第126回国会 本会議 第2号
平成五年一月二十五日(月曜日)
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 議事日程 第二号
  平成五年一月二十五日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
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○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時二分開議
○議長(櫻内義雄君) これより会議を開きます。
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 国務大臣の演説に対する質疑
○議長(櫻内義雄君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。山花貞夫君。
    〔山花貞夫君登壇〕
○山花貞夫君 新しく日本社会党の委員長に就任いたしました山花貞夫であります。どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)
 私は、日本社会党・護憲民主連合を代表し、宮澤総理の施政方針演説に対し、質問をいたします。
 まず、先ごろ発表されました皇太子殿下と小和田雅子さんの御婚約に対し、心からお喜びを申し上げます。(拍手)お二人がごく自然に、明るい家庭をつくりたいと話し合われている姿が新鮮でした。お二人が国民に開かれた民主的な皇室をつくられますよう期待いたします。そのさわやかな笑顔と率直な御発言をテレビで拝見いたしますと、時代の流れをつくづくと感じました。
 総理は、施政方針演説の初めに、東西冷戦の終えんによって「歴史の流れは大きく平和へと転じ」たとの時代認識から、「新たな平和秩序の構築」という今日的課題を提起いたしました。そして、この国際環境と国民意識における変化は、「戦後我々が積み上げてきた経済社会システム全体の変革を迫るもの」であるとして、「変革と実行」のスローガンを掲げました。しかし、その中身は、聞く者にとってむなしいという印象しか残りませんでした。政策は総花的に羅列されましたが、どのようなビジョンを持って、何をどのように変革するのかほとんど見えてこないのです。しかも、その「変革と実行」の先導役は政治だと言われても、日本の政治に対する不信感を極限まで募らせている国民は、白けるばかりではないでしょうか。
 東欧に始まった激動の世界史に学ぶべきです。冷戦構造を突き崩し、何百年に一度という大きな時代の変化を引き起こした主役は、それぞれの国の民衆でした。真の民主主義を求める民衆のエネルギーが、新しい時代を切り開いたのではなかったでしょうか。
 アメリカでも、四十六歳の若きクリントン大統領が、変化への挑戦を掲げて登場いたしました。クリントン氏は、アメリカの国民に夢だけを与えたのではなく、アメリカの屋台骨を揺さぶっている経済、社会の厳しい現実との格闘による変化と責任を訴えました。アメリカの国民自身がこの呼びかけに応じて、変化を選択したのです。
 世界と日本が歴史的な転換期に立っているとの共通の認識に立つならば、「変革と実行」は、国民の英知とそのエネルギーを原動力とすべきではないでしょうか。そのためには、国民の皆さんの政治参加に基づく国会における与野党間での徹底した討論、ディベートが必要です。
 今、具体的に討論し、解決すべき緊急の課題を挙げるとするなら、第一の課題は、佐川疑惑の真相解明です。とりわけ政権の誕生に右翼、暴力団が介在したことについての事実の解明と責任の明確化です。
 第二は、実効性ある政治腐敗防止の法整備と政治改革の実現です。
 第三は、激変する世界のもとで、国民が合意できる平和主義と国際協調の原則に立った日本の自主的な国際路線を明らかにすることです。
 そして第四は、国民の生活の質を改善していくという基本的な立場に基づき、不況を克服し、中期的な経済政策路線を確立することです。
 私は、今通常国会の焦点は、以上の四点であると考えます。以下、率直に議論したいと思います。(拍手)
 さて、具体的な論議に入りたいと思います。
 総理は、「今や政治改革こそがすべての変革の出発点」であるとされました。「きょうの後にきょうなし」と覚悟は示されましたが、ここでも自民党の政治改革基本方針を引用する以上のものは何も出ませんでした。
 総理、あなたは、施政方針演説で、佐川疑惑について、「まことに遺憾なことであります。」としか触れませんでした。感想を述べればそれで済むのだとお考えですか。政治の最高責任者である総理は、まさか昨年の臨時国会で幕が引かれたとは考えておられないでしょうね。
 金丸さんが東京佐川の渡邉社長から五億円をもらった後、これを自民党の国会議員と候補者六十数名に配った事件について、東京地検は、昨年十二月に不起訴処分にいたしました。これに対し、社会党の国会議員団が検察審査会に審査の申し立てをしたところ、不起訴処分は不当であるとの議決がなされました。(拍手)五億円の配付について、一たん新国土開発研究会なる政治団体に入金された証拠はなく、捜査は尽くされていないという判断は国民の常識です。国民の政治腐敗に対する検察庁の及び腰に対する批判もあります。総理は、この検察審査会の判断をどうお考えですか、お聞かせください。(拍手)
 後藤田法務大臣は、この検察審査会の議決をどのように受けとめ、どうされるおつもりですか。まだ処分のなされていない不記載罪など政治資金規正法違反と所得税法違反について、厳正な処分を行うべきは当然です。さらに、渡邉被告が供述したとされる二十億円余の行方についても、徹底解明して国民の前に明らかにすべきです。この際、特に法務大臣の所見を求めます。(拍手)
 政界と企業と暴力団とが癒着した構造の中で政権がつくられ動かされていたという恐るべき事実は、憲政史上の汚点であり、国民の怒りと政治不信を消えることなく噴出させています。
 竹下氏らの証人喚問では、真実が解明されるところか、竹下証人については、暴力団関与の責任などに関して偽証の疑いが濃厚であり、疑惑はますます深まりました。竹下氏の再喚問と議員辞職勧告が行われるべきです。また、小沢一郎氏らの新たな証人喚問はぜひとも実施されなければなりません。(拍手)日本の政治のあり方として、徹底的な解明を行おうではありませんか。
 昨年の国会では、各党協議を受けて緊急改革案が成立しました。しかし、率直に言って、極めて不十分なものに終わったと言わざるを得ません。社会党は、さきの臨時国会に企業・団体献金の禁止、選挙違反における連座制の強化、政治資金の透明性の確保を図るための法案を提出しました。かつてある財界人は、企業の政治献金は見返りを求めなければ背任となり、求めれば贈賄となる性格のものとの趣旨の発言をしましたが、まさに正鵠を得たものと言えます。宮澤総理は、企業、団体の政治献金の禁止と政党に対する公的助成実現に英断を下すべきだと考えますが、いかがですか。(拍手)自民党案は、企業献金の枠を二倍にし、今以上に企業献金を拡大しようとしています。これでは国民の納得を待ちれるはずがありません。総理の所見を求めます。(拍手)
 宮澤内閣・自民党が、政治改革を選挙制度改革、しかも小選挙区制の導入にすりかえようとしていることは許せません。野党のすべてが一致して反対しており、成立する見通しは皆無です。本気でこの制度を導入するおつもりなのですか。自民党が策定した「政治改革の基本方針」にある選挙制度の改革案は単純小選挙区制ですが、これでは多くの死に票が生じて民意を反映しないばかりか、自民党絶対多数の議席の恒久化をねらうものであり、国民が求める政治改革とはほど遠いものであります。(拍手)
 もちろん、現行中選挙区制度はさまざまな限界を示しており、その改革を図らなければならないという認識は私たちも持っています。私は、これにかわるものとして、民意を最もよく反映する比例代表制を中心とした制度の導入を図るべきだと考えます。総理は、国民が納得し、与野党が合意できる選挙制度改革を目指すべきです。いかがでしょうか。
 自民党の政治改革のごまかしは、国会改革や国民の政治への直接参加を軽視していることでも明らかです。国民の政治への不信は、国対政治と表現される取引型政治、官僚の代行答弁の横行や議員の族化などにも起因しており、議員間の自由な討論や審議の公開推進、議院証言法改正によってこうした議会政治の風化を改めてこそ、国会の活性化が図られます。また、選挙によって多数となったら、次の選挙までは何をやってもよいというのではなく、国論を二分するような問題については直接国民に諮問する国民投票制度など、政治参加の拡大策の確立が必要です。これらの改革は与野党合意のもとで制度を整えればできることです。宮澤総理、私たちは政治家としてできることから国民の期待にこたえようではありませんか。積極姿勢に期待したいと思います。(拍手)
 同時に、中央集権型の政治構造は、許認可権や補助金など広い分野で深く根を張っており、政財官の癒着による政治腐敗の温床ともなっています。橋一つ、バスの停留所一つ、一々中央官庁がかかわるというシステムは異常だというほかありません。政治政章には自治と参加の原則に立つ集権排除、分権型政治の推進が不可欠です。政府省庁の権限を自治体に大胆に移譲し、分権化を計画的に推進していかなければなりません。社会党は、地方分権推進法の制定を提唱していますが、分権、自治の確立は党派を超えた課題です。宮澤総理はいかがお考えでしょうか。(拍手)
 次に、新しい時代の中での国際関係のあり方について、私の見解を述べ、総理の所信をお伺いいたします。
 冷戦終了後の今日、しかも我が国の行動が国際社会の動きを左右するまでになったとされる今日、新たな世界の平和秩序の構築と共生に向けて、いかなる積極的な理念を持つのかが問われています。そうした理念を内外に明らかにしてこそ、またその理念に基づく具体的な行動をとってこそ、国民からも諸外国からも信頼を得られるのではないでしょうか。
 私は、そのような理念を整理すれば、一、戦争と暴力の廃絶、二、飢えと貧困からの脱却、三、人権と民主主義の確立、四、地球規模の環境保全に象徴される人類の生存基盤と生態系の維持、五、協調と共生の国際関係、以上だと考えます。宮澤総理、この五原則に賛成いただけますか。もし賛成いただけるなら、これを国際貢献五原則として確立し、政府開発援助もそれに沿って改革すべきだと思いますが、いかがですか。(拍手)
 冷戦後の世界では、地域紛争が激化し、国連PKOが展開する機会が激増しているだけでなく、PKOそのものの性格が大きく変わろうとしております。
 ソマリアに見られるような多国籍軍方式の人道的介入、マケドニアでのPKO部隊の予防展開などは、これまでのPKOの枠を超えみ活動だと言えます。私は、国連の平和維持活動が時代の変化に伴って発展すること、またそれに日本が国是に従って協力することは当然だと考えます。しかし、それはあくまでも国際社会と我が国国民の合意を得たものでなければなりません。この点に関連して、昨年六月に公表されたガリ事務総長の「平和への課題」に盛られた平和強制部隊などの考え方について、先日、政府部内から、PKO協力法の平和維持軍への参加凍結を解除することなどが必要などの発言がありました。政府はこれまでの慎重な対応の立場を変えたのかどうか、総理の明確な答弁をいただきたいと存じます。(拍手)
 また、政府は、国連の安全保障理事会の枠組みに手を加えないでひたすら常任理事国入りを目指しているようですが、大国中心の常任理事国の体制のまま我が国がそれに加わることは、政治大国化を目指すものだとして国際的にも強い懸念の声が上がっています。
 さて、カンボジアでは、ポル・ポト派による武装解除拒否や今回のロケット弾攻撃など、停戦協定そのものが遵守されていない状況となっているのではありませんか。また、国民のコンセンサスを欠いたまま自衛隊の派遣に踏み切ったわけですが、要員の安全確保も焦眉の課題です。この点について、政府はUNTACとどのような協議を行ったのか、国民に明らかにすべきであります。
 さらに、政府は、みずから定めた派遣五原則を遵守するとともに、PKO法の根本的見直しについての協議を進めるべきです。協議の基本は、平和憲法の精神に基づいて自衛隊とは別組織をつくるという国民合意の考え方に立ち戻るべきです。いかがですか。(拍手)
 なお、この際、はっきりさせていただきたいことは、渡辺外相が、集団自衛権の行使は憲法違反としてきた政府の憲法解釈の見直しとか、自衛隊の三割か四割はいつでもどこでもPKOに出せるようにと発言している問題であります。国際貢献を口実に憲法の理念をないがしろにするものであり、その先には第九条を中心とした改憲の動きが見られます。宮澤総理は、十七日ブルネイで、こうした論議を、そう軽々しい話ではないと批判的見解を述べられましたが、放置しておくなら明確な閣内不統一にもなります。憲法原理の平和主義の否定につながりかねないこうした改憲論に対し、憲法政治に識見を持っておられる宮澤総理の御所見を改めて示してください。(拍手)
 お隣の韓国では、三十二年ぶりに文民の金泳三大統領が誕生いたしました。私は、心から歓迎の意を表明し、日韓関係の新たな発展を期待したいと思います。社会党も、そのための努力を尽くす決意です。また、日朝国交正常化交渉が遅延していることは遺憾であります。朝鮮半島の緊張緩和と南北対話の促進に側面から協力する立場からの総理の見解を示してください。
 同時に、国交正常化二十周年を経た目中両国関係も大切です。中国の改革・開放政策の進展に協力し、さらなる友好関係の前進を図ることは、アジアの安定、発展のために極めて重要です。
 それにつけても、政府高官が改憲について言及した途端に、東南アジアの新聞が、軍国主義の復活といったような批判を行うことを見ても、日本はアジア諸国からいまだ信用されていない事実があります。私たちがかねてから主張している戦争の反省と平和への決意を国会における決議をもって内外に宣言すべきです。(拍手)戦争責任は謝罪の言葉だけでは償えません。犠牲となったアジアの人々に対して誠実な補償を行うことを明確にすべきであります。そのためには、国会に戦後補償問題に関する調査と協議の場を設置し、国民的合意の形成を図るべきだと提案しますが、総理の見解はいかがでしょうか。(拍手)
 次に、クリントン政権の誕生と日米関係について質問します。
 クリントン大統領の政治的キーワードは「変化」であり、米国の理念を守るためと訴えています。総理も、従来の日米関係の常套句であった「日本外交の基軸」という言葉を使われませんでしたね。総理の施政方針演説にある「共通のビジョン」、「共通の理念」とは、新大統領のもとで具体的に何を指しているのですか。戦後から今日に至る日米関係を大胆に変化させながら、二十一世紀に向けての平和の秩序の構築がなされるべきです。「共通の価値観」とは、地球環境の保全、人権の尊重、市場経済の発展などが挙げられるでしょう。とりわけ地球環境は、両国で世界のGNPの約四〇%を占める日米両国が、その経済力、技術力を活用して積極的な保全のための施策が必要です。これらの諸点について、総理はどのような考えでしょうか。
 ことしの東京サミットの最大テーマの一つは、対ロシア支援であります。ポスト冷戦時代が安定するか否かは、ロシアの動向にかかっております。この事実を明確に認識している欧米諸国は、一層の対ロシア経済支援をサミットで強調すると考えますが、日本政府はどのように対応するつもりでしょうか。政府は、政経不可分の原則をやめ、ロシアの経済的、政治的安定に最大限の支援を行い、それによって四島の返還を実現するよう、対ロシア政策の根本的転換を図るべきでありますが、宮澤総理の見解を示してください。(拍手)
 クリントン政権の誕生によって、アメリカは今後五年間で国防費は一千億ドル削減されることになると言われます。世界の主要国が軍縮に向かい始めているとき、先進国で日本だけが相変わらず軍備増強を続けていることは、余りにも時代錯誤です。特に、政府の当初見積もりは三百二十五億円だったAWACSを、一・八倍程度高い一機五百七十億円で四機も購入するというのは、政府の姿勢を疑わせるものです。なぜこのような高値になってしまったのでしょうか。また、安全保障上必要なのでありましょうか。導入を取りやめるべきです。また、昨年の野党四党の合意に基づいて、冷戦体制下に策定された防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画の抜本的見直し作業と防衛費の削減を進めるべきだと思いますが、総理の所見をお伺いいたします(拍手)
 続いて、暮らしと経済の問題を中心にお尋ねをいたします。
 まず、厳冬の中、先ごろの釧路沖地震で大きな被害を受けられた皆様に心からお見舞いを申し上げます。そして、雲仙島原の市民の皆様の本当に長期にわたるお苦しみについては、言葉では言い尽くせぬ思いです。災害に見舞われた被災者の救済に全力を挙げることをお約束いたします。(拍手)
 さて、我が国には二つの不思議があると言われています。その一つは、違憲の実態にある肥大化した自衛隊の存在であり、もう一つは、経済大国であるにもかかわらず国民の生活の質の貧困さです。私は、日本が世界の隣人として尊敬されるためには、貿易黒字の解消とともに、本当の意味で内需を振興し、国民の生活水準を引き上げ、ゆとりと豊かさを実感できる生活者経済を確立することが不可欠だと思います。
 今、日本経済は大きな転換に直面しています。この十年間の異常なバブル経済を反省し、新たな政策目標を立てなければなりません。宮澤さんの経済運営は、大蔵大臣であるときから一貫してかじ取りを誤っていると言わざるを得ません。今や、古い在来型のカードを幾ら切っても経済は改善されません。新しい構造に対応する新しい政策を用意しなければなりません。
 私は、今日の複合不況、雇用不安を克服する上での必要な視点は、第一、国際協調、共生主義への脱皮、第二、内需・実需主導による生活成長路線への転換、第三、平和、福祉、環境へのシフト、第四、地域格差是正と小さな中央政府への移行であると確信いたします。
 その第一歩は、所得減税を実施することです。GNPに占める消費の比率は約六割を占めており、実質消費がマイナスを記録するまでに落ち込んでいるとき、財政出動の一環として大幅な減税の実施は当然であります。平成五年度の財政状況は厳しいことは承知していますが、個人消費の拡大と中期的な需要の伸び、投資意欲を増進させるために減税は不可欠です。政府経済見通しに照らして、その達成のためにも減税を実施し、個人消費を伸ばす必要があることは明らかです。私たちは、二兆円程度の減税は特例公債を発行しなくても大丈夫という確信を持っています。景気対策には四兆円以上の減税が必要という声もあります。
 政府には、当初予算が成立してから補正予算における減税実施を検討しようとする動きがありますが、そうであるなら、まず当初予算において減税を実施すべきです。その上で、さらなる減税の上積みの議論を進めるべきです。(拍手)所得減税の実施は消費税の税率アップが前提であるかの議論がありますが、私は反対です。法人会計制度も土地を初めとする資産課税も、もう一度洗い直すべきです。防衛費の削減など不要不急経費の節減とともに、分権の推進によって小さな中央政府を目指し、行財政改革を推進すべきです。短期あるいは中期の特例公債の発行についても、経済界や国民世論の意見を聞き、議論しようではありませんか。今必要なことは、現状維持策にしがみつくことではなく、現状を積極的に変革する姿勢です。宮澤総理の所得減税実施の決断を求めます。(拍手)
 そして、ゆとりと豊かさに必要な要素は、社会資本整備もさることながら、福祉・社会保障、教育・文化、労働時間の短縮や女性、高齢者の社会参加拡大など、ソフト面が重視されなければなりません。地球環境サミットは終わりましたが、環境基本法の制定やNOx対策、森林の保護と水質保全などを含む国内法の整備を推進する責務があります。教育改革とあわせて子供の人権を擁護する施策の推進は、最近の社会状況を見ても焦眉の課題です。がん対策やエイズ対策は今や世界共通の課題であり、がんとエイズの克服なくして文明の健全な発展はあり得ません。環境、教育、医療などソフト対策の推進こそ、中長期にわたる日本経済の成長戦略でもあります。(拍手)
 私は、特に福祉の問題を強調します。高齢者の介護問題は、市民一人一人にとって深刻な問題です。政府の十カ年戦略、ゴールドプランでは福祉の水準が不十分なことは、家庭の実態を見れば明らかです。社会党は、政府計画の前倒しと地域福祉の推進のための財政支援について提案しておりますが、同時に、女性の社会進出の推進のためにも介護休業制度の確立を進めなければなりません。(拍手)
 介護の問題とあわせて、ゆとりある生活の重要な柱の一つは自由な時間づくりであり、勤労所得の向上と労働時間の短縮です。ドイツやフランス、などに比べて年間三カ月分も労働時間が長く、過労死も後を絶たない現実をどうするのか。一九九二年度中に年間千八百労働時間という国際公約がなぜ実現されないのか。私は、宮澤総理のおっしゃる生活大国が絵にかいたもちと言われても仕方がないと思います。福祉と環境にどう具体的に取り組まれるのか、宮澤総理の明快かつ具体的な答弁を求めます。(拍手)
 関連して、人権にかかわる問題について二つ伺います。
 第一は、沖縄の問題です。沖縄が復帰して二十年たちました。この間、沖縄県民は多くの試練と辛苦に耐えながら、平和で豊かな沖縄県づくりに懸命の努力を傾けております。しかし、沖縄問題の基本は、広大な米軍基地の整理、縮小、撤去の問題です。政府の約束は遅々として進まず、また戦後処理、復帰処理問題も、懸案となっています厚生年金等の格差是正もいまだに未解決です。総理は、こうした沖縄県民の痛みにどのようにこたえられるおつもりであるのか、所見を伺います。(拍手)
 第二に、ことしは、国連が定めた国際先住民年です。しかし、今日に至るも政府は何らの方針も計画も示してはおりません。日本の先住民としてアイヌ民族が存在する事実についてさえ認めておりません。私は、我が国の歴史的事実を率直に認め、アイヌ新法制定に向け、政府も検討に入る時期に来たと思いますが、いかがでしょうか。(拍手)
 宮澤内閣が部落解放問題や在日外国人の人権を尊重する姿勢を持つことこそ、世界に日本が平和貢献を果たし、世界の友人としての地位を占める前提条件と考えますが、総理の決意を促します。
 さて、暮らしと経済の問題は地域社会の安定の問題と不可欠ですが、私はことしに入って、日本の食糧基地と言われる北海道に伺い、愕然といたしました。私が伺った桧山地域十町村、三千八百三十一戸の農家では、昨年三月、新規学卒で農業後継者となったのはたった一人だということでした。宮澤総理を初め自民党の閣僚の米自由化あり得べしとの発言に、農家の不安は頂点に達しています。
 総理、今農水省には、農業・農民団体にとどまらず、消費者、市民運動の皆さんが多く訪ねているという事実を御存じでしょうか。新ラウンドが、農畜産物貿易を盛んにするために安全基準を緩めようとしていることに対する警戒心からです。既にOECDも、地域環境を守る立場から、環境、農村社会の維持を重要課題として取り組みを開始しています。米の自給確立と自由化、反対の国会決議を生かし、農業と農村の再生を目指すことは、国際的にもその意義が認められているのです。(拍手)新ラウンド交渉が大詰めを迎えている今、日本は食糧安全保障の見地に立ち、自給力はこういうふうに確立していく、中山間地における農業は国土保全の観点からもこれが必要だという基本政策を立て、例外なき関税化に反対しながら、欧米諸国の理解を求めるべく強力な外交を展開しようではありませんか。宮澤総理の明快な見解を示してください。(拍手)
 私たちは、今、現在から未来へ時代の列車に乗り込もうとしています。そのためには、日本と世界の大きな流れの中で、私たちの政治や経済のシステム、暮らしの実態を見詰め、政治改革、経済社会改革を断行しなければなりません。
 私たちは、戦後日本の営々とした歩みが軍事国家への道でなかったことに誇りを持ち、経済大国日本と言われる現実の中に生きています。しかし、長く続いた自民党一党政治の構造的、制度的疲労が政治家と金にまつわるスキャンダルを生み出し、国民の政治不信がかつてなく高まっています。今、改革が叫ばれています。同時に、国際社会への貢献を初めとする新しい時代の課題への取り組みが求められています。
 私は、こうした要請にこたえるに当たって、憲法を積極的に政治の場で展開する創意論を提唱いたしました。世界に誇るべき日本国憲法の平和主義、国民主権、基本的人権の原理を高く評価しつつ、創造的に政策展開させるべきだという考えてあります。憲法を政治に生かすとは、「護憲」の二文字を唱えるだけにとどまらず、現実と向き合い、私たちの理想とのギャップを埋めるタブーなき議論を行い、憲法理念を政策化していかなければならないからです。もちろん、私は、憲法をこれまで粗末に扱ってきた人たちの乱暴な条文改正論にくみすることが改革ではないと確信をしております。(拍手)
 民主主義社会の進歩と発展、国民の多様な価値観を包摂するもの、言葉をかえて言えば、平和、人権、環境、公正の基本価値を体現するものが改革の目標であります。
 総理、この目標に向かって、私は、改革が可能な率直な提案を行い、大いに議論しようと呼びかけました。賛成いただけるのではないでしょうか。総理の基本的見解をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 先般、日本社会党委員長に御就任になられました。心からお喜びを申し上げます。内外極めて多事の折でございますので、御健闘をお祈りを申し上げます。(拍手)
 歴史的変動の中にありまして、我が国をめぐる国際環境あるいは国民意識は、御指摘のように大きく変化をしつつございます。そうして、このような変化は、戦後我々が長い間築き上げてまいりましたこの経済社会システム全体の変革を迫るような種類のものであると考えておりますので、そのような場合のリードは当然政治が務めなければならないと考えます。政治が一日も早く国民の信頼を回復し、期待される機能を回復していかなければなりませんが、そのようなときにあって、いわゆる東京佐川急便事件が起こりました。まことに遺憾なことでございます。この真相解明は何よりも大切なことでございます。昨年の臨時国会におきましても、それに向けて各党が尽力をせられたところでございます。もとより政府といたしましても、可能な限りこれに協力をしてまいる考えでございます。
 と同時に、このような事態にあって国民の政治に対する信頼を確立するためには、いわゆる政治改革が焦眉の急務でございます。さきの国会で緊急改革を成立させていただきましたが、それに引き続きまして、政治の構造にまで立ち入った抜本的な改革をぜひ実現しなければならない。それをこの国会にぜひ実現をしていただきたい、こいねがっているものでございます。
 今我が国が歴史的な転換期に立っているということを仰せられました山花委員長の御認識には、私も深く共感をいたします。いわば我々の日本丸にとりましてはかって経験したことのない航海をするわけでございますが、この航海を成功させるために、政治への信頼を回復して、いわば船内の総力を結集することが不可欠であるとおっしゃいますことは、私もまことに同感であります。
 と同時に、このように激しく動く情勢の中で、内政、外交上処理を急ぐたくさんの問題がございます。これらの問題の処理を怠りますならば、海図のない航海をいたします日本丸が針路を誤るおそれがある、そのことも同時に考えておかなければなりません。このことも政治に求められるリーダーシップでございます。どうぞ、この点につきましても御理解と御協力をお願いいたしたいと存じます。(拍手)
 具体的な問題についてお尋ねがございまして、検察審査会が不起訴不当の議決を行ったことをどう思うかということでございました。
 これにつきましては、後ほど法務大臣からお答えを申し上げますけれども、検察当局においては、この議決を受けて、事件を再度立件をして、その上で適切に対処をいたすものであると考えております。
 なお、国会における証人喚問の進め方等につきましては、国会において御判断をいただくことと存じます。
 政治資金につきまして、政治資金は政治活動を支える財政的な基盤であります。そういう意味で、選挙制度そのものと密接な関係を有しておりますから、この二つの改革は両々相まって行うことが大切であると思います。
 自由民主党が先般策定いたしました「政治改革の基本方針」では、政策、政党中心の選挙制度を実現するということとあわせまして、政治資金自身も政党中心に調達をすべきではないかという考え方に立っております。その場合、したがいまして、企業等の団体献金は、いわゆる資金調達団体に対する、個人に対する少額のものを除きまして政党に限るというふうな考え方をしておりますし、同時に、政党に対する公的助成制度を創設したいと考えておるものでございますけれども、いずれこれらの問題につきましては、今国会において各党間で十分御論議をいただきたいと存じます。
 次に、小選挙区制についてお話がございました。
 いわゆる小選挙区制は、各政党が一人の候補者を立てて選挙を争うわけでございますから、選挙そのものはおのずから政策中心のものになる、また、そのときどきの政権の選択について有権者の意思が明確になるというような点で特色を持っておりますし、有権者にとってもこれはわかりやすい制度だと思います。現行中選挙区制度を抜本的に改革するとすれば、その導入が最も望ましいのではないかというふうに思っておりますけれども、比例代表制について申しますならば、比例代表制は多様な民意をそのまま選挙に反映をする、その結果として少数勢力も議席を確保し得るという特色を確かに持っておりますけれども、その結果として、ともすれば小党分立になりやすい、そうして連立政権になる可能性が大きいということは内外の、外国の例でよく我々が知っておりますが、その結果、政権が不安定になりやすいという問題の指摘もございますことは御承知のとおりと思います。
 選挙制度の問題は、いずれにしてもお互いの土俵の問題でございますので、各党ともいろいろな御意見をお持ちのことは当然でございます。今後、各党間で十分論議を尽くしていただいて、合意点を見出していただくことを念願をいたしております。
 それから、国会の問題につきまして、国会議員同士が十分に討論をする機会をつくるべきである、国会の活性化、議会制度協議会等についてのお話がございました。
 私も一人の国会議員として、国会がそのような十分な、お互い議員同士の議論を行われる場になることはもとより賛成でございますが、議会制度協議会等の場において御議論を進めていただいておるものと考えております。
 それから、国民投票制度、重要な問題については国民投票というものをもっと考えるべきではないかという御指摘であったのであります。
 この点については、いろいろな議論がありますし、憲法上の問題もございますけれども、外国の例を見ておりますと、例えば大統領制のフランスなどではしばしば国民投票が行われます。しかし、イギリスの場合にはほとんど国民投票が行われることはない。それは議員一人一人がそのような問題についてこそ国民の負託を受けておる、それは我々の仕事であるという、そういう考えに基づくもののように承知をしております。(拍手)したがいまして、この点はいろいろ御議論のあるところですけれども、要するに、国民の代表である国会が国民に期待される機能を十分に発揮できるようにすることが一つの先決ではないかと思います。
 地方分権、地方自治について仰せになりましたことは、私は概して賛成でございます。
 つまり、我が国の場合、非常に中央集権的ななお色彩が強い、そうして一極集中の弊があるということは、戦後今の段階になりますと、国民生活に必要ないわゆる基本的な環境、シビルミニマムというものはまずまず達成されたわけでございますから、その上のことは地方に任せる方がいい、殊に生活に密接した問題はなるべく地方に任せる方がいいというのは、私は、それが本当だろうというふうに考えます。その点は、御指摘が当たっていると思いますので、政府といたしましては、いろいろな機会に、地方分権の推進、地方自治団体の自主性、自立性の強化を図ることに努めてまいりました。今後ともそのような努力をいたすべきものと考えます。
 それから、国際貢献について五つの原則をお示しになりました。
 私どもとして、従来、いわゆる国連を中心とする国際的な努力、あるいは軍備の管理、軍縮の促進、それから各国における人権、自由、民主主義といった普遍的価値の推進、さらに加えまして南北問題でありますとか、あるいは地球環境、難民、人口、エイズ、麻薬といったような地球的規模の問題の解決もございます。そのようなことを昨年六月に政府開発援助大綱に盛り込んだわけでございまして、援助の原則としてそのような考えに基づきまして、開発途上国の軍事支出の動向、あるいは人権についてどのような考慮が払われておるか、環境というものを大事に考えているかどうかといったようなことを、援助を行います際の一つの大切な判断基準として策定をいたしました。今後も、御指摘の趣旨に沿いまして、そのようにやってまいりたいと思っておるところでございます。
 それから次に、国連のブトロス・ガリ事務総長が、いわゆる「平和のための課題」というもとに最近提案せられました構想についてどう考えるかというお尋ねでありました。
 国連に求められる役割が冷戦後の世界に非常に大きくなり、国連としてはこれに対応するに寧日なきありさまでありますが、必ずしもまた効果が発揮できないということの中から、事務総長がそういういわば使命感を持ってああいう発言をされたという、そういうイニシアチブは評価をいたします。
 ただ、子細に点検をいたしますと、例えば平和執行部隊というようなこと、あるいは、平和強制部隊というのは妙な言葉でございますが、平和が実現されるように、紛争の間に場合によれば割って入らなければならないという、そういう使命感がと思いますけれども、それは今まで言われておった国連の平和維持活動とは異なる考えに立脚するものではないかと思います。国連がそういう役割を新たに果たすべきかどうか、使命感は了解ができますけれども、それは国連加盟国の間で十分に議論をする必要があるであろう。私どもとしては、したがって、その問題提起はわかるけれども、引き続き検討すべき問題であるというふうに思っております。
 もちろん、その検討の過程の中において、そのような国連の任務、活動が仮に望ましいとしましても、我が国がそれに参画できるかどうかということは、これはまた別途の問題でございます。武力行使にわたるというようなことになりますと、これは別個の問題でございますから、そこは分けて考えておかなければなりませんが、いずれにしても、この事務総長の提言というものは、これから関係各国が検討していく問題提起であろうというふうに思います。
 カンボジアの問題について御言及がございまして、散発的、局地的な事件が発生をしておりますことは、私どもも絶えず関心を払っておりますけれども、いずれにしても停戦の前提が危うくなっているような状況ではない。また、ポル・ポト派も全面的に戦闘を再開するような行動に出ているわけではございません。したがって、パリ和平協定に基づく基本的な枠組みは、私は維持されておると思いますし、紛争当事者の停戦の合意も保たれておるわけでございますので、したがって、我々の、いわゆる国際平和協力法に基づきます人の派遣ということは、その前提は今日も崩れておらないというふうに思っております。
 たまたまUNTACの文民警察等に対する襲撃事件がございまして、その詳しい事情ははっきりいたしませんけれども、先般直ちにカンボジア駐在の今川大使からUNTACの特別代表に対して、要員の安全確保について配慮をするように申し入れ、先方よりも、できる限りの安全策を講じたい旨の回答を得ております。
 したがいまして、基本的な五原則は満たされておると考えておりますが、いろいろ御議論がありました後、自衛隊を初め多くの人々にカンボジアに行きまして国づくりに従事をしてもらっておりますが、自衛隊が長年にわたって蓄積した技能、経験、あるいは組織的な機能が十分に活用さおておりますし、その後、知り得るところをいろいろ想像いたしますと、そのような経験のない、組織のない者があれだけの貢献を果たしてなし得たであろうかというふうに思われます。自衛隊の諸君に活躍をしてもらっていることが我々の国際協力の目的にかなうものであるというふうに私どもは判断をしておりますし、また、あの法律が国会で御審議になっておりました当時、国民の持っておられました懸念というものも、その後の実績、これをテレビ、報道等で見ておられる国民からは大多数の理解と支持を得ておるものと私は考えております。(拍手)
 国際平和協力法につきましては、三年を経た後において見直しを行うという規定がございますけれども、まだ協力が開始されて間もない今の段階でございますので、このような実績を積み重ねもことによって国民的な判断に資したいというふうに思っております。
 改憲論について総理大臣はどう思うかというお尋ねであったわけでございますけれども、民主主義、平和主義、基本的人権の尊重あるいは国際協調主義等々は、これは申し上げるまでもなく国民的な支持を得ているものというふうに考えております。
 もちろん憲法には改正手続が、それ自体憲法の中に盛り込まれておりますから、いわゆる不磨の大典である、永久不変のものでおるというふうには考えておりませんけれども、したがって、これにつきましていろいろな御議論があることは、憲法の理解の上で、私は、これは決して悪いことではない、よく憲法の言っていることを国民が理解をするということは大切なことと思います。ただ、今の段階で国民の中に、ここをこういうふうに直すことがいいというような具体的な意見のコンセンサスが出ておるようには私は判断をいたしておりません。そういう成熟は見られない。どこをどうするかといったようなことにつきましてのもう一つ詰めた議論というものは、コンセンサスとしては見られませんので、私としては現在憲法の改正ということを考えておりません。
 朝鮮半島の問題についてお尋ねがございました。
 朝鮮半島が安定をするということは、半島のみならず、我が国にとっても、東アジア全体にとっても重要と思っております。我が国としては、御承知のように、朝鮮民主主義人民共和国と交渉をやっておるわけでございますけれども、粘り強くこの交渉をいたしてまいりまして、朝鮮半島の安定に寄与したい、また南北対話推進のための環境づくりにもできる限りの貢献をいたしたいと思っております。
 それから、過去の我々の戦争への反省、アジアに対する我々の平和への誓い等につきましてのお尋ねは、しばしば申し上げましたとおり、これらの人々に耐えがたい苦しみを与えた、そういう体験をおさせしたことについて、深い反省と遺憾の意を政府としてもしばしば表してまいりました。
 法律的には、いわゆるサンフランシスコ平和条約あるいは二国間の条約等々で誠実に対応しておりますけれども、そのようなおわびの気持ち、反省の気持ちをこのような方々にどのようにしてあらわすことができるか、各方面の意見を聞きながら誠意を持って検討いたしているところでございます。
 なお、国会の御決議あるいは御協議の場につきましては、これは国会の御決定にまつところであるというふうに思います。
 米国との関連につきまして、いわゆる新大統領との間に持つ「共通のビジョン」、「共通の理念」とは何かということにつきましては、合わせて世界のGNPの四割を持つ両国でございます。幸いにして共通の価値観を持っておりますから、その価値観の実現、世界の平和、民主主義あるいは市場経済のために協力をするということが基本的な両国の間のいわば使命である、ビジョンであるというふうに思っておりますし、もちろん両国間には幾多の問題がございますので、これは話し合いによって解決をしていきたいというふうに思っております。
 それから、環境問題につきまして、先般の国連環境開発会議の成果、我が国も大きな貢献をいたしましたが、それを着実に実施をいたしたい、また、クリントン政権もそれにつきましては非常に熱心でございますので、米国とも力を合わせてこの解決に努力をいたしていきたいと思います。
 ロシアとの関係でございますが、昨年、エリツィン大統領の訪日が突然延期になりましたことはまことに残念なことでございましたが、ロシア国内のいろいろな事情というものが好転をすることを期待をいたしておりました。
 昨年十月にいわゆる旧ソ連支援会議が、我が国がホストとして東京で主催をしまして、これについてはエリツィン大統領から後に感謝の表示を受けておりますが、十二月には両国外務省の次官級が会議をいたしました。また、つい先ごろ、本年一月十三日に、渡辺外務大臣がコズイレフ・ロシア外相とパリで会談をしておられまして、その結果、エリツィン大統領の訪日実現に向けて真剣な準備を行うということに合意をされております。
 一日も早くそれが実現することを希望いたしておりますが、我が国としては、エリツィン大統領がかねて言われます法と正義に基づきまして北方領土の問題を解決をして、そうして関係の正常化を図らなければならない。もとより、ロシアを初めとする旧ソ連邦の国々が民主主義、市場経済の道を歩んでくれることは、我々にとりましても共通の利益でございますので、そのための努力は、我が国としてもちろん惜しむつもりはございません。
 なお、東京サミットにつきましては、まだ正式にいわゆるシェルパの会合というものが始まっておりませんので、議題、参加者等、あるいは参加の内容等につきましては、いまだ決定をいたしておりません。これからのことでございます。
 それから、AWACSを買うことになった、これは非常に高い買い物になった、のみならず我が国の防衛のためにこれが入り月かという、こういう問題の提起をされたわけでございます。
 この点は、政府部内でもいろいろに議論をいたしましたが、やはり我が国のように専守防衛の立場をとる国にとりましては、いわゆるウサギの耳の長いことは何としても必要である。これは、専守防衛でありますだけに必要だということについては、関係者の間で異論がなかった。
 ただ、言われますように、この単価が非常に高くなったということは事実でございます。それは、かつてこのAWACSをあちこちの国が買いました時代には相当量産体制にあったわけでございますが、その需要がもう一応満たされた。我が国としてはいわば遅く需要者に、レートカマーになったわけでございますので、その単価がかなり高くなったということは、これは事実でございます。事実でございますが、入り用なものであれば多少単価が値上がりしても、これは入り用なものであれば、やはりこれは我々としてこれを買わなければならぬ。その間にいろいろな交渉がございましたけれども、私は、大切な納税者の金を使わせていただいて、我々の専守防衛、安全を全うするためにこれは必要な買い物である、入り用なものであるという判断をいたしました。(拍手)
 それにしても、こういう国際情勢の変化の中で、我々の防衛体制というものを将来に向かってどう考えるかという、これは当然お互いに考えなければならないお尋ねでございますけれども、御承知のように今の防衛計画の大綱というのが、いわゆる基盤的防衛力、仮想敵を置かない、ミニマム必要な防衛力という考えに立っておりますから、この考え方自身は今修正をする必要はない。ただ、今の中期防衛計画が終わりまして新しい計画が生まれますまでの間に、この点についてはやはりもう一度検討をする必要があるであろうと思っております。
 なお、中期防衛計画につきましては、いわゆる見直しを三年後を待たずに先般いたしまして、総額を縮減いたしましたことは、過般の施政方針演説で御説明を申し上げたとおりでございます。
 所得税の減税についてお話がございました。
 これは前国会からいろいろ御議論のあったところでございますが、平成五年度の予算編成をいたしますときに、昨年の八月の総合経済対策の延長線でかなり大きな公共事業関係費を積み増しをしておりまして、財投につきましても一二%余り、地方単独事業もさようでございます。なお、生活関連の中で、公共事業の中で生活関連、住宅、下水道、環境衛生等につきましては、実に七%余りの伸びを予算に盛り込んでおりまして、先般の総合経済対策が、先般お認めいただきました補正予算を柱にして、これからことしの上半期にかなり経済に大きな影響を与える、それを平成五年度の予算が追っていくということでございますから、これは相当なインパクトになることは間違いがないと思います。また、住宅建設も好調でございますので、これだけの政府投資住宅建設があって経済に影響がないということは、これはあり得ないことである。が、ただ、それが経営者なりあるいは消費者の実感になって出てくるのに時間がかかるという問題が確かにございます。そして、施政方針でも申し上げましたとおり、これから数カ月、経済の推移には政府も十分注意を払ってまいらなければならないと思います。
 減税の問題は前国会でもいろいろ御議論があり、私ども、予算編成でいろいろ議論をいたしましたけれども、結局、財政が一定の負担をいたしますときに、それを減税という形で行うか、あるいは公共投資等々、そういう意味での国民の生活基盤を強める投資で行うか、いずれが景気に与える効果が大きいかというそういう問題が一つと、それから、減税をいたすとすれば、これは山花委員長と多少考えが違っておりますが、削減すべき歳出はもうぎりぎり削減をしておるというふうに考えますものですから、そのための財源は別途に求めなければならないという、そういう問題になってまいります。
 その辺の選択をどうするかということで、この平成五年度予算におきましては、まずそのような財政負担は、公共事業を初めとする国民生活関連の、中央も地方もそういう投資に充てることの方が景気の回復により役立つという判断をいたしましたことと、歳入補てん公債というものはやはりこの隊としては発行すべきではない、そういう二つの判断のもとにこのような平成五年度予算を編成いたしまして、御審議を願っておるわけでございます。ただいま言われましたことは、しかし十分に注意深く拝聴をいたしました。
 経済情勢は非常に難しゅうございますから、今後とも経済情勢の変化に細心の注意を払いまして、機動的な対応を怠らずにいたしますが、いずれにいたしましても、御審議を願っております平成五年度の予算をひとつできるだけ早期に成立をお認め願いまして、年度早々から執行させていただくことがとりあえず緊急なことであるというふうに思います。(拍手)
 環境問題につきましては、地球環境時代にふさわしい政策を総合的に進めてまいります。
 御指摘のNOxによる大気汚染、水質汚濁等の公害防止等々につきましても、全力を尽くしてまいります。
 教育につきまして御懸念がございまして、確かに今の急激な社会の変化の中で、教育内容が画一的である、あるいは受験競争の激化、いじめ、登校拒否、心を痛める問題が多うございまして、一人一人の個性を伸ばすこと、学校教育を多様化すること、あるいは学校、家庭、地域社会の連携を図ることなど、臨時教育審議会の答申を十分に尊重してまいるつもりでございます。
 がん対策とエイズにつきまして、がん対策の十カ年総合戦略はかなり効果を上げましたが、その後におきましても引き続き努力を続けてまいります。
 エイズは、何としても拡大をとどめなければならない問題でございますので、五年度予算案におきましても、御承知のように、厚生省の関係予算には惜しみなく十分な予算の増額をいたしてございますが、なお、これにつきましての知識の啓発普及あるいは検査や医療の拡充に十分の注意をいたしてまいります。
 それから、「高齢者保健福祉推進十か年戦略」、いわゆるゴールドプランでございますが、これはおかげで順調に年次計画を進めておりまして、その計画の達成に、西暦二〇〇〇年まででございますが、着実に全力を尽くしてまいりたいと思っております。
 その中で、御指摘のように、人的な確保を必要とするホームヘルパーであるとかあるいは看護婦さんであるとか、そういう問題につきましては、予算あるいは法律等で十分の確保を図ってまいりたいと思っておるところでございます。
 それから介護休業制度でございますが、介護を必要とする家族がだんだん多くなる、そういう労働者が多くなるということで、介護と職業の両立をどうするかということは、これからますます深刻な問題になってまいりますから、介護休業制度というのは、やはり制度としてひとつ定着をさせていきたい。ただいまガイドラインを策定をいたしまして、介護休業制度が多くの企業に導入されるように今いわゆる啓発指導をやっておる、そういう段階でございます。定着をしなければならない制度と存じております。
 それから、労働時間の短縮につきましても、先般申し上げたとおりでございますが、とりわけ中小企業等にやはりいろいろ問題があるわけでございますので、その自主的な取り組みに対して支援を図ってまいりました。また、これからもいろいろに支援をする必要がございまして、週四十時間労働制への移行を実現するために、今回労働基準法の改正案をこの国会で御審議をいただきたいというふうに考えておるところでございます。
 沖縄の問題につきましては、戦争中、戦後、今日に及びますまで、我々の国民の安全というものを沖縄の県民の人たちに重く背負ってもらっておるということは、片時も私ども忘れておりません。それに対する我々としてのいわば感謝の気持ちをあらわす道というのは、これはどんなにしてもし足りるということはないという思いでございますので、したがって、そういう意味で基地をできるだけ早くさらに統合をいたしたい。
 また、沖縄の復帰に伴う特別措置も先般延長をしていただいたところでございます。
 大抵の問題は解決いたしましたが、いわゆる厚生年金の問題が御指摘のように未解決であります。実は、本土復帰のときと平成二年と二度特別措置を講じましたので、政府としては十分なことをいたしたという気持ちがございますけれども、なおいろいろ御要望がございまして、関係省庁間で検討会を続けておるところでございます。御理解をお願いいたしたいと思います。
 アイヌ新法問題につきましては、北海道からアイヌ民族に関する法律制定についての御要望がございまして、関係省庁で検討委員会を設けまして検討をいたしております。
 同和問題につきましても、昭和四十四年以来二十四年間にわたって関係施策の推進に努めてまいりました。また、昨年、地対財特法も改正をせられました。一日も早い解決に努めてまいる考えでございます。
 外国人労働者につきましても、これは労働関係法令が適用されているわけでございますから、人権に配慮しつつ、十分な行政を適切に運営してまいりたいというふうに考えます。
 農村問題につきましては、昨年、農林省で「新しい食料・農業・農村政策の方向」が策定されました。いわゆる新政策でございますが、それに基づきまして、経営感覚にもすぐれた、いわゆる意欲的な農業者を育てていきたい。また中山間地域対策につきましても、これは生産面ばかりでなく、国土、環境の保全という見地から活性化を図ってまいりたいと思います。
 ウルグアイ・ラウンドにつきましては、政府は、国会決議等の趣旨を体して、国内産で自給するという基本方針を堅持してこの会議に臨んでまいりました。最終段階を迎えております。各国ともいろいろ難しい問題を抱えております。解決に向けて最大限努力をしておりますが、米につきましては、ただいま申し述べました基本方針で対処してまいりたいと存じます。
 創意論につきまして、御紹介がございました、御披露がございました。
 私は、憲法を生かすという意味で、憲法の理念を堅持しながら、憲法で許されていることにつきましては、内外の政治の現実がそれを求めている場合には、勇気を持って憲法で許されている限りのことは我々はいたしていかなければならないと思います。また、そのような憲法の運用が、そのような政策選択が今日の平和と繁栄を築いてきたというふうに考えております。山花委員長が、理想と現実との間に立って、それを埋める、タブーのない議論が必要であるということを呼びかけておられることを承知いたしておりまして、現実的な御提案として期待を申し上げているところでございます。(拍手)
    〔国務大臣後藤田正晴君登壇〕
○国務大臣(後藤田正晴君) 山花委員長の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、このたびの検察審査会の議決をどう受けとめておるのか、こういうことでございますが、私といたしましては、検察審査会の議決についてコメントをすることは差し控えたいと思いますが、検察当局といたしましては、直ちに事件を再起をして、議決書を検討の上、必要と認められる捜査を行っていると承知をいたしております。何分、公訴時効が迫っておりますから、近いうちに適正な処分が行われるものと考えます。
 次に、まだ処分のされていない不記載罪など政治資金規正法違反と所得税法違反について厳正な処分を行うとともに、二十億円余の行方についても徹底解明すべきとのお尋ねでございますが、政治資金規正法の収支報告書不記載等の告発事件や所得税法違反事件の告発事件については、検察当局で、被告発人とされた約六十名の候補者の特定のための捜査を含め、引き続き必要な捜査を行っておるところでございまして、いずれ法と証拠に照らし適正に事件を処理するものと確信をいたしております。
 また、御指摘の二十億円余について、いろいろな報道がなされておるということは承知をいたしておりますが、報道されたような事実について犯罪の嫌疑が認められたという報告には接しておりませんので、これ以上の答弁は差し控えたいと思います。
 以上、山花委員長の御質問にお答えをいたしました。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 三塚博君。
    〔三塚博君登壇〕
○三塚博君 私は、自由民主党を代表いたしまして、宮澤総理の施政方針演説に対し、質問をいたします。
 まず、質問に入ります前に、さきの皇室会議において、皇太子徳仁親王殿下と小和田雅子さんとの御結婚が正式に決定いたしました。この日を久しく待望しておりましたすべての国民とともに、心からお喜びとお祝いを申し上げる次第であります。(拍手)この御結婚の決定は、多難な内外情勢の昨今、日本列島に春風が吹いたかの感がありました。特に、ここに至るまでの皇太子殿下のお心には、古来からの日本人が持ち続けたさわやかなものが感じられ、国民の喜びをなお一層大きくしたものであります。(拍手)皇太子殿下と小和田雅子さんの末永いお幸せを、皇室の御繁栄とともに心からお祈りを申し上げるものであります。(拍手)
 さて、本年に入り、世界では、欧州においてEC共同市場が発足、米国においてクリントン新大統領が誕生するなどの動きがありました。また、二月には、お隣の韓国において、三十数年ぶりにきっすいの政党政治家金泳三氏が大統領に就任されます。
 世界はまさに激動の時代にあります。この世紀末、歴史は激しく揺れ動き、人類社会は地球規模で大きな節目を迎えていると言えます。特に、ソ連邦崩壊とそれに伴う東西冷戦終結後の国際社会の変化の速さは、我々の予想をはるかに上回るものでありました。同時に、冷戦秩序の崩壊による民族、宗教対立は、さまざまな地域紛争を引き起こす結果と相なりました。
 また、その一方、地球規模での環境破壊問題は、新たな国際的重要課題の一つとして大きくクローズアップされてまいりました。日本人初の宇宙飛行士となりました毛利衛さんが、宇宙から見た地球をリンゴに例え、それを覆う大気ほ皮一枚の厚さと言っておりますが、各国の英知を結集して、その皮一枚の大気を汚染から守らなければなりません。
 旧ソ連のゴルバチョフ大統領は、かつて「歴史の流れにおくれた者は、それによって罰を受ける」と述べました。しかし、そうした歴史認識を持ちながら、ゴルバチョフ氏ほ、わずか二年後に大統領の職を去らなければなりませんでした。このことは、我々政治に携わる者が、今日どういう時代に置かれているのかを端的に物語っていると思われます。内政においても外交においても、この歴史の転換期に対処する責任を負った我々政治家は、旧習に固執せず、一党一派の利害を乗り越えて、必要な変革、改革にはいささかもちゅうちょせずに果敢に挑む覚悟と決断が求められていると考えるのであります。(拍手)
 思えば、十九世紀末、明治維新を果たし、富国強兵と殖産興業を旗印に近代国家の建設に邁進した日本人には、純粋な改革のエネルギーが満ちておりました。しかし、そうした国民の夢や希望は、明治、大正、昭和という時代を経て軍国主義の中にかき消え、太平洋戦争で国家のすべてが灰じんに帰するという惨禍を経験いたしました。しかし、我が国は、戦後の廃墟の中から平和主義を国是として再び立ち上がり、民主主義、自由主義、市場経済のもとで、国民の生活の安定と経済に重点を置いて努力を重ね、今や世界のトップに位置する経済大国に発展したのであります。
 しかしながら、現在の歴史の流れは、一国平和主義、経済最優先主義の延長線上に日本が甘んじることを許す環境にはありません。今求められていることは、内外の大きな変革に的確に対応し、来るべき二十一世紀に向けて我が国の進むべき方向を明確に示し得る責任ある政治なのであります。
 内政における最重要課題の一つは、頂点に達した感のある政治不信の解消であり、現在の政治制度を抜本的に見直さなけれぱ、国民の信頼を回復することはできません。戦後一貫して政権を担当してきた我が自由民主党は、政治改革の主体となり、みずからの血を流し、その実現に突き進むことをここにはっきりとお誓い申し上げるものであります。(拍手)
 また、昨年から低迷を続けている我が国経済は、国民生活に陰を投げかけております。この不況の克服は当面の最大の課題であります。
 国政の最高責任者である総理に対し、歴史的な激動を続ける内外情勢に的確に対応する御決意のほどをお伺いを申し上げます。
 以下、順次、課題ごとに御所見を承りたいと思います。
 この国会で真っ先に、しかも与野党の総力を挙げて取り組むべき課題は政治改革であります。
 政治が国民の信頼のないところに成り立ちませんことは言うまでもありません。しかし、残念ながら、現状はたび重なる不祥事件が、かつてなかったほどの政治不信を国民の間に生み、厳しい批判の声が沸き起こっている現況であります。政権政党である我が自民党の責任重大なることを痛感するとともに、国民各位に深くおわびを申し上げる次第であります。
 政党が信頼を失えば、議会制民主主義は崩壊に向かうしかございません。日本の政治はいわば瀬戸際に立っているのであり、これを立て直すためには、自民党が先頭に立ち、与野党がそろって抜本的改革のために立ち上がり、新しい政党政治を創造するしか道はないと確信するものであります。(拍手)
 政治改革の核心は、選挙制度を抜本的に見直すことにあります。私は、まず現在の衆議院の中選挙区制度の改革をしなければならないと考えます。
 御承知のように、今日の制度では、多数の議席を確保して政権を担当しようと思えぱ、どの政党でも一つの選挙区に複数の候補者を立て、同じ政党の候補者が同士打ちを演ぜざるを得なくなります。その結果、政策で争うのではなく、有権者との個人的なつながりを密接にするため、選挙のときはもちろん、日常政治活動の大半をも費やしてしまうことになるのであります。これが今日の政治不信の原因となっておる政治資金や政治倫理、派閥政治など、さまざまな問題の底流にあるのであり、そのことは、これまでも繰り返し指摘されてきたところであります。
 国民の政治不信がかつてない高まりを見せている今、私は、もはや小手先の改革ではなく、思い切って中選挙区制の古い衣を脱ぎ捨てるときが来たと思うのであります。(拍手)我が党は、こうした認識に立って、昨年十二月「政治改革の基本方針」をまとめ、衆議院における一選挙区一議員の単純小選挙区制の導入を今国会に提案することを決定いたしたところであります。
 単純小選区制度は、その仕組みが国民にわかりやすい制度であります。また、選挙が、候補者個人の選挙から政党本位、政策本位に変わることが期待できるのであります。さらに、政党が国民の期待に反する行動をとれば、次の選挙で批判を浴び、間違いなく政権を離れざるを得なくなるのであります。その意味では、政権交代を想定した制度であると言え、政治全体に緊張感がみなぎることになるでありましょう。こうしたさまざまな点を考え合わせ、単純小選挙区制度を実現すべきだと考えるのでありますが、総理の見解を伺います。(拍手)
 政治改革のもう一つの重要な課題は、政治資金に関する制度を改めることであります。政治活動には相当の資金が必要であることは否定できない現実であります。現在、資金は政治家個人が中心となって集めていますが、選挙制度を政党中心の仕組みに変えることとあわせて、政治資金も政党中心の仕組みに改革する必要があります。
 そこで我が党は、政治資金の調達団体を二つに制限し、政治家個人への寄附に一定の制限を設ける一方、政党への公的助成制度の導入により、党の財政基盤を充実させる方針を打ち出しております。もちろん、こうした改革の実行に当たっては、国民に新たな負担をお願いするわけでありますから、政治資金の収入、支出とも、一点の疑惑も招かないよう、透明性を確保する必要があることは言うまでもございません。そのため、寄附の公開基準の引き下げなどの措置が不可欠であるのに加え、私個人としては、公認会計士等専門家の監査を義務づけるなどの方法もあるのではないかと考えます。
 このほか、国会の審議充実と能率的な運営のための改革や、政党自身の改革も進める必要があります。
 政治改革は、今や待ったなしの段階を迎えております。我が党は、単純小選挙区制の実現に向けて、宮澤総裁を先頭に全党一丸となって取り組む決意であることを改めてここに表明をいたします。(拍手)
 もちろん、選挙制度を初めとする政治改革は、我が党だけでできるものでもありません。各党と討議を重ね、合意点を見出し、広く国民の理解を得られる形で進める必要があります。幸い、去る二十二日、本院に政治改革調査特別委員会が設置されました。各党がそれぞれの抜本改革案を本院に提出して、オープンな形で徹底した論議を行い、お互いの最大の努力により合意点を探り、国民の期待にこたえようではありませんか。
 宮澤総理はこのたび、みずから我が党の政治改革推進本部の本部長に就任されました。一八八三年、イギリスにおいて、時の宰相グラッドストーンは、議会政治の再生を期し、政治腐敗防止法を制定するため、政治生命を賭して取り組み、なし遂げたのであります。まさに宮澤総理には、我が国のグラッドストーンになっていただきたいのであります。(拍手)政治改革に取り組む決意をお尋ねを申し上げる次第であります。
 さて次に、現在我が国が抱えている喫緊の最重要課題である景気問題についてでありますが、その前に、今般の釧路沖地震におきましては、亡くなった方、けがをされた方のほか、住宅などに相当の被害が発生いたしました。被災者の皆様に、党を代表し心からお見舞いを申し上げたいと思います。我が党といたしましては、政府ともども、被災者の救済、施設の早期復旧に全力を挙げて取り組んでまいります。
 さて、今回の不況はいわゆるバブルの崩壊がきっかけとなって始まったことから、当初はバブルの清算であると考えられておりましたが、時がたつにつれ、実体経済にも影響が及び、極めて深刻な状態に立ち至っております。
 例えば、消費の実態を百貨店の売り上げで見ると、昨年十一月には全品目が前年割れとなっており、また、バブルとは関係のない日用品が中心のスーパーの売り上げすらも前年割れを続けておるのであります。一般国民が消費に対して極めて慎重になってきていることは明白であります。
 設備投資についても、企業経営者は、三十四年ぶりの減収、減益という事態に投資マインドは冷え込み、非常に弱気なものになっております。企業の倒産件数も増加傾向にあります。当初の不動産や株の価格下落によるバブル崩壊型の倒産から、昨年に入り、いわゆる不況型倒産の割合が半数を超えるに至っておるのであります。さらに、今後は雇用問題も楽観できません。また、企業内失業者も少なくないと言われるなど、その実態は予想以上に深刻であります。
 こうした状況に対処し、政府と我が党は、十兆七千億円の総合経済対策を決定し、その円滑な実施に努力を続ける一方、平成五年度予算案においては、公共事業関係予算の高い伸びを確保するなど、景気に十分配慮をいたしてまいりました。まずは、平成五年度予算を年度内に成立させることが景気対策の決め手として不可欠であり、国民生活の安定を目的とする国会の責務でもあると考えるのであります。(拍手)議員各位の御理解をお願いを申し上げます。
 さて、私のところには、今回の不況による生活の苦しさを切実に訴える手紙などが数多く寄せられております。例えば、企業の人員整理による失職、残業がなくなることによる給与の目減り、そして住宅ローン支払いが難しくなったなどの悲鳴であります。私は、経済あるいは国民生活の実態は、統計数字にあらわれる以上に深刻であると受けとめているものであります。
 今回の不況は、資産デフレの影響が強く、さらに、成長を支えた産業の回復の兆しがいまだ見られないことなどから、土木中心の従来型公共投資だけではなく、景気を回復できる総合的な対策が望まれるのであります。我が国経済は、言うまでもなく民間主導であります。個人消費、民間設備投資、在宅投資に回復が見られない限り、日本経済の確実な成長はなく、平成五年度政府見通しの三・三%成長の達成も難しくなるのであります。この際、民需の自律的回復を促進するための対策を、ちゅうちょすることなく機動的に実施することが求められます。
 現在の深刻な事態を招いたもう一つの要因は、対策実行のおくれにあるとの厳しい指摘もあります。後手後手ではなく、時期を失せず、断固とした必要な対策を実施すべきであります。
 我が党は、こうした考え方のもとに、昨年末、総合景気対策本部を党内に設置いたしました。対策本部は、各地方の現地調査等を行い、事業者、消費者など各界各層の皆様から御意見をいただき、国民の皆様の生活実態を把握しながら、適時適切に金融財政措置の出動を考える等、不況の克服に向かって全力を傾注してまいる決意であります。
 また、世界経済とのかかわり合いも重要であります。先進諸国の経済が全体として停滞している中、我が国の内需主導の三・三%成長への期待は極めて強いものがございます。日本は、東京サミットの議長国として、また世界経済の大きな責任を負っておる経済大国として、我が国経済の早期回復を通じて世界経済全体が力強い成長を遂げるよう、最大限の努力をすることが求められているのであります。景気回復に向けての総理の決意をお伺いを申し上げます。
 次に、外交政策についてであります。
 国の外交は、その国の風格を示すものであります。外交は内政の延長であると言われるゆえんもここにあります。今や我が国は、国内の諸改革を断行するとともに、積極的に自立した外交を展開すべきときにあります。
 世界は今、環境問題やエイズ問題、武器輸出等あるいは兵器の拡散、地域紛争などの問題解決に国際的な取り組みがますます重要と相なっております。貿易、経済面でも世界経済全体の回復に向けた世界的な政策協調や、ガット・ウルグアイ・ラウンドの成功が不可欠となっております。
 また、旧ユーゴスラビアの内戦やソマリアの悲劇といった地域紛争、アジアにおけるカンボジア問題などは、いずれもその解決に向けて国際的な取り組みが要請されるところであります。
 既にカンボジアにおきましては、昨年成立した国際平和協力法のもと、六百余名の自衛隊員と七十五名の文民警察官が、炎天下のもと活躍中であります。我々はこれらの方々の御苦労に思いをいたしながら、これからの日本が果たしていかなければならない国際協力への責任について、国民的レベルまで理解と協力の度合いを高めていかなければならないと考える次第であります。(拍手)これからの日本外交は、国民の皆様の御理解と御協力を得ながら、国際社会全体の利益を守るという基本を踏まえ、展開すべきものと考えるのであります。
 我が国の外交の最大の柱は、言うまでもなく日米関係であります。日米は、日米両国で世界のGNPの四〇%を占め、世界の平和と安定に格別の責任を有しているのであり、ともに民主主義、人権の尊重、市場経済という普遍的な価値観共有のもとに、自己の利益だけにとどまらないグローバルな発想を行うことのできる国であります。
 米国のクリントン新大統領は、「日米関係は米国にとって最も重要な二国間関係である」と述べております。その言葉の背景にほ、外交、安全保障では両国の関係はグローバルな広がりを見せている一方、経済、貿易では依然として緊張要因を抱えているとの認識がうかがえます。また、米国議会などには新たな対話を開始すべきであるとの考えもあり、我が国としては、総理の早期訪米も含め、早急に新政権との接触を深め、日米関係の基本的認識の共有化を図るべきだと考えるのでありますが、いかがでしょうか。
 次に、ロシアの問題です。ロシアの安定は世界の平和と安定にとって最も重要なポイントだと考えます。ロシアが我々と同じイデオロギーの国に転換するための努力を西側全体として支援し、この改革が後戻りしないことを確かにすることが重要であります。北方領土問題を抱える我が国としてほは、そうした国際的支援体制に参加しながら、平和条約を含めて全体としてバランスのとれた関係を進展させる必要があると考えます。
 また、アジア・太平洋地域の安定と繁栄にとって、中国は極めて重要な存在であります。中国との協力関係を一層進展させていく中で、先進民主主義国が求める民主化や人権面でのさらなる努力を促していくことが必要でありますが、同時に、中国の近年の歴史を踏まえながら、中国が国際関係の中で建設的なパートナーとなるよう、我が国の外交を展開すべきであると考えます。
 さらに、アジア・太平洋地域との関係については、その経済発展のダイナミズムと輝かしい未来を見据え、日本としては、その基盤となっておる開放的な経済環境を維持していく必要があります。私は、この地域の将来のために、ASEANとの関係を重視しつつ、APECを通じて開かれた地域協力を強化する必要があると考えるのでありますが、APECサミットの開催も検討されてしかるべきと考えます。
 以上述べました外交面における国際的な取り組みのあり方、二国間関係の展開などについて、さきの四カ国歴訪の成果などを踏まえ、総理の御所見をお伺いをいたします。
 次に、ガット・ウルグアイ・ラウンドについて申し上げます。そして同時に、我が国の農林漁業の振興についてもお伺いいたしたいと思います。
 私は、我が国の経済的繁栄が自由貿易によるものであり、他のどこの国にも増してその恩恵を享受していることはよく承知をいたしております。だからこそ、一日も早いウルグアイ・ラウンドの成功による交渉妥結によって、世界が一層の自由貿易拡大の方向に向くことを望み、そのために我が国はできるだけの協調、協力方針をとるべきだとかねがね主張してきたところであります。
 しかしながら、全体としてそうした協調方針に基づきながらも、交渉では各国が国内の歴史的事情や国民生活の観点からどうしても守らなければならない基本に関する部分があることも、私は認めるべきだと強く主張してきたところであります。(拍手)ぎりぎりの交渉の中で折り合い、協調、融和させていくことが国際会議の性格であり、どうしても譲ることのできない国益については、粘り強く交渉していくことが大事であります。
 我が国にとっては、米の輸入自由化問題がまさにそれに当たるのであります。日本にとって稲作農業は、地域社会を構成し、日本文化を構築してきたという特別な意味を持つことを忘れてはなりません。二千数百年来続いてまいりました稲作農業文化を守ることは、我が国の基本を守ることでもあるとの認識に立って、ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉においては、日本の立場を理解させていかなければならないと考えるのであります。(拍手)
 そこで、政府は、米の包括的関税化については、あくまでも我が国の立場が交渉結果に反映されるよう求めていくという従来からの方針に変更はないのかどうか、総理の見解を伺います。
 今や我が国の農林漁業は、担い手の減少、高齢化、あるいは山村の過疎化などにより、戦後最大の転換期に立っております。私は、かねてから農山漁村についての長期的な将来ビジョンを明らかにして農政を進めていくことが重要であると提唱してまいりました。
 そこで、我が党は、平成五年度より発足する新しい農政の展開に即応して、農業再生のための農業自立達成十カ年計画を早急に策定し、本年八月末の概算要求時には党要求として取りまとめ、その実現を期し、平成六年度より強力な支援措置を講じていきたいと考えておりますが、今後の農政の展望と対策について総理の所見をお尋ねをいたします。
 私は、最後に、我が国がこの世界史の激動期に的確に対応していくための改革の根本問題として、国家の最高法規である憲法の問題を取り上げたいと思います。
 もとより私は、現行憲法が戦後の日本の平和と繁栄に果たしてきた大きな役割は高く評価するものであります。特に憲法の平和主義、国民主権、基本的人権の尊重といった諸原則ほ、今後も長い将来にわたり我が国が堅持すべき国家の基本的理念であると考えるものであります。
 しかしながら、今日の我が国は、敗戦直後の憲法制定当時と比べ、経済はもとより、国際社会から期待される役割など、さまざまな点で大きな変容を遂げてまいりました。東西冷戦が終わり、国際社会も変わってまいりました。
 その結果、憲法と現実の間に多くのずれが生じていることは否定できないところであります。憲法が国家のあるべき姿と理念を明示するものであるならば、この矛盾を放置することなく、新たな国民の合意を形成するため、憲法についても積極的に議論することこそ、改革の時代に国会に議席を占める政治家の責任ではないでしょうか。(拍手)
 以下、幾つかの論点を申し上げますが、その一つは、憲法九条をめぐる問題であります。
 これまでさまざまな解釈論議が繰り広げられてまいりましたが、我が国は、今後、これまで以上に多様なPKO活動への参加を求められるでありましょうし、さらに、近い将来には、国連の集団安全保障措置にどうかかわっていくのかという問題にも決断を下さなければならない時期が来ると思われます。そうした事態に対応できるよう、平和国家としての日本が何をすべきなのか、現行憲法では何が可能であり、何が不可能なのか、今こそ真剣に論議すべきときであると確信するものであります。
 同時に、しばしば指摘される、国連憲章などの国際法と憲法との関係などの問題も、きちんと明確にしておくことが必要であります。そうした国内の準備を整えずして、国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指すといっても、責任ある役割を果たすことはできないのではないでしょうか。
 八十九条の見直しも論点の一つとして提案したいと思います。御案内のとおり、八十九条は、「公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業」に対し、公金その他の財産を支出したり、その利用に供してはならないと定めております。しかし実態は、大学生の八割が私立大学で学んでおり、平成四年度の私学助成は全体で三千八百億円にも上っているのであります。教育の機会均等を確保する立場からも、また教育立国の観点からも、国は、私学振興に積極的に進まなければならぬと思うのであります。無理な条文の解釈を続けるより、この際、各党の合意を得て、条文の改正を真剣に検討すべきではないかと考えるものであります。
 さらに、時代に合った新しい理念や制度を憲法に取り入れることが可能かどうかも議論していいのではないでしょうか。
 すなわち、憲法の前文に、平和主義、国民主権、人権尊重の三原則がありますが、これに加えまして、人類の生存と地球との共生を目指し、核兵器の廃絶と地球環境の保全に国を挙げて取り組む決意を明示するなど、被爆国日本としては当然な国家理念ではないでしょうか。
 また、地方分権を推進し、活力ある国家を建設するため、地方自治についての明確な規定を設けることや、重要問題に関する国民投票制度の是非などについても、大いに論議すベきでありましょう。
 我が党内でも、憲法調査会においてさらに論議を深めるべきであると考えますが、同時に、私は、衆参両院に各党が参加する憲法に関する協議会を設置し、与野党が真剣な論議を開始するよう提案したいと考えるのであります。(拍手)
 憲法は不磨の大典ではありません。憲法をタブー視せず、どこに問題があるのかを国民の前で堂々と議論すべきであります。そうした論議の中から、二十一世紀の日本の針路につながる新しい国会論戦が始まるのではないかと期待するものでありますが、総理のお考えを伺い、私の質問を終わります。(拍手)
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように、我が国は何世紀に一度という久しく経験したことのない歴史的な変動の中にございます。冷戦の終了によって歴史の流れが大きく平和ヘ転じましたけれども、国際社会は、東西対立にかえまして、新たな世界平和を、どうやって秩序を構築するかという重い課題に直面をしております。たまたま我が国はその間に国力が非常に増大をいたしました。その責任と役割を積極的に果たすことが求められている、そういう国際状況にございます。
 国内的には、御指摘のように極めて厳しい経済情勢があり、早期の景気回復が緊急の課題でございます。また、その間、成長、効率というようなことから、ゆとりとか豊かさを求める国民の意識の変化も見逃せないところであります。
 このような内外情勢の変化は、まさしく御指摘のように、我々が経済社会システム全体の変革をしなければならないときであることを意味しておりますし、そのリードは政治がとらなければならないということもおっしゃるとおりでございます。その間に、国民の政治不信がこれほど深まっているということはまことに残念なことであって、一日も早くこの信頼を回復しなければなりません。政治改革というのは待ったなしの課題であると思います。
 そうして、お話がございましたように、今や、信なくんば立たずという、そのような状況にあるというふうに考えておりまして、このためには、私どもといたしましても、せんだっても申しましたように、きょうの後にきょうなしという覚悟で取り組みたいと存じますが、国会におかれましても建設的な御議論をぜひお願いいたしたいと思います。
 小選挙区制は、ただいまお話がありましたように、各党が一人の候補者を立てるわけでございますから、政策というものが議論の中心になる。そうして、政策をどのように選択するかという、有権者にとっても問題の意味合いは極めて明確でございます。わかりやすい制度である。この今の中選挙区制度を抜本的に改革するに当たりましては、その導入が最も望ましいものであろうというふうに考えます。
 ただ、この選挙区制度の問題は、御指摘がありましたように、各党にとっておのおのの土俵の問題でございますので、各党ともいろいろな御意見をお持ちでございます。十分御議論を尽くしていただきたいというふうに考えます。
 政治資金は、政治的活動を支える財政的基盤でございますから、選挙制度と密接な関係を持っております。選挙制度を政策、政党中心の仕組みに変えることによりまして、御指摘のように政治資金も政党中心の仕組みにすることができるわけでありまして、その具体的な内容として、お示しのありました資金調達団体の制度、これによって個人と企業献金との関係を非常に小さくしていく、あるいは政党の公的助成制度等々、透明性を確保しつつ、政党中心の政治資金制度を設けますことは極めて重要なことであるというふうに考えておるわけでございます。
 イギリスで一八八三年に、グラッドストーンの時代に、大きな、いわゆるかつて腐敗選挙区と言われましたような選挙区が一八〇〇年の前半になくなりましたことから、一八八三年までの間に大きな政界の浄化が進んだ。ほとんど百年余りおくれておりますけれども、我が国も、今やそういうことをしなければ国民の信頼を回復することが難しい、そういう正念場に立っておるという、そういう自覚を私も持っております。勇気と決断を持ってこれを実行しなければならないと考えております。
 次に、不況について御指摘がございました。
 確かに今回の不況は、ただ在庫の循環ということ以外に、いわゆる資産価値の下落という新しい問題を含んでおりまして、その不況の底ほ非常に深刻なものである、三塚政調会長が言われましたとおりと思います。そういう深刻な状況に対して、政府としてもできるだけの対応はいたしてまいりましたが、例えば金融機関の融資対応力が非常に低下している、あるいは金融システムそのものが正常に動かなくなっているといったようなことから、実体経済面にも影響が出ておりまして、御指摘の昨年の総合経済対策による十兆七千億円の財政措置を中心とする施策のほかに、金融機関の不良資産問題への対応等、いわゆる金融システムの安定性の確保、あるいは公的資金によって、俗に指定単と申しますものの設定など、証券市場の活性化等の施策もいたしておるところでございます。
 政府の平成五年度予算におきましては、公共事業関係費あるいは財政投融資、地方単独事業、殊にこの後の二者につきましては一二%以上の伸び率を確保しておりますし、また生活関連の住宅、下水道、環境等につきましても七%という大きな伸びを確保いたしております。その間、先般の平成四年度の補正予算の効果がこれから何カ月かの間に出てくる。それが、その延長線上に平成五年度予算を成立させていただいて、さらにそれを強化するというそういう方策をとっておるわけでございますが、住宅投資も幸いにして比較的順調であるということから、これらの施策が必ず経済に効果を持つとは思っておりますけれども、何分にも経験したことのない型の不況でございますし、そのよって来るところは深いと考えなければなりません。この点、政調会長のおっしゃいますように、十分私どももその点を注意して見ていかなければならない。殊に、これから数カ月間、そういう大事な時期にあると思いますので、経済情勢の変化には細心の注意を払ってまいります。そうして、機動的な対応を怠らないようにいたしたいと存じます。
 なお、党におかれましても、十分国民各層、経済各分野における実情について御検討願うということでございます。政府といたしましても、怠りなくこの不況の脱出につきまして最善の努力を払ってまいりたいと考えております。
 それから、国際社会の問題でございますが、今、世界有数の経済大国となった我が国として、新しい世界秩序構築のために、国力にふさわしい貢献をいたさなければなりません。
 その中で、米国との関連におきましては、御指摘のように両国間で世界のGNPの四〇%を占めております。昨年、大統領が当選されました直後、電話で話をいたしましたが、お互いの二国間の問題のほかに、共通の、協力して果たすべき国際的な責務というものについて、十分に意思の統一を今後とも図ってまいりたい、できるだけ早い時期に会談をいたしたいと考えておりますが、ただいまのところ、クリントン政権が一応内政を優先するという立場でございますので、その一区切りを待っておるというところでございます。
 今後、ロシア連邦がどのような動きをしていくか、内政、経済及び外交についてどのような進路をとるかは、今後の、殊に二十一世紀にかけましての世界全体にとっても大きな問題でございますので、我が国としてロシア連邦の内政、外交あるいは経済政策について、でき得る限りの求められる支援をしていくべきことは当然と思います。エリツィン大統領の訪日が急に取りやめになりましたことは、まことに残念なことでございますけれども、ことしの一月十三日に、渡辺外務大臣がパリでコズイレフ外相と会談をされました。そして、エリツィン大統領の訪日実現に向けて真剣な準備を行うということに合意をされました。ロシア連邦における国内の事情が好転をいたしまして、一日も早くエリツィン大統領が訪日をされて、そうして、法と正義の原則に基づきまして、北方領土問題の解決、日ロ関係の正常化に一歩を進めたい、このことは、我が国のみならず、国際社会全体にとっての大きな利益であると考えております。
 中国との外交関係も今後、殊に二十一世紀を展望しますと、中国の動向というのは世界の政治に非常に大きな、私は、影響を持つであろうと思います。幸い、中国は今、政治経済両面におけるいわゆる改革というもの、殊に経済面におきましては改革・開放政策が進んでおりますが、それが政治面にもさらに及びますように、一層の国際的な協調をも、私どももいろいろな機会に慫慂もいたしまして、中国が二十一世紀にかけて世界の平和、繁栄の大きな力になるような、そういう国になるべく、我が国としても対中外交を進めてまいりたいというふうに考えております。
 それから、アジアにおいて、これからどのような将来の平和、安全保障の仕組みを考えるかということでございますが、御指摘がありましたように、ASEANの外相会議が最近は拡大外相会議の場等も設け、また経済問題に限らず、安全保障というような政治の分野にも関心を持つに至りましたことは、この問題についての関係諸国の関心のあらわれだとは思っておりますが、APECそのものの、これはただいまのところ、御承知のように経済問題に限られております。APECそのものが首脳会議を開くということは、オーストラリアの首相が唱道をされたところでございますが、やはりこれは本来的にこの地域の国々の基本的な問題でございますから、この地域のいろいろな国との協議を経て、そういう動きが自然に醸成されることであれば非常に望ましい、我が国としてはそのような態度をこの問題についてとっております。
 いずれにいたしましても、このたびも私、これらの四カ国を訪問いたしまして、やはり開かれた、多様性を持つことがこの地域の特色であり、また将来もそうでなければなりませんが、その中において、将来に向かってのこの地域の安全保障のための仕組みをどうしていくかということは、だんだん各国の間にも問題意識が出ておりまして、我が国としても、そういう中で協力をいたしていきたいと考えております。
 ウルグアイ・ラウンドにつきましては、確かにただいまの段階において、いわゆる食糧の輸入国の立場から申しますと、輸出補助金の削減ということにはかなりの議論がございましたけれども、輸入国の立場としての国境措置をどうするかということについては、いわば両方の間のバランスがダンケル案の中では十分にとれていないというふうに私も考えておりますので、この点については、日本としてのやはり主張を翻すわけにはいかないというふうに考えております。各国ともいろいろ問題を持っておりますけれども、国会決議の趣旨を体しまして、これまでの基本方針のもとに、何とか早期の解決をいたしたいということは考えておりますけれども、そのような基本方針のもとに最大限努力をいたしたいと思っております。
 それから、今後の農政の展望につきましては、先ほどお話のありましたいわゆる農水省による新政策のもとに、経営感覚を持った意欲的な農業者がこの生産の根幹を担って、力強い農業を展開していきたい。農政審議会から、新政策を踏まえた具体策のあり方についても提言が行われました。それを指針として施策の展開を図ってまいりたいというふうに考えております。
 次に、憲法問題について御指摘がございまして、確かに、いわゆる冷戦後の時代における国際貢献ということは、湾岸問題をめぐりましてお互い国民が深く関心を持つに至りました。そうして、昨年六月には国際平和協力法が成立をいたしました。その結果、カンボジアに現に我々の七百人の同胞が国づくりに従事をいたしておりますし、アンゴラにもまた平和維持のために我々の同胞が参りました。これは我が国にとって新しいいわば国際貢献の道であったわけでございますが、さらに、この国際貢献について国連事務総長の提言もございます。今後の国際社会において、我が国が国連の平和維持の活動にどのように、どの程度に参画できるかということについては、今後とも積極的な議論を進めていく必要があるというふうに考えております。
 それから、私学助成につきましても、問題点の一つとして御指摘になったわけでございますけれども、過去の推移を考えますと、憲法の規定がございます、八十九条の「公の支配」という問題をめぐって国会でいろいろ御議論がございました。結果といたしましては、議員立法が行われまして、私立学校振興助成法によって私立学校が監督を受けるということで憲法八十九条との規定を調整をした、こういういきさつがございました。ちょっとこのいきさつにはいろいろ確かに苦労があったということは、私も、おっしゃいますようにそういう感じを持っております。ただいまとしては、一応整合的にここを読んでおるということではございます。
 全体として、今三塚政調会長からは、これだけ世界の情勢も変わった、また日本もこれだけの国になった、そういうことの中で、民主主義、平和主義あるいは基本的人権ということは、これは当然であるけれども、やはりひとつここで憲法というものを考えるべきではないか、こういうお話が御主張の基本になっておりました。
 もちろん、憲法自身が改正手続の規定を設けておりますから、これは法理的に永久不変だということはありません。むしろ、憲法というものを神棚に上げておかないで、日常我々がいろいろそれについて議論をするということは、私は、憲法を尊重するゆえんである、大切にするゆえんであるとすら思っておりますから、これについていろいろな御議論がある、議論があるということは、これはむしろ私は好ましいことである、そういうふうに考えている点におきましては、三塚政調会長と考え方の違いはございません。
 政府の立場といたしまして、今、憲法についていろいろな御議論が出始めておりますけれども、具体的にどこをどのように改めるべきかという、そういう国民の世論が成熟するに至っているとは思っておりませんので、政府として、現在、憲法を、私として改正をするということは考えておりません。
 ただ、そもそも憲法の御論議というのは、そのように憲法自身を国民のもの、自分のものにするという意味で有意議なことであると思っておりますので、いろいろな御議論があることはむしろ歓迎すべきであるというふうに思います。国会においてこれをどのようにお取り扱いになるかということは、国会において御検討いただく問題であると思っておりますが、憲法についての議論があれこれ行われますことは、私自身、むしろ憲法を国民に理解してもらうゆえんであるというふうに考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(村山喜一君) 石田幸四郎君。
   〔石田幸四郎君登壇〕
○石田幸四郎君 私は、公明党・国民会議を代表し、宮澤総理に対し、内外の変革に対応する政治のあり方、景気対策などについて、一年有余にわたる宮澤政治に厳しい批判を加えながら、所見を承りたいと思います。
 冒頭に、このたび皇太子殿下の御婚約が決定されたことについて、謹んでお祝いを申し上げます。今後、より開かれた皇室を築かれ、国民とのきずなを深められますことを御期待申し上げます。
 総理、冷戦が終結して三年が経過しました。しかし、世界は、冷戦下でつくられた構造が崩壊したままであり、新しい秩序は形成されず、まだ不確実、不安定な混沌とした状況にあります。
 日本は、これまで他人がつくってくれた道しるべと地図を頼りに歩んできましたが、これからは、日本みずからが世界の平和と安定、繁栄のための道しるべも地図もつくらなければなりません。これは非常に困難な作業ですが、英知を絞って行わなければなりません。宮澤内閣からその気迫が全く感じられないことはまことに残念であります。
 私は、そのためのキーワードを幾つか提示したいと思います。
 その第一は、日本は軍事的にも経済的にも、覇権を求めてはならないということです。
 ソ連の消滅は、アジアにおける米ロの軍事的影響力の低下をもたらすことになるでしょう。その結果生じるであろう軍事的空白をどう埋めていくのかが大きな関心の的になっております。その中で、東南アジア諸国では、日本の軍事的プレゼンスの増強に強い懸念を持っております。経済力は政治力に転化し、軍事力になってあらわれるのが権力の歴史の公式だという見方に立てば、その危惧はもっともなことであります。日本は軍事大国にならないことを再三表明してきましたが、理念、政策、具体的行動でそのことをより明らかにしなければなりません。
 経済にしても同様であります。巨額な経常収支の黒字は、日本企業の国際競争力の強さのあらわれであるとしても、世界各国の経済に甚大な影響を及ぼしていることに思いをいたさなければなりません。世界のGNPの約一五%を占める日本の経済力、そしてその技術力を、ともに地球環境の保全、世界の貧困、飢餓の追放、識字率の向上などにどう役立てるかが大きなポイントになります。
 第二は、国連を中心とした協調管理体制に積極的にかかわるということであります。
 世界は、ソマリアに見られるように、人々の生命と健康にかかわる支援については、武力を行使してでも人道主義を貫こうという模索を始めています。紛争地域の平和と人道確保のために、平和原則に基づく日本の果たし得る分野を提示すべきであります。
 政府は、日本が国連安保理の常任理事国になるため、水面下の交渉をしております。私は、日本が常任理事国になることに反対するものではありませんが、我が国は、常任理事国入りに対し、いかなる決意を持つのか。財政負担増に対し、また国連の将来に対し、いかなる考えを持つのか。十分な国民的合意を得て実行すべきだと申し上げたいのであります。
 キーワードの第三ほ、新しい国家像であります。
 冷戦終結の影響は国内政治にも大きく反映をしております。日本でもまさに変革のときを迎えたのであります。政治の分野で、ようやく共通の土俵、共通の価値観で政策を議論できる環境が整ったと思います。私は、自由主義、平和主義、人権主義を基調として、環境、文化・教育、ゆとりと安心、分権の福祉国家こそ、日本の目指す国家像だと考えています。そのためにも、生産中心のシステムを生活者、消費者中心のシステムに、会社中心のライフスタイルを家庭、地域を大切にするライフスタイルに改める必要があります。変革はクリントン米大統領の専売特許ではありません。明後平成七年は、第二次大戦後五十年の節目に当たります。このときに当たって、タブーを設けることなく、すべての制度を抜本的に見直し、一国の責任者として大胆に変革する勇気、実践する勇気を持つべきだと思います。
 これらの指摘に対し、総理の所見を伺い、以下、基本的テーマについて見解をただしたいと思います。
 第一は、政治の変革についてであります。
 私は、その中心は、中央集権体制を打破することだと考えます。官主導による中央集権体制が、日本の近代化、経済大国化に大きな役割を果たしてきたことは否定しません。しかし、それは戦後の経済、社会の混迷期にこそ力を発揮したものであり、過去の遺物ではないでしょうか。今日では、許認可と補助金行政により中央への隷属を押しつけ、地方の自由なる発想を大きく阻害していると言っても過言ではありません。年末に地方自治体幹部が大挙して陳情を繰り返すなど、醜態のきわみであり、根本的に改革しなければならない一例であります。そこには民主主義の基本である地方自治は存在しておりません。今こそ蛮勇を振るって、国の政治システムそのものを見直し、地方自治確立のための方途を示すべきであります。
 中央政府の役割ほ外交・安全保障、経済・財政、福祉のナショナルミニマムなどに限定し、国民の暮らしにかかわる問題は、地方自治体、特に住民と密接な関係にある市町村に、財源も含めて権限を大幅に移譲する必要があります。
 中央省庁の再編合理化、許認可、補助金行政、都道府県体制などの見直し、いわゆる道州制などについて総理の見解を伺います。
 選挙制度も大胆に見直すべきであります。中選挙区制が制度疲労を起こしていることは歴然たる事実であり、これにかわる新しい制度を模索しなければなりません。その基準は、政党・政策中心の選挙、民意を正確に反映できる制度だと思います。にもかかわらず、何ゆえに政府・自民党は、民意の反映に欠陥のある単純小選挙区制に固執しているのか、真意をはかりかねます。宮澤総理は、単純小選挙区制だけが唯一の選択肢だと考えているのかどうか、所見を承りたい。
 選挙制度と関連して、政治腐敗防止法体系の強化を要求します。昨年暮れの臨時国会では、若干の手直しが行われただけであります。企業、団体からの政治献金の禁止、選挙犯罪の罰則の強化などを内容とする政治腐敗防止法体系を整備すべきであります。
 これらの問題について、政府・自民党からは、選挙制度の改革なくして政治資金規正法改正や政治倫理の論議をしても意味がない、問題の根源はすべて選挙制度にあるとの極論が聞こえてきます。この議論は明らかに誤っております。諸外国の例を見ても、小選挙区制であってもなくても汚職事件は起こる可能性があり、間断なく真相究明と防止策に腐心しているのが現状であります。関連なしとは言いませんが、選挙制度と汚職防止問題とは本質的に切り離して考えるべき性質のものだとする私の主張に対し、総理はどのような見解をお持ちか、伺います。
 総理、佐川スキャンダル問題の経緯、国民の政治不信に思いをいたすとき、政治改革は内政問題の緊急課題ではありませんか。一日も早い論議が必要であります。政府は一体、法律案としていつ国会に提出されるのか、明確な答弁を求めます。
 国会も改革しなければなりません。憲法では、国会は国権の最高機関であり、唯一の立法機関と規定されていますが、実態は、政府提出法案の審議が中心で、議員立法は全く軽視されています。国会を活性化させるためには、議員提案を行いやすくする必要があります。現行法においては、衆議院では、予算を伴う法案は五十人以上、それ以外は二十人以上の賛成がなけれぱ議員提案はできません。また、提出された法律案は、委員会で審議されることは極めて例外的であります。国会は、政府提出法案のみならず、議員提案についても十分に審議し、採決する慣行を樹立すべきであります。国会の問題と逃げずに、政治家宮澤氏としての見解をお示し願いたい。
 政治倫理の確立についても、総理の見解をただしたいと思います。
 佐川問題について、自民党は、既にこの事件の幕引きを画策しておられるようですが、これは到底容認できるものではありません。公明党は、今国会でもこの問題を最重要課題の一つとして徹底した究明を行います。そのために関係者の証人喚問を要求します。宮澤総理は、自民党総裁として、自民党もこれに協力するよう指示すべきだと思いますが、その決意のほどを伺いたいと思います。
 ところで、政治スキャンダルの真相を解明し、政治責任を明らかにするには現行のやり方では全く不十分であります。
 その一つは、さきの臨時国会でも見られたように、国政調査権に対し、行政府、司法は、守秘義務を盾に全く非協力だということです。捜査や訴訟の核心部分を除き、政治的道義的責任にかかわる部分の資料は国会に提出すべきであります。
 その二は、システムの問題であります。アメリカでは、ウオーターゲート事件にせよ、イラン・コントラ事件にせよ、委員会が法律の専門家等から成るスタッフに、関係者から事情聴取したり資料提出を要求できる権限を付与し、委員会がスタッフを指揮して真相を究明したのであります。
 公明党は、改めてこれらの権限を有する政治倫理常任委員会の設置を要求します。専門のスタッフを置き、事情聴取、資料提出要求などの権限を付与した調査を行い、必要に応じて証人喚問や参考人招致を行うシステムをつくるべきであります。最終的には、委員会として、政治責任がある、ないなどの結論を下し、国民に公表することが大切だと思います。これによって国会の自浄能力を高めるべきであります。総理の見解を求めます。
 変革や発想の転換を求められているのは、経済政策も同様であります。
 私は、昨年一月、総理の施政方針演説に対する質問で、生活大国づくりと関連して、企業中心社会の転換が必要であり、政策の軸を家庭や地域に重点を置いたライフスタイルの確立と、生活インフラの整備に移すべきであることを強く訴えてまいりました。
 今、日本は、これまでの生産重視、企業中心の経済構造、企業行動を見直し、個人生活と企業社会の調和へと変えていく必要があり、また、地球環境、国際社会との調和、量的拡大から質的拡充への転換を目指し、大胆な改革を行うべきであります。
 まず、総理の決意を承ります。
 当面する緊急の課題は、不況の速やかな回復であります。
 私たちは、早くから今回の不況を、単なる景気の循環によるものでなく、地価や株価の下落による資産デフレが加わった複合不況であることを指摘してまいりました。複合不況についての認識を欠き、資産価格の下落による景気への影響を過小評価し、適切な対策を怠ってきた結果、かつてない深刻かつ長期の不況をもたらしております。この政府の責任は重大であります。
 今求められているのは、大胆な景気対策を実施し、資産デフレの実体経済への悪影響を最小限に抑えていくことです。
 政府は、五年度の実質成長率を三・三%としておりますが、所得税減税を欠いた政府予算案では、これを達成することは不可能であります。
 消費の落ち込みは予想以上です。可処分所得は残業手当、パート収入の減少などによって伸び悩み、個人資産も株価低迷等によって大きく目減りをしております。このため、消費マインドの冷え込みが著しく、春闘の賃金値上げが低調であれば、さらに消費の落ち込みに拍軍をかけることは必至であり、景気はさらに落ち込む危険すらあります。
 現在実施されている公共事業中心の景気対策は、おのずから限界があります。建設、製造業など素材産業に効果が偏り、サービス業などに効果が及ばない等の問題や、用地費、消化率の問題などを考えると、公共投資をふやせば当該年度の景気効果が上がるというものではありません。配分比率の固定化という問題もあります。
 個人消費を回復させると同時に幅広い需要を拡大するためには、私は、四兆円から五兆円規模で、戻し税方式による所得税減税を実施するよう強く要求をいたします。(拍手)財源は赤字国債もやむを得ないと思います。総理の見解を伺うものであります。
 予算編成について最も不可解なことは、平成五年度予算案が確定した直後に、与党幹部の中から補正予算の必要性が叫ばれたことであります。
 財政法第二十九条に規定されているように、補正予算の性格は、契約上の義務経費の不足を補うためか、あくまでも予算編成後に生じた事由の対策であって、補正予算の必要性が本予算成立前、いわんや、その審議に入る前に与党内でささやかれているということは、およそ論外であります。これは本予算のずさんさを示す以外の何物でもありません。(拍手)
 総理、七月には東京サミットが開かれます。先進諸国が日本にさらなる内需拡大を要求することは目に見えております。その景気対策の追加措置の中心は、当然減税になるでしょう。であるならば、建前やメンツにとらわれず、予算案を修正し、大幅所得税減税を行うべきであります。(拍手)総理の決断を求めます。
 また、不況の長期化の中で、中小企業は苦境に立たされ、倒産が激増しております。中小企業経営の安定を図るために、政府系金融機関の貸付枠の拡大、下請企業対策、倒産防止対策の強化等について、きめ細かい対策を打つべきであります。総理の御所見を伺います。
 金融機関の体質強化も重要な課題であります。
 金融機関の不良債権の増大は、経営姿勢、経営体質の結果として生じている問題であり、まず不良債権等の累積を招いた原因を追求し、真の信用秩序の回復を目指すべきであります。不良債権の買い取り会社が発足しますが、金融機関の自己責任原則が大前提であります。まず、各金融機関ごとに不良債権の実態などをディスクローズするとともに、金融機関が減量経営などの自助努力を行うことが必要であります。金融機関の健全性確保に関する総理の見解を伺います。
 当面する外交問題についてお伺いします。
 まず、私は、日米関係は非常に重要であり、友好関係は堅持しなければならないと思います。
 二十日に発足したクリントン新政権の内外政策は、まだ不透明ではありますが、国内政策、特に国内経済の再活性化を最優先してくることは疑うべくもありません。私は、戦後生まれのクリントン大統領の対日観は、彼が社会に進出したときの日本は既に経済大国であり、歴代の大統領の対日観とは違うと思います。厳しい対日要求が予測されます。それを受け身で対応するのではなく、協力もするし、競争もするという、イコールパートナーの立場で能動的に対応する必要があります。
 日米構造協議では、日米双方で激しい議論の応酬が行われましたが、これは、ある面では両国の経済依存関係が重層的に深化していることを示していると思います。私は、クリントン政権との間でも、構造協議にかわる恒常的な機関を設けてもよいのではないかと考えております。クリントン新政権に対する評価、対応について所見を承ります。
 次に、ロシア支援問題と日ロ関係についてお伺いします。
 昨年のミュンヘン・サミットにおいて、十項目にわたる旧ソ連諸国支援策を決定したものの、ロシアの政治情勢の不安定化、経済改革の停滞などからスムーズに進展していないことは極めて残念であります。引き続き、ロシアの民主化、市場経済化支援のため、先進諸国と協力してロシア支援を行うこと、特にロシアの経済改革を後戻りさせないように支持していくことが重要であります。総理の見解を承りたい。
 日ロ関係は、昨年のエリツィン大統領の訪日延期以来、一時的に停滞しておりますが、本年の早い時期にぜひとも大統領訪日を実現し、日ロ友好関係の促進と領土問題解決への道筋をつけるべきであります。訪日のめどは立っているのか、また、東京サミットへのロシア招聘は考えておられるのか、伺います。
 さて、アジア外交についてであります。
 お隣の韓国は、長く軍事政権が続き、今回初めて民間人としての金泳三氏が大統領に当選されました。一衣帯水の日韓関係を考えますときに、最高責任者同士の対話が重視されるべきであります。それも早期に行われることが望ましいのでございますが、総理のお考えを承っておきたいと思います。
 次に、私は、アジア・太平洋をさらに強靱かつ豊かな地域にしつつ、世界の平和と繁栄に資すること、それが日本・ASEAN協力の最も重要な使命とのバンコクでの宮澤総理の表明は、我々の認識と大差はありません。問題は、日本の具体的対応策であります。
 総理は、日本の基本姿勢として、域内の政治安全保障対話を促進するとしていますが、どういう枠組みを想定しているのか明らかではありません。
 公明党は、アジア・太平洋地域の平和と安定、同地域の各国間対話の促進による信頼醸成の拡大や軍縮、経済、文化、学術協力の進展を図るため、アメリカ、ロシアを含めた全アジア平和会議の創設を主張しておりますが、総理の考えを承りたいと存じます。
 また、さきの宮澤・スハルト会談では、このスハルト大統領が宮澤総理に対し、非同盟諸国会議の議長として、東京サミットの期間中にG7メンバーと直接の対話を希望したと伝えられております。私は、日本で開かれるサミットに際しては、アジアの声を聞くための工夫があってよいと思います。宮澤総理は、欧米のサミット参加国に、このような対話の機会が得られるよう最大の努力をすべきだと思いますが、総理の見解を承ります。
 地域紛争解決のためのかかわり方についてお尋ねしたい。
 第一は、ガリ国連事務総長報告についてであります。これは、将来の国連の役割を、予防外交、平和創設、平和維持、平和再建の四活動に分類し、紛争発生後の介入に限っていた国連活動を、紛争の未然防止まで拡大するというものです。こうした新しい考えに対する総理の見解を承りたい。
 第二には、ソマリア、カンボジア支援等に関連し、現行のPKO協力法では限界があるので見直すべきである、あるいは、PKFの凍結を解除すべきだなどという議論があります。私は、法律が施行されてから五カ月、UNTACヘ派遣されてから三カ月しか経過していないことを考えれば、まず現行法の枠内で実績を積み重ねることが重要だと思います。総理の見解を承りたい。
 次に、農業問題について伺います。
 ウルグアイ・ラウンド交渉については、米について、農産物輸出国の論理により、関税化することについては、日本農業を守り、輸入国の権利を確保する立場から我が党は反対でございます。総理のこの問題についての決意のほどを承りたい。
 他方、国内対策については、農村の高齢化と後継者不足という著しい構造変化に対応するためにも、稲作など土地利用型農業の生産基盤の整備に対しては、規模拡大への誘導措置とあわせ、国の高額補助による思い切った措置を講ずべきであります。
 また、今政府が検討を進めている農業分野への企業参入問題については、両刃の剣的な性格を持っています。農地の乱開発への懸念など、我が国農業、農家の将来に禍根を残さぬような明確な対策なしに企業の農業参入は認めるべきではないと考えます。
 過疎に悩む中山間地域の農業振興対策をも含め、総理の所見を承っておきたいと思います。
 次に、生活者の政治を推進する立場から質問をいたします。
 この質問の最初に、去る一月十五日、北海道を中心に東日本一帯を襲った釧路沖地震で被害を受けられた皆様に、心からお見舞いを申し上げます。政府に対し、地域住民の意向に沿った速やかな復旧対策の実施を強く要求するものであります。
 政府は、昨年六月末に「生活大国五か年計画」と題する新経済計画を策定されました。しかし、平成五年度予算には、この五カ年計画に沿った新しい政策は全く見当たりません。こうした観点から、以下、重点的に総理の所信を問うものであります。
 第一には、高齢化社会を迎える上で不可欠な、老人介護と年金の問題についてであります。
 現在、寝たきり老人と痴呆性老人の数は合わせて二百万人、その背後には、介護に大変な苦渋を強いられている一千万人に近い家族がいると言われています。
 政府は、平成二年度から、ゴールドプランと呼ばれる「高齢者保健福祉推進十か年戦略」を進めていますが、このゴールドプランが順調に達成されても、到底関係者の要求を満たすものとはなりません。中でも、特別養護老人ホームの入居待機者は既に三万人を超えており、早期整備が強く要請されています。ホームヘルパーについても大幅な増員が迫られています。この際、政府のゴールドプランについては、全体の計画の前倒しなどの見直しを提案をするものでありますが、方針を伺います。
 特にマンパワーの確保が急務であり、ここに人材を集めなければなりません。それには待遇改善とこれらの人々への顕彰が必要です。どのような対策を考えておられるのか、お伺いをいたしたい。
 年金制度については、現在社会保障制度審議会、年金審議会等において、平成六年度の次期年金財政再計算を踏まえ、大幅改正を行うための検討が進められていますが、一例を挙げれば、現行の在職老齢年金は、働けば年金の額が減らされるなど、極めて不合理でございます。賃金が上昇すれば賃金と年金の合計額も増加されるよう改正する、これが必要なのではないでしょうか。高齢化社会の中で年金生活者が生きがいと安心して暮らせるための抜本改革を行うべきであると考えますが、総理のお考えを承りたい。
 第二には、生活者の政治を確立する上で極めて重要な住宅問題についてであります。
 我が国の住宅総数は四千二百万戸、全都道府県で世帯数を上回っています。したがって、今や住宅政策の目標は、数より質の向上に切りかえるべきであり、特に良質な賃貸住宅の提供を重視する必要があります。このため、土地所有者が建設する良好な民間賃貸住宅を地方自治体や住宅供給公社が借り上げ、公共賃貸住宅として安い家賃で供給する借り上げ方式を拡充すべきでありますが、政府の方針を伺います。
 また、お年寄りが低家賃で生涯にわたって入居でき、医療、介護を受けられる公的住宅を供給するなど、新しい角度の政策が必要であると考えますが、あわせて総理の答弁を求めます。
 「生活大国五か年計画」では、年収五倍での住宅取得を掲げておりますが、首都圏で通勤一時間程度の地域において、年収の五倍で良質な住宅を持つことは、サラリーマンにとって、もはや夢ではなく絶望であります。しかも、住宅面積は七十平方メートルを想定したものであり、アメリカの一戸当たり百六十七平方メートルに比べ、半分以下にすぎません。それでも、この目標を達成するために、総理はいかなる方途を講ずるのか、地価対策などを含め、具体的にお答えをいただきたい。
 第三に、教育費の負担軽減の問題であります。
 昨今、受験戦争の激化や教育費の家計圧迫、学校教育現場における画一性、硬直性など、教育をめぐる問題が山積していますが、特に父母の教育費負担は限界に達しています。我が党は、日本育英会に、入学資金を対象とした貸与制度を創設すること、特定扶養控除を現行の十万から二十万に引き上げることなど、教育費の負担軽減策を強く主張しているところでありますが、総理の所見を承ります。
 第四は、環境問題についてであります。
 昨年十月には、中央公害対策審議会、自然環境保全審議会から、「環境基本法制のあり方について」の答申が出されました。総理も環境基本法の制定に前向きの発言をされておりますが、総理の考える環境基本法とは、一体どのような内容で、政府の目指す持続可能な経済社会とは具体的に何を意味するのか。さらには、環境アセスメントと環境庁の機能強化に関し、基本法においてどう具体的に位置づけていくのか、明確ではありません。総理の所見を明らかにしていただきたい。
 最後に、最近の憲法論議について総理の見解を承りたい。
 私は、日本国憲法の基本原理である国民主権主義、基本的人権の保障、恒久平和主義は、永遠に死守しなければならない原理だと考えております。しかし、一般論としては、憲法は時代や社会の変化、進展に応じて見直しされるものであり、不磨の大典ではないと考えます。国際情勢が大きく変化し、世界の日本に対する期待も質的変化を遂げております。また、憲法制定四十数年を経て、国内においても、当時は想定されなかった問題が提起されるようになっております。この観点から、国際貢献、環境権、地方分権、ナショナルミニマム、教育の中立性など、現在の時代状況を踏まえた広い視野で憲法を議論することは重要であります。
 しかし、我が国の憲法論議は、かつての軍事強国にノスタルジアを抱く、いわゆる右サイドからの改憲論議のみであったという経緯を考慮しなければなりません。憲法のどこを見直し、何を加えるかを慎重に見きわめる必要があります。
 自民党は、憲法問題に関する与野党の協議機関を国会に設置すべきであると主張しておられるようでありますが、私どもは時期尚早と考えます。また、各党が党内でまず議論する段階であり、このような考えには公明党は到底応ずることはできません。総理の憲法論議、協議機関等の設置について、この見解を承りまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 石田委員長から、今、我々が何百年に一度という歴史的変動の中にいる、そういう御認識のもとに、我々として、今考えるべき幾つかのキーワードと言われましたが、そういう御指摘がございました。
 基本的には、言われますことにまことに同感でありますが、まず第一には、我が国が軍事的にも経済的にも覇権を求めないということでございます。我々としては、これだけの経済力を持つ国になりました、また技術も高くなりましたが、それらの経済力や技術は、この冷戦後の時代において、国際社会の抱えておる諸問題の解決に向かって貢献をするために用いられなければならない。殊に南北問題ということになりますと、これは冷戦後の時代におけるいわゆる平和の配当と言われる部分と思われますが、そういうことについての貢献をするということが、我々の憲法が定めている日本の行くべき姿であると思います。したがって、この第一の御提言については、まことに同感でございます。
 第二点の問題は、国連中心の協調体制ということでございまして、これも昨年来、私、この議場で申し上げているところでございますが、本来我が国は、国連中心主義の歩みを戦後してまいりまして、国連がそれだけの機能をいたしませんために、どうもこれはお念仏であるというようなことを言われておったわけでございますけれども、幸いにして、冷戦後の時代になりまして国連が機能をするようになった。それは我々としてはまことに幸せなことでありますが、今日、現に我々は国連において、財政負担という意味では第二位、日本が第二番目でございます。しかも、負担は必ずきちんと期限どおりに払っている。そういう点ではいわば優等生でございますから、さらにこの国連中心の貢献を進めてまいりたいと思います。
 ただ、国連の仕事が非常に多く、忙しくなりますと、国連自身がこれだけの新しい任務を十分遂行できるかどうかという問題がございます。我が国もそれについて提言をいたしておりますけれども、そういう意味でも国連を大事にしていかなければならないというふうに思っております。
 それから第三のキーワードとしての御提言は、国の政策あるいは経済政策あるいは国家像という中で生活者というものを大事にすべきだという御指摘であって、これも、私自身が生活大国ということを申しましたときのいわば発想の中心点であったわけでございますので、「生活大国五か年計画」でもそれを具体化をして昨年策定をいたしたわけでございます。それに従いまして具体的な施策を進めてまいりたい。そういう意味での国民の意識の変化ということは、私も大変大切なことに考えております。
 そこで各論でございますが、まず第一に中央政府、中央集権ということを見直さなければならないということでございます。
 考えてみますと、我が国は、明治以降、富国強兵の時代におきましては、勢い中央集権的にならざるを得ませんでしたし、また戦後は戦後で、瓦れきになりましたので国を挙げて復興をする、それこそいろいろなことについて中央がリードをしなければならない時代が続きました。ただ、今になってみますと、国民生活に必要な基本的な需要、仮にシビルミニマムと申しますか、それは一応全国に整ったわけでございますので、そういう意味での中央政府の施策と申しますか、場合によっては干渉とでも申しますか、そういうことは随分以前とは違ってくるべきものである。それは、ふるさと創生というような施策が非常に地方でもてはやされるということによってもおのずからわかるように思いますので、そういう意味で、中央政府の役割を基本的に見直すべきだということは、まさにそうではないかと私も痛感をいたしておりまして、行革審におきましても、再度、今回は政府部門の果たすべき役割についての再検討をお願いをいたしているところでございます。
 その場合、道州制というものが果たしていいかどうかということは、今の府県制度がかなり定着をしておりますので、十分検討しなければならないのではないかと思います。
 それから、選挙区制につきましてのお話は、小選挙区制は、各政党が一人の候補者を立てますので、その政策によって争われる、また、有権者としてはどの政策を選択するかという比較的わかりやすい選択をやりやすい、こういうことであると思いますけれども、まあ選挙制度の改革については、これはお互いの土俵の問題でございますので、各党に当然のことながらいろいろな主張がおありになります。各党間で十分御論議を尽くしていただきたいと考えます。
 それから、企業献金、団体献金のことについて、これは本来禁止すべきものであるというお尋ねであったと思いますけれども、私どもは、企業も社会的な存在でありますので、政治的な主張をするということは、これは、それ自身としてあって差し支えないことだ、おのずから節度はございましょうけれども、そう思っておりました。先般自民党で「政治改革の基本方針」を定めました際には、企業、団体の献金は、原則としてはもう政党に限る、個人に対しては、資金調達団体に対する少額のものにするということに考えておりまして、そういう意味では、企業と個人とのかかわり合いというものをやはりなるべく少なくした方がいいという、そういうお考えは、自民党の「政治改革の基本方針」にも盛られておると思います。
 それから、腐敗防止の見地から、やはり選挙制度とこの資金の改革は両方相まって行う必要があると思いますし、また違反者に対する制裁のあり方についても、腐敗防止の見地から十分検計されなければならない問題と思います。
 しかし、選挙制度の改革というものと汚職というものとは、本来違うことではないかとおっしゃいますのは、それはそれが正論と思います。言われるとおりだと思います。汚職というのは、本来、政治家一人一人の倫理の問題でありますから、どういう制度でもこれは起こり得るし、また、どういう制度でも起こってはならない種類の問題でございますけれども、ただ、今の中選挙区制度というものが、私どもの経験でございますと、いかにも選挙に金がかかるという現状でありまして、そういたしますと、その金というものは、やはりそういうふうにして何とか調達をしなければならないということは、残念ながらある程度事実でございますから、そういう意味で、選挙制度と資金というものはやはり現実の問題としては切り離して考えることは難しい。やはり資金関係を浄化しようといたしますと、先ほども申しましたような選挙制度の問題、あるいは公的助成の問題に突き当たらざるを得ないというのが現実ではないかというふうに私は実は考えております。
 それはそれとしまして、自民党の政治改革の問題でございますが、先般自民党で「政治改革の基本方針」を策定いたしましたが、これを中心にいたしまして法案化を検討しております。今国会に提出することを目途に鋭意作業を進めておるところでございます。
 それから、議員立法に関してでございますが、これはもう、議員立法を行いやすくすること、あるいはそれについて十分な審議を行うということは、私は基本的に、それはごくごく当然のことであろうというふうに考えております。
 それから、東京佐川急便事件について、真相解明はもとより重要なことでございますし、過般臨時国会でも、各党がそのために非常な御努力をされました。政府としても、今後とも可能な限り政府としての協力は申し上げていくつもりでございます。
 なお、資料の提出について、国会の国政調査権と捜査や訴訟に関する資料の提出につきまして、三権分立とか司法権の独立とかいういろいろな問題がございます。おのずから限界があることは御理解いただけましょうと思いますが、そういう中では、できる限り行政府が協力をすることが本来であるというふうに思います。
 それから、政治倫理の確立について、さきの臨時国会において、行為規範、政治倫理審査会の規程の改正が行われました。政治倫理常任委員会を設置すべきであるという御提案につきましては、これまでの各党協議の経緯等も踏まえながら、今後国会において各党間で十分御協議をいただくべきことかと思います。
 それから、経済運営について、生産者中心の視点から消費者や生活者を重視する、そういう個人生活というものについて大事に考えるべきだとおっしゃることは、生活大国の考え方、私もそのように基本的に考えておりまして、今我が国の経済は非常な不況にございますけれども、こういう不況の状況の中から、むしろそういう変革のための契機を取り上げていきたいと考えております。つまり、経済成長のあり方、あるいはその成果をどう使うかということについて、例えば労働時間の短縮でありますとか、社会資本の整備でありますとか、男女共同参画型社会の形成でありますとか、あるいは老後の問題でありますとか、これはこの不況回復のための諸施策の中からこういう方向づけをやはりしていくべきだと考えまして、そういう努力を平成五年度予算でもいたしております。
 それから、個人消費の回復につきましていろいろ御議論がありました。平成五年度の予算では、公共事業関係費あるいほ財政投融資、地方単独事業等々かなり大きな伸びを確保しておりまして、政府投資全体でいいますと、四年度補正後に比べて平成五年度ほ九・五%伸びておりますので、住宅投資とあわせまして、これは相当の景気刺激効果があるというふうに考えておりまして、それによって早く民間活動、個人消費、企業投資につなげていきたいというふうに考えておるわけでございます。
 そこで、石田委員長の御指摘では、やはりここは所得税減税ではないか、それも戻し税ということがどうであろうか、その場合、財源としては赤字公債もやむを得ないのではないかという、こういう御主張であったと思います。
 この問題は、前国会でも申し上げたところでございましたが、要するに財政が負担をいたしますときに、それが減税という形の負担か、あるいは公共投資等による支出か、いずれが景気回復に効果的であるかというような判断の問題がございまして、私といたしましては、平成五年度予算編成では、やはり公共投資等を中心の支出の方が景気回復に有効であろう、かたがた、それはいわゆる建設公債、後に資産の残ります形でファイナンスができる、そういう観点からこのような予算を提出をいたしたところでございます。石田委員長の御指摘につきましては、十分注意をして拝聴をいたしました。この予算をまず早期に成立をさせていただきまして、新年度早々から施行をいたしますならば、必ず景気の回復が見られると存じますが、この数カ月間は、しかし景気の動向につきましては、十分注意をしていかなければならないこの数カ月でございますので、必要に応じまして適宜な対応をいたしたいと考えております。平成五年度の予算はそのような観点から組ましていただいたものでございます。
 それから、下請企業につきまして、中小企業に対する低利融資制度の実施を初めとしまして、政府関係の中小企業関係金融機関、総額一兆二千億円の貸付枠を追加してございます。資金需要がないのではなくて、民間の金融機関から借りられない、しかし資金需要があるということが、これらの資金需要を見ますと明らかになっておるわけでございまして、政府関係の機関、大変忙しゅうございます。また、平成五年度におきましても、中小企業金融公庫の貸付規模を拡大をいたしました。あるいは倒産防止相談窓口の増設等々、中小企業関連は十分に施策をいたしたつもりでございます。
 それから、この不良債権の買い取り会社のことでございますが、金融機関がいろいろな困難をしょうに至りましたので、やはり経営の合理化等、厳しい自助努力がまず先決でございます。その上で、不良資産問題について早期処理を進めますために、金融機関の自助努力によりまして、共国債権買取機構が今般発足することになりました。これは、もとより金融機関の厳しい合理化、自助努力が必要でございまして、その関連におきまして、ディスクロージャーのことでございますが、各銀行による不良資産のディスクロージャーは、本年三月期から銀行の責任において行ってもらうことにいたしたいと考えております。
 クリントン政権につきまして、確かに委員長の言われましたように、戦後に育った大統領でございますので、物心ついたときには、日本はいわば敗戦国としてではなく経済競争力の強い国として認識されておるということは、これは確かにそういうことがあろうかと思いますが、それで日米の経済関係につきまして、今後どのように新政権の間で協議を進めていくか、どのような話し合いの場をつくるかということは、今後新政権との間で十分相談をしてまいりたいと思っております。
 それから、ロシアのことについてお話がございまして、ロシア連邦が内政、経済、外交で、いわゆる民主主義あるいは市場経済路線に進んでいくことは極めて大切なことでございます。我々にとりまして大切なことでございますから、我が国も国際社会と協力して適切な支援を、これまでやってまいりましたし、今後も進めてまいりたいと思っております。
 同時に、先般、渡辺外務大臣がパリでコズイレフ外相と話をされましたように、エリツィン大統領がひとつ早期に来日されることを、訪日されることを真剣に準備を進めたいという合意がございます。そういうことも待ちまして、いわゆる両国関係を、領土問題を含めましたバランスのとれた形で発展させたいと思います。
 なお、東京サミットにつきまして、ロシアを招くか招かないかということは、実はまだ議長国として我が国が就任したばかりでございまして、各国と協議をいたしておりません。これから各国と協議の問題でございます。
 それから、アジアにつきまして、公明党が全アジア平和会議の創設を提唱されたことを承知しております。ヨーロッパが全体的なCSCEというような平和の仕組みを持っておりますように、アジアも何かを持つべきではないかということは、私どもも当然にやはり思い至ることでございますが、ヨーロッパの各国と違いまして、アジア諸国はかなり多様的でございます。恐らく、おのおのの国がひそかに潜在的に脅威と思っております相手なども、きっとおのおのの国の立場、立場で違うであろうというふうに思われまして、そういう意味で、かつてヨーロッパの国々が、西欧の国々がソ連を一様に脅威だと考えた状況とは、それよりむしろかなり複雑なようでございます。
 ただ、ASEANの会議が、いわゆる拡大外相会議の形で、経済問題からさらに進んで政治、安全保障まで議論しようということに最近なりましたことは、石田委員長の言われますような意識の一つの進展だというふうに思いますが、どのような仕組みを今後考えていくかということは、このASEAN諸国から内発的に自然に出てくる、それを十分尊重していくのが、私は、我が国としてとるべき態度ではないかというふうに考えておるわけでございます。
 スハルト大統領が、いわゆるノンアラインドの百八カ国を代表して、非同盟の考え方を東京のサミットに伝えたいという意思を持っておられることはそのとおりでございますが、スハルトさんも自分で、そのG7の会議に自分が参加すると言っておられるわけではございません。何かの形で、
しかしこの百八カ国の議長としての意見を伝えたい、そういうふうに考えられることは、私は理由のあることだと思いますので、直接の対話ということは難しいと思いますけれども、どういうことをすれば百八カ国の議長としてのスハルトさんの御希望に沿えるか、G7の国とも相談しながら、ひとつ何か工夫をしたいと考えておるところでございます。
 それから次の問題は、やはり重要な問題でございますが、国連の活動を今度のガリ事務総長が、いわゆる平和維持活動からかなり進んで、さらに紛争の未然防止という方へ、あるいは予防的な配備といったようなことを提案、考えているようであるが、それについてどう考えるかということでございました。
 十分はっきりはいたしませんけれども、紛争の未然防止の中には、紛争が激化しないように、その間に割って入ると申しますか、そういう機能も大事ではないかという考えがあるように思われますが、そういたしますと、それは武力衝突に発展する可能性をも含みます。
 従来、国連の平和維持活動として考えられておったものとはかなり違ったものになると申しますか、先ヘ進んだものになりますので、果たして、もう少し正確にどういうものであるのかということを検討する必要がございますし、今、国連加盟国自身がそういう発想をどう考えるかを十分協議すべき問題ではないか。意図されるところは決してわからないではございませんけれども、しかし、よほどよく考えてみなければならない部分もあるというふうに私としては実は思っております。
 それから、PKO協力法の見直し云々につきましては、私も、ああやって自衛隊の諸君を初め七百人の人が国づくりに働いておってもらえることについて、国民の大方の支持はあるものというふうに考えておりますが、さらに、この法律の施行後三年たちましたときの見直しをどういうふうに考えるか、今の時点では、予断を与えることなしに、もう少し、現にああやって活躍しておってくれる人たちの実績、国民のそれに対する受け入れ方、受け入れの気持ち等々を注意深く見てまいりたいというふうに思っております。
 それから、ウルグアイ・ラウンドにつきましては、先ほども申し上げましたいわゆるダンケル・ペーパーというものが、輸出補助金への配慮と国境措置への配慮とのバランスが十分でないと思っておりまして、殊に米につきましては、国会決議等の趣旨を体して国内産で自給することを基本方針としてまいっておりまして、何とか各国との間で解決をしたいと思っておりますけれども、この基本方針のもとで対処をいたしたいと思います。
 農業につきましては、いわゆる新しい農業政策、昨年の農水省で定めました政策を今後の基本にしてまいります。そのために、法人化も含めまして、意欲的な農業者を育成してまいりたい、また、農地利用を集積したいと思いますが、ただ、企業が農地を取得しまして農業に一般的に参入するということは、これは資産の保有であるとか投機的な要素というものが入りやすいのでございますから、それは適当でないと思います。
 釧路沖地震につきましては、現在、北海道庁の災害対策本部や釧路市等関係機関で鋭意応急対策、復旧活動をしておりますし、政府でも、関係省庁の連絡会議を開きまして、応急対策及び早期の復旧に全力を挙げております。被災者に対しまして謹んでお見舞いを申し上げます。
 それから、いわゆるゴールドプランでございますが、これは消費税創設の際に、殊に公明党から強い御主張がございまして、今の十カ年計画というものが誕生をいたしまして、西暦二〇〇〇年までの高齢者対策を考えておるわけで、おかげさまでただいまのところは着実に年次割りの仕事が進んでおります。ただ、それでも不十分だという御指摘はあろうかと思いますけれども、精いっぱいの努力をいたしております。
 その中で、マンパワーがやはり一つ問題でございまして、さきの国会で法律を通させていただきましたけれども、処遇の改善や資質の向上等、総合的な人材確保対策を予算面でも法律面でも確保してまいりたいと思います。
 それから年金のことは、平成六年の年金制度改正がございます。それに向けまして、先はど在職老齢年金のあり方についてお話があったわけですが、それも含めまして、幅広い観点から年金審議会等において今検討を始めたところでございます。
 それから住宅のことは、二〇〇〇年に一戸当たりの床面積を百平方メートル程度とするということにつきまして、いわゆる民間の賃貸住宅を活用すべしということは、非常に有意義な御提言だと考えました。そこで、民間の土地所有者等の建設する優良な賃貸住宅を借り上げることによりまして、公的賃貸住宅として活用をしていくということを、平成五年度からそう実行をいたしたいと思います。したがって、そのような賃貸住宅の建設費に対する補助、それから住宅金融公庫の融資を拡充する、あるいは家賃が高くございますときの減額のための補助の助成等々につきましてやってまいりたいというふうに思います。これは平成五年度からそのような予算措置を講じていきたいと思っております。
 「生活大国五か年計画」では、年収の五倍ということを考えておりまして、これは大都市では七十平方メートルぐらいでございますが、住宅金融公庫の融資をふやす、あるいは都市基盤の整備などを重点的に予算で措置をいたそうと思います。
 教育につきましては、育英会が奨学事業をいたしておりますが、入学資金につきましての融資は、国民金融公庫において教育ローンという形で取り扱っておるわけでございます。
 それから、同じく教育の、いわゆる特定控除でございますが、十六歳から二十二歳までの扶養親族はちょうど学校年齢に当たるということで、十万円、四十五万円の割り増し扶養控除をいたしておりまして、ただいまとしては、これをもってひとつ実行をさせていただきたいというふうに考えております。
 それから環境基本法案、中央公害対策審議会及び自然環境保全審議会の答申がございまして、ただいま法案化を鋭意進めておりますが、新しい地球環境時代にふさわしい政策の大筋を国民の前に明らかにしたいと考えております。
 それからエネルギーにつきましても、持続可能な経済社会、物の再使用、再生利用あるいは環境負荷の少ない経済社会を構築したいと考えております。
 環境アセスメントにつきましては、答申に基づきまして、現行措置の実態や事業者の自主的取り組みを踏まえつつ、環境アセスメントの重要性、考え方を法律に盛り込んでいきたいと思っております。
 環境庁を機能強化すべきかどうかにつきましては、いろいろ行政の事情もございますので、展開の中で今後検討をいたしていきたいと思います。
 最後に、憲法の問題でございますが、確かに憲法が制定されてから後、今日新しく生じております国際貢献であるとか環境問題であるとか地方分権という新しい問題があるではないか、それは十分に検討すべきものだと言われますこと、そのとおりと思います。各党におきまして、恐らく党内でそういう御検討が進んでおることと思いますが、政府といたしまして、この憲法問題が国民の中で十分議論されますことは有意義なことと存じております。
 ただ、具体的にどこをどうという、そういう改正のコンセンサスが成熟しつつあるとも考えておりませんので、ただいま私として、憲法を改正する考えは持っておりません。しかし、これにつきましていろいろ御議論がありますことは有意義のことと存じます。
 なお、国会におかれましてどのような対応をなさいますか、これは衆参両院において御検討の課題であると存じます。(拍手)
     ――――◇―――――
○魚住汎英君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十六日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。
○副議長(村山喜一君) 魚住汎英君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(村山喜一君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。本日は、これにて散会いたします。
   午後四時二十二分散会
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