第121回国会 本会議 第10号
平成三年九月二十日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第七号
  平成三年九月二十日
    午後一時開議
 第一 地方自治法第百五十六条第六項の規定に
    基づき、公共職業安定所の出張所の設置
    に関し承認を求めるの件
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○本日の会議に付した案件
 日程第一 地方自治法第百五十六条第六項の規
  定に基づき、公共職業安定所の出張所の設置
  に関し承認を求めるの件
 廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び廃棄物
  処理施設整備緊急措置法の一部を改正する法
  律案(第百二十回国会、内閣提出)
 証券取引法及び外国証券業者に関する法律の一
  部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
  及び質疑
    午後一時三分開議
○議長(櫻内義雄君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 地方自治法第百五十六条第六項の
  規定に基づき、公共職業安定所の出張所の
  設置に関し承認を求めるの件
○議長(櫻内義雄君) 日程第一、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、公共職業安定所の出張所の設置に関し承認を求めるの件を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。労働委員長川崎寛治君。
    ―――――――――――――
 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づ
  き、公共職業安定所の出張所の設置に関し承
  認を求めるの件及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔川崎寛治君登壇〕
○川崎寛治君 ただいま議題となりました地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、公共職業安定所の出張所の設置に関し承認を求めるの件につきまして、労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本件は、労働省の所掌事務の円滑かつ効率的な遂行を図るため、再就職を希望する女子の職業相談、職業紹介等を専門的に取り扱う公共職業安定所の出張所を二カ所設置する必要があるので、その設置について、国会の承認を求めようとするものであります。
 本件は、去る九月十七日に付託となり、同月十八日の委員会において小里労働大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって承認すべきものと議決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認するに決しました。
     ――――◇―――――
○北村直人君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 第百二十回国会、内閣提出、廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。
○議長(櫻内義雄君) 北村直人君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
    ―――――――――――――
 廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び廃棄
  物処理施設整備緊急措置法の一部を改正す
  る法律案(第百二十回国会、内閣提出)
○議長(櫻内義雄君) 廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。厚生委員会理事野呂昭彦君。
    ―――――――――――――
 廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び廃棄物
  処理施設整備緊急措置法の一部を改正する法
  律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔野呂昭彦君登壇〕
○野呂昭彦君 ただいま議題となりました廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部を改正する法律案について、厚生委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、最近における廃棄物の発生量の増大及びその質の多様化等に伴い、廃棄物の適正な処理が困難となっている状況にかんがみ、現行の廃棄物処理制度を基本的に見直すとともに、新たに廃棄物処理施設整備計画を策定しようとするもので、その主な内容は、
 第一に、廃棄物の排出の抑制及びその処理の一形態としての分別、再生等を法律の目的に明記するとともに、廃棄物に関する国民、事業者並びに国及び地方公共団体の責務について、所要の規定を設けること、
 第二に、廃棄物の計画的処理を推進するため、市町村の一般廃棄物処理計画及び都道府県の産業廃棄物処理計画の内容の充実を図るとともに、市町村長またぼ都道府県知事は、多量に廃棄物を排出する事業者に対し、廃棄物の処理等に関する計画の策定を指示できること、
 第三に、市町村の一般廃棄物の減量等の施策に協力するために廃棄物減量等推進審議会等を新たに設けるとともに、市町村の処理手数料については、一般廃棄物の特性、処理に要する費用等を勘案して定めること、
 第四に、廃棄物処理業の許可要件の強化等を図るとともに、廃棄物処理施設の設置を届け出制から許可制に改めること、
 第五に、市町村における適正な処理が全国的に困難であると認められる一般廃棄物を厚生大臣が指定し、その一般廃棄物となる製品の製造者等に対し、市町村が協力を求めることができること、
 第六に、爆発性、毒性等のため人の健康または生活環境に係る被害を生ずるおそれがある廃棄物として、新たに特別管理廃棄物という区分を設けることとし、特別管理産業廃棄物については処理基準等の強化を図ること、
 第七に、特別た管理を要する廃棄物等の適正かつ広域的た処理を行うため、廃棄物処理センター制度を創設することとするほか、罰則の強化等を図ること、
 第八に、廃棄物処理施設整備計画の期間を平成七年度までに改めること等であります。
 本案は、第百二十回国会に提出され、四月二十三日の本会議において趣旨説明が行われ、同日付託となり、継続審査となっていたものであります。
 今国会においては、九月十日に下条厚生大臣から提案理由の説明を聴取し、同月十二日に現地視察を行い、翌十三日には地方行政委員会、商工委員会及び環境委員会と連合審査を行う等慎重に審査を行い、本日の委員会において質疑を終了いたしましたところ、日本共産党より、事業者の責務等について修正案が提出され、採決の結果、修正案は否決され、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 証券取引法及び外国証券業者に関する法律の
  一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説
  明
○議長(櫻内義雄君) この際、内閣提出、証券取引法及び外国証券業者に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣橋本龍太郎君。
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) ただいま議題となりました証券取引法及び外国証券業者に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
 今回の証券会社による大口法人顧客等に対する損失補てんは、免許会社としての規範に著しく反するものであり、こうした行為により一般の投資者の証券市場に対する信頼が大きく損なわれました。
 本法律案は、市場の公正性と健全性に対する投資者の信頼を確保するため、有価証券の売買等によって生じた損失の証券会社による損失保証、損失補てんを禁止する等の措置を講ずるものであります。
 以下、その大要を申し上げます。
 第一に、損失保証、損失補てん等を禁止することといたしております。これは、証券会社による損失保証、損失補てん等を禁止するとともに、顧客が証券会社の損失保証、損失補てん等を要求する行為を禁止し、それらの違反に対しては、刑事罰を適用することとするものであります。
 第二に、取引一任勘定取引を禁止することといたしております。取引一任勘定取引は、今回問題となりました損失補てん等の温床となりやすいことから、これを禁止することとし、その違反は行政処分の対象とすることといたしております。
 以上の改正点につきましては、証券取引法のみならず、外国証券業者に関する法律についても同様の改正を行うことといたしております。
 以上、証券取引法及び外国証券業者に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 証券取引法及び外国証券業者に関する法律の
  一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説
  明に対する質疑
○議長(櫻内義雄君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。宇都宮真由美君。
    〔宇都宮真由美君登壇〕
○宇都宮真由美君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました証券取引法等の一部を改正する法律案について、総理及び関係大臣に対して質問を行います。
 まず、総理にお尋ねいたします。
 総理が、現在、政治生命をかけて審議をなさっている政治改革の発端となったのは、政治家に対する未公開株の譲渡という実質的利益供与が問題となったリクルート・スキャンダルでした。今回の証券・銀行スキャンダルにおいても、同様に政治家の名前が取りざたされておりますが、この点に関してどのような調査をされたのでしょうか。また、その結果は、今回の不祥事に関しては政治家の関与は絶対にないと言い切れるものだったのでしょうか。株等の譲渡をめぐる利益供与という同種事案だけに、調査の内容、結果いかんによっては総理の政治改革にかける姿勢すら疑問視されますが、いかがお考えでしょうか。明確にお答えください。(拍手)
 次に、大蔵大臣にお尋ねいたします。
 今回の証券不祥事は、我が国の経済社会において、自由競争の最も初歩的かつ基本的なルールさえ根づいていなかったことを示しております。今回の不祥事の事実関係をまず明らかにすることが、不正再発防止策を講ずるための必要不可欠の大前提です。証券・金融問題等に関する特別委員会における調査もそのためでした。
 しかし、七月二十五日の大蔵委員会から始まる調査審議の中で、どれほどの事実が明らかになったでしょうか。不十分と言わざるを得ません。にもかかわらず、自民党は、全野党が一致して求める野村証券前社長田淵義久氏等の証人喚問を拒否し、調査を打ち切って法案審議に入ろうとしています。これでは、果たして本気で不正再発防止に取り組もうとしているのか、疑わざるを得ません。
 まず何よりも、損失補てんの全体像を明らかにしなければなりません。公表されたもの以外に、本当に損失補てんはなかったのでしょうか。公表された四大証券会社の最低額は、山一証券三千七百万円、野村証券三千万円、大和証券一千五百万円、日興証券九百万円ですが、四大証券会社においてこれより少額の損失補てんはなかったと言い切れるのでしょうか。また、一九八七年九月以前、あるいは一九九〇年四月以降において損失補てんは行われていないのでしょうか。この点、明確にお答えください。
 損失補てんは損失保証の結果として行われる場合がほとんどであり、損失補てんのみが単独で行われる場合はまれだと思われます。利益提供が行われる場合に、その前提として利回り保証が存在するのも当然です。この点に関する事実関係を把握するについて、いかなる調査をなされたのでしょうか。証券会社側の調査だけたとすれば、余りに形式的な調査と言わざるを得ません。
 損失補てんのために、価格のはっきりしないワラント債等を低い価格で購入させる場合、後に高く買い戻すことを約さない限り、顧客はそれらを購入しないはずです。これは、特別の利益提供を約しての勧誘、すなわち健全性省令に該当する行為であり、証券取引法違反になると考えます。(拍手)また、高く買い戻す行為は、以後の取引継続のためであり、実質的にほ利益提供による勧誘行為と見るべきだと思いますが、この点いかがでしょうか。
 そのほか、東急株、本州製紙株の株価操作の問題、暴力団関係者との取引の実態等、明らかになっていない問題はたくさんあります。これらを明らかにしないで、不正再発防止策を講ぜられると大蔵大臣は考えていらっしゃるのでしょうか。
 なお、今回の証券不祥事の調査の中で一番問われるべきは大蔵省の姿勢であると思います。大蔵省にほ、証券・金融をめぐる一連のスキャンダルについて、事実を解明しようという意欲がうかがえませんでした。例えば日興証券については、一九八八年一月の検査で既に損失補てんの概要を把握していたにもかかわらず、今回明らかになるまで公表せず、何らの処置もとらなかったこと、また、ことし三月、銀行調査で信託法違反の事実を把握していたにもかかわらず、信託銀行における指定金外信託、いわゆるファントラにおける損失補てんの存在を関係委員会の審議で否定し続けたことなど、大蔵省が事実解明に消極的であ喝ことを示す事実はたくさんあります。損失補てんにつき大蔵省が証券会社と共犯関係にあると言われても仕方がないのではないでしょうか。(拍手)多くの情報と資料を掌握し、事実を解明する能力を持つ大蔵省が、真相解明にいかに消極的であったか、国民の皆様によく見ていただきたいと思うとともに、このようなことで本当に不正の再発防止が図られるとお考えなのか、大蔵大臣にお尋ねいたします。
 次に、法案について具体的に質問をいたします。
 第一は、今回の改正により、証券取引法第五十条の二第一項に掲げる行為を行った者に対しては罰則が科せられることになりますが、証券会社において実際に罰則を受けるのは一体だれなのでしょうか。顧客と直接に接する社員なのでしょうか。社員の一存でした場合はそれでよいかもしれませんが、今回の事件のように、専務会の決定等により行われた場合、いわば会社ぐるみで行われたような場合には、だれが罰せられることになるのでしょうか。また、直接に顧客と接した実行者以外の者が罰せられる場合には、共同正犯になるのでしょうか、それとも教唆犯になるのでしょうか。今回の事件の原因は、行為者の倫理観や遵法精神の欠如にあるのではなく、証発会社の制度、体質にこそ存在するのであり、したがって、行為者の責任を追及することによって不祥事の再発防止を図ることほ根本的に無理だと考えますが、いかがでしょうか。大蔵大臣、法務大臣にお尋ねいたします。(拍手)
 第二は、罰則の対象となる行為の内容が極めて抽象的で、合法行為と違法行為の境界がはっきりいたしません。刑罰法規として極めて危険であると思います。より具体的にかつ客観的に現認できる事実を構成・要件とすべきだと考えます。証券事故の場合を罰則の対象から除外し、事故か否かの判断を大蔵省令にゆだねたこと、また、損失補てんの定義について、日本証券業協会等の業界の自主ルールにゆだねる結果となっていることは、罪刑法定主義の原則にもとることになるのではないでしょうか。この点も法務大臣に伺います。
 第三は、証券会社に対する罰金百万円、顧客に対する罰金五十万円は、何ら不正行為の抑止力にはならないと考えます。証券会社、大口顧客にとって百万円、五十万円という金額がいかなる価値を有するかは、今回の損失補てんの額からもうかがえますが、法務大臣、いかがでしょうか。
 第四は、顧客が罰せられる場合を顧客が証券会社に損失補てん等を積極的に要求した場合に限ったことです。実際問題として、顧客の要求があったことを立証できる場合は極めてまれであり、したがって、顧客が罰せられる場合は例外的な場合に限られます。改正案では、今回の損失補てんにおいてもほとんどの顧客が罰則の対象から外れます。このことは、証人喚問において証券大手四社の首脳がそろって、補てんが証券会社の独自判断であったことを強調していることからもうかがえます。このようなことで不正再発防止のための実効性が認められるのでしょうか。また、こうした企業犯罪によって得た不当利益については、刑法による追徴、没収ということではなく、行政処分としての負担金、例えば課徴金として徴収した方が実効性があると思われますが、いかがでしょうか。大蔵大臣にお尋ねいたします。(拍手)
 今回の改正法案が不正再発防止のための実効性に極めて乏しいことは以上のとおりです。
 ところで、もしこの改正案が成立したい場合、我が国の証券会社は、損失補てん等、改正案で禁止される行為を行い続けるのでしょうか。マスコミ、世論の非難を浴び、国会における調査、追及を受けながらこのような行為を繰り返すことは、幾らモラルの欠如した証券業界においても不可能ではないでしょうか。少なくとも、私たち国民がこの不正を追及する手を緩めたい限り、不可能だと思います。だとすれば、今私たちがまず第一に行うべきことは、今回の不祥事を過去のこととして葬り去らないよう真相の徹底究明を続けることであり、そして、それと並行して、不正再発防止のための抜本的改革を一刻も早く行うことではないでしょうか。
 不祥事の真の原因は、証券会社の免許制、固定手数料制、また、証券会社の保護育成をも職務とする大蔵省が行う現在の検査制度にあります。これらの点に抜本的な改革を行うことなく実効性の乏しい一時しのぎの法改正を行うことは、かえって今回の不祥事を過去のものとし、抜本的な改革をおくらせる結果になるのではないかと懸念されます。(拍手)そのようなことになれば、今回の法改正は、不正の再発防止制度の早期実現を阻害する結果ともなりかねません。そのようなことにならないよう切に希望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 宇都宮議員にお答えを申し上げます。
 証券・金融不祥事における調査と結果についてのお尋ねでございましたが、証券会社に対しては、これまで会社の業務運営及び財産の状況を総合的に把握するために、一般検査を定期的に行っておりましたが、今回、損失補てん等の状況を把握すもため、大手四社に対し特別検査を行っているところであります。これまでのところ、損失補てん問題等について政治家の関与があったとの報告は受けていないとこみであります。
 また、今回の金融機関職員の不祥事件については、監督当局より当該銀行に対し事実関係の詳細な調査等を指示したところでありますが、これらの事件は既に告訴され、一部逮捕者が出ており、司法当局による真相解明を強く期待しているところであります。残余の御質問については、担当大臣から答弁を申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 宇都宮議員からのお尋ねに順次お答えをさせていただきます。
 まず第一に、今回公表されました一連の損失補てんのリストは、各社の自主報告において損失補てんとして報告されたものがすべて含まれており、また、各社が税務調査等におきまして損失補てんと指摘をされましたものもすべて含まれているという報告を受けております。なお、現在、大手四社に対し特別検査を実施中でありまして、この中で平成二年三月期以前の損失補てんにつきましても、既に公表されたものにつきまして確認を行っているさなかであります。
 また、過去の検査結果から見ますと、一九八七年九月以前におきましては、一九八三年から損失補てんを目的としたと疑われる取引を含め、特定顧客に対する利益供与と疑わしい取引が一部に認められましたことから、このようなことがあった証券会社に対し検査で指摘し、個々に厳しく改善の指導をしてまいりました。また、一九九〇年四月以降につきましては、現在、大手四社に対し特別検査を続行中でありまして、特に損失補てんについて綿密に調査をしている状況でありますが、ある程度検査結果がまとまれば、可能な限り早く国会に御報告をしたいと考えております。
 また、健全性省令に関連してのお尋ねがございました。
 証取法五十条の一項第五号、また健全性省令一条二号は、有価証券の売買等につき、顧客に対して特別の利益を提供することを約して勧誘する行為を禁止しておりますが、ここで想定いたしておりますのは、証券会社が顧客の有価証券売買に係る意思決定に影響を与えるため、過当なサービスを顧客に対して約束し勧誘することであります。損失補てんのためにワラントを安値で売却し、高値で買い戻すことを約束することは、その顧客とのワラント売買という証券取引を勧誘しているのではなく、顧客に対する財産上の利益の供与、いわば現金の移転を申し入れているわけでありまして、この行為がこの規定に違反するとは言えないと考えております。
 また、東急電鉄株について御指摘がございました。
 東急電鉄株をめぐる株価操作の疑いにつきましては、これまで特別検査等において把握した具体的た事実をもとに、証取法百二十五条の適用の可否を検討しておりますが、多数の投資家が売買に参加しており、また、特定の委託者や特定の証券会社による意図的改株価のつり上げ、仮装、なれ合い売買を含めた売買なども確認できないことから、現在までのところ、同条違反の行為があったと認定することは難しい状況にございます。なお、特別検査におきまして引き続き事実関係を調査している最中でございます。
 また、本州製紙株につきましては、元年十一月以降二年八月までの間、株価の急騰、売買高の急増が見られましたことから、当時、所要の調査を行っておりました。委託者の売買動向を見ますと、複数の投資家グループの売買に加え、不特定多数の顧客の売買注文が集中しており、いわゆる全員参加型の売買となっております。また、株価急騰日の価格形成状況においても、特定委託者による継続した買い上がり買い付け等の売買は認められなかったことから、証取法百二十五条違反の事実があったとの確証は得られませんでした。
 また、証券会社の暴力団関係者との取引の実態について、現在、特別検査において鋭意調査を行っております。大蔵省として、今後とも証券取引所との連携を強めながら、市場監視を一層強化し、株式市場における公正な価格形成の確保に努めてまいりたいと考えており、再発を防止いたしますために、法律上、行政上の必要な措置を講じ、信頼回復のために全力を挙げたいと考えております。
 また、日興証券の一九八八年一月の検査についてお触れになりました。
 当局としては、従来から証取法五十五条に基づき適正に検査を行って、過去の定例検査において、損失の補てんを意図したと思われる取引を含め、特定顧客に対する利益供与と疑わしい取引が見られた場合、証券会社に対し検査で指摘し、個々に厳しく改善指導してまいりました。しかし、結果として今回のような事態を招きましたことについて、その御批判は甘受しなければならないと考えております。
 また、信託の関係についてのお尋ねがございました。
 大蔵省としては、これまで信託銀行に対しまして、信託業務を担うものとしての社会的責任、受託義務が誠実に履行されているか等、適正な業務運営の確保の観点から、厳正にかつ注意深い検査を行っております。検査の結果、信託の委託者と受託者の間の信頼関係を阻害し、顧客とのトラブル発生の原因となりかねない行為を把握したときは、厳しく指摘をし、改善を求めてまいりました。
 なお、過去の信託銀行の検査におきまして、信託法、信託業法等の法令に違反した事実を把握したことはないという報告を受けております。しかし、いずれにしても、今後の信託銀行の検査におきまして、ファンドトラストをめぐる昨今の御議論というものも外しながら、一層注意深く検査に当たりたいと考えております。
 また、むしろ刑法による追徴、没収の形よりも課徴金など行政処分の方がいいのではないかというお尋ねがございました。
 私は、証券会社に対して損失補てんを要求する顧客というものについては、没収、追徴という規定を設け、むしろ刑事罰を科す方が損失補てんの再発防止策としてはより実効性が高いと考えておりまして、課徴金制度よりこの方がいいと率直に考えております。
 また、抜本的な改革についての姿勢というお尋ねがありました。
 今まで私は、この原因を大きく五つに分けて、それぞれの問題についての考え方として御説明を申し上げてまいりました。この考え方をこれからも進めてまいらなければなりません。
 このうち、ルール違反を的確に把握するための検査・監視体制というものについての過去からの御指摘を考えましたとき、九月十三日に行革審から御答申が総理に提出をされました。大蔵省としては、極めて厳しい内容を含んでおりますけれども、これを真剣に受けとめることにより国民に対しておこたえをしていく責任があると考えておりまして、この検査・監視体制というものを、御答申を受けたそれを最大限に尊重しながら、検討を進めてまいりたいと考えております。
 また、その一つの問題点として過去から言われております株式委託手数料の問題につきまして、取引所の意見も聞きますけれども、行革審答申にも沿いまして、資本市場への影響、小口投資家への影響等も十分配慮をしたから、資本市場の健全な発展を図るという視点から検討を進めてまいりたいと考えております。(拍手)
    〔国務大臣左藤恵君登壇〕
○国務大臣(左藤恵君) 宇都宮議員にお答え申し上げます。
 第一に、証券会社において処罰を受ける者に関する御質問についてお答えいたしたいと思います。
 今回の改正案は、証券会社に対して損失保証や損失補てん等の行為を禁止して、これに違反した者を処罰するものでありまして、その処罰を受ける者は、第一義的には違反行為をした個々の行為者となりますが、しかしながら、違反行為をした行為者と証券会社の役員等との間に共犯関係が認められる場合には、当該役員等が刑法上の共犯として刑事責任を負うことは当然でございます。そして、両罰規定が適用される場合には、当該証券会社自体が罰金刑を受けることになります。このような刑事罰則は、違反行為に対する行政上の制裁等とも相まって、証券会社による損失保証や損失補てん等の行為の再発防止上、十分効果を持つもの、このように確信をいたしております。
 次に、構成要件の明確性に関する御質問についてお答え申し上げたいと思います。
 今回の改正案においては、すべての行為類型を網羅することが困難であることなどを考慮しつつ、禁止される行為をできる限り明らかにするとの観点から禁止行為を規定したものでありまして、構成要件の明確性に欠けるところはない、このように考えております。なお、御指摘の証券事故につきましては、これを刑事罰の対象から除外する必要があるため、事故とされるものを法律で明示して、その具体的な内容を省令に委任したものであり、自主ルールにつきましては、構成要件に該当するか否かの判断の認定資料や行為の違法性評価の上で一つのガイドラインになるものでありまして、これが構成要件の内容をなす損失補てんの定義になるものとは言えないのであります。したがって、御指摘のいずれの点につきましても罪刑法定主義の原則にもとるものではない、このように考えております。
 第三に、法定刑に関する御質問についてお答えを申し上げたいと思います。
 今回の改正案におきましては、証券取引法の現行の罰則体系を前提として、損失補てん等の禁止行為を踏まえつつ、証券取引法上の他の罰則の法定刑との均衡等を勘案して、証券会社に対する禁止行為についての法定刑を定めたものであります。ところで、証券会社による損失補てん等のようないわば企業犯罪と言われる類型の行為に対する法定刑のあり方につきましては、刑事罰則全体のあり方にもかかわることでありますので、現在、法制審議会で御議論をいただいているところであり、その動向を見守った上で今後適切に対応してまいりたい、このように考えておるところでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 東祥三君。
    〔東祥三君登壇〕
○東祥三君 私は、公明党・国民会議を代表し、ただいま議題となりました証券取引法及び外国証券業者法の一部を改正する法律案に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 今回の証券不祥事は、国会審議が進むにつれ、日本の経済構造全体を根底から揺るがしかねない重大な問題であることが次第に明らかになり、戦後、日本の企業社会を支えてきたその仕組みが、今、内外から厳しい批判にさらされております。私は、この不祥事が、ジャパン・バッシングを一層強める契機となるだけでなく、世界経済へ悪影響を及ぼすことを危倶せざるを得ないのであります。
 官民癒着の日本型経済システムによる強い国際競争力によって、世界の金が日本に集中し、この貿易黒字と金融の超緩和とが相乗してバブル経済を発生させました。バブルの余剰資金は新たなもうけ先を求め、土地や株式に向かい、これを担保にしてマネーがマネーを生む自己増殖のメカニズムが日本経済にビルトインされ、企業は国際競争力を一層高めたのであります。こうした実体経済から離れたマネー経済のメカニズムに手をかしたのが、ほかならぬ証券会社、不動産会社、そして金融機関であります。
 一九八七年から八九年の三年間のGNPの総額は千百兆円、土地と株の値上がりは何と千四百兆円であります。汗水垂らし一生懸命働いて千百兆円、一方、マネーゲームで千四百兆円であります。ガルブレイス教授を引き出すまでもなく、だれが見ても「バブルの物語」としか言いようがありません。しかし、バブルによる悪魔のうたげは当然ながら長く続きません。九〇年初頭からのバブルがはじける過程において、我が国の経済社会システムはさまざまな矛盾を露呈いたしました。その一つが証券・金融スキャンダルであります。
 総理、世界最大の市場を持つに至った日本の総理大臣として、この証券スキャンダルをどのように認識されておられるか、どこが問題で、それをどのように解決しようとされておられるのか、今回の証券問題に対する総理の御見解と責任の自覚、解決に向けた御決意のほどを改めて伺いたいのであります。
 さて、今最も必要なことは、この不祥事を生んだ根本原因にメスを入れ、全容解明の上に立って公正、透明な証券市場をつくることであります。全容解明なくして対策を立てることなど不可能であります。しかし、疑問点のうち肝心なことは今もって何一つ解明されておらないと言っても過言ではありません。
 国民の皆様は、不祥事の全容解明を強く要求しておりますしかるに、証券・金融問題特別委員会の審議における自民党の対応は、問題であります。我が党など野党が共通して要求した証券不祥事のかぎを握る田淵義久野村証券前社長など、この不祥事に精通する実務責任者に対する証人喚問の追加要求を拒否したのみならず、参考人でもだめだというのでは、全容解明の意思があるのかどうか、全く理解に苦しみます。自民党総裁として、海部総理の明確な答弁を求めるものであります。
 解明されていない問題点のうち、特に九〇年四月以降の損失補てんはどれぐらいあったのか、公表された補てん額より少額のものはなかったのか、信託銀行のファンドトラストでの補てんの実態はどうか、海外の事業法人等を利用した損失補てんはどうなのか、政治家との関係は本当になかったのか、暴力団絡みの相場操縦の実態は等々、国民の疑念は深まりこそすれ、全く払拭されておりません。何をもって全容解明がなされたと考えるのか、総理の御所見を伺いたい。また、全容解明がなされていないと考えるのなら、何ゆえこの段階で再発防止策である本改正案を提出されたのか、明確な見解を伺いたいのであります。
 損失補てんは、本来、損失保証という違法行為と一体であり、補てんという履行行為によってこそ損失保証は完結するのであります。にもかかわらず、大蔵省は、補てんという字句が法文上に明記されていたいことを理由に、補てんは違法となっていないから問題であり、通達によって禁止したとしております。こうした大蔵省の態度は、証取法の機能を矮小化させ、弱体化させるものと言わなければなりません。
 大蔵省は、営業特金が保証の温床であるとの認識でその廃止を指導したのでありますから、損失補てんが表面化した段階で、まず関係者を呼び出し、保証の立証に全力を挙げるべきでありました。立証の困難性を理由として、行政責任を回避するために、損失保証と補てんを別のものだとする論理を用意するなど、法解釈、運用の姿勢として、監督の立場にある者のとる態度とは到底言えないのではないでしょうか。
 損失補てんは、一面で企業人のモラルの問題でありますが、モラルは法の下支えがあって初めて確立されるものであります。その意味で、今回の不祥事は、大蔵省が真の意味で証取法の番人たり得なかったことを明確に示しております。大蔵省に市場規制の監督権限を集中させることの問題点を指摘するものであります。総理の御見解を伺います。
 さて、証取法五十八条には、悪質な不正取引の禁止が定められ、違反した場合にほ刑事罰が規定されております。私は、今回の損失保証、補てん問題には、この条項を適用することが可能だと考えるものであります。五十八条の「何人も、」に証券会社が含まれないという解釈はなく、損失保証の高度の反公益性から見て、今回の損失補てんは、損失保証を禁止する証取法五十条に該当することはもちろん、刑罰規定のある五十八条にも違反するものと考えるものであります。証取法五十八条は死文化しているというような認識に象徴される大蔵省の姿勢にこそ、今回の損失補てん問題の本質的な問題があると言わなければなりません。御見解を伺うものであります。
 今回提出された証券取引法改正案は、事前の保証、事後の補てんを法律で禁止するとしており、違反した証券会社と顧客の双方に罰則規定を設けております。しかし、問題点を幾つか指摘せざるを得ません。
 まずその一つは、損失補てんの基準を証券業界の自主ルールにゆだねており、現時点でまだそのルールもできていないことであります。法案を提出しても、その法律を実質的に適用する基準がないというのでは、一体何を審議せよというのか、政府の姿勢を疑わざるを得ません。この法律と自主ルールとを媒介とした行政と業界の関係を考えたとき、今回の問題の原因となった癒着構造そのものは依然として温存されており、自主ルールに名をかりて、みずからの行政権限を手放そうとしない大蔵省の意図が明白であります。大蔵省から独立した監視機構の必要性を指摘するものであります。今回の不祥事について、一体何を反省したのか、疑問に思わざるを得ません。
 二つには、補てんを受けた顧客は、要求しなければ罰せられないことになっております。今回の証人喚問を通じて、証券会社の首脳たちは、損失補てんは独自判断だったと述べ、顧客からの要求がなかったことを強調しております。一方、田渕節也野村証券前会長は、補てんを受けた企業側も担当者は認識があったとも証言しており、顧客側が補てんの事実を知っていたことを明らかにしております。にもかかわらず、この改正案では、補てんを受けたことを知りながらも、顧客側からは要求しなかったことにすれば、顧客についてはすべて合法となり、もらい得となって、全く該当しなくなります。それではこの法案は一体何のために提出したのかわかりません。顧客に対する罰則は、認識しながら補てんを受けていた者を対象とすべきであります。顧客の罰則適用を、要求した者にのみ限定した理由はどこにあるのか、伺いたいのであります。
 三つに、損失補てんの温床となりやすい証券会社の取引一任勘定取引を禁止しておりますが、なぜもう一つの問題である仮名・借名口座取引をあわせて禁止しないのか、これも不可解と言わぎるを得ません。
 四つとして、今回の証券取引法改正案はいわば緊急避難措置であって、抜本改革は次期国会に提出される旨を表明しておりますのであるならば、現行法のどこが問題で、どう改正しようとしているのか。銀行と証券の業際問題や、免許制度や売買委託手数料の自由化など、抜本改革の骨組みはどうなるのか。少なくとも、政府として問題意識を鮮明にすべきであります。小手先の対症療法は事態を悪化させるだけであります。
 結論して言えば、今回の証取法改正案は、緊急是正と称して、部分的な対策にとどまるだけでなく、その実効性にも疑問が残るものであります。それぞれの疑問に対し、明確なる答弁をお願いいたします。
 この際、私は、現行証取法に対する見解を明らかにしておきたいと存じます。
 現行法は、その目的を「国民経済の適切な運営及び投資者の保護に資するためこと第一条に規定しております。しかし、国民経済に資することの具体的内容が明らかにされておりません。私はい法が実態と適合せず、市場にさまざまな問題を生じせしめる原因も実にここにあると考えるものであります。証取法は、市場法体系の一角を構成する経済法規として、市場機能の確保、すなわち公正な価格形成のための環境づくりに法の目的があることを明らかに規定すべきであります。そうすることによって、初めて「国民経済の適切な運営及び投資者の保護に資する」ことの具体的な内容が鮮明になるとともに、グローバル化、ハイテク化、金融の証券化という市場の実態に適合した証取法制になると考えます。
 公正、透明な市場をつくるために、今最も必要なことは、市場の価格機構が公正に働くための環境を整えることであります。そのために、株価操縦、ディスクロージャー等の市場規制を完全なものとすることが重要であります。課題となっている損失保証、補てんの禁止も、この一環として位置づけて規定すべきであります。本来、これらの環境が未整備だったこと自体が問題であり、これらの規制策が整備されて、初めて、証券取引の基本である自己責任の前提条件が整うものと考えるものであります。法目的の明確化に対する見解とあわせ、市場規制に対する総理の御見解を伺いたい。
 最後に、私は、今回の証券不祥事の温床である行政のあり方を、これまでの保護育成型から監視型へ抜本的に転換する必要があると考えます。
 監視機構について、行革審の答申では、大蔵省からの独立を求める国民の期待とかけ離れた。実効性に疑問の残る内容が答申されております。私は、大蔵省から独立した組織として、公正取引委員会と同様に、強制調査権など多くの権限を持ち、国家行政組織法第三条を根拠とする仮称証券取引委員会を創設すべきだと考えます。いわゆる日本版SECの創設に関する総理の見解を伺い、私の質問といたします。ありがとうございます。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 東議員にお答えをいたします。
 今回の一連の証券不祥事件の受けとめにつきましては、私は、御指摘のようなマネーゲームの中で、免許会社としての規範に逸脱した行為があり、このことについては厳しく証券会社の責任と自覚を求めたいと思いますし、また、我が国証券市場に対する内外の信頼を大きく損なったものであり、公正な社会の理念から見てもまことに遺憾なことであったと厳しく受けとめております。このため、損失補てんを行った証券会社に対し、社内責任の明確化を求めるとともに、行政府といたしましても責任を重く受けとめ、厳正に対処するとともに、再発を防止するためにでき得る限りの努力をし、信頼の回復を求めていかなければならないと強く決意をいたしております。
 今回のこの不祥事の実態について、政府としても国会審議の場を通じ、説明をいたしました。同時に、引き続きその実態を明らかにするように政府としても努めてまいります。なお、委員会における追加証人喚問の問題につきましては、これは事柄の性格上、国会でお決めいただくべきことと考えております。
 また、証券不祥事件については、今回の損失補てん等の問題の実態について、既に証券会社から補てん先の企業名が公表され、補てんの手法についても、代表的な方法やその具体的な事例などについて、政府より御説明をいたしたところでありますが、また、本院においても特別委員会が設置され、真相解明に向けて、証人喚問を含めて精力的な御審議が行われてきたところであります。このように明らかになった損失補てん等の実態を踏まえ、政府としては再発防止をするとともに、内外の投資家の信頼を回復するため、直接的かつ緊急の措置として、証券取引法の改正法案を国会に提出したところであります。御審議、御賛成をいただくようお願いをいたします。
 また、一連の不祥事件について、先般行革審より、証券市場の監視のあり方を含めて、証券行政全般についての御提言をいただきました。政府は、内外の信頼を回復するためにこの答申を最大限尊重し、所要の改革を実施していく所存であります。
 この行革審の答申においては、抜本的改革のための諸方策が示されたところであり、今回のような不祥事の再発防止と証券市場の透明性、公正性の向上、金融システムに対する信頼の回復に全力を挙げて取り組んでまいる所存であり、御指摘の免許制度や売買委託手数料の自由化などの抜本改革の問題につきましても、今後いろいろ検討を進めていく考えでおります。
 また、現行証取法は、「国民経済の適切な運営及び投資者の保護に資するためこ有価証券の取引の公正と流通の円滑を目的とすると、法において定められております。
 御指摘の、公正な価格形成のための環境づくりなどは、既にこの第一条の「目的」の中に含まれているものと考えますし、また、市場の透明性、公正性確保のため、これまでも内部者取引規制、株券等の大量保有の状況に関する開示制度などの措置を講じてきたところでありますが、今後とも、世界の三大市場の一つである我が国証券市場の透明性、公正性をより高めていくべく努力を重ねてまいる考えでおります。
 行政のあり方を保護育成から監視型に抜本的に転換するとともに、日本型の証券取引委員会を創設すべきではないかとの最後のお尋ねがございました。
 先般いただいた行革審答申において、検査・監視体制のあり方につき、大蔵省に、新たに行政部門から独立をした八条委員会を設置し、その下に独自の事務局を置いて、違法行為等に係る強制調査等を実施するものと提言されているところでございます。政府は、答申を最大限に尊重し、今後の検査・監視体制のあり方に検討を加えてまいりたいと考えております。
 残余の問題については、関係大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 東議員から私に四点の御質問をいただきました。
 まず第一点は、証取法五十条一項三号、四号についてであります。
 これは、有価証券等の売買等の取引につき、顧客に対して当該有価証券について生じた損失の一部または全部を負担することを約して勧誘する行為、すたわち事前の損失保証を禁止いたしております。現在までのところ、今回明らかになりました損失補てんにおきまして、このような事前の損失保証があったという事実を把握いたしておりませんが、現在、証券四社に対して行っております特別検査の中におきまして、事前の損失保証がなかったかについても調査を行っております。
 また、証取法五十八条は、有価証券の取引に関連して、人を錯誤に陥れる態様の詐欺的行為を禁止した規定と解しておりますが、今回の損失補てんにおきましては、証券会社は相手の取引先、すなわち補てんを受けている者を錯誤に陥れる態様の詐欺的行為というものをなしたわけではございませんので、証取法五十八条には違反しないものと考えております。
 また、その自主ルールとの関係についての御指摘がございました。
 本改正案は、損失を補てんするために財産上の利益の提供を申し込み、約束し、ないしはその提供を行うことをもって損失保証、補てんと定義をいたしております。この定義は、処罰に値する損失保証、補てん行為というものを網羅的に禁止の対象とすべきであるといった必要性、罪刑法定主義、刑法法定主義と申しまするか、これからまいります構成要件の明確性という二つの要請をともに満たすことができるように配慮をしたものでありまして、これは、損失保証、補てんの禁止規定を包括的に定めたものと言えると思います。
 一方、このたび自主規制団体に対してさらに整備するように求めております自主ルールというものは、証券取引の円滑化という観点から、正当な業務と考えられる典型的な行為を明示するようにお願いをしておるものであります。したがいまして、損失補てんの定義と自主ルールとは、私は直接的には関係がないと申し上げるべきだと思いますが、大蔵省として、各自主規制団体に対しまして、できるだけ早く自主ルールというものを整備するよう働きかけておるところであります。しかし、それは自主規制団体のつくったルールをそのまま受け入れるということではございません。その内容が適当であるかどうかということにつきましては、法務省とも御相談をしながら判断をしていくことになると考えておりまして、官民癒着という御指摘は、私は当たらないと思います。
 また、罰則関係についてのお尋ねがございました。
 本改正案におきまして、証券会社について損失補てん等を禁止し、違反行為については刑事罰を科するといたしました理由は、証券会社には、証券市場における正常な価格形成機能の保持、また市場仲介者としての公正性保持、こうした責任があることによるものであります。これに対して、証券会社の顧客の場合には、市場の仲介者としての公正性に関する義務は負っておりませんし、また、市場の正常な価格形成機能の保持につきましても、証券会社と同等の責任を要求することは必ずしも適当ではないと思います。
 また、損失補てんなどの問題の再発の防止につきましては、証券会社を対象として講じることとしております措置、すなわち、証券会社による損失補てん行為を幅広く法律で禁止し、違反に対する刑事罰の適用、また厳正な行政処分による対応、そして自主規制団体を通じた監督の充実強化、こうしたことによりまして、相当強力な抑止効果、抑制効果が期待できると考えております。したがいまして、本改正法案におきましては、再発防止策の実効性を確保するという観点からは、顧客につきましては、市場の価格形成機能をみずから積極的にゆがめようとするような行為を行った場合、刑事罰を科すことで必要かつ十分という条件を満たしている、そのように判断をいたしました。
 また、仮名口座の禁止の問題についての御指摘がございました。
 証券取引に関する仮名取引の禁止、また本人確認の徹底につきましては、従来から証券局長通達等によって指導を行ってきたところであることは御承知のとおりであります。現在、大蔵省として、証券取引の規制あるいは証券会社に対する行政指導の見直しを進めておりまして、通達等のうち法令化すべきものは法令化をする、自主規制団体の規制にゆだねるべきものについてはそれぞれの規則に盛り込んでいただくよう、通達の簡素合理化を図る方向で検討を進めております。仮名取引の禁止、本人確認の徹底につきましても、こうした中で検討してまいりたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 辻第一君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔辻第一君登壇〕
○辻第一君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題になりました証券取引法及び外国証券業者に関する法律の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)
 証券スキャンダルほ、我が国の名立たる大企業をほとんど網羅する多数の企業が関係した構造的な不正、腐敗事件であります。証券会社と一部大企業、大口投資家の癒着により、しかも大蔵省の容認のもとに起こった今回の損失補てん、利益保証は、株価暴落により損失をこうむった多数の一般投資家だけではなく、バブル経済の被害を受けた広範な国民の大きな怒りを呼んでいるのであります。このような不祥事は、二度と引き起こしてはなりません。その再発防止策の大前提は、何よりも事件の全容を徹底的に解明し、その原因と責任を明確にすることであります。(拍手)
 しかるに、証券スキャンダルでは、東急電鉄株の株価操作疑惑など、証券会社と暴力団の癒着の問題を初め、我が党など野党が一致して要求している田渕節也野村証券前会長の再喚問と田淵義久前社長など関係者四人の証人喚問が、自民党の反対でいまだに実現していないなど、全容解明にはほど遠いと言わざるを得ません。このままで再発防止策の確立をうたい文句にして真相解明にふたをすることは、断じて許すことはできません。(拍手)総理の見解を求めるものであります。
 この際、証人喚問をあくまで要求するとともに、以下、質問いたします。ユ大蔵省は、七月十八日、四大証券会社などに特別検査を開始し、一九九〇年三月以前のプレミアム商品などによる補てんの有無及び九〇年四月以降行われた補てんについても調査しています。既に調査開始以来二カ月を経過し、私たちの得た情報でも、各証券会社は社内調査を終了しているはずであります。調査の結果、補てんはあったのか、その額、手口、対象企業名はどうか、詳細をこの際明確にしていただきたい。もしまだ検査が終了していないというのなら、一体いつ終了するのか、終了した場合には、国会のしかるべき委員会に資料を提出すべきだと考えますが、大蔵大臣の明快な答弁を求めるものであります。(拍手)
 次に、証券会社と暴力団の癒着、特に、業界第一位の野村証券が、暴力団稲川会の事実上の代理人としてあらゆる便宜を与えてきたことは、日本のみならず世界のひんしゆくを買っています、田渕節也前会長が、株式部担当取締役や秘書担当取締役など個々の部門の責任者にその責任を押しつけ、みずからは知らぬ存ぜぬ、報告を受けなかったと証言していることは、何人も納得させるものでなく、偽証の疑い濃厚であり、断じて放置できない問題であります。この点についての野村証券の指揮命令系統はどうなっているのか、また、あのような東急電鉄株の大量売買、株価操縦が本店首脳の指揮もしくは容認なしに可能と考えておられるのか、調査の結果に基づき、大蔵大臣並びに法務大臣の納得のいく答弁を求めるものであります。(拍手)もし明確な答弁がないなら、それは証人喚問の必要性を一層明白にするものであることを、この際指摘するものであります。
 次に、法案の内容についてお尋ねいたします。
 本法案は、損失補てんの温床になっている取引一任勘定取引を禁止し、また、事前の損失保証と事後の損失補てんなどを一括して刑罰の対象にするなど、一定の前進も含んでおります。同時に、以下質問するように、重大な問題点があることも指摘せざるを得ません。
 法案は、損失保証だけでなく損失補てん、すなわち有価証券の売買その他の取引などについて生じた顧客の損失を補てんし、または利益に追加するため財産上の利益を提供する旨を、当該顧客などに対し、申し込み、約束し、または財産上の利益を提供する行為を処罰することとしています。この犯罪構成要件において最も重要であり、かなめとなるのは、補てんとは何かであり、その定義、基準であります。
 政府は、通常のルール、自主ルールに従って行われる取引は、外形上補てんと見られるものも、刑法三十五条に言う正当業務行為として処罰されないとしています。これは、刑法上、正当業務行為による違法性阻却事由と言われるものでありますが、実際は違法性阻却事由にとどまらず、本罰則の重要な構成要件の一部をなす核心であります。ところが政府案では、この自主ルールは、証券業協会と証券取引所が本法案成立後に作成することに改っています。
 申すまでもなく、証券業協会は証券会社を会員とする業界の自主規制組織であり、今回重大なスキャンダルを起こした四大証券を含むすべての証券会社を構成員としており、野村証券の会長もかつてこの証券業協会の会長も兼ねていたことは周知の事実であります。現在の会長は日興証券出身者であります。総理、これでは法によって取り締まるべき相手に法の核心をつくることを任せ、ゆだねることになるのではありませんか。
 しかも、その自主ルールなるものは、法案成立後に検討、作成すると称しています。これでは国会の立法権の侵害となるだけではなく、刑法上も構成要件の中身が確定しない、事実上白地刑法を許すことになります。しかもその白地は、省令や地方自治体の条例、規則ですらなく、民間団体の、しかも取り締まられる者の定める自主ルールにゆだねるという、前代未聞の刑罰法の成立を許すことになるのであります。総理並びに法務大臣の明確な答弁を求めるものであります。
 さらに、顧客についてであります。当初大蔵省は、補てんと認識しながら補てんを受けた場合を含むこととしていました。ところが本法案では、要求した場合のみに限定されております。
 今回の証券スキャンダルでも、たった一日の売り買いで数十億円の利益提供を受けた顧客会社も、ほぼ一様に、補てんを受けた認識がないと称していることは周知の事実であります。今回のごとき明々白々たる損失補てん、野村や日興の責任者が国会で証人として、何らかの認識があった場合於多いと思うと証言しているケースについてすら認識がないと言っている現状を見るなら、積極的に要求したなどと彼らが認めることは、将来にわたって希有のことであります。顧客はこんなへまはしないように、希望利回りをえんきょくに言って圧力をかけることになるでしょう。そうすれば、たとえ相手の証券会社が処罰されても、顧客は処罰されません。また、犯罪ではないから、何十億の補てんや利益提供を受けても没収もされないということになります。
 総理、こんなことで国民の納得を得ることができますか。今回のスキャンダルでも、自分の収入から見て莫大な損失をこうむった一般投資家は、なぜ一部大口投資家のみ損失補てんされているのか、しかも、その受けた利益を返還し、社会に還元しないのかと怒りの声を上げています。
 政府は、顧客を処罰する趣旨、法益を、証券会社の違法行為を積極的に求めることにあるとし、証券会社の市場の価格形成機能をゆがめることと区別していますが、果たしてそうでしょうか。顧客すなわち投資家は、もちろん証券会社のように市場仲介者ではありません。しかし、みずからも自己責任による投資を通じて、市場の価格形成、すなわち資金と資源の公正な市場機能による配分に参加する当事者であることは、多くの学者の一致して認めるところであります。
 しかるに、なぜ今回の政府案ではこのような骨抜き、大後退が行われたのか。報道では、政府・与党の強力な介入によって実現したとされています。これでは、今回補てんを受けた一部大口投資家の意向を受けてその利益を代弁したと言われても仕方のないことではありませんか。総理のはっきりした説明を求めるものであります。(拍手)
 政府は、今回の法改正は当面応急なものであり、近い将来、行革審の答申に従って抜本的改正を行う予定とされているので、この際、伺います。
 今回の証券スキャンダルが証券業界と一部大企業の癒着だけでなく、大蔵省の業界との癒着、不明朗沈行政の仕組みにありたことは、国会の審議によっても明らかであります。ところが、行革審の九月十三日の答申では、証券監視機関は国家行政組織法第八条に基づく機関として大蔵省内に設置され、その委員も、国会の同意を得るとされているものの、大蔵大臣に任命権があるとされているのであります。これは、当初、行革審が目指した国家行政組織法第三条による自主性の強い日本型SEC構想からめ大後退であります。
 報道では、大蔵省幹部は、ぎりぎりのところで組織防衛ができたと胸をなでおろし、早くも委員に理解者を送り込むことをねらっています。金融・証券業界も、委員会の独立性薄れ、安堵感が広がっていると言われています。証券スキャンダルに重大な責任がある業界が安堵し、大蔵省が胸をなでおろすような抜本改革では、問題の解決に役立たないことは明らかであります。この後退の理由について、総理の明確な答弁を求めるものであります。
 今回の証券スキャンダルに対する国民の怒りと批判は、証券取引被害一一〇番でも噴き出しています。私は、この国民の声にこたえて、証券スキャンダルの全容を徹底的に解明し、それを踏まえて抜本的た再発防止策を確立するため、全容解明に不可欠た野村証券の四名を初めとする証人喚問の実現と、本法案に対しては緊急措置として、少なくとも当初の大蔵省案を復活させるよう改めて強く要求し、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 辻議員にお答えをいたします。
 今回の損失補てん等の問題の実態につきましては、既に証券会社から補てん先の企業名等が公表され、補てんの手法についても、既に代表的な補てんの手法やその具体的な事例について、政府の方からわかった限り国会にも御説明をしてきたところでありますし、また、本院においても特別委員会が設置され、真相解明に向けて証人喚問を含めて精力的な審議が行われてきたところでございます。この損失補てん等の実態を踏まえて、政府としては、問題の再発を防止するとともに、内外投資家の信頼を確保するため、全力を挙げて取り組む決意でございます。
 また、自主ルールの問題にお触れになりましたが、損失補てんを包括的に定義しておりますが、法律上の規定としては、それほ明確であると受けとめております。自主ルールは、証券取引の公正円滑化の観点から、証券業務として正当なものと考えられる典型的な行為を明示しようとするものであると私は承知をいたしております。したがって、自主ルールが法律の核心を業界にゆだねることではないのでありまして、罪刑法定主義など刑法上の原則にもとるものとは考えておりません。
 また、損失補てん等の問題の再発防止については、刑罰の適用など証券会社に対する措置によって相当に強力な抑制効果が期待されると受けとめております。
 顧客に罰則を適用する問題についてお触れになりましたけれども、再発防止策の実効性の観点からは、顧客についても、市場の価格形成機能をみずから要求し、それをゆがめようとするような行為を行った場合には、刑事罰を科すことにしておるわけでありまして、そのことについて、必要かつ十分と判断をいたした次第でございます。
 なお、証券の監視機関の問題につきましては、行革審において、新たな検査・監視機関について、独立性、中立性の確保や国会等に対する行政責任の明確化など、種々の観点から検討が行われました。行革審みずからの御判断において、行政部門から独立した八条委員会を設置し、その下に独自の事務局を置いて違法行為等に係る強制調査などを実施するもの正提言、御提示いただいたものであります。政府は、今後の検査・監視体制のあり方を、この提言の趣旨を生かして進めてまいりたいと考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁いたします。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 私から御答弁を申し上げる点は二点であります。
 まず第一に、四大証券等に対する特別検査についででありますが、現在、議員御指摘のように、大手四社に対し特別検査を続行中そありまして、特に損失補てんについて綿密に調査をいたしておる状況でありますが、ある程度検査結果がまとまりましたなら、可能な限り国会で御報告をいたしたいと考えております。
 また、野村証券の暴力団関係者との取引につきましては、当時の秘書担当取締役が当該暴力団関係者から取引を要請され、本店営業部に紹介し、取引が開始されたものと聞いております。また、東急電鉄株の売買につきましては、営業店、株式部、投資調査部がこれに関与していたものと聞いております。
 いずれのケースにつきましても、社内的にどのような形で意思決定が行われたかも含め、具体的事実関係につき、引き続き一層の調査をしてまいるところであります。(拍手)
    〔国務大臣左藤恵君登壇〕
○国務大臣(左藤恵君) 辻議員にお答え申し上げたいと思います。
 まず、野村証券の指揮命令系統に関する御質問でございますが、お尋ねの件につきましては、現在捜査中の東急電鉄株式の相場操縦事件の捜査の内容にかかわる事柄でありますので、答弁は差し控えたいと存じます。
 次に、自主ルールに関する御質問につきましては、総理から御答弁もございましたが、なお、御指摘の自主ルールほ、罰則の構成要件に該当するか否かの判断の認定資料や違法性評価の上での一つのガイドラインになるもの、このように理解しておりまして、罪刑法定主義などの刑事法の原則にもとるところはない、このように考えておるところでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(村山喜一君) 小平忠正君。
    〔小平忠正君登壇〕
○小平忠正君 私は、民社党を代表して、ただいま提案のありました証券取引法及び外国証券業者に関する法律の一部を改正する法律案について、総理及び大蔵大臣に質問をいたします。
 損失補てん、暴力団との取引、株価操縦もどきの行為など、証券業界による一連の不祥事は、国内の個人投資家の怒りを買っただけではなく、世界に対する日本の証券市場の信頼を失墜させるということになりました。大口投資家に対する損失補でんぽ、自己責任という株式取引の大原則を侵し、たけなしの資金によって取引を行う一般投資家を不当に冷遇するゆゆしき行為と断ぜざるを得ません。
 また、この事件が、単に民間企業だけのスキャンダルではなく、損失補てんを事実上容認し、これに目をつぶってきた大蔵省証券局の姿勢にも原因があったことに憤りを感じます。さらに、大手銀行の不正融資だと、利益至上主義に偏り、社会的責任を欠いた金融業界の不祥事が次から次へと明るみに出たことは、遺憾にたえないところであります。
 我が党が強く求めてきた特別委員会における審議、証人喚問、参考人質疑を通じて不祥事の実態が明らかにたったことは、一歩前進と言えるかとほ思います。我々が厳しく政府を追及するのも、証人を尋問するのも、日本の証券市場の将来を思ってのことであります。そのためにも、実効ある再発防止策を速やかに講じなければなりません。世界に通用する自由、公正、健全な証券市場をどう確立していくのかという視点から、以下、政府にお尋ねをするものであります。(拍手)。質問の第一は、検査・監視機関の創設についてであります。
 今月十三日、臨時行政改革推進審議会は、証券不祥事再発防止策について海部総理に答申を行い、最大の焦点となっていた検査・監視機関については、大蔵省に附属する証券・金融検査委員会の設置を打ち出しました。しかし、この委員会は、調査、告発はできるものの、独自の行政処分権が与えられず、大蔵省証券局にその権限をゆだねることとなっております。また、大蔵省に証券会社等の経営検査をする検査部門を残すこととなっておりますが、日常の検査こそ不祥事摘発の第一歩であり、摘発検査と一元化することがなくては意味がないのではないでしょうか。
 結局のところ、行革審が提言したこの委員会に実効ある検査・監視を期待することは到底不可能だと強調せずにはおられません。こんな機関のもとでは損失補てんの禁止、罰則等を盛り込んだこの証券取引法等の改正が効力を発揮せず、不祥事が再発することほ目に見えております。
 日本が世界に冠たる経済大国となり、国際社会における日本の行動様式、貢献のあり方が厳しく問われる今日、経済活動に関しても、まずフェアかアンフェアかが問題であって、先進国の欧米諸国ではこの原則こそが最重要視されております。民間企業の活動はあくまでも自由であり、直接行政府が業界の保護育成、秩序づくりに関与することは絶対に避けなければなりません。しかし、自由を認めるかわりに厳しいルールを定めて、これを破った者ほ容赦なく罰するというのが自由社会の鉄則ではなかろうかと思います。大蔵省から完全に独立をした行政機関、いわゆる日本SECを創設することが肝要であります。
 行革審の答申に対しては自民党内にも異論があり、検査機能をすべて大蔵省から移管するなど、やり方があったはずなどの批判があったかのように聞いております。取引法改正を口にする以前に、検査・監視機関のあり方を決めることが優先するのではありますまいか。日本の証券市場を世界に通用するものにするためには、大蔵省から完全に独立をした検査・監視機関をつくるという総理の決断が求められると考えますが、いかがか。
 以上の諸点につき、海部総理の明快たる御所見を求めます。
 また、橋本大蔵大臣が行革審を所管する総務庁の局長を呼びつけ、さらには官房長が鈴木会長に直訴するなど、大蔵省は行革審に徹底的に圧力をかけたとの報道も聞いておりますが、これが事実だとすれば大変なことである、こう考えます。公正な証券市場を育成することより、大蔵官僚の権益を守ることにこだわるのか、大蔵大臣の答弁を求める次第であります。
 質問の第二は、損失補てんの禁止、罰則についてであります。
 証券取引法を改正し、損失補てんを禁止し、その罰則を盛り込むことは当然のことであります。損失補てんは証券会社及び顧客の間の関係で生ずるものであり、双方が罰則の対象となることは当然であると考えます。
 ところで、当初の大蔵省案では、顧客が、証券会社が損失補てんをする目的を持って財産上の利益を提供していることを知りながら、これを受け取った場合にも罰則の対象とたるとの内容でありました。しかし、自民党内の論議でこの項目が骨抜きにされ、顧客がみずから補てんを要求するか、第三者に要求させた場合にのみ罰則を適用するというなまぬるいものに変わってしまったのであります。これは、自己責任の原則をないがしろにし、補てんの生まれる土壌を温存させるものであり、当初の中身に戻すべきだと考えます。
 さらに、刑事罰については、証券業者側が一年以下の懲役またほ百万円以下の罰金、顧客側は六カ月以下の懲役またほ五十万円以下の罰金で、損失補てんなどの財産上の利益は没収、追徴されることとなっております。しかし、この刑罰は余りにも軽過ぎないでしょうか、殊に、法人そのものは懲役刑を受けず罰金だけとなるのに、その額がわずか五十万円とか百万円では、犯罪の抑止に資するものでないことは、明々白々であると断言せざるを得ません。
 現在、法務省は法制審議会で、財産刑のあり方などを検討する一環として、行為者への罰則と法人等への罰則とを切り離し、法人等に対する罰金を重くする法改正の方針を打ち出そうとしていると聞いておりますが、今回のなまぬるい罰則はこの動きにも反するものではありますまいか。むしろ、企業が利潤を追求する存在であることを冷厳に見詰め、補てんを行った証券会社、補てんを受けた企業には、経営が脅かされるほどの多額の罰金を科した方が効果的だと主張したいのであります。(拍手)日本的温情主義はこの際捨て去り、企業に倫理やモラルを求めるより、悪いことをすれば利潤がなくなるという経済原理に訴えるというドライな考え方に発想を転換する時期が来ていると考えます。
 さらに、損失補てんの定義を確実なものにするために、日本証券業協会や証券取引所などの自主規制団体が、大蔵省や法務省と相談をして自主ルールを策定することとなっておりますが、損失補てんなどの不祥事を見逃し、厳しい措置をとれなかった証券取引所や証券業協会に自主ルールをつくらせるのは問題であり、政府が責任を持って細かな損失補てんの定義を定めるべきだと考えます。
 以上の諸点について、総理及び大蔵大臣の答弁を伺います。
 質問の第三は、新規参入、手数料の自由化についてであります。
 行革審は免許制の見直しや手数料の自由化の方向を示しましたが、当然のことと考えます。大手証券会社が世界的な規模に達し、一方では株価操縦と疑われる行為や損失補てんなどの不公正取引を行い、株式市場の秩序を乱しているのに、新規参入を制限することで事実上の補助金を与えることは、もはや全く正当性がないと言っても過言ではありません。いきなり米国のように登録制にしないまでも、ある程度の条件を満たせば認可する方式にすべきではありますまいか。
 また、手数料についても固定化され、これが補てんの温床となったという見方があります。委託手数料は、現在、制度上も固定化され、証券取引所で決定することになっておりますが、小口投資家の負担に配慮しつつ、原則自由化すべきであると思います。また、引受手数料についても、制度上は自由化されておりますが、実質上は固定化されております。諸外国に比べ、我が国の大手企業は安定株主に恵まれ、その企業の幹事証券会社にはさほどリスクはありません。にもかかわらず、証券会社が話し合りて高い水準に引受手数料を固定していることは、競争経済原理に反し、カルテルの疑いが強いと言わざるを得ません。引受手数料についても、実質上自由化されるよう、所要の措置を講じるべきと考えます。
 これらの点について、総理及び大蔵大臣の答弁を求めます。
 最後に、行政と証券業界の癒着是正策についてお尋ねをいたします。
 今回の一連の不祥事が官民なれ合いで行われたことを示す何よりの証拠は、大蔵省出身の社長や監査役がいる証券会社でも損失補てんが行われたという事実であります。野村証券の田淵義久前社長は株主総会の席上で、損失補てんは大蔵省の承認のもとで行ったという旨の発言を行いましたが、これはまさしく本音を述べたものと、こう我々は受けとめております。
 職業選択の自由は保障されねばなりません於、大蔵省の金融業界に対する保護育成行政が完全に改められない限りは、原則として大蔵官僚の金融機関への天下りは禁止すべきと考えます。さらに、不透明な行政をなくすため、口頭での指導は一切なくし、仮名取引や推奨銘柄の自粛を初めとする通達はすべて法令化すべきであります。
 なお、監視・検査機関については、さきに述べたように、我が党はあくまでも大蔵省から完全独立した機関の設置を求めますが、なれ合い防止のため、委員はすべて大蔵省とは無関係の、例えば学識経験者等から選ぶべきだと考えます。
 以上、我が党の提言にどうこたえるのか、総理及び大蔵大臣の答弁をお伺いいたしたい。とりわけ不透明な口頭での行政指導については、大蔵省のみならず全省庁にわたってこれを廃止するとの約束を総理に求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 小平議員にお答えを申し上げます。
 検査・監視機関の創設については、証券市場に対する先般の行革審よりの答申において、新たに行政部門から独立した検査・監視機関の設置が提言されているところでございます。行政部門から独立した八条委員会を設置をし、その下に独自の事務局を置いて違法行為等に係る強制調査等を実施するものと提言されており、今後その体制のあり方に向けて検討を続けてまいりたいと考えております。
 罰則はなまぬるいのではないかとの御指摘がございましたが、今回の改正案の法定刑は、証券取引法の現行の罰則体系を前提として、他の法定刑との均衡を勘案して定めたものではございます。しかし、証券会社による損失補てん等のような、いわば企業犯罪と言われる類型の行為に対する法定刑について、御指摘のように現行の法定刑では不十分であるという御意見があることはよく承知をしております。この問題は刑事罰則全体のあり方にもかかわるものであり、現在行われている法制審議会での議論を踏まえて適切に対処していきたいと考えております。
 また、免許制の見直し、手数料の自由化については、行革審答申を当然最大限に尊重すべきものと考えており、今後免許基準をできる限り具体化、明確化することを検討し、新規参入の促進を図っていく所存であります。また、手数料の自由化についても、資本市場への影響、小口投資家への影響などに配慮しながら検討を進めていく所存であります。
 また、いわゆる官僚天下りの問題については、一般論として、営利企業への再就職については、それが行政をゆがめるようなことには絶対にならないと確信をいたしますが、一方において、今回の一連の事件の中で、証券会社への再就職が厳正な行政を損なっているのではないかという御批判があることほ承知いたしております。そこで、当面、大蔵省幹部職員の人事院承認を要する証券会社への再就職については、自粛を求めることにいたしました。
 また、口頭での指導は一切なくせということでありますが、口頭による行政指導については原則として廃止をする、通達のうち法令化すべきものについては、その性格に応じ可能な限り法令化をしていく考えであります。
 委員の選任についても、今後、鋭意答申の趣旨を踏まえて実行してまいりますし、また、すべての行政省庁にそのことを約束しろと言われましたが、今、行政手続の透明化のため、行政指導の内容の明確化、求められた場合の書面の交付など、一定のルールを確立すべく、鋭意行革審において検討中と承知しておりますが、答申を受けてその実現に努力をしていきたいと考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 小平議員の御質問にお答えを申し上げます。まず第一点、去る九月十三日に行革審の答申が総理に提出をいたされたわけでありまして、それを受けて我々は最大限これを尊重しつつ、全力を挙げて努力をしていくわけでありますが、その途中においての状況についてのお尋ねがございました。行政管理局長初め行革審事務局の諸君は、大蔵省の大臣室をこの件について訪問をいたしておりません。私の方から呼びつけたといったような事実がないということは、まず御報告を申し上げておきたいと思います。
 また、顧客がみずから補てんを要求する、あるいは第三者に要求させたのに、罰則がこれでは弱いという御指摘がございました。
 本改正案におきましては、証券会社につきまして、証券市場における正常な価格形成機能の保持、市場仲介者としての公正性の保持という責任を持った行動を前提に置き、これに対し、証券会社の顧客の場合は、市場仲介者としての公正性に係る義務を負っておらないこと、また、正常な価格形成機能の保持につきましても、証券会社と同等の責任を要求することは必ずしも適当ではない。損失補てん等の問題の再発の防止については、証券会社を対象として講じておりますさまざまな措置により、相当に強力な抑制効果が期待できると考えておるということであります。したがいまして、再発防止策の実効性を確保する観点からは、顧客につきましては、市場の価格形成機能をみずから積極的にゆがめようとするような行為を行った場合、刑事罰を科すことで必要かつ十分と判断をいたしました。
 また、この罰則について御意見がございました。
 証券会社の資力に比して罰金の上限が低過ぎるという御指摘は、十分認識をいたしております。そして大蔵省といたしましても、両罰規定における法人の罰金刑の上限と行為者の罰金刑の上限を切り離し、証券会社の罰金を引き上げたいと考えまして、法務省初め関係省庁と協議をいたしてまいりました。しかし、この問題については、法体系全体にかかわる問題であり、両罰規定における法人の罰金刑の上限と行為者の罰金刑の上限とを切り離すことについて、現在行われております法制審議会の議論の方向を見定めるのが適当という法務省のお考えもありまして、私どもとしては、今回の問題に対処し、損失補てんというものを法律上、直接かつ緊急の措置として刑事罰の対象とし、禁止することといたしました。今後、法制審の御論議の結論を踏まえ、私どもとしては、この証取法のみならず、大蔵省主管の各法律につきまして、法人の罰金刑の引き上げについての法案を提出したいと現在考えております。
 また、損失補てんの定義について御意見がございました。
 本改正案におきましては、処罰に値する損失保証、補てん行為というものを網羅的に禁止の対象とすべきであるという必要性、罪刑法定主義からくる構成要件の明確性という二つの要請を十分満たすように配慮しながら、禁止規定を包括的に定めたわけであります。種々多様な行為類型をすべて網羅するということは現実には困難であり、また法律に規定された行為類型の一部でも異なっていれば犯罪にならなくなってしまい、ループホールが容易に出現するのは避けたい、そうしたことも考え、私どもとしてこういう方針をとりました。
 本改正案は、証券会社につきましては、損失を補てんするため財産上の利益の提供の申し込み、約束ないしは提供を行うことをもって損失保証、補てんと定義をいたしており、このような構成要件はそれ自体として明確でありますし、他の立法例にも見受けられるところであります。
 また、自主規制についての御意見がございました。私どもとしては、自主規制団体がより強力なものであることを願い、その能力を高めていただきたいと考えております。
 そして、その中で、今私どもがさらに整備をするよう求めております自主ルールは、証券取引の円滑化の観点から、正当な業務と考えられる典型的な行為を明示するというものであります。これは損失補てんの定義と自主ルールとは、私は、直接的には関係がないと申し上げてよいと思いますが、いずれにせよ、大蔵省としては、自主規制団体のつくりましたルールをそのまま受け入れるということは考えておりませんで、これが適切であるかどうかにつきましては、法務省と御相談をしながら判断をしていくこととなります。
 また、新規参入の問題については、総理もお触れになりましたが、免許制といえども新規参入を抑制するものであってならないということは、そのとおりであります。適格性を有する者に対し参入を認めるべきであることも当然であり、今般の行革審の御答申におきましても、免許基準をできるだけ具体化、明確化する方向で見直しを図り、免許申請に係る審査についても透明性を向上させ、競争促進に資する新規参入の実現を図る必要がある、中期長期的には、免許制の是非についても検討を行う必要があるという御指摘をいただいているとこうでありまして、私どもは、有効かつ適正な競争を促進する見地から、新規参入の問題についても積極的に検討してまいりたいと考えております。
 また、委託手数料についての御指摘がございました。
 私どもとしては、取引所の意見も聞きながら、行革審答申に沿い、資本市場への影響、小口投資家への影響等にも十分配慮しながら、資本市場の健全な発展を図る観点から、検討を進めたいと考えております。
 また、引受手数料について御指摘がございました。これがルールとして自由化されている、しかし、実質そうではないという御指摘と理解をいたしました。
 国際的に見まして、我が国の株式や社債の引受手数料は、必ずしも割高とは言えませんけれども、大蔵省としては、個々の発行につき引き受けリスクなどを基本に、発行会社と引受証券会社の間において引受手数料が弾力的に決定されることが望ましいと考えております。引受手数料の弾力的な決定が行われますよう、今後とも働きかけをしてまいりたいと考えておりますし、引受業務への新規参入につきましても、証券取引に係る基本的制度の見直しの一環として取り組んでいきたいと考えております。
 また、職員の再就職問題についての御意見がございました。
 総理からもお触れになりましたが、大蔵省といたしまして、今日、厳しい世間からの御批判を受けておりますことを考え、当面、大蔵省幹部職員の、人事院承認を要する証券会社への再就職につきましては、本人及び証券会社両当事者の理解を得て自粛を求め、人事院承認の申請を行わないようにしたい、そのように考えております。
 また、口頭指導というものについての御指摘がございました。
 既に本院でも何回か御答弁を申し上げてまいりましたが、現在、証券行政の中での過去の通達の全面的な見直しを行っております。そしてこの中で、今後法律に移すべきものあるいは自主ルールに移すべきものを整理してまいりますが、その際、口頭による通達というものを廃止したい、緊急の場合においてそういうケースが出たとしても、すぐにそれは紙によって置きかえたいということは、答弁を繰り返し申し上げてまいりました。その決意に変わりはございません。(拍手)
○副議長(村山喜一君) これにて質疑は終了いたしました。
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○副議長(村山喜一君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時五十五分散会
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