第146回国会 青少年問題に関する特別委員会 第2号
平成十一年十一月十八日(木曜日)
    午前九時三分開議
 出席委員
   委員長 石田 勝之君
   理事 石崎  岳君 理事 太田 誠一君
   理事 阪上 善秀君 理事 戸井田 徹君
   理事 田中  甲君 理事 肥田美代子君
   理事 池坊 保子君 理事 三沢  淳君
      岩下 栄一君    岩永 峯一君
      江渡 聡徳君    大野 松茂君
      奥山 茂彦君    佐田玄一郎君
      佐藤  勉君    実川 幸夫君
      中野 正志君    能勢 和子君
      原田 義昭君    水野 賢一君
      目片  信君    北橋 健治君
      中川 正春君    中山 義活君
      山本 孝史君    太田 昭宏君
      旭道山和泰君    一川 保夫君
      松浪健四郎君    石井 郁子君
      大森  猛君    保坂 展人君
    …………………………………
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君
   政府参考人
   (総務庁青少年対策本部次
   長)           川口  雄君
   政府参考人
   (法務省人権擁護局長)  横山 匡輝君
   政府参考人
   (文部省生涯学習局長)  富岡 賢治君
   政府参考人
   (厚生省児童家庭局長)  真野  章君
   参考人
   (埼玉県中央児童相談所長
   )            今井 宏幸君
   参考人
   (社会福祉法人子どもの虐
   待防止センター理事長)  上出 弘之君
   衆議院調査局青少年問題に
   関する特別調査室長    澤崎 義紀君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 青少年問題に関する件(児童虐待問題等)

    午前九時三分開議
     ――――◇―――――
○石田委員長 これより会議を開きます。
 青少年問題に関する件、特に児童虐待問題等について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、参考人として埼玉県中央児童相談所長今井宏幸君及び社会福祉法人子どもの虐待防止センター理事長上出弘之君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○石田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 引き続き、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として厚生省児童家庭局長真野章君、文部省生涯学習局長富岡賢治君、法務省人権擁護局長横山匡輝君、総務庁青少年対策本部次長川口雄君及び警察庁生活安全局長黒澤正和君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○石田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
○石田委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、児童虐待問題等につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず今井参考人、上出参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、政府参考人から説明を聴取した後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。
 念のため申し上げますが、御発言はその都度委員長の許可を得てお願いをいたします。また、衆議院規則の規定により、参考人は委員に対して質疑ができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
 それでは、まず今井参考人にお願いいたします。
○今井参考人 埼玉県中央児童相談所長の今井でございます。よろしくお願いいたします。
 資料をお手元に用意させていただきましたので、それに基づきまして進めさせていただきたいと存じます。
 まず、私の立場でございますが、本日は、全国児童相談所長会の会長であります東京都児童相談センター長の大久保隆氏からの依頼を受けまして参考意見を述べさせていただくものでありますことを、あらかじめお許しいただきたく存じます。
 また、児童相談所におきます虐待の取り扱いの実態等の御説明は、埼玉県のもの、また私の担当した職務の範囲内で御容赦願いたいと存じます。
 参考までに申し上げますが、平成十年度の埼玉県におきます虐待相談処理件数は三百四十七件で、全国第三位でございました。全国の処理件数六千九百三十二件の五%を占めております。
 次に、申し述べる意見の内容でございますが、三行目からでございます、法改正等の意見につきましては、現在全国所長会議には集約したものがございませんので、さきの全国会議や、私の属します関東甲信越ブロック会議での協議事項などを要約して述べさせていただくことをお許しいただきたいと存じます。
 次に、児童虐待の防止に関して、埼玉県児童相談所等の取り組みの実例、ケースの実例について申し上げたいと存じます。
 二十年以上前のことでございますが、埼玉県の児童相談所におきまして、性的虐待で娘を保護された父親が児童相談所に押しかけまして、担当の女性ケースワーカーの腹を刃物で、これは文化包丁でございましたが、刺し、職員が重傷を負った事件がございました。
 次に、児童養護施設上里学園在職中には、虐待で措置された児童は形式上は少なかったと思いますが、それは、児童相談所側が、保護者を刺激しないように、養育困難などほかの理由で入所させた結果でございました。
 しかしながら、現実には、虐待を受けた人間関係のゆがみから、職員や同室の子供にしばしば突っかかったり、また、学校帰りに子猫の口に砂を無理に押し込んで殺してしまったりというようなことがございました。
 次に、新たに中学二年生の女子が非行の果てに入所しましたが、この児童の非行の真の原因は、養父からの性的虐待から逃れるためでございました。
 また、虐待を受けた児童とは別に、知的障害があり特殊学級や養護学校へ通わせた児童が八十人中十人も混在しておりまして、通学の指導や就職先の開拓にも大変な苦労がございました。
 児童養護施設は、養護児童や軽度の知的障害児、虚弱児童を多数受け入れて、社会人として自立させてきました。今後は、被虐待児童の大部分を受け入れる受け皿の役割も果たさねばならないと思いますが、児童の処遇の実態は、自立支援には不十分であると思いますので、改善に向けて目を向ける必要があると存じます。
 次に、児童相談所での被虐待児童の取り扱い経験から、幾つかを述べさせていただきたいと存じます。
 危険の非常に大きい虐待では、精神疾患のある母親が、乳児院から強引に連れ帰った生後六カ月の乳児の泣き声に「どうして泣くのよう」と過剰反応いたしまして、家庭訪問中でありました児童福祉司の目の前で、シェーキングベビーといいますか、こういうふうに揺すぶるわけですね。そうすると脳がぐずぐずになってしまうということなんですが、そうなってしまうほど激しく揺すぶったために、その場で緊急保護した事例がございました。この母親は、保護先の乳児院へもその後も押しかけまして、強く引き取りを求めてきましたが、虐待が再発するおそれがありましたので、児童福祉法二十八条の強制入所措置を家庭裁判所へ申し出、承認されたケースでございます。
 もう一件、両親が泣き叫ぶ幼児をたたいて、両眼を、水晶体破裂でございましたが、失明させてしまった事例がありました。病院からの通告でございました。最近転居してきて、地域からは孤立していた家族でございました。乳児がたたくと泣きやむので、泣く都度泣きやむまでたたいたということでしたが、乳児を失明させてしまった悲惨な例でございました。児童は、現在県外の盲児施設で生活をしております。
 次に、ごく最近の事例でございますが、先日テレビで報道されましたように、児童の証言によりまして、虐待が日常的にしつけと称して行われ、重傷を負わされ、児童本人の、これは五歳の女の子でございますが、証言によりまして刑事事件として立件されたものもございます。
 いずれにいたしましても、児童福祉司の、児童の命を守り子育てを支援しようとする熱意とケースワーク技術、それに児童相談所の総力を挙げましても、発見の早い遅い、それから対応開始の時期等によりまして結果に差異が出てまいるかと存じます。
 次に、虐待防止活動の妨げとなる当面の問題点についてでございますが、児童を入所させる先の乳児院、それから児童養護施設の入所児童数が定員いっぱいに近くなりまして、新たな入所が困難になってきております。
 それから、ケースワーク上の進行管理がまだ徹底されていないのではないかと考えております。
 次に、虐待防止の埼玉県の取り組みについて申し上げます。
 八年度にこういう指針をつくりまして、九年度から強化事業というのを県単で始めまして、県内の関係機関のネットワークを形成しまして、ネットワークによるケース一つ一つの取り扱いをやるということにしています。それから、弁護士、精神科医師、家庭裁判所の調査官、大学の教授等を入れまして、虐待防止専門員を委嘱して相談をしているということでございます。
 それから、本年度、平成十一年度の埼玉県児童相談所の新たな取り組み、これは児童相談所で決めたものでございますが、これについて申し上げたいと存じます。
 平成十一年度は、虐待の早期発見、早期対応のために新たな取り組みを始めました。
 取り組みの基本方針でございますが、虐待の防止は、早期発見、早期対応、早期治療に尽きると考えました。
 取り組みの実施方針でございますが、虐待通告処理の進行管理を確立するということ、虐待防止関係機関ネットワークを再構築する、それから内部組織を虐待対応型に変更する、この三点でございます。
 取り組みの具体策としまして、まず進行管理でございますが、すべての虐待通告ケースを、通告受理後四十八時間以内に訪問調査し児童の現状を確認するということでございます。訪問調査の主眼は、児童の心身の状態、生活状態を児童福祉司みずからの目で確認することである、自分で見てきなさいと言っております。身柄の安全を図るべきものは緊急保護するというようなことは従来どおりでございます。児童の同意を得て保護するということも従来どおりでございます。説得も含みます。
 その後の対処は、各所での緊急受理会議等で進めることにします。対処の中身につきましては、二十九条の立入調査、助言指導、継続指導、児童福祉司指導、施設・里親委託等でございます。
 四十八時間の考え方につきましては、三番目をごらんいただきたいと存じますが、金曜日の受理ケースを翌週へ持ち越さないためには、四十八時間は最大限ぎりぎりの時間である、それ以上は延ばせないということでございます。
 もっと早くていいんじゃないかということですが、もちろん緊急、今やられているというものは即時に対応することにしております。それ以外のものにつきましては、関係機関と連絡して、家庭のアウトラインをつかむまでにいろいろ時間がかかるものですから、四十八時間の余裕を与えたということでございます。
 それから、ネットワークの再構築でございますが、全ケースを四十八時間以内に調査ということで、従来のネットワーク活動では間に合いませんので組みかえをいたしました。細分化したわけでございます。現在、国の方では市町村単位ということを考えておるようでございます。
 それから、イの2でございますが、四十八時間以内の連携調査への協力を要請するということで、これにつきましては十ページの資料四をごらんいただければと存じます。フローチャートがございますのでごらんいただきたいと存じますが、関係機関、市役所、役場、保健センター、管内警察署、学校、保育所、幼稚園等が関係先になってございます。これらでネットワークを再構築したということでございます。
 この説明を申し上げます。
 虐待通告を児童相談所で受けますと、市役所、市町村保健センター、管内保健所、学校等に電話して、家庭の状況を調べます。それから、臨時受理会議を開きましてチームを決定いたします。チームの編成は、市町村の児童担当とか生活保護担当、保健センターの保健婦さんとか警察の方とか、その都度チームをつくってその家庭を訪問するということでございます。それで、訪問調査して、現場協議いたしまして、その後どうするかを決める。そこまでを四十八時間以内にやるようにということで決めたわけです。
 とりあえず、ここまでことしはつくり上げたわけでございます。
 次に、四ページにお戻りいただきまして、七番の実績でございます。恐れ入りますが、七ページ、八ページをごらんいただきたいと存じます。
 七ページが十年度の実績でございます。一番上の、トータルで三百六十九件でございました。それから八ページ、十一年度をごらんいただきたいと存じますが、上半期、九月までの実績が三百五十二件でございます。ことしは去年の倍のスピードで通告が出ております。そのグラフが九ページにございますので、ごらんいただきたいと存じます。これは昭和六十三年から平成十年まで、去年までのものですが、このように虐待につきましては右肩上がりでございます。大変なことだなと思っております。
 それから、そのふえたことが四十八時間の取り扱いでどういう結果が出たのかということが、四ページの下の方から書いてございます。実施方針の実績ということで、ふえた経路、近隣知人からのものが、去年一年間で四十件あったものが、ことしは上半期で四十件ということで、スピードは二倍になっております。それから、福祉事務所が四倍、児童委員からのものが二倍、保健所から四倍、警察署から二倍ということで、皆さん方の対応が、関係機関の対応が大変早くなってきたということかと存じます。
 訪問調査の実績でございますが、匿名通告で該当世帯が特定できないもの以外はすべて四十八時間以内に調査を実施し、児童の実態をつかめたと考えております。
 二十九条の強制立ち入りの調査でございますが、ゼロ件でございます。早期対応した結果、二十九条を使わないで済んだかなという気がいたします。
 それから、援助状況でございますが、三百六十二件中施設入所が三十三件、一〇%が分離になっております。平成十年度は、三百六十九件中入所は六十五人ということで二割程度でございましたので、ことしは分離が半減しているのですが、通告がふえた割には、要するに、早期に来ているもので行ったことでおさまっているというケースが、率が多くなっているのじゃないか、そのように感じております。また、施設の定員が、先ほど申し上げましたように、かなり定員いっぱい子供が入っていますので、入れにくいという現実もございます。
 死亡事例は、ございません。
 行ったものについての、再発して再通告というケースは今のところないようでございます。これも効果の一部かと存じます。
 それから、四十八時間以内にやったことによる問題点でございますが、やはり仕事がきつくなってしまったということがございます。九番で1、2と書いてございますが、今後も虐待通告がふえれば、相談所の他の養護児童、非行児童、障害児童等の施設入所、通所、自立支援等の業務が、ストップといいますか、滞ってしまうということは言えるかと存じます。それから、調査や継続指導のための関係機関のネットワーク、ほかの機関の皆さん方に協力をお願いしておりますが、それも限界に来てしまうのじゃないか、そのように考えております。あくまでも協力いただいているということがございます。
 六ページをお開きいただきたいと存じます。現行法に対する意見についてでございますが、全国所長会では法改正等の意見が集約されていませんので、冒頭申し上げましたとおり、全国所長会議や関東甲信越ブロック会議の席上等で、たびたび厚生省へ向けて要望等の発言がある項目について述べさせていただきたいと存じます。
 一番目でございますが、現行児童福祉法の虐待に関する規定は法律内に分散されて規定されているために、実務的にはやりにくい面がございます。
 二番目、特に虐待の定義が示されていないので、通告義務や機関の協力等に疑問をぶつけられ、その都度説明しなければならない。また、マスコミ等も、事件の都度、虐待の一般的な定義の説明を求めてくる。要するに、社会一般には虐待そのものが何かということが、読める場所がないということかと存じます。
 通告の免責もはっきりしないために、近隣も、訴えられることを恐れて通告を渋る例がございます。それから、医師等の協力も得にくい面がございます。
 保護者は反論してくるので、虐待の定義や、国民の権利義務をはっきりさせる必要があると存じます。
 また、五番ですが、立入調査には、危害を加えられるおそれや閉じこもりのため強制立ち入りが必要な場合がありますので、警察官の立入調査権、それに、書き落としてしまいましたが、緊急一時保護の権限も必要かという意見もございます。
 また、二十八条による強制的な施設入所児童の保護者による強制引き取りを防ぐために、親権の制限、一時停止等の規定を求める意見も強くございます。
 親権剥奪後の後見人の選任が困難なために、児童相談所長が引き受けざるを得ない場合があるが、一身に属するため不都合であるという点もございます。
 これらの点を含めて、規定の改正を求める意見がございます。
 次に、独立する特別法を求める意見についてでございますが、現行法に対する意見で申し上げましたように、虐待の定義や国民の権利の制限や通告等の義務、手続の流れを明確にするために、虐待防止法等の単独法の制定を求める意見もございます。
 以上でございます。(拍手)
○石田委員長 どうもありがとうございました。
 次に、上出参考人にお願いいたします。
○上出参考人 現在、子どもの虐待防止センターの理事長をしております上出と申します。
 実は、以前に東京都の児童相談センターの所長、また全国の児童相談所長会の会長も、平成三年まででございましたが、いたしました。また、もともとが精神科の医者でございますので、そういう意味も含めまして、きょうは何か参考になることを申し上げられればと思って立っております。
 もう既に皆様十分に御存じと思いますが、大変に虐待の件数がふえております。平成二年から国の方の厚生省報告例で虐待の項目が挙がりまして、当時千百一件であったものが昨年度は六千九百三十二件、六倍以上の増加を示している。
 これは恐らくは、今まで家庭の中における虐待が潜在していた、外にはなかなか見つからなかった、そういうものが、非常に虐待に対する認識が高まるにつれまして顕在化してきた、そういうことでふえてきている、あるいは、発見のための手引等も非常にたくさん発行されまして、それが実際に子供にかかわりを持っている人々の中にかなり周知、啓発されてきた、その結果であろうというふうにも言えます。しかし、やはりまだまだ、虐待というものがさらに潜在している可能性が非常に高い。
 これは、実は私どもが民間の虐待防止センターというところで一番最初に取り上げました。平成三年でございますが、平成三年から防止センターの活動が始まっております。
 大変皮肉といいましょうか、私は、当時まだ現職の児童相談所長でございましたけれども、その児童相談所の虐待ケースに対する取り組みが大変に手ぬるい、あるいは幾ら通告をしてもなかなか動いてくれないというようなことがございました。それに対して、民間の精神科医であるとか、あるいはさまざまな子供にかかわりを持っている法律の、弁護士の方等が集まりまして、この防止センターをつくりまして、最初にやりました仕事が電話相談でございます。
 虐待一一〇番というような銘を打ちました。虐待一一〇番というような銘を打ちますと、果たしてどれだけ相談が来るだろうか、恐らくは実際に近隣で見られている虐待のケースについての通報相談はあろうかと思いましたが、実は、ふたをあけてみますと、電話をかけてくる方々はほとんどが実際の子供の母親でございます。約八割が母親からの電話である、こういう状況があったわけです。
 実際にそういう電話をかけてくる母親自身が、本当に虐待と呼べるかどうか、これはまた実は、虐待の定義、概念規定にも絡んでまいりますけれども、お母さん、母親自身としては、つい子供を殴ってしまう、言うことを聞かないのでお仕置きをしてしまう、これでいいんでしょうか、あるいは、これはもう虐待なんでしょうか、虐待に発展するんじゃないんでしょうか、そういう心配を持ちながら電話をかけてきている。
 いわばこれは虐待の予備群と言ってもいいのじゃないか。顕在群、潜在群、予備群というような私は分け方をしておりますが、そういう予備群的な虐待のケースというのは、実は児童相談所でキャッチできている件数の恐らくは十倍ぐらいはあるんではなかろうかというふうな感じを持っているわけでございます。
 同時に、これは今も前の参考人が触れておりましたけれども、虐待の概念規定というものがまだ非常にあやふやでございます。いろいろな分野でそれぞれの手引などが出されてはおりますけれども、しかし、その概念規定の中に全く統一されたものがまだできていない。法律の上にも、児童福祉法を見ましても虐待の定義は全く書いてございません、厚生省の通知等には出ておりますけれども。そういう意味で、まだ虐待の概念規定が非常にあいまいでございますが、その規定が、どのように、どの程度からを虐待と呼ぶかというようなことまで含めて規定されますと、その数はさらに飛躍的に増加するのではないかというような心配さえ持っているわけでございます。
 次にちょっと、私の精神科医としての経験を踏まえながら精神医学的な立場から虐待というものを見ていった場合には、被虐待児童に対する心理的虐待にもっともっと注目をしていかなければならないんじゃないかということを強く感じております。
 直接には心理的虐待という言葉も使われております、主に言葉による暴力、体に傷は与えないが言葉による暴力を与えるとか、あるいはネグレクト、心理的なネグレクトというものもありますし、もちろん言葉でおどすとかいうこともございますが、同時に、いろいろな身体的な暴力を受けた子供たち、特にまた性的な暴力を受けた子供たちは、その暴力を受けた結果、まさに心のトラウマというものを、心的外傷といいましょうか、それを受けております。
 したがいまして、そういう子供たちが、阪神の大震災で大分膾炙いたしましたPTSD、外傷後のストレス障害という症状を示し、大変に不安、おびえというものを示してみたり、あるいはうつ状態になってみたり、しばしばそういう、虐待でいいますと暴力を振るわれた場面を思い起こしてそこで非常にパニックな状態を起こしてしまう、こういうことが起こってくるということが知られております。
 同時に、さらに遠隔的な効果と言っていいかと思いますし、私はこれを外傷後の人格障害と呼んでおりますけれども、PTPDと呼んでおりますポスト・トラウマティック・パーソナリティー・ディスオーダーでございますが、そういうPTPDと言われるような、将来の人格形成において、特に人間関係に非常に障害を残すようなそういう症状を示してくる。これがその子供の将来にとってまさに心理的な影響が非常に強いということのあらわれであろうというふうにも思っております。
 飛びますけれども、そういった子供たち、小さいころに親から虐待を受けて育った子供が、大人になった場合にまた自分の子供に対して暴力を振るう、あるいはネグレクトをしてしまうという、また虐待の再現が起こってくる。世代間伝達というような言葉も使われておりますが、そういう現象も一つのPTPDのあらわれであるというふうにも考えざるを得ないんじゃないかということを感じているわけでございます。
 一方、虐待されやすい子供、被虐待児童、ハイリスクベビーとかチャイルドと呼ばれておりますけれども、簡単に言ってしまえば、望まれざる子供、あるいは育てにくい子供、こういう子供がしばしば虐待の対象になりやすいということも知られております。
 精神医学的な問題といたしましては、しばしばそこでは知的な障害を持っているお子さん、あるいはこれも最近云々されておりますが、いわゆる多動症候群といったものを持っているお子さん、あるいは自閉的なお子さん、こういうような障害を持っているお子さんがその標的になる可能性が非常に高い。また同時に、多胎児であるとか、低出生体重児といったような、いわゆる未熟児でございますが、そういうものも、発達が非常にスムーズにいかないということから、親から見て虐待をしてしまいやすい対象になってしまうというようなこともあるわけです。
 そういうようなことがあり、しかも、虐待の結果もまた、特に、そういう身体的な発達もそうですが、精神的な発達も損なわれてしまうというようなこともしばしばございます。そして、それがまたフィードバックしまして、虐待の連鎖が起こってくるというようなこともございます。
 というようなことを考えてまいりますと、被虐待児童に対する心理的あるいは精神的な治療、援助というものが、どうしてもこういう子供たちにとっては必要になってくるということでございます。確かに、身体的な暴力を振るわれる、性的な暴力を振るわれる、そういう子供を早く発見して、そして保護、隔離をするということで、その身体的な暴力や性的暴力からは解放されるかもしれません。しかし、そこに残っている心理的外傷に目を向けていかなければいけないということを強く感じているわけでございます。
 また同時に、虐待者の方に目を向けますと、これは全国の児童相談所長会で平成八年に行った全国の実態調査にもございますけれども、それで見ますと、虐待者の精神の状況を見ますと、精神病やその疑い、神経症やその疑い、あるいはアルコール依存、人格障害、知的障害といったような、明らかに精神的な病理を持った、精神病理を持った方々がそれぞれ一〇%ぐらいずついる。ということになりますと、虐待者全体の半数近くが、半数以上と言ってもいいかもしれませんが、何らかの精神的な問題を持っている方々であり、やはり彼らが虐待に走ったその一つのメカニズムの中に、彼ら自身の精神病理というものを見過ごすことはできないというふうに思います。つまり、彼らにも何らかの援助、治療というものが必要になってくるということを強く感じているわけでございます。
 そういうようなことを含めますと、現在の児童福祉法に基づいて主として児童相談所が行っているさまざまな援助活動というものに、もっともっと強い、何といいますか、新たな視点を持ちながら強い働きかけが必要になってくるのではなかろうかというようなことが考えられるわけです。
 私自身が児童相談所にいた関係もございますが、児童相談所の機能というのは現在まだ非常に弱いと言わなければならない面がございます。特に、最近のように非常に件数がふえてまいりますと、通告を受けてすぐに活動を始める、今の四十八時間体制というようなお話もございましたが、そういうような形で、最初の初動調査というものを非常に迅速に行わなければならない。そして、必要に応じて、危機介入というような形で子供の保護をしていかなければいけない。
 もちろん、そこでは一時保護所というものが大いに活用されるべきだと思いますが、同時に、先ほど来申し上げておりますように、そういう虐待をされている子供を発見し、あるいは虐待している親というものとの接触ができた場合には、その子供や親への対応、治療ということも進めていかなければならない。果たして今の児童相談所の機能でそれらを全部カバーできるかどうか。これは、さらにこれから件数がふえていくという状況を考えますと、大変に心配される面がございます。
 今の児童相談所に欠けているとしばしば指摘されております職員の専門性、そういう職員の任用制度なり、あるいは研修のシステムといったものを高めていくというようなことも必要になります。
 あえて申し上げますと、例えば、精神科医が常勤されている全国の児童相談所というのはごくわずかでございます。百七十四カ所中に、常勤の精神科医がいるところは、新しいのはちょっと調べておりませんが、恐らく七、八カ所にすぎないのじゃなかろうかというようなことを考えますと、そういうスタッフの充実ということも大変に必要になってくると思っております。
 それに伴いまして、実際に、さまざまな現在の児童福祉法上の問題点、これは随分と厚生省の方の通知によって改善されております。十年前、現職でおりましたころを振り返りますと、立入調査などというものは全くされない状況でございました。法上にはありますけれども、現実には行うことができないというような状況があったというふうに考えております。
 これがもう数十件、四十件余りが昨年度あたりは行われているというような状況になり、その辺は随分と改善されておりますが、ある意味では、今、児童相談所は大変に荷が重い状態になっている。これを何とか解決していかなければいけないのじゃなかろうか。そのために、児童相談所の児童福祉法に決められております機能というものをもう一度さらに強化する方向を、私は進めてまいりたいと思います。
 同時に、虐待されている子供が発見されたときに、現在は、一時保護をするなりあるいはさらに家庭裁判所へ申し立てをするなりというようなことも行いますが、片方で、親へのケースワークも行っていく。そのケースワークあるいはカウンセリングというものを行いながら、同時に、片方では子供を隔離させるというような強硬的な手段も必要になる。この辺のジレンマが、果たして一つの機関でやっていいのかどうか、この辺が十分に検討されなければならない。アメリカ等にありますところのCPSといいましょうか、子供の保護センター、チャイルド・プロテクティブ・サービスといったような機関、それを別の形の行政機関でつくるということも検討されなければならないのではないか。
 といっても、この辺は、十分にアメリカあたりの実績も踏まえながら検討を進めた上で、法的にはっきりとした、法改正あるいは新しい立法というものも考えることが必要なのかなというふうにも考えております。
 最後に、民間の虐待防止機関におります者といたしまして、民間の虐待防止機関というのは、公的な児童相談所がかかわっている場合、あるいは中心になってつくられているものもございますが、純粋に民間の草の根運動的に行われている団体が、全国でも二十カ所ぐらいございます。実は、それらはある意味では全くの手弁当で、本当にボランティア活動の延長のような形でやっております。私どものところはたまたま、一昨年になりますが、社会福祉法人の認可を受けて、国の方からといいましょうか、社会福祉・医療事業団の方からの子育て支援基金などもちょうだいして活動はやっておりますけれども、実際に多くは、私どものところも含めまして、経常的な防止活動にかけられる費用はほとんどございません。全くの持ち出しの形で、いろいろな方の援助のもとにやっているというのが実態でございます。
 こういう民間の機関の特色、これは公的な児童相談所と別の形でかなりフリーに動けます。あるいは、虐待そのものに対して、必ずしも子供だけではなくて、親に対しても大きな治療的な活動もできます。それから、転居などによっていろいろな悲惨な事件が起こったりもいたしますが、民間の場合には、多少ともその辺のところが弾力的に動けるという利点もございます。
 そういったようなことを含めまして、民間のこういう防止機関に対しても、公的な機関と同様に、あるいは連携しながら、もっともっと活動を援助していただければということをお願い申し上げたいというふうにも思っております。
 以上でございます。(拍手)
○石田委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
○石田委員長 次に、政府参考人から説明を聴取いたします。厚生省児童家庭局長真野章君。
○真野政府参考人 それでは、厚生省関係の御説明をさせていただきます。
 お手元に、「児童虐待問題への厚生省の対応について」という資料と「児童虐待対策に関する資料集」、二つの資料をお出しいたしております。分厚い方の資料は、後ほど御説明をいたします、昨日行いました児童虐待対策協議会用に作成をいたしました。本日この委員会に配らせていただきますのも大変遅くなりまして、きちんと資料を読める時間に出すべしという御指摘をいただきましたが、資料作成が大変遅くなりまして、まことに恐縮でございますが、そういうことのためにつくらせていただいたものでございます。
 また、対策協議会には、当委員会から三人の先生方がおいでをいただきまして、熱心に意見をお聞き取りをいただきまして、まことにありがとうございました。
 それでは、「児童虐待問題への厚生省の対応について」という資料に沿いまして御説明をさせていただきます。
 一ページをごらんいただきたいと思います。
 この辺につきましては、もう先生方には既に御案内のとおりでございますが、児童福祉法は、児童の福祉の増進及び健全育成を理念といたしました、いわば児童福祉の基本法であると私どもは考えております。この児童福祉法に基づきまして、都道府県等の機関でございます児童相談所が、関係機関と連携をとりながら、虐待を受けた児童への保護を実施しているという状況でございます。
 その「参考」のところにございますように、児童福祉法に盛り込まれております児童虐待防止の関係規定がございます。それぞれの条文は二ページ並びに三ページにお示しをいたしております。
 二十五条では、当委員会でもいろいろ御意見がございました、国民一般に対する、保護者に監護させることが不適当であると認める児童を発見した際の通告義務でございます。二十六条、二十七条は、児童相談所長または都道府県によります指導並びに施設入所への措置でございます。それから、二十九条が児童相談所の職員等によります立入調査の権限、三十三条が児童の一時保護の権限でございます。それから、三十三条の六が、民法の親権喪失宣告の請求者が民法に規定されておりますが、子供の親族または検察官、こういう請求者に加えまして、児童相談所長もその請求ができるというものでございます。
 これまで、厚生省といたしましては、このような規定を適用いたしまして対策を講じてきたところでございます。
 四ページをごらんいただけますでしょうか。
 今申し上げましたような権限に基づきます、そしてまた対応の種類ごとに、いわば主な対応策を御紹介いたしております。これまでとってまいりました措置の経年的に並べたものがございまして、これは、大変恐縮でございますが、別冊の資料の三十二ページからにございますので、経年的な、何年度にこういうことをやったというのはそちらの方でごらんをいただきたいと存じます。
 まず、児童相談所等への通告に関する啓発活動の推進でございますが、とにかく早期の段階での発見をし対応するということのために、いわば通告を促そうということで、虐待の発見の目安などをわかりやすく解説をいたしまして、そして、最も子供に接する機会の多い学校の先生でありますとか保育所の保育士さん、保健所の保健婦さんなどを対象にいたしました「子ども虐待防止の手引き」というものを作成いたしまして、そういう関係機関に配付をいたしました。
 また、児童虐待に関する啓発ビデオというものを作成することといたしておりまして、保育所、幼稚園、学校などの保護者会などにおいてぜひ見ていただこうということで、そういうビデオを作成することといたしております。
 とにかく関心を持っていただいて、できるだけ早く関係方面に御連絡をいただく、そういうことをお願いしているわけでございます。
 それから、2の児童相談所によります対応のために、児童相談所がとる具体的な対応策を指示いたしております。平成十年に、通告や相談を受けました児童相談所の、通告、相談の受理から処遇の集結まで、いわば対応上のそれぞれの流れに沿いまして、ポイントになる点につきまして実務上のノウハウを解説いたしました、こちらは「子ども虐待対応の手引き」をつくりまして、具体的にどういう対応をとってほしい、特に毅然とした態度をとってほしいということをお願いいたしております。
 それから三番目でございますが、これまで何度も、前回の集中審議でも厚生省側から申しておりますように、これまでは、できるだけ親との関係を何とか維持しつつ子供の保護を図るということを主としてやってまいりましたけれども、それではなかなか対応ができにくいという状況が出てきております。そういう場合には、毅然として一時保護なり施設入所などの措置をとることを指導しておりまして、平成九年の六月に「児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運用について」という通知を出しまして、保護者などからの分離が必要な場合について適切な保護を行うよう、とにかく児童の福祉を最優先した対応をとる、そして、必要に応じて、例えば警察への事前協議その他、そういう協力、連携もとりながら対応するようにという通知を出しております。
 それから四番目の、身近な地域での子育てに関する相談、支援体制でございますが、とにかく地域なりで孤立をしている、お母さんが孤立をしている、親が孤立をしているというようなことがいろいろな問題に関連をしているのではないかというようなことから、子育てのいわば専門機関でございます保育所を活用することによりまして、子育てに関する相談、助言、いわば地域において子育てを支援していくという地域子育て支援センターの整備を行っております。
 また、地域で活動していただいております主任児童委員、それから保育所の保育士さん、施設の職員、そういう方々を対象にいたしまして児童虐待に関する専門研修を行いました。そして、研修修了者を地域協力員として登録をしていただきまして、地域の連絡網を整備する。そして、定期的にそういう会合を持ちまして何とか地域で助け合う、そういう仕掛けをやっていきたいということで、今年度からそういう事業を行っております。
 それから次、五ページでございますが、冒頭申し上げました児童虐待対策協議会、七月の当委員会におきます集中審議でも、関係省庁がとにかく連携を十分とって対応する必要がある、こういう御指摘もいただきました。大変遅くなったわけでございますが、昨日、関係省庁並びに関係団体にお集まりをいただきまして、とにかくこの大問題であります問題に対して、関係省庁にいろいろ自分たちが持っている手段を全部協力してやっていこうではないかということをお願い申し上げましたし、また関係省庁から、ぜひそういう対応をとろうという御協力の意見表明もございまして、そういう体制をとっております。
 こういう体制をとりますことで、それぞれ管下の団体を御指導いただきまして、都道府県レベルまた地域レベルで、既に県によりましてはそういう対応をとっているところもございますが、そういう対応をとることによって地域でのネットワークで何とかそういう対応をしたいということで、昨日集まらせていただきました。適宜その後のフォローアップをしてまいりたいというふうに考えております。
 それから、七ページ以降が、平成十年度に私ども厚生省報告例におきまして把握をいたしました児童虐待相談処理件数の調査の内容でございます。
 当委員会でも御指摘をいただきましたように、実態把握が十分ではない、そういう反省に立ちまして、厚生省報告例だけではなくて、十年度は、そこの丸印の二つ目にございますように、経路別相談、それから立入調査の状況、死亡事例の把握ということを、あわせて特別集計として行いました。先ほど御紹介がございましたように、非常に相談件数がふえている。そして、それに対して対応してきているという状況でございます。
 お時間の関係がございますので、大変簡単で恐縮でございますが、八ページ、ざっと御説明をさせていただきます。
 一番が、先ほど御紹介がございましたように、総件数でございます。
 それから二番が経路別相談件数でございますが、そこにございますように、二七%程度が家族から相談がされております。そして、今回その経路別相談でわかりましたことは、そういう、家族から相談があったときに、虐待を行っている本人からの相談というのがわかった場合に、本人が母親の場合には、九割近い方が母親から言ってこられる。それから虐待者が本人以外、例えば母親が虐待をしているときに父親からの相談というのは二割ぐらいしかないというようなことが今回の調査でわかってきております。
 次、九ページでございますが、相談内容といたしましては、身体的暴行が五割を超えている。
 それから、主たる虐待者につきましては、実父母合わせますと八二・七%という状況でございます。
 また、被虐待児童の年齢構成を見ますと、ゼロ歳から学齢前児童を合わせますと四四・七%ということで、半数近くがそういう状況になっている。
 また、相談所での処理の種類でございますが、面接指導が七割程度、施設入所は二割程度という状況になっております。
 十ページでございます。この中身を今回新たに調査をいたしましたが、施設入所措置は、パーセントでは減少いたしておりますが、実数では二百二十五件ふえております。
 また、面接指導のうち、児童福祉司指導、(注)の4にございますように、複雑困難な家庭環境に起因する問題を有する児童等、処遇に専門的な知識、技能を要する事例に対しまして継続的に行う指導でございますが、これが百八十六件の増、六八%の増ということで、かなり困難な事例が多くなってきているという状況がうかがわれるのではないかと思っております。
 十一ページでございます。立入調査が十三件でございますが、そこにございますように、特に緊急を要するため警察官同行のもとに立入調査の上児童を保護したケースが二件報告されております。
 それから十二ページでございます。一時保護でございますが、これも四百六件の増ということで、いわば家庭から一時的に切り離すという必要があるというケースがかなりふえてきているということを示すものと思っております。
 十三ページが死亡例でございます。八件、児童相談所が関与していながらお亡くなりになるという、大変、まことに言葉もない状況が報告をされております。
 それから最後、十七ページには、児童相談所が関与をいたしませんでしたけれども、把握をいたしました数字として、三十三件の死亡事例があったということでございます。
 私どもといたしましては、何とか関係省庁と十分連携をとりながら、今後とも引き続き努力をしてまいりたいと思っております。
○石田委員長 次に、文部省生涯学習局長富岡賢治君。
○富岡政府参考人 私ども文部省といたしましても、最も信頼をするべき親からの虐待は非常に子供の心に大きな傷を与えるものであり、深く憂慮すべき問題と考えているわけでございます。
 子供の虐待の問題につきましては、さまざまな要因によって複合的に生じるものであると考えているわけでございますが、昨年六月に、中央教育審議会が「幼児期からの心の教育の在り方について」の答申をいたしたわけでございますが、子供の虐待の要因の一つといたしまして、夫婦関係が不安定で、互いに理解し合う、そして支え合う姿勢が欠けているということが特に大事な問題だという指摘をいただいているところでございます。
 こうしたことから、文部省といたしましては、家庭教育の支援ということに努めておるわけでございますが、第一に、親が家庭を見詰め直しまして子育てに取り組んでいく契機となるよう、家庭教育やしつけのあり方につきまして親に問題提起をするという内容でございます、家庭教育手帳とか家庭教育ノートというのを作成しまして、乳幼児とか小中学生を持つすべての親に配布いたす事業を始めておるわけでございます。
 特に、来年度の配布分からは、虐待と思われる行為を発見した場合は福祉事務所や児童相談所に通告すべき旨を明記いたすことといたしまして、全国の親への通告義務ということについての趣旨の普及を行うということで準備をしているところでございます。
 それから第二番目でございますが、地域で子供を育てる環境や親と子供たちの活動を振興する体制を整備することを目指しまして、現在、全国子どもプラン(緊急三ヶ年戦略)を立てているわけでございます。その一環としまして、子供や親の悩みにいつでも答えることのできる二十四時間電話相談事業、子どもホットライン、子育てホットラインを全国で整備することに着手しております。
 それから三番目でございますが、深刻な問題につきましては、臨床心理士、医師等の専門的な知識や能力を有する者を、家庭教育カウンセラーという形で地域におきまして活用することの事業に取り組んでおるわけでございます。
 それから、平成十二年度の概算要求におきまして、子育て中の親のしつけに関します悩みや不安に対して気軽に相談に乗ったり、きめ細かなアドバイスを行う子育てサポーターを地域に配置し、厚生省の児童虐待防止市町村ネットワーク事業と連携して、子育て支援のネットワークを構築する事業を現在要求しているところでございます。
 次に、学校教育でございますけれども、家庭を取り巻く環境の変化に対応して、親となる自覚を高め、家庭における親の役割についての理解を深めるということが大事でございますので、高等学校の家庭科を男女とも必修といたしまして、乳幼児の保育と親の役割や、家庭の機能と家族関係などについて指導しているところでございます。
 さらに、本年三月に告示しました新しい高等学校の学習指導要領では、家族、家庭の機能、子供の発達と保育に関する内容を充実いたしました。子供の健全な発達を支える親の役割と保育の重要性、親の保育責任などに関する学習の一層の充実に努めることとしているわけでございます。
 それからまた、学校におきましては、従来から、学級担任等が児童生徒との望ましい信頼関係を日ごろから醸成して虐待の早期発見に努めるということで、家庭や児童相談所等、関係機関との緊密な連携を図ることとしているわけでございますが、特に平成九年に、厚生省の「児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運用について」の通知を受けまして、そういう要保護児童発見者の通告等につきまして適切な配慮を行うよう、文部省から各都道府県教育委員会等を通じて学校の教職員への周知を図ってきたところであります。
 文部省と厚生省では、昨年、「子どもと家庭を支援するための文部省・厚生省共同行動計画」を策定いたしまして、児童虐待の防止についても協力して取り組んでいくこととしておりますので、今後とも、関係省庁と密接に連携をとり合って児童虐待の問題に対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。
○石田委員長 次に、法務省人権擁護局長横山匡輝君。
○横山政府参考人 それでは、法務省の人権擁護機関の児童虐待に対します取り組み状況について御説明いたします。
 法務省の人権擁護機関では、従来から、児童虐待を看過することのできない重大な人権問題であるととらえまして、児童虐待の解消のため、各種の啓発活動に努めますとともに、人権相談や人権侵犯事件の調査、処理を通じて関係者に人権尊重思想を啓発し、被害の救済に努めているところであります。
 まず、法務省の人権擁護機関について簡単に説明させていただきます。
 法務省には、人権擁護の事務を専門的に担当する機関として、法務本省に人権擁護局が、その地方機関として、全国八カ所の法務局に人権擁護部が、四十二カ所の地方法務局に人権擁護課が、さらに法務局、地方法務局の管内に二百八十一の支局が設置されております。
 また、市町村長が推薦した地域住民の中から法務大臣が委嘱しました民間ボランティアとしまして、人権擁護委員が全国の市町村に約一万四千人配置されております。これらの法務局等の職員や人権擁護委員が、人権の擁護のため一体となって、人権啓発活動、人権相談、人権侵犯事件の調査、処理に当たっております。
 まず、児童虐待に対する具体的な取り組みでありますが、一番目に、啓発活動がございます。
 児童虐待防止のための啓発活動としましては、児童虐待などが問題となっております子供の人権を含め、弱い立場にある人たちの人権を尊重することの重要性を国民の方々に広く理解していただきますとともに、広く人権尊重思想の普及高揚を図るため、全国各地で、テレビ、ラジオ放送、新聞等のマスメディアを利用した啓発活動や講演会、座談会、シンポジウム等の開催、ポスター、啓発冊子の配布等、さまざまな啓発活動を実施しているところであります。
 二番目に、人権相談の点です。
 法務省の人権擁護機関では、法務局職員や人権擁護委員が、家庭内や隣近所のもめごとなどを含め幅広い人権相談に応じていますが、子供の人権問題につきましては、特に全国の法務局、地方法務局に、子供の人権相談所や子ども人権一一〇番を開設し、子供などが容易に相談しやすい体制をとっております。
 なお、平成六年度以降、人権擁護委員の中から、子供の人権にかかわる問題を専門に扱います子どもの人権専門委員を選任し、子供の人権相談所などにおいて人権相談に応じたり、児童虐待など、子供の人権が侵害されているおそれがある場合には、これから御説明します人権侵犯事件として、法務局と連携して調査、処理を行うなどの積極的な取り組みをしております。
 三番目に、人権侵犯事件の調査、処理について御説明いたします。
 法務省の人権擁護機関は、人権侵犯の疑いのある事案を認知しました場合は、加害者及び被害者等の関係者から事情聴取を行うなどの任意調査によって人権侵犯の有無を明らかにし、その結果、人権侵犯の事実が認められた場合には、事案に応じて適切な処置を講ずるよう努めております。
 児童虐待につきましては、重大な人権侵犯として、児童虐待の情報を得た場合には積極的に人権侵犯事件として調査、処理するよう担当者の会議等において指導しますとともに、児童虐待事件調査、処理の手引を作成、配布するなどして、調査、処理の適正を期しているところであります。
 なお、虐待されている児童の保護に当たりましては、特に、そのための各種権限を有しております児童相談所等との連携が重要でありますことから、各法務局の現場において、児童相談所を中心とした関係機関のネットワークに積極的に参加しますとともに、具体的事案において、これら機関との適切な役割分担のもとに、児童の保護に努めているところであります。
 ちなみに、法務省の人権擁護機関が人権侵犯事件として過去三年間に取り扱いました児童虐待の件数は、平成八年が二百四十件でありましたが、同九年が四百十七件、昨年が四百九十六件と、増加傾向にあります。
 また、その処理の主な内訳は、昨年では、児童虐待の排除を内容とする処理であります説示あるいは排除措置が四十五件、他の機関への連絡や法律上の助言を内容とする援助が四百二十一件となっております。
 最後に、今後の課題でありますが、児童虐待の解決のためには児童相談所などの関係機関との連携協力が重要でありまして、昨日、厚生省を中心とする関係機関により立ち上げられました中央レベルにおきます児童虐待対策協議会において、より効果的な連携協力のあり方について検討してまいりたいと考えております。
 また、法務省に設置されております人権擁護推進審議会において、現在、人権が侵害された場合における被害者の救済に関する基本的事項について調査審議が行われておりまして、児童虐待を含む子供に対する人権侵害に関しても調査審議が行われる見込みであります。法務省といたしては、その結果をも踏まえて、被害者救済方策の充実強化について今後検討してまいりたいと考えております。
 なお、この審議会におきましては、本年十二月十四日に社会福祉法人子どもの虐待防止センターからもヒアリングを行う予定になっております。
 以上でございます。
○石田委員長 次に、総務庁青少年対策本部次長川口雄君。
○川口政府参考人 児童虐待問題に関する総務庁の対応などについて御説明申し上げます。
 子供が親から虐待を受け、その生命、身体が危険に脅かされるという状況は、次代を担う青少年の健全な育成を図る観点からも極めて憂慮すべき問題であります。
 この問題の背景として、近年の都市化、核家族化、価値観の多様化等によりかつてのような地域社会のつながりが弱まり、家庭の内外において人間関係が希薄化している傾向がうかがえます。家庭や地域社会における子育て機能が低下した結果、周囲から孤立した家庭の中で親が育児不安に陥ったり育児に負担を感じる例が増加しているのではないかと思われ、そのような親が家庭内外から適切なサポートを受けられずに児童虐待に及んでしまうこともあるものと考えます。
 本年七月に提出された青少年問題審議会答申においては、家庭が地域社会に対して開かれたものとなるよう支援を充実していくべきとし、「すべての親が、自らの役割と責任を自覚し、適切な知識・情報を得て、信念をもって責任ある行動をしていけるよう、啓発、学習、情報提供等の場を拡充させること、親や保護者が子育ての在り方や成長の過程で子どもが抱える問題の多様性を実感し、自信をもって子どもをしつけていけるよう、子育ての知識や体験、悩みを伝え、共有するための場を充実していくことが必要である。」と指摘されております。
 総務庁としては、答申の指摘等を踏まえ、関係省庁から成る青少年対策推進会議等を通じて、子育てや家庭教育を支援するための各般の施策の充実、総合的展開に努めるとともに、国民運動の推進、各種の広報啓発を通じて、家庭の役割の重要性、子育てに関する親や社会の責務について国民に広く呼びかけております。
 本年十月二十二日には、政府全体の青少年対策の基本方針等を定めた「青少年対策推進要綱」の名称を「青少年育成推進要綱」に改め、その中で、「児童虐待問題等への対応の推進」を「当面特に取り組む課題」として新たに位置づけて、児童相談所を初めとする関係機関、団体のネットワーク化の促進、地域に根差した相談機能の充実、国民の理解を得るための広報啓発活動等の充実等を図ることとしております。
 これに対応して、要綱の「重点推進事項」の一つである「家庭への支援の充実」には、児童相談所の対応力強化、子供の虐待防止のための広報啓発の充実等児童虐待防止施策の充実、地域における子供のグループ活動、団体活動その他の児童・青少年健全育成活動の振興を盛り込んでおります。
 また、青少年の健全育成を図るための国民的な運動の展開を通じて、児童虐待問題に関する国民の関心を高めてまいりたいと考えております。毎年十一月を全国青少年健全育成強調月間に定めて、関係省庁、民間団体等と連携を図りつつ、集中的に各種広報啓発活動を実施するなどの取り組みを行っておりますが、本年度からは、児童虐待問題についても国民全体の意識を高めるための広報啓発活動を推進することとしたところでございます。児童虐待問題を含め青少年をめぐる問題の解決に向けて、青少年問題審議会の答申でも指摘されているように、地域住民、民間ボランティア等も含めた開かれた関係の中で、地域ぐるみの横断的、総合的かつ開放的な体制づくりを進めることが重要であると考えます。
 総務庁といたしましては、「青少年育成推進要綱」に沿った関係施策の推進や国民運動の展開等を通じて、今後とも、関係省庁、地方公共団体、民間団体等との緊密な連携のもと、関係施策の総合的かつ効果的な推進に努めてまいる所存でございます。
 よろしくお願いいたします。
○石田委員長 次に、警察庁生活安全局長黒澤正和君。
○黒澤政府参考人 警察の取り組みにつきまして御報告申し上げます。
 近時、児童虐待が大きな社会問題として指摘されておりますが、児童虐待に関しまして警察に寄せられる相談件数も増加いたしております。また、児童虐待事犯として検挙された事例もございます。
 例えば、最近の事例でございますが、六歳の娘が言うことを聞かないことに腹を立てて、素手やモップ等で殴打して死亡に至らしめた両親とその友人を傷害致死で逮捕いたしたもの、それから、四歳の娘が言うことを聞かないことに腹を立てまして、殴る蹴るの暴行を加え、ポットに入れた熱湯をかけるなどした母親とその内縁の夫を傷害罪で逮捕いたした事例などがございます。
 警察といたしましては、児童虐待は、人格形成期にある児童の心身に深刻な影響を及ぼす重大な問題であると認識をいたしますとともに、児童の生命、身体を守り、また、児童の精神的な立ち直りを支援することによりまして問題行動等に走ることを防止するという観点から、この問題を今日の少年保護対策の最重要課題の一つとして位置づけまして、積極的に取り組んでいるところでございます。
 具体的には、児童虐待につきまして、家庭内で起こる事案でありますことから、認知及びその対応に大変難しい面がございますが、特に、次に述べるような点に留意して取り組んでおります。
 その一つは、児童虐待事案は早期に認知することが重要でございますので、警察部内の、少年部門はもとより、地域、刑事、被害者対策等の関係部門が緊密に連絡をとりながら、街頭補導、少年相談・一一〇番通報事案への対応等の各種活動を通じまして早期発見に努めております。
 その二つは、犯罪に該当するものは事件として厳正に措置しており、また、保護者に監護させることが不適当であると認める児童につきましては、児童相談所等に通告を行うほか、児童相談所、保健医療機関、学校等の関係機関と連携を図りながら、現在全国の警察に構築されております少年サポートセンターに配置されております少年相談専門職員や少年補導職員等が中心となりまして、被害児童の適切な保護に努めております。
 特に、児童虐待事案への対応につきましては、関係機関とのより効果的な連携が極めて重要でありますが、最近におきましても、六歳の女の子を迷子として保護いたしましたところ、全身にあざなどがございまして、児童から事情聴取をいたしました結果、母親、そしてその内縁の夫による暴行傷害等の虐待事案が判明いたしました。直ちに、児童を児童相談所に通告をいたしまして保護をいたしますとともに、医師の診察を受けさせ、児童相談所長からの告発を受けまして、母親及びその内縁の夫を傷害罪で逮捕した事例などがございます。
 また、児童相談所、保健医療機関、家庭裁判所等の関係機関によって構成される児童虐待防止のネットワークの一員として、事例検討や研修、手引の作成等に取り組むなど、各都道府県警察におきまして関係機関との連携強化に努めておるところでございます。
 また、第一線の警察職員が児童虐待問題の重要性についての意識を十分持つ必要がありますことから、警察庁におきましては、全国警察本部長会議、全国少年課長会議等におきまして、この問題の重要性につきまして繰り返し指示等を行っているところであり、これを受けまして、各都道府県警察におきましては、第一線の職員に対しまして指導教養を行っております。
 また、児童等への支援を担当する少年補導職員、少年相談専門職員等に対しまして、児童虐待問題に関する専門的な知識、技能の向上を図るため、各種研修、専科教養等を実施いたしておるところでございます。
 警察といたしましては、今後とも、関係機関と緊密に連携し、児童虐待の防止、虐待されている児童の早期発見とその保護等に努めてまいりたいと考えております。
○石田委員長 以上で政府参考人からの説明は終わりました。
    ―――――――――――――
○石田委員長 これより参考人及び政府参考人に対する質疑に入るのでありますが、理事会協議によりまして、最初にあらかじめ申し出のありました委員が順次質疑を行い、その後、自由に質疑を行うことといたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阪上善秀君。
○阪上委員 今井、上出参考人には、早朝より御出席をいただきましたことを心より感謝申し上げます。
 中国のことわざに三樹の教えというのがあります。一年先を考えるならば種をまけ、十年先を考えるならば木を植えよ、百年先を考えるならば人を育てよという教えであります。これは、一年先の短期の展望、そして十年先の中期の展望、百年先の長期の展望を持てという意味ではないかと私は理解をいたしております。
 今日の政治、経済、教育、マスコミ報道等を見ておりますと、目先のことばかりにとらわれ過ぎではないかなと思っておるのであります。戦後五十四年、日本の教育は、人間として一番大切な道徳教育というものを忘れておった、欠如しておったと思います。日教組の先生による、人を批判はするけれども、師に対する尊敬の心、親に対する感謝の心を持つ教えが欠けておったのではないかと思います。人の道、道徳、それには道という字がついておりますが、私は、日教組の教育はしんにゅうが抜けておったのではないかと思います。でありますから、首のみであります。まさしく、さらし首の教育だったと思うのであります。これが今日の子に対する虐待事件につながってきたのではないかと思うのであります。
 そこで質問でございますが、四点。今日虐待を起こす、戦後教育を受け育った親に対する戦後教育の総括が今必要ではないかと思うのであります。今後、親に対する対応をどのように考えておるのか、文部省の対応をお伺いいたしたいと思います。
 そして、今日の学級崩壊は、教師と生徒の信頼関係の欠如にあったと思います。この延長線上に来ますと、家庭崩壊もまさしく親と子の力関係、この教育が家庭崩壊に必ずつながってくると思うのであります。この延長線上に虐待事件がつながると思いますので、この対応をどのように考えますか、文部省、厚生省にお伺いをいたしたいと思います。
 そして、四点目でございますが、先日のNHKのテレビ報道で、虐待事件等で百カ所余りに骨折を起こしておる子供、児童虐待については、学校の先生あるいは病院の医師、警察、児童相談所などが連携して早期発見することが重要ではないかと思うのでございますが、また、これらの関係機関が連携するような機関をつくる必要があると思いますが、それぞれの関係機関の対応をお願いいたしたいと思います。
 以上です。
○富岡政府参考人 中央教育審議会におきまして、今の子供たちの一番の問題というのは何かという議論がずっとなされてきたわけでございます。その中で、現在の子供につきまして、大人社会全体のモラルの低下を背景にいたしまして子供たちに大きな影響を与えているんだ、特に、大人社会で、新しい時代の夢を語ったり未来を切り開く大切さを伝えようとする努力に欠けていた、あるいは子供たちに伝えるべき価値に確信を持てない、あるいはしつけの自信を喪失したりと、そういうことが非常に子供たちの精神環境に大きな影響を与えてきたという問題点を指摘いたしまして、今までの教育につきまして、特に心の教育ということにつきまして十分な努力をしていかなくてはいけないのではないかというふうに総括していただいたわけでございます。
 そして、現在の私どもの教育改革の基本的な考え方といたしまして、これからの新しい社会を、豊かな国と社会をつくるためには、社会全体で子供たちが生きる力を身につける、つまり自分で課題を見つけまして、みずから学びみずから考える力、それから、特に正義感や倫理観等の豊かな人間性というものを身につけるための取り組みを進めていこうではないかということが現在の教育改革の基調になっているわけでございます。
 その中では、御指摘のように、道徳教育等につきましても、形式的には整備されてはまいっておりますけれども、実質的な内容についてはまだまだ今後十分な改善努力が必要だというようなことは私どもも認識しておるわけでございますので、そういうことから一歩一歩努力してまいりたいというふうに私どもは考えているところでございます。
 それから、二番目でございますけれども、このような子供たちの虐待等につきましては、家庭におきまして、先生御指摘のように、親がしっかりしつけをするというような場として、家庭教育、家庭の果たす役割が十分果たされていないのではないかということがやはり問題意識としては非常に多いわけでございます。そのためには、家庭とかあるいは親子、夫婦の信頼関係を築くという努力を父親も母親も十分していないのではないかということを私どもも大きな問題意識を持っております。
 実は、先ほどもちょっと御紹介申し上げましたけれども、全国のゼロ歳から十五歳までの子供を持つ親全員に、家庭教育というもの、もう一度家庭を見直していただけないだろうかということで、例えば家庭教育手帳に、楽しい家庭をつくって、子供たちみんなが、楽しい家庭というものを、自分自身の家庭をそうしてほしいと望んでいるということを問題提起したり、間違った行いはしっかりしかるということをやっていただけないかというようなことを問題提起させていただいた資料を全国に配布させていただいたわけでございます。
 私どもは、そういうような家庭教育の場に国が直接物を言っていくということについてはできるだけ慎重であるべきだというのが今までの考え方でございましたけれども、今先生御指摘のような実情がある以上は、問題提起するということについてやっていこうということで今投げかけているわけでございます。私どもの方に全面的にけしからぬというような御指摘をいただいているわけではなくて、それをきっかけに考えていこうというような機運が多少とも盛り上がっていると思いますので、そういうようなことを進めてまいりたいと思っております。
 それからもう一つは、先生と生徒の関係ということにつきましても十分、教えられる者と教える者というようなことについてのきちっとしたけじめを持った相互の信頼関係というようなことが必要でございますけれども、その点につきまして、教師の毅然とした対応、子供たちの目線に立ちながらも毅然とした態度で教師が指導するということにつきまして、さらに今後努力しなくてはいかぬと思っております。これは、養成、採用、研修すべての段階でやっていかなくてはいけないということでございますので、この点は当然大きな問題意識として持っているわけでございます。
 それから、関係機関との連携ということで、最後に、ちょっと長くなって恐縮でございますけれども、私どもとしましては、学校としてはそういう状況にあります子供を把握した場合に児童相談所等の関係機関との連携に努めるということはずっと以前からお願いはしてあったわけでございます。事実、虐待の実態で通告されたものの大体十数%が学校からの連絡というような実情が現実としてあるわけでございますが、まだまだ学校の先生というのは、虐待とかそれに近いような感じを受け取ったときに、まず家庭と相談しようというようなことがどうもまず最初にアクションとして出てくるということがございまして、十分通告というようなことについて趣旨の普及徹底がなされているかどうかということについては、十分でないと思っておりますので、地域でそういうような取り組みを、特に学校の先生も理解するように、今後とも普及に努めてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
○真野政府参考人 家庭の子育ての悩みが高じてという状況ではないかと存じますが、とにかく、できるだけ親御さん、特にお母さんを孤立させない、そういうことによって対応していく必要があるのじゃないかということで、いわば子育ての専門施設であります保育所を活用いたしまして地域子育て支援センター、また、働くお母さんだけではなくて、緊急時または短期間の保育をやるという一時保育というような、とにかく一たん子供さんをお預かりして、少しお母さんと若干距離を置いて、またもう一度再構築をしようというような仕掛けもございます。そういういろいろな仕掛けを通じてぜひサポートをしていきたいというふうに考えております。
 また、関係機関との連絡につきましては、先ほど来御説明をいたしておりますように、私どもそれぞれのツールを使って、そして関係機関いろいろ協力してやっていこうということでございまして、児童相談所の運営指針、平成十年に出しておりますが、児童相談所が中心的な役割を果たして地域の関係機関のネットワークづくりを、ぜひつくってほしいという指導をいたしておりますし、中央レベルでは、先ほど御説明いたしました、昨日関係省庁、関係団体にお集まりをいただきましたが、引き続き議論をしてまいりたいと思っております。
 また、何をおきましても身近な市町村、地域で、一番身近な市町村レベルでもやはりそういう対応をとっていただく必要があるということで、私ども来年度の概算要求におきまして、市町村レベルでもそういう虐待防止のネットワークが組めるような概算要求をいたしております。そういう意味で、それぞれのレベルで関係機関の連携強化に努めてまいりたいというふうに考えております。
○石田委員長 次に、戸井田徹君。
○戸井田委員 自由民主党の戸井田徹であります。
 十分ですからそんなにたくさん質問はできないと思うんですけれども、今回のこの委員会に所属をしまして、そして理事という立場で初めてこの児童虐待の問題を深く調べていこうと。その資料がこの当日になってどうっと洪水みたいにして前に提示されるということで、それをまた読み直してみると、危うくおぼれそうになる部分があるわけですけれども、しかし、ポイントは、虐待によって子供の命が失われているという事実だろう、ここらが一番重要なところなんじゃないかなと。
 いろいろ資料によりますと、平成四年から八年まで、平成四年で虐待が確実で命を落とした子供が四十四名、五年に三十一名、六年で五十九名、七年で六十二名、八年に四十九名、合計でこの五年間で二百四十五名の子供の命がなくなっていると。九年度は資料の中に出てこないんですけれども、十年度はきょうの新聞なんかによりますと四十一名が命を落としている。そういう意味では若干減ったかなと。
 さらに、児童相談所が関与して、そしてなおかつ命を落としたケースというのが平成九年で十五件、平成十年に八件ということなんですね。そういう意味では、命を落としたケースということをとらえてみると余り変わっていないんじゃないかな。そして、逆に一時保護等を含めると、一時保護が二五%増というようなことが新聞にも出ている。
 そういう体制がとれてきたからそういうものがふえてきたというとらえ方も当然あると思うのですけれども、しかし、なぜ死亡者が減らないのか。まして、児童相談所が関与していながら、なおかつ死亡者が出る。それはやむを得ない部分もあるのかもわからないけれども、認めるわけにはいかない。これを減らしていくことが、やはり行政に携わる人の責任だろうし、我々政治に携わる人間の責任でもあるというふうに私は思うわけであります。
 しかし、行政と一般の人とをつなぐ連係プレーということを、さっき話にも出ておりましたけれども、児童福祉法の中にも、当然そういう児童を発見した場合には福祉事務所または児童相談所に通告しなければならないというかなり強い形の表現も実はあるわけです。
 しかし、私どもかつて子供に関係するような学校のPTAだとかそういうところでの活動をしていたときのことを振り返ってみると、やはり関心のない人ほどそういうことに無関心だ、当たり前のことなんですけれども。そういうところからかけ離れたところにいる。しかし、その近くには関心のある人もいるんだ。そういうケースというものを見聞きしながら、しかし家庭内のことだからということで、なかなかそこまで踏み込んで物が言えないところがある。まあいいわということで逃してしまう。それをもっともっと引きつけるような形のものをつくっていけば、そこがもっとつながってくるんじゃないかな、そんな気がするわけです。
 それを法律にしてしまったらきつ過ぎるということがあるのか、その辺はこれから議論していくことなんだろうと思うのですけれども、どうも児童相談所と国民との間に距離があり過ぎるんじゃないか。その間に入っているのが、特に子供のことに関しては学校であるとか保育園であるとか、もっと小さい場合だったら保健所であるとか保健所の保健婦さんであるとか、そういったところが子供の虐待の事実を知る立場にあるんじゃないか。
 そうやって考えてみると、例えば学校の先生にしても、幼稚園の先生、保育園の保母さんであるとか、または保健所の保健婦さんだとか、そういった人たちが、その事実がおかしいんじゃないかなということがわかったとしても、やはりそれも家庭内のことでということで、ただ情況証拠だとか疑いだけでもってそういうことが通告できるだろうかということになると、この児童福祉法の二十五条の表現というのは、もうちょっと表現の仕方があるんじゃないかなと。そういう疑いがあったとしても、とりあえずその知り得た人間同士の関係でなしに、第三者である児童相談所なり福祉事務所に通告させるということが必要なんじゃないか、そういうものが死亡者のあれを減らしていくことにつながっていくんじゃないかというふうに思うのですね。
 かつてベビーホテルの問題がありました。あのときに厚生省は、社会福祉法人の手のうちに入っているところではそういうことは起きないけれども、結局それでカバーし切れないところが違法であっても必要だからということでもって、そういう認可のない、それも資格もない人がやるところに預けていってしまう。自分たちは関係ないということで済ますのではなしに、そういうものをすべて手のうちに入れて、その中で解決方法は何なのかということを考えていくのが重要なところじゃないか。
 今回のこの児童虐待に関しても、やはりそういう部分が抜け落ちているような気がして仕方ないわけでありますけれども、ぜひ、この相談所なり福祉事務所と国民との間の、学校の先生であったり保育所の保母さんであったり保健婦さんであったり、そういったところにもう少し強制力のある表現でこの福祉法を改正した方がいいんじゃないか、私はそういうふうに思うのですけれども、それぞれ御関係のところ、そしてきょう御出席いただきました今井参考人、それから上出参考人にも御意見をお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○今井参考人 今の、はっきりしたものが必要ではないかという御質問でございますが、私もそのように考えております。と申しますのは、家庭内に法律が入らない、国は家庭内に入らないということでしょうか、そういう関係の、家庭内暴力にしろ、いろいろ現実にはあるわけですけれども、それに対応するものがないという現実があるのじゃないかと思います。
 それで、人のことを言ってはあれですから私どものことを言いますと、私が四十八時間ということを言い出したわけですけれども、四十八時間でやれとはどこにも書いてないのですね。理屈で、翌週へ持ち越してはいけないということで、七十二時間では長過ぎるから四十八時間、それだけのことでございます。
 それから、初期対応、さっき警察の方もありましたが、早期発見だということはまさにそのとおりだと思います。そういうことで、早期発見、早期対応までやれば大分減るんじゃないか。母親が五五%程度ありますから、お母さんを説得できれば何とかなるかな、やはり福祉の仕事だろうということで、早く行ってこいということをやったわけです。
 ただ、それは我々の努力でやっているのじゃないかと思います。これを全国へ広げるといったら、厚生省もかなり苦労するのじゃないかと思います。埼玉が余計なことをやったなと言われるかもしれません。そういうことだと思いますね。
 あと、児童福祉法を見ますと、中に組み込まれちゃっているものですから、ベテランなら、もうここにあるからできるんだよということでわかるのですけれども、新人だと大変わかりにくいのですね。
 今は通告義務のところにも虐待を含めて書いてありませんから、要するに徹底的に、あの親はだめだから分離してしまえ、そこまで考えて、そう見たら初めて通告しなさいよという規定で、どうもあの親は厳しいな、それだけでは法律上は通告義務がないんじゃないかと思うんですね。その時点で通告すると、通告された方が、何、余計なお世話をということになって、あんた、名誉毀損で訴えてやるなんて、現実にあるわけですよね。
 ですから、まず入り口がないということがありますので、その入り口を、虐待の通告義務を与えるためには虐待とは何ぞやとやはり書いてある必要があると思うのです。
 話がぐしゃぐしゃしますけれども、今の法律だと、具体的に言うと、郵便屋さんが郵便袋を持ってポストから郵便物を回収してくる、それでトラックへ載せて郵便局へ行って、本局へ行って広げてみたらその中に虐待があった、さあどうしようかという仕事のやり方だと思うのです。ですから、もう最初から、ポストに入っているものが、速達とかありますけれども、虐待という印がついていたらそれはもう郵便袋に入れない、そういう法律のつくり方も必要じゃないかと思います。
 あと二十九条で立ち入る場合も、一般調査においては、あなたは虐待しているから来ましたと言ったらとんでもないことになるわけですね。今、虐待という言葉は絶対使えないですから。要するに、書いてないですから。定義が書いてないものは使えない。
 そうすると、近所の方が心配しているのでとか、通りがかりの人から大分にぎやかだということで連絡がありましたので、電話がありましたので来てみましたというようなことで、カモフラージュしながらやるわけですね。そのカモフラージュをずっと続けていくわけです。施設へ入れるときも、本当は虐待なんだけれども、虐待と言うと返せって言われちゃうから、そうではなく、子供が少し悪いことをするから、しばらく環境を変えましょうというようなことで施設へ入れる。やはりはっきりさせる必要があるかと思いますね。
 あと虐待を防ぐための、ハイリスク家庭というのですか、ハイリスクな母親を見つける方法として、近所からの通告と一緒に、母子保健法で、母親、妊産婦から乳幼児の健診等ありますけれども、あれは、来る者は受けますけれども、来ない者はそのままになってしまうのですね。保健婦さんの活動は市町村の保健センターへ移ったわけですけれども、あれは地域保健で全体を見ますから、やはりそういう一つ一つを家庭訪問までして拾うというのはかなり、今の数では間に合わない、できないんじゃないかと思いますね。ですから、我々が頼んでようやく来てくれるということでございます。行ってくれると、今度は、我々の児童福祉司よりは保健婦さんの方が、やはりいろいろ子供を見られるということでお母さん方に信用がありますから、私どもとしても行ってほしいと思いますね。
 ですから、母子保健法の中に、ハイリスク家庭として、母親がその養育にたえられるかどうかというものを見て、危ないなと思ったらそこへ保健婦さんが訪問活動を、児相とタイアップしてやっていく。今までは全部、ゼロ歳から十八歳まで児童相談所が見ていますけれども、そういう乳幼児健診の対象になる年齢部分はむしろ、特に乳児の場合には保健センターの方でもやる、保健センターの方でも仕事をやらなきゃならぬというようなことも必要かと思います。縦割りと横割りをうまく組み合わせ、分けていったらなおよろしいんじゃないかと思います。
 以上でございます。
○上出参考人 ただいまの御意見の中で、確かに、二十五条の法文は非常にまだ不十分な点があろうと私は思っております。
 特に、虐待という言葉は書いてございませんで、「保護者に監護させることが不適当である」というのは、まさに虐待をかなり意識しているのだろうと思うのですけれども、一般の国民がそれをどれだけ受けとめているか。これはしかし、法文そのものよりも、それに対する啓発をもっともっと広めていく。厚生省の通知もございましたけれども、まだまだそれが不十分だということが一点。
 それからもう一つつけ加えますと、それに対する、何といいましょうか、故意にそういうような疑いのある者を通告したことによって責めを問われる、そういうことが懸念される場合があろうかと思うので、ぜひ免責条項を入れていただきたいというのが私の考えでございます。
 以上でございます。
○石田委員長 次に、石崎岳君。
○石崎委員 自由民主党の石崎岳です。
 両参考人、本当に御苦労さまでございます。
 この問題は、議論していきますと、教育の問題、国民性の問題、文化の問題、いろいろ広がってまいります。日本の病理といいますか問題点をいろいろ考えさせられるわけですけれども、少しディテールのことをお聞きしたいのです。
 今、戸井田委員からも御質問がありましたが、先ほど参考人の方から現行法の改正の点についての言及もございましたけれども、二十五条の問題についてお話がございました。虐待というものを明示して、その虐待の内容も明示して、それによって介入、現場の児童相談所の方々が対応しやすくするというお話がございました。
 今井所長にちょっとお聞きしたいのですけれども、具体的に何か、虐待の内容というものを明示して、法律に明定をして、それによって現場の方々の対応がやりやすくなるということになりますでしょうか。それとも、余り具体的にしますと逆にやりにくくなるということになりますでしょうか。その辺をちょっとお聞かせ願えますか。
○今井参考人 役人の物の考えを基本的に申し上げますと、決まりがあるとやりやすいところがございます。
 それから、四十八時間ということを決めましてから、ケースワーカーは仕事が逆にやりやすくなったということを言っています。要するに、今まではいろいろ考えて、どうしたら、何が最善の策であろうかとかいろいろ悩んで、悩んでいたら先へ進んでしまったということがございます。
 今度はとにかく、何でも四十八時間で行ってこいということを言って、むしろ逆に、そこへ来た理由がはっきり、命令で来ましたということでやりやすくなった。何も考えないで、向こうへ行ってから考える。要するに、一一〇番でパトカーが行く、それから一一九番で消防車が飛んでいく、それと同じことではないのかということを言っています。アメリカなどはそういう考えでやっているようでございます。
 そういうことで、定義につきましても、厚生省が定義をつくっていますので、あれを工夫すればいいかと思うのですけれども、並べるとかなり難しいと思います、文章の中で用語の意義といいますか、言葉の定義の中で虐待とは何ぞやと。虐待とはというのじゃなくて、身体に暴力を加えとか、あるいは精神的に何々とか、子供に過度の緊張を与えるような状況をいうとかということで、虐待というものをこのようにかなり緩やかにとらえる必要があるとは思います。
 罰則をくれると今度は厳しくなってしまうから、やってはならないという禁止規定、今三十四条に禁止規定がありますけれども、あれは家庭外の問題だけですので、あの辺の表現というのを、あわせて家庭内での、あれは家庭外の虐待、家庭内の虐待ということで、表現を工夫すればできるのじゃないか、そのように思っています。
○石崎委員 それと、よくテーマになりますけれども、親権に対する対応で、喪失という規定はありますけれども、一時停止というのが必要かどうかということですね。親権の一時停止機能というのが法律上必要かどうか。それから、それを判断する者、裁判所の判断というものが必要かどうか。期限を設定すべきかどうかということですね。
 それと、現在は一時保護というのが一般的に行われていますけれども、一時保護ということと親権の一たん停止ということと違うのかどうか。別にそういうものを設けた方がいいのかどうか。現実に、一時停止の判断までに現状ではかなり時間がかかりますから。現状というか、親権を喪失させるためには、その裁判所の判断に時間がかかりますから、そうすると、一時保護というものと別に親権の一たん停止という規定を設けた方がいいのか、設けても余り意味がないのかどうか。
 整理しますと、親権の一たん停止というのが必要かどうか。それを判断するところはどこか。期限を設けることが必要か。それから、現在の一時保護と親権の一たん停止とが違う機能になるかどうかというのを両参考人にお聞きしたいのです。
○上出参考人 親権の停止というのは現在は余り行われていないわけでございますけれども、実際に、例えばアメリカあたりの児童保護センターのような形になりますと、そこで保護されると同時に、親権の一時停止が行われているわけですね。しかし、日本ではそういう法はございません。
 私は、少なくとも家庭裁判所が二十八条によって施設入所の承認を行ったようなときには、やはりはっきりと親権を停止するという、これは判例の形でもよろしいと思うのですが、出されるべきではないかなというふうには思っております。
 それをさらに進めた、法改正の上でどういうふうに入れるかということは、ちょっと私は専門外でわかりませんけれども、結果として、現在二十八条で仮に施設に入所いたしましても、その後で親権を振りかざして再三施設へ押しかけてくるというようなことも現に起こっているわけですね。それに十分に対抗できるだけの法的な根拠というものがやや乏しいといいましょうか、確立していないといううらみはあろうかというふうに思っております。
 ただ、少なくともそういうような親権の問題になりますと、これの判断はやはり児童相談所で行うべきものでもないと私は思うので、やはり家庭裁判所というところで行うべきことだろうというふうに考えております。
○今井参考人 二十八条の不同意入所ですか、あれに連動して親権停止がある方がよろしいのではないかと思います。ですから、連動して審査するというシステムまであってもいいのではないか、そのように考えます。
 ただし、その場合には期限をつくる必要があるかと思います。例えば一年なら一年と、その間に、交通事故を起こして免許停止を食うと講習を受けて回復というのはありますけれども、ああいうシステムをつくってやる必要があるかとも存じます。
 それから、判断する場所ですが、これは家庭裁判所、司法の方でやるということかと思います。
 それから、一時保護について必要性はどうかということですが、一時保護は必要ないと思います。そこまで厳しくやったら、一時保護は今権限が強過ぎますので、もし親権停止までやるのであったら、一時保護の期間を制限するとかが必要になるかとも存じます。
 以上でございます。
○石崎委員 それと、そういう現場の児童相談所なりを支えるサポートシステム、これはもう上出参考人が実際に取り組んでいらっしゃることでありますけれども、今の議論を突き詰めていきますと、児童相談所に今後ますます負担がかかってくるというお話がありましたけれども、その負担をどうやったら和らげられるのか、あるいは何をやるべきかというのを両参考人から手短にお聞かせください。
○上出参考人 現実に、ますますこういうケースがふえてまいりますと、児童相談所が自分のところで処理しなければならぬ、これはどうしても非常に困難な状況に陥ると思います。したがいまして、私の意見としましては、特にそういうようなケースで保護をする必要がある場合には、別の機関がそういうことを考えて、機関を設立した上で、そこにやはり、サポートといいましょうか、そこがかわって子供の保護を果たしていくというやり方が必要で、それを検討する必要があろうというふうに考えております。
○今井参考人 私は、児童相談所の児童福祉司の数が今政令で人口十万から十三万人に一人となっておりますが、標準して、十万に一人で足りるかどうか、その辺の議論も必要ではないかと思います。
○石崎委員 終わります。
○石田委員長 次に、田中甲君。
○田中(甲)委員 田中です。
 参考人の皆さん方、本日はありがとうございます。持ち時間が限られていますから、そう思うかそう思わないかでまずお答えをいただきたいのです、どうか御無礼をお許しいただきたいと思います。
 児童虐待は年々増加しており、ゆゆしき状態に至っている、何らかの対応強化が必要である、そう思うか思わないか。全参考人から、それだけで結構です、一言ずつお願いします。
○今井参考人 必要であると思います。
○上出参考人 必要だと思います。
○真野政府参考人 必要であると思っております。
○富岡政府参考人 必要だと思っています。
○横山政府参考人 必要であると思っております。
○川口政府参考人 必要と思っております。
○黒澤政府参考人 必要だと思います。
○田中(甲)委員 ありがとうございます。皆さん一様に、何らかの対応が必要ということを御答弁いただきました。
 それでは、法的な改正、例えば児童福祉法等の法的な改正も必要であると思われているかどうか、その点をお三方にお聞きしたいと思うのです。同じく、そう思うかそう思わないかで結構でありますが、今井参考人、いかがでしょうか。
○今井参考人 必要だと思います。
○田中(甲)委員 上出参考人、いかがでしょうか。
○上出参考人 必要だと思います。
○田中(甲)委員 厚生省、いかがでしょうか。
○真野政府参考人 私どもといたしましては、現行法を適切に執行したいというふうに思っております。(田中(甲)委員「いや、必要であるか必要でないか」と呼ぶ)私は、現在のところ、必要ではないと思っております。
○田中(甲)委員 もう一方聞いておきましょうか。法務省、いかがでしょうか。
○横山政府参考人 先ほど御説明しましたように、私ども、その点につきましては……(田中(甲)委員「必要であるか必要でないかと聞いたのです」と呼ぶ)人権擁護推進審議会で充実強化方策について……(田中(甲)委員「政府参考人、結構です」と呼ぶ)検討をお願いしております。
○田中(甲)委員 それでは、厚生省にお聞きをしたいと思います。
 それでは、現行の児童福祉法の中で、児童虐待の定義はうたわれていますか。うたわれている箇所を言ってください。
○真野政府参考人 虐待の定義は、虐待という言葉はございますが、定義はございません。
○田中(甲)委員 二十八条、ここに「保護者が、その児童を虐待し、」という文言が出ていますね。そして、具体的に児童に対する禁止行為は児童福祉法の第三十四条でうたわれています。この三十四条、ちょっと読み上げてみます。三十四条第一項、何人も以下に掲げる行為をしてはならない。障害のある子を見せ物にすること。第二号、物ごいをさせること。第三号、軽わざ、曲芸をさせること。第四号、路上で歌わせたり劇をさせたりすること。飛ばします。第五号、お酌をさせること。第八号、営利目的に子供をあっせんすること。これが今の時代に適応していると思いますか。
○真野政府参考人 今先生御指摘の点は、戦前の児童虐待防止法から引き継いだ三十四条の御指摘でございますが、私ども、現在、児童虐待の定義といたしましては、平成二年度に厚生省報告例を出しましたときに……
○田中(甲)委員 それは聞いていません、後ほど聞きます。
 明らかにこれは時代錯誤ですよ。これを改正する必要を感じていますか、感じていませんか。
 もう少しつけ加えますと、文化や時代背景や経済状況によって虐待の定義というのは変わってくるわけです。それがしっかりととらえられた児童福祉法になっていない。いかがですか。
○真野政府参考人 三十四条の禁止行為そのもの、当然それは虐待に該当をいたしますが、虐待の範囲は、先生おっしゃられているように、社会的な要因でいろいろ変わってくるわけでございまして、私どもは虐待の定義というのを、先ほどもちょっと申し上げましたが、厚生省報告例または今度の「子ども虐待対応の手引き」というところでそれをお示しをいたしているわけです。
○田中(甲)委員 する必要があるかないかで答えてください。児童虐待の定義ということを児童福祉法に明確にうたう必要があると思いますか。
○真野政府参考人 今申し上げましたように、児童虐待の……(田中(甲)委員「あるかないかで答えてください」と呼ぶ)私は、法律上は非常に難しいのではないかと……(田中(甲)委員「難しいじゃない、あるかないか」と呼ぶ)いや、それは、難しいのではないかと思います。
○田中(甲)委員 責任を感じてないと思います、厚生省。今、児童虐待がこれだけ問題になって、何らかの対応が必要だと言っている中で、児童福祉法の中で児童虐待の定義がされていない、その事実を認めてください。もう一度お願いします。
○石田委員長 厚生省局長は、委員の質問に対して的確に答えてください。
○真野政府参考人 児童虐待という言葉は、先生御引用されましたように二十八条に出てまいります。二十八条につきましては、これを法律上定義していないということを申し上げたわけでございまして、私ども、虐待というのは報告例その他で示しているということでございます。
○田中(甲)委員 先ほど、喫緊に何らかの対応が必要だとおっしゃった。その中で、全く定義自体がつくられていないということをなぜ認められないのか。
 きょうは参考人にいらしていただいていますけれども、社会福祉法人子どもの虐待防止センター、本当にすばらしい資料をつくっていただいて、「子どもの虐待とは」と、ここにきちっと定義が書かれている。そして今、きのうもテレビでも随分やられていましたけれども、身体的虐待、心理的虐待、そして性的虐待とネグレクト、こういう四つが柱になって新たな定義をつくる必要が、私はあると思います。
 時間の許す限り、ほかの点を指摘します。
 児童虐待を行った保護者に対するカウンセリング、今のままで十分だと思いますか。
○真野政府参考人 私ども、いろいろ施策は講じておりますが、それで十分だとは思っておりません。
○田中(甲)委員 思っていない。受講義務を課する制度の創設ということが私は必要だと思います。児童虐待を行った保護者をしっかりとカウンセリングしていくことがこれから重要だと思います。
 次の点を指摘します。
 現在の児童福祉司、この数で足りると思いますか。
○真野政府参考人 先ほど今井参考人の方からお話がございましたように、交付税の算定上、また基準上、人口十万ないし十三万人に福祉司一人という基準を私ども設けております。したがいまして、現在、交付税上は一事務所十六人という福祉司の数になっているかと思いますが、私ども、これをぜひ増員すべく、今自治省と協議をいたしております。
○田中(甲)委員 私の手元の資料では、全国百七十四カ所の児童相談所、児童福祉司は一千三百人、そして年間相談件数が三十万件、一人当たり二百三十件の案件を抱えている。こういう状態で児童福祉司をふやさないということは、厚生省は、法的な整備を行わないというところの責任をやはり感じていただかなきゃならない。
 十一条並びに十一条の二、児童福祉司の援用規定ということを設ける必要があると思いますが、いかがでしょうか。
○真野政府参考人 恐縮でございます、ちょっと聞き取れませんで。失礼ですが、援用というのはどういう……。申しわけございません。
○田中(甲)委員 児童養護施設等の改善について質問をさせていただきます。
 養護施設の今の広さというものをどこで明記しているか教えてください。
○真野政府参考人 最低基準で示しております。
○田中(甲)委員 私も視察に行ってまいりましたが、一人当たり三・三平米、傷ついた子供たちが養護される施設としては余りにもひど過ぎる。これを改善していく必要性は感じませんか。
○真野政府参考人 最低基準では三・三平米でございますが、私ども整備をする際の実質上の補助基準といたしましては、大体七平米ぐらいになっております。そういう意味では、改善をしてまいっておるつもりであります。
○田中(甲)委員 これは、大蔵省と厚生省が折衝してとるという難しい問題があるかもしれませんけれども、厚生省の児童養護施設の最低基準を法律に規定する必要性があると思います。今のような環境では余りにも、被害を受けた、虐待を受けた子供たちが立ち直れるという環境にはないと思いますが、その点は指摘をさせていただきます。
 私の発言でわからない点があったということは、後ほど私の方からまたお伝えいたしますから、そのとき、書面でも結構ですから御答弁をしてください。
 それでは最後、立入調査に関して私は一つ申し上げたいと思うのですけれども、立入調査を受ける側がそれを拒否した場合、それでも虐待を受ける危険性があると判断した場合は例外規定を設けて立ち入りができるようにしなければいけないと思うのですが、その規定の改正はどのようにお考えですか。
○真野政府参考人 先ほども資料で御説明申し上げましたように、立ち入りの際に拒否される場合もございます。ただ、その場合は、先ほど二例、警察官と同行してという事例を御報告いたしましたが、今でもそういう対応は可能でございますし、また警察側の協力も得られるということでございますので、私どもとしてはそういう対応が可能ではないかと思っております。
○田中(甲)委員 最後の発言にします。
 立ち入りをするときかぎを壊して家に入ることができない、つまり、緊急を要する場合でもかぎを壊して中に立ち入れないというところが法律的なネックになっていますから、私は、法改正ということを早急にして、児童の生命ということを尊重していくべきだと思います。
 もう一点。これだけ問題点があって、法改正が必要ないとおっしゃいますか。
○真野政府参考人 先ほど先生からイエスかノーかで答えよということで申し上げたわけでございますが、私どもは決して現在のままで十分だということを申し上げているわけではございませんし、現行法を適正に、また現行法の執行状況をより改善するということが、今、私どもの責めではないかというふうに思っております。
○田中(甲)委員 一日も早い法改正を行うことが必要であると判断している議員の、あるいは立法府に対して、障害になったりあるいは協力をしない、協力する姿勢というものが見受けられないということは、既存の法律を守ろうとする厚生省の児童虐待に対する消極的な姿勢、これは、今後子供の命が奪われていった場合に厚生省の責任は大きいということを私は申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○石田委員長 次に、肥田美代子君。
○肥田委員 昨日、厚生省で児童虐待対策協議会が初めて開かれまして、私も傍聴させていただきました。児童家庭局長が大変遅くなったと率直におっしゃられますから、それについて云々は申し上げません。
 ただ、私はこの会議が開かれたことを大変喜んでおりました。そして、緊急事態を察知してくだすった、重い腰が上がったと喜んでおりました、実は。
 ところが、会議が進行してまいりますと、この一時間半という限られた時間の中で省庁の説明が三分の二ありましたね。そして、二十団体がお越しになりましたけれども、その二十団体の方々の意見陳述はその三分の一、およそ三、四十分ですね。私は、これにはちょっと愕然としました。もう私たちが何をしてきましたこうしてきましたという段階じゃないと思うんですね。私たちがしてきたことが功を奏しませんでした、本当に済みませんでしたという反省のもとに、皆さんの新しい御意見をちょうだいしますという段階かと私は思っておりました。ですから、がっかりしたと申し上げたんですが、緊急事態という認識がおありになるのかどうか、私はちょっと疑問を感じたもので、率直に申し上げておきたいと思います。
 それでは質問に移らせていただきます。
 子どもの権利条約が国連で採択されたのが一九八九年十一月二十日です。ちょうど十年になります。子どもの権利条約十九条は、親による虐待や放任、怠慢な取り扱いや搾取から子供を保護するために、あらゆる適当な立法、行政、社会、教育上の措置をとると明記しております。子どもの権利条約は、親による子供の権利侵害を想定し、子供の保護と養育に必要な援助のための総合的な計画の確立、さらには虐待予防の措置について提起しているわけですが、この条文に見合う我が国の国内法はどれに当たりますか。法務省、答えてください。
○横山政府参考人 私どもの所掌の関係からいいますと、私どもの人権擁護機関としましては、現在啓発を中心に児童虐待の対応をしているということで、作用法、今そういうふうな法律は持っておりません。
 ただ、この問題につきましては、それでよいのかという問題がありますので、先ほど申しましたような人権擁護推進審議会というところで、人権侵害の被害者救済の方策について、充実強化策について今調査審議を本格的にしていただいているところでございます。
○肥田委員 それでは質問を変えますが、この権利条約に対応する法律を持っていらっしゃる省庁がありましたら、手を挙げてどうぞ。
○真野政府参考人 虐待等からの児童の保護、虐待等の禁止、それから児童の回復及び社会復帰その他につきまして、児童福祉法、それから具体的な措置という格好で対応しているというふうに考えております。
○肥田委員 それでは、自信を持ってこれに対応できるというふうにおっしゃられますか。
○真野政府参考人 この権利条約が国会で批准されました後、国連の児童の権利に関する委員会に私どもの現在の状況を提出いたしまして、委員会が審査をして、やっている。そして、平成十年六月に最終見解が採択されておりますが、その改善事項といいますか、具体的に指摘された事項としては、この関係の分はないというふうに私どもとしては承知をいたしております。
○肥田委員 ちょっとずらして答弁をいただいておりますけれども、これ以上追及するのはやめます。
 先ほど今井所長さんから、今後虐待通告がふえれば相談所の業務はストップする、そういう発言がございました。上出理事長さんからは、一つの機関が、福祉的なものや援助と、強制的な役割、この二つの全く違った機能を持つことはやはりジレンマがあるという御発言もございました。私はまさにそのとおりだと思うのですね。
 相談所というのは、その二つの機能が押しつけられている。ですから、二つの機能をきちっと整備するその方策がない限り、これから児童相談所はますます大きな仕事を抱えて、それも二つの違った種類の仕事を抱えて、パンクするのじゃないですか。今井所長さんにお伺いしたいのです。
○今井参考人 パンクすると思います。
○肥田委員 明快なお答えで、ありがとうございます。
 それで、これは児童相談所の見直しをまずしなければいけないと思います。そして、立入調査についても少し申し上げたいのですが、相談や通告を受けた子供虐待が六千九百件に対して、平成十年度で立入調査はわずか十三件ですね。やはりかなり少ないと思います。慢性的な人員不足、それから専門家、専門知識を持った職員が足りないということも現実にありますが、立入調査権限にはやはり、強制力があるとはいえ、実効性がないということもございます。としますと、先ほど同僚議員田中さんもおっしゃっておりましたけれども、やはり法律改正にならざるを得ないと思うわけですね。
 それで、子供虐待に対する効果的な政策を打ち出すために、まず、虐待とは何かという定義が必要であります。それから、虐待の禁止も法律で明記しなければいけない。それから、通告制度も、児童虐待を通告する義務を負う者を明確に特定しなければいけない。その際に、通告基準も制定する必要がございます。
 このことは、子供虐待について、健全育成を理念に掲げる児童福祉法では到底対応できないと私は思っております。確かに、児童福祉法二十八条は、保護者の児童虐待等の場合の措置を定めております。しかし、親による子供の権利侵害を十分に想定して制定された法律ではございません。例えば、親による子供の虐待を防止し、あるいは虐待される子供を少しでも早く救い出すためには、予防、発見、通告、介入、親子分離、親子のケアなど各段階における援助が必要となります。
 こうした虐待にかかわる一連の対策は、児童福祉法では無理だと思います。抜本的な法改正を行う必要があると私は思いますが、今井所長さんと上出理事長に伺います。現在ある児童福祉法の運用でいいのか、法改正が必要なのか、児童虐待防止法というような新法が必要なのか、三つの中でお答えいただきたいと思います。
○上出参考人 私は、抜本的な法の立法も当然必要だ、こういうふうに思っております。ただし、それは十分に検討した上でなされるべきだというふうに思っております。
○今井参考人 私は、新法が必要だと思います。
 ただし、それに対する反論として、そうすると児童福祉法がもぬけの殻になってしまうのではないかという危惧があるようですが、ほかの福祉法を見ますと、例えば障害者福祉法にしろ、知的障害者福祉法にしろ、老人福祉法にしろ、あの単独法のレベルと、新法をつくった後の児童福祉法のレベルは、何ら格差があるとは考えられないと思っております。
 以上です。
○肥田委員 今、図らずもおっしゃいましたけれども、児童福祉法がもぬけの殻になる、これが恐らく新法をつくるときの大きな障害になると思います。もぬけの殻になるという御意見がですね。
 厚生省にお尋ねしますが、そうなりますと、児童福祉法はもぬけの殻になりますか。
○真野政府参考人 先生がおっしゃられます抜本的な法体系の全体の状況が必ずしもはっきりいたしませんので、今、今井参考人がおっしゃられたように本当にもぬけの殻になるのか、まだまだ児童福祉法として十分機能するのか、そこは少し、全体像が見えませんので、お答えはしかねます。
○肥田委員 法律がもぬけの殻になろうとなるまいと、大事なのは人間でございます。まさに、小さい体の子供たちでございますので、その辺を私ども議員たちもしっかりと今回見詰めながら、議員立法というか、議員たちで法律を出させていただくという形で進めさせていただきたいと、きょう改めて思いましたので、そのことを申し上げて終わります。
 ありがとうございました。
○石田委員長 次に、池坊保子君。
○池坊委員 明改の池坊保子でございます。
 私は、厚生省が実態調査をしていらっしゃる以前から、民間のデータをもとにして、児童虐待の悲惨さとその防止の必要性を厚生省に委員会でいつもお願いをしてまいりました。ですから、昨今マスコミの方にも取り上げていただき、また社会問題になっておりますことは、虐待されております子供にとっても、また、虐待をしてはいけないと感じながらも、しなければ自分の気持ちが抑えられないという加害者、その両方にとって何らかの明るい兆しが見えてきたのではないかというふうに感じております。
 少子化対策の最大の課題は、生まれ出た命を慈しみ、社会全体がそれを大切に育てていくことにあるのではないかと思います。そこで、上出参考人に私はお伺いしたいと思います。
 先ほどもお話がございましたように、アメリカでは、児童虐待された児童のケアと、それをしてしまった者の治療、この二つを分断してケアしております。先ほどもお話がございましたように、これは世代間連鎖犯罪であって、幼いときに虐待をされた人間は、また大人になったときに虐待をしてしまうという事実がございます。そして今、相談所に相談に来る八割は実母である、そして五割以上の実母が虐待をしているという事実がございますときに、私は、児童虐待防止は、子供を一時保護する、あるいは養護施設に入れるというそのケアだけでなくて、心的トラウマを持っているそういう加害者のケアというのが必要ではないかと思っておりますけれども、このような法整備も必要とお考えかどうか、もし必要であるならばどのようなものが必要か、具体的にちょっとお教えいただきたいと思います。
○上出参考人 おっしゃるとおり、私はさっき子供のケアのことも申し上げました。と同時に、加害者である虐待者に対するケアが必要だということを申し上げたつもりでございますが、では、それを具体的にどうするか。
 現在はどうなっているかといいますと、例えば、児童相談所に相談といいましょうか、通告その他でかかわったお子さんの場合に、子供をすぐに分離し保護するという必要がそこまでなくても、やはり親に対するケアを続けていかなければいけない、その場合に、恐らくは児童福祉司指導あるいは継続指導というような形で児童相談所が対応をしているというのが一つございます。それから、そうでなくて、そういう親御さんに対する、むしろ治療というような形で、精神科の診療医師が自分のクリニックでやっている場合もございます。
 それから、例えば私どもの子どもの虐待防止センターなんかですと、加害者である親御さん、まあほとんど母親でございますが、母親を集めたグループセラピーといいましょうか、グループカウンセリングといいましょうか、MCGというような名前をつけて、「母と子の関係を考える会」というような形。ただ、これは、全体から見ますとやはりまだごくわずかですが、そういう形で親を支える、あるいは親に対していろいろな働きかけをした上で親子関係を調整していく、そういうことで解決できるケースもたくさんございます。
 もっと簡単な、例えば電話でいろいろな、自分は虐待してしまいそうだといったような、電話だけのカウンセリングである程度解決できるものも実はございます。
 やはり、比較的軽いものから重いものまでございますけれども、特に重いものに対して、例えば二十八条で施設入所をさせざるを得ないようなお子さんの場合、先ほどもちょっとお話があったかと思いますが、その親に対するケアの受講命令といったものを家庭裁判所の方で用意して、それが満たされた場合に初めて、二十八条の解除といいましょうか、家庭引き取りが可能になるような、そういう方策が必要なんじゃないかなというふうに思っております。現在はそれがございません。ですから、親の方が、かなりの期間施設に預けておいた子供を無理やり引き取っていくというようなことがあって、それが、たまたままた不幸な結末を迎えることもある。
 これはやはり親に対するケアが非常に不十分なためだということで、そういう意味での親への治療なり親へのカウンセリングなり、少しこれをできるような機関、これは、児童相談所であるとか医療機関であるとか、それから私どものような民間の団体みたいなものも含めて、そういうさまざまな社会的資源というものを用意していく必要があるだろうというふうに考えております。
○池坊委員 厚生委員会でいろいろ申し上げたのが功を奏したのか、児童相談員の増強並びに専門職の増強がなされましたけれども、私は、これは児童相談員をふやしたから解決する問題ではない、もっと抜本的に見直さなければならない問題をたくさんはらんでいると思っております。
 児童福祉法第二十九条では立入調査というのがございますが、先ほどもお話がございましたように、十年度は十三件しかなかった。そして、児童相談員が関与したにもかかわらず、八名の虐待死が起こっております。
 この立ち入りというのは、知事、地方自治体の長の許可を得て行うということになっておりますが、大体、知事はもちろん実態がおわかりになっていらっしゃらない。それで、これは児童相談所長の主観的判断に任せられているので、慎重な所長ですと、いろいろな問題を起こしたくない、住居の不可侵という憲法問題もあるじゃないかと、いろいろなことで弱腰になってしまうというのが現状ではないかと思います。
 これをもうちょっとスムーズにできる法整備というのが必要ではないかと思っておりますけれども、今井参考人はどのようにお考えでございましょうか。
○今井参考人 我々の立場で子供を目で見て確認するのが大原則かと思います。それの対策というのは立てられるべきだと思います。今の規定では、たとえ警察官が同行しても、かぎを壊してまで入れるのかどうかは難しいと思います。
 以上です。
○池坊委員 それと、養護施設に入所いたします場合に、親の同意がない場合には家庭裁判所の許可が必要でございます。先ほど、問題を感じたときには四十八時間以内に着手するというふうにお話がございましたけれども、現実には、この家庭裁判所の許可を得るのに一カ月、普通は三カ月かかると言われております。そうすると、この間、児童虐待を受けている子供は、そのまま受ける日々を送ることになります。
 私は、それでは余りにも時間がかかり過ぎるのではないか、もっと緊急を要するのではないかというふうに思っております。この辺、もうちょっと法律が、何かそういう措置の仕方があったならば、子供たちがもっと速やかに一時保護なりが受けられるのではないかというふうに思いますけれども、上出参考人はその点についてどのようにお考えでございましょうか。
○上出参考人 私も、今までの経験の中で、二十八条の申し立てをいたしましても、審判を受けるまでに三カ月どころか半年、時には一年といったような期間を要した例を前に経験しております。これは随分改善はされてきているとは思いますけれども、場合によっては、その場合に少し仮処分的な、何といいますか、あらかじめそういう二十八条についても保全処分を求めるというようなやり方を今とろうとしているというふうに聞いております。
 いずれにしても、一時保護については、ある意味では、児童相談所長の判断によってかなり強制的な、行政処分的な形で一時保護ができるわけですから、これはやり方次第といいましょうか、運用の方で可能だろうというふうに私は思っております。
 ただ、そこで、先ほどもお話がございましたように、親がかぎをかけている場合にどうするかというような場合には、それはしかし法改正が必要なのかどうか、ちょっと私にはよくわかりませんが、その運用を十分に考えていかなきゃいかぬだろうというふうには考えております。
○池坊委員 三年前、議員になりましてからずっとこの問題に取り組んでまいりました私といたしましては、厚生省の方も随分前向きに、三年前に比べたら積極的にやっていらっしゃるとは思いますけれども、私はやはり、今の児童福祉法の中では、もちろん運用をもっと速やかにしたら直るという問題もございます、機能不全である部分もたくさんあるとは思いますけれども、この法律自体では限界があるのではないかというふうに思うのです。
 ですから、新しい二十一世紀を担う子供たちが児童虐待を受けますと、それは大人になったときにもいろいろな、先ほどお話がございましたように、人間関係がうまくいかないとか、あるいは社会に適応していかないとか、また、犯罪を犯す要因にもなってまいりますので、ぜひこのことをもう一度お考えいただきたいというふうに思っております。
 最後に、厚生省の方のお考えを伺いたいと思います。私の意見を踏まえて、御自分というか、厚生省のお役人的な判断でなくておっしゃっていただきとうございます。
○真野政府参考人 再三申し上げておりますように、私どもも、とにかく現在の児童福祉法の与えられた手段、手法を十全にこなし切れているかという意識が非常に強うございます。私どもも、また県、児童相談所含めましてそういう認識になっております。先生長年の御指摘で、そういう部分につきまして、少しずつではありますけれども、いろいろな通知を出しますとか指導をするということで、今持っている手段を十全に使おう、そういうことで指導いたしております。
 私どもといたしましては、正直なところ、いましばらくそういうことで努力をさせていただきたいというふうに思っております。
○池坊委員 現場と厚生省のお役人の間には著しい落差があることを、私は大変残念に思っております。法律というのはあくまでも一人一人の国民の幸福追求のためにあると信じておりますので、そのようになっていくことを願って、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○石田委員長 次に、松浪健四郎君。
○松浪委員 おはようございます。松浪健四郎でございます。
 参考人の皆さんにおかれましては、早朝から御苦労さまでございます。貴重な御意見を賜りましたことを、御礼申し上げたいと思います。
 一カ月前に、私の愛犬が七匹の子供を産みました。毎晩、また早朝、その親の子育ての様子を見ているわけでございますけれども、教育を受けていない犬がこんなに真剣に子供を育てている、このことが人間にできないでいるということを大変悲しみます。
 恐らくは、複雑な、社会的な背景あるいは文化的な背景、また家庭的な背景等、これらがあって今日のような、児童虐待というような、信じることのできないようなことが現実のものとして、たくさんの報告が見られるわけであります。
 そして一方では、これらを防止するには新しい法律が必要なのかどうなのか、これらのことも論じられておりますけれども、私は、それらを論じる前に、人間が人間として本当に美しい豊かな心を持つことができる、そして、一人の児童、子供が一人の人間としてきちんと扱われなければならない、このような原点を見直すような発想、思考からこの問題をとらえていかなければ、どんなに法を改正しても、あるいは立法的措置を講じたとしても、今日問題化しているものを処理することは極めて難しい、こういうふうに思うものであります。
 そこで、まず最初に法務省の横山人権擁護局長にお尋ねをしたいわけでございますが、法務省の調査によりますと、人権侵犯事件の処理件数というのは、平成元年から平成十年まで大体千件弱で推移をしております。恐らくことしはそれよりも多くなっているんでしょうけれども、この処理件数というのは、親の子に対する酷使、虐待及び強制圧迫というものでありますけれども、それら以外の人権侵犯事件の処理というようなもの、つまり、親の子に対する人権侵犯、それ以外の処理した事件というのはどの程度あるのか、お尋ねしたいと思います。
○横山政府参考人 委員御指摘の、親の子に対する人権侵犯以外で法務省の人権擁護機関が取り扱っております子供に対する人権侵犯の態様としましては、教職員による体罰事案、それから、いじめ問題に対する学校側の対応不十分等の事案、そのほか、最近では教職員によるセクハラ事案もございます。
 それから、件数的には、過去五年間の、これは受理件数で申し上げますと、体罰が、平成六年八十九件、平成七年百十一件、平成八年百六十件、平成九年が二百十二件、平成十年二百八件です。また、いじめの関係が、平成六年四十八件、平成七年百五十八件、平成八年百六十五件、平成九年百七十三件、平成十年二百五十四件。
 以上でございます。
○松浪委員 今の御報告を伺っておりますと、親にも問題があるけれども、やはり社会的あるいは学校の中においてもいろいろな問題がある。したがって、これらの問題は、単に厚生省や文部省だけがああだこうだと言って取り組んでもなかなか解決することができない、総務庁を初め政府が、各省庁が一体になって取り組んで、そして対応しなければこの問題を解決させることができない、私はこういうふうに今の報告から推察させていただくわけでございます。
 そこで、もう一度横山人権擁護局長にお尋ねしたいんですけれども、これら人権侵犯事件の処理件数というのは、諸外国と比して果たして多いんだろうか少ないんだろうか。それは、教育の制度も異なりますし、社会的背景あるいは宗教的背景等いろいろな異なる面が多いわけですけれども、我が国も世界に冠たる先進国になりましたけれども、先進国と比較して、これら虐待、人権侵犯、こういうものについてどういうふうになっているのか、お尋ねしたいと思います。
○横山政府参考人 申しわけございませんが、あいにくと諸外国の人権侵犯に関します統計につきましては持ち合わせておりませんので、欧米諸国との比較につきましては御容赦いただきたいと思います。
 また、発展途上国につきましても同様でございまして、数字的な比較というのはできないのでございますが、発展途上国におきましては、貧困に起因するいわゆるストリートチルドレンあるいは強制労働等、我が国では必ずしも一般的ではない子供の人権問題がある、そういうものもあるというふうに承知しております。
○松浪委員 諸外国と比較することはできないというようなことでございましたけれども、いずれにいたしましても、我が国にありましては年々これらの問題が増加しておるというのは事実でございますし、これからそういうふうに諸外国との比較をしていただいて、そして、社会的要因あるいは経済的要因いろいろあろうと思うんですが、それらの分析をしていただければありがたい、こういうふうに思います。
 最後に上出参考人にお尋ねいたしたいんですが、諸外国の制度と日本の制度との比較についてどう思われるか、厚生省からいただいた資料にも若干出ておりますけれども、上出参考人の経験上、どのように考えられていらっしゃるのか、御意見を伺いたいと思います。
○上出参考人 私自身実はそういう外国の制度を十分に研究も調査もしておりませんので、ある程度の知識だけでお答えせざるを得ないのですが、例えば、アメリカあたりにおきましては通告制度が非常に発達しております。そして、その通告先が、日本で言う児童相談所とは別でございまして、子供の保護機関であるCPSですか、そういうところになっております。そこで、もうそれこそ二十四時間体制でございまして、果たしてこの子供は虐待で保護する必要があるかどうか、すぐに判断いたします。そして、判断の結果、必要な場合にはすぐそれが家庭裁判所に当たるものにつながりまして、そこですぐに、今度は職権の形で裁判所の判断で保護をする。
 先ほど来出ておりますように、そこで一時親権停止になりまして、親権は一時的に、国といいましょうか、公的な親権者になるという形になる。日本とその辺のところが制度が大変違いますが、その通告が非常にまた、罰則まで設けられておりまして、一定の範囲の者には通告をしない場合にはいろいろな罰則が下されるということで、大変に通告が多いということですね。
 統計もどうも、アメリカの場合には、よくわからないんですが、年間二百万とか三百万という、ちょっと我々から見ると考えられない数字が出てまいります。それは、実際には虐待されていなくても、虐待の疑いがあるということで、例えば近隣で泣き声がするというだけでそのセンターの方へ通告される。これはもう非常にちょっと行き過ぎた制度にもなりかねないというふうに思います。
 ですから、そういう外国の例を考えながら、日本で同じようなことをできるかどうか、いや、できるかどうかじゃなくて、すべきかどうか。今の現在の日本の状態を考えます前に、日本のそういう状況にそれをただうのみにして入れてしまうということは、罰則の強化みたいなものも含めて、私は十分に検討しなければいけないというふうには考えております。
 それから同時に、アメリカの場合には、そういった子供たち、一時保護いたしましても、やはり一定の期間、裁判所の判断で親元へは帰せません。親にやはり受講命令が出され、州によってアメリカなんか違うようでございますけれども、それをちゃんとクリアした上でないと親元へは帰さないという、かなりある意味では、親権を一時まさに停止して公権の方に移すというシステムになっております。
 その辺も含めて、将来的には日本でも考えていかなければいけないんじゃないか。将来というのは何も十年先、二十年先という意味じゃございませんけれども、余り性急にうのみにした制度を取り入れるには、私はちょっとやや疑念を持っている次第でございます。
 以上です。
○松浪委員 時間が参りましたので、これで終わります。
 どうもありがとうございました。
○石田委員長 次に、石井郁子君。
○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 児童虐待という深刻な問題、また緊急な対応を要するという問題につきまして、きょうは、児童相談所の取り組み、いろいろの御苦労をお聞かせいただきました。本当にありがとうございます。
 私は、お聞きをいたしまして、児童相談所の機能をやはり強化をするということは、述べられましたとおり、児童福祉司や心理判定員などの体制を拡充するというのが本当に不可欠だというふうに考えたところでございます。ところが一方で、この児童相談所の人員だとか予算というのが、たしかことしの予算でも削られているんですよね。現場でも人が減らされているということをお聞きしますけれども、こういう点は本当に重大な問題だということをまず指摘をしておきたいと思うのです。
 その上で、まず今井参考人に、先ほど来、現行法制で対応できる問題と、新たな立法が要るんじゃないかということが議論になっております。政府の方の答弁は、現行法規の積極的な活用で足りるということで、局長通知などもあったかというふうに思うのですけれども、この問題で実際のところ、現行法規で対応できる点と、やはりそれでは困難だという問題というのは、具体的なこととしてどうなのかということを一点お伺いをしたいと思います。
○今井参考人 実務的には、今の児童福祉法の中に新たに虐待というような章をつくればはっきりするかと思います。
 それから、それに合わせて、児童相談所の仕事のやり方を、虐待部門、要するに、三十三条の一時保護は警察官による保護の規定に類似するものでありますし、また二十八条の家庭裁判所への申し出につきましては親権を制限するものでありますので、検察官が刑事事件に関して公訴するのに類似していることではないかと存じます。虐待に関しては、我々、検察の仕事と警察の仕事を預けられているかと存じます。一方、法律が福祉法ということでありますので、それらの矛盾、制度の矛盾といいますか、あるのではないかと私は感じます。はっきり分けることによって、児童相談所の仕事がやりやすくなると考えます。
 と申しますのは、保健所は非常に法律を多く抱えております。食品監視あるいは環境監視ですか、取り締まりに関する法律と、それから保健婦に関する仕事とかいうことで、サービス部門と両方持っております。ですから、法律が二つになったからといって、決して、児童相談所が仕事ができなくなる、あるいは児童福祉法がもぬけの殻になる、そういうことは私はないと思います。はっきり法律を分けて仕事を分けるということが、我々にとってもやりやすいし、権限を任せられております都道府県の財政担当なり人事担当なりにも理解しやすくなる、私はそういうふうに思います。
 以上です。
○石井(郁)委員 いろいろ御説明いただきまして、本当にありがとうございます。参考にしたいというふうに思います。
 私は、もう一点、子供たちを救うという点で、一時保護とかあるいは施設入所という形がとられるわけですけれども、この一時保護という施設も本当に現状がどうなっているのかというと、もう定員がいっぱいだという話も聞くのですね。そういうことをもっと私たちも調べていかなくちゃいけないというふうに思っているのですが、施設に入る子供の側の問題として、実はこれは余り語られていないのですけれども、子供の声として、こういう施設には行きたくなかったとか、こっちの方に行きたいとかというのがやはり私はあると思うのですよ。ぜひ子供の、やはり施設を選ぶ権利といいますか、あるいは親から離されることについて子供がどう思うかも含めまして、子供の意見というのを、子供の申し立て権というふうにまで言ってもいいかもしれませんけれども、そういうこともそろそろ考えていかなくちゃいけないのじゃないか。
 例えば、施設に入った子供が、やはりもっと学校に行きたいとか、十分教育を受けたいとかいう話もあるのですね。そういう部分というのはどうなっているのかということを実は詳しくお聞きしたいのです。もう時間がありませんが、この点では上出参考人にぜひ、現状と、どういうふうにしていったらいいのかということで御意見を伺えればと思います。
○上出参考人 私は現在、児童相談所ではございませんので、例えばその一時保護から施設に子供を措置をする場合に実際どうしているかというところまでは、十分に承知しておりません。
 ただ、私がまだ現職でおりましたころから、実はそのことは大変気になっておりまして、子供自身が施設を選ぶことができるようにしなければいかぬだろう。ややもいたしますと、むしろ子供を施設に入れること自体を親が求めてきて、そして、子供の意見を無視して一時保護をするなり、あるいは施設入所をさせるなりということをやってきたという経緯がございます。これは間違いだろうと思うのですね。特に、子どもの権利条約みたいなものが出まして、意思表明権といいましょうか、意思を尊重しなければならないということで、少なくとも子供自身が意思を持てる年齢、あるいは発達段階にある場合には、十分にその子供の意思を聞いた上で、そして施設へ入所する、あるいはどこへ入所するということも選択する権利を尊重していかなければいけないだろう。
 ただし、虐待のことになりますと、これは子供自身の意思を尊重するといいましょうか、子供自身が、虐待されている親に対して意外と親をかばったりするのが現実でございます。ですから、子供の意思だけでは決められない場合もある。これはやはり客観的な判断が必要になってまいりますし、子供と十分に話し合った上で、子供が納得をした上で、一時保護もし、あるいは施設入所も図るということが必要だろう。その後の施設の選択は、私はおっしゃるとおりだろうというふうに思っております。
○石井(郁)委員 どうもありがとうございました。
 以上で時間が参りました。
○石田委員長 次に、保坂展人君。
○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。
 これは委員長にもぜひ聞いていただきたいのですが、七月二十九日、当委員会で虐待問題の議論をいたしました。そこで法務省横山局長に対して、虐待について何かパンフレットかポスターでもあったらお持ちいただきたい、こう求めて、具体的なお答えがなかったので、ぜひ国民に見えるように、ポスターをつくったりパンフレットをつくったりしてくださいと要望したのです。
 先ほどの報告を聞いていましたら、啓発活動をやって、ポスター、パンフレットと言われたので、ああ、私が求めたことに早速法務省は腰を上げてくれたと思って、早速法務省に頼んで、そのポスターとパンフレットを持ってきていただきました。
 委員長、ちょっと掲示してよろしいでしょうか。
○石田委員長 はい、どうぞ。
○保坂委員 これがポスターなんですが、これは「子どもの人権専門委員」のポスターでありまして、ようく見ると、ここに「虐待」とありますね、二文字。そして、パンフレットは、いずれも内容はいいのですよ。「子どもの人権」「みんなともだち マンガで考える人権」「いじめ」。このパンフレット、よく読んでみたら、この中に虐待のことは二行ですよ。しかも、子どもの権利条約の要約、これがあるだけですね。これはもう少し国会での議論というのを尊重して、きょうの報告なんかもいかにも虐待について告知をしているかのように聞こえるけれども、ちゃんとつくっていただけませんか。
○横山政府参考人 お答えいたします。
 私ども子供の人権問題に含めまして、児童虐待も含めて、いろいろな問題を扱っているということで、ただいまのポスター、確かに子供の人権一般的な観点からのポスターということですので……(保坂委員「だから、虐待について」と呼ぶ)今後そういうポスターも多数つくって、周知に努めたい、こう思っております。(保坂委員「努めたい」と呼ぶ)はい。
○保坂委員 ぜひちゃんとやってください。こういう問題がこれだけ社会でも国会でも問題になっているということを認識した上でということでお願いします。
 それから厚生省に、やはり二十九日の議論のときに、宮下厚生大臣に対して、もちろんいろいろな立法的な措置等々あるけれども、当の子供や親に対して、虐待というのはだめなんだよという強いメッセージを、例えばテレビコマーシャルなどで出せないだろうか、こういうことを求めているのですね。それに対して大臣は、もっともな御指摘だ、児童虐待のためのメッセージをやるということを検討したい、こういうふうに答弁されているのですが、厚生省さんの方では、何か、テレビで日本の家庭の子供や親に虐待を防止しようというメッセージを出すという計画、あるいは、現実どういうふうになっていますか。
○真野政府参考人 年度途中のことでございますのでなかなか難しい面がございますが、我々としても、こういう状況でございます。どういう方法があるか、ぜひ考えたいと思っております。
○保坂委員 どういう方向があるか考えるじゃなくて、少なくとも厚生大臣がこういうふうに、受けとめる、ぜひ検討させてくれと。もう検討していなきゃいけないわけですよ。だから、いろいろ考えさせてくださいじゃなくて、もちろん立法の努力も大事だけれども、今虐待を受けているかもしれない子供たちのために、ぜひそういうことへ踏み切る努力をもう少し見せてください。
○真野政府参考人 やらせていただきます。
○保坂委員 それでは、参考人として大変貴重な御意見をいただいた上出参考人に伺いたいと思います。
 私もいじめをめぐって電話相談等を十数年やってまいりました。その中には、かなり対応するのに難しいさまざまな若者たち、心的外傷、中には人格障害を抱えているんじゃないかと思うさまざまな人たちに出会いました。参考人が最後におっしゃられたことに大変大きなポイントがあると思うんですが、民間団体の柔軟な活力、努力、私もその現場を幾つか知っていますけれども、これと公的な支援というものをうまくドッキングできないものだろうか。
 先日、国会における委員派遣で私はイタリアに行ってまいりました。ローマで、テレホノ・アズーロという民間の子供たちのための電話相談をやっている団体が、ローマの市と合同で小学校を丸ごと一つ大改装をして、その中にシェルターをつくりまして、子供たちを安全に一時保護できる、そして、そこには精神科医や弁護士やカウンセラーやさまざまな専門家の支援があって、民間と役所が一緒に実験的に運営しようというのを見てきたんですね。例えばそういう取り組みを一歩も二歩も前進させたいと思うんですが、そのあたりについていかがでしょうか。
○上出参考人 おっしゃるとおり、実は我々民間の機関といたしましては、何とかしてやはり公的な機関、特に児童相談所あるいは保健所等々ですね、それからもちろん公的や民間も含めた医療機関、それからもちろん学校その他の、いわゆる虐待でしばしば出てまいりますネットワークに参加できる機関との連携活動を高めていくというのが実際の活動の中でも必要なことになってまいります。
 ただ、現実に眺めてまいりますと、同じような形で活動しております全国の民間の防止センターみたいなところでは、地域によって随分差があるわけですね。本当に児童相談所が一体、一体というのはおかしいんですが、中の重要なメンバーになって活躍しているところもございますし、児相とは全くといいましょうか、離れて活動しているところもある。
 私どもの子どもの虐待防止センターの場合には、発足当時は、実はちょっと触れましたけれども、逆に児童相談所に対する不満を持っている方の救出ということで始まったものですから、やや対立関係にあった時代もございました。ただ、私自身のことになりますが、そういう児相におった者が現在理事長をさせていただいているわけで、そういう意味では、人間的なつながりができていると思います。
 現在は、いろいろなケースが民間の、例えば我々のセンターへ寄せられた場合に、すぐにその地域にある児童相談所との連携を始めます。これを実際にネットワークミーティングなんて呼んでおりますけれども、一つ一つのケースに応じて、それぞれの児相、それからそれに対する関係機関とのネットワークを、私どもの方が主導してそういうミーティングをやっていくという形をとっております。これは個々のケースについてであります。
 ただ、もう一つ、逆に、今度は公的な相談機関である児相の方のネットワークといいましょうか、そちらが呼びかけた形で、ネットワークあるいはケースマネジメント会議というようなこともございますが、そういった場合に、今度は我々のところに声がかかりまして、それにも参加していく。こちらからも参加する、こちらからも呼びかけるというような両方の形でつながりを持っているという状況でございます。ただ、欲を言いますと、公的なものと民間のものとが何か、もっともっと一緒にお互いに連携できる場というものが本当は必要なんだろうというふうに思っております。
 ただ、もう一つそこで問題になりますのは、例えば児童相談所というのは都道府県立なんでございますね。非常に広域を管轄しているわけでございます。しかし、実際のケースに対応するには、その児童相談所の中で、例えばどこかの区、市であるとか、あるいはその学校なり保育所なりといった地域の中のいろいろな機関との関係になってまいりまして、都道府県立だけの児相との連携じゃだめなんじゃないか。もっと地域の中のさまざまな機関との連携を個々のケースについても考え、あるいは、何かもう少しまとまった形で対応策を考える場合にも、もっと地域ごとにやはりそういう集まりをつくっていかなければいけないだろう。
 これも、幸いなことに、それぞれの幾つかの区や市の中では我々のスタッフが参加しておりまして、地域での連絡を密にしていこうという試みをやっております。これは別に法的にどうということではございませんけれども、現実の運動、活動の中ではそういう地域との連携というのは極めて重要ですし、個々のケースだけじゃなくて、本当の虐待防止対策を考えていく場合に必要だろうということを痛感していることを申し添えておきたいと思います。
○保坂委員 私たちも現場の声をよく聞きながら、いろいろな制度的な問題にも目配りしながら、なるべく早期に立法措置も考えていきたいと思っております。
 ありがとうございました。
○石田委員長 以上であらかじめ申し出のありました委員の質疑は終わりました。
 これより自由質疑に移ります。
 この際、各委員に申し上げます。
 質疑のある委員は、挙手の上、委員長の許可を得て発言するようお願いいたします。また、発言の際は、着席のまま所属会派及び氏名を述べた上、お答え願う参考人または政府参考人のお名前を告げていただきたいと存じます。
 なお、理事会の協議によりまして、一回の発言時間は三分以内となっておりますので、委員各位の御協力をお願いいたします。
 それでは、質疑のある方は挙手を願います。
○奥山委員 自由民主党の奥山でございます。
 上出参考人にお尋ねをしたいと思います。
 最近は、核家族で少子化が進んで、そして、家族の中で育児に対する孤立化ということがいろいろ言われているわけでありますけれども、そういう中で、虐待に走る両親、父母、お母さんもお父さんも含めまして、虐待に走りやすい親の共通項というのが何か出てくるでしょうか。これは先生、いろいろなケースがあると思うんですが、いかがでしょうか。
○上出参考人 実際の虐待のいろいろな統計を見ておりますと、やはり母親が実際の虐待者である場合が大変多いことは事実でございます。ただ、そういった場合の御家族の様子を見ましても、母親だけにいろいろな問題があるんじゃなくて、むしろ家庭全体のダイナミクスに大きな問題がある。その家庭全体のダイナミクスと申しますのは、やはり父母、夫婦といいましょうか、父母間の不和というようなこと、そして、父親が全然家庭を顧みない、それに対して母親が非常にいらいらし、まさに子育てに対して父親である夫の協力も得られない、そこに、言うなれば一種のノイローゼ状態になり、いらいら感が高じ、あるいは時には抑うつ、あるいはそれで育児を放棄するとか、逆に自分のいらいらを子供にぶつけてしまうようなことがあるということもあります。
 それから、父親の方について言えば、これは先ほどちょっと最初に申し上げましたけれども、例えばアルコール依存というようなことが父親の場合には非常に多い。しかも、その場合、セクシュアルな問題を起こしやすいというようなことも知られておりますし、父親ではそういう精神障害、あるいは明らかな性格的な問題を持っている父親がいたりというようなこともございます。
 例えば、我々の電話相談なんかにかかってくる電話は大半が母親でございますけれども、その母親の場合に、今申し上げましたように、家庭内全体の力動の問題というものを考えなきゃいけない。ですから、母親を特に取り上げて、母親だけをカウンセリングするんではまただめなわけですね。家庭全体へのアプローチも考えていかなきゃならぬだろうということで、十分にできない場合もしばしばございますけれども、方法としては、そういう家庭全体を視野に入れて、子供の家庭の親子関係の調整をするという方向になっているわけです。
○佐田委員 自由民主党の佐田玄一郎でございます。
 実は、私も以前、文部政務次官をやっておったときに、親が子供にほとんど食事も与えないで子供が最終的に亡くなってしまった、こういう事案がありました。
 そのときに、例えば、何々さんちの何々さんは大変だよ、いじめられているよ、食事も与えられないよ、こういうことは周りの方は全部知っているんですね。PTAなんかでも評判になったそうであります。そういうことがあるにもかかわらず、そういう子供たちが苦しんでいるにもかかわらず、何の手も打てない。確かに、家庭の中において親の教育方針だとか、しつけだとか、こういうことは、理由によっては最終的にその理由になるけれども、子供が亡くなってしまったら取り返しがつかないわけであります。
 こういうことを反省の一つとして、私はもっともっとこれは進んでいくのじゃないかと思っておったら、皆さん方も御案内のとおり、例えば本当に暴力を振るわれているのが明らかであるにもかかわらず、そしてまたなおかつ、児童相談所が監視をしていたにもかかわらず、一時保護ができないで亡くなった事案があったということを新聞で私も知りまして、本当に心が痛む思いでありました。これは本当に子供さん方が犠牲になった。
 私は、児童相談所を担当されます厚生省の真野さんにお聞きしたいのですけれども、これからそういうことに対して、これは家庭のしつけなんだからとか、親権の問題であるとか、そういうふうないろいろな問題があろうかと思います。しかしながら、子供は自分の表現ができないわけでありますから、そういうところはある程度きちっとやはり行政の方で、子供は日本の宝ですからね、保護していく、そういう方向ができないのかどうか。それと、なぜ何人かの子供さん方が、児童相談所の相談を受けながら亡くなってしまったのか、この辺のこともお聞きしたいのです。
○真野政府参考人 先生おっしゃられますような状況がございました。したがいまして平成九年に、立入調査、こういう状況で入れるんだ、入るべきなんだということを明確にいたしまして、そしてやはり児童相談所が毅然とした態度で対応してほしいということを言っております。そういう状況で大変不幸な事態がいろいろ起きておるということは、私どもとしても、まことに言葉もございません。
 今回の八つの事例につきまして公表させていただいたというのも、防止の手引きで示してはおりますけれども、やはり児童相談所が関与すべきであるし、そしてそういう不幸な事態にならないように、反省をもって対応すべきだ、こういうことで公表させていただいたような状況でございます。
 私どもも、ぜひ全力を尽くして児童相談所の方を指導したいというふうに思っております。
○佐田委員 反省と言われますけれども、これはもうきちっと、子供さんの命がかかわっていることなんですから。これははっきり申し上げて、児童相談所の方々もそうだし、きょうは文部省の教育委員会の関係の方も、局長おいででありますけれども、やはりこれは一丸となって、とにかく命がけでやっていただきたいと思うのです。子供さんたちは今苦しんでいるのですから、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
○石田委員長 答弁はいいですか。
○佐田委員 答弁は今していただきましたから、もうこういうことが二度と起きないように、これからしっかりやっていただきたい。
○山本(孝)委員 先ほど今井所長が、このままでは児相はパンクするという悲痛な訴えをされたわけですけれども、それを受けて、真野局長に三点、端的に聞きますので、ぜひお答えをお聞かせください。
 今の佐田委員の御指摘にもありましたけれども、確かに平成九年に、児相は積極的に関与すべきだ、こう方針を出されたのでしょうが、実は現場ではなかなか、それでもやっていけない、法律の裏づけがないとやれないという部分もあるんだと思うのですね。そういう意味でいけば、児童相談所の所長は、家の中で保護しなければいけないという子供がいるときに、家裁の許可を得て立ち入ることができるんだというような条文をつくってあげないといけないのではないかという点が一点。
 それから二つ目に、やはり先ほど上出参考人もおっしゃいましたけれども、親にちゃんとカウンセリングを受けさせないといけないわけですが、受けない親もいるわけで、親はカウンセリングを、期間を限ってでも受けなければいけないというような条文をつくってあげないといけないのではないかというふうに思います。これが二点目。
 それから三点目として、虐待の定義は、さっき三十四条は改正する必要はないというふうにおっしゃいましたけれども、虐待とは一体何なんだということ、虐待あるいはネグレクト、アビューズの問題、全部を含めて市民に、国民に啓発していくという意味でも、こういうことなんだよということを決めていくというのは一つの方向としてあるのではないか。すぐに法律に書くかどうかの話は別にして、そういう定義づけというものをしていくという方向性は要るのではないかと思いますが、この三点について真野局長のお考えをお聞かせください。
○真野政府参考人 家庭裁判所の許可を得て立ち入るという部分で御質問がございました。
 立入調査につきましては常々御指摘を受けております、件数が少ないと。私どもは、恐縮でございますが、立入調査を児童相談所としては行うのだ、そして、先ほども申し上げましたように、警察官と同行して行うというようなことも現にあるわけでございます。今までなかなか、そういう手段を児童相談所がとるのに、ちゅうちょといいますか、非常に難しい面がございましたけれども、とにかくそういう態度をとるべきだし、とることができるのだ、権限を持っているのだということを九年の通知で申し上げたわけでございまして、まずはそれをきちっと、現行法でもできるというところを私どもとしてはさらに指導したいというふうに思います。
 それから親のカウンセリング、これも先ほど来、両参考人からもお話がございますように、決して子供だけ保全をしてということではございませんで、親のカウンセリング、ケア、これも重要な部分だと思っております。例えば児童相談所でのカウンセリングでございますとか、養護施設での心理療法というような手を現在打っております。私ども、それを充実していくというのがまず先決ではないかというふうに考えております。
 それから虐待の定義でございますが、先ほどちょっと、いろいろ御意見がございまして定義云々のところははっきり申し上げられなかったわけでございますが、虐待につきましては、私ども、厚生省の報告例をとりますときに定義をいたしました。そして今回、「子ども虐待対応の手引き」という、児童相談所その他、最も専門的な機関が対応するためにいわばマニュアルとして使っていただくその手引を作成する際に、有識者、それから実務者から成ります検討委員会を設けまして、虐待の定義ということの見直しを行いました。現在四分類になっておりますのは、その見直しの結果でございます。
 先生おっしゃられますように、この対応の手引きは専門家にお願いをしているものですから、専門家だけではなくて広く一般に、いろいろ有識者に集まっていただいて議論した、現在の虐待というのはこういうことなんだ、定義というのはこういうものなんだということを、私ども、ぜひ一般の方々にもPRをしていきたいというふうに思っております。
○山本(孝)委員 局長、お言葉を返すようで申しわけありません。きょう参考人の皆さんは、今の現行法で、いかに厚生省が言われていても、なかなか現場では難しいのです、こういう御意見の開陳だったと私は理解をしているのですね。
 現職の所長さんが厚生省に盾突くのが難しいのであれば、OBでも結構でございますが、もう一度参考人の方から、今の、平成九年の厚生省の姿勢を受けて、実際に現場としてきっちりと、虐待を受けている、あるいは遺棄されている子供たちを保護できるように児童相談所はちゃんと動けるのか。
 今厚生省の御答弁は、やれるようにしてやっているじゃないか、現行法の中でやれ、こうおっしゃっておられる。でも、実際にそれが本当にできるのかどうか。やれるのでしょうか。もう一度参考人に御意見をいただいて、できるとおっしゃるのであればそれは一つの考え方でしょうし、できないとおっしゃるのであれば、厚生省にもう一度答弁を求めたいと思います。
○今井参考人 できる場合もありますが、それは多くの場合、親をだまし討ちにかけて連れてきてしまうということになります。要するに、学校へ行っているときに連れてきてしまう、保育園に行っているときに連れてきてしまう、そういうことでございます。中にいたら難しいということでございます。
 ですから、二十九条の立ち入りも、もし拒否されたら、次に行くときは家庭裁判所の許可をとって行くとか、あるいは三十三条の一時保護につきましても、一時保護を拒否されたら家庭裁判所に申し出て、家庭裁判所の許可をとって司法の方の権限で一時保護に入っていく。そういう法律の使い分けをすることによって仕事がやりやすくなるかと思います。
 以上です。
○上出参考人 現行法でもそれぞれの児相でかなりやっておられると私は思います。特に、この平成九年の通知が出る前は、その辺で、立入調査にいたしましても、あるいは施設に入所させてからの親の引き取り要求に対する対応にいたしましても、児相も非常に困惑していたというのが実態だろうと思いますが、その通知が出たことによってかなり実効は上がってきているというふうには思っております。
 しかし、なお果たして現在で十分できているかどうか。特に親に対するカウンセリング、ケアというようなことになりますと、親の方に十分協力する意思がない限り、なかなか長続きはいたしません。少なくとも二十八条ケースのような場合には、強制的に受講命令として裁判所の方から示されるということが私は必要だと考えております。そうなると、やはり法改正にもつながることかなというふうに思っているわけでございます。
○大森委員 日本共産党の大森猛でございます。
 厚生省の真野児童家庭局長にお伺いをしたいと思います。
 先般の当委員会でも、児童養護施設居室基準が戦後の混乱期につくられたまま約半世紀、全く改正されていないということに愕然としたわけなんですが、きょうの委員会でも、戦後の混乱期どころか、戦前の規定がそのまま今日生きている。きょうの御意見の中でも、児童家庭局における頑迷さに改めて愕然としているところなんです。
 そこで、具体的な点を二点だけ、端的に伺いたいと思います。
 第一点は、死に至るまでもなく、心にも大変な傷を持った子供たちに対するケアの重要性を参考人が大変強調されたわけなんですが、私も本当にこれは共感します。人格を全部否定される、あるいは生涯心を閉じたまま過ごすことになるかもしれない、そういう子供たちに専門家がきちんと対応していくことは非常に重要だと思います。
 その点で参考人は先ほど、全国の百七十四の児童相談所の中で七、八カ所ですか、そういう陳述もありました。そういう心のケアを子供たちにしていくという点で、精神科医をきちんとこの百七十四全児童相談所に配置する考えはないか。このいただいた資料の中でも、現在、施設に在籍している被虐待児童のわずか一九%しか、これは心理職員も含めて対応できていないという現状を抜本的に大きく変える必要があるんじゃないかということと、あわせて児童養護施設についてはどうなるのか、この点。
 それから第二点目は、これも上出参考人からお話があった、民間団体、草の根からのボランティアが地域社会でこういう児童虐待をなくしていく大きな運動の重要性も強調され、ボランティアが重要な役割を果たす、こういうこともおっしゃいました。厚生省としても、こういうボランティアを児童虐待をなくしていく全体の運動の中にきちっと位置づけて、財政的な支援も含めた積極的な援助をする必要があるんじゃないか。
 この二点、お伺いをしたいと思います。
○真野政府参考人 児童相談所には精神科医を置くということになっております。ただ、先ほど上出参考人からございましたように、常勤の医師がおるというのが非常に少ないわけでございます。
 私どもとしましては、できるだけ、これからの親のカウンセリング、子供のカウンセリングという点への対応といたしまして、ぜひ児童相談所の医師の配置の促進というのを都道府県の方に指導してまいりたいというふうに思います。
 また、養護施設につきましても、これは心理療法を担当する職員ということで、一定の要件のある養護施設でございますが、そういうところに心理療法を担当する職員を配置するというような予算的手当てもいたしております。
 また、民間団体との協力、これは私どももぜひお願いしたいと思っておるわけでございます。直接いろいろな援助というのはなかなか、逆に言えば、民間団体からすれば活動の自主性ということからいろいろな問題があろうかと思います。どういう方法ができるのか、例えば子育て基金というようなものを社会福祉・医療事業団の特別会計の中に設けておりますので、そういうところからいろいろな格好でできる限りの支援をしたいというふうには思っております。
○今井参考人 児相等施設のカウンセリングの話でございますが、児童相談所には家族療法という言葉はありますが、心理職が家族を含めてまでやるという、何というか、実力といいますか、こういうことを言っては失礼ですけれども、意識の問題とか、なかなか虐待家庭にまで届かない現状があるのではないかと思います。
 ですから、やはり児相の役割として、虐待を引き起こすような親のカウンセリング、家族療法ですね、それを明記する必要がある、そうすればもっと相談所のレベルも上がるんじゃないか、そのように考えます。
○三沢委員 自由党の三沢です。参考人の皆さん、本日は本当に御苦労さまです。
 ずっとお話を聞かせていただきまして、確かに今、本当に児童虐待を何とかしなきゃいけないという気持ちはわかるのですけれども、子供の立場でなしに、今度は親の立場といいますか、これから二十一世紀、少子化になりまして、若い子たちに日本を支えてもらわなきゃいけない、健全な精神と肉体の若者をつくらなきゃいけない。その中で、例えばこの法律ができた場合に、親が――要するに、昔、我々は小さいころ、悪いことをしたり言うことを聞かなかった場合は表にほっぽり出されたり、びんたの一発も張られたりして、その中で、ルールやマナーを守っていかなきゃいけないという思いも子供の中にありました。
 例えばこの法律ができた場合に、親が子供に遠慮して、子育てといいますか、お母さんの子育て、お父さんの子育て、そのしつけに影響が遠慮した場合は出てくるのかどうか。今井参考人、上出参考人のお二人に、その辺のところはどういうふうに思われているのか、影響はないのかどうか、御意見を伺いたいと思います。
○今井参考人 たたくのはしつけのうちかもしれませんが、虐待でたたいているケースはたたき過ぎでございます。たたくのがもう恒常化してしまって、たたくのが親子のコミュニケーションになってしまっています。一種の刷り込みをしてしまうということは、大きな将来にわたっての悪影響がありますので、やはりできるだけたたかない方がいい。
 それから、やはり親は子供に口で説得できなければいけないと思います。読み書きという言葉がありますが、読み書き話し、話すことが今日本人に欠けているという議論がございますが、もう少し話しして、親子のしつけは基本は口であるということで考えていく必要があるんじゃないかと思います。
 以上です。
○上出参考人 例えば、たたいたというようなことから、それでけがを起こした、極端な場合にはそのために救急に運び込まれるということまであれば、これは当然虐待と呼ばざるを得ないだろうというふうに思いますが、問題は、ただしつけという意味でたたくというようなことがあった場合にそれをどう受けとめるか、ここが非常に難しい問題があると思います。
 ただ、その場合に、私は、親の方の言い分ではなくて子供の言い分を聞く必要があるのだと。子供がそのことを非常に苦痛に受けとめ、あるいはそれに対して子供がどう反応しているかということの方が大事なのでございます。そこで判断が分かれるのではないでしょうかというふうに私は考えます。
○三沢委員 それでしたら、片方の子は虐待だと思っている、片方の子はそうじゃないと。僕は自分が悪いことをしたから親から怒られているんだと判断された場合は、思った方の親は罰せられて、そうじゃないと思う子の方はと、そこで分かれるのですけれども、その辺のところはどういうふうにお考えでしょうか。子供の判断ですと、片方はそう思わない男の子と、片方は親に殴られたと思う子と出た場合は、そこはどういうふうになるのでしょうか。
○上出参考人 子供によりましては、自分が悪いから親にたたかれたんだ、こう主張するかもしれません。しかし、それは本音であるかどうか、そこが非常に問題だと思います。
 しばしば、虐待をされた子供、特にたたかれた子供というのは、そのために自分自身で自分が悪い子だというイメージを持ってしまう、そういう心配さえあるわけです。だから、それをやはり救っていくことが必要になる。子供から場合によってはSOSが出ることもあるでしょうが、そうではないそういう状況を見た場合に、少なくとも近所の者が、近所というのは近隣という意味ではございませんで、家族のほかの成員なりあるいは保育所なり幼稚園の職員なり、そういったほかの者が見て、やはりこれは少し度を過ぎ、子供自身がおびえている、あるいは何らかの反応を起こしているというふうに判断がなったら、それは的確に子供と話し合っていくことが必要なんだろう、こういうふうに考えます。
○三沢委員 ありがとうございます。
 この法律ができた場合は、しつけに対しては影響がない、家庭でのしつけに対してはこの法律ができた方がいいと思われていますか。
○上出参考人 ちょっと聞き取れなかったのですが、こういう法律ができた場合に影響はないかということでございますか。(三沢委員「はい」と呼ぶ)十分、それは運用の問題になるのかと思いますけれども。
○三沢委員 子育てには影響はないということですね。
○上出参考人 はい。
○三沢委員 ありがとうございました。
○戸井田委員 先ほど上出参考人の話の中にあったと思うのですけれども、例えば親の立場でもって子供に虐待、普通であれば親が虐待するなんということはあり得ないけれども、親の気持ちのあり方、精神状態によってかなり影響される部分があるんだろうと。
 そうすると、日本の社会というのは、割とそういう精神的な病気に対して偏見というのはかなりきついと思うのですね。それが抜け切れていない部分がある。そうすると、自分が精神的に今普通でない状態だと自分自身が仮にわかっていたとしても、そういうところの病院に行くということさえはばかるような状況というのは、いまだにまだ日本の社会の中にはあると思うのですね。アメリカなんかだったら、割とそういう心療内科に相談に行くとかいうことは、簡単に行って、それも社会的に認めていて、同時に働きに出ていても、そういうものに関して社会もさほど偏見がないというようなことも、それなりに普通の生活の中で情報としてはちらほら入ってくるわけですね。
 そうすると、特に子供の虐待というものをとらえてみたときに、子供と大人、親子の関係、その中の親の状態というのは非常に大きな要素を占めるんじゃないか。その親が、ゆっくりそういうカウンセルを受けるような状況にもないし、また、社会的な状況としてそういう状況にもないんじゃないか。根本的にはそういう部分にも一つの問題点はありはしないかな、そういうふうに思うのですね。
 阪神・淡路の震災のときに、やはり子供への精神的な影響がかなり大きいということで、ソーシャルワーカーか何か、だれか入っていましたよね。そういうものがかなり地元からも要求があった。こういう部分というのは、日本の全体からいったらかなり欠けているというか足りない、そういう資格を持った人たちが少ない、そんな部分もあるんじゃないか、それがまたこういう虐待というものを増長させるようなものにつながっているところもあるんじゃないかなという気がするんですけれども、その辺について何か御意見があったらお聞かせいただきたいと思います。
○上出参考人 確かに、日本で精神科あるいは精神障害に対する偏見がまだ根強く残っております。それから、精神科の受診というのも、その方にとっては非常に抵抗があると思いますし、もっともっと気軽に精神科が利用できるような、そういう方向へ社会を変化させていく必要があるだろう。これは一点ございます。
 それから、今、特に虐待について申し上げますと、一つは、そういう精神科に受診してきた患者さんの中で、子供を持っている親御さんといいましょうか、子供の親御であって精神科を受診してきた場合に、その子供にどういう影響があるかということに視点を向けた取り組みが今までやや薄かった。これは精神科の医者としての反省にもなるわけですが、そういうことが一点ございます。
 それからもう一つは、特に医療の関係で申し上げますと、小児科の先生方が近ごろはかなりこの精神的な問題、特に心の問題、そして当然ながら子育ての問題というものにいろいろとアプローチをしなければならぬといって、勉強会などを始めて、あるいは資格を何とかという話も聞いておりますが、そういう心の健康についての取り組みを小児科の先生方が随分なさるようになってきた。
 そういうことで、親の場合に、今の日本の社会の状況ではなかなか精神科への受診というのは難しい場合でも、小児科ですと比較的楽に行けるというようなこともございますので、そういう方向に行くのは、これは予防的な取り組みの一つとしていろいろこれから実際に考えていかなきゃならない対応の仕方じゃないかなというふうに考えております。
○戸井田委員 それともう一点なんですけれども、児童センターなり福祉事務所あたりのそういう一つのネットから漏れていく部分がたくさんあるだろう、そういう意識をいかに国民の一番底辺まで広げていくかということがやはり大きな問題だろうと思うのですね。そういう場合に、それを行政の組織でもって全部網羅していこうと思ったら、できるんだろうけれども、それをやっていってしまったときには、かなり予算面でも広がっていくだろう。
 そうすると、日本の社会の中でどうしても必要なものというのは、やはりボランティアだろうと思うのですね。例えば、今回のこういう児童虐待のことに関しても、学校の先生のOBであるとか、そういうものにかかわった人たちのOBというのはかなりたくさんおられるんだろうと思うのです。そういう人たちをボランティアとしてうまく吸収できるような、そういう組織をつくれないのかなと。
 今、日本の社会のボランティア的な組織として考えられるのは、自治会であるとか婦人会であるとか、いろいろそんな組織もあるし、社会体育の組織もある。それはそれなりにみんな機能しているんですけれども、その地域の中でそういった人たちの横のつながりというのは僕はかなりあると思うのです。
 その中に児童委員というものもある。だけれども、児童委員がどれだけ横とつながっているんだろうか。そして、その児童委員みたいな人たちがもっと中心になって、例えば子供のサッカーとか野球だとか、そういうものの世話をしているような人たちだとか、そういった人たちをうまく組織化していったら、この児童虐待というものに関してはかなりそういう情報を集めることは可能だろうと思うのです。
 その人たちがそういうことに対してもっと児童センターに情報を入れていかなければならないという意識を持っていけば、かなりの部分でもってカバーできるのじゃないか。そして、その人たちにしてみれば、逆に、自分たちがある種の情報を得て、それなりにその子供に対して接触することができる、その親に対しても接触することができるということになれば、そういったところで問題を解決することが可能なこともあり得るんじゃないかなと。どうもその辺、地域での人間関係の希薄さみたいなものがあるんじゃないか、そういうことができないのかなということをちょっと、だれに聞いたらいいのかな、今井さんですかね。
○今井参考人 ことしは児童相談所の方で、主任児童委員ですか、研修をするようにということできていますが、今、民生委員、児童委員それから主任児童委員の任用は福祉事務所の方を経由していますので、基本的な監督権は向こうへ行ってしまう。児童相談所はお願いする立場であるということで法律上は書いてあるんですけれども、なかなか電話一本でというのは難しいということであります。
 それからあと、主任児童委員が、委員さんはそれぞれ一人一人独立なものですから、束ねて物を考える、地域でどうやるかということを束ねるには、組織的にまだ弱いんじゃないかと思います。
 それから、民生委員が先行していますので、民生委員の縛りの中で主任児童委員が動かざるを得ないという沿革的なものがあったりして、その辺をもう少し、主任児童委員を地域のボランティアの組織として強化していくということで、民間と児童相談所、また地域との連携というものももう少し強化されるような気もいたします。
 以上です。
○池坊委員 先ほど上出参考人から、加害者のケアというものの必要性をお聞きいたしました。私も、それが絶対に必要だというふうに思っておりますが、同時に、虐待された子供たちを、ただ一時保護したり、養護施設に預かるのではなくて、その子供たちのケアというのが必要なのではないかと思います。
 現在はそれが欠けているのではないか。精神医とか、それから心理学のカウンセラーの方々、専門職の方も少ないと思います。それがなされませんと、健全な人格形成がなされないのではないか。現実に、生後四カ月までの子供にお乳を上げなかったお母様がいて、その子供は一歳、二歳になりましたときに、同じ年配の子供に大変暴力を振るうという事例も出ております。そのことについて、上出参考人はどのようにお考えかを伺いたいと存じます。
○上出参考人 被害を受けた子供へのケアは、これはもう当然のことでございまして、親のケアをあえて強調したのは、親のケアの方がやや忘れられているのではないかという懸念があったからでございまして、当然、子供に対して、私がちょっと触れましたPTPDというような、将来的に本当にその子の人格障害を起こし、場合によっては、やがて自分の子供へ虐待の行為をまた再現させるというようなことも含めて、非常に社会的な不適応を起こしやすい子供たち、そしてまたその以前には、まさにストレス反応としてのさまざまな、ただいまもお話がございましたような乱暴を働くようなこともございます。
 したがいまして、そういう子供に対して、虐待された子供の場合に、児童相談所のあたりでもそうですが、まずは子供を何とかケアしていこうという試みはずっとやられております。ただ、施設、特に児童養護施設、あるいは乳児院もそうですが、そういうところに措置された子供の場合に、従来それがやや不十分だったのではないかということも言われておりまして、それが一つは、非常勤ですが、心理職の配置という施策にも結びついたのだろうというふうに思っております。
 ただ問題は、そこに今配置されている心理職員が量的に十分なのか、あるいは質的にというのは失礼かもしれないのですが、本当にそういう虐待を受けた子供に対する、まさに援助の、あるいは指導の能力をきちっと身に把握できている方々がやっているのかどうか。もちろん、今お話がありましたように、児童施設にも精神科医がやはり、これは常勤でなくてもいいとは思いますが、少なくともかかわりを持つというようなことも必要になります。
 現に幾つかの施設では、この私どものセンターの方でも人が、職員といいましょうかスタッフがおりまして、それがもう精力的に施設へ出向いて、施設で被虐待児童の心理ケアということを職員と一緒にやっておりますが、そういう試みといいましょうか、そういう働きかけがどんどんこれからも必要になってくるだろう。やはりある意味ではそれを保障していく施策、予算的な裏づけも必要になってくるのではないか、かように考えております。
○池坊委員 ありがとうございます。
○太田(誠)委員 だんだん浮き彫りになってまいりましたので、少し実際的なことをお聞きしたいのですが、警察が立入調査に同行することがあるということで、それは今でも可能なのだということを実は初めて知ったわけです。
 もしそれが今の法律の中でできるのであれば、立入調査に至る、あるいは立入調査を拒否された場合の対応というのは、本当はもっと警察とそれから厚生省の間でルールがちゃんとあって、こういう場合にはこうだということで、ちゅうちょせずに、ためらわずに、さっきの今井参考人のお話ではないけれども、機械的に対応できるようにしておいた方がいいのではないかと思います。そこは、警察の方はどうなんですか。
○黒澤政府参考人 立入調査でございますが、児童福祉法二十九条による立入調査につきましては、保護者に児童虐待等の疑いがある場合に、第二十八条に基づき、児童福祉施設に入所させる措置等をとるために行うものでございまして、そうした事務は私ども警察は直接には担っておりませんので、必要に応じて、児童福祉施設、児童相談所と適切な連携をとりまして、私どもは現場へ待機するなどいたしまして適切な援助をしていく、こういうことでございます。
○真野政府参考人 平成九年六月の通知によりまして、立入調査等のやり方につきまして、いわば具体的に指示をいたしております。その場合に、児童または調査員、調査担当者に対する保護者等の加害行為に対して迅速な援助が得られるように、警察に対する事前協議を行って、これに基づく連携による適切な調査を行うというような、いわばどういう状況か、いろいろ虐待の事実の蓋然性でありますとか、児童の保護の緊急性、それから保護者の協力の程度、そういうものを総合的に勘案するわけでございますが、今申したような状況があれば、警察と事前に協議を行って、連携して対応するということをお願いしているわけでございます。
○太田(誠)委員 今やや警察の方は慎重な、リラクタントな御答弁で、厚生省の方は、事前の協議でできるのではないか、相当のことはできるのではないかというようなお答えでありましたので、この部分については、恐らく両省で詰めてもらえばもう少しはっきりした姿が出てくるのではないかと思います。
○田中(甲)委員 済みません、もう一つ関連で。
 記憶が正しければ、刑事訴訟法の百十一条に、かぎの粉砕をしても許されるという条文がたしかあったと思うのですけれども、これはやはり立入調査を行うときに、法的にそのような制度を設けて、児童の身体生命を保護するというような、そういう法改正も考えられないかという質問でありますけれども、法務省、いかがですか。
○横山政府参考人 私ども人権擁護の関係では、人権侵犯事件調査処理、これは法務大臣訓令である人権侵犯事件調査処理規程に基づいておりまして、作用法を持っておりません。ですから、その関係の法改正ということは、私どもの所掌の関係では現在のところは全く出てこない話であります。
 ただ、被害者救済制度との関係で、今人権擁護推進審議会の方でいろいろ検討しております。その中では、こちらの方から、調査手続と権限については調査審議をお願いしておりますので、そういう人権侵犯事件の調査処理手続という中でどういうようなものが出てくるのか、それは審議会の方で検討していただけることになるのではないかと思います。
 それからなお、刑事訴訟法そのものにつきましては、人権擁護局は所管しておりませんので、それについての答弁は御容赦いただきたいと思います。
○石田委員長 予定した時間も参りましたので、本日の参考人及び政府参考人に対する質疑はこの程度で終了することといたします。
 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十九分散会