第123回国会 大蔵委員会 第15号
平成四年五月二十日(水曜日)
    午前十時四分開議
出席委員
  委員長 太田 誠一君
   理事 井奥 貞雄君 理事 中川 昭一君
   理事 村上誠一郎君 理事 持永 和見君
   理事 柳本 卓治君 理事 小野 信一君
   理事 細谷 治通君 理事 日笠 勝之君
      浅野 勝人君    石原 伸晃君
      岩村卯一郎君    江口 一雄君
      衛藤征士郎君    狩野  勝君
      亀井 善之君    久野統一郎君
      小林 興起君    左藤  恵君
      坂本 剛二君    関谷 勝嗣君
      林  大幹君    前田  正君
      三原 朝彦君    光武  顕君
      山下 元利君    池田 元久君
      佐藤 観樹君    佐藤 恒晴君
      沢田  広君    仙谷 由人君
      富塚 三夫君    中村 正男君
      早川  勝君    堀  昌雄君
      渡辺 嘉藏君    東  祥三君
      宮地 正介君    正森 成二君
      伊藤 英成君    中井  洽君
      菅  直人君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  宮澤 喜一君
        大 蔵 大 臣 羽田  孜君
 出席政府委員
        内閣法制局第三
        部長      津野  修君
        経済企画庁調整
        局長      吉冨  勝君
        経済企画庁調査
        局長      土志田征一君
        法務省民事局長 清水  湛君
        外務省欧亜局長 兵藤 長雄君
        外務省経済局次
        長       林   暘君
        大蔵政務次官  村井  仁君
        大蔵大臣官房長 篠沢 恭助君
        大蔵大臣官房総
        務審議官    日高 壮平君
        大蔵大臣官房審
        議官      小川  是君
        大蔵省主計局次 涌井 洋治君
        大蔵省主税局長 濱本 英輔君
        大蔵省理財局長 寺村 信行君
        大蔵省証券局長 松野 允彦君
        大蔵省銀行局長 土田 正顕君
        国税庁次長   冨沢  宏君
 委員外の出席者
        法務省刑事局刑
        事課長     鶴田 六郎君
        運輸省鉄道局国
        有鉄道清算業務
        指導課長    鶴野 泰孝君
        郵政省簡易保険
        局資金運用企画
        課長      藤野 利行君
        参  考  人
        (日本証券業協
        会会長)    渡辺 省吾君
        参  考  人
        (日本証券業協
        会専務理事)  関   要君
        参  考  人
        (東京証券取引
        所理事長)   長岡  實君
        参  考  人
        (神戸大学名誉
        教授)     河本 一郎君
        参  考  人
        (日本銀行理事)福井 俊彦君
        大蔵委員会調査
        室長      兵藤 廣治君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十日
 辞任         補欠選任
  亀井 善之君     光武  顕君
  河村 建夫君     坂本 剛二君
  戸塚 進也君     三原 朝彦君
  山下 元利君     鳩山由紀夫君
  中井  洽君     伊藤 英成君
同日
 辞任         補欠選任
  坂本 剛二君     河村 建夫君
  三原 朝彦君     戸塚 進也君
  光武  顕君     亀井 善之君
  伊藤 英成君     中井  洽君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 証券取引等の公正を確保するための証券取引法
 等の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇
 号)
     ――――◇―――――
○太田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、証券取引等の公正を確保するための証券取引法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、参考人として日本証券業協会会長渡辺省吾君、日本証券業協会専務理事関要君、東京証券取引所理事長長岡實君及び神戸大学名誉教授河本一郎君、以上四名の方に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 なお、議事の順序についてでありますが、まず、渡辺参考人、長岡参考人及び河本参考人にそれぞれ十分程度御意見をお述べいただき、次に、委員からの質疑に対して各参考人からお答えをいただきたいと存じます。
 それでは、渡辺参考人からお願いいたします。
○渡辺参考人 日本証券業協会の会長を務めております渡辺でございます。
 本日は、ただいま本委員会において審議が進められております証券取引等の公正を確保するための証券取引法等の一部を改正する法律案に関しまして、証券界の立場から意見を申し上げる機会を与えていただきまして、まことにありがたく、厚く御礼を申し上げます。
 昨年の夏以降表面化いたしました一連の証券不祥事は、証券界、証券市場に対する内外の信頼を大きく損なうこととなりましたが、本協会では、不祥事の再発を防止し、失われた投資者の信頼を回復するため、昨年八月、業界改革推進本部及び外部の有識者から成る有識者懇談会を設けまして、業界改革に鋭意取り組み、国会や行政当局の御指導をいただきながら、いわゆる自主ルールの整備、監査機能の強化等の具体策を逐次実施に移してまいりました。証券界といたしましては、さらに一段と業界改革を進めまして、証券取引に係る公正性、透明性を図り、市場の活性化の実現、健全な市場機能の確立のため、業界挙げて全力を傾注してまいる覚悟でございます。
 また、本協会につきましても、自主規制団体として、拡大する機能と責任に十分こたえられるよう、引き続きその体制を整備していく所存でございます。
 先生方におかれましては、これまで以上の御理解と御支援を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。
 それでは、以下、今回の改正法につきまして、私どもの意見を申し述べさせていただきます。
 今回の改正法案には、証券取引等監視委員会の設置、自主規制機関の機能強化、通達の法律化、罰則の強化、店頭市場における不公正取引の規制、誠実・公正の原則の法定等の措置が含まれております。これらは、証券取引の公正を確保し、市場に対する投資者の信頼を保持するため、証券界及び証券市場にとりまして大変重要かつ必要な改正であると考えております。改正内容は、私どもが進めてまいりました業界改革と同じ方向を目指し、また相互に密接に関連するものであると理解しております。
 まず、証券取引等監視委員会の設置についてでございます。
 本委員会の設置につきましては、昨年九月の臨時行政改革推進審議会の答申におきまして、「市場の公正性を確保する観点から、市場ルールの遵守状況を中立的・客観的な立場から監視する機能を充実・強化することが特に重要である。」という指摘が行われ、その後の国会の審議等を踏まえまして今回提案されているものと承知しております。私どもといたしましても、この新しい行政機構が、公正な証券取引の確保、投資者保護の徹底、健全な証券市場の確立のため積極的な役割を果たされるものと期待しております。
 ただ、この新設されます監視委員会、それから大蔵省本省における官房検査部及び証券局の三者の関係につきましては、制度的には仕分けが行われておりますが、これが重複することなく円滑に規制機能を果たしていただくことが大切だと存じますので、今後の実務面の運用につきまして十分配慮くださいますようにお願い申し上げます。
 また、現在大蔵省の証券検査と、私ども自主規制機関であります証券業協会の監査及び証券取引所の考査は、相互に補完関係にございまして、ある程度連絡調整を行っておりますが、この面におきまして、今後監視委員会と自主規制機関との適切な協力の体制が実現するよう努力したいと存じております。
 第二は、自主規制機関の機能強化に関する措置についてであります。
 私ども日本証券業協会は、大蔵大臣の認可を受けた民法上の公益法人であると同時に、証券取引法第六十七条の規定によりまして大蔵省に登録された我が国唯一の団体でありまして、外国証券会社を含め、全国のすべての証券会社を構成員として組織されております。本協会は、証券取引法第六十七条及び協会の定款第四条で明記されておりますように、協会員である証券会社の行う有価証券の売買その他の取引等を公正かつ円滑ならしめ、投資者の保護に資することを主たる目的といたしております。
 今回の改正案では、証券業協会のこのような自主規制機能をより明確にするため、証券業協会の法的性格を民法上め社団法人から証券取引法上の法人に変更することとされておりまして、極めて時宜に適したものと考えております。これに伴い、従来行政が直接処理されておりました外務員登録に関する事務が本協会に移管されたり、既に協会規則に基づいて本協会で担当しております店頭売買有価証券に関する登録や市場管理の業務が証券取引法上明確にされることになり、私どもはこれらの新しい役割を適切に遂行していく責任を痛感しているところでございます。
 第三は、通達の法律化についてでございます。
 本年一月の証券取引審議会報告「証券市場における適正な競争の促進等について」では、行政指導に係る通達等のうち、一定の行為を禁止、自粛、制限しているもの等については、その内容、目的に応じ、ルールの明確化等の観点から、可能な限りこれを法令化ないしは証券業協会または証券取引所の規則への移行等を行うことが適当であるとされております。
 今回の改正案では、現在証券局長通達に基づいて適用されております自己資本比率規制の根拠を証券取引法第五十四条に置くことになっておりますが、この規制は、証券会社の財務の健全性をモニターするために基本的に重要なものでありますので、これも適切な措置であると考えます。
 また、適正な営業活動の基本的なルールでありますいわゆる適合性原則も古くから証券局長通達に定められておりましたが、今回の改正案で同様に証券取引法上に根拠が置かれることとなっております。
 なお、本協会では、この適合性原則等の具体的内容を営業第一線にまで正しく理解させるために、「証券営業ガイドライン」というものを取りまとめまして、協会員に周知徹底を図っているところでございます。
 今さら申し上げるまでもないことでございますが、私は、自主規制の理念は、業界みずからがルールを定め、その遵守状況を自分たちで的確に把握し、違反者に対しては自分たちが適切に処置を行うという方式の方が、行政当局が直接規制されますよりも証券取引の円滑かつ公正、投資者の保護等の規制の目的をより効果的に達成できるというものであると認識をいたしております。
 本協会といたしましては、このような自主規制の理念を実現させるべく引き続き全力を尽くす所存でございますが、私は、今後の自主規制機能の運用に当たりましては、法令の枠組みのもとではありますが、その自主的な運営が行えること、すなわち自治の精神が発揮できることが大切であると考えております。
 なお、本協会では、証券局から通達、事務連絡等約五十本を協会規則に移したいという御連絡をいただいておりますので、目下その具体的な取り込み方について細部の検討を進めているところでございます。
 第四は、店頭市場における不公正取引の規制についてであります。
 株式店頭市場につきましては、昭和五十八年六月の証券取引審議会報告「株式市場の機能拡充について」を受けまして、将来性ある中堅・中小企業の資金調達の円滑化及び投資者の資産運用の多様化等の面で、取引所市場を補完する機能を有効に果たしていくことを目的として、その機能整備の努力を重ねてまいりました。
 その結果、近年、株式店頭市場の登録銘柄数や取引規模が増大しておりますが、店頭市場につきましては、これまで行為規制の面で取引所市場に比べて整備がおくれていたために、証券取引審議会において店頭市場に対する行為規制の適用について審議され、昨年六月、インサイダー規制や相場操縦の禁止といった不公正取引規制を株式店頭市場にも適用する必要がある旨の報告書が取りまとめられております。
 今回の改正法案におきましてこの整備が行われることとなりましたが、本協会といたしましては、これらの店頭売買有価証券に対する新しい規制措置が十分徹底するよう、諸般の努力を続けたいと考えております。
 第五は、誠実・公正の原則の明定、行き過ぎた大量推奨販売の禁止についてでございます。
 昨年四月、証取審不公正取引特別部会におきまして、証券監督者国際機構、いわゆるIOSCOでございますが、その行為規範原則の我が国への適用についてめ報告書が取りまとめられたこと等を踏まえまして、今回の改正法案では、誠実・公正の原則が明定されることになりました。また、行き過ぎた大量推奨販売につきましても、今回、証券会社の禁止行為として規定されることとなりました。
 私は、これらの改正は、いずれも必要かつ重要な措置であると存じます。
 なお、これに関連して、本協会では、最近、証券会社における基本的な営業ルールであります大量推奨販売の禁止、誠実・公正の原則等につきまして易しくかつ具体的に解説した「証券営業ガイドライン」というものを作成いたしまして、これらの基本的なルールが第一線の営業員に十分理解されるように周知徹底を図ったところであります。
 そのほか、今回の改正法案で、投資者の苦情処理について本協会が積極的な役割を果たすべきことが規定されていることにかんがみ、現在、特別な作業部会を設け、本協会の紛争処理制度の見直しを進めているところでございます。できるだけ早い機会に新しい紛争処理制度を発足させ、投資者の信頼回復の一助としたいと考えております。
 また、証券会社の引受業務が適切に遂行されるように、最近、引受業務に関する規則、利益配分に関する理事会決議等を制定いたしまして、関係者の協力と理解を得ながら健全な発行市場の機能回復を図っているところであります。
 以上、改正法案に関する証券界の考え方を申し述べさせていただきました。いずれも我が国証券市場における取引の公正の確保、市場に対する投資者の信頼を保持する観点から基本的に重要な改正内容でありまして、大変意義深い改正であると考えております。
 以上をもちまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○太田委員長 どうもありがとうございました。
 次に、長岡参考人にお願いいたします。
○長岡参考人 東京証券取引所の長岡でございます。
 本日は、証券取引等の公正を確保するための証券取引法等の一部を改正する法律案の審議に当たりまして、意見を申し述べる機会を与えていただきました。大変ありがたく存じております。
 大蔵委員会の諸先生方には、平素から何かと証券市場の諸問題につきまして御指導を賜っておりますが、特に昨年来、損失補てん等証券取引をめぐる一連の問題に関しまして御高配を煩わし、恐縮に存じております。御高承のとおり、証券市場は長期間にわたり低迷しておりますが、私どもといたしましては、一刻も早く市場への信頼を回復し、その健全な発展を期したいと存じておりますので、よろしく御指導のほどをお願い申し上げます。
 さて、今回の法律案につきまして私の意見を述べさせていただく前に、昨年来の一連の問題を契機に東京証券取引所がこれまでとってまいりました措置につきまして、概略御説明させていただきたいと存じます。
 まず第一点は、取引所運営への公益の反映についてでございます。より公正、中立な立場に立って東京証券取引所の運営を行う観点から、公益理事を二名増員するとともに、会員委員会における公益委員等を増員いたしました。
 第二点は、会員規律の強化についてでございます。会員活動の公正性、健全性を高める観点から、規律委員会の機能を強化するとともに、会員に対する考査の充実を図りました。また、規律違反者に対してより厳正に対処するため、過怠金の上限を五百万円から一億円に引き上げるなど、処分内容を強化いたしました。
 第三点は、証券取引の公正性、透明性を確保する観点から、価格監視、売買取引例審査機能を一段と強化いたしました。まず、市場部門におけるリアルタイムの価格監視体制を強化しております。こうした監視により、価格形成状況等が不自然であり、不適正な取引となるおそれのある取引が発見された場合には、会員に対し、その都度その旨を通知し、取引内容について照会を行うことといたしました。また、売買取引の審査基準を強化するとともに、価格監視と売買取引審査両部門の連携強化のため、副理事長を責任者とする審査連絡会を設置いたしました。
 以上が、昨年来の一連の問題を契機に東京証券取引所がとってまいりました主な措置でございます。
 申すまでもなく、流通市場を預かる証券取引所の責務は、公正、透明で、効率的かつ流動性の高い市場を維持運営することを通じて、よりよく資本市場の機能を発揮させ、もって国民経済の円滑な発展に資することにあります。東京証券取引所といたしましては、このような観点から、市場の公正性、透明性を一層確保し、内外の投資家の信頼を回復すべく全力を挙げて取り組んでまいりましたが、このたび、証券取引等の公正を確保するための法律改正が行われますことは、証券市場の運営に携わる者として極めて有意義なことであると考えております。
 それでは、今回の改正案のうち、証券取引所に関連するものを中心に、簡潔に私の意見を申し述べさせていただきたいと存じます。
 まず、証券取引等監視委員会の設置についてでございます。
 同委員会が設置されますことは、より一層証券取引等の公正を確保するとともに、我が国証券市場に対する内外投資家からの信頼を確保する上で、まことに適切であると存じます。東京証券取引所といたしましては、先ほど申し上げましたとおり、昨年来の一連の問題を契機に、売買取引の審査及び会員に対する考査部門の体制整備を図っておりますが、今後は、同委員会と有機的な連携をとりながら、公正確保へ向け一段と努力をしてまいりたいと存じます。
 次に、私ども東京証券取引所を初めとする自主規制機関の機能強化についてでございます。
 今回の改正案では、証券取引所の運営目的が明定され、「有価証券市場は、有価証券の売買取引等を公正かつ円滑ならしめ、かつ、投資者の保護に資するよう運営されなければならない。」とされております。私どもの定款ではこれと同じものを既に規定しているところでございますが、今回の改正により法律上もこのことが明定されたわけでございます。今後とも自主規制の利点を生かしつつ、有価証券市場の公正かつ円滑な運営に一層邁進してまいりたいと存じます。
 次に、会員に対する取引所の調査権限等についてでございます。
 現在は、定款に基づき会員から資料等の提出を受け、売買取引の審査あるいは会員に対する考査等を行っておりますが、今回の改正案におきましては、会員の法令、法令に基づいてする行政官庁の処分、定款その他の規則または取引の信義則の遵守状況の調査に関する事項を定款に記載しなければならないこととされ、法律上会員に対する取引所の調査権限等が明記されたわけでございます。東京証券取引所といたしましては、今後この改正案の趣旨に沿って定款等の規定を整備し、売買取引の審査及び会員に対する考査等を一層充実強化させてまいりたいと考えております。
 以上が今回の法律改正に関する私の意見でございます。
 最後に、私は、昨年来の一連の問題は証券市場にとって投資家の信頼がいかに大切であるかを示したものであると考えております。証券取引の国際化がますます進展する中にあって、市場に対する信頼を早期に回復し、国際資本市場として基盤強化を図っていくことが、私どもにとっての喫緊の課題であります。その意味におきまして、本法律案の早期成立を期待し、それを踏まえまして東京市場の一層健全な発展に努めてまいりたいと存じておりますので、引き続き格段の御高配を賜りますようお願い申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
○太田委員長 どうもありがとうございました。
 次に、河本参考人にお願いいたします。
○河本参考人 私、現在神戸大学の名誉教授の資格を持っております河本でございます。
 最初に一言、今回の改正案に対する基本的な気持ちを申し上げさせていただきますと、二十四、五年前に私初めて「証券取引法」という本を書きました。そのころはほとんど証券取引法についての体系書というものはなかったわけであります。それ以来数次の改正をずっと見てまいりました。今回のこの改正は、もう一度証券取引法をつくり直す。ようなものだと考えております。
 従来の法律は、御承知のようにまさにアメリカの占領下でつくられたものであります。その間、日本の経済の非常な発展、しかもそこには非常に独特の形態を持っておる、それが証券市場にも及んでおりますが、それを踏まえた上での独自の証券取引法が初めてできる。そういう意味で、私も研究生活がぼつぼつ終わる年代に達しておりますが、非常に深い感慨を持って今回の改正案を見ておる次第でございます。
 それで、まず証券取引等監視委員会の設置について申し上げますと、現行証券取引法によりますと、大蔵大臣は、証券会社に対しまして営業、財産の状況、帳簿書類等を検査する権限を有しておりますが、証券会社の取引先である投資家に対しましては、証券会社の営業、財産に関し参考となる報告、資料の提出を命じ得るというだけのことであります。昭和六十三年の証券取引法の改正に当たりまして、インサイダー取引を禁止する規定を新設いたしましたときに、この規定の実効性を確保するためには、監督機関に調査権限を与えてそれを投資家に対しても拡大できないのかという議論を私どもはいたしました。しかし、当時は到底それが実現できるような雰囲気ではありませんでした。今回、証券不祥事という不幸な出来事を契機としてではありますが、やっと強制調査権を備えた監視委員会ができることは、私ども証券取引法の研究者といたしましては喜ばしいことであると考えております。
 もっとも、この権限を行使する機関、すなわち証券取引等監視委員会のあり方につきましては、随分議論がございます。しかし、証券業の免許制を今登録制に変更するというような大変革を行えるような客観的情勢ではありません。そういたしますと、この免許制を維持しながら、免許制に固有の予防監督行政と証券取引等に関する犯則事件の監視、すなわち市場監視との双方が両立し得るような制度をつくり上げていくほかございません。法案によりますと、同委員会は大蔵大臣のもとに置かれる組織ではありますが、その任命には国会の同意を要しますし、委員の身分は保障されており、独立して職務を行うのだということが法律に明記されております。これによってその独立性と中立性は制度的には保たれておる、こう考えております。
 同委員会は、行政処分権は有しておりませず、大蔵大臣に処分を勧告することができるということになっておりますが、これも証券業についての免許制を維持していくということとの関係から生じる必然の結果ではないかと考えております。
 次に、この委員会の活躍に対する期待でございますが、いわゆる市場監視を主たる任務といたします同委員会に対する最も大きい期待は、相場操縦とインサイダー取引に対する効果的な監視であります。このうちインサイダー取引につきましては、昭和六十三年の改正により、既にどのような行為が違法であるかということについては極めて詳細な規定が設けられております。したがって、今後は同委員会による有効、適切な法の執行が強く期待されるわけであります。
 それから相場操縦につきましては、それを禁止した百二十五条の条文の適用の困難さが従来から指摘されておりました。そこで、この問題につきまして証券取引審議会の不公正取引特別部会で、立法技術的な面をも含めまして詳細にわたり審議をいたしましたが、その結果、新たな監視委員会の発足に備えまして、百二十五条、つまり改正法案では百五十九条になっておりますが、二項一号の運用についての考え方を明らかにするということにいたしました。それが、平成四年一月二十日付の証券取引審議会不公正取引特別部会中間報告書でございます。そこでは、今まで同条を適用いたしました三つの下級審判例、事件としては二つでありますが、それを素材といたしまして詳細な検討を加えました。最大の問題点は、条文の中の「有価証券市場における有価証券の売買取引等を誘引する目的」、この存在が犯罪成立の構成要因になっている。しかしこういう目的につきまして、それが存在したということを積極的な意思の立証まで要求いたしますと、到底これは犯罪として摘発することは難しいことになります。そこで、この判例の中に、そこでは積極的な意思の立証までは必要なく、第三者が誘い込まれることの可能性
 の意識、認識、その立証で足りるという考え方を示しておりますので、この判例の考え方に従って百二十五条、新しい改正法案では百五十九条、これを今後積極的に活用していくことが望まれる、
 こういう答申を私どもしておるわけでございます。
 なお、証券会社が大量推奨販売行為を行うに際しまして、特定の投資家と共同し、あるいは自己売買や売買一任勘定取引を利用いたしまして、意図的に株価のつり上げを図るというような場合には、これはもう相場操縦の罪に当たりますが、そのような行為は認められないというような場合には、この罪の成立を認定することは難しいのでございます。そこで、改正法案はこのような行為を五十条の定める禁止行為の一つとして明確にし、違反行為に対しては直ちに行政処分を課することができるようにしております。
 なお、法案では相場操縦、インサイダー取引の禁止規定の適用を店頭登録銘柄にも拡張することにしておりますが、最近の店頭市場の活況にかんがみれば、これも当然のことであると思います。
 それから、最後に簡単に申し上げますが、法案では自主規制機関としての証券取引所、証券業協会、なかんずく証券業協会の機能強化が図られております。私ども、証券取引の規制は本来自主規制機関を前面に立てて行うべきものであると考えておりますので、これも当然の改正であると思われます。
 以上、私の御報告を終わらしていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○太田委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
○太田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村正男君。
○中村(正男)委員 四参考人の皆さんには、大変お忙しいところ、きょうこの委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
 私は社会党の中村正男でございます。
 今渡辺さん、長岡さん、そして河本先生、お三方から基本的な認識についての御意見が述べられました。私が当初予定しておりましたお聞きをしたい点もかなり触れられておりますが、さらに重ねてお聞きをする点もあろうかと思いますけれども、よろしくお願いしたいと思います。
 まず最初に、業界言葉で温州のだんなという言葉があるようですが、この意味は当然皆さん方、まあ河本先生はともかくとして御存じだと思うんです。もう一度申し上げますと、証券市場の業界言葉で温州のだんなという言葉があるんですが、会長御存じですか。長岡さん御存じですか。――いや、結構です。恐らく本当は知っておられるんじゃないかと思うのですけれども、私が申し上げたいのは、飛ばしという言葉が最初出てまいりましたときには、恐らく大方の一般の国民の皆さんは何のことか全くわからなかったと思うのですね。その後、報道を通じてその意味がわかってぎたわけですけれども、証券業界にはこういった業界独特の符牒、隠語があるわけです。ちなみにこの温州のだんなの意味は、御存じだと思いますけれども、温州ミカンは種がない、温州のだんなというのは金のないお客、こういうことで言われておるようです。
 もう一つ紹介しますと、あんこという言葉があります。これも御存じですか。関専務理事は御存じだと思うのですが、首をかしげておられますが、これも、安値で仕込んで値上がりした株や債券をその日のうちに売り、利益を確定させたところで、売買を顧客の勘定にそのまま渡すこと、一番おいしいところを与える、そこから来たようでありますが、こういう独特の言い回しか証券市場にはたくさんございます。中には極めていかがわしい行為を指す言葉もあるわけです。もともとこういった符牒だとか隠語は閉鎖社会の産物と言えるんではないでしょうか。そういう隠語から証券市場というのはどうしても一般の市民の見方からいたしますと隠微な世界ではないか、こんなことが言えると思うんです。
 私はなぜ冒頭こんなことを申し上げたかといいますと、今回、昨年の一連の不祥事、これはまさに証券業界が閉鎖社会であり、開かれた公正なそういう市場ではない、そのことを端的に物語っておると思います。
 今それぞれお三方から御意見が述べられました。改めて、昨年六月証券不祥事が発覚をいたしましておよそもう一年たちます。この補てん問題、暴力団に実質的に資金提供を図るようなこと、さらには飛ばし等々、こういったことについて協会長の渡辺さん、それから東証理事長の長岡さんから一日本音で反省の言葉をお聞きをしたいと思います。
○渡辺参考人 ただいま中村先生からいろいろと業界の持っております古い体質といったような点につきましてお話がございまして、中には私の存じない言葉などがございまして、大変勉強になり、反省させられました。
 しかし、概括的に申し上げまして、証券市場が担っております役割は、今さら申し上げるまでもなく、あるいは証券界の人間として別に大げさに胸を張って申すわけではございませんけれども、やはり経済の中で非常に大きな役割を分担しているというふうに思います。それからまた、特に国内だけでなくて国際的に見ましても、日本の証券市場が非常に大きく国際的に組み込まれておるというような状態になっておるわけでございます。したがいまして、それが特殊な社会であったりあるいは閉鎖的であったりというような御指摘がございましたが、そういうことであってはならないというのはもう明らかでございます。ただ、そういう点につきます改革というものは一つの大きなきっかけなり、あるいは大きな改革なりをするモメントというものが必要なのだろうと思います。決して望ましいことではございませんけれども、昨年来の一連の不祥事件といったようなものは、これはなるほどバブルといったような異常な経済状態の後遺症とも言えますけれども、御指摘のように証券界が長い歴史の中で持っておりました古い体質が表面に出てきたというふうに言えないこともございません。したがいまして、これを冒頭申し上げましたような証券界が担っております使命に照らして改革していくということが絶対に必要だと思いますし、私どももその使命感に燃えているわけでございます。
 それで、昨年以来いろいろな対策をとってまいりました。証券取引法も昨年改正されておりまして、いわゆる損失補てんとかいうような問題あるいは暴力団との過度の取引とか、いろいろな点について、まだ一年弱でございますが、その間に過去に例を見ないような改革の動きがございましたし、我が証券業協会といたしましてもこれに取り組んでまいったつもりでおります。
 今度の飛ばしといったような問題も表面化しておりますけれども、これも行き過ぎた法人営業のとがめだと思います。個人のなせるわざということもございますけれども、しかし社内でそれを十分にチェックできなかったという点は一つの大きな問題でございまして、その点についても証券業協会は内部管理体制の強化で、きちっと決めております。こういった点につきまして、これを機会に今後とも証券界が非常に公正で健全で活気のあるものになるように、自主規制機関としての我々協会の使命も非常に重いと思っておりますので、先生の御指摘を十分踏まえて努力してまいりたいと存じております。
○長岡参考人 証券市場の公正性、透明性を確保し、また証券市場が健全な発展を遂げていくためには、何と申しましても投資家の信頼というものが基礎になければならない、私は基本的な認識としてそういう考えを持っております。そしてその投資家の信頼をしっかりとつなぎとめていく場合に、でき得る限り数多くの個人投資家が安心して参加できるような市場をしっかりとつくっていくということが一番大切なことではないかというふうに考えておるわけでございます。
 そういう点から考えますと、中村委員も御承知のように平成二年以来株式市場は低迷を続けておりまして、三年の半ば以降に発生しました損失補てん等の一連の証券不祥事というようなものがいかに証券市場に対する信頼を大きく傷つけたかということを考えますと、本当に深刻な問題として受けとめております。私どもといたしましては、何とかして一日も早くそういったような一種の不信感を払拭いたしまして、市場に対する一般投資家、なかんずく個人投資家の信頼をつなぎとめ、これを回復していきたいということで、今後とも全力を挙げて市場信頼の回復に努めてまいりたいと考えている次第でございます。委員御指摘の今までの問題をどう受けとめたかという点につきましては、私ども本当に深刻にこの問題を受けとめて現在対処している所存でございます。
    〔委員長退席、中川委員長代理着席〕
○中村(正男)委員 昨年の一連の不祥事の中でいろいろな新聞報道があったわけですけれども、一つこういうことがございました。「通達への依存「情けない」」、こういう見出しでありまして、七月末に大蔵省証券局長の通達で「証券会社の社内管理体制の強化等について」、こういうのが出たときに、「ある大手証券幹部は「こんな通達を受け入れる業界の体質が情けない」」ということで、以下、この書かれた方は行政からの自立を強く主張されているわけです。
 今回の一連の不祥事、これを招いた原因はいろいろ複合的なものがございます。例えば証券市場の変化、これは非常に速いスピードでもって変化をしてきたわけですけれども、制度改革の方が市場の変化のスピードについていけなかった、それも一因だと思うのです。行政のおくれもあったでしょう。ただ私は、一連の昨年からのあの特別委員会の論議、今日まで続いてまいりましたさまざまな論議の中で、一番重たく受けとめておりますのが大蔵省と証券業界とのもたれ合い、これが一番大きな要素ではなかったのかな、こう思うわけであります。今まで大蔵省が出した通達は約四百五十本、これを六月中に見直しをやり、最終的には五十本ぐらいに集約する、こういうことが言われておるわけでございますが、通達という形で業界、証券会社は経営の重要な部分を大蔵省にゆだねてきたのではないか。言い方を変えれば、厳しい見方をするならば国営企業と呼ばれてもしょうがない、それだけ協会にも証券会社個々にも主体性というものが見えなかった。この責任が大変大きいのではないか。証券会社そのものが独自の経営判断能力を持てなかった、これが一番大きな問題ではなかったかと思います。
 今回監視委員会の設置等、法律が出されましたけれども、これが行政からの自立ということを確立する絶好の機会ではないか、この機会を逃したらまたまた大蔵省に依存していく体質がそのまま残っていく、それがまた多くのこれからの不祥事を誘発させていく一因にもなる、私はそういうことを考えるわけでございまして、日本の証券規制を改善するかぎというのは、規制機関の形態だけではなく取り組む姿勢である、こういうふうにも言われております。行政からの自立について、渡辺参考人と長岡参考人に御意見をお伺いしたいと思います。
○渡辺参考人 ただいま先生から御指摘の点については十分に理解いたします。
 それで、前の答弁にも申し上げましたように、例えば内部管理体制につきましても、通達ということでなしに、ただいまは自主規制機関である私ども協会でこれを定めて協会員にそれを守ってもらう、また、各証券会社の内部にそういう体制をきちっとつくっていただくということでもう既に進んでおりますから、そういう体制で動いておりますから、今後は自分たちの手でそれをやっていくということになると思います。
 今回の法律改正によりまして、冒頭に申し上げましたように自主規制団体といたしまして証券業協会の役割が非常に明らかになったわけでございまして、私どもはそこでも申し上げましたように、自主規制の理念が実現できるように全力を尽くしてまいりたいというふうに思います。そのためには、さらに協会の内部も体制整備をいたしまして、その役割と責任を全うできるように今後も努力したいと思っております。
 自主規制団体の運営におきまして、先ほども自治の精神が大切であるということを申しました。これは、証券市場は非常に、今先生のお話も、変化の激しい、変化が速いというお話もございましたが、変化も厳しゅうございますし、それから市場の動きも非常に速いものでございます。それに対する自主規制ということでございますから、これは自分たち一番仕事。なり情勢なりをよく知っている人間が、それをどういうふうに規制していけば公正で透明な市場になり得るかという意味で一番よく物を知った人間が集まってそれをよく議論をし、そしてルールを決めたらそれを今度自分たちで必ず守るというのが自治の精神だと思いますが、そういう物の考え方で進めてまいります。
 しかし、行政との関係でございますけれども、これも先ほどちょっと触れましたように、きちっと決めなきゃならぬことは法律で決めていただくし、あるいは自主規制団体に任せられるところは自主規制でルールをつくり、今申し上げたような物の考え方でこれを運用していくということで、今後は通達なり行政の指導といったようなものの範囲はかなり大幅にきちっと整備されるということではないかと思いますが、しかし、我々自主規制団体も、自分たちで勝手に物を考えて決めればそれでよいというわけにもまいらないと思いますので、日本では証券は免許会社になっておりますので、やはり大蔵省の監督といったような面は当然残ると私は思います。
 したがいまして、そういった行政とそれから我々の自主規制との間には密接に連絡をとることはこれは必要だと思います。それは決して、行政とのもたれ合いとかなれ合いとかそういったような面とは全く異質のものであるというふうに思っております。密接な連絡や調整や、そういう調和を図っていくということは今後とも必要なのではないかというふうに思っております。
○中村(正男)委員 もう長岡参考人、結構でございます。今の協会長のお話で結構でございます。
 次に、自主規制機関の問題、お尋ねをしたいと思うのですが、体制を強化されたことについては冒頭の陳述で十二分にお述べになりましたので一応理解をいたしております。
 そこで、昨年の十二月十八日に発表されました自主ルールですね、今日までまだ半年足らずでありますが、これを適用した具体的な事例はあったのか、まずそれをちょっとお聞きをしたしいと思います。
    〔中川委員長代理退席、委員長着席〕
○渡辺参考人 ただいまの御質問にございましたけれども、私どもの協会では、改正証券取引法の施行に対応いたしまして一連の自主規制ルールを昨年整備いたしまして、ことしの一月からそれを実施しておりますが、これまでにこの自主規制ルールに違反するような事例は把握しておりません。
○長岡参考人 東京取引所関係の自主ルールにつきましても、実施以降今日に至るまで、違反した例はございません。
○中村(正男)委員 一連の飛ばしで山種証券それからコスモ証券、これがいろいろな行政処分を受けた、こんなふうに承っておりますが、これらはいわゆる自主規制機関の自主ルールに抵触した、こういうことではないのですか。
○渡辺参考人 お答えいたします。
 山種証券の飛ばしの問題につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、我々としても思わない事件でございまして甚だ残念に思いますが、その金額が非常に多額でございますし、それから法令違反といったような問題がございます。損失補てんと同じように、投資家の市場の公正性、透明性への信頼を非常に損なうということでございますので、本当に残念なことだと思います。
 それで、去る四月二十八日に大蔵省の処分がございました。これは、本店事業法人部及び法人資金運用部の十日間の業務停止ということで大蔵省の処分がございましたので、私どもの協会におきましても現在事実関係の掌握に努めておるところでございますが、法令違反行為によりまして行政処分が行われたということも含めまして、この協会においてはどういう手段、措置をとるべきかということで今月中には規律委員会を開くことにしておりまして、一この規律委員会は外部の、証券界以外の方々が多数でございますので、ここで議論していただきまして、同社に対する処置を決定いたしたいというふうに存じております。
○長岡参考人 昨年十二月十八日の自主ルールとの関係についてだけ限定してお答え申し上げますと、いわゆる山種証券の飛ばし行為が自主ルール制定以前の行為でございまして、遡及適用は難しいというふうに思っております。
 しかしながら、こうした行為が自主ルール制定以降に仮に行われたといたしますれば、適正な取引の範囲を逸脱する行為でございまして、自主ルール違反と言わざるを得ない場合があろうかというふうに考えております。
○中村(正男)委員 長岡参考人に今の件でお尋ねをするわけですが、仮にこれがルールの適用の期間の中で起これはどの項に該当するのか。証券事故について一、二、三あるのですが、ちょっと参考までにお聞きをしておきたいと思います。
○長岡参考人 正会員の行う媒介の取り扱いについての項目がございますですね。この媒介の取り扱いについての項目、「適当と認める範囲内の値段」というところを逸脱するということになるのではないかというふうに考えます。
○中村(正男)委員 次に、自主規制機関として、ルール違反をした場合、この処分権の範囲というのはどの程度のものなのか、これをお聞きをしたいと思います。
○長岡参考人 まず、東京証券取引所の関係からお答え申し上げますと、会員が行ったルール違反等に対します本所の処分権の範囲は、昨年来の一連の不祥事にかんがみまして処分を強化したわけでございます。一億円以下の過怠金、それから戒告、それから売買取引等の停止もしくは制限、六カ月以内の会員権の停止、そして最後に除名というふうになっております。
○関参考人 証券業協会におき」ましても、協会の定款に「協会員の処分」と、いう規定がございます。協会員が法令違反とか協会の規則に違反をした場合においては、ただいま長岡参考人が取引所のことを申されましたけれども、協会においても制裁を加えるということができることになっております。それで、制裁の内容につきましては、「譴責、一億円以下の過怠金の賦課、六か月以内の会員権の停止または除名の処分」、こういうことになっております。
○中村(正男)委員 そういう処分の段階があるようでありますが、今回この監視委員会が設置をされたとき、この自主規制機関との相互の関係は一体どうなるのか。協会の監査、取引所の考査等々あるわけですが、この辺はどういう形で線引きをされ、あるいは相互にどういう連絡をとりながら処分をしていくのか。わかりやすく簡潔にひとつお願いを申し上げます。
○関参考人 協会員におきまして、証券取引法あるいはそれに関連いたします法令の違反というようなものがもし起きますと、これは先生御承知のとおり、当然大蔵省の処分の問題が発生し得るわけでございます。また、そういった事態が、今度新設されます委員会におきます強制調査、おるいは任意の立入検査、従来の証券検査でございますが、そういうことで発見されまして、それが、大蔵省の証券局の方にこういった報告が行く、あるいは、それに対する処分の勧告が伴って行く、こういうことになりまして行政の方の処分が行われる、こういうことになると思います。
 それと同時に、そういった法令違反が起きたということにつきましては、それぞれ自主規制機関の取引所あるいは私ども協会の規則との関連において同時にそれが問題になるということがあり得るわけでございます。そういった場合については、行政のいろいろな措置と連動いたしまして、それぞれ自主規制機関の制裁措置がとられるということになるわけでございます。
 また、先ほど来参考人が御報告申し上げておりますけれども、協会は監査、それから証券取引所は考査という自主規制の立場からの検査機能を持っているわけでございまして、そういった活動の結果協会員のルール違反というようなものが発見された場合は、これは協会とか証券取引所がそれぞれの立場から判断して制裁の内容を決めていく、こういうことになると思います。
○中村(正男)委員 次に、河本参考人にお尋ねをしたいと思います。この一連の不祥事の後、日本じゅうを挙げて日本版SECをつくれという大合唱が起こったわけでございます。その後、アメリカと日本のいろいろな司法制度の違いだとか、もちろん証券業界の免許制、登録制の違い、あるいは片や一万二千社、日本はせいぜい二百社余り等々、この違いがやはりあるから、今日では日本版SECをつくれ、こういう強いといいますか、何が何でもという意見はちょっと下火になったのでないか、こういう理解をしております。ただ、例えば予算の面で見ましても、アメリカの場合は九二年度で二億二千五百億ドル、約三百億円、今回の監視委員会にかかわる予算はたかだか九千八百万円、一億円、果たしてこれでどの程度のものができるのかという危惧がございます。
 そこでお尋ねしたいことは、こういった予算の面それから人的対応、これで十分なのかな。昨年あんな事件がありましたから、業界そのものは大きな反省をしておりますから、当面はという見方もありますけれども、ちょっとその危惧がございます。
 それから、基本的に国家行政組織法三条の委員会にせずに八条委員会にした。これも我々としてはいささか問題にしておるわけでございまして、冒頭参考人の方から、大蔵省からの独立性についてもこれは十分担保できている、こんな御意見もございましたけれども、改めてそういった点についてのお答えをまずいただきたいと思います。
○河本参考人 よくアメリカのSECとの比較がなされるわけでありますが、御承知のようにアメリカのSECは、いわゆる証券というものの範囲が極めて広うございます。ところが今回の法案では、まさに流通性のある有価証券、それに対象を限定いたしまして監視委員会が動くことになっております。
 ところで、その証券会社の数だけ見ましても、米国は登録制でありますから一万二千数百ある。ところが日本の場合は、外国証券等を除きますと現在で二百十六、全部入れましても二百六十五。数からいきますと大体六十分の一ぐらい。それで、よく言われますように、アメリカは二千人から抱えておるが、日本の場合予定されているのは、各財務局等々も全部合わせますと百十八人。こうしますと、日本のそういう官庁の検査能力というのは非常にすぐれておるということも聞いておりますので、規制の対象との比較でいきましてもこれでいけるのではないか、私はこういうふうに考えております。
 それから予算の点でありますが、私もその点を十分存じておりませんのですが、今回、お挙げになりました九千八百万というのは委員会の業務に直接必要な経費と言われておりますので、今後それがどうなっていくのかということは私はよく存じませんが、しかしアメリカでも、SECの方からこれこれの金がかかるといって予算の要求をするというようなことがありますから、国会でこういう制度がもし御承認いただけましたら、今後恐らくそこでの十分な活躍のためにどれだけの金がかかるかということがこの委員会の方からも要求がされてくるのではないかと存じております。したがって、結論的には、さしあたって考えますと、その規制の対象、それからその規制の仕方等々から考えまして、この委員会、一応十分期待していいのではないかと私ども考えております。
○中村(正男)委員 次に、証券監督者国際機構というのがございます。IOSCOというのがあるのですが、これが一昨年の十一月に採択をいたしました証券業者が守るべき七つの原則、一応申し上げますと、一つは誠実・公平、二番目は注意義務、三番、能力、四番、顧客情報の把握、五番目、顧客への情報開示、六、利益相反の回避、七番、規則の遵守、こういうものを一昨年十一月に採択されたわけです。日本のああいった一連の不祥事に対してこれを日本にも適用しよう、こういう審議がされたというふうに商いております。それに対して大蔵省としては三月一日付で一定の通達を出して一応カバーしたといいますか、そんな対応をとられたと思うのですが、国際的に日本の今回の一連の不祥事に対しての見方は、非常に措置は甘いのではないか、甘かったのではないかという評価がある、そういうふうに聞いておるわけですが、そういった。上に立って今回この監視委員会の設置になったわけですが、この監視委員会そのものについては国際的にはどういう評価をされているのか。また、先ほど申し上げた七つの原則というものが今回の法改正にどういうふうに取り入れられたのか。この辺を河本参考人にお尋ねをしたいと思います。
○河本参考人 今回の証券取引法の改正、これにつきまして、まだ私どもも直接海外の学者等々からの意見は聞いておりませんが、もう既にこの秋には、まずヨーロッパの学者七日本の学者が京都に集まりまして、それぞれの銀行、証券、保険、それについての監督のあり方についてのシンポジウムを開くことにしております。実は私ども、まさにそのときに、この日本でこれだけの監視体制ができたということを持っていけるということを非常に心強く思っておるわけであります。恐らく、少なくともヨーロッパとの関係では、これは全く日本の方が進んでおる。これを進んでおると言っていいのか、こんなものが要るということが果たして進んでおると言っていいのかどうかわかりませんけれども、とにかく巨大な資本市場を抱えた国といたしまして、ここまでの監視体制を整えたということを、口幅ったいようでありますが、胸を張って言えるのではないか、こういうふうに思っております。
 それからアメリカとの関係では、まだそういう計画はございませんが、恐らくこの監視委員会の権限というのはアメリカのSECよりもはるかに強いものになっておりますから、日本の実態を踏まえて、まさに日本的な機能を備えた、そういう制度ができた、恐らくこう見てくれるのではなかろうか、こういうふうに思っております。
 それからIOSCOとの関係でございますが、これも私もメンバーの一人に加わっておりまして、証券監督者国際機構、IOSCOの「行為規範原則の我が国への適用について」というリポートに名を連ねております。そこで先生お挙げになりました七つの項目につきまして、それぞれ一体これをどういうふうに扱うかということを詳細に検討いたしました。その結果、具体的には誠実・公正の原則とそれから適合性原則を法案の中に入れましたが、それ以外については特に法律上の手当てをしておりません。
 そのわけは、現在既に民商法等々の規定、例えば信義誠実の原則等々を使っていきますと、注意義務であるとかそういうものが十分手当てできますし、それから既にそのほかの条文の上ででき上がっておるものもございます。例えば利益相反等々につきましても、改めて条文をつくるということもない。一般的な行為規則それから協会、取引所の規則、そういうようなものを活用していきますと、十分現在あるものを、さらに運用さえきちっとしていけば得られるということでありますので一この二つだけを特に条文の中で取り上げた、こういうことでございます。
○中村(正男)委員 冒頭申し上げました八条委員会にした理由、これをちょっと。
 それから、委員長以下委員は三名、こういうふうになっておりますが、先生のお立場から、どういう職能の人あるいはどういう立場の人が委員にはふさわしいのか、具体的な氏名はともかくとして、そういう監視委員会の性格からして、不公正部会長としてのお立場から御意見をお聞きをしておきたいと思います。
○河本参考人 この監視委員会の法律上の位置づけでございますが、私が先ほど御報告させていただきましたように、今免許制を再び登録制に戻すということはとてもできない、そしてまたこの免許制というのは十分それだけの効果を上げてきたという面もございます。そうしますと、この免許制につきましては、私も自分の本の中にかなり詳しく書いておるのでありますが、結局これは予防監督行政を行うことができるというところにこの免許制のメリットがございます。これを崩さずに、さらに独立した監視委員会をつくっていきます場合に、この二つがうまく両立するという上で考えますと、やはり行政処分権、これは免許を与えた者がその責任において行うべきだということはどうしても筋として出てまいります。そうしますと、三条委員会でいきますと、それ自体がそういう処分権を持つという仕組みにならざるを得ませんので、この二つの間にちょっと調和のとれない矛盾が起こってくる。そこで、免許制のもとでこういう独立の監視委員会を設けるとすれば、この法案のような制度が最良のものであるし、またちょっとそれ以外に制度としては考えにくいのではないか、こういうふうに考えております。
 ただ、この場合に最も大事なことは、たとえ大蔵大臣に任命されるにいたしましても、それが完全に独立して、中立の立場でその監視の権限を行使し、その職務を行い、そして必要があれば処分を勧告するという、それが行われなければならぬ。法律上は身分保障があり、選任に当たっては国会の向意を得る、職務は独立して行う、こういうふうになっておりますが、結局やはり私は人を選ばなきゃならぬと思います。単に法律知識、経済知識がある、それは大事なことでありますが、それ以外にこの法律の趣旨をどこまでも貫いていける、そういういわば非常に強い意思を持った方、そういう方がこの制度のもとでは最も望ましいのではないか、こういうふうに考えております。
○中村(正男)委員 冒頭河本参考人の方から百二十五条の見直しを行った、こういうお話がございましたが、今日までこの五十八条、不公正取引の禁止についてはいまだかつて適用されたことはないわけですね。百二十五条、相場操縦につきましても、二回適用された、こういうふうに残っておりますが、我々としては、まだまだこれだけの複雑化した証券市場に対してより有効な証取法にしていかなければならぬと思うのですね。緊急に改正すべき問題点、これは先生として御指摘があればお聞きをしておきたいと思うのですが。
○河本参考人 まず、この五十八条について、その適用が今までなかったという御指摘でございましたが、実はたった一件、たった一件というようなことでそう偉そうなこと言えませんのですが、最高裁まで行った件があったことは確かであります。ただ、これは私どもは本来の適用場面とはちょっと言えない、つまり全くのぼろ株を価値があるようにして売りつけた、これは全く詐欺なんですね。そういう場合にわざわざ五十八条を使った。その場合に最高裁は、決してこれは、内容が極めて不正確で、こんなもので罰則をかけるのは憲法違反だという被告の主張に対しまして、いや、そうではないというふうにこの五十八条の合憲性を認めた最高裁判例が一つございます。しかし、これはそのケースで見れば全く当たり前の話であります。
 しかし、先日も不公正取引部会で出ました議論で、例えば前回六十三年の改正のときに、インサイダー取引については非常に詳細な、日本の検察が使いやすいようなインサイダー取引禁止の規定をつくりました。ところが、そのときの議論として、今後インサイダー取引が行われたときは新しくできた条文だけで処罰できるのか、つまり、そうしますと刑罰が非常に軽くなりますですね。ところが、五十八条で使いますと、これはもう三年、それから懲役というように非常に重い刑罰になってきます。五十八条はもうインサイダー取引には使えないのか、こういう議論も出ました。
 しかし、先月の不公正取引部会のときに、私、一体今後この五十八条はどうなりますかと。そのときに刑法の専門家の間では、いや、例えばインサイダー取引につきましても五十八条は使わない、新しくできた、現行法でいいますと百九十条の二と百九十条の三だけでいくんだというわけでは決してない、非常に悪質なものが出ましたら、金額が大きいとか極めて巧妙な手段を使ってインサイダー取引をやっておるとかいうようなことになるとやはり五十八条が使えるのだろう、そういう意味で、五十八条がインサイダー取引にも適用される理論的根拠が前回の改正によってむしろ与えられた、こういうような議論もありまして、ただこれにつきましては今後もっと詰めて部会で議論していきたい、こういうふうに考えております。
 それから、百二十五条につきましては、これは先ほども申しましたように、これをどういうふうな規定に変えたらもっと相場操縦を摘発するのに便利になるか、これは非常に難しいわけであります。といいますのは、株というのは買えば上がる、売れば下がる、こういう性格を持っておりますので、そういう正常な取引、それが引っかからぬように、しかし相場操縦として悪質だと言われるものを抑える、そのためにもしも条文をつくり変えるとしたらどういう条文をつくったらいいかということは非常に難しいわけでございます。
 そこで、今回は百二十五条の改正に手をつけましても、とても立法技術的に着地点が見出せない。そこで、先ほども申しましたように、幸い判例が、この条文適用の上で最も困難だと言われている一般の投資家に対して株の売りあるいは買いの誘引をする目的、そこのところを本来の目的犯の、それを目的としておるというような証明じゃなくて、それを意識しておればいい、認識しておればいい、そういう段階にまでこの要件を解釈基準を少し下げまして、それでしっかり今後委員会においてこれを運用していただきたい、こういうところでおさまらざるを得なかったわけでございます。
○中村(正男)委員 時間があとわずかになってまいりましたので、次に、中長期的な資本市場対策、こういう意味合いで基本的な方向をどう考えておられるのか、その点についてお聞きをしたいと思います。
 今日までのいろいろな論議で、日本の証券業界というのは大手の寡占、これが一つの牽引車でもあり、同時にまた問題発生の一つの要因でもあった、こういうふうに言われております。それから、どうしても取引が大口中心の取引に力点が置かれる、これはやむを得ない一面もあるのですが、これに関連して、やはり法人が中心である、こういう要素があったと思うのです。
 そういうことですから、個人の持ち株比率をアメリカと比較してみますと、アメリカは五六%、日本は二三%、昭和二十五年には七〇%であったものがここまで下がっている。これからの新しい投資資金というのは、私は、今さら特金だとかファントラ、ましてや仕手集団、こういうものに頼ることはまかりならぬわけでありまして、この新しい投資資金というのは個人の金融資産とそれから年金の資金を導入していく、これを中心に考えるべきだ、こう思うわけですね。
 この個人の金融資産の中で、株式に対しての投資比率も、アメリカと比較してみますと、アメリカは一七%、日本はせいぜい一千兆円あると言われておる個人金融資産のうちだかだか七%、こういう現状なんですね。
 したがって、これからの中長期的な方向性なんですけれども、いわゆるアメリカ型のピープルキャピタリズムの方向に行くのか、あるいは従来の日本の一つの特性である株の持ち合いをこのままにした形での法人資本主義で行くのか、当然のことながら簡単な問題ではないと思うのですが、協会の立場なり、それから河本参考人のお考えを一言お聞きしたいと思います。
○渡辺参考人 時間の関係もございますので、大変重要な問題であり、広範な問題でございますけれども、先ほど来いろいろと申し上げておりますように、我々協会としてもこの証券業界改革のためにいろいろな点について手をつけておりますし、また今後とも真剣に取り組まなければならないわけでございますが、その問題の一つにも、御指摘の個人株主が減少している、ないしは資本市場に個人株主がもっと登場してもらいたいということが一つの大きな問題でございます。
 これは協会といたしましても、昨年の四月に個人投資家の証券投資促進についてという報告書を取りまとめておりますので、その線に基づいて今後とも努力してまいりますが、しかしこれはもう先生の御指摘の中長期の対策でございまして、証券界はもちろんいろいろ努力しなければなりません。特に信頼回復とか市場の公正性、透明性を階立するといったようなことは私どもの任務でございます。
 ただ、そのほかにも、経済界が例えば個人投資家を大切にする配当政策なりそういったものにも考慮してもらう、あるいは税制の面でもいろいろ検討していただく面があるかとも思いますし、また最近問題になっております、法人資本主義と先ほどおっしゃいましたが、自社株の問題なんかもこれに関連するかと思いますし、それから手数料の問題なんかも関係してくると思いますし、いろいろな問題について、まだ申し上げませんが、広範に関係してくる問題だと思います。
 しかし、繰り返しますけれども、やはり中心になってそれを努力しなければならぬのは証券界でございますので、御指摘のように何とかしてもっと個人株主をふやす、個人投資家に投資意欲を高めてもらうということに今後とも努力いたしたいと思いますし、これについてはこちらにいらっしゃる長岡理事長も常日ごろ大変に強調しておられますし御努力になっていらっしゃいますので、我々も御一緒になって努力したいと思っております。
○長岡参考人 市場を預かる者といたしまして一言申し上げたいと思いますが、機関投資家の投資の判断と申しますか売り買いの判断は、どちらかというと我が国の場合にはとかく一方に偏りがちでございます。そうなりますと、株価の変動の幅が大きくなる可能性がある。その場合に、それを緩めてくれるのが多様な判断を持つ個人投資家でございまして、私は、市場の安定的な運営のために何としてでも個人投資家を呼び戻すべく努力いたしたいと考えております。
○河本参考人 この問題は、本当に私ども学者が一体どうしたらいいのかといって悩む問題でございまして、先生御指摘の法人資本主義、これは日本の社会で起こる諸悪の根源だといってこれを攻撃する学者がおられます。御承知のように龍谷大学の奥村君も、例の不祥事の間新聞に顔が出なかったことはないぐらいに活躍しておりましたが、私どもを見ますと、一体おまえら商法学者は何をしておるんだと言ってしかるわけであります。ところがまた片方で、日本の代表的な経済学者の中には、法人資本主義のどこが悪いんだ、これで日本の経済はここまで発展してきたという積極的評価をする人もあります。それからまた、私どもの仲間で商法学者と経済学者と両方兼ねておるような人の中には、日本は大体資本主義ではないんだ、それをはっきり認識しろと言う人もあります。したがいまして、結局制度として一体どうするか、それは常に法務省の商法部会へ持ち込まれるわけであります。
 しかし結論的に、何としてもこれ以上法人資本主義が進むことはやはりよくないというので、例えば前回の昭和五十六年の商法の改正のときには、子会社は親会社の株を持ってはならぬとか、あるいは二五%以上持っておる会社は、この持たれておる会社の株の議決権を行使できないとかというような形で何とかこれを抑えようとしてきたわけですが、しかしもう到底そのような商法上の規制ではおさまりがつきません。といって、それじゃ会社は会社の株を持ってはならぬというような原始独禁法のような規定を置くかといっても、これまた到底できるはずがありません。したがいまして、先ほど来協会長あるいは理事長がおっしゃったように、せめて個人投資家が減らないように、それをふやしていくような措置を地道にとっていくよりほかは方法がないな、こういうふうに考えております。
○中村(正男)委員 時間がぼちぼち参りましたのでこれで終わりたいと思いますが、最後に、一連の昨年六月以降のいろんな大きな問題がありまして、それに対する対応策等々をとられてきたのですが、私率直に思うのは、約一年かかってようやく監視委員会の設置、こうなりまして、国を挙げての対応としてはちょっと遅かったのではないか。また、国を挙げての対応策の協議あるいはどういう対応策を出していくのか、そういう本当に集中した論議が行われたというふうな感じは持ってないのですね。
 御案内のように、アメリカでは一九八七年のあのブラックマンデー、五百八ドル下げた大変な、これは世界の経済を揺るがしたわけですね。あのときにアメリカがとられた措置というのは、三日後に大統領がブレイディ委員会の設置を決める、さらに会計検査院それからSEC、商品先物取引委員会、ニューヨーク取引所等々七つの機関が寄り集まって暴落の原因を分析して逐次対応策を出していった、こういうふうに聞いておるわけです。それに比べると日本の今回とられた対応というのは、一つは拙速であり、一つは大蔵省にかなり依存したそういう対応ではなかったのか。もっと経済界あるいは公取、顧客を代表する立場の人あるいは学者先生、そういうものが一つのテーブルに着いて、本当にこれしかない、これでいこう、そういうものが感じられないで率直なところ私そう思うわけですね。
 これで終わりますが、最後の最後として、きょうは信頼回復のためにそれぞれの立場からいろいろな施策が述べられました。大変結構なことであります。ぜひそれを実行してもらいたいと思うのですが、ただ懸念するのは、株価さえ戻れば、こういうのが過去からずっとあったのではないか。確かに今ちょっと底を脱した感じがするわけですが、株価が少々戻ったとしても、ぜひ今の情熱を失わずに抜本的な改革を大蔵省からの自立を含めて推進をしていただきたい、そういうことを申し上げまして、四参考人の皆さんにお礼を申し上げながら質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○太田委員長 日笠勝之君。
○日笠委員 参考人の皆様方には、公私どもにお忙しいところ、大変に御苦労さまでございます。公明党・国民会議の日笠勝之でございます。先ほど中村委員の方から概括的にお話がございましたので、私、持ち時間も少のうございますから、個別具体的なお話をし、お答えをいただければと思います。
 まず、渡辺日証協会長にお伺いしたいのですが、先ほど今後の業界の改革推進への力強い御表明がございました。一方また、ごく最近の大きな話題になりました飛ばしの件が頭を交錯するわけですね。と申しますのも、損失補てんもそうなんですが、この飛ばしというのは業界の中ではもう周知の事実、そういうことはあり得るということで多くの方が知っておったのだ、こういうふうなマスコミなんかの報道もございます。そこで、会長はこの飛ばしというのはまさに寝耳に水だったのでしょうか、お伺いしたいと思います。
○渡辺参考人 まことに申しにくいことで、おまえ、そんなことを知らなかったのか、よほど現場のことを知らずに協会の仕事をしているのかというおとがめを受けるおそれがございますが、正直に申し上げて飛ばしという言葉は私はあの事件か起こるまでは存じませんでした。
○日笠委員 今回の証券取引法の改正は、どっちかというと対症療法的なものが多いわけですね。だけれども、今後日証協が自主規制団体としてきちっと位置づけられていくに当たっては、私は、やはり対症療法的なことで今後自主ルールをつくったり、いわゆる検査、監査強化とかではなくて、予知能力といいましょうか、そういうものこそが大切じゃないか。出てきたものをたたくのではなくて、出てきそうなものはしっかりと協会の中で議論をして出ないように、国民の市場への不信を招かないような予知能力がこれからは自主規制団体の日証協さんには強く要請されるんだと思いますが、この点はいかがですか。
○渡辺参考人 御指摘のとおりだと思います。そういう意味で、従来の大蔵省の行政指導に特に依存していたような物の考え方から、今度は協会が改めて自主規制機関としての機能を強化するということで先ほど来申し上げているとおりでございますが、この自主規制ということになりますと、実際の業界の中身のことをよく知っている人間がいろいろと話し合い、問題点を取り上げて、そしてそれが公正性なり透明性なりに欠けるところがあるということであればそれに対するルールをつくって、そしてそれを守っていくというふうに先ほども申し上げましたが、そういう意味では、予知能力というのは人から与えられるのではなくて、自分たちが自主規制機関として当然持つべき仕事であり、またそれを期待することができるのではないかというふうに私は思います。
○日笠委員 その点は強く要望しておきたいと思います。
 それから、私は昨年の証券・金融問題特別委員会、あの証券不祥事、金融不祥事が起こって、衆議院に設置されましたあの特別委員会の委員として、終始一貫一つのことをもうねちっこく訴えていることがあるのは、巨額の脱税の温床でもありますいわゆる仮名口座の禁止ですね。今回はこれは法律事項にはなっておりません。お聞きすると、これは日証協のいわゆる自主規制というものに取り入れていく、このように証券局長もこの前答弁されましたが、いわゆる仮名口座禁止についてどのような対応をとろうとされておられるのかをお聞かせ願いたいと思います。
○関参考人 ただいま御指摘がございましたけれども、昨年九月二十六日、本院の特別委員会におきまして「証券及び金融に係る不祥事の再発防止に関する決議」というものが行われまして、その中で、顧客の行ういわゆる仮名取引の受託等の禁止については、その徹底のため指導を強化し厳正を期することとされております。この仮名取引の問題につきましては、協会としては、従来から仮名受託の禁止について何度か証券局長通達も出ておることもございますし、また、最近では御承知のマネーロンダリングとの関係で、本人確認の励行ということも非常に重要な課題になっているわけでございまして、何度となくその徹底を図ったところでございます。証券会社の役職員については、この仮名取引について既に規則で禁止行為として運営してきているわけでございます。今度こういった特別な決議もいただきましたし、また今回証券取引法の改正もございます。そういった中で通達の見直しという作業が行われておりまして、その通達のうち、自主規制機関の方に移すことが適当であるものについてはそちらできちっと措置をとろうというのが、先生御承知のように一般的な方針でございます。したがって、この顧客に行う仮名取引の受託に関する禁止に関する部分につきましても、行政当局と御連絡をとりながら、その具体化を検討しているところでございます。
 実際どういうふうにやるかということでございますが、まだ最終決定には至っておりませんけれども、私どもの規則におきまして、顧客の行う株式の仮名取引の受託の禁止、この規定、それと裏腹の関係にあります。そういった場合の本人確認の義務について所要の規定を定める、こういう方向で行きたいと考えております。
○日笠委員 ぜひひとつ、自主規制団体でございますから、この辺のところもきちっと押さえたルールをつくっていただきたいと思います。
 それから、これは突然お尋ねするかもしれませんが一いわゆる野村証券の野村ファイナンスと日興証券の日興クレジットのいわゆる暴力団への便宜供与、三百六十二億円の供与がございましたね。これはなかなか回収が難しいということですが、協会としてはこの件については何か両証券会社に指導といいましょうか、やってはおられるんですか。また、その両証券会社の対応はいかがでしょうか。
○関参考人 暴力団と証券界とのかかわり合いの問題につきましては、原則として暴力団との信用取引等を行うことはやめようとか、一般に慎重な対応をすべきであるということは、既に理事会決議で決めてあるわけでございます。ただ、先生今御指摘の、証券会社のグループの中にありますいわばファイナンスカンパニーの具体的なその処理の問題については、直接協会があれこれ申し上げる問題ではないんだろう、こういうふうに思っております。
○日笠委員 いわゆる両証券会社本体の経営に影響を与えるようなことがあってはいけないという意味で、私は、どういう対応をされているのかとお聞きしているのですが、これはもう完全に各社の経営判断だということで、協会とすればノータッチ、こういうことですか。
○関参考人 グループの中の関連会社に経営上まずい事態が生じまして、それが本体であります私どもの協会員である証券会社に影響が及んでくるということは、当然あり得る話でございます。しかし、それは私どもからいたしますと、その証券会社の財務の健全性が保たれているかどうか、こういう観点から見ていく、こういうことになるんだと思います。今の現状では、自己資本比率規制におきます指標等を見ましても、当面そういう事態にはなっていないわけでございまして、今のようにお答えした次第でございます。
○日笠委員 これで時間を費やしてもいけませんが、財務の健全性だけでなく、いわゆる証券市場そのものの四社の中の二社ですから、信用という問題を言っておるわけです。ぜひそういうことで、六月末までに回収するということに、再延長になっているようでございますが、それを見守りながら、またこの点についてもいろいろと議論をしていきたいと思います。
 それから、この証取法のいわゆる監視委員会の問題とはちょっと外れるかもしれませんが、せっかくきょうは会長も専務理事もいらっしゃっていますので、金融制度改革に関連してちょっとお聞きしたいと思います。
 実は、昨夜大蔵省から、今回の金融制度改革に対する政省令の骨子といいましょうか、概要が発表になりました。既に御承知のことと思いますが、何となくまだ隔靴掻痒の感がするという声が多いのですけれども、どういう政省令が明確になれば日証協さんとすればありがたいなと思われておるのか、お聞かせ願えればと思います。
○渡辺参考人 今度の、今の法案の方ですね、制度問題につきましては、もうこれも先生御承知のとおり、何年来金融制度調査会あるいは証券取引審議会等で議論されてきたことでございますね。一言で申せば、証券界に、証券界だけではございませんが、競争原理を導入して、フェアな競争に基づいて効率的なそういう市場を形成していくということでございましょうか。したがいまして、いろいろな業界から相互に参入していく、そしてそういった競争を確保するというような精神でつくられているものだと思います。それにつきましては長い間の議論を重ねてきたところでありまして、我々の証券界ということに限定いたしますと、証券界としてもこの業界に新規に証券会社として参入してこられることには別段異存はないということになっております。
 ただ、その場合にいろいろ問題がございますのは、それぞれの業界、特に銀行と証券の関係でございますけれども、これは金融制度調査会でも、あるいは証券取引審議会でも、両方の仕事はきちっと本来の仕事を確立すべきである、確立するというのはそれぞれの仕事を守るべきであるという考え方が打ち立てられております。したがいまして、例えばユニバーサルバンキングといったようなことは、これは日本では否定されておるわけでございますし、また、証券取引法六十五条の精神も今日的な意義を認められるというふうに、これは議論の来そういうふうにきちっと整理されたわけです。したがいまして、その観点で相互の参入が図られるというふうに私どもは理解しておりますし、そういうふうにあってほしい、こう思うわけです。
 法律の上でもいろいろと規定されておりますけれども、御指摘のように、政省令に委任される事項がたくさんございます。その辺について今の物の考え方がきちっと割り切れておるであろうかという点でございまして、具体的に申しますと、例えば日本の銀行はアメリカなどと非常に性格がある意味では違っておる、ないしはその銀行の力が非常に強いということが言えるかと思います。例えば、銀行は株式を持つことができます。アメリカの場合はそれが禁じられておりますね。ですから、産業界に対して非常な力を持っているということだと思います。
 そういう銀行が、子会社の形式による今度は参入でございましょうけれども、その場合にも、先ほど来申し上げましたようなユニバーサルバンキングなりあるいは六十五条の精神なりから考えますと、いろいろな点で制約が必要なのではあるまいかということでございますね。それは何も証券だけの話ではなくて、例えば銀行のサウンドバンキングにとりましても、あるいは競争と申しました場合にも、フェアな競争という意味ではイコールフッティングが必要である、同じ立場に立ってフェアな競争をすべきではなかろうかとか、あるいは銀行と証券との仕事の間には利益相反というようなことが間々起こるのではあるまいか。
 そういった点で、アメリカでもファイアウォールといったようなもの、つまり障壁がきちっと決められておりまして、そしてその上に両方の業界がそれぞれ進出してフェアな競争をするというふうになっておりますが、日本の場合には、先ほど申し上げましたような銀行の特殊な力から見ますと、アメリカ以上にそういったようなきちっとした実効あるファイアウォールの確立が必要なのではあるまいかということで、証券取引審議会の報告にもこれがるる書き上げられておりますので、そういった点についてきちっと政省令で決められるようなものは決めていただきたいというふうに思うわけです。これは決して競争制限という意味じゃなくて、両方の業界がそれぞれ機能を十分に発揮するために必要な障壁ではあるまいか、そういう意味で申し上げているわけでございます。
 そのほかにもいろいろとございますのは、例えば有価証券の証券化の商品というものが今後ふえてまいりますが、その場合に、有価証券の範囲といったようなことについても政省令にゆだねられているというふうになっておりますから、その点を明らかにしていただきたいというふうに思いますし、また社債が、最近非常に私募形式の社債がふえておりますね。本来、資金の調達方法として社債は非常に大切なものでございますが、公募という形の社債が本筋だと思いますけれども、しかし私募は私募にまたそれぞれ意味がございますが、その私募社債の、私募の業務の内容は、新たにできます証券子会社等の業務の範囲について、業務の内容について明確にしてもらいたいといったような点について我々としては希望を持っております。それは、再度繰り返しますけれども、証券取引審議会で長年議論されましたその精神そのものの整理がきちっと法律の上で、ないしは今後の政省令の策定もしくは運用の上で確保されることが望ましいというふうに考えておるわけでございます。
○日笠委員 時間が迫ってきました。
 長岡東証理事長、昨年の特別委員会で本州製紙株の株価操縦について御調査いただくということで、こういうチャンスがなくてその後の結果虚聞いておりませんので、この際、本州製紙株の株価操縦の東証の調査はどうなっておったのか、どうなったのか、お聞かせ願いたいと思います。
○長岡参考人 お答え申し上げます。
 東証といたしましては、本州製紙株につきまして、平成元年十一月から平成三年五月までの間、委託者内容を含めた売買内容につきまして、大蔵省の再調査に合わせまして調査内容等の精査を改めて行ったところでございます。
 その結果、当該銘柄の売買は複数の大口委託者及び同グループの売買が認められるものの、大半は不特定多数の委託者の売買注文によって形成され、いわゆる全員参加型の売買となっており、株価急騰日の価格形成状況におきましても、特定委託者による継続した買い上がり、買い付け等の技巧を凝らした売買は認められなかったことから、株価操作があったとの確証を得るまでには至らなかった次第でございます。この旨を大蔵省に報告をいたしております。
 以上でございます。
○日笠委員 最後に、じゃ河本先生に、一つ二つ時間がある限りお尋ねしたいと思います。
 一つは、今度の監視委員会は、いわゆる国家行政組織法で言う八条委員会なんですね。公正取引委員会は三条委員会。その公正取引委員会ですら、最近のあの埼玉県のいわゆる談合罪につきましても排除勧告で終わっている。恐らくあの問題が起こったときには国民の多くは、いろいろな外風からのプレッシャーもあるわけですけれども、これは告発されて、いわゆる日本の土建業界における談合罪についてメスが入るのではないか、それでこそ公正取引委員会であり三条機関だ、こう強い希望もあり、私も実はそう個人的には思っておりました。しかし、何か排除勧告ということで腰抜けといいましょうか、腰を引いたような、お茶を濁したような格好に現在なっておるわけであります。
 ですから、この監視委員会がその意味では、たとえ三条委員会でも長年の年数がたっていきますと、いろいろな癒着とかいろいろな人間関係が出てきますよね。ですから、三条委員会ですら本当に公正中立的な業務ができるのかという心配も、今の公取を見ればわかるように、八条委員会でその辺が本当に実効性が確保されるのかなというのが、最近の公取の排除勧告のニュースを聞きながら感想を持つわけですが、先生、その辺の話と関連して、八条機関でも実効性が保たれると、何か胸を張って京都のIOSCOの会合では言えるとおっしゃっていましたけれども、今後の経過を見れば、日本の独特の人間関係もありますし、いかがなお考えでしょうか。
○河本参考人 公取の建設業者の談合についての問題につきましては、当初は、私どももまさに日笠先生おっしゃったようなふうに思っておりましたですけれども。それで、直接私聞いておるわけでもございませんが、これも全く新聞の情報だけですけれども、どうもだれがやったのかというそこの特定ができなかった、こう言われてみると、ああどうもしょうがないかなという気がするんですね。これは、証券不祥事に関して出した公取のあの文書を見ましても、本当に責任ということになると、やはりどの取締役がどうなる、そういうことはほとんど書いてないのですね、ああいうものには。ところが、刑事責任あるいは民事責任を追及することになりますと、そこが最も大事なこと。したがって、それがつかまえられないとなると、これは一遍やってみいというだけのことになってしまいましてですね、結局検察がよう立件できないというようなことになってしまったんでは、それこそ信用を失ってしまう。
 そこで、新しい委員会につきましてもそういう問題、全く同じことだと思いますが、ただ私が非常に期待しておりますのは、先生御承知のように、前回のインサイダー取引の規制の規定をつくりましたあの直接の動機になったのは、私どもの地元のある会社、それをめぐってのある銀行の株の売却、これがインサイダーでやったのではなかったか、こう言われて、大阪の証券取引所などは随分一生懸命調べたわけですけれども、事実はつかめない。それは、全く証券会社の取引先である投資家に対しては、ただお話を承るということしかできないわけなんですね。そこで私どもは、これはとにかくやはり強制的な調査権がなければ到底こういう経済犯罪というものは立件することはできないんだというふうに強く感じたわけなんですが、ただ、だからといいましてそれをやってみても、今のようなだれがいかなることをやったかということがつかめないということになれば、これはもう仕方ないことなんですけれども、私は、それぐらいのことはやれる、また、それがやれないようではこの制度はもう全く何にもなりませんが、制度的にはもうこれ以上のことはできないのではないかなというふうに思っております。
○日笠委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。
○太田委員長 正森成二君。
○正森委員 まず、長岡参考人に伺いたいと思います。
 新聞報道によりますと、参考人は四月十三日ごろですが講演されまして、個人金融資産は一千兆円を超えている、個人投資家をいかに市場に呼び戻すかがかぎだというように訴えられまして、種々地道な努力の継続を企業と証券界に求められた、こういうようになっております。もちろん、長い時間講演されたのでしょうけれども、その御真意と骨子をお述べいただきたいと思います。
    〔委員長退席、持永委員長代理着席〕
○長岡参考人 そのときの講演の内容も、今まさに正森委員のおっしゃいました個人投資家、個人株主をいかに市場に呼び戻すかということが、私個人といたしましても、また証券業界といたしましても、一番真剣に取り組まなければならない問題ではないかという問題意識を率直に申し述べた内容でございます。
 と申しますのは、我々の国よりも進んでおりますアメリカですら、手数料自由化後、一方、機関化現象が進み、手数料自由化によって個人投資家の方に手数料がしわ寄せされたときに、個人投資家の持ち株比率が六割を割ったところで、果たしてこれで健全な市場と言えるかという議論が起きたという話を聞いております。現在はたしか五五%程度だったと思うのでございますが、それに比べまして我が国の場合にはわずかに二三%である。
 一体どういう点が問題かということでございますけれども、一つには、機関化現象、これは当然進むとは思いますけれども、機関投資家の投資行動というのはとかく一方に偏りがちでございまして、それによって市場の株価が大きく変動しからである。そういった場合に、アメリカのように、半分以上も持ち株比率のある個人投資家というのは投資が非常に多様な判断になりまして、売りも出れば買いも出るということで、これが一種の緩和剤になりまして市場の価格の変動を和らげてくれるという要素がございます。ということは、すなわち市場の安定につながるというわけでありまして、そういう占用から考えましても、二三%にまで低下している我が国の個人持ち株比率を何とかして上げたいというのが私どもの最大の関心事と申しますか、また努力の目標であろうというふうに考えております。
 そのために、私といたしましては、昨年と本年と二回にわたりまして経団連の常任理事会に出席を認めてもらいまして、上場会社の幹部の方々に、もう少し株主の方に顔を向けてください、配当性向も上げてほしい、それから、千株単位で取引をする場合にサラリーマンでは手が届かないような金額になりつつあるので、これはくくり直し、あるいは株式分割等をやってもう少し手の届くぐらいの単位にまで下げてほしいということを熱っぽくお願いをいたしたところでございます。今後ともこの努力は続けてまいりたいというふうに考えております。
○正森委員 それに関連して、もう一問お伺いしたいと思います。
 たしか長岡理事長の前の前の理事長の谷村さんですね、「株主勘定復活論」というのをお書きになりまして、その中で、今の時価発行増資が既存の株主を非常に無視している傾向がある。だから株式の従来の株主に対する割り当てを行い、そして時価発行の長所も取り入れた中間発行増資、株価が三千円で株の額面が五百円だとすれば千五百円ぐらいで株主に割り当てる。そうすれば、ずっと持って増資に応じるかもしれないし、権利がついたまま売るかもしれない。ともかく配当のほかに増資の楽しみもあるというようなことがあるのではないかということを著書に書いておられます。私は、ほかの点では意見は違いますが、こういう点については非常に傾聴すべき意見だと思っておりますが、理事長はお立場上お答えが難しいかもしれませんが、御見解をお示しいただければありがたいと思います。
○長岡参考人 谷村元東証理事長がたしか昭和五十七年に出版されました「株主勘定復活論」の中で、中間発行論を強く主張しておられます。
 その主張の論拠は、まさに正森委員のおっしゃったようなところであり、また私がそんたくいたしますのに、その背景には、時価発行、時価発行でいく、先ほど来私が非常に大事だと申し上げております個人投資家が、いわゆるインカムゲインのことを考えずにキャピタルゲインだけに走らないか。キャピタルゲインに走り過ぎるということは、投資ではなくて投機になるわけでございまして、それは決して健全な市場とは言えないというお気持ちもあってであろうと思います。基本的に株主をもっと大切にするということ、それからそれを通じて証券市場を健全なものにするということ、この二点につきましては谷村さんのお考えに私は全く同感でございます。
 ただ、時価発行、現在時価発行が行われておるわけでございますが、時価発行にも全く、それでは中間発行に比べていい点がないのかというと、必ずしもそう言えませんで、広く一般からの資金調達が可能になる、多くの人の市場参入を可能にするといったようなメリットもあるわけでございます。しかも現在時価発行が続いておるわけでございますから、私といたしましては、企業が中間発行を行っていただくことは自由であり、これはある意味では結構なことだと思いますけれども、一方、時価発行が定着しております今日におきまして、時価発行をなさいます企業がやはりもっともっと株主の利益を尊重してほしいということを今後もお願いをし続けてまいりたいというふうに考えております。
○正森委員 時間の関係もございますので、次に河本参考人に伺いたいと思います。
 参考人の御意見、いろいろございましたが、その中で、今度の新しくできました監視委員会が行政処分を持っておらないという点につきまして、免許制の必然の結果ではないかと思うという意味のことを言われました。これは果たしてそう言えるのだろうか。
 例えば雑誌などを読んでおりますと、もとの証券局長でございました坂野常和さんなどは、免許制のもとでは、行政当局は、自分が免許したものが不始末をしてかしたということで処分をするというのは自己矛盾のようになるので、何かそういう不祥事があったときにできるだけ内々に済まそうとするという意欲が出てくるということを指摘されておるわけであります。
 今度の法案でも、調査をいたしまして不都合な点があれば行政処分の勧告はできるということになっております。したがって、免許制のもとで、免許の取り消しというのは免許に準ずることでございますから大蔵省が持つとしましても、勧告と同時に独自に役員の処分あるいは営業の停止といったような行政処分権を持たせても、免許制と何ら矛盾するものはなく、逆にその短を補うということで、行政処分を一切与えないことが免許制の必然の結果だとは言えないのではないかという気がいたしますが、御見解はいかがですか。
○河本参考人 私、先ほど申しましたところを結局繰り返すようなことになるわけでございますが、免許制はまず入り口のところで、この会社なら十分証券業を営んでいけるだろうという条件を判断いたしまして、いわゆる入場させます。それから後、予防監督行政等々を行っていって、そしてそれでもうまくいかない、違反等々があった場合に、最初入り口で入場させた免許権者が、それについての責任をとって処分するというのが免許制そのものの本来の性格だろうと私は位置づけておるわけでございます。
 ところが、ここに別の機関ができまして、しかもそれが全く独自に処分を上げてくるということになりますと、後の処分権を免許権者から奪っておかなければ、両方が処分権を持ったままの状態で行きますと、いわば二元的といいますか、処分権の出どころが二本でき上がってしまう、これは非常に混乱を招くのではないかという気がするのです。
 そこで、本来の免許制の持っておる仕組みをそのまま生かしておいて、しかし、それを十分チェックできる体制をつくるというのがこの新しい委員会でありますし、そしてまた、これは単なる勧告といっておりますけれども、勧告した結果、大蔵大臣の方がそれを聞かなかったら、それについてのどうしてかという報告を求めるとなっておりますし、それからまた、尊重であるというだけのことではないかということでありますが、しかし、これも処分権者が本当に処分するときには、今の法律制度では審問手続も経なければなりませんし、その結果、別の事実が認定されるということもあるかもしれない。そういうことを考えますと、免許制を置きながらということではこの制度しか仕方がないのではないか、こういうふうに申し上げたわけでございます。
○正森委員 私の意見は違いますが、参考人ですから、御説は承っておきたいと思います。
 最後に、渡辺参考人に伺います。
 去年の十二月三日に、証券団体協議会というのが「株式店頭市場の現状と今後の課題」という報告を出しております。それを拝見しますと、店頭登録企業が去年の十一月末現在で四百二十四社、東証の二部上場企業数を超えた、時価総額でも昨年の四月以降二部市場を上回り、売買代金も二部市場を凌駕するようになっております。それから、地方の証券取引所と比べてみますと、これは東京、大阪、名古屋以外のすべてを上回るというような状況であります。そうなりますと、しかも、ここの方が時価発行増資はできるし、規制は割と緩やかだということになりますと、そこにメリットがあるということで、アメリカにもそういう例があったようですけれども、取引所に上場する資格が十分あるのに店頭市場にずっととどまっておるというようなことも見られまして、これは証取法百九十一条の類似市場の禁止というのにも合致してくるのではないかという危惧が持たれております。今、店頭市場は証券業協会がいろいろ面倒を見ておられているようですが、これについての御見解を承りたいと思います。
○関参考人 株式店頭市場につきましては、先生も御承知のように、昭和五十八年の証券取引審議会の答申に基づきまして、将来性のある中堅・中小企業の資金調達の円滑化とか投資者の資産運用の多様化等を図るため、その活性化の努力を重ねてきているわけであります。これは、店頭市場に関する規制は、今回の改正法案によりましてもいろいろ整備されているところでございます。
 そこで、百九十一条との関係につきまして、それを解釈するというのは果たして協会が適当かどうかはわかりませんが、店頭取引は基本的には協会員の相対取引でございます。それから、今実際に店頭取引を主として動かしておりますJASDAQの売買システムというものの基本的な性格は、証券会社間の取引を仲介する日本店頭証券株式会社の内部システムという考え方でございます。それからまた、取引所との差異ということを十分考えまして、取引所取引のように集中義務もなく、売買の仕組みと決済手法等も取引所取引とは異なるということにいたしておりまして、百九十一条との関係では問題はないのじゃないか、こういうふうに思っております。
 店頭市場につきましては、その整備の出発点から、取引所市場に対します補完的な市場、あるいは企業が成長いたしますれば、取引所市場の方に卒業していっていただく、こういう市場であるという性格で運営しておりまして、別に具体的な規定をまだ定めているわけでございませんけれども、多分、全体的に見まして、日本の場合は企業が上場企業になりたいという志向が非常に強うございますから、いつまでも店頭市場にとどまっているということは余りないのではないか、こういうふうに思っているわけでございます。
○正森委員 JASDAQでも、オンラインでリアルタイムで処理できるようになっているというような点がございますし、それから、なかなか卒業したがらない企業と、一方では、店頭市場に登録している中で倒産だとか借り受け金の返済猶予を求めているところが出ているというようないろいろな問題が出ておりますので、きょうはもう時間が参りましたのでやめさせていただきますが、また別の機会に論じさせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
○持永委員長代理 中井洽君。
○中井委員 民社党の中井洽です。
 お忙しいところを御出席いただき、貴重な御意見を承りまして、ありがとうございました。特に証券業界と東証の理事長さんにはたびたびの御出席で、本当にありがとうございます。短い時間ですので、簡単にお尋ねいたします。
 渡辺参考人と長岡参考人に共通でお尋ねいたします。
 自主ルールを制定され、信用回復にいろいろと御努力なさっているわけでございますが、そういう中で、この法律で委員会がつくられます。それに合わせて、証券業界あるいは取引所におかれましても、監査あるいは検査、考査ですか、それぞれの部局の人数あるいはそういう部局の人たちの充実といったものの対策をおとりいただいていると思いますので、その対策をお聞きしたい。
 同時に、証券局あるいは大蔵省からこの委員会が独立性を持つことが大事だということで、過去一年、いろいろな議論がなされてまいりましたが、皆さん方の自主規制団体のチェック機関においてもやはりそういう独立性というのが必要じゃないか。特に、会費をおもらいになっていらっしゃる会員の方々の不正行為のチェックをやるわけですから、日本的情感からいえばなかなかやりにくいところがある。そういう意味でのそれぞれの部局の独立性、同時に思い切った処分をするという勇気、こういったものが要ると思うのであります。たびたびお尋ねいたしましても、皆さん方がおやりになっているのは大蔵省の証券局と同じような方向ばかりでは、自分たちで自主ルールをきちっとつくってやるよと言っても国民の信頼というのは返ってこない、そういう意味では思い切ったルールづくりが必要だと私は思います。そういう意味で、おやりになっていらっしゃること、お考え等を両参考人からお聞かせいただきます。
    〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
○長岡参考人 お答え申し上げます。
 私ども自主規制機関といたしまして、今回の法律改正によってその自主規制機関たる性格の位置づけが特にはっきりいたすわけでございますから、その責任の重大さを真剣に受けとめております。
 東証といたしましては、現在、公正取引を確保するための検査あるいは管理の人員は、主たるところを申し上げますと、株式部が百五十人、債券部が七十一人、売買審査部が四十三人、考査部二十七人、また上場されている株式の管理に当たっておりまして株式部等と常に連絡をとります上場部に四十六人、合計三百三十七人の者が直接こういった部門に関与しておるところでございます。
 そのような部門に関与する職員に対しましては研修にも非常に力を入れておりまして、初任者研修、これは新入時に大体十日間ぐらい行うほか、若干なれたところで商法の基礎講座、証券取引法の講座等も開いております。それから入所俊二、三年たった若手の男子職員を中心にしましてまた若年の職員研修をやる。さらに昇進、昇格をしたときに新任課長代理研修とか新任課長研修、新任次長研修、また広く昇進、昇格者研修といったようなものも開きまして、何度がにわたって研修を繰り返しながら、検査や管理の質を高めるということには努力をしているつもりでございます。今後とも私どもの課せられた使命の重要性にかんがみまして、ただいまおっしゃいました会員組織で運営されている取引所ではございますけれども、厳正な態度で管理なり検査なりを行っていくように努めたいと思っております。
 具体的に申しますと、最初に私が参考人の意見陳述のところで申し上げましたように、昨年来の一連の事件の発生にかんがみまして、私どもといたしましては、現在できるだけ早く問題になりそうな事案をつかまえまして、これを直ちに相手の証券会社に連絡をする。その受けとめる証券会社の方は、責任者を私どもの方に登録をしてもらいまして、その受けとめる相手方の方が責任を持って現状を調査して私どもにすぐ答えを返してくるというような、いわば早期警戒信号発生装置のようなものをつくりまして、現在厳正に実行しているところでございます。
○渡辺参考人 協会が自主規制機関である以上、監査体制が非常に大切だと思うが、どういうふうに充実させてきたかといったような意味の御質問と受け取りまして、そういう点について答弁をさせていただきます。
 今申し上げましたように、協会の自主規制機能の強化の一環として監査体制の充実強化が要請されましたので、昨年の九月に監査の方に重点を、今までは内部監査の整備といったような指導監査でございましたけれども、それを協会が営業活動に関しましていろいろな規則、ルール、法律といったようなものの遵守の状況を中心にして監査をするように重点を移しました。それに基づきまして専任監査員もふやさなければならぬ、監査項目を見直さなければいかぬ。監査結果に基づく処分等を内容といたします「監査体制の強化策について」というのを協会決定といたしております。
 さらに、来年度の監査計画におきましても、昨年の十二月に制定いたしました一連の自主規制ルールのうちで監査の対象とすべき事項を監査項目に加えるというふうにいたしましたし、再度専任監査員を増員することもいたしまして、体制の強化を図って、それを今年度も実施していくというつもりでおります。
 ちなみに、監査員の人数でございますけれども、専任監査員と兼任の監査員とおりますが、これが九十一名でございましたが、この四月末現在で百十三名、二十二人の増員ということにいたしました。今後ともそういった監査については、十分自主規制機関としての機能を全うできるように努力いたしたいと存じております。
○中井委員 長岡さんにお尋ねいたしますが、そういう大勢の方で日々の取引所の動きをチェック」なさっているわけですが、そういう中で不審なことあるいはこれは少しということが、専門家ですからおわかりになる。そのときにはすぐ、今度できます委員会に連絡をなさるのか、それとも自分たちでまずやって、その結果を委員会へ報告なさるのか、どういうことになるとお考えですか。
○長岡参考人 お答え申し上げます。
 ただいまの監視、検査の体制でまいりますと、極めて軽微なものについてはその部局で処理ができると思います。しかし、相当の部分のものは、私どもの東京証券取引所の中に副理事長を長とする審査連絡会議を設けましたので、ここで審査をするということになるわけでございます。
 なお、新しく監視委員会が発足一いたしました場合には、これはやはり相当程度問題のあるもの、私どもは御承知のように顧客等に対する調査能力などは持っておりませんから、そういうことまで含めまして調査の必要があると思われるものが監視委員会の方へ上がっていくということであろうかと存じます。
○中井委員 河本参考人にお尋ねをいたします。
 この法案の中で、法案自体が大改正だ、そして一番は強制調査権を持ったことだというお話は、私もそのとおりだと思います。同時にまた、一番うまく運用するに但、この委員長によっぽどすばらしい人を選ばなければならない、このお話もそのとおりだと考えております。
 そういう中で、強制調査をやって、証券会社あるいはそこにお勤めの方じゃなしに、お取引先に不法があった、このときの罰する法律というのが証取法の中できちっと整備されているのだろうか。実は、去年の法改正の中でも、相手方をどうするかということでいろいろ議論がございました。結局その認識なければ罰せないなんという、私どもから見ればおかしいじゃないかというような形で法律ができたわけであります。
 そういうことで、信用回復というものがなかな、か出てこない。お金にまつわることですから、常に悪いことをしてもうけようと考えるのはおるわけであります。両方罰する、そういう意味でもう少し証取法を考えていかなければならないのじゃないかと私は思いますが、参考人の御意見をお聞かせいただきます。
○河本参考人 我々証券取引を勉強しておるもの、殊に立法にある程度参画しておるものといたしましては、今先生がおっしゃったような点も絶えず考えておるわけでございます。
 それで、先ほども申しましたことでありますが、数年前にインサイダー取引の疑惑が大きく浮かび上がった関西の事件、その後で、とてもおの五十八条では使い物にならぬというので、ああいう非常に細かな規定ができまして、これなら検察が使ってくれるだろうというようなことがありました。もちろんそれから後もほんの一件か二件、まだそれも小さなものしか上がっておりませんけれども、一応インサイダーに関しましては、非常に詳細な、使えるような法律ができております。まだ残っておる一番難しいのは、先ほど申しました相場操縦に関する百二十五条でございますけれども、ただこれも、株は買えば上がるし、売れば下がるという性格を持っておりますので、その中で通常の取引が違法としてひっかからないような、しかし悪質なものをつかまえるにはどんな条文をつくったらいいのか。これは、同じ答えの繰り返しになるのですが、随分刑法学者等とも集まってもらって検討したのですけれども、条文をつくりかえていくということになりますと非常に難しい。難しいところをもっとしっかり考えると言われるのでしょうけれども、とにかくさしあたっては、先ほど申しましたように、誘引の目的というこれを認識の程度ぐらいにまで解釈上下げまして、あとは客観的な行為で、例えばある値段がついたらすぐそれに追随していくとか、寄りつき、終値の少し前ぐらいではたばたと買ってくるとか、そういう客観的な行為をつかまえまして違法性を認定していく。そういう現在の法律の解釈を、難しい、難しいと言わずにもっと積極的に適用する方向へ持っていってください、そういう程度の報告でしか現在のところはできておりませんが、まだ不公正取引部会が残っておりますので、さらにその点は五十八条も含めまして詰めて考えていくという予定にしております。本日はその程度しかお答えできません。
○中井委員 ありがとうございました。
○太田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人各位には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
 午後一時三十分に再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十一分開議
○太田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 内閣提出、証券取引等の公正を確保するための証券取引法等の一部を改正する法律案について質疑を続行いたします。細谷治通君。
○細谷委員 細かい質問に入ります前に、現在の証券市況の低迷とその原因みたいなことについて考えてみたいというふうに思います。
 もちろん現在の証券市況の低迷というのは企業業績の不振というものが一番大きいでありましょうし、それから大衆投資家が証券不祥事に嫌気が差した、市場離れを起こしているということもございましょう。たまたま決算期にかかるということで企業が株を放出して会計処理をするというようなこと、そうした現象的な要因というものが当然あるわけでありますけれども、より根本的といいましょうか構造的な問題、本質的な問題について考えてみますれば、これはもう先日来の審議の中で同僚議員からも述べられておりますように、日本の株式市場のあり方というものが問われていしるのではないか、すなわちキャピタルゲインを中心とした市場の構造といいましょうか、こういうものがあって、その辺が欧米の市場なんかと根本的に違うところだろう、そしてそのことは同時に、株主資本に対する配慮というものが著しく欠けている、そうした市場構造に根差すものだというふうに指摘せざるを得ないと思うのです。
 そして当面の緊急的な課題として申し上げれば、何といっても一番大きな要因として挙げなければならぬのは株の供給過剰状態、いわゆるオーバーイシューのツケというものが、過剰ファイナンスのツケというものがここに来て一挙に露呈しているということじゃないかと思うのです。そしてそれがまさにバブルがはじけて崩壊するという形で、現在あらわれているのじゃないかと思います。いろいろと株価対策というものを政府でもお考えのようでありますけれども、しかしこの過剰ファイナンスの問題というものを抜きにして、真の株式市場の回復というものはあり得ないのじゃないかと私は思うのです。このバブル経済のもとで、いわば財テク目当ての資金調達、エクイティーファイナンスが行われてきた。実体経済といいましょうか、本来市場のあるべき姿、設備投資資金というものを市場から調達するという機能を忘れて財テクに走ったツケじゃないかと思います。
 そして、もう少しこれを掘り下げて考えてみますと、この一連の損失補てんの問題というものは、結局株式市場の特異な、異常な姿というものに私は根本的な原因があるのじゃないかというふうに指摘したいと思います。
 損失補てんは、御承知のように、考えてみますと、大口の顧客だからという理由だけで平均的に証券会社が損失の補てんを行ったということでもどうもないようであります。その証拠に、四大証券の補てん対象企業百五十四社のうちほとんど大半、九十数%というものが、まさに幹事証券の役割を担っている。まさに損失補てんというのは、証券会社が発行市場での企業との、事業法人との永続的、安定的な関係を重視して、そのために流通市場での損失を補っていくという仕組みになっているのじゃないかと思うのです。損失補てんというのは、証券会社トータルとして見てみれば、流通市場では損するけれども発行市場ではメリットがあるということで、ある意味ではごく当たり前の商売だというふうに受け取っている向きがあってもいたし方がないんじゃないかというふうに思うわけであります。
 こういうふうに考えていきますと、その根本的な対策というものは、そうすると発行市場と流通市場双方に証券会社がかかわることを遮断する、できないようにするということかといいますと、これもまた非常に難しいことだと思うのであります。
 それから、今度言われておりますけれども、流通市場で固定委託手数料、固定売買手数料の超過利潤というものがあったからこそ損失補てんができたんだという指摘がありますけれども、じゃこれを一挙に自由化することによってこの過剰利潤というものを解消して、そうした原資が生み出されないような仕組みにするということも、これもまた難しい問題ではないかというふうに思います。そしてまた、今度は発行市松での発行手数料のあり方についてもいろいう言われているわけでありますけれども、これも一挙にこれを改善していくということも大変難しいんじゃないかというふうに思います。そういうことからいいますと、先ほど申しましたように、株式市場における過剰なエクイティーファイナンスというものをどうやって自制し、規制していくかということが、当面今一番大きな問題としてあるのじゃないかというふうに私は考えます。
 去年の証券・金融特別委員会の総括質疑の中で、私は、有価証券の届出書で、大蔵省として、行政としては債券発行の使途について把握できる立場にあるわけだから、もっときちんとした厳正な把握をすべきではないかということを指摘をいたしました。これからお伺いいたしますけれども、その後、この問題については行政当局としてはどういうふうな検討をなされ、どういうふうな手を打たれたのか、それが一点。それから、この問題は、言ってみれば証券会社と発行会社、事業会社との問題というものが大きいわけでありまして、そこの節度といいましょうか、自主規制といいましょうか、そういうものが大きな要素であるということもまた事実であります。その辺について、自主規制ルールみたいなものの制定についてどういうふうな検討がなされたのか、その二点について、まずお伺いをいたしたいと思います。
○松野(允)政府委員 御指摘のように、過去におきます過剰なファイナンスというものが財テクに回ったというような指摘もございますし、あるいは損失補てんの原因になっている。ということが、我々としてもそういう感じを持たざるを得ないケースが多いわけでございます。
 今御指摘のように、いろいろな対策を考える必要があるわけでございますが、今御指摘のありましたファイナンスの資金使途という問題につきましては、私どもも従来から事前の届出書の段階では把握しておりますけれども、その届出書どおりに資金が使われたかどうかという事後のチェックというのは、お金には色目がございませんので非常に難しい問題ではございますけれども、やはり今回の問題を考えたときに、フォローアップというものがぜひ必要であるというふうに考えたわけでございます。
 そういう観点から、証券業界ともあるいは協会を中心にしていろいろと検討を要請してまいりまして、このたび証券業協会におきまして、引き受けに関する規則というものを制定いたしました。この規則は、いわゆる公正慣習規則と言っておりまして、この規則に違反いたしますと証券業協会の処分を受けるということになるわけでございますが、その引き受けに関する規則の中に、もちろん引き受けに当たって十分引受証券会社が審査をすべきであるということはいろいろと書かれているわけでございますが、その中の一つに、資金使途について、特に現在引受審査の対象としております資金調達についての資金使途に加え、前回のものについてもそれをチェックするということを引受証券会社に対して要求をするということをルールの中に織り込んだわけでございます。
○細谷委員 業界サイドで、自主規制ルールという形でエクイティーファイナンスのあり方について検討されたということでございますけれども、行政サイドにおいても、せっかく届出書というものをとるわけでありますから、事前だけではなくて、とった以上は資金使途まで当然明らかにさせているということであるならば、それがどういうふうに使われたかということのチェックもきちっとしていただくことをぜひお願いしたいと思うのです。そういう中からこの自主規制、そして行政当局の指導というものと相まって実効あるものにしなければならないというふうに思いますので、ぜひそれは要望をいたしておきたいと思います。
 続きまして、証券取引等監視委員会の独立性の確保とその機能ということについて、逐一、少し詳しく具体的にお話を伺いたいと思います。
 まず監視委員会、略称監視委員会と言わせていただきますけれども、監視委員会の独立性を担保する措置として一体どんな制度上、運用上の配慮がなされているのかということについて考えてみたいと思います。これは本会議でも、大蔵大臣の趣旨説明にもございました。それから当委員会での質疑に対する回答でもございましたが、この委員会は合議制になっているということが、何といってもこの独立性を担保する極めて大きな要素なんだということを言っておられました。合議制だとどうして独立性が担保されるのか、その辺について、まずお伺いしたいと思います。
○小川政府委員 ごく通常の考え方で申し上げますと、ある仕事をやるときに大臣等から指揮命令を受けて行う、その監督に従って行うのは、いわゆるヒエラルビー的な上下関係で行っていくわけでございます。そうした場合に比べまして、ある仕事を複数の人間の意思決定によって行うということになりますと、そうした指示を通すということが困難になりまして、複数人間の議論あるいは意見交換によって、そのボディーとしての意思決定を行っていかなければならない、そこに牽制効果もございましょうし、上下関係での指揮というのが困難になるわけでございます。逆に申しますと、その点が、その合議体が意思決定をし行動するときに独立性を持っているということを指しているのであろうかと思います。
 したがいまして、講学によりますと、行政事務を通常合議体に所掌される趣旨は、一つは当該事務の処理に中立性が強く求められたりあるいは専門的知識が必要とされるような場合、これらの事務を所掌する組織の独立性を高め、公正中立の立場で慎重な判断に基づいて処理せしめることが必要であるからとされているわけでございます。
 こうした考え方に沿って、今回の監視委員会は合議体である、それで一つの大きな独立性を持っていると御説明申し上げている次第でございます。
○細谷委員 一人よりも合議制の方がいろいろな意見を交換し合ってやるから、その分だけ独立性が高まってくるのだということ、それはなるほどそういうことでございましょう。しかし、なるほど制度としては合議制をとり、独立性を担保する形でつくられていても、しょせんは運用次第によってはこれはどうでも変わるわけでありまして、合議制であってもそこに独裁的な運営だって当然あり得るわけでありますから、制度がそうであるからといって私は必ずしも独立性、自主性を担保することにはならない、あくまでも運用の問題であるということでありますので、その辺については十分これから見きわめをしていかなければならないというふうに思います。
 次に、委員会は検査等の結果に基づいて、大蔵大臣に行政処分等の勧告を行うことができるとなっておりまして、大蔵大臣は委員会の勧告を尊重しなければならない、そして、「勧告に基づいて採った措置について報告を求めることができる。」とされております。勧告、尊重、報告ということでありますけれども、まず「報告を求めることができる。」としてあるわけでありますけれども、なぜ大蔵大臣は、みずから行ったその措置について報告をしないのか。委員会の要求がなければしないのか。私は当然、大蔵大臣として委員会を尊重するならば、必ず報告するというふうにすべきだと思いますけれども、この辺についてはいかがでございますか。
○小川政府委員 法文では確かに、委員会が報告を求めることができるという書き方になっておりますが、その趣旨といたしましては、ただいま委員がおっしやられたとおり、大蔵大臣は報告をしなければならないという趣旨でございます。それでは、なぜ報告を求めることができるという書き方に法文上しているかと申しますと、まず一つは、委員会は勧告を行うことができるというふうに、勧告の権限が置かれております。そこで、勧告を行うことができる勧告権者の報告聴取権として規定することが、実はほかの立法例でも大変多うございます。勧告することができる、その結果を聞くことができるという形になっているというのが一つでございます。
 それからもう一つは、どちらかと申しますと、大蔵大臣が報告しなければならないというふうに書きますと、何か報告の内容は、大蔵大臣が自分がやりたいという分だけ報告をすれば足りるというような感じのところが出てまいります。つまり、大臣の裁量が非常に大きい感じがいたしますが、委員会が報告青求めることができるという言い方にいたしますと、委員会が納得のいくまで報告を求めることができる、実質的な意味においてもこちらの方が立法技術としてはよいのではないかということで、こういう規定にいたしているわけでございます。
○細谷委員 承りました。ぜひ、その都度必ず御報告をしていただくようにしていただきたいと思います。
 次に、処分権でありますけれども、もちろん大蔵大臣にあるということであります。この処分権の大蔵大臣の裁量の範囲でありますけれども、具体的に委員会は勧告する場合に、例えば免許剥奪をすべきであるとか、いわゆる処分の中身に立ち至った勧告ができるというふうに考えていいのか、いやそうじゃなくて、あくまで処分の内容、そういうものは大蔵大臣の裁量権の範囲内なのだから、それは処分をすべきかどうかの勧告だけであって、内容については大蔵大臣が判断するのだ、そういうことなのでしょうか。そこを伺っておきたい。
○小川政府委員 大蔵省設置法第十九条第一項、御提案しております中には、委員会は証券取引等の公正を確保するため行うべき行政処分その他の措置について大蔵大臣に勧告することができると規定いたしております。したがいまして、この文言からいたしますと、委員会が処分の具体的内容にまでわたる勧告を行うことが法律的にできないということではないというふうに考えております。
 それでは、現実に委員会がどういう勧告を行うか、これはこの法律を受けて委員会でお考えになることでございますが、これを準備いたしましたものといたしましては、恐らくは検査の結果というのは各証券取引法等の法令に違反するところがないかということを調べているわけでございますから、処分の勧告を行う前提として、こういう違反をしている事実があるということを明らかにするというのは最低必要であろうかと思います。
 その次に、処分の内容あるいは業務改善命令といったようなことについて、具体的に何日の営業停止をしなければならないというような処分内容まで入ることは、ちょっと委員会としてはないのではないのかなという感じがいたします。と申しますのは、やはり行政処分の前提といたしまして、法律上その処分に至る前に、大蔵大臣は当事者に対する審問を行わなければならないということになっているわけでございます。
 行政処分の内容については、このように審問を行って当事者に弁明の機会を与えるということが一つございます。またもう一つは、証券行政全般について責任を負っております大蔵大臣といたしましては、そうした具体的な処分を行うことが、例えば当該証券会社の経営あるいは事業内容が著しく危殆に瀕するようなことがないか、そしてそれがかえって関係の投資者の保護に欠けることにならないかとか、あるいはかえって資本市場の安定といったようなものを損なうことがないかとか、さまざまの要素を十分勘案して具体的な処分を決めることになるのではないかと存じます。
 ただ、そのことは、勧告に従って処分を行った後には委員会に報告をしなければならないわけでございますから、当然委員会にとってもなるほどと思う合理的な内容のものでなければならないというふうに考えるわけでございます。
○細谷委員 こう申しましたのも、何も大蔵大臣を信用しないというわけじゃないので、行政処分というものを実効性あるものにするために、せっかく委員会ができるわけでありますから、ぜひ処分の内容についてもやはりできる限りの範囲内で委員会の自主性を尊重する、判断を尊重するということをぜひやっていただきたいという意味において質問したわけであります。
 ところで、業者行政にかかわる問題でありますけれども、委員会は検査等の結果に基づいて大蔵大臣に所要の施策についての建議を行うことができるとなっております。この施策についての建議でありますけれども、上記の行政処分の勧告と異なりまして、実はどうするとも書いてないのです。できると書いてあるだけなのですね。この建議の実効性の確保というものはどうなるのでありましょうか。これは言いっ放し、聞きっ放しということか、大蔵大臣が裁量でこれを判断するということなのか。
 と申しますのも、市場の監視とか公正かつ透明な市場の形成という立場に立ってみても、業者行政のあり方と密接に関連していると思うのですね。そこのところの施策がうまくいかなければ、結果として資本市場の公正、透明性を確保する当初のねらいが実現できないということだって十分考えられるわけであります、そういうことになりますれば、監視委員会の施策の建議についても、大蔵大臣としては十分尊重するということでなければならない、と私は思うのでありますけれども、この辺については規定には盛り込まれておりませんけれども、運用上どういうふうに考えていかれるのか、お尋ねしたいと思います。
○小川政府委員 確かに、委員会が行います検査の結果、行政処分を必要とするときには勧告を行うことができるとなっておりまして、これに対しまして、一般的な施策の方向あるいはルールのあり方等についての意見を申し出るのは建議という形になっております。
 そこで、どうしてこういう違いがあるかという点でございますが、今回の経緯に顧みまして、本省の行政部局から独立した委員会が検査・監視機能を担う、そして、この検査の結果行われる勧告に基づく行政処分といいますのは、繰り返しになりますが、委員会が個別具体的に行った検査、調査の結果として、そのケースについて処理される事項でございます。したがって、委員会と大蔵大臣との関係の中で、大蔵大臣がより厳格にフォローアップしていくことがとりわけ強く要請されていると考えるわけでございます。その意味におきまして、勧告であり、尊重であり、報告というところを、こうした個別の検査結果については明確化しているわけでございます。
 これに対しまして、取引の公正を確保するために必要と認められる事項について意見を申し出る、建議することができるというのは、個別ではなく一般的な施策のあり方でございますので、法律の書き方を異にいたしたわけでございます。ただ、しかしながら、そのことは建議をそのままにしておいていいという意味ではございません。各種の審議会、調査会の答申であるとか建議とやはり同じように、行政を所掌する立場から、建議された施策については、それこそ各方面、国会での御議論等も含めまして各方面の意見等を踏まえ、誠実に大蔵省として検討していくべき課題である、このように考えております。
○細谷委員 議事録に書きとどめられることでございますので、その辺については十分その精神を尊重して運用に当たっていただきたいというふうに思います。
 さらに、委員会の独立性についてお尋ねをいたしたいと思います。
 先ほどもちょっと触れましたけれども、委員会の独立性を担保するものとして委員会の合議制があるということでございました。問題はやはり、合議にあずかる委員の人選というものが大きな問題としてあると思うのです。大蔵大臣が任命権者であるわけであります。国会の同意を得るといいながら、大蔵大臣が任命権者です。大蔵省の業者行政にとって、口幅ったいようでありますけれども、都合の悪い人を任命するはずがないわけであります。大臣は、人選に当たりまして、その要素として、経済の知識を持った人、中立的な人、そして当分の間OBの起用はないというふうに御答弁になりました。大蔵OBはどうなさるのか、当分の間とは一体どんな感じてお考えになっているのか、お考えをお尋ねしたいと思います。
 それから、もう一つ重要な点でありますけれども、事務局体制であります。事務局長、次長、実は人事というものは大蔵大臣の権限であることはもちろんわかります。しかしながら、事務の実質的な責任者の立場にある大事について、委員会が、委員長が全く関与できないというのは、独立性確保の見地から大変重要だというふうに私は思っているわけであります。私は、当然事務局長、次長の大事については委員会の同意を求めるべきである、要件とすべきであるというふうに思います。それが大蔵大臣の人事権、任免権を侵すということであるとするならば、せめて事務局長、次長以下、事務局の職員の大事については委員会の方に協議するということをぜひやっていただきたいと私は思います。これは法制面では何ら手当てをされておりませんけれども、この二点について大蔵大臣から御答弁いただきたいと思います。
○羽田国務大臣 まず、委員会の委員長の人事でありますけれども、この点につきましては、確かに行政事務、実務といったものに通暁している人がいいという意味で、大蔵省OBであっても適当な人がいればいいじゃないかという御議論が実はあるわけでございます。ただ、この委員会を設置することになりました経緯というものを考えましたときに、やはり少なくとも当面は大蔵省関係者を委員に充てることは見合わせるべきであろうと思っております。
 ただ、今御指摘の中に、当分の間はどうだということであろうと思いますけれども、まさにこの経緯がそういうことであるということで、今後これが運営されていく中で、本当にいい人があり、また国民に理解される、そういう状況になったときということで、一年後とか二年後とか三年後とか、そういう年数を限ってどうこうと言うべきものではないだろうということ。いずれにしましても、きちんと皆様の理解を得られる、しかも本当にいい人、この人だったらいいじゃないかというような人が出てくればまた話は別でしょうけれども、私どもはそのことを今、当面という言い方をしていることをひとつぜひ御理解いただきたいというふうに思っております。
 なお、事務局長あるいは次長について大蔵大臣が任命するということはよろしいけれども、少なくとも委員会の委員長と協議をすべきじゃないかというお話でございますが、最終的には任命権者の責任におきまして、公務の要請に基づいて、適材適所の原則に従いまして人事を行っていくということでありますけれども、必要があれば、それぞれの段階の管理者の意見を聞くこともあろうというふうに思っております。いずれにしましても、最終的には任命権者の責任において任命していくということになろうと思っておりますけれども、今御指摘の点もよく我々の方も踏まえながら、この間にありまして、話し合いをして意見を聞くというようなことも十分気をつけていきたいと思っております。
○細谷委員 三条委員会である公取ですら、委員長は大蔵省OBがほぼ独占するという形になっているわけです。まして大蔵大臣のもとにある八条委員会の長であるならば、当分の間が過ぎたら、これはもうほとんど大蔵省OBで占められてしまうのではないかという危惧があるから実はお聞きしているわけであります。大蔵省のOBの方々は天下り先はいっぱいあるわけでありますから、ひとつこの八条委員会ぐらいはせめて天下りしないということで、当分の間を継続していただきたいと思います。それはそうですよ、実際に使うのは監視委員会の委員なんですから、大蔵大臣、そう権力を振り固さずにぜひ、任命権を汚すわけじゃないんだ、委員会が言うことを聞かなかったら最終的には自分が決めればいいのですから、ぜひ協議をしていただきたい。特に事務局長、次長それから検査官ぐらいですね、ぜひこれは協議をしていただきたいということを要望しておきたいと思います。
 それから、事務局体制というものは、すべて従来の大蔵省の役人で占めることになるのかどうか。そういうことになりますと、今国民の間に、本当に大丈夫なのかな、この大蔵省の検査体制というものは今回の一連の不祥事の中で極めて不信感を抱かせているわけでありまして、当面は別にして、大蔵省の将来にわたっても本当に全部そうなのかというと、大変危惧が出てくるのじゃないかというふうに思うわけであります。それが一点。
 それからもう一つは、この委員会と大蔵部局との職員の人事の交流というのは、一般の職員でございますけれども、その辺の交流は一体どうなるのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
 それからもう一つ、最後につけ加えて、委員会OBの、特に委員クラス、事務局長、次長クラス、幹部クラスの証券会社、証券業界への天下りについては、大変また癒着構造を生むものとして、そして委員会の独立性を担保するという意味において大変問題だと私は思うのです。それについてはぜひ自制をしていただきたいと思いますけれども、それについてお答えいただきたい。
○小川政府委員 まず、委員会の事務局の職員でございますが、これは証券取引あるは証券取引法についての知識を持っていること、あるいは経験を有していることのほかに、強制調査といった面での知識経験を持っている人、こうした幅広い人を集める必要があるわけでございますが、多くの部分はやはり現に証券につきましての経験を持っております大蔵省の職員が当たることになります。しかしながら、ただいま申し上げましたような事務局の職務から考えまして、検察庁とか警察庁とかあるいは国税庁など、そうした専門知識を持っている省庁からも人材の派遣をお願いしたいと思っているわけでございます。
 なお、そのほかに民間の人材の登用ということが考えられないかという点につきましては、やはり我が国の公務員制度というものが、基本的には、こうした事務に携わる人間は国家公務員の中でこれを確保して養成していくというのが適当であるというふうに現に運用されてきております。そういう意味において、当面そうした職員に充てることは予定をしていない次第でございます。
 この委員会の事務局のスタッフと大蔵省職員との間の交流でございますが、今申し上げましたようなことからいたしまして、また、大蔵大臣のもとに統一した人事権がございますので、人事交流といいますか、異動の際には行政部局からこの委員会に動く、あるいは委員会からまた行政部局に動くということが当然あり得るわけでございます。ただ、そのことは、人事面では確かに交流がございますが、お話にございましたように、今回の経緯からいたしましても、委員会が国民的に見て、確かに検査・監視について独立した中立の機能を営んでいるかという点が大事な点でございます。その仕事のやり方につきましては、委員会の要目は独立して職権を行うわけでございますし、したがいまして、事務局の職員もまた委員長の指揮余命に従って仕事を行うわけでございます。そういう意味での独立性は十分確保されているのではないかと思うわけでございます。
 なお、委員会の委員をお務めになられた方が退職をされた後にどういう仕事につかれるかというのは、特別職の公務員でいらっしゃいますからそれぞれのお立場でございますが、ただ、これらの特別職の公務員は、その在職中の仕事について退職後も秘密を守らなければいけないといったような規制がかかっているわけでございます。
○細谷委員 いずれにいたしましても、国民から見て、委員会を独立して市場の公正、透明な市場形成のために信頼に足る存在にしなければならない、そういう意味において、委員をやめたらすぐ証券業界に入るというようなことでは必ずしも納得性がないのではないかと思います。十分配慮した人事運用がなされるべきだと思います。
 続きまして、通達類の見直しの問題であります。
 この証券行政には大変数多くの通達がありまして、四百七十本を上回る証券局長通達があるということであります。この整理統合というものが今回大きな問題になりまして、図られたというふうに聞いております。これについて、整理状況がどうなっているのか、そして現在まだ作業中のものがあれば一体どういうめどがあるのか、法令化したのが何本、廃止したのが何本、そしてその他の扱いでどうなっておりますか、口頭による行政指導の整理等はどうなったのか、それについて現況をお伺いしたいと思います。
○松野(允)政府委員 通達の見直しにつきましては、一連の事件の中で、透明性、ルールの明確性を。確保しろというような御指摘を受けまして、現在すべての通達の洗い直しをしているところでございます。
 私どもの考え方といたしましては、証券会社に対して一定の義務を課したり、あるいは権利を制限する、いわゆる指導通達と言っておりますが、これにつきましてはできるだけ法令化するものは法令化し、残りは協会等の自主規制機関のルールに移行するということを考えております。それ以外の通達としては、部内の事務委任通達あるいは法令解釈通達というようなものがございます。これにつきましても、できるだけ簡素合理化、廃止、整理統合するという方向で検討しております。また、いわゆる口頭による指導通達というのがございますが、これは原則として廃止をするという考え方で検討を進めているわけでございます。
 現在までの作業状況、最終的には四百六十本ぐらいございますのでまだ全部の洗い直しを終了しておりませんが、法令化いたします通達が十五本ございます。これは、今回お出ししております二つの法律案の中にすべて盛り込まれております。それから、協会等の規則に移行するものが六十本ございます。それから、廃止をするのは百五十本ございまして、整理統合が二百六十本。これは、実は合計いたしますと四百九十五本ということになりますが、若干重複している面がございますのでそういう数になります。
 いずれにいたしましても、そういうようなことでございまして、最終的に残る通達は、整理統合等もいたしますので五十本ぐらいのものになる。しかもそれも、先ほど申し上げましたような事務委任通達あるいは法令解釈通達というようなものになるというふうに考えております。
 作業の進捗でございますが、これは、現在御審議いただいております法律の中に法令化を考えております通達もございます。いずれにいたしましても、私どもは、法律の施行までには作業を完了したい、できるだけ早く、できれば来月中にでも完了できるように鋭意検討しております。
 ただ、協会、取引所の規則に移行するということになりますと、向こうの方の手続が要るものでございますので、その辺は少し時間の余裕を見る必要はあろうかというふうに考えております。
○細谷委員 次に、飛ばし問題について若干立ち入った御質問をしたいと思います。
 現段階で、証券トラブルに係る訴訟事件、いわゆる損害賠償請求事件というのはどうなっているのか。前回の大蔵委員会でお尋ねいたしましたところ、三月三日までの合計で、二百三十五件、三百十四億九千万円、今後さらにふえる見通したということであったわけであります。大手四社が八十三件、二百三億、その他が百五十二件、百十億ということでございましたけれども、いわゆる飛ばしに絡む係争中の訴訟事件というのは現段階においてどうなっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
○松野(允)政府委員 飛ばしにかかわるものとあわせまして、私どもは、証券会社が訴訟を提起したりあるいは訴訟を提起された場合は報告を受け取ることになっておりまして、今御指摘の数字は、飛ばしだけではなくて訴訟案件すべてというふうに私は理解しているわけでございます。
 現在私どもが把握しております中で、昨年つまり平成三年一月一日以降証券会社から報告を受けました訴訟事件は、本年四月末現在で集計いたしますと、全国で三百件の訴訟が起こっております。その請求金額は五百九十億くらいの数字になっております。そのうち、いわゆる飛ばしにかかわる訴訟というふうに私どもが考えておりますのは六件でございます。六件で訴訟金額が二百七十一億くらいの数字になります。
 四社について申し上げますと、平成三年一月一日から四年四月末までで、全体で九十八件の訴訟が提起されておりまして、訴訟金額が二百十億弱になっております。そのうち飛ばしにかかわる訴訟は一件で、三十五億五千万という数字になっております。
○細谷委員 今日までに、確定判決を受けたり、裁判所の和解をしたり、民事上の調停によって何件解決されておりますか。そして、解決された金額、解決金は一体幾らだったのか、総額は幾らだったのか、お尋ねをいたします。
○松野(允)政府委員 いわゆる飛ばしにかかわるもので訴訟が起こり、和解が成立したものが三件ございます。この三件で、証券会社の支払い額で申しますと、全部で二百三十一億円ということになります。それから、民事調停が成立いたしましたのが七件ございまして、これは支払い額が千五百二十四億円ということになっております。
○細谷委員 今後の見通しでありますけれども、監視委員会なんかができるということで、できる前に駆け込み的に問題解決をしておこうというのが出てくるのじゃないかと思いますけれども、今後の見通しについてはどういうふうなお考えをお持ちですか。
○松野(允)政府委員 飛ばしと申しますのは、いわば営業マンが会社の帳簿を通さないで無断で取引の仲介を行っているというケースが多いものですから、完全に把握をすることはなかなかできないわけでございます。ただ、こういうものが訴訟なりあるいは民事調停で出てまいりまして、各証券会社とも一生懸命になって、そういうものがないかチェックをしております。これは、営業マンをチェックするだけではなくて、できるだけ法人を中心とした取引相手先にまで照会をするということでチェックをしておりまして、私どもが現在まで聞きますところでは、いわゆる表面化しております飛ばしというようなものに類するものは、その後見つかっておりません。
 ただ、今申し上げましたように訴訟が三百件起こっているわけでございまして、この訴訟は投資家と証券会社との間のトラブルがもとになっているわけでございます。そのトラブルの中身の事実関係については個々の訴訟の手続の中で明らかになっていくわけでございまして、その中に飛ばしに類するものが全くないかどうかということは、私どもも実は現在のところ把握をしていないという状況にございます。
○細谷委員 四月二十八日に大蔵省は、山種証券と東京証券金融ほか三社との間のいわゆる飛ばし事件について、証取法五十条違反、すなわち、特別の利益を提供することを約束して勧誘する省令違反、そしてまた同時に、断定的判断を提供して勧誘する行為として同じく証取法五十条違反ということで、山種証券に対する業務停止命令並びに外務員の登録抹消というものを行いました。要するに、これはあくまで外務員個人じゃなくて、会社の判断、関与というものを認めたからであります。
 この事件は、詳しく言いませんけれども、外務員が二正期間後に一定の利回りが得られると数字を示して、そして約束した、そして外務員の行為が五十条違反にされ、そしてこれに会社が関与したということを認めた上での処分であったわけでありますから、当然これは五十条の二の利回り保証に当たると私は判断するわけです。それは明らかだと思います。新聞報道によりましても、大蔵省はこの判断を避けた、回避したと報道されているわけであります。
 こういうふうに明白な、どこから見ても五十条の二の利回り保証の違反事件でありながら、これすら適用できないということでありますれば、監視委員会ができて、一体どれだけこの種の事件に対して機能し得るのかということについては、私は甚だ疑問に思わざるを得ないわけであります。何ゆえに大蔵省はこの判断を回避されたのか、お伺いをいたしたいと思います。
○松野(允)政府委員 この山種証券のケースにつきましては、私ども、行政処分を行いましたときに、大蔵省として事実を公表しております。
 その事実の中には、今御指摘がございましたように、私どもとしては、この営業マンの行為、後はとは会社の行為自体が、営業マンの行為としては断定的判断の提供と、それから一定期間後に一定時価を大幅に上回る価格で買い取る約束を行ったという事実がございますし、会社の行為としては、一定期間後に時価を大幅に上回る価格で買い取るという行為を会社として行ったという認定をしたわけでございます。それに基づいて、証取法五十条一項五号の省令に基づきます、いわゆる特別の利益提供を約して勧誘する行為だという認定をしたわけでございますが、この行為自体が行われましたのは昭和六十一年から平成三年まででございまして、改正証取法が施行される前の行為でございます。改正証取法が施行される前の行為として考えますと、この特別の利益提供を約して勧誘する行為であるという認定ができるというふうに考えたわけでございます。
 今御指摘のございました改正後の五十条の二にあります利回り保証に該当するかどうかということにつきましては、今回のケースについては、その判定をする必要はなかったというふうに私どもは考えているわけでございます。形式的に見ますと、利回り保証の疑いが非常にないということではないわけでございますけれども、行政処分を行います行為は改正証取法の改正前の行為でございますので、改正後の五十条の二に該当するかどうかという判断をあえてする必要はないということでございまして、しかも、改正証取法の五十条の二の利回り保証ということになりますと、構成要件の一つとして、損失補てんの目的というようなことがございます。行われました行為というのは、当事者間ではどうもいわば担保金融的な認識を持っていたというようなこともございます。
 いずれにいたしましても、私どもの態度としては、別に五十条の二の解釈をわざと回避したということではなくて、今回の行政処分に当たっては、改正前の証取法五十条に基づく省令に該当するかどうかということを認定することで足りるというふうに考えたわけでございます。
○細谷委員 それでは、仮に監視委員会が新たに設立されたら、今度は監視委員会の立場で、刑事事件になるかどうかという、利回り保証に当たるかどうかという判断を委員会としてすることがあり得べし、こういう理解でいいですか。
○松野(允)政府委員 改正証取法は本年一月から施行されております。したがいまして、施行後に今のような行為があった場合には、監視委員会が事実関係を調査の上、利回り保証に該当するかどうかということを判断することになろうかと思います。
○細谷委員 私は、今回の行政処分に対する行政当局の責任の問題というのもあると思うのです。免許権者として、行政当局として責めを十分果たさなかったという意味において、ただ業者だけを責められない面があるのじゃないか、免許権者なるがゆえに行政当局の責任というものもあると私は思います。これは指摘にとどめておきたいと思います。
 もっと重大なことは、この山種証券の飛ばし事件については、九〇年夏の証券局の検査の際に、大蔵省は飛ばしの事実について報告を受けていた、その後一年半にわたって明確な指導もしていない、放置し黙認してきた。言葉は語弊があるかもわかりませんけれども、結果としてはそうなっている。この九〇年八月の大蔵省検査のときに飛ばしの内容について十分説明し、これに対して大蔵省から、不明朗な取引がある、透明な形での解決をと山種側に指示されたと、橋本社長自身が四月二十八日、処分発表後の記者会見で明らかにされております。しかも、そこでこの問題の早期解決を具体的に指導した形跡は見られないのであります。大蔵省の対応はどうだったのか、経過を追って説明していただきたいと思います。検査で発覚した時点で、なぜ早期解決を図るための指導をしなかったのか。
 山種の橋本社長は証券局審議官OBだということでありまして、証券局の大先輩だそうでございます。こういうことが何となく、遠慮といいましょうか、まあまあということがあったのではないかというふうに勘ぐられても仕方ないわけでありますけれども、この辺がどうなっていったのか。しかも、昨年の八月といえば、御承知のように、あれだけ全国民注視の中で証券・金融の特別委員会が衆参で開かれていた。ここの中では何ら、この飛ばしの事実すら具体的な説明もありませんでしたし、まして、この事件については何の報告もかかったということであります。この検査との関係について、経過を追って御説明いただきたいと思います。
○松野(允)政府委員 山種証券に対します定期検査は、平成二年の八月から十二月にかけて行われております。十二月の時点でその立入検査は一応終わったわけでございますが、その検査で検査官が把握した事実関係をもとに、山種証券に対してその考え方あるいは事実のさらに詳細な解明を要請するというのが検査の通常の手続でございまして、それを私どもは推問書と称しておりますけれども、その推問書を立入検査が終わった段階で会社側に出して、それに対する会社の見解を求めるわけでございます。
 その検査で把握した中に、山種証券が会社として一部の法人顧客との取引において非常に不自然な価格の取引があるということは指摘したわけでございます。それは会社が行った行為でございますので会社の帳簿に載っているわけでして、その点についての、そういう不自然な価格での取引があるという指摘をし、それについての事実の解明あるいは会社の考え方というものを求めたわけでございます。
 それに対して山種証券は、社内での事実関係の調査、解明に当たっていたわけでございますけれども、今申し上げましたように、その取引の中に会社が関与した取引だけが把握できたわけでございまして、それ以前の、営業マンが会社の帳簿を一切通さないで行っていた行為というものはなかなか解明に手間取ったということがございます。そういったようなことで、その事実解明に非常に時間がかかりまして、時間がかかっている途中で当該顧客との間でトラブルが発生をいたしまして、むしろ事実関係そのものについて争いが起こってきたというような事情がございます。
 そういったようなこともございまして、私どもが山種証券に対して事実解明を急ぐように再三要求をしたわけでございますけれども、完全な事実解明ができないままで、私どもに対する山種証券からの事実解明に関する、あるいは会社のそれに対する見解、意見に関する報告がなされないままで過ぎ去ったわけでございます。その過程でこのトラブルが裁判になり、裁判上の和解が成立し、それによって事実関係が、可能なところでございますけれども確定をした。その中に、先ほど申し上げた営業マンによる断定的判断の提供あるいは特別利益提供を約しての勧誘というような行為、途中からは会社みずからがそういう勧誘行為というものを行ったという事実が判明したわけでございます。
 その事実の判明したのに従って今回行政処分を行ったわけでございまして、確かに御指摘のように非常に時間がかかっているではないかということは、私どももその点は大変認識をしておるわけでございますが、何分事実解明に非常に時間がかかり、証券会社自身、私ども行政当局が検査の過程ですべての事実関係を把握してしまえばいいのですけれども、なかなか時間的制約もあり、今申し上げたように検査官が把握した事実に基づいて一応質問を発し、それに対して会社の回答を得るというような形で検査結果を確定するというような手続を踏んでいるわけでございまして、そういう関係で、検査が行われて、それに基づいて私どもが会社に要求したものと、その要求に関連して事実関係が確定するまでに非常に長い時間がかかったということについては私どもも非常に反省する点がございますけれども、何しろ会社の外で行われた行為ということで、営業マンあるいは取引先に対して証券会社がどこまで事実解明ができるかというのが、飛ばしの場合の非常に難しい問題であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
○細谷委員 今るる経過の御説明がございましたけれども、思い起こしてみますと、ちょうどそのころ、去年の八月というのは特別検査が入っていたわけでありまして、詳細な日にちは忘れましたけれど、も、その後中間報告という形で国会に対しても報告がありました。しかし、その中では何も触れられておりません。だから、やはりその辺については非常に納得できない面があるのではないかというふうに私は思います。
 さらにもう一点、少しさかのぼってこの構図というものを描いてみたいと思います。まさに飛ばしか起こったのが、山種の場合でいえば去年の八月ですね。そして大蔵省は、証取法の五十条の二の三項に基づくいわゆる健全性省令第四条というものを定めた。そして確定判決のほかに裁判上の和解、民事上の調停というのを省令をつくったのが十二月二十六日であります。さらに言えば、大和証券と東急不動産の訴状が出されたのが去年の十二月十七日、省令の前であります。それから山種と東京証券金融の訴訟も去年の十一月十二日、こうなっているのですね。そして訴状が出た。山種事件や大和証券と東急不動産の事件が出ている。訴状も訴えもあった。その後にこの健全性省令というものができて制定された。そしてみんなここに駆け込み寺のように駆け込んでいって、全部裁判上の和解や民事調停に逃れ込んで、証券事故としての処理をしたという形になっているのですね。刑事事件化するのを免れた、こういう構図になるのじゃないでしょうか。
 これは結果というふうにおっしゃるかもわかりませんけれども、全体を描いてみたらそういう構図になるのです。だから、飛ばしをずっと抑えておいて、そして健全性省令四条で和解条項をつくっておいて、ここへ逃げ込んで刑事事件になるのを免れた、こういう構図になるのじゃないでしょうか。それについて、どうせ違うのだというお答えでありましょうけれども、ちょっと何かありましたら言ってください一
○松野(允)政府委員 今の御指摘は、私どもとしては全くそういうことはございません。
 これは証取法改正が行われ、五十条の二というものができて、損失補てんが罰則をもって禁止される行為となったわけでございます。その施行を一月にということで健全性省令を整備したわけでございまして、そのときの考え方としては、証券事故というものは法律で例外的に認めるということになっております。
 その証券事故について、原則として大蔵大臣の確認行為ということで、何でも証券事故に流れ込むのを歯どめをつけるというような制度にしたわけでございますが、健全性省令をつくりますときに、その確認事項を確認するまでもないケースとして三つ考えたわけでございます。それが確定判決でありあるいは裁判上の和解であり、民事調停法上の調停でございます。これは大きく申し上げまして、二つの要素が考えられると思います。一つは、今申し上げた民事調停法上の調停あるいは裁判上の和解というのは確定判決と同一の効力を持つということ。それからもう一つは、やはり裁判官が関与して行われた手続において決定されたものであるというようなことを私どもは重視をしたわけでございます。
 その改正後の証取法五十条の二に触れるような行為を前提にして裁判官が調停なり和解をするということは、我々としては考えられないというふうな考え方でございまして、仮に改正法が施行された後で五十条の二の損失補てんに触れるような行為を民事調停なり裁判上の和解で解決するというようなことは、裁判官が認めるはずがないというふうに私どもは考えているわけでございます。
○細谷委員 いずれにしても、時系列的に事件をたどっていけばそういう形になるのですよ。そして、どうもうさん良さを感ずる。きのうも同僚議員が言っておりましたけれども、裁判上の和解といい民事上の調停というのは、世間の人はみんな知っているのですよ。言葉は悪いけれども、そんな難しいものじゃない。両者合意をしていけばすぐお墨つきをもらえるのだとみんな知っているのですね。それが実態なんです。ですから、こういうのを、一連の事件とこの省令の制定時期を考えてみると、どうもうさん良さを感じているということを指摘せざるを得ないというふうに思います。
 次に、もう一件、時間もなくなってまいりましたので、急いで御質問いたします。
 野村証券に対する寄託金返還訴訟というのがあります。提訴したのは三井ハイテック、それで相手は野村証券北九州支店。これは民法六百六十六条に言う消費寄託ということだそうであります。事件の内容としては、寄託金として預けた十億円の返還を求めたのに三億円足らずしか戻らなかった。そこで、未払い利息を含む七億九千万円の寄託金返還措置請求をしたということ。
 そして、三井ハイテックは八九年十月に社の株式運用禁止の内規で解約をした。株式運用の契約を解約したということなんですね。ところが、解約の正式な手続がなされたのかどうかということが一つ問題でありますけれども、その直後に、十一月に野村証券の北九州支店長が、必ず二けたの利息をつける、すぐに解約しないでほしいとの勧誘で、そこで三井ハイテックとしては翻意をいたしまして、契約をそのまま継続した、こういう形になっているのじゃないかというふうに思うわけであります。すなわち、寄託金契約というのが新たになされたわけでもないわけでありますから、どうもこれは株式を運用するという従来の契約のまま継続されているというふうに考えざるを得ないというふうに私は思っている。
 そこで、野村証券側は、これは争いになりましたけれども、通常の株式取引だ、提訴までは再三再四にわたって通常の株式取引だと主張したわけであります。そこで四月六日に、なお通常の株式取引だと野村が言って譲らないものですから、三井ハイテックが訴訟を起こしたということであります。
 さらに、これは新聞報道によりますと、勧誘に際しまして、必ず二けた以上の利息をつける、野村の全組織を挙げて実現する、三井側と北九州支店側では、口頭約束とはいえ、定期預金と実質同様の扱いにすると約束をして、それを条件に十億円を三井ハイテックは預けたとされております。しかも、これは確定利息でありまして、会社預け分が年六%、会長分が毎月二百万円、これは年利に私が計算しますと四・八%に相当する、こういうふうに決めたということであります。
 これは野村側の言い分と三井ハイテック側の言ってみれば利回り保証の約束をあわせて考えてみれば、明らかにこれは利回り保証と言わざるを得ないと思うのですね。証取法違反と言わざるを得ないと思います。野村側は利回り保証の株式取引であるということを認めているにもかかわらず、三井ハイテックとしては、たまたま証取法五十条の二違反を回避するために、寄託金というふうにすりかえているにすぎないのではないかというふうに私は思うわけです。大蔵省の認識は一体どういうふうになって、調査はどういうふうになっているのかお聞かせをいただきたいと思います。
 あわせて、これもまた両者が裁判上の和解とか、訴訟ですから、起こされておりますから、裁判上の和解をすれば、これまた証券事故として証取法の五十条の二の利回り保証という追及を受けない、こういうことになるのでしょうか、それについてお伺いしたいと思います。
○松野(允)政府委員 御指摘のケースは私どもも報告を受けておりますし、また訴訟が提起されておりまして、訴状の内容についても把握をしております。訴状の内容は、今御指摘がございましたような内容になっておりまして、四月二十四日に訴訟が提起をされております。野村証券側の言い分は、訴状とはかなり内容が異なるわけでございまして、もちろん利回り保証というようなことは否定をしているわけでございます。
 いずれにしましても、訴訟が現在係属をしておりまして、私どもとしてはもちろん事実関係を野村証券から聞くということもやっておりますけれども、訴訟における司法当局の判断というものも見ていきたい、そういう中で証取法に触れる行為がありましたら、それは厳正に対応するということにしたいと思っておるわけでございます。
 なお、利回り保証、これ自身もまた、行為自身は改正証取法以前の問題ではございますけれども、もし利回り保証というものが改正証取法のもとで行われたといたしますと、それは恐らく裁判になっても、裁判上の和解というようなことはできないのではないかというふうに私どもは考えるわけであります。仮にそうなりましても、先ほど申し上げました証券事故というものの前提としては、営業マンの違法、不当な行為ということもあるわけでございますが、利回り保証ということになりますと、これは罰則をもって禁止をされております行為でございますから、それについての効力の問題は、また別途判断があるわけでございまして、形式的に証券事故に該当しないようなものまで証券事故にするというわけにはなかなかいかないわけでございます。
 民事裁判上の和解、確定判決あるいは民事上の調停といっても、これはあくまでも証券事故に該当するものについて、大蔵大臣の確認を要しない場合ということで規定をしているわけでございますから、もし、もともと証券事故に該当しないようなものであれば、これはそもそもが五十条の二に例外として認められている証券事故にはならないという解釈が成り立つわけでございまして、いずれにいたしましても、この件につきましては訴訟係属中ということで事実関係が確定し得ないという状況にございます。
 いずれにいたしましても、そういうものが確定する段階で、私どもも証取法上の問題点をチェックし、厳正に対応するということにしたいと思っております。
○細谷委員 これも多分、やがて裁判上の和解ということになるのではないかというふうに私は考えております。
 きのうも同僚議員が言いましたように、私はこの健全性省令四条の見直しを要求いたします。なぜかといえば、あれだけ議論があった中で、これが行政府で定められた。それは法律の委任事項かもわかりませんけれども、立法府に対しては何の説明もなされておりません。こんなしり抜けの省令がつくられるということは私は予想だにしなかったわけであります。これについてはぜひ見直しをしていただきたいということを私は要求いたします。
 まだいっぱい御質問したいことがありますけれども、最後に、去年の証金特におきまして我々は熱心な議論をいたしました。その中で、衆議院で十項目にわたる附帯決議をつけさせていただきました。まだまだこれは途中経過のことでありますから何とも申し上げられない面がありますけれども、私どもは熱いまなざしで見ております。どういうふうにこの附帯決議が実行されているのか、守られているのかということは大変重大な関心を持って見ておるわけであります。本日は時間がありませんから一々をお尋ねいたしませんけれども、次の委員会の質問の折にはぜひお尋ねをしたいと思いますので、この十項目がどういうふうに具体化され、実現されているかということについて、御検討をぜひお願いをしておきたいと思います。
 これで質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
○太田委員長 小野信一君。
○小野委員 最初に、確認という意味の質問ですので、イエスかノーか、あるいはそれに準じた簡潔なる答弁を求めておきます。
 昨年の百二十一臨時国会で証券取引法が改正されまして、本年の一月一日から損失補てんが禁止されました。刑罰を伴い禁止されました。だとしますと、それ以前は損失補てんは法律違反ではなかった、こう考えてよろしゅうございますか。
○松野(允)政府委員 事後に有価証券の売買で生じた損失を補てんするという行為は、証取法では禁止されておりませんでした。
○小野委員 損失補てんが行政通達違反となったのはいつからですか。
○松野(允)政府委員 通達を出しましたのは、平成元年の十二月二十六日でございます。
○小野委員 この通達の法的根拠は何ですか。行政府である大蔵省がその権限を握る根拠はどこにあったのでしょうか。
○松野(允)政府委員 この通達は、大蔵省設置法にございます大蔵省の所掌事務の中に、証券会社に対する監督というのがございまして、その設置法に基づいて所掌事務を遂行するために発出されたものというふうに考えております。
○小野委員 この行政通達はどんな条件のもとで、どこで、だれが、どのような方法でもって決定されるのですか。
○松野(允)政府委員 これは証券局長から出た通達でございまして、今申し上げましたように、設置法に基づく権限で証券局長が各財務局長あて、それから証券業協会長あてに出したものでございますので、当時証券局の中で議論をした結果、それを通達にまとめて証券局長の通達ということで出したというふうに考えております。
○小野委員 どうして一省庁の通達がこれほど大きな強制力を持つのか、世界の皆さんは大変不思議に思って、理解をしかねております。大蔵省はこの通達の効力、まことに大きな威力を持つ通達、なぜこのようになるのか、どう理解をいたしておりますか。市場と大蔵省との関係をどう理解しておりますか。
○松野(允)政府委員 この通達は、一事後的な損失補てんを禁止したわけではございますけれども、この通達が出る以前から既に、特定の投資家に利益提供するというような行為は取引の公正を害する、あるいは証券会社の仲介業者としての公正性を害するものだというようなことで指導していたことも事実でございます。そういったようなことを受けまして、証券会社の仲介業者としての公正性を維持するということから出したものでございまして、特に急に損失補てん行為が、この通達によって証券会社が行うべき行為でないということになったということではなくて、むしろ一般的に、証券会社の仲介業者としての公正性というものをきちんと認識して、こういうことをしないようにということそ要請したわけでございます。したがいまして、この通達はあくまでも行政当局からの指導ということでございます。
○小野委員 市場操作や利回り保証等が明らかに法律違反であるというならば、政府は当該企業を告発して、正式な法的手続を踏むべきだと思います。例えば暴力団をもうけさせたのではないかという株価操作の疑いが出ました。大蔵省は、野村証券の社長を査問した結果、証券法五十四条の違反と認めたために、一部の営業店に営業停止を行うという行政命令を出して決着をつけました。大蔵省は、捜査権に加えて司法権まで行使した、そして決着させたと私は考えます。本来こうした行為は、違法性があるならば司法当局が十分捜査を行って、告発に基づいて真相を明らかにすべきだと考えます。短絡的で拙速な対応は、市場の発展にとって、少なくとも長期的に見ますと、むしろマイナスになると思います。
 そもそも、六月に証券・金融スキャンダルが露見をいたしまして、七月中旬に監視機関のあり方の検討を依頼いたしました。海部総理が行いました。損失補てんの原因、真相がよく解明されないうちに、この監視機関のあり方が諮問され、結論が出、答申を受けてスタートいたしましたけれども、私は余りにも拙速過ぎるのではないかと考えます。大臣、いかがですか。
○羽田国務大臣 行革審におきまして、行政全般にわたりまして豊富な経験と高い見識を持たれた委員から構成され、また、特に証券問題の審議に当たりましては、これらの委員の皆さんに加えまして、経済問題ですとかあるいは企業実務に経験の深い専門委員の方々にも参画をいただいたというふうに私ども承知をいたしております。行革審も述べられておりますとおり、一連の証券等の問題の緊要性、今の状況というのはまさにそこにあるというふうに考えますけれども、行革大綱につきまして、早急に提示する必要があるとの考え方に立ちまして精力町かつ集中的な審議を重ね、答申を御提出いただいたものでございまして、御指摘のようなことはないというふうに考えております。
 なお、大蔵省といたしましても、行革審答申は、今般の証券あるいは金融不祥事に対する国民の厳しい御批判を反映したまことに厳しい内容のものであろうというふうに、実は厳粛に受けとめて対応してきたところでございます。国会等におきます御議論をも踏まえまして、今般、検査・監視体制の見直し等の具体策を御提案申し上げたところでございまして、ぜひとも御理解をいただきたいということでございます。
○小野委員 今大臣から、証券・金融に造詣の深い行政改革推進審議会のメンバーである、こう答弁をいただきましたけれども、メンバーを見ますと九人でありますが、この中で証券についての専門家は長岡さんのみでございます。あとの人は証券・金融について全く素人とは言いません、常識的にはかなり造詣の深い人だとは思いますけれども、今回の大改正を行うような、法制を改革するようなことを行うには余りにも違った畑の人ではなかったか、私はこういう感じがしてなりません。したがって、先ほど申し上げましたように拙速であると同時に、証券・金融のプロである大蔵省の皆さんに対立して自分の意見を通すためにはやはり拙速過ぎたのではないか。同時に、この審議会は日本SECの制度改革のためにつくられたものではございません。したがって、本来の任務から外れた任務が付加されたわけですから、拙速過ぎたのではないか。また、今回の損失補てんの本質的な真相、結論がまだ出ないうちに結論が出されたということで、拙速過ぎるという批判をいたしておるわけでございます。
 同時に、この問題が大きくなりまして、大口投資家優遇の批判が高くなりました。この批判に対して大蔵省はどういう判断、どういう考えをお持ちですか。
○松野(允)政府委員 いわゆる損失補てんが行われました相手先につきましては、各社で公表がなされたわけでございます。それはほとんどすべてが法人でございました。個人も絶無ではございませんが、法人でございました。法人取引という中でこういうことが行われたわけでございまして、それは一つには、法人が株式運用、いわゆる財テクを行って、それが失敗して、証券会社が法人との取引関係を維持するという観点から補てんを行ったということになるわけでございます。法人の財テクということから、法人は大口の投資家であり、かつ、証券会社と法人との関係というような関係に基づいて補てんが行われて非常に不公平だ、一般の投資家と差別をしているというような批判が出たわけでございます。
 法人に対して損失補てんが行われたという理由はいろいろあるわけでございますけれども、現象を表面的に見ますと法人に対する補てんが多かったということで、大口優遇、こういうふうな批判につながったのだろうというふうに考えます。
○小野委員 ですから、法人に対する損失補てん、これが大口投資家の優遇だと批判が強くなったのですが、これは、不都合なことだ、不公正な、不公平なことだと判断をいたしますか、それとも、日ごろの取引関係からいってやむを得ない措置であった、こう判断をいたしますか。
○松野(允)政府委員 法人との取引は長期継続的、関係が長いわけでございますから、いろいろな面でサービスが行われるということは十分考えられるわけでございます。
 ただ、有価証券投資、特に株式投資によって生じた損失を補てんするということは、証券取引の基本的なルール、つまり自己責任原則ということからいいますと問題があると我々としては言わざるを得ないわけでございまして、それが証取法を改正して損失補てんを禁止しました理由の一つになっております。つまり、仲介業者としての公正性、あるいは自己責任原則を投資家に十分認識していただけないような営業のやり方、それがひいては、市場の中にそういうふうな補てんが期待できるような投資家とそうでない投資家が入ってきて、市場の価格形成上問題が生ずるというようなことで損失補てんを禁止したわけでございまして、そういった観点から申し上げますと、いかに大口投資家であっても、損失補てんという形でサービスをするということには問題があったと言わざるを得ないと思います。
○小野委員 今回の金融・証券不祥事について、大蔵省や、当時の大臣でありました橋本大臣の発言を聞いておりますと、監督不行き届きに尽きるのですけれども、大蔵省は何をどこまで監督すべきだったのか、当時私は理解することができませんでした。大蔵省の責任範囲とはどういうことなのか、監督の範囲とはどこまでなのか、もしそれらの合意事項がありましたならば説明願いたいと思います。
○松野(允)政府委員 大蔵省の監督責任でございますが、これは証券会社が、証券市場における仲介業者ということで証券市場の公正な運営ということに非常に大きな責任を持つ、公共的な役割を要求されているということで、日本は免許制をしいているわけでございます。大蔵省としては、その免許制のもとにおきます免許会社に対する監督権限もございますし、それに伴う責任というものもあるわけでございます。
 私どもは、証券取引法に規定されております証券市場における取引の公正を確保するためのいろいろな措置、規制がございますが、そういった規制を証券会社に対して十分守らせなければならないという監督責任が証取法で与えられた権限の範囲内であるというふうに考えているわけでございます。もちろん一方では、証券投資の基本原則であります投資家の自己責任原則というものも十分認識していただくように努力をしなければいけないわけでございますけれども、基本的には、証券市場における仲介業者として公正な市場を維持するというための証取法上のいろいろな規定を適正に執行するというのが私どもに与えられた責任であるというふうに考えるわけでございます。
○小野委員 今の答弁、私は残念ながら理解することができませんでした。いつの機会にか、またやらせていただきます。私は、これで確認という意味の質問を終わらせていただきます。
 これから本格的に入りますけれども、私は、今回の損失補てんの問題に関して、三年前に大蔵省証券局のとった態度は正しかったのではないかと考えておるものであります。通達は、九〇年の三月までに営業特金の運用を投資顧問会社に移すことを条件に損失補てんを黙認するというものであったと私は解釈をいたしております。ダウ平均が四万円以上になると言われ、株価が上昇しているときに、利回り保証の営業特金を解約させることは大変大蔵省には勇気が要ったのではないかと私は思っております。株は下がることもあり、これは当然であります。利回りの事前保証であるニギリは危ない、ある程度解約のときに補てんをしても、ニギリをやめさせることは正しいと大蔵省は判断したと私は思います。その意味で、私は評価するものであります。もし、あのまま営業特金を続け、ダウ平均が当時二万三千円まで下がりましたが、現在のように二万円を割る株価になっていたならば、証券会社は間違いなくすべて倒産をいたしたと思います。
 大蔵省は今まで、このことについて一言も弁解をいたしませんでした。しかし私は、古武士といいますか、日本的感覚ではいけないのではないか、当時の事情を、当時の大蔵省の考え方を国民の前に、市場の皆さんに、関係者の皆さんに、今しっかり説明することがあなたたちの任務ではないかと考えますので、局長と大臣の考え方をお聞かせ願いたいと思います。
○松野(允)政府委員 確かに、御指摘をいただきまして、私どもも平成元年十二月に通達を出しましたが、そのときの通達の考え方というのは、もちろん誤った通達を出すことはございませんから、基本的には当時は正しかったというふうに確信をしているわけでございます。
 それは、営業特金というものがいわば売買一任的に運用されるというようなことによって損失補てんが行われる温床になるという問題意識を持って、その営業特金の適正化を図る、つまり、売買任的な営業特金ということではなくする、原則として投資顧問契約を結ぶというような指導をしたわけでございまして、十二月に出しましたその通達の内容そのものは、私どもとしては、当時の状況からすれば、証券会社の今後の営業あるいは証券市場を考えたときに、方向としては極めて適切であったというふうに考えるわけでございます。
 それが結果として、平成二年の年初から株価が急落し、そういう営業特金の適正化がなかなかうまく図れなくなったという客観的な情勢があったわけでございますが、基本的には、御指摘のように、この通達の考え方というのは、もちろん一年間の期間を置いて適正化を図るという指導をしたわけでございまして、その指導の方向性については正しかったというふうに私どもとしても考えているわけでございます。
○羽田国務大臣 ただいま局長の方からお答え申し上げたとおりでございまして、あの事態の中における行政のとりました措置というものは正しかったというふうに考えておりまして、その点について御評価いただくことに対しても心から感謝したいと思います。
 ただ、私どもといたしましても、そこに至るまでの間にもう少しいろいろなことができたのかなということを考えますときに、今後とも投資者の皆様方を保護するという観点から行政は進めていかなければいけないというふうに考えておりまして、今後とも我々もよく状況等を見守りながら適切な対応ということが大事であろう。特に、今度委員会をつくっていただくということになるわけでございまして、そういった中から、本当に信頼される市場というものをつくり上げるために、我々もさらに努力することを申し上げたいと存じます。ありがとうございます。
○小野委員 だからといって、大口にだけ補てんいたしまして、小口を無視したということを私は認めているわけではございませんけれども、大局として、証券業界を救った一つの通達であったということを述べておきたいと思います。
 そこで、昨年の六月に大手証券会社による大口の顧客への損失補てんが表面化いたしましたけれども、その後、四社ではなく中堅、小会社まで補てんを行っていることが明らかになりました。この損失補てんは、日本の証券会社の個人による、あるいは会社の方針による間違いだったのか、過ちであったのか、それとも日本の証券業界が持っておる体質から来る必然的な結果であったのか、大蔵省はどう判断をいたしておりますか。
○松野(允)政府委員 確かに、中堅の証券会社におきましても、ほとんどは法人取引との間で生じたものでございますが、損失補てんが見られたわけでございます。
 これにつきましては、今御指摘のありました二つの理由、どちらともなかなか言いにくいわけでございまして、一方では、証券会社の営業体質として、営業の方針、営業方法にやや行き過ぎがあったということを認めざるを得ないと思います。これは、法人との取引とはいえ、やや一任的な行為を受けたというようなこと、あるいは過度の売買が行われたというようなこともあったと思います。
 しかし一方では、法人でございますから、当然その有価証券投資についての最終的な損益の帰属は自分だという自己責任の原則というものも十分認識をしていただかなければならないわけでございまして、そういう自己責任原則の認識が十分でないところで、証券会社の営業の行き過ぎも重なってこういうような問題が起きたというふうに考えるわけでございます。
○小野委員 先ほど私が、臨時行政改革推進審議会に日本型SECのあり方を諮問した、監視機関のあるべき姿を諮問したことは余りにも性急過ぎるのではないか、拙速過ぎるのではないかと申し上げましたのは、この損失補てんが日本の証券市場の体質から発生している、生まれているともし判断するならば、私は余りにも拙速過ぎたと考えるものでございます。個人の考え違い、あるいは道徳心、業界の良心に依存するような形で、この損失補てんがもし行われたものであるとするならば、監視機関のあり方は、先ほど申し上げました市場の本質的な問題から出てくる要因とは、その対策はおのずから大きく違ってくるはずであります。
 したがって私は、今回の損失補てんは日本の証券市場が持っておる構造的なものである、したがって、必然的に生まれたものであるという判断に立ちますので、今回の監視委員会の結論は余りにも拙速過ぎると判断いたしておるわけでございます。
 そこで、お尋ねしますけれども、今回の損失補てんが生まれた背景、要因は何であったと分析いたしておりますか。
○松野(允)政府委員 これは一つには、基本的な背景といたしまして、金融緩和基調の中で企業の財テクが非常に盛んに行われ、御指摘がありましたような営業特金というものが非常に膨らんだ、これはある意味では、企業にとっては余裕資金の効率的な運用ということになろうかと思いますけれども、しかし、その財テクが証券投資の自己責任原則の認識が十分ないままに行われた、あるいは証券会社と企業との間の取引関係が非常に日本的な中で重視されたというようなことがあったと思います。その企業の財テクが盛んになるということに加えまして、そういう株式中場の非常なブームの中で、証券会社の営業姿勢にも行き過ぎがあったということが言えるわけでございます。
 基本的には取引関係の維持というようなことで、こういうような補てんが行われたわけでございまして、そういったような観点から申し上げますと、一つには、今、構造的な要因という、確かに証券市場自身の構造的な要因というものもあるわけでございまして、その中には、今申し上げた自己責任原則が欠如しているという基本的な問題があろうかと思います。
 それから、ルールというものに対する考え方、つまり自己責任原則の裏腹になるわけでございますけれども、ルールを適正に守れば、そのルールのもとで、証券投資というものに対する結果というのは自分が負うのだというようなことになるわけでございまして、基本的には企業と証券会社との間の関係というものが引受業務あるいはブローカー業務というものを通じて、その関係を維持するということにかなり重点が置かれ、それが結果的には自己責任原則が守られないで済むという形でこの補てんが行われたというようなことが言われると思います。
 もちろんそれ以外にも、ルールが明確でなかった、行政上の問題、責任もある、保護行政もあったというようないろいろな御指摘もございます。私どももその批判を十分受けとめているわけでございますし、また、手数料問題についても言及がなされております。
 いずれにいたしましても、御指摘がございましたように、現象的には、財テク、それに伴う問題だということは言えるわけでございますが、その裏には、証券市場に対する参加者、関係者、証券会社、資金運用者あるいは資金調達者を含めての考え方というものに大きな問題があったというふうに考えるわけでございます。
○小野委員 私は、先ほど申し上げましたように、この問題は個人的な心情の問題、ルールの問題ではなくて、日本の証券業界が持っておる本質的な、構造的なものであると考える一人でございます。
 そこで、第一に、損失補てんが行われた最大の要因と私が考えるのは、機関投資家や証券会社が資金を運用する能力に欠けておったのではないか。アメリカの証券会社と比較いたしますと、明らかに、若干ではなくて明らかに劣っておることを考えるからでございます。
 株価を見てみますと、一九八〇年から八九年まで十年間の年平均の上昇率は一九%でございます。一九八〇年にTOPIXと全く同じ値動きをする証券、株を一千円投資をいたしますと、十年間待ちますと五千六百九十五円になります。千円の株を買っておきますと、TOPIXで同じ値動きをする株だといたしますと、五千六百九十五円になります。最初に補てんの対象として明らかになった取引は、株式市場が依然として上昇している一九八九年のものであります。年率八%程度の利回り保証は、株価が依然上昇基調にあった十二月までインデックスで展開し、一月以降はすべて確定利回りで運用しても、私は楽に達成できただろうと思います。このような市場環境が最もよかった年に八%の利回りも達成できずに補てんを行わなければならなかったことは、証券会社の運用能力に問題があったのではないか、私はそう思います。実際よく調べてみますと、多くのファンドで相場が上昇しているときの運用成績がインデックスを下回り、下落しているときはインデックス以上に悪かったという実態があるからであります。補てんを受けたところは、こういう保証が後ろにあるということであります。要するに、日本の証券会社は顧客の利益を最大にするという本来最も責任のある行為を怠っておったと私は思うからであります。
 欧米の主要投資顧問会社の一九八九年の日本市場での株の運用成績は、TOPIXの伸びの一七%を上回る二〇から三九%に入っております。ここでは損失の補てんはございません。したがって、日本と外資系の証券会社の運用の能力の差が、損失補てんをしなければならなかった最大の要因ではなかったかと私は考えるわけであります。いかがですか。
○松野(允)政府委員 まさに御指摘のとおりだろうと思います。私たちも、日本の証券会社あるいは今御指摘がございました投資顧問会社の営業の体質というものが、外国のそういうものとかなり異なっていた、今御指摘がございましたように、顧客の利益を最優先するというような方向で果たして営業が行われていたのかどうか、むしろ私どもが聞きますのは、手数料稼ぎの回転売買が非常に行われ、その手数料の方に利益が消えてしまうというようなことすら言われて、そういうケースも聞くわけでございます。
 そういったことで、基本的に日本の証券会社はブローカー・ディーラー体質というようなことで、今も御指摘がありましたように、株を買って長期に保有するということになれば平均的な上昇率というものを享受できるわけでございますが、その間手数料のために必要以上に回転が早いというようなこと、これはあながち証券会社だけの責任がどうかという問題があるわけでございまして、日本の株式市場そのものが、信用取引客を初めプロの個人投資家がかなり参加をしている、もちろんそういうものも必要ではございますが、一般的な個人の資産形成の場として成長していなかったということは否定できないことだろうと思うわけでございます。
 やはりそういうことからいいますと、顧客の利益を優先するということからいえば、手数料稼ぎに走るあるいはそれが営業マンの成績評価上大きなウエートを占めるというような点についての見直しというものは必要だし、それを私どもも証券会社に要請し、顧客の利益が優先できるような、顧客の利益が上がるような営業マンというものの評価を上げていくという評価体制の見直し、あるいは投資顧問会社、投資信託会社にいたしましても、より外国の業者と同じように、証券会社に引きずられたような運用をしないように、そこの間の独立性を十分確保していくということが必要だし、場合によっては新しい業者を参入させることによって、そういうような体質を変えていくということも必要ではないかというふうに考えているわけでございまして、資金運用技術が未熟であるという御指摘でございますが、資金運用技術が未熟というよりはやはり手数料稼ぎといいますか、成績評価あるいは営業のやり方がどうも顧客の健全な資産形成の方に重きが置かれてなかったということが言えるのではないかというふうに感じるわけでございます。
○小野委員 インデックス運用が広く普及しておりますヨーロッパあるいはアメリカでは、投資顧問会社や投資信託の運用するファンドの成績は、インデックスにどれだけ忠実に連動したかによって評価されております。我が国では証券会社のこの利益、これはどんな基準で運用成績の評価が行われておるのでしょうか。同時に、もし証券会社の市場での運用成績の評価が余りにも拙劣だとするならば、大蔵省はこういう点こそ指導していかなければならないのではないかと私は思いますけれども、いかがですか。
    〔委員長退席、柳本委員長代理着席〕
○松野(允)政府委員 日本にも投資信託の中にインデックスを利用して運用するファンドがございます。しかし、残念ながら、私どもが聞いておりますところでは、このインデックスファンドというのは成績が非常に芳しくないわけでございます。もちろん、その設定の時期にも大きく左右されることはあるわけでございますけれども、日本の投資信託の場合にはいろいろな商品が出ております。それに対して、それについて一応運用成績を公表するということで対応をしておりまして、基本的にはその公表された運用成績を見て投資家が判断をするというような仕組みは用意をされているわけでございます。
 行政当局としてその運用評価をどういうふうに考えるかということでございますが、行政当局として運用をどういうふうにすればいいかということはなかなか言いにくいといいますか、実際問題として私どもにはその能力はございません。やはり実際に運用をし、その運用の成果をバックにして金融商品を販売するということに直接携わっているところが運用の方法の改善に努力をしなければならないわけでございまして、私どもとしては、運用が悪いところはどこだ、あるいは運用が悪いファンドはどれで、いいファンドはどれだという情報の提供を通ずることによって、投資家の投資判断が正確、誤りなく行われるような環境を整備するということになろうかと思うわけでございます。
 各社とも、外国の業者の運用の方法がすぐれているというようなことを認識をし、その運用方法を何とかまねしようあるいはそれをさらに超えるような運用方法を考えようということでいろいろと工夫をしております。私どもとして、どれがいいか、どれが悪いかということは言いにくいし、また言うべきではないと思うわけでございますけれども、残念ながらインデックスファンドにつきましては、日本の運用技術というのは外国にはまだはるかに及ばないような状況にあるということは言えると思います。
○小野委員 大蔵省の指導によって、日本の証券会社は間違いなく規模だけは世界一になりました。世界的になりました。しかしその反面、こうした巨大な証券会社も、経営力やイノベーションの面ではアメリカの証券会社、投資銀行に大きく差をつけられております。
 現在、アメリカの証券市場には、大手、中堅の多くの日本の証券会社が進出をいたしております。規模だけはアメリカの投資銀行を上回っておりますけれども、ほとんどすべての業務面で対等に勝負ができておらないと私は聞いております。この海外市場での赤字を垂れ流しておるのが現地法人であります。この赤字の現地法人が存続をしているのは、日本の親会社が資本を追加し続けておるからでございます。もし日本の証券会社が、まだ大蔵省が日本の企業の低いコストでの資金調達を助けていかなければならないのだ、証券会社、証券市場を守り育てていかなければならないのだと考えておるならば、大蔵省の任務だとさっき言っておりました、指導しなければならないと考えておるならば、私は、日本からアメリカ市場に進出している赤字証券会社の投資こそ防止すべきじゃないのか、制限すべきではないのか、こう考えるわけであります。そんなことはできるわけはありませんけれども、既に大蔵省が証券会社や日本の証券市場をすべての面で指導しなければならないという時代は終わったのではないかと考えるからであります。
 証券局長、どうお考えになりますか。
○松野(允)政府委員 確かに、日本の証券会社はアメリカのみならずヨーロッパ一ロンドン等に子会社をつくって証券業務を行っております。もちろん、それはそこの市場におきます状況に応じて業績が変わるわけでございまして、確かに御指摘のように、アメリカで活躍しております日本の証券会社の収益力というのは非常に悪いわけでございます。
 そういうことに対応するために、日本の親証券会社がアメリカの証券子会社に資本を出すというようなことも行われたわけでございますが、これは証券会社全体のいわばグローバル戦略みたいなものがございます。やはりニューヨーク、ロンドン、日本という三大証券市場においてどういうふうな活躍をするかというようなグローバルの関係がございまして、その辺は私どもは、基本的には各証券会社の経営判断にゆだねているわけでございまして、一々それに対して行政として介入するということはすべきではない。もちろん、親証券会社の経営が非常に危うくなるというようなことになりますとこれは問題でございますから、そういうような状況になる場合には、行政として何か介入といいますか、意見を言う必要があるわけでございますけれども、そういうふうにならない限りは、あくまでも各証券会社の経営方針、経営判断の問題であるというふうに考えるわけでございます。
 また、御指摘がありました日本の証券市場において企業が非常に安いコストで資金を調達するというようなことをどうするかということでございますが、私どもの考え方としては、確かに大量のファイナンスのときに、コストの安い調達だという認識で行き過ぎた調達が行われたわけでございますけれども、本来はやはり、特にエクイティーファイナンス、株価を利用したファイナンスが行われれば、それに対して相応の利益を配当の形で株主に還元するというのはこれは当然のことでございまして、やはり証券市場全体に参加いたします資金調達者、資金運用者、それから仲介業者、この三つがうまくかみ合わないと、証券市場というのは健全に発展をしないわけでございまして、一方にだけしわ寄せをするというような形の証券市場というものを維持するということはできない。し、またそういうことをすることは適当ではないというふうに考えるわけでございます。
 行政介入の程度ということになりますと、やはり基本的には、証券市場は自由な市場でございます。ルールさえきちっと守って公正な取引が行われ、その中で自己責任原則に基づいて資金の調達あるいは運用が行われるということであれば、行政としてはそれ以上の介入をすることは基本的には適切でないというふうに考えるわけでございまして、私どもの役割は、やはりあくまでもそういうルールにのっとった公正な取引が行われている公正な市場がどうかということに、その環境をつくり上げていくということにあるというふうに考えているわけでございます。
○小野委員 一九九一年三月期の野村証券一社の経常利益は、アメリカの上場している投資銀行SIAすべての経常利益を上回っております。要するに、大きいのです。証券会社は、日本でのこの利益をもとにして、世界の主な金融市場に出かけていって大きく活動を展開いたしております。このような巨大な証券会社をいつまでも保護して育成しなければならない、こういう考え方を果たして世界の人々が、関係者が納得するだろうか、私はこう考えておることをまずお伝えいたしておきます。
 損失補てんが行われた構造的な原因の二つ目は、運用責任を果たしていない機関投資家ではなかったのかと私は考えております。証券会社と同じように、投資家側にも責任があると考えるからであります。事業法人だけではなく、運用責任を負っているプロの機関投資家である年金基金、各種共済組合、金融機関まで、営業特金として証券会社に資金運用を任せてしまいました。我が国では高齢化の進展とともに、年金資金残高はこれからますます大きくなります。八九年に三十兆円の基金がありましたけれども、九五年には推定六十兆円、倍になると計算されております。その伸び率は一二%です。したがって、今まで以上に残金は伸びる計算です。これまでも機関投資家の能力が運用資金の増加に追いつかず、営業特金として証券会社に預けることになったと私は思います。今後もまたその傾向が続くのではないかと思います。したがって、厳しい見方をしますと、これが今回の不祥事件の第二の原因ではないかと思うのですが、いかがですか。
○松野(允)政府委員 確かに、損失補てんの相手先には、法人と申し上げましたが、今御指摘のありました機関投資家、金融機関も含めましていろいろな機関投資家が出ております。これは、機関投資家みずからが営業特金を設定し、証券会社にその運用を任せるというような行為が行われたわけでございまして、営業特金という形をとらないものもございましたけれども、やはりそういう形で証券会社あるいは場合によっては投資顧問会社に運用を一任するということで、みずからの運用というような形をとっていなかったということは事実でございます。それが投資の成果についての自己責任というものを認識するのを薄めたという点も否定できないのではないかというふうに思います。
○小野委員 イギリスでは、悪いですけれども、産業は衰えておりますけれども年金はふえております。市場でも、ファンド運用を中心に展開をいたしております心アメリカ市場も、この十年を見ますと、急速に年金のファンド運用に動いております。したがって、私は、これから高齢化社会を迎える我が国にとって、この基金の増大をどう国の産業なり経済運営に安全に、しかも有効に使うかということになりますと、既に運用中心の市場に変えていかなければならないのではないか、こう考えております。今までのように証券業界は発展途上国型あるいは産業育成型だけの指導では、年金の皆さんに対して非常に危険を感ずるわけであります。もしこういう資金運用型の証券市場になったならば、今大蔵省の皆さんが天下りをするといって大変非難を浴びておりますけれども、運用中心の証券市場であるならば、堂々とそんな批判は追い出すことができるだろう、こう思うわけでございます。
 九〇年代の特に後半から、年金受給者に対する支払いが急増いたします。将来の年金に期待して資金の拠出を続けている年金加入者に対する機関投資家の責任は、私はまことに大きいと考えるものであります。後になって、運用成績が悪かったので約束していた年金は払えませんなどということは言えないはずだ、言わせてはならないはずであります。その意味で、特に、プロである機関投資家の基金の運用に対する大蔵省の指導あるいは意見というものは大変重要になってくると私は思います。いかがですか。
○松野(允)政府委員 確かに、機関投資家の成長、保険もそうでございますが、特に年金資金を中心といたします機関投資家の成長というのはこれから非常に見込めるわけでございます。そういったものが証券市場に相当なウエートを占めてくる、いわゆる機関化現象と言われますけれども、そういう証券市場になっていくというのは、これは先進国を見てもそういう流れはとめられないわけでございます。もちろん、一方では、多様な投資判断を持つ個人というものが市場に参加することによって市場が円滑に機能を発揮できるということも必要ではございますけれども、やはり機関投資家の成長、機関化現象の進行というのは世界の流れであるというふうには考えられるわけでございます。
 そういったことからいいますと、御指摘ありましたように、証券市場における機関投資家の資産運用というものがこれからますます大きくなってまいるわけでございます。そのときに、日本の場合にはどうも往々にしてその機関投資家が皆同じ行動をとるというような嫌いがございまして、それが市場の激化要因になることが多いわけでございます。やはり機関投資家の資金運用者、いわゆるファンドマネジャーでございますが、こういった者が独自に判断をして、特に年金、保険等であれば中長期的な観点からの証券投資、株式投資というものを行うことが望ましいわけでございます。私どもも、この機関投資家の成長等々に備えまして、例えば格付というような問題、あるいは評価機関というようなものをつくる必要があるのではないかとか、いろいろな検討を進めております。
 いずれにいたしましても、機関投資家みずからがみずからのファンドマネジャーを持って、みずからの判断に基づいて証券市場に参加し投資を行う、もちろん中にはそれは専門家を使うという部分があってもいいのかもしれませんが、基本的にはみずからの判断で、みずからの責任で証券市場に参入し、運用を行うということが望ましいと考えているわけでございます。
○小野委員 当然に、投資顧問会社、生命保険会社、信託銀行など、長期的に資金を運用する機関投資家の運用成績が、とっているリスクとの対比ではかられなければならないと私は思います。したがって、リスクとリターンとの関係が、その情報が投資家に間違いなく伝わるような制度が確立されておることが市場の公正さだと私は考えます。すべての投資家をもうけさせることが市場の公正さではないと思います。リスクに伴って高いリターン、低いリターン、ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンということが明らかにされることが市場の公正さだと私は思います。そのためにはどうしても、このリスクも投資者に対して公開することが必要になります。したがって、このディスクロージャーはこれからますます重要になりますけれども、この機関投資家等に対する大蔵省のディスクロージャーの考え方、今後の方針をお聞かせ願いたいと思います。
○松野(允)政府委員 一機関投資家の場合には、確かにリスク・リターンの関係というのはディスクロージャーというものが最大の決め手になるわけでございますが、個人投資家と比べますと、本来、そういう情報を分析しあるいは入手する能力というものはすぐれていると考えられるわけでございます。ただ、そうは申しましても、そういうものを分析するいわゆるアナリストといいますか、こういったものを十分その機関投資家が養成し、それを利用することによってそのディスクローズされている情報を分析して、リスクを評価しあるいはリターンを図るということは必要になるわけでございます。
 いずれにいたしましても、いろいろな金融商品に備えて、できるだけそういう金融商品に適合したディスクロージャーの内容を求めようということを今回の法律改正案の中に織り込んでいるわけでございますが、私どもとしては、できるだけの情報を開示することによってそのリスクを評価してもらう。もちろんその専門的な機関として格付機関というようなものもございます。機関投資家がみずからアナリストを擁して、このアナリストの分析に基づいて投資判断をするということも必要だろうと思うわけでございまして、その前提としてのディスクロージャーの充実ということについては、私どもこれからも大いに考えていく必要があると思っております。
    〔柳本委員長代理退席、委員長着席〕 
○小野委員 損失補てんを必然とした第三の理由はやはり固定手数料制があるのではないか、こう思っております。
 料全体系を見ますと固定制で、例えば一株千円の株を一千株、百万円買いますと、下一五%の手数料ですから一万一千五百円になります。百万株、十億円買いますと、〇・〇七五%プラス固定手数料七十八万五千円、〇・〇七五%は七十五万円ですから、プラスして百五十三万五千円になります。つまり、取引金額に対する比率は小口料金は大口の七倍ではありますけれども、絶対額では大口が小口の百三十三倍になります。しかし、千株取引をいたしましても百万株取引をいたしましても、今のコンピューター時代ですから、取引のコストは余り変わらないのではないか、私はこう思います。したがって、数量がふえてもコストが変わらないものは、大口取引の料金をパーセントベースでよほど低くしておかないと、大口に不公平になるという結果になります。
 それで、先ほど聞いたのは、大口と小口のどちらが優遇されているのだろうか。損失補てんで大口が大変批判をされておりますけれども、実際の取引の中ではどうだったのだろうかということが背景にあったことをつけ加えておきたいと思います。
 損失補てんを禁止するということになりますと、大口から取り過ぎた手数料は証券内部に利益として蓄積されることになります。私は損失補てんを禁止するなど言っているのではございません。損失補てんをしたのはこの手数料から来たのだというのは今常識になっておりますから、もしこのままにしておきますと、大口から取り過ぎた手数料は利益として証券会社に積み重なるということであります。こうなってまいりますと、大口の、証券会社の利益に対する過度の保護以外のものではないのではないかという批判が当然、利益から判断されると私は思いますけれども、それをどのように解釈し、どのようにこの問題を解決していかなければならないのか、その方向だけでもお示し願いたいと思います。
○松野(允)政府委員 株式の売買手数料につきましても、昨年来の一連の不祥事の中で、固定手数料制を見直すべきだという御提言を行革審からもいただいたわけでございます。それを踏まえまして証券取引審議会でもいろいろと議論をしていただきまして、固定手数料制そのものが直接損失補てんにつながったかどうかという点についてはいろいろと意見のあるところだということでございますけれども、それが今御指摘のありましたような超過利潤を生んだ、あるいは、手数料のところではなくて別のところでゆがんだ競争が行われたということになったのではないかというような意見もあったわけでございます。
 いずれにいたしましても、証取審の議論では、諸外国はほとんど自由化をしておりますので、手数料を諸外国と比べるのは非常に難しいわけではございますけれども、いろいろなデータを検討いたしますと、どうも日本の場合には大口手数料が割高であるということが言えるのではないかというデータがございます。そういったこと、あるいは、大口の手数料は主として機関投資家、法人等でございますから、交渉を行って手数料を決めるということも市場にそれほど大きなインパクトを与えないのではないか、競争の促進、あるいは大口が割高ではないかという問題、それから市場に与える影響というようないろいろなものを考えた場合に、大口手数料から自由化を始めるということがやはり適当ではないかというような意見をいただいたわけでございます。
 現在、それを踏まえまして、専門家を含めました作業部会を設けて、まず大口手数料を自由化する、その大口の水準をどうするかという問題はあるわけではございますが、そういうことを前提にして、それが市場に与える影響を見ながらその後の自由化の展望を探っていく。小口の場合には、自由化すると小口手数料がかえって上昇するということも言われております。確かにそういうような点も見られるわけでございまして、そういったことからいいますと、やはり大口から自由化し、手数料の割高を是正し、あるいは競争を促進するという方向が適当ではないかというふうに考えているわけでございます。
○小野委員 今回の日本の証券不祥事の発覚は、日本の大手証券四社が自分たちの利益確保をねらって、これ以上の補てんをしなくても済むように痛みを承知でやったのではないか、欧米でこういううわさが流れておるのは、手数料問題が背景にあるからだと私は思います。今、損失補てん禁止条項を証券法に加えることで小口の一般投資家の信頼回復を試みようとしておりますけれども、果たしてこれで小口投資家の信頼が回復できるのかどうか、私は不安に感じておるところであります。むしろ、大口投資家の不公平感はますます強まりそうな気がいたしますし、市場参加を減ずるのではないかと心配される要素もあることを私は申し上げておきたいと思います。
 要するに、株式の売買委託業務のコスト、収益構造を反映しない人為的な手数料制度を維持したままでは、どうしても利用者の不公平感は払拭できないと考えるものでございます。まして、大口だけを自由化し小口は固定制などにしたら、よほど小口の手数料を高目に設定しない限り、証券会社は収益の悪い小口取引は本気で取り組まなくなるのではないか、こう心配しておるところです。小口投資家はますますないがしろにされるだろうと予想されるからであります。
 これらのプラス・マイナスを考えて物を決めなければならないわけですけれども、私の考え方に対して、プラス・マイナスについて、局長はどうお考えになりますか。
○松野(允)政府委員 手数料論議が証取審で行われましたときに、今御指摘がございましたコスト論というようなものも議論の対象になりました。
 確かに、取引コストというものを考えた場合に、大口と小口とでどれだけ違うものなのか、コンピューターの部分は同じではないか、ただ、小口の場合には営業マンが注文を受けるということからいうとコストがやや高くなるという点は否定できないところだろうと思うわけでございます。しかも、証券会社は、日本の場合には大から小まで非常に企業格差がございます。なかなか取引コストを平均的に出すというわけにもいかないわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたような作業部会において、取引コストというものを何らかの形で計算をする必要があるのではないか、それは規模別でもいい、大中小でもいいというようなことで宿題をいただいておりまして、それについて我々も鋭意検討をする必要があると思います。
 それから、小口の手数料の問題でございます。これもいろいろと御議論がございまして、確かに、今御指摘がございましたように、これを自由化しないで固定化しておくと、小口が低く抑えられて小口の注文を受けなくなってしまうのではないか、小口に対するサービスが低下するのではないかというような意見があり、そういうことからいえば、仮に自由化して小口が上がっても、それだけのサービスが提供できるのであればその方がかえっていいではないか、あるいは、手数料が上がることによって小口の投資家はそんなに頻繁に売買を行わなくなってかえって健全な株式投資が行われるのではないかというような意見もございました。
 いろいろな意見がございまして、小口の手数料の取り扱いについては、私ども現在のところまだ明確な方向を持っているわけではございません。先ほど申し上げましたように、イギリスは同時にやりましたけれども、アメリカの例を見ましても、大口から自由化を始めておりまして、七年ほどかかっているわけでございます。日本の市場というのは、アメリカに並びあるいはアメリカ以上にブローカー業務が中心になっている市場でございます。非常にオープンな市場でございますので、そこに手数料の自由化というものをどういうステップで導入するかというのは非常に難しい問題でございまして、やや慎重なステップを踏んでいく必要があろうかというふうに考えるわけでございます。ただ、そのステップを踏んでいく途中で、仮に御指摘のように小口投資家に対して非常に変な影響が出るというようなことになれば、これは非常に好ましくないわけでございますので、そういうようなことになれば、それに対応する措置をとっていく必要があろうかというふうに考えるわけでございます。
○小野委員 損失補てん発生の四つ目の原因は、企業の不必要な財テク投資であると私は考えております。本業の設備投資や運転資金等への使用目的がない資金を企業が余裕資金としていることは、投資家に対して正当化することができるだろうか、こう私は考えております。仮に余裕資金を大量に持つことに正当性があるとすれば、近い将来その企業に大きな資金ニーズの発生がわかっている場合のみだと考えております。もし資金二ーズの見込みがないなら、企業は余裕資金を本来の所有者である株主に還元するなり従業員への配分の増加、地域社会への貢献という形で還元すべきであります。ましてや、本業に必要のない転換社債やワラント債で資金を調達し、営業特金やファンドトラストのよりリスクの大きい投資に向けるなどとは、株主や債権者、従業員をないがしろにした行為であると私は思います。いかがですか。
○松野(允)政府委員 いわゆる企業の財テクと言われるものでございます。確かに、行き過ぎた財テクが行われたのではないかというような指摘がございます。私どもの立場といたしまして、その企業が仮に余資を持っている場合に、それをどう運用するかという点について行政当局として云々するということはできないと思うわけでございますが、今御指摘がありましたように、行き過ぎた財テクが行われ、それが証券市場に非常に悪い影響を、証券市場をゆがめるというようなことになるのであれば、それは我々としては非常に困るわけでございます。一時的な待機資金というものの運用というものは当然考えられるわけでございます。大量な、行われた資金ファイナンスが財テクに回ったのではないかというような指摘が往々にしてございます。私どもも、それはどの程度回ったのかわかりませんし、全く否定するということもできないわけでございます。
 いずれにいたしましても、結果としてそういったものが証券市場、特に株式市場を必要以上に拡大させだというような点があることはある程度認められるわけでございまして、そういった観点からいいますと、財テクの行き過ぎ、あるいはそれはもちろん証券会社の側にも問題があるわけでございますが、そういった問題については、もしファイナンスというものが財テクの行き過ぎの一因になっていたということであれば、これは非常に問題で、そういうようなファイナンスというものの行き過ぎを防いでいく、再発を防止するということが必要であろうかというふうに考えるわけでございます。
○小野委員 今私は、損失補てんの背景と考える四つの要因を挙げてみました。これらはいずれも日本の証券市場の構造的なものであると思います。したがって、今回の損失補てんはおのおの個人による、個人的な要求による損失補てんではなく、日本の証券市場が持つ構造的なものから必然的に生まれたものだと考えるわけであります。
 したがって、単に日本型SECをつくって刑罰を科すれば、それによって解決する問題ではないと考えるものであります。したがって、この重要課題を臨時行政改革推進審議会、ここに答申を求めたということは、行革審の立場上、そのメンバーがその任務のために集められた人たちだけでないだけに、少し拙速過ぎためではないかと私は考えるわけであります。先ほど申し上げましたように、メンバーの中に金融の専門家は一人もおりません。同時に、大蔵省が日本の証券業界を指導しなければならないという使命感にあふれておる我が国では、法律で厳密に規定していないものは行政機関の裁量で解釈を行い、行政指導、通達という形で業界を指導してまいりました。このようなシステムのもとでは、監視機関は厳密過ぎるほどの独立性の強い位置づけにしておかないと当初の目的は達せられないのではないかと私は考えるものでございます。
 したがって、スタートしたものを否定したりするものではありませんけれども、日本の証券市場、損失補てんが生み出した日本の証券業界の構造的なものを考えた場合に、大臣が考える以上に独立性をこの機関に与えないと同じ過ちを繰り返すのではないかと心配しておるところでございます。したがって、最後に、大臣の所見と決意をもう一度お伺いして、終わりといたします。
○羽田国務大臣 ただいま小野委員の方から、損失補てんがどうして行われたのか、その背景から、どうもこういった問題が起こったのは市場の持つ構造にあるのではないのかという御指摘から、非常に深く現在の証券市場のあり方についてのお話があったわけでございまして、私もずっと傾聴させていただいたところでございます。
 御指摘の流れの底にありますものは、証券市場というものが一般投資家の方あるいは機関投資家と言われる方にとりましても安定性のあるものでなければいけない、余り投機性であるだけではいけないというのが底におありになるというふうに思っております。また、そういうものこそ国際的にも、私どもがこうやっていろいろと見ておりますと、成熟した市場であろうというふうに思っておりますし、また今後そうあり、いわゆる個人の方々も資産形成の場として十分安心して活用できる場所にしていかなければいけないであろうというふうに考えておりまして、私たち行政に携わる者もそういった点を十分念頭に置きながら、また、発行される方あるいは仲介される方々、また、みずからのリスクを負わなければならない自己責任ということについて投資家の皆さん方にもそういった点を理解していただく中で本当の運営というものができていくのじゃなかろうかというふうに考えまして、私どももそういったことを念頭に置きながら対応してまいりたいと思っております。
 そういう中で、今度つくります委員会の機能といいますか、あるいはこれができ上がることによって、本当に申立て、公正で、しかも独立して、そのルールがきちんと守られているかどうかをチェックする機関としてこれを育成といいますか、本当の仕事をやっていただけるような環境整備というものについては、我々もこれから常々念頭に置きながら対応しなければいけないというふうに改めて感じましたことを率直に申し上げたいと思います。
○小野委員 終わります。
    ―――――――――――――
○太田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本日、本案審査のため、日本銀行理事福井俊彦君に参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○太田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました
    ―――――――――――――
○太田委員長 東祥三君。
○東(祥)委員 大蔵大臣、本日の朝刊に本委員会で議論していることと関連する極めて衝撃的な記事が出ました。「全銀協の不良債権情報開示 大蔵省の圧力で後退」との記事です。お読みになったと思いますが、この点についてどのように思われますか。事実はどうなのか。
○羽田国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。
 金融機関の不良債権のディスクロージャーのあり方につきまして、本年一月に取りまとめられました金融制度調査会報告書におきまして、「今後の方向として、各金融機関はこ「より広範なディスクロージャーを推進していく必要がある」というふうにされております。また、現在、全国銀行協会連合会におきまして、ディスクロージャーの具体的な基準が設けられておりますけれども、その充実につきましても検討が行われておるというふうに承知をいたしております。
 私どもといたしましては、ディスクロージャーは金融機関の経営の健全性に関する自己努力を促進するための一つの方法としてこれを活用していくべきであろうと考えておりますが、なお検討を要する点も少なくないことから、今後金融制度調査会にディスクロージャーに関する作業部会を設け、専門的な立場から検討を進めていただき、開示内容の一層の充実を図っていきたいと思っております。
 なお、きょうマスコミ一で報道されておるというような、全銀協のディスクロージャーに大蔵省そのものが圧力をかけた、そういう事実はないということは最後に申し上げておきたいと思っております。
○東(祥)委員 この新聞記事にょりますと、名前は伏せますが、大蔵省の方が、「大蔵省が直接口をはさんだのは、誤解を招いたかも知れないが、情報開示を遅らせる意図はなかった、事実として直接口を挟んでいるわけですね。事実、認めているのではないでしょうか。
○土田政府委員 具体的な新聞記事についてのお尋ねでございますので、その新聞記事を見まして、誤解とはあえて申しませんけれども、多少この制度の仕組みについて解説をつけ加えておいた方がよかろうと思いまして御説明を申し上げます。
 昨今、不良債権の問題に絡んでディスクロージャーとして話題になっておるものは、仕組みとしては二種類、代表的なものとして二種類ございます。
 一つは、証券取引法に規定されております有価証券届出書や有価証券報告書のような、投資家保護のために、投資家に投資判断を行うのに必要な材料を公開し、公示するということを義務づける制度でございます。この制度の運用上は、開示の内容は銀行相互間でそろっていることが望ましいでありましょう。これについてのいわば義務的な開示項目をどうするかという問題、これは現在まださしあたっての問題に不良債権の問題はなっておりませんが、今後この不良債権をどうするかということは話題になるものと思います。
 ところでもう一つ、この新聞がどちらを意図して書かれたのかはやや不明でございますが、ディスクロージャーと言っておりますのにもう一つの制度がございまして、これは金融機関に固有の制度といたしまして、各業法、例えば銀行法の第二十一条でございますが、説明書類の縦覧という制度がございます。これは一般企業にはない規定でございます。これは昭和五十六年、銀行法の全面改正のときに、銀行その他の主要業法に登場したものでございますが、金融機関が多数の預金者、貸し出しの取引先等と交渉を持つ、いわば社会的存在であることにかんがみまして、投資家相手にのみならず、そのような多数の取引先に対しても企業内容を積極的に自発的に開示する、そういうものでございまして、いわば金融機関の私企業性と公共性というものの調和をさせる制度であるというふうに当時も御説明をいたしました。これは実は義務規定ではございませんで、訓示規定でございます。それから必要的記載事項というものは定められておりません。そこは各銀行の創意工夫にゆだねる、それがかえって私企業としての金融機関に重大な責任を負わしめて、創意工夫を凝らし合うというようなプラス面が働くのではないかということを期待しておるわけでございます。
 そのようなことでございますから、この説明書類の縦覧の方で開示すべき項目について特別に制約はございませんが、やはり多年この制度を運用しておりますうちに、銀行界でいわば最低水準の必要記載事項というようなものを申し合わせるようなことに現実にはなっております。それにつきまして今回いろいろと見ておりますと、大銀行から小さな銀行まで、代表的都市銀行と地方銀行までの間にいろいろ実務的また理論的にも問題があり、議論がそろわなかった。そこで結局、義務的な記載事項として追加するには至らなかったというものでございます。
 ただし、今申しましたように、これは各銀行の記載事項に有価証券報告書ほど厳密な横並びを問うことを期待しておりませんで、むしろ各銀行の自発的な創意工夫を促すという趣旨の規定でございますから、この義務的記載事項にとどまらず、みずからの創意工夫によっていろいろと開示項目をふやしていくということは、各銀行の経営上の判断でできることでございます。この辺を十分に解説すべきでございましたが、そのような解説が必ずしも十分に理解されなかったような点があるかと思いますが、この制度の仕組みについて申し上げればそのようなことでありまして、開示を制限しているというような性格のものではございません。
○東(祥)委員 きょうは五十一分与えられておりまして、目いっぱいやろうと思っております。答弁は簡単にしていただきたいのですが、私は事実があったのかなかったのか、これを聞いたわけです。どうもあったようなないような、余り問い詰めてもかわいそうですから、この辺でやめます。
 問題は、今回の法改正においてディスクロージャーの推進が一つの目玉になっている。しかし、この新聞記事が事実であるとすれば、何らかの形で、たとえそれが大蔵省側によれば圧力ではないというものであったとしても、何らかの形でディスクロージャー推進に障害を大蔵省みずからがやっているのではないのか、こういうイメージをどうしても与えてしまう。この点についてどうですか。簡単にお願いします。
○土田政府委員 それでは簡単に申し上げますが、私どもはこのディスクロージャーの推進につきまして基本的に前向きでございます。そして、このようなディスクロージャーの積極的な展開、私は、これは主として銀行法その他の業法に申しますところの、いわば説明書類の縦覧の系統の問題としてこの問題を議論しておるのでございますが、これにつきましては、金融制度調査会にこの六月から作業部会を設けまして、このディスクロージャーの開示内容の一層の充実を図っていきたい、そして専門的な立場から検討を進めていただきたいと考えております。そのような検討の結果、理論的にも実務的にも十分実用にたえるような仕組みが見出されることを期待しております。
○東(祥)委員 後ほどまた質問させていただきますけれども、それとの関連で言えば口頭行政、日米構造協議問題でも大きな問題になっている。外国人が口頭行政、口頭で大蔵省に何か言われたとしてもなかなか理解することができない。今後口頭行政指導というものをどのようにしていかれるおつもりなのか。口頭行政というのをやめるのか。必ず明文化していくのか。明文化していくべきなのだろうというふうに思いますけれども、この点についてはいかがですか。
○松野(允)政府委員 ルールの明確化という観点から、少なくとも証券行政にかかわります従来ありました口頭の行政指導につきましては、原則として廃止をする、どうしても通知、指導として残さなければならないものは明文化することによって、例えばそれは協会のルールにするなりというような形で文書にするという方向で検討しております。
○東(祥)委員 この記事がもし事実であるとすれば、預金者が、どこが今安全なのか安全でないのか、こういうものをわかる時期もおくれてしまうのではないのか、預金者がどこが安全なところなのかということをみずから調査して、そして預金銀行を決めていかなければならない、そういう状況になってしまうのではないのか、こういう懸念を持つわけでございますが、この点についていかがですか。
○土田政府委員 企業内容の開示の問題に戻るようでございますが、この企業内容の開示の中で、一般的にはそれは積極的にいろいろとこの内容の開示に努めておる、またその仕組みも発展しておるということは申し上げたとおりでございます。
 ただし、これはさらに理論的に研究を要する問題といたしまして、銀行は信用機関としての特殊性がございますし、現在銀行法制でも商法についての特例が設けられておる。例えば株主の帳簿閲覧権の否認のような規定が認けられておるというようなこともあります。それから、これは実際上は訓示規定でございますので明確な定義はございません。運用の積み重ねによって正しく適正に実施されていくべきものであると思いますが、説明書類の縦覧についての訓示規定でございます銀行法第二十一条を見ましても、ただし書きがございまして、「信用秩序を損なうおそれのある事項、預金者その他の取引者の秘密を害するおそれのある事項及び銀行の業務の遂行上不当な不利益を与えるおそれのある事項並びにその記載のため過大な費用の負担を要する事項については、この限りでない。」という注意書きがございます。したがいまして、その内容をディスクローズするということはもちろん一般的には望ましいことではございますが、そこは銀行業務の特性上、個別の預金なり貸し出しの内容をディスクローズするようなことは慎むべきでございますし、その他、やはり良識の範囲内というものがあるかと思います。
 そこで問題は、不良債権のようなものにつきまして、何が不良債権であるか、それをどのようにとらえることが客観的かつ公平であるかということをやはり研究せねばいけない。それを研究した後に、いわば前向きのディスクロージャーというものが実施に移されるのではないか、そのように考えて、近々に専門家に御研究を始めていただくということにしておるわけでございます。
○東(祥)委員 具体的なその内容はいつごろ出ますか。
○土田政府委員 これはまだ作業部会がスタートしておらず、作業部会にお願いも申し上げないうちに私の方から断定的なことを申し上げることはできかねるのでございますが、何らかの研究の成果が最終的にかあるいは中間的にか取りまとめられまして、本年度、すなわち平成四年度の財務諸表を調製し、それから関係の書類老調製するときまでには何らかのつけ加えるようなガイドラインというものが出てくることを期待しておるわけでございます。
○東(祥)委員 次の質問に移ります。
 現在の株式市況についてでございますが、現況が極めて低迷している中で、五月中旬にマスコミ等で中小証券会社の経営基盤が果たして大丈夫なんだろうか、このような情報がもたらされております。例えば、証券二十五社の三月期決算は、全体の八割に当たる二十社が経常赤字に転落する厳しい内容となっている、こういう報道があるわけでございますが、果たして中小証券会社の経営基盤は大丈夫なんでしょうか。
○松野(允)政府委員 確かに株式市況が非常に低迷をきわめておりまして、その中で証券会社の経営環境も非常に厳しいわけでございます。
 現在まで明らかになっております決算、四年三月期の決算は、上場会社、上場しております証券会社が出したものでございまして、中小証券会社すべてについての決算の数字がまだまとまっているわけではございません。しかし、いずれにいたしましても非常に赤字会社が多いということが予想されるわけでございます。しかしながら、五年間ほど株式市場は非常に好調でございまして、その間、中小証券会社の財産、財務体質というものも非常に強化をされております。
 そういったことから考えますと、現在考えられておりますような赤字の水準であれば、少なくとも財産、財務体質から考えれば、直ちに経営上困難になるということはないというふうに考えております。もちろん、マクロでございますから、ミクロで個々の証券会社を見たときにかなり経営状態が苦しくなってくるというところもあろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、四年三月期の赤字決算で直ちに経営が行き詰まるというような状況は、中小証券会社についてもまずないのではないかというふうに考えております。
○東(祥)委員 経営が悪化している証券会社の中で自己資本比率の状況といいますか、それはどういう状況になっておりますでしょうか。
○松野(允)政府委員 自己資本比率は証券会社の自己資本額と証券会社が持っておりますリスク、例えば保有債券の変動リスクなり、あるいはベーシックな、基本的な営業費用、あるいは一部証券会社の貸し付け、信用取引に基づく貸し付けでございますが、そういったようなもののリスクを積み上げまして、そのリスクと自己資本との比率をとっております。自己資本の中から流動化されてない固定化された自己資本を引いた比率ということで計算をしているわけでございますが、全体の証券会社で見てみますと、これは二百十社ございますが、四年三月期、三月末現在でその自己資本比率が三一四%という数字でございます。ということは、端的に申し上げますと、自己資本はリスクの三倍あるということになるわけでございます。したがいまして、この数字だけを見れば、それほど自己資本比率が低い水準になっているということは言えないと思います。ちなみに、一年前の三年三月期は三七一%ということでございましたので、五七ポイント下がっているということになろうかと思います。
○東(祥)委員 それは比較的経営が悪化していない企業も含めた上での平均値なわけですね。悪い企業だけ、例えば自己資本比率二〇〇%以下の企業、これがどれぐらいあるかということはお答え願えますか。
○松野(允)政府委員 信用機関でございますので、なかなか個別の会社の状況はお答えを差し控えさせていただきたいわけでありますが、マクロ的に見まして、私ども実は、行政上の考え方として自己資本比率一五〇%というのを一つの基準に置いております。一五〇%というもの、つまりリスクに対して資本の額が五割増しであるというような形になる、その一五〇%というのを一つの基準で考えておりますが、それを基準にいたしますと、一五〇%を割り込んでいる証券会社は四年三月未で十五社ございます。
○東(祥)委員 ありがとうございます。
 一般論として、大蔵大臣、景気はいつ回復するのでしょうか。
○羽田国務大臣 大変難しいあれでございますけれども、確かに現在の経済情勢というのはいわゆる調整過程にあるというふうに思っております。設備投資につきましても、過去数年間大変高い伸びで設備投資が行われてきたということで、ストック調整、こういう動きがあろうと思っております。しかし一方では、労働需給は引き締まり基調で推移しておりますし、また住宅建設は最近回復の兆しか見られてきております。また、一般の資材等の在庫調整は割合と速いピッチで進んでおるというふうに聞いております。そういう中で個人消費は、物価が比較的安定しておるということと雇用者の所得というものが着実に伸びておるということで、額そのものは少し低くなっておりますけれども、全体の数でいきますとこれは底がたく推移するというふうに見込まれております。また、金利の低下の効果が、いわゆる住宅投資ですとかあるいは今必要とされておる時間の短縮のためのいわゆる省力化投資といったものにもいい方向を見せてきておるということでございまして、私どもといたしましては、インフレなき持続可能な成長というものへ向けて今進みつつあろうと思っております。
 いつまでかということになりますと、これは大変あれでございますけれども、しかし今日の状況が着実に進んでいくとするならば、私は多くの業種におきまして、年度の半ばごろにはおおむね一巡していくであろうというふうに考えております。
○東(祥)委員 NTT株について質問します。
 この点については、夏場でもあるいはまた今回の審議におかれましても種々議論されていることでございますが、NTT株は国民に対する大蔵省の大だましである、こういうことは巷間まだ言われ続けているわけでございます。大蔵大臣、NTT株に関連して、何かおやりになろうとしていることはありますか。
○羽田国務大臣 この株について大蔵省の大だましと言われるのはちょっと困るので、市場に出しますときには事前に市場の動向といったものを手続によって把握しながらこれに自然に値がついていったということでありますけれども、しかし、どうも一般の投資家の方々の中に釈然としない思いがあるということについては、私どもも承知いたしているところでございます。
 この低迷の要因につきましては、もう細かくは申し上げませんけれども、例の六十三年のリクルート問題なんかで企業イメージというものが悪化してしまったということがありましょう。また、分割論議等をめぐりまして先行きに対する不安なんというものを持たれたということ、あるいは新規参入業者とのNTTの競争というものが激化しておるというようなことでございまして、いわゆる業績というのが多少落ち込んでおるという事情があろうかと思っております。
 ただ、株式全般との関連から申し上げますと、ちょうどNTTの株式が下がっておりましたころに、証券会社あるいは信託銀行ですとか東京電力という金利に敏感な株、それから大型株といったものもほぼ同じような推移をたどって安くなってきておるという状況でございまして、単にいわゆるNTT固有の要因のほかにもそういった市場全体のものがあったろう。これはまたいわゆる損失補てんですとかそういったものがあったろうと思いますし、またもう一つは、景気について全体的にやはりバブルが崩壊したといいますか、そういった状況の中で下がってきたものであろうというふうに思っております。
 私どもといたしましては、こういった状況にあるNTTの株につきましては、まず投資家の信頼を回復しながら市場の活性化を図るということ、そういういろいろな手だてをしながら、これは本筋をやっていくべきであろうと思っております。ですから、そういったことをある程度担保することができるような、今度の委員会等をつくって市場に信頼を取り戻すということが重要なことであろうということで、いろいろな、余りその先のことは考えるべきではないのではないのかなというのが率直な思いであります。
○東(祥)委員 もう大蔵大臣は十分おわかりだと私は承知しているつもりなんですけれども、NTT株というのは、一般国民を株式市場に引き入れた象徴的な株ではないのか。東証における平均個人持ち株比率三三%ぐらい。今日現在NTT株の個人持ち株比率というのは六〇%強です。そういう意味で、一般国民を株式市場に引き入れた極めて象徴的な株ではないのか。それ以前は、セミプロあるいはプロのみが株売買をしていたと極論することができるかもわからない。このNTT株を通して多くの国民一般が入ってきた象徴的な株じゃないのか、それはまたバブルの時代を代表する株であったと言うこともできるかもしれません。
 今思いますと、当時というのは、ガルブレイス教授の言葉を引き合いに出すまでもなく、ユーフォリア、陶酔的熱病、これに冒されていたのじゃないのか、そういう状況に多くの方々がバブル崩壊後気がついた。当時は、政府も政治家もそして多くの国民の方々も、何かおかしいんじゃないのか、しかしそれなりの見識を具体的に発言することができなかったんじゃないのか。そういう中で最高の見識を持ち、またその見識を発言しなければならない大蔵省もこの陶酔的熱病に冒されてしまったんじゃないのか。そして冒されただけではなくて、今度はNTT株の売り出し人という役割を持ったわけです。これではだれもがこの株に飛びつくのは当然ではないのか。
 ある方は、家訓として株は絶対やらない、しかしバブルが始まる前、NTT株が第一次放出される、大蔵省がやっているんだからということで家訓を破って株を買うようになった。あるいはまた遺産を何とかして子供たちに明確な形で残しておきたい、それもまた、いまだかつて株市場になんか入ったことのない人が子供に一株渡すということもあった。そこには厳然と大蔵省の中に、これも夏場で議論されたことでございますが、証券局という証券状況全体を見守らなければならない一つの審判がいる。もう一つは、プレーヤーとして理財局がこのNTT株を発行する、売り出してしまう。したがってこのような、ある意味で一般の国民の方々が株式市場にまさに陶酔的熱病に冒されて入っていってしまったんじゃないのか。もう民営化されたんだから何もしなくていいのじゃないのか、それは余りにも国民の怒りを理解していないことになるんではないのか。ただ単に株が低落する、それは自己責任の原則にのっとれば当然のことです。問題は、大口投資家が損失補てんされた、それが明るみに出た、そこに国民の怒り、持っていき場のない怒りが爆発しているんじゃないのか。
 これに対して大蔵大臣は、基本的には何もやらないというふうに言っているわけですが、例えば航空会社の株主というのは、これは持ち株数によって異なるのかわかりませんけれども、一年ぐらいたてばひょっとして安い航空券かなんかもらえるんじゃないのか、あるいはまた映画会社の株を持っていれば年にただの切符をいただくこともできるんじゃないのか。株それ自体をいじれということを言っているんじゃなくて、もっと国民の怒りに対して、その怒りの本音がどこにあるのかという部分を大蔵大臣が、まさに見識ではなくて今はもう胆識の時代に入っているんだろうと思うのですが、行動を伴わなくてはいけない。そういう意味では株主に対して何かしてあげることがあるんではないのか。いかがですか。
○羽田国務大臣 まず御認識をいただきたいと思いますのは、何かNTTがただ一つ特別に下がってしまったということ、これがぜひ御理解いただきたいのは、先ほどもちょっと私申し上げましたように、ちょうどこの株の下落のタイプというのが、NTTですとかあるいは証券会社、あるいは信託銀行、あるいは電力会社、こういったものは全く同じバターンで下がっておるというのが現状なんですね。ですから、まず株というものがちょうど大きく天井知らずで上がったあのときから、そんなふうな形で下がっていったんだということはぜひ御認識をいただきたいと思うのです。
 今お話があったことは、何か特別に政府がどうこうしろという話じゃないんだ、株主に対する優遇策というものについて何か考えろということでありまして、これは基本的にはこの経営主体でありますNTT自身がやはり考えていただかなければならぬ問題であろうというふうに考えております。
 ただ、今私どもの方に方々から聞こえてくる中に、例えば政府保有株式を民間株主に額面価格で譲渡をしたらどうだということですとか、あるいはNTTが額面価格で買い入れてこれを消却して減資するような形はどうなんだというようなこともよく報道がなされております。しかし、こういうものについては、国有財産である政府保有株式を時価より大幅に下回るような価格で処分するというようなことになりましたら、どうもこれは国が損失補てんをしているんじゃないのかというおしかりなんかも受けることもあるであろうということで、私どもとしてこういう形というのはなかなかとれないなという思いが実はあります。それと同時に、もう既に売却された方々があるというのが現状であろうと思っております。しかし、今御指摘がありましたように、企業というのは、株主の皆様方に対して、株を保有することによって利益を得るようにそれぞれいろいろな工夫がなされておる、そういったことは考えるべきじゃないかということは私どももよく念頭に置いておきたいと思っております。
 ただ、一般の皆さん方が株式市場に、比較的今まで株に関係なかった方が株という世界に入られたそのきっかけは、確かにこのNTTが大きな一つの道を開いたということはあり得る。また、これが下落したために大きく離れていってしまったり、あるいは市場に対する信頼というものを何か失ってしまったということがあるだろうというふうに考えております。そういった点についても私どもよく念頭に置いておきたいと思っております。
○東(祥)委員 御指摘のとおり、私は、NTT株のみが下がっただとか、そういうことは言ってなくて、重々その当時の状況を、ここに線グラフもありますし、日経平均株価の推移も全部ありますので、そういうのをわかった上で、NTT株というのは特殊ですよ、今大臣がお認めになりましたとおり、一般の投資家がどっと入ってくる一つの機縁になったことも事実ですし、また象徴的な株になったのも、これも事実ですし、さらにまた他の株と違うのは、大蔵省自体が売り出し人として役割を担っているということ、これもまた事実ですから、そういう意味では他の株とは極めて違うんだ。
 そういう意味で多くの一般投資家をまたこの株市場に持ってくるためには、このNTT株に関して何らかの責任といいますか、難しくなってしまいますが、何らかの働きかけをする必要があるんじゃないのか。株市場に直接介入せよ、また損失補てんせよと言っていることではなくて、今大臣のお言葉の中にありましたとおり、基本的にはNTT、民間企業がやらなければならないわけですけれども、少なくとも売り出し人としての責任があるわけですから、例えば株主優遇あるいはまた株主優待、少なくともこういうことに関して大蔵大臣の意見としてNTTに郵政省を通じて言うことができるんじゃないのか。例えば一株持っていれば電話料金価%安くするだとか、また新しい電話ができたならばそれをいち早く株を持っている人にやってあげるというサービスだとか、そういうことは業績に関係なく何らかの形でやるべきではないのか、こういう提言を私はさせていただいているわけですけれども、いかがですか。
○羽田国務大臣 この点につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、基本的にはNTTがその経営状況を考えながら自主的に判断すべき事項であろうというふうに考えておりますけれども、利益還元策を実施するという考え方、こういったものをNTTが持つとするならば、私どもといたしましても、こうしたNTTの意向というものを十分配慮すべきであろうというふうに考えます。
○東(祥)委員 郵政大臣と御相談していただけますか。
○羽田国務大臣 今御指摘のあった点につきましては、郵政大臣の方にも報告したいと思います。
○東(祥)委員 関連して、JR株またJT株の放出を考えているのかどうか、管轄の運輸省の方にも来ていただいておりますが、JR株についていかがですか。
○鶴野説明員 御説明申し上げます。
 JR株式の売却は、JR各社の完全民営化という国鉄改革の趣旨を達成するため、また清算事業団の長期債務の早期償還を図るためにも必要なものであり、株式市場の動向にも十分配慮をしながら今年度には売却を開始したいと考えております。現在、その準備のために、国鉄清算事業団の資産処分審議会におきまして売却方法等について検討いただいているところでございます。
 なお、具体的な売却時期については、同審議会の審議結果あるいは株式市場の動向を踏まえまして、それから市場関係者の意見を伺って円滑な売却が図られるよう適切なタイミングを決定していきたいと思っております。
 以上でございます。
○東(祥)委員 JT株についてはいかがですか。
○寺村政府委員 JT株式につきましては、法律で政府が株式総数の三分の二以上の保有を義務づけられておりますので、売却可能な株式総数は三分の一の六十六万株でございますが、これを平成四年度予算におきまして処分限度数としての授権をいただいたところでございます。
 具体的な売却方法につきましては、現在国有財産中央審議会で御検討いただいているところでございます。また、具体的な売却の時期あるいは売却の進め方につきましては、JR株式と同様、株式市場の動向等を十分見きわめる必要がございまして、市場関係者の意見を参考にしながら、円滑な売却が図られるよう検討してまいりたいと考えているところでございます。
○東(祥)委員 次に、証券取引等監視委員会の業務範囲について質問させていただきます。
 主として、この監視委員会の業務範囲というのは証券取引法によって規定されているわけですけれども、その証券取引法の対象範囲というのは今回第二弾目に行われる制度改革法案によって大きく拡張されることになるわけです。例えばCPあるいは住宅ローン債権信託受益権あるいはCARDS等が証券取引法の対象有価証券となって、また有価証券の私募の取り扱いが新たに証券業務となるなど、まさに第二弾目の法案によって証券取引等監視委員会の業務範囲が拡充されると私は理解しておりますが、この監視委員会と制度改革法案とは密接に関連していると理解しておりますけれども、大蔵省としてのお考え、御見解を承りたいと思います。
○土田政府委員 ただいま委員の御指摘になりましたとおりであると理解しております。このたびこの二法案を提出させていただいているところでございますが、この関連性につきましてまことに貴重な御指摘であったと思います。
 この証券取引等監視委員会は、今回のいわば二番目の制度改革法案において予定されております有価証券の定義の拡大、それから新たに証券業務とされる私募の取り扱いにも対応することになります。さらに加えまして、証券市場への子会社による新規参入に伴う弊害防止措置についても証券取引等監視委員会の検査の対象となるわけでございます。そのように、まさに御指摘のように両法案は相互に密接に関連しているものと考えております。
○東(祥)委員 監視委員会の機能についてお伺いいたします。
 大蔵大臣は、委員会に対して、特定の不公正な案件が出てきたとする、それに対して調査させることができますか。いかがですか。
○小川政府委員 新しい委員会に対して、各種の取引の公正の確保に係る規定の遵守状況のチェックの仕事が委任されるわけでございまして、この仕事は、法律にありますように、委員会がその判断において独自に行うわけでございます。
 ただ、お尋ねのように、行政部局の方で、行政遂行の必要上重要である、あるいは緊急にということで、ぜひ立入検査が実施され、その結果が欲しいというような状況が予想されるわけでございます。そうした場合には、行政部局は委員会に対してある種の検査の実施を要請するということがあり得ると存じますし、もともと委員会がそうした監督行政を実施していく上での検査を行うということを任務といたしているわけでございますから、検査のやり方についての独立性は当然確保しながらでございますが、こうした行政部局の検査の要請は十分尊重されるものというふうに考えるわけでございます。
○東(祥)委員 非常に線引きが難しい点なんだろうと思うのですけれども、私の聞いている論点というのは、その委員会の独立性と、そして行政当局との連携性について聞いているわけですけれども、命ずることができるということであれば、つまり委員会の独立性に問題があるのじゃないのか。また、委員会が大蔵大臣に対してノーというふうに言ってしまえば、これは連携がうまくいっていないということになってしまうのではないのか。この独立性と連携性についてどのようにお考えですか。
○小川政府委員 もとより、委員会と行政部局の連携というのは、具体的な組織間における実際の行政の中で行われることでございます。法律上は確かに独立性ということが非常に強く書かれているわけでございます。この委員会を設けるに至った経緯、趣旨を考えますと、どこまでもこれは監督行政のために行政を行っている部局の検査機能を委任しているわけでございますから、そうした立法趣旨からいたしまして、新しい委員会と行政部局の間では、特に行政部局の方で具体的な検査の要請がある場合に十分な連絡協議、そして両者にとって満足のいくような連携が図られるものというふうに思うわけでございます。
○東(祥)委員 関連してこの点について質問していきますが、政省令を昨日いただきました。第五十六条の関連で質問いたしますけれども、どういう考えてこの委員会の立入検査の対象が決まるのでしょうか。
○小川政府委員 ただいまの点は、提出しております新しい証券取引法の五十六条に、証券取引等の公正の確保に係る規定として政令で定める規定に関する検査を委員会に委任するというふうになっております。したがいまして、取引の公正の確保に係る規定でございまして、それがさきにお出しいたしました法律案における政省令事項の主要事項として、五十六条で定めようとしているものの例示に挙げられているものでございます。
 例えば、証券取引法五十条の断定的判断を提供した勧誘であるとか、あるいは大量推奨販売であるとか、あるいは第六十一条の証券の買い主に対する信用供与制限であるとか、あるいは百二十九条ののみ行為の禁止であるとか、いずれも取引の公正の確保に係る規定でございますので、こういった規定を政令で定めていきたいと考えているわけでございます。
○東(祥)委員 今のお話は、委員会は取引の公正性を考える、こういう視点で立入検査の対象が決まる。では、財務の健全性というのは本省が考えるのですか。イエスかノーかでお願いします。
○小川政府委員 そのとおりでございます。取引の公正確保以外の部分の規定は残るわけでございますから、財務の方は御指摘のとおつでございます。
○東(祥)委員 そうしますと、財務の健全性ということに関しては委員会は関知しないということになります。同様に、大蔵省が財務の健全性の調査をする場合は、逆に公正性について無視するということになるわけですか。いかがですか。
○小川政府委員 行政組織でございますから、どこまでも所掌あるいは権限というものが法定されているわけでございます。その法律の分け方は、私が申し上げましたように、五十六条で「公正の確保に係る規定として政令で定める規定」、これは委員会の方に権限が委任される、それ以外は官房金融検査部ということになるわけでございます。
 これは法律の定めてございますが、現実の検査において、例えば金融検査部が財務の関係の検査をしているときに取引の公正に係る規定に違反しているのではないかというような事例に当たった。ときには、当然これは連携の問題といたしまして、委員会に対してその連絡をすることになりましょうし、また逆に委員会の方で立入検査をしました過程において財務内容について何らかの問題ありと考える場合には、そうした状況をもとより行政部局に提供する、それが両者の連携の一つの形態でございます。
○東(祥)委員 まさに聞きたいところを答えてくださったわけですけれども、基本的には、検査しているときに財務の健全性に何か問題があるとする、それをそのまま無視してあくまでも取引の公正性だけを追及している、他方、本省から派遣される検査部の人は財務の健全性のみを追及していて、取引の公正性に関しては無視する、そういうことがないように情報交換していくということだろうと思うのですが、それは法律上どこに担保されることになるのですか。
○小川政府委員 これは、大蔵省のもとにある証券局あるいはその他の局、それと委員会の関係でございます。したがいまして、一つの省内において各部局が分担をして仕事をやっているわけでございますから、その間に相互に連絡が行われるのは大蔵大臣のもとで当然でございます。
 それと同時に、繰り返しになりますが、今回の法律改正の趣旨が、委員会というのは、監督行政と検査行政というのを同じ省内であってもできるだけ距離を置いた方がより透明であり、公正に映るというところが問題の出発点でございました。その趣旨からいたしまして、逆に両者が密接な連携をとる、特にただいまのような目的のために密接な連携をとるというのは当然のことだというふうに考えるわけでございます。
○東(祥)委員 最後に、ファイアウォールの遵守についてはだれが見るのですか。これは委員会が責任を持って見るのですか。お答え願いまして、私の質問を終わらせていただきます。
○小川政府委員 ただいまのお尋ねにつきましては、基本的に監視委員会の方で対象として見ていくということになると考えております。
○東(祥)委員 どうもありがとうございました。
○太田委員長 正森成二君。
○正森委員 きょうは、証券取引に関連して郵政省に来てもらっていますが、来てますか。――きのうからの報道によりますと、郵政省は簡易生命保険資金の運用対象に、これまで禁止されていた株式の直接購入ができるようにする制度改革を検討しているということで、簡易保険局長が会見をしております。これは昭和六十二年度から、個別銘柄の選択はできないが、単独指定金銭信託の設定が認められて、外郭団体の簡易保険福祉事業団に資金を貸し付け、さらに信託銀行に委託して運用するということをやっていたようでありますが、それをさらに株式の直接購入ができるようにする制度改革を要望するということですが、これは本当ですか。
○藤野説明員 お答え申し上げます。
 簡易保険事業、生命保険事業でございまして、その資金は将来の保険金等の支払いに備えました長期的な資金でございまして、毎年着実に増加している資金でございまして、このような性格から、生命保険事業におきます運用は安定、継続的な投資、長期保有を原則といたしまして、株式の含み益を初めといたしましたストックの確保を重視する必要がございますので、株式は簡保の運用対象として意義のあるものと考えております。
○正森委員 これは五月十四日に我が党の議員が参議院の逓信委員会で伺ったところによりますと、簡保が今福祉事業団に回しているお金は、九一年度末で残高が五兆五千五百億円、そのほかに郵貯の金融自由化対策資金からの委託金が九一年度末で一兆五千億円、合わせて七兆五百億円になっておるという答弁をされたようであります。そのときの答弁では、そのうちの約四割が株式として運用されているということを言われたそうですが、そのとおりですか。
○藤野説明員 お答え申し上げます。
 簡保から簡保事業団に対しまして貸し付けを行いまして指定金銭信託を実施しておりますが、その金額は、三年度末で五兆五千五百億円でございまして、およそ四〇%近くが株式でございます。
 貯金の自由化対策資金につきましては、私、数字を持ち合わせておりません。
○正森委員 そこで、五兆五千五百億円の四割近くを運用しているということになると、二兆二、三千億円になるのですけれども、昭和六十二年度以降の運用ですから、六十二年、三年といったら株価が非常に高かったときだから、現在は損失が出ているでしょう。目の子勘定だってその損失は五千億円を下らないんじゃないですか。評価損。
○藤野説明員 お答え申し上げます。
 ただいまのような株式の状況でございますので、指定単の中に組み込んでおります株式につきましてもある程度の、いわゆる損というものが出ているところでございます。
○正森委員 明白に損が出ていると言って認めましたね。
 そこで、簡保局長はそういうぐあいに威勢のいい記者会見をしたんだけれども、その後できのうの夕刊からきょうの朝刊を見ますと、渡辺郵政相は、リスクを伴うため、国民に不安を与えるような株式運用には賛成できないということを記者会見で言っており、いろいろの新聞がありますが、事務局の大失態とか「根回し不足で実現遠のく」とか「事務当局が勇み足」とか、そういうことが出ていますね。大体簡保資金なんというのは、今あなたが明白に認めたように、平然と答えたけれども、株式の運用で評価損が出ているというようなことをしゃあしゃあ言って、それにもかかわらず今度はもっと直接的に投資して、一年単位じゃなしに長期に運用しょうと。今、いいですか、株価に対する配当の利回りは一%を割っているのですよ。そんなもので有利な運用ができるわけがないから、投機をやってもうけなきゃしょうがないじゃないですか。あなたの言ったことは、簡保資金を投機で活用してもうけます、こういうことを言っているわけであって、渡辺郵政相が、そんな危ないことには同意できないと言っているのは当たり前の話なんですね。
 ところが、そういう記者会見をやって、各紙に出ているにもかかわらず、事務当局が出てきて、依然として局長の言ったことを維持する。あなたは課長らしいが、郵政大臣の指揮命令下にあるのか、局長の指揮命令下にあるのか、どっちだ。
○藤野説明員 お答え申し上げます。
 簡易保険局長の上は郵政大臣で、郵政大臣の指揮下にございます。
○正森委員 それだけはさすが、局長の指揮監督下にあるとは認めなかったね。
 そこで、大臣に伺いたいと思います。
 報道によりますと、大臣もやはり簡保資金というようなものをこういう方向で運用するということには賛成できないという意見を表明されておるようでありますが、念のためにもう一度伺いたいと思います。
○羽田国務大臣 この問題についての議論というのは、実は相当長い議論がございました。ただ、そのときの、いつも議論の結論といたしましては、確かに簡保というものは、資金というものをこうやって運用しながら、安定してできるだけ高いものを皆さんに還元していくという一つの目的があるし、また、金融自由化という中にあっては、やはり資金運用というものはいろいろと考える必要があろう。
 ただ問題は、やはり国の制度で、またあるいは国の信用ということに基づいて国民からお預かりするという、しかも将来国民にお返ししていかなければならないというものであるということから、やはり運用は何よりも安全確実性という考え方がまた不可欠であろうということで、元本というものが保証されない株式に運用するということは、性格上なかなか難しいなということを実はこの間もここでお答えをしたところであります。
○正森委員 郵政省に念のために申し上げておきますけれども、ここに私は四月十一日の読売新聞の朝刊を持ってきました。その中に、「崩れた株価」という特集をやった中に載っておりますが、こう言っております。
  三月七日午後。自民党経済動向プロジェクト
 チームの亀井静香座長(政務調査会副会長)を
 中心に、証券大手四社の政策担当副社長らが緊
 急に集まり、株価対策についての秘密会合が開
 かれた
  「自社株取得の早期解禁と証券税制の早期見
 直しをお願いしたい」「公的機関の株式運用の
 規制緩和も決め手になる」
  業界側から出された意見は、これまでの要望
 の域を出ないものだったが、関係者によると、
 証券各社の姿勢は鬼気迫るものさえ感じさせた
 という。こうなっている。ここに公的資金の株式運用の規制緩和というのが入っておるじゃないですか。だから、あなた方がやろうとした、簡保局長がやろうとしたことは、まさにこの業界のやろうとしたことを、大臣の了承も得ず、根回しもしないで記者会見して業界に迎合したということじゃないですか。ここに書いてある、鬼気迫るものだったというその鬼気に当てられてやったんじゃないですか。そんなことで国民の大事な金を預かっている公的機関の責任者が勤まるのですか。まさに証券会社の要望したとおりじゃないか。
○藤野説明員 お答え申し上げます。
 簡易保険局長が記者会見いたしました趣旨でございますが、最近、先生おうしゃるように、公的資金によります株価対策というような話が出てまいりましたので、簡易保険局といたしましては従来から株式に投資すべきであるという考え方を持っておりましたので、それを述べたわけでございまして、株価対策という意識ではございません。
○正森委員 それは株価対策という意味ではございませんでしたと言うけれども、株価対策で要望した証券会社の希望と完全に合致しているじゃないですか。そしてみずからが、五兆五千五百億円、そのうちの四割は、株式で運用した部分については元本割れをしておるということを明白にこの公の場で認めているじゃないですか。それなのに、そういう危険な方向にもっと乗り出そうとする。それは証券会社の要望を受けて以外に何があるのですか。国民のためでないことは明らかです。郵政省はよほど姿勢を正さなければいけないんじゃないですか。そのことを指摘して、次を伺いたいと思います。
 法務省、来ていますか。――法務省に伺いたいと思いますが、大蔵省では、去年の東急株の大量推奨販売について行政的な措置の対象ということにはしましたが、百二十五条の二項一号ですか、その点については消極的なまとめをしております。あなた方は捜査当局として捜査をしたはずでありますが、その結論はどうなっていますか。大蔵省の見解に追随して検察当局ももうやめにしてしまったんですか。それともまだ調べて、何らかの方向を出すんですか。率直に答えてください。
○鶴田説明員 お答えいたします。
 お尋ねの件は、昨年の七月十五日と七月十九日に東京地検が告発を受理しました野村証券に係る東急電鉄株の株価操縦の告発事件にかかわることだろうと思いますが、この事件については、告発を受けて以来関係者の取り調べあるいは関係証拠の収集等、捜査を行っておるところでございまして、現在もそれを継続しているところでございます。
 そういう状況でございますので、この事件に関連しまして、犯罪の成否について申し上げることは差し控えさせていただきたいと思うわけですけれども、今御指摘があった証券取引法百二十五条二項一号の、私どもいわゆる変動操作の罪と言っておるわけですが、この罪が成立するには、問題になっている一連の取引が、いわゆる誘引目的を持って、それから、相場を変動させるべきといった性質を持つ取引であるということが証拠によって立証されなければならないわけでありまして、この点については刑事裁判例は少ないわけですが、現在上告中ではございますけれども、協同飼料の事件に対する控訴審の判決がなされておりますので、そういった判決も十分踏まえながら、関係証拠を十分吟味し、適切に処理していきたい、こういうふうに考えております。
○正森委員 ここに「証券市場における適正な競争の促進等について」という資料を持ってまいりましたが、その中に不公正取引特別部会の中間報告書というのがあります。今課長が言いましたように、百二十五条にかかわる判例としては、日本鍛工事件に関する東京地方裁判所の判決と、協同飼料事件に関する東京地裁判決と昭和六十三年七月二十六日の東京高等裁判所の判決がある。これは釈迦に説法で、御存じのことであります。
 そこで、伺っておきたいと思うのですが、構成要件上非常に問題になります売買取引の誘引等の目的の存在とか相場を変動させるべき一連の売買取引というような問題については、東京高等裁判所で被告らが有罪ということで控訴が棄却されたように、しかるべき検察側に有利な解釈がなされておるのではないのですか。しかも、その判決を私も読ませていただきましたが、相当、「寄り付き前から前日の終値より高い指値で買い注文を出す」とか、いろいろ四つ五つ細かい点についてまで具体的な事例に当てはめながら分析をしておるというような面があると思います。
 ですから、構成要件の上から法律が適用できないという点はないにもかかわらず、いろいろ捜査中であるから捜査の内容は言えないということですが、随分時間、もうたっております。一説によると、高裁の判決では不安であるから最高裁の判決が出るまで待とうか、そういうことだというようなことも巷間言われているのです。しかし、最高裁の判決が出なければ何にもやらないというのは、検察の独自の判断というのも、せっかく高裁の判決があるにもかかわらず、独自性を失うということにもなると思いますが、検察は、最高裁の判決待ちでゆっくりやっているのですか。
○鶴田説明員 お答えいたします。
 具体的な事件をどのように捜査し、あるいはどの時点で終了して処理するかということにつきましては、ちょっと私ども法務当局からお答えできる事柄ではございませんし、やはりそれも広い意味では捜査の内容にわたることですのでお答えいたしかねるわけですけれども、いずれにしましても、厳正公平、不偏不党の立場から事案の解明に努め、先ほど先生が御指摘になりました判決も十分踏まえながら適切に対処していくもの、そういうふうに考えております。
○正森委員 そこで、証券局に伺いたいのですが、証券局としては、百二十五条で告発するということは困難であるという結論を出しているわけですが、今度の証取法の改正については、大量推奨販売という点について、今まで健全性省令であったものを法律に格上げして行政処分の対象にするということにしたようであります。私どもは、後ほど提出いたします修正案で、これは百九十九条の該当にして、この点については一年以下の懲役に科するということも必要ではないかというように思っているのですが、その点についてあなた方の意見を伺って、質問を終わります。
○松野(允)政府委員 御指摘の、東急電鉄株に見られました行き過ぎた大量推奨販売でございますが、これは、私ども御提出申し上げております法律案では、五十条の禁止行為に格上げといいますか規定がえをしたわけでございます。これは、五十四条ではいかにも業務執行体制云々ということでございまして極めて間接的過ぎるということとあわせて、行き過ぎた大量推奨販売行為自身が公正な価格形成をゆがめるおそれがあるということで、五十条の禁止行為にしたわけでございます。
 もちろん、御指摘のように刑事罰の対象とするということも考えられるわけでございますが、この行き過ぎた大量推奨販売行為というのは、営業の実態の問題、あるいはその情報を社内でどういうふうに流したかというような問題、それから市場においてどういう執行が行われるかといういろいろな問題、要素を勘案して判断をしなければならないわけでございまして、刑事罰の対象としようとしますと、非常にそこら辺の構成要件を厳格にすることが極めて難しい問題になり、あるいはそれが逆に脱法行為を呼ぶおそれがあるというようなこと、それから、機動的に対応できるというようなこと、それから、新しい監視委員会ができてこれを監視するというようなこともございまして、そういうことを考えまして五十条の禁止行為ということで行政処分の対象としたわけでございます。
○正森委員 終わります。
○太田委員長 伊藤英成君。
○伊藤(英)委員 証券取引等監視委員会は、三権分立という観点から当然のこととしてこれは中立性の確保が重要であるわけでありますけれども、そのためには、まず委員長及び二人の委員の人事が問題になります。そのときに、大蔵省出身以外の人を採用すべきだと考えるのですが、どのような人を今想定しておられるか、そしてまた事務局も、他の省庁の役人はもちろんでありますけれども、民間企業出身者とかあるいは弁護士、会計士など幅広い方面から人材を確保すべきであると思うわけでありますけれども、大臣の見解をお伺いいたします。
○羽田国務大臣 御指摘がございましたように、中立性といいますか、あるいは独立性というようなこと、こういったものを確保していかなければならないということでございます。そういった意味から、やはり専門的な知識を持たれた方、そして、まさに公共性、こういった観点から慎重に人選を行う必要があろうというふうに考えております。
 その中で、具体的にどういう方をということはまだございませんけれども、例えば法曹界あるいは官界その他法律または経済に関する専門的な知識を有する中立的な立場にある方、こういった方を選任したらどうかというふうに考えていることを申し上げたいと思います。
○伊藤(英)委員 政府の資料を見る限りでは、委員会や官房検査部の事務局はほとんど大蔵省出身者で占められるのではないかと思うわけです。そのように考えますと、今後の運営というのはなかなか難しい局面が予想されるのではないかと私は思うのですね。
 具体的な事例で伺いますけれども、去年の九月四日の新聞報道によりますと、公立学校共済組合に対して某証券会社が損失補てんを日経二二五でなされております。売買日は九〇年の二月二十一日でありました。まず、この取引は証券取引法の違反にはなりませんか。
○松野(允)政府委員 この取引につきましても、私どもいろいろと検討をしたわけでございますが、法改正以前の事後的な損失補てんが禁止されていない段階では、この取引は証券取引法に違反するというふうなことにはならない、違反行為というふうには認定できないということになったわけでございます。
○伊藤(英)委員 この二月二十一日の状況を見てみますと、日経平均株価は千百六十一円下がっています。前日も下がっております。千百六十一円下がった日であります。年初からの株価の状況、そしてこの二月に入ってからの株式市場の動きから判断して、これは非常に不可解な取引と見えますね。これは証券取引法第五十八条違反の疑いがあると見ることはできませんか。どうですか。
○松野(允)政府委員 証取法五十八条は、これは判例が一つあるわけでございますが、いわゆる詐欺的な行為を禁止する規定、「不正の手段」ということで表現されておりますが、詐欺的行為を禁止する規定でございまして、当該取引が取引の相手方を欺罔する詐欺的な行為があったというふうには認定ができなかったわけでございまして、法の五十八条には違反するということは言えないというふうに考えられるわけでございます。
○伊藤(英)委員 私が指摘しておりますこの日経二二五は、自主ルールの中で自己売買が可能ですね。制度としていつでも悪用できることになってしまうと思うのですね。しかも、それが定められた制度、ルールの範囲の中で実施をされるといたしますと、違反がどうかの裁定はなかなか難しいケースも想定されますよね。
 一つは、この株式先物取引の日経二二五は、そしてまたこの自己売買ということは今後とも今のままで本当にいいのだろうか。これは株価操作が可能だろうと思うのですね。まず、この制度そのものは今後本当に今のままでいいと思うのかどうか。そして、こうしたケースで考えますと、例えば大蔵省が認めているからという理由で、今度つくる監視委員会は実は何もできないということになるのではないだろうかと心配をするわけですが、いかがですか。二点。
○松野(允)政府委員 この日経二二五の先物取引を利用した損失補てん取引は、まず日経二二五を証券会社が自己取引として売りと買いと両方建てておきまして、それを決済をして利益が出た方をお客の注文としてつけかえるわけでございます。これについて私どもは、こういう問題が起こってから防止策、予防策というのを考えたわけでございます。
 その一つとしては、日経二二五先物取引を始めるときに、それは証券会社の自己取引なのかあるいはお客から注文を受けた取引なのかというのをあらかじめ注文を出すときに明らかにするということをすればこの取引は防げるのではないかということでございまして、現在は、各証券会社に対して日経二二五の先物取引を市場に出すときは、それが自己の取引なのかあるいはお客から受けた注文なのかという点をはっきりとさせるように、社内で整理をするようにという指導をしております。したがいまして、そういう指導で行われておりますと、監視委員会が検査に入りましたときにそれをチェックすれば、そういう不正な取引が行われているかどうかというようなことはチェックができるのではないか。予防策としてそういうふうな形のものを社内ルールとしてつくらせておりますので、その社内ルールをちゃんと守っているかどうかということをチェックできる体制にはなっているというふうに考えております。
○伊藤(英)委員 今のお話で、監視委員会がチェックをするときにも、日経二二五を使っていろいろなことをやられたときに、これはなかなか認定が、本当はいろいろあるんだけれども、難しいということがあると思うのですが、それは大丈夫ということですか。
○松野(允)政府委員 今申し上げましたような社内の規定に従って取引の自己、委託の別がはっきりとしておりますし、場合によっては、疑わしい場合。には、取引相手方であります法人等に監視委員会から直接説明を聞く、あるいは検査をするということは今度は可能でございますので、監視委員会の権限をもってすればそれは十分可能であるというふうに考えます。
○伊藤(英)委員 この証券取引等監視委員会が調査、検査の結果に基づいて大蔵大臣に勧告、建議を行うことになっておりますね。それで、この改正大蔵省設置法の第十九条ですと、大蔵大臣は、勧告を受けたときはこれを尊重しなければならない、こういうふうになっていますね。この勧告、建議が行われたときに、大蔵大臣はどのくらいそれを尊重するのか、あるいは逆に言いますと、実際に勧告があって実行しないことがあるのかどうか、お伺いをしたいと思います。
 それは、この問題につきましては、行革審も日本版SEC的な組織を設置することを提言もしたりいたしましたし、この間ある本を読んでおりましたら、ある証券会社の方も、規制は日本版SECでやるのが一番いいんだ、そして、証券会社の経営には大蔵省が細かいことに口を出さない方がいい、それで違法行為があったら徹底的にたたけばいいんだ、そういう考え方も言っているわけですが、いずれにしても、この勧告、建議をどのぐらい守るのか、実行しないというようなケースがあり得ると思われるのか、いかがですか。
○小川政府委員 行政処分権は引き続き大蔵大臣のもとにございますので、行政処分を必要とする場合には、御指摘のとおり、十九条によって委員会から大蔵大臣に勧告を行うわけでございます。十九条の第二項には、大蔵大臣は、勧告を受けたときは尊重しなければならないという規定がございますし、また第三項には、勧告に基づいてとった措置について委員会は報告を求めることができるという規定がございます。この全体を通じて流れております精神は、当然のことながら、大蔵大臣は、こうした勧告を受けた場合には、特段の合理的事由がない限り、勧告に従って行政処分等を行うのは当然であるというふうに考えます。
 それでは、行政処分を行わない、あるいはそれをやらないようなことがあり得るかどうかという点でございますが、これは大蔵大臣が行政処分をいたしますときには、当然、それに先立ち当事者に弁明の機会を与える審問手続が義務づけられております。そこにおける事実認定であるとかあるいは法令適用の誤りといったようなこと、その他全く、資本市場の安定をある種の処分をやることによって非常に損なうおそれがあるとか、特別の理由がある場合に行政処分を行わないということが法律的には考えられないではありません。ただしかし、それは、今申し上げましたように、委員会に対しての報告を要しますし、また、委員会は全体の事務処理についていずれ公表するわけですから、仮に万が一そういう事態がある場合には、大蔵大臣にとっては国民を十分納得させるだけの合理的な事由がある、そういうときに限られると存じます。
○伊藤(英)委員 大蔵大臣にお伺いいたしますけれども、先般の一連の証券不祥事というのは、あれは何だったんだろうかというふうなことを思ったとき、私はこう思うのですね。これは、証券業界と大蔵省の行政の関係、そしてまた、いわゆる業者行政というべきものが問われたのではないかと私は思うのですよ。その上で伺うわけでありますが、証券各社がこの九二年の三月期の決算を発表しておりますけれども、その状況は大変厳しい、苦しい状況になっておりますね。こういう状況が続きますと、救済、合併というようないわゆる業界再編の可能性も想定されるのではないかと私は思うのですが、こういうような事態になって、行政と業界との関係をどのようにしていくのがよいと大蔵大臣は考えておられるか、お伺いいたします。
○羽田国務大臣 確かに御指摘のように、株価の低落ということもございまして、証券会社の決算におきましては、これが反映されておりまして、かなりの会社が赤字決算となるというふうに存じております。ただ、証券会社の財務体質は相当充実されておりまして、今般の赤字決算というもの、これによってもういきなりどうこうなってしまうというものではなかろうというふうに思っております。
 ただ、私たち行政といたしましては、やはり非常に国民的にも経済的にも大変大きな存在になっておるということで、十分この成り行きというものは見守っていきたいというふうに考えております。
○伊藤(英)委員 業者との関係をどういうふうにこれから考えていかれることになりますか。
○羽田国務大臣 こういったものに対しまして証券会社がどうするか、あるいは例えば、今のお話は合併なんということもお考えになってかもしれませんけれども、こういったことについては、まさに証券会社みずからが判断をすべきものであろうというふうに考えております。
 ただ、私たちとしては、やはり一番の問題は、確かに株価の低迷の一つの大きな原因として、市況、市場に対する不信というようなものが起こってきてしまっておるということでありますから、まず基本的には、こういったものに対して信頼を取り戻すということの指導といいますか、そういったものを進めると同時に、今度の委員会等に十分機能していただいて、市場に対する信頼を取り戻すことが第一であろうというふうに考えております。
○伊藤(英)委員 時間が参りました。終わります。ありがとうございました。
○太田委員長 これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
○堀委員 本日は、宮澤総理大臣の御出席をいただき、羽田大蔵大臣とともに、当面するこの証券の問題がございますけれども、それに先立ちまして、去る五月十二日、十三日の両日、日本・EC議員会議の第十三回会議がストラスブールで行われました。日本・EC議員会議は倉成さんが会長を初めからしておられまして、私も副会長として長くこれに参加をさせていただいているのでありますが、国会開会中にもかかわらず、会議が行われましたので、出席をしてまいりました。
 今回のこの日本・EC議員会議は、私ども長年やっておりました者にとっては、大変実は新しい段階を迎えた会議だというふうに私たちは認識をいたしました。それはどういうことかと申しますと、これまで、例えばドロール委員長あるいは外交担当のアンドリューセン副委員長に表敬訪問をするというような日程が組まれておりましたけれども、たびたびこれが向こう側からキャンセルをされるという事態がございました。しかし今回は、ドロール委員長、アンドリューセン副委員長がみずから私どもの会議の席上に参りまして、約一時間、自分たちの見解を述べ、私たちの質疑応答に答えるという極めて好意的な会議の状態でございました。私は、日本がいろいろな点でだんだんと力をつけてまいりまして、ECとしても日本というものを正しく評価する段階に参ったのではないか、こういう感じがいたしておるわけであります。
 この会議が終わりまして、かねてから問題になっておりますところのフランスのリセフランコジャポネ、富士見町にございますフランス人学校の問題について、最近、私ども日仏議員連盟の者がいろいろと努力をいたしまして、港北ニュータウンに適地を見つけ、そこへの移転等について努力をいたしております最中に、四月の中旬にフランス政府から、フランス側の理由によってこの話はもうやめにする、こういう連絡が入ってまいったわけでございます。実はこの問題は、フランス側とすれば、富士見町にあります施設を売って、その施設の収入によって新たな場所に土地と建物を建てたい、こういう問題でございました。
 この問題の経緯をちょっと簡単に申し上げておきませんと、お聞きになっておる皆さんは事情がわからないと思いますので、これのそもそものもとになりますのは、実はミッテラン大統領が一九八二年、日本に公式訪問されまして、「迎賓館におけるミッテラン大統領と鈴木善幸首相との会談後にミッテラン大統領が記者団に行った言明 一九八二年四月十五日し、こういうことで実は文書がございます、
  本日は、まず鈴木首相と私との間で約一時間の首脳会談を行い、次いで閣僚を含めた拡大会議を同じく約一時間行った。
  会談は主として日仏間の二国間交流について、その現状や内容を検討し、その発展の見通しや、発展させるべき方向を話し合い、両国の利害関係が一致しているか、一致していない場合にはいかにすれば一致させられるかなどを討議した。
 次に、
  最後に私たちは日仏文化関係の発展に関連する問題を議題とした。この発展はとくにパリの日本会館と東京のフランス会館の実現という形で具体化することになる、いくつかの基本的方向に沿って進められるべきものである。これら両会館はそれぞれの国が相手国にもつ知的、科学的中心地となる性格のもので、できる限り近い将来に建設される必要がある。すなわち来年にも着工が可能だと考えられる。こうなっておりまして、さらに記者会見のクラブでの話でありますが、同じく四月十五日、パリの日本会館、東京のフランス会館、青少年交流の推進、文化交流の発展、その他とくに外国語教育の分野をはじめとする多くの組織的なキャンペーンなどを通して、フランス政府は、世界史の中で偉大な地位を占める国の一つである日本に対するフランス人の関心と知識を高め、深めるよう努める所存である。しかし、日本もフランスの不在に余りにも慣れてしまったように思われるので、これから私たちも努力してフランスの存在感を強めるつもりであり、そのことを日本の方々に認識していただく必要があろう。
こういうコメントが実は発表されているわけであります。
 当時、総理大臣は官房長官をしておいでになりまして、ミッテラン大統領の午さん会に私も実はお招きをいただきました。非常にありがたく感謝をいたしているわけでございます。この問題が実は今日も実現をしていないというのが現実の問題でございます。
 その中で、実は一九八八年の暮れに、私、パリで社会民主主義の大会がございまして、それに出席をして帰りますときに、フランス大使館が、ちょうどニッコー・ド・パリの少し川上の方に、実はこの土地が日仏会館の建設予定地でありますというのを教えてくれました。この予定地というのは千七百五十平米でございまして、フランス側としては、これを向こうの言葉で言いますと、一フランの賃貸料で四十九年間お貸しをします。シンボリックな賃貸料と言っておりますけれども、これは差し上げるわけではありませんということで、しかし、実質的には無償貸与の形でこの土地を提供する。そして、これについては平岩さんを中心とする日本側の方がその文化会館の建物については費用を出して建設をされる、こういうことになっておるのを見て帰ったところでございます。
 帰りましたときに、実は日仏議連の会合が急に招集をされまして、当時のドラン大使が、実は目黒にある土地に日仏文化会館とリセフランコジャポネを移動して処理をしてほしいというお話が出てまいったわけでございます。その後実はいろいろと紆余曲折がございまして、私ども大変努力をして、フランス側の負担にならないように努力をしたのでありますけれども、この目黒における東京営林局の跡地の問題というのはフランス側からキャンセルをされるということになったのでございます。
 その後、ちょうど一九八九年、パリの二百年祭、フランス革命二百年祭の前に、実はフランスの商工会議所の関係者の方が私のところに来られまして、実は堀さん、日本政府はいよいよあの市ケ谷の土地に、あそこをぶっ壊してリセを建てよう、こういうことを言っております、しかし、あそこは十分な面積もないので、あそこに建ててもとても二、三年したらまた足らなくなります、ドイツは今横浜市が開発をしておる港北ニュータウンに既に敷地を予定をしてドイツの学校を建てていますので、堀さん、ひとつ何とかエリゼ宮に話をしていただいて、今の市ケ谷に建てるのではなくて港北ニュータウンのような広いところに、土地の余裕のあるところに建てるように話をしてくれませんかというのがフランスの商工会議所の幹部の皆さんの要請でございましたから、またまた私はこの二百年祭に招待を受けておりましたので、エリゼ宮でクリスチャン・ソーテーユ大統領補佐官に会いましてこの話を伝えて、実は日本の、在日のフランス人の皆さんは余裕のあるところをやってほしい、こういうことなので、ひとつ大統領に一話をして新しい余裕のあるところに移るように考え方を変えてもらえないだろうかという話をいたしました。その結果、フランス政府側も、港北ニュータウンにおける私たちが選定をいたしました場所に移ろう、こういうことになったのでありますが、時期がだんだんおくれてまいりますと、御承知のように、このフランコジャポネの土地が、かなり高かったのがどんどん値下がりをしてまいりました。
 この土地は実は普通の土地ではなくて、東京都が文教地区と指定をしておりますから、この土地には貸しマンションとか貸しビルを建てるわけにはいきません。制約された土地なのであります。しかし、何とかしたいということで、柿澤さんや皆さんのお骨折りの結果、三和銀行に関係する皆さんがその新しい買い主を見つけてくれて、ことしの一月二十四日に実は入札が行われまして、テンポラリーという会社が九十五億円でこれを入札をしてくれたわけであります。
 しかし実際には、この港北ニュータウンでフランス側が希望しております二・五ヘクタールというものは九十五億円ではちょっと処理が困難になってまいっておりましたので、私たちは竹下会長とも相談をいたしまして、横浜市の高秀市長にも協力を願って、その隣が横浜市の小学校、中学校の敷地になっておりますので、〇・五ヘクタールぐらいをひとつ横浜市で買っていただいて、しかし横浜市といえども、その土地を買っても、フランス側に賃貸で貸す場合の費用はどこかから出してもらわなければ困ります、こういう話でございますから、当然それは何らかの財団をつくって、そこからの支援をいたしましょうということで、実は平岩さんにもお話をいたしまして、いろいろな点での御協力をお願いしておりました最中に、フランス政府側から、もうやめたという話が参ったわけであります。
 そこで、しかしもしあそこをやめたといたしますと、あの土地が上がる見込みはありませんし、ますます児童がふえてくれば、これは日仏間の関係の、実は非常にのどに骨の刺さったような問題として残ってまいりますので、これだけはどうしても何とかしたいと思って、実はストラスブールの帰りにパリに回りまして、今ミッテランのシェルパをしておりますところのマダム・ローベルジャンに会いまして、経過の話をいたしました。そうしたら、マダム・ローペルジャンも、大統領も非常にこの問題について関心を持っており、宮澤総理がおいでになったときにもたしかお話が出たと思う、ついては担当のジャン・レビーという方に会ってください、こういうことで、その後でレビーさんにお会いをいたしました。レビーさんの方のお話は、フランス政府の現状では新しく財政支出をして移転をするということは到底不可能なものだからお断りをした、こういうことでありますから、では私たちは、今すぐできるわけではないが、少し時間をかけて、少なくとも予定通り港北ニュータウンにリセを移転をしてもらって、そして、そこでかなり余裕のある地域で子供たちが勉学をしてもらえるようにいろいろな工夫をしている最中に、あなた方が一方的に断ってきたのでは、これはどうにもならないという話をしましたら、いや、皆さんの方でそこまで考えていただいているのなら、堀さん、皆さんにお任せをします、フランス政府としての財政負担がないのならば、それはもう皆さんの御好意に非常に感謝をし、私どもとしてもその方向でやっていただくことを望みます、こういうことに実はなってまいりました。
 帰ってまいりましたのは十七日でありますが、十八日のお昼に日仏議連の会長の竹下さんにお会いをいたしまして、このことを御報告をいたしました。そうして、現在の私の構想というのは、この学校の問題だけでは実は片がつかないのでございまして、さっき読み上げましたように、この日仏文化会館の処理をしなければなりませんが、フランスヘ参りまして、前の西欧一課長でありました桂さんが参事官をしておりまして、総理がおいでになって向こう側は何かオーケーをしたように聞いたけれどもどうかと言いましたら、実はまだそこまでいっておりません、こういうような話で、どうも今のフランスの文化会館の問題というのは、こちらの日本の問題が片づかなければ、向こう側としてもどうも動かないということのようでありますので、この問題を、まずリセを片づけ、文化会館もあわせて片づけるということにしなければ、なかなか問題は解決しない。そういうことで、これをセットに考えますためには、やはりプラスアルファの資金が必要になる、こう考えまして、私は竹下さんに、ひとつ日仏文化教育振興財団というような財団を国の費用と民間の費用を合わせたものでつくりまして、その財団の運用収入を利用しながらリセの問題も処理する。大体こういう学校の問題については、国が金を出したりする性格のものではございませんから、直接に国が支出をするわけにはまいりませんけれども、そういう民間と公的なものの財団が横浜市の買ってくれた土地の土地代の賃料だけを払うぐらいのことは可能ではないかということを竹下さんにもお話をいたしまして、何とかひとつ、これは総理もこの間お出かけになってお話があったことだろうと思いますが、この際ひとつ、そういう官民合同になるところの日仏文化教育振興財団というようなものを考えて、全体としてこの一九八二年の鈴木・ミッテラン会談における日仏文化問題の解決をしたい、こう考えておるのでありますが、この件についてひとつ総理の御見解を承りたいと思うのでございます。
○宮澤内閣総理大臣 ただいま堀委員の御指摘になりました問題は、仰せのごとく、この発端の鈴木内閣の時点で、鈴木首相とミッテラン大統領との話に出た問題でございましたので、私も当時のいきさつを記憶をいたしております。
 そして、それ以後今日まで、この問題につきまして堀委員が非常に関心をお持ちくださって、これはやはり日仏両国の関係ということから見まして、殊に最近非常に両国の関係が近くなってまいりましたことがございまして、非常に大事な問題であると思っておりますので、堀委員が大変な関心をお持ちいただいていることに私敬意を表するものでございます。
 実は、私もそういう背景を存じておりましたので、先般、先月の末から今月の初めにかけまして、ごく短期間でございましたがヨーロッパヘ参りましたときに、この問題に、ベレゴボワ首相の、これは昼食を兼ねてワーキングランチと申しますか、そういう機会がございまして、私の方から触れました。
 それは、我が国といたしましては、これは先ほど御指摘のように、バリに文化会館をつくる、その土地の選択の問題につきましてなるべく早く促進を願いたいという立場でございますので、そういう日仏間の案件としてこの問題に触れたわけでございますが、もちろんベレゴボワ首相もこのことはよく知っておられて、大変に大事な問題であるというところでは認識に相違はないのでございますが、そのときにちょうどデュマ外務大臣はた。しかこの場におらなかったのでしたかと思いますが、外交担当のキージュマンという閣外大臣と思います、大臣から、このことは自分はよく知っております、それで日仏文化会館の問題と東京のリセの移転の問題、今御指摘になりましたこれとは何も自分の方で、どう申しますか、はかりにかけて、てんびんにかけておるというようなわけではないのです、ないのですが、同時に、しかし日本におけるこのリセの問題、フランスの文化学術施設の問題についてはフランスとしてもいろいろな問題を抱えております、そういう表現でございますけれども、二つのことは無関係ではない、率直に言えばそういうことを少し遠回しに言われたということだと思います。
 私はそれに対して、実はリセの問題については、我が国でも非常に熱心に推進しておられる方々がたくさんあって、政府もこれには協力をしてきた、詳しいことは御存じであろうから省略しますけれども、横浜の港北ニュータウンがよかろうということで一遍それで実は話が進んでいた、ところが、日本の経済に大きな変動があって、土地価格がいわば値上がりを続けていたものが値下がりをするというようなことで、そこでそのリセの移転について財源の上での問題が生じているというふうに私は理解をしています。それに対しては、キージュマン大臣は、自分の方も現在この問題をどうしようか、検討しているところだというお話でありました。私は、我々としても文化会館は、せっかくいいお話で、もう大分時間もたっていることでございますので、ぜひやりたいと思っているが、リセの問題も、それはフランス側にとっては大事な問題でございますから、お互いによく相談をしてまいりましょうということで、一応その場の話はそういうことで、問題を将来に残しておるわけでございます。
 そこで、御存じのように、ここに来まして、EC、先ほどドロール委員長のお話がございましたが、EC全体もそうでございますが、殊にフランスの対日接近と申しますか、そういう動きはかなり顕著でございますし、また、これは従来のことから考えますと喜ばしいことでございます。この問題が何とか、おっしゃいますように、とげにならないように解決をするならば大変にいいことである。もともと両方とも大変善意から出た話でございますので、それが変にこじれて悪い話になってしまったのでは、これは思わないことでございますから、何かやりようがないものだろうかということは、私も痛切に考えております。
 堀委員の方で、先ほど広い意味での基金と言われましたか、そういうようなことができないだろうかとおっしゃいましたことは、実は初めて伺いますものですから、それにつきましてにわかにこうこうということを申し上げることはできませんけれども、この問題が日仏両国の関係、ひいては我が国とこれからのECとの関係に、事柄は何でもないようであったのですが、実はその処理を誤りますと、まさに骨のような問題になりやすいので、大切な問題として考えていく必要があるであろう、こう思いますことにつきましては、堀委員の御質問の基本的な趣旨には私も十分共感をいたしております。
○堀委員 今のお答えで、私も当面、これからの問題でございますので、総理がそういうふうに認識をしていただいたこと、大変ありがたく思っております。
 ただ、大蔵大臣、ちょっとこの問題の問題点というのは、実は国際交流基金というのがございまして、先進国に対しての資金が出せるわけでございますが、この外国人学校というのは、日本でもフランスにもつくっていますけれども、自前で土地を買って学校を建てているわけで、これは世界共通のことでありますから、リセに対して私どもは国の資金で何かをするという気は実は私もないのであります。しかし、要するに、広い意味での文化、教育振興のための財団というものを民間と協力して国も出資をしながら立てて、その財団の運用資金によって、実は、例えば横浜市が買ってくれた土地の借り賃を横浜市に払うというのは、これは何も国の費用がリセの土地に行くわけではございませんし、さらにあとの問題の、今度は文化会館の問題にいたしましても、これは日本側が建てる問題ですから、それがやはり日本で建てた場合に、フランスの問題は別でありますが、日本の費用でフランスに建てるのでありますが、日本のものはやはり日本で建てなければなりませんから、そのためには東京都やその他自治体の御協力もいただきながら、やはり日仏文化教育振興財団のような協力ができるような体制をつくるということが、私はどうもこの問題には避けて通れないと思いますので、ひとつ大蔵省としても少し前向きな検討を進めていただきたい。
 きょう結論を伺おうなどとは思っておりませんが、どちらにしても、この解決をしないと、せっかく実は今フランスとの関係が大変よくなってきたというふうに感じておる中で、またこれが得とんすみというようなことは、日本の国際的な将来に非常に問題があると思いますので、ひとつ大蔵省としても、この問題についての前向きの御検討をいただきたいと思いますので、御答弁をひとつお願いいたします。
○羽田国務大臣 まず、この問題につきまして、今総理からもお話がございましたけれども、堀先生が大変御苦労なさってきたということを私自身もよく存じ上げておりまして、ただ港北ニュータウンの話はうまく進んでいるものだと思っておりましたが、何かちょっと残念なことに今なっておるということであります。
 今総理も、こういった問題、日仏関係という中で非常に重要な問題であろうということで、堀先生の基本的なお考え方というもの、御認識というものについては、まさにその御趣旨というものに賛成といいますか、そういった御意思を尊重したいというお話であったわけでございます。
 ただ、今国際交流基金がやれる仕事というもの、知的な交流ですとかあるいは科学分野での親善交流ですとか、草の根の交流ですとか、そういったこと、あるいは日本語の熱が世界じゅうに今非常に高いものですから、こういったものに対する支援なんということをやってきておるわけでありまして、そういう中で一体今お話があったものとどうかみ合うことができるか、この辺はもう少し勉強してみないとならないと思うのでございますけれども、日仏関係の間で何か本当に考えることができるのか、いつまでもただ放置しておくということはなかなか難しいんだなということ、いろいろと私どもも感ずるわけでございまして、これからもよく連絡をとりながら、果たして国でやることができるのか、あるいは本当に民間を動かすためにはどうしたらいいのか、そんなことも含めながら、さらに先生と一緒に勉強させていただきたいと思っております。
○堀委員 どうもありがとうございました。
 次に、新聞の記事をちょっと読み上げますが、実は昨年の十二月の十五日の日本経済新聞でございますけれども、「宮沢首相は十四日」これは昨年の十二月十四日であります。「十四日午後、都内のホテルに加藤官房長官、近藤、石原両副長官らを集め、国会会期末と来年度予算編成を前に」いろいろな「景気対策など当面の懸案の処理について約二時間半協議した。この中で首相は景気が減速局面に入っているとの認識を示し、来年度予算編成の中で財政・金融両面から積極的な景気対策を実施する考えを強調した。」と。そして「協議で首相は「経済成長がゼロになるまでは、景気が底堅いといえるのかどうか」と、経済企画庁などの経済報告に疑問を示し、景気の先行きに懸念を表明した。こうした認識に立って財政・金融政策の機動的運営で景気回復に乗り出す必要性を強調した。」これは昨年の十二月十五日の日本経済新聞の朝刊の記事でございます。
 そうして、実はこれを受けて、その次の十七日の日には、
  企画庁は最近、景気の現状を説明する際に「底堅い」という表現を多用するようになった。
 「減速しながらも拡大している」「拡大テンポが減速している」といったこれまでの表現に対して「わかりにくい」「現状認識が甘い」という批判が官邸や自民党から強まってきたのに配慮したためだ。ただ足元の設備投資や個人消費はしっかりしているほか、有効求人倍率や設備稼働率もなお高水準と判断しており「後退局面とみるのは尚早」(調査局)としている。
  しかし、宮沢首相はこの「底堅い」という現状認識にも批判的な見解を示した。
こういうふうな記事が実は出ているわけでございます。
 そうして、実はこの三月の二十二日に御承知のようにQEが発表になりまして――これは三月二十二日ですか、企画庁、ちょっと答弁してください。
○吉冨政府委員 その日に出ております。
○堀委員 そこで、実は初めて、一九九一年のGNPの年率表示の成長率、実質が一―三が八・三%、四−六が二・八、七−九が二・〇そうして十−十二が三角で〇・二と、こういう発表が三月二十二日にされているわけであります。
 私は、大蔵委員会に約三十年余り席を置きまして、経済見通しの問題その他についていろいろと論議をしてまいりましたが、常に感じますことは、官庁エコノミストの判断は大体一クオーター半から二クオーターはどうしてもおくれるというのが私のこれまでの感じでございます。まさに総理が十二月十五日にこういうふうにおっしゃって、そうして、この十−十二月がマイナス成長であったというのは、実は三月の終わりになってわかったということでありますから、ちょうど一クオーター実はおくれるわけでございます。
 それはどうしてかというと、大体これは大蔵省も、恐らく経済企画庁もそうでありましょうが、確実なデータをもとに判断したい。それは確かに、間違いなく、確実なデータの積み重ねのような判断が間違いがないのだろうと思いますが、経済というのは生き物で、どんどん動いているのでありますから、データが完全にそろうのはどうしても一クオーターか一クオーター半、長い場合には二クオーターおくれなければ十分なデータがそろわないというのが実情ではないか、こんな感じが私はしてならないわけでございます。
 そこで実は、これからのこういう経済の対策について、日本銀行は御承知のように短期経済観測というので企業側からの資料をとっておられるわけでありますけれども、この日本銀行も、それならタイムリーであるかというと、ちょっとここもやはり一種の官庁でございましょうか、実はどうもラグがあるような感じがしてなりません。
 と申しますのは、ことしの三月十七日に三重野総裁、大蔵委員会に来ていただきまして、要するに、マネーサプライがどうも締まり過ぎているんじゃないでしょうか、国際的な流動性が非常に下がってきておりまして、国際的な流動性の下がった最大の要因は、日本の流動性が非常に下がっているということだという点については三重野さんもそうだとおっしゃったのでありますが、私が、マネーサプライが少し低過ぎるんじゃないだろうか、こういう問いに対しては、「委員の今御指摘のとおりでございますが、まず日本のマネーサプライの伸びが低い、これは確かに伸び率は低くなっておりますけれども、これはもう委員先刻御承知のとおり、過去数年間の非常な緩和がございましたので、ストック、この関係で見ますと、例えばGNPとの比較で、マーシャルのkとかあるいはその逆数である流通速度から見ますと、傾向線より下になったのが今ようやくちょっと上がってきたということで、特に非常にストックとして足りないということはないと思います。」こういうお答えでございました。
 その後、御承知のように、日本銀行は四月の初めに公定歩合を〇・七五%下げられました。普通の経済状態のときには、公定歩合が〇・七五も下がれば、株価がこれに反応するというのが一般的な原則でございますけれども、要するに、資金がタイトになっておれば、金利が下がっても、実質的には安い金利で借りようにも資金がタイトで入らないということが今の、これが最後だという認識もあったかもしれませんが、株価は逆に下がったということになっているのではないだろうか、私はこういう感じがいたしてなりません。 そこで、ちょっとお手元に、マーシャルのkと、それから近年のマネーサプライの増加率というのをお配りをいたしました。データは一九八七年一月からことし、九二年の三月までのものをここに書いておりますけれども、確かに総裁がお話しになりましたように、九〇年の一月、当時は一一・五ということで、十月あたりまでは非常に高いマネーサプライが続いておりましたが、三重野総裁が交代をされましてから公定歩合の引き上げが行われまして、九・九、八・五というところからだんだんと下がってまいりまして、そして昨年の十二月には二・〇、一月一・八、二月一・六、三月一・八、四月はまだ発表にならぬと思いますが、恐らくこの一・八程度ではないだろうか、こう思うのでありますが、ここでマネーサプライを緩めたら直ちにそれなら資金がどんどんふえてくるかというと、これまたやはり一クオーターぐらいたっていかなければ、徐々にふやしていく中で、時間がたって十分な流動性が確保されることにならない、こういうことではないだろうか、こういう感じがしてならないのであります。
 ですから、あわせて総裁がマーシャルのkの話をなさいました。その一年くらい前に、自民党の方で大いに金利を下げろというお話がちょっとあったときに、そのときは、実は私は、まだマ一シャルのkが大きいものですから、委員の皆さんにマーシャルのkのこういう図面をお配りをして、まだマーシャルのkが高いから、やはりもう少し引き締めが必要だということを申し上げたのでありますが、この今のマーシャルのkの方のトレンドの見方でありますけれども、少なくとも一九七〇年のトレンド、一九七五年のトレンド、一九八〇年のトレンドという三本の線を引いて今日のマーシャルのkを見ておりますと、おおむねもうマーシャルのkも傾向線のところまで来ておるのであって、これ以上マネーサプライを締めておくということは、今OECDでバリでやられておりますことでも、アメリカその他が日本の内需拡大を求めておるということに対して、やはり国内的に最も重要な金融面の問題については、総合的な判断の中で日本銀行もこの問題について考えていただきたい、私はこう思うのであります。
 それに先立ちまして、総理はそういう意味で大変先見性を持って既に昨年に経済の下降について御指摘になったのでありますが、今私がこういうふうに申し上げております金融の基本的な対策、問題については、経済の専門家であります総理はどんなふうにお感じになっておるかをまず最初に伺いたいと思います。
○宮澤内閣総理大臣 当委員会には、大変私自身長いことお世話になってまいりましたし、また、殊に堀委員には三十年余りにわたって御教示をいただいております。そういう立場から、多少申し上げることが長くなるかもしれませんので、どうぞお許しをいただきたいと思います。
 まず、官庁による経済予測でございますが、それはやはり役所でございますから、確かなデータをできるだけ早く集めて、そして分析をし予測をするという、大変に一生懸命関係の諸君はやってくれていると思います。私は、殊に経済企画庁には五年ほどおりましたものですから、そういう意味で友人もたくさんおりますし、そういう努力も知っておりますが、やはりそういう性格のものでございますので、ある程度予測におくれがあるということは、本来私はそういうものであろう、そこはこちらからそういうものとしてそれを受け取って、その上でお互いに判断をするということで、これは本来的にそういうものが不可避的にあるのではないかという感じが私はいたしております。そこを自分の勘でもって物を動かすというようなことは、やはり役所というものはしてはならないところであろう。
 先ほど堀委員がQEのことをおっしゃいました。十−十二月のQEのことをおっしゃいまして、今お互いが一番知りたいのは一−三月がどうなっているかということでございますが、このQEも六月にならなければ出てこない。それでも、QEという言葉が示しますように、これはクイックエスティメードでございますから、遅くなってはいけないということで非常に努力をして、そしてこれを出している。それで、しかも一−三が六月にしかわからないという、ここは私はやはり役所というものの持っている一つの使命あるいは仕組み等々から、その点はむしろしんしゃくしてこちらが考えるべきものではないかという気持ちを持っております。したがいまして、私が昨年の暮れにそういうことを申しましたのも、むしろそれを批判するという意味ではなくて、我々としてはそれをもとに現状をどう判断するかということではないかということを言おうとしたのでございます。
 アメリカなんかでも、御承知のように随分そういう批判がございますものですから、大変に早い予測をいたしますけれども、すぐに修正をする、あるいはいろいろな予測が出過ぎて過剰反応があったりするようなこともございますね。そういうことを考えますと、私はやはり経済企画庁を中心に出してくれているいろいろな資料なりなんなりをお互いが自分の立場で読んで、そして見通しを立てる、そういうことが大事なのではないかということを、大変長くなりましたが、一つ感じております。ディフュージョンインデックスにいたしましても日銀の短観にいたしましても、やはりおのおの多かれ少なかれそういう性格を持っておるのではないかと思います。
 さて、後段の部分でございますが、確かにマーシャルのkにいたしましてもマネーサプライにしましても、M2プラスCDで日銀は見ている、郵便貯金は入っていないというようなことでございますけれども、非常にマネーサプライが小さくなっている。これは私も堀委員と御同様に何度も日銀総裁にそういうお話を、御所見を聞くという意味でしておりますが、私の持っております。ただいまの印象は、どうも銀行側のお話というものは、いや、銀行は決して貸し惜しみをしておるのではございません、不動産についてはそういう部分はございますけれども、それは全体でいえば大きな部分ではない、むしろ資金需要がなかなか出てこないのだというのが銀行側の多くの方々の説明である。どうもしかし、それが全部本当であろうかという点も実はございますので、銀行の方々に言わせますと、やはりエクイティーファイナンスが非常に楽であった時代に企業家はもう金利というものを払わなくてもほとんどただのお金が使えた、公定歩合が下がったといっても、今さら金利のつく金を借りる気にはなりません、まあそこまで言うのは少し極端でありますけれども、そういう心理が借りる側にあるのだという銀行の説明である。日本銀行の説明もややそちらの方に近いようなふうに私は受け取っておるのでございます。
 しかし、そうかと申しまして、先ほどもお話しになりました有効求人倍率は依然としてかなり高いのでございますし、人手不足というのは解消するわけでございませんから、製造業も非製造業もやはりそれに対する投資はしていかなければならぬという事実は私は動かないのだと思いますから、そういう意味で、投資意欲というものは、やはりある程度在庫調整が終わりますと出てくるはずのものである。そこで、その際に、先般〇・七五日銀が下げられましたのは、もうこれより下はありません、お借りになる方は、もう今よりいい条件はありませんよという意思表示として企業側が受け取ってほしいし、まあそれは私は概してそう受け取られているのではないかと思っております。
 そこで、残りました問題は、在庫調整がどうなっておるかということと思いますが、早いものは、例えば鉄などは昨年の夏ごろから始まったのではないかと思います。私は今になって非常に意外に思いますのは、かなり多くの機械であるとか家庭電器であるとかいうところの在庫調整が昨年の十二月になってにわかに起こっている。そこまでは余り在庫調整が行われていない。なぜ十二月に急にそうなったのであろうかというのは、私は今でもまだよくわからずにおりますけれども。したがいまして、その部分がおくれているということだと思うのでございますね。それからかなり急速に進んでおりますけれども、まあまあ鉄なんかに比べると、言ってみれば、半年とは申しませんが、それに近くおくれている。したがって、その部分がなお尾を引いておるということだと思います。
 しかし、いろいろ考えますと、在庫調整がそれだけもう、昨年の夏から勘定いたしましたら間もなく一年に近いのでございますから、そうすれば、やはり省力投資というものの必要というのはございますし、それから春闘がほぼ終わったというところで、昨年のようなベースアップではございませんでしたけれども、しかし大変に低かったということでもないわけでございますから、あれこれ考えますと、我が国の経済も、政府も御承知のような緊急経済対策もいたしまして、今前倒し等々一生懸命やっておりますので、まあまあ遠からず回復過程に入る。恐らくこの四―六という時期は、後になってみますと、もう底を過ぎてやや上がりかけの時期になっておるのではないかと思っておるのでございます。
 そういうわけで、決して安易に考えてはおりませんけれども、やはり全体が、殊にプラザ合意以降のことを考えますと、雇用の不安がないということは、やはり我が国にとりまして非常に幸せなことであって、それだけ経済の回復というのも病状は軽くて済むのではないか、また、一生懸命努力をいたさなければならない、こんなふうな考え方をいたしております。大変長くなりまして申しわけございません。
○堀委員 今ちょっとエクイティーファイナンスの問題にお触れになりましたから、一体銀行がどのくらい市場から資金を吸い上げたかというのをちょっと過去の例で調べてみました。
 一九八七年の四―六から一九八七年度計というところで見ますと、二兆五千四百八十六億で全体の市場からの資本調達の二一・八%を占めております。次の一九八八年度は四兆六千三百七十二億円で市場全体の二六・三%。その次の一九八九年度は四兆二千九百三十一億円で、ここは一六・二%でありますけれども、銀行も実は大変多額なエクイティーファイナンスをやっておられるわけであります。そして全体としてのエクイティーファイナンスで、今総理もお話しになりましたように、ほとんど金利のかからないような資金を企業が取り入れたものですから、銀行から金を借りる必要はない、これでいける、こういうのが出てまいって、そのあおりが例えば興業銀行におけるパーソナルファイナンスなどというところへ、本来、長期信用銀行法では企業の設備投資に資金を貸すというふうに法律がなっているにもかかわらず、パーソナルバンキングなどということがあの東洋信用金庫の問題に発展をする、こういうことになっておりまして、私は、銀行が大量のエクイティーファイナンスをやったということは、結果的には自分の首を締めることになったんじゃないのだろうかな、こういう感じがいたしてならないのでございます。
 そういう経過と、もう一つは株の価格が低落をしておりますものですから、御案内のように、BISの規制によって、日本では五%までの株式の保有が認められておるものですから、この株の保有がBISに大変役に立っておりますけれども、今のような一万八千円では、これも実はマイナス要因として働いておる。いろいろな条件が実は重なっておるのが今日の状況でございますけれども、やはり今総理もおっしゃいましたけれども、ECで、日本経済の今後の状態は一体どうなりますかというお尋ねに対しては、私も、日本はこの四―六で大体調整過程の終わりになるのじゃないか、ですから少なくとも七―九は徐々に上がって、十―十二でかなり回復をしていくのではないかと思うということを議員会議の中でEC側の皆さんに御説明をいたしました。これは私なりの判断でありますから、それは結果を見なければ経済の見通しの問題はわかりません。
 ただ私は、この前もこの委員会で申しておりますけれども、要するに、私は出身が医者でございますから、病気というのは病という字の下に気という字が書いてあるわけであります。病は気からと言いますけれども、病気というのは本人の気持ちが非常に影響して、本人の気持ちががたっと落ち込んでいるときにはなかなか思うような回復過程に入らないのであります。ですから、医者というものは病気を治すためには、まずその人の気持ちをエンカレッジして、要するに少し元気になるようにすることが実は病気を治すためには非常に重要な我々医師としての問題であります。景気も同じように下に気というのがついているわけですから、これもマインドなのでありまして、計数の話とマインドの話というものを総合的に勘案しない限り、計数だけに頼っておれば、これはどうしても一クオーターなり二クオーターなり常にずれるというのは避けられないことだ、こう私は思うのですね。
 そこで、きょうは経済の専門家であります調整局長が入っておられますから、その調整局長の立場ではなくて、ひとつエコノミストの立場で今の私の問題提起に対してのお答えをいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○吉冨政府委員 御指名でございますので、私見を述べさせていただきます。
 やはり私どもが見ますのは、繰り返しになりますけれども、ディフュージョンインデックスの先行指標であります。それと一致指標との関係を一番よく見ます。それから日銀の短観は企業自身の判断でありますので、先ほど総理がおっしゃいましたように、企業自身が企業内でまだ人手不足と考えているということであると、そういう点はかなり重要視していかなくちゃいけないと思います。速報性という点で、これも総理がおっしゃられたことですけれども、一番私どもが迷いますのは、木だけを見ていますと森全体がどうなっているかというのを見失うところが一番怖いわけであります。
 これは、今回のOECDの閣僚理事会でも問題になっておりますけれども、経済政策をとった後の危険というのも同時に考えなくちゃいけない。これは、先ほどから出てきます認識ラグのほかに政策ラグと効果ラグというのがありまして、一番難しいのは効果ラグであります。したがって、人手不足がまだ企業で感じられるような段階で余り大げさなことをやりますと、その後遺症に悩まされて中期的な志向性を持った経済政策にもとるということにもなりますので、現状についてはなるべく先行指標をたくさん見ていくということであると同時に、マクロ経済政策については、今のような中期的志向性の中でなるべく考えていきたいというふうに考えております。
○堀委員 大変学問的で、どうも余りよくわからない感じがいたしましたけれども、まあお立場ですから、そのように承ります。
 そこで、きょうは福井日銀理事にもお入りいただいておりますので、私が問題を提起しておりますマネーサプライの問題、マーシャルのkとの関係で、今こう緩めたからといってすぐマネーサプライがふえるという性格のものではないと私は思っておりまして、これもやはり一定のタイムラグが生じてくると思いますので、その後の、資金需要が起こるであろう予測のもとに、まだ発表になっておりませんが、結果的には恐らく四月も一・八ぐらいになるんじゃないかなという感じがしておりますが、やはりそろそろ、これだけ引き締めが続いておるわけでありますから、今のOECDその他の内需拡大という要請にもこたえるたヶには、BISの問題その他がありまして、なかなか銀行も、まあクレジットクランチということはないのでしょうけれども、かなり選択をしながらの融資という形になっているんじゃないだろうかという気がしますので、そこらはひとつどんなものか、ちょっと日本銀行の立場からお答えをいただきたいと思います。
○福井参考人 お答えを申し上げます。
 日本銀行は、委員御承知のとおり、昨年の七月以降金利の引き下げを軸といたしまして幾たびか措置を重ねてまいりまして、金融緩和措置をとってまいりました。現在ただいまは、その緩和効果の浸透を図りつつある、こういう段階でございます。
 マネーサプライとの関係で申し上げますれば、私どもの現在の政策スタンスは、今の低いマネーサプライ伸び率をそのまま維持するということではなくて、今後の日本経済の健全な発展の幾つかの条件の中の極めて重要な条件として、流動性の供給を適切に行う、そういう方向にマネーサプライの適切な伸び率を現出していきたい、そういう方向で政策運営をいたしているわけでございます。
 現在、ただいままでの金融情勢を私どもなりに点検いたしますと、一つは、これはもう委員よく御承知のとおり、市場金利の急速な低下をバックといたしまして、銀行あるいはその他の金融機関が企業に対して貸し出しをいたします場合の貸出金利、これも今日までのところ、かなり急速に下がってきております。それからもう一つは、銀行の貸出態度でございます。これにつきましては、個々の企業ごとにいろいろな御批判、御意見が出ていることは事実でございますけれども、金融機関の融資態度全体を掌握さしていただいております私どもの目からいたしますと、全体としての金融緩和の浸透につれて、昔のように金融機関が積極的に、いわゆる需資を掘り起こすという言葉がございましたが、ああいうしぶりに戻っているわけではございませんけれども、健全な企業に対する融資に対しては相当前向きになってきていることは事実でございます。こういう事実があるにもかかわりませず、マネーサプライの伸び率は引き続き非常に低いところにとどまっている。
 先生から大変わかりやすい資料を私もちょうだいいたしましたけれども、実際の金融緩和の浸透とマネーサプライ伸び率の低さがなお続いていることとのギャップの大きさを私どももしっかり認識をいたしております。これを全部明快に解明せよと言われましても、私どももなかなか能力の及ばないところもございますが、一つ二つ明確に言えますことを申し上げますと、先生からちょうだいしましたこの表の一枚目をそのまま拝借いたしましても、実はマネーサプライ伸び率が非常に高かった時期が非常に長かったということがございます。手元にちょうだいしましたこの表をそのままリファーさせていただきますと、八七年の三月から以後九〇年の十一月までずっとマネーサプライの伸び率が九%以上という高い伸び率が続いている。しかも、その中で一〇%以上と、いわゆる二けたのマネーサプライの伸び率を経験した期間が三十五カ月ございます。九%以上が四十五カ月、二けたが三十五カ月、これだけ長い間高いマネーサプライの伸び率、つまり経済全体に対してかなり大量の流動性が供給された時期が続きました結果として、現在ただいまは、大きく言えば、その反動局面をなお経過しつつあるということは明確に言えると思います。別の言い方をしますと、今日までのところ、個々の企業で見て、それだけ手元流動性を取り崩す余地が非常に大きかったし、現在なお企業がみずからの資金の賄いをいたしますときに、手元流動性の取り崩しというものを最優先にしながら行動している企業が引き続き多いというところにそれがあらわれているわけでございます。
 しかし一方で、金利がこれだけ下がるという状況になってまいりますれば、新しい資金需要が出てきて銀行貸し出しの増加に結びつき、そしてマネーサプライの増加の萌芽が出てきておかしくないということも言えるわけでありますが、そこのところについては、まず一つは、今回の経済全体の調整といたしましては、資産価額の大幅な調整を伴っている、それに伴っていわゆる資産取引というものが今非常に萎縮している状況にございます。したがいまして、従来ですと、マネーサプライが一番早く先行指標的に伸び始める一つの要素は、実体経済に先駆けて資産取引が少し早目に動くというケースもあったわけですが、今回はそれがないという事情がございまして、したがって、資産取引関係の資金需要が今のところ鎮静しているということがあると思います。しかし、もっと重要なのは、実体経済取引による資金需要がそろそろ出てきていいのではないか、私どももそれを強く期待し、その芽が早く出てくることを心待ちにしている、そういう状況でございます。
 しかし、現在ただいまの実体経済の状況は一先ほども宮澤総理からお話のありましたとおり、今在庫調整を中心といたしまして恐らくは一番厳しい調整局面を経過しつつある。企業は恐らくその先の状況をいろいろ用意をしながら、したがって、資金面の計画も内々はあれこれ相当練り上げつつあるのではないかと私ども思っておりますが、現実の資金需要を早目に銀行に対して突きつけるという状況にいま一歩及んでいない局面、そういう意味では、タイムラグが今回緩和局面にあっても、少し大きく伴って今動いている状況ではないかというふうに思っております。
 マーシャルのkと申しますか貨幣の流通速度と言ってもいいのですが、ちょうだいしました資料では、マーシャルのkで、トレンドとの乖離で、これまたマネーサプライの伸び率が少し低過ぎるところに入ってきているのではないかというデータをちょうだいいたしております。私どももこのトレンド線はやはり幾つか引きまして、マーシャルのkの動きというものをつぶさにフォローしてきておりますが、先生からちょうだいしました資料にも正確にお示しいただいておりますとおり、ここに参りまして従来からのトレンド線の幾つかを現実のマーシャルのkが下回る、つまりマネーサプライの伸び率が低過ぎるというところに入ってきているのではないかということを示唆する状況に入ってきていることは確かでございます。
 ただ、この点も、先生からお示しをいただきました表で私ども見せていただいておりますけれども、これも全体としてのマネーサプライの伸び率が大きくタイムラグを持って今回動いてきたのと同じように、今回もマーシャルのkの動きがトレンド線を下回る時期が、本当言うと引き締め期間中に起こっていておかしくないことが最近起こっているというぐあいに、これ自身も相当ラグを持って動いてきているということでございますので、このトレンド線を割ってきているということ自身は、私ども重要な指標として受けとめておりますが、現在ただいまの時点におけるその問題の深さということを秤量いたします場合には、もう少しほかのデータも補いながら判断させていただいている。
 それは、例えば企業金融の実際の動きを見ました場合に、金利の低下状況というものを企業が先行きの投資採算との関係でどれくらいの位置づけで見ているかとか、したがって先行きの資金計画を立てるときに、まだ金利が高過ぎると見ているか見ていないかとかいうふうな個々の企業情報はもちろんでございますけれども、それ以外にも個々の業種別に一体その資金のアベイラビリティーはどうなっているか。その点につきましては、私どもがつかんでおります限り、不動産あるいはノンバンクといった一部の業種につきましては、幾らかアベイラビリティーについて逼迫感があることは否定できないと思いますが、それ以外の企業につきましては、今までのところは少なくともアベイラビリティーリスクを強く感じている向きはないというふうに思っております。
 それで、これには、一つには、最近資本市場からの資金調達が非常に不如意になっているという話がございますが、増資というふうな形、あるいは転換社債というふうな形では、現在の株式市場の状況から見て、確かにそうなっておりますけれども、いわゆる私募債を含め社債市場というところまで目を広げて資本市場からの資金調達全体を見ますと、かなり順便に資金調達が行われていることは事実でございます。三月に終わりました昨年度一年間をとりましても、企業が社債を中心にして資本市場から十四兆円以上の資金調達を行っておりまして、これらも現実の企業金融の動きを助けているという面がございます。
 そういう状況で、現実の企業金融の動きは、マネーサプライの伸び率が非常に低い状況にもかかわらず、さしたるヒッチなく今は動いているというふうに思っておりますけれども、私どもの目標はあくまで今後の日本経済の健全な発展にとって必要な流動性供給の条件を整えるということでございますので、実体経済の調整がこれからさらに進んでいくことと相まって、全体の動き、特に金融面の動きについてしっかりと誤りなく判断するように注視してまいりたいというふうに思っているところでございます。
○堀委員 極めて詳細にお答えをいただいて、ありがとうございました。
 まあこれは予測ですからなかなかわかりませんけれども、私も大体この四―六が終わりますと一応資金需要が出てくるのではないのか。そうしますと、少し早い目に緩めてある方が、資金需要が出てきてもなかなか借りられないというのではちょっと回復のスピードに関係すると思いますので、そこらはひとつ適切な対応をお願いしたいと思います。
 それでは、きょうの本題の方の問題に入らせていただきます。
 実は、「証券・金融の不公正取引の基本的是正策に関する答申」、平成三年、一九九一年九月十三日、臨時行政改革推進審議会から答申が出ているわけでございます。そうして、その答申の中で、二ページでありますが、「なお、証券不祥事に引き続き、金融界においても連続して不祥事が発生し、内部管理体制の脆弱さを示したが、この際、金融行政についても、その在り方について見直す必要がある。すなわち、間接金融を扱う金融行政は、金融機関経営の健全性確保を主な目的とし、広く市場監視をも視野に入れる証券行政とは、かなり性格を異にするが、近年、証券・金融の両市場が相互連関を強めていること、今後の金融制度改革による相互乗入れの推進により、証券会社・銀行の両。経営の融合化が進むことが展望されること等にかんがみ、本答申において、証券行政の在り方と併せて、金融行政についても取り上げることとした。」と。そこで、その三項に「検査・監視体制の在り方 基本的考え方 検査・監視体制を含む関係行政組織の在り方については、証券・金融問題への対応により種々異なる意見があるが、次の基本的考え方に沿って検討する必要があると考える。 ア 対象範囲 証券・金融・為替の各市場間の相互連携の強まり、各業態の相乗り分野の拡大、金融制度改革による相互乗り入れの進展を勘案すると、検査・監視機構は証券・金融・為替市場を視野に置くことが適当である。」ちょっと下にいきまして、「新たな検査・監視機関の設置 大蔵省に、新たに行政部門から独立した証券・金融検査委員会(仮称)(国家行政組織法第八条に基づく機関)を設置し、専属の事務局を置く。 イ 新たな機関の任務及び権限 市場監視のための、証券会社、金融機関、投資家、発行会社、自主規制機関等に対する調査、提出された物件の領置、市場情報の収集等 違法性の強い取引行為等に係る国税犯則調査に準ずる強制調査」、以上こうずっと書いてあるわけであります。この答申は証券に対する監視と同時に金融に対する監視も提案をしているわけでありますが、今回の政府の提案は証券だけにとどめられているのであります。
 そこで、一体金融というのは基本的にどういう状態がといいますと、金融機関とユーザーたる個人または企業との相対取引ですべてが行われる世界でございます。ですから、金融というのは、当初は資本金がございましょうが、その後はユーザーたる国民や企業が銀行に預金をして、その預金をもとにして信用創造が行われて貸し出しか行われるという形で実は銀行か大きくなりますから、もちろん銀行がそういう収益を通じて自己資本を持っておることを否定するものではありませんけれども、金融機関が預かっております資金と今の自己資本との割合とは、大変大きなものが国民の資金であるということは間違いがありません。その国民の資金を預かっておる銀行で、今回のような架空預金証書その他によって、要するに国民の資産が不当、不正な形で他に流用されたということは、これは私は大変大きな問題だという認識であります。
 証券会社の方は、市場の仲介業者でありますから、証券会社がやったことも、これももちろんよくありません。私は、特に考えられないことだと思いますのは、飛ばしというのですか、これはどうやら株式の現先取引ということのようでありますけれども、現先取引というのは買い戻し条件つきの取引でありますから、少なくとも金利が確定しておる債券においてなら当然行われるものでありましょうが、価格が変動するものをそういう現先取引をやるなどということは、これはもう私ども三十年この問題をやっておりますけれども、想像もできない問題だと思うのでありまして、まさに証券におけるそういう市場に関する問題の取り締まりも必要であります。
 しかし、今回起きました都市銀行あるいは長期信用銀行におけるこのトラブルというものは、まさに国民の資産が不当に扱われたという点では、私は実は証券の問題と何ら相違なく極めて重要な問題でありますので、この答申に書かれておるように、金融に対しても、この第八条に基づくところの監視委員会というものが当然今の監視その他の措置を行うべきであって、この際こういう金融というものが国民の資産を不当な形で悪用したということについては、そのまま放置をして、それが放置をしてあるということは、大蔵省の監督権が十分行われていない。免許制でありますから、免許制において起こったトラブルというは挙げて免許を与えておる大蔵省の責任であるという認識が果たしてあるのかどうか。私はこの点について実は非常に一方的な処置ではないのか、こういう感じがいたしてなりません。まず最初に大蔵大臣から御答弁いただきます。
○羽田国務大臣 ただいま堀先生の方から御指摘がありましたように、証券取引というのは、いわゆる不特定多数の者が参加して市場メカニズムを通じて形成される価格のもとで成立するということにつきましては、もう既に御承知のとおりでありまして、また、銀行につきましても、その性格についてもお述べになりましたが、これについてもう細かいことは申しません。しかし、ここで起こってきた問題については、一つの同じあれがあるんじゃないのかということでありますけれども、私どもといたしましては、いわゆる証券取引というものの取引の公正、いわゆるルールの遵守状況、これを監視するということで今度の委員会というものが機能するということはよろしいんじゃなかろうかというふうに思っております。
 ただ、銀行の場合には、確かに今個々の人によってそういう問題があったわけでありますけれども、むしろここの場合には、財務体質ですとか、そういったものの健全性というものをやはりチェックしていく必要があろうと思っております。しかし今度の場合にも、大蔵省が行いますところの金融検査につきましても、検査の実施方針にかかわる意見具申、これ色委員会が行われるということでございまして、その意味では、行革審の答申の趣旨というものは、私ども十分生かされているのではなかろうかというふうに理解をいたしておることを申し上げたいと思います。
○堀委員 実は、免許制でありますから、監督をしておる者に、このような多くの事態が起きた場合には、やはり監督責任というものが何らかの形で明らかにされなければならないのではないのかという感じがしてなりません。ですから、私は何も人を処分しろという話ではないのでありますけれども、こういうことが二度と起こらないようにするためには、今大蔵省の監督だけで果たしてそれで済むのだろうか。今度の八条委員会による証券監視委員会というのは、これによって実は市場に参加する皆さんが、これなら安心して今後は取引ができるだろう、こういう安心感がこの八条委員会による証券監視委員会ができることによって生まれると私は思うのでありますが、金融取引の場合にはどこも変わらないわけですね。要するに、官房に金融検査部ができるだけで、これは大蔵省がこれまでやってきたことと同じで、そうして一体それの反省というものは具体的にどういう形で出ているのかというと、何も出ていないということになりますと、これは私はちょっと行政上から見ても、政治的に見ても適切を欠く、こういう感じがしてなりません。
 最後に宮澤総理大臣のお答えを伺って、私の質問を終わります。
○宮澤内閣総理大臣 ただいま大蔵大臣がお答えになっておられましたように、考え方としては、証券は市場において取引をされるものでございますから、その市場が公正に形成されていないというところにやはり問題があった。それに対して金融取引というのはいわば相対取引でございますから、相対の問題であって、その間に公正、不公正というような観点の問題はない、こういうのが今大蔵大臣の御説明になったことだと思います。私はそのとおりであると思いますが、他方で、先ほどから堀委員のおっしゃっていらっしゃることを伺っていますと、ある意味で、国民の財産というものを管理、運用をする銀行について起こった出来事が、いろいろな意味でやはり公正を欠いていなかったかという、そういう御指摘は、市場における不公正ということとまた違った観点の御指摘であったと思います。
 今回の御審議いただいております法律案は、そのような立場から、先ほど大蔵大臣の言われましたような立場から御審議を願っておるのでございますけれども、堀委員の御指摘になられました問題は問題として、私どもこれからやはりいろいろ反省してまいらなければならない問題を含んでおるというふうに承りました。
○堀委員 どうもありがとうございました。終わります。
○太田委員長 宮地正介君。
○宮地委員 きょうは、私に与えられた時間は二十五分間でございますので、総理に、当面する重要な政治課題を中心に、何点かお伺いをしてまいりたいと思います。
 先ほども少しお話が出ましたが、昨日のOECDの閣僚理事会におきまして、名指しこそはされませんでしたが、我が国に当てはまるような内容のコミュニケが発表になっております。大きな黒字があり、かつ、成長が落ちている国においては、政策決定者は適切な措置を通じて内需を強化する可能性を念頭に置いておくべきだ。いわゆるインフレなき持続的成長の中で、日本に対して内需拡大を中心とした世界経済の中における大きな役割と責任を求められた内容ではないか、このように私は理解をしているわけでございますが、この問題は恐らく七月のミュンヘン・サミットの大きなテーマにもなるおそれがあるわけでございますが、総理はこのコミュニケをどのように受けとめ、日本政府として今後対処されようとしているか、まずお伺いしたいと思います。
○宮澤内閣総理大臣 OECDのこういうコミュニケあるいはIMFの暫定委員会等におきましたようなステートメント、私も何度か経験がございますが、大変率直に申しまして、やはりはたから見ればそういうふうに見えるだろうなというのが、大変正直な感じでございます。
 なかなか当事者にしてみますと、一生懸命いろいろなことを実はやっております、我が国の場合もそうでございますけれども。そうして、財政は実は非常につらい状況にある。そういうことはそういうこととして、しかしやはりはたから大づかみに見れば、日本という国にはまだいろいろなそういう余裕があると申しますか、力があると申しますか、それを世界の経済のためにもう一つ出し切ってほしいという、まあいわばはたから見たときのこれが見方であろうかなと、大変率直な言葉で申しますと、そういうふうに私は印象を持ちます。
○宮地委員 そこで具体的に、政府としては、平成四年度の予算が成立をした、そして公共事業の前倒しもした、公定歩合の再引き下げも行った等々、いろいろ景気対策についても打ち出しております。しかし、そうした景気対策についての効果はこれからでおりますけれども、決して、今後平成四年度最後まで息が長続きするかどうかは、非常にこれは懸念がおるわけです。既に大幅な貿易収支の黒字も出ておるわけでございますし、国内的にも相当に景気は厳しい状況にある。中小企業の倒産あるいは負債額も相当な額に、まあ一兆円近い額になってきている。
 私はやはり内外のそうした情勢を見たときに、いずれ政府としては、補正予算で追加的な措置というものは十分検討せざるを得ない、こういう時期は必ず本年度じゅうに来ると思う。それをいつ行うか、そのタイミングの問題と、その規模をどういう形で行うか。私は、感じとしては、今回は、臨時国会を参議院選挙後早い時期の秒あたりに開いて、大型の補正というものを編成せざるを得ないんじゃないか、それも内需中心とした編成をしていく、そうした方向を出さざるを得ないんじゃないか。今の段階では、非常にまだ総理としても、そうした方向性について国民に明確に答弁することは難しいにしても、やはりそうした準備といいますか、認識というものは持っておられるべきではなかろうか。今回のOECDのコミュニケにおいてもそうではなかろうか、私はそういうふうに考えておりますが、総理、もう少し総理自身の考え方を明確にしていただきたいと思います。
○宮澤内閣総理大臣 先ほど堀委員も御指摘になられましたけれども、昨年の暮れに予算をつくりますときも、大蔵大臣と私とは大変に同じような見方、同じ考え方、よく相談をしいしい予算をつくらせていただきました。これはやはり不況が来る、それに対応しようという予算のつくり方でございましたが、今回の前倒しにつきましても、二人よく相談をしながら呼吸の合った運営をしてまいっておると思います。また日銀もその間事態を見ておられて、適切な対応をしてくれたと思っております。
 このたびのようなことで、まず有効求人倍率等々から、あるいは消費水準から見まして、そんなに重い病気ではない、かなりこれで事態は好転をしていくというふうに私は今考えておりますものですから、宮地委員の御指摘でございますけれども、ただいますぐに必ずこの時期にこうということを考えておるわけではございません。しかし、もとより七割何分の公共事業の前倒しをし、また地方でも単独事業をあれだけ急いでやってもらっているということは、年度の後半はどうするのだということはどなたでもお気づきになる問題であって、そこはもう何にもございませんということで話が済むわけのものではない、それはよくわかっております。したがいまして、そういうことが入り用なときにはまたそれを考えなければならない。財政は非常に苦しゅうございますので、いろいろな手があるわけではございませんけれども、それはやはり考えておかなければ、前倒しをしたといって喜んでいただいても、後がないのでは、これは先ほども経済は気だとおっしゃいましたけれども、そういう意味からも、それはそれで済む話ではないだろう。ただ宮地委員も御承知のように、七割何分の前倒しをいたしましたが、実はこれはある意味で設計能力とかなんとかいうところの物理的な限界があるということを今度もつくづく痛感をいたしました。幾らでもいけたかというとそうでもない、そういうところに、有効求人倍率の方は、これはまだまだ一・二二とかいうところで、多少の、ある意味では余裕は出てきたかと思いますが、むしろもっと設計能力とか施工とかいうそういうところにネックが現実にはあったなということを今度前倒しのときにも感じたわけでございますから、そういうことも考えてまいらなければならないと思います。
 しかし、もう一度もとへ戻りまして、これだけの前倒しをいたしましていろいろな施策も講じましたが、もしそれで、仮に秋になって十分でないというような状況に現実になったといたしますれば、それはそのときに対応する対策は立てなければならない。大蔵大臣ともよく御相談しながら、それはそうしなければならないということをもとより今思っております。ただ、私自身は、もうちょっと早く、あるいは一般に言われているよりも在庫調整等々が比較的上手に進んでいくのではないかなということを思っておりますものですから、今具体的にどうと申し上げる時期ではございません。
○宮地委員 今回の証取法のこうした改正の中においても、やはり経済環境というものを全く考えないで対応するということも大変これは危惧されるわけです。やはり総理御存じのように、株価の市況も非常にまだまだ低迷をしているわけです。日経平均でも一時は一万七千円台、これを切ったこともあります。大分回復はしてきても、まだまだ低迷をしております。取引の株についても、二億、三億、こうした状態を行ったり来たりしておるわけです。そうしたバックグラウンドを考えた中での今回のこうした改正というものについても、非常に懸念する国民の声があることは事実でございます。しかし、公正な市場というものをつくり上げていこう、こういう大義の中で、この法案についてもきょう成立を、衆議院において可決をしよう、こういうことで採決が行われるわけでございます。私は、そういうことを考えたときに、やはり日本経済の景気というものは、今後持続的に成長させていくために、少なくとも経済は生き物でございますから、先手を打っていく、これが非常に大事なことだと思うのです。そういう点で、私は大蔵大臣にも申し上げましたが、どうか後手に回らないように、どうかその見きわめをしっかりと的確に早期に把握をされて、今後の経済運営に誤りのなきように特段の配慮をしていただきたい、このことを強く要請をしておきたいと思います。
    〔委員長退席、持永委員長代理着席〕
 もう一つは、やはりきょうのこの法案についても、昨年来からの証券不祥事あるいは金融不祥事、大変国民の中に不信感が募っております。そうしたものが、やはり一つの証券投資に対するマインドが冷えているとも言われているわけであります。まさにこの法律案が国会で成立をする。こうした不祥事が二度と起きないような再発防止が実際に国民の期待に沿って今後機能するのか、運用するのか、これは非常に大事であろうと私は思う。そういう点において、大蔵省も反省の上に立って今回の監視委員会についてもつくられたわけでございますが、昨日も大蔵大臣等に質問させていただきましたが、果たしてこの監視委員会の八十四名の陣容、特に証券Gメンと言われる方が二十三名、この陣容で国民の期待に機能するだろうかどうか、再発防止に本当に国民の期待にこたえられるかどうか、私は大変色倶をしているわけでございます。
 総理、そうした面で今回のこの法律案の本日の採決に当たりまして、国民の皆さんに対して本当にこうした不祥事の反省、この上に立って政府として二度とこうした不祥事を起こさない、再発防止のために全力で取り組んでいくんだ、そのきっかけがこの法律なんだ。しかし、組織や機構だけができて、中身の運用そして機能の面においては、これは人が動かすものでございますから、政府としてのそれなりの意識とまた決意と行動がなければ実らないわけでございます。その点について総理の決意のほどを伺っておきたいと思います。
    〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
○宮澤内閣総理大臣 戦後間もなく起こりました財閥の解体等々からいわゆる証券民主化というものを政府としてはかなり主導をして盛り上げてまいったと思います。そういう意味では、我が国の証券界も、経済の成長もございまして、政府の期待にもこたえてくれましたし、また国民も証券を持たれるようになり、海外にも随分大きな力を我が国経済界が持つようになった。そのことを私は決して低く評価するものではございません。正常に評価いたすべきものと思いますが、このたびの出来事が我々に教えたものは、そのような一種の、これはちょっと言い過ぎかもしれませんが、はたから見れば保護行政とも見えたような時代というのがやはり終わったのであろう。それは自由化、国際化ということもやはり大きく関係をいたしました。そういう時代が終わった。やはりそういう意味では、一般投資家というものの立場というものをもう一つはっきり意識しながら、かなり厳しく証券界にも対応していかなければならない、そういうことを関係者が全部感じたのが今度の出来事であったというふうに私は思っております。これで初めて我が国の証券界のあり方あるいは証券行政というものがいわば国際的な開かれたと申しますか、そういうものになっていくのであろう。そのぐらいな厳しい気持ちで、今度の法案というものを成立させていただきますならば、そういう厳しい気持ちで運営をしていかなければならない。これは政府ばかりでございません、関係者すべてがそういう気持ちがあってこそこのたびの法案の志向しておりますものが達成できるであろう、そういう気持ちで運用いたさなければならないと思っております。
○宮地委員 総理のそうした決意を大蔵省もぜひ反映をしていただいて、今後の運用に当たっては厳正に行っていただきたい、このことを強く要求をしておきたいと思います。
 少し法案からはそれますが、どうしても総理の重要案件でございますので、この際御質問をさせていただいておきます。政治改革の問題であります。この問題はいよいよ総理の決断が非常に迫られてきている重要課題であります。恐らくその中でも我々の政治生命にかかわる定数是正問題、これは非常に重要な案件であると同時に、六十一年の改正以来大変に国民も関心の強い問題であります。
 きょうは時間がありませんから率直にお伺いしますが、いわゆるこの定数是正については、基本的には総理は、いわゆる四増・四減ではこれはだめだ、今後それを上回る定数是正をすべきである、本来的には一対二に抑えたい、それは十年間かけて二倍以内にしたい、三段階方式で何とかやりたいというようなこともいろいろ言われております。そこでずばりお伺いしますが、いわゆる九増・十減あるいは十増・十一減、こうしたことが言われておるわけでございますが、総理としては、この定数是正問題についてどのように現段階ではお考えになっておられるのか、そこをまずお伺いしておきたいと思います。
○宮澤内閣総理大臣 このたびの政治改革を、私はいわゆる緊急な問題をこの国会でお願いをしたい、少し長い問題は年末に国会においてお願いを申し上げたいというふうに実は考えておりますので、したがいまして、ただいまの問題は緊急是正に関するものでございます。それらは政治資金、政治倫理あるいは国会、政党のあり方、そして定数と四つの問題を含んでおりまして、あるものにつきましては、既に各党による政治改革協議会で御審議をいただき、実務者会議に送られたものもございますし、まだこれから御協議を続けていただくものもございますが、いずれにいたしましても、私はこの国会で成立をさせていただきたいものに限りまして今度御協議の対象にしていただきたいと考えております。定数の問題はその一つでございます。
 いわゆる四増・四減ということでは不十分と考えるかというお尋ねでございますが、それでは不十分と考えております。それならば、どのような案をどういう見通しに立ってやるかということにつきまして、実は私どもの党内ではつぼつ党内の意思統一をしていかなければなりません。その上で協議会にお諮りをいたして、各党の御意見なり御主張なりの中からコンセンサスをつくっていくというその段階にございますので、私としては、やがて党内で私の考えも述べまして、党内の意見を聞きながら、党としての対処方針を決めてまいりたい。それがどのようなものであるかにつきましては、まだそういう相談をいたしておりませんので、ただいま私の考えを申し上げるまでに至っておりませんけれども、いわゆる四・四ということでは、これは問題の解決には十分でないと考えております。
○宮地委員 そうしますと一自民党の党内の取りまとめの中で、総裁として総理が一つの見解を述べる、その時期は大体どのくらいを目途に考えておられますか。
○宮澤内閣総理大臣 党内でも大分いろいろあちこちで議論が具体化しつつございますので、余り遅くない時期にひとつ党内の協議をいたしまして、そして結論を得たいと考えております。
○宮地委員 その時期についても、来週あたりには宮澤総裁の見解が発表されるのではないか。それを受けて自民党案の取りまとめをして、与野党の政治改革協議会のテーブルにのせていく、そういうスケジュールになっていこうかと思います。総理として、総裁として、今国会で成案を得る、また成立させるということになれば、それなりにタイムリミットというものは逆算すれば出てくるわけですね。ですから、少なくとも五月中には総裁としての見解あるいは政治改革協議会のテーブルにのせないと、今国会の成立も非常に厳しくなってくる、こうなるのですが、この点についてはどうでしょうか。
○宮澤内閣総理大臣 これはもうお互い申すまでもないことでございまして、案は幾らでもできますけれども、実際には容易ならぬことでございますから、したがいまして、いついつまでにこういたしますと私が勝手に言えることではございません。それなりにお互いによく理解をし合って、譲り合ってというような種類の問題でございますから、紙に字を書くようなわけには実はまいりませんので、それはおわかりいただいていることと思います。が、しかし、おっしゃいますようなあたりの期限までには何とかまとめなければならない、そのようにお互いにみんな努力しようではないかというふうに党内で話し合っていきたいと思っております。
○宮地委員 最後にもう一点、重要案件はいわゆるタイ情勢に対する日本政府としての対応だと思うのです。総理は、今回のタイにおけるこうした問題についてどういうふうな認識を持たれておるのか、また政府として経済制裁等が検討されているようなこともいろいろ言われておるのですが、こうした点についてどういう対応をされようとしているのか、この二点、お伺いしておきたいと思います。
○宮澤内閣総理大臣 基本的には、あのような流血の事態というものはできるだけ早く鎮静をさしてもらいたい、そうでなければならないというのが一つでございます。
 もう一つは、伝えられるところ、恐らく間違いないと思いますが、憲法の改正等々について与野党と申しますか、政府側と反対勢力と申しますか、その間である程度の話し合いが実は進行しておったわけでございますから、その話し合いというものをひとつ進めてもらって、そういうことによってこのような事態をできるだけ早く解決をしてもらうことを日本政府としては心から望んでおる、こういう趣旨のことを昨日、岡崎大使から政府の首脳部に伝えました。また、今日もなお事態の推移にかんがみまして、再度政府としての考えを先方に伝えることになっております。一もとより主権国家、独立国家について起こっておることでございますから、私どもがいわば口を出すと申しますか、そういう性格のものではございません。ただ、私どもとして、長いこと友好関係が続いており、また経済関係も深く、邦人もたくさんおります非常に長いつき合いの国でございますので、この事態がそのような解決を見ることをよかれかしと祈るような、そういう気持ちで政府の見解を再度にわたりましてタイ政府に伝えているところでございます。
○宮地委員 時間が参りましたから終わります。ありがとうございました。
○太田委員長 正森成二君。
○正森委員 私は、総理がせっかく大蔵委員会にお見えになりましたので、本年の二月に予算委員会で御発言になりましたことがアメリカで非常に誤解された問題についてから論を始めたいと思います。
 これは御承知のように、武藤委員が御質問になったのに答える形で話が出たわけで、武藤委員の発言に、まことによくわかるお話というように賛意を表された上で、
  今アメリカに欠けておりますものといいます
 か、この十何年、ここに至ったゆえんを見てい
 きますと、物をつくるというか、価値を生むと
 いうことについての解釈が非常にルースになっ
 たと申しますか、それはマネーマーケットでも
 価値を生むには違いないだろうとか、そういう
 額に汗をして一つ物を創造していくという、そ
 ういう勤労の倫理でございますか、そういうも
 のがいろいろなことに関係があったと思いま
 す。中略、
  そういうことでいいのだろうかと考えている
 うちにマネーマーケットが進みまして、今度は
 ジャンクボンドというものになりました。シャ
 ンクボンドというようなものは、これは本当に
 ある意味で言葉が示すように危険なものでござ
 いますし、LBO、レバレッジド・バイアウトな
 んというのも、全く自分で手金を持たずに人の
 ものを買収して、その結果、利子が払えなくて
 倒産してしまうという、だれが考えても長続き
 がしないことをここ十年余りやってきた。私は、
 その辺のところに働く倫理観というのが欠けて
 いるのじゃないかということをずうっと思って
 まいりました。
  今、御心配になっていらっしゃるのは、私は
 まさにそのことだと思いますし、ある意味で我
 が国のバブルと言われるものにもそういう要素
 があったのだと思うのです。ですから、あのバ
 ブルということが起こりまして、お互い今こう
 いう後始末が大変でございますけれども、あれ
 はやっぱり国民全体に対する教育であったとす
 ら私は思います。やはり額に汗をして価値をつ
 くり上げていくということが大事なことだ。長くなりましたが、こういう趣旨であります。
 ところが、この趣旨がアメリカの報道機関で、米国の労働者に勤労の倫理観が欠如していると発言したやのように報道され、その結果、アメリカの一、二の議員が日本の人種差別主義のあらわれであるとか、米労働者への中傷であり怒りを感じるとか、こういう報道がされて、いろいろ誤解を招いたわけであります。私は速記録を持ってまいりましたが、二月十九日の本委員会におきまして、それは、正確に速記録を読む限り、宮澤総理の真意ではない、これは米国の労働者に働く意欲がないというようなことを言ったものではなしに、強いて言うならば、アメリカの経済のあり方あるいは経営者の物の生産を重視しない、そういうやり方に対する感想を述べ、あわせて我が国のバブル経済について、これは教訓であったというように反省の弁を述べられたものにほかならないというように考えたわけですが、私のこの解釈について、総理、何か御意見があれば一言お述べいただきたいと思います。
○宮澤内閣総理大臣 私としましては、思わない誤解を生じたと思っておりますし、後になってわかってもらった向きもあったようですが、しかし、もうダメージが生じてしまいましたので、これについてはもう繰り返さない方がいい、触れない方がいい、そういう考えでございます。
○正森委員 そういうお気持ちもわからぬではございませんので、それ以上昔のことを申そうとは思っておりません。
 しかしながら、それに関連して、私はまた過去の御審議のことを持ち出して失礼でございますが、三月十六日の参議院の予算委員会で、今度は久保亘議員の質問に対する答弁がございます。お忘れかもしれませんので、ごく簡単に要約しますが、同委員が、「プラザ合意以降五次にわたる金融緩和策がバブル経済の有力な原因になったと言われているのであります。」これについての日銀と政府の責任というものを聞かれたわけであります。それに対して三重野日銀総裁は、「内需主導型の経済構造に変革を実現し、かつその上でかなりの高成長を実現した」というようなことを述べられた後、
 それと同時に、副次作用として今委員御指摘のバブル現象を生じたこともこれは否定できないわけでありまして、それは私どもの責任も感じております。この点は、今後二度と少なくとも金融面からこういうふうなことがないようにしなければならないというふうに思っております。
こう述べられ、さらに、
 物価はほとんどゼロインフレの成長でございました。その間、資産価額は次第に上昇したわけでございますが、その資産価額の上昇をもって金融引き締めをするというためには、いわゆる認識が足りなかったということは認めざるを得ない、こういうふうに思っております。
こういうように率直に責任を認めておられます。
 ところが、非常に失礼でありますが、総理はどう答えておられるかといいますと、プラザ合意以来非常に円高になったということを述べられた後で、
 円の急速な上昇を防ぎますために、かなり長期にわたりましてドル買い、円売りをいたしましたことも御承知のとおりでございます。そこから相当大きな過剰購買力が民間に出てまいりました。また、緊急経済対策によりましても、減税、公共事業等々でございますから、金融的にはかなりやはりここで金が緩むというようなことがございまして、両方のところからいわゆる過剰購買力を生じだということは、これは事実であったと思います。
  その結果として、我が国はこの急速な円高に企業も家計も対応することができ、その後、史十二度目の長い経済繁栄が続いたわけでございますが、しかし、そのいわばコストというのが先ほど日銀総裁も言われましたようなバブルであった、このことも事実でございます。
こう言われた後、まとめとして、
 そのような過剰購買力を他方で吸収する方法はなかったのかとおっしゃいますれば、むしろそのようなことでこの危機を乗り切ったという観点から申しますれば、それはやむを得ないそのための副次的な効果であったと申したいところでございますけれども、
と、こう言って、
 現実には株式、土地等にそれが非常に大きな上昇を招く結果になったそのことは、また否定できないところであるというふうに当時を回想して考えております。
つまり、回想しておられるだけで、責任があったというよりは、この文脈から見れば、むしろ非常にうまくやったのだ、そのためのコストであり、一副次的効果にすぎないのだというのが総理の意見で、三重野日銀総裁とは明白にスタンスが違うのですね。しかし、まさにこのバブルで生じたいろいろな欠陥をどういうように是正するのか、しなければならないのかというようなわけで、今当大蔵委員会が証券監視委員会とかその他いろいろのことについて審議し、間もなく採決されるわけであります。
 そこで、そのときに、そのプラザ合意の半年か一年以内に大蔵大臣になられましていろいろ御努力されたことは事実でございますし、私も予算委員会で質問させていただきましたが、その過剰流動性に対する対応がややおくれて、その結果こういうことが起こったという責任は、やはり日銀総裁と同じように認めていただかなければ、いたずらに証券会社、銀行を責めるというだけではこれは不十分であろうと思いますし、また、それをお認めになったところで総理の権威が傷つくわけではないと私は思いますが、率直なお言葉をいただきまして、ちょうど質問時間が終了したようですから、これで終わらせていたださます。
○宮澤内閣総理大臣 久保委員に対しまして概してただいま御紹介いただいたようなことを申し上げましたけれども、最後のところは、ただ、その結果としてこういうことになりましたのは間違いのないところでありまして、ああいう施策はとりながら、しかし、この過剰購買力をどうにかして吸収する方法はなかったのだろうかという反省をいたしておりますと、そういう気持ちで申し上げましたので、正森委員のおっしゃいますことに逆らう気持ちはございません。
 つまり、プラザ合意が八五年の九月のお彼岸でございましたが、あのときに二百四十二円でございました。それがその年の暮れには二百円になっております。翌年の夏には百五十円になっておりますので、これにはもう日本経済、どう対応していいか本当にわからなくて、おまけにこの場合には雇用不安が非常に大きくなりましたので、それで何とか余りドルが急激に落ちないように、随分買うものも買いました。それで購買力は、確かに円が随分出ました。緊急経済対策もいたしまして、六兆余りでございますから、これもそうでございました。その結果と申してはまたいかぬかもしれませんが、しかしともかくこれで日本経済は対応することができ、国民経済もまあ耐えることができたということは事実であったと思いますけれども、しかし、それならば、その過剰購買力を他方でどうして吸収しなかったのかという点は、深くやはり将来に向かって研究もし、反省もすべきことだと思っております。
○太田委員長 伊藤英成君。
○伊藤(英)委員 先般の一連の証券不祥事の問うたものは、これは証券業界と行政との関係のあり方であり、そしてまた日本の証券市場のあり方だと私は思うのですね。
 それで今思い出されるのは、日米構造協議というのが行われました。そこで、日本の市場をあるいは社会の構造をどれだけ公平なあるいは透明度の高い市場にしていくかということだと思うのですね。
 そういうことを念頭に置きながらお伺いをするわけでありますけれども、今回のこの法改正に関して証券関係者からもちょっと意見を聞いたりもしたりしたのですが、こういうような感じでありました。要するに、またいわゆる完全自由化への道半ばでありまして、行政システムを基本的にどのように政府が変革をしていこうとしているのか見えてこないというようなことでありました。
 私は、従来から指摘をされてきた日本の行政システムのひずみといいましょうか、そういうものを是正をして、いわば完全自由化への道あるいは市場の公平あるいは公正の確保を一義とするような市場行政に変えていかなければならぬだろう、こういうふうに思うのですね。そしてそれが日本の証券市場が世界に通用するシステムになっていくんだと思うのでありますけれども、そしてまた同時に、それが日本の個人投資家が再び安心して株式市場に投資できる環境が整うのだろうと思うのですね。
 そういう意味で総理にお伺いするわけでありますけれども、現在の日本の状況について、この証券市場等につきましてどういう認識を持っていらっしゃるのか。世界に対して、ああ日本の今の状況は大丈夫ですよというような感じでいらっしゃるのか。あるいはこれからもうちょっとどういうふうにしていきたいというふうに思っていらっしゃるのか、その辺についての考え方をお伺いいたします。
○宮澤内閣総理大臣 先ほども宮地委員に申し上げましたとおりでございますが、戦後日本の証券業界が国民生活、日本経済のために果たした功績というものは、私は決して過小評価いたすものではございません。しかし、我が国のすべての行政が、よく明治以来、富国強兵あるいは欲しかりません勝つまではというようなことで、生産側に、つまり消費者と対立、分かれた意味での生産側に、あるいは一般投資家とこちら側にある意味での証券業といいますか、行政全体がどちらかといえばそういう姿勢に傾いていたことは、国全体として否めないことであったろう。このたびのことは、そのことについて、証券行政というのは、やはり一般投資家のために、公正のためになければならないという警鐘をすべての人に鳴らす出来事であったと思います。そのことは、伊藤委員が言われましたように、多くの先進国が消費者なり一般投資家なりにより傾斜をした行政をしているということの意味で、我が国もここで初めて国際的な証券業、国際的な証券行政のあり方というものをこの法案によって実現をいたしたい。それは従来からいえば非常に厳しいことになるわけでございますけれども、それはやはりそれが国際化であるし、また一般消費者、投資家に対するやはり行政のあり方ではないかと思います。
○伊藤(英)委員 私に残された時間がほとんどもうなくなって、あと三分だそうでありますけれども、したがって最後にお伺いしますが、いわゆる行政指導ということが非常に議論になったわけでありまして、この種の証券関係の問題につきましてもかなりの改善がされたわけでありますけれども、しかしまだ、例えば仮名取引だとかあるいは推奨銘柄禁止などの通達は残ったままだ、私はこういうふうに思いますね。それで例えばこの証券関係はいろいろされたりはしているのですが、証券関係以外の各部局の通達、行政指導もこれは見直さなければならぬと思いますし、同時に、これは大蔵省だけではなくて、ほかの他の省庁関係の見直し、整理もこれは行わなければならぬ、このように思いますね。
 そういう意味で、総理が既に他の省庁に対しても、この通達等の見直しを指示をされているのか、あるいはこれからその問題についてどういうふうに進めていこうと思っておられるのかお伺いして、私の質問を終わります。
○宮澤内閣総理大臣 私が生活大国ということを国会で何度も申し上げております際に、これは一つの意味では生産から一般消費者へ、あるいは行政というものが一般消費者、一般投資家というものへもっともっと目を向けなければいけないのではないかということを何度も申し上げておりますし、また経済審議会でもそのようなことを中心に今長期計画も検討していただいておるところでございます。これは証券行政に限りません、戦後、そういういわば国を再建するために行政が果たしてきた役割を私は決して過小評価いたしませんけれども、ここまで来ました我が国にとっては、やはり消費者、一般投資家というものをすべての行政がより大事にする姿勢になっていかなければならない、強くそのように感じております。
○伊藤(英)委員 時間が来ました。終わります。ありがとうございました。
○太田委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
○太田委員長 この際、本案に対し、正森成二君から、日本共産党提案による修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。正森成二君。
    ―――――――――――――
 証券取引等の公正を確保するための証券取引法
  等の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
○正森委員 私は、日本共産党を代表して、政府提出の証券取引等の公正を確保するための証券取引法等の一部を改正する法律案に対する修正案について、提案理由並びにその概要を御説明いたします。
 修正案を提案する第一の理由は、証券取引等監視委員会の大蔵省からの独立性の確保の問題であります。昨年我が国を揺るがせた証券スキャンダルの再発を防止する核心の一つは、大蔵省と証券会社との癒着をきっぱりと断ち切ることができるかどうかにありますしかるに、政府提出の法案では、証券取引等監視委員会は国家行政組織法第八条に基づいて大蔵省の内局に置かれ、事務局の人事権が大蔵大臣にあり、委員会は独自の処分権を持たず、大蔵大臣に行政処分等の勧告ができるにとどまるなど、大蔵省からの独立とはほど遠いものとなっています。多くの有識者とマスメディアが政府の改正案の内容を大蔵省の焼け太りと痛烈に批判したことは周知の事実であります。
 第二の理由は、野村証券が広域暴力団稲川会前会長の東急電鉄株買い占めに巨額の資金を提供するとともに、その買い占めと連動して東急電鉄株大量かつ集中的な推奨販売を行って株価の異常な高騰を引き起こしたにもかかわらず、何らその刑事責任を問われることなく、行政処分のみで済まされた問題であります。昨年秋の段階では、大蔵省自身が現行の証取法百二十五条では証券会社が特定銘柄を意図的につり上げている可能性が強くても多数の投資家がその取引に参加していれば相場操縦の立証が困難なので、こうした場合でも立証が可能なように条文を改正する方針であることが報道されていました。しかし、現行百二十五条の改正は見送られ、今後同条を積極的に運用するとしているものの、それだけでは東急電鉄株疑惑と同種の事例が発生しても刑事罰の適用は不可能だと大蔵省自身がマスコミに公言しているのであります。
 第三に、金融機関に対する監視についてであります。昨年秋の行革審答申でさえ、「証券・金融・為替の各市場間の相互連携の強まり、各業態の相乗り分野の拡大、金融制度改革による相互乗り入れの進展を勘案すると、検査・監視機構は証券・金融・為替市場を視野に置くことが適当である。」と提起していました。しかるに政府提出の法案では、金融機関に対する監督は委員会の監督対象から外され、大蔵大臣は金融検査の実施方針その他の基本的事項について委員会の意見を聞くこととしているものの、その意見を尊重することすら規定していないのであります。
 以上のような政府提出法案の問題点を是正し、証券スキャンダルの実効ある再発防止と証券取引の公正を確保するために最小限必要な修正を行うこと、これが本修正案を提案する理由であります。
 次に修正案の概要について御説明。いたします。
 第一に、証券取引等監視委員会を国家行政組織法第三条に基づく大蔵省の外局としての独立行政委員会とし、事務局の任命権は委員長が持つこととしております。また、委員会は独自の行政処分権を持ち、犯則事件の調査を行った場合において必要があると認めるときは、証券会社の業務の停止を命じ、または証券会社の役員の解任を命ずることができるようになります。さらに、証券取引に関する紛争の仲介の権限を現行の大蔵大臣から委員会に移すほか、委員会は独自の規則制定権を持ち、国会に対して報告する義務を負うこととしております。
 第二に、証券会社の大量推奨販売について、政府提出法案において規定される行政処分だけでなく、刑事罰を科することができることとしております。
 第三に一大蔵大臣が金融機関に対する検査の実施方針その他の基本的事項について委員会の意見を聞くという政府提出法案の規定に加えて、この意見を「尊重しなければならない。」ことを明記することとしております。
 以上が、証券取引等の公正を確保するための証券取引法の一部を改正する法律案に対する我が党の修正案の主な内容であります。
 何とぞ、御審議の上、御賛同賜りますようお願い申し上げます。
○太田委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
○太田委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 まず、正森成二君提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○太田委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。一
 次に、原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○太田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
○太田委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、井奥貞雄君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党及び進歩民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。井奥貞雄君。
○井奥委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
    証券取引等の公正を確保するための証券取引法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について十分配慮すべきである。
 一 証券市場に対する国民の信頼を確保する努力を引き続き行うことにより、証券市場の活性化に努めること。
 二 証券取引等監視委員会の委員の人選に当たっては、委員会の独立性・自主性を確保する観点から、専門的知識に加え公共性、中立性を担保し得るような適切な人材を選任すること。また事務局長・次長をはじめ事務局職員の人事については、委員会の担っている職務の重要性にかんがみ その意向を踏まえ幅広く人材を求めること。
 三 証券取引等監視委員会の独立性・中立性を確保するため、事務局体制の充実をはかるとともに、委員会が大蔵大臣に対して勧告、建議等を行った場合には、大蔵大臣は、迅速、適切に対応すること。
 四 大蔵大臣は、金融機関等検査の実施方針その他の基本的事項に関する委員会の意見を尊重して事務運営を行うよう努めること。
 五 委員会は、勧告、建議等の内容及びその実施状況を適切に公表するとともに、その行った検査等、事務処理状況の公表に当たっては、その実態が国民に十分理解されるよう配意すること。
 六 委員会の所掌事務及び組織のあり方については、その運営状況を踏まえ社会経済情勢の変化にも対応しつつ、適切な見直しに努めること。
 七 今般の証券に係る一連の不祥事は、自己責任原則に基づく明確なルールの下でフェアな取引を行うという基本的な原則が徹底していなかったという反省に立ち、自由・公正で透明・健全な証券市場の実現を図るため、自己責任を徹底し、いわゆる「とばし」等の是正を図るとともに、暴力団の不当な介入を排除するため早急に自主的な対策の確立及び捜査機関との連携・協力体制を強化すること。
 八 行き過ぎた大量推奨販売行為等証券市場の公正を損なう行為に対しては、証券取引法の積極的かつ厳正な適用に努めること。
 九 最近における企業経理の実情にかんがみ、企業経理の透明性・公正性を確保する観点から、一層のディスクロージャーを進めるほか、監査の一層の充実を図るとともに社内の責任体制の整備等を図ること。
 十 証券市場の公正性、行政の透明性を確保する観点から、通達等を全面的に見直し、可能な限り法令上明確化するとともに、極力その整理・統合に努めること。
以上であります。
 何とぞ御賛成賜りますようお願いを申し上げます。(拍手)
○太田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○太田委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。羽田大蔵大臣。
○羽田国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。
○太田委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○太田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
    〔報告書は附録に掲載〕
○太田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後七時四十九分散会
     ――――◇―――――