第121回国会 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第2号
平成三年九月十九日(木曜日)
    午前九時三十一分開議
出席委員
  委員長 中西 績介君
   理事 岡田 克也君 理事 武部  勤君
   理事 中川 昭一君 理事 宮里 松正君
   理事 五十嵐広三君 理事 上原 康助君
   理事 玉城 栄一君
      新井 将敬君    今津  寛君
      北村 直人君    松浦  昭君
      伊東 秀子君    沢田  広君
      前島 秀行君    藤原 房雄君
      古堅 実吉君    小平 忠正君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 中山 太郎君
 出席政府委員
        総務庁長官官房
        審議官     小山 弘彦君
        外務省北米局長 松浦晃一郎君
        外務省欧亜局長 兵藤 長雄君
        外務省条約局長 柳井 俊二君
 委員外の出席者
        外務大臣官房審
        議官      高島 有終君
        水産庁海洋漁業
        部国際課長   城  知晴君
        特別委員会第一
        調査室長    直江 鷹郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 沖縄及び北方問題に関する件
     ――――◇―――――
○中西委員長 これより会議を開きます。
 沖縄及び北方問題に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浦昭君。
○松浦(昭)委員 私は、本委員会におきまして本日議題となりました北方問題の調査に対しまして、これから政府に二、三の質問をさせていただきたいと思う次第でございます。
 ただいま、隣邦でございますソ連の国内におきましては政治的な大変革が進行している次第でございまして、まことにその現象は瞠目に値すると思うのであります。また、その規模と速度につきましても我々の予想をはるかに超えるものがありまして、まさに世紀の世界史的な地殻変動ともいうべきものであると思うのであります。
 思え拭、七十三年前のロシア革命に端を発したわけでございますが、共産主義による一党の支配体制が、ゴルバチョフ大統領のペレストロイカあるいはグラスノスチ政策の推進によりまして揺らいでまいったわけでございます。さらに、これが西ドイツによります東ドイツの統合、これを契機にいたしました東欧共産主義体制の崩壊へと続きまして、さらには最も注目すべき事象といたしまして、去る八月十九日のソ連邦内部に発生したクーデター、そして三日後にその失敗を見たわけでございますが、これを転機といたしまして一挙にソ連邦の内部で民主化が加速され、それによってソ連邦の解体につながるような危機の状態が生じまして、共産党の廃止あるいはバルト三国その他の共和国の独立あるいは経済の急速な悪化へと突き進んでまいった感があるわけであります。
 この大事件は、東西冷戦構造の上に成り立っておりました国際政治に大きな変動を与えるとともに、隣国であります我が国に対しましても、内外のいろいろな大きな影響が生じてまいっているわけでありまして、この変革は特に今後とも不確定の要素を持っているだけに、これに対しましては、我が国として時としては果断な、また時としては慎重な対応が要請されるものと思うのであります。
 本日は、本委員会に幸いにも中山外務大臣においでをいただいておりますので、このような情勢下で一体ソ連はどこに行くのか、あるいは経済問題あるいは援助問題あるいは核拡散問題等たくさんお尋ねしたいことがございますけれども、時間の関係もございますので、ごく絞りまして一、二問お伺いしたいと思う次第でございます。
 まず第一問は、何と申しましても北方領土問題でございます。この問題は当委員会の所掌でもありますだけに、まず第一にお伺いをいたさなければならないものであると思います。
 振り返ってみますと、本年四月にゴルバチョフ大統領が訪日されまして、日本の内部では北方領土問題の前進を期待した向きもございますけれども、ゴルバチョフ大統領は領土問題の存在を認めていったものの、期待した足跡は残されていかなかったようであります。
 しかし、去る八月十九日のクーデターの失敗によりますソ連邦内の大変革は、特にロシア共和国の強力化あるいはエリツィン大統領の台頭を見たわけでございまして、北方領土問題についても、引き続いて驚嘆すべき変化が生じているような兆候が見られるわけでございます。
 すなわち、我々は新聞報道しかわかりませんけれども、この報道によりますと、去る九月初旬に来日いたしましたソ連・ロシア共和国最高会議議長代行のハズブラートフ氏、この方は九日に海部総理にお会いなさいまして、エリツィン・ロシア共和国大統領の親書を手渡したと言われておりますけれども、この親書の内容は、かつてエリツィン大統領が最高会議代議員時代に提唱なすっておられましたいわゆる五段階論を大幅に修正したものだと言われているわけでございます。この五段階論はここで細かに御説明することは要らないと思いますけれども、何と申しましても、最終的には四島の帰属は次の世代にゆだねられるべきだといった点が非常に印象的でありました。
 しかしながら、さきのハズブラートフ氏の記者会見によりますと、新しく海部総理に手渡された親書の内容によりますと、この五段階論に大きな修正が加えられ、著しい質的な変化を見ていると述べられています。また、五段階論で述べられた期間をそれぞれ短縮していこうと提案されており、特に、我々の世代で四島問題を片づけようと述べておられるというわけであります。また事実、おいでになったハズブラートフ氏御自身が、具体的に実質的な交渉を始めるとお述べになったそうであります。
 また、同氏とともに訪日しておられましたクナーゼ・ロシア共和国外務次官は、親書の内容は五段階の圧縮であるとともに、戦勝国、戦敗国の区別なく日ソ関係を発展させようと述べられていると言われますし、あるいは国際ルールに従って問題を解決しようと書いてあるとも言われているわけであります。
 さらに驚くべき事実としては、ソ連の暫定内閣ともいうべき国民経済対策委員会の副議長であるヤブリンスキー氏、この方は。元のロシア共和国の副総理でありますが、この要職にあった方が九月九日、共同通信との会見におきまして、一八五五年の日露通好条約に立ち返って歯舞、色丹、国後、択捉の四島は日本に返還されるべきである、あるいはこの条約は日露両国が戦争ではなく友好的な交渉の後結んだものであるということを述べられたそうであります。これはまさにこれまでソ連側が主張しておりましたヤルタ体制の放棄につながるものでありまして、また我が方の返還論そのものと言ってもいい、そのような大きな転換であります。
 このような一連の発言を見ておりますと、ロシア側はこの四島問題について大きく態度を変えまして、返還への千載一遇の好機が訪れたかのように見えるわけでございます。
 しかしながら、同時にこの話し合いは決してストレートにいくものではないとも思われるわけでありまして、ロシア側は同時に、一方で日本政府の政経不可分の原則は認めつつも、大規模な緊急援助を日本に要請しているようでありまして、ハズブラートフ氏の言をかりましても、その額は何億ドルの単位ではなくて、何十億ドルの単位の援助を期待すると述べているようであります。
 確かに、ソ連は未曾有の経済危機に直面しております。ことしの冬も乗り切れるかという状況であると聞いておりますが、これを打開するのは西側の援助しか道がありません。しかも、米国は今大きな債務国となっておりまして、その援助の力には限界があります。またドイツも、東ドイツの統合によりまして東ドイツを抱えて、援助の力も大きく減殺されている状況であります。アメリカ及びヨーロッパが四島問題の日本側の態度に対してこれをバックアップしてくださることはまことにありがたい次第でありますし、もちろん我が方の主張を正論と認めてくださっている、そのように判断するわけでありますが、彼らのお家の事情もあるのではないかと思うわけであります。とにかく、極論すれば、ロシアにとって我が国は一番頼りになる援助国であるということであります。ここで我々は、四島問題と援助問題のパッケージディールという極めて厳しい外交交渉をロシアとの間で持つことを考慮しなければならないと思います。
 課題はほかにもあります。それは四島に住む方々の反対であると聞いております。これを受けまして、サハリン州知事のフョードロフさんは、返還論に傾いたロシア共和国首脳の考え方に強く反対していると伝えられております。
 以上が我々が承知している事実でありますが、これらのことに関してはもちろん外務省の方々は十分に情報をとっておられると思いますし、我々以上の情報を持っておられると思います。そこで兵藤局長にお尋ねいたしたいことは、これらの事態を踏まえましてどのような状況であると判断をしておられ、またどのような分析をしておられるか、ひとつ外務省の御見解を承りたいと思います。
 また、中山外務大臣には、この事態をとらえまして外務大臣としてどのように問題に対処していくか、お伺いをいたしたいと思います。確かにこの事態は、今まで一度も訪れたことのないような国民の悲願を実現させる絶好の機会とも言えます。しかし、私も長年、日ソの漁業交渉に携わらせていただきましたが、そのいささかの経験をもちましてもまた次元は非常に違うものと思いますけれども、このようなときにこそ冷静に判断をしなければならないとも思うわけでございます。外相はいかがお考えか、外相のお考えのほどを聞かしていただければありがたいと思う次第でございます。
○兵藤政府委員 八月のクーデター以後の日ソ関係、特に平和条約問題につきましての現状をどういうふうに認識しているかということについてでございますが、松浦委員御指摘のとおり、八月以降の、特にロシア共和国政府あるいは最高会議の要路の方々のいろいろな御発言、特に委員御指摘のハズブラートフ・ロシア共和国最高会議議長代行の訪日並びに訪日後のいろいろな御発言並びに御指摘のございましたヤブリンスキー氏その他の方々のいろいろな御発言を総合いたしますと、まさにおっしゃるように今までに見られなかった、今までと申しますのは、戦後、三十数年の国交を樹立いたしましてからの過程の中で見られなかった基本的に質的に違うこの御発言、違うと申しますのは、北方領土問題に対します基本的な認識と姿勢、このようなものにつきまして、私どもにとりましては大変に歓迎をし陸ろいろな肯定的な、積極的な御発言が出てきているというふうに私どもも認識をいたしております。
 そういう中で、特にハズブラートフ議長代行の御発言の中で、平和条約締結交渉を加速化したいという御発言、これはゴルバチョフ大統領訪日の際に日ソ両国の政府で確認したことでございますが、その御発言、それから戦勝国と敗戦国の関係、区別、もうそういう関係からこの問題を考えるということはやめたいという御発言、それからあくまでも法と正義、この場合、特に私どもは国際法ということも含めての御発言であると考えておりますけれども、そういう御発言に特に注目し、おっしゃるように、この問題についての解決のための一つの大きな可能性を含む機会というものが訪れつつあるかもしれないという認識を強めている次第でございます。
○中山国務大臣 今、松浦議員に兵藤欧亜局長がお答えを申し上げましたように、ソ連の変化、これは我々も予期しなかった突然の変化でございまして、指導部の人員構成も変わってまいりましたし、今日までの日ソ間の交渉の条件というものが大きく変わってきたものと認識をいたしております。そのような中で、エリツィン大統領が五段階の説を私にも前回訪日されたときにおっしゃっていかれました。ハズブラートフヘロシア共和国最高会議の議長代行どこの間お目にかかりまして、ハズブラートフ議長代行からこれをもっと縮めるという考え方もお聞かせをいただいたわけでございますが、私は、この問題の解決のために首脳間でどのように具体的に詰めるのか、いわゆる短縮するのかといったことを協議する機会をぜひ持ちたいということを、エリツィン大統領に私からのメッセージとしてお伝えをいただきたいということを申し上げたわけでございます。
 私は、外務大臣としても領土問題解決のために全力を挙げてこれから交渉に当たらなければならない、このように考えております。
○松浦(昭)委員 大変ありがとうございました。前向きの姿勢で全力で取り組んでいただけるということで大変感謝をいたす次第でございますが、本件は、先ほども申しましたように、経済援助問題と非常に深くかかわるのではないかと思うわけでございます。特に従来までの我が方の経済援助の体制は、さきのサミットでも外務大臣が表明されたとおりでございまして、人道的な食糧援助と技術援助に限定されているというふうに我々理解をしているわけでございますが、こういう事態になりまして、弾力的な交渉をしなければならないという事態が生じた場合には、やや踏み込んだ援助問題への対処も必要となるのじゃないかなという感じもいたすわけでございます。経済不可分の原則というものは当然にこれは堅持することになると私も思っておりますけれども、この北方問題の解決が図られる好機とも言うべき具体的な交渉が展開されるというような事態になりました場合に、外務省としましてはこの対処ぶりについてどうお考えになるか、外務大臣からお伺いいたしたいと思います。
○中山国務大臣 さきのロンドン・サミットにおきまして対ソ支援についていろいろと協議を行ってきたことは、委員も御理解をいただいているところでございます。その際に、人道的支援あるいは技術的協力といったものを積極的にやるべきだ、こういう考え方がG7の各国で合意を見ました。ただし、大量の金融支援というものは、現在のソ連の状況においては効果は余り上がらないのではないかという考え方がそれぞれ共通した認識でございましたが、日本政府といたしましては、今後の技術支援あるいは人道的支援といったものについては相当思い切った協力をいたしたい、このように考えております。
○松浦(昭)委員 次に、時間もなくなりましたので少しはしょってお伺いいたしたいのでございますが、大きな問題といたしまして、一体この交渉の相手がどこであるか、ロシア共和国でよいのかソ連邦かという大問題があるのではないかと思うわけでございます。現在、ソ連邦の存続につきましては、経済同盟草案というような形で議論がなされているようでありますし、漏れ聞くところによりますと、EC的な比較的緩い経済統合といったような形で、軍事面はもちろん統合していくと思いますが、そういう方向に行くんじゃないかと言われているわけでありまして、今後連邦に残る権限は、軍事、経済の一部といったような限られたものになるんじゃないかということも言われているわけでございます。
 そこで、欧亜局長にお尋ねしたいわけでございますけれども、ハズブラートフ・ロシア共和国最高会議議長代行かおっしゃられたのは、ソ連政府の外交権は事実上消滅し、権限はロシア共和国に移ると強調しておられたようでありますが、これは事実でありましょうか。また外務省は、このような事態を踏まえてどこを交渉の主体としていけばいいというふうに見ておられるか、お伺いしたいと思います。
 また同時に、この問題は単に領土問題にとどまらない問題でありまして、先ほど大臣の仰せられた食糧援助関係等の交渉相手が一体どこになるかということも非常に大きな問題でありますし、また民間では、私も幾つか承っておるわけでございますけれども、例えば合弁企業を設立していく際の交渉相手方、あるいはその許可の主体というのはどこになるのかということで非常に混乱も起こっているということを聞いておりまして、そのような問題でいろいろな分野で生じております実態がどんなふうになっているのか、また今後どうやって対処していったらよいかということをお伺いしたいと思います。
 そして最後でありますが、この問題は水産関係でも同じような問題があると思われるわけでありまして、ことしの末には、日ソ、ソ日の漁業交渉の結果、新しい暫定協定を結ばなければならないと思うのでありますけれども、いつもでございましたらもうそろそろ準備にかかって、十一月の末には交渉に入るというような事態が生ずると思うのでありますが、その際に、もしもその交渉の相手方が不明で明年のクォータが設定できないというようなことになりますと、漁業者は大変困ってくると思うのであります。先般の交渉ではダリルイバ総裁が交渉の相手方だったといいますが、一体ソ連の漁業省がどうなっていくのか。特に、連邦の権限も大切でありますが、それに基づく行政機関の対応というのが実際の交渉上は非常に重要な問題になってくると思うわけでありまして、その点についてはひとつ局長、あるいは水産庁の国際課長が来てくださっておるようでありますから、御答弁をお願いしたいと思います。
○兵藤政府委員 今御指摘の、ソ連邦政府とほかの共和国、特にロシア共和国政府との権限あるいは力関係はいかんということでございます。
 御指摘のとおり、一昨日、国家評議会におきまして、経済同盟条約案が初めて審議に付されたわけでございます。私も、四島交流の問題で交渉いたしますためにモスクワに参ったわけでございます。その際にも、一体、事外交に関してソ連邦外務省と、この場合にはロシア共和国外務省でございますけれども、この権限あるいは所掌がどういうふうに分かれていくのかということについては種々質問をしたわけでございますが、大原則といたしまして、御承知のとおり連邦と共和国との間には、実質的な権限は共和国に移していく、その中で外交権と申しますか、国際法主体も原則として共和国が持つという原則が確立されつつある。その中で二国間関係、この場合には日ソ関係でございますが、これが一体どういうふうに処理されていくのかということについてはなおまだ不透明な部分、これからいろいろ詰められる部分があるというのが私の印象でございます。
 例えば、私は四島交流についてモスクワに参ったわけでございますが、ソ連邦外務省の担当局長とロシア共和国の担当部長と両方がいわば対等の形で交渉に出られた、両方を相手に私はお話をしてまいったというのが現状でございます。しかしながら、全体の趨勢といたしましては、私の承知いたしました限りでは、日ソ関係につきましても、ロシア共和国外務省がより多くの問題を徐々にではございますけれども取り仕切るようになっていく、そういう意味では、ロシア共和国政府あるいはロシア共和国外務省との接触というものがこれからますます重要になっていくであろう。しかしながら、それはソ連邦政府というもとの関係をもうこれで代替するということでは必ずしもない。ソ連邦は、あくまでもソ連邦全体としての外交の主体であり続けることは変わらないわけでございます。したがいまして、ソ連邦政府、ソ連邦外務省並びにロシア共和国政府、ロシア共和国外務省と日ソ関係につきましては、この事態の推移に応じまして私どもも適切な対応をしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。漁業関係につきましては、水産庁の方からお答えをお願いいたしたいと思います。
○城説明員 お答えいたします。
 先生の御承知のように、明年度の日ソ地先協定に基づきます漁獲割り当て量を定めますための交渉につきましては、本年末に開催する必要があるのでございますが、ただいま外務省の方から御答弁ございましたように、現時点におきましては、漁業資源の管理であるとか、あるいはそれに関します対外交渉につきましての連邦と共和国間の権限関係等につきましては非常に不透明な面が多うございまして、具体的に、今年の交渉におきましてソ連側の代表がどのような方が代表になるか、あるいは代表団のメンバー構成がどのようになるかということにつきましては、現時点においては、的確に見通すことは困難と考えております。いずれソビエト側から外交ルートを通じまして我が国に通知されると思っておりますが、今先生のお話にもございましたように、昨年の交渉におきましては極東のダリルイバ総裁をソ連側の政府代表にしまして、また代表団のメンバー構成におきましても、極東重視、現場重視、こういう対応で臨んできておりますので、私どもといたしましては、本年度の交渉におきましても、このような現場重視、極東重視という基本的なソ連側の態度は変わらないのではないか、そのようなメンバー構成で臨んでくるのではないか、このように考えております。
 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、ソビエトの国内情勢の推移を十分見ながら、相互利益の原則に立ちまして我が国漁業者の操業の安定的確保を図る、こういう基本的立場で本年の交渉に対処いたしたい、このように考えている次第でございます。
○松浦(昭)委員 いずれにせよ、四島の返還問題は国民の悲願でございます。ある場合には慎重に、ある場合には果敢に外務大臣に交渉をお願いしなければならないと思うわけでございますが、どうか悲願の実現が一日も早く訪れますように外務大臣の御努力をお願いいたしまして、私の質問を終わります。
○中西委員長 岡田克也君。
○岡田(克)委員 私は、自民党の綿貫議員を団長とする自由民主党訪ソ団の一員として、九月五日からロシアを訪問してまいりました。ロシア共和国副大統領のルツコイ氏、あるいはその後日本に参りましたハズブラートフ・ロシア共和国最高会議議長代行、ポポフ・モスクワ市長を初め、数多くのロシア共和国政府の要人とじっくり意見交換をする機会を得たわけでございます。
 そういう中で感じました第一は、ソ連共産党の七十四年間の支配に対する反省であります。ある高官は、共産党の支配はソ連の国家を収容所に変え、そしてソ連の国民を家畜のごとく扱った、こういうことを述べられたわけであります。他方で感じましたのは、新しいソ連あるいは新しいロシアをつくろうという国づくりの息吹であります。また、隣国日本に対する親近感あるいはその日本の経済力に対する強い期待感、そういったものをあわせ感じたわけでございます。そういう中で、北方領土を取り巻くいろいろな環境も好転をしてきたということを実感してまいりました。
 先ほど、松浦議員の質問に対する御答弁で、外務省の北方領土問題に関する基本的認識については既にお聞きをしたところでありますけれども、この北方領土問題を解決していくに当たって、今なお基本的な障害というものが幾つか存在しているように思うわけであります。そういった問題について、どういう問題が具体的にあると認識しているのか、外務省の御見解をお伺いしたいと思います。
○兵藤政府委員 北方領土問題解決におきまして最大の問題は、四島返還自体にまつわるいろいろな問題であることは委員御承知のとおりでございます。しかし、同時に私どもは、最近のソ連邦内の変化、あるいはロシア共和国あるいはこの場合には関係地域の動きを見ておりますと、ソ連の中におきますこの問題に関する世論という問題、これはっとに最近ソ連の要路の方々が指摘される問題でございますけれども、その問題も、ソ連政府あるいはロシア共和国政府にとってはますます重要な問題になってきているのだろうという認識を私は深くいたしております。私は、やはりソ連の国民あるいはロシア共和国の国民の正しい理解というものを得た上で判断していただくということが大変に重要な問題であるだろう、特に、最近のロシア共和国の中に見られます、いわばロシアナショナリズムの台頭というような潮流にかんがみましても、この問題に対する正しい理解を求めていくということがもう一つ大きな重要な課題であるだろうというように認識をいたしております。
○岡田(克)委員 ただいま政府委員の方から御指摘をいただいたわけでありますけれども、私も、ソ連の国民あるいはロシア共和国の国民の感情、意識というものが非常に重要ではないか、こういうふうに思っている者の一人であります。幾ら学者を初めとする有識者あるいは政治家が北方領土問題を取り巻く歴史的な経緯とかあるいは国際法上の扱いについて理解をし、納得をしたとしても、個々のロシア共和国の国民あるいはソ連の国民がこの問題について納得をしない限りこの問題の解決は難しいのではないか、そういう認識を持っております。とりわけ、かつての共産党一党独裁の国家であり、情報操作も容易である、そういう国からまさしくクーデターの失敗という一つの歴史的な事件を経て、ロシア共和国あるいはソ連は国民の意思というものが強く反映をするという国になっているわけでございます。
 そこで質問でありますけれども、それでは、そういったソ連の国民あるいはロシア共和国の国民のこの問題に対する理解は一体どういうものであるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
○兵藤政府委員 日ソ国交回復以来、この北方領土問題につきましては、日本におきます世論の活発なあるいは積極的な関心と裏腹に、ソ連におきましては、ほとんどソ連の大多数の国民が北方領土問題の実態を知らないという状態が長く続いてきたことは御承知のとおりでございます。しかしながら、ゴルバチョフ大統領のいわゆるグラスノスチ政策のもとでいろいろな問題がかなり自由に論じられるようになってきたその流れの中で、北方領土問題というものも次第に自由に議論をされ、論じられるようになってきた。その中でソ連側の、最初は学者グループでございましたか、ソ連の公式見解と異なるいろいろな見解が出てきたということも御承知のとおりでございます。かっては、日本政府の広報誌の中に北方領土の四島を含めた地図の入ったものを配っただけでもすぐに送り返されてきた、あるいは没収されたという時代が長く続いたわけでございますけれども、最近では情勢が一変したということでございます。
 その中で、御高承のとおり、例えば三月十八日でございますか、サハリン州が行いました北方領土島民のこの問題に対する意識調査というものもございます。その結果によりますと、報道によりますれば、四人に一人は北方領土返還に肯定的であるという回答があったというようなことがあるわけでございますし、四月、これはゴルバチョフ大統領御訪日の直前でございましたが、主としてモスクワ市民に対して行われました意識調査では、二六%が返還に賛成であるという数字等があるわけでございます。この数字については評価は分かれるわけでございますけれども、既にこの時点で、返してもいいという明確な意思表示をするソ連国民あるいはサハリン州の島民がいるということは注目すべきことでございますが、私どもはこの問題について、委員御指摘のとおり、正しい理解、歴史的、法律的な理解を関係者あるいは国民に持っていただくということがぜひ必要だという認識をますます深めております。したがいまして、ロシア語の啓発資料等の作成も含めまして、ますますこの面での努力を加速化いたしたいというふうに考えているところでございます。
○岡田(克)委員 外務省を中心として、この問題に関するロシア共和国の国民あるいはソ連の国民に対する直接的なPRといいますか、働きかけについてさらに力を入れていただきたいと思うわけでございます。
 さて、ソ連の世論を味方につけるといいますか、日本に対して好意的な感情を持ってもらうためにも、ソ連国民にいろいろな局面で直接的に働きかけていくことが必要ではないかと思うわけでありますが、私が訪ソしました折に一つ要望として出ましたのが、ソ連の小中学校における日本語教育の問題であります。これは、ロシア共和国を初め幾つかの共和国で具体的に希望が出ているわけでありますけれども、この問題についての外務省の御見解といいますか、私は、ぜひ協力して、ロシア共和国あるいはソ連で日本語を勉強したいという小中学生がいるのであれば、それはどんどん日本の方で力をかして日本語が理解できる子供をつくっていく、ソ連人をつくっていく、このことが将来の日ソ関係に大きなプラスをもたらすと思うわけでありますけれども、この問題に対する現状と、今後についての外務省の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○兵藤政府委員 委員御指摘のとおり、ソ連国民に対して北方領土問題の理解を求めるに際しましても、広い意味での日本に対する理解というものが不可欠である、そのための日本語教育の重要性は仰せのとおりでございます。私どももそういう認識でこれからいろいろな努力もしてまいりたいと思います。
 現状を御報告申し上げますと、御承知のとおり、従来、ソ連の国内におきましては、日本語教育というものは少数精鋭主義と申しますか、特定の学校あるいは大学と直結した形での教育、具体的にはモスクワ、レニングラード、極東の三大学が中心となりました日本語教育、こういうシステムが展開されたわけでございますけれども、最近では日本語教育に対する関心がかなり高まってまいりました。それを受けまして、私どもも過去、大きなものでも三回、この問題についての調査団を派遣いたしております。第一回目は昨年十一片でございますが、モスクワ、レニングラードに日本語教育の現状を調査分析するための視察団を派遣する、また、ことしの一月でございますが、極東、具体的にはハバロフスク、ウラジオストク、ユジノサハリンスクに同様の調査団を派遣いたしたわけでございます。
 さらに、私どもが今までやってまいりました具体的な努力といたしましては、国際交流基金から専門家を派遣するというようなこと、あるいは現在ウラジオストクの高校に教員一名を出したわけでございますが、こういう教師派遣というもの、あるいは日本語を教えている先生を日本に呼んでくるという日本語教師の招聘というもの、これは昨年度は七名でございましたけれども、今年度は十七名の先生を呼んでいきたいということを考えております。
 さらに教材でございますが、日本語教育の教材が大変に不足をいたしております。そういうことで、私どもも日本語教材の寄贈ということを積極的に図ってまいりたいと思います。ことしは、モスクワ、レニングラード、極東地方六カ所を対象に日本語教材の寄贈を考えてまいりたいということを考えております。
 さらに、国際交流基金におきましては、十一月でございますが、日本におきまして「ソ連・東欧における日本語教育の現状と課題」という題のもとにセミナーを開催して、この件についての専門家の方々の御意見をさらにいろいろちょうだいをいたしたいというふうに考えております。
○岡田(克)委員 次の問題に移りたいと思います。
 私がお会いをしたロシア共和国の幹部の一人がこういうふうに言っておりました。中長期的には市場メカニズムの導入とかあるいは政治の面での民主化、そういったいろいろな課題があるけれども、我々にとって今一番重要なことはこの冬をいかに乗り越えるか、この冬生存できるかどうかである、まずこういう話であります。飢えとそれからエネルギー不足に対する不安の深刻さというものを痛感したわけであります。そういう中でその幹部は、例えば予想しないような非常な寒さとか、そういった予想しがたい事態が起こった場合に、サミット諸国がいざというときに助けてくれるという保証が与えられていることが非常にありがたいんだ、そういう話でありました。
 先ほど、既に松浦議員の質問の中でサミット諸国における検討状況についてはお聞かせをいただいたわけでありますが、特に日本に対して、子供用の児童食とかあるいは粉ミルクあるいは病人用の薬、そういったものに対する要望が出されたわけでありますけれども、この問題に関する外務省の御見解、できましたら外務大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○中山国務大臣 私ども日本政府あるいは日本国といたしましても、やってくる厳しいロシアの冬に対してできるだけの人道的な支援を行うという基本的な方針を持っております。G7の国ではそのようなことにつきましてもいろいろ協議が行われておりますけれども、我々隣国としては、できるだけのことをやるために九月の末に調査団を極東地域に派遣をいたし、食糧あるいは医薬品あるいは生活必需物資等どのようなものが現実に不足しているかということを調査をし、検討をいたしたい、このように考えております。いずれにいたしましても、大変な困難を抱えている状態の中で隣国としてはできるだけの協力をするというのが我々には必要なんだという認識を持っております。
○岡田(克)委員 ありがとうございました。次に、この北方領土問題というものを考えていく際にどうしても避けて通れないのが、南樺太あるいは千島列島全体の帰属の問題ではないかと私は思います。これは、前回当委員会におきまして参考人をお呼びして議論をしたときにも私、発言をさせていただいたわけでありますけれども、基本的な認識として、サンフランシスコ条約に署名をしていない以上、ソ連は、日本以外の諸外国に対して南樺太あるいは千島列島の地域に対する主権というものを主張できない立場にあるのではないかと私は思うわけでありますが、この認識についてお聞かせをいただきたいと思います。
○柳井政府委員 お答え申し上げます。
 ただいま御指摘のとおり、サンフランシスコ平和条約には南樺太、千島列島に関する規定があるわけでございますが、この二条C項におきましては、我が国は南樺太、千島列島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄するというふうに規定されているわけでございます。この規定におきましては、ただいま申し上げましたように、我が国としては放棄すると言っているのみでございまして、それではだれのために、どの国のために放棄するというところまでは書いていないわけでございます。御指摘のとおり、この南樺太、千島列島の帰属の問題は未定のまま残されているということが言えると思います。したがいまして、この平和条約の当事国でないソ連といたしましては、我が国を含めましていかなる国に対しても、この条約に基づいてその領有権を主張するということはできないわけでございます。
 このことは、サンフランシスコ平和条約の別の規定からも言えると思います。すなわち、この条約の第二十五条におきましては、この条約を締結しなかったいずれの国に対しましてもこの条約はいかなる権利、権原または利益を与えるものではないというふうに規定していることからも明らかであると言えると思います。
 また、サンフランシスコ平和条約の主たる起草者でございました米国も、この条約は日本によって放棄された領土の主権帰属を決定しておらず、この問題は、サンフランシスコ会議で米国代表が述べたとおり、同条約とは別個の国際的解決手続に付せらるべきものとして残されているとの立場を明らかにしている、そういう経緯もございます。
 以上のような次第でございまして、我が国はサンフランシスコ平和条約第二条C項によって南樺太及び千島列島を放棄しておりますので、これらの地域に対しまして発言する立場にはないと考えております。
 なお、この条項に言う千島列島に北方四島が含まれていないということにつきましてはもう御承知のとおりでございます。
○岡田(克)委員 この問題を議論するのはやや時期尚早であるというふうに私は認識しておりますけれども、将来、北方領土問題を解決するに当たっては、ソビエト側から見ると非常に重要な問題であるのではないか、こういうふうに思うわけであります。現にソビエトの学者その他からそういった発言も出ていると思うわけであります。先ほど局長の御答弁の中で、日本はもう既に放棄をしておってこの問題について発言をする立場にないという趣旨の御意見がありましたけれども、法律的にはおっしゃるとおりだとは思いますが、しかし、北方領土問題の解決に当たってソビエトの懸案を取り除いてやるということが日ソ間の関係に非常にいい影響を及ぼすのではないか、私はこういう気もするわけでございます。そういう意味で、当事者である日本が、特にこの問題はアメリカの問題であると私は思うわけでありますが、アメリカを中心とする各国とソビエトとの橋渡しをする、そういうことが将来的には非常に重要なことではないかと思うわけでありますけれども、この点についての御意見をお伺いしたいと思います。
○兵藤政府委員 北方領土問題との関連におきまして、南樺太、千島列島の最終的な帰属問題というものは、当然のことながらソ連邦におきましても関心のある問題であることは委員御指摘のとおりであろうかと存じます。ソ連側の今までのこの問題に対するいろいろな表現の中に、国境線の画定あるいは領土画定というような表現が出てまいります。その国境線の画定という中にはあるいはそういう認識も背後にあろうかという気もするわけでございますが、いずれにいたしましても、この問題は、条約局長から答弁をいたしましたように、日本政府はこれを永久に放棄したという立場でございますけれども、最終的に平和条約が締結されるという段階ではこの問題についてもいろいろな議論が出てくるであろうということは、私どもも念頭に置いている問題でございます。そういう中で、またこの問題をどう取り扱っていくかということも検討されるべき課題だというふうに考えております。
○岡田(克)委員 かつて東西ドイツの統一が成ったときに、その統一の半年前にはだれも東西ドイツがこんなに早く統一されるとは思わなかった。そして統一の一年後であれば、恐らくソ連の政治情勢が変わったことによって統一は不可能であ、っただろう、こういうふうに言われているわけであります。そういう中で、コール首相を初めとする西ドイツ側の政治家の決断というものが数少ないチャンスを物にして東西ドイツの統一につながっていったんだというふうに私は思っているわけでございます。そういう意味で、今我々の予想をはるかに越える速さで国際情勢は進んでいる。この中で、北方領土問題について後で、あのときが唯一のチャンスだったんだな、そういうことを言わずに済むようにしておくということが大事なことだと思います。もちろん、だからといって必要以上に焦ってもこの問題は解決できるということではありませんけれども、先ほど少し申し上げましたようないろいろな、今できる人道的な援助とかあるいは教育の問題とかあるいはソ連の国民に対する働きかけとか、そういうものを着実にこなしていくことによって、将来出てくるであろう数少ないチャンスを確実に物にしていくことが私は重要ではないかと思っているわけでございます。
 きょうはどうも本当にありがとうございました。これで私の質問を終わります。
○中西委員長 五十嵐広三君。
○五十嵐委員 兵藤局長さんは夕べソ連からお帰りになったばかりで、本当に御苦労さまでございます。
 先日、来日していたハズブラートフ・ソ連ロシア共和国の最高会議議長代行かエリツィン・ロシア共和国大統領の親書を海部総理に持参をいたしました。また、こちらにいるうちも非常に精力的にいろいろな発言をなされていかれた。殊に、エリツィン・ロシア共和国大統領がさきに提案をしていた北方領土の五段階解決論を短縮する提案をしていったわけであります。このアプローチについて日本政府はどのようにお受けとめになっておられるか、まずそのことをお伺いしたいと思います。
○中山国務大臣 先般来日された最高会議の議長代行ハズブラートフ氏と私との会談におきましても、総理あての親書をベースに率直にお話し合いをさせていただきました。この五段階の説を言われたエリツィン大統領の構想を短縮していくというお考えを示されたわけでありますが、私も、この問題を解決するのは、エリツィン大統領がかつて言われた次世代に解決するということはもうこの時点で考えるべきではない、現在の政治家がこの問題を解決するために決断をしなければならないと思う、それについてはどのように具体的なプログラムで話し合いをするか、そのプログラムを双方が腹を割って相談するような機会をぜひ持つべきである、こういうお話し合いをいたしました。私は、私がそのような考え方を持っているということをお帰りになったらエリツィン大統領にぜひお伝えを願いたいということをお言づけしたわけであります。今週末に参りますニューヨークにおいて予定されております日ソの外相会談におきましても、そういう点も踏まえて突っ込んだ意見の交換をいたしてみたい、このように考えております。
○五十嵐委員 この前、何かの報道で見たのでありますが、ソ連邦のパンキン外相もあの親書には目を通していた。そしてゴルバチョフ・ソ連邦大統領もあの提案を支持しているというふうに伝えられているのですが、連邦もあの共和国大統領の提案に賛同している、こういう認識でよろしいかどうか。
○兵藤政府委員 エリツィン大統領から海部総理に送られました親書につきましてはソ連邦外務省もこれを承知しているということは、私、モスクワにおいて確認をいたしてまいりました。当然、ソ連邦外務省、ソ連邦政府も承知の上で出されたものというふうに理解をいたしております。
○五十嵐委員 この前、訪ソしていたベーカー・アメリカ国務長官のエリツィン大統領との会談後の記者会見で、ベーカー長官はこう言っているわけであります。北方領土について実質的な提案があった、難しい問題だが、彼の提案は検討に値するもので日本政府に伝える、こう述べたようであります。したがって、日本政府には報告があったものと思いますが、その内容はどのようなものでありましたか。
○兵藤政府委員 ベーカー国務長官のモスクワにおきます今回の会談に関します内容につきましては、米側から通報を受けております。詳細は、米ソ間の話し合いでございますし、事柄の性質上ここで明らかにすることはお許しいただきたいと思いますけれども、一部新聞に伝えられましたように、日本政府に対してなされたのとは異なった、あるいは全く新しい何らかの提案と呼べるようなもの、あるいは考えの打診というものがあったというふうには承知をいたしておりません。従来私どもにいろいろ述べられました見解、五段階返還論も含めました見解がベーカー長官に対しても表明されたというふうに承知をいたしております。
○五十嵐委員 今度の五段階解決論の短縮提案については、これはもちろん前進でありますし、一つの壁を越えていくようなものであろうというふうに思いますから、歓迎し、評価をしたいというふうに思うのでありますが、しかし、そもそもこの五段階論については、提案をいただいた折から、我々は拝見してやはり問題を感ずるものがあった。それは、いわゆる期間の問題だけでなくて、五段階そのものについても問題が感ぜられたところであって、その点について若干御意見を伺いたいというふうに思うわけです。
 これは、一段階目の方は問題ないわけでありますが、第二段階において四島を日本の自由興業地帯にするというこの考え方については、日本政府としてはいかがですか。
○兵藤政府委員 このエリツィン大統領の五段階提案は、エリツィン氏がロシア共和国の大統領に就任される前の御承知の資格で来られたときに出された考え方でございます。私どもは、五段階の内容そのものについてロシア政府と立ち入ったお話をしたことはございません。したがって、今この五段階提案について公的の場でいろいろ論評するということは、大変微妙な時期でございますし、エリツィン大統領の提案ということでございますからエリツィン大統領のお立場もあろうかと思います。そういうことで、具体的な提案の内容についてここで一つ一つコメントを申し上げるということは、この段階では差し控えさせていただいた方がよろしいのではないかというふうに感ずる次第でございます。
○五十嵐委員 わかりました。したがって、その面は私どもの方で一方的に申し上げます。
 それから三段階目の軍事力を撤退するというのは、これはもう歓迎すべきことで何の問題もないわけですが、四段階目で十五年以内に領土問題を未解決のまま日ソ平和条約を締結するというように伝えられている面も、もちろんこれは問題がある。最終段階第五段階で、最終的な解決は四島の共同管理、自由地域化、日本への返還の中から次の世代が選択するということになっているわけで、これでは四島返還は一つの選択肢だというにとどまっているわけであります。したがいまして、この提案がそのまま仮に短縮されたということではどうなのかなという感じを率直に申し上げて私ども感ずるところなんですね。
 しかし、この短縮という意味を、そういうことではあるが、例えば二、三年後に自由興業地域にするという二段階目であるとか、あるいは四段階目に関しましてもこれを五段階目と一体のものとしてとらえながら、かつ、この四島返還を主眼として交渉するというようなぐあいにこの短縮というものをとらえていけば、つまり、それは単なる時間的な短縮ということだけじゃなくて、いわば修正短縮ということですね。また短縮するという意味は、そういうようなことが部分的にカットされるというかあるいはまた一緒にするというか、そういうことでなければ短縮にならないようにも思うわけで、私はそういうものなんだろうなと、その他の諸状況、いろいろな発言等からあわせてそういう印象で受け取っているのでありますが、そのような受けとめ方をどのようにお考えか、御意見があれば承りたいと思います。
○兵藤政府委員 先ほど申し上げましたように、ロシア共和国政府が今後北方領土問題に本格的に取り組みます際に、このエリツィン大統領の提案されました五段階論というものをどういうふうに位置づけられるのかということについては、若干不透明な点もあるわけでございます。したがいまして、この御提案そのものについての私の考え方をここで申し上げるということは差し控えさせていただきたいと思いますが、それを離れまして、ハズブラートフ議長代行か参りましての日本におけるいろいろな御発言、あるいはモスクワでのその他の方々のいろいろな発言というものを総合して判断いたしまするに、ロシア共和国政府、ロシア共和国外務省の中には、やはりこの問題は何とか解決をしなければいけない、決着をしなければいけない、しかもその決着をするタイミングは、今委員御指摘のような、五段階論に述べられているような時間の長さといいますか、そういうものではなくて、やはりゴルバチョフ大統領訪日の際の日ソの合意にございますような平和条約締結交渉の加速化の必要性、それが第一義的に重要である、むしろそちらの認識からこの問題に取り組みたいということで、期間の短縮あるいは早急な解決等々のいろいろな御発言があるというふうに受け取っております。まさにそれは私どものかねてよりの主張でございますので、一日も早いこの問題の解決というものを引き続き私どもとしては主張してまいるということであろうかと思います。
○五十嵐委員 そういう提案がなされた一方、九月九日、国民経済対策委員会のヤブリンスキー副議長が、これは共同通信への書面回答でありますが、一八五五年の日露通好条約に立ち返った四島返還を明言しておられるようであります。また、ハズブラートフ議長代行もそれらの発言とあわせて、領土問題解決の原則に第二次大戦の勝敗によらない国際法上の原則を挙げて、戦勝国、敗戦国の区別によらない国際法上の平等、正義、平和による問題の解決という表現をしているようでありますが、こういうことも非常に我々としては注目し、評価をしたいと思いますし、ハズブラートフ議長代行と一緒に来ておりましたロシア共和国のクナーゼ外務次官が、北方領土問題に対するロシア共和国の認識として、戦後の枠組みを決定したヤルタ体制の反省に立って見直す必要があるということのコメントをしているということ沌、我々はこの五段階論の問題に関連しつつ評価をしていきたいというふうに思うわけであります。
 最近の報道によると、ロシア共和国の新憲法改革第二次草案で注目すべき点が北方領土に関連して見受けられるようであります。修正案の第四部第十四章「ロシア共和国の構成と領土」の中の第九十条でありますが、修正案では「ロシア共和国の国際条約」との表現で、領土条約はロシア共和国が直接締結することを表明している。また、領土条約と国境線画定条約とを分けて、国境線画定条約の批准は「通常の手続による」というぐあいにしている。これは去年の春のときには非常に難しいことがあって、国民投票にかけるなどということもありましたから、我々はあのときには非常に心配をして見ていたのでありますが、今度の修正案ではそういうことは含まれていない。さらに、北方領土問題を国境線の画定というふうにみなすとすれば、条約の批准は憲法修正などの手続を経ないで法律レベルで済ますことができるというふうな解釈になると思うわけです。したがって、ここのところは手続上非常に大きな変化ということに我々は受け取れるのではないかというふうに思いますが、御認識のほどはどうですか。
○兵藤政府委員 今、委員御指摘のロシア国憲法の新しい憲法作成の作業の中の草案の検討段階で、今御議論のような議論が出てきているということは私も承知をいたしております。
 問題は、いわばソ連邦、あるいはソ連邦という名前になるかどうかわかりませんが、仮にソ連邦という言葉を使わせていただくとすれば、ソ連邦全体として先ほど申しました国際法主体というものをどう位置づけるか、その中で特に重要な国境線の変更の問題をどう位置づけていくかという問題は、ロシア共和国一つの問題ではなくてほかの共和国にもある問題でございます。それを全体として連邦と各共和国との関係をどうしていくのかというもう一つ大きな枠組みの問題があって、その問題がはっきりした段階でロシア共和国の今検討をされている憲法がどういうふうに、そのまま生きるのか、そうではないのかという問題があろうかと存じます。
 いずれにいたしましても、この憲法草案に色濃く出ているわけでございますけれども、ロシア共和国政府の中には、先ほどちょっと申し上げましたように、日ソ関係、わけてもこの重要な問題というものはロシア共和国が主体となって解決をしていきたい、そういう極めて強い意思があるということは事実であろうかと思います。
○五十嵐委員 我が国として領土問題等でソ連側と交渉する場合に、先ほどもちょっと議論があったと思うのですが、いわゆる窓口といいますか、どこと交渉する、交渉の主体はどこなんだということがあろうと思うのですが、ロシア共和国にしてみれば、それは私の方だという強い主張があると思うわけであります。お話しのように、その新しい連邦条約がそう遠からずできてくるのだろうと思うのですが、しかし、今日ももちろん積極的な領土交渉はしていかなければならない。それは共和国にも、あるいは連邦ともしていかなくてはいけないのでありましょう。まあ、その連邦がどういうやわらかさになるかというような、殊に領土問題等についての未確定の要素が随分あると思いますが、しかし、そういう中でやはり積極的な機を失しない交渉は、先ほども同僚議員のお話のようにどんどん必要だろうと思います。その場合、交渉の主体、主たるものとしてはやはりロシア共和国と積極的にしていく。いずれにしても、ここが大きな力を持つことになったことは八月革命以降明らかであって、そうしながら一方でもちろん連邦との話し合いもしていくどいうことであろうと思うのでありますが、それはそのように考えてよろしいものですか。
○兵藤政府委員 現在、ソ連邦の中におきましては、まさに過渡期と申しますか、委員御指摘のように、最終的な連邦と共和国の関係がまだきちっと条約あるいは憲法、法律の形で規定されていない状況下にあるわけでございます。実態は、先ほど御報告申し上げましたようにロシア共和国は、共和国が主体でこれからやりたいという意思の表明をしておられる。私どもも、ロシア共和国あるいはロシア共和国外務省の重要性は八月以前に比べて一段と大きくなっているという認識にあるわけでございます。今この時点でそれ以上に出まして、どちらを上に置くか下に置くか、あるいは優先させるかというような問題は、恐らくこれからの連邦と共和国の規定を見た上で判断さるべき問題であろう。今私ども日本国政府はソビエト連邦政府と正常な外交関係を持ち、通常の業務を行っているということの前提に立って、ロシア共和国とも十分に意思疎通を図りながら、両方といろいろなお話を続けていくのかというふうに思う。わけでございます。現に、先ほども御報告申し上げましたように、四島交流の問題につきましても両者の代表が出てこられまして、両者の代表と同じテーブルでこの話をさせていただいたというのが実態でございました。
○五十嵐委員 さっき中山大臣が、プログラムを相互に示し合って腹を割ってひとつ話し合いたい、そのことをエリツィン大統領にもぜひ伝えてほしい、こういうぐあいにお話しになったということで、非常に心強く思う次第であります。この前ハズブラートフさんとお会いになられました折に、五段階短縮論に関して、報道するところによると外務大臣は、解決を次世代に送るのではなく勇気ある政治家、責任者が今検討しなければならない問題だ、こういうふうに言っておられて、非常に我が意を得たり、そのとおりだという感じがいたしました。中山外務大臣らしい善言葉であったと思うのであります。その勇気ある政治家、責任者が必要だということに関しては、ソ連側もそうであろうと思うが、日本側もそうであろうというふうに思うのであります。この辺の御決意のところをひとつ承りたいと思います。やはり今非常に重要な新局面にあると思われますので、最近の状況を踏まえながら、領土に関する大臣の御見解を承りたいと思います。
○中山国務大臣 戦後四十六年目を迎える間、日ソ間には領土問題を解決したいという我々国民の悲願があり、さらに、その解決を経て平和条約を締結して日ソの友好関係を確立したい、そして北東アジアの平和と安定に努力しなければならない、これが我々の悲願でございました。しかし、一九六〇年以降領土問題は存在しないというソ連の考え方、それが今年のゴルバチョフ大統領が訪日された際に、両国間の領土問題を四つの島の名前を挙げて共同声明に出されたといったことで、改めてここで領土問題の解決が残されているということを双方が確認をした。ここで一つの事態が変わったわけであります。しかしその後、委員御指摘のように八月革命があって、ソ連の内部における政治状態は全く激変をしたという認識を私は持っております。そのような中で、新しいロシア共和国のエリツィン大統領が八月革命以前の昨年訪問されたときにお出しになった五段階説というものは、ソ連の国内情勢がこの八月以降大きく変わった中でまた新しい環境というものがソ連の中につくられつつあるということで、私は、今委員が御指摘のように、次世代の政治家の手にゆだねるのでなく現代の政治の責任者がこの問題を両国とも解決をすべきだ、決断をしなきゃならない、こういうことを申し上げたわけであります。
 私どもも、今回のこの新しい環境の中で長年の問題を解決して、新しい日ソの、あるいはロシア共和国との関係を構築して隣国としての友好というものを確立していく、こういうために、私は極めて重要な、貴重な時期に立ち至ったという認識を持っておりまして、外務省は挙げてこの問題の解決に全力を挙げて取り組みたい、そのような気持ちを、ロシア共和国のエリツィン大統領にもメッセージとして私からお伝えをしたわけであります。
○五十嵐委員 国連の折にパンキン・ソ連外相と会談をなされるということにはなっておるようでありますが、十月ごろモスクワで日ソ外相会談をパンキン外相はお考えになっておられて、既にその十月の定期外相会議に中山外相を招請済みであるというふうにも伝えられているわけであります。やはりいろいろな状況からいって大臣が当然行くべき折だというふうに思うわけであります。そうして、さまざまな新しい枠組みだとか、そういう新しい前進のための体制をここで大臣レベルできちんとつけていぐべきものだと思いますが、十月訪ソのお考えはあるかどうか、御意向を承りたいと思います。
○中山国務大臣 私は先般のロンドン・サミットで、まだベススメルトヌイフ外相が現職におられたころに、これからの日ソの外相の話し合いのスケジュールについて意見の交換をいたしたことはございました。そういう中で、次の外相会談をモスクワで行うということでは話をいたしておりましたが、八月革命以来、外務大臣もおかわりになられ、またロシア共和国のコズレフ外相も出てこられたわけでありますから、ここで、国連総会における日ソ外相会談において今後の日ソの交渉のプログラムというものをよく話し合ってみたい、このように私は考えております。
○五十嵐委員 ぜひひとつ早目に、十月訪ソ、外相協議に臨まれるように、そうして、今大臣がいろいろお話しになられましたその御決意を交渉の上で生かしていくように期待をいたしたい、こういうぐあいに思います。
 五段階解決論の短縮提案なとさまざまな新しい状況の中で、伝え聞くところによりますと、サハリン州のフョードロフ知事がかなり不快感を表明しているようであります。早期解決論を厳しく批判している、牽制をしているというふうに伝えられでおりまして、実は心配をしているわけであります。従前も領土問題に関しましては、サハリン州の管轄下にあるだけに、該当の知事としての立場ももちろんあって厳しい見解を続けてきているわけであります。私ども、超党派のサハリン友好議員連盟をつくっておりまして、こういう立場でも理解を深める懸命の努力をしていかなければいかぬというふうに実は思っているところでありますが、政府レベルでもこの辺のところへの十分な配慮、留意というものをしていってほしい。大事なところで水の漏れることのないようにする必要があると思うのです。
 十六日のタス通信によると、サハリン州のクリル地区で、つまり国後、色丹、歯舞諸島の地域でありますが、そのソビエト幹部会が国内外に対してアピールをしているのですね、我々は反対であると。ただ、よく読んでみますと、原則的に反対するという立場を表明しながら、安易な解決というのは人権に関する国際法の違反となると述べて、住民の生活権などを考慮すべきだという点について主張しているようであります。また、住民の中で電報作戦なんかでいろいろな幹部のところにどんどん出す。我が国でもよくやるところでありますが、そんなのが行われたりもしているということも聞きまして、全体的に現地に対する対応というものがやはり大事だな、これまでも繰り返して私どもが主張してきたところでありますが、そういう感が深いのであります。ぜひこういう点について十分な御配慮をいただきたいというふうに思いますが、いかがですか。
○兵藤政府委員 フョードロフ知事のお話でございますが、十四日付でございましたか、ラボーチャヤ・トリブーナ、極東の新聞でございますが、このインタビューのお答えの中でそういう批判をしておられるということは私どもも承知をいたしております。私もフョードロフ知事とお話をしたこともございますけれども、従来からこの問題について一つの意見を持っておられる。その持っておられる背景は、やはり知事御自身の管轄下の問題である、その管轄下の住民の意思というものを十分に踏まえることは知事として当然であるという御認識があることも事実でございます。また、サハリン州にはフョードロフ知事のほかに、アタショーノフあるいはザイツェフといった、いわば立法府の議長あるいは第一副議長というような方々もおられる。この方々はまたフョードロフ知事とは若干ニュアンスの異なる御発言をいろいろしておられるというように、いろいろな御意見があることも御承知のとおりでございます。
 その中にありまして、委員御指摘のように、まさにこの地域の、サハリン州の、あるいは現実に今住んでおられる四島の住民の意識、理解というものが大変に重要であるという認識は私ども全く同一でございますのであるからこそ四島島民との交流を一日も早く実現いたさなければいけないということで、私も一昨日まで交渉してまいったわけでございますけれども、私どもといたしましては、一日も早くこの交流を実現して、その辺の相互理解を直接肌で接しながら進めていくということが大変重要であろう。四島におられますソ連の国民の皆様方が自分たちの生活権というものをどうしてくれるんだという疑義を呈しておられるということはまことに当然でございますし、理解もし得るわけでございます。北方領土問題の解決というものが可能になります場合には、当然その問題は十分に考慮されなければならない問題だろうというふうに私どもも認識しているわけでございます。
○五十嵐委員 今な言葉にありましたように、そういう現地の指導者や住民の皆さんと十分な理解を深めるという意味で、今局長さん言及なされた北方四島とのビザなし交流問題は一つのテーマであろうと思うわけであります。ゴルバチョフ大統領がお見えになったときにそういう合意ができて、鋭意双方で事務的な、技術的な面を詰めてこられたというふうにも思うのであります。今回、訪ソ中の兵藤欧亜局長とパノフ・ソ連外務省太平洋・南東アジア諸国局長との会談で大枠の合意に達した、こういうぐあいに聞いているわけでありますが、この際、その合意のあらましについてお話しをいただけないかと思うわけであります。
○兵藤政府委員 この四島交流につきましては、中山外務大臣の指示によりましてできるだけ早くこの話を進めるということで、パノフ・ソ連邦外務省担当局長、それからイワノフ・ロシア共和国外務省の担当上級参事官とできるだけ早く合意に達するということで交渉してまいったわけでございます。その結果、いわゆる代表団限りでの大体の大枠について一つの考え方がまとまった。しかし、あくまでも代表団限りでございます。私も帰りまして外務大臣あるいは関係省庁と御協議をする必要がある、ソ連側もまさに同じ理由で、特にロシア共和国の代表の方はロシア共和国の中のいろいろな関係、これは現地も含めて協議をする必要があるということで、双方持ち帰ったということでございます。
 その際に、特にロシア共和国の代表から強い御要望が出たわけでございますが、これからこれについて協議をするので、その前に過早に内容が外に出るということは絶対に避けてほしいという要望が出ました。したがいまして、その内容についてはまとまったときに同時に公表するという合意をしてまいりましたので、大変恐縮でございますが、その中身については、今ここで御報告申し上げるということは御容赦いただきたいと思うわけでございます。
○五十嵐委員 わかりました。
 そこで、今のような経過で、今度の国連におけるパンキン外相と中山外務大臣との会談の折にこの問題は正式に合意を見る、こういうことと考えていいかどうか。それから、そうなりますと実現は、いわゆる初渡航はいつごろになるのか、それは十月でも可能なのか、あるいはけさの新聞ではパノフさんは一月であろうというような報道もぽんと入っておりました。ちょっと我々としてよくわからないのでありますが、この辺の見通しなどをお伺いできればと思います。
○兵藤政府委員 この双方持ち帰っております合意の大筋、これがいつごろ双方の国内関係機関の協議を経て最終的にクリアされるかという見通しの問題でございますが、私ども日本側はそれほど時間を要するとは思いませんけれども、ソ連側、特にロシア共和国の内部におきます協議は若干の時間を要するということでございました。それから、さらにこの大枠の合意に従いまして非常に細かい技術的な話を詰めるという話がございまして、これについてもかなりの詰めを行ってきたわけでございますが、若干残っておるところもございます。この両方が詰まりました段階で、当然のことながら外務大臣のレベルで最終的に、この場合に先方がどういう形でどういう形式になるかということは、まさにロシア共和国、ソ連邦という二つの問題がございますので形式についてもまだ最終的に固まっておりませんが、少なくとも日本国外務大臣と先方のしかるべき人、どちらかの外務大臣あるいは両方との間で正式に合意を見るというふうになろうかと思っております。
 こういうことでございますので、私どもはニューヨークの外相会談ということも当初は考えたわけでございますけれども、技術的に見てそこにはとても間に合わないだろうというお話でございました。私どもはできるだけ早くこのシステムを発足させて、第一陣ができれば氷結の前にでも行ければというお話はしてまいりました。しかし、これはソ連邦あるいはロシア共和国の中のこれからの協議の過程でございます。私がこれ以上具体的なことを申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
○五十嵐委員 ぜひひとつ早期実現を目指して御努力いただきたい。そして、こちらから行くのは当然でありますが、やはり向こうからも呼んで、日本を見てもらってみんなと話し合って、そして四島の人たちの深い理解も得るように、一日も早い実現を期待したいというふうに思います。そういう意味からも、一定の制限はやむを得ないと思いますが、その辺は余り細かい末梢的なところにこだわり過ぎたことにならないように期待したい。今のような趣旨からいいましてもそういう感じがするところであります。
 それと同時に、こっちから行くのもそうだが、向こうから来てもらう方が大事だという点に立ちますと、実際には経済的な負担能力が随分お互いに違うといいますか、しかも、こっちが向こうへ行って宿泊するのと違って、向こうからこっちに来て宿泊するのにはそれはけた違いの経費負担というようなこともあるわけで、うっかりすると一方的な、交流というのじゃなくて一方通行ということにもなりかねないという点もあろうと思いますので、この辺には一定の経済的な支援の配慮というものも必要ではないかというふうに思います。これはもちろん財政当局との協議等も必要になろうというふうに思いますが、ぜひ実体としてそういうものが成果を上げるような体制をおとりいただきたい、こういうぐあいに思っております。これは、御返事というよりは御要望を申し上げておきたいというふうに思います。
 モスクワで今月開かれた全欧安保協力会議の人権会議でパンキン・ソ連外相が、ソ連市民と外国人に対するソ連国内の移動制限を廃止するということを明言をしたということのようであります。これまでは、国防上の理由というようなことから相当大幅なソ連国内における旅行制限等があって、いわゆる閉鎖地域があったわけであります。これを解消するということは画期的なことであろうというふうに思うのですが、これはまだ公式に各国には伝達がないのか、あるいは伝達はないがそういうことになったとお聞きになっているのか、その辺ちょっとお伺いしたいと思います。
○兵藤政府委員 私どもも、今五十嵐委員御指摘のCSCE、欧州安保会議におけるパンキン外務大臣の発言は承知しておりますけれども、きょう現在、このことが具体的な措置として我が方の大使館に通報を越されたという事実はございません。恐らく意図表明をされたのかという気がいたしますが、いずれにいたしましても、そういうことであれば私どもとしてはこれを歓迎をいたしたい。私どもが課しております旅行制限は、よく御承知のとおり、ソ連側が課していることに対応すもものとして今までやってきておるものでございます。かなりソ連政府も緩和措置をとってまいりました。その緩和措置の流れとして、これを原則として撤廃をしていくということであれば大変に喜ばしいことであろうかというふうに考えます。
○五十嵐委員 何かお聞きしますと御予定があるようで、局長さんいいのですか。(兵藤政府委員「まだ大丈夫です」と呼ぶ)そうですか。
 我が国も、部分的にはかなり緩和されてきていますが、しかしいろいろあるのですね。例えばこの間、これは札幌総領事館の副領事なんですが、稚内の隣の猿払村というところで、あそこは年中行事でやっているのですが、インディギルカ号の遭難者の慰霊祭があって、そこに招かれたのだそうですよ。ところが、やはり外務省からだめだということで行けなかったそうです。しかしソ連大使館の人は行ったのですね。これまたどうして一体現地の副領事はだめで大使館からはいいのだろうということで、そんな話題も出ているのです。これは一つの例ですが、さまざまなことがまだある。これは領事館の人の話ですが、そうでない一般のソ連人の旅行等についても同じことだと思います。
 しかし、これはお互いのことですから、向こうも大幅な制限をしているうちは我が国も一定の制限はやむを得ないというふうにも思われるが、向こうの制限がなくなるということであれはこちらもその必要はなくなるというふうに思いますが、そう考えてよろしいですか。
○兵藤政府委員 委員のお考え、基本的にそのとおりだろうと思います。具体的に御指摘のケースについて、私、今ちょっと承知をいたしておりませんが、恐らく推察いたしまするに、緩和措置をとってまいりました中で、大使館の参事官以上の館員についてはかなり旅行制限の適用が緩和をされております。したがいまして、私どもも同じ措置をとっておりますので、あるいはそういうことが関係があったかと存じますけれども、いずれにいたしましても、私どもがとっておりますこの旅行制限というものは、これを導入いたしましたときから、ソ連政府の措置が続く限りそれに対応したものとしてとるということにいたしておる次第でございます。
○五十嵐委員 あと、そう時間がなくなってしまいましたが、対ソ支援の問題であります。なかなか大変な経済状態になっている。GNPでも前年比一〇%ぐらいダウンとか、あるいは食糧危機に関しても、穀物生産が昨年の二億三千万トンに対して今年は一億九千万トンぐらいであろう。従前も食糧危機について随分言われたのですが、もっと深刻な状況になるのではないか。こういう状況の中で今冬を間近に控えているということになるわけであります。
 ソビエトの経済再建であるとか民主的な体制の促進であるとかその安定化というものは、これはもう言うまでもなくソ連国内だけの問題でなくて地球的な大問題で、殊に隣人である我が国としては重大な問題であることは言うまでもないわけでありますが、この対ソ支援について、去年の十二月でしたか、三つぐらいの柱が示された。しかし、これの実動状況を聞いてみると、諸般の状況が経過としてあったことは承知していますが、どうもはかばかしいものではない。一億ドルに関してはそのままになっておるというごとであります。そこで、殊に八月革命後民主化がやや確定をした、より民主的な進化があった。あるいはバトル三国の独立てあるとか、あるいはキューバにおける軍事支援の撤去であるとか、あるいはまた先ほど来の議論に出ているような北方領土への新しい局面であるとか、さまざまに状況というのは変化してきて、そういうものもひとつ踏まえながら、積極的なソ連支援というものをやはり今考えていかなくてはだめな時期ではないかというふうに私は思うのです。今までの支援策がどうなっているということは、今時間がありませんので省略するとして、これからそういう意味でどうお考えになっているか。
 それから対ソ支援の対象、これも共和国になるのかどうかという点も一つあろうというふうに思いますが、その辺もどんなふうにお考えになっておられるか。あるいは共和国を対象にした場合に、今までは連邦をまとめて考えていたわけですが、しかしそれぞれの共和国に独立したものを考えていった場合に、ODAの支援対象になり得るのかというようなことについてお話をお伺い申し上げたいと思います。
 また、お聞きしますと、それぞれ調査団の派遣も各省にわたって御用意になっておられるようであります。その辺も、簡単で結構でございますが、御説明いただきたいと思います。
○兵藤政府委員 先ほど外務大臣からも御答弁申し上げましたように、この冬に向けて予想をされる厳しい食糧事情、経済事情、これは大方の見るところ、昨年、大豊作と言われた年でございましたが、昨年よりは厳しいであろうという状況認識があるわけでございます。それから、委員御指摘のように八月の出来事以来の大変な変化、その中におきます特にロシア共和国の指導者層から出てまいります日ソ関係、わけても平和条約締結問題についての積極的な姿勢というもの、これは昨年の状況とは異なった状況下にあるというふうに私どもも認識をいたしております。
 その中でどういう援助が適切であるのかということについては、政府の部内でこれからいろいろ検討してまいる課題でございますけれども、まず重要なことは現状を把握することである、実情を把握することである。これは、G7、先進国サミットの協議の中でもこの点が強調されたわけでございますし、どういう実情がということをつぶさにまず把握するということが重要だろう。モスクワで私もヤブリンスキー氏以下若干の方々とお会いをいたしたわけでございますが、この実情把握については、ソ連政府の中でも、一体どの程度深刻であるのか、どの程度の外国の支援が必要であるのかということについては、まだきちっとした見通しが立っていないということでございました。そうでございますからなかなか実情の把握は難しいわけでございますけれども、その中にございまして、委員御指摘のように少なくとも日本としては、地域のいわば分担という考え方はまだないわけでございますが、当然のことながらロシア共和国が中心になるであろう。ロシア共和国の中でもやはりウラル以東の極東、その中でも特に極東・サハリン地区が重点的に扱われるべきであろうという認識は私どももっとに持っているわけでございます。
 そういう認識に立ちまして、このほど、九月の二十日でございますが、田中大使を団長といたしまして、この中には農林水産省初め、厚生省その他関係省庁の専門の方々あるいは日本赤十字社、実際にこういう問題に携わっておられる方々を含めました大がかりな代表団を派遣をいたす予定でございます。なお、そこでカバーができないロシア共和国、例えばスベルドロフスクその他の地域につきましては、在ソ連日本大使館の館員を派遣いたしまして実情を調査をする話が既に進んでおります。一部はもう出かけておりますが、そういうことで、昨年の援助がどうなったかという追跡調査も含めまして実情の把握に努めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
○五十嵐委員 本当に申しわけないですが、通産省とそれから郵政省に対ソ支援に関連しておいでいただいていて、私の時間配分が悪くて御意見を伺う時間がなくなってしまいまして、深くおわびを申し上げたいというふうに思います。改めていろいろお伺いをいたしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 きょうはどうもありがとうございました。
○中西委員長 藤原房雄君。
○藤原委員 きょうは大変お忙しい中、大臣の御出席のもとに、限られた時間ではございますが、時間をとっていただきまして、そしてまた、今一番関心の深い北方領土問題を中心といたしまして御質問したいと思います。何点かに絞りましてお話を申し上げたいと思います。また、兵藤局長におきましては昨日お帰りになって早々ということで、それだけに非常に大事な立場にあろうかと思うのでありますが、率直な御見解を賜りたいと思う次第であります。
 最初に、ことしの四月、ソ連の最高責任者が日本の国に来日するということで、大きな期待、そしてまた大きな局面の打開、こういうことに非常に大きな国民の関心が持たれたわけであります。しかしながら、ソ連の政治状況、いろいろなこともございまして、大方の期待というものが、余りにも期待が大きかったということもございまして、なかなかその期待どおりには進まなかった、こういうお考えの方が多いようでございます。
 しかしながら、外務省といたしましては言うべきことを言い、そしてまた四島の明記、そのほかのこともあろうかと思うのでありますが、八月の政変といいますか、これはまさしくゴルバチョフが来日した以上の大きな大変な出来事であったと思いますし、北方領土返還に今日まで一億国民が大きな関心を寄せ、その返還運動を進めてきた者としまして、また国民としましてこの八月革命というものがどういう意味を持つのか、ゴルバチョフ来日以上の大きな変革をもたらすのではないか、こういう一つの大きな期待を寄せていることは間違いないことだろうと思います。そこに至るプロセスは非常に困難な、また時間のかかることだろうと思うのでありますけれども、現実的な問題としましては、おおよその国民はそのような大きな期待感を持っているのではないか、こう思うわけでございます。ゴルバチョフ来日に対する外務省の取り組みとその評価、そしてまたこのたびの八月の革命といいますか、この問題に対して、北方領土という観点から外務省としてはどうこれを受けとめていらっしゃるのか、御見解をお伺いしておきたいと思います。
○兵藤政府委員 ゴルバチョフ大統領の御訪日につきましては、今から振り返りますと、政治的には最も困難な状況下で訪日をされたという気がするわけでございますが、にもかかわらず、その中で日ソ間で合意されました内容は、三十数年の日ソ平和条約締結交渉のいろいろな経過を顧みました場合には、やはり一つの画期的な合意であったというふうに私は思っております。特に、歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島、この四つの島が平和条約交渉の対象であるということが、公式の、しかも最高指導者の間での文書に明記されたということは、これは、例えば田中総理の一九七三年の訪ソのときに口頭ではそこまで到達した、しかしどうしてもそれは書けなかったという事実があったわけでございますが、そういう事実に照らしましても、これが明記されたということはやはり画期的なことであったと思うわけでございますし、さらに、先ほど来お話が出ているわけでございますけれども、その領土問題について平和条約締結交渉を加速化する、できるだけ早くこの解決を目指すという認識、合意というものがこの中で明確に書かれたということもまた一つの重要な点であったであろうというふうに思います。
 最近、ソ連ではいわゆる革命という言葉が使われておりますが、八月以来の異変の中で一番重要でありますのは、いわゆる民主主義の根幹でございます法と正義というこの原則に従っていろいろなことを処していく、とりわけ国際問題を考えていこうという姿勢、その中でも日ソ間の領土問題、平和条約締結交渉を、まさにハズブラートフ議長代行の御発言にもあるわけでございますけれども、あるいはエリツィン大統領の書簡の中にもあるわけでございますけれども、法と正義というこの大原則にのっとってこの問題を解決していきたいという明確な姿勢が出てきたということは、日本としてもこれは高く評価し、これを歓迎する。まさにその上に立って、私どもは一日も早くこの問題の解決を図りたいというふうに考えるわけでございます。
○藤原委員 今まで三十数年、戦後以来四十数年にわたります領土返還に対しまして、この八月の出来事というのは一つの大きな転衡であった。法と正義の上に立って考えようということでありますから、これは一つの同じ土俵といいますか考えの上に立ってこの話し合いを進めることができる状況になったということだろうと思います。
 顧みますと、ゴルバチョフ大統領が大統領に就任いたしまして政権ができて以来、日ソ関係におきましては、八六年の一月から外相の定期協議が持たれまして、年に一、二回の頻度で開催を見ましたし、そのうちまた外務次官協議、平和条約作業グループ協議、または政策企画協議、こういう会合を頻繁に回を重ねて、日本の主張とソ連の当事者との間の話し合いが進められてまいりましたし、また、それらの結果によります実務協定等も締結されたという経過もあるわけでありますが、日本の主張すべきことはこれらの中で十分に主張しているのではないか。今お話ございましたこの法と正義の上に立ってということになりますと、これは日本の主張が今日までこれらの公式の場でつぶさにいろいろな角度から主張されてきた、こういうことの上に立って、同じ土俵で今後の諸課題についての解決の方途というものが話し合われる。こういうことでは、ゴルバチョフ政権ができて以来のこの数々の会議というものは、大変難しい交渉であったのかもしれませんが、それが大きな力になるときが来たのではないかという評価を私は持っておるわけでありますが、これからのことについてはいかがお考えでしょう。
○中山国務大臣 日ソの関係を改善したいという我が方の強い考え方、また、領土問題を解決しなければ真の日ソの友好が確立されない、こういったことで、今委員がお示しのようなあらゆる機会をとらえてこの歴史的な事実を主張し、貫いて今日まで参ったわけであります。ただ、御案内のように、かねてからソ連は領土問題は存在しないという姿勢をとっておりましたけれども、本年のゴルバチョフ大統領の訪日の機会に、この四島が二国間の解決しなければならない領土問題だという認識を明確に共同声明に出すといったようなことで双方が合意をするという画期的な事実が生まれた。さらに、八月革命が起こって新しいロシアの政治体制というものができる、こういう中でエリツィン大統領が海部総理に親書を送ってこられた。そして、五段階を次世代で解決したいということをさらに飛躍的に縮めて加速しよう、こういったことが起こったわけでございますから、私どもといたしましては、このような新しい国際政治情勢の中で、ロシア共和国、ソ連邦との話し合いというものをこれから積極的に日本政府もさらに加速をしていく必要があると考えております。
○藤原委員 過日は、ハズブラートフ・ロシア共和国最高会議議長代行ですか、来日されました。それぞれの立場の方々が八月以来、今までのかたくなな考えから法と秩序、法と正義といいますか、そういうものに準ずるという、私どもとしましては非常に好感の持てる発言がいろいろあるわけであります。確かに議長代行かいらっしゃっての発言につきましても、一つ一つ私どもに新しい局面の展開を思わせる発言があるわけでありますが、ただ、先ほど来、同僚委員の質問にもございまして御答弁ありましたが、外交交渉一つにいたしましても、連邦と共和国という関係の中で現在はどこと交渉することがその解決の方途になるのか、こういうことになりますと、非常にまだ確定的でないように受け取れるような御発言がございました。
 こういうことでちょっとお伺いするわけでありますが、ハズブラートフ・ロシア共和国最高会議議長代行という方が日本の国に参りまして、エリツィン大統領の親書を携えて海部総理にお渡ししたということでございますが、日本に参りますにはどういう立場といいますか、資格でそういうエリツィン大統領の親書を携えていらっしゃったのかということ。
 それから、外務省のソ連との交渉相手のことでございますが、報ずるところによりますと、パンキン外相のお話の中にも、十四日ですか、連邦と共和国で外相評議会というものを設置して、そこで連邦の外交権限を共和国に大幅に移譲することを初めとしまして、当面は共和国の全権代表を現在の連邦の大使と一致するといいますか、連邦と共和国との評議会のようなもの、外相評議会ですか、こういうものを設置して、そこで連邦と共和国との間の調和を保っていく、こういうことが報じられておるわけであります。実際、十四日ごろというと、兵藤局長は向こうにいらっしゃっていろいろな折衝に当たられた当事者でもございますから、そういう方向にこれが固まっていくのかどうか、その辺のことについてはいかがでしょう。
○兵藤政府委員 前半のハズブラートフ・ロシア共和国最高会議議長代行の御訪日でございますけれども、これは自由民主党が招待をされて、その自由民主党の御招待に応じて、まさに最高会議議長代行という資格で来日をされたというふうに私どもは承知をいたしております。今、ロシア共和国の中におきましては、最高会議が国権の最高機関であるというふうにうたわれていることは御承知のとおりでございます。したがいまして、その最高会議の事実上の最高指導者が来日されたというふうに申し上げてよろしいかと思います。エリツィン大統領の親書を携行されたわけでございますが、来日に先立ちましてその親書作成に当たっては、ハズブラートフ議長代行も含めましてロシア共和国の中でいろいろ検討された結果、親書の発出ということに至り、その親書を携行されたというふうに承知をいたしております。
 それから、二番目の御質問でございます連邦と共和国、特に外交権あるいは国際法上の主体の問題でございますが、基本的には、国際法上の主体は各共和国にあるということが言われているわけでございます。しかし、どこまでその主体性を貫いていくのか。
 例えば、国連加盟の問題がございます。これは今、バルト三国が独立をいたしまして十二共和国があるわけでございますけれども、国連の加盟につきましては、御承知のように、ウクライナ共和国と白ロシア共和国は既に国連に別々の資格を持っているわけでございますので、これを除くわけでございますが、十共和国が別々に国連に加盟するのかという議論が一時あったわけでございます。私がモスクワで聞きました範囲では、国連については一応統一的な代表というものが必要であろうということで、今のところはソ連邦が代表して国連でいろいろ活動を行う方向であるという話を聞きましたけれども、この最終的な決着も、先ほどから御答弁申し上げておりますように、連邦と共和国のほかのいろいろな権限の問題もございます。外交権に限りませんが、国防の問題も、まだ細部に入ってまいりますといろいろ不透明な部分がございます。経済はなおさらそうでございますが、そういう中で最終的に決めらるべきものというふうに考えております。
 外相評議会あるいは外相理事会と呼ばれるこの組織は、国際法的に各共和国が完全に独立しているということを前提にいたしまして、例えばECのような組織を頭に置きながらそういう組織をつくろうという一つの考え方が出てまいりまして、それに基づいて会合が行われたというふうに承知をいたしております。
○藤原委員 時間もありませんので、はしょって申しわけございませんが、エリツィン大統領の五段階返還論というのは、過日来日したときにこういう発言もあり、周知しておるところでございますが、この五段階返還論の日本政府の受けとめ方というのは公式には私どもお見受けしていないのですけれども、公式にはどういう位置づけといいますか、どういう受けとめ方で現在あるのか。またベーカー長官やいろいろな方々の発言で、これを加速させるとか、いろんなことが言われているわけでありますが、それが一つのシナリオといいますか、今後の話し合いを進める一つの大きな方向性を指し示すものなのかどうか、その辺は外務省としてはどうお受けとめになっていらっしゃるのですか。
○兵藤政府委員 エリツィン大統領の五段階解決論の公的な位置づけでございますが、正本政府がこのエリツィン大統領の五段階解決論を正式に提案として受け取ったということは当然のことながらなかったわけでございますし、今日までないわけでございますが、にもかかわらず、現職の大統領であるエリツィン氏から正式に海部総理に届けられた親書、あるいはハズブラートフ議長代行のお話の中でこの五段階解決論というものが言及をされているということは事実でございます。したがいまして、私どもも、エリツィン大統領のそういうお立場は十分に尊重する必要があるというふうに考えるわけでございますが、具体的な内容について今日本政府が具体的にいろいろ申し上げるということは、この段階では適当ではないだろうということも御理解をちょうだいいただけるのではないかというふうに存じております。
 しかしながら、ハズブラートフ議長代行以下、いろいろなロシア共和国政府の中の要路の方々が、いずれも一つのことでは共通している。つまり、平和条約締結を一日も早く急いで行う必要がある、日ソ関係を質的に新しい段階に持っていく必要があるという政治的な認識、政治的な意図表明というものは明確になされている。私は、そのロシア共和国内で示されている意思というものを高く評価し、またこれを歓迎をするというのが日本政府の立場であろうと思います。
○藤原委員 ソ連邦が激動の中にあって今後どういう方向に向かうのか、また各共和国の内政がどう展開するのかというのは、今は全く読めないといいますか、そういう状況の中にあるわけでありますが、北方領土問題を解決するために対ソ外交をどう進めたらいいのか、これは非常に慎重を要する一面、しかしながら、慎重に過ぎでそのタイミングを失ってはならないという一面もあろうかと思います。東欧の変革とか東西両ドイツの統一、次いで今回のバルト三国の独立、そしてまた国連参加、スターリンの拡張主義による不合理が是正された今こそこの拡張主義の犠牲となった北方領土の返還実現はまことにその絶好の機会だろうと思いますし、先ほど来、それぞれの立場で局長、大臣の答弁もございましたが、まさしく正念場といいますか、大事なときを迎えたと痛感するわけであります。また、アメリカのベーカー長官のモスクワでの発言、それからロンドン・サミットにおける各国の支持、こういうこと等も考え合わせますと、非常に大事なときだろうと思います。
 そういうときであるだけに、慎重である一面、やはりなすべきことは早急になさなければならない、こう思うわけでありますが、そういうことで、大臣は国連に参りまして演説をなさる、その間もソ連の外相といろいろコンタクトをとっていらっしゃるようでございますが、この対ソ交渉への外務大臣の、今こそ大事なときで全精力を傾注して取り組まねばならないという決意といいますか、その認識等についてお伺いをしておきたいと思うのであります。
○中山国務大臣 外務大臣として考えてみますと、今年一月の私のモスクワに訪問をしての外相会議、あるいは三月の東京における外相会議、四月のゴルバチョフ大統領の訪日、さらに八月の革命、そしてこの国連総会における日ソの外相会談というものを考えてみますと、日ソ間では今日まで、今年になりましても相当頻繁に意見の交換をやってまいりました。それで、四月の大統領訪日の際に、十五の協定文書というものの一応の署名ができたわけでありますが、私は、ソ連及びロシア共和国における新しいソ連の内政上の変化、こういう状況の中で、日ソの交渉は、もうとにかく双方とも一日も早く平和条約を結ぼうという意欲は強いわけでありますから、それに対してどのようなスケジュールで交渉を妥結に導くかといったようなことを、私は積極的に、しかも、あらゆる機会をとらえて日ソ間で意見の交換をすることが重要である、私どもは誠意を持ってこの交渉に当たり、国民の期待する平和条約締結の日が一日も早く来るように努力をいたしたい、このように考えております。
○藤原委員 時間もありませんので最後になりますが、大臣の強い決意はよくわかりますが、北方領土があるという現実、国民の悲願でありますこの北方四島の現実を時の総理にしっかりと見ていただきたいというのが地元の大きな声でありまして、これを機会あるたびに訴えているわけであります。海部総理はなかなか時間がとれないということでありますけれども、こういう非常に重要なときでありますので、総理もこの先どうなるのか、いろいろありますが、やはり時の最高責任者の方が最大の関心事でありますこの四島のそこに立ってしっかりと見定めていただくということが大事なことだろうと思います。大臣も現地にいらっしゃって強い要請があったと思うのでありますが、ぜひひとつ機会がありましたらこれらのことについてはお訴えをいただきたいものだと思いますし、地元の要請を実現するようにお働きをいただきたいものだと思います。これは要請として申し上げておきます。
 それから、総務庁にちょっとお伺いしますが、時間もございませんから端的に申し上げます。
 いよいよこういう大事なときを迎えたわけであります。明年度予算についても概算要求はもう八月に大体固まっておることだろうと思うのでありますが、ぜひ明年度の予算の中で、予算といいますか返還運動を初めとします活動の中で、この国際社会の大きな変革の中で今外務省が大きな取り組みをいたそうとしておるこのとき、総務庁といたしましても、強力な国内的な世論喚起ということ、また国際的な世論喚起ということ等もあわせて、活動方針、一活動の面で相呼応するものがなければならぬ、こんなことで総務庁でもいろいろ御検討いただいておると思うのであります。新しい明年度の予算面や活動のことについて御計画がございましたらぜひお伺いしておきたいと思いますし、予算は別としましても、こういう大事なときですから、各省庁それぞれの立場で総力を挙げてこの実現のために一歩でも二歩でも前進させる努力をぜひしたいものだ、こう思うわけでございますが、お伺いしておきたいと思います。
○小山政府委員 総務庁官房審議官の小山でございます。
 北方領土の返還がいまだ実現しない状況にございますけれども、日ソ交渉が現在進められております中で、北方四島の一括返還を求めるいわゆる国民世論の結集がますます重要になってき一でおる、このようにまず認識しております。総務庁といたしましては、国民世論の高揚を図るための施策の一層の推進に努めてまいることとしておりまして、平成四年度の予算概算要求に関しましては、充実すべき点、重点事項として三点お話し申し上げたいと思います。
 第一点目は、地域における草の根的な返還要求運動を促進するための、市町村における啓発活動でございます。第二点目は、我が国の将来を担う青少年への返還要求運動の継承、この観点に立ちました教育指導者に対する啓発活動でございます。第三点目に関しましては、新規にという観点が今の第二点目でございますが、元居住者等に対します援護措置の充実を図るために、関係する方々からの要望の強かった融資事業における融資枠の拡大、これにつきまして、従来の十二億円の枠から二億円増の十四億円という枠で要求をいたしているところでございます。これらの獲得に今全力を注ぎたい、このように思っております。
○藤原委員 終わります。
○中西委員長 古堅実吉君。
○古堅委員 最初に、日ソ領土問題について伺います。
 九月六日、ソ連国家評議会が、バルト三国、すなわちリトアニア、ラトビア、エストニアの独立を承認しました。バルト三国は、スターリン時代のソ連がバルト三国を独ソ秘密議定書でソ連の戦力圏に組み入れ、無理やりに併合したものが、その覇権主義の改められることもなく今日に至ったものであります。今回の独立の承認で、ソ連の覇権主義、大国主義が国際法と国際正義に反する誤りであったということが改めて示された、そういうことだと思います。政府の御見解を伺いたい。
○高島説明員 お答え申し上げます。
 今、先生御指摘のとおり、バルトの独立はソ連邦の方からも承認され、国連の加盟も実現したわけでございます。過去に歴史的な経緯があったことは御指摘のとおりでございますが、特に今回の独立につきましては、これらバルト三国の国民の自由な意思を反映し、平和裏に独立ができたということを政府といたしましても歓迎し、またこのような観点で、去る六日にこの三国を国家として承認した次第でございます。今後は、速やかにこれら三国と外交関係を樹立して友好親善関係を進めたい、こういうふうに考えている次第でございます。
○古堅委員 スターリン以来の覇権主義の遺産について申しますと、日本の正当な歴史的領土である千島列島及び歯舞、色丹の不当な占有という重大な誤りも根本的に正す必要がございます。しかしながら、ソ連は、今回のバルト三国の独立に当たって、三国併合を取り決めた独ソ秘密議定書の存在を初めて公式に認めはしましたけれども、その誤りを認めるということはしておりません。ソ連のこうした態度は、日ソ領土問題の正しい解決にとっても妨げの要因となるものであります。
 領土問題の根源は、スターリンがヤルタ会談で、対日参戦の条件として千島引き渡しを要求するという大国主義、覇権主義にありますけれども、米英がこのスターリンの要求に応じたことにより生み出されたものがヤルタ協定でありますし、それを前提に、アメリカの要求でサンフランシスコ平和条約二条一項で日本が千島を放棄した、そういう歴史的な経緯がございます。今年四月十二日の外務委員会でも私は質問いたしました。ソ連が国際法上の根拠としているヤルタ協定の不法性、不当性を今こそ正面切ってただすということなしには領土問題の正当な解決は前進せられない、そういうときだと思います。そういう立場から、政府がこの問題についてどういう対処をしようとされるか、御見解を伺いたい。
○柳井政府委員 お答え申し上げます。
 ただいま先生の御指摘になりましたヤルタ協定でございますけれども、我が国はそもそもヤルタ協定の当事国ではございませんし、また、我が国の受諾したポツダム宣言もヤルタ協定には何ら触れておらないわけでございます。しかも、この協定は当時全く秘密とされたものでございます。我が国といたしましては、何らこのヤルタ協定に拘束されるものでないということは明らかでございます。この協定が我が国の領土に関しまして何らの法的効果も持たないものであるということは当然であるというふうに考えております。我が国固有の領土でございます北方領土のソ連によると領がカイロ宣言に言う領土不拡大の原則に真っ向から背馳するものであるということは、我が国といたしましても従来からソ連に対しまして主張しているとおりでございます。今後ともこのような立場を堅持していきたいと考えております。
○古堅委員 先ほども同僚議員からの御発言にありましたが、今月来日したハズブラートフ・ロシア共和国議長代行か九日に海部首相と会談され、この中で、領土問題の解決の基本原則として、第二次大戦の戦勝国、敗戦国の区別によらないで国際法上の平等、正義、平和による困難な問題の解決を考えたいと語ったと報道されております。また、ヤブリンスキー氏のヤルタ協定を内容的に否定する発言も報道されています。ヤルタ協定とそれを基礎にしたサンフランシスコ平和条約の千島放棄条項こそ国際法と国際正義の原則に違反した、これは明白だと申さねばなりません。ハズブラートフ議長代行か国際法上の正義と平和を問題にするなら、カイロ宣言その他で繰り返しうたわれた領土不拡大の原則に違反した戦後処理の不公正を国際的な民主主義の道理に立って是正する、そういうところにこそ筋道があるのだと申さねばなりません。ヤルタ協定とそこにあらわれたソ連の大国主義の是正を要求することをせずして領土問題の本質的な解決は図れません。政府は、このような基本的立場を踏まえてあらゆる努力をすべきであります。御所見を伺いたい。
○高島説明員 お答え申し上げます。
 ただいま条約局長から御答弁申し上げましたように、これまでの日ソのあらゆる協議におきまして、私どもは、ヤルタ協定に日本が法的に拘束されるものではないということを強く主張してきておりますし、また、ソ連の北方四島の占拠がカイロ宣言に言う領土不拡大の原則にも反するものであるということも主張してきているところでございます。そういう意味で、今回、ハズブラートフ・ロシア共和国最高会議議長代行か総理、外務大臣との会談におきまして、今後の日ソ、日露の関係を規定する原則、あるいは平和条約を締結する際の原則の問題として法と正義が重要な基盤になる、こういう発言があったことは、私どもとしては非常に重視し、かつまたそれを評価しているところでございます。今後ともそのような考え方に立って、法と正義が日ソ関係において実現されていくような方向で努力していきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
○古堅委員 次に、在比米軍基地閉鎖に伴う在日米軍基地の強化問題について伺います。
 フィリピン上院は、在比米海軍スビック基地存続を決める新条約の批准を否決しました。これによって、在比米軍基地の条約上の根拠となってきた一九四七年調印の米比基地協定が失効することになりました。
 ところで、去る五月三十日、後藤利雄駐比日本大使が地元経済人の会合で講演し、基地交渉が長引けば投資意欲を損なうなどと圧力をかけたのに続いて、七月二十二日、ASEAN拡大外相会議で米比基地交渉に言及された中山外務大臣は、「米国の存在がこの地域にとって不可欠」と演説されました。在比米軍基地を存続させる立場からこれまでこのように関与してこられた政府として、今回のフィリピン上院の決定についてどういう見解を持っておられるか、大臣から伺いたいと思います。
○中山国務大臣 在比米軍基地の存続にかかわる米比間の条約批准問題は、第一義的には米比両国の問題でございますので、今回のフィリピンの上院による本条約の批准否決につきまして立ち至ったコメントを行う立場にはございませんが、我が国としては、基本的には、米軍のアジア・太平洋地域におけるプレゼンスはこの地域の平和と安定にとり重要であると考えております。いずれにいたしましても、フィリピン政府は国民投票という形で条約批准に向けての努力を行うことといたしておりますので、我が国としても引き続さ事態の推移を見てまいりたいと考えております。
○古堅委員 フィリピンの民主的な国民の闘いも反映しながら今回の上院の在比基地協定が否決されるということに至ったわけで、アメリカの立場に立ち、アメリカの意向を代弁するような立場でフィリピンのそういう闘いに圧力になるようなことは一切やめるべきです。きっぱり、そういう態度をとらぬよう強く要求しておきたいと思います。
 在比米軍基地が閉鎖されたことに伴って、在日米軍基地がその肩がわりの役として強化されるのではないか、そういう懸念が広がっています。八月三十日の外務委員会で、在比クラーク基地の閉鎖に伴う嘉手納基地の強化の問題について質問いたしました。嘉手納基地への肩がわり移駐ということになるのではないかということについて、はっきりしたことを言いませんでした。しかし現実の問題としては、既に航空機の一部が嘉手納に移駐し任務につく、そういう事態が明確にされております。外務省として、その後のクラーク基地の閉鎖に伴う嘉手納基地との関係、何らかの情報の交換あるいは相談、それらにかかわることがあったかどうかお聞かせいただきたい。
○松浦(晃)政府委員 先生の言及されました八月末の外務委員会で御説明をして以降、日米間におきまして具体的な動きがございません。繰り返しになりますけれども、今先生が言及されました嘉手納におきます米軍の第六〇三空輸支援群の増員は一時的なものであるということでございまして、当時御説明いたしましたように、クラーク基地の閉鎖に伴いますクラーク基地が持っておりました機能の再配置に関しましては、現在米側において検討中というふうに承知しております。
○古堅委員 検討中ということで、繰り返し繰り返しそういう立場だけはとっておりますけれども、これだけ沖縄の県民を初め国民の立場から、肩がわりの基地強化になるんじゃないかと重大な関心を持っていろいろと聞いておるというのに、政府がこの問題について積極的にかかわってそういうことをさせないような立場での対処というものも何一つ見えるところがない、これは許せないものがあると思います。
 スビック基地が閉鎖される、そういう方向にもなろうかと言う人もいますが、日本の横須賀、佐世保基地が艦船の修理機能の一部を引き受けることはあり得る、そういうことを共同通信の緊急インタビューにスタックポール米海兵隊参謀次長が答えています。何か、かかわって相談がございますか。
○松浦(晃)政府委員 スビック基地の今後に関しましては、先ほど中山大臣から御答弁されましたように、フィリピン政府は、今後、国民投票にかけるという形で批准に向けてさらに努力をするということでございますので、私どもといたしましては、スビック基地からの米軍の撤退を前提といたしました具体的な議論をするのは時期尚早ではないか、こういうふうに考えております。
○古堅委員 冷戦構造の崩壊が言われます。ソ連の脅威を最大の理由にしてきた日米安保条約、米軍基地の存続を認めるそういう立場というのがもう理論的には崩れ去っています。そういう中で在比米軍基地の閉鎖に伴う肩がわりを、クラークは嘉手納に、スビックは横須賀にということでどんどん日本に持ち込まれる危険性があるということに対して、そういうことは断じて許してはならぬ、そういう立場から政府の対処を強く求めておきたいと思います。
 最後に、今沖縄の恩納村で、都市型戦闘訓練施設の同村内移設をめぐって大問題になっています。安富祖というところに今の都市型戦闘訓練施設を移設しようという動きがあるからであります。当然のこととして、同村内だけじゃなしに沖縄のどこへ持っていっても、あの狭い沖縄の地域で安全な米軍施設などというものが演習場について言えば確保できるはずがありません。ですから、地元の人々はもちろん、向こうの村長、村議会、沖縄県当局挙げて、それは許されぬ、我々が要求しておるのは、どこかへの移駐ではなしに都市型戦闘訓練施設の撤去そのものだ、このように声を大にして叫んでいます。その地元沖縄の要望にこたえて、外務省としても、こういう危険きわまりない演習場を移設ではなしに撤去させる、そういう方向で折衝すべきです。御意見を伺いたい。
○松浦(晃)政府委員 先生御指摘の恩納村の都市型訓練施設に関連いたしまして、一般論として最初に二点申し上げたいと思います。
 第一は、米軍は日米安保条約目的達成のために我が国に駐留しており、そして必要な訓練を実施しております。この米軍の訓練のために提供されている施設、区域の中で米軍が必要な訓練施設を建設し、そしてこのような施設を利用して必要な訓練を実施するということは、地位協定上認められた米軍の権利であるということを申し上げたいと思います。
 それから二番目に、同時に申し上げたいことは、しかしながら、こういう施設、区域の存在と米軍の活動によって生じます。辺住民の方々への影響についてですけれども、それはできるだけ最小限にとどめられ、可能な限り地域住民の方々の理解と協力を得ていくことが重要と私どもも考えて、そういう見地で米側ともいろいろ話をしてきておることでございます。
 先生言及されました具体的な都市型訓練施設についてでございますけれども、私どもは、平成二年三月に西銘前沖縄県知事からの収拾案に基づきまして、恩納村長、恩納村村会議員の方々の御了解も得た上で、移設ということでその検討を進めてきておるわけでございまして、したがいまして、平成三年度の予算にも必要な経費を計上いたしまして、県それから地元の方々と十分調整を図りつつ他の場所への移設のための作業を今後とも進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
○古堅委員 もう時間が参りましたので質問というわけにはまいりませんが、地元はみずからの命と安全を守るために切実な思いをかけて、絶対許せぬ、そういう態度をとり続けております。そういうことに逆らい、既に安保条約の基礎となった冷戦構造なども破れ去り、それ以上基地を強化する何らの理由というものもない。こういう中から、アメリカの意向だけに従って国民である現地住民を力ずくで抑えっけるなどということは絶対許せぬ。そういう立場で対処することを要求して、終わります。
○中西委員長 小平忠正君。
○小平委員 大臣には大変お忙しいところ、まことに御苦労さまでございます。
 八月のソ連の政変は、思い起こせばこれは急な出来事ではなくて、東欧のああいう民主化から始まって東西両ドイツの統一、こういう流れの中であのような政変があった。これまでソ連という国は共産主義といういわゆる一つの統制のもとに、言論も抑えられてああいうような形で今日まで来た。しかし、クーデター以降、まるでせきを切ったようにいろいろな意見が出てきて、あの十五の共和国のうち既にバルト三国は独立をし、そして残るほかの共和国は、それぞれの地域で民族問題あるいは宗教問題等々いろいろな問題にかかわる中でそれぞれの自己主張を通して今大きく動いてきておる。こういうことで、今までは北方領土という問題はその地域の問題、我が国とソ連の極東のそういう地域という問題でありましたけれども、しかし、ここに来てこの北方領土という問題は、ソ連全体の動きを今まで以上によくチェックをしながら、監視をしながら進めていかなければならない。そんな意味においては、これから外務省の与えられた立場での責任といいますか役割も非常に大きいものがある、私はこのように思う次第でございます。
 そういう中で、先般、エリツィン・ロシア共和国大統領のいわゆる五段階論というもの、そういう発言がありましたけれども、しかし、その後来日したハズブラートフ氏の話の中でもあれを短縮するとか、あるいは連邦の外務省筋からはロシア共和国と交渉していただいても結構だ、こんなような発言もあったり、いろいろ動きがございます。そういう中で私がまず大臣にお伺いしたいことは、北方領土問題について、あたかもソ連邦とロシア共和国の二つのどちらを交渉の窓口にすべきか、このようにとらえがちでありますけれども、前段私が申し上げましたように、例えばつい先日にはカザフ共和国のナザルバエフ大統領は、ロシア共和国のこのような行為に対して非常に反感を持って発言をしておる。その要旨は、例えば北方領土問題に触れて、ロシア共和国が交渉当事者になるのは道理にかなっていない、さらには、連邦の領土は不可分である、こうまで言い切って牽制をしている。そういう中でこれから自己主張がいろいろな地域で出てくると思います。
 そういう中で、まず大臣、これからの動きの中でどこにその外交権が真にあるのか。交渉の窓口を一カ所に決めつけることは大変な危険性があると思いますけれども、しかし外交権はどこにあるのか。今の段階では結論は出せないと思いますけれども、こういうことを踏まえて、これからの大臣のこの問題に対する基本的な御姿勢をまずお伺いしたいと思います。
○中山国務大臣 本年一月のモスクワにおける日ソの外相会談におきまして、ソ連邦の外相であるベススメルトヌイフ外相と私との協議の際にもロシア共和国の外務大臣は同席をされておられました。また、今年三月、東京で開かれました日ソ外相協議の際にも同じように同席をされておりましたが、発言というものは特になかったわけであります。四月のゴルバチョフ大統領訪日の際にも同行されておられます。兵藤欧亜局長が昨日モスクワから帰ってまいりましたけれども、今回、ソ連の連邦の外務省あるいはロシア共和国の外務省の責任者といろいろ協議をいたしておりますが、先ほども他の委員の御質問にお答え申し上げましたように、ロシア共和国の発言権が強くなりつつある印象を受けたと言っております。私もそのように報告を受けております。
 今後の外相間の協議というものは、もちろんソ連邦の外相ともやらなければならないし、ロシア共和国の外相との協議もやっていかなければならない。しかし、極東地域を直接共和国として支配しているといいますか、そのような立場にあるロシア共和国とは、相当突っ込んだいろいろな話し合いが必要になってくる可能性は十分あると認識をいたしております。
○小平委員 私もその姿勢はよかろうかと思います。しかし、けさの新聞の報道によりましても、シラーエフ・共和国の首相ですか、これが国民経済委員会の議長に就任ということで首相も辞任する、そういうような報道も届いておりますが、ロシア共和国自体の中身についてもいろいろと今までベールに包まれた国であります。したがって、その御姿勢で進まれることは私もよろしいと思いますけれども、いわゆる人的な動きが連邦とまたがっていろいろとあると思いますので、そこのところをひとつよろしく進めていただきたい、こんなふうに思う次第であります。
 そこで、今問題になっております対ソ支援のことでありますけれども、八月のクーデター以前にゴルバチョフ当時の大統領が、今も連邦大統領ですけれども、ロンドン・サミットにも出席をいたしましていろいろな要請をした経緯がございますね。その中で、ドイツ、フランス、イタリア等のECはヨーロッパの中でソ連に地続きである、そういう地理的要件からも対ソ金融支援に対しては積極的な態度を表明いたしました。しかしアメリカ、イギリス、また日本などは慎重な態度を示した。こういう中で、その後、八月十九日ですか、クーデターが勃発した。これはいわゆる三日天下という言葉が日本にありますけれども、まさしく三日天下で成功しなかった。その後、今お話ししましたようにソ連の急速な民主化がうなりを立てて進んでいる、こんなふうに想像できますが、その中で、先般来日をいたしましたハズブラートフ・ロシア共和国最高会議議長代行ですか、この方が我が国に対して八十億ドルから百五十億ドルですか、そういう多額の援助を要求した。
 そこで、政府は今まで政経不可分という大原則で当たられてきました。そういう中でこれらとの問題。また私はここで同時にお聞きしたいことは、アメリカのベーカー国務長官もあのように積極的にソ連に対しての支援、協力の発言をされている。そういうものにすぐお返しするかのようにソ連はキューバからの全面撤退をする。こんなような外交のいわゆるギブ・アンド・テークといいますか、そういうようなことが今行われている。そういうところで我が国としては、先般湾岸戦争のときに百億ドル以上のああいう多額な拠出をいたしました。しかし、残念ながら、これだけのいわゆる国民の血税を使ってこれだけの協力をしてきながら、国際舞台での評価は御承知のようにいま一つだった。これ以上私は申し上げません。
 そういうことから思い起こしまして、日本が今日これだけの経済力の中で、アメリカやEC諸国からいいますと、日本に期待する、要求するものも、ソ連が日本に期待すると同様に大きなものがあると思います。しかし、そういう中で非常に難しい問題がかかっている。しかも、ここ最近の日本国内の世論の動向は、ソ連に対して多額な援助をするのはまだ時期尚早である、こんなふうな意見も強い、こう私は聞いております。そういうところで大臣考えられることは、ソ連に対して多額の援助をすればそのお返しとして北方領土が返ってくるかもしれない、しかし、いろいろな面で問題もある。そういうことを考えますときに、現実にソ連の経済、ソ連のいわゆる国体を立て直すために、ソ連はのどから手が出るように日本の援助を欲しかっていますね。そういう中で、今私がいろいろ申し上げましたことを踏まえて、対ソ支援について大臣はどのように今後考えていかれるのか、そこのところのお考えをお聞きしたいと思います。
○中山国務大臣 対ソ金融支援につきましては、昨年のヒューストン・サミットの際に、既にドイツ、イタリーあるいはフランス等は熱心に対ソ金融支援について発言をいたしておりました。また、イギリス、アメリカ、日本は慎重論を説いておりましたが、その結論として、国際的な機関であるIMFとか世銀とかOECDとかEBRDの経済専門家をソ連に派遣してその調査の結果を待とうということでございましたが、昨年の十二月に出てまいった調査の結果では、大量の資金援助をやることはソ連の経済にとって大きな効果を及ぼさないというのがこのレポートの一項であります。もう一つは、しかし技術的な支援は積極的にやるべきだ、あるいは人道的な援助もやるべきだということで、実は日本政府もそのような姿勢を堅持してまいりました。また、今年のロンドン・サミットにおいても、そのような考え方で七カ国は合意したわけであります。
 私どもは、ソ連に対して政経不可分という原則を持っておりますけれども、我々は、ソ連が来るべき冬に大変な困難に遭遇するということも聞かされております。私はかつて衆議院の予算委員会でも五十嵐委員の御質問に答えまして、チェルノブイリの原子力発電所の被曝者の援護のために日本は蓄積された能力と資金を提供しよう、こういうことでWHOに二十七億円の機材を供与いたしますとともに、十億円の食糧及び医薬品の援助を行った、そういうふうな努力をしてまいりました。今年の冬は大変難しいソ連の冬がやってくる。昨日も、欧亜局長がモスクワから真っすぐ帰ってきまして私が一番先に尋ねたことは、ソ連の国民生活の中で、モスクワに肉はあるか、あるいはバターはどうか、食糧事情はどうかということを尋ねたわけであります。現状では肉は思ったよりも多く出回っている、バターも十分ある、こういったことでございましたが、伝えられる食糧の収穫量、農産物の収穫量は今年は大きな落ち込みがあると言われておりまして、私どもは、大変難しい事態にソ連の国民の皆さん方が遭遇するといった場合には、人道的な観点から、特に我々は隣国でございますから、思い切った大規模な人道的支援を行うことが必要であろう、このように考えております。
○小平委員 今、たまたま食糧のことについてお話がありました。確かにあの酷寒の地帯を抱えたソ連のことですから、どうやってことしの冬を無事に乗り切るかという大変な問題を抱えていると思います。そういう中で、我が国としても、食糧の緊急援助といいますか、こういうものが隣国として今まさしく大臣がおっしゃっていたとおりだと思います。
 そこで私は思うのでありますけれども、九月から例のウルグアイ・ラウンド、農業交渉も再開されました。今までなかなかラウンドの決着が年をまたいで、しかも非常に今の状況でも難しい中にあります。その中でECあるいはアメリカ、さらにはケアンズ・グループ、これらはいわゆる農産物余剰国でありますね。特にソ連の政変以来、EC諸国は早速食糧援助に名をかりて、信用供与というのですか、そういう形をもって国内の余剰農産物をさはこう、そんなようなことが見受けられます。しかし、我が国の中で食糧安保論といいますか、こういうことを今まで主張してきたのでありますけれども、こういうことを見るにつけて、食糧というものはやはり工業製品とは違って国内で自給できる体制をつくるべきである、このことは私は正論であると思います。
 そういうところで、私は今、質問というよりは大臣に強く要請したいことは、これからの北方領土返還を含めて、いわゆるソ連との関係の中において、たまたま今ラウンドの農業交渉が継続されておりますが、ここで農水省とも連携をとって、食糧援助を考えながら、我が国のいわゆる国益が損なわれないように踏まえていってもらいたい、このように大臣にこれは質問というよりは強く要請をしておきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 時間も迫ってまいりましたので、次に、北方領土の四島の島民ですか、いわゆるソ連人の意識調査を過日、北海道新聞社がサハリンの現地紙に委託をして、サハリン州と北方領土四島の住民を対象にアンケートをした、そういう事実がございます。これは昨年十二月、まだ冬の段階なのですが、クーデター以前の、しかもゴルバチョフ大統領が来日する前の時点でありますけれども、その調査の結果によると、あの時点でも、特に四島を現状のままで日ソ平和条約を締結するという意見が七割に達している。これはいわゆるサハリン州全域ですね。しかし、四島に住む回答者に限ってそれを見ますと、これはわずか二万五千人ぐらいの四鳥での人口でありますけれども、それを見ますと、現状維持が五三%で約半分ですね。四島返還をはっきりと答えた人は一二%、それから歯舞、色丹は返還、残る二島は日ソの共同管理とする意見が五%、さらには、住宅をつくってくれるならば返還してもいいという意見が四%、極端な人は、全千島を返還しろという意見が三%、こんな結果が出まして、これはいずれも、四島居住者の方の意見の方がサハリン州全体の意見よりは北方領土返還の数字が上回っている、そういう結果が出ました。そういう中で、四島とも日ソ共同管理をしたらいいという一八%の意見を含めると、四島がソ連領でなくともよいという意見が約四割を超えているという、まことに興味津々なアンケート結果が出たわけであります。
 ということは、今こういうソ連の政変の後、ソ連の国内でも、バルト三国の独立を踏まえて、北方四島はやはり日本の固有の領土であって返すべきであるという意見が非常に出てくる中で、我が国としては、これはまだそんな手放しで喜べる状況ではありませんけれども、イフ、仮定の話として、返ってきたらこの四島をどのようにつくっていくんだ、こういう日本国内での青写真というかビジョンづくりをもう進めていって、しかもそれをもう少し出していって、国内はもちろん、ソ連に向かっても、特にサハリン州に向かってもそれをもっと具体的に出していってもいいのではないか。
 そして一番大事なことは、サハリン州知事を頂点にする北方四島の住民の皆さんに不安感を与えないように持っていくことが、これが住民感情を味方にだんだんと引き寄せていくという意味からも大事なことである、こんなふうに私は考えるわけでありますけれども、共存共栄というか、共産主義という大きなあれは取り除かれました。したがって、隣国、友人として、今後、この北方四島を我が国の領土として位置づけしていくためにこのようなビジョンづくりをどのように進めていかれるのか、このことをお伺いして、時間も来ましたので私の質問を終わりたいと思いますので、よろしくお答えいただきたいと思います。
○中山国務大臣 かつて私が鈴木内閣で北方領土担当の総務長官をいたしておりまして、北方領土の日もそのころ実は閣議で決めたわけでございますが、そういう私の経験から、当時いろいろと議論になった問題は、北方領土に住まっておられた旧島民、この方々が北海道にたくさん移転をしておられるわけでありまして、この方々のいわゆる権利の問題というのが日本の現在の国内の問題としてあるわけでございます。そういう観点からも、また、北海道地域周辺の漁民の方々にも生活を確保するという意味から、政府はその当時いろいろと資金的な手当てもいたしたわけでございますが、領土がいよいよ返還された場合にどのような考え方でやっていくのかという問題も、政府としては当然これから考える必要はあろうかと思います。
 一つの問題は、ここに駐留しているソ連軍がどのような形で撤退をするのか、これは非常に大きな問題でございまして、これは、北方領土がソ連の領土として占有されていたというこの四十数年間の歴史的な事実とは別に、これから領土問題が解決した場合にこの駐留ソ連軍がどのようなプロセスでソ連の本土に移転をするのか、ここらの点も、これから日ソ間の外相協議で当然詰めていかなければならない問題でございます。また、返還に当たって、そこに居住しているソ連の人たちの住民としてのいわゆる生活権はどうなるのかといったような問題もこれから協議をしていかなければならない問題であり、住民の意思もある機会には聞く必要も当然出てくるわけでありまして、そういうことも踏まえて、政府としては、関係各省と協力しながらこれからのあり方というものを研究して進めてまいりたいと考えております。
○小平委員 終わります。
○中西委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四十一分散会