第161回国会 法務委員会 第6号
平成十六年十一月十日(水曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 塩崎 恭久君
   理事 園田 博之君 理事 田村 憲久君
   理事 西田  猛君 理事 平沢 勝栄君
   理事 津川 祥吾君 理事 伴野  豊君
   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君
      井上 信治君    大前 繁雄君
      小泉 龍司君    左藤  章君
      柴山 昌彦君    谷  公一君
      谷本 龍哉君    早川 忠孝君
      福井  照君    三原 朝彦君
      水野 賢一君    森山 眞弓君
      保岡 興治君    柳本 卓治君
      加藤 公一君    鎌田さゆり君
      楠田 大蔵君    小林千代美君
      佐々木秀典君    樽井 良和君
      辻   惠君    中村 哲治君
      松崎 哲久君    松野 信夫君
      松本 大輔君    江田 康幸君
      富田 茂之君
    …………………………………
   法務大臣         南野知惠子君
   法務副大臣        滝   実君
   法務大臣政務官      富田 茂之君
   最高裁判所事務総局総務局長            園尾 隆司君
   最高裁判所事務総局刑事局長            大野市太郎君
   政府参考人
   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     江嵜 正邦君
   政府参考人
   (法務省大臣官房司法法制部長)          寺田 逸郎君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    大林  宏君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    横田 尤孝君
   政府参考人
   (財務省主計局次長)   松元  崇君
   参考人
   (東京都立大学法学部長) 前田 雅英君
   参考人
   (日本弁護士連合会副会長)            大塚  明君
   参考人
   (朝日新聞編集委員)   藤森  研君
   参考人
   (独立行政法人国立印刷局情報製品事業部長)    岡田  茂君
   法務委員会専門員     小菅 修一君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月十日
 辞任         補欠選任
  笹川  堯君     小泉 龍司君
  松島みどり君     福井  照君
  河村たかし君     松崎 哲久君
同日
 辞任         補欠選任
  小泉 龍司君     笹川  堯君
  福井  照君     谷本 龍哉君
  松崎 哲久君     楠田 大蔵君
同日
 辞任         補欠選任
  谷本 龍哉君     松島みどり君
  楠田 大蔵君     中村 哲治君
同日
 辞任         補欠選任
  中村 哲治君     河村たかし君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件
     ――――◇―――――
○塩崎委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人として、東京都立大学法学部長前田雅英君、日本弁護士連合会副会長大塚明君、朝日新聞編集委員藤森研君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中にもかかわりませず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をぜひお述べいただきまして、御指導賜れればありがたいと思っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、前田参考人、大塚参考人、藤森参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願いたいと思います。
 それでは、まず前田参考人にお願いいたします。
○前田参考人 都立大学の前田でございます。このような機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。
 私がこのような場で発言させていただく理由の一つとして考えられるのは、長年、男女共同参画会議、女性に対する暴力に関する専門調査会に関与させていただいて、女性被害者対策ということを長くやらせていただいたということで、今もやらせていただいているわけですけれども、強姦罪の法定刑の引き上げに関する議論をさせていただいて、やっとこのような形で強姦罪の法定刑の引き上げができるようになったということで、その間、与野党の合意を得た形で私は進んでまいったと思っております。
 逆に、三年という下限が象徴的な部分なんですが、これについては審議の過程でも非常に厳しい御批判があって、五年にしろ、四年にしろと。ただ、法律家としては、ほかの法定刑とのバランスがあり、また、法律の世界の今までの流れからいって三年に上げるのがせいぜいであるということで調整、調整と言うとちょっと偉そうになってしまうんですが、議論してまいった経緯がございます。
 今回、法制審の議論の中で、性犯罪に関して男性も被害者になる可能性もあるし、世界の趨勢からいって強姦罪の根本的な見直しをしなければいけないのではないかというような議論があるんですが、この手の議論はDVのときにもありました。女性が被害者だというけれども、男が十分自分の配偶者にいじめられているんだから男性も被害者だとしてもっと入れるべきだというような議論もあるんですが、やや、我々専門家から見ますと、揚げ足取りの、ジョークとしてならいいんですが、法制度論としては非常に問題があると私は思っております。
 少なくとも、世界の趨勢としてはともかく、日本の中で強姦罪の法定刑を上げるということを、どれだけの時間をかけてどれだけ議論してきているかということをぜひ踏まえていただきたい。また、三年ということに関しては、やはりかなりの妥協の産物として、今の段階ではこれが合理的であろうという結論として得られたものであるということを申し述べさせていただきたいと思います。
 あと、全体の重罰化に関連してなんですけれども、私は刑法学者として、日本の治安情勢は非常に厳しいということを指摘してまいった者の一人でございます。その意味で、はっきり申し上げられるのは、犯罪状況が本当に悪化しているということは間違いがない。もちろん、悪化しているかどうかというのは評価の問題ですから、三倍になってもふえていないといえばふえていないんです。しかし、一%ふえてもふえているという言い方はできる。やはり、事実をきちっと認識していただきたいということなんですね。
 いわゆる我々が最も基本と考える犯罪率は、戦後の混乱期が二千ですね、十万人当たり二千件。それが第二次世界大戦後の経済発展の中で千に、ちょうど半減するわけです。それが一九七五年から増加傾向をたどって、今二千二百になっている。それが去年初めて二千百台に落ちてきた。これは、ただ、内閣を初めとした大変な努力の結果、やっととめたという認識を私は持っております。
 これに関しては、認知件数等は警察等の操作的な部分が入っている。やや極端な言い方をすれば捏造であるというような議論をする人もいますが、私は根拠は非常に薄いと思いますね。
 確かに、警察が、より強く反応するようになった、桶川事件等で反応するようになった、事件を取り扱うようになった面があることはありますが、百万単位の件数、動きの中で、犯罪の増加傾向を警察がつくり出した云々というような議論があるとすれば、これは全くナンセンスと思っております。
 そういう捏造論者の人たちも、強盗がふえているということは否定できないんですね。これはもう厳然たる事実として、平成元年には強盗は千五百件だったんですね。平成十年は七千六百件なんですね。これは大変なふえ方なんですよ。どうやって警察が強盗の事件をでっち上げるのか。検事に全部送らなきゃいけない。裁判所に行くんですよ。ということは、検察と裁判所までぐるになって強盗の数字を書きかえているのか。これはあり得ないことですね。
 確かに、DVの問題やなんかで相談件数がふえたり、ストーカーの問題がふえて、暴行、脅迫、軽微な事案といいますか、軽微と言ってはいけないんですが、その辺について従来よりもふえたという面があることは認めざるを得ない。しかし、大勢としては私は変わっていないと思います。
 そういう言い方をすると、強盗はここ十年で一八%増、これをどう見るかというのは難しい評価だと思いますね。ただ、一八%というのも、二割ふえるというのも重大なことといえば重大なことという評価もあり得る。
 ただ、いずれにせよ、私は、国会の場で刑の重さを考えていただくときには、最後のよりどころは何かといえば、これは統計数字その他を踏まえて、国民の、つまり選挙をして投票をしてくださった国民の意識をもとに那辺に法定刑を持っていくのが合理的であるか、政策として妥当であるかという御判断をいただきたい。
 そのときに、世論調査の類が、非常に治安の悪化を意識しているという数字が出ている。これも見方によれば、マスコミが先導しているからというか、あおっているからそういう数字が出てくるんだという議論は当然あると思いますし、確かに一部のマスコミの中にはあおり過ぎるという感じのものがないことはないと思います。
 ただ、私なんかが見ていて非常に思うのは、世論調査の結果とかというのは、国民の意識というのは非常にある意味で鋭いんでして、いろいろな調査研究は我々もやるんですが、犯罪の検挙率とか犯罪率と不安感というのは非常に強い相関を持っています。
 それから、外国人犯罪なんかに関しても、外国人はそんなに事件数からいったら一割ぐらいしかないので、外国人犯罪は騒ぐほどじゃないと言いますけれども、総理府の調査の中なんかですと、やはり不法残留者の凶悪犯が怖いみたいな統計が出てくるんです。
 私、専門家として余り数字を出して申し上げたことはないんですが、それは非常に鋭くて、不法残留者は刑法犯としては日本人の二倍ぐらいなんですよ。ところが、強盗、強姦、殺人、放火になりますと、十三倍なんですよ。そういう事実というのは余り表には出ていませんけれども、厳然たる事実として存在している。
 私は、国民がいろいろな形で吸収した、治安対策という意味では、国民の声を踏まえて各政党やっていただいていると思うんですが、与野党で、私いろいろなお手伝いをしていて、意識の差はないと思いますね。やはり国民のニーズにこたえて刑罰をどう設定していくか。
 残された時間で、具体的な重罰化の問題、総論的にも、十五分ですので、細かい、すべてについて御説明というか意見を述べさせていただくわけにいかないんですけれども、一つは、今回広く重罰化するといいますか、法定刑を引き上げることは犯罪の増加の中の一つの対応でしかない。いろいろなことをやった後で刑罰を引き上げる、法改正をすべきだという御意見があるのも、よく存じ上げています。
 ただ、私は、先ほど申し上げたような治安状況でして、それをどう見るかというのは人によって意見があるのは認めますが、国全体として内閣の対策会議ができて、それから各知事レベルでいろいろな対策が講じられている状況の中で、熱が出ているのに体質改善が必要だからランニングをしてこいというような議論をする人がいるか。やはり解熱剤は打たなきゃいけないだろう。もちろん、では、風邪で、熱さえ下がれば日本がよくなるといいますが、体が治るなんてだれも考えていない。
 すべて総合的な対策なんですが、ほかの対策をしてから、法定刑を上げるのが最後に来なければいけないという議論は私は必ずしも的を射ていないと思っております。
 一つは、刑罰の重罰化が即犯罪の数の抑止につながるというふうには私も考えておりません。交通事故その他、効果があったものもありますし、ないものもあるかもしれない。ただ、強姦罪の場合なんかに象徴されますように、国民の常識、国民それから女性の側の被害感覚に合った法律に直していく、これは国会にとっても私は非常に大事なことだ。それに対応して、ほかのものとの法定刑のバランスもつくっていただく。これだけ犯罪状況が悪化している中で、強盗を引き下げるという議論は全くナンセンスだと思います。そうだとしますと、強盗の五年を下げないで、いろいろなものをバランスをとりながら動かしていくというときに、殺人を少し上げる、ほかとのバランスを考えるというのは私は非常に合理的な選択である。
 一番強く正直言って申し上げたいのは、やはり強姦罪の法定刑を今のまま放置するというのは、これは裁判所から見ても言い渡し刑をずっと上げてきていますし、実刑率も上げてきていますし、国民の声を何と聞くのかということになると思います。それに対して、殺人の法定刑を上げないということのマイナスというのはそんなに私は大きくないかもしれない。しかし、今の状況で、殺人罪を含め法定刑を上げる、バランスをとって上げるということは妥当な政策選択だというふうに私は評価しております。
 あと、もう一つ重要なのは、刑の上限ですね。重罰化につながるという問題をどう考えるかということなんです。重罰化が受刑者の社会復帰を阻害するという問題は、これは当然あります。ただ、私の教え子なんかも刑務所の職員なんかをやっていて、ここのところもうずっと年賀状も来ない。それは、有給休暇を一日もとれない。過剰収容ですね。その中で、彼らの側としては、なるべく刑期は短いというのはわかるんですが、しかし、刑法の世界で、刑罰論、刑罰をなぜ科すかという議論の中で、今、応報を入れない学説というのはないんですね。要するに、犯罪の抑止も大事です。加害者の更生も大事です。しかし、国民から見た応報感情も大事です。総合的に、相対的応報刑論というんですが、そのバランスのとり方なんだと思いますね。
 そのときに、これは当然のことなんですが、裁判官、検察官、それから学者の世界の刑法理論では応報がより強く出ます。それに対して、刑務所の世界で受刑者に対して対応する側、それから受刑者をサポートするグループなんかから見れば、特別予防、社会復帰。必ずどんな方でも犯罪に陥るにはそれだけの理由があって、そこを取り除いていけばよりよくなるというのは当然あります。ただ、システムとしては、そういう複合的なものをトータルでどうしていくかなんですね。
 そのときに、私はやはり、社会全体のニーズ、それから国民の応報感情からいって刑罰を重くしなければいけないというものがその多数を占めるならば、それに応じて最大限の社会復帰の可能性を探る矯正の作業をやっていくべきである。それ以外に、要するに、社会復帰のためにマイナスになるから刑期は短くすればするほどいいというわけにはいかないんだと思います。もちろん、短くすればするほどいいなんというのは揚げ足取りの誇張した議論で、そんなことを矯正の方もおっしゃっているわけではない。今回の刑罰の上限の引き上げについても、矯正局関係もこれは賛成されておられる。現場も含めて、これは妥当な引き上げであるという御判断を私はされているんだと思いますね。
 あと、公訴時効を延ばすということ。これは、一つは、やはり国民の常識みたいなものに合わせるという側面があろうかと思います。専門的に言えば、公訴時効が延びればそれだけ捜査期間が延びて、一方の議論としては、それでなくても今検挙率が低いわけです、犯罪がふえて。今まで十五年であったものをもっと長い時間捜査をし続ければ、それだけ警察官が足りなくなるじゃないかという議論はあると思いますね。しかし、だから公訴時効はではもっと短くした方がいいかという議論が出てくるか。可能な範囲でやはり国民の被害感情、それから真相究明の欲求に合うような形での警察活動なり検察活動をやっていただかなければ困る。決して、不当な延長では私はないと思います。
 昔から言われる、時効に関しては証拠の散逸とか事実上意味がなくなるということはあるんですが、ここのところ本当に、私なんかも若干コミットしているんですが、警察のレベルで証拠としてDNAをより積極的に利用していくといいますか、使っていく。そういう科学性も出てきていますと、十五年で短過ぎるという方がより強い。常に議論は、一〇〇%こっちが正しくて、一〇〇%こっちがバツということはあり得ないんですね。公訴時効だって延ばせばデメリットは必ずあるんです。
 しかし、今の長期化した大きな事件の未解決なものなんかを考えますと、国民から見た要請なんかを考えますと、私は、今の時点でこのような公訴時効の期間を長くするということも合理的な選択であるということで、本当に雑駁な申し上げようで恐縮なんですが、基本的に今回の法案は私は妥当なものであるという意見を申し述べさせて終わらせていただきたいと思います。
○塩崎委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、次に、大塚参考人にお願いいたします。
○大塚参考人 日本弁護士連合会の副会長を務めております大塚明でございます。
 私は、今回の法律案のうち、強盗致傷罪の刑の見直しと傷害罪の罰金刑の引き上げ、そして法定刑からの科料の削除には賛成でございますが、その余の改正については、拙速に過ぎるのではないか、そういう意味で反対でございます。
 まず、今回の改正案には、改正をしなければならないという立法事実がないと考えております。
 犯罪対策のあり方といたしましては、刑法の法定刑や処断刑を引き上げることで犯罪を抑止する効果を期待することは残念ながらできません。凶悪重大な犯罪を犯そうという者が、刑法の法定刑を見て、これなら犯罪をやめておこうと思いとどまるということは考えられないからでございます。
 政府が真に犯罪対策を行おうというのであれば、むしろ長期的な視野に立って、犯罪の発生原因等を調査いただき、その原因を除去するための政治的、経済的、そして社会的な方策を検討、立案いただかなければなりません。それには、人的、物的にも相応の予算が必要でございます。刑事罰の重罰化は、刑法の謙抑性という見地から見ても補充的な形で検討されるべきでありまして、その意味で今回の改正は、刑罰の重罰化のみに偏っており、その意味で、犯罪対策は行ったんだという国の、申しわけございませんが、証拠づくりのための、いわば安上がりで効果のない刑事政策にとどまっているのではないかという危惧を持っております。
 法律案は、凶悪重大な犯罪に対処するものとされておりますけれども、有期の懲役、禁錮の法定刑の上限に関する改正につきましては、個々の犯罪事実の具体的な実情を考慮することなく、かつ凶悪重大犯罪と言うことのできない犯罪までをも含めて一律に法定刑の上限を上げようというものでございます。その意味で、極めて大ざっぱな改正と言わざるを得ないと考えております。
 改正の対象になります犯罪は、刑法典で四十四、特別刑法で六十。その意味で、この今回の刑法総則の改正は、いわば刑法の全面改正とも言うべき性格を有しております。しかしながら、今回の改正の論議におきましては、そのような全面的な改正のための作業とはほど遠く、十分な議論がなされたとは考えられません。
 刑法各則に規定されます強制わいせつ、強姦、強姦致傷等の各罪、殺人罪、傷害及び傷害致死、これらに関する法定刑の加重に関する改正につきましても、戦後今日に至るまで約半世紀の犯罪統計を冷静に分析したときには、その必要性は疑問がございます。
 すなわち、平成十二年版の警察白書を拝見しますと、凶悪犯の認知件数は、戦後直後の昭和二十三年ごろ及び昭和三十三年ごろ、これをピークにして以後減少を続けております。平成元年からまた徐々に増加は始めているものの、戦後から昭和三十三年ころまでの認知件数と比較すると半分以下にすぎません。
 このことは、各犯罪ごとの認知件数を見ても同様の傾向にございます。殺人の認知件数は、昭和二十九年の三千八十一件をピークにして減少傾向にございます。平成三年の千二百十五件で底を打ち、その後は横ばいで推移しており、平成十一年には千二百六十五件となっております。強姦の認知件数につきましては、昭和三十九年の六千八百五十七件をピークに平成元年まで減少傾向が続き、以後は千五百件前後で推移して、十一年は千八百五十七件となっております。傷害の認知件数につきましては、昭和三十二年以後三十四年まで七万件台と高水準にございましたけれども、以後減少傾向が続いて、その後は約二万件前後で推移しております。
 このように、凶悪犯罪の認知件数は、その後の推移を考慮に入れたとしても、戦後から現在までの長期的視野で見るとむしろ減少傾向さえ示しているのであります。今、これらの犯罪について法定刑を加重しなければならない理由は見当たらないと考えております。
 法務当局は、刑を加重する理由として、我が国の治安水準、国民の体感治安の悪化、あるいは国民の規範意識ないし国民の法的正義観念の高まり、そして命の大切さを訴え、犯罪を犯してはならないという国民に対するメッセージ性という極めて漠然とした理由を挙げておられます。しかし、これらは国家刑罰権の発動、行使にかかわる国の基本法たる刑法の改正のあり方としては立法理由が希薄であり、刑法の謙抑性という観点からも納得のできるものではないと考えております。
 法務当局は、国民の体感治安の悪化や国民の規範意識の高まりについて、内閣府世論調査における治安関係数値の推移であるとか、朝日新聞、読売新聞等の国民意識調査等を援用して、改正の根拠があるというふうに言われております。しかしながら、例えば本年一月二十七日の朝日新聞社の国民意識調査によりますと、日本の治安については、八一%の人が五年前と比べて悪化したと答えております。しかし、自分の住んでいる地域の不安について言えば、五八%が特に変わっていないと答えておられる。そして、犯罪に遭う不安として具体的に感じる犯罪については、詐欺的な悪質商法八二%、これが一番多く、次いで、空き巣の七七%、これが続いております。この統計によれば、多くの市民は身近な自分の地域はむしろ安全だと考えており、不安に感じているのも凶悪犯罪というよりはむしろ悪質商法や空き巣等に対するものなのではないかと考えられます。
 また、国民の規範意識の高まりという点につきましては、今回の法律案についてはマスコミにも安易な一律厳罰化は避けるべきであるという社説が出ており、将来に禍根を残すことがないようにぜひ慎重な審議をお願いしたいと思っております。
 命の大切さを訴え犯罪を犯してはならないという国民に対するメッセージの必要については、特に殺人罪の下限を三年から五年に引き上げる理由として、法制審議会の刑事法部会でもそのような御意見が出されました。これは、およそ人を殺せばよほどの情状がない限りは執行猶予はつけないんだということをこの改正で国民に知らしめようということかもしれません。
 しかしながら、具体的に殺人に至る人がそういった事情を考慮して犯罪の実行を思いとどまってくれるものなのか、これは想定しがたいと考えます。もしそのようなメッセージ性が必要であるとするならば、それはむしろ学校教育であるとか家庭教育の中でこそはぐくまれることであろうと私は考えております。
 以下、若干個別の改正事項ごとに御意見を申し上げたいと思います。
 まず、有期刑の法定刑の上限の引き上げでございますが、有期懲役、禁錮が規定されているすべての犯罪類型について一律に上限を十五年から二十年に引き上げようというものでございますが、先ほど申し上げたように、その対象は百以上になります。本来であれば、これらの罪一つ一つについてその長期を引き上げることが妥当かどうかが検討されるべきでありましょう。
 例えば、凶悪重大犯罪とは到底言いがたい御璽、天皇陛下の印鑑でございますが、御璽偽造罪や加重収賄罪についても法定刑の引き上げとなりますが、その理由が果たしてあるのでしょうか。その検討がなく十把一からげに法定刑を上げることがいかに乱暴な議論か、御理解を賜りたいと思います。
 法務当局からは、有期刑上限を引き上げて無期刑との差を縮めることによって量刑場面で無期よりも有期の刑を選択しやすくなるという説明もあります。しかしながら、この説明は、法定刑の中に有期刑と無期刑が規定されている罪には該当いたしますが、有期刑のみが規定されている罪には該当いたしません。
 次に、強姦等の法定刑について申し上げます。
 本来は、強制わいせつと強姦罪の犯罪類型については根本的に見直す必要があると考えております。
 先ほどの御意見にもございましたけれども、強姦罪は男性が女性に対するものに限っております。しかし、性的自由の侵害に対する罪については、世界的な趨勢としては男女間に差を設けない方向にございます。我が国の性犯罪に関する罪を見直す必要があるとすれば、それは、性的自由の侵害に係る罪については男女差を設けない構成要件を新たに検討し、その中でそれぞれに見合う刑を検討するべきであると考えております。そして、新たに設けられるこれらの罪のそれぞれの刑は、強盗罪等の法定刑の適正化を図りつつ、その均衡を考慮して決められるべきでありましょう。
 次に、殺人罪について申し上げたいと思います。
 殺人罪の法定刑下限を三年から五年とすること、そして同様に組織的殺人の法定刑を五年から六年に引き上げることについても反対でございます。
 殺人というのは、人と人との濃密なかかわりの中で発生する事件が多いというふうに言われております。例えば、家族中心の介護をせざるを得ない社会状況の中で、長期間介護をしていた夫が介護に疲れて妻を殺してしまったというふうな行為類型も、当然殺人の中には含まれます。
 私は、殺人罪にはその罪の性質からして類型的に執行猶予を付することができる三年の刑に相当する事案があることから、刑法はその刑の下限を三年以上としたものと考えております。
 また、日本の殺人の発生率は世界でも一、二を争うほど低いと言われております。戦後半世紀を長期的に眺めたとき、殺人の認知件数は昭和二十九年をピークにして減少傾向にあり、殺人罪の検挙率も下がってはおりません。現状においてこの刑の下限を引き上げなければならない理由があるのでしょうか。
 次に、傷害罪について申し上げたいと思います。
 傷害罪の法定刑の上限を引き上げること、そして傷害致死の法定刑の下限を引き上げること等についても反対でございますが、罰金刑を五十万に引き上げること、及び法定刑から科料を廃止することには賛成をいたします。
 我が国の傷害罪の法定刑は、国際的に見て決して低くはありません。例えば、アメリカ・ニューヨーク州では二年以上七年以下、イギリスでは五年以下の自由刑、ドイツでは六月以上十年以下、フランスでは十年以下及び十五万ユーロ以下の罰金。これを比べるならば、刑法の十年以下という刑が特に低いわけではございません。
 また、引き上げの理由とされた医療技術の進歩、科刑状況、これは理由にならないのではないかと考えます。
 法務当局からは、医療技術の進歩によって、かつてならば傷害致死の罪に問えた事案が傷害にとどまることになる、これは妥当ではないという説明がなされました。しかし、死の結果が発生していないのに死の結果を招いたと同様の責任を問おうとすること自体、これは問題ではないでしょうか。
 最後に、公訴時効期間の見直しについて申し上げます。
 公訴時効期間を十五年から二十五年に、十年から十五年に、七年から十年にそれぞれ引き上げようとする刑事訴訟法の改正には反対でございます。
 検察官に主張立証責任がある現行の刑事訴訟法のもとにおいても、実務の具体的場面においては、実際上は、被告人・弁護人が無罪を積極的に立証しない限り有罪とされてしまう事例は枚挙にいとまがございません。このような場合に、事件後長期間経過していることによって、被告人・弁護人がアリバイなどの立証に困難を来すことは容易に想像ができます。公訴時効期間の大幅延長は、この困難をさらに増加させることになるでありましょう。
 また、民事の除斥期間二十年を超えて国家が公訴権を維持しなければならない理由も不明でございます。
 以上申し上げましたように、今回の改正につきましては、国家の基本法たる刑法を全面的に改正するに近いものであるにもかかわらず、十分な国民的議論がなされたとは言えないと考えます。国家刑罰権の発動たる刑事罰を、かくも安易に、個別の検討を経ることなく改正をしてよろしいのでしょうか。私は、この改正については、今後さらに十分に慎重な検討を経た上でなされるべきであるというふうに考えております。ありがとうございました。(拍手)
    〔委員長退席、西田委員長代理着席〕
○西田委員長代理 どうもありがとうございます。
 次に、藤森参考人にお願いいたします。
○藤森参考人 おはようございます。
 藤森研と申しまして、新聞記者がこんなところに来るのも場違いなんですが、今回の刑法改正案について、朝日新聞社としてはコンセンサスができておりません、特につくっておりません。私の、記者として見ながら考えてきたことについての個人的な意見を申し上げることをどうぞお許しください。
 今、お二方のお話を伺っていて、大変勉強になります。おっしゃるとおりに、今多くの市民が日本社会の治安が悪化しているという不安感を抱いていることは間違いがないように思います。
 朝日新聞のことし一月の世論調査については、大塚先生が大変的確に御紹介をしていただきましたので、私は、時間を節約することができて大変感謝しております。
 一つだけ補足いたしますれば、その一月の治安、安全に関する朝日の世論調査、私も関与いたしましたけれども、その結論的な部分で、では、犯罪を減らすためにあなたは何が最も有効だと思いますかという質問をいたしております。これに対する答えは、「モラルの向上」「地域住民の連携」「景気や雇用対策」「刑罰の強化」「警察の捜査能力の強化」、この順で、しかし、いずれも大きい差はなく、今の五つのような回答がまことにきれいに分散していた、それが印象的でした。
 そのことはいろいろな見方があると思いますけれども、私は、言ってみれば、対症療法と根治療法とをあわせて重層的に進める以外に犯罪減少のための簡単な道はない、そういうことを国民が言っておられる、言ってみれば、逆に言えば、今の社会の成熟した見方のあらわれではないかな、こんなふうに受け取りました。
 先ほど前田先生が、解熱剤と体質改善という大変わかりやすい比喩をお出しになられました。それについて異論はないのですが、言ってみれば、その両方が必要であるし、私は医学に全く暗いのですが、多剤併用療法というような言葉があるようですが、片方についての、解熱剤をやりながら、しかしその影響はどう出るか、また、体質改善をやりながら、その影響はこっちにどう出るだろうかということを両方を見ながら同時並行的に総合的に進めること、そういうことが恐らくこういう社会科学的な大きな問題については必要なのではないかなと思ってお聞きいたしました。
 それでは、刑罰の強化ということが我々が当面目指す犯罪抑止にどの程度寄与するのか、あるいは余り寄与しないのか、これについてはさまざまな見方があると思います。私自身は、刑罰が犯罪抑止にある程度の効果を持つことは、これは否定はできないということであると考えております。もっとも、今言いましたように、罪の威嚇だけではなくて、共助など、いろいろなものを組み合わせた総合政策の一環としてこそ、適正な刑罰はその機能を一番よく発揮するんだろうというふうに思います。
 今回の刑法改正案の内容は、では、その適正な刑罰と言えるのかという点にお答えしなければなりません。私は、法律の専門家でもないので、きちんと、これはこう、これはこうというふうに、申しわけありませんが、賛否を明確にはできません。ただ、私自身の感じ、感覚としましては、例えば公訴時効の延長などには大変賛成したい、そういう気持ちが自分の中にあります。それは、一九八七年に起きました朝日新聞阪神支局襲撃事件というのがありまして、あのとき、阪神支局に駆けつけて、あのときの現場の様子というのは今でもきのうのように思い出せます。十五年前ということは、もう既に時効になりましたが、恐らく被害者のお気持ちの中においてはそんなに昔ではないのかなというふうなことも思います。
 あるいは、平均余命の問題もきっとあるんだと思います。DNAの問題なんかも、DNA型鑑定ですか、というふうなこともあって、私はそう思いますが、ただ、そのことによるマイナスの影響などを子細に自分で緻密に調べたわけではございませんので、感覚的にそんなふうに思うという点しか申し上げられません。
 一方で、今回の刑法改正案を読ませていただきますと、私には幾つかの疑問がわきます。ここでは時間がありませんので、疑問点を中心に述べさせていただくことにいたします。
 第一の疑問点は、先ほど大塚先生が立法事実がどの程度あるのかという点を言われました、この点にかかわります。改正案の直接の契機、さっき前田先生は、国民の現在ある犯罪への不安感の一因としてマスコミのあおりという問題を厳しく御指摘いただきました。そういう面がやはりあるだろうなというふうに胸に手を当てて受けとめたいというふうに思います。
 ただ、マスコミだけではなくて、いろいろなところでついそこのところが、決して悪意ではないんだけれども、何とかしなきゃいけないという気持ちから、やや息せき切ってしまう面がないだろうかという、決してマスコミを免罪してくださいと言っているわけではなくて、例えば、昨年暮れの政府による犯罪に強い社会の実現のための行動計画、この冒頭には、現状認識としてこんな書き出しで始まっています。戦後長い間、年間百四十万件前後で推移していた刑法犯の認知件数は、最近増加の一途をたどり、平成十四年の刑法犯認知件数はおよそ二百八十五万件と七年連続で戦後最多というふうな表現です。あたかも、このまま読むと危険は倍増しているかのように読めてしまいますが、前田先生がさっきおっしゃったとおり、基本的にはやはり犯罪率で見ることがいいんだろうと思います。もちろん、犯罪統計自体の信用性についての議論もありますが、ここでは現在の公的統計に基づいて話を進めます。
 御承知のとおり、一九四六年の日本の人口はおよそ七千三百万人ですね。それでいいますと、さっき前田先生がおっしゃったとおり、戦後ずっと緩やかなU字カーブを描いてきたというのが実際の犯罪の実態だと思います。国際的にも日本の犯罪率はまだ欧米各国の二分の一から五分の一ぐらいの水準にございます。決して浮き足立つような状況にはないだろう、そんなふうに思います。
 疑問の二つ目というのは、これも大塚先生の論点とダブるんですが、国民の正義観念といった改正の理由づけなんです。これは大塚先生は専門家としておっしゃったんですが、僕自身は、一人の非専門家として別の観点からの疑問なんだろうと聞いていて思いました。
 改正案のもとを審議した、卵を温めた法制審議会の刑事法部会の議事録を読みますと、国民の正義感情とか規範意識あるいは国民に示す行為規範、刑法典が持つメッセージ性といったやや文学的な表現が多様されていることに気づきます。私は、現在の国民の正義観念といったものは、ないとはもちろん言いませんが、実はだれにとっても検証が難しい抽象概念のように感じるんです。また、規範意識というのは、もちろんですが、刑法の条文によって規定されるような簡単なものだけではないように思います。
 そういうような言葉を使ってではなくて、もっと直截に、これらの改正が現実的にどのくらい犯罪の抑止に役に立つのかという、我々にもわかる、単純だけれども検証可能な、そういう観点で議論をしていただけたらなと私は感じています。刑法の持っている難しさ、哲学性、多面性ということももちろん理解できますが、やはり、今これが浮上してきている最大の理由は、どうやって我々が安全の回復をしたらいいだろうという模索の中からだと思うからです。
 疑問の第三に、個々の改正点について少し触れさせていただきます。
 強姦は魂の殺人とも言われると聞きます。強盗罪に比して下限が低過ぎるという気持ちもわかる気がいたします。今回、下限を引き上げようということにうなずきたくなる面があるのも事実です。ただ、事務局からいただきました黄色い資料集、あの二十ページにございますように、現実の量刑実績を見ますと、三年未満の刑が適当だと判断された事例が決して少数でない。相当の数、現在まだあるということが僕には気になります。酌量減軽があるからいいじゃないかという御意見もあるかもしれませんけれども、強姦における酌量事由というのはどういうものなのか、僕は不明にして余りきちんとはわかりません。
 同様に、さっきの資料集ですと、二十三ページの傷害罪です。これについては上限の引き上げだったと思います、改正案は。ところが、この表を見ますと、現在の法定刑の上限近くに張りついている判決例というのは皆無に近いということがわかります。でも、これは改正案で法定刑の上限をさらに上げようということですが、実際に必要性というのがどれほどにあるのかなと考えてしまいます。
 また、これは小さなことですけれども、傷害の法定刑の改正に関連するほかの条文にある、例の「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。」という表現、これは、やはり我々のように法律の専門外の者にとってはとてもわかりにくい文章です。ここのところは変えなくていいよというのは、そうかなと。できるだけ開かれた司法にしていただくためにも、お直しになられる方が我々としてはありがたいなという気持ちがいたします。
 さっき強姦罪に関連してちょっと触れましたけれども、いわゆる凶悪重大犯罪の典型で、しかも前田先生のお言葉にあったように、近年急増している強盗、これは改正案の対象外となって、強盗致傷の問題はありますが、他方で、低水準で横ばっている殺人罪については今回法定刑を引き上げる。これも、凶悪犯罪などの最近の情勢にかんがみ、これらの犯罪に適切に対処するためという立法理由と考え合わせた場合に、平たく考えてどうも腑に落ちない点でございます。
 疑問の最後は、この刑罰強化が矯正保護に与える影響はどういうものかという点でございます。
 これもよく言われてきたことでございます。つまり、一つは、一一六%を既に既決の場合には超えている過剰収容が、さらに窮屈になるだろうということ。あるいは、無期の仮出獄の運用への響きなどもあると思いますが、ここでは省きます。あるいは、それで刑務所人口がふえるであろうことも多分蓋然性は強いと思いますが、国家財政の面からいっても、刑務所入所者一人当たりにかかる年間予算はおよそ二百六十万円というふうに言われているそうです。
 いろいろ疑問ばかり呈してきましたが、では、どうしたらいいのかというのを示せと言われそうなので、私なりに一つだけ考えていることを言います。
 刑務所を出た人のうち、およそ五割がまた犯罪を犯して刑務所に戻っています。さらに、刑務所に初めて入る人とそれからベテランで再入の人は、現在これまたほぼ半々になっていますね。ということは、これはもう仮定の話ですが、仮に刑務所出所者が全員きちんと社会復帰できれば、たちどころに刑務所に入るほどの犯罪を犯すことが半減する、これはもちろん比喩的な言い方ではございますが、今のを単純に計算すればそういうことですね。
 つまり、言いたかったのは、一般予防だけではなくて特別予防の方にもっと力を入れることが極めて効果的で安上がりな犯罪抑止の方策の一つにやはりなるのではないだろうか、そこのところにもっと力を入れていただけたらいいなというのが私の提案です。
 私は、昨年、幾つかの刑務所を取材させていただきました。精神に変調を来したり、あるいは、府中の独居房では、一日じゅう新聞紙をただ細かくちぎって箱に入れるという生産性のない、そういうさいの河原みたいな仕事をいたしている方がいまして、胸が痛みました。それを毎日させなきゃいけない刑務官の方の心の痛みの深さというのをさらに感じます。これは、やはり、刑法によって懲役というふうに一律に決めてあってそのままになっているということによって、そうせざるを得ないということなんだそうでございます。
 あるいは、もう一つ、刑務所を出所してからの更生保護の問題、これも非常にまだ貧しいんではないかと私は思います。やはり取材をいたしまして、更生保護施設なんかで、刑務所を出たばかりの方々にずっとお話を聞いたことがございます。ある初老の方は、出るときには、ほとんどの人はもう二度と刑務所には戻りたくないと思っているんだよというふうにおっしゃいました。しかし、現実には五割はまた戻ってしまう。それは、いろいろ聞いてみますと、やはり受け入れの問題が大きいと思います。もちろん、作業賞与金が物すごく低くて元手がないとか、あるいは保証人がいないからアパートが借りられないとか、就職の問題とかいろいろありますね。それから、保護観察官なんかも、現在日本で八百人ですか、やはり少ないんじゃないかなと私は思います。
 しかし、それは行政がやってくださいだけじゃなくて、これは、我々自身、私たちの社会が元受刑者を受け入れようとしたがらない点を大きく変えていかなきゃいけないというふうに私は思います。社会復帰の受け皿を用意することは、本人のためにはもちろんですけれども、結局は、我々みんなにとっての犯罪の少ない、安心、安全な社会をつくることになるからだと思います。
 大変不十分でございますが、皆様のいろいろな疑問を今挙げさせていただきました。そういうことにもう少し、ああ、なるほどなと思わせていただくような十分な御審議をお願いして、終わりといたします。どうもありがとうございました。(拍手)
○西田委員長代理 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
○西田委員長代理 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三原朝彦君。
○三原委員 きょうは、前田先生、大塚先生、藤森先生、どうもありがとうございました。いろいろ勉強させていただきました。
 三人の先生方の話を聞いていまして、一番私の意見、うんうんと納得できるのは実は前田先生の意見で、ということは、よく考えてみましたら、大塚先生の考え方というのは性善説で僕らは性悪説なのかなんて思ったりもしましたけれども、そういうことでもない。
 やはり世の中というのは陰と陽があるように、私の心の中にも邪悪な心と善良な心もあるんだろうし、それが何かの拍子に出てしまったところで、我々が決める社会の規範、法律、基本である刑法も犯すようなことになっちゃった、こういうことなんだろうと思いますけれども、今回の場合には、そういうのが我々の社会の中でどうもふえてきているんじゃないかと私自身はそういうふうに思っておりましたものですから、前田先生の考えにより私は納得できるなと思ったのかもしれません。
 今回の改正というのは、凶悪犯罪にいかに対処するか、そしてまた、ふえてきておる性犯罪に対してどのように積極的に対応するかという問題点があるんだと思います。それは結果としては重罰化の方向に行って、そしてそれを抑えよう、この方向であることはそうなのだと思いますが、私自身はそれもやむを得ないと思ってはおります。
 しかし、大塚先生は、罰則を強化したからといってそれで犯罪がすぐに抑えられるというものではないだろう、こう言われますけれども、実は、最後にお話しになった藤森先生の、五割ぐらいの人はまた累犯しちゃうという、それから考えると、そういう人たちは一度入ると、やはりある面では、もうそのようなことは二度とするまいという、一面では抑圧された、自分を制御することにも私は役に立つ。社会で本当なら、三年、五年、隔離されたところに入っているんじゃなくて、それだけ活躍すれば、自分にとっての可能性も大いに社会で活動できたにもかかわらず、隔離された中で自分の罪を償わなきゃいけなかったということに対して、反省する面も大いに出てくるという気持ちがあるからこそ、私は今回の改正に対して賛同もしておるんですけれども。
 その面では、いま少し、大塚先生の重罰化したって絶対にそんなことないぞという意見を私たちに納得せしめるように、ひとつお話しいただけないかと思いますが。
○大塚参考人 貴重な御指摘、ありがとうございます。
 先生のおっしゃるとおり、私の心にもやはり正と邪の部分がございます。そして、今先生が御指摘になりました、刑務所に入った人が、残念ながら、その矯正の実を上げて、本当に反省し出ていく方がほとんどだと思うにもかかわらず、約半数近くが戻ってくる、それも厳然たる事実だと思います。
 それをどう評価するかということだと思いますが、逆の見方をいたしますと、刑務所に一たん入って再犯をする人というのは、かくすればかくなるものと知り尽くしているわけなんですね。つまり、刑法が自己の行為を悪と規定して、そうすればそれに相応する報いを受ける、端的に言いますと、また刑務所に入らなければならないとわかっているにもかかわらず、それを犯してしまう。だとすれば、その抑止は、もちろん刑法典はその抑止の一つではありましょうけれども、刑法の重罰化によってそれを抑止できるものだろうか、これが私の疑問なんです。
 逆に言いますと、刑務所に入った人が二度と刑務所に戻ってこないような社会、これが理想だと思います。そういう社会であれば、考えようによっては、刑法の抑止力がよく働いている。つまり、最初はそんなことを認識していなかったから罪を犯してしまったけれども、実際に罪を償った後では、もう重々腹に落ちてわかっている、そういう人は二度と罪を犯さない。これは、ある意味で理想の形でありますし、刑法の抑止力が有効に働いている社会だと思います。
 ところが、残念ながら、今の日本はそうなっておりません。その点を私たちも考えていきたい、こういうふうに考えております。
    〔西田委員長代理退席、委員長着席〕
○三原委員 ということは、今よりも重罰化したところで、罪を犯す人はなかなかコントロールできないと。それがまた累犯するようなことも、そう簡単にはできませんぞという結果になるんですかね。そういうお気持ちなのかもわかりません。
 では、とするならば、次は、今度お聞きしたいのは、藤森先生のおっしゃった最後のところで、ヒューマニスティックなことをおっしゃっておられたわけでありますが、受け入れといいますか、出た人。
 実は、私の地元でも、私は保護司の人なんかとよく話をするんですが、そんなに重罰の人の面倒を見ている人は余りいませんが、例えば麻薬ですね、シャブというんですか、あれを打っておいて窃盗して、それで出てきても累犯多いですよ、あれは。ああいう厳しい罪じゃないにしても、三カ月、半年、何回もやると長く入りますが、そういう人たちが出てきても、一生懸命で社会復帰でいろいろなことをやって、保証人になって仕事させていっても、うまくいかないんですよね。そういう人が最終的には、今度は強盗をやり出す。どんどんどんどん悪い方に行くんですよね。
 それで、社会の受容を、こう言われましたけれども、そういうのは、決定的なものがないからこそ何度も何度もそういうことが起こるんだけれども、では、公がするようなことで具体的に提言みたいなのがございますか。
○藤森参考人 ありがとうございました。
 おっしゃるとおり、そう簡単なことじゃないというのは私もそう思います。ただ、私自身も、数えることができる程度でございますが、見事に立ち直って、前科何犯ですね、頑張っている人も友達にたくさんいます。
 おっしゃるように、覚せい剤は難しいと思いますね。ですから、それは所内でのいろいろなそういう対策教育ということがもっとプログラム化されなきゃいけないだろうということも一つのお答えになるかと思います。
 一つは、更生保護施設というのが、今、民間に対して委託、言ってみれば、おんぼろの、おんぼろと言っちゃ失礼ですけれども、民家ですよね、お金は少し出していますが。それも、全国に非常に数が少ない。例えば、これをつくることが必要である。あるいは、保護観察官、さっき日本の人数を言いましたが、イギリスはその十倍だそうですね。もちろん、保護司さんがいるから。だけれども、保護司さん、ボランティアで大変ですよね。そこのところに、もっと人的あれを投入すること。
 私、一般予防の方を否定しているわけではないんです。排除するものじゃなくて、特別予防の方にやることがもっと効果的かもしれないね、そこのところを一緒にやっていってみようよということを申し上げたかったんです。
 答えになるかどうかわかりませんけれども、一、二例を挙げれば、そういうことでございます。
○三原委員 それと、きのうの法務委員会のディスカッションで、同僚の女性議員が声を大きくしてそのことについて質問していたので、私は大いに、ああそうだなと思ったことについて一つ今度は前田先生にお聞きしたいと思うんです。
 強制わいせつ等致死傷の百八十一条の二項で、「無期又は五年以上」と、三年が五年になったんですね、今度するということになっています。そうしたら、その同僚の議員の先生が言われるんですね。強盗致傷だと、今度七年を六年に減らしたんですけれども、この一年の差というのは何だと。一方では、物取りに入って追いかけられて、それからぶん殴って何かして、それで六年になっている。こっちは、身も心もずたずたにされて、それで、少なくとも同じぐらいならいいけれども、この一年の差というのは百年も千年もの差だというので、えらい問題提起されまして、ああそうかと。それをのほほんと私見ていたけれども、確かにそういう気持ち、特に、普通、強制わいせつなんというのは男が女にすることが多いですからね。何か統計によると、九七%か八%はそうなんだそうです。
 そういうことから考えると、これはどういうふうに解釈すればいいんだろう。刑法の専門家の人、きょうは、ちょっと、こういう機会をいただいたので、この一年の差というのは縮められないんだろうか、もっとふやしてもいいぐらいのものじゃないか、百八十一条の二項の方ですね、こう思ったんですけれども、先生はどうお考えになりますか。
○前田参考人 非常に具体的な御指摘、ありがとうございます。
 お答えさせていただきたいと思うんですけれども、これは本質的にはやはり、強盗が今度のでも五年で、強姦は上げても三年だということにもつながっていると思うんですね。女性の方の議論、先ほど申し上げたように、一貫して、強姦三年では低過ぎるという御意見です。これは議員の方、与党、野党を問わず、かなりその意見が強いと思いますね。
 それは、だから、抑止を目指しているわけではなくて、女性の尊厳といいますか、社会の中での男女の平等の実現ということがポイントになると思うんですね。法改正というのは、一つはやはり犯罪抑止ですが、社会の中の規範をつくる一つの根源として、物事の考え方の筋道を示すという側面もどうしても持つんですね。
 そのときに、おっしゃるとおり、強姦致傷、もっと上げるというお気持ち、わからないことはない。PTSDとかその後のあれは本当に重いものだし、被害者は殺人よりつらい目に遭っているというのはアンケート調査にいっぱいあるんですね。
 ただ、逆に、法改正というのは、今までのシステムに整合性を持たせながら動かしていく。その中で、伝統的に強盗をこれだけ重くしてきた日本の文化の中で、急に変えるのは難しい。
 先ほど藤森参考人からも御指摘がありましたように、二年から三年の間の言い渡しの刑というのは五割ぐらいあったんです、ずっと。ただ、ここのところ二五%になっているんです。言い渡し刑、どんどんどんどん上がってきています。これはやはり、国民の中でのというか、裁判官の意識もそうだと思いますが、変わってきていると思いますね。
 そういう動きがあって、変わっていく部分、これは決して犯罪の抑止だけではない。そのときに、御指摘のように、一つの政策判断としては、強盗と強姦同じように、致傷の場合も、法定刑、下限切っていくというのはあるんですが、これは、従来の議論と、それからほかの財産犯とのバランスとか、いろいろなテクニカルな問題があってそうなっているということで、十分な答えにはならないんですが、お気持ちは非常によくわかる、その女性議員のおっしゃることは非常によくわかるということなんですね。
 何で強盗がそんなに重いのかというと、やはり我が国では、明治以来、つくったとき以来、社会の治安の抑止にとって、強盗を抑え込むというのは非常に重大な課題だった。それで、五年以上という刑、それから二百四十条の七年以上の刑というのができているんですね。
 ただ、それは、現場では非常に苦しんで今度六年に変えるという案が出てきて、それは私はリーズナブルだと思うんですが、それをまた五年に下げるというのは逆に問題があるし、逆に強姦を一挙に、強姦致死傷を一挙に七年にするとか六年にするというのも急速な変化過ぎるということで、説得力は非常に弱い説明ですけれども、我々はやはりそのあたりの改正が合理性があるというふうに考えているということなんです。申しわけございません。
○三原委員 それと、もう一つ問題提起としてされました、男女の性的な犯罪に対する、外国ではこのごろ、男も女も余り分けない方向に行っているということを言われましたね。大概、男の方から女の方に対するいろいろな意味での性的抑圧が法律の上では載っておるんですけれども、そうでない場面もあるということなんですけれども、その点に関して、前田先生、日本でもそういう法制化みたいなことはどんどん進んでいるんでしょうか。どうでしょうか。
○前田参考人 お答えさせていただきます。
 性犯罪というのは、やはり国ごとの文化が非常に色濃く出るものだと思います。同性愛に関してどう評価するかとか、近親姦をどこまで処罰するかとか、ですから、国によっては、近親姦を非常に厳しく処罰する法律をつくっている国もある。それは、現にあるから処罰するんですね。ところが、日本は相対的にはその問題は小さいんだと思うんです。
 もちろん、欧米に学んで日本は法律をつくってきましたから、それに学ぶ面は大きいところはあると思いますが、また、国際化して性の文化も欧米化している面があるのかもしれません。ただ、少なくとも、現状での強姦罪の改正に関して、その議論を踏まえてやるというのは、非常に学問的にはわかるんですが、現実の、そしてこれまでの男女共同参画会議なんかの歩みを見ていますと、ちょっとそれは回り道をし過ぎるという感じだと思いますね。
 強姦に関しても男女間の関係は動いていくと思いますけれども、私は、今の現状では、先ほど御指摘があった強制わいせつで、議員の御指摘があったように、九七%ですかは男性が女性に対して行うんですね。女性加害者の問題が、強姦と同じような形でやらなきゃいけないものというのは、それこそ立法事実としてどれだけあるか。私は、非常に小さい。
 ですから、まず現に差し迫った問題について規範を変えていただきたいということです。
○三原委員 ありがとうございました。
○塩崎委員長 次に、早川忠孝君。
○早川委員 自由民主党の早川忠孝でございます。
 きょうは、前田参考人、大塚参考人、藤森参考人には、御出席を賜りまして、ありがとうございます。
 私の方からは、専ら、公訴時効を延長するという問題について前田参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
 現行刑法は、明治四十年に制定をされ、今日に至っているというわけであります。これは日弁連の意見書でも指摘をされておりますけれども、現行憲法の制定に伴って、国家の刑罰権を行使するという観点からの刑法の見直しというのが当然行われるべきではなかったか。しかし、それが行われなかった。一方において、刑事訴訟法は、昭和二十四年ですか、制定をされた。旧刑事訴訟法制度と現在の刑事訴訟法は、大幅に変わっているということであります。
 そこで、参考人の御専門だと思いますので、この改正の内容について一応御説明をいただいた上で、それでは、そういう状況の中でなぜ刑法は改正されないで今日に至ったのか、その背景事情等について御説明を賜りたいと思います。
○前田参考人 御質問ありがとうございます。
 第二次世界大戦の後、憲法が変わって、刑事訴訟法というのは憲法と非常に結びついたものとして大きく修正されたわけですけれども、刑法の規定するような実体的な、先ほどいろいろ出てきましたけれども、何が悪いことで、男女間のことも含めて、そういう規範的なものは、やはり伝統的なといいますか、従来の議論を踏まえたものに結びつけて運用していけば十分である。もちろん、全く修正がなかったわけではなくて、姦通罪のようなものは憲法の理念に合わないということで改正されたわけですけれども、人を殺すのは悪いことである、強姦するのは悪いことであるというような基本的なことは、第二次世界大戦前後で基本的には変わらないだろうということで、刑法は維持されたわけでございます。
 ただ、刑訴のやり方が変わって、刑法と刑訴はある意味ではセットになっているわけですから、刑訴が当事者主義化して、それに伴って、立証の仕方それから自白の評価の仕方その他、微妙な変化がある。それに対応した刑法の書き直し、被疑者の主観面に余り光が当たらないような、客観的な証拠を中心にやっていく方がいいんじゃないかという議論はあったと思います。ただ、何とか刑法でやれるようにし、そのままの状態で刑訴と組み合わせながら現状に至っている。そこでは、大きな改正をその意味でしなきゃいけないというほどのトラブルは起こってこなかったというふうに認識しております。
○早川委員 犯罪被害者の方々の権利あるいは利益の保護を拡充するという観点から、現在、犯罪被害者基本法の制定という動きが進んでいるわけであります。
 平成十一年以降、児童買春等処罰法、あるいはストーカー規制法、犯罪被害者保護法、児童虐待防止法、DV防止法等、多くの特別法が制定をされて、犯罪被害者の保護という観点から法制度の整備がされてきた。これが、都立大学の木村光江先生の論文の中にそういう趣旨で引用されているわけであります。
 そこで、犯罪被害者の権利利益という観点から考えますと、欧米諸国では、犯罪被害者に公訴を提起する権限、権能を付与している国もあるというふうに伺っております。しかるに、我が国においては国に公訴提起の権限が独占されているということですが、これはどういう物の考え方の違いに由来するのでしょうか。
○前田参考人 お答えいたします。
 犯罪被害者を考えて基本法をつくっていただくということは、非常に我々としても希望しておりますし、勉強させていただいているわけですけれども、その問題と、被害者が公訴を提起できるかどうかということは、ちょっとやはり分けて考えていただいた方がいいのではないかと思っております。
 刑事訴訟法の基本構造の中で、原告にだれがなり得るかというのは、これは大問題で、それこそやはりその国の法文化もありますし、我が国では、もうかなり長いこと、国家訴追主義、検察官が公訴を提起するという形をとってきた。
 その中に被害者の視点をより入れていかなければいけないという御指摘は非常によくわかるんですが、被害者本人の公訴の権限というところまでいくと、これはかなり、家の建て直しでいきますと、大きな柱の建て直しになると思います。また、それをしなければいけないような問題が起こっているかというと、それよりはむしろ、被害者の訴訟の段階でのいろいろな参加の仕方、それから被害者への情報の提供の問題、それらについてより手厚い議論をしていただきたい。
 間違いなく、DVの議論、先ほど御指摘いただいた児童虐待の問題、それからストーカーの問題、そして今回の強姦罪の法定刑、もちろん凶悪犯罪でほかの問題にも広がったわけですけれども、私は、完全につながった問題。一つ、その背景には、やはり従来軽視されてきた被害者の視点が入ってきた、やはりそちらのことについても光が当たったことによってやっと動き出した。強姦罪の法定刑というのは昔から言っているんですが、それが動き出したのはやはりDV法の影響が非常に大きかったと思っております。
○早川委員 刑罰というのは、犯罪に対する言ってみれば正義の執行という側面があると思います。正義を実現するという観点からすると、そもそも刑罰あるいは公訴提起に時効制度を援用するというのは果たしていかがなものかと思いますけれども、その点にはいかがでしょうか。
○前田参考人 お答えいたします。
 正義感からいえば、正義はあくまでも追求されるべきであるというのは一つの考え方だと思いますが、やはり法制度というのはかなり、その意味で、国家の制度として政策的な側面も持つ。やはり被疑者の側としての防御権といいますか、どこまでの間防御しなきゃいけないかというバランスも考えなければいけない。それから、先ほど私が申し上げましたように、捜査機関がどれだけの時間それだけの事件にエネルギーを投入しなければいけないかという国家の資源の配分の問題もある。
 その中で、やはり片一方で、御指摘のように、正義の実現として、犯人がわかって、名乗り出ているのに、いけしゃあしゃあと大きな顔ができるのはおかしいじゃないかというのは、もう国民の気持ちとしてよくわかります。それとのバランスをどうとっていくか。
 一応制度として今まで十五年であったのが、やはり全体として、いろいろな事件を踏まえて短過ぎるのではないか、もう少し延ばしていいではないか。これは法定刑すべてそうなんですが、どこまで延ばすのが科学的な根拠で正しいものかというのは難しいです。それはちょうど、体操の選手でもいいし、フィギュアスケートでもいいのですが、最近アイススケートなんかやっていますけれども、あれが何・何点でどっちが上か科学的にきちっとピンポイントで決めるというのは難しいですが、どちらがより上で、一位か二位かは大体わかるな、その感覚なんだと思うんですね。
 今回の殺人もそうなんですが、強姦があのくらいで強盗がこのくらいなら、やはりバランスとして殺人はこのくらい。それと連動して、御指摘の公訴時効についても十五年はどうなんだろうか。これはいろいろな波及効果も含めて、ただ、これは法制審議会で相当議論を詰められたと伺っておりますので、それを踏まえての結論ということで、私は、公訴時効制度自体は否定すべきでないと。
 一方で御不満があるのはわかりますが、ただ、その不満が強くなったのはやはり時効期間を延ばす形で受けとめていくのが合理的であるというふうに考えております。
○早川委員 公訴時効が経過した犯罪ということについてお伺いしたいのですが、最近、公訴時効が満了したその後に真犯人が名乗り出るという形の事件が幾つか報道されている。本当に一般国民の正義感に相反することであります。
 そこで、公訴時効が経過した犯罪について捜査当局は捜査の権限を行使できるのかどうか、あるいは、そういった場合に、犯罪の捜査をすることが違法となるのか、あるいは、捜査当局あるいは検察当局がこれを捜査を遂げて裁判所に公訴提起した場合に不適法な公訴提起であるということで却下を免れない、そういうことで結果的には捜査をしないだけなのか。このあたりの、公訴期間を経過したものについてはどう取り扱うのが一番妥当なんでしょうか。
○前田参考人 お答えいたします。
 公訴時効が成立しますと、捜査というものは犯罪の公訴提起に向けての準備活動でございますので、捜査ということはあり得ないということになるわけです。ですから、捜査官が時効が成立しているのを知りながらそれについて事情聴取したりとか調べたりということは、これは許されないということになる。
 それが非常にアンフェアな感じがするというのはわかるんですが、先ほど申し上げた、公訴時効制度を維持するということは、そういうものをやはり認めるというか、ただ、それはやはり、ある程度の時間が過ぎれば国民の何割かの人はそれを納得されるということで制度ができているんだというふうに考えております。
○早川委員 日本弁護士連合会が本年の八月十九日付で反対の意見書を出しておられまして、きょう、大塚参考人からもそういう趣旨の意見陳述があったわけであります。
 公訴時効期間の見直しに反対する根拠として、被告人や弁護人の防御権を大きく侵害する結果になってしまう、証拠が散逸をしてしまう、こういうことで、迅速な裁判を受ける権利を結果的に侵害するのと同じ効果になってしまうのではないか、こういう意見が述べられているところであります。
 私自身は、そうではなくて、やはり現在の公訴時効の適用について、社会的には、これを延長しなければ正義に反するようなことが幾つも出てきている、それに対して何も、手をこまねいておいておくというわけにいかないのではないかというふうに思いますが、参考人としては、この弁護士会からの御意見についてはどのようにお考えでしょうか。
○前田参考人 お答えいたします。
 弁護士会のお立場としては非常によくわかる御発言だと思っております。被告人、被疑者の権利を守り、弁護をしていく上で、やはり弁護権を実質的に保障していく。形式上弁護権があるというだけではなくて、どこまでやり切れるかということも含めて。
 それから、被疑者、被告人をどこまで不安定な状況に置いておくかということをおっしゃるのはわかります。片一方で、バランスとして、不安定な状況に置かれるといったって、あなた、犯罪を犯したんでしょうという議論、真犯人であればそのくらい甘受すべきだと。
 ただ、問題は真犯人かどうかがわからないというところなんですね。そのバランスの中で、非常にはっきり、明々白々と、公訴時効が過ぎた段階で名乗り出てくるような事例に直面すれば、正義感からいって非常に強い反発が来る、それはそのとおりだと思います。そういう確率的なもので、わからないものを含めて、被疑者がやはり権利をきちっと主張することによって刑事手続の真相解明ができてきている。そういう構造にのっとった上で、どの程度の公訴時効期間を置くのが合理的なのか、これは、最後は、科学的に何年が最も合理的だというような数値は出ないんだと思います。
 さっきから御指摘のような、国民一般に存在する正義感といいますか真相究明の意欲、それと被疑者、被告人の利益とかそれから捜査機関の負担とのバランスをどうとっていくか、それは、動かし方は、今のものが長いか短いか、どの程度延ばすんだったら納得できるか、これはやはり最後は国民が決めるというふうに私は考えております。
○早川委員 時間が経過しましたので、これで質問を終わります。
 ありがとうございました。
○塩崎委員長 次に、江田康幸君。
○江田委員 公明党の江田康幸でございます。
 本日は、三人の先生にそれぞれの意見をこの刑法改正に関して述べていただきまして、大変勉強になりました。ここに感謝を申し上げます。
 先ほどからの議論を、また先生たちの御意見をお聞きしておりますと、治安回復に向けて何が大事か、それは刑罰が最優先か、もしくは犯罪抑止か、そういうような議論があっているような気がしますけれども、私の考えといたしましては、やはり刑罰の強化が、強化といいますよりもむしろ適正化というのが正しいかと思うんですが、刑罰の適正化がまた必要であろうし、犯罪抑止対策というのがまた重要であろうし、そして矯正を図る教育というのが大事である。すなわち、これらが総合的にうまく稼働していくことが治安をよくしていく非常に重要なことであろう。また、国民にもわかりやすい、そのような考えではなかろうかと私自身思っております。
 その上で今回の改正についてそれぞれの皆さんの御意見をお聞きしたいと思っておりますが、きょうは割愛されましたけれども、最近の犯罪情勢というのにつきましては、もう皆さんも御存じのように、一般刑法犯の認知件数が二百七十九万件と戦後最高水準を更新しているという状況。また、世論調査でも、先ほどもありましたけれども、国民の約八割以上の方々が、日本の治安が悪くなった、また、自分や身近な人が犯罪に遭うかもしれないと不安になることが多いと思われているという結果も出ております。さらには、検挙率というのは、認知件数の増加に反比例して、平成六年比でいけば五四%にも低下してきている。さまざまな犯罪状況の悪化といいますか、そういうのが浮き彫りにされているわけでございます。
 そのような中で、この百年来の刑法の抜本的改正を今回行うことになっているわけでございますので、国民にわかりやすい議論を我々議会もしていかなければならないと思っております。そういう意味で、二つ三つになるかと思いますけれども、重要な観点について皆さん方にお聞きしたいことがございます。
 一つは、強姦罪についてでございます。
 強姦罪につきましては、私も、また我が党も、公明党も、強姦罪の罰則強化、また集団強姦罪という新たな犯罪に対しては新たなその罰則の創設というものを主張してまいりましたが、凶悪犯罪の中でもこの強姦罪、強制わいせつ罪というのは、ほかの犯罪と著しく異なるのは、暴力によって被害者の人格とか人間性、また人権、そういうものが著しく破壊されるわけでございまして、このような犯罪に対しては厳正に加害者の刑事責任を追及するというのは国民の声であるかと思っております。
 最近出てきた事件におきましても、婦女暴行等の事件につきまして、これは一般質問でも質問させていただきましたけれども、検察官の求刑を上回るような懲役の判決が出ている。また、最近の集団強姦の例としてスーパーフリー事件というのがありまして、その主犯格に対しては最高に近い十四年の判決が出ているわけでございます。
 質問でございますけれども、このような強姦罪の罰則の強化、そして集団強姦罪の今回の新設に関しましてどのように先生方はお考えであるのか、国民へのメッセージでもございますので、お答えいただきたいと思います。それは、強姦罪、そして集団強姦罪に対して今回の改正は適正なのかどうか、また、ほかの刑との比較で考えてみてバランスはとれているのか、検討の必要があるのか、そういう観点についてもお聞かせいただければと思います。前田参考人と、時間がございませんので、大塚参考人、よろしくお願いいたします。
○前田参考人 お答えいたします。
 御指摘のとおりだと思うんですね。強姦罪の重みというのが法律の現場といいますか、大阪地裁の十二年の求刑に十四年が出たというのが象徴的ですけれども、裁判官の意識が動いてきている。東京地裁でもそうだと思いますね。じわじわと上がってきている。それに検察がついてこられなかったのでああいうことが起こったと思うんですが、法律の専門家の特殊なひとりよがりの議論ということでは私は絶対ないと思います。やはり世の中全体の、女性に対しての侵害の重みを、法曹社会でも遅まきながらで、男社会だったと思いますね、やはり裁判官にしろ。それが変わってきたということの私は象徴だと思っております。
 その意味で、それを踏まえて、三年に法定刑の下限を上げるので妥当なのか。これは常に内閣府で批判されてきたんですが、私は、まさに先生の御指摘になる、他の犯罪とのバランスからいって三年というのが合理的だということでございます。それから、集団強姦についての新設。これも今までなかなか、指摘はされていたんですが踏み切れなかったんですが、構成要件をつくられたというのは、私は、合理的であって賛成であるという意見を持っております。
○大塚参考人 他の刑との比較ということで御質問いただきました。
 例えば、強盗罪あるいは強盗致傷というものがわかりやすいかと思います。これを単純に年数ということで比較しますと、現在、格差がございます。ただ、ここで考えなければならないのは、例えば強盗罪の中にいわゆる押し込み強盗、これはもう典型的な強盗です。しかし、それ以外に、強盗罪の中には例えば、それが軽いとは申しません、いいとももちろん申しませんが、軽微なひったくり、あるいは空き巣、これは窃盗罪です。しかしながら、その場合に、家人に見つかって、そこで居直ったらこれはもう強盗ですから、そうではなくて逃げようとした。逃げる途中で追いつかれて、振り払ったところが転倒したというふうな場合、これは場合によっては傷害が付加されまして強盗傷人ということになり得ます。つまり、強盗罪というのはそういう意味で非常に幅が広い。その幅が広いときに、上の方はともかくとしまして、下の方が今のままでいいんだろうか。これが、今回、強盗致傷につきましても下を下げるということになりましたけれども、こういう事情があるかと思います。
 そういう意味で、強姦罪あるいは強制わいせつと他の罪とを比較するときに、単純に年数で比較することがよろしいのかどうか。その内容に立ち入って、その刑が妥当なのかどうか、この検討が必要だろうと思っております。
 その意味で、私としましては、現在の強盗罪、もっと幅を広げて言いますと財産犯についての日本の法定刑は若干下限が重いのではないか。その結果として、強姦罪あるいは性犯罪と比較して格差があるように見える。もちろん私も、強姦罪あるいは強制わいせつが人格の尊厳の根本に触れる重大な犯罪であるということについては全く異論ございません。そして、このことは、もう先生方のみならず社会一般の共通認識だと思っております。その点の手当ては必要でございますけれども、今申し上げたような点を付加して均衡論を論じることが必要だろう、これが一つでございます。
 そしてもう一つは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、性差の問題がございます。確かに強制わいせつのうちほとんどは男性の女性に対する犯罪です。これは間違いございません。ただ、少数ではありますが、女性から男性に対する性犯罪が存在するということ、それを今の強制わいせつという形でくくっていていいんだろうか。これが、先ほど私が申し上げました、性犯罪についての再検討が根本的に必要なのではないかと申し上げた趣旨でございます。
 そういった検討の中で、例えば今回の集団強姦等についても検討されることが必要でありましょうし、その検討抜きに、例えば今回のスーパーフリーというふうな非常に忌まわしい事件、これだけに着目してというと言い過ぎかもわかりませんが、短期的に、長期の視野を抜きにして対応することが果たしてよろしいのかどうか、こういう疑問を申し上げたつもりでございます。
○江田委員 大変短い時間でございますので、私も議論をしたいわけでございますが、先生たちのきょうは御意見をお伺いして、もう一つだけ質問したいところがございますので、これは公訴時効の延長についてでございます。
 先ほどから、公訴時効の延長については御議論があっておりますので再度の皆さん方の御意見をお伺いすることになるかと思いますが、これもまた、私も、きょうの質問の観点は、国民の視点、庶民の視点からわかりやすくということで、今回の刑法改正においてわかりやすくということで質問をさせていただいておりますが、やはり今いろいろな事例がございますけれども、こういう事例がございます。
 東京都の足立区の小学校女性教諭殺害事件。二十六年前に殺害したということでことしの八月に自首してきた。自宅の床下に埋めていた。その自宅が区画整理で取り壊されることで不安になったから自首してきた。犯人は、時効成立、時効が完成していた、それは知っていた。それに対してやはり御遺族の方々の御意見というのは、人を殺しても十五年間逃げ切るならばふだんどおりの生活ができるというのはおかしい、そういうような感情ですね。また、時効完成しているから犯罪者と呼べない、呼ぶことすらためらうというのに対して、もう遺族の方々は非常に苦渋のお気持ちであるわけです。
 こういう時効という制度は一刻も早く廃止してもらいたいというのが御遺族の意見ですが、こういう御意見は、国民感情の変化から今回の法改正に至っているということになっておりますけれども、こういう国民感情の変化からすれば妥当な御意見ではなかろうか。それにこたえているものが今回の改正ではなかろうかと思うんですが、改めてやはりお二人にといいますか、もう時間がございませんので、その件について、前田参考人、いかがでしょうか。
○前田参考人 お答えいたします。
 御遺族のお気持ちはまさにそのとおりで、国民の大多数の方がそれには納得されるということで、私も非常によくわかるということだと思います。
 ただ、二十六年という長いこと、例えば刑務所に入っている、その中で悔い改めてそれに対して被害者がどう考えるか。これは、そういうことも受けないで、刑罰も受けないで二十六年間過ごしたということなんですが、それは単純にはやはり、天下晴れていい思いをしてというわけでもない。そういうことも含めて考えますと、ある程度の年数に関しては、今回の提案でもやはり公訴時効は残すわけですね。ある程度時間がたった部分については、宥恕と言うとちょっとあれなんですけれども、考えるということは認めざるを得ない。
 その中で、しかし、明々白々犯人がそれを計算して十五年間逃げ切ってそれでというようなことが出てくれば、やはりそれに対してきちっとした対応をする、それで延ばしていくということは合理性があると思うんですが、そういうお気持ちを遺族が持たれたものを一〇〇%払拭する制度をつくっていくというのは、これは残念ながら非常に難しいと思います。
 ただ、今の世の中の大きな流れの中で、先ほど御指摘があった被害者の感情、遺族の感情なんかも重視するような法理論で今度は基本法ができる、そういう流れの中で、やはり時効期間を延ばすというのは非常に合理性があるといいますか、国民の意識といいますか常識にのっとった方向性の議論だと考えております。
○江田委員 時間が参りましたので、先生方、大変にありがとうございました。
 以上で終わります。
○塩崎委員長 次に、津川祥吾君。
○津川委員 民主党の津川祥吾でございます。
 きょうは、三人の参考人の皆さん、朝から本当にありがとうございます。
 時間もございませんので早速中身について質問させていただきますが、まず冒頭、この法律案というのは正式名称で言うと刑法等の一部を改正する法律案、こういう名前に大体なってしまいまして、これだけだと何の改正案かよくわからないものですから、我々はよく通称何々法案というような言い方をします。今回も刑法の厳罰化法案というような言い方をついついしてしまうんですが、それぞれお三人の方々に改めて若干確認をさせていただきたいのが、これは厳罰化の法案なのか、それとも適正化の法案なのか、どちらの認識を持たれるのか。
 藤森参考人については、特にこれまでの法制審にはかかわってこられなかったかもしれませんが、御感想も含めて、まず前田参考人からお話をいただければと思います。
○前田参考人 お答えいたします。
 厳罰化と適正化が対立する概念かどうかというのはちょっと難しくて、法律家というか、我々の商売、言葉でいろいろ議論するので難しいんですが、重くなるという意味で厳罰化であるということは事実だと思います。
 ただ、特に強姦罪なんかについてるる申し上げてきましたように、まさに国民の意識に合うように適正化する、それは犯罪を抑え込むための目的というよりは、むしろ国民のニーズに合うようなといいますか常識に合うような形で適正化するものである。ほかのものに関しても、時効期間も含めて、そういう意味では適正化の面を含んでいるというふうに考えております。
 ただ、事実として、従来の改正にないような刑の引き上げを含んでいるという意味で厳罰化という名前で呼ぶ方がわかりやすいとすれば、それは納得いたします。
○大塚参考人 私たちは、この法案について、略称でございますけれども、よく重罰化法案というふうな表現をしております。それで御理解をいただきたいと思いますが、もちろん、改正法でございますから、御提案者はそれが適正なものという御理解で提案をされたものだと思います。
 ただ、先ほども申し上げましたので繰り返しは避けますが、私たちとすれば、適正な刑、適正な法定刑を定める、これはもちろん必要なことでございます。そして、それがより今よりも重いものになるのか軽いものになるのか、これはさまざまな議論の中で最終的には国民の代表である国会で御決定をいただくこと、これは当然であります。
 ただ、その際に、この犯罪類型については例えば今の法定刑の上限ぎりぎりの判決が多くなっているからこれは上げなきゃいけない、あるいは逆に、この犯罪類型についてはもっと低い刑を宣告したいんだけれども最低がここにとどまっているからできない、これは問題だ、こういう事例があれば、最高刑あるいは最低刑を変更するという立法理由は少なくとも検討に値するかと思います。現在、それがあるんだろうか。これが一つ。
 それともう一つは、先ほども申し上げましたように、個々の犯罪類型についての議論ではなく、最高刑を一律に上げる、これがどういう意味を持つのか。
 さっき申し上げたように、個々の犯罪類型について上げる必要があるから最高刑が邪魔になる、だから上げるんだということであれば、賛否は別にしまして当然議論ができると思いますが、そうでなく、有期懲役の最高刑を上げることによって有期懲役という形での法定刑があるものを一律に、さっき申し上げたように百余りになります、上げることが妥当なんだろうか。
 その意味で、私たちはこれを重罰化と呼び、問題があるというふうに認識しております。できれば個々の犯罪類型ごとに、これは上げるんだ、これは必要ない、これはどうするんだ、こういった議論であれば、賛否は別にいたしまして、さまざまな議論ができるし、これが建設的な議論のあり方であろうと私は考えております。
○藤森参考人 法定刑でございますから、全体としては、いわば裁判官が選択できる幅を上方に拡大する、もちろん若干下げるのもありますが、そういうことなんだろうと思います。
 では、それ自体が量刑、実際の科刑に連動するかどうかという問題なんですが、私は、素人考えとしては、やはり裁判官が見たときに、ゾーンが、全体を見ると思うんですね。それで、上の方は、やはりどんなのが起きるかわからないからもちろんあけておくでしょう。しかし、その中での、上からどの辺かなというふうなのがあるとすれば、やはり上方シフトへ量刑自身が動いていくのではないかというふうに素人なりに思います。
 それと、有期はあれだけれども、処断刑が一番上が三十年になるというふうなことから、やはり厳罰化と言ってもいいし、重罰化というふうに客観的な意味で言っていいんじゃないかなと思います。
 じゃ、適正かどうかという問題ですが、ここについては、決して逃げるつもりはないんですけれども、ここはそうだよな、例えば、さっき言いましたように、二十五年がいいかどうかはわかりませんが、時効の延長なんかはもっと延びていいなというふうに私は個人的には思っております。
 それから、これはそうだなと思う点もありますし、しかし、先ほど述べたように不適正かもしれないなというふうに疑われる、そこがすとんとまだ説得されていない、それがたくさんある、そんな気持ちでいます。
○津川委員 冒頭にこういうお伺いをさせていただいたのは、大塚参考人からも言っていただきましたが、実は、それぞれの犯罪類型ごとに、これは軽過ぎるのではないかとか、これは重過ぎるのではないかとか、これは実務上実際に問題が発生をしていると。こういうときに、それを何とか変えていこうと。それは、もちろん国民の意識が変わったということでももちろん必要あり得ることだと思いますが、こういうことを背景としてここが変わらなければならない、そこをまさに適正化しようという流れならば、それはそれで適正化と理解をします。これは法務大臣に聞けば、間違いなく適正化だと言われると思いますが、個々の犯罪類型ごとの問題点ということを議論しているはずが、全体が大幅に変わってしまうというやり方が果たしていいのだろうかというのは、若干やはり私としては危惧をする部分が一つあります。
 もう一つは、一方で、国民に対して、やはり重罰化をするんだ、あるいは厳罰化をするんだ、これは言葉がどちらが正しいかわかりませんが、こういうメッセージというものも一つ必要なものが含まれているんだと思うんです。
 これは、大臣のこの法案の提案理由説明の中にこういう書き方をしておりまして、治安水準が悪くなったということが一つ、もう一つは、国民の体感治安が悪くなったと。体感治安という言葉があるのかどうかよくわかりませんが、大体おっしゃりたいことはわかるんですね。治安が悪くなったと国民が感じていて、それが不安要因になっている。これを何とか改善していかなきゃいけない。その理由としては、重大犯罪の増加があって、さらには加えて、有期刑や公訴時効期間のあり方について正義観念に合致していないのではないかという指摘も従来あったのであわせてこの際変えましょう、こういうような提案理由の説明なんですね。
 ですから、国民の不安感とか、あるいは治安が悪くなっているのではないかというふうに感じていることに対してこたえるということもこの法律の提案理由の中の一つだということを大臣がおっしゃっているんだというふうに私は認識をします。
 そこで、ちょっともう一つ、先ほど前田参考人の方からお話があったところなんですが、これは私の聞き間違いだったかもしれませんが、国民の不安感といいましょうか、国民が認識をしている、犯罪がふえたかもしれない、治安が悪くなったかもしれないという感覚は非常に鋭いんだという指摘がございました。確かに、国民の大体みんなが何となく感じるというものにはそれなりの根拠があって、やはり非常に大きな意味があるし、また決して無視してはいけないものだと思います。
 ただ、それに触れたところで、犯罪との相関関係があるのではないかというふうにおっしゃったかと思うんですが、相関関係というと、犯罪がふえたら国民が不安になるというのもあるんですが、国民が不安になると犯罪がふえるという話にもなるのかもしれません。これは言葉の、私の聞き間違いだったかもしれませんが、ちょっと御説明いただけませんか。
○前田参考人 今の点に限って、細かい点ですが。
 私はちょっと全国的な調査をやったことがあって、交番に何を国民がニーズとして持っているかというようなところで、要するに、犯罪に対しての体感治安という言葉がそのころから出だしたと思いますけれども、不安感を持っている人たちの割合とその地域の犯罪発生率との間に強い相関があるということなんですね。
 だから、恐らく先生の御指摘のとおり、不安があったら犯罪がふえるということはあり得ないわけでして、犯罪がふえているのでその地域の人が不安感を持っている、それはかなり強い、統計学的に見ても強い相関の形で出ている。要するに、そんな地域ごとの、今のように犯罪の発生率なんというのを出す前の時代、状況なんですよね。そういうときに、やはり県ごとでいろいろ比較してみたんですけれども、やはり犯罪発生率の高いところは不安が強い。
 それからまた、それが根拠として、マスコミなのか地域なのか、要するに口コミで入ってきたのか、いろいろなことも分析したんですが、やはり広い意味で、生活に対する不安というのと客観的な犯罪状況というのは相関関係はあるだろうということを申し上げたので、ただ、それを特にきょうの説明の中で重視したわけではなくて、ちらっと申し上げて誤解を招いて申しわけなかったんですけれども。
○津川委員 要するに、国民が不安に思っている割合が上がったら犯罪がふえるという理解じゃなくていいですね。それはいいですね。(前田参考人「もちろんそうです」と呼ぶ)はい、わかりました。相関関係とおっしゃったので、ひょっとしたら、専門家の先生にはそういうのが、事例があるのかなと思ってちょっと心配になったんですが……(前田参考人「いや、とんでもないです」と呼ぶ)そうですね。わかりました。ありがとうございます。当然、犯罪が実際に減って、初めて国民の不安というものが減っていくということになるんだと思います。
 実は、国民の体感治安の悪化をこれは改善していこう、不安を解消していこうということになるには、では、そうすると、この今回の刑法の改正も、実際に犯罪が減るとか、そういう効果が出てきて、初めて国民の不安を解消するということにこたえられるという話になろうかと思います。
 それで、実際に厳罰化というものが効果があるのかどうかということ、随分いろいろ議論があると思いますが、先ほど前田参考人のお話の中で、効果のあるものもあれば、ないものもある、こういう御説明のされ方をされました。ちょっと時間がないので、こういったものはあるよ、こういったものはないかもしれないよということを前田参考人と大塚参考人にそれぞれ御所見をいただければと思います。
○前田参考人 ここで一つお断りしておかなければいけないのは、効果という意味が非常に複合的だということなんですね。
 具体例として、警察がやった酒気帯び、酒を飲んでの運転に関して罰金刑を上げた、がくっと減った。あれなんかは目に見えた効果だと思いますね。それから、業務上過失致死罪に関しても大きく変わった。それから、私なんかは、やはり少年犯罪なら、少年法の改正も一定の効果があったというふうに評価しております。これらに関しては具体的に出るんです。
 ただ、もう一つ広い意味の効果として、やはり犯罪を悪いことだと認識して、それに対して、国民の行動で、現にもう犯罪を犯して、再犯を犯すような人に対してのメッセージ性ではなくて、何もしない一般市民に対して犯罪というものはこれだけ悪いものだということを伝えるという、条文による規範形成効果といいますか、難しい言い方になって申しわけないんですけれども、そういうものも広く考えなきゃいけない。
 ですから、効果がないんで全然摘発がないんだったら全部刑罰をなくしたらどうなのかというと、その部分でばっとマイナスが出ちゃうかもしれない。あくまでも、非常に効果というのははかれない微妙なものなんですが、具体的に、例えばけん銃の刑を上げたのもかなり効果が出てきた部分が、一時的ではありますが、あります。
 ただ、はっきり申し上げておきたいのは、こういう重罰化で直に数を抑えるという効果だと、必ず短期的でまた別の揺り戻しが出てくるという面はあります。ただ、その意味で解熱剤と申し上げたんですが、そういうものと、それから、広く法規範を国民に知らしめて、殺人は悪いんだ、五年になるんだという形で抑止していくということもじわじわときいてくる効果がある。そのほかに警察力とか地域の力をアップするとか、すべてを総合して犯罪を抑止していかなきゃいけないというふうに考えております。
○大塚参考人 私は、犯罪学あるいは刑事政策の専門家でございませんので、どの犯罪類型について有効で、どの犯罪類型について有効でないかということに適切にお答えすることはできません。
 ただ、私の直観で申し上げるならば、さっき申し上げた、濃密な人間関係の中で出てくる例えば殺人罪、こういったものについて抑止効果があるだろうかといえば、これは私はないんだろうと思います。そして、もっと言えば、今前田参考人がおっしゃったとおり、そもそも犯罪抑止のために刑を上げることによって総体としてそれほどの効果があるんだろうかといえば、私はかなり疑問に感じております。
 ただ、前田参考人の言われた中で一点だけ補足をさせていただきますと、刑罰にはもちろんメッセージ性がございます。こういうことをすればこういう刑になるんだ、そういうメッセージ性はございますけれども、そのこと自体を私は否定いたしませんが、本来、国民の規範意識というのは、そういう悪いことをしたら死刑になるんだよ、刑務所に行くんだよ、そういった形で醸成されるものではなく、刑法によって規制される以前に、モラル、規範として、こういった悪いことをしてはいけない、そういったものが醸成されなければいけない。これは、教育の成果であり、家庭教育の問題であり、養育の問題であり、社会の常識であろうと思います。
 逆の言い方をしますと、刑法のメッセージ性によって国民の規範意識を高めるというのは逆であり、国民の規範意識が高まることによって治安が守られる、これが社会のあるべき姿ではなかろうかと思っております。
○津川委員 時間が参りました。大変ありがとうございました。また、よろしくお願いいたします。
○塩崎委員長 次に、辻惠君。
○辻委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。
 今回のこの刑法等の一部を改正する法律案について、私は、この提案の経過が、国民的論議を尽くさない、非常に拙速的なものであるという思いが強くいたします。
 内容につきましてもいろいろ問題があるというふうに考えておりますが、まず、昨年の末に犯罪対策関係閣僚会議で、それ以前にもそういうことは言われていたことは確かだと思いますけれども、正式には昨年十二月に問題になって、本年の二月からの法制審、実質的な凶悪・重大犯罪関係部会の論議は十二時間程度だというような報告も受けております。果たしてそのような短期間の論議で本当に本質的なことを含めた議論ができるのか、本当に疑問だなと。
 しかも、そのことについて、刑法が制定されて以降百年ぶりの改正、初めてとも言っていいほどの大幅な改正であるにもかかわらず、国民の皆さんに対する説明、具体的に何をして、どうしようとしているのか、どこへ行こうとするのかということについての説明責任が全く果たされていない。提案者としての法務省の見識を私は疑わざるを得ない、このように考えます。
 その上で、私は、物事を考えるときに、刑法にしても、そして憲法にしても、これは人類の英知の所産であるというふうに思います。刑法典が近代国家において制定されたというのは、目には目を、歯には歯をというようなタリオの法に任せていたのではだめなんだ、応報刑的な感情について、それにとどまるのではなくて、もっと刑罰の本質論を考えて、一般予防、特別予防の両面にわたって考えなければいけないという、その中で生まれてきたものだと思います。
 応報感情というのは、とりわけ死刑なんかのときに一番端的なわけでありますが、少なくとも目には目を以上のものを果たさないと応報感情は解消しないわけでありますから、どこまで行っても応報感情は満たされない、残るわけであります。したがって、応報感情というものについては、どう社会的、経済的、またはその被害者御本人、そして家族の方々の精神的なケアができるのか、そういう非常にやわらかな、大きな構造の中で、どのように応報感情をいやしていくのかという総合的な政策として考えられなきゃいけないんじゃないかなというふうに思うわけであります。
 そういう意味で、今回のこの提案というのが非常に一面的な、短絡的な応報感情の強調に堕している嫌いがあるのではないかなと。これは、今の小泉政権が非常に短絡的、一方的、そして、従来の国民そして世界の人々のいろいろな知恵の集積の所産を次々、タブーを破るんだということで打ち破っていく傾向と軌を一にしているのではないか。
 また、憲法改正の問題について、佐藤幸治さんが国民に号令をしているわけですね。統治客体意識から統治主体意識を持てというふうに国民に号令をする。そして、自民党の中の部会では、国柄というものを考えて、権利屋で終始していたのではだめなんだ、義務とか責務を憲法の中にうたわなきゃいけないんだ、このような議論が出てきている。非常に治安主義的な、国家主義的な大きな流れの中で、この刑法の重罰化の問題も政治的に持ち出されているなという思いがいたしております。
 まず、私の率直な見解としてはこのようなものがあります。
 前田参考人、熱があるときに解熱剤を与えるべきである、体質改善でトレーニングをしているいとまはないんだというようなお話がありました。比喩として非常にわかりやすいと思うんですけれども、では、今の現状はどの程度の熱なんだ。四十度の熱なのか、三十八度の熱なのか。解熱剤を与えなければいけないほどの今状態なのか。しばらく様子を見る、安静にする、そしてその中で体質改善も同時に図っていく、そのような状態なのか。まず、そういう現状の議論というのがもっとしっかりと尽くされるべきなのではないかなというふうに思うんですね。それは、立法事実があるのかどうなのかということにかかってくるわけであります。
 凶悪犯罪がふえているということについては、これは議論のあるところであって、例えば、「安全神話崩壊のパラドックス」という、河合さんという方の最近出した本が新聞の書評でも紹介されておりました。私は一概にこの河合さんの書いておられる説にくみするわけではありませんけれども、議論のあるところであるということは事実なわけであります。
 また、刑罰の効果ということをやはり考えなければいけない、犯罪の抑止効果が本当に重罰化によって生まれるんだろうかということを。そして、他方で、刑罰の一般予防、特別予防と言われた機能、日本は比較的刑事政策がうまくいっていて、特別予防的な効果も一定上がっているというふうに評価されている現状であるにもかかわらず、重罰化によって収容者がどんどんどんどんふえていくことによって、では今機能している特別予防的な効果、機能というのが阻害されることになるのではないか、そういう懸念もやはり同時にあるわけであります。だから、そういう意味で、いろいろな面について、要素について、総合的にもっと議論をすべき問題なのではないかなというふうに考えております。
 限られた時間ですので、それぞれの参考人に一、二点に限って御質問をさせていただきたいと思います。
 まず、前田参考人に伺わせていただきたいのは、引き上げられる下限以下の判決の判決例というのは現に多数あるという報告を受けております。また、現在の法定刑の上限に張りついたような判決で、もうにっちもさっちもいかない、これ以上上限を上げないと、本当に上限に張りついて、それ以上の判決を下したいのに下せない、だから法定刑を上げなきゃいけない、そういうような、私はこれは立法事実の有無の判断において重要な事実関係だと思うんですけれども、このような事実関係についてはどのように認識され、どう理解されているんでしょうか。
○前田参考人 今の点に限ってお答え申し上げたいと思うんですけれども、今回の法改正で、例えば、先ほど議論がありましたけれども、強姦罪で今度三年になると。三年と二年の間に、ある程度、今二十数%ですか、あると思いますね。ただ、それは三年になるからといってその量刑が、情状の酌量によって到達することができる。それと、もっと重要なのは、やはり下限が上がると、そこは動いていく可能性はあると思いますね。やはり三年以下のものの割合は減っていくんじゃないか。
 ただ、御指摘のように、立法事実としてそういうものがあったらまずいとか、それから逆に、上限に張りついているから、変えなきゃいけないから今度変えるのかというと、今回は、私が法制審に参加したわけでもないしあれですけれども、そういうことだけで上げたのではないというふうに承っているわけですね。
 ただ、先生御指摘のことも非常にごもっともで、応報だけではなくて、一般予防、特別予防が重要である、そのとおりだと思うんですね。そのときの、私が申し上げているのは一般予防効果ということなんですけれども、やはり、刑罰を、上限に張りついていなくても上げることによって犯罪を抑止していく、そういう効果は、私は、今の段階で重要だと考えて法定刑を上げられた。それは、決して応報感情を満足させるということだけではなくて、やはり一般予防効果も考えているということはあると思うんですね。それだけでもお答えします。
○辻委員 メッセージ効果、規範意識を形成する効果ということを先ほどおっしゃったように思うんですけれども、そういう意味でおっしゃっているのかなというふうに思うんですが、国家が規範意識を形成せよというふうに号令をかけるというのは、やはり限界があるわけですよね。だから、今の社会の中で犯罪の問題をどう扱っていくのか、そういう奥深さを持ったやわらかな、そういうバックグラウンドを含めた検討の中で刑罰を位置づけ直さないと、本当の効果は上がらないんじゃないかなと私は思います。その点、ちょっと時間の関係があって御指摘だけさせていただきたい。
 それからもう一点。これは、アメリカでは一九七五年から二〇〇〇年の間に二十万人いた被収容者、刑務所人口が七倍の百四十万人になった、こう言われているんですね。そうすると、日本でも同じようになるとは限らないと思いますけれども、かなり今過収容だと言われる刑務所の状況の中で、やはりもっと満杯になっていく。そうすると、今の特別予防として一定機能している日本の行刑の現状が変容を迫られる、少なくともそれを遂行する上において悪影響が及ぶような結果になる可能性があると思うんですが、この点についての対策なり、具体的にはどのようにお考えになっているのか、その点を伺いたいと思います。
○前田参考人 お答えさせていただきます。
 御指摘のとおり、アメリカで過剰収容といいますか、二百万の収容者で大問題になっているわけですね。ただ、その一つの背景は、やはりアメリカは日本のある意味では手本の面もあったわけですが、社会内処遇といって刑務所に入れないで社会で何とかしようとして、それがうまくいかなくて、非常にタフな、刑罰を重くするという政策で収容になって、それが必ずしもアメリカはうまくいっていないんだと私は思うんです。アメリカのようになってしまうというのは問題だというのは、御指摘のとおりだと思うんですね。
 ただ、今何で日本で刑を重くしてまでしなきゃいけないかというと、収容者がふえてといいますか、それを犯す犯罪者がふえて、対策を立てなければいけない人がふえたから、収容者もふえる、刑も上げなきゃいけないという因果の流れだと思うんですね。
 そうすると、当面は、やはりそれは国家の責任として刑務所をふやすなりなんなりして対応していかなきゃいけないですが、一方で、先ほど藤森参考人がおっしゃったように、特別予防は物すごく大事で、社会復帰は非常に大事です。そのための人材をどうするかなんですが、逆にそこが非常にピンチなんですね。保護の問題がさっき出ましたけれども、日本社会の変質の中で、社会が犯罪を犯した人を温かく受けとめて、そして、それを矯正して社会に戦力として戻していく力が弱まっている。これをどう考えるかというのは国家的に大問題だと思うんです。そこを抜きにやるというのは私は全くナンセンスなんですが、だからといって、刑罰を軽くして外に出せばいいというわけではない。先生がおっしゃった、奥深く、広く考えなきゃいけないのは、そのとおり、そこをやっていくときに今回の改正は決して足手まといになるものではない、私はそう考えます。
○辻委員 時間の関係で大塚参考人に伺わせていただきますが、今回の法務省のこの提案、国民的議論を呼びかけるそもそもの姿勢すらうかがわれないような提案の仕方だと思うんですね。これは、七〇年代に、刑法改正の問題がいろいろ国民的な議題に上っていろいろ議論が行われた。重罰化に限らずいろいろな問題、保安処分の問題とか、いろいろな議論があったと思いますけれども、法務省は何で国民的議論を呼びかけないようになってきたんでしょうか。これは、どうすれば変えることができるんでしょうか。その点はどうお考えですか。
○大塚参考人 私、法務大臣でございませんので、的確なお答えはできないかと思いますが、例えば、今回の議論、これは法制審議会の刑事法部会で審議されました。この刑事法部会における審議においても、私、報告も聞いておりますし、議事録も参照しておりますけれども、率直に申し上げて、十分な議論がなされたと思えない。特に、学者の先生方の発言が非常に少ない。ありていな申し上げ方をすると、日弁連から出た委員と法務省との間での議論になっていやしないか。これは、やはり国民的議論とは言いがたいと考えております。
 あるいは、もう一つ法制審議会のことで申し上げるならば、法制審議会の記録はだれが発言したかということは記載されておりません。やはり、こういった国家の基本法について専門家を集めて議論するという場合には、どのような方がどのような発言をし、どういう議論をされたか、これを広く国民に公開することは国民的な議論の第一歩であろうと思います。
 そういった意味で、私は、むしろ法務省にお願いをすべきことかと思いますけれども、法制審議会の議論をもっと活性化すること、さまざまな議論をそこで活発に闘わせること、そしてその議論内容を広く国民に公表すること、こういったことはまず第一歩、それがすべてではございませんが、第一歩としてはぜひお願いしたいというふうに考えております。
○辻委員 最後に簡単に、申しわけありません、藤森参考人に。
 結局、応報感情にどう対応するのかというのは一つの大きな問題だと思います。それから、特別予防をどうもっとしっかり図っていくのかということが犯罪を減らしていくためには非常に重要だというふうに私も思いますが、非常に大ざっぱで申しわけありませんが、それぞれについて、何かこうしたらどうなのかという御意見があれば伺わせてください。
○藤森参考人 こうしたらというのはありませんが、応報感情について、ある程度やはり配慮をし、それにこたえることは我々として必要なことだと思います、この社会について。
 それから、特別予防について先ほど例を幾つか挙げましたが、前田さんのおっしゃったように、両方である、それはみんな総合的と言うんですね。その中のバランスが、やはりちょっと特別予防の方が弱まっちゃいないかというのを私が心配をして申しました。
○辻委員 時間が参りました。きょうは、三人の参考人の方々、お忙しいところ、ありがとうございました。終わります。
○塩崎委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。
 午後零時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時七分休憩
     ――――◇―――――
    午後零時四十五分開議
○塩崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 各件調査のため、本日、参考人として独立行政法人国立印刷局情報製品事業部長岡田茂君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として総務省総合通信基盤局電気通信事業部長江嵜正邦君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、法務省民事局長房村精一君、法務省刑事局長大林宏君、法務省矯正局長横田尤孝君、財務省主計局次長松元崇君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
○塩崎委員長 次に、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所事務総局園尾総務局長及び大野刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
○塩崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松野信夫君。
○松野(信)委員 民主党の松野信夫です。
 きょうは、行刑問題、刑務所問題について、大臣その他関係者に御質問をさせていただきたいと思います。
 午前中の参考人の御意見の中にも、刑法が重罰化されるということになると、現在でも受刑者がふえているのにますます受刑者がふえるだろう、こういうような指摘もありまして、私も当然だというふうに思いますので、この行刑問題の持っている重大性というのはますます大きくなっていくだろう、こういうふうに考えております。
 この行刑問題については、行刑改革会議がありまして、この改革会議が平成十五年十二月二十二日に行刑改革会議提言ということで、「国民に理解され、支えられる刑務所へ」ということで提言書が明らかにされております。私は、この提言は基本的には我が国の刑務所の進むべき方向性を示したもの、監獄法あたりも百年も前の法律ですから、これを早急に改めるということは大変重要なことではないか、こういうふうに思っております。
 さて、大臣、この行刑改革会議の提言、これは大臣はごらんになっていらっしゃるでしょうか。基本的にはこの提言に対してどういうようなお考えをお持ちでしょうか。
○南野国務大臣 お答え申し上げます。
 法務省におきましては、行刑改革会議の提言、これを最大限尊重いたしまして、行刑改革の実現に取り組んでいるところでございます。
 具体的に申し上げるならば、この提言におきまして行刑改革の中心とされております監獄法改正のための作業を鋭意進めております。そのほかに、現行法のもとにおいて実施可能な改善策について、順次その実現を図ってまいりたい、そのように思っております。
○松野(信)委員 そうすると、大臣の方もこれをごらんになって、基本的にはこの改革会議の提言した方向で進めていきたい、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
○南野国務大臣 はい、そのとおりでございます。
○松野(信)委員 この改革会議の提言を見ますと、いま一つは、大臣がお話ありましたように、監獄法の改正、これをうたっております。監獄法というのは、制定が明治四十一年というもう百年も前につくられた法律で、かなり古くなっているわけで、この監獄法の改正、これは当然必要だし、また他方、改正ということではなくて、今の実際の運用の中で緊急に改善を図るべきだ、こういうふうに提言している部分もございます。
 例えば、この中で見ますと、累進処遇制度を廃止して、真に受刑者の改善更生の意欲を喚起するような報奨制度に変えるべきだ、こういうような提言もあります。
 また、職員の研修。職員の研修というのが非常に重要だ、こういうことで、直接受刑者と相対する職員については、研修プログラムというものを矯正研修所等において早急に作成して実施する必要がある、こういうふうに言っております。
 また、そのほか、人事異動。人事異動の制度についても見直しが必要だと。何もこれは法改正の必要がないわけで、例えば、この中では、刑務所の中の一般職員の大多数というのは生涯を一つの刑務所で勤務して定年を迎えている、一生、例えば府中刑務所なら府中刑務所でずっと最後まで迎えるというのが通例になっている。ところが、幹部職員は短期間で刑務所を異動する。そうすると、一般職員と幹部職員との意識の差というものがどうしても出てくる。言うならば、キャリアとノンキャリアの違いみたいなところがあるかもしれません。
 そうすると、一般の職員の人が生涯を一つの刑務所で最後まで勤める、それはそれで意義があるのかもしれませんが、やはりいろいろ問題点も出てくるので、適当な時期には異動するということも必要ではないか、こういう指摘もあるわけです。
 私は、この辺はなかなか貴重な指摘でもあるし、これは何も法改正をする必要がない部分ですから、こういうようなものは早急に取り入れてはどうか、このように思っておりますが、この辺の対処はどうなっているでしょうか。
○横田政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のように、この行刑改革の提言、大変多岐にわたっておりまして、そして、監獄法の改正によらなければならないものと、それから改正を待つまでもなく実施できるものとありまして、その実施できるものについてはできるだけ速やかにこれを実行すべきであるという御提言をいただいております。
 その内容はまた種々ございますけれども、今当面、委員から御指摘のありました、一つは累進処遇制度にかわる新たな報奨制度の問題、それから人権研修の問題、それから人事の問題がございました。
 いずれにつきましても、この新たな処遇の充実策というものが提言から求められておりますので、現在、教育内容の充実等も含めて、それから処遇内容の充実も含めて検討していまして、報奨制度につきましても、今、累進処遇制度にかわる報奨制度といいますか、そういう新たな制度をどのようなものにしていったら一番受刑者のいろいろな意欲、意識を喚起できて、そして改善更生、社会復帰に役立てるかどうかということを具体的に検討しているところでございまして、順次実行していくということであります。
 それから、人権研修につきましては、既にこれまでも、矯正研修所あるいは矯正研修所の支所というのが全国にございますけれども、そういったところで具体的に人権研修をどんどん取り入れてやっているところであります。これもまた、今後とも充実させていくということでございます。
 それから、人事の問題ですが、この提言の指摘のような部分がありますけれども、これについては、なかなか、いろいろな条件といいますか、困難な問題がありますけれども、私どもは、大変これは貴重な、大事な提言だというふうに思っておりますので、これにつきましても、これからの人事政策の中でできる限り実現してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○松野(信)委員 法改正を待たなくても取り入れることができるようなものについては、ぜひこれは進めていくべきだと思っております。
 特に、人事異動の話が出ましたけれども、一人の人が同一の刑務所に一生勤めるというのは、これはまたいかがなものかと。刑務所という非常に特殊な施設ですから、一生勤め上げたというのは、それはそれでまた確かに立派なところがあろうかと思いますが、この人事異動制度についてはやはりしっかりした見直しをする、これがやはり必要だろうということを指摘しておきたいと思います。
 それから、監獄法の改正について、これは、私が聞くところによりますと、来年の通常国会で改正案が上程される、そういう方向だというふうに聞いておりますが、今どういうような状況になっているのか、また、どの点を改正するという改正のポイント、これがどうなっているか、お答えいただければと思います。
○南野国務大臣 先生御指摘のとおり、行刑改革会議の提言というのは、現行監獄法については、被収容者の権利義務関係が法律上明確にされていないなど、不十分な法律である旨指摘されておりますし、行刑改革を実現するためには、先生おっしゃっておられるように、可及的速やかに同法を改正すべきであるというふうに我々もしております。
 法務省におきましては、この提言を踏まえ、ぜひとも監獄法を改正する法律案を次の通常国会に提出したいと考えており、そのための作業を鋭意進めているところでございます。
○横田政府参考人 ただいまの委員の御質問の趣旨に沿いまして、若干大臣の答弁について敷衍させていただきたいと思います。
 その前に一点、人事の方の点でちょっと申し上げたいんですが、人事につきましては、委員もよく御存じのように、刑務官につきましては、いわゆる上級幹部、中級幹部につきましては比較的広範な異動をしておりますけれども、本当の現場の第一線の刑務官の方たちについては、確かに一生そこの同じ刑務所で過ごすという人も少なくありません。
 しかし、それについてはいろいろ、先ほども先生御指摘のような問題もあるわけですので、これにつきましても、既に今年度の人事から極力、少しずつですけれども、異動を進めるような、そういう政策も進めているところでございますので、一点だけちょっとつけ加えさせていただきます。
 それから、監獄法の問題でございますけれども、若干御説明させていただきますが、委員御指摘のように、現行の監獄法は明治四十一年に制定されました。要するに、被収容者の権利義務関係が不明確である、今大臣答弁がございましたように。それから、職員の職務執行権限が不明確である。そして、受刑者処遇の原則や内容、方法等についても不明確、不十分である。また、法律の不備を大量の訓令や通達で補完していて継ぎはぎ的であって非常にわかりにくい。そして、何といっても、片仮名まじりの文語体の条文でありまして、これは時代おくれであるといったようなことがあります。
 私どもが目指しております監獄法改正は、ポイントとしては近代化、法律化、国際化というふうに申し上げていますけれども、そういったことをねらいといたしまして、項目だけ申し上げますと、被収容者の権利とその制限根拠の明確化、それから刑務官の職務執行権限の明確化、被収容者の生活水準の保障、それから受刑者の社会復帰へ向けた処遇の充実、被収容者の権利救済制度の充実といったような事柄を柱に、現在、来年の通常国会に提出すべく鋭意作業を進めているというところでございます。
○松野(信)委員 さて、今話に出ています刑務所でございますが、大臣は、この刑務所というものを視察されたことがおありでしょうか。あるとすれば、どういうような印象を持たれたんでしょうか。
○南野国務大臣 今の立場をいただいてから視察に行かせていただきました。
 本当に今は受刑者が多く、百何%、一一〇%も超えるぐらいの方々がおられるために、本当にその住居環境というのが悪化しているな、そのように思いました。小さい独房であるにもかかわらず二人が収容されなければならないとか、いろいろな状況をつぶさに拝見させていただきましたが、それについてまたしっかりと考えていきたいというふうにも思っております。
○松野(信)委員 それでは、本来、刑務所というのは一体どうあるべきだ、大臣は率直にどのようにお考えでしょうか。
○南野国務大臣 刑務所といいましても、懲役、禁錮または拘留の刑に処せられた方を拘禁して、そして刑の執行を行おうとする場所であると思っておりますし、これらの人々を改善更生させ、円滑に社会復帰させてさしあげるために、刑務作業や生活指導、そういうものの処遇を行う場所、施設というふうに思っております。
○松野(信)委員 刑務所は、もうこれは言うまでもありませんけれども、一つは、犯罪者を社会から隔離するという点が一つあろうと思いますし、またもう一つは、いずれまた社会に復帰をするということが予想される者も多数いるわけですから、その改善更生、こちらの方、両面性を持っているというふうに思うわけであります。
 確かに、日本の場合は、いわゆる刑務所から脱走するという例は世界的には少ない、そういう意味では、隔離という面は割合うまくいっている方かなというふうに思いますが、更生、矯正、こちらの方については正直まだまだ課題が多いのではないかというふうに思っております。これは後ほどまた指摘をいたします。
 それとはまた別に、少年鑑別所というのがございます。大臣はもともと看護師をされておられ、赤ちゃんから子供さんまでいろいろと対応してこられたと思います。子供さんとかあるいは弱者とか、そういう弱い立場の人たちに対する温かい配慮をしなきゃいけない、これは常日ごろおっしゃっていることかと思います。
 大臣自身はこの少年鑑別所というのを視察されたことがあるでしょうか。もしあれば、どういう印象をお持ちになりましたか。
○南野国務大臣 残念ながら、まだ鑑別所の方には視察させていただく機会がございません。
○松野(信)委員 それは残念ですので、ぜひ少年鑑別所の実際を御視察いただきたいと思います。
 少年鑑別所というものは一体何を目指して、どういうふうにやっているのか、この点についてはどういう御認識でしょうか。
○南野国務大臣 早速に視察したいと思っておりますが、そういう少年鑑別所というものについては、主として、家庭裁判所が行う非行少年の審判に役立てるために、裁判所の決定に基づいて少年を収容するとともに、医学やまた心理学などの専門的知識に基づいてその少年の心身の状況の鑑別を行うことを目的とした施設であるというふうに思っております。
○松野(信)委員 私も基本的にはそういうふうに理解をしております。
 そうすると、刑務所というのは、要するに、罪を犯した、これがはっきり確定した人を社会から隔離する、そしていずれ社会に戻るための更生を図るというのに対して、この少年鑑別所というのは、本来、まだ罪を犯したかどうかはっきりしていない、確定していない少年を収容して、一定の資質とか能力、環境、こういうものを調査する、こういうわけですから、明らかに刑務所とは全くその趣旨、目的を異にするものだ、こういう理解を大臣も持っているというふうに考えてよろしいでしょうか。
○南野国務大臣 いろいろなことがあろうかと思いますが、先生の御趣旨に私の考えも近いと思っております。
○松野(信)委員 ところが、全国的には、刑務所と同じ敷地の中に少年鑑別所というのが設置されているというケースが、私が聞いているところでは全国で十三ほどあるということでございます。
 これはあくまで一般論ですけれども、やはり趣旨、目的が全く異なるものを同じ敷地の中に設置するというのはいかがなものか。特に少年、言うならば弱者に近いわけですから、社会の中でどういうふうに見られるか。刑務所と同じ敷地の中に入っていくとなれば、少年に与える精神的な負担もかなり多大なものがあるのではないかというふうに思いますので、一般論として、少年鑑別所と刑務所が隣り合わせに設置されているということについては、大臣はどのようにお考えですか。
○南野国務大臣 まだ施設等を視察しておりませんので率直な感想は申し上げにくいとは思いますけれども、その立地する問題ということにつきまして、これは一般論としてでございますけれども、隣り合っている状況について先生の御不安をお話しになられましたが、施設間の距離、またはそれぞれの敷地と建物との関係、これは相互に見られないような設備の有無など、また具体的には個々の状況を踏まえた上でなければ、一概には判断しかねる課題があるのかなと思っております。
 また、一般的に、施設を整備するに当たりましては、敷地の条件その他さまざまな整備条件がございます。それを事案ごとに検討する必要があろうかというふうに思っておりますが、したがいまして、新たに整備する場所につきましては、個々の事案ごとに、周辺環境など具体的な条件等を踏まえた上で、これもまた総合的に判断して考える必要があろうかと思っております。
○松野(信)委員 本来であれば、刑務所と少年鑑別所はやはりそれぞれ別々に設置をする。それは、いろいろ財政上の問題とかあるいは具体的な場所の問題とか、それはいろいろ大臣もおっしゃるように具体的なケースではあろうかと思いますが、本来あるべき姿としては、私は、やはり別々に設けるのが、財政上とか場所の点とか許せば、その方が望ましいのではないか。
 我が国が既にもう批准しております子どもの権利条約というのも、少年と成人、これはしっかり分離をして処遇すべきだ、こういうふうにしているわけであります。先ほども申し上げたように、少年鑑別所と刑務所が同じ敷地にあるということであれば、世間の人が見れば、子供が少年鑑別所に入っていくといえば、ああ、これは悪いことをしたやつだと、もう刑務所と大体同一のような、そういう誤解あるいは偏見を持ちやすいのではないか、こういうふうに考えております。
 確かに個々の問題点はいろいろあろうかと思いますが、本来は別々が望ましい、この点については、大臣、どうですか、そういうふうにはお考えになりませんか。
○横田政府参考人 ちょっと私の方からお答えさせていただきたいんですが、まず、委員がおっしゃっておられます、同じ敷地内に刑務所と少年鑑別所があるのはいかがなものかとおっしゃっているその同一敷地内というのが、委員がどういうイメージでおっしゃっているのかちょっと私わかりかねますので、あるいは、これから申し上げることは委員の意に沿わない答弁になるかもしれませんけれども、その点ひとつ御了解いただきたいんですが。
 今大臣から答弁がございましたように、一般論とすれば、刑務所と少年鑑別所が隣り合っているという関係につきましては、個々具体的な状況を踏まえた上でなければ、やはり一概に判断できないというふうに思っております。
 現在、刑務所または拘置所と隣接して設置されている少年鑑別所は全国で十三庁、委員御指摘のとおりでございます。いずれの施設につきましても、特段の支障もなく円滑に施設運営がなされております。したがいまして、刑務所とそれから少年鑑別所が隣接していること自体には問題があるとは考えておりません。問題は、同一敷地内というのはどういう概念、イメージかということによるんですけれども、問題はそれぞれの建物の独立性であろうかというふうに思っています。
 そこで、先ほど大臣の答弁もございましたように、それはやはり、敷地の広さであるとか、それから両方の建物の配置ぐあいであるとか距離であるとか、あるいは両方の建物の間にどのような遮へい物があるかとか、それからそれらの個々の建物構造、そういったものを全部考えていかなきゃいけないわけで、およそ刑務所と少年鑑別所が隣接していればそれ自体で問題だというふうには言えないのではないかなというふうに私どもは考えております。
 委員、実際に十三カ所のうちのどれかをごらんになったかどうかわかりませんけれども、現在、そのようなことをどのようにしているかと申しますと、敷地はそれぞれ分画されておりますし、それからそれぞれの建物は、やはり刑務所は刑務所で高い塀で囲まれておりますし、鑑別所は鑑別所でまた一つの区画が整理されておりますし、それで周りには塀や植栽などがあって、外見上は全く独立の建物ですし、それからもちろん入り口も違いますし、正門、玄関、全部違います。いろいろな意味で、いずれにしましても、両方のプライバシーが十分保たれるような十分な配慮をしておりますので、今後とも、そういった点に配慮しつつ、適正な施設配置をしていきたいというふうに考えております。
○松野(信)委員 私は、この問題を取り上げておりますのは、現在、これは北九州でございますが、小倉少年鑑別所を北九州の医療刑務所の敷地の中に移転をしよう、こういう計画がありまして、地元の住民の人たち、あるいは弁護士会の方からも、これについては反対だ、こういうような運動も起きているわけでございます。
 この問題については、もう既に国会の中でも審議されたことがありますけれども、やはり本来の趣旨からするならば、それぞれ趣旨、目的が違う。しかし、少年に与える負担、あるいは世間から見た場合の目線、これはやはり、もう刑務所に入るも少年鑑別所に入るも同じじゃないか、こういうふうに見られるのではないかと思っています。
 今局長の答弁の中には、全国で十三、そういうような施設があるけれども特段の弊害はない、こういう答弁がありました。しかし、本当に弊害があったかなかったか、本当に当該少年の方に対して、新たな精神的なそういう負担、あるいは刑務所の隣に入れられるということでどういうような気持ちが生じているか、何らかの問題がないか、やはりそういうような少年の気持ち、それから世間の人たちの見る目、ここにまでやはり目を向けなければならないのではないか。特段の弊害という、別に逃げたとかそういうような弊害はないのかもしれませんが、そういう精神的なところまでやはり踏み込んだ上でこの問題については考えていかなきゃいけない、こういうふうに思っております。
 それから、高い塀ができて、ある意味では少年鑑別所側からは刑務所の方は余り見えないようになっている、こういうようなお話もあろうかと思いますが、確かに、既存の刑務所はかなり高い塀がつくられているわけです。しかし、どうも聞くところによりますと、新しいこれからつくろうという刑務所については、従来のような極端に高い塀で囲まれたというよりは、できるだけ塀の高さも低目にして、割合開放性が出てくるような刑務所を目指そう、こういうふうに一方では言っているわけです。そうすると、必ずしも、高い塀でなければお互いに見通せるというおそれもあるわけで、この辺はやはりよくよく慎重に考えていくべきだ、こう思っております。
 それで、今申し上げた小倉少年鑑別所を北九州の医療刑務所に移転するという、これを北九州矯正センターという名称で呼んで、言うならば一緒くたにしているのではないか、こういう疑いもあるんですが、この計画は今現在どういう状況になっているんでしょうか。
    〔委員長退席、田村委員長代理着席〕
○横田政府参考人 お答え申し上げます。
 北九州矯正センターというのは、確かに私どもは呼んでおりますけれども、これは一つの仮称でございまして、正式に施設の名称として決めているものではございません。便宜上そのように呼んでおります。
 これはどういうことかと申し上げますと、北九州市内にあります老朽化した矯正施設、三庁ございました。旧城野医療刑務所というのがございました。現在これは北九州医療刑務所になっております。それから、小倉の拘置支所、小倉少年鑑別所がありました。この三つの施設を、旧小倉刑務所敷地にそれぞれ区画をして、そしてそこに整備するという計画でございまして、平成八年度から医療刑務所の新営、整備に着手いたしまして、これまでに刑務所の部分は約六〇%建物が完成しております。本年度予算において、小倉少年鑑別所を移転整備するための調査費が認められたという状況にございます。来年度には、この少年鑑別所庁舎の建築に着手する予定でございます。
 具体的な建物の整備に当たりましては、先ほど申し上げましたように、被収容少年に配慮するため、刑務所と少年鑑別所の建物はそれぞれ別棟の独立した建物としますし、相互に見えないように、囲障、囲いですね、それから植栽、目隠しもします。もちろん、正門、玄関も全く別で、入り口は別で、方角も違います。そんなようなことで、敷地や建物構造等に配慮しつつ、明確に区分して、それぞれ独立の建物と外から見てもはっきりわかる形で整備する予定でございます。
○松野(信)委員 私が聞いているところでは、北九州市は、市の土地もある、遊休地もある、ですから、例えば、法務省の方から北九州市に対して、あいている土地があればそこを借りて、そこに小倉少年鑑別所を移す、こういうことも十分可能だというふうに聞いております。
 しかし、実際には、どうも法務省当局から北九州市の方に対して何のお伺いも出ていない。市の方では、ある意味では、何か御相談があればそれに十分対応する準備はあるようですが、どうも法務省さんの方からはそういう要請もない。この辺はなぜそうなのか。市との対応をどうも避けているようにも思われるのですが、その点はいかがなんですか。
○横田政府参考人 確かに、こちらの方から北九州市側に対して土地を探してほしいということは言っていないようでありますけれども、いずれにしましても、やはり国有財産の適正な利用、それから、もちろんその矯正施設の集中配置によりますさまざまな便宜といったものも配慮してというようなことであります。
 それから、これはまだ実際に、一般論として申し上げるわけですけれども、御承知のように、なかなか、新しい土地に矯正施設をつくるということにつきましては、まだまだいろいろな、住民などの御理解を得るまでに相当長期間かかるというのが現実の姿でございます。そういった点も配慮して、結局は、旧小倉刑務所の跡地、これが相当の面積がございますので、そこで集中配置して、そして効率的な運用を図ろうということでこのような計画になったものというふうに承知しております。
○松野(信)委員 それでは次に、刑務所での過剰収容の問題についてお伺いをしたいと思います。
 これは、先ほど大臣もお話がありましたけれども、現在、刑務所の方では定員を超える収容が続いている、大体一一〇%から一二〇%ぐらいだというふうに承知をしております。
 衆議院の法務委員会でも、ことしの三月二十二日に府中刑務所を視察いたしまして、私も参加させていただいております。府中刑務所側からも実情をお聞きしましたけれども、確かに、ちょっとこれは早急に改善をしないといけないのではないか、こういう印象を持ちました。写真なども拝見したりしましたけれども、かなりひどい過剰収容だなと。例えば入浴についても、本当に芋の子を洗うような感じでおふろに入っている、それから単独房にも二人ぐらいで、本当にくっつき合わせるような形で居住させている。
 こういうことで、これは早急に対処しなきゃいけない。恐らく大臣もそういうお考えではないかと思いますが、この過剰収容に対して具体的にどういうふうに対策をとっていこうとされるのか、この点についてはいかがでしょうか。
○横田政府参考人 お答え申し上げます。
 委員がおっしゃいますように、現在、過剰収容状態が大変厳しい状況になっております。私どもといたしましては、この過剰収容の対策として、収容能力の増強、そして必要な要員の確保に努めてまいることはもちろんでございますけれども、さらには、行刑改革を一層進めていって、あるいは事務の合理化とかそういうものを進め、そして行刑改革も進めながら、こういった厳しい状況の中でより適正な処遇、行刑を進めていきたいというふうに考えているところでございます。
○松野(信)委員 恐らく、今後もこの過剰収容の状況は、受刑者の数が増加するということからも考えていかなきゃならない問題だろうと思います。
 現在、この臨時国会で刑法の重罰化の法案が審議されて、これが通りますとますます受刑者がふえるだろうということは十分に予想できるわけで、この辺の受刑者の増加について、将来的な見込みについては、何らかの指標といいますか、そういうようなデータをお持ちでしたら明らかにしていただきたいと思います。
○横田政府参考人 具体的なデータ、指標ということでございますけれども、これは委員もよく御存じと思いますけれども、犯罪の増加、受刑者の増加といいますのは、やはり犯罪情勢等いろいろな要因でこうなっていると思われますので、なかなか一概に、いつどうなって、それから先にどうなるかということを公式的に確たることを申し上げることはなかなか難しゅうございます。
 ただ、最近の収容人員の増加傾向、これはもう明らかでございますし、そういったことを考慮いたしますと、なお相当、引き続きこの増加傾向は続くだろうということは申し上げられると思います。
○松野(信)委員 増加傾向に対して、既存の施設をうまく改善、運用するということは当然でしょうけれども、刑務所の増設、新たに刑務所を建築するという必要性も当然やはり考えざるを得ない、そういう状況ではないかと思っております。
 そうした中で、けさの朝日新聞にも出ております民営刑務所、これが山口県美祢市に来年の四月に誕生する、こういう指摘があります。いわゆる民間活用ということでPFIの手法を取り入れたものかと思います。
 一定の部分で民間を活用する、建物を建ててもらうとか、そういうような民間を活用するということについては、私は一定の意義はあるのかという気はしますので、全く否定するものではありませんが、しかし、受刑者との関係で見ますと、非常に刑務所というところは、ともすると人権侵害の発生が恐れられる、そういうところであります。建物を建ててもらうぐらいはいいかもしれませんが、その中で直接やはり受刑者と接する職員、これをまた民間のサラリーマンでやらせるというようなことにでもなると、これは大変な問題になりはしないか、こういう点を危惧するわけであります。
 この朝日新聞の記事を拝見いたしますと、南野法務大臣も「「新しい刑務所は私の特命事項。社会との共生を目指す」と張り切る。」というふうに記事が載っているんですが、大臣は、こういう民営の刑務所、民間の刑務所についてはどういうようなお考えをお持ちでしょうか。――いやいや、大臣に。
○南野国務大臣 やはり収容施設が今本当に窮乏しております。少しでも早い形でそれが充足されることを望んでおります。
 PFIについても、十分とお考えになっていただけた過去があると思いますので、それを試しに美祢の方でひとつ立ち上げてみていただくという方向で今検討させていただいているところです。
○松野(信)委員 今私が指摘したように、どうも来年の四月から美祢で民営の刑務所ができるということですが、やはり、例えば名古屋刑務所で暴行事件が起きたとか、いろいろな各地の刑務所でやや行き過ぎた人権侵害があったというような報道もなされているわけです。
 被収容者とのいろいろな接触の中で、ともすれば人権侵害という可能性があるわけで、どこまで民営化するか、どこまで民間の活用を図るかというのは大変重要な問題だと思うわけですが、現時点で、どこまで民営化するのか、これについてはどのように考えておりますか。
○横田政府参考人 お答え申し上げます。
 最初に、今委員がおっしゃった一点だけ、ちょっと失礼ながら訂正させていただきたいんですが、今進めておりますPFI手法による美祢の刑務所、これは平成十九年の四月に施設の運営を開始するという予定で現在進めているところでございます。
 それからもう一つは、これも細かい言葉の問題といえばそのとおりなんですけれども、先生お示しのきょうの朝日新聞の記事なんですが、「「民営」刑務所」というふうに書いてありますけれども、これは言葉の正確な意味では民営ではございませんで、やはり国の施設である刑務所で、そこに民間の活力といいますか、それを活用する形で運営するということでございますので、その点、言葉の問題とおっしゃればそのとおりですけれども、一言、私どもの立場としては申し上げさせていただきたいというふうに思っております。
 それから、今委員御指摘の点は、一体職員を刑務所の運営の中でどの程度民間に任せるのかということですが、現在私どもが考えておりますのは、所要の法制上の措置を講じました上で、施設の警備のほか、職業訓練や健康診断の実施など、受刑者の処遇の一部も含め、公権力の行使に係る業務を民間に委託し、官民協働の運営を実現したいと考えております。
 しかしながら、武器や戒具の使用など実力行使を伴う業務、それから接見や信書の授受、発受の許否、許可するしないの問題ですね、そういった処遇など受刑者の権利制限に係る業務につきましては、もちろん民間委託はせずに、これまでどおり国の職員が行うということで考えております。
○松野(信)委員 この「民営」という括弧つきの民営の刑務所、この問題については今後ともいろいろ議論はさせていただきたい。特に、いわゆる特別権力関係という、法律用語ですが、そういう関係にあるわけですので、例えば食事の点だとか、そういうのを民間にというのはわからないではないですが、特に権力関係が出てくる場面では、やはりそれは国がしっかり責任を持って対応すべき場面だ、私はそういうふうに考えておりますので、この点については申し上げておきたいと思います。
 それから、次の問題ですが、受刑者の中で、いわゆる刑務所の中で死亡されるという件数、これは、私が調べましたら大変ふえている。平成六年が八十二件であったものが、平成十五年には二百一件発生している。平成十四年は二百六十件も発生しているということです。
 確かに、受刑者そのものの数がふえていることはもう言うまでもありません。しかし、それ以上に、受刑者の中で死亡する人がふえているということであります。これだけふえている原因については、どういうふうに把握をしておられますか。
○横田政府参考人 委員御指摘のように、刑務所の収容中に死亡した受刑者の数、これは増加しております。今委員もおっしゃいましたが、平成六年、八十二名、そして平成十年が百三十四名、平成十五年が二百一名でございます。
 その死亡者の病名を見ますと、第一に、肝臓がん等の悪性新生物、それから次に、心筋梗塞、脳出血等の循環器系の疾患、それから肝硬変等の消化器系の疾患が上位を占めております。死亡者の伸びはこの収容人員の伸びと比較しても大きい、これはただいま委員御指摘のとおりです。
 しかし、その理由を考えますと、一つは、受刑者の高齢化に伴う生活習慣病に起因する死亡者が増加したということが考えられます。それから、御案内のように、受刑者の中には、覚せい剤というか薬物使用者が相当数、高い比率を占めています。そういった人たちが感染したC型肝炎などから移行した肝臓がんとか肝硬変とか、そういうものがやはり多いな、そういったことがやはり原因しているのではないかなというふうに推測しているところでございます。
 受刑者に対しましては、これまでも、入所時や定期の健康診断などを通じまして、疾病の早期発見、早期治療に努めておりますけれども、特に悪性新生物の早期発見のために、胃がんの検診、子宮がんの検診などを実施しております。さらに、健康管理のより一層の充実を図るために、本年度からは、四十歳以上の受刑者に対する健康診断時の血液検査項目をふやしたり、それからB型及びC型肝炎ウイルスのスクリーニング検査を始めたというところで、今後とも受刑者の健康管理に十分に努めてまいりたいと思います。
    〔田村委員長代理退席、委員長着席〕
○松野(信)委員 今お話しいただいた死亡者がふえている原因として、例えば生活習慣病を言われましたけれども、生活習慣病が急に最近ふえて死亡者がふえたというふうには私はちょっと理解できないし、また、覚せい剤を打っていてそれでC型肝炎とか、そういうのも別に、覚せい剤も最近出てきたわけじゃないわけで、覚せい剤は昔からあって、覚せい剤事犯者というのも、昔からそういうのはいたと思いますので、どうもそういうことで死亡者がふえたというのは、ちょっと死亡原因の分析としてはいかがなものかというふうに思っております。
 それはさておき、先ほども申し上げた、平成十五年十二月二十二日の行刑改革会議の提言の中で、これは四十四ページですが、こういうような指摘もあります。死亡した被収容者について、死亡帳に急性心不全などと記載され、具体的な死因が不明なものが少なくないという指摘がある、こういう記載があります。それから、その少し下のところで、現行の監獄法施行規則によれば、在監者が死亡した場合、所長が検視を行い、自殺その他の変死の場合は検察官及び警察署に通報して検視を受けることとされている、しかし、実際の運用としては、検察官のみに通報している例も多いとのことである、こういうような記載があります。
 そうすると、実際の運用は必ずしも監獄法施行規則によったものになっていないということをみずからこの提言書では認めていることになりますが、実際のところはどのようになっているんでしょうか。
○横田政府参考人 お答えいたします。
 この行刑改革会議提言に指摘のあるとおりの事実はございました。しかし、その後、中の通達、新たな通達等を発しまして、この死亡帳記載の適正化、それから通報の関係につきましても、通報基準というものを統一いたしまして、自然死、事故死以外は検察庁及び警察署の双方に通報するということに変えて、現在実施しております。
○松野(信)委員 ぜひ、それは規則でそうなっているなら、やはりその規則のとおりにこれは運用しなきゃいけないだろうと思います。
 それから、行刑関係ではもう最後になりますが、いわゆる再犯率ですね。刑務所に入って罪に服していた者が、仮出獄あるいは満期で出所する。ところが、いわゆる再入所率、再び社会の中で罪を犯してまた刑務所に舞い戻ってくるという確率、これは、私が聞いているところでは、刑務所を出所した受刑者のうちのおよそ半分近く、五〇%近くが再び五年以内にまた罪を犯して再入所するということで、この率というのはここ十数年余り変化がない、こういうふうに聞いています。多分それは間違いないと思います。
 そうだとすると、刑務所の中で行っている矯正の効果、あるいは刑務所を出てから更生保護施設での指導とかケア、これがどうも余りうまくいっていないのではないか。そこがうまくいっていれば再入所率というのがだんだんだんだん下がってこなきゃいけないわけですが、これはほとんど十数年全く変わりないというのは一体どこに原因があるのか、この辺はどのように分析をしておられますか。
○横田政府参考人 人がいかなる動機あるいはいかなる環境のもとにおいて犯罪をするかというのはなかなか科学的には難しいわけで、調査しているかとおっしゃいますと、これが原因だということをお答えできるような調査というものはしておりませんし、これはなかなか現実論として難しいのではないかなというふうに思っているところです。
 ただ、私ども矯正といたしましては、この受刑者の処遇につきまして、その改善更生及び社会復帰を図るために、個々の受刑者の人格特性等について科学的な調査を行いまして、これに基づいて適当な施設に収容する、そして個々の受刑者に応じた刑務作業、生活指導あるいは教化教育、あるいは医療などを行っているという状況にございます。
 ただ、現在のそのような再入率と申しますか、そういう比率について、ではこれでいいんだ、これでよしとしているということではないわけでございまして、昨年十二月に出されました行刑改革会議の提言におきましても、教育的処遇をより充実させることというふうにされておりますので、対象者の特性や問題性に応じた一層効果的な教育プログラムを実施するとともに、保護観察所等との連携の一層の充実強化を図ることにより、受刑者の円滑な社会復帰ができるよう、さらに鋭意努力してまいりたいと考えております。
○松野(信)委員 私が聞いているところでは、刑務所の中では矯正局、そこから出た後はいわゆる保護局ということで、お役所の方も二つに分けて対応しておるようですけれども、どうもその間の連携が必ずしもうまくいっていない。人間は一人、受刑者は一人ですから、刑務所の中から刑務所の外にかけても、その者に対して、再び罪を犯さないように、本当に更生が進むように、中と外とでやはりしっかりとした対応をしていかなきゃいけないだろうと思いますので、ぜひこの点は、矯正局、保護局踏まえて、連携をとりながらやっていただきたい。
 せめて、この再入所率というのが毎年少しずつでも下がっていくというのを目指してやっていただきたいな。場合によっては、いろいろな管区によって競争させて、どこの管区が成績がよくなっているか、それをある意味ではコンテストでもするぐらいにやって、できるだけ再入所にならないようにしていただきたいというふうに思います。
 では、残された時間、大臣、副大臣、政務官の政治姿勢について最後にお伺いをしておきたいと思います。
 通常国会からいろいろ問題になっています年金の未納の問題でありますが、大臣、副大臣、政務官、それぞれ、年金の未納はないかどうか、お答えいただきたいと思います。
○南野国務大臣 お答えいたします。
 国民年金が強制加入になりましてから後は、すべてお支払いしております。
○滝副大臣 私も全く同様でございまして、未納はございません。
○富田大臣政務官 通常国会で党の方で調査していただきまして、未納はございません。
○松野(信)委員 それは大変結構でございます。
 それから、郵政民営化に対して、小泉さんは郵政民営化を一生懸命やって、実現化内閣だというふうに豪語しておられますので、郵政民営化に対してはそれぞれどういうようなお考えを持っておられるか。
 それから、大臣、副大臣については、自民党でございますので、郵政懇話会に入っていらっしゃるかどうか、この点もあわせてお答えいただきたいと思います。
○南野国務大臣 郵政民営化に賛成か反対かということにつきましては、私も内閣の一員としてその方針に従いたいと考えております。
 さらに、これは自民党の郵政懇話会に入っているかどうかというお尋ねでございますが、私は今、拝命いたしております法務大臣としての立場で答弁に立っているところでございますが、お尋ねの件は、議員連盟への加入に関することで、一議員としての活動についてのお尋ねでありますので、この場でお答えすることは差し控えたいと思っております。
○滝副大臣 内閣の一員でございますから、内閣として、政府・与党一致した方針が出ればそれに従うというのが当然だというふうに考えております。
 議員連盟の件は、大臣の考え方と一緒でございまして、個人的な、一議員としての活動については、この場での発言は御遠慮させていただきたいと存じております。
○富田大臣政務官 内閣の一員としてその方針に従いたいというふうに考えております。
○松野(信)委員 それから、今、政治と金の問題についていろいろと取りざたされておりまして、迂回献金あるいは旧橋本派からの献金があるかどうか、これについてもお答えいただきたいと思います。
○南野国務大臣 今お尋ねの橋本派からの迂回献金、これはございません。
○滝副大臣 私は、平成研の所属でございますから、献金というよりも政治資金を受けております。
 それから、迂回の資金というのは、私はその心当たりはございませんので、ないというふうにお答えをさせていただきたいと思います。
○南野国務大臣 済みません、ちょっとさっき一緒に答えといたしましたが、迂回献金の有無及び橋本派からの献金の有無、この両方とも、いずれもございません。
○富田大臣政務官 私は公明党ですので、両方ございません。
○松野(信)委員 ありがとうございました。国対の方からの指示もあるものですから。
 さて、法務省関係ですので、最後に死刑の問題についてお聞きしておきたいと思います。
 私が調査したところでは、死刑の確定判決を受けて実際に死刑が執行されるというのが、大体平均して八年ぐらいたっているようであります。これはもう言うまでもなく法務大臣の印鑑がないと死刑執行はされないわけで、死刑に対して現行法は確かに存在する、しかし、それぞれの考え方で、執行に賛成する場合もあれば判こをつかないという場合もあろうかと思います。
 この死刑については、大臣はどのようにお考えでしょうか。
○南野国務大臣 死刑の執行、そのことについてでございますか。(松野(信)委員「はい」と呼ぶ)
 私といたしましては、国民的な方々の御意見が多様でございますし、今、死刑をしていいよ、それはだめだよといういろいろな議論がございますが、大半が死刑を認めている方向であると存じておりますので、その場を預かる私としては、国民の大勢の声に耳を傾け、法を守っていきたいと思っております。
○松野(信)委員 死刑の問題については、これまた大変な問題であります。
 大臣は、日ごろから、命を大事にと、赤ちゃんから子供、弱者に対して配慮すべきだというような御指摘をしておられるわけで、その限りでは私も賛成をしているんですが、死刑の問題については、やはり慎重の上にも慎重でなければいけないだろうというふうに思っております。
 それから、先ほど申し上げたように、死刑の確定判決が出てから実際に執行されるまで約八年あるんですが、しかし、最近、一年余りで執行されたというケースがございます。これはお調べいただければわかる、割合有名な事件ですが。そういうようなこともありまして、実際の死刑の執行についてもそういう、人によって、一年ぐらいで執行してしまう、あるいは十何年もそのまま放置している、そういうようなばらつきがあります。
 これはこれで議論していかなければならない問題だという点を指摘させていただきまして、時間が参りましたので、私の質問を終わります。ありがとうございました。
○塩崎委員長 次に、鎌田さゆり君。
○鎌田委員 きょうもよろしくお願いします。
 冒頭ですけれども、お天気のいいお昼休みなどは、それぞれの議員の皆さんの地元から国会見学あるいは修学旅行生などが国会を訪れていまして、きょうは私も地元の小学六年生の修学旅行を御案内してきました。
 そのときに、ちょっと意外というか、驚いたんですが、小泉さんの名前が冒頭ばあっと出てきてきゃあきゃあ言うのかなと思ったら、何と南野大臣の名前が出てきたんですよ、大臣。南野大臣にどこかで会えるかしらというのが私の地元の小学六年生の、えっと、ちょっと驚いたんですが、大臣、連日テレビで、ピンク、赤のお洋服をお召しになって一生懸命頑張っている姿が、私の地元の子供たちには非常に好感に映っていたようで、きょう午後に質問に立つからそのことをしっかりお伝えするからと言ったら喜んでいまして、頑張ってくださいということでしたので、頑張ってくださいの気持ちは全く私も同じなんですけれども、言うべきことは言わせていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それでは質問に入りますが、きょうは一般質問でございますから、日ごろずっと興味を持って、関心を持って、ぜひただしたい、問いただしたいと思っていることを中心に伺いたいと思います。
 まずなんですけれども、これはあらかじめ先ほどお知らせをさせていただきましたが、大臣、ことしの四月の二十三日の当法務委員会の席上で野沢前法務大臣が御答弁をされたことにつきまして、私は一生忘れることのできない宝としてその野沢大臣の言葉はとっておきたい。いろいろなところでアピールもしているんですけれども、読んでいただけましたでしょうか。
 非常に深い意味のこもった言葉なんですが、よかったら、それをどのように引き継がれていて、引き継がれているならばどんなお気持ちで大臣は引き継がれているのか、それもあわせてお示しください。
○南野国務大臣 最初に、鎌田先生の御支援の方々からエールをいただきました。私も一生懸命頑張っていきたいというふうに、また機会があればお伝え願いたいと思っております。
 先生の御指摘でございますが、答弁の内容については、野沢大臣と引き継ぎをさせていただいております。私の考えといたしましても、前大臣のお決めになられた方向、先生にとっての宝物であるということであり、それについても必要な予算の確保に最大限の努力をしていこうというふうに思っております。
○鎌田委員 宝物というのは、その言葉を信じているからこそ宝物であって、ですから野沢大臣がおっしゃった言葉も重いし、今、引き継がれたというふうにおっしゃいましたので、三文字を、私はぜひ南野大臣からその三文字を引き継いでいますというのが聞きたかったんですが、なかったので私がかわりに言いますと、野沢大臣は、今回の百年に一度の司法制度改革に当たっては、どうしても、どうしても現実的にお金が必要なことが出てくる、予算が必要になる、それについては財務省の協力を得ながら責任を持って法務省がやる、このことは議事録にも残るし、この議事録は私の遺言状と理解されたいというふうにこの委員会の場でおっしゃったんですね。
 それ以上重い答弁はないなと私は思っているんですが、そのとおりに南野大臣もこの重みを引き継がれて、そして責任を持って所管の大臣として司法制度改革に当たられていくというふうな御答弁だったと解釈をしたいと思います。
 それでなんですけれども、野沢大臣は、その後の法務委員会の席上でも、我々がこの改革に対して必要なところには必要な分をかけなくちゃいけないということを訴えたことに対して、本当に誠意を持ってお答えを下さったと思っています。
 四月二十三日の法務委員会の席上では、法律扶助のことにも触れながら、法案に魂が入るかどうかは、人と物とお金、特に国の方から手当てするものとしては予算の獲得が最も大事な仕事である、今の間借りで仕事をしているような状況であるとか、民事法律扶助についても、これまでの努力に加えまして、さらなるまた期待も大きくなっており、この点を含めて、予算の獲得につきましては全力を挙げて努力をするつもりであります、関係省庁との協議も進めながら、このことを約束する、そして、これは議事録にも残るというふうに、また重ねて答弁をされていらっしゃいました。法案に魂が入るために最も大事だというふうに御答弁もありました。
 この予算確保について、総合法律支援の司法ネット、これから始まっていきます、今準備中でございますけれども、今の時点で、この法律が成立後、具体的にどのように協議をし、あの支援センターの法律の中には、私は個人的には非常に気に食わない表現が入っていましたけれども、財務大臣と協議をするじゃなくて、「財務大臣に協議」をするなんという、こちら側の法務大臣がいかにも財務大臣にお伺いを立てる、そんな表現があったような内容ですけれども、それはさておき、法案に魂が入るための予算確保について、現時点でどのような努力が行われてきたのか、あるいは今後の見通し、示せるだけで結構ですので、お示しいただきたいと思います。
○南野国務大臣 先生の情熱が伝わってまいります。
 先生の御質問でございますが、総合法律支援法に基づきまして、平成十八年度に日本司法支援センターを設立し、業務を開始するということが予定されております。
 法務省では、司法法制部にプロジェクトチームを設け、予算に関連する分野を含めて、支援センターの設立準備作業を行っております。平成十七年度には支援センター設立前の準備段階に入りますが、同年度の予算の概算要求におきましては七億二百万円の要求を行っております。
 法務省といたしましては、支援センターの業務を効果的かつ効率的に処理するため、必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えておりまして、今後、運営上の詳細とあわせ、検討を重ねてまいりたいというふうに思っております。
○鎌田委員 十七年、準備に向けての七億二百万という数字でございましたけれども、この数字に対して、先ほど私は、法案に魂が入るために向けてのということですが、それは自信を持ってそのような数字になっているんでしょうか。
○南野国務大臣 平成十七年度の概算要求と今申し上げましたが、これは総合支援の、いわゆる司法ネット準備経費でございます。ですから、実際展開するときにはもっと多くなる、それは先生も御存じだと思いますが、どういうものに使われるのかと申しますと、支援センターの準備経費は、広報活動経費、それから司法過疎地域の調査経費、または情報提供システムの開発経費等々でございます。
○鎌田委員 はい、わかりました。
 おっしゃるとおり、十八年度業務開始、ここからのところが非常に、でも、今の時点から非常に悩ましくて、生々しくて、東京の本部のセンター、そしてあと全国の支部と。全国の支部でだれが支部長になるのか、どんな形でその支部長をやっていくのか、どうやってそこに張りつく弁護士さんがついていくのか、どういう相談支援体制を組むのか。
 本当にもう今、法務省の国の予算獲得、それが、大丈夫、安心してそこに任せてこっちは準備していこうという状況ならば、何も余り地方でも問題も起きずに、いろいろな方が次々に自分から手を挙げてやっていかれるんでしょうけれども、そこに不安がまだ残っている、そういう状況ですから、この準備に対して、万全に近い形でこの数字を要求していっているというのであればなおのこと、十八年スタートに向けてはさらに、前の通常国会でも申し上げましたけれども、地方の方々が大変な大変な思いをしてやっていらっしゃいますから、そこのところに一生懸命こたえるということをぜひ忘れないでいただきたいと思います。
 それで、具体に伺いますけれども、この支援センターとも大いに関係することでございまして、国選弁護のことについてでございます。
 まず、憲法の三十七条の第三項、ここのところにうたわれております内容と、そして国選弁護とにつきまして、刑事被告人の弁護人依頼権、これを実質的に保障することの重要性、これをどのように理解なさっているのか、まず大臣に伺いたいと思います。
○南野国務大臣 お答えいたします。
 被告人に対する国選弁護につきましては、憲法でも保障されているとても大切な制度であるというふうに思っております。
 これは先生御存じと思いますが、憲法三十七条三項、「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。」というふうになっております。
○鎌田委員 ただいまの答弁で大切という表現を大臣おっしゃっていらっしゃいましたけれども、済みません、私は、大切などというものをはるかにはるかに超えて実は憲法の第三十七条の三項ではうたっていると思っております。
 その三十七条の三項の、特に後半の部分なんですが、「被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。」ということ、まさにこの憲法で、国が責任を持ってこの制度を守り、そしてしっかりやっていくんだということ、これは国の責務だと私は思うんですね。
 ですから、憲法でもうたわれている大切な制度でもあるということを否定はしませんけれども、大臣、センターでこの国選弁護ということがさらに枠が広がっていくんです。これは大臣も御存じいただいていることだと思いますけれども。ですから、非常に重要なので、これは大切というその意識をさらにもっとバージョンアップしていただきまして、そういう御認識をぜひ今後持っていただきたいと思います。
 それで、確認なんですが、ここにうたわれてありますとおりのこと、これは、国が責任を持ってこの制度を、そして被告人の弁護人依頼権、これを実質的に保障する、このことの責任は国がちゃんと最後まで持つんだということでよろしいですね。
○南野国務大臣 被疑者段階と被告人段階とを通じて一貫した弁護体制を整備するということは、被疑者、被告人が弁護人の援助を受ける権利を実効的に担保し、また充実し、かつ迅速な刑事裁判の実現を可能にするという観点から重要な意義があると考えておりますし、法務省といたしましては、日本司法支援センターが国選弁護体制の整備に関する業務を効果的かつ効率的に処理するため、必要な予算の確保に努めてまいりたい、まずは予算ということで考えており、今後、運営上の詳細とあわせ、検討を重ねてまいりたいと考えております。
○鎌田委員 今、大臣の御答弁の中に実効的という言葉がありました。さまざまな資料等を見て、実効的というよりは実質的に、実質的に保障するということを多く目にすることがありますけれども、その実効的、実質的ということは、大臣、何を示していると思いますか。
 私は、実質的に弁護人依頼権を保障していくということは、弁護する弁護人がどれだけの労力とどれだけの時間をかけて、そして、どれだけの時間をかけたか、その時間に見合った費用というものがそれぞれに成り立ってこそ、私は、実質的に保障される、担保されるというふうに考えるのですが、この考えについて、いかがでしょうか。
○滝副大臣 支援センターでこれから国選弁護人の引き受けの仕方、あるいは報酬の支払い方、そういうことを所管してまいるわけでございますけれども、もちろん、それまでに法務省としてもいろいろな相談にあずかります。そしてまた、日本弁護士連合会とも、どういう格好で弁護士費用の基準を考えていくのかというような御相談をさせていただきながら、お互いに関係者が納得いくような形での基準づくりをやっていきたいと思うんです。
 ただ、国選弁護人につきましては、支援センターができますと弁護士の立場が二通りぐらいになると思うんですね。センターの常勤の弁護士さんが引き受ける部分と、それだけでは足りませんから個別の案件でお願いする場合の引き受け方、二通りありますから、そういうこともあわせて関係筋と御相談しながら決めさせていただく。そういう意味で、実質的、効率的な運用ができるような格好でまとめ上げていきたい、こういうふうに思っております。
○鎌田委員 また最後に実質的、効率的という言葉で、だから、そこに対して、私は、それに見合った準備も含めた弁護活動の労力、そして時間と、それに見合った費用というものが成り立ってこその実効的、実質的ということのこの考えについていかがですかというのに対して、いやそのとおりだとか、いや違うとか、見解をお聞きしたかったんです。
 今の副大臣のお話ですと、本当におっしゃるとおり、これから先センターが始まっていくに当たって、そこでも新たな被疑者段階からの弁護人の制度が始まっていきますから、その国選弁護人に関するさまざまな予算、経費、費用等もこれからいろいろなところとお話し合いをしながら決めていく、決めていっている、今検討中のところだというふうに受け取ったんですが、それはそれとして、それも聞き及んでいるところでございます。
 だから、なおのこと、今そういったことを、まさに現場のところでお話し合いが少しずつ始まっているときだからこそ、昭和二十六年から営々と続いてきた、この日本の刑事弁護を支えてきた、六〇%とも七〇%とも言われている国選弁護人の活動、これに対する、支払われている報酬、この現実、実態というものを今ここでしっかり改めて検証し、そしてこれからのところによい方法で生かしていかなければいけないと思うので、あえて私は、初めの意義とか理念とか、そういうところから、ぜひ確認というかお聞きをしたかったのでございます。
 だから、戻しますけれども、刑事裁判での国選弁護人の果たしてきた役割について、どのような見解をお持ちでいらっしゃいますでしょうか。
    〔委員長退席、田村委員長代理着席〕
○南野国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、被告人に対する国選弁護につきましては、憲法でも保障されている、そして大切な制度である。貧困などの理由によりまして私選弁護人を選任できない被告人についても、その権利が実質的に保障され、刑事手続が正しく行われるために必要なものであるということでございます。
○鎌田委員 それもそうですよね、おっしゃるとおりですよね。そうだと思いますけれども、割合的に見て、日本の刑事裁判におけるところの大半を国選弁護人が弁護活動を担ってきている。つまりは、日本の刑事裁判のほとんどを国選弁護人が担ってきている。ぜひ、そういうところからの意義もともに感じ取っていただきたいんですね。
 憲法でうたっている基本的人権の非常に重要な一部分を示しているこれだから、国選弁護人の制度、国選弁護が大事だ、こういうのもあると思うんですけれども、しかし、現実として、日本の刑事裁判、刑事弁護を国選弁護人がどれだけの労力と時間を費やして担ってきているかというところからも、その重要性というものはかいま見ることができると私は思うんです。
 それで、もう大体、初めから予算、お金のところから入りましたので、言いたいことをわかっていただけるのかなと思うんですけれども、この国選弁護人に対する報酬の現状について改めてお伺いをしたいと思います。数字のところで今、大臣にお答えいただけるんなら大臣でもいいですけれども。
○大野最高裁判所長官代理者 金額ということであれですが、国選弁護人の標準報酬額ということでありますと、現在、八万五千二百円ということになっております。
○鎌田委員 八万五千二百円という提示がありましたけれども、二年連続で減額されていますよね。その実態、それから合理的、客観的根拠というか、二年連続減額。そして、その減額は、結局は財務省がそういう提示をしたからなんでしょうけれども、その前は最高裁が要求しているはずですから、最高裁はどういう数字で要求して、財務省からどういう返事が来た、最高裁はこの理由をもってこの数字を要求したんだというところも含めてお示しいただきたいと思います。
○大野最高裁判所長官代理者 平成十三年度におきましては、八万六千九百円の要求をいたしました。査定額は八万六千四百円。十四年も同額を要求しまして、額は変わっておりません、八万六千四百円ということになっております。平成十五年度は八万六千四百円の要求をいたしまして、査定額は八万五千六百円。十六年は八万六千円を要求いたしまして、八万五千二百円ということになっております。
 据え置きないしは減額ということになっておりますけれども、これにつきましては、厳しい社会情勢あるいは経済情勢の中で、人事院勧告、さらには社会的な給付等も含めまして、賃金水準等も含めまして、減ってきているといったような状況がありました。それを踏まえまして私どもの要求額も一定程度減額したものとなっておりますし、恐らく、その中で財務当局にいろいろ御理解をいただきながらこの額を維持してきているということであります。
○鎌田委員 非常に残念ですよね。最高裁の要求のときからしてどんどん減っていって、そして最高裁の要求額も、だって、弁護士さんの実態を知っているところのはずなのに何でこんな数字なんだというふうに思うんですけれども。
 だって、この八万六千何がしって、地方の弁護士さん、弁護士さん一人に事務員さん五人も十人もいるところではなくて、一人とか二人とか、本当につつましく、まじめに弁護活動をしている弁護士さんの事務所で、一日の経費だというではないですか。一日七万、八万。御存じでしょう。知らないんですか。
 だから、最高裁から要求するときから、八万六千九百円要求して五百円減額されて八万六千四百円、それで次の年、要求をさらに五百円減らして、だから財務省も減らして結果をよこして、それでまたその次の次の年、また減らして要求したから財務省もまた減らして結果をよこしてって、財務省が喜ぶことばかりやっているんではないですかと思うんです。
 だから、私は、弁護士さんの、特に国選弁護人の方々の活動の実態というものをやはり最高裁ぐらいはちゃんと見ていただいて、そしてそれに伴って、見合って財務省に要求して、堂々と、誇りを持って、そして財務省から来たものに対しては、ちくしょうと思っても、またという、それでこそだと思うんだけれども、何か最高裁からの要求からしてこれでは非常に残念で、私は法曹資格はありませんからね。全然、法曹の方と身内でも何でもないですから。別に弁護士でも何でもないので、自分のところにお金が欲しいという気持ちもさらさらないんです。
 ただ、やはり日本国民である以上、いつと言うとまたいろいろ皆様想像をかき立てるかもしれませんが、いつ刑事裁判とか、いつ司法の現場で充実した弁護活動を求める立場に立つやもしれない。そういうことを考えると、やはりこれは非常に、法曹の人間ではないからこそ切実な問題でありまして、しっかりとした弁護活動をやってもらうというところからもそうなんですけれども。
 それで、今、数字をお示しいただきました。今、この数字をはじき出した根拠は、経済情勢、人事院勧告、賃金情勢とかいろいろありましたけれども、済みません、私の頭ではさっぱり、全然、合理的、客観的にそうだよねとは思いませんね。思えないんでございます、はっきり申し上げて。
 そこで、ちょっと具体的にお伺いをいたしますけれども、この数字の中に、いわゆる証拠資料のコピーをとったり、記録謄写をしたり、それからどこどこに出かけていって調査をしたり、いろいろな話を聞いたり、あるいはどこかで泊まることもあるかもしれないけれども、そういう実費というのは入っているんですか。
○大野最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げました標準報酬額の中には、通常の弁護活動上必要と思われる、例えば通信費ですとか謄写料ですとかいったような経費については、この中に盛り込まれている。
 ですから、通常の弁護活動として行ったものについては、この先ほど申し上げた八万五千二百円が一応の目安ですから、その弁護活動に応じて、もちろん、よくやってくれた、活動が大変だったと思う弁護人にはそれ以上の額を支払いますし、そうでない場合にはそれより低額ということはあるわけですが、その前提といたしまして、先ほどの標準報酬額の中には、今委員がおっしゃられたような経費は含まれている、通常要するものについては含まれているというふうな理解です。
    〔田村委員長代理退席、委員長着席〕
○鎌田委員 済みません、ちょっと確認させていただきますが、これ以上頑張ったらこれ以上出す、これ以上頑張らなかったらこれより低額というのはあるとおっしゃったんですけれども、それはどんなふうになっているんですか、具体的に。
○大野最高裁判所長官代理者 通常は、公判での弁護活動を見ておりますと、この弁護人はどこまで活動をよくやってくれていたか、あるいはそうでなかったかということが裁判所にわかることもございますし、よくやってくれているような場合には、法廷活動プラス、場合によっては、弁護人に、法廷外での活動について、資料等をお出しいただければその部分ももちろん考慮いたしますよ、必要なものについては考慮いたしますよということをお話ししまして、そういったものが出されたものについては、それを考慮した上で報酬額を決定するといったようなことをしていることもあります。
○鎌田委員 それは何か基準があるんですかね。裁判所ごとによって、あるいは裁判官ごとによって違うんでしょうか。
○大野最高裁判所長官代理者 基準というものは特にございません。
 要するに、報酬を決めるのは、事件を受けていた裁判所が、その弁護活動を見て、具体的な事案の内容ですとか複雑性ですとか、あるいは弁護活動がどの程度のものであったかというようなことを、わかる範囲のところでですけれども勘案しまして、個別具体的な事件の中で妥当あるいは適正と思われる額を算定するということになっております。
○鎌田委員 それも少し驚くのです。基準もない。まず、基準がないんですね。さっきの八万五千何がしは一応の目安で、それの上、アップもあれば下もある。基準はない。
 だから、裁判官の、裁判所の方で、うん、頑張ったかな、プラス、はい、頑張らなかったね、だめと。そんなものですか、日本の刑事裁判の国選弁護人に対して払われる報酬とは。そんなものと言ったら怒られるんですかね。そんなものでいいんでしょうか。いいんだべかと言いたいところなんですけれども。
 本当に、私は法曹のものじゃないので、やはり非常に強烈に、新鮮にショックです。法曹関係の方はそういうものなのかなと思われるかもしれない。でも、私、ショックですね。国選弁護人の方たちがどれだけの気持ちで今国選弁護をなさっているのか。そして、私は、その八万五千何がしが余りにも安過ぎだ、そういうことを主眼に置いて言いたいと思ってきょう来ているんですけれども、それよりもさらにちょっとショックだなと。
 そして、あと、実費がこれに含まれているということ。だから、八万五千二百円、これに交通費も宿泊費も、宿泊費は入らない、謄写料、そういうのも入っている。
 では、例えば、物すごく記録謄写、だって、このくらいで済むというときもあれば、このくらい謄写しなくちゃならないときもあるんでしょう。そのとき、謄写料が、例えば五百円で終わるときもあれば、万単位になるときだってあるわけでしょう。そういうときは、この弁護人の方はどこかに請求するわけですか。
○大野最高裁判所長官代理者 事案の内容にもよりますけれども、重要な事件、例えば法定刑が非常に重い事件とか、あるいは、争いがあって記録謄写がどうしても必要であるし大部であるといったような場合には、その部分については、それに要した費用を報酬に勘案して支払うという扱いをしております。
 ですから、通常といいますのは普通の事件で、そう争いのない事件程度とか、あるいは少し争いがあっても必要なものについては支払いますし、そうでないものについては払いませんけれども、今申し上げたような重大事件ですとか一部否認のような事件については謄写料を支払う、それを勘案した上で報酬額を決めるということにしております。
○鎌田委員 ごめんなさい。だから、お聞きしたのは、請求をどこかにするんですか、弁護人の方がどこかに請求して支払われるんですか。
○大野最高裁判所長官代理者 そうです。
 こういう事案であるから謄写料を支給されたいと申請がありまして、そして、謄写料の実際にかかった費用の領収書というようなものを提出していただいて、その上で勘案して決めるということになります。ですから、申し出が必要だということになりますけれども。
○鎌田委員 済みません、その基準がないわけですよね、戻りますけれども。
 そうすると、例えば、謄写料、五万かかりましたと五万と書いて、あるいは交通費も、とんでもない遠隔地を行ったり来たりして、これも何万だ、それを請求書に書いて出す。これに対しても基準はないと思っていいのかが一つと、これは、請求を受けた裁判所側がいろいろ総合的に勘案してとおっしゃったけれども、もしかして、裁判官、裁判所の裁量で、丸々、謄写料五万円に交通費五万で十万円もプラスになって、本当に大変だったわね、では、八万五千二百円に十万足して、はい、十八万幾らと出すこともあるし、あるいは、謄写料五万かかったけれども一万だけ出してやるか、あるいは交通費五万かかったけれども二万出してやるかと三万だけとか、こういう差が出ちゃうことはあるんですか。
○大野最高裁判所長官代理者 本当に必要だということであれば、それは全額お払いします。ですけれども、中には必要でないと思われる部分もある。
 例えば、交通費なんかについては、なかなかそれは分けがたいところでありますから、例えば、この証人の尋問、どうしても会いに行きたいという関係がありますれば、それはそれで、そこに要する旅費と、宿泊費が必要であれば宿泊費、その額については基準はありますけれども、ここまで行けばこれだけというあれがありますけれども、そういったものは支払います。
 謄写料については、先ほど申し上げたように、物によっては必要でないと思われる部分もあったりする場合には、全額出ないということもあり得ます。
○鎌田委員 必要か必要でないかはその裁判官が判断なさるんでしょう。そこに基準がない。だから、裁判官によっては、この人は、必要と判断して出そう、こっちの裁判官は、そうしたら、国選弁護人も、裁判官の当たり外れで、わあ、当たった、外れだという感じで、あの裁判官のときには絶対厳しいんだよねという、そんな実態になっているんでしょうかね。もう何か目に浮かぶようでございますけれども。
 そうやって日本の司法を支えている国選弁護人、刑事裁判、何かやはり私はこのままでいいということはないんではないかなと思うんですけれども、どうですか。
○大野最高裁判所長官代理者 謄写料につきましては、私どもの方で、こういう基準で支払ってほしいという通達を出しておりまして、先ほど申し上げましたように、重大な事件、それから否認事件については支払っているし、そういう取り扱いをするようにということで周知方に努めているところであります。
○鎌田委員 私より大きい声を出してとは言いませんけれども、もうちょっと大きい声で言っていただかないと、この距離でも聞こえないんですよね。何か最後の方、特によくわからなかったんですけれども。
 最高裁は最高裁なりに伝統もあるでしょうし、この支払いの手続のやり方について。今、ましてや、再来年から、もう最高裁は、はっきり言えば、極端な話、手を離れるんでしょう。おらのところ関係ねえもんという感じになる、正直言えばですよ。だって、もう最高裁からお金出るわけじゃないもの。センターからお金出るんだもの。
 だから、そういうふうにはなっていないと思いますけれども、もう関係ないという気持ちはないと思いますけれども、しかし、ずっと長年日本の刑事裁判を支えてきた国選弁護人に対する報酬の算定の仕方だとか、あるいは伴って実費の出方だとかその内容が、やはりここで今新たにセンターで被疑者段階の国選弁護ということも国費で始まっていくわけですから、やはりこの国選弁護人に対する報酬の姿というものは、ここでぜひしっかり、さっき副大臣おっしゃったように、しっかり築き直していくということが大事だと私は思うんです。
 それにつけても、最高裁が今までやってきたんだから。それに対してしっかり、こういう根拠をもってこの数字を出してきた、しかし、この数字はこうだから、今後センターでやっていくに当たってはこういう形が望ましいんだということを最高裁は言う責任があるし、そして堂々とそのことをちゃんと主張して、そして最高裁としてこれだけの金が必要なんだということを、自分たちのことだっていいですから、お金は必要なところには必要なんだということをちゃんと言わないと。そして、そのことを大臣にも理解していただき、法務大臣のこの不思議な圧力で、谷垣さんとしっかりガチンコしてもらってかち取ってもらわないと。そうじゃないと、何のための改革かと。まさに野沢先生が、野沢前大臣がおっしゃったように、魂が入らなくなっちゃうわけですから。だから大事なんで。
 それで、最高裁に、くどいようですけれども、もう一回というか何回か聞きますが、この数字、これから先、支援センターの方に請求されていくことに変わっていくと思いますが、さっき副大臣がおっしゃったように、検討が今されているところだと思いますけれども、この数字に対して、今後、国選弁護の今の現状、あるいは弁護士さんの活動の状況などを踏まえれば、大いに検討の必要ありとお考えになるのか、この水準を維持していくべきだとお考えになっているのか、または別に新たに何かお考えがあるか。引き継ぐ側の責任だと私は思っていますので、日本の刑事弁護、日本の刑事裁判を崩壊させないために、最高裁は、今ここでこの問題に対してどういう意見を具すべきだと思っていますか。
○大野最高裁判所長官代理者 司法支援センターができた後のことにつきましては、また司法支援センターの方でいろいろ検討された上で、最高裁に意見を聞いた上で法務大臣が認可するというようなことになっておりますので、その際にまた、今後検討した上で意見を述べるということになろうかと思いますが、その案が出た段階でですね。
 現在の、先ほど来出ております国選弁護報酬が低過ぎないかという点ですけれども、この額につきましては、いろいろ御意見があるということは十分承知しております。
 ただ、先ほども申し上げましたように、今般の社会情勢や財政状況、さらには国選弁護人の高度の公共的性格でありますとか、この国選弁護費用は訴訟費用として被告人の負担となる、負担させた場合には負担になるといったような問題もあります。さらに、国選弁護人が選任された事件の多くは、九四%程度が自白事件であるといったような実情にもございます。そういったことを総合勘案しますと、必ずしも一概に低い額であるというふうには思っておりませんということであります。
○鎌田委員 今、おりませんと最後に言いましたね。低いと思っておりませんと言いましたね。一概には低いと思っておりませんとおっしゃいましたね。信じられないな。私、けんかするつもりは全然ございませんので。
 さっき、私、ちらっと触れました、弁護士さんの日々の活動の実態、こういったものを調査なさったことというのは過去あるのかどうか。弁護士さん一事務所当たり、全然もうけていない、身なりを見れば、あら、弁護士さんて何でみんな同じようなこういう格好しているんだべと思うような、かわいいというか、余り立派じゃないというか、そういういでたち。でも、違うんですよ、そういう人こそ本当にもう人権派で、事務所がぼろぼろだろうが何だろうがという感じで、すばらしくやっていらっしゃるんですよね。
 そういうつつましくやっているところでも、一日やはり七万、八万かかる。一日ですよ、一カ月じゃなくて。その一日に飛んでいっちゃう、消えちゃう経費が、国選弁護の一件の報酬。これは余りにも低い。だから、さっきちょっと言いましたように、実態を調査したことがあるのかどうか、それに基づいての数字なのかどうか、一つ伺いますね。
 それともう一つは、地方で、もう刑事裁判の六五%以上、七〇%以上を国選弁護人が担っているという数字はもう明らかに出ていますね。しかし、この国選弁護人だって、全国、地方の弁護士さんが、おら嫌だ、やりたくないと言えばつかないわけでしょう。
 この現状を見て、現実を見て、この報酬だけじゃなくてですよ、刑事裁判そのもの、今広く言われているとおり、非常に弁護士さんにとっては、やりがいというか、生きがいにつながらないような弁護活動だったりすることも聞くと、刑事裁判、刑事弁護がもう崩壊するんじゃないか。
 やり手がいない、受任回避者ばかり出る。そうすると、地方の弁護士会、単位会においては、もう強制的に義務制までしいているところもある。それで、単位会の会長は頭を下げ回って、何も私の仙台の地元を言っているんじゃないですからね、別に、想像にお任せしますけれども。弁護士会員に一人一人当たって、国選弁護をやってくれないかと。これが現状ですよ。これだけ苦労している。
 しかも、日弁連は自腹切って、基金みたいに積み立てもやっているじゃないですか、自分たちで毎年毎年持ち出しをして。それは、やはり日本の刑事裁判、刑事弁護というものをしっかり守っていかなきゃいけない、そこの責任感、使命感ですよ。それで、自分たちで持ち出しして、積み立てもして、それに充てる。
 さらには、コピー代なんかも、裁判官の裁量によっては、出るか出ないかもわからない。けれども、やる。それで、もうやりたくないなと思っても、単位会の会長さんから、ひとつやってくれないかねというのもある。これが日本の刑事裁判の現状なんですもの。それは最高裁もよくわかっていると私思うんです。よくわかっているよと。わかっているんでしょう。思います。そう信じたいし、信じているし。
 ただ、本当にさまざまな事情でなかなかその要求のところにそういう数字としてあらわすのが、数字にあらわすとき、前段階で財務省ときっとあるでしょうから、たび重なって。だから、なかなか大変だろうけれども。
 いいです。今後この数字をアップしなくちゃいけないと思っているなんというのは、今突然、急には無理かもしれない。しかし、今私がずるずると言いました、日本の刑事裁判、刑事弁護を支えている国選弁護の現状というもの、これはともにこういう理解でよろしいですね。その確認はさせてください。
○大野最高裁判所長官代理者 確かに、刑事弁護の、特に国選弁護人の確保ということで弁護士会は御苦労されているし、個々の弁護人の力によって支えられているということは私も承知しているつもりですし、実態もそうだろうと思います。
 先ほど委員からお話のあった、実際の国選弁護活動の実情を調査したことがあるかという問題ですが、これにつきましては、私どもが調査いたしますと、弁護活動そのものの内容について踏み込むことになります。これが果たしてよろしいのかといった問題もあります。それから、弁護士事務所の経費等を含めて、やはり私どもが調査するというのも何かふさわしくないような気もいたしますので、私どもとしてそういった調査はしておりませんけれども、国選弁護が本当に意のある弁護人の方々で支えられているというところは、私も承知しているつもりであります。
○鎌田委員 弁護活動に踏み込んでの調査にもなるからという、それもそれで本当に非常に正しいというか、慎重なそういう御判断だと思いますけれども。最高裁がなさらなければ、何も、弁護士さん同士でやっている実態調査の資料も山ほどありますし、見るのが嫌になるぐらいいっぱい数字が載っている資料もいっぱいありますから、私はぜひ、この数字が出てくる根拠となるちゃんとした合理的なデータがあってこうなんだというものを示すべきだと思いますし、そして、逆にそれが、いや、ここで見直すべきだというなら、それを正しく、正直におっしゃっていただいて、これからのセンターの中での国選弁護に役立てていくべき。私は、それは全然どこも隠す必要もないし縮こまる必要もないし、それを堂々と、最高裁は今までこれをやってきたというところの責任でいいと思うんですよ。
 ですから、今後、センターの十八年の秋の業務開始に向けて、まさに実態の具体的な実務のところでのお話し合いが今進んでいるというふうに聞いていますから、ぜひ、意見を聞かれるときがあれば、あるいは聞かれなくても、最高裁なんですから、最高裁。私なんか、こうやって最高裁の偉い人とお話し合いするなんて本当にもう大変なことだと思っていますよ。何が大変なんだかわかりませんけれどもね。本当に思っています。
 それだけ、本当に一般国民、市民は、裁判というものを皆様は今身近なものとして改革を進めようとしているけれども、やはりまだまだ裁判あるいは最高裁、裁判所というものに対して特別な特別なそういう目や感覚を持っています。私も本当に、正直、持っています。
 ですから、それの裏返しは、やはりそれだけ責任があるし、それだけ堂々と誇りを持って日本のこれからの司法改革に意見をちゃんと言っていっていいと思いますので、それは要望として最後に。お疲れさまでした。本当にありがとうございました。
 そういうことでございまして、大臣、きっとやりとりをずっと聞いていていただけたと思うんですね。さきの通常国会で、これから先、十八年には被疑者段階から弁護人が選任できる、それを国費で賄っていくという法律が通り、そしてスタートは十八年。ちょうどそのセンターの開始時期といみじくもほぼ同じころなのかなと。
 そうすると、大臣、単純計算して、国選弁護人に今まで、一件当たり八万五千二百円という数字がことしは出て、払ってきた。これは全部の件数を掛ければいい。全部のお金が出ますよね、予算が。それで、ところが、これは被告人の国選弁護ですから、今度センターができると、被疑者段階でもこれが加わる。単純計算して二倍ですよ、単純計算して。
 数字であらわれているのは、初めの何年間かは一万人ぐらいじゃないか。しかし、その後、その被疑者段階からのが加わっていくと、五年後には十万人にふえるんじゃないか、そういうふうに言われている。そうすると、この数字というのは、単純に一つと一つを足して二になるという話じゃなくて、今の予算よりも、とんでもなく、この現状維持だけでも、現状を維持しただけでももっともっとかかってくるという可能性が非常に強くなってくるんですよ。
 ですから、私は、初めに、冒頭に国選弁護の意義も大臣からお答えいただきましたので、その考えをぜひ持って、南野大臣が法務大臣として、平成十八年、支援センターの開所、オープンのときにテープカットするのか知らないですけれども、そのとき大臣でいらっしゃるのか。いずれにせよ、今まさにその準備段階に携わる大臣ですから、ぜひ、この国選弁護人に対するさまざまな報酬等充実を図っていきますよね、そこのところの御決意を改めて伺いたいと思います。
○南野国務大臣 先生がるる今御質問された中身でございますが、弁護権が大切であるということはもう私も十分存じ上げております。具体的に弁護士の方々の報酬が幾らが適正であるかというのは、また今後さらに検討していかなければならないことであろうかというふうに思っております。また、どれくらいの予算が必要かということについても、我々として検討していかなければならないことだと思っております。
○富田大臣政務官 済みません、ちょっと差し出がましいと思うんですが、先生の質問をずっと聞いておりまして、今八万円台で低いじゃないかというお話がありましたけれども、私は昭和六十一年の弁護士登録なんですが、当時の国選弁護料は、たしか月四万円いかなかったと思うんですね。そこから十七、八年でこの金額までなっているということで、各党の御理解があって徐々に積み上がってきた数字がここまで。
 最高裁、大野さんの方は、一概に低いとは言えないと言われましたけれども、実際、私選で刑事弁護を現実にやってきた身としては、私選でやれば着手金で三十万から五十万ぐらい、執行猶予になれば同じぐらいの金額はどんな事務所でも多分報酬としていただいているんじゃないか。それと比べれば本当に低いんですね。
 ただ、先生が御指摘のように、国選弁護の報酬で事務所経費を維持している弁護士はまずいないと思うんですよ。それぞれ別の事件でしっかり事務所を維持できるように活動して、大野局長が言われたように、やはり公共的な面があるので、弁護士の社会的使命ということで国選弁護に参画していますので。
 当番弁護士制度というのは、自分たちでお金を出して、自分たちでそこから報酬をもらうということで、タコが足を食っているような状況でしたので、今度、支援センターができて、きちんとそこに財政的な措置ができれば弁護士も活動しやすくなると思いますし、先生のようにそういう法曹じゃない方がしっかりバックアップしていただいて、来年の予算要求もぜひ賛成していただいて、法務省としても頑張っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○鎌田委員 賛成できるだけの予算要求の数字をしっかり要求していただいて、こんな要求じゃだめじゃんというふうにならないように、ぜひ政務官、全然差し出がましくございません、どんどん。
 何も事務所経費を国選弁護の報酬でやろうなんというあれはないです。まさに今おっしゃったように、私選との大きな格差、これは一刻も早く解消すべきことだと私は思っていますので、今の政務官のもしっかり議事録に残るでしょうから、時の現政府の法務に携わる方々の答弁として残して、そして国選弁護の充実を図られるように、強く要望したいと思います。
 残りの時間で実は二つやりたいのがありまして、半分にすると三分ぐらいずつなんですけれども。
 公示催告の手続についてです。この間の当委員会で成立して、後、本会議でも通りました民事関係手続の迅速化、効率化なんですけれども、そこに、公示催告の手続についても迅速化を図るというのが入っております。
 確かに、公示催告期間、これが六カ月から二カ月に短くなって、四カ月短縮になって、これは私は非常に賛成、だから法案にも私たち賛成もしていますけれども。しかし、催告されるまでの間、簡裁に、なくしましたとか盗まれましたとか、届け出、申し出しますよね、簡裁に申し出する、そして今度、簡裁がその中で審査をして決定をする、それから今度、官報に載せてといって国立印刷局に回る。この間を合わせると、打ち合わせでは、約二カ月間かかっているみたいなんですね。それが、確かに二カ月かかっているのかどうか。
 これを短くしなくちゃいけない。後の方、こっちがせっかくこのくらい短くなって、しかし前の方は従前どおりだと。ここを短くする努力が、今回の手続で、法案は通りましたけれども、これからの課題だと思うんですね。
 ここを短くする手だてとして、例えば、国立印刷局に入稿される際に、手書きの原稿が入ってくるんじゃなくて、もうオンライン化が進んでいるんだから、その際入っていくものも電子化されて入っていく、そうすれば印刷局の方でも早く官報印刷ができるんじゃないか、そんなふうにも私は思いますので、本当は今申し上げたものを五つぐらいに分割して質問しようと思ったんですが、全部今一緒にしましたので、お答えいただきたいと思います。
○園尾最高裁判所長官代理者 公示催告の申し立てから公示催告の決定までの期間としては、ただいま御指摘のような実情がございます。申し立てから決定までにはおおむね一カ月程度を要しておりまして、それから官報公告までにおよそ四週間程度を要するということで、およそ二カ月というのはそのとおりでございます。
 どうしてこれだけの期間がかかるのかといいますと、公示催告をするに際しまして、申立人の権利の有無や、証書の盗難、紛失の事実等の要件の有無を審査しなければならないということがございます。ところが、公示催告手続の申し立ての場合には、本人が申立人であるという場合が相当多いということでございまして、申し立て書の記載内容や添付書類に不備があるケースも多いということで、これだけの期間がかかっておるという実情がございます。
 このような中で、一般的な姿勢でございますが、裁判所としては、できる限り迅速に処理するように心がけているところでございまして、今後もそのようなことを心がけるというつもりでございます。
 電子入稿の問題がございました。これは、破産手続で試験的に今実施をしておりまして、個人再生手続でも実施しております。破産手続は二十万件余り、個人再生手続は二万件を超えるということで、これで実施をしております。これによりますと二週間程度で官報公告がされるという効果がありまして、御指摘のように、その差の期間というのは早くなるということでございます。
 そういうことで、これは効果があるということではございますが、公示催告の事件の数は、平成十二年でいいますと一万六千件余りあったものが、平成十五年では四千四百件余りということで、激減しております。ことしは二千件余りになるであろうというような見込みの数でございまして、そのような数の状況などを見て、どのような形でやれば最も効率的かということについても、今後研究をしてまいりたいというように思っております。
 ただ、破産事件、個人再生事件、あるいはほかの手続で電子入稿がされたということの反射的な効果として、書面による入稿についても期間が徐々に早くなっておるというように認識をしておりまして、あらゆる努力を重ねていきたいというように考えておるところでございます。
○鎌田委員 あらゆる努力をこれからも重ねていただいて、本当はもっとやりとりしたいんですけれども、より迅速になるように、ぜひ、被害者の立場に立ってもやはりこれは大切な検討課題だと思いますので、要望したいと思います。
 国立印刷局にもおいでをいただきましたので一つ伺いますけれども、今のように電子入稿で入ってくれば、やはり確実に官報掲載は早くなるのかということと、それから、どんどんオンライン化が進んでいっておりますけれども、閲覧検索のところで、確かにその検索、ある程度の期間のところは無料になっておりますけれども、これを全体的に無料にということができないものかどうかな。いち早く検索できて、そしてそれが手軽に無料でできないかというような気持ちもありますが、いかがでしょうか。済みません、三十秒から一分ぐらいでお答えいただければと。
○岡田参考人 お答えいたします。
 先生から御指摘ございましたように、六カ月から二カ月になるということでございますので、我々も催告に関しましては万全を尽くしまして、先ほどお話ありましたように、二週間、十営業日程度まで短縮できるよう努力してまいりたいというふうに思っております。
 もう一点でございますけれども、国立印刷局は運営費交付金をいただいておりません。独立採算で運営しておりまして、電子化等に要しました経費につきましては利用者の方に応分の負担をしていただいているという状況でございます。
 なお、官報情報検索サービスの利用料金につきましては、内閣府等と調整の上、設定しております。
○鎌田委員 ありがとうございました。
 独立ですべて賄っているというのを改めて知りまして、無料ということは要望として一応申し上げましたけれども、今後とも、迅速化ということでぜひ御努力をいただきたいと思います。
 最後に一つ伺いますけれども、さきに香田証生さんという若者が、イラクで大変残虐な方法で殺害をされました。これに対して南野大臣は記者会見で、国内法を適用する犯罪被害者、戦争被害者ではなく犯罪被害者として認定をし、国内法を適用していくというふうな記者会見でのコメントがございました。これは、こういう認定で、刑法なんでしょうけれども適用されていくということは、今後どのような展開が想定されるのか。
 というのは、今現地で活動している自衛官も、これは全く同じような境遇に遭わないとは全然言い切れないんですね。遭う可能性もある。あるいは、ほかの方々も同じですけれども、そういったときに、暫定政府の状態のイラクに対して、日本政府としてどのようにその捜査を積極的にというか、この解決に向けてですが、されていくお考えなのか、お示しをいただきたいと思います。その御答弁をいただいて終わります。
○南野国務大臣 お尋ねの件でございますが、殺人などが、我が国の法律で犯罪とされる事件が起こった場合には、我が国の捜査機関が可能な限り捜査を尽くすのは当然のことであります。警察及び検察当局はそのように対応されるものと承知しております。
 ただ、外国で起こった刑事事件でありまして、犯人も主な証拠もその国に存在する場合には、主要な捜査は当該外国にゆだねざるを得ない面があります。現段階で個別事件についての具体的な捜査の見通しを申し上げることは困難であります。
 さらにまた、御指摘ございました自衛隊の方々の件の御配慮もございますが、御指摘のような仮定の場合についてお答えすることは困難でありますが、一般論として申し上げるならば、日本国外において日本人が殺害された場合には、刑法第百九十九条の殺人罪が成立し、同法第三条の二第二号により日本の刑法の適用があることとなっております。
○鎌田委員 終わります。ありがとうございました。
○塩崎委員長 次回は、来る十二日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後二時四十八分散会