第151回国会 本会議 第28号
平成十三年五月九日(水曜日)
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 議事日程 第十五号
  平成十三年五月九日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
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○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑

    午後一時二分開議
○議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
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 国務大臣の演説に対する質疑
○議長(綿貫民輔君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。鳩山由紀夫君。
    〔鳩山由紀夫君登壇〕
○鳩山由紀夫君 私は、民主党・無所属クラブを代表し、小泉総理の所信に対し質問をするとともに、私の所信を表明し、私たちが政権を担うためこれまで積み上げてきた構造改革の姿を明らかにしていきたいと考えます。(拍手)
 この大型連休中、日本各地の行楽地では、子供や父母とともにつかの間の休日を楽しむ多くの人々の姿が見られました。夏のような沖縄から、桜のつぼみがようやく膨らんだ北海道まで、美しい日本の風景の中に溶け込む姿には、どこかほっとさせられるものがあります。
 しかし、ふだんと変わらぬその光景とは裏腹に、今、多くの国民は、言い知れぬ不安と、遅々として進まないこの国の改革にいら立ちを募らせています。言うまでもなく、この国民を包む暗い空気をつくり出した責任の多くは、あなたが総裁となった自由民主党そのものにあります。(拍手)だからこそ、いや、今度こそ、あなたの力であなたの所属するあの古い自民党を変えることができるのではないかと、あなたに期待が寄せられているのでしょう。
 私たち民主党が党是として主張してきた日本の構造改革に、あなたがうそ偽りなく取り組むというのであれば、あなたの内閣と真摯に議論を積み重ねていき、改革のスピードを競い合うことはやぶさかではありません。しかし、あなたが目前に迫った参議院選挙のための単なる偽善的改革者であるとすれば、私は、徹底的にそのことを白日のもとにさらす決意でございます。(拍手)
 総理、私たちに残された時間は長くはありません。私は、単に危機感をあおるために言っているのではありません。あなたの党が今までやってきた、改革を先送りする政治をこれ以上続けられては、この国に未来がないと確信するからです。(拍手)
 一昨日の総理の所信表明には、改革という言葉が何と四十一回も躍りました。その勇ましいかけ声とは裏腹に、具体的な提案はどこにも見当たらず、まさに、改革は躍る、されど改革は進まずという感は否めませんでした。
 そこで、あなたの政治姿勢についてお尋ねをします。
 まず、あなたがつい最近まで森派の会長として支えてきた森内閣は、景気対策と称してはばらまきを続け、構造改革を先送りしてきました。では、一体なぜ、森内閣では改革ができなかったのでしょうか。あなたは、昨年の暮れ、森改造内閣ができたとき、私との雑誌の対談で、この内閣は歴代最高のできだと豪語されました。しかし、その内閣は、結局何もできませんでした。しからば、森内閣ではできなかったことがあなたの内閣ではできるということがどこにあるのでしょうか。
 次に、自公保連立という政権の枠組みを全く変えないままに、なぜ今度は改革断行内閣と言えるのか、あなたは国民に説明する義務があります。国民に対して、総理はどのように説明するおつもりなのでしょうか。
 さらに、総理はみずから、改革に抵抗する勢力を恐れず、ひるまず、断固として改革を進めるとしていますが、一体、その抵抗勢力とはだれのことでしょうか。(拍手)
 以上の三点について、総理の改革姿勢を明確にするためにもぜひ明らかにしていただきたい。
 さて、私たち民主党は、これまで愚直なほどに、構造改革の必要性とそのための具体的な改革提案を行ってまいりました。小泉総理が、抵抗を排してでも改革を断行すると力強い決意を示されたので、私たちは、やっと対等の立場で政策論争ができるようになったと素直に喜んでいます。そして、日本大改革のためのリードオフマンとしての積極的な役割を果たしていく決意を新たにしています。
 その観点から、批判のための批判ではなく、改革のための改革提案を総理に申し上げ、その一つ一つについて小泉総理御自身の姿勢をお尋ねし、また、その改革姿勢を野党の立場からチェックしていきたいと考えます。
 そこで伺います。第一は、経済、財政の構造改革です。
 小泉総理は、内閣の第一の仕事として、緊急経済対策を速やかに実行に移すと言われました。政府の緊急経済対策は、構造改革を先送りするものや、国民の理解を得ることが困難なもの、モラルハザードを生み出すだけのものが含まれています。これでは、構造改革が聞いて泣きます。その森内閣が取りまとめた緊急経済対策を実行に移すことが、なぜ改革の断行につながるのですか。私には不思議に思えてなりません。(拍手)
 小泉総理は、自民党総裁選で、国債発行額を三十兆円以下に抑制することを公約に掲げられました。私は、当然これは今年度から実行する公約であると受け取りました。しかし、連立与党合意では、これは来年度予算のしかも目標とされ、さらに一昨日には、何か起きれば柔軟に考えると、公約だったはずのものがどんどん後退しております。加えて、総裁選であなたと真っ向から意見がぶつかった自民党の麻生政調会長からは、補正予算を組むという発言も出ています。これでは、どれが本当なのか、国民には全くわかりません。この際、はっきりしていただきたいと思います。
 財政健全化の道筋として、国債発行額の抑制は当然のことであり、問題はその先のビジョンにあることです。私たちなら、五年以内にプライマリーバランスの均衡を目指します。そして、そのために、公共事業を三割削減し、行政改革を断行して特殊法人への補助金や行政経費を大幅に削減するなど、徹底した歳出の削減に取り組んでまいります。
 そこで、総理、提案があります。財政構造改革に取り組む姿勢を明確にするため、国債発行額を三十兆円以下に制限する法案を私たちは準備しようと考えていますが、総理は当然この法案に賛成すると考えてよいか、明確な御答弁をお願いします。(拍手)
 今年度から財政投融資制度が変わりました。しかし、道路公団に代表される非効率な特殊法人の延命に国民の税金と郵貯資金を投入する仕組みは、今までと何ら変わりがありません。せめて、特殊法人の資金調達方式として、財投債や政府保証債は認めず、財投機関債に限るべきではないですか。私たちがそうしたルールを明確にした法案を提出すれば、郵貯改革、特殊法人改革を主張してきた総理は当然賛成していただけると思うのですが、いかがでしょうか。(拍手)
 これまで、不良債権の実態は常に黒いベールに包まれていました。そして、年を追うごとに不良債権の金額はふえ続けてまいりました。大蔵省時代から一貫して金融当局が事実を隠し続けてきたことが、巨額の不良債権という怪物を生み出してしまったのです。こうした姿勢が続く限り、金融システムに対する不信感はなくなるはずはありません。
 先月、ようやく、私たちの要求に応じて、政府は、我が国の問題債権が何と百五十兆円にも上ることを明らかにしました。この数字はこれまで公表していた数字の倍近い数字であり、驚くべきものと言わざるを得ません。
 小泉総理は、この百五十兆円という数字を聞いてどうお感じになったでしょうか。また、金融当局がその事実をこれまで隠し続けてきたことを、やむを得なかったこととお認めになるのでしょうか。御答弁願います。
 政府の緊急経済対策は、不良債権の最終処理を売り物としています。しかし、その対象はごく一部に限られ、肝心な部分が全く抜け落ちています。すなわち、倒産寸前企業など明らかに不良債権として処理すべきものを、甘い資産査定で、単なる灰色債権として処理を先送りしているのです。
 問題の核心は、百七兆円にも上る要注意債権の査定を改めて厳格にやり直すことです。私たちなら、直ちに大手銀行を中心とした一斉検査を実施し、厳格な資産査定と引き当てを行わせ、半年以内に金融不安を解消します。その上で、不良債権の抜本処理を二年で終わらせます。これこそ構造改革のスタートである。総理が金融改革に本格的に取り組むのなら、当然そのようにされると考えますが、いかがでしょうか。(拍手)
 まだ問題はあります。それは、経営不振企業に対する安易な債権放棄を最終処理と称していることです。
 甘い再建計画で借金を棒引きし、一時的な企業の延命を認めたところで、問題は先送りされるだけです。私たちは、公的資金を投入した銀行による安易な債権放棄、すなわち、税金による私企業の救済は断じて認めるべきではないと考えます。小泉総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 雇用のセーフティーネットを整備することは、国民が抱く失業の不安を解消するために極めて重要な問題です。私たちなら、国民が安心してその能力を発揮し、働くことのできる環境をつくるため、失業に備えた雇用保険制度を充実するとともに、再チャレンジを応援する制度を創設します。また、高い金利の住宅ローンに悩まされているサラリーマンの方々に対して、金利減免などの支援策を講じてまいります。
 森内閣が掲げたIT基本法では、何と五年もかけて日本をIT先進国に押し上げるとしています。しかし、この分野における進歩のスピードは速く、世界はとても待ってくれません。IT革命のスピードを上げて起業活動を活発にし、新しい雇用のチャンスを広げることが必要です。
 働く生活者への支援とIT革命の推進について、総理の積極的なお考えをお聞かせください。
 第二は、中央集権が生み出した補助金行政の改革です。
 明治維新のころ、欧米列強の圧力を前にして、私たちの祖先は中央集権体制を目指しました。それは、ある時期までうまく機能しました。しかし、官主導の中央集権体制は、一人一人の多様性が生きる二十一世紀の社会にはふさわしくありません。
 そこで、私たちは、官僚主義、中央集権体制を打ち崩し、民主主義に基礎を置いた分権社会を確立するために、二つの改革を提案いたします。
 一つは、天下り禁止法の実現です。
 官僚が、みずから認可した公益法人に天下り、その影響力を行使して補助金、出資金を注ぎ込む、果ては、政治連盟なるものを立ち上げ、特定の議員や政党に政治資金を提供するという仕組みがこの国でまかり通っています。小泉総理が真に改革を望むのであれば、何よりもまず、こうした理不尽な税金のむだ遣いと不正使用をやめる覚悟が必要ではないでしょうか。(拍手)
 私たちは、補助金や出資金を受けている公益法人、国から仕事を受注している企業、団体への天下りを禁止する法案を今国会中に提出する予定です。総理なら当然この法案に賛同されると考えますが、いかがでしょうか。(拍手)
 次は、地方分権の実行です。
 私たちは、自治体と地域に根差して生活している住民が、権限と責任を持ち、みずから決定できる地方分権の社会を確立すべきだと考えています。そのためには、補助金を一括交付金に改め、自治体が必要な事業をみずからの判断で実施すべきだと思っています。小泉総理は、この考えに賛同し、私たちが提出する公共事業一括交付金法案に賛成していただけますか。(拍手)
 第三に、公共事業の問題について質問いたします。
 私たちは、これまで一貫して、むだな公共事業の歳出削減と、今現実に進められている事業の再評価の必要性を訴えてまいりました。あなたがもし所信表明演説で主張したとおりに、構造改革を断行して歳出を削減するというのであるならば、公共事業は当然削減するということになりますが、総理のお考えを具体的にお示しください。
 諫早湾の干拓事業や熊本県の川辺川ダム、このような事業は小泉総理なら当然即刻中止するものと思いますが、いかがですか。また、公共事業の予算を確保するために政府が行ってきた長期計画の策定というやり方を直ちに改めなければ、現実にはむだな公共事業は見直せないと思いますが、総理は今後どのようにするおつもりなのか、御答弁をお願いします。
 小泉総理、私は、農林水産業に従事する人たちが、今、経済的に厳しい環境に置かれていることを極めて憂慮しています。農林水産業は国の基本です。しかし、これまで自民党の政権がこの人々を豊かにするために予算を使ってきたとは、私には到底思えない。
 自民党政権の農政は、毎年一兆二千億円もの農業土木予算を使い、農道や大規模林道の建設、さらには飛行機がほとんど着陸しない農道空港などを日本じゅうにつくり、予算をばらまいています。これでは、農業に生きる人々を豊かにするのではなく、まさに農業土木に従事する業者を潤すための農政でしかありません。
 私たちは、農業予算を農業土木業者の手から農民の手に取り戻すことを強く訴えています。(拍手)
 具体的には、農業土木予算を、緑のダムづくりなどの森林再生やその人材の確保、さらには農業後継者の養成など、人への投資に振り向けるべきだと考えますが、総理のお考えを伺います。環境を重視し、人への投資を重視する小泉総理であればこの意見に御賛同いただけると思いますが、いかがですか。(拍手)
 第四に、小泉総理の外交について質問いたします。
 私たちは、日米同盟関係を外交政策の基軸に置きます。しかし、それは、米国の顔色をうかがい、唯々諾々と従うことを意味しません。例えば、地球温暖化対策に関する京都議定書の枠組みから米国が離脱を表明したことは、地球温暖化対策を後退させ、グローバルにも我が国の国益にとってもマイナスです。総理は、米国の対応いかんにかかわらず、日本政府として議定書を早期批准すべきだとお考えになりませんか。
 東アジアの平和と安定は、日本外交のもう一つの重要な柱です。私は、先週、韓国を訪問し、金大中大統領を初めとする韓国のリーダーたちと、二十一世紀の日本と韓国との関係や東アジアのあり方について率直に意見交換をしてまいりました。また、昨年末には中国を訪問し、江沢民国家主席を初めとする中国の政治指導者たちと会談してまいりました。
 二つの訪問で私が一貫して呼びかけたのが、東アジア地域の平和と安定のための不戦共同体をつくることであります。この構想を実現するためには、日本と近隣諸国の間に強い信頼関係を築き上げなければなりません。だからこそ、私たちは、過去の歴史を直視すべきだと考えているのです。そして、政府も国民も、我が国のことのみを考える狭い国益概念にとらわれることなく、広く東アジアの平和と安定に責任を持つんだという自覚を持つべきだと考えます。
 私は、日本と韓国、中国との間で歴史教科書対話に着手し、これを推進することを提案します。総理の御所見を伺います。
 一方、総裁選のさなか、総理は何度も、靖国神社に公式参拝すると言ってこられました。閣僚の公式参拝は宗教に対する国家権力の関与に当たるとの指摘もあります。あなたは、現在も、首相として靖国神社を公式参拝するおつもりなのでしょうか。
 小泉総理が誕生した直後に、北朝鮮の金正男氏と思われる人物が、偽造パスポートを持って、我が国に不正入国しようとした事件が起こりました。この人物は出入国管理法違反を繰り返していたと見られますが、政府は、十分な審査はもちろん、明確な身元確認さえ行わず、実にあっさりと国外退去させてしまいました。まさに、総理自身がかつて厳しく批判しておられた外務省の事なかれ主義にみずから染まってしまわれたのではないのですか。
 本件に関する政府の対応は、我が国の主権と国益の観点からどのように説明されるのですか、総理にお伺いします。
 時間をかけても結果は同じだったなどという消極的な答弁は期待いたしません。
 次に、対ロ外交について質問をいたします。
 北方四島の帰属問題をめぐっては、自民党内に、二島先行かあるいは四島の帰属優先かという路線対立があります。そして、日本政府すなわち外務省は、この自民党内の派閥次元の対立に振り回されてきました。森内閣では明らかに二島先行返還論を推進してきましたが、小泉内閣では方針転換をされるのか、田中外務大臣にお伺いします。
 昨日、田中外務大臣は、外務省内人事をめぐって、機密費もそうだが、どす黒い利権の問題もあると語っておられます。外務大臣に端的にお伺いします。どす黒い利権とは具体的に何を意味するのでしょうか。あなたには国民にしっかりと説明をする義務がございます。(拍手)
 いわゆる外交機密費問題の発覚と、そのうやむやな内部調査によって、国民の外務省に対する信頼は地に落ちています。よりオープンな真相究明を進めるとともに、今の機密費の制度的見直しが不可欠です。執行凍結などというこそくな手段でやり過ごすことは、透明性を重視する小泉総理ならあり得ないことだと思っています。
 私たちは、法律で機密費の支出範囲を厳しく限定し、支出状況を国会の非公開委員会でチェックする機密費公表法案を用意しています。その上で、官房機密費は四分の一に、外務省機密費も二分の一以下に大幅削減することを求めています。
 総理、私たちが法案を提案すれば、これに賛成していただけますね。また、補正予算を組んで機密費を減額するという意思はお持ちではないのでしょうか。(拍手)
 七月の参議院選挙がいよいよ迫ってまいりました。各党の立候補予定者は、顔を真っ黒にして運動を続けています。総理、あなたの党の比例代表候補者は、その多くが旧建設省、厚生省、運輸省、農林水産省など、役所の出身者で占められているのは周知の事実です。
 これらの候補者は、例えば建設業界、日本医師会、全国農業協同組合など、多くの補助金を受け取るなど政府の庇護のもとに既得権を手にした業界団体の支援を受け、この連休中も、東に行っては建設業界を集め、西に行っては農協の職員を集め、既得権を守るための活動を元気に展開しています。これらの改革をさせまいとする多くの候補者たちが、改革を声高に叫ぶあなたと手に手をとってにっこりと写真を撮り、運動を展開しているではありませんか。(拍手)
 KSD事件、幽霊党員問題、あなたが守ろうとしている自民党の実態は、あなたが言うのとは全く逆の方向へ必死に走り続けているのです。あなたが総理になったことで、これらの人たちは、これで選挙がやりやすくなったと、内心ほくそ笑んでいるのではないでしょうか。これは、皮肉を通り越して喜劇にすら見えます。果たしてどちらが本当の自民党なのか、そして、あなたは本当はどちらの側にくみしているのか、問われるべきなのはあなたそのものでございます。(拍手)
 もし、あなたが自民党を変えようと本気で思っておられるのであるならば、まず、既得権を守るために立候補を予定している比例代表の候補者を見直すべきだと考えますが、いかがお考えですか。(拍手)
 あなたは、所信表明演説で、長岡藩に届けられた米百俵の話を紹介されました。しかし、よく考えてみれば、米百俵を将来への投資のために学校づくりなどに充てることなく、百俵どころか子供たちに借金まで背負わせて、千俵、万俵の米を食い続け、ついには日本そのものを食い物にしているのが自民党政治そのものではありませんか。(拍手)
 私たちは、資源も何もないこの我が国が世界の中で生きていくために、人への投資を徹底的に行うべきだと結党以来訴え続けてまいりました。しかし、そうした議論には一切耳を傾けず、全く利用されない港湾や自然を破壊するための林道開発など、まさに国民の米とも言える大事な税金をあなたの党は食い続けてきたのです。このことが、結果として六百六十六兆円という借金をつくり、我が国財政を破綻寸前まで追いやったのです。米百俵の教訓は、あなたの足元の自民党こそが胸に刻まなければならない教訓です。(拍手)
 私は、二十一世紀の日本が、他者を思いやり、毅然とした品格ある国家として再生するために、民主党を結党いたしました。私たちは、自立と共生に基づく市民が主役の社会、そして、すべての人に公正であることを約束する社会を実現してまいります。
 小泉総理、私たちに残された時間はあとわずかしかありません。国民の皆さんが営々と築いてきたこの日本のすべてを失うか、今、新しい未来の扉を切り開いていけるか、道は二つしかありません。改革を具体的に行い、そのスピードを競い合う場にこの国会がなれることを切に願いながら、私の所信表明と質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 鳩山由紀夫議員の御質問にお答えいたします。
 初めに、小泉内閣において構造改革ができるのか、その理由のお尋ねであります。
 私は、構造改革なくして景気回復はない、あるいは経済の再生はないと言っておりますが、今回の小泉内閣におきましては、改革断行内閣にふさわしい陣容が整ったものと考えております。
 また、経済財政政策について、従来の需要追加型の政策から、不良債権処理、競争的な経済システムの構築、国債発行の抑制など、構造改革を重視する政策へとかじ取りを行ってまいります。
 他方、教育改革を初めさまざまな分野で、森内閣において改革の道筋がつけられているものも多々あります。いいものは継続していく、変えるべきものは変えていく、このような方針で今後ともさらに具体的な改革を進めていくつもりであります。
 抜本的な改革を進めるに当たりましては、国民との信頼関係が大事であります。私は、国民との対話を強化することによって、政策検討の過程を明らかにして、広く国民の理解と問題意識の共有を求める信頼の政治を実施していきたいと思っております。
 小泉内閣は、改革の意欲に燃えた、志と決意を持った内閣であると自負しております。今後とも、国民の理解と協力を得て、改革断行内閣にふさわしい実績を上げていきたいと思いますので、よろしく御理解、御協力をお願いしたいと思います。(拍手)
 自公保連立という政権の枠組みに関する御質問がありました。
 私は、現在の公明党、保守党との連立の信頼関係を大事にしていきたいと思いますし、今後、小泉内閣の政策に共鳴をし賛成してくれる政党があったら、喜んで協力していきたいと思います。ぜひとも、御賛同いただけるなら多くの方々に、また多くの政党に協力していただく、そういう姿勢は堅持していきたいと思っております。
 改革の抵抗勢力についてのお尋ねがありました。
 私は、いろいろな改革を進める場合には、必ず反対勢力、抵抗勢力が出てきます。こういう勢力に対して、恐れず、ひるまず、断固として改革の初志を貫きたい。(拍手)
 どういう勢力かというのは、やってみなきゃわからない。私の内閣の方針に反対する勢力、これはすべて抵抗勢力であります。(拍手)
 緊急経済対策についてお尋ねがありました。
 私は、この緊急経済対策は、日本経済の再生を最重要課題と位置づける小泉内閣の第一の仕事として速やかに実行に移すべき事項が盛り込まれておりますので、まず、森内閣のもとで定められました緊急経済対策、できることは速やかに実行に移していきたい。そして、さらに今後、小泉内閣としてやるべき改革を、早急に具体策をまとめて、順次実行に移していきたいと思っております。
 国債発行額と補正予算についてのお尋ねがありました。
 公約が後退しているというようなお話がありましたけれども、全然後退していません。(拍手)国債発行を三十兆円以下に抑える目標、目標として何で後退しているんですか。当たり前、目標だから。これ以下におさめていく努力をしていくんですから、後退したとは全く考えておりません。
 そして、さらに、私は増税は目標としませんから。増税はしない、そして国債発行は来年度は三十兆円以内に抑えていく、これは努力していく。あわせて、徹底したむだな歳出を削減していく、この見直しが大事であります。この実現に向けて全力を傾けてまいりたいと思います。(拍手)
 また、十三年度の補正予算についてでありますが、今、十三年度当初予算が執行の緒についたばかりであります。これを、今から補正予算を考える必要ないでしょう。この本年度予算の円滑、確実な、着実な執行に努めていくのが今の内閣に課せられた私は責任であると思っております。
 また、国債発行額を三十兆円以下にする法案についてお尋ねがありました。
 これは、私は今、平成十四年度予算について国債発行を三十兆円以下にする目標を財政健全化の第一歩として達成したい、その後、さらに持続可能な財政バランスを実現するため、例えば過去の借金の元利払い以外の歳出は新たな借金に頼らない、そういうものを次の目標とする、そして今後、順次本格的な財政再建の取り組みを進めていきたいと言っているのでありまして、まず我々が取りかからなければならないのは、この第一歩だけをとらえた法案を準備することよりも、目標達成のために、どういう分野におけるいろいろな方策が必要かということを考えていきたい。そして、法案については、まだ出されていないんですから、出された段階でよく見て検討いたしたい。(拍手)
 財投機関債についてのお尋ねがありました。
 この財投改革は、郵便貯金、年金積立金の全額を資金運用部へ預託する制度から、特殊法人等の施策に真に必要な資金を市場から調達する仕組みへと抜本的な転換を図るものであります。所要の法改正を行いまして、十三年度から実施することとしたものであります。
 また、財投改革後における各財投機関の資金調達については、まず、その資金を財投機関債の発行により自己調達するため、最大限の努力、検討を行うこととする。次に、財投機関債による資金調達では必要な資金需要を満たすことが困難な機関については、その業務が民業補完のために実際に必要なものかどうか、将来の国民負担を推計した政策コスト分析、償還確実性等の精査によりまして、当該法人等の業務についてゼロベースからの徹底した見直しを行った上で、真に政策的に必要と判断される場合においては、財投債によって調達した資金の貸し付けを受ける方式を認めるということにしております。なお、政府保証債については、財政規律の確保等の観点から、個別に厳格な審査を経た上で限定的に発行を認めるという考え方を基本としているところであります。
 なお、特殊法人等については、現在、昨年十二月に閣議決定されました行政改革大綱にのっとり、新たな時代にふさわしい行政組織、制度への転換を目指す観点から、その業務の廃止、整理縮小、合理化、民間、国その他の運営主体への移管等の改革を進めていくところでございます。
 預金取扱金融機関の要注意先以下の債権の合計額百五十兆円に関するお尋ねです。
 御指摘の百五十兆円の中には、元利払いや貸し出し条件に問題が生じているわけではなくて、単に注意が必要な債権が百兆円強含まれております。これは、国際的基準においても不良債権には該当しないものであります。
 不良債権には、銀行法に基づくリスク管理債権と金融再生法に基づく再生法開示債権とがあり、これらについては、従来より適正に開示されてきていると私は思います。
 不良債権の抜本処理についてのお尋ねがございました。
 大手銀行十七行を中心とした一斉検査を平成十年に行っており、その後、既に十一行に対して二巡目の検査を実施済みであります。
 いずれにせよ、不良債権の査定等については、金融機関による自己査定、会計監査人による外部監査、さらに金融当局による厳正な検査、監督を通じて適切な資産査定等が行われるよう努めていきたいと思います。
 不良債権については、緊急経済対策を踏まえ、新規のものは三年以内に、既存のものは二年以内に最終処理を行うこととしております。
 公的資金を投入した金融機関による債権放棄についてのお尋ねです。
 一般に、金融機関が債権放棄を行うか否かについては、各金融機関の経営判断により、経済合理性の観点から、個別具体的ケースに応じて判断されるべきものでありますが、政府保証を付した借入金を原資として資本増強を行った銀行の債権放棄に当たっては、「資本増強の基本的考え方」において、借り手企業の経営責任の明確、残存債権の回収がより確実となる等の合理性、当該企業の社会的影響等について考慮すべき旨が明らかにされているところであります。
 政府としては、資本増強行が債権放棄に応じるに当たって、このような点を十分考慮した上、適切に対応しているか、経営健全化計画のフォローアップの中で注視していくつもりであります。
 雇用のセーフティーネットについてのお尋ねであります。
 雇用保険制度については、倒産、解雇等による離職者に対して手厚い給付日数を確保した改正雇用保険法の円滑な施行を図ることとしております。また、再チャレンジを応援する制度の創設についても、既に、求職者に対しては無料で公共職業訓練を実施しているほか、雇用保険の訓練延長給付や教育訓練給付など、現行制度の効果的な運用を図っているところであります。
 政府としては、不良債権の最終処理等、構造改革に伴い厳しさの増す雇用情勢に的確に対応していくため、産業構造転換・雇用対策本部を速やかに改組、強化し、新規雇用の創出、能力開発支援等により雇用対策に万全を期してまいります。
 住宅ローンの返済で苦労している方々に対して支援策を講じることは重要な課題だと考えております。
 このため、住宅金融公庫等において、住宅ローン返済が困難な者を対象に、積極的にローン返済相談を行うとともに、返済期間の延長や据置期間中の金利の引き下げによる返済負担の軽減などの対策を講じているところであります。今後とも、これらの措置を的確に実施することにより、住宅ローンを返済している方々への支援を図ってまいりたいと考えております。
 IT革命の推進に関しましては、五年以内に世界最先端のIT国家となることを目指すという野心的目標を設定しております。その実現を確かなものとするため、e―Japan重点計画を着実に実行するとともに、中間目標を設定するIT二〇〇二プログラムを作成し、全力を挙げて取り組んでまいります。
 いわゆる天下り問題についてのお尋ねがありました。
 今のところ、民主党が提出を予定している法案についてはまだ詳細を承知しておりませんので、詳しいことは申し上げられませんが、出身省庁の権限や予算を背景としたいわゆる押しつけ型の天下り、この疑いを持たれる公務員の再就職について国民から厳しい批判を受けていることは私も十分に認識しております。
 このため、公務員の再就職については、これによって行政がゆがめられることがないかとの国民の疑念を払拭できるような厳格なルールを設定することが必要と思います。三月に取りまとめました「公務員制度改革の大枠」に従い、今後、具体的な制度設計を進めていきたいと考えております。
 公共事業に関する補助金の一括交付についてのお尋ねです。
 公共事業に係る個別補助金等のあり方については、平成十三年度予算においても地方公共団体の自主性を尊重する統合補助金の一層の拡充を図るなど、積極的に見直しを図っているところであります。個別補助金の見直しについては、今後、財源問題を含めて地方分権を推進するという観点から、種々の御提言にかんがみまして一層推進に努めてまいりたいと思います。
 公共事業費の削減についてのお尋ねです。
 これは、今、「聖域なき構造改革」というのは、歳出の増加、削減においても聖域ない、徹底した見直しが必要だと思っています。私は、この二十一世紀にふさわしい、簡素で効率的な政府をつくることが財政構造改革の主たる目的ですから、今後、公共投資のあるべき水準について、こうした改革の目的を踏まえて、今、経済財政諮問会議など、政府・与党におけるさまざまな議論がこれから行われます。その中で、当然、公共事業費の問題についても検討を進めていかなきゃなりませんので、「聖域なき構造改革」、聖域なき歳出の見直し、この中で検討を行っていきたいと思います。(拍手)
 諫早湾の干拓事業を中止すべきだという御意見であります。
 本事業は、長崎県を初めとする地元の強い要望に基づき、高潮、洪水等に対する防災機能の強化及び大規模かつ生産性の高い優良農地の造成を目的として着実に今実施してきているものでありまして、今後については、環境に十分配慮しつつ対応してまいりたいと思います。
 川辺川ダムについてのお尋ねであります。
 球磨川流域ではたび重なる洪水被害によって多くの方々が苦しんでおりまして、治水対策が急がれていること、また安定的な農業用水を確保するため、川辺川ダムは必要な事業だと思います。したがいまして、今後とも、環境に十分配慮しつつ、完成に向け鋭意努力してまいりたいと思います。
 公共事業の長期計画の策定についてお尋ねがございました。
 公共事業については、これまでも、政策課題に対応した予算の重点化、事業評価の厳格な実施、入札・契約制度の適正化、コスト縮減等の見直しに取り組んできたところでありますが、歳出の見直しを行うに当たっては公共事業も例外ではありません。さらに根本にさかのぼった見直しを行いまして、新しい時代の変化に対応し、より効率的で重点的な公共事業の実施に努めていく必要があり、経済財政諮問会議など、政府・与党におけるさまざまな議論の場において検討を深めてまいりたいと考えております。
 農林水産予算についてのお尋ねであります。
 農業公共事業につきましては、水田における麦、大豆生産の定着による食料自給率の向上や家畜排せつ物のリサイクル等の環境対策に資するよう重点的、効率的に事業を推進するとともに、農林水産業を担う人材の確保、育成対策等につきましても、森林整備の担い手である林業就業者の確保、育成対策や農業の後継者対策を講じているところであります。今後とも、循環型社会の実現や食料自給率の向上に向け、農林水産業の担い手対策を重点的、効率的に推進していきたいと思います。
 地球温暖化問題への対応ですが、我が国は、二〇〇二年までの京都議定書の発効を目指して、京都議定書を関係国が締結することが可能となるよう、七月のCOP6再開会合の成功に向けて全力を尽くします。
 その際には、地球規模での温室効果ガスの削減の実効性を確保するために、世界の二酸化炭素の排出量の約四分の一を占める米国が京都議定書を締結することが極めて重要であると考えております。このような考えのもと、京都議定書の発効に向けた交渉に米国が建設的に参加するよう、あらゆる機会を活用して働きかけを行っているところであります。
 また、環境問題への取り組みはまず身近なところから始めるという姿勢が大事でありまして、政府は、原則としてすべての公用車を低公害車に切りかえるべく行動を始めたところであります。こうした取り組みを含め、京都議定書の目標を達成するための国内制度に総力で取り組んでまいります。
 歴史教科書についてのお尋ねです。
 我が国にとって韓国、中国との友好協力関係の発展に努めることは重要であり、日韓、日中関係の大局に立ち、いかにすればこの問題が両国との友好関係を損なうことなく円満に解決できるか今知恵を絞っておりますが、こういう観点から、鳩山議員の御提案も一つの御意見として十分承りながら、今後、検討していきたいと考えております。
 靖国神社への公式参拝についてのお尋ねがございました。
 御指摘の公式参拝は制度化されたものではないので、あえて公式参拝と呼ぶものとして行うかどうかについては、我が国国民や遺族の方々の思い及び近隣諸国の国民感情など、諸般の事情を総合的に考慮し、慎重かつ自主的に検討した上で判断したいと考えておりますが、私としては、今日の日本の平和と繁栄の陰には、みずからの命を犠牲にして尽くされた戦没者の方々がたくさんおられます。そういうとうとい犠牲の上に成り立って今日の日本があるんだということを考えますと、私は、戦没者に対して心を込めて敬意と感謝の誠をささげたい、そういう思いには変わりはありません。そういう思いを込めて、私は、個人として靖国神社に参拝するつもりでおります。(拍手)
 金正日氏の長男ではないかとされる人物が不法入国した件に関し、その対応についてのお尋ねがありました。
 本件については、法務省から、五月一日の夜、事案の第一報を受けました。その際、私からは、事案の解明を進め、法令の手続に従って処理するようにとの指示をいたしました。その後、法務省は、関係当局と協議の上、関係法令等に従い、退去強制という処理方針を定めたものと承知しております。
 私としても、今回の事案については、民主主義国家として法令に基づいた処理を行うことが第一と考えるとともに、本件の処理が長引くならば内外に予期しない混乱が生じるおそれなどもあり、そうした事態を避けるためにも今回の措置は適切な対応であったと考えております。
 報償費に関する民主党の機密費公表法案及び補正による減額についてのお尋ねであります。
 報償費については、国政の円滑な遂行という目的にかなうものでなければならない、真に目的にかなうものであるかどうかすべてについて再点検を行った上で執行する、執行及び管理の一層の適正化のための体制を整備するという考えのもとで、厳正かつ効果的に使用すべきものと考えております。こうした考え方のもとで、平成十三年度については、減額も含め厳正に執行します。
 民主党が用意されている機密費公表法案については、仮に国会に提出されるのであれば、国会の審議の場において御議論いただくべきものであると考えております。
 自由民主党の比例代表の候補者の見直しについてのお尋ねがありました。
 私は、候補者の選定に当たっては、今後、「聖域なき構造改革」、改革断行内閣、この趣旨と目的に沿った方々にぜひともたくさん出ていただきたい。そして、この我が党の、そして小泉内閣の政策を支持するという方々が、国民の支持も得られて、たくさん当選してくれたらいいなと思っております。
 そうすることによって、自由民主党が掲げたこの改革への意欲、また小泉内閣の掲げる政策の実現のため、すべて一致協力して実行に移していける方々にできるだけ立候補してもらうようにこれからも努力を続けていきたい、そういうふうに考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣田中眞紀子君登壇〕
○国務大臣(田中眞紀子君) 鳩山代表にお答え申し上げます。
 二島先行返還という提案は、我が国の政府といたしましては、ロシアに対して今まで一度も提示したことはございません。これは森内閣も含めます。
 それから、二つ目のお尋ねでございますけれども、これは必ずしも特定の問題を念頭に置いたものではございませんで、むしろこれからが大事なんです、むしろ外務省の体質及び外務省が抱えている問題というものは極めて根深いものがある、このように感じております。
 したがって、これを、国民の目線に立ちまして、真の国益ということのために、外務省の組織を抜本的に、しかもわかりやすく改革していきたいという私の考えを示したものでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(綿貫民輔君) 山崎拓君。
    〔山崎拓君登壇〕
○山崎拓君 私は、自由民主党を代表して、さきに行われました小泉総理大臣の所信表明演説に対し、率直、簡明に御質問申し上げます。(拍手)
 ほぼ十年前、外にあってはベルリンの壁の崩壊とともに米ソ冷戦構造も崩壊し、内にあってはバブル経済がはじけ、それまでの平和と繁栄を保障してきた政治、経済、社会のシステムが一挙にアンシャンレジームと化しました。
 この時代の大変化に気づかずに、政治改革の美名のもとに選挙制度の改革に血道を上げ、それに伴う新党の乱立と政界再編劇に憂き身をやつした一九九〇年代の前半、おくればせながら構造改革の名のもとに新規のシステムを模索しつつも、ついに新しい軌道に乗せることができなかった一九九〇年代の後半、この通算十年はまさに失われた十年と呼ばれ、政治の役割もまことになすところ少なかったと反省せざるを得ません。
 二十一世紀劈頭のこのときに当たり、「新世紀維新」の実現を掲げる小泉総理の誕生は、停滞し、混迷を深め、無力感が蔓延して、あすへの希望を失いつつあった日本社会に、かつての驚異的な経済成長時代とは別な次元で、新たな奇跡を呼び起こすものと確信いたします。(拍手)
 小泉内閣は、内閣発足時の支持率としては歴代最高の驚異的な高支持率でスタートいたしました。国民のこれほどまでに圧倒的で巨大な期待にいかにこたえていくか、総理も責任と使命感の重圧に苦しんでおられると思いますが、あくまでも国民の目線に立って、いかなる抵抗にも屈せず、現状を打開し、「聖域なき構造改革」を断行していただくよう心から期待いたします。
 国家の指導者が強い信念と確信を持って国民に語りかければ、国民は自信と勇気、未来への希望を奮い起こすことができるのです。
 これほどまでに高い支持率が国民から寄せられていることを、総理御自身はどのように受けとめておられるのか。また、総理は、みずから新内閣を改革断行内閣と命名されましたが、我が国の政治を大きく変革しようとする総理の御決意について、改めてお伺いいたします。
 昭和三十年十一月の自由民主党の立党宣言、綱領、「党の使命」といった基本文書には、今でもみずみずしく、戦後の荒廃を乗り越えて新しい時代を築こうとする先人たちの理想がつづられています。そして、何よりも自主憲法制定が高らかにうたわれています。
 二十世紀においては、欧米先進国に追いつき追い越そうという明確な国家目標があり、大きな挫折を経ましたが、ついに世界に冠たる経済大国を築き上げました。戦後政治の中で自由民主党が果たした役割は、歴史上高く評価されてしかるべきものと自負しています。
 それに引きかえ、今日の政治は確固とした二十一世紀の国家ビジョンを示し得ず、日本国民は未来の不透明感に戸惑い、将来不安に悩んでいます。このたび、我が党に総裁直属機関である国家戦略本部が設置されたのも、二十一世紀の明確な国家目標を樹立するためであります。
 まず指摘したいことは、憲法制定後既に五十年以上が経過し、この半世紀の間に国内外の状況は極めて大きな変化を遂げているということであります。冷戦構造崩壊による安全保障上の新たな情勢の出現、我が国の国際平和に対する役割や期待の高まり、地球環境問題の深刻化、遺伝子解明に伴う生命倫理の問題、インターネット社会の到来とプライバシー保護の必要性など、我が国も世界も全く新しい課題に直面しつつあります。
 国内に目を向けても、青少年犯罪の続発や公徳心を欠いたわがままな振る舞いの日常的な横行など目に余る状況であり、礼節や信義、社会奉仕の精神といった日本国民の伝統的なアイデンティティーを守りつつ道義国家の確立を目指し、自由と責任、権利と義務、家族の尊重、公と私の関係などについて議論を深める時期が到来していると信じます。
 既に衆参両院に憲法調査会が設置され、また、世論調査を見ても憲法改正を肯定する声は既に半数を超えており、立法府としても党派を超えて謙虚に耳を傾ける必要があります。総理は、まず首相公選制導入の議論から憲法改正論議に入ることを提唱されていますが、私は、この際、そのような内閣制度のあり方を含め、国のあるべき姿、新しい国の形について徹底的に議論し、国民のコンセンサスを得て、遅くとも二〇一〇年までには平成新憲法を制定すべきものと考えています。総理の憲法問題に関する御見解をお聞きしたいと思います。
 次に、構造改革と景気回復の問題についてお伺いいたします。
 我が国の財政状況は、国、地方を合わせた長期債務残高が六百六十六兆円に達する見込みとなっており、主要先進国の中で最悪の、極めて厳しい状況にあります。幾ら国民の金融資産が千四百兆円あるといっても、国債の発行を野方図に続けるわけにはいかず、政府主導の財政支出のみに重きを置いた景気対策には当然限界があります。明らかに、個人消費の低迷が今次不景気の原因であります。
 国債乱発は、むしろ将来、大増税が待ち受けているのではないか、高金利時代に突入するのではないかといった国民の不安を惹起し、国民の消費性向を極度に低下させる要因の一つになっているという認識を持つべきであります。この際、幅広い観点から財政再建に向けた検討を開始すべき時期が来ていると考えます。
 総理は、構造改革なくして日本の再生と発展はないと明言されました。まず年間の国債発行額を三十兆円以下に抑え、次に国債発行額が国債費を超えないことを目途としたプライマリーバランスの実現を目指す方針も表明されております。一方、増税なき財政再建を標榜され、国民に安易な負担を求めることはせず、まず政府においてできる限りの節減努力をするという姿勢を明確にされています。私は、こうした総理の方針を高く評価し、全面的に支持するものであります。
 まず、森内閣から引き継がれた不良債権の処理や資産デフレ対策のための緊急経済対策を強力に実施されるとともに、目下凍結されている財政構造改革法をこの際廃止し、新設の経済財政諮問会議において新たな財政構造改革法の制定に取り組まれたらどうか、提案いたします。
 国民は賢明であり、減税によるばらまきや景気対策に名をかりた国債増発をもはや歓迎しておりません。むしろ財政に規律や節度を顧みない政権は、政権担当能力も資格もないと考えています。
 国民が小泉総理を評価しているのは、景気回復のためにこそ構造改革を進めるという明確な政治目標を掲げ、改革への断固とした決意を表明し、多少の痛みがあっても我慢してほしい、一方、痛みを和らげるためセーフティーネットを講じるなど万全の措置を講じると、国民に率直に語りかけておられる姿勢だと思います。
 財政構造改革と当面の景気回復について、国民に対し総理御自身の言葉で率直なお考えをお伝えください。
 総理は、社会保障制度改革について、年金、医療、介護を一体のものとして考える、国民の今がよければという精神を改造し、高齢者も若い人もお互いに支え合っているという心を持ち、給付の陰には負担があるということを熱意を持って説得し、制度改革を実現すると語られました。
 少子高齢化の進展の中で、政治が強い指導力を発揮し、英知を結集して、社会保障が今後目指すべき進路をはっきりと見定め、国民に示していくことが日本の将来の不安を解消するために何よりも必要なことです。総理の御決意をお伺いいたします。
 国家百年の計である教育の問題は、国の将来を左右する国政の最重要課題の一つであります。森前総理は、今国会を教育改革国会と名づけ、教育改革の断行の観点から抜本的な改革への第一歩を踏み出そうとされました。小泉総理におかれても、引き続き諸改革を力強く断行し、国民一人一人、子供たち一人一人が、確かに教育が変わる、学校が変わるんだということを実感できるような、思い切った改革を進めていくことが必要であります。
 特に、日本の教育の基盤である教育基本法の見直しを森前総理は明言されました。その点を含めて、小泉総理の教育改革に取り組む御決意のほどをお伺いいたします。
 総理は、所信表明演説で、司法制度改革を最重要課題の一つに位置づけられましたが、構造改革により、明確なルールと自己責任原則に貫かれた社会が実現すれば、一方で、国内外において企業や個人がさまざまなリスクを負うことにもなり、充実した司法のサービスがますます必要不可欠になります。したがって、司法の人的、物的基盤の充実など司法制度改革が急務と考えますが、総理のお考えと御決意をお伺いします。
 私がさきに述べた過去の奇跡的な経済成長は、技術革新の波によってもたらされたものであります。無資源国日本の発展は、人的資源、頭脳資源の活用以外にありません。したがって、科学技術創造立国は、まさに国是であります。この三月、今後五年間に二十四兆円の政府研究開発投資を行う新たな科学技術基本計画が策定されましたが、資金を総花的でなく、国家戦略として定めた重点分野に集中的に投入し、すぐれた成果を上げることに全力を傾注すべきだと考えます。
 また、若手研究者の思い切った登用や資金の重点的配分など、我が国の研究システムを大胆に変革していくことも重要です。
 そのためには、総合科学技術会議に、より実質的な権限と機能を担わせ、名実ともに我が国の科学技術の司令塔としての役割を果たさせるべきだと思いますが、総理の御所見をお伺いいたします。
 一九五一年にサンフランシスコ講和条約とともに日米安保条約が締結され、ことしはちょうど五十周年に当たる節目の年を迎えています。一九六〇年には改めて新日米安保条約を締結することを選択し、幾つかの結節と変化を経ながらも、日米同盟は世界で最も重要な二国間関係の紐帯として重要な役割を果たしてまいりました。この五十年間、我が国が戦争の悲劇を再び経験することなく、平和と繁栄を享受することができたのは、日米同盟関係という安全保障の基盤があってこそであるということを改めて認識すべきでありましょう。
 冷戦が終結し、新たな世紀に入っても、国際情勢は依然として不透明、不確実であります。この際、これまでの日米同盟の成功の歴史を踏まえ、今後五十年、百年を見通して、この最も成功している同盟関係をもう一段高いレベルに発展させていく必要があると考えます。
 日米両国は、自由経済と民主主義という価値観を共有し、この地域の平和と安定という共通の国益を基盤としています。このような日米両国が、それぞれの国益と国家戦略に基づきつつも、常に国際情勢認識などについてすり合わせを行い、政策を調整していく、いわば戦略対話というものを積極的に行っていくことが重要になってくると私は考えておりますが、日米同盟の意義とさらなる日米同盟の発展のための施策について、総理のお考えをお伺いいたします。
 さらに、日米安保条約と関連して、集団的自衛権の行使についてお伺いします。
 これまで、自衛権の行使は、専ら個別的自衛権を念頭に置いて議論されてまいりました。しかしながら、今日の国際情勢のもとでは、日米防衛協力の指針、いわゆるガイドラインの見直しの際の議論に見られるように、我が国の防衛政策を検討する上での関心は、個別的自衛権から集団的自衛権の方に大きく移っています。科学技術の顕著な発達によって、現代における軍事力はミサイルの発達など想像を絶するような破壊力を持つようになっており、こうした中で、それぞれの国家が単独で防衛を行うことは技術的に考えても現実的ではなく、同盟国との共同防衛を行うことが有効かつ現実的であります。
 さきに述べたとおり、日米の防衛協力関係は、我が国の平和と安全のみならず、アジア太平洋地域における平和と安定のための基軸であり、特に冷戦終結後は、一九九六年四月の日米安保共同宣言をまつまでもなく、我が国への直接武力侵攻への対処はもとより、地域紛争の抑止、対処が主たる課題となっています。また、ブッシュ新政権も日米対等のパートナーシップを強調しており、日米の安保協力関係を発展させるためには、自衛隊が米軍と可能な限り共同して対処できるようにすべきであります。そして、これによって日米安保条約の双務性が高まれば、沖縄を初めとする在日米軍基地のあり方についても、我が国の発言力が一段と高まるものと考えています。
 この点に関する政府の解釈は、従来より一貫して、集団的自衛権を持っているが、行使することは憲法違反というものでありました。しかしながら、安全保障のニーズが時代とともに変化していく中で、他国を防衛するため他国において武力行使をする海外派兵が認められないことは憲法解釈上当然のこととして、それ以外の補給、医療までも厳格に解釈して認めないという態度では、将来において日米の信頼関係の維持に支障が出てくる事態が想定される時代になってきているのです。同様の考え方は、国連の平和維持活動や多国籍軍への参加の問題にも当てはまります。
 この点について、総理は、日米同盟は国益だということを考えれば、政府の解釈を変えても国民の理解を得られるときが必ず来ると述べられたことがありますが、私は、憲法の有権解釈を司法の場でなく内閣法制局の手にゆだねることには反対であります。しかしながら、最高裁が憲法九条の解釈権を事実上放棄している以上、立法府の役割こそ極めて重要ではないかと考えます。
 本来ならば憲法改正を発議すべきところでありますが、その時期が到来するまでの間、とりあえず、国会決議によって一定の範囲で集団的自衛権の行使を認めることにしたらどうか。例えば、ガイドライン法に規定された日本の平和と安全に重大な影響を与える周辺事態に限り後方支援を認めるとする国会決議を行い、集団的自衛権行使を容認する道を開いてはどうかということを、本会議場における国会議員諸君に提案いたします。総理の御所見もお伺いいたします。
 次に、外交問題についてお聞きいたします。
 まず、いわゆる外交機密費について、外交は国益実現そのものであり、機密費が真に国益実現のために使用されるためにも、これまでの問題点の検証、責任体制、チェック機能の明確化等について幅広く検討されるようお願いいたします。
 けさの新聞報道によると、総理は六月訪米の計画のようですが、私も、日米のより強固な関係構築に向け、ブッシュ大統領と早期に会談されるべきだと思います。今後、ブッシュ政権との関係をどのように進めていかれるのか、総理のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
 また、ブッシュ政権は、地球温暖化問題に対処するための京都議定書を支持しないとの立場を表明しましたが、我が国は、京都議定書を取りまとめた責任ある立場であり、二〇〇二年の発効を目指した早期批准の決意を明確にするとともに、国際合意の取りまとめに全力を尽くすべきだと考えますが、この点についても総理のお考えをお聞きいたします。
 また、日米間には、普天間飛行場の移設、返還問題を初めとする沖縄の米軍基地問題など、両国の緊密な協力が必要な課題があり、これらについてもどのように取り組むのか、お伺いいたします。
 我が国にとって日米関係に次ぎ重要な日中関係ですが、本年は総理の訪中が予定されており、明年の日中国交正常化三十周年に向けて、相互信頼及び相互理解のさらなる進展を図っていく必要があります。
 一方、中国との間では、教科書問題、歴史認識、貿易等をめぐって一部に摩擦が生じており、これらをどのように克服し、今後の日中関係を進展させていかれるのか、お伺いいたします。
 日韓関係も同様に重要です。二〇〇二年ワールドカップの開催も予定され、天皇の御訪韓も取りざたされております。いろいろな問題はあっても、大局的な見地から乗り越え、関係緊密化を進める努力が必要です。
 朝鮮半島をめぐっては、米国のブッシュ政権は、現在、対北朝鮮政策の見直しを行っていると承知しております。このような動きの中で、我が国は今後、米韓両国と歩調をとりつつ、日朝関係をどのように進展させていくのか。
 また、先般、金正日総書記の長男ではないかとされる人物が偽造旅券で不法入国し、国外退去させられた事件がありましたが、この対応をめぐりいろいろな意見があります。経緯及び対応判断について、総理にお伺いいたします。
 あわせて、不法入国や不法滞在の外国人による犯罪が多発し、我が国の治安悪化を招いていることから、入国管理体制の抜本的な強化、拡充が必要だと考えますが、総理のお考えをお伺いいたします。
 日ロ関係についてもお伺いしますが、三月に行われたイルクーツク首脳会談を踏まえ、このところ停滞ぎみの日ロ関係をどう打開されるか、とりわけ領土返還交渉など、平和条約交渉にどのように取り組まれるのか、総理の御決意をお伺いします。
 小泉総理は、自由民主党はかつてだれからも好かれる国民政党だった、これからの新しい時代に本来の姿を取り戻し、この日本を変え、また、新しい時代に雄々しく立ち向かっていくのは自由民主党だと、党員が自信と誇りを持って言える政党にするのが私の責任だと、国民を思い、党を愛する真情を吐露されました。総理の飾り気のない、真っすぐな政治姿勢に国民は心底から共感し、熱いエールを送っています。自信を持ち、国民が期待するリーダーシップを堂々と発揮して、この国の新しい時代を国民とともに切り開いていただきたいと思います。
 私も、国民政党自由民主党の幹事長として、全党員・党友の先頭に立ち、脈々と受け継いできた立党の精神に立ち返って、かつ、小泉総理・総裁の目指す理想実現に向け、全面的に協力してまいる決意であります。
 そして、我が国が、二十一世紀の新しい時代においても、バートランド・ラッセル卿の言う第一級の国民の資質である、レベルの高い活力、知性、勇気、感受性を持つ国民によって形成された、平和で繁栄する国家であり続けられるよう力強く前進していくことを祈り、重ねて、日本丸の新船長小泉総理の決意を確認させていただき、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 山崎議員にお答えいたします。
 まず、温かい、力強い御激励に心から感謝を申し上げます。(拍手)
 初めに、内閣支持率や政治の変革に対する決意などのお尋ねでございます。
 私も率直に言って、このような高い支持を国民からいただいていることに対して驚くと同時に、大変責任が重いなと、改めて総理大臣というものの責任の重圧と緊張に毎日震えている状況でございますが、問題はこれからであります。もうこれ以上高い支持率はないと思っていますので、後は下がるだけだと思っておりますが、これから実績を積んで少しでも多くの国民の御支持と御期待にこたえるように頑張っていくのが私の務めだと思います。
 まず、毎日の行動に対してみずからを律して、そして一身を投げ出してこの総理大臣の職責を果たすという決意で、毎日を精進しながら改革断行に向かって進んでいきたいと思いますので、力強い御支援と御激励をお願いしたいと思います。(拍手)
 憲法改正についてのお尋ねでございます。
 私は、憲法の基本理念であります民主主義、平和主義及び基本的人権の尊重は、憲法が制定されてから今日に至るまでの間、一貫して国民から広く支持されてきたものであって、将来においてもこれを堅持すべきものと考えております。
 一方、憲法第九十六条は憲法の改正手続を規定しておりまして、憲法が永久不変のものとは考えておりません。憲法をめぐる議論が行われること自体は何ら制約されるべきものではないことは、言うまでもありません。私としては、例えば首相公選制など、政治の現実的課題として取り上げられていいのではないかと思っております。
 いずれにしても、国の基本法である憲法の改正につきましては、世論の成熟を見定めるなど慎重な配慮を要するものと考えております。
 憲法に関する問題につきましては、これまでも各方面からさまざまな意見が出されておりますし、特に、第百四十七回国会から、憲法について広範かつ総合的に調査を行うため、衆参両議院に憲法調査会が設置され、こうした問題についても幅広く熱心な議論が行われているところでありますが、あわせて、国民の間でも大いに議論していただくことを期待しております。
 緊急経済対策、経済財政諮問会議、また財政構造改革への取り組み、景気回復の問題についてお話がありました。
 私は、かねがね主張しておりますように、構造改革なくして景気回復なしとの考え方に立ちまして、各般の構造改革といろいろな経済問題につきまして、一体としてこの問題に取り組んでいく考えであります。いわゆる景気回復も構造改革も、二者択一ではない、包括的に取り組んで初めて景気回復もあり得る、日本の経済の再生もあり得るという考えで取り組んでいきたいと思います。
 そういう考えから、平成十四年度予算では、財政健全化の第一歩として、国債発行を三十兆円以下に抑えることを目標とし、また歳出の徹底した見直しに努める、その後、持続可能な財政バランスを実現するため、例えば過去の借金の元利払い以外の歳出は新たな借金に頼らないことを次の目標とするなど、本格的財政再建に取り組むという段階で考えていきたいと思います。
 社会保障制度についてでありますが、社会保障制度は、国民の安心と生活の安定を支える制度であります。今世紀に少子高齢社会を迎える我が国におきましては、これからは、給付は厚く、負担は軽くというわけにはいきません。世代間の給付と負担の均衡を図りながら、お互いが支え合う、将来にわたり持続可能な、安心できる制度を再構築していかなければならないと考えております。
 三月末に、政府・与党社会保障改革協議会において、改革の理念や基本的な考え方を明らかにする社会保障改革大綱を決定したところであり、今後、この大綱に基づき、国民に対して道筋を明快に語りかけ、理解と協力を得ながら改革を進めてまいります。
 教育改革についてでございますが、日本人としての誇りと自覚を持ち、新たなる国づくりを担う人材を育てるための改革に取り組むことは極めて重要であります。このため、今国会において、学校がよくなる、教育が変わることを目指した教育改革関連法案の成立に全力を尽くすなど、教育改革を断行してまいるつもりでございます。
 また、教育基本法の見直しについては、教育改革国民会議の最終報告を踏まえ、中央教育審議会等で幅広く国民的な議論を深め、しっかりと取り組んで成果を得てまいりたいと考えております。
 司法制度改革についてでございますが、司法制度改革は平成九年の議員の代表質問を契機として進められてきたものであると私は承知しております。
 我が国社会を自由で活力のある健全なものとしていくため、行政改革を初めとする諸改革を推進し、明確なルールと自己責任原則に貫かれた事後チェック・救済型社会への転換を図っていく上では、議員御指摘のとおり、国民の権利、利益の救済を図る司法の機能を充実強化していくことが不可欠であります。このような意味で、司法制度改革は、行政改革を初めとする構造改革を進めていく上で不可欠な重要課題であります。
 この問題につきましては、内閣に設置された司法制度改革審議会において国民的見地に立った調査審議が行われているところでありますが、本年六月中にも取りまとめられる同審議会の最終意見を十分に尊重し、その実現に全力を挙げて取り組んでいきたいと思います。
 総合科学技術会議の役割についてでありますが、本年一月に発足した総合科学技術会議は、私が主宰する科学技術政策推進のための中心的機関であります。従前の科学技術会議は年一回の開催でしたが、新たな総合科学技術会議は、発足以来月一回の割合で開催し、活発な議論を行い、三月には新たな科学技術基本計画を策定するなど成果を上げてきています。
 私は、総合科学技術会議を我が国科学技術政策の司令塔と位置づけ、重要研究分野への戦略的な研究開発投資と研究開発システムの改革の実施などを通じて、科学技術創造立国の実現を目指してまいります。
 日米同盟の意義と発展のための施策についてでありますが、日米同盟関係は、日米両国のみならず、アジア太平洋の平和と安定の基盤として重要な役割を果たしてきました。その重要性は今後も変わらないと思います。私は、米国との間で国際情勢を含む幅広い分野における緊密な政策協議を行い、日米同盟関係を一層強化していく考えです。このために、日米安保体制がより有効に機能するよう努めるとともに、経済・貿易分野での対話を強化するための新たな方策を見出し、政治・安全保障問題等に関する対話や協力を強化してまいります。
 日米安保関係と集団的自衛権に関するお尋ねです。
 政府としては、御指摘のとおり、日米安保関係を機能的、効率的に運営していくとの観点から、これまで、新たな日米防衛協力のための指針の策定、その実効性確保のための法整備等を通じ、日米安保体制の信頼性の向上に取り組んできております。今後とも、日米安保体制の信頼性の一層の向上のため努力していくつもりであります。
 集団的自衛権については、政府は、従来から、我が国が国際法上集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上当然であるが、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えてきております。
 憲法は我が国の法秩序の根幹であり、特に憲法第九条については過去五十年余にわたる国会での議論の積み重ねがあるので、その解釈の変更については十分に慎重でなければならないと考えております。他方、憲法に関する問題について、世の中の変化も踏まえつつ、幅広い議論が行われることが重要であり、集団的自衛権の問題についてさまざまな角度から研究してもいいのではないかと思います。
 外務省報償費についてのお尋ねです。
 不祥事を契機に、報償費の適正な執行に対する国民の信頼が損なわれていることを重く受けとめております。
 外務省報償費は、情報収集及び諸外国との外交交渉ないし外交関係を有利に展開するために重要な役割を果たすものであります。外交の円滑な遂行に役立てるという原則に立って、原点に立って、御指摘の点も含め幅広く検討し、抜本的な見直しを行う考えであります。
 今後のブッシュ政権との関係についてですが、私は、日米両国が、二国間問題に限らず、国際社会が直面する諸問題について、幅広い政策協議を通じ、アジア太平洋のみならず、世界の平和と繁栄のために協力すべきであると考えております。このため、ブッシュ政権との間で率直かつ忌憚のない対話を行うことにより、日米同盟関係を一層強化していく考えです。
 ブッシュ大統領との会談については、できるだけ早い時期に行うことでブッシュ大統領と意見の一致を見ているところであります。
 沖縄の米軍施設・区域に関する問題への取り組みについてでありますが、普天間飛行場の移設、返還を含め、沖縄に関する特別行動委員会最終報告の着実な実施に全力で取り組み、米側とも密接に協議しながら、沖縄県民の負担の軽減に最大限努力していく考えであります。
 日中関係についてですが、現在、日中間では幾つかの問題が発生しております。我が国としては、日中関係が我が国にとって最も重要な二国間関係の一つであるとの認識のもと、お互いの立場を理解し、粘り強く努力を重ねることにより、両国関係の改善に努めていきたいと思います。
 日朝関係についてですが、米韓両国と緊密に連携しつつ、北東アジアの平和と安定に資する形で日朝国交正常化交渉に粘り強く我が国は取り組んできております。また、こうした日朝間の対話の中で、北朝鮮との人道的問題及び安全保障上の問題の解決に向けて全力を傾けてきております。
 御指摘のとおり、現在、米国は対北朝鮮政策を見直しているところですが、以上のような我が国の基本方針は変わりありません。
 金正日総書記の長男ではないかとされる人物が不法入国した件に関し、その経緯及び対応判断についてのお尋ねがございました。
 本件につきましては、法務省から、五月一日の夜、事案の第一報と、偽造ドミニカ共和国旅券所持者の男性一名が北朝鮮の金正日総書記の子息である金正男氏ではないかとの未確認情報もある旨、報告を受けました。その際、私からは、事案の解明を進め、法令の手続に従って処理するようにとの指示をいたしました。その後、法務省は、関係当局と協議の上、関係法令に従い、退去強制という処理方針を定めたものと承知しております。
 私としても、今回の事案については、民主主義国家として法令に基づいた処理を行うことが第一と考えるとともに、本件の処理が長引くならば内外に予期しない混乱が生じるおそれなどもあり、そうした事態を避けるためにも今回の措置は適切なものであったと考えております。
 入国管理体制の強化についてですが、不法入国を含め我が国に不法に滞在する外国人は約二十六万人と推定され、御指摘のとおり、その一部が凶悪犯罪、組織犯罪に関与するなど我が国の治安等に悪影響を及ぼしており、看過できない状況となっております。世界一安全な国、日本に対する国民の信頼を取り戻すため、多発する凶悪犯罪の対策や入国管理の体制の強化に取り組んでまいります。
 なお、先般の事件を踏まえ、五月六日の閣僚懇談会において、職員の増強や機器の整備など、入管体制の強化を検討するよう関係大臣に指示したところであります。
 ロシアとの関係でありますが、先般のイルクーツク首脳会談までに得られた成果をしっかりと引き継ぎ、北方四島の帰属の問題を解決することにより平和条約を締結するとの政府の一貫した方針を堅持いたします。そして、平和条約の締結、経済分野の協力、国際舞台における協力という三つの課題を同時に進行させるという観点に立って、幅広い分野で日ロ関係を進展させていく考えであります。
 以上であります。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
○副議長(渡部恒三君) 枝野幸男君。
    〔枝野幸男君登壇〕
○枝野幸男君 小泉総理、総理は先日の所信表明演説において、痛みを恐れず、また、既得権益の壁にひるむことなく、構造改革を推進すると宣言されました。この言葉は、私が、政治活動を始めてから八年間、訴え続けてきた姿勢そのものであります。
 政党政治のもとで、小泉さんと私は党派を異にしています。しかし、政党のために政治があるのではなく、目指すべき政策を実現するために政党が存在することは言うまでもありません。改革が本当に前に進むのであるならば、私は、党派を超えて、これを全力で支援したいと思います。(拍手)
 問題は、改革の具体的な中身であります。
 これまでも、改革という言葉、つまり総論だけは、何度も繰り返し言われ続けてきました。しかし、具体的な中身となると、あるときは、既得権益の壁に阻まれ、また、あるときは、議論を尽くすという大義名分のもとに先送りがなされてきました。今、本当に改革を実現するためには、一刻も早く具体論を提示してその議論に入り、期限を決めて着実に成果を上げていく以外にはありません。
 私は、民主党・無所属クラブを代表して、こうした観点から、鳩山代表の質問に対する先ほどの総理の答弁と、小泉改革の具体的な中身について、重複を避けつつ、総理及び森山法務大臣に質問をいたします。(拍手)
 先ほどの鳩山代表の、政治姿勢に対する質問において、小泉総理の改革に向けた強い意欲はお聞きをいたしました。しかし、鳩山代表の質問は、小泉総理の意欲をお尋ねしたものではなく、森内閣ではなぜ改革が進まなかったのか、小泉総理御自身が森派の会長としてこれを中心となって支え、また、みずから歴代最高と言った森内閣でなぜできなかったのか、その失敗の検証と反省がなければ、小泉さんにいかに強い意欲があろうとも、再び同じ失敗を繰り返すのではないか、そうした懸念からその政治姿勢をお尋ねしたものであります。
 改めてお尋ねをいたします。なぜ、小泉さんが歴代最高とまで言った森内閣では小泉さんのような改革が断行されずに、内閣がかわることになったのか、端的にお答えをいただきたいと思います。(拍手)
 次に、財政構造改革についてお尋ねをいたします。
 鳩山代表に対する答弁の中で、小泉総理は、増税なき財政再建ということをおっしゃられました。ここは、まさに大切なポイントであります。財政健全化に当たって、増税を手段として認めるならば、総理がおっしゃっている歳出の徹底した見直しが骨抜きにされかねません。また、経済対策という観点からも問題があります。膨らむ一方の国の借金が、多くの皆さんに将来の大増税という不安を与え、その結果、財布のひもがかたく締まり、消費不況の一因となっているからであります。
 改めて、小泉総理が財政再建に当たっては増税をしない、明確に確認をさせていただきたいと思います。
 また、鳩山代表の質問に対する答弁においても、三十兆円以内という国債発行額の目標、公約が、いつの時点のどういったところにかぶさってくるのかということが明確ではありませんでした。
 三十兆円以内に国債発行額を抑える、平成十三年度当初予算では二十八兆でありますが、平成十三年度を通してこの数値目標を掲げるのか。そして、平成十四年、三十兆円以内に抑えた後、平成十五年以降はどうなるのか。第二段階として、いわゆるプライマリーバランスをとるということを目標として掲げておられますが、プライマリーバランスをとるに当たっても、国債発行額を三十兆円以内に抑えるということは当然の前提になってまいりますから、自然に読めば、平成十四年以降も三十兆円以内に抑えるという目標を掲げていると理解できるはずでありますが、それでよろしいのか、確認をさせていただきたいと思います。
 この質問を初めとして、鳩山代表から、幾つか我が党が法案を提案をした場合、総理は賛成されますかと、三十兆円以内に国債発行額を抑えるなどの法案について提起されたことに対して、原則的に総理は法案が出てきてから考えるという御答弁をされておられます。
 問題は、本当に真剣に検討していただけるかどうかであります。残念ながら、これまでの我が国の国会の慣例は、野党がどんな法案を提案しても、国会で、採決にかけられるどころか、残念ながら、審議すらしていただけません。審議するかどうかということ自体が、与党、つまり自民党を中心とした皆さんの多数決による力によって決定されるからであります。
 提案をしたら検討するという御答弁でありますから、当然、先ほど鳩山代表が申し上げた幾つかの法案を提案した場合には、審議に付し、採決をしていただけるものと理解したいというふうに思いますが、答弁をお願いいたします。
 なお、これまでの歴代内閣は、それは国会の話だからといって、こういった質問から逃げておられることが多くあります。しかし、当然のことながら、小泉総理は、日本国の総理大臣であると同時に、自由民主党の総裁であります。総裁としてリーダーシップを発揮していただければ、国会で審議するかどうかということを決めることができるはずでありますので、ぜひ、逃げた答弁をなさらないようにお願い申し上げます。(拍手)
 鳩山代表の質問の中に、農業土木予算を人への投資に振りかえるべきではないかというお尋ねをいたしましたが、これに対して、総理の明確な御答弁をいただいておりません。ぜひ、この提案に対する総理の御見解を明確にお願いいたします。
 次に、社会保障についてお尋ねします。
 総理は、所信表明演説で「給付は厚く、負担は軽くというわけにはいきません。」とおっしゃられました。確かに、社会保障改革においても痛みを伴うことはやむを得ないと思いますが、この場合、負担の増加か、給付の削減かという狭い範囲ではなく、もっと大きな範囲で選択肢を示し、国民の判断を仰ぐべきではないでしょうか。
 少子高齢社会においては、多くの人が年をとり、年をとれば病気になる人もふえ、その中の少なからずの人々が介護の必要性を生じます。このことは、年をとっていく世代にとってだけではなく、私たち、それを支える次の世代にとっても大変大きな不安の種であります。また、経済がますます国際化する中で、競争も激しさを増していくでありましょう。失業や倒産の不安がますます拡大することも予想されます。今、日本を覆っている閉塞感は、こうした将来への不安が大きな原因になっていると考えます。
 一方で、私たちは、公共事業によって、より便利で、より快適な生活を実現してきました。まだまだ欧米諸国よりはおくれているという意見もありますが、しかし、世界を見渡せば、有数の社会資本が整備された国である、このこともまた間違いのない事実であります。
 こうしたことを考えると、私は、これ以上の便利さ、快適さ、これも、ないよりあった方がいいに決まっていますけれども、しかし、こうしたことを求めるよりも、老後や失業など、将来の不安を少しでも小さくすることこそが、二十一世紀における政府の最大の役割であると考えます。(拍手)
 痛みが避けられないのであるならば、まずは、公共事業をあきらめて徹底的に削減するべきであって、公共事業をどんなにあきらめて削減してもどうしても足りない場合に初めて、税金や保険料の引き上げということを第二段階として考えるべきであります。そして、その上で、効率化は当然図るべきでありますが、将来の不安を小さくするための政策手段なる社会保障の水準は、可能な限り維持する。こういった姿勢のもとに痛みを伴う改革というのは進めていくべきではないかと思いますが、この三者の関係について、小泉総理の御見解をお尋ねいたします。(拍手)
 ところで、具体的な社会保障の根幹にかかわる年金改革と医療保険改革が、長年、先送りされています。
 民主党は、将来にわたって安定した年金制度とするために、基礎年金の財源を保険料に求めるのではなく、国庫負担とすることを主張しています。こうした考え方に対する総理の見解と、また、年金改革をどうしていこうとしているのかという方向性をお聞かせください。また、具体的にはいつまでに抜本的な年金改革の案を示していただけるのか、その時期もあわせてお尋ねいたします。
 医療保険については、医師会など関係団体の合意を得ることができずに、改革が先送りされています。私は、効率的で質の高い医療を実現するためには、サービス提供者の立場よりも、サービスを受ける立場から、関係団体の圧力を排除していく、こうした姿勢が重要であると考えます。医療保険改革の断行に当たっては医師会などの圧力に屈しない、そうした総理の決意を求めたいと思いますが、この点についてお尋ねいたします。また、これについても具体案をいつまでに示されるのか、時期を明示してください。
 また、これにあわせて、カルテ開示の法制化について、医師会などの強い反対があるようですが、これを押し切る考えはないのか、お尋ねいたします。
 不良債権の問題について、鳩山代表の質問に答えて、不良債権と問題債権とは別であるというような御答弁をされました。
 確かに、不良債権と問題債権は、定義の上で別扱いをされています。しかし、過去の金融行政を振り返ってみるとき、例えば日債銀や長銀の破綻処理の結果、わかったことは何でありましょうか。それまで問題債権に分類されていた債権、それどころか健全債権と分類されていた債権の中にすら、あけてみたら、全く回収不能であった債権が多々あった。こういうケースが繰り返されてきたから、不良債権問題は解決しなかったのではないでしょうか。(拍手)
 そうした視点からすれば、せめて問題債権については、徹底した検査というものを行うべきであると思いますが、総理の御見解をお尋ねいたします。
 経済に関連して、多くの中小零細企業が、長引く不況の中で、倒産、廃業に追い込まれています。大部分のケースでは、倒産が全財産を失うことに直結し、夜逃げとか、最悪の場合、自殺という悲惨な事態まで生んでいます。その一方で、バブルに踊った金融機関の幹部や不良債権の借り手が、公的資金という名前の税金や債権放棄に助けられ、その経営責任を免れるとしたら、余りにも不公正です。
 責任を追及するということは当然です。問題は、具体的にどういう方法でこれらの責任を問いただしていくのか。実際には、例えば銀行幹部の責任は、破綻をした場合に初めて追及できていますが、そうでない、金融機関の過去の経営責任が問われた例を私は聞いておりません。具体的にどういう形でチェックをしていくのか、お答えください。
 関連して、与党内では、株主代表訴訟に関して、取締役の責任を軽減しようという議論がなされていると聞いています。しかし、中小零細企業の経営者は、連鎖倒産の場合など、本人にはほとんど責任がないケースであっても、個人保証を余儀なくされているために、事実上、身ぐるみはがされる結果となっています。それなのに、大企業の取締役だけその責任が軽減されるというのでは、法律論としてはわからないではないですが、実体論としては明らかに不公正であります。
 本当に株主代表訴訟における取締役の責任を軽減するのであるならば、中小零細企業における経営者の個人保証の問題にも同時に対処すべきであると考えますが、総理の御見解はいかがでしょうか。(拍手)
 さて、総理は、長年にわたって、郵政三事業の民営化を訴えてきました。しかし、所信表明演説では、具体的な民営化の道筋について説明はなく、民営化問題を含めた検討を進めるとの表現にとどまりました。
 一方、中央省庁等改革基本法の三十三条一項六号には、今も、「民営化等の見直しは行わないものとする」との規定が残っています。この規定は、総理の持論や、民営化の検討を明言した所信表明演説に抵触することになってしまいます。
 総理は、こうした規定があることを御存じだったのでしょうか。また、この矛盾をどう解決されるのでしょうか。条文を一つ削除するだけでありますから、あしたにでも法改正を提案できる簡単な内容であります。当然、すぐにでもこの法改正を提案されるものと考えますが、総理の御見解はいかがでしょうか。
 ところで、総理はどうして郵政三事業の民営化が必要だとお考えなのでしょうか。私は、もし民営化を議論する必要があるとすれば、その理由の一つには、宅配業者、銀行、生命保険会社などとの関係で、官業による民業圧迫になりかねないことが挙げられると思います。郵政三事業による民業圧迫について、総理はどうお考えになっているのか、お聞かせください。
 本来、郵貯や簡保は、民間金融機関の足りないところを補完的に補うものであります。ところが、現在、郵便局員の皆さんが新たな郵便貯金や簡易保険を獲得すると、それに対して奨励手当が出されるという制度になっています。
 私は、一般論としては、公務員の給与にも実績給という考え方を取り入れることには賛成です。しかし、民間の補完機関であるはずの郵貯や簡保において、こうした手当によって新規の顧客を獲得させようとすることが本当に合理的でありましょうか。結果的に、民間の補完にとどまることなく、民間との競争になり、民業圧迫の原因となっているのではないでしょうか。
 郵政三事業の民営化を唱える総理でありますから、この奨励手当についても、当然、さまざまな御見解をお持ちだと思います。それをお聞かせください。
 先ほどの鳩山代表への財政投融資に関する答弁に対してお尋ねをいたします。
 郵政民営化を議論しなければならないとしたら、その理由のもう一つの大きな柱には、特殊法人に対する資金の供給源を閉じること、これも大きな理由としてあるのではないでしょうか。そして、そうした視点から、ことし四月、いわゆる義務預託の制度をやめて、特殊法人は財投機関債や財投債を発行することになったはずであります。国民の貴重な郵便貯金や簡易保険、赤字で利息の支払いもままならないような公共事業に投資をされている、こうした特殊法人の実態を考えるならば当然のことであります。しかし、いわゆる義務預託という形で特殊法人への資金として自動的に流れるという制度こそ改められましたが、郵便貯金のお金で結局は財投債を買っていたのでは、実質的には、意味は何も変わらないのではないでしょうか。
 マーケットを通じて買っているという反応が返ってきそうでありますが、例えば、平成十三年度、四十兆円余りの資金のうち、マーケットを通じて郵便貯金などに買ってもらうことを予定しているお金は、わずか十兆であります。残りは、マーケットを通じずに、郵便貯金などの資金でこれらの財投債を買ってもらうという仕組みになっていて、マーケットを通じているからいいではないかという理由は成り立ちません。
 郵政三事業民営化とこの郵便貯金、生命保険、簡保の資金の動かし方について、今のような指摘を受けてどう考えられるのか、御答弁をお願いいたします。
 李登輝氏の入国ビザの発給についてお尋ねします。
 政府の姿勢は、残念ながら、右往左往しました。北京政府との外交的な約束は尊重すべきですが、民間人が治療や観光目的で入国することには、何の問題もないはずです。外交的配慮によって事態を長引かせたあげくに問題を大きくした失敗を、小泉内閣では繰り返すべきではありません。
 私は、他国の政府が何と言おうと、公職を離れた民間人であれば、台湾から政治目的以外の理由で入国を求めた場合、一般の民間人と同じ基準でビザを発給するべきだと考えます。また、今回のような混乱を再び起こさないためには、あらかじめこうした基準を明確にしておけば、今後、李登輝氏などから再び入国の要請などがあった場合に、対応に混乱することがないと思いますが、総理の見解はいかがでしょうか。
 金正男問題についてもお尋ねをいたします。
 確かに、入国管理法によれば、今回の処理も一つの適法な、法に基づいた処理の方法であります。しかし、法律をよく読むと、例えば今回のケースで、不法入国罪で刑事告発をすることも、これは入国審査官の裁量の範囲で可能であります。また、入国管理法に基づいて、もうちょっと長い間、さまざまな調査を続けて、収容を続けておくことも可能でありました。いずれも、法律に基づいた適法な処理の範囲であります。
 にもかかわらず、今回のような判断をその中から選択した。それは、法務省の単独の判断なのでありましょうか。そうではなくて、明らかに、官邸にも報告し、外務省や警察庁も含めて協議したということは、政治的、外交的な判断をしたのではないですか。
 私は、金正男氏である疑いは濃厚だが、外交的判断も加えた結果、他の選択肢をとらずに送還したと率直にお認めになるべきではないかと思います。政治判断がきちんとなされたということが明らかになることで、その判断の是非、よしあしについては意見が分かれるかもしれませんが、少なくとも、危機管理のシステムが機能していたという安心を国民に与えることができると思います。このような重要な問題を法務省の審査官限りのところで法に基づいて処理したという扱いでは、安心することができません。
 前総裁のもとで、自民党や与党の中に、報道に関するさまざまな機関がつくられました。また、政府が提出を予定している個人情報保護法案には、出版や報道に関する過剰規制にもなりかねない内容が含まれていると伝えられています。
 確かに、報道やメディアのあり方にはさまざまな意見があるでしょう。しかし、少なくとも、公権力が報道やメディアに介入したり無言の圧力をかけたりすることは、許されるべきではありません。国民との対話を重視する新政権においては、報道統制を目指しているとも疑われかねないこうした最近の風潮に歯どめをかけ、大きく転換するものと思いますが、総理の見解をお尋ねします。
 さて、私は、今回の内閣に五人の女性が大臣として起用されたことを、ある意味では当然のことでありますが、男女共同参画社会の実現を目指す立場から、率直に評価いたします。
 もっとも、職場や社会において、多くの女性の皆さんは、今もなお、男性中心につくられた社会の厚い壁と悪戦苦闘しています。特に議論になっているのが、選択的夫婦別姓の問題です。結婚によっていわゆる名字が変わることには大きな負担が伴いますし、通称使用の場合、戸籍名と通称の食い違いが問題になります。すべての人に別姓を強制するわけではありません。どうしても別姓にしたいというカップルに限ってこれを認めようとするものでありますから、別姓は嫌だという多数の皆さんに迷惑をかけることはありません。
 選択的夫婦別姓の導入に向け、長年にわたってリーダーシップを発揮してきた森山さんが所管大臣である法務大臣に就任したことは、強い期待を持って迎えられています。ぜひこの強い期待におこたえいただきたいと思いますが、御答弁をお願いいたします。(拍手)
 最後に、財政や経済、高齢化など、日本の現状は、残念ながら大変危機的です。政党や過去のしがらみに縛られることなく改革を断行しなければ、手おくれになりかねません。総理が、本当に一身を投げ出し、自由民主党の総裁ではなく、日本国総理大臣の職責を果たしていく決意であるならば、党内手続であるとか、与党の枠組みであるとか、あるいは自由民主党という存在そのものも、時には無視し、場合によっては破壊することになっても、直接、一人一人の議員に向かって、そして、ひいては一人一人の国民に向かって支持を呼びかけ、その理解と支援によって改革を進めていく必要があると考えます。(拍手)
 私も、総理がそうした姿勢で改革を進めていただけるのであるならば、民主党所属の議員である以前に、多くの皆さんからの信託を受けている一人の国会議員としての立場で、さらに言えば、少子高齢社会を中心となって支えなければならない世代の一人として、改革の断行に向けて、ともに協力して、前進をしていく決意であります。
 問題は、総理が本当に政党や過去のしがらみを断ち切って、改革に向かって具体的に進んでいただけるかどうかであります。総理が志を最後まで貫かれることを強く期待することを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 枝野議員にお答えいたします。
 まず最初に、森内閣でできないのがなぜ小泉内閣でできるのかというお尋ねでありますが、人間には個性があります。ある人にはできて、ある人にはできないということ、いろいろあるんじゃないでしょうか。
 まず、森内閣は、森総理個人の非常に多方面に気配りする御性格ということがありまして、党内バランスにかなり配慮をして、その中で、昨年十二月はいい内閣を組織したと思います。私は、どちらかというと、そういう党内バランスを余り配慮しないで、いわゆる派閥の論理ではない、適材適所を貫くという形で、今までにない党三役、閣僚人事を断行できたと思います。
 それと、私は、大事なのは、よく自民党の若い議員に言っているんです、自分が最初に当選してきたころをよく考えてみろと。中選挙区制時代は特に現職がいたはずだ、現職を押しのけて何で新人の自分たちが当選してきたのか。それは、当時、支持団体とか党員というのは新人に対して応援してくれなかったはずだ、しかし、党員でもない支持団体でもない、一般有権者に向かって共感を得た発言、行動をしてきたがゆえに当選してきたのではないか。一般国民、党員でもない支持団体でもない一般国民が支持したから、党員も支持してくれた、支持団体も支持してくれたんじゃないか、この視点を忘れてはだめだということをよく言っているんです。
 今回の総裁選挙が、これは私に当てはまるんですよ。国民の声を党員が素直に、真摯に受けとめてくれた、国会議員がそれを受けとめて、私に総裁になれということで支援を与えてくれた、この気持ちを大事にしていこう。まず代議士として一番大事なのは一般有権者なんだ、この層が一番多いんだ、そういう観点がこれからも大事じゃないか。
 私は、政策を遂行するに当たり、もちろん、党員の意見も大事にします。支持団体の意見も大事にします。しかし、それにとらわれません。最も大事なのは、一般有権者、国民がその意見を聞いて理解を示すか、賛同するか、これに最大限の配慮をして、私の内閣においてかかわるべき政策を推進していきたい。そういうことについては、自民党議員の多くも必ず話せばわかる。そういう議員が自民党ではないかと私は信じております。(拍手)
 十四年度以降も三十兆円以下に国債発行を抑制するのか、いわゆる財政構造改革路線についての御質問がございました。
 私は、この方針は十四年度以降も堅持していきたいと思っています。その中で歳出の徹底した見直しをやる。ただし、今までよくとられていた手法として、各省庁一律削減という方法はとらない。ふやすべき予算がある、そうすると減らさなければならない部分がある。これが、経済財政諮問会議で非常に大事な仕事であります。これを何とかやっていきたい。
 民主党の提案に対してはよく検討するかどうかというお話であります。内容によってはよく検討していきたい、場合によっては、民主党と協力できることがあったら協力していきたい、そう思っております。(拍手)
 そして、先ほどの御質問と関連しますが、社会保障に関して、あるときはふやさなければならない予算もある、給付は厚く、負担は軽くという私の主張に、枝野議員も少なからぬ理解を示していただきました。将来にわたって安心した、安定した社会保障制度を構築することは、私の内閣にとっても、大変大事なことであり、重要な課題だと思っております。そういう際には、当然、減らさなければならない部分もある。
 これは、枝野議員は公共事業関連を頭に置いているのだと思いますけれども、この予算配分の優先順位については、私は、どの予算を削減するかを、経済財政諮問会議など、政府・与党におけるさまざまな議論の場において、今後、検討を深めていきたいと考えております。
 年金制度についてのお尋ねであります。
 基礎年金の財政方式につきましては、「自助と自律」の精神のもとに、社会保険方式を基本としつつ、保険料と公費を適切に組み合わせることにより、給付に要する費用を賄っていく必要があると考えております。
 よく、保険方式か税方式かという議論があります。今の日本の年金制度においても医療制度においても、私は、二者択一ではない、保険と公費、両方とも入っているのです。問題は、保険料の負担をどのぐらいにするか、税金投入をどのようにするのか、個人の負担をどのようにするかで、調整の問題であって、日本の今の社会保障制度については、税方式か保険方式かと短絡的に二者択一はとらない。私は、総合的な判断で、安定的な、お互いが支え合うような社会保障制度を構築していきたい、そう思っております。
 そして、年金制度の改革の時期と方向性につきましては、次期財政再計算を平成十六年までに行うこととされていることを踏まえまして、国民の老後を支える公的年金の役割を将来にわたって果たしていくことができるよう、世代間の給付と負担の均衡を図り、お互いが支え合う、持続可能な制度を構築していかなければならないと考えております。
 医療保険についてであります。
 医療保険制度は、すべての国民の生活を支える基本となるものでありまして、利害や立場を超えた国民的な合意なくして、その大きな改革は困難であります。
 私は、単に医師会の要求がだめだと思っていません。医師会の要求にも、合理的な、なるほどと思わせる要求もある。ただ、それだけがすべてでない。医師会もあれば、健保連もあれば、国民多数もある。総合的に勘案して、今後あるべき医療保険制度を国民の合意が得られるようにやっていきたいというふうに考えております。
 カルテ開示についてのお尋ねがありました。
 カルテ開示の法制化については、関係審議会での議論を踏まえ、患者の側の認識や意向の推移、医療従事者の取り組みの状況などを見た上で判断してまいりたいと考えております。
 また、政府としては、カルテ開示等の普及、定着に向け、カルテの記載の適正化や用語の標準化、医療機関における診療記録の管理体制の整備などに取り組んでいるところであり、このような環境整備をさらに推進してまいります。
 不良債権の処理に当たっての責任追及についてのお尋ねです。
 銀行経営の責任は、不良債権の適切な処理ができず、銀行が破綻に至った場合に生ずるものであり、こうした場合の責任追及については、民事、刑事の責任追及も含め、現行の破綻処理制度のもとで適切に行われていくこととなっております。
 また、債権放棄と借り手責任との関係については、いわゆる資本増強行の債権放棄に関し、従来より、残存債権の回収確実性や当該企業の社会的影響を十分考慮するとともに、借り手企業の経営責任を明確化することにしております。
 中小零細企業の個人保証責任についての御指摘です。
 中小零細企業の経営者が倒産により財産を失う等の悪影響に対して、特に経営者に過失のない連鎖倒産の防止対策として、政府系金融機関や信用保証協会等を通じ、円滑に資金が供給されるよう措置を講じるとともに、中小企業倒産防止共済制度を実施しております。
 今後とも、連鎖倒産の危険など中小零細企業の経営の安定に不測の支障を生じないよう、金融面での適切な対応等に努めてまいりたいと考えております。
 郵政事業の民営化についてでありますが、中央省庁等改革基本法と民営化の検討との関係についてのお尋ねです。
 基本法は、郵政三事業について、国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずる際の方針の一つとして、民営化等の見直しは行わない旨を定めております。しかし、これは公社化にするための基本法なんです。公社化後のあり方を検討すること自体は、基本法に反するものではないのです。
 私は、これは今後大事な問題でありまして、公社化後のあり方については、先般の与党三党合意を踏まえ、早急に懇談会を立ち上げ、民営化問題を含めた具体的な検討を進めて、国民的議論を大いに行っていきたい。
 そして、郵政三事業による――この質問は、私は、枝野議員は非常に勇気がある質問だと思って、敬意を表しています。この問題は実に大きな問題で、与野党を通じて私は反省してもらいたいと思っているのです。
 まず、民間にできることは民間に任せる。この基本姿勢は、私の内閣は貫いていきたい。そういう観点に立って、今後これは、郵政民営化の問題は特殊法人の改革にもつながっていく問題であります。枝野議員も、特殊法人の資金源について言及されました。まさに、最も大事な行政改革だと言っても過言ではない。そういう観点から、枝野議員の御意見には私も賛同するところが多いんですよ。(拍手)
 まず、公社化は決まっています。公社化は、平成十五年度に公社化に進めていく。その後の問題は、白紙で検討します、もちろん民営化も含めて。今回は、民営化はタブーで触れられなかった、私の内閣になったからタブーじゃなくなったのです。国営化しかないという前提はとりません。
 そして、公社化に進む過程においても、これからの問題ですが、私は、郵便事業についても民間参入を促進することについて、できるだけ民間にできることは民間に任せていくという方針を貫いていきたい。かつてのように、商品券は民間企業が配達してよい、しかし地域振興券は民間企業が配達しちゃいかぬという旧郵政省のわけのわからない論理は、小泉内閣には通用しないということを銘記していただきたい。(拍手)
 こういうことに対して、民主党の議員の中には言っている方がいました。しかし、ほとんどの政党は言わなかったじゃないですか。こういうことから変えていかなきゃならない。過去の郵政省の事業を見ていると、むしろ、民間企業の活動を妨害している面がある。こういうことは、小泉内閣では断じて許さない。(拍手)
 李登輝氏の訪日についてのお尋ねです。
 今回の訪日に当たっては、前内閣のもとで、我が国を取り巻く国際環境、人道的観点等、さまざまな要因を勘案しながら検討を行い、あくまでも我が国の国益に立って、自主的に判断が行われたものと承知しています。同氏の訪日については、今後とも、その時々のさまざまな要因を勘案しつつ、関連の情報を収集し、適切な判断を行っていきたいと思います。
 金正日氏の長男ではないかとされる人物が不法入国した件に関し、その対応についてお尋ねがありました。
 御質問の趣旨はよく理解できますし、国民に説明して理解を得る必要があることも、私は、枝野議員の言っていることはよくわかります。
 私としては、今回の事案については、民主主義国家として法令に基づいた処理を行うことが第一と考えるとともに、本件の処理が長引くならば内外に予期しない混乱が生じるおそれなどもあり、そうした事態を避けるためにも総合的判断を加えた上で強制退去の措置を行ったものでありまして、適切な対処措置であったと今でも考えております。
 報道やメディアのあり方などに関するお尋ねがありました。
 言論、出版その他の表現の自由は、憲法上保障された極めて重要な権利であり、最大限尊重されるべきことは言うまでもありません。また、時に、公権力を批判する立場にある報道やメディアに対して、政治家が謙虚でなければなりません。他方、報道に伴う個人の名誉やプライバシーの侵害などのような問題が発生する可能性があることも否定できません。こうした問題に対しては、細心の注意が必要です。そうした意味で、報道に関しては、政党を含めて、さまざまな視点からさまざまな形で検討が行われていくことは重要なことであると私も考えております。
 いずれにせよ、私としては、報道の主体であるマスメディアが人権などに十分配慮するなど、常にみずからを律しつつ行動していくことが基本であると考えております。
 個人情報の保護に関する法律案についてのお尋ねであります。
 近年、民間企業や行政機関等全般にわたり、ITを利用した大量の個人情報の処理が拡大しており、その流出が社会問題化するなど、個人情報の取り扱いに対する不安感が広がっているほか、国際的にも、整合性を保った国内法制の整備が急務となっております。
 このような観点から、個人情報の保護に関する法律案は、国民が安心してIT社会の便益が受けられるよう、個人情報の適正な取り扱いのルールを定め、国民の権利、利益の侵害を未然に防止しようとするものであります。
 御指摘の報道分野については、法律案の第五章、「個人情報取扱事業者の義務等」を適用した場合、事前規制となるおそれがあることから、報道機関が報道の用に供する目的で個人情報を取り扱う場合は適用を除外しております。
 他方、「基本原則」は、何人にも適用されることとなりますが、法律上、一律かつ具体的な義務を課すものでなく、個人情報の保護のために自主的に努力すべきことを定めるものであり、また、主務大臣による関与もないことから、報道機関の正当な報道活動を制限するものではありません。
 このように、本法律案は、報道や出版など報道機関の自主性を尊重し、その活動を制限することのないような制度とされているところであります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣森山眞弓君登壇〕
○国務大臣(森山眞弓君) 結婚届を出すときに、希望する者が、夫婦、法的に別姓を名乗れるという道を開くのが選択的夫婦別姓と承知しております。そのことについてお尋ねがございました。
 国民の価値観が多様化いたしまして、男女ともに、さまざまな生き方が求められている時代になっております。特に女性の間で関心の高いテーマでございまして、私も、この問題に重大な関心を持ってやってまいりました。
 自民党の男性先輩議員の中でも、応援してくださる方が少なくございません。しかし、国民各層、関係各方面にさまざまな御意見がある、中には反対の方も相当ありまして、意見がなお分かれているということも承知しております。
 いずれにせよ、社会や家族のあり方など、国民生活に重大な影響を及ぼす事柄でありますから、法改正は、国民の大方が理解をすることができる状況というのが必要であると思います。
 そのような意味で、近く、五年ぶりに世論調査を行うべく準備いたしております。その結果を注目したいと思っております。さらに、この機会に国民各界各層や関係方面で議論が深まることを期待しておりますし、特に国会における御議論の動向を見守りながら対処してまいりたいと考えます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(渡部恒三君) 神崎武法君。
    〔神崎武法君登壇〕
○神崎武法君 私は、公明党を代表いたしまして、小泉総理の所信表明演説に対し、質問をいたします。(拍手)
 まず初めに、総理御就任に対し、公明党を代表して、心からお祝い申し上げます。(拍手)
 小泉総理は、一貫して構造改革を標榜され続け、組閣に当たっても、史上初の女性閣僚五人、民間人三人の登用などによって、派閥のしがらみを超え、民意にこたえるという改革の意思を鮮明にされました。
 中国の古典「菅子」には、「政の興る所は民の心に順うに在り」とあります。私たち公明党は、小泉総理が民意に沿う真の意味での改革を断行する限り、全力で支持することを表明するものであります。(拍手)
 問題は、改革の中身であります。総理の掲げる「聖域なき構造改革」の方向性、目標は何なのか、その底流にある理念、哲学、国家観は何なのか、その中身が民意に沿うものであるのかどうか、そのことこそが重要なのであります。
 公明党は、二十一世紀の日本のあるべき社会について、平和と人権を守り、年齢や性別、障害などによる差別を排除して、社会を構成するすべての人が喜びと誇りを持って生きることができ、自立できる社会、換言すれば、多様な生き方を個々人が相互に認め合い、支え合う共生社会の実現こそ、目指すべきだと考えております。
 さらに、人類が生存する上で危機的な兆候を顕著に示し始めた環境問題を踏まえたとき、私たちが目指す共生社会とは、単に人間だけにとどまらず、自然生態系という、すべての生命との共存までをも視野に入れた新しい社会でなければなりません。
 私たち公明党が、とりわけ生命や人権の尊重、環境問題に力を入れ、また、与えられる福祉ではなく、障害者が平等に生き、働くことのできる権利を実現するための法律、仮称日本版ADAの制定を推進し、あるいは永住外国人に対する地方選挙権付与などについて懸命に取り組んでいるのも、こうした多様性を認め、支え合う社会づくりをという問題意識からであります。
 総理の、目指すべき社会像と構造改革の方向性について、明確な答弁を伺います。
 個別の政策課題に入る前に、憲法に関連し、幾つかの点について確認させていただきます。
 まず第一に、総理が意欲を示されておられる首相公選制の導入についてであります。
 総理のリーダーシップを確立するために、その選任に当たって国民の意思をできるだけ反映させるべきとの考えは理解できますが、現憲法の象徴天皇制や議院内閣制との関係をどう位置づけるかなど、難しい問題もあります。
 我が党内でも積極的に論議してまいりたいと思いますし、具体的な内容については今後の議論にまつとしても、総理御自身の首相公選制への基本的な考え方と方向性について明らかにしていただきたい。
 第二に、集団的自衛権の行使と憲法九条との関係です。
 これまでの長年の政府見解は、憲法九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどめるべきものであり、他国に加えられた武力攻撃を実力をもって阻止することをその内容とする集団的自衛権の行使は、これを超えるものとして憲法上許されないというものであります。
 総理、この政府見解を変更するものではないことを確認したいと存じます。
 第三に、靖国神社公式参拝の問題です。
 靖国参拝は、個人として参拝なされることは自由ですが、一方、憲法二十条三項及び同八十九条に定められた国家と宗教の分離、すなわち政教分離規定に反するようなものであってはならないことは言うまでもありません。
 また、これまでの歴史的経緯、殊にA級戦犯が合祀されていることを踏まえ、近隣のアジア諸国との間で無用の摩擦を生じさせてはならず、慎重に対応されるべきと考えます。
 私は、先日の小泉総理の所信表明演説を拝聴し、私たち公明党がこれまで主張してきた改革の方向性と基本的に合致するものが数多くあることに、大いに心強く感じております。
 例えば、ごみゼロ社会の実現、保育所の待機児童ゼロ作戦、バリアフリーの推進など、まさに、公明党が従来から主張し続けてきた課題について、具体的な方向性が明示されております。
 さらには、報償費についても、外務省の元幹部職員の松尾事件を踏まえ、公明党は、報償費の使途の限定、事前の決済システムと事後のチェック体制の確立、一定の情報公開などとあわせ、減額を主張してきたところでありますが、総理から、減額を含め平成十三年度予算を厳正に執行する旨が明確にされたことは、高く評価するものであります。
 三党連立から一年七カ月が経過いたしましたが、公明党の掲げる理念、政策がまさに具体的な形で開花しつつあります。公明党は、引き続き、立党の精神を旨に、庶民のための政治を貫いてまいる決意であります。(拍手)
 以下、具体的な政策課題について、順次質問をいたします。
 まず初めに、経済問題についてであります。
 我が国経済は、米国経済の影響などを受け、予断を許さない状況が続いています。私たち三党連立政権は、これまで、経済構造改革を推し進めつつ、本格的な景気回復に軸足を置き、万全な対策を講じてきましたが、小泉内閣におきましても、まずは、さきに政府で決定した緊急経済対策の早期具体化と実行を図るべきであります。
 総理の景気認識と緊急経済対策への取り組み、さらに、金融政策の考え方についてお伺いいたします。
 緊急経済対策に盛り込まれている具体的な施策について、お伺いいたします。
 第一には、雇用のセーフティーネットについてであります。
 政府の緊急経済対策は、バブル崩壊以来、我が国経済の最大の足かせとなってきた不良債権の早期かつ抜本的処理に重点を置いた画期的な内容となっています。他方、不良債権処理には、企業倒産や失業増大などの大きな痛みを伴い、厳しさを増すことが予測され、雇用への不安が強く懸念されます。
 我が国の新たな経済発展を遂げるため、不良債権の処理に果敢に取り組むとともに、国民が抱いている雇用不安を払拭するために、政府主導による万全な雇用のセーフティーネットの整備と新たな雇用創出策を同時並行で進めていくことが極めて重要であります。
 既に内閣に設置されている産業構造転換・雇用対策本部を抜本的に改組、強化し、総理みずから本部長となり、民間からの参加をも含めた本部を可及的速やかに立ち上げ、企業倒産やリストラにより職を失った人を中心とした失業給付の充実、本格的な職業能力開発支援の強化、新産業分野での雇用創出などの対策について、早急に検討を進め、今通常国会中にも中間的取りまとめを行うべきであります。
 その際、必要に応じ、相当規模の新たな基金創設を図るなど、予算措置もあわせて検討すべきであると考えますが、小泉総理並びに坂口厚生労働大臣の御見解を伺います。
 第二には、証券市場活性化対策についてであります。
 間接金融から直接金融の流れを促し、また、個人投資家が参加しやすい魅力ある証券市場の整備は喫緊の課題であり、中でも証券税制の見直しは、市場も大いに注目しております。特に個人における株式譲渡益課税の見直しなどは、与党の合意にもあるとおり、早急に、できれば今国会中に協議、結論を得るべきであります。総理の御所見を賜ります。
 第三には、都市再生本部についてであります。
 二十一世紀における都市の再生は、循環型社会の構築、国際化の進展などの中で極めて重要な施策であり、政府が先導的な役割を果たしていくべきであると考えます。
 昨日、内閣に都市再生本部が設置されましたが、地方公共団体の職員などの力を結集しながら、二十一世紀型都市再生プロジェクトの選定や低未利用地の有効活用のためのスキームなど、具体策を早急に、できれば今国会中にも決定し、必要な予算措置などについての検討を行うべきであります。総理の御見解を賜ります。
 財政健全化への取り組みについて、お伺いいたします。
 公明党は、財政政策について、これまでも、景気を自律的回復軌道に乗せた段階で財政健全化路線へと切りかえていくべきであると訴えてきました。
 小泉総理は、国債発行三十兆円以下に抑えることを目標とすることなどを提示されましたが、本格的に財政再建を進めるに当たっては、公共事業のあり方、安定的な社会保障のあり方、国と地方の役割分担と税財源、権限のあり方等々についてトータルで議論し、中長期的な目標を定め、総合的、一体的に進めていく必要があると考えます。我が党は、そうした議論自体は早急に進めていくべきであると主張してきているところでありますが、総理の財政健全化についての考え方を確認したいと存じます。
 次に、行政改革についてお伺いいたします。
 公明党は、これまで、連立政権の中にあって、改革の党として行政改革に積極的に取り組み、我が党の主張を次々に政府・与党の方針として実現してまいりました。具体的には、行政評価法案の国会提出、特殊法人等改革、公益法人改革、公務員制度改革を柱とする行政改革大綱の策定と二〇〇五年までの改革の道筋の確立、特殊法人等改革基本法案の国会提出等々、その解決に向けた流れをつくってまいりました。
 しかしながら、行政改革には総論賛成、各論反対が常であり、今後、改革が本格化するにつれ、関係者の抵抗や衝突が高まることが強く懸念されます。
 総理においては、これまでの流れを後戻りさせることなく、改革を文字どおり断行されるものと確信しております。総理の御決意のほどを伺いたいと存じます。具体的には、特殊法人等改革基本法案の今国会成立と、与党三党で合意しております公益法人運営適正化についても法案化が重要であると考えますが、総理の見解を賜ります。
 また、公務員制度改革においては、結果として公務員に都合のよい制度づくりとなり、天下りが助長されたり、行政の肥大化を招く可能性がないような取り組みが重要であります。総理の基本姿勢をお聞かせいただきたいと思います。
 次に、社会保障制度改革について伺います。
 総理は、さきの所信表明演説の中で、年金、医療、介護については、「自助と自律」を基本に、世代間の給付と負担の均衡を図ると述べられた上で、「国民に対して道筋を明快に語りかけ、理解と協力を得ながら、改革を進める」との考えを示されました。
 総理のおっしゃる「自助と自律」、給付と負担の均衡は、いずれも痛みの伴う改革であり、その道は容易ではありません。我が党も、政府が一日も早く改革の姿を幾つかの選択肢として国民に示し、国民的議論の中で早期に決定すべきであると考えております。
 特に、来年度に迫った医療保険制度の抜本改革や、二〇〇四年度までに行うとされている基礎年金の国庫負担の二分の一への引き上げなど、先延ばしの許されない問題について、総理はどのように進めていかれるおつもりか、具体的に御説明いただきたいと思います。
 あわせて、総合的な少子化対策の推進について伺います。
 総合的な少子化対策の推進も、社会保障制度の改革を進めていく上で急務であります。我が国の合計特殊出生率は、平成十一年には一・三四にまで激減いたしました。一時保育、夜間保育など多様な保育サービスの整備や、育児相談の拡充、児童手当の拡充、乳幼児医療費の無料化の実現などが、今、強く求められております。
 団塊世代の子供世代がまさしく子育て世代に当たる今こそ、思い切った総合的な少子化対策を講じなければ時期を失するものと考えますが、総理並びに厚生労働大臣のお考えをお示しいただきたい。
 環境政策について、何点かお伺いいたします。
 本年三月、アメリカ・ブッシュ政権が、突如、京都議定書の離脱を表明しました。公明党は、この事態を重視し、アメリカに冷静かつ良識ある判断を迫るため、政府・与党代表団の派遣及び国会決議の採択など、率先した行動を起こしてまいりました。
 小泉総理の、二〇〇二年までの京都議定書発効を目指し最大限努力するとの決意は高く評価しますが、具体的にアメリカ政府にどのような働きかけを行うのか、お伺いいたします。
 本年は、循環型社会形成推進基本法をいよいよ現実化する重要な第一歩の年であります。
 特に、私は、大都市のごみ問題の解決こそが急務の課題であると認識しております。大都市圏から排出される膨大な量のごみは、域内では処理能力が限界に近づきつつあり、また、現実に、国内外に不法投棄などの問題を引き起こしております。
 私は、ごみはごみという廃棄の発想ではなく、ごみは資源であるという、循環を前提としたごみ行政へと大きく発想を転換しなければ根本的な解決にはならないと考えます。(拍手)
 そうした認識から、公明党は、東京圏を初めとする大都市圏エコタウン構想十カ年戦略を打ち出し、また、その趣旨はさきの緊急経済対策にも盛り込まれました。大都市圏エコタウン構想についての総理の御見解を賜ります。
 次に、自然エネルギーなど再生可能エネルギーについて伺います。
 現在、欧州では、再生可能エネルギーの供給を倍増するために、二〇一〇年までに再生可能エネルギー発電の割合を約二二%にするとしております。我が国においても、クリーンで地球環境への負荷の少ない再生可能エネルギーの導入を積極的に進め、少なくともクリーンエネルギーを二〇二五年までに二〇%にとの明確かつ大胆な目標を掲げ、取り組みを強化すべきであると考えますが、総理の見解を賜ります。
 最後に、政治倫理、国会改革等について申し上げます。
 現在、KSD事件等を教訓に、政治の信頼回復と政治倫理の確立が強く求められております。さらに突き詰めて申し上げれば、政治改革、政治家改革こそが今問われているのではないでしょうか。
 中でも、古い先例や慣習によって運営されている国会は、国民の目線から見ると、庶民感覚とかけ離れた旧態依然とした議員特権が目立ちます。この際、先般の三党連立政権合意にあるとおり、政治倫理を確立し、国民に開かれた効率的な国会を実現するため、抜本的な改革に着手すべきと考えます。
 例えば、永年勤続議員への表彰についてであります。現在、在職二十五年以上の議員に対し、月額三十万円の支給と肖像画の掲額が認められ、五十年以上は、年間五百万円の功労年金が支給されることになっています。小泉総理は、在職二十五年の際、表彰を辞退されたと伺っていますが、私は率直に評価したいと考えます。私は、現在のような国会議員の永年勤続表彰は、この際、廃止すべきと考えております。(拍手)
 また、栄典制度については、昨年十二月二十二日、与党において、栄典法の制定を初め、叙勲の等級廃止や男女格差、官民格差の是正を図るなどについて申し合わせたところであります。その際、公明党は、受章対象者は民間人を基本とし、特に政治家は勲章、褒章の対象から除外すべきとの見解を明らかにしました。なぜなら、政治家は、公選によって選出されたこと自体が極めて名誉なことであり、公僕としてそれ以上の栄誉を期待すべきではないと私は考えるからであります。(拍手)
 以上、国会改革等の必要性につきまして、総理の御所見があればお伺いすることとし、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 神崎議員にお答えする前に、枝野議員に対する答弁漏れがございましたので、最初にお答えしたいと思います。
 平成十三年度においては国債発行額は三十兆円以下にするのかという御質問だと思いますが、これは補正予算に絡んできます。私は、現在、予算成立して、執行状況を見ながら補正は考えるべきものでありまして、現時点で補正予算は考えておりませんし、当然、今年度予算は二十八兆円で済んでいるわけですから、三十兆円以下にする目標でやっていきたいと思っております。
 また、増税なき財政再建ということなのかということでございますが、当然、徹底した歳出の見直しをするということでありまして、国債発行を三十兆円以下にすると同時に、増税なき方向で徹底した歳出の見直しに向かって突き進んでいきたい、そう思っております。
 神崎議員に対して、いろいろ御質問がありましたが、御答弁いたします。
 初めに、私の目指すべき社会像と構造改革の方向性についてでございます。
 現在の私に課せられた最重要課題は、長期にわたって低迷しております日本経済をいかに立て直すかでございます。これから、構造改革なくして日本の再生と発展はない、そういう考えに基づきまして、「聖域なき構造改革」に向かって進んでいきたいと思っております。そして、自信と誇りに満ちた、自立型の経済社会を実現することが大事だと思います。
 また、構造改革によって目指すべき社会は、国民一人一人や企業、地域が持っている大きな潜在力を自由に発揮し、さらに、潜在力そのものを高めていける社会でありまして、生きがいを持って安心して暮らすことができる社会であると思います。
 「自助と自律」の精神、自然との共生を大切にして、二十一世紀にふさわしい新たなるシステムを確立していきたいと思います。
 私は、国民との対話を常に重視しつつ、希望に満ちあふれた日本の未来を創造すべく、全力を尽くす覚悟であります。
 首相公選制への私の基本的な考えについてでございます。
 私は、この首相公選制というのは、政治の分野における規制緩和の一つだと思っております。今、国会議員だけが総理大臣を選ぶ権利を持っている、それを一般国民に開放するということでありまして、これは当然、憲法改正が必要だと思います。
 その際には、天皇制の問題とか今の議会はどうあるかと、いろいろな問題が出てまいります。この問題については、私個人だけの考えではなく、憲法学者初め多くの識者の意見を聞いていくべき問題であり、また、国民的な議論を盛り上げて、多くの国民が納得できるような首相公選制がいいなという気持ちで、早急に懇談会を立ち上げて具体案を提示していきたいと所信表明に盛り込んだつもりであります。
 今、私が考えるところは、当然、天皇制とこの首相公選制は矛盾しない、両立できる。そして、候補者も、県知事とか市長選挙みたいにだれでも立候補するということではなくて、国会議員から何名かの推薦を要件とするということになれば、いわゆる売名候補とか泡沫候補も阻止できるんじゃないか。
 いずれにしても、議会をなくす話じゃありません。議会とこの首相公選、両立できる、天皇制とも矛盾しない制度を考えてもらいたいという気持ちで、懇談会を立ち上げて、多くの学識者の意見を聞きながら具体案を提示していきたいと思っております。(拍手)
 集団的自衛権の行使と憲法九条の関係についてです。
 政府は、従来から、我が国が国際法上集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上当然であるが、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するための必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えてきております。
 憲法は我が国の法秩序の根幹であり、特に憲法第九条については過去五十年余にわたる国会での議論の積み重ねがあるので、その解釈の変更については十分に慎重でなければならないと思います。
 他方、憲法に関する問題について、世の中の変化も踏まえつつ、幅広い議論が行われることは重要であり、集団的自衛権の問題について、さまざまな角度から研究してもいいのではないかと考えております。
 景気認識、緊急経済対策への取り組み及び金融政策についてです。
 私は、かねてから、構造改革なくして景気回復はないという考えであります。このため、経済、財政、社会保障、行政等、各般にわたり、聖域を設けず、構造改革を強力に推進していく決意であります。
 まずは、第一の仕事として、本格的な景気回復をおくらせている構造問題の根本的な解決に取り組むため決定された緊急経済対策を速やかに実行に移してまいります。
 また、金融政策については、日本銀行の所管事項でありますが、日本銀行におかれては、物価の安定を図ることを通じて経済の発展に資するよう、経済、市場の動向などを注視しつつ、適切な金融政策運営を行っていただきたいと考えております。
 雇用のセーフティーネットの整備と新たな雇用創出策についてお尋ねです。
 不良債権の最終処理等、構造改革に伴い厳しさの増す雇用情勢に的確に対応していくことは、内閣の重要な課題であります。
 そこで、与党三党の連立政権合意にあるように、産業構造転換・雇用対策本部を速やかに改組、強化したいと考えます。新しい本部においては、私が本部長となり、経済財政諮問会議に置かれた雇用拡大に関する専門調査会と連携を図るなど、民間有識者の御意見も伺いながら、早急に産業の構造改革と新規雇用の創出、能力開発支援等の対応策を検討してまいります。
 また、予算措置については、改組、強化された本部における具体的な検討が行われた上での問題であると考えます。いずれにせよ、本部における議論の結果等を踏まえ、今後の雇用対策に万全を期してまいりたいと思います。
 証券税制ですが、この見直しについては、与党合意においては、長期保有株式に係る少額譲渡益非課税制度を創設するとともに、申告分離課税への一本化後の株式譲渡益課税のあり方について、引き続き協議の上、早急に結論を得るとされたところです。
 政府としては、個人投資家の積極的な市場参加の促進等の観点から、長期保有株式に係る少額譲渡益非課税制度を創設するための法案を今国会に提出することとしております。また、申告分離課税への一本化後の株式譲渡益課税のあり方を含め、今後の金融・証券税制のあり方については、今月中にも、政府税制調査会において、新たに幅広い検討を開始することとしております。
 政府としては、与党における協議や政府税制調査会における審議状況等を踏まえて適切に対応してまいります。
 都市再生本部についてですが、昨日、私を本部長とする都市再生本部を設置するとともに、国、地方公共団体、民間から人材を集め、専属の事務局を内閣官房に設置したところであります。
 御指摘のとおり、都市再生のための具体的プロジェクトの選定や低・未利用地の有効活用のためのスキームの策定は、喫緊の課題であります。このため、国のみならず、地方公共団体や民間の英知を結集し、熟度の整ったものから、逐次、プロジェクトの選定を行うなど、必要な施策を速やか、かつ強力に推進してまいります。
 財政健全化、財政の構造改革についてのお尋ねであります。
 構造改革なくして景気回復なしとの考え方に立ち、経済、財政、社会保障、行政等、各般にわたる構造改革を強力に推進します。
 次の世代に借金のツケを回さないよう、国債発行の抑制に努め、十四年度の国債発行額を三十兆円以下とし、歳出の徹底した見直しを行うとの方針により取り組み、財政健全化の第一歩としてまいります。
 もちろん、財政構造改革は、十四年度だけで完了せず、中長期にわたる継続した取り組みが必要となるものであります。三十兆円以下の次の目標としては、過去の借金の元利払い以外の歳出は新たな借金に頼らないことを目標とするなどが考えられております。
 こうした財政再建の道筋については、経済財政諮問会議等の場で、社会資本整備、社会保障、国と地方との関係など、我が国経済社会全体の諸課題を含め検討の上、できる限り早く国民に示していきたいと考えております。
 行政改革についてであります。
 本年実施された中央省庁再編は、行政改革の始まりにすぎません。行政すべてのあり方について、ゼロから見直し、改革を断行していきたいと思います。
 昨年十二月に取りまとめた行政改革大綱に基づき、国の事業について、その合理性、必要性を徹底的に検証し、痛みを恐れず、既得権益の壁にひるまず、民間にできることは民間にゆだね、地方にできることは地方にゆだねるとの原則に基づき、行政の構造改革を実現してまいります。
 特殊法人については、現在、昨年十二月に閣議決定されました行政改革大綱にのっとり、新たな時代にふさわしい行政組織、制度への転換を目指す観点から、その業務の廃止、整理縮小、合理化、民間、国その他の運営主体への移管等の改革を進めているところですが、特殊法人等改革基本法案も、これと趣旨、方向を一にしているものと考えており、特殊法人等改革を確実に実現していくためにも、今国会における同法案の早期成立が期待されるところであります。
 公益法人の抜本的改革については、政府としても、重要な課題と考えており、行政改革大綱に基づき、事務事業を厳しく見直しつつ、制度の抜本的改革に向けた検討を進めております。御指摘の与党三党合意の法案化に当たっては、このような作業と十分連携をとりつつ進めていただくことが重要と考えております。
 公務員制度の改革についてです。
 公務員制度改革については、国民の公務員に対する厳しい批判を真摯に受けとめ、正すべきは正し、国民に信頼される公務員を目指すとともに、簡素効率的な業務執行等を実現する必要があると考えます。
 御指摘のあった再就職の問題については、国民に疑念を抱かれることのないよう、厳格なルールを設定していきたいと思います。
 また、今回の公務員制度改革は、国の行政組織の減量、効率化等を目的として行われた中央省庁改革に魂を入れるものと考えており、行政の肥大化を招くことのないよう、十分配慮しながら進めていきたいと考えます。
 社会保障制度についてのお尋ねです。
 三月末には、政府・与党社会保障改革協議会において、改革の理念や基本的な考え方を明らかにする社会保障改革大綱を決定したところであり、今後、この大綱に基づき、国民の理解と協力を得ながら改革を進めてまいります。
 とりわけ、医療制度については、昨今の医療保険財政の厳しい状況にかんがみ、検討作業を急ぎ、平成十四年度には、高齢者医療制度の見直しを初めとする医療制度改革を実現したいと考えております。
 また、基礎年金の国庫負担割合の引き上げについては、年金改正法附則の規定をどのように具体化していくかについて、安定した財源確保の具体的方策と一体として鋭意検討してまいります。
 少子化対策についてであります。
 二十一世紀の我が国を家庭や子育てに夢や希望を持てる社会とするため、幅広い分野における総合的な少子化対策に取り組む必要があると認識しております。
 政府としては、仕事と子育ての両立や子育てそのものの負担感を緩和し、安心して子育てができる環境整備を推進してきております。また、家庭と仕事の両立についても、女性も男性も家庭生活における活動とその他の活動を両立させ、安心して子育てができる男女共同参画社会を築いていく必要があると考えております。
 こうした観点から、保育所の待機児童ゼロ作戦の推進や、必要な地域すべてにおける放課後児童の受け入れ体制の整備など、総合的な少子化対策をさらに推進してまいります。今後とも、安心して子供を産み育てることができる社会の実現を図るとともに、男女共同参画を真に実のあるものにするためにも、全力で取り組んでいきたいと思います。
 米国新政権の京都議定書不支持の立場表明に関するお尋ねです。
 我が国は、これを強く懸念しており、京都議定書の発効に向けた交渉に米国が建設的に参加するよう、引き続き、あらゆる機会を活用して働きかけていく考えであります。
 現在、米国政府は地球温暖化政策の見直し中ですが、温暖化対策の実効性を確保するためには、世界最大の二酸化炭素排出国である米国の京都議定書締結は極めて重要です。
 こうした考えに基づき、前内閣のもとでは、森総理初め関係閣僚が、書簡を発出したり電話会談、さらには訪米し、また、政府代表団を派遣し与党代表団と協力するなど、さまざまな働きかけを行ってきました。新内閣のもとでも、昨日の福田官房長官とアーミテージ国務副長官との会見において、この問題につき協議しました。先方からは、現在、環境政策の見直しを進めているところであり、ボンのCOP6再開会合で十分議論していきたいとの発言を得たところであります。
 大都市圏におけるエコタウン構想についてのお尋ねです。
 大量のごみの廃棄で処理の限界に至っている大都市圏を、新しい、ごみゼロ型の都市に再構築することは、極めて重要と思います。このため、私が本部長を務める都市再生本部におきまして、東京圏を初めとする大都市圏においてエコタウンのようなごみゼロ型の都市を構築することについて、精力的に検討を進めてまいります。
 再生可能エネルギーについてのお尋ねであります。
 エネルギー安定供給の確保や地球環境問題への対応を図る観点から、その最大限の導入を図るべく、現在、二〇一〇年度において一次エネルギー総供給の約七%にするという目標を設定しております。今後、技術開発の強化や導入支援策の拡充等、その開発と導入に向け取り組みの強化を図ってまいります。
 最後に、国会改革等の必要性について御質問がありました。
 政治倫理を確立し、これまでの先例や慣習、既得権にとらわれることなく、国会あるいは国会議員のあり方をいま一度国民の目線で見直し、抜本的な改革に取り組んでいくことは、政治に対する信頼を回復するためにぜひとも必要であり、また、国民もそれを期待しているものと思います。
 永年勤続議員の表彰につきましては、私としては、これは、神崎議員の廃止すべきとの御意見に同感しております。私の場合は、在職二十五年の表彰も、肖像画も特別手当も辞退いたしましたけれども、これは各党協議していただく問題ですが、表彰制度を残したいと思う気持ちが強いのはわかりますが、せめて肖像画とか特別手当等はもう廃止していいんじゃないでしょうか。(拍手)この点の問題については、各党協議をしていただきたいと思っております。
 栄典制度については、そのあり方について、昨年十二月に、与党三党によるプロジェクトチームにおいて申し合わせが行われ、政府に対して、今後の議論に反映されるよう要請があったところと承知しております。
 また、現在、栄典制度の在り方に関する懇談会において、幅広く自由に御議論いただいているところであり、本年秋を目途に最終報告を取りまとめていただく予定と承知しております。政府としては、懇談会の議論も踏まえ、適切に対応してまいりたいと考えております。
 いずれにせよ、御指摘の問題も含め、国会の改革は国会議員みずからの手で断行すべきものでありまして、国会において早急に取り組みがなされるよう強く期待しております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣坂口力君登壇〕
○国務大臣(坂口力君) 神崎代表からいただきました二問ございます。
 一つは、雇用のセーフティーネットの整備と新たな雇用創出策についてのお尋ねでございました。
 雇用セーフティーネットにつきましては、いつ経済の変動がありましても、失業率など、失業率だけではございませんけれども、メルクマールといたしまして、緊急に対応できる対応を強化していかなければならないと決意をいたしております。
 また、平素から雇用につきましては予防的措置も必要でございますし、平成十三年度予算等に盛り込まれております、離職者に対します再就職支援、あるいは年齢、能力、地域におきます労働力需給のミスマッチを解消するための対策、中小企業や第三次産業を中心とする新規・成長分野における雇用機会の創出への支援等、これらも着実に万全を期していきたいというふうに思っております。
 それから、新たな雇用創出策についてのお尋ねもございますが、これは、不良債権の新たな処理に対してどのように取り組むかという御質問であろうというふうに思います。
 今後の不良債権処理につきまして、その規模とそのスピードをどのようにしていくかということによって、その対策も異なってくるかというふうに思いますが、これから、経済産業省あるいは金融庁等々、関係省庁とよく連携をとりまして、緊急に役立つ対策を取りまとめてまいりたいと考えております。御指摘をいただきましたとおり、今国会中に結論を出す決意でございます。
 それからもう一つ、少子化対策についてでございます。
 これはもう今さら申し上げるまでもございませんが、近年の急速な少子化の進行は、我が国の経済社会に大きく広く深刻な影響を与えることが懸念されております。特に、人口構成の推移を考慮いたしますと、少子化に的確かつ迅速に対応し、将来を担う世代が健やかに成長できる社会にしていくことが求められているところでございます。
 少子化対策推進基本方針あるいはまた新エンゼルプランに基づきまして、各般の施策の拡充に努めております。本年三月末に政府・与党の社会保障改革協議会が取りまとめました大綱におきましても、少子化対策を社会保障改革の重要な柱として位置づけているところでございまして、その中でも、育児不安の解消など地域における子育ての支援策の推進、それから、仕事と家庭の両立支援対策の充実を図り保育所待機児童を削減すること、それから、多様な保育サービスの充実や放課後児童の健全育成の推進、こうしたことがその中で取り組むこととされているところでございます。
 いずれにいたしましても、少子化対策には二つの大きな流れがございますが、一つは、子供を産み育てやすい環境の整備であり、もう一つは、生まれました子供が健やかに育つための環境整備、この二つでございます。
 総理が先ほど述べられました、保育所の待機児童をゼロにする作戦でありますとか、放課後児童の受け入れ体制でありますとか、これらは前者に属する重要な問題でございます。せっかく生まれましても、子供を育てる能力に欠けまして虐待するなど、痛ましいニュースが後を絶たない毎日でありますので、子供の人権を守るための政策も非常に大事であるというふうに考えているところでございます。
 純粋な子育て政策だけではなくて、年金の政策あるいはまた医療の政策等、それらの政策の中に子育て政策をちりばめていくということが大事であるというふうに思っておりまして、来年の国会までに作成しなければならない医療政策等の中におきましても、子育て対策をちりばめたいと考えているところでございます。
 以上、御答弁を申し上げさせていただきました。(拍手)
     ――――◇―――――
○小此木八郎君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明十日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。
○副議長(渡部恒三君) 小此木八郎君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(渡部恒三君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時十九分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  小泉純一郎君
        総務大臣    片山虎之助君
        法務大臣    森山 眞弓君
        外務大臣    田中眞紀子君
        財務大臣    塩川正十郎君
        文部科学大臣  遠山 敦子君
        厚生労働大臣  坂口  力君
        農林水産大臣  武部  勤君
        経済産業大臣  平沼 赳夫君
        国土交通大臣  扇  千景君
        環境大臣    川口 順子君
        国務大臣    石原 伸晃君
        国務大臣    尾身 幸次君
        国務大臣    竹中 平蔵君
        国務大臣    中谷  元君
        国務大臣    福田 康夫君
        国務大臣    村井  仁君
        国務大臣    柳澤 伯夫君
 出席政府特別補佐人
        内閣法制局長官 津野  修君