第142回国会 本会議 第12号
平成十年二月十六日(月曜日)
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 議事日程 第五号
  平成十年二月十六日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説
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○本日の会議に付した案件
 橋本内閣総理大臣の施政方針に関する演説
 小渕外務大臣の外交に関する演説
 松永大蔵大臣の財政に関する演説
 尾身国務大臣の経済に関する演説
 中央社会保険医療協議会委員任命につき同意を求めるの件
 航空事故調査委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件
 労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件
    午後一時三分開議
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
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 国務大臣の演説
○議長(伊藤宗一郎君) 内閣総理大臣から施政方針に関する演説、外務大臣から外交に関する演説、大蔵大臣から財政に関する演説、尾身国務大臣から経済に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣橋本龍太郎君。
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 私は、将来の我が国を展望した上で、現在をいかなる時代と認識し、何を優先課題とすべきかを考え、冷戦後の国際社会に対応した外交、沖縄が抱える問題の解決、行政改革を初めとする六つの改革に全力を傾けてまいりました。内閣総理大臣就任以来の二年余を顧み、我が国の進むべき方向を見据え、今何をなすべきか、改めて率直に申し上げたいと思います。
 まず第一は、この十年来の経済面の困難を克服し、また、制度疲労を起こしている我が国のシステム全体を改革することであります。
 経済のボーダーレス化、人口の少子・高齢化など内外情勢が大きく変化する中で、我が国がより安定した発展を続けていくために改革を先送りすることは許されません。
 私は、自立した個人が夢を実現するために創造性とチャレンジ精神を十分に発揮できる国、また、内外のさまざまな変動に機敏にかつ柔軟に対応できる国を築きたい、年長者を敬い、親から子へと心の大切さや生活の知恵を伝えていくことのできる社会、そして、豊かな自然や伝統、文化を大切に守り、伸ばしていけるような社会をつくり上げたい、心からそう思っております。私が進めている改革はこうした認識に基づくものであり、内閣の総力を挙げ、どのような困難があってもやり抜く決意です。
 第二は、この国の将来を担う子供たちのことであります。
 明治以来、教育は、親や地域だけではなく、国が積極的に関与すべき課題とされ、今や我が国の学校教育は平均的には世界最高の水準にあると言われます。しかしながら、暮らしが豊かになり、家庭の役割が変化し、進学率が上昇する中で、受験戦争やいじめ、登校拒否、さらには青少年の非行問題が極めて深刻になっております。
 今、子供たちは本当に悩み、救いを求めていると思います。家庭にも学校にも居場所を見つけられず、進学や就職のこと、友達づき合いや男女交際のことで悩んでも、相談相手が得られない、解決を見出せないというのが厳しい現実でありましょう。
 しかし、この問題を放置すれば将来に禍根を残すことは間違いありません。大変難しい課題でありますが、子供たちのために何をすればよいのか、皆様とともに考え、真正面から取り組んでまいります。
 第三は、冷戦後の国際秩序を模索する世界の動きに的確に対応した外交であります。
 第二次世界大戦後の世界を分断した東西対立は過去のものとなり、日ロ関係の抜本的な改善を初め、我が国の外交が広がりを持つとともに、アジア太平洋地域の平和と安定がますます重要になっている今日、こうした認識に立って主体的な外交を進めます。
 この三点を念頭に置いて施政の方針を明らかにし、国民の皆様の御理解と御協力をいただきたいと思います。
 我が国は、一九八〇年代半ば以降、急激な円高、その後のバブルの発生と崩壊という経済の大きな変動を経験しました。特に、バブル崩壊の過程では地価の下落、土地の需給の不均衡、不良債権問題の深刻化、企業の財務状況の悪化が進み、さらに昨年の夏以降、アジア各国においては通貨・金融面の混乱、国内においては金融機関の破綻などが相次ぎました。これらの問題を克服し、経済の停滞から一日も早く抜け出し、力強い日本経済を再建しなければなりません。
 そのためには、まず、金融システムの安定と景気の回復が必要であり、同時に、経済構造改革を初めとする構造改革が不可欠であります。財政構造改革の必要性も何ら変わっておりません。そして、経済金融情勢の変化に応じ臨機応変の措置を講じ、景気の回復を図ることもまた当然であります。
 今国会においては、金融システムの安定を図るとともに、一日も早く景気を回復するため、九年度補正予算と関連法案の成立に全力を挙げてまいりました。議員各位の御協力にお礼申し上げるとともに、既に実施している緊急経済対策、二兆円規模の特別減税、九年度補正予算に加え、金融システム安定化対策の迅速かつ的確な執行に努めます。
 十年度予算においては、社会保障、環境、科学技術、情報通信など、国民生活の安定と経済構造改革に資する予算を確保するとともに、公共投資を重点化、効率化し、過去最大の五千七百五億円、一・三%の一般歳出の減額と一兆千五百億円の公債減額を行っております。
 また、国鉄長期債務の処理、国有林野事業の債務の処理を含めた抜本的改革の実現を図ることとしております。
 景気回復を確実なものとするためにも、十年度予算の一日も早い成立に御協力をお願いいたします。(拍手)
 金融システムの信頼は、行政、金融機関、金融・資本市場の参加者が責任を全うすることによって得られます。行政の責任は、金融システム安定化対策を速やかに実施し、また、透明かつ公正な金融行政を遂行することであります。この重大な時期に、大蔵省職員、大蔵省出身の特殊法人役員が不祥事を起こし、金融行政のみならず、行政全体に対する信頼を著しく損ないました。事態を厳粛に受けとめ、大蔵大臣のもと、徹底した内部調査と関係者の厳正な処分を行い、綱紀を正し、不祥事を繰り返す土壌を根本から改めます。
 さらに、いわゆる公務員倫理法の制定を期します。金融行政に関しては、客観的かつ公正なルールに基づく透明な行政に転換するとともに、民間専門家の登用、外部監査の活用などにより、厳正で実効性のある金融検査を確立します。
 金融機関に対しては、経営の徹底した合理化を強く要請するとともに、国際的に通用する水準の経営情報の開示を求めてまいります。また、破綻した金融機関の経営者の責任が厳しく問われることは当然であります。
 こうした取り組みを進めながら、働いて蓄えた資産を有利に運用することができ、また、事業のリスクに見合ったコストで必要な資金を調達することができる公正かつ効率的な金融システムを目指し、株式売買の委託手数料の完全自由化と証券デリバティブの全面解禁、公正な証券取引ルールの整備などを行います。
 金融システムの改革の進展に合わせ、金融関係税制については、十年度に有価証券取引税の税率の半減などを行うとともに、十一年末までに見直し、株式等譲渡益課税の適正化とあわせて有価証券取引税を廃止することとしております。
 次に、経済構造改革について申し上げます。
 私が目指す力強い日本経済は、透明性の高い市場における活発な競争を通じて人と技術が磨かれ、資金が循環し、これら三つが将来性のある分野におのずと集まる経済、個人消費と民間投資が主役となって成長し質の高い雇用の場をつくり出す経済であります。これからの日本は、福祉、情報通信、環境などへのニーズがますます高まり、産業はこうした需要にこたえていかなければなりません。また、企業活動の場としての我が国の魅力を高めるために、物流、運輸や、電力、石油などのエネルギー、情報通信などの分野で、コストを含めたサービス水準が二〇〇一年までに国際的に遜色のないものとなるよう、徹底した規制の撤廃と緩和を行います。
 十年度税制改正においては、法人税及び法人事業税の基本税率などを引き下げ、新規産業の創出を促し、国際競争力を持つ企業が活動しやすい環境の整備に踏み出しました。法人課税の水準を国際水準に近づけていくことが重要であり、このような観点も踏まえ、法人事業税における外形標準課税の問題についても検討を進めます。
 産業構造が変化し、終身雇用と年功序列を基礎とした雇用慣行が見直される中で、労働形態の多様化を進めることは、人々が生きがいを持って働くためにも、国全体の生産性を高めていくためにも重要な課題であり、転職をより容易にし、転職に伴う不利をなくすための制度改革、労働基準法の改正、能力開発のため主体的に努力する方々への支援、高齢者の雇用促進に力を入れます。また、企業倒産により生ずる雇用問題には機動的に対策を講じます。
 技術の面では、産学官の連携による研究開発とその成果の活用、適切な知的財産権の保護により新規事業の創出を図るとともに、我が国の競争力の源泉である物づくりを支える技術と技能、中小企業の人材の育成に努めます。
 農林水産業と農山漁村の発展は、経済構造を改革する上でも、食糧の安定供給、自然環境や国土の保全のためにも極めて重要であります。昨年取りまとめた新たな米政策を推進するとともに、新しい農政の基本法の制定に向けた検討を進めるなど、農政の抜本的改革に取り組んでまいります。
 冒頭申し上げましたように、ナイフを使用した殺傷事件、薬物の乱用、学校でのいじめ、性をめぐる問題など、子供たちが直面する問題は極めて深刻であり、現象面にのみ目を奪われることなく、根底にある問題を真剣に考えなければなりません。子供たちには、この世に生をうけて本当によかったと思ってほしい、みずからの目標に向かって邁進してほしい、成長してから社会が抱える問題に積極的にかかわってほしい、心からそう思います。
 家庭と学校がお互いの責任を強調しても問題を解決することはできません。子供たちがなぜこうした行動に走るのか、家庭、学校、地域、さらにはマスメディアなどを含め、皆が手を携えて取り組むためにどうすればよいのか、それぞれの経験、意見を持ち寄り、幅広い観点から議論し、今こそ大人の責任で対策を考え、実行しなければなりません。
 常識、知恵、知識を身につけるための教育が、いつの日からか、皆が同じようによい学校に入り、よい仕事につくための手段になり、私たちは、いわゆるよい子の型に子供たちをはめようとする親と教師になっていないでしょうか。偏差値より個性を大切にする教育、心の教育、現場の自主性を尊重した学校づくり、中高一貫教育など選択肢のある学校制度、子供たちの悩みを受けとめられる教師の養成など、教育改革を進める上でも、このような問題意識を十分反映させていかなければなりません。
 六つの改革が前提とする個人は、自立した個人です。社会を明るくし未来を切り開く源はそうした個人の夢と希望であり、それをかなえるために努力する姿は本当にすばらしいものです。開催中の長野冬季オリンピックと、引き続き行われるパラリンピック、そして六月のワールドカップ・サッカー大会における日本選手の活躍を心から期待いたします。そして、子供たちがこうしたすばらしい活躍に胸を躍らせ、それぞれの地域でスポーツ、文化、ボランティアなど、好きなことに打ち込み、個性と能力を伸ばしていく、そのような社会をつくりたいと考えております。
 個人の幸福と社会の活力をともにかなえるためには、個人が相互に支え合い、助け合う社会の連帯を大切にし、人権が守られ、差別のない公正な社会の実現に努力しなければなりません。
 中でも、男は仕事、家事と育児は女性といった男女の固定的な役割意識を改め、女性と男性がともに参画し、喜びも責任も分かち合える社会を実現することは極めて重要であり、そのための基本となる法律案を来年の通常国会に提出いたします。労使の方々にも、働く女性が性により差別されることなくその能力を十分に発揮することができるよう、御理解と御協力をいただきたいと思います。(拍手)
 社会保障、福祉政策はこれまで大きな役割を果たし、我が国は世界一の長寿国となりました。社会保障に係る負担の増大が見込まれる中で、国民皆年金・皆保険制度を守り、安心して給付を受けられる制度を維持していくためには、少子・高齢化や経済成長率の低下という環境の変化などに対応し、改革を進めなければなりません。年金については、来年の財政再計算に向けて、世代間の公平、公私の年金の適切な組み合わせを考えながら、将来にわたって安定した制度づくりを行います。
 医療については、いつでも安心して医療を受けられるよう、医療費の適正化と負担の公平の観点から、薬価、診療報酬の見直しを初め抜本的な改革を段階的に行います。こうした改革を進める上では、国民の皆様の声を政策の立案過程から十分に伺い、議論を尽くし、結論を出します。
 また、子育てや介護を担う方への支援を充実するとともに、介護保険制度の円滑な施行に向けて、施設の整備、人材の確保に努めます。ハンディキャップを克服し自立した生活を送ろうと努力する障害者の方々など、真に手を差し伸べるべき弱い立場にある方を支援することは当然であります。
 かけがえのない環境、国土、伝統、文化を大切に守り、暮らしの安全と安心を確保することは国の果たすべき役割であり、中でも地球環境を守り子孫に引き継ぐことは最も重い責任の一つです。
 昨年の十二月、世界は地球温暖化の防止に向けて大きな合意をいたしました。その合意を実現するために、省エネルギー法の強化などによる省エネルギーの徹底、原子力、新エネルギーの開発利用の促進、革新的な技術開発、途上国の支援などに取り組んでまいります。国民の皆様にも、ライフスタイルの見直しを初め、できる限りの御協力をお願いします。
 また、限られた資源を有効に活用し、廃棄物を減量するため、家電製品などの再商品化に関する法整備を初め廃棄物処理対策、とりわけリサイクルを一層強力に推進いたします。さらに、ダイオキシン類の排出抑制、いわゆる環境ホルモンの問題への対応、新型インフルエンザなどの感染症対策など、人の健康と自然環境を脅かす新たな問題や、科学技術の進歩に伴う生命倫理の問題に精力的に取り組みます。
 二十一世紀は、時間や距離の制約なく、だれもが大量の情報をやりとりすることができる高度情報通信社会であり、その到来に向けた戦略的な対応が必要です。政府としては、電子商取引の本格的な普及、西暦二〇〇〇年問題、いわゆるハイテク犯罪など情報化をめぐる諸問題に適切に対応するとともに、ネットワーク・インフラの整備、教育、医療など公共分野の情報化、利用者本位の行政の情報化を推進いたします。
 これからの国土政策の基本は多軸型の国土構造を形成していくことであり、新しい全国総合開発計画を策定し、首都機能移転問題への取り組みも含め実施してまいります。あわせて、ゆとりある国土空間と恵まれた自然環境を生かした北海道の総合開発計画を推進いたします。
 社会資本整備については、国が関与する事業を重点化、効率化するとともに、民間の参加を期待することができる分野に新たな手法を導入してまいります。土地税制の見直し、不動産の証券化、大都市における容積率の見直しなどにより、民間部門の建てかえや再開発、そして不良債権の処理、経済の活性化にも資する土地の有効利用を促進し、職と住の両面における都市の利便性、快適性を高めます。
 中心市街地の活性化対策、大型店と地域社会がともに栄えるために実効性のある政策を行い、地域コミュニティーの発展を支援します。さらに、国民共通のよりどころ、豊かな心をはぐくむ源である伝統、文化、芸術、工芸を大切に守り、育ててまいります。
 危機管理、災害対策に関しては、在ペルー日本国大使公邸占拠事件、ナホトカ号重油流出事故などの教訓を踏まえ、初動体制の整備、内閣の体制の強化などを行い、万全を期します。阪神・淡路大震災の被災地の復興にも最大限の努力を続けます。また、市民生活を脅かす銃器犯罪や薬物の乱用、組織犯罪、さらには公正な金融・経済秩序の信頼を損なう行為に厳正に対処するとともに、暴力団やいわゆる総会屋などの反社会的勢力を根絶するよう断固として対処します。また、発生件数が五年連続して増加している交通事故の防止対策を推進します。
 次に、外交であります。
 まず、焦眉の急となっているイラクの大量破壊兵器の廃棄をめぐる問題に関しては、関連する国連安保理決議に基づき、国連特別委員会の査察が即時、無条件に実施されることが必要であります。外交努力を続けながら、米国を初め関係国と協調して対処する方針であります。
 アジア太平洋地域の平和と安定は我が国外交の最大の課題でありますが、昨年夏以来のアジア各国の通貨・金融市場の混乱は、この地域の経済に深刻な影響を及ぼしているだけでなく、世界経済に不安定感を与えております。アジア各国が潜在的な力を発揮し、再び力強い経済成長を続けるには、透明な市場原理に基づいてみずから富を生み出すことのできる、すそ野の広い経済を目指した経済、産業構造改革を進めることが重要であり、IMFを中心とする国際的な枠組みを基本とし、関係国、関係国際機関と連携しながら対応してまいります。
 アジア太平洋地域の平和と安定のためには、日本、米国、中国、ロシアの四カ国が、信頼と協調に基づく関係を構築していくことが重要であります。
 そのような中で、私がまずもって重視するのは、ロシアとの関係の抜本的改善であります。四月にはエリツィン大統領の訪日が予定されています。大統領との間に生まれた信頼関係を一層強固なものとし、橋本・エリツィン・プランを含め、昨年十一月のクラスノヤルスク首脳会談の成果を着実に具体化しながら、二〇〇〇年までに、東京宣言に基づいて平和条約を締結し、両国関係を完全に正常化するよう最大限努力いたします。
 また、日中平和友好条約締結二十周年を迎え、江沢民国家主席の来日が予定されている中国との間では、さまざまなレベルにおいて対話を深め、日中友好関係をさらに発展させるとともに、中国と国際社会との一層の協調を促してまいります。
 韓国との間では、漁業協定締結交渉など懸案を抱えておりますが、より広い視点から金大中次期大統領との信頼関係を確立し、さまざまな分野での交流、協力を進めてまいります。
 北朝鮮に関しては、朝鮮半島の平和と安定に向け、韓国などと緊密に連携しながら、拉致疑惑や日本人配偶者の故郷訪問、国交正常化交渉の再開、KEDOの問題などに真剣に取り組みます。
 アジア太平洋地域の平和と安定のためにも、ユーラシア外交を進めていくためにも、基軸となるのは日米関係であり、安全保障、政治、経済にわたる幅広い関係をさらに発展させてまいります。特に、日米安保体制の信頼性の向上は、我が国の安全にとって不可欠であるとともに、アジア太平洋地域全体の平和と安定につながるものであり、新たな日米防衛協力のための指針の実効性を確保するための作業を着実に進めてまいります。
 アジア太平洋地域における米軍のプレゼンスが地域の平和と安定に不可欠である状況のもとで、沖縄の方々が長年背負ってこられた負担に思いをいたし、沖縄が抱える問題の解決に全力を傾けたい、中でも普天間飛行場は市街地にあり、この危険な状況をほうってはおけない、だからこそ、私は、SACO最終報告を取りまとめ、普天間飛行場の返還を可能にする最良の選択肢として代替へリポートの建設を提案いたしました。今でもそのような私の思いは同じです。米軍の施設・区域の整理、統合、縮小に引き続き全力を挙げ、代替へリポート建設に地元の御理解と御協力をいただけるよう粘り強く取り組みます。北部地域を含めた沖縄の振興にも最大限努力する決意であり、特別自由貿易地域制度の創設などを内容とする法案の成立を期します。
 我が国の防衛については、日本国憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に従い、文民統制を確保し、非核三原則を守るとともに、防衛大綱及び昨年末に見直した中期防衛力整備計画に基づき、節度ある防衛力の整備に努めます。また、ASEAN地域フォーラムなどの安全保障対話や防衛交流などにより、周辺諸国との信頼の醸成に努力してまいります。
 また、人口が増大する中で、食糧、エネルギー、環境などの問題を克服し、持続可能な開発を実現していくことは極めて重要であります。我が国としては、これらの課題に積極的に取り組むとともに、途上国の自助努力を支援するため、貧困対策と社会開発、環境保全、人づくりなどを重点として、質の高い援助を効果的に実施してまいります。地域紛争、軍縮・不拡散、難民、テロなどの問題についても、国連平和維持活動への参加などにより積極的な役割を果たすとともに、我が国の安保理常任理事国入りの問題を含め、この分野において大きな役割を果たす国連が、全体として均衡のとれた形で改革されるよう努力いたします。
 行政改革の目的は、国の権限と仕事を減量し、簡素で効率的な行政、機動的で効果的な政策遂行を実現すること、国民の皆様から信頼される開かれた行政を実現することであります。これは、同時に、住民に身近な行政をできる限り身近な地方公共団体が担えるようにすることであります。
 地方分権に関しては、今国会中に政府の推進計画を作成し、確実に実施するとともに、市町村へのさらなる権限などの移譲、市町村の自主的な合併の積極的な支援、国と地方の役割分担に応じた地方税財源の充実確保、地方の課税自主権の拡大を図ります。地方公共団体に対しては、徹底した行財政改革に取り組むよう強く求めてまいります。
 また、新たな規制緩和推進三カ年計画を作成し、一層の規制の撤廃と緩和を進めます。これらの取り組みにより、国の権限と仕事を絞り込み、二〇〇一年一月には、一府十二省庁体制への移行を開始することを目指し、内閣機能の強化と中央省庁改革のための基本法案の成立を期します。新体制に移行する過程においては、現業の改革、独立行政法人制度の導入、郵便貯金などの預託の廃止を含めた財政投融資制度の抜本的な改革などにより、公務員の定員を含め、行政を大幅にスリム化するとともに、公務員制度のあり方を検討し、必要な改革を行います。
 今国会に提出する情報公開法案は、主権者である国民の皆様に、政策を評価、吟味し、御意見をいただき、政治と行政への関心を高めていただくために極めて重要であり、法案の早期成立をお願いいたします。また、開かれた行政への取り組みとして、動力炉・核燃料開発事業団の改革を行います。
 最後に、行政改革によって不透明な規制を廃し、社会が事後監視・救済型へと転換していく中で、国家の基礎を支える司法の機能が充実することは欠くことのできない課題であり、内閣としても積極的に協力してまいります。
 以上、私の所信を申し上げてまいりました。
 本年は、バブル崩壊後の最終局面を乗り越え、改革に向けて力強い歩みを進める年、すなわち「明日への自信を持つ年」であります。私は、この国と国民の力を信じます。私たちは、敗戦後の廃墟から立ち上がり、石油危機、円高などの国際情勢の激変や公害問題など、その時々の困難を乗り越えてきました。その熱意と知恵と努力があれば、解決できない問題はありません。(拍手)
 我が国の将来像、進むべき方向を示し、それを実現するために政策を実行するのは政治の使命であります。政治が国民の信頼を回復し、国民の期待にこたえていくために、与党三党は、政治腐敗の防止のための方策、議員の兼職禁止に係る行為規範の見直しなど、政治倫理などに関する協議を精力的に進めており、その結論に従い、清潔で活力ある政治の実現を図ります。
 私自身、政策を真剣に議論する政治を率先し、与党三党の協力関係を基本とし、政策によっては各党各会派の御協力をいただき、国民の皆様のために全力を尽くします。
 御臨席の各党各会派の議員各位、国民の皆様の御支援と御協力を心からお願い申し上げます。(拍手)
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○議長(伊藤宗一郎君) 外務大臣小渕恵三君。
    〔国務大臣小渕恵三君登壇〕
○国務大臣(小渕恵三君) 第百四十二回国会に当たり、我が国外交の基本方針につき所信を申し述べます。
 まず、私は、緊張の高まっているイラク情勢につき、一言申し上げたいと思います。
 大量破壊兵器の廃棄をめぐる、重ねての国連安保理決議を無視し続けるイラク政府当局のかたくなな姿勢は、平和を願う国際社会全体への重大な挑戦であると言わざるを得ません。イラクが保有しているとされるサリンやVXガス等の恐ろしさは、私たち日本人自身がわずか数年前に体験したばかりであります。このような大量破壊兵器の拡散が生じないよう、イラクが国連の全面的な査察を直ちに無条件に受け入れることが重要であります。我が国としては、外交努力をさらに続けながら、関係国と協調して対処する方針であります。
 二十一世紀まであとわずか三年を残すのみとなった現在、我が国を取り巻く国際情勢はいかなるものでありましょうか。冷戦終結後一時期の混乱を経て、民主主義と自由市場経済を大切にする基本的な考え方は広く世界に根づいたように思われます。さまざまな地域紛争も、今解決へ向けての進展が見られます。
 我が国が位置するアジア太平洋地域では、日米両国に中国、ロシアを加えた四カ国の間で活発な外交が展開され、新たな枠組みづくりの動きが芽生えております。しかし、その一方で、東アジア諸国が現在直面している経済問題のように、大胆な対応が緊急に必要とされる事態が生じております。
 このような情勢の中で、我が国外交が目指すべき方向をしっかり考えなければなりません。その際重要なのは、冷静な歴史的視点と、将来に対する的確な見通しであると思われます。私は、国際情勢の現状と変化を正しく見きわめ、二十一世紀の日本の姿を念頭に置きながら、我が国の外交に果断かつ積極的に取り組む決意であります。
 さて、我が国が位置するアジア太平洋地域を見ますると、地域の平和と安定の枠組みづくりを目指した日米中ロ間の協力を確保することが枢要であります。そのため、我が国としては、日本外交の基軸である日米関係の一層の強化に努めながら、日中関係の発展と日ロ関係の前進に向けて努力してまいります。また、このような四カ国の関係進展に伴い、将来四カ国が一堂に会して種々の議論を行うことも視野に入れておく必要があると考えます。
 良好な日米関係は、日米両国のためだけではなく、アジア太平洋地域、ひいては世界全体の安定と繁栄のために極めて重要であります。
 この日米関係の根幹をなす日米安保体制は、我が国の安全保障政策の重要な柱であるとともに、アジア太平洋地域の平和と繁栄を支える役割を果たしております。このため、その一層円滑で効果的な運用に努めていく必要があり、特に、新たな日米防衛協力のための指針の実効性を確保するための施策に精力的に取り組んでいくことが重要であります。
 また、普天間飛行場の返還、海上ヘリポートの建設を含めSACO最終報告の着実な実施が、沖縄県の方々の御負担を軽減するための最も確実な道であるとの考えに変わりはありません。今後とも、この最終報告の実施に向け、地元の方々の御理解と御協力を得るべく努力してまいります。
 もちろん、日米関係は、安全保障関係のみならず、経済、社会、文化等の広範な分野にわたる包括的な協力関係であり、これを全体としてさらに進展させるべく努力をいたしてまいります。
 中国との間では、昨年の両国総理による相互訪問に続き、日中平和友好条約締結二十周年に当たる本年は、江沢民国家主席の訪日が予定されております。今後とも、活発な要人往来や安全保障を含むさまざまな対話を通じて、相互理解と協力の一層の増進に努めてまいります。そして、中国のWTO早期加盟の支持や経済協力等を通じて改革・開放政策を引き続き支援し、また、遺棄化学兵器処理問題等の日中間に存在する諸懸案の解決に努力いたします。
 ロシアとの間では、クラスノヤルスクでの日ロ首脳会談において、東京宣言に基づき二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすことに合意いたしました。さらに、経済分野や安全保障等、各分野で均衡のとれた成果が達成され、両国関係はこれまでにない展開を見せております。
 昨年十一月のプリマコフ外相との会談では、両外務大臣を責任者として平和条約交渉を行うことで一致し、先般、平和条約締結問題日ロ合同委員会が設置されました。また、北方四島周辺水域における操業枠組み交渉は、昨年末、実質妥結に達しました。
 近く予定されます私のロシア訪問や四月に予定されるエリツィン大統領の訪日等の機会を通じ、さまざまな分野での協力を進めるとともに、領土問題を解決して平和条約を締結し、日ロ関係の完全な正常化を達成するため、今世紀に起こったことは今世紀中に解決するとの姿勢で橋本総理とともに努力を尽くす決意であります。(拍手)
 次に、朝鮮半島情勢は極めて重要な問題であり、韓国との友好協力関係は我が国外交の最も重要な柱の一つであります。
 韓国では経済的困難の克服が喫緊の課題となっており、金大中次期大統領もこの問題に全力で取り組んでおられます。両国間のさまざまな問題に適切に対処するとともに、国際社会においても緊密に協力し、友好協力関係をさらに発展させなければなりません。私は、昨年末、金大中次期大統領に対してこのような考えをお伝えし、積極的な反応を得ました。
 なお、漁業協定につきましては、まことに残念ながら最終的に意見の一致に至らず、先般、現行協定に従いこれを終了させる意思を通告しました。政府としては、今後とも、国連海洋法条約の趣旨を踏まえた新たな漁業秩序を早期に確立するとの決意のもと、新たな協定を早期に締結すべく交渉を続けてまいります。
 北朝鮮につきましては、その情勢を鋭意注視しつつ、また、拉致疑惑や日本人配偶者の故郷訪問など、諸懸案の解決に取り組みます。そして、朝鮮半島の平和と安定に資する形で日朝間の不正常な関係を正すべく、韓国等と緊密に連携しながら対処いたします。また、四者会合本会談の開始を歓迎するとともに、引き続きKEDOの活動に積極的に取り組んでまいります。
 昨年来、東アジア諸国が直面している経済困難への適切な対処は、この地域共通の枢要な課題であります。この問題は、近年地球的規模で相互依存が進展する中で発生したものであり、世界経済全体に不安定感を与えておりますが、国際社会が保護主義の台頭を抑え、一体となって対応することが急務となっております。我が国に対する期待も高まっており、これまで、関係各国、国際機関とも連携をいたしまして、タイ、インドネシア、韓国に対する支援を行ってまいりました。東アジア各国が現在直面する困難の解消に協力し、相互の関係を一層強固にすることが重要であります。
 我が国は、世界第二の経済大国、そして地域における最大の経済主体として、今後とも主要国首脳会議等の場を通じ、リーダーシップを発揮してまいります。この地域の経済は、健全なマクロ経済運営及び構造改革によりさらなる成長が可能であり、我が国自身、厳しい国内経済情勢ではありますが、国際社会からの期待にできる限りこたえていく決意であります。
 広く世界に目を転ずれば、新たな国際秩序の構築過程において、欧州統合の進展は国際社会全体に重要な影響を及ぼすものであり、欧州との協力関係はさらに重要となります。各種外交日程、文化行事などを通じ、日欧関係の一層の強化のため努力してまいります。
 中南米諸国につきましては、民主化と経済発展を重視し、貧困、環境等の問題解決のために支援を強化します。中東におきましては、中東和平プロセスの支援等を通じ、地域の平和と安定に貢献してまいります。アフリカ諸国との関係では、開発と安定の両面からアフリカ諸国の自助努力を支援することが重要であり、本年十月には我が国で第二回アフリカ開発会議を主催いたします。シルクロード地域に対しては、政治対話の強化や経済協力を通じて国づくりの努力を支援してまいります。
 このように、私は、さまざまな諸国との関係強化にきめ細かく努め、外交の幅を広げてまいります。
 二国間関係の強化と並行して、アジア太平洋での地域協力の推進も重要であります。経済面ではAPECが、現下の東アジア経済情勢のもとでも、貿易・投資の自由化、円滑化を推進するなど重要な役割を果たしております。安全保障面ではASEAN地域フォーラムが、信頼醸成に加え、予防外交について政府レベルでの検討開始を確認するなど着実な成果を上げております。また、本年四月には、アジアと欧州間の相互理解と協力のために大きな意義を持つ第二回アジア欧州会合が開催されます。
 次に、グローバルな視点から世界を見ますると、地域紛争、軍縮・不拡散、開発、環境、民主化、人権、国際組織犯罪、テロなどの課題が今まで以上に重要となっております。我が国は、これらをみずからの課題としてとらえ、平和な世界、繁栄した世界の構築のため積極的に役割を果たしてまいります。
 グローバルな問題への対処に当たり、重要な枠組みは国連であります。この国連が時代の要請に適合した役割を一層効果的に果たすよう、全体として均衡のとれた形での改革を早期に実現すべく最大限の努力を行います。我が国といたしましては、このような国連改革が実現される中で、憲法が禁ずる武力の行使は行わないという基本的考え方のもとで、多くの国々の賛同を得て、安保理常任理事国として責任を果たす用意があることは、これまで表明してきたとおりでございます。
 先般我が国が主催した紛争予防戦略に関する国際会議でも明らかにしたとおり、我が国は、地域紛争の予防から紛争後の国づくりまでを視野に入れて、国際社会の平和と安定のため、国連平和維持活動等に協力をしてまいります。この関連で我が国が和平成立に向け努力してきたカンボジアについては、本年七月の自由、公正な選挙の実施のため支援を行います。また、地域紛争に伴う難民問題についての支援を引き続き積極的に行う方針であり、政府予算案におきましても特に重点を置いております。
 世界平和のために大量破壊兵器の軍縮と不拡散は重要な課題であり、包括的核実験禁止条約の早期発効等に向け、真剣に取り組みます。
 私は、昨年十二月、対人地雷全面禁止条約に署名いたしましたが、政府としては、今後、条約の早期批准を目指す所存です。また、政府は、地雷除去や犠牲者支援のため、今後五年を目途に百億円程度の支援の実施を決定いたしました。さらに、人道的な対人地雷除去活動に必要な機材等の輸出については、これらを武器輸出三原則等の例外とし、その輸出を可能といたしました。今後、小火器を含む通常兵器の移転と過剰な蓄積の問題にも率先して取り組んでまいります。
 世界経済の発展に関しましては、国際社会がグローバリゼーションの恩恵を最大限に享受するよう、WTOを中心とする多角的貿易体制の強化が重要であります。
 同時に、開発途上国の発展を促すことが必要であります。政府開発援助は、そのために我が国が行う貢献の最も重要な柱であります。来年度政府予算案の中でODA予算は一〇・四%削減となっておりますが、政府としては、総合調整により予算の重点配分を行うとともに、国別の援助政策の充実、実施体制の改善、国民参加のODAの推進等、改革に大胆に取り組み、限られた財源で最大限に効果を発揮するよう努めます。そして、この改革の中で国民の皆さんとともにODAのあり方を考え、御理解を得ていきたいと考えております。
 また、世界経済にとり、中長期にわたるエネルギー政策も不可欠であり、資源開発に対する支援などを通じ、安定的なエネルギー供給に向けた取り組みにも参画してまいります。
 一方、持続可能な発展のためには、環境問題も各国が協力して取り組まなければなりません。我が国は、先般の地球温暖化防止京都会議におきまして、議長国として最大限の努力をしたところでございますが、地球全体の将来のために、今後とも積極的な役割を果たしてまいります。
 ますます多くの日本人が広く海外を旅行し、外国に在住されて、国際交流や国際貢献に大きな役割を果たされることを願ってやみません。しかし、日本と治安状況も異なる海外で、邦人が犠牲者となる痛ましい事故や事件が発生していることも記憶に新しいところであります。邦人の方々にこのような危険に御留意いただく中で、政府としても、海外における邦人の安全対策の強化に努めてまいります。
 以上、外交の基本方針につきまして詳細に述べてまいりました。今日の厳しい国内経済状況を前にして、我々はとかく内向きとなり、対外関係よりも国内の問題に目が向きがちであります。しかし、現在、平和にして豊かな我々の国民生活は、世界全体の平和や繁栄を度外視して維持することは不可能であります。外交は政府だけの力で行うものではございません。
 日露戦争後の我が国外交の方向を危惧したイエール大学の朝河貫一教授は、九十年前に日本の危機を論じたその著書の中で、我が国と外国との関係を決定するのは、究極のところ、外交に対する日本国民の理解いかんにかかるとの趣旨を述べております。これは、そのまま今日の外交にも当てはまると思います。
 平和で豊かな日本を、そして世界を次の世代へ引き継ぐために、日本の外交をどのように進めていくべきか、私は責任者の一人として、また一人の国民として、皆さんとともに考えていきたいと存じます。国民とともに歩む外交推進のため、皆様の英知ある温かい御支援、御協力を切にお願い申し上げるものであります。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(伊藤宗一郎君) 大蔵大臣松永光君。
    〔国務大臣松永光君登壇〕
○国務大臣(松永光君) 平成十年度予算の御審議をお願いするに当たり、財政及び金融行政の運営の基本的な考え方と予算の大要を御説明したいと思いますが、その前に、このたびの金融検査をめぐる不祥事について申し述べます。
 先般、大蔵省の金融検査部に所属する職員が収賄の容疑により逮捕されましたことは、大蔵省に対する信頼を著しく損なうものであり、ざんきにたえません。ここに改めて国民の皆様におわび申し上げます。
 今回の事態への対応については、これまでの国会審議の過程などで申し上げているところでありますが、まず、綱紀の保持を徹底するため、新たに金融服務監査官を大臣官房に設置いたしました。金融服務監査官は、民間金融機関等の検査・監督に従事する職員について、綱紀の保持状況の監視・調査を行うものであり、その際、弁護士に助言を求めることとしております。今後とも、この制度を活用し、綱紀の保持の一層の徹底を図ってまいります。また、現在、金融行政に関連する部局の職員と金融機関等の関係について大蔵省の内部調査を実施しておりますが、その結果を速やかに取りまとめ、問題がある場合には厳正に処分いたします。
 さらに、金融行政に対する信頼を回復するため、検査体制、行政手法等に関し、抜本的な改革を進めてまいります。
 金融検査については、厳正で実効性ある検査体制、手法を確立するため、検査の基本的なあり方を転換いたします。
 具体的には、早期是正措置の導入を契機として、金融機関による自己査定を前提としつつ、事後的なルール遵守状況等の把握に重点を置くほか、予告検査の導入等の新たな金融検査の手法を構築いたします。
 さらに、民間専門家の登用、研修の強化充実、主要国監督当局との人材交流等を進めることとし、早急に具体策を取りまとめ、実施してまいります。
 また、金融行政については、明確なルールに沿った透明性の高い手法に移行しつつありますが、こうした中で、さらに金融機関から意見を聴取したり、行政の考え方を説明するため、定例の金融連絡会を新たに設置いたします。これは、いわゆるMOF担の存在を必要としない行政に転換するとともに、行政の透明性を確保するための措置であります。
 私は、国民の皆様に信頼される新しい大蔵省をつくり上げるため、以上申し上げました措置を初めとする大蔵省の改革に全力を挙げて取り組んでまいる決意であります。(拍手)
 次に、財政及び金融行政の運営の基本的な考え方について所信を述べます。
 最近の経済金融情勢を概観しますと、個人消費が低調な動きとなるなど、家計や企業の景況感の厳しさが実体経済に影響を及ぼしており、景気はこのところ停滞している状況にあります。また、アジア地域の通貨・金融市場の混乱のほか、昨年秋以来、複数の金融機関の経営問題の表面化等を契機に、我が国の金融システムの安定性が大きく揺らぎかねない事態が生じました。
 こうした危機的な事態に機動的に対応するため提案いたしました平成九年度補正予算並びに特別減税及び金融システム安定化に関する法律について御賛同いただきましたことに感謝申し上げます。
 同補正予算に計上されました災害復旧事業等の公共事業や一般公共事業に係る国庫債務負担行為などについては、現在、鋭意執行に努めております。
 二兆円規模の特別減税については、給与所得者等に対して、今月の源泉徴収時から減税を実施しております。
 預金者保護と金融危機時における金融機関の自己資本充実を柱とする金融システム安定化のための措置については、国会における御審議を踏まえ、厳正かつ透明性の高い運用に努めてまいります。とりわけ、多くの御議論がありました金融機関の発行する優先株等の引き受けについて、その審査を公正、中立に行うため、金融危機管理審査委員会を可及的速やかに設置し、金融機関からの審査要請に直ちに応じられるよう体制を整備することにより、金融機関の自己資本の充実に向けた取り組みを進めてまいります。
 また、年度末に向けては、政府系金融機関の資金量を十分に確保するとともに、早期是正措置の弾力的運用などの方策を講ずることとし、資金供給の円滑化に努めてまいります。
 政府としては、金融システムの安定化と経済の回復軌道への復帰に向けて、これらの施策を適切に実行してまいります。
 経済金融情勢に対して機動的な対応を行うことと並行して、中期的な目標に向けた構造改革を着実に推進することも重要な課題であります。
 新世紀まであと三年となった現在、我が国経済社会は、本格的な高齢社会への移行、国際化・情報化の進展など、時代の大きな潮流変化の中にあります。経済社会を支えてきた旧来の制度をこうした変化に対応した新たなものとし、豊かで活力ある経済社会を構築していくために、全力を挙げて、財政構造改革、金融システム改革等の構造改革を推進していかなければなりません。
 まず、現在の危機的な財政状況から脱却し、さまざまな政策要請に十分対応できる財政構造を構築していくことが必要であります。私としては、財政構造改革法に規定された最終的な目標達成に向けて全力を尽くしてまいる所存であります。
 また、財政投融資については、財政政策の中で有償資金を適切な分野に活用するという基本的な役割を踏まえつつ、その抜本的改革を進めてまいります。
 さらに、税制については、平成十年度改正において、時代の潮流変化と各般の構造改革にあわせ、広範かつ思い切った措置を講ずることとしております。
 主要な措置を申し述べますと、法人税制については、基本税率や中小法人に対する軽減税率等を引き下げるとともに、課税ベースを拡大、適正化いたします。これにより、法人税の基本税率は、シャウプ税制以降最も低く、米国の連邦法人税率を下回る水準となります。こうした改革は、経済活動に対する税の中立性を高め、経済構造改革の推進にも寄与するものと考えております。
 金融関係税制については、金融システム改革に対応した措置を講じます。その中で、有価証券取引税及び取引所税について、その税率を本年四月から半減し、さらに、平成十一年末までに、金融システム改革の進展状況、市場の動向等を勘案して見直し、株式等譲渡益課税の適正化とあわせて廃止することとしております。
 土地住宅税制については、土地をめぐる状況の変化等を踏まえ、地価税を当分の間課税しないこととするほか、個人、法人の土地譲渡益課税の大幅な軽減措置等を講じます。
 また、所得課税においては、中堅所得者層の税負担等に配慮したきめ細かい措置を講じます。
 我が国の金融システムに対する内外の信認を確固たるものとしていくためには、金融システム安定化のための措置を実施していくとともに、新世紀に向けて金融システム改革を進め、自由かつ公正で国際的な金融システムを形成していくことが不可欠であります。
 政府としては、このために、投資信託の整備、株式売買委託手数料の完全自由化、証券会社の原則登録制への移行等を図るとともに、公正取引ルール、金融機関のディスクロージャーに関する制度及び破綻の際の証券投資家、保険契約者の保護のための制度の整備を行います。また、不動産等の資産の流動化を促進するための制度整備等を行ってまいります。こうした措置を実施するため、今国会に金融関連の所要の法律案を提出することとしております。
 このような政府の取り組みにあわせて、金融機関において、その社会的責任と高い公共性にかんがみ、国際的に通用するディスクロージャーの実現、責任ある経営体制の整備及び経営の合理化、効率化に向けたさらなる取り組みが行われることを強く期待するものであります。
 目を外に転じますと、世界経済は米国を中心に拡大基調を続けておりますが、昨年夏以降、タイに端を発しインドネシア、韓国などのアジア地域に広がった通貨・金融市場の混乱の影響が懸念されております。世界経済の持続的発展にとってアジア経済の安定が不可欠であります。そのために、我が国としては、IMFを中心とする国際的な支援体制の中で、関係各国中最大の支援を実施してまいりました。
 さらに、アジアの通貨・金融の安定に向けた域内協力を強化するため、我が国の積極的な取り組み等により、昨年十一月、マニラにおいてアジア地域を中心とした新たな支援の枠組みが合意され、APEC首脳宣言でも支持されたところであります。
 今後とも、アジア地域の動向を注視していくとともに、関係各国及びIMF、世界銀行、アジア開発銀行等の国際機関とも密接に連携しながら適切に対処していく所存であります。
 為替相場については、今後とも、主要国との政策協調及び為替市場における協力を通じ、その安定を図ってまいります。
 また、我が国は、WTO、APEC等を通じ、多角的自由貿易体制の維持強化及び貿易円滑化に積極的に取り組んでおり、平成十年度関税改正においても、特定品目の関税率の引き下げ等、所要の改正を行うこととしております。
 次に、今国会に提出しております平成十年度予算の大要について御説明いたします。
 平成十年度予算は、財政構造改革法に従い、歳出全般について聖域を設けることなく徹底した見直しを行いつつ、限られた財源を重点的、効率的に配分したものとなっております。また、長年の懸案である国鉄長期債務及び国有林野累積債務についても具体的な処理策をまとめたところであります。
 歳出面については、一般歳出の規模は四十四兆五千三百六十二億円となり、前年度当初予算に対して五千七百五億円、一・三%の縮減を達成いたしました。
 国家公務員の定員については、第九次定員削減計画を着実に実施するとともに、増員は厳に抑制し、三千七百人に上る行政機関職員の定員の縮減を図っております。補助金等についても、地方行政の自主性の尊重及び財政資金の効率的使用の観点から、その整理合理化を積極的に推進しております。
 これらの結果、一般会計予算規模は七十七兆六千六百九十二億円となり、前年度当初予算に対し〇・四%の増加となっております。
 歳入の基幹たる税制については、さきに申し述べましたとおり、法人税制、金融関係税制、土地住宅税制等に関し適切な措置を講ずるほか、たばこ特別税を創設することといたします。
 税の執行については、今後とも国民の信頼と協力を得て、適正、公平な実施に一層努めてまいります。
 以上の措置を受け、公債発行予定額については、前年度当初予算より一兆千五百億円減額し、十五兆五千五百七十億円としております。その減額の内訳は、建設公債について八千百億円、特例公債について三千四百億円となっております。この結果、公債依存度は二〇%となり、前年度当初予算の二一・六%より一・六ポイント低下しております。特例公債の発行等については、既に関係の法律案を提出しており、御審議をお願いすることとしております。
 財政投融資計画については、財政投融資の抜本的改革を推進するとの基本方針のもとで、民業補完や償還確実性の原則を徹底するとともに、景気に配慮しながら資金の重点的、効率的な配分を図り、その規模のスリム化を図ったところであります。この結果、一般財政投融資の規模は三十六兆六千五百九十二億円となり、前年度当初計画に対し六・八%の縮減となっております。また、資金運用事業を加えた財政投融資計画の総額は四十九兆九千五百九十二億円となり、前年度当初計画に対し二・七%の縮減となっております。
 次に、主要な経費について申し述べます。
 社会保障関係費については、少子・高齢化が急速に進む中で安定的な社会保障制度を構築する観点から、医療分野において薬価の大幅な引き下げや老人医療費の負担の公平化を図るための制度改革を行うほか、雇用保険制度に係る国庫負担のあり方を見直すなどの措置を講じております。
 文教及び科学振興費については、創造的で活力に富んだ国家を目指して、教育環境の整備、高等教育、学術研究の充実、創造的、基礎的研究に重点を置いた科学技術の振興等の施策の推進に努めております。
 公共事業関係費については、物流の効率化対策に資するものを中心とした経済構造改革関連の社会資本及び生活関連の社会資本について重点的に整備することとしております。公共事業の実施に当たっては、費用対効果分析の活用や長期にわたる事業等を対象とした再評価システムの導入などを通じて、公共事業の効率化、透明化に努めることとしております。
 中小企業対策費については、厳しい経営環境に配慮し、中心市街地活性化、金融対策等に重点を置いて施策の充実を図っております。
 農林水産関係予算については、自主流通米価格の急落等、米をめぐる厳しい状況に対処するため新たな米政策を構築するなど、担い手への施策の集中及び市場原理、競争条件の一層の導入を図りつつ、施策の着実な推進に努めております。
 経済協力費については、事前調査・事後評価の拡充等を図りつつ、環境、社会開発、人道、人づくり等の分野に重点化を図り、所管の枠を超えた総合調整を行うなど、援助の量から質への転換を徹底しております。
 防衛関係費については、先般見直しが行われた中期防衛力整備計画のもと、効率的で節度ある防衛力の整備を図ることとしております。
 エネルギー対策費については、地球温暖化問題への対応の重要性等も踏まえ、総合的なエネルギー対策の着実な推進に努めております。
 地方財政については、国と地方がバランスのとれた財政運営を行う必要があるという基本的考え方を踏まえつつ、所要の地方交付税総額を確保するなど、地方財政の運営に支障を生ずることのないよう適切な措置を講ずることとしております。地方公共団体におかれましても、財政の自主的かつ自立的な健全化に鋭意努力されるよう要請するものであります。
 以上、平成十年度予算の大要について御説明いたしました。
 何とぞ、関係の法律案とともに、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。
 私は、これまで申し述べました諸施策を実施し、経済を回復軌道に復帰させるとともに、諸改革を通じ、将来世代のために豊かで活力ある経済社会を築いていくことに全力を尽くしてまいります。そして、大蔵省に対する国民の皆様の信頼を回復するよう、財政及び金融行政を適正に運営してまいる決意であります。
 国民各位の一層の御理解と御協力を切にお願い申し上げる次第であります。(拍手)
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○議長(伊藤宗一郎君) 国務大臣尾身幸次君。
    〔国務大臣尾身幸次君登壇〕
○国務大臣(尾身幸次君) 我が国経済の当面する課題と経済運営の基本的考え方について、所信を申し述べます。
 我が国経済は、最近の株価等の動きに見られるように、市場心理には一部好転の兆しが見られるものの、金融機関の経営破綻、アジア地域における通貨・金融市場の混乱等を背景に、家計や企業の景況感の厳しさが個人消費や設備投資に影響を及ぼしているなど、景気はこのところ停滞しております。
 このような現状の背景には、我が国経済が直面している次のような構造的な問題があり、これらを早急に解決する必要があると考えます。
 第一に、金融機関や企業の不良債権問題であります。
 バブルの後遺症である不良債権処理のおくれと金融システムの安定性に対する信頼感の低下が景気回復の足かせとなっており、これらの問題の解決が急務であります。
 第二に、日本的な経済システムの制度疲労の問題であります。
 グローバル化の進展、少子・高齢社会への移行、情報通信の高度化といった内外の環境変化の中で、我が国経済のさまざまな制度や慣行の変革が求められております。過剰な規制の存在は、民間企業の事業機会をそぎ、高コスト構造を通じて経済の活力を低下させるなど、規制緩和を初めとする経済構造改革の推進が重要課題となっております。
 第三に、産業の空洞化の問題が挙げられます。
 経済のグローバル化が進展し、企業が最適な事業環境を求めて国際展開を進める中で、海外に生産拠点を移す動きが見られるなど、産業の空洞化が懸念されています。企業が国を選ぶ時代において、我が国が事業活動の拠点として選ばれる国になるためには、国際的に魅力ある事業環境を整備する必要があります。
 以上のような諸課題に対応し、私は、民間需要を中心として経済を順調な回復軌道に乗せ、自律的な安定成長を持続させ、もって豊かな国民生活の実現を図っていくことを経済運営の基本として取り組んでまいります。
 このため、政府として、経済の体質を改善強化し、民間の活力を十分に生かせる体制を整備するなどの観点から、次の五つの点を中心とした諸施策に取り組んでまいります。
 第一に、金融システムの安定性確保と不良債権問題の早期解決であります。
 金融システムは経済の根幹であり、その安定性確保が経済活性化の大前提であります。このため、預金者保護と金融システムの安定を図る観点から、合わせて三十兆円の資金を活用できるよう、九年度補正予算及び関係法律において措置されたところであります。
 他方、バブルの後遺症として、担保不動産の処分が滞っていることが不良債権処理の障害となっており、土地の有効利用の促進や土地取引の活性化が必要と考えられます。このような状況にかんがみ、地価税を凍結し、また、法人の土地譲渡益追加課税の適用停止等、バブル期に導入された措置を停止するなどの土地税制の改正を行うこととしております。
 さらに、いわゆる貸し渋りの問題があります。
 本年四月の早期是正措置の実施を控え、民間金融機関において貸し出しに慎重さが見られる中、中小企業を初めとして経済を支える健全な企業に対する必要な資金供給が妨げられることがないよう、適切な措置を講じてまいります。このため、前述の金融システム安定化策に加えて、中小企業金融公庫等の政府系金融機関に新たな融資制度を創設するなどにより、信用保証分を含めて総額約二十五兆円の資金を用意し、その積極的な活用を促進してまいります。
 第二に、規制緩和を初めとする経済構造改革の推進と新たな発展基盤の整備に努めてまいります。
 規制緩和は、企業の自由な創意工夫を引き出すことによって新規事業、ベンチャー企業の創出を実現するなど、経済全体の体質強化につながるものであり、我が国が目指すべき民間活力中心の経済構造を構築する上で不可欠であります。
 政府は、昨年十一月に、規制緩和を中心とする経済構造改革等を柱とした「二十一世紀を切りひらく緊急経済対策」を取りまとめました。
 一例を挙げれば、情報通信分野について思い切った規制緩和を行うこととしたところであり、これが料金の低廉化、サービスの多様化などを通じて電気通信分野の国際競争力の向上につながるほか、情報通信の高度化は、さまざまな分野における生産性の向上と新規事業の創出を通じ、経済構造改革を推進する原動力となるものと考えております。
 また、土地の有効利用に関連して、都心の商業地域などにおける容積率の抜本的緩和、農地転用の円滑化、市街化調整区域における開発許可の弾力化などの措置を講ずることとしたところであります。
 さらに、介護サービスへの民間参入の促進、労働者派遣事業の対象事業の拡大、活力ある証券市場を目指した金融システム改革の推進など、広範な措置を講ずることとしたところであります。
 政府としては、これらの経済対策の確実な実施に努めるとともに、経済構造の変革と創造のための行動計画の推進及び新たな規制緩和推進計画の策定を含め、今後ともさらに経済活性化のための具体的方策について検討を続け、より一層強力に規制緩和を中心とする経済構造改革を推進してまいります。
 また、我が国産業の革新的な展開を図り、二十一世紀の新しい経済社会の発展を実現するためには、独創的で幅広い産業のフロンティアを開拓する環境を整備することが必要と考えます。科学技術は、新たな成長のフロンティアを生み出す源泉であります。創造的な研究開発を推進するため、産学官連携による研究開発環境の整備を進めるなど、科学技術創造立国を目指して科学技術の発展に重点的に取り組んでまいります。
 さらに、研究開発力を有する将来有望なベンチャー企業を初めとする新規産業の創出は、良質な雇用機会の確保、本格的な高齢社会における我が国経済の活力維持の観点からも重要であります。このため、規制緩和の強力な推進に加えて、リスクマネーの供給、人材の育成と移動の円滑化、適切な知的財産権の保護の強化などに力を注いでまいります。
 なお、経済構造改革とともに、財政構造改革も車の両輪として推進していく必要があります。財政構造改革を進めていくためにも経済の活性化が重要であり、また財政構造改革は、中長期的には国民負担率の上昇の抑制、公的部門の簡素化等により、経済の活性化に資するものと考えます。
 こうした構造改革後の我が国経済社会の将来展望につきましては、現在、経済審議会において審議を進めておりますが、透明で公正な市場経済システムのもとに環境に調和した社会を構築し、プラスの蓄積を未来に発展、継承していくとの方向で、本年六月を目途に取りまとめを行う予定であります。
 第三に、企業にとって魅力ある事業環境を整備し、産業の空洞化に対応してまいります。
 法人課税については、その水準を国際水準に近づけていくことが重要であり、十年度税制改正においては、企業の活力を高め、国際競争力を引き続き維持していくため、国、地方を合わせた法人課税の実効税率を約三・六%引き下げることとしております。
 また、金融のグローバル化等に対応し、東京をニューヨーク、ロンドンに匹敵する国際金融市場として発展させていくなどの観点から、有価証券取引税の税率を当面二分の一に引き下げるなど、金融・証券関係税制を改正することとしております。
 さらに、我が国の制度や仕組みをより国際的に調和のとれたものとするため、政府の苦情処理機能を活用しながら諸外国からの要望にこたえていくなど、貿易・投資環境の整備に努めてまいります。
 第四に、豊かで安心できる国民生活の実現であります。
 我が国は、戦後の目覚ましい発展を経て、国民一人当たり国内総生産は平成九年度で三万三千ドル程度とOECD加盟国中のトップクラスとなっておりますが、国民が真に豊かさを実感できる経済社会の形成に向けてなお一層の努力が必要であります。少子・高齢化の進展、日本的雇用システムの変貌などにより、国民生活の将来に不安の生ずることのないよう、社会保障制度の整備や雇用の確保に努め、経済活性化の成果が生活に反映される豊かで安心できる経済社会の構築を着実に進めていく必要があります。
 我が国は、都市における地上過密、空中過疎の問題と、都市と地方の間の過密過疎の問題を抱えております。これに対し、長期的な視野に立って、ゆとりある居住スペースやオフィススペースの実現、国民の行動範囲の拡大など、スペース拡大を図ることは、豊かな国民生活の実現とともに、経済の活性化にも資するものと考えます。このような観点を踏まえ、昨年十一月の経済対策においては、土地の有効利用に資する規制緩和や郊外型住宅の取得促進等の措置を講ずることとしたところであり、今後ともその一層の推進を図ってまいります。
 また、消費者の自立を支援し、消費者と企業が自己責任に基づいて行動できるような市場ルールを整備することが不可欠であります。現在急増している契約をめぐるトラブルに対応して、消費者利益の擁護、増進を図るため、消費者と事業者の間のあらゆる契約に関する具体的なルールの早期立法化に向けて努力してまいります。
 さらに、国際化や高齢化の進展などの環境変化の中で、民間非営利団体、いわゆるNPOによる社会貢献活動が活発化しており、今後、活力ある豊かで安心できる社会を築いていく上で重要な役割を果たすものと考えられます。このため、NPOの活動を促進するための環境整備を積極的に図ってまいります。
 第五に、我が国が世界とともに繁栄していくため、世界経済の持続的発展に貢献してまいります。
 アジア諸国については、その長期的な成長力は依然として力強いと考えられますが、幾つかの国は通貨・金融市場に不安定性が見られるなど困難に直面しております。政府としては、IMFを中心とする枠組みの中で、できる限りの支援を行うとともに、経済協力につきましても、アジア地域に重点を置き、経済インフラの整備、人材育成、中小企業、すそ野産業育成等を重視した支援を行い、この地域の発展を一層促進するよう努めてまいります。
 また、地球温暖化防止京都会議の結果を踏まえ、経済の活性化の要請にも配慮しつつ、総合的な地球温暖化防止対策を講ずるなど、地球環境問題への対応に貢献してまいります。
 平成九年度の我が国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動、金融機関の経営破綻、アジア地域における通貨・金融市場の混乱などを背景とする企業や消費者の我が国経済の先行きに対する信頼感の低下等から、大幅に減速いたしました。この結果、平成九年度の実質経済成長率は〇・一%程度となるものと見込んでおります。
 このような状況に対し、政府としては、以上申し上げた金融システム安定化措置、規制緩和等の経済構造改革の推進、土地の取引活性化と有効利用、法人課税、有価証券取引税の引き下げなどの政策対応に加え、二兆円規模の特別減税を行うこととしております。
 平成十年度経済は、駆け込み需要の反動等の要因がなくなるとともに、これらの政策対応の効果が徐々に本格化し、また、平成十年度予算及び関連法案を早期に成立させていただくことにより、企業や消費者の我が国経済の先行きに対する信頼感の回復が期待されることから、次第に順調な回復軌道に復帰してくると考えております。こうした考え方のもと、平成十年度の実質経済成長率は一・九%程度と見通しております。
 もとより政府としては、今後とも、内外の経済、金融の実情に応じて、経済活性化に向けて、適時適切な経済運営に努めていくことは言うまでもありません。
 以上、我が国が当面する主な経済運営の課題と基本的考え方について所信を申し述べました。
 我が国経済は、二十一世紀に向けた新たな発展のために、従来の発想を抜本的に転換し、民間部門中心の強靱で活力に満ちた経済へとその体質を変えていくべき極めて重要な段階にあります。そして、政府の果たすべき役割は、規制緩和等を通じて、民間部門がその活力を最大限に発揮できるよう、経済の体質を改善強化し、競争を促進し、弱者の保護にも配慮しつつ自己責任の原則を貫徹する条件を整えるなど、発展のための基盤を整備することにあると考えます。
 我が国は、これまでに蓄積してきた八千億ドルの対外資産、二千億ドルを超える世界一の外貨準備、千二百兆円の個人金融資産等の資本、教育水準の高い人的資源、高度な技術基盤やそれを支える文化的基盤など、二十一世紀における新たな発展を実現するための高い潜在的能力を有しております。構造的諸問題を克服し、将来世代のためにこれらのプラスの蓄積を未来に向けて発展、継承していかなければなりません。歴史の転換点にあって、一時的に足踏みを経験しつつも、経済構造改革の必要性については国民的コンセンサスがあります。
 我が国経済は、一時的に霧に覆われた状況にありますが、経済の実情に応じた各種の施策の総合的推進により明るい展望が開かれ、一たん回復軌道に乗れば徐々に力強い足取りの景気拡大につながっていくものと考えます。改革と展望が生み出す活力ある二十一世紀を目指して、国民の皆様が元気を出して仕事に取り組んでいただけるよう、私は微力ながら精いっぱい努力してまいります。
 国民の皆様の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○田野瀬良太郎君 国務大臣の演説に対する質疑は延期されることを望みます。
○議長(伊藤宗一郎君) 田野瀬良太郎君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。
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 中央社会保険医療協議会委員任命につき同意を求めるの件
 航空事故調査委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件
 労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件
○議長(伊藤宗一郎君) お諮りいたします。
 内閣から、
 中央社会保険医療協議会委員に井原哲夫君及び森嶌昭夫君を、
 航空事故調査委員会委員長に相原康彦君を、
 同委員に勝野良平君、加藤晋君、水町守志君及び山根皓三郎君を、
 労働保険審査会委員に飯田康夫君及び千葉省三君を
任命したいので、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。
 まず、中央社会保険医療協議会委員の任命について、申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えることに決まりました。
 次に、航空事故調査委員会委員長及び同委員の任命について、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。
 次に、労働保険審査会委員の任命について、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。
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○議長(伊藤宗一郎君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時三十六分散会