第129回国会 法務委員会 第5号
平成六年六月十日(金曜日)
    午前九時四十分開議
出席委員
  委員長 高橋 辰夫君
   理事 小澤  潔君 理事 斉藤斗志二君
   理事 島村 宜伸君 理事 山本 有二君
   理事 中村 時広君 理事 山田 正彦君
   理事 小森 龍邦君 理事 冬柴 鐵三君
      衛藤 晟一君    奥野 誠亮君
      塩川正十郎君    宮里 松正君
      笹川  堯君   柴野たいぞう君
      土田 龍司君    西村 眞悟君
      山岡 賢次君    佐々木秀典君
      坂上 富男君    山花 貞夫君
      大口 善徳君    富田 茂之君
      宇佐美 登君    枝野 幸男君
      簗瀬  進君    正森 成二君
      徳田 虎雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 中井  洽君
 出席政府委員
        法務政務次官  牧野 聖修君
        法務大臣官房長 原田 明夫君
        法務大臣官房審
        議官      森脇  勝君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 永井 紀昭君
        法務省民事局長 濱崎 恭生君
        法務省刑事局長 則定  衛君
        法務省人権擁護
        局長      筧  康生君
        法務省入審管理
        局長      塚田 千裕君
 委員外の出席者
        警察庁長官官房
        総務課長    黒澤 正和君
        警察庁刑事局保
        安部生活保安課
        長       瀬川 勝久君
        国土庁土地局土
        地利用調整課長 二木 三郎君
        外務省経済局国
        際機関第一課企
        画官      鶴岡 公二君
        法務委員会調査
        室長      平本 喜祿君
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委員の異動
六月十日
 辞任         補欠選任
  亀井 静香君     衛藤 晟一君
  津島 雄二君     宮里 松正君
  枝野 幸男君     宇佐美 登君
同日
 辞任         補欠選任
  衛藤 晟一君     亀井 静香君
  宮里 松正君     津島 雄二君
  宇佐美 登君     枝野 幸男君
    ─────────────
本日の会議に付した案件
 商法及び有限会社法の一部を改正する法律案
 (内閣提出第四六号)
 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特
 別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 六四号)
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○高橋委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、商法及び有限会社法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案につきましては、去る八日質疑を終了いたしております。
 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。正森成二君。
○正森委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました商法及び有限会社法の一部を改正する法律案に対し、反対討論を行います。
 本改正案は、出資制度の運営の一層の適正化及び円滑化を図るとして、株式会社、有限会社の自己株式、自己持ち分の取得規制を緩和しようとするものであります。
 現行商法は、資本の充実と債権者や株主保護などを目的としており、それゆえ商法第二百十条は、自己株式の取得は資本の空洞化につながり、債権者保護の見地から認めるべきでないとしたもので、例外的に権利の実行や合併、営業譲渡などの場合や株式買い取り請求権の導入に伴うものなどを認めるだけであって、あくまでも原則禁止が法の趣旨であります。この商法上の原則に対し、株価下落対策など企業側の身勝手な要求に基づいて改変しようとすることは、企業の健全な発展にとっても邪道であり、債権者や大衆投資家の利益を害することを防止するためにも、到底認めるわけにはまいりません。
 自己株式の取得及び保有規制を緩和せよとの要求は、財界、企業側が一九三八年に改正された現行商法の最初から一貫して出してきたもので、そのときどきの経済状況に応じて、さまざまな論拠を示してきました。最終的な法改正への具体的なばねとなったのは、バブル経済の崩壊と日米構造協議であります。
 バブルのとき、大企業は資金調達でコストの安いワラント債の発行などエクイティーファイナンスを行い、設備投資や土地投機を行いました。バブル崩壊でそれが破綻するや、その犠牲を国民に押しつけ、政府の力をかりて、昨年は銀行の不良債権買取機構の設置や社債発行限度規制の撤廃を行い、今回は自己株式取得規制を緩和して商法の大切な諸原則をないがしろにする、このような大企業の身勝手は断じて許すわけにはまいりません。
 利益による消却など自己株式の取得規制緩和によって、株価操作は必然的に発生し、また、いかに証券取引法で新たな規制の規定をつくっても、インサイダー取引を助長することは必至であります。
 従業員持ち株会に対する譲渡を目的とする自己株式取得も、本来の福利厚生の目的から離れ、会社にとって安定株主づくりへの一手段の色彩を一段と強めるに違いありません。
 以上述べてきましたように、今回の商法・有限会社法改正案は、たとえ関連法である証券取引法で弊害防止策をとるにしろ、債権者と大衆株主の利益を損ない、国民にとって利益にならず、一方的に会社と経営者の利益を図る改正であり、我が党は強く反対することを表明して、私の討論を終わります。
○高橋委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ─────────────
○高橋委員長 これより採決に入ります。
 商法及び有限会社法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○高橋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、
 そのように決しました。
    ─────────────
     〔報告書は附録に掲載〕
     ────◇─────
○高橋委員長 内閣提出、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
  これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので一順次これを許します。宮里松正君。
○宮里委員 私は、外国弁護士の法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案について、法務省当局に質問をいたします。
 これから主として外国法事務弁護士の基本的な問題について順を追って議論を交わしてまいりたいと思いますので、答弁は法務省でこの問題を専門的に扱ってきた事務当局にお願いすることにして、法務大臣にはこれから行われる議論をお聞きいただき、最後に所管大臣として所見をお聞かせ願いたいと思います。大臣、よろしゅうございますね。
○中井国務大臣 はい。
○宮里委員 この特別措置法に規定されている外国法事務弁護士の制度は、近年我が国の経済が飛躍的に発展し、経済活動の国際化と相互依存関係の度合いを深めてきたことに伴い、それを背景にして、アメリカやEC諸国から貿易の自由化や市場開放の一環として要求されてきたものであります。
 政府は、そのような客観情勢のもとで、アメリカやEC諸国からたび重なる強い要求を受け、政府部内における協議や日弁連との慎重な意見調整などを経て、昭和六十一年に外国弁護士の法律事務の取扱いに関する特別措置法を制定して、その導入に踏み切りました。
 この制度の導入に当たって、政府は、日弁連の強い要請を受け、我が国の弁護士制度の伝統である弁護士の独自性を維持することなどの見地から、相互主義の原則を採用したほか、外国法事務弁護士となるための資格を五年以上の職務経験を有する者でなければならないこと、この外国法事務弁護士が我が国において我が国の弁護士を雇用したり、あるいは我が国の弁護士と共同事業を営むことを禁止すること、この外国事務弁護士が自国において所属しているローファームの名称を使用することを制限することなど、幾つかの制限規定を設けました。
 しかし、アメリカやEC諸国は、このような日本政府の対応に納得せず、その後はこれらの制限規定の撤廃や規制の緩和を要求し続け、また今回のガット・ウルグアイ・ラウンド交渉においても、サービス貿易に関する自由化の問題として大きく取り上げるに至り、これに対応するために今回の法改正になったわけであります。
 この一連の流れを見れば、おのずから明らかなように、アメリカやEC諸国は、弁護士の業務を一般のサービス産業と同列に置いて、我が国にその市場開放や規制緩和を要求してきているわけであります。
 しかし我々は、弁護士の業務をアメリカやEC諸国のように一般のサービス産業と同じ性格の単なるサービス業務とは考えておりません。我々は、これまで、弁護士の業務は国の司法制度の一翼を担うものであり、その意味で公的性格の極めて高いものであると考え、そこから弁護士の資格試験を裁判官や検察官と同様にかなり厳格なものとし、また弁護士には職務遂行に当たっても強い独自性と高い倫理観や使命感の保持を要求してきたのであります。
 私は、現在の我が国の弁護士制度にも、例えば行政事件の専門、民事事件の専門、商事事件の専門、労働事件の専門、刑事事件の専門あるいは渉外事件の専門といった専門化や、これらの専門化した弁護士たちが集まって、適正な規模の法人化した事務所をつくるなど、時代の要請に応じた幾つかの改善が必要であるとは思いますが、我が国の弁護士制度の基本となっているこれらの原理原則だけは、これからもしっかりと堅持すべきであって、安易にアメリカなどの制度をまねるべきではないと思います。
 そこで、法務省当局にお尋ねいたしますが、法務省は、弁護士の業務をアメリカやEC諸国と同じように一般のサービス産業と同じものと考えて、その自由化や市場開放を積極的に推進すべきだと考えているのか、それとも、それは国の司法制度の一翼を担う公的性格の強いものであるから、その基本となっている我が国の弁護士制度の原理原則をしっかりと堅持し、アメリカやEC諸国から求められている自由化や市場開放には慎重に対応すべきであると考えているのか、この際、この点に関する御所見を伺っておきたいと思います。
○永井(紀)政府委員 今回の法改正の基本になりました問題は、確かに、EC諸国あるいはアメリカからの規制緩和の要望というのが一つの契機になっているのは間違いございません。ただ、これを受けまして、安易にその圧力に屈してこういう改正作業をやったということではございませんで、日弁連及び法務省におきましては、平成四年の九月から平成五年の九月まで、有識者等も入っていただきまして、外国弁護士問題研究会というものを開催いたしまして、一体この問題についてはどういう取り組み方をするのかということも検討されたわけでございます。そこにおいては、基本的には、あくまで我が国の主体性に基づき、弁護士業務を取り巻く国際的な環境の変化や、これに呼応する今後の我が国における弁護士活動のあり方等の視点から、主体的に検討するという立場が貫かれたわけでございます。
 そこで、ただいまの委員の御質問でございますが、弁護士の責務というものを一体どのように考えるかということにつきまして、やはりこの研究会におきましても、弁護士というものは、司法制度の存立及び維持に不可欠な重要な担い手として、憲法並びに弁護士法に基づき基本的人権を擁護し、社会主義を実現することを使命とする公共的な役割を有するのだということを基盤に据えたわけでございます。
 ただ、もう一つの観点で、やはり弁護士は専門的な法律サービスというものを独占しているということがございます。したがいまして、これについては制度の利用者に対して十分の法律サービスを提供する義務もあるのではないか、こういう側面もあるということも十分考慮すべきだという考え方で、この外国弁護士問題研究会では討論がされたわけでございます。
 したがいまして、法務省といたしまして、基本的にはただいま先生の御指摘のあったとおり、やはり日本の独自の司法制度の重要な担い手としての性格というものは堅持していくべきである、ただ一方で、法律業務についての独占という観点から、国民に対するリーガルサービスということについてのより適切な、国民の利用しやすい、そういう弁護士でなければならないという観点も忘れてはいけない、こういうスタンスに立っているわけでございます。
○宮里委員 必ずしも私の問いにストレートにはお答えいただけませんでしたが、今は最初の質問でございますから、順次この質問を重ねていくとまた重なってくると思います。時間もそう多くはございませんので、質問に対してストレートにお答え願いたい、こう思います。
 そのような弁護士業務に対する基本的な考え方の違いや司法制度の制度的仕組みの違いなどから、我が国とアメリカとでは弁護士の数や弁護士の活動のあり方などについても際立った違いがあります。局長、そのことは御存じのとおりであります。
 我が国では、かなり競争率の高い司法試験に合格した上で、二カ年の司法修習を経て弁護士になるのでありますから、弁護士の数は、私正確には今記憶しておりませんが、全国でせいぜい一万五千人くらいであります。そして、我が国の司法制度のもとでは、自分の主張の正当性を法律の専門
家である裁判官に納得してもらわなければなりませんから、訴訟を起こすときには、自分の主張の法理論的な根拠や証拠の有効性といったようなものについて十分な吟味をしてかからなければなりません。それと同時に、我が国では、社会通念上筋の通らない訴訟を起こしたり、あるいは明らかに敗訴するしかないといったような訴訟を起こすような弁護士は、生涯、裁判官たちからまともな弁護士としての扱いを期待することができないと言われてまいりました。そのようなことから、我が国では、今のところ何でもかんでも裁判所へ訴えを起こすという訴訟社会の傾向は起こっておりません。したがって、そのような弊害もまだ全く出ておりません。
 ところがアメリカでは、州によっても異なるのでありますが、大体においてロースクールを卒業する学生たちの八〇%前後が弁護士になると言われておりますので、毎年我が国の弁護士の総数をはるかに上回る弁護士が誕生するわけであります。そのようにして生まれた膨大な数の弁護士たちは、大都市を中心に何百人または千何百人といった巨大な総合商社並みの人数の弁護士を抱えた巨大なローファームに所属して弁護士業務に従事しているわけであります。このように弁護士の数が毎年膨張していることと、アメリカの司法制度の中にある、あるいは司法制度の中で認められてきている極端な成功報酬制度、懲罰的な損害賠償制度、あるいは民事陪審制度といった独特の司法制度と相まって、アメリカでは近年訴訟社会の傾向が強くなり、その弊害も次第に大きくなりつつあると言われております。
 今回の法律改正によって、外国法事務弁護士の活動が現在よりやや自由になることから、訴訟社会になれたアメリカの弁護士たちの日本進出が多くなり、その影響を受けて、我が国もやがて訴訟社会化するのではないかと心配する人もおります。
 そのことについて、法務省はどう考えておられるのか。また、訴訟社会化することは我が国の司法制度にとっても好ましいことではないから、何としてもそれは回避しなければならないと考えておられるのか、それとも、訴訟社会化は国民の権利意識が高揚していることを裏づけるものであるからむしろ歓迎すべきであると考えておられるのか、そのことについての御所見を伺っておきたいと思います。
○永井(紀)政府委員 この点も実は外国弁護士問題研究会で随分検討されました。訴訟社会化するのではないか、アメリカと同様の弊害が起きるのではないかという懸念も随分議論されたわけでございますが、この研究会の報告におきましては、その発生の可能性を否定することはできないけれども、具体的にこれの発生を予測することが困難であるということで、一応、すぐにこういった規制緩和によってアメリカのような弊害が生じるとは考えていないというスタンスをとっております。
 ただいまの委員の御質問に端的にお答えしますならば、我々も、日本社会がアメリカにおけるような端的な訴訟社会の弊害が起きることは避けるべきであるというふうに基本的には考えております。
○宮里委員 次に、これは事実関係の確認でございますが、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法が施行されて以来、我が国で開業している外国法事務弁護士の実情についてお伺いをいたします。
 この特措法の施行前には、それが施行されれば、アメリカを中心に大勢の外国人弁護士が我が国に進出してくるのではないかと予測する人もおりましたが、私がお聞きしたところでは、実際には、外国法事務弁護士の活動がかなり制限されていることもあって、それほど多くの弁護士たちが日本に進出していることはない、このように承知しております。
 そこで、その実情はどうなっているのか、できれば国別にその数を教えていただきたい。そして、アメリカの場合には州別に実情を教えていただければありがたいと思います。と同時に、この際、我が国の弁護士が外国でどの程度活動しているのか、そのことにつきましても御存じであれば教えていただきたい、こう思います。
○永井(紀)政府委員 外国法事務弁護士として登録されている者の内訳を申し上げますと、これは平成六年、今月の八日現在という一番最新のものでございますが、合計で七十九名でございます。この数は、ほとんどこの数年来変わったことはございません。ほとんど八十名前後で推移しておりまして、余り増減がございません。
 この七十九名の内訳を申しますと、アメリカ合衆国五十六名、連合王国、いわゆるイギリスが十八名、フランスが一名、ドイツが二名、オーストラリアのニューサウスウェールズ州の方が一名、オランダが一名、こういうふうになっております。
 それで、アメリカ合衆国の五十六名でございますが、これの州別の内訳を申し上げますと、ニューヨーク州が二十六名、カリフォルニア州が十六名、ハワイ州が二名、ニュージャージー州が一名、オハイオ州が一名、イリノイ州が二名、ルイジアナ州が一名、それからコロンビア特別区が七名という数字になっております。
 なお、この方々はほとんどが東京に事務所を持っておられまして、東京以外ですと、名古屋に一名、それから大阪に一名、こういうふうにほとんどが東京で開業していらっしゃいます。この活動状況といいましても、私どもは日弁連の方々からお伺いするわけでございますが、個人的に開業されている方もいるわけですが、多くの方々はやはり英米ではローファームからの派遣という形でよく交代をされる、そういうふうに聞いております。
 ところで、第二番目で、外国で活動している日本人弁護士は何名くらいいるのかということでございますが、実は必ずしもわかりません。ただ、日本の弁護士事務所が外国に事務所を設けているといいますか、そういう方々、例えばイギリスにあるとかあるいは中国にもある、あるいはアメリカ等にもあるということは聞いております。
 それから一方、日本人弁護士という資格で活動している以外に、アメリカ等へ行きましてロースクールを出て、それからアメリカのバーエグザムを、要するに司法試験を通ってアメリカ人弁護士としての資格を持っている方も実はいらっしゃるわけでございます。その方の数も正確にはわかっておりませんが、必ずしも日本の弁護士資格を持たないで、商社等の法務部から行ってアメリカの資格を取ってこられている、しかも弁護士としては活動されないで、あくまで会社の法務部でやっておられるという方もいますので、その数は正確にはわかりませんが、仄聞するところによると、数百名は下らないだろう、そういう話も聞いたことがございます。
○宮里委員 次に、先ほどちょっと局長触れられましたが、今回の法律改正の理由についてお尋ねをしておきます。
 今回の法律改正の理由として、弁護士業務を取り巻く国際的環境の変化があったことは、アメリカやEC諸国からのたび重なる要求や、ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉における論議を考えれば容易に理解ができます。そのほかに、これとは別に、アメリカやEC諸国からの強い要求のほかに、国際的な法律事務の増大があって、外国法事務弁護士の数をふやす必要があったかどうか、この点、お考えがございましたらお答え願いたいと思います。
○永井(紀)政府委員 事件の増大があったから外国法事務弁護士をふやす必要がある、そういう議論は余りございませんでした。確かに、国際的法律事件というのは長いタームで見ますとやはりふえていることは推測がつきます。現に商用目的で入国する外国人は非常にふえております。それから外国法人が営業所等を我が国内に設置するという数も、昔に比べますと随分ふえております。
 そういった観点から、そういった国際的な法律事務というものの必要性が増大しているというこ
とはわかるのですが、だからといって外国弁護士をふやさなければならないという議論ではなくて、いろんなそういう企業関係者あるいは個人レベルでも、日本の弁護士と外国の弁護士とが一緒のところにいて、そこに相談に行ったら一挙に法律サービスを受けられる、要するに、日本人弁護士と外国弁護士とが共同経営といいますか共同事業をやってはいけないという制限があるものですから、一方、日本人弁護士のところへ行っていろいろ相談を受けて、これは外国法も関係するからあっちの外国弁護士のところへ行きなさいということで外国法事務弁護士のところへ行く、二重手間で一々行ったり来たりするというのが非常に不便であるというようなことの方が、もう少し規制緩和といいますか、余り制限がきつ過ぎるのではないかというところから、むしろこういう議論が出てきた点もございます。
○宮里委員 最近、渉外事件を専門にしている国内の弁護士事務所、かなり暇になってきたようでございまして、これから後、国際関係の法律事件はあるいはふえていくかもしれませんけれども、現時点ではかなりそれが鎮静化といいますか数が減ってきたという傾向にあると聞いているものですから、もし法律改正が、事件数の増大によって、それに対応するために行っているのであれば若干筋違いだったかなという感じもいたしましたので、念のためにお聞きをしたところであります。
 これから、改正の具体的な中身について順次お尋ねをしてまいります。
 今回の法律改正で講じられることになりましたいわゆる相互主義の緩和につきましてお尋ねをいたします。
 今回の改正特措法第十条第三項第二号には、「外国においてこの法律による取扱いと実質的に同等な取扱いが行われていない場合においては、そのことを理由に承認をしないことが条約その他の国際約束の誠実な履行を妨げることとなる」場合には、いわゆる相互主義を適用しない旨規定し、規定の形から見ると、相互主義は全面的に撤廃するものではないという規定の立て方になっております。この規定を見ますと、いかにも役所のつくった条文かなという感じがいたしまして、一度や二度読んだだけではわけがわかりません。しかし要約すると、これは大臣の承認に関する項目で書かれているものでありますから、先ほど申し上げたとおりになるわけであります。
 しかし、規定そのものは全面的に撤廃するとは書いてありませんが、例えば近く締結されることになっているWTO、いわゆる世界貿易機関協定が締結されれば、我が国はその加盟国のすべてに対して最恵国待遇を与える義務を負うことになるのでありますから、この貿易機関協定の加盟国には相互主義は適用されないことになります。したがって、改正特措法第十条第三項第二号の規定によって、我が国は世界のほとんどの国に対して相互主義を適用することができなくなるわけであります。私はそのように解釈をしているのでありますが、それでよろしいかどうかということが、まず一点。また、今回の改正によって、相互主義の適用を受けずに外国法事務弁護士の資格を取得することができるのは、それが出てくるわけですね、それはどこどこの国の弁護士が予測されるのか。おわかりでございましたら、教えていただきたいと思います。
○永井(紀)政府委員 相互主義を緩和するといいましても、ただいま委員お話しのとおり、基本的には相互主義を維持しているということは変わりございません。ただ、現在は厳格な相互主義をとっているわけでございますが、我が国が外国弁護士受け入れ制度について相互主義を適用しないことを条約その他の国際約束において約束した場合には、これは最恵国待遇の原則を尊重するということになりますので、そういったただいま御指摘のWTO協定等に加入した国の弁護士であれば、もちろん一定の資格要件が要りますが、そういうことについては門戸を広げるという結果になるわけでございます。
 それで、どういった国の方が予想されるかということでございますが、必ずしもそれは私ども予測できないわけでございます。これにまた、WTO協定そのものが、国会の御承認を経て我が国では多分発効する予定になるのではないかという推測はするのですが、これがどうなるかわかりませんし、また、どういう国が加盟することになるのかということも現段階では必ずしもわかりません。
 ただ、私どもでいろいろ相談を受けているのは現段階においてもいろいろあるわけでございまして、例えばスペインの方であるとかブラジルの方であるとかあるいはレバノンの方であるとか中国の方とか、そういう方々からの御相談といいますか、日本で外国法事務弁護士になれるだろうかという御相談を受けている案件はございます。
○宮里委員 次に、今回の法律改正によって外国法事務弁護士の承認の資格要件とされておりました職務経験の年数が緩和されることになりました。そのことについてお尋ねをいたします。
 そもそも私には、現行法が外国法事務弁護士の資格承認の要件として原資格国における職務経験が五年以上なければならないとした理由がよく理解できません。原資格国において弁護士の資格を有する者は、職務経験の年数いかんにかかわらず弁護士として対等の資格を持っているはずであります。例えば法律事務所などがどの程度の弁護士を雇いたいと具体的な雇用をする場合ならともかく、一般的な制度の問題として外国法事務弁護士の資格承認の可否を決する場合に、このような職務経験の年数によって区別することはいかがなものであろうかと実は思うのであります。
 それに、改正特措法第十条第二項がその緩和策として講じた、外国の弁護士が日本国内において弁護士または外国法事務弁護士に雇用され、かつ、当該弁護士または外国法事務弁護士に対しその外国弁護士となる資格を取得した外国の法に関する知識に基づいて行った労務の提供が二年以上あれば、二年を限度としてそれを資格要件の五年の中に算入をする、こういう形で緩和策をとっているわけであります。
 ところが、この緩和策として規定した事項は、私は、非常にあいまいもことしておって、現実の事実証明の段階になってまいりますと、どこそこの法律事務所に雇用されておったという雇用契約程度の証明手段しかないのだろうというふうに思うわけです。それが、この法律に書いてあるように、自分の弁護士資格を取得した本国の法律知識を使ってこれこれの仕事をしてきましたなんという証明は、これはできるものじゃないと思うのですよ。ですから、むしろこの際、よその国から日本の外国法事務弁護士の規制についていろいろなことを言われることもあるわけでありますが、これは全面的に撤廃したらどうだろうかと実は思うのであります。
 そこで、この点に関する規制の規定を設けた理由と今回これを緩和することになった経緯あるいは理由などについてお伺いをしておきます。
○永井(紀)政府委員 現行法は七年前に施行されているわけですが、現行法がなぜ資格要件として五年以上の職務経験を必要としたかという点でございますが、これは、外国法事務弁護士として日本に受け入れるということは、すなわち日本の試験は何も課していないわけですね。要するに、外国において、例えばアメリカならアメリカのバーエグザムは通ったけれども、日本で試験を課さないで、しかも外国の法律に関しての法律事務を日本で行うことを許すという制度でございますから、したがいまして、原資格法といいますか、母国法に関する法律事務を取り扱うに足りる十分な能力と資質を持っているかどうかということが、どういうことで担保されるかという問題になるわけです。
 そこで、五年母国でそういう仕事をして、そこにおいて例えば懲戒処分等を受けることなく倫理的にも弁護士として欠けることがなかった、そういう経歴を要求することによってそういう能力、資質というものを担保しよう、そういう考え方に
なってきたわけでございます。これは、実は我が国だけではございませんで、アメリカの多くの州も五年の職務経験を要求しております。もっとも、州によっては三年でいいというところもございます。
 こういうことで五年の職務経験を資格要件としたわけでございますが、ただ、その後、アメリカ等では、アメリカ、例えばカリフォルニア州で三年間仕事をして、そして若い時代にぜひ日本に来て、日本の弁護士のもとで研修生というかトレーニーという形で仕事も一緒にさせてもらって勉強する、そういう希望者も現にいるわけでございますので、そういう方々は、日本で二年間やれば、それは日本の弁護士の監督を受け、しかも日本の弁護士は日弁連の監督を受けているわけでございますので、こういった資格を有する者の監督のもとで働いたという経験があるならば、二年を限度として職務経験年数に算入してやってもいいではないか、そういう考え方で少しこれを緩和しようということにしたわけでございます。
○宮里委員 今度の緩和策のこの規定は、かなり念入りにといいますか、細かく規定をしているわけでありますけれども、実際の事実証明ということになってまいりますと、どこそこの法律事務所に何年雇用されておった、勤務したという程度のことしか出てきませんね。ですから、それでよろしいかどうか。恐らくそれしかないと思うのですよ。自分が弁護士資格を取得した母国法の知識に基づいて労務を提供したといっても、それを一つ一つリポートを書かせてあるいは行動日誌などを書かせて、それを提出させるわけではないのであって、また、そんなことをしますと、その法律事務所のいわば秘密保持、そんなことを侵すことにもなりかねないわけでありますから、結局これは、二カ年以上どこそこの法律事務所に勤務しておったという、そういう雇用証明で見るしかないのだと思うのですね。これでよろしいのですね。
○永井(紀)政府委員 御指摘のとおりでございます。
 ただ、これは五年の職務経験を要求しております現在の資格審査の場面でも、例えばアメリカのニューヨーク州においていついつ弁護士として、アトーニーとしての資格を得て、そして、五年間以上どこどこの事務所で働いた、こういう証明をもらいます。もう一つは、その間に特に懲戒処分等を受けることなく、事故は起こしていないということの証明。それ以上のものを求めるということは、五年の場合でもやっておりません。したがいまして、日本で二年働いたという問題も、やはり弁護士事務所なり、ここで仕事をしたという証明だけにとどまるかと思います。
○宮里委員 必ずしも釈然といたしませんが、五年の職務経験というのが、いかほどの意味を持つのか。特に、資格承認の条件としてそのようなことを持ち出すことはどうであろうか、私は依然として疑問を抱くものであります。
 五年間実務経験があるから、そしてその間、何ら懲戒を受けたごともない、あるいは履歴を汚したこともないということまで考えるのであれば、それは筋違いだというふうに思うわけでありまして、これはまた、別の方法で証明してもらえばいいわけです。ただ、いずれにいたしましても、一応本国で実務経験五カ年がある、一人前の弁護士として来てもらった、こういういわば評価はあるかもしれません。とりわけ、自国の国民からの依頼ではなくて、要するに日本の弁護士と一緒に日本人から相談を受ける場合には、あるいはそういうことが一つの評価の対象になるかもしれません。そのことだけを質問しておってもいけませんので、次に移りたいと思います。
 今回の法律改正によって、従来かなり制限をされておりました外国法事務弁護士の事務所の名称に関する規制が緩和されることになりました。いわゆる自分の所属するローファームの名称がかなり自由に使えるようになります。
 そこで、お尋ねをいたしたいのでありますが、現行法は、その第四十七条によって、外国法事務弁護士は、自分の氏名及び事務所の名称に付加する形でなければ自分の所属するローファームの名称を使用することができないようになっているわけでありますが、改正特措法は、第四十五条第二項ただし書きによって、外国法事務弁護士が自分の所属するローファームの名称をほぼ自由に使用することができることに改められました。
 そこで、現行法が自分の所属するローファームの名称を自由に使用することができないようにしてあったのは、いかなる理由によるものであったのか。また、今回の改正によって、このローファームの名称の使用をほぼ自由にしたのは、いかなる経緯があってそうしたのであるか、お尋ねをしておきたいと思います。
 私が理解するところでは、例えばアメリカの場合、巨大なローファームに所属しておるのが多いわけであります。そして、社会的に名の通ったローファームもあるわけであります。これを、日本に来て、日本で働く外国法事務弁護士が、そういう看板を使ってその法律業務を行うということは、やがては、私どもが懸念をしておりますアメリカの巨大なローファームのブランチみたいなものになっていく、そういうことを誘発するおそれなしとしない。また、外国法事務弁護士は、もともとかなり制限された形でしか法律事務の取り扱いができないわけでありますから、まず、自分の名称、それを掲げて、その後ろに自分の所属を書かせる、こんな配慮があったんだろうというふうに思うわけでありますが、ひとつお答えをお願いいたしたいと思うわけであります。
○永井(紀)政府委員 現行法におきまして事務所名称につきまして制限を設けている理由は、ただいま委員がお話しになったとおりでございます。やはり、外国弁護士となる資格を有する個人に対して、あくまで個人に対して外国法事務弁護士としての資格を与える、そういう考え方なものですから、実際は原資格国においていわゆる巨大ローファームに属している実態があっても、それは表に出すこと自体若干問題があるということで、非常に慎重な姿勢で今まで対処してきた、そういうことだったと思います。
○宮里委員 恐らくアメリカ政府あるいはアメリカのABAあたりから接触されたときに、どうもアメリカのローファームの名称の使用はかなり強く要求されたと思いますが、そんなことはなかったでしょうか。
○永井(紀)政府委員 この名称の問題につきましては、アメリカはそんなに強く言っていたというより、むしろ日本におります外国法事務弁護士あるいは日本の弁護士も、時々メンバーが変わったりしますので、余り個人名でやられると非常にわかりにくい、かえってストレートにローファーム名称でやっていただいた方が、お互いわかりがいいという感じの意見が日本国内にもあったわけでございまして、アメリカの政府が非常に強く言ったという感じはなかったと聞いております。
○宮里委員 次に、外国法事務弁護士が日本の弁護士を雇用することは禁止されておりますね。そのことについてお尋ねをいたします。
 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法は、その第四十九条第一項において、外国法事務弁護士は、我が国の弁護士を雇用してはならないと規定をし、外国法事務弁護士は、我が国において我が国の弁護士を雇用することを全面的に禁止しておりました。そのことは今回の改正法案におきましてもそのまま維持されているところであります。これは実は重大な問題を含んでいるわけであります。
 このように外国法事務弁護士が我が国の弁護士を雇用することを全面的に禁止したのは、これを認めるとアメリカなどの巨大なローファームが我が国にそのブランチを設けて、我が国の弁護士を使って我が国の弁護士制度や司法制度の運営に不当に介入したり、あるいはそれに悪影響を与えるおそれなしとしない、恐らくそのような配慮があったと思うわけであります。
 そこで、この際、この雇用禁止規定を設けた理由について、はっきりとお答えを願っておきたいと思います。
○永井(紀)政府委員 今回の法改正でも、この点は、雇用禁止の原則は維持しており、改正をしていないわけでございます。これは、外国弁護士問題研究会においてもこの原則は維持すべきだとされております。この外国法事務弁護士が弁護士を雇用することを禁止する理由は、日本法をおよそ取り扱うことを許されていない外国法事務弁護士に日本の弁護士を雇用することを認めますと、自己の収益の増大を図るため、弁護士に対して雇用主としての指揮監督権を行使することによりまして、外国法事務弁護士が実質的に日本法の処理に介入するということが予想されるという、こういうことからでございます。
○宮里委員 この問題は、これから後も重大な意味を持ってくるだろうと思います。したがって、これはどんなことがあっても維持していかなければならぬと私は思います。
 次に、外国法事務弁護士と我が国の弁護士との共同事業のあり方についてお尋ねをいたします。
 現行の外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法は、その第四十九条第二項において、この共同事業については、「外国法事務弁護士は、組合契約その他の契約により、」我が国の「特定の弁護士と法律事務を行うことを目的とする共同の事業を営み、又は」我が国の「特定の弁護士が法律事務を行って得る報酬その他の収益の分配を受けてはならない。」と規定し、これを全面的に禁止しておりました。これは、我が国の弁護士を雇用することを禁止していることとほぼ同じ理由に基づくものであったと思います。
 ところが、今回の改正案は、その第四十九条の二の第一項において、外国法事務弁護士が一定の限定された範囲内において、我が国の弁護士と共同して「法律事務を行うことを目的とする共同の事業を営むことができる。」と規定し、この点に関する規制を緩和いたしました。
 そこで、これはいかなる理由によるものか、また、このような緩和策を講ずるに当たってはどのような経緯があったのか、お聞きしておきたいと思います。
 一方、改正案は、その第四十九条の二の第三項において、外国法事務弁護士は、第一項の共同事業を営む場合において、「当該特定共同事業に係る弁護士が」、要するに我が国の弁護士が「自ら行う法律事務その他の業務に不当な関与をしてはならない。」と規定し、共同事業を行う場合においても、我が国の弁護士の独自性がここで貫徹をされている、そのような手当てがなされているわけであります。
 そこで、外国法事務弁護士と我が国の弁護士とがこの改正案によって共同事業を営む場合の共同事業というものは、具体的には一体いかなるものであるかということが非常に疑問に思われるわけであります。この二つの規定を総合して考えますと、この共同事業に参加する我が国の弁護士の業務遂行の独自性が貫徹できるような手当てがわざわざ講じられているということを考えますと、改正法第四十九条の二の第一項の共同事業というのは、共同事業に参加する外国法事務弁護士と我が国の弁護士とが一体となって共同事業の中に埋没するのではなくて、それぞれが独立した事務所を維持しながら、事務所単位で共同事業を行うものであるというふうに解釈することが素直であるように思われます。そういたしませんと、この共同事業に参画をしていく我が国の弁護士の独自性というのは貫徹されないわけでありまして、改正法第四十九条の二の第三項の趣旨が没却されるわけであります。
 このことについて法務省当局の明確な御見解を承っておきたい、こう思います。
○永井(紀)政府委員 確かに、今回の改正法におきましては、共同事業を今までは全面的に禁止していたものを一部認めるという、こういう改正になっております。この四十九条の二の表題のところには「特定共同事業」という、こういう表題をつけております。いわゆる全面的な共同事業を認めたものではないという点が一つの特徴でございます。
 と申しますのは、日本法に介入するというおそれはできるだけ避けるべきだという、こういう基本的な枠組みは変わっていないものですから、やはり、いわゆる俗に言います渉外事件については一緒にやれますよ、しかし、日本人弁護士しかやれない部分については、一緒に仕事をするという、そういう観念は成り立ち得ないという関係になるわけですから、いわば完全な同心円を描いて完全に一致した事務所としてのあり方はできないという、こういうスタンスに立っておるわけでございます。
 その規定が現に四十九条の四というところにも、「特定共同事業の表示」という条文もあるのでございまして、これは、場所的には同じところで事務所を構えてよろしい、しかし看板は別々に掲げなさいという、こういうことを前提にした条文になっているわけでございまして、しかも、看板は別々にするけれども、お互いにそれは共同事業をやっていますよということも書きなさいということも書いてあるわけでございます。
 それから、先ほど委員がおっしゃったように、共同して行える法律事務も限定しておりますし、看板を別々に掲げなさい、それから、外国法事務弁護士はやはり原則として雇用ができません、共同事業をやっていても、外国法事務弁護士だけがそれで日本人弁護士を雇用するということはやはり禁止されているということになります。共同事業をやっている場合にも、日本人弁護士を雇用する場合には日本人弁護士が雇用するという、そういうことになっているわけでございます。
 それから、「不当な関与をしてはならない。」という、こういう規定も置きまして、日本人弁護士の独立性が侵されないような、そういう制度的な担保をここに置いているわけでございます。
 ただ、共同事業でございますから、やはり実際に、いわゆる許される範囲での渉外事件については、同じ事務所という形で働くということはできるということでございます。
○宮里委員 実は、具体的な形としては非常にわかりにくいのですよ。
 一方においては、外国法事務弁護士は取り扱い業務の範囲が限定されてまいります。日本法に関することは一切取り扱いできません。一方、日本の弁護士はこれは自由でございます。この両方が共同事業を行うということは、外国法事務弁護士が行える業務の範囲内のことを両方で共同して処理する、こういう意味だというふうに思います。
 そうしますと、共同事業というと、ずっと同じ、何といいますか両方が一体となって一つの事業を推進するというイメージがあるわけでありますけれども、ここで言う共同事業というのは、それぞれが独自性を持ちながら、そしてまたそれぞれ権限が異なることを承知しながら、そして看板も別々に掲げながら、具体的な事件処理は一緒にやりましょう、この程度の意味しかないのですね。それ以上に、いわゆる共同事業としてずっと同じ一つの計算のもとに事業を遂行していくということにはならないのだろうというふうに思います。もしそうであるならば、むしろこれは、一つの事務所、場所は一つ使ったとしても、それぞれが独立した経営体になり、そして看板も別々に掲げ、具体的な事件は一緒に処理する、こんなことにしかならないだろうというふうに思いますが、具体的にはどのような形になるのでしょうか。
○永井(紀)政府委員 いわゆる日本法を除いたいわゆる渉外事件につきまして共同事業ができるということの本質は、利益分配ができるということでございます。渉外事件についてはこれからもずっと継続的にやりましょうということで、報酬を受けますと、それは今個別的に、単発的に利益分配するということは許されておりますが、共同事業として継続的にやることは許されていないわけでございますから、やはり今度、渉外事件については継続的に一緒にやりましょう、そういう合意のもとで継続してやり、しかもそこの部分については収益を分配することができるということで、単発的に一緒にやりましょうというようなそういう処理じゃなくて、今度は同じ場所にいて、
渉外事件についてはずっと継続的に収益分配を含めてやれるということに意義がある、こういうように考えているわけでございます。
○宮里委員 同じ日本の弁護士同士でも、あるいは事務所同士でも、事件ごとに一緒に共同することはいつもあるわけでございます。もちろん共同事業というからには、そんな単発的な、個別具体的に一個一個やることではない、ある程度継続したものである。局長が指摘されましたように、渉外事件は一緒に組んでやりましょう、こういうことだと思うのですね。
 しかし、外国法事務弁護士にはいろいろな規制がかかっている。権限に制限が当然のことながら設けられている。それの取り扱えるいわば権限の範囲内のことでなければ、この共同事業の目的にはできない。ですから、おっしゃるとおり、渉外事件が主要なことであろうというふうに思います。そして、外国法事務弁護士の仕事の大半は契約書の作成だと思うのですね。そのようなことは一緒に共同してやりましょう、こういうことになると思うのです。
 ところが一方においては、日本の弁護士の独自性を保持するという観点から、外国法事務弁護士が日本の弁護士の業務の遂行に不当な介入をしてはならぬといういわば規定がしっかりと置かれている。そしてそれぞれ弁護士も名称、看板も別々に持ちなさい、こういうことになっている。ですからこれは、共同事業といっても、共同事業に参加をするものがそれぞれ独自性を保持し、独自の看板を持ち、そしてその上で局部的に一緒にする。ということは、事務所同士がお互いに独立していながら、この合意された共同事業に関する限りは一緒にやる、こんな形になるんですね。
 どうもその共同事業というイメージとこの法の規制との間になかなか具体的な形でイメージしにくい問題があるわけであります。恐らくそのことは日弁連にも届けをすることになっておりますね。ですから、日弁連がその届けを受けて法に適合しているかどうかを審査する場合にも、かなりこれは問題になるだろうというふうに思うのです。
 ですから、これはひとつ法案を作成された法務省も、そこら辺のしっかりしたものを持っておられて日弁連とも協議をしていただかなければならぬ、こう思うのですよ。ですからもう一度、失礼ですが、ひとつ具体的な形のものをお示しください。
○永井(紀)政府委員 実は委員、独立した事務所同士、こういうお話をされました。これはある面ではそのとおりなんです。ところがもう一つ、日本の弁護士法や外国法事務弁護士に関するいわゆる外弁法も、事務所という概念は、いわば物理的な弁護士さんがいる場所を事務所と言っているわけでございまして、独立した事務所と今委員がおっしゃるときには、事業体というか、企業的に言うと一つの経営体、そういう感じでおっしゃっているかと思います。
 ところが、外弁法も日本の弁護士法も基本的にはあくまで個々の弁護士という、個人を単位にしていろいろ規定をしております。したがいまして、例えば今度共同事業をやるときに、多くの場合は複数の日本弁護士と複数の外国法事務弁護士とが共同事業をやりましょうという契約を結ぶことが多いと思いますが、実は、基本的には一対一でできるわけでございます。日本の弁護士一人、外国法事務弁護士一人、同じ事務所にいて、形式的には看板は二つ掲げますが、実際は一緒になって仕事をするというような場合もイメージされるわけでございまして、これが一番基本でございます。
 そういう弁護士さんの独立性を言うときに、事務所の独立という言い方もしてよろしいんだと思いますが、弁護士個人個人はそれぞれ独立、外国法事務弁護士も含めて独立をしているわけでございまして、独立した主体が二人一緒に事業をやるという意味で多分事務所の独立という表現を委員はされているのではないかと思います。
 そういう意味では、倫理的な意味でもそれぞれ独立していますし、それから形の上でも、日本法に介入を受けないような形の担保をするためにそういう仕組みをつくっている、こういうことになっているわけでございます。
○宮里委員 ここは恐らく、日弁連が届け出を受けて外弁法の規定に適合しているかどうかを審査する場合、ほとんどが余り実質的な審査まではできないのだろうと思いますが、かなり重要な意味を持ってくると思います。ですから、法務省の方ではぜひひとつそこら辺のこともしっかりとしたものを持っておっていただきたいと思います。
 さて、今回の改正の具体的な中身についてはほぼこれで議論をいたしました。外弁法の制定から今回の改正に至るこの問題を議論する場合には、やはり一つの観点は、私どもの日本の司法制度、その一翼を担う日本の弁護士制度の伝統的ないい点をどういうふうに守り、そして、巨大なローファームを中心とするアメリカの弁護士制度、これが日本に進出してきて、日本の弁護士制度やあるいは司法制度に不当な介入をしたり、あるいは悪い影響を与えたりすることは極力避けなければならぬ。こんな観点から、この外弁法をつくりましたときも、今回の改正案の根回しにおきましても皆さん苦労をなさったのだろう、こう思います。これは当然のことながら、最大の注意を払わなければならぬ、こう思います。
 私は、日本の司法制度、今のままでもとより完璧だとは思っておりません。訴訟の遅延あるいはいろいろな面で弊害もあるわけであります。しかしそれらのことを除きますと、日本の司法制度はかなりすぐれたものがある、私はこう考えます。そして日本の弁護士も、国民のニーズに十分こたえているかどうかということは、数の面でもあるいは取り扱っているそれぞれの仕事の中身、とりわけそれほど専門化していないために一人で何でもやる、そんなところから多少の不満があることも、私は承知をしております。
 しかし、伝統的な独自性の問題でありますとかあるいは高度の倫理観や使命感が要求されておる弁護士は、それだけ社会的な信頼も得てきています。アメリカやECみたいに、弁護士の仕事は単に法律サービスをやっているんだ、法律知識あるいは法律事務を処理することによってサービス提供をしているんだ、このような観点には立ち得ない、こう思うのです。
 ですから、これからも恐らくアメリカは、これまでしばしば言ってきたように、しかもブッシュ前大統領までがその問題を持ってきたわけでありますから、多少横道にそれますけれども、最近のアメリカは業界の意見をストレートに政府が取り上げて日本政府にぶつけてくる、そういう傾向があります。私の考えでは、アメリカのABAは、何とかして日本にアメリカのローファームのブランチをつくってできるだけ多くのアメリカ人弁護士を日本に送って、できるならば日本の弁護士をアメリカのローファームの日本のブランチで雇用して、そしてしっかりとした弁護士活動をしたい、そして収益も上げていきたい、恐らくこんな思いだと思うんです。アメリカ政府が躍起になって日本政府にこの弁護士市場といいますか、弁護士業務の市場といいますかの開放を求めてきているのは、恐らくそこにねらいがあるのだろうと思います。
 しかし、もしそんなことになりますと、先ほど来議論しておりますように、私は、日本の弁護士制度あるいは司法制度に大変な混乱をもたらす、そして根底からこれが壊されていく、こういう危険性をはらんでいると思います。ですから、私は、弁護士制度に関する限りアメリカのまねはすべきでない、こう思います。
 そこら辺に対して私は、今度の改正によってアメリカやECが完全に納得すると思いません。恐らく今後も、これじゃ不十分である、もっと完璧な形の自由化を迫ってくる、規制緩和を迫ってくる時期が来るだろうと思うんです。そのときに、どのような要するに基本的なスタンス、考え方のもとに対応していかれるのか。担当局長からまずお伺いをした上で、後で大臣にまた所見を伺いた
いと思います。
○永井(紀)政府委員 多分ECも、今はEUと言いますが、EUもアメリカもいずれ、まだ規制緩和が不十分だということでいろいろ議論を吹っかけてくることは、可能性としては否定できない点があろうかと思います。
 これは外国弁護士問題研究会におきましても、先ほど冒頭に述べましたとおり、こういった問題は、単なるいわばリーガルサービスあるいはサービス貿易部門という、そういう観点からだけでとらえるとやや問題がある、あくまでそれぞれの国における司法制度の問題に深くかかわっているという、そういう認識を持った上で、やはり我が国の主体性を持った上で今後とも対処していかなければならないものである、こういうように思っております。
○宮里委員 大臣、私は、昭和四十年から東京第二弁護士会及び日弁連に登録したまま沖縄へ参りました。沖縄弁護士会へ登録をして、沖縄でも事件処理をしたことがありました。アメリカ民政府裁判所の裁判に携わったこともありました。もうかなりでたらめなんですよ、これは。
 例えば、私がそのころ扱った事件に、裁判所の移送問題が対象になりました友利事件がございました。琉球政府裁判所、要するに県民の裁判所ですね。ここで勝訴をして、そして控訴になりました。控訴審で係属中、アメリカは裁判所から取り上げてしまった。アメリカの民政府裁判所にこれが移送されました。私はその代理人でございましたが、代理人というのは、依頼者から依頼を受けて初めて代理人になるわけであります。裁判所が変わったわけでありますから、その委任契約は当然ここで失効するわけであります。同時に私どもは、この友利事件というのは当選無効の事件でございましたから、これを取り上げたということは、やはりこちらの依頼者を敗訴させるためのものだな、こう思いましたので、こんな裁判は受けないというので、直ちに辞任届を民政府裁判所に出しました。そうしたら、その民政府裁判所の裁判長が私に何と言ったかといいますと、民政府裁判所があなたに代理権を付与するから、そのまま代理人を続けてくれと、こういうふうに言ってきた。そんなことを平気で言うのですね。ですから、私はそのほかのアメリカ人弁護士たちともつき合いをしてきたことがありましたが、日本の弁護士とはおよそ事務処理の態度において随分違うのですよ。
 それから、これは先ほど冒頭に申し上げましたように、私ども日本の弁護士は、裁判官を説得しなければ自分の主張は通らないんですよ。裁判官が納得して初めて自分の主張が通るわけであります。私法律専門家でありますから、鬼面人を驚かすような、そんなはったりだけでは事は済まぬわけであります。ですから、日本の弁護士はそのような訓練がされております。
 ところがアメリカは陪審裁判ですからね。素人、国民大衆から選ばれてくる陪審員ですから、ここでのパフォーマンス、そういうことが力となりますから、ここが違うわけですよ。しかも、日本に比べてもう膨大な数の弁護士がアメリカにおる。先ほど申し上げましたように、年々ロースクールを出て弁護士になるのが、日本の弁護士の総数をはるかに上回る数が出てくるわけでありまして、これは自分の国だけではもうおさまらない。私は、アメリカのABAやあるいはアメリカ政府が日本に弁護士の業務の自由化といいますか、市場開放といいますか、規制緩和を求めてきたのは、そのようなことも背景になっていると思うんです。
 ですから、この外弁問題というのはよほど慎重に扱ってまいりませんと、そして法務省は、刑事施設法の問題でありますとか、留置施設の問題でありますとか、日弁連と必ずしもしっくりいかないところもあるわけでありますが、この問題につきましては、日弁連ともよくひとつ協議をされて、しっかりと体制を築かれて、そしてアメリカの無法な要求は、これはちゃんとはねのける、そしてそのような理論式装をしっかりしておくということが大事であると思うんです。
 ちなみに大臣、アメリカの通商代表部というのがありますね。あれはほとんど弁護士なんですよ。あれは役人じゃないんですよ。ですから、言うことがきついですよ。あれから大体想像はつくんだというふうに思います。
 今までの私と局長との間の議論のやりとりをお聞きになって、この外弁法問題についてどうお考えか、担当大臣としての御所見を承っておきたい。
○中井国務大臣 長時間にわたりまして、宮里先生から弁護士としての御経験を生かされ、幅広い、しかもそれぞれポイント、ポイントをつかれた貴重な御質疑を賜りまして、まことにありがとうございました。
 私、この法務大臣になるまでに商工委員長をいたしておりまして、ことしの税制改革、私どもは与党として初めて取り組んだわけでございますが、その中で、やはり日本へ進出している外国企業がここ数年間撤退がかなり多い。そういった意味で、今まで税制面から輸出振興という形でかなり優遇してきたけれども、日本にいる外国企業の税制優遇、こういったことをやらなければならない、あるいはジェトロなんかも、貿易振興というよりか、逆に外国企業の日本進出のお手伝いをする、こういうふうになってまいった、このことを痛感をいたしました。したがいまして、先ほど先生御質疑がありましたように、本当に国際法事犯が増大しているのかというと、私は必ずしも増大してないんじゃないかというふうには感じておるところでございます。
 昭和六十一年、前回この特例法ができましたとき、私議連の理事をいたしておりまして、大変な弁護士会の方々の御心配、騒ぎ、そしてアメリカからの大変な要求があった中で、かなり期間をかけてこの制度ができ上がったわけでございます。しかし、でき上がってみますと、そういう情勢の中で、意外と心配しておったほどではないんじゃないかという弁護士の皆さん方の御認識、そして同時に、もっともっと日本がこのボーダーレスの時代に国際化をしていかなきゃならないのだろうという御認識が深まったんだ、このように考えております。そういう御認識の中で、今回幅広いメンバーを集めて、この研究会が極めて短期間に御熱心に御論議をいただいていい御結論をお出しをいただいた、このように感じております。
 先生の御指摘、世界一難しい司法試験をお通りになって、倫理観、使命感に基づいて司法の一角を担い続けておられる弁護士会あるいは弁護士の皆さん方、この日本独自のあり方、これは当然よさを残していかなきゃならない。同時に、この国際化の中でどういうふうに対応していくか、これが常にこれから問題であろうかと考えております。
 私は、当面の国際化という問題については、いろいろと御心配の向きもありましょうが、今回の法律改正で十分対応させていただけるものだ、このように考えますと同時に、これからも国際的な圧力でどうこうということではなしに、国民のニーズに十分こたえられるような制度改革あるいはまた国際的な平均化、これらのことを常に考えながら、弁護士会の皆さん方あるいは最高裁、それから法務省、常にいい議論の中でよりよい制度確立に向かって努力をしていくべきだ、素人みたいなことで申しわけございませんが、このように感じているところでございます。
○宮里委員 時間が参りましたので、私の質問はこれで終わります。ありがとうございました。
○高橋委員長 山本有二君。
○山本(有)委員 外務省の方おいででございますか。この外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法、既に昭和六十一年五月に公布をされておるわけでありますが、この法律ができるまでの一連の経過、そして今日改正法に至るまでの経過、これはおよそアメリカ側が外交交渉の中で日本に要求してきたものであることは間違いありません。そんな意味で、アメリカの主張の概要をお伺いさせてください。
○鶴岡説明員 お答え申し上げます。
 アメリカからの弁護士問題についての外交上の接触というのは、ただいま委員御指摘のとおり、かなり長い歴史のあることでございます。振り返りますと、昭和五十七年の時点から既に米国政府から日本における外国弁護士の活動について問題の提起がございました。
 その後、米国だけに限りませんで、EC、欧州の方からも同様の問題提起がございましたけれども、この背景にございます先方の主張の原理といいますか意図するところは、一つには、法律サービスの国際化というものが非常に速い速度で進展をしている、我が国の世界の経済関係の中で占めている地位にかんがみて、日本に関係する国際的な法律事案が急速に伸びている中で、日本国内における国際的な法律事務に関するサービスの提供に制約があるということが第一でございます。
 これは、米側が我が方に対して問題を提起してまいりましたときに、日本の司法制度全体に対する理解が十分にあったか、あるいは先ほどからも御指摘のあるような需要が我が国の中にどの程度あるのかといった具体的な知識、情報をもとにしたものでは必ずしもございませんで、米側としては、今後我が国の国際的な地位が高まるにつれまして、当然のことながら法律的な手当てが必要になってくるであろうということを当初から考えていたものと思われます。
 その後、具体的な、まさに御指摘のございました六十一年に立法化されまして昭和六十二年に施行されました外弁法に至る経緯でございます。これもただいま申し上げました米側の認識を受けまして、日米間で相当長期にわたり、かつまた詳細な協議を行いました。そのときも貫きました我が方の立場は、日本の弁護士制度というものは司法制度の中の一つの大きな柱であって公共性を有するものである以上は、そういったものについて交渉の対象とするということは、そもそも必ずしも適当ではなかろう、すなわち、我が方として主体的に判断をした上で、我が国に求められた対応を内外の状況を見ながら決定していくということでございます。そのような御議論をいただきまして、また国会でも御審議をいただいた結果が、まさに昭和六十一年に承認をいただきました法律に反映をされておるということでございます。
 しかしながら、米側は当時におきましても現行の外弁法の中に含まれております外国弁護士に対する取り扱いに不満を有しておりまして、その後五項目というふうに整理をされましたけれども、当時から要求を提示してきておった次第でございます。しかしながら、我が政府といたしましては、とりあえずは、まずはこういった新しい制度を導入したということ、それから内外の情勢を考えた上でなければ、新たな対応をとることが適切でないという考え方に基づきまして、その後外弁法の誠実な実施を旨としたところでございます。
 米側からのその後の接触は、具体的な交渉提起ということでは必ずしもございませんでしたけれども、時宜に応じまして、ブッシュ政権下におきましても、当時のヒルズ米国通商代表部代表から我が方のさまざまな各階層に対しまして働きかけが行われておりました。これはよく報じられておったことでございますけれども、そういった米側の要請を受けまして、政府間での協議をその後平成二年以降開始をいたしまして、数回さまざまなレベルでこれを行ってきております。
 また、平成四年一月になりますと、当時のブッシュ米国大統領が訪日をいたしまして、その際に日米間で検討されましたアクションプランの中におきまして、国際的な事案の処理において弁護士が果たす重要な役割を考慮しつつ、外国法事務弁護士に関する問題の解決のため、今後一層の努力を行うといった我が方としての考え方を表明いたした経過がございます。
 以上が最近の日米間で、二国間の枠内において行われた協議ないし交渉でございまして、その後ウルグアイ・ラウンドが開始されて以降は、二国間での具体的な折衝よりは多国間のウルグアイ・ラウンドの枠内の交渉に議題が移ったということであろうかと思います。
○山本(有)委員 大体の概要をお伺いさせてもらったわけですが、アメリカ国内での弁護士業、ローファームの仕事の中身、それと日本の弁護士の仕事の中身、そういったものについて外務省当局の御認識はどれぐらいあるのか、ちょっとお伺いさせてください。
○鶴岡説明員 外務省といたしまして、法律専門家ないし日弁連経験者あるいは弁護士が組織の中におるわけではございませんので、委員御指摘のとおり直接の利害関係者としての認識は十分持っていないところがあるやもしれませんけれども、あくまでも、私ども政府といたしまして、司法制度の中で、日米の比較という観点から、特にこの問題が顕在化して以降、我々としても調査研究を行ってきております。
 アメリカの司法制度も、そもそも五十州という州において管轄されているということから、非常に州によって差異がございまして、一概に申し上げることはなかなか困難でございますが、今回、あるいは、この問題に関連いたしまして米側が提起をしてきたいわゆる渉外事務と申しますか、国際的事案に関心を持っている米側の事業者の観点の調査というものは、我々もしております。
 その観点から申し上げますと、米側でも、ニューヨークを中心といたします大都市に本拠を有するいわゆる巨大なローファームというものが相当数ございます。この巨大なローファームがまさに形成をされ、かつ活動が非常に活発になりましたのは、一九八〇年以降の状況だろうと思います。アメリカにおいてもございましたいわゆるバブルの時代に、大きな吸収合併等が相次ぎまして、その中で、そういった契約関係をお手伝いをする観点からの事務所の収入が大幅に伸びる、また、極めて専門性のある個々の分野についてローファーム自体が責任を持って事案に当たるということが、米国内の経済的事情から需要が出てきておったと承知しております。
 その結果、米国のローファームも、それまではパートナー数等についても二けたどまりだつたものが、急速に大きくなりまして、ローファームには百人以上抱えるような、パートナーを持つようなところが続出してきたということだろうと思います。
 ちなみに、同じような状況は、ヨーロッパにおいても、英国、特にロンドンを本拠とするローファームについて見られたことかと思います。その状況につきましては、一時期、バブルのはじけた状況を背景にいたしまして、米国でもローファームの規模の拡大がとまっておりまして、今や、当時肥大化したローファームの整理の段階に入っているというふうに私どもは承知しております。
 他方、日本の弁護士制度と申しますか、弁護士事務所のあり方につきましては、私ども、法務省あるいは日弁連、私自身も各地域弁護士会にもお招きをいただいてお話を伺いながら、私どもとしての知識を深めさせていただいておりまして、ただいま申し上げましたアメリカの状況とはまず第一に異なるということは間違いないことであろうと思います。
 また、日本の制度につきましては、もう先生よく御承知のことだと思いますので、私から申し上げることは、この場では差し控えさせていただきたいと思います。
○山本(有)委員 アメリカのローファームのその実態を調べたときに、アメリカの企業が自分の国、アメリカの弁護士を使ってやっている仕事、それを日本の企業はどういうようにやっているか御存じないですか。
○鶴岡説明員 アメリカのローファームに対して、米国の主として大企業が依頼する案件と同様の事例がある場合に、我が方の在米日本系企業の場合はやはり同様の依頼をしているように私どもは承知をしております。
 例えば、ニューヨークに進出をしております我が方の日系企業の多くは、やはりアメリカの巨大ローファームをそれぞれ抱えておりまして、個々
具体的な事例に応じて、それぞれのローファームの専門性に着目した事案の相談を持ちかけているというふうに承知をしております。
 他方、我が国におきましては、必ずしも弁護士事務所の活用の仕方が米国とは同一ではございませんで、大企業になればなおさらその傾向が強いと私ども承知をしておりますけれども、社内において相当の法的な事務がとり行われた上で、訴訟等の法律事務にかかわる部分について顧問弁護士等の日本の事務所のお世話になっておる、かように承知をしております。
○山本(有)委員 企画官のおっしゃるとおりで、日本の企業というのは弁護士を使っていないのですよね。自分の大企業の終身雇用制度という中で、優秀な人を雇用して、総務部法務課とかいう課をつくって、そこでもう本当に若い時代から定年に至るまで同じ仕事をどんどんどんどんさせて、アメリカの弁護士さん以上に能力のある人を開発して、ただ日本の弁護士資格がないというだけで、その分野においては大変な権威、プロフェッショナルであるというように私は思います。
 そうすると、弁護士法、こういうように位置づけをされて、その弁護士を語ると、勢い日弁連が関係してくるし、勢い法曹関係にも、そしてまた法務部会の話になってくるわけであります。本来、このことは大臣がやっておった商工委員会の商工の話ではないのかな。私は、考えますのに、外国弁護士というよりも、いわば外国法のサービス士というような新たな資格でもつくって、いわばその法務部で一生懸命やっている人に試験してやって、ニューヨーク州でやらしたらいいじゃないか。いわば、これは、一つは外交交渉のあり方の矛盾、ひどい言葉で言えば、ちょっと稚拙さが出てきた結果ではないかな、失礼ながら僕はそう思うわけであります。
 というのも、先ほど言ったことも一つ、これからまた申し上げますけれども、本来これは日本の弁護士さんの話とは全く関係ない話だ。私はそう思うのですが、まず、サービス分野としてウルグアイ・ラウンドで位置づけられていますよね。
 日本の弁護士はおよそサービスでやっていない。サービスというのはビジネスの話ですし、株式会社組織にできない。アメリカは株式会社組織にできる。そして、我々日本の弁護士が何か取締役にでもなろうとすると、各単位弁護士会の常議員会の許可が要るわけですね。一々兼業もできない。そして、宣伝できるかというと、日本国内の医療機関、病院が宣伝するようなことすらできない。向こうはテレビ宣伝ができる。全然話にならぬ。
 この日本国内ではサービスというような分野ではないのではないか。それをあえてガット・ウルグアイ・ラウンドの中でサービス分野に位置づけられている。そのことについて、外務省は、これはおかしいよというようなことの交渉をしてきた経過、あるいは日本の弁護士の実情を説明した経過があるかどうか、これをちょっとお聞かせください。
○鶴岡説明員 ただいまの委員の御指摘はまさに私もそのとおりであるというふうに考えます。
 ただ、米国においても、弁護士事務所が株式形態をとっていいというところまではいっておりませんで、彼らの言うところのパートナーシップという形態であろうかと思いますが、これがウルグアイ・ラウンドの交渉の中でサービスという位置づけがなされた理由あるいは背景について簡単に申し上げますと、法律的なサービスというものが世の中に存在するということについては、まず各国の間に異論はございません。
 ただし、法律的なサービスの中に、公共性が基本になっているもの、それに対しますところの商業性が基本になるもの、この二つが大きく分けてあるのではないか。したがって、法律サービスと言った場合に、訴訟に直接関係するような、いわゆる弁護士の社会的任務の中で期待されている役割について、諸外国の間でこれを貿易ととらえて自由化をするという発想は極めて希薄でございます。
 それは、アメリカ、欧州を含めて同様の認識が持たれているというふうに私どもは承知しておりますし、まさにそういった部分について、ともすれば弁護士なり法律サービスという非常に大まかな議論がこれまで横行しておったところが、ウルグアイ・ラウンドの枠の中におきまして、日米欧の先進諸国におきます司法制度のそれぞれのあり方、また、その中で商業的な色彩の濃い部分について議論を深めて、その部分についてのみまさに今回の自由化の交渉を行ってきているということでございます。
 したがいまして、国際的にもあるいは我が国の政府の部内におきましても、弁護士という職務に着目をした自由化それ自体を私どもは議論しておるわけではございませんで、弁護士の職務の中で特に国際的な事案にかかわる商業的な部分について、これを諸外国との間の調整も勘案しながら、また我が国の国内において国際化の観点からもこれに対応するという考え方できております。その点については、私は、諸外国の間にも我が国の立場についての誤解はないものと考えております。
○山本(有)委員 確かに誤解はないかもしれません。そして、そういう主張が正しいのかもしれません。外交交渉の場に上ったのかもしれません。
 しかし、先ほど法務省から発表がありました原資格国別外国法事務弁護士登録者数、これは日本における外国人弁護士がどれぐらいいるかというもので、七十九人です。平成六年三月三十一日現在で見ますと、内訳で十人以上を超えているところはアメリカとイギリスだけだ。そして、アメリカの州単位で見ますと、十人を超えているのはたった二つだけで、カリフォルニア州とニューヨーク州だけである。さらに、州でいくと、五十州あるうちの八州しか来ていない。そうすると、わずかの人たちのために我々がこんなに大騒ぎしてやる話なのか、それが私の極端な、素朴な疑問ですよ。こんなのを重要な政府間交渉の場に持ってくるなというぐらいの気も私はするのです。これが特に資格の問題だとか相互主義をやめてしまえとかいうようなことになると、外務省は州単位の話を国レベルの話にわざわざ持ち上げて対応してきたようにも思うのです。わずかな州であるということ、また州においては資格が全然違うということ、さらに、このことをアメリカがわざわざ政府の交渉の中に入れてきてやっているという事実についてどう思われていますか。
○鶴岡説明員 先ほど私の方からも申し上げましたとおり、米国の五十州の中には弁護士のあり方についてかなりの差がございます。先ほども申し上げましたけれども、ニューヨークというまさにアメリカの中でも最も中心的な商業地域、また太平洋に面する国であることから、カリフォルニアという経済的にも日本と非常につながりの深いところ、この二つの州からの法律事務への関心が強いということは、日米間の経済関係の帰趨から見て当然のことであろうと私は思っております。
 ただ、その他の州から出てくる弁護士なり資格を有している者が我が国において活動する需要はそもそも低い、相対的には低いものであろうと私も思っておりますし、それがまさに具体的な数字に反映をされているわけでございます。
 日米間の経済関係を全体として見ますと、多くの場合、ただいま申し上げましたニューヨークそれからカリフォルニア、この二つの州が大きな役割を果たしていることも、これまた委員もよく御承知のことであろうかと思います。ニューヨークの場合には、弁護士自身の資格がニューヨークの州法の資格を持っているにせよ、ニューヨークを拠点として活動している米国企業は何もニューヨーク州の経済基盤だけを基礎としているわけでは毛頭ございません。まさに全米の規模をニューヨークに収れんさせることによって、本社機能がニューヨークに集中しているということでございますので、そのような経済実態が一つは背景にあるということであろうかと思います。
 また、規制当局と申しますか、連邦制を持っております米国におきましては、弁護士事務につい
ては州の権限の中に含められておりまして、連邦としての政府が当然に規制権限を持っているわけではございません。これは米国通商代表部も私どもの再三の指摘に対しまして、先方も十分認めておることでございます。
 したがって、私どもと米側との交渉なり協議の場で我々が申し上げておることは、米国政府としてなし得ない我々に対する注文は、まず米国側が身を正すことによって我々に模範を示し、なおかつそれに基づいた我々としての対応を求めるべきではないかということでございます。まさにこの点がウルグアイ・ラウンドの交渉の中でも焦点の一つになりました。
 と申しますのは、米国連邦政府がウルグアイ・ラウンドの中で連邦議会から受けました権限をもとに交渉を進めまして、その結果、これまで日米間で行っておりましたが、私が先ほど申し上げましたけれども、協議という位置づけでございましたが、ウルグアイ・ラウンドの成果の中には、米側も交渉に応じた結果、米側として今回の交渉結果において責任を負って実施していかなければならない米側の約束が含まれております。したがって、そのような観点からは、ウルグアイ・ラウンドの交渉を通じて、米側にも我々の求めた義務が国際的な約束として含められたということでございます。
 連邦と州の間の権限の配分ということから申し上げれば、基本的には米国の内政の問題でございますので、憲法上の制約はもちろんあるわけでございますけれども、その中で国際的な交渉を推進することによって連邦制の制約も部分的には外れたところがあったと考えております。
○山本(有)委員 先ほど冒頭でお伺いした米国側の主張の概要の中で、カーラ・ヒルズUSTR代表が法務大臣を訪問して規制緩和要求を具体的にやりましたね、鶴岡さん。それから、ブッシュ大統領がお見えになられて、アクションプランという形でさらに今後一層の努力を要請していきましたね。私は、今回の改正とこの二つの事実が余りにも関連し過ぎているのじゃないかと思うのです。つまり、ヒルズが言ってきた五項目のうち、最後の国際商事仲裁手続においての当事者の代理人となることを認めること、これは明文化していないのですが、一から四までこのとおり今度の改正案の中身ができておるわけですよ。つまり、ヒルズが要求したことをうのみにしたというように言えぬこともないわけです。
 私はリン・ウィリアムズという次席代表と二、三度お会いしたこともありますし、彼は日本人の奥さんをもらって日本で弁護士活動を随分長いことやっておったわけですが、よく事情を知っておるからということもあるかもしれませんけれども、要求どおり改正することにおいて、これは一般論で結構なんですけれども、今回ここは理由があるかもしれませんけれども、日弁連なんかはかなり抵抗してきたのではないかと私は思うのですけれども、この点を外務省と法務省の両方にお聞きしたい。これは余りにも似ているのです、そのとおりやっているような感じだ。
○永井(紀)政府委員 今山本委員御指摘の中で一部違っておりまして、要求事項のうちの一番重要な雇用に関しては一切認めておりません。それから、共同経営を全面的に認めろということについても限定をしております。
 そういったところで全面的に全部認めたということではございませんし、外国弁護士問題研究会におきまして、法曹三者のみならず有識者を含めていろいろな見地から検討した結果、単にアメリカからの圧力がどうこうという問題ではなくて、弁護士がみずから主体的にどのように現在の状況に合わせていくべきかという考え方を基本にしたというふうに聞いております。
○鶴岡説明員 今回の改正法案の中に含められることになりました個々の対応が、米側が従来から求めてきたものに一つ一つ一〇〇%こたえるものではないということは、既に法務省の方からも御説明をされたとおりだと思います。
 私ども、基本的な認識として一つ申し上げておきたいと思いますけれども、先ほど委員の方からも一般論ということで御指摘がございましたのであえて申し上げますが、特に弁護士制度の場合、司法制度の中の一つの大きな柱であるということが基本にございまして、諸外国の要求があるからといってそれに一々対応するという問題ではそもそもないというふうに考えております。
 他方、我が国の国際化という我が国自身の大きな国益の絡んでいる重要な問題がございまして、その過程の中で十分な国際的な法律事案に関する良質な相談ができないような体制が仮に我が国の中にあるとすれば、それは何も諸外国のためではなく我が国自身にとって大きな不利益につながるのではないか、こういう問題意識を私どもは持っております。
 すなわち、先ほども法務大臣の方からも言及ございました対内直接投資との関連で申し上げますと、諸外国が我が国に投資をしたいということを考えた場合、そのような相談に先方の文化、言葉、理解に基づいた説明をするだけのサービスを提供する業者なり基盤が我が国にあるかというと、なかなかそこの点は実はまだまだ不十分な体制ではなかろうかというふうに率直に思います。これは結果的には我が国への諸外国の参入が妨げられる、あるいはしにくくなっているという結果にあらわれるわけでございまして、その点を何としてでも私どもは是正したいというふうに考えております。
 翻って申し上げれば、私ども外務省としまして、法律サービスあるいは法律事務についての諸外国との協議ないし交渉を行っている場合には、相手の巨大ローファームの利益を我が国において与えるために交渉しているわけでは毛頭ございません。先方が持っております我が国の顧客なり消費者なりがアクセスすることが利益になるような専門的な知見を我が国にいながらにして得られるような、そういった仕組みが我が国にとって望ましい限りにおいて、これを可能にしていくことを進めるということでございます。
 当然のことながら、基本である弁護士の業務、事務というものは公共性を持っておるわけでございますから、それへの悪影響が及ばないような形で、先ほど申し上げた二つの分野を分けた対応で考えていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
○山本(有)委員 米の自由化の件もそうですが、この弁護士の問題もそうだと思います。国内事情というのが大変重い存在であることは間違いない。それを伝えることを何かもう少し十分できなかったのかな。もしできたならば、ちょっと違う解決方法があったのじゃないかな、米もこれもというような部分、多少懸念があります。
 そういうようなことを踏まえて、どうぞこれからも交渉に当たっては我々日本の主張を思いきり外務省も法務省もやっていただいて、今後この外弁問題について遺漏なきを期していただきたいということを最後にお願い申し上げまして、質問とさせてもらいます。どうもありがとうございました。
○高橋委員長 午後二時より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時三十三分休憩
     ────◇─────
    午後二時開議
○高橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。山本有二君。
○山本(有)委員 午前中に引き続き質問をさしていただきますが、午後からは観点を変えまして、先週からずっと御質問させていただいていますマスコミの犯罪報道の犯罪という観点から、刑事局長さんを中心にまた御質問さしていただきます。
 私の人生観やら物の考え方でいきますと、戦争という時代には自由が奪われる、特に精神的自由も肉体的自由も奪われる。特に学者さんであるとかあるいは芸術家であるとかいう方は、戦争の時代にはかなり窮屈な創作活動になってしまう。そ
れは、戦争という肉体に関係しておるがゆえに自動的に精神的な自由も奪ってしまう。ところが、戦争のない時代がずっと長く続くと、精神的な文化は発達して自由を謳歌して、やがてそこに人間の本来の姿、創造性が発現されてくるだろう、こういうように思います。
 そういう歴史観の中で物を考えましたときに、今の時代、日本は、五十年ぐらい近く既に平和が続いておるわけでありまして、極めて高い精神性と精神的な創造があり得るであろう、こう思いますし、それにふさわしい法制度、社会システムでなければならないというように私は思います。
 そういう中で、戦争直後と今日と変わらざるものは、報道に関する物の考え方ではないだろうかというように思います。そこには、報道というものの一番大切なのは、表現の自由、これはもう、まさに自由が確保されなければ、我々はこの民主主義を到底維持することができないわけでありますけれども、しかし一方で、自由は自由であるけれども、自由ということの意味の中身をもう一回検討するということもまた必要になってくるのではないかというように思います。
 かつて民放連、民間の放送の協会、しかも労働組合の方が、我々の言論の自由、人権を軽んじる、この言論の自由とか人権を軽んじるなら、国民の精神風土もまた言論の自由を軽んじ、人権を軽んじるものになっていくのだ、そういう自覚が必要だということを、一九八三年九月十六日の「アピール」という、そういう形で述べております。つまり、言論の自由、人権を重視すれば、そこにおのずから規制が必要なんだ、自覚が必要なんだというような趣旨のアピールを出しておるわけでございます。つまり、報道の自由がむやみな自由ではないということに帰着するようでございます。
 そこで、制度的に各国で報道の自由に対する自主規制があるだろうか。アメリカは、前回御紹介申し上げましたように裁判の国で、裁判の判決で名誉毀損、そういう民事訴訟の判決額、賠償額が非常に高い、勝訴率も極めて高いということでありますから、名誉毀損をすることのないようにおのずから自主規制がナイトローヤーという形で新聞社にもある。ヨーロッパでは北欧に典型に見られますように、プレスオンブズマン制度と報道評議会という二つの機関がチェックを十分にしているということでございます。
 つまり、精神的活動を自由にしていくその中でお互いの自由を守ろうじゃないか、報道する側とされる側の自由を両方守ろうじゃないかという観点が今日必要ではないかなというように思うのでありますが、前回るる御質問さしていただいた中に、不起訴になった者の救済ということを申し上げました。
 刑事局長、不起訴になった者の救済が我が国ではまだ十分でない。特に、犯罪報道によって強制捜査された段階あるいは被疑者段階、疑いを持たれた段階で報道されるということは事実でございます。その人たちが一たん不起訴になってしまった場合、特に、嫌疑なし、そういう形で不起訴になった場合の救済制度を今後設けるつもりはないだろうか。そしてまた、設けるつもりが具体的になくても、刑事局長さんの物の考え方、問題意識として、そういう物の方向で考えていくべきではないかというようなことを御認識でないか、お伺いいたします。
○則定政府委員 お答えいたします。
 法律でないものですから、あるいは一般的に知られてないのかもしれません。その点私どもの方が、広報が十分でないという点で反省すべきかと思いますけれども、実は、強制捜査を受けて身柄を拘束され、調べを受けた被疑者が不起訴になりましたときに、政令でございますけれども、被疑者補償規程というのがございます。これに基づきまして、一定の要件のもとで金銭的な補償をするということは既に行っておるわけでございまして、あわせて、当該被疑者からの申し立てによりまして官報等にその旨の公示をする、そういうことで名誉回復の手段の一助とさせていただいておるわけでございまして、これらの規定の運用を適切に行うことによりまして、被疑者がこうむりました名誉の回復に資するもの、こういうふうに考えておるわけでございます。
○山本(有)委員 省令──政令ですかね。政令でそういうように金銭的あるいは官報による名誉回復ということが既に制度として確立していただいておる。これは確かに、本当に法務省も名誉を回復しようという意図はわかりますし、法務省の範囲の中でできる限りという意味でもあろうかと思います。しかし、犯罪報道というのは、これは公表の伝播性、これはもうマスメディアというぐらいですから大量なものでございます。そして、官報というのはまだまだ小さいわけでありまして、金銭賠償は別といたしまして、よく考えれば、まだ足らざるところ多しというように思うわけであります。本来、記者会見をする、実名を公表する、そうした人たちが官報では足らないのだろうというときに公表して、その公表、発表を忠実に、あなた方、記事として載せた以上は、逆に名誉回復の記事を載せるべきでないか、そこまで思い切った改正をあるいは努力をしていくおつもりはないかどうか、そこのお考えをお聞かせいただきたい。
○則定政府委員 御指摘の問題の重要性はよくわかるわけでございます。
 また、警察といたしましては、強制捜査をいたしまして、捜査の結果起訴するに至らなかった者につきまして、その事件の注目度、内容あるいは関係者の名誉、人権、こういったことをいろいろと気配りいたしました上で、適宜新聞記者に対して発表しているわけでございます。
 その際に、その内容をどのように取り扱い、どのような大きさで新聞等で報道するか、これはあくまでも報道機関の自由裁量ということになろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、それまで仮にその事件につきまして大々的に報道されていた事件の被疑者について今申しましたような不起訴処分が行われましたときには、その名誉の回復という件もありまして、報道機関がそれに沿う対応をしていただければ好ましいことであろうという気持ちは持っておるわけでございます。
○山本(有)委員 あらまほしきという願望的あるいは期待的なそういうものを持っていらっしゃるだけでもほっとするわけでございますが、ぜひ今後、そういう不起訴になった場合、特に名誉回復についての十分を期していただきたいということを御要望申し上げます。
 今度は匿名報道について少しお聞きしたいと思いますが、スウェーデンの例であります。
 八歳の少女の殺人事件があって、四十六歳になる犯人が警察に逮捕された。この被疑者は直ちに自白をして、それで有罪の判決になった。この有罪の判決になったことを新聞記事で、写真つきで実名が報道された。これに対して、プレスオンブズマンというところに本人が不服を申し立てた。氏名と写真を報道したことは、報道倫理綱領に照らしてこれは正当ではない、もうその犯罪を犯したことを認め、そして逮捕もされて、そしてそのことをもって囚人として収監されておる人が、氏名と写真を出されたことは大変心外だといって申し立てをした。これに対してスウェーデンのプレスオンブズマンは、これは十分理由があるということで、実名報道をしたことに対してプレスに謝罪を要求してきた。日本とはとんでもない違いがあるわけでございます。
 新聞社側の言い分はどうかというと、もし実名報道しなければ、一週間の間、他に疑われた人がいる、その人の名誉が回復できない、こうきた。しかしそれは、プレスオンブズマンでは、社会的関心はそこにはないのだ、むしろ実名とか写真とかで報道されるこのプライバシー侵害の方が、社会的関心のない以上、それはプライバシーを保護する方がさらにまさるという結論を出して、この実名報道に異議を認めた、こういうわけでございます。
 ここまで地球上の先進国の中で犯罪報道につい
て神経質に考えられ、個人のプライバシーを大事にしている国があるわけでございますが、今の日本の報道、特に新聞、これは大きな新聞はともかくとしまして、小さな新聞、そして週刊誌等々というようなことを考えましたときに、余りにも実名報道、人権侵害のおそれなしとしない傾向があるように思います。
 そんな意味で、この制度があるということの御紹介をさせていただきましたが、実名報道と匿名報道、犯罪報道におけるそうした観点から、刑事局長に感想があれば聞かせていただきたいと思います。
○則定政府委員 委員御指摘のとおり、表現の自由と申しましても、これは私どもの立場から申しますと、刑事法の分野においてもおのずから一定の制約がある、またそれは、公共の福祉の問題、あるいは事件、あるいは報道された関係者の人権、名誉ということにかかわってくるわけでございますから、一定の制約があるということは私どももよく理解するわけでございます。
 その場合に、どのような報道をするのか、あるいはその報道に対して一定の公的な組織がどのように介入するのか、いろいろな方法がある。現に今委員御指摘のように、北欧の一部の国でそういうオンブズマンあるいは報道評議会といった機関もあるようでございます。
 これは私どももそれなりに勉強させていただいておりますけれども、そういう制度をどういうふうに導入するのか、これらにつきまして政府サイドから報道の分野について物を申すのは適当でないかと思いますけれども、いずれも、それぞれの国の犯罪の情勢であるとか国民の人権感覚とか、そういったものが総合的に反映してそういう制度が導入されているのかなというふうに思います。
 したがいまして、我が国におきまして、それらのことも参考にされながら、報道機関が今後そういった報道姿勢についてお考えになるということは有益なことではないかというふうには思います。
○山本(有)委員 ありがとうございました。大変御理解を示していただいた、そう感じます。
 今日本の報道の中で野放しになっている一つの根拠として、刑法二百三十条及び二百三十条ノ二の規定があると思います。刑法二百三十条というのは名誉毀損罪をうたっておりまして、「公然事業ヲ摘示シ人ノ名誉ヲ毀損シタル者ハ其事実ノ有無ヲ問ハス三年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五十万円以下ノ罰金ニ処ス」こうあるわけでありますが、その事実の有無を問わず、名誉毀損したら処罰されるわけであります。この名誉毀損罪であるならば、たとえ犯罪であろうとも事実を摘示して名誉毀損したら、その毀損した新聞社あるいは出版社は処罰されるのが当たり前になるわけでありますけれども、二百三十条ノ二でみなし規定を掲げてあります。二百三十条ノ二の二項で「前項ノ規定ノ適用ニ付テハ未タ公訴ノ提起セラレサル人ノ犯罪行為ニ関スル事実ハ之ヲ公共ノ利害ニ関スル事実ト看倣ス」、つまり公共の利害に当たるし、これは違法性が阻却されるんだという意味になろうと思うわけでありますが、さて、それがあるがゆえに、警察が発表したその発表をたとえ誤解しても、このみなし規定によっていわば人の名誉を傷つけるということが間々あるわけでありますが、このみなし規定の立法趣旨を尋ねてみますと、こういうことも言われておるのです。
 戦後間もない一九四七年に、刑法改正において、GHQによる戦犯捜査の過程で民間の密告を奨励すること、これがこの規定の趣旨だ、いわば戦争犯罪者をどんどん密告させて処罰していく、そういうような立法趣旨、それがひとり歩きをしてしまって、到底立法趣旨の時代には考えられないいわばプライバシー侵害のはんらんというものを招いた一つの根拠になっているようであります。
 そこで、刑法改正の作業の中で、刑法改正草案ではみなし規定を削除したということを聞いておりますが、刑法改正案ではいかがでしたでしょうか。
○則定政府委員 今御指摘の刑法改正草案におきましては、現行刑法の二百三十条ノ二の第二項に対応する規定は設けておりません。この種の事実は、公共の利害に関係するのが通常であると一つは言えると思います、犯罪報道につきまして。したがいまして、その意味からは、みなすという擬制を設けるまでもなく、公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図るためにやったと認められる場合に、真実証明がありました場合には処罰されないという規定が本則としてございますので、それによって適正に処理ができるのではないか。また逆に、このようないわゆるみなし規定がございますと、犯罪に関する報道ならどのようなものでも許されるという誤解を生みやすい。今行き過ぎた興味本位の記事によって被疑者やその他の関係者の名誉を侵害するおそれも少なくないという理由もございまして、設けないことにしたものでございます。
○山本(有)委員 改正案もそうなんですか。草案と改正案、一緒ですか、一緒になっているのですか。
○則定政府委員 昭和四十九年から始めました刑法の全面改正につきまして法制審議会から答申を得た中身、これが今申しましたところでございまして、いわゆる刑法改正草案ということでございます。
○山本(有)委員 虚名を保護する利益以上にそれを暴露する公共的必要が認められることも少ないというその解釈、そしてこの条項の趣旨が通説になっておるわけでございます。
 しかし、先ほど局長さんが言われたように、取材し公表する側、マスコミの側はこの条項があれば何を言ってもいいということになりがちでありますし、そういう誤解のないような、いわば新しい法律の制定というものは大事であろうというように思いますので、刑法改正案は是といたしますし、まさにそういうような趣旨でこれからも取り組んでいただきたいと思います。
 次に、今度は日本の犯罪報道の具体的あり方ということをお尋ねさせていただきます。
 日本の犯罪報道の方法としては実名報道主義を断固守り抜くという立場をとられております。個々のケースで、氏名をどうするかについては区々ばらばらであるようでございます。それは、記者の主観やら編集委員の主観やらでばらばらになっております。最近の傾向としましては、呼び捨てをやめた、肩書呼称に変わったと言われております。大体十年ぐらい前から肩書呼称でございます。例えば山本有二でなくて山本有二議員とか山本有二被告人とかいうように、肩書をつけることでいわば呼び捨てによるイメージをもう少し和らげるという配慮がされるようになりました。これは大変いい傾向だろうと思います。一九八四年にはNHKで、犯罪報道で被疑者、被告人の呼び捨てをやめるという発表までしております。したがって、最近の傾向としては実名報道にだんだんマスコミ側も疑問を抱いてきて、それで肩書呼称にまで至ったというような、いわば文化の向上が見られると思います。
 そこで、今度は警察庁にお伺いをさせていただきますが、警察庁がずっと実名報道をしてきたあしき慣行がありました。それは飲酒運転の氏名公表でございます。飲酒運転をすれば必ず実名を新聞紙上に公表する。これは飲酒運転をして、それこそ逮捕されたら自動的に氏名が発表されるわけでございますけれども、このことは警察が、各地域の県警が協力をしなければできないはずでございます。一々この飲酒運転はだれかということを警察関係者が公表しなければ、非常に微罪でありますし、こんな小さな事件を実名まで社会部担当の記者さんが全部網羅することはまず不可能であります。
 我が高知県でも随分公表されました。酒を飲むのが非常に普通になっている環境というか、日本でも一番飲酒量が多いと言われて久しい高知県でありますけれども、飲酒運転は確かに多いわけです。もう夕刊を見ますと、かなりの人数が、一日十人以上がずっと載っておった記憶があります
が、最近これをやめるようになっています。どうしてやめたか、その経過は私はよく知りませんけれども、最近のマスコミのいわば実名報道を、できるだけ実名報道による弊害を除去しようというつもりでやめたのではないかというように、マスコミの自主規制と思っております。ただ警察庁も、これによって例えば犯罪抑止力が欠けてきはしないか、あるいはこれによって警察庁の方は逆に残念に思っていはしないかというような危惧もあるわけでございます。
 微罪である飲酒運転氏名公表が最近やめられたこと、そしてまた、こうした飲酒運転氏名公表の今までの経過を御説明いただきたいと思います。
○黒澤説明員 お答えいたします。
 御質問の高知県の場合でございますが、飲酒運転による交通事故が大変多かったことなどの交通情勢にかんがみまして、昭和四十六年でございますが、この種事故の防止の観点からすべての事案を公表いたし始めました。昭和六十二年までそのような扱いで推移いたしまして、すべての事案を公表していたわけでございますけれども、その後飲酒運転による交通事故の減少を見まして、一応の成果もあったということから、原則として公表を取りやめたと聞いておるところでございます。飲酒運転による交通事故の公表につきましては、各県がそれぞれの判断において対応してきたものでございます。
 なお、実名で報道するか匿名で報道するか、この問題につきましては、マスコミの報道のあり方でございますので私どもの立場でコメントする立場にはないわけでございますけれども、各府県におきまして、実名により発表するかどうかにつきましては、個々具体的な事案に即しまして、事案の内容、被疑者等事件関係者のプライバシー等に配意いたしまして適切に対処していくものと承知をいたしておるところでございます。
○山本(有)委員 黒澤課長さん、これは通告にないわけでありますが、氏名公表をした場合に犯罪抑止力があったと思われますか、それとも、氏名公表しなくなってから飲酒運転がふえましたか。つまり、実名報道の公益性、もしそれがないならば、私の方はなるたけ実名を報道しない方がいいのではないかと思います。特に、飲酒運転によって会社をやめてしまったとか、やめざるを得なくなったという例は枚挙にいとまがありません。例えば、飲酒運転は悪いことに決まっておるわけでありますが、呼気一リットル中〇・〇二五ミリグラムですか、その基準は正確でありませんけれども、そこの微妙な点になりますと誤差もあるわけであります。それで、もし基準に満たないことが後でわかったりする場合には、これは無実の人を公表してしまうという弊害もあるような気もいたしますけれども、もしその点お答えができるようでありましたら、課長さん、お願いいたします。
○黒澤説明員 お答えいたします。
 事故の数字につきましては、正確な数字はただいま持ち合わせてはおりませんが、高知県におきましては事故が大変減少したというふうに聞いております。ただ、事故の減少につきましてはいろいろな要因もあろうかと思いますので、このこと自体がこういう結果をもたらしたかどうかにつきましてはコメントすることができないわけでございますけれども、客観的事実といたしましてはこの種の事故が大変減少しておる、こういう傾向がございます。
 それから実名か匿名かでございますけれども、私どもの立場では、情報の提供、報道機関に対する素材提供の問題でございますけれども、やはり犯罪の内容でありますとか、それぞれの事件に対する社会的関心、こういった点を考慮いたしまして、犯罪によって引き起こされました社会的不安の解消でありますとか、同種犯罪の再発防止、こういったことに資するものであるか否かという点からケース・バイ・ケースで対応してまいりたい、かように考えておるところでございます。
○山本(有)委員 犯罪が減少したことは認めるけれども、氏名公表によるものかどうかはわからないという点でありますけれども、一応既に実が上がったからもう氏名は公表しなくなったということでありますから、いわば警察庁も実名報道の弊害の方が抑止力よりも高いのではないかという観点からおやめになっていただいたというように理解をさせていただきたいと、逆にこっちの方は思うわけでございます。そういう観点も踏まえながら、今後の犯罪報道について、警察庁の方もプライバシーのことを考えていただきながら、捜査との調和をぜひ図っていただきたいと要望をさせていただきます。
 実名報道についての根拠はまだまだたくさんありまして、日本の実名報道主義マスコミがやっているのはほとんど権利侵害がない、なぜなら有罪率が日本では高いから、もし逮捕等をされた場合にはほとんどこれは実名で公表しても何ら人権侵害はないのではないか、こういう考え方があります。
 そこで刑事局長さんにお伺いいたしますけれども、日本が有罪率が高いから実名報道でも構わない、こういう観点はいかがでございましょうか。もしお答えができるなら。
    〔委員長退席、島村委員長代理着席〕
○則定政府委員 大変難しいことでございますけれども、御指摘のように日本の場合、少なくとも起訴されますと九九・何%という高い有罪率なものですから、世間の人はその起訴された被告人について有罪と事実上の心証を受けるのであろうと思うのです。
 ただ逮捕段階におきましては必ずしもそういうことではない。その後いろいろ捜査活動を行い、また検察官が起訴、不起訴を決定するわけでございますから、したがいまして、いわゆる初期の捜査段階において、有罪率が高いからそういう実名報道の一つの根拠になるというふうに考えるのは、いささか私どもとしてはひっかかるところはございます。
○山本(有)委員 私も同感でございます。有罪率、これをもって、九九%だからといって実名報道でいいという根拠にはならないと思いますし、局長さんの言われるように逮捕者の四〇%以上が不起訴であるという事実もまたこれありますから、私も同感でございます。
 もう一つ、実名報道の根拠として、報道に迫真力があるというわけであります。迫真力はさらに捜査に極めて資するものである、こういうわけでございますが、マスコミ報道が迫真力がある、そしてそのことが、実名を挙げることによって、それで捜査等に非常に協力ができる、こういう根拠が実名報道にあるわけでありますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
○則定政府委員 その点はどうでしょうか。どういう理由で迫真力があると捜査にプラスに作用するのか、ちょっとわかりにくいところがあるのでございますけれども、想像いたしますと、例えばかなり難しい案件について、実名報道されることによって、その捜査対象者なり犯罪行為にそれなりの知識を有する人が積極的に捜査に情報を提供するという意味であるとしますと、あるいはそういうことがあり得るのかなという感じがいたします。ただ、一般的にすべての事件についてそういうふうに言えるのかどうか、ちょっとわかりにくいといいますか、お答えしにくい問題だろうと思います。
 それからこの際、ちょっと先ほど被疑者補償規程につきまして政令と申しましたが、誤りでございまして省令でございます。恐縮でございます。
○山本(有)委員 迫真力あるいは捜査に資するものがあるというのは、恐らくAさんと報道されるより山本有二と言ったら、その知識のある人が協力する、局長さんのおっしゃるのは、そういう意味だろうと思います。しかしあくまで捜査というのは、捜査権を持った方のこれは専権でありますし、それがマスコミに一々手伝われなければできないというものではありませんから、その意味ではこれも根拠にならないだろうと思います。
 実名報道が抑止的効果がある、犯罪を抑止する効果がある、こういうわけでありますけれども、これについていかが思われますでしょうか。犯罪
を抑止する、先ほどの警察庁の飲酒運転の公表というのは、まさにそのことでありますけれども、刑事局長、実名報道が抑止効果があるというのはいかがお考えになられますでしょうか。この点は非常に難しい点で、既に飲酒運転ではあると警察庁の方は言っておるので、答えにくい部分もあるかもしれませんけれども。
○則定政府委員 確かに答えにくいお話でございますけれども、相当強度の社会的非難を浴びるような犯罪、刑法犯の中でも法定刑の重いような犯罪等につきましては、それ自体が抑止力として大きく働くのだろうと思いますが、一般的に法的に強い非難の度が加えられない程度のものにつきましては、それにかかわる容疑者等について、ある段階でその罪について捜査の対象になっている、そういったことが一般的に言えるのだということになりますと、あるいは同種の犯罪に走ろうとする他の者について、ある意味での抑止力というものが働く可能性はあるような気がいたします。
○山本(有)委員 ある程度というぐらいのことでありますから、これも利益衡量の対象なわけでありまして、プライバシーを著しく侵害してまでということは許されないという御判断だろうと思います。
 実名報道の最後の根拠、実名報道だから冤罪が救える、こういうようにマスコミが言う理屈もあるのですけれども、この点はもうお伺いするまでもないと思います。冤罪事件というのは、必ずしも報道が実名であったから冤罪だというわけではない。実名を言えば、だんだん世間の人たちが、あの人が犯罪者だというそういう先入観、偏見は持っていきますけれども、そのことによって捜査機関が必ずしも揺れるものではないし、さらに裁判が誤判になるというものでもないだろうと思います。むしろ別な観点が大事だろうと思います。と考えますと、実名報道、必ずしもすべて正しいものではないというように総括できるわけでありまして、そう考えたときに、我々はもう少し今の日本の現状に対して配慮をすべきではないかというように思います。
 最近、日本の実名報道主義の報道機関も、精神障害者と少年犯罪、これには事実、匿名報道するように徹底してまいりました。匿名報道ということがやはり少年の可塑性に富むこれからの人格を傷つけないで、それで人生過ごさすことができる、こういうような考え方が一つ出てまいりましたし、そうであるならば、さらに一歩進んで、健常者、成人であっても、精神障害者でなくても、やはりプライバシーを守って匿名報道ということも十分考えられてくるだろうと思います。特に憲法三十一条、デュープロセスの理論とか世界人権宣言の無罪推定とか、あるいは日本の裁判制度が三審制であるというようなことを考えましたときには、やはり有罪の確定判決があるまでは無罪推定が働くというのが、文化の高いところの国の常識に、この報道もなってもらいたいというわけでございます。
 そこで最後に、日本の制度がまだまだ十分でないということを指摘し、かつ北欧でもこういうことが行われております。北欧のフィンランドで報道評議会という機関を自発的に設けまして、フィンランドの法務省がその評議会に運営費の四四%を支出している。自主的な、報道機関の報道を自分自身で制約していくそういう機関に国がお金を出している、こういうようなこともございます。いわばこれは報道の健全性を当該国家の法務省がリードしていると考えることもできるわけでありますけれども、そう考えたときに、我が国でも、こういう文化の進んだ国家において犯罪報道をもう少し健全化しようという法務省の一歩進んだお考えができないものだろうか、フィンランドのようなまねはできないものだろうかというように思いますが、その点いかがでしょうか。
○則定政府委員 フィンランドで今おっしゃいましたような公的資金を、報道評議会ですか、援助されているのは承知しておりますけれども、果たしてそれが法務省からかどうか、ちょっと私は定かでございません。
 いずれにいたしましても、もともとそういう犯罪報道についてどういうふうな姿勢でいくのか、それぞれの国の伝統なりあるいは国民の権利意識等によりまして適宜の選択がなされておると思うわけでございまして、直ちにそれらの方策につきまして我が国が導入すべきかどうか、この点につきまして、私どもの立場からこれを直截にその方向性を含めてお答えするというのは、差し控えるべきではないだろうかというふうに思っております。
○山本(有)委員 最後に、私の質問をまとめさせていただきますと、第一番にお訴えしたいのは、一般市民における犯罪報道の犯罪、いわば市民を実名で、名指しで、まだ有罪も確定していないのに犯罪報道するということのマイナス面、弊害面、これを除去しようという考え方でございます。
 二番目に、政治腐敗が最近叫ばれております。そして政治改革も断行されました。そういう中で、ゼネコン汚職等々、きょうの東京新聞の朝刊に、堀田元検事がこういうことを言っております。「『実名での疑惑報道 名誉棄損で訴訟を』」というようなことを書いてありまして、まさに実名によって弊害もあるということを元検事さんも報告をされておる、最近こういう発表をされておるということでもございまして、そういう意味での弊害もございます。
 さらに、私は三番目に指摘しておきたいのは、今後、公職選挙法とかあるいは政治家関連の犯罪ということになりますと、小選挙区制度に移行した場合に、この果たす影響というのは、アメリカにおける小選挙区のネガティブキャンペーンではありませんけれども、この報道一つで政権がかわってしまうということにもなりかねません。そういった観点から、実名報道というのは検察庁当局は非常に慎重に、そしてまた警察も微妙な扱いをしていただかなければ、今後の我々の国家自体の、全体としてのいわば仕組みが崩れてしまわないかなというように思います。
 そんな意味で、犯罪報道の犯罪というようなことを指摘をさせていただきましたが、そのことをぜひ御要望申し上げまして、私の質問とさせていただきます。どうもありがとうございました。
○島村委員長代理 富田茂之君。
○富田委員 公明党の富田茂之でございます。改新、さきがけ・青雲・民主の風の御了解をいただきまして、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案について質問させていただきます。
 午前中の宮里先生、また先ほどの山本先生の質問で論点はほぼ出尽くしたと思いますが、何点か、この点に関しまして質問させていただきます。
 宮里先生の方からの質問に、今後も自由化、規制緩和を求めて英米が迫ってくるのではないかという御質問がございました。本改正でもまだ不十分だということで、こういうような動きがあるのではないかという御質問が午前中ございました。これに対しまして、中井大臣の方から、今回の改正で国際化には十分対応できる、今後も国際的圧力によるのではなく、国民のニーズにこたえるような制度にしていきたいというような決意表明がされておりました。
 ただ、ちょっと気になることがございます。日本弁護士連合会が昨年十二月三日に臨時総会を開催いたしまして、本改正法案に関しまして、外国法事務弁護士制度の改革に関する基本方針を承認いたしました。ところが、この総会直後にアメリカの八つのローファームがこの基本方針の内容に不服があるとして、米国通商代表部、USTRの方に対しまして、規制の全面解禁に向け日本側と交渉するよう直訴していた、そういう旨の新聞報道がなされておりました。また、私の方で日弁連の担当者の方にお伺いしましたところ、この改正案が当委員会で審議されておりますにもかかわらず、ローファームの方から派遣されて日本で弁護士をされている方が、このUSTRの方に対して、今回の改正案でもまだまだ不十分だというよ
うなことで、何か書面を出している、そういう動きがあった、しかもその書面を出したことをわざわざ日弁連の方に通達してきているというようなことでございました。法務省は、このような事実を確認されておりますか。
○永井(紀)政府委員 正確なことはちょっと今忘れた点はございますが、日弁連の理事者の方からそのような話を聞いております。
○富田委員 現行の外国弁護士制度は昭和六十一年に成立して、六十二年の四月から施行されております。しかし、平成元年の秋には、もうアメリカの方から一層の緩和を求める五項目の要求があった、そういう経過がございました。これは午前中にも外務省の方からも説明がございました。この要求の中で、外国法事務弁護士と弁護士との共同経営を認めること、また外国弁護士が弁護士を雇用することを許容すること、この二点の対応が非常に難しいのだと思います。
 今回の法改正におきましても、この二点は基本的には認められておりません。このことから見ますと、本改正法案が成立しても、前回と同じように、再度時を経ずして外国弁護士問題が浮上してくるのではないか、いわゆる第三次外弁問題と言われるような問題が起きるのではないかというふうに懸念されるのですが、法務省の方はどのように考えられていますか。
○永井(紀)政府委員 先ほどの委員の言われました手紙の問題等も含めまして、昨年秋に外国弁護士問題研究会で一応の結論が出たにもかかわらず、まだ法改正が具体化していないというところから、非常に外国からも、一体どうなるのかという不安感から一部出たのがございます。
 それで、もともと私ども法務省、日弁連の立場といたしましては、第三者を含めた外国弁護士問題研究会で十分な審議をいただいたその成果を踏まえて国民的合意のもとで対処していく、こういう考え方を持っていたわけでございますが、何も日弁連と法務省だけが決めたわけではございません、国民的合意の形成というところで決めたわけですが、やはり若干まだ不満が残っている。そういう問題につきましては、これからもまたいろいろと専門家同士での話し合いその他も起きる可能性はまだあると思います。
 ただ、それをいわば第三次、第四次といったような外圧的に受けとめるのか、もっとそれとは違った形でもう少し冷静に受けとめていくのかということは、これからの対処の仕方は慎重でなければならないと思いますが、ただ、私ども法務省及び日弁連の立場といたしましては、基本的には今回の外国弁護士問題研究会の報告書をもって、とりあえずこれを基調に対処していき、さらに、今後相当長期におきまして国際的環境等が変わりましたらまた改めて検討していくというスタンスでいきたい、こういうふうに思っております。
○富田委員 日弁連が雇用の問題また共同経営に反対してきた基本的理由というのは次の二点にあると思います。雇用を認めますと外国法事務弁護士が弁護士に対する指揮命令権を通して本来禁止されている日本法に関する法律事務に実質的に介入するようになる。また、共同経営を認めると雇用禁止を潜脱されるおそれがある。また、日本といわゆる経済力と組織力の格段に違う英米のローファームとの共同経営は、実質的に日本の弁護士の独立性の確保が困難であり、我が国の司法制度に及ぼす影響が極めて大きい。この二点から、日弁連の方では二つの点について反対してきたのだと思いますが、法務省はこの点についてはどのように理解されておりますか。
○永井(紀)政府委員 法務省といたしましても、日弁連のそのような考え方を基本的にそのとおりであろうと思っております。ただ、共同事業につきましては、それを日本法への介入あるいは日本の弁護士への悪影響が及ばないような措置を講ずることによって利用者側のニーズにどうこたえていくかということを検討しなければならない、こういう考え方でございます。
○富田委員 相互主義の点について一点確認させていただきたいと思います。午前中の質問に対しまして、永井部長さんの方ら、スペイン、ブラジル、レバノン、中国の
 々から相談を受けているというような御発言がざいました。法務大臣の裁量によって外国法事務弁護士の資格を与えようとする場合、大臣は日弁連の意見を聴取するのでしょうか。この点ちょっと確認します。
○永井(紀)政府委員 現行法のもとにおきましても、法務大臣の承認につきましては日弁連の意見を聴取するということになっております。
○富田委員 ただいま述べました国の方々からの、正式な申請かどうかわかりませんけれども、申し入れに対しては、現在日弁連の方との協議は進んでいるのでしょうか。
○永井(紀)政府委員 まだ日弁連への正式の照会はしていないものがほとんどでございまして、これは、私どもの司法法制調査部の方が事務を扱っておりますが、そういうところから日本の弁護士さんあるいは御本人さんからいろいろな形でいわば事前の相談案件という形で参っているというのが実情でございまして、まだ正式に日弁連と協議をするという段階には至っていないと思っております。
○富田委員 ありがとうございます。
 法案の中身についてなんですが、午前中の御説明で大体は理解できたと思うのですが、特定共同事業という概念なんですが、若干まだわかりにくい部分がございますので、質問させていただきます。
 午前中の御説明では、場所は同一だ、看板は別だ、お互い共同でやっているという旨を掲げてもらうんだというような御説明でした。日本の弁護士と外国法事務弁護士とは概念上は別の事業体だというような御説明もございました。具体的には、事務所を構える際にその事務所はどういうふうに外に向かって表示されるようになるのでしょうか。その点を教えていただきたいと思います。
○永井(紀)政府委員 まず、物理的な場所は同一の場所であるべきだというふうに考えております。物理的場所といいますのは、例えばこのような部屋ですと、入り口等はたまたま近くこのようにドアが二つあっても、それはよろしいのですが、やはり室内においては、中が区分されようが区分されていなかろうが物理的には同じ場所にあるということが、まず一つの利用者に対する利便ということから要求されているのだろうと思います。
 それからもう一つ、看板の問題ですが、看板を具体的に、例えば入り口が一つであるというときにどういう書き方をするかというのは、また改めて日弁連の方でもいろいろお決めになるかと思いますが、これは、例えば一つの看板の中に二つ、日本の、例えば霞が関法律事務所と書き、その次にピーター・アンド・ブラウン外国法事務弁護士事務所というふうに並べて書いておいて、そこに両者は共同事業をしているという旨を括弧して書いても、これはいいのではないか。それから、看板を二枚書いて、そこに並べてかけて、とにかくその入るところに二つの事務所があるということがわかればいいのではないか。具体的なかけ方まで日弁連の方でお決めになるかどうか、私どもはまだ具体的には話を聞いておりませんが、日弁連の先生方のお話ですと、そういうことが考えられるのではないか、こういうふうに聞いております。
○富田委員 特定共同事業を行う外国法事務弁護士に対する日弁連による監督というのは、どういうふうに考えられているのでしょうか。
○永井(紀)政府委員 これは、改正法にもありますとおり、特定共同事業を営もうとするときには日弁連に届け出をしなければならない。そして、届け出がありますと各単位弁護士会にもその旨を通知する、こういう仕組みになっております。したがいまして、日弁連としては、その届け出がありますと、これをそれぞれの登録名簿に付記をいたしまして、もちろん届け出についての問題がありましたらそれは付記をすることはできませんが、もし不法な、不適法な届け出なら、これはだ
めですよと言って突き返さなければならないということになります。
 それで、そのもとで特定の弁護士もそれから外国法事務弁護士も既に日弁連の監督下に入っているわけですね、いずれも登録されておりますので。したがいまして、そういう届け出のもとにおきまして、もし違法な、特定共同事業の事業目的でないことについてまで共同事業を行っているというようなことがありますれば、それについて調査を行い、懲戒処分を行うといったような形で監督、指揮をしていく、そういうことになろうかと思います。
○富田委員 今回の改正で原資格国のローファームの名称の使用が許されるようになりましたが、この点でちょっと一点確認させていただきたいのですが、例えばアメリカにあるローファーム、同じローファームの出身の弁護士が東京と大阪で原資格のアメリカのローファームの名称をそれぞれ名のるということはできるのでしょうか。
○永井(紀)政府委員 今回の改正法によりましても、現行の法のもとにおきましても、それは許されないということになります。
○富田委員 その意味では、日本の弁護士と同等に扱われるというふうに理解してよろしいでしょうか。──わかりました。
 次に、この法案を離れまして、私がちょっと関心のある点について御質問させていただきたいと思います。
 まず、入管業務について何点か確認させていただきたいと思います。
 出入国管理及び難民認定法の附則に、「後天性免疫不全症候群の病原体に感染している者であって、多数の者にその病原体を感染させるおそれがあるものは、当分の間、第五条第一項第一号に掲げる患者とみなす。」との規定がございます。同法五条一項本文によりますと、この規定に「該当する外国人は、本邦に上陸することができない。」というふうに規定されております。この規定は、現在どのように運用されているのでしょうか。
○塚田(千)政府委員 お答え申し上げます。
 出入国管理及び難民認定法におきましては、後天性免疫不全症候群の病原体に感染しているとの理由だけで上陸を拒否されるものではございませんで、また上陸審査に当たっては、一般的には、HIVに感染しているかどうか感染の有無に関する証明書の提示を求めたり、あるいは性的な指向について問うたり、あるいはHIV感染の有無の検査を要求するようなことはいたしておりません。要求いたしません。
 また、HIV感染者であって、かつ多数の者に病原体を感染させるおそれがあるものは上陸を拒否されることになっておりますが、この多数の者に病原体を感染させるおそれがあるものかどうかの判断は、これは入管法の九条二項に定めてございますが、厚生大臣または法務大臣が指定する医師の診断を経た上で慎重に行うこととなっております。
    〔島村委員長代理退席、山本(有)委員長代理着席〕
○富田委員 実際にこの規定が適用されて、上陸が拒否されたというような事例がございますか。
○塚田(千)政府委員 ございません。
○富田委員 先月末でしたか、アメリカのプロバスケットボールの選手でマジック・ジョンソンさんという方が、私の地元の千葉の方に来て、少年たちにバスケットを教えていましたが、彼もエイズウイルス感染者だということで、何の問題もなしに入国されていろいろな教育活動をされていたということから見ても、実際に適用されることはないというふうにお伺いしてよろしいのですね。
 実は、五月三十一日に、ハイロ・エンリケ・ペドラサさんという、コロンビア出身で、現在ニューヨークでエイズの患者・感染者に対して無料の医薬品供給活動を行っている男性から、議員会館の方で陳情を受けました。彼は、エイズウイルスの感染者であります。彼は、五月二十八日に、成田にUA八〇一便で十四時五十五分到着、その後成田の入管におきまして、入国審査官から三時間にわたり質問攻めに遭ったそうであります。彼を受け入れてくれる受け入れ先への電話をお願いしても拒絶され、またトイレにも行かせてもらえず、水一杯もらえなかったと彼は私に訴えておりました。また、大部屋での事情聴取であり、みずからエイズウイルス感染者だと名のっている者にとって、人権に対する配慮が全くなかったのではないかと思われるような事情聴取だったと聞いております。なぜこのような事態が発生したのでしょうか。おわかりでしたら教えていただきたいと思います。
○塚田(千)政府委員 お答えいたします。
 私どもも、このハイロ・エンリケ・ペドラサ氏でございますか、お話は伺いましたので、事実関係を調べましたところ、ただいま富田先生から御指摘のあった事実関係と私どもが承知しておる事実関係で食い違いがございますので、私どもが把握した事実関係を御説明させていただきたいと思います。
 同氏は、先ほどの便で成田空港に到着したわけでございますけれども、EDカードに入国目的を「ビジット」とだけ書きまして、日本での連絡先を「ドント・ノウ・イエット」と記載した上に、欄外に「ライム・ア・ホモセクシュアル(ゲイ)アイ・ハブ・エイズ」と記載した上で上陸申請に及びましたので、入国審査官は入国目的に疑問を感じまして、特別審理官にバトンタッチをしたということでございます。特別審理官は、事情を聴取した上、すぐに、この入国目的には疑問はなく、またエイズに感染しているかどうか確認するまでもなく、多数の者にこれを感染させるおそれはないと判断しまして、短期滞在の在留資格により上陸を許可したわけでございます。
 本件の取り扱いについて、同氏を三時間質問攻めにしたというようなことを、今お話がございましたけれども、東京入国管理局成田支局によりますれば、特別審理官がバトンタッチを受けて上陸を許可するまでに要した時間は全部で一時間弱、十六時から十七時前までということでございまして、あるいは同氏が、これは入国管理関係の時間ではなくて、空港全般のいろいろな手続がございますが、通関だとかそういうものと混同されているのではないかというのが私どもの理解でございます。
 また、同氏は、六月二日に私どものところにもお見えになりました。そのとき国会のお二人の先生方も御一緒だったのでございますが、そのとき、口頭審理について長時間を要した、またプライバシーに配慮がなかった、水を飲ませなかったというようなクレームがございましたので、私ども別途調べた状況をお話ししたわけでございます。つまり、口頭審理終了までに要した時間は一時間弱であった、また口頭審理を行った場所も飲料用水の機器等の設備が設置してございましたし、またトイレも申し出があればもちろん使用を認めることとするのが当然なのでございますけれども、御本人からはこのような申し出は一切なかったというのが、私どもの成田支局から得ている報告でございまして、ちょっと事実関係が違っておるようでございます。
○富田委員 事実につきましては、私はこのペドラサさんから聞いただけですので、今の塚田局長のお話を信じたいと思いますが、入国カードに本来要求されていない記載を彼の方がしたということで不審を持たれたという点では若干やむを得ない部分があったのかなとも思います。
 ただ、エイズウイルス感染者あるいは患者の方たちは、何らかの思いを持ってそういうような意思表示をしていると思いますので、こういう対応があった場合に、入国審査の現場で彼らに誤解を与えないような対応をぜひしていただきたいというふうに思います。この点はよろしくお願いいたします。
 六月三日の当委員会におきまして、自民党の斉藤先生、また我が党の大口議員からも質問がございましたが、八月に横浜で国際エイズ会議が開かれ、ただいまお話ししましたペドラサさんと同じような感染者が多数来日する予定であります。そ
の際にまたペドラサさんと同じような事態が発生しないように、この点は重ねて入管当局によろしくお願いいたしたいと思います。
 ペドラサさんは日本に来ていろいろな会合に出られまして、新聞社のインタビュー等にも応じられております。五月三十一日付の東京新聞に彼の発言が載っております。若干紹介させていただきたいと思います。「横浜国際エイズ会議は」「日本の会議というより世界の人たちのための会議だ。そのドアを閉めるというなら、何のための会議だろう。もう一つ、売春問題はエイズ問題の中心にあるということ。セックス・ワーカーも麻薬中毒者もエイズが無知と貧困を襲うという意味では、その道の専門家だ。ぼくらが横浜に行くのは、セックスをしたり病気をうつしに行くのではない。友情と教育と命を共有するために行くのだ」このように記事に掲載されておりました。ペドラサさんは私にもこのような御自身の気持ちを真摯に訴えられておりました。この言葉をぜひ法務当局にもしっかりと受けとめてもらいたいと思います。
 本来なら大臣にお伺いしたがったのですが、予算委員会の審議ということで、牧野次官にこの点についてどう思われるか御所見を伺いたいと思います。次官は、就任のごあいさつで、学生時代国際法を勉強されたというふうに言われておりましたので、その感覚からぜひ所見をお伺いできればと思います。よろしくお願いします。
○牧野(聖)政府委員 ただいまの委員の御質問にお答えさせていただきます。
 入国管理体制の中でエイズの感染者であるがゆえに差別があるのかどうか、そういう御趣旨ではなかろうかと思います。先ほどと答弁が若干重複する点があろうかと思いますが、お答えをさせていただきたいと思います。
 出入国管理及び難民認定法におきましては、HIV感染者であることのみをもって上陸拒否事由としているわけではございません。HIVに感染している者でかつ多数の者にその病原体を感染させるおそれがある者についてのみ、公衆衛生上の利益を確保するとの観点から、上陸を拒否することとしているものでありまして、これはあくまでもHIV感染を理由とする差別ではない、こう思っておりますので、この趣旨を大切にしてまいりたい、こういうふうに思っております。
○富田委員 ありがとうございました。
 実は、昨年十月二十七日に開かれました当委員会におきまして、私は、この国際エイズ会議における売春従事者の入国問題について質問いたしました。その際、塚田局長から、まだ態様、規模がはっきりしておらない、もう少し事情が判明したら検討するというような御回答をいただきました。六月三日の当委員会における大臣のお話では、エイズ会議については、事務局同士で積み重ねて、十分話を聞いて対応したい、またできる限りバックアップもしていきたいというような御趣旨の発言をされたと記憶しております。
 ところが、六月八日付の朝日新聞に「法務省エイズ会議後援断る」との記事が載っておりました。その記事の中で、入国管理局坂中審判課長のお話としまして「「エイズ会議は意義深いものと考えているが、本省が後援するかどうかは別問題。会議には売春関係者らが相当数入ってくるのが予想されるが、世間などから『後援しているのに入国を拒否するなんて』とか『後援者なんだから、審査に目をつぶって』とも言われかねず、トラブルのもと。審査にフリーハンドでいたいから、お断りした」」と伝えられています。
 後援を断ったという事実並びにこの記事の中に掲載されております坂中審判課長の話というのは事実なんでしょうか。
○塚田(千)政府委員 まず、後援名義の件でございます。
 昨年の終わりの方だったと思いますけれども、後援名義の貸与の話がございまして、これは私どもも慎重に検討した結果、後援者として名前を連ねることはお断り申し上げました。厚生省に御連絡申し上げました。
 理由は、会議の意義を軽視するとか低く見るとか重んじないというようなことでは毛頭ございませんで、会議の重要性はわかっておりますけれども、それと入国管理の問題は別ということで、適正な入国管理を行う上では、むしろ後援名義はお断りした方がよいのではないかという判断で行ったものでございます。
 課長が新聞インタビューに対しましてそのような趣旨でおおむね対応したということは、私も後刻報告を受けて承知しております。
○富田委員 今のはちょっとおかしいのじゃないかと思うのですね。国際エイズ会議を法務省が後援するかどうかというのは、エイズ会議の重要性または法務省後援の意義、必要性等を勘案して決定すべきではないのかと私自身は思います。
 また、細川前総理大臣も、本年三月四日の施政方針演説の中でこのように言われております。「エイズ対策については、拠点病院の整備や治療薬等の研究開発など医療体制の充実に努めるとともに、本年我が国で開催される国際エイズ会議の支援など世界のエイズ対策への貢献に努めてまいります。」こう述べているわけであります。前総理大臣でありますけれども、現在の羽田内閣も細川総理の改革政権を引き継いでいくということなんですから、この施政方針演説の趣旨は生きていると思うのですね。この演説について、法務省はどういうふうに受けとめているのでしょうか。
○塚田(千)政府委員 今回の第十回の国際エイズ会議はアジアで初めて開催されると私どもも承知しておりまして、先ほど申し上げましたとおり、学術上、医学上の会議が有する意義、会議の開催というものが意義深いということについては、我々も当然そのような認識でございます。
 ただ、後援名義との関係で申し上げますれば、繰り返しになりますけれども、私どもは、会議本来の趣旨、会議のメーンのと言うと語弊があるかもしれませんけれども、会議本来の趣旨には賛成でございますけれども、出入国管理上微妙な問題が含まれているのも事実でございますので、適正、公正な入国管理を行うためには、後援名義をお断りした方がフェアではないかと考えまして、そのような措置をとらせていただいたわけでございますので、御理解賜りたいと存じます。
○富田委員 微妙な問題というのもわからないわけではないのですが、実は、先ほどのペドラサさんと一緒にジュリー・ドーフさんという女性の方も陳情に見えました。この方がこのように言っております。
エイズ問題は人の権利をどう保護していくかに尽きます。人権を話し合う国際会議が開かれる意義をみんなで考えてほしい。開催国の日本がエイズ予防のリーダーになることを期待しています。
 ただ、感染者らの入国を保証する明確な表明が、日本政府から出されていないのが気がかりです。そういう障壁は感染者らに対する偏見を増長することになることを分かってほしい。会議は人が性的行動について誠実に語り合える場。語り合うことがエイズ予防につながるのです。
こういうふうにジュリー・ドーフさんは私に言っておりました。またこれは、六月八日の朝日新聞の夕刊にも、彼女は同じようにインタビューに答えて、掲載されておりました。
 人権擁護を訴える立場にある法務当局が、心して聞く言葉だと私は思います。入国管理の関係で微妙な問題があるというのも十分理解できますが、このような彼ら、また彼女らの言葉をぜひしっかりと受けとめていただきたいと希望いたします。
 具体的に、この会議に関しまして、法務大臣の特別許可を申請されているような事案がございますか。この点だけ、ちょっと確認させてください。
○塚田(千)政府委員 査証の申請というような形で具体的に出てきているものはまだございません。ただ、こういうケースはどうだろうかというのでサウンドがあった件はございます。それにつ
きましては、私ども御相談に乗りまして、私どもの感触はお伝えしてございます。
○富田委員 ありがとうございます。具体的な申請があった場合には、ぜひ国際エイズ会議の意味を十分しんしゃくされて対応されるよう希望いたします。
 次に、また入管の業務に関係するのかもしれませんが、一点、確認したい点があります。
 本年三月に、中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律が成立いたしました。これは議員立法で成立したわけでございます。同法の十三条二項に「国は、中国残留邦人等が一時帰国する場合には、当核中国残留邦人等並びに前項に規定する当該親族等及び当該介護人が出入国管理及び難民認定法その他出入国に関する法令の規定に基づき円滑に帰国し又は入国することができるよう特別の配慮をするものとする。」との規定がございます。この「特別の配慮」というのは、具体的に何を意味するのでしょうか、お教え願いたいと思います。
○塚田(千)政府委員 お答えいたします。
 中国残留邦人が日本へお帰りになるときは、日本人でございますので、入管法上は特別保証人とか身元を保証する人とか、そういうたぐいの者は一切必要でございません。帰国いただいて入国手続を済ます上では何ら問題はございません。今言及のございました特別身元引受人制度、特に議員立法で入れられておるこの制度は、実際は厚生省で実施している制度だと思いまして、私どもが理解している限りでは、日本にお帰りになった方は今まで遠いところに別の生活をしておられたわけでございますから、何かと相談相手や頼る人がいないと不便だろうということで、こういう制度といいますか、人を想定していると理解しております。したがって、帰国していただく入国管理上の要件といいますか、そういう意味では、全く問題はございません。
○富田委員 厚生省が管轄をしているというお話でしたが、この特別身元引受人制度を改善して運用面で帰国しやすくしていくんだというのが、この法律の趣旨でございますか。そのようにお聞きしてよろしいですか。
○塚田(千)政府委員 先ほど申し上げましたとおり、これらの方々が日本へお帰りいただく上では入国管理法上必要なものは何もないわけでございます。したがいまして、我々から見れば、この身元引受人云々というのは入国の問題ではなくてむしろ入国後国内でリハビリテーションというのでしょうか、円滑な生活をしていただく上での大事な制度ではなかろうか、入国上は必要ない、必要ないといいますか、関係ないと理解しております。
○富田委員 わかりました。
 それでは、最後になりますが、成年後見法、成年後見制度について法務省の見解をお伺いしたいと思います。
 実は、私が弁護士として担当した事件で成年後見法の必要性を痛感したことがございました。私が住んでいた地域にいらっしゃいましたひとり暮らしのおばあちゃんなのですが、この方が突然何千万かの遺産を相続することになりました。おばあちゃんは何が何だかわからずに、近所の知り合いの方に相談されました。ここで問題が起こりました。この相談を受けた方がおばあちゃんから遺産相続に関する交渉権、また相続した財産の管理権、それからおばあちゃんが亡くなった後の一切の処理を任せる、そういう権限まで記載した委任状をとってしまったわけであります。おばあちゃんはこの委任状の意味が全く理解できていませんでした。たまたまこのおばあちゃんの家を訪ねた別の方が、この委任状のもとになりました原稿をおばあちゃんが所持しておりまして、これを見てびっくりしたわけであります。おばあちゃんに委任状の原稿を見せて、その原稿どおりに相談を受けた方が書かせていたわけであります。
 その後、この遺産相続の件は、私が実際に弁護士として担当するようになりまして無事解決いたしましたが、その経過の中で、このおばあちゃんがいわゆる健忘性痴呆の状態になっていたことが判明いたしました。遺産分割が無事終了してかなりの金額をおばあちゃんが取得したわけですけれども、せっかく遺産を受けられたのに、健忘性痴呆がどんどん進行していきまして、私がお話ししても、その場その場で説明すると本当に納得されたような感じを受ける、話していることもしっかり理解しているなという対応をされるわけですが、ところが、翌日になると前日話したことを全部忘れてしまっている。私がお渡ししました預金通帳のコピーを見て、なぜ自分がこんなお金を持っているんだ、意味がわからないということで、私の事務所やあるいは私を紹介してくださったその御近所の方の家に一日に何十回も電話をかけてこられました。ただ、普通の生活はもう何の支障もなくされるのです。
 こんな生活が何カ月か続いた後に、いろいろな方の御協力をいただきまして、地元の特別養護老人ホームにこのおばあちゃんは入居することができました。私もやっと自分の仕事が終わったかなと思って安心しておりましたら、またここで新たな問題が発生いたしました。
 入居時にはおばあちゃんの健忘性痴呆はかなり進んでおりまして、預金とか、年金が入ってきます、年金等の管理を一体だれがするのだというような問題がまた発生したわけであります。施設の方は、こういう財産管理の面をすべて面倒見るわけにはいかないと。本来なら施設長がやっていただければいいのですけれども、いろいろまたトラブルが起きて問題にされても困るということで、なかなか承諾していただけませんでした。年金の方の管理だけ何とかお願いしまして、財産関係については私の事務所の方で引き続き弁護士としてやらせていただくというようにして、現在行っているのですが、このおばあちゃんの例に見られますように、痴呆性の高齢者の数が、厚生省のデータによりますと昭和六十年で八十万人、平成二年で百万人、平成十五年には百五十万人になるのではないかというふうに予想されております。また、現在日本には知的障害者が推計で三十八万五千人いるとも言われております。この方たちの権利擁護をどう図っていくべきかが大変問題なわけであります。現行民法で規定されております禁治産宣告等の後見制度ではカバーし切れない問題が、これまでに例のないスピードで進む少子高齢化社会の中で発生してきたわけであります。
 このような問題の解決に向けて、法制審議会において成年後見法の検討に入った旨の新聞報道が先日なされておりました。法制審議会におきましてはどのような問題意識またどのような方向性で検討を行っているのでしょうか、差し支えない範囲でお聞かせ願えればと思います。
○森脇政府委員 成年後見制度についての法制審議会での検討状況いかんという御質問でございますが、法制審議会の民法部会におきましては、先生御承知のとおり、現在選択的夫婦別氏制度の導入の可否を含む身分法の改正問題に鋭意審議を進めているところでございますが、成年後見制度の問題については、この審議の過程で将来の検討問題として話題になったことがございます。高齢化社会を迎えるに当たっての重要な検討課題の一つであるという認識が持たれているところでございます。
 事務当局であります私どもとしても、この問題について強い関心を抱いているところでございまして、今後老齢化社会がますます進展していく、そういたしますと、今先生から御説明を受けましたような事例というものもふえていくであろうということも踏まえまして、今後どのような取り扱いをするかという点を含めまして十分に検討してまいりたいというように考えておるところでございます。
○富田委員 まだ余り具体的な検討に入っていないという感じのようですが、厚生省の方では痴呆性老人の財産等保護研究会というのを設けまして、そこで痴呆性老人が残された能力を生かして自身の生き方を選べる自己決定権を尊重すべきだ、その上で痴呆になった場合に財産を管理する
代理人をあらかじめ決める制度、あるいは裁判所が痴呆の程度によらず世話人をつけて本人と相談しながら財産管理や契約を行う制度の確立が必要というふうにこの研究会では指摘がされております。またさらに、老人ホームなどの施設と都道府県ごとに法律、医療、福祉などの専門家で構成される痴呆性高齢者等財産保護委員会を第三者機関として設置、財産管理などについて報告を受け、問題があれば調査し、また告発等も検討する、さらに財産管理を含めた福祉行政に問題がないか調査、勧告するオンブズマン制度の導入をも提言しているというふうな新聞報道もなされておりました。法務省の方としては、この研究会との連携とかあるいはこの研究会の提言をしっかり参考にして具体的に検討していく予定はあるのでしょうか。
○森脇政府委員 厚生省等でこの老人問題と申しますか、高齢化社会に対応する問題につきまして種々の検討会が催されておる、またその一部については私どもも参加する形での検討が持たれておるというところでございまして、先生の御指摘は十分承知いたしておるところでございますので、私どもとしても、民法の立場から、早期に適切な対応ということを念頭に置きながら検討してまいりたいというように考えておるところでございます。
○富田委員 通告をしていなかったのですが、一分ほど時間がありますので、できましたら牧野政務次官、この成年後見法あるいは成年後見制度について、御自分の体験等を踏まえてもしお考えがありましたら、ぜひお聞かせ願いたいと思います。
○牧野(聖)政府委員 大変重要なことでございますので、先生の質問の中で主張されます。その趣旨をこれから誠意を持って検討しながら進めていきたい、こういうふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。
○富田委員 ありがとうございました。これで私の質問を終わります。
○山本(有)委員長代理 土田龍司君。
○土田委員 新生党の土田でございます。きょうは、法務大臣にかわって牧野政務次官がお見えでございますので、余り眠くならないような意味も含めて、二つ三つ御質問させていただきたいと思います。
 大変重要な法務政務次官に御就任されたわけですけれども、特にどんな点を注意して職務を行っていらっしゃいますでしょうか。
○牧野(聖)政府委員 お答えをさせていただきます。
 法務行政の趣旨は、現行法の法体系の法秩序を維持しながら国民の安全を守る、このことに尽きると思いますが、非常に時代もテンポも速く進展をしております。社会、時代の動向に合わせて即応できる、そういう体制を考えながら法務行政の推進に努めていきたい、そんなことを念頭に置きまして大臣の補佐を務めていこうと考えております。
○土田委員 ついでにもう一つお願いしたいのですが、サッカーのワールドカップを招致しようという話が盛り上がっているときに、入国管理の問題が非常にネックになるのだそうですね。前回、イタリアでワールドカップが行われた際には、二百五十万人の観客が見に来た。入国に際して、選手とか役員は当然のこととして、観客も無条件で受け入れなさいというような条件がついているわけですけれども、そうなると、日本においては、ワールドカップを招致するということは、非常にというか極めて困難な状況になってくると思うのですが、国民の中には、それでもやはり日本でワールドカップをやろう、やりたいという気持ちがあるように私は思っています。アメリカにおいては特例措置でもってこれをクリアしたわけですけれども、何としても日本にワールドカップを招致するに当たってこの入国管理をクリアしてほしいと私も思うのですが、その件について所見をお伺いしたいと思います。
○牧野(聖)政府委員 お答えをさせていただきます。
 私も住まいは静岡市でございますので、サッカー王国でございますから、そのことに対する大勢の皆さんの期待が高まっているということは十分承知しておりますが、現行法の法律の中では、先ほど法務省の出した見解で仕方がなかろう、こういうふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○土田委員 それでは、外弁法の改正法案について、これからちょっと本題に入ってまいりたいと思います。
 きょう、私を含めて、全部で七人の方が質問をされるのですが、私を除いて、皆さん弁護士なのですね。法律の専門家でいらっしゃって、私だけが法律はほとんど知らない人間でございます。一生懸命勉強してまいりましたし、いろいろ問題点についても事前に法務省に問い合わせもしたのですが、どうしてもやはり聞いておきたいという点について何点か御質問させていただきます。重複する点が多分あろうかと思いますが、確認も含めて、ひとつお答えを願いたいと思います。
 現行の外国弁護士受け入れ制度については、そもそもアメリカが、昭和五十七年に、外国弁護士受け入れ問題をサービス産業の自由化の観点から貿易摩擦問題の一環として取り上げてきたわけですけれども、そのため、日米の政府間協議の問題に発展し、さらにECが、昭和五十九年に、アメリカ同様、外国弁護士受け入れ制度を設けることを要望したために、日本とEC間においても政府間協議の問題に発展、その後、我が国政府が、アメリカ政府及びECと長年にわたって折衝を行った結果、昭和六十一年五月に公布、六十二年四月に施行というのが現行の外弁法であると理解しております。
 ところが、現行外弁法施行後も、アメリカやECから外国弁護士受け入れ制度に関する規制緩和の要望があったわけです。いわゆる第二次外国弁護士問題として、今日、大きく取り上げられるようになったと承知をしているわけでございます。
 そこで、現行の外弁法施行後の外国弁護士問題に対する法務省の取り組みについて、その概要についてまず御説明をお願いしたいと思います。
○永井(紀)政府委員 お答え申し上げます。
 ただいまお話がございましたとおり、昭和六十二年四月に施行されましたいわゆる外弁法によりまして、外国弁護士が我が国において外国法事務弁護士として母国の法律等に関する法律事務を取り扱う道が開かれたわけでございますが、その後、今もお話がありましたとおり、アメリカ及びECからこの制度に関する規制緩和要求がされまして、法務省では、日弁連と十分意思疎通を図りながら、これらの外国との協議を重ねてまいりました。
 その後、臨時行政改革推進審議会いわゆる行革審の世界の中の日本部会におきまして、外国弁護士問題が取り上げられまして、平成四年五月に至りまして同部会の報告、及び六月の内閣総理大臣に対する行革審第三次答申におきまして、「政府は、日本弁護士連合会の自主性を尊重する一方、」「主体性をもって本問題の解決に向けて努力すべきである。そのため、広く国民各層・関係各界の意見を反映し得る開かれた公式の場を早急に設け、結論を得るように努める。」という旨の提言がまとめられたわけでございます。
 そこで、法務省は、日弁連と共催で、先ほども申し上げましたが、有識者を中心といたします外国弁護士問題研究会を発足させたわけでございまして、この研究会は、平成四年九月から平成五年、昨年の九月まで計十七回にわたりまして会議が開催されまして、九月三十日に、法務大臣及び日弁連会長に報告書が提出されました。法務省は、その後、報告書に書かれました研究成果を踏まえまして、日弁連の自主性を尊重いたしまして、日弁連と外弁受け入れ制度の改善に向けた協議を実施してまいったわけでございます。
 その結果、日弁連は、ことしの二月十七日、外国弁護士受け入れ制度における規制緩和を目的とした「外弁法改正に関する制度要綱」というものを
策定されまして、日弁連会長から法務大臣に対しまして、この制度要綱に基づきまして現行外弁法の改正を行ってほしいとの要望が参ったわけでございます。
 そこで、法務省といたしましては、日弁連の自主性を尊重しつつ、制度要綱の内容を検討した上立案作業を行いまして、今回、この改正法案が国会に提出された、こういう経緯になっております。
○土田委員 本法律案を作成するに当たって、日本弁護士連合会が作成した「外弁法改正に関する制度要綱」を尊重したと理解しておるわけですが、日弁連の制度要綱には書かれてはいるものの本法律案には書かれていないことも幾つかあるように思われるわけです。
 そこで、その点も踏まえて、日弁連の制度要綱と本法律案の関係について御説明をお願いしたいと思います。
○永井(紀)政府委員 日弁連の制度要綱というものは、先ほども言いましたとおり、二月十七日に当時の日弁連阿部三郎会長から当時の法務大臣三ケ月章大臣あてに出されたわけでございますが、これ自体は完全に法案の形ではございませんで、こういう趣旨で改正をしていただきたいという文言になっております。
 この制度要綱の中には、この制度改正はなぜ必要なのかとか、あるいはこういうふうに法案を改正するときには定員規定を置いたらどうだろうかとか、抽象的な文言その他いろいろございました。私どもあくまで、これは内閣法制局とも相談いたしまして、この制度要綱に基づいてこれを忠実に法案にした場合どういう形になるだろうかという技術的な立法技術の観点からの整理はいたしましてこの改正法案になったわけでございまして、趣旨は、細かいいろいろな点は幾つか、要するに落ちている点がございます。
 例えば、日弁連のこの制度要綱におきましては、こういう定員規定を置いたらどうかというような案につきましては、これは立法技術の問題でして、無理に置かなくてもこういうふうに書けますよということ、あるいは弁護士事務所の独立という表現を使ったらどうかというような議論がございました。これも現在の弁護士法あるいは外弁法では事務所という概念で主体をあらわす表現になっていないものですから、これはもっと別の形で、いわゆる日弁連がおっしゃっている弁護士の独立という問題についてはうまい表現の仕方を考えようじゃないかと。といいますのは、事務所というのは、この弁護士法のもとではあくまで物理的な部屋という意味での事務所という使い方をされているものですから、ちょっと事務所という用語は立法技術上ここにはなかなか置きにくい、しかし、その趣旨を十分表現する方法はいろいろあるのではないかということで、そういったところが少し違ってきております。ほとんど中身は趣旨を十分生かしたつもりでございます。
○土田委員 今回の第二次外国弁護士問題について、アメリカ及びECの要望はどのような点にあったのかについて、簡単に説明をお願いしたいと思います。
 また、本法律案においては、このようなアメリカ及びEUからの要望に対してどのように対応しているのかについても説明をお願いしたいと思います。
○永井(紀)政府委員 改めて整理をいたしまして御答弁申し上げたいと思います。
 アメリカ及び当時のECでございますが、平成元年から先ほども申し上げましたとおり我が国の外弁受け入れ制度に関する要求を行ってきたわけでございますが、アメリカからの要求は次の五点ございました。
 一つは、外国法事務弁護士と弁護士との共同経営を許してほしいということ。第二番目は、外国法事務弁護士による弁護士の雇用、雇うことを許してほしい。それから第三番目には、法務大臣の承認の基準である五年の職務経験期間に、日本において弁護士または外国法事務弁護士に雇用されて母国法に関する知識に基づいて労務を提供していた期間を算入してほしいということ。それから四番目は、原資格国において、すなわち母国において所属するローファームの名称を外国法事務弁護士事務所の名称として直接使用することを許してほしいということ。それから五番目に、国際仲裁手続において仲裁の当事者の代理人となることを許容してほしい、こういう五つの点がございました。
 実はECもほぼこれに似た要求でございました。ただECは、五年の職務経験期間、これを全廃してほしい、そういうところが大きく違っておりました。
 なお、細かい点も若干あったのですが、その点は省略させていただきますが、大体五点でございました。
 そこで、今回の改正法案につきましては、第一点目の外弁と日本弁護士との共同経営については、非常に限られた限度ではありますが、特定共同事業ということで部分的にこれを認める、そういうことで対応しております。
 それから第二番目に外国法事務弁護士が日本の弁護士を雇用する、雇うということ、これは絶対だめですよということで、これは改正に含まれておりません。この点については、現行法の規定と同様に日本の弁護士の雇用は許しませんということで対応しております。
 それから三番目の五年の職務経験期間でございますが、これはアメリカも要求しておりましたとおり、我が国において日本の弁護士あるいは外弁に雇われて日本で働いていた期間は二年間に限ってこれを算入いたしましょう、これはそれなりの意味がある、許容してもいいのではないかということで、これは認めましょうと。
 それから第四番目に、母国におきまして所属していましたローファームの名称を直接外国法事務弁護士事務所の名称として使用するということも、これも許していいのではないか、そういう結果になっております。
 第五番目の国際仲裁手続において仲裁の当事者の代理人となることを許容するという、この点につきましては、まだこの法案の段階では回答が出ておりません。これはなおペンディングということになっております。
 いずれもこれらの対応は、先ほど申し上げましたとおり、法曹関係者のみならず国民各層から来ていただいた外国弁護士問題研究会の結論に従ったものでございまして、さらにその外国弁護士問題研究会の報告と、日弁連がそれに基づいて策定されました先ほどの制度要綱に基づいているものでございます。
○土田委員 大体わかりました。
 本法律案が第二次外国弁護士問題を解決するということが非常に重要な目的となっているわけですが、そこで、先ほどもちょっと話は出ていましたけれども、外国弁護士問題を解決するということに熱心になる余りに、諸外国、特にアメリカの圧力に屈したのじゃないか、国益を無視してこの法律案が策定されたものではないかという疑問がどうしてもやはり残るわけでして、同じように第三次、第四次外国弁護士問題が出てくるたびに、この法律にかかわらずほかのことでもたびたびそういった圧力によって法改正を迫られるということが、どうしてもやはり心配されることじゃないかと思っているのです。そこで、これらの点について法務省がどのように考えているのか、もう一度ひとつ御答弁をお願いしたいと思います。
○永井(紀)政府委員 この今回の改正法案は、先ほど来御説明申し上げておりますとおり、我が国の主体性に基づいて外国弁護士受け入れ制度のあり方等につきまして十分研究、検討いたした上で作成したものでございまして、諸外国の圧力に屈した結果作成したものではございません。内容的にも必ずしも諸外国の要求に合わせたものとなっておりません。しかも、それを決定したのは、いわば国民各層の代表者に来ていただきましていろいろ研究していただきましたもので、ある面では、いわゆる外国弁護士問題研究会の報告書は、現時点において、私ども法務省、日弁連に対して
も一つの指針になっているものであろうと理解しております。
 この法案は、そういった意味で、最近における弁護士業務を取り巻く国際的環境の変化等にかんがみまして、また日弁連の自主的な判断のもとに法改正の必要があるとされた結果作成されたものでございまして、今後も弁護士業務を取り巻く国際的な環境の変化等に対応しながら、我が国の外国弁護士受け入れ制度を国際的にも国内的にも妥当な制度としていきたいと考えております。
 しかし、その場合におきましても、諸外国の圧力に単に屈して法改正がされる、こういうことがあってはならないことは当然である、このように考えております。
○土田委員 わかりました。
 先ほど話が出ました外国弁護士問題研究会の報告書の提言内容は尊重されているということですけれども、本法案にあらわれていない国際仲裁代理問題について、先ほどペンディングになっているというお話でしたけれども、この問題については、現在どのように具体的に取り組んでいらっしゃるのか、その辺についてお話し願いたいと思います。
○永井(紀)政府委員 外国弁護士問題研究会の報告書では、次のように提言をしております。「国際商事仲裁における代理の問題については、一層の自由化に向けて制度を改正する方向で、今後速やかに関係各機関との連携の下に鋭意検討を進めていくこと」、こういう提言がされているわけでございます。
 この外国弁護士問題研究会自体は、広く国民各層、関係各界に開かれた研究の場ということで、いわゆる仲裁あるいはさらに技術的な仲裁代理といったことについて、必ずしも造詣が深くない方もいらっしゃったものでございますから、特に弁護士法との関係もまたこれありということで、具体的な制度改正の内容に至るまでの提言がされなかったものと理解しております。
 そこで、法務省といたしましては、日弁連とも早速緊密な協議をいたしまして、その報告書の内容を尊重いたしまして、我が国における国際仲裁代理のあり方というものを研究するために、仲裁について経験の深い方々を中心といたしまして国際仲裁代理研究会を発足させようという結論に達しました。それで早速、と申しましても今月の六月一日に第一回の研究会が発足いたしました。これは現在、国際商事仲裁の充実発展のために調査等をされております国際商事仲裁システム高度化研究会というものがございますが、そういう研究会やあるいは社団法人の国際商事仲裁協会といったものとも連携を密にしながら、こういう関係者の方にも来ていただいて研究会を発足させました。なお座長は、中央大学の小島武司教授になっていただいております。
 今後、この研究会におきましては、月一回ぐらいの頻度で会議を開きまして、諸外国の制度についても研究しながら、国際仲裁代理についての具体的な自由化の内容なども含んだ検討を進めていく予定でございまして、弁護士の先生方もたくさん見えておりまして、今後どのような結論になるかはまだ発足したところでございますので何とも言えませんが、日弁連も前向きに取り組んでいただいている、こういう段階でございます。
○土田委員 現在、日弁連に登録している外国法事務弁護士の数は約八十人ということでございますが、比較的少ない数にとまっているように思います。その原因の一つとしては、現行外弁法の厳格な相互主義の要件、これを満たすことのできない外国が多いために、それがその歯どめの役割を果たしていると考えられるわけでございます。
 そこで、今回の法改正によって厳格な相互主義を緩和することとなりますと、その歯どめがなくなり、その結果、言葉は悪いのですが、質のよくない多数の外国弁護士が外国法事務弁護士となって我が国において活動するということが出てくるんじゃないかという心配をするわけです。
 相互主義の緩和については、そもそも日弁連が決議したことではありますけれども、法務省では、今述べましたような弊害が生じるのではないか、こういう心配についてはどのようにお考えになっておりますか。
○永井(紀)政府委員 委員御指摘のとおり、厳格な相互主義を適用していることによって外国弁護士の受け入れ制度を持っていない国の弁護士さんが日本に来ていない、これを緩めることによってそういう方々が入ってくるのではないかということでございますが、質がいいかどうかという問題は別にいたしまして、現在相互主義の関係で入っていらっしゃらない国の弁護士さんが入ってくるという可能性はあると思います。
 ただ問題は、じゃ、質の悪い人が入ってくるのかどうかということでございまして、これは無制限に入れているわけでございませんで、まず法務大臣の承認ということで、その承認要件では、向こうで日本の弁護士と同等の資格のある弁護士としての職業を持っていた人なのかどうか、そこで五年間以上働いていたことがあるのかどうか、そしてまた日本において、これは外弁法にも規定があるのですが、日本に来た場合、「誠実に職務を遂行する意思並びに適正かつ確実に職務を遂行するための計画、住居及び財産的基礎を有するとともに、依頼者に与えた損害を賠償する能力を有する」かどうか、こういう要件も必要になっているわけでございまして、ただ弁護士資格があるから漫然とさっと入れるというものではないわけでございます。しかも、これにつきましては弁護士会の意見も十分聞き、その上で法務大臣の承認ということになっているわけでございます。
 結局、外国において法律事務を行うことを職務とする者で弁護士に相当する者ということでございますので、日本の弁護士と同等のそういう資質、能力を持っているかどうかということの判定はやはりしていくということになっておりますので、直ちにいいかげんな方が入ってくるということにはならない、かように思っております。
○土田委員 先ほどの答弁の中の三番目、承認要件の職務経験の件ですね。規制緩和するに当たって、本法律案のように、我が国における経験を二年を限度として職務経験年数に算入するという方法も一つ方法であると思うのですが、思い切って職務経験をなくし、または、五年でなくて四年あるいは三年に短縮する方法もあると思うのですね。どうして今回は法改正に当たって、職務経験の要件を廃止したり、年数を短縮するという方法をとらなかったのでしょうか。
○永井(紀)政府委員 この点は、先ほど申し上げました外国弁護士問題研究会においても随分議論がありました。結論的には、やはり五年の職務経験年数は維持した方がよろしいという結論になっております。ただ、日本でトレーニーという形で日本の弁護士または外国法事務弁護士、いずれも日弁連に登録された方の指導のもとで働いた経験がある期間は、二年は算入してあげましょう、そういう部分的な規制緩和にとどめるという結論になったわけでございます。
 なぜこういう議論になったかといいますと、実は外国弁護士の受け入れ制度というものは、基本的なことを考えますと、要するに日本で司法試験等を受けないで、日本の資格は取らなくても、外国で要するに資格を持っていれば、一定の要件のもとに日本でその母国法について業務が行える、こういう例外的なものだというふうに理解されるわけでございます。すなわち、日本で改めて試験をするとかなんかだったらまだ許せるわけですね、それで判定できるわけです。こういう制度なものですから、確かに外国で弁護士としての資格が認められているのならば、そう間違いないだろう、そこまでは言える、だろう。
 ただ、議論になりましたのは、なぜ五年間要求するかといいますと、単に能力があるというだけではなくて、やはり弁護士として、外国においても弁護士倫理というのがありまして、そこにおいて仕事の上でのトラブルを起こしたり、あるいは懲戒処分を受けるような、そういう倫理的な資質といいますか、そういう面も十分備えていてほしい、そういうことは要求していいんじゃないかと
いうことから、やはり母国において五年間まずまず仕事を全うしてきた人間ならある程度安心できるだろう、そういう感覚でございまして、これは前にもお答えしたこともあるかもしれませんが、この五年というのは、実はアメリカのニューヨーク州がこれを維持しているものですから、大体アメリカは五年という州が結構あるわけでございまして、そういう関係で、やはり外弁研、外国弁護士問題研究会においてもいろいろ議論がありましたが、やはりそれは要求していいんだろう、こういう結論になっているということでございます。
○土田委員 その次には、雇用の問題なんですね。
 我が国においては、外国法事務弁護士が弁護士を雇用することを全面的に禁止しているわけですが、外国弁護士受け入れ制度を有している外国において、外国弁護士が地元の弁護士を雇用することを禁止している国が、禁止している例があるんでしょうか。また逆に、外国弁護士が地元の弁護士を雇用することを禁止していない国があるのかどうか。外国の実情にかんがみて、我が国において外国法事務弁護士が弁護士を雇用することを全面的に禁止する、こういうことが国際的に通用する妥当なものと言えるかどうか。その辺をひとつ御答弁願いたいと思います。
○永井(紀)政府委員 外国弁護士が地元の弁護士を雇用することができるかどうかということにつきましては、まず外国の、私どもわかる範囲でちょっと調べてみましたところ、禁止している国は、ベルギーが全面的に禁止しております。それから、カナダにおいては、オンタリオ州においては禁止されております。それから、カナダのブリティッシュコロンビア州におきましては、外弁がその州の弁護士を雇用することは認められておりますが、雇われた弁護士は、その雇い主の外弁さんの範囲に対してのみ助言が可能で、いわゆる一人前の弁護士としての活動はできない、こういう制限があるわけです。だから、雇うことはできても、一人前の地元の弁護士でありながら、いわゆる一人前の弁護士としての活動はできない、こういう規制がかかっております。それから、オーストラリアにおきましては、ニューサウスウェールズ州におきまして弁護士の雇用は禁止されております。また、香港においても禁止されております。
 禁止していない国は、ドイツとオランダでございます。それから、アメリカにおいても、ニューヨーク州、カリフォルニア州等においては雇用が禁止されていません。許容されております。
 非常にわかりにくいのは実はイギリスでございまして、これもカナダに似ているんでございますが、外国弁護士が、バリスター、いわゆる法廷弁護士と訳しておりますが、ソリシター、事務弁護士という二つに種類が分かれておりますが、地元のいわゆる弁護士の雇用は認められているんですが、これも、雇用された地元の弁護士は、一人前の自分の地元の弁護士として何でもできるはずだけれども、それが制限されてくるという、そういう限度がございます。それから、フランスにおきましては、実は、一九九二年一月から外国弁護士を外国弁護士としての資格のままで受け入れるという制度をなくしております。したがいまして、外国弁護士がフランスで弁護士的な業務をやろうとするならば、フランスの試験を受けなきゃいけない、こういうことになっております。ただ、これは私ども、まだ正確に知っておりませんが、試験も最近なされたそうでございますが、日本の例えば司法試験と同じ難しさで、例えば現地の司法試験と同じ難しさでやるのではなくて、少し簡易な試験を課しているんじゃないか、こういうようなことを聞いております。したがいまして、フランスなんかでは、外国弁護士という観念をなくして、全部フランスの弁護士だ、そういう行動で動くものですから、雇用はできるといえばできるという結果になるんだ、こういうふうに思っております。
 したがいまして、こういう世界の体制を見ますと、必ずしもどれが大勢かということは言えないんじゃないか、むしろやはり禁止している国は少なくはありませんし、また、一見許していても、相当制約された形でしか許してない、そういう感じがございます。
 現在、現行法でも、今度の改正法でも外国法事務弁護士が弁護士を雇用することを禁止していることの趣旨そのものは、やはりこういう外弁に日本弁護士の雇用を認めますと、自己の収益の増大を図るために、日本の弁護士に対して雇用主としての指揮監督権を行使することによりまして、外国法事務弁護士が実質的に日本法の処理に介入することが現時点でも予想されるではないか、雇用の禁止はやはり維持すべきである、こういう結論で、外国弁護士問題研究会もそういう結論にした、そういう経緯がございます。
○土田委員 わかりました。
 共同事業の件ですね。共同事業を一部許容することにしたわけですけれども、これは、今回の法改正の最大の目玉と言われておるわけです。その根拠条文である第四十九条の二第一項が、共同事業の対象とすることのできる法律事務を一定の範囲のもの、すなわち、第四十九条の二第一項各号に掲げられている法律事務以外の法律事務に限定しているのはなぜでございましょうか。
○永井(紀)政府委員 今回の法改正によりまして、日本の弁護士と外国法事務弁護士との共同事業の禁止という点を一部解除することといたしましたのは、共同の事業を一部でも許容することが利用者の利便等に資するからである、そういうニーズが強いという点が一つございます。したがいまして、特段の弊害の生じるおそれがない限り、共同事業を許容するのが相当であると考えられたわけでございます。
 しかし、外弁法の三条一項第一号とか二号、第四号、五号といいますのは、これは今抽象的に条文だけ申しましたが、実は、裁判所において訴訟代理をするとか、あるいは検察庁において被疑者の弁護人としていろいろ活動するとか、あるいは特許庁に出願の代理をするとか、あるいは一定の書類の送達をするとか、こういったような国家の一つの機関の中への行為についての代理を行う、あるいはそれを言いかえれば、国益ないし公益上という問題が絡む問題がございますので、これを外国法事務弁護士にやらせるということは、もともと相当ではないという判断で除外されてきたわけですので、幾ら共同事業を認めるといっても、これを一緒にやらせるということはいけないということとしているわけでございます。
 やはり原則的には、こういう公益的な見地から、こういうものは関与させてはいけないという問題と、それからもう一つ、日本法のみが適用されて外国法の知識を必要としないような、こういう法律事務について、何も外国弁護士がタッチする必要はないし、日本法についての知識についてのテストはしておりませんので、これをすぐ認めるというわけにいかないということから、その部分は外した、こういうことになっているわけでございます。
○土田委員 アメリカ及びECは、外国法事務弁護士と弁護士がパートナーシップを組むことをしてもらいたいということを強く求めておりましたね。ただ、日本側では、パートナーシップは認められないと強く反発をしてきたというふうに認識をしているんですが、本法律案の第四十九条の二の第一項によって許容される共同事業とパートナーシップ、相当似通っているように私は思うんですが、特定共同事業とパートナーシップはどの点において異なっているのか、その辺をひとつ御説明ください。
○永井(紀)政府委員 このパートナーシップということを、日本でもパートナー、パートナーという言い方でよく言うのですが、実はこれは英米法上の制度でございまして、厳密な意味で我が国はパートナーシップという法制度はないのでございます。何となくわかったようなつもりでパートナーシップという言葉あるいはパートナーという言葉を使っているんですが、やはり英米法上独特の法制度でございます。
 英米においても実はパートナーシップということがいろいろ種類がたくさんあるんだと、こう言われております。いろいろ変形もあったり。例えば、ジョイントベンチャーとパートナーシップとはどう違うかなんという大議論もあるそうでございます。パートナーという法制度自体にもいろいろ変形があるんではないかと言われております。
 そういう理論上あるいは現実問題を抜きにいたしまして、結局パートナーシップというのは、複数の者が営利の目的で金銭、労力等を出資して事業を行う契約関係であるという点では相当共通性があるんじゃないか。これを我が国に当てはめてみますと、民法上で言う組合というあれがあるんですね。一定の共同事業のために出資をするという、そういう組合契約というのがあるんですが、これとやや似ているんではないか。あるいは、会社、法人的なものでいくならば、合名会社というものと割合似通った点があるんじゃないかと思うのです。
 ところが、英米におけるパートナーシップといいますのは、構成員から独立した法人格を持っていないという点では、要するに法人格を形式的には持っていないという点では日本の合名会社とまた違ってきて、民法の組合契約に割合近い線があるのです。ところが、このパートナーシップは、英米においてはパートナーシップ名義で不動産の登記が許されているという面ではどうも社団性も部分的に認められているという、何かぬえ的な感じのものになってきているということでございます。
 それで、今回の法改正ではパートナーシップということも議論されたんですが、これはあくまで日本の制度でございます。やはり日本は日本の制度で議論するべき問題であって、厳密な意味で、パートナーシップ契約なんというわけのわからないといいますか、外国法制を持ってきてもわかりませんので、これにつきましては「組合契約その他の契約」、すなわち組合契約またはそれに類似した契約に基づいて事業を行うという、そういう枠組みで、まず、パートナーシップ契約と相当違ってきております。この特定共同事業というものは、改正法案四十九条の二の第一項各号に掲げる法律事務を行うことを目的とすることができない、すなわち制限があるという、先ほどお答え申し上げましたとおりの制限があるということ、あるいは外国法事務弁護士が弁護士と共同して他の弁護士を雇用することも禁止されている、すなわち、一体となってその共同事業体が何か弁護士を雇用するという、そういう形も許されない、あるいは、名称はそれぞれ一応形だけでも別々にしていただきたい、こういったようなことになっておりますので、明らかに英米のローファームにおいてよく締結されていると言われますパートナーシップ契約とは異なってきているわけです。
 ただ、今回の改正法案で認められております特定共同事業というものは、組合契約その他の契約により営まれるものでございまして、限られた部分での共同事業ではありますが、外国法事務弁護士と要するに弁護士がお互い収益の分配を受ける、こういう点だけを切り取ってみますと、パートナーシップにもやや似た点もあるなという、そういうところでございまして、外国法を私どもは十分承知していないものですから説明が難しいんでございますが、こういう外国の説明より、日本は日本の枠組みといいますか、スキームはこうなんだということで、あくまで日本の民法等に従った理解をしていけばいいのではないかと、やや理屈っぽくなりましたけれども、そのように考えているわけでございます。
○土田委員 時間になりましたので、では、もう一点だけお尋ねしたいと思います。
 この第四十九条の三第一項は、共同の事業を営もうとする外国法事務弁護士があらかじめ日弁連に届け出なければならないという事項について、法律にすべて列挙するのではなくて、一部の事項を定めただけで、残りの届け出事項は日弁連の会則にゆだねるということにしてあるわけですね。どうして法律にすべてを列挙しなかったのか、日弁連の会則にゆだねることにしたのか、そのことをお尋ねしたいと思います。
○永井(紀)政府委員 弁護士法及び外弁法におきましては、もう御承知のことと存じますが、弁護士自治の原則のもとに、弁護士あるいは外国法事務弁護士の監督は日弁連及び所属のそれぞれの単位弁護士会にゆだねられているわけでございまして、特定共同事業を営もうとする弁護士あるいは外国法事務弁護士につきましても、特定共同事業が適法かつ適切に営まれているかどうかを含めまして、やはり日弁連及びそれぞれ所属する単位弁護士会が指導監督を行うのが、これは当然弁護士法及び外弁法が予定しているところでございます。
 ところで、一般にこういう団体が活動するために必要な組織、運営に関する基本的規範というものは、当然この弁護士法及び外弁法におきましても、日弁連及び所属弁護士会に付与されております。こういう監督権限、責務を実効あらしめるために、それぞれ現に弁護士名簿や外国法事務弁護士名簿の登録事項など非常に幅広い範囲について日弁連と弁護士会の会則制定権というものが認められているところでございます。日弁連及び所属弁護士会が特定共同事業に関する監督を十分行うために、特定共同事業に係る届け出の事項の具体化を日弁連の会則にゆだねることは、何ら問題がないと我々は考えております。
 また、すべての届け出事項を外弁法に規定することは繁雑でございますし、立法美学も若干これありますし、必要性に応じて柔軟に対応することができるようにした方がいいのではないかということで、特定事業に係る届け出事項の具体化につきましても、日弁連の会則にゆだねることとしているわけでございます。
 もっとも、日弁連及び弁護士会の自治の重要な要素でございます会則制定権といいましても、やはり弁護士法と外弁法の委任になった範囲を超えることはできないという制限は、これはあくまでございます。やはり弁護士法と外弁法の趣旨に沿ったものでなければならないということは当然でございまして、日弁連が外弁法における制約以外に、実質的に、例えば今度認められようとしております特定共同事業を営む上で制約となるような届け出事項を新たに会則で盛り込んでしまうということは、これはやはり問題が出てくるのではないか、やはり法律の範囲内において当然その趣旨に沿ったものとして会則が定められるべきものであろう、このように考えております。
    〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
○土田委員 以上で終わります。
○高橋委員長 佐々木秀典君。
○佐々木(秀)委員 永井部長、ずうっとお疲れだろうと思いますけれども、もうしばらくおつき合いをいただきたいと思います。
 今回のいわゆる外弁法の改正問題、その中身それから背景などについては、同僚委員から午前中からしばしお尋ねがあって、大体明らかになっていると思います。そしてまた本法案も、実は、私の法務政務次官在任中に皆さんと御協議の上で出させていただいたものでありますので、もちろんこれをどうしても通す必要があるという思いでございます。
 しかし、何といってもこの問題は、午前中の同僚委員、特に宮里委員の指摘されましたような経過も踏まえて、国際的な関係、特に日米交渉あるいは日米の経済問題としての観点、それからまたウルグアイ・ラウンド、ガットのステージでのテーマにもなっているというような関係などもあって、将来にもまだこれだけで済まないぞ、また問題が出てくるかもしれないという要素も含んでおりますので、この際やはり認識を共通にし、あるいは確認すべきことなどをはっきりさせておきたいというような思いを込めて、質問をさせていただきたいと思います。
 今度のこの改正については、私は本当に法務省も日弁連もよくやったなと思います。比較的短期の間でこれだけの結論を得たということは、非常に私は大きな大きな成果だったろうと思います。
法務省にしても日弁連にしても、それぞれの立場をわきまえ、国際関係も十分念頭に入れ、そしてそういう中で改正すべき点は改正しようということに踏み切っている、この御努力の点を高く評価したいと思います。
 しかし、それというのも、実は、この外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法が六十一年につくられた。それで、このつくられるまでの間には本当に産みの苦しみがあったわけですね。ここで相当な論議をして、各方面からの御意見も聞いて論議をした、その上であの法律をつくった。そういう議論を踏まえた上でのことであったから、それを土台にして、今度の改正についての論議というのは比較的スムーズに進んできたのだろう、私はそういうように思っておるわけであります。
 その経過をもう一回考えてみますと、この問題がアメリカ側から提起されたというのは、実は一九七四年、昭和四十九年のことだったと思うのですが、このときにはまだ政府間交渉の問題にはなっていなくて、ニューヨーク州の弁護士会が日弁連に対して弁護士の門戸の開放を申し入れたということに始まったのだと思います。まさに鎖国を破る黒船の来襲みたいな感じで弁護士会も受けとめたのですね。私も当時弁護士会の役員などもやっておりましたので、それからの弁護士会の受けとめ方なども今思い起こしているわけです。
 そういう問題提起があった後に、これも関係者はおわかりですけれども、シャピロ事件というのがあって、アメリカからあるローファームに所属する弁護士が日本にやってきて、これの在留を認めたところが、これがローファームを代表するような法律事務所をさっさとつくってしまう、それで活動を始めるというようなことから、弁護士会でもこれは非弁活動になるのじゃないかという大騒動になって、その後同じようなことで、さらに入ってこようとしたアメリカの弁護士に対して法務省が在留の点で問題ありとクレームをつけるというようなこともいろいろあった。
 そのあげくに、それから八年たって昭和五十七年ですけれども、アメリカの政府が貿易問題として改めて、初めてと言ってもいいかもしれませんが、日本政府に対していわゆる貿易摩擦解消の問題の一環としてこの問題を提起してきた。中曽根内閣時代で政府としてもこれを受けとめるというような態度があったわけですけれども、日米貿易摩擦、さまざまな問題が提起された中で、この問題が出てきた。それを日本政府としても受けとめてしまったのですね。
 そこで、今度は政府間レベルの話となってどんどん進んでくる。経済的な側面が非常に強調されるということになったものですから、日本弁護士連合会、弁護士側としても、先ほど来のこの質疑の中でも出ていたように、これは司法制度の根幹にかかわる問題じゃないか、それをないがしろにして経済優先的な観点から進められていくのではたまったものではない、これはえらいことになるということで、弁護士会側もあるいは法務省の方でも、重大な問題意識を持ちながらこの問題に取り組んできたというような経過があったと思うのですね。そういう関係者の本当に御努力の中でできたのがこの外弁法だった。
 ところが、せっかくそういう御努力でやれやれ一安心と思っていたやさきに、この法律ができて間もなく、さっきもお話に出ましたけれども、またアメリカの通商代表部が、こうしてできた外弁法によってもなお市場の開放問題から見て問題あり、なお貿易障壁の項目に該当すると指摘をして、再びこの問題を持ち出してきたのですね。しかも、一番具体的だったのは、これも先ほどお話が出ておりましたけれども、平成元年六月に通商代表部、USTRの次席代表が当時の法務事務次官を訪問してこの話を出す、さらにこれを具体化したのがヒルズ代表だったと思うのですね。
 ヒルズさんというのは、この人もアメリカの女性弁護士ですけれども、なかなかのやり手で、私もずっと農林水産委員会にいたものですから、例のガットでの農産物の問題には非常に私どもは苦労したのですけれども、特に米の市場開放の問題などでも、非常に強い姿勢でこのヒルズさんは日本に臨んできた。あわせて弁護士の市場開放問題でも、この外弁法の規制、これを取っ払えということで、お話に出ていたようないわゆる五項目を突きつけてきたのですね。こういう態度というのは、私どもから見ると、日本側が本当に苦労して、苦労して、苦労してこの外弁法をつくったにもかかわらず、それができた途端にまた文句を言ってくるという態度は、少なくとも責任ある一国の政府の代表としてはいかがなものか。これまでの経過というのは日本側の説明を聞いて十分わかった上で交渉に臨んでいるはずではないか、まさにこれは力を背景にした強権的な押しつけではないかということで、非常に憤慨した思いを持っております。
 ところが、こうした要求に対して日本の世論の中では、やはり日本はまだまだこういう国際的な関係で規制を強めているということは好ましくない、もっと市場開放については積極的になるべきだというようなことを言う向きがあったり、財界の中でもこれに迎合するような主張をする論調があったり、そしてまた一方、臨時行政改革推進審議会などがこの問題について取り上げるというようなことが動きとして出てきたわけですね。
 そこで、私どもとしても大変心配をいたしました。実は、これが具体的な論議になりましたのが平成四年でありますけれども、平成四年の一月だったと思いますが、第三次行革審で、先ほど永井部長お話しのように、世界と共に生きる部会でもこれを検討事項として取り上げたわけですね。
 特に、これはいかがなものかと思ったのは、我が国の内なる国際化を進め、世界に対して開かれた社会にしていく必要があるということをこの部会の方で言われて、国際的責務を果たし得る行政の実現に向けて行政改革を推進する観点から、行政の制度、機構等の見直しを行い、具体的改革を検討するということを趣旨として言われ、「調査・検討事項」の主なるものの中の第四番目として、「制度・基準の国際化」というものをうたい、そして、その具体的なテーマとして、「資格」の項で外国弁護士の問題を取り上げている。ここでは、日本の弁護士との共同経営などの面で、外国法事務弁護士の活動に対する規制を緩和する必要があるかどうかということを具体的な検討事項にする、こう言われているのですね。
 これが(5)項で「資格」となっておりまして、そのもう一つ前の項、(4)では、「国際的視点からの国民生活、消費者利益の向上等」というのが挙げられて、その最初には、「運転免許更新手続きの簡素化」なんというのがあるのですね。弁護士問題はその下にきているわけですけれども、こうした運転免許の問題と弁護士の問題とを同列に扱う、あるいはその下位に置きながらというあたりにも私は大変な不満を感じて、そして実はその年の予算委員会の分科会でも質問をさせていただきました。
 三月十一日の分科会ですけれども、主として、現在は民事局長をなさっておられる濱崎さんが、その当時は調査部長をおやりになっていて、濱崎さんあるいは外務省の方、それから行革審の方に対して質問をし、お答えをいただいたということがございまして、今申し上げましたような問題点を指摘したことを思い出しております。
 そうした問題はきょうの議論の中でも出ておりますし、今後もやはり引き続いて意識しておかなければならなかろうと思っております。しかし、それにいたしましても、今回の改正案がこういう形でまとまった。改めて繰り返しますけれども、関係者の皆さんの御努力に私は心から敬意を表したいと思います。
 そこで、この制度ができてから今日まで、随分繰り返しということもあり、後退ということもあるようですけれども、アメリカを中心にしながら、各国の弁護士が日本に来られている。部長のお話ですと、きのう付でですか、七十九名ぐらいだということですね。総数として八十名は超えたことはないのですかな。少し超えたことはあった
のですか。しかし、八十名前後だということで、当初私どもが予想していたよりは比較的少なかったわけですね。その少なかったという理由の一つは、外弁法による規制が強いんだ。
 そこで、今度の改正でさらに規制が緩和されるんだということなんですけれども、これはなかなか難しいかもしれませんが、今度の規制緩和で、今まで大体八十前後で維持されてきたこの入国者の数というか、いわゆる外弁の数ですね、これは今度は相当数ふえるという見込みをお持ちになっているのか。これは日弁連とも話し合っておられるかもしれませんけれども、その辺の予測というのはどんなものですか。うんと大幅にということでもなさそうには思うけれども、どんなものでしょうか。
○永井(紀)政府委員 佐々木委員は、現行外弁法制定の過程は私どもより十分御承知のことでございますので、その当時、何名ぐらい外弁さんが入ってくるだろうかということをいろいろ予測されたと思いますが、私も後で聞きましたら、最低四、五百人は入るのではないかというようなことも議論したことがあるとか、あるいはひどい人は、千名ぐらい入るんじゃないかということを言った人もいるということでございます。
 今御指摘のとおり、外弁の現在の数、大体ここ数年八十人前後でもうほとんど変わっておりません。この原因は何かというと、特に最近は、バブルの崩壊に伴いまして、ある面では日本に来てもなかなかペイをしない場合もあるとか、いろいろそういう要素もあるのかもしれませんが、それでは今度のこの改正によって外弁がどのぐらい増加するかという御質問でございますと、これは将来の予測でございますので、にわかに答えられないというのが本音でございます。いずれにいたしましても、日本あるいは世界の経済状態や、あるいは企業活動の方針等いろいろな要因に左右されるものと思われますが、それではまた数百名現在よりふえるかというと、そこまではふえないのではないかな。
 ただ、先ほどもちょっと話が出ておりました相互主義の緩和の問題とあわせまして、共同事業等もある程度できるということになりますと、いろいろ実質トレーニー的な立場でも今度共同事業という形でやるとか、そういう形で登録者数がある程度ふえてくるのではないか。また、ある程度はふえて、日本が、そういった外国の弁護士さんも行き来するというような、そういう活性化された部分も一部あってもいいのではないかというようなことで、若干は増加するだろうなというくらいの予測しか立っておりません。これによって直ちに訴訟社会になるとか、極端な弁護士制度に対する影響がそう出てくるという予測はしてないというのが本音でございますが、これも本音を言いますと、確かにわかりにくいという点もございます。
○佐々木(秀)委員 確かにおっしゃるように、やはり初めてのときはなかなか予測がつかなかったんだけれども、何しろアメリカは州ごとで随分資格も違うし、活動の状況などについてもいろいろあるにしても、とにかく弁護士と名前のつく人が六十万を超えて、六十七万人ぐらいいるだろうとか、それから一年間で新たに弁護士の資格を取る人が四万人を超えているとか、日本の私たち弁護士からすると考えられないようなことなんですね。今日本には弁護士が約一万四、五千でしょうか。人口的にいうと大体一万人に一人強くらいですかね。アメリカの方はその数は人口比でいくと三百人に一人ぐらいになるというようなことだったり、もちろん資格は日本の弁護士制度とは違って、全く同じに統一しているわけでもない。非常な差異もあることはわかる。
 それからまた、この外弁法との関係で私どもが何といっても気にしたのは、アメリカの巨大ローファームですけれども、そこのいわゆる支店、ブランチを日本につくりたいというような思いがあるだろう。当初のニューヨーク州の弁護士会からの申し出のときにも、そういうようなねらいがあったということは間違いないことだと思うのです。
 そういう弁護士社会の様相の違いなどもあったり、いろいろと違うにはしても、とにかくそれだけの弁護士がいるんだから、これは何というか、市場もそれだけ厳しくなっているだろう、食い詰めたやつをどんどん送り込んでくるんじゃないかなという心配もあって、いろいろな予測を立てたわけですけれども、実際には、運用のよろしきを得、あるいはやはり御指摘のように何といっても経済的な眼目が重要な要素としてあるわけですから、そういうことでペイしないということもあるのか、私どもが心配していたほどには外国からの弁護士というのはそう来てないようにも思うのです。しかし、まだまだ本来的なねらいというのはやはりないわけではないと思うのですね。したがいまして、これからはやはりそういう点にも意識を持ちながら、できるだけ実情なども掌握していく必要があるんだろう、このように思っておるんですね。
 そこで、この外弁法、専ら入れる側、入ってくる側からのメリットというものがどうしても意識されるわけですけれども、反対の立場に立って、それじゃ入ってこられる側の日本の弁護士あるいは外弁を利用するという日本の社会、企業の側からのメリットというのは考えられるのかどうか、全くないものなのかどうか、考えられるとすればどんなところにそのメリットがあるのか、御指摘をいただければありがたいと思います。
○永井(紀)政府委員 やはり端的に申しますと、利用者の利便ということでございまして、同じ場所で、同じ施設内に外国法事務弁護士もいて、かつ日本の弁護士さんもいらっしゃる。形の上では二つの事務所があるという形式はとっておりますが、その一カ所に行けば外国法に関するリーガルサービスもあるいは日本法に関するリーガルサービスもあわせて受けられる、そういったことの要望というのは、やはり個人的にも企業者側にも大分出てきておりました。そういう意味ではメリットがあると思います。
 それからもう一つは、これは従来、委員の方が十分御承知だと思いますが、日本の渉外弁護士さんのもともとの発足は、戦後のいわゆる準会員の方々、これは毀誉褒貶いろいろあるわけですが、そういうところで育ってきた方なんでございますが、やはり共同事務所の中で、若い人たちが今度日本弁護士に雇われて、そこで一緒に外国法事務弁護士さんともいろいろ行動をともにしたり仕事を一緒にするという協力関係が出てきた場合に、それはそれで日本弁護士の国際化といいますか、もう少し渉外に強い者ももっともっと出てくるだろう、こういう利点もあるのかなと思ったりしているところでございます。そのほかにも幾つか例はあるかもしれませんが、さしあたり思いついたことはそんな程度であろうと思っております。
○佐々木(秀)委員 日本の方では、当初は共同で事務所を持ち合う、あるいは共同で仕事をするということに対しても非常な抵抗があった。一方、アメリカ、EUなどからすると、とにかく共同は当然のこと、さらに外弁が日本の弁護士を雇用する、雇うということまで認めろ、これは非常に強い要求だったわけですね。しかし、今度の改正でもそこまでは譲歩できないぞということになったわけですけれども、一番の眼目がここにあったんだとすると、今度の改正でもアメリカだとかEUの側はこれを不満だということで問題を再燃させるかどうか。
 先ほど申し上げましたように将来の予測との絡みもあるのですけれども、この辺はどうなんでしょう、今度の改正でアメリカ、EUは納得しているんでしょうか。もちろんガット交渉のときにも、協議の中で、先ほどの研究会の結果を踏まえたその事情の説明なり報告というのも日本の政府はやっていたはずだと思うのですけれども、その辺の受けとめ方はどうなんでしょうか。これは掌握しておられましたらお教えいただきたいと思います。
○永井(紀)政府委員 今回のこの改正は、やはり外国弁護士問題研究会のあの報告に沿っておりま
すし、またそれに基づいた日弁連のあれに沿っているわけでございます。確かにアメリカがいわゆるグローバルパートナーシップといいますか、巨大ローファームととにかく一体となったそういう共同経営なりパートナーシップが組めるようにしろ、こういう要求が非常に出ていたことは間違いないわけでございまして、そういう意味では、そんなものできていないからけしからぬということがあるいは本音論としてあるのかもしれません。ところが、アメリカとEUの関係も、意外にEUの方もシュリンクしているところがありまして、余りアメリカのローファームに乗っ取られるのも困るという部分もあるやに聞いております。
 いずれにいたしましても、私どもの知り得る範囲で御説明いたしますと、そもそも今回の法改正作業に当たりましては、日弁連におきまして、この外弁法の改正に関する制度要綱をつくられる前に、三回にわたって外国法事務弁護士からの意見を聴取されております。また、法務省におきましても、法改正のための立案作業中に一度外国法事務弁護士から意見を聞く機会を設けました。
 これらの機会で明らかにされました外国法事務弁護士の要望のうち、なるほどなと思う点につきましては、できるだけこの法案に反映させるようにしようということで、日弁連と我々も話し合って、若干の字句の訂正であるとか物の考え方はどうしようということで議論したところであります。そういうことの意見も入れられまして、日弁連においてもこの制度要綱ができたものだと思っております。
 それで、本年の四月十九日の閣議決定でこの法案が国会に提出されたのですが、その後も外国法事務弁護士の代表の方々にこの法案を英訳つきで送付いたしまして、質問等があればこれに答えましょうということを伝えておきましたが、外国法事務弁護士の代表者から、ぜひ質疑応答の機会を設けてもらいたい、こういうことは格別ありませんでした。
 こういう態度あるいはその後ちょくちょく私どもの参事官とも接触した感触では、本質的にローファームとのパートナーシップ等が認められないということについては、十分満足しているというものではないけれども、基本的にはそれなりの理解をして、今後日弁連でどのような会則が決められるのか、実際にどのように運営がされていくのだろうかということを見守りたい、こういう姿勢であるように考えられます。
 したがいまして、私どもとしては、できるだけ日弁連と会則改正についてお話し合いをする場合も、実は外国の弁護士、外国人弁護士さんなども、実際に特定共同事業というものがファンクショナブルなものである、要するに本当に機能するようなものになってほしい、本当にこれがそれなりにうまく動いていくようなことにしたいですねというような話もされております。十分満足はしていないけれども、それなりに評価をして、今後どういうふうに実際にこれを運用していこうかということを考えていらっしゃるという状況ではないか。これは現にいらっしゃる外国法事務弁護士さんの感触の問題でございます。
○佐々木(秀)委員 確かに昨年の十一月二十七日の読売新聞などを見ますと、日弁連がガット交渉の最終段階でこういう方針をまとめて出したということが、ガットのウルグアイ・ラウンドに対しては非常に好材料を与えているという指摘もあって、評価されているわけです。日弁連がそうした方針を確認したのが昨年の十二月三日の臨時総会です。私もいろいろ聞いておりますけれども、この臨時総会でも相当な議論があって、厳しい意見もあったようだけれども、最終的には執行部が取りまとめたこの方針でいこうということで確認をしたんですね。
 これは日弁連としては、ガットの最終日が昨年の十二月十五日だったわけですから、その前にはどうしてもということで非常に頑張って努力をされたのですね。そういうことも評価をされておるのだろうと思いますし、この問題も踏まえて、七年越しのガット・ウルグアイ・ラウンドが去年の十二月十五日でまとまった。
 農産物の扱いの問題などについては私ども非常な不満があって、社会党としても大変な議論があったのは御承知のとおりです。しかし、弁護士の問題はそれほどのところまでいかなかったというのは、関係者の御努力でこれでいこうということになったから、そして、ガットの方でもその内容についても一応評価をされたということだろうと思うのですね。これは、外弁の問題は部長御指摘のように何も日本とアメリカだけの問題ではない。ガットを舞台にして討議される以上は、アメリカと他の国との問題もあるわけですから、それぞれの相互関係がある上でのことだろうと思います。
 しかし、何にしてもこういう努力の上で今度の改正にまでこぎつけたということは、仮にアメリカだとかイギリスだとか、あるいはEUの国々が言ってくるような場合には、やはりきちんとこれまでの討議の経過なども踏まえて主張すべきことを主張なさったり、これ以上緩めるようなことがないように、ぜひまた関係者に御努力を願わなければならないのではないかな、そんなふうに思いますので、その点の御努力をぜひお願いしたいということを申し上げておきたいと思います。
 そこでまた、他の質問事項になるわけですけれども、具体的な内容についてもいろいろお話がございました。この共同事業、特定共同事業というように言われているわけですけれども、この共同事業というのはいわゆる事務所の共同経営とイコールなのかイコールでないのか、この辺についてはどのようにお考えになっておられますか。
○永井(紀)政府委員 実は、アメリカ等の要求の中には、共同経営を要求するという言い方、向こうはパートナーシップという言い方を共同経営、こういうふうに訳した形になってきたと思うのです。我々も俗に言う共同経営ということは、日弁連の先生方とも話し合うときにお互いに共同経営の問題というようなことで言っていたのですが、さてこれはよく考えてみますと、もともと現行の四十九条では共同の事業をしてはいけない、こういう表現になっているわけですね。要するに、経営という言葉はどこにも出てきませんし、弁護士業務に関してこういう経営という用語は法律用語としてはややふさわしくないのではないか、そういう観点から共同の事業という従来ある表現を使ったということでございます。
 やはり共同経営というのは、やや英米法のパートナーシップ的なところに引っ張られた表現になるのではないか。また、先ほど言いましたとおり、弁護士の業務について経営という表現はどうであろうかというところから、共同の事業という言い方に変えたわけです。したがって、俗語的には同じように考えていたわけですが、中身を分析していくと、やはりちょっとニュアンスとか意味が違ってきているのではないか、かように思っているわけでございます。
○佐々木(秀)委員 それではもう少し具体的にお聞きしますけれども、先ほど共同事業をやるための事務所の姿として、場所を同じくする。中はそれぞれの外弁事務所とそれから日本の弁護士事務所、これがエリアとして分かれていても、一つの場所の中で分かれていても構わない。それから、看板の出し方についてもさっき御説明がありました。
 そこで、事務所の設備ですとか、それから事務員さんですね、これは共用にしてもいいということになるのか、共用にする場合に、その費用の分担などについてはどういうように決めるべきものだと考えられるのか。それから、電話代だとか家賃ですとか光熱費ですとかいろいろな日常経費があると思うのですね。その辺についてはどうでしょうか。
○永井(紀)政府委員 この点日弁連の制度要綱等には、経理は別にするというような表現も入っているのでございます。ところが、その経理というのはどういう意味かということを我々も日弁連の先生方と話し合ったのですが、皆さん意見が違っておりまして、経理というときに確かに区分しな
ければならない経理があることは間違いないんです。
 これはなぜかといいますと、共同事業をやるところにつきましては、一緒にやれるいわゆる渉外事件については共同事業として一緒にやる。すると、それの収益が上がったものをここに入れて、そして分配をする、そういう口座が必要、口座といいますか一つの経理区分をしなければいけません。それから、純粋に日本人しかできないものについて、日本人しかやらないものについては、これは混同してはいけない。そういう面で事業目的からくる経理の区分ということが一つあろうかと思います。
 それからもう一つは、具体的に例えばファクスを一台一緒に入れた、あるいはそのほかに事務員さんをどういうふうにするかというのは、これは実は共同事業をやっていく場合、極めて私的な、任意的な契約の世界ではないだろうか、こういう議論が日弁連の先生方や我々で意見交換している中では相当多うございました。
 これを例えば日本人の弁護士さんのものだ、これは何のものだといった場合に、ではファクスは共用できないのかとか、そういう場合には確かにこれは日本人弁護士のお金で買うんだけれども共用してもよろしい、しかし何かの分担金を出すという方もありましょうし、それぞれからお金を出し合って一緒に買いましょうということもあるでしょう。
 だからそういう物の経理といいますか、什器、備品を購入したりなんかするというのは、いろいろなそれぞれの事務所同士のやり方というのは千差万別あり得るのではないか。要するに、日本人の弁護士さんの共同事務所でも同じような問題があるのではないかということで、皆さん意見がなかなかまとまっておりませんでした。
 それから、事務員さんの採用につきましても、これは基本的には事務員ですから、日本人弁護士しか雇えないということではなくて、共同で費用を分担して一人の方を雇うということも、それはあり得るかもしれない。ただ、日弁連の先生方のお話を聞きますと、いややはり日本人が雇用した形態の方が税金の関係やいろいろなことで明確になって、それの方がいいんだというようなことをいろいろ言われます。
 ただ、実際にそういう事務員さんを外国法事務弁護士さんが使えないかというと、これは使えないというのもおかしい。やはりそれも共同事業をやる場合の一つの契約の合意で決められるし、そんなに法律で何かこうでなければならないと決めつけられるものではないのではないかというような議論がございました。
 余り明確な答弁になっておりませんが、そういう実際の運用とか会計の問題になってきますと、一定の制限はありますが、あとは自由契約の中で、お互いに運用でできる部分が相当多いのではないかというような感じを持っているわけでございます。
○佐々木(秀)委員 これも今度共同事業をやるために事務所をこうして共同にするということも初めての試みになるわけですから、いろいろとこれをやってみると、細かい問題では一体これはどうするんだというようなことが出てくるのだろうと思うのですね。
 大まかなところは、先ほどの御答弁も聞いておりまして、一つは日本弁護士連合会の方で会規ないしは規則で決めていく事項があるだろう、規則などで決められるだろうということです。それからさらに、事務所の運営などについて、それぞれの事務所間の取り決め、これはいわゆる組合契約に準じた契約で決めていくことになるだろう、こういうように想定されるわけですね。
 その中に、今部長御指摘のように、例えば税金の問題なんかも出てくるかもしれませんね。それと、例えば共同事業をやったときその依頼者から報酬を受けることになる、それじゃその報酬の受け方をどうするのだという問題も当然出てくるのだろうと思うのです。例えばそれを直接に渡すというときには、その事務所間の契約でその分配の比率なんかを決めていればそれに従うのでしょうけれども、例えば振り込み送金の場合に、一体どちらの事務所名で受け取るのだ。
 これは、あくまでも個々の事務所の独立を尊重しながらということになっているから、日本側の弁護士の事務所、それから外人弁護士側の事務所、これは別個ですから、看板に例えば二つの名前を並べて書くことはできても、二つの弁護士事務所が全く一緒ではないわけですね。それと、銀行口座なんかはどうするのだというような問題だとか、考えてみるとどうもいろいろありそうに思えるのですけれども、そういうトラブルの心配というのはどうなんでしょう。
○永井(紀)政府委員 そういう話題も、日弁連の理事の関係者といろいろ話し合ったときも出たのでございます。
 しかし、私ども法務省といたしましても、よほど極端な、外国法事務弁護士による日本人弁護士に対する何か変な干渉とか、そういうものがなければ、また、そういうおそれのないような形態ならば、それぞれ紳士の弁護士と外国法事務弁護士でございますから、そこは、契約上の取り決めでいろいろ工夫をしながらやっていただけるのではないかと法務省としては期待しているのですが、日弁連の先生方は、ただいま佐々木委員がおっしゃったとおり、具体的に考えるといろいろあるな、とにかくやってみなければだめだなというような話をされておりました。
 私ども、必ずしも、ちょっと予測しがたいこともあることも間違いございません。
○佐々木(秀)委員 そうすると、何から何まで、例えば法務省側で法律あるいは政令などで細かい点まで縛ってしまうというつもりではない、ひとつやってもらってというようなこと、あるいは弁護士側の主体性を信頼しようというような御配慮だというふうにお聞きしていいのですね。
 そこで、本法の改正によっても、おのおのの事務所、つまり外弁の事務所と日本の弁護士事務所は、業務の独立性、これはお互いに尊重しよう、少なくとも、外弁が日本の弁護士の業務に対して不当な干渉はしないようにということが記載されているわけですね。
 そこで、おのおののその独立性を維持するために、その担保といいますか、方策を法律の上で予定されている点、これをひとつ明らかにしていただきたい。
 それから、反対解釈のようでなんですけれども、四十九条の二の三項には、当該特定共同事業に係る弁護士がみずから行う法律事務その他の業務に対して外国法事務弁護士は不当な関与をしてはならない、こうなっているのですね。関与してはならないと書いてあれば全部についてとなるのだけれども、不当な関与と書いてあるものだから、不当でない関与は、反対解釈として関与しても許容されるのかな、仮に許容される関与というのはどんなケースが考えられるのかななどということを老婆心ながらつい考えてしまうのですけれども、その二つの点についてお示しをいただければと思います。
○永井(紀)政府委員 まず、事務所の独立といいますか、私ども、理論的には、日本弁護士及び外国法事務弁護士のそれぞれの独立と言ってもいいのかと思いますが、先ほども言いましたように、事務所という表現はちょっと使いにくいものですから、むしろ個人単位でここに記載してあるのですが、特定共同事業において、それぞれの弁護士が独立した主体としてそれぞれあるということを担保する方法といいますか、担保するものとして、一つは四十九条の二の共同事業を行うことができる法律事務について制限を加えているということでございます。
 一項一号、二号等については、これを行ってはならないということで一定の制限をかけている。この制限によりまして、必然的に日本の弁護士しかできないものがありますから、事業目的を完全に同じにした形での仕事はできないということになるわけです。共通する部分はいわゆる渉外事務だけである、そういう考え方であります。
 それから二番目に、先ほども言いましたとおり、四十九条は残しておりますので、ここでは雇用の禁止というのがかかるわけです。だから、特定共同事業を行う外国法事務弁護士であっても日本人弁護士を雇用してはいけないということになりますので、あくまで、共同事業を営んでいる場合でも日本人弁護士を雇用できるのは日本人弁護士である、そういう制限がかけられているわけでございます。
 それからもう一つ、先ほども言いましたが、四十九条の四ということで、特定共同事業の表示をするということ、それから実は、外国法事務弁護士事務所については、外国法事務弁護士事務所であるということの名称の使用を強制しておりますので、したがって、同一施設、同じ物理的な場所にありながら事務所としての看板だけは違う、こういうところで少し独立性を持たせようという、その担保をしようということでございます。
 それから四番目が、先ほどの四十九条の二の第三項でございまして、「弁護士が自ら行う法律事務その他の業務に不当な関与をしてはならない。」という外国法事務弁護士に対する規制がかけられているわけでございまして、この「不当な関与をしてはならない。」というところで、これは単なる倫理規定ではないかというふうにも見られるのですが、実は、これは若干意味があるわけでございます。
 委員の後段の御質問の方にちょっと入らせていただきますが、ここで言う、四十九条の二の第三項に規定しております不当な関与とは何かという問題があるのです。我々この条文を置いたときには、実はこういう規定は置かなくても、こういうのはお互いの弁護士倫理上当たり前のことではないか、そんな倫理的なことをここに記載しても意味がないよという議論もあったのですが、私ども、これは絶対入れるべきだなと思いましたのは、実はこれは契約自由ですから、日本人弁護士と外国法事務弁護士が共同事業の目的を決めるときに、日本人弁護士は日本法に関する事務を行ってはならないという約束をしてすべて渉外事件しかやらない、そういう合意ができるのかどうかということが問題になったわけです。そうすればもう一体になってしまうわけですね。日本人弁護士が本来できることをできないようにするという、そういう合意なんか、これは当然無効だからこんなものは書かなくてもいいということですから。
 しかし、もともと組合契約その他の契約でできるということならば、契約自由じゃないか。しかも、弁護士という立派な能力を持っていらっしゃる方がそれでいいよと言うのなら、それだって自由じゃないかという考え方も出てくるのではないかということで、少なくとも、要するに、日本人弁護士ができることを制限するような、そういう組合契約をやること自体は問題があるということに、ここで一つ引っかかってくるのではないか。こういう規定を置いた方が、だから、それは単なる倫理規定と違って、実体規定としても解釈できるのではないか、こういう考え方で一つ入れております。
 さらに、若干倫理的な部分もないわけではないのでございまして、この不当な関与というのは、そういう形で、日本人弁護士に本来特定共同事業の対象とならない法律事務を取り扱うことがないように働きかけるとか、そういう契約をするということはまず許してはいかぬ。それから、仮に特定共同事業に係る弁護士が特定共同事業対象とはならない法律事務その他の業務を行うに際しましても、その業務に外国法事務弁護士が関与することによりまして、実質的に外弁さんが特定共同事業の対象とならない法律事務を取り扱っているのと同視し得るような、非常に極端に介入をしてきたという極端なケースが考えられるのではないかというような幾つかの実体的な想定をしているわけでございます。
 それから、じゃ許される関与は何かあるのかということでございます。実は、外国法事務弁護士が自己の職務範囲外の法律事務を弁護士とともに特定共同事業の場合に行うということがあり得ると思います。これは一つは、法律事務そのものではないけれども、法律事務に付随して行われる事務、要するに法律事務を補助する事務というのがあるのじゃないかということは考えられるわけです。
 例えば、第三国法に関する法律事務なんかにつきましては、これは理屈の上から言うと外弁さんが扱ってはいけないということになるわけです。あくまでも本来日本人弁護士しかやってはいけないことになっている。ところが、実際には第三国法なんかにつきましては、むしろ外国法事務弁護士の語学能力というかそういうことを生かせる場合があるものですから、弁護士からの指示に従って外国法事務弁護士が契約書のドラフトを作成して弁護士に渡すとか、あるいは参考となる法律文献、雑誌を集める、弁護士の指示に従って何々法の文献を探してくれ、こういうようなことはできる。それから、弁護士と依頼者との間のコミュニケーションを円滑にするために通訳または通訳類似の事務ということもあり得るだろう。お客さんなんかが外国人であって、自分の母国語そのものの問題ではないけれども、語学的にはできるというときには通訳類似の仕事を弁護士の補助みたいにしてやることはできるだろう。あるいは、弁護士が作成した英語等の外国語による契約書等の書面の校正をする、やはりネーティブの人の方が表現がうまいとかいうことで、弁護士さんの補助をするとかいったようなことは十分あり得るのかなという感じがしているわけでございます。
○佐々木(秀)委員 再々名称問題がお話の中に出てまいりました。看板の表示、これもまた弁護士会としても、つまらないことだけれども大事なことだというので割合こだわっておったことなんですね。今度はそれぞれの看板を出せる。特に、今までは外弁の場合に個人名であったものが、所属ローファームの名前を出しても構わない、こうなったのですね。
 しかし、弁護士が、所属の事務所としてはというか自分の事務所としては一つ、他の地域には持てないのと同じように、このローファームの名称を表示する外弁としても二つの事務所は持てないということになるわけですが、脱法行為として、一つの地域に所属のローファームの事務所を出す、全く他の地域に自分の所属するローファームの名前は出さないで今度は個人の自分の名前だけを出すということで、別な日本の弁護士ともう一つの事務所での活動の拠点といいますか、そういうものを設けるということは、この規定からは認められないことになるのですか。その辺、ちょっとはっきりしないのだけれども。
○永井(紀)政府委員 この問題は、実は今回の改正法直接の問題ではございません。これは、弁護士法二十条三項の問題と、現行外弁法四十五条五項の問題でございます。
 弁護士法二十条三項には、日本の弁護士が複数事務所を設けてはいけない、こういう禁止規定がございます。この二十条三項に関する解釈は本来日弁連がおやりになることでございまして、法務省が別に解釈権を持っているわけではございません。第一義的には日弁連が解釈権を持っておられるのですが、私ども、日弁連にお聞きいたしましたところでは、日弁連はこの規定の解釈につきまして、事務所を異にする複数の弁護士が継続的に収益を共通にすることを禁止するものである、こういう解釈をとっているというふうに聞きました。これはそれなりの合理性があるものだと思います。例えば東京の弁護士と大阪の弁護士が、それぞれ形の上では事務所名は別だけれども、実は一体でやっていて収益分配を継続的にやっているということになると、やはり二十条三項の違反になるだろう、こういう解釈のようでございます。
 それで、外国法事務弁護士に関する外弁法の四十五条五項も全く同じ条文が入っているのです。これは一体どう解釈するのだろうということで、日弁連の方でも必ずしも確定した解釈がされているかどうか明確に伺っていないところですが、漏れ承るところによりますと、一応この解釈については、例えば、外国法事務弁護士が母国において
特定のローファームに所属している、そして一人の人が東京に事務所を出し、もう一人の人が大阪に事務所を出している、その東京と大阪とは実は母国のローファームを通じて常に収益を継続的に共通にしている、そういう実態があるならば、これも日本弁護士の弁護士法二十条三項の規定と同様に複数事務所の禁止規定に触れるというふうに解されるのではないかというあれでございます。
 ただ、ここで問題は、では実態が外国のローファームと本当に収益分配しているか、ローファームを通じて収益分配の実態があるかどうかという事実認定はいろいろ問題があるのではないか、そういう話を承っております。
○佐々木(秀)委員 時間が参りましたので終わりたいと思いますけれども、何にいたしましても、将来にもまだこれだけで済まないようなことがいろいろと想定されるようにも思いますので、どうかこれまでの御努力の成果を生かされて今後に備えていただきたいと思います。特に、今回この仕事を仕上げるについては、法務省、日弁連が非常に協議を重ねてきた、このことも大事にしていただきたいと思うのですね。
 ところが、残念ながら法務省、日弁連間はすべてがうまく丸くいっているわけでもなくて、例えば矯正関係の問題だとか、いわゆる刑事施設法の問題だとか、まだまだしっくりいっていないところもあるわけですが、どうかできるだけ協議を重ねて、お互いに日本の司法制度をよりよいものにするために御努力いただきたいと思います。
 時間がなくなりましたけれども、牧野政務次官、御苦労あると思いますが、法務大臣もお忙しいと思いますので、どうか法務省と日弁連の間に入っていただいて、双方の言い分、主張を橋渡ししていただきたいと思います。御努力をお願いいたしまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
○高橋委員長 坂上富男君。
○坂上委員 各省から大変たくさんお出かけをいただいて恐縮に存じますが、質問するころになってまいりますといろいろと飛び込みが入ってまいりまして、あるいはせっかく来ていただいてもそのままお帰りになるような事態もあろうかと思いますので、お許しいただきたいと思います。
 それからいま一つ、外弁法の問題については、少しお疲れでしょうからお休みくださいまして結構でございます。
 時間がありませんので、早速でございますが、警察庁は来ておられますな。この間法務委員会でお聞きをさせてもらいました例の京都の朝鮮学園問題でございますが、きょうは地行委の方でも大変厳しい質問が展開されておるのだそうでございまして、本当はダブらないようにしたいのでございますが、あるいはダブるかとも思いますので御容赦をいただきたい、こう思います。
 そこで、しかも今の状況で把握できることはあるわけでございますが、一つは、警察の方がおっしゃることの言葉の中に、適法であったが御迷惑をおかけをした、捜査に違法な点はなかった、しかし御迷惑をおかけをした、こういう言葉があるわけでございます。それから、違法捜査を受けたところの関係者の皆様方には、適法な行為をしたんだからおわびをする必要がないというような対応をしておられるそうでございます。これはしているとかしてないとかということを言っているわけではございませんが、一体、適法行為をして人に迷惑がかかるなんというのは日本の政治の中、日本の行政の中にあるんですか、これ。我々の社会の中にはちっともありませんね。適法行為をして迷惑がかかることなんてないです。どうですか。一体、適法だというのは何が適法だというのですか。警察庁、お答えください。何を適法と言ったのです、今回の場合は。
○瀬川説明員 お答えいたします。
 今回の問題は、本件捜査につきましては、いろいろ所要の捜査を遂げまして、国土利用計画法違反容疑ということで捜索を行ったわけでございます。その過程で、その判断の最大の根拠としまして、先日もお答え申し上げましたが、京都市役所からの公文書による回答、これに結果的に誤りがあったということで、国土利用計画法違反容疑の事実といいますか、そういうものが解消したという結果になったわけでございます。しかし、あってはならないことではございますが、公文書に誤りがあるということは我々としても本当に予想が
 つかないような事態でありました。そのことによって、結果として関係者に大変御迷惑をかけることになったという認識でおりまして、大変残念に思っているわけでございます。(坂上委員「何が適法かと聞いているのです。何の法律で適法かと聞いている」と呼ぶ)
 国土利用計画法違反容疑の捜査を進めるに当たりまして、もちろんでありますが、刑事訴訟法にのっとって私ども捜査をしたつもりでございます。京都市役所に対する照会につきましても、捜査関係事項照会書により照会をしたものでございますし、また、今回の捜索につきましても、裁判官の発付する令状を得まして、それに基づいて捜索を実施したという点で、これは違法な点はなかったもの、こういうふうに承知をしております。
○坂上委員 だから、これは裁判所は、本当は、いてもらったら、よく裁判官に言ってくださいよ。(「裁判所をだました」と呼ぶ者あり)だましたんじゃないんだ、これは。捜査のやり方が悪いからこうなった。
 私は理由を申し上げます。いいですか。刑事訴訟法上からいって適法であった。適法の根拠は何であるかというと、公文書をもとにして令状の請求をした、裁判官が令状を出してくれたから、それをやったんだ、したがって適法行為をやったんだと、しかし、もう国民の皆様方に大変迷惑をかけた、こういう話であります。法治国家の中にこんなばかなことないです。違法行為をしたから迷惑をかけたというのはわかるのです。
 そこで、判例を調べましたか。うちらの議員がきのうも調査に行きました。それから、県警本部長からもしかるべき態度の表明がありましたが、いずれも適法である、適法であるが迷惑をかけた、こういう言葉であります。これがまかりならない。いいですか。令状発付をした場合のいわゆる違法性の問題は、次のように言われています。請求をしたところの違法性はないかということ、令状執行上の違法性がないかということ、これによって、違法であるかどうかということを判断することになる。
 今度裁判官が、いわゆる違法な、犯罪もないのに令状を出す、これは皆さんが出してくるところの資料をもとにして判断をするものだから、裁判官の気持ちの中に、不法な目的、違法な目的を持って令状発付したときは責任ありとしているわけです、違法だと言っている。しかし、皆様方が請求を出す、そういうことによって裁判官を錯誤に陥れしめてやったんであって、裁判官が違法であることを承知の上で出した場合は、いわゆる国家賠償法の責任は裁判所側、国側にある、こう言われる。それ以外は全部、令状請求の請求上の違法と、いわゆる執行上の違法がある、こう言われているわけです。
 そこで、まず請求上の違法について申し上げましょう。どういう請求の違法があるかといいますと、公文書だけで請求したってできるはずはないわ、公文書だけでは。公文書のほかに、いろいろと事情の聴取をしなければならぬでしょう。ただ、役所からこれあるかないか、ないとするならば、国土利用計画法違反だと、こう言って出すわけでございますね。これだけじゃ、ずさんな捜査と言われても仕方がないんじゃないの。したがって、こういう請求上の違法もあるわけです。
 しかも、いま一つ大事なことは、六月三日の日に京都市役所へ行ったというんでしょう。そして、告発をしてくれというんでしょう。告発をするにはいろいろと調査をしなければなりませんから、十日間お待ちください、こう言ったわけだ。そうしたら、じゃ告発は要らないということで、強制捜査をやっちゃったわけでしょう。もしこのとき、皆さんが十日間待っておられれば、こうい
う違法行為はなかったかもしれない、こういう大失態を起こさないで済んだかもしれません。したがって、何としても、いわゆる請求上の皆さん方の違法性というのは、これはぬぐい去ることはできないんじゃないですか。
 しかも、いわゆる北朝鮮関係の皆さんだから、皆さんの方では必要以上に警戒をしているとするならば、売った人、仲介した人、そういう人からちょっと調べればすぐわかることでありますが、こういうことも何にもしてないわけでしょう。とにかく、何はともあれ、北朝鮮の関係者については、あらゆることで手入れをして、何か今回の北朝鮮の疑惑問題とかかわりがないか、そしてこれについて何らかのひとつ資料がないか、いわば送金関係がどうなっているとか、いろいろなことを捜査するためにこれはやったんじゃないの。だからこういうむちゃな話になるわけで、告発することを待ってくれと市役所が言っているわけ、市が言っているわけ。何で待てなかったの。この点について一つ問題があるわけです。
 今度国土庁が私のところへきちっと文書を持ってきてくれました、そのことについて。いいですか、「六月三日に京都府警の担当者が来庁され、届出のない二十七筆のうち、時効となっていない三筆について告発するよう依頼されました。本市といたしましては、十分に調査を行い、」調査をするというんです。いいですか、素人でもこうやって厳重に、刑事問題にする場合については十分調査をしたい、こう言っている。「国土庁と連絡を取りながら、対応して行く旨を回答いたしました。」やはり告発するということになると、それほど慎重なんです。まだ告発だから、被害が及びません。令状、ガサをやるんですから、これは大変な強制的な迷惑が及ぶことはもう当然でございます。素人の市役所ですら、慎重に対応すべくいたわけであります。したがって、あなた方がその要請を受け入れていれば、こんな大失敗はなかったわけであります。「なお、調査期間は数日を要しますので、本市の方から府警に対して、告発の有無も含めて連絡を入れることを申し伝えました。」しかしながら、それを聞かないでやったというんです。
 これは、国土庁、いらっしゃるでしょう。私が調査報告を出しなさいと言って、出された文書でしょう。今読んだとおりでしょう。イエスかノーか、そうかどうかだけお答えください。
○二木説明員 国土庁でございます。
 そのとおりでございます。
○坂上委員 そうでしょう、警察庁。課長さんは、これ知っていますか。警察、知らぬでしょう。こういう慎重さを欠いているわけです。この三月に情報を得たというのですよ。この間質問したけれども、課長さんの方はお答えできなかった。どういう情報だったかわかりますか。これは後から一緒に答えてください。でありますから、それから見ても、これは令状請求の違法は明白であります。
 それから、課長さん、これによって皆様方がかたくなな態度をとられるが、いずれその責任の有無について民事裁判になると思います。責任ありとして裁判所が判断したら、一体警察庁は責任をとられますか。課長さんですから、お答えはなかなか容易じゃないと思いますが、いろいろ私がこの間質問したことを受けて御相談なさっただろうと思いますが、これもあわせて答弁してください。
 さて、今度は執行上の違法という点についてお聞きをいたします。
 朝早くから家宅捜索をなさった。何か午前中ぐらいに、これはやばい、間違っていたということがわかったそうじゃないですか。わかった時間はいつなんですか。捜査を終えて、間違った捜査をしてしまったことがわかったと新聞に書いてある。どうも午前中らしいじゃないですか。しかも、仲介人のところへ行ったときにわかったらしいですね。さてということになったのは何時ごろだったのですか。それで、今度は慌てて市の方にもう一度照会をした、そこに書いてある。国土庁、この文書の中に時間が書いてないです。時間はわかりますか。届け出がないと回答された土地については、届け出はあるのじゃないかという照会が府警からあったのは何時だったかわかりますか。
○二木説明員 京都市から聞いたところによりますと、届け出があったという事実がわかって、その旨を御連絡したのが午後五時半と聞いております。(坂上委員「いや、照会があったのは」と呼ぶ)それはちょっと私どもまだ確認しておりません。
○坂上委員 課長さん、少なくとも三時ぐらいまでには完全にわかったらしいですね。さっき地方行政で答弁があったのです。しかし、捜査を続けたのはいつまでですか。中断しなかったでしょう。一時中止をしなかったでしょう。夜の七時ごろまで家宅捜索をやったそうじゃないですか。これはまさに執行上の違法というのです。課長さん、これはどうですか、今言ったことをずっとあわせて一度に答弁してください。
○瀬川説明員 大変多岐にわたる御質問でございますので、すべて的確に漏れなくお答えできるかどうかあれでございますが、まず請求上の違法があったのではないかという問題でございます。
 市役所から回答があった公文書だけに基づいて捜索令状の発付を請求したのではないかというお尋ねがございましたけれども、これはそうではなくて、もちろん市役所からの公文書回答が最大のよりどころといいますか、中心ではございましたけれども、当然のことながら、その周辺部分といいますか、例えば登記簿の関係、被疑者の特定、その他もろもろの捜査を進めておりまして、そういった捜査の総合的な結果によりまして令状の発付を請求をしたものでございます。
 それから、なぜ市当局の告発を待たずに捜索を行ったのかという点でございますけれども、これは御案内のように、国土利用計画法違反事件につきましては、告発は捜査の要件とはされていないわけでございます。通常といいますか、一般的にこの種国土利用計画法違反事件というのは検挙する例が多いわけでございますけれども、告発を待たずに捜索等を行っている例が大半でございます。ただ、私どもといたしましても、行政当局が告発という形をもってその意思を明確にされるということは、捜査上も大変意義のあることだと考えております。
 六月三日に、先生御指摘のとおり、京都市の幹部と京都府警の方が会いまして、京都府警から京都市に対しまして告発をしていただくように促したという事実、そのとおりでございます。ただ、捜査に着手するということにつきましては、告発の有無にかかわらずこれは捜査に着手するという方針でございました。捜索に着手した後においても、行政当局からの告発がいただければということで、継続してその告発については促していく方針であったと聞いております。
 それから、政治的意図があったのではないかという点でございますけれども、これにつきましては、前回も御答弁させていただきましたとおり、私どもはそういったものは全くございません。国土利用計画法違反事件というのは、国民生活にとって大変重大な犯罪であるという認識でございまして、全国の警察においてその摘発に力を入れているものであるということを御理解をいただきたいと思います。
 それから、端緒情報でございますけれども、これは前回もお答え申し上げましたとおり、捜査の内容にかかわることでございますので、お答えを差し控せさせていただきたいと思います。
 それから、訴訟になった場合ということでございますが、そういう場合、仮定の問題でございますのでいかがかとは思いますけれども、私どもとしても、この事件捜査に当たりましてとりました手続等につきまして、そういう場でも十分御説明をさせていただくということになろうかと思います。
 それから、執行上の問題でございますけれども、いつ届け出があるということがわかったのかというお尋ねであったかと思います。
 若干時日の経過を申し上げさせていただきますと、私どもが届け出があるという話を最初に聞きましたのは、当日の午後二時過ぎでございます。午前十一時以降関係者から事情聴取ということで開始をいたしまして、そのうちのある関係者を取り調べております際に、そういう申し立てがございました。これが最初でございます、
 その後、京都市に届け出の有無を照会いたしまして、先ほども国土庁の方から御答弁がありましたように、午後五時半ごろ京都府警の方から市に再照会といいますか、なかなかお返事が来ないものですから、再度こちらの方から電話で尋ねたところ、届け出があるというお話がそこでございました。
 ただ、私どもといたしましては、四月一日に公文書でもらっているわけですので、その間の事実を確認をしなければいけないということで、電話回答だけではその公文書について誤りであったという確信が持てませんので、市の幹部の方にもおいでいただきまして、十分事情をお伺いするなり、どうしてこういうことが起きたのかということをお伺いするなり、届け出に関する書類を京都市の方から御提出をいただいて、いわば現物で確認をするなりということで、届け出ありという事実を確認をしたわけでございます。そういう確認手続を経まして、最終的には午後十時半ごろ本件についての捜査を打ち切るという方針を決定をいたしまして、直ちに関係者の方にその旨御連絡をし、証拠品について直ちにお返しをする、還付をするという御連絡を差し上げた、こういう経過でございます。
○坂上委員 捜索の中止は何時ですか。家宅捜索、令状に基づくところの家宅捜索は何時ごろやめたの。それだけ。十時と聞いていいのですか。十時ですね。
○瀬川説明員 お答えいたします。
 家宅捜索といいますか、その捜索につきましては、実施をいたしましたのは二十一カ所でございます。(坂上委員「ですから何時に終了したのか」と呼ぶ)ですから一番最後捜索が終わりました場所につきましては、十九時五十分に終了したというのが、最後の捜索場所でございます。
○坂上委員 これじゃ明らかに執行上の違法もあるじゃないの。もう届け出があって犯罪が成立しないということをわかっていながら、まだ捜査しているんだ、八時近くまで。一体こんなこと許されるの。これは大変な事件なんです。
 私は、この間の質問の中で間違ったのは、コンピューター入力、こう言いましたけれども、コンピューターじゃないそうですね。パソコンに入力を忘れたんだそうですね。それだけです、私の違いは。あと全部私の言ったことは正しい。そうでしょう。反論できますか、私の言ったことに。
 ですから、これは大変なことなんですよ。どういう情報に基づいてやったかということが明らかにされないでしょう。それからすると、告発してくれないかと言ったけれども、告発について少し待ってください、調査しますから、それをもし聞いておれば、こういう事態は起きなかった。
 その次、調べているうちに、家宅捜索をしているうちに、これはもう大変なこと、とんでもないことをしたということはわかったわけだ、昼間中ごろから。それでも念のために確認しようというわけで、どんなに警察側によって判断をいたしましても、もう五時、六時くらいまでにはわかったわけだ。捜査を続けたのが七時五十分。こんなばかなことあっていいのですか。これはもう違法捜査ですよ。これに関係した人は全部責任をとってもらわぬといかぬですよ、こういうことするん、だったら。
 単なる過失じゃないもの、これはもう最後になってくると。故意にやったんだ。何で故意にやる必要があったのか。しかも、疑いがあったときに、待てばいいの。中止をすればいいわけよ。その間あなたたちは、四百人もいるんだから、ちゃんと黙って待っていればいいわけです。それで捜査続行するかどうかを決めればいいのですよ。わかっていながら七時五十分とか八時くらいまでやったというんだから、これはもう大変なことだ。日本の司法制度の中で、法治国家の中でこういうことがあっていいということは絶対にない。
 どうです、法務大臣、こういうことをやっているのですよ、警察というのは。どうぞ。
○瀬川説明員 恐れ入ります。
 先ほど手短にということで申し落としたのかもしれませんけれども、京都市の方から五時半ごろ電話で届け出があるというお話を伺ったわけでございますが、その事実を、公文書で既に私どもとしては届け出なしというものをもらっているわけでございますから、その公文書を否定する内容ということになりますので、これはしっかり事実を確認しなければいけないということで、京都市の幹部においでいただいたということを御説明いたしました。それが午後七時過ぎから京都市の幹部の方の事情聴取ということが始まったわけでございますので、六時ごろには既にわかっていた、そういう届け出があったということが確定していたはずだということでは実際の状況はございませんということを御説明させていただきます。
○坂上委員 疑いがあったときは、こういう失敗したという疑いがあったときはもう中止すべきなんです。市役所から確認したのが遅くなったんだ、こういう話。こんなことは弁解になりません。弁解に何もなりません。もう疑わしいときはばつと中止するのが当たり前なんだ、こんなものは。人権にかかわることなんだから。裁判所も気をつけてもらわぬといけないのですよ、こういうばかなことが行われているんだから。
 しかも、家宅捜索の場所が二十一カ所だというのでしょう。何で二十一カ所、こんなに出す必要があるの。国民の立場から見れば怖くて寝ていられないじゃないの、こんなことをされたんじゃ。
 そこで、ひとつ私が、あなた方がやったことは違法であるという判例を示します。
 きょうわざわざ調査室から全部総がかりで調査をしてもらった。そうしたらこういう判例が出てきた。「裁判官が捜索差押許可状を発布した一事からは、嫌疑につき相当な理由があるとは認め難いとして、捜索の違法性を肯定した」と。いいですか。だから、裁判官が許可状を出したからといって、それに基づいて捜査したからといって適法性は推定できないというのですよ。請求の違法性、そのことはあくまでも請求した人にあるというのが判例なんです。それが一つ。この判例は、熊本地裁昭和五十七年の判例です。
 それからいま一つ判例があるんだ。これと同じのを今読み上げたら、もう時間がないから事件番号だけ申し上げますよ。これは那覇地裁昭和四十七年の事件です。これは「公務執行妨害等被疑事件につき、報道写真家を被疑者としてなされたフィルム、ネガの差押を違法として慰藉料請求を認容した」、こういう事件でございまして、これはやはりこの人は犯人だ、こう間違って令状をもらってネガを取り上げた事件。これも人違いだったのですね。ですから、これについては違法だよ、こう言っているわけです。
 したがいまして、この二つの判例から見ると、今回のあれはもう完全に違法なんでございますから、世間に適法だ適法だなんて言わぬでくださいよ。違法行為をしたから申しわけないと言ってくださいよ。
 どうしても私の言うことが間違いだったら、どうぞひとついつでも論議をいたしたいと思っております。私は、こうやってちゃんとこれだけの資料をもとにしてやっているわけでございます。
 違法なんですよ。違法だから国民に迷惑をかけたのですよ。適法で国民に迷惑をかけるなんという法律はないです。全部国民のためになっているのが適法で、国民には迷惑をかけない。国民は必ずしも喜ばぬけれども、適法であっても。違法であるから迷惑になるのです。これだけはよく警察庁の方は御理解をいただかないといかぬと思っております。
 さて、その次に、本当にこの問題はどういうふうに解決されるつもりですか。おれらは適法なんだ、おまえらからとったものは返すぞ、それで終
わりだ、こう言うつもりですか。これは何らかの処置をしてもらわぬといかぬですよ。国会議員も、こういう国民の人権上の問題だ、もうあらゆる政党の先生方、だれ一人こんなことを許容するはずありませんよ。
 この問題をどうするつもりですか。課長さんに聞いてもちょっと無理かもしれませんが、課長さん、本当に人間的な立場で御答弁ください。これで終わりますから。それから、ほかのところも大変申しわけありませんでした。こういう事情でございますから。どうぞ。
○瀬川説明員 お答えをいたします。
 今回の問題につきましては、何度も繰り返しになるようで恐縮ではございますけれども、こういった捜査において私どもが最も信用をし、そして判断の最大のいわばよりどころとする公務所からの公文書による回答というものが、本来これはあってはならない誤りがあったということが原因だろうと思います。
 私が申し上げておりますのは、私どもの捜査は法の定めた手続にのっとって、そのルールに基づいて行ってきたということでございます。ただ、その結果として大変関係者の方に御迷惑をかけることになったということで、大変私どもとしても残念に思っているということをぜひ御理解をいただきたいと思います。京都府警といたしましても、こういった事情が判明をした時点で直ちに捜査を打ち切り、そして同時に直ちに関係者に連絡をさせていただきましてその間の事情を御説明をし、押収した品の還付を大至急進めるというふうにするなど、私どもとしては誠意を持ってこの事後の措置を講じておるというふうに御理解をいただきたい、こう思います。
 また、なぜこのような本来あってはならないといいますか、予想もできないようなことが起きたのか、こういった事案の再発を防止するための方策があるのかといったことについても検討し、今後の捜査に生かすものがあれば生かしてまいりたい、このように真剣に考えているところでございますので、どうか御理解をお願いいたしたいと思います。
○坂上委員 済みません、もう時間が過ぎているのですが、また余計なことをおっしゃるものだから、一言言っておくわけです。とてもじゃないが承知できませんよ、私はあなたの答弁は。こんなもの、だれに聞いたって、だれ一人先生方はそうだそうだなんて言いませんよ。(発言する者あり)まあ、たった一人だ。いいですか、あとはみんな。こういうことの捜査が許されていいはずはないのですから、もう少し検討をきちんとしてください。
 どうも時間を過ぎまして……。
○高橋委員長 正森成二君。
○正森委員 私は外国弁護士関係法について質問させていただきますが、きょう席で聞いておりますと、私が質問通告した点について幾つかは同僚委員が質問し、永井さんですか、詳細に御答弁になっているようですから、そういう点は時間の節約上省略させていただきたいと思います。なお、私が席を離れていた間にお聞きになったことで重複する部分があるかもしれませんが、それはお許し願いたいと思います。
 まず第一に、昭和二十四年に弁護士法が制定されましたが、そこでは外国弁護士関係についてどういうように規定していたか、簡単に述べてください。
○永井(紀)政府委員 この昭和二十四年に制定されました弁護士法では、第七条におきまして外国弁護士受け入れ制度を認めておりまして、二つの種類の外国弁護士を認めておりました。一つは外国の弁護士となる資格を有し、かつ、日本国の法律につき相当の知識を有する者は、最高裁判所の承認を受けて弁護士と同じ業務ができる、こういうグループと、もう一つ、外国の弁護士となる資格を有する者は、最高裁判所の承認を受けて、外国人または外国法に関してやはり弁護士と同じような仕事ができる、こういうような極めて特異な規定をしておったわけでございます。
○正森委員 これはほとんど他国にも例を見ない規定で、占領下のためにそういうことになったんだというように言われているわけであります。だから、我が国の法曹資格のない者が、日本人に関係することで日本法に関することも全部できるというようになっていたわけですね。
 そこで、昭和三十年に改正されたと思いますが、それはどういう項目で、なぜですか。
○永井(紀)政府委員 ただいま委員がお話しのとおり、この七条の弁護士受け入れ制度というのは極めて一方的に寛大な制度であって、当時の諸外国との均衡という意味からも、我が国に独立国としての実質が備わってくるに従って、やはり廃止されるということが望ましいのではないかということで、昭和三十年の第二十二国会にこの七条を削除する法律案が提出されております。この提案理由につきましても、外国人であっても日本の試験に合格すれば弁護士となれるんだから、今さらこういうような弁護士制度は認める必要はない、そういう趣旨で削除するということが提案され、これが可決されたと聞いております。
○正森委員 一口に言えば、独立国としてふさわしくないということで、昭和三十年に改正されたわけですね。
 その後、昭和六十一年に相互主義を原則として外弁法が制定されたのは御承知のとおりであります。ところが、今回の改正を見ますと、これは貿易障壁の一種だ、最恵国待遇というようなことで、相互主義というものを大幅に緩和するということですが、これはどういうように評価されますか。下手をすると昭和三十年以前の考え方に逆戻りするということになるんじゃないんですか。
○永井(紀)政府委員 昭和三十年当時の世界的な弁護士の動きといいますか、動向というものと最近とは随分違ってきておりまして、やはり世界的に、特に国際商事的な取引を通じまして国際的な弁護士が流動的に活動していく、こういう事態が非常にふえてまいったわけでございます。やはり昭和六十一年制定の現行外弁法自体が相互主義を採用したのは、それなりの理由があったわけでございまして、我が国の弁護士を受け入れる国の弁護士となる資格を有する者にだけ我が国の活動を認める、こういうことによりまして、諸外国に対して我が国の弁護士に対する門戸を開くように働きかけるという趣旨では非常にいいわけでございます。
 ただ、これは一方では相手国の制度いかんによってその待遇を変更していくという問題がございまして、最恵国待遇原則というものとは次第に矛盾することになってくるのではないか、そういう観点からの議論がされたわけでございます。
○正森委員 江尻さんという弁護士さん、これは私も知っている方ですが、朝日新聞の「論壇」に投稿されているのですが、そこではこう言っているのですね。よく御存じだと思いますが、「米国の弁護士は州単位で資格を与えられるが、大多数の州では外国弁護士との共同経営はおろか、外国弁護士の進出すら認めていないことである。しかし米国政府は、ある州が日本の弁護士の進出を認めれば日本もその州の弁護士を受け入れるべきであるとし、日本国と州を同一レベルで扱うよう求めている。」こういうように言っているのです。これは言葉の表現は必ずしも正確ではないかもしれませんが、事の本質としてはそういうことなんですね。日本を第五十何番目の州と考えるというのと同じことになるのではないかというのが、弁護士会などで非常に反発をした大きな理由なんです。
 そして、日本の弁護士法には、弁護士の使命というのは社会正義の実現と基本的人権の擁護というようになっていますが、アメリカの弁護士というのはそういうのと著しく反する、あるいは異なる原則のもとに動いているということが言われているんですね。例えばここにジュリストの一九九三年三月十五日号に載せられました吉川さんという弁護士、これは外国弁護士問題研究会に参加されている方のレポートがあるんですが、それの中に出ている非常に興味深い点を幾つか言います
と、アメリカの法曹人口約七十五万、その中には裁判官や検事も入っていますから、それを除きました、いわゆる日本における弁護士活動をやっている、プライベートプラクティスを行っている弁護士と言われますが、それが大体五十四万人はおる。それで、アメリカ以外の十九の主要国の弁護士人口は四十七万余りだ、だからアメリカ一国でその他の文明国の全部を持っておるような状況だ。アメリカの司法試験はバーエグザミネーションと言われるようですが、言ってみれば、日本での運転免許みたいなもので、受けた人は、大学をまともにやっていればほとんど全部通るという試験だ、これは事実、外国弁護士問題研究会でいろいろなことをよく知っている人が書いているわけなのです。だから、こんなことを言うたらいけませんが、質の点で非常に問題があって、差が甚だしいのですね。ハーバードとかそういうような一流のところを出て一流のビジネスローファームに就職しているような弁護士と、自分の出身地の田舎などで、ソロプラクティショナーと言われるそうですが、一般の市民を対象にした離婚事件だとか遺言だとか簡単な刑事事件をやっている弁護士とでは、言うたらいけませんけれども、雲泥の差がある。だから、そういう者を一緒にして、外国で五年の経験があるとか日本で二年間働いたというようなことで資格を与えるということは、やはり非常に問題があるのじゃないかというように思うのです。
 それから、もう一つ言われておりますのは、私はこの論文を見て意外だったのですが、アメリカの弁護士業務というのはアメリカでは最重要産業になっているのですね。ここに書いてある資料によりますと、アメリカの弁護士業界の付加価値、総所得は、少し古いですが一九八六年で五百四十億ドル、これが百十円で換算すると、約六兆円であります。ところが、これに対して鉄鋼業界全体の付加価値が三百億ドル、繊維業界が三百八十億ドル、自動車及び出版業界が五百億ドルということで、弁護士産業というのはアメリカでももう最大の産業になっておる。しかも、これはハウスカウンセルという個人的なそういう収入は入っていないので、それを合算すると八百億ドルになるだろうというように言われているのですね。
 ですから、こういう弁護士の収益を広げるということで、アメリカのUSTRなどが貿易障壁の一種だということでどんどん侵入してくる。だから、そこには社会正義の実現とか基本的人権、そういうものの擁護という観点が非常に低い。だからアメリカの弁護士の行動原理というのはビジネスのような原理で、プロクェッションということから離れてきた、そして利益追求マインドが非常に高くなったということが、この論文には書いてあるのですね。だから、アメリカの弁護士の中にはサービス産業という意識が強くて、自分が司法の一翼を担っておるという観点が非常に薄れておるというのが、この弁護士の論文の趣旨であります。
 そういうぐあいに考えますと、相互主義を緩和し、あるいは一定の条約あるいは約束をした場合にはそれを外すというようなことはいかがなものかと思うのですが、いかがですか。
○永井(紀)政府委員 確かに現行外弁法の相互主義によりまして、米国の弁護士であっても、外国弁護士受け入れ制度を持っております約十六の州と区以外の州を母国とする米国の弁護士については入れなかった、これを緩和するのだから当然ある程度ふえるだろう、この点は多分そうであろうと通常は考えられるのです。
 ただ問題は、これまでのアメリカの弁護士の受け入れの状況を見ますと、大多数は、午前中にも申し上げましたけれども、経済的な面で有力な州であったり、あるいは日本と非常に結びつきの深い州で、特にニューヨーク州、カリフォルニア州、もうほとんどそれと、そのほかワシントンDCといいますか、コロンビア特別区、そういうところがほとんどでございまして、いわゆる受け入れ制度を持っていないような州から弁護士が来たいという照会もほとんどないわけでございます。特にこの受け入れを持っていないような州の人が、今度本当に相互主義が緩和されたからといって来るかというと、やはりこれも俗な言葉で言うと、ほとんどペイをしないであろう、そういうことがあります。現実にも、アメリカで取得した弁護士さんは自分の州で、あるいはほかの州でも動けるわけですから、そこでやるより日本へ来た方が非常に制限されているわけですから、わざわざ来るかな、来る以上は、多くの弁護士はやはりローファームなり資金力をある程度背景にして来る、そういう形の弁護士でなければ、そういう意味では、ある程度優秀な弁護士が来るのではないか、今までの例も大体そういう感じでございまして、いわば受け入れ制度もないような州から本当に来るかなというのが疑問である、これは弁護士会の先生方もそうおっしゃっているところでございます。
○正森委員 今の答弁は非常に親切に答えてもらったのですが、実態面からそうなるだろうと言っているので、法制度としてはそういうところもやってくるということだと思いますが、あえてその点は申しません。
 それで、今同僚委員に対する質疑の中で聞いておりますと、第四十九条の雇用禁止の理由は、外国法事務弁護士には日本法を取り扱うことを認めていない、これを認めれば弁護士を通じて日本法に介入することになるという意味のことを、たしか永井さんは答弁されたと思います。
 それで、今回共同経営を大幅に緩和した内容としては、一方、渉外事件について利益といいますか、収益を分配できるということが本質だ、継続して共同事業を行い利益分配することだという意味の答弁をされたと思います。
 そうしますと、共同経営の推進、それからローファーム名称の使用許可など、今回の改正の措置が、力のあるアメリカのローファーム、これは弁護士を千人も持っているというのがあるのですから、そういうのが結局日本の弁護士を実質的に雇うことにつながらないか。私も弁護士ですから知っているのですけれども、収益配分の力というのは何かといえば、結局事件を獲得してくる力なんです。俗にイソ弁と言われて居候弁護士というのがいますが、日本でなぜそういう制度があるかといえば、弁護士なりたての人は事件を持ってくる力がない、そこで親弁護士のところに行って修行している間にだんだんお客がついてきて、それで自分の収益を賄うに足るようになるところで独立するということなんですよ。
 だから、実際上共同経営をやりまして、そしてアメリカとは限りませんが、特に国際的な企業、そういうところと結びついた外国弁護士がそこの関係の事件を持ってくる。そうすると、収益の配分をやるわけですから、共同している日本の弁護士というのは経営維持のためにはその点を配慮せざるを得ないという、収益力あるいは事件獲得力のそういう力を通じて、やはり介入が行われるという可能性があるのですね。
 それで今あなたは、四十九条の二の三項ですか、不当な関与をしてはならないという点について質問が行われて、それについて非常に詳細な御丁寧な答弁がありました。私はずっと聞いておりました。あなたの答弁は、なるほどそういうことで実体法的な意味も持つ、それから一方倫理的な意味も持つということですが、その点で私は、実態的な介入を行う根拠が今度の改正で与えられているのじゃないかという危惧を持つのです。
 それはどういうことかといいますと、今度の改正法では、従前ありました第三条の三号と六号を削除しておりますね。三号には「原資格国法以外の法の解釈又は適用についての鑑定その他の法的意見の表明」というのがあります。つまり、これを除いたことによって、共同経営をやっている外弁はこういう点について意見を言い、あるいは鑑定をすることができると解釈せざるを得ないのです。そうしますと、今私が言いました収益上の力と第三条の三号が除かれたということが両々相まって、実際上は日本弁護士を雇用しているのと同じような状況になるということにならないで
しょうか。
○永井(紀)政府委員 この外弁法第三条第一項の三号、六号に掲げます法律事務というのは、これは実は我が国の国益とか公益上の見地という問題で規制をしてあるわけではないのでございます。これは極めてある面で公益性がない職務でございます。ところが、今回の改正でも、これ自体は本来は外国法事務弁護士はやってはいけないことになっております。
 ただ、こういったことについては、弁護士の監督のもとに、その指導のもとにそれを補助することは、こういうことは割合それなりの意味のあることであるから、ここまでは許してもいいだろう。これはむしろ弁護士会の先生方の方が、むしろこのぐらいは許すべきであろうという観点からこういう意見になったわけでございまして、これで非常に崩れるというものではない、こういうふうに言われております。
○正森委員 必ずしも答弁に納得したわけではありませんが、法務大臣が来られましたし、金曜日の夕方でございますので、私の時間も若干残っているかもしれませんが、終わらせていただきます。
○高橋委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
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○高橋委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○高橋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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    〔報告書は附録に掲載〕
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○高橋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時十三分散会