第118回国会 法務委員会 第10号
平成二年六月二十日(水曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 小澤  潔君
   理事 逢沢 一郎君 理事 大塚 雄司君
   理事 太田 誠一君 理事 熊谷  弘君
   理事 自見庄三郎君 理事 小澤 克介君
   理事 小森 龍邦君 理事 中村  巖君
      木部 佳昭君    久間 章生君
      古屋 圭司君    簗瀬  進君
      渡瀬 憲明君    鈴木喜久子君
      山花 貞夫君    平田 米男君
      冬柴 鐵三君    木島日出夫君
      中野 寛成君    徳田 虎雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 長谷川 信君
 出席政府委員
        北海道開発庁計
        画監理官    平工 剛郎君
        法務大臣官房長 堀田  力君
        法務大臣官房会
        計課長     木藤 繁夫君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 濱崎 恭生君
        法務省民事局長 清水  湛君
        法務省刑事局長 井嶋 一友君
        法務省矯正局長 今岡 一容君
        法務省人権擁護
        局長      篠田 省二君
        法務省入国管理
        局長      股野 景親君
        外務大臣官房審
        議官      川島  裕君
 委員外の出席者
        内閣官房内閣内
        政審議室内閣審
        議官      中西 明典君
        国土庁土地局土
        地利用調整課長 大日向寛畝君
        大蔵省主計局主
        計官      浜中秀一郎君
        大蔵省主計局主
        計官      田谷 廣明君
        文部省初等中等
        教育局教科書課
        長       矢野 重典君
        文部省高等教育
        局医学教育課長 小林 敬治君
        文部省学術国際
        局留学生課長  中西 釦治君
        厚生省健康政策
        局総務課長   小沢 壮六君
        厚生省健康政策
        局医事課長   丸山 晴男君
        厚生省保健医療
        局結核・感染症
        対策室長    曾我 紘一君
        厚生省保健医療
        局精神保健課長 篠崎 英夫君
        厚生省薬務局麻
        薬課長     市川 和孝君
        厚生省社会局保
        護課長     炭谷  茂君
        通商産業省機械
        情報産業局自動
        車課長     鈴木 孝男君
        海上保安庁警備
        救難部警備第一
        課長      大森 寿明君
        労働大臣官房審
        議官      高橋柵太郎君
        労働省労働基準
        局監督課長   氣賀澤克己君
        労働省職業安定
        局外国人雇用対
        策室長     前田 充康君
        建設省河川局開
        発課長     豊田 高司君
        最高裁判所事務
        総局総務局長  金谷 利廣君
        最高裁判所事務
        総局経理局長  町田  顯君
        最高裁判所事務
        総局民事局長  今井  功君
        最高裁判所事務
        総局刑事局長  島田 仁郎君
        参  考  人
        (日本国有鉄道
        清算事業団理
        事)      荘司 晄夫君
        法務委員会調査
        室長      小柳 泰治君
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委員の異動
六月二十日
 辞任         補欠選任
  大内 啓伍君     中野 寛成君
同日
 辞任         補欠選任
  中野 寛成君     大内 啓伍君
    ─────────────
六月十八日
 夫婦同氏・別氏の選択を可能にする民法等の改正に関する請願(佐藤泰介君紹介)(第一七三〇号)
同月十九日
 治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法制定に関する請願外二件(伊藤茂君紹介)(第一八九〇号)
 同外二件(宇都宮真由美君紹介)(第一八九一号)
 同外一件(上原康助君紹介)(第一八九二号)
 同外二件(小澤克介君紹介)(第一八九三号)
 同外二件(北川昌典君紹介)(第一八九四号)
 同(小林守君紹介)(第一八九五号)
 同外二件(志賀一夫君紹介)(第一八九六号)
 同(清水勇君紹介)(第一八九七号)
 同外二件(須永徹君紹介)(第一八九八号)
 同(鈴木喜久子君紹介)(第一八九九号)
 同外二件(田口健二君紹介)(第一九〇〇号)
 同外二件(高沢寅男君紹介)(第一九〇一号)
 同外三件(谷村啓介君紹介)(第一九〇二号)
 同外二件(筒井信隆君紹介)(第一九〇三号)
 同外二件(中沢健次君紹介)(第一九〇四号)
 同外三件(元信堯君紹介)(第一九〇五号)
 同(安田修三君紹介)(第一九〇六号)
 同外二件(山中邦紀君紹介)(第一九〇七号)
 同外二件(山花貞夫君紹介)(第一九〇八号)
 同外二件(山元勉君紹介)(第一九〇九号)
 同(小沢和秋君紹介)(第二〇九一号)
 法務局、更生保護官署及び入国管理官署の増員に関する請願外三件(宇都宮真由美君紹介)(第二〇三〇号)
 同(冬柴鐵三君紹介)(第二〇五八号)
 夫婦同氏・別氏の選択を可能にする民法等の改正に関する請願(川島實君紹介)(第二〇九〇号)
同月二十日
 外国人登録法の抜本改正に関する請願(草野威君紹介)(第二二九七号)
 外国人登録法の抜本改正と在日韓国・朝鮮人、中国人に無条件の永住権に関する請願(神崎武法君紹介)(第二二九八号)
 同(草野威君紹介)(第二二九九号)
 同(鈴木喜久子君紹介)(第二三〇〇号)
 同(長谷百合子君紹介)(第二三〇一号)
 同(冬柴鐵三君紹介)(第二三〇二号)
 同(薮仲義彦君紹介)(第二三〇三号)
 在日韓国・朝鮮人の在留の保障に関する請願(神崎武法君紹介)(第二三〇四号)
 同(草野威君紹介)(第二三〇五号)
 法務局、更生保護官署及び入国管理官署の増員
に関する請願(中村巖君紹介)(第二三〇六号)
 治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法制定に関する請願(池田元久君紹介)(第二三〇七号)
は本委員会に付託された。
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六月十五日
 外国人労働者入国問題等に関する陳情書(大阪市中央区本町橋佐治敬三)(第一二四号)
 在日韓国人の永住権問題等に関する陳情書外七件(東京都東久留米市南沢一の二四の二七山田實外十名)(第一二五号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 裁判所の司法行政、法務行政、検察行政及び人権擁護に関する件
     ────◇─────
○小澤委員長 これより会議を開きます。
 お諮りいたします。
 本日、最高裁判所金谷総務局長、町田経理局長、今井民事局長、島田刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
     ────◇─────
○小澤委員長 裁判所の司法行政、法務行政、検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本件調査のため、本日、参考人として日本国有鉄道清算事業団理事荘司晄夫君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
    ─────────────
○小澤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小森龍邦君。
○小森委員 先般来の質疑に引き続きまして、人権問題を軸にお尋ねをしたいと思います。もちろん人権擁護局に対する質問が大部分を占めるわけでございますが、事人権という問題は人間の全生活にかかわる問題でございますので、多少各省庁の関係者に御答弁をいただかなきやならぬこともございます。多岐にわたる非常に煩わしさというのもあるわけでございますが、御理解をいただきまして、御答弁を賜りたいと思います。
 まず第一に、国鉄、JR、これは一連の流れといたしまして、その行政的な手だての一つといたしまして清算事業団なるものがございますが、本日、清算事業団の方からも参考人として御出席をいただいておると思いますが、お尋ねを冒頭させていただきたいと思います。
 それは、私の聞きますところによりますと、北海道の稚内におきまして、国鉄からJRへの移行の過程において、相手が清算事業団だと思いますが、大変な人権侵害が行われておるということで、人数は、私も正確なことは知りませんが、恐らく百数十名に及んでおるのではないかと思いますけれども、人権侵害を救済してもらいたいという意味の、法務省人権擁護局の出先の法務局の人権擁護部だと思いますが、そういう申し出が出ておる、そういうことを聞いておりますが、人権擁護局の方でとりあえずそういうものを受け付けておるかという事実と、若干のそれに対する取り扱いについてお知らせをいただきたいと思います。
○篠田政府委員 委員御指摘の事案は、本年四月二十三日に、清算事業団の稚内清算事業団組合員、これは人数が必ずしもはっきりしませんが、七十三名かと思われますが、稚内雇用対策支所長等を相手方といたしまして、本年の二月分及び三月分の給与の支払い方法、場所等に関しまして、人権を侵害されたということで申し立てがございました事案だと思いますが、その件につきましては、現在、人権侵犯事実があったか否かという点について関係者から事情を聴取している段階でございます。
○小森委員 後ほどまた、その事情聴取の状況につきましても今日の到達しておる経過をお知らせいただきたいと思いますが、このあたりで事業団の方にお尋ねをいたしますが、事業団とすれば、そういう人権擁護局への関係者の訴えについてどういう受けとめ方をされておられますか。
○荘司参考人 御承知のとおり、六十二年四月一日、国鉄改革の実施に伴いまして清算事業団は発足いたしまして、七千六百余人の就職先未内定の職員につきまして、再就職の特別措置法によりまして再就職のあっせんをするという業務を事業団として開始をいたしてまいりまして、ことしの四月一日まで三年間、この法律に基づいて再就職対策を実施してまいりましたところでございます。
 先生お話しのように、稚内にもこの雇用対策を行います私どもの出先機関の一つがございまして、ここで六十二年四月一日以来、当初百十六名の再就職を要する職員について私どもとして再就職のお世話をするという業務を始めたわけでございます。三年間にわたりできる限りの再就職のための努力をいたしまして、そのうち三十六人の方が再就職を何らかの形でされる等ございまして、四十三人の方については円満に退職をしていかれたわけでございますけれども、最終的に地元JR北海道への復帰といいますか、そういう考え方でこの再就職のあっせんに応じずに最後までおりました職員が七十三名ということ、先ほど局長さんからお話がございました七十三名が最後まであっせんに応じないという結果で雇用対策は終わったわけでございます。そういう状況の中で、今お話しのこれらの七十三名の職員を中心とする者と思いますけれども、法務局の方へ人権侵犯があったという訴えをしたということにつきましては、私どもとしては特に正式に、法務局等から事業団として正式に御通知があったということはございませんが、新聞報道その他で事実については承知をいたしておるわけでございます。
 私どもといたしましては、その報道等によるところから見まして、先ほども申し上げましたように、三年間私どもとしては再就職の意思を有する職員については最大限の努力をしてまいったというふうに考えておるところでございまして、人権侵害といったようなことに当たるようなことはないものというふうに考えておるところでございます。
○小森委員 先ほどの人権擁護局長の答弁によりますと、二月、三月の給料の支払い方法とか支払い場所と聞いたか、いずれにしても支払いをめぐって人権侵害があった、こういう訴えとなっておるわけですが、事業団の方はその点の事実についてはどういう受けとめ方になっていますか。
○荘司参考人 先ほども申し上げましたように、正確な訴えの内容とかについて正確に御連絡いただき、かつ承知をしておるわけではございませんので、若干新聞報道等による推測がまじるわけでございますけれども、給与の支払い方法と申しますのは、私どもで考えますに、稚内の支所におきまして、本年の二月分の給与からかと思うのでございますけれども、事務所の建物の一部を改造いたしまして、私も実際に実は検分しておらないので大変恐縮でございますが、店屋の窓口といいますか小窓といいますか、そういった設備をいたしまして、その小窓を通じて職員に給与の支払いをしたということについて、これが人権侵害であるということを申し出ておるのが一点かというふうに私どもとしては新聞報道等で理解しておるところでございますが、これは先ほど申し上げました三年間の事業団発足以来の稚内支所におきます私どもの業務の遂行の過程におきまして、いろいろございました経緯にかんがみましてそういった措置をことしの二月からとったわけでございます。
 若干申し上げますと、設立当初からJR北海道への原職復帰という主張をいたします職員の相当数がおるわけでございまして、これらの職員は、私どもの管理者にございます再就職あっせん業務と立場的にいわば対立する立場であったわけでございまして、いろいろな組合としての活動もやっておったと思うのでございますけれども、こうした背景のもとで、常識的に見て必ずしも妥当な範囲とは思えない、いろいろな管理者に対する質問でございますとか抗議でございますとか、こういったことがずっと繰り返されておるというふうな状況にもございまして、いよいよ再就職あっせん業務の最終段階に入りましていわばその程度がやや増してきたというふうなこともございまして、私どもの業務がなかなか円滑にできないというふうな状況になってまいったわけでございます。
 そんなことをいろいろ勘案いたしまして、管理者側といたしましては、トラブルというのをできるだけ避けて円滑に業務を遂行する立場から一部その事務所の改造等を行いまして、その結果として給与の支払いにつきまして小さな窓を通して手渡すといいますか、こういった状況になったと理解しておるわけでございまして、そのことについて、今申し上げましたような状況の中での扱いでございまして、私どもとしては先ほど申し上げましたように、これが人権侵害に当たるというふうなことではないというふうに考えておるところでございます。
○小森委員 あるいは釈迦に説法かもわかりませんが、我が国憲法は、労働者の団結する権利、団体交渉その他団体行動をする権利は、これを保障する、こうなっておることは御承知のとおりであります。そのことのためにいかなる差別待遇も受けてはならぬということも憲法の精神です。
 あなたは、今、小窓を設けてそこから給料を支払う行為を行ったということが差別ではないと言われるけれども、例えば郵便局の職員と我々が郵便貯金を引き出しに行ったときの関係は、カウンターを控えて、だれが見ても、だれが行っても同じ処遇だということになれば、郵便局の場合往々にしてありますけれども、仮にそこに小窓があっても、それは差別ではないでしょう。しかし、労働者がある一つの労働条件を求めて団結をしたことに対して他の労働者とは違う処遇をしたら、それは差別というものなのです。赤だとか黄だとか青だとかいう自然的な相違を差別というのじゃないのです。そこに社会的な評価、意味づけを行ったときに差別となるのですね。そういう意味では、既に人権擁護局の方へ回っておりますからそれほどくどいことは申し上げませんけれども、そういう点をよく考えてやっていただかないと知らず知らずの間に差別的処遇を行っておる、こういうことになりますから、後ほどまた清算事業団のその他の問題についてもお尋ねをしますので、その点は私の方から私の理解というものをあなたの方に申し上げておいて、ひとつ参考にしていただきたい。しかし、究極において、そういうことがいつまでも続けられるということになれば、それはまた我々の方とすればしかるべき大衆的な行動とか、あるいは国民の理解を求めて反省を促すとかさまざまな方法があるわけでありますが、これだけの近代国家を装っている国でありますから、そういうみみっちい差別的なことはもうやめてもらいたい、こういう気持ちを持っておりますので、それは私の見解として申し上げておきたいと思います。
 そこで、そのことに関連いたしまして法務省人権擁護局の方へお尋ねをいたしますが、私の聞いておる範囲では、あるいはその後状況が変わっておるかもしれませんが、私先ほど百名と言ったのは、これは七十三名の方が正しいのだろうと思いますけれども、ある一定のところまで調査、聞き取りをして、あとはもう同じことだからよろしいというような形で、人権救済を申し入れた方からすると何だか切って捨てられたような感じだというふうな状況が展開されておるのじゃないかと思いますが、その点はどうでしょうか。
○篠田政府委員 具体的な案件でございますので一般論しか申し上げられませんけれども、同種類の方々が大勢いる場合には、一部の人を聞いてあとはおおむね同じということで事件を考えていくこともあり得ると思います。
 ただ、本件については、具体的にどういう方針で原局の方でどういう処理をしているかということは、まだ進行中でございますのでここで意見を述べるのは差し控えさせていただきたいと思います。
○小森委員 それはどの辺のところの共通項で結ぶかということで、ここまで聞いたらわかるということになるかもしれない、そういう場合もあると思います。しかし、これは人権侵犯事件調査処理規程からいいましても特別事件なのですね。特別事件というのはいろいろありますけれども、それはやはり我が国が真の意味における人権の確立というか近代的な感覚に到達するために法務省人権擁護局は人権侵犯事件調査処理規程なるものを定め、その中の特別事件に位置づけているわけですね、労働問題ですから。それをその他大勢というようなやり方では困ると私は思うのです。だから、あるいはそのことが不当であるか不当でないかは、Aという人に聞いたら不当でないという判断ができた、BもCもDも不当でないというふうに判断できた、しかしEのところで切って、E以後に重大な問題を持っている場合にはどうなるのか。なるほど社会的な意味は同一の問題かもしらぬけれども、個々の事実というものがやはり大事なのでありますから、可能な限り入念に聞き取りをしていただいて、そして今地労委でも中労委でも問題になり、労働省も頭を痛めておるという問題ですから、人権の角度からしかるべき方向性というものが出て局面が解決するということになればこれは歴史の大きな前進ですから、そういう意味で使命感を持ってやっていただきたいと思います。
 続きまして、同じく清算事業団にお尋ねをいたします。
 日にちは忘れましたけれども、十日ばかりになるかあるいは二週間ぐらいになるか、それぐらいのところだと思いますけれども、テレビで放送されましたJRの――JRと言うたらいかぬのかもわかりませんが、清算事業団との関係で大変な労使の紛争が起きまして、私はびっくりしたのですけれども、有刺鉄線を張って何か囲いみたいなものをつくっておる。これほど過酷な、精神的に痛めつける処遇というものはないと思って私は見たのですが、そういうふうな場面がブラウン管に映し出されたのが私の目に強い印象で焼きつけられております。これも先ほど申しましたように、例えば有刺鉄線の囲いの中で仕事をするというようなことが万人ひとしく行われる場合には、それは何らかの理由があって行われるのだろうから、そのことをもって直ちに差別とは言われないけれども、ある一定の労働条件に対する主張を持つ者をそういうふうにするというようなことは、これは明らかに差別であります。そういった点は先ほど私が申しました論旨と同じでありますので、これも強く頭に入れておいていただきたい。
 私が今具体的にお尋ねをしたいと思いますことは、そのテレビを見ておると、どうも労働者に対してある一定の暴力行為を挑発してそれを事件にでっち上げて裁判闘争へ持ち込んで、今のむちゃをしておる労使関係を一挙に逆転ホームランを打とう、こういうふうな感じで行われておるにおいが非常に強いわけであります。
 それで、ここでちょっと、私忙しかったのですけれども、そのテレビをビデオに撮り、さらに、一文字や二文字は違うかもわからぬけれども、これは大事なことだから、テレビの画面から清算事業団の関係者がいろいろ言うておるセリフを私、書き取ったのです。ちょっと肝心なところだけ読み上げてみますと、こうなっておるのですよ。挑発をかけておることがありありとわかるのは、その清算事業団の幹部の会議で「残っていただく方は、ここに居ていただきます。それでですね、ここに居ていただいて、うちの方は繰り返しやりますから、」この「繰り返しやりますから、」というのが問題なんですね。挑発の問題なんですね。「繰り返しやりますから、しばらくやっている間にいなくなったなあ、という感じで皆さん一応、ここに隠れてもらって……」、というのは、当局側がたくさんおったら挑発もうまくいかぬだろうから、少人数で向こうがなめてきたときに何らかのことをやるだろうからみんな隠れてくれというようなことを言っているのですね。「何かあったときには、すぐ飛び出してもらいます。そういう形でむしろ、あのぅ、やられる部分の現認をしてもらうように仕向けますからね。」こういうセリフがあるのですね。これはもう驚くべきことですね。
 そして、それに類似したことを読みますと、「じゃあ、今日のところは繰り返し業務指示に従いなさい、という感じで何か事象が起きたらよってたかって皆で現認すると、そういうことですね。」こういう会話がその会議であるわけですね。つまり何かが起きたら現認する、そしてなるべく何かを起こすように繰り返し業務指示に従いなさい、従いなさいとつっけんどんに言うてやるという意味のことを言っているわけですね。
 それで、要するに「繰り返し業務指示に従いなさい」と言うてやるセリフというのは、その後に出てくるのですね。どういうセリフかといったら、「十三時二十分になりましたよ。引っ越しの作業をしなさい。引っ越しの作業をしなさい。就労の意志がないんですか。」これじゃだれだって腹が立ちますよ。ああ、時間ですよ、こういうぐらいならわかるんですけれども、「十三時二十分になりましたよ。引っ越しの作業をしなさい。引っ越しの作業をしなさい。就労の意志がないんですか。」これはけんかをするときのセリフです。そうしたら、組合の方は「あるよ。」就労の意思はないのですかと言うから「あるよ。」仕事は何だという意味で「仕事は。」こういうことを問うているわけですね。そうしたら、次にどういうことを言っているかというたら、「時間が過ぎましたので引っ越しの準備をして下さい。」組合、「引っ越しは終わったんだろ。」もう既に引っ越しは終わったんだろうと言うたら、「就労の意志がないんですか。」またこう言っているのですね。
 とにかく、そうでなくても自分の次の就職先が決まらないから妻や子供を抱えて自分の生活設計に対していらいらしておるところへもっていってそういう形の挑発をかけたら、テレビでそこの場面を、わずか三十分ぐらいの番組だったから、そこのところに焦点を置いた番組であったから、これはその後、横浜地裁で今審理中だと思いますけれども、事件の全体像は知りませんけれども、これはいかに言うても、スピード違反をするのを待って捕まえるというのもちょっと社会常識からいったら変な感じがするのですけれども、スピード違反をするように後ろから追い立てておいて前の方で警察官がスピード違反を捕まえる事件に似ていると私は思います。その点については、テレビの放送については清算事業団の関係者も御存じだと思いますので、これについてはどうなのかということをお尋ねしたいと思うのです。
○荘司参考人 本件は、昭和六十一年十一月ごろ、改革以前の国鉄時代の事案だというふうに承知をいたしております。
 事業団は、国鉄改革法に伴いまして六十二年四月に発足いたしておりますので、新生のJRあるいは事業団というふうに分かれる前の国鉄時代の事案でございます。したがいまして、細かいことを言うようで恐縮でございますけれども、今先生がおっしゃいました事業団関係者の発言というお話でございますとか、あるいは事業団の職場での会議ということではございませんで、改革前の国鉄時代の現場での事案でございます。
 今お話のございました横浜貨車区というところのいわゆる人材活用センターという職場で起きた暴行事件にかかわるものだというふうに承知をいたしております。先生も御指摘のように、現在横浜地裁におきまして刑事、民事の事件として裁判所で審理が進行しておるものに関するものでございます。テレビの報道については私どもとしても承知をいたしておりますし、その中で今先生のお話のような報道がなされたことも承知をいたしておるところでございます。ただ、テープの中身でございますとかその発言の趣旨でございますとか、こういったことにつきましては、私どもといたしましては人権侵犯に当たるというふうな事実があったというふうには理解をしておらないところでございますが、なお、今先生もおっしゃいましたように、また私も申し上げましたように、いずれにいたしましても、本件に関して具体的な裁判が係属中でございまして、今先生がお触れになったような事実の関係につきましても裁判所の方でも、鑑定といいますか、そういったことを進めるような段階になってまいっておるというふうに承知をいたしておりますので、いずれこの裁判の場で事実が判明するというふうに私どもとしては理解をしておるところでございます。
○小森委員 権力を持っておる立場というか、あるいは今日ではJRは会社ですから、会社業務の責任能力を持っておる者という立場からすれば、すっぺらこっぺらと言うて物事をやっていきさえすればそれでその場は通るかもしれない。しかし、現実に苦しい目に遭わされる者というのはそれではたまらぬわけですね。そのことがわかるかわからぬかということが、江戸時代の切り捨て御免という態度と深く個人の生活にかかわっての人権を守っていける社会かどうかの分かれ目になるわけです。しかし、今の答弁を聞いておると、今裁判所へ行っておるんだからやがて事実が明らかになるだろうということで、みずからの裁判所に至るまでの取り来ったいろいろな言動、処置というようなものに対する考え方というものは、ほとんど胸にこたえるようなものが出てこないですね。
 きょうは私もいろいろなことをこの際に政府当局から聞いておきたいから、私とすれば、いつものことだけれども、いつも時間的に制約があるという急いだ気持ちでやっておるんだけれども、それでは通常の議論とか通常の社会的な対応とかであなたのところは人々の気持ちというものを酌み取った業務というものを行い得ない会社ということになってしまうと私は思うのですよ。そのために、これももう時間がないからきょうは省きますけれども、旧国鉄から引き続いて今日までのJRの各地でどれだけの差別事件が起きておるか。これも重大な問題ですよ。
 それから、きょうは答弁する担当者がいないということで、きのうの事前のレクチャーで私も先に残しましょうということにしたんだけれども、JRの幹部がここへ参考人として出られないと言われるから私もあきらめたけれども、我が党の安恒議員に対する松田さんという理事かね、常務かね、それの発言。私の入手している資料では、「社会党の安恒議員は、まったくけしからん。連合に加盟している私鉄総連がなんで国労と結託してJRいじめをするのか。」こういうような発言を松田さんという人がしておる。それから中労委でも変なことを言っていますよ。それは直接答弁人がおらぬのですから、一方通行になるからやめますけれども、そういうことはむちゃな不当労働行為をするときに一貫してついて回る思想である、こういうふうに私は受けとめています。したがって、そういう受けとめもする者もいるということを理解した上で、可能な限り人権ということに視点を置いてやってください。
 ちょっと時間が中途半端になりましてうまくいかないのですけれども、これであなたの方のことについては打ち切ります。しかし、強い意思を持っていますよ。悪盛んなときには天に勝つ。いいですか、むちゃやりよるにはある程度通用しますよ、悪盛んなときには天に勝つ。天定まってこれを誅すですよ。世の中が治まったらそんなむちゃは通りませんよ。よく考えてやってください。
 では、続きまして、主として法務省人権擁護局にかかわっての質問をこれからいたしたいと思いますが、先般、私は韓国・朝鮮人に対する植民地支配の時代の問題点について、人権の角度からの問題点について人権擁護局長に答弁を求めました。あの段階で少し対立をいたしまして、うまくそこのところが答弁をいただいておりませんので、きょうの段階で、何も外務省を気取って答弁をしてもらいたいと言っておるんじゃないのですから、ひとつ人権擁護局長の方からまずその辺についての発言をしていただいて、それから順次移りたい、かように思います。
○篠田政府委員 それではお答えいたします。
 先般の盧泰愚大統領の国会演説で、小学校の児童が日本名を使わせられたり、あるいは日本語を使うことを強制された、そういったような発言がございましたけれども、そういったような事柄とか、それから先般来問題になっております強制連行といったようなこと、あるいは神社参拝を強制したというようなこと、そういったようなことについて韓国、北朝鮮の方々が耐えがたい苦しみを体験されたということについては、そういうものとして認識しております。
○小森委員 その他にも、通常、項目として挙げられるものもたくさんあるのですけれども、一部でも挙げられたということになりますと、ちょっと私の発言の関係がありますから、また別の機会に、何も公式の話でなくてもよいと思いますから、私の方からそれはいずれお会いする機会にまた話題とさせていただきたい、かように思います。
 そこで問題は、私がそのときに次の論理へと行きたいと思ったのは、何らかそういうように日本政府が韓国・朝鮮人に対して植民地時代に理不尽なことをやっていた。そのことは今日我が国に住んでおられる在日韓国・朝鮮人の生活の今日的な水準なり条件なりということと決して無縁ではない。そういう無縁でない状況の中で起きてくるさまざまな人権問題というのは、そこにさかのぼってのある程度の知識を持っていなければ、それが人権問題か人権問題でないかわからない、こういう意味のことを私は人権擁護局長にわかってもらおう、法務大臣にも深くその点についての認識をしてもらおう、これが質問の意味ですから、議員と執行機関、内閣との関係というのは、論戦をするのはそういう意味ですから、そういう意味で実はそこのところを申し上げたわけであります。
 そこで、この際人権擁護局長にそのことに関連してちょっとお尋ねをしておきたいと思いますが、既に総務庁あたりと私のやりとりは、同和問題に関係して、この間の四月二十六日の衆議院予算委員会第一分科会でもそれは議論になりまして、つまり現実に展開される差別とか人権侵害というようなことは単なる人間の意識の世界だけで展開されるものでなくて、その意識の根っこにある客観的な、実在的な世界、社会経済構造と言えば大げさになりますけれども、そういうふうなこととの相関関係について、まさにそれは相関関係はあります、その点については同対審答申が言っているとおりです、こういう答弁が四月二十六日の衆議院予算委員会の第一分科会で総務庁の方からあったわけです。
 それから、この間また物価対策の特別委員会でも、やはり物価というものがある特定の者には有利に作用し、特定の者には不利に作用するというような意味から、この経済のひずみというものが人々の意識に関係があるというようなことから、また再び私と総務庁との間にそのことが議論になりまして、これもまた明確に人間の意識と客観的存在との関係はある、こういう答弁をもらっておるわけであります。
 そこで、きょうはそのことに限って具体的な論理を展開する時間的いとまがございませんので、ごく総論的にお答えをいただければよいと思いますが、人権擁護局長は総務庁が私に答弁をしたような感覚に立っておられるのか。なぜこういうことを改めて問うかというと、これからまた何回も議論することによって私はただしていこうと思うけれども、地対協意見具申に反しない限度において同対審有効とあなたは言われたのです。これは法律的な秩序、法に基づく行政秩序を無視するものだと私は思っているが、実はその同対審に、今衆議院予算委員会第一分科会で議論したことや、物価の特別委員会で――物価じゃなくてこれは内閣委員会です、内閣委員会で議論したことや、というようなそのときの物の考え方、これは同対審にぴたりなんだけれども、あなたはその点についてはどういうように思っておられますか。
○篠田政府委員 人の差別意識というものが経済的な実態との相関関係にあるということについては、私もそのように認識しておりますけれども、四月の何日でしたか、前回お答えいたしましたように、当局といたしましてはやはり地対協路線というのを踏襲するということでございまして、同対審はそれに反しない限度で尊重する、そういう建前で考えております。
○小森委員 それが私は法の秩序を無視しておる者の言い方だと思うのです。地対協というのは総務庁の庁令、つまり省令ですよ、省令に基づいてできておるいわゆる審議会みたいなものですよ。同対審答申というのは法律によってできたのですよ。しかも、公平に被差別の立場の者も議論に参加しているのですよ。地対協は省令でできて、しかも被差別の関係者、当事者は入っていないのですよ。どっちが位が、位と言うとおかしいが、そういう法的な秩序においてどっちが上位にランクされるべきものかということは、あなたは前歴裁判官であったというならわかるはずでしょう。この議論はまたやりましょう。これはだれに聞かれたってそのとおりだと思いますよ。だから、そういう意味で私は言っているのですよ。――何か答弁したいような、手を挙げかけておるから、してもらいましょうか。
○篠田政府委員 今、上下の関係ということをおつしゃいましたけれども、法律の場合でございますと、憲法、法律、政令、省令といった上下の関係はございますけれども、今お話しの同対審の答申、それから地対協の意見、これはいずれも本質的には意見ということでございまして、その内容について政府の方でそれを尊重するということになるわけでございまして、時間的に申しますと、同対審は昭和四十年、それから地対協の意見具申は昭和五十九年あるいは六十一年、そういった時の流れということがございますので、新しい方の地対協の意見を尊重するということでございます。
○小森委員 だから、大変あずり分別でそういうふうなことが今まで人権擁護局内で議論されておるのだろうと思うけれども、よく考えてくださいよ。だから私は、ほかの議論が予定されておるから、あなたが手を挙げなかったら言うまいと思っておったのだけれども、もう一遍済まぬけれども言わしてもらいます。
 よく考えてもらわなければいけぬのは、あなたは今、地対協の意見が時間的にごく内輪だ、同対審答申は二十五年前だ、だから内輪のことをこっちは尊重してやるんだ、こういう意味のことだと思う。しかし、あなたは今、衆議院の予算委員会の第一分科会で総務庁から私が答弁をもらったことあるいは六月十二日に内閣委員会で答弁をもらったこととほぼ同じことを答弁されたんだが、その答弁内容と地対協の意見具申とは違うのですよ。もう一遍よく見ておってください、しかるべき日にまた討論さしてもらいますから。だから、ちょろちょろっと寄ってためにする議論をして、こういう重大な人権問題にかかわる答弁をしてはいかぬのですよ。これはまたしかるべき日にやりますから。
 私が申しましたように、人権というのは生活各般にかかわる問題ですから、だから議論が余りにも多過ぎるのですよ。したがって、私もかなり配慮をしてもらって、かなりの時間を私の発言のために許してもらっておるのですけれども、なかなかこれは足りないのです。それで仕方がないから前へ行くんですよ。きょうは人権擁護局あるいは法務大臣にも途中でちょっと答弁をいただくことになるかもわかりませんが、法務大臣、人権擁護局、その他の関係者の方にわかってもらおうと思って質問を組んでおるのです。
 そこで、まずこれからアイヌの問題についてお尋ねをいたすのでありますが、アイヌの今日の生活の水準にかかわって、これは厚生省からお答えをいただくんだと思いますが、生活保護率をパーセンテージで答えられるんだと思いますが、パーセンテージは、日本の今の水準、日本の国民の一般的平均値との関係においてわかるようにひとつ数字を提示いただけないだろうか。平均的な世帯の収入というものが、日本の国の全体の平均的な家族の収入とどういうような状況になっているだろうか。この二点をひとつお答えいただけないでしょうか。
○炭谷説明員 お答えいたします。
 まず、生活保護率でございますが、この調査は昭和六十一年、北海道ウタリ生活実態調査に基づいて行った結果でございます。この結果によりますと、六十一年現在での保護率は、ウタリ地区につきましては六〇・九パーミル、パーセントに直しますと六・〇九%になります。これを北海道内の市町村と比較いたしますと、北海道内の市町村は、同年は二一・九パーミルというふうになっております。ちなみに、その当時の全国の保護率は一一・三パーミルというふうになっているわけでございます。
 次に、所得の状況でございますが、比較いたしますために、住民税の課税区分の世帯数の構成比という形でとってみますと、やはり同一の調査でございますが、昭和六十一年現在の調査では、非課税世帯、非常に所得の低い生活保護に近い世帯でございますけれども、三六・三%となっております。同年の北海道の市町村では二一・一%というふうになっているわけでございます。
○小森委員 厚生省の方のその説明で法務省人権擁護局の方もおわかりをいただいたと思いますが、生活の水準に著しく格差があるということはこれでおわかりをいただけると思います。その著しく格差があるということと、人々のアイヌに対する差別意識ですね。北海道ではアイヌに対する言葉として和人と言っていますね。アイヌ民族に対して日本民族の側は和人と言っていますね。この和人のアイヌに対する物の考え方というものは、この実態の照応関係として、やはり差別的な意識がかなり出てくるだろうなというふうなお考えに立たれますか。
○篠田政府委員 一般論ですけれども、そういうことはあるであろうというふうに認識しております。
○小森委員 まことにストレートに論理にかなった答弁を人権擁護局長がされましたので、物を判断するのに順序よく私はいけると思うのです。
 それで、アイヌの子供が作文を書いているんですね、自分が差別されたということについて作文を書いているんです。その作文の中で、実に厳しい差別の現実に立たされておるということを子供たちが明らかにしています。その子供たちが明らかにしておるのは、まことに皮肉なことですけれども、皮肉と言うとそのこと自体がまた皮肉かもわからぬけれども、昭和五十五年度、昭和五十五年度というから一九八〇年ですね、釧路人権擁護委員連合会主催の「人権擁護に関する作文コンクール」の最優秀賞の中に、「差別」と題する芽室中学一年生の竹内さんという女子の中学生、その子が言っておるんですね。どういうことを言っておるかというと、「私が小学四年になったころ、ひっこみじあん」、ここではなくて、ちょっと目がちらちらしてよくわかりませんが、こんな資料おたくもお持ちだと思いますから、また後でお読みいただきたいと思いますが、どういうことを言っておるかというと、差別されて泣き寝入りしてはいけないということを言っているんですよ。それがまことに皮肉なことに、人権擁護局の考え方とは大分かけ離れている。人権擁護局は、差別されたらおれに任せておけ、こういう考え方ですけれども、しかし、民主主義社会というものは差別されて泣き寝入りはいけない、これが憲法第十三条の個人の尊厳という主体的な自覚なんです。それを書いているんですね。
 そうすると、差別の現実があるということとその点では私と意見が一致しましたが、実態と意識との構造において私とほぼ意見が一致しましたが、そこから先、今度は泣き寝入りをしろとは言わないけれども、差別されたら自分でとりあえずとれるべき措置をとるなという意味のことを人権擁護局はしきりに言われるのですけれども、人権擁護委員連合会が最優秀作品として認めた子供の作文の中に、差別されたら泣き寝入りはいけないと言っているんですよ。ここになるとまた物すごい大きな論理に広がりますから、ちょっと先ほど私が申し上げましたこと、食い違う点がありますよと言ったことと関係がありますので、そういうことは指摘にだけきょうはとどめさせてもらいます。
 具体論にこれから入ります。
 そこで、物事は違うのですけれども、北海道に平取町というのがありますね。あれはどこの駅を降りるのか、何線であったのか、線の名前は忘れましたが、平取町というのは馬の産地ですね。あの平取町から川上に向かって、あの川は沙流川という川ですが、沙流川をせきとめてダムをつくるという事件にかかわって、土地所有者であるアイヌの関係者との間にかなり対立が生まれた。それは最終的には土地収用法にかけられまして裁決が行われたという状況なんでございますが、このことについてごく簡単でよろしいですから若干の経過を説明をいただくことと、同時に、私の記憶では、その裁決の中にアイヌがたどってきた歴史的事情に、同情という言葉は的確でないが、深く理解を示すような文言があったということを私は新聞記事で読んで記憶しています。そういう点についてちょっと御説明をいただけないでしょうか。これは建設省ですか。
○豊田説明員 御説明申し上げます。
 お尋ねの経緯について御説明申し上げますと、昭和六十一年四月二十五日に事業認定の申請をいたしまして、同年十二月十六日に事業認定の告示が行われました。翌年、六十二年十一月三十日に裁決申請及び明け渡し裁決の申し立てをいたしまして、この間審理が二回、現地調査が一回行われました。平成元年になりまして、二月三日に裁決が行われまして、補償金の払い渡し、供託が行われております。三月六日に権利取得をいたしまして、現在に至っておるわけであります。この間、三月四日に収用委員会の裁決の取り消しを求める審査請求が提起されて現在に至っておるところでございます。
○小森委員 私のもう一つの質問に、その裁決の際に、アイヌの今日まで歩んできた歴史的な事情に深く理解を示す文言があった、その点について説明をいただきたい、こういう質問があったのですけれどもね。
○豊田説明員 お答えいたします。
 二風谷ダムは、この地域を洪水被害から防御いたしますとともに、地域の発展に不可欠な水資源を将来安定的に確保していく上で極めて重要な公共施設として建設しているところでございます。事業の推進に当たりましては、地域及び住民の抱えています歴史的特性に十分配慮しておるところであります。
 具体的に申し上げますと、職業転換や代替地取得が困難であるということを配慮いたしまして、農業の休廃止補償を行っておるところでございます。地元平取町では、関係機関とも調整いたしまして、アイヌ文化を生かした地域振興計画を策定しておるところでございます。ダム事業者といたしましても、計画の中心となります二風谷レイクサイドパークの整備構想に対しまして、ダム周辺環境整備を通じまして協力を行ってまいる所存でございます。
○小森委員 そういうことも地元の関係者が理解をしてそれをよしとするならば、それはそれなりに意味があると思いますが、私はそれをよしとしておるかどうかよくわかりませんので、それに対しての私の考えを述べることはちょっときょうは差し控えをさしていただきます。
 そこで、実は私が求めておるのは、今ここで見つかりましたが、裁決書の中に言われておることは、強制収用はやむを得ないが、次のようなことを言っているのですね。やむを得ないと言いながらも、「アイヌ民族の立場から、土地の歴史、生活とのかかわりを述べたもので傾聴に値する」、これは現地の萱野さんというあの地域の文化的な活動のリーダーなんですけれども、萱野さんが土地収用委員会で自分の立場をいろいろ言われていることに対して、「傾聴に値する」と言われておるのですね。そして、最後にどう言われておるかというと、収用委の処理の権限を越えるとしながら、「関係機関の協力によって早期解決を望む」、少数民族の問題を早期に解決を望むと土地収用委員会が言っておるわけですね。こういう点は、これからいろいろ起きてくるだろう――アイヌ民族が権利意識を持てば持つほど、和人との関係において何を小しゃくなというふうに考える差別的な感覚を持った者もいるわけですから、アイヌの関係者が権利意識を持てば持つほどそこにトラブルが生まれてくる、それが差別事件に発展する、こういう関係になると思いますので、人権擁護局はそういうふうな状況というものを十分に踏まえて、頭にそういう知識を蓄えて問題と取り組んでもらいたい、こういうことを申し上げておきます。
 そこで、このことは建設省は建設省サイドのことをそういうふうにやっておられるという表明が今ございました。それはそれなりに私は理解できます。そこで北海道開発庁の方にお尋ねをしますが、北海道開発庁の方とされては、今のような具体的な事例に対してずばり答えていただきたいというわけじゃないのですけれども、すべて物事が、北海道に今生活をしておる少数民族たるアイヌの関係者の問題というのは大体こういうパターンであります。例えば、私が北海道大学を見に行って、アイヌの友人とそこを散歩しながら、あのこんもりと茂った木の中を歩いておりましても、冗談半分ではありますけれども、小森さん、これはすべてアイヌモシリですよ、アイヌモシリというのはつまりアイヌの国土ですよ、アイヌの、我々の郷土ですよという意味のことを言われるのです。確かに歴史的にはそうなんです。歴史的にそういうような状況の中で我が国の北海道開発というものが次から次へ行われたわけですから、この際ひとつ北海道開発庁としてそういった感覚というものをどういうふうに受けとめられて、どういうふうにしようとしておられるか。開発とは、川をきれいに改修したり道路をつけたりだけが開発ではなくて、そこに住む人々の意識というものを真に人間らしく――アイヌという言葉は人間という言葉なんですよ。だから、真に人間らしくそこにアイヌ民族と和人との関係というものが人権を軸に整理されるということについて、北海道開発庁とすればどういうお考えでしょうか。
○平工政府委員 お答えします。
 私ども北海道開発庁といたしましては、昭和四十九年以来各省で構成されております北海道ウタリ対策関係省庁連絡会議の窓口を担当しておりまして、ウタリの人たちの生活水準の向上や、一般道民との格差がございますので、その是正にいろいろ努めているところでございます。今後とも関係省庁の皆さんあるいは道庁の皆さんとも十分連携をとりながら、ウタリの人たちの意向を十分把握しまして、福祉対策の推進に当たってまいりたいと考えております。
○小森委員 最近横文字でマイノリティーという言葉がよくお互いの間で使われます。少数者ということです。人権という問題についてはかなり認識があるようでも、少数者の物の考え方というのは多数者には理解しがたいのです。そこでマイノリティーということが非常に強調されるわけでありますが、先ほどの姿勢は私は基本的に正しいと思いますので、さらにそれを深めつつ、みずからに問い詰めつつ、果たして少数者の意見というものを自分が本当に受けとめているだろうかどうだろうかということを自分に確かめつつ、ひとつ北海道開発庁の仕事を進めていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 それから、この際ちょっと――その前に、まことに失礼をしたのですけれども、先ほどの清算事業団との関係におきまして、我が国労働行政の役所である労働省の意見を伺いたいと思っておりましたが、時間の関係でちょっと素通りをしました。今さらまた逆戻りをしても、もう清算事業団の方もお帰りをいただいておりますので、申しわけないですけれども、いつでもひとつお引き取りをいただきますように。済みません、これは私のちょっとミスでございますので、お許しをいただきたいと思います。
 それで、アイヌに関係してもう一つだけお尋ねしておきたいと思いますことは、文部省の方に、アイヌ問題の記述というのが中学、高校の教科書にあるのではないかと思いますが、基本的にはどういう記述の仕方になっておるのかということをお尋ねします。
○矢野説明員 現在、教科書におきまして、アイヌあるいはアイヌ民族の問題につきましては、小学校の社会科、中学校の社会科、さらには高等学校の現代社会、日本史等の教科、科目で取り上げられているところでございまして、例えば中学校の社会科の教科書について見てみますと、中学校の社会科は地理的分野、歴史的分野、公民的分野というふうに分かれているわけでございますけれども、それぞれの観点から取り上げられておりまして、まず地理的分野では、北海道の地理に関してアイヌ民族の存在について記述がございます。また歴史的分野では、江戸時代、明治時代等における北海道の開拓に関連いたしましてアイヌの歴史が記述されてございます。さらには公民的分野では、これは解決されるべき差別の事例として取り上げられておるわけでございまして、そういう形で地理、歴史、公民といったような分野でそれぞれの観点から取り上げられているところでございます。
○小森委員 私もまた後ほど、資料を若干取りそろえておりますけれども、資料を全面的に取りそろえまして目を通させていただきたいと思っておりますが、先ほどのお話の限りでは、アイヌ民族の存在の事実というものが教科書で取り上げられておるということでございますので、これは本当に初歩的なことでございますけれども、かつて、当時の中曽根総理大臣が、日本という国は単一民族国家だ、こう言ってアイヌ民族の存在を無視した発言がございました。これはまことにすぐれた態度であったと思いますけれども、当時の法務大臣が総理大臣に注意を促したというのを新聞で読んだことがあります。そして総理大臣の態度もアイヌ民族というものが存在するということをやはり無視できないという態度に変わったという記憶がございますが、その限りでは、教科書はそういうことを取り上げられておるということはよいことだと思います。
 それで問題は、解決しなければならない差別の事例とか北海道開拓の歴史とかということについても、本当にマイノリティーの立場の者というのは、大きな声で叫びたいけれども、大きな声をしてもなかなか世間に通らないという苦しみをずっと味わいながらいっておるわけですから、さらにさらに、ひとつ人権の角度から、適当な時期には教科書も見直しをされるんだろうと思いますが、十分にそこら辺のところは念頭に置いてやっていただきたい、こういうふうに思います。
 そこで、この際ひとつこれも事実として申し上げておきたいと思うのですけれども、根室からどのぐらいありますかね、私の記憶では二、三十キロだと思いますけれども、納沙布岬に参りますと、これは根室市ではないかと思いますが、あそこに北方館というのがありますね。十五年くらい前に参りまして、そこで変なこと書いてあるなと思ったから、きのう問い合わせしてみたのです。問い合わせをしてみたら、北方館のあるそれは、北方領土を望遠鏡で見たりする、それから千島列島が得撫島以北十七島を含めると四国くらいの面積になるとか、それからどういう資源があるとかいうようなこともいろいろ書いてあるわけです。北方領土返還をめぐる建物だと私は思うのですけれども、その建物のすぐ下の方に、一七八九年というからフランス革命の年です。あそこで和人といざこざがありまして、それを多分、国後・目梨の戦いと言うんだと思うのですけれども、歴史的には。そこで和人が七十一人殺されたということを記述した碑が建っているんですね。それでアイヌの方の処刑者は三十七人ということもたしか記述してあったと思うのです。きのう問い合わせたのは、そのことに対する現地の説明書きみたいなものがありますので、それはどうなっていますと言ったら、これはやはり和人側がむちゃをしたからアイヌ民族がやむなく立ち上がってそういうことになったんだという記述になっているというから、それは私は安心したのですけれども、さっきの北海道の開拓の歴史ということで、そういったところがそうたくさんありはしないと思いますけれども、やはり正しく歴史的に取り上げられなければなりませんので、そんなこともひとつ念頭に置いておいていただきたい、かように思います。片方は殉難の墓碑が建っておって、片方は処刑をされた三十七人というようなことでは、歴史は全く暗やみにその真実が覆い隠される、こういうことになりますので、その辺もひとつ文部省の皆さん方に頭に入れておいていただきたい、かように思います。
 そこで、時間がだんだんなくなりますが、もう一点だけ事実の問題としてお尋ねをしたいと思います。
 それは旧土人保護法の問題であります。これは、土人保護法という言葉自体がべっ称、べっ視感に満ちておるということはだれしも認めるところだと思います。しかし、これが現行法として今生きておるわけですね。我が国法制の中にあるわけですね。それで、この点につきましては、アイヌに関する新法という法律を北海道ウタリ協会が要求をされており、北海道当局もそれはまことに正当だというような意味のバックアップが行われまして、政府、各省庁に働きかけが行われておると思います。
 これは後ほど聞きますけれども、とりあえず、事実は、旧土人保護法に基づいてある一定の面積を、つまり農業用の土地として給付するというか、おまえらにこの土地はやるというような格好になって、その土地がそれぞれの名義で旧土人保護法に基づいて一定面積、給付という言葉は当たらないと思うけれども、便宜上法律の用語に従いまして言いますと給付地があると思うのです、給与地ですか、そういう言葉遣いになっておると思いますが、その土地が当初アイヌの手に渡ったんだけれども、それがその後の社会経済の変動によって土地所有関係が今日ではどういうふうな数字にとどまっておるだろうか。つまり問題は、いろいろな事情で、その土地を次から次へと隣の土地を買うてふやしておれば、それは経済が豊かになるのですけれども、だんだんだんだん減っておるということになれば、生活が追い込まれておるということの一つのバロメーターになると思いますが、その点の数字がわかっておれば、ひとつお知らせいただきたいと思います。
○炭谷説明員 北海道旧土人保護法に基づきまして、法律上は下付されたというふうな用語を使っておりますけれども、当初下付された土地の面積は九千六十一ヘクタールでございます。そこで、現在残っている下付された土地の面積は、六十三年度末の数字でございますけれども、千三百四十ヘクタールが残っておる。したがって、他のものは第三者に譲渡されたと思われるものでございます。
○小森委員 この事実をもってみてもおわかりをいただけると思いますけれども、旧土人保護法で保護政策をとる、こういう我が国明治政府から大正、昭和にかけてとっておるわけですけれども、そのことが決して保護ではない。そして、これは私どもの運動の水平社の精神ですけれども、人間はいたわるべきものじゃないのです。ここは法務省人権擁護局は基本的に考えておいてくださいよ。つまり、対象団体と対立するのはそこなんですから。いたわるべきものじゃないのです、尊敬すべきものなんです、人間は。土地を下付してやる、アイヌモシリをうまく開拓の名において我が国が領有しておいて、そして下付してやる、おまえらの生活を守ってやるという考え方からいったら、その政策は決して成功しないのであります。例えばカナダにおけるカナダ・インディアンの状況も私は見ましたし、また、その土地の指導者の弁護士なんかやっておられる人とかなり突っ込んだ議論をしました。結局、あれはリザーブといいまして、やはりここの下付の土地と同じような感じになると思います。一定の地域に住んでそこでさまざまな行政政策がとられておるのですけれども、結局はいたわるということではどうにもならないのでありまして、尊敬する、そして人格を認める、その人格を認めるに至る到達点における行政諸策をプロセスでどうするか、こういうことでないと問題は解決しないのであります。そういうことで、このこともひとつよく念頭に置いておいていただきたいと思うのです。
 さて今度は、今日かなり具体的に問題が展開をされておりますことについてお尋ねをします。
 実は、私の発言は非常にデリケートで難しい問題なんですけれども、ある学者などの努力によりまして「アイヌ史資料集」というのが出ているのですね、その「アイヌ史資料集」の中に収録をされておりますもののうち、実はずばり申しまして、具体的なアイヌの名前を挙げて、そしてそれに梅毒だとか遺伝梅毒だとか中等トラホームだとか、ちょっとこれは専門の字ですから読み方が違うかもわかりませんけれども、眼瞼縁炎ですか、つまり、病名をずっと個人の名前を挙げてやっているのですね。これは歴史的な資料なんです。しかしながら、このことが今ごろ出ることとして、資料なのか、あるいは場合によっては――これはまだ一、二生存者もおられるようであります。例えば小学校一年生ぐらいの者のことも書いていますからね。六十何年たっていますから、七十何歳とか八十歳くらいで生きておられる人もおられるそうです。ほとんどの方は亡くなっておられるのだろうと思いますけれども。ここに書いてある人の子供さんとか孫さんは、この人はわしのおじいさんだとかわしのおやじだとかいう人はたくさんおられると思うのです。それで、資料であるとか、あるいは、いやそれは差別文書であるとかということは、今現地で多少議論をしておることであって、遠く離れたここで今にわかに議論すべきことではないと私は思うのです。
 ただ、お尋ねをしたいのは、今までずっと私がいろんなことで答弁をいただきましたと同じように、日本政府はアイヌ民族に対して大変なべっ視感情を持って物事を行ってきた、そのことのあらわれがこの「旧土人衛生状態調査復命書」とか「アイヌ医事談」とか、これは主としてお医者さん系統の人が報告書を出されたり書かれたりしておるのでありますが、非常にべっ視感を伴っておるからこそこういうものができたのではないかというふうに私は思っています。しかし、それはべっ視感とかべっ視感でないとかということは、今はこの時点にさかのぼって私は言っているのですからね。現在これが資料集で出ておることについては現地で今議論をしておる、今ここでにわかに法務省人権擁護局あるいは厚生省と議論をして結論を出すべきものではないと思いますから、それは私はきょうのところはそこのところには触れずにいきたいと思います。
 ただ、我が国のこれまでの歴史的取り組みの中で、こういった個人名を挙げて、いかにも保護政策をとるための資料だというような格好をして、だれべえが梅毒じゃとか、だれべえがどういう病気じゃとか、つまり簡単に言うと、お医者さんの、あれ何というのですかね、診断のときに書く書類ですね、ああいうものはある程度お医者さん以外の手に渡らなければまとめられない、あるいはお医者さんがまとめたとしても、こういうものをやるとお医者さん以外のところへ回るということになる、そのことの扱いが私は歴史的に大問題であったのではないか。
 そこで、医師法なのか医療法なのか、何か知りませんけれども、刑法にもそういうことがあるのかもしれませんけれども、お医者さんが自分が診断をしたことを他に漏らすことを禁ずる法律があると思いますけれども、その点について今ここで手元に資料があれば、厚生省の方でお知らせいただきたいと思います。
○丸山説明員 先生お尋ねの医師の守秘義務の関係は、法律的には刑法に規定がございまして、刑法の百三十四条、秘密漏えい罪、医師、薬剤師その他でございますが、「故ナク其業務上取扱ヒタルコトニ付キ知得タル人ノ秘密ヲ漏泄シタルトキハ六月以下ノ懲役」という規定がございます。
 お尋ねの「旧土人衛生状態調査復命書」でございますが、これは警察医であります諏訪医師という方が作成をしたということでございますが、仮にその調査復命書なるものが初めから公表される可能性をはらんで作成されたという性質のものである場合には、それを承知して当該医師がいかに衛生状態の改善に熱意を有するからといって、個人名を記載したという場合には、大正五年時代とはいえ、先ほど申し上げました刑法上の守秘義務を持つ職業に従事する者としてはやや軽率だったと言わざるを得ないと思いますが、しかし、通常、調査復命書なるものは、それが衛生状態の改善という行政目的のみに使用されることを念頭に置いて当該医師も作成をしているはずでございまして、そういったような場合には、当然その勤務先である警察の指示によって衛生状態を調査した事務でございますので、その医師について、いわば守秘義務あるいは先ほどの刑法上の漏えいという問題は起こり得ないのではないかと考えております。
 いずれにしましても、個人名、病名が記載されている資料の公表というのは、プライバシー保護の観点から問題でございまして、今日においては、行政庁が行っております各種の疾病調査におきましても、罹患者の個人名が公表されるというようなことは考えられないことでございます。
○小森委員 さまざまな議論をこの国会の場で可能な限りして、そして現地におけるアイヌ解放運動の関係者がみずからこの問題に対する歴史的評価、結論を出すべきものであると思います。
 したがって、その面においては、私は立ち入ったことは差し控えたいと思いますが、仮に北海道の警察、北海道庁警察部がその衛生状態を調査したいという場合に、どうして個人名が警察の段階で、だれべえが梅毒で、だれべえがどうだとかいうようなことが必要なのかということを考えると、結局大いなる疑問がある。そして、そのときの警察官の警察官たる資質の問題も考慮に入れなければならない。私は、最近のことをよく知っていますけれども、現在の警察官でさえ秘密をどういうふうにばらすかというふうな問題についても、しばしば苦い思いをすることがございますが、そういう観点から、どうなんですか、これは旧土人保護法を所管する厚生省とされて、こういうものが土人保護法上、名前まで挙げて、病気の傾向がどうかということはそれは結構なことだと思いますけれども、名前まで挙げて、年まで挙げて、それが小学校の一年生か二年生かというようなことまで書いてするということは、プライバシーの侵害になればいけないけれども、ならなければよいというようなことになるのでしょうかね。
○丸山説明員 先生お尋ねの、警察での捜査という点でございますが、これにつきましては、戦前は衛生警察ということで警察の所管でございましたが、現在では厚生省で所管している事務がかなり多うございまして、例えば食品衛生業者の衛生状態でございますとかそういった衛生警察的なものは、現在厚生省で所管いたしておるわけでございます。
 今お尋ねの、旧土人法の適用の関係で個人名まで必要かどうかという点でございますが、私どもこの調査復命書の目的についてつまびらかに承知いたしておらないわけでございますけれども、私どもの厚生省の事務として、例えば難病の調査がございますが、この場合には、氏名を確認する場合と氏名を確認しない場合がございます。氏名を確認する場合といいますのは、後ほどの難病の治療費をお支払いするために、本人であることを確認するために氏名を確認しているわけでございます。仮にこの調査復命書の目的の一つの中に、例えば旧土人保護法の第五条で「疾病ニ罹リ自費治療スルコト能ハサル者」に対して救療をする、要するに医療費を支払うという規定が当時ございましたので、仮にそういった後ほどの治療費支払いのために個人ごとの疾病情報を把握する必要があったというのであれば、それなりの必要性もあったのではないかというふうにも考えますけれども、これはあくまで仮定の話でございますので、私どもとしては必要な範囲における必要な調査がされるべきものであるというふうにも考えているわけでございます。
○小森委員 今日の状況から見て、こういうことがもし今日時点でやられるとすれば、それは私は大きな問題、大社会問題となると思います。
 これは、保護の名のもとにつくられたアイヌ人の病気の一覧表というような性格を持っておる。以前問題になりました部落地名総鑑というのは、就職との関係において、簡単に言うと部落民の一覧表、こういう格好になるわけでございますから、厚生省としてもこういう歴史的事実を十分教訓として酌んでいただいて、この旧土人保護法が厚生省の所管である限りは、ひとつ可能な限り憲法の精神に合ったような行政諸策と取り組んでいただきたいということを申し上げたいと思います。
 そこで、この際もう一点だけこの問題と関係して明らかにしておきたいと思いますことは、この「アイヌ史料集」の中のどこかの一節に、梅毒が多いということを書いてあると同時に、梅毒という病気はアイヌ人の固有の病気というか、まつわりついて非常にアイヌ人と深い関係にある病気だというような、どういう難しい漢語であったかちょっと覚えていませんけれども、そういう言葉が使われておるわけで、これは医学上はどうなんですか。梅毒というものはアイヌ人と特に深い関係があるとか、特にこれはまつわりついておるとか、遺伝的にそれはなかなか難しい問題だとかいうようなことなのかどうか、それをお答えいただきたいと思います。
○曾我説明員 御説明申し上げます。
 先生御指摘の復命書におきまして、当時のウタリの人々の梅毒の蔓延状態と申しますか罹患状態を「梅毒ハ殆彼等種族ノ固有病タルノ観アルヲ以テ、」というような記述で表現してございますが、梅毒がウタリの人々の固有のものであるという事実については全く承知をいたしておりません。また梅毒は、御存じのようにスピロヘータによります感染性の疾患でございまして、我が国では既に一五〇〇年の早い時期に近畿地方から関東地方にかけて流行を見ているということを文献的に知ることができるのでございます。
○小森委員 そのお答えによって、この資料集で大変屈辱感を味わうアイヌの皆さんは、今日の我が国政府はここに分析してあると同じような感覚ではない、それは日本本土の側でも一五〇〇年代に流行、蔓延をした病気であるということが、ここで、国会の議論のやりとりの中で出たということは、ある意味の正しい理解を進める上で私は大事なことであったと思います。
 そして、この際申し上げておきますけれども、「アイヌ民族を理解するために」という北海道から出た文書、あるいは「アイヌ民族の自立への道」、これは北海道ウタリ協会から出た文書でありますが、これなどの中にも、簡単に言うと、和人が持ってきた病気じゃないか、本土から持ってきた病気じゃないかということが書かれておりまして、その辺のところがこれらの警察の分析では逆になっているんですよね。その逆になっているということが今日一般の大衆の目に触れた場合に、それが必ずしも人々を少数民族の問題を深く理解し正しい認識に立たすということにはならない、こういうふうなことなんでありまして、先ほどの答弁がございましたので、ある程度物事を解決することに役立つというふうに思います。
 時間が参りましたので最後にお尋ねをしますが、今北海道ウタリ協会は、旧土人保護法を廃止して本当に生活、文化、経済あるいは政治への参加の道などを求めた法律案を提示して、そして北海道でもたしか審議会か何か設けられていろいろ議論して、北海道としてまとまって政府にひとつ働きかけよう、こういうことになっておると思うのでありますが、これは内閣の内政審議室だと思いますが、今のところその問題の政府の取り組み状況はどうかということをごく簡単にお知らせいただきたいと思います。
○中西説明員 お答えいたします。
 今お尋ねのアイヌ新法に関する要望書につきましては、北海道知事の方から政府に対して提出がなされまして、中身につきましては、法制上の問題を含め、非常に種々の難しい問題が含まれております。したがって、今後政府として慎重かつ十分な検討を行っていかなければならないというふうに考えておりまして、そうした観点に立ちまして、先ほど北海道開発庁の方からお話がございました北海道ウタリ対策関係省庁連絡会議のもとに検討委員会を設けまして、この中で御指摘のアイヌ新法問題について鋭意検討を行っている最中でございます。
○小森委員 十分にとか鋭意検討しておるとか、そういう修飾語が余計つくたびに、本気でやっておらぬというふうに私は受けとめておるのです。私は、長らくの私の経験でそういう日本語の応対をそういうふうに理解しているのですが、鋭意ぐらいか、あるいは十分ぐらいで、やりますというようなことに、そういう気持ちになってください。そしてこれも長らく、今私がずっと証明をするような意味で、まだまだいっぱいあるのですけれども時間の関係で飛ばしているわけですが、やってきておるわけですから、苦しんできておるわけですから、だからそこでどうしてもなじまない問題はなじまないと討論して決めたらいいのですから、だからひとつ速やかにそういう問題は解決するようにやっていただきたい、こう思います。
 最後に法務大臣、えらい時間がなくて済まぬのですが、アイヌ民族の問題を通しても、やはり人権というものと俗に言われる世相というか世間の状況というものと深くかかわっておりますので、そういうことを念頭に置いていただいて、人権擁護行政の指揮監督の最高の立場の大臣としての力を発揮していただきたい。一言決意のほどを伺いたいと思います。
○長谷川国務大臣 ただいま委員のお話をいろいろ承りまして、本当に頭の下がる思いであります。
 御案内のとおり、アイヌの皆さんに対しても基本的人権が尊重されるべきは当然のことでありますし、人権擁護機関として今後ともアイヌの人々に対する差別を生む土壌を改めるための啓発活動を積極的に推進してまいる所存であります。
 なお、前にも申し上げましたとおり、人権が法務省の金看板でありますので、御期待に沿うよう最大の努力をいたしたいと思っております。
○小森委員 それでは終わります。ありがとうございました。
○小澤委員長 御苦労さまでした。
 小澤克介君。
○小澤(克)委員 冒頭、法務省入管の方にお尋ねいたします。
 青森短期大学に留学をしております中国の方、日本風に読みますと張祖強さん、チャン・トウチャンさんが、大学に入ってみたところが、夜学部いわゆる二部であったために、省令である入管法の運用基準によると、これでは在留資格が認められないということで在留期間の更新ができないまま、あした二十一日が期限、在留期間そのものは今月六日に既に切れておるそうでありますが、あしたまでに出国手続をとらない限り強制送還もしくは処罰の対象になるという事態が発生をしております。
 これについて、私いろいろ心を痛めまして、新聞等でかなり報道されておりますのでいろいろ情報を集めてみましたら、その後青森短期大学当局において事態の解決のためにいろいろな御努力がされて、そして二部から一部への編入を、かなり突っ込んだ検討をされていたようでございますが、けさ入りました最新のニュースによりますと、とりあえず昼間部の聴講生とすることに決めた。そしてその上で、八月に一部への編入試験を行うということが決まった。それが昨日だそうでございますが、それに基づいて本日、この張さん御本人が在留の更新をお願いに、これは仙台入管局になりましょうか、そちらの方へお願いするというような運びになったということが報道されているようでございます。
 これについて入管の方で知っておられる事情、あるいは端的に申し上げて何とかあした強制送還ということは避けられるのかどうか、その辺についてのお見通し等言っていただければ大変ありがたいと思います。
○股野政府委員 ただいま委員から御指摘のございました、中国人のこれまで就学生として日本に滞在しておられた方の留学生としての資格申請の問題でございますが、ただいま委員御指摘のとおり、青森短大における入学手続について問題があったということを入管当局としても承知いたしております。留学生についての在留資格についての基準を定めました省令の中で、夜間部の学生ということについては在留資格を認めない形になっております。
 そこで、この方の昼間部、すなわち一部への編入の可否ということについて近々その大学側において結論が出される、こういう見通しであるのであれば、当局といたしましてはとりあえずその結論が出るまでの間の在留については、具体的な申請をいただきまして、それに基づいて検討をさせていただくということにさせていただきたいと思っております。
 なお、その昼間部の学生としての申請が具体的にどういう学生として申請をなされるのか、この点についてもよく検討させていただきたいと思いますが、とりあえず昼間部への編入についての結論が出るまでの間については、その在留を当方としても認めていく用意はございますので、具体的な申請を待って検討させていただきたいと思っております。
○小澤(克)委員 その件で、もう一つだけお尋ねしておきますが、今も答弁にありました省令である入管法の運用基準では、「専ら聴講による教育を受ける研究生又は聴講生として教育を受ける場合は、当該教育を受ける教育機関が行う入学選考に基づいて入学の許可を受け、かつ、当該教育機関において一週間につき十時間以上聴講をすること。」こういう規定があるようでございます。
 報道されているところによりますと、とりあえず昼間部で聴講というのは恐らくここを意識して十時間以上の聴講という取り扱いで、とりあえずこの八月の一部編入までの期間を何とかこの基準に合うようにという大学当局としての配慮のように見受けられます。
 そこで、今のお話と若干重なるかもしれませんが、とりあえずこの聴講十時間という要件を満たせば、それはそれなりに期間更新の一つの要件を満たすということになりましょうか。
○股野政府委員 委員御指摘のとおり、一週間に十時間以上聴講するということが一つの要件に定められておりますので、その要件を満たしていただく必要がございますが、さらに、この聴講生として入学する場合には、その大学自体がきちんと定めた選考手続を踏んでいただくということももう一つの要件として必要になっております。
○小澤(克)委員 いずれにいたしましても、せっかく勉学の意思に燃えておられる方のようでございますが、あすという大変差し迫った状況になっているようでございます。報道されておるところによれば、きょうじゅうに本人が書類等の追完を行うということのようでございますので、ひとつ温かいといいますか、入管もいろいろ御苦労なさっていることは私もよくわかるのです。実態は就労目的というような方も一部いらっしゃるのは恐らく事実だろうと思いますので、いろいろ御苦労があろうことはよくわかっておりますが、それを承知の上で、こういう本当に勉学の意思に燃えておられる方には、余りしゃくし定規でない温かい配慮をぜひなされるように心から希望しておきたいと思います。
 それでは、その点は打ち切りまして、本日は、実は京都府宇治市伊勢田町ウトロ五十一番地ほか二筆の上に居住する在日外国人約八十世帯、三百八十人というふうに聞いておりますが、その方々が土地明け渡しを求められてまさに生存権を脅かされている件について、人権擁護の観点から、あるいはこれは国際問題にも発展しかねませんし、さらには通商問題にも発展しかねないかなと思います。その理由は順々におわかりいただけると思いますが、この件について、人権擁護を任務といたします当委員会において質問をさせていただきたいと思います。
 実は本年六月四日に、我が党の嶋崎議員を団長といたします党調査団を現地に派遣したわけでございますが、その一員として私自身、現地を調査してまいりました。それに基づいて、実情を報告しつつ若干御質問したいと思います。基本的には、我が国と特別の歴史的経過を有する在日外国人の人権の問題であろうかと思うわけですが、今も申し上げたとおり、同時にこれは外交問題にもあるいは通商問題にも発展しかねない大変重要な事件ではなかろうか、かように思うからであります。
 それで、私自身調査に参りまして、ある程度事実関係について承知をしているつもりでございますが、念のために、事実関係についてまず若干確認をさせていただきたいと思います。
 最初に、ウトロ地区というふうに以下略称させていただきますが、このウトロ地区における在日外国人の居住状況、これの国籍別あるいは男女とか大人、子供の別とか含めておわかりになれば、まず確認を願いたいと思います。
○股野政府委員 ただいま委員からお尋ねのございました京都府宇治市の伊勢田町ウトロ地区でございましょうか、ここについて、当入管局において把握しております外国人登録の統計によりますと、まず、京都府の宇治市において、平成元年三月末の時点において二千五百二十人の韓国籍、朝鮮籍の方の外国人登録がございます。さらに今度は、その宇治市の中の地区になりますか、法務省の方では市区町村単位以下の特定の区域別の登録者数については常時集計をとっておりませんので、このウトロ地区に限っての登録人員の具体的な数というのは直ちには算出できないわけでございますが、このウトロ地区には相当数の韓国、朝鮮の方々が居住している、こう承知しております。
○小澤(克)委員 わかりました。統計上は市町村単位でないと出てこない、あとは各登録を全部ひっくり返して住所を点検しなければ出てこないということでございますので、今の御答弁でやむを得ないかと思います。いずれにいたしましても、このウトロ地区に相当数の在日外国人、実質は韓国、朝鮮の方でございますが、居住しているのは、どうも今の御答弁からも間違いのないところのようでございます。
 そこで、外国人登録上からは必ずしも確定できないということでございますので、もう一つの手段として、建物登記等について調査する方法があろうかと思います。私の知るところでは、このウトロ五十一番地上に三十三棟の建物、登記のある建物がある。それから同じく、中荒(なかのあら)と読むのでしょうか、六十番には、四棟のこれまた登記のある建物があり、そしてそのほとんどが、所有者のお名前を見ますと、一見して韓国、朝鮮籍の方と思われる名前となっているようでございます。この点についてはいかがでしょうか。間違いないところでしょうか。
○清水(湛)政府委員 お答え申し上げます。
 先生の方からあらかじめいただきました資料によりまして調査しました結果によりますと、ウトロ五十一番地の土地上には三十三戸の建物が登記されております。うち、所有者の名前から韓国名ではないかというふうに推測される建物が二十二戸でございます。それから、中荒六十番地の土地上には登記された建物が四戸ございますが、うち三戸につきましては、やはり韓国名ではないかというふうに推測されるものがございます。
○小澤(克)委員 そうしますと、ウトロ地区に韓国、朝鮮の方が非常にまとまって住んでおられるという状況は建物登記からも裏づけができるかと思うわけでございます。それからまた、それではウトロ地区の土地ですね、本件土地についての実体的な所有権がどうなっているかというのは後で触れますが、裁判等にもなっているようでございますのでその点には触れないことにいたしまして、登記上どうなっているかということにつきまして、これまた私の知るところでは、いずれもつい最近まで日産車体株式会社の所有名義になっております。そして、昭和六十二年八月十二日付でしょうか、筆によっては若干日にちにずれもあるようでございますが、いずれにいたしましても、有限会社西日本殖産というところに売買によって所有権移転登記がなされているということのようでございますが、この点についても間違いないでしょうか。
○清水(湛)政府委員 お答えします。
 ウトロ五十一番の土地、それから中荒六十番地の土地、それから南山二十一番地の二の土地につきまして、いずれも御指摘のように六十二年八月十二日付の登記をもちまして日産車体株式会社から有限会社西日本殖産に対する売買による所有権移転登記がされております。
○小澤(克)委員 そこで、少しさかのぼりますと、まずウトロ五十一番地については、もとは個人の所有であったわけですけれども、昭和十五年六月二十九日付売買をもって日本国際航空工業株式会社に所有権が移転し、その後は昭和二十一年二月二十七日に日本国際航空工業が日国工業株式会社へと商号変更をされ、それから昭和三十七年八月一日付で、今度は会社合併によって日産車体工機株式会社という法人に所有権が包括承継され、そしてその後昭和四十六年六月一日にまた商号変更によって日産車体株式会社の現在所有になっているという経過です。ですから、この間ずっと、法人格的には同一の法人格を有する者の所有が継続していた。それから、中荒六十番地に関しては、これまた、かつては個人の所有であったのですが、昭和十五年六月二十六日付売買で国際工業株式会社の所有となり、昭和十六年七月一日付の会社合併によって日本国際航空工業株式会社の所有となり、それ以降はウトロ五十一番地と同じ運命をたどっているようでございます。また、もう一筆、南山二十一番地の二、ここはウトロ五十一番地とほぼ同一の所有権の変遷をたどっているようでございますが、この点について、このとおり間違いないでしょうか。
○清水(湛)政府委員 私どもの調査したところによりますと、お尋ねのとおりでございます。
○小澤(克)委員 そこで今度は、実は私どもの調査したところによりますと、この土地に韓国、朝鮮の方が多数住みつくようになった経過といいますか、原因にさかのぼりますと、その詳細はまた次にお尋ねしますが、とりあえず承知しておるところでは、戦時中、昭和十六年七月一日に日本国際航空工業という会社ができまして、そしてそこが京都飛行場の建設あるいは航空機の製造等に当たった、そしてそのために朝鮮人労働者を多数動員した、それが発端だというふうに聞いております。
 そこで、その詳細な関係は後回しにいたしまして、とりあえず、この会社についての法人格の継承関係について確認をさせていただきたいのです。
 これまた私の知るところでは、日本航空工業株式会社という会社と国際工業株式会社という二社が昭和十六年七月一日に合併いたしまして日本国際航空工業株式会社という会社になった。そしてその後、昭和二十一年二月二十七日に日国工業株式会社と商号を変更した。一方、戦後の混乱期におけるいろいろな企業整理等々の関係で、昭和二十四年四月一日付で新日国工業株式会社というものが設立された。これは、旧会社日国工業からの相当部分の現物出資等によって設立された新会社のようでございます。そして、今の新日国の方が昭和三十七年一月一日付で日産車体工機株式会社と商号を変更した。そして、やや複雑になりますが、昭和三十七年八月一日に至って、旧日国、すなわち日国工業株式会社と、新日国が商号を変更いたしました日産車体工機株式会社が合併をいたしまして日産車体株式会社になった、このように承知しておりますが、このとおり間違いないでしょうか。
○清水(湛)政府委員 日産車体につきましては、昭和三十四年以前の閉鎖登記簿につきましてはもう廃棄になっております。それから日国工業については、昭和二十四年以前のものが廃棄、つまり書類の保存期間経過による廃棄処分がなされておりますので、それぞれのその前の状況というのは、設立年月日等を除きまして内容は不明でございますけれども、御指摘のように、日国工業株式会社は昭和十六年に設立されました。そのときの商号はちょっと現在の登記所の商業登記関係の書類でははっきりしないのですけれども、十六年に設立された。昭和二十四年に第二会社として新日国工業株式会社を設立し、日国工業は解散したわけでございます。その新日国工業が昭和三十七年に日産車体工機というふうに商号を変更して、さらに昭和三十七年に、解散し清算中の日国工業株式会社を合併した。こういう経過になっているわけでございまして、御指摘のとおりであるというふうに思います。
○小澤(克)委員 私、先ほど、ちょっとやや正確さを欠いたかと思いますが、新会社と旧会社が合併したのが昭和三十七年八月一日でございますが、この会社は日産車体工機という名称だったわけですけれども、昭和四十六年六月一日に至って日産車体株式会社と商号を変更したということのようでございます。今御確認をいただきました。結局のところ、現在存在いたします日産車体株式会社がこの飛行場建設等に当たった日本国際航空工業株式会社を法人格的にも同一性を持って継承しているということが明らかになったかと思うわけでございます。今の御答弁では、一部登記簿等からは確認できないというお話がございましたが、これはもう日産車体の三十年史などというものから間違いのないところではなかろうかと思うわけでございます。
 それでは、あと二分しかございませんが、今、この土地の上になぜ外国人が多数居住するに至っているかということについての原因等について少しお尋ねをしたいと思います。
 私の知るところでは、この日本国際航空工業が飛行場建設あるいは航空機製造の国策会社として設立をされた、そして当時、逓信省が、なぜ逓信省なのか今となってはちょっとよくわかりませんが、京都飛行場の建設を決定し、そして京都府も協力して、この国策会社と三者一体となって飛行場建設に邁進をしたということのようでございます。その飛行場建設に朝鮮人労働者が大量に動員された。そして、日本国際航空工業の敷地内に飯場が設けられ、そこに居住をしていた。ところが、飛行場が完成しないうちに敗戦を迎え、事業は当然廃止になりまして、そして、多くの朝鮮人労働者は帰郷の費用を出されるとかいったことは一切ないままに、そのまま事実上解雇という形でほうり出されてしまった。そしてそのまま飯場に住みついた。当時約三百世帯、千三百人に上ったというように承知しておりますが、このとおり事実関係に間違いないでしょうか。これは、本来ならば日産車体の方にお答えいただくのが一番わかりやすいのですが、とりあえず通産省を通じて調査をお願いしてあったのですけれども、いかがでしょうか。
○鈴木説明員 お答えいたします。
 先生今お話しになりましたように、戦前の昭和十四年に日産車体の前身でございます国際工業、これが設立されまして、飛行機の組み立て工場あるいは飛行場の用地という建設のための土地を取得した。その土地の工事につきましては、当時大倉土木という建設会社に建設を委託いたしまして、その建設のために事務所あるいは飯場がこの敷地内に設置され、そのための建設の関係者がその敷地内に住まわれたということは、日産車体に確認いたしまして、そのようなことでございます。
 その後、工場ないしは工事も終わりまして、戦後のいろいろな混乱の中でかなり多くの方々がその敷地内におられまして、ただ、それが建設関係の方々と同じなのかどうか、その辺は特定できませんけれども、かなりの多くの方が住まわれているということにつきましても、日産車体に確認したところでございます。
○小澤(克)委員 それじゃ、午後にさせていただきます。
○小澤委員長 午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二分休憩
     ────◇─────
    午後一時一分開議
○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。小澤克介君。
○小澤(克)委員 午前中の最後のところで、通産省を通じて本件土地上に多数の朝鮮人、韓国人の方が居住するに至った経過についてお尋ねしたのですけれども、その中でちょっとはっきりしなかったのですが、日本国際航空工業、すなわち現在の日産車体の認識としては、当時大倉土木というところに建設業を請け負わせていたということでございますが、この朝鮮人労働者の雇用主体がだれであったかというような形式的なことはともかくとして、本件飛行場建設工事に、これは発注者が当時の日本国際航空工業であったわけでしょうが、従事した方々が当時の日本国際航空工業の敷地内の飯場に多数居住し、そしてまさに飛行場建設業務に従事していた。そして、その方々が敗戦で事業廃止後そのままその飯場に残った。その後の人の入れかわり等は当然あったかもしれませんが、当初の発端としてはそういう事情であったということについては、このような認識を日産車体として持っておられるのでしょうか。もう一遍確認を願います。
○鈴木説明員 お答えいたします。
 大体先生のおっしゃったような認識だと思っております。
○小澤(克)委員 そこで、当時の日本国内における朝鮮人労働者の状態はどんなものであったかということについてお尋ねをしようかと思ったのですが、これについて十分答えられる官庁が今政府内には存在しないということだそうでございます。それ自体、いかに私ども日本政府が戦時中あるいは戦前も含めて、朝鮮の方々に対してどんな仕打ちをしたのかということについての認識が全く欠ける、あるいは知ろうとしないことの一つのあらわれではなかろうかと思うわけでございます。歴史に対してきちんと直面をし、歴史を知ることのない者は現状判断することもできませんし、ましてや将来についての展望を持つこともできないのは明らかでございます。今の日本の出発の原点となった戦前戦時中の我々日本人の行った行動については、やはりきちんとした歴史認識を持たなければならないのではないかと思うわけでございます。
 そこで、どこからも答えられないということでございますので、やむを得ず、私の方で若干知り得たところを、これは御報告の形になろうかと思いますけれどもさせていただきたいと思います。
 もとより、私とて歴史的な認識は大変浅いわけでございますが、戦前において、特に朝鮮を日本の植民地とした日韓併合以後、大変な朝鮮人の労働者が日本国内に流入しているわけでございます。その原因については、二つぐらいの要因があろうかと思います。
 一つは、一九一〇年から一九一八年にかけて行われました土地調査事業。これは近代的所有権の確立を名目として行われたわけでございますけれども、この際に耕地の多くが国有地とされてしまった。前近代的な土地の利用関係を無理やり近代的所有権、使用収益処分のすべてを備えた全き権利としての近代的所有権に当てはめていくということはいろいろな無理が伴うわけでございまして、そういうことは日本国内でも恐らく明治初期にあったのだろうと思いますけれども、まさにこのようなことが朝鮮半島において行われた。そのために、多くの土地が国有地にされる。そしてまたその一方で、露骨な植民政策によって、例えば東洋拓殖株式会社の土地所有が短期間に極めて大きく増大している。また、大小の日本人の地主の所有に帰する土地も増大した。そういった結果、結局朝鮮半島における自作農が土地を失い小作農になり、あるいは雇農になり転落し、そしてしかも、小作料が実に七〇%というようなまさに過酷な状況であったために多数の朝鮮人農民が離農せざるを得なかったというのが歴史的な一つの要因でございます。
 それからもう一つは、第一次大戦後、日本国内の諸産業が大変勃興いたしまして、そのために多くの労働需要を生じた。さらに、後に至っては強制連行というような、これは戦争によって国内の労働力が払底したことに起因するわけでございますけれども、そういった要因が重なって日本国内に多数の朝鮮人労働者が流入したというのが歴史的な事実でございます。
 どのくらいの方が流入したのかということについては余り調査も進んでないようでございますけれども、例えば坪江豊吉さんという方が、この方は公安調査庁などにおられた方のようですけれども、各種官庁資料によってまとめられた表がございます。これは「在日朝鮮人運動の概況」という出版物でございますが、一八八三年末には日本国内における朝鮮人労働者の人口はわずか十六名だったのが、一九〇九年末に七百九十名、二〇年末には四万七百五十五人、三〇年末には四十一万九千九人、三八年末には七十九万九千八百七十八人、四〇年末には百二十四万一千三百十五人、四四年末には百九十三万六千八百四十三人、四五年、終戦の年には二百三十六万五千二百六十三人。このように多数の朝鮮人が日本国内に流入しているという事実があるようでございます。この点について、日経連の専務理事をされました前田一さんの「特殊労務者の労務管理」という一九四三年に刊行された出版物によりますと、「欧州大戦勃発以降内地の産業は勃興し、事業界は未曽有の殷盛を告げ、労力の需要は頓に増かを来し、その結果内地労働者の吸収のみを以ては充分ならず、寧ろ内地人に比して賃金の低廉なる鮮人労務者を積極的に誘引するに如かずとする機運を醸成し」たといぅような記載があるのもその裏づけではなかろうかと思うわけであります。
 さらに、強制連行でございます。これは、今まさに日韓間でホットな問題となっているわけでございますけれども、これについても十分な調査がなされていないわけです。
 例えば、強制連行と俗に言っておりますが、これは法的根拠は国民徴用令でございまして、一九三八年の国家総動員法に基づいて翌年七月に発布されたのでございます。したがいまして、一九三八年、三九年ごろから行われました強制連行に関しては、敗戦までの七年間に百五十万を超える、この中にはサハリンに連行された四万三千人の方を含むようですけれども、このように普通に言われているようです。客観的な裏づけのある資料といたしまして、第八十六議会説明資料に基づきますと、一九三九年、五万三千百二十人、それから高等外事月報という公的資料によりますと、一九四一年に十二万六千九十二人、四二年には二十四万八千五百二十一人、四三年には三十万六百五十四人、さらに朝鮮経済統計要覧という公的出版物によりますと、一九四四年には三十七万九千七百四十七人のようでございます。合計百五十一万九千百四十二人がこの徴用令による強制連行の対象となったという資料もあるようでございます。
 そして、その朝鮮人労働者の当時の生活状態はどうであったか、これについてもきちんとした調査が残念ながらなされていないわけですけれども、一般的に言われていることは、いわば公知の事実であろうと思いますが、労働条件は極めて劣悪で、賃金は日本人の約半分というのが常識であったというふうに言われております、そして、さきに挙げました前田一さんの同じ書物の中で、「彼等」というのは朝鮮人労働者のことでございますが、「彼等は極めて僅かな収入を得るに過ぎなかったが、その生活費も亦想像以上に低廉なもので、おそらく人間としての最低限度の生活を維持して居るに過ぎない状態であった。住居は粗末で壁は落ち屋根は打ち辛うじて雨露を凌ぐ程度のもの、殊に食物の点に就いてはよくもあれで生存に必要な栄養が接種されるものかと疑われる程であり、食ふ分量は多いが、彼等は全く米と塩と野菜で生きて居る有様であった」こういう表現がある。これはある意味で率直な表現ではなかろうかと思うわけでございますが、こういった状況であったことは間違いのない史実のようでございます。たまたまけさの新聞を見ておりましたら、「松代大本営工事の朝鮮人労働者「千人以上が死亡」」、実際に徴用された経験を持つ韓国の方がそのような証言をソウルでされているというような記載がございます。
 いずれにしても、大変過酷な、およそ人間として最低限度の人格の尊重もなされないような労働あるいは生活があったのではないだろうかということは疑う余地のないところであろうかと思います。
 本件土地における朝鮮人労働者の生活についても他の例とほぼ同様であったと思うわけです。現に、このウトロ地区におられた、そして現在までおられるムンクァンジャさん、文光子と書くのですが九歳で日本に渡って、一九四一年、十九歳でウトロに来た方ですけれども、その方の証言によりますと、「ウトロでは男はモッコかついで一日十二〜十四時間、ムチで働かされていた。女は飯炊きだから、朝五時の食事作るのに三時起き。」というような証言があるわけでございます。
 そしてまた、私自身が先般の調査で見たその飯場、ごく一部でございますが残っておりましたが、それはもう大変ひどいものでございまして、まさに掘っ立て小屋といいますか、屋根は片流れの屋根で、現在ではトタンぶき等になっておりましたが、当初はセメント袋のようなもので張ってあったそうでありまして、雨露をしのぐことすら不十分、飯場というよりもむしろテントに近いのではないかなという印象でございますが、そのようなところで起居していたということは間違いのないところのようでございます。現在では、私どもが調査した時点では、それぞれ皆さん自力で家を建て直しておられまして、中にはかなり立派なものもございますし、一応の水準にはなっているかなというふうに思いました。しかし、水道は実に一九八八年、一昨年になってやっと引かれたということのようでございます。まさに生存権が保障されていなかったということになろうかと思うわけでございます。
 こういう実情であったということを、今のところは質問というよりは報告になりましたけれども、ぜひ法務大臣初め御認識をいただきたいと思うわけであります。
 そして、このウトロ地区の朝鮮人の方々がたくさん居住していた土地が最近に至って売却をされるという事態が生じました。私の方で調査したところによりますと、二つ契約書がつくられておりまして、日産車体株式会社から許昌九という方に昭和六十二年三月九日付で四億円で売却されております。この方は日本名平山桝夫とおっしゃるそうです。そしてもう一つの契約書は、この平山さんから有限会社西日本殖産というところに昭和六十二年五月九日、最初の売買から二カ月後でございますが、今度は四億四千五百万円で売買をされているようです。なお、登記関係については、中間省略で日産車体から有限会社西日本殖産へと登記が移転しているようでございます。
 そこで、国土庁の方においでいただいていると思いますが、これら売買についての国土法上の届け出はどのようになっていましたでしょうか。
○大日向説明員 お答えいたします。
 御指摘の土地につきましては、県を通じて調査したところ、昭和六十一年十二月四日付で、譲渡人日産車体株式会社、譲受人平山桝夫を当事者とする国土利用計画法第二十三条の規定による届け出がなされまして、京都府において厳正に審査した結果、価格、利用目的、そういった面におきまして問題がないということでございまして、同法第二十四条第三項の規定により、昭和六十二年一月十三日付で、届け出当事者に対し勧告を行わない旨の通知を行っているという報告を受けているところでございます。
○小澤(克)委員 二つの売買を指摘したのですが、もう一つについてはいかがでしょうか。
○大日向説明員 お答えいたします。
 国土利用計画法の規定による届け出は、日産車体株式会社及び平山桝夫氏との間の売買に係るものでございまして、御指摘のような平山氏と西日本殖産との間の売買についての届け出はなされていないと聞いております。御指摘のような売買が仮に別途なされているという場合には、これは国土利用計画法違反という疑いも十分にございますので、早速京都府に対して事実関係の調査を指示するという所存でございます。
○小澤(克)委員 そこで実は、有限会社西日本殖産の代表取締役が、一時期でございますけれども、この平山桝夫氏であったという事実もあるようでございますので、その辺は若干ルーズになされたのかなというふうに思うわけでございます。お調べを願いたいと思うわけでございます。
 もう一つお尋ねをしたいのは、この国土法上の届け出、これは要するに価格が相当かどうか、価格監視を目的とする法律だと承知しておりますが、その前提として、この土地についての売買価格、価格幾らという届け出だったかについては守秘義務があるんだそうでございますのでお尋ねしませんが、前提として、何ら負担のない完全な所有権といいますか円満な所有権を前提とした価格設定として許可があったんでしょうか、その点いかがでしょうか。
○大日向説明員 お答えいたします。
 県に確認いたしましたところ、宅地所有権の売買についての届け出でございまして、所有権以外の権利は存していないという届け出内容になっている、そのように報告を受けております。
○小澤(克)委員 そこで次に、今度は、実は最初に申し上げたとおり、この有限会社西日本殖産によって住民に対する追い出しの訴訟が今どんどん行われていて、そのために今まさに外国人の方々が生存権について脅かされているという状況にあるわけです。
 それで、その裁判の状況について、これはわざわざ最高裁の方に来ていただくこともないかと思いましたので、あらかじめ調査をお願いいたしまして、私の手元に資料が届いております。それによりますと、追い出し訴訟が第一次から実に第十八次までありまして、第一次が平成元年二月二日付、第十八次が平成二年一月二十日付、いずれも京都地裁でございましょうか、原告が有限会社西日本殖産、被告が地域住民でございまして、トータルで八十人について追い出しの訴訟が行われている。いずれも建物収去、土地明け渡し訴訟でございます。それから逆に、地域住民の方から自分たちは所有権があるんだということを前提に、登記名義上の所有者がかわったらまた紛争が複雑になりますので、それを防ぐために、有限会社西日本殖産を被申請人としての処分禁止の仮処分、これも全部で六件申請があるようでございまして、そのうち一件は取り下げ、残る五件についてはいずれも認容をされている。もちろん保証金を立ててでございますが、されているという実情にあるようでございます。
 以上で事実関係の確認等を終わらせていただきまして、この問題について一体どう見るべきなのか。まさに生存権が脅かされているわけでございますけれども、とりわけここで問題となるのは、やはり日産車体の対応ではなかろうかと思うわけです。きょうは日産車体の方に直接来ていただいておりませんので、欠席裁判になってはまずいかと思いますが、とりあえず私どもの承知しているところを御報告して、足らざるところがあれば、今国会でもし無理であればまた次の国会ででも、もちろんそれまでにこの事態が解決していれば問題ないのですけれども、あるいは参考人として来ていただくことも、この際お考え願いたいと思います。
 この日産車体が何ゆえに結局は有限会社西日本殖産に売ってしまったのか、ここが私どもに大変不可解なところでございます。悪意にとれば、一種地上げに加担したのではないかともとられかねないわけですけれども、しかし、これについていろいろ私どもなりに状況を調査しますと、日産車体さんにもそれなりの方針があったのが結局思ったとおりにいかなかったというふうにも解釈されるわけです。できれば善意に解釈したいと私も思うわけでございますけれども、いろいろ調査いたしますと、日産車体さんはこのウトロに現に住んでおられる方に対して売却を考え、そのような申し入れをしたことも実はあるようでございます。申し入れ価格が六億四千万円であった、しかし、住民の側は先ほどからのような歴史的経過もあり、それは高過ぎる、公示価格でいいではないかというようなお話があって、結局まとまらなかったというのが事実のようでございます。そして日産車体さんの方も、これは報道されているところによりますと、「五十七年ごろから土地所有の正常化を目差しA氏を通じて住民に土地買い取りを働きかけてきた。しかし、A氏と住民の交渉がうまくいかないため、A氏がまず土地を一括して買い取り、その後時間をかけて住民を説得することを計画。第三者に売るつもりは全くなかった、」このように釈明しておられるというふうに聞いております。このA氏というのが実は平山桝夫氏のことのようであります。それからまた、他の報道によりますと、「(日産車体の担当者は)今、地元で問題になっている第三者への再転売については「絶対に転売しないということを(平山氏に)再確認している」」のだ、そして結局は居住者に買ってもらうという方針であるということも言明しておられるようです。したがって、日産車体としては、この平山氏を通じて最終的にはウトロ住民へのそれぞれ分譲を意図していた、この釈明を信ずれば、そのようにも解釈できるわけです。ところが現実には、平山さんが有限会社から代表取締役を辞任してその後この会社と関係なくなって、今では行方不明になっているというような状況もあるようでございますけれども、結果的には、先ほど紹介しましたとおり、実にこの住民八十人に対して十八次にもわたる訴訟でまさに追い出しが今行われているという状況にあるわけです。これはやはり、日産車体がどのような主観的な意思があったかはともかくとして、現時点で見れば極めて無責任といいますか、何といっても日産車体が事態の収拾に当たるべきではないだろうか、また、当たるだけの能力を備えているのは日産車体ではないだろうかというふうに常識的に判断されるわけでございます。
 そこで、これについてどうするかということを考えなければならないわけですけれども、私はドイツのベンツ社がとった行動についてここで御紹介をしたいと思います。日産と同じ自動車のメーカーであります西ドイツのベンツ社で、こういうことがございました。
 世界で初めてガソリン四輪車を開発したことの百周年記念事業として社史の編さんを企画して、これをケルン市の企業史調査協会というところに委託をしたんだそうです。そういたしましたら、その協会の調査の過程で、ナチス政権下の一九三三年から四五年にかけてユダヤ人その他をベンツの工場で強制労働に付したといいますか、そういうことが明らかになった。これに対してベンツは何をしたかといいますと、早速このことを自己批判いたしまして、そして、そのとき強制労働させられた方が今どうなっているか、あるいはその子々孫々がどうなっているか、もはやわからないわけでございますけれども、それにもかかわらず賠償金として二千万マルク、邦貨にして十四億四千万円を支払うことにした。結局、ユダヤ人協会等に寄附をするという形をとったようでございます。
 そして、このベンツの行動に関して、ベンツの広報担当のウースラ・スタイン女史という方はこのように言っておられます。「金は問題ではない。われわれのことを忘れずに調査してくれたことに意義があると、多くはこう評価してくれました。」ユダヤ人側がそう評価してくれたという趣旨だろうと思います。「だれに言われて始めた訳でもない、自主的な決定であることを私も誇りに思います。」このように言明をしているそうです。
 この同じ自動車会社のドイツのベンツ社と比較して、日産車体の対応は余りにもお粗末だと言わなければならないかと思うわけです。この問題は、後でお話ししますが、外交問題あるいは通商問題にも発展しかねない極めて重要な問題を含んでいると思います。
 何はともあれ、これは基本的には人権の問題、しかも人権の中でも最大の、最も根源的な生存権の問題であろうかと思います。今これまでるる説明いたしました経過について、ひとつ人権擁護についてを職掌とされます法務大臣、どのように受けとめられますか、率直なところをお聞かせ願いたいと思います。
○長谷川国務大臣 委員お話しのとおり、人権は法務省の最も大事な仕事でございます。昨年の二月に訴訟が提起をされていることは承知をいたしておりますが、法務省の人権擁護機関としては、関係者においてできるだけ円満に解決されるよう願っているところであります。
 なおまた、今後とも委員の御意見も十分体していろいろ検討、研究をいたします。
○小澤(克)委員 現に訴訟の行われることでございますのでいろいろ技術的にも難しいところはあろうかと思いますけれども、今の大臣の大変前向きの発言、大変ありがたいと思うわけでございます。特に、訴訟はあくまで有限会社西日本殖産と住民との間で行われているわけでございますので、その訴訟とは全然別に日産車体が事態の収拾に乗り出すということは何ら問題ではなかろうと思いますし、そのような方向に行政庁等が何らかの働きかけをするということは決して裁判に対する干渉等にはならないのではないかとも思いますので、ぜひ今のような方向で大臣の御努力をお願いしたいと思うわけでございます。
 そして今、現時点では日産車体はもうこれは売ってしまったものだからどうにもならないという、いわば逃げの一手のようでございますが、先ほども紹介したとおり、ドイツのベンツ社の対応に比べて余りにもお粗末ということは免れないかと思うわけです。これは私は外交問題にも発展しかねないというふうに思うわけです。
 それについても思い出すのは、先般国会で韓国の盧泰愚大統領が演説をされました。この演説について一議員であります私が批評がましいことを言ったり評価するようなことを言うのは僣越でございますので、それは差し控えますが、率直に言って大変感銘を受けたものでございます。衆議院の本会議場を埋めていた衆参両議員ひとしく感銘深く聞いたのではないだろうかと思うわけでございます。
 その中に、次のような一節がございました。
  戦後四十五年が過ぎ、世界大戦を経験したヨーロッパ諸国がひとつの共同体を築きあげている現時点まで、われわれ両国民は過去の過ちに対する認識と感情を整理できずにいます。
「われわれ両国民」というのは、言うまでもなく韓国の方と日本人でございますが、このように率直に言っておられます。そして創氏改名などの事実をさらっと触れた後、このように言っておられます。
  過ぎ去ったことは神でさえも変えることはできません。
  しかし歴史は現在のわれわれが過去をどう考え、どう理解するかの問題です。
  つまりわれわれの行動次第で過去の束縛を断ち切り、過去の残滓を消し去ることができるのです。
  われわれみなの勇気と努力が必要とされています。
  これに関連して私がこの席で特にみなさまにお願いしたいことは、過去の歴史によって日本に居住することになった七十万の在日韓国人の問題です。
  かれらは日本人と戦争の苦痛を共にし、戦後日本の再建と発展に参与しました。
  かれらが親しい隣人として何の不便もなくこの国で暮らすことができるとき、両国民は韓日友好を胸に感じとることができるでしょう。
こういう内容がございました。
 この内容から見ますと、今回の追い出し訴訟が次々に行われているという事態は、外交的な配慮からも大変まずいのではないだろうかというふうに思うわけでございます。本来、人権の問題でございますから純粋に人権の問題として考えるべきなんでしょうが、したがってやはり、功利的な観点から外交上まずいとかいうのはある意味では間違った考えなのかもしれませんが、人権についてはそれぞれ人によっているんな感覚がありますので、こういった功利的な物の言い方をせざるを得ないかとも思うのですけれども、この点について、例えば韓国の日刊全国紙でありますハンギョレ新聞に大変大きく報道されております。これは一九九〇年五月二十五日付でございます。それから、同じくことしの五月十七日付慶南日報にも大変大きく報道されているわけでございます。
 さらに、これは日本の新聞ですけれども、本年四月十日の英字新聞、ジャパンタイムズでございますが、大きく報道されております。したがって、在日のすべての外国人、英語を話す方々には広くこの事実が知れわたっているようでございます。
 見出しによりますと、韓国人の、朝鮮人というのでしょうか、「コリアン」という表現ですが、コリアンの民族集団が「ファイツフォーサバイバル」、生存への闘いをしている、そして、第二次世界大戦当時の強制労働のゲットーに対して、デベロッパー、開発業者が、権利を越えているということで対決している、というふうに訳すのでしょうか、そういうサブタイトルがついておりまして、中ほどの見出しには、「ウェンジャパニーズピープルウオントツーユーズアス、ゼイドゥー。ウェンウィアーノーロンガーネセサリー、ゼイアバンダンアス」という住民の言葉が出ております。翻訳すれば、「日本の人たちは私たちを使いたいと欲したときにはそうした、そしてもはや我々が要らなくなったときには彼らは捨てた」ということのようでございますが、このようなかなり大きな見出しのついた報道がなされております。
 これはやはり捨てておけないことではないかと思うわけでございますが、外務省の方、いかがお考えでしょうか。
    〔委員長退席、太田委員長代理着席〕
○川島政府委員 お答えいたします。
 訴訟の案件自体は係争中ということで、外務省として立ち入った具体的コメントをすべき立場にないようには思いますけれども、ただ、まさに先生が明らかにされましたように、この在日韓国・朝鮮人の方々がこの地域に在住するに至った経緯というものを考えますと、やはりこの問題が公平の見地からできる限り速やかに解決されることを外務省としても期待しておるということでございます。
○小澤(克)委員 さらに、通産の方にもお尋ねいたします。
 日産車体というよりもオール日産というふうに考えますと、韓国ともいろいろな通商関係があるんじゃないかと思いましてお調べいただいたところ、これはメーカー限らずすべての自動車ですけれども、日本から韓国への輸出が、一九八六年に二万九百十四、八七年に十七万八千四百九十九台――ああ失礼、台じゃなくて、これは単位千ドルで、金額でございました。したがって、どう言えばいいんでしょう。ちょっと教えてください、日本から韓国への自動車の輸出実績。済みません。
○鈴木説明員 お答えいたします。
 先生御質問の、韓国との自動車の輸出入でございますが、実は韓国は最近まで完成車の輸入を制限しておりまして、現在は輸入制限が解除されましたが、我が国との大幅な入超を理由に事実上輸入が禁止されておりますので、金額ベースで申し上げますと、八九年度は日本から韓国への輸出が千二百六十八万ドル、輸入が四百八十万ドルと、自動車の貿易としては大変限られた貿易になってございます。
 なおまた、技術導入、技術移転等につきましては、日産グループとしては現在、韓国に技術を二件供与している、このようなふうに私どもは確認しております。
○小澤(克)委員 いただいた資料に、金額、単位千ドルでの表がございますが、これをちょっと説明していただけますか。
○鈴木説明員 お答えいたします。
 先生にお渡しいたしました資料は、金額、単位千ドルでございまして、今、私引用しましたのは八九年度で千二百六十八万ドルでございますので、台数で受けますとおよそ数千台、年によって違いますけれども、台数は数千台ぐらいのオーダーでございまして、金額で申しますと千二百万ドル台というような形で推移している、こういうふうに御理解いただければと思います。
○小澤(克)委員 韓国が自動車の輸入を禁止しているとかで、数量は余り多くないそうでございますが、今もお話ありましたとおり、技術移転等で技術提携も行われているようでございますし、それから朝鮮系の方は韓国だけではなくてアメリカ西海岸などにも多数いらっしゃいますし、もちろん日本にも多数いらっしゃるわけです。それで、このようなことを放置しておりますと、私は通商問題にも発展しかねないのではないだろうか。もちろん日産車体が問題なんですけれども、日産車体という会社は日産自動車が四二・五九%の株を持つ、したがって日産自動車の子会社と言っていいかと思うのですけれども、そういたしますと、オール日産に波及しかねないのではないだろうか、大変憂慮するわけでございますが、どうでしょうか。
 この人権問題について、功利的な考え方それ自体あるいは正しくないのかもしれませんが、これはわずか四億円で売っているのですよ。四億円という数字は、私どもから見れば天文学的な数字ですが、大きな会社にとってはそれほど大きい数字ではないのではなかろうか。また、一部の人にとっては株転がしですぐもうける程度の金額なのかもしれませんが、それはともかくといたしまして、この程度のことでこの問題の処理を誤ると大変まずい結果になるのではないだろうか。また逆に、先ほどのベンツのケースで紹介しましたわけですけれども、この問題について適切な処理をすればこれは企業のイメージが大幅に上がるということではないだろうかというふうにも思うわけでございますが、通産省としてはどんなふうにお考えでしょうか。
○鈴木説明員 お答えいたします。
 現在係争中の問題点につきましては、私どもコメントをする立場にございませんし、また私人間の取引という制約もございますが、先生の御指摘のような形で今具体的に本件が自動車の問題で日韓の通商問題として顕在化する懸念は、私どもそこまでは認識しておりませんが、そういったことも将来生じ得るというようなことにつきましては十分状態を見きわめる、この点につきましては外務省さんとも十分連絡をとりまして、私どもも今後の事態の推移を見守っていきたいと思っております。
○小澤(克)委員 先ほどから再三言っておりますとおり、これは基本的には人権問題でございます。特に、人権の中でも最も基本的な権利である生存権の問題であろうかと思います。したがって、外交上まずいのじゃないかとか通商上まずいのじゃないかという言い方自体があるいは批判を受けるかもしれない、功利的な考え方かもしれません。しかし、それはともかくといたしまして、私はこれは大変重大な問題を含むと思います。ぜひこれは処理を誤らないようにお願いしたい。
 というのは、先ほどから日産車体をやり玉に上げているわけですけれども、実はそれだけの責任ではないわけでして、これは日本人全体あるいは日本政府が戦前戦時中についての歴史的事実についてきちんと認識をしていない、そして戦後そのことについてのきちんとした対応をしていない、その意味ではいまだ戦後は終わっていないと私は思うわけですけれども、その一つのあらわれではないかと思うわけでございます。
 そして、とりわけ本件については、最初に申し上げたとおり、この飛行場建設については当時の逓信省、なぜ逓信省なのかよくわかりませんけれども、これが深く関与している、京都府も協力している、いわば官民一体で飛行場の建設を行った。その中で朝鮮人労働者が大量に動員され、そして先ほど紹介したような極めて劣悪な状況、劣悪な労働条件あるいは生活条件の中で、およそ人間たり得ないような生活を強いられた、そういう歴史的な事実を直視するならば、これはやはり一民間企業に解決を任せる問題ではなくて、日本人全体が、そしてとりあえずは行政府が真摯に取り組まなければならない問題ではないだろうかと思うわけでございます。
 私ごとで恐縮ですが、昭和十九年に生まれた私など、戦時中の事柄について事実としても不勉強であったかもしれませんし、また、そのころの日本人の行動について一体どう責任をとっていいのかよくわからないところがございます。やはり歴史的な事実をきちんと勉強し、把握をし、そしてそのことを現在の行動及び将来の我々の行動に生かす、これが私自身を含めて現在の日本人にとっての責任のとり方ではないだろうかというふうに思うわけでございます。その意味で、現在、現時点でなおこのような在日外国人に対する極めて過酷な追い出し訴訟などが行われているということは、まさに同時代のこととして私としてはどうしても座視することができないわけでございます。一日本人としてこのことを放置することはできない、そういう思いを先般の調査で強くいたしたわけでございます。
 重ねて法務大臣、恐縮でございますが、先ほど大変前向きのお言葉をいただきましたけれども、現時点で行われている事柄でございまして、しかも、先ほどからるる申し上げているように国も関与した事実でございますので、その辺を踏まえて、もう一度ひとつこの問題について、積極的に人権救済という観点からお考えをいただけたら大変ありがたいと思います。
○長谷川国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、法務省の人権擁護機関としては、関係者においてできる限り円満に解決されるよう願っておるところであります。なお、今係争中でございますので、法務大臣がこっちがいいとかこっちが悪いとかコメントすることは正式にはできないことに相なっておりますので、その点は御了承いただきたいと思います。しかし、人権問題は十分また考えなければいけないということも含めてであります。
○小澤(克)委員 終わります。ありがとうございました。
○太田委員長代理 鈴木喜久子君。
○鈴木(喜)委員 私は、今回は大きい柱としては三つの点をお聞きしたいと思います。
 まず第一に、現在の国選弁護人の報酬について伺いたいと思いますけれども、現在、第一審においては大体八四%ぐらいが国選弁護人がつくという形で賄われているということでございます。そしてまた、控訴審になりますとそれでも四八・八%、五〇%ぐらいが国選弁護人だということでございますけれども、それでよろしいでしょうか。
○島田最高裁判所長官代理者 国選弁護人のついている事件の割合ですが、地方裁判所ですと大体六〇%強というところでございます。それから高等裁判所の方は、正確なところがちょっと出ておりません、大体委員御指摘のようなところだと思います。
○鈴木(喜)委員 申しわけありません。今六〇%ぐらいで、私が八四%と言ったのは簡裁事件でございます。済みません。
 こういった国選弁護人の増額の経緯をずっと見ておりますと、大体一年ごとに、昭和五十九年が四万八千二百円であったものが大体二千円かそこらずつ上がっているような状況だと思うのですが、過去三年ぐらいのところの経緯をお知らせいただけますでしょうか。
○島田最高裁判所長官代理者 地方裁判所の三開廷の支給基準ということで見てまいりますと、御指摘のように大体二千円ずつということで、正確に申し上げますと、昭和六十二年の基準、五万五千五百円でございました。昭和六十三年が五万七千円、平成元年は五万九千円、平成二年が六万一千五百円、このようになっております。
○鈴木(喜)委員 この二千円ないし二千五百円ぐらいの幅の値上げというのは、物価の値上がり等々から考えまして非常に低額ではないかというふうに思われるのですが、いかがでしょうか。
○島田最高裁判所長官代理者 物価の値上がり等と比較、勘案しまして低額ではないかという御指摘でございましたけれども、私ども、これを公務員の給与改定率と比較いたしますと、パーセントにして各年大体一%を超えるところで値上がりをしてきておりますので、この辺で私どもとしては精いっぱい値上げに努力してまいったというふうに御理解いただきたいと思います。
○鈴木(喜)委員 大体公務員の給与の値上げと同じように、人事院の勧告に基づいた値上げを少しぐらい上回るというようなお答えだろうと思うのですけれども、パーセンテージで言われますとそうかもしれませんけれども、もとの値が非常に小さ過ぎますから、ここで一%と言われましても、もともとのところが非常に小さい、五万円内外のところから行きますから、金額にしますと大変安いという感じをどうしても持ってしまう。
 これは、もとの国選弁護というもののあり方が現在のあり方と違うのではないか。その辺で、弁護士の方のとらえ方というのも少し違ってきていると思うのです。今現在におきましては、若手の弁護士の中ではこれを一つの収入源として、収入源というのは源という意味ですけれども、そういうことで考えてそれをしている者たちも多いわけでございます。かつては、これは弁護士の一つの義務ということで、名誉的なといいますか義務的な活動として、それを一つの収入源だと考えるような形ではなかったと思うのですけれども、地方においても、また都会においても、このごろではやはりこれを一つの当てにするといいますか、それを一つの報酬の収入源とすることも多くなってきておりますし、その点の変化というものを考えますと、もうちょっと何とかならないものか。もとが狭いので、人事院の勧告のパーセンテージでは到底足りないのではないかと思うのですが、その辺はいかがでしょうか。
○島田最高裁判所長官代理者 先ほど公務員の給与のアップ率を引き合いに出しましたけれども、私ども、必ずしも人事院の勧告率だけを基準にいたしておるわけではございませんで、国選弁護人の報酬の増額ということにつきましては、そのときどきの国家の財政事情や物価、賃金の値上がり等諸般の事情をいろいろ勘案いたしまして、また、弁護士会、日弁連等からの御要望も十分考慮をいたしまして、この程度まではぜひ増額していただきたいということで毎年財政当局の御理解を得ながら予算の増額を図ってきたところでございます。
 ただいま委員御指摘のような声がいろいろあることも私どもも承知しておりますので、今後ともなお、この方向で一層努力してまいりたいと思っております。
    〔太田委員長代理退席、逢沢委員長代理    着席〕
○鈴木(喜)委員 実は、この問題は私だけが取り上げるわけではなくて、前にもこういうふうな問題で同じような質問をした議員もたくさんいることと思います。そのときのお答えも、今刑事局長がおっしゃっていただきましたようなお答えというものがやはり返ってきているわけでございます。ほとんど変わりのないお答えではないかと思っているわけです。努力いたしますとは言われるのですけれども、結局努力の結果が二千円か二千五百円ということになっていて、私たちとしても、別にお金だけのことではないと思いつつ、やはりそこは人情でございますので、もう少しそこは考えていただかなければならないときに来ていると思うのです。つい二年ぐらい前の国会で同じような御答弁をいただいているわけでございますので、また今回もここで同じようなお答えでは、どうも納得がいかないところがあります。
 特にここのところで考えますと、国選弁護というものの弁護士についての負担が、今は土曜日も閉庁ということで面接に行く場合にも時間的にいろいろ制約がある、それからまた交通費も非常に高騰しておりまして、それぞれの関係者に会う交通費でありますとか、そういう点でも昔に比べると非常にコストがかかっている。
 特に、その中で一番私たちが気にしておりますのは、記録の謄写料でございます。記録の謄写というものは、東京の裁判所に関して言いますと、司法協会というところに頼んでその記録の謄写をするわけですが、普通私たちがコピー料といって考えておりますのは一枚十円ぐらいのことを考えているのですが、たしか四十円か、今下がって三十円ぐらいになったかもしれません。いや、四十円じゃないですね、もっと高いのですね。普通のときのコピー屋さんよりはずっと高い謄写料を取られるわけでございます。それは、取られるのは仕方がない。その営業というものがそこで成り立っている司法協会の経済状態というものもあるので仕方がないのですが、その謄写料がすべて実費として私たちの手元に入ってくるのであればそれは納得できるのですけれども、それがなかなかままならないというところがあると思うのです。記録の謄写に関しては、確かに検察庁で閲覧をさせてもらえばそのときは無料ですし、そのときにどこどこと必要な箇所だけをピックアップして謄写をすれば経済的でもあるし、必要であるという部分についてはそれはそれなりに実費として認められることもあるわけですけれども、ただ、そういうことをしている時間が、面接に関してもさっきも言いましたように、忙しい中でなかなかとれない。そういうときには、みすみすわかっているけれども、それは自腹を切ることにはなるけれども、全体をコピーしてもらわなければならないときがある。例えば写真部分は除くとか、その程度のことしかできない場合も多いのですが、この交通費、それから記録謄写費等々についての実費についての取り扱いを、それは全額支給するというような形で考えていただくわけにはいかないでしょうか。
○島田最高裁判所長官代理者 今御指摘の、弁護人が支払いました実費の分でございますが、これは国選弁護人の場合ですと報酬ということでそこへ繰り入れて支払われることになっております。そして、私どもが先ほど申し上げました支給基準額というのは、本当の一番典型的な通常の事件を頭に置いての基準額でございますが、もとより多くの事件において通常予想される以上にそのような必要な実費額がかかる事件はたくさんございます。御指摘のような謄写料がたくさんかかったというような場合には、それを裁判所の方へ申し出ていただきまして、二十万でも三十万でも、場合によれば五十万円以上という多額の謄写料が実際に支給されている事件もたくさんございます。そのようなわけで、今後国選弁護人の方から当該裁判をしておる部の方へ、必要な実費として通常見込まれる分以上にこれだけの経費がかかったということを申し出ていただければ、それはそれなりに相当分を考慮しまして報酬の支給決定をするようにということで、私どもとしては最近も全国各庁にそのような趣旨を徹底させるべく御協力を仰いだわけでございますが、今後ともそちらの面では十分手厚くやっていこうと思っております。
○鈴木(喜)委員 交通費の点も同じでしょうか。
○島田最高裁判所長官代理者 御承知のように、国選弁護人の場合、旅費、日当、宿泊料というものは報酬のほかに支払われることになっておりますので、その旅費として、法廷へ来る分あるいは出張尋問等で要した交通費は旅費の方で払われます。それから、訴訟準備のために支払われるバス代等の交通費は報酬の中に繰り入れて払われるわけでございますが、その分につきまして、仮に例えば拘置所が非常に遠方にあって、そのためにタクシー代がたくさんかかったというような場合には、これも先ほど申し上げたと同様に、特別にかかりましたよということが御説明いただければ、それなりに考慮して支払われているはずでございます。
○鈴木(喜)委員 建前としておっしゃったことはよくわかるし、これからその方向でみんなもいろいろとそれをお願いしながら請求していくような形をとっていくということでしていきたいと思いますけれども、交通費といいましても、遠方でないところ、通常に行く場合の交通費まではなかなか請求できないのが実情でございます。なるべくでしたらば、そういう実費は別に支給していただくように初めから形が整っておりましたら、余り請求しにくいということもなく取れるというふうに思っております。よろしくお願い申し上げます。
 それから、増額に関して先ほど言われまして、このあたりならしようがないだろうというふうなお話があったというふうに聞いておりますけれども、要望としましては現在の三倍ぐらい、約十万円か十五万円くらいのところまでは何とかしてほしいというのが日弁連の考えでございますので、何とかそれに近づくような大幅な御考慮というものをお願いしたいというふうに考えております。
 ここのところで、やっと今会期ももうすぐ終わりになって、随分この法務委員会でもいろいろな質問をさせていただいたのですけれども、最初は予算の部分がありまして、どうも法務省の予算というのは、請求される際に紳士的といいますか、弱気といいますか、非常に消極的に、余り予算をおとりにならないというような感じを、中から見ると最初から遠慮されておるのかなと思うような感じがあります。こんなことでいいのかな、日本の司法を守るということについてはもっと厳格にたくさんお金をかけて、しっかり守っていただきたい。その中で国選弁護人についても、正確な立派な弁護をするような、できるような形にぜひともしていただきたいと思います。最後にこの点で法務大臣、いかがですか。
○長谷川国務大臣 今委員のおっしゃること、私も非常に賛成であります。ちょっと一、二分時間をいただいて説明したいと思います。
 今、予算は御案内のとおり六十七兆円くらい、財投を入れますと百兆円を超えますね。百兆円を超えますが、法務省の予算はわずか五千億であります。五千億と百兆円を比べますと二百分の一。それでは、日本のその成果は上がっていないかと言えば、今委員おっしゃるとおり日本の治安はまさに世界一。治安がいいのは一〇〇%法務省だとは申し上げませんが、法務省の成果も十分上がっておる。だから、最もコストの安い仕上がりだと思っております。
 そういう面をいろいろ考えますと、今弁護人の報酬を上げることについてはいろいろ問題もあるでしょうが、基本的には、先生のお考えには私も賛成であります。
○鈴木(喜)委員 頼もしいお答えをいただきましたので、ぜひともどうぞよろしくお願いを申し上げます。
 その次に移ります。これは前にも私もちょっと言ったかもしれませんし、ほかの委員の先生も取り上げられた問題なんですが、東京の霞が関の簡易裁判所と家庭裁判所、検察庁、その同一の庁舎の建設に関してでございます。
 この新東京家庭裁判所と新東京簡易裁判所がまず一緒になるということ。裁判所と裁判所ですから、そこでは問題はないのですが、家庭裁判所という一つの特殊な理念を持ったところと簡易裁判所が合同になるということについては、家庭裁判所というもののもともとでき上がった経緯ということを考えると非常に問題があると思うのです。この点はいかがなものでございましょうか。
○町田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 当委員会でも御説明してきたところでございますけれども、先生のような御意見があることは十分承知しておりますが、日本の家庭裁判所の全体を見ますと、実は大部分の家庭裁判所は、地方裁判所、簡易裁判所と一緒でございます。これは、支部はもちろん全部そうでございますし、それから本庁につきましても、五十庁のうち三十庁までは同一庁舎の中に入っているわけでございます。それによって家庭裁判所の理念としておりますところが損なわれた、こういうことで困っているんだというようなお話は、私どもこれまでずっとそういう形でやってまいりましたけれども、具体的な話としては聞いてないわけでございます。
 もちろん、私どもも家庭裁判所に来られる方のプライバシーの問題等々は配慮し、部屋の配置とか動線とかについてはそれなりの配慮はしてきておるつもりでございますけれども、建物が別でないとどうしても因るということはないと私ども現在確信しているところでございます。
○鈴木(喜)委員 この家裁と簡易裁判所の庁舎の合同ということに関しては、確かに一緒のところも多くあるというふうには思っています。ただ、簡易裁判所に来る人と家庭裁判所に来る人、特に少年事件で来る少年たちを考えますと、これが一緒であっていいわけはないし、その御配慮というのは十分お願いしたいところでございますけれども、今回の建設予定の建物は、いつごろ設計ができ上がって、着工はいつごろになるのでしょうか。
○町田最高裁判所長官代理者 現在私どもこの建物についてやっておりますのは、いわゆる平面プランの策定中でございまして、そろそろ平面プランを固めなくてはならない段階になっております。
 正確には存じ上げませんが、夏ぐらいには今の法務、検察の合同庁舎が建ち、そちらの方に移転されるようでございますので、その後、現在の検察庁の建物を壊し、それから私どもの建物の建築が始まるわけでございますけれども、順調にいけばことしの末あるいは来年の早々ぐらいから、いわゆる建築工事にかかれるのではなかろうかと考えております。
○鈴木(喜)委員 この中で、さっき申しました家庭裁判所と簡易裁判所のフロアの配置ですとか出入り口、エレベーター等々の問題については、これから先ももし修正可能な部分であれば十分に話し合って、その点で余りトラブルのないような形で、そして少年の心とかそういうのを傷つけるようなことがないような形で御配慮を十分にお願いしたいと思います。
 それはそれとしまして、そこにまたもう一つくっつくのが検察である。区検がそこにまたくっつくということなので、それについてはいかがなものでございましょうか。ここは非常に問題の多いところじゃないかと思うのです。
○町田最高裁判所長官代理者 区検がくっつくという問題がございますけれども、これは御説明が非常に難しいわけでございます。
 これまでも御説明したところでございますけれども、家庭裁判所と簡易裁判所の庁舎として当初三万七千平米の建物を予定したわけでございます。それで私ども、現状のままであれば十分だと思ったわけでございますけれども、いろいろ聞いてみますと、容積率いっぱいの建物をあそこに建てたいということのようでございます。
 そうしますと、これまでやっておりますように事件がふえたから増築するということが非常に難しい状況にございます。そこで、将来を見越してもう少し余裕を持った方がいいのではないかということで、関係省庁と御相談して、あと二千平米ほど裁判所の簡裁、家裁庁舎にプラスしていただくということが決まったわけでございます。
 問題は、その二千平米をどこにくっつけるかということなのでございますけれども、これはもう御承知だと思いまするが、日比谷公園側はもう壁面線が決まっておりまして、その日比谷公園側に、前に出すわけにはいかない。それから、今度は今の東京高地簡裁があります大きい建物の側でございますけれども、あそこは建設地に接してすぐ弁護士会の建物があるわけでございます。したがって、そちらの方向に延ばすことも弁護士会の建物があります関係で不可能でございます。それから、あと左右いずれかということになるわけでございますけれども、今の厚生省寄りの方は、これもすぐ弁護士会の合同庁舎の敷地になっておりまして、そちらの方に延ばす余地もない。あと残りますのは、区検等が入ります、B棟と言われておりますが、すぐそばに建ちます庁舎との間の方に延ばす以外にない。もう一つ、上に延ばせるのではないかということも考えられるわけでございますが、実はもう二十階建てというのは高さの制限でいっぱいでございまして、上にも延ばせない。どこにも延ばしようがない、あと延ばすとすれば区検側の方にしか延ばせないという状況にあるわけでございます。
 それで、区検が入りますB棟との間は十メートル足らずぐらいでございまして、そんなに間があいているわけでもございません。そうしますと、そこの土地を、土地といいますか、むしろ建物のために有効な面積をとるためにそちら側を使うといたしますと、そこをもう、いっぱいに使う以外にはない。そこを広げていき、広げていった行き詰まりのところにB棟があって壁が接することになったということが実情でございます。そういうことで、形の上では、B棟と家裁、簡裁が入りますC棟が二十階建てのうち七階建ての部分において壁を接することになるということは避けられなかったわけでございます。
○鈴木(喜)委員 外側からの形を見ますと、何かU字形のような形がイメージとして浮かぶわけですけれども、二十階のうち七階、ですから三分の一くらいの間は、その下の部分がつながっている。しかも、聞くところによりますと、三階まである地下もつながっていて、そして最後の地下三階でしょうか、そこの機械等々についてはすべて一緒である。ですから、底の部分はずっと一緒の形のU字形の建物に結果としてはなっているというふうに聞いておりますけれども、そうでございますか。
○町田最高裁判所長官代理者 地下二階までは、今申し上げましたとおり、B棟とC棟との間は壁で仕切られることになっております。それで、地下三階の部分は、今御指摘がございましたとおり、エネルギー源をなるべく共通にしたい、これがエネルギーの節約等の上でも有効なわけでございますし、それから同じような機械を両方の建物にとるということは機械の価格あるいはスペースの問題等からいたしましても問題があるわけでございますし、エネルギー源を共通にするということ自体が司法の独立に関係があるとも実は思われませんので、そういった意味で、地下三階はB棟とC棟のエネルギーの供給源となります各種の機械が混在して入るという形になる、その意味では地下三階だけは一体化された形になることは事実でございますけれども、地下三階部分はそういった機械ばかりがあるところでございまして、もちろん一般の人が立ち入るところでもございませんし、さしたる問題はないのではなかろうか、むしろメリットの方がはるかに大きいのではなかろうかということで、そういうことをする予定にいたしております。
○鈴木(喜)委員 伺っておりますと、そのメリットといいますのは、容積がふえる、そこで使うものが多くなるということと、それからエネルギーや何かについて非常に能率的、効果的に使えるというその使う側からのメリットというのはよくわかるのですけれども、そこへ入ってそこを利用する人たちというふうなことから考えますと、やはりそれはちょっと待ってくださいと言いたくなるわけでございます。そういった利便とか経済とか、そういうことで検察庁と裁判所というのは本来一体ではないのだという国民のそういう一つの信頼をもし損なうとすれば、二千平米ですから、それが立米にしてどのくらいになりますか、そういった空間の問題とかエネルギーの問題とかにかえられないほどの、大げさに言えば司法全体に対する信頼を損なうということになるのではないか、私はその点を懸念するわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
○町田最高裁判所長官代理者 その点につきましては、失礼ではございますけれども、私ども若干意見を異にしているわけでございます。一つの建物の中にいわば混在した形で司法機関といいますか裁判所と検察庁等々が入っているというのは、実は外国では珍しくないわけでございます。もちろん、外国でそうだから日本でもいいのだと申し上げるつもりはございませんけれども、司法の独立の基本的なものが建物にもしあるのだとすれば、それはやはり世界共通の問題であろうと考えます。ただ、日本の事情もいろいろございます。したがって、私どもが建てます建物、確かに壁は一部接することにはなりますけれども、その間は完全に仕切られているわけでございまして、それによって司法の独立が云々されるような問題ではないと私どもは確信しております。
 念のために申し上げますと、裁判所の構内に弁護士会館があるところは少なくないわけでございますし、まさに弁護士会館とドッキングしているところもあるわけでございます。相互に行き来しているところもあるわけでございますけれども、だからといって裁判所の中立性が損なわれるというような議論はこれまで全くなかったわけでございまして、そこら辺もあわせて御配慮をいただければと思っております。
○鈴木(喜)委員 私も弁護士会と裁判所がドッキングしている、通路でつながっているというところは存じ上げておりますけれども、ただ、それはやはり権力を持った検察庁と裁判所がくっつくということとはちょっとまた意味合いを異にする、私もそれはちょっとは奇妙に思っているところもあるのですけれども、それはおいておきまして、検察と裁判所とが一体となったとなると、それは、罪を裁く方とその罪を糾弾する方が一緒になっているということでは、私たち庶民としてはそこで裁かれることに不安を覚えるという意味では、弁護士会の場合とは雲泥の差があると思います。
 それからもう一つ、外国ということになりますと、これは裁判官の任免制度その他についていろいろと司法権のあり方そのものにも違いがありますので、日本のような場合と必ずしも同一に考えることはできないと考えておりますので、この点についても、日本が誇る司法権の独立、それも建物自体まで独立させてまで守ろうとしているその司法権の独立を二千平米の土地のことで何とかしないで、ぜひともそこのところはお考えいただければとお願いして、この問題は終わらせていただきます。
 その次に、今回は法務委員会ですからということもありまして司法の問題ばかり取り上げさせていただきますが、司法試験の改革の問題について伺いたいと思います。
 この司法試験の改革ということでは、法務省の方からも改革をしたいということで、現在、案としまして甲案、乙案、丙案というような案が出されて、弁護士会を交えていろいろと話し合っておられるところもあるかと思いますけれども、まず、この司法試験制度ということについて国会で問題になりましたのは、昭和三十三年の第三十回国会の法務委員会で司法試験法の一部改正がありましたときですか、そのときに話題になって以来、なかなか話題にしていただけなかったように聞いております。その法案のときにですが、附帯決議というのがついていまして、司法試験法というものについて、「今後大学の学制改正と照し合せつつ、たえず検討すること。」ということ等々が附帯決議として決まっております。また、「司法試験考査委員の選任についても公正を期すること。」「司法試験管理委員会委員は将来これを相当数増員し、之が選任に付いては公正を期すること。」それから「短答式試験に於てはなるべく多数を合格せしむること。」こういうふうな附帯決議がついているわけでございますけれども、その後そのことについて一向に話題にされたことがないまま現在に来まして、これから改正ということになっているわけでございます。この点、今の司法試験法ということに基づきまして改革というもの、または改正、いろいろされてきたのでしょうか、簡単にその経緯を伺いたいと思います。
○濱崎政府委員 御指摘のとおり、昭和三十三年に試験科目の一部に変更を加える等の内容の司法試験法の一部改正が行われまして、その際に、衆参両法務委員会におきまして、御指摘のような附帯決議がされております。この附帯決議の中身は、法改正を必要とするものと運用上対応をすべきものと二つに分けられると思います。
 まず、法改正の対象となりますものとしては、試験科目の見直しという問題と、司法試験管理委員会委員の増員という問題がございます。その関係につきましてその後の法改正の検討の経緯を御説明申し上げますと、昭和三十七年に臨時司法制度調査会が設置されまして、その調査会におきましては司法試験制度についても調査、審議がされまして、司法試験に素質のある者を多数合格させるための方策が提言されました。法務省といたしましては、その提言を実現するべく、法制審議会の答申を得まして法律案を準備いたしたわけであります。
 その内容は、主要なものといたしましては、全体として試験科目を減少させる、司法試験管理委員会の委員の数を三名から五名にふやすということを主たる内容とするものでございまして、この内容は、ただいまの附帯決議の趣旨に沿ったものであるというふうに考えていたわけでございます。
 しかしながら、当時この法案に対する反対は極めて強うございまして、この法律案を国会に提出するということを断念せざるを得なかったという経緯がございます。そういう経緯もございまして、法務省といたしましては、最近に至るまで法律の改正ということは困難であるという判断のもとに制度の運用面の努力を続けてきたという経緯にございます。
 次に、運用に関します附帯決議といたしましては、大きく分けて三つあるかと思います。
 まず、司法試験管理委員会委員の選任の問題でございますが、これは御案内のとおり、現行法上三人の委員のうちの二人は法務事務次官と最高裁の事務総長をもって充てるということになっておりまして、もう一人は弁護士のうちから日弁連の推薦に基づいて法務大臣が任命するということになっております。この運用は、この規定に従って公正に行われてきているものと考えております。
 司法試験考査委員の選任でございますが、この点につきましても、各専門分野の最高水準の方に委員になっていただけることができますように、関係の方々の御意見と御理解を得ながら慎重に、かつ公正に選任してまいっております。とりわけ、論文式試験の試験問題作成及び採点を充実するという観点から、漸次その員数も増員を図ってきているところであります。
 また、短答式試験の合格者につきましては、当時はほぼ二千名でございましたけれども、その後次第に増加いたしまして、現在ほぼ四千名前後を短答式試験の合格者として運用している状況でございます。
 そういう方面で、運用面につきましてはできるだけの努力をしてきているつもりでございます。
○鈴木(喜)委員 そういう努力をしていただきました結果、今回この法改正ということはなぜしなければならないということなんでございましょうか。
○濱崎政府委員 司法試験の実情につきましては、かねてから合格までに多数回の受験を要する、合格者の平均年齢がそれによって上昇するといったようなことが指摘されておりましたが、近年その傾向が一段と深刻化しつつあるということでございます。これは従来から御説明しておるところでございますが、合格者の平均的な受験回数が六、七回にも及ぶ、合格者の年齢も二十八歳代になるという事態に至っております。これを平たく言えば、通常の大学法学部の卒業生が司法試験に合格するには、平均的にいって卒業後数年の受験勉強、しかも、いわゆる予備校等に通いながら専ら受験勉強に専念する、そういう経路を経て初めて合格し得る試験であるという実態になっているわけでございます。そういうことからいろいろな弊害が生じてきておる、かつ、これからますますその弊害が広がっていくのではないかという懸念が深刻に持たれるわけでございます。
 どうしてそういう事態に立ち至ったかということを分析してみますと、結局、試験の成績の上位のところに合格者数に比べましてはるかに多数の長期の受験者が滞留しておって、少数回の受験者の多くが多数回の受験者との競争に敗れて不合格になる、その中でかなりの者が試験をあきらめて断念してしまうという現象が生じます一方、それでも相当数の者はなお多数回受験を継続していく、そうすることによって次第に成績が向上して合格する。その結果、さらにその後に受験を開始する者にとっては相対的に成績が下位になって合格しない、こういう悪循環が生じているということがその原因であろうと思うわけであります。
    〔逢沢委員長代理退席、委員長着席〕
 そういうことのために、具体的な弊害といたしましては、任官者がそういう現象に伴って次第に少なくなっている。さらには、法曹実務家として活動するまでに非常に長い期間を要し、実務家として活動していただく期間が少なくなる。さらにまた、私どもが一番深刻に考えております問題は、こういう実情がありますために、法曹に優秀な適格性を有する人であっても一、二回の受験であきらめて他に転じてしまうとか、あるいは最初から受験をあきらめてしまう、いわゆる司法試験離れという現象が生じる、このことは法曹三者にとって後継者の養成という観点から極めて重大な事柄ではないか、そういう観点から法曹三者それぞれが多様なすぐれた人材を十分に、かつバランスよく確保する、そのことによって国民に対する法的サービスを充実していく、そういうことのためには、ただいま申し上げましたような弊害を早急に解消するための何らかの方策を講じなければならない、このように考えて検討に取り組んでいるわけでございます。
○鈴木(喜)委員 今伺いましたけれども、確かに司法試験離れということはあるかもしれませんけれども、結局のところは、そうなると、上にたまっている人を一掃しなければ下の方の人たちが、若い人たちが上がってこないということであれば、定員増というふうなこと以外にはあり得ないような気も単純に考えますとするわけです。どうも定員増という単純なことをしないで、上澄みの中から下の方の若い人だけをちょろちょろとすくい出したいということを考えようとするから、甲案、乙案、丙案というような非常にわかりにくい、また何となく納得しがたい案が出てくるわけでございまして、単純な増員ということであれば、何年かたてば上澄みの方はおっしゃるような形ですっと移動するんじゃないかと思います。私も、何年も何年もそこら辺のところでぐずぐずしておりまして、この甲案も乙案も丙案もないころであったから、やっとこすっとこ合格できたようなもので、そうでなければ絶対にすくい上げられなかった。そういう可能性があるものですから、非常な危機感を持って――これまで、可能性だけはもちろん、どのお話でもよくわかっております、残っているわけです。そんなことを言っても、努力すれば一粒ぐらいはすくい上げられるよということで、小さな芽を絶ってしまうことはないでしょうけれども、事実上そういうことではなかなかすくい上げられにくくなってくるような形の複雑な案ではなくて、定員増ということで何年かやってみよう、そうすれば大体よくなるんじゃないかというようなお考えがないでしょうか。これがまず一点。
 それからもう一つなんですが、これはもともとは任官者が少なくなるというふうな御懸念があって、もちろんこれは現実になっているわけですけれども、裁判所の方を見ますと、裁判官の任官者というのはだんだんふえてくるような形もありまして、別に問題はそうないんじゃないか。要するに、問題は検察官の数が大分少ない、志望する人が少ないという現象があるというふうなことが非常な危機感になって、法務省の方々が今の改革ということに熱心になられる原因ではないかというふうに思っているのですが、検察官に余りなりたくないというのは、司法試験の改革云々の問題ではない、それから若い人云々の問題ではなくて、検察官そのものの仕事に対して魅力を感ずる人が少なくなってきているからじゃないかというふうに端的に言えば思うところがあるのですが、この点まず伺いたい。
 時間がだんだんなくなるので、もう一つだけそこにつけ加えさせていただきますと、この司法試験で上澄みの方がいつまでも消えないでいるとかいうことについて考えますと、どうも司法試験そのものの中に、皆さんの改革をなさる方から見ますと、受験生の目というものが抜けているんじゃないかと思います。受験生の方からいきますと、これが滞留しないですんなりといくのはどういうところにあるかといいますと、短答式試験については問題も公表されない、そしてもちろん解答も公表されない、こういうものを開示されることによって、もっとすんなりと勉強はどういうふうなことをやったらいいかということが決まってくるし、毎年毎年、猫の目のように出題傾向が変わりまして、今回は応用編でいったかと思うと来年は基礎編でいくというような形で、非常にいろんな範囲のことまで勉強しないと受からないような状況がある。少なくとも、受験生の心理をそういうところに追い込むというような形で、毎年毎年、猫の目出題というような言葉で言われているような現状がございます。これを、この程度のことをこう勉強したら受かるんだよという形があれば、素質のある若い人たちは、滞留している多数回受験者などは押し分けてすいすいと受かられると思うのです。ですから、その点の、出題の内容とかそのあたりの一定した開示というものをされればいいのではないか。
 それからもう一つが、成績の開示でございますけれども、私八回も受けましたが、択一試験で七回も落っこっているわけです。そのときに早くに、おまえさんは九十点満点の二十点だよと言われたら、もしかしたらあきらめてやめていたかもしれません。でも、自分としては七十五点ぐらいとっているつもりですから、その次はまた頑張ろうということで、おいおい高くなってしまいます。この点、司法試験の制度の改革というよりは、出題の内容とかその傾向等々の御検討によって、そして定員増ということによってこの問題の解決を図られるというようなお気持ちはないでしょうか、その点伺いたいと思います。
○濱崎政府委員 御質問が多岐にわたりますので、まず、私どもの司法法制調査部の所管の問題について御答弁させていただきます。
 先ほど申しましたような弊害を除去するためには定員増ということしかないのではないか、そういう方向で考えるべきではないかという御指摘でございます。司法試験のあり方が、将来の理想像としてどうあるべきかということについては、いろいろな御意見がございまして、その中に、今委員御指摘のような考え方が非常に有力な考え方としてあるわけでございます。私どもとしても、将来の理想像としてそれが一つの解決の適切な方策であるということについては、決してこれを否定するつもりはございません。ただ、定員増ということにもいろいろな程度があるわけでございまして、私どもいろいろ過去の資料に基づきまして、統計の専門家等の御意見も承りながら検討してまいりましたところでは、御指摘のような方法で問題を解消するということのためには、現在、合格者五百名前後で推移しておりますけれども、これをかなり大幅に、何倍かにふやすということを考えるのでなければそういう成果を得ることは難しいというふうに考えているところでございます。ただ、何倍にもふやすという問題になりますと、これを今早急に実現できるかということになりますと、客観的な条件あるいは関係者のコンセンサスという面でこれは極めて困難であるといいますか、早急にということは不可能に近いという実情にございます。まず大幅に合格者をふやすということになりますと、法曹に対する需要と供給のバランスということを考えなければなりません。そういうことを踏まえた法曹三者のコンセンサスが早急に得られるかどうかという問題もございます。
 それから、現在五百人程度の員数を前提といたしまして非常に充実した二年間の修習ということが行われているわけでございますが、その修習のあり方をどうするかということについても抜本的に見直さなければならないという問題が生じてまいりますが、これについても早急な解決が図られるという問題ではないわけでございます。問題は極めて深刻な状況が切迫しているわけでございますので、そういう客観的な状況の中で現実問題として今直ちに改善できる方策は何かということで、甲、乙、丙案というものを提示して法曹三者の間で現在鋭意検討を詰めているところでございまして、そういう観点から、そういう解決策以外に当面とり得る適切な措置があるという具体的な意見もいまだ提示されておらない状況でございます。
 それから、現在の甲、乙、丙案、いずれも二百名程度合格者をふやすということを前提に考えておりますが、二百名程度合格者をふやした上で何も制度的な改善を加えないということになるとどうかという問題はございますが、この点につきましては、先ほど申しましたように、いろいろ統計の専門家等の御意見も伺って詳細に検討いたしました結果、それによって長期受験勉強を要するという実情を改正する効果はほとんど期待することができない、むしろ枠を広げるということによって、新規のチャレンジをする人がふえるということによって、かえって今よりもっと合格までに期間を要する効果を生ずるのではないかということが懸念さえされるという検討の結果になっております。したがいまして、そういうことで問題を解消するということは不可能であるというふうに考えております。
 それからもう一点、御質問の一端について答えさせていただきますが、この改革は検察官の任官者が減少しているということを主たる理由として考えているのではないかという御指摘でございましたけれども、それは一つの大きな理由でございますけれども、先ほど申し上げましたように、それのみでこの改革を考えているわけではございません。また、裁判官の任官者の数の御指摘がございましたけれども、たまたま本年度は比較的多数の任官者がございましたけれども、統計的に見れば漸次逓減している動向にあるというふうに承知しておりまして、裁判官の任官者についても、これからの問題としては同様な懸念があるのではないか、私どもこの問題を担当している立場でいろいろ資料を検討したところでは、そのように考えているところでございます。
 そのような問題、それぞれ担当のところからお答えさせていただきたいと思いますが、今御質問の一部だけ……。
○鈴木(喜)委員 時間がもう来ているようですが、今お答えをいただけるということであれば、ここでよろしいでしょうか。――じゃ、お願いいたします。
○堀田政府委員 時間の関係がありますので、簡潔に。
 成績を公表しろという問題でありますけれども、これは受験する方の立場に立ちまして、一番重要な論文式試験につきましてランク別に公表いたしております。短答式につきましても、今度の司法試験の改革問題を論ずる中で、同じような方法をとるかどうか検討しておるところであります。
 それから、試験問題が猫の目のように変わるじゃないかという御指摘でございましたけれども、これは、司法試験管理委員会の方針といたしまして、大学で基本的なリーガルマインドを身につけた者ならば合格できる試験問題にしようという方針が打ち出されておりまして、それに沿うような問題を常にいろいろ考えていただいているわけであります。非常に技術的な勉強をいたしますと、技術的な変更の点が気になるようでありますけれども、どのような問題形式になりましょうと、基本的な点をしっかり身につけておけば合格できるということで、私ども今後とも考査委員の方々にお願いいたしまして努力してまいりたいと思っております。
○鈴木(喜)委員 今お答えいただきましたが、もう一つだけ、解答と試験問題の開示についてもよろしくいろいろ御検討いただきたいと思います。
 それから、時間が来ましたので終わりますけれども、この問題については、法曹一元化という非常にいい形をとりながらお話をしているわけでございますから、今後ともこの問題については法曹三者の間でじっくりお話しになって、カンフルのようにすぐ効かなければいけない、即効だ、即効だということでさっきおっしゃっておりましたですが、そういうことでなく、何とかゆっくりとでいいのではないかと私は思うのです。それでもいろいろ人材は出てくることもあるわけでございますから、そんなに下の方から若い人だけをしゃくり上げるということだけをくれぐれもお考えにならずに、法曹というものはそうでなくてもいい人材というのは多数回受験の中でも出てくるわけでございますので、その点よくお考えいただきまして、余り性急な改革というものについて、余りそうなさらずに、じっくりよくお考えいただきたいというふうにお願い申し上げて、終わります。
○小澤委員長 御苦労さまでした。
冬柴鐵三君。
○冬柴委員 公明党の冬柴鐵三です。
 本日は、いわゆる白い粉と呼ばれる薬物犯罪のうち、我が国で最も乱用されていると言われる覚せい剤に絞って順次お尋ねをしていきたい、このように思います。
 我が国の覚せい剤取締法違反検挙者というのは、昭和四十五年以降急拡大をいたしておりまして、特に昭和五十五年以降、連続して毎年検挙者数が二万人台を超えるという高い水準で推移していると承知いたしております。しかも、その乱用というものは全国的に広がっており、そしてまた、乱用者層というのが、暴力団の関係者のみならず一般市民層、特に主婦あるいは若年層にまで広がってきているということで、非常に憂慮するところでございます。
 そこで、法務省及び厚生省からその実態について、アウトラインで結構です、後で細かく聞いていきたいと思いますから、重複しないように御説明をいただきたい、このように思います。
    〔委員長退席、太田委員長代理着席〕
○井嶋政府委員 我が国におきます覚せい剤違反事件の統計的な推移を若干御説明いたします。
 全国の検察庁の通常受理人員の数で見てまいりますと、御指摘のように、昭和四十五年以降増加傾向を示しておりまして、昭和四十八年に、委員御記憶のとおり、覚せい剤取締法の改正をいたしまして罰則の強化をしたことがございますが、そのときに一時的に減少したことがございますけれども、その後一貫して増勢を続けまして、昭和五十七年の通常受理人員が三万四千四百三十一、これがいわゆる二十八年、二十九年ころのピークから見まして第二のピークと我々呼んでおりますが、非常に高い水準を示したわけでございます。しかし、これをピークといたしまして五十八年度以降は漸減傾向にございまして、平成元年の通常受理人員数を申し上げますと、二万一千四百五十四人でございまして、対前年度比で四千六百二十五人減、一七・七%の減少となっておるわけでございます。
 しかしながら、依然として暴力団関係者の占める割合が四五%ないし五〇%という非常に高率であります上に、やはり大量の密輸入事件等が後を絶たないということでございますし、さらに、御指摘のように主婦層等を含めました一般市民層への乱用の浸透が認められるわけでございまして、そういった意味で、事案としても放置できませんし、さらに巧妙化といいますかあるいは潜在化と申しますか、そういった点もさらに進んでいると認められるわけでございますので、件数の減少は必ずしも私どもは鎮静化を示すものではないというふうに受けとめておりまして、従来同様、これからも覚せい剤事犯に対しては厳格に対処していくという方針を堅持しているところでございます。
    〔太田委員長代理退席、委員長着席〕
○市川説明員 ただいま法務省から御答弁ございましたので、若干補足的に御説明をさせていただきます。
 平成元年におきます覚せい剤取締法違反による検挙者は約一万七千名でございましたが、これらの者についての実態面を申し上げますと、年齢別に見てみますと、最も多いのが二十代の者でございまして、これが約三六%、次に三十代の者が約二五%、次いで四十代の者が約二四%、それから二十歳未満の青少年は全体の五・九%というような比率になっております。
 それから、職業別に見てみますと、職を持たない者が約五〇%で非常に多いのでございますが、有職者について見てみますと、比較的多いのが土木建築業関係者で、これが一二・七%、それから飲食業関係者、ここには風俗営業者も含まれておりますが、これが六・七%、交通運輸業関係者が四・三%というようなところが比較的目立つ職業でございます。なお、主婦に分類されておりますものは三百五十三名、二・一%、それから中学、高校、大学の学生は九十六名、〇・六%というような比率になっております。
○冬柴委員 法務大臣、総理はこの施政方針演説の中で、たしか麻薬取り締まり強化を挙げられたと思います。麻薬と覚せい剤は厳密には違いますけれども、我々が言ういわゆる薬物犯罪、白い粉という意味では共通であります。また、ことしの三月、海部総理とブッシュ大統領の日米首脳会議でも、この麻薬取り締まりについての協力ということが話し合われたと聞いております。
 そのような観点で、この海部内閣は麻薬、ひいては白い粉に対する取り締まり強化ということについて力を入れられるということだと私は思うわけですけれども、今、法務省及び厚生省からそれぞれ概略を簡潔に説明をいただきまして、非常に深刻な問題だと私は受けとめておりますが、このような問題に対する大臣の所信を伺っておきたいと思います。
○長谷川国務大臣 今いろいろ御説明申し上げたとおりでございまして、これはもう取り締まるのが当然でございますし、麻薬の撲滅はまさに国の方針というか国是にしなければならない、こんなものは野放し、野放しと言っては悪いけれども、ほっておいたら青少年、子供がだめになり、孫がだめになり、国がだめになり、議論の余地はないと思うのです。海部内閣の基本方針である、これは言うまでもございませんし、また、法務省としても、担当者といたしましても、これは本当に全面的に全力を尽くして頑張るつもりであります。
○冬柴委員 今、法務大臣から力強い決意をお聞かせいただきました。期待をいたしますし、我々もこれについては強い関心を今後も持ち続けたい、このように思います。
 そこで、法務省に伺いたいのですが、この覚せい剤事犯についてどのような刑、懲役刑あるいは罰金刑等があると思うのですけれども、特に自由刑の懲役刑についてどの程度の刑期になっているのか、説明しにくいと思うのですが、何か工夫をして説明をいただきたいと思います。
○井嶋政府委員 昭和六十三年の統計で恐縮でございますけれども、昭和六十三年の第一審の裁判結果を取りまとめましたので、御説明申し上げます。
 この六十三年一年間に覚せい剤事犯によって有罪の判決を受けた者の一万三千六百八十五名のうち、まず無期懲役刑の宣告を受けた者が二名、十年を超え二十年以下の宣告を受けた者が十一名、五年を超え十年以下の判決を受けた者が五十八名、全体の〇・四%、三年を超え五年以下の判決を受けた者が二百五十四名、一・九%、一年以上三年以下の判決を受けた者が一万一千九百七十五名、八七・五%、一年未満千三百八十五名、一〇・一%でございます。そして、三年以下の懲役に処せられた者のうち執行猶予に付せられた者は五千三百二十七名、三八・九%、約四〇%でございます。したがいまして、逆に申し上げれば、約六〇%の者が実刑であるということでございます。
 従来、一年未満の求刑といったものが単純使用罪の場合にあったわけでございますけれども、最近、ここ数年前から、この辺の求刑は厳罰主義に変更しておりますので、一年未満の判決がだんだん減ってまいっておりまして、単純な使用事犯であっても一年以上三年以下というところへ集中してきておる、こういう実態でございます。
○冬柴委員 そこで、行刑施設と少年院の新収容者に占める覚せい剤事犯者はどんな比率になっておるのか、その点について御説明いただきたいと思います。
○今岡政府委員 行刑施設の方からお答えいたしますと、行刑施設における覚せい剤事犯者の新収容人員数は、昭和五十九年に八千六百四十六人となりました。これが最高でございまして、以後、年々少しずつ減ってまいりまして、昭和六十三年の例で申しますと、新受刑者二万八千二百四十二人中覚せい剤事犯受刑者は七千九百六十八八ということで、新受刑者全体に占める比率は二八・二%ということになっております。
 それから、少年院における被収容少年のうち覚せい剤事犯者でございますが、これも、昭和五十九年に五百八十三人と最高を記録いたしましたけれども、以後、五百二十六人、四百六十八人、四百三人というふうに年々減ってまいりまして、昭和六十三年には新収容者四千八百三十一人中二百九十八人まで急激に下がっておりまして、新収容者全体に占める比率も六・二%になっておるという状況でございます。
○冬柴委員 この法務委員会でも婦人の刑務所の視察を二回ほどさせていただきましたけれども、覚せい剤事犯の占める割合は非常に高かったように思うのですが、この点についても御説明いただきたいと思います。
○今岡政府委員 御指摘のように、女子刑務所における被収容者中、覚せい剤事犯受刑者の占める比率は全般的に高うございます。
 これを年末の在所人員でお答えいたしますと、これもだんだん減っておるのでございますが、昭和六十年の場合には九百六十四名おりましたけれども、それが、六十一年には九百四十九名、六十二年には九百四十三名と少しずつ下がってまいりまして、昭和六十三年十二月末現在の数字で申し上げますと、女子受刑者千八百九十一名のうち覚せい剤事犯受刑者は八百九十六名ということになりまして、女子受刑者全体に占める割合も四七・四%と、若干でございますが、下がっておるという状況でございます。
○冬柴委員 この覚せい剤事犯の再犯率についてもお教えいただきたいと思います。
○井嶋政府委員 私どもで刊行いたしております犯罪白書の六十三年度版から統計を申し上げますと、刑法犯全体の再犯率が三〇・三%であります。成人の刑法犯の再犯率は三二・四%であります。これに対しまして、覚せい剤事犯の再犯率は五六・七%でございまして、このように、全体あるいは成人の再犯率と比較いたしましてもかなりの率の再犯性が認められるわけでございます。
 原因については、いろいろあろうかと思いますけれども、先ほども申しましたように、暴力団関係者が関与する事件が多いということからどうしても足を洗えないという問題もございましょうし、また、薬物事犯全般に申せることではございますが、一つの薬物依存と申しますか、精神的な依存により薬からの脱出が不可能である、こういうようなことが原因しておるのじゃないだろうかと考えております。
○冬柴委員 刑事局長が今おっしゃいましたように、薬物中毒というものは精神依存性が非常に高い、強いといいますか、一度常用しますと、みずからの意思でこれから脱出をしこれを断ってしまうということは非常に困難であるというふうに聞いているわけですけれども、だからといってこれをほっておくわけにはまいりません。
 厚生省にお伺いしたいのですけれども、こういうものを断ち切る、脱出するためには、中毒になっていなくてもこれからやめたいのだという人、これは中毒なんでしょうか、どういう治療方法があるのか。そしてまた、こういう人たちを家族の一員に持ちますと、この家は大変だと思うのですね。こういう人たちは覚せい剤を手に入れるためにお金が要ります。そのために犯罪に走るということも当然予想されますし、家の中の物を持って出るということもありますし、こういう人を家庭の中に抱えた家庭というのは大変だと思うわけです。
 そういうことから、再犯性が非常に、五六・七ということになりますと、一度こういう深みにはまって逮捕されて懲役に処せられても、なお懲りずに、半数以上の人がまたこういうものに侵されて刑務所に入らざるを得ないという、そういうことだと思うわけですけれども、こういうものから脱出するためにどういう研究がされているのでしょうか。後でまた重症者の麻薬中毒者についてはお尋ねしますけれども、それ以前の人たちに対してどういう治療方法があるのかをお教えいただきたいと思うのです。
○篠崎説明員 お答え申し上げます。
 覚せい剤の常用者についての御質問と承っておりますが、覚せい剤の常用者が依存をなくすためには、精神病院等への入院をすることによりまして覚せい剤から離脱することが必要でございます。したがいまして、入院治療が原則であろうと思います。
 また、期間につきましては、大分個人差がごさいますから、一概には申せませんが、相当期間入院治療が必要だろうというふうに考えております。(冬柴委員「相当期間というのは。もうちょっと、何年とか」と呼ぶ)最低数カ月から、年にわたるものというふうに思っております。
○冬柴委員 入院治療ということになりますと、刑務所に入れるのは完全な入院治療でして、薬物から離れて、刑事局長の御説明によりますと相当、一年から三年というところが非常に多いようですから、そこへ入ればほぼその間は覚せい剤から強制的に離されるわけですから、本人はそれで脱出できるように思えるのですけれども、再犯を犯してしまうというのはそれ以外の要因、すなわち暴力団関係者とかということで再びそういうところへ戻るために、またそういう環境上そういうものに再び侵されるということになると思うのですけれども、一回断ち切った場合、それに対する誘惑というか薬物的なものはどうなんですか、厚生省。一回、一年なら一年かけてそういうものから引き離すことによって常用という習癖が消えるとしましても、またそういうものに対する誘惑というものに駆られるという傾向が残るのでしょうか。その点はどうなんでしょうか。
○篠崎説明員 お答え申し上げます。
 覚せい剤の中毒の場合には身体依存よりもむしろ精神依存が非常に強いわけでございますので、そういうわけで、一たん治癒をした者でも再発する例が極めて多いと聞いております。
○冬柴委員 私も弁護士をやっていたときに、いわゆる関西の方の言葉ですかね、シャブぼけ、こういうことを言いますけれども、長期間常用しますと幻覚とか妄想型の中毒性精神障害というものが起こって、被害妄想といいますか、理由なき殺人というものを私は扱ったことがありますけれども、非常に恐ろしいことで、全く見ず知らずの人を刺し殺したというような事件なんですが、こういう非常にショッキングなことが時折起こるわけです。最近のそのような事例で、わかりやすく一、二挙げていただければと思います。
○井嶋政府委員 一昔前に非常にセンセーショナルな事件が発生いたしまして世人を騒がせたことを記憶しておりますけれども、最近そういった意味でのセンセーショナルなものはちょっと少なくなったかなという感じはいたしておりますが、しかし、ローカルでいろいろ見ますと、それなりに問題になった事件もあるようでございます。
 御質問がございましたから二例ばかり探してまいったのでございますが、まず、昭和六十二年十一月に北九州市内におきまして、三十五歳の男性が覚せい剤を施用しました後、刺身包丁を持ってタクシー強盗を敢行したということで、覚せい剤取締法違反、強盗、銃砲刀剣類所持等取締法違反というようなことで起訴されましたが、精神鑑定を受けまして、その結果心神耗弱という認定になりまして大幅に量刑が下がりまして、懲役三年の実刑が言い渡されたという事件がございます。なお、これは現時点では矯正施設からは既に仮釈放になっておるという事件でございます。
 もう一つは、昭和六十三年一月に福岡県田川郡におきまして、二十八歳の男性がやはり同じく覚せい剤を施用しました後に他人の物置に放火をし、現場に駆けつけて現行犯逮捕しようとしました警察官の頭部をとびぐちで殴打して傷害を与えたということで、覚せい剤取締法違反、非現住建造物放火、公務執行妨害、傷害といった件で起訴された事件がございます。これは精神鑑定の結果、心神喪失、今委員がおっしゃったような、いわゆる幻覚状況のもとにおける犯罪ということで心神喪失と認められまして、不起訴処分になっておりますが、もちろん当時の精神衛生法に基づきまして措置入院手続がとられた事例でございます。なお、現在入院中かどうかはちょっとトレースできませんでした。
○冬柴委員 今伺っても非常に背筋が寒くなるようなことが行われ得るわけでありますけれども、心神耗弱ということであればまだ刑の言い渡しがされるわけですけれども、一たん喪失ということになってしまいますと、これは起訴猶予とか、あるいは裁判であれば無罪ということになってしまって、後は厚生省の方のことになると思うのです。
 厚生省に伺いますけれども、そのような心神喪失をしてしまって犯罪を犯したというような人たちにつきましては、今もちょっと言われましたけれども措置入院ということがありますが、どんな治療をされるのか、それの入院期間というものはどういうことになるのか、そしてまた、そういう人たちは医者の目から見て本当に治って、正常な生活に復帰することができるのか、しているのか、その点についてお尋ねをしたいと思います。
○篠崎説明員 覚せい剤の多量あるいは長期使用によりまして今先生がお話しになりましたような、覚せい剤のいわゆる中毒者と私ども呼んでおりますが、中毒者に対しましては、入院形態のいかんにかかわらず、先ほど申し上げましたような入院治療が原則でございまして、さらに、入院している間に精神病様の症状が認められる場合が多いわけでございますが、例えば幻覚、妄想などの精神分裂病に類似した症状に対しましては、向精神薬と申しまして薬を使います。また、意欲減退あるいはうつ状態などの症状に対しましては抗うつ剤を用いております。いずれにしましても、薬物療法あるいは精神療法等、入院治療の間に行うわけでございます。
 その期間につきましては、これも非常に個人差がございますので、先ほど申し上げましたように、数カ月から年にわたるものもあろうかと思います。
 その後治癒するのかという御質問でございますが、もちろん、薬から離脱をいたしまして必要な精神科治療を行いますと、原則治癒するわけでございます。治癒されれば、地域の中におきましてまた社会復帰活動を行った後に普通の生活に戻れるという場合もあるわけでございます。
○冬柴委員 そこで、精神保健法によりますと、捜査機関あるいは矯正施設の長から、覚せい剤中毒の疑いある者を知事に対して通報し、そして知事がその人たちを診断せしめ、自傷他害のおそれあるという覚せい剤中毒者であれば、精神病院または指定病院に措置入院をさせるということになっているようですけれども、この規定によって捜査機関とかあるいは矯正施設の長から通報を受けた件数というのは、時間もありませんので最近のものだけで結構です、どれくらいになっているのか。そして、そういう措置入院、あるいはそれ以外に任意入院、あるいは覚せい剤以外の精神病というのはたくさんあるわけですから、そういう人たちに対してきちっとベッドは用意されているのか、十分なのか。ベッドが足らぬために早く退院させるということはないのか。そこら辺の事情についてお伺いしたいと思います。
○篠崎説明員 捜査機関あるいは矯正施設の長からの通報された件数でございますが、平成元年一年間におきまして、千三百六十六件でございました。また、措置入院等で入院した場合のベッド数がどうかということでございますが、これも平成元年六月現在でございますが、精神病院は全国で千六百四十一施設、ベッド数で三十五万一千六百十一床でございます。また、その中で措置入院のできる病院は千二百七施設、四万七千五百六十床でございますので、入院に必要なべッド数は確保されているものと考えております。
○冬柴委員 そこで法務省に提案したいわけですけれども、このように受刑者の中に占める覚せい剤事犯、あるいは麻薬も含めてもいいと思うのですが、薬物犯罪者の割合が非常に多い。どこへ行っても刑務所の中でそういう人たちが多いということになりますと、いっそのこと、交通刑務所のように、ある刑務所はその人たちを専門に入れて、そして厚生省等とも連携をとりながら、片や治療、あるいはそういう人たちに対する薬物の恐ろしさの教育とか、そういうものを重点的にそこで行うという考え方はないのでしょうか。一般の窃盗事犯とか、そういう人たちと一緒に薬物事犯を入れておきますと、中で窃盗を犯した人にまで薬物事犯についての誘惑とかいうおそれもなきにしもあらずと思うわけで、素人考えですけれども、そういう発想はないものかどうか、お伺いいたします。
○今岡政府委員 初めに現状を御説明させていただきたいと思うのでございます。
 現在私どもの方では、覚せい剤事犯者、あるいは覚せい剤が原因と申しますか、覚せい剤に絡んだ犯罪で服役をする受刑者、これらの中で、御指摘のように服役中に現に精神障害の状態にある者と申しますか、そういう治療を要する者も若干名おるのは事実でございます。そのような受刑者につきましては、私どもの方で医療刑務所といって、精神疾患、身体疾患の受刑者を集禁して治療する施設がございますが、そこに収容いたしまして、薬物療法でございますとかあるいは精神療法でございますとかあるいは作業療法、収容者の症状に応じてこれらの療法を活用いたしまして治療させているというのが一つございます。そのほか大多数の覚せい剤関係の受刑者は、日常生活の面では特に他の受刑者と区別して処遇をしなければならないという点も見受けられないというふうに現在のところ考えております。
 ただ、覚せい剤の依存性を断ち切るための教育は必要であるという認識は持っておりまして、各施設におきまして、覚せい剤を再度使用することのないように、覚せい剤の薬害についての啓蒙ですとか、講義ですとか、集団討論ですとか、作文を書かせるとか、いろいろな手法を活用いたしまして、覚せい剤から手を引いてしまう、そういうことができるような処遇をしているという状況でございまして、私どもとしましては、医療刑務所に収容する者は別といたしまして、その他の受刑者について特に覚せい剤事犯者だけの特定の集禁施設というものは現在のところ考えていないという状況でございます。
○冬柴委員 法務大臣、通告していませんけれども、今矯正局長からのお話にありましたように、普通の状態にあっても、外へ出たら五六・何%また入ってくるわけですから、そういう人たちに対して特に薬物の恐ろしさのこととか反省文を書かせるとかということをやっておられるわけですから、そういう特別の施設を考えられたらいかがかと私、提案したいと思うのです。一言で結構です。
○長谷川国務大臣 今お話を聞いておりまして、大変いい案だと思っております。事務当局に検討させます。
○冬柴委員 最後になりますが、私は、覚せい剤を含む白い粉による中毒性精神障害者の犯罪につきましては、一般の受刑者と同一の処遇のもとにそれらを一定期間刑務所に拘束することのみをもって足れりとすることはもはや許されないところへ来ているのではないかと考えます。精神障害に基づく犯罪対策の問題としましては、大正十五年の臨時法制審の答申以来、保安処分を導入してはどうかという議論が長く続けられて現在に至っていると思います。昭和五十六年に法務省と日本弁護士連合会との間で行われました第四回刑法問題意見交換会において示されました、刑事局長案と言われておると思いますが「保安処分制度の骨子」というものと、日本弁護士連合会の方から示された「精神医療の抜本的改善について」と題する要綱案に問題は収れんされて現在に至っていると私は考えているわけでございます。この二つの案の考え方の基本、一つは刑事処分として考えるのか、それとも精神医療あるいは福祉施策としてそういうところに重点を移して考えるのかという点で大きな違いはありますけれども、目指すところは同じことでありまして、これをどう調整していつ立法作業に入るのかという段階を迎えていると私は思うわけでございます。
 そういう意味で、法務省と厚生省からそれぞれお伺いしたいわけですけれども、法務省からは、「保安処分制度の骨子」と題されたものについてどういうふうに考えていらっしゃるのか。それからまた厚生省につきましては、「精神医療の抜本的改善について」という日弁連の要綱案が出ているわけですが、これは御存じだろうと思いますが、そういうものについて、精神医療の充実及び精神障害者に対する福祉の施策充実。こういう犯罪者は、矯正施設から外へ出てもまた生活に困ったり、あるいは帰っていくところは暴力団の古巣であったりして、自分の意思ではなくても再犯、そういうことになってしまっている場合が多いと思いますので、何らかのけりをつけなければいけないのではないかと思うわけですけれども、法務省と厚生省からそれぞれ御意見をお伺いしたいと思います。
○井嶋政府委員 もう委員十分御承知のことでございますから、細かい説明は省略させていただきますが、私どもは、現時点におきましても、精神障害者に対する司法のあり方といたしまして保安処分制度をぜひ実現すべきであるという考えを持っておることには変わりはございません。ただ、委員御承知のとおり、日弁連の意見書によりますと、精神障害者等に対する対策は何よりもまず医療であるということで、医療の抜本的な改善こそがまず当面の急務である、こういう御意見でございましたために、当時対立したままということでございましたし、なお、六十三年の七月から施行された精神保健法によりまして新しい入院制度、措置入院制度等が整備されましたので、その辺の動向も十分見据えながらこの問題に対処したいということで今まで参っておるわけでございます。
 新しい精神保健法施行後まだ二年に満たないわけでございますが、その間、私ども必ずしも統計を所有はいたしておりませんけれども、一部の庁からの報告等によりますと、検察官の二十五条通報による措置入院の数、率と申しますか、これは若干上がっているという報告をよこしている庁もございます。そういったこともございますから、なお精神障害者に対する精神保健政策がどういうところになっていくのかということをもう少し見きわめて、その上で日弁連とも意見の調整をして立法作業に入りたい、このように思っておりますが、当面具体的なスケジュールは決めておりません。
○篠崎説明員 厚生省といたしましては、現行の精神保健法体系のもとで精神障害者に対して医療機関への早期受容あるいは適正な医療及び保護の確保を図りますほか、再発予防のための通院医療の確保、また社会復帰に必要な地域精神保健対策を講ずるなどいたしまして、今後とも医療福祉対策の充実に努めてまいりたい、このように考えております。
○冬柴委員 時間が終了したのですけれども、これについて一言、大臣のお言葉をいただいて私は終わりにしたいと思うのですが、よろしくお願いします。
○長谷川国務大臣 この種の事犯については、何ら落ち度のない善良な一般市民が被害者となることが少なくなく、重大な問題と考えております。関係諸機関と緊密な連絡を保ちつつ、この種の事犯の撲滅のために一層の努力をいたします。
○冬柴委員 どうもありがとうございました。終わります。
○小澤委員長 御苦労さまでした。
 平田米男君。
○平田(米)委員 まず、最高裁の方にお伺いをしたいと思います。
 今月の七日に長官・所長会同が行われたそうでございますが、そこで草場最高裁長官が訓示を出されたわけでございますけれども、その骨子について、簡単で結構でございますので、御説明をいただきたいと思います。
○金谷最高裁判所長官代理者 本年六月七日、八日に長官・所長会同が開かれまして、その冒頭に草場最高裁長官が訓示をなさったわけでございます。ことしで裁判所制度が確立してから百年を迎えるということで、裁判所の任務としては個々の事件の具体的、妥当な処理ということで変わるところはないが、司法を取り巻く環境が急速に変化しているので、いろいろな場面について見直しをなしていかなければならないというのが基本的なことでございまして、それに伴いまして各論的なところで、人材育成ということが裁判所にとって非常に大事なことであるというところから人材育成に関する諸施策についての考えを述べられ、またいろいろな手続、制度の見直しということで、特に民事訴訟法の運営の改善、あるいは立法面をも含めたそういう制度の見直しということの必要性を強調された、そういったところが大きいところでございます。
○平田(米)委員 たしかその中で、裁判官の生活にゆとりを持つようにということに触れられて、その点についてマスコミも大きく取り上げたという経緯があるかと思いますが、いかがでございますか。
○金谷最高裁判所長官代理者 ただいまの訓示の人材育成に関する中で、「現代は、生活にゆとりを持つことの意義が指摘されている時代であるといえましょう。裁判所としても、このような時代の流れを踏まえ、執務方法の改善、工夫等によりゆとりを生み出し、これを活用し得るよう、その環境づくりに努めるべきものと考えます。」こういうふうに長官の訓示が述べられておるところでございます。
○平田(米)委員 裁判官の生活にゆとりを持つようにという御意見は、私も心から賛成をするわけでございます。私も弁護士として裁判官とおつき合いがございます。大部の事件の判決書というのは夏休みあるいはお正月休みまでつぶして、それを待って作成をされる。しかも、帰られるときもふろしきいっぱいにして記録を持って御自宅に帰られて、また夜も記録に目を通される、こういう生活をしておいでになるありさまを見ておりましても、大変だなという思いがいたしております。そもそも、裁判というのはこれは判断をするということでございまして、余り忙し過ぎると、人にしっかり耳を傾けるということもなかなか厳しいわけでございますし、また、冷静になって物事を考えるということも一般論からいって難しいわけでございまして、裁判というものは本来心のゆとり、言うなれば時間のゆとりがなければいけないのではないかと思うわけであります。そういう意味で、長官がそのような点を御指摘されたことは、私も心から賛成をするわけでございます。
 ただ、残念なことは、長官がそこでおっしゃったそのゆとりを得るための手段として「執務方法の改善、工夫」ということを特に挙げておいてになる。それ以外のものを否定しておいてになるというふうに私は理解をしてはおりませんけれども、果たしてそれで裁判官の現実の生活の中で、あるいは執務の中でゆとりが得られるのかどうか、甚だ私は疑問に思うわけでありまして、今客観的に見てほとんどの裁判官は、地域によって若干は差があるかもしれませんけれども、必死になって働いておいでになる、若干の執務方法の改善とか工夫などによってではゆとりなどというのは到底望むべきものではない、そういうふうに私は思うわけでございまして、裁判官にゆとりを持ってお仕事をしていただくためには裁判官そのものの数をふやしていかなければならないと思うわけでありますが、いかがでしょうか。
○金谷最高裁判所長官代理者 長官のゆとりについて触れられたくだりは先ほど読み上げたとおりでございますが、私ども裁判所の中にいる者がこの訓示を聞きまして、おっしゃっておられる趣旨はこういうことであろうと理解する点がございます。
 一つは、この訓示でおっしゃっているのは、個々の裁判官がやはり生活にゆとりを持つことの大切さということを十分認識して、そして今まで例えばだらだら仕事をしているというようなことがあれば、そういうことでなくて、仕事すべきときはし、休むときは休む、要するに執務の仕方にめり張りをつけて自由な自分の時間を生み出す、そういうことを心がけよということでございまして、裁判官の意識改革あるいはこれに基づく執務方法の改善工夫を促しておられるということでございます。
 もう一つの面がやはりあると思います。これの環境づくりという言葉が出ておりますが、もう一つは司法行政面のことでございまして、個々の裁判官がゆとりを生み出すべく工夫したり、あるいはその生み出したゆとりを活用し得るように、司法行政面でも種々配慮してその環境づくりに努めよということでございます。
 すぐ思い浮かびますのは、具体的なことといたしましては、例えば非常に負担が過重で少々の改善工夫をしてもゆとりが出ない、そういった部署がもしあるとすれば、そういうことがないように内部での暇な部門から忙しい部門への配置がえ、場合によっては、事件の動向等によって必要とならば増員の手当て、そういったことも含みました人的な充実、あるいは能率器具と申しますか、執務を効率的に行うためのいろいろな物的な手当て、あるいは裁判事務のOA化できる部分のOA化、そういったことの手当ても必要でございましょうし、あるいは十分な休暇を遠慮なくとれるように、そういうためには年配者と申しますかそういった者が率先して休暇をとるとか、ある意味でのムードづくりも必要でございましょうし、その他もろもろの司法行政面での施策も必要でございます。
 長官のおっしゃっていることは、最初の個々の裁判官の工夫だけをしろよということではございませんで、もちろんその両面をおっしゃっておるのだと私ども理解しておるところでございます。
○平田(米)委員 そこの中に裁判官の増員という言葉が全然出てこないのですけれども、それは入っていないというふうに理解すべきなのでしょうか、それとも入っているというふうに理解した方がよろしいのでしょうか。
○金谷最高裁判所長官代理者 言葉としてはこのとおりでございまして、広い意味での人的手当てということで、必要とあらばそういう増員ということも考えなければならないことは当然の前提になっていると思います。
 ただ、私ども、誤解のないように申し上げたいのでございますが、今まで裁判所が非常に増員に消極的であるとかという議論が弁護士会の一部にございます。そういうことではございませんで、御承知のとおり、毎年この法務委員会でお手数を煩わせまして裁判官、一般職、増員に努めてまいっておるのでございます。しかし、その増員は、やはり事件の状況を見ながら、各種事件の動向を見て、そしてこの部門にはこういうことが必要だ、こういう手当てをしなければいけないということを見て行っておるものでございまして、弁護士会の一部の議論によりますと、全般的に現在の裁判所が人手不足で、そして裁判所に参る事件を処理するだけの必要な陣容を整えていない、要するに慢性的な人員不足状態にあるかのような議論があるのでございますが、その点は少し私ども認識を異にしております。
 これは数字で見ていただきましても、最近、裁判所に参ります事件、新受事件と申しますが、その事件を上回る処理を毎年いたしております。また一方では、平均的な審理期間も少しずつではございますが改善の方向に向いております。そんなところから見ますと、裁判所にやってくる事件を処理できるだけの陣容を整えていないということではなくて、その辺は、参ります事件と裁判官の数がそう大きくかけ離れているという状態ではございません。ただ、年々の事件の動向あるいはある部署での事件のたまりぐあい、そういったところを見て、また一方では、少しずつでもよりよい訴訟の運営を考えるといった面から毎年増員をお願いし、これが財政当局の御理解を得て認めていただいている、こういう状況でございます。
○平田(米)委員 まさにその辺が認識の食い違いかと思うのですが、私も定員法の関係で質問をさせていただいたときにも触れたわけでございますけれども、現実に、欠席裁判は別にしまして、証拠調べ等に入った裁判の民事訴訟の場合の第一審のかかる期間は二年を超えておるという現実があるわけでございまして、そういうものを、何とか国民の皆さんの御期待にかなうような、できれば一年以内に判決を出す、こういう視点で考えれば、陣容がそれに対応していないと思われるわけでございますが、その点まで御否定になるのでしょうか。
○金谷最高裁判所長官代理者 裁判官の数をふやすことによって訴訟改善の効果が促進される面があるということを私は決して否定しているものではございません。
 先ほど委員御指摘のとおり、対席判決の事件と申しますか、これは地裁で見ますと現在一年半弱、平均審理期間がかかっております。しかし、一般的な事件ですと、地裁で民事訴訟事件につきまして十一・九月です。そういったところから、平均審理期間は改善されておるのでございますが、事件の中には二年かかり三年かかるというものがありまして、それはもっと早く処理しなければならないことは仰せのとおりでございます。しかし、そういうお互いに争っていて、いろいろな証拠が双方から出され、そして審理に弁論回数を重ねなければならない事件の迅速な処理のための方策として、これは人をふやすことが最大の方策であるかといえば、率直に申し上げますが疑問を感じざるを得ない点もあるわけでございます。むしろ、もう少し今の五月雨式の審理を改めて、これは訴訟関係人、特に弁護士の先生方の御協力を得なければならないわけでございますが、一つ一つの期日をもう少し大切に充実したものとして、全体の審理回数を減らし、準備期間としては十分な期間をとっていただきながら審理を始めれば、もう少し集中的な証拠調べをする、これは裁判官にも訴訟指揮の面で責任がございますが、そういった面の工夫をしなければならない。また、代理人の方々にも、そういった訴訟指揮に応じられるだけの態勢を整えていただき、準備していただかなければなりません。そういった訴訟関係人、裁判官も含めまして、もう少し訴訟手続自体の改善、これによって改善を図らなければならない部分も相当占めていると思います。
 もう委員も御承知と思いますが、私の経験から申しましても、たまたま裁判所が比較的期日があいている、ぜひここを受けていただければ期日が入るのだがというときに期日が入らない。むしろ弁護士の先生方が多数の事件を受任しておられまして、あるいはその準備のために必要だということで期日が入らない、あるいはせっかく期日を開いてもごく形式的な期日で実質的なことが余り行われない、そういったことで延びている場合もございまして、これは決して弁護士の責任だというわけではございませんが、法曹全体が協力してもう少し審理方法の改善に取り組まなければならないという面を私は強調したいわけでございます。
○平田(米)委員 おっしゃることがわからないわけではありませんけれども、確かに運営方法を改善する、今の五月雨的な審理方法を直して集中審理をしなければいけないというのは私も同感でございます。
 しかし、私ども、集中審理をやる場合にどれだけの人的、物的施設が必要かを考えたときに、いろいろ御意見あるかもしれませんが、私どもは、かえって裁判官の人員をふやさないと効果的な集中審理ができないのではないか。といいますのは、証人も当日に確保できない可能性がある、そうしますと、一日で朝から晩まで証人を全部調べてしまって一回で終わらせようということで予定を組んでおったところ、穴があいてしまって、それも埋めようがないということで空白の時間が出てくるわけでございます。今の五月雨方式というのは、できるだけそれを回避して、裁判官も十時から五時までびっしり弁論、証人調べを入れておいでになるわけでございまして、これはまさに現実に合った合理的なやり方として裁判官がやらざるを得ない、こういう状況にあるのではないかという認識なわけでございます。それは立場の違いによって、また認識の違いによって御意見の対立があるかもしれませんけれども、そういう考え方もあるということは十分御認識いただいているかと思うわけでありまして、運営の改善とともに、裁判官の実質的な増員を同時に図っていかなければ弁護士会側の理解も得られないということも事実でございますので、やはり運営の改善ということを強力におっしゃると同時に、裁判官の増員ということもあわせて言っていただければ、弁護士会も、そのとおりである、両方の面で協力しようじゃないか、当然こういう姿勢にもなってくると私は思うわけでございまして、その辺、もう一歩裁判所の姿勢の転換を求めたい点であるわけでございますが、いかがでございましょうか。
○金谷最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたとおり、私ども決して増員に消極的ということではございませんで、むしろ最近十年間で裁判官、一般職含めまして百七十数名の増員をしていただいておるわけでございます。先生も御承知とは思いますが、現在、法曹三者協議会で司法試験改革が論議されております。そういった中でも、裁判所としても多数のすぐれた人材を迎えたいということをはっきりと表明いたしております。決して人を大勢採るということに消極的だということは申しておりません。ただ、増員ということで枠をふやすということになりますと、それはその年の給源の状況、空の枠をいただいても埋まらないということでは困りますので、そういう給源の状況、いい人をそれだけの数採れるかといったことをもにらみ、あるいは事件数の動向もにらんで手当てしてまいるわけでございまして、そういったあたりを御理解願いたいと思うわけでございます。決して増員に消極的ということではなくて、多数の有為な人材を迎えたいんだということは法曹三者協議会でも最高裁の見解として公式に申しております。
○平田(米)委員 増員に消極的でない、積極的なんだというお考えがあることはそのお言葉で理解をさせていただきたいと思うわけでありますが、まだそこで事件数の推移ということをおっしゃっています。しかし、事件数の推移じゃないわけでございまして、現実問題として裁判が遅延している、現在の事件数で容量が足りないんだという認識を持っていただかなければ、現状の改革は前に進まないと私は強く感ずるわけでございます。
 こればかりやっておりますと時間がなくなりますので、先に進みたいと思いますが、大蔵省、きょうおいでいただいているかと思いますが、今裁判所も増員については積極的な姿勢を持っているというお考えを示していただいたわけでございます。今、司法試験制度の改革が行われておりまして、合格者をもう少しふやそう、五百名から七百名ぐらいにしようということになっておるわけでございます。私も、七百名にふやしてそれによって裁判官が任官する数あるいは検事も任官する数が大いにふえることを期待しておるわけでございます。裁判所がそのような姿勢を持って現状よりも大勢の方を裁判官、検事として採用される、検事というのは法務省になりますけれども、そういうような姿勢を持った場合に財政的に十分な手当てをするというようなお考えはあるのでしょうか。
○浜中説明員 御答弁申し上げます。
 我が国社会経済の多様化に伴い、裁判全体が複雑困難化し、民事訴訟の審理の充実、促進が裁判所の大きな課題であって、裁判所として種々そのための努力をしているということはただいま御検討いただいているところでございますし、そのような努力を着実に実行していると聞き及んでいるところでございます。
 御質問の裁判官の増員につきましては、御答弁にもありましたが、過去十年間で百七十名を超える増員を見ているところでございます。国家公務員全体といたしましては、この十年間、大幅な定員の削減を図ってきたところでございます。このような中で裁判官の増員を確保してまいったところでございます。具体的には毎年、裁判所とも御相談の上適切に対処してきているところでございますし、今後ともそうしてまいりたいと存じております。
 なお、裁判官の執務環境の改善という点に関しましては、先般成立いたしました平成二年度予算におきましてワープロ、OA機器、パソコンその他につきまして格段の整備を図る、こうしたことを特に申し添えておきたいと思います。
 以上でございます。
○平田(米)委員 もう少し前向きな御答弁をいただきたかったわけでありますけれども、現状をきちっと踏まえて、めり張りのついた予算づけをやっていただかないと、財政が厳しいからできないんだということでは財政当局の責任を果たしたことにならないと私は思うわけでございまして、優秀な官僚が大蔵省にはそろっておいでになるわけでございますので、その辺よろしく御配慮いただきたいと思うわけであります。
 次に、法務省の方にお伺いをしたいわけでございます。
 改正入管法が今月一日から施行されたわけでございますけれども、施行時点における日本における不法在留者そして不法就労者の数というのは大体何人ぐらいと把握をしておいでになるのでしょうか。
○股野政府委員 ただいま先生御指摘の点については、これは事柄の性質上推計によらざるを得ませんが、私ども、平成元年末の時点において不法の残留者の合計は、それのほとんどが不法就労者になっておると考えますが、約十万人と推計をいたしております。
○平田(米)委員 入管法施行ということで不法在留者が自首をしてきたと大分マスコミで取り上げられたわけでございます。施行してまだ一カ月たたないわけでございますけれども、その状況から見て、多数の不法在留者、就労者を減少させるめどはどのくらいついていると認識しておいでになりますか。
○股野政府委員 改正入管法施行後まだ日も浅いわけでございますので、改正入管法の施行後の事態を踏まえて不法就労者の実情というものを把握することについてはまだ若干の日数を要するものと思います。ただ、ただいま先生の御指摘の中にございました、本年の改正入管法の施行を控えて、改正入管法の施行に先立ちまして、不法就労をしている外国人の人々が当局に対して出頭申告をしてまいったという事態がございます。この流れが東京地方入国管理局において、本年の初めから五月末までにおよそ二万人の人が出頭申告をしてきたという事態がございました。改正入管法がいよいよ施行になりましたので、今後、当局といたしましては、関係方面に対する改正入管法の周知に努める過程において、不法就労を行っている人々に対して早くその不法状態を是正するよう指導する、そして出国を呼びかける、こういうことをまず心がけてまいり、また、その中にあって特に悪質な事案については、これは摘発を続けていくということも心がけておるところでございます。
○平田(米)委員 一部のマスコミが、不法在留者、不法就労者に対する処罰は退去強制のみで、懲役、罰金というのはありませんというような報道をしておいでになるわけでありますけれども、これは明らかに誤りなわけでございますが、こういう問題について今後どのように対応されるのか、また、現在不法在留者等に対してどのような処罰が行われ、処罰件数等がわかりましたら教えていただきたいのです。
○股野政府委員 まず、ただいま委員の御指摘の、一部の報道の中に、不法残留ないし不法就労を行っている者に対する処罰がないというような報道があった点、私どもも気がつきまして、直ちにこの報道機関に対しまして不法就労あるいは不法残留ということに対しては前法においても、また現行法、改正入管法のもとにおいても罰則の規定があるんだということを指摘をいたしまして、その結果、その報道機関においては直ちにその報道についての訂正の記事を掲載した、こういう経緯がございます。
 また、この観点につきまして、罰則全般についての理解をさらに関係方面において深めていただくという観点から、報道機関に対して改正入管法の施行の前、さらに改正入管法の施行の後、それぞれにおきまして、特に罰則の問題について解説を当局として改めて行ったという経緯がございまして、こういう点についても十分理解がいただけるよう努めておるところでございます。
 それから、ただいま委員のもう一つの御指摘の点でございますが、入管法違反という不法状態にある外国人の人々についてこれは退去強制の対象となるという点は、御指摘のとおりでございます。さらに、退去強制をとることとあわせて、入管当局として、処罰問題の関連で捜査機関に対して、法令違反の事案として特に悪質なものについて捜査機関側に告発ないし通報を現に行っております。
 過去三年のその状況を見ますと、平成元年におきましてはこのような捜査機関に対する告発ないし通報を行った件数は二百件、その前年の昭和六十三年においては二百十九件、またその前年の昭和六十二年においては百七十五件、こういう件数になっております。
○井嶋政府委員 不法残留者に対する刑事処罰の件数というお尋ねでございますので、過去三年の状況について申し上げます。ただ、この不法残留者という七十条第五号のみに包括をした統計はございませんので、入管法違反という統計をまず申し上げまして、その大体七割ぐらいが不法残留者であるというふうに私どもの実務の経験で考えておりますので、そういった意味で、全体の統計で大変恐縮でございますが、それを申し上げたいと思います。
 昭和六十一年の検察庁におきます通常受理人員が八百八でございます。これに対しまして、公判請求百七十三、略式命令三百五十一、不起訴二百三十二でございます。昭和六十二年におきましては、通常受理人員が九百三十八名でございますが、そのうち公判請求百六十五名、略式請求四百十二名、不起訴三百三、昭和六十三年は、六百十四名を通常受理しておりまして、そのうち百六十四名が公判請求、百八十四名が略式命令請求、不起訴が二百五十四でございます。
○平田(米)委員 処罰の問題のみならず、今回いろいろな制度がいいものも随分できたわけでございまして、その辺のPRもしっかりやっていただきたいなというふうに思います。
 それで今度、就学という在留資格が新しく設置をされましたが、留学生、就学生というのは、許可をもらえば一日四時間ぐらいということでございますがアルバイトができる。その就学生、留学生の入国審査の基準が省令の第十六号で決まっておるわけでありますけれども、それを見ますと、「申請人が生活費用を支弁する十分な資産、奨学金その他の手段を有すること。ただし、申請人以外の者が申請人の生活費用を支弁する場合は、この限りでない。」こういうことになっておるわけでありますけれども、現実問題として、就学生というのは九五%ぐらいがアジアの諸国からおいでになっておりますし、留学生も九〇%ぐらいがそうだというふうに伺っておるわけであります。こういう方々からしますと、この基準をクリアするというのは現実問題として非常に厳しいのではないか、このように感ずるわけでございますが、どのような認定でこういう方々の入国を認めておいでになるのでしょうか。
○股野政府委員 ただいま委員の御指摘のとおり、省令の中で留学あるいは就学についての上陸審査の基準を定めております。その中で生活費の支弁についての条項がそれぞれございます。まず、日本でアジアの留学生ないし奨学生の方々が全体の中の大きな割合を占めるというのも、先生が御指摘のとおりでございますが、こういう方々の入国申請に当たりまして審査をいたしますときは、まず基本的に、その方たちが御家族からの例えば仕送りというものがあるというようなこと、あるいは本邦で十分な奨学金の支給を受けられるということがある、こういうことの場合には生活費の支弁がそれなりに保証されているということでございますが、そういう場合以外になりますと、この審査基準の中にも触れている点でございますが、日本におります保証人が生活費等についての責任を持つということを要件として審査に当たっております。そこで、この保証人の人たちが生活費等についてきちんとした責任を果たすことが、入国審査あるいは既に日本についてさらに在留期間を更新するという場合、いずれについても同様の観点からの審査を行わしていただいております。
○平田(米)委員 まず仕送りとおっしゃっても、日本で半年生活をするということは、六カ月の在留期間が就学生は認められているわけでありますけれども、アジアの方々の一般の所得からしますと到底仕送りができるものではありませんし、就学生についても全く奨学金制度というのはありませんし、留学生については若干ありますけれども十分なものではない、こういう点からいきますと、残るのは日本の保証人ということになると思いますが、この日本の保証人というのが果たして人間関係の濃い人なのかどうか、濃い人が出ない限りはなかなか生活費の面倒を見るなんということは実質上考えられない。そうしますと、その辺の認定を厳しくするということになりますと、実際上入れないのじゃないかなというふうに思うわけです。
 しかし、現実問題としては、就学生、留学生、アジアの方々がたくさん入っておいてになるということはその辺の審査が非常に甘い、言葉をかえて言えば弾力的にやっているということになるかもしれませんが、しかし、もしそれを甘い審査をすれば、今回、改正入管の主眼でありますところの不法就労者を排除しようという目的はかなわないわけでございまして、その辺、やはり法律に従って厳しくやる。しかし反対に、そうなりますとアジアの方々は全く留学も就学もできないということになるわけでございまして、それでは近隣諸国との友好関係というのは到底保てないわけでございまして、そこで考えるべきは奨学金制度というものをきちっと設けることではないかと思うわけであります。今、私費留学生二万六千人、就学生約五万人と伺っておりまして、合計七万六千人でございますが、月五万円の奨学金を与える、年間六十万円でございますが、ざっと計算しますと四百五十六億円でできるということになるわけであります。今、ODAは七千億円と言われておるわけでございますけれども、ODAもハードのODAからソフトのODA、こういうふうに言われているわけでございまして、ぜひともODAの一つとしてこのような充実した奨学金制度を打ち立てるべきではないかと思いますが、文部省、いかがでございましょうか。
○中西説明員 留学生経費の充実につきましては、先生御指摘のようにODAの予算の活用ということも考えておりまして、平成二年度の予算で申し上げますと、国費留学生の増、それから今おっしゃった二万六千人の私費留学生に対する学習奨励費という形の奨学金制度、これの充実等を中心に二百七十一億円の予算を計上いたしたところでございます。なお、このうちODAの予算とされておりますのが二百六十二億でございまして、留学生予算全体の九六%がODA予算という形になっております。御指摘のように、私費留学生が日本に来て、ほかのアジアに比べますと生活費が高いとかそれから住居を見つけるのが難しい等、いろいろな問題がございます。それらを援助するために、先ほど申し上げました学習奨励費の充実、それから宿舎を見つけるための種々の施策というものをとっておりまして、これらの施策の充実を通じまして、留学生が日本に勉強に来てよかった、所期の目的を達して帰る、こういうような体制をつくりたいというふうに考えております。
○平田(米)委員 きょうは労働省にも来ていただいたのですが、時間がありませんので、労働省に対する御質問はまたの機会にさせていただきたいと思います。
 最後に、大臣と大蔵省にお伺いをしたいのですが、私はきのう東京入管をお伺いさせていただいたわけでございますけれども、伺いますと、入管の審査担当を初めとする職員の方々は大変な過重労働にある。月に五十時間から八十時間の残業は当たり前ということでございます。しかし、超過勤務手当が、予算がないので実質四割弱ぐらいしか払われない、こういう状況にありまして、一生懸命国のために働いておいでになっている方々に正当な賃金さえ払えないということでは、国としては全く何を言われてもしようがないというような状況にあるかと思うわけであります。しかも、大蔵省の御努力もありまして、人員は相当程度ふやしていただいておるわけでございますが、到底追いつかない、こういう状況にございます。先ほども裁判所の裁判官の増員問題でも申し上げたわけでありますけれども、確かに赤字国債を出さないようになったとはいえ、まだまだ財政は厳しい状況にあるかと思いますが、だからといって、こんなに大変なところに対してはきちっとした予算をつけなければならないと思うわけでございますが、超過勤務手当の問題については直ちに改善をしていただきたいと思いますし、また、人員増加についてもしかるべききちっとした対応をしていただきたいと思うわけであります。
 もう一つは、入管の室内の状況を見ますと、本当にまさに事務所然としている、雑然としているといいますか、そういうような雰囲気でございまして、海外の方々というのは我が国から考えればお客様でございます。お客様がおいでになるところが、備品も設備も非常に貧弱だ。状況も雑然としている。これであっては経済大国日本の姿とは言えない。全く恥ずかしいなと私は思いました。手続を待っておられる方々も、立ったままで待っておられる方がたくさんおいでになるわけであります。こんな恥ずかしい状態は直ちに改善をしていただきたいと思うわけでございますが、この点につきまして、大臣と大蔵省の方からお答えをいただきたいと思います。
○長谷川国務大臣 私も一カ月ぐらい前に現場を視察してまいりました。まさに座っている場所がないということでなく、立っている場所がないくらい本当にどうにもならない状況でした。ああいう状況の中で一日六時間も七時間も立たされた人が国元へ帰ったら、日本はいい国だったななんて言うとはやはり私も思わなかったですよ。それじゃ、定員の増、それから今いろいろな予算を要求しておりますが、そんなにびっくりするほどの金でもないわけでありますので、そういう点は私ども頑張ってやります。
 超過勤務の問題は今聞いたのでございますが、これは事務局にすぐ検討させて善処いたしたいと思っております。
○浜中説明員 出入国管理行政を取り巻く環境が大変大きく変化している、御指摘のとおりでございます。そのため、出入国管理関係の業務量が近年激増しているところでございます。
 御指摘いただきました何点かのうち、まず定員の状況でございますが、国家公務員全体の定数を厳しく抑制している状況の中で、法務省の出入国管理関係の増員につきましては、平成二年度予算で増員を六十六名措置したところでございまして、御案内のとおり大変な増強を図らせていただいたところでございまして、予算の成立を待って直ちに定員がそれぞれの部署に張りついて執務を開始するものと理解しております。
 また、超過勤務手当の関係でございますが、本年度予算の中で適切に対応していただくよう、法務省当局にもお願いをしたいと思っておるところでございます。
 なお、窓口等のお話もございました。特に在留外国人が都市に集中しておられること、首都圏への集中が顕著であるというようなところから、東京入国管理局の審査窓口の混雑、事務の渋滞が起こっている、こういうことでございます。平成二年度予算では、在留資格審査の事務の電算化を図る、このような経費とともに、審査窓口における在留資格審査相談員及び窓口案内整理員を配置いたしまして、これによって窓口の混雑の緩和、在留資格審査業務の複雑多様化に対応したい、おおむね三億円を上回る額をこの関係に特に投入して対処をお願いしているところでございます。
○平田(米)委員 きょうは時間がなくて、わざわざお越しいただきました労働省、また大蔵省の中でも一部の方に御質問ができなかったことに対しまして深くおわびいたします。これで終わります。
○小澤委員長 御苦労さまでした。
 木島日出夫君。
○木島委員 きょう、私は二点について質問をしたいと思っております。一つは、去る六月七日に伊豆七島の三宅島東方約八十キロの公海上で起きたノルウェー船籍ノーパル・チェリー号と日本船籍カツオ一本釣り漁船の衝突事故の問題、もう一つは、六月十三日に強制捜査が始まった、日本で初めての敵対的MアンドA、国際航業株事件にかかわる問題であります。
 最初に、漁船とノルウェー船籍船との衝突事故の問題について、海上保安庁と法務省にお伺いをいたします。
 六月七日の午後一時二十分ごろ、三宅島東方約八十キロ公海上で、宮崎県の塚本水産所属のカツオ一本釣り漁船第八優元丸、五十九・七九トン、十五人乗り組み、いずれも日本人、これに、ノルウェー船籍の貨物船ノーパル・チェリー号、一万九百八十六トン、いずれもフィリピン人二十一人乗り組みが衝突をいたしまして、日本人十一名が行方不明。まことに被害者とその家族の皆さんには心からお悔やみ申し上げるわけですが、六月十二日の午後七時に捜索が打ち切られたということでございます。
 最初に、海上保安庁にお伺いをするわけですが、千九百七十二年の海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約及び国際規則、そしてそれを受けてつくられた国内法である海上衝突予防法、この法律が日本人乗組員には適用がなされる、そしてそれに基づいて海難審判が行われるかと思うのですが、この条約、そして国内法である海上衝突予防法、いずれも同じ条文で、十三条には追い越しのときの回避義務がどちらの船にあるか、十五条には横切りの場合と見た場合にはどちらに回避義務があるか、それぞれ規定されておるかと思います。
 そこで、結論だけで結構なんですが、現在の捜査で判明している資料に基づきますと、今回の海難事故の場合、どちらの船に法律上の回避義務があったと認定をされているのか、まず簡潔にお答えを願います。
○大森説明員 お答え申し上げます。
 ただいま、下田海上保安部等で、先生御指摘の事件につきまして捜査を続けているところでございます。
 現在まで、ノーパル・チェリー号、N号の船体、あるいは第八優元丸の残されている船橋部分、そういったところの実況見分、あるいは両方の乗組員、関係者の事情聴取をやっておるところでございまして、今後捜査を鋭意続けることによって事故原因の徹底解明に努めてまいりたいというところでございます。
○木島委員 続いてお伺いしたいのですが、ノルウェー船籍であるノーパル・チェリー号、乗組員はいずれもフィリピン国籍、そして公海上の事故、これらの皆さんに対しては、海難審判法に基づいて審判を請求する権限は我が国にはあるのですか、ないのですか。
○大森説明員 お答えいたします。
 海難審判の扱いにつきましては、きょうちょっと海難審判庁の人間が参っておりませんので詳細お答えできませんけれども、海難審判は、言ってみれば行政手続を進めるためのことでございますので、私ども進めております刑事手続とはちょっと違う扱いになろうかということだけお答えしたいと思います。
○木島委員 それでは続いて法務省に、刑事処分の件についてお伺いをいたします。
 昭和四十三年六月二十一日条約第十号、公海に関する条約の第十一条によりますと、「公海上の船舶につき衝突その他の航行上の事故が生じた場合において、船長その他当該船舶に勤務する者の刑事上又は懲戒上の責任が問われるときは、これらの者に対する刑事上又は懲戒上の手続は、当該船舶の旗国又はこれらの者が属する国の司法当局又は行政当局においてのみ執ることができる。」とあるわけです。この条文をまともに読みますと、今回の事故で、ノルウェー船籍で乗組員がいずれも全員フィリピン国籍ということになりますと、こちらの皆さんに対する刑事上または懲戒上の責任を問うのは、旗国といいますとノルウェーの国の権限、それからこれらの者が属する国の司法当局の権限ということになりますとフィリピン政府が刑事訴追、懲戒訴追をする権限があると読めるのですが、本件の場合はどうなんでしょう、ノルウェー国とフィリピン国、両方にこの権限が重畳的にあるのでしょうか。
○井嶋政府委員 ただいまの御質問の前提は、ノルウェー船が加害船である、刑事責任を負うべき当事者である、こういう前提のお話として公海条約の条文を当てはめた御質問でございますが、御指摘のとおりであろうと思います。
○木島委員 公海に関する条約を読みますと、日本国政府にはノルウェー船籍船に乗員しているフィリピン人に対しては、残念ながら刑事訴追権はないとお伺いしてよろしいわけですね。
○井嶋政府委員 今前提を置きましたとおり、ノルウェー船側が加害船であるということが捜査の結果はっきりした場合の話でございます。まだ現在、この公海上の衝突におきましてどちらが加害船であるのか被害船であるのかということも含め、刑事上の捜査が続行しておるわけでございまして、それが確定いたしませんと実際はこの裁判管轄権の問題は最終的には固まらないということになるわけでございますけれども、抽象的に、例えば加害船が向こう側だといった場合の設問でございましたからそのようにお答えをした、現実にはこれからの捜査を待たなければわからない、つまり、公海上の今回の衝突がもし仮に日本側が加害船であったとした場合は、旗国は日本であるということになるわけでありますから、そういう意味におきまして捜査の進展を見守る必要がある、こういうことでございます。
○木島委員 ですから、加害船がノルウェー船籍の船であったと仮定した場合には刑事訴追権が日本にはないということは、いいわけですね。
 同時に、これは日本の刑法の第一編総則を読んでも、国外犯で日本国籍でない者の犯罪については残念ながら一定の決まった罰条しか訴追ができないということで、業務上過失傷害事件について、国外で起きた犯罪で犯罪者が外国人の場合、被害者が日本人であっても日本の国には刑事訴追権がない、こういうふうに刑法を解釈してよろしいですか。
○井嶋政府委員 そのとおりでございます。
○木島委員 新聞等によりますと、日本側の乗組員で幸いにして行方不明にならなかった四名について近く静岡地検に書類送検が行われるような記事がありました。これはそういう方向で考えておるのですか。
○井嶋政府委員 静岡地検からの最新の報告では、現在まだ海上保安庁当局が捜査中であるということでございまして、送致は受けておりません。
○木島委員 海上保安庁にお伺いしたいのですが、現在までに収集されたいろいろな証拠で、衝突予防法の十五条を適用すべき事故だったのか、十三条を適用すべき事故だったのか、十五条なら横切りでこれは日本船が回避義務がある、十三条なら追い越しでノルウェー船に回避義務があるということのようですが、判断はできるのですか、できないのですか。
○大森説明員 お答えいたします。
 先ほど申し上げましたように、現在関係者の事情聴取等をやっている段階でございまして、事故原因の解明に当たっているところでございますので、詳細についてはまだお答えできる段階ではございません。
○木島委員 そうしますと、私も仮定の質問をせざるを得ないわけですが、新聞等によりますと、本件の回避義務はどうもノルウェー船籍の方にあると伝えられております。もしそうだといたしますと、フィリピン人に対して刑事訴追権が日本にはない。先ほどお答えのように、フィリピン政府とノルウェー政府に重畳的に刑事訴追権があるということになるわけですが、日本人が十一名行方不明という重大事故について、仮に日本の国内法で業務上過失が認定された場合を想定いたしますと、加害者の刑事責任を追及できないということになるわけですが、こうした場合、法務大臣、法務省にお伺いしますが、訴追権を持っているフィリピン政府あるいはノルウェー政府に対してきちんと捜査をして訴追するようにという行動、アクションは起こすのでしょうか。
○井嶋政府委員 まだ仮定の前提がついておりますので、確定的なことを申し上げるのは非常に難しいわけでございますけれども、事実が確定し、外国が刑事裁判権を持つ場合には、それなりにいろいろな協力もし、また要望も加えた協力といったこともこれから行っていかなければならぬだろうと一般論としては言えるわけでございますから、そういった過程においてそういった希望なり意見というものも言える機会があるんだろうと思います。
○木島委員 仮定の質問といってもこういう事故は少なくないわけでありまして、パナマとかリベリアなど便宜置籍船がますますふえている現状にかんがみ、しかもその実質上の船主は日本である、しかし船籍はパナマなりリベリアである、そして乗組員が日本人でない、しかも公海上の事故、被害者は日本漁船という事故は多々想定されるわけであります。そうした場合も含めて私はお伺いをしているわけでありますが、そういった場合に、司法共助といいますか、フィリピン政府やノルウェー政府等に対してそちらで刑事訴追をきっちりやってもらうための日本の援助、もうちょっと具体的に答弁していただけませんか。どういうことがやれるのか。
○井嶋政府委員 具体的に外国の当局がアクションを起こし、それを日本政府が受けとめていろいろな手続をするというのが原則かと思います。しかし、現実にどのような手順なり手続なりが要請されてくるのか、現時点では全くまだわかりませんし、それにも増して事件そのものの責任の所在がまだはっきりしていないわけでございますから、余りそれ以上の論議に触れるのは適当じゃないのじゃないかなという気もいたすわけでございます。
○木島委員 本件の場合、恐らくフィリピン政府から見ますと、船の所有でもないし単にフィリピン人が雇われているだけだという事件でありますから、そのフィリピン人の刑事訴追をするということについて恐らくフィリピン政府はそれほど熱心にならないというのが事の事情であろうと思うわけであります。相手国の態度待ちでは恐らくこの刑事事件はどこも手をつけないままうやむやになってしまうんじゃないかということを私としては非常に危惧せざるを得ないわけでありますので、そういうことのないように、法務省として、日本には国際法上刑事処罰権はないけれども他国政府にある場合に、そして被害者が日本人である場合には、その当該刑事訴追権を持っている国に対してきちっと捜査するように、そして日本政府は海上保安庁を中心にたくさん資料を持っているわけですから、刑事訴追するだけに足る資料は日本国政府しか持っていないわけですから、それを情報提供するなど、便宜を最大限図られるべきであると考えるのですが、法務大臣、いかがでしょうか。
○長谷川国務大臣 部内において真剣に検討さしていただきます。
○木島委員 そこで、最後に一点だけ海上保安庁にお伺いしたいのです。
 今、世界の海運状況をちょっと調べますと、便宜置籍船が非常にふえている。それは税金上の問題だけではなくて、船員労働者の確保という観点から非常に便宜置籍船がふえているというふうに伺っているのですが、我が国船会社が事実上支配している船で、しかし船の国籍といいますか、置籍は日本になくてリベリアやパナマやノルウェー等にある船が一体どのくらい運航しているのか、数字をお聞かせ願いたい。
○大森説明員 外国船舶の実態把握につきましては、海上保安庁ではなく、運輸省のところでやっております。きょう運輸省の方は来てないようでございますので、ちょっと今お答えできる状況ではございませんので、申しわけございません。
○木島委員 そうですか。呼んでおかなくてはいけなかったのですが、私が調べたところ、なかなか実情をつかめないけれども、平成元年六月末現在では、いわゆる便宜置籍船として我が国船会社が用船している船舶数は約一千百隻、二千三百万総トンある。その内訳は、パナマ船籍が一番多くて約九百隻、一千六百万総トン。その次がリベリア船籍で約二百隻、六百万総トンあると言われているんですね。実質的には日本の船会社が支配している、用船している。そして日本の船会社の利益のためにそれが動いている。しかし、たまたま税金上の問題、そして労働者雇用の問題からパナマやリベリアに船籍を置いている。そして現実に運航している労働者はパナマ人だったり、リベリア人だったり、今回の場合のようにノルウェー船籍だけれどもフィリピン人であるという例が非常にふえているんですね。
 特に私、一つだけ指摘しておきたいのは、ノルウェーが最近制度を変えまして、一九八七年の七月にノルウェー国際船舶登録制度というのをつくりまして、従来はノルウェー船籍の船は原則として三分の二がノルウェー人でなければ運航できなかったというのをつくりかえまして、船長が原則としてノルウェー人であればいい、原則ですから例外もいい。ですから、今回のように船長すらノルウェー人じゃない、フィリピン人、全部フィリピン人がノルウェー船籍の船を運航するという実態が出てきているわけですね。そうすると、ますます今回のような事故はふえるんじゃないか。日本の沿岸漁業に従事している多くの漁民の皆さんにとっては非常に重大なことではないかと思いますので、そこを指摘いたしまして、先ほど私が要望しましたように刑事訴追の問題も抜かりなくきちんとやられるようにお願いをいたしまして、次の問題に移らしていただきます。
 六月十三日に、日本で初めての敵対的MアンドAと言われる国際航業の株事件についての強制捜査が開始をされました。国際航業の元取締役四名が逮捕され、今鋭意捜査がなされていることと思います。
 この事件は、今回の逮捕の罪となるべき事実が所得税法違反事件、いわゆる脱税事件ということで逮捕がされたわけですが、一企業の経営陣による単なる脱税事件として片づけるわけにはいかないということは、既に十四日の参議院法務委員会において私ども日本共産党の橋本敦委員から指摘したとおりでありますし、その答弁で井嶋刑事局長から、厳正、公正に捜査するという答弁もあり、また、その旨法務大臣からも答弁があったとおりであります。特に本件は、八九年四月に改正証券取引法が施行されて、それが施行されていればもう間違いなく証券取引法違反と思われるインサイダー取引が典型的に見られるわけでありますし、特に、政治家が随所に顔をちらつかせている。山王経済研究会の元代表である太田英子氏と小谷光浩氏との株式の相対取引で、わずか一カ月に一億二千万円の利益が太田英子氏の懐に入ったということも指摘されておりますし、乗っ取り側と乗っ取られる側とが八七年の八月に共同経営の覚書を締結した、後、ほごにされるわけですが、その覚書に元運輸大臣の三塚博氏がサインしているということまで指摘されているわけであります。国民はこの事件を検察当局がしっかりと捜査することをかたずをのんで見守っていると思いますので、法に触れることは厳正、公正に処分するということが求められておると思うのですが、法務大臣、その期待にこたえるつもりでしょうか。
○長谷川国務大臣 検察は、従来からいかなる事件であれ、常に厳正、公平、不偏不党の立場でその職責を果たしてきております。私も深く信頼をしているところであります。
 今回の国際航業事件については、現在東京地検において同社の株式にかかわる脱税事件解明のため鋭意捜査を行っているところであると承知をいたしており、私としては検察の行う捜査を見守っていきたいと考えているが、他に刑罰、法令に触れるような事実があれば、適切に対処されるものと思います。
○木島委員 もう時間が本当に少なくなっておりますので、この大きな事件の全貌について質問することはできませんので、ほんの一つか二つ質問をいたします。
 サンデー毎日の本年七月一日号にも書かれているのですが、この事件の非常に重要な人物として、キーパーソンという言葉を使っていますけれども、「国際航業子会社で宝石・貴金属販売「ウイング」の富嶋次郎前社長」がいる。「現在は海外に”脱出中”で、特捜部でも、「小谷とともに政界への人脈形成を図った人物」として行方を追っている。」という指摘があるのですが、この富嶋次郎氏に対しては、令状請求はしているのでしょうか。
○井嶋政府委員 ただいまのお尋ねは、捜査の極めて具体的な事実に関する御質問でございまして、御承知のとおり、捜査は密行という原則でやるべきものと考えておりまして、この場において私から御答弁申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
○木島委員 もう既に新聞等で報道されておりますように、この人物は今日本国内にはいないという状況があるわけでありまして、それで私伺っているのですが、海外にずっと居住し続けるような状況になりました場合にはちょっと問題だと思うのですけれども、その辺どうなんですか。
○井嶋政府委員 マスコミがいろいろな観点から報道していることは私どもも十分承知をいたしておりますが、いかんせん、御質問そのものは、令状をとったかどうかというような問題はまさに捜査そのものの事項でございまして、私からお答えする立場にはないということは御理解いただきたいと思います。
○木島委員 それじゃ、捜査に差し支えては私の趣旨からも外れますから、この辺で質問を変えます。
 これもマスコミ等に既に出てきている事柄であり、先日の参議院法務委員会での質問でも、マスコミ等に出ている事実については注意深く追って処置しておるということなのでお聞きいたしますが、今私が質問をした富嶋次郎氏から元の国際航業の取締役である石橋紀男氏に対して二億三千万の金が渡った。この金の趣旨は、光進の、小谷側ですが、株買い占めに対する防戦側の担当者であった石橋紀男氏に対して寝返りを打たせるための金ではないかということが指摘をされているわけであります。その問題を先ほど私が指摘したサンデー毎日も書いてありまして、その前に小谷氏から富嶋氏へは十億円渡されたそうだというような記事もあるわけですが、これも捜査でありますから、私は仮定の質問をしますけれども、このサンデー毎日の記事の中に、刑法の板倉教授、日大教授の話として、これが事実だとすれば、小谷代表に対する特別背任の教唆共犯あるいは商法上の贈収賄、要するに商法四百九十三条に該当するのではないかということも指摘されているわけです。取締役がその職務に関し不正の請託を受け財産上の利益を収受したときには三年以下の懲役という商法四百九十三条があるのですが、これも仮定ですけれども、この条文が適用される事件だと私は考えているわけですが、いかがでしょうか。これも仮定でいいです。
○井嶋政府委員 先ほど来申し上げておりますとおり、具体的な案件につきまして犯罪の成否を判断し得るのは唯一捜査機関のみでございまして、捜査機関が適法に集めた証拠に基づいて判断をするわけでございますから、そういった意味で、私、捜査機関でない法務当局がお答えをする立場にないことは御理解いただけると思います。したがって、ただいまの御質問につきましても、その成否についてお答えはいたしかねますが、ただ、先ほど大臣も申しましたとおり、捜査の中において刑事罰則に触れるような行為があれば検察は常に厳正、公平に対処してきたということでございますし、これからもそうするであろうという大臣のお言葉は、そのとおりだろうと思っております。
○木島委員 時間が来ましたから、終わります。
○小澤委員長 御苦労さまでした。
 徳田虎雄君。
○徳田委員 新聞、テレビ等で報道されているように、生体肝移植が国民の関心を呼んでおります。脳死状態の人からの臓器移植に関しては脳死臨調で検討されております。死体からの角膜移植や腎臓移植に関しては法律で定められておりますが、生体からの肝臓移植に関しては一大学の倫理委員会の判断で行われていると聞いております。生体から肝臓の一部を摘出して移植するということは、脳死状態の人から臓器を取って移植することよりも重大かつ複雑な問題があると思いますが、法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○井嶋政府委員 委員、冒頭に、現に行われております具体的なケースにも触れられましたが、これは現に行われ、生命との闘いが続いているわけでございますから、具体的な問題に触れるということは慎まねばならぬと思います。したがいまして、御質問の趣旨は一般的に生体から内臓を摘出して移植する場合というふうに置きかえていただきたいと思うわけでございますが、その場合、やはり問題になるのは刑法上の行為としてどうなるかという御質問だろうと思います。
 御承知のとおり、治療行為といたしまして行われるいろいろな治療の手段は、いずれも人間の体に対する傷害その他を伴うものでございますから、当然形式的には刑法に触れるということになるわけでございますけれども、従来確立された治療行為は、刑法三十五条の正当業務行為ということで違法性が阻却されるという論理で刑法上不処罰になってきておるわけでございます。そういう問題でございますから、御質問の問題は、いろいろ具体的なケースごとにそういった状況があるかどうかを判断して刑法上の適用が論じられるべきものであろうというふうに考えております。
○徳田委員 厚生省にお伺いしたいのですが、医療は、病気を予防したり、病気になった人を治療したりして延命すると同時に、健康増進を図ることを使命としていると思います。生体肝移植の場合、肝臓を提供する健康人にとっては、本人の了解があったとしても大変な問題が含まれていると思います。厚生省の立場から生体肝移植に関しての御見解をちょっとお伺いしたいと思います。
○小沢説明員 生体肝移植につきましては、委員御指摘のように、いわゆる臓器提供者と申しましょうか、ドナーの方の負担も大変大きいという問題もございます。それからまた、世界的に見ましても、いわゆる脳死の状態からの肝移植なり臓器移植というのが一般的でございますので、こういった形での生体肝移植というのは症例が極めて少ない、したがいまして、技術的にもまた大変難しい問題があるというような指摘がされているわけでございます。
 こういうような問題がございますが、個別の行為そのものは、私どもとしましては、個別のいわば医療行為そのものでございますので、行政当局としましてその医療行為そのものをいいとか悪いとか、そういうような判断をする意見を申し上げるという立場にはないということでございます。ただ、そういった非常に幅広い問題を含む問題でございますから、私どもとしては、その幅広い見地からいろいろなところでどういうようなあり方が望ましいかというようなことを御議論いただく必要があるのではないだろうか、そのように考えている次第でございます。
○徳田委員 法務省に対して。生体から肝臓等の臓器の一部を摘出し移植する行為は、刑法上どのような意味を持つと解釈されますか。
○井嶋政府委員 先ほどもちょっと触れたわけでございますけれども、やはりこの行為は治療行為として行われるわけでございますから、その治療行為がいわゆる刑法上の正当行為、違法性を阻却する正当行為に当たるかどうかという問題が刑法上は論議される問題になるわけでございます。通常の注射をするとかちょっとメスで皮膚を切るとかいった程度の、いわゆる刑法上の傷害を伴うようなことであっても治療行為として確立されておれば、これは刑法上、正当業務行為ということですべて処罰をされておらないわけでございます。もちろん、犯罪にもならないわけでございます。そういった問題が生体の内臓移植といったものにはつきまとう問題かなというふうに思っておるわけでございます。
○徳田委員 各大学の倫理委員会が生体からの肝臓移植、肝臓等の臓器の一部の移植を容認する決定をしたとしたら、その決定は刑法上どのような意味を持つか、どう解釈されますか。
○井嶋政府委員 今申しましたとおり、刑法上の正当行為に当たるかどうかということにつきましては、いろいろな要素から検討を加えなければなりません。要するに、最終的に違法性を阻却する事由があるかどうかということを判断するわけですから、病気の状況でありますとか手術の仕方でありますとか、その他その必要性でありますとかあるいはその補充性でありますとか不可欠性でありますとか、いろいろあるだろうと思いますし、さらに大きな問題は、同意という問題もあろうかと思います。いずれにしても、そういったあらゆる諸般の要素を考えて判断の正否を論じるわけでございますが、一つの大学の倫理委員会がこれを承認したということは、そういった検討すべきファクターの一つとして当然取り上げられなきゃならぬ問題だろうと思っております。
○徳田委員 各大学の倫理委員会が、脳死状態にある者からの臓器移植を容認する決定をしたとしたら、その決定は刑法上どのような意味を持つと解釈されますか。
○井嶋政府委員 脳死状態の人の臓器を摘出する場合、これは先ほどの生体とはその脳死の部分が違うわけでございますけれども、それにいたしましても、倫理委員会の決定と承認といったものが刑法上の検討の中で占める要素というのは大体同じことでございます。ただ、脳死の問題につきましては、現在脳死臨調でいろいろ議論もされておりますし、それに伴い、また臓器移植につきましても議論されておって、いずれ結論が出るものと思っておりますが、それまでの間は、私どもとしてもその辺の動向を十分見守りたいと考えておるわけでございます。
○徳田委員 文部省にお願いしたいのですが、今報じられている生体肝移植に関しては一大学の倫理委員会の承認を得ているということになっておりますが、移植を受ける側が万が一のことがあった場合には、できるだけの手当ては尽くしたということになると思います。しかし、肝臓を提供した人にもしものことがあった場合、先ほど法務省の見解にもありましたように、傷害致死等の罪にも問われかねないように思います。
 一大学の倫理委員会が容認したからといって、例えば国立大学の場合は、文部教官である医師等のいわゆる手術者、術者の権利を守るためにも、司法界とか学術、学識経験者、あらゆる分野の人を加えた超学閥的な倫理委員会を設ける必要があると思います。文部省の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○小林説明員 お答えいたします。
 確かに、今先生御指摘のように、この問題につきましても各大学がそれぞれ倫理委員会を設けまして、そこで審査を経た後、そのゴーサインを得てこれまでやってきております。
 その際に、倫理委員会でどんなことを審議をするかと申し上げますと、各大学によって多少の違いはございますが、一般的には、やはり今回申請をした件についての手術をされる先生のそれまでの実績等でありますとか、それから患者さんとその御家族の方にどのような説明をしたか、そして同意を得たか、そういったことなどが皆必要なこととして入っておるわけでございます。御指摘のようにドナー側に万一のことがあったら大変ではないか、刑罰に問われることがありはしないかということは当然考えられることでございますので、レシピエントに対する医療と全く同じ程度に、ドナーについても、大学では万全を期してやっておるというふうに聞いておる次第でございます。
 それから、各大学がやっておるのではやはり心もとないといいましょうか、不十分であるから横断的にというお話がございました。確かにそういう御意見もあろうかと思いますけれども、現在、各大学が審議をいたします際にも、各学会の意見等も踏まえつつ、また他大学との情報交換なんかもやりながらやっております。
 それからもう一つは、昨年の二月には、各大学の倫理委員会の相互の全国的な情報交換といったものを目的として、大学医学部・医科大学倫理委員会連絡懇談会というものが設立されまして、現在でも活動しておるというふうなことになっておる次第でございます。
 なお、臨時脳死及び臓器移植調査会、いわゆる脳死臨調でございますが、ここにおきましては、脳死の問題とあわせまして、現在いろいろな問題になっております臓器移植全体についても御議論がなされるのではないかというふうに私どもは期待をいたしておりますので、そうした場におきまして、各大学が持っておりますノーハウや情報といったものを積極的に差し上げて適切な判断を仰ぎたいというふうに思っておる次第でございます。
○徳田委員 どうもありがとうございました。
○小澤委員長 御苦労さまでした。
 次回は、来る二十二日金曜日午前十時理事会、午前+時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時一分散会