第153回国会 本会議 第2号
平成十三年十月一日(月曜日)
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 議事日程 第二号
  平成十三年十月一日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
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○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑

    午後一時三分開議
○議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
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 国務大臣の演説に対する質疑
○議長(綿貫民輔君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。鳩山由紀夫君。
    〔鳩山由紀夫君登壇〕
○鳩山由紀夫君 私は、民主党・無所属クラブを代表し、小泉総理の所信に対し質問するとともに、私の所信を表明し、絶叫すれども姿が見えぬ小泉流構造改革の実態を明らかにしてまいります。(拍手)
 最初に、私は、アメリカにおけるさきの同時多発テロに際して亡くなられた方々、負傷された方々、そしてその御家族の皆様方に対して、心から哀悼とお見舞いの言葉をささげます。
 九月十一日の日本時間夜九時四十五分、ニューヨークの世界貿易センタービルに旅客機が飛び込んだあの映像は、世界の人々の目に今なお焼きついていることでしょう。激突した飛行機の中でテロリストたちにやいばを突きつけられていた人たちはどれほどの恐怖に包まれて最期の瞬間を迎えられたか、悲しみと怒りで、私自身、胸がつぶされそうな思いです。
 テロリズムは、正義と人道に反する行為であり、私たちはこれを絶対に許すことはできません。私たちは、米国や国際社会と一致協力して、暴力に屈することなく、いかなるテロに対しても毅然として立ち向かわなければなりません。
 当面するテロ撲滅対策に関する民主党の基本姿勢は、一、正義と人道に反するテロには毅然として立ち向かう、二、テロ撲滅行動への協力に必要な法整備には憲法の枠内で周辺事態法の議論を踏まえて行う、三、求められる後方地域支援には犯人の特定と米国の作戦目的の明確化を求める、以上の三原則を条件としています。
 ここで忘れてはならないことがあります。古代ローマの政治家キケロは、戦争になると法律は沈黙すると言いました。国権の最高機関である立法府に集う私たちは、これを許してはなりません。我が国が米国を初めとする国際テロ対抗措置を講ずるに当たり、なし崩し的な対応、あるいは危機に名をかりた行き過ぎた行動を決してとってはなりません。
 以下、総理に具体的な質問を行います。
 今回のテロ事件に対する小泉総理の初動は、諸外国と比べてスピードに欠けたというのが率直な感想です。総理みずからが国民や世界に対して日本の姿勢を表明したのは、事件発生後、何と十二時間以上もたってからです。事態の深刻さに対する理解が欠けていたとしか思えません。
 そして、小泉総理は、九月十九日、唐突に七項目の当面の措置を発表し、二十五日にはブッシュ大統領と会談し、日本の支援策を説明しました。しかし、今日に至るまで、七項目の詳細について、日本国民や国会に対してはほとんど説明がなく、十九日の記者会見はメモを読むだけの一方的な表明でした。先週の所信表明でも、内容については何ら語られていません。
 総理に対し、初動のおくれに対する反省と、七項目の詳細や法整備について国民への説明も作業そのものもおくれていることについて、納得のいく答弁を求めます。(拍手)
 九月二十一日、米国の空母キティーホークが横須賀基地を出港し、それに合わせて海上自衛隊の護衛艦が出港、同行しました。
 防衛庁は、防衛庁設置法第五条の調査研究活動と説明していますが、中谷防衛庁長官が、警戒監視であったことを記者会見で認め、山崎自民党幹事長も、きのうのテレビで、護衛であったことを認める発言をしました。法的根拠のない活動を自衛隊が行ったことになり、法治国家として看過しかねる問題が起きました。対米支援なら法的根拠がなくても行ってよいというわけにはいきません。さらに、こうした自衛隊の活動が官邸の福田官房長官の耳に事前に入っていなかったと報道されていることも、大変危うい問題をはらんでいます。
 総理に質問します。
 九月二十一日の自衛艦活動の法的根拠は何か、もしも調査研究活動というならば、それを実質護衛と呼ぶ中谷防衛庁長官や山崎幹事長の発言に問題はないのか。また、今後、インド洋へのイージス艦の派遣を行う計画があるのか、あるとすれば、イージス艦派遣の法的根拠は何なのか。以上二点についても、あわせて総理に伺います。
 次は、国内テロ対策について質問します。
 総理の所信表明には、対米支援の決意は盛り込まれていても、この肝心かなめのポイントがすっぽり抜け落ちていたことに、私は唖然としました。日本国民の生命と財産を守ることが私たち国会議員の最大の責務であることを考えれば、総理に猛省を促さなければなりません。今後、日本がアメリカなどに協力する場合、日本に対するテロの危険がいや増すことは否定できません。生物化学兵器テロ、サイバーテロを含めて、万全を期すことが最も喫緊の課題です。
 そこで、小泉総理に二点質問いたします。
 空港などの検査体制や出入国管理の強化など、現行法のもとで政府の危機管理の取り組みはどうなっているのでしょうか。また、今後、警察力を超える事態が国内で起こった場合に、自衛隊を活用することも必要になると考えますが、その際、米軍基地や自衛隊基地を守れても、例えば都心のオフィスビルは守れないということになれば、本末転倒なのじゃありませんか。今後必要になる自衛隊の警備対象についていかが考えるのか、総理にお尋ねいたします。
 総理は、七項目の措置の中で、「米軍等に対して、医療、輸送・補給等の支援活動を実施する目的で、自衛隊を派遣するため所要の措置を早急に講ずる。」としています。ところが、そのために必要となるであろう法整備と憲法との間の関係が明確ではありません。
 例えば、与党幹部の発言からは、今回の自衛隊の活動について、活動地域及び武器使用基準について従来の憲法解釈におさまり切らない可能性がある、だから本件限りの特別立法にして、大目に見ましょうという印象さえ受けるのです。憲法に例外を認めるようなやり方は、絶対に認めることができません。
 小泉総理は、去る九月二十四日、ワシントン市内で行われた同行記者団との懇談で、自衛隊は危険なところに出しちゃいかぬでは話にならない、出し惜しみはしないと述べました。これは、従来、海外における自衛隊の行動を、戦闘区域と一線を画した場所に限定してきた政府の基本方針を変更する意図を表明するものとも受けとめられます。新法における自衛隊の活動領域についての考え方と、それが武力行使の一体化に関する従来の政府見解を変更するものであるか否かについて、総理の明確な答弁を求めます。
 また、同じ懇談で、総理は、自衛隊の武器使用基準について、どこにいても安全は保証されない、常識的な対応が必要だと思うと述べています。常識的な対応と法律に書くことはできません。総理の言う常識的な対応の内容について、具体的な答弁を求めます。
 特に、総理が自衛隊の武器使用に関する従来の政府見解を変更する意図を持っているか、持っているとすればどの程度までの基準緩和を考えているのか、明確に説明することを求めます。
 後方地域支援に当たる自衛隊の任務についても、慎重な吟味が必要です。周辺事態法では、自衛隊による武器弾薬の輸送を認めていますが、新法において、日本の領土や公海を越え、他国の領域での活動をも認めるのであれば、慎重を期して、武器弾薬の輸送も行わないこととすべきです。総理の見解を伺います。
 また、十九日の七項目の中には、医療目的や難民支援のための自衛隊派遣が入っていますが、これは、パキスタン等に対する陸上自衛隊の派遣を意味するものでしょうか。私たちの理解では、アフガニスタン周辺国において、陸上自衛隊の活動区域を、現在及び将来にわたって戦闘区域と一線を画される地域として認めることは、基本的に難しいと考えます。この点について、総理の見解を伺います。
 ところで、小泉総理の発言からは、日米同盟を強調する余り、何か米国が求めることであれば何でもやると言わんばかりの焦りさえ感じられ、それに国民は危うさを感じているのです。日米同盟は重要ですが、テロ撲滅のための国際共同行動という、より大きな文脈に立って今後の対応を考えなければなりません。その際、国際的な正当性を裏打ちするのが国連決議だと思います。その点、これまでの国連決議では不十分です。新たな決議をあくまで求めるべきと考えますが、総理の御所見を伺います。
 国連決議が国際的な正当性なら、国内的な正当性は国会承認で担保すべきではないでしょうか。フル装備した自衛隊を海外に出すのです。新しい法整備で自衛隊の後方地域支援を可能にするのであれば、シビリアンコントロールと民主主義を全うするという観点から、国会承認が不可欠です。また、一定期間を超える活動に対して国会にチェック機能を持たせることも、泥沼化防止には極めて有効です。国会承認を要件とすることについて、総理のお考えを伺います。
 私たちは、仮に新法が成立しても、それが自動的に新法適用を意味するものとは考えていません。すなわち、日本が実際に後方地域支援に踏み切る場合には、幾つかの条件があります。その一つは犯人の特定であり、少なくとも日本政府が、犯人をウサマ・ビンラディン氏と断定する根拠について、アメリカ政府から十分な説明を受けなければなりません。
 総理に伺います。本日現在、日本政府はどのような説明を受けているのですか。
 また、アメリカの作戦目的についても、ビンラディン氏の逮捕か、テロ組織の撲滅か、それを支援した国家に対する攻撃をも含むのか、日本政府が全く関知することなく自衛隊を派遣するというわけにはいかないと考えるのは、それこそ常識です。
 総理に伺います。日本政府は、今回のアメリカ軍の作戦目標についてどのように聞いているのでしょうか。
 今回のテロリズム撲滅のための国際共同行動は、アメリカなどに対する後方地域支援にとどまるものでは当然ありません。むしろ、外交面で日本が役割を果たすことが非常に重要なのです。私たちは、テロの遠因である貧困問題解消のためにODAを戦略的に活用することや、中東和平外交への取り組みを倍加すべきことを提案します。例えば国連決議についても、本来ならば、日本が中国を含む安保理常任理事国に働きかけるべきことなのです。
 一体、安保理常任理事国や中東、南アジア諸国に対し、どのような外交的働きかけを行うつもりなのか、お答えください。
 テロ撲滅のためには、国際司法の観点から取り組みを強めることも不可欠です。そして、これに関連する重要な国際的取り決めが、九八年に採択された国際刑事裁判所設立条約であります。これは、国際社会にとって最も深刻な罪である集団殺人罪、人道に対する罪、戦争犯罪等を犯した個人を国際法に基づき訴追し、処罰しようという常設の国際刑事法廷の開設を意図するものです。しかし、我が国は、本条約の批准はおろか署名さえしていません。
 私たちは、日本が国際刑事裁判所設立条約に署名、批准すべきだと思いますが、日本政府としてその用意はあるのですか。
 最後に、国民の皆さんに訴えておきたいことがあります。今後の日本が取り組む挑戦は、あくまでテロリズムとの闘いです。決して、特定の宗教や民族、文化、思想の対立と位置づけてはなりません。日本における多文化教育の充実などとあわせ、日常生活を送る上でもこの点を踏まえた冷静な対応をお願いするものです。(拍手)
 小泉総理、総理就任から百五十日がたちました。まだ百五十日ではなく、もう百五十日なのです。もはや、始まったばかりとの言いわけは許されません。改革、改革と言う総理の勇ましい言葉とは裏腹に、国民の目の前にあるものは一体何でありましょうか。
 それは、日本経済を瀕死の状態まで追い込んだ経済のマイナス成長であり、本格的な五%失業時代への突入であり、さっぱり進まぬ不良債権処理と相次ぐ大型倒産という現実であります。そして、資金繰りに苦しむ地域の中小企業群の解体であり、中高年者の自殺の増大です。今や、人間も地域社会も崩壊の危機にあえいでいます。
 経済ばかりではありません。政治、行政の世界においても、国民に伝えられるものは、相次ぐ外務省不祥事の発覚であり、農水省の狂牛病に係る隠ぺい体質の露呈であり、高祖議員辞職劇を生んだ政官癒着構造の顕在化であります。これが、総理自身の百の説教よりも確かな現実なのです。
 総理自身、抵抗勢力と組んでは道路特定財源の一般財源化をうやむやにし、国債発行額を三十兆円以下に抑制するとした国民への約束を放棄するかのような発言をしています。これらの癒着、隠ぺい、なれ合い、先送り、その場しのぎ、そのすべてが総理になる前からの自民党政権の体質そのものじゃありませんか。(拍手)
 その上、特殊法人改革をめぐる国土交通大臣と行革担当大臣のばらばらな姿勢、官房長官と外務大臣の冷え切った関係など、内閣としての一体性に乏しく、あなた自身の統治能力そのものが問われているのです。
 総理就任から株価は四千円以上下落をし、アリ地獄のようなデフレの進行のもとでダウ平均一万円を大きく割り込み、バブル崩壊後最安値を更新しました。にもかかわらず、株価には一喜一憂しないとうそぶいておられます。しかし、問題は、一喜一憂するかしないかではありません。総理自身が、我が国経済が崩壊寸前の危機的状況にあることをわかっておられるかどうかなのです。総理、私は大変に危機的な状況だと認識していますが、あなたはどう思っておられるのか、お尋ねをします。
 さて、総理は、柳澤金融担当大臣の言をうのみにして、不良債権について、その処理がうまくいっているかのような発言を行ってまいりました。実際、つい二年半前、当時の柳澤金融再生委員長は、不良債権処理は完了したと宣言しています。しかし、不良債権の金額は実はどんどんと膨らみ、あげくの果てには、問題債権は百五十兆円もあるという、とんでもない事実が判明する始末です。今や、だれも政府の言うことを信じていません。欧米から厳しいまなざしを向けられ、IMFが金融特別審査に乗り込んでくるのも、そのためなのではありませんか。
 柳澤大臣は、不良債権の査定は適切だと言い続けてきました。しかし、倒産したマイカルの資産査定は、本当に適切に行われていましたか。自民党お得意の手心を加えて、甘い査定をしていたのではないですか。
 マイカルは、昨年、個人投資家向けに九百億円の社債を発行したといいます。実に二万人の個人投資家が一瞬にして財産を失いました。金融当局と銀行、大企業のなれ合いと問題先送り体質がこうした事態を招いたのではありませんか。
 私は、柳澤大臣のもとでは不良債権処理は進まないと前から主張してきましたが、その責任についてどう対処されようとしているのか、総理の決断をお尋ねします。
 また、政府自身の認識の誤りを率直に認めて、私たち民主党が主張しているように、緊急一斉検査を実施して、銀行に厳格な資産査定と引き当てを行わせることが必要不可欠なのではないですか。お答え願います。
 総理は、整理回収機構による不良債権の買い取り価格の決定方式を弾力化するという方針を示されましたが、買い取り価格は簿価にしようという構想もあると聞いています。
 不良債権を時価より高い価格で買い取るということは、形を変えた銀行への税金投入であり、国家的な不良債権の飛ばし、すなわち、国民の税金による肩がわりにほかなりません。私たちは、このような国家的な飛ばしを断じて認めるわけにはまいりません。それでもこの方針を強行するおつもりですか。明確な御返答をお願いします。
 今国会に提出する補正予算の規模、内容についてお尋ねします。
 特に、今年度の国債発行額を三十兆円以下に抑制するのかどうかについて、所信表明演説は明快ではありませんでした。「大胆かつ柔軟に」などと逆方向の言葉も申されているのです。
 総理は、みずからの公約をあえて捨て去り、三十兆円を超える国債発行で補正予算を組むようなことはないと思いますが、はっきりとお答え願います。
 次に、ついに日本でも発症例が確認された狂牛病問題についてお尋ねをします。
 九月十日に農水省が、狂牛病の疑いのある牛を一たん焼却処分したと発表しておきながら、たった四日後の十四日には、実は肉骨粉に加工されていたと発表するとは何事ですか。届いたファクスを机に放置するなど、県との連絡の不徹底さも次々と明らかになっています。狂牛病の発生に対応するマニュアルもなかったと聞きます。こんな農水省の発表を今後一体だれが信じるというのでしょうか。
 農水大臣の責任は極めて重大です。その責任について総理はどうお考えなのか、お答え願います。
 総理は、先月二十七日、まるで人ごとのように農林水産省や厚生労働省の対応を批判したと聞いています。さらに、あの薬害エイズ事件での元厚生省課長に対する有罪判決について、随分もう前のような出来事だねと、平気でコメントしたのもあなたです。
 一体、行政府の長はだれなのか。ほかならぬ、小泉総理、あなたです。あなたこそ、この事態に対応しなければならない最高責任者なのです。国民に対し早急に、この事態をどう解決するのかという、いつもあなたがなかなか口にしたがらない具体策を打ち出すことこそ求められているのです。(拍手)
 総理、あなたの所信表明では、この狂牛病問題についてはほんのわずかしか触れられませんでした。まさに、総理の危機感のなさのあらわれではありませんか。万全の措置を講ずるなどという聞き飽きた言葉を並べるのは、もういいかげんにやめてください。
 狂牛病の感染経路の早期解明、狂牛病発覚に伴う直接の被害及び風評被害を現実に受けておられる関係者に対して補償と対策をどうするのか、狂牛病感染の実態とともに、人間への影響などに関する早急な情報開示とあわせて、それぞれ明確にお答え願います。
 近畿郵政局長を初め郵政関係十六人の逮捕者を出した高祖議員をめぐる選挙違反事件は、連座制適用目前というところでの辞任劇となりました。しかし、国民は、政府・自民党による臨時国会前のトカゲのしっぽ切りと感じているのです。事件の根底にある、業界、団体、省庁、そして族議員との、ザ・自民党の癒着構造が深々と横たわっていることを国民は知っているのです。
 私は、代表質問や党首討論を通じて、繰り返し、さきの参議院選挙における自民党の比例候補者に業界団体代表、官僚OBがずらっと並んでいる事実を取り上げ、自民党を変えると公約をして自民党総裁になった小泉総理に再考を促してきました。にもかかわらず、自民党は相変わらず利益誘導で業界団体などの支援を取りつけ、郵政族のほかに、建設族、医師会、看護業界、JR族などから候補者をそろえたのです。事もあろうに、高祖議員の辞職に伴って繰り上げ当選となるのは、その一人であるJR出身の人物です。これでは、あなた方自民党にとっては、いわばやり得そのものじゃありませんか。
 あなたの師である福田元総理は、政治は最高の道徳とおっしゃったと聞いています。政治を最高の道徳にするためにも、やり得方式の繰り上げ当選を辞退させ、議席返上を党総裁として決断すべきだと思いますが、どうでしょうか。明確な答弁を求めます。あわせて、高祖前議員の喚問を要求して真実の徹底解明に当たるべきだと考えますが、総理の見解を伺います。(拍手)
 管理監督の責任者である総務大臣や郵政事業庁長官らは、組織的犯罪の実態が発覚した後も、実態調査を行って真相を解明する努力への姿勢を見せていません。二人の責任は重大です。総理は、その責任問題にどう対処するつもりなのか、お尋ねをします。
 今、与党内で中選挙区制復活の議論が進められています。党利党略が露骨に出過ぎて、自民党の中からさえも、哲学も理念もない、国民の失笑を買う提案だとの声が出るほどじゃありませんか。こんなお粗末な選挙制度改悪を強行するなら国民の信頼は全くゼロになるとの貴党の議員の叫びが総理には聞こえますか。あまつさえ、連立をどう維持するかの観点で決断したと自民党選挙制度調査会の責任者が公言するありさまではありませんか。この問題について、自民党総裁でもある小泉総理はどのような見識を持っているのか、ぜひお聞かせ願いたい。
 次に、小泉内閣のアジア外交について伺います。
 小泉内閣発足以来、私たちの隣国である中国、韓国との関係は、率直に言って冷却化しています。これは、総理自身の靖国参拝問題など、あなたが種をまいた結果です。韓国の金大中大統領は、日韓関係の冷え込みについて、問題は日本側で生じたと述べ、韓国民が納得できる日本政府の措置を求めています。
 総理に質問をいたします。
 特に靖国参拝問題について、日本国民及び諸外国に対してどのように説明するつもりなのですか。これを明らかにしなければ、総理の望む中韓両国指導者との真摯な対話は不可能です。
 テロリズムへの対応を初め、今日、外交の重要性はかつてないほど高まっています。しかし、日本外交を担うはずの外務省と、その司令塔であるはずの外務大臣が機能不全に陥っているのではないか、その危惧は今や広く国民の共有するところとなっています。
 とりわけ、田中外務大臣についてです。最近でも、テロ事件の後、極秘情報であったアメリカの国務省の避難先をマスコミに具体的に話してしまったこと、パキスタンへの訪問を拒否したと言われること、駐日中国大使の表敬訪問を二カ月近くも放置していたこと、官邸や外務省幹部との間で意思の疎通さえとれていないことなど、大臣としての資質を疑わせる事例は枚挙にいとまがありません。このような事態を放置しておくことは、日本の外交不在に拍車をかけることになり、国益そのものを害することにほかなりません。
 総理は、かつて、まだ二カ月なので多少ふなれなこともあるとか、勉強していろいろな事情もわかってくるなど、そんなたぐいの発言を繰り返しては、田中外務大臣を弁護する姿勢をとってこられましたが、今日に至ってもまだその姿勢は変わっておられないのでしょうか。田中外相の外交センスと外務省管理能力について、任命権者たるあなたの認識をお聞かせ願います。(拍手)
 小泉総理、最後にあなたに申し上げたい。
 あなたの最大の問題は、この国の未来の姿を国民に一度も示したことがないことです。あなたの口から発せられてきた断片的な改革の先にどんな社会を描いているのか、あなたは一度も国民に語っていません。あなたは、所信表明で改革が目指す五つの目標を示したつもりでしょうが、あなたの改革でなぜこのような目標を実現できるのか、全く説明がありません。ごまかしてはいけません。改革に痛みを伴うと言われても、痛みの先にどんな未来が待ち受けているのか見えなくては、国民が痛みに耐えられるわけがありません。
 私は、子供も大人も一人一人が尊厳を持てる社会、女性と男性が互いに自立し、共生し、責任を持つ社会をつくりたい。海外に名誉を求めることよりも海外から尊敬される、そんな日本をつくりたい。中央集権ではなく、地域主権の国をつくりたい。そして、会社や組織の利潤を第一に考えるのではなく、個人そして家庭を第一に考える、人間中心主義の世の中にしたい。そのためには、今までの依存型社会から勇気を持って脱出することです。それはまさに、テロへの対応にも見られるようなアメリカ依存から、より主体性のある外交をつくり出し、政官業の癒着の中に安住した官僚依存の政治をやめることです。それが真の構造改革です。
 小泉総理、あなたには改革の意味がわかっていない。自民党政治に身を任せ、政官業の癒着に手をつけようともせず、主体性のある外交も行っていない。私は、だから改めて確信します。政権交代なくして真の構造改革はあり得ない。このことを最後に申し上げ、代表質問を終えます。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 鳩山議員にお答えいたします。
 同時多発テロ発生時の初動対応と七項目の措置についてのお尋ねであります。
 私は、テロ発生後直ちに、被害者に対する救援体制と国内の米国関係施設への警戒警備の強化を指示し、また、深夜ではありましたが、総理大臣声明を発表して、テロを許さない我が国の姿勢を明らかにしたところであり、初動のおくれがあったとの御指摘は当たらないと考えます。
 七項目の措置は、米国を初めとする関係諸国と協力しながら、テロリズムとの闘いをみずからの安全確保の問題と認識して主体的に取り組もうという我が国の決意を内外に明示するため、私がみずから発表したものであります。かかる姿勢と方針は、多くの国民の理解と支持を得ているものと考えております。(拍手)
 なお、今回のテロへの対応に係る法案については、現在、作成作業を急がせているところであり、近日中に成案を得たいと考えております。
 九月二十一日の米国空母の横須賀基地出港の際の海上自衛隊の護衛艦の活動の法的根拠及び性格についてのお尋ねであります。
 米国におけるテロ事件を受けて、現在、防衛庁は、東京湾や佐世保港の内外において艦艇や航空機による警戒監視を強化していますが、御指摘の、米空母の横須賀出港に際しての自衛隊の活動は、このような警戒監視の一環として行われたものです。その法的根拠は、「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと。」について規定した防衛庁設置法第五条第十八号であり、自衛隊の通常の警戒監視活動と同様であるので、御指摘の発言に問題があるとは考えておりません。
 インド洋へのイージス艦派遣の計画の有無についてのお尋ねです。
 自衛隊艦艇の派遣については、先日発表した「米国における同時多発テロへの対応に関する我が国の措置について」において、情報収集のために自衛隊艦艇を速やかに派遣するとされており、現在、防衛庁において、派遣の具体的海域、派遣すべき艦艇等について検討を行っているところであります。かかる派遣が行われる場合の法的根拠については、「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと。」について規定した防衛庁設置法第五条第十八号であります。
 政府の危機管理の取り組みについてのお尋ねです。
 今回の米国におけるテロの発生を受け、私は、直ちに、そうした事態が我が国で発生することのないよう、国内における警戒警備の強化を指示したところであります。
 特に、ハイジャック等の防止に向け、空港等における手荷物検査等を強化したほか、不審外国人の出入国をチェックするため、関係機関の連携のもと、出入国審査を強化しているところであります。
 こうした事案を未然に防ぐために何よりも重要なことは、関連情報の収集であり、関係省庁において情報収集体制を強化するとともに、その一元的集約により、迅速かつ的確に対処することとしております。
 生物化学テロやサイバーテロについては、既に必要な計画等を策定しているところでありますが、今回の事件を踏まえ、その見直しを行うなど、政府として、国民の安全の確保のため、あらゆる角度から危機管理体制の充実強化に努めてまいります。
 警察力を超える事態が国内で生起した場合の自衛隊の活用についての御質問であります。
 国内の治安維持について全般的に責任を有する警察機関が警備態勢を強化して、テロ等の不測の事態に対応することが基本でありますが、御質問のような、一般の警察力をもっては治安を維持することができないと認められる場合には、自衛隊に治安出動を命じ、適切に対処してまいります。
 また、自衛隊の施設や米軍の施設及び区域などの防衛に関連する施設については、特別の必要があれば、治安出動によることなく自衛隊が警護に当たることができるよう、所要の法改正を検討しているところであります。
 新法における自衛隊の活動地域と武力行使との一体化についてのお尋ねです。
 武力の行使との一体化に関する政府の従来からの基本的考え方に変わりはありません。
 自衛隊の活動地域については、米国政府を初め関係諸国がいかなる行動をとるか明らかでない現段階で具体的に申し上げることは困難ですが、法律案の作成に当たっては、今後、いろいろ予測し得る可能性を考えつつ、憲法の範囲内でできる限りの支援、協力は何かという観点から、御指摘の点も含め、意義のある支援、協力ができるよう、早急に検討してまいりたいと考えております。
 自衛隊の武器使用基準についてのお尋ねです。
 自衛隊の武器使用については、テロ攻撃に対応する諸外国の活動の支援や、人道的精神に基づく被災民の救援に従事するに当たって、その安全確保について万全を期すよう措置することが常識的な対応と考えております。
 具体的には、これまでの政府見解を踏まえた上で、自衛隊による支援や救援を行う際の武器使用権限などについて、派遣される自衛隊員及び支援活動の安全が確保されるよう、最大限の配慮をしてまいりたいと考えております。
 このような考え方のもと、一日も早い法案成立を目指し、法律案の作成に取り組んでまいります。
 武器弾薬の輸送についてのお尋ねです。
 自衛隊による、テロ攻撃に対応する諸外国の活動の支援のあり方については、今後、いろいろ予想し得る事態を考えつつ、憲法の範囲内でできる限りの支援、協力は何かという観点から、その内容を早急に検討し、法律案の作成に取り組んでまいります。
 医療目的や難民支援のための陸上自衛隊のパキスタン等への派遣の有無及び陸上における自衛隊の活動地域についてのお尋ねであります。
 自衛隊の活動地域については、米国政府を初め関係諸国がいかなる行動をとるか明らかでない現段階で具体的に申し上げることは困難ですが、今後、いろいろ予測し得る可能性を考えつつ、憲法の範囲内でできる限りの支援、協力は何かという観点から、早急に検討してまいりたいと考えます。
 新たな国連決議の必要性についてのお尋ねです。
 今回の同時多発テロ事件を受けて、国連安保理においては、今回のテロ事件を国際の平和及び安全に対する脅威であると認め、テロの実行者及び支援者等の処罰、並びにテロ行為の防止、抑圧のための国際社会の努力を求めること等を内容とする決議が採択されています。我が国としても、安保理決議を踏まえ、このような国際社会の取り組みに積極的に協力していく考えです。
 自衛隊の支援活動に際して国会承認を要件とすることについてのお尋ねです。
 シビリアンコントロールの原則は、民主主義国においてぜひとも確保しなければならないことは言うまでもありませんが、新法における国会と政府との関係を含め、新法の具体的内容については、法律案を作成している現段階で申し上げることは困難であることは御理解いただきたいと思います。
 ビンラディン氏を犯人と断定する根拠及び米国の作戦目的について、米国政府より受けている説明についてのお尋ねです。
 ブッシュ大統領初め米政府高官は、ウサマ・ビンラディンが主要な容疑者であることは疑いない旨繰り返し述べ、また、同人のみならず世界的なテロのネットワーク、さらにはテロリストをかくまう国に対しても断固たる措置をとっていく旨述べています。
 日米間では、事件発生以来、本件事件に関し、ウサマ・ビンラディンに関する情報交換や事件への対応を含め、緊密に連絡をとっており、先月二十五日の日米首脳会談においても、ウサマ・ビンラディンについて触れるとともに、本件事件への対応につき今後とも緊密に連絡をとっていくことを確認したところでありますが、事柄の性質上、両国間のやりとりの詳細を述べることは控えさせていただきたいと思います。
 テロリズム撲滅に向けた外交的働きかけについてのお尋ねです。
 政府としては、国際社会が一致団結して、テロリズムの遠因となるさまざまな問題の解消に取り組みつつ、テロリズムを撲滅すべく最大限努力すべきと考えます。
 このような考え方に立って、政府は、国連等の国際場裏で適切な取り組みがなされるよう、安保理常任理事国を含む関係国と協議し、また、テロへの対応に向けた国際的連帯が維持強化されるよう、中東諸国、南アジア諸国を含む関係国と協議をしていく考えです。中東和平についても、引き続き、主要外交課題の一つとして取り組んでまいります。
 国際刑事裁判所設立条約の締結についてのお尋ねです。
 我が国は、国際社会における最も深刻な犯罪の発生を防止し、もって国際の平和と安全を維持する観点から、国際刑事裁判所設立に向けて努力してまいりました。
 裁判所の設立条約である国際刑事裁判所規程については、現在、内容を精査するとともに、国内法令との整合性について必要な検討を行っています。
 我が国経済が危機的状況にあるとの見解についてのお尋ねであります。
 我が国の景気は、世界経済が同時的に減速していることもあり、四―六月期のGDP成長率がマイナスとなり、失業率が過去最高の五%に達するなど、厳しい状況にあります。さらに、先般の米国テロ事件の世界経済への影響が懸念されます。
 日本経済は、いわば世界的な経済変動の荒波の真っただ中にあります。このため、状況の変化には細心の注意を払いつつも、経済の基本的な成長力を高めるため、改革なくして成長なしの決意のもと、構造改革を加速していく必要があります。具体的には、改革工程表に従って着実に構造改革を進めることにより、初めて民需主導の自律的な経済成長の達成が可能になると考えております。
 倒産企業に関する銀行の資産査定と緊急一斉検査の実施に関するお尋ねがありました。
 今般の改革先行プログラムにおいては、主要行に対し、通常の検査を二年に一回から一年に一回とし、その検査をフォローアップする検査も半期ごとに行うこととしております。さらに、本件のように、借り手企業の信用力が市場で急速に低下した事例をも踏まえ、市場の評価に著しい変化が生じている債務者に着目した検査を導入するとともに、市場の評価に適時に対応した引き当てを確保することとしております。
 このような取り組みを含め、不良債権処理に関する各般の施策を果断に実施することにより、遅くとも集中調整期間が終了する三年後には不良債権問題を正常化することを目指し、全力を尽くしてまいります。
 整理回収機構による不良債権の買い取り価格についてお尋ねがありました。
 今般の改革先行プログラムにおいて、不良債権問題の早期解決に資する見地から、預金保険機構、RCCは、不良債権の買い取りについて、価格決定方式を弾力化の上、十五年度末までに集中的に実施することとしたところであります。
 弾力化の具体的内容については、金融庁に、与党と連携しつつ検討を進めるよう指示したところでありますが、不良債権を簿価で買い取ることについては、御指摘のように、税金による肩がわりという問題もあり、買い取り価格は、あくまでも時価を基本とすべきものと考えます。
 補正予算についてです。
 補正予算の内容は、従来型の公共事業の追加でなく、雇用対策に重点を置いたものとすること、また、その規模については、真に必要な施策を積み上げて決定してまいりますが、財源については、安易な国債発行によるべきではないと考えております。
 税収が五十兆円程度にとどまる中で、国債を三十兆円発行すること自体、緊縮予算とは言えず、十三年度補正予算においても、十四年度予算における国債発行額を三十兆円以下とすると同様の方針で取り組んでまいります。
 狂牛病に対する農水大臣の責任についてのお尋ねであります。
 狂牛病に関しては、事態が発生して以来、農林水産省と厚生労働省の間や、県の農林部局と衛生部局の間など、関係者間の連絡が不十分で、対応に混乱が見られたことなど、国民の行政に対する不信を招いたことは遺憾であります。
 このため、農林水産大臣及び厚生労働大臣に対して、縦割り行政の弊に陥らず、関係者間の意思疎通をよくして、両省一体となり、国民の立場に立って、徹底した情報公開を含め、迅速かつ万全の対応を指示したところであります。
 狂牛病に関する情報開示、感染経路の早期解明、被害者対策についてのお尋ねであります。
 本病に関しては、一般に食べられている牛肉や牛乳は安全であり、また、感染した牛が食用にも飼料用にも供されることがないよう、緊急に態勢を整えました。さらに、十月四日から、主な感染源とされている肉骨粉の輸入の一時停止と国内の製造販売の一時停止により、感染経路を遮断することといたしております。
 また、国民生活及び我が国畜産に及ぼす影響を緩和するため、牛の処分に伴う生産者への支援、関係事業者への緊急融資、牛肉や牛乳の安全性等正しい知識の普及等を内容とする当面の緊急対策の具体的内容を九月二十五日に公表したところであり、その円滑な実施に努める所存です。
 今後とも、国民に不安を与えることのないよう、徹底した情報開示に努めるとともに、感染経路の究明のため、飼料給与の実態等の追跡調査に全力を傾注します。
 高祖議員の辞職に伴う繰り上げ当選についての御指摘がございました。
 先般の参議院議員通常選挙から非拘束名簿式比例代表制が導入されましたが、政党が候補者名簿を作成する比例代表選挙であり、氏名を記載した投票も第一義的にはその名簿登載者の所属する政党への投票であるとされることから、議員が辞職した場合には、その政党の次順位の名簿登載者が繰り上げ補充されるものであります。むしろ、繰り上げ補充しないと、政党への投票の意思を示した選挙人の意思に反することになると考えられます。
 なお、高祖前議員の喚問をすべきとの御指摘がありましたが、議院の運営に関することであり、国会において御判断いただくべきものと考えております。
 管理監督責任についてお尋ねです。
 さきの参議院議員通常選挙に際し、現職の国家公務員が公職選挙法違反の容疑で逮捕されるという事態に至ったことは、まことに遺憾であります。本件については、現在、なお捜査が継続中であると承知しており、捜査による全容解明を待って、行為者への行政処分とあわせ、適切に対処すべきものと考えています。
 衆議院選挙制度改革についてのお尋ねです。
 この問題については、与党三党の間で設置された衆議院選挙制度改革協議会において協議が進められています。
 この協議会において、去る九月二十日、現行の小選挙区比例代表並立制を基礎としつつ、従来批判があった最小行政区画より狭小な選挙区を解消することとして、そこに複数区の選挙区を創設することを骨子とする改革案について合意がなされました。この合意は重いものと認識しており、現在、与党三党それぞれにおいて党内手続に入っているところであると承知しています。
 いずれにせよ、衆議院議員の選挙制度は議会政治の根幹にかかわる問題であり、各党各会派において十分な議論をいただくべきものと考えております。
 私の靖国神社参拝についてのお尋ねです。
 私は、二度と戦争への道を歩むことがあってはならないとの思いに立って、平和への誓いを行うために参拝しました。私は、国内外のさまざまな意見や反響を十分踏まえながら、過去の歴史を直視し、戦争を排し平和を重んずるという我が国の基本的考え方を明確に示しつつ、中韓両国との間で、未来志向の協力関係を構築していく考えです。
 田中外務大臣についてのお尋ねです。
 田中外務大臣は、これまでも、我が国外交の推進に当たって着実な成果をおさめてきているとともに、国民の目線に立って外務省改革に最大限の努力を払ってきております。今後とも、米国における同時多発テロ事件に対する我が国の対応を初め、山積する外交問題に対し、引き続き全力を傾注してほしいと考えております。
 改革後の姿について、どんな社会を描いているかについてのお尋ねです。
 私は、構造改革なくして日本の再生と発展はないという方針のもと、二十一世紀にふさわしい自立型の経済社会システムを確立することを目指し、今回の所信表明において、小泉構造改革の五つの目標を掲げました。すなわち、民間にできることは民間にゆだね、地方にできることは地方にゆだねるとともに、生きがいを持って安心して暮らすことができる社会を実現することとし、そのため、簡素、効率的、透明な政府を実現するなどの改革を進めてまいります。
 こうした改革を進めるに当たっては、非効率な部門の淘汰を伴い、社会に痛みが生じることも考えられます。この痛みを和らげることは政治の責任と考えており、このため、雇用対策を初めとしたセーフティーネットの整備は大変重要と考えております。
 改革を具体的に進めるに当たり、まず骨太の方針を取りまとめ、さらに、先日、改革工程表を国民に提示したところであります。今後は、これらに従ってより具体的に小泉構造改革を進めてまいりたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(綿貫民輔君) 麻生太郎君。
    〔麻生太郎君登壇〕
○麻生太郎君 私は、自由民主党を代表し、小泉内閣総理大臣の所信表明演説に対し、質問をいたします。(拍手)
 西暦二〇〇一年九月十一日をもって世界の安全保障に対する枠組みは根本的に変わったと、後世の歴史家はそのように表現すると思います。従来の、国家、民族、宗教、地域といった次元とは全く異なった次元で、二十一世紀の戦争が起こりつつあるからであります。
 私は、今回の極めて組織化された同時多発テロ事件において、日本人はもちろん、米国民を含む各国の、まことに痛ましい犠牲となられた方々に心からお見舞いを申し上げるものであります。また、救援のため、危険をも顧みず火災中のビルに突入し、救出作業中にビルが崩壊し、殉職されることになられた消防士、警察官など、志の高い多くの殉職者の方々に深甚なる敬意と哀悼の意を表明するものであります。
 今回の事件は、これまでのテロ事件とは規模も手段も全く異質かつ大胆なものであり、世界を震撼させ、表現する言葉すら失うものでありました。
 この事件で我々が基本的に認識を共有しておかなければならないのは、世界が新世紀に入り、国際化を一層進め、平和への真摯な努力を傾注している人々が多くいる反面、価値観の全く異なる狂信的なテロリストや、これらを支援する巨大な国家的な組織が存在することであります。このテロが単に米国のみに向けられたものにとどまらず、国際社会あるいは我々の世界そのものがテロリストの標的として挑戦を受けていることを認識しなければなりません。米国大統領の、これは戦争行為そのものだとの発言は、この事件がいかに容易ならざる事態であるのかの表現であり、我々はそれを十分理解する必要があります。
 無差別の大量殺人、大量破壊を平然と行う犯罪組織の行動に大義を認めるかのごとき発言をし、平和な法治国家や市民社会と卑劣なテロリストを道義的に平等な立場に置いて論じておられる方々も見受けますが、同等に論じること自体が間違っていると確信をしています。(拍手)
 我が国は、このテロ事件に関し、米国などに対し、友好国として、可能な限りの支援、協力を惜しまないことは当然であります。また、今後、この種の国際的なテロ事件が頻発することは十分予想され、我が国にも発生する可能性は否定できません。今回のテロ事件は、自国の問題としてとらえ、緊急性の高い問題として、国内的にも十分かつ万全な対策を講じておく必要があります。
 そのためには、新規立法や国内体制の整備が必要であり、それらは迅速かつ効果的に対応することが求められているのであって、ちゅうちょやためらいがあってはなりません。
 この立法に際し、確認していただきたいのは、目的はテロの根絶であり、撲滅であって、対米協調はその手段であります。予測を超えた事態に対し、感情や情緒に流されることなく、見識を持って冷静に対応しなければならないことは当然のことであることもつけ加えておきます。
 さて、九月八日は我が国がサンフランシスコ平和条約に署名してから五十年たちましたが、日米双方で、これを記念する幾つかの行事が行われました。今、いささかの感慨を持って、五十年前のこの日を振り返ってみたいと存じます。
 当時、全権大使として臨んだ吉田茂は、出発に際し、帰国したら売国奴と言われ、家が焼かれることぐらいは覚悟しておいてもらいたいと言い残しての渡米であったことが思い起こされます。
 言うまでもなく、当時は、共産圏を含むすべての交戦国との全面講和か、米国を初めとする西側諸国との多数講和かで、国論は二分されておりました。いずれにしても、相当な反対が予想される、厳しい国内情勢にあったことは事実であります。
 吉田茂は、我が国が一刻も早く独立を果たし、国家の主権を回復することが国益に資すると確信し、米国を中心とする多数講和を選択いたしております。その署名後のスピーチで、これは和解と信頼の文書であるとも述べております。同日締結された日米安全保障条約とあわせ、戦争によるわだかまりを融解し、交戦国であった日本とアメリカは、再び信頼関係を再構築し、友好国として出発したのであります。
 この条約により、我が国は敗戦から立ち直り、独立した国家として完全な主権、自由と平等を回復した、歴史上忘れることのできない、銘記されるべき日となりました。以後、今日まで、対米協調の上に日本の今日の繁栄と発展の基礎が築かれたことは、紛れもない事実であります。
 日米両経済大国が世界に向かって果たさなければならない役割は、今、さらに重要なものとなってきております。二十一世紀初頭において、日本という国家の見識が問われ、日米関係が問われ、また、国際社会との関係も問われていることでもあります。
 以上、若干の個人的感情も含めて意見を述べましたが、総理大臣としての今回のテロに対する見解並びに対策を伺います。
 ところで、国内では、この夏、大きな風水害に遭いました。その被害は甚大であり、お亡くなりになった方々に対し心からお悔やみを申し上げますとともに、被災された方々の一日も早い復旧に政府は全力を挙げるようお願いしておきたいと存じます。
 また、新宿の雑居ビルで起こった火災により、実に四十四名の方が亡くなられましたが、大都市に避けられぬ密集したビルの火災は、何とも痛ましい限りであります。心から御冥福をお祈りしたいと存じます。
 さて、景気対策について伺います。
 景気は悪化の一途をたどっております。今年度第一・四半期の実質成長率は、年率でマイナス三・二%と予想されます。当初予想のプラス一・七%との差は四・九%となり、税収も減少は避けられません。名目値はさらに大きく、昭和恐慌以来の年率マイナス一〇・八%に落ち込むと予想され、失業率も五%台に突入しました。
 そこで、まず、財政政策についてお尋ねをいたします。
 総理は、十四年度予算における国債発行額を三十兆円以下に抑えることを目標とする方針を掲げられ、十三年度の補正予算の編成に当たっても同様の方針で取り組むと指示を出しておられます。
 我が国の公債発行残高が今年度にも六百六十兆円、GDPの実に一二〇%を超えると見込まれる中で、私は、こうした総理の方針は重要であると考えます。ただし、財政はあくまでも経済の安定と成長を実現するための手段でありまして、財政規律そのものを目的化してはならないと考えております。
 日本を取り巻く経済状況は、テロを含め、年当初とは大きく変わっております。財政再建を不況下でなし遂げた国はありません。ありていに言えば、三十兆円にこだわって日本経済をこれ以上失速させてはならないとも考えております。
 公共工事はすべて悪かのごとき昨今の風潮の中で、二十一世紀、再び日本が繁栄するために必要な社会資本は何かを考え、決断すべきであります。例えば、光ファイバー、環境、医療、治安等々が考えられるところと思いますが、総理の御見解を伺います。
 景気対策上、申し上げるべき必要もありませんが、構造改革によって急激な変化を要求されて痛みを強いられるのは、常に中小零細企業であります。しかるべき配慮が必要な点についても、言及いただきたいと存じます。
 次に、金融政策についてお尋ねをいたします。
 私は、戦後初めてのデフレ脱却のためには、具体的な需要をつくり出すといった政府の経済財政政策のもとに、財政と金融が一体となった政策が発動されるべきだと考えます。
 インフレ対策が日本銀行の仕事なら、デフレ対策も日本銀行の仕事であって、物価は下がっていれば物価は安定しているかのごとき発想は、明らかに間違っています。日銀として、せめて二年後の物価は今よりは下がっていないぐらいの目標を立てられても当然と思いますが、総理の御所見を伺います。
 次に、証券税制についてお尋ねをいたします。
 株式市場は、一万円を割り、一九八四年以来十七年ぶりの低水準に落ち込んでおります。米国におけるテロ事件などの特殊要因も働いているとは考えられますが、最大の問題は、我が国の個人投資家が株式市場から逃げていることであります。
 昨年一年間で見ても、個人は約二兆円を売り越しております。ドイツなどと同様に、抜本的な証券税制の改革など思い切った方策を講じることにより、個人金融資産一千四百兆円のうちわずか数%が証券市場に戻るだけで、持ち合い株式の解消を含む売り圧力を優にカバーできるということになります。
 間接金融から直接金融、貯蓄から投資への流れを促し、個人投資家が参加しやすい活発な証券市場の確立を促すための証券税制改革を、この臨時国会中にぜひとも実現させるべきだと考えますが、総理のお考えと御決意をお聞かせください。
 雇用対策につきましては、八月の完全失業率が五・〇%と過去最高となり、有効求人倍率も、前月より〇・〇一ポイント低下して〇・五九倍となるなど、厳しさを増しております。さらに、不良債権処理の促進、景気低迷の深刻化などに伴い、雇用情勢のさらなる悪化が懸念されるところであります。
 これまで、政府・与党は一体となって、一連の経済対策、雇用対策に取り組んでまいりました。しかし、米国経済の低迷に端を発した製造業を中心とした生産の後退に加え、戦後初めてのデフレ状況のもと、日本の景気は悪化を続けております。さらに、今回のテロ事件によるアメリカ経済の消費の落ち込みは、アメリカ経済をさらに厳しいものにすると予想されます。
 新しい経済状況が発生しておりますのは明白であります。政府は、総理の所信表明にも述べられているように、経済財政政策は柔軟かつ大胆に、そして迅速果断に実行することが、我が国経済を再び回復軌道に乗せるために必要なことであると考えます。
 特に雇用につきましては、引き続き厳しい情勢が懸念されることに対応し、民間の職業紹介機関と連携し、就業あっせんの実効性を高めるため、法令及び政省令の見直しを行うとともに、万全の財政措置を講ずるべきであると考えております。
 失業率五%、戦後最大と言われております一方、企業の求人率もまた、三・九%、戦後最大と言われている現実を踏まえ、単純に失業手当を延長するようなことではなく、構造改革に対する痛みを和らげるための手段を伺います。
 次に、我が国の社会保障制度が抱える喫緊の課題、すなわち、高齢化社会を見据えた医療制度改革のあり方について伺います。
 我が国の医療制度は、国民皆保険、フリーアクセスといった点で、世界でも最高水準のシステムを構築してまいりました。そして、今や我が国は、世界一の長寿国家となっております。
 しかしながら、小泉内閣の掲げる構造改革は医療分野においても必要であり、我が国医療の成果、到達点を大事にしながらも、国民が納得し、負担することのできるシステムをいかに構築していくのかといった厳しい課題に立ち向かっていかなければならない事態に直面をいたしております。医療制度改革は待ったなしです。
 今後の少子高齢化社会を見据えれば、社会保障の基本的なあり方に立ち返って考えていくべき課題であると考えております。
 そこで、当然必要となる社会保障の財源を今後いかに賄っていくのかという課題についてどのようなお考えなのか、総理にお伺いをいたします。
 都市再生についても伺います。
 我が国の都市は、九〇年代以降の経済の低迷の中で、特に、中枢機能が集中しております京浜圏、関西圏など、都市圏が国際的に見て地盤沈下いたしております。二十一世紀にふさわしい、豊かで快適な活力あふれる都市に再生させていく必要があります。都市の魅力と国際競争力を高め、我が国経済の牽引役とするためにも、国際都市にふさわしい国際交流機能の確保を図ることが重要であります。
 これらの課題への取り組みについては、個人金融資産の受け皿となる民間投資を喚起するなど、PFIなどによる民間の資金や能力を積極的に活用し、土地の流動化、経済の活性化につなげるべきであります。そのため、諸規制の柔軟な運用、街路などの関連公共施設の重点的な整備を図るなど、投資を取り巻く環境が速やかに整備されるよう十分な取り組みをお願いいたします。
 次に、IT関連についてお尋ねをいたします。
 私は、IT革命の推進は、十八世紀の産業革命にも匹敵する構造改革の原動力となるものであり、二十一世紀にふさわしい効率的な経済システムとして、日本経済本来の発展力を高める上で最も重要な位置を占めるものの一つであると認識しております。
 政府として、三月のe―Japan重点計画に加え、六月にはe―Japan二〇〇二プログラムを決定し、来年度における政府のIT革命への取り組みを一層明確なものとされましたが、さらに一層のIT革命の加速化が不可欠であると考えております。
 特に、電子政府の加速化は重要な課題であります。政府は二〇〇三年までに電子政府を実現するとしていますが、これは、行政の効率化に資するだけでなく、行政サービスの向上など国民の利便性の向上に資するものであり、また、国民が直接的にIT革命の成果を実感することができるものであります。
 政府としても、国として整備した管路、光ファイバーの未使用部分、通称ダークファイバーについて積極的に民間に開放するなど、民間によるインフラ整備が加速化されるよう環境の整備をすることが必要であります。IT革命の推進に対する総理の御決意について伺いたいと思います。
 農業政策について伺います。
 安心して暮らせる二十一世紀を築き、食料・農業・農村基本計画に掲げられた四五%という食料自給率の目標達成を図るために、政府として、今後、どのような農業の構造改革が必要であるとお考えなのでしょうか。
 また、水問題を初めとして、都市の問題は都市だけでは解決されません。森林を守り、おいしい水、きれいな空気に囲まれた生活空間などを確保するためには、都市と農山漁村が共生、交流することが必要であります。農山漁村の新たなる可能性の創出についてどのようなお考えなのか、お伺いをいたします。
 さらに重要なことは、我が国で初めて狂牛病の牛が発見されたことです。国民も大変心配をいたしております。風評が先行し、マスコミ報道により学校給食に牛肉を使わないなど、情報開示が不十分なための過剰反応に対し、政府の迅速的確な対応が必要であります。農林水産大臣の明快な答弁をお願いするものであります。
 さて、質問を終えるに当たって申し上げたいことは、総理の言われる構造改革には痛みを伴いますが、国民の高い支持のもとに断行されるのですから、我々もこれを支持することは当然であります。
 しかしながら、その一方で、平成十年からは連続して年間三万人を超える自殺者が出ていることも十分配慮いただきたいと思うものであります。先人の言葉に「一隅を照らすもの、これ国の宝なり」という言葉があります。高度経済成長を、家庭を顧みず懸命に働いてきた企業戦士たちの最後の行き着く先が、みずから命を絶たなければならないということでは、幾ら長寿世界一と誇ってみても、むなしく響くように感じます。
 私は、時々、NHKの「プロジェクトX」という番組を見ます。さまざまな分野で、不可能と思われる技術開発や困難な環境に意地と誇りをかけて取り組んだ多くの技術者や教育者のドキュメンタリーであります。それは、組織のリーダーたちが明確なよるべき指標を示し、実践することによって、部下たちが奮い立ち、熱い情熱を喚起した話でもあります。
 小泉総理も、国民の前に日本が目指すべき国家像を明快に示すことによって、国民が将来への希望をつなぎ、次代に託せる国家をつくり得ることを確信いたします。
 国民一人一人を守るためにも改革が求められているのであって、それなくして何の改革かということになりかねません。事態は極めて困難な状況下にあります。しかし、その困難な改革が今できるのは、小泉総理、あなたですと申し上げ、質問を終わらせていただきます。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 麻生議員にお答えいたします。
 米国において発生した同時多発テロに対する見解及び対策についてであります。
 このテロは米国で起こりましたけれども、我が国としても、主体的に、テロ撲滅あるいはテロ抑止のために立ち向かっていかなくてはならないと思っております。単に米国だけへの攻撃でなくて、民主主義社会、自由、平和に対する、人類に対する攻撃だという観点から、我が国としても毅然として立ち向かっていきたいと思います。
 かかる観点から、テロと闘うアメリカを強く支持するとともに、世界の国々と一致団結してこの問題に対応していく決意であります。さきの日米首脳会談において、私からブッシュ米国大統領に対し、直接お会いし、今のような考えをお伝えし、ともに協力してこのテロ撲滅のために立ち向かおうという意見で一致を見ました。
 先般、私は、我が国が実施する七項目の措置を発表いたしました。この考え方に基づき、今回のテロ事案への対応に当たっては、新規立法によるものを含む国際的な協力が重要であるとともに、国内各分野において、テロ防止に向けた具体的な体制を強化することも極めて重要であります。そのため、既に、関係省庁において、緊密な連携のもと、さまざまな措置を講じてきているところでありますが、国民の理解を得ながら、テロの根絶に向けた取り組みを一層強化してまいる所存であります。
 公共事業の重点的な配分についてであります。
 私は、国債発行額を三十兆円以下に抑えるという目標のもとに、五兆円を削減しつつ二兆円を重点分野に再配分するという方針で、歳出の思い切った見直しと重点的な配分に取り組んでまいります。
 具体的には、御指摘のように、光ファイバー収容空間などのITや環境問題への対応など、民間需要創出効果や雇用創出効果が大きい事業に重点的な配分を行ってまいりたいと思います。
 構造改革の推進の際の中小企業への配慮についてであります。
 セーフティーネットとしての信用保証制度などを活用して、中小企業への円滑な資金供給の確保を図ります。また、中小企業の経営革新を支援するため、資金調達手段を多様化するとともに、人づくりや技術開発などの支援策を強化することとしております。
 金融政策についてです。
 我が国経済の現状を見ると、継続的な物価下落は経済にさまざまな悪影響を与えており、できるだけ速やかに物価下落を阻止することが必要であると考えております。
 日本銀行においても、物価の継続的な下落を防止するため、最大限の努力を続けていく方針である旨表明しており、引き続き、適切かつ機動的な金融政策を行うよう期待しております。
 証券税制についてのお尋ねです。
 国民一般が安心して証券市場に参加できるよう、透明性、公平性の高い証券市場を構築する必要があると考えております。貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方の切りかえ、これが必要であるという観点から、今国会に税制の見直しのための改正法案を提出したいと考えております。
 構造改革に対する痛みを和らげるための手段についてであります。
 先般、産業構造改革・雇用対策本部において、補助教員の採用などによる新たな雇用の創出、民間活力の活用などによる雇用のミスマッチ解消、より効果的に訓練を実施できるよう訓練延長給付制度の拡充などによるセーフティーネットの整備を柱とする総合的な施策パッケージを取りまとめました。
 このうち、直ちに取り組むべき施策については、改革先行プログラムに盛り込み、補正予算を活用しつつ集中的に実施してまいります。また、法律上の措置を要するものに関しては、早急に法案を取りまとめ、今国会に提出するなど、法令面の整備をあわせ行います。
 社会保障に関するお尋ねです。
 これから高齢化社会、少子社会を迎えるに当たりまして、給付は厚く、負担は軽くというわけにはいきません。
 そこで、我が国としては、社会保障費用については、社会保険方式を基本としつつも、利用者負担、保険料、公費をいかに適正に組み合わせるか、これが重要であると考えております。
 とりわけ、医療保険制度改革については、改革待ったなしという財政状況にあります。この方針に基づいて、本年末には改革案を取りまとめ、来年の通常国会に所要の法律案を提出すべく全力を尽くします。
 都市再生についてです。
 都市の魅力と国際競争力を高めるため、まず、都市再生本部において既に決定した八つのプロジェクトについて、各界の英知を結集し、積極的に推進を図ります。
 次に、現下の厳しい経済状況を踏まえ、民間都市開発投資の前倒し拡大を図るための緊急措置に早急に着手します。具体的には、関係地方公共団体と一体となって、都市計画、建築規制等の諸規制の柔軟な対応、関連公共施設の重点的な整備に取り組むなど、民間都市開発プロジェクトを強力に支援してまいります。
 IT革命の推進についてです。
 これからの日本経済の発展力を高めるために、IT革命の推進は不可欠と考えております。
 政府は、IT革命推進の行動計画として、本年三月に、e―Japan重点計画を定めました。六月には、来年度に重点的かつ戦略的に推進すべき事項をe―Japan二〇〇二プログラムとして定め、さらに九月には、これらの計画の加速、前倒しを決定したところです。政府は、電子政府を実現するための施策などに集中的に取り組み、世界最先端のIT国家の実現に向けて全力を傾けてまいります。
 農業の構造改革についてです。
 我が国の農業は、国民に対する食料の安定供給はもとより、国土の保全、都市住民に対する憩いの場の提供など、多面的な機能を有しております。
 このような農業を将来にわたり発展させていくため、食料自給率の向上に向け、全農家への一律政策をやめ、意欲と能力のある経営体に農業経営の規模拡大や法人化の推進などの施策を集中化するとともに、米の生産・流通システムを見直すなど、農業の構造改革を進めてまいります。
 農山漁村の新たなる可能性の創出についてのお尋ねであります。
 議員の御指摘のとおり、都市と農山漁村の共生と交流を進めることが重要と考えられます。
 このため、美しい環境に囲まれ、快適に過ごせる社会、地方の知恵が活力と豊かさを生み出す社会の実現に向け、都市住民にゆとりが得られ、農山漁村の住民には都市の持つ魅力を享受できるような施策を推進してまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)
    〔国務大臣武部勤君登壇〕
○国務大臣(武部勤君) 麻生議員の御質問にお答えいたします。
 狂牛病に係る情報開示の迅速的確な対応についてのお尋ねであります。
 今回の事態を踏まえ、農林水産省と厚生労働省が連携いたしまして、まず、中枢神経症状のある牛すべてを検査し、焼却処分とすることにいたしました。また、屠畜場における三十カ月齢以上の牛はすべて徹底検査を行うことといたしました。そして、それから初めて流通に回すという体制をとることにした次第であります。これにより、今後は、BSEが疑われる牛が屠畜場から食肉としても飼料原料としても出回ることのないシステムを確立した次第であります。
 また、先週二十八日には、厚生労働省と共催で、約四百人の消費者、流通・食品産業、農業団体の方々にお集まりをいただき、BSEが疑われる牛の肉等が食用にも飼料用にも出回ることがない体制が確立したことを直接御説明するとともに、今後の対応について、さまざまな御意見をお聞きしたところであります。
 そこでのさまざまな御意見を踏まえ、肉骨粉の誤用や流用をなくし、国民の皆様の不安を解消するためにも、BSEの主な感染源とされている肉骨粉については、十月四日から、すべての国からの輸入の一時停止のみならず、国内における製造販売の一時停止を決定し、本日公表した次第であります。これにより、完全にBSEの感染を遮断する体制ができたと確信しております。
 BSEが疑われる牛の肉等が食用にも飼料用にも出回ることがないことを説明したパンフレットを一千万部作成し、小売店等で幅広く配布しているところでありますが、今後も、あらゆる媒体を通じて迅速かつ正確な情報を公開し、国民の皆様に対してもわかりやすく説明を行うとともに、厚生労働省を初め政府全体として風評の鎮静化に全力を尽くしてまいります。また、感染経路や飼料給与の実態等、今後なすべき問題の究明と対応に万全を期してまいる次第であります。
 今後ともの御鞭撻をお願いしたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
○副議長(渡部恒三君) 北橋健治君。
    〔北橋健治君登壇〕
○北橋健治君 私は、民主党・無所属クラブを代表し、鳩山由紀夫代表に続いて、小泉内閣総理大臣の所信表明に対する質問をいたします。(拍手)
 鳩山代表に答える小泉総理の言葉には、私は、温かみというものを感じませんでした。官僚が原案をつくることは当然でございますが、そこには総理のリーダーシップというものを感じることができません。ぜひとも、私の質問に対しまして、雇用不安というのは切実な国民問題でありますから、あなたのお言葉でお答えいただけるように、まず要望させていただきます。(拍手)
 所信表明で、あなたは、雇用不安の払拭を図ると言われました。失われた十年、国民は実に多くの大切なものを失ってきました。特に雇用不安は、社会の根幹を揺るがす深刻な状況にあります。ある市民アンケートによれば、自分の周辺に失業者がいると答えた人は、三人に一人の割合になっています。これは過去十年にわたる失政の産物だとは連合の鷲尾会長の指摘でありますが、まさに国民の声ではないでしょうか。
 日本の再生は、金融改革と並んで、雇用の安心を取り戻し、同時に、福祉など未来の安心を取り戻せるかどうかにかかっています。今、国民が知りたいのは、決意やスローガンではありません。改革の具体的中身であります。経済再生への総理の基本的な姿勢をまずお尋ねし、本当に雇用の不安をこの国会で払拭できるか、具体的に、以下、質問をいたします。
 まず、総理の認識でありますが、総理は所信の中で、公共職業安定所には求職者を上回る年間七百万人もの求人があって、バブル期に匹敵する水準だ、だからミスマッチの解消にはインターネットの活用が大事だと言われました。正直言って、多くの国民はどう聞いたでしょうか。およそ現場の厳しい情勢からかけ離れた御発言ではないでしょうか。
 なぜ今、求人と求職のミスマッチが起こっているのか。それは、職を求めても、冷酷非情な年齢制限があったり、大幅な賃金ダウンなどの越えるに越えられぬ困難な状況が待っているからであります。有効求人倍率は、今〇・五九倍にすぎない。失業者は、今や五%とは言えなくなっています。内閣府によっても、就職をあきらめた若い人や主婦の方々など四百二十万人を加えると、失業率は既に一〇・四%に達しています。今、高校、大学を出ても就職のできない人々が二十数万人に上り、身分の極めて不安定なフリーターの仕事で二百万人近くの人が頑張っています。
 総理はこの厳しい雇用情勢を正面から本当に受けとめていらっしゃるのでしょうか。まず、その認識をお伺いいたします。
 また、これからの雇用政策を立案するに当たって重要なことは、失業がこれからどれだけ発生をするか、また同時に、雇用を幾ら創出できるかという見通しであります。雇用の創出を、突然、経済諮問会議で出たように五百三十万人、それも規制緩和だけでとは驚きでありますが、そのような大きな数字が出れば、予算その他対策は縮むかもしれません。
 今、政府内部の試算には、官庁、部署によって相当なばらつきがあります。これからの雇用政策を論議するに当たりまして、総理のお言葉として、統一的な見解を聞かせていただきたいと思います。
 次に、私は、雇用対策の位置づけという問題についてお伺いします。
 歴史に残る経済不況打開のモデルは、何といってもあのアメリカのニューディール、新規やり直し政策でしょう。まさに、ダム建設など大規模な公共事業でありました。今、イギリスでは、ブレア労働党政権のもとで、大胆かつ抜本的な雇用対策を断行しております。そして、着実に実績を上げていますが、その政策は同じくニューディールと呼ばれているのを御存じでしょうか。景気対策は公共事業から雇用対策に移ってきたことの象徴ではありませんか。雇用不安こそ、個人消費そして国民経済を凍らせる不況の原因にほかなりません。
 雇用対策は、不良債権処理の事後処理ではなく、今や景気対策の最大の柱と位置づけ、公共事業などほかの予算を削ってでも、何としてでも雇用対策に予算をシフトさせる、その決意が求められています。しがらみを断ち切って予算の優先順位を変えていく、それが構造改革にほかなりません。総理の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
 歴代内閣は、この間、七次にわたり緊急雇用対策を次々と打ち出してきました。しかし、いずれも雇用状況の根本的な改善には結びついていません。例を挙げると、緊急雇用創出特別奨励金では、二十万人の目標が何と七千五百人です。新規・成長分野雇用創出特別奨励金では、十五万人の目標が三万七千人にとどまっています。この現実を直視し、しっかりと従来の手法を総括すべきときであります。
 反省なくして決して前進はありません。過去の雇用対策のどこに欠陥があったと考えるか、総理の明快な答弁を求めます。
 雇用のセーフティーネットの整備は、焦眉の急であります。所信では、補正予算の規模が先送りになっていることは極めて遺憾であります。メニューの輪郭は見えてきましたが、財政的裏づけもなく、政策論議をすることは困難です。夏休みに一体官庁は何をしておったのでしょうか。雇用対策予算は幾ら必要なのか、最低これだけは必要だという見解をぜひ示すべきであります。
 民主党がことし六月に提唱している雇用のセーフティーネット案を紹介します。
 新たな働く場所づくりと並行して、今後三年間で雇用保険制度を充実、安定させるために、二兆円の基金創設が必要と試算しました。また、雇用保険の給付が終わった失業者や自営業を廃業せざるを得なくなった人たちのためにも、二兆円規模の、そして最長二年間の職業能力開発の支援体制が不可欠と考えます。
 これらは、政府・与党が考えている以上に大規模で長期的な内容ですが、これだけやらなければ効果は上がらないという意味であります。ぜひとも総理の御賛同を求めたいと思います。
 次に、雇用におけるミスマッチの解消についてであります。
 雇用におけるミスマッチの解消には、何といっても職業紹介、職業訓練の一体化が先決であり、手始めにまず官庁の職業紹介、職業訓練の担当部局を統合すべきときではないでしょうか。能力開発は、官主導の時代から民主導に、そのかわり、ルールを明確にして、民間活力を大胆に活用するときであります。
 この見地から、民主党は、長期失業者に対するきめ細かいカウンセリング、職業訓練、職業指導、再就職を一貫して行う長期失業者就職実現プログラムを創設する、民間職業紹介所に業務を委託し再就職に結びつける、特に多数の失業者が見込まれる業種からの転職については転職可能な職業訓練コースを充実させること、キャリアアドバイザーを資格認定しミスマッチ解消に向けてプロを養成していくこと、就職を仲介する民間の職業紹介事業が求職者から手数料を徴収することができる個人契約型職業紹介サービスを導入するなどの方針を採用すべきだと考えます。総理の御賛同をいただけるか、御所見をお伺いします。
 さて、私はここで、政府の雇用対策の中で一つ重要な問題について苦言を呈したいと思います。
 現在検討されている労働者派遣制度、有期労働契約、裁量労働制の見直しは、一体だれのための手直しでしょうか。私は、派遣元、派遣先企業、労働者の利便性向上につながる面があることは否定しません。しかし、中高年に対するリストラを初め厳しい雇用状況や再就職難の状況を踏まえると、常用労働者を派遣労働者に置きかえていくなど、雇用全体の拡大にはつながらない、かえって雇用の不安定化を招くのではないかという懸念を持たざるを得ません。拙速な見直しは問題と思いますが、いかがお考えでしょうか。
 小泉総理は、二年間中断していた政労会見を再開されました。二十一世紀最初のメーデーに出席をされました。あのメーデーで何十万人の人々がプラカードに同じ趣旨のことを述べていたと思います。ぜひとも総理のリーダーシップによって、この問題について政労使の対話を開始するように求めるものであります。
 今回、政府の緊急雇用創出プランはようやく芽を出した程度ではありますが、公共的な分野で雇用を先導的に生み出していく努力は重要と考えます。民主党は、さらに加えて、環境リサイクルなど環境分野、そして延長保育、育児アドバイザーなど多様な保育サービス、学童保育への支援拡充、そして、技術支援を目的とした海外支援プログラムも必要だと考えます。雇用不安払拭のためには百四十万人ぐらいを目指すべきだとの連合の有力な意見もありますが、緊急雇用創出プランのさらなる拡大について、総理の見解を求めます。
 同時に、問題点が指摘されている緊急地域雇用特別交付金制度は、最長六カ月、更新ができない、常用雇用につながらないなどの批判があり、雇用創出効果を十分吟味して有効活用されるよう、雇用期間の延長、二回更新の是非などについて拡充見直しを行うべきでありますが、御意見をお伺いいたします。
 民主党は、結党以来、非営利活動法人、NPOに対する支援体制を提唱してきました。世界では、今、千八百万人が教育、福祉などのNPOで有給で働いています。NPOの雇用創出効果は極めて大きく、私は、雇用創出の主要な柱に据えるべきだと考えます。四千八百九十五の登録NPOが今後力をつけていくためには、アメリカのような税制の抜本的支援が不可欠ですが、政府の姿勢は、残念ながら決して温かくありません。
 NPOは、きょうから税制の優遇措置の申請に入っていきますが、関係者の間では、国税庁の認定基準が厳し過ぎ、ほとんど認定されないのではないかと嘆いています。財政的な基盤なくして大きな前進はありません。NPO税制を前進させる、そして我が国におけるボランティア活動の拠点をしっかりとつくっていく、そのことについての総理のリーダーシップを求めるものであります。
 以上、私は、雇用対策について質問をしてまいりましたが、雇用とともに、未来の安心を取り戻すことがこの国の再生のかぎになっていると思います。
 その点、総理の所信表明には、社会保障制度について、年金、介護には触れず、医療制度を再構築するため改革案を取りまとめるとだけ言及をされました。
 九月二十五日、厚生労働省が公表した医療制度改革試案は、国民、患者への大幅な負担増と給付削減策にほかなりません。しかも、国民の最大の関心事である高齢者医療のあり方については、方向性すら示されていません。健康保険の財政悪化の問題は放置されたままです。医療と医療保険制度の将来の明確な姿は全く示されていないのです。しかも、政府・与党内の議論を見ていると、厚生労働大臣が私案をつくる、各党も試案づくりに入ると伝えられ、混迷を深めています。
 総理、この案は、あなたが目指す構造改革の名に値するのでしょうか。将来不安を増幅させるだけの内容では、到底国民は納得できません。
 かつて小泉総理は、厚生大臣在任中に、医療制度の抜本改革と薬価問題をいずれも先送りし、改革を実現されませんでした。
 総理はこの試案をどう見ていらっしゃるのでしょうか。事前に了承されたのでしょうか。民主党は直ちにこの試案の撤回を求めますが、総理の決断を求めたいと思っております。医療制度抜本改革は小泉構造改革最大の試金石であると申し上げておきたいと思います。
 介護保険について、総理は触れられませんでした。思い起こせば、一昨年の国会で、政府は突然、全額赤字国債によるあの場当たり的な見直し案を提起し、私たちの反対を押し切って成立させました。あの見直しがどれだけ福祉の現場の混乱を招いたか、介護保険制度の将来に大きな禍根を残したか、記憶に新しいところであります。
 国民は、介護保険料、サービスの質について、総理が今後どういう方針を打ち出すか見守っています。総理はこの間、介護サービスの進展を踏まえ、国民のニーズを酌み取りつつ、中長期的に制度の安定をどう実現するか、ビジョンを明示すべきであります。
 今、若年層を中心に、年金に対する根強い不信感が渦巻いています。ことしの世論調査では、国の年金制度を信頼している人は、何と二十代で二割にしかすぎません。三十代で二三%、四十代でも三三%と、過去最低まで激減しています。国民全体で、年金を信頼していない人は、実に五四%にも達しています。また、将来支給される年金額がわからないことが不満の第一に挙げられています。年金の将来について、今日ほど国民の不安が高まっていることはありません。この現実を総理はどう考えますか。
 年金制度改革について、政府は、骨太方針の中で国民年金の空洞化は指摘しましたが、具体的対策には言及がなく、国民年金に対する危機感が全く感じられませんでした。そして、今回の所信表明にも触れられていません。まさに、問題の先送りではありませんか。この際、年金改革の方向づけを総理は国民の前に明確にすべきであります。
 生命保険は、社会保障制度を補完する自立自助の生活保障手段であります。九割の国民が加入している今日、昨今の生保の相次ぐ破綻によって、未来への安心は大きく揺らいでいます。これは、年間一兆数千億円に及ぶ逆ざやの発生が主な原因であり、年金生活者などの金利収入減と並んで、超低金利政策の副作用にほかなりません。
 生保の経営環境の改善について、予定利率の引き下げを含めた議論が、年初来、政府内部で行われてきました。生保の安定については、総理は大変お詳しいと思います、結論を出し、実行すべきときではないでしょうか。見解をお尋ねします。
 次に、私は、この経済不況の中からいかにして中小企業を守っていくか、そのセーフティーネットにつきまして質問をいたします。
 今、日本の勤労者の三千万人が中小企業で働いています。毎日、不況の痛みに耐えつつ頑張っています。不良債権処理を進めても、貸し渋りが解消するかは甚だ疑問であります。むしろ、地価の大幅下落に伴い、土地担保に見合って融資が縮減され、その結果、つぶれなくていい企業までが銀行の都合で息切れ倒産に追い込まれていくのではないか、民主党は事態を憂慮しております。今こそ、中小企業を守るために、手厚い支援が不可欠であります。
 この点、所信表明は、中小企業の資金調達手段の多様化や、やる気のある中小企業の連鎖的破綻を回避するための対策には触れておられますが、政府の施策は、その切実な現場の声にこたえているとは言えません。中小企業がこれから不良債権処理の道連れにされていかないために何をなすべきか、国会は早急にその答えを出さねばなりません。民主党は、そのために、具体的な提案を交え、以下、総理の見解をただしてまいります。
 第一に、個人保証の撤廃であります。
 政府は、年間十八万社にとどまる開業、創業を今後五年間で倍増すると言われています。しかし、銀行の土地担保主義の商慣習を改革しない限り、絵にかいたもちになることは目に見えています。
 起業家の多くは、土地担保が乏しく、資金の確保が事業スタートの隘路になっている上に、個人保証を強いられるため、つまずくとすべてを失い、二度と立ち上がれない状況に追い込まれるのです。しかし、アメリカでは、ニュービジネスが多数生まれ、大成功をおさめ、新規雇用をたくさん創出してきました。これは、土地担保と個人保証に制約をされていないため、一、二度失敗しても再起を期せるからであります。新規事業者に対するリスクキャピタルの市場を政府が整備してこなかったために、どれだけ多くのビジネスチャンスが失われたか、そして雇用が失われてきたか、まさに失われた十年の象徴であります。
 民主党は、この際、中小事業者向けに担保土地至上主義を転換し、個人保証の要らない事業者ローンの実現を目指して、まずは政府系金融機関から個人保証を廃止するように提案します。これは、総理の目指す「努力が報われ、再挑戦できる社会」にふさわしい制度改正だと思いますが、御所見を承ります。(拍手)
 政府は、今国会で、中小企業の資金調達手段に、売掛金債権約八十七兆円の一部について信用保証協会による新たな保証制度を創設する方針と聞きます。一兆円規模でのスタートのようですが、それでは焼け石に水であります。アメリカは十兆円規模であります。ぜひとも上方修正をすべきであると思いますが、規模の再検討を求めるものであります。
 次に、民主党は、中小企業に対する金融を、ディスクロージャー、情報公開を通じて円滑化するために、金融アセスメント法案、その成立を提唱してまいりました。
 これは、金融機関が経営者の人物評価、事業内容、企業の計画性や将来性をしっかりと評価し、地元の中小企業に積極的な融資を行い、有益な金融機関になっていくように環境を整備する内容で、借り手の責任ばかりではなく、貸し手の社会的責任も明確にし、事業者がむやみに貸し渋りに遭わないためのセーフティーネットであります。ぜひとも与党の皆様方の賛同を求めたいと思います。
 特殊法人の抜本的な見直しは、政府系金融機関についても着実に前進せねばならないことは言うまでもありません。同時に、銀行の貸し渋りから中小企業を守るための緊急避難的な役割も考慮せねばなりません。中小企業者へのしわ寄せにならないような配慮が不可欠と思いますが、見解をお伺いします。
 次に、下請対策の強化であります。
 経済の二重構造の中で、不況は下請企業にとって一層厳しさを増しています。現在、下請中小企業が親企業の優越的な地位の濫用によって不利益をこうむらないよう、法律はあります。しかし、ほとんどの中小企業は報復を恐れて泣き寝入りをしているのが実態ではありませんか。
 民主党は、この際、サービス産業への適用も拡大し、罰則を強化するなど、下請代金支払遅延等防止法の改正案をまとめましたが、政府は、ガイドラインを策定し、行政指導で対処する方針を変えようとしません。しかし、官庁の主張している行政指導の手法は、過去五年間にわずかに何と一件の実績しかありません。行政指導という手法は、下請企業の保護には余りにも非力と言わねばなりません。法案の成立に協力していただけるか、総理の見解を求めます。
 さらに、整理回収機構の強化に関して、産業再生委員会の設置を提案する総理のブレーンの発言がありますが、今後、整理回収機構が新たに行う企業再建スキームとは一体どういうものなのか、そこには企業の生き死にがかかってくるだけに、明快なビジョンの説明を求めたいと思います。
 次に、私は、我が国の経済産業の活性化について、特に緊要の課題と思うことについて触れたいと思います。
 総理は、株価にも一喜一憂しないと言われますが、平均株価一万円割れの衝撃をどう受けとめられたのでしょうか。一国のリーダーとして、マーケットに対して経済再生への強いメッセージを送るべきではなかったでしょうか。所信を見ても、今回、抜本的な証券税制は先送りされています。証券市場の問題は、今や緊要の課題であります。
 民主党は、目先の株価対策のために証券税制の朝令暮改を繰り返すことには反対です。しかし、証券市場への個人投資家の参入を促進し、明治以来、間接金融に偏った日本の金融システムを改め、直接金融をより重視した構造に変えていくための改革は思い切って進めるべきだと考えます。
 そのためには、バブル期に発生した損失補てんや相場操縦、インサイダー取引などの不公正取引が証券市場に対する個人投資家の信頼を失わせる大きな原因となっている事実を直視し、まず証券業界や市場自体への国民の不信感を払拭する対策が不可欠です。
 現在の証券監視委員会の陣容で、果たして日々の大量な取引が公正に行われるよう監視できるでしょうか。アメリカのような証券市場先進国は、独立した強大な第三者機関を持っています。我々は、日本の株式市場の健全な発展のために、日本版のSEC、証券取引委員会が必要と考えます。民主党は、既に、公正取引委員会のような独立性を持った証券取引委員会を設置する法案を衆議院に提出しています。総理に賛同を求めます。
 その上で、民主党は、抜本的な証券税制改革に踏み切るよう提案します。
 総理は、自民党をぶち壊しても日本を再生すると明言されています。株価の危機的な現状からしても、総理は、自民党税調の動きにとらわれず、速やかに証券市場の改革を決断すべきであります。所見をお伺いします。
 最近の自動車、電機メーカー等の相次ぐリストラを見ても、戦後日本経済を支えてきた民間産業においても雇用不安は深刻であります。産業界では、リストラへの対応や業績低迷のために、基盤技術への投資など、攻めの先行投資がすっかり冷え込んでいます。国際競争力は、十年前はアメリカと一位を争っていたのに、現在は二十七位に転落したとの推計もあります。国際競争力を回復するため、民間の研究開発、環境関連の設備投資には思い切った支援策を断行してはどうかと思います。
 知的財産権は、遺伝子工学など、米国にかなりおくれている現状にあると思います。我が国としても、抜本的な二十一世紀戦略を早急に確立すべきであります。
 世界的な保護主義の蔓延を許すならば、自由貿易体制の恩恵を最も受けてきた日本の受ける打撃は、はかり知れないものになります。農産物セーフガードの本発動は、そのトリガーになりかねません。これを回避し得るよう、我が国の農業再生のプログラムを早急に策定、実行するとともに、秩序ある貿易関係の構築を目指して、中国との外交努力に全力を傾注すべきであります。総理の強力なリーダーシップをお伺いいたします。
 環境問題について、所信では、ごみゼロ型都市、低公害車、食品リサイクルを挙げるにとどまっています。これらは民主党や市民団体がかねてより提唱してきたものであり、ともに前進させたいと思います。
 しかし、今、世界各国が直面している環境問題は、国民生活に大きな影響の及ぶ地球温暖化問題への対応であります。政府は、さきの日米首脳会談で、これに背を向けるアメリカ政府に同調し、結局、京都議定書の批准の決断を回避し、内外の厳しい批判を浴びたことは記憶に新しいところであります。総理は、美しい環境に囲まれ、快適に過ごせる社会を目標に掲げてはおります。言葉だけではありませんか。COP7に向けて、京都議定書の批准と経済的措置を含む国内法整備の取り組みについて、明快な方針を明らかにするよう求めます。
 終わりに、個人情報保護法案について一言触れたいと思います。
 民主党は、プライバシー保護に関する早急な法整備の必要性を否定するものではありません。しかし、政府の考え方は、報道規制とも疑われかねない条文があります。この点を削除して、法案の再検討を指示していただきたいと思います。総理の御所見を承っておきたいと思います。
 以上、私は、国民生活と経済産業全般について問題提起をしつつ、総理の御所見を伺ってまいりました。民主党は、与党と厳しく対峙しつつも、いつでも政権を担うことができるよう、常に建設的な提言、政策論議を行うよう努めてまいりました。内外ともに未曾有の困難な状況にある今日、国政運営に当たって、小泉総理が、我が党の主張にも十分耳を傾け、日本の将来を誤ることのないよう期待して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 北橋議員にお答えいたします。
 経済再生への基本姿勢についてであります。
 私は、我が国経済の潜在的成長力は十分あると思っております。そのために、改革なくして成長なし、この方針を堅持して、民需主導の自律的な経済成長の達成ができるように全力を尽くしていきたいと思います。
 雇用情勢や不良債権処理による失業の予測、今後の雇用創出の見通しについてです。
 現在の雇用情勢は、八月の完全失業率が五%であることに象徴されるように、厳しいものであることは十分に認識しております。また、主要行の不良債権を二、三年以内に最終処理することによって、失業する人はおおむね十万から二十万人程度と試算されているなど、雇用情勢がさらに厳しさを増すことも考えられます。
 一方、雇用拡大専門調査会の緊急報告では、雇用創出型の構造改革が実行されれば、今後五年間にサービス部門で五百三十万人規模の雇用創出が期待されるとの試算が示されています。
 今後、構造改革を進めていくためには、改革の痛みを和らげることが必要であり、先般、産業構造改革・雇用対策本部において決定した総合雇用対策に盛り込まれた、雇用の受け皿整備、ミスマッチの解消、セーフティーネットの整備のための施策を着実に実施してまいります。
 雇用対策を景気対策の最大の柱と位置づけるべきとのお尋ねです。
 国民の雇用不安に対する処方せんを明確に示し、改革の痛みを和らげることは政治の責任であります。
 このため、先般、産業構造改革・雇用対策本部において、補助教員、森林作業員等公的部門の雇用の創出や、規制緩和等による新たな雇用の創出、民間活力を活用した雇用のミスマッチの解消、効果的な訓練を実施できるよう訓練延長給付制度の拡充等のセーフティーネット整備、これらを柱とする総合的な施策パッケージを取りまとめたところであります。
 この中に盛り込まれた施策のうち、直ちに取り組むべきものについては、改革先行プログラムに盛り込み、補正予算を活用しつつ集中的に実施する等、雇用対策に万全を期してまいります。
 数次にわたり実施してきた雇用対策の評価についてです。
 昨年五月の「ミスマッチ解消を重点とする緊急雇用対策」を例にとれば、三十五万人程度の雇用・就業機会の拡大の現実化を図るとの目標に対し、約三十二万人の雇用・就業機会が創出されるなど、これまでの雇用対策は一定の下支え効果を上げてきているところであります。一方で、活用が不十分な助成金については、周知等を強化するとともに、例えば民間職業紹介所による雇い入れを対象に加えるなど、制度の改善を十月一日より実施します。
 今後とも、総合雇用対策に盛り込まれたものを初め、各種施策の効果的な実施に取り組み、雇用不安の解消に努めてまいります。
 補正予算における雇用の予算の総額についてであります。
 この総額については、真に必要な施策を積み上げて決定してまいりますが、歳入歳出の洗い直しを踏まえる必要もあり、現時点で具体的な見込みを申し上げることはできないことを御理解いただきたいと思います。
 民主党御提案のセーフティーネットについてのお尋ねであります。
 まず、雇用保険制度については、単純な給付日数の延長は、ただ失業者の滞留を招くだけに終わるおそれがあることも踏まえ、訓練延長給付制度を拡充することにより、能力開発を通じて再就職を支援していくこととしております。
 また、職業能力開発については、求職者に対する無料の職業訓練を実施するとともに、民間機関や大学等、あらゆる教育訓練資源を活用して、より長期間の訓練をより多く提供する等の具体的な強化を図ってまいります。
 雇用のミスマッチ解消についてです。
 先般の産業構造改革・雇用対策本部の総合雇用対策においても、雇用のミスマッチの解消を大きな柱の一つとしております。
 公共職業安定所等において、求職から訓練受講、就職までの一貫した支援の強化を図るとともに、民間就職支援会社を通じた再就職に対する支援を行うなど、官民連携した取り組みを推進してまいります。
 また、民間職業紹介事業所による求職者からの手数料徴収については、その範囲の拡大の検討を進めており、本年度中できるだけ早く結論を得て、措置を講じてまいります。
 労働者派遣制度、有期労働契約、裁量労働制の見直しに関するお尋ねであります。
 特に再就職が厳しい状況にある中高年齢者について、臨時緊急の措置として、中高年齢者の派遣期間の一年制限を三年に延長する措置等を内容とする法律案を本臨時国会に提出する考えであり、現在、検討を進めております。
 なお、労働者派遣制度全体や有期労働契約、裁量労働制の見直しについては、関係審議会で調査検討を開始したところであり、労使関係者の意見等も十分聞きながら、早急に検討を進めてまいります。
 公共的な分野を中心とした雇用創出についてのお尋ねです。
 公共的な分野を中心とした雇用創出は、大きな柱の一つとしております。このため、医療、福祉・保育などの分野における規制改革や、開業、創業の五年間での倍増などにより新市場、新産業を育成するとともに、地方公共団体と協力し、補助教員や森林作業員などの公的部門の雇用創出などの施策を盛り込んでおり、これらの施策により、雇用の創出に積極的かつ総合的に取り組んでまいります。
 緊急地域雇用特別交付金の拡充見直しについてのお尋ねであります。
 先般の産業構造改革・雇用対策本部の総合雇用対策において、新たな緊急地域雇用特別交付金を創設して、学校への教員補助者や環境保全のための森林作業員等の公的部門における緊急かつ臨時的な雇用創出を推進することを盛り込んだところであり、雇用創出効果がより一層高くなるよう、具体化に向けて検討を進めてまいります。
 NPO法人に対する税制上の措置についてのお尋ねであります。
 税制上の優遇措置の対象となる法人は、租税の減免にふさわしい公益性を有する必要があることから、事業活動について一定の情報公開を行っていること、活動資金につき広く一般からの支援を受けていること等の要件を満たすNPO法人について、その対象としたものであります。
 この制度は本日施行されたばかりであり、できるだけ多くのNPO法人にこの新たな制度を積極的に活用していただくことを期待しております。
 医療制度改革についてのお尋ねです。
 厚生労働省試案については、厚生労働相から報告を受けておりますが、これは一つの提案と認識しております。
 今回の医療制度改革においては、厳しい医療保険財政のもと、改革が待ったなしとなっておりますので、今後、自立自助の精神を基本に給付と負担の改革を行い、国民に信頼される、持続可能で安定的、効率的な制度に再構築していくよう努力いたしたいと思います。
 今後、厚生労働省の改革試案を踏まえ、年末までに政府としての成案を得て、次期通常国会に所要の法律案を提出すべく、全力を尽くしてまいります。
 介護保険は、施行後一年半を迎えたところであり、引き続き、介護を国民皆で支え合う制度として国民の間にさらに定着するよう、関係者の方々の声に十分に耳を傾けつつ、制度の周知に努めるとともに、介護サービスの質の向上など、運用面の改善に最善を尽くしてまいります。
 年金制度についてであります。
 公的年金の考え方と大切さについて徹底的に広報、普及を行い、特に若い世代の年金不安の解消に全力を注いでまいります。
 また、世代間の給付と負担の均衡を図り、お互いが支え合う、持続可能な安心できる制度を再構築するため、次期制度改正を平成十六年までに行うこととしております。
 これらを通じて、国民の不安を解消し、年金制度が国民の老後を支える役割を将来にわたってしっかりと果たすことができるよう努めてまいります。
 生命保険会社の経営環境の改善についてのお尋ねがございました。
 生命保険をめぐる総合的な検討に関しては、既に六月の金融審議会中間報告において、具体的な検討事項が取りまとめられたところであります。そのうち、予定利率引き下げの制度については、去る九月、制度導入の前提となる環境が整っていないとされ、まず財務基盤の充実等について、各保険会社、行政当局に必要な対応を求めることとされたところであります。政府としても、今後、そのために必要な検討を行ってまいりたいと考えます。
 中小企業者向け融資の個人保証についてのお尋ねです。
 特に創業者は土地担保に乏しい場合も多く、本人保証なしで資金調達できる環境の整備が必要です。今後、開業、創業を五年間で倍増すべく取り組みますが、その具体策として、ビジネスプランを審査し、担保や本人保証を求めないで創業者に対して融資できる制度を拡充します。
 また、創業者、中小企業者に対する直接金融についても、環境整備に努めてまいります。
 売掛金債権を担保とする融資に対する新たな信用保証制度についてのお尋ねです。
 これは、土地担保への依存から脱却し、中小企業の資金調達手段を多様化することを目的として、新たな信用保証制度を創設しようとするものであります。この目的を着実に達成できるようにするため、保証規模を含めて、新制度の具体的な内容については今後さらに検討してまいります。
 金融円滑化法案についてのお尋ねがありました。
 金融円滑化法案の詳細は承知しておりませんが、金融機関の融資業務等については、基本的には自主的な経営判断、すなわち市場メカニズムに従って行われるべきであり、何らかの措置を法的に義務づけることは慎重に考えるべきものと考えます。
 なお、先般の改革先行プログラムにおいても、中小企業を含む健全な取引先に対する資金供給の一層の円滑化に努めるよう、金融機関に要請することとしております。
 特殊法人改革についてであります。
 すべての法人について、ゼロベースからの徹底した見直しを行うこととしており……(発言する者あり)今般の改革は、こうした原則に基づき、簡素、効率的、透明な政府を実現する行政の構造改革の一環でありますが、経済的、社会的、その他緊急的な事態に対して、特殊法人等が真にやむを得ない場合に臨時的、暫定的役割を果たすことはあり得るものと考えます。
 下請法の改正についてのお尋ねがありました。
 民主党御提案の下請法の改正案については、詳細は存じませんが、下請法の規定については、経済情勢の変化等に応じ常に検討していくべきものと考えます。
 役務の委託取引において親企業が下請中小企業に対して不当な不利益を与える行為については、現行の下請法の対象となっていないところ、独占禁止法の優越的地位の濫用規制により厳正に対処していくとともに、下請法の対象とすることの妥当性について、その取引実態を踏まえて検討していくことが重要と考えます。
 整理回収機構による企業再建についてのお尋ねであります。
 今般の改革先行プログラムにおいて、RCCは企業再建に積極的に取り組むこととされたところであり、既に関係者間において具体的な取り組みに向け検討を進めていると承知しております。
 また、同プログラムにおいては、再建中の所要資金について日本政策投資銀行等の融資等の活用を図ることとされたほか、企業再建のための基金の設立を推進することとされております。RCCに対しては、これらの新たな枠組みを活用して、大企業はもちろん、中小企業の再建にも積極的に取り組むよう要請したところであります。
 民主党が衆議院に提出した証券取引委員会設置法案についてのお尋ねがありました。
 金融の担い手や金融商品が、銀行、証券、保険などの垣根を越えて一体化しつつある流れを踏まえると、銀行、証券、保険の各分野を横断的に所管し、企画、検査、監督、監視と機能別に編成している金融庁の現体制は、こうした流れと一致しており、機動的かつ総合的な政策の遂行が可能な体制であります。したがって、金融庁から資本市場担当部門のみを分離独立させて証券取引委員会を設置しようとする法案は適切ではないと考えております。
 証券市場の構造改革に関し、税制についてのお尋ねがありました。
 国民一般が安心して証券市場に参加できるよう、透明性、公平性の高い証券市場を構築する必要があると考えております。貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方の切りかえとの観点を踏まえ、市場の信頼向上のためのインフラ整備などを進めるとともに、透明性、公平性の高い証券市場の構築に資する税制の見直しを考えており、株式譲渡益課税に関する改正法案を今国会に提出したいと考えております。
 設備投資に対する支援策についてのお尋ねであります。
 投資減税につきましては、試験研究費に対する税額控除のほか、リサイクル設備や省エネ対策設備に対する特別償却などの租税特別措置を既に講じてきているところであります。
 なお、租税特別措置は、実質的には補助金の裏返しであり、課税の公平、中立を害するとともに、減収要因となっております。したがって、経済財政諮問会議の基本方針においても、租税特別措置について聖域なく徹底した見直しを行うこととされており、投資減税も含め、租税特別措置の政策目的、効果等を十分吟味し、見直しを行ってまいります。
 我が国の今後の知的財産戦略についてのお尋ねであります。
 知的財産権はいわば国富の源泉として一層重要性を増しているとの認識のもと、研究開発の促進、知的財産の保護、強化を図る視点に立って、知的財産制度の整備を積極的に進めております。
 今後とも、研究開発の成果である知的財産を保護し、これを積極的に活用して、我が国経済の国際競争力の強化につながるよう、知的財産権の創造とその適切な保護、活用のために必要な施策を講じていく考えであります。
 農産物セーフガードの本発動についてのお尋ねがありました。
 セーフガードは、自由貿易体制のもとで、輸入の増加による国内産業の重大な損害に対し、国内産業が構造調整を行うための緊急避難的かつ一時的な措置であり、その発動等の検討に当たっては、WTO協定及び関連国内法令に基づき、透明かつ公平、厳正に対応してまいります。
 ネギ等三品目の暫定措置は、これらの手法にのっとって発動したものです。確定措置への移行については、今後、輸入増加と国内産業の損害との間の因果関係の有無等を見きわめた上で、WTO協定及び関連国内法令に基づき、総合的に判断することとしております。
 一方で、ネギ等三品目については、国際競争にも耐え得る国内生産・流通体制の確立に向けて構造改革を実現していく所存であります。
 本件については、中国との間で対話を通じて解決することが重要であると考えており、引き続き、中国側と積極的に粘り強く協議を続けていきたいと考えております。
 京都議定書に関するお尋ねです。
 我が国としては、京都議定書の二〇〇二年発効を目指して、COP7までに最終合意を達成すべく、引き続き交渉に全力を尽くす考えです。
 その際、すべての国が一つのルールのもとで行動することが重要であり、米国を含めた合意が形成されるように、米国に対し建設的対応を求めるとともに、引き続き最大限に努力する考えです。
 また、京都議定書の目標を達成するための国内制度に総力で取り組み、規制的措置、経済的措置、自主的取り組みなどについて総合的に検討を進めてまいります。
 個人情報の保護に関する法律案についてであります。
 民間企業や行政機関等全般にわたり、ITを利用した大量の個人情報の処理が拡大しており、その流出が社会問題化するなど、個人情報の取り扱いに対する不安感が広がっているほか、国際的にも、整合性を保った国内法制の整備が急務となっております。
 法案は、報道を統制するものとは全くなっておりません。「基本原則は」、法律上、一律かつ具体的な義務を課するものでなく、個人情報を取り扱うすべての者に、個人情報の保護のために自主的に努力すべきことを定めるものであります。また、主務大臣が関与することにもなっておりません。
 以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(渡部恒三君) 太田昭宏君。
    〔太田昭宏君登壇〕
○太田昭宏君 私は、公明党を代表し、さきの小泉総理の所信表明演説に対し、質問をいたします。(拍手)
 初めに、米国における同時多発テロ事件で犠牲になられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに、いまだ行方のわからない被害者の方々と御家族、関係者の皆様、そして、米国国民の御心痛に対し、心よりのお見舞いを申し上げるものであります。
 世界を震撼させた今回の同時多発テロ事件は、二十一世紀の世界に課せられた余りにも多くのテーマの数々を暴力的に突きつけました。私は、常々、二十世紀はネーションステートが猛威を振るった時代、つまり、本来異なる要素である民族的なネーションと機能国家としてのステートが一体化されたネーションステートとして、国家と国家とが激突した世紀であったと思います。それに比して、二十一世紀は、ネーションとステートが分かれ、国家対国家という以上に、文化や宗教や民族の対立がリージョナルな形でより顕在化する世紀であることは間違いありません。サミュエル・ハンチントンの言う文明の衝突というよりも、むしろ、文化の衝突にこそ本質があると私は思うのであります。
 この二十世紀型の国家対国家の間隙を縫い、新たな対立の図式を残虐非道な形で見せつけた今回の事件を見るときに、こうした国家を超えた文化や宗教や民族の対立、衝突をどのように克服していくのか。紛争の構造的要因である貧困、飢餓、差別などのいわゆる構造的暴力問題にどう立ち向かうか。さらには、自由と開放のグローバル経済の中で、日本と世界の安全確保や危機管理システムをどう構築するのか。まさに、突きつけられた課題は山ほどあります。
 そして、その対応は、テロ事件への国際的連携による軍事的行動のみならず、外交的措置、さらには、より根本的な、憎悪を消すほどの異文化間の洪水のごとき対話促進など、まさに重層的かつ広範なものでなくてはなりません。私は、総理には、軍事的側面のみに偏るのではない、日本と世界の二十一世紀を見据えた重層的な視点に立ったリーダーシップを強く期待いたします。
 フランスの哲学者ベルクソンは、問題は正しく提起されたときに既に解決であると言いましたが、テロ撲滅という課題と、暴力と報復の連鎖を回避するという重い課題を前にして、総理に、今回のテロ事件をどうとらえるか、また、テロ根絶への基本姿勢について、まずお聞きしたいのであります。
 さて、今回のテロ事件において踏まえなくてはならないのは、第一に、平和と自由と民主主義への不当な挑戦であるテロに対し、我が国は主体的に闘う意思を明確に持つということであります。第二に、テロと断固たる決意で闘う米国を支持するとともに、国際社会に対する共通の脅威であるテロに対し、世界的なテロ包囲網をつくることであります。九月十九日、総理は基本方針と七項目の対策を発表し、さらに二十五日には、ブッシュ大統領と会談、その意思を明確に表明したことを率直に評価したいと思います。
 その上で、以下の諸点について総理の見解を伺うものであります。
 国際テロ組織に対する軍事制圧には、新たなテロの続発を生むおそれもあり、冷静な対応が必要であることは言うまでもありません。しかし、国際社会が今回、軍事的対応を含めた断固たる措置をとらねば、今後、テロが世界の平和と安定に一層重大な脅威となることは必定であります。
 したがって、国際社会が現在、テロに敢然と闘おうとしている中、我が国が憲法の許す範囲内で、主体的にテロと対決し、テロと闘う米国等へ協力を行うのは当然であります。そのため、特に我が国としてやるべきは、医療や難民救援等の人道的支援を中心に取り組むことであります。このことは、自由と民主主義によって立つ国際社会の一員として極めて重要であります。
 ただ、立法に当たっては、あくまで武力行使と一体化しない、戦闘地域と一線を画した地域で、医療や難民救援、物資の輸送などの、周辺事態法の定めるいわゆる後方地域支援が行われるべきであります。この活動は他国の領域内でも行われるものと予想され、当然、慎重かつ機敏な対応、指揮が必要であります。こうした観点から、派遣した自衛隊員の安全確保をどのように図っていくのか、総理の方針を伺いたいと思います。
 一方、国際的連携に基づく外交的な措置、イスラム諸国への働きかけなど、テロ集団への国際的包囲網の強化が重要であります。今後、どのような対応を考えているのか。また、昨年の九州・沖縄サミット等でもテロ対策の強化が確認されてきましたが、日本は、テロ関連の十二条約中、爆弾テロ防止条約、テロ資金供与防止条約をいまだ批准しておりません。各国が批准を進める中、なぜ批准がおくれているのか、臨時国会中にも批准できるよう準備を急ぐべきと考えます。さらに、今回の非道な行為の犯人を法のもとで裁く、常設の国際刑事裁判所の創設に向けても積極的に努力していくべきですが、あわせて、政府の方針を伺いたいと思います。
 今回のテロ事件を契機に、米軍施設などの警備に自衛隊が当たれるよう、法改正の準備が進められています。しかし、こうした警備は第一義的に警察が行うというのがこれまでの我が国の大原則であります。私は、自衛隊が警備を行う場合でも、この原則を崩すことなく、両者が有機的連携を保てるような防備体制を確立すべきだと考えます。
 同時に、通常の銃器等を使ったテロ犯罪等に対する警察の対応能力アップや入国管理体制の強化、金融システムの保全等を含めた総合的な対策が必要と考えます。危機管理強化についての総理の基本認識を伺いたいと思います。
 次に、世界経済並びに日本経済の問題についてお伺いいたします。
 今回のテロ事件の発生を受け、世界経済は予断を許さない深刻な状況になっております。アメリカ経済の一時的な景気後退が必至な状況の中で、世界同時不況を断固として阻止するためにも、金融経済面における国際的な連携を密にしつつ、協調体制をより強化していくことが重要であります。日米欧の中央銀行は、テロ発生直後の素早いタイミングで、相次いで協調利下げを実施しました。今週末にはG7財務大臣会議がありますが、世界経済の安定に向け、強い決意で臨むことを期待いたします。
 小泉総理並びに塩川財務大臣に対し、世界経済の現状と今後の見通し、世界経済安定に向けた決意を伺いたいと存じます。
 我が国経済は、残念ながら悪化の一途をたどり、今がまさに正念場であります。
 私は、改革先行プログラム、改革工程表に示された方針を断固たる決意で実行に移すことはもちろん、特に、四月六日に連立政権で取りまとめた緊急経済対策の四つの柱の実行が大事だと考えます。すなわち、不良債権問題の解決、証券市場の構造改革、都市再生・土地の流動化、雇用の創出とセーフティーネットの構築等の課題について、この臨時国会で具体化を図るべきであります。株価低迷の中、証券税制の見直しは特に急ぐべきであります。答弁を求めるものであります。
 他方、我が国経済を取り巻く状況の変化を踏まえ、景気に十分に目くばせをしつつ、的確かつ機動的な対策を講じなければなりません。規制緩和、制度改革の前倒し実施など、いわゆる財政出動を伴わない景気刺激策の推進とあわせ、雇用対策、中小企業対策、保育所待機児童ゼロ、ごみゼロ社会実現など、構造改革を加速させる施策に特化した形で、平成十三年度補正予算の編成を急ぐべきであります。これらは、本年度マイナス成長にはしないためにも、最低限必要な施策であると考えます。よって、小泉総理の掲げる国債発行三十兆円以内の原則、節度は保ちつつも、必要な施策を積み上げた結果、補正予算における国債発行が多少ふえることはやむを得ないと考えております。
 小泉総理の構造改革への決意並びに経済対策についての所見を伺います。
 不良債権問題についてお伺いいたします。
 不良債権問題の解決は、我が国経済の新たな発展に向け、避けては通れない最重要課題であります。改革先行プログラムでは、新たに特別検査の実施と、適正な債務者区分と償却、引き当ての確保、買い取り価格決定方式の弾力化などのRCCの機能強化、さらには、中小企業の特性も考慮し、再生可能性や健全債権化についてきめ細かく的確な判断を行うこと、中小企業の連鎖倒産を防ぐための配慮などの方策を示されました。追加的な対応策の可能性も含め、二年、三年以内の不良債権問題の解決という公約実現に全力を挙げるよう求めるものであります。
 深刻化する雇用問題については、第一に、雇用の受け皿の整備、第二に、ミスマッチの解消、そして第三に、セーフティーネットの整備と、講ずるべき対策は既に明らかです。問題は、いかに実行するかにあります。
 私は、次の三点を強く主張します。
 まず第一に、新たな緊急地域雇用特別交付金制度を活用した公的主体による緊急雇用創出事業の実施であります。
 自然環境保全や介護支援、さらには学校補助教員の採用など、地域のニーズに沿った効果的な事業に取り組み、即効性のある雇用の受け皿づくりを進めるべきと考えます。
 第二に、再就職支援策の強化です。
 雇用ミスマッチの解消は、結局三点、つまり、情報と年齢と能力という三つに集約されます。そのためには、ハローワーク機能の強化だけではなく、民間の職業紹介機関等を活用し、求人企業の積極的発掘と、それにマッチした教育訓練、カウンセリング等を行う新たな再就職支援制度の創設が必要です。民間活用を進めたイギリスの例は極めて参考になると思います。
 第三に、離職者の方に対する生活支援策の強化です。
 特に中高年の失業問題は極めて深刻であり、住宅ローン返済繰り延べ制度の延長や離職者支援資金の創設、そして有利子奨学金の大幅拡充など、セーフティーネットのさらなる強化が必要と考えます。
 総理の御決意を伺います。
 次に、中小企業対策について伺います。
 中小企業こそ、日本経済の活力の源泉であります。米国でも、八〇年代中期以降、大企業がリストラをし、中小企業がそれを上回る雇用を拡大して経済活性化を果たしたという厳然たる事実を直視すべきであります。
 中小企業に対する貸し渋り、貸しはがしなどの声が聞こえる今、私は、中小企業の倒産を防止する観点から、臨時特例措置として行われた中小企業特別信用保証の返済期限の一定期間繰り延べ、また、それぞれの中小企業の実情を十分踏まえた上で、返済条件の変更に柔軟な対応を図ることを強く求めたいと思います。
 また、不動産担保の制約を脱却し、新たな資金調達の確保を図る売り掛け債権を担保とする融資制度の創設、あるいは、民事再生法で健全な再生計画に基づき再建手続を行っている企業が再チャレンジできるように、資金の確保を柔軟に行う再建企業向け融資の拡充、創設などを速やかに実施すべきであると考えます。
 また、融資判断の目ききを行う新たな評価機関を創設し、資金調達の多様化、安定化を図ることも大事であると考えます。
 これら支援策について、経済産業大臣のお考えをお聞きいたします。
 特殊法人等の改革について伺います。
 特殊法人等の改革が、廃止・民営化等を前提として、事業をゼロベースから見直し、財政支出の大幅削減も視野に入れて進んでいることを、私は高く評価するものであります。これまでの発展途上国型ともいえる政治・行政システムの転換のためにも、改革の断行は不可欠であります。ただ、特殊法人等の事業の見直しとは、実は、行政本体の政策手段を洗い直すことを意味いたします。したがって、特殊法人等の原則廃止・民営化はこのまま貫徹するとして、真に必要な施策については、改革後における全体像をもあわせて示し、きちんと措置していくことが重要だと考えます。
 例えば、住宅金融公庫のケースについてであります。公庫の民営化に対する期待の声がある一方で、廃止・民営化された場合の将来の住宅取得などへの不安の声が上がっていることも事実であります。
 私は、改革の歩みを停滞させてはならないと考えておりますが、同時に、民営化をするという場合でも、まじめに働く中堅勤労者のマイホームの夢を奪ってはならない、また、既に公庫から資金を借りている五百五十万世帯に不安を与えないなど、国民の目線に立って、改革後の施策の全体像を明確に示しつつ、丁寧に進めていくべきだと考えます。改めて、総理の御決意並びに御見解を承りたいのであります。
 また、特殊法人等への公務員の天下りが今後どうなるか、これまた国民の注目する課題であります。
 私は、公務員出身役員のわたりを排除し、すぐれた人材を広く民間から募集するとともに、情報を透明化し、仮に退職公務員が役員ポストにつく場合でも、報酬等の抑制を図り、これを退職公務員が社会に貢献する場としてふさわしいポストとすべきだと考えます。公務員のライフワークのあり方や、意欲を持って仕事に取り組むという問題ともあわせ、天下り問題にどのように対処されるおつもりか、総理の考えを伺うものであります。
 次に、公務員のあり方についてであります。
 政府に寄せられた国民の声を見ましても、定員の削減等、行政のスリム化、効率化に対する根強い要求があります。
 国家公務員の定員については、現在、十年間で二五%純減という目標のもと、着実に進められていると理解しますが、新たな行政ニーズへの人的配分と組織としてのスリム化、効率化という課題をどう両立させるのか。非常に重大な課題であります。総理の御見解を伺います。
 次に、衆議院選挙制度改革問題について質問をいたします。
 現在、衆議院議員選挙区画定審議会が、昨年十月の国勢調査の結果に基づいて区割り改定の作業を進めており、十二月には見直し案を勧告すべく、審議を行っております。現行制度では、十の道県での五増五減が行われることになっており、これらの県で区割りの変更が必要となっています。
 しかし一方、格差二倍以内を達成するためには、その他の都道府県についても、人口の少ない選挙区の区画拡大や、人口の多い選挙区の一部を隣接区に移すなどの具体的な格差是正に踏み込む必要があり、区割りの大幅な変更は避けられません。
 一方、行政区画が分割されている自治体が十七に上り、区市長や区市議会議員よりも狭い範囲から衆議院議員が選出されるという不自然な状態等を生じてまいりました。
 公明党は、このような現行制度の欠陥を是正し、かつ、定数を比例区削減分と合わせて五十削減するという抜本改正を図り、選挙制度の基本である民意の反映、格差は二倍以内、死票は極力少なくとの観点から、百五十選挙区、定数三の中選挙区制度を提案してまいりました。
 その間、与党三党で衆議院選挙制度改革協議会において協議を重ねた結果、九月二十日の同協議会で、現行制度を念頭に置いて改正を行うこととし、大都市を中心に特例として定数二から四の選挙区を設ける等の改革案の合意事項をまとめたところであります。
 自民党総裁でもある小泉総理に衆議院選挙制度改革へのリーダーシップを強く求めるものでありますが、総理の所感を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 太田議員にお答えいたします。
 テロについてでございます。
 米国において発生した同時多発テロは、米国のみならず人類全体に対する極めて卑劣かつ許しがたい攻撃であります。また、今回のような国際テロリズムは、従来のような主権国家同士の関係の問題としてはとらえ切れない新しい問題と考えられます。
 私は、テロリズムとの闘いは我が国自身が主体的に取り組むべき問題と認識し、宗教や文化にかかわらず、世界の国々と一致団結して、断固たる決意を持って立ち向かっていく必要があると考えております。
 政府としては、かかる我が国の決意を内外に明示するものとして、与党との協議を踏まえ、先般発表した七項目の措置を着実に実施することとしております。
 あわせて、テロを許さず、また、テロを起こさせないような国際環境の形成を目的として、異文化間の対話も含め、さまざまな外交努力等の適切な対応を行い、テロリズム根絶のため、あらゆる努力を尽くしてまいります。
 派遣される自衛隊員の安全確保についてでございます。
 自衛隊員がテロ攻撃に対応する諸外国の活動の支援や人道的精神に基づく被災民の救援に従事するに当たっては、その安全確保について万全を期すことが重要であることは言うまでもありません。具体的には、自衛隊による支援や救援を行う際の実施地域や武器使用権限などについて、派遣される自衛隊員の安全が確保されるよう最大限の配慮をしてまいりたいと考えております。
 このような考え方のもと、一日も早い法案成立を目指し、現在、法律案の作成に取り組んでいるところでございます。
 テロに関する国際協力についてのお尋ねであります。
 テロと闘うためには、金融・法制面を含め、国際社会があらゆる手段を講じることが重要であります。我が国は、そのような努力に積極的に参画します。
 御指摘の未締結条約については、国内法の整備等につき鋭意検討してきているところですが、今般の事態を踏まえ、爆弾テロ条約につき、締結準備作業を一層加速化するよう指示しました。テロ資金条約についても、年内に署名し、早期締結に向けて作業いたします。
 常設の国際刑事裁判所の創設に向けての政府の方針についてのお尋ねです。
 我が国は、国際社会における最も深刻な犯罪の発生を防止し、もって国際の平和と安全を維持する観点から、常設の国際刑事裁判所規程の採択のために努力してきたところであり、今後も、その設立に向けて取り組んでまいります。いずれにしろ、今回の非道な行為の犯人の処罰のための国際協力に、我が国として引き続き努力する考えであります。
 危機管理強化についての基本認識についてであります。
 今回の米国におけるテロ事件を目の当たりにして、私は、国家及び国民の安全を確保するための危機管理の重要性を改めて痛感いたしました。
 我が国の危機管理の強化に向けては、安全保障、治安、経済の安定など、多面にわたる努力が必要であります。このため、危機管理に当たる政府各機関がその対応能力を向上させ、相互の連携を強化するとともに、官民の有機的連携を図り、内閣のもと、全体として危機管理能力を向上させることが重要であると考えます。
 具体的には、警察機関の対応能力を向上させるとともに、情勢に応じて自衛隊と連携するなど、的確に事案に対応できる危機管理体制の確立に努めてまいります。このほか、出入国管理体制の強化や経済・金融システムの安定維持等、総合的な対策を進めてまいる考えであります。
 世界経済の現状と今後の見通し、世界経済安定に向けた決意についてのお尋ねであります。
 世界経済は、米国のIT関連産業の業況悪化を契機として、成長が同時的に減速しています。さらに、先般の米国における同時多発テロ事件により、先行きが一層不透明な状況となっております。今後は、米国経済にマイナスの影響があらわれてくる可能性があり、各国の経済動向にも注視が必要であると思います。
 日本としても、世界経済及び日本経済システムに混乱が生じないよう、米国を初めとする各国と協調し、状況の変化に応じた適切な対応を図ります。また、日本経済の再生は世界に対する我が国の責務であり、改革なくして成長なしの精神で、引き続き構造改革を推進する決意であります。こうした私の改革への決意については、ジェノバ・サミットなどにおいて、各国首脳からも強い期待が表明されております。
 四月六日の緊急経済対策についての具体化についてお尋ねがありました。
 議員御指摘のとおり、四月に取りまとめた緊急経済対策については、いずれも早急に対応すべき問題と考えております。
 このため、小泉内閣の発足と同時に、産業構造改革・雇用対策本部、都市再生本部を立ち上げ、それぞれ総合的な施策のパッケージを取りまとめ、具体的なプロジェクトを検討するなど、積極的に取り組んでおります。また、不良債権問題の解決に対しても新たな方策を導入し、証券市場の活性化にも積極的に取り組んでまいります。
 このうち、直ちに取り組むべき施策については、改革先行プログラムに盛り込み、補正予算を活用しつつ集中的に実施します。法律上の措置を要するものについては、今国会において早急に法案を取りまとめ、提出したいと考えます。
 証券税制についてのお尋ねです。
 我が国経済の再生を図るためには、金融・証券市場を通じて資源が効率的に成長分野に流れることが必要であり、そのためには、国民一般が安心して証券市場に参加できるよう、透明性、公平性の高い証券市場を構築する必要があると考えております。
 政府としては、貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方の切りかえとの観点を踏まえ、市場の信頼向上のためのインフラ整備などを進めるとともに、透明性、公平性の高い証券市場の構築に資する税制の見直しを考えており、株式譲渡益課税に関する改正法案を今国会に提出したいと考えております。
 構造改革への決意並びに経済対策についてのお尋ねであります。
 我が国経済については、雇用情勢を含め、厳しい状況にあります。しかし、ここで従来型の景気対策を繰り返していては、むしろ、将来に負担を残すことになります。我が国経済の潜在的成長力は十分にあり、これを生かすためにも、改革なくして成長なしとの決意のもと、構造改革を強力かつ迅速に遂行することとしたいと思います。
 このため、今般、経済財政諮問会議において、改革工程表を取りまとめ、今後の構造改革の道筋を示すとともに、改革工程表に盛り込んだ施策のうち、先行して決定、実施すべき施策については、補正予算で措置する事項も含めて改革先行プログラムとして十月中には取りまとめ、構造改革を加速することとしております。
 なお、補正予算の規模については、真に必要な施策を積み上げて決定してまいりますが、財源については、安易な国債発行によるべきではないと考えております。税収が五十兆円程度にとどまる中で国債を三十兆円発行すること自体、緊縮予算とは言えず、十三年度補正予算においても、十四年度予算と同様の方針で取り組んでまいります。
 不良債権問題の解決についてです。
 経済、財政の分野における第一の課題である不良債権の最終処理については、今般の改革先行プログラムにおいて、まず、主要行に対して通常の検査を抜本的に強化することとし、加えて、市場の評価に著しい変化が生じている債務者に着目した検査を導入するとともに、市場の評価に適時に対応した引き当てを確保し、整理回収機構の機能を拡充するため、不良債権買い取りの価格決定方式を弾力化し、企業再建のための基金の設立を推進するなどの措置を講ずることとしております。これらの施策を果断に実施することにより、遅くとも集中調整期間が終了する三年後には、不良債権問題を正常化します。
 雇用対策の具体化、実行に向けた決意についてのお尋ねであります。
 私は、改革の痛みを和らげることは政治の責任であると考えており、このため、御指摘のとおり、補助教員や森林作業員等公的部門での雇用の創出や、規制緩和等による新たな雇用の創出、民間活力を活用した雇用のミスマッチの解消、効果的に訓練を実施できるよう訓練延長給付制度の拡充などによるセーフティーネットの整備が重要であると考えており、先般、産業構造改革・雇用対策本部において、こうした対策を盛り込んだ施策のパッケージを取りまとめました。
 このうち、直ちに取り組むべき施策については、改革先行プログラムに盛り込み、補正予算を活用しつつ集中的に実施してまいります。また、法律上の措置を要するものに関しては、早急に法案を取りまとめ、今国会に提出いたします。
 特殊法人等改革は、肥大化し硬直化した政府組織を改革し、重要な国家機能を有効に遂行するにふさわしい、簡素、効率的、透明な政府を実現する行政改革の一環であり、民間にできることは民間にゆだね、地方にできることは地方にゆだねることを基本原則に、ゼロベースからの徹底した見直しを行い、あわせて、財政支出の大胆な削減を目指すこととしております。
 改革を進めるに当たっては、議員御指摘のとおり、国民の目線に立つことが重要であると考えており、こうした観点に立って改革作業を進めており、年内に特殊法人等整理合理化計画を策定し、改革の全体像を示すことにしております。
 特殊法人等への公務員の天下り問題についてのお尋ねです。
 天下りの問題については、特殊法人等が公務員の再就職の安易な受け皿とされているなどの指摘があり、行政改革の一環である公務員制度改革において、その見直しを指示しているところであります。
 他方、見直しに当たっては、議員御指摘のとおり、公務員のライフワークのあり方や、意欲を持って仕事に取り組むという観点を踏まえて検討することが必要と考えています。
 いずれにしても、国民の理解が得られるよう、適切に対応していきたいと思います。
 国家公務員の定員についてのお尋ねであります。
 定員につきましては、民間にできることは民間にゆだね、地方にできることは地方にゆだねるとの原則に基づき、行政のスリム化、効率化を抜本的に進める中で、定員削減の強力な実施を図ってまいります。
 一方で、施策の重要度、優先度、緊急度に応じて定員を重点的に配分することも重要であり、めり張りのある定員配置を実現してまいります。
 これらの取り組みにより、十年二五%純減という目標の達成に向けて最大限努力したいと考えております。
 最後に、衆議院選挙制度改革についてお尋ねがありました。
 この問題は、平成十一年の自自公連立合意以来の大きな課題であり、小泉内閣における自公保連立の際も、その決着を図るため、与党三党の間で衆議院選挙制度改革協議会の設置を合意し、今日まで協議が進められているものであります。
 この協議会において、去る九月二十日、現行の小選挙区比例代表並立制を基礎としつつ、従来多くの批判があった、最小行政区画より狭小な衆議院選挙区を解消することとして、そこに複数区の選挙区を創設することを骨子とする改革案について合意がなされました。この合意は重いものと認識しており、現在、与党三党それぞれにおいて党内手続に入っているところであると承知しています。
 いずれにせよ、衆議院議員の選挙制度の問題は議会政治の根幹にかかわる問題であり、各党各会派において十分な議論をいただくべきものと考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕
○国務大臣(塩川正十郎君) 私に対しましては、テロ事件以降、経済はどういう状況になっておるかというお尋ねでございます。
 そもそも、テロ事件が起こります前に、つまり昨年の暮れごろから、世界経済はすべて弱含み、減速状況にございましたところへ、さらにテロ事件が発生いたしましたこと等も、現在におきましては予測することは困難でございますけれども、短期的に景気が回復することはちょっと難しいような状況でございまして、深刻な状況にあるということは事実であろうと思っております。
 こうした中にあって、我が国を初めとします先進諸国は、九月の十三日に、電話で会談いたしまして、G7の財務大臣並びに中央銀行総裁の声明を発表いたしました。その声明によりますと、まず第一に為替の安定を図ることと、同時に、流動性資金を十分に確保するということを申し合わせたのでございまして、現在、我が国におきましては、流動性資金は日銀にたっぷりと用意いたしておりますので、まあ心配はないと思っております。同時に、金利の引き下げの措置もいたしたところでございます。
 ついては、今後とも、各国と密接な連絡をとりながら、太田さんの心配しておられる世界同時不況を起こすようなことのないように、断固それを阻止しようということにつきまして懸命の努力をしてまいりたいと思っております。(拍手)
    〔国務大臣平沼赳夫君登壇〕
○国務大臣(平沼赳夫君) 太田議員にお答えをさせていただきます。
 議員御指摘のとおり、経済大国である我が国の基盤を支えているのは中小企業であります。五百万社と言われている企業の中で、九九・七%になんなんとするのが数の上の中小企業の実態であります。また、雇用の七〇%を受け持っていただいているのも中小企業であります。
 したがって、我が国経済の活力の源泉でありますこの中小企業の将来展望を確立するということが一番大切なことだと、私も同様の認識を持っているところであります。
 そこで、御提案でございました、土地担保主義というものを脱却して、そして売掛金債権担保融資、ここをやるべきだという御指摘でありますけれども、今、中小企業に属する土地担保の総資産というのが九十二兆円と言われています。また、売り掛け債権というのが、いろいろな統計がございますけれども、八十七兆円、こういうふうに言われています。したがって、今、この厳しい中で、我々としては、ここに着目して、そして、土地担保によらないで、この売掛金債権に着目して新しい保証制度を創設する、このことをお約束させていただきたい、このように思っています。(拍手)
 また、大型倒産や金融機関の破綻の際に、どうしても中小企業にしわ寄せが来ます。そのときに、やる気と活力のある中小企業を救わなければなりません。そのために、連鎖的な破綻に追い込まれることのないように、セーフティーネットをしっかりと構築して、そして、例えば政府系金融機関でありますとか信用保証協会、さらには共済貸し付け、あるいはその他のいろいろな相談に応じるということによって、我々はその充実を図って、万々遺漏なきを期していかなければならないと思っています。
 また、御指摘の民事再生法等により再建途上の潜在力ある中小企業の再生に資するために、これは今、商工中金等で具体化をしておりますけれども、DIPファイナンス、この充実をさらに強化していきたい、このように思っています。
 また、お尋ねの、中小企業金融安定化特別保証に係る既往債務の償還期間の延長等の条件緩和に関してでありますけれども、既に、この厳しい状況の中で条件緩和ということに応じさせていただいて、この特別保証制度というのは一年延長して三十兆円にしたわけでありまして、百七十二万件、そして約二十九兆円の保証をさせていただきました。
 その中で既に九万件の条件緩和に応じておりまして、さらに、与党三党で先般合意されました緊急雇用対策の内容も踏まえまして、個々の中小企業者の実情に即した柔軟かつきめ細やかな対応をするように、金融庁と連携をしつつ、信用保証協会及び民間金融機関に対する指導を一層徹底して、そして、中小企業者の御要望にこたえていかなければならないと思っております。
 さらに、御提案がございました、融資判断に資する評価機関、こういうのを設けてはどうか、こういうことでございました。
 現在のところは、その評価機関については考えておりませんけれども、意欲ある創業者等のビジネスプラン作成と評価を、商工会でございますとか既存の商工会議所、また全国三百カ所の中小企業支援センター、こういったところを活用することによりまして、融資の円滑化を大いに図っていかなければならない、そして、御提案のことは、将来課題として私どもはしっかりと受けとめさせていただきたいと思います。
 以上のような総合的な対策を講ずることによって、中小企業の資金調達を多様化するとともに、セーフティーネットの整備に万全を期すべく最大限の努力を傾けていきたい、このように思っております。(拍手)
     ――――◇―――――
○小此木八郎君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。
○副議長(渡部恒三君) 小此木八郎君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(渡部恒三君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  小泉純一郎君
        総務大臣    片山虎之助君
        法務大臣    森山 眞弓君
        外務大臣    田中眞紀子君
        財務大臣    塩川正十郎君
        文部科学大臣  遠山 敦子君
        厚生労働大臣  坂口  力君
        農林水産大臣  武部  勤君
        経済産業大臣  平沼 赳夫君
        国土交通大臣  扇  千景君
        環境大臣    川口 順子君
        国務大臣    石原 伸晃君
        国務大臣    尾身 幸次君
        国務大臣    竹中 平蔵君
        国務大臣    中谷  元君
        国務大臣    福田 康夫君
        国務大臣    村井  仁君
        国務大臣    柳澤 伯夫君
 出席政府特別補佐人
        内閣法制局長官 津野  修君