第116回国会 本会議 第8号
平成元年十一月九日(木曜日)
    ─────────────
 議事日程 第七号
  平成元年十一月九日
    午後一時開議
 第一 公職選挙法の一部を改正する法律案(公職選挙法改正に関する調査特別委員長提出)
    ─────────────
○本日の会議に付した案件
 日程第一 公職選挙法の一部を改正する法律案(公職選挙法改正に関する調査特別委員長提出)
 国民年金法等の一部を改正する法律案(第百十四回国会、内閣提出)及び被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法案(第百十四回国会、内閣提出)の趣旨説明及び質疑
    午後一時二分開議
○議長(田村元君) これより会議を開きます。
     ────◇─────
○議長(田村元君) 日程第一は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(田村元君) 御異議なしと認めます。
    ─────────────
 日程第一 公職選挙法の一部を改正する法律案(公職選挙法改正に関する調査特別委員長提出)
○議長(田村元君) 日程第一、公職選挙法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の趣旨弁明を許します。公職選挙法改正に関する調査特別委員長左藤恵君。
    ─────────────
 公職選挙法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ─────────────
    〔左藤恵君登壇〕
○左藤恵君 ただいま議題となりました公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。
 本案は、昨八日公職選挙法改正に関する調査特別委員会において全会一致をもって起草、提出いたしたものであります。
 近年、指定都市においては、人口の移動等に伴い、区の再編成が行われ、衆議院議員の二以上の選挙区にわたって新たに区が設置されるという事態が生じております。
 衆議院議員の選挙区は、指定都市については区の区域にその基礎を置いているため、このような場合にあっては、新たに設置された区の所属すべき選挙区を定めることとなりますが、指定都市の区については、市町村の合併の特例に関する法律に基づく特例措置のような規定がないため、選挙区が直ちに変更されることとなり、選挙人の候補者選択が困難になる等、種々の支障を来すおそれがあります。
 本案は、以上のような実情にかんがみ、指定都市の区の新設に関し、衆議院議員の選挙区について、その急激な変更を緩和しようとするものでありまして、衆議院議員の二以上の選挙区にわたって新たに設置された指定都市の区に係る衆議院議員の選挙区については、当該区が設置された日以後二度目に行われる衆議院議員の総選挙前に行われる衆議院議員の選挙に限り、なお従前の区域によることといたしております。
 なお、この法律は公布の日から施行することとし、その他所要の規定を整備することといたしております。
 以上がこの法律案の趣旨及び内容であります。
 何とぞ、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
    ─────────────
○議長(田村元君) 採決いたします。
 本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(田村元君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
     ────◇─────
 国民年金法等の一部を改正する法律案(第百十四回国会、内閣提出)及び被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法案(第百十四回国会、内閣提出)の趣旨説明
○議長(田村元君) この際、第百十四回国会、内閣提出、国民年金法等の一部を改正する法律案及び被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法案について、趣旨の説明を求めます。厚生大臣戸井田三郎君。
    〔国務大臣戸井田三郎君登壇〕
○国務大臣(戸井田三郎君) 国民年金法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 我が国は、世界に例のない速度で高齢化が進んでおり、老後の問題は国民の最大の関心事となっております。老後生活の主柱としての公的年金制度に寄せる国民の期待は極めて大きなものとなっております。
 こうした国民の期待にこたえていくため、昭和六十年の年金制度の改正においてすべての国民に共通する基礎年金の導入が行われ、公的年金制度全体の長期的な安定と整合性ある発展を図る上での礎が築かれたところでありますが、高齢化のピークを迎える二十一世紀に向けて、さらに年金制度全体を揺るぎなきものとしていくため努力を重ねてまいることが必要であります。
 このような考え方に基づき、今回提出いたしました改正案では、必要な年金額の確保を図るとともに、後代の負担を適正なものとするため、厚生年金の支給開始年齢を十分な準備期間を設けて段階的に引き上げていくためのスケジュールを明示する等所要の改正を行うこととしております。
 以下、改正案の内容につきまして御説明申し上げます。
 まず、国民年金法及び厚生年金保険法の一部改正について申し上げます。
 第一に、年金額の引き上げにつきましては、本年十月から国民年金の基礎年金の額を月額五万五
千五百円に引き上げるとともに、厚生年金保険の制度成熟時における加入期間四十年の場合の標準的な年金額を月額十九万七千四百円に引き上げることとしております。旧法国民年金及び旧法厚生年金保険の額も、これに準じて引き上げを行うこととしております。そのほか、配偶者や子に係る加算・加給年金の額を引き上げることといたしております。
 第二に、物価スライド制につきましては、平成二年四月から物価変動に完全に対応して年金額の改定を行う完全自動物価スライド制とすることといたしております。
 第三に、厚生年金保険の在職老齢年金につきましては、本年十月からその支給割合を現行の三段階から五段階に改める等の改善を図ることといたしております。
 第四に、老齢厚生年金の支給開始年齢につきましては、給付水準を維持しつつ後代の負担を適正なものとするため、十分な準備期間を設けて、平成十年度から平成二十二年度にかけて段階的に六十五歳に引き上げることとしております。また、これに伴い、老齢厚生年金の繰り上げ支給制度を創設することといたしております。なお、これらの改正の施行につきましては、別に法律で定める日からとしております。
 第五に、厚生年金保険の標準報酬につきましては、最近における賃金の実態に即して、本年十月から八万円から五十三万円の三十等級に改めることといたしております。
 第六に、保険料につきましては、年金額の引き上げ及び受給者増等に対応して年金財政の健全性を確保するため、国民年金については、平成二年四月から月額八千四百円に改定し、以後段階的に引き上げることとしております。また、厚生年金保険については、本年十月から保険料率を男子については千分の二十二引き上げる、女子については男子との格差を解消するため千分の二十三・五引き上げ、その後男子の料率に達するまで毎年千分の一・五ずつ引き上げることとしております。
 第七に、現在、国民年金に任意加入となっている二十歳以上の大学、専修学校等の学生につきまして、年金を保障するため、平成二年四月から国民年金の当然加入の被保険者とすることとしております。
 第八に、基礎年金、厚生年金等の支払いにつきましては、本年十月から年六回支払いに改善することといたしております。
 第九に、自営業者等に対する基礎年金の上乗せ年金制度を実現するため、現行の業種単位の職能型の国民年金基金の設立要件を緩和するとともに、一般の自営業者等が加入する都道府県の区域を単位とする地域型の国民年金基金を創設することとしております。
 第十に、厚生年金基金につきましては、積立金の運用の一層の効率化を図るため、運用方法を拡大するとともに、積立金の管理及び運用に関する業務について、所要の規定の整備を行うこととしております。
 次に、平成元年度におきます年金額の特例物価スライド等について申し上げます。
 拠出制国民年金及び厚生年金保険の年金額につきましては、最近における社会経済情勢にかんがみ、特例的に昭和六十三年の物価上昇率に応じて年金額の引き上げを行う特例物価スライドを実施することとしております。また、老齢福祉年金の額につきましても、拠出制年金の額の引き上げに準じて引き上げを行うこととしております。
 最後に、児童扶養手当法及び特別児童扶養手当等の支給に関する法律の一部改正について申し上げます。
 児童扶養手当及び特別児童扶養手当等の手当額につきましては、年金額の引き上げに準じて引き上げを行うとともに、平成二年四月から物価変動に完全に対応して手当額を改定する完全自動物価スライド制を導入することといたしております。
 以上が国民年金法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。
 次に、被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 我が国の公的年金制度を今後の高齢化の一層の進展や産業構造、就業構造の変化の中で公平で安定した揺るぎないものとしていくためには、公的年金制度の一元化を図る必要があります。
 その第一段階として、昭和六十年の年金制度の改正においては基礎年金制度の導入を行い、公的年金制度の一階部分について給付と負担の両面にわたる一元化を行うとともに、二階部分に相当する被用者年金制度についても、共済年金の給付水準を将来に向けて厚生年金の給付水準にそろえることにより給付面における公平化を図ったところでありますが、公的年金制度の一元化を完了するためには、被用者年金制度の負担面における不均衡を是正していくことが課題となっているところであります。
 この法律案は、このような課題を踏まえ、被用者年金制度間の負担の調整を進めるため、公的年金制度の一元化が完了するまでの間の当面の措置として、厚生年金及び共済年金の老齢・退職年金給付のうちの共通の部分について費用負担を調整するための制度間調整事業を実施しようとするものであります。
 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。
 第一は、調整交付金の交付であります。
 制度間調整事業の実施主体たる政府は、各被用者年金保険者が行う老齢・退職年金給付のうち各制度に共通する部分の費用に充てるため、各被用者年金保険者に対し調整交付金を交付することといたしております。
 第二は、調整拠出金の拠出であります。
 調整交付金の財源に充てるため、各被用者年金保険者は、その標準報酬総額に応じて、制度間調整事業の実施主体たる政府に対し、調整拠出金を拠出することといたしております。
 第三に、制度間調整事業の事務の執行に要する費用は、国が負担をすることといたしております。
 第四に、制度間調整事業は社会保険庁が実施することとしておりますが、その円滑な実施のため、各共済組合からの社会保険庁長官への報告等について所要の規定を設けております。
 この他、厚生保険特別会計法、被用者年金各法等について、制度間調整事業の実施のための所要の改正を行うこととしております。
 なお、この法律の施行期日は、平成二年四月一日としております。
 以上が被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法案の趣旨でございます。(拍手)
     ────◇─────
 国民年金法等の一部を改正する法律案(第百十四回国会、内閣提出)及び被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法案(第百十四回国会、内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(田村元君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。高橋辰夫君。
    〔高橋辰夫君登壇〕
○高橋辰夫君 ただいま趣旨説明のありました年金改正法案につき、その改正の基本的考え方を中心に幾つかの点に絞って質問いたします。
 まず最初に、これから本格化する高齢化社会をどのような社会にしていくかについてであります。
 高齢化社会を考えるとき、お年寄りがふえるとか、負担が重くなるとか、経済発展が停滞するとか、マイナス面を強調する考え方がありますが、私はこうした見方に賛意を表するわけにはまいりません。人生五十年時代から人生八十年時代にな
れば、お年寄りが多くなるのは理の当然であり、むしろ、だれもが理想とする長寿が実現できたことを喜ぶべきものと考えています。
 要は、物の考え方と政策の方針を、これまでの人生五十年時代のものから人生八十年時代のものに大胆に変えていくことが重要なのであります。こうした観点に立った政策展開のよろしきを得れば、停滞する高齢社会という俗説を破り、我が国は世界に誇り得る活力ある高齢社会が実現できると信ずるものであります。
 そのためには、大胆な発想の転換、勇気ある提言、将来を見通した周到な計画が必要であります。幸い総理は、新百年人生計画や「二十一世紀へ向けて目指すべき社会を考える懇談会」の設置など意欲的に取り組んでいると聞いておりますが、二十一世紀を活力ある高齢化社会とするための総理の決意と基本方針を明らかにしていただきたいと存じます。
 活力ある高齢社会をつくっていくためには、社会経済のあらゆる分野での積極的な取り組みが必要でありますが、中でも、社会保障制度は高齢化社会を支える基礎であり、そのときになっても揺らぐことのない制度を今から準備していかなければなりません。
 特に、年金制度は、高齢者が生活していく上での命綱であり、今日でも年金受給者は二千五百万人の多数に上り、年々その数はさらに増加し、年金を生活の基本にした老後生活が次第に定着していくものと見られますが、この命綱を将来とも万一にも切れることのない、頼りがいのあるものとしていかなければなりません。
 こうした観点から、以下幾つかの点について具体的にお尋ねいたします。
 まず第一に、一日も早く年金額の改善を実現することであります。二千五百万人の年金受給者の命綱は、消費税の導入もあって細まりつつあるのが実情であります。我が党が公約した給付改善の四月さかのぼり実施を含め、今国会で改正法を成立させ、できるだけ早く、しかも確実に給付改善を実現すべきだと考えますが、総理の決意をお伺いします。
 第二に、保険料についてであります。
 新聞紙上では、給付改善だけ先行させ負担は先送りするような報道が見られますが、こうした安易きわまりない考え方は断じてとるべきではありません。年金は言うまでもなく社会保険であり、給付を改善すれば、それに見合った保険料を引き上げるのが当然のことであります。負担面での手当てをしなければ、結局その分は先の世代にッケを回すことになり、国民年金はもちろんのこと、厚生年金でさえも単年度収支が赤字になり、五年を経ずして積立金に手をつけざるを得ないという事態に陥ると聞きます。国民はやみくもに一時しのぎの給付改善を望んでいるのではありません。世紀を超えて将来とも安定した年金制度の確立こそ求められているのであります。制度を預かる厚生大臣の確固としたお答えをお聞かせいただきたいと存じます。
 次に、支給開始年齢の引き上げと、これと表裏の関係にある高齢者の雇用の問題についてお伺いいたします。
 活力ある高齢化社会を実現するためには、若い人たちの保険料負担をある程度抑えていく必要があります。先のことだからといって法外な負担を野放しにはできません。命綱たり得る給付水準を将来とも維持し、かつ、負担を適正なものに抑えていくためには、先々、厚生年金の支給開始年齢を五歳程度引き上げていくことが一番妥当かつ現実的な解決策だと考えます。残念ながら、この支給開始年齢の引き上げについては、国民の間に正確に理解されているとは思われません。改めて厚生大臣からその必要性と基本的考え方をはっきりお答え願います。
 一方、高齢者の雇用の問題についてでありますが、そもそも活力ある高齢化社会を実現するためには、高齢者、特に六十歳代前半層の方々が生き生きと働ける雇用の場を確保することが最も大切であると考えます。幸い我が国の高齢者の働く意欲は極めて旺盛であり、職場の確保こそが何よりも生きがいのある生活につながるものであります。
 我が国の経済が将来とも引き続き発展していく中で予測される労働力不足、あるいは二千百時間から一千八百時間程度への労働時間の短縮などを考えれば、六十歳代前半層の雇用の場の確保の条件はそろっており、雇用政策のよろしきを得れば、これらの人たちが生き生きと現役として働く社会をつくることは十分可能だと考えます。具体的には、特に定年後の継続雇用が重要であり、年金の支給開始年齢の引き上げについての国民の不安を解消するには、これを法律の上で明確にすることがかぎになるものと考えるものであります。
 高齢者雇用対策の思い切った拡充を図るべきこと、継続雇用のための法的整備について、労働大臣の答弁を求めるものであります。
 次に、国民年金基金についてお伺いします。
 支給開始年齢の問題などの論議に隠れておりますが、今回の改正法案の中には、年金制度として大きな前進が図られる内容が幾つか盛り込まれているのであります。その中の一つが、自営業者などの上乗せ年金を実現するための国民年金基金の制度の創設であります。
 全国民共通の基礎年金でいわゆる一階部分の年金は保障されるのでありますが、自営業者などサラリーマン以外の人にとって、これまで自分の所得や考え方に沿った老後の備えのできる道がなく、長い間上乗せ年金制度の実現が待たれていたのであります。これが今回国民年金基金制度として実現を見ることは、極めて時宜に適したものと考えるものであります。厚生大臣から、この制度の基本的考え方と普及に当たっての方策について改めてお示しいただきたいと存じます。
 次に、鉄道共済年金についてお尋ねいたします。
 鉄道共済年金も、言うまでもなく公的年金の一つであります。それを頼りにする四十数万人の受給者にとって、この制度が将来どうなるかは、直接生活を左右する問題であります。ひいては公的年金全体の信頼にもかかわる問題であり、何とか解決していかなければなりません。ただいま趣旨説明のあった制度間調整法によって幸いにも他の年金制度からの支援がなされるものと考えますが、まず鉄道共済年金自体の問題として、その危機をどう乗り切っていかれるのか、明らかにしていただきたいと存じます。
 また、鉄道共済の運営については、従来いささか問題があったことは否定できません。そうした中で他制度からの支援を得るためには、相当思い切ってみずからを正していく自助努力と厳しい運営が求められてしかるべきものと考えます。こうした点について、所管大臣としての大蔵大臣からの答弁を求めるものであります。
 以上、年金改正法案について幾つか伺いましたが、高齢化社会において、年金制度とともに大きな役割を果たす老人福祉の問題についてお伺いいたします。
 国民には、年老いたときの健康や体が弱ったときにどうなるかという問題について大きな不安があります。こうした不安をなくし、お年寄りが安心して暮らせる社会を築いていかなければなりません。その際に大事なことは、まず、いわゆる寝たきりになってからの対応の前に、自立した、より人間味豊かな生活ができるように支援することだと思います。従来の寝たきり対策の発想そのものを変えて、寝たきりをつくらない方向に転換すべきであります。このような観点から厚生省が打ち出した「ねたきり老人ゼロ作戦」は極めて重要な方向であると思いますが、その内容とこれを進める決意をお伺いいたします。
 あわせて、健康づくりや寝たきり防止に努めてもどうしても介護が必要になったときの不安を除く方策も確立しておかなければなりません。その
場合でも、お年寄りは、住みなれた地域や一緒に暮らした家族や友人とともに老後を送りたいということを強く望んでおられます。このような希望にこたえていくには、特に在宅福祉対策の充実を急ぐべきであります。現状では、他からの支援のない状態の中で介護をしている家庭も多く、現実にはまだまだ在宅福祉サービスが利用しにくいなどの問題があると聞きます。これらのサービスの拡充に当たっては、サービスに当たる人員や施設を思い切ってふやすとともに、必要な家庭に、必要なときに、適切に供給されるような仕組みをつくっていかなければなりません。
 そこで、具体的にどのような在宅福祉対策を進めようとしているのか、また、我が国の家庭に普及させていくためにどのような努力をしているのかを厚生大臣にお伺いいたします。
 以上、年金改正法案について幾つかの点についてお尋ねいたしましたが、総理並びに関係大臣から、課題を先送りすることなく、また、問題を直視しつつ、率直に国民に訴えるべきは訴える視点からの御答弁をお願いするものであります。
 最後に、自由民主党は、年金改正法案については、受給者を初め国民の生活に直接かかわる法案として、給付と負担の両面をにらみ、かつ、長期的安定を図る観点に立って、今国会でぜひとも成立させる決意であることを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
○内閣総理大臣(海部俊樹君) お答えをいたします。
 二十一世紀の初頭には本格的な高齢化社会が来る、人間が長生きをしていただくことはいいことだという基本的な認識に立っての御質問、そしてだれもが長寿を喜べるような社会を築くためにはいかがすべきかとの角度のお尋ねでございます。
 私は、人生八十年時代にふさわしい経済社会システムを構築していくことが何よりも大切だと考えております。このため、昭和六十一年六月、政府が推進すべき施策の指針として長寿社会対策大綱を策定し、活力と包容力のある豊かな長寿社会を築くことを基本方針といたしまして、雇用・所得保障、健康・福祉、住宅・生活環境などの広範な分野にわたる諸施策を推進しておりますが、今後とも一層努力をしてまいる決意であります。
 さらにもう一点、今国会で年金改正法を成立させて確実に給付改善をせよとの御質疑でございました。
 私は、年金額については昨年春以来据え置かれており、高橋議員御指摘のとおり、二千五百万人に上る年金受給者から一日も早い年金額の改善が待ち望まれているところであり、物価スライドはもとより、実質改善についても、できるだけ早く実施すべきものと考えております。その立場から、改正法案の成立を心から期待をさせていただきます。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 私には、鉄道共済年金についてのお尋ねであります。
 鉄道共済年金の赤字の原因は、有識者によります懇談会の報告でも御承知のように、一つは、退職時特昇の年金額への反映、保険料の引ぎ上げ不足など鉄道共済自身の制度、運営に起因する面、また、モータリゼーションの進行など産業構造の変化並びに人口構造の変化に起因する面、二通りの原因があろうかと思います。
 今回の鉄道共済への対策は、これらの原因を勘案しながら取りまとめたものでありまして、その対策といたしましては、まず鉄道共済自身の最大限の自助努力が必要であるという基本的な考え方のもとに、既裁定年金のカットを含む年金給付の見直し、清算事業団及びJR各社の特別負担など最大限の自助努力によりまして千五百五十億円を生み出すことといたしました。所要の法律案を国会に提出をいたしております。また、今回、平成七年の公的年金一元化に向けての地ならしとして、被用者年金制度間の負担調整を行うことといたしました。所要の法律案を国会に提出をいたしておりますけれども、その結果として鉄道共済が千四百五十億円の受け取りとなります。
 平成二年四月以降の鉄道共済年金の支払いを確保いたしますためにも、年金関連法案全体が早期に成立いたしますよう心からお願いを申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣戸井田三郎君登壇〕
○国務大臣(戸井田三郎君) 私に対する御質問は、給付改善と保険料は一体である、決して切り離すべきではないということでございます。
 年金の給付改善につきましては、二千五百万人に上る年金受給者から一日も早い年金額の改善が待ち望まれているところであります。物価スライドはもとより、実質改善についても、できるだけ早く実施しなければならないという考えを持っております。
 一方、御指摘のとおり、給付改善を行う際には年金財政を安定させるための負担面の措置も必要であり、給付改善のみを切り離してすることは断じて行うべきものではないと考えております。(拍手)
 次に、支給開始年齢の引き上げについてでございますが、公的年金は世代間扶養の仕組みで運営されており、給付を受ける側と負担する側のバランスを考えることが必要であります。現行制度のままでは、将来、高齢化のピークには現役世代二人で一人の受給者を支えることとなることが見込まれておるわけであります。後代の負担が過重なものとならないようにするためには、支給開始年齢の引き上げは避けて通れない課題であります。
 人生八十年時代を迎え、高齢化社会を活力あるものにいたしていくためには、昭和六十一年の長寿社会対策大綱及び昨年の第六次雇用対策基本計画に示されているとおり、六十歳代前半の雇用の湯の確保が必要であります。
 今回の改正案においては、これら政府の方針を踏まえながら、厚生年金の支給開始年齢を平成十年から二十二年度にかけて段階的に六十五歳へ引き上げるという将来的計画を示すにとどめ、しかも、その実施に当たっては、高齢者雇用の状況を見きわめながら改めて別の法律によって施行するという、慎重な手続を踏むことといたしているところであります。
 第三に、国民年金基金に関するお尋ねでございますが、今回新たに設けようとしている国民年金基金制度は、御指摘のように自営業者の方々に対する基礎年金の上乗せ年金制度であり、サラリーマンとのバランスに配慮し、自営業者の方々の老後生活に対する多様なニーズにこたえるため、かねてよりその実現が望まれていたものであります。
 この国民年金基金に自営業者の方々が加入しやすくするために、一口当たりの掛金を五千円程度の小口に抑え、できるだけ加入しやすいものとするほか、掛金や給付について税制上の優遇措置を講ずることとしており、政府としても、自営業者の方々に広く活用していただけるよう、その普及定着に努力してまいる所存であります。
 また、「ねたきり老人ゼロ作戦」についてでございますが、寝たきり老人問題は、二十一世紀の高齢化社会に向けた国民の老後の大きな不安の一つとなっております。しかしながら、脳卒中等の寝たきりの原因となる病気の予防や適切なリハビリテーションの実施等を総合的に行うことにより、寝たきり老人の予防ができるという認識を持っておるわけであります。このため、総合的な対策を「ねたきり老人ゼロ作戦」としたものであり、寝たきりの解消に向け、国民的運動として「ねたきり老人ゼロ作戦」に取り組んでいく考え方であります。
 最後に、在宅福祉対策の推進についてでありますが、これから急激に増大するお年寄りの介護の問題は、家庭に大きな負担をかけることになります。そのため、介護に頑張っておられる家族を世代間の助け合いにより社会全体で支えていかなけ
ればなりません。このため、ホームヘルパーを初めとする在宅福祉施策の大幅な拡充を進めるとともに、ショートステイ事業の利用料の引き下げなど、家庭が利用しやすいようさまざまな努力を行っているところであります。
 例えば、最近のことでは、各都道府県に、高齢者の各種の相談に総合的に対応する高齢者総合相談センターを整備したところであります。さらに、このセンターの電話番号も、NTTの着信短縮ダイヤルサービスにより、全国どこからでも八〇八〇で利用できることとすることが昨日決まったところであります。
 今後とも在宅サービスの一層の普及に努め、お年寄りが家庭の中で幸福な老後を過ごせる、若い世代も将来に夢と希望の持てる、真に豊かな長寿社会を実現していく決意であります。(拍手)
    〔国務大臣福島譲二君登壇〕
○国務大臣(福島譲二君) お年寄りの方々の雇用について、特に定年後の継続雇用が重要であり、その実現のための条件はそろっておるという高橋議員の御指摘は、私もそのとおりだと考えております。また、六十歳定年の定着を図りつつさらに六十五歳までの雇用確保を進めるために、お説のように法律の上でこれを明確にしていくことも立派な一つの選択であろうかと思っております。しかし、現在、雇用審議会でこのあたりのことも十分に御審議中のことでございまして、その結果を待ちまして、御報告をいただきました上で適切に対処してまいりたいと考えております。(拍手)
    ─────────────
○議長(田村元君) 池端清一君。
    〔池端清一君登壇〕
○池端清一君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案並びに被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法案につきまして、海部総理並びに関係閣僚に質問をいたします。
 さて、議題となっております年金法案は、人生八十年時代の我が国の年金制度の根幹にかかわる問題であると同時に、多くの勤労国民、年金生活者にとっては日々の暮らしに重大な影響を与える問題であります。したがって、政府・与党は、参議院において与野党逆転の政治状況にあることを十分認識をされ、緊急の課題については速やかな与野党合意の道を模索すべきであると存じます。政府・与党において真摯に対応しようとするなら、私たちもまた、その責任の重みを受けとめ、当面の年金問題について一致点をまず見出し、緊急に処理を要するものは処理をし、もって切実な国民の願いにこたえていかなければならないと考えるものであります。(拍手)
 海部総理は、さきの所信表明演説において、長くなる第二の人生を支える公的年金については、その制度を確かなものにしていかなければならないと述べられました。高齢者の雇用保障がないまま厚生年金支給開始年齢を引き上げるなどが提案をされております。これでは国民の老後生活に対する不安はむしろ高まるばかりであります。年金問題は、本格的な高齢化社会の重要な問題であると同時に、今日ただいまの問題でもあります。そういう観点から、以下若干の問題点についてお尋ねをいたします。
 第一にお尋ねをいたしたいことは、当面の年金給付の改善措置についてであります。
 社公民野党三党は、さきの通常国会におきまして、平成元年度物価スライドの実施法案を提出いたしました。自民党もまた、先般の参議院選挙のさなかに、財政再計算期に伴う給付改善措置について、政府案では本年十月から実施となっているものを四月にさかのぼって実施すると公約をされたのであります。もちろん、私たちもそれに異存はありません。現在、二千五百万人に及ぶ年金受給者の皆さん方は、一日千秋の思いでその支給を待ち望んでいるのであります。したがって、まずこの給付の改善分を分離して早急に実施し、可及的速やかに改善された年金を年金受給者の皆さん方にお届けすべきだと思いますが、いかがでございましょうか。
 このことについては、既に、自由民主党の三塚政調会長が、去る十月二十六日、熊本で開かれた自民党の一日政調会で発言されたと報道もされているのであります。海部総理、あなたの決断一つで決まることであります。このことについて総理の決意を促し、答弁を求めるものであります。
 第二は、年金支給開始年齢の問題であります。
 政府案は、厚生年金支給開始年齢を現行の六十歳から六十五歳にまで段階的に引き上げるなど、老齢厚生年金の支給繰り延べの措置を講じようとするものでありますが、この措置は、一般男子の場合、昭和十三年四月二日以降に生まれた方、すなわち現在五十一歳以下の方にとっては、六十歳に達した以降六十五歳までの間の生活について公的な保障が全くないということになるのであります。
 今日人生八十年時代と言われていますが、いまだに六十歳末満の定年退職制を実施している企業が四割、四〇%も占めているのが実情でございます。ましていわんや、六十一歳以上の定年退職制を実施している企業は、全体のわずか四・三%にすぎないのであります。このような高齢者雇用をめぐる実態が改善されないままに、厚生年金の支給開始年齢を六十五歳に繰り延べ、さらに公務員等についてもこれに準じようというのは、我が国の年金政策の大変更であると同時に、雇用政策にも重大な変化を与え、社会不安を招くことは火を見るよりも明らかであり、絶対に容認できるものではありません。支給開始年齢の繰り延べ条項を完全に撤回することを強く要求するものであります。
 西欧諸国では、少なくとも公的年金支給開始年齢以前には年齢を理由として退職させてはならないことが法律と労働協約で定められており、これが社会常識となっているのであります。まさに年金問題は雇用問題なのであります。
 総理は、最近、新人生設計計画を提唱し、人生百年のビジョンをおつくりになるというお考えを明らかにしましたが、人生百年のビジョンのかなめは、六十歳代の雇用保障と年金制度の一体化であるということは論をまたないところであります。そのビジョンについての国民的な論議を行い、だれもが納得できるような高齢化社会対策をつくり上げることが今日求められているのであり、高齢化社会における雇用環境の具体的な整備方策、社会保障制度全体における給付と負担のあり方、そして公的年金一元化の姿を示すことなくして六十五歳問題を論ずることばできないと思うのであります。特に雇用政策に関しては、六十歳からの雇用保障の確立のため、スウェーデン、西ドイツ等で採用している部分年金、部分雇用制度の確立などの改善が不可欠であると考えますが、この点についての総理並びに戸井田厚生、福島労働、両大臣の所見をお伺いいたしたいと存ずるのであります。
 第三に、保険料の大幅な引き上げと基礎年金の給付水準の問題であります。
 言うまでもなく、国民年金、いわゆる基礎年金は、公的年金の中核をなすものであり、文字どおり国民の老後生活を支え得るものでなければなりません。お年寄りの皆さんは長い老後生活をこの基礎年金に託していると言っても決して言い過ぎではないのであります。しかるに、基礎年金の額は、今回の引き上げ後においてもようやく一人五万五千五百円であり、これでは生活をどう切り詰めてみても到底生活し得る金額でないことは何人も否定できないところであります。しかも、この額は、四十年間国民年金に加入した方に支払われる額なのであります。
 このように基礎年金は到底満足できる給付水準に達していないにもかかわらず、逆に保険料の方は大幅なアップが求められているのであります。すなわち、国民年金の保険料は現在の月額八千円から八千四百円へ、厚生年金は千分の百二十四か
ら千分の百四十六への大幅な引き上げを行おうとしているのであります。この保険料負担がどれほど低所得者の方々にとって過酷なものであるかは、現在でも国民年金の保険料の滞納率が一六%にも及んでいるというこの事実を見れば明らかであります。しかも、この上げ幅は、前回の法改正、六十一年改正の際に政府が国会に提示した将来の保険料の引き上げ幅、すなわち、国民年金では三百円、厚生年金では千分の十八というこの数字を大幅に上回る内容になっているのであります。
 以上のように、基礎年金の給付水準を低く据え置いたままの保険料の引き上げは、とても認めるわけにはまいりません。この際、戸井田厚生大臣、あなたの年来の主張であります国庫負担を大幅にふやし、基礎年金の充実を図るとともに、保険料の大幅な引き上げは何としても避けるべきだと考えますが、総理の所信と同時に戸井田厚生大臣の答弁を求めるものであります。
 最後に、鉄道共済年金の問題についてお尋ねをいたします。
 来年度以降三千億円の赤字が出るという事実は、よく承知をしております。これを救済し、再建しなければならないということも当然であります。しかし、鉄道共済年金の財政危機のよって来るものは、要員構成、職員構成が主要な原因であることは、今さら申し上げるまでもありません。
 戦後、大量の復員軍人軍属の皆さん方を国鉄が採用し、さらに旧満州、朝鮮、台湾等の鉄道関係引揚者を国鉄が受け入れ、また、我が国の戦後の復興政策による輸送力の増強のために大量の職員採用が行われたのであります。この国策としての大量に採用された職員が退職の時期を今迎え、また、国鉄再建政策が進められる中で大量の要員削減が行われ、そして国鉄の分割・民営化が実施されたのであります。この結果、現在、鉄道共済は、一人の現職共済組合員が二人の年金受給者の財源を負担するという状況になっているのであります。一人の現役が二人のOBを支えているという状況になっているのであります。
 これが鉄道共済年金危機の主要な原因なのであります。戦後処理の問題にしても国鉄再建の問題にしても、すべて国の政策に基づくもので、構造的なものでございます。したがって、私たちは、鉄道共済の赤字は政府が責任を持って解決すべきであるという基本的立場に立っております。
 しかるに、政府案では、国、国鉄清算事業団は八百億円の負担、好決算を続けているJRも二百億円の負担にしかすぎないのであります。残りは他の年金制度が負担せよというのであります。これでは国がその責任を果たしたということにはなりません。私は、まず国、清算事業団の責任を明確にし、それに相応した思い切った負担をすべきだと存じますが、この点についての橋本大蔵大臣の明快なる御所見を承りたいと存ずるのであります。
 以上、私は、政府提出の年金法案の主要な問題点について指摘をいたしました。年金制度の問題は、単に社会保障制度の中の一分野の問題ではなく、広く国民生活全般にかかわり、大きな影響を及ぼす問題であります。したがって、年金制度の問題は、国政の基本問題として、各方面の意見を十分聞きながら、真剣に議論をし、対応していかなければならない問題だと思うのであります。
 そして、年金問題を考える基本的な視点は、憲法第二十五条なり老人福祉法第二条に明確に規定されておりますように、国民の権利としての老後保障ということと、安心できる老後保障を確立する国の責任ということであると存じます。
 このような立場から、我が党としても、国民から真に信頼される年金制度の確立を目指して今後とも全力を尽くすことをここに表明し、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 池端議員にお答えをいたします。
 年金額の物価スライド並びに実質改善は早期実施すべきであると私も考えますが、給付改善とそれに伴う負担面の措置とを切り離すことは適当ではないと考えております。
 給付水準を維持しつつ後世代負担を適正にしていくためには、支給年齢の引き上げの問題も避けて通れない課題となっております。高齢化社会を活力あるものとしていくため、六十歳代前半層の雇用の場の確保を図りつつ、高齢者雇用の現状を見きわめながら、支給開始年齢を長期間かけて段階的に引き上げることが必要であると考えます。
 その実施に当たっては、改めて別の法律によって施行するという慎重な手続を踏むこととしており、社会不安を招くようなことはないものと考えます。
 また、雇用環境の整備について触れられましたけれども、本格的な高齢化社会の到来を迎え、六十五歳までの雇用機会の確保は重要な問題であると認識をいたしております。六十五歳までの雇用機会を確保する対策については、法的整備のあり方も含め、雇用審議会における議論の結果を踏まえて適切に対処する所存であります。
 御指摘の部分年金、部分雇用の問題につきましては、今回の法案において、引退生活への緩やかな移行と高齢者雇用を促進するための措置として、在職老齢年金の改善を図るほか、繰り上げ減額年金制度を創設し、今後とも環境整備には十分の配慮をしていく考えでおります。
 社会保障制度全体における給付と負担のあり方並びに公的年金の一元化の具体的な姿につきましては、今回の被用者年金制度間の負担調整措置の推移を見据えながら成案を得てまいりたいと考えております。
 最後に、年金に対する国庫負担につきましては、先般の年金改革において、全国民を通じて負担の公平を期するため、基礎年金の三分の一に集中したところであります。なお、保険料の引き上げは、年金額の引き上げ、受給者数の増大などに対応して行うものでありますので、どうぞ御理解を賜りたいと考えております。(拍手)
    〔国務大臣戸井田三郎君登壇〕
○国務大臣(戸井田三郎君) 池端議員にお答えをいたします。
 既に総理から御答弁のあった分もありますので、重複を避けてお答えしたいと思います。
 支給開始年齢の引き上げは社会不安を起こすのではないかという御質問でありますけれども、公的年金は世代間扶養の仕組みで運営されており、給付を受ける側と負担をする側のバランスを考えることが必要であります。現在負担をする現役は、将来、後世代の方々の負担によって給付改善を受けながら支えられる立場であります。現行制度のままでは、将来、高齢化のピーク時には現役世代二人で一人の受給者を支えることとなりますが、後世代の負担が過重なものとならないようにするためには、支給開始年齢の引き上げは、後世代の負担を考えれば、避けて通れない課題であります。
 人生八十年時代を迎え、高齢化社会を活力あるものにしていくためには、長寿社会対策大綱において示されたとおり、六十歳定年の定着と継続雇用の推進などによる六十歳代の前半層の雇用の確保を図る必要があると考えております。六十歳支給の現状でも、厚生年金の平均的受給者年齢は、現在六十二歳であります。
 このような変化に対応しつつ、今回の改正案においては、これら政府の方針を踏まえながら、年齢引き上げの将来計画を示すにとどめ、しかも、その実施に当たっては、高齢者雇用の状況を見きわめながら、改めて別の法律によって施行することといたしておるわけであります。慎重な手続を踏んで進めている次第でありますから、社会不安を招くことはないと考えております。
 次に、六十五歳問題に関して御指摘されたわけでありますが、支給開始年齢の引き上げは、将来の社会保障全体における給付と負担のあり方を考
える際に年金制度として避けられない問題であり、現行の給付水準を維持しつつ後代の負担を過大にならないようにするため最も現実的な解決策と考えております。
 また、公的年金の一元化の具体的な姿としては、年金審議会から御意見が出されているところでもあり、この御意見を踏まえ、また、今回の被用者年金制度間の負担調整措置の推移を見ながら成案を得てまいる所存であります。
 第三に、国庫負担の増額と保険料の引き上げについてお尋ねがありました。
 年金に対する国庫負担については、先般の年金改革において、全国民を通じて負担の公平を期すため、基礎年金の三分の一に集中することとしたところであり、これを変更する考えはありません。
 なお、基礎年金の水準は、老後生活の基礎的な部分を保障するという考え方に立って設定されたものであり、今回の改正においてもこの考え方を踏襲し、その改善を図ることとしております。今回設定された月額五万五千五百円というものが非常に低額であるという御意見でございますけれども、夫婦で十一万一千円という水準は、決して世界的水準に比して劣っているとは思いません。例えばスウェーデンの基礎年金の単身月額は四万七千円であります。夫婦で七万七千円。イギリスの基礎年金の単身は四万二千円であり、夫婦で六万八千円という水準に比べても、決して遜色のないものであります。
 また、保険料の引き上げは、年金額の引き上げ、受給者の増大などに対応して行うものであり、ぜひとも御理解をいただきたいと思います。
 なお、私個人の個人的見解にも触れられて御質問でありましたけれども、私は、老人への投資はその消費を通じて経済の活性化に貢献するという側面を持っているという考え方は、従来も今も変わっておりません。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 池端議員の御質問にお答えを申し上げます。
 私へのお尋ねは鉄道共済年金の問題でありますが、この赤字の原因につきましては、議員御承知のように、例えば退職時特昇の年金額への反映あるいは保険料の引き上げ不足など鉄道共済自身の制度、運営に起因する面、また、モータリゼーションの進行など産業構造の変化や人口高齢化に起因する面がございます。
 今回の鉄道共済年金への対応策は、これらの原因を勘案し、鉄道共済の自助努力など、同時に公的年金一元化の地ならしとしての被用者年金制度間の負担調整により対応することとし、所要の法律案を国会に提出したわけであります。
 議員から御提案のありました国の負担と申しましても、結局は国民の税金で賄うものであります。どの年金制度も財政事情が厳しい中で自助努力を行い、また、それぞれの公的年金制度を通じて基礎年金の三分の一に集中して国庫負担が行われている現状におきまして、鉄道共済にのみ特別の国の負担を行うのは、公平性の観点からも問題があり、不適当であると考えております。
 なお、今回の対策の一環として清算事業団の特別負担を求めることといたしております。この負担は最終的に国において処理する債務などの増加につながるわけでありまして、国もこうした形でその役割を担うこととなると考えております。(拍手)
    〔国務大臣福島譲二君登壇〕
○国務大臣(福島譲二君) お答えを申し上げます。
 年金問題は雇用問題であるという池端議員の御指摘は、私も同感でございます。その心組みを持って高齢者雇用問題に全力を尽くしてまいりたいと考えております。
 スウェーデン、西独等の例を御引用でありましたが、その背景については我が国と若干事情を異にするところがあるようでありますが、その考え方、趣旨については生かしつつ今回の法律案は提案されているものと考えております。
 いずれにいたしましても、労働省といたしまして、六十歳からの雇用機会の確保のために全力を尽くしてまいりたいと存じます。(拍手)
    ─────────────
○議長(田村元君) 吉井光照君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔吉井光照君登壇〕
○吉井光照君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま趣旨説明のありました国民年金法等の一部を改正する法律案及び被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法案等について、総理並びに関係大臣に対し若干の質問をいたすものであります。
 今後の高齢化社会において、公的年金制度の役割は、老後生活を支える主柱としてますます大きくなりつつあります。老後の所得保障として、安心して頼れる年金制度の確立を国民の皆さんは強く要望をいたしております。
 しかしながら、総理、最近の国民の声の中には、民間の私的年金は初めの契約をきちんと守るが、政府の公的年金は勝手に支給開始年齢の引き上げや保険料率の引き上げを行うので信頼できないとか、これでは安心して老後の生活設計が立てられないなどという率直な声が多いことを御存じでしょうか。総理はこうした国民の声をどう受けとめておられるのでしょうか。
 また、政府は、高齢化社会への対応といううたい文句で強硬に消費税を導入しましたが、この消費税が、現在、年金生活者の生活を最も強く直撃している現実を総理はどのように認識されているのでしょうか。最初にこの点をお伺いいたします。
 さて、我が党は、今回の年金改正案について、我が党が従来から主張してきた完全自動物価スライド制、地域型二階建て国民年金基金等評価し得る部分は認めるものの、全体的には、狭い年金保険財政論理のみがひとり歩きをし、国民及び勤労者の生活や雇用状況を無視した拙速主義の産物にほかならないと言わざるを得ません。また、公的年金充実への政府の役割を極力回避するとともに、これからの高齢化社会において不可欠となる雇用や福祉と年金を有機的に結びつけるという総合的視野に欠けるものであります。
 まず最初に、六十五歳年金支給問題についてであります。
 我が党がこれに反対する理由は、第一に、六十歳代前半層においては肉体的、精神的な個人差が大きく、あるいは健康であっても家庭の事情等により働けない人等が相当数出てくることが考えられますが、これらの人々にとって六十五歳支給は相当長い期間の所得の中断を意味するからであります。
 第二に、女性にとっては、女性労働者の平均引退年齢が男性よりもさらに早いことを考慮すると、女性が年金をもらえない空白期間は一層広がることになります。この場合、政府が用意する繰り上げ減額年金では到底生活はできません。
 第三に、現在六十歳定年制の定着も六割に満たないという雇用環境が、将来においても六十五歳定年制など十分な改善がなされるという保証がほとんど期待できないということであります。事実、日経連を初めとする経営者団体等は、定年延長の法的義務づけには強く反対しており、年金支給開始年齢の引き上げさえ明示すれば雇用環境は自然に改善されるといった政府の無責任で甘い見通しを一蹴しております。年金は六十五歳支給になったが雇用環境はそのままという事態のみが残る可能性が強いと言わざるを得ません。
 このように、この問題の国民生活に与える影響は極めて大きく、徹底した国民的論議が必要であります。したがって、年金法案の審議を軌道に乗せるためには、まず六十五歳問題を法案から削除することが先決でありますが、総理並びに厚生大臣の御見解を承りたいのであります。
 次に、年金額の改善についてであります。
 年金のみに頼っている年金生活者の皆さんは、年金額の改善と給付、そして物価スライドを一日も早くと願っております。政府は、年金額の改善と給付を四月に遡及して行うとともに、野党四党が要求している物価スライドを速やかに実施すべきであると思いますが、総理並びに厚生大臣の御見解を承りたいのであります。
 次に、年金と不即不離の関係にある高齢者の雇用保障の問題であります。
 我が党は、年金問題とは結局雇用問題であるとの認識に立っております。したがって、これからの高齢化社会を乗り切り、かつ年金財政を安定させるためには、高齢者の健康対策に力を入れるとともに、今後六十五歳程度まで働ける高齢者就業型福祉社会を構築し、六十歳代において各人のニーズに応じて年金が受給できる環境をつくることこそが最重要課題であります。そのため、政府は、まず六十歳やそれ以上の定年制延長等の法制化を図るとともに、将来にわたっての高齢者雇用計画を策定し、国民の前に提示すべきであります。総理並びに労働大臣の明快な御答弁をお願いしたい。
 次に、保険料の大幅引き上げについてであります。
 厚生年金保険料率の二・二%の引き上げは、月収三十二万円のサラリーマンで年間約三万四千円の負担増をもたらし、消費税導入に伴って実施された所得税減税を全く帳消しにし、高齢化社会への対応であったはずの消費税は一体何だったのだろうと、国民は怒りすら感じているのであります。
 また、国民年金の保険料の引き上げは、現在でさえ低所得のために保険料が納められない免除者や滞納者が全体の三割近くもいる現状をさらに悪化させるとともに、いわゆる無年金者の増大をもたらすことは必至であります。
 国民に急激な負担を強いる前に、累積約一兆四千億円を超える国庫負担繰り延べ金の早期完全返済、年金積立金の自主運用枠の拡大及び効率運用、積極的な雇用政策の展開による高齢者・婦人被保険者の拡大、保険料の労使負担割合の見直しなどを先行的に実施することによりこうした大幅な保険料率の値上げを回避すべきでありますが、総理並びに厚生大臣はこの辺を十分検討されたのかどうか。また、今後、これらの課題を積極的に実行する決意があるのかどうか承りたい。
 さて、いま一つ、いつも論議されないのが生活できる年金の視点であります。ベースとなる基礎年金は、最低生活保障年金でなければなりません。しかし、老齢基礎年金水準は依然として低水準であり、生活できる年金には遠く及びません。そこで、提案でありますが、基礎年金額を基礎的な所得保障たり得る水準に引き上げるために、この際、基礎年金への国庫負担率を三分の一から二分の一に引き上げるべきでありますが、総理並びに大蔵大臣の決意のほどを伺いたい。
 次に、被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法案について伺います。
 我が党は、財政的な窮地に陥っている鉄道共済年金については、さまざまな意見がありますが、公的年金の一つである同年金を何らかの形で救済しなければならないと考えているところであります。
 その意味で、鉄道共済年金や国鉄当局等と長年深くかかわってきた国の責任と負担を根本に、現役組合員の保険料負担が過度にならないよう配慮しつつ、JR各社等の自助努力を促し、そして他の年金制度からの応援をいただくというスタンスによって対処すべきであります。したがって、国すなわち清算事業団の拠出金をさらに増額すべきであると考えますが、総理並びに大蔵大臣にこの点についての御見解を承りたい。
 また、政府は、今回の制度間調整は平成七年に予定されている公的年金一元化へ向けての地ならしであるという説明だけで、一元化の具体的な姿及びプロセスを何ら示しておりません。このような状況においては、一元化とは成熟度の低い厚生年金から成熟度の高い共済年金などへの単なる財政調整にすぎないとの厳しい批判があります。我が党は、このような安易な制度間財政調整ではなく、政府として、社会保障制度充実のためにも、一元化の具体的なビジョンとプロセスを示すとともに、それに対する国の役割と負担を明確にした制度間調整を強く要望するものでありますが、総理並びに厚生大臣の御見解を求めるものであります。
 最後に、若干の提案をさせていただきます。
 第一に、地域型二階建て国民年金基金についてであります。高額所得者優遇との批判を解消するために、低所得者も加入できるよう保険料を低額とし、給付においては所得再配分機能が働くよう設計すべきであり、また、自営業者以外の者も加入できるようにすべきであります。
 第二に、年金と雇用及び福祉の結合についてであります。既に我が党が「二十一世紀トータルプラン」の中で提案しているように、高齢化社会への安定的着陸を図るためには、雇用と年金を適切に結びつけ、賃金と年金によって豊かな老後生活を可能とする部分年金、部分就労制度を政府は早急に確立すべきであります。
 また、六十五歳受給を希望する者や六十五歳定年制を図る企業に保険料の一部を国が補助する保険料補助制度や六十五歳割り増し年金制度を創設し、定年制延長や継続雇用へのインセンティブとすべきであります。
 さらに、高齢者の多様な福祉サービスに対応するためにも、例えば寝かせきり老人等への介護サービス費用を年金から給付するなどの福祉サービス型年金等も検討すべきであると思いますが、これらの点について総理並びに厚生大臣の御見解を求めるものであります。
 以上、改正案の問題点に絞って質問をいたしましたが、国民は本改正案の成り行きに重大な関心を寄せ、政府の対応を見詰めております。最後に、総理並びに関係大臣の誠意のある御答弁を強く希望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 吉井議員にお答え申し上げます。
 公的年金は、国民の老後生活の主柱としての役割を果たしており、生活水準や賃金の上昇に合わせた年金額の改善を行うほか、年金額の実質価値の維持を図るための完全自動物価スライド制の導入を図るなど、最大限の努力をしているところであります。
 また、お触れになったように、消費税は収入の種類や多寡にかかわらず消費に伴い負担が生ずるものではありますが、御指摘の年金生活の方々について申し上げますと、税制面においては、公的年金等控除が創設されたこと、老年者控除が二十五万円から五十万円、二倍に引き上げられたこと、さらに基礎控除などの諸控除の引き上げが行われたことにより、公的年金のみで生活しておられる六十五歳以上の夫婦世帯の課税最低限が従来の二百四十一万八千円から三百一万八千円に引き上げられるなど大幅な負担軽減が図られておりますし、さらにそのほかにもきめ細かい配慮をしてきておるところでございます。
 六十五歳、年齢の問題についても御質問がありましたが、年金の給付水準を維持しつつ後世の負担を適正なものにとどめるためには、厚生年金の支給開始年齢問題は避けて通れない課題でございます。この支給開始年齢の引き上げは、国民の老後の生活にも影響し、また、社会的にも雇用関係の整備が必要でありますので、できるだけ早い機会に国民の皆さんの前にその将来計画を示すことが必要であるという観点から今回の改正案に盛り込んだものでございます。その点、御理解をいただきたいと思います。
 年金額の問題につきましては、昨年の春以来据え置かれており、物価スライドはもとより、年金給付の実質改善につきましても、できるだけ早く実施すべきものと私どもも考えております。その際には負担面の措置も必要でありますので、これらを含めて改正法案の一日も早い成立をお願い申し上げておる次第でございます。
 定年延長問題につき、高齢者雇用計画についてお触れになりましたが、本格的な高齢化社会の到来を迎え、六十五歳までの雇用機会の確保は重要な課題であると認識をいたしております。このため、法的整備のあり方を含め、六十五歳までの雇用機会を確保する対策について雇用審議会に諮問しているところであり、人生八十年時代にふさわしい雇用のあり方を示す長寿社会雇用ビジョンを作成すべく、ただいま検討中でございます。
 保険料引き上げの問題は、今回の改正による年金額の引き上げ、受給者の増大などに対応して行うものであり、御指摘いただきました点につきましては、一つ、厚生年金国庫負担の繰り延べの返済については、年金制度に対する国民の信頼を損なうことのないよう、今後適切に対処をしてまいります。
 二つ目の年金積立金の運用問題につきましては、着実に運用額の増大を図っており、その努力を積み重ねているところでございます。
 三つ目の高齢者の雇用につきましては、急速な高齢化の進展の中にあって、高齢者の知識、経験、能力が十分生かされるよう、今後とも六十五歳までの雇用機会の確保には努力を続けてまいりたいと考えております。
 また、働く女性の皆さんについては、経済社会の発展に大きな役割を果たしていただいており、今後とも就業援助のための対策を推進してまいりたいと考えます。
 厚生年金の労使の保険料負担割合につきましては、制度発足以来労使折半とされてきておりますし、また、中小企業の事業主の負担能力に照らして考えてみましても、変更は適当ではないと考えております。
 基礎年金の国庫負担につきましては、先般の年金改革において、全国民を通じて負担の公平を期するために、基礎年金の三分の一に集中したところでありますので、これを今変更することは考えてはおりません。
 鉄道共済年金問題についてお触れになりましたが、鉄道共済の自助努力など、公的年金一元化の地ならしとしての被用者年金制度間の負担調整により対応することといたし、所要の法律を今、国会にお願いしておるところでございます。国の負担といっても、それは結局は国民からの税金で賄うものであり、どの年金制度も財政事情が厳しい状況で自助努力を行っている現状においては、鉄道共済にのみ特別の国の負担を行うのは公平性の問題からいっても不適当ではなかろうかと思います。
 なお、今回の対策の一環として清算事業団の特別負担を求めることとしておりますが、その負担は最終的に国において処理する債務等の増加につながり、国もこうした形でその役割を担うこととしておる面もあることを御理解をいただきたいと考えるわけであります。
 最後に、一元化のビジョンとプロセスについてお触れになりましたが、公的年金の一元化につきましては、昭和六十年の改正において全国民共通の基礎年金を導入したところであり、今回の改正におきましては、平成七年度の一元化に向けて、当面急がれる被用者年金制度間の負担調整を行うこととしております。一元化の具体的な姿については、今後、今回の負担調整の推移を見据えながら成案を得てまいりたいと考えます。
 なお、今回の制度間調整は保険料を財源とする被用者年金について行うものであり、これに対する国の負担はなじまないものと考えております。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 議員から私には二点お尋ねがございましたが、鉄道共済年金につきましては、総理がすべてお答えになりましたので、省略をさせていただきます。
 基礎年金につきまして、総理の御答弁を多少補足させていただきますが、前回の改正時に設定をされました老後生活の基礎的な部分を保障するという考え方を踏襲いたしまして、その後の基礎的消費支出の増大などに即しまして、今回の改善案におきましても実質的な改善を図ってまいりました。今回設定いたしました基礎年金の水準は、保険料負担との関係から見ましても、適切なものと考えております。
 基礎年金に対する国庫負担のあり方につきましては、受益と負担の関係が明確な社会保険システムのメリットは今後ともに重視すべきであり、今回御審議をいただきますような内容を私どもは現時点において最善と考えております。(拍手)
    〔国務大臣戸井田三郎君登壇〕
○国務大臣(戸井田三郎君) 吉井議員から私に対する御質問は、まず、支給開始年齢の引き上げについてでございますが、年金の給付水準を維持しつつ後代の負担を適正なものにとどめるためには、厚生年金の支給開始年齢の引き上げは避けて通れない課題であります。この支給開始年齢の引き上げは、国民の老後の生活にも影響し、また、社会的にも雇用環境の整備が必要であるので、できるだけ早い機会に国民の前にその将来計画を示すことが必要であるという観点から今回の改正案に盛り込んだものであります。御理解を賜りたいと考えておる次第であります。
 次に、年金額の引き上げにつきましては、二千五百万人に上る年金受給者から一日も早い年金額の改善が待ち望まれているところであり、物価スライドはもとより、実質改善についても、できるだけ早く実施しなければならないと考えております。その際には負担面の措置も必要であるので、これを含めて改正法案の一日も早い成立をお願いしたい次第であります。
 また、保険料の引き上げは、今回の改正による年金額の改善、平均寿命の伸長に伴う受給者数の増大などに対応して行うものであり、御理解いただきたいと考えております。
 御指摘いただいた点については、従来より検討を加えてきたところであります。
 厚生年金国庫負担の繰り延べの返済問題については、できる限り速やかに返済が行われるよう、今後とも財政当局との協議をしてまいりたいと考えております。
 年金積立金の運用問題につきましては、着実に運用額の増大を図っており、その努力を積み重ねているところであります。
 厚生年金の保険料の負担割合については、制度発足以来労使折半とされており、また、中小零細企業の事業主の負担能力に照らして、変更は適当でないと考えております。
 次に、公的年金の一元化については、昭和六十年の改正において全国民共通の基礎年金を導入し、公的年金制度の一階部分については一元化が図られたところであり、また、二階部分に相当する被用者年金制度についても、将来に向けて給付面の公平化が図られたところであります。今回の改正においては、二階部分の一元化に向けての地ならしとして、当面急がなければならない被用者年金制度の負担調整を行うことといたしております。
 二階部分の一元化の姿については、年金審議会より、同一給付・同一保険料率による新たな単一の被用者年金制度を創設すべきであるとの意見が出されておりますが、この御意見を踏まえ、今後、今回の負担調整の推移を見据えながら、一元化の具体的な姿について成案を得てまいる所存であります。
 なお、今回の制度間調整は保険料を財源とする被用者年金について行うものであり、これに対する国庫負担はなじまないと考えております。
 また、国民年金基金についてでございますが、国民年金基金に自営業者の方々が加入しやすくするため、御指摘のように一口当たりの掛金を五千円程度の小口に抑えてまいる考えであり、定額制の掛金を採用するため、所得配分機能が働くようにすることは困難でありますが、民活により年金資金の高利運用を図ることにより、できるだけ魅力のある給付が行えるよう十分配慮してまいる所存であります。
 なお、自営業者の上乗せ年金である国民年金基金の自営業者以外の者に加入の道を開くことは、現行の国民年金制度の体系から見て困難であると考えております。
 最後に、年金と雇用及び福祉の結合についてでございますが、まず、部分年金・部分就労制度につきましては、高齢者雇用を促進するとともに、引退生活への緩やかな移行を図るために、日本型の部分年金・就労システムである在職老齢年金や繰り上げ減額年金制度を活用することの方が妥当であると考えております。
 既に六十五歳定年制をとる企業等への保険料補助制度につきましては、六十五歳定年制をとる企業や六十五歳受給を希望する方についてのみ保険料の補助を行うことは、補助の対象とならない方々や企業との公平を考えると困難であると考えております。
 また、六十五歳割り増し年金制度につきましては、現行の厚生年金制度においては、六十五歳以降の繰り下げ受給を希望した場合には割り増し年金を支給する仕組みが既に用意されているところであります。
 さらに、福祉サービス型年金につきましては、老後の所得保障を主目的としている年金制度で現物給付を行うことが適切かどうか、今後の介護サービスのあり方全体を見据えた上で、慎重に検討すべきであると考えております。(拍手)
    〔国務大臣福島譲二君登壇〕
○国務大臣(福島譲二君) 六十歳から六十五歳までの方々の就業の場の確保は、御指摘の高齢者就業型福祉社会の構築に当たって中心的課題であろうと存じます。また、それによって雇用から年金への円滑な移行も可能になるものであり、勤労者の健康の確保、六十歳以上の継続雇用や定年延長は、労働行政にとっての最大の課題として取り組んでいるところでございます。
 総理からも御答弁がございましたが、高齢者雇用問題につきましては、目下法的整備のあり方も含め雇用審議会で御議論をいただいておるところでございまして、この御答申をいただきました上で、その結果を踏まえ、立派に対処さしていただきたいと考えております。(拍手)
    ─────────────
○副議長(安井吉典君) 西村章三君。
    〔西村章三君登壇〕
○西村章三君 私は、民社党・民主連合を代表して、ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案及び被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法案について質問を行うものであります。
 民社党は、結党以来、福祉国家の建設を一大目標に掲げ、長年その実現に努めてまいりました。我が党の熱意と主張によって、老人保健制度の確立、退職者医療制度の創設、基礎年金の確立を軸とした年金制度の抜本改正などが行われ、従来ややもすればおくれをとってきた我が国の社会保障も、年金や医療を中心として制度的には漸次充実をしてまいりました。
 しかし、制度的には欧米並みだと政府が自負する割には、社会保障への国民の信頼はいまだ薄く、老後や万一の場合についての国民の不安は必ずしも小さくなっておりません。特に、今後我が国が世界に類を見ないスピードで進行している人口の高齢化がさらに進む場合、将来の社会保障は本当に約束をされるのか、国民の不安はむしろ高まっている現状にあると言わなければなりません。
 かねてより、民社党は、今後の高齢化社会において、政府が提供する福祉サービスの水準はどの程度なのか、またそれに要する費用負担をどうするのかといった総合福祉ビジョンの提示を再三にわたって政府に求めてまいりました。政府は、我が党のこうした要求にこたえ、昨年三月、「二十一世紀初頭における高齢化状況等及び社会保障の給付と負担の展望」と題したビジョンを、また昨年十月には「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本的考え方と目標について」と題するビジョンをそれぞれ国会に提出したのであります。政府が単年度予算主義や審議会の審議経過など種々の制約の中から福祉ビジョンを提出したことについて、我が党はこれを評価するにやぶさかではございませんが、しかし、その内容たるや、残念ながら極めて不十分なものであると断ぜざるを得ないのであります。
 その具体的な理由は、第一に、関係省庁は大蔵省、厚生省、労働省のみであり、政府の全体計画となっていないこと、第二に、福祉ビジョンと社会保障の財政計画を具体的に示していないこと、第三に、年次計画が全く示されていないこと、第四に、要介護老人などへの介護サービスの充実についての問題認識が薄いことなどであります。
 特に強調したいことは、高齢化社会の到来を消費税導入の大義名分として位置づけ、最大限にこれを利用しておきながら、高齢化に伴う福祉支出の増加と消費税による税収との相関関係がいまだに明らかになっていないことでありまして、これでは到底国民の納得を得られるものではございません。
 我が党は、以上の認識のもとに、高齢化社会の福祉ビジョンの提示を改めて政府に要求するものでありますが、これらの点について総理の明快な見解をお聞かせ願いたいと思います。
 今さら申し上げるまでもなく、年金制度は、老後の生活を支える所得保障の根幹であり、福祉ビジョンの重要な柱の一つとなるべきものであります。
 政府は、昭和五十九年の閣議で、公的年金制度の一元化を平成七年度までに行うことを閣議決定しております。本年はその中間年に当たるのでありますが、果たして平成七年度に年金の一元化は可能なのか。また、被用者各制度間の成熟度の差異に基づく負担の不均衡、アンバランスをどのように是正をしていくのか。さらに、今回の年金改正を一元化の実現過程の中でどのように位置づけておられるのか。これは総理にお答えをいただきたいのであります。
 次に、今回の政府案について、数点にわたり質問をいたします。
 その第一は、厚生年金の六十五歳支給開始年齢の引き上げについてであります。
 六十歳定年の定着という政府のかけ声とは裏腹に、五十五歳定年の企業が全体の三分の一を占め、六十歳定年制すらいまだ半数に達しておらず、六十五歳定年の実現というものは到底期待することのできない夢のまた夢という現状において、定年延長や雇用保障についての何らの対策や措置を講じないままに、年金支給開始年齢だけを六十五歳に引き上げを行おうとすることは、福祉の充実よりも、年金財政の帳じり合わせを優先させるもので、明らかに時代に逆行するのみならず、勤労国民に対する挑戦でございまして、民社党は断じてこれを容認することはできません。絶対に反対であります。(拍手)
 大蔵省の資料によりますと、六十歳から六十四歳までの五年間の家計消費支出は千八百五十万円であります。この金額に対して、労働省の調査による三十五年勤続の定年退職者の退職金の実支給額は、平均千六百二十九万円となっております。今六十歳で定年を迎えたサラリーマンがすべての退職金を注ぎ込んでも六十五歳までの家計を維持
することが不可能な状況にある中で、具体的な雇用保障もないままに、年金支給開始年齢を段階的とはいえ大幅に引き上げるという提案は、定年におびえるサラリーマンにとってはまさに過酷な切り捨て宣言でありまして、これは定年制に無縁な人々の考えた極めて無責任な提案であると言わなければなりません。
 政府案は、六十歳から六十四歳までの空白を、早期受給の制度を創設することにより埋めようといたしております。しかし、早期に受給すればするほど年金が減額をされ、これが将来にわたり続くという仕組みは、必然的に早期受給の抑制につながり、受給者保護という面から見ても大きな問題を将来に残すものであります。
 この際、政府は、六十五歳支給開始年齢の引き上げを潔く撤回をされ、雇用と年金との連係について再検討を行い、老後の所得保障のあり方について明確な方針を示すべきであると考えますが、総理としての率直な方針をお示しを願いたい。
 第二に、保険料の引き上げについてお尋ねをいたします。
 政府は、厚生年金の保険料率を男子一二・四%から一四・六%に、また月額八千円となっている国民年金の保険料を平成六年度まで毎年四百円ずつ、月額一万円となるまで引き上げようといたしておりますが、この内容は、政府が年金財政のつじつま合わせのみを頭に置き、実際の国民の負担能力を全く無視したままで法案を提出したものであります。
 国民年金加入者、とりわけ第一号被保険者の中には、低所得者など拠出能力の低い方々が数多く含まれております。強制適用である国民年金を夫婦合わせて毎月二万円ずつ支払わなければならないというのは、中小零細事業者や低所得者層の負担能力をはるかに超えるものであり、このような大幅な保険料引き上げは安易に認めるわけにはまいりません。今日、国民年金の保険料の未納率が一五・七%にも達しているという事態を考えれば、既に保険料負担は一つの限界に来ており、年金財政安定化のためには国庫負担の引き上げがどうしても必要であると考えるものでありますが、これらの点について総理の御見解を承りたいと思います。
 第三に、政府は、国の財政事情を理由に、事実上の借金に等しい厚生年金積立金への国庫負担繰り延べ措置を毎年行ってまいりました。その結果、この繰り延べ額は既に一兆三千五百億円近くにも上っております。こうした措置をこれ以上続けることは年金制度に対する国民の信頼を大きく損なうものであり、政府は来年度予算においてすべて利子をつけて返済すべきであると思いますが、総理及び大蔵大臣の明確なる御答弁をお願いいたします。
 第四に、地域型国民年金制度の創設についてお尋ねをいたします。
 これまで所得比例部分のなかった自営業者などへもいわゆる二階建て部分をつくろうという構想については、基本的には私どもも賛意を表するものでありますが、単に税制面での優遇措置を講ずる程度では、国民が広く加入し、確固たる二階建てとしての制度を確立するためには魅力に乏しいのではないかと感ずるのであります。また、学生への強制適用については、果たして所得のない学生から適正に保険料が徴収できるのかどうか。運用の仕方によっては新たな不公平が生じたり、市町村の徴収事務に混乱も生じかねないと考えられますが、以上二点については、総理及び厚生大臣からそれぞれ御見解を伺いたいと思います。
 質問の最後に、鉄道共済年金問題についてお尋ねをいたします。
 日本鉄道共済年金財政は、来年度から毎年およそ三千億円の赤字が見込まれており、これをこのまま放置すれば、年金受給者に年金が支払えなくなるばかりか、公的年金制度そのものの崩壊につながるものでありまして、こうした最悪の事態はぜひとも避けなければなりません。旧国鉄の経営合理化に伴う人員削減などが今日の鉄道共済年金財政の赤字の大きな要因の一つになっていることを考えた場合、国の責任は極めて大きいと言わなければなりません。
 政府案では清算事業団への特別負担を八百億円と見ておりますが、この根拠は一体どこに置いておられるのか、また、鉄道共済年金財政の破綻をもたらした政府の責任をどう感じておられるのか、総理並びに大蔵大臣からの責任ある見解をお伺いをいたします。
 以上、いろいろと申し上げてまいりましたが、人生八十年時代を迎えた今日、二十一世紀の我が国社会を豊かで生きがいに満ちあふれたものとするためには、公的年金制度をさらに充実をし、公平で、財政的にも安心ができ、だれからも信頼されるに足るものとしていくことが何よりも必要であります。
 憲法第二十五条には、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障の向上及び増進に努めなければならない。」と明記をされております。政府は、今後もこの原点に立って、誠実にかつ積極的に最大限の努力を傾注されることを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 西村議員にお答えを申し上げます。
 政府は、昨年十月にお示しをしたいわゆる福祉ビジョンにおいて、今後の長寿・福祉社会を実現するための基本的考え方と目標を可能な限りお示ししたところであります。
 この福祉ビジョンは、昭和六十一年六月に閣議決定をしました長寿社会対策大綱を踏まえて、年金、医療、福祉等につき、例えば在宅介護サービスの大幅な拡充など、さらに具体的に掘り下げたものをお示ししたものでございます。今後、このビジョンに沿って、各年度において着実に施策を実施していく考えでおります。
 政府は、平成七年を目途に公的年金を一元化することとしており、この考え方には変わりはございません。このため、昭和六十年の改正において全国民共通の基礎年金を導入し、公的年金制度の一階部分については一元化が図られたところであり、また、二階部分に相当する被用者年金制度についても、将来に向けて給付面の公平化が図られたところでございます。
 今回の改正においては、一元化に向けての地ならしとして、当面急がなければならない被用者年金制度間の負担調整を行うことにしております。今後、この負担調整の推移を見据えながら、平成七年の一元化に向けて最大の努力を続けていく考えでおります。
 雇用と年金の連係について、高齢化社会を活力あるものとしていくためには、昭和六十一年の長寿社会対策大綱及び昨年の第六次雇用対策基本計画において示されているとおり、六十歳定年の定着と継続雇用の推進などによる六十歳代前半層の雇用の場を確保していくことが大切でございます。こうした方針を踏まえながら、年金の給付水準を維持しつつ将来の負担が過大にならないようにするため、十分な準備期間を置いて支給開始年齢を段階的に引き上げていくことが必要であると考えております。
 実際の引き上げにつきましては、高齢者雇用の状況等を見つつ、改めて別の法律によって実施に移すという慎重な手続を踏むことといたしております。
 国庫負担の引き上げにつきましては、先般の年金改革において、全国民を通じて負担の公平を期するため、基礎年金の三分の一に集中することとしたところでございまして、これを変更することは考えておりません。
 最後に、厚生年金の繰り延べの返済についてでありますが、厚生年金国庫負担の繰り延べの返済
につきましては、年金制度に対する国民の信頼を損なうことのないよう、今後適切に対処してまいりたいと考えております。
 残余の具体的な問題につきましては、関係閣僚から答弁をさせていただきます。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 私からお答えを申し上げます点は二点ございます。
 一点は、ただいま総理からもお触れになりました厚生年金の国庫負担繰り延べの問題についてであります。
 行革関連特例法に基づきまして昭和五十七年度から六十年度までの間に行っておりました繰り入れ特例分につきましては、昭和六十三年度補正予算におきまして利子相当分を含めて返済を行わせていただきました。昭和六十一年度以降の厚生年金国庫負担の繰り延べにつきましては、利子相当分を含めまして、一般会計が特例公債依存体質から脱却いたしました後、国の財政状況を勘案しながらも、できる限り速やかに繰り入れに着手するという基本的な考え方に立ち、その取り扱いを考えていきたいと思っております。
 また、鉄道共済につきましてお触れになりましたが、鉄道共済年金の赤字の原因は、一つは退職時特昇の年金額への反映あるいは保険料の引き上げ不足など鉄道共済自身の制度、運営に起因いたします面と、モータリゼーションの進行など産業構造の変化や人口の高齢化に起因する面がございます。今回の鉄道共済年金への対応策はこれらの原因を勘案しつつ取りまとめたものでありまして、鉄道共済の自助努力など、また、公的年金一元化の地ならしとしての被用者年金制度間の負担調整により対応することとし、所要の法律案を国会に提出させていただいたわけであります。
 今回の対策の一環として清算事業団の特別負担を求めることとしておりますけれども、その負担は最終的に国において処理する債務などの増加につながるわけでありまして、国もこうした形でその役割を担うこととなると考えております。
 そこで、御指摘を受けました八百億という数字についてでありますが、今回鉄道共済年金の財政上の対応を検討するに際しまして、鉄道共済年金の最大限の自助努力が必要であると考えてまいりました。この場合、鉄道共済年金の過去の保険料率が十分でなかったことに伴う旧国鉄時代の事業主の負担不足につきまして、これは当時の事業主に負担をさせることが適当であるということから、今回、この分につき、旧国鉄の地位を引き継いだ清算事業団の負担とすることとしたわけであります。その負担不足額が平成二年から六年度までで四千億円になると見込まれておりまして、平成二年度から毎年八百億円ずつ繰り入れることといたした次第であります。(拍手)
    〔国務大臣戸井田三郎君登壇〕
○国務大臣(戸井田三郎君) 西村議員にお答えいたします。
 一つは国民年金基金についてでありますが、国民年金基金につきましては、自営業者の基礎年金の上乗せ年金として広く加入していただけるように、掛金については月額六万八千円まで社会保険料控除の対象とし、また、給付についても公的年金控除等の対象にするなど税制上大幅な優遇措置を講ずるとともに、一口当たりの掛金を五千円程度の小口に抑え、できるだけ加入しやすいものとするほか、それぞれの地域におけるニーズにもこたえる給付を行うなど工夫してまいりたいと考えております。
 さらに、学生を国民年金の対象とすることについての保険料の問題でありますが、さきに年金審議会から、「親の保険料負担が過大とならないよう、適切な配慮がなされるべきである。」との答申をいただいておるところでもありますので、負担能力を超える方については、保険料の免除について適切な配慮をしてまいりたいと考えております。また、具体的な実施に当たっては、事前に十分な周知徹底を図り、御指摘のような混乱が生じないように万全を期してまいる所存であります。(拍手)
    ─────────────
○副議長(安井吉典君) 児玉健次君。
    〔児玉健次君登壇〕
○児玉健次君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、国民年金法等の一部を改正する法律案等関連二法案について質問いたします。
 政府・自民党は、昨年、高齢化社会のためと言って消費税の導入を強行しました。今回の参議院選挙で、国民は消費税は廃止との明確な審判を下しましたが、政府・自民党は今も国民の審判を無視したままです。しかも、消費税の口実となった高齢化社会論は、今国会における日本共産党の論戦によって論破されたものです。それにもかかわらず、性懲りもなく高齢化社会論を新聞広告などで繰り返し、消費税存続に固執する政府・自民党の態度は全く許せません。(拍手)
 消費税がお年寄り、年金受給者の生活を直撃していることは、各種の調査によっても明白です。それに加えて、年金支給開始年齢の繰り延べ、保険料の大幅引き上げ等を内容とした今回の年金大改悪は、世界に類例のない老人への差別医療とあわせて、国民の老後に深刻な脅威となっています。今、全国のお年寄りの中に、年金で暮らす我々からも消費税はいや応なく取り立てておきながら年金の引き上げをやらないのはなぜか、早く給付を改善してくれという怒りの声が満ち満ちています。
 私は、まず端的に伺います。
 年金受給者にとって、物価上昇に見合った年金額の引き上げと政策改定の即時実施は切実な要求です。年金額の引き上げを本改正案から切り離し、直ちに実施すべきです。あれこれの一般論ではなく、切り離して実施するかどうか、そこのところを総理の明確な答弁を求めます。
 質問の第二は、厚生年金の支給開始年齢六十五歳繰り延べについてです。
 支給開始年齢の繰り延べは、平均寿命が八十歳、そこで二十年間もらえるはずの年金を五年分カットし、金額で約一千万円を取り上げるというものです。
 私は、先日、この問題で北海道新日鉄室蘭の労働者の意見を聞く機会がありました。高温のもと、過酷な条件で働いている労働者から、おれたちは年金をもらえずに死ぬのじゃないか、むしろ支給開始年齢を五十五歳にしてほしいと訴えられました。労働者にとって、年金支給の六十五歳繰り延べは絶対に受け入れることができないものであります。
 現在、六十歳定年制を採用している企業はやっと六割に達したばかりです。多くの労働者が、退職後年金を受給できるまでの間に収入空白の老後が生じることに対して強い不安を抱くのは当然のことです。
 政府は高齢者雇用に取り組むと言っていますが、財界は、六十五歳定年制について、法制化にも行政指導にも反対すると言っているではありませんか。年金の六十歳支給は将来にわたって厳守すべきです。この点について、総理並びに厚生大臣、労働大臣の答弁を求めます。
 第三は、保険料の大幅な引き上げをすべての年金制度にわたって行い、労働者や国民の生活を脅かそうとしていることです。
 政府の年金改革は、年金財政への国庫負担増額をかたくなに拒み、年金財源を専ら国民の負担で賄おうとするため、保険料の増大、給付の切り下げ、無年金者の増大という悪循環に陥っています。既に、国民年金加入者の二八・二%、三割近い方が掛金の未納または免除となっており、今回の値上げが無年金者の増大に拍車をかけることは明白です。しかも、老後の生活を支えるには余りにも給付水準が低いことと相まって、国民皆年金制度の崩壊を招くことになるのではないかと私は考えますが、厚生大臣の見解を伺います。
 第四は、現在任意加入になっている二十歳以上の学生を強制加入にして新たに年間十万八百円を学生、親から取り立てようとしていることです。政府は、保険料免除の道があるなどと言い逃れをしています。しかし、現行の申請免除は所得税を払っている世帯を対象としないことから、子供を大学に入れている家庭で免除を受けられる世帯はごく限られたものとなるでしょう。この際、学生に対する保険料免除制度を新たにつくり、学生の年金権を保障すべきです。このことについて厚生大臣の答弁を求めます。
 第五は、地域型国民年金基金についてです。
 政府は、これによって自営業者の老後が保障されるかのような宣伝をしています。これは、国民年金保険料の上にさらに一口五千円の掛金を何口か払うというもので、保険料の負担にあえいでいる多くの国民にとっては絵にかいたもちに等しいものであります。
 我が国の老齢年金受給者の多くは、今なお月額三万円足らずの年金しか受け取れないという劣悪な年金水準にあります。基礎年金の大幅な改善こそ急務だと考えますが、厚生大臣の明確な答弁を求めます。
 第六は、鉄道共済の財政破綻を労働者と国民に転嫁しようとしている問題です。
 鉄道共済の財政破綻は、国策として行われた戦後における満鉄要員等の吸収、さらに国鉄の分割・民営化の強行による大幅な人員削減などによるものであり、その責任が政府にあることは余りにも明白であります。今政府は、みずからの責任を回避し、鉄道共済の破綻に何ら責任のないJR労働者、退職者に保険料の大幅引き上げ、既に受給している年金を減額するなど過酷な犠牲を押しつけようとしています。
 鉄道共済の再建は、国とJRの責任で行うべきです。これについては総理並びに運輸大臣の答弁を求めるものです。
 政府は、高齢化社会になると働く人が二人で一人を支えることになるなどと宣伝し、福祉切り捨てや消費税導入の口実にしてきました。これは、高齢者人口と生産年齢人口とを単純に比較した数字であって、国民を欺くものです。戦中戦後、最も辛酸をなめ、日本の再建に力を尽くされた全国のお年寄りがこの宣伝によってどのくらい肩身の狭い思いを強いられているか、海部首相におわかりでしょうか。
 働く人が支えるのは、高齢者だけでなく、本人も含む総人口です。総人口と就業者人口との比率が将来どのように推移するかが最も肝心な点です。総人口対就業者人口の比率は、政府の資料に基づいても、現在も、そして二〇二五年も、同じように二対一であって、変わりはございません。また、我が国の経済成長率は、低成長下の一九七三年から八五年までの間にあっても、年平均実質三・九%伸びております。年金の給付や医療費がふえても、高齢化社会は十分に支えることができます。
 問題は、国の政治に、国民がっくり出した豊かな経済力を国民の暮らしと福祉の向上に振り向ける意思があるか否か、ここにかかっております。総理にその意思があるかどうか、しかと伺います。
 政府は、六十五歳繰り延べは国民の負担増を避けるためなどと言っています。そこで、年金制度を現在のようにやせ細らせたのは一体だれなのですか。それは、国の負担がもともと少ないところに、前回の八五年改正で国庫負担をさらに削減する仕組みにつくりかえ、そのことによって二十一世紀の前半には、八五年までの仕組みと比較して、年間三兆円を超す国庫負担の削り込みを行った政府ではありませんか。
 また、我が党が再三指摘しているように、日本の財源負担は、国際的に見ても、財界、大企業に軽い仕組みとなっております。保険料負担の労使折半方式を企業七、労働者三に改めるなら、労働者の保険料を引き上げることなく十兆円規模の年金財源を生み出すことは完全に可能であります。当面、国庫負担を基礎年金の二分の一にふやし、労使の負担割合を変更することを要求しますが、総理並びに厚生大臣の答弁を求めます。
 政府は、軍事大国化の財源づくりのために、消費税の強行とあわせて社会保障の相次ぐ切り捨て、制度改悪を図り、社会保障の基本原則を個人の自助努力、相互扶助に置きかえ、権利としての社会保障から、恩恵と哀れみ型の救貧制度につくり変えようとしています。これは国の責任を放棄するものであります。
 およそ人間である限り、高齢を迎えることはすべての人にとって避けられない問題です。高齢者が心豊かに暮らせる社会を築くことは、高齢者とやがて高齢に達するすべての国民の共通の願いです。
 日本共産党は、年金、医療、福祉、雇用、住宅などを含む総合的老後保障制度を確立するために最大の努力を払うものです。
 最後に、厚生年金の支給開始年齢六十五歳への繰り延べ、保険料の大幅引き上げなどの撤回と、物価上昇に見合った年金額の引き上げ、政策改定の即時実施を再度要求して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 児玉議員にお答えをいたします。
 年金額の引き上げについてお触れになりましたが、物価スライドはもとよりのこと、実質改善、それを含めた年金額の引き上げを早期実施すべきであるということは私も考えておりますが、給付改善とそれに伴う負担面の措置とを切り離すことは適当ではないと考えます。
 また、支給年齢の問題にもお触れになりましたけれども、年金の給付水準を維持しつつ後世代の負担を適正なものにとどめるためには、支給開始年齢の問題は避けて通れない課題でございます。私は、高齢化社会を活力あるものとしていくため、六十歳代前半層の雇用の場の確保を図りつつ、支給開始年齢を時間をかけて段階的に六十五に引き上げていくことが必要であると考えております。
 鉄道共済の問題にお触れになりましたが、共済金問題については、鉄道共済の自助努力等、公的年金一元化の地ならしとしての被用者年金制度間の負担調整により対応することとしております。しかし、今回、対策の一環として清算事業団の特別負担を求めることとしておりますが、その負担は、最終的に国において処理する債務等の増加につながり、国もこうした形でその役割を担うことになっておりますし、また、JR各社には特別の負担等を求めることにもしております。
 また、総人口に対する就業人口比率の問題についてもお触れになりましたが、今後一層の人口高齢化の進展に伴い、年金や老齢医療などの社会保障給付費は大きくなっていくということもわかっていただきたいと思うわけであります。このため、長寿・福祉社会の実現に当たっては、国民の負担も長期的にはある程度上昇をお願いせざるを得ませんが、経済の発展、社会の活力を損なわない程度にとどめる必要があると考えており、経済計画においても、社会保障機能の安定的な維持と活力ある経済社会の両立することを基本として福祉の向上を図ることにいたしております。
 最後に、基礎年金の国庫負担についてお触れになりましたが、前回の年金改革において、全国民を通じて負担の公平を期するため、基礎年金の三分の一に集中したところであり、これを変更することは考えておりません。
 厚生年金の労使の保険料負担割合については、制度発足以来労使折半とされており、また、中小企業の事業主の負担力に照らして、変更は適当でないと考えております。(拍手)
    〔国務大臣戸井田三郎君登壇〕
○国務大臣(戸井田三郎君) 児玉議員にお答えいたします。
 年金支給開始年齢の問題については、総理からも御答弁がございましたけれども、公的年金は世代間扶養の仕組みで運用されており、給付を受ける側と負担する側のバランスを考えることが必要であります。年金の給付水準を維持しながら後代の保険料負担を適正なものにとどめるためには、厚生年金の支給開始年齢を、高齢者雇用の確保を図りつつ、六十五歳へ向けて長期間かけて段階的に引き上げていくことが最も現実的な解決策であると考えております。
 次に、保険料の引き上げについてでありますが、小幅なものに抑える等の配慮を加えるほか、負担のできない方については免除の道を開く等の適切な措置を講ずることとしていることであります。
 無年金者は、人口移動の激しい都市部に多いことから、制度加入の徹底したPRや保険料の自動払い込み制度の推進等いろいろな方法を考えて対策を講じているところでありますが、低所得者の方であっても、その免除の手続をすれば当然それは免除されて、基礎年金の国の負担部分についてはいただけるわけでありますが、その年金制度に加入するという手続もしない人には救済の道はございません。
 第三に、学生の年金の保障についてお尋ねでございますけれども、学生を国民年金の適用対象とすることについては、さきに年金審議会から、「親の保険料負担が過大とならないよう、適切な配慮がなされるべきである。」との答申をいただいているところでありますので、負担能力を超える方については、保険料の免除について適切な配慮をしてまいりたいと考えております。
 次に、基礎年金の水準と国民年金基金についてのお尋ねでございますけれども、基礎年金の水準については、老後生活の基礎的部分を保障するという考え方に立って設定されておりますが、欧米の水準からしても決して劣っているとは言えません。今回の改正についてもこの考え方を踏襲して実質的な改善を図ったところであり、この水準は、将来の保険料負担との関連から見て適切なものと考えております。
 かねてより自営業者の方々から基礎年金の上乗せ年金の創設が強く要望されていたことにかんがみ、今回の改正で創設することといたしたところであります。
 最後に、基礎年金の国庫負担については、総理からお答えがあったとおりであります。(拍手)
    〔国務大臣福島譲二君登壇〕
○国務大臣(福島譲二君) 六十歳定年制はまだ六二%程度の導入率にとどまっておりますが、今回の年金法改正案では、六十五歳支給となりますのは二十年余り先のことでもございますし、私といたしましては、むしろこれに先行する心組みを持って六十歳から六十五歳までの雇用の場の確保を図りたいものと考えております。
 具体的には、この間の高齢者の方々の多数雇用や継続雇用についての助成策等を通じて、高齢者の方々が安心して生活を送れるように全力を尽くしてまいりたいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣江藤隆美君登壇〕
○国務大臣(江藤隆美君) 鉄道共済年金問題につきましては、さきに総理並びに大蔵大臣からも御答弁がありましたが、改めて、せっかくのお尋ねでありますから、運輸大臣としてお答えをさしていただきます。
 御案内のように、鉄道共済の問題は、その受給者が約四十六万八千人、所要財源が九千億ということで、平成二年度から三千億の財源の不足を来す、したがって支給ができなくなるということで、関係者はもちろんでありますが、国会の各党各派において御心配をいただいておりますことは御承知のとおりであります。
 したがいまして、今回は、鉄道共済年金の自助努力等によって千五百五十億、公的年金一元化の地ならしとしての被用者年金制度間の負担調整によって千四百五十億、合わせて三千億の財源を生み出すというために今回の法律案をお願いをしておるところでございます。
 国の負担といっても、それは結局は国民の税金から賄うものでありまして、鉄道共済のみに特別の国の負担を行うというのは、公平の原則という立場からして、適当ではないと考えております。
 なお、今回の対策の一環として、清算事業団の特別負担として毎年八百億ずつ五年間、合計四千億の実は負担をすることにしておるわけでありますが、御案内のように、清算事業団は二十七兆円という長期債務を抱え、年間一兆五千億の金利がかさむという苦しい中でのこれは拠出でありますから、最終的には国において処理する債務等の増加につながるものでありまして、国としてもこういう形でもってその役割を担おうとしておるものであります。
 また、JR各社の特別負担は、毎年二百億ずつ合計一千億を拠出することにいたしておるわけでありまして、この負担の限度についてもおのずから限界があるものと考えます。
 私としては、平成二年度からの鉄道共済年金の円滑な支払いが維持できるよう関係法案が国会において速やかに成立をするため各党の御協力を賜りますように、この機会にお願い申し上げる次第でございます。(拍手)
○副議長(安井吉典君) これにて質疑は終了いたしました。
     ────◇─────
○副議長(安井吉典君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十一分散会