第118回国会 外務委員会 第3号
平成二年四月十八日(水曜日)
    午前十時二分開議
 出席委員
   委員長 柿澤 弘治君
   理事 愛知 和男君 理事 園田 博之君
   理事 浜田卓二郎君 理事 浜野  剛君
   理事 牧野 隆守君 理事 上原 康助君
   理事 高沢 寅男君 理事 山田 英介君
      伊東 正義君    小渕 恵三君
      鯨岡 兵輔君    小杉  隆君
      坂井 隆憲君    塩谷  立君
      福島 譲二君    福田 康夫君
      五十嵐広三君    井上 一成君
      岡田 利春君    遠藤 乙彦君
      古堅 実吉君    伊藤 英成君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 中山 太郎君
 出席政府委員
        外務政務次官  石井 一二君
        外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君
        外務大臣官房外
        務報道官    渡邊 泰造君
        外務大臣官房会
        計課長     阿南 惟茂君
        外務省アジア局
        長       谷野作太郎君
        外務省北米局長 松浦晃一郎君
        外務省欧亜局長 都甲 岳洋君
        外務省中近東ア
        フリカ局長   渡辺  允君
        外務省条約局長 福田  博君
        外務省国際連合
        局長      赤尾 信敏君
 委員外の出席者
        郵政省貯金局業
        務課長     田中  博君
        外務委員会調査
        室長      藪  忠綱君
    ─────────────
委員の異動
四月十日
 辞任         補欠選任
  小杉  隆君     大石 千八君
  神崎 武法君     市川 雄一君
同日
 辞任         補欠選任
  大石 千八君     小杉  隆君
    ─────────────
四月十三日
 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とタイとの間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第三号)
 向精神薬に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)
 千九百八十九年七月三日に国際コーヒー理事会決議によって承認された千九百八十三年の国際コーヒー協定の有効期間の延長の受諾について承認を求めるの件(条約第六号)(予)
 千九百八十九年のジュート及びジュート製品に関する国際協定の締結について承認を求めるの件(条約第七号)(予)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とタイとの間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第三号)
 国際情勢に関する件
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○柿澤委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 まず、平成二年度外務省関係予算について、その概要説明を聴取いたします。石井外務政務次官。
○石井(一)政府委員 平成二年度外務省予算の重点事項を御説明いたします。
 平成二年度一般会計予算案において、外務省予算としては五千三百三十九億二千九百九十七万九千円が計上されております。これを前年度予算と比較いたしますと、一四・四%の伸び率となっております。
 現在、我が国を取り巻く国際環境は大きな変貌を遂げつつあり、新たな国際秩序への模索が始まっています。このような中で我が国は、世界の平和と繁栄を一層確固たるものとする新しい国際的枠組みの構築のために、世界的視野に立って主体的に貢献を行っていくことが不可欠となっております。我が外交に課された使命は極めて重大であると言わざるを得ません。
 このような使命を果たすためには、我が国は、これまで以上に強力な外交を展開していく必要があります。
 かかる観点から、平成二年度においては、定員等の増強、在外勤務環境の改善等の外交実施体制、いわゆる足腰の強化、国際協力構想を中心とする国際協力の推進の以上三点を予算要求の最重要事項とし、その他情報機能、海外邦人対策を加え、予算の強化拡充を図ることに努めた次第です。
 外務省定員につきましては、本省及び在外公館合計で百八名の増員を得ました。ここから定員削減四十四名を差し引くと六十四名の増加となり、これに他省庁からの振りかえ増三十一名を加えると九十五名が対前年度比増員となります。この結果、二年度末外務省予算定員は合計四千三百三十一名となります。
 機構につきましては、在外公館として在カメルーン大使館及び在エジンバラ総領事館の新設を行うこととしております。
 在外勤務環境の改善等の外交実施体制の強化に要する経費は、百四十億四千六百万円であり、前年度予算と比較いたしますと、十四億三千六百万円の増加であります。
 次に、国際協力構想を中核とする国際協力の推進に関係する予算について御説明いたします。
 国際協力構想の三つの柱は、政府開発援助(ODA)の拡充、国際文化交流の強化、そして平和のための協力の強化であります。
 まず、政府開発援助(ODA)の拡充については、昭和六十三年六月に設定されたODA第四次中期目標に盛られた諸施策の着実な実施を図る内容のものとなるようにしております。平成二年度ODA一般会計予算については、政府全体で対前年度比八・二%増の八千百七十五億円となりました。
 外務省のODA予算について見ますと、対前年度比五百九十九億円、十六・八%増の四千百五十一億円となっております。この予算のほとんどは贈与予算であり、ODAの質の改善に寄与するとともに、外交の円滑な推進にも重要な役割を果たすものと考えます。
 このうち無償資金協力は対前年度比四百十五億円、二六%増の二千十一億円を計上しておりますが、その内訳は、経済開発等援助費が一千六百二十一億円、二年度から外務省に計上されることとなった食糧増産等援助費が三百九十億円であります。また、我が国技術協力の中核たる国際協力事業団の事業費のうち技術協力に向けられる同事業団交付金は、対前年度比七・一%増の一千二百十八億円を計上しております。
 また、援助実施体制の強化の観点より、国際協力事業団の定員につき、三十四名が純増となり、また、開発援助に携わる人材の育成のための経費について四億六千百万円を計上しております。
 また、国際機関を通ずる国際協力に係るODAとして四百十九億七千七百万円を計上いたしまし
た。
 次に、国際文化交流の強化でありますが、世界の異なる文化間の相互交流を促進し、世界の文化をより豊かなものにするとともに、近年の対日関心の高まりへの積極的な対応を図ることが求められております。
 そのため、国際交流基金の拡充、国際文化交流事業の促進、海外啓発活動の促進のために対前年度比二十五億九千万円、二〇%増の百五十五億二千二百万円を計上しております。
 また、国際交流基金の定員につき、十二名の純増となっております。
 さらに、平和のための協力の強化につきましては、我が国は、国力の伸長に伴い、経済、経済協力の分野においてのみならず、国際平和の維持、確保等の政治的分野においても相応の国際的責任を果たすことが必要となっており、百二十一億四千四百万円を計上しております。
 このほか情報機能の強化及び海外邦人対策の整備拡充にも努めることとしております。
 以上が外務省の平成二年度予算重点事項の概要であります。
○柿澤委員長 以上で説明は終わりました。
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○柿澤委員長 次に、国際情勢に関する件について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
○井上(一)委員 私は、世界のすべての国からなくすべきは核と差別であり、守るべきは平和と人権であるという強い理念を持っているわけです。今まさに人権問題が、さらに平和志向へ向かって世界の趨勢が動いているとき、我が国が過去に何をなしたのか、そして、その結果生じた事態にどう対応していこうとしているのか、今大きく問われていると思うのです。
 そのことは、在日韓国人三世問題においても言えることだと思うわけです。私は、植民地支配のその歴史的な背景に思いを寄せるとき、反省の上に立った誠意ある対応が今求められている、こういうふうに思うわけです。みずからの意思に反して強制連行された実態、さらには民族差別の強い怒り、そういう意味では、今政府が誠意のある対応というものを迫られている、こういうふうに思うわけです。在日韓国人が今まで法的地位においても決してすべての権利が十分保障されたとは私は思っていないわけです。しかし、あえて三世問題に限ってどう対応していこうとなさっていらっしゃるのか。また、この問題に対する外務大臣の認識というものをまず最初に聞いておきたい、こう思います。
○中山国務大臣 委員お尋ねの在日韓国人の問題につきましては、私どもの国と韓国との間に長い歴史がございますが、その間には幾つかの不幸な消しがたい思い出が双方にございます。そういう中で強制連行され、日本において過去に働いてこられた方々、そういう方々が戦後日本の社会の中に住み込まれて、そして我々の社会を構成する一員として今日まで生活をしてこられておる。こういう考え方の中に立ちますと、いろいろな目的を持って日本に往来される外国の方とは違った意味でのお立場というものがあることを私はよく認識いたしておりまして、この方々の、いわゆる現在日韓両国間で問題となっております三つの点、すなわち、在日韓国人の方々の被爆者の扱いの問題、また在サハリンの韓国人の母国への往来の問題、また三世問題等については、政府としては誠意を持ってこの問題の解決のために努力をしていかなければならないと考えております。
○井上(一)委員 とりあえず最初に私は三世問題について尋ねておきたい。
 先ほども申し上げましたように、その歴史的背景あるいは今日の定住性の問題あるいは国際的人権擁護の立場あるいは人道的な立場、結論としては、安定した法的な地位を権利として保障していくということが今必要である、私はこういうふうに思うわけです。事務レベルでいろいろと協議をなさっていらっしゃったわけですけれども、結論としては、韓国政府、盧泰愚大統領が、政治決断にまつ、こういうふうに言われているわけですし、国内法の問題も絡んでなかなか大変だろうとは思いますが、私自身は、各省庁間で協議をされて、どこに問題があったのかあるいはどういう点で認識の一致が得られなかったのかということについて、具体的に尋ねる時間はないわけでありますが、強く意見の違っている点について、今後どう調整をしていくのか、あるいはそういう調整機関をだれか、どの省庁がイニシアチブをとって今後進めていくのか。とりわけ外務大臣は三十日の外相会議に出席をされるわけですから、そういう意味では、出席するについての大臣としての決意、政府としての政治決断が当然あってしかるべきだ。昨日、そういうことについては総理も報告を受けているであろうし、外務大臣もその経過をお聞きしているわけでありますから、私はもう時間を必要としない、政治決断、いわゆる外務大臣の考えをしっかりとここでおっしゃっていただきたい、こう思うのです。いかがですか。
○中山国務大臣 三十日に行われます日韓外相会談を控えまして、実は、一昨日来韓国を訪問されておられました竹下日韓議員連盟会長が昨日日本にお帰りになり、私は昨晩午後七時から竹下邸を訪問して、盧泰愚大統領初め韓国の政府並びに各政党の要人との会談の状況を承ってまいり、これから三十日にかけて、日韓外相会談を前にして、日本政府として解決をしなければならない各省庁間の調整に全力を挙げてまいる覚悟でございます。
○井上(一)委員 もう全力だとかあるいは前向きにだとかいう段階ではないのですよ。もう事務レベルで幾ら話を詰めたって、これは詰まらない、政治決断をするときだ、こういうことになっているのですよ。これはやはり御苦労だけれども、外務省は一生懸命やっていただきましたが、大臣がしっかりここで決意をおっしゃっていただかないと、私は納得がいかないし、そういうことでは議論の詰めにならない。先ほども申し上げましたように、今までの協定の中身といえば恩恵的な位置づけであった、それは間違いである、法的地位の問題については権利として当然保障していくべきである、私はしっかりとこういうことは申し上げているのです。恩恵的なものではない、権利としてしっかりとこれを保障するという考え方で、あとは、それをどのように対応していくかという事務的な問題は事務方でいいと思うのです。政治レベルでの政治決断ですから、外務大臣としてしっかりとお答えいただかないと、私は納得いかない。大臣、いかがですか。
○中山国務大臣 日韓の問題につきましては、一九九一年の一月をめどに、この問題を全面的に両国が満足するような解決をするということでは、日韓の政府間では基本的にその目標を定めておりますけれども、外相会談に臨むに当たりまして、現在まで関係各省庁との間で協議がさらに続いているところでございますから、私は、大臣としては、最終的に政治決断をせなければならないときは、当然政治決断をして、日韓両国間の問題の解決に当たる決意は十分いたしております。
○井上(一)委員 いや、外務大臣、何を言うていますか。もう政治決断をする時期なんですよ。あなたはもう三十日に行かれるわけなんです。今決断しなければいつするのです。九一年一月十六日、そんなことじゃないのですよ。竹下さんと盧泰愚さんとが会われたときでも、もう既に政治決断によって――そうでないと、両国の友好親善を深めていきたいとか両国の強いきずなを結ぶなんて言っても言葉だけですよ。そういうことが誤解を生み、むしろそれは両国間のためには不幸な、問題が先送りになると私は思う。だから、そういう意味では、ひとつ外務大臣がしっかりとここで決意をおっしゃってほしい。そして、それぞれの所管の大臣のお考えもおありでしょう。そういうことを調整する内閣官房、官房長官がいろいろ調整をされる役割を持たれると思うのですが、それはどなたが、どの省庁が調整役に回るか。
 私は政府の考えを続いて問いたいわけなんですけれども、あなた自身の考えをしっかりと、十分
な権利保障はする、法的地位の問題については、三世の問題については、外務大臣としては、任せてくれ、三十日にはしっかり自分の政治哲学を持って外相会議に臨むということをお答えいただかなければ、この問題は進まないですよ。いかがですか。
○中山国務大臣 私は、外交をお預かりしている立場として、これからの日韓外相会談に臨む前に、やはり今日まで日本の関係各省庁がいろいろとこの問題で日韓両国政府の満足するような結論を得るために努力をしてきた経過がございます。そのような経過が、現在さらに詰めの段階を急いでおる過程でございまして、私が日韓外相会談に臨む前に、先ほども申し上げたように、外務大臣として政治決断をする日が必ず来る。もう三十日という日韓外相会談の日が決まっているわけでありますから、委員重ねてのお尋ねでございますが、私が外相会談に臨むときには、政治決断をして臨むものであるというふうに、きょうお答えを申し上げておきたいと思います。
○井上(一)委員 私は重ねて大臣に強く要望しておきたい。
 これはもう何回も繰り返すようですけれども、事務レベルではなかなか問題解決にはつながっていかないわけですから、とりわけ外務大臣が率先して政治決断、私は、海部総理に対する一つの道筋としても、外務大臣はしっかりとみずからの政治決断をすべきであると思います。重ねて十分な権利が、そして十分な保障がそこに約束されるように、そして、そのことが両国のより友好な関係に発展していくということ、さらに、そのことが過去の反省の上に立った、国際国家として、国際感覚を十分に持った日本の行くべき道だと私は思っているのです。そういうことを強く私から、これはもうこれ以上申し上げませんが、十分心して外相会議に臨んでほしい。外務大臣が一生懸命やっていらっしゃるということについては、私はその点については大変理解もし、ぜひ頑張ってほしいと激励も送りたいと思っています。
 さらに、この三世問題については、現在韓国政府と協議をしていることでもあるし、基本的には在日韓国人三世を対象としているということには十分理解ができるわけです。しかし、私は、人道的な立場からも、同じ歴史的な経緯を有する在日朝鮮人にも、その内容を及ぼすことは当然であるという考え方に立っているわけです、冒頭に申し上げた私の理念からしても。このことについて外務大臣の考えを聞いておきたいと思います。
○中山国務大臣 委員お尋ねの点につきましては、いわゆる韓国の方々の三世問題については、日韓法的地位協定に基づき、韓国政府と協議を行っているものでございますが、その意味として、対象となるのは在日韓国人の三世以降であることは御承知のとおりであります。
 一方、在日朝鮮人の子孫の方々を含め、いかなる外国人にいかなる地位、待遇を付与していくかという問題につきましては、今後いわゆる三世問題の進展をも踏まえ、適時検討されていかなければならないと考えております。
 ちなみに、従来より在日朝鮮人につきましては、日韓法的地位協定のような特別の協定はございませんが、実際上、同協定の対象である在日韓国人と基本的には同様の待遇を享受し得るよう配慮されていることを御承知をお願いしたいと思います。
○井上(一)委員 さらに二点目に、私は被爆者の問題について少し尋ねておきたいと思うのです。
 外務大臣、韓国人の被爆者の慰霊碑がどこにあるか御存じですか。
○中山国務大臣 広島の平和記念公園の横にあると聞いております。
○井上(一)委員 平和公園の中なんですか外なんですか。
○中山国務大臣 外でございます。
○井上(一)委員 それは何を意味すると思いますか、大臣。
○谷野政府委員 お答え申し上げます。
 井上先生、経緯、御存じのとおりでございますけれども、けさの新聞にも出ておりました。これを何とかこの公園の中に持っていきたいというお気持ちがあるわけでございまして、広島市の当局に伺ってみますと、外にあるのはやはり何としてもまずいということで、これをできるだけ公園の中に設置したいということのようでございます。
 ただ、これも先生御案内かと思いますけれども、朝総連系の方々との関係がございまして、まとめて一つにした上でその中に入れたいということで、そこが今広島当局とお話し合いが続いておるところだというふうに承知しております。
○井上(一)委員 外務大臣、きょうの報道で「死んでも差別」と、被爆者の方々が日本で、広島で強い怒りを表明しているんですよ。このことにどうこたえるかということが問題なんですよ。そういうことを一つずつこたえ、かつ積み上げていくことが結果的にはすべての問題の解決になっていく、私はこう思うのです。被爆者の援護に、支援に協力をいたします、これに全面的に対応をしていきます、そういう通り一遍な答えでは議論にならないし、そういう認識が間違いであるから、今アジア局長、具体的にお答えになられましたが、広島も平和公園の中に入れたい、政府としてもそうあってほしい、希望する、そういうことに努力をされるのか、そのことからまず聞いていきましょう。
○中山国務大臣 残念な広島の被爆によって亡くなられた方々には、人種とか国籍の差は考えるべきではないというのが私の基本的な考えであります。
○井上(一)委員 ということは、平和公園の外の慰霊碑については、これは間違いであり、好ましくないから、平和公園の中に改めて慰霊碑を移す、そういう方向に政府としては考えているということですね。
○中山国務大臣 この問題は、私が先ほど申し上げたような私の基本的な考え方がございますが、今までの経緯で、この朝鮮半島、分断された二つの国家の方々に関係があるみたまがそこに祭られているということでございますので、そういう経過も踏まえながら、政府としてはできれば早い機会にこの公園の中にお祭りをするという方向で努力をしたいと考えております。
○井上(一)委員 さらに、被爆者の方々に対して、私は十分な補償なりあるいは協力支援体制が固まっているとは思っていませんし、一部報道では、治療する病院、二十数億円でと、そういう報道もありますけれども、予算的な措置――まず日本政府がそれらの方々に対して公式に謝罪表明あるいはおわびの態度表明があったのかなかったのか。私の聞いているところでは、そういうことは一切なかったということを聞いているのです。そういうことは、やはりまずそこから始まり、そして予算的な問題なり治療に専念してもらう、そういう措置が私は必要だと思うのです。そういうことについてはどうお考えなのか、この点についても聞いておきたいと思います。
○谷野政府委員 お答え申し上げます。
 被爆者協会の方々がソウルの大使館にも何度か足をお運びいただきまして、梁井大使が数度にわたってお目にかかりまして丁重なお悔やみの言葉を申し上げた上で、さて日本政府としてどういうことをして差し上げられるかというお話し合いをしておるところでございます。(井上(一)委員「病院建設、二十七億」と呼ぶ)病院ですか。先方からは、井上先生御承知のように、補償として二十三億ドルという金額の提示がございました。政府として、この問題につきましてどういう対応ができますか、真剣に今検討しておるところでございます。御案内のように、従来は渡航費、治療費の面で支援をさせていただいておるわけでございますけれども、それに加えてどういう対応ができるか、今外務省の中で真剣に検討をしております。
○井上(一)委員 被爆者のその問題についても、お金がすべてではないという、誠意の問題ではありますが、予算にしても四千二百万というわずかな額なのです。これも実質的に赤十字を通してのなんですけれども、実質的に韓国のそういう方々
に手渡されたというのは十二月の一日だったと私は聞いているのです。何ら私はそこには誠意も見られないし、四千二百万の金で被爆者の方々に対する――これでは強い怒りを納得してもらえる額ではないし、またあなた方が支援に対して誠意を示しますということにはならない。今後どうするのか。ことしはどうなのか。ことしも四千二百万でしょう、予算の計上は。そんなことでいいのですか。そういうことについてもひとつ聞かせてください。
○谷野政府委員 ただいま仰せのように、今御審議をお願いしております予算におきましても、四千二百万円が計上されておるわけでございますけれども、他方韓国側の関係者のお気持ちもございますので、それに加えてどういう対応ができるかということを、外務省なりの考え方はございますけれども、これを政府全体としての考え方にまとめるに至っておりません。真剣に対応ぶりを検討しておるということでございます。
 いずれにいたしましても、これは蛇足でございますけれども、蛇足と申しますか、法的には非常に冷たい、請求権で決着したという議論があるわけでございますけれども、他方、仰せのように、人道的な問題でございますから、真剣に検討しておるところでございます。
○井上(一)委員 余り時間がありませんのでなんですが、我が国の戦争責任の問題あるいはそれに対する対応の問題、いろいろな意味からして、被爆者に対する援護というものは、私は、その住んでいらっしゃるところを問わない、日本であろうが韓国であろうがどこの国に住んでいらっしゃっても、被爆を受けた方々に対する補償、援護あるいは支援というものは一に変わることがない、これは日本の責任であるという強い考えを持っておるわけなのです。
 大臣、一言私の考えに、まあ同じなのだろうと、支援の方法は少し立場があるが。しかし、私の考えに間違いがあるなら間違いだとおっしゃってください。考えに同じなら同じだと。
○中山国務大臣 委員お尋ねの点は、この日本で戦争中に被爆をされた韓国の方々、この方々が、一応法的にはいわゆる国家間の協定というものはできているとはいえ、日本政府としては、この方々が存命されている間、その方々に対する人道的な協力をしなければならない、こういうことは考えております。
○井上(一)委員 私は、今後とも被爆者の方々に対する国家の責任を強く明確に打ち出し、かつ十分な誠意ある対応をぜひとるように強く要望しておきましょうo
 次に、私はカンボジアの和平への道について尋ねておきたいと思うのです。
 この問題については、大臣もよく御存じだし、大変熱心に取り組んでいただいているわけですが、難民キャンプの中立化構想についてどのように政府は考えていらっしゃるのか、この点をまず聞いておきましょう。
○谷野政府委員 これは、先般タイのチャチャイ首相が見えられましたときも、総理との間で御議論がございました。十分お考えを伺ったわけでございますけれども、私ども日本政府としましても、この難民キャンプを全体として中立化するというのは、一つの非常に和平の面で積極的な寄与をなし得る、支持し得るお考えだというふうに総理からも申し上げた次第でございます。
○井上(一)委員 カンボジアの和平に貢献するというか平和的な介入というか一つのワンステップとしての東京会談については、政府はどのように考えていらっしゃるのか、どう受けとめていらっしゃるのか、このことについても聞いておきたいと思います。
○中山国務大臣 カンボジア和平に関しましては、委員も長年この関係についているいると御苦労いただいていることを私もよく承知いたしております。
 かねて政府としては、この二月に外務省から課長を初めてカンボジアのへン・サムリン政権下の地域に入れまして、政府の治安状況あるいはそこに住んでおられる方々の意見等も十分調査をさしていただく機会を得ました。また、大いなるカンボジアの和平にかかわりのあるベトナムには、ただいま御答弁申し上げております谷野アジア局長を派遣いたしまして、ベトナムにおけるこのインドシナ半島の和平問題についての意見の交換もさしてまいったわけでございますが、先日、チャチャイ・タイ国総理がお越しになりました際に、この日本においてへン・サムリン政権のフン・セン首相とシアヌーク殿下との会談の場を持ってはどうかというお話がございまして、これにつきましては、現在日本の外務省としては、このタイの首相のお申し出というか御意見、御発想を大きく受けとめまして、この実現に向けて努力をしておるということを申し上げておきたいと思います。
○井上(一)委員 これは、私も去年の十一月にフン・セン首相なりシアヌーク殿下にパリで会って東京会談については提言をしているわけなんです。これはぜひ実現をしてほしい、こういうふうに思います。
 最後に、リトアニアの問題について一言触れておきたいと思うのですが、ソ連の経済制裁に対して政府はどうこの問題を受けとめ、今後どう対処していくつもりなのか、このことについて大臣からお答えをいただきたい。
○中山国務大臣 さきの当委員会においてもリトアこァ問題について御意見を申し上げておきましたが、このリトアニアの政府といいますかリトアニアの関係、バルト三国の平和的な解決、これについて日本政府としては、ソビエト政府との間に円満な話し合いが進むことを期待しているということを御答弁申し上げておりますけれども、現在もその考え方に変わりはございません。
○井上(一)委員 具体的に経済制裁に入ったわけなんですから、そういうことについて今後どう政府がアクションを起こしていくのか、そのことについては。
○都甲政府委員 ソ連政府側からリトアニア共和国に対しまして、ガス供給及び石油の供給の削減について通報があったということは承知しておりますし、その措置がとられつつあるという報道も承知いたしております。ただ、他方リトアニア側におきましても、いろいろな話し合いのための回答を本日中に作成しているということも聞いております。そのような中で、私どもとしては、そういう強制措置というものは決して実質的な解決につながらないという見地から、なお双方が実質的な話し合いによって本件を解決する機運が高まってくることを期待したいと思っておりますので、当面事態の成り行きを注視していきたい、そのように考えております。
○井上(一)委員 終わります。
○柿澤委員長 五十嵐広三君。
○五十嵐委員 まず、サハリン残留の韓国・朝鮮人問題について若干お伺いしたいと思います。
 政府側も大変御努力いただいて、あるいは日本赤十字社、韓国赤十字社あるいはボランティアの皆さんなんかも御苦労いただいている中で、問題がこの二、三年大きく進展を見た、大変うれしく思う次第であります。殊に去年なんかは随分飛躍的に一時帰国あるいは永住帰国の数もふえてまいりまして、特に我々が評価したいのは、去年の九月それから十二月、ことしに入って二月、三月、それぞれソウルからハバロフスク、ュジノサハリンスクというふうな直航便が飛んで、そこで交流が図られるというようなところまでまいりまして、従前から見ると、もう本当に驚くような進展を見ているわけであります。
 そこで、日韓両赤十字社間あるいは両政府間でもいろいろお話し合いをいただいているようでありますが、ことしは予算は今審議中でありますが、従前から見ると、これもかなりふえて、今年は一億という予算になって御審議をいただいているわけであります。したがいまして、そういうことの中で、この際、残留韓国・朝鮮人の殊に一世の方々の非常な高齢化の状況、なるべく早く帰国させるあるいは親族と会わせるというようなこと等もあって、できれば月に一便くらいはチャー
ターして運航するということが望ましいのではないかと我々思ぅのであります。また関係者もそのようなお気持ちを持っているようでありますので、どういうことになっているか、ぜひひとつ前向きの御見解を承りたいと思います。
○谷野政府委員 お答え申し上げます。
 本件、五十嵐先生にはかねてから大変強い御関心、非常に御激励もいただいているわけでございますけれども、ただいま仰せの月一回程度の直航便の話でございますが、この問題は、ただいま日本と韓国の両国の赤十字社の間で、やはりそういうふうに定期的に直航便を運航した方が予算の執行上も、それから関係者の方々の便宜の上からも望ましいのではないかということで、定期的に運航するということで今関係者の調整を行っておるというふうに私どもは伺っております。ぜひそういたしたいと思っております。
○五十嵐委員 ぜひ月一便くらいの運航は、御検討いただいているようでありますから、お話しのように、早期にその実現を見るようにお願いを申し上げたいと思います。
 今申し上げたようなことで、殊に韓ソの国交の関係も非常に好転をしているというようなこともあって、率直に言って日本側が今までのようなお世話を余りしなくても、直接の話で交流が可能になってきているというようなことは、我々としては大変うれしく思うものであります。そういうような実態と、それから去年、例えば今までと違って家族ぐるみの永住帰国なんというようなものも実現して、永住帰国者も四十人くらい今日ではいるわけですね。しかし、帰国してからの暮らしぶりというものを見ると、なかなか大変らしい、相当困窮している家庭も見受けられるようであります。あるいは長い間待ち続けておられる老いたるハルモニの皆さんがいる。こういう暮らしも大変厳しいことは改めて言うまでもないのであります。それからひとりぼっちで残っていて、身寄りがないので招請の手続がとられていない、しかし帰りたいという方々などもサハリンにはまだたくさんいるわけですね。こういう人たちだって早晩帰ってもらわなければいかぬというようなこと等を考えてみますと、今のところは旅費等について援助をしていただいているわけであります。これは赤十字を通じて援助をしていただいているわけでありますが、しかし、この種の問題というのは、福祉等も含めて非常に多様に総合的に対応しなければならないようなことに次第になってきている。こういう実態は外務省もよく把握されているのだろうと思うのですね。そういう点を考えますと、今のような毎年の日本政府側の予算で、これを日韓の赤十字社、事業体を通じて出しているようなシステムというようなことがいいのかどうか。僕は、むしろこの辺である程度まとまった基金というようなものが造成されて、その運用を通じて、また、そこの運用に関しては、相当主体的に韓国側で配慮しながらやっていくというようなことの方がどうも実態に合っているのではないかなという感じがするわけなんであります。これはかねがね機会があれば申し上げてきていたところでもありますが、そういう方向での検討について、お考えをお伺いしたいと思います。
○谷野政府委員 お答え申し上げます。
 確かにただいまの時点では旅費等の面での支援を行ってきておるということでございますけれども、ただいま仰せのような先生のお考えは、私どももつとに伺っておるところでございまして、今後どういう取り組み方をいたしますか、韓国政府とも相談いたしてみたいと思います。先生御指摘の点は十分留意しながら適切な方法を考えてみたいと思っております。
○五十嵐委員 さて、きょうは特にお伺いをしたいと思う点があるのでありますが、おととし、私ども、超党派のサハリン残留韓国・朝鮮人問題議員懇談会というものがあって、原会長さんともどもサハリンを訪れたのでありますが、そのときにも、例えばユジノサハリンスクで千人ぐらいの方々が集まったり、各地域で大変多くの方々が集まって、お気持ちを存分に我々は聞かされたものでありますが、そのときに伺った話の一つで、向こうに強制連行されて働いていて、働いた中から毎月五円だとか、強制的というものでもないが、しかし、実態からいうとやや強制的みたいなものでありますが、貯金、郵便貯金などもさせられている。その貯金がこういう状況、歴史的な経過になったわけでありますから、そのままになってしまった。ちょっときょうはその通帳等を持ってきておりますので、大臣、ちょっとごらんをいただきたいと思うわけであります。これは最近今言うようなことで一時帰国者等もうんと多くなってきた。大分そういう問題が具体的に出てくることになってまいりまして、私どもへの問い合わせもまた多いのであります。実は今サハリンからサハリン朝鮮人離散家族会のソ・ユンジュン会長さん、それからパク・トンチョルさん、お二人が来日中でありまして、きょうも実はこの傍聴席にお見えになっておられるのです。お手元にごらんいただいている通帳は、会長が預かって問題の解決のために一式をお持ちになっている。それを今ごらんいただいているわけなのでありますが、その通帳をごらんのように、まさに涙と汗と血の通帳と言っていいような印象を我々は感動深くそれを見ると受けるのでありますが、この通帳の残高がそれぞれ何百円あるいは何千円とあるわけであります。その通帳をずっと見るとわかりますように、毎月五円ずつずっと並んでいたり、二円ずつ並んでいたり、それは働きの中からそうやって預金させられていたものなのでありますが、そこで郵政省は、この通帳の預金はお支払いになりますか。
○田中説明員 サハリンに在住されておる方の郵便貯金につきましては、確定債務であり、請求があれば支払わなければならないというふうに考えております。この支払いの履行につきましては、現在関係の省庁と鋭意調整を図っているところでありますので、速やかに結論を出して、できるだけ早期に解決するよう努力してまいりたいと思っております。
○五十嵐委員 かつて同じようにサハリン残留韓国・朝鮮人の郵便貯金の支払いの請求があって、これを支払ったというような事例があるように聞いておりますが、いかがですか。
○田中説明員 四十九年に一度支払いの請求がございまして、そのとき一度お支払いしたことがございます。
○五十嵐委員 既にそういう事例もあることでありますし、なるべく早くひとつ結論を出してほしいというふうに思うところであります。外務省で格別異存があるというようなものではないだろうというふうに思うのでありますが、局長さん、どうですか。
○谷野政府委員 ただいま郵政省からお答えになったとおりでございまして、別の意見を持っておるわけではございません。
○五十嵐委員 どうですか。そうすると、結論はいつぐらいまでに出ますか。そう時間かけていてもしようがないと思うのですが、お見通しは。
○田中説明員 できるだけ早期に解決したいと思っております。
○五十嵐委員 一、二カ月。
○田中説明員 ちょっとまだ時期は申し上げにくいですが、できるだけ早くと思っております。
○五十嵐委員 それはあなた、もう一遍払った事例さえあるのに、今ごろ今度のものはどうだとかこうだとかというのはおかしい話であって、どうですか、二月くらいの間には大丈夫ですか。
○田中説明員 時期はちょっと申し上げにくいのですが、できるだけ早くということで御勘弁願いたいと思います。
○五十嵐委員 こんなことでやりとりしていてもしようがないからあれだけれども、早くやってくださいよ、そんな時間かけていたってしょうがない話でありますから、そのことは強く御要望を申し上げておきます。
 さて、先ほども同僚議員の質問がございましたが、在韓被爆者の代表団が来日中であります。それで、在韓被爆者の問題は、去年の三月の百十四国会のこれは内閣委員会でありますが、私御質問させていただいていたところであります。このと
きに、韓国内で在韓被爆者のための医療的あるいは福祉的な政策について、基金の拠出などの援助の方法を考えてはどうかというふうに御提案、質問をしたのでありますが、この折に、現アジア局長、当時審議官の谷野さんのお答えでありますが、先方政府からそのような提案があれば積極的に検討したい、こういうお答えをいただいているわけであります。また、当時宇野外務大臣は、我が国の歴史的な責任でもあり、我が国のまた統治にかかわる問題でもあると思う、概要そのようなことをお述べになられて、また韓国の崔外務大臣とも十分腹蔵なく話し合い、盧泰愚大統領来日も頭に描きながら検討したい、こうお述べになって、誠意を持って検討したいとも答えておられるわけであります。
 その後、何遍もこの問題に関して両国間で長い交渉、協議を重ねてきているのは私ども存じておるわけでありますが、いよいよ五月二十四日の盧泰愚大統領の来日を目前にして、日本政府の在韓被爆者の援助方策というものももちろんほぼ固まってきているというふうに思うのでありますが、当時の経過から見て、谷野局長さんの御説明をいただきたいと思う次第であります。
○谷野政府委員 韓国側ともこの件内々お話をしておりますが、確かに仰せのように、盧泰愚大統領の御訪日も迫ってまいりましたので、どういった面でどういう支援がしてさしあげられるか、引き続き政府の部内で積極的に検討しておるということでございます。外務省の考え方はもとよりあるわけでございますけれども、先ほど御答弁申し上げましたように、政府全体としての対応ぶりということになりますと、もう少し中での議論が必要だということでございます。
○五十嵐委員 外務省の考え方としては、私今申し上げたような、昨年の、谷野当時審議官、今の局長のお話のような筋で協議、検討を重ねてきているというように、それは政府全体のものには、今お話しのように、確定しているものではないというふうにお話がございましたが、そういう筋であるということは、そういうことですね。
○谷野政府委員 まさに仰せのように、今の治療費、渡航費に加えてどういう支援ができるかということでございまして、外務省としてはそういった方向で今考え方をまとめております。
○五十嵐委員 基金などについては。
○谷野政府委員 基金というのも一つの考え方であろうかと思っております。
○五十嵐委員 これは盧泰愚大統領も選挙の折に、この問題は大きな公約になされて大変関心が深い問題であろうというふうに思っているわけでありますが、経過からいいましても、盧泰愚大統領来日を期に本問題は決着をつけるというお考えであろうと思いますが、大臣、いかがですか。
○中山国務大臣 そのような考え方でおります。
○五十嵐委員 ぜひ両国間の友好のためにも、その早期解決が望ましいわけで、お話のように、今度の大統領訪日を機に必ず決着をつけていただきたい、このように思う次第であります。
 さて、先ほどちょっと同僚議員からも触れられていたわけでありますが、私はそのサハリンの問題あるいは在韓被爆者の問題等、ずっと関係しながら思うのであります。例えば在韓被爆者の問題では、一昨年ですか、外務省と厚生省で一緒の調査団をお持ちになって実情の調査なんかもしてきているのですね。そういう中で、僕はやはりなるほどなと思ったのは、役所の調査でありましても、そこの前文のところに、韓国の皆さんがまず考えておられるのは心の問題だということを言っているんですね。さまざまな施策のこともそうだが心の問題だ。私もやはりそうだろうなという感じがするのであります。
 今よく言われるように、韓国で世論調査をする、どこの国が一番好きか嫌いか、どこの国民が一番好きか嫌いかというような世論調査をすると、意外なことにといいますか、我々から見ると意外なことに日本が一番嫌いな国であり国民というような世論調査の結果が出るんですね。そこにはやはり長い歴史的な経過の中における韓国の国民大衆の一つのハンといいますか、そういう気持ちというものはなかなか容易に抜け切れるものではないというふうにも思うわけなんです。そういう意味では、韓国の皆さんとの話等について、やはりそこのところをしっかり踏まえなければ、真の友好というようなものは決して出てこないのではないか、こういうふうに常日ごろ私は感ずるわけなのであります。
 そこで、私は大臣にお願いしたいのであります。もういろいろな多くの言葉は要りません。また、きょうも時間もないわけでありますから、何回もお聞きしようとも思いません。ただ、お伺いしたいのは一点だけで、やはりこういうこと等に関して、その原点にある、いや、本当に済まなかった、こういう言葉がひとつ日本国政府を代表する立場で外務大臣からあってほしい、私はそう思うのであります。そこがこの問題全体の原点であろうというふうに私は思うのであります。もう多くのことは要らないのであります。明日、在韓被爆者の辛会長らも実は大臣に会いたいということで東京に来るのですが、大臣はきょう午後中米にお立ちになるということで、これはやむを得ぬと思います。かわりに審議官がお会いいただけるようであります。あるいは先ほど御紹介いたしましたように、きょうもサハリンの残留者の家族会の会長も来ている、こういう皆さんが本当に求めているところはそれだろうと私は思うのですね。大臣、一言いただきたいというふうに思うのです。
○中山国務大臣 我々のこの日本に来られておった韓国の方々あるいは朝鮮の方々、またそういう歴史を踏まえて、植民地時代というものが一つの大きな韓国の方々あるいは朝鮮半島の方々に長く心に刻み込まれた悲しい歴史であったということは私自身がよく感じております。そういう悲しい歴史のページを我々の日本という国が早く傷をいやしてもらって、次の新しい時代の日韓関係を築くためには、この方々にああいう悲しい一つの歴史の時期があったということについては、まことに遺憾であるという気持ちを持っております。
○五十嵐委員 大臣、例えばサハリンの問題一つ見ても、戦争中は半ば強制的に連行して炭鉱であるとか飛行場の建設だとかさまざまな仕事に従事させていた。それで戦争が終わった。終わってあそこにいた日本人は、あのときは二十万ぐらいでしたか三十万ぐらいでしたか、いた。これはみんな引き揚げた。四万二千人の韓国・朝鮮人はそのまま置き去りにされた。自来四十数年、今日に至るも、最近に至ってようやくそういう交流が可能になってきたということであって、親族と会うことさえもできないという状況が続いてきた。やはりそういうことを考えますと、難しいことは要らないんですよ。本当に気持ちから一言あっていいと私は思うのです。みんなそれを聞きたいんですよ。大臣、今のそれの背景説明は、今の言葉でよくわかった。一言いただきたいと思いますね。
○中山国務大臣 重ねてのお尋ねでございますから申し上げますけれども、自分の意思ではなしに、当時の日本政府の意思によってサハリンに強制移住をさせられ就労させられた方々が、戦争の終結とともにかつての祖国に帰れずに、そのまま現地にとどまって暮さざるを得なかったという一つのこの悲劇は、まことにこの方々に対して日本としても心から済まなかったという気持ちを持っております。
○五十嵐委員 私は、今のお言葉を大変うれしく受けとめたい、その済まなかったという言葉を受けとめたいと思います。実は私もずっと議事録を見ているのですが、今まで歴代の大臣でそういう率直な意見がなかなか出ていなかった、みんな真情はそれぞれ吐露しているのでありますが。しかし、きょうのお言葉は関係者も非常に喜んで受けとるのではないかというふうに私は思います。
 これは在韓被爆者の場合も同じであろうと私は思うのですが、どうかこういう大臣のお気持ち、言葉というものを原点にされて、サハリン残留韓国・朝鮮人の問題あるいは在韓被爆者の問題、それから今ある在日三世問題、すなわち永住権の付与、指紋押捺制度の廃止、再入国許可制度、外国
人登録証の常時携帯の撤廃等々の問題をそれぞれ検討になっているわけでありますが、どうか原点に立って十分な御解決の御努力をいただきますように心からお願い申し上げて、質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
○柿澤委員長 遠藤乙彦君。
○遠藤(乙)委員 最近の劇的なかつ歴史的な国際情勢の変化を前にしまして、我が国の外交姿勢につきましてお伺いしたいことは多々あるわけでございますけれども、時間の制約もございまして、当面の大きなテーマでありますソ連情勢、日ソ関係に絞って御質問をさせていただきます。
 まず、最近のソ連情勢、まことに日進月歩とも言うべき状態で驚かされることも多いわけですが、その驚くことの一つに大統領制の導入があったわけでございます。三月十五日にソ連臨時人民代議員大会がゴルバチョフ新大統領を選出したわけですけれども、まず、この大統領制導入に至る背景、意図、性格等につきましてどう見ておられるか、お伺いしたいと思います。
○都甲政府委員 お答え申し上げます。
 今回の大統領制導入につきましては、やはりソ連の中におきましても、東欧圏の改革の働きに見られますように、共産党の権威自体が民主化の流れの中で低下していること、そういう中でソ連の国内での問題が山積しつつあり、ますます困難をきわめつつあること、そういう問題についてより果断な政策を遂行できる、より強力な権限を持つ大統領制の導入が不可欠であるということが前提にあったというふうに考えております。そういうことで、二月の拡大党中央委員会の中において、党指導性の廃棄と複数政党制の導入とともに、大統領制の導入ということでゴルバチョフ書記長が大統領に就任したという経緯があったと思います。
 私は、やはりこの結果、ペレストロイカの促進ということが図られると思いますので、我が国といたしましては、ゴルバチョフ書記長の指導のもとにソ連の中で行われておる自由、民主主義あるいは市場原理に基づく改革という方向に向かってペレストロイカの定着化が進むことを期待している次第でございます。
○遠藤(乙)委員 大統領制を導入したわけですけれども、他方、支持率は六割を切っているという状況でございまして、果たしてこういった状況でゴルバチョフさんの立場は強化されたのか、あるいはゴルバチョフ大統領の政治的安定性というものにつきましてどうお考えか、お伺いしたいと思います。
○都甲政府委員 大統領そのものは、第二回目以降は国民投票にかけられて選ばれるわけでございますけれども、今回は人民代議員大会によって選ばれたということでございますが、先生御指摘のように、五九%の支持率にすぎなかったということ、これはやはりゴルバチョフ大統領そのものに対する信任投票という形で行われたわけでございますので、なかなかその立場には難しいところがあるということだろうと思います。しかし、基本的には人民代議員大会の三分の二以上の賛成で憲法あるいは法律に違反した場合に大統領の解任ができるということになっておりますし、そういうことでゴルバチョフ大統領の地位そのものは安定したというふうに見ることができると思います。しかし、抱えている民族問題あるいは経済改革等の問題は非常に難しいわけでございますし、最近の民族問題の処理に当たって見られるように、問題はますます困難になってきているという状況でございますので、今後はこれらの問題の処理にどのように成功をおさめていくかということがゴルバチョフ大統領の地位そのものの行方にも影響していくだろうと思いますので、そういう意味では、国内問題の処理に当たっていよいよ難しい問題に対処しなければならない状況になったというふうに感じております。
○遠藤(乙)委員 今の御説明のとおり、ゴルバチョフ大統領が誕生して、まず直面している最大の困難が民族問題でございますが、リトアニア独立問題に対する対応につきましては、先ほど御答弁があったわけでございますけれども、今後の一つの焦点は、これが武力介入に至るか否かということになるのだと思います。さまざまな抑制要因があって簡単には武力導入にはならないと思いますけれども、他方、ソ連は国内に多数の民族問題を抱えておりまして、そう簡単ではないわけでございます。この武力介入の可能性をどの程度評価しておられるのか、また、それがあった場合に、我が国の対応をどうするのか、ここら辺につきましてお伺いしたいと思います。
○都甲政府委員 あるゆる場におきましてソ連側に対して西側、アメリカを含めまして欧州の諸国も武力介入に対する懸念というものを強く表明しております。そして武力介入があれば、これが今まで順調に推移してきた東西関係にも重大な影響を及ぼさざるを得ないということで警告を発しているという状況もございます。それで、米ソ外相会談あるいは米上院議員との会談等におきましては、ソ連側から直接の武力介入には訴えないということが表明されているようでございますが、他方、石油あるいは天然ガスの供給の停止措置をとったという報道もございます。こういうことで、武力ではなしにせよ、経済的制裁という形で強権的な措置を発動しながらリトアニア側を交渉の場に出るように慫慂していくという措置が現在とられつつあるようでございます。
 私どもといたしましては、やはりこのような強権的措置というのはいかなるものであれ、武力であれ経済措置であれ、そのことが実質的な問題の解決にはつながらないというふうに感じておりますので、あくまでも当事者の平和的な話し合いによって解決すべきであるという立場をとっております。そういう意味で、ソ連側には強く自重を求めたいと思いますし、それから、リトアニア側におきましては、十八日、本日の最高会議でソ連側に対する回答について審議が行われているようでございますし、一部いろいろな問題についての妥協的な動きも出ているようでございます。そういうことで、こういう動きが双方の平和的な解決に向けての動きを強めることになることを強く期待しつつ、ソ連側にはなお自重を求めていくというのが現在の私どもの考えでございます。
    〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
○遠藤(乙)委員 ソ連側に自重を求めるということで、何か具体的な措置としてとられてきたのか、あるいはこれからもとる考えはおありかどうか、お聞きしたいと思います。
○都甲政府委員 まだ具体的にどのような措置をとるかということは検討中でございますが、外交チャネルを通じまして、適当な方法でこれをソ連側に伝達することは可能であろうというふうに考えております。
○遠藤(乙)委員 民族問題、このバルト三国のみにとどまらず、中央アジア等も含めて多数の問題を抱えておりますけれども、このリトアニア独立問題が、中央アジアを含めその他の民族意識に燃える地域の紛争あるいは問題に波及する可能性、これをどうごらんになっているか、お伺いしたいと思います。
○都甲政府委員 リトアニアの独立の問題は、まずバルト三国の他の二国に対して既に影響を及ぼしつつあります。それで、これらの国も順次独立の方向への動きをとるということを宣明してきておりますし、そのような動きが強まってきているということも事実でございます。
 それから、バルト三国とは背景を異にいたしますけれども、グルジアあるいはアルメニア、アゼルバイジャンというような、古いキリスト教民族あるいは回教民族という背景を持つコーカサスの三民族におきましても、特にグルジアを中心に独立の方向が強まってきているという状況もございます。それから、もともとモルダビァにおきましても、これはルーマニア人と同じといいますか、ルーマニア人が主たる住民でございますし、ルーマニアとの合併を要求する声も強いわけでございます。それからさらに、ウクライナ、白ロシアという、スラブ系の中でもロシア民族とは異にする独自の伝統を持つ民族の独立化への動きもござい
ます。
 そういうことで、リトアニアの独立が認められるということになりますと、こういう他の民族への波及というものが避けられないということをゴルバチョフ大統領としては感じていると思いますので、当面やはり緩やかな連邦制という中にとどめるよう話し合いを進めていくというのが基本的な方針だろうと思います。他方、バルト三国側におきましても、民族独立への熱意、意欲というのは非常に強い。特に第二次世界大戦直前の不幸な歴史的な経緯もございますから、そういう意味で、今後の交渉は予断を許さないものがあるというふうに感じております。
○遠藤(乙)委員 民族問題と並んで危機的な経済状態というものがゴルバチョフ及びペレストロイカの行方に関する最大の不安定要因の一つでございますけれども、改革の本番を迎えたゴルバチョフ政権が長期停滞にあえぐ経済をどう立て直すのか。それから、ソ連経済の現状と今後の展望について政府の見方をお聞かせいただきたいと思います。
○都甲政府委員 御指摘のように、ソ連経済の改革がペレストロイカの最大の目標でございました。ゴルバチョフ政権誕生後五年たった今、ソ連経済の状況というのは極めて厳しい状況にあるということが言われておりますし、現実に昨年の数字を見ても、そのことは出ております。例えば昨年の計画経済は、全体として未達成でございますし、そういうことで今次五カ年計画自体の目標遂行は無理になったという感じがいたします。
 具体的な数字を若干御紹介申し上げますと、昨年のGNPは一昨年の五・五%に比べまして三%に落ち込んでおりますし、生産国民所得は一昨年の四・四%に比して二・四%に落ち込んでおります。工業生産は一・七%、農業生産が一%という状況でございまして、これはかつてない低い数字であるわけでございます。このように経済生産そのものの総括的な数字に顕著にあらわれておりますが、さらに問題になっておりますのは、消費物資の不足あるいは食料品の不足でございます。これは、例えば労働者のストの頻発にもあらわれておりますし、国民全般に大きな不満となってあらわれております。部分的に砂糖あるいは肉、ハム等の配給制も実施されているというような状況でございますので、緊急にこの問題をどう処理するかということが非常に大きな当面の課題になっております。
 ゴルバチョフが大統領の強力な権限を手にいたしましたので、今後の改革の方向といたしましては、従来保守派との間でかなりの妥協を強いられてきていた市場経済に向けての改革を一層推進するというのが当面の目標でございます。その中で、国有企業の部面を減らして非国有化するということを中心に、市場経済をつくり上げ、株式市場あるいはその他の私有制を認め、生産手段についても所有権を認めるという形、あるいは統一的な税制をつくる、それから価格制度を改革するというような、今後市場経済に向けての改革を強力に進めていくというのがゴルバチョフ大統領の強力な意図でございますし、その方向に向かって具体的に近々総合的な計画がとられるというふうに承知しております。
 そういうことで、中央計画経済のもとでソ連経済がその経営に行き詰まった中において、市場経済への大きな動きが出ておるということに私どもは注目して、その成果を見ていきたいと考えております。
○遠藤(乙)委員 それでは、今の御説明を踏まえた上で日ソ関係の問題をお伺いしたいと思うのです。
 ソ連がゴルバチョフ大統領のもとでペレストロイカ路線を進め、市場経済への移行を目指して経済改革を積極的に推し進めるとともに、我が国初め西側諸国に対しまして、あらゆる面での援助に強い期待を表明しております。また、大臣も外交演説におかれまして、ペレストロイカの正しい方向性を支持すると表明されております。これに対しまして、我が国の対ソ外交は従来から政経不可分という基本姿勢のもとで今日に至っているわけでございます。来年ゴルバチョフ大統領の来日を控えまして、抜本的な日ソ関係の打開が望まれる現在、今まで同様の対ソ姿勢でよいものかどうか、これは大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○中山国務大臣 日ソ間に平和条約がないということが両国にとっては一番大きな問題であろうと思います。日本政府としては一日も早く平和条約を締結したい。しかし、私どもの古来の領土である北方四島というものがソ連軍によって占拠されているという事実の解決をしてもらいたいというのが日本国民の願望でございまして、国会でもたび重なる御決議をいただいておりますし、政府としても、この領土問題の解決をして、日ソ間の関係をさらに深めるために平和条約を締結していく、こういう基本的な考え方は変わっておりません。この平和条約作業グループを通じまして、五つの部門でこの条約締結までのいろいろな問題点について双方が協力をしております。
 特に、私は人物交流ということが極めて重要であるという認識をとっております。殊にソビエトにおいては、最近グラスノスチが進み、大統領が将来直接投票制の選挙によって選ばれる制度が導入されたことからも、ソ連における民主化というものは大変な勢いで進んでいくであろう。そういう過程の中で、世論を主導される方々を日本にお招きをして、日本をよくわかってもらう、我々の国は決して再び戦争をするというような意思を憲法は示しておりませんし、あくまでも平和国家として生きていく、しかも防衛は専守防衛である、こういう考え方でございますから、日本を御理解いただくと同時に、私どもは日ソ関係を発展させて、アジア・太平洋の平和を構築していきたい、このような基本的な考え方で臨んでいるわけであります。
○遠藤(乙)委員 大臣のお考え方、大変心強く思うわけでございますけれども、従来政経不可分という方針で来たことに加えまして、昨年宇野元大臣が訪ソ以来、拡大均衡ということを主張されるようになっております。この政経不可分という考え方と拡大均衡という考え方はいかなる関係に立つのか、これは政経不可分原則を修正するものであるのかどうか、この点につきましてお伺いしたいと思います。
○都甲政府委員 お答え申し上げます。
 従来から政府といたしましては、基本的な問題が解決されないで、政治的な関係が不安定なままに全面的な経済協力をソ連との間に進めることは、国民感情の上からもあり得ないことであるということから政経不可分ということを基本的な立場として対ソ交渉を進めてまいっております。
 そういう中におきまして、一昨年の十二月以来平和条約の問題につきましては、平和条約作業グループというものができまして、具体的に領土問題についての議論を行い、平和条約締結に向けての作業が進みつつある状況でございます。残念ながら領土問題そのものについてのソ連側の態度は変わっておりませんけれども、平和条約が必要であるということについては、ソ連側もこれな認識し始め、そして、その締結のために努力しようということにはなっております。
 そういう中におきまして、平和条約及び領土問題の解決を進めながら、他の分野においても関係を拡大均衡という形で進めていくことによって、今この分野を五つ考えておりますけれども、平和条約と領土問題、第二番目に信頼関係の強化、第三番目といたしまして実務関係の推進、第四番目といたしまして人物交流の強化、それから最後に首脳会談の実施ということで、この五つの分野をそれぞれ一つもわきに置くことなく、あわせて拡大することによって拡大均衡を図って関係を進めていき、そして、その中において領土問題の解決を実現しようというのがこの拡大均衡の考え方でございます。しかし、冒頭に申し上げましたように、その基本的な政治問題が片づかない限り、実態的な経済協力を全面的に進めるという雰囲気にはならないという意味で、政経不可分という立場
は守りつつ、こういう拡大均衡という形で関係を進めている、そういう意味では、その原則の中で可能な範囲で関係を拡大していくという考えでございます。
○遠藤(乙)委員 この拡大均衡という考え方、もう一つわからない点があるわけですが、今の五つの要素を同時並行して進めるということをおっしゃっておりました。ただ当然のことながら、五つ問題があっても、それぞれの分野において問題の難易度は違いますし、進展のスピード、度合いは当然違ってくるわけでございます。そういった場合に、同時並行ですべて全く同じ速度、同じ距離で進めていくのか、あるいは五つの間で進むものと進まないものがあっても、それは許容していくのか、そこら辺につきましてお伺いしたいと思います。
○都甲政府委員 基本的にはこの五つの分野をあわせて進めていくということで、一つの分野もわきに置くことなくという点が重要であろうと思います。もちろん実態におきまして、それぞれの分野が若干進みぐあいが速かったり遅かったりということはあり得ると思いますし、それぞれの分野におきましては、従来ともソ連との関係で着実に関係を進めてきた分野でございますので、これをそういう形で集大成して、むしろ各分野を拡大していこうということによって、前向きの雰囲気を出していくということがこの拡大均衡による関係改善の目的でございます。
○遠藤(乙)委員 さらに突っ込んで御質問したいのですが、領土問題は確かに非常に困難な問題でございますので、粘り強い交渉が必要でございまして、急速な進展は見込めないというのが常識的な見方でございましょうけれども、他方、人物交流とか人道的な面での協力等は大いに進めても結構な分野ではないかと思うわけでして、こういった人物交流、文化交流あるいは人道面の協力等につきましては、領土問題の交渉はそれとして、大幅に進めてもいいのではないかという感じを私は持っておりますけれども、この点につきましてはいかがでございましょうか。
○中山国務大臣 昨年の末、ソビエトからはペレストロイカを推進するための経済調査団が日本に来ておられますし、この受け入れについては政府は全面的に協力をいたしております。また、今回も第二陣が到着しております。そういう面で、我々の国は、問題があるということはわかっておりますけれども、ソ連のペレストロイカの正しい方向性を支持するために、経済改革を推進していく上での知的な協力というものについて国家としては協力をするという考え方でおるわけであります。
○遠藤(乙)委員 ことしの一月、自民党の安倍元幹事長が訪ソされまして、ゴルバチョフさんと会談をした際、日ソ間の経済関係、人的交流、人道問題等につきまして八項目の提案をされたわけでございまして、これは私は大変結構なもので大いに進めるべきであると考えておりますけれども、政府としましては、この安倍提案をどう評価しておられるか、お伺いしたいと思います。
○都甲政府委員 基本的には安倍元幹事長の提案されました八項目というのは、私ども政府が昨年の五月ソ連側に提案いたしました拡大均衡の考えと同じ考えに立っているものでございます。
 そして、この内容を項目別に具体的に御説明してみますと、これを大体五つぐらいに分類できると思うのでございますが、ソ連における市場経済的要素の導入に関する知的協力、これは先ほど大臣の御答弁にもございましたように、ソ連側の市場経済への移行を促すものとしてむしろ好ましいわけでございますから、このような協力は当然あってしかるべきだろうと思います。その次、人的交流、それから文化交流、それから見本市の開催等従来から行われている実務的な経済面での交流、それから漁業、人道分野での懸案の解決に関するものというこの五つの分野に分かれるわけでございますが、これのそれぞれ一つ一つをとってみますと、これは従来の実務的な関係の範囲にとどまっており、そういう意味では、拡大均衡の枠の中でのソ連側との交流であるということでございます。
 そういう意味で、拡大均衡というときに私どもが重要と考えておりますのは、やはりバランスのとれた関係を進めていくということで、一つの分野だけが全然進まないという状況は好ましくないというふうに考えております。
○遠藤(乙)委員 そこでお聞きしますが、自民党の小沢幹事長が三月に日ソ関係打開のため政経不可分には固執しないという発言をされておるようでございます。また、四月に入ってからも、互いに譲歩が必要とも発言をされているようでございますが、こういった一連の小沢幹事長発言に関しまして、これは政府も同様の考えであると考えてよろしいのでしょうか、それともそうではないということでしょうか。
○都甲政府委員 先生が今御指摘になりました政経不可分には固執しないという表現をお使いになったとは私どもは承知しておりません。私どもは、日ソ関係におきましては、領土問題を解決し、平和条約を締結するということを最大重要課題といたしまして、拡大均衡で進めていくということが対ソ関係の改善の基本的な方針でございますが、小沢幹事長の御発言も、この趣旨に沿ったものであるというふうに私どもは理解いたしております。そういう意味で、今後日ソ関係を進めるに当たって、政府と党が一丸となって、この基本的な問題の打開のために、拡大均衡という原則にのっとって話を進めていく必要があるだろうというふうに考えております。
○遠藤(乙)委員 最近、日ソ関係、それから対米関係も含めまして、いわゆる議員外交が非常に活発になってきておるやにうかがわれますけれども、当然この議員外交というのは、議員レベルで相互理解、認識を深めることは大変結構なわけですから大いに進めてもいいと思いますけれども、その反面、時としていわゆる議員外交が外交の二元化につながるおそれも当然あるわけでありまして、特に重要な交渉問題につきましては、我が方の立場を損なうおそれも出てまいりますので、こういったいわゆる議員外交のあり方について大臣のお考えをお聞きしたいと思っております。
○中山国務大臣 外交政策の一元性ということが日本にとっては極めて絶対不可欠な要素であろうと思います。一方、議員外交において広範な立場でいろいろな国と日本との間の将来の展望について御意見を交換していただくということも、これまた極めて重要なことでございます。私どもはいろいろな機会を通じてお互いが一体どんなことを考えているのか、そういうことを国民を代表される議員の先生方が相手と御意見を交換していただくことは決して無意味なことではない、これまた極めて意義のあることでありますけれども、外交の責任を持つ総攬者であるということについては、この外務省が全責任を負っているというふうに理解をいたしております。
○遠藤(乙)委員 続きまして、四月五日に行われた米ソ外相会談でベーカー国務長官が、我が国の北方領土問題に関しまして、これは日ソ間の問題ではなく東西問題としてとらえていると発言されたやに伝えられております。他方、これに対しまして在京ソ連大使筋は、そのような考えに賛成することはできないと不快感を表明したやに聞いておりますけれども、この米ソ外相会談におきまして、この北方領土問題に関してどういうやりとりがあったか、お聞かせ願えればと思います。
○都甲政府委員 先般の米ソ外相会談におきましては、北方領土問題がアジア・太平洋地域の地域問題の議題のもとに討議されたというふうに承知しております。その中でベーカー長官より、北方領土問題の解決が単に日ソ関係のみならずアジア・太平洋地域の平和と安全に役立つものであり、それはグローバルな東西関係の見地から非常に重要であるという趣旨をソ連側に指摘したというふうに承知しております。そういうことで、我が国といたしましては、米側が東西関係の改善の一環として、日ソ関係の改善、その基礎にある北方領土問題解決の問題をこのようにソ連側に提起
していただいたことに対しては、これを高く評価している次第でございます。
○遠藤(乙)委員 東西問題としてとらえるということの意味でございますけれども、従来、領土問題、北方領土は日ソ二国間の問題として交渉されてきたと理解しておりますけれども、これに東西関係の次元を入れるということは、さらに問題を複雑化するのか否かということでございますけれども、この点につきましてお聞きしたいと思います。
○都甲政府委員 領土問題の交渉そのものは日ソ間の交渉でございますし、これについてはそのような基本的な性格は変わっておりません。今後とも日ソ間の問題としてこれを解決するための交渉を続けていく次第でございます。
 しかし、その問題が持つ意味といいますか、日ソ関係が正常化される意味ということについて国際的な理解が深まるということは非常に重要なことだろうと思います。日ソ関係が正常化されないという状況は、アジアの安定にとって非常に問題でございますし、アジアにそのような不安定な情勢があるということは、東西関係がヨーロッパにおいてこのように進展している中において、全体としての東西関係がグローバルな見地からまだ不安定な状況を残したまま進むということになるという認識でございますので、そのことは、日ソ関係の持つ意味ということに国際的な理解が深まるという見地から、私どもは、領土問題解決に対する障害というよりも、むしろ日ソ関係の重要性に対する国際的な認識の強化という見地から好ましいことであろうというふうに考えております。
○遠藤(乙)委員 時間がございませんので、最後の一問としてお聞きいたします。
 北方領土問題ですが、北方領土返還を阻害する要因の一つとして考えられることは、ソ連側の立場から見ますと、北方領土が非常に軍事的な価値が高いということにあると思います。特に、オホーツク海の聖域化が進んで以降、この価値はソ連側にとっては非常に高いものだと思うわけですけれども、そういったことを考えた上で、この北方領土問題の解決を促進する環境づくりとしては、今後むしろアジア・太平洋地域における軍縮、特に海の軍縮の枠組みづくりをぜひ日本としても積極的に考えていくべきではないかと感ずるわけでございますが、この点につきまして日本は何ができるのか、どうすべきか、大臣の御所見を伺いたいと思います。
○中山国務大臣 今ヨーロッパにおいては、委員もよく御承知のように、ワルシャワ条約機構あるいはNATO両軍事機構が次第と軍備・軍縮の方向から政治機構化へ将来向かっていくという見通しは共通の認識ではないかと思います。ただ、アジアにおいて、御承知のように、ヨーロッパの大陸と違って、ここは非常に海洋の多い地域でございます。特に日本は海洋に囲まれた国家として、この地域の平和をどのように構築していくのか、これは日本にとっては極めて、専守防衛という防衛の基本政策をとっている以上は、この周辺の海域が平和で安定しているということでなければ、国家としての貿易立国はできないわけでありますから、そういう意味で、委員御指摘のような海の軍縮をどうするかということについては、日本政府としても当然その考え方を立てていかなければならないと思います。
 ただ、御案内のように、アジアは現在朝鮮半島がまだ不安定な対立が続いている、あるいは中国と北朝鮮の関係が強化されている、あるいはベトナムが引き続き共産党支配下の中にあって、経済的な改革がまだ緒についたばかり、カンボジアではまだ内戦が続いている、こういうふうな状況の中で、やはりこのアジア・太平洋地域の海の軍縮あるいは平和の確保というためには、私は日米安保条約というものを基軸にした日米の安定した信頼関係の中で、この海の軍縮がどうあるべきか、これは安保条約を締結しているアメリカとの協議が基本ではなかろうか、その上に立って米ソの軍縮に関するいろいろな話し合いがただいま進んでおりますし、私どもはアジア全域の平和を海を中心として考えていくことが極めて重要であろうと考えております。
○浜田(卓)委員長代理 次に古堅実吉君。
○古堅委員 米空母タイコンデロガの横須賀寄港問題について大臣にお尋ねします。
 この問題は、我が国の非核三原則の立場を政府が厳格に守っていこうとされるのかどうか、そういうことにかかわる極めて重要な問題です。また、それをただすのは国会の重要な責務だとも考えております。そこでさっそく質問に入ります。
 昨年十二月、米国防総省が日本政府の照会に対して回答してきたとのことでありますけれども、その回答の全文を明らかにしていただきたい。また、その回答が文書によるものか口頭によるものか、その形態についても御説明をいただきたいと思います。
○松浦政府委員 タイコンデロガの航跡等に関しまして米側に照会しておりましたところ、先生今御指摘のように、昨年十二月下旬、回答が口頭でございました。これは文書でございません。口頭によります回答を読み上げさせていただきます。
  米国政府は、日本国民の特別の関心を理解し、タイコンデロガの事故をめぐる情報を提供してきた。すなわち、位置及び環境上の影響を含め、当該事故に関する情報を日本政府に提供してきた。しかしながら、米国政府は、この問題に関するこれ以上の議論は、我々の軍の運用上の政策を危うくするものであり、我々の国家安全保障上の利益に悪影響を与えるものと考える。
以上でございます。
○古堅委員 報道によりますと、外務省は、この回答を理解したということで、それで済ませようということのようでありますが、アメリカからきちっとした回答を得るというのが外務省の当初の約束でした。事故発覚直後の昨年五月十五日の参議院予算委員会で当時の宇野外務大臣が、「政府はやはり政府間のきちっとした回答を得ることが必要だと、かように思っております。」と明確に答弁しておられます。外務省が米国からのその回答を理解したということで済ませようというのであれば、その回答はきちっとした回答になったと受けとめておられるのかどうか。既に米国自身の公開公文をもって客観的には明らかになっているタイコンデロガの当時の航海日誌について照会を行い、その拒否内容の回答を受けて、一体何がきちっとした回答と言えるのか、一体何をもって理解したというふうに済ませようとされるのか、御答弁を願いたいと思います。
    〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
○松浦政府委員 私ども先ほど御紹介いたしました米側の今回の説明をそのまま受けとめております。もう一度繰り返しになりますけれども、アメリカ側が言わんとしておりますことは、この問題に関しますこれ以上の議論、それから情報の提供等は、アメリカの軍の運用上の政策を危うくし、国家安全保障上の利益に悪影響を与える、したがって、右はしないとの考えであるという回答でございまして、私どもといたしましては、以上のアメリカ政府の最終回答を理解しております。
○古堅委員 外務省は、このタイコンデロガの横須賀寄港問題を最初から明らかにしよう、そういうつもりはなかったのではありませんか。本当に明らかにするつもりで米国への照会をされたということなのかどうか、その真意をお伺いしておきたい。
○松浦政府委員 政府といたしましては、この事件が日本国内で大変な反響を呼び、国会でもたびたび討論されておりますことを踏まえまして、米国側に照会をした上で、折に触れて回答を催促してまいりまして、それが十二月二十六日に先ほど来御紹介しているような回答を得たということで、私どもといたしましては、十分国会での議論も踏まえた上で対応したつもりでございます。
○古堅委員 その回答の内容が、照会の内容に関する限りは、回答拒否の内容になっておるということについては認められますか。
○松浦政府委員 これは、昨年の国会の過程で何度も御説明していることでございますけれども、今のアメリカ側の回答にもございますが、アメリ
カ側といたしましては、今まで日本側に対して、この事故に関します必要な情報、これは位置及び環境上の影響を含めてでございますけれども、提供してきたということを言っております。私どもはそういうものを踏まえた上で、米国が今回の最終回答をしてきたものであると理解しております。
○古堅委員 大臣は、日米安保条約は日米の信頼関係が根本的支柱だという趣旨のことを述べておられますが、公開公文で既に明らかになっているこのような内容についての照会にさえ、回答をもって明らかにすることを拒否してきたのでありますから、再度きちっとした照会をもって回答を求めるべきなのが日本政府の立場ではありませんか。お答えを求めます。
○松浦政府委員 先ほど来御説明申し上げておりますように、私どもから見ますと、米側は必要な情報を累次提供してきております。
 それから、今先生がお触れになりました日米の信頼関係でございますが、これはまさに日米安保条約の根底をなすもので、私どもも非常に重要だと考えておりますが、先生が冒頭の御発言で指摘されました点に関連しまして申し上げますと、私ども国会で累次御説明申し上げてきておりますが、日米安保条約上、艦船によるものを含め、核兵器の持ち込みが行われる場合は、すべて事前協議の対象となる次第でありまして、政府といたしましては、核持ち込みの事前協議が行われない以上、米国による核持ち込みがないことについては何らの疑いも有しておりません。
 アメリカ政府は、核持ち込み問題に対します日本の立場及び関心を、最高首脳レベルを含めて十二分に理解をしておりまして、今回の事件に関連いたしましても、昨年の五月九日のアメリカの国防省の対外説明においても、アメリカは核兵器に関する日本国民の特別な感情を承知しており、日米安保条約及び関連取り決めのもとでの義務を誠実に遵守してきており、今後も引き続き遵守する旨を述べているところでございます。
○古堅委員 昨年六月八日付で渉外関係主要都道県知事連絡協議会から「空母艦載機の水没事故の究明及び核兵器特込みの疑惑解消に関する要望書」が出されております。
 この協議会の会長は、神奈川県長洲知事で、青森、長崎、沖縄、北海道、茨城、埼玉、千葉、東京、山梨、静岡、広島、山口、福岡の十四都道県知事で構成されたものでありますが、その要望書の中でこう述べています。「政府はこれまで、核持ち込み疑惑について、米国から事前協議がない以上、核持込みはないとの見解を示しておりますが、もはや従来の説明のみでは国民の不安と疑惑を解消できない状況であります。」このように述べています。この指摘を大臣は、まさに国民一般の声を代表する極めて重大な指摘とは思いませんか。大臣からお聞きしたい。
○松浦政府委員 先生御指摘の要望書を私どもも承知しておりますし、それから先生御指摘のようなことが国民の一部にあるといたしましたら、私どもといたしましても、先ほどちょっと私が御説明申し上げたような米国政府及び日本政府の基本的な立場に関しまして、さらに国民の理解を得たい、こういうふうに考えております。
 基本的には、先ほど申し上げたことで、繰り返しになりますので省略いたしますけれども、米国政府も最高首脳レベルを含めまして日本の立場及び関心を十分理解しておりますし、それからまさに、この問題が起こりました昨年の五月九日には、先ほど御紹介したような対外説明をアメリカの国防省がやっているということに関しまして、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
○古堅委員 今のことについてぜひ大臣からお聞きしたいと思います。
○中山国務大臣 今政府委員が御答弁申し上げたと同じでございます。
○古堅委員 大臣、このタイコンデロガの航海日誌については、政府がその意思さえあれば米海軍の公文書館で入手できる問題であります。政府は、これまで米国への照会中云々で、その公文書館での入手問題を避けてこられましたが、照会に対する形式的な回答があり、照会の内容については、拒否の回答となっておる以上、政府みずから米国の公文書館で入手することによって横須賀寄港問題を明らかにするよう努力すべきではありませんか。お答えを求めます。
○松浦政府委員 先ほど御紹介いたしましたアメリカ政府よりの正式の回答を得ましたので、私どもといたしましては、公文書館で航海日誌を入手する考えは持っておりません。
○古堅委員 政府は航海日誌を明らかにすることをなぜかくも避けて通ろうとされるのですか。何を恐れて事実を明らかにすることにそれほど恐れをなすのですか。こういうことが明らかになれば、我が国に核の持ち込みがあった、事前協議云々という言い分は成り立たなくなる。そういうことを恐れて、国民が願い、国会が繰り返し繰り返し求めているそういう重大な核兵器にかかわる問題についても、素直に明らかにしようという態度がとれないのではないですか。非核三原則の厳守を厳しく求める立場で、この問題について指摘し、もう一度国会で重ねて論議されてきた航海日誌の問題を含め、質問されている疑惑について何らかの形で答える用意があるかどうか、最後にお聞きしたい。
○松浦政府委員 先ほど来御説明しておりますように、昨年十二月にアメリカ政府より正式の回答を得ましたので、私どもとしては必要な措置はとったと考えております。
 改めて申し上げますけれども、日米安保条約上、艦船によりますものを含めまして、核兵器の持ち込みが行われる場合は、すべて事前協議の対象となる次第でございまして、政府といたしましては、核持ち込み事前協議が行われない以上、米国による核持ち込みがないことについては何らの疑いも有しておりません。
○柿澤委員長 伊藤英成君。
○伊藤(英)委員 今トピック的なことを二、三要点のみ質問をしたいと思いますが、まず最初に、在日韓国人三世の法的地位の問題についてお伺いをいたします。
 この問題は、本日、他の同僚委員からも一部話があった問題でありますけれども、何といっても現在の日本と韓国との間の当面の最大の懸案は、この在日韓国人の法的地位、待遇の問題であると思います。今日まで何回にもわたって公式非公式の協議がそのために行われてきてもおります。そしてまた、この五月二十四日には盧泰愚大統領も訪日を予定されているわけでありますし、そしてまた、今月末には日韓外相会議も予定をされております。そして韓国側の方でも、今回この懸案が解決されない場合には、大統領の訪日も中止すべきだというような声明も出されたりしているくらいの状況であります。またつい先日は、竹下元総理も日韓議連の会長として韓国を訪問され、そして大統領ともこの問題について議論をされたようであります。
 そういう意味で大臣にお伺いいたしますけれども、何としてもこの問題はこの機会に大きな前進をさせなければならない。そしてまた非常に難しい状況の中で、きのうの新聞だったでしょうか、首相もあるいは法務大臣も、いわば過去の経緯も重視をして、政治的な決着を図っていかなければならぬ、文字どおり政治決断をしていかないとこの問題はできないだろう、こういうふうに言われておりますけれども、このように差し迫った重大な問題について、外務大臣としてどのように取り組んでいかれるのか、その対処の方向について伺います。
○中山国務大臣 三世問題を初めサハリン在住の韓国の方々の母国訪問の問題とか被爆者の問題等いろいろと日韓両国政府間の事務レベルでずっと協議が行われてまいりました。そういう過程の中で、昨日、竹下日韓議員連盟の会長が大統領に会われた後、お帰りになり、私も昨晩一時間ほどお話を承ってまいりましたが、この問題は一九九一年の一月に両国政府が満足のいくような解決をいたしたいというのが原点でございます。それに対
してただいま事務レベルでの作業が進められておりますけれども、最終的には政治決断が必要になるものというふうに考えております。
○伊藤(英)委員 この問題は、私はこういう印象を持つのです。例えば法務省とか自治省が検討する部分について考えれば、往々にして、いわゆる一般外国人というのでしょうか、外国人一般についてどういうふうにしようかというような範疇で考えることになりやすいと思うのです。もちろんそれぞれ大変な努力をしておられると思いますが、傾向としてはそういうふうになりやすくないかなというふうに考えます。この在日韓国人の三世問題というのは、いわゆる日韓の法的地位協定の精神で考えなければ解決できない話だと思うのです。その考え方から過去の歴史的な経緯を踏まえて、他の一般外国人とは区別をして特別の措置をしなければならぬということだと思うのです。だからこそ他の省庁以上に外務省があるいは外務大臣がリーダーシップをとって進めていくことだろうと私は思うのです。実は、今月末に私ども日韓議連の役員として韓国を訪問することにしておりますけれども、どうしてもこれは先ほど申し上げたように前進をさせなければならぬ。そういう意味で、先ほど申し上げたようなこの地位協定の精神に基づいて特別な扱いをする。そういう意味で大臣の決意をもう一度お伺いしたい、このように思います。
○中山国務大臣 御趣旨を踏まえて努力をいたしたいと考えております。
○伊藤(英)委員 簡単なあれですが、全力で頑張ってください。
 それから、最近「米国における対日世論調査」というのが新聞にも大きく報道をされました。外務省とギャラップ社との共同調査のようでありますが、この問題で昨年と比べてもアメリカのいわゆる対日感情というのが非常に悪化しているというふうに、このデータから見れば言える、このように思います。
 そこで、これも特に新聞でも大きく報道されましたけれども、日本は信頼できる友邦国かどうかという質問について、日本は信頼できないというふうに答えた人の割合が前の二九%から四〇%まで伸びたというふうに報道をされております。私は大変なことだと思うのです。ずっと調べてみますと、過去三十年くらい前の状況でしょうか、それからずっとよくなっていたのが、このように四〇%という大変な数値を示す状況になったわけでありますが、なぜこんなふうになっているのかですね、大臣としてはどのように考えられますか。
○中山国務大臣 実は外務大臣に就任して以来、この日米間の関係が非常に今までよりも好ましくない状態に入っている。特に、従来でございましたら、先生アメリカに長らくいらしたので、大変アメリカの事情は我々よりもよく御存じのはずでありますけれども、東海岸で非常に対日批判がきついときでも、西海岸ではさほどでもない、親日的な空気が非常に強かったという傾向がございましたけれども、最近の状況では西海岸においても相当な人たちが日本に対して好感を持たない雰囲気が生まれつつある。これは日本にとっては大変大きな問題でございますし、またアメリカにとりましても、友好国としてアメリカ政府が大変大きな心配をいたしておるのは現実であろうと思います。
 それでは、その背景に一体何があるのかといえば、私はやはりこの貿易不均衡、日本の一方的な貿易黒字がなかなか減っていかない、あるいはハイテク分野における日本の異常な進出ぶり、あるいは日本の資金によるアメリカ人の誇りとも言えるような不動産がどんどんと買収されていく、そういうふうないろいろな一連の問題が重なってここ一両年のうちに登場してまいりまして、これが結局このアメリカの日本に対する感情の中に、前よりも今お示しのような数字があらわれてまいったのではないか。私ども外交を預かる者としては、日本が日米の友好関係を堅持しながら、日米安保条約を締結して、今年は改定から三十周年を迎える一つの大きな節目の年でございますが、私どもはこれを振り返って、三十年前の日本と現在の日本と二国間の関係がどうか、あるいは日本人自身がどれだけ繁栄をし平和を享受し得たかということを考えながら、日米関係を新しい発展をさせるために、この節目に当たってお互いがこの事態をさらに好転させるように努力をしなければならないと考えております。
○伊藤(英)委員 今のお考え、これは本当に最大限の御努力をお願いしたい、こう思うのですが、今大臣が言われておりましたように、私はいつもアメリカを見るときに、こんな感じで見ていたのです。アメリカという国を見て、そして一カ所だけで物を考えてはならぬ。一地域で、例えば東部なら東部、さっき言われたように、中西部なら中西部、西なら西というところだけで物を考えると、いつもそれは危ない、危険だというふうに思っていました。だから、例えば東部の方が不況で困っていても、あるいは西部の方では非常に繁栄しているとか、あるいは南部の方ではどうだとかサンベルトではどうだとかいうふうなことを思っていたりしました。今回のこの調査を見ますと、地域的に見てみますと、余り有意差ないなというぐらいの状況ですね。そういう意味では大変なことだなというふうに思いますし、そして日本がアメリカに住んでいる有識者あるいはオピニオンリーダーたちに期待するところは本当は非常に大きいと思うのですね。日本に対して理解も持ってくださっているそういう人たちが、アメリカでどういう活動をしてくれるかということが非常に重要なと思われるときに、最近ではいわば日本に対して理解を持ってくださっている学者とかそういう人たちが、逆に非難をされたり批判をされたり、あるいはまた日米間の状況をよくしようと各企業が例えば大学なんかに寄附をしたりして活動している、そのときに今度はその寄附していること自体がいわばそのことによって日本の手先となって活動しているかのごとき批判が、新聞やら有名な雑誌等にもかなり大きく報道をされたりというような状況というのは、これは本当に大変なことだと私は思うのですね。
 私、最近思うのですが、基本的に日本がいろいろ直さなければならぬ、今ちょうど構造協議云々と言ったりしていますが、日本が改善をしなければならないこともたくさんあるわけでありますが、アメリカが本当にやらなければならぬこともたくさんあるのですね。それとまた同時に、日本とアメリカとの関係がこれだけ相互依存関係が深くなっていても、実はアメリカの多くの人たちが日本とアメリカとの相互依存関係の深さを認識してないんじゃないかと私は思うのですよ。ここが今世界の中における日米の大きな役割というか日米間の重要さ、その辺についての理解がどうしても薄くなってしまうということだと思うのですよ。これから日本のことを考えれば、何といってもこの日米間というのは日本にとっては最も重要な関係であるわけですし、そうした意味で、アメリカでの活動、アメリカへの理解のさせ方、こういうものが極めて重大だ、こう思うのでありますが、その辺についての感想と決意をもう一度お伺いして、質問を終わります。
○中山国務大臣 委員が実際にアメリカにおいて市民生活を経験され、また商業活動にも従事されてこられた経験から、今日の日米関係を御心配いただいていることを大変ありがたく感謝を申し上げたいと思います。
 外務省におきましても、この問題を非常に深刻に受けとめておりまして、この事態を解決するためには相当な努力が必要である、政府は政府レベルで、また議会は議会同士で、あるいは民間は民間同士で今日ほど深いかかわり合いを持っている二国間関係は他の国に見られないわけでございますので、この安保改定三十周年の記念に当たりまして、ぜひひとつ政府、国会、民間を挙げてこの新たなる日米関係の健全な発展のために一層努力をさせていただきたいと思っておりますが、議会におかれましても、御協力のほどを心からお願いを申し上げておきたいと思います。
     ────◇─────
○柿澤委員長 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とタイとの間の条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 政府より提案理由の説明を聴取いたします。中山外務大臣。
    ─────────────
 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とタイとの間の条約の締結について承認を求めるの件
    〔本号末尾に掲載〕
    ─────────────
○中山国務大臣 ただいま議題となりました所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とタイとの間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 政府は、タイとの間の現行租税条約にかわる新たな租税条約を締結するため、タイ政府と数次にわたって交渉を行いました結果、平成二年四月七日に東京において、両国外務大臣の間でこの条約に署名を行った次第であります。
 この条約は、現行条約に比し、条約全般にわたって最近の租税条約の改善された規定をできる限り取り入れたものであり、近年我が国が諸外国との間で締結した租税条約と同様、OECDモデル条約案に基本的に沿ったものとなっております。
 この条約の主な内容といたしまして、まず、事業所得につきましては、企業が相手国内に支店等の恒久的施設を有する場合に限り、かつ、当該恒久的施設に帰属する利得に対してのみ相手国で課税できるものとしております。また、国際運輸業所得のうち、航空機の運用による所得に対する租税につきましては、相手国において全額免除とし、船舶の運用による所得に対する租税につきましては、相手国において五〇%軽減することを定めております。また、投資所得につきましては、一定の配当、利子及び使用料についてそれぞれ源泉地国における限度税率を定めております。
 この条約の締結によって日・タイ間の二重課税の回避等の制度がさらに整備され、両国間の経済及び文化の面での交流が一層促進されるものと期待されます。
 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。
○柿澤委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
 本件に関する質疑は後日に譲ることといたします。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    〔午後零時十六分散会〕