第126回国会 本会議 第26号
平成五年五月十三日(木曜日)
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 議事日程 第十九号
  平成五年五月十三日
    午後一時開議
 第一 銃砲刀剣類所持等取締法及び武器等製造
    法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第二 気象業務法の一部を改正する法律案(内
    閣提出、参議院送付)
 第三 不正競争防止法案(内閣提出、参議院送
    付)
 第四 身体障害者の利便の増進に資する通信・
    放送身体障害者利用円滑化事業の推進に
    関する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 永年在職の議員上田哲君に対し、院議をもって
  功労を表彰することとし、表彰文は議長に一
  任するの件(議長発議)
 日程第一 銃砲刀剣類所持等取締法及び武器等
  製造法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 気象業務法の一部を改正する法律案
  (内閣提出、参議院送付)
 日程第三 不正競争防止法案(内閣提出、参議
  院送付)
 日程第四 身体障害者の利便の増進に資する通
  信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に
  関する法律案(内閣提出)
 河野国務大臣の「我が国文民警察要員死傷事件
  と要員の安全対策等」についての発言及び質
  疑
    午後一時二分開議
○議長(櫻内義雄君) これより会議を開きます。
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 永年在職議員の表彰の件
○議長(櫻内義雄君) お諮りいたします。
 国会議員として在職二十五年に達せられました上田哲君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。
 表彰文は議長に一任されたいと存じます。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
 表彰文を朗読いたします。
 議員上田哲君は国会議員として在職すること二
 十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸
 張に努められた
 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院
 議をもってこれを表彰する
    〔拍手〕
 この贈呈方は議長において取り計らいます。
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) この際、上田哲君から発言を求められております。これを許します。上田哲君。
    〔上田哲君登壇〕
○上田哲君 ただいま院議による表彰を賜りました。感激のきわみでございます。ありがとうございます。(拍手)
 私は、一九六八年、参議院全国区に初当選させていただきまして以来、東京地方区、衆議院東京二区と、国政選挙のすべてのタイプを経験させていただいた唯一の者でありますから、本日のこの栄誉は、本院の先輩、同僚の皆様方、並びに参議院の先輩、同僚の皆様方に心から感謝しなければなりません。この間、二度にわたり、百万票を超える御支援を賜りました全国有権者の皆様、全東京の皆様、そして、お地元東京二区の皆様方に心からお礼を申し上げる次第であります。(拍手)
 二十五年前の思いで申し上げれば、一日も早くこの手に、この肩に政権を担いたいと思っておりましたから、なおその機を得ないことが何より残念であります。しかし、議会民主主義を奉ずる立場で言えば、野党である間は、だれよりも時の総理に畏怖される存在でなければならないと心組みしてまいりました。
 この間、数えて十一人の総理に相まみえてきたのでありますが、今、私の脳裏には、鮮やかに幾つかの情景がほうふつとするのであります。
 一九六〇年代から七〇年代は、安保論争の華やかな時代でありました。例えばシーレーン、「日米政府間にシーレーン計画と称する秘密協定あり」と、私が初めて国会にシーレーンの言葉そのものを持ち出しましたのは、一九七五年三月八日の予算委員会でありました。
 F4EJファントム、この新鋭戦闘機に空中給油装置があるのは憲法違反なりと追及して、ついに、その百二十八機全機からこれを取り外しましたのは七三年四月のことであります。
 このようにして野党である私たちも、この憲法を背にして、やがて政権近しと考える機会も、幾たびかはあったのであります。
 これとは別に、私は、NHKで、日本の小児麻痺、ポリオを根絶するテレビキャンペーンを展開いたしまして以来、政治家としても小児予防医療をライフワークとしてまいりました。
 一九八五年十月、国際児童年の記念事業として、東京青山にその名も念願の「こどもの城」ができましたことは象徴的な喜びでありました。
 今、世界は、WHOによって、天然痘に続いてホリオの地球的根絶に挑んでおります。
 このようなときにこそ、私も、一九八五年二月二十三日、本院予算委員会におきまして、毎年、アジア・アフリカで命を失う五百万人の子供たち、これは食糧難であるよりも感染症が直接の理
由であることを指摘をいたしました。この際、政府は、一年間に及ぶ誠実な調査を続けられ、翌八六年二月二十二日、膨大な資料を付して、この事実を確認されたのであります。特に、日本の六種混合ワクチン、ジフテリア、結核、ポリオなどの六種混合ワクチンによって、この五百万人の子供の危機を救済し得ることについても確認されたのであります。
 今、にわかに国際貢献論のかまびすしい中、私は、このような努力こそ、我が国にとって最もふさわしい国際貢献であることについて、特に朝野の御理解に問うておきたいと思うのであります。(拍手)
 今、政治不信の極限に達する姿であります。私は、政治改革の根幹は、まさしく国民主権と国会との距離の速さをどのように埋めるかにあると思います。「衆議院二名区論」も具体提案でありますが、今は特に「国民投票法」であります。憲法改正を前提とするのではなく、現憲法のもとで許容される、このような国民投票法を制定することによって、みずみずしい議会政治の蘇生をぜひ実現をしたい。私は、国民投票法の実現を畢生の課題とする決意でございます。
 ここに、国会在職二十五年に当たり、皆様方の温かい御支援の中、まさに長きにわたる一党支配体制を必ずや打ち破り、しかも断じて保守二党論にあらず、まさしく屹立して、政策と政権を担い得る二大政党体制の確立に向かって全力を傾注することを、燃焼いたしますことをお誓いを申し上げ、ここに、本日、心からの決意とごあいさつにいたしたいと思います。皆様、ありがとうございました。(拍手)
     ――――◇―――――
 日程第一 銃砲刀剣類所持等取締法及び武器等製造法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(櫻内義雄君) 日程第一、銃砲刀剣類所持等取締法及び武器等製造法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。地方行政委員長中馬弘毅君。
    ―――――――――――――
 銃砲刀剣類所持等取締法及び武器等製造法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔中馬弘毅君登壇〕
○中馬弘毅君 ただいま議題となりました銃砲刀剣類所持等取締法及び武器等製造法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、最近における暴力団以外の者によるけん銃等の不法所持事件や、けん銃等を使用した凶悪犯罪が多発している実情等にかんがみ、けん銃等の不法所持の根絶を図るため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、次のとおりであります。
 第一に、けん銃等の不法所持、密輸入及び密造に関する罰則を強化することといたしております。
 第二に、けん銃等及びけん銃部品の譲り渡し、譲り受け等を一定の場合を除いて禁止することとし、所要の罰則を設けることといたしております。
 第三に、けん銃等の不法所持者がそのけん銃等を提出して自首した場合には、当該不法所持等に係る刑を減軽し、または免除することといたしております。
 以上が、本案の概要であります。
 本案は、四月十三日本委員会に付託され、同月二十二日村田国務大臣から提案理由の説明を聴取した後、去る五月十一日審査を行い、けん銃使用犯罪の実態、けん銃等の一般市民に対する拡散の背景とその対応策、国際協力によるけん銃等の密輸ルートの解明の必要性、けん銃取り締まり関係省庁の連携強化の必要性等について質疑が行われました。同日質疑を終了し、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 気象業務法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
○議長(櫻内義雄君) 日程第二、気象業務法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。運輸委員長森田一君。
    ―――――――――――――
 気象業務法の一部を改正する法律案及び同報告
  書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔森田一君登壇〕
○森田一君 ただいま議題となりました気象業務法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、社会の高度情報化の進展等に対応し、民間における気象業務の健全な発達を図るため、気象庁以外の者が行う予報業務に関し、気象予報士制度を創設するとともに、気象庁長官が民間気象業務支援センターを指定し、気象庁が保有する気象情報の提供を行わせる等の措置を講じる等所要の施策を講じようとするものであります。
 本案は、去る四月二十一日参議院より送付され、同日本委員会に付託されました。同月二十七日には越智運輸大臣から提案理由の説明を聴取し、五月十一日に質疑を行いました。
 かくて、同日質疑を終了し、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
 日程第三 不正競争防止法案(内閣提出、参議院送付)
○議長(櫻内義雄君) 日程第三、不正競争防止法案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。商工委員長井上普方君。
    ―――――――――――――
 不正競争防止法案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔井上普方君登壇〕
○井上普方君 ただいま議題となりました法律案につきまして、商工委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、最近の国際的調和を目指した知的財産制度に係る国際協議の進展等に対応し、本法の内容を国際水準に適合するよう整備しようとするものでありまして、片仮名条文の法律である現行法を全面的に改定し、目的規定の新設、規制の対象
として、著名なブランド、マーク等の無断使用及びデッドコピー商品の譲渡等をする行為の追加、損害額の推定手続の導入、法人に対する罰金の大幅引き上げ等の罰則強化等を内容とするものであります。
 本案は、去る四月九日参議院から送付され、同日当委員会に付託され、四月二十一日森通商産業大臣から提案理由の説明を聴取し、昨十二日質疑を行い、採決の結果、全会一致をもって可決すべきものと議決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)1
○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第四 身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律案(内閣提出)
○議長(櫻内義雄君) 日程第四、身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。逓信委員長亀井久興君。
    ―――――――――――――
 身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律
  案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔亀井久興君登壇〕
○亀井久興君 ただいま議題となりました本案について、逓信委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、社会経済の情報化の進展に伴い身体障害者の電気通信の利用の機会を確保することの必要性が増大していることにかんがみ、電気通信役務並びに放送及び有線放送の役務の利用に関する身体障害者の利便の増進を図るため、当該利便の増進に著しく寄与する通信・放送身体障害者利用円滑化事業を推進しようとするもので、その主な内容は、
 第一に、通信・放送身体障害者利用円滑化事業等の定義を設けること、
 第二に、郵政大臣は、通信・放送役務の利用に関する身体障害者の利便の増進に関する基本的な方向及び通信・放送身体障害者利用円滑化事業の内容等に関して基本方針を定めること、
 第三に、通信・放送機構の業務として、通信・放送身体障害者利用円滑化事業の実施に必要な資金に充てるための助成金の交付、郵政大臣及び大蔵大臣が指定する金融機関が行う通信・放送身体障害者利用円滑化事業の実施に必要な資金の貸し付けについての利子補給金の支給、通信・放送身体障害者利用円滑化事業に関する情報の提供等の業務を追加すること等であります。
 本案は、去る二月十五日逓信委員会に付託され、同月二十二日小泉郵政大臣から提案理由の説明を聴取し、昨十二日質疑を行い、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 国務大臣の発言(「我が国文民警察要員死傷事件と要員の安全対策等」について)
○議長(櫻内義雄君) 河野国務大臣から、「我が国文民警察要員死傷事件と要員の安全対策等」について発言を求められております。これを許します。国務大臣河野洋平君。
    〔国務大臣河野洋平君登壇〕
○国務大臣(河野洋平君) 先般発生した我が国文民警察要員死傷事件と要員の安全対策等について御説明申し上げます。
 去る五月四日、カンボジアにおいて国際平和協力業務に従事していた我が国文民警察要員五名が、他国のUNTAC要員とともにパンテアイ・ミエンチャイ州のフォンクーからアンビルに向けて移動中、武装グループに襲撃され、高田晴行さんが殉職され、ともに行動していた他の四名の方々も負傷されるという痛ましい事件が発生いたしました。
 高田さんの文民警察要員志望の動機は、国際平和協力隊員の一員として世界平和のために努力したいというものでありました。こうした高田さんの訃報に接し、深い悲しみと強い憤りを感じております。ここに、高田さんの御冥福をお祈りし、御遺族に衷心よりお悔やみを申し上げます。また、負傷された方々の一日も早い御回復をお祈りいたします。カンボジアの恒久和平の達成に向け努力してきた前途有為な人材を失ったことは、我が国にとりましても大変に残念な事件でありました。
 政府といたしましては、事件発生後、直ちに官房長官を本部長とする国際平和協力業務安全対策本部を設け、派遣要員の安全対策の強化につき協議を行うとともに、関係閣僚によりカンボジア国際平和協力業務関係本部員会議を開き、派遣要員の安全対策に万全を期すことといたしました。これを踏まえ、先週末、村田自治大臣兼国家公安委員長をカンボジアに派遣し、我が国要員を含むすべてのUNTAC要員について、警備の強化、配置先の再検討など、要員の安全の確保をUNTACに申し入れたところでございます。また、我が国要員に対する装備品の支給、現地支援体制の一層の充実強化などにより、政府といたしましても、要員の安全対策について、あとう限りの努力をしているところであります。
 かかる日本側の申し入れに対し、明石特別代表からは、一、UNTACとしても要員の安全対策にさらに万全を期したい、二、UNTAC要員の配置について再度緊急に検討したい、三、安全対策のための会議を巡回によって行う、といった具体的かつ評価すべき対応がなされたところであります。
 五月十二日の午前、関係本部員会議を開き、帰国した村田大臣より、これらの経過などの報告を受け、その後、国際平和協力業務安全対策本部の第二回目の会合を開き、一、現在の配置が危険と考えられる地域については、関係国とも協議しつつ、UNTAC側と早急に話し合う、二、山崎隊長を中心に早急に地域の巡回の実施を指示する、三、手薄となっているUNTACの輸送手段を支援するための我が国としての措置を早急に検討することを確認し、直ちに実施に向けて準備を開始することとし、その関連で、村田自治大臣の派遣結果を踏まえ、本日、国際平和協力本部の柳井事務局長、その他関係省庁の職員をカンボジアに派遣することといたしました。
 また、UNTAC要員の一層の安全対策の強化のためには、カンボジア各地で活動を行っている要員のための水や食糧などを初めとする物資の輸送や、UNTAC要員の移動のための手段として、ヘリコプターなどによる輸送能力の強化が必要とされており、そのため国連は各国に対して、
輸送能力増強を柱とするUNTACの安全対策強化に向けた一層の協力を要請をしてきております。政府としては、国連からの要請にこたえ、UNTACによる輸送能力増強のための経費に充当するため、国連に対して百万ドルをめどとする緊急拠出を行うことを決定したところであります。詳細につきましては、今後国連側と協議をしてまいります。
 現在、カンボジアでは、局地的な停戦違反はあるものの、全面的に戦闘が再開されているわけではありません。また、カンボジアにおける紛争当事者各派は、パリ和平協定に署名をし、UNTACの設立に同意し、また、SNCを通じてUNTACの活動を受け入れております。ポル・ポト派も、パリ和平協定に反対しているわけではなく、むしろパリ和平協定が厳格に履行されるべきこと、ベトナム軍がいまだ残留していること、SNCが十分権限を行使していないことなどを問題にしておりますが、UNTACの活動を全面的に否定するような言動をとっているわけではありません。
 したがって、パリ和平協定に基づく和平プロセスの基本的枠組みは依然維持されており、停戦の合意を含む国際平和協力法上のいわゆる五原則は満たされていると考えているところであります。なお、パリ和平協定の基本的枠組みが維持されているとの考えは、国際社会共通の認識でもあります。
 カンボジアでは、パリ和平協定に従って、五月二十三日より、制憲議会選挙が行われることとなっておりますが、これまで、ポル・ポト派の不参加にもかかわらず、有権者の九割以上と推測される約四百七十万人の人々が選挙登録を行っており、これはカンボジア国民自身が選挙の実施を強く望んでいる証左であり、さらに十日には、シアヌーク殿下も、選挙への参加をカンボジア国民に呼びかけているところであります。
 政府としては、カンボジアの恒久和平と民主主義の確立のためにも、十日後から始まる制憲議会選挙が予定どおり、かつ、安全に実施されるよう、UNTAC、関係諸国とともに努力をしてまいることが最善の道であると考えており、今後とも、我が国が果たすべき役割にふさわしい貢献を積極的に行ってまいりたいと考えております。
 何とぞ、関係各位の御理解と御協力をお願い申し上げます。(拍手)
     ――――◇――――― 国務大臣の発言(「我が国文民警察要員死傷事
  件と要員の安全対策等」について)に対する
  質疑
○議長(櫻内義雄君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。綿貫民輔君。
    〔綿貫民輔君登壇〕
○綿貫民輔君 私は、自由民主党を代表し、ただいま御報告がありました我が国の国連平和維持活動への協力の問題に関し、政府に対して質問をいたしたいと思います。
 今月四日には、文民警察官としてカンボジアのタイ国境パトロール中に何者かの襲撃を受け、岡山県警高田晴行警視が殉職され、四人の警察官の方々が重軽傷を負われたことは、痛恨のきわみであります。
 私は、国際貢献のために命をかけて尽くされた高田警視の栄誉をたたえて、御冥福をお祈り申し上げるとともに、御遺族の皆様に心からお悔やみを申し上げます。また、負傷され、現在手当てを受けられている方々の一日も早い回復をお祈りするものであります。私は、襲撃を行った武装集団に対し、強い憤りを覚えるとともに、強く抗議し、自制と和平プロセスヘの協力を促すものであります。先般のボランティア活動中に犠牲となられた中田厚仁さんと、今回の高田警視の殉職をめぐって、なぜに犠牲者が出るのか、さらなる犠牲者が出ないためにはどうするのか、そもそも何のためにPKOに協力しなければならないかなどの声が出ております。
 私は、ここで原点に戻って、国際平和協力の意義について振り返ってみたいと思います。
 約三年前の平成二年八月、湾岸戦争が勃発。この戦争への対応を含め、激動する世界情勢に日本がどう対応するか苦慮し、与野党間で対話を重ねました。その結果、ノーベル平和賞を受賞し、世界じゅうの多くの国々が参加しているPKOに参加することが、現在の我が国として一番ふさわしい国際貢献であるとの結論に達し、国会史上最長の時間をかけて審議を行い、国際平和協力法が成立したわけであります。
 その初めてのケースとしてカンボジアPKOに参加したわけでありますが、法案審議の過程で心配された点と現実とのギャップを埋める努力をしながら、国内外から期待され、評価されているカンボジアPKOを何としてもやり抜くべきものと思います。
 我が国より派遣されて活動している隊員の諸君のためにも、ここで政府としてしっかりとした対応を講じる必要があると思います。今般、村田自治大臣兼国家公安委員長が政府の代表として現地に赴かれ、この点を中心に協議をされ、昨日お帰りになったようでありますので、これを踏まえ、幾つかの質問をさせていただきたいと存じます。
 まず、UNTACでは、今月の二十三日から二十八日まで総選挙の実施を予定し、これに向けた体制を整備しつつありますが、ポル・ポト派の妨害が予想される中で、この際、総選挙を延期すべきではないかとの意見もごく一部ではあるようでございます。私は、これまで国際社会の多大の努力によりやっと和平の兆しが見えつつある中で、カンボジアにおける民主国家の実現をより確かなものとし、将来の平和国家を着実に建設していくためには、この時期を逃すべきではないと考えますが、総理のお考えを伺いたいと存じます。
 第二に、しかし、そうであるとすれば、事態は引き続き緊迫して推移するものと思われます。政府として、ポル・ポト派の勢力、戦略等から見て、今後、総選挙に向けて全面的な戦争に至るような事態もあり得るのかどうか、これを含めてどのように見ておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
 そうした事態の中で、我が国の要員が引き続き活動を続けていくためには、要員の安全面を初めとした活動環境について、政府としてしっかりと対応を講じていくことが絶対に必要であると考えます。現地の文民警察官の諸君も、現在の状況について大変不安を持たれているように報道されております。やる気を持って現地に臨んだ諸君が困っているのであります。隊員本人はもちろん、御家族も心配なく業務に励めるよう、安全面はもちろんのこと、連絡体制、水、食糧等の物資の補給に万全を期すことが必要だと思います。
 今回、村田大臣が行かれたわけでありますが、どのように実情をとらえ、どのように対応策をとられたのか、またとられようとしているのかをお伺いいたしたいと存じます。
 同時に、最近の情勢を見ますと、さまざまな襲撃事件により、日本人ばかりではなく、四月にはブルガリア兵四名、五月にはコロンビアとフィリピンの文民警察官それぞれ一名が死亡しております。要するに、UNTACの活動に参加している他の諸国にも犠牲者が出てきているわけであります。そうした中で、一部の国では、カンボジアにおける総選挙の成功に向けて、UNTACに対して追加的な支援を行おうという動きも聞こえております。政府としても、こうした動きに呼応し、国際的連携のもとにUNTACをさらに支えていく対策を講じることも極めて重要だと思われますが、政府はどのようにお考えかをお伺いしたいと思います。
 また、昨日、四十一名の選挙要員をカンボジアに向けて派遣されたとのことでありますが、カンボジアの総選挙の実施を支えるこうした要員につ
いても、安全面を初めとした勤務環境については万全を期すべきだと思います。この点についても、今回、村田自治大臣が明石代表と会談され、結論が得られたと聞いておりますが、具体的にどのような対策をとろうとされているのか、お伺いいたしたいと存じます。
 また、選挙要員の方々は全員タケオ州に配属されるとのことですが、各投票所に一人ずつ配置され、大変厳しい生活環境が待っております。同州に配置されている自衛隊の部隊におかれては、緊急の場合はもちろんのこと、国際的に許される範囲で、同じ日本人として、この方々に対してできるだけの支援をしてあげていただきたいと思います。この点についてのお考えをぜひお伺いしたいと思います。
 さて、ボランティアの中田厚仁さんが亡くなったとき、彼のお父さんは、「彼の志は十分遂げられ、彼のとうとい意思はこれからも生かされて世界の人々のために生き続けていくと信じています。今回の事件で少しでもひるむことが生れば、それは私どもが一番悲しむところです。」と述べられました。また、高田晴行さんのお父さんは、「息子は国際平和に貢献でき、満足だろう。息子を大変誇りに思っています。」と述べられました。このような崇高な言葉は今も私の耳に焼きついておりますが、お二人の死を無にすることのないよう、我々は、国際平和協力の道を決然と歩んでいかねばなりません。(拍手)
 最後に、最近の情勢、また今後予想される事態の推移を踏まえ、カンボジア国際平和協力活動に対する我が国の取り組みについて、政府は、その基本的な考え方を常に国民に明確にしていくことが重要であります。総理の確固とした決意をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 先ほど官房長官から御報告をいたしましたような事件が発生いたしましたことについて、深い悲しみと強い憤りにたえません。高田さんの御冥福をお祈りし、御遺族に衷心よりお悔やみを申し上げるとともに、負傷された方々の一日も早い御回復を祈念しております。世界平和のため努力してきた有為な人材を失ったことは、まことに断腸の思いであり、残念のきわみであります。
 選挙の施行について最初に御質問がございました。
 既に、カンボジアの有権者の推定九割を上回る四百七十万人が選挙の登録を終わっております。これは明らかにカンボジア国民の大多数が選挙を行うことを熱望しているということの証左であります。また、シアヌーク殿下自身も、つい数日前も全カンボジア国民に向かって、選挙に参加することを呼びかけたところでございます。この選挙を予定どおり実施することは、本来、パリ協定の基本的な枠組みの、基本的なしかも目的であります。また、安全保障理事会もたびたびこれについて決議を行っておりまして、これは、明らかに国際社会の確固たる支持を得ているところと思います。我が国として、この選挙を予定どおり実施するために協力をすることが、カンボジアの永続的和平と国民的な和解を達成する上で極めて重要であり、かつ不可欠と考えております。この際、この選挙を延期するということによって得るものは、私は何もないと思います。
 そもそも、選挙の参加を拒否しているのはクメール・ルージュであって、幾たび呼びかけても、この選挙に参加をしない、延期をすれば参加をするかという、そういう見込みは全くありません。むしろ、これを延期することによって、不参加を奨励するような結果になることになれば、これは全くパリ協定の基本精神をないがしろにするものであると言わなければなりません。(拍手)
 このたび、このような選挙の妨害が起こり、また、さらに事態が緊迫するような場合にも備えて、UNTACとしても可能な限りの安全対策を講じております。我が国としても、各派にしばしば自制と選挙参加を呼びかけているところでございます。ポル・ポト派の戦力等々から考えまして、このようにUNTAC及び関係者が万全の対策をしておりますれば、カンボジア全土で全面的な戦争を展開するような能力はポル・ポトにはないというのが大方の判断であり、また見方でございます。
 以上のような理由によりまして、政府としては、カンボジアの永続的和平達成のため、選挙が予定どおり、かつ安全裏に実施されるよう、UNTAC関係諸国とともに懸命に努力をしてまいります。これが和平を達成する最善の道と考えており、我が国が果たすべき役割にふさわしい貢献を積極的に行ってまいりたいと存じます。
 このたびの国連平和維持活動は、御指摘のように、十三年間にわたる長い戦乱にうんで、各派が戦争をやめよう、しかしながら、その和平に至りますまでには、各国の仲介と支援がございまして初めてパリ協定に到達したところでございました。したがって、和平そのものが脆弱であったことは否定ができません。むしろ、そうでなければ国連が平和維持活動をする必要はなかったわけでございますので、我々は、この脆弱な和平を我々が平和維持活動を行うことによって国づくりに貢献をいたしたい、このように考えて、平和維持活動に参加をいたしておるわけであります。
 その後、ポル・ポト派が武装解除に応ぜず、また、選挙参加を拒否しております結果、当初予定したこととは違った状況が生じておることは否定いたしませんけれども、しかし、それは十三年間戦争をしておった、その後に来るべき事態として、ある程度そのような平和の性格を我々は当然のこととして、それがゆえに平和維持活動の協力を行いつつあるわけであります。もとより、そのための派遣要員の安全には万全を期さなければなりません。
 先般、村田自治大臣兼国家公安委員長をカンボジアに派遣し、我が国要員を含むUNTACの選挙要員や文民警察要員等の安全確保の強化について重ねて申し入れますとともに、我が国要員に対する装備の強化、現地支援体制の一層の充実強化などにより、あとう限りの努力をいたしておるところでございます。
 なお、このたびの事態にもかんがみまして、要員の安全対策の一環として、UNTACのヘリコプター等による輸送力の増強の必要があることをUNTAC当事者が強く痛感をしておられ、我々もそれを痛感をいたしました。ヘリコプター等の提供は、近隣の国家から短時間のうちに可能なようでございますが、このための財政的な必要がございますので、我が国として、UNTACからの要請を受けまして、とりあえず百万ドルの拠出をいたしました。これは我が国の要員のみならず、UNTAC全員の安全に資すること大なるものであろうと考えております。
 次に、選挙監視要員についてお尋ねがございましたが、先般、村田大臣を現地に派遣し、我が国の要員を含むすべてのUNTAC要員について、警護の強化等をUNTACに申し入れますとともに、特に選挙要員につきましては、自国派遣部隊の展開地域に配置されるということの原則の確認を行ってきたところでございます。明石代表からは、UNTACとしても隊員の安全対策に万全を期したい、特に選挙要員については、歩兵部隊による警護等を計画していること、各国とも、自国の部隊が配置されている地域に選挙要員を配置するといった点が確認されております。
 カンボジアに我々の自衛隊の部隊が派遣されておりますが、これらの部隊は、国際平和協力法及び実施計画に従いまして、UNTACからの指示のもとに国際平和協力業務を実施しておりますが、こういう状況の中で、我が国の選挙要員に対して、緊急の場合と否とを問わず、必要に応じ可能な限りの支援を行うことは当然であります。そういたすように指示をいたしてございます。
 なお、カンボジアでは、以上申し上げましたとおり、パリ和平協定によって選挙が行われることになっており、住民の大部分の九割以上と推定される人々の登録が済んでおります。政府といたしまして、カンボジアの和平と民主主義のため、選挙が予定どおり、かつ安全裏に実施されるようUNTAC、関係国とともに努力し、今後とも我が国が果たすにふさわしい貢献を積極的に行ってまいりたいと存じます。
 残りの問題につきましては、関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣村田敬次郎君登壇〕
○国務大臣(村田敬次郎君) 私は、宮澤総理の命によりまして、今回カンボジアを訪問し、厳しい治安状況の中で常に身の危険を感じながら勤務しております文民警察官の実情を強く認識したところでございます。
 政府としては、これを踏まえ、我が国の要員を含むすべてのUNTACの要員について、警護の強化等を申し入れるとともに、特に文民警察要員については、配置先の再検討及び安全対策協議のための一時的なプノンペンへの招集等の安全対策をUNTACに申し入れたところでございます。これに対し明石特別代表からは、一、UNTACとしても隊員の安全対策に万全を期したい、二、文民警察要員の配置について再度緊急に検討したい、三、文民警察要員の安全対策のための会議を巡回によって行うといった、具体的な評価すべき対応が示されたところでございます。
 昨日、国際平和協力業務安全対策本部の第二回目の会合を開き、一、現在危険とみなされる地域に配置され、任務の遂行が困難となっている地域については、関係国とも協議しつつ、要員の配置先の再検討をUNTAC側と引き続き話し合う、二、山崎隊長を中心に早急に地域に巡回を実施することを指示する、三、要員の安全対策の一環として、UNTACの輸送能力の確保を支援するなどの措置を早急に検討することを確認し、昨日の総理の記者会見におかれましても発表をしたように、また、ただいま御発表がありましたように、UNTACのヘリコプター等による輸送能力の増強のため、国連に百万ドルの緊急拠出を政府として決定したところでございます。
 また、本日、国際平和協力本部の柳井事務局長ほか外務省及び警察庁の職員をカンボジアに向けて出発させる等、直ちに実施に向けて準備を開始したところでございます。
 今後とも、政府といたしましては、UNTACとの緊密な連絡等を維持しつつ、派遣要員の安全対策に万全を期してまいりたいと考えております。
 以上、お答え申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 和田静夫君。
    〔和田静夫君登壇〕
○和田静夫君 私は、日本社会党・護憲民主連合を代表して、PKOに関連して総理に質問いたします。
 初めに、先般カンボジアにおいて、武装集団の襲撃により、とうとい命を落とされた中田厚仁さん、文民警察官高田晴行警視を初めとする多くの国々の犠牲者の方々に対し、心から哀悼の意を表するとともに、御遺族の皆様に対して心からお悔やみを申し上げます。
 私は、今回の事件に関し、政府に対して強い怒りと憤りを覚えるものであります。それは、予見されたことが起こったからであります。先月二十八日の本会議において、我が党の同僚議員は、カンボジアでは、我が国のPKO参加五原則は既に崩れているとして、日本人要員を撤収するように求めたにもかかわらず、政府は、五原則は崩れていないと強弁したのであります。しかも政府は、その後、要員の安全確保のため何ら有効な措置をとらないまま、今回の事件が起きてしまったのであります。総理は、その責任をどのように認識されているのでありますか。(拍手)政府は、PKO協力法案審議の際に、カンボジアでのPKOは安全で平和的な業務であり、戦闘に巻き込まれるおそれのあるところへは派遣しないと繰り返し答弁しました。ところが、現実はどうですか。今のカンボジアは、危険がないところか、戦場そのものではありませんか。総理の考える国際貢献とは、汗を流すことではなく血を流すことまでを言うのでありますか。我が国要員の死傷事件が起きて、初めてPKOが極めて危険な業務であることを認識したかのように振る舞い、PKOには危険な面があり、多少の犠牲はやむを得ないと言うのは、余りにも無責任であると言わざるを得ません。総理は、国会や国民を欺いてきたのでありますか。この責任をどのようにおとりになるつもりですか。
 カンボジアでは、選挙を間近に控え、テロ攻撃が日増しに激しさを増すなど、情勢は非常に緊迫をしております。こうしている間にも、我が国の要員が戦闘に巻き込まれる事態が生ずるかもしれないのであります。我が党は、今回の事件後、カンボジア情勢の深刻さにかんがみ、政府に対し、派遣要員の一時的な業務中断や撤収を含め、派遣のあり方を再検討するよう強く申し入れたのであります。これに対して、政府は、パリ和平協定の枠組みは崩れておらず、現段階で中断や撤収の考えのないことを改めて示したのであります。
 しかし、現実はどうでありましょうか。ポル・ポト派は、これまでの武装解除拒否に加えて、UNTACの手による総選挙拒否、そしてSNC会合への不参加の姿勢を明確にいたしました。ソン・サン派やラナリット派さえ選挙の延期を主張し、またUNTACは、三派に対する武器の一部を返却する方針とも伝えられます。停戦合意、武装解除、総選挙の実施というパリ和平協定の枠組みは、実質的には既に崩れているのは、だれの目にも明らかであります。
 先日の閣議においても、閣僚の中から、停戦合意は形だけで、実際にそれが守られているとは言えないのではないかと、郵政大臣を初めとする疑問の声が出たというではありませんか。加えて、カンボジアを訪れた村田自治大臣は、我が国の文民警察官の皆さんの、「一体何人死んだら帰れるのか」、「水も食糧もないところでどうやって業務がやれるのか」、「日本の人たちは現地の事情を知らない」との悲痛な声を聞き、ショックを受けられたというではありませんか。政府がこれまで強弁してきた、戦闘は散発的だから停戦は崩れていないという言葉を国民のだれが信じるというのでありますか。業務の中断や撤退を考えることは、ポル・ポト派のねらいにはまることだということを名目に、五原則をなし崩しにしたのでは、歯どめの意味がなくなると考えなければなりません。もし政府が、現時点においてもPKO参加五原則が確実に守られていると考えるのであれば、それはどうしてなのか。我が国として、それをどう確認しているのか。明確に、かつ、国民が納得するように説明していただきたいのであります。(拍手)
 政府は、事件後、我が国の文民警察官の安全確保のため、UNTACに対し、文民警察官の安全な地域への再配置を申し入れたものの、UNTACは、日本人だけ特別扱いできないとして、事実上、この要請を断りました。このことは、我が国の要員は危険な地域には派遣しないという政府の方針とは反対に、現に危険な地域に文民警察官を派遣していることをみずから認めるものであります。
 また、今後、選挙が近づくにつれ、ポル・ポト派のUNTACに対するテロ攻撃は日増しに激しさを増していくに違いありません。そうなれば、再び我が国の要員の中から犠牲者が出るのは必至であります。なるほど、選挙が無事終了するまで我が国要員がカンボジアにとどまって業務を遂行することが、カンボジアで銃弾に倒れたお二人の死をむだにしないことだという声もあるようであります。しかし、今やカンボジアのかなりの人々
が強い反発を示しているとも言われるUNTAC主導のもとで拙速に選挙を行い、形はかりの政府をつくることだけが、カンボジア和平を達成する唯一の道であるはずはありません。カンボジアが落ち着くまで選挙の実施を延期するよう、国際社会に訴えていく勇気を日本政府は持つべきであります。
 なるほど、我が国だけがカンボジアから撤収すれば、諸外国から我が国の国際貢献の姿勢が疑われるという声がなくはありません。しかし、一たびは撤収し、その後、カンボジアにおける真の和平実現に向けて、関係国と十分協議し、パリ和平協定の再構築のために最大限の努力を尽くしていけば、むしろ我が国の行動は国際的に評価されるものと私は確信をいたします。総理の明確な所見を求めたいところです。
 近く実施予定の総選挙監視のため、我が国から既に四十一名の要員がカンボジアに派遣され、プノンペン近辺の比較的安全な地域で活動を行うようであります。他方、政府は、カンボジア情勢の悪化にかんがみて、カンボジアへの国際協力専門家の派遣を延期されました。また、既にプノンペン入りしている青年海外協力隊三人の活動も延期しております。同じ地域で活動する人たちのうち、一方の選挙監視要員の活動は強行する、他方で国際協力要員の活動を延期するというのは明らかに矛盾であります。政府は、国際協力活動においては派遣の基準を厳しくとらえ、平和協力活動においては甘くとらえるという、いわば二重の基準をとっているとしか私には思えません。なぜそうなのか、総理の御所見を伺いたい。
 ポル・ポト派は、今後、選挙阻止のため、プノンペン周辺を含むあらゆる地域で、UNTAC要員に対しテロ攻撃を加えるのではないかとの見方もあります。日本人監視要員が、たとえ自衛隊が駐屯するタケオ州内で活動するにしても、それが絶対安全であるとの保証はどこにもないのであります。政府は、これら選挙監視要員の安全確保のため、どのような措置を講じていくつもりか、総理にお伺いをいたします。
 ところで、無事選挙が終われば、果たしてカンボジア情勢は安定するのでありましょうか。もし仮にプノンペン政権が勝利すれば、ポル・ポト派は一層反発を強め、その攻撃は激化するのではないでしょうか。加えて、UNTACが、武装解除に応じた残りの三派に武器の一部を返還するようでありますが、そうなればますます内戦の再発は避けられそうにありません。そのことは、これまでUNTACの行ってきた和平への努力がすべて水泡に帰してしまうことを意味するのであります。総理は本当に、選挙さえ実施されればカンボジアに和平は到来すると思っているのでしょうか。選挙実施後のカンボジア情勢をどのように見ておられるのでしょうか。
 政府は、カンボジアに続き、遠くアフリカのモザンビークにまで自衛隊を派遣することを決めました。モザンビークの状況を見ると、果たして停戦合意が守られているのか疑問でもあります。武装解除もほとんど進んでいないと言われております。今回の派遣決定に当たって、当初、総理は、この点を憂慮されて、派遣に慎重な姿勢をとったのではないですか。カンボジアと違って、水や食糧を自前で調達できず、しかも我が国の在外公館もつくられたばかり、十分な支援体制も期待されないまま、一体どうやって十分な活動ができるのでありますか。政府は、カンボジアでの二の舞になりかねないモザンビークヘの自衛隊の派遣を直ちに中止すべきであります。
 また、今回、五名の自衛官をモザンビークPKO司令部に派遣すると言われますが、この司令部は司令官を補佐し、武装解除などのいわゆるPKF業務等に関して総合的な企画立案を行う部門であり、まさにPKO協力法で凍結されているPKF業務以外の何物でもありません。今回、政府がPKO司令部への要員派遣をあえて決めたことは、近い将来、PKFの本体業務にまで自衛隊を参加させる意図によるものであることは明らかであります。これも直ちに撤回することを強く要求をいたします。(拍手)
 この際、日本の国際協力のあり方に関連して、一言申し上げたい。
 それは、国際協力を推進するにしても、戦後処理問題が未解決のままでは、東南アジア諸国との信頼関係を構築するのは難しいという問題であります。この見地から、さきの大戦において日本が犯した、著しい非人道的な行為について、真相究明の上に謝罪と補償を急がなければならないと考えますが、総理、いかがでしょうか。
 この問題に一元的に取り組む担当行政機関さえ定まっていないという現状を早急に改める必要についても、この際、見解を明らかにしていただきたいのであります。
 カンボジアとボスニアのPKO活動は、国連の行うPKO活動の転機であります。湾岸戦争やソマリアでのように多国籍軍によらなくとも、紛争当事者の合意によらない派遣や予防派遣、重装備化の道を開こうとするガリ事務総長の描いたラインを進むべきなのでしょうか。それとも、PKO活動は、あくまでもこれまでの原則に立ち戻り、軽装備で、停戦と紛争当事者の合意のもとに派遣するものに限るべきなのでしょうか。これは、ポスト冷戦の世界秩序を考える上でも大切な問題であります。
 総理は、今後のPKO活動のあり方をどのように考えておられるのか伺いまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) カンボジアに部隊、要員を送ることにつきましての決定は、国際平和協力本部長としての私がいたしたものでありまして、その責任は、私が負わなければなりません。今度のような、とうとい犠牲を生じましたことを心から申しわけなく思っております。かかる上は、今後とも派遣要員の安全対策に万全を期しまして、派遣の目的を達成いたしたいと考えております。(拍手)
 次に、法案の審議に当たって、政府は故意に事態を安易なものと説明をしてきたのではないかというお尋ねがございました。
 国連の平和維持活動が行われるような場合は、このたびのカンボジアがいい例でございますが、十何年という戦争にうんで、何とか戦闘はやめて和解をしたい、しかし、自分たちだけではなかなかそれができないというようなことから、各国が仲介をする、あるいはそれについて意見を述べる。今度の場合ですとパリ協定でございますが、そういう中で、しかし、その後の平和を確かにするために国連の平和維持が求められる、そういう性格のものでございますから、平和そのものが、もし自分たちだけで国づくりができれば、これは必要のないことでございますので、そういう意味での平和の脆弱さがあるということを申し上げてまいりました。
 しかし、その際、国連の平和維持活動は、武力を行使いたしましたのでは、これはまた戦争になるわけでございますから、それでは平和維持ということにならない。むしろ、国連の信頼と説得に基づく作業でございますから、これは本来、決して容易なものではないということは申し上げてまいりました。殊に、我が国の場合に、海外における武器の使用ということは殊さら慎重でなければなりませんので、そういう意味での制約を法律に置いておりますことも御存じのようなところでございます。
 そういうような脆弱な環境の中でこのたびの平和維持活動が行われました。不幸にして武装解除が完全に行い得なかったこと、また選挙に一派が参画することを拒否しているということはまことに残念なことでございますけれども、しかし、ここで国連の平和維持活動をやり遂げまして、選挙を行い、そうしてカンボジア人のカンボジアの国づくりにつなげていくことが、やはり私どもに課
された任務であるというふうに判断をいたしております。
 派遣要員の万全を期さなければならないことは申すまでもないことでございまして、先ほども申し上げましたが、村田自治大臣兼国家公安委員長に先般現地に行っていただきまして、我が国要員に対する装備の強化、現地支援体制の強化などについて、政府としても努力をし、UNTACの理解を求めたところは御報告をいたしたとおりであります。
 事態はこのようなことで、十分な武装解除が行い得なかった、またポル・ポトによる選挙不参加ということがございまして、国際社会が当初期待したとおりの状況でないことは残念でありますが、事実でございますけれども、しかしながら、かといって、もちろん全面的な戦闘が展開されているわけではございませんし、クメール・ルージュ自身が、自分たちはパリ協定を忠実に履行するということをつい先日も申しておるわけでございます。むしろ彼らの主張は、パリ協定を忠実に履行するならば、ベトナム人は排除されるべきである、なおベトナム人がたくさんいるというのがクメール・ルージュの主張のようであります。それからSNCが十分に機能を発揮していない、もっとパリ協定の求めるようにすべきであるという、パリ協定の忠実履行ということをクメール・ルージュは言っているわけであって、基本的な枠組みがしたがって崩れているとは考えられません。UNTACの活動についても、これを受け入れておるわけでございます。
 そういう状況でございますから、平和五原則というものが崩れているとは考えない。むしろ、勝手に選挙参加を拒否するという行動が許されるならば、パリ和平協定で求められているものはみずから放棄することになってしまうということを私どもは恐れておるわけであります。
 先ほども申し上げましたが、有権者の九割に当たる登録が行われておりますから、カンボジア国民が概して選挙を希望しておることは明らかと思います。また、シアヌーク殿下自身も、クメール・ルージュを含めまして国民に暴力行為の自制を呼びかけるとともに、選挙への参加を呼びかけておりまして、シアヌーク自身が、選挙延期の主張には自分は同意できないということを言っておるわけでございます。
 御指摘のように、仮に選挙を延期をせよとおっしゃいましても、延期をすることによって何を新たに期待するのか。選挙を放棄するということになれば、それはパリ協定の求めておる基本が実現をしないということになるのではないかということを恐れます。
 十三年間の戦乱を、カンボジア人が自分の手で国家を再建するための努力をいたしておるわけでございますから、我々がここで、日本だけが撤収をする、そして眼前に迫っております選挙を、いわば現実に行い得ないような事態にするということが、我々が国際的評価を得るゆえんではないと政府は考えます。
 なお、海外協力隊や農業専門家の派遣についてお話がございましたが、これらは国際平和協力法の定めるところではなく、カンボジアからの要請に基づくものでございますので、その派遣についてを同一の基準で判断することは適当でないように存ぜられます。
 なお、選挙監視要員の安全確保につきましては、先ほども御報告をいたしましたが、安全のための防弾チョッキ等々の整備、それから我が国からの短波受信用のラジオの確保、それからタケオ州の自衛隊宿営地にはインマルサット等々を設置をいたしておりまして、緊急事態の発生に対しましての万全の態勢をとることにいたしております。
 なお、この選挙が仮に行われた後、カンボジアの情勢がどうなるかということにつきましては、その後、憲法がつくられるというふうにパリ協定は想定をいたしておりますが、基本的に、したがって、そのような努力はカンボジア人の手で行われるべきものであると存じます。ただ、そのような状況がどう展開してまいりますか、国際社会としては、いずれにしても、カンボジア人のそのような努力を引き続き支援をしていくということが必要であろうかと存じます。それがどのような形をとりますかは、その事態になりませんと、ただいま判断がいたしかねますけれども、いずれにしても、カンボジア自身の自助努力に協力をすることは必要であろうと思います。
 それから、モザンビークヘの自衛隊派遣につきましてお話がございました。このたび本部員を設けましたのは、我が国が委託されております輸送の管理、ムーブメントコントロールというものにつきまして、やはり本部と常に連絡をしていかなければ業務を有効に能率的に遂行し得ない、こういう観点から五名の自衛官の司令部派遣の決定をいたしました。撤回をいたすつもりはございません。
 それから、戦後処理の問題一般につきまして、我が国としては、サンフランシスコ講和条約あるいは二国間の平和条約で一般的には処理をされておると考えますけれども、慰安婦等々の問題もございます。我々の気持ちをいかなる形であらわすことができるかにつきまして、誠意を持ってただいま検討をいたしております。
 なお、ガリ事務総長の提案されましたような、いわゆる国連の平和執行部隊について意見をお求めでございましたが、重装備をもって平和を執行するというようなことは今まで国連がいたしたことのないことでございますし、国連憲章におけるその地位も実は必ずしもはっきりいたしません。ガリ事務総長がいろいろ問題意識を持たれておりますことは十分理解ができますけれども、したがいまして、新しい問題としてこういう問題を検討することはやぶさかではございませんが、ただ、そのことは、我が国がそのような行動に参加できるか否かということは全く別の問題であると考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 遠藤乙彦君。
    〔遠藤乙彦君登壇〕
○遠藤乙彦君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま政府より報告がありましたカンボジア国際平和協力業務の状況に関して、総理及び関係大臣に質問を行います。
 質問に入る前に、過日、カンボジアにおけるPKO任務の最中に殉職された中田厚仁さん及び高田晴行さんのお二人の御冥福を心からお祈り申し上げます。世界平和貢献への高い志を持った優秀な人材を二人も失ったことは痛恨のきわみでありますが、お二人のとうとい志は永久に生き続けるものと確信いたします。また、負傷された方々の一日も早い御回復を心よりお祈りいたします。また、困難な状況にあって、とうとい平和維持の任務のために活躍されておられる多数の国際平和協力隊員及びボランティアの方々に対して、心から敬意を表するものであります。
 UNTACは、昨年三月から活動を開始して以来、五月二十三日からの制憲議会選挙を前に、極めて緊迫した状況になっております。現在のカンボジア情勢は、平和への胸突き八丁とも正念場とも言うべき重要な段階を迎えております。
 UNTACは、従来の国連PKOとは異なる新しい試みであり、その成功は、カンボジアのみならず、アジア全体の平和に貢献し、冷戦後の世界における国連の権威と役割を示す重要な意味を持つものであります。他方、もしUNTACが失敗し、カンボジアから撤退することとなれば、あの恐怖と殺りくに満ちたカンボジアの悲劇の再現を意味するものであります。
 今日の事態に当たって、PKO参加五原則の見直しとか感情的な撤退論だけを言うことは、無責任な議論であると考えるのであります。したがって、国際社会はあらゆる努力を払ってUNTACを成功させ、この二十世紀最大の悲劇の再現を阻
止し、悲惨な歴史に終止符を打たなければなりません。
 そこで、まずカンボジア情勢と総選挙の見通しについてお伺いします。
 カンボジアでは、既に約四百七十万人の有権者登録を終え、五月二十三日から二十八日まで実施される予定の制憲議会選挙に向けて、二十の政党による選挙戦が展開されております。カンボジアの本格的な平和構築と民主的国家樹立は、長期にわたって内戦の苦汁をなめてきたカンボジアの国民はもとより、国際社会の強い願望であり、ぜひとも総選挙を成功させねばなりません。しかしながら、実際のカンボジア情勢は、ポル・ポト派の総選挙への不参加の表明、五月六日のSNC北京非公式会合のボイコット、同派によるものと見られる襲撃事件の頻発など、総選挙を前ににわかに緊迫してきており、総選挙を危ぶむ声も聞かれております。
 政府は、カンボジアの現状をどう見ているのか。特に、自由かつ公正な総選挙が可能なのかどうか、また、総選挙が近づくにつれてポル・ポト派による大規模な同時多発的な選挙妨害も予見されるところ、その可能性や選挙妨害戦術など、どのようなものになると予想しているのか、そしてこれらに対してUNTACその他の国際社会の取り組みはどのようになっているのか、お伺いいたします。さらに、ポル・ポト派が不参加のまま総選挙が実施された場合、その後のカンボジア情勢についてどう展望されているのかもあわせてお聞きしたいと思います。
 次に、パリ和平協定とPKO参加五原則についてであります。
 ポル・ポト派はパリ和平協定そのものは遵守するものと一貫して表明しており、パリ和平協定は大枠で守られているとの政府判断は理解できますが、カンボジアの実態として、停戦の合意が崩れていることが一部地域で明らかになりつつあるのではないかとの危倶を抱くものであります。特に、ポル・ポト派が停戦合意を明示的に破棄することは国際的な孤立を招き、得策ではないとの判断から、形式的にはパリ和平協定の遵守を表明する一方、実態面において総選挙を阻止するために大規模かつ同時多発的な襲撃、戦闘を展開する場合、これが最も可能性が高いケースであると思われますが、こういった場合、停戦合意が守られているとは言えないのではないかと考えられます。
 政府としては、どのような場合に停戦合意が維持され、またどのような場合に停戦合意が存在しなくなったかについての判断の基準を明確かつ具体的に御説明いただきたい。
 次に、日本を含めたUNTACの要員の安全対策であります。
 平和構築を妨害する不当な暴力行為はUNTAC、国際社会への挑戦であり、断じて許すわけにはいきません。しかし、そのためにとうとい犠牲を重ねることは避けなければなりません。特に、非武装、個人ペースで活動する文民警察官、選挙監視員の安全対策の抜本的強化を強く要求するものであります。
 政府は、村田自治大臣ほか関係者を現地に派遣しておりますが、UNTACに対してどのような安全対策を要求したのか、またUNTACからどのような回答があったのか、具体的な中身の詳細を明らかにしていただきたい。さらに、UNTACがこれ以上の安全対策をとれないのであれば、地域によっては任務の中止、いわゆる実施要領で言う休止を政府は検討すべきではないのかと考えますが、この点について明確な答弁を求めます。
 次に、カンボジア和平のための日本の一層の外交努力についてであります。
 ポル・ポト派の総選挙参加が望ましいことは言うまでもありませんが、実際には総選挙参加はほとんど見通しがない状況かと思われます。しかしながら、ポル・ポト派による不当な暴力行為を抑制するために、あらゆる外交ルートと手段を通じての努力をすべきであります。また、国連安全保障理事会として、ポル・ポト派の暴力行為を抑制するための措置を検討し、強力なメッセージを送る必要があり、我が国もそのための働きかけを行うべきであると考えますが、政府の見解をお伺いいたします。
 今回の一連の事件に対する一つの問題点として、PKO協力法討議の際、自衛隊参加問題については長時間にわたって事細かに議論が行われた反面、文民参加については十分な議論が行われなかったうらみがあり、今後の問題として、一連の事件の流れを踏まえつつ、文民のPKO参加のあり方を何らかの形で十分に議論をしておく必要があると考えますが、この点について政府の見解を求めます。
 また、PKO協力法では、文民警察官の任務は現地警察への指導、監視、助言が規定されておりますが、実際には地元の要人の警護など、同法を逸脱する任務を負わされているようであり、この点、警察庁が国際平和協力本部に対し、PKO協力法から逸脱した任務が行われないよう要求したと報じられておりますが、事実関係及び政府の見解を求めます。
 最後に、カンボジア情勢及び我が国のPKO活動に関する情報の提供の問題であります。
 PKOへの参加は我が国にとって初めてのことであり、政府は慎重を期し、国民の不安を取り除き、理解と支持を求めていくという基本姿勢を忘れてはならないと思います。特に、あらゆるカンボジア情報を率直に国民に提供するなど納得のいく説明を常に行うべきと考えます。この点についての政府の見解を求めます。
 中田厚仁さんの父上は、プノンペンで息子さんとの悲しみの対面をされたときに、「息子は世界人として生きることを信条にしていた。その意は十分に遂げられたと思う」と発言された由であります。私は、深い感動をもってこの言葉を受けとめました。今日まで平和の恩恵をたっぷり享受してきた日本が、国際平和に貢献しないことは、もはや許されることではありません。今、我々日本人は、世界人として生きていくための試練のときを迎えているものと思います。私は、日本国民は今まで幾つかの試練を乗り越えてきたのと同じように、必ずやこの試練も乗り越え、二十一世紀の日本、世界の中の日本として脱皮するであろうことを強く確信しつつ、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように、カンボジアで種々の暴力行為、テロ事件が発生をいたしておりますので、今後のことにつきましてのお尋ねでございましたが、今後、選挙が近づきますと、なお選挙妨害等々が発生する可能性は否定することができません。そのようなことに備えまして、先ほども申し上げましたとおり、UNTACとしても我々としても安全措置を考えているわけでございますが、特にUNTACとしては、投票所の数の削減あるいは投票所の警備の安全対策等を具体的に講じつつあるものと承知をいたしております。
 制憲議会選挙を予定どおり五月二十三日より実施するという国際社会の決意は、三月八日に採択されました国連安保理決議、それから四月二十三日にはパリ和平協定署各国の共同声明にもございます。また、シアヌーク殿下もそれをカンボジア国民に呼びかけておるところでございますので、このような国連、UNTACの努力、また我々も選挙監視員を派遣をいたしましたが、困難な条件ではございますが、公正な選挙が実施されなければならない、そのために全力を尽くすべきであると考えております。
 次のお尋ねは、ポル・ポト派が不参加の場合に、このまま選挙が済む、その後の状況をどう考えるかということでございます。
 選挙の行われ方がなおはっきりいたしませんが、しかし、いずれにしても、総選挙が済みまして憲法がつくられるということになりますと、カ
ンボジア人自身の国づくり、国民和解による国づくりが行われるというふうに期待をされます。その場合、基本的には、やはりカンボジア人の手で和平をつくってもらうより方法はないわけでございますが、国際社会として、そのようなカンボジア人の自助努力をできるだけ支援をしなければならない、そういう必要は残っていくであろうというふうに考えております。
 ただ、選挙妨害がこれからも恐らく幾つかあるであろうと思いますが、その結果といたしまして、選挙が実施できないような形でそれが全国に広がる、あるいは戦闘が行われるというようなことは予想をいたしておりません。したがいまして、パリ和平協定の枠組みは崩れることがあるとは思っておりません。一般論といたしまして、ただ、和平協定が崩れたかどうかを何で判断するかということでございましたが、これは状況を見て総合的に判断をすべきことであろうと思います。現在はそのようなことを予想いたしておりません。
 それから、派遣要員の安全対策に万全を期すべきことは既に御説明をいたしましたが、我々としては、UNTACとの密接な連絡を維持しつつ、我が国を含むすべてのUNTAC要員が本来の業務が行うことができるように、つまり、水も食べるものもないという、仮にそういう局地的な状況がございますと、これは任務を行いがたいわけでございますから、そういうことがありませんような環境、条件を整えるために努力をいたさなければならない。また、先ほど申しましたような、このたびのヘリコプターあるいは我が国による財政支援等々も、そういうことを目的といたしておるものでございます。
 それからもう一つ、今回の事件等を考えて、文民のPKO参加についてはもう一度考えてみる必要があるのではないかという御指摘がございました。
 確かに、部隊の場合と、文民が何人かで、多数でなく任務を執行いたします場合とは、いろいろ状況が違うであろうということはこのたびも経験をいたしました。今後の安全をどういうふうにすべきかについては、今回のことも十分に参考にしながら、むしろ、しかし現実には、今回のこの事態にとりあえず安全を期さなければならないというふうに考えております。
 それから、このような部隊ないし要員の海外での活動を維持いたしますためには、国民の理解と支持というものが最も重要であることは御指摘のとおりであります。官房長官は、毎日、記者会見でカンボジアに関する情報を提供いたしております。私自身も昨日記者会見を行いましたが、十分国民の納得と理解を得ることが大切であるということは御指摘のとおりでありまして、極力努力をいたしてまいりたいと存じます。
 自余の問題は関係大臣からお答えをいたします。(拍手)
    〔国務大臣河野洋平君登壇〕
○国務大臣(河野洋平君) お尋ねの文民警察の任務の態様等についての問題について、お答えをいたします。
 今総理からもお答えがございましたように、まことに困難な状況の中で、目前の制憲議会選挙の公正かつ自由な実施に向けて、文民警察にも選挙関連の業務を負わされているのではないかといったような情報がございます。五月十日には、警察庁より、国際平和協力本部事務局に対しまして、我が国の文民警察要員の担当する業務が法律に崇める範囲を逸脱することがないよう、UNTACに対して申し入れるように要請がございました。現在、UNTACに申し入れを行うべく、検討をいたしておるところでございます。(拍手)
    〔国務大臣武藤嘉文君登壇〕
○国務大臣(武藤嘉文君) 遠藤議員にお答えをいたします。
 私に対しましては、外交努力についての御指摘であったと存じます。
 ポル・ポト派に対しましては、既に、昨年十一月三十日の国連安全保障理事会の決議におきまして、木材禁輸に係るSNCの決定の支持、国境チェックポイントの設置等の具体的措置を決定し、ポル・ポト派のUNTACへの非協力的態度に対する国際社会の確固たる意思を表明いたしました。
 また、本年三月八日の国連安全保障理事会決議において、UNTACへの攻撃を非難するとともに、あらゆる暴力行為を停止するためのあらゆる措置をとるようカンボジア各派に要請、また四月二十三日のパリ協定署各国の共同声明でも、暴力行為を許さないとの国際社会の確固たる決意を表明したところであります。そして、これら決議あるいは声明の採択に当たりまして、我が国は積極的にイニシアチブをとってまいりました。
 さらに、我が国独自といたしましても、かかる国際的な呼びかけと並行いたしまして、ポル・ポト派を初めカンボジア各派に対し自制を強く働きかけているところであり、また、各派に影響力を持っている関係諸国に対しましても、その影響力を行使するよう要請をいたしておるところでございます。(拍手)
    〔国務大臣村田敬次郎君登壇〕
○国務大臣(村田敬次郎君) 遠藤議員にお答え申し上げます。
 総理よりのお話にございましたように、政府としては、国際の平和と安定のためにとうとい命をささげられた方々に報いるためにも、派遣要員の安全対策に万全を期すべく、我が国の要員を含むすべてのUNTAC要員について、警護の強化、配置先の再検討等、要員の安全対策をUNTACに対し申し入れたところでございます。
 これに対してUNTACからは、UNTACとしても隊員の安全対策に万全を期したい、UNTAC要員の配置について再度緊急に検討したい、安全対策のための会議を巡回によって行うといった、具体的かつ評価すべき対応が示されたところでございます。
 今後とも、政府といたしましては、UNTACとの緊密な連絡を維持しつつ、派遣要員の安全対策に万全を期してまいりたいと存じます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(櫻内義雄君) 金子満広君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔金子満広君登壇〕
○金子満広君 私は、日本共産党を代表して、まず、文民警官高田晴行さんを初め、カンボジアで犠牲になられた方々に対して心から哀悼の意を表明し、パリ和平協定を全面的にじゅうりんしているポル・ポト派を厳しく糾弾し、その上に立って総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 カンボジアに本当の平和をもたらすその上で、ポル・ポト派の無法な暴力と軍事行動が最大の障害になっていることは、今や天下周知の事実であります。ところが総理は、昨日の記者会見で、またも、ポル・ポト派が和平協定を守っているなどと、判を押したように同じことを繰り返しました。
 しかし、ポル・ポト派は、パリ協定の第一段階である停戦合意を踏みにじる、第二段階である武装解除も拒否する、第三段階である総選挙にまで反対をしている、そしてこれを武力で妨害しているのであります。さらにポル・ポト派は、パリ協定を実施するための国内の枠組みであるSNC、つまりカンボジア最高国民評議会の活動にも参加せず、国際的な枠組みであるUNTACに対しても公然とした武力攻撃を行っているのであります。事実は、まさにカンボジア情勢はパリ協定が全面的にじゅうりんされている、そういうことではありませんか。それとも総理は、こうしたことはパリ協定の重要な内容じゃないんだ、そういうことでも言うのか、はっきりとこの点については答えていただきたいと思います。
 重大なことは、日本政府が、和平協定を踏みにじっているポル・ポト派の無法に対してまともな
批判をこれまで全く行っていないことであります。それどころか、きのうの記者会見でも総理は、ポル・ポト派は協定の遵守を表明しているとか、協定が忠実に実施されてほしいとも表明しているなどと述べて、ポル・ポト派擁護に終始をいたしました。なぜ無法な行為を行っているポル・ポト派を批判できないのか。今きっぱりとした批判を行うことこそがカンボジア和平にとって焦眉の課題だと思いますが、この点、総理の見解をはっきりと承っておきたいと思います。(拍手)
 今必要なことは、ポル・ポト派の無法に対して批判を集中すること、国際的にも孤立させていくことです。また、国連安保理決議に基づいて経済制裁を実効あるものにすることであることは当然でありますが、この点についても総理の明快な答弁を求めるものであります。
 こうしたカンボジア情勢のもとで、自衛隊の派兵、協力隊の派遣、こういう問題を抜本的に再検討し、撤退を図ることが今急務となっているのではありませんか。憲法はもとより、PKO法の参加五原則に照らしても、自衛隊そして協力隊の派兵、派遣の継続は全く根拠を失っているのであります。ところが政府は、ポル・ポト派がパリ協定の破棄を言っていないとか、全面戦争になっていないからとか、こういうことを繰り返して、自衛隊の派兵などに対してしがみついているのが現状であります。
 しかし、派遣された村田自治大臣・国家公安委員長に対し、現地の文民警官が何と言ったか。「あと何人死ねば日本に帰れるんですか」、「日本の警官は戦場のようなところで仕事をするための訓練は受けていない」、そのように悲痛な訴えがあったこと、そして、それに大臣が答えて、「これを聞いてショックを受けた」と述べたことが、現地の記者の確認を踏まえて各紙で一斉に報道されたのであります。村田大臣は、現地は戦場であるという文民警官の声をどのように受けとめ、どのように対処しようとしているのか、この点を改めて伺っておきたいと思います。(拍手)
 総理は、ポル・ポト派がパリ協定の破棄を言っていないと言いますが、大体ポル・ポト派は、彼らに市民権を与えたパリ協定を今最大限に利用しつつ、パリ協定の具体的内容をことごとく踏みにじってきたことは明白ではありませんか。協定の内客を破壊するためにこそ協定破棄を言わないんだということは見え見えのことじゃありませんか。総理は、ポル・ポト派が協定の破棄を言わない限り、どんな事態が現地で起きても協定というのは守られているんだというのを言い続けるつもりなのかどうなのか、この点もしかと承っておきます。
 また、ポル・ポト派の戦術の基本はあくまでゲリラ戦であります。そのゲリラ戦で和平協定の内容である総選挙を今妨害しているんじゃありませんか。それを、全面戦争になるかならないか、これを基準にするなんということは、ポル・ポト派がどんな無法、暴力をやってもそれを容認するという結果になるんじゃありませんか。総理は、ポル・ポト派がゲリラ戦でUNTACの要員の殺害を繰り返している、そして選挙が実施できないようになっても、それでも、全面戦争ではないのだから五原則は全く問題はないと言うつもりなのかどうなのか、この点も明確に、事実に基づいて答えていただきたいと思います。(拍手)
 重大なことは、総理が自衛隊派兵に固執するため、停戦合意があると繰り返せば繰り返すほどポル・ポト派の無法行為を容認し、まだ和平協定の枠内だ、そういうふうに言ってこれを弁護する結果になるのであります。ポル・ポト派が何をやっても、総理が、停戦合意は守られているのだなどと言えば、結局はポル・ポト派のあの無法、暴力を小さく見せ、その蛮行を助長させていくだけであります。政府の責任はまさに重大であります。この点をどう考えているか、あわせて伺っておきます。
 しかも、カンボジアのような戦場に、みずからを守ることのできない自衛隊などを派遣する、そのこと自体、要員の再配置問題での日本政府とUNTACの間での混乱が示すように、国連のPKO活動にも一層の困難を持ち込むことになっているのは明らかではありませんか。憲法を守る立場からはもちろんのこと、PKO法の各条から言っても、自衛隊、そして協力隊を直ちに撤退をさせる、そしてポル・ポト派を公然と批判する国際世論をつくるイニシアチブを発揮すべきであります。これこそが日本が果たし得る真の国際貢献の道だと思いますが、総理の見解を伺います。(拍手)
 停戦の合意が守られているなどという詭弁の一方で、血を流す貢献を主張する閣僚が生まれていることは重大であります。防衛庁長官は、血を流さないということで世界のリーダーとして信頼を得ることができるかと発言したことが報道されていますが、まさに憲法違反の重大な発言であります。あなたは、自衛隊の直接の責任者として、自衛隊員にもっと血を流せと本当に強要するのですかどうですか。PKO法とは、血を流す貢献をやるための法律なのかどうなのか。自衛隊員の家族の方々も聞いております。はっきりと答えていただきます。
 最後に、停戦の合意も崩れた、自衛隊及び協力隊派兵の、そして派遣の条件も全く存在しないことが明白なもとで、この現状を直視し、対応を根本的に再検討し、自衛隊及び協力隊の撤退を図ることを再度強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 一九九一年の十月二十三日にパリ和平協定を署名がされまして、カンボジアにおける紛争当事者間の停戦合意が発効したわけでありますが、九二年の六月十三日よりの停戦第二段階、すなわち武装解除の段階にありまして、四派のうち、ポル・ポト派がこれに協力をしないという事態が起こったわけであります。
 また、選挙を目前に控えまして、UNTAC要員に対するものも含めまして、ポル・ポト派によるものと言われる攻撃が増加しております。ポル・ポト派は、そういう中で、四月四日に選挙の不参加を表明をいたしました。十三日にはプノンペン事務所を閉鎖をいたしたわけであります。
 このように選挙に至るプロセスが当初予定したように進んでいませんことは事実であります。それもポル・ポト派の態度によるところが大きいということも事実でございますけれども、しかし、現在、カンボジアにおいて全面的な戦闘が行われているわけではもちろんございませんし、ポル・ポト派も、SNCからは脱退しないということを言っている、またパリ和平協定は遵守するということを言っておるわけであります。
 他方、パリ和平協定の基本的枠組みが維持されているか否かということは、これは具体的な状況に照らして総合的に判断すべきものと思いますが、一部の地域で武装集団による襲撃事件あるいは停戦違反事件が発生していることをもって、パリ和平協定の基本的枠組みが崩れていると判断することはいかがであろうかというふうに思っています。
 カンボジア国民の九割が選挙登録をしたというような事実、またシアヌーク殿下もその選挙への参加を国民に呼びかけているということから考えますと、UNTAC、関係諸国とともにこの選挙の実現に努力をすることが大事であると思います。
 このような状況でございますから、五原則は満たされておりますし、憲法上問題があるわけでもありません。我が国の自衛隊の撤退等を検討すべき段階ではないというふうに考えております。
 残りの問題は関係閣僚からお答えいたします。(拍手)
    〔国務大臣村田敬次郎君登壇〕
○国務大臣(村田敬次郎君) 金子議員にお答え申し上げます。
 私は、今回のカンボジア訪問におきまして、バンコク市内の病院に入院中の文民警察官四名を見舞ったほか、プノンペン市内で十三名の文民警察隊員と会見をしたわけでございますが、その際、隊員の皆様から任地の治安の状況や生活環境が厳しくなっているといった話を聞くにつけまして、日本での生活との違い、その御苦労のほどが感じられたところでございます。(拍手)
    〔国務大臣中山利生君登壇〕
○国務大臣(中山利生君) 金子先生のお尋ねは、一昨日私が行いました「我が国の防衛について」という講演の中で、その講演の一番最後のところで、先般アメリカに行ってまいりまして、またガリ国連事務総長にPKO要員の安全確保について特に強くお願いをしたこと等の報告をした中で、我が国は、過去の戦争の経験から、戦争とか軍事行動とかによって国民の一滴の血も流さない、また周辺諸国の国民の血も一滴も流さないという一つの決意をいたしました、しかし、国際社会におきましては、自由を守るため、あるいは民主、人権といったそれぞれの国の信念を守るため、あるいはさらには平和を守るために、血を流しても守っていく、そういう考え方が一般的であり、日本だけがお金と物だけで国際貢献をするということが、世界のリーダーの一員として本当の信頼を得るゆえんであるかどうかということを申し上げた次第でございます。
 私は、長官を拝命して以来一日も忘れずに、国の内外で汗を流しております隊員の安全、健康等について、頭から離れたことはございません。その私が、血を流せとか、そういったことは毛頭ないわけでございますので、心配をされている家族の方々がいらっしゃるということでございますので、金子先生からも正しくお伝えをいただいて、安心をしていただくようにお願いを申し上げたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(村山喜一君) 和田一仁君。
    〔和田一仁君登壇〕
○和田一仁君 私は、民社党を代表して質問をさせていただきます。
 今から十日たちますと始まります制憲議会選挙を前にいたしまして、カンボジア情勢が緊迫の様相を見せていることはまことに遺憾なことでございます。混乱の中で亡くなられました国連ボランティアの中田厚仁氏、文民警察の高田晴行警視を初め、犠牲となられた各国の方々の御冥福を心よりお祈り申し上げるものでございます。
 私は、かつてPKO協力法案の国会審議がありましたとき、平成三年の九月でございますけれども、この衆議院本会議におきまして、国連の平和維持活動がノーベル平和賞を受賞したときのノーベル賞委員会委員長の言葉を引用した記憶がございます。委員長は、それまでに亡くなった七里二十三人の隊員たちの名誉のために黙祷をささげた後で、こういうことを言われております。「犠牲となった隊員たちは、出身も違えば、経験も異なる。しかし彼らは一つのきずなで結ばれていた。つまり平和にその若さと情熱をささげる心をともにしたのである。彼らは危険を承知でその任務に志願し、そして人が支払う最も高価な代価を支払ったのだ。」と。
 また同じ席で、デクエヤル国連事務総長は、「挑発を前に冷静であり、攻撃されてもなお平静であるために、国連平和維持活動の隊員、すなわち将校も兵士も等しく、格別の勇気を発揮しなければならない。わが国連部隊はその試練に耐え、克服してきた。国連平和維持活動の歴史をひもとくと、真の英雄ならではの行為、勇敢なる自己犠牲に満ちているのである。」と語ったのでございます。この言葉にあらわされているように、PKOとは、みずからの危険を承知しつつも平和のために献身する、崇高で誇り高い活動なのであります。
 カンボジアの今日のこの事態を、我々はあらかじめ予想することはもちろんできませんでした。一部には、政府がこうなることを予期していたにもかかわらず、それを隠し続けてきたがために今回の不幸な事態を招いたとの指摘がありますけれども、その指摘は間違っていると考えます。(拍手)
 しかし、PKOは多かれ少なかれ何らかのリスクを伴うものであるにもかかわりませず、政府自身が安全を強調し過ぎた。その結果、PKOは本当に安全だと国民に思い込ませ、安全の神話すらできてしまい、そのために今日の疑心暗鬼が生じたのではないかと思うのであります。
 私は、国会での質問の際にも、PKOが出ていく背景や精神というものをもっともっと国民の間に浸透をさせていかなければならないということを政府に求めてまいりました。それをしっかりやっていれば、今日の事態に際しても国民の間に動揺は少なかったのではないかと考えるのであります。政府として、PKOについての国民の理解が十分に得られているとお考えかどうかを総理大臣にお尋ねしたいと思います。
 民社党は、我が国が国際社会の中で生きていくためには、世界から信頼され、尊敬され、必要とされる国家とならなければならない、そのためには、日本だけが平和であり繁栄すればそれでいいというのではなくて、世界の平和に他の国々とともに努力していく国家にならなければいけないとの立場から、人的貢献の必要性を説き、PKO協力法の成立にも尽力をいたしたのであります。(拍手)
 我が国PKO協力の真価がまさに今問われているのであります。今我が国がカンボジアから撤退すれば、UNTACは動揺し、PKOそのものの機能に重大な支障が生じ、カンボジアでようやくにして開かれつつある平和への扉が再び閉ざされるばかりではなく、今後、我が国の国際社会での孤立化を恐れるものでございます。
 また、カンボジアの人々やカンボジアの子供たちを見捨てて引き揚げるというのは、どこの国よりも我が国に信頼を寄せているカンボジアの人たちを裏切ることになるのではありませんか。荒れ果てたカンボジアに平和と安定の世界に通ずる道路をつくり、橋をかけ、選挙の準備をしてきた皆さんのこれまでの努力をすべて無にすることになるのであります。私は、単に橋や道路の修復のみでなく、長い内戦、言語に絶する殺りく、このためにすさみ切った人心に平和への希望の灯をともし、人の心の温かさをよみがえらせ、心の傷をもいやしているのではないかと思います。せっかく培ってまいりましたこの信頼関係を無に帰せしめるということは、あっていいことではないと思うのであります。
 PKOは、我が国単独の行動ではありません。各国が国連の指揮のもとに共同して行動することにより、初めて達成される活動であります。我が国独自の行動は許されるものではありません。現時点で我が国部隊は撤退するべきではなく、また、万が一撤退を余儀なくされる事態となるにしても、五原則の運用は、日本が一方的に判断をして一方的に行うのではなく、UNTACや各国との緊密な連携と意見交換を踏まえて行動することが最も重要である、このように思うのであります。
 我が国は、安全保障理事会の構成員として、UNTACの目的達成について、参加しているすべての国々に対して共同の責任を持つ立場にあると考えますが、その点について、総理の御見解をお尋ねいたします。(拍手)
 我が国初のPKO派遣は、人的貢献の試金石であり、派遣された隊員が無事任務を完遂するよう万全の対策を立てることは当然でありますけれども、初めての派遣であり、今回のカンボジアでのこの経験となりました。このことを踏まえて今後の対応に生かしていくということが非常に大事でありますが、この見地から、幾つかの点について政府の考え方をただしてまいりたいと思います。
 まず、国会承認の問題についてであります。
 カンボジアで我が国の要員の中から不幸にして犠牲者が出たということは、まことに痛ましいことでありました。しかし、残念ながらPKOは、戦争終結後の、余しんが立ち込めているような地域で行われる以上、こうした事態を招く可能性は常に否定できないのが実情であります。また、その危険は、武器を携帯した自衛隊員ばかりでなく、PKOやPKFの枠を越えて、文民警察官や選挙監視員にも及ぶものであるという実態が改めて明らかになったのであります。
 この見地から、PKO派遣に当たっては、昨年の国会で我々が主張したとおり、原則、すべてのPKO派遣を国会で承認することにより、派遣についての国と国会の責任を明らかにし、国民合意のもとにPKOは推進していくということが必要であると考えておりますが、今後この点を検討すべきだと思いますけれども、総理の御所見を賜りたいのであります。
 指揮権と武器の使用について、いかがお考えでしょうか。
 PKO協力法成立に当たり、三年後の見直し規定が修正により盛り込まれました。ただいま申し上げましたように、既にPKO協力のあり方について見直すべき点が出てきております。また、国連のPKOも、我が国が参加するしないは別といたしましても、ガリ提案に見られるような新しい展開の様相が示されておるわけであります。我が国のPKOも、歩兵部隊などいわゆるPKFについては凍結されたままとなっております。今後の我が国の国際貢献のあり方を考え、必要な修正を加えるため、三年後にこだわることなくPKO協力法の見直しを進めるべきであると考えるものでありますが、これについての総理の御見解をお尋ねいたします。
 最後に、我が国は、国際社会の重要な一員として、自由と平和と人権と民主主義、この世界観、価値観を共有するものであります。これからの国際貢献への対応を誤りなきものとしていただくことを強く期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 国際平和協力法の国会の御審議に際しまして、政府がいわゆるPKO活動というものについて安易な御説明をし過ぎたのではないかという御指摘がございました。
 御指摘は謙虚に承りますが、私といたしましては、実は国会におきまして、PKOというものは、武力行使をしたのでは戦争になってしまうので、それが本意ではない、しかし、脆弱な状況の中で武力を用いずに説得と公平によって、中立性によって仕事をしていくということは決して容易なことではない、殊に我が国の場合、この法律で定めておりますように武器の使用について非常に制限をいたしておりますので、それだけこれは容易でない仕事であるということは申し上げたと自分で考えておりますけれども、しかし、御指摘の点には十分留意をいたしてまいります。
 それから、我が国から派遣された要員、部隊は、停戦の合意が存在しなくなった、あるいは法の定めております条件が欠けだというような場合には、法律に従って行動しなければならないことは言うまでもございませんが、仮に、仮にそういった事態になりました場合には、御指摘のように、当然のことでありますが、UNTAC及びUNTAC参加国とも十分協議、情報交換をしてまいるべきものと考えます。
 それから、十三年余りにわたる戦乱と国内混乱を終結させたカンボジアにおきまして、平和を確固たるものにすべく、我が国としても国際社会とともに積極的に貢献をいたしておるわけでございますが、国際平和協力業務の実施につきまして、これを国会承認との関係でどうするかということは、法案御審議の過程においていろいろ御議論がございました。結局その御議論の結果、現在の法律の仕組みが制定されておりますので、政府としてはこれに従ってまいったわけでございます。
 いずれにいたしましても、平和協力法第七条では、実施計画を作成しまたは変更した際、その内容を国会に報告するとともに、実施状況、実施結果についても報告することを定めておりまして、国会に十分な報告を行うための措置を政府としてもとってまいったと考えております。
 国際平和協力法においては、業務に従事する個々の自衛官に対し、生命、身体を防衛するための武器使用の権限を与えておりますが、これは自己保存のためのいわば自然権的な権利とも言うべきものとして、個々の自衛官にその判断をゆだねているということが基本的に適切なことであろうと思います。
 我が国の武器の使用のあり方については、いわゆる五原則の一つとして位置づけられております。国連にもこれを説明し、了解されているところでございます。
 なお、この法律では、「法律の施行後三年を経過した場合において、」「法律の実施状況に照らして、」「実施の在り方について見直しを行うもの」とされております。
 今日まで、カンボジア及びアンゴラにおきまして実際の協力を行ってまいりました。これらの経験を、今後の我が国の平和維持活動への協力に当たり、積極的に生かしていくことが肝要であると考えております。実績を着実に積み重ねてまいりまして、その結果、必要とあれば法律の見直しをお願いすることになろうかと考えております。(拍手)
○副議長(村山喜一君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○副議長(村山喜一君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時十分散会
     ――――◇―――――