第121回国会 本会議 第3号
平成三年八月八日(木曜日)
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 議事日程 第三号
  平成三年八月八日
   午後二時開議
一 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)
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○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)
 裁判官訴追委員辞職の件
 裁判官訴追委員の選挙
 裁判官訴追委員の予備員の選挙
 国土開発幹線自動車道建設審議会委員の選挙
 雲仙・普賢岳噴火の災害対策に関する決議案
  (清水勇君外十一名提出)
 田邊誠君の故議員安倍晋太郎君に対する追悼演
  説
    午後二時三分開議
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○議長(櫻内義雄君) これより会議を開きます。
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 国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)
○議長(櫻内義雄君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。戸田菊雄君。
    〔戸田菊雄君登壇〕
○戸田菊雄君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、海部総理の所信表明に対し、質問をいたします。
 私は、質問に先立って、昨年暮れ近くに噴火活動を再開し、本年六月に四十一名もの死者・行方不明者を出し、いまだに一万一千人もの住民の皆さんが避難生活を余儀なくされております。そうした被災者の皆さんに衷心よりお見舞いを申し上げます。
 その要請される対策の詳細につきましては、既に我が党の田邊委員長が触れられましたので重複を避けますが、しかし、昨日の総理の答弁は現地被災者の要望にこたえておりません。生活補償のための施策が欠落いたしております。特別な立法措置を講じることが必要だと考えますが、総理の温情あふれる、かつ政治的決断を求めます。お答えをいただきたいと存じます。
 ところで、現在、日本での活火山は八十三カ所、そのうち気象庁は雲仙岳を含めて十九カ所で常時観測を行い、警戒を続けております。その観測要員は全国で六十名、地震計、観測機器等の使用は大部分リースで、年間予算はわずかに二億円程度、各大学での研究費を含めても微々たるものであります。雲仙における火山予知・観測体制が極端に脆弱に過ぎるということを指摘をせざるを得ません。こうした自然の災害を未然に防ぐためには、基礎研究を初め、予知・観測体制を抜本的に強化する必要があると考えますが、総理のお考えを承りたいと存じます。(拍手)
 それでは、初めに金融・証券不祥事についてお伺いをいたします。
 今臨時国会は、証券国会とも形容されておりますように、証券不祥事の徹底的究明、再発防止体制の整備が最優先の課題となっております。銀行の不正融資、架空預金問題など次々と明らかになっている金融不祥事と考え合わせると、バブル経済の中でバブルの両輪と言われる銀行、証券は言うに及ばず、特定の企業や個人が土地や証券にかかわるやみの取引にいかに深く手を染めていたか、その実態が露呈しているのであります。
 リクルート事件に引き続いて、土地や株の高騰に象徴されるバブル経済のもとで、日本全体が金まみれになっていたその異常さが、バブルがはじけると同時に明らかになっているのであります。日本経済の強さの裏返しとしての我が国の特異な経済構造が諸外国からも奇異の目で見られており、金融・証券不祥事に象徴されるバブル経済の崩壊過程で出されているうみは徹底的に出し尽くさなければなりません。
 周知のように、リクルート事件は政界に波及し、自民党政権は窮地に追い込まれ、海部政権の誕生によって何とか延命いたしました。今回の金融・証券不祥事においても、大蔵大臣の元秘書が不正融資の仲介をした事実などが明らかになっており、そのほかにも、一部マスコミなどでは自民党実力者がさまざまな形で取り上げられており、国民の疑惑の目は銀行、証券、大手企業や行政にとどまらず、政治の世界にも向けられようとしております。不祥事の防止体制を整備し、ゆがんだ経済社会を正し、公平、公正な社会を構築するためにも、そして政界に対する国民の疑惑と政治不信をなくすためにも、金融・証券不祥事の全容の徹底的解明が緊急課題となっております。
 総理、今回の金融・証券の一連の不祥事発生の原因は、自民党政治そのものにあると考えますが、総理の御所見を伺いたいと存じます。(拍手)
 その観点から、証券不祥事、金融関係の事件につきまして、以下幾つかの疑問点を具体的に質問をいたしますので、総理、大蔵大臣の明確な御答弁をお願いをいたします。
 第一に、証券会社が取り扱っていた特定金銭信託にかかわる損失補てん問題であります。
 大口顧客に限定した損失補てんは、大衆投資家の不満、不公平感を呼び起こし、我が国資本市場における証券会社と事業会社などとの相互依存のゆがんだ市場構造、行政との癒着関係が露呈しております。株価が高騰を続ける中で、証券取引の自己責任原則さえ忘れ去られていたのであります。
 この損失補てんに関しては、大手四社に続き、準大手・中堅十三社から損失補てん先リストが公表されております。大蔵本省が所轄をする二十二の証券会社については補てんの事実がないと報告している会社もあるため、それで報告されたものは尽きていると説明をされておりますが、しかし、これで本当に八七年のブラックマンデー以後の損失補てんのすべてが明らかになった、今後追加、訂正は絶対にない、こう断言できましょうか。
 損失補てんの概念が、証券会社が有価証券の売買につき、証券会社が損失補てんの目的を持って財産上の利益を供与することと漠然としか規定されておりません。証券会社に自主的に公表させただけでは全く不十分と考えられますが、大蔵省は独自の調査、検査をしたのか、それとも今後するのか、その結果を公表する考えはないのか、九〇年四月以後の損失補てんの事実の有無、財務局管轄の中小証券の損失補てんリストの公表問題とあわせてお答えを願いたいと存じます。(拍手)
 第二に、大蔵省は、九〇年三月期までについて、当時、証券会社から損失補てんについて自主報告を受けていたにもかかわらず、その一部が表ざたになった都度、それについてだけ社内処分などの行政指導を行っていたにすぎません。なぜ報告を受けた時点でその全容を公表し、適切な対処策、改善策を講じなかったのか。行政の怠慢で責任は重大であると思われますが、大蔵大臣の御所見を伺いたいと存じます。
 さて、これまでに証券会社から公表された損失補てん先リストについてでありますが、それを子細に点検をいたしましても、上場企業でもなく、実態の不明な企業もあり、実態を解明するには、リストのより詳細な説明が不可欠であります。自民党有力政治家の縁者が関係する企業名があるといったことが報道されておりますが、政治家の関与いかんについて国民の前に明らかにするためにも、補てん先の詳細な説明を求めます。
 同時に、個々の事例について、損失補てんの理由、目的、期間ごとの補てん額、その手口などを明らかにしていただきたいと存じます。
 損失補てんの手口については、国債、外債、外貨建てワラント債、新株等を利用したものなどかなり具体的に説明されておりますが、個々の事例における目的との関連は明らかでありません。大蔵省は、一定期間ごとに証券会社から特定金銭信託の運用について報告を受けているのでありまするから、特金の残高の推移、そのうち投資顧問のつかない、いわゆる営業特金の金額とその割合なども掌握しているはずだと思います。それもあわせて詳しく公表していただきたいのであります。(拍手)
 第三に、証券会社の特定金銭信託の運用の実態について疑問がありますので、お尋ねをいたします。
 特定金銭信託は、委託者もしくは投資顧問会社の指示に従って、受託者である信託銀行が受託した金銭を有価証券で運用するものであります。それが、委託者の指示もなしに、証券会社の裁量によって運用されていたことが今回の損失補てんの事態をもたらした原因となっております。
 株価高騰の中で急増した大企業のエクイティーファイナンス、すなわち新株発行を伴う資金調達などの主幹事となったり、その他の取引関係を確保するため、証券会社は利益保証に近いことを行い、大口投資家である大企業も、金銭を委託すれば一定の利益が加わって回収されることを当然のごとく考えていたようであります。投資顧問のつかないいわゆる営業特金の場合は、特に一括委任的な取引が常態化していたと思います。ですから、今回、補てん先リストが明らかになっても、補てんを受けていた側は、その認識はなかったなどということになるわけであります。こうした証券会社の一括委任的な特金の運用は、信託制度に反していると思いますが、いかがでございましょうか。八九年十二月の通達以前は、そうした実態を大蔵省は承知していながら黙認していたのではないでしょうか。そうであれば、大蔵省の監督責任が問われることとなりますが、いかがでございましょう。その後、一括委任的な取引はすべて禁止されたのか、含めて御所見を伺いたいと存じます。(拍手)。
 第四に、今回、損失補てん先リストでは、野村証券系や大和証券系の投資顧問会社が関与した特定金銭信託についても、その親証券会社が損失補てんを行っていた事例が明らかになっております。営業特金だけではたく、通達に従って投資顧問に移した特金についても、投資顧問会社みずからではなく、その親証券が損失補てんをしていたことは、投資顧問会社の独立性、さらには投資顧問制度そのものの存在意義に疑念を抱かせる事態と言わざるを得ません。今回の補てん問題で、投資顧問業法に反した事例あるいは疑わしい事例はないのか、投資顧問の実態はどうなっているのか、また、今後投資顧問制度について改善策があれば明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 ところで、今回の損失補てん問題を検討してみますると、制度それ自体の趣旨からして、特定金銭信託よりも受託者側の裁量の余地が格段に広い信託銀行の指定金銭外信託、いわゆるファンドトラストは、特金よりも制度上損失補てんが行われやすいのではありませんか。今までのところ、そうした事実は公になっておりませんが、実際損失補てんが行われていたのではないかといったことが一部ではうわさされておりますが、そうした事実は全くないのか、調査しているのか、ファンドトラストの現状はどうなっておりますか、御所見をお伺いいたしたいと存じます。(拍手)
 第五に、野村証券の東急電鉄株の株価操作疑惑についてお尋ねをいたします。
 大蔵省は、平成元年末の野村証券などによる東京急行電鉄株の投資勧誘、集中売買は、通達違反の疑いが濃いという問題意識を持って調査を進めていると説明しております。これは通達違反で済まされることではありません。既にこの件については、証券取引法第百二十五条が禁じている株価操作の被害に遭ったとの告発が出ており、東京地検で捜査中でございます。
 野村証券が東急電鉄株を参考銘柄とし、同社で発行している「ポートフォリオウィークリー」などで盛んに推奨し、営業活動を行っていたことは周知の事実でございます。この株をめぐっては、暴力団関係者による株の買い占め、それを担保に資金調達などの事実が明らかになっており、徹底した真相究明が求められておりますが、大蔵省として、通達違反だけではなく、株価操作の疑惑を調査する考えはございませんか。検察、警察では今捜査されていると思いますが、証取法に違反する株価操作の事実は明らかになっておりませんか。それぞれお答えを願いたいと存じます。(拍手)
 第六に、最近続々と明らかになり、刑事事件ともなっております銀行などの不正融資問題について御質問をいたします。
 土地、株、ゴルフ会員権が高騰を続ける中で、総量規制等が行われる以前は、特に銀行は、それらの取引に関係する融資を、系列のいわゆるノンバンクなども介在させて、異常に膨らませていたようであります。バブルがはじけるとともに、そのような融資関係で不正が大々的に行われていたことが芋づる式に露呈しているのでございます。それは証券不祥事の比ではありません。不正融資ではなくても、不良債権化しているものは巨額に上ると予想されますが、大蔵省はその金額など詳細に把握していると思います。その実態を明らかにしていただきたいと存じます。
 また、富士銀行などが巨額の架空預金証書をでっち上げ、それを利用して不正融資が行われていましたが、大蔵省はこうした不正融資、問題のある資金流通の実態をどの程度掌握しておりましょうか。富士銀行の不正融資では、大蔵大臣の元秘書が仲介役をしていたとのことですが、大臣の責任は重大であると考えます。金融監督行政の責任者である大蔵大臣は、どのようにその責任をおとりになるお考えでございましょうか、御所見を伺っておきたいと存じます。(拍手)
 第七に、昭和四十六年に株式の時価発行定着に伴って、企業内容開示制度の改善が図られました。有価証券届け出制度の強化、半期報告書、臨時報告書制度の創設など改正がなされたわけであります。開示制度の強化のため、有価証券届け出制度の虚偽の記載について発行会社の賠償責任、担当役員、公認会計士、元引受証券会社の賠償責任も明示されました。野村、富士銀行当該年限有価証券報告書は、虚偽記載に相当すると思いますが、御見解はいかがでございましょう。また、担当役員、公認会計士の責任は重大であると考えますが、大蔵大臣の御所見を伺いたいと存じます。(拍手)
 第八に、証券取引法第一条では、国民経済の適切な運営と投資家の保護にあることを規定しております。銀行その他の金融機関が金融市場の担い手であると同様に、資本市場としての証券市場の担い手は証券会社であります。つまり証券の発行を通じて財政、産業資金の調達に寄与すると同時に、証券流通を通じて一般投資家の資産の運用と保全を図ることが目的であります。終始、公平、公正に証券市場が運営されなければならないことはもちろんでありますが、再発防止のためにSEC等の第三者機関等を設置することが必要かと存じますが、総理の御見解をお伺いしたいと存じます。(拍手)
 次に、消費税の見直しについて質問をいたします。
 消費税については、昨年税制両院合同協議会が設置され、与野党が合同の場で税制全般にわたり熱心に論議いたしました。結局、消費税に対する野党の廃止、自民党の存続の態度は簡単に折り合いのつくものではなく、あるべき間接税の論議はじっくり継続することとして、消費税の緊急是正措置について協議されたのであります。
 その結果、さきの通常国会で不十分ながらも第一段階の消費税の緊急是正にかかわる法案が成立し、一部は既に実施されております。そして、緊急是正についての合意が成立するに際し、懸案の飲食料品関係の非課税については引き続き協議し、九二年度税制改正に間に合うようこの十月までに結論を得ることとされております。
 飲食料品の非課税は、消費税の最大の欠陥である逆進性緩和のために欠くことができないことであります。与野党間の協議をまとめるためには、自民党側の譲歩が不可欠かと存じます。政府としては飲食料品の非課税を早急に実施する考えはありませんか。これは政府みずからが昨年国会に提出したいわゆる消費税見直し法案にも不十分ながら盛り込まれていたことであります。政府の考えをお聞かせください。
 また、自民党首脳が国際貢献のための財源として消費税の税率の引き上げを実施する案を公言したことがありましたが、消費税の税率引き上げは行わないという海部内閣の公約はどうなったのでありますか。私どもは消費税の廃止を目標にしておりますが、政府は、少なくとも消費税の税率を引き上げることはないとこの場で明言する必要があります。総理の御所見を伺いたいと思います。(拍手)
 次に、湾岸平和基金拠出金、いわゆる九十億ドルの補てん問題についてお尋ねをいたします。
 そもそもこの九十億ドルは、アメリカ軍を中心とした多国籍軍への資金協力を目的としたものであり、アメリカからの要請に従った戦争協力費でありました。そうした指摘に対し、政府・自民党は、憲法で禁止されている集団的自衛権の概念は実力の行使に係るもので、この基金への拠出は実力の行使ではない、したがって、憲法上問題はない、アメリカからの要請に従ったものでもないと強調して拠出したのであります。しかし、憲法上の疑義を払拭できず、武力行使を支持するような基金への拠出は中止すべきでありました。その後、御承知のように、アメリカは為替による目減り分を補てんするよう要求し、政府はそれにこたえて今年度予算の予備費で支出したようでございますが、それは事実でございましょうか。昨年も、予備費の使用目的として問題があることは再三指摘をいたしたところでございます。追加しないとしていた平和基金への追加拠出をまたしても予備費で行ったことは重大問題であります。
 また、政府は、武器弾薬などの購入には使用しないと確約しましたが、本当に使用されなかったのか確認する必要がございます。湾岸平和基金の使用状況、特にアメリカの使用状況について、総理、御見解をお示し願いたいと存じます。(拍手)
 次に、今国会に提出が予定されておりますPKO法案に関連してお尋ねをいたします。
 政府・自民党は、我が国の国連平和維持活動、いわゆるPKOへの協力について、あくまでも停戦確保や兵力引き離しなどを任務とする平和維持軍本隊への参加、そして自衛隊の部隊としての参加を目指そうとしております。しかし、武力の行使または武力による威嚇を目的としない平和維持軍というものは想定することが難しく、それへの我が国の参加、とりわけ自衛隊の参加は、いかに限定条件をつけても、武力行使または武力による威嚇を目的に他国の領土、領空、領海への自衛隊の派遣であり、自衛隊の海外派兵そのものであり、従来からの政府見解にも明確に反することでございます。
 政府・自民党は、この法案を再度国会に提案をしようといたしておりまするけれども、この問題は、昨年の国連平和協力法の廃案によって既に解決済みであり、我が国の国際貢献、国連協力の手段、方向性は明確にされているのであります。政府は、平和維持軍への参加、自衛隊の海外派兵を提案すべきではないと存じますが、そのような企図は放棄すべきだと考えますが、総理のお考えはいかがでございましょう。(拍手)
 次に、環境問題についてお尋ねをいたします。
 地球環境の悪化が叫ばれて既に久しいものがあります。それにもかかわらず地球の環境は残念ながら悪化の一途をたどっております。環境汚染による地球の温暖化やオゾン層の破壊によって、もはや地球の運命は風前のともしびとさえ極言されております。私は、今こそ地球環境を守るため政治が全力を挙げて取り組むべきと考えますが、総理はどのようにお考えでございましょうか、御見解を承りたいと存じます。
 総理が述べられた国際貢献策では、重要な国際課題である地球環境保全について触れられていないのはどうしたことでありましょうか。来年六月ブラジルで開かれる国連環境開発会議、地球サミットでは、気候変動に関する枠組み条約、地球温暖化防止条約が大きなテーマとなることが、さきのロンドン・サミットの経済宣言でもうたわれております。先進国の一員である我が国も、そうした貢献策を明らかにすべきだったと考えますが、総理はどのようにお考えか、お答えください。
 また、地球環境保全に森林の果たす役割が重要になっているとき、国内木材需要の七五%を外国に頼り、このうち消滅することが懸念されている熱帯林木材を世界貿易の四割も輸入している我が国が、森林の再生のための貢献策として、熱帯森林再生基金制度を提唱する必要があると考えますが、総理にそのようなお考えはございましょうか。さらに国内の森林資源を充実し、外国の森林資源を温存できるよう、百二十国会で成立した森林法改正による森林整備事業計画の充実、国土の二割を占める国有林野事業の再建、森林資源の充実にふさわしい予算措置を講ずるべきだと考えますが、総理にそのようなお考えがあるのか、明確に御所見をお述べいただきたいと思います。
 次に、我が国農業と米の市場開放問題についてお尋ねをいたします。
 先月のロンドン・サミットまでの間、国内では財界、政府・自民党、マスコミ等が一斉に米の部分開放論を展開し、もはや米の市場開放は避けられないというムードづくりが意図的に行われてまいりました。しかし、ガット・ウルグアイ・ラウンドの農業交渉における最大の問題は、大規模な企業農業を代弁するアメリカと、環境を重視し、家族農業を守ろうとするECとの間の輸出補助金をめぐっての激しい攻防が展開されたのであります。決して日本の米市場開放が農業交渉の障害になっているわけではありません。
 今日、我が国では米は過剰基調にあり、四国全域に匹敵する面積の減反を農業者に強制しているときに米の市場開放を行えば、さらなる減反を強制することになりましょう。農業の将来に希望を失った生産者の生産意欲は減退し、水田農業は壊滅的な打撃を受けることは火を見るよりも明らかであります。しかも、日本の水田は、国民の食糧を安定的に供給するという重要な役割のほかに、国土の保全、自然環境の維持、地域経済の活性化など、国民にとってはかり知れない役割を担っているのであります。もし市場開放を行えば、失うものが余りにも大きいと指摘せざるを得ません。
 さきのロンドン・サミットにおいて採択されました経済宣言を見ますると、日本政府が強く要求していた非貿易的関心の考慮が盛り込まれており、我々も総理以下の御努力を高く評価をいたしたいと思います。しかし、同時に、この経済宣言の中には、ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉の年内解決に向けて、各国首脳の交渉介入の用意が明記されております。各国の農業問題に関する主張が大きく変化する展望のない中で、各国の主張がこのまま平行線をたどった場合、総理はどのようなお考えを持って交渉に臨まれるのか、ガット農業交渉に臨まれる総理の基本姿勢について改めて承りたいと存じます。(拍手)
 次に、総合農政の見直しについて質問をいたします。
 去る五月末、農林水産省に新しい食料・農業・農村政策検討本部という名称の機関が設置されました。この政策検討本部における検討項目の各論、六項目ほどでありまするが、これを拝見をいたしますると、「多様な担い手(農業経営体)の育成」と題し、「従来の家族的農業経営に加えて、地域的広がりをもち、持続的、安定的な経営が可能な多様な担い手(農業経営体)を育成し得るよう、農地所有と農業経営の分離、農地の所有、利用等のあり方につき検討」するとし、第三セクターや法人的な土地所有など、従来の家族経営以外の経営体の農業への参入を認めていこうとしております。これは現行の農地法で言う、農地は耕作する農民が所有するという基本的概念を逸脱しており、極めて問題だと考えます。総理の明快な御答弁を求めます。(拍手)
 世界の農業政策の流れは、環境破壊型の大規模農業ではなく、環境保全型の家族農業でございます。農政の抜本的改革を行うのであるならば、公益的機能を多分に持った自然環境保全型の家族農業の維持と農村地域社会の発展を柱とした地域農業振興対策をまず確立すべきではないでしょうか。そしてそのためには、過疎、高齢化、農山村の崩壊など、戦後農政のひずみが象徴的に集中している中山間地帯の対策を急がなければなりません。地域農業の振興、中山間地帯対策に関する総理の御見解をぜひとも承りたいと存じます。(拍手)
 漁業問題について質問をいたします。
 国民に貴重な水産たんぱく食料を供給する漁業もまた二百海里体制下において、北洋サケ・マス漁業や底びき網漁業の撤退など、依然として国際的に厳しい状況が続いております。殊に、一部の環境保護運動には行き過ぎた面もあり、資源に対する科学的な根拠を無視して、捕鯨禁止、流し網漁業の禁止、さらにはクロマグロの捕獲禁止を求める動きがございます。関係漁業者は、地球環境保護の名のもとに、このような規制がすべての漁業に及ぶのではないかと不安のうちに漁業を行っております。私は、海洋資源を食糧資源として利用することが今後ますます重要となってくると確信をいたします。したがって、遠洋漁業と呼ばれる国際・公海漁業は適正規模で維持するべきだと考えますが、政府は、厳しさを増す国際・公海漁業をどのように維持されるのか、農林水産大臣の御見解を承っておきたいと思います。(拍手)
 さらに、我が国水域に隣接する漁場として重要な東シナ海においては、ことしの四月から六月にかけて、山口県など西日本のはえ縄漁船が、公海上において国籍不明の船舶によって威嚇射撃を受けるなど襲撃され、資材や金品が強奪される事件が多発し、関係漁民を恐怖のどん底に陥れております。事態の究明と我が国漁民の安全操業の確保が緊急の課題となっておりますが、政府は、こうした国際法上直ちに外交問題に発展する公海上における海賊行為ともいうべき国際的事件に対してどのように対応されているのか、農林水産大臣の御所見を承りたいと存じます。
 最後に、部落問題について質問いたします。
 さきの通常国会における野党の六十数回にわたる質疑で明らかになりましたように、部落差別の実態は依然として厳しいものがあります。また、最近出された地域改善対策協議会会長談話においても、いわゆる「一般対策への円滑な移行の方策」の取りまとめが困難である旨が率直に述べられております。部落差別の現状の厳しさへの認識がえんきょくに示されているのであります。さらに、来年度以降においても何らかの法的措置を求める国民的世論も急速に高まってきております。もはや今年度限りで法を打ち切るということに執着したままでは進まない状況となっております。したがって、この際、政府として地対協に対して、さきの予算委員会の総理答弁にあるように……
○議長(櫻内義雄君) 戸田菊雄君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
○戸田菊雄君(続) 地対協の審議経過及びそこから出てきた結論を尊重することを再度確認していただきたいと存じます。
 私は、金融・証券不祥事の問題を中心に消費税問題、環境問題、農林水産問題、部落問題など、政治が全力を挙げて取り組まなければならない国民生活に深くかかわる緊急課題について、総理を初め関係大臣に御質問を申し上げました。もし、政府がこうした国民生活に深くかかわる課題をおろそかにされることがあれば、国民の政治離れに拍車がかかり、危機に瀕していると言われる議会制民主主義は砂上の楼閣として崩壊するおそれがあると指摘して、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 戸田議員にお答えを申し上げます。
 冒頭に、雲仙岳噴火災害に係る立法の問題について、追加してお述べになりましたが、二十一分野八十三項目にわたる救済対策を決定し、これらの措置は政令の改正、省令の改正、特別基準の設定など、今回の災害のため新たに閣議決定をした措置が三十項目も含まれておりまして、お尋ねの立法を行わなくとも、現在、所要の措置を確保できるものと政府は考えて、鋭意努力をしておるところでございます。
 災害の終息後、この地域全体の防災、復興、活性化については、今後とも地元の御要望を聞きながら積極的に対策を講じていきたいと考えておるところであります。
 また、地震国、火山国である我が国に重要な施策の一つとして、観測体制の強化や地震予知及び火山噴火予知に関する研究開発をしていくことも、御指摘のとおり重要なことであり、また情報の伝達につきましても、ただいま適宜発表を行っているところでありますが、今後、関係機関との連携を強化し、的確な対応に努めてまいる所存であります。
 今回の金融・証券の一連の不祥事件の発生の問題については、私は、「公正な社会」という理念からいって極めて遺憾であり、この不正行為に対する監督が行き届かなかったことを、私も行政の責任者として責任を感じ、国民の皆さんにおわびを申し上げたいと思います。
 今回の証券問題にかんがみ、大切なことは、今後こうした問題の再発防止のため各般の対策を講ずることであります。証券市場に対する監視機能のあり方はどのような形が適切であるのか、是正策のためには何が必要であるのか、ただいま行革審に対し、早急に検討をしていただいておるところであり、大蔵省においても、検査体制の見直しについてプロジェクトチームを発足させ、ただいま精力的に作業を進めておるところでございます。
 消費税についてお話がありましたが、先般、議員立法により、消費税法の一部を改正する法律が成立したところであります。政府としては、本年十月の法律施行に向けて、今回の措置が円滑に実施されるよう最大の努力を傾けてまいります。なお、飲食料品の問題については、両院合同協議会において各会派協議をお続けいただけるものと報告を受けておりますので、政府は、立法府における各党の協議会の御検討を見守ってまいる考えでございます。
 なお、これまで再三申し上げておりますとおり、現内閣は消費税の税率の引き上げを行う考えはありません。
 また、平和回復活動に対する支出金が武器弾薬に使用されたかどうかというお尋ねでありましたが、これまでに合計すると一兆四千九百億円が支出されており、このうち一兆三千四百億円が米国に対する協力に向けられたと承知しております。米国に対して向けられたもののうち、資金協力については、輸送、医療関連、食糧・生活関連、事務関連、通信、建設の六分野の諸経費に充当され、また物資協力としては、防暑機材、水関連機材等が供与されているものと承知をいたしております。
 PKOの参加について、平和維持軍への参加、これを放棄すべきではないかとの御説でありますが、政府は、国連平和維持活動及び国連決議、または人道的活動に従事する国際的な機関からの要請に基づく人道的な救援活動について、これらに対する協力体制を整備するため鋭意検討を行っておるところであり、これらの活動に自衛隊を従事させることを考えているところであります。これは憲法の枠内のことであって、海外派兵ということにつながるものとは考えておりません。
 また、地球環境についてお触れがありましたが、私は、地球の温暖化、オゾン層の破壊、熱帯林減少などの環境問題は、人類の生存基盤にかかわる重大問題であると受けとめ、我が国としては、地球環境保全を国際貢献の重要な柱と位置づげております。
 所信表明の中で、地球環境問題は人類の生存基盤に深刻な影響を与えるが、これについてなぜ明らかにしなかったのかとお尋ねでございました。
 今回の所信表明は、当面する緊急な問題に焦点を絞って所信表明をさせていただきましたが、環境問題は御指摘のとおり極めて大切なものであり、「世界に貢献する日本」としては果たすべき問題と認識しており、明年ブラジル開催の国連環境開発会議にも積極的に貢献をし、作業に参加してまいります。なお、この七月には我が国においてアジア・太平洋環境会議をも開催し、この地域からの提言を行う上で重要な役割を果たしたところであります。
 環境分野に関しましては、二国間、多国間援助を八九年より三年間で三千億円程度を目途として拡充強化に努め、二年間で目標をほぼ達成し、発展途上国への技術移転を推進するためのUNEPの国際環境技術センターを我が国に開設することを目指して目下準備中であり、この面からも人的な貢献ができるものと考えております。
 また、森林の果たす役割が重要になってきたという御説は全くそのとおりでありまして、重要な課題であると政府も受けとめております。二国間及び多国間の協力を通じて、今後とも、熱帯林の再生等の問題に取り組んできている国際熱帯木材機関の最大の拠出国として我が国はその活動を引き続き支援していく所存であり、また、FAOの熱帯林行動計画の国際的推進にも努力をしてまいります。御指摘の点については、貴重な御意見として承ってまいりました。
 森林は、木材生産のみならず、水資源の涵養、生活環境の保全等重要な役割を果たしているところであります。第百二十回国会において改正をした特別措置法、これを受けて、森林整備事業計画については、現在計画を策定中でございます。また、国有林野事業の経営改善については、国有林野事業の改善に関する計画に基づき、今後とも、国有林野の機能の重要性にかんがみ、国有、民有林を通じ、森林整備は着実に推進してまいる考えであります。
 我が国は、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業交渉において、農業生産の持つ特殊性や農業が果たしている多様な役割が適切に配慮されるよう積極的に対応しているところであり、このような立場に立って、食糧安全保障等の観点から、基礎的食糧については、所要の国内生産水準を維持するために必要な国境調整措置を講ずるよう提案を行っているところであります。今後の交渉に臨むに当たっては、食糧輸入国としての我が国の立場が適切に反映されるように、また、米については国内産で自給するとの基本的な方針で対処をし、アメリカやEC諸国がそれぞれ抱える困難な問題とともに、ガット・ウルグアイ・ラウンドの場で、我が国の立場が適切に反映されるよう努力を続けていく考えでございます。
 また、新しい食料・農業・農村政策に関する検討におきましては、今後、農業労働力の減少と高齢化の大幅な進展が見込まれる中で、農業の生産性を向上し、農業生産力を確保するため、従来の家族的農業経営に加えて、地域的広がりを持ち、持続的、安定的な経営が可能な多様な担い手を育成し得るよう、幅広く検討をしておるところでございます。
 また、中山間地域対策、地域農業の振興については、農業は、国民生活にとって大切な食糧の安定供給のほか、地域社会の活力の維持、国土・自然環境の保全等の多面的な役割を果たしておるものと認識しております。このため、経営感覚や技術にすぐれた担い手の育成、需要の動向に応じた農業生産の展開、生産基盤の整備、新技術の導入等、各般の施策を推進してまいる考えであります。なお、中山間地帯に対しては、立ちおくれた生産・生活基盤の整備、付加価値の高い農業生産の振興等の施策をきめ細かに実施し、活性化に努めてまいりたいと考えております。
 地対協の問題は、同和問題は、憲法に保障された基本的人権に係る重要な問題であるという認識のもとに、きょうまで諸施策の推進に努め、相当の成果を上げてきたと感じておりますが、平成四年四月以降の方策については、地対協において一般対策への円滑な移行について幅広く各方面から意見を聴取しつつ審議されていると聞いており、その意見具申を尊重し、検討を続けてまいりたいと考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 昨日、御答弁に立ちました最初に、おわびの言葉から始めさせていただきました。きょうも同様の気持ちで御答弁をさせていただきたいと思います。
 戸田議員から御指摘いただきました補てんの公表関係についての問題に、まずお答えをいたしたいと思います。
 証券会社に対しましては、従来から証券会社の業務運営、財産経理の状況及び法令の遵守状況等を総合的に把握するために、定期的に検査を行ってまいりました。その中で、証券会社からは、一九九一年三月期につきましては損失補てんはないという報告を受けてはおりますが、今般、一九九一年三月期及び当期の事後的な損失補てんの有無について把握する目的で、大手四社に対しまして、この七月十八日、特別検査に着手をいたしました。検査が終了いたしました段階で、問題があれば各社に対し、可能な限り事実関係を明らかにするよう指導してまいりたいと考えております。また、四社以外の証券会社につきましても、必要な対応をしてまいりたいと考えております。
 また、中小証券についてのお尋ねがございましたが、中小証券におきましても、金額は小さいといいながらも、証券検査の過程及び税務調査の結果を受けまして、数社から損失補てんがあったとの報告を受けております。これらにつきましては、ディスクロージャーのルールに従って、有価証券報告書の訂正という形で明らかにされるよう指導したいと考えております。なお、損失補てん先の企業名などの公表につきましては、中小証券会社につきましては、大手四社を含む十七社とは証券業界におけるウエートが異なるほかに、金額が小さいと見られることもありまして、各社の自主的対応に期待したいと現時点では考えております。
 また、大蔵省が報告を受けた時点についてのお尋ねがございました。
 当局としては、平成元年末に証券会社に対し、損失補てんにつきまして自主点検、報告を求め、その報告のありました会社に対しては、厳正な社内処分を実施させるとともに、再発防止に向けて内部管理体制の強化等を指導してまいったところであります。なお、御指摘の公表の点につきましては、昨年の報告が自主的な報告であり、公表を前提に報告を求めたものでなかったことから、公表等の措置をとらず社内処分などを実施させたところであります。
 また、リストの詳細な説明ということでございましたが、大蔵省としては、今後国民の証券市場に対する信頼感を回復し、市場の健全な発展を期するためには、国民の前に損失補てん先の企業名を具体的に明らかにすることが必要であると考えた次第でありまして、こうした視点から、大蔵省としては、先般、大手証券四社を含みます証券十七社から、補てん先の企業名等を自主的に公表するように要請いたしました。その補てん先につきましては、各社からその公表の際に説明が行われたところでございます。
 また、補てんの手法等につきましては、これまでわかりました範囲内を既に国会審議の場を通じて御説明を申し上げてまいりましたが、なお新たなものが出てまいりましたなら、その都度御報告を申し上げるということにさせていただきたいと思います。そして御指摘の、引き続き、特定金銭信託の残高の推移などを含め、その実態を明らかにするように努めてまいりたいと思います。
 また、いわゆる営業特金と申しますものにつきましてお尋ねがございました。
 営業特金は、特定金銭信託のうち、投資顧問会社がついておらず、顧客自身が証券会社の投資情報、投資助言をもとに信託銀行に運用を指示しているものでありまして、それ自体は、適正運用されれば、通常の資産運用の一形態と考えられます。しかし、営業特金が一任的に運用され、その結果、いわゆる損失補てんが行われていることが判明いたしましたことから、元年十二月に証券局長通達を発出し、営業特金につきまして、原則として、顧客と投資顧問業者との間に投資顧問契約を締結すること、投資顧問契約を締結しない場合は、売買一任や利回り保証は行わない旨の確認書を顧客と取り交わすことなどの適正化のための指導を各証券会社に行ってまいりました。
 今回の損失補てん問題と投資顧問業者とのかかわりにつきましては、関係者からの事情聴取等により、現在、事実関係を確認中であります。今後、仮に法令、通達等に違反する行為が明らかになりました場合には、厳正に対処してまいりたいと考えております。また、投資顧問業者の独立性につきましては、法律、通達により、取締役の兼職が制限されるなどの措置が講じられており、大蔵省としても、投資顧問業者の親会社からの独立性の維持、確保に努めてきたつもりでありますが、現在行っております事実関係の確認作業の結果を踏まえながら、投資顧問業者の独立性を一層確保するなどの措置を検討したいと考えております。
 また、信託銀行のファンドトラスト、これはもう議員がよく御承知のように、投資家が委託者、信託銀行が受託者という関係の中で、有価証券投資を目的とした信託契約を締結し、受託者が広範な裁量権を持って有価証券の運用を行う金銭上の信託のことであります。このファンドトラストについて損失補てんの事実はないかという御指摘をいただきましたが、事務方から信託銀行各社に対し事情を聴取いたしましたところ、信託銀行が顧客に対して元本の補てんあるいは利回り保証を約束し、それに基づいて損失を補てんするような事実は存しないという答えでありました。また、元本補てんあるいは利回り保証を約束しない場合の銀行勘定から信託勘定へのいわゆる事後の補てんについても、そのような事実は存しないとのことであります。なお、ファンドトラストの残高は、平成三年三月末で約九兆円に上っており、ファンドトラストは、大口顧客を対象とする信託商品として、一口当たりの平均信託金額は約二十三億円であります。
 また、東急電鉄株についてお尋ねをいただきました。
 大蔵省としては、野村証券などによります東急電鉄株の売買が証券取引法上の株価操作に該当するかどうか、問題意識を持ちながら調査を行っているところであります。しかし、これまでに判明しておりますところでは、各種の株価指数が史上最高値を更新するなど市場全体が活況を呈し、東急電鉄株以外の電鉄株も急騰している中におきまして、東急電鉄株についても多数の投資家が多くの証券会社を通じて売買を行っておられること、特定の委託者や特定の証券会社による意図的な株のつり上げや仮装、なれ合い売買という事態は確認できておりませんことから、引き続き調査を続けております。しかし、現在までのところ、株価操作的行為があったとの確証は得られておりません。
 また、金融機関についてお尋ねがございました。
 まず申し上げなければならないことは、私自身の元秘書が、富士銀行の赤坂支店元渉外課長との間に私の秘書というものがお客を紹介したということにつきまして、その責任を痛感をいたしております。既に司直による捜査が開始されておることでありまして、必ず全容は明らかになると考えておりますが、不正融資にかかわっていることを全く知る由がなかったとはいいながら、軽率にも融資希望者の紹介を行ったということ自体が不適切と考えており、結果として秘書の監督に至らぬ点があったということは、心からおわびを申し上げます。
 そしてまた、金融機関の融資等につきましては、従来から検査等を通じ経営の健全性の観点等から把握に努めてまいりましたが、議員の御指摘のように、いわゆるバブル経済のもとにおいて貸し出し競争が激化し、貸出資金が資金需要の強い不動産、財テク等非製造部門に向かうなど融資構造が変化してきたこと、そうした中において、一部の金融機関に安易に業容拡大等の動きが見られたことは否定できないことであると思います。また、今回の一部都市銀行の不祥事件は、当事行が対外的にも公表いたしましたとおり、その総額は約三千億円程度と言われております。
 これらの事件は既に告訴されており、当局からも司法当局に対しその徹底解明をお願い申し上げるとともに、司法当局による真相解明を心から願っておるところであり、監督当局としても、本事件の重要性にかんがみ、内部管理について総点検を各行に指示いたしますとともに、その結果講じた措置などについて報告すべき旨を指示いたしました。また、関係行以外の都市銀行等につきましても、早急に内部点検を実施し、不正が発覚した場合には直ちに当局に報告するよう求めているところであります。
 また、有価証券報告書についてのお尋ねがございました。
 損失補てんなどを行った証券会社につきましては、有価証券売買等損益などの一部に、今後の取引関係を維持するなどのため、証券会社が売買損失などを発生させた取引が見られたことから、明瞭表示の観点に立って、訂正有価証券報告書等によりその旨を開示することとしたものでありますが、これは当該期における最終損益に影響を与えるものではなく、虚偽記載には当たらないものと考えられます。また、偽造預金証書に係る銀行の問題につきましては、その処理に当たり、当該銀行により貸付債権の肩がわり等が実施されます場合には、その段階で財務諸表に反映させる必要が生じてくるものと考えられます。したがって、本年三月期までの有価証券報告書等について虚偽記載の問題は生じないものと考えております。
 また、第三者機関という問題についてのお尋ねがございました。
 総理から御答弁がございましたように、現在、行革審において一段高い立場から御検討いただいております。しかし、それとは別に大蔵省自身として、今回の一連の証券問題の反省の上に立って緊急に対応策をまとめる責任はあると考えておりまして、この一環として、検査体制の見直しにつきましても、七月十日にプロジェクトチームを発足させ、組織体制、人員配置、検査の方法などの視点から、現在精力的に作業を進めているところでございます。
 また、消費税について議員からのお尋ねがございました。
 これは、総理からお答えをいただきましたとおりでありまして、飲食料品関係の問題につきまして、立法府における御検討を見守らせていただいております。
 また、湾岸平和基金に対するこれまでの拠出はすべて円建てで行われております。今回の七百億円の予備費の使用は、湾岸地域における近時の新たな状況に応じ、新たな資金需要が発生している事情等にかんがみて、我が国として国際社会における地位にふさわしい貢献を行うとの観点から決定をしたものでありまして、目減り分を補てんするということではございません。(拍手)
    〔国務大臣近藤元次君登壇〕
○国務大臣(近藤元次君) 戸田議員にお答えをいたします。
 我が国の遠洋漁業については、御指摘のように、二百海里体制の一層の定着に加えて、最近においては、漁業資源の国際管理の強化なりあるいはまた海洋環境保全といった新しい動きの強まり等により、種々の制約が生じているところであります。遠洋漁業の存続に当たっては、沿岸国との多様な協力関係を強化していくとともに、科学的な知見に基づく新たな国際漁業の秩序の構築に向けて努力を払い、その枠組みに応じて遠洋漁業の再編成を図っていくことが必要であると考えております。
 次に、東シナ海における国籍不明船に対する安全操業確保対策に関するお尋ねについてであります。
 本年三月十八日以降、東シナ海の公海上において、我が国漁船が国籍不明船に臨検または襲撃を受ける事件が十一件発生しております。これに対して農林水産省では、事件発生の直後に、海上警備の担当官庁である海上保安庁にこの海域における警備強化をお願いをするとともに、水産庁の取り締まり船も派遣をして海上保安庁巡視船と連絡をとらせて、我が国漁船の安全操業維持に努めてきたところでありますが、関係漁業者に対しても注意喚起を行うとともに、操業に当たっては、関係機関との間の通報連絡体制を十分整備するとともに、可能な限り集団操業を行う等、安全操業に徹するよう指導してきておるところであります。
 さらに、本件については、中国国旗を掲げ、軍服姿で臨検した者がいたこと等から、外交ルートを通じて中国当局に関する情報を問い合わせているところであります。今後、この種の事件の未然防止のためには、中国側の協力が不可欠であるところから、中国側に対して安全操業確保のための協力を外務省から要請していると承知をしているところであります。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 不破哲三君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔不破哲三君登壇〕
○不破哲三君 私は、日本共産党を代表して、海部首相に質問いたします。
 まず、証券スキャンダルの問題です。
 この事件の深刻さ、重大さは、何よりもまず、それが個々の企業にとどまらず、証券業界を中心に、多くの部門の多数の企業が関係した構造的な腐敗事件だというところにあります。だからこそ、事実が明らかになるとともに国民の怒りと批判が噴き出し、国際的にも日本の経済と政治の信頼性が広く問われているのであります。この腐敗事件の全貌を解明し、その社会的、政治的な責任を明らかにすることに、この国会が国民に負っている最大の責務があると言っても決して言い過ぎではありません。
 この点で、総理に第一に求めたいのは、全貌解明への徹底した努力であります。
 問題の損失補てんについて、十七の証券会社から一応のリストが公表されましたが、内容は、九〇年三月までと時期を限っている上、元本一億円未満の分は省かれています。また、その他の証券会社でも少なからぬ損失補てんがあると指摘されています。補てん先のリストだけでなく、補てんがどのような仕組みによって行われてきたかの解明も重要です。こうした点から見るならば、十七社の自主的な発表をもって事実の解明が終わったとすることはできません。証人喚問を含む国会での徹底解明、大蔵省が把握している事実の全面公表など、事態の本格的な解明に向かっての総理の見解と態度を問うものであります。(拍手)
 第二は、証券スキャンダルに対する政府、特に大蔵省のかかわりの問題です。
 野村証券の田淵前社長は、損失補てんについて、大蔵省の承認を得てやったと言明しました。後であいまいな釈明などもありましたが、仮に事後報告にもせよ、大蔵省が事実を知りながら黙認していたとしたら、事は重大であります。証券業界が特定の相手に対して損失補てんをしていることを大蔵省はいつ知ったのか、またそれにどう対応してきたのか。損失補てんは、不公正取引の代表的なものとして証券取引法が明文で禁止している不法行為です。その違法性を政府がどう認識してきたのか、明確な答弁を求めます。(拍手)
 大蔵省証券局が四大証券の社長会と毎月定期の会合を持ってきたことは、三年前の衆院予算委員会で当の証券局長自身が認めたことでした。それほど密接な関係のある証券業界で、大企業に対する損失補てんが大規模かつ系統的に行われてきたのです。この不公正取引は、大蔵省も承知の上で実行されてきたというのが真相ではありませんか。大蔵省がそうした不公正取引の世界に首まで浸り込んでいたからこそ、大蔵大臣のおひざ元で秘書が銀行絡みの経済犯罪に関与するといった、容易には信じられない不祥事まで起こったのではありませんか。その大蔵大臣と大蔵当局の責任問題を総理が過去形で語り、解決済みであるかのように扱ったことは、理解に苦しむところであります。ここに今国会が解明すべき最大の問題の一つがあることを指摘し、総理の責任ある答弁を求めるものであります。(拍手)
 第三に、証券スキャンダルは、土地投機、株投機を膨れ上がらせた、いわゆるバブル経済の落とし子であります。バブル経済は、大企業にはぬれ手でアワの大もうけの舞台を提供しましたが、国民にとっては多くの経済的な苦しみのもとになりました。実際、それは大都市を中心に全国の地価の狂乱的な暴騰を引き起こし、国民の住宅難を極端に深刻なものとしました。史上最低水準への金利引き下げで国民が失った預貯金金利は、三十兆円を超えると計算されています。さらに、一億総財テク時代とあおられる中で、多くの国民が株式投資に引き込まれましたが、大企業に特権を与えた損失補てんの体制は、まさにこういう一般投資家の犠牲の上に立ったものでした。
 バブル経済は、日本経済の避けられない局面ではなく、政府と財界が協力してつくり出したものでした。その引き金となった公定歩合の強引な連続的引き下げ、不公正取引の最大の足場となった営業特金制度の創設、NTT株の売り出しによる財テクのあおり立てなど、バブル経済の枠組みは、まさに政府自身が政策的につくり上げたものではありませんか。その破綻が空前の証券スキャンダルとなってさらけ出された今日、政府はバブル経済を生み出した政治的責任を明確にすべきであります。(拍手)
 第四に、歴代の自民党政府は、証券業界の中心人物に政府のいわば政策顧問といった地位を与えてきました。今回の事件の主役となった野村証券を例にとっても、田淵前会長は消費税導入の際の政府税調を初め多くの審議会の委員を歴任してきました。野村総研の中川前社長は、行政改革推進審議会で規制緩和分科会の責任者となり、企業活動をより野放しにする体制づくりに活躍しました。企業の利益のためには違法行為も平気という人々が日本の経済政策を左右する重要ポストを占める、こうした事態がまかり通ってきたのも、自民党政府と財界、特に証券業界との癒着の深さを示すものです。国民に背を向けた政府と財界の異常な結びつきを、この機会にきっぱりと清算すべきではありませんか。総理の見解を求めます。(拍手)
 総理、政府のかかわりを含め、事件の全貌を解明して初めて、再発防止策も実際に生きた力を持つ内容を持って立てることができます。私たちは、そのためにこの国会であらゆる努力を尽くす決意であります。
 この事件を通じても痛感されたことですが、私は、民活と行革を看板にした八〇年代の政治が、大企業と軍事費を優遇する一方、国民生活の諸問題を冷遇してきたことについて、総理に率直な反省を求めたいと思います。
 雲仙対策の問題でもそのことははっきりあらわれています。雲仙では住民の避難が始まって既に三カ月近くが経過しました。私は、火砕流で亡くなられた皆さんに心からの哀悼の意を表するとともに、極めて厳しい条件の中で災害に立ち向かわれている住民の皆さんにお見舞いを申し上げるものです。
 被災地の現状には多くの国民が深い関心を寄せていますが、この火山災害に対する政府の災害対策の立ちおくれは余りにもひどいものです。先日のテレビで島原市長が、現状を訴えながら、いまだに国から一円の補助金も出ていないと述べたことは、全国に大きな衝撃を与えました。突発的な災害には予備費を緊急に充てるのが当然ですが、政府はまだ予備費の支出に踏み切っていません。総理が対策実施中として挙げた二十一の分野のどれを追跡調査しても、財源の不足が壁となって、現地の切実な要求の実現が阻まれているのが偽らざる実情であります。この状況は、避難後半月で十一億円の予備費支出を決めた伊豆大島噴火の先例と比べても全く異常なものであります。また、激甚災害法の正式な指定は行われておらず、活動火山法の適用も部分的です。
 こうした立ちおくれの原因はどこにあるのか。大蔵省の担当者は、私たちの調査に対し、予備費はほとんど湾岸戦争関係で使用し、残額が六百八十億円しかないという事実を述べました。総理、これが政府の雲仙対策の実情なのでしょうか。そうでないというのなら、雲仙対策に真剣な態度で臨むという政府の意思を、予備費の緊急の支出を初め、十分な財政的な裏づけをもって明らかにすべきではありませんか。(拍手)
 日本は、地球の陸地面積の〇・三%以下という狭い列島に、世界の活火山の一割が集中しているという有数の火山国です。長期的な問題としては、その日本での火山対策の根本的なおくれが問題にされなければなりません。八十三の活火山のうち、気象庁が地震計での常時観測をしているのは十九火山、精密観測の体制はそのうち四火山だけ、それ以外の火山は地震計も置かず、十年に一度の巡回検診に頼るという貧弱な体制です。
 この状況なのに、気象庁の火山対策の新規施設整備費は、八〇年代の初めにはそれでも年間一億数千万円あったものが、現在の二千万円台にまで大幅に削られてきました。噴火は、八三年の三宅島、八六年の大島、八八年の十勝岳と相次ぎましたが、臨調行革の大なたは情け容赦なく振るわれたのであります。これを根本的に立て直し、災害対策の面でも、観測体制の面でも、火山国にふさわしい体制をつくることは、雲仙の被災地の緊急の要請にこたえると同時に、国民的な安全を保障する急務であります。総理の積極的な対応を求めるものであります。(拍手)
 次に、国際貢献の問題に進みたいと思います。
 世界では、軍事ブロックの対抗というこれまでの体制に大きな変化が起こり、ワルシャワ条約機構など東側の軍事ブロックは解体に至りました。世界の平和を追求する立場に立つならば、これを軍事ブロックの体制全体をなくす転機とするように力を注ぐのが当然であります。そして、核兵器廃絶を中心に軍縮を促進しつつ、世界と日本の経済力を貧困問題、環境問題などの解決に役立てる努力を尽くすべきであります。ここにこそ日本の憲法の平和原則を踏まえた国際貢献の大道があるのではありませんか。(拍手)
 世界には日本が貢献を求められている多くの重要問題があります。例えば、世界子供白書は、毎週二十五万人以上の幼い子供が、簡単に防げる病気や栄養不良で命を落としているという事実を、現在の最大の罪として挙げています。この点で、総理が出席した昨年九月の子供のための世界サミットは、二〇〇〇年までに子供の生存、保護、発達のために達成すべき主要目標とそれをやり遂げる行動計画を決めました。それに必要な資金は、向こう十年間、年間二百億ドルずつとされています。これを湾岸戦争での日本の戦費負担百十億ドルと比べるなら、日本がこうした諸問題の解決に本気で取り組んだときに、どれだけ大きな国際的イニシアチブが発揮され、どれだけ大きな世界の共感が得られるか、理解されると思います。私は、日本の経済力を子供の健康と生命の保護、貧困問題、環境問題などのために、最優先で役立てることを強く提唱するものです。総理の見解を伺いたいと思います。(拍手)
 人的な貢献の面でも、日本は憲法の平和原則を持った国として、軍事活動とは厳密に一線を画しつつ、医療、教育、災害救助、環境などの分野でこそ積極的な対応をすべきであります。これらの分野では、日本の努力がまだまだ不足しており、その体制も十分でない現状、これを正して、思い切った拡充が必要であります。しかし、国際緊急援助活動に自衛隊を参加させるなど、これを殊さらに軍事活動と結びつける計画は、平和的な活動として進めるべき分野に本来の趣旨に反する状況をつくり出すもので、同意することはできません。
 軍縮の分野でも、核保有の大国が交渉するその枠内で、その後を追うだけにとどまるべきではありません。核兵器廃絶の課題に世界政治の緊急の中心問題として取り組み、あらゆる情勢の中でそれに接近し、実現する努力を一貫して払うことは、被爆国日本が独自に担うべき重大な課題であります。自民党は、従来、通常兵器が同時に廃絶されない限り、核兵器廃絶には賛成できないという態度をとってきました。この課題を問題にするとき、必ず究極的という形容詞をつけるのはそのためですが、総理もこの立場を繰り返しました。被爆国民の願いを代表するには、こうした棚上げ論を乗り越えての努力が必要であります。
 また、総理は、経済協力の実施に当たって、武器の輸出入を含むその国の動向に十分な注意を払うという態度がサミットで評価されたと述べました。この問題に真剣に取り組むなら、湾岸戦争の教訓からいっても、当然、武器の輸出国は経済援助の対象から外すというきっぱりした態度をとるべきであります。軍縮問題でのこうした態度が、そしてその努力が、世界平和への直接の重要な貢献をなすことは疑いありません。総理の見解をただすものであります。(拍手)
 今、政府が国際貢献と言って提起しているのは、全く反対の道であります。すなわち、自衛隊の海外派遣を焦点に、憲法の平和原則の壁をいかにして破って軍事的な海外活動に踏み出すか、ここに日本の国際貢献の最大の課題があるとする立場です。これは世界情勢の転換の時期に、日本の進路を誤るものと言わなければなりません。法案はまだ公表されていませんが、平和維持軍を含む国連平和維持活動に自衛隊を部隊として参加させることが骨組みになっていると聞きます。
 そこで、幾つかの基本点について伺いたい。
 第一、自衛隊が違憲か合憲かという問題では、私たちとあなた方の間に根本的な意見の違いがあります。しかし、現憲法のもとで自衛隊の海外での軍事活動が認められないことは、従来の国会答弁に照らしても大局の一致があったはずであります。PKOとはほかならぬ海外での軍事活動を基本とするものですが、政府は従来みずから認めてきた立場も憲法解釈も投げ捨て、自衛隊の海外での軍事活動に踏み切るつもりなのですか。これが第一点であります。
 第二、政府はPKOへの参加にいろいろ条件をつけて矛盾を取り繕おうとしていますが、そのこと自体が新たな矛盾を生む結果となっています。昨年十月、国連事務総長は、PKOの訓練計画のガイドラインとして平和維持活動の訓練マニュアルを作成し、加盟国に送付しました。それによれば、PKOに参加した部隊は、指揮系統の問題でも、武力行使の問題でも、自衛の概念についても統一した規定と規律のもとに置かれます。幾ら政府が独自の参加条件を決めても、PKOの統一的な規定とは別個の条件、例えば状況が変化したら撤退するといった条件で制約された異質の部隊がこれに参加する余地はないのであります。政府は、事務総長名のさきの文書を含め、PKOのこういう実態を承知の上であれこれの参加条件を問題にしているのですか。それとも、国連協力の名で自衛隊海外派遣のための法体制さえできればよいというのが真意なのですか。明確に伺いたいと思います。(拍手)
 第三、さらに重大なことは、政府が協力の対象を国連のPKOに限定せず、その他の国際機関への協力など、自衛隊の海外派遣により広い道を開こうとしていることです。昨年の国連平和協力法案でも、同じ論法で多国籍軍への軍事協力が問題にされました。国連協力を看板にしながら、なぜ協力の対象を国連に限らないのか。ここで言う「その他の国際機関」という範囲にはどのような限定があるのか。具体的な答弁を求めます。
 政府の法案づくりは、憲法との関連でも、当の国連との関係でも無理に無理を重ねたもので、自民党内の意思統一にもいまだ成功していないように聞いています。にもかかわらず、政府がこの国会で是が非でもこの法案に日の目を見させようとしているのはなぜか。私は、世界の紛争地域での自衛隊の軍事活動を求めるアメリカの戦略的思惑がこの問題の根底に何よりも強く働いていることを、特に昨年来の日米間交渉の経過に照らして痛感せざるを得ません。
 総理、日米軍事同盟やそれに基づく海外派兵の計画などにいつまでも固執する態度では、軍事同盟の解体が世界的な課題となっているこの時代に対応することはできません。激動する世界情勢は、この古い枠組みの打破、軍事同盟のぎずなに縛られない自主独立の道への転換をこそ求めているのであります。(拍手)
 最後に、小選挙区制の問題です。
 総理は、自民党の選挙制度改革案を、政治に民意を的確に反映できるシステムと呼びました。これほど無責任な偽りの言葉はないでしょう。四割台の得票で八割の議席を保障する選挙制度のどこに民意の的確な反映があるでしょうか。日米安保と大企業の利益を最優先させてきた自民党政治の古い枠組みが、あらゆる面で再検討を迫られている今日ですが、選挙制度をつくりかえて、その自民党に多数議席を保障し、自民党政治の永続化を図る、また、いわゆる海外筋からの要請にできるだけ機敏にこたえる、ここに小選挙区制の最大のねらいがあることは明白ではありませんか。
 総理、国民主権の立場に立つならば、選挙制度のよしあしをはかる最大の基準は、国民の意思が国会の構成にどれだけ正確に反映されるかに置くべきであります。総理はこの基本問題についてどのような見解をお持ちですか。民意の的確な反映を重視するというのなら、まず自分の提案をその基準に照らして検討すべきであります。四割台の得票で八割の議席というのは、前回の総選挙結果に基づく多くの試算が一致して示していることですが、総理は、こうした結果をもたらす選挙制度が民意の的確な反映を保障するシステムだと本気で考えているのでしょうか。
 小選挙区制の理由づけとして総理が持ち出した最大の議論は、複数の候補者を立てると政策不在の選挙になるということでした。しかし、これは自民党の選挙戦のやり方にかかわる苦情にすぎません。それがまずいというのなら、自民党自身が総裁の責任で正すべきであって、その是正方を選挙制度に求めるなどは全く筋違いの話であります。(拍手)しかも、複数立候補は、地方選挙ではどの党も共通してやっていることであり、それがすべて政策不在だというのは、政党政治と有権者の全体をばかにした話ではありませんか。民意の的確な反映を問題にするなら、緊急かつ最優先に実施すべきは、法律にも明記され、国会でも決議した定数の抜本的是正であります。政府・自民党はこの定数是正をなぜ回避するのか、国民の前で納得のいく答弁を求めるものであります。(拍手)
 どの党でも、あるべき選挙制度を探求する権利を持つのは当然であります。しかし、この問題については、定数是正を実行した上で総選挙で国民の判断を求め、次の段階で国会がよりよい選挙制度の議論に取り組む、これが民主的な筋道ではありませんか。政府の小選挙区制導入計画は、自民党の党利党略を最高の指針に押し立てた日本の民主主義への正面からの挑戦であります。民主主義の政治制度と国民の自由を将来にわたって守り、発展させることは、戦前戦後六十九年の歴史に裏づけられた日本共産党の確固とした信条であります。
 私は、この立場から、反民主的な小選挙区制導入の計画とその法案を撤回することを総理に厳しく要求し、質問を終わるものであります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 不破委員長にお答えをいたします。
 今回の証券不祥事につきましては、損失補てん等の問題の実態については、先般来、十七社の証券会社から補てん先の企業名が公表されたところであり、また、補てんの手法等について、政府としても国会審議の場を通じて説明をしてきておりますが、引き続き、その事実を明らかにするように努力をしてまいります。
 証人問題については、ただいま国会においてお決めいただく問題であると思い、その御決定に政府は従ってまいります。
 また、証券業界の問題を全部過去形で話してはおりません。やったことはやったと言い、これからやろうということはこれからやろうと、分けてきちっと申し上げておりますから、そのように御理解をいただきたいと思いますし、平成元年に一部証券会社の損失補てんの事実が明らかになったことを契機として、同年末に大蔵省は通達を発出して、このような行為のないよう厳しく指導するとともに、損失補てんを行った証券会社に対し、社内責任の明確化、営業自粛を行わせたところであります。
 私は、特定顧客に対する損失補てんは、内外の一般投資家の市場に対する信頼を大きく損なったものであり、「公正な社会」という理念からいってもまことに遺憾だと考え、行政の責任も重く受けとめて、厳正な対処を行ったところであります。
 こうした問題の再発防止が極めで大切なことであり、証券取引法の改正、それは今国会に提出したい、鋭意準備を続けておりますし、また、このような一部金融機関、銀行等の問題にもお触れになりましたが、公共性の強い金融機関の性格にかんがみてまことに遺憾なことであり、今後とも内部管理体制の改善等については一層厳正に指導をして、再発しないように努めてまいります。
 また、バブル経済の問題は、昭和六十一年以降の金融緩和局面において、景気拡大等を背景に株価も大幅に上昇いたしました。こうした中で証券会社の業務も拡大しましたが、営業姿勢において行き過ぎがあったこと、顧客の側にも自己責任原則の認識の徹底を欠いたものがあったことなどが、今回の補てんの背景にあるものと考えられます。今後は、心して対処をしていく考えであります。
 また、審議会委員の任命にを言及されましたが、これは閣議の口頭了解に基づいて、審議会には、関係のある広い分野から人材を起用するよう努めているところであり、具体的な人選については、任命権者が適材適所により選考してきたところでありまして、今後とも注意をして続けてまいります。
 また、雲仙岳の問題につきましても、いろいろ申されますが、現在二十一分野八十三項目にわたって救済対策を実施しております。災害の発生に対処するための所要の経費は予算に計上されております。現在、予算が不足だから実施がおくれているということはございません。なお、さらに追加的に必要となる経費の財源措置については、予算の執行状況等を見ながら適切に対処をしてまいります。
 火山災害に備えた長期的な対策の確立は、これは御指摘のとおりであり、今後とも観測、監視の強化や予知技術など一層の充実を図ってまいります。
 また、私が参加しました子供のためのサミットの問題について、私は、この行動計画において触れられた子供の健康促進、貧困緩和、環境の保護、教育の徹底等について、我が国もでき得る限り積極的に国際協力を続けていく所存であります。
 また、人的貢献については、医療、教育、災害救助、環境などの分野で積極的に思い切って拡充していくべきではないかと仰せられますが、私は全く賛成でございます。ですから、いろんな面で人的貢献を進めていこうと、こう考えておるわけであり、国際緊急援助隊への自衛隊の参加は、その持っておる能力や経験や集団行動の実績や、また医療、災害対策等において、国内においても感謝されつつ目覚ましい活躍をしておることにかんがみて、国際緊急援助隊へ自衛隊の参加のできるような法改正も用意をしていきたいと考えております。
 また、核兵器の廃絶は我が国の究極的な目標であり、既に先般の国連軍縮京都会議における基調報告でも私は申し述べておきました。今後とも積極的に努力をいたしますし、武器の輸出入について、これも我が国は従来からの武器輸出三原則を踏まえて厳格に行ってきておりますが、ODAの供与に当たっても、相手国の軍事支出の動向及び武器輸出入の動向にも十分に注意を払いながら、ただ、相手国の置かれた安全保障環境を含めた国際情勢、あるいは相手国の安全保障にかかわる固有の問題等をも念頭に置きながら、二国間関係を通じて総合的に判断し援助を決定し、懸念があったときには二国間で率直に忠告を繰り返していく決意でございます。
 また、PKOは海外の軍事活動を基本とするものではありません。御承知のように、我が国が参加する、こう決意しました基本思想の中にも、そこで停戦が成立をし、そして参加国すべてがPKOの活動を要請し、そしてまた中立的な立場でその平和回復活動、平和維持のために動くということで、これは従来の意味での軍事活動とは趣旨が全く違うものでありますし、国連協力の面においてもその能力や経験や組織的行動力を生かして、きょうまでも多くの議員の皆さんに国連本部やあるいは現にPKOを派遣しておる国々の実態等を調査してきていただきましたが、その御報告を議員の皆さんから直接聞いても、やはりお役に立つような能力と経験と組織が必要だということは御報告として承っておるところであります。我が国のなし得る協力は何なのかという対象を、この前、政府は中間報告としてまとめ、提出をした次第でございます。
 国連平和維持活動及び人道的な救援活動に対する協力とは何かとのことですが、これは過般の三党合意に基づいて、この問題について人的協力をするということであり、国連難民高等弁務官等の国連機関とか世界保健機関等の国連専門機関、そういった人道的任務を達成するための国連機関を想定しておるところでございます。
 また、選挙制度のよしあしをはかる最大の基準は、国民の意思が国会に正確に反映されるということであります。そのためには政党政治が必要であり、政策本位、政党本位の選挙制度が行われることが大切であると私は考えます。同じ地域で複数の同じ党の候補者が争うことは、これはいろいろと必要以上な摩擦や個人的な選挙運動の弊害を生むものであるということは、私は率直に申し上げました。
 私の記憶に誤りなければ、かつて全国区の参議院選挙のときには、全国が一つの選挙区であったのですが、共産党の候補の皆さんは特定のブロックにはお一人ずつしか立候補がなく、どこを回っても特定地域ではお一人のポスターしか見ることができなかったというのが私のイメージの中に残っておりまして、同じ政策の者同士が複数で争うことはこうやって実質的に避けられたのかなあと推測をしたことについても、私の意見として申し上げさしていただきたいと思います。
 さらに、民意の的確な反映を問題にするなら緊急な定数是正が大切だ、こうおっしゃいましたけれども、今度提案しております改正法案では、選挙区間の最大格差は、一番大きい格差が一対二・一四六となりました。これは選挙制度審議会に純粋にこちらの気持ちもお伝えして、一対二未満というのを原則におつくり願ったのでありましたが、このような結果になりましたことはやむを得ないことではなかったかと思います。いずれにしても、大幅に改正されていくことだけは間違いがないと信じます。御理解をいただきたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(村山喜一君) 大内啓伍君。
    〔大内啓伍君登壇〕
○大内啓伍君 私は、民社党を代表して、当面する内外の重要問題について質問いたします。
 その第一は、証券問題についてであります。
 去る七月二十九日、三十一日の両日、大手四社、準大手・中堅十三社が相次いで補てん先リストを公表し、その規模が何と千七百二十億円、六百八法人、九個人に上る巨額かつ広範な損失補てんの実態が明らかにされたとき、国民は余りの事態に唖然とし、世界の各国もまた一斉に、日本をアンフェアな異質国家として厳しくこれを批判いたしました。一般個人投資家、すなわち庶民が支払った手数料が大口投資家だけへの膨大な損失補てんのために使われ、正直者、弱い者だけが株価の暴落に泣かされる、それが今回の証券問題の実態だったのであります。正直者がばかを見るとは、まさにこのことでなくて一体何でありましょう。
 しかも、それは大蔵省自身が認めているように、事件の全容ではなく、一部にしかすぎません。八九年十二月二十六日の損失補てんに係る大蔵省通達では、肝心かなめの損失補てんの定義が示されておりません。したがって、公表されたリストも、その補てん時期やその手法並びに公表基準がはっきりしておりません。しかも、それは昨年三月末までのもので、四月以降のものは全く不明であります。これでは、今回の事件の全容、真相を明確にすることは到底不可能であります。
 私は、この際、政府、なかんずく大蔵省に対し、次の諸点を明確にするよう強く要求いたします。
 その第一は、損失補てんの定義を改めて明確にすることであります。
 去る八月二日の参議院大蔵委員会で橋本大蔵大臣は、損失補てんは証券会社が顧客の損失の全部または一部を補てんする目的を持ち、有価証券売買の形をとって、財産上の利益を供与することだと答弁されていますが、これでは一定の利回りを保証する損失なき補てんは含まれなくなります。これは明らかに矛盾ではありますまいか。この際、大蔵省は、損失補てんの定義を改めて明確にすべきであります。大蔵大臣の明確な答弁を求めます。
 その第二は、大蔵省のさきの通達が免許を与えられたすべての証券業者に対してなされたものであるならば、先般公表されたリスト以外のすべてのものを公表させるのが当然の筋であると思います。また、昨年四月以降のものについても、同様にその損失補てんの実態、個々の補てんの手法、具体的時期を公表することが事件の全容を明らかにする上で不可欠と思うが、大蔵大臣の答弁を求めます。
 この際、私が特に問題にいたしたいのは、この問題についての大蔵省がとった態度、措置についてであります。
 その第一は、証券大手四社が昨年三月末までに自主報告したものによって、今回問題になっている補てん総額の八割以上を既に大蔵省が把握していたにもかかわらず、大蔵省がほとんど厳しい制裁を科すことなく、一年以上にわたってこれを放置してきたと言われていることであります。証券行政の監督官庁である大蔵省が、第三者によって今回の事件が暴露されるまでなぜこの事態をみずからの手によって明らかにしなかったのか、その責任は極めて重大であると思うが、大蔵大臣はどのような責任を感じているか、明らかにされたい。
 その第二は、今回の事件発覚以来、大蔵省のとった対応が余りにも泥縄式かつ小手先であったことであります。
 七月十日に大蔵大臣を初め大蔵省幹部に対してなされた減俸、訓告の処分、十八日には四大証券に特別検査と、それはまさに後手後手の対応でありました。大蔵大臣、大臣みずからを初め大蔵省幹部に対し、減俸、訓告の処分が行われた理由は何か。証券取引法第一条には、投資者の保護こそが同法の最大の目的であることが明記されています。そこには、庶民を保護することはない、大口投資者だけを保護せよとは書かれておりません。しかし、現実に行われたことは、まさに差別的保護であったのであります。大蔵大臣は、この証券取引法第一条に基づく責任を果たせなかった責任として減俸をされたのであるか、この際、その理由を明らかにされたい。
 日本の証券行政は、一九六一年から六五年にかけての証券不況を契機に、一般投資家保護のために、それまでの届け出制から今日の免許制に切りかえられました。それだけに、免許制のもとでの大蔵大臣の責任はまことに重大であります。今回の事件に対する大蔵省の対応は、職務怠慢以外の何物でもありません。(拍手)世間はこれをなれ合い、もたれ合いと言っています。これだけ国民に大きな憤りと不信感を与え、また、世界からも厳しい批判にさらされる事態を招いて、減俸や訓告といったおざなりの処分でその責任をとり得るものとお考えでしょうか。特に、大蔵省の歴代次官、証券行政の直接の責任者である証券局長等が天下っている会社の不祥事をも含んでいるだけに、その責任回避は断じて許されないと存じます。(拍手)大蔵大臣はこの責任をどうおとりになるのか。私は、あなたへの個人的友情を超えて、国民の名においてあなたにそのことをたださなければなりません。あなたには大事な将来があります。大蔵大臣の率直な所見を求めます。
 同時に、その責任はひとり大蔵大臣だけのものではありません。内閣法第六条は、総理大臣に対し、行政各部を指揮監督する権限と責任を明記しています。それは人ごとではありません。海部総理は、今回の不祥事に対し、みずからはどのような責任をおとりになるのか、明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 このたびの一部の大口投資家に対する損失補てんは、本来ならば証券会社の利益金として株主に還元されるものが大口投資家に回されたものであり、株主に対する明白な背任行為と言わなければなりません。それは、当然、交際費として益金課税を受けるべきものであります。また、損失補てんを受けた側は、金銭上の利益を受けたことになり、その分について法人税あるいは所得税を支払わなければ脱税になります。大蔵当局はこの点を今後どう処置するのか、お伺いをいたしたい。
 真相究明に当たって、さきに大蔵省は守秘義務を盾に補てんリストの公表を拒否いたしましたが、国民に対するこれほどの不当行為を隠ぺいすることが果たして守秘義務でありましょうか。それは守秘義務の乱用と申さなければなりません。むしろ大蔵省は、このような不法不当な行為が行われた場合、法律上、告発義務すら負っていることを自覚されているでありましょうか。事態をうやむやにすることは国民が承知いたしません。その意味で、政府は、事件の全容報告とともに、その真相を明らかにするため、関係者の国会証人喚問についても積極的に協力する姿勢をとるべきであります。
 海部総理、あなたは行政の長であるとともに自民党の総裁でもあります。政府・与党の責任を果たすために、前述の諸点について真相究明のためのあらゆる努力を尽くすことを、この際、国民の前に明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 さらに、今後こうした事件の再発を防止するためには、損失補てんの全面禁止や違反者への厳しい罰則の適用など、証券取引法の改正はもとよりのこと、免許制のもとでの大蔵省の指導監督が失敗に終わった以上、大蔵省の一層の権限強化という方向ではなく、アメリカのSEC、証券取引委員会のような捜査権まで持つ強力な独立行政委員会を設置することが不可欠であります。既にアメリカのSECも今回の事件に関し、親会社を含めて本格的な調査に乗り出しており、この問題は、ひとり我が国の国内問題にとどまらない様相を示しつつあります。日本は今こそ、この事件を教訓として、国際的にも通用する証券・金融市場づくり、公正な監督機構づくりに立ち上がらなければならないときに来たと存じます。その見地からも日本版SECの創設は緊急かつ根本的な対策だと思いますが、総理の明快な答弁を求めます。
 質問の第二点は、政治改革と選挙制度改革についてであります。
 一昨年五月、自民党は、リクルート事件を反省した党声明を出されました。その中で、政治改革は政治倫理の確立と選挙制度の改革の二本立てで進めたければならぬと書いてあったことは、総理も御承知のとおりであります。ところが、これがいつの間にか政治倫理の確立の方は切り捨てられ、選挙制度一本、それも政治改革を小選挙区制導入にすりかえたことは、まことにこそくなやり方と言わなければなりません。
 昨年十二月二十五日の党首会談において、総理は私に対し、政治、選挙制度改革の法案は一党だけで法案化し、国会に提出するようなことはしないと言明されました。にもかかわらず総理はみずからの重き発言をほごにし、今回一方的に法案を提出するに至ったことは、公党間の信義を踏みにじるものと言わなければなりません。(拍手)この点について、総理の明快な答弁を求めます。
 さて、政府が導入しようとしている小選挙区比例代表並立制案は、あらゆる点で欠陥制度であると断ぜざるを得ません。選挙制度で最も肝要なことは、国民の多様な意見を国政に反映させることであると確信いたします。その面で小選挙区制は最悪であります。もし政府案が今実行に移されれば、死票は現在の二三%から四三%にふえます。金がかからなくなるなどということは、何の根拠もない虚言と申さなければなりません。さらに、政権交代ができるどころか、各種のシミュレーションが明らかにしているように、自民党一党支配の固定化をもたらすことは明白であります。また、国際化時代に逆行し、地元サービス合戦に追われるどぶ板議員をつくるなど、それは欠陥だらけであります。しかも、選挙制度審議会の答申より小選挙区の割合をふやしたり、定数の人口比を二十七選挙区にもわたって二倍以上にしてしまうなど、それはまさに海部内閣の党利党略案と断ぜざるを得ません。(拍手)
 総理、昭和二十二年、現在の中選挙区制が導入されたとき、自民党の先輩議員である小沢佐重喜氏は、国会でどのような提案理由説明を行ったか御存じでありましょうか。小沢氏は、それまで六回行われた小選挙区制による選挙は、一つには、選挙区が狭過ぎて地方的人物のみ多く選出され、大人物が当選困難であった、二つには、選挙抗争が激烈になり、情実と投票買収が横行した、だから小選挙区制ではだめなのだと述べたのであります。(拍手)総理、自民党の先輩たちが指摘した小選挙区制の苦い経験をあなたはどのように受けとめて教訓としておられるのか、承りたい。
 私は、国民の政治不信を解消するための政治改革を実効あらしめるためには、これを二段階で推進することが最も妥当であると確信いたします。
 すなわち、第一段は、各党間で合意を得やすいものや緊急を要するものをまず実行に移すこと。具体的には、政治改革の根本である政治倫理確立のためにまず政治倫理法を制定し、また、政党選挙、政策選挙を助長するための政党助成法の制定、政治資金の透明化を実現するための政治資金規正法の改正を行うとともに、大阪高裁を初め既に再三にわたって違憲判決を受けている定数の抜本的な是正を断行することがそれであります。(拍手)この点については、既に国会自身も昭和六十年、六十一年の二度にわたって定数是正の決議を行っており、これをないがしろにし、放置することは国会の自殺行為と言わなければなりません。
 第二段は、各党の意見の異なる選挙制度の抜本改革については、各党間の協議を徹底して行い、比例代表制の導入を含め、お互いの意見の一致を見出す努力を尽くすことであります。
 この二段階論こそ現実的な改革案であり、また、国会の責任を果たす道だと確信いたします。なぜなら、政府が小選挙区比例代表並立制の導入にこだわれば、その結果は、政治倫理法、政治資金規正法改正、政党助成法などの政治改革がすべてつぶれ、また違憲状態も続くという最悪の事態を招くことは、野党がすべて並立制導入に反対していることからも明白だからであります。総理は、政治改革に取り組んでいるという格好をつければ、何も実らなくてもいいとお考えなのでありましょうか。それは国民の政治不信をさらに高める結果を招く以外の何物でもありません。我々は、この際、政府が小選挙区並立制導入法案を撤回し、二段階改革を推進することこそ真の政治改革の道と確信するが、総理の責任ある答弁を求めるものであります。(拍手)
 質問の第三点は、さきのロンドン・サミットと今後の対ソ支援についてであります。
 総理は、ロンドン・サミットについて自画自賛されているようでありますが、私は逆に、日本は今後G7の枠組みの中で重大なお荷物を背負わされていく可能性が高まったことを深く懸念するものであります。
 今回のロンドン・サミットの最大の特徴は、ソ連を新しい国際秩序づくりの担い手としてその枠組みの中に引き入れ、そのかわりにソ連経済の支援に対して、当面大型支援は見送ったものの、G7各国が今後基本的にその支援に乗り出すことを確認したことにあります。
 一方、その支援を受けるゴルバチョフ大統領は、日本が北方領土に固執することによってG7各国の間で孤立化するおそれを認識させ、それを通じ、政経不可分の原則を徐々に切り崩し、日本が本格的な対ソ経済協力に立ち上がらざるを得ない戦略を遂行しつつあるように思われます。
 また、米国のブッシュ大統領が今回のSTART条約締結のための訪ソに際して、北方領土問題解決に積極的に仲介する姿勢を示したことは、日ソ関係の正常化が新世界秩序づくりのための不可欠の条件であるという基本認識に立つものであるとしても、同時に、それを米国が後押しする姿勢を示すことによって、対ソ支援に対する日本の政経不可分の態度を緩和し、現在、世界各国の中で唯一の資金協力可能国家である日本の対ソ支援の本格化を誘導しているように思われます。ドイツ、フランスなどEC諸国が対ソ経済支援に積極的であることは多言を要しません。
 すなわち、日本は、そうした状況のもとで、G7諸国との協調という枠組みの中で、北方領土問題をお題目として唱えながら、また各国もこの日本の要求を基本的に支持する立場を示す中で、じわじわと政経不可分の原則が崩され、領土未解決のまま対ソ経済支援に追い込まれていくのではありますまいか。特に、米ソ間のSTART交渉の妥結によるソ連の軍縮の進展と、それによる軍需から民需への急速な転換は、日本の対ソ経済支援の本格化を強く要求するものになると推測されます。
 そこで、お伺いをいたします。
 第一に、政府は、今後どのような原則をもって対ソ支援に当たるのか。第二に、新思考外交の地球規模での適用とアジアヘの反映が合意されましたが、それは言葉だけではないのか、でないとすれば、その最大の課題である日ソ関係正常化の核心であるソ連との北方領土交渉のスケジュールを、この際、改めて明らかにしていただきたい。第三に、対ソ支援六項目の合意によって、日本が予期しなかった大蔵大臣の訪ソが約束されましたが、訪ソの条件、時期はいかたるものか、訪ソすれば金融支援についても当然話し合うことになると思うが、政経不可分の原則は今後とも守ることができるのか、以上の諸点について、総理の明快な答弁を求める次第であります。(拍手)
 次に、PKOの問題についてお伺いいたします。
 さきのロンドン・サミットの大きな特徴は、その政治宣言を通じて、ポスト冷戦の新世界秩序に向けて、国連の機能強化を高らかに宣言したことにあります。その意味でも、懸案である日本のPKO、国連の平和維持活動への参加体制の確立は、今国会に課せられた急務の課題であります。そのことは、憲法前文の言う自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」ということの具現化であると確信いたします。特に、湾岸戦争で日本が百三十億ドル、一兆八千億円もの資金協力をしたにもかかわらず、クウエートが感謝の意を表した三十カ国の中に日本が数えられなかったことなど、日本の国際的貢献のあり方が改めて問われております。したがって、PKOに日本がどう参加し、協力していくかは、国際国家日本の大きな試金石になっていると言わなければなりません。
 私は、去る五月、国連のデクエヤル事務総長に直接お会いし、国連の真意を確かめてまいりましたが、事務総長は日本のPKOへの参加を強く望んでおられました。この期待にこたえるためには、日本の国内事情を優先するのではなく、あくまでも国連の基準に合致した、国連に喜ばれる実効ある組織をつくることが不可欠と確信いたしますが、いかがでありましょう。(拍手)それは具体的には、憲法の枠組みを踏まえつつ、第一に、武力行使を目的としないすべての平和維持活動に参加すること、第二に、それには自衛隊、自衛官の参加、協力を求めること、第三に、その派遣に当たっては国会の承認を得ることの三原則が新組織づくりの枠組みてなければならないと考えるが、総理の答弁を求めます。(拍手)
 最後に、当面する一番重要な問題として雲仙噴火災害について質問をいたします。
 初めに、昨年十一月以来、噴火で亡くなられた方々の御冥福を衷心よりお祈りを申し上げますとともに、遺族の方々に対し、心からお悔やみを申し上げる次第であります。また、長期化している中で厳しい生活に耐えられている被災者の方々、救援活動に取り組んでいる方々の御苦労に対し、深く敬意を表する次第であります。
 私も、先般、現地を訪れましたが、このような苦境に立たされた方々に温かい手を差し伸べることこそが政治の大きな使命であると痛感いたしました。
 政府は現行法の枠内で対応しようとしておられますが、現地において今切実な問題になっている休業中の所得補償並びに災害を受けた住宅、農地の買い上げと新たな住宅、農地の取得、無利子融資などは現行法の運用では到底不可能であり、特別立法が不可欠と考えます。
 総理、あなたは六月九日、現地で特別立法に前向きの姿勢を示されましたが、それを裏づける具体的行動は全く示されず今日に至っております。それゆえに、現地では、総理の言っていることと政府のやっていることとは矛盾しているという不信感で今満ちていることは総理も恐らく御承知でありましょう。それこそ政治不信を生む基であります。
 総理、この際、現地の人々の期待にこたえるために特別立法で緊急事態に対処する決意を明らかにして、現地の人々に対する政府の姿勢をはっきり示していただきたいと思うのでございます。(拍手)私は、そのことを強く強く要求して、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
    〔副議長退席、議長着席〕
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 大内委員長にお答えをいたします。
 今回の証券不祥事におきましては、一連の不祥事は、免許会社の規範に反して、内外の一般投資家の証券市場に対する信頼を大きく損なったものであり、「公正な社会」という理念から見ても、まことに遺憾なことであります。事態を重く受けとめて、これまでも申し述べてきたところでありますが、今回の不祥事について、行政の最高責任者としてその責任を痛感し、改めて国民の皆様におわび申し上げる次第であります。
 政府としては、今後こうした問題の再発を防止するために、取引一任勘定取引や事後的な損失補てんの禁止を含む証券取引法の改正案を今国会に提出すべく全力を挙げるとともに、証券会社に対して営業姿勢の適正化を求め、証券市場における公正性の確保に全力を挙げて取り組んでいくことが責任を果たす道であると私は考えております。
 全容解明のためには、今回の損失補てんの問題の実態については、既に証券会社十七社から自主的に補てん先が表明されたところであり、補てんの手法については、政府としても国会審議の場を通じて説明をいたしてきておりますが、引き続いてその事実を明らかにするように努めてまいります。
 今回の証券問題にかんがみて、今後再発防止のためには、証券市場に対する監視機能のあり方にはいかなる形が適当であるのか、適正化のためには何が必要かという是正策について、行革審に対し早急に検討をしていただくよう依頼したところでありますが、大蔵省においても、検査体制の見直しについてプロジェクトチームをつくり、現在精力的に作業を進めているところであります。私は、各方面の御意見を聞きながら、再発防止と明るい証券市場再生のために全力を挙げるつもりであります。
 また、昨年、党首会談においても委員長に申し上げましたが、選挙制度の問題については、各党各会派の皆さんのよって立つ基盤でありますから、いろいろな御意見を交換しながら国会で十分な御議論をしていただくべきものであると考えてまいりました。いろいろと先輩の御意見はございますが、私は、現実に現在の衆議院中選挙区制の抱えておる問題点、特に日常生活や選挙活動に対して、政策中心、政党本位ということがややもすれば影を隠して、個人本位、個人責任で政治資金からすべてを賄うようなことになっていくのでは、これはよくないと考え、政治倫理の問題の大切なことは当然でありまして、委員長も御承知と思いますが、自民党も政治倫理確立のための資産公開法や、また、衆議院議会制度協議会には各党とともに案を出して、政治倫理確立のための御議論も各党と詰めておるところでありますし、また、一票の格差の問題も、今回の法案を成立させていただければ、原則一対二という基準を設けてつくっていただいた区割りによって一票の格差の問題も解決していくようになると考えておりますので、この三法についての御理解と御協力を重ねてお願い申し上げる次第でございます。
 また、対ソ支援に対してどのような原則をもって臨むかということでありますが、世界の新しい秩序の中で東西の対立が終わり、本当に冷戦構造の発想を乗り越えるというなれば、私は、ソ連も世界の大国として自由と民主主義と市場経済の普遍的な価値の中で国際平和のために協調できる国になってもらいたい、これが基本的な願いでありますから、そのためのペレストロイカ、これは方向性を認めて、成功するように支持もいたしますが、ただ、新思考外交はユーラシア大陸の西の方だけで結実するのではなくて、アジア・太平洋地域においてもこれがきちっと解決されるように、スターリンの膨張主義の誤りに対しては、これは世界的規模で是正されることを強く願っておるわけであります。
 原則としては、G7でいろいろ強調しましたが、これはソ連の自主努力を前提としながら皆がこれに対する技術支援、知的協力を行うことに同意をいたしました。日本も四月の中旬の日ソ首脳会談で、技術支援を中心とする十五の項目について協定も結びました。軍需産業から民需産業へ転換する、ソ連の資源を軍事から民生に切りかえていくこと、これも大切なソ連のペレストロイカの一つの項目であります。これについては既に調査団も送り、それに対して何が適切な支援かを考えながら努力を重ねてまいります。拡大均衡という原則で、領土問題を解決し、平和条約を締結するという日ソ共同宣言の精神に従ってやってまいりますが、無原則な政経分離はいたしません。
 また、対ソ六項目の合意によって大蔵大臣の訪ソの問題もサミット7プラス1の場でゴルバチョフ大統領から出され、メージャー首相がそれを議長として発表されるに至りました。日ソ関係全般の動向を踏まえつつ検討をしていくべきことになると考えております。
 PKOへの参加は、第一に、武力行使を目的としないすべての平和維持活動に参加すること、第二に、それには自衛隊、自衛官の参加、協力を求めること、これは自衛隊のきょうまでの資質やあるいは能力や組織された行動力や、そういったものを踏まえて私も同感のことでございます。武力行使を目的としないということは、日本の平和国家の理念として、これも極めて大切なことでございます。
 政府は、今、成案をつくるために努力をいたしておりますが、国会の承認については、国際平和協力に関する新たな法案について立法府の御承認を得た上で、法案にのっとり、平和維持活動協力隊の海外派遣を決定することを考えております。今後はさらに、三党の皆さんとも協議をして、成案を得るよう努力をしてまいる考えであります。
 最後に、雲仙岳問題についてお触れになりました。
 政府は、被災者救済対策を決定し、二十一分野八十三項目にわたっております。特にこの中の三十項目は、政令の改正、省令の改正、その他のことを閣議決定をして行ったことでございまして、特別に立法を行うまでもなく、やらねばならぬ緊急、所要の措置を確保できたものと考えておりますが、今後、災害終息後の問題については、この地域の防災、復興、活性化の問題についても積極的に対策を講じてまいりたいと考えております。
 残余の質問は、関係大臣から答弁をいたします。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 大内委員長からちょうだいをいたしました厳しい御叱正、真剣に伺っておりました。私自身の糧とさせていただきます。
 まず第一にお尋ねをいただきましたのは、私の参議院大蔵委員会における答弁を御引用になりました点であります。
 損失補てんとは、一般的に言えば、顧客に対し、有価証券の売買等によって生じた顧客の損失などの全部または一部を補てんする目的をもって、有価証券の売買などの形をとり、財産上の利益を供与する行為をいうと考えております。御指摘の一定の利回りを達成するために行ういわゆる補てんにつきましても、特定の顧客だけが有利な取り扱いを受けたのではないかという不公平感を広く国民の間にもたらし、証券市場に対する信頼感を大きく損なうという意味で、損失を補てんする行為と同様に不適切な行為と考えられることから、損失補てん行為と同様の取り扱いをすべきものと考えます。
 また、第二点目でありますが、中小証券におきましても、金額が小さいとはいいながら、証券検査の過程及び税務調査の結果を受けて、数社から損失補てんがあったとの報告を受けております。中小証券につきましても、損失補てんがあります場合に、その損失補てんについてディスクロージャーのルールに従って有価証券報告書の訂正という形で明らかにさせるよう指導したいと考えております。
 また、証券各社からは、九一年三月期について損失補てんはないという報告を受けておりますが、今般、九一年三月期及び当期の事後的な損失補てんの有無などについて把握する目的をもって、大手四社に対し、七月十八日、特別検査に着手をいたしました。検査が終了いたしました段階で、問題がありましたなら、各社に対し、可能な限り事実関係を明らかにするよう指導してまいりたいと考えておりますし、四社以外の証券会社につきましても、必要な対応をとってまいりたいと考えております。
 また、この事態に至るまでの責任という点についての御指摘をいただきました。
 当局といたしましては、平成元年末に証券各社に対し、損失補てんにつきまして自主点検、報告を求め、報告がありました会社に対しましては、厳正な社内処分を実施させると同時に、再発防止に向けて内部管理体制の強化などを指導してきた次第であります。
 しかし、いずれにいたしましても、今般の証券会社による特定顧客に対する損失補てんなどの一連の不祥事は、内外の一般の投資家の証券市場に対する信頼感を大きく損なったばかりではなく、特定の顧客だけが有利な取り扱いを受けたのではないかという不公平感を広く国民の間にもたらしたものでありまして、まことに遺憾でありますし、深刻に受けとめているところであります。この問題に対し、国民の皆様方に対し、その責めにある者として、監督不十分でありました点を繰り返しおわびを申し上げますとともに、この事態の再発防止と証券市場に対する信頼の回復に向けて全力を尽くしてまいりたいと思います。
 また、今般の証券会社の一連の不祥事に対しての処分についてのお尋ねがございました。
 今申し上げましたように、この不祥事は、内外の一般投資家の証券市場に対する信頼感をただ単に大きく傷つけただけではなくて、特定の顧客だけが有利な取り扱いを受けたのではないかという不公平感を国民の中に広く植えつけてしまったというもので、本当に私にとって深刻な問題でありますが、今回の大蔵省職員に対する処分と申しますものは、こうした事態に立ち至るまでの間、適切な指導をなし得なかったことについて、行政当局としてその責任を受けとめたものでございます。
 その責任のとり方ということについて委員長から御指摘をいただきました。どうか多少の時間をお与えをいただきたいと存じます。私どもは、何よりも、この責任と申しますものは、おわびを申し上げることだけではなく、こうした事態の再発をどうすれば防げるか、どうすれば証券市場に対する信頼の回復に向けて努力をしていくことができるかということだと考えております。そして、その上でさまざまな御指摘を、私は、次に申し上げるような形で私なりに整理をいたしました。
 第一の我々が取り組むべき課題はルールの不明確性の問題、すなわち、証券取引に適用されるルールが明確ではなかったのではないかということであり、第二は、ルール違反者に対する処罰の問題、すなわち、違反者に対して相応のペナルティーが科されていないのではないかという問題であり、第三は、検査・監視体制の問題、すなわち、ルール違反を的確に把握するための検査・監視機能が十分作用していなかったのではないかということであります。第四は、自己責任原則の問題、本来、証券取引と申しますものは自己の責任において行われるべきものでありますが、この中に参加する一部の投資家たちが、このような基本原則を十分認識していなかったのではないかという問題であります。最後に、業界行政のあり方の問題ととらえております。すなわち、行政が業界の保護育成に重点を置き過ぎ、適正な競争原理が働かなかったり、いわゆる証券会社への再就職問題によって、厳正な行政ができなかったのではないかという批判であります。
 この第一のルールの不明確性の問題につきましては、まず、本院にもお願いを申し上げ、今国会において取引一任勘定取引や事後的な損失補てんの禁止を内容とする証券取引法の改正法案を提出し、御審議をいただきたいと考えております。さらに、証券市場の公正及び行政の透明性の確保という観点から、証券取引の規制や証券会社に対する行政指導を見直すことといたしておりますが、この際、必要があれば法令化も行ってまいりたいと考えております。
 第二の違反者に対する処罰の問題につきましては、この御審議をいただこうと願っております証取法改正案におきましても、事前の損失保証や事後の損失補てんを行った証券会社に刑罰を科す方向で検討いたしておりますほかに、今後、証券取引法違反に対する罰則の見直し、強化や、行政処分のあり方について検討してまいりたいと考えております。
 第三の検査・監視体制の問題につきましては、去る七月十日、大蔵省内にプロジェクトチームを発足させ、証券会社のみでなく金融機関等も含めました検査・監視体制を充実強化するための措置、施策につきまして、目下鋭意検討を進めておりまして、早急に結論を得たいと考えております。
 第四の自己責任原則の問題につきましても、証券市場に参加されるすべての方々に対して、証券取引に対する基本原則というものを改めて認識していただくための方策を講じてまいりたいと考えております。このような考え方の一環として、例えば損失保証や損失補てんを求め、これを受けた顧客側にも罰則を科することを証券取引法改正案に盛り込みたいと考えております。
 業界行政のあり方として、金融制度改革の推進などを通じ、適正な競争原理の活用を図っていきますとともに、証券取引所等の自主規制機関の機能の充実強化を働きかけてまいりたいと考えております。また、いわゆる証券会社への再就職問題につきましては、いやしくも行政に対する信頼を損なうことのないように厳正に対処してまいりたいと考えており、これらの問題について早急に解決を図ることが私どもの責任であると考えております。
 最後に、その損失補てんという行為につきまして、これに関係した個々の役職員の行為が背任罪に該当するかどうかは、司法当局の判断を待つべき問題であると思います。
 また、損失補てんのために顧客に利益を供与していると認められた場合には、その実態において、当然のことながら交際費等としての課税が行われることになります。また、有価証券の売買を通じて損失補てんを受けた者は、原則として課税されることになりますし、このような場合における利益は、所得金額に反映されているのが通常と思われますが、国税当局としては、課税上問題があると認められる場合には、実地調査を行うなどによりまして、適切な課税に努めてまいりたいと考えます。(拍手)
○議長(櫻内義雄君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 裁判官訴追委員辞職の件
○議長(櫻内義雄君) お諮りいたします。
 裁判官訴追委員山花貞夫君から、訴追委員を辞職いたしたいとの申し出があります。右申し出を許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 裁判官訴追委員の選挙
○議長(櫻内義雄君) つきましては、この際、裁判官訴追委員の選挙を行います。
○北村直人君 裁判官訴追委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。
○議長(櫻内義雄君) 北村直人君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。
 議長は、裁判官訴追委員に石橋大吉君を指名いたします。
     ――――◇―――――
 裁判官訴追委員の予備員の選挙
○議長(櫻内義雄君) ただいまの選挙の結果、裁判官訴追委員の予備員が一名欠員となりました。
 この際、同予備員の選挙を行います。
○北村直人君 裁判官訴追委員の予備員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名され、予備員の職務を行う順序については、議長において定められることを望みます。
○議長(櫻内義雄君) 北村直人君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。
 議長は、裁判官訴追委員の予備員に細川律夫君を指名いたします。
 なお、その職務を行う順序は第三順位といたします。
     ――――◇―――――
国土開発幹線自動車道建設審議会委員の選挙
○議長(櫻内義雄君) 国土開発幹線自動車道建設審議会委員の選挙を行います。
○北村直人君 国土開発幹線自動車道建設審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。
○議長(櫻内義雄君) 北村直人君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。
 議長は、国土開発幹線自動車道建設審議会委員に
      中村喜四郎君 及び 日野 市朗君
を指名いたします。
     ――――◇―――――
○北村直人君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 清水勇君外十一名提出、雲仙・普賢岳噴火の災害対策に関する決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。
○議長(櫻内義雄君) 北村直人君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
    ―――――――――――――
雲仙・普賢岳噴火の災害対策に関する決議案  (清水勇君外十一名提出)
○議長(櫻内義雄君) 雲仙・普賢岳噴火の災害対策に関する決議案を議題といたします。
 提出者の趣旨弁明を許します。清水勇君。
    ―――――――――――――
 雲仙・普賢岳噴火の災害対策に関する決議案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔清水勇君登壇〕
○清水勇君 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、民社党及び進歩民主連合を代表いたしまして、ただいま議題となりました雲仙・普賢岳噴火の災害対策に関する決議案につき、趣旨弁明を行わんとするものであります。
 まず趣旨弁明に先立ち、今回の災害による多数の犠牲者の方々に衷心より哀悼の意を表しますとともに、被災者及び避難されている方々に対しまして心からお見舞いを申し上げる次第であります。
 引き続き決議案の案文を朗読いたします。
    雲仙・普賢岳噴火の災害対策に関する決議案
  平成二年十一月十七日、約二百年ぶりに噴火した雲仙・普賢岳は、本年五月に入ってからは、さらに火山活動が活発化し、火砕流及び土石流の頻発により周辺に人的被害を含む多大の被害をもたらした。その後も火山活動は続き、予断を許さない状況である。
  政府は、火山噴火等の災害対策の過去の実績、将来の見通しを十分にふまえ、この災害の特殊性、長期性、激甚性等にかんがみ、事態の推移に応じ、適宜適切な措置を積極的に講じ、次のように万全を期すべきである。
 一 被災地の住民救済、復旧、民生安定及び地域振興等に関するあらゆる現行の法的制度を強力かつ弾力的に運用すること。
 二 現行制度において不十分なものは適切かつ速やかに対応するなど必要な措置をとること。
  右決議する。
 御承知のように、雲仙・普賢岳は本年五月以降火山活動が活発化し、周辺地域では断続的な火砕流と土石流の発生とともに、広範にわたる降灰により、甚大な人的そして物的被害が生じております。六月三日の火砕流により、地元住民、警察官、消防団員など死者・行方不明者四十二名、負傷者十名の人的被害が発生いたしました。また、住民のある者は、田畑、家屋など生活基盤を根底から奪われました。
 島原市及び深江町では警戒区域が設定され、また、それ以外の区域の住民にも避難勧告が出され、多くの住民が、余儀なく体育館、公民館、応急仮設住宅などで、非常に不便で窮屈な避難生活を強いられております。長期にわたり、日夜を分かたぬ集団生活を送っておられる避難住民の方々を思いいたせば、まことに痛恨のきわみでございます。
 また、農林漁業、中小商工業の分野におきましても、土石流、降灰、住民の避難による無人化、工場及び店舗の閉鎖などにより、莫大な被害が出ており、地元経済に壊滅的打撃を与えております。
 このように、雲仙・普賢岳の周辺地域の住民の御労苦、経済的困窮及び地元自治体の財政負担は極めて多大なものとなっております。
 したがいまして、この災害の特殊性を十分に踏まえ、被災地の住民救済、復旧及び地域振興を図り、民生の安定に資するため、現行の法制度を最大限に運用し、現行制度で不十分なものは適切かつ速やかに対応する必要があると考えます。
 以上の趣旨において、政府は、本決議案の趣旨を実現することに万全を期するだけでなく、その他必要と認められる対策についても善処すべきであると存じます。
 以上が本決議案を提案する趣旨でありますが、何とぞ各位の御賛成あらんことを切に望むものでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
 この際、西田国務大臣から発言を求められております。これを許します。国務大臣西田司君。
    〔国務大臣西田司君登壇〕
○国務大臣(西田司君) ただいまの決議につきましては、その御趣旨を十分尊重して、一日も早く住民生活の安定並びに地域の復旧及び活性化が実現するよう、政府の総力を挙げ、地元地方公共団体とも連携して、対策の万全を期してまいりたいと存じます。(拍手)
     ――――◇―――――
○議長(櫻内義雄君) 御報告いたすことがあります。
 議員安倍晋太郎君は、去る五月十五日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 同君に対する弔詞は、議長において去る六月十三日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
    〔総員起立〕
 多年憲政のために尽力し特に院議をもつてその功労を表彰された議員従二位勲一等安倍晋太郎君は しばしば国務大臣の重任にあたり 内政外交に多大の貢献をされ また終始 政党政治の進展につとめられました その功績ほまことに偉大であります
 衆議院は 君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます
    ―――――――――――――
 故議員安倍晋太郎君に対する追悼演説
○議長(櫻内義雄君) この際、弔意を表するため、田邊誠君から発言を求められております。これを許します。田邊誠君。
    〔田邊誠君登壇〕
○田邊誠君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員安倍晋太郎先生は、去る五月十五日、順天堂大学附属病院において逝去されました。まことに痛惜の念にたえません。私がその日の朝、病院に駆けつけましたときは、先生の御遺体を乗せたひつぎが、国会正門前を通過して自宅に帰るため、病院の門を出発した直後でありました。私はそれを見送りながら、輝ける大器安倍先生の御霊の安らかなことを祈ったのであります。
 ここに、私は、諸君の御同意を得まして、議員一同を代表し、謹んで哀悼の言葉を申し述べたいと思います。(拍手)
 先生は、大正十三年四月二十九日、かつて本院議員であられた安倍寛・静子御夫妻の長男として、山口県大津郡油谷町でお生まれになりました。先生は、生後三カ月足らずで大伯母ヨシさんのもとに預けられ、幼少時代を過ごされました。ヨシさんは、安倍家嫡嗣である先生を厳しくも温かくしつけられました。
 長じて、先生は、県立山口中学、旧制第六高等学校に進まれました。先生は、中学、高校時代を通じ、父君が政務で東京暮らしが多かったこともあって、両親のいない生活の寂しさを紛らすため、剣道と文学に没頭されました。殊に、長身を生かし、「メン」を得意技とされた剣道の腕前は六高でも随一で、「選手監督」として活躍をされました。後年、先生と談笑した際、同じ剣道を学んだ私が「コテ」打ちの妙味を主張したのに対し、「田邊さん、剣道の真髄は真っ向みじんに打ち込むメンにあるよ。」と譲らなかったのであります。ここに、人生を真っすぐに生き抜いた人間・安倍晋太郎先生の面目躍如たるものがあったと思うのであります。
 その後、太平洋戦争において日本の敗色が濃厚になりつつあった昭和十九年九月、在学一年半で六高を繰り上げ卒業、東京帝国大学に入学されました。しかし、翌十月には、学徒動員で海軍滋賀航空隊に入隊し、予備生徒隊で生徒班長に任ぜられ、猛訓練の先頭に立たれました。翌二十年、特攻隊に志願、千葉県館山で本格的な特攻訓練を受け、いよいよ出陣というときに終戦を迎えられました。
 戦後の混乱の続く中、先生は大学に復学されましたが、講義の再開もままならず、間もなく郷里に戻られ、戦後初めての総選挙に立候補の準備を進めていた父寛氏を手伝われました。しかし、寛氏は選挙を目前にして心臓麻痺のため急逝されたのであります。戦前、大政党の金権腐敗を糾弾し、終始戦争に反対し続け、昭和十七年の翼賛選挙では非推薦で立候補するなど、反骨の政治家として、選挙民からは「昭和の吉田松陰」と慕われた父の時代が訪れたと自分のことのように喜んでおられた先生は、このとき、亡き父の遺志を継ぐべく政治家になることをしかと決意されたのであります。
 昭和二十四年四月、大学を卒業された先生は、「将来、政治家となるには新聞記者となるのが一番」と毎日新聞社に入社され、日夜の取材に若さを燃焼させる中で、生きた政治の動きをつぶさに学ばれました。
 そして、入社三年目の昭和二十六年、先生は当時公職追放中の身であった岸信介氏の長女洋子さんと結婚されました。
 昭和三十一年、既に政界に復帰されていた岳父岸氏が石橋内閣の外務大臣として入閣された際、先生は直ちに外相秘書官に身を転じられ、翌年、岸内閣が誕生するや総理秘書官に就任されました。総理官邸という国政の中枢において、政界の要人から薫陶を受けつつ政治家としての資質を存分に磨かれると同時に、来る総選挙に立候補すべく着々とその準備を進められていたのであります。しかし、選挙区は有力者がひしめき、極めて厳しい状況にありました。岸氏もそれとなく自重を促されたようでありますが、先生は頑として承知せず、「どんなことがあっても立候補する。」と、尋常ならざる覚悟をされたと聞いております。まさに「一度決めたらてこでも動かない」という先生の政治に対する一徹さを見る思いがいたします。
 かくて、昭和三十三年の第二十八回衆議院議員総選挙において、先生は、若き郷党の衆望を一身に集め、見事初当選の栄をかち取られ、政治家のスタートを切られたのであります。(拍手)
 将来を嘱望され、新進気鋭の政治家として本院に議席を得られた先生は、議運、農林水産等の各委員会を舞台に、議院の運営に、また農政を初めとする国政の審議に卓越した識見と行動力をもって縦横の活躍をされ、さらには大蔵委員長の要職につかれ、すぐれた調整力を発揮され、よくその重責を果たされたのであります。
 昭和四十九年十二月、先生は、農政における豊富な経験と力量を認められ、三木内閣の農林大臣として初入閣されました。日本経済が高度成長から安定成長に切りかわる微妙な時期にあって、当時最大の難関と言われた米価問題を見事に処理されるとともに、転換期を迎えた農政の新たな指針づくりに尽力されました。さらに先生は、福田、鈴木、中曽根の歴代内閣にあって、内閣官房長官、通商産業大臣、外務大臣の要職につかれ、先見性を遺憾なく発揮し、多くの業績を残されたのであります。
 とりわけ外務大臣としては、昭和五十七年十一月から六十一年七月までの三年八カ月にわたり在任され、連続在任記録をつくられました。この間、勝海舟の「外交の要諦は正心誠意なり」を信条に、シュルツ前米国国務長官との親交を通じて多難な時期の日米関係を揺るぎないものにされたのを初め、中断していた日ソ外相定期協議を復活し、懸案の北方領土問題の継続的交渉、北方墓参の再開に道を開くなど、日ソ関係の改善にも精力的に打ち込まれました。
 また、みずから標榜された「創造的外交」を実践され、特にイラン・イラク戦争の際、みずから戦闘下の両国を訪問し、我が国独自の立場から戦争の早期終結を強く訴えられ、中東との関係に新境地を開いた上、自主外交の第一歩をしるした功績は特筆大書すべきであると思います。(拍手)
 外務大臣退任後も、日米間の草の根レベルの人的交流を目指した日米親善交流基金、いわゆる安倍基金の創設に、さらにはソ連最高首脳としては初めてのゴルバチョフ大統領訪日実現のために尽力されるなど、国際関係の改善に大きく寄与されました。
 本年四月十八日、先生は、念願かなったゴルバチョフ大統領訪日の両院議長主催歓迎昼食会に病気を押して臨まれましたが、しかし、これが我が国外交に一時代を築かれた先生の最後の晴れ舞台となってしまったのであります。まことに痛恨の思いがいたします。
 この間、党にありまして、昭和五十一年十二月、まさに与野党伯仲時代の幕あけに国会対策委員長の要職につかれた先生は、厳しい国会運営が続く中で、常に率直にして誠心誠意与野党折衝に当たられ、話し合いによる国会運営の中枢の役割を果たされたのであります。たび重なる国対委員長会談の中で、血気にはやって退席しようとする私を制して、「田邊さん、結論が一致しないことがあってもよい、しかし、心が通じ合わないで別れては今後に続かない、徹底した話し合いをしよう。」と諭されたことを忘れることができません。政党政治の真底を見詰めておられた先生は、私よりも二歳年下であったにもかかわらず、常に兄に接する思いに駆られたのであり、日本政界の長兄と思慕されていた先生の人柄をしのばせるものと言えるでありましょう。(拍手)
 さらに先生は、政務調査会長、総務会長の重責を担われ、党務に、政務に獅子奮迅の活躍をされました。こうして、自民党に欠くことのできない領袖としてますます重きを加えられた先生は、着々と政権構想を固めながら総理・総裁への道を進まれてきました。そして、昭和六十二年、竹下内閣発足の際には幹事長に就任され、難しい政局の中で多くの重要課題を解決し、党内での評価を一気に高めるところとなったのであります。(拍手)
 一昨年三月、私は、幹事長であられた先生に、懸案の朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化交渉について相談に伺いましたところ、先生は、「日本は今日まで朝鮮全体に大きな犠牲を強いてきた歴史がある。もちろん韓国との長い交流、友誼があり、これを重んじなければならないから、韓国を越えることはできないだろうが、韓国と同様のことは朝鮮民主主義人民共和国に対しても言わなければならないし、また実行しなければならない。竹下総理にも話をして、解決に向け尽力しよう。」と約束され、その後、竹下総理の国会答弁となり、これが昨年来の日朝国交正常化交渉の扉を開く端緒となったことを思うとき、「平和のために外交はある」とする安倍全方位外交の心意気を感ずるのは私一人ではないと確信するのであります。(拍手)
 いかなる人の意見にも耳を傾け、信ずるところに向かっては即座に行動するという先生の政治姿勢に私は深い感銘を受けたのであります。
 かくして、安倍先生は、本院議員に当選すること十一回、在職三十年一月の長きに及び、昭和六十一年には永年在職議員として院議をもって名誉ある表彰を受けられました。その間、内政、外交に多大の貢献をされ、政党政治の進展に努められました功績はまことに偉大なものがあります。
 政治家安倍晋太郎先生の真骨頂は、あふるるばかりの正義感と信念の強さであったと申せましょう。かつて先生は、「私の体の中には亡き父の政治信念の血が流れている。」と申されました。戦争中、権力におもねることなく、みずからの政治信念を貫き通した父を目の当たりに見、正しいと信ずるところには、いかなる困難があろうと、命をかけても立ち向かうという政治家としての精神を学ばれた先生は、まさに父寛氏を政治の原点として、常にみずからを厳しく研さんしてこられたのであります。
 思うに先生は、温厚篤実の人でありました。生後間もなく別れる定めにあった母静子さんへの断ちがたい思慕、母親のぬくもりを知らぬまま育った孤独感から培われた揺るぎない人間愛をもとに、常に、安倍スマイルと言われる独特の人懐こい笑顔で人に接せられ、党派を超えて多くの人々を魅了されたのであります。外相時代、エチオピアの難民キャンプで飢えと寒さに震える子供たちに接して涙し、帰国後直ちに大量の毛布を送らしめたのも、その人間愛から導かれた先生の温かさのなせるわざであったと申せましょう。
 先生は、平成元年五月、総胆管結石の手術を受けて以来、健康回復に努めておられましたが、病気療養に触れながら、「ここまで培ったものを何かに生かしていく。吉田松陰先生が「死して不朽の名前を残すならば死すべし、生きて大業を成すならば生きるべし」と言っているが、日本の二十一世紀に向かって何かの大業を成す端緒をつくりたい。」と政治への情熱を切々と語っておられます。
 いよいよ政治家として「志 定まって意気盛んなり」との境地に達し、大業を成就されようとしていた先生は、志半ばにして、最愛の奥様を初め近親の方々、医師団一体となっての看護もむなしく、ついに六十七歳の生涯を閉じられたのであります。返す返すも残念でなりません。御家族の方々の御心情をお察しいたしますとき、まことに痛恨の念を禁じ得ないのであります。
 今や我が国は、国際社会の一員として世界の平和と繁栄を積極的につくり上げる責務を負っております。こうした重要な時期にあって、国の未来を託するに足るリーダーシップとすぐれた国際感覚を持った安倍先生を失いましたことは、ひとり自由民主党のみならず、国家国民にとりましてもまことに大きな損失と申さなければなりません。(拍手)
 しかし、安倍先生の残してこられた輝かしい数々の業績は、末永く内外の人々の胸中にとどめられ、いつまでも語り伝えられるであろうことを信じてやみません。
 ここに、謹んで安倍先生の生前の御功績をたたえ、心から御冥福をお祈りして、追悼の言葉といたします。(拍手)
     ――――◇―――――
○議長(櫻内義雄君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時九分散会
     ――――◇―――――