第123回国会 本会議 第28号
平成四年五月二十八日(木曜日)
 議事日程 第二十三号
  平成四年五月二十八日
    午後一時開議
 第一 国際海上物品運送法の一部を改正する法
    律案(内閣提出、参議院送付)
 第二 職業能力開発促進法の一部を改正する法
    律案(内閣提出、参議院送付)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 加藤万吉君の故議員山村新治郎君に対する追悼
  演説
 議員請暇の件
 日程第一 国際海上物品運送法の一部を改正す
  る法律案(内閣提出、参議院送付)
 日程第二 職業能力開発促進法の一部を改正す
  る法律案(内閣提出、参議院送付)
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法
  律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び
  私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する
  法律の一部を改正する法律案(竹村幸雄君外
  十名提出)の趣旨説明及び質疑
    午後一時二分開議
○議長(櫻内義雄君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
○議長(櫻内義雄君) 御報告いたすことがあります。
 議員山村新治郎君は、去る四月十二日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 同君に対する弔詞は、議長において去る四月二十七日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
    〔総員起立〕
 衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され さきに商工委員長議院運営委員長の要職につき また再度国務大臣の重任にあたられた予算委員長議員正三位勲一等山村新治郎君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます
    ―――――――――――――
 故議員山村新治郎君に対する追悼演説
○議長(櫻内義雄君) この際、弔意を表するため、加藤万吉君から発言を求められております。これを許します。加藤万吉君。
    〔加藤万吉君登壇〕
○加藤万吉君 「青葉になりゆくまで よろずに ただ 心をのみぞ悩ます。」兼好法師は徒然草の中で春のうら悲しさをこう述懐しています。春は、人の心を痛めさせながら、通り過ぎていく季節だといいますが、ことしの春は、とりわけその思いを深くした悲しい春でした。
 ただいま議長から御報告のありましたとおり、去る四月十二日山村新治郎先生は、自由民主党の北朝鮮訪問団の団長として平壌に赴く前日、逝去されました。
 その計報は、一陣の春のあらしのように吹き過ぎ、私たちは偶然と立ち尽くして、しばし言葉すら失ったのですが、時を経て今、ただただ深く悲しみに胸が熱くなるばかりであります。まことに哀悼痛惜の念にたえません。
 私は、諸君の御同意を得て、議員一同を代表し、謹んで哀悼の言葉を申し述べたいと思います。(拍手)
 顧みますと、私と山村さんとの出会いは、昭和四十二年にさかのぼります。その年、第五十六回臨時国会では、健康保険特例法をめぐって与野党が熾烈な激突をしておりました。
 与野党の意見が対立した同法案の取り扱いは、八月一日に至り、社会労働委員会を舞台に騒然となったのでありますが、その中にあってひときわさっそうたる活躍ぶりを示したのが山村さん、あなたでした。持ち前の気力と気迫をみなぎらせ、先頭に立って奮闘されていた山村さんの姿が鮮やかに思い出されます。私もまた情熱をたぎらせ、負けじと山村さんの前に立ちふさがったのであります。
 互いにその立場こそ違え、信ずる道をひたむきに進むべく相譲ることのなかった私たち二人の間には、それから深い友情が生まれました。そして今日まで幾年月、その友情がはぐくまれ、政治的立場を超えての得がたい友でもありました。
 あなたは昭和八年四月、水郷の里、千葉県佐原市で江戸時代からの米穀商を営む由緒ある名家に生まれ、九代目新治郎氏のころから深く政界にかかわり合いを持たれ、続く御尊父の十代目新治郎氏は、衆議院議員として予算委員長、議院運営委員長、自由民主党の国会対策委員長等の要職を歴任し、池田内閣において行政管理庁長官を務められ、政界に重きをなした方であります。
 「青は藍より出でて藍より青し」といいますが、あなたはこうしたすばらしい家庭にはぐくまれ、成長されました。長じて佐原高等学校から学習院大学政治経済学部に進まれましたが、学業半ばにして、生きた政治の世界を学ぶべく、御尊父新治郎氏の秘書として政界への第一歩を踏み出されたのでありました。
 昭和三十九年十月、父新治郎氏が病に倒れ急逝されるや、亡き御尊父の御遺志を継ぎ、第十一代目新治郎を襲名、同年十一月に行われた衆議院議員補欠選挙に立候補し、弱冠主十一歳の若さで堂々の栄冠をから得、国政壇上に立たれたのであります。(拍手)
 あなたは、小柄ではありましたが県高校ボクシング大会に優勝されたという鍛え抜かれた身体に不携不屈の精神を秘め、一朝事に臨んでの果敢な実行力は衆目の見るところであり、運輸委員会、議院運営委員会及び予算委員会の理事として極めて広い分野で縦横無尽の活躍をされたのであります。
 あなたをしのぶときだれでも思い起こすのは、あの昭和四十五年三月の日航機ハイジャック事件の活躍ぶりでありましょう。
 当時、第三次佐藤内閣の運輸政務次官の職員にあったあなたは、我が国最初のハイジャック、「よど号」事件の報を受けるや、直ちに「よど号」を追って大韓民国に赴き、管制塔に登って乗っ取り犯との交渉に当たるという機敏かつ果断な行動力の後、みずからの身命を賭して乗客、乗員の身がわりを買って出るに及んだことは、全国民の感嘆と畏敬の注目を浴びたものでした。(拍手)
 粘り強い交渉の末、乗客、乗員百三名の無事釈放に成功したときは、かたずをのんで見守っていた全国民からあらしのような拍手が起きたのも、至極当然と言えるでしょう。(拍手)
 タラップをおりて大地を踏んだ喜びの乗客、乗員を背に、一人の男がタラップを上っていくその
姿は、まことに崇高と感動で見詰められ、永久に語り継がれ、消え去ることはないでしょう。(拍手)あなたの郷土が誇る義民、佐倉惣五郎の人間愛に満ちた快挙と並んで、不滅であることを信じてやみません。
 昭和五十年、商工委員長に選ばれたあなたは、難問、独占禁止法改正案を衆議院で通過をさせ、昭和五十七年十一月には、議会運営の手腕を高く買われ、議院運営委員長に推されました。親子二代がその要職につかれたのは、憲政史上たぐいまれに見る快挙と言えるでしょう。亡き御尊父にささげる孝行として、これ以上のことはまずありますまい。
 折しも昭和五十八年の第百回臨時国会におきましては、いわゆるロッキード判決が出て以来国会が紛糾し、一カ月以上の空転が続き、あなたは国会の正常化を取り戻すべく奔走され、当時の福田議長を補佐して与野党間の意見の相違を取りまとめ、両院議長見解による国会解散への感得を引き出す一方、政治倫理協議会を設置することの合意を取りまとめ、今日の政治倫理審査会の礎を築かれたのであります。
 さて、私的な角度であなたをしのびますと、あなたは大層な食通でした。フランス料理ならトゥール・ダルジャン、マキシムがよいとか、親子丼なら人形町の玉ひでがうまいとか、まことにほのぼのとした人柄がしのばれ、一献の酒に舌鼓を打つ楽しさを知る人でもありました。
 そのあなたが平成三年十一月、予算委員長に就任されるや、一滴の酒も口にせず、百二十六日間その重責に専念されたというエピソードには、私など襟を正さずにはいられなかったのであります。(拍手)
 そのあなたの態度は、予算委員会で共和問題をめぐり証人、参考人の招致で審議が暗礁に乗り上げることもしばしばでしたが、常に公正な立場を堅持し、各党の意見に耳を傾け、持ち前の誠実さと精力的な調整の結果、難航した平成四年度予算は、三月十三日衆議院を通過、四月九日成立を見たのであります。
 大任を果たし、「きょうの美酒のため酒を断つ」としたその美酒を口元に含み、心地よく酔う姿が今もほうふつとして目に浮かぶのであります。
 また、あなたの大きな足跡として、農業行政における功績を忘れることはできません。
 昭和五十八年十二月、中曽根内閣において農林水産大臣として初の入閣を果たされたあなたは、牛肉・オレンジを初めとする農産物の市場開放という、国際的な厳しい問題にも真っ向から取り組まれました。
 難航に難航を重ね続けていた日米農産物交渉の決着を図るため、翌年二月渡米。交渉技術のベテラン、ブロック通商代表と一歩も退かず渡り合い、外交交渉としては考えられない、私邸を訪ねるという熱意と誠意によって見事交渉をまとめられました。一大危機を体当たりで救ったこの活躍は、我が国の農政史上に刻まれた金字塔とも言えるでしょう。(拍手)
 かくして、閣僚としての力量、手腕を高く評価されたあなたは、宇野内閣の運輸大臣として再び入閣。その内閣成立の目から天安門事件に遭遇、在留邦人の救出が急務と判断し、わずか三回という短時日に三千人余の救援輸送を円滑に終了されるという離れわざをやってのけられたのであります。
 振り返りますと、なぜかあなたの前には常に立ちはだかる試練がありました。しかし、あなたはその一つ一つを、「山新魂」とでもいうのでしょうか、くじけることなく立派に乗り越えられたのであります。
 自由民主党内にあっても、国会対策筆頭副委員長、副幹事長、全国組織委員長、そして成田空港建設促進特別委員会副委員長等々の要職を歴任し、華々しく活躍されておられました姿が、今も目に浮かんでまいります。
 さて、目を転じますと、あなたは父祖代々の地「ふるさと千葉」をこよなく愛しておられました。そして、その千葉県の発展にも深い思いと心血を注いでおられました。特に、日本の表玄関たる新東京国際空港の建設には、一方ならぬ情熱を傾けられました。
 御尊父新治郎氏とともに諸外国の施設を視察、御尊父亡き後は、その御遺志を受けて献身的な努力を続けられました。地元の方々の声に耳を傾け、強硬な反対運動の中に、何とか合意のもとでの開港をと、だれよりも願い、だれよりも心を痛めておられたのはあなただったと、私は今も胸が熱くなってまいります。
 ごらんください。今日、成田空港は貨物輸送で世界第一位、乗降客数で第七位という輸送力を誇るようになりました。
 そして、あなたのふるさと佐原は、首都東京と快速によって結ばれ、首都圏としての発展を日々に続けつつあります。
 あなたが千葉に残された輝かしい功績は、このほかにも語り尽くせないほどあります。
 母なる川、利根川の治水問題、銚子港の三角波による水難事故防止と掘り込み漁港改良工事の完成もまた、あなたの郷土愛が生んだものと言えるでしょう。長年、板子一枚に命を託してきた地元漁民の方々にとって、それはどんなに光差す喜びであったか、はかり知れないところであります。
 あなたの政治信条は、簡潔明快「実行と和」でありました。このわずか四文字の信条には、余すところなくあなたが、そしてあなたの人生が凝縮されております。まさにさっそうとして「男・山新」の面目が躍動している言葉だと私は幾たびも胸の内に繰り返しながら、今、あなたをしのんでいます。
 かくして本院議員として当選九回、在職二十四年十カ月、激動の四半世紀を活躍してこられたあなたの歩みは、いつまで語っても語り尽くせません。本院は四月二十四日、院議をもって永年在職議員としてその功を表彰したのであります。
 終わりに臨み、長いその来し方の道連れとして、あなたを支え、苦楽をともにしてこられた奥様の御胸中を拝察し、衷心からお悔みを申し上げる次第であります。
 山村さん、あれは半年ほど前、去年の暮れのことでした。あなたから私は一鉢のシクラメンを贈られました。それはみずみずしい白と薄紅の、優しい花の一鉢でした。
 私は早速、私の部監の朝の光の差し込む場所に飾りましたが、北風の吹く寒い日々、あのシクラメンがどんなに私の心の内を温かく、ほのぼのとさせてくれたことかわかりません。そして、男の中の男と言えるあなたの一面に、花をめでる優しさと、人に対する和やかな心配りをしみじみと感じたものでした。(拍手)
 冬が通り過ぎ、春が訪れ、その春が去っていくころ、あのシクラメンも、終わりの花をこぼしました。それは、なぜかあなたとの別れを私にそっと告げるかのような風情であったと、今も思い出されるのであります。
 享年五十八歳、政治家としていよいよ円熟を増し、幅広い活躍、なかんずく朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化へ向けて、貴重なかけ橋として大きな期待が寄せられていただけに、政治家山村新治郎先生を失ったことは、ひとり自由民主党のみならず、我が国にとりましても大きな損失と申さなければなりません。
 ここに、謹んで山村新治郎先生の生前の御功績をたたえ、その人となりをしのび、心から御冥福をお祈りして、追悼の言葉といたします。(拍手)
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
○議長(櫻内義雄君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
 海部俊樹君から、海外旅行のため、六月二日から十一日まで十日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第一 国際海上物品運送法の一部を改正
  する法律案(内閣提出、参議院送付)
○議長(櫻内義雄君) 日程第一、国際海上物品運送法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。法務委員長浜田卓二郎君。
    ―――――――――――――
 国際海上物品運送法の一部を改正する法律案及
  び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔浜田卓二郎君登壇〕
○浜田卓二郎君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、いわゆる船荷証券統一条約を改正する議定書の批准に伴い、国際海上物品運送に関して所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、
 第一に、運送人は、事実と異なる船荷証券の記載について、過失の有無を問わず、善意の船荷証券所持人に対抗することができないこととし、船荷証券の効力を強化すること、
 第二に、運送人の責任限度額を引き上げるとともに、責任限度額の計算単位を国際通貨基金の定める特別引き出し権によることとし、また、コンテナ等を用いて運送される場合の責任限度額等について定めること、
 第三に、運送人及びその使用する者の不法行為による損害賠償の責任について、運送人の契約違反による責任と同様の免除及び軽減を認めること、
 第四に、損害賠償の額の算定、運送人に故意等がある場合の特例及び運送人の責任の消滅等について、議定書に合わせ、所要の規定の整備を行うこと等であります。
 本案は、参議院先議に係るもので、去る四月十七日同院において原案のとおり可決され、本院に送付されたものであります。
 委員会においては、五月二十六日田原法務大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、これを終了し、直ちに採決を行ったところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 職業能力開発促進法の一部を改正
  する法律案(内閣提出、参議院送付)
○議長(櫻内義雄君) 日程第二、職業能力開発促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。労働委員長川崎寛治君。
    ―――――――――――――
 職業能力開発促進法の一部を改正する法律案及
  び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔川崎寛治君登壇〕
○川崎寛治君 ただいま議題となりました職業能力開発促進法の一部を改正する法律案について、労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、最近における経済社会の変化に対応して、事業主、労働者等の自主的な職業能力開発を促進するための支援の強化、高度で多様な職業能力開発機会を提供するための公共職業訓練体制の整備、技能を尊重する社会を形成するための技能振興施策の推進のための措置を講じようとするもので、その主な内容は、
 第一に、国及び都道府県は、事業主等のほか労働者に対しても、職業能力開発に関する情報及び資料の提供、相談その他の援助の実施に努めなければならないものとするとともに、公共職業訓練施設は、職業訓練を行うほか、事業主、労働者その他の関係者に対し、情報及び資料の提供、相談その他必要な援助を行うように努めなければならないものとすること、また、公共職業訓練施設について、施設の名称をそれぞれ改め、公共職業能力開発施設と総称するものとすること、
 第二に、公共職業訓練の体系を、養成訓練、向上訓練及び能力再開発訓練に基づく対象者別体系から、訓練内容の程度と訓練期間の長さによる弾力的体系に再編することにより、多様で高度な職業訓練を実施できるものとするとともに、新たに職業能力開発短期大学校において、在職労働者を主たる対象とした短期間の高度な職業訓練を実施できるものとすること、
 第三に、事業主がその雇用する労働者の職業能力開発を促進する場合に講ずる措置として、労働者に各種の職業能力検定を受けさせることを規定するとともに、国及び都道府県が事業主等の行う職業能力検定に対する援助等を行うことにより、その普及促進を図るものとすること、また国は、技能の重要性について事業主その他国民一般の理解を高めるために必要な啓発活動等を行うものとすること、
 第四に、公共職業能力開発施設、職業能力開発大学校及び職業訓練法人は、その業務の遂行に支障のない範囲内で、外国人研修生等に対しても、職業訓練または指導員訓練に準ずる訓練を行うことができることを明確にするものとすること等であります。
 本案は、去る四月二十四日に参議院から送付され、同日付託となり、五月二十二日に近藤労働大臣から提案理由の説明を聴取し、昨日の委員会において質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告を申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する
  法律の一郡を改正する法律案(内閣提出)及
  び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関
  する法律の一部を改正する法律案(竹村幸
  雄君外十名提出)の趣旨説明
○議長(櫻内義雄君) この際、内閣提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案及び竹村幸雄君外十名提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。国務大臣加藤紘一君。
    〔国務大臣加藤紘一君登壇〕
○国務大臣(加藤紘一君) 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 独占禁止法は、公正かつ自由な競争を維持、促進することにより、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発展を図るものであります。政府は、国民生活を一層充実し、我が国経済を国際的により開かれたものとするため、独占禁止法違反行為に対する抑止力の強化を図ることを重要課題の一つと位置づけております。その一環として、独占禁止法の刑事罰規定について、事業者等に対する罰金刑を強化することとし、ここにこの法律案を提出した次第であります。
 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
 私的独占、不当な取引制限等の独占禁止法第八十九条の罪について、事業者及び事業者団体に対する罰金の最高限度額を現行の五百万円から一億円に引き上げることとしております。
 以上が、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 提出者竹村幸雄君。
    〔竹村幸雄君登壇〕
○竹村幸雄君 私は、ただいま議題となりました日本社会党・護憲共同提案の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、提案者を代表し、提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。(拍手)
 近年、世界的に市場経済の有効性が再評価され、各国における政府規制分野の見直しや独占禁止法の運用、執行力の強化が図られてきているところであります。特に我が国におきましては、世界有数の経済力に見合う豊かな国民生活を実現するとともに、我が国の市場を国際的に開かれたものとしていくという面からも、独占禁止政策の果たすべき役割が従来にも増して大きくなってきておるのであります。
 このような情勢のもと、独占禁止法違反行為に対する厳正な対処及び抑止力の強化を通じて国際的ルールヘの平準化を図るとともに、法運用の透明性を高めるため、私どもは、法人罰金の大幅な引き上げ、適用除外制度の見直し、公正取引委員会の委員長及び委員の任命基準の見直し等が重要な課題であるととらえておるのであります。特に法人罰金につきましては、独占禁止法違反行為は企業の利益追求のために事業活動そのものとして行われる典型的な企業犯罪であり、刑事罰がこれに対する十分な抑止力となるためには、現行の五百万円という罰金刑の上限は、巨大な資力を有する事業者に対する効果という点で低きに失すると言わざるを得ないものであります。
 この点につきまして、私どもは、刑事罰研究会報告書に示されております法人と個人の資力格差に関する試算結果を重視するとともに、主要先進国の罰金等の水準、例えば米国が企業の罰金刑の上限を一千万ドル、約十三億円としている等の事情を考慮に入れながら、法人に対する罰金刑を現行の百倍、最高五億円に引き上げるのが適当であると考えております。(拍手)
 これが、ここにこの法律案を提出する理由であります。
 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、法人等に対する罰金の引き上げであります。両罰規定に定めるすべての罪について、法人及び法人でない団体に対する罰金刑の上限の額を現行の百倍に引き上げるものとしております。
 第二に、独占禁止法違反事件についての調査のための強制処分権限の実効性を高めるという観点から、第九十四条の二第四号の物件提出命令違反の罪を両罰規定の対象に加えるものとしております。
 第三に、不公正な取引方法のうち特定の行為類型について罰則を新設することといたしました。具体的には、共同の取引拒絶または再販売価格の拘束をした者等を三百万円以下の罰金に、また、共同の取引拒絶または再販売価格の拘束に該当する事項を内容とする国際的協定または国際的契約をした者は、二百五十万円以下の罰金に、それぞれ処するとともに、これらの罪を両罰規定の対象に加えるものとしております。不公正な取引方法についての公正取引委員会による現行の一般指定のうち、共同ボイコットと再販売価格の拘束以外の指定はそのまま残すことを想定をいたしております。
 第四に、再販売価格維持制度は、特定の著作物に係るものを除き、廃止するものとしております。特定の著作物とは、新聞、書籍その他の出版物に限る趣旨であります。
 第五に、公正取引委員会の委員長等の任命につきまして、これまでのあしき慣行を排し、行政官庁と無関係の裁判官、学者などの専門家から積極的に登用するという観点から、任命要件を加重することといたしました。このため、公正取引委員会を除く国の行政機関の職員であった期間が通算して二十年以上になる者は、委員長となることができないものとし、また委員の任命についても同様に、そのうち三名以上が国の行政機関の職員であった期間が通算して二十年以上になる者となってはならないものとしております。あわせて、任命の日以前五年間において、資本金三十億円以上の株式会社の代表権を有する役員または事業者団体の役員であった者は、委員長または委員となることができないものとしております。
 第六に、第二十五条の規定による無過失損害賠償責任に係る訴訟については、第一審の裁判権は、現行法では東京高等裁判所に属するものとされておりますが、価格カルテルや共同ボイコットの被害者となった消費者や中小事業者が容易に訴訟を提起できるようにするため、各高等裁判所に属するものとしております。
 その他、必要な規定の整備を行うこととしております。
 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する
  法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及
  び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関
  する法律の一部を改正する法律案(竹村幸
  雄君外十名提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(櫻内義雄君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。和田貞夫君。
    〔和田貞夫君登壇〕
○和田貞夫君 我が国は、敗戦後、焦土の中から経済社会の再建を進め、今日、世界有数の経済大国となるに至りましたが、この戦後経済の発展を支えたものは、一つは、通産省に代表される産業政策の展開でありますが、他方、私が強調しておきたいのは、紆余曲折があったにせよ、財閥解体を出発点とする経済民主化と独占禁止政策なくしては、今日のような我が国の繁栄は決してあり得なかったのであります。(拍手)
 また、我が国の世界経済への貢献が強く求められている今日、私は、その最低限の一つが、独占禁止政策の国際ルールの平準化実現という課題であると考えております。これまで産業政策の名のもとに、日本の産業の中に温存されてきた古い制度や慣行を見直し、世界各国との公正な競争の中で、よりよいパートナーシップを築くことが求められているということであります。そのことがまた、我が国の今後の経済発展の活力を生み出すものと確信いたしております。
 さて、恐らくは、そのような共通の認識に立ちながら、ただいま趣旨説明がそれぞれありましたように、私的独占禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律の両案が、竹村幸雄
君外提出のものと内閣提出のものとが、その内容に大きな隔たりが見られるのであります。
 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、提出番及び宮澤総理並びに関係大臣に対し質問をいたします。
 まず、社会党案についてお尋ねいたします。
 第一に、今回の法案を提出するに当たって、独占禁止政策を取り巻く現状と課題をどのようにとらえているのか。第二に、法人事業者に対する罰金の上限を五百万円から五億円に引き上げた理由は何か。第三に、第九十四条の二第四号の物件提出命令違反の罪を両罰規定の対象に加えた理由は何か。第四に、公正取引委員長及び委員の任命要件を加重する理由は一体何か。以上、明快にお答え願いたいのであります。(拍手)
 続いて、政府案についてお尋ねいたします。
 まず、本改正法案の基礎となっている刑事罰研究会報告書の公表を二カ月以上も公取委が拒み続けて、予算委員会での社会党の要求でようやく公表に至ったのであります。この間、産業界や政府・与党内で反対が強かったためとも言われていますが、公表をおくらせた理由を、この際、明らかにするよう要求いたします。(拍手)
 次に、罰金の引き上げについてであります。
 刑事罰研究会報告書では、主要先進国の罰金刑・制裁金の上限がアメリカにおいては十三億円、ECが約一億六千六百万円、もしくは当該企業の前年度総売上高の一〇%となっていますので、こうした事情をもとにして、さらに我が国では刑事罰と課徴金が併存しているとの事情を十分勘案した上で、第八十九条の罪について、事業者等に対する罰金刑の上限額を「数億円程度の水準に引き上げることが必要である。」との結論を出しているのであります。
 また、公正取引委員会もこれを受けて、当初、同研究会との間で、この数億円とは三億円から五億円程度と念頭に置いていたのでありますが、いつの間にやら一億円にと腰砕けになったのか、その理由をお聞かせいただきたいと思います。(拍手)
 また、今国会に提出されている証券取引法の改正案では、相場操縦行為等についての罰金額の上限を三億円に引き上げることとしており、これに比べても本改正案はまことに見劣りをするとは思いませんか。総理、ここはひとつ素直にお答えいただきたいのであります。(拍手)
 ところで、公正取引委員会が先ごろ告発を見送りました埼玉県の公共工事入札談合事件に対する政府、公取委の対応についてお尋ねいたします。
 埼玉県の公共工事入札談合事件については、公取委が告発の最有力事件として調査に力を入れていると承知していたのでありますが、ことし二月ごろから一転いたしまして極めて消極的になり、結局は告発を見送り、排除勧告のみにとどまり、国民の大きな期待を裏切ったのであります。この間のいきさつにつきまして、マスコミ等では、政府・与党関係者との間で、罰金の引き上げを盛った独禁法改正案の提出と埼玉談合告発の見送りで取引があった等の報道もなされましたが、それは事実でしょうか。この際、国民の前に明らかにすべきであります。
 また、公取委と検察当局との協議もほとんどなされていなかったとも言われていますが、もしこれを否定されるのでございましたならば、協議の回数等を含めて、納得ができるよう、この際お答えいただきたいと思います。
 公取委は最近の記者会見で、告発見送りの理由として、個人の違法行為があったとする具体的な証拠がないことを挙げています。しかし、もともと公正取引委員会には犯罪捜査権が与えられていない以上、告発に当たって個人の犯罪の認定まで求めることは、このような大がかりな悪質な事件ほど刑事責任の追及ができないようになるではございませんか。要するに、公正取引委員会が告発したくないから告発しなかったということに尽きるのでありまして、その理由づけに困ったあげく、本来、公正取引委員会にない権限まで持ち出して、告発要件をみずから困難にしているように私には見えてなりません。(拍手)これでは、罰金を一億円にしようが、仮に十億円にしようが、二十億円にしても、告発しないのでありましたならば、何ら抑止力の強化にはならないではございませんか。お答えいただきたいと思います。
 この機会に、独占禁止法の改正案と入札談合問題について建設大臣の認識を伺っておきたいと思います。
 大臣はことし三月初めの記者会見で、建設省としては、今議論されている独禁法の刑事罰引き上げには反対であると述べておられますが、国際的にも国内的にも批判されている我が国建設業界の談合体質を改善する意思がないのですか。
 また、社会的な指弾を受けている埼玉県の公共工事入札談合事件について、どのような対応策を考えておられるのですか。
 昨日、建設省は、埼玉土曜会の六十六社に対し、指名停止一カ月間の措置をとりましたが、このような一カ月程度の指名停止処分でお茶を濁し、停止期間が終えると大型工事量を発注するというのでは、世論を納得させることはできないと思いますが、大臣の所信を明らかにしていただきたいと思います。(拍手)
 次に、通産大臣にお尋ねいたします。
 カルテル等は強盗と同じで、非常に悪質な行為であるというのが先進国の常識でありますが、我が国の経済界では、これまでほとんど独禁法違反で刑事責任の追及がなかったこともあり、認識が極めて希薄であります。我が国の独禁政策のあり方についてどのようなお考えを持っておられるか、お答えいただきたいと思います。
 また、最近、アメリカが独禁法の域外適用についての新たな方針を発表したことについて、あなたはどのようにお考えになっておるのか、お尋ねいたしたいと思います。
 最後に、公正取引委員会のあり方について、総理の見解をただしたいと思います。
 公正取引委員会の委員長及び委員は、三十五歳以上で、法律または経済に関する学識経験ある者のうちから、総理大臣が両院の同意を得て任命する、こういうように法律で明記されておるのであります。発足後数年間は、裁判官、弁護士、大学教授といった肩書の方が任命されていたのでございますが、近年に至っては、大蔵省を初めとする各省庁の出身者が独占している現状であります。このような人事のあり方は、いかに手続的に適正であったといたしましても、本来の趣旨から申しますと、決して適切な人事とは言えないのであります。(拍手)
 公正取引委員会の職務の独立性、公正さについて、いささかも国民から疑念を差し挟まれる余地があってはならないと存じます。このような観点から、今後は各省庁からの天下り的人事は、ぜひやめていただきたいと思うのであります。公正取引要員会事務局で長年にわたり実務に携わってきたプロパーの職員や、裁判官や弁護士や学者等、幅広くバランスのとれた人事を強く要望するものでございます。
 四カ月先のこの九月二十三日に任期満了となる現公正取引委員会委員長の後任に、事もあろうに大蔵事務次官経験者の名前が既に取りざたされるに至っては、全く国会を冒涜する人事であると言わなければなりません。(拍手)
 しかるに、今後なおこのようなあしき慣行の人事が繰り返されるのであれば、我が日本社会党。護憲共同は、当該人事案件には同意しないこともあり得るので、厳重に注意を促して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 独占禁止法に関する刑事罰研究会は、昨年十二月、刑事罰の強化について検討結果を報告したのでありますが、本件については、当時、まだ各方面において必ずしも意義についての理解や議論が熟していない段階に
ありましたため、研究会の結論が各方面に予断を与えることのないよう、適当な時期まで報告書の公表を見合わせることが適当であると公正取引委員会において判断したものと承知をいたしております。
 刑事罰研究会は、独占禁止法違反特有の事情などを考慮し、企業と行為者個人の資力の格差、諸外国の法制との比較、課徴金制度の存在などの諸点を総合的に勘案し、現行の罰金刑を抜本的に引き上げることが必要との結論を出したものと承知をいたしております。
 政府において改正法案を作成するに当たりましては、刑事罰研究会の報告書の基本的方向を踏まえ、現時点で社会の大方の理解が得られるものであることが必要であることを考慮いたしますと、事業者に対する罰金刑の上限を一億円とするのが適当と判断したものであります。
 なお、事業者に対する罰金刑を定める場合においては、平成三年十二月の法制審議会了承事項にあるとおり、当該法律、罪ごとに、事業主に対する抑止力として期待できる金額は幾らかという点を基本として個別に決定されるべきもので、すべて同一の基準によらなくてはならないということはないと存じます。
 次に、埼玉県の公共工事入札談合事件につきましてでございますが、独占禁止法の運用については、公正取引委員会が独立してその職権を行使しているものでございます。適正な法運用が行われていると考えます。
 御指摘の件については、公正取引委員会では、本件につき告発を行うか否かに関し、検察当局とも意見交換を行った上、法律上及び事実認定上の問題を検討した結果、告発を相当とする具体的事実が認められるに至らなかったため、告発を行わないとしたものと承知しております。
 具体的案件についてのものでありますので、詳細について申し上げる立場にはございませんが、本件については、公正取引委員会において検察当局との間で適宜意見交換を重ねてきたものと聞いております。
 談合、価格カルテル等の独占禁止法違反行為を排除し、公正かつ自由な競争を促進することは、一般消費者の利益を図るとともに、国際的な調和を図る観点から極めて重要であります。このような観点から、従来から公正取引委員会において、独占禁止法を厳格に運用していると考えておりますが、今後とも、独占禁止法違反事件に対しましては、刑事告発を含め、厳しく対処するものと考えております。
 委員長、委員についての人事でございますが、公正取引委員会の「委員長及び委員は、年齢が三十五年以上で、法律又は経済に関する学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が、両議院の同意を得て任命する。」こととされております。
 公正取引委員会の行政は、経済の広範な分野における事業者の活動を対象とし、かつ、処分に当たり準司法的手続がとられるなど、法律、経済に関する豊富な知識と高度な専門性が必要とされることから、法律関係の学識経験者と経済関係の学識経験者をもって構成されております。
 現在の公正取引委員会の委員長及び委員は、いずれもこのような観点から、法律に定める資格要件を有する者のうちから適切な者を人選し、両議院の御同意を得て任命したもので、人格、識見ともに秀でた人物であって、法律を厳正かつ公正に運用しているものと考えております。公正取引委員会の委員長及び委員の任命に当たりましては、今後とも、両議院の御同意を得て、適切な人材を任命していくことといたしたいと存じます。
 自余の問題につきましては、関係大臣からお答えを申します。(拍手)
    〔国務大臣渡部恒三君登壇〕
○国務大臣(渡部恒三君) まず、和田議員冒頭の御発言で、戦後の貧しさから今日のすばらしい豊かさを築き上げた我が通産省の産業政策に対して、大変高い御評価をいただきましたことに、心から敬意を表したいと存じます。(拍手)
 第二のお尋ねでありますが、産業の活力ある発展と消費者利益の増進のためには、自由で公正な競争の確保が必要不可欠であります。これは、我が国経済の国際的調和を一層進める観点からも求められておる課題であり、通産省としては、この課題を達成する上で独禁法の果たす役割は極めて重要なものであると認識をいたしております。
 産業界においても、自由で公正な競争を重視するとの観点から、独禁法に対する関心が一層高まっており、独禁法遵守に向けた自主的な取り組みが見られております。通産省としても、我が国企業が独禁法を踏まえ、自由で公正な競争を行うことを期待いたしております。
 第二番目のお尋ねでありますが、我が国としては、米国の輸出を制限する米国域外での行為に対してアメリカが反トラスト法の適用を行うこ止は、国際法上許すことのできない米国内法の域外適用に当たるものと考えており、米国司法省がそのような新方針を発表したことはまことに遺憾であります。私どもは、こういう考えを内外に今表明をいたしております。
 独禁法の域外適用の問題については、国際的に各国の独禁政策の調和を図っていくことが極めて重要であり、通産省としても、外務省、公正取引委員会等と協力して、そのための国際的な話し合いを推進していく必要があると考え、その方向に向かってただいま努力中でございます。(拍手)
    〔国務大臣山崎拓君登壇〕
○国務大臣(山崎拓君) 和田議員の御質問にお答えいたします。
 私が独占禁止法の罰金引き上げに反対したという御指摘でございましたが、そういうことはございません。私が申し上げましたのは、独占禁止法の抑止措置の強化は必要であると受けとめますけれども、罰金の引き上げ額の検討に当たっては、中小企業が九九%以上を占めるという建設業の実態等を十分勘案した対応が望ましいということを申し上げた次第でございます。今回の政府提案の罰金引き上げ額は、関係方面と慎重に協議を重ねたものと承知をいたしておりまして、建設省といたしましても、このような措置は必要と考えております。
 いずれにせよ、独占禁止法に違反する行為は決して容認しないというのが従来からの建設省の基本的な方針でございまして、これまであらゆる機会を通じて建設業界に対し、独占禁止法の遵守を徹底してまいりましたところでございます。
 次に、今回の埼玉土曜会事件でございますが、この事件は、建設業の健全な発展に対する国民の期待を裏切りますとともに、我が国建設業に対する国際的信頼を失墜させるものと言わざるを得ず、まことに遺憾に存じております。建設省といたしましては、今回の事態を重大に受けとめ、昨日、建設業者団体の長に対しまして、独占禁止法の遵守の徹底、再発防止のための社内体制の整備について私の指示を強く伝えるとともに、本日付で土曜会会員六十六社すべてに対し、関東地方建設局管内で一カ月間の指名停止措置を実施することといたしました。
 さらに、今後速やかに建設業法に基づく監督処分を行い、厳正に対処するとともに、業界全体にわたる独占禁止法等関係法令の遵守の一層の徹底に努めるほか、入札契約制度についても透明性、競争性を一層高めるため、現在、中央建設業審議会で行われている審議の促進をしてまいる所存でございます。
 なお、指名停止措置が軽過ぎるのではないかという御指摘につきましては、これにより一定期間指名から排除され、かつ、当該ブロック内のほとんどの公共工事発注機関において同様に措置されること等を考えますと、事業者にとりましては相当厳しい措置であると考えております。しかし、公共工事の入札に関し、独占禁止法違反行為が繰り返されますことは、公共事業に対する国民の信頼を損なうおそれがありますことから、今回の事
件を契機として、今後、一定期間内に再び独占禁止法違反が繰り返される場合には、指名停止期間を長くし、再発防止に対処する方針でございます。
 いずれにいたしましても、独占禁止法に違反する行為は決して容認しないというのが建設省の基本的な方針であり、再発防止のため万全を期してまいる所存でございます。(拍手)
    〔小岩井清君登壇〕
○小岩井清君 和田貞夫議員の御質問に提案者を代表してお答えをいたします。
 第一点は、法案提出に当たっての現状と課題の認識であります。
 この点につきましては、まさに和田議員が御質問の冒頭で述べられたとおりでありますので、繰り返しを避けたいと思いますが、一言で申し上げるならば、生活者重視の公正な経済秩序の実現と国際的な競争ルールヘの平準化という主要な二つの観点から、独占禁止法違反行為に対する厳正な対処と抑止力の強化を図るとともに、法運用の透明性を高めることが今日の緊要な課題となっているということであります。
 なお、違反行為に対する厳正な対処という点につきましては、さきに公正取引委員会が決めました埼玉県の建設談合事件に対する告発断念と関連づけて、何点か申し上げておきたいと思います。
 和田議員も御指摘のように、まず公正取引委員会が告発を行うための要件について、法律の趣旨は、果たして今回のように当該事件への個人の関与に関する具体的事実の証拠の存在まで求めているのかどうか。今回の公正取引委員会の見解によれば、今後告発を行うことが著しく困難になりはしないかという点について、十分に議論する必要があると考えております。いかに罰金額を引き上げようとも、めったに刑事告発されないというのであれば、刑事罰による抑止力は事実上著しく減殺されてしまうのであります。
 第二に、現行法の両罰規定は、自然人の違反行為についての有罪判決があって初めて、事業者等にも罰金刑が科される仕組みになっておりますけれども、典型的な企業犯罪である独禁法違反行為について、このような仕組みのままでよいのかどうかも今後検討の必要があるように思われます。
 なお、この問題とも関連いたしますが、現行法には、一九七七年の大改正の際に追加された第九十五条の二のいわゆる責任罰に関する規定がございます。これは、法人の代表者が法人及び従業者個人の違反行為を防止もしくは是正しなかったことについて、代表者を処罰する旨を定めたものであります。この規定による法人代表者の刑事訴追は、両罰規定とは異なり、行為者個人の違反行為自体の刑事訴追を前提とせず独立して行うことができ、また、公正取引委員会の専属告発にもなっておりません。
 今回の埼玉県の事件では、談合ルールがかなり以前から形成されていたために、九〇年六月以降については個人の具体的な違反行為が認定できなかったケースであるとしても、それ以前の違反行為に基づいて今日まで談合が継続し、法人代表者がそれを知りつつ是正のために必要な措置を講じなかったという事実を認定できれば、この責任罰の規定によって法人代表者の刑事責任を追及し得たとも考えられるのであります。
 質問の第二点は、罰金額の上限を五億円に引き上げる理由であります。
 今回の改正により法人事業者に対する罰金を引き上げる趣旨は、法人事業者とその役員とでは資力に大きな格差があるため、その格差に応じて法人事業者の罰金刑の上限を引き上げることにより、法人事業者に対する刑罰としての抑止力を高めることにあります。その具体的水準につきましては、和田議員の御質問の中でも言及されている刑事罰研究会の検討結果を重視いたしました。
 すなわち、まず事業者等と従業者等の資力の比較でありますが、フロー面では、資本金一億円以上の法人の経常利益と、同規模以上の法人事業者の役員の役員給与を比較すると、過去五年間の平均で九十二倍となっております。また、ストック面では、資本金一億円以上の法人の純資産と、同規模以上の法人事業者の役員の収入に相当する収入のある個人の正味資産の推計を比較すると、約五十倍となっております。これは、時価に換算いたしますと約百七十倍になるのであります。
 次に、主要先進国におけるカルテル等の違反行為に対する企業についての罰金刑・制裁金の上限でありますが、米国では、一千万ドル、すなわち約十三億円になっております。また、ECでは百万ECU、すなわち約一億六千六百万円、もしくは当該企業の前年度の総売上高の一〇%になっております。これを総合し、また、我が国には課徴金制度が併存することをも一応考慮に入れた上で、研究会は数億円という結論を出しているのであります。
 研究会座長であります正田彬教授によりますと、この数億円の読み方は、現行の五百万円に、前に述べたとおり、資力比較で得られた係数を乗じて、二億五千万円から八億五千万円の範囲だという意味だそうであります。
 社会党案におきましては、このほかに、今国会に提出されている証券取引法改正案が、同様の趣旨から事業者等に対する罰金刑の上限を現行の百倍に引き上げていることをも十分に参考にいたしまして、現行の百倍、五億円といたしたものであります。これは、刑事罰研究会の言う数億円のちょうど真ん中ぐらいであり、また、米国やECと比較しても極めて適切な水準であると言えるのであります。
 刑事罰は、ばれたら損をするという仕組みによって違反行為を抑制することがねらいでありますので、大企業に対してもそれなりの感銘力、すなわち経済的打撃を与え得るものとしなければならない、この意味でも、五億円程度の水準は必要であると考えております。
 第三点は、公正取引委員会の調査権限を強化をするという観点から提案したものであります。
 現行法の規定では、公正取引委員会は、事件について……(発言する者あり)
○議長(櫻内義雄君) 御静粛に願います。
○小岩井清君(続) 必要な調査を行うために、事件関係人の営業所等への立入検査の権限を認められ、その検査妨害に対しては六カ月以下の懲役または二十万円以下の罰金が科されることになっております。また、この検査妨害は両罰規定の対象となっております。しかし、立入検査によって帳簿等を見つけても、また個人が談合の日時等を記載した手帳を所持していると思われる場合でも、それを押収する権限は認められておりません。改めて当該物件の所持者に対して物件提出命令書を送ることにより提出させることになっております。提出命令違反については二十万円以下の罰金刑が科されますが、両罰規定の対象とはなっておりません。この点について、今回、会社ぐるみでの談合隠し等への制裁を強化をする意味で、両罰規定の対象に加えたものであります。
 それ以上に調査権限を強化するためには、証券取引法改正により新設されることになっている証券取引等監視委員会のように、裁判所の許可状により臨検、捜索、差し押さえをする権限を付与するということも考えられるところでありますので、今後さらに議論が必要であろうと思われます。
 質問の最後は、公正取引委員長及び委員の任命要件を加重する理由であります。
 公正取引委員長と各委員は、その職権の遂行に当たって独立性と公正さを厳格に要求されているのであります。刑事罰研究会報告書の公表が延期されたり、再販見直しが後退をしたり、罰金額を圧縮したり、告発見送りに至る最近の公正取引委員会の姿勢につきましては、国民は大変厳しい目で見ているのであります。(拍手)
 私どもは、このような公正取引委員会の姿勢は、委員長及び委員の人選が長年にわたって、大蔵省を初めとする特定の行政官庁出身者によって
ほぼ独占されてきたことと無縁ではないと考えております。委員長及び委員の任命が手続上適正に行われてきたということと、その人選が適切なものであるかは全く問題は別なのであります。
 公取委の性格から考えて、少なくとも一定数、委員長及び委員のうち少なくとも委員長を含む三名は、経済官庁と無関係の裁判官、学者などの専門家から任命するというような慣行の成立が必要であるということは古くから指摘されております。今や、このことを法律上規定せざるを得ない段階に至っているということであります。
 以上、御答弁申し上げます。(拍手)
○議長(櫻内義雄君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○議長(櫻内義雄君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時二十分散会
     ――――◇―――――