第113回国会 本会議 第5号
昭和六十三年八月二日(火曜日)
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 議事日程 第四号
  昭和六十三年八月二日
    午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続

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○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑   (前会の続)
 山口鶴男君の故議員福永健司君に対する追悼演説
    午後二時三分開議
○議長(原健三郎君) これより会議を開きます。
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 国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)
○議長(原健三郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。永末英一君。
    〔永末英一君登壇〕
○永末英一君 私は、民社党・民主連合を代表し、竹下総理の所信表明について質問いたします。
 去る七月二十三日横須賀港外に発生いたしました海上自衛隊潜水艦と釣り船との衝突事故はまことに遺憾であり、特にかつて海軍に在籍し、この海を幾度となく航行した私にとりましては、身を切られるようにつらいことであります。事故のため命を失われた方々、御遺族並びに負傷者の方々に対し、謹んで弔意を表し、お見舞いを申し上げます。
 自衛隊は、日本国民の命を守ることがその最高の使命です。これまで数々の災害出動や人命救助によって国民の信頼をかち得てきたその自衛隊が、使命とは全く正反対の結果をもたらし、特に事故後の人命救助に身を挺して赴く気迫が欠如したかと見られていることは、何といっても残念至極であります。速やかな原因究明を求めるとともに、竹下総理に二つのことを要望いたしたい。
 第一は、自衛隊は国民とともにあるという理念に立って、国民から信頼される自衛隊をつくり上げるために懸命の努力を払われたいということであります。第二は、交通頻繁な海域における自衛隊艦船の航行については、今後絶対に事故を起こさぬよう、制度の整備を行うとともに、航行する自衛隊艦船や民間船舶の対応姿勢を十分整えるべきであります。さらに、海上自衛隊のすべての艦船は、事故発生時の救助に対し、総がかりで即時に立ち向かえるよう、その対処行動をきちんと準備しておくべきであります。国民の命を守ることを最高の任務とする自衛隊は、いついかなる事態にも即応し得るよう、隊員一人一人の自覚の上に鍛錬が行われていなければなりません。自衛隊最高指揮官としての総理の御見解を伺いたい。
 税制論議の中心は、不公平税制の是正であり、その最大の焦点は株売却益課税であります。
 これまでのような株の売却益原則非課税という制度のもとにあっては、明電工事件にあらわれたように、これを悪用し、四百もの実際いない人の名をかたる仮名口座、実際いる人の名をかる借名口座を約三十社の証券会社に設けて、巨額の脱税を行った事実は、人々を大いに憤激させました。また、六十二年度の脱税白書によれば、告発された株取引絡みの件数は、前年の三件から二十三件に急増し、隠し所得額の平均も一件当たり四億円を超えております。これらはすべて、原則非課税制度に起因するものであります。こんな状態だから、株売却益を原則非課税から原則課税に改正することは当然であります。
 しかし、改正の内容を見れば、分離課税やみなし課税で、株の売却益捕捉を全くあきらめた代物で、これでは到底不公平は是正されません。そこへ発覚したのがリクルート問題。不明朗な新規公開株の仕組みをつくって、数千万円という巨額の金をぬれ手にアワとつかみ取っても、原則非課税のもとでは税金を納める必要はありません。また、今度原則課税になっても、源泉みなし分離方式を選択すれば、売却額のたった一%を納税するとそれで済みというのでは、到底不公平税制が是正されたとは言えません。
 折しも殖産住宅事件に対する最高裁の判決が下され、株の公開による値上がりの利益は贈収賄の客体になるというのであります。この判断に基づいて、職務権限のあった関係者は収賄罪の判決を受けました。これらを背景にして、発覚したリクルート疑惑に関し、株を譲渡された政治家の全貌を明らかにし、何の目的で、どういう形で行われたかを解明せよと国民はひとしく求めております。これをうやむやにしたままで税制論議を始め
ようとしても、国民は、この件の関係者によってつくられた税制の論議など、聞く耳を持っておりません。
 論語は「民、信なくば立たず」と教え、マックス・ウェーバーは、国家国民に対する責任感を政治家に欠くことのできぬ資質として挙げております。総理、あなたは、公職の最高位にあり、しかもこの件に関係のある政治家として、一体どう対処されるのか、明確にお答え願いたい。
 また、税制の最高責任者である宮澤大蔵大臣には、この件の関係者としての所見を求め、さらに大蔵大臣としてこの件の全貌を国民に明らかにし、また、公開もしくは上場に至るまでの株式の取引に問題の原因がありますので、再発を防止するため現行制度をどう改革すべきだと考えているのか、明らかにしていただきたい。
 国民の大多数は税制の抜本改革を望んでおります。税金は金のある者から取り、金のない者からは取らないという応能原則のもと、税を安くしてほしい、不公平をなくしてほしい、これが国民の期待する税制改革であります。ところが、政府の税制改革の真のねらいは、安定した収税手段としての間接税の導入にあります。初めに消費税ありというのが政府の態度です。政府は、不公平感を払拭し、所得、消費、資産の間で均衡のとれた税体系を構築しようと言っております。まるで、所得、消費、資産のバランスのとれた税制をつくれば、それで税の不公平がなくなると言わんばかりの態度であります。これは問題のすりかえだ。
 税制改革の方法論として今必要なのは、現在の我が国の税体系で主要な役割を果たしている所得税、法人税及び間接税のそれぞれの内部的構造改革にあります。ところが、政府は、この改革努力を放棄し、国民の不公平是正への要望をねじ曲げて、所得、消費、資産のバランスをとればよいなどと称して、ごり押しに消費税を導入しようとしているのであります。昭和六十一年度の国税収入の中で、所得、消費、資産の収入割合は七、二、一となっております。バランスのとれたというのは、このそれぞれの比率を三分の一ずつにしようというのでありましょうか。そうすれば税の不公平がなくなると総理は考えておられるのか、明確にお答えを願いたい。
 また、所得税率のフラット化によって高額所得者に大幅減税を行うなら、当然、資産課税を強化して、高所得者と低所得者との格差の是正を行わなければなりません。ところが、政府の提案は、緊急の必要だとして、相続税や贈与税の最高税率を引き下げ、土地税制にもほとんど手を触れておりません。我々は、庶民の相続については、課税最低限の引き上げなどを含め、土地の値上がりのために引き起こされる困難に対処しなければならないと考えております。しかし、富の再配分の役割を果たす相続税、贈与税の最高税率を引き下げるなどは、不公平を一層拡大するものだと言わなければなりません。総理は、これで不公平が是正されるとお考えか、お答え願いたい。
 消費税導入だけでは税の不公平は少しも是正されません。例えば、消費税がかからぬとされる土地に関する税制改正は緊急の要務ではありませんか。我が国の両三年来の東京を中心とする地価高騰は、土地の資産評価が高いのにその税負担が著しく低く、さらに譲渡の場合各種の優遇措置により軽減されているところに原因があります。今や我が国の宅地資産の総額は千八百四十兆円余り、このうち東京都は四百九十一兆円、二七%、東京圏では九百四十八兆円、五〇%を占めております。また、金融と保険業を除く全法人百八十万社の調査では、土地の含み資産は千六百七十九兆円に上ると言われております。
 このような事態に対処するため、遊休地税の創設や特別土地保有税の強化、農地の宅地並み課税の実施、さらに固定資産税の適正化など、土地の譲渡と保有に対する課税の適正化を図り、資産格差は是正すべきであります。総理のお答えを願いたい。
 所得税減税を消費税導入で埋めようとすれば、所得税を払わない低所得者は明らかに増税になり、また、ひとり身の若い男女や年金で暮らす高齢者は負担増になります。サラリーマンのライフサイクルを考えたとき、この政府のやり方はまさしく人生八十年、減税二十年、増税六十年だと言わなければなりません。総理は、このやり方をサラリーマンが喜んで受け取るとでも考えておられるのでしょうか。しかとお答えを願いたい。(拍手)
 シャウプ以来、我が国の税制の歴史を追ってみると、利子分離課税、キャピタルゲイン非課税、事業所得の分割制度、配当の分離課税等の優遇税制は、名目的な高い法定税率の累進構造と裏腹の関係にあったものであります。これを断ち切ることが不公平是正の一つの眼目であります。ところが、政府案では税率のフラット化だけが行われたため、不公平税制の是正は全く不徹底に終わっております。さらに、株売却益の総合課税化も、番号制度の導入がなければ完全には行われないということを知りながら、政府税調は番号制度の結論を十一月まで引き延ばし、政府は、それも待たずに今度のような理に合わぬ原則課税制度を持ち込んだことは、全く納得できません。
 これとともに、自民党税調が検討事項として先送りした公益法人、宗教法人課税、協同組合課税や医師課税等についても、すべて消費税導入前に論議を決着させるべきだと言わなければなりません。総理にお答えを願いたい。
 税制改正の旗印として、政府は社会経済の一層の国際化を挙げておりますが、国際化とは外国の攻撃にたわいもなく敗北するということですか。イギリスの激しい攻撃によって高級ウイスキーの税率は大きく引き下げられ、反射的に二級ウイスキーは大幅に引き上げられましたが、これと同時に、蒸留酒という言葉以外にはウイスキーと縁も
ゆかりもないしょうちゅうの税率が殺人的に引き上げられました。これにつられて、ウイスキーとは全く別世界の清酒もまた、二級は大幅に増税、特級は大幅に減税されました。この結果、大衆向けの安いお酒はすべて値上がりすることになりました。
 国際化の名のもとに、竹下総理は、しょうちゅう、清酒二級、ウイスキー二級という大衆酒の大幅増税をやって、大衆の恨みの歴史にその名を残すおつもりですか。(拍手)これでは、零細なしょうちゅうメーカーはつぶれてしまいます。政府は、慌てて転廃業給付金や近代化資金として百億円を出そうとしておりますが、総理、あなたのやろうとしていることはおかしいことだとは思いませんか。国際化は、外国人に気に入られて、国民を泣かすことですか。お答え願いたい。
 農業においても、政府は外国に対して極めて弱腰です。農家に対しては市場開放は行わないと明言しておきながら、牛肉・オレンジの自由化を決めました。今後の日本の農業のビジョンを何ら示さずして、外圧、すなわち国際化を口実に自由化を強行することは、農民の政治不信を招くだけです。総理はこの責任をどう感じておられるか、伺いたい。
 本臨時国会直前の七月十五日、与野党書記長・幹事長会談のとき、自民党安倍幹事長は、不公平税制是正について各党間の協議機関を設けることに賛成すると野党側に約束をいたしました。これは、六月十五日の我が党塚本委員長の提案にもこたえたものと思いますが、いまだに各党間の協議機関は設けられておりません。不公平税制是正は国民の声です。これを未解決のままに放置しておいて、国民の過半数が反対する消費税の審議に入れると思いますか。(拍手)竹下総理は、トロント・サミットからの帰途ハワイで、税制改革については野党と話し合い優先主義でいくと語っております。あなたはこの公約をよもやお忘れではないでしょう。不公平税制是正の協議機関を設置し、協議を消費税審議の前に行うことをこの湯でお約束されたい。
 税制改革について政府の掲げるもう一つの旗印は、高齢化社会の到来に備えるというものであります。速いスピードで間違いなく到来する高齢化社会の福祉ビジョンを今提示することは、新しい税制を考えるに当たって極めて重要なことであります。私は前国会の予算委員会においてこの福祉ビジョンの提示を求めたところ、政府は予算委員会の終わりに社会保障費の将来推計を提出いたしました。しかし、これは現行制度を前提にした推計にすぎず、政策的判断を全く欠如したもので、我々の求める福祉ビジョンとはおよそ縁遠いものでありました。
 高齢化社会を迎える我が国には、多くの課題が山積しております。医療保険、年金制度の一元化をどう進めていくか、高齢者の雇用の推進と年金との統合をどうするか、病院と社会福祉施設の連携をどう進めるか、施設と在宅との負担の不公平をどうするか、ホームヘルパーやボランティア活動をどう整備するか、住宅対策はどうするのか、これらの施策を進めていくためには国民の負担はどうなるのか。政府の発表したものは、高齢化のピーク時、二〇一〇年、国民負担率は四六%台に上昇するという推計数字を示すだけであって、その政策的裏づけは全く示されておりません。
 また、高齢化社会のために消費税を導入すると自民党政府は言っておりますが、税率はどうなるのか全く不明、総理の所信表明も何も答えておりません。税率の歯どめも、国会にげたを預けて逃げております。無責任きわまりないやり方ではありませんか。(拍手)福祉ビジョンの提示を総理はいつできると考えておられるのか、はっきりとお答え願いたい。
 総理は行財政改革と税制改革とを車の両輪に例えておりますが、我々は行政改革は税制改革の大前提だと考えております。ところが、総理は行政改革への決意を披瀝するだけであって、その実行ぶりは手抜きとしか言えません。まるで行政改革を税制改革のだしと思っているのではありませんか。
 政府は、臨調答申以来六年間、毎年、予算の一律削減をてこにして行政改革を行ってきたとしております。しかし、行政改革の精神は、行政をスリムにして財政に弾力性を与え、重点的な施策に資源配分をするところにあります。総理の言う「世界に貢献する日本」も、行政改革によって財政力を持たねば実行不可能ではありませんか。そのためには、行政機構の縮小、定員の計画的縮減、補助金、特殊法人の整理合理化、許認可事務の整理による公的規制の緩和、地方出先機関の整理など、行政改革本来の課題について徹底した切り込みを行い、税のむだ遣いを是正すべきであります。(拍手)我々が行政改革の中期計画の策定を求めているのはこの意味であります。総理はどうして我々に新たな行革五カ年計画を示さないのか、行革の中期計画を示すつもりがあるのかないのか、あるならばいつ提示するのか、はっきりとしたお答えを願いたい。
 予算の一律削減は悪平等方式であって、臨調答申の精神に沿うものではありません。本年春以来鳴り物入りでやってきた一省庁一機関地方移転も、同じ手法に立つ代物であります。私は、二月、予算委員会において総理にこの構想を再考するよう求めましたが、政府はなおも執念深く国の機関の移転を強行しようとしております。東京への一極集中を排除し、多極分散型の国土形成を図るためには、単に入れ物だけを各省庁横並びに東京都区内から東京圏内に移すというこそくなやり方にこだわることなく、基本的に遷都問題の可能性を探るべきであります。総理は私に、極限に集中すれば遷都論に議論するものだと答えました。今や、超党派の議員連盟も真剣に遷都問題を論議しております。あなたも真剣に遷都問題について
考えておられるのかどうか、お答え願いたい。
 総理は所信表明で、国民の所得水準が向上し、所得が今や平準化してきたと述べ、それを消費税新設の根拠にしております。しかし、果たして国民の所得は平準化しつつあるでありましょうか。全日本民間労働組合連合会、すなわち連合の最近の調査によれば、勤労者世帯とその他の一般世帯、個人営業、会社経営者、自由業者などの世帯の所得の格差が広がりつつあります。生活もまた、物価の安定している中で、低所得階層ではほとんど向上を見ておりません。しかも、我が国の勤労者は世界一高い食料品価格で暮らしているのであります。最近、日経連と連合との共同調査によると、東京とニューヨークとの物価比較で、牛肉は九倍、米は六倍、ジャガイモは四倍、牛乳は三倍というありさまであります。消費も資産も、低所得者と高所得者との格差は拡大しつつあります。
 こうした状況下へ消費税という比例税制が導入されれば、低所得者階層に大きな打撃を与えることは歴然です。総理が述べた七つの懸念のうち、消費税の逆進性はなくならず、また、所得税のない人には丸々負担増になり、物価を押し上げても転嫁がはっきりしないため、消費者の納税感覚はあいまいになります。年間売り上げ五億円以下の事業者に簡易課税制度を認めたため、消費税は第二事業税もしくは第二法人税という直接税となり、かつての大悪税、取引高税と同じものになり果てます。
 税制改革法案で、「円滑かつ適正な転嫁が行われるよう努める」とか、「課税の累積を排除する方式」だとか法律で定めてみたところで、経済取引の実体は法律どおりになるものではありません。こうしたあいまいな間接税を性急に導入すれば、「我が国経済社会の活力を維持」するどころか、逆に経済の大混乱を招き、多数の倒産者を生み出すことになります。総理の見解を伺いたい。
 さて、六十二年度の税収は、当初予算に比較し七兆円もの増収がありました。それは、政府の言うように土地や株の財テクにだけ原因があるのではなく、個人消費の好調や設備投資の大幅な伸びに裏打ちされているものであります。我が国の経済が拡大しつつあるのです。本年の経済成長率は昨年以上と見られ、したがって、本年は昨年同様、いやそれ以上の増収があると見込んで当然ではありませんか。我々が既に決定した六十三年所得税減税財源のために消費税などを慌てて考える必要はないと判断いたしますが、総理、いかがですか。(拍手)JRや日本たばこ産業の株を売却して国債利子の償却に充て、財政再建計画を具体化するとともに、税制抜本改革もまたこの機会に十分時間をかけて論議すべき余裕があると考えますが、総理の見解を伺いたい。
 本年六月、米ソ首脳会談においてINF全廃条約が調印され、さらに戦略核兵器五〇%削減交渉も行われております。核廃絶を願う人類にとって極めて喜ばしいことであります。ソ連は、ゴルバチョフ書記長によってペレストロイカの旗のもとに国内外の政策を改めようとし、足かけ十年にわたるアフガニスタンからの撤兵も始まり、ソ連経済立て直しのためには、軍備縮小の道を目指し、ヨーロッパにおける通常兵力の縮減交渉も具体的な日程に上りつつあるようであります。この変化を見つつ、北方領土問題について伺いたい。
 最近、ソ連の一部から、北方領土についていわゆる国境線変更論がささやかれ、また先般、中曽根前総理訪ソの際、ゴルバチョフ書記長は二島返還論とも思える見解を示しました。しかし、北方四島一括返還を求める我が国の方針は不動のものであります。総理はどのようにしてこの実現を図るおつもりか、伺いたい。
 他方、アメリカにおいては、レーガン政権はその終末期を迎え、強いアメリカを旗印にした軍備拡大政策も、三年前から軍事費削減という形で政策転換を示すに至っております。しかし、太平洋における米ソの核対決は海洋においてであるために、太平洋は戦略核兵器削減の最後の舞台になるものと考えられ、したがって、ヨーロッパのように直ちには通常兵力の削減交渉には入り得ない環境にあります。けれども、私は、ヨーロッパにおいて東西双方の通常兵力削減交渉が本格的になったときは、アジア・極東においても関係諸国による通常軍縮の会談を持つべきだと考えます。通常軍縮は世界的規模でなければ意味がないからであります。総理はどうお考えか、伺いたい。
 総理は、八月下旬訪中のとき、中国に対し、中国が核軍縮会談に参加する時期と条件を尋ね、アジア・極東の通常軍縮会談への参加の意思を伺うべきだと存じますが、総理の御見解を伺いたい。
 ところで、核戦略の緊張緩和は、通常兵力にあっては逆に兵力増強を促す理屈をもつくります。アメリカが、アジア・太平洋の通常軍備維持のために、全般的な緊張緩和の状況の中で、我が国にはバードンシェアリング、負担の分担を求めてくるのは必至であります。アメリカからすれば、一九七八年以降の日本側の思いやり予算という労務諸経費や施設改善費は、歓迎すべきものだと映っているのであります。自民党政権は、一九七六年に策定した「防衛計画大綱」に基づく中期防衛力整備計画を実現するのだというひとりよがりの理由で防衛費を増大してまいりました。しかし、本来、シナリオに基づかない架空の防衛力などは意味を持つものではありません。アメリカ側からすれば、我が国の自衛力はアメリカの極東戦略の一部分を日本が自主的に担っているものと映っているのであります。一体、竹下総理は、アメリカから負担の分担の強い働きかけがある場合これをどう受けとめるか、方針を伺いたい。
 また、総理は、国際協力構想の推進と称して、ODA、政府開発援助の増加や途上国借金の棒引きなど派手に金まき外交を展開しております。し
かし、これらが果たして我が国の安全のためどれだけの効果を上げているのでありましょうか。例えば、一九九二年以降のフィリピンにおけるアメリカ基地の成り行きをどう判断し、これに対してどのような対処をしようとしているのでありましょうか、総理の見通しを伺いたい。我が国ODAは今や世界第一の額に達しております。莫大な金を支出するのでありますから、これまでのように行き当たりばったりではなく、政府として国外のだれからも理解される理念、目的、諸原則を定め、統一ある協力を行うべきであります。総理の御見解を伺いたい。
 衆議院議員定数是正は、国会が国民の信認にこたえるためには、国会としては最重要の問題です。ところが、総理はさきの予算委員会で定数是正にイニシアチブをとると私に答えましたが、一向に進んでおりません。総理はまじめに定数是正に取り組まれるのか、お答え願いたい。
 また、自民党の参議院比例区候補者になろうとする者は、党員・党友二万人、後援会員百万人を集めなければならぬと言われております。党費が年四千円、党友の会費が年一万円でございますから、仮に党員・党友半々としても、最低一億四千万円かかることになります。公式には党員・党友二万人を超えても順位の基準とはしないとされているようでございますが、とりわけ新人の場合、獲得した人数が物を言うと信じられているのか、党員・党友集めに激しいせめぎ合いが続けられているようであります。特に官僚出身の新人候補者は、官庁の組織を使って狂奔のありさま。いやしくも公正なるべき選挙への活動としての政治活動に官庁の組織を使う、すなわち、公選法を無視し、権力を利用して運動するなどということは、健全な議会制民主主義のために到底許さるべきことではございません。総理は官の中立性を保持するため厳正に指揮監督すべきだと思いますが、明確にお答えを願いたい。
 最後にお伺いいたします。
 現在の国会は、二年前の中曽根内閣の時代、中曽根総理の大型間接税は導入しないという選挙公約のもとに行われた選挙によって選ばれた議員によって構成されております。売上税から消費税へ名前こそ変わりましたが、大型間接税である実体に変わりありません。したがって、二年前の選挙で多数を占めた自民党が大型間接税である消費税をこの国会で成立させることは、国民の意思を裏切り、議会政治の基盤を破壊する暴挙だと言わなければなりません。もし自民党がどうしても消費税をこの臨時国会で成立させたいと願うならば、まずそのことを選挙戦の争点として衆議院を解散し、国民に信を問うのが議会制民主主義を守るため絶対必要な要件ではありませんか。議会の子をもって自認される竹下総理、まさかあなたの手によって議会政治に泥を塗ることはされないと私は信じております。総理、あなたがどうしても間接税の新設を望まれるならば衆議院を解散して国民の信を問うべきだと考えますが、あなたの御見解を伺って代表質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕
○内閣総理大臣(竹下登君) まず最初は、第一富士丸事故の問題についてのお尋ねであります。
 今回のような痛ましい事故が発生して多数のとうとい人命が失われましたことは、まことに遺憾であり、まさに痛恨のきわみであります。私としては、このことを厳粛に受けとめ、かかる事故がそれこそ二度と起きないよう、事故原因の早急かつ徹底的な究明と再発防止対策の確立を図ることが、何よりも今私どもに課せられた重要な課題だと思います。そのため、事故発生の翌日から第一富士丸事故対策本部を設置いたして取り組んでおるところでございます。今後、事故原因の調査結果を待って、一層の航行安全対策を講ずる考えであります。私としては、このような措置などを通じて、今御指摘にもございましたように、自衛隊の存立の基盤は国民にある、この点に思いをいたし、より一層その信頼の得られる自衛隊であるよう不断の努力を行うことが大切である、このように思料するものであります。
 なお、海上自衛隊がこの事故の直後において遭難者に対してとった措置等について、いろいろな御批判があることは承知いたしております。私は、今回の事故で得られました反省、教訓を今後一層生かしていく、それが犠牲者の方へのせめてもの供養であると思っております。永末議員におかれては、今もお話にありましたように、旧海軍の先輩として、平素より海上自衛隊に御厚情を賜っておりますことを感謝いたします。今後とも変わらない御叱正を心からお願いをするところでございます。今御指摘がありましたように、制度、施策、万全を期してまいりたいと考えております。
 次の問題は、リクルート事件と政治家のモラルの問題についてでございます。
 いわゆるリクルートコスモスの問題につきましては、株式公開に至るプロセスが投資家保護及び公正な証券取引の確保といった見地から適切な規制のもとに置かれていたかどうかという点につきましては、現行法の定めるところによりまして調査検討を進めてまいります。そして、健全かつ公正な証券取引の確保という観点から現行制度に欠けるところはないか、関係者の御意見を十分聞きながら、改善すべき点についてはきちんとした対応をしていく考え方であります。
 今また、原則課税から、みなし分離等が完全でない、こういう御指摘のありましたことも十分承知いたしております。そして、政治家ないしその関係者がその中に含まれておるではないか、この点につきましては、現行制度のもとにおいてみずからの責任において行われたものであるといたしましても、たとえそれぞれの行為は現行制度の中で許された経済取引であるにいたしましても、国民感情として割り切れないものがあるという批判
は、この際しっかりと受けとめるべきであると思います。李下に冠を正さずの教えのとおり、私自身を含め、一人一人の政治家として今後とも十分心してまいりたい、このように考えておるところであります。
 さて、次の問題であります。いわゆる所得、消費、資産のバランスの問題についてお触れになりました。
 いかなる税目も、それぞれの長所を有する反面何らかの問題点を伴うことは事実でありますので、税収が特定の税目に偏り過ぎることには問題があります。その意味において、税体系は全体として所得、消費、資産等に対する課税が適切に組み合わされている必要がありますが、もとよりそれは、それぞれ単一に各三分の一ずつであるべしというようなものでは全くございません。今御指摘のありましたそれぞれの内部的構造改革、これも重要な問題であります。現行税制について問題となりますのは、直接税、とりわけ給与所得に対する課税が大きくなり過ぎていること、その裏腹として消費課税のウエートが下がり過ぎており、しかも現行の個別消費税制度が時代の変化に即応していないことにもございます。このような認識に立って税体系を見直しますことが、いわゆる不公平税制の是正と相まって、税に対する不公平感、重圧感の払拭に資するものである、このように考えておるところであります。
 資産課税につきましては、株式譲渡所得の原則課税への転換、そして、法人の借入金による土地取得に対する課税強化等が図られます一方、昭和五十年以来十数年ぶりに相続税の見直しを行うことといたしております。その最高税率につきましては、昭和五十年以前の七〇%に引き下げることとしておりますが、なお諸外国と比べましてかなり高いものであります。富の再配分機能がこれによって損なわれるという性格ではない、このように考えております。
 次が、土地税制の是正についてであります。
 土地税制については、土地政策の一環として、税負担の公平にも配意しつつ、種々の措置を今日まで徐々に徐々にとってきております。さらに、今回の改革案にも、法人の借入金による土地取得を通ずる税負担回避行為への対応策が盛り込まれておるということを指摘申し上げておきます。土地問題の解決には各般の対策をまさに総合的に実施していくことが必要でありまして、土地税制についても、総合的な土地対策の一環として、先般の総合土地対策要綱、税制調査会の検討等を踏まえて、負担の公平にも配慮しつつ、今後とも適切な対処をしてまいる考え方であります。
 次は、私がかつて申しました六つの懸念あるいは七つの懸念等について具体的にお触れになりました。低所得者問題であります。
 今回の税制改革では、二兆円を上回る大幅なネット減税を行いますことによって、働き盛りで収入は高いが教育費、住宅費などの支出がかさみ家計にゆとりが余りない四十代、五十代を中心に、サラリーマンのライフサイクルではほとんどの世帯で税負担の軽減が図られるものと考えております。今の永末議員のライフサイクルに対する二十対六十という問題は、私、にわかにそれに対してお答えする準備はいたしておりませんが、いずれにせよ、サラリーマンのライフサイクルを見ながら税制は構築されておることは事実であります。
 所得や世帯の状況によりましては負担増が生じる場合がありますことは否定できませんが、租税はだれもが受けている公共サービスを支える財源でありまして、この社会共通の費用を広く薄く公平に分かち合っていくことは、二十一世紀に向けてより豊かな経済社会を築いていく上で非常に重要になっておること、我が国の所得税の課税最低限は今回の改革により国際的に見てもなお一層高い水準となること、また、真に手を差し伸べるべき方々については、これは税制の面だけでなく財政面で引き続ききめ細かな配意を行っていくこと、このようなことによりまして、具体的には生活保護あるいは福祉年金等々になりましょうが、私は懸念が中和されていくものであると考えるものであります。
 さて、不公平税制の是正についてであります。
 納税者の信頼の基礎となるものは負担の公平であり、今回の税制改革におきましても、税制改革法案に述べられておりますように、公平の原則をまず基本的理念の一つとして置いております。いわゆる課税の適正化にできる限りの努力を行っているところでありますが、負担公平の確保は税制のかなめでありまして、今後ともよりよき改善への検討は、これは継続してまいらなければならぬ課題だ、このように考えておる次第であります。今後、税制改革関連法案の十全な御審議を心からお願い申し上げる次第であります。
 次は、酒税の問題にお触れになりました。
 近年における酒類消費の態様の変化や国際的な観点等を踏まえて、従価税及び級別制度の廃止等酒税制度の簡素合理化を図りますとともに、各種酒類の税負担水準の見直しを行うこととしておるところでございます。税負担水準の見直しに当たりましては、各種酒類の消費の実態等にも配慮しながら、酒類間の税負担格差を縮小した上で消費税相当分の税率引き下げを行うこととしております。なお、清酒及びしょうちゅう等の中小酒類製造者に対しましては、税率を軽減する特別措置を講ずるなど、所要の対策を行うことといたしておるところであります。
 牛肉・かんきつ問題についてお触れになりました。
 今回の交渉では、佐藤農林水産大臣を初めとする関係者が米側と粘り強い交渉を行って、自由化までの期間、そして国境措置、これらにつきまして米側からも相当の譲歩を引き出し、日米間の協力とまさに共同作業によって決着したと考えてお
るところであります。我が国としては、輸入数量制限をめぐる厳しい世論、我が国の置かれております国際的立場等を考慮して、国境措置とそして国内対策を講ずることによりまして牛肉・かんきつ生産の存立を守り得るとの判断に立って決断を行ったものであります。これらの経過、結果等については関係方面にも十分御説明申し上げ、政治不信につながってはならない、この考え方にこたえるべきであると思っております。
 次の、いわゆる不公平是正の与野党協議の問題であります。
 この問題については、私自身事情はよく承知いたしております。しかし、きょうは私自身行政府の立場としてのお答えを申すべき立場にございますので、各党間の話し合いの問題についてはコメントをする立場にないということをこの場では御理解を賜りたいと思います。
 次の、福祉ビジョンの提示でございます。
 これは、永末議員から前回の国会の予算委員会の際にも私どもにこのことについていろいろ御示唆がございました。まず、昭和六十一年六月に長寿社会対策大綱を閣議決定して、これに沿って各種施策を総合的に推進しているところでございます。また、本年三月に、二十一世紀初頭における社会保障を展望していただくために、人口の高齢化状況や社会保障の給付と負担の見通し等を明らかにいたしました。これは、御指摘なさいましたとおり、いわば現行の施策、制度を前提に置いたものであるということは御指摘のとおりであります。したがって、さらに具体的な形で高齢化社会の福祉施策の方向を示すことにつきましては、最終的には、これは国会に預けるというお言葉もありましたが、国民の合意と選択を得るべき問題があります。種々難しい点もございますが、何とか御趣旨に少しでも近づけられるような姿が描けないものか、これからも工夫、検討をしてみたい、御示唆のほどをお願いをいたす次第であります。
 さて、次に行革中期計画についての御議論がございました。
 確かに、財政力なくば、いかに立派な「世界に貢献する日本」などと申しましても、その実行は不可能であります。まず、行財政改革については、従来から行革審答申などを最大限に尊重しながら着実に推進してまいっております。行財政改革の中期計画を示せとの御指摘につきましては、国民の必要とする行政サービスの水準は毎年毎年の予算編成過程等を通じて決定し、国会の御審議を仰ぐべきものでございます。内外の経済社会情勢が流動的な中で、行財政についてのみ将来を先取りして拘束性のある具体的な計画を示すことについては、これはぎりぎりの議論をいたしますと、非常に困難な面がございます。しかしながら、国民の理解と協力を得て税制改正を実現するために行財政改革を一層推進する必要があるということについては、御指摘のとおりであります。したがって、新行革審の意見等を踏まえ、今後行政改革について誠心誠意これに取り組んでいきたい。
 確かにいろいろ御指摘がございました。しかし、例えば国鉄の分割・民営、たばこ会社あるいはNTTの民営化とその株式売り払い代金の既に果実の活用等々、そうしたいわば目玉になるものを今すぐ示せと言われてもなかなか困難であります。しかし、やはり原点に立って、地味でございましょうとも、この問題は根気強く続けていかなければならない課題だ、このように理解しておるところであります。
 さて、首都移転問題についてお触れになりました。
 私どもはいろいろな政策を打ち立てておりますが、これらが大きく議論が展開して首都移転問題等につながっていくということは、私どももあらかじめ承知いたしておるところであります。しかし、首都機能の移転再配置それそのものについてまず議論いたしますと、国民生活全体に大きな影響を及ぼして、国土政策の観点のみでは決定できない面がございます。したがって、さきの総合土地対策要綱におきましても、政治・行政機能の中枢的機関の移転再配置につきましては、幅広い観点から本格的検討に着手する、このようにいたしておるところであります。超党派の新首都問題懇談会ができていろいろな提言を私どもにも賜っておりますことは、私も十分承知いたしております。
 さて、間接税と経済の混乱の問題についてお触れになりました。
 消費税においては、経済に対する中立性や事業者の納税事務負担の軽減の観点等から、帳簿上の記録等に基づきます税額控除方式や簡易な税額計算方式を採用いたしております。また、消費税の実施に当たりまして、税負担の円滑かつ適正な転嫁が行われるよう、消費税の仕組みの周知を図りますなど、法令面の手当てをも含めまして必要な施策を講じて、その環境づくりに努めていかなければならない、このように考えます。
 さらに、消費税の導入に伴いまして物価への影響が生じる場合には、生活保護、さきにも申しました在宅福祉等、真に手を差し伸べるべき方々に対する施策については適切な配慮を行うべきものであります。政府としては、消費税の円滑な導入に資するためこうしたさまざまな配慮を施しておるところでありまして、したがって、これらの懸念というものは、私はお互い議論する段階におきまして中和、解消されていくべきものである、このように考えておるところであります。
 税率問題についても、国会にげたを預けておるではないかという趣旨の御発言がございました。しかし、この最大の歯どめというのは、まさに租税法定主義の建前において国会こそがその機能を果たすものであるという私の考え方は、いつも申し上げておるところであります。
 税制改革に時間をかけるべきだという御意見がございました。
 確かに、六十三年度税収の動向につきまして、本格的な収納が始まったばかりでございますので、予算額の一割にも満たない現段階において今年度の見通しを申し上げることは困難でございます。六十二年度は、一時的要因といたしましても、自然増収があったことも事実であります。そこで、私は、やはりこういう機会にこそ、すなわち、いわば物価が安定して、いわゆるよく言われますインフレなき持続的成長の過程にある落ちついた時期にこそ、税制改革というものを本当に冷静な環境の中でお互いが議論をし合って選択肢を求めていくということには絶好の機会ではなかろうか、このようにも考えておるところであります。
 さて次に、北方領土問題等外交問題にお触れになりました。
 歴史的にも法的にも我が国固有の領土であります北方四島の一括返還を実現して、北方領土問題を解決することによって平和条約を締結することは、従来よりの一貫した対ソ外交の基本方針であることは御指摘どおりであります。いろいろな御意見がございました。しかし、政府としては、今後ともこの基本方針にのっとって、あらゆる機会に北方四島一括返還実現のため、粘り強い対ソ交渉を行っていく考え方でございます。(拍手)
 アジア・極東の通常軍縮問題についてもお触れになりました。
 欧州におきます通常戦力安定化交渉は、国境の不可侵と国家の領土保全につき関係国間で明確な合意が達成されたとの経緯を経て、かつ欧州におきましては、NATOとワルシャワ条約機構がほぼ東西ヨーロッパに対称的な形で対峙してきたとの状況等を背景に進められるものであると承知いたしております。これに対して、アジアにおいては、まず領土問題、それから各種地域問題が未解決のまま残されていること、また、そもそもこれらの諸問題の背景にありますところの政治、軍事情勢が欧州とは基本的に異なりますことなどから、欧州と同様の方式を適用することが現実的かつ適切であるとは必ずしも申せないと思います。我が国といたしましては、現状においては、まず本地域における紛争、対立の原因、例えば北方領土問題の解決を図ることがより肝要との立場から、今後ともこのための外交努力を継続していく、このような考え方に立つものであります。
 中国との問題であります。
 中国は、軍縮のための国際会議に参加する条件として、圧倒的多数の核兵器を保有しております米ソがまず核兵器を大幅に削減しなくてはならないという立場であると承知しております。私は、国会の御理解を得て、今月末訪中し、中国国家指導者との間で率直な意見交換を行う予定にいたしております。現在、詳細日程、議題等については打ち合わせを行っておりますが、御指摘いただいた点等を踏まえてこれに当たる覚悟であります。
 さて、バードンシェアリングのお話がございました。
 米国において、近年の日米間の経済情勢をも反映して、議会を中心に我が国に一層の防衛努力を求める動きがあることは私も十分承知しております。安保条約上、我が国に対する武力攻撃が発生しました場合に我が国を防衛する立場にある米国として、我が国の防衛努力につき関心あるいは期待を有するということは、これはいわば自然の姿であろうと思います。他方、我が国は、憲法及び基本的な防衛政策に従って節度ある防衛力の整備に努めてきておるところであります。また、在日米軍経費の負担についても可能な限りの努力をしているところでございますが、これはあくまでも我が国の自主的判断に基づいて行っているものでございます。したがって、政府としては、今後ともかかる努力を自主的判断の中で継続していくべきものである、このように考える次第であります。
 ODAの理念、目的、諸原則、これは私どもが考えておりますことと考え方をおおむね等しくいたしておるところでございます。これから、それこそ量、質の改善を含め、一層の効果的、効率的実施を図ってまいる、このような考え方でございます。
 さて、衆議院定数是正の問題にお触れになりました。
 確かに、予算委員会において私も一問一答したことを記憶いたしております。衆議院議員の定数是正問題につきましては、これは本院の本会議において抜本改正の検討を行う旨が決議されたわけであります。この問題は、国会の構成にかかわる選挙制度の基本にかかわる問題でございますので、やはりまずは各党間で十分論議を尽くしていただくことが重要である、政府としては、その論議等を踏まえて努力すべきものではなかろうか。ただ、いわば与党たる自由民主党がイニシアチブをとるべきだという永末議員の前回予算委員会等におけるお尋ねでありました。この点については、十分心して対応すべきものと考えております。
 さて、官僚出身者の問題についての御指摘がありました。
 公職選挙法は、公務員の地位利用によります選挙運動や選挙運動類似行為を禁止しておることば御案内のとおりであります。国家公務員はこのような法律の趣旨を十分理解して、いやしくも世間の疑惑を招くようなことのないようにすべきであるは当然であるというふうに私も思っておるところでございます。
 そこで、今度は選挙公報違反、公約違反等の問題に最後にお触れになりました。
 昨年二月提案いたしました売上税は、二年前の選挙の際の中曽根前自民党総裁の発言をも十分踏まえた上のものでございましたが、結果として審議未了、廃案となりました。政府としては、こうした経緯というものを真剣に、かつ謙虚に受けとめて、国民各界各層の意見は那辺にあるかということを幅広く伺いながら、改めて税制改革案を取りまとめ、このたび提出した次第でございます。したがって、何とぞこの国会において十分御審議を賜りますことを心からお願いをする次第であります。
 さて、選挙によって信を問えという御意見もございました。
 選挙によって私どもに与えられました任期というのは、その任務を果たす上で大切な大切なものであると私は考えております。したがって、解散といったようなことは全く今日私の念頭にはございません。
 以上、お答えを終わります。(拍手)
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
○国務大臣(宮澤喜一君) リクルート問題について、先ほど総理から李下に冠を正さずという御答弁がございましたが、私自身、自分の事務所の活動の監督に欠くるところがございまして、反省をいたしております。以後十分注意をいたします。
 なお、主務大臣といたしまして、このたびのような出来事を今後起こらないように防止するためにどういうことを考えておるかというお尋ねでございました。
 今回の件は、非公開会社の株式が店頭登録前に当事者間で売買されたということでございますが、この時期は、しばしば公開に備えましていわゆる安定株主工作が行われる時期でございます。これは、一般論として申せば株式の公開を助けるものでございますので、安定株主工作そのものが悪い、これを排除するということではないはずでございますが、店頭登録前の株式移動を一律に制限いたしますと、そういう問題が起こって、今後の証券市場の円滑な機能発揮にかえって障害があるという問題が片方でございます。
 ただ、しかしながら、株式の公開に関連したこのたびのような売買が一般投資家の不公平感を招く、あるいは証券市場に対する信頼を損なうおそれがあるということは、これもまた事実でございますので、公正な証券取引のあり方をいかようにすべきか、これから証券取引審議会あるいは関係各方面の意見を聞きながら検討を進めてまいりたいと考えておるところでございます。(拍手)
    ─────────────
○議長(原健三郎君) 川俣健二郎君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔川俣健二郎君登壇〕
○川俣健二郎君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、竹下総理初め関係閣僚に質問いたします。
 まず、海上自衛隊潜水艦の暴走による犠牲者の方々に対し、昨日、土井委員長が御冥福をお祈り申し上げながら政府をただしました。問題は、現場で救助された十九名のうち、潜水艦により助けられたのはわずか三名で、その乗組員の自衛隊員七十五人のうち飛び込んで救助活動に当たった者は一人しかいなかった、これがこの事件の本質の一つではないかと思います。近年、マイナスシーリングの他の予算をしり目に特別枠で年々増額されてきた防衛費、何のことはない、国民を守ってくれるよりも自分を守る訓練をしていたのではないかという印象を受けたのは私だけでしょうか。
 さらに問題なのは、防衛庁の西廣事務次官がもっと飛び込んで救助してほしかったと言い、竹下総理や瓦防衛庁長官も同様なとらえ方をされているのに、海幕長や防衛部長、すなわち制服組は、救助活動に全く落ち度がなかったと言っている。背広組と制服組の事件のとらえ方、感覚が全く違っているということが問題だと思います。しかも、報道によれば、潜水艦がとるべき救助手順を定めたいわゆるマニュアルの公表を制服組は拒んでいるというではありませんか。これでは、到底シビリアンコントロール、文民統制を貫けるわけがありません。制服組幹部の責任をどう問うのか、総理の明確な方針をお尋ねしたいと思います。(拍手)
 次に、税制改革についてであります。
 税金は納めるのは国民であり、したがって、税制改革はまず納める国民の意向が反映されなければならないと思います。だからこそ欧米諸国では、事前にその全容を明らかにしているのは御承知のとおりであります。ところが、日本は、新税制の導入はやりませんと公約して選挙しました。大量に当選者が出てから、やはりやることにしました。これでは、総理、国民を愚弄したことになり、そこには民主主義はありません。
 政府は、今日、間接税は国際的潮流でもあるかのように宣伝しています。しかし、諸外国の税体系は違います。例えばフランスの大蔵省、税制の父と言われるローレ氏が、今回の日本の消費税に強い疑問を示しております。それは、ぜいたく品も毎日の生活必需品もすべて同じ三%である点を鋭くついたものであり、まさに適切、明快な御指摘と存じます。例えば米やパン、豆腐の果てまで日常の食料品に課税される一方で、ダイヤモンドやミンクのコートなどの高級品は、今までの一五%の税金も同じ三%に引き下げる、また二級酒は引き上げられ、特級酒は引き下げられる。事ほどさように発想が逆転しております。これでは、総理の党本部に「新税制 みんな納得 公正社会」というスローガンを掲げていますが、話がまるで逆ではありませんか。(拍手)
 そして、総理は所信表明で先哲石田梅巖の言葉を引用され、「若聞人なくば、たとひ辻立して成とも吾志を述ん」と、不退転の決意を述べられました。しかし、その先哲が残された言葉には、後段のくだりがあることも忘れてはならないと思います。それは「政の頭なれば、清潔にして正直なるべし。もし私欲あらば、其所は常闇なり。」真っ暗やみになるという意味だそうです。清潔にして正
直、すなわちリクルート問題にふたをしようとしたり、やらないと言った公約を守らないような政の頭は税制改革は語れないのではないかと、私にはこの先哲の言葉が響くのであります。(拍手)
 竹下総理、もしあなたがどうしても税制改革をやるというのなら、税金を納める国民にまず諮るという手順を踏むべきではないでしょうか。第二に、慌てないで、先に約束したとおり不公平税制の是正の徹底、第三、財政構造を軍事費優先から生活優先に転換すること、高齢化社会における福祉総合計画とその財源構想等を示すことだと思います。総理の後見役と言われる金丸さんも、余り慌てなさんなと言っているように思うのでございます。総理、いかがでございましょうか。
 ところで、最近政府はあたかもカルテルは必要悪かのような発言をしており、これが業界の消費税容認に対するお返しのように言われます。もしこのとおりだとすれば、消費者は消費税と価格カルテルの二重の被害をこうむることになり、どこから消費者保護と言えるでありましょうか。公正取引委員会の梅澤委員長、いかがでしょう。我が国経済の基本法ともいうべき独占禁止法を守り抜く決意を、この際みんなで確認させていただきたいと思います。
 次に、農業問題についてお尋ねします。
 去る六月二十日に、牛肉・オレンジ交渉が、ヤイター通商代表の勝利宣言に見るように、日本側の一方的な譲歩により決着しました。私は、さまざまな経緯から見て、このたびの交渉が、ただ佐藤農林水産大臣を初め農林側のみ汗をかき、政府全体として真剣に取り組んだ交渉とは到底思えないのであります。そもそも今回の自由化騒動は、日本の工業品輸出過剰から起因するものでしょう。そこで、貿易摩擦の要因である輸出産業を管轄する通産省が今回の日米交渉をどうバックアップしたのか、通産大臣にお尋ねしたいと思います。
 なお、ついでながら、今底知れぬ円高、建て値不定に非常に金属鉱業が困窮しております。この対策がなされたやに伺っておりますので、通産大臣、具体的にお示し願いたいと思います。
 何はともあれ、自由化に伴う対策として、関連農家の負債に対し長期無利子融資を行うなど、具体的に今国会で特別立法を行う方針について、農林水産大臣に伺いたいと思います。
 次に、米の転作問題についてお尋ねします。
 現在、米作農家は水田全体の実に四分の一に及ぶ減反に苦しめられております。また、場当たり的な農政のため、転作作物が何ら定着しておりません。なぜだろう。その地域にふさわしい作物が何であるかは、土がだれよりもよく知っております。今こそ適地適産の原則に立ち、総合的な価格政策を確立することで、その他の作物の収益性の格差を是正し、地域複合農業の確立を期すべきと存じますが、いかがでしょう。また、私は、いわゆる米価新算定方式の導入撤回を強く求めたいと思います。
 さらに、政府の農政では規模拡大の必要が強く主張されておりますが、それは理想としては存在するでしょう。しかし、規模拡大のため、一方で土地を手放す小規模農家はどうなるのか。農民は、退職金はあるでなし、就職も容易な情勢ではありません。さらに、大規模農業は農薬づけ、化学肥料づけを促進する要素があります。いわゆる日本古来の精農主義から粗放農業に転落することにつながります。この際、大規模化一本やりの農政を改め、農村を軸とし、地域の自然環境を生かし、畜産と水田、畑作を結合し、各地の有機農業の経験を取り入れた新しい農業のビジョンを打ち立てるべきだと存じますが、いかがでございましょうか。(拍手)
 次に、林業問題についてあえて総理に伺います。
 国土の七割を占める森林は、今全く荒れ果てております。各県の森林公社は借金に苦しみ、同じように国有林も経営難にあります。民有林においても、過重な相続税負担のもたらす過伐や細分化、さらに間伐、除伐の手おくれ、また労働条件の悪化に伴う後継者離れ等々の問題が山積しております。今こそ政府は、森林・林業の活性化を国政の大きな柱とすべきだと考えます。
 さらに、国有林野事業は、水資源、国土保全、国立公園、国定公園の管理を初め、いわゆる採算には乗らない公益的機能を果たしておるのにもかかわらず、その特別会計五千七百億円の予算に対し、一般会計からの繰り入れはわずか百四十五億円であります。このようなことでは、総理のいわゆる「ふるさと創生論」がうたい文句に終わると思いますが、総理、御所見を伺います。
 さらに、今国有林で働く労働者に対する不当な扱いがされようとしております。それは、六月一日に国営企業労働委員会から、郵政、印刷、造幣、国有林野の四現業職員の新賃金にかかわる仲裁裁定が出されました。しかし、政府は、林野についてだけは財政状況が厳しいという理由で仲裁裁定を守ろうとはせず、国会に諮ると閣議で決めたようでありますが、絶対に容認するものではありません。
 そもそも仲裁裁定の制度は、憲法で保障された労働基本権を制約されたための代償措置であります。したがって、今回の政府のとった態度は全く不当なものと私は思います。国有林野事業の財政悪化は、過去の乱伐、過伐と現在生育途上の森林を多く抱えた実態、木材需要低迷による林業界全体の停滞等によるものであって、何ら山で働く職員の責めに帰すべき理由はないではありませんか。国有林野職員の新賃金についての国会付議を取り下げ、法に従い仲裁裁定を完全実施すべきと存じますが、竹下総理のお気持ちを聞かせていただけませんか。
 次いで、土地問題です。
 政府がいまだにその抜本策を策定しないでいるのは、極めて遺憾であります。竹下総理、その抜本策とは、さきの社会党、公明党、民社党及び社会民主連合の四党で先鞭をつけた土地基本法の制定であります。総理、私たちのこの土地税制を含めた土地基本法を正しく評価すべきではないかと思いますが、いかがでございましょう。
 次に、高齢化対策について伺いたいと思います。
 政府は、高齢化社会に高負担はつきものと言われます。しかし、高負担社会には重大な前提条件が伴うことを理解されていないのではないでしょうか。その一つは、施策の効果を高めるような社会保障費の使い方を確立することであります。さらに、地域それぞれの実態に応じて効果を上げるためには、自治体の自主財源を十分確保することが必要であります。このため、六十三年度までの三年間の暫定措置であった各種の補助率一括カットは、約束どおり、六十四年度から取りやめるべきであると私は思います。さらに、縦割り行政におけるいわゆるひもつき補助金をできるだけ統合するとともに、中央の権限を大胆に委譲し、自治体の裁量の余地を拡大することもあわせて断行すべき時期を迎えていると考えますが、総理、いかがでございましょう。
 高負担社会の前提条件としてもう一つ指摘しなければならないことは、ゆとりと思いやりの社会をつくることであります。そのために、親の職場も子供の学校も完全週休二日制を早急に実施することを総理に迫りたいと思います。労働者一人の年間総労働時間は、英米がおおよそ千九百時間、西ドイツが千六百時間に対し、何と日本は二千百五十時間であります。このような状況について経済運営五カ年計画は、六十七年度までの計画期間中に週四十時間、年間千八百時間に向け、できる限り短縮するとしております。問題なのはその実現の方法であります。中小零細企業に対する援助策を含めた、政府の具体策をお示し願いたいと思います。(拍手)
 国際社会における問題は、さらに経済大国、人権小国、すなわち思いやりのない大金持ちと言われる実情についても是正が迫られているのであります。
 先般の国連人権専門委員会は、日本政府の報告を審査しまして、いわゆる代用監獄や外国人の指紋押捺の制度については各国から特に批判が強かったのであります。そこで、総理、次の二点についてこの場からひとつ世界各国にアピールしていただけませんか。その一つは、今政府が提出しておるいわゆる拘禁四法を撤回し、代用監獄の廃止や在監者の処遇改善などに向け改正案を検討し直すことであります。もう一つは、昨年の外国人登録法改正の際衆参両院で附帯決議された趣旨を踏まえて、指紋押捺の強制をやめることであります。いかがでしょうか。(拍手)
 これに関連し、外国人労働者の問題についても新たなルールを早急に確立する必要があると思います。とりわけ、いわゆる不法就労の外国人の弱い立場につけ込む業者については厳しく取り締まる必要があると思うが、総理の見解を伺いたいと思います。
 この際、戦後処理について一例だけ挙げながら伺っておきたいと思います。それは、シベリア抑留者に対する補償が大きく放置されているという問題であります。
 既に日本も調印、批准を済ませた一九四九年のジュネーブ条約についてですが、それによると、捕虜に対する補償はすべてそれぞれの国、すなわちこの場合は日本で補償するという定めになっているのに、歴代の内閣は、抑留した国、すなわちソ連が補償すべきであると言い張ってまいりました。しかし、シベリア抑留者、関係団体の裁判による訴えがあり、ようやく一昨年九月、時の安倍外務大臣が条約原文の解釈が間違っていたことを認めたのであります。そこで問題は、この政府解釈の訂正は、一片の官報の告知に終わるのではなくて、どんな補償を行うかが問題であります。まさか今回の十万円の慰労金で済ませようとは考えていないと思いますが、総理の前向きな答弁を期待したいと思います。いかがでしょうか。(拍手)
 最後に、竹下総理が人類共通の悲願である平和に向けてどのような決意をお持ちか、改めて確かめておきたいと思います。
 さきの国連軍縮特別総会において、総理は、核廃絶、さらには全面完全軍縮を人類の究極目標として堅持すべきであると明言されてまいりました。まことに喜ばしい、日本の誇りとするところであります。しかし、問題は、いうところの人類の究極目標に対する理解が地域や自治体とともに一層深まるようにしなければならないと思います。
 例えば、東京湾沿岸の自治体が過密な浦賀水道を原子力潜水艦の乗り入れ禁止区域にしたいというのなら、政府としてもこれに協力すべきであり、また、非核平和都市宣言は今や千二百八十五自治体に及んでおります。さらに増加することも歓迎しなければならないと思います。これは総理も御同感と存じます。ところが総理、あなた方自民党のパンフがここにあります。それによりますと、何と「「非核都市宣言」は日本の平和に有害です」、「「非核都市宣言」は日本の平和に有害です」と明記しているではありませんか。一体これはどういうことでしょうか。総理、意味明瞭な御答弁を求めて、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕
○内閣総理大臣(竹下登君) お答えいたします。
 まず、今回の事故は、海上自衛隊を一方の当事者といたします事故であります。したがって、この事故によりかくも多くのとうとい生命が失われましたことは、まことに痛恨のきわみであります。遺憾のきわみであります。
 今回の救助活動につきまして、反省、教訓などとなる点が多いことも事実であります。しかし、こうした考え方は、いわゆる内局と、今お言葉をおかりいたしますならば、背広と制服との間で見解に差があるという問題ではございません。なお、防衛上の見地から制約はございますけれども、国民の御理解を得るために、国会の御審議に際しまして、今御指摘のありました救助マニュアルのような資料で可能なものは提出するよう検討を指示しております。防衛庁、自衛隊各レベルの責任問題、これは現在行われております事故原因の調査結果等を踏まえて適切に対処すべきものである、このように考えております。
 次が、税制改革の手順であります。
 ローレ氏の言等を御引用になりました。税制の抜本的改革の実現は現下の最も重要な内政上の課題でありまして、現行税制のさまざまなゆがみを直し、国民が納得できる公平で簡素な新しい税制を実現することが急務である、これは幾たびも申し上げておるところであります。こうした見地から、税制全般にわたる改革案を取りまとめた法案を国会に提出申し上げたところであります。
 この改革案の検討に当たりましては、税制改革法に述べられておりますとおり、公平の原則を最も基本的な理念として、負担の公平確保の見地から最大限の努力を払ってきたところであります。今回の改革案によりまして、我が国経済社会の活力が維持され、国際化に即応しながら豊かな長寿福祉社会をつくるにふさわしい、より公平な税体系の構築が図られるものと確信をいたしておるところでございます。したがいまして、この法律の十全なる御審議を賜りますよう、この機会に重ねてお願いを申し上げる次第であります。
 そうして、高齢化社会における福祉施策の大筋は、六十一年六月に長寿社会対策大綱を閣議決定し、また、本年三月の予算委員会に一つの姿を現行の制度、施策を前提にしてお示ししたところでございますが、今後とも可能な努力をしなければならないと思います。しかし、総じて、何たびか申しますように、今こそインフレなき持続的成長というものが基調になった経済運営がなされておる今日であります。全く税論議、とかく言われます新税はすべて悪税なりと、そういうことではなく、冷静な環境下において審議できる時期であると思います。したがって、感情とか感傷にとらわれることなく、私どももどんな質問に対しても懇切丁寧にお答え申し上げるという姿勢で臨んでいきたい、このように考えるものであります。(拍手)
 さて次は、専門の国有林野事業の経営改善についての御意見がございました。
 国有林野事業につきましては、基本的には独立採算で運営すべきものとされておりますが、現下の厳しい財政事情にかんがみ、臨時的なものとしてこれまで保安林の造林、林道整備等に対する一般会計からの繰り入れを実施しております。これはすべて御承知のとおりであります。引き続き、昨年七月に見直しました経営改善計画に基づいて、最大限の自主的改善努力と所要の財政措置によりまして、経営の健全性を確立し、国有林野の適正管理に鋭意今日努力中、環境の厳しさの中にも鋭意努力を続けておるということは御承知のとおりであります。
 さて、それについての仲裁裁定完全実施の問題であります。
 国有林野事業にありましては、仲裁裁定の実施が予算上可能であるとは断定できないとして、政府としては国会の御判断を仰ぐべく付議を行ってきたところであります。御指摘のように、仲裁裁定は労働基本権制約の代償措置であります。これは私どももよく存じております。林野に係ります裁定の取り扱いについては、政府としては国会に付議いたしまして、したがって国会の速やかな御判断をお待ちしておる、こういうことを正確に申し上げておきます。
 さらに、土地基本法についての御議論がございました。
 私も、この土地基本法につきましては、土地対策特別委員会等いろいろ意見を交換をいたしました。そして、その内容も私なりに理解をいたしております。この御努力に対しては評価をいたします。しかし、土地基本法の検討を進めるに当たりましては、具体的な施策の実施とそれから制度の改変等についてある程度見通しがなければなりません。土地に関する制度は、国民の財産権に深くかかわる問題でありますことなど、多くの問題が存在しております。したがって、既に御提案いただいております法案を十分参考にさしていただいて、そうして先般閣議決定いたしました総合土地対策要綱を踏まえて、法律制定の意義や必要性について政府としても検討していこう、こういうことになっておるわけであります。
 次が、社会保障の効率化問題にお触れになりました。
 経済運営五カ年計画では、現行制度を前提として高齢化等に伴います社会保障負担の上昇を示した上で、社会保障制度の効率化を推進すべきことを指摘いたしておるところであります。このためには、今後とも引き続き公的部門の規模を適正なものとしながら、国民の多様なニーズが充足されるよう、給付と負担のあり方を含めて、制度の見直し、合理化を推進していかなければならぬ、このように考えておるところであります。
 医療費にもお触れになりました。
 この負担を適正なものといたしますために、従来から、制度改革、医療費の適正化対策の推進に積極的に取り組んできたところであります。将来における適正化努力の効果を現時点で数量的にお示しすることは困難でございますが、良質で効率的な医療を供給するためには、今後一層の政策努力を続けていかなければならない、このように考えております。
 補助率の問題についてお触れになりました。
 暫定措置期間終了後における補助率問題の扱いは、これまでの経緯等を踏まえて、今後予算編成過程において適切な対応をいたします。補助金の統合メニュー化の問題については、引き続き補助金等の整理合理化の一環として積極的にこれは推進いたします。そして、国と地方の機能分担のあり方や地方財源の問題につきましては、地域特性を生かした魅力ある地域づくりと国、地方を通ずる行財政改革の推進等の見地から、今後ともこれは真剣にお互い取り組まなければならない課題だと思っております。
 労働時間の短縮にお触れになりました。
 労働時間の短縮は、新経済計画「世界とともに生きる日本」においても、生活のゆとりを生み出し、多様性に富んだ創造的な国民生活の実現や、先進国としてよりふさわしい労働条件の確保、内需の拡大といった観点から、最も重要な課題の一つであると私も思っております。このため、政府としては、完全週休二日制の普及促進を基本に、改正労働基準法の円滑な施行や中小零細企業に対する指導援助に努めますとともに、国民の理解を得ながら金融機関そして公務員それから学校の週休二日制を推進するなどを通じて、労働時間短縮の積極的な推進に努めてまいる考え方であります。
 拘禁四法にお触れになりました。
 いずれも、それぞれの施設の適正な管理運営を図って、収容される者の人権保障を強めて、その生活水準の保障を図るなどのものであると理解をしております。また、いわゆる代用監獄につきましては、必要な制度的改善を加えるものであるというふうに理解をいたしております。各施設に収容される方々の処遇の近代化、法律化、国際化を推進する見地から速やかなる成立を期待しておるところでございますので、撤回して検討をし直すという考え方はございません。
 指紋押捺にお触れになりました。
 去る六月一日に施行されました改正外国人登録法によって指紋押捺の義務が原則一回に改められ、これについての外国人の心理的負担の軽減が図られたところでありますが、指紋押捺の制度に関しては、今後とも、附帯決議の趣旨を尊重して、内外の諸情勢の推移を踏まえて検討してまいる考え方であります。
 外国人労働者問題にお触れになりました。
 今後における外国人労働者問題への対応につきましては、御指摘の点は極めて重要であります。国民的コンセンサスを求めながら検討を進めていく所存であります。
 それから、シベリア抑留者の補償問題にお触れになりました。
 一九四九年のジュネーブ条約は第二次大戦後に成立したものでありまして、第二次大戦に伴うシベリア抑留者問題にそのまま適用されるといたしますことには無理がある、このように従来も言い続けてまいりました。また、本条約の六十七条の趣旨も、いずれの国が補償責任を有するかの問題と関係はない、こういうふうに考えております。以上のとおり、一昨年の訳語の訂正は、シベリア抑留者にかかわる補償問題とは関係なきものというふうに考えておるところであります。
 次が、シベリア抑留者の措置そのものに対する問題であります。
 いわゆる戦後処理問題については、さきの国会で成立させていただきました平和祈念事業特別基金等に関する法律に基づきまして、一つには、関係者に対して慰藉の念を示す事業を行います。二つには、特に戦後強制抑留者の問題については、本邦に帰還した戦後強制抑留者またはその遺族に対し慰労品を贈呈すること、また、これらの方々のうち恩給等を受給されていない方々、これらに十万円の慰労金を支給すること、このように決定したことは今御指摘のとおりであります。
 それから、非核・反核意思、地方自治体の決議の採択等にお触れになりました。
 究極の目標、これは今川俣議員が御指摘なさいましたとおり、私もそのことを国連特別総会等で申し述べております。地方自治体が地方自治の本旨に基づいて各自治体住民の意見として決議を採択すること自体については、政府として申すまでもなくとやかく言う立場にはございません。ただし、外交、防衛はあくまでも国の責任事務であるということ、そして、政府としては、今後とも非核三原則を堅持する所存であって、既に内外に十分周知徹底されておる非核三原則が我が国の基本政策として存在しております以上、各都市、各地域の懸念は必要がございません、こういうふうに申し上げておるところでございます。
 それから、パンフレットの問題につきましては、これはやはり党の文書でございますので、直接のコメントはこの場では差し控えたい、このように思うわけでございます。
 非核を求める国民の願いというものは十分承知しておる、そして、今おっしゃいましたように核の究極的廃絶のためにお互いこれからも努力しなければならない、このように考えておるところであります。
 以上でお答えを終わります。(拍手)
    〔国務大臣佐藤隆君登壇〕
○国務大臣(佐藤隆君) 牛肉・オレンジ自由化に伴う対策として、いろいろお話がございました。
 特に冒頭、一方的に譲歩したのではないか、政府全体として取り組んだのか、こういう御指摘がございましたが、長きにわたる懸案の問題でございまして、政府・与党一体となって取り組んでまいりました。もちろん国会での御論議も頭に置きながら話し合いを進めた結果がかような結果になった、こういうことでございます。
 先般の日米、日豪合意が関係農家にとり極めて厳しい試練であることは、十分認識しております。今後、厳しい条件のもとで牛肉・かんきつ生産の存立を守り、その体質強化を図っていくとい
う基本的な考え方にのっとりまして、所要の国内措置について最大限の努力を傾注しておるところでございます。
 具体的には、牛肉については、まず国内肉牛生産の振興合理化を推進するため、肉用子牛の価格安定等に関する立法措置等について検討を進めておりますが、成案を得次第国会での御審議をお願いすることになろうかと考えております。また、当面懸念される価格変動等に対処するため、肉用子牛価格の安定、負債整理資金の融通等による肥育経営等の安定、肉用牛の低コスト生産の推進、牛肉の流通の合理化等の緊急対策についても鋭意検討を進めているところであり、これに伴う予算措置を講ずる所存であります。
 また、かんきつにつきましては、需給及び価格の安定等を図るための緊急対策として、ミカン園の再編整備の推進、果汁原料用ミカン等の価格安定対策の拡充強化、果汁工場の設備の近代化、合理化、需要の拡大のための措置等を検討するとともに、国内かんきつ生産の競争力の確保を図るため、優良品種への転換、園地の整備等の推進を中心に鋭意検討を進めているところでありまして、これらの対策は予算措置による対応が中心になるものと考えております。
 次に、転作についてでありますが、水田農業確立対策は、水田を活用して生産される作物の生産性の向上、地域輪作農法の確立及び需要の動向に応じた米の計画的生産を一体として図ることを趣旨として実施しているものでありまして、その実施に当たっては、我が国農業、稲作を担う地域、担い手層において米生産の大宗が担われるよう配慮するとともに、極力適地適産が実現されることが重要であると考えております。この項は、全く委員の御指摘のとおりでございます。
 このため、転作等目標面積の配分に当たっては、地域農業の実態を踏まえつつ、地域の生産コスト、稲作生産の安定性、需要に対応した生産等の可能性、担い手農家の経営規模、シェア、良質米生産地域等に配慮して行っているところでございます。
 次に、転作に関連しての総合的な価格政策の確立の御提案については、我が国の主要農産物については、農業生産の安定を確保するとの観点から、農産物の生産、流通、消費の特性を踏まえ、各種の価格政策を講じているところであります。これらの価格政策については、全体としての整合性の確保に配慮するとともに、さきの農政審議会報告において指摘されておりますように、構造政策を助長し、生産性向上の促進に資するとともに、対象農産物の需給均衡の確保に資するといった観点から、適切な運用に努めてまいる所存であります。
 次は、米価新算定方式についてでありますけれども、農政審議会報告において、需給の趨勢をより的確に反映するとともに、今後の我が国稲作の担い手の育成と生産性向上を的確に反映した新しい運用方向を志向すべきであるとされたこともあり、また、昨年米価決定時の意見も踏まえ、昨年九月以降米価審議会小委員会で新しい算定方式について検討され、本年六月米価審議会において了承が得られたものであります。新しい米価算定方式につきましては、本年産の米価決定の際は適用が行われなかったものでありますが、今後、生産者を初め関係者の御理解を深め、また構造政策、生産対策等の強化を図りながら、来年産から適用することといたしております。
 規模拡大にもお触れになりました。
 農業経営の規模拡大を進めるに当たっては、御指摘のとおり、地域農業の担い手の育成対策とともに、農地の出し手となる農家の就業対策があわせて必要であります。このため、従来から関係省庁と連携をとりつつ農村地域工業導入制度を核として関係施策の推進に努めてまいりましたが、今後は、前国会で農村工業導入制度につき導入対象業種の拡大等を内容とする改正を行うなど、施策の拡充を行いましたので、その適切な運用を図るとともに、さらに、地場産業の振興、リゾート地域の整備等を推進し、農家の安定的な就業機会の確保を図ってまいる所存であります。
 最後に、農業の将来ビジョンについてでありますが、我が国農業の発展を図っていくためには、特に土地利用型農業について中核的な役割を果たす農家の経営規模拡大を図るとともに、地域の農家を幅広く含めた生産組織を育成し、地域農業全体としての生産性向上を図ることが必要であります。具体的には、合理的作付体系の導入、稲作、畑作と畜産の結合等による地域農業の複合化の推進が重要であります。
 このため、農政審報告を踏まえ、昨年度の水田農業確立対策の発足に伴い、地域輪作農法の確立に努めるとともに、本年度から地域の実情に即した土地利用型農業の経営指標の作成等に取り組んでいるところであります。また、農家にとっての将来への道筋として、現行の農産物需給見通しにかえ、新たな主要農産物の長期見通しの作成に着手してまいります。
 いずれにいたしましても、生産性向上とかあるいは担い手育成など、たゆまぬ努力が必要ではありますが、経済合理主義のみではうまくいかない天の恵みと災いの中で他産業と異なり使命達成しなければならない第一次産業ですが、お互いの努力が必ず魅力あるものにしていけるものと信じ、頑張りたいと思っております。今後の御支援、御協力をお願いいたします。(拍手)
    〔国務大臣田村元君登壇〕
○国務大臣(田村元君) 日米貿易摩擦問題は、一九八〇年代前半のドルの過大評価等に起因する日米貿易不均衡や日本市場へのアクセスなど、多様な問題が複合化したものと理解をいたしております。通商産業省としましても、半導体摩擦等個別の案件の処理に努めますとともに、輸入、特に製品輸入の拡大に努めておるところでございます。
それによって何とかいわゆる貿易収支のアンバランスを解消したいと努力をいたしておるところであります。
 牛肉・オレンジ交渉につきましては、私が直接の担当ではございませんけれども、職務上クレイトン・ヤイターとかあるいはマイク・スミスとかあるいはベリティとかという人々としばしば会う機会がございますので、私からもあらゆる機会をとらえてこういう人々に対して日本国内農業の苦しい状況等について説明をし、何とか理解をしてくれということを強く求めてまいりました。
 また、鉱山でございますけれども、我が国の鉱山の現状を見ますと、合理化の進展や価格の上昇等によりまして現在は小康状態にはございますけれども、基本的には極めて厳しい状況にあると考えます。このため、いわゆる三段階探鉱助成策、金属鉱業経営安定化融資等の施策を引き続き講じていく所存でございます。(拍手)
    〔政府委員梅澤節男君登壇〕
○政府委員(梅澤節男君) お答えを申し上げます。
 今回のいわゆる消費税の価格転嫁に当たりまして政府から提案されております今後両三年にわたる臨時措置の内容におきまして、二つの行為が対象とされておるわけでございます。一つは、消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為、いま一つは、中小企業及び一定の組合に限定をいたしまして、そこで行われる転嫁の方法の決定に係る共同行為でございます。これらの共同行為につきましてはいずれも公正取引委員会への届け出が要件とされておりまして、それらの行為について独占禁止法の適用につきまして特例措置を講じる、同時に、便乗値上げなどの行為は禁じられるという内容になっておるわけでございます。
 今回の政府の臨時措置につきましては、ただいま申し上げましたような内容からいたしまして、我が国の競争政策なり独占禁止政策の基本に何ら変更を加えるものではない、もたらすものではないというふうに承知をいたしております。いずれにいたしましても、この措置によりまして価格の転嫁が適正、円滑に行われますと同時に、ただいま御指摘がございましたような消費者の利益を不当に侵害するような事態が生じないように、運用に当たりましては万全の努力をしていかなければならないと考えるものでございます。(拍手)
    ─────────────
○副議長(多賀谷真稔君) 不破哲三君。
    〔不破哲三君登壇〕
○不破哲三君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、竹下首相に質問いたします。
 まず最初に指摘したいのは、この臨時国会が、消費税という大型間接税の導入を主な目的にして召集されたことであります。
 言うまでもなく、大型間接税の導入に反対することは、野党はもちろん、竹下総理を含む自民党議員の大多数が前回の選挙で公約したことであります。この公約に基づいて成立した国会が、公約に反する消費税の導入について提案を受けたりそれを採択したりする資格を持たないことは、主権在民、議会制民主主義の立場に立つならば、全く明白であります。(拍手)
 にもかかわらず、政府は、臨時国会を召集し、公約違反の消費税法案の国会提出をあえて行いました。我が党は政府のこの態度を徹底糾弾するものですが、消費税問題に入る前に、政府の基本姿勢にかかわるどうしてもただしておきたい一連の問題があります。
 第一の問題は、先般の自衛隊潜水艦と釣り船の衝突事故の問題であります。
 私は、まず、事故の犠牲となった三十人の方々及びその御遺族の皆さんに心からの弔意を表するものであります。
 この事故と、それに対する自衛隊及び政府の対応は、国民の間に強い怒りとともに多くの疑問を引き起こしました。
 問題の浦賀水道は、世界でも有数の過密幹線航路であります。この航路を潜水艦が横切るわけですから、衝突を防止する最大の責任が潜水艦の側にあることは明白です。「なだしお」は、なぜ衝突回避の措置を、しかも十分な時間的余裕を持ってとらなかったのか、そのことによって衝突を引き起こした責任をどうするのか、これが第一であります。
 第二に、「なだしお」は、衝突によって第一富士丸が沈没したのを目の前にしながら、遭難信号を発して近くの船に事態を知らせることもせず、海上保安庁への連絡すら二十一分後というおくれでした。また、人命救助への努力も驚くべき怠慢ぶりでした。例えば、「なだしお」にはゴムボート二隻、救命胴衣二百十六、浮き輪四つが常備されていたとのことですが、そのうちどれだけが現実に活用されたのでしょうか。これら一連の怠慢のために多くの人命が失われたことは疑いを入れません。このような信じがたい怠慢がなぜ起こったのかは、徹底的に究明されるべきであります。
 第三は、事故が起こって以後の自衛隊当局の態度であります。海上保安庁の原因究明の努力もまだ始まらない時点で、自衛隊当局は、潜水艦には誤りはなかった、衝突の原因は第一富士丸の側にあったとする一方的な記者会見を繰り返し行いました。こうした行為が容疑者の側で許されることでしょうか。そこには、再びこうした事故を起こさないために自身の側の問題点を究明しようとする態度はみじんもなく、自衛隊の保身だけしか念頭にない当局の打算が見え見えでした。しかも、自己弁護のために持ち出した経過説明なるものが多くの点で事実を偽るものであったことは、その後の経過が既に雄弁に立証しているところであります。
 総理、あなたは自衛隊の最高の指揮監督権を持つ最高責任者であります。今回の事故に対して多くの国民が持つこれらの疑問に対して、総理が言
う教訓を引き出すためにも、責任者にふさわしい具体的な解明と責任ある態度表明を求めるものであります。(拍手)
 これまでの国会論議の中で、あなたは、遺憾の意は表するものの、つかさつかさに当たって自衛隊のとった措置は法、規則に基づき正確に行われたなどと、自衛隊側の責任を認めない答弁を繰り返してきました。あなたは、多くの事実が明らかになった今でも、自衛隊の側に法規違反はなかったというこの判断を変えないのですか。軍艦だから、潜水艦だからという趣旨の弁明も一部では聞かれました。もしこれらの答弁や弁明が真実であって、万全を尽くしても衝突事故は防げず、事故に際して人命救助の能力がないのが自衛艦の実態であるならば、それは、自衛隊の艦船には衝突の危険性のある航路を通航する資格がないということではありませんか。言い逃れでない、御遺族や被害者も納得できる、責任ある答弁を強く求めるものであります。
 今回の全経過を通じて私が痛感したのは、政府が決まり文句としている国民の安全を守る自衛隊とは全く反対に、軍事上の都合のためには国民の安全どころか人命さえ念頭にない恐るべき軍事優先と、それに基づく特権意識の実態であります。私は、この事故が起こった後のテレビで、海上自衛隊の元最高幹部が、漁船などに気兼ねしないで済むよう自衛艦にもっと通航の自由を与えよと語るのを聞いて、さらに肌寒い思いがしました。この軍事優先の現状を肯定するかどうか、率直な見解を伺いたいのであります。
 さらに言えば、この軍事優先、国民軽視の態度がどこから出ているかが問題であります。その根底には、今日の自衛隊が戦略から日々の訓練、演習まで対ソ戦に備えたアメリカとの共同作戦体制に組み込まれ、米軍から割り当てられた作戦任務の遂行を最優先の使命としているという、日米軍事同盟の現実があるのではありませんか。事実、在日米海軍当局は、朝日新聞の質問への文書回答で、事故後の数分以内に海上自衛隊から連絡を受けたと、両者の連絡の緊密さを明らかにしました。事の重大さに慌てたのか、翌日、回答のやり直しをしたそうでありますが、日米軍事同盟の利益を国民の安全の上に置く政府、自衛隊の現在の態度のもとでは、いかにもありそうなことだと多くの国民が受け取ったのであります。
 総理は、再発防止に全力を挙げると述べました。どういう具体的な措置によって再発を防止しようとするのか、伺いたい。
 浦賀水道のような過密航路の真ん中に軍港が置かれ、軍艦による航路の横切りが常時行われているといった危険水域は、世界でも恐らく例がないでしょう。アメリカの核艦船もこの水域を頻繁に出入りしています。東京湾の海上交通の安全を保障するためには、こうした配置そのものを構造的に解決することが必要であります。我が党は日米軍事同盟の廃棄を主張しており、この立場からは当然のことですが、自民党がたとえ日米安保条約の堅持を党是としていても、真に国民の安全優先の立場に立つならば、航路管理方式の根本的な転換、さらには東京湾からの横須賀軍港の撤去を含めて、抜本的な対策を真剣に検討すべきではありませんか。(拍手)
 関連して触れたいのは、日米軍事同盟の利益を国民の上に置く態度は、他の多くの分野にも共通する問題だという点です。
 竹下首相がさきの日米首脳会談でアメリカに約束してきた牛肉・オレンジの自由化は、その典型の一つであります。もともと日米の貿易不均衡は、日米双方に責任のある問題であります。日本の側でいえば大企業製品の大量輸出こそが最大の原因であって、その責任を農業に負わせるというのは筋違いも甚だしいではありませんか。世界のほとんどの国が自国農業の保護に力を尽くしているときに、食糧自給率が穀物では三一%という危機的な事態にある日本が、アメリカの要求を無責任に受け入れて農業を荒廃に任せるなどは言語道断であります。政府は、自国の農業からあすの展望を奪い、食糧自給の土台を破壊する無責任な政策を直ちに打ち切るべきであります。そして、農業発展と自給率向上の戦略的な展望を持った政策を国民に示す義務があります。総理の見解を明示していただきたい。
 もう一つは、核兵器廃絶の問題です。
 さきに国連第三回軍縮特別総会が行われ、数日後には広島、長崎の被爆四十三周年を迎えます。その時点で行われた所信表明演説で、あなたは、核兵器廃絶の問題にも核軍縮の問題にもついに一言も触れず、日米安保条約の堅持を強調しただけでした。核軍縮の推進、核兵器の緊急の廃絶が最大の国際的課題になっている今日、アメリカによる日本での核戦争態勢の強化は、平和の流れに逆らう危険な逆流となっています。そのアメリカの核兵器固執政策に同調するの余り、被爆国日本の首相としての最小限の義務さえ忘れるとは、それ自体が軍事優先の最も露骨なあらわれにほかなりません。あなたは、核兵器廃絶は人類究極の目標だと言われますが、究極だから、遠い未来の先の話だから、ふだんの現実政治の上では忘れてもよい、何の努力もしなくてもよい、それがあなたの御見解ですか。改めて核兵器廃絶の課題に臨む態度を問うものであります。
 次に、最近の一連の金権腐敗事件の問題であります。
 公明党田代参議院議員の砂利船汚職から明電工事件、総理府汚職、リクルート疑惑などの諸事件は、どれも政界の中枢がかかわる重大事件であり、徹底的な追及、解明の必要なことは論をまちません。中でも、総理府汚職は、売上税、消費税を初め政府の施策を国民の血税で宣伝する政府の広報活動が汚職にまみれていたことをさらけ出したものであり、この総理府の行政管理の責任を負っているのは総理自身です。その政治責任につ
いて、また汚職を一掃する具体策について、総理の見解を伺いたいのであります。(拍手)
 リクルート疑惑も重大であります。こうした形での政治家への金のばらまきが現金によるわいろと同じ意味を持つことは、殖産住宅事件の最高裁判決でも明らかにされました。今回もその財源とされたのは株の売買によるいわゆるキャピタルゲインで、これらのもうけが非課税だということは、不公平税制の最大の一つとして国会で議論されてきた問題でした。その国会に議席を持つ政治家たちが、この不公平税制を最大限に活用して莫大な利益を懐にしていたのです。それだけでも、道義的政治的責任は極めて重大であります。
 しかも、この株売買で利益を得た政治家のリストには、竹下総理、宮澤蔵相、安倍自民党幹事長、渡辺税制改革推進本部長、中曽根前総理など、売上税、消費税の推進者がそろって顔を並べているではありませんか。汗水流して得た所得のすべてに税金がかけられる国民の目から見るならば、このような不公平税制の受益者で中枢が固められた今の政府や自民党に税制改革など語る資格のないことは明白であります。
 事は、キャピタルゲインへの課税をどうするかといった税制問題に尽きるものではありません。問われているのは、それ以前の、政治家としての政治的道義的責任の問題であります。竹下総理を初め名前の出た多くの政治家が、秘書や家族の行為として弁明し、国民に政治家の無責任さを印象づけたことは、残念のきわみでした。この点では、リクルートの前会長自身が、政治家の秘書や家族とつき合いはない、つまり、株譲渡の対象はあくまで政治家本人だと明言しているではありませんか。総理は「李下に冠を正さず」と言われますが、冠を正したのが問題ではなく、冠の中にナシを入れてしまったのが問題なのであります。私はまず、竹下首相と宮澤蔵相が、無責任な弁明を繰り返すのではなく、この事件とみずからのかかわりを率直に明らかにすることを求めるものであります。(拍手)
 日本共産党・革新共同は、これら一連の事件の真相究明のために十一名の証人の国会喚問を要求しています。リクルートの江副前会長は、証人喚問に応じる用意ありとの意思表示を既に公的な場で行っています。国会が国政調査権を的確に発動し、金権腐敗の根を断つために、国会を構成する最大の党派の総裁としての竹下氏に、証人喚問の提案に賛同されることを強く求めるものであります。
 消費税の問題に進みます。
 この国会に消費税を提案した政府の態度は、公約違反に加えて何重もの偽りで国民を欺き、空前の悪税を押しつけるものと言わなければなりません。
 偽りの第一は、政府が公平の名のもとに最悪の不公平税制を強行しようとしていることであります。
 税制の公平にとって最大の問題は、健康で文化的な最低生活に必要な生活費には税金をかけない、下に薄く上に重い累進制を基本にするなど、歴史的に確立されてきた民主的な原則を貫くことであります。だからこそ、一般庶民には生活費にまで食い込む重税が課せられているのに、大企業、大資産家、金権政治家などは特権的な減免税を享受しているという不公平、この是正が緊急最大の問題になっているのであります。ところが、今回の税制改革なるものは、消費税はもちろん、そのほとんど全項目が特権者への優遇措置を一層厚くし、一般庶民への重荷は一層加重するという性格を持っているではありませんか。
 消費税は、国民の生活全体から税金を取り立てようという悪税であります。その負担は低所得者ほど重いものになり、下に重く上に軽いという逆進性を本来的に持つことは、総理自身がその懸念の一覧表の第一番目に挙げていることであります。所得税なら課税最低限以下の人々でも、消費税では容赦なく徴税の対象となるこの事実一つ見ても、事は明瞭であります。総理は懸念解消の自信があると言うが、何をもって消費税の逆進的な本質を解消するのか、具体的な数字を挙げて解消策を明示していただきたいのであります。(拍手)
 所得税減税でも、政府が一番力を入れたのは累進制の緩和でした。累進制を緩和するとは、従来高額所得者が負担してきた税金を低所得者の負担に転嫁するということであります。たとえ全階層が減税分の恩恵を多少はこうむるように見えたとしても、この本質を隠すことはできません。政府案に含まれている所得税減税にしても、累進制の緩和ではなく、生計費非課税の原則に立って課税最低限の引き上げを重視する従来型減税として実施するならば、年間収入一千万円以下の世帯が政府案以上の減税となり、平均的な労働者、サラリーマンならば減税額を二倍にできるのです。
 総理は課税最低限が国際水準に比べれば高いと言われましたが、これは生活実態から離れた、いわゆる円レートでの比較です。OECDが試算した購買力平価で比べるならば、我が国の課税最低限は欧米の主要国に比べてまだまだ低いのであります。このときに、勤労者の大多数に恩恵をもたらす課税最低限の引き上げ方式ではなく、高額所得者本位となる累進制緩和の方式を殊さらに選んだ理由を伺いたいのであります。
 法人税減税も、経営の不振に苦しむ中小企業への減税は積極的に推進すべきですが、今回の一律減税では、減税額の大部分は大企業に還元される結果となります。実際、資本金十億円以上の企業が、これは企業数では〇・一%にすぎませんが、減税額では全体の約六割を占めることになります。これによって年間利益が数十億円から百億円以上もの純増となる企業も少なくありません。これらの企業は、これまでも減免税から補助金まで、国際的にその不当性が問題になるほど多面的
な優遇を受けていた企業であります。不公平の露骨な拡大そのものではありませんか。
 キャピタルゲインについても、政府案は、スズメの涙ほどの分離課税を納めさえすれば、リクルート式のぬれ手にアワのぼろもうけが天下御免となり、だれがどれだけの利益を上げたかの調査も一切無用になるというものです。政府は税制の問題でよく外国の例を出すのが好きですが、この分野でこのような特権的な減免税が横行している国は、例えばサミット諸国をとってもどこにあるでしょうか。
 総理、庶民の目から見、庶民の立場に立つならば、政府が持ち出した税制改革が不公平税制の拡大そのものであることは疑問の余地のないところです。消費、所得、資産のバランスなどというのは、この不公平を合理化する口実でしかありません。これをいかなる根拠をもって公平化と偽るのか、正直な答弁を求めるものであります。(拍手)
 第二の偽りは、今回の税制改革が国民にどんな被害、影響を与えるかという問題についてさえ、政府が国民に正確な事実を提示しようとしないことです。
 我が党が政府統計をもとに試算した結果によれば、片働き四人家族の勤労者世帯で、子供が中学生以下なら年収五百五十万円以下、高校生、大学生がいれば年収四百十万円以下、共働きでは年収一千万円以下の家庭はすべて増税になります。ところが、大蔵省は、国民の大多数が差し引き減税になるという試算を発表しました。これは、消費税の家計に及ぼす影響を極めて低く見積もった上、特別に減税額が大きくなる家族構成を設定するなど、意図的な操作がありありと見えるものでした。二十歳代の共稼ぎ世帯に高校生の子供を持たせるという驚くべき設定は、その一つであります。こういうやり方は、それ自体が政府の差し引き減税論の偽りを告白するものです。政府は、自分が導入しようとしている消費税が国民に何をもたらすのか、正確な事実に基づいて正直に報告すべきだし、その義務があることは明白ではありませんか。
 第三の偽りは、消費税の税率の問題です。
 総理は、極力抑えて三%にしたと述べました。三%でも国民への被害は甚大であります。さらに重大なことは、諸外国の経験に照らしても、一たん導入されたら税率の引き上げが必至だということです。現に大蔵省は五%の税率を最後まで主張しました。今回の三%税率を決めた自民党税調の当の責任者山中氏自身、当日の記者会見で、諸外国では一〇%以上二〇%近いのが通例だと殊さらに紹介した上で、将来の税率引き上げの手を縛る不見識はしないと言明しました。総理は三%に抑えたと言うが、消費税制度の導入後それが引き上げられない保証はどこにあるのか。将来にわたってこれを引き上げないと国民の前で言明できるのか。一%の引き上げは二兆五千億円の新たな増税を意味するのであります。大蔵省の主張どおり税率を五%にしたら、五兆円もの新増税になるのです。明確な答弁を求めます。
 第四の偽りは、消費税の目的についてです。
 高齢化社会に備えてというのが政府の宣伝文句ですが、これが本当なら、高齢化社会の到来に備えてどのような福祉政策を実施するのかをまず国民に示すのが先決ではありませんか。老人医療費無料化制度の廃止を初め福祉切り捨ての政策を連続強行しながら、増税のときその口実にだけ高齢化問題を持ち出しても、それで国民を納得させることはできないのであります。(拍手)
 私は、最近、自民党の税制改革推進本部長の渡辺氏が外国のお客さん向けに講演した記録を読みました。大型間接税導入を必要とする事情として、そこで最も力を込めて力説されていたのは、米軍基地と自衛隊の費用、これからもますます増大するという軍事費の調達の問題です。消費税導入のこの真相は、外国の客人に対してではなく、これを負担させられる日本の国民の前でこそ率直に語られるべきなのであります。
 アメリカ国防省の代表がこの二月ワシントンで行った演説によれば、日本は、アメリカの要求にこたえて最大の軍拡政策をとってきた点では、アメリカの同盟国の中でも最も模範的な国で、軍事費の総額は、現にアメリカ、ソ連に次ぐ世界第三の地位に迫りつつある上、米軍基地のための支出額は年間二十五億ドル、これだけ気前のよい国は他に例がないとのことでした。彼は、日本政府がそのために予算の他のすべての項目を犠牲にしてきたことを特に評価していましたが、それではもはや間に合わなくなって、新たな増税が必要になったというのが消費税導入の偽らざる真相ではありませんか。
 もし総理がそのことを否定するというのなら、突出軍拡の政策を直ちにやめ、軍事費の大幅削減、軍拡から軍縮への転換を断行し、平和と軍縮の世界的な流れを促進する先頭に立つべきであります。福祉や教育の予算まで犠牲にして突出軍拡を続けながら、増税と軍拡が無関係だと言い張ってみても、そうした議論が通用しないことは明白ではありませんか。
 また、渡辺氏はさきの外人向け講演の中で、アメリカとの間に軍事費を毎年実質五・四%ずつふやす約束があると述べ、これを大型間接税導入の背後事情の一つにしていますが、一体日米間にそういう約束があるのか。これは国の主権にかかわり、国会の予算決定権にもかかわる重大問題であります。責任ある答弁を求めるものであります。
 最後の決定的な偽りは、公約違反の消費税を公約違反でないとする弁明であります。
 総理、あなたの議席を含め、この国会の議席はすべて一九八六年七月の同時選挙で選ばれた議席であります。この選挙で有権者に行った公約は、内閣の交代のいかんにかかわらず、議員と国会、そしてその国会で選ばれた政府を拘束しているのであります。選挙さえ終わってしまえば公約など
問題にしないという態度をとることは、国会自身が国民主権と議会制民主主義の原則を否定することであり、絶対に許されないことであります。(拍手)
 その暴挙をあなたは今あえて強行しようとしています。総理は、自民党があの選挙で大型間接税は導入しないと公約した事実を否定するのですか。しかも、この公約に言う大型間接税とは何かについて、政府みずからがそれに先立つ国会で、多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税という定義を下しているのであります。この公約は、主権者である国民の選挙の洗礼を経た公約であって、後になってあなたがどんな弁明をしようと、大型間接税の最終的な定義はないなどと言い直そうと、消し去るわけにはいかないものであります。
 あなたが国民と議会政治に責任を持つ政治家であるなら、とるべき道は明白であります。
 第一に、今回の消費税が、さきの選挙でやらないと公約した大型間接税であることは明白であります。主権者国民の審判を尊重することが今の議会制度の基本である以上、自民党には、現在の議席の多数を持っていようと、それによって消費税を強行する権限はないのであります。公約違反の消費税を撤回するのは当然ではありませんか。
 第二に、今回の消費税導入に命運を賭す、みずからの政治生命をこの悪税とともにする、こういうことをあなたの信念として幾ら強調してみても、それは何ら消費税が公約違反であることの否定とも反証ともなるものではありません。あくまでも消費税に固執するというのなら、国会を解散して、主権者である国民に消費税の是非を問うべきであります。(拍手)
 総理、あなたに少しでも日本の議会政治に責任を負う意思があるならば、これ以外に選択の道はないはずであります。いずれの道を選ぶのか、総理の答弁を求めて、私の質問を終わるものであります。(拍手)
    〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕
○内閣総理大臣(竹下登君) まず最初に、第一富士丸事故について申し上げます。
 今回の事故は、海上自衛隊を一方の当事者といたします事故であります。この事故により多くのとうとい生命が失われたことは、まさに痛恨のきわみであります。
 事故原因及び当時の具体的な状況については、現在、海上自衛隊自身によりますことはもとよりのこと、海上保安庁、海難審判庁においてそれぞれの立場から調査中でございますので、これについてはお答えを差し控えたいと思います。なお、各レベルの責任問題については、これらの調査結果を踏まえ判断すべきものである、このように考えます。
 事故への対応につきましては、自衛隊の艦船も、民間船舶と同様、事故に際しては適切に対応するなど、海上交通安全法等の規定に従って航行することになっておるものであります。今回の救助活動については、反省、教訓となる点が多いことも事実であります。このような反省、教訓を最大限生かして事故再発防止に努めていくことが最重要であると考えます。なお、自衛隊に御指摘のような軍事優先、国民軽視といった態度があったとは考えておりません。(拍手)再発防止対策につきましては、事故対策の徹底的究明こそ大切である、このように考えておるところであります。
    〔副議長退席、議長着席〕
 具体的に航路管理方式等についてのお尋ねがございました。航路管理方式の根本的転換については、まず原因の究明が先決と認識いたしております。当面は、海上自衛隊の艦艇と東京湾海上交通センターとの緊密な情報交換を行うことによりまして安全の確保に努めてまいる所存であります。
 自衛隊の施設及び在日米軍の施設、区域は、我が国の平和と安全の確保に必要不可欠であることは申すまでもありません。横須賀における自衛隊の施設の撤去及び在日米軍施設、区域の米側への返還、これらは全く考えておらないところであります。
 さて、引き続き牛肉・かんきつ交渉にお触れになりました。
 再三申し上げますように、佐藤農水大臣を初めとする関係者が粘り強い交渉を行いまして、まさに共同作業で決着したところであります。我が国としては、今後、国内対策を含め、牛肉・かんきつ生産の存立を守るという判断に立って決断し、また、そういう施策を推進してまいる所存であります。
 自給率向上問題等にもお触れになりました。
 今日の厳しい状況の中で、農業者が将来を見通しつつ営農を展開することができるよう、新たな農産物の需要と生産の長期見通しを策定する所存であります。何としても、いわゆる基礎的な物資であります食糧の安定供給、そしてそれが国民に理解されるところの価格で供給できること、これが最も重要であると考えます。
 核兵器廃絶は我が国の究極の目的である、このことはいつでも申し上げておるところであります。したがって、第三回軍縮特総の演説においてもこの旨に言及をいたしました。他方、核の究極的廃絶に向かうためには、国際的な安全保障の維持に留意しながら、実効的でそして具体的な措置が着実に行われていかなければなりません。我が国としては、現実の厳しい国際関係の中におきまして、実現可能な具体的な措置を一歩一歩進めていく。粘り強い努力をいたしてまいります。
 総理府汚職についてお触れになりました。
 不祥事が発生したことはまことに遺憾かつ残念なことであります。改めて姿勢を正して国民の信頼にこたえるよう、政府としても努力してまいります。そして、総理府におきましては、「政府広報の適正な実施体制の確立等について」を先般防止策として決定をいたしたところであります。
 リクルート疑惑の道義的政治的責任問題と証人喚問についてであります。
 この問題は、幾たびかここで御答弁申し上げましたように、株式公開に至るプロセスが投資家保護及び公正な証券取引の確保といった見地から適切な規制のもとに置かれていたかという点につきましては、現行法の定めるところによりまして調査検討を進め、そうして現行制度に欠けるところはないか、関係者の意見をも十分承って適切な対処をいたします。
 そして、政治家ないしその関係者が問題とされる中にあるではないか、この点につきましては、政治家やあるいは関係者が現行制度のもとにおいてみずからの責任において行ったものであって、たとえそれぞれの行為が現行制度の中で許された経済取引であるにしましても、国民感情として割り切れないものがあるという批判はしっかりと私も受けとめております。李下に冠を正さず、その教えのとおり、私自身を含め、一人一人の政治家として今後とも十分心してまいるべきであると思います。
 なお、証人喚問といったような問題は、私にもいろいろな意見はございます。しかし、本院において今日までいろいろな議論のあったことと承知しておりますので、国会においてお決めいただく課題である、このように考えます。
 税制改革の基本理念もたびたび申し上げてまいりました。税体系全体として、税負担の公平に資するため、所得課税を軽減して、消費に広く薄く負担を求め、資産に対する負担を適正化することなどによって、国民が公平感を持って納税し得る税体系の構築を目指して行われるものでございます。したがって、特権階級を優遇するとか一般庶民に重荷を課すなどという考えは全くございません。
 消費税の逆進性ということにお触れになりました。
 元来、社会主義社会は、最初は間接税だけで出発する社会であります。しかし、その議論をきょうしようとは思いませんが、いわゆる逆進性という問題そのものにつきましては、議論を積み重ねることによって和らいでいくもの、それから税制全体の中で考えていくべきものがそれぞれあるわけでございます。したがって、税制の持ちますところの所得再配分機能というのは、一つの税目のみを取り上げて議論すべきものではありません。税制全体、そしてさらに社会保障制度、いわゆる財政全体の中で中和できるものであると私は信じておるところであります。したがって、所得税、住民税の課税最低限を大幅に引き上げるといったこと、そうしてまた、国際的に見て、率直に言って、累進度というものにつきましてはこれは今日なお強い累進度を有しておるということであります。
 そして、消費税の税率の問題でありますが、確かに三%と言えば、国際的に見てこれは低い水準であります。既存間接税の廃止等も行われますことから、いわゆる税制全体として見ましたならば、国際的に見ても相当程度の累進性がなお維持されておるとも言えると思うのであります。
 税率の累進緩和と課税最低限の問題について御意見がございました。
 所得税減税につきましては、働き盛りで収入は比較的多いものの教育費や住宅費等の支出がかさむ中堅所得者層に特に負担累増感が多いことにかんがみまして、最低税率を一〇%として、その適用される所得の範囲を大幅に引き上げるなど、税率構造全体について簡素化、累進緩和を図る一方、中低所得者層の所得税負担軽減の観点から、課税最低限の引き上げを図っておるところであります。
 課税最低限について国際比較をなさいましたが、また詳しくは別の機会で議論をすることにいたします。
 次の法人税減税効果の帰属でございます。
 法人税の基本税率等の引き下げ、配当軽課制度の廃止等の法人税改正は、国際的視点に立った法人税制の確立を目指して行われるものでありまして、いわば大企業に偏った改正だというような評価は当たりません。
 キャピタルゲイン課税につきましては、有価証券の譲渡益について、これまでの原則非課税から原則課税へ改めたところであります。具体的な仕組みにつきましては、いわゆる分離課税、みなし課税等の問題がございますが、今後なおこれらの問題については当面の措置として適当であるという判断の上に立っておるものであります。そうして、諸外国におけるキャピタルゲイン課税についての比較もお述べになりました。これの課税はさまざまであります。と同時に、株式というものが機能する割合というものが各国において大変な相違がございます。一概に論ずることは適切でなかろうと思っております。
 次が、所得、消費、資産のバランス等不公平の問題であります。
 負担の公平は税制に対する納税者の信頼の基礎となるものでありまして、今次の税制改革法案においても基本原則の一つとして定められております。現行税制のもとで直接税、とりわけ給与所得に対する脱負担の重さが不公平感を募らせておるということから、税体系全体を見直す必要がありますほか、個別消費税制度の持つ不公平な根本的に改め、そうしていわゆる不公平税制の是正を図ることによって国民の抱く不公平感が払拭されることを期待しておるわけでございます。したがって、この点については今後とも十分な御審議を賜りたいと思う次第であります。
 さて、税制改革の家計への影響の問題にお触れになりました。
 今回の税制改革に対して理解を深めるための一助として、これまでさまざまな角度から試算を行っております。したがって、標準的な事例につ
いて統計資料に基づいた客観的な試算に努めておるというところでございます。
 そうして、今度、消費税の税率にもお触れになりました。
 私が申しております懸念の一つでもございます。これは、国会こそが税率引き上げについての最大の歯どめとして機能するものであるという基本的考え方に基づくべきものであります。
 さて、高齢化社会における福祉施策のいわば青写真を示せというようなことば、先ほどもお答えをいたしました。長寿社会対策大綱のみならず、今年三月に提出いたしました現行制度、施策をそのままにしたいろいろな数値をもお示ししたところでありますが、今後とも、これについては、十分、可能な限りこの議論の中で全体像が明らかになるような努力をすべきものであると考えております。
 それから、消費税の導入というものが、何か軍備のための消費税というような御発言がございました。
 これこそ最も初歩的な間違いでありまして、まさに所得、消費、そして資産、この三つにいかに調和のとれた二十一世紀に向かっての税体系を構築していくか、これが一番大事なことでございますので、そのような目的税的なものが存在するはずはない、このように申し上げておく次第であります。(拍手)
 そうして、軍備費削減、軍縮促進等の問題についてもお触れになりました。
 私どもは基本的に考え方が違いますのは、日米安保体制というものの中に今日の我が国の防衛というものが存在するわけであります。したがって、我々としては、そのときどきの経済事情等に考慮しつつも、必要にして最小限な対応をしていくというのは当然のことであろうというふうに思うわけであります。
 それから、政府が従来から米国に対して中期防衛力整備計画の着実な実施のための努力を言明しておるということは事実でございます。この中期防というものは、国会でいろいろまた御議論をいただくまさにシビリアンコントロールのこれが土台ともいうべきものであります。渡辺政務調査会長の御発言も、その中期防ということを念頭にあるいは御発言なすったかとも思われます。
 そして最後に、選挙公約と消費税ということで二つのこと、すなわち、撤回するか、さもなくば解散をするか、こういう大上段のお話でございます。
 お答えを明確にいたします。今日までぎりぎりの検討を行いました結果、国会で御審議をいただくべく提案したものであります。まず、撤回の意思は全くないということを申し上げておきます。(拍手)そして、選挙の問題でございます。二年間を経過いたしました。しかし、国民から与えられた任期は、それこそ最も大切にすべきものだと思います。ただいま解散などを毛頭考えておりません。
 以上をもってお答えを終わります。(拍手)
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどもお答え申し上げましたが、私の事務所に対する自分の監督が不十分でございました。反省をいたしております。今後十分気をつけます。(拍手)
○議長(原健三郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
    ────◇─────
○議長(原健三郎君) 御報告いたすことがあります。
 議員福永健司君は、去る五月三十一日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 同君に対する弔詞は、議長において去る七月二十五日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
    〔総員起立〕
 多年憲政のために尽力し 特に院議をもつてその功労を表彰された議員従二位勲一等福永健司君は さきに本院議長の要職につき またしばしば国務大臣の重任にあたり終始政党政治の確立につとめ議会制民主政治の進展に多大の貢献をされました その功績はまことに偉大であります
 衆議院は 君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます
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 故議員福永健司君に対する追悼演説
○議長(原健三郎君) この際、弔意を表するため、山口鶴男君から発言を求められております。これを許します。山口鶴男君。
   〔山口鶴男君登壇〕
○山口鶴男君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員福永健司先生は、去る五月三十一日、入院先の社会保険大宮総合病院において、七十七歳の生涯を閉じられました。まことに痛惜の念にたえません。
 私は、ここに諸君の御同意を得て、議員一同を代表し、謹んで哀悼の言葉を申し述べます。
 私が先生と親しく言葉を交わす機会を与えられましたのは、昭和四十五年、モナコで開催された列国議会同盟春季会議に同行したときでございました。
 「僕は三途の川を途中まで渡り、地獄のかまをのぞいたんだよ」という話に始まり、サンフランシスコ講和会議で吉田首席全権の巻紙に墨書の演説原稿がどうしても間に合わない、とっさに「この辺で一休みして日本代表の言い分をじっくりと聞いてもらいたい」とアチソン議長に休憩を申し出、事なきを得た苦労話、フルシチョフ首相との会談で「東京―モスクワの距離が遠いのは日本のせいではなく、貴国が大き過ぎるからだ。国土の
大小にかかわらず、相互乗り入れは首府対首府が常識である」と主張、相互乗り入れ交渉が一挙に解決に向かったことなど、ざっくばらんな語り口、底抜けの明るさ、鋭い機知に魅せられたのであります。
 以来、お目にかかるたびに「おう、元気か」と慈顔あふれるまなざしで語りかけてくださった大きな容姿が、今でもまぶたの底から消えようとはいたしません。(拍手)
 福永先生は、さきの通常国会中、本院の最後部の議席に元気に着席しておられました。四月上旬入院された後も、順調に御回復に向かわれていると聞き、ひそかに安堵しておりましたのに、五月末容体が一変され、ついに不帰の客となられましたことは、人の世の定めとはいえ、無情を嘆かずにはおられません。
 殊に、さきに衆議院議長として、その豊富な経験を生かし、公平な院の運営に身をもって当たられ、内外の信望を集められた輝かしい業績をしのぶとき、哀惜の情ひとしおであります。(拍手)
 福永先生は、明治四十三年八月五日、滋賀県甲賀都甲賀町に、事業家で林業を手広く営む福永角之助氏の長男としてお生まれになりました。古来、甲賀の里、その隣伊賀の里は、東西往来の要衝の地として時代の変遷には敏感であり、かつ独立自尊の気風が強い土地柄でありました。加えて先生は、父君の「親の手元で子供を育てると甘えてろくなものにはならぬ」という教育方針のもと、小学校へ行くようになると他家に預けられ、和歌山、横浜、神戸など、小学校だけでも四たびも転校させられるという、「獅子は子を千尋の谷に突き落とす」の例えそのままに厳しく育てられたのであります。これによって先生は、自己の信念を貫き通す、事に臨んで動じない不撓不屈の精神力を培われたのであります。
 長じて、旧制松江高等学校から東京帝国大学法学部に進まれました。学生時代の先生は、首席を他に譲らぬほど勉学に精励研さんを積まれる一方、その恵まれた体躯を生かし、種々のスポーツに親しみ、オリンピックで銀メダルに輝いた西田修平選手と競い合ったことがあるなど、棒高跳びを初め砲丸投げ、投てき競技に活躍せられました。
 先生が大学に在学された昭和初期は、満州事変の勃発、それに続く満州国の建国宣言、さらに五・一五事件などを契機とする政党政治の危機、国際連盟からの脱退など、まさに我が国は激動の時代を迎えておりましたが、日本の将来に深く思いをいたされた先生は、政治に強い関心を抱くようになり、ひそかに、将来は政治の世界で活躍し、国家国民のために働いてみたいとの夢をはぐくまれたのであります。また、父君と交遊のあった時の政界の有力者前田米蔵氏らの知遇を得、演説会に行ったり、選挙運動を手伝ったりなど、政治の何たるかを模索され始められたのであります。
 昭和八年、先生は、当時貴族院議員であり片倉製糸紡績社長でもあった今井五介翁に嘱望され、卒業と同時に片倉製糸に入社されました。
 「君は最高学府を出て入社したが、これから工場に行って少年工から工場長のすることまで一通り経験してこい。現場のすべての人が君の師匠であり、先生と思って修業せよ」との今井翁の戒めを受けた先生は、朝五時に起きて宿舎や工場のぞうきんがけの先頭に立つなど、職務に精励し、また、秘書役として翁とともにさまざまなところを訪れ、いろいろな立場の人々と出会い、会社経営のみならず、人間と政治について学ばれたのであります。
 昭和十四年には翁の代理として群馬県富岡に赴任し、フランス人の設計による我が国初の本格的なれんが建築として名高い伝統ある製糸業の名門工場、富岡工場の合併に成功、次いで三十代そこそこの若さで大宮工場長という要職につき、そこで終戦を迎えられたのであります。
 先生は、戦後の混乱の中で従業員に沈着に行動するよう呼びかけ、大宮工場と片倉全体の速やかな平和産業への転換に心を砕かれるとともに、埼玉県の労働委員として、深刻な食糧難と相まって労働争議が燎原の火のように広がる中にあって、争議の渦中に積極的に飛び込み、解決の道を探り、説得に当たり、「今日本の産業を立て直さなければ国の再建はできない」との信念で身を挺して尽力せられたのであります。
 さらに昭和二十二年、先生が三十六歳のとき、埼玉県知事西村実造氏の強い懇請により副知事に就任され、地方自治の発展、民生の福祉増進に尽力、特に、キャスリン台風が関東一円を襲い、利根川が決壊して千人を超す死傷者を出す大災害の際、最も危険な栗橋方面で陣頭指揮し、一時「福永副知事行方不明」とのラジオニュースが流されるなど、八面六臂の活躍をせられたのであります。
 青年時代の夢を着々実現に移された先生は、昭和二十四年、第二十四回衆議院総選挙に、郷党の絶大なる衆望を担って当時の埼玉県第一区から民主自由党公認として勇躍立候補、台風のときの恩人として、選挙区外からも多数の応援が駆けつけるなど、運動は盛り上がり、見事、最高点当選をもって初当選の栄冠を得られ、国政の舞台でのスタートを切られたのであります。(拍手)
 本院に議席を得られてからの先生の御活躍は瞠目すべきものがございました。
 昭和二十六年九月、先生はサンフランシスコにおいて開催された講和会議に衆議院代表として派遣されました。当時既に朝鮮戦争が勃発しており、東西冷戦の厳しい国際情勢の中で、日本がいかなる形で主権を完全に回復するか、国政の上での最重要課題に直面していたのであります。
 先生は後年、セイロン全権の「憎悪は憎悪によって消えるものではなく、ただ愛によって消えるものであるとの仏陀の教えを説いた演説は忘れ
がたかった」と記され、「平和条約の調印式が始まった。ABC順に各国代表が調印し、最後に日本全権が調印すると会議場に日章旗がするすると掲げられた。それを見ながら、皆目頭をぬぐった」と述懐されておられますが、全身全霊を込めて吉田首席全権を助けられた先生の胸中は、まことに感慨無量なるものがあったと存じます。
 吉田首相にすぐれた才幹と手腕を見込まれた先生は、池田勇人、佐藤榮作元首相や保利元議長らとともに、いわゆる吉田学校の優等生として頭角をあらわし、一年生議員ながらも幹事長の指名を受けるほど期待されておりました。しかし、党内事情により実現の運びに至りませんでしたが、先生に対する党内の評価は高まり、吉田体制の中心人物の一人と目されるに至ったのであります。
 昭和二十七年、福永先生は、与野党からの推挽を受け、議院運営委員長に就任され、「一度も採決をしないで全部話し合いで決めた委員長」というすばらしい記録を残されたのであります。(拍手)自来、議院運営委員長を歴任すること前後四回に及び、また、内閣委員長、公職選挙法改正に関する調査特別委員長として、話し合いを旨とする委員会運営にすぐれた才幹を発揮されました。
 一方、内閣にあっても、労働大臣、厚生大臣、運輸大臣という主要な閣僚を歴任されましたが、特筆すべきことは、吉田内閣、佐藤内閣において四たび内閣官房長官を務められたことであります。言うまでもなく、官房長官という職は、内閣のまとめ役であるばかりでなく、内閣と国会の接点に立つ役柄を持つものであります。先生は、職務を遂行するに当たり、誠意を尽くして徹底的に話し合うことはもとより、相手を信頼し、「約束したことは必ず実行する」ことをモットーにしておられたのでありまして、これこそまさに議会政治の基本であると申せましょう。
 議会や内閣における先生のたゆまない御尽力を思えば、まさに先生は、戦後の議会制民主政治をよりよく構築された第一の功労者であり、きっすいの議会人であったと申し上げることができましょう。(拍手)
 昭和五十八年十二月、与野党伯仲という新しい政治状況の中、満場一致で本院議長の要職に推挙された先生は、与野党の意見によく耳を傾け、国会の公正かつ円満な運営に尽瘁されるとともに、当時の緊急課題でもありました政治倫理に関する協議会の設置を実現させるなど、政治の果たすべき重要課題と正面から取り組み、誠心誠意職務に専念せられたのであります。任期半ばで健康上の理由から御退任を余儀なくされましたが、当時国会対策委員長を務めておりました私は、議会制民主政治のあるべき姿を求め続けておられた福永議長に「任期いっぱい務めていただきたい」と願い、心からの敬意を払わずにはおられなかったのであります。
 先生の政治は、将来を見通し、そして決断する政治でありました。敗戦に打ちひしがれた国民を前にして、日本民族の将来に平和と安定を確立することを希求されて奮闘された若き日の懸命の努力は、それを示すものと申せましょう。
 また、運輸大臣在任中、成田空港の長期の開港延期やむなしとする周囲の意見を退け、敢然として開港を決断し、反対同盟の戸村一作氏と秘書官一人を伴って会見し、さしで話し合いを行うなど、あらゆる機会をとらえて心魂を傾けた御努力の未開港に導いた式典のごあいさつで、「難産の子は育つと言われる。この新空港も健やかに育つと確信する」と述べられたのであります。
 さらに、先生は、自由民主党にあっては、全国組織委員長、総務会長、総裁公選実施に関する委員長等を歴任され、また党の最高顧問となり、自由民主党に欠くことのできない重鎮としてますます重きを加えられたのであります。
 先生は、人と人との触れ合いを大事にされました。外にあっては列国議会同盟会議を初めとする議員外交の推進、内にあっては体育の振興に大きく貢献されました。
 IPU活動は、昭和三十五年以来、執行委員として長きにわたりその発展に寄与されました。とりわけ、昭和四十九年秋のIPU東京大会においては、大会議長として見事に議事を主宰され、会議を成功に導かれたのであります。
 昭和三十九年には、日本国会訪ソ親善使節団の団長としてモスクワを公式訪問され、当時のフルシチョフ首相やミコヤン第一副首相とまさにさきに述べたごとく腹を割った話し合いを行い、日ソ友好の礎を築き、大きな成果を上げられたのであります。
 また、昭和四十七年テルアビブ空港事件に際しては、急遽特派大使として単身イスラエルに赴き、IPUにおいて旧知の間柄のメイア首相に「日本国民のおわびの気持ちを伝えに来ました」と訴え、メイア首相も「すぐ飛んでこられた福永さんの姿こそ本当の日本人の姿です。イスラエル国民に日本の誠意を伝えましょう」と答えられたとのことであります。これらは先生が日ごろから口癖にしておられた「外交も人と人とのつき合い」を身をもって具現化されたものであり、偉大な御功績の一つと申せましょう。
 先生は若いころよりスポーツに長じ、一時はオリンピック選手を目指そうかと考えられたほどでありました。その先生が体育の振興に情熱を注がれましたのも、フェアプレーをもとにした人と人との心の触れ合いがスポーツの意義であると感じ取られたからではないでしょうか。先生は、埼玉県体育協会会長を初め、東京オリンピック、札幌冬季オリンピックの組織委員を歴任し、昭和五十八年には日本体育協会会長に就任され、我が国スポーツの発展に多大なる業績を残されたのであります。
 かくして先生は、本院議員に連続して当選すること十五回、在職三十九年六カ月の長さに及んだのでありまして、昭和四十八年十二月には永年在
職議員として本院からはえある表彰を受けられました。その間、国政の上に、また議会政治の確立のために残された功績はまことに偉大なものがございます。
 思うに、先生は、若いころから縦横無尽の活躍をされたのでありますが、ざっくばらんで陽気なお人柄から、野党からも「信用のおける人、相手側にいてもらわないと困る人」と慕われ、敬愛の情を込め「健ちゃん」と呼ばれていたのも、ひとえに先生の人徳のなさしめたものと申せましょう。
 先生は若くして奥様を亡くされました。幼子を抱えた先生ではありましたが、「妻は得やすく、子の母は得がたし」の信条から、お子様との信頼のきずなを最も大事にされたのであります。ここに、温かみあふるる福永先生を見る思いがいたすのであります。この間、三途の川を渡りかけたほどの二回にわたる大病をたぎる政治への情熱で克服された先生も、今やこの議場に見ることばできません。今ごろは、はるか天国で先生は若き奥様と四十有余年ぶりに再会し、来し方を振り返りつつ、御令息信彦君が御遺志を受け継ぐ決意をされたことや、靖子さん初めお孫さんの話に花を咲かせておられることでありましょう。
 先生は、なすべきことはすべてやり抜いたという満足感からか、穏やかな表情で永遠の眠りにつかれたそうであります。その死は、激動の戦後政治の一つの終わりを告げるものと申せましょう。福永先生の残された偉大な足跡は私たちの胸に深く刻み込まれ、その信念であった「話し合いを大事にする政治」は、必ずや今臨時国会、今後の議会政治の上に受け継がれていくに違いありません。
 今や我が国内外の情勢は極めて厳しいものがございます。とりわけ国際社会において日本の果たすべき役割が今日ほど期待されているときはありません。このときに当たり、崇高な人格と国際性豊かな練達の大衆政治家福永健司先生を失いましたことは、ひとり自由民主党のみならず、本院にとっても国家国民にとっても最大の損失と言わなければなりません。(拍手)
 ここに、謹んで福永先生の御生前の面影をしのび、御功績をたたえ、心から御冥福をお祈りいたしまして、追悼の言葉といたします。(拍手)
     ────◇─────
○議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十二分散会