第114回国会 本会議 第21号
平成元年六月十五日(木曜日)
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 議事日程 第二十一号
  平成元年六月十五日
    午後一時開議
 第一 常時有人の民生用宇宙基地の詳細設計、
    開発、運用及び利用における協力に関す
    るアメリカ合衆国政府、欧州宇宙機関の
    加盟国政府、日本国政府及びカナダ政府
    の間の協定の締結について承認を求める
    の件
 第二 地域ソフトウェア供給力開発事業推進臨
    時措置法案(内閣提出)
 第三 小規模企業共済法及び中小企業事業団法
    の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第四 中小企業投資育成株式会社法の一部を改
    正する法律案(内閣提出)
 第五 中小企業事業団法の一部を改正する法律
    案(内閣提出)
 第六 特定船舶製造業安定事業協会法の一部を
    改正する法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
 江崎真澄君の故議員春日一幸君に対する追悼演
  説
 裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員辞職の件
 裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員の選挙
 裁判官訴追委員の予備員辞職の件
 裁判官訴追委員の予備員の選挙
 検察官適格審査会委員及び同予備委員の選挙
 国土開発幹線自動車道建設審議会委員の選挙
 北海道開発審議会委員の選挙
 国土審議会委員の選挙
 日本ユネスコ国内委員会委員の選挙
 土地基本法案(内閣提出)及び土地基本法案(
  第百十二回国会、伊藤茂君外三名提出)の趣
  旨説明及び質疑
    午後一時二分開議
○議長(田村元君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
○議長(田村元君) 御報告いたすことがあります。
 議員春日一幸君は、去る五月二日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 同君に対する弔詞は、議長において去る六月下目贈呈いたしました。これを朗読いたします。
    〔総員起立〕
 元民社党中央執行委員長衆議院議員正三位勲一等春日一幸君は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰されました 君は終始政党政治の推進に力をいたし議会制民主政治の発展に貢献されました その功績はまことに偉大であります
 衆議院は君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます
    ―――――――――――――
 故議員春日一幸君に対する追悼演説
○議長(田村元君) この際、弔意を表するため、江崎真澄君から発言を求められております。これを許します。江崎真澄君。
    〔江崎真澄君登壇〕
○江崎真澄君 ただいま議長から御報告がありましたように、本院議員春日一幸君は、去る五月一日夜、肺炎がもとで、入院先の名古屋市立大学病院で逝去せられました。
 ここに、私は、皆様の御同意をいただき、議員一同を代表し、謹んで哀悼の言葉を申し述べます。
 春日君は、二月の末闘病の床につかれ、一日も早い御快癒を念じておりましたが、病状にわかにあらたまり、再び君のさっそうたる英姿にまみえることかなわず、まことに痛恨のきわみであります。
 献身的な御看病に当たられ、百方手を尽くされた御遺族の御心情を拝察するとき、万感胸に泊り、お慰めの言葉もございません。
 春日君は、明治四十三年、木曽三川が海に流れ込もうとする位置に近い岐阜県長良川下流部のほとり、海津郡東江村の農家の、七人の女性姉妹ばかりの中に、たった一人の息子として産声を上げられました。長じては、村じゆうにとどろく餓鬼大将として天真らんまんに育ち、後年の片りんをしのばせたと履歴書にしたためておられます。(拍手)
 大正十四年、名古屋逓信講習所を卒業され、軍務につかれた後、昭和三年、さらに高等科を卒業し、名古屋市中央郵便局で電信マンとしての人出を歩み出されたのであります。
 しかし、君は、早くから文学への志が高く、辻潤とか林芙美子などのダダイズムに引かれ、一方、プロレタリア文学にも傾倒されました。当鷹旧制八高に在学し、後年医師である文人として君名になった宮田重男氏などとも親交を結ばれ、春日君の詩作は、当時の生田春月氏主宰の「詩文学」にたびたび掲載をされたと言います。詩壇の高名な評論家伊福部隆輝氏からも高い評価を受けていたと言われます。その後、生田春月氏が瀬戸内海で身投げ自殺をされたことに出会ったり、宮田重男氏から「詩では飯は食えないぞ」としきりに言われたりしました。宮田家に仮寓をしておった春日君としては、この言葉が非常にきいたようであります。
 そこで、昭和九年、心機一転して郷里において実業界に身を転じ、数年後には名古屋に出て、有数の春日楽器製造株式会社の経営者としてその商才を発揮されたのであります。だが、やがて敗戦となり、空襲で焦土と化した名古屋の地に立って、君は、「世も身も無残、槿花一朝の夢」と慨嘆しながらも、いち早く工場を再建し、戦後の困難な時期に事業を軌道に乗せる一方、このころから、現実に世を動かす力は何といっても政治にあることに気づかれました。三たび転身のときへ向けてその大いなる翼を羽ばたかせるのであります。
 戦災市民大会への参加を契機に、労働運動の旧友に再会した君は、戦後問もなく日本社会党に入党をし、愛知県連の渉外部長として革新政治家の第一歩を踏み出されたのであります。
 春日君、君は、昭和二十二年四月、新憲法下初の県議会議員選挙に出馬し、素人の業者仲間や友人の応援に支えられて、高位当選を果たされたのであります。
 この選挙を通じて、君は、人の心を動かすものは、大げさな構えではなく、ひそやかな誠である、そして、票に固まるのは、大きな声ではなく、まさに骨身を惜しまぬ足である、こういうことをしかと心に刻まれたと申します。これは、お互いに政治を志す者にとっては、肝に銘すべき言葉であると言うべきでありましょう。(拍手)
 春日君、君の政治家としてのモットーは、「思い立てば直ちに実行すること」でありました。
 昭和二十四年、占領軍指導による公安条例が県議会本会議に上程されようというとき、言論、集会、結社の自由を抑圧するものとして、君は、断固反対の立場から、七月の炎暑を物ともせず、延々三時間余にわたって大獅子吼をなし、ついに会期の時間切れ、廃案となったことは、余人のなすことのできない愛知県議会時代の不滅の金字塔であったと言えるのであります。(拍手)
 また、中小企業のための火災共済制度、金融保証協会制度が愛知県を嚆矢とするというのも、春日君なくしては語れないものと言うことができます。
 春日君は、国政がつとに有能な政治家を渇望していることを見てとり、愛知県議会に春日ありとはいえ、君が次第に県政に限界を感じるのころ、その機会が近づいてまいりました。
 昭和二十七年、講和条約発効、日本独立後初の第二十五回総選挙に、君は決然と立候補し、定員の四倍になんなんとする全国屈指の激戦区と言われた愛知県第一区で熱戦敢闘して、見事初当選の栄冠に輝かれたのであります。(拍手)
 その当時の愛知県知事桑原幹根さんは、私に対して、社会党の春日一幸君は信頼のできる人です、親しくされて間違いのない人ですよと、御推薦のお話があったことを覚えております。その後本当に親しい交際をいただきましたが、まさに無欲恬淡、しかも誠実にして清廉、夢とロマンを追って、常に堂々と政治の大道を歩み、我が国政界に大きな足跡を残されるに至ったのであります。
 君は、本院に席を得られるや、長らく大蔵委員会にあって、税制、金融、証券行政問題に気迫のこもった論陣を張られ、行政当局をして立ち往生をさせることもしばしばであったといいます。
 君は、いつも、経済の自立がなければ民族独立の完成はない、そして日本経済の重要な基盤は中小企業であると主張しておられました。まさに企業の九四%が中小企業によって占められておる我が国経済の現状をにらんだ適切な御指摘であったと言えましょう。
 今日、中小企業基本法や近代化促進法、商店街振興組合法、下請代金支払遅延等防止法等数多くの中小企業の保護政策が実現したことも、君の熱意と御協力があったればこそであります。
 また、中小企業者の政治的団結を図り、その全国組織として、昭和三十九年、特に民社中小企業政治連合の結成が成ったことなども挙げなければなりません。ひたすら中小企業振興政策の推進に情熱を燃やした君の政治活動のたまものであります。君が今もって中小企業の父と言われ、全国の中小企業関係者から敬慕されるゆえんでもあると言えましょう。
 君は、代表質問に立つこと十五回、財政、外交、公害、物価問題など、国民生活にとって不可欠の重要施策に関し、この壇上から舌鋒鋭く政府に迫り、裂帛の気合いに満ちた堂々たるその演説は、議場を圧するものがございました。春日節と称せられる独特の節回しと、当意即妙の比喩をちりばめた君の演説は、まさにひのき舞台での独壇場であったと言っても過言ではないと思います。(拍手)
 君は、昭和三十四年、国民政党論の対立から、社会党とたもとを分かち、西尾末広先生を中心とする民主社会主義新政党の準備に参画をされ、昭和三十五年一月、正式に民主社会党が結成されるや、衆望を担って、初代の院内幹事長、国会対策委員長につかれました。
 ちょうど昭和三十七年ごろ、私は君とともに国会対策委員長としてその任務を同じゅうしたことがあります。君は、みずからの信念を貫く反面、たとえ自民党の案であっても、国民が喜ぶようなものであれば賛成をする、また、戦うときは戦うが、話をつけなければならないときは思い切って妥協もするという是々非々の態度を政治信条とされていたのであります。
 こうした然諾を重んずる君の人柄に接した私は、今もそのころのことを懐かしく思い出し、君の心意気に深い尊敬の念を覚えるものであります。
 春日君、君は、その後党内にあって次第に枢要の地位を占められ、昭和四十二年に書記長、昭和四十六年には、西村栄一委員長逝去の後を受けて第三代民社党中央執行委員長に選ばれました。それから六年有余にわたって、重責をその双肩に担い、全党員の先頭に立って、民社党の政治理念の実現に奮闘されたのであります。
 昭和五十二年には、惜しむ声のうちに委員長を勇退されました。君は常任顧問になられましたが、なお党の顔として、民社党の立党精神である議会制民主主義の擁護を旗印に、八面六臂の活躍をされてきたのであります。
 君は、政治は国家の安全を大前提とした国民の福祉にあるとして、建前に流れず、委員長としても是々非々の路線を貫かれたのであります。
 君は、かねがね、日本の政治の最大の課題は政党間の政権の交代制を確立することにあるとの信念から、連合政権構想を熱烈に提唱し続け、よしゃ日の目を見なかったにしろ、戦後政治の重要な転換点には、常に主導的役割を演じられたのであります。「政治のことは、まず結論だ、理屈は後から荷車に積むほどやってくる」、この春日語録を地で行くかのように、君の全容は、連合政権構想の実現とロマンに彩られていたと言えるのであります。
 なお、君の活躍は広く海外にも及びました。幾たびか海外派遣議員団団長として、アジア、アメリカ、ヨーロッパなど、その足跡は全世界にわたったのであります。アジア・アフリカ会議、列国議会同盟総会などでも名演説を行い、英会話の巧みな君は、多くの国際政治家たちと肝胆相照らす深い親交を結ばれ、大政治家としての風貌が大きく磨かれていったのはこのころであったと思うのであります。
 君は、奔放にして豪胆、いかなる権力も恐れず、どのような困難にもためらわず、常に戦いの先頭に身を挺してきました。それだけに、人生の哀歓をひとしお鋭敏に受けとめ、人生にあるいは事業に行き悩む人々に対しては、それこそ親身の力を与えられたのであります。その点、世話活動を惜しまない人情味あふれる政治家でもあったと言えましょう。
 例えば、宝くじ売りの戦争未亡人がたまたま百万円当せんの宝くじを拾って正直に届け出をしたところ、宝くじ法と遺失物法との兼ね合いでその当せん金を受け取れぬことを新聞紙で知られました。いたく憤慨した君は、この非は法にあると言って、議員立法による改正に奔命をし、未亡人の正直に報いる道を大きく開かれたことも忘れがたい事実であると言えましなう。(拍手)
  辿り来ぬ山の熊笹野の茨押し渡り押し渡りたる旅路なりしが来し方を顧みての君の述懐は、民社党の歴史に深甚の思いをなぞらえる君の心中を余すことなく描いております。まさに徒手空拳、道なき原野を押し分け踏み分けて行く真の政治家春日一幸君の全人像には、ただ頭の下がる思いがあるばかりであります。
 かくして、君は、本院議員に当選すること連続十四回、在職三十六年十カ月の長きに及びました。昭和五十二年には、院議をもって永年在職議員として国政に尽瘁した功績により表彰をされたのであります。なお、君の栄誉は、ネパール王国及び大韓民国における最高勲章の栄典にも輝いております。これらは、その幅広い国際的視野と直言実行の大衆政治家春日一幸君を世に長く記念する輝かしい名誉でもあると言えるのであります。
 春日君、昨年、私は、中日新聞の計画で、君と十日間に及ぶ紙上対談を試みたことがあります。そのとき、君は、自分は死ぬまで政治家をやり抜くのだと決意も新たに語られましたね。その言葉どおり、民社党の機関紙「週刊民社」のコラム「天鼓」に、既に病あっき四月二十四日、遺言とも言うべき檄文を寄せられております。
 大厦の顛れんとするは一木の支ふる所にあらず。我らが結党来三十年、党の基本理念を日本政治に昇華させるべく、民社党の出番熱望の時機である。と。
 再起を危ぶまれる病床にあって、なおこの強固な信念とその意気や軒高であります。春日一幸たる者かくありてこそ、我ら政治を志す者まさにこのようにありたきものとの思いに尽きるのであります。(拍手)
 春日君、君は文字どおり死ぬまで立派な政治家であられ、その任務を全うされました。その生涯を見事に憲政の上にささげ尽くされました。今、ひつぎを覆って、君の名声はきわまっております。
 春日君、私たちはもはやこの議場で君の英姿にまみえることはできなくなりました。あの堂々〉した君の演説、春日節を聞くこともできなくなりました。しかし、君の歩まれた軌跡は、この国の憲政史上にさんとして輝きを放っております。激動の平成時代幕あけの今、君に対する敬慕と欽仰の情は、ひとり民社党の同志のみでなく、ここに集まる同僚議員はもとより、広く国民の間に長く生き続けることでありましょう。
 私は、ありし日の君の面影をしのび、君のすばらしい生涯を心からたたえ、今はただ君の安らかな御休息をお祈りするばかりであります。
 ここに、尽くせぬ哀悼の言葉を終わりたいと思います。(拍手)
     ――――◇―――――
 裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員辞職の件
○議長(田村元君) お諮りいたします。
 裁判官弾劾裁判所裁判員石田幸四郎君から裁判員を、また、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員守井吉典君から予備員を、辞職いたしたいとの申し出があります。右申し出をそれぞれ許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(田村元君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員の選挙
○議長(田村元君) つきましては、裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員の選挙を行います。
○金子原二郎君 裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員の選挙は、その手続を省略して、議長に驚いて指名され、予備員の職務を行う順序については、議長において定められることを望みます。
○議長(田村元君) 金子原二郎君の動議に御異議ありませんか。
     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(田村元君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。
 議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員に伏木和雄君を指名いたします。
 また、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員に河上民雄君を指名いたします。
 なお、予備員の職務を行う順序は第三順位といたします。
     ――――◇―――――
 裁判官訴追委員の予備員辞職の件
○議長(田村元君) お諮りいたします。
 裁判官訴追委員の予備員森田一君から、予備員を辞職いたしたいとの申し出があります。右申し出を許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(田村元君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 裁判官訴追委員の予備員の選挙
○議長(田村元君) つきましては、裁判官訴追委員の予備員の選挙を行います。
○金子原二郎君 裁判官訴追委員の予備員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名され、その職務を行う順序については、議長において定められることを望みます。
○議長(田村元君) 金子原二郎君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(田村元君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。
 議長は、裁判官訴追委員の予備員に谷垣禎一君を指名いたします。
 なお、その職務を行う順序は第三順位といたします。
     ――――◇―――――
 検察官適格審査会委員及び同予備委員の選挙
 国土開発幹線自動車道建設審議会委員の選挙
 北海道開発審議会委員の選挙
 国土審議会委員の選挙
 日本ユネスコ国内委員会委員の選挙
○議長(田村元君) 検察官適格審査会委員及び同予備委員、国土開発幹線自動車道建設審議会委員、北海道開発審議会委員、国土審議会委員及び日本ユネスコ国内委員会委員の選挙を行います。
○金子原二郎君 各種委員の選挙は、いずれもその手続を省略して、議長において指名されることを望みます。
○議長(田村元君) 金子原二郎君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(田村元君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。
 議長は、検察官適格審査会委員に友納武人君を指名いたします。
 また、加藤卓二君を友納武人君の予備委員に指名いたします。
 次に、国土開発幹線自動車道建設審議会委員に
      橋本龍太郎君    水野  清君
      村田敬次郎君    天野光晴君
   及び 石井  一君
を指名いたします。
 次に、北海道開発審議会委員に高橋辰夫君を指名いたします。
 次に、国土審議会委員に内海英男君を指名いたします。
 次に、日本ユネスコ国内委員会委員に
      麻生 太郎君 及び 北川 正恭君
を指名いたします。
     ――――◇―――――
 土地基本法案(内閣提出)及び土地基本法案(第百十二回国会、伊藤茂君外三名提出)の趣旨説明
○議長(田村元君) この際、内閣提出、土地基本法案及び第百十二回国会、伊藤茂君外三名提出、土地基本法案について、趣旨の説明を順次求めます。国務大臣野中英二君。
    〔国務大臣野中英二君登壇〕
○国務大臣(野中英二君) 土地基本法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 東京都心部に端を発した今回の地価高騰は、国民の住宅取得を困難とし、社会資本の整備に支障を及ぼすとともに、土地を持つ者と持たざる者との資産格差を拡大し、社会的不公平感を増大させる等我が国社会経済に重大な問題を引き起こしているところであります。
 政府としても、これまで各般の土地対策を講じてきているところでありますが、これらの諸問題により適切に対処するためには、昨年六月の臨時行政改革推進審議会答申に示されたとおり、国及び地方公共団体が一体となって需給両面にわたる各般の土地対策を総合的に推進するとともに、その前提として、国民各層にわたって土地についての共通の認識を確立することが不可欠であります。
 本法案は、このような考え方に基づき、土地についての基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、土地に関する施策の基本となる事項を定めることにより、適正な土地利用の確保を図りつつ、適正な需給関係のもとでの地価形成に資する見地から土地対策を総合的に推進し、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とするものであります。
 次に、この法案の概要について御説明申し上げます。
 第一に、土地については、公共の利害に関係する特性を有していることにかんがみ、公共の福祉のため、その特性に応じた公共的制約が課されるものである等の土地についての基本理念を定めるとともに、国及び地方公共団体は、基本理念にのっとり、土地に関する施策を策定し、これを実施する責務を有する等、国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明確化するなど所要の規定を定めております。
 第二に、土地利用計画の策定、土地取引の規制等に関する措置、社会資本の整備に関連する利益に応じた適切な負担など、土地に関する施策のうち基本となる事項を定めております。
 第三に、内閣総理大臣の諮問機関として国土庁に土地政策審議会を置き、土地に関する総合的かつ基本的な施策に関する事項及び国土の利用に関する基本的な事項を調査審議するものとするなど、土地政策審議会に関する規定を定めております。
 以上がこの法案の趣旨であります。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(田村元君) 提出者中村茂君。
    〔中村茂君登壇〕
○中村茂君 ただいま議題となりました土地基未法案について、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合を代表して、提案の趣旨を御説明申し上げます。
 地価は、自民党政権とともに限りなく高騰を続けてまいりました。特に、東京一極集中に端を発したここ数年の異常な地価の高騰は、住宅価格、家賃、固定資産税等の上昇をもたらし、国民の住宅取得を困難にし、公共投資においてもその費用の増大を招くなど、国民経済全体に多大の悪影響を与えています。その上に、土地を持つ者と持たざる者との資産格差が拡大しています。
 このような富の偏在は、働かずして得た不労の富のために、それが利権や汚職等にもつながり、多くの悲劇を生み出し、社会をゆがめ、経済を退廃させる大きな要因となっています。
 このような事態に対処するため、我々社会党、公明党、民社党、社民連の四党は、土地基本法策定の共同作業を行い、野党連合政権確立の統一政策第一号として、この土地基本法案を提案する次第であります。(拍手)
 およそ、すべての人間の営みは土地の上で行われております。人間は、土地なくしては生存することはできないのであります。とりわけ国土の狭隘な我が国にあっては、土地は、現在及び将来における国民のための限られた貴重な資源であるとともに、国民の生活及び生産を通ずる諸活動の共通の基盤であり、土地は、その本来の性格から公共性を有するものであります。したがって、土地に関する権利は財産権として保護されるものの、土地の利用については、公共の福祉を優先させなければならないものであります。これは、すべての国民が将来健康で文化的な生活を営む上で欠くことのできない原則でもあります。
 したがって、本法案は、以上のような基本的な考え方に基づいて、土地についての政策目標、国及び地方公共団体の責務、特に計画に基づく土地の有効かつ合理的な利用の原則を確立するとともに、土地の投機的取引を規制する等により、適正な地価の形成を図るとともに、良好な宅地の供給を促進することにより、国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展を図ろうとするものであります。
 次に、この法案の概要について御説明申し上げます。
 第一に、土地の利用は公共福祉を優先させなければならないことにしております。
 第二に、土地を投機的取引の対象としてはならないものとしております。
 第三に、土地利用計画は、関係住民の意見が十分反映され、かつ、自然環境の保全等に十分留意されたものでなければならないものとしております。
 第四に、国及び地方公共団体は、居住環境の良好な宅地の供給を促進するため、必要な施策を講ずるものとしております。
 第五に、国は、地価の形成及び課税の適正化に資するため、一物四価と言われている土地評価制度の一元化を図ることにしております。一 第六に、地方公共団体は、良好な都市環境の計画的な整備を促進するため、公有地の拡大を推進することにしております。
 第七に、適正な地価の形成及び社会的公平を確保するため、土地の増価益は社会に還元されなければならないものとしております。
 以上がこの法案の提案の趣旨及び内容の概要であります。
 ところで、さきに提案された政府の土地基本注案と比較していただければおわかりのとおり、よりすぐれた土地基本法案となっております。(拍手)
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
 以上であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 土地基本法案(内閣提出)及び土地基本法案(第百十二回国会、伊藤茂君外三名提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(田村元君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。小野信一君。
    〔小野信一君登壇〕
○小野信一君 日本社会党・護憲共同を代表し、総理と国土庁長官に質問をいたします。
 今、我が国の繁栄は、単に景気循環の上昇過程としてではなく、大国の興亡という文明史的視点でとらえられ始めております。
 確かに、我が国の国民総生産高はアメリカに次いで世界第二位、国民一人当たりの所得はそのアメリカを抜いて世界第一位、三千億ドルに達しようとする世界最高の対外債権、まさに経済大国日本です。
 しかし、ここ数年のこの急膨張は、プラザ合意以後の円高という為替レートのトリックがなければ不可能だったはずです。その証拠に、為替レートとの関係の薄い国民生活の面では、先進国の中で最も長い労働時間、年金で生活のできないお年寄りの皆さん、アメリカの二倍高い生計費、一生働いて退職金を加えても家を一軒持つことのできない都市の勤労者、これでは、自分たちの所得が世界一高いと言われても、自分たちの暮らしが世界一豊かであるとの実感を持っている日本人は一人もおりません。
 国民一人一人の生活は、GNPで表現される日本の経済力と比較して余りにも貧弱です。少なくとも労働の対価としての所得、その所得で購入きるサービスの量を無視しては、国民生活の豊かさははかれないことに気づき始めております。
 その端的な例は、土地であり住宅です。
 我が国の地価は、国際的に見ても異常です。昭和六十二年度の国民経済確報によりますと、我が国の課税対象の土地資産額は一千六百三十七兆円で、前年対比二九・六%増です。同期のGNPが三百五十一兆円ですが、土地の評価増は実に三百七十一兆円で、これを超えます。同期のアメリカの土地資産は、一ドル百二十二円で計算しますと四百三兆円ですから、実に四・一倍です。国土面積は日本の二十五倍ですから、単価は実に約百倍ということになります。また、国の総資産から総負債を差し引いた正味財産、いわゆる国富の構成比は、我が国は土地の比率が他の国と比べて非常に高く、逆に住宅資産の割合は格段に低くなっております。資産構成の面からも、必ずしも国民経済上バランスがとれた姿ではありません。
 東京に端を発し、今や地方都市にまで波及しみ地価高騰、それに伴う住宅購入難と居住環境の亜化への国民の怒りをこの土地基本法が真に代弁し、国と地方団体へ一大決心を促すことを私は心から願うものです。したがって、私は、この基本法を高地価と住宅問題との関連に絞って質問をいたします。
 我が国では、土地の所有権は憲法で保障され、その利用も処分も個人の自由な意思にゆだねられ、その取引は市場で行われ、価格は需給を反映してつくられます。しかし、土地の保有や利用をすべて自由な市場メカニズムにゆだねたままでは、経済的にも社会的にも最適な配分ができないことが明らかになりました。
 そこで、公的な意思に基づく強制、公的主体による制限、介入、誘導等は不可欠であることを経験いたしました。ここまでの認識は、国民の共通のものとなっておると私は思います。したがって、土地の保有と利用に公的制約である制限、介入、誘導等は、社会的にも当然なものとして、積極的に許される環境を具体的につくっていかなければなりません。
 そこで、第一の質問は、土地の保有と利用への制限、介入、誘導等の公的制約は、我が国憲法第二十九条のもとでどこまで及ぶことができ、どこまで実行しようとするのか、総理の所見と決意をお聞きいたします。
 第二の質問は、その効果についてです。
 この基本法案は、土地に関する基本的考え方として、第一に、土地は公共の福祉のため公共的制約が課せられるもの、第二に、その利用に当たっては計画的でなければならないこと、第三に、投機的取引の対象としてはならないこと、第四に、開発利益はその一部を社会に還元し、社会的公平を確保することの四つを挙げました。そして、この四つの原則をなぜ国民の共通認識として確立しなければならないのか、その理由にも触れております。
 しかし、この四つの原則が果たして地価暴騰に対する土地政策の基本理念として適当であるかどうか、疑問のあるところです。この四つの原則に基づく施策で地価暴騰に歯どめがかかり、そして地価が下がるかどうか、疑念を表明せざるを得ません。
 それは、この土地所有権に関する四つの原則の考え方が、近代国家としては余りにも当然過ぎるほどの概念によって構成されているからです。それは、日本の場合、土地の特性に沿って地価を抑制し、土地神話を打ち砕かなければならないのが我が国の土地政策であり、その目標が、地価水準を引き下げることに置かなければならないからです。
 というのは、この基本法案が目指している土地に関する具体的施策を実施するための法律は、実は既に過剰なほどたくさんあるのです。基本法がなければ実施できないという現状ではありません。
 例えば、国土利用計画法には、首都圏の地価高騰に、高値安定ではありますが、一応歯どめをかける役割を果たした監視区域制度があります。同時に、この法律には、地価高騰の予測される地域を規制区域とし、その区域内の土地取引を許可制にすることができるもっと強い地価規制手法が書かれてあります。しかし、いまだ一度も実行されたことがありません。あの狂乱地価高騰のときにもです。この基本法は、単に屋上屋を架すだけではないのかとの批判が出るゆえんです。
 そこで、この基本法が国民の期待にこたえるような効果を上げるために、他の関連法をどのように運用しようとするのか、総理の決意をお聞きいたします。
 第三の質問は、少し具体的になります。
 都市開発協会の調査では、東京十キロ圏での一戸当たりマンション価格は六千六百七万円で、一般サラリーマンの平均的年収の十一倍、二十キロ圏では四千八百十五万円で八・〇九倍となり、高ねの花となりました。平均的勤労者の何年分の収入で住宅が取得できるかの国際比較では、アメリカの三倍、イギリスの四倍、西ドイツの四・八倍、そして日本は実に八倍になりました。国際的にも異常です。
 そこで、経済企画庁が平均的勤労者の経済的条件をもとにして住宅取得について試算をいたしました。
 敷地面積百二十から百五十平方メートル、通勤可能範囲三十から三十五キロ、貯蓄動向調査によって四十一歳から四十五歳までの平均年収五百八十八万四千円、貯蓄高は年収の一・五倍、借入金は金融機関が採用する最高限度額である年収の三・五倍、二十年の元利均等償還で単年度の支払いは年収の三五%以内、建築費一千二百四十万円で坪単価四十五万円程度、年収の五倍は三千五百万円という前提ですと、地価は一平米当たり十七万から十八万円でなければなりません。これが平均的サラリーマンの取得能力です。私は、これはまことに合理的で納得できる試算だと考えております。したがって、土地基本法は、計画的に地価を下げ、住宅取得の国民的要求を確実に実現させるものでなければなりません。
 そこで、第三の質問、長官はこの基本法をどんな視点で何を具体的に解決しようとしておるのか、その考え方をお聞きいたします。
 次は、住宅取得への国の援助についてです。
 国の歳出総額に占める住宅対策費の割合は、フランス四・三%、イギリス二・二%と高く、日本は一・五%、アメリカ一・四%、西ドイツ一%となっております。普通収入に占める住宅関係減免税額の割合は、アメリカ四・八%、イギリス四・二%、フランス一・五%、西ドイツ一・三%、日本はわずかに〇・五%で、アメリカの十分の一にすぎません。この数字は、制度の違いがありますが、欧米先進諸国は我が国に比べて手厚い住宅への援助を実施し、我が国では税制面での優遇度で大変劣っていることを明らかにしております。
 土地基本法案の提出に当たって、国民の住宅取得に国の財政援助を先進諸国並みに一挙に引き上げるべきであることを提案するのですが、総理の答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宇野宗佑君登壇〕
○内閣総理大臣(宇野宗佑君) 小野さんの御質問にお答え申し上げます。
 第一問は、憲法二十九条との関係でございます。
 仰せのとおり二十九条には、財産権はこれを侵すべからず、それによって我が国の私有財産制度が保障されておるところでございます。しかし、財産権の内容は公共の福祉に適合するよう法律で決めなさい、かように書いておりますから、我々といたしましても、財産権のうち土地に関しましては、常に公共の福祉という一つの制約、それを念頭に置きながら考えていくべきである、かように私たちは考えておる次第でございます。
 したがいまして、基本理念に示されておりますように、現在及び将来における国民のための限られた貴重な資源である土地、これに関しましては、ただいま申しましたとおり、公共の利害に関係する特性を有しておる、だから私たちは、その特性にかんがみまして、今後の公共の福祉のためどこまでその特性に応ずる公共的制約が課せられるのかという御質問に対しましては、私は、土地の保有と利用についての公共的な制約がどこまで可能かというそうした判断につきましては、例えば土地収用法等々がございますが、それらの個別的な具体的法律の内容において判断をしなければならないものである、かように考えております。
 続きまして、土地基本法の運用、つまり他の関連法との関係はいかが、こういう御趣旨の御質問でございました。
 政府といたしましては、土地問題に対処するため、これまで各般の施策を取り上げてまいりました。
 まず、私たちは、今申し上げましたように、土地の公共性を明確化する必要がございます。また、土地についての国民の共通認識を確立することが必要であろう、かように考えております。
 したがいまして、今後は、この法律をベースといたしまして、土地に関する関連法律を適切に活用、改善することによって、土地の利用計画、二番目には土地の取引規制、三番目には土地税制等総合的な土地対策の推進に取り組んでまいる所存でございます。屋上屋を架さないようにと御忠告がございましたが、もちろんそうしたことをも念頭に置きまして、今申し上げました施策を積極的に進めてまいりたいと存ずるものであります。
 最後に、住宅取得に対する財政援助の強化という御質問がございました。
 世界の例も取り上げられまして、いろいろとその例を申し述べられました。私は、そうした比較に対しましても、本当に御造詣の深いところを拝しまして、我々といたしましても一つのそれは今後大きな資料であると考えておりますが、住宅取得に対する財政援助のあり方を社会的背景の異なる諸外国と一般に比較するということは困難だ、かように思っております。日本は何と申しましても三百六十分の一しかその面積はない、その中においていかに土地の有効性を図るか、公共性を図るか、このことは仰せのとおり大切なことであると私は考えております。
 そこで、住生活を営むことができるように、サラリーマンの方々にそうした優良な住宅環境をつくり出すように、私たちは考えてまいらなければなりません。ちょうど六十一年度から平成二年度にかけましての住宅建設五カ年計画がございますが、これに基づきまして、住宅公庫の利子補給等いわゆる住宅金融、さらには税制上の措置、こうしたことを拡充、そして活用いたしたいと考えております。
 なおかつ、公営、公団等の公的住宅の供給等につきましても努めてまいりましたが、今後ともその政策をさらに一段と強化し、推進いたしたいと考えるものでございます。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣野中英二君登壇〕
○国務大臣(野中英二君) 小野議員さんの私に対する御質問は、土地基本法をどんな視点で具体的に運用するかという御質問でございます。
 土地の価格は需給関係によって形成されるのが基本でございまして、地価高騰に対処するためには、まず東京等大都市地域に集中している土地需要を分散する必要がありまして、このために多極分散型国土形成促進法に基づきまして施策の実施を図り、多極分散型国土の形成の促進に努めてまいる所存でございます。
 また、需要に応じて適切な供給を行う必要があり、このため、本法にのっとって、土地利用計画の整備充実、土地利用計画に基づくところの土地の高度利用、土地利用の適正な転換の促進等の施策を講じてまいる所存でございます。
 さらに、投機的取引の抑制でございますが、抑制のために、土地取引の規制、土地に関する適正な税制上の措置等の施策を講じることによって、地価の抑制、ひいては国民の住宅取得の円滑化に努めてまいる所存でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(田村元君) 小谷輝二君。
    〔小谷輝二君登壇〕
○小谷輝二君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました政府提案の土地基本法案の趣旨説明について、総理並びに関係大臣に若干の質問を行うものでございます。
 今や、我が国は、アメリカに次ぐ世界の経済大国となりましたが、先進諸国と比べて生活小国と言われています。それは、住宅水準が欧米諸国に比べて極めて貧弱であるからであります。
 この住宅事情のネックとなっているのが異常に高い地価であることは言うまでもありません。東京や大阪などのサラリーマンは、世界の最高水準の所得であるにもかかわらず、一生働いても地価高騰で満足なマイホームも持てないのが現状であります。このような異常に高い地価は、大都市地域の住宅事情を悪化させただけではなく、二十一世紀の高齢化社会を目前にして急がれる社会資本の整備をも困難にいたしております。
 一例を挙げれば、東京虎ノ門から汐留までの環状二号線一・三キロの建設は、東京湾十三号埋立地など臨海部の大規模開発には欠かせませんが、その費用は、地価高騰で一兆円に上るとも言われております。しかし、その実際の事業費はわずか
 八十億程度と言われています。すなわち、九九%以上が用地費になるのであります。
  このような事態をもたらした根本的な原因は、長期にわたり実効ある土地政策を怠ってきた政府・自民党にあることは言うまでもありません。
 この深刻な土地問題を解決することが、今我が国に課せられた重要課題であります。また、急務でもあります。我が党は、このような認識のもとに、土地に関する憲法とも言われる土地基本法の早期制定を主張してきたところであります。
 さらに、昨年初頭から、公明党は、社会党、民社党、社民連三党とそれぞれ構想を持ち寄って、土地基本法案の作成作業を進め、昨年五月に四野党共同で土地基本法案を国会へ提出し、ただいま趣旨説明のあったところであります。
 このように、公明党を初め、社会党、民社党、社民連が四野党共同で土地基本法案を提出したことが政府・自民党に大きなインパクトとなり、この通常国会へ土地基本法案の政府案の提出となったわけであります。我々の主張を認めて政府が土地基本法案を提出したことについては、率直にそれなりの評価をするものであります。
 政府の土地基本法案は、その基本理念で、一つには、国民の貴重な資源である土地は公共的制約を受けること、二つには、土地の利用は計画的に行わなければならないこと、三つには、土地を投機的取引の対象としてはならないこFと、四つには、社会資本の整備による地価上昇に伴う開発利益に適切な還元を求めること等を述べたものであって、いわゆる宣言法であります。今国民が求めているのは、このような土地に関する抽象的な宣言法ではなく、いかにして実効性ある土地対策が実施されるかであります。
 そこで、まず総理に伺いますが、政府案がこのように具体性に極めて乏しい宣言法にとどまったのはいかなる理由によるのか、御説明を願います。
 政府案は、土地が国民のための貴重な資源であることから、公共性の優先を強調しており、また、投機的取引の抑制も明記しているようでありますが、国民が最も注目していた地価の高騰に伴う利益の社会還元については、法案作成過程で経済界などの強い抵抗に遭って、最終的に「適切な負担が求められる」と当初案から大きく後退していると言われております。このように条文が大きく後退した経緯を御説明願います。
 この際、この条文を「適切な負担が課せられる」と修正すべきだと思いますが、これらの点について国土庁長官のお考えをお伺いいたします。土地に関する権利については、我々四野党共同提案では、「財産権として保護されるものの、土地の利用については、公共の福祉を優先させなければならない。」と明確に規定していますが、政府条では、「土地については、公共の福祉のため、ての特性に応じた公共的制約が課されるものとする。」と極めて抽象的なものとなっています。これは土地臨調が示した考え方からも後退したものであります。土地対策の遂行に際し、私権の制限は大きなポイントであります。政府案ではいかなる理由によってこのように極めて抽象的なものになったのか、しかと御説明を願います。先般、国土庁が発表した公示地価によると、地価の高騰は東京都心部においては鎮静化したものの、地方の主要都市ではすさまじい勢いで高騰しており、特に関西地方ではこの一年間に実勢価格は二倍以上になったところもあります。既に関西地方の住宅地では一億円以上の一戸建て住宅がふえております。
 政府も、地価の高騰に歯どめをかけるため、これまで国土利用計画法に基づく監視区域の指定や金融機関の土地への過剰融資の抑制等によって対処してきましたが、打つ手が後手後手に回り、十分な効果を上げることができませんでした。今なお大都市周辺部の通勤圏では依然として上昇しており、またリゾート開発地域でのすさまじい高騰は、その地域社会を混乱させて深刻な事態をもたらしているのであります。
 総理、あなたは、このように全国的規模に拡大している地価の高騰に歯どめをかけるために、いかなる地価抑制策を講ずるのか。また、大都市地域を中心に異常に高い土地価格を引き下げるために具体策を講ずるべきであると考えるが、総理の御見解をお伺いいたします。東京や大阪など大都市地域において、住宅用地として供給できる土地がないわけではありません。例えば東京都内には八千四百十七ヘクタールの市街化区域内農地があり、また、東京都臨海部などを有効に活用すれば、相当の中高層住宅を供給できるはずであります。しかし、残念ながら現実にはこれらの土地が有効に活用されていません。
 マンモス都市東京の土地が有効利用されていないことも有名であります。よく東京や大阪とフランスのパリが対比されますが、パリの中心部は五階から七階建てに統一された住宅、町並みであり、大変きれいに調和がとれ、美しく整っております。市民もそこに住み、生活しています。東京では、二十三区の平均階数がいまだに二・七階程度であります。一方、都心部のオフィス街には高層ビルが林立しています。そこに住み、生活している人はほとんどいません。そこで働く人の大半が千葉県、埼玉県、神奈川県、三多摩などからの遠距離からの通勤者であります。まことに不経済な生活形態をなし、非合理的な土地利用がなされているのであります。
 総理並びに国土庁長官は、との実態をどのように把握され、いかなる認識のもとにどのように土地の有効利用を促進されようとしているのか、具体策をお伺いしたいのであります。
 政府は、東京への一極集中の是正策の一環として一省庁一機関の地方移転を進めていますが、その中身は、一極集中の是正にはほど遠いものであります。今日の東京一極集中の根源は、明治政府以来の中央集権制にあることは周知のところであります。この中央集権体制を根本から洗い直し、地方分権こそ民主主義を支える基盤であるとの認識のもと、抜本的に改革していかなければなりません。私は、東京一極集中の是正策としては、まず政府の持っている行財政権限を大幅に地方へ移譲すること、すなわち、中央集権的な行財政システムを抜本的に改め、地方分権を構築することだと考えておりますが、最後に、この点についての総理の御見解をお伺いいたしまして、質問を終わらせていただきます。(拍手)
   〔内閣総理大臣宇野宗佑君登壇〕
○内閣総理大臣(宇野宗佑君) 小谷さんの御質問にお答えいたします。
 最初に、土地基本法が宣言法にとどまった理由、こういうお尋ねでございました。
 先ほども小野さんの御質問にお答えいたしましたとおり、憲法第二十九条によりまして、土地の公共の福祉によるところの適合性というお話をいたしました。したがいまして、まずそうしたことに関しまして、私といたしましては、土地対策を進めるためには公共性を明確化する、これが第一点。土地についての国民の共通認識を確保すること、これが第二点でございます。この二つを一つのベースとして今後土地対策の推進に取り組んでまいる所存でございます。
 今後の地価抑制策に関しましてもお尋ねがございましたし、大都市地域における土地の有効利用に関しましても同じようにお尋ねがございました。
 土地の価格はもちろん需給関係に上って形成されるのが基本でございますが、地価高騰に対処するためには、まず東京等の大都市地域に集中している土地需要を分散していく必要がございます。このため、多極分散型国土形成促進法に基づきまして施策の実施、促進に努めてまいる所存でございますが、その一環として、御指摘になりました国の行政機関等の移転の促進、これもひとつ頑張らなくてはなりません。
 それにはやはり我々といたしましても努力をいたしまして、現在七十九機関が移転することを決定いたしました。既に実施に移っているものもございます。今後、こうしたことによりまして、仰せのとおり、明治以来の東京都市集中という弊を除けということにおこたえ申し上げたいと私は考えます。
 その次には、そうしたことを中心といたしまして、本法にのっとって土地の利用計画の整備充実、さらには土地利用計画に基づく土地の高度利用、さらには土地利用の適正な転換の促進、こうした施策を講じてまいる所存でございます。もちろん、投機的取引の抑制、これはもう一番大切なことであると私は考えますので、今後も、適正な税制上の措置を講ずることによりまして地価の抑制に全力を挙げたい、かように考えておる次第でございます。
 特に、東京都あるいは大阪等大都市、こうしたところにおいてのひとつ有効利用の促進についても配慮をせよというお話でございました。
 これに関しましては、市街地再開発事業等の積極的推進によりまして用途地域の適正な見直しを図ってまいる所存でございます。
 次に、政府の行政権限を大幅に地方に移譲すべきであるという仰せでございます。
 もちろん、このことは大切だろうと私は考えております。前にも申し述べましたが、地方自治の尊重の観点から、住民に身近な事務は住民に身近な地方公共団体において処理できるよう、国と地方間の機能分担、このあり方に関しましてさらに幅広い検討が必要であろうと思います。
 政府は、従来から、行革審あるいはまた臨調等々にいろいろなことをお願いをしてまいりましたが、さらに平成元年度行革大綱におきましても行革審の審議を求めているところでございます。
 今申し上げましたように、国、地方の機能分担とそして費用の負担、このことを決定しなければならない、そのことをお諮りいたしておりまするから、そうした答申が本年度内に出される予定でございます。その答申を待ちまして一層積極的に改革を進めたいと思うものでございます。
 最後には、一極集中の是正のために財政権限を地方へ移譲せよ、こういう仰せでございました。
 国と地方を通ずるところの行財政改革、これはその推進が重要であると私は思います。しかし、多様化いたします地方財政需要の増大、このことも考えていかなければなりません。このためには、地方財源の確保と安定のため今後とも適切な措置をとりたい、かように考えておる次第であります。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣野中英二君登壇〕
○国務大臣(野中英二君) ただいまの御質問についてお答え申し上げます。
 第一に、地価高騰に伴う利益の社会還元についてでございますが、当初案から後退したのではないかという御指摘でございます。
 本法案は、第五条では、四番目の基本理念として「価値の増加に伴う利益に応じて適切な負担が求められる」と規定しているところであります。これは、土地の価値の増大が人口、産業の集中、道路や鉄道等の社会資本の整備等の外部的要因によってもたらされた場合には、土地の所有者に対して利益に応じて適切な負担が求められることを明らかにしたものであり、この中には開発利益の社会還元という考え方も含まれているものでありまして、御指摘のような当初の考え方から後退したものではないということを申し上げる次第でございます。
 次に、公共の福祉の優先が後退したのではないかとの御指摘でありますが、本法案第二条において、土地が公共の利害に密接に関係する特性を古していることを明らかにするとともに、土地については、公共の福祉のため、その特性に応じた公共的制約が課されることを規定しております。ここで「公共の福祉のため」とは、野党案で示された公共の福祉を優先させることと同趣旨であり、土地についての公共的制約には、土地の利用に関する制約を初め土地の保有、処分等に関する制約が含まれていることから、全体としては、四野党が提案された土地基本法案及び土地臨調が示した考え方と同様の考え方に立っておるのでございます。
 最後に、土地の有効利用の促進についてでありますが、東京、大阪等大都市地域における土地の有効利用を促進するため、本法が示す土地に関する施策の展開方向に沿って、土地利用計画の詳細化、土地利用の規制に関する措置、土地利用計画に係る事業の実施、土地に関する適正な税制上の措置等各般の施策を適切に講じてまいる所存であります。(拍手)
○議長(田村元君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○金子原二郎君 議事日程は延期し、本日はこれにて散会されることを望みます。
○議長(田村元君) 金子原二郎君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(田村元君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時二十三分散会
     ――――◇―――――