第120回国会 本会議 第13号
平成三年二月二十五日(月曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第八号
  平成三年二月二十五日
    午後一時開議
  一 国務大臣の演説
    …………………………………
 第一 住宅金融公庫法等の一部を改正する法律
    案(内閣提出)
 第二 裁判所職員定員法の一部を改正する法律
    案(内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 平成三年度一般会計予算中修正の件
 平成三年度特別会計予算中修正の件
 橋本大蔵大臣の財政についての演説及びこれに
  対する質疑
 日程第一 住宅金融公庫法等の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
 日程第二 裁判所職員定員法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
    午後一時二分開議
○議長(櫻内義雄君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
○議長(櫻内義雄君) 御報告いたします。
 立太子の礼に当たり慶祝の意を表するため、去る二月七日の本会議において議決されました賀詞は、二十三日、議長が皇居において天皇陛下にお目にかかり差し上げ、次いで、東宮仮御所において皇太子殿下にお目にかかり差し上げました。
     ――――◇―――――
 平成三年度一般会計予算中修正の件
 平成三年度特別会計予算中修正の件
○議長(櫻内義雄君) 内閣から、平成三年度一般会計予算、平成三年度特別会計予算、右両案に対して、それぞれ修正したいので、国会法第五十九条によって承諾を得たいとの申し出があります。
 大蔵大臣から発言を求められております。これを許します。大蔵大臣橋本龍太郎君。
    ―――――――――――――
 平成三年度一般会計予算中修正の件
 平成三年度特別会計予算中修正の件
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 政府は、さきに平成三年度予算を国会に提出し、御審議をお願いいたしているところでありますが、このたび一般会計予算及び国債整理基金特別会計予算について、所要の政府修正を行うことといたしました。
 ここに、その概要を御説明いたします。
 第一は、一般会計歳出予算におきまして、臨時特別公債に係る償還財源の国債整理基金特別会計へ繰り入れ二千十七億円を修正増加するとともに、この財源に充てるため、防衛関係費十億円、公務員宿舎施設費七億円及び予備費二千億円を修正減少することといたしたことであります。また、防衛関係費に係る国庫債務負担行為を修正減少することといたしております。
 第二は、国債整理基金特別会計予算におきまして、歳入面において、今般創設される法人臨時特別税及び石油臨時特別税並びに臨時特別公債に係る償還財源の一般会計より受け入れ等を修正増加するとともに、歳出面において、臨時特別公債に係る償還費等を修正増加することといたしたことであります。
 以上、修正の概要につき御説明いたしました。
 何とぞ御承諾いただきますようお願いいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 両案に対する修正をそれぞれ承諾するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(櫻内義雄君) 起立多数。よって、いずれも承諾するに決しました。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説
○議長(櫻内義雄君) 大蔵大臣から財政について発言を求められております。これを許します。大蔵大臣橋本龍太郎君。
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 政府は、さきに平成三年度予算を国会に提出いたしたところでありますが、今般、平成二年度補正予算(第2号)の御審議をお願いするとともに、平成三年度予算の修正を行うことといたしましたので御説明申し上げます。
 当面の財政金融政策につきましては、去る一月二十五日の財政演説において申し述べたとおりであり、その基本方針には変更のないことを改めて申し上げる次第であります。私は、我が国を取り巻く諸情勢を踏まえ、適切な財政金融政策の運営に引き続き取り組んでまいります。
 ここで、湾岸地域における平和回復活動に対する我が国の支援について申し述べます。
 政府といたしましては、湾岸地域における今般の事態が早期に終結し、中東において永続性のある平和と安定が一日も早く達成されることを強く望むものであり、さきに、このための関係諸国の行動に対し、国際連合安全保障理事会決議に従って、できる限りの支援を行う決意を表明し、また、我が国として国際社会におけるその地位にふさわしい支援を行うとの観点から、湾岸平和基金に対して、従来の拠出分に加え、新たに九十億ドルの資金を拠出することを決定いたしました。このための財源措置については、先般、従来の特例公債によることなく、新たに臨時的な税制上の措置を講ずることを基本として、政府の考え方を取りまとめたところでありますが、今国会での御論議等を踏まえ、今般、政府としても歳出の節減合理化等に最大限の努力を行うこととし、なお不足する財源について、新たに臨時的な税制上の措置を講ずることといたしたところであります。
 これらの措置を実施するため寸平成二年度補正予算(第2号)を国会に提出するとともに、平成三年度予算の修正を行うことといたしました。
 また、これらに関連する法律上の措置について、湾岸地域における平和回復活動を支援するため平成二年度において緊急に講ずべき財政上の措置に必要な財源の確保に係る臨時措置に関する法律案を国会に提出し、御審議をお願いしているところであります。
 今般の支援は、平和を希求する国際社会において主要な地位を占める我が国が積極的に果たすべき責務であり、これを適切に果たしていくためには、今日の国際社会の中にあって我が国国民があまねく平和を享受していることにかんがみれば、国民の皆様方にも広くその御負担をお願いせざるを得ないと考えております。御理解と御協力を切にお願いする次第であります。
 次に、平成二年度補正予算(第2号)の大要を御説明いたします。
 今回の一般会計補正予算(第2号)におきましては、歳出面において、以上申し述べました湾岸地域における平和回復活動に対する我が国の支援を実施するため、湾岸平和基金拠出金一兆一千七百億円を計上いたしております。他方、歳出の節減合理化に最大限の努力を行うこととし、既定経費について百十六億円を節減するとともに、予備費について二百五十億円を減額することといたしております。
 また、歳入面におきましては、その他収入についてその確保に努め、一千六百四十五億円の増収を見込むとともに、今般の支援に係る平成三年度以降の財源を確保するまでの臨時的措置として、臨時特別公債を九千六百八十九億円発行することといたしております。
 これらの結果、平成二年度一般会計第二次補正後予算の総額は、歳入歳出とも第一次補正後予算に対し、一兆一千三百三十四億円増加して、六十九兆六千五百十二億円となっております。
 特別会計予算につきましては、国債整理基金特別会計及び外国為替資金特別会計において所要の補正を行うことといたしております。
 次に、平成三年度予算の修正の大要について御説明いたします。
 一般会計歳出予算におきまして、臨時特別公債に係る償還財源の国債整理基金特別会計へ繰り入れ二千十七億円を修正増加するとともに、この財源に充てるため、防衛関係費十億円、公務員宿舎施設費七億円及び予備費二千億円を修正減少することといたしております。また、防衛関係費に係る国庫債務負担行為を修正減少することといたしております。
 国債整理基金特別会計予算におきまして、歳入面において、今般創設される法人臨時特別税及び石油臨時特別税並びに臨時特別公債に係る償還財源の一般会計より受け入れ等を修正増加するとともに、歳出面において、臨時特別公債に係る償還費等を修正増加することといたしております。
 以上、平成二年度補正予算(第2号)及び平成三年度予算の修正について御説明いたしました。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださるようお願い申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
○議長(櫻内義雄君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。伊藤茂君。
    〔伊藤茂君登壇〕
○伊藤茂君 きのうついに地上戦が始まり、今第二次世界大戦後最大規模の戦争が始まりました。この重大な事態にどう対応するのか、政府の対応はまさに歴史に問われるものとなっております。この事態と日本の進路に深くかかわる九十億ドルの戦費支出に関する補正予算提案について、私は、日本社会党・護憲共同を代表して、総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)
 私は、まず、この非常事態に当たって、我が日本が今緊急になすべきことは何かを政府に問いたいのであります。
 今日の事態の根源は、サダム・フセインによるイラクのクウエート侵略であり、さらにクウエートを焦土とするなどの狂気とも言うべき行動は許されるものではありません。イラクは、六百六十号決議を全面的に受け入れることを内外に声明し、直ちにクウエートから撤退すべきであります。
 しかし、戦争の惨禍を繰り返さないかない誓いから再出発した私ども日本国民にとって、この大戦争の事態は、とても黙視していることはできないのであります。大規模な戦争は、大量破壊と、軍人と市民の大量死傷とを生み、人の心に消えない憎しみの傷跡が残るでありましょう。一刻も早く停戦、和平、それを世界に訴える使命は、まさに我が日本にあるはずであります。しかし、政府と海部首相は、地上戦開始に確固たる支持を意思表示するのみであります。ブッシュ大統領に地上戦への確固たる支持を伝えるだけで、戦争の大きな惨禍への胸の痛みを感じないのでありましょうか。戦争回避を願う国民の心を表現する言葉がなぜあなたにないのでありましょうか。
 総理、大規模な戦争を今直ちにとめることを世界に訴える気持ちはないのですか。安保理事会の決議から始まった戦争であることからしましても、国連安保理事会が強力な行動を緊急にやる責任があります。その当然の訴えと行動をなぜ政府はしないのですか。かつてキューバ危機を打開したときに良識の勝利と言われたような役割を日本と国連が今果たすように全力を尽くす気持ちはないのでしょうか。
 ソ連のゴルバチョフ提案へのイラク回答のときに、幾つかの問題点はあるにしても、それを解決への糸口にしてもらいたいとみんなが思いました。なぜそういう方向への行動をしなかったのですか。十二の安保理決議は、イラクの政治体制破壊やイラクヘの直接軍事的進攻までは決定していないはずですが、総理はどうお考えですか、はっきりお答えください。(拍手)
 この重大な事態への対処を見ますと、今日までの中東危機への政府の対応を改めて問わなければなりません。最近幾つかの新聞で、日本外交は蚊帳の外という報道がなされております。事実とすれば余りにも情けないことであります。アメリカやソ連のトップに堂々と説明を求めることがなぜできないのでしょう、説明していただきたいと思います。
 湾岸危機の世界に日本政治は不在でありました。中東危機の打開のために、ミッテラン提案やさまざまの国の提案に見られますように、世界じゅうが発言をしたのに、世界から評価されるような日本の提案はただの一つもありません。あったのは、国連協力法という名で自衛隊の海外派兵に血道を上げただけ。昨年の八月二日以降、国民に国際的に印象として残ったのはただ一つ、プッシュホンという言葉だけではありませんか。こういう外交に国民はやりきれない気持ちでいるのであります。総理、今こそ世界への日本の役割を立派に果たそうではありませんか。この事態における世界の日本としての使命を真剣に考え、停戦、和平への行動をやろうではありませんか。
 提案されました補正予算の内容について質問します。
 九十億ドル問題、それは文字どおり戦費であることは今や事実として明白になりました。私たち社会党は、日本国憲法からいって日本は戦費は負担しません、しかし和平と復興のためには惜しみなく負担します、そういう立場で具体案を提起をいたしております。
 総理、あなたは、戦争が終わったら半分は戦後復興に回すと言ってまいりましたが、それは吹っ飛んだのでしょうか。さらに重大なことは、全額がアメリカヘでなく多くの国々に対する支援である、繰り返して答弁されました。先日アメリカ政府が議会に提出した湾岸戦争に関する九一年度補正予算案では、九十億ドルの全額が日本から計上されております。総理の国会答弁とは全く違う重大な事実であります。(拍手)どういうことで、すか、明確にお答えください。
 また、我々が指摘をしてまいりましたように、武器弾薬に使用しないという意味の総理答弁は、これを交換公文に明記し、結果を検証、証明することもできないではありませんか。国民一人当たり一万円の負担は、アメリカの国防協力基金にそっくり入ってしまうのであります。幾らごまかしても、結果は裸の王様と同じであります。事実をはっきり答弁してください。(拍手)
 大規模な戦争が開始された事実を見ますと、九十億ドルでは済まないのではないでしょうか。甚大な破壊が発生するだけに、戦後対策も含めてさらに大きな規模の財政負担が当然予想されるのではないかと国民は心配しています。それを何も言わないでは無責任です。我が党は具体的な提案を出しておりますが、大蔵大臣、今後の財政運営と湾岸問題の展望、経済との関係をはっきりと示してください。
 私は、ここで改めて自衛隊機の中東派遣計画の中止を求めたいのであります。自衛隊法百条の五による政令が立法府である国会と法律を無視したものであるかを私たちは今日までの論議で厳しく指摘をしてまいりました。政府のとる方法、内容はまさに不当、不法であります。私は、今直ちにその計画の断念を表明することを要求します。
 同時に、私は、それが今必要でなくなったことを強調したいと思います。自衛隊機を海外出動させるな、市民の力、国民の力で避難民を救援しようという国民の真剣な行動で、既に数十機の民間機がチャーターされ、既に実行に移されております。また、国連の難民対策本部が日本に二十五人のボランティアを募集したところ、千人を超える若者が応募しているということであります。私は、この事実に深い感動を覚えます。これこそ国際社会に名誉ある地位を占める日本への行動だと思います。国際社会に誇りある日本人への道であろうと思います。それに反して、総理の説明には何ら感動がありません。この国民の行動とともに進むところに国際社会に誇りある日本があるのではないでしょうか。
 私は、現在の戦争に対する態度、戦争の終わり方と戦後の復興対策、中束の秩序づくりは一体関係にあると思います。停戦監視問題やPKOへの対応でもそれは明らかであります。今、自衛隊の海外派遣にいまだに固執した動きが自民党内にあると報道されておりますが、それは昨年の臨時国会で決着済みであります。私は、次の五原則、平和憲法を堅持し、国連決議に基づき、非自衛隊・文民で、近隣諸国の理解と支持のもとに、国民合意・国会の一致の五原則で、自衛隊とは明確に区分した国連協力隊の創設を図るべきだと考えますが、どうでしょうか。
 さらに私は、戦後の中東にどういうプログラムを持っているのかを聞きたいのであります。私は、この点について、日本の行動原則を世界に示すべきであると思います。宮澤私案なども拝見しました。資金的協力は当然ですが、同時に、戦争のない中東への提案、湾岸での厳しい軍備管理体制が基本だと思います。特に武器の輸出禁止を厳重に要求しなければなりません。今日の事態も、武器を大量に提供してきた大国にも責任があります。また、化学兵器禁止も提案しなければなりません。
 これを前提にしながら、パレスチナ問題を含む公正で安定した中東のシナリオが必要でありますが、中東平和国際会議などの構想をどうお考えでしょうか。同時に経済的な面でも、中東安定復興基金とも言うべき大きな規模での協力が必要だと思いますが、外務大臣どうお考えですか。日本はそのために、次期防の規模を現中期防以下に抑えて四兆円を超える財源を確保するなど、軍縮時代への方向を鮮明にすべきだと強く求めるものであります。(拍手)
 私は、質問の最後に、日本の外交戦略の転換を強く求めます。今、世界と日本が歴史から問われております。ポスト冷戦の重大な試金石、そうして二十一世紀への世界と日本が今問われています。総理、あなたは、政府は歴史に問われる重大な局面に今直面しているのであります。
 中東についても、なぜミッテランやゴルバチョフと肩を並べて世界に発言し(行動する日本になれないのでしょうか。ベルリンの壁崩壊とマルタの後、オーストラリア外相は、ヨーロッパの全欧安保協力会議と同じようなアジアにおける新しいCSCA構想を提案をいたしました。同様な提案がカナダの外相からもございました。しかし日本には、ポスト冷戦時代の鮮明な構想は一つもなく、冷戦思考のままであります。新時代への構想とグランドデザイン、それのあるなしで中東危機への対応も決まってくるのではないか、私はそれが決定的に重要であると思います。このような新時代の進路を一体海部総理はどうお考えになっているのでしょうか。
 総理を初め政府の明確な答弁を求めまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 伊藤議員にお答えを申し上げます。
 ただいまここでお述べになりました冒頭の部分において、議員は、六百六十号の国連の決議をイラクが直ちに受け入れ、一即時撤退に踏み切ることが肝心だと言われました。私も、その点は全くそのとおりだと思います。そうして、そのようなことは私自身もきょうまで、日本の悲惨な戦争体験を踏まえ、また人的悲劇を避け、戦火を一日も早く収束したい、そのためには、局面を転回するかぎを握っておるのはイラクのフセイン大統領その人だ、早く決断してほしいということをあらゆる場面を通じて言い続けてきたところでございました。にもかかわらず、それに対して、何回も何回も提案が具体的になされたにかかわらずその決断が全くなされなかったこと、それによってこのような状況になっておることは、伊藤議員と同様に、それ以上に私自身も心を痛めておるものであります。
 今日、安保理の決議に基づいての多国籍軍の今回の行動は、自分の国の有為な青年男女を送り出して、貴重でとうとい犠牲をあえて覚悟せざるを得ないという厳しい今日の状況のもとで、なお国際社会の大義は守らなきゃならぬ、なお平和の理念は守らなければならぬという厳しい状況のもとで、ブッシュ大統領を初め多くの多国籍軍の首脳は、このぎりぎりの立場に立って厳しい選択をしたのであります。(拍手)私は、このことに政治家として、その決断に対して、これは率直に連帯と支持を表明しなければならない。(拍手)同時に、国際社会の侵略は許さないという六百六十号の決議を守れとおっしゃったあなたの冒頭の精神に、もう一回立ち返ってもらいたいということをこの場所で申し上げておくものでございます。(拍手)
 なお、和平への努力は、ぎりぎりまで世界に向かって声を大にして言い続けております。電話をしておるのも、ただ単にブッシュ大統領のみならず、ゴルバチョフ大統領に対しても、ゴルバチョフ大統領の平和へのイニシアチブを多としながら、あそこでまとまったものはまだ完全無条件撤退にはなっておらないので、ゴルバチョフ大統領の説得力と努力でいま一歩イラクに対して完全な受諾を求めてほしいということも私は言いましたし、また、国連やイラクの大使を東京でも呼んで、イラク自身に対する厳しい反省を求め、今後とも一刻も早い平和回復に向かってあらゆる努力を積極的に続けていきたいということを申し上げさせていただきます。(拍手)
 また、今回の九十億ドルの追加支援にもお触れになりましたが、私は、これは当初から申し上げておるように、湾岸の平和と安定の回復のために国連安保理の関連諸決議に従って活動しておる関係諸国に対して、日本はその地位にふさわしい追加支援を至急行う必要があることなどを総合的に勘案して、日本の国際社会における立場、地位、求められておるものに応分の負担をしていかなければならないとこれを決意をして、自主的な判断として行ったものでございます。(拍手)
 このことに関しては、平和回復活動の大宗はアメリカ向けとなるでしょうが、最終的には湾岸平和基金に設けられている運営委員会によって決定されるものでございます。そして、今後の湾岸情勢の推移いかんによって、これ以上の追加支援は現在のところ考えておりません。
 なお、伊藤議員御自身も御出席になっておった一昨日のテレビの討論会を通じて、多くの国民の皆さんがこの考えに対して御理解と御支持をあの世論調査の数字でお示しいただいたことに、私は率直に敬意を表する次第でございます。(拍手)御理解をいただきたいと思います。
 また、特例政令を撤回しろというお話でありますが、これは何度も申し上げておりますように、避難民の輸送という人道的、非軍事的な分野において、関係国際機関から要請のあったときにおこたえをしようというものであり、そのときの対応のために、百条の五の規定に従って新たな政令を制定したわけでありまして、これを撤回する考えはございません。(拍手)
 また、武器輸出問題にお触れになりましたが、御指摘のとおりであります。だれがイラクに武器を移転し、だれがイラクを今日の状況に追い込んだかということは、詳しく報道が示しておるとおりであります。これらの大量の武器輸出その他をきちっとすることが今後の世界の平和にとって大切であるという御指摘は、私もそのとおりだと思っております。したがって、去る九月にはニューヨーク大学で講演する機会がありましたので、そのときに、核兵器、化学兵器、生物兵器の拡散防止を徹底すること、通常兵器についても公開性や透明性をさらに広めてこの方面の努力をしていかなければならないということを積極的に申し上げ、今後は国連の場などを通じてこれらの考えを具現していかなければならないと私は考えておる次第であります。
 なお、今後の日本の外交は、二十一世紀に向けて、せっかく最近確立されておる自由と民主主義を基盤とした対話と協調による国際秩序が必要であり、自由と民主主義が人類普遍の原理となりつつあるということに我々は大きく心の支えを持ちながら、このための世界に向かって新しい国際秩序づくりに頑張っていかなければならない、これが我が国が置かれた二十一世紀へ向けての外交姿勢の基本であると私は考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 伊藤議員にお答えを申し上げます。
 まず第一に、この補正予算が日本経済全体にどのような影響を及ぼすかという点であります。
 我が国の経済は、内需を中心とした持続的な拡大成長を続けておりまして、また、物価も総じて見ますと安定基調にあります。今回の湾岸地域における平和回復活動に対する追加的な支援の実施及びそのための財源措置につきまして、その規模などから見て、こうした我が国経済の基調に影響を及ぼすものではないと考えております。しかし、今後とも内外の経済事情を十分勘案しながら、適切な経済運営に努めてまいりたいと考えております。
 また、戦後の中東復興について必要な財源という御指摘がございました。
 私どもは、一日も早くこの戦闘行為が終結することを願っておりますが、その段階におきまして、中東地域の安全保障の確保と並んで、その戦災復興、経済再建というものが大切な課題になることは御指摘のとおりであります。国際的にもさまざまな論議が既に出ておりますけれども、その被害の実態、態様、相手国の気持ち等を考えますと、今後、関係諸国間において種々議論、検討していくべき問題であると考えておりまして、現在においてその財源措置を云々するような状況にはないと考えております。
 また、追加支援について、九十億ドルでは済まなくなるのではないかという御指摘がございました。
 政府として、一日も早い終結を望んでおる今日、今後の湾岸情勢の推移いかんによりますけれども、これ以上の追加支援措置というものを現時点で考えてはおりません。
 また、防衛費の問題にお触れをいただいたわけでありますが、先ほども申し上げましたように、戦闘行為が終結しました段階において、国際的にこれらの地域の戦災復興、経済再建は重要な課題の一つになると考えております。その中に指いて今後私どもとしても対応すべきものだと考えておりますが、新中期防につきましては、防衛計画の大綱に定める水準がおおむね達成されております状況及び最近の国際情勢の変化などを踏まえ、効率的で節度ある防衛力の整備に努めることとしておるわけでありまして、今それを云々する状況にはなかろうと思います。(拍手)
    〔国務大臣中山太郎君登壇〕
○国務大臣(中山太郎君) 伊藤議員にお答えを申し上げます。最近幾つかの新聞で、中東危機への我が国の対応に関し、日本は蚊帳の外という報道があるが、米国やソ連のトップに堂々と説明を求めるべきではないかというお尋ねでございました。
 我が国は、犠牲者を最小限にとどめるためにも、戦闘が一日も早く終結することを切望し、そのためには、イラクが一連の安保理決議を明確に受け入れて、まずクウエートからの撤退を行動に移すことが不可欠であるとの立場から、イラク側へも強く申し入れてまいりました。一月十五日、安保理決議六百七十八の期限を目前にいたしまして、私は、在日イラク大使をお招きし、期限を目前にしてイラク側のクウエートからの即時撤退の決断を求めるよう本国政府への通達を要請したわけであります。
 また、私自身が一月十四日米国を訪問し、ワシントンにおいてブッシュ米国大統領、クエール副大統領、ベーカー国務長官、ブレイディ財務長官と湾岸問題解決につき意見の交換を十分に行い、翌一月十五日にはニューヨークに飛びまして、国連本部においてデクエヤル事務総長に平和的解決に向けて最後の努力を要請するとともに、日本政府としては今後とも国連事務総長の和平努力を全面的に支持していくことをお伝えしたわけであります。
 また、一月二十二日、私はソ連のモスクワを訪問、ゴルバチョフ大統領、ベススメルトヌイフ外務大臣と、湾岸問題解決のため、日ソ間の幅広い意見の交換を一時間五十分にわたって行ったのであります。日ソの間には国連決議六百七十八号についての意見の相違は全くなかったのであります。特に、地上戦闘の開始が強まった最近におきましては、在京イラク大使を再度外務省に呼び、本国政府に平和のための国連決議の受け入れを即刻行うように強く要請したことも申し上はておきたいと思います。私は、二十二日ベーカー国務長官と電話連絡をとり、現下の情勢について緊密な協議を行うとともに、海部総理よりは、二十三日ブッシュ大統領と電話会談が行われ、二十四日にはゴルバチョフ大統領から、昨日未明、電話で海部総理との協議が行われました。また、二十三日、私から駐日イラク大使を呼び、ニューヨークにおいてイラク側に波多野国連大使から、それぞれ国連安保理決議に従って即時無条件の撤退を実行に移すよう強く申し入れたほか、国連事務総長に対して一層の努力を要請しておるわけであります。
 以上のようなことから、日本外交は蚊帳の外という話は全く当たらない、このように考えております。(拍手)
 次に、九十億ドルを武器弾薬に使用しないことを交換公文に明記すべきではないかというお話でありますが、従来、湾岸平和基金への拠出に当たっては、同基金に対する拠出金は交換公文上、湾岸の平和と安定の回復のため資金協力または物資協力に使用される旨規定されており、その具体的使途は、我が国政府及びGCCの代表から成る運営委員会により決定されることと相なっております。また、運営委員会は、日本政府の拠出金がこれらの使途に使用されるよう確保する旨規定されており、我が国の意に反した使途に充てられないよう確保し得る仕組みと相なっております。さらに、我が国政府は、運営委員会を通じ、資金供与後その使用につき報告を受け取ることとなっております。今回の九十億ドルにつきましても、基本的に以上のような仕組みに従うことにより、その使途の確保につき十分な手当てがなされるものと考えております。
 第三に、憲法の平和原則を堅持し、国連決議に基づき、非自衛隊・文民で、近隣諸国の理解と支持のもとに、国民合意・国会の一致の五原則で、自衛隊とは明確に区分した国連協力隊の創設を図るべきではないかという御意見でございました。
 先般の臨時国会におきまして、国連平和協力法案の審議や各界各層における議論を通じ、我が国が平和のために資金、物資面のみならず人的側面においても貢献すべきであるという点については、国民の間に共通の理解が確認されるに至ったと認識をいたしております。
 政府といたしましては、国連の平和維持活動に対する協力を推進すべく、自民、公明、民社各党間の合意を尊重して、新たな国際協力のあり方につき、一日も早く成案を得たいと考えている次第でございます。(拍手)
○議長(櫻内義雄君) 中島源太郎君。
    〔中島源太郎君登壇〕
○中島源太郎君 私は、自由民主党を代表して、財政演説に対し質問を行います。
 質問に先立ちまして、このたび、皇太子殿下の立太子の礼が厳かにとり行われましたことを心からお喜び申し上げます。
 さて、昨年八月二日にイラクがクウエートに侵攻して以来、世界はいかにしてこの平和と安定への脅威を取り除き、国際社会における法の支配を確実なものにするかに全力を挙げてまいりました。すなわち、同日、国連の安全保障理事会は、イラクのクウエートからの即時無条件撤退を要求する決議六百六十を採択し、また、同月六日には、貿易、投資、経済援助等の禁止を含む経済制裁措置に関する決議六百六十一を採択いたしました。その後、十二本の一連の決議を次々と成立させていったことは、国際秩序の維持と平和回復への強い意思の表明であります。国連がこれほどまで一致して行動したことはかってありませんでした。これは、東西対立が解消した時代において初めて可能となった成果とともに、平和への一致した強い希求のあらわれでありましょう。
 しかしながら、イラクは、この国際社会が一致して求めたクウエートからの即時無条件撤退に応ぜず、みずから和平へのイニシアチブを放棄しているのであります。その上、原油の流出はペルシャ湾の海を汚染し、油井と石油施設の破壊により大気を汚染する等、恐るべき環境破壊をもたらしております。
 米国を初めとする多国籍軍を構成する諸国は、イラクの暴挙と侵略を許さないために、そして一日も早い平和回復のために、とうとい犠牲を覚悟しながら活動しているのであります。我が国としては、国連に加盟している一員として、国際社会における地位にふさわしい支援を行っていくべきことは当然のことであります。(拍手)
 既に湾岸の平和回復活動に二十億ドル、周辺国に対し二十億ドル程度、また避難民援助に二千二百万ドル以上の中東貢献策を実施していますが、憲法上の制約もあり、必ずしも人の面で十分な貢献ができない我が国としては、平和回復のためにさらに九十億ドルの追加資金協力を行うことは当然の責務と考えます。(拍手)
 資金協力を初めとする中東貢献策についての総理の御所信をまずお伺いいたしておきたいと思います。
 次に、この九十億ドルの財源対策について伺いたいと思います。
 今般の支援は、先ほども申し述べましたように、平和を希求する国際社会において主要な地位を占める我が国が積極的に果たすべき責務であります。したがって、これを安易に従来のような赤字公債の発行をもって賄い、我々が負うべき負担を子孫の世代にまで残すことがあってはならないと考えます。この意味で、私は、政府が当初から示している赤字公債の発行は何としても回避するという姿勢を支持するものであります。
 それでは、財源をどうするのかという点につきましては、国会を中心としていろいろな議論がございました。国際秩序の回復、世界平和の構築への貢献は、日本国民がひとしく税により負担すべきであるという考え方もある一方で、政府みずからも血のにじむような努力をすべきであるという御意見もあり、今般、すべて税により賄うのではなく、政府としても歳出の節減合理化努力を行うこととしたものと思います。
 特に、今回の財源措置に当たって、防衛関係費の削減につきましては実に厳しい決断であったと存じます。防衛とは国民の生命、安全を守るという崇高な理念であります。そのためには、不断の努力をもってあらゆる事態に備え、万全の備えがあってこそ、国際的な懸案も政治の場において解決されるべきものであるというのが防衛理念の基本ではありませんか。「武とは矛をとどめるをもって真髄となす」、つまり武力は決してみずから行使してはならない、万一、世に乱あらば、それを静めるためにこそある、私はそう学びました。文部大臣を務められた宰相としても、そのように学ばれ教えられたことと存じます。平和維持のために、防衛は平時にあってもたゆまざる努力の継続が必要な性質のものであります。(拍手)
 平成三年度の防衛関係費につきましては、防衛計画の大綱に定める防衛力の水準がおおむね達成される状況を踏まえ、また、最近の国際情勢の変化等を十分に勘案し、昨年末閣議決定された新中期防衛力整備計画のもと、効率的で節度ある防衛力の整備を進めるための必要最小限の経費を計上されたものであり、人件糧食費、歳出化経費等の義務的経費を除きますと実質マイナスという厳しい予算となっているのであります。しかも、そこからさらに一千億円を減額するというまことに厳しい選択が行われました。このような決断をされ、それを実行されるに当たっての総理のお考えを伺いたいと思うのであります。
 また、政府は、これまでも行財政改革を進めていく過程におきまして、例えば年金、医療制度の改革、地方財政対策の改革等を通じまして、歳出全般にわたり節減合理化努力を続けてこられました。しかし、一方で、予算における各種経費は、真に必要な財政需要に適切に対応するために、年々の予算編成の中で決定されていくものでありまして、あらゆる経費を一律に削減していくことができるものではないこともまた確かなことであります。このように歳出の削減、節減というものは非常に難しい性格を持つものでありますが、国債残高が百六十八兆円にも達する厳しい財政事情の中で、政府としても、今後とも歳出全般にわたる一層の節減合理化努力を続けていかざるを得ないと思いますが、このことに対する総理の御決意のほどをお聞かせ願いたいと存じます。
 次に、今回の財源対策の一つの柱であります税制上の措置について伺います。今日の国際社会にありまして我が国の占める地位にかんがみれば、今般の追加支援はどうしても実行しなければならないものであり、その財源について、政府において歳出の節減合理化などに最大限の努力を払った上でなお足らざる分については、子孫にツケを回さないとの原則を堅持されましたことは、責任ある対応であると考えます。また、国民の皆様も必ず理解していただけるもの正確信するものであります。
 このような基本的な考え方のもとにおけるぎりぎりの選択といたしまして、法人、石油の二つの臨時特別税を創設することとされたところでありまして、私としては、この具体的な措置の内容についても適切なものであると考えておりますが、今般の臨時増税としてこの二税を選択した基本的考え方について、総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 私は、先ほど、我が国の人の面で貢献には限界があると申し上げました。しかし、それは我が国が金だけを払えば済むということでは断じてあってはならないのであります。米国を初めとする国々の人々は、自由や民主主義という原理原則を守るために、また、国際秩序を守るためには、時には命をかけなければならないことがあるのだという気概を持っているように思います。我が国に対し、国際秩序の維持のために目に見える行動を期待する諸外国の気持ちの背景に、こうした考え方があることを忘れてはならないと思うのであります。(拍手)
 我が国は、恐るべき環境破壊に対して、我が国保有の機材を既に率先して中東に送っておりますし、さらに我が国の頭脳と技術力によってその対策を続けております。また、避難民の本国への輸送という人道的かつ非軍事的分野においては、安全確保を前提として、我が国の支援による外国航空機のチャーターや我が国民間航空会社に対し協力を強く要請し、既に実行されておりますが、民間機が活用されないような状況において、人道的見地から緊急の輸送を要する場合には、必要に応じ自衛隊輸送機により輸送を行うこととされたことは、我が国が資金だけでなく、人道的な面で積極的に貢献する国であるという理解を求める上でも意義のあることだと考えるのであります。(拍手)
 湾岸戦争が始まって以来、戦争の悲惨な状況が刻々とテレビを通じて報道されております。その中で、一瞬ではありましたが、イラクの撤退の意思が報じられたとき、撤退、停戦、和平を夢見て全身に喜びをあらわしたイラク国民の姿を忘れることはできません。同時に、一方で徹底抗戦を叫ぶサダム・フセイン大統領のラジオ放送が、その国民の期待をもぎ取ってしまったそのときのイラク国民の暗い絶望の表情をもまた忘れ局ごとができないのであります。
 今や本格的地上戦に突入した湾岸戦争の厳しい現実の中で、国連決議に基づき、一日も早い終結のために我が国は最大限に貢献をし、地球の恒久的な平和の維持のために血のにじむような努力を傾注すべきであります。(拍手)今こそ我々は、独善的な一国平和主義の迷妄を排し、真の国際的平和国家への道を進むべきであることを強く訴え、我が国が平和への主導力を発揮するよう海部総理の渾身の御努力を期待申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 中島議員にお答えを申し上げます。
 日本の国際的貢献のあり方についてどう決断をして行動をしたかということでありますが、私は、今国際秩序がイラクのクウエート侵略という暴挙によって大きく揺らいでおり、それに対して、国際社会が力を合わせてこの侵略を排除して国際社会の大義を守ろうと行動が続いておることに大きく敬意を表するとともに、我が国としてできる限りの協力、支援をしていかなければならない、こう考えておる次第でございます。
 武力行使ということ、それに対して、あれはいいことだとは率直にどこの国も、だれも思いません。それは、それをするために平和を回復するという国際社会の大きな大義、しかもたび重なる国連決議というものを踏まえての、その決議の実効性を確保するために、二十八に及ぶ国々の首脳がみずからの国の青年男女の犠牲をも顧みずに、より高い世界の平和のためにという立場に立って決断をされたことに、私は率直に敬意を表するわけであります。反対、反対と言っておるだけで平和が来るものではありません。(拍手)反対、反対と言っておるだけで平和が来ないということは、イラクの暴挙を見ても明らかなことであり、中島議員御指摘のとおりでございます。私は今後とも、一刻も早い戦争の終結に向けて、皆さんの御理解と御協力もいただきながら努力を続けていきたいと考えておる次第であります。今日本は世界の中で自由と民主主義を尊重する陣営だと言うけれども、日本は何かルールが違うのではないかとか、日本だけは何も協力をしてくれないのかという深刻な指摘が欧米各国の論調にも出ておることを私どもは厳しく受けとめなければなりません。日本は今、世界と切り離されるかどうかの断崖に立っておると言って言い過ぎではございません。
 私は、我が国の置かれた立場、我が国のこの今日到達した経済力の中で、許される範囲内でできるだけの支援、協力をしていこうと考えておるところでありまして、願わくばソ連のイラクとの合意事項も、私はゴルバチョフ大統領にも率直に申しましたが、その御努力は多とするけれども、それは国連決議の無条件、完全なクウエートからの撤退になっていない、一番大切な国連諸決議を撤退したら全部無効にしてしまうというのは、国際社会が求める公正な平和解決でもないわけでありますから、私は、不十分なうやむやな解決はかえって問題を混乱させるものである、こう思っておりますので、あくまで原則に従った公正な解決が必要だということを重ねて申し上げておきたいと思います。(拍手)
 また、平成三年度防衛関係予算の削減は、議員おっしゃるように、政府としてもまことに身を切るような厳しい思いで決断したことでございました。財源措置を国民の皆さんにいろいろお願いを申し上げ、国会の御議論等も踏まえて、野党の皆さんともいろいろな立場でこの問題の議論がありましたが、政府は、誠心誠意その御議論を踏まえるとともに、国民の皆さんに負担をお願いしていくわけでありますから、政府としてもできる限りこれに対応をしなければならないものと判断をして決断をした次第でございます。御理解をいただざたいと思います。また、歳出の全般にわたる節減合理化は、かねてから政府としても大切に考えてきたテーマでございましたが、今後とも新しい行革審の審議、それに御答申も求めておりますが、従来にもまさる一層の努力を払って、今後とも財政事情等を踏まえて改善のための合理化努力を続けてまいりたいと決意をいたしております。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 坂井弘一君。
    〔坂井弘一君登壇〕
○坂井弘一君 ただいま議題となりました平成二年度補正予算二号及び平成三年度予算修正承諾の件につきまして、私は、公明党・国民会議を代表して海部総理に質問をいたします。湾岸危機は、不幸にしてついに地上戦に突入してしまいました。極めて残念な事態と言わなければなりません。ここ数日来、世界の人々は、耳目を凝らし、一喜一憂、かたずをのんできました。一時は、不明確な点があるとはいえ、イラクがクウエートからの無条件撤退の意向を明らかにしたことを、湾岸和平への重要なステップとなり得るか、停戦への一筋の光明を見る思いも、あえなく断たれてしまいました。地上戦が短期で終結するのか、それとも泥沼の長期戦にのめり込むのか、その展開を予測することはおよそ不可能なこと、容易なことではありません。
 戦争は常に狂気であり、予測不能の事態を招くことは、歴史の教えるところであります。戦火の拡大は多数の流血をもたらし、それはやがて壊滅的な環境破壊、地球破滅へとつながることを恐れます。何としても、破局的な愚かしい事態は回避しなければなりません。私は、イラクが国連諸決議を受け入れ、即時無条件撤退を明確にするならば、多国籍軍は速やかに停戦すべきであると考えます。
 我が党は、今日まで多国籍軍の武力行使をやむを得ないとする反面、武力行動が停止され、話し合いによる解決への道が開かれることを心から願い、この実現のために、政府に対し再三にわたって国連や関係国に積極的に働きかけるよう要求してまいりました。
 まず、総理に、湾岸戦争の停戦、和平に関するソ連とイラクの合意、一方、米国及び関係諸国の対応をどう評価し、日本としてどのように対応してきたのか、明らかにしていただきたい。
 率直に申し上げて、国民の目には、政府の対応は常に要請にこたえるいわば受け身の姿勢で、それは対症療法に明行暮れる、何とも主体性のない頼りない姿に映っているのではありますまいか。もちろん、海部総理も政府も懸命に努力されたことを私は否定するつもりはありません。しかし、今大規模地上戦開始のこの重大局面に臨み、一刻を争い、日本として停戦、和平にいかなる役割を果たすのか。多国籍軍の行動に理解を示しつつも、同時に重要なことは、国連決議の枠を踏み外さず、和平への芽を摘んではなりません。我が国として積極的に停戦を促す主体的行動はあって当然のことと思います。国連や関係国に重ねて総理は身を乗り出して働きかけるべきであると思いますが、あわせて御答弁をいただきたいと思います。
 さて、湾岸協力基金への九十億ドル、一兆一千七百億円の拠出の問題についてであります。
 私どもは、地球上から一切の戦争をなくすことを強く願い、努力を重ねてまいりました。しかしながら、昨年八月のイラクによるクウエートヘの武力侵攻は明らかに平和を破壊する行為であって、いかなる理由をもってしても許されるべきものではありません。サダム・フセインに自国を奪われたクウエート国民の無念に思いをいたすとき、古代中国の王朝、殷の紂王をいさめた箕子が、荒れ果てた祖国を悲しんで詠んだ「麦秀の嘆」が脳裏によぎります。民族を同じくする隣国に侵略された罪なきクウエートは、今や焦土と化しています。炎上する祖国を前にしたクウエートの人々の嘆きははかるべくもありません。かの「麦秀の嘆」は今や「油炎の嘆」でありましょう。イラク軍のクウエートの人々に対する人権の圧殺、残忍きわまりない行為もまた許されるものではありません。(拍手)しかも、イラクは、国連の十二回にも上る決議を無視し、クウエート占拠を続けてきたのであります。
 今国際社会は、このような国連決議を無視し、平和を破壊した蛮行に対し、国連を軸として失われた平和をどう回復するのか、ポスト冷戦の国際平和の新しい枠組みをどうつくり出していくのかという試練に直面していると言えるでありましょう。
 我が国は、全石油の七〇%を中東に依存し、経済は世界のGNPの一四%を占める経済大国に発展しました。一国平和主義にとどまるならば、それはもはや世界の孤児への道でしかありません。(拍手)憲法第九条を堅持しつつ、国連を軸として平和回復、平和維持、平和創造にも積極的にその責任を分担していくことこそ、憲法の精神に合致するものであると私は考えます。(拍手)
 今回の九十億ドルの拠出については、我が国の置かれている立場を考え、我が党は真剣に論議を重ねてまいりました。湾岸戦争は冷厳な事実であります。手をこまねいて黙過することはできません。議論の末、第一に、我が国も国連を軸とした平和回復活動のための国際貢献が必要である。第二に、今回の武力行使は国連決議に基づくものであり、九十億ドル拠出は国連決議に基づく支援要請にこたえるものである。第三に、政府も国会審議における我々の主張を取り入れ、財源はすべて増税で行うという当初の方針を転換し、防衛費を含む五千億円の歳出削減を決断するとともに、この九十億ドルの使途については直接武器弾薬に使用しないことを確認したこと等により、前向きに対応することといたしました。(拍手)
 そこで、総理にお尋ねいたします。
 九十億ドル、一兆一千七百億円はいかにも巨額であります。地上戦に突入した現在、その負担について国民の理解と協力を求めるには、この拠出が国連の平和回復活動にいかに必要であるか、十分に納得のいく説明が必要であります。しかし、遺憾ながら、政府から十分な説明がなされているとは私には思えません。国民に何の相談もなく、独断で追加支援を決め、一時は全額増税で賄おうとしていた政府・自民党の態度も不信を招いた一因でありましょう。国民が納得できるようなぜ今我が国が湾岸協力基金に九十億ドル拠出が必要なのか、いま一度はっきりお答えをいただきたいと思います。
 また、その使途について国民の多くは不安を抱いております。その一つは、負担した血税の一部が武器や弾薬として使われることへの懸念であります。過日の予算委員会において、総理が我が党議員の質問に対し、我が国の立場から武器弾薬には充当しないと明言されたことは評価するものでありますが、改めて明確にしていただきたいと思います。
 防衛費一千億円の削減は、さきの党首会談において総理みずからが削減を明示したものであります。私は、この一千億円の削減については、三年後の新中期防の見直しの際、新中期防の総額が一千億円減額されるものと理解しておりますけれども、この理解で間違いないか、簡明にお答え願いたいと思います。
 さて、イラクが国連の諸決議を受け入れ、クウエートから即時無条件撤退し、湾岸戦争が早期に終結することを強く願うものでありますが、終結後いかに中東に平和を築くか、大音な課題であります。各国の動きも次第に顕在化しつつあります。私は、停戦が実現した後において、民生の安定、経済の復興への支援は当然のこととして、長期におたる懸案事項である包括的中東和平のための国際会議の開催を国連主導のもとでPLOを含む関係当事者国が行うことを提案するものでありますが、総理がこうした考え方にあるかどうか伺いたいのであります。
 さらに、同本として、軍備管理、武器移転の国際的規制、核、生物化学兵器の禁止等を含め、中東地域全体の安全保障と平和秩序の枠組みづくりについて貢献すべきだと思います。特に、先進各国の武器輸出の抑制について国際協定の推進等積極的に取り組むべきであります。総理の見解を伺うものであります。
 最後に、我が国の国際平和協力についてであります。
 さきの第百十九国会において、政府の提出した国連平和協力法案が廃案となる一方、自衛隊とは別個に国連の平和維持活動に協力する組織をつくることについて、自民党、公明党及び民社党の間で基本的に合意がなされました。この合意は、憲法の平和原則の堅持、国連中心主義を前提として自衛隊とは別個の組織をつくり、国連の平和維持活動に対する協力及び国連決議に関連して人道的な救援活動に対する協力を行うとともに、国際緊急援助隊派遣法により災害救助活動に従事するものであります。また、今後の取り組みについて合意事項では「立法作業に着手し早急に成案を得るよう努力すること。」と規定しております。この合意事項に基づいて、他の野党も加えた国民合意の国連協力法新法を速やかに制定すべきであり、政府は合意事項に基づいた法案を今国会に提出すべきであります。事は急を要すると思います。総理の確たる見解を伺うものであります。
 また、政府は、これまでの自衛隊の海外派遣は自衛隊法を改正しなければできないとの国会答弁を翻して、湾岸戦争による難民救済のために自衛隊機を派遣することについて、政令改正というこそくな手段をとったことは極めて遺憾であります。加えて、戦争終了後の戦災復興を行うためと称して自衛隊機を派遣するようなことは、断じて行うべきではないと考えるものでありますが、明確な答弁をいただきたいと思います。
 以上、重要事項に絞って質問をいたしました。総理の明快な答弁を求め、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 坂井議員にお答えを申し上げます。
 議員が最初に御指摘の、ソ連とイラクの最近の合意事項、また、米国や関係諸国の対応について基本的にどう考えておるかという趣旨のお尋ねでございます。
 私は、ソ連がイラクと最近モスコーで行った事項、当初八項目であったものが六項目に修正されたということ、同時にまた、その間に至るソ連の平和へのイニシアチブ、それを多としております。そして、その内容を詳細に検討をいたしましたけれども、六項目には一定の前進が見られるものであって、私も当初、あの第一項目の、イラクは六百六十号決議を無条件、完全に受け入れるという項目だけを見ました瞬間には、これは平和に直接つながっていくものである、そのような期待も持ったのでありますが、読んでいくに従っていろいろな条件が付随をいたしておりました。同時に、六項目になってもなおすべての国連決議は撤退完了後にすべて無効になるという決議もついておりまして、依然としてこれはいまだ不十分なものであると言わなければなりません。私は、さらにこれらの問題が国連決議の精神に従って、今後国連の安保理事会の場所などの努力を通じて、イラクが無条件、完全な撤退を決断することを重ねて強く求めたいと考えております。
 また、米国及び関係諸国の今回の動きについてどうかというお尋ねでございます。
 先ほど来申し上げましたように、米国を初めとする関係諸国は、現在の湾岸の平和が破壊されておるという現状を踏まえて、イラクに対して再三厳しい反省を求めてまいりましたが、イラクが撤退をしないのみならず、原油を海に流したり、クウエートの油井その他に火を放ったり、また、最近のアムネスティーの報告書を読めば、幼児の保育器を取り除いて三百名の幼児が虐殺されると。か、毎日何千人というイラク人がこの瞬間も虐殺をされておるという報道などを見るにつけましても、私はこれを放置しておいてはいけないという感じがあり、平和を早く回復しなければならぬという強い気持ちを持っておるのであって、クウエートで現に行われておるあのことに対してどのような評価をされるのか、私は逆にお聞きをしたいほどであります。
 このたび重なる要求に応じて、大義を守り、そしてあの地域に平和を回復するように、やむを得ざる最後の措置としてとられておる国連決議に基づいた平和回復のための武力行使が行われておるものである、私はこう考えて、一刻も早い平和回復のためり努力を心から期待するとともに、私自身も先頭に立って頑張っていきたいと考えておる次第でございます。(拍手)
 また、九十億ドルの支援の問題についてもお触れになりましたが、私は、あの地域において何でも武力行使そのものに反対だ、武力行使はいけないのだと言っておるだけでは本当の平和は回復しないと思います。憲法に書いてあるように、日本国憲法の九条にも「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」すると我々は書いてあるわけでありますから、正義と秩序を基調とした国際平和を解決しなければなりません。そのために、二十八の国が厳しいそれぞれの国の状況を乗り越えて、人間的な犠牲まで覚悟しながら決断をして、回復をしようと決意をして努力をしておるところへ、日本は憲法のもとで力においてお役に立とうとすることはできないという、この立場を世界の多くの人々に納得を求めるためにも、また、今日の平和の中で、この秩序の中で日本が今日に立ち至っだということが私は事実であって、どうか皆さん、この事実は忘れないでおっていただきたいと思うのです。(拍手)その中で、許される限りの日本の立場にふさわしい貢献をしなければならないということと、国連の適切な支援を与えるという決議に従って、自主的に、私たちの立場に立って応分の支援をしなければならないというのが、この九十億ドルの支援を決定をしたところでございます。
 政府といたしましては、今後ともこの九十億ドルにつきましては、湾岸アラブ協力理事会及び関係諸国と協議の上、最終的には平和基金の運営委員会で決定されることになっておりますが、政府といたしましては、輸送関連、医療関連、食糧関連、事務関連などの諸経費に充てる方針でありまして、この意向を運営委員会で反映をさせ、そして、運営委員会で決定に至るところでこれらの諸経費に充てんする方針を決めておるところでございます。
 また、今回の処置を重要なものとして考えて、九十億ドルは何としてもこれは拠出をできるように提案をしてお願いしなければならぬというので国会の御議論を始めたのでありますが、各党の皆さんとの御議論の中においても、政府自身も先頭に立っていろいろな努力をすべきである。ぎりぎりの与野党の議論の中で、政府は、防衛費の一千億円の削減という今回の措置が新中期防の執行にも影響を与えるということは、率直にそのとおりだと認めております。計画期間中の各年度の防衛予算の編成に当たっては、一千億円の削減という措置を念頭に置きつつ実施することにより、結果として今回の措置が総額に反映されることとなります。
 また、湾岸戦争後、包括的中東和平のための国際会議を開催するべきだがどうかという御指摘でありますが、私は、やはり国際的に見て、中東の包括的な和平というものほかねてから議論されておった大切な問題だと受けとめております。我が国も、国連安保理決議二四二及び三三八を基礎に、イスラエルの全占領地からの撤退、独立国家樹立の権利を含むパレスチナ人の民族自決権の承認、イスラエルの生存権の承認、それらを通じて恒久和平を達成すべしとの立場は一貫して主張してきておるところでございます。今後とも、関係当事者との政治的対話を通じた努力を重ねて継続する所存であります。
 また、私は、ベーカー国務長官が一昨年秋より主張しておったパレスチナ人とイスラエル間の直接対話構想に対しても、我が国としては積極的に支持をしてきたところでありますが、このような大切な和平プロセスも、今回の湾岸危機の勃発で完全に停滞しておることは極めて残念なことだと言わざるを得ません。この地域の安定回復のために、一層の努力を続けていくつもりでございます。
 また、武器輸出の抑制に取り組むべきであるということは、何度も申し上げておりますように、核兵器、生物兵器、化学兵器その他ミサイルの拡散防止を徹底することが極めて大切でありますし、通常兵器の移転についても透明性、公開性の増大をしていこうということ、これについては日本も積極的に取り組んでおりますし、私も機会あるごとに主張し続けておる問題でございます。
 なお、三党合意をいただいて、国連の平和維持活動に関する我が国の新たなる取り組みのあり方について、自民党、公明党、民社党の三党間合意を踏まえて、政府といたしましては、新たな国際協力のあり方について一日も早く成案を得るべく、目下努力をしておる最中でございます。
 また、戦後復興のためと称して自衛隊機派遣についてという御質問もございましたが、現在、我が国は、避難民の輸送という点について、緊急な人道的な立場に立ってのことを考えておるのでございますから、そのことに限定しての政令もつくったということを申し上げさしていただきたいと思います。
 なお、先ほど私が発言中にアムネスティー報告の関連でいろいろ申し上げましたけれども、あのアムネスティー報告の中には、乳幼児が保育器も外されて何百人も餓死したという事実、また、クウエート人が今何百人も現に殺されているという報道があるということを申し上げた次第でありまして、そのこともあわせて確認をさしていただいておきます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 正森成二君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔正森成二君登壇〕
○正森成二君 私は、日本共産党を代表して、政府の九十億ドル、すなわち一兆一千七百億円に上る湾岸戦争戦費調達に関する財政演説に対し、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 湾岸戦争は、昨日、ついに地上戦に突入しました。これによって、生まれかけていた平和的解決の機会が閉ざされたことは極めて残念であり、我が党は、戦火の拡大がさらに多くの人命を犠牲にし、中東に公正な平和を実現する上でも新たな困難をつくり出すという点で、これに深い憂慮の念を表明するものであります。
 問題解決を阻んでいる最大の障害は、イラクの態度にあります。イラク・フセイン政権は、あれこれの条件をつけることなく、クウエートからの無条件完全撤退の意思を直ちに明確に表明し、それによって一刻も早い停戦への道を開き、無益な殺りくと破壊に速やかに終止符を打つべきであります。(拍手)我が党はこのことを強く要求するものであります。
 この十日足らずの間、停戦と平和解決を探求して、世界の各方面で多くの努力が行われました。このことは極めて重要なことであります。我が党も、去る十五日、政治的合意の達成による停戦と問題の解決を求める書簡を国連事務総長に送り、その方向での努力を要請するとともに、湾岸問題、湾岸戦争にかかわりの深い三十カ国の在京大使館を訪問して、これら諸国の積極的な行動を要請しました。
 二十二日に発表されたイラクとソ連の合意によれば、イラクはクウエートからの無条件完全撤退を初めて表明しました。一方、それに先立つフセイン演説で侵略と併合を正当化し、ソ連との合意でも撤退後に国連諸決議の効力を失わせることを求めるなど、明らかに矛盾する態度もありました。しかし、こういう問題点の解決を含め、イラクのクウエートからの無条件完全撤退を軸とする必要な政治的合意を達成して、問題の平和的解決を進めるために全力を尽くす必要があったと私は考えます。
 国連の場でもさまざまな働きかけがありました。しかし、日本政府の態度は、平和のための自主的な努力を欠いたまま、ひたすらアメリカに追随し、アメリカの戦費調達にのみきゅうきゅうとしていたのではありませんか。
 この和戦の岐路で、総理、日本政府は平和のために一体どのような努力をしたのですか。また、和平実現のために他国の政府からどんな働きかけを受け、どんな対応をしたのですか。それを国民の前に具体的に示していただきたいと思います。
 総理、地上戦突入という事態に当たって、今改めて問われなければならないのは、この戦争がどういう戦争かという問題であります。政府は、この戦争が国連の戦争だから無条件に協力すべきだと言い、戦争でなく平和回復活動であるなどとさえ言っています。しかし、事柄はそう単純ではありません。それは事態の全体を見れば明白であります。
 第一に、国連憲章との関連の問題です。
 米軍、多国籍軍の行動は、国連安保理決議六七八に基づいているとされていますが、この決議は、憲章上重大な問題を持っています。国連による武力の行使は、経済制裁などの非軍事的措置が不十分なことが判明したときにのみ発動されることになっています。しかし、六七八決議を採択した昨年十一月二十九日の国連安保理では、我々の知る限り、経済制裁の効果などは全く論議されておりません。経済制裁の効果があったことは、米議会の多くの証言でも確認されているではありませんか。総理、米軍などの行動が国連決議に基づくと言っても、その決議が国連憲章との関連で重大な問題を持っている以上、米軍などの行動を無条件で支持したりすることができないのは当然ではありませんか。(拍手)
 第二に、安保理決議六七八がイラクに対する軍事行動を米軍などに白紙委任しているという重大な問題であります。
 その結果、国連総会はもとより、国連安保理さえ、米軍などの作戦の内容はおろか、世界に重大な惨禍をもたらしかねない昨日の地上戦の開始そのものについてさえ、何らの関与もできなかったではありませんか。そればかりか、戦争が始まって以来、六七八決議を採択した安保理そのものが、この戦争に関してまともに論議することもできない状態に置かれているのであります。
 国連事務総長自身、この戦争は国連が作戦を管理せず、国連の旗もヘルメットもなく、これまでの国連の戦争ではない、この戦争について我々が知っていることは、英国、フランス、米国から聞くこと、行動が行われた後、二、三日ごとに安保理に報告してくることであると言っています。
 総理、あなたは、こういう点について何ら問題がないと言い張るつもりでしょうか、明確な見解を求めるものであります。(拍手)
 第三に、六七八決議は以上のような重大な問題を持っていますが、その決議でさえ、イラクの撤退期限が切れればすぐに武力行使をすべきだなどと定めたものではありませんでした。一月十五日の期限切れ直前の安保理に提出されたフランスの提案は、平和的な解決のための合理的な内容を持つものでした。
 我が党は、このフランス提案の方向で平和的な解決を図るよう安保理十五カ国に要請し、実際、そのうちの十一カ国がこの提案に賛成し、アラブ諸国やイラクの国連大使まで賛意を表明したのは、厳然たる事実であります。この提案の方向で平和的解決を図る条件があったのであります。ところがアメリカは、この提案を拒否し、開戦を急いだことは、極めて重大な問題であったと言わなければなりません。
 こうして始まり続けられている戦争を国連の戦争と単純に呼ぶことはできません。また、国連の行動であるということで、それを支持し、それに費用を提供することを当然視することはできません。総理の明快な見解を求めるものであります。(拍手)
 以上の前提に立って、米軍中心の多国籍軍への九十億ドルの戦費調達について質問します。
 第一に、この九十億ドルは、今や地上戦を含む戦費そのものであるという問題であります。
 海部首相は、この追加支援は、平和回復活動のためだ、輸送、医療、食糧、生活、事務関連経費以外には充てない方針と答弁を繰り返し、戦費ではないかのように印象づけようとしています。しかし、防衛庁ですら防衛白書で、整備、補給、輸送、衛生などの後方支援は、作戦準備のための基盤であり、これが戦闘部隊と均衡をもって維持され、円滑に機能することが必要であると、後方支援が戦争、戦力と不可分の一体をなすものであることを認めています。幾らあなたが平和回復活動などと美辞麗句を並べても、この資金は紛れもなく戦争遂行に不可欠な後方支援を可能にする経費であり、戦費そのものの一部ではありませんか。(拍手)
 第二に、政府は、九十億ドルについて、日本が置かれている国際的地位を考え、応分の額を自主的に決定したもので、積算根拠についてアメリカから説明を受けたことはないと繰り返し述べておりますが、さきにブレイディ米財務長官は、米下院予算委員会で、九十億ドルは米側が要請し、満額回答を得たと証言しているではありませんか。まさに米国の要請で、米国のために拠出するものであることは明々白々であり、自主的どころか、米側から要求されたアメリカ言いなりの数字ではありませんか。
 また、政府は、この資金は、二十八に及ぶ国が平和回復活動に従事しており、あくまで多くの国々に対する支援である、停戦後には残金を戦後復興に使用するなどと言って、米国向けだけではないと繰り返し答弁してきました。しかし、米国政府が二十二日、議会に提出した湾岸戦費を賄うための特別補正予算によれば、この九十億ドル全額が米国予算に計上されております。しかも、仮に戦争が終結して不用額が出ても返還しない、また、戦費が膨らんだ場合には外国からの追加の財政支援が必要になると明記されているのであります。
 あなたのこれまでの答弁と全く食い違うこの事実について、明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 第三に、九十億ドル拠出が日本国憲法に真っ向から反するという問題であります。
 日本国憲法は第九条で、武力の行使を明確に放棄し、禁止しています。ところが実際は、この九十億ドルは全額が米国の戦費として計上され、その資金によって戦争が開始され、継続されるのであります。まさにこの九十億ドルの補正予算案等の提出と支出という政府の行為は、武力の行使への加担そのものではありませんか。それとも、武力の行使はいけないが、武力の行使を財政的に支えることは許されるとでも言うのでしょうか。これは明らかに我が国平和憲送を踏みにじるものであります。海部首相の明確な答弁を求めます。(拍手)
 第四に、財政法の問題であります。
 太平洋戦争終了後間もなく現在の財政法が制定され、その四条により赤字国債の発行が禁止されたとき、当時の大蔵省主計局司計課長が逐条解説を書きました。その中で彼はこう言っています。「戦争危険の防止については、戦争と公債が如何に密接不離の関係にあるかはこ「我が国の歴史を観ても公債なくして戦争の計画遂行の不可能であったことを考察すれば明らかである、又我が国の昭和七年度以来の公債を仮に国会が認めなかったとするならば、現在の我が国は如何になっていたかいわずして明らかである。」「公債のないところに戦争はないと断言し得る」「従って、本条は又憲法の戦争放棄の規定を裏書保証せんとするものである」こう言っています。これは現在でも、いや現在こそ耳を傾けるべき至言であります。
 総理、大蔵大臣、あなた方はいつからこの逐条解説で言われている精神を忘却したのですか。我が党はこれまで、財政法の精神に沿って、赤字国債の発行に反対してきました。今回の赤字国債は、まさに戦費調達の手段そのものであり、戦時国債そのものなのであります。しかも、その将来の歯どめは我が国の決定できない米国任せで、文字どおり財政自主権の放棄ではありませんか。一方、米国は、戦時増税もなく、他国の金を当てに戦争を行っています。我が国が公債によって調達する資金が米国の予算の一部となり、戦費として使用される、このような独立国にあるまじき財政主権を放棄する予算案に対し、日本共産党は、民族の名誉と誇りにかけて断固として反対するものであります。
 今、我が国のなすべきことは、こうした戦費負担ではなく、湾岸戦争の早期停戦実現、中東に公正な平和確立のために、戦後政治の原点であり国際的にも誇るべき先駆的な憲法の平和原則を持つ日本国にふさわしい平和解決のイニシアチブをとることであります。
 海部首相の責任ある明確な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 正森議員にお答えを申し上げます。
 冒頭においておっしゃったこと、イラクが国連安保理決議を受け入れて即時無条件に撤退するということ、その点については私も全く同感でございます。また、それがただ一つ、この問題を解決するかぎであるということも、私はあえてつけ加えさしていただきます。
 特に、地上戦開始の見通しが強まってきた最近においては、アメリカ、欧州の各国、ソ連、中東の関係諸国との間でも、私はもちろんのこと、外務大臣、その他外交ルート等のいろいろのレベルで緊密に協議、連絡を行うとともに、在京のイラク大使にも、ニューヨークで国連事務総長にも、イラク政府に対して最後まで安保理決議に従うように働きかける努力を続けてまいりました。今後とも、この努力を積極的に続けていきたいと考えております。
 また、平和回復のための武力の行使は国連安保理決議によるものであり、八月の二日から十一月の二十九日の六百七十八号決議に至るまでの間に、何回も何回も繰り返して国際社会はこのことを決議をし、私も、国会の御議論を通じて、局面を転回することが今後のあの地域の平和達成と恒久和平のためにも大切なことだと言い続けてきたのでございます。私は、今後とも、イラクが一日も早く反省をして、正森議員もここで指摘するように、完全に、無条件に、即時に撤退をするという行動に踏み切ることを強く求めておきます。
 この戦争は国連の戦争と言うことには疑義があるという立場でのいろいろな御意見がございましたが、私は、そのことには何ら疑義を持っておりません。特に、安保理決議六七八はすべての国に対して適切な支持を要請しておりますし、あの安保理決議には、アメリカはもちろんのこと、ソ連を初め多くの国々がそれに従い、二十八の国々が多国籍軍をつくってそれを支持しておるわけでありますから、問題があるとすれば、このような行動に対していつまでも反省の態度を示さないイラクの態度にこそ問題があると私は申し上げさしていただきたいのであります。
 フランスの立場についても言われましたが、フランスもいろいろ努力をされたことは、私も率直に評価をいたしております。しかし、そのフランスも、ぎりぎりのあのイラクの行動に対して、これはよくない、フランス政府の声明も、アメリカ大統領の声明内容とフランスは完全に一致しておるということを述べておりますし、また、フランスも、即時無条件完全撤退の条件が満たされないような条件つき撤退であってはいけない、それを許してはいけないということを明確にしておるわけでありますから、今国際社会の意見というものは完全に一致しておると見るべきだと私は思っております。
 私は、九十億ドルについては、あくまでも侵略を排除するための国際社会の共同行動に対して、安保理決議の求めている適切な支援に日本が適切にこたえたものである、このように受けとめておりますから、アメリカの財務長官がいろいろなことを言ったということをここで言われますけれども、アメリカでのいろいろの御発言と日本の国会における日本の政府の発言は、やはり日本の政府の発言をこの場においてさらに申し上げますので、それを御信頼いただきたいと思うのです。
 湾岸地域における平和回復活動の大宗を担っておるのは米国の行動でありますから、支援するお金は最終的には湾岸平和基金に設けられている運営委員会によって決定されるということは、これまでも繰り返して申し上げ続けてきたとおりでありますし、また、我が国の使途に対する意向等についてはその基金の運営委員会に反映されるという、こういう仕組みになっておりますので、このことについては我が方の代表を通じて的確に伝えていく決意でございます。
 また、九十億ドルは武力行使で憲法に問題が出てくると、こういうお話でありますが、私は、憲法の掲げる平和主義、国際協調主義の理念からいけば、武力による威嚇、武力を伴うようなことをして武装部隊を海外に出す、あるいは力によってその行動に参加することは憲法違反でございますが、憲法との関係で、およそ自衛権とは国家による実力の行使に係る概念であるということは、再三政府はお答えをしてきておりますし、湾岸平和基金への拠出により我が国が単に費用を支出するということは、実力の行使には当たらず、憲法の解釈上認められない自衛権の行使には当たらないと私どもは考えておる次第であります。
 また、最後の御質問についてお答えしますが、平和解決へのイニシアチブは、安保理決議六百七十八号に基づいて、イラクの侵略を排除し、平和を回復するための手段が功を奏したときに、我が国は、きょうまでの安保理決議に従って、あの地域にアラブとそしてイスラエルとの関係あるいはパレスチナ人の民族自決権を含む問題、イスラエル国家の存在というものを承認するという角度、そういったようなことを全部踏まえた二百四十二号、三百三十八号の決議に従って、中東に恒久の和平が招かれますように積極的に行動をとっていくつもりでおります。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 正森議員に総理の御答弁を補足して二点御報告を申し上げます。
 総理から御答弁をいたしましたとおり、追加支援の九十億ドルにつきましては、日本政府は、湾岸平和基金に拠出するという従来の方針に全く変わりはなく、また、一日も早く戦闘行為が終結することを強く願っておる状況の中でありまして、追加支援等今日の時点では考えておりません。
 また、財政自主権の放棄ではないかという御指摘でありましたが、総理の御答弁に示しますように、九十億ドルの追加支援は諸般の要素を総合的に勘案し、日本政府として自主的に判断したものでありまして、財政自主権放棄云々という御批評は当たらないと思います。
 なお、財政法第四条につき、戦前戦中の我が国における巨額の公債の発行による軍事費調達を許したことが戦争の遂行、拡大を支える一環となったという反省の上に立ち、無原則かつ歯どめのない借金財政を戒めるために設けられたという御意見は、私は決して否定するものではありません。しかし、同時に、財政法第四条は、あくまでも健全財政のための財政処理の原則を規定したものでありまして、戦争危険の防止そのものが同条の立法趣旨であるとは考えておりません。
    ―――――――――――――
○副議長(村山喜一君) 中野寛成君。
    〔中野寛成君登壇〕
○中野寛成君 二月二十五日、きょうはクウエート国の建国記念日であります。この日にクウエート及び湾岸諸国の人々に真の平和がプレゼントされますように祈りながら、私は、民社党を代表して、ただいま行われた財政演説について、海部総理に質問を行います。(拍手)
 ついに地上戦が始まってしまいました。和平の実現と地上戦の回避のため、多国籍軍側がぎりぎりの条件としてイラクに求めた二月二十四日午前二時という撤退期限が来たにもかかわらず、平和を願う世界の声に背を向けて、イラクがかたくなな態度でこれに応じなかったために、ついに地上戦突入という最悪の事態に至ったことは極めて遺憾であります。私は、戦争の犠牲者をこれ以上拡大せず、戦争を早期に解決するために、イラクが国連決議に従いクウエートからの即時無条件完全撤退を行うよう、改めて強く求めるものであります。(拍手)
 この数日間、平和への期待を持たせるさまざまな動きがありました。特に、ソ連のゴルバチョフ大統領が、イラク政府に対して地上戦回避のために最後の努力を行ったことを私は率直に評価するものであります。しかし、残念ながらこの提案は、米国を初めとする多国籍軍の受け入れるに足る内容のものではありませんでした。
 事ここに至って、ソ連の提案をアメリカがもしのんでおれば地上戦は回避できたのではないか、妥協の余地はあったのではないかという意見がありますが、ソ連の示した八項目提案、また修正六項目提案は、クウエート領をイラクの一部と認め、また、イラクの侵略責任やクウエートヘの損害賠償責任を免罪することになり、恒久平和への第一歩と言うにはほど遠く、妥協は不可能であったでありましょう。すなわち、それは、結果的に交渉の継続をイラクによる侵略行為の時間稼ぎに使われ、クウエート国民に対する殺りく行為をさらに長引かせ、石油資源と生産設備の破壊行為を拡大させることとなったでありましょう。その意味で、地上戦突入はまことにまことにやむを得ないものであったと考えざるを得ません。
 フランスの哲学者パスカルは、「力なき正義は無能であり、正義なき力は圧制である」と述べております。私は、平和回復への唯一の道は、イラクが国連決議に全面的に従う以外にないのであり、フセイン大統領の一刻も早い決断を願ってやみません。また同時に、多国籍軍の行動も、正義の戦いである限り国連決議を逸脱するものであってはならないことは言うまでもありません。すなわち、イラクの破壊を目的としたものであってはならないし、一般の国民や民間施設に危害を与えるものであってはなりません。国連中心主義に立つ我が国がこの立場をはっきりと内外に明らかにする必要があると思いますが、やむなく地上戦突入に至ったこのときに、我が国としての基本的考えをまず明確にしていただきたいと存じます。
 民社党は、イラクのクウエート侵攻直後から、クウエートの主権を回復するために各国が共同して行動していることに対し、我が国としても積極的に協力するべきであると主張してまいりました。その立場は、地上戦開始に至った現在もなお変わるものではありません。世界第二の経済大国として、また、国際社会の恩恵を受けて存在している国家として、それにふさわしい貢献をしなければ、日本が国際社会で名誉ある地位を占めるどころか、我が国に対する世界からの信頼は大きく失墜するでありましょう。我が国が湾岸危機回避のために行う財政支援によって国民の負担がふえることは、必要やむを得ざるものであります。そして、この国民の痛みは、単に我が国が国際社会において名誉ある地位を占めたいとするためのものではなく、いかなる国家も力でもって他国の主権を侵害してはならないという国際社会のルールをはっきりと示し、世界平和の秩序を守るために各国の国民が分かち合わねばならぬ痛みであることをはっきりと認識すべきであります。(拍手)
 しかるに、現在、これほど正邪の別がはっきりしているにもかかわらず、この追加支援の賛否について国論が分かれていることはまことに残念であります。このこと自体、ある意味ではいまだに政府が国民に納得できる説明を明確にしていないことを示しているとも言えなくはありません。総理の御所見を伺いたい。
 また、この追加支援は、世界平和のための秩序づくりに我が国自身がいかに積極的に貢献していくことができるかを問われているのであり、それはアメリカなどから言われてやるのではなく、我が国が主体的に行うものでなくてはならないと思いますが、総理の財政支援に対する決意を改めてお示しいただきたいのであります。
 総理は、九十億ドルの支援はGCCの湾岸平和基金を通して武器弾薬には使用させないとお述べになりました。理屈をつければ、すべて武器弾薬以外の輸送経費、資機材の調達、車両、食糧、輸送品などに使用されるという言い分も通りましょう。しかし、いずれにせよ、武器弾薬も水も食糧も後方支援のための経費も戦費であることに変わりはないのであります。政府は、戦費ではないとか武器弾薬には使わないとか逃げの答弁に終始するのではなく、今各国が協力して行っている平和回復のための戦いに対して必要やむを得ざる財政支援なのであるということを、総理自身が堂々と正直に国民に向かって明らかにする姿勢が必要なのではないでしょうか。(拍手)そして、その上で国民の理解を求めるべきなのではないでしょうか。逃げの答弁に終始するがゆえに国民に余計な疑念を与え、アメリカの国益のために出すのであるとか他国の言いなりであるとかばらまきであるとかいった批判が出るのではありませんか。
 私は、まず、今回の我が国の財政支援は、国連決議を実行する、すなわちイラクの撤退とクウエートの原状回復のために使用されるのであって、それ以上でも以下でもないということをはっきりさせること、そして、それは我が国の平和憲法の精神を実行する、その精神を踏まえた支出であること、また、単に戦費ばかりではなく、戦争終結後の平和回復や災害復旧にも民生安定にも使用していくのだという使途の大枠をはっきりさせることが必要であると考えるものであります。特に大切なことは、日本が九十億ドルという年間のODA経費に匹敵するような巨額の支出を、取られっ放し、出しっ放しというのではなく、この紛争終結後に使うためにも拠出するのだという明確な条件をつけて、それを戦後の中東和平に貢献していく足がかりにするという、主体性を持った外交姿勢を示していくことが政府のとるべき道ではないかと存じます。総理の見解を求めます。
 次に、さらなる追加支援の可能性についてお尋ねをいたします。
 地上戦が近いうちに終結するのかあるいは長期化するのか、定かではありません。しかし、地上戦の遂行には莫大な経費が必要であることは論をまちません。不幸にしてそれが長引いた場合、米国を初めとする各国からさらなる追加支援が求められる可能性もありますが、その際に政府はいかなる対応をとるのか、お考えをお聞かせいただきたい。
 私は、地上戦が短期に終結したにせよ、中東地域に戦闘による混乱が静まり完全な平和が訪れるのに相当な期間が必要になると思うのであります。戦闘が終結しても、国連平和維持軍、停戦監視団など、いわゆるPKOに係る費用負担は膨大になるでありましょう。その一一・三八%は、国連分担金として我が国に支出が求められてまいります。また、戦後の災害復旧を初めさまざまな被害の復旧のための費用、疲弊した中東諸国や周辺アジア諸国の経済復興のための費用などにも、巨額な支出が必要になってまいります。
 先進諸国にその負担が求められてくることが当然予想されますが、米国経済は今四年半ぶりのマイナス成長という景気後退に陥っており、ソ連の経済実績も最悪の状況にあります。ドイツは統一後の経済安定化に力を注がなければなりませんし、英仏両国も米国同様、今回の戦闘参加に伴う過重な経済負担を強いられております。このように考えますと、日本は、戦後の中東地域の再建についても、相当積極的なイニシアチブをとっていかなければなりません。私は、政府がこの際、日本版マーシャル・プランを実施するくらいの大胆な提言があってもよいのではないかと思いますが、いかがでありましょうか。
 また、総理は既に国会答弁で、経済復興への支援、環境汚染の拡大防止、中東の包括的和平実現への協力、中東への兵器移転の抑制という四項目の戦後中東政策を明らかにしておられますが、それらの政策を実現するための具体的なプログラムを提示し、早急に国民合意を得る必要があると思いますが、御所見を伺いたいと思います。
 以上の点を勘案すれば、今後相当長期にわたって巨額な経済支援を我が国が求められ、財政の圧迫要因となることが懸念されるのであります。果たして短期の増税で事足りるのか、場合によってはこれ以上の国民の負担増を求める事態にもなりかねないと思いますが、これについての答弁を求めるものであります。
 最後に、お尋ねいたします。
 地上戦が開始されてから一日余りが経過いたしました。このときにも、多国籍軍の兵士たちは、イラクの不当な侵略に対し国際正義と国連の権威を守るために戦い、そして血を流しているのであります。私は、重ねて和平の一日も早からんことを祈念するものでありますが、これから幸いにして停戦を迎えることができた場合に、日本は一体何をしてきたのかという非難が各国から寄せられることも恐れるものであります。今回の財政拠出は、確かに巨額であります。政府の努力も多とするものであります。しかし、こうした努力が十分に諸外国に伝わらず、日本はかつての朝鮮戦争やベトナム戦争と同じように、今回もまた油安、円、株などでもうけているという声が世界に広がれば、日本は世界からさげすまれ、つまはじきにされてしまうでありましょう。
 一月十七日の開戦直後、ソ連のゴルバチョフ大統領は、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、中国、インドなど有力諸国の元首にメッセージを送り、紛争の局地化と拡大阻止の共同措置を呼びかけましたが、その中に日本の名前はありませんでした。政府が昨年八月二十九日に発表した甲東貢献策のうち、人的貢献については輸送協力、医療協力を約束しながら、これといったものは何も見えません。難民救済の自衛隊機の派遣についても結局実現しなかったということになりますれば、金だけ出して約束は履行しない日本という烙印を押されかねません。
 日本は、これまで敗戦国として国際社会での政治的な役割をむしろ避けてまいりました。しかし、もはや米国や世界が寛大な態度をとり続けるには日本は余りにも大きくなり過ぎました。これにこたえるため、一刻も早く我が国が世界に貢献するための制度を確立するべきであります。まずは、政府は、自公民合意に基づく国連の平和活動のための法案を今国会中にも国会に提出するべきであると思います。他の野党も、もはやここまで来て反対はしないであろうと思います。総理の決意をお尋ねして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 中野議員にお答えを申し上げます。
 私は、今回の平和回復活動というものは、国連決議に基づいて国際世論の中に示されておる大義をきちっと守り抜くこと、平和の破壊者と国連決議でみなされたイラクがクウエートから撤退をしていくこと、それはあくまで即時無条件でなければならないという国連決議の基本的な考え方を支持いたしております。したがって、たび重なる国連決議にもかかわらず頑として最後までその要請に応ぜず、あまつさえ、ここで今再現することをはばかるような言辞を弄して徹底的に抗戦をすると言い続けておるフセイン大統領に対して、これではいけない、国連はその決議に従って多国籍軍の共同の武力行使を認めたわけであります。
 私は、この地上戦の段階に至っだということは、あくまでイラクのかたくなな態度にあるとする議員の御指摘と全く同感でありまして、これ以上クウエート国民が殺りくされること、油井や施設の破壊がどんどん続いていくこと、そしてそのことは、国連のたび重なる決議の権威を無視されておるということ、今後の世界の秩序に極めて破壊的な影響を及ぼすということ、これらを考えますと、一日も早くあの地域に平和が回復するための武力行使に対しては、これは確固たる支持を表明していかなければなりません。同時に、力による侵略は許さないということが、おっしゃるように、最も基本的な新しい世界秩序の基本であります。私は、今後ともこれらの問題の再現を防ぐためにも、今回はあいまいな解決ではなく、原理原則に従った解決が行われなければならないと考えております。
 また、追加支援の賛否につきましては、私どももでき得る限りの御説明をして、国民の皆さんにも議会の皆さんにも御理解を賜りたいと努力をしておるところでございます。日本の国際的な地位、今日の平和を享受しておる日本のこの立場、これらを考えますと、国際社会の一員として、平和憲法の理念や国際協調主義の理念を具現化していくためにも、許される範囲でできるだけの努力はしていかなければならぬというのは、議員と同じく当然のことであると決意をいたしております。
 そして、この財政支出九十億ドルにつきましては、日本の立場にふさわしい、そして、国際社会からの求めに応じて二十八もの国が、自分の国のあらゆる経済条件やあらゆる苦しさをも乗り越えて、国際社会の大義を守ろうと人的な犠牲をも顧みず行動をしておるこの共同の武力行動に対して、それに対して力でお役に立つことのできない日本がせめてなし得ることは、それに対する支援であるという立場に立って、自主的に九十億ドルを決めてお願いをしておる次第でございます。各党各会派の皆さん方の御理解と御支援を重ねてお願いしたい次第でございます。
 いずれにいたしましても、今後、湾岸の情勢が一刻も早く平和解決をすることを望んでおりますが、湾岸情勢の推移いかんにもよっております。これ以上の追加支援は現在のところ考えてはおりませんが、周辺国の復興とか経済の復興を初め、平和と安定のためのプログラム、これに対しては、日本は積極的にできる限りの応援を今後も続けていかなければならないと決意をいたしております。
 また、戦後の中東再建貢献策、また復興策のためにはどうするか。やはり中東全体の安定と繁栄ということは、湾岸の平和のみならず国際社会全体にとって、平和と繁栄、極めて大切な関係を持ってきております。その際大事なことは、域内諸国の努力を尊重しながら、域内諸国のイニシアチブを支援するという立場に立って、経済の復興とか安全保障、軍備の管理、そして大切なことは、パレスチナ問題を含む恒久和平のための国際協力を行うことが大切になってまいります。日本は、これらの国際的努力に対しまして、きょうまでもいろいろな外交努力を積み重ねてまいりましたが、今後とも適切な対処を積極的に行ってまいる考えでございます。
 また、最後にお触れになりました自由民主党、公明党、民社党三党合意に基づく国際協力のあり方についての新しい成案を得るための努力は、ただいま政府、鋭意努力をいたしております。一層の御理解と御協力をいただいて、一日も早く成案をお示ししたい と考えております。(拍手)
○副議長(村山喜一君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第一 住宅金融公庫法等の一部を改正す
  る法律案(内閣提出)
○副議長(村山喜一君) 日程第一、住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。建設委員長桜井新君。
    ―――――――――――――
 住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案及び
  同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔桜井新君登壇〕
○桜井新君 ただいま議題となりました住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、国民の居住水準の向上及び内需の持続的拡大を図るため、住宅金融公庫等の貸付制度について、特別割り増し貸付制度を延長するとともに、新たに賃貸住宅に対して特別割り増し貸し付けを行うこととし、また、産業労働者住宅であって事業主等の借り上げ方式により供給されるものに対しても資金の貸し付けを行うこととするものであります。
 本案は、去る二月十二日本委員会に付託され、二月二十日大塚建設大臣から提案理由の説明を聴取し、二月二十二日質疑を終了、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(村山喜一君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(村山喜一君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 裁判所職員定員法の一部を改正す
  る法律案(内閣提出)
○副議長(村山喜一君) 日程第二、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。法務委員長伊藤公介君。
    ―――――――――――――
 裁判蕨職員定員法の一部を改正する法律案及び
  同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔伊藤公介君登壇〕
○伊藤公介君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、判事補の員数を五人、裁判官以外の裁判所の職員の員数を二十八人増加しようとするものであります。
 委員会においては、去る二十二日提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、これを終了し、直ちに採決を行ったところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(村山喜一君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(村山喜一君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
○副議長(村山喜一君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時二十一分散会
     ――――◇―――――