第118回国会 本会議 第21号
平成二年六月一日(金曜日)
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 議事日程 第十三号
  平成二年六月一日
    正午開議
 第一 証券取引法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第二 戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第三 麻薬取締法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第四 市民農園整備促進法案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
 日程第一 証券取引法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第三 麻薬取締法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第四 市民農園整備促進法案(内閣提出)
 水質汚濁防止法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
    午後零時二分開議
○議長(櫻内義雄君) これより会議を開きます。
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 日程第一 証券取引法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(櫻内義雄君) 日程第一、証券取引法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。大蔵委員長衛藤征士郎君。
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 証券取引法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
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    〔衛藤征士郎君登壇〕
○衛藤征士郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、最近の我が国証券市場における株券等の売買の実情にかんがみ、証券市場の透明性を確保し、投資者保護を一層徹底するため、証券取引法を改正するものであります。
 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、株券等の大量保有の状況に関する開示制度を導入することといたしております。これは、上場会社等の発行済み株式総数等の五%を超える株券等を実質的に保有することとなった場合等には、五日以内に大蔵大臣に報告することを義務づけ、その違反に対しては刑事罰を科することとするものであります。
 第二に、公開買付制度につきましては、事前届出制を廃止し、新聞公告の日に届出書を提出させることとするとともに、制度の対象範囲について、これまで発行済み株式総数等の一〇%以上を所有することとなる市場外の買い付けとされていたのを、五%ルールの導入に合わせて五%超に引き下げることといたしております。
 以上のほか、外国証券規制当局が行う行政上の調査に関し要請があった場合には、関係人に対して報告等を求めることができることとする等所要の改正を行うことといたしております。
 本案につきましては、五月三十一日橋本大蔵大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、質疑終了後、直ちに採決いたしました結果、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(櫻内義雄君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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 日程第二 戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第三 麻薬取締法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(櫻内義雄君) 日程第二、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案、日程第三、麻薬取締法等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。社会労働委員長畑英次郎君。
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 戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案及び同報告書
 麻薬取締法等の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
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    〔畑英次郎君登壇〕
○畑英次郎君 ただいま議題となりました二法案について、社会労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 まず、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、戦傷病者戦没者遺族等の処遇の改善を図るため、障害年金、遺族年金等の額を恩給の額の引き上げに準じて引き上げようとするものであります。
 本案は、去る三月二十日付託となり、五月二十四日津島厚生大臣から提案理由の説明を聴取し、昨日の委員会において質疑を終了いたしましたところ、自由民主党より施行期日についての修正案が提出され、採決の結果、本案は修正案のとおり全会一致をもって修正議決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 次に、麻薬取締法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、我が国における向精神薬の乱用の防止を図り、向精神薬に関する条約の批准に備えるため、向精神薬の輸出入、製造、譲り渡し等の取り締まりの措置等を定めようとするもので、その主な内容は、
 第一に、この法律の目的に、向精神薬について必要な取り締まりを行うことを加えるとともに、名称を「麻薬及び向精神薬取締法」に改めること、
 第二に、向精神薬が医療または研究以外に用いられないよう、向精神薬の輸出入、製造、卸売、小売等を業として行う者については免許制度を、向精神薬の試験研究施設の設置者については登録制度を設け、向精神薬の譲渡先をこれらの免許業者、登録施設の設置者等に限定すること、
 第三に、免許業者等に輸出入、製造等に関する記録を義務づけるとともに、乱用による危害の大きい特定の向精神薬について、輸出入ごとの許可または届け出の制度を設けること、
 第四に、向精神薬の一般向けの広告の禁止、罰則の整備その他所要の改正を行うこと、
 第五に、大麻取締法及び覚せい剤取締法の一部を改正し、大麻及び覚せい剤についても、一般向けの広告の禁止、罰則等の整備等の措置を講ずること
であります。
 本案は、去る四月十八日付託となり、五月二十四日津島厚生大臣から提案理由の説明を聴取し、昨日の委員会において質疑を終了し、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(櫻内義雄君) 両案を一括して採決いたします。
 日程第二の委員長の報告は修正、第三の委員長の報告は可決であります。両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり決しました。
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 日程第四 市民農園整備促進法案(内閣提出)
○議長(櫻内義雄君) 日程第四、市民農園整備促進法案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。農林水産委員会理事大原一三君。
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 市民農園整備促進法案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
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    〔大原一三君登壇〕
○大原一三君 ただいま議題となりました市民農園整備促進法案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、主として都市住民のレクリエーション等の用に供するための市民農園の整備に関する措置を定めることにより、健康でゆとりある国民生活の確保を図るとともに、良好な都市環境の形成と農村地域の振興に資することを目的とするものであります。
 その主な内容は、
 第一に、都道府県知事は、市民農園の適正かつ円滑な整備を図ることが必要と認めるときは、市民農園の整備に関する基本方針を策定し、市町村は、基本方針に基づき、市民農園区域の指定と市民農園の開設の認定を行うこととしております。
 第二に、市町村の認定を受けた計画に従って市民農園を整備する場合には、農地の貸し付け及び転用等についての農地法の特例を講ずるとともに、市民農園施設の整備のための開発行為について、都市計画法の特例措置を講ずることとしております。
 本案は、去る四月二十四日本委員会に付託されました。
 委員会におきましては、五月三十日山本農林水産大臣から提案理由の説明を聴取し、翌三十一日質疑を行い、同日質疑を終局いたしました。次いで採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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○佐藤敬夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 内閣提出、水質汚濁防止法等の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。
○議長(櫻内義雄君) 佐藤敬夫君の動議に御異議ありませんか。
    「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
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 水質汚濁防止法等の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
○議長(櫻内義雄君) 水質汚濁防止法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。環境委員長戸塚進也君。
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 水質汚濁防止法等の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
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    〔戸塚進也君登壇〕
○戸塚進也君 ただいま議題となりました水質汚濁防止法等の一部を改正する法律案について、環境委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、生活排水の排出による公共用水域の水質の汚濁の防止等を図ろうとするもので、その主な内容は、
 第一に、本法の目的に、生活排水対策の実施を推進することを加えること、
 第二に、生活排水の排出による公共用水域の水質の汚濁の防止を図るため、生活排水対策の実施について国、地方公共団体等の責務を明確にすること、また、都道府県知事は、公共用水域等において生活排水対策の実施を推進することが特に必要であると認めるときは、関係市町村長の意見を聞き、生活排水対策重点地域を指定することとし、生活排水対策重点地域を含む市町村は、生活排水対策の実施の推進に関する基本的方針、生活排水処理施設の整備に関する事項等を定めた生活排水対策推進計画を策定すること、
 第三に、総量削減基本方針に係る指定水域の水質汚濁の防止の一層の推進を図るため、指定地域における規制対象施設を追加すること等であります。
 本案は、去る四月十六日本委員会に付託され、五月二十五日北川環境庁長官から提案理由の説明を聴取し、二十九日審査を行い、同日質疑を終了し、本日採決を行いましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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 生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(櫻内義雄君) この際、内閣提出、生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。文部大臣保利耕輔君。
    〔国務大臣保利耕輔君登壇〕
○国務大臣(保利耕輔君) 生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 国際化、情報化、高齢化など大きな変化の中にあって、二十一世紀に向かい、我が国が独創的で活力ある社会を築いていくには、学習に関する国民の自発的意思を尊重するよう配慮するとともに、国民の多様化、高度化した学習に対する需要に対応し、生涯にわたる学習が円滑に行われるよう、国及び地方公共団体を通じて生涯学習の振興のための体制の整備を図ることが必要となっております。
 今回の法律案は、中央教育審議会の答申の提言を受け、生涯学習の振興のための施策の推進体制及び地域における生涯学習に係る機会の整備を図るために、国及び地方公共団体を通じて必要な措置を定めることをその内容としております。
 今回の法律案の概要は、次のとおりであります。
 第一は、生涯学習の振興に資するための都道府県の体制の整備についてであります。
 今日、生涯学習の振興を図るためには、都道府県における学校教育及び社会教育に関する学習及び文化活動の機会について、一、これらの機会に関する情報を収集し、整理し、及び提供すること、二、住民の学習に対する需要及び学習の成果の評価に関し、調査研究を行うこと、三、地域の実情に即した学習の方法の開発を行うこと、四、住民の学習に関する指導者及び助言者に対する研修を行うこと、五、地域における学校教育、社会教育及び文化に関する機関及び団体に対し、これらの機関及び団体相互の連携に関し、照会及び相談に応じ、並びに助言その他の援助を行うことなどの事業を推進するための体制を整備することが求められてきております。このため、都道府県の教育委員会は、これらの事業を相互に連携させつつ推進するために必要な体制の整備を図りつつ、一体的かつ効果的に実施するよう努めるものとし、これら体制の整備に関し、文部大臣が望ましい基準を策定することといたしております。第二は、地域生涯学習振興基本構想についてであります。
 都道府県は、交通条件及び社会的自然的条件等から見て生涯学習に係る機会の総合的な提供を行うことが相当と認められる特定の地区において、当該地区及びその周辺の相当程度広範囲の地域にお
ける住民の生涯学習の振興に資するため、社会教育に係る学習及び文化活動その他の生涯学習に資する諸活動の多様な機会の総合的な提供を民間事業者の能力を活用しつつ行うことに関する基本的な構想を作成し、文部大臣及び通商産業大臣の承認を申請することができることとし、必要な事項を定めることといたしております。
 さらに、基本構想の円滑な実施を促進するための文部大臣及び通商産業大臣の必要な援助について定めるとともに、民間事業者の能力の活用のために、民間事業者に対する資金の融通の円滑化その他の業務を行う基金を設け、基金に対する負担金について損金算入の特例の適用があるものといたしております。
 第三は、生涯学習審議会についてであります。
 生涯学習の振興のための施策の推進体制の整備のために、文部省に生涯学習審議会を置くこととしております。生涯学習審議会は、文部大臣が内閣の承認を経て任命する二十七人以内の委員で組織することとし、この法律及び社会教育法の規定によりその権限に属させられた事項を調査審議するほか、文部大臣の諮問に応じ、学校教育、社会教育及び文化の振興に関し、生涯学習に資するための施策に関する重要事項及び社会教育一般等に関する事項を調査審議することとしております。さらに、生涯学習に資するための施策に関する重要事項に関し必要と認める事項を文部大臣または関係行政機関の長に建議し、関係行政機関の長に対し、資料の提出、その他必要な協力を求めることができることといたしております。
 また、都道府県に都道府県生涯学習審議会を条例で置くことができることとし、都道府県の教育委員会または知事の諮問に応じ、生涯学習に資するための施策の総合的な推進に関する重要事項を調査審議するとともに、これらの事項に関し必要と認める事項を都道府県の教育委員会または知事に建議することができることといたしております。
 なお、市町村については、生涯学習の振興に資するため、関係機関及び関係団体等どの連携協力体制の整備に努めるものとすることといたしております。
 第四に、関係法律の改正等所要の規定の整備を行うことといたしております。
 以上が法律案の趣旨でございます。(拍手)
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 生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(櫻内義雄君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。輿石東君。
    〔輿石東君登壇〕
○輿石東君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま御提案のありました生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律案につきまして、法案提出に至る経過も含め、基本的な事項について御質問をいたします。
 最初に、生涯学習に対する国の姿勢と法案上程に至る経過とその背景について、総理並びに文部大臣にお尋ねしたいのであります。
 一九八四年八月から三年間にわたって設置されました臨時教育審議会、いわゆる臨教審の四次にわたる答申の中で、学歴社会の弊害を是正するとともに、新たな学習需要の高まりにこたえ、学校中心の考え方を脱却し、生涯学習へ移行することが重要であるとの提言を受けて、政府並びに文部省は、今後の教育改革の基本的な視点として、生涯学習へ移行を図ることを基本に、個性重視の教育、国際化、情報化などの時代の変化に対応する教育を実現することを挙げ、八七年十月には教育改革推進大綱なるものを閣議決定し、政府全体として総合的教育改革を推進することを確認し、さらに八八年七月には、文部省は社会教育局を改組し、生涯学習局を筆頭局として発足させ、さらに本年一月には、中央教育審議会、いわゆる中教審答申、「生涯学習の基盤整備について」の答申がなされ、本法案の国会上程に至ったと考えられますが、そのように理解してよろしいでしょうか。
 また、生涯学習の重要性が指摘される背景としましては、現代の学校教育に対する過度の依存や学歴社会の弊害を改め、学校中心の考え方から脱却して、生涯学習体系へ移行する必要性があること、加えて、人々の学習意欲はますます高度化、多様化していくという学習需要にこたえるとともに、さらに、物質的な豊かさの中で失われた家庭や地域の教育力を回復することや、科学技術の進歩や産業構造の変化等、社会の進展、発展に対応できる生涯学習を実現することが急務であるとの認識に立っておられると考えますが、総理、いかがでしょうか。そのような考えには私どもも大いに賛同するものであり、何らこれを否定するものではありません。
 しかしながら、本法案の提出に当たっては、生涯学習の理念、定義や事業内容をめぐって十六の関係省庁との調整に手間取り、原案も大きく修正されたと伝え聞いているところであります。国民一人一人の自発的学習意欲にこたえ、生涯学習についての情報提供など、地方自治体や民間事業者が中心になって行う基盤整備を法律で規定すること自体、我が国で初めてのことであり、評価すべき点もありますが、今回の法案は、幾つかの問題となるべき欠陥を持っていると言わざるを得ないのであります。
 そこで、海部総理にお尋ねしたいと思うのでありますけれども、まず第一に、生涯学習に関する我が国初の法律であるにもかかわらず、今なぜ生涯学習なのかという、生涯学習の理念や定義については、一言も触れられていないということであります。
 臨教審が学歴偏重社会を是正するために生涯学習社会への移行を提言した経緯を踏まえれば、どうしても教育全体における生涯学習の位置づけを明確にし、生涯学習とは何かの理念や定義づけをすることが重要だと考えますが、総理の考える生涯学習とは一体いかなるものであるかどうか、お伺いしたいのであります。(拍手)
 我が国の学校は、今、学校にさえ行けば、学校に行かなければという過信と、既に学校は子供たちが人間として健やかに育つ場ではなくなっているという危機意識からの不信の中で大きく揺らぎ、子供、青年は、その不信と過信のはざまにあって苦悩し、一教科七千円の塾通いを余儀なくされ、幼児から始まると言われる過酷な受験戦争にも苦しみ、耐えている子供、青年を前に、私たち大人は、政治は、今こそ何をしなければならないかが問われているときでもあると思うのでありま
す。子供、青年は日本の未来であり、次代を担う子供、青年にすばらしい未来を保障することば、現代に生きる私たち大人の政治の責任でもあると思うのであります。
 臨時教育審議会でも指摘しているこの学歴社会のひずみを是正し、週休二日制、学校五日制等への取り組みこそが、今教育現場に求められている緊急にして最大の課題だと考えますが、総理、いかがでしょう。
 また、一九七四年の第五十九回ILO総会において採択されました有給教育休暇は、労働者の教育を受ける権利を国際的に承認したものであり、ヨーロッパ諸国では、これと前後して、有給教育休暇にとどまらず、その権利行使を保証するための保育所の整備、労働と余暇とを交互に繰り返せるリカレント教育のシステム化などを模索してきているところであります。
 国民の権利としての生涯学習を保障する諸外国では、週休二日制、学校五日制や有給教育休暇等はもはや世界の常識となりつつあります。外国から経済大国日本、世界の中の日本ともてはやされ、政府みずからも人生八十年時代、豊かさの創造、七十万時間をどう過ごすかを標榜してみても、諸外国からウサギ小屋の働きバチなどと評され、真の豊かさを求めても実感できないこの現状をどう打開していくのか、そのための生涯学習はどうあるべきかが論議されなければならないと思うのであります。
 したがって、生涯学習を振興するに当たって行政に期待されているもの、それは、国民のだれもが、いつでもどこでも安い費用で学ぶことのできる条件整備を行うことであります。しかし、本法律案は、国及び地方公共団体の学習権確立のための条件整備に関する責務、とりわけ勤労者が働きながら学ぶことのできる有給教育休暇制度については、何ら触れられていないのであります。
 また、法案は、都道府県が実施する生涯学習事業に対して、文部省が「望ましい基準」を設けたり、特定地域での生涯学習推進基本構想についても、文部、通産両大臣の承認基準を定めておるところでありますが、これらの基準を定めること自体、学習者の自発性の尊重を原則とする生涯学習の精神に反することとなり、国による生涯学習の管理につながる危険性をはらんでいると思いますが、この点についてもいかがでしょう。
 さらに、法案は、民間事業者の能力活用をうたい、融資や損金算入による税制上の優遇措置を講じておりますが、これは教育の営利事業化につながりやすく、金と暇のある人にしか生涯学習の機会が与えられないこととなり、問題ではないかと考えますが、この点についても明確にお答えいただきたいのであります。
 次に、文部大臣にお伺いをいたします。
 法案は、社会教育審議会を廃止して、文部省に生涯学習審議会を設置し、学校教育や社会教育、文化の振興など生涯学習に関する重要事項を審議し、文部大臣だけでなく他省庁の大臣にも建議でぎるとしておりますが、生涯学習が学校・社会教育、職業能力開発、企業内教育、文化、スポーツ、社会福祉事業など幅広い分野にまたがり、十六省庁が関係している事業を、文部省に設置する生涯学習審議会だけで推進できるのかどうか、極めて疑問であり、このことば、政府全体で全省庁挙げて取り組むという八七年十月の閣議決定の精神にも反すると考えますが、いかがでありましょうか。
 以上の幾つかの問題につきまして、それぞれ明快なお答えをいただぎたいと思うのであります。
 さて、日本社会党・護憲共同は、ユネスコ等で提起された、国民の権利としての生涯学習という考え方を尊重するように主張してきているのであります。したがって、有給教育休暇の実現、週休二日制や学校五日制に伴う学習環境の整備等々といった本来の意味での生涯学習の推進に関しては、日本社会党・護憲共同といたしましても大賛成であり、ぜひその実現を図りたいと考えているところであります。
 しかし、本法律案は、生涯学習とは何かという理念や定義を初め重要事項が欠落し、文部省が本来主管してきた学校教育や社会教育をゆがめることになる法律案ではないかと考えますが、いかがでありましょう。
 今ほど、政治が、教育が問われているときはないと思います。そして今、政治に、教育に必要なのは、一人一人の人間が人間として大事にされることであり、生きがいを持って生きていける平和で民主的な社会を目指すことにあると思うのであります。教育は、子供、青年の希望を育て、人間の尊厳と平和の確立に寄与する国民的事業であり、また、教育改革は、国民参加の教育論議を通して合意をつくり上げるものでなければなりません。したがって、政治を、教育を、人が人として育つという人間の論理で考えるか、いかに安く仕上げるかという経済の論理で考えるかは、日本という国家の一つの重大な選択であることを忘れないでほしいと思うのであります。(拍手)
 最後に、総理並びに文部大臣にお尋ねいたします。
 政府及び文部省は、本法律案を拙速に通すという立場ではなく、もう一度生涯学習のあり方について御検討をいただき、改めて真の、国民が求める、憲法、教育基本法の理念に立った生涯学習推進法を提出すべきではないかと考えます。いかがでしょうか。
 この点を強く主張し、本法案の趣旨説明に対する私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 輿石議員にお答えをいたします。
 御質問の冒頭で、今回の法案の提出に至るきょうまでの経緯について詳しく御説明をいただき、どうかという御指摘でありましたが、私もその部分については全く同感でございます。
 御指摘いただいたとおり、生涯教育の重要性は、学校教育への過度の依存や学歴社会の弊害を改め、生涯学習体系へ移行する必要があること、また、多様化する人々の学習意欲にこたえること、社会の進展、発展に対応した学習機会の整備が急務であることなど、御指摘いただいたとおりの背景があると考えております。
 生涯学習というのは、御承知のように、すべての人々がいつでもどこでも自発的意思に基づいて学習することができる社会をつくるという目的でありまして、私は、そのために、高度化した国民の学習要求、学習需要を背景にして、それぞれの人々の生涯にわたっての自己啓発、充実のため適切な学習機会が整備されなければならないとい
う、学習者の視点に立った理念に基づく生涯学習体制の整備が必要であると考えております。
 教員の週休二日制の問題や学校五日制の問題が極めて重要な問題であるとの御指摘がございました。
 私は、学校五日制の問題、教員の週休二日制の問題につきましては、現在、教育水準の維持や学校運営のあり方、また、国民世論の動向などにも配慮しつつ、その対応について文部省において調査研究を行っていることでありますので、引き続き検討を続けてまいりたいと考えております。
 また、この法案は国による生涯学習の管理の危険性があると御指摘でありますけれども、今回の法律案の趣旨は、学習に関する国民の自発的意思を尊重するように配慮しつつ、国及び地方公共団体を通じて生涯学習の振興のための体制の整備を図ることとしておるものでございます。したがいまして、国が生涯学習の管理をするものではないかという御指摘は、当たらないものと私は承知をいたしております。(拍手)
 また、国や地方公共団体が行う事業以外にも、民間の創意工夫により教育、スポーツ、文化の学習機会が提供されており、人々の学習需要に柔軟に対応するために民間の能力も活用したらいかがであろうかと私は考えます。
 最後に、本法案については、憲法、教育基本法の理念を踏まえて生涯学習の推進体制の整備を図るための極めて重要な法律案と認識いたしておりますので、どうか十分委員会において各党の御審議を賜り、成立させていただくことを期待をさせていただきます。
 残余の御質問については、文部大臣から答弁いたさせます。(拍手)
    〔国務大臣保利耕輔君登壇〕
○国務大臣(保利耕輔君) 私に対する輿石議員の御質問は、四点あろうかと思います。
 まず、本法案国会上程に至る経緯でございますが、ただいま輿石議員からお述べになりましたとおりでございますので、これはそのとおりでございます。
 次に、生涯学習審議会についての御指摘でございますが、生涯学習に係る施策は各省庁にわたるものでございますけれども、本審議会は、生涯学習の振興において中心的役割を果たす学校教育、社会教育及び文化の振興に関する施策について調査審議する機関として文部省に設置しようとするものでございます。さらに、審議会は、その調査審議を進める上で関係省庁との連携協力を図ることといたしており、これらは、生涯学習社会の実現に最も責任を持つ省庁である文部省が各方面に積極的対応を行うべきとする臨時教育審議会の答申及び教育改革推進大綱の趣旨に沿ったものであると考えております。
 次に、本法案と学校教育や社会教育との関係についてのお尋ねでございます。
 我が国においては、今後、生涯学習社会の実現という理念のもとに、学校教育、社会教育等について相互に連携させつつ、国民の学習需要に沿った学習機会を提供していくことが重要でございます。本法案に規定する推進体制等は、そうしたことを実現する上で必要なものであると考えておる次第であります。
 最後に、改めて生涯学習推進法を提出すべきではないかという御指摘についてでございますが、今回の法案は、中央教育審議会が十分かつ精力的な審議を経て御提言をいただいた御答申を受け、生涯学習の振興のための施策の推進体制及び地域における生涯学習に係る機会の整備を図るために、国及び地方公共団体を通じて必要な措置を定めることを目的とするものでございまして、我が国において今後早急に実現すべき生涯学習社会の基盤の整備の上で重要かつ大きな役割を果たすものであると認識いたしております。
 これらの点を踏まえ、速やかに十分な御審議をいただき、御賛成くださいますように、ぜひお願いを申し上げる次第であります。(拍手)
○議長(櫻内義雄君) これにて質疑は終了いたしました。
     ────◇─────
○議長(櫻内義雄君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四十七分散会