第162回国会 法務委員会 第26号
平成十七年七月十二日(火曜日)
    午前九時三十二分開議
 出席委員
   委員長 塩崎 恭久君
   理事 田村 憲久君 理事 平沢 勝栄君
   理事 三原 朝彦君 理事 吉野 正芳君
   理事 津川 祥吾君 理事 伴野  豊君
   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君
      秋葉 賢也君    井上 信治君
      大前 繁雄君    左藤  章君
      笹川  堯君    柴山 昌彦君
      園田 博之君    武田 良太君
      谷  公一君    早川 忠孝君
      松島みどり君    水野 賢一君
      森山 眞弓君    保岡 興治君
      柳澤 伯夫君    柳本 卓治君
      加藤 公一君    河村たかし君
      小林千代美君    佐々木秀典君
      樽井 良和君    辻   惠君
      松野 信夫君    松本 大輔君
      江田 康幸君    富田 茂之君
    …………………………………
   法務大臣         南野知惠子君
   法務大臣政務官      富田 茂之君
   外務大臣政務官      小野寺五典君
   政府参考人
   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         米田  壯君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    大林  宏君
   政府参考人
   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君
   法務委員会専門員     小菅 修一君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月十二日
 辞任         補欠選任
  柳本 卓治君     武田 良太君
同日
 辞任         補欠選任
  武田 良太君     柳本 卓治君
    ―――――――――――――
七月四日
 裁判所の人的・物的充実に関する請願(樽井良和君紹介)(第三〇六八号)
 国籍選択制度の廃止に関する請願(伴野豊君紹介)(第三一〇八号)
 成人の重国籍容認に関する請願(伴野豊君紹介)(第三一〇九号)
 治安維持法の犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(石井郁子君紹介)(第三一六八号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十九回国会閣法第四六号)
     ――――◇―――――
○塩崎委員長 これより会議を開きます。
 第百五十九回国会、内閣提出、犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局組織犯罪対策部長米田壯君、法務省刑事局長大林宏君、外務省大臣官房国際社会協力部長神余隆博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
○塩崎委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田村憲久君。
○田村(憲)委員 おはようございます。自民党の田村でございます。大臣、おはようございます。
 久しぶりに法務委員会の質問に立たせていただきます、少しばかり緊張いたしておりますけれども。やっとこの法律案、審議に入れるということで、紆余曲折、本当に長かったなというのが率直な感想でございます。法務省の方でも待ちに待った法案であろうな、このように思うわけであります。
 まずは、この法律、組織立った国際犯罪に対して対応していこうという一つの大きなテーマも入っております。ロンドンでテロがありまして、大変な被害が出て、本当に被害者の方々にはお悔やみを申し上げるわけでありますけれども、こういう状況を考えましても、やはりこういう国際犯罪、組織立ったものに対して、テロも含めてでありますが、国際間、国同士が協力し合いながらどう未然に防ぐか、また摘発していくか、大変重要な問題であろうと思います。
 特に、国際組織犯罪防止条約、これは平成十二年十一月、国連総会で採択されましてから、十五年九月発効ということで、現在幾つになっているか、これはちょっと前の資料でありますから正確かどうかわかりませんが、百五十近くが署名をして、締結国も百国近いという話であります。
 G8を見ましても、締結している国、また国内法をもう既に整備している国、あとは手続を待っている国、いろいろあるわけでありますけれども、我が国も平成十二年の十二月十二日に署名をいたしました。また、平成十五年の五月の十四日、百五十六回通常国会で承認ということで、自民、公明、民主、共産が賛成したということで、必要性というものはある程度理解はされておるんだと思いますが、国内法の整備というものがまだ追いついてきていないという現状、サイバー犯罪条約の方も同じような状況があるということで、今回いよいよ国会に上程されたというわけであります。
 この法律案、全体でありますね、提案理由説明をしていただいたんですが、ちょっと日がたってきておりますので、改めて全体の提案の理由というものを大臣からお聞かせいただきたいと思います。
○南野国務大臣 田村先生からの御質問にお答えするに先立ちまして、一言申し上げたいことがございます。
 去る七月七日、英国におきまして発生しました同時多発テロの犠牲になられた方々の御遺族にも対しながら、謹んで哀悼の意を表します。それと、おけがをされた方々に対しても、早く回復されますように、心からお見舞い申し上げます。
 今の先生の御質問でございますけれども、この法案ということにつきましては、最近のグローバリゼーションの進展に伴いまして、犯罪行為が容易に国境を越えていくということになりました。また、犯罪組織によります国際的な犯罪が頻発いたしております。また、厳しい経済情勢の中で、暴力団等の反社会的勢力が組織的に関与する悪質かつ巧妙な強制執行妨害の事犯が後を絶たないなどの状況にございます。さらに、近年、コンピューターが広く社会に普及しまして、世界的な規模のコンピューターネットワークが形成されておりますけれども、このような情報処理の高度化に伴いまして、やはりハイテク犯罪というものが多発いたしております。
 この法律案は、このような近年における犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化の状況にかんがみまして、刑法、刑事訴訟法、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律、その他の法律を改正し、既に国会の御承認をいただいた関連条約の締結に必要な法整備を含めて、所要の法整備を行おうとするものでございます。
○田村(憲)委員 時間が三十分で、かなりの質問の内容なものでありますから、機械的にちょっとお聞きをいたしますので、申しわけないと思うんですが、次は、刑事局長にお伺いいたします。
 この国際組織犯罪防止条約の策定の経緯、それから採択の動向、さらには国際的な組織犯罪対策の現状の沿革といいますか、これを問いたいと思います。
○大林政府参考人 国際組織犯罪防止条約は、薬物犯罪に対処するための国際的な法的枠組みを創設した一九八八年の麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約、いわゆる麻薬新条約の採択後、G8諸国を中心とした国際社会の活発な組織犯罪対策の諸活動を受け、国連において起草、採択されたものでございます。
 その経緯の概略を申し上げますと、一九九四年十一月にイタリアのナポリで開催された国際組織犯罪世界閣僚会議において、国際組織犯罪に対するナポリ政治宣言及び世界行動計画が採択され、国際組織犯罪に対処するための国際協力の促進を目的とした国際文書の作成を検討することが提唱をされました。
 その後、一九九八年十二月の国連総会決議により、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の起草のためのアドホック委員会が設立され、同委員会は一九九九年一月に審議を開始しました。
 このような経緯を経て、本条約は二〇〇〇年十一月に国連総会において全会一致で採択され、我が国は、同年十二月にイタリアのパレルモで開催された本条約の署名会議において、他の約百二十カ国とともに本条約に署名しました。
 その後、本条約は、二〇〇三年九月に発効し、現在に至っております。
○田村(憲)委員 例の九・一一のアメリカでのテロがあってからこういうような動きがあったのかというふうによく錯覚するんですが、もうそれ以前に、国際的な犯罪というものに対して、やはりある一定の協力のもとにこれを取り締まっていかなきゃならないという方向でこのような条約が結ばれておる、こういうような話を改めて確認させていただきました。
 この条約の批准状況、今どうなっておるのか。それからもう一問、これは大臣に、二問とも大臣なものでありますから、あわせてお聞かせをいただきたいと思うんですが、締約国に対してどのようなことをこの条約は義務づけているのか、この二点をお願いいたします。
○南野国務大臣 お答え申し上げます。
 本年六月末現在で国際組織犯罪防止条約の署名国は約百四十七カ国に上っております。また、締約国は百六カ国となっております。いわゆるG8の中では、フランス、カナダ、ロシアがこの条約を締結済みでありまして、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリアは締結に向けて準備中であると聞いております。
 さらに、もう一つの御質問でございますが、国際組織犯罪防止条約は締約国に対して、これは六つほどございますが、一つは、重大な犯罪の共謀または組織的な犯罪集団の活動への参加を犯罪とすること、もう一つは犯罪収益の洗浄を犯罪とすること、三つ目は腐敗行為を犯罪とすること、四つ目は司法妨害を犯罪とすること、五つ目はこれらの犯罪及び重大な犯罪に係る犯罪収益を没収すること、六つ目が犯罪人の引き渡し、司法・捜査共助を行うことなどを義務づけております。
 また、これらのほかに、例えば法の執行当局の情報交換や法執行の職員のための訓練の促進など、国際的な組織犯罪の防止、捜査及び訴追に関する実体法、手続法、国際協力等の多岐にわたる多様な事項についても規定しております。
○田村(憲)委員 それでは、条約の中身についてお聞かせをいただきたいと思います。
 第三条、適用範囲。この中で、「この条約は、別段の定めがある場合を除くほか、次の犯罪であって、性質上国際的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するものの防止、」云々と書いてありますが、この「別段の定めがある場合を除くほか、」という部分と、「性質上国際的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するもの」というふうになっておりますけれども、これはどういう意味なのか。また、「別段の定め」、前段の部分でありますが、多分「別段の定め」というのは複数あると思うんですが、これはどういうたぐいのもの、種類のものがあるのか。これは刑事局長にお願いいたします。
○大林政府参考人 条約三条は、条約の適用範囲を規定するものであり、次に掲げる犯罪、すなわち、組織的な犯罪集団への参加の犯罪化について定める条約五条、犯罪収益の洗浄の犯罪化について定める条約六条、腐敗行為の犯罪化について定める条約八条及び司法妨害の犯罪化について定める条約二十三条の規定に従って定められる犯罪、及び、重大な犯罪、すなわち、長期四年以上の自由を剥奪する刑またはこれより重い刑を科することができる犯罪のうち、性質上国際的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するものという要件を満たす犯罪についてこの条約が適用されるのが原則ですが、別段の定めがある場合には、このような国際性と組織性の要件を満たさなくても、当該別段の定めに従ってこの条約が適用されるという意味であると理解しております。
 この別段の定めに当たる規定としては、犯罪に関する国内法の要件について定める条約三十四条の2の規定のほか、犯罪人引き渡しについて定めた条約十六条1の規定や、法律上の相互援助について定めた条約十八条1の規定が挙げられるところでございます。
○田村(憲)委員 今、三十四条の2という話が出てまいりました。第五条「組織的な犯罪集団への参加の犯罪化」、この部分に関してやはりこの三十四条の2というものがかかってくるということでございますが、この別段の定め、三十四条の2に書いてあるんです、読むんですが、なかなかわかりづらい文章になっております。これをかみ砕いて、刑事局長、お聞かせください。
○大林政府参考人 条約三十四条2は、締約国の国内法における犯罪化の義務に関し、条約三条1が定めるこの条約の適用範囲についての別段の定めを規定したものでございまして、具体的には、条約の規定に従って定められる犯罪については、共謀罪等の犯罪化を求める五条の規定により組織的な犯罪集団の関与が要求される場合を除き、各締約国の国内法において、国際的な性質または組織的な犯罪集団の関与とは関係なく定めると規定しております。
 したがって、条約五条による共謀罪等については組織性の要件を付することができるものの、それ以外の場合には、条約上、国内法において犯罪を定めるに当たっては、国際性等を要件とすることはできない。すなわち、国際性等を要件としないで犯罪化することが義務づけられているものと理解しております。
○田村(憲)委員 今、第五条、これは共謀罪、参加罪、こういうような話になってくるんだと思うんですけれども、この第五条の中の規定といいますか、第五条を、第三十四条の2という部分で、別段の定めという一つの規定でその中をある程度規定してきておるという話でありますが、国際性、これは越境性なんでしょうけれども、それから組織性、こういう話が出てまいりました。この要件、要するに、国際的な組織犯罪を防止することを目的とするところの国際性や組織性を要件とすることができるか否か、これについて、条約交渉の過程でどのような議論があったのか。
 本来、これは、国際組織というか国際犯罪、それから組織性、組織犯罪、これを防止するための話ですよね。これを防止するための条約ですよね、これは。その中において、これを要件の中から外しているということが実はこの三十四条の2に書いてある、しかし組織性に関してはまたそこでもう一枠入っておる、こういう話なんだろうと思うんです。
 実はどういう議論が条約をつくる過程で議論としてあったのか、ここを、刑事局長、お聞かせください。
○大林政府参考人 国際組織犯罪防止条約の交渉の過程におきましては、条約が犯罪化を義務づける規定に基づいて各国が国内法を整備するに際し、この条約の対象となる犯罪に国際性と組織的な犯罪集団の関与を要求する条約の原則、委員おっしゃられる三条とは異なる取り扱いをすべきか否かについて議論がなされております。
 そして、この議論の結果、各国が国内法において犯罪を定める場合、仮に国際性や組織性の要件を厳格に要求すると、対象となる犯罪を不当に狭め、国際的な組織犯罪を防止するというこの条約の目的を損なうおそれがあるとの意見に理解が得られ、国内法において犯罪を定める際には国際性や組織性という要件を付することを許さないということで合意されました。
 その結果、各国において国内法で犯罪を定める際に国際性等の要件を付することを禁止することを内容とする条約三十四条2の規定が設けられたところでございます。
○田村(憲)委員 改めて聞きますけれども、なかなかわかりづらいんですね。条約が国内法の要件として、要するに国際性や組織性という要件を付することを禁止している、こういう話が決まってきたという話が今あったと思うんですが、この実質的な意義というもの、一体なぜこういうようなものを排除したのか、これはどういう意義があってこういうような話し合いになったんですかね。
○大林政府参考人 現実の社会では、ある犯罪についてその背後に国際的な犯罪組織が存在するなど国際的な犯罪組織が関与しているものの、個別具体的な犯罪行為だけを見ると、単独犯であったり、犯罪行為自体は一国内にとどまるため、性質上の国際性を認めがたいような場合もあります。また、特に捜査の初期の段階においては、捜査の対象となっている犯罪行為が国際的な性質を有するか、あるいは組織的な犯罪集団が関与しているかが明らかではなく、さらに捜査を進めてもその立証が容易でない場合が少なくありません。
 そもそも、国際組織犯罪防止条約が犯罪化を義務づけている、共謀、犯罪収益の洗浄、贈収賄及び司法妨害の罪は組織犯罪対策上有効性があることから、これらを犯罪とする罰則を各国が標準装備すべきものであると考えられたため、これらを犯罪とすることが義務づけられたものですが、さきに述べたような現実を踏まえると、仮に犯罪化に当たって国際性や組織性を要件とすると、対象となる犯罪事象が組織犯罪の実態に照らして不当に狭くなる上、早期かつ的確な検挙、処理が困難となり、ひいては一層効果的に国際的な組織犯罪を防止するという条約の趣旨、目的を没却してしまうことにもなりかねません。また、捜査共助等の面でも双罰性の観点から支障を生じることにもなります。
 そこで、国際的な組織犯罪に対する効果的な対処を確保するため、条約三十四条二項は、条約が犯罪とすることを義務づける罪について国内法でこれを犯罪とするに当たっては、国際性や組織性の要件を付することを禁止したものと考えられます。
○田村(憲)委員 全体として、組織的な国際犯罪をいろいろと捜査していくに当たって、やはり制約を余りかけると実質的にいろいろな事象に対応できないというような趣旨からこのような条約になったというふうに理解をさせていただきました。
 今のお話の中で、第五条、先ほど話しましたが、「組織的な犯罪集団への参加の犯罪化」、こういう部分がありますが、ここで、先ほど言いましたとおり、共謀罪と参加罪、こういうものが一応定義されておりまして、これの両方もしくは片方を義務づけておるということでありますけれども、この理由はなぜでありましょうか。
○大林政府参考人 国際的な組織犯罪の実態を見ますと、犯罪の実行そのものに直接の関与をしないで、その計画や準備段階に関与する者が多く存在します。また、そのような犯罪は、通常、計画性が高度であり、かつ、組織の指揮命令に基づいて行われることから、そのような犯罪が計画に従って実際に敢行される可能性が高い上、一たびそのような犯罪が実行されると重大な結果や莫大な不正な利益を生ずることが多くございます。
 そこで、国際組織犯罪防止条約は、このような国際的な組織犯罪の実態にかんがみ、これに効果的に対処するためには、犯罪行為の未遂または既遂とは別個の犯罪として、犯罪行為の実行に着手する前の段階の一定の行為を処罰の対象とすることが不可欠であるとの認識に立ち、共謀罪または参加罪の一方または双方を各国の国内法において犯罪とすることを義務づけているものと考えられています。
○田村(憲)委員 共謀罪といいますと、余り日本ではなじみがないわけでありまして、まあ騒乱罪とか一部あるんですかね、ここは今各団体が大変心配をされておられるところの一つでありますが、条約を結ぶためには当然国内法を整備していなければならないということになっておりますが、この共謀罪かもしくは参加罪、これを要するに選択しなきゃいけない、もしくは両方ともそろえなきゃいけないという話でありますけれども、世界各国は今どういう状況でありますか。
○大林政府参考人 アメリカ合衆国とイギリスは、いわゆる共謀、コンスピラシーを犯罪としておりまして、特に対象犯罪を限定することなく、一般に犯罪を犯すことを合意することを処罰していると承知しております。
 また、ドイツは、犯罪団体の結成の罪として、犯罪行為の遂行に向けられた団体を設立する行為やこのような団体に構成員として関与するなどの行為を犯罪としていると承知しております。
 また、フランスは、重罪または五年以上の軽罪の準備のために結成された集団またはなされた謀議を凶徒の結社とし、凶徒の結社に参加する行為を犯罪としていると承知しております。
 さらに、カナダは、共謀罪により、一般に犯罪を犯すことの共謀を犯罪としており、かつ、犯罪組織への参加または貢献する行為も犯罪としていると承知しております。
○田村(憲)委員 やはり世界で重立った国がどちらかは選択をしておるという話でありますから、これは日本だけ共謀罪はだめだという話にはなかなかなっていかないんだろう。これから国際的な組織犯罪というものをどのように防いでいくか、またどのように取り締まっていくか、こういう話の中で、日本だけ、なかなかここら辺が、この共謀罪というものがセンシティブな話であるから避ける、こういうわけにはいかない、こんな現状があるということは理解をいたしました。
 ただ、日本は、この場合、参加罪じゃなくて共謀罪の方、組織的な犯罪の共謀というものを選択しようとしておるわけでありますが、範囲からいくと、実は私は参加罪の方がかなり幅広く処罰できるのかなというふうな気がするんですけれども、日本が共謀罪の方を選んだ理由というものはどこにあるんですか。
○大林政府参考人 参加罪は組織的な犯罪集団の活動やその他の活動に参加する行為を犯罪とすることを義務づけていますが、組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動の認識または特定の犯罪を行う意図の認識は要件とされているものの、参加する行為と特定の犯罪行為との結びつきは要件とされておらず、このような特定の犯罪行為と結びつかない行為を犯罪とすることは、これまでの我が国の法制にはないものであるので、このような参加罪を犯罪とすることについては慎重な検討が必要であると考えられます。
 他方、共謀罪は特定の犯罪の実行を合意することの犯罪化を義務づけていますが、我が国では、例えば内乱陰謀や爆発物使用の共謀など、既に一定の犯罪について実行の着手前の共謀あるいは陰謀が未遂罪や既遂罪とは別の独立の犯罪とされているなど、現行の我が国の法制との親和性も認められること等を考慮し、重大な犯罪の共謀の犯罪化を選択することといたしたものでございます。
○田村(憲)委員 確かに参加罪の方は、その他の活動なんて、ほとんどこの団体の行う活動は犯罪になってしまう、範囲に入ってしまうということでありますから、そういう意味では日本の国の刑法等々にそぐわない、なじまないという部分があったんであろうというふうに理解をさせていただきます。
 もう一点、重要なところは、この条約の五条の1の(a)の(i)、ここで、重大犯罪を行うことというふうになっております。重大犯罪というのはそれぞれの国においていろいろと規定があるわけでありますけれども、要するに国際的な組織犯罪というものはある程度類型分けができるんであろうと思いまして、それぞれの犯罪の種目といいますか、犯罪において、列記をすればそれである程度事足りるのではないのかなという考え方もあるんだと思うんです。
 重大犯罪という一般化することによりまして、要らぬ心配が起こってくる。もしかしたら、こういうことをした場合、我々もこの条約と同じ話になってしまうのではないか、こういう話になってくるわけでありまして、一般的に重大犯罪というふうにした理由、なぜ具体的な犯罪例を列記しなかったのか、これはどういう理由からですか。
○大林政府参考人 国際組織犯罪防止条約の対象となる犯罪の範囲につきましては、条約の交渉過程において議論がなされ、御指摘のように、対象犯罪をいわゆるリスト化するべきであるという立場の国もございました。
 しかしながら、組織的な犯罪集団は、みずからの組織の維持拡大のため、種々の利益を求め、手段、方法を選ぶことなくあらゆる犯罪活動を行うという特性を有するものであることから、各国においても、組織的な犯罪集団が将来実行し得る犯罪のすべてを網羅したリストを作成することは現実的に困難であるとの意見が大勢を占めました。
 そこで、この条約の対象犯罪については、各国においてそれが重大な犯罪と考えられているものを対象とすることが適当であり、具体的には、各国の法律において定められている刑期の重さを基準として、一定の重さ以上の刑期が定められている罪を包括的に対象とするべきであるという立場が支持を集め、結局、重大な犯罪として、長期四年以上の自由を剥奪する刑またはこれより重い刑を科することができる犯罪を対象とすることとされたという経緯であったと承知しております。
○田村(憲)委員 この条約、いよいよこの法律が通った後には批准に向けて我が国も動いていくんだろうと思うんですけれども、この条約を締結すると、我が国にとって、国際犯罪防止のみならず、いろいろな部分でどういうような利点、メリット、これから国内対策も含めて進めるために、メリットがあるというふうに大臣はお考えですか。
○南野国務大臣 国境を越えて組織的に敢行される国際的な組織犯罪の脅威が深刻化しておることは、先ほどのサミットなどでの声明でも繰り返し指摘されております。
 一方、我が国におきましても、集団密航事犯、覚せい剤等の密輸事犯、クレジットカード偽造事犯、ピッキング用具を使用した窃盗事犯など、国際的な犯罪組織によって敢行される各種の犯罪が多発しております。
 国際組織犯罪防止条約は、一層効果的に国際的な組織犯罪を防止し及びこれと戦うための協力を促進することを目的といたしております。そして、このような目的を達成するために、組織犯罪に対する対策として有効性がある罰則については世界各国が標準装備するべきであるとの考え方から、重大な犯罪の共謀等の一定の行為を犯罪とすることを義務づけております。
 また、この条約の対象となる犯罪に関する犯罪収益の没収共助に関する規定、犯人の引き渡しに関する規定、また捜査及び司法手続における相互援助に関する規定など、広範な分野にわたる協力に関する規定も設けており、締約国間における組織犯罪対策のあらゆる協力の促進を図るとしております。
 このような国際的な組織犯罪の脅威という現実や、このような犯罪を防止しそれと戦うということを目的として、そのためのさまざまな方法等を定めているこの条約の内容にかんがみますと、我が国としても、この条約を締結することにより、司法さらに法執行の分野における一層強化された国際協力のもとで、国際的な組織犯罪から国民を守ることができるものと考えております。
○田村(憲)委員 時間がないものですから、全部質問ができないものですから途中になって恐縮でございますが、あと一問か二問だと思います。
 共謀罪の要件の一つということで、「団体の活動として、」というのがあるわけでありますが、これは組織的犯罪処罰法第三条一項、これと大体同じ要件、これは六条の二に書いてあるんですけれども。
 この部分で、問題は、この団体自体に何が当たるかというのではなくて、団体の活動として犯罪行為を行うという要件を満たす場合は、この要件を満たす団体というのはどういう団体なのか。非常にまどろっこしい聞き方なんですけれども、この団体というのは、なかなかこれはわかりづらいんですね。要するに、団体の活動として犯罪行為を行う、その場合、この要件を満たす団体というのはどういう団体なのか。具体的になかなかお話ししづらいんだと思うんですが、刑事局長、わかりやすくちょっと教えてください。
○大林政府参考人 御指摘のように、団体の定義を定めた規定に該当するということだけで直ちに共謀罪の対象になったり、処罰されたりということはございません。
 団体ということでございますが、団体の活動とは、団体の意思決定に基づく行為であって、その効果またはこれによる利益が当該団体に帰属するものをいい、また、犯罪行為を実行するための組織とは、犯罪実行部隊のように、組織の構成員の結合の目的が犯罪行為を実行することにあるものをいいます。
 御指摘のとおり、なかなかわかりにくいような規定になっておりますけれども、共謀罪が適用されるのは、犯罪行為を行うことを共同の目的を有する団体として意思決定する、すなわち、犯罪行為を行うことが共同の目的に沿うような団体であり、かつ、団体内部に犯罪実行部隊を持つような団体である場合に限られる、このように考えております。
○田村(憲)委員 言うなれば、例えば建設会社、建設会社とは限りませんが、要するに、公共事業を入札する会社がその内部で、みずからの会社の中に、そういう違法な行為といいますか、それで情報を聞き出す、最低入札価格を聞き出すような、そういう組織をつくった場合は、それは団体に当たらないけれども、それを専門で請け負う独立した、どこか、犯罪集団といいますかブローカーみたいなところがそれをやった場合には、それはこの団体に当たるんだろう、こういうことですよね。
 ということは、例えば、よく我々にも質問が来るんですが、労働組合なんかにはこれは当たらないというふうに最後確認して、質問を終わりたいと思います。
○大林政府参考人 今御指摘のとおり、犯罪を目的とする、そういう団体については本条の適用がございますけれども、その団体自体の目的がそういうものを目的としているものではない、こういう場合は共謀罪の適用はない、こういうことだろうと思います。
○塩崎委員長 次に、左藤章君。
○左藤委員 どうもおはようございます。自由民主党の左藤章でございます。
 サイバー犯罪に関する条約、いよいよ運びになって、特に、ハイテク犯罪というのは非常に多くなった中で、この審議ができるということは本当にありがたいな、このように思います。
 昔、アサヒビールの樋口さんとお話ししたときに、実は七、八年前の話なんですが、今あなたは何がしたいですかと言ったら、いろいろあって、絶対やってほしいのがサイバーテロの話だ、こう言われたんですね。
 実は、今週中にもいよいよスペースシャトルがまたあれしますけれども、これは全部、システム、コンピューター、無線で飛ばして、きちっとIC関係が全部動くか動かないかによってすべてが変わってしまう。乗っている彼らの命もそれに全部かかわっているわけですね。そこにいたずらをして、サイバーテロでぴっぴっと動かして別な信号を送ったら、その軌道から全部外れてしまうという非常に恐ろしいのが今の時代であります。
 この前から、キャッシュカードの問題とか、クレジットカードのフィッシングの問題とか、いろいろコンピューターを使った犯罪がありますけれども、全部これは、テロ、ウイルス、そういうものによって非常に変わってしまう。今の世の中はシステム一つ間違うと大変なことになってしまうという状況であることは間違いないと思います。
 この前の郵政の四分社化の中でも、システムをしっかり分割してやれるのかというのを一番大きく私は問題にしましたけれども、このさなかで、サイバーの犯罪に関して、いろいろある中で、今回の法改正、これについて、大臣はどのような必要性と、どのようなお考えのもとでこの法律を提出なさったか、ひとつ御質問させていただきたいと思います。
○南野国務大臣 お答えいたします。
 近年、コンピューターが広く社会に普及するとともに、世界的な規模のコンピューターネットワークが形成されるなど、コンピューターは重要な社会的基盤の一つとなっております。
 しかし他方で、このような情報処理の高度化に伴いまして、コンピューターウイルスによる攻撃やインターネットを利用した犯罪が増加しております。先生おっしゃるとおりでございまして、こうした犯罪は容易に国境を越えて犯されることなどから、国際的な対策が重要であります。
 そこで、G7諸国はもとより、ヨーロッパ諸国の大多数が署名いたしており、事実上のグローバルスタンダードとなっている欧州評議会のサイバー犯罪に関する条約を我が国も締結する必要があるということでございます。
 このような最近のハイテク状況の現状に的確に対処するとともに、サイバー犯罪に関する条約、これを締結するため、今回のハイテク関係の法整備を行うこととしたものであります。
○左藤委員 今おっしゃった欧州評議会、サイバー犯罪に関する条約、二〇〇一年に締結されて、現在、署名国が四十二カ国、批准国が十カ国ということになっておるようでございます。必ず日本もこれを実行していきたいと思います。
 御存じように、我々はふだんの生活でパソコンを使いますね。インターネットに実はもう八千万人ぐらい接続している。そして、超高速、ADSLとか光ファイバーとか、またケーブルを使った、そういうものを使ってどんどん今やっているわけなんですが、そこの中で、いろいろな、先ほどお話がありましたけれども、我々国内だけでやっているんじゃなくて、外国とのネットの取引というのがあり得るわけであります。
 そうすると、今お話があった、国境を越えて犯罪が出てくる、こういう問題もありますし、前、実は、政府の広報が、わかりませんが、中国だと思うんですが、はっきりわからないので申しわけない、全部サイバーテロに遭って、ウイルスにやられて、何か動かなくなったという事件があったわけですね。こういうことになりますと、実際どのように捜査をして、どのような対処をするのかというのが非常に具体的な問題として出てくるわけですね。
 これについて当局のお考えを賜りたいと思います。
○大林政府参考人 国境を越えて犯される犯罪におきましては、証拠や犯人等が外国に所在する場合も少なくありませんが、我が国の捜査機関が外国において直接捜査を行うことはできません。
 そこで、このような場合には、一般に、外交ルートを通じて当該外国に対して捜査共助として証拠の収集への協力や犯罪人の引き渡しを求め、当該外国が収集した証拠の提供を受け、あるいは身柄を確保した犯罪人の引き渡しを受けることになります。
 御指摘のとおり、ハイテク犯罪は国境を越えて犯されることが多く、外国に所在する証拠の収集等が非常に重要でございます。したがって、捜査機関においては、必要に応じ、ただいま御説明したような捜査共助等を活用して事案の真相を解明し、このようなハイテク犯罪に対応していくことが必要であると考えております。
○左藤委員 ありがとうございます。
 全くそのとおりだと思うんですが、先ほど申し上げた、批准国が十カ国でありますので、まだまだそういう問題が出てくるだろう。特に、今回の問題ではありませんけれども、言い方は悪いんですが、中国とか東南アジアの諸国、どうしても、いろいろコンピューターウイルスを送ってくる人たち、その辺が大変多いようでございますので、それぞれの国とも、この問題は批准はしていませんけれども、連携をしっかりやっていただいて、お互いの国、我が国だけじゃなくて相手方の国も同じことになると大変なことですので、その辺はぜひひとつお互いに協力をし合っていただければありがたいな、このように思います。
 ちょっと具体的に質問をさせていただきたいんですが、今度、不正指令電磁的記録作成等の罪を新設するんですね。この必要性をひとつ御説明を賜りたいと思います。
○大林政府参考人 コンピューターウイルスは、近時、コンピューターネットワークの発達により短時間のうちに極めて広範囲に広がり、広く社会に被害を与え、深刻な問題となっております。これを放置すれば、人は電子計算機による情報処理のためにプログラムを実行するに際して、そのプログラムを信頼して情報処理を行うことができなくなり、ひいては社会的基盤ともいうべき電子計算機による情報処理は円滑に機能しなくなります。
 しかしながら、現行法ではコンピューターウイルスを用いて現実に一定の結果を生じさせなければ処罰が、従来の、現行法において、例えば電子計算機損壊等業務妨害罪などがありますが、こういう結果を生じさせれば処罰が可能な場合もございますが、そうした現実の被害が生じていない場合には必ずしも処罰することができません。
 そこで、このようなコンピューターウイルスの作成等をする行為自体を処罰することが必要であると考えられることから、今回の法案によりコンピューターウイルスの作成、供用等の罪を新設することとしたものでございます。
○左藤委員 わかりました。それは、今まで実際犯罪を犯した人以外の話も含まれるという解釈でいいですね。
 そうすると、実は、研究者とかウイルスの駆除のソフトをつくる、入ってきたやつを逆につぶす、こういうのをつくる人もいるんですね。そういう目的で、実験目的でウイルスのプログラムをつくったり保存していた場合、来たら壊す、つくっておく、こういうことですね。こういうとき、今おっしゃった不正指令電磁的記録作成等の罪が成立しないのが当然なんですが、この辺は、変な話ですが、ちょっと確認をさせていただきたいと思います。
○大林政府参考人 今回新設いたします不正指令電磁的記録作成等の罪は、人の電子計算機における実行の用に供する目的で行われることが必要とされております。
 そこで、この「人」という解釈でございますが、刑法の他の規定と同じく、犯人以外の者ということでございます。また、「電子計算機における実行の用に供する目的」とは、人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、またはその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える状態にする目的を意味しております。
 したがって、不正指令電磁的記録作成等の罪が成立するためには、不正指令電磁的記録、すなわち、コンピューターウイルスが、犯人以外の者が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせないか、またはその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える状態にする目的を犯人が有していることが必要でございます。
 御指摘のような研究や実験目的の場合には、コンピューターウイルスを自分自身の電子計算機上で作動させるか、これを作動させることにつき承諾を得た第三者の電子計算機上で作動させる限り、行為者においてこのような、今申し上げたような目的がないということになりますので、処罰されないということになります。
○左藤委員 ちょっと済みません、先ほどの未遂の件なんですが、未遂もやるということで、量刑等はかなりきつくなっていると思うんですが、その辺をちょっと教えていただきたい。未遂の件。
○大林政府参考人 未遂とおっしゃいますと、今作成罪については、これは未遂罪は設けておらないで、いわゆる供用罪的なもの……(左藤委員「未遂も罰するというか、なっているんですよ」と呼ぶ)
 今御指摘の、百六十八条の二に不正指令電磁的記録作成等という罪がございますが、今私の申し上げた作成または提供罪は、未遂処罰規定がございません。それは、作成すればもうそこで既遂となるということで、非常に間隔が短い。ところが、二項にありますが、それを実行の用に供するという形にした場合には、これは未遂段階があるものですから、ここでは未遂が処罰される、こういうことでございます。
○左藤委員 そうですね。はい、わかりました。ありがとうございます。
 次に、いろいろ聞きたいんですが、実は、わいせつ物頒布等の罪を改正する、こういう項目がございました。この必要性ですね。
 それと、ちょっと先ほどお願いしておいたんですが、刑法の百七十五条の一項の第二文に「頒布」という言葉があります。要するに、わいせつ物を頒布するんだと。これもいろいろ、言葉の問題でございますけれども、この言葉を、立法化するのであれば、頒布にかえて公衆送信という用語を使ったらどうだろう、これは弁護士会の意見なんですが、これについてどうお考えなのか。
 そしてもう一つは、実はわいせつ物をばあっとネットであちこちに出すということになると、普通の頒布と違ってどこへ行くかわからないんですね。だれが見るかわからない。この前も、パソコンを二人盗まれて、ちょっと変なものを自分のへ入れていたものがネットで流れて、あれ、うちの社員と違うかとか、何かいろいろ、ちょっと新聞に出ていた事件がありました。
 今までですと、公然わいせつ罪というのは大体六カ月以下の懲役、三十万円以下の罰金、科料とか、どっちかというと軽いんですが、今回の、サイバーを使っての、パソコンを使ってネットを通じてあちこち行くというふうになったら大きな問題ですから当然被害も大きいし、名誉の問題も、いろいろな人権問題もあるわけなんですが、当然、そうすると、二年以下の懲役または二百五十万円以下の罰金、科料という重い刑になっているんですね。
 私は、正直言って当然じゃないかな、このように思うんですが、中にはちょっと行き過ぎじゃないかと言う方もおられます。
 ですから、済みませんが、改正する必要性と、この二点について、公衆送信とそれから今の科料の問題についての考え方をお願い申し上げたいと思います。
    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕
○大林政府参考人 三点について御質問がありました。
 まず、わいせつ物頒布等の罪を今回改正する理由について申し上げますと、最近、電子メールによりわいせつな画像の電磁的記録を送信するような行為が見られますけれども、こうした行為は、わいせつ物の頒布行為と実質的には同様の行為であるにもかかわらず、ビデオテープのような有体物のやりとりを伴わないため、現行法による的確な対応に疑義が生ずるに至っております。
 そこで、今回の改正では、こうした有体物のやりとりを伴わないインターネット上でのわいせつな画像の電磁的記録の頒布等についても処罰できることを明確に規定するなどの改正を行うものとしたものでございます。
 次に、このようなもので、その頒布にかわり公衆送信の用語を用いるべきではないか、こういう御意見がございます。
 わいせつな電磁的記録送信頒布罪における頒布は、有体物の頒布に準じて解釈することができ、その意義は明確であると考えております。その罪の成立には、不特定多数の者の記録媒体にわいせつな電磁的記録を存在するに至らしめることが必要でございます。
 これに対し、公衆送信は、具体的な定義規定を置かなければその意味が不明確である上、仮に、「公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うこと」、これは著作権法二条一項七号の二に規定されているわけでございますが、わいせつな電磁的記録を公衆送信したというような構成要件にいたしますと、相手方における記録の存在はもちろん、相手方の受信を要せず、送信の段階で犯罪の成立を認めることになりますので、そのような規定ぶりは適当ではないというふうに考えておりますし、また、公衆送信という規定ぶりでは、公衆とは言えない多数人に送信するような行為が含まれるというような問題もございますので、いかがかというふうに考えております。
 次に、公然わいせつ罪との刑の不均衡の問題でございます。
 わいせつ物頒布罪の罪が公然わいせつ罪より重く処罰される理由は、公然わいせつの場合は、わいせつな内容はその場限りで認識されるにとどまるのに対し、わいせつな内容が有体物に化体している場合、これは、繰り返し公然陳列され、または頒布先からさらに頒布されることによって法益侵害がより広い範囲に広がる可能性がある、こういうようなことで刑の差がある、このように考えております。
○左藤委員 おっしゃるとおりだと思います。
 ネットでずっとあちこち飛ばされるわけでありますし、CD―Rに残すこともできるわけですから、これは大変な問題だろうと思いますので、やはりその程度の科料は必要だろう、このように思います。
 次の質問をさせていただきたいんですが、実は、電磁的記録に係る記録媒体の差し押さえにかえて電磁的記録の複写等の処分をすることができるものとする、こうなっているんですね。この必要性についてお伺いしたい。
 というのは、反対意見もあるんですよね。そんな、行き過ぎじゃないかという話もあるので、その辺について、ひとつお願いを申し上げたい。
○大林政府参考人 現行法上、電磁的記録に係る証拠を収集する場合には、電磁的記録が記録されているコンピューターやCD―ROM等の記録媒体自体を差し押さえることになります。
 しかし、コンピューター等を差し押さえることによって、これを利用している者の業務等に著しい支障を生じさせるおそれがある一方、捜査機関にとっても、コンピューター自体を差し押さえなくても、必要な電磁的記録を取得すれば捜査の目的を達成できる場合がございます。
 そこで、捜査機関が、電磁的記録に係る捜査の証拠の収集に際してより適切な対応をとることができるようにするため、差し押さえるべきものが電磁的記録に係る記録媒体、例えばコンピューターであるときは、その差し押さえにかえて、コンピューターに記録された電磁的記録を他の記録媒体、例えばCD―ROM等に複写した上でそのCD―ROM等を差し押さえることができるようにすることとしたものでございます。
○左藤委員 そういうことですね。当然、差し押さえができる。そうすると、その中で、記録命令つき差し押さえの制度を設けるという話に当然なってきますが、これについて、もうちょっと詳しく必要性をお願い申し上げたいと思います。
○大林政府参考人 今御指摘の記録命令つき差し押さえの制度とは、電磁的記録の保管者等に、必要な電磁的記録を別の記録媒体、例えばCD―ROM等に記録させた上で、そのCD―ROM等を差し押さえる制度のことでございます。
 現行法では、電磁的記録に係る証拠を収集する場合には、例えば必要な電磁的記録がコンピューターに記録されている場合であれば、そのコンピューター自体を差し押さえることになりますが、最近はコンピューターシステムが複雑になり、必要な電磁的記録が複数のコンピューターに分散して記録されていたり、どのコンピューターに記録されているのか特定することが困難な場合や、コンピューターの操作に専門的な知識や技術が必要な場合があり、これまでのような方法では捜査の目的を十分に達成できないおそれがございます。
 また、通信事業者等の電磁的記録を保管している者については、裁判所の令状があれば、必要な電磁的記録をCD―ROM等の記録媒体に記録した上、当該記録媒体を提出することに協力する場合も多いところ、そのような場合であって、電磁的記録が記録されている記録媒体自体を差し押さえなくても、必要な電磁的記録を取得すれば証拠収集の目的を達成することができるときには、そのような方法をとることが合理的であると考えられます。
 そこで、今回の改正により、記録命令つき差し押さえの制度を創設することといたしたものでございます。
○左藤委員 今おっしゃった中で、記録媒体からとれるということは、先ほど、あちこちの、ホストコンピューター以外に別なところのパソコンからも行っているかもわからないということになりますから、当然、記録媒体から複写ができるということに相なるわけですね。これは確認です。
○大林政府参考人 今お尋ねの点でございますけれども、今日、コンピューターはネットワークに接続した形態での利用が一般的となっており、ネットワークを利用することにより、そのコンピューターで処理すべき電磁的記録を、物理的に離れたさまざまな場所にある記録媒体に保管する場合も多くなっております。
 そのような場合として、例えば、メールサーバーに電子メールを保管している場合や、インターネット上のリモートストレージサービス、すなわちインターネットを利用して遠隔地にあるコンピューターにふだん自分のコンピューターで処理している電磁的記録を保管することができるサービスを利用している場合、あるいは、LANで接続された他のコンピューターに電磁的記録を保管している場合等が挙げられます。
 このような状況にかんがみますと、証拠として必要なそのコンピューターで処理すべき電磁的記録が物理的に離れたさまざまな場所にある記録媒体に保管されているような場合には、コンピューター自体を差し押さえるだけでは直ちに必要な証拠を入手することができず、捜査の目的を十分に達成できないおそれがございます。
 そこで、今回の法案により、電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であって、当該電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものについては、そのような電磁的記録を差し押さえるべき電子計算機等に複写した上でこれを差し押さえることができるとしたものでございます。
○左藤委員 今のお答えの中でもう一回ちょっと確認をさせていただきたいんですが、要するに、電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体から複写を認めるわけですね。そうすると、差し押さえられたコンピューターがインターネットを介して、さっき言ったリモートの話なんですが、介して他のコンピューターと接続している場合、そうしたコンピューターから無制限に複写ができるようになるという、要するに、向こうに行ったものを、ならそこを押さえに行こう、そうすると、そこに載っているそれ以外のデータも含めて複写ができるんじゃないか、これはちょっと行き過ぎじゃないかという批判があるんですね。
 今おっしゃったように、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であって、当該電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものに限定はしている、こうおっしゃっているんですが、これはまた、これによって、裁判所によって令状も行われるとすれば、憲法違反はしないかという話もあるんですね、これは考え方なんですけれども。私らはそうでもないと思うんですが、その辺について、無制限にやられてしまうのじゃないかというのと、今言った、こういうことにしても裁判所の令状が必要じゃないか、こういうことについてのお考えはいかがでございますか。
○大林政府参考人 今回の法案で新設されますリモートアクセス、すなわち電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体からの複写の処分が認められるためには、まず、電子計算機自体について、裁判官が差し押さえを許可する差し押さえ許可状を発付していることが必要でございます。
 その上で、リモートアクセスが認められる範囲については、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であって、当該電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものに限定し、かつ、その範囲について、電子計算機の差し押さえを許可する差し押さえ許可状に明示されなければならないこととなっており、捜査機関はこの範囲内に限って複写を行うこととなります。
 したがいまして、電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体からの複写の処分が憲法に違反するということはないと考えております。
○左藤委員 今おっしゃったとおりだと思うんですが、その中で、ちょっと要綱の第二の五で、通信履歴の保全要請の云々というのがあるんですね。特に、通信の秘密やプライバシーを侵害するようなものというのは当然あってはならないわけですが、この必要性と、保存期間、三十日がいいという人もいれば、今回は実は九十日以内、こういう話になっているんですが、これについてちょっとお考えを賜りたいと思います。
    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕
○大林政府参考人 通信履歴と申しますのは、要するに通信内容とは違うものでございまして、通信の日時、送信元、送信先といった事柄に関する情報でございます。ハイテク犯罪の捜査を行うに当たっては、このいつ、どこから、どこに通信が行われたかという通信履歴を解明することが重要でございます。
 このような通信履歴につきましては、プロバイダー等の通信事業者は、みずからの業務を遂行する上で必要であることから、電磁的記録の形で保管していることが少なくありませんが、業務上必要がなくなれば保管し続ける必要がないため、一般に短期間で消去されていくことが多く、捜査機関が令状を得てその差し押さえを行う前に既に失われてしまっていることも多くなっています。
 そこで、今回の法案により、捜査機関が、通信履歴の保管者である通信事業者等に対し、令状による差し押さえの前の段階で、とりあえずこれを消去しないように要請することができるとしたものでございます。
 この期間につきましては、「九十日を超えない期間を定めて、」という形になっております。この日数が事業者に対して負担を負わせるものではないかという御議論があることは私どもも承知しております。ただ、これは事業者に対して捜査への協力を求めるということが基本でございまして、当然その中では、業者との間で、どういう形でそういうことをしますかという打ち合わせをしなければなりません。あるいは、今のような犯罪捜査を必要とする事態が、結構、実際に被害があってから大分たってから被害者が届けるというような問題もありまして、捜査上いろいろな状況も勘案して、九十日を超えないような形で、そこは実質はお話し合いになると思うんですけれども、その保全をしていただくという要請ができるようにした、こういうものでございます。
○左藤委員 わかりました。
 次に、サイバー犯罪に関する条約で、通信記録のリアルタイム収集と通信内容の傍受に関する規定が置かれております。これについて我が国はどのような対応をするつもりなのか、この辺をお聞きしたいと思います。
○大林政府参考人 サイバー犯罪に関する条約は、第二十条で通信記録のリアルタイム収集の規定を、第二十一条で通信内容の傍受に関する規定を置いておりますが、これについて、我が国では現行法で対応することができるというふうに考えております。
 すなわち、通信記録のリアルタイム収集につきましては刑事訴訟法の規定に基づく検証を行い、また、通信内容の傍受については犯罪捜査のための通信傍受に関する法律に基づく通信傍受を行うことによりそれぞれ対応できるもの、こういうふうに考えております。したがって、新たな捜査手法に係る改正は今回は考えておりません。
 もちろん、これらの検証や通信傍受を行うためには、あらかじめ裁判官から令状の発付を得るなどの法律上定められた要件を満たすことが必要であり、その要件が満たされない場合にはこれらを行うことはできません。
○左藤委員 済みません、時間がありませんので最後にさせていただきたいと思います。
 今回の改正で、捜査機関の捜査手段について必要な拡大を行うものであるという考え方があるんですね。大変だと思うんですね。これに対して、濫用のおそれが大きいと指摘をなさる方もおります。これについて、最後にですが、どのようにお考えか、どのように対応するのか、お願いを申し上げたいと思います。
○大林政府参考人 今回の法案におきましては、社会におけるコンピューターやネットワークの利用の実情と、有体物と異なる電磁的記録の特性を踏まえ、その証拠の収集について被処分者の負担を軽減するとともに、捜査機関が適切に必要な証拠を収集することを可能とするものです。
 このような捜査の手続において、捜査機関がこれを濫用し、関係者の利益が不当に害されてはならないことは言うまでもございません。今回の法案においては、そのようなおそれのないよう法律上厳格な要件等を定めている上、捜査機関においても、その運用に当たって関係者の利益の保護に十分留意することとなる、このように考えております。
○左藤委員 ありがとうございました。以上で終わります。
○塩崎委員長 次に、早川忠孝君。
○早川委員 自由民主党の早川忠孝でございます。
 御案内のとおり、先週七月の七日、イギリス・ロンドンにおいて地下鉄やバスをねらった同時多発テロが発生をいたしました。四年前、小泉内閣が誕生した二〇〇一年の九月十一日にあの九・一一同時多発テロが発生して以来、二〇〇二年のインドネシア・バリ島事件、二〇〇三年のモロッコ・カサブランカ事件、あるいは二〇〇四年のスペインのマドリード列車爆破事件等、悲惨なテロ事件が続いているところであります。二十世紀が戦争の世紀と言われましたけれども、このままでは二十一世紀がテロの世紀ということになりかねないわけであります。私たちはこうした事態を何としても避けなければならないというふうに考えております。
 私は、世界じゅうの国々が相携えて、憎むべきテロの撲滅に向けて一致協力をしていかなければならないときであると考えております。また、私たち日本の国会議員も、日本国民の安全を守り、安心のできる社会をつくる、そのために、国民の信頼にこたえる責務を十分自覚してこれからの審議に臨むべきであるというふうに考えております。
 さて、先週の火曜日、七月五日の衆議院の本会議において、小泉構造改革の本丸として位置づけられておりました郵政民営化法案の採決が行われました。賛成が二百三十三票、反対が二百二十八票というわずか五票という僅差であった。私が所属しております自民党の中からも三十七名の反対票が投じられ、いかにも与党の中に大きな亀裂が入ったかのように報道されているところであります。
 しかしながら、その一方で、自民党の衆議院議員の百九十九人が郵政民営化法案に対して賛成票を投じていること、さらに、反対票を投じられた方々も、郵政の改革の方向性自体はこれを否定されておられない。決してこれを妨害しようとしておられるわけではない、よりよい改革を求めておられるんだというふうに考えております。こういった状況の中で、私どもは、政治の大道を決して見誤ることなく、国政の重要課題に真剣に取り組んでいかなければならないと考えるところであります。
 この国会において審議入りをいたしました犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案、私は、我が国の刑事法制に重大な変更をもたらすものであって、その運用いかんによっては国民の生活に甚大な被害をもたらしかねない内容もあわせ持っているのではないか、特に慎重な審議が必要であるということをまず御理解いただきたいと思っております。
 このたびの法律案については、大きく分けて三つの部分から成り立っていると理解しております。第一が、国際組織犯罪防止条約の締結に伴う国内法の整備であり、第二が、強制執行を妨害する行為等に対する罰則の整備であり、第三が、先ほど左藤章委員から質問がありましたサイバー犯罪条約の締結に伴うハイテク犯罪に対処するための法整備である、このように理解しております。
 強制執行を妨害する行為に対する罰則の整備、あるいはハイテク犯罪に対処するための法整備、これの内容については賛同を全面的にするものでありますけれども、国際的組織犯罪防止条約の締結に伴う国内法整備の部分に関しては、組織的犯罪処罰法の改正を内容とするというこの法案の中身について、法律の実務家として三十年間さまざまな事案の対処に当たってきた立場から、いささか問題点がやはりクリアされていない、十分の審議を必要とする法案である。
 幾つか説明がありましたけれども、残念ながら、国民の皆さんにはこの法案の中身がよくわからないのではないだろうかな、よくわからない中で国会議員が大事な法案をそのまま通過させてしまうということがないように対処しなければならないというふうに考えております。
 そこで、法務大臣にお伺いを申し上げますけれども、国際組織犯罪防止条約の締結に伴う法整備について、その基本方針と法案の概要について、改めて御説明をお願いいたしたいと思います。
○南野国務大臣 この法案につきましては、平成十五年五月に国会において承認されました国際組織犯罪防止条約の締結に伴いまして必要となる罰則の新設など所要の法整備を行うことといたしております。
 すなわち、一番目といたしますでしょうか、条約の規定する重大な犯罪に当たる行為であって、団体の活動として、犯罪行為を実行するための組織により行われるもの等の遂行を共謀する行為を処罰する、組織的な犯罪の共謀の罪というのが一つでございます。
 次には、重大な犯罪等に係る刑事事件に関しまして、虚偽の証言または証拠の隠滅、偽造等をすることの報酬として利益を供与する行為を処罰するということでございます。これは証人等買収の罪、これを新設させていただくということでございます。
 さらに、いわゆる前提犯罪、これの拡大など犯罪収益規制関係の規定を整備するということでございます。
 さらに、贈賄罪につきまして国民の国外犯を処罰するなど国外犯処罰規定の整備を行う、そういうものでございます。
○早川委員 今、国際組織犯罪防止条約の締結に伴う法整備の中身について御説明いただきました。
 そこで、外務省にまずお伺いいたしますけれども、国際組織犯罪防止条約はそもそもどういうことを企図して策定されたのか、その意義と内容を簡単に御説明願いたいと思います。
 平成十七年六月三十日現在、本条約の署名国が百四十七カ国、そのうち百六カ国が締結済みであり、平成十五年九月二十九日に既に発効に至っていると承知しております。主要国のうち未締結の国は、現在、条約の締結に向けてどういう段階、状況にあるのかについて、あわせて御説明をお願いいたします。
○神余政府参考人 お答え申し上げます。
 この条約は、法の網をかいくぐって暗躍します国際的な組織犯罪に効果的に対処するというために各国の法制度を整備し、法執行活動を強化するということを目的といたしますとともに、国際的な組織犯罪の捜査や訴追におきます国際協力の促進を目的として作成されたものでございます。
 日本がこの条約を締結することによって、国際社会におきます法の抜け穴をなくし、また、国際的な組織犯罪の防止のための国際協力を促進する、こういったことを通じまして、深刻化しております国際的な組織犯罪に対する国際的な取り組みの強化、これに寄与することができればというふうに考えております。
 先生御質問のありました条約の締結状況でございますけれども、本年七月八日現在、百六カ国が締結をしております。すなわち、批准を完了しているということでございます。
 G8諸国に関しましては、フランス、カナダ、ロシアが締結済みでございまして、その他のG8諸国においても早期の締結に向けて積極的に取り組んでいるというものと承知をしております。例えば、アメリカ、イタリアにおきましては既に議会に提出をされておりまして、ドイツにおきましても近々議会への提出が予定されているというふうに承知をいたしておりまして、こういった国々を含めまして、締結に向けた手続が着実に進められているものと承知をしております。
 加えまして、この条約につきましては、国連の場におきましても、すべての加盟国がこの条約を早期に締結するように繰り返し要請されておりまして、組織犯罪対策に関します国際的な取り組みの中で中心的な位置を占めているものというふうに考えられております。
 政府としても、できる限り早期に締結をしたい、こういうふうに考えております。
○早川委員 私も、この国際組織犯罪防止条約を批准すべきである、そのための国内法の整備を進めなければならないと基本的に考えております。
 しかし、今回の法案の共謀罪に関する規定でありますけれども、条約の第五条が締約国に義務づけているものといささか範囲を異にしている部分があるのかなという疑いをどうしても払拭することができません。条約第五条が締約国に義務づけている内容と本法案における組織的な犯罪の共謀罪との関係をまず御説明いただきたいと思います。
○大林政府参考人 条約五条は、犯罪行為の未遂または既遂に係る犯罪とは別の犯罪として、重大な犯罪を行うことを一または二以上の者と合意すること、いわゆる共謀罪、または、組織的な犯罪集団の活動に積極的に参加する行為、いわゆる参加罪の一方または双方を犯罪とすることを義務づけております。
 このうち、前者のいわゆる共謀罪は、重大な犯罪、長期四年以上の自由を剥奪する刑またはこれより重い刑を科することができる犯罪を構成する行為を共謀することを処罰するものであり、また、条約上、組織的な犯罪集団の関与または合意の内容を推進するための行為という要件を付することも認められております。
 法案の組織的な犯罪の共謀罪は、条約上犯罪化が義務づけられている共謀罪または参加罪のうち共謀罪を選択した上で、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀することを要件として定めて、条約が付することを許容する組織的な犯罪集団の関与の要件を付したものでございます。
○早川委員 そもそも、本条約の審議の過程で、政府の方からは、共謀罪の新設は我が国の法制度の基本原則に反すると主張しておられたと伺っております。罪刑法定主義を基本とする刑法の原則からいえば、犯罪の実行がなされていない、その結果が現実化していない段階で処罰し得るのは一定の重大犯罪の未遂罪あるいは予備罪だと考えております。
 いまだ予備にもあるいは未遂にも至らない共謀の段階でもって処罰の対象とするのは、第一に、極めて重大な犯罪行為の共謀であること、第二に、組織的犯罪集団による犯罪の共謀であって、組織内の規律が極めて厳しく、外部者によっては犯罪の端緒を把握することが極めて困難であり、犯罪の未然防止は極めて困難であるという特性が備わっていなければならないのではないかなというふうに考えております。
 法務省において、広く、長期四年以上の法定刑が定められている罪について共謀罪を創設しようとしておられるのか、その理由について御説明をお願いいたします。
○大林政府参考人 私どもとしては、条約は、重大な犯罪、すなわち長期四年以上の自由を剥奪する刑またはこれより重い刑を科することのできる犯罪を共謀罪の対象犯罪とすることが義務づけられておりまして、法案の共謀罪、対象が広過ぎるのではないかという御意見があることは承知しておりますけれども、この対象犯罪を減らすことは条約上できない、このように考えております。
○早川委員 今御説明があったところでありますけれども、条約で言う重大な犯罪というものと我が国が法定刑で長期四年以上と定めている犯罪、どうも重なり合っていない部分があるのではないか。恐らく、五百五十あるいは六百に近い犯罪が、言ってみれば、この法律によればすべて重大な犯罪として位置づけられ、共謀罪の対象となってしまう。この法制のやり方について、やはりいろいろと検討して、本当に必要な犯罪を処罰する、あるいはその発生を防止するためということを考えていかなければならないのではないか。そういう意味では、いわゆる立法事実の有無というのが非常に重要になってくると思います。
 そこで、警察庁にお伺いいたします。
 現在の組織犯罪処罰法が平成十二年に施行されて以来、どのような事案が摘発の対象となってきたのか。現行法に新たに共謀罪を創設することで、現実の犯罪捜査及び組織犯罪対策にどのような意義があると考えられるかについて御説明をお願いいたします。
○米田政府参考人 お答えいたします。
 警察におきましては、犯罪組織、特にその中枢に打撃を与えるために、組織的犯罪処罰法に定める加重処罰規定等の積極的な適用を図っておるところでございます。
 最近の適用事例といたしましては、暴力団員やその周辺者、これは架空請求詐欺グループでありますが、反復して架空の有料サイト利用料金名下にお金を詐取していた事案であるとか、あるいは暴力団組長らが対立抗争事件に際して報復行為として相手方構成員を殺害した事案などにつきまして、団体の活動として、犯罪実行組織により行われたということで、組織的犯罪処罰法第三条第一項で検挙したようなものがございます。あるいは、暴力団員がその縄張りにおける不正権益を維持する目的で、その当該縄張り内で覚せい剤密売を企図していた男を逮捕監禁した事案、これらにつきましては、団体の不正権益維持のためということで、同法の第三条第二項を適用したというものもございます。
 この共謀罪というものができますならば、例えば暴力団による組織的な殺傷事案、詐欺事案あるいは縄張り獲得のための恐喝等につきまして、その実行着手前、すなわち被害が生ずる前に検挙、処罰が可能となるという可能性も出てまいりますので、組織犯罪対策上意義があるものと考えているところでございます。
○早川委員 次に法務省にお伺いいたしますけれども、この法律が成立いたしますと、捜査共助や犯罪人の引き渡しの面で具体的にどのように有効に機能することになるのか、御説明をお願いいたします。
○大林政府参考人 我が国が捜査共助や犯罪人引き渡しの要請に応じるためには、共助や引き渡しの対象となる事実が我が国においても犯罪に該当するものであること、いわゆる抽象的双罰性と言っているものでございますが、このような要件が必要となります。
 今回、組織的な犯罪の共謀罪を新設することにより、共助の対象となる事実が我が国で行われたとした場合において、組織的な犯罪の共謀罪に該当するものであれば、外国から請求を受けた場合に捜査共助や犯罪人引き渡しの要請に応じることが可能となりますので、組織犯罪に対する国際協力に一層資するものと考えております。
○早川委員 共謀罪は、内心にとどまる意思を処罰するものであり、思想、良心の自由を侵害するものであるとか、あるいは冗談半分にだれだれさんを殴ってけがをさせてやろうと意気投合しただけで処罰されてしまうという指摘が一部になされております。私は、これらの行為はおよそ共謀罪の対象とはならないと考えておりますけれども、法務当局の御見解をお伺いいたします。
○大林政府参考人 この法案により新設する組織的な犯罪の共謀罪は、あくまで二人以上の者が重大かつ組織的な犯罪を実行しようと共謀する行為を処罰するものでございまして、人の内心にとどまる意思や思想を処罰するものではなく、憲法の保障する思想、良心の自由を侵害するようなものではないと考えております。
 また、共謀と言えるためには、単に漠然とした相談をしただけでは足りず、特定の犯罪を実行しようという具体的、現実的な合意がなされなければなりませんので、御指摘のような、冗談半分で意気投合しただけでは、この法案の共謀罪は成立しないと考えております。
○早川委員 条約を国内法化していくための作業というのはなかなか大変だと思います。構成要件をどういうふうに決めていくのか。
 若干、条約の規定と法案との関係で、これは立案作業の中身についてお伺いをいたしますけれども、条約の五条1(a)の(i)には「金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のため」という要件が付されているわけであります。本法案の共謀罪ではこの要件を付していないようであります。さらに、条約の同じところですけれども、「重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意すること」を犯罪とすることと義務づけた上で、「国内法上求められるときは、」「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件を付することを認めております。本法案の共謀罪ではこの要件をどういう形で付しておられるのか、御説明を願いたいと思います。
 さらに、本法案の共謀罪の要件であります「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるもの」、あるいは、不正権益を維持する等の目的で行われるものとは具体的にどういうことを意味しているのか、あわせて御説明をお願いいたします。
○大林政府参考人 三つのお尋ねがございました。
 まず、利益に関するものでございますが、条約に言う「金銭的利益その他の物質的利益」とは、例えばわいせつ物をやりとりするような、主たる動機が性的欲望を満たすことにある犯罪も含まれるなど、極めて広い意味を有すると解されている上、これを得ることに直接または間接に関連する目的で足りるとされていることから、その適用範囲はさらに広く、現実的には純粋に精神的な利益のみを得る目的の犯罪等が除かれるにとどまるものと考えられます。
 他方、そもそも組織的な犯罪の共謀罪が成立する場合には、このような目的が認められるのが通例であると考えられます。すなわち、まず団体の活動とは、団体の意思決定に基づく行為であって、その効果またはこれによる利益が当該団体に帰属するものでありますので、組織的な犯罪の共謀罪が成立するためには、共謀者間に団体に効果、利益を帰属させる意図が必要であり、条約の規定する目的は認められるのが通例であろうと考えられます。
 また、不正権益目的は、いわゆるみかじめ料の獲得等を目的とするものですから、常に条約の規定する目的が認められると考えられます。
 なお、仮にそのような目的が認められない共謀の事案があったとしても、それが、団体の活動として、当該犯罪行為を実行するための組織により行われるものという厳格な要件を満たすのであれば、そのような目的がある場合と同程度に犯罪実現の危険性が高く、犯罪の事前抑止の必要性も高いと考えられますので、そのような目的がある場合と同様に処罰すべきであろうと考えております。
 次に、条約五条1(a)(i)の要件の問題でございますが、条約は共謀罪について組織的犯罪集団が関与するものという要件を付することを認めております。そこで、法案の共謀罪においてはこの要件を付することとし、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるもの、または団体に不正権益を得させ、または団体の不正権益を維持し、もしくは拡大する目的で行われるものという要件を付しているところでございます。
 次に、法案の共謀罪の要件でございます。
 まず、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものという要件のうち、団体の活動とは、団体の意思決定に基づく行為であって、その効果またはこれによる利益が当該団体に帰属するものをいい、また、犯罪行為を実行するための組織とは、犯罪実行部隊のように、組織の構成員の結合の目的が犯罪行為を実行することにあるものをいいます。
 また、不正権益を維持する等の目的で行われるものという要件のうち、不正権益とは、団体の威力に基づく一定の地域または分野における支配力であって、当該団体の構成員による犯罪その他の不正な行為により当該団体またはその構成員が継続的に利益を得ることを容易にすべきものをいい、具体的には、例えばみかじめ料を獲得するための暴力団の縄張りのようなものがこれに当たると考えております。
○早川委員 市民団体や労働組合等の正当な団体の活動が、この法律による共謀罪の対象とされては絶対にならないと私は考えております。しかしながら、この法律の要件そのものを考えると、どうもこの組織性の要件の中の団体に市民団体や労働組合等の団体が一応該当するのではないか、そのことによって正当な団体の活動が阻害されるのではないかという指摘があるところであります。この点についての法務省の考え方を御説明いただきたいと思います。
○大林政府参考人 今申し上げた要件がかかっておりまして、犯罪行為を実行するための組織を持つことのない市民団体や労働組合等の正当な団体に属する人が仮に犯罪を共謀したとしても、今のような要件から、共謀罪は成立しませんし、また、そのような団体が、不正権益、すなわち暴力団の縄張りのようなものを有しているとは考えられないことから、正当な団体の活動が阻害されることはないと私どもは考えております。
○早川委員 法律というのは、一たん成立してしまうとどうしてもひとり歩きをしてしまう、また、その法律の運用者の解釈いかんによってその幅が広がったり縮まったりしてしまう、こういう恣意的な、不安定な運用があっては決してならないと私は考えております。
 そういう意味では、きょうは、この条約の制定の趣旨とかあるいは現実の組織犯罪に対して共謀罪を犯罪化するということについての必要性等についてお伺いをしたところであります。しかし、それで本当にだれでも同じ解釈にたどり着くようなそういう法文になっているか、まだ疑念が残っているように思います。そういう意味では、なお検討が必要なのではないかと思います。
 そこで、残された時間でありますけれども、この法案の証人等買収罪についてもお伺いをしておきたいと思います。
 この証人等の買収罪も、国際組織犯罪防止条約の締結に伴う罰則の整備であるというふうに伺っております。条約の二十三条が締約国に義務づけている内容と本法案の証人等買収罪との関係について御説明をいただきたいと思います。
○大林政府参考人 条約第二十三条(a)は、締約国に対し、条約の対象となる犯罪に関する手続において偽証させ、または証拠の提出等を妨害する目的で、暴行、脅迫、不当な利益の約束、供与等をする行為を犯罪とすることを義務づけております。
 このうち司法妨害の目的で暴行、脅迫を行うことにつきましては刑法の強要罪により担保されていますが、このような目的で不当な利益の約束、供与等を行うことについては現行法上これを処罰し得る罰則がありませんので、この法案により証人等買収罪を新設することによりこれを担保しようとしたものでございます。
○早川委員 長年、刑事事件等の弁護活動をやっている場合に、いささかこの共謀罪との関係でどうなるだろうかというふうに心配を、これは私自身じゃなくて、同じ弁護人の活動の中で心配をするようなケースが出てまいります。
 証人等買収罪を創設しますと、刑事事件の弁護人が証人予定者と喫茶店で打ち合わせをして飲食代金を支払った、それだけで処罰されるということになりますと、これは弁護活動を明らかに萎縮させてしまうことになります。万一弁護人の正当な弁護活動が警察当局の監視下に置かれてしまう、あるいは被疑者や被告人の防御権が不当に侵害されてしまう、あるいは弁護士の正当な職務行為が制限されてしまうということは、決してあってはならないというふうに考えております。
 この証人等買収罪の当てはめの点について法務省ではどのように考えておられるのか、御説明をお願いいたします。
○大林政府参考人 証人等買収罪の保護法益は、刑事手続において、一般に証言、証拠物の内容等が買収によりゆがめられていないことと、これに対する社会一般の信頼ですが、このような法益を刑罰をもって保護することは十分な合理性があると考えられます。
 また、今回犯罪とするのは、証言、証拠物等の提出主体以外の者が、外部から、証言をしないこと、または虚偽の証言をすること、証拠を隠滅、偽造、変造すること、または偽造、変造の証拠を使用することという現行法上も偽証罪等の犯罪に当たり得る行為を行うことの報酬として金銭その他の財産上の利益を供与等する行為ですので、今御指摘のあった例えば喫茶店の代金を支払うとかいうようなことは考えておりませんで、あくまでそういう不正な依頼行為とそれに対する報酬、こういう対価性の問題がなければこの犯罪は成立しない、このように考えております。
○早川委員 以上です。ありがとうございました。
○塩崎委員長 次に、漆原良夫君。
○漆原委員 公明党の漆原でございます。
 大臣にお尋ねしたいんですが、趣旨説明で大臣はこうおっしゃっています。本法案は、昨年「五月に国会において承認された国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の締結に伴い必要となる罰則の新設等、所要の法整備を行うものであります。」こう述べられております。
 この条約の意義について大臣はどのようにお考えになっているのか、御所見を承りたいと思います。
○南野国務大臣 お答え申し上げます。
 国境を越えまして組織的に敢行される国際的な組織犯罪の脅威が深刻化しているということを申し上げましたが、サミットの声明等でも繰り返し指摘されております。
 一方、我が国におきましても、集団密航事犯、覚せい剤等の密輸事犯、またはクレジットカードの偽造事犯、さらにまたピッキング用具を使用した窃盗事犯など、国際的な犯罪組織によって敢行される各種の犯罪が多発しているこのごろでございます。
 国際組織犯罪防止条約は、一層効果的に国際的な組織犯罪を防止し、及びこれと戦うための協力を促進することを目的といたしております。そして、このような目的を達成するため、重大な犯罪の共謀等の一定の行為を犯罪とすることを義務づけるほか、広範な分野にわたる協力に関する規定も設けております。締約国間におきます組織犯罪対策のあらゆる協力の促進を図ることといたしております。
 また、このような国際的な組織犯罪の脅威という現実や、このような犯罪を防止し、これと戦うことを目的としてそのためのさまざまな方法等を定めているこの条約の内容にかんがみますと、我が国としましても、この条約を締結する意義は大きなものがあり、これにより、司法、法執行の分野における一層強化された国際協力のもとで国際的な組織犯罪から国民を守ることができるようになるものと考えております。
○漆原委員 ありがとうございました。
 この国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約、二〇〇〇年の十一月に国連で採択されたわけでございますけれども、この条約の採択に向けて日本がどのように貢献してきたのか、御説明をいただきたいと思います。
○南野国務大臣 この条約は、G8の諸国を中心としました国際社会の活発な組織犯罪対策の諸活動を受けまして、国連において起草、採択されたものでございます。
 そして、我が国も、こうした組織犯罪に対する国際的な取り組みの流れの中で、他のG8諸国とともに繰り返し本条約の早期採択を訴え、また、条約を起草したアドホック委員会の全体的な運営、また具体的な条文の提案や各国との協議についても多大の貢献をしてまいったというところでございます。
 また、二〇〇〇年のG8議長国といたしまして、九州・沖縄サミットのG8首脳のコミュニケにおきましても、組織犯罪対策の強化及びその柱としての本条約の重要性を訴えますことに当たりまして強いイニシアチブを発揮するなど、本条約の策定に積極的に貢献してきたという由来がございます。
○漆原委員 共謀罪の犯罪化について、大臣に総括的な質問を二題させていただきます。
 日弁連のパンフレットで、「日弁連は共謀罪に反対します」というパンフレットをつくりました。この中にこう書いてあるんですね。「同じ団体(会社でもNPO法人でもよい)に属するAとBがCを「やってしまおう」と合意したとします。この会話の意味はあいまいですが、捜査機関はAとBにはこの段階で殺人、傷害などのいずれかの共謀罪が成立すると考えることでしょう。」と書いてあるんですね。
 この宣伝が大分効き過ぎまして、僕ら国会に来るとき駅の改札口でビラが配られますが、一般的には、会社の同僚が焼き鳥屋で一杯飲みながら気に入らない上司の悪口を言って、あのやろう、やっつけてしまおう、そうだそうだと言っただけで殺人または傷害罪の共謀罪が成立するという恐ろしい法律なんだというふうにビラに書いてあります。
 新設される共謀罪はそんな法律ではないと私も思うし、大臣からきちっと国民の皆さんに向けて明確な発信をしていただきたい、こう思います。
○南野国務大臣 今先生御指摘のように、誤解は解いていかなければならないというふうに思っております。
 この法案によって新設されます、組織的な犯罪、これの共謀罪は、あくまで二人以上の人が重大かつ組織的な犯罪を実行しようと共謀する行為を処罰するものであります。そして、共謀と言えるためには、今おっしゃったような漠然とした相談をしただけでは、これはいけない。特定の犯罪を実行しようという具体的かつ現実的な合意がなされなければならないということでございます。
 したがいまして、今先生の御指摘になられましたように、会社の同僚が焼き鳥屋で一杯飲みながら上司の悪口を言い合っているうちに冗談半分で意気投合しただけでは、そもそも特定の犯罪を実行しようという具体的かつ現実的な合意ではなく、組織的な犯罪の要件にも当たらないわけでございますので、このような法案の共謀罪は成立いたしませんということを申し上げることができると思います。
○漆原委員 このパンフレットにはもう一つこう書いてあります。「思想処罰につながる共謀罪」「この共謀罪では、犯罪の結果が発生することはおろか、凶器を買うなどの準備行為に取りかかることすら必要ありません。単なる「合意」の段階では、「心の中で思ったこと」と紙一重です。」中略しますけれども、「共謀罪は、この「予備」よりもはるか以前の「合意」だけで、「行為」がなくても、悪いやつははじめから処罰するとして、思想処罰に限りなく近づこうとしているのです。」と。
 やはり、これを見て、思想処罰されるんじゃないか。本来は客観的な行為によって犯罪が成立するわけですね。客観的な行為によって、それが犯罪かどうか、また処罰の対象となる、今までの日本は。しかし、思っただけでは犯罪にならなかったんですね。今度は、この法律ができると、実行行為は要らない、予備も要らないわけですから、このパンフレットに書いてあるように、思っただけで、心の中に思っただけでも犯罪になって処罰されるんだ、したがって、思想処罰につながるという心配をされておるんですが、大臣の御見解を求めます。
○南野国務大臣 我々は、国民の安心、安全を守るための法律をつくっていこうとしておりますので、そのプロセスで不安になられるということは、我々も大変慎重に論議をしていかなければならないなというふうに思っております。
 先生が今御指摘のことでございますけれども、今回の法案が定める共謀罪は、二人以上の人が重大かつ組織的な犯罪を実行しようとして共謀する行為を処罰するものであり、人の内心にとどまる意識、また意思や思想を処罰するものではありません。また、共謀する行為と言えるためには、特定の犯罪を実行しようという具体的、現実的な合意をする行為がなされなければならず、心の中で悪い考えを抱いているというだけでは共謀罪が成立しないことは先生おっしゃるとおり当然でありますし、また、そのような考えを外に出したとしましても、漠然とした相談程度ではやはり共謀罪は成立しないということでございます。
 したがいまして、先生の御指摘のとおり、今回の法案が定める共謀罪を設けることによっても、決して思想の処罰に近づくものではありませんということをお伝えできると思っております。
○漆原委員 ありがとうございました。
 以下は局長にお尋ねしたいと思います。
 条約上は、この第五条において、重大な犯罪を共謀すること、共謀罪、または組織的な犯罪集団の活動に参加すること、参加罪、この一方または双方の犯罪化を締約国に義務づけているわけですね。
 我が国は、参加罪を選ばないで共謀罪を選択した。この理由を尋ねます。
○大林政府参考人 まず、参加罪は、組織的な犯罪集団の活動やその他の活動に参加する行為を犯罪とすることを義務づけておりますけれども、組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動の認識または特定の犯罪を行う意図の認識は要件とされているものの、参加する行為と特定の犯罪行為との結びつきは要件とされておらず、このような特定の犯罪行為と結びつかない行為を犯罪とすることはこれまでの我が国の法制にはないものでありますので、このような参加罪を犯罪とすることについては慎重な検討が必要であると考えております。
 他方、共謀罪につきましては、特定の犯罪の実行を合意することの犯罪化を義務づけていますが、我が国では、例えば内乱陰謀や爆発物使用の共謀など既に一定の犯罪について実行の着手前の共謀あるいは陰謀が未遂罪や既遂罪とは別の独立の犯罪とされているなど、現行の我が国の法制とは親和性も認められます。
 これらのこと等を考慮し、今回の法案では、重大な犯罪の共謀の犯罪化を選択することといたしたものでございます。
○漆原委員 条約上は、共謀罪については犯罪実行の合意だけで処罰できるということを原則としながらも、締約国の国内法において「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件を付加することも認めているわけですね。
 本法律案では、重大犯罪の共謀を一般的に犯罪化するのではなくて、重大犯罪であって、かつ団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるもの、あるいは、団体に不正権益を得させ、または団体の不正権益を維持し、もしくは拡大する目的で行われるものの共謀に限って処罰するというふうに要件を付したわけですね。この要件を付加した理由について尋ねます。
○大林政府参考人 我が国といたしましては、組織的犯罪集団が関与する犯罪については、各自が任務を分担して組織の指揮命令に基づいて行われるなどの点で、その目的実現の可能性が著しく高い上、一たび実行されると重大な結果や莫大な利益を生ずることが多く、特に悪質で違法性が高く、事前抑制の必要性も高いと考えられることから、このような厳格な組織性の要件を付した上で、重大な犯罪についての共謀行為を処罰することといたしました。
 そして、この組織性の要件につきましては、我が国では既に、組織的犯罪集団が関与する犯罪の高度の違法性にかんがみ、組織的犯罪処罰法が刑の加重処罰要件として、団体の活動として、当該犯罪を実行するための組織により行われるもの、または、団体に不正権益を得させ、または団体の不正権益を維持し、もしくは拡大する目的で行われるものという要件を定めておりますので、本法案の共謀罪につきましても同じ要件を付することとしたものでございます。
○漆原委員 そうすると、重大犯罪という、ある意味では無制限な広いものではなくて、それをさらに犯罪集団という、集団犯罪で絞りをかけた、こういうふうに理解させていただきます。
 ところで、現行法上の共謀罪、陰謀罪は、刑法では内乱陰謀罪、外患陰謀罪、私戦陰謀罪があります。その他の法律においては、爆発物取締罰則の爆発物使用共謀罪、破壊活動防止法の政治目的殺人・放火等陰謀罪、自衛隊法の防衛秘密漏せつ等共謀罪、競馬法等の不公正な方法による競走等の共謀罪、これらの法律で、ある意味では共謀と使ったり、ある場面では陰謀と使っているんだけれども、この用語の区別は法的にあるのかな、構成要件的に違うのかな、同じと思っているのですが、いかがでしょうか。
○大林政府参考人 共謀とは、二人以上の者が特定の犯罪を実行する具体的、現実的な合意をすることを言います。すなわち、共謀が成立するためには、単に漠然とした相談程度では足りず、目的、対象、手段、実行に至るまでの手順、各自の役割等、具体的な犯罪計画を現に実行するために必要とされる各種の要素を総合的に考慮して、具体性、特定性、現実性を持った犯罪実行の意思の連絡があることが必要であり、かつそれで足りると考えております。
 そして、現行法上の陰謀罪における陰謀につきましても、基本的にはこれと同様に解されていると考えております。
○漆原委員 共謀罪の成立には犯罪実行の意思の合意があれば十分だ、実行行為を必要としない。この合意の意思というのは、今局長がおっしゃった具体性、特定性、現実性を持った犯罪実行の意思の連絡ということになるわけでございますけれども、その意思の連絡、合意があれば十分であって、実行行為は要らないわけですから、外形的、客観的事実は不要ということは、犯罪の立証そのものができにくいのではないのかなと。あるいは、立証が場合によっては裁判官の恣意的に流れることになりやしないかなという危惧を持っておるんですが、この点はいかがでしょうか。
○大林政府参考人 共謀罪の捜査につきましても、多くの密行的な犯罪の場合と同様に、捜査の端緒を求め、必要かつ適法な捜査を尽くすことになります。
 現実には、現に行われた別の犯罪の捜査の過程で、共謀に関する供述や物証が得られることも予想されますし、共謀に参加した者の自首や共謀の存在を聞知した犯罪組織の構成員の情報提供等を契機として捜査が開始されることもあろうかと思います。そして、このような捜査によって得られた各種の証拠により立証することになると思われます。
○漆原委員 もう一つ、日弁連の「共謀罪Q&A」というのがあるんですが、ここにはこんなふうに書いてありますね。「共謀罪を実際に捜査するためには、どのような捜査手段が必要でしょうか?」という問いに対して、こういう答えがあります。「共謀罪の発生のために被害の結果は必要とされません。犯罪場面に残された指紋や遺留品からさかのぼって、犯人を特定する従来の捜査手法では到底対応できません。すなわち、人々の会話や電話・メールの内容そのものが犯罪となるのです。日常的な会話やメールそのものの内容を監視することが、犯罪捜査の主要な部分となれば、捜査はどのようなものになるでしょうか。盗聴法の適用」、私は盗聴法と言わないんです、通信傍受法と言うんですが、日弁連のこれでは盗聴法となっております。「盗聴法の適用範囲を拡大し、室内での会話の盗聴やサイバー犯罪条約で導入が提案されているメールの保全・リアルタイム傍受等の捜査方法が次々に拡大されていくこととなるでしょう」、実際こうなったら怖い社会になってしまうなというふうに思います。
 また、先ほど来申しましたように、立証の対象が外形的、客観的事実ではなくて、内面の、内心的事実というんでしょうか、内心というのは合意ですから、内心的事実というんでしょうか、そういうものをなかなかのぞき見ることができない、外形から推測していくことができない難しいものですから、勢い通信傍受等の拡大あるいはメールの傍受、こういうところにつながりやすい危惧を皆さん持っていらっしゃるんですが、この危惧に対して、法務省、どうお答えになりますでしょうか。
○大林政府参考人 共謀罪の新設と新たな捜査手段の導入拡大とは別の話であろうと思います。また、新たな捜査手段の導入拡大については、今後、各種の犯罪に関する捜査の実情等を踏まえつつ、その必要性などを検討すべきものであって、今回の共謀罪の新設に対してそのような法改正は行っておりません。
 今も申し上げたところでございますが、共謀罪の捜査も多くの密行的な犯罪の場合と同様に、捜査の端緒を求め、可能な捜査を尽くすことになると考えられます。実際には、現に行われた別の犯罪の捜査の過程で、共謀に関する供述や物証が得られることも予想されますし、共謀に参加した者の自首や、共謀の存在を聞知した犯罪組織の構成員の情報提供等を契機として捜査が開始されることもあると考えております。
 共謀の存在を立証する方法としては、これまでの共謀共同正犯における共謀の立証と同様、被疑者の供述のほか関係者の供述や物的な証拠など、必要な証拠を収集して立証することとなる、このように考えております。
○漆原委員 そういうことになろうと思います。
 実際に爆発物使用の共謀罪の成立を認めた裁判例があるわけですね。この裁判例の具体的概要、どんなことを謀議して、どんな合意がなされて共謀罪になったのか、この具体的な概要を説明していただきたいと思います。
○大林政府参考人 お尋ねの事案は、共犯者と共謀の上、共犯者らにおいて、赤軍派構成員らに対し、鉄パイプ爆弾及びピース缶爆弾多数を使用して首相官邸警備の警察官らを攻撃する旨指示するとともに、各爆弾の構造、威力、使用方法等を説明し、爆弾の使用について全員の賛同を得た上、石灰、木片等を爆弾に見立てて投てき訓練を行わせ、さらにその使用方法を討議させるなどし、もって治安を妨げ、かつ人の身体、財産を害する目的を持って、さらに同派構成員らと爆発物を使用することを共謀した、このような事案であると承知しております。
○漆原委員 はい、わかりました。
 犯罪の成立には犯罪実行の意思と犯罪の実行行為が必要だというのが刑法の原則だと思うんですね。いわゆる共謀共同正犯でも、共同実行の意思と共同実行の行為が必要だというふうに解釈されています。刑法の理論では、客観説と主観説、大きな対立がありますが、いずれの立場に立っても、犯罪の成立には単なる意思だけではなくて何らかの外形的事実が必要だ、こういうふうに解釈されております。
 今回新設される共謀罪も含めて、実行行為を伴わない共謀罪、陰謀罪というのは、今の日本の刑法の全体の体系の中においてどういうふうな位置づけになるのか、その位置づけを教えてもらいたいと思います。
○大林政府参考人 御指摘のとおり、犯罪の成立には単なる意思だけでは足りませんが、法案の共謀罪は、一定の犯罪に当たる行為の遂行を合意する行為を犯罪とするものであり、人の内心にとどまる意思のみを処罰するものではございません。我が国の刑事法におきましては、実行の着手がある場合に処罰することを原則としつつ、特に重大な罪や取り締まり上必要がある犯罪について、予備罪、共謀罪等、実行の着手前の行為も処罰することとしております。
 この点、法案の共謀罪はすべての犯罪の共謀を一般的に処罰するものではなく、重大な犯罪、死刑または無期もしくは長期四年以上の懲役もしくは禁錮の刑が定められている罪であって、かつ組織性の要件、すなわち、団体の活動として当該犯罪を実行するための組織により行われるもの等を満たすものに限って処罰するものでございます。
 これは、国際的な組織犯罪の実態を見ると、犯罪の実行そのものに直接の関与をしないで、その計画や準備段階に関与する者が多く存在し、また、そのような犯罪は通常計画性が高度であり、かつ組織の指揮命令に基づいて行われることから、そのような犯罪が計画に従って実行に敢行される可能性が高い上、一たびそのような犯罪が実行されると重大な結果や莫大な不正な利益を生ずることが多くあることから、これを処罰すべき必要性が高いと考えられたことがございます。
 このように、この法案では処罰すべき必要性が高い重大かつ組織的な犯罪の共謀に限ってこれを処罰することといたしたものでございまして、我が国の刑事法の原則にも沿うものである、このように考えております。
○漆原委員 我が党のある議員にこの共謀罪を話したら、犯罪実行行為が必要でない、合意だけで犯罪になるんですというふうに言ったら、その人は実は主観説の論者なんですね。主観説は、もちろん犯罪は心のあらわれだという、徴憑と見るわけですから、心そのものを本来、悪い心を処罰するんだ、こういう考えですよね。その主観説の我が党の議員は、いよいよ主観説が刑法の原則になったかと言って喜んでおられたんですが、とんでもないことを言うなと私は思っております。
 私は客観説なんですけれども、そういう意味では、現行の共謀罪も新しい共謀罪も、現行法体系においては、今局長るる述べられました、その必要性からくる例外的なものなんだというふうに私は理解しておるんですが、この点はいかがでしょうか。
○大林政府参考人 御指摘のとおりだと思います。(漆原委員「もうちょっとはっきり言って」と呼ぶ)今おっしゃられた趣旨を実現するために今回設けられたものでございます。
○漆原委員 そういうことを聞いているんじゃないんだよね。我が刑法の法体系からいったら例外の部分に属するのか原則の部分に属するのかと。我が党のある人は原則になったと喜んでいる、私は例外だと言って反対している。局長に聞いてくると言ってきょう、私は、その先輩に言ったんですが、いかがでしょうか。
○大林政府参考人 現行刑法等の処罰法令において、陰謀罪とか共謀罪の対象犯罪となる数はそれほど多くないことは御指摘のとおりでございます。
 今回、共謀罪をつくるようになったわけです。それは、四年以上という、重大犯罪をそういうふうな定義にしてある条約のために、罪数そのものとしては非常に多くなると思います。そういう意味におきまして、罪数だけを見れば、原則と例外がひっくり返ったように見える、このような御意見もあろうかと思います。
 ただ、先ほどから御説明しているとおり、今回のものは国際的な条約に基づく要請であること、それから暴力団等の団体あるいは不正権益の要件を重ねたということで、そこには厳しい縛りがかかっています。ですから、そういう適用の場面といいますか、そういうものについて私どもはそれほど急激に多くなるというふうに考えているわけではございませんので、委員おっしゃるように、原則と例外と言われると、なかなか私どもも断じがたいんですけれども、そういう国際的な要請も踏まえて、そういう要件を付した共謀罪であるということで、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
○漆原委員 言外に例外だとおっしゃっているんだなと。
 ところで、この条約上は、共謀罪の成立について、単なる共謀だけではなくて、合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴うという要件を付することが許されているわけですね。いわゆるオーバートアクトということなんですが、これは一体どのような理由からくるものでしょうか。
○大林政府参考人 オーバートアクトにつきましては、これを要求する法制もございますが、これについては法制審議会でも議論されましたけれども、既に共謀罪については厳格な組織性の要件がかけられており、処罰範囲が不当に広がるおそれはないこと等に照らし、このような要件を付する必要はないとされた経緯がございます。
 このようなことを考えまして、政府案におきましては、組織的な犯罪の共謀罪について、条約の言う、合意の内容を推進するための行為を伴うという要件を付してはおりません。
○漆原委員 いや、そうじゃなくて、私が聞いているのは、要件を付することが許されているわけですね。その条約が許した理由はどういう意味なんですかと、条約がこれを許している理由について聞いているんですよ。今回の法が、日本政府がとらなかった理由じゃなくて、条約がオーバートアクトを許しているその理由は何なんですかということを聞いているんです。
○大林政府参考人 今おっしゃられるものでアメリカの合衆国連邦法について例を申し上げますと、二人以上の者が合衆国に対する何らかの犯罪を犯すこと等を共謀し、そのうちの一人以上の者が共謀の目的を果たすために何らかの行為を行ったときに共謀罪が成立するとされておりまして、この共謀の目的を果たすために行う何らかの行為をオーバートアクトと呼んでいる、このように承知しております。
 条約においてこのような規定が設けられているのは、このような法制が設けられている国があるということを前提にしているものと思われます。
○漆原委員 オーバートアクトは、共謀が単なる心の状態から実行の段階に移ったことをあらわしているというふうにされているわけですね。
 英米法でオーバートアクトをとられているようなんですが、米国法の共謀罪について、オーバートアクトに当たるのは具体的にどんな行為なのか、教えてもらいたいと思います。
○大林政府参考人 アメリカの判例でオーバートアクトに当たるとされたものといたしましては、例えば、銀行強盗を共謀した者が銀行までの往復のルートを下見し強盗に使用する盗難車の調達を手配する行為、あるいは、偽造通貨行使を共謀した者がみずからの割り当て分の偽造通貨を他の共謀者に渡して保管させる行為、また、殺人の共謀をした者が殺人の実行を依頼した者に対してその報酬の一部を支払う行為、また、ヘロイン密売を共謀した者が他の共謀者との間で密売について電話や会合で話し合って段取りをする行為、偽造通貨行使を共謀した者が他の共謀者に対して偽造通貨を行使する際のリスクを説明し注意を与える行為などがあると承知しております。
○漆原委員 そこで、先ほどの質問に移るんですが、共謀罪は、心の状態から実行の段階に移ったという、これがオーバートアクトというふうに要件とされているということなんですが、心だけでは処罰しないよ、何らかの行為があって処罰するんだよという我が国の刑法理論が原則とすれば、オーバートアクトを要求することの方が我が国の刑法理論に合うのではないかなと私は思っているんです。
 ところが、要件をつけてもいいよというふうに条約が言っているにもかかわらず、我が国は要らないよと言ったわけですね。その理由は一体何なんでしょうか。
○大林政府参考人 このオーバートアクトの扱いにつきましては法制審議会においても議論になりました。先ほども申し上げましたけれども、今度、共謀罪については団体等の厳格な要件を重ねることにいたしました。それから一方、日本の場合には、共謀罪についてさらにオーバートアクトを求めるというような法制は従来とってきていませんので、審議会においても議論にはなりましたけれども、結論としては、現行の共謀罪、今回提出させていただきました共謀罪で足りるというふうな結論が出たこと等を考えてこのような形式にしたものでございます。
○漆原委員 この点については、今局長がおっしゃった、十五年二月五日付の法制審議会の部会長報告があるんですよね。読ませてもらいました。こう書いてあります。「そもそも条約が共謀の犯罪化に当たり、「合意を促進する行為」という要件を付することを認めているのは、共謀罪の成立にいわゆるオーバート・アクトと呼ばれる行為を必要とする英米法系の国に配慮したものと考えられ、我が国の法制には馴染まないこと、現行法上の共謀罪においては、一般に共謀に加えてこの種の行為が要件とされていないこと」中略ですが、「このような要件を付することは相当ではないとされました。」という報告がありました。
 私は、これを読んで、この部会長報告こそが我が国の法制になじまないんじゃないかなという感覚を持って読ませてもらいました。
 共謀罪の成立にオーバートアクトを付するのは我が国の法制になじまない根拠として、この部会長が言っているのは、現行法上の共謀罪においては一般に共謀に加えてこの種の行為が要件とされていないというこの一点だけなんですね。
 だけれども、先ほど申し上げましたこれらの共謀罪、陰謀罪、この犯罪行為は、むしろ我が国の法体系からいうと、これは例外に属する部分に位置するわけですね。法理論上からは例外に位置するところにあるわけだから、これをもって、ここが実行行為を要求していないから、だから我が国の法制は要求しないんだと全部に敷衍して言うようなやり方は、原則と例外を逆にしていると私は思って読ませてもらった。
 だから、そういう意味ではこの部会長報告そのものが我が国の法制になじまない報告だと私は思っているんですが、局長はこれを何の抵抗もなく読まれましたか。
○大林政府参考人 既に御説明したとおり、法制審議会の議論をも踏まえ、政府案におきましては、組織的な犯罪の共謀罪について、条約の言う合意の内容を推進するための行為を伴うという要件は付しておりませんが、この点も含めて国会において御審議いただきたい、このように考えております。
○漆原委員 含みのあるお言葉で……。
 この条約の国連における審議の冒頭で日本政府が提出したペーパーには、「このように、すべての重大犯罪の共謀と準備の行為を犯罪化することは我々の法原則と両立しない。」といって、そのまま出てきた共謀罪の規定には反対したという経緯があるわけですね。
 「我々の法原則と両立しない。」という、政府が主張したその内容はどんな内容ですか。
○大林政府参考人 条約交渉の初期の段階において、我が国が、すべての重大な犯罪の共謀及び準備行為を犯罪とすることは我が国の法的な原則と相入れないと発言いたしました。
 当時は、いまだ共謀の対象となる重大な犯罪の範囲が定まっていなかったことに加え、共謀の犯罪化について、現在の条約のように「組織的な犯罪集団が関与する」という要件を加えることも認められていませんでした。
 したがって、この発言は、このような状況において、我が国では犯罪の実行の着手以前の共謀等を一般に処罰することとはしていない実情を踏まえ、あらゆる犯罪の共謀等を、今回新設する組織的な犯罪の共謀罪の要件としている厳格な組織性の要件を付さないで一律に無条件で処罰することとするのは、我が国の刑事法制の原則的なあり方に反するおそれがあることを明らかにしたものです。
 その上で、我が国としては、この共謀罪について、「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件を加えることを提案し、交渉の結果、国内法でこの要件を加えることが認められたものでございます。
○漆原委員 そうすると、やはり実行行為を必要としない共謀罪を一般的につくり上げるということは我が国の法制と両立しないんだ、こういうことですよね。組織犯罪というふうに限定して初めて我が国の法制とは、認められるんだという意味ではやはり例外なんですね。原則としては、実行行為を必要としないという共謀罪を一般化することはできない、しかし、必要性と危険性、いろいろなことを考えて、例外的にこの組織性という限定された場面でようやく認めることができるんだということですよね。そういう意味では、やはりこれは例外的な規定なんだなというふうに理解をさせていただきます。
 共謀罪の成立の要件として、単に共謀だけではなくて何らかの外形的事実、外形的行為を付するということは、我が国の法制度と矛盾するんじゃなくてむしろ我が国の法制と一致するというふうに私は思っておりますが、将来、何らかのことを考えて、この辺は日本の法制度にむしろなじむように変えていくべきじゃないのかなという考えを持っておりますが、いかがでしょうか。
○大林政府参考人 今委員がおっしゃるように、日本の処罰法は着手行為から処罰しているものが基本的に圧倒的に多いわけでございます。
 先ほどから御説明していますように、共謀罪については、その適用についていろいろな条件をつけているわけでございますけれども、委員御指摘のとおり、思想的なものを処罰するのではないかという、このような議論があることは私どもも承知しておるところでございまして、この罰則の適用については、当然そういう批判を招かないような適正な捜査なり手続なりがやはり必要であるというふうに考えております。
○漆原委員 ここは、米国法のようにオーバートアクトを要求した方が日本の法制に合うということを指摘しておきたいと思います。
 組織的犯罪処罰法第六条第一項、組織的な犯罪の共謀が成立するためには、所定の行為のうち「団体の活動として、」という要件と「当該行為を実行するための組織により行われるもの」、この二つの要件が必要になってくるわけですね。
 そこで、「団体の活動として、」とは一体何か、「当該行為を実行するための組織により」とは何か、二つを説明していただきたいと思います。
○大林政府参考人 まず、「団体の活動として、」とは、団体の意思決定に基づく行為であって、その効果またはこれによる利益が当該団体に帰属するものとしてという意味です。また、「当該行為を実行するための組織により」とは、犯罪実行部隊のように、組織の構成員の結合の目的が犯罪行為を実行することにあるものによることを意味します。
 これらの要件が必要とされるため、共謀罪が適用されるには、犯罪行為を行うことを共同の目的を有する団体として意思決定する、すなわち犯罪行為を行うことが共同の目的に沿うような団体であり、かつ団体内部に犯罪実行部隊を持つような団体である場合に限られることになると考えております。
○漆原委員 これまでに、この「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により」という要件に該当するとされた事例はどのようなものがあるんでしょうか。
○大林政府参考人 お尋ねの事例といたしましては、例えば、暴力団による賭博場開張図利や、みかじめ料目的の業務妨害、恐喝の事件、あるいは対立暴力団構成員に対する殺人未遂の事例などがあります。また、詐欺会社などと呼ばれる専ら詐欺を行うことのみを目的とする組織による詐欺の事例も見られます。
 こうした暴力団や詐欺会社等によるもの以外の市民団体や犯罪性のない会社等について、お尋ねの「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により」の要件に該当するとされた事例は承知しておりません。
○漆原委員 この処罰法では、団体とは犯罪集団に限らない、こう定義されております。そのため、市民団体、会社、労働組合等の団体に属する者が特定の犯罪の実行を共謀すれば、すべて共謀罪が成立するというふうに誤解をされているように思います。
 この市民団体、会社、労働組合に属する者が特定の犯罪実行を共謀した場合に、共謀罪が成立するのかどうか、しないとすれば何の要件を欠くのか、そこをお尋ねしたいと思います。
○大林政府参考人 法案の共謀罪の構成要件は、団体の活動として犯罪行為を実行するための組織により行われる犯罪行為、または団体に不正権益を得させる等の目的で行われる犯罪行為の遂行を共謀するというものでございます。
 したがって、団体に属する者が特定の犯罪の実行を共謀したとしても、例えばそれが当該団体とは全く無関係のものであれば、先ほど述べた、団体の活動として犯罪行為を実行するための組織により行われるもの、または団体に不正権益を得させるための目的で行われるものとは言えないことから、そのような場合には共謀罪の構成要件には当たらず、共謀罪は成立しないものと考えております。
○漆原委員 それでは、この市民団体、会社、労働組合の正当な団体の幹部が、その組織として特定犯罪を実行することを決定したという場合は共謀罪が成立するのかどうか。しなければ、どの要件を欠くのか。
○大林政府参考人 正当な共同の目的のために活動している市民団体や会社等については、仮に、たまたまその団体の幹部がその団体の意思決定として特定の犯罪を実行することを共謀したとしても、組織的な犯罪の共謀罪は成立しないと考えております。
 すなわち、法案の共謀罪は、団体の活動として行われ、かつ、犯罪行為を実行するための組織により行われる犯罪を実行することを共謀したことを要件としておりますけれども、「団体の活動として、」という要件を満たすためには、犯罪行為を行うことを共同の目的を有する団体として意思決定することが必要であり、したがって、犯罪行為を行うことがその団体が有している共同の目的に沿うものであることが必要であると考えられます。
 言いかえれば、団体が有している共同の目的が犯罪行為を行うことと相入れないような正当な団体については、仮に、たまたまその団体の幹部が相談して犯罪行為を行うことを決定したとしても、共同の目的を有する団体として意思決定したとは言えないため、「団体の活動として、」という要件を満たさず、共謀罪は成立しないと考えております。
○漆原委員 非常に難しいんです、ここは。
 この法律の「団体」には、犯罪性のない株式会社、市民団体、サークル、労働組合などの組織犯罪集団でないものも含まれる、こう解釈されていますよね。したがって、そもそもこの法律は組織犯罪集団を対象としたものではないんだ、だから、何らかの団体構成メンバーによる組織的な犯罪を広く処罰の対象としているのではないかという強い懸念が指摘されているわけですよね。
 そういう意味では、私は、この懸念を払拭するために、共謀罪は組織犯罪集団の行う行為に限定されているんだということを明確にしたらどうでしょう。あるいは、もう条文を明確に、だれが見てもわかるように直したらどうでしょうか。いかがでしょう。
○大林政府参考人 御趣旨は私どもわかるんですけれども、先ほど申し上げたとおり、国会での御審議の中で御議論いただきたい、このように思っております。
○漆原委員 要するに、先ほどの質問の中で、労働組合は対象にならない、市民団体も対象になり得ない、会社の幹部も職員も対象になり得ないというわけですよね。絶対対象にならぬわけですよ。それは、その会社というのが犯罪を行うことを共同目的としているわけじゃないからなんですよね。まあ、犯罪を行うことを共同目的としている会社、詐欺会社と言いましたね、それはなりますよ。それ以外の会社はならないんですから。
 そういう意味では、この法律は犯罪集団が対象なんだというふうにはっきり言ってあげた方が皆さん安心しますよ。団体が含まれるなんと言うものだからわけわからなくなって、組織性の方からぐるぐるといろいろな理屈をこねて、結局、犯罪集団なんだよということをよく局長説明しているんだけれども、もう頭から、犯罪集団が規制の対象ですというふうにおっしゃったらどうでしょう。いかがでしょうか。
○大林政府参考人 何度も説明いたしておりますように、条約からの要請の問題、あるいは、これまでありました組織犯罪処罰法を前提といたしまして法制審議会にかけ、その議論をいただいたところでございます。
 私どもとしては、解釈上、先ほどから申し上げているとおり厳格な要件であるというふうに考えているところではございますけれども、確かに委員がおっしゃるように、一般の方々にとっては非常にわかりにくい構成要件であろうということも、私ども、そこは理解しているところでございます。
 この取り扱いについては、恐縮でございますが、引き続き御議論をいただきたいなというふうに思っております。
○漆原委員 これは通告していなくて申しわけないのですが、共謀罪がもし新設された場合に、適用になる数。日弁連は、五百六十、こう言っているんだけれども、どのぐらいの犯罪が適用になる、対象になりますか。六百とかいうふうな話も聞くんですけれども、どのくらいになるのでしょうか。
○大林政府参考人 犯罪の個数の数え方につきましては定まったルールがあるわけではございませんけれども、平成十七年四月一日に施行されている罰則であって、性質上共謀の対象とならない過失犯と未遂犯を除いた上で対象となる罪の条の数を数えると、合計で四百九十二となります。
 また、どのような罪名あるいは犯罪行為が対象となるかという観点から数えると、合計で六百十五ということになります。
○漆原委員 やはり五百から六百の犯罪が実行行為がなくて共謀罪として処罰されるんだということは、相当国民から見るとショッキングなことになるわけです。局長もおっしゃったように、数から見ると例外と原則がわからないなという話、まさにそのとおりですよね。
 そういうことを考えれば、なおさら、一般の人にはこの法律は適用になりませんよ、適用対象じゃありませんよ、あくまでも犯罪集団というこういう団体だけなんですよということを、私はこの際明確に国民に訴えて、その必要性とそしてまた安心感を持っていただく必要があるということを申し上げておきたいと思います。
 もう一つの論点であります国際性についてお尋ねしたいと思うのですが、法案の共謀罪には国際性を要件としておりません。これに対して国際性を要件とすべきであるとの強い指摘がありますが、この点についてそもそも条約はどうなっているのか、説明してもらいたいと思います。
○大林政府参考人 国際組織犯罪防止条約は、別段の定めがある場合を除くほか、共謀罪等の条約が犯罪化を求める犯罪または重大な犯罪であって、性質上国際的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するものの防止、捜査及び訴追について適用するとされております。条約三条の1です。
 しかしながら、その一方で、犯罪化に関しては、別段の定めとして、条約三十四条2が、共謀罪等の犯罪化を求める五条の規定により組織的な犯罪集団の関与が要求される場合を除き、締約国の犯罪化義務に対応する国内法の内容を国際的な性質または組織的な犯罪集団の関与とは関係なく定めると規定しております。
 この条約三十四条2の規定は、条約交渉の過程で種々の議論を経て、仮に犯罪化に当たって国際性や組織性を要件とすると、対象となる犯罪事象が組織犯罪の実態に照らして不当に狭くなる上、早期かつ的確な検挙、処罰が困難となり、ひいては、一層効果的に国際的な組織犯罪を防止するという条約の趣旨、目的を没却してしまうことになりかねないとの考え方が交渉国に受け入れられて設けられたものと承知しております。
○漆原委員 条約の解釈ノートによれば、条約は、犯罪化に当たって国際性を要件とする必要はないとするだけであって、必ずしもこれを要件とすることを禁止しているわけではないのではないか、したがって、国際性の要件を付することも許されるという見解もあるんですが、この点はどうなっているんでしょうか。
○大林政府参考人 御指摘の解釈ノートには、確かに、国際性及び組織的な犯罪集団の関与を要件として含める必要はないと記載されている部分があります。しかし、その冒頭部分には、「国際性の要件と組織的な犯罪集団の関与を犯罪の要件とみなしてはならない」と明確に記載されています。
 したがって、御指摘の解釈ノートについても、これを全体として見れば、必要がないとは、条約三条1が規定する原則に従って国際性等を要件としなければならないわけではない、すなわち、その必要はないということを注意的に述べたにすぎないと考えられます。何より、成文としてでき上がった条約の条項が、明文上、しなければならないという義務を課すシャルという用語を用いて明確な表現でその義務を定めていますので、国内法で共謀罪を犯罪とするに当たっては、条約の明文上、国際性を要件とすることはできないことは明らかであるというふうに考えております。
○漆原委員 この条約は、大臣の趣旨説明にもありました国際的な組織犯罪防止という目的なわけですよね。また、犯罪が国境を越えてグローバル化しているという大臣のお話もあったとおりであります。
 そういうことから考えると、何で国際性が要らなくなるのかなという。もともと、国際犯罪の防止、犯罪のグローバル化、国境を越えた犯罪が多発しているからそれを規制の対象とするんだというふうにいいながら、実際は国際性は要らないよというと、ある意味では、国際性という必要性から出発したものが、国際性といいながらも適用対象は広い国内犯罪だけになってしまうじゃないかという。だから、悪く解釈すれば、国際性の名前をかりて、国内の処罰対象を、本来例外でできない共謀罪というのをつくってうんと広げたにすぎないんじゃないか、こういう非難もあるわけですよね。
 どうして国際性を要求しないんですか。国際性を要求する場合にどんな不都合があるのか、その辺はよく理解できるように説明していただきたいと思います。
○大林政府参考人 条約三十四条の2が、国内法で共謀罪を新設するに当たっては国際的な性質とは関係なく定めると規定をしており、明文上国際性の要件を付することを認めていないので、これを共謀罪の要件とすることは許されず、したがって、仮に法案の共謀罪に国際性の要件を付した場合、本条約を締結できなくなると考えております。
 また、実際問題としても、例えば暴力団による国内での組織的な殺傷事犯の共謀が行われた場合について、そのようなものは国際性の要件を満たさないことから、これを共謀罪として処罰できなくなってしまいますが、そのようなことになるのは不都合であると考えられます。
 このように、共謀罪に国際性の要件を付することは、条約上禁止されている上、実際の適用上も不合理な結果となると考えられることから、適当ではないと考えているところでございます。
○漆原委員 最後に大臣に、通告していないんですが、お尋ね申し上げます。
 本条約は二〇〇〇年十一月十五日に採択されました。それで、二〇〇三年の九月二十九日に発効しております。我が国も二〇〇〇年十二月十二日に署名をしております。また、昨年五月、国会でも承認されているところでございます。
 私は、ぜひとも今国会でこの法整備を行って批准に持ち込むべきだというふうに思っておるんですが、大臣の御所見を聞いて最後の質問にしたいと思います。
○南野国務大臣 今いろいろと御議論、御審議をお聞きいたしております。先生方の御審議が本当に十分行われることによりまして、この法律が皆様方の御意思として成立させていただくならば、これからの問題点がもっと解決に向かい、安心、安全の国づくりに一役買うものと思っておりますので、どうぞ御審議をよろしくお願いしたいと思っております。
○漆原委員 以上で終わります。ありがとうございました。
○塩崎委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時四分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二分開議
○塩崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。吉野正芳君。
○吉野委員 自由民主党の吉野正芳でございます。
 私は、強制執行妨害についてお尋ねをしたいと思います。
 この不景気で、ある意味で小泉内閣の経済対策、不景気をなくそうということで、不良債権処理が大きな政策的な課題でありました。おかげさまで、今銀行等々は落ちついたわけですけれども、この不良債権処理に当たって、いわゆる最終的なところはやはり強制執行であると思います。
 そこで、強制執行を妨害する行為等に対する罰則整備が今度の改正に盛り込まれているわけですけれども、どういう意味で法整備を必要とするのか、大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
○南野国務大臣 先生お尋ねでございます件につきましては、近年、債権債務関係の迅速また適正な処理が社会的な課題となっておりますが、悪質な資産隠し等の手口や占有屋と呼ばれる手口等によりまして強制執行を妨害する事案が後を絶っておりません。
 このような強制執行に対する妨害行為への対処につきましては、司法制度改革審議会の意見書などを踏まえながら、既に民事法の整備がなされておりますけれども、刑事法の分野におきましても、権利の実現の実効性をより一層高めるという観点から、強制執行を妨害する犯罪等に対する罰則を整備することが必要であると考え、今回の法案の提出をさせていただいた次第でございます。
○吉野委員 以下、細かいですけれども、具体例を示しながら質問をしていきたいと思います。
 裁判所の執行官が、差し押さえ物件があって、そこに封印を張るわけですけれども、何者かによってはがされた、その後に差し押さえ物件を運び出すような行為、これは現行法では処罰できないという規定になっているんです。おかしな話だと思うんですけれども、現行法ではそうなっております。
 しかし、封印がはがされたとしても、差し押さえの効力は引き続きその物件に及んでいるものと私は思います。ですから、例えばその封印が違法にはがされたことを知って運び出したという者は、処罰をすべきであると思うんですね。そういうところは今度の改正法で処罰できるのかできないのか、お伺いをしたいと思います。
○大林政府参考人 委員御指摘のとおり、現行法では、封印や差し押さえの表示が除去された後においては、たとえ違法に除去されたものであることを知っている者の行為であっても、封印等破棄罪が成立しないと解されております。
 しかし、御指摘の事案のように、封印等が何者かによって違法に除去された後に、強制執行を妨害しようとする者が、差し押さえられていたものを勝手に運び出すなど、封印等に係る命令の趣旨を没却するような行為に及ぶという事案が見受けられ、このような現行法では処罰できないようなものであっても、現実に強制執行を妨害するような事案については適切に対処する必要があると考えております。
 そこで、今回の改正により、仮に封印や差し押さえの表示そのものを損壊する行為が認められない場合であっても、封印や差し押さえの表示に係る裁判所の命令や処分を無効にする行為についてはこれを処罰する旨を明確に規定することにより、封印や差し押さえの表示が違法に取り除かれた後にこれらの実質的効果を滅失または減殺する行為についても処罰できるように条文を改め、御指摘のような事案についても適切に対処できることといたしました。
○吉野委員 当然だと思いますので、ありがとうございます。
 次に、強制執行を妨害する目的で、強制執行の目的となっている建物の中にごみなどの廃棄物を入れてしまう、そうすることによっていわゆる物件の価値を下げてしまう、このような行為もあると聞いています。現行法ではこのようなものを処罰することができない、全くおかしな話だと思うんですけれども、こういう場合も今度の改正法ではいかがなんでしょうか。
○大林政府参考人 現行法では、財産の隠匿、損壊、仮装譲渡などの行為が処罰の対象とされていますが、御指摘の事案のように、現行刑法が対象としていないような行為を行って強制執行を妨害する事案も見受けられ、このような巧妙かつ悪質な事案についても適切に対処する必要があります。
 そこで、今回の改正により、処罰の対象になる強制執行の進行を妨げる行為類型を拡充し、強制執行を妨害する目的で、財産の物理的な状態を変更して、その価格を著しく減損し、または債権者を費用倒れに追い込む行為を適切に処罰することができる規定を新設するとともに、金銭執行を受けるおそれのある状況において、これを妨害する目的で、その対象となる財産について無償その他の不利益な条件で他に譲渡し、または権利の設定をすることにより引き当て財産が不足した状態にすることを適切に処罰することができる規定を新設するなどいたしました。
 このような改正により、委員御指摘の、強制執行を妨害する目的で、強制執行の目的となっている建物の中に廃棄物を搬入して放置するような行為についても、そのような現状改変の結果、執行に際して廃棄物処理のための搬送料や処理費用がかかることになりますので、強制執行の費用を増大させる行為に当たることから、そのような行為についても適切に処罰することができることとなる、このように考えております。
○吉野委員 次に、裁判所の執行官に対する妨害ですけれども、例えば、執行官が、競売の目的となっている建物に調査に行くために、建物に行きました。しかしながら、かぎがボンドなどで固められていて入れないとか、また、執行官が建物を明け渡させるためにそこの現場に行こうとしたんですけれども、大きな大きな猛犬、ドーベルマンみたいな猛犬が放たれていて、執行をするためにその建物にも近づけなかった、こんなような妨害行為がございます。そのような場合には今度の改正法ではどのように対応しているのでしょうか。
○大林政府参考人 強制執行の現場で行われる執行官等の行為に対する妨害行為につきましては、現行法でも、それが執行官等に対する暴行、脅迫を手段とする場合には公務執行妨害罪が成立することになります。しかし、現実には、委員御指摘の事案のように、暴行、脅迫に至らない偽計または威力にとどまる行為により執行官等の行為が妨害されている実態が認められ、看過できない状態になっております。
 そこで、今回の改正により、公務執行妨害罪として処罰できない偽計または威力による執行官等に対する妨害行為についても適切に処罰することができる規定を設けることとしており、これにより、御指摘のような事案についても適切に対処できることとなります。
○吉野委員 今回新設する強制執行行為妨害等の罪では、強制執行の申し立てをさせないようにする目的で強制執行の申し立て者に対して暴行とか脅迫を加えた者が処罰されることになっております。しかし、この申し立て者が個人ではなくて法人、会社の場合、いわゆる会社に対して、暴行とか脅迫の対象とならないという考え方もございます。そのためにこの罪が成立しないとすると、ある意味では適切な処罰が図れないこととなると思うのですが、このような場合はいかがでしょうか。
○大林政府参考人 今回新設いたします強制執行行為妨害等の罪は、強制執行の申し立てを阻止するなどの目的による強制執行の申し立て権者等に対する暴行または脅迫行為を処罰することによって、権利者が強制執行手続を発動する手段としての強制執行の申し立てを保護しようとするものであり、これがこの罪の保護法益であると考えられます。
 そして、この申し立て権者とは、自己の名において強制執行の申し立てを行う権利を有する者をいうと解されますけれども、今述べましたようなこの罪の保護法益からすれば、申し立て権者から法人を除外する理由はなく、債権者が法人の場合には、申し立て権者は法人自身になると解されます。
 そして、一般に、申し立て権者の関係者に対する暴行、脅迫であっても、それが申し立て権者に申し立てをさせないなどの目的のもとで行われる場合には、そのような行為は申し立て権者に対する脅迫と考えることができることから本罪が成立すると解し得ることからしますと、代表者、その他当該法人における強制執行の申し立てに関する意思を決定し得る立場にある者のように、当該法人と同視できる地位にある者に対して暴行、脅迫が加えられたような場合などには本罪が成立すると解されます。
 したがって、お尋ねの、申し立て権者が法人である場合でもこの罪は成立し得ると考えられます。
 なお、一般に、脅迫罪や強要罪の脅迫の相手方は自然人に限られるものと解されていますが、このような解釈は、その条文の体系からも明らかなように、これらの罪が人の意思の自由を保護法益とするものであると解されているからでございまして、これらの罪とは保護法益を異にする本罪の対象に法人が含まれると解することは矛盾するものではない、このように考えております。
    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕
○吉野委員 次に、占有屋が、競売開始決定前に、競売の予想される物件に殊さらに例えば暴力団の代紋等を掲示し、その後の入札希望を断念させるとか、物件の占有を継続したり、安値で落札するなどの妨害事案があると聞いております。
 現行法では、処罰される行為というのは競売開始決定後のものに限るというふうになっているんですけれども、このようなものを処罰することは、決定後に処罰することは難しいと思います。今回の改正によって、決定前でもこのような行為をした者を罰するべきだと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
○大林政府参考人 委員御指摘のとおり、現行の刑法第九十六条の三におきましては、競売開始決定以前の行為については処罰の対象とはならないと解されております。しかしながら、公正を害すべき行為は、競売開始決定前においてもこれを行うことが可能であり、これにより応札が断念させられることもあり得ますし、実際上も、御指摘のように、競売開始決定前に妨害行為に及ぶ事案が見受けられます。
 そこで、今回の改正により、現行法では処罰できない競売開始決定前の行為についても適切に処罰することができる規定を整備することとしており、これにより、委員御指摘のような事案についても適切に対処できることとなります。
○吉野委員 次に、現行の封印等破棄罪や強制執行妨害罪などは二年以下の懲役とされております。その罰金額も、それぞれ、封印等破棄罪は二十万円以下、または五十万円以下と定められておりますが、今回の改正によって、いずれも懲役三年以下または二百五十万円以下の罰金とされて、法定刑が引き上げられております。また、懲役刑と罰金刑の両方を科すことも可能となっております。
 これは、どんな理由によってこのようになっているのか、お伺いをしたいと思います。
○大林政府参考人 委員御指摘のとおり、まず、今回の改正により設けられる刑法第九十六条から第九十六条の四までの罪については、その法定刑を同一にいたしました。
 今回の改正は、改正後の刑法第九十六条の封印や差し押さえの表示に係る裁判所の命令や処分を無効にする行為、改正後の刑法第九十六条の二の強制執行の目的となる物に対してなされる行為、改正後の刑法第九十六条の三の強制執行を行う人に対してなされる行為、改正後の刑法第九十六条の四の強制執行において行われる売却の公正を害する行為をそれぞれ処罰できるようにすることによって、強制執行手続のさまざまな場面で行われる妨害行為に対処することを可能とするものです。
 このように、これらの罪は、いずれも一連のプロセスである強制執行の手続のさまざまな段階で行われる可能性がある妨害行為を処罰することにより、強制執行の手続が全体として適正に行われることを確保しようとするものであることから、これらの罪の法定刑は同一とすることが適当であると考えられます。
 次に、委員御指摘のように、これらの罪の法定刑を引き上げるとともに、必要に応じて懲役刑と罰金刑の両方を科すことも可能といたしました。
 まず、懲役刑については、民間の競売または入札の妨害行為が業務妨害罪に該当する場合には三年以下の懲役とされていることとの均衡などを考えて、いずれの罪についても、その法定刑を三年以下の懲役に引き上げることとしました。
 また、罰金刑については、これらの罪は利益を得るために敢行されることが多いこと等にかんがみ、現行の強制執行を妨害する行為についての罰金の中では、二百五十万円以下という、最も重い現行の刑法第九十六条の三の罰金額にそろえることといたしました。
 また、懲役刑が選択されるような悪質な事案こそ罰金刑を科す必要も高いと考えられますので、必要に応じて懲役刑と罰金刑をあわせて科すことを可能としたところでございます。
○吉野委員 けさも、我が党の自由民主党、朝八時から治安対策の部会で暴力団についての議論をしてまいりました。その中で、暴力団は不当な利益を得ていくということを大きな資金源としているという、いわゆる暴力団の資金源という形で分析がされたわけですけれども、他人に対する強制執行に介入することにより不当な利益を得ようとする暴力団等の強制執行妨害が今社会問題化しております。こうした職業的で悪質な強制執行妨害行為については、さらに厳しく処罰する必要があると私は思います。
 今回の法改正においても、このような者らに対する罰則が設けられていると思いますけれども、その内容と考え方についてお尋ねをしたいと思います。
○大林政府参考人 委員御指摘のとおり、現実に社会で行われている悪質かつ執拗な強制執行妨害事犯の中には、職業的な妨害者によるものが少なからず見受けられ、そのような行為は違法性が強く、また責任も重いと考えられます。そこで、今回の改正においては、このような者による強制執行を妨害する行為に対して適切に対処するため、一般的な妨害事犯に比べてその刑を加重する規定を刑法と組織的犯罪処罰法に設けました。
 まず、刑法についてですが、職業的な妨害者が妨害行為に及ぶ主な動機は、妨害行為の対価として報酬を得ることや、妨害行為によりみずからが所属する組織の上層部に直接財産上の利益を得させることにあると考えられます。そこで、報酬を得るなどの目的で他人の強制執行に介入してこれを妨害する行為を行ったような者については、そのような目的で行われたものではない妨害行為に比べてより重く処罰することといたしました。
 次に、組織的犯罪処罰法についてですが、これは、例えば暴力団やいわゆる占有屋をなりわいとする組織がその構成員に指揮命令して行う妨害行為のように、職業的な妨害者は組織的に妨害行為に及ぶことも少なくないことから、強制執行を妨害する行為が一定の組織性の要件を満たしている場合には、そのような組織性のない場合に比べてより重く処罰することとしました。
 そして、刑法、組織的犯罪処罰法ともに、その法定刑は、一般の妨害事案、三年以下の懲役、二百五十万円以下の罰金に比べて重い、五年以下の懲役または五百万円以下の罰金とし、また懲役刑と罰金刑をあわせて科すことを可能といたしました。
○吉野委員 次に、犯罪収益についてお尋ねをいたします。
 犯罪組織というのは、利益を得ることを目的として犯罪活動を行い、犯罪によって得た犯罪収益を再び犯罪行為に用いるとか組織の規模を拡大させていくだけでなく、これを事業活動に投資して、いわゆる合法的にやっている方々の経済活動に大きな悪影響も与えていると思います。そこで、このような犯罪収益を剥奪するとともに、犯罪収益を隠すいわゆるマネーロンダリングを処罰することも必要である、私はこのように思います。
 今回の法案では、このような犯罪収益を生み出すもととなるいわゆる前提犯罪を拡大することができるとありますけれども、その中身について概要をお知らせ願いたいと思います。
○大林政府参考人 御指摘のとおり、組織的な犯罪に経済的な側面から適切に対処するためには、犯人から犯罪収益を剥奪するとともに、犯罪収益と犯罪との関係を隠すいわゆるマネーロンダリングを処罰することが極めて重要であると考えられます。
 我が国においても、犯罪収益が将来の犯罪活動に用いられることや合法的な経済活動への投資による悪影響等を防止することにより、社会生活の安全や経済活動の健全さを確保するため、これまでも組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法において、一定の犯罪について、これを犯罪収益を生み出すもととなるいわゆる前提犯罪として定めることにより、そのような犯罪から得られた犯罪収益を剥奪するとともに、そのような犯罪収益のマネーロンダリングを処罰することとしてきました。
 そして、国際組織犯罪防止条約第六条2(b)は、締約国に対し、原則として、すべての重大な犯罪及び条約が犯罪化を求める一定の犯罪を前提犯罪に含めることを義務づけております。
 これらの犯罪のうち相当数のものは、先ほど述べたように、既に現行の組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法により前提犯罪とされていますが、前提犯罪とされていないものもあることから、今回の法案により、条約の義務に従って、組織的犯罪処罰法の前提犯罪をすべての重大な犯罪等に拡大することとしております。
    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕
○吉野委員 経済活動のグローバル化に伴って、犯罪収益も国境を越えて移動させることが今は容易となっております。犯罪収益が金融システムに流れ込むことによって正常な経済活動に与える悪影響は、もはや一国だけにとまるものではありません。したがって、国際社会が協力して犯罪収益規制に取り組む必要があり、今回の法案で前提犯罪を拡大することは、国際的な動向から見ても大変有意義なことであると思います。この点について御意見を賜りたいと思います。
○大林政府参考人 御指摘のとおり、金融経済活動のグローバル化に伴って、犯罪収益の運用等の場面で、どの国も他の国の組織的な犯罪の影響から逃れることが困難な状況になっており、各国とも犯罪収益が金融システムその他の経済活動に流れ込むことによって正常な経済活動に悪影響を及ぼすことを強く警戒しており、国際社会が一致協力して犯罪収益規制に取り組むべきであると強く認識されてきました。
 すなわち、犯罪収益規制の国際的な取り組みは、一九八八年に、薬物犯罪対策として、薬物犯罪を前提犯罪とする犯罪収益規制を取り込んだ国際的な法的枠組みとして、いわゆる麻薬新条約が採択されたことに始まります。その後、アルシュ・サミット経済宣言に基づいて設置されたFATF、金融活動作業部会は、OECDに事務局を置き、一九九〇年、麻薬新条約の早期批准、同条約に規定するマネーロンダリングの犯罪化、その前提犯罪を薬物犯罪から重大犯罪に拡大することの考慮等を盛り込んだ資金洗浄に関する四十項目の勧告を行い、さらに、一九九六年、この四十の勧告を改定し、マネーロンダリングの前提犯罪を薬物犯罪から重大犯罪に拡大すること等の勧告を行いました。
 このような動向を踏まえ、国際組織犯罪防止条約は、一層効果的に国際的な組織犯罪を防止し、及びこれと戦うための協力を促進するため、締約国に対し、原則として、すべての重大犯罪及び条約が犯罪化を義務づけている一定の犯罪を前提犯罪に含めることを義務づけています。
 したがいまして、今回の法案で前提犯罪が拡大することにより、我が国としても、国際社会と協調して法の抜け穴をなくし、犯罪収益規制を徹底することが可能になると考えております。
○吉野委員 最後の質問に移ります。共謀罪についてです。
 私も、共謀罪、いろいろ勉強してまいりましたけれども、一つだけやはり心配があります。これは、長期四年の重大犯罪は全部処罰の対象にするという、ある意味で対象が広くなっているわけなんですけれども、これが捜査機関に濫用されるのではないかというその心配が、今のところ、私が勉強した範囲ではぬぐい去ることができません。今回、そういうことがないようにするためのどんな制限とか歯どめがかかっているのでしょうか。お尋ねをしたいと思います。
○大林政府参考人 今回の法案の定める共謀罪は、犯罪の共謀を一般的に処罰するのではなく、重大な犯罪であって、かつ厳格な組織性の要件を満たす犯罪、つまり、例えば暴力団による組織的な殺傷事犯や、詐欺会社による悪徳商法のような団体の活動として犯罪行為を実行するための組織により行う犯罪、または、例えば暴力団の縄張り獲得等のための犯罪のような団体の不正権益の獲得、維持、拡大の目的で行う犯罪を共謀した場合に限り処罰することにしています。したがって、通常の生活や活動を行っている人や団体の行為がこの共謀罪の対象となることは考えられないと思っております。
○吉野委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。
○塩崎委員長 次に、辻惠君。
○辻委員 民主党の辻惠でございます。
 議員になってこのような法案の審議に立ち会うことになるとは、夢にも思っておりませんでした。人類は社会が進歩するものだというふうに信じておりましたけれども、やはり獲得した人類の知恵についても不断の努力を重ねないと簡単に失ってしまうものなんだな、極めて危険なことはすぐ先にも起こり得るんだなという思いが強くあります。
 私は、端的に言って、今回のこの共謀罪は現代版の治安維持法であるというふうに断じて間違いがないというふうに思います。午前中の審議、質疑を聞いていて、当面そういう意図はないんだ、市民団体や労働組合やそういうところに危険が及ぶものではないんだというような誘導的な質問があり、そしてそれに応じるような答えがありました。治安維持法の一九二五年の本会議、そして委員会の質疑でも同じ議論がなされております。二十年たって廃止になるまで猛威を振るう治安維持法でありましたが、そのように猛威を振るうような状況になるなんというのは、一九二五年の時点で提案者も思っていなかったということが読み取れます。
 したがって、問題は、今願望として、市民団体に及ぶことはないだろうとかいうことではなくて、この法案の法規の規定のあり方においてどういう危険性が生ずる可能性があるのか、そもそも今、立法目的、立法事実が存在するのか、このことを厳密にとことんやはり審議をする、議論をすることが絶対に必要だろう、このように思います。
 手元に、一九二五年の治安維持法の本会議において、当時の憲政会の加藤高明内閣の若槻礼次郎内務大臣に対して、星島二郎議員、そしてさらに三番手として鳩山一郎議員が代表質問を行っている。委員会質問も星島二郎議員が行っておられます。
 「普通選挙を断行せんとし、貴族院改革を致さんとする現政府を支持致して居る一人であります、」星島二郎議員はこのように冒頭で述べております。「然るに其与党に属する私共が突如此法案に、而も反対の意思を以て質疑をしなければならぬと云ふことは、洵に遺憾至極に存ずる次第であります」「第一に本法を提出する根本の意思、而して現在政府が此日本の社会に対する一種の思想政策、どう云ふ風に一体考へて居られるか、どんな風に一体せられんとするのか、此根本に私は疑点を持つて居るのであります、」このように述べております。「貴族院の問題にも、婦人の参政権も、奴隷制度を否認する此公娼制度の廃止案も、有ゆる意味に於きまして其根源をもつと立派なる社会にしたい、もつとより良き人間らしき生活を営みたいと云ふ根柢があるから、普選が少々騒がしくも貴族院改革が少々激烈になりましても、其事態は御互が歓迎せんければならぬのであります」
 普通選挙が一九二五年、同時に実施される。そして、支配秩序が揺らぐんではないかという懸念を持って、治安維持法が、これは同時に一九二五年に制定されておりますが、そういう、これからの社会を一体どのようにやっていくのかという、当面、今の支配政党がやりにくくなるから、だからといって治安重視の政策を持ち込めばいいんだ、そういうことではない。これは人類の歴史が、日本の近代史の歴史が証明しているところじゃないですか。
 まさに今、越境組織犯罪条約ということで、国際的な犯罪があるんだというふうに云々されている。しかし、では、日本において立法事実はあるのか、どういう立法目的でこの法案に対処するのか、このことを本当にきちっと問うていかなければいけないと思うんですね。
 そして、今の小泉政権のもとで、強者が弱者を虐げる、二極分化してしまっている。これは刑法の重罰化の法案審議のときにも申し上げましたけれども、いろんな階級、階層の利害を調整して、みんなが、一億総中流と言われる、何がしかの未来に期待が抱けるかもしれないという、市民社会が統合していた力が弱まっている。その中で、弱肉強食の論理で、強者が弱者を虐げている。多くの弱者が今あえいでいる、こういう社会をこのままにするのか。そこにメスを入れて、どういうふうに今の二十一世紀の日本の社会を立て直していくのか。それこそが先に検討されなければいけないときに、強者の支配権限を強化するような法案をあえてこの時期に持ち出すということは全く誤っている、本末転倒だろうというふうに冒頭強く申し上げたいというふうに思います。
 一言で言って、治安維持法は、結局のところ、一九二五年の制定、それに続いて一九二八年に三・一五事件があって、そして目的遂行罪や死刑の規定を導入しようとして、これは衆議院で否決されたんです。それを枢密院で緊急勅令という形で、一九二八年に勅令でもって目的遂行罪を導入し、死刑を導入する。その後、どういうふうになっていったのか。一瀉千里ではありませんか。
 国体の変革と私有財産の否認という目的の結社の結成が禁止されていた。しかし、その結社は日本共産党だけではなくて、どんどん広がっていって、果ては、つづり方教室をやっているようなそういう農業団体にまで、結社に当たるんだと。そして昭和十六年には、その結社の外郭団体も処罰するという、新たな治安維持法の改正が行われているではありませんか。
 今、市民団体を目的としていない、そのことを言うのはたやすい。しかし、それはだれがそれを保証できるんですか。南野大臣、それを保証できるんですか。あなたがずっと法務大臣で指揮権をとっているわけじゃないじゃないですか。十年後、二十年後、ひとり歩きすることは明らかなわけであります。それが歴史に学ぶということであろうと思います。
 この共謀罪は、そういう意味で、冒頭において、本当にその意味とその危険な性格と、したがって、今立法化する必要性があるのかということについて本当に審議を尽くし切らなきゃいけない。この場にいる法務委員の皆さん、そういう歴史的な場面に立ち会っているんだという自覚を、私も自覚を持って何とか質疑を行いたいというふうに思いますし、答弁される方も本当に命がけできちっと答弁していただきたい、このように思います。
 まず、具体的に審議に入るに当たって、この場に滝実法務副大臣がいらっしゃらない。今までの会社法案についても刑事施設法案についても、滝実副大臣がいらっしゃって、政府の側の陣容が整って、答弁をされてきた。何でいらっしゃらないんですか。これは、理由は何なんですか。今いらっしゃらない理由は何なんですか。お答えください。
○塩崎委員長 だれに対する質問でしょうか。
○辻委員 法務大臣ですよ、これは。答えてください。
○南野国務大臣 内閣の方針に対して違反したということが理由でございます。
○辻委員 そうすると、政府側の答弁として、副大臣の存在というのは不可欠だったんだけれども、内閣の方針にそぐわないという態度をとったから罷免をしたんだ、それで今欠いているんだ、こういう理解でいいんですか。
○南野国務大臣 はい、そのとおりです。
○辻委員 そうであれば、政府の布陣として、副大臣を早急に選任いただきたい。きちっとした答弁をしていただくためには、副大臣の存在が必要だと思います。(発言する者あり)大臣でいいという声がありました。大臣でいいんですか、どっちですか、お答えください。
○南野国務大臣 本日の段階では、私から副大臣のことについて申し上げることは差し控えたいというふうに思っております。
○辻委員 副大臣の存在というのは不可欠なんでしょう。布陣として必要不可欠なんでしょう。そのことをお認めになった御発言ですか、今のは。いかがですか。
○南野国務大臣 それはそのとおりでございます。
○辻委員 それでは、きょうの段階は副大臣はいらっしゃらない。次の審議の段階では副大臣にいていただかなければ、我々としては責任を持って答弁を求めることができません。いかがですか、その点は。
○南野国務大臣 政務官富田氏もおられますし、我々結束して、皆様方の御審議がスムーズにいきますことを祈っているばかりでございます。
○辻委員 きょうの読売新聞で、滝実法務副大臣がいらっしゃらないから、南野法相は「「大変厳しい」と不安を見せている。」と書いてありますよ。だから、不安を払拭してからちゃんと答弁に当たってくださいよ。いかがですか。
○南野国務大臣 私の言葉をいろいろな方がいろいろにおとりになって新聞記事を書かれていると思います。これは一回二回ではないと思いますが。本日は富田政務官がおられます。立派に答弁したいと思っております。
○辻委員 これは質問の前提として伺っているんですが、しっかりした答弁がなされるかどうかということについて極めて不安に思っているわけですよ。滝副大臣がいらっしゃったらしっかりした答弁が出るかどうか、これはまた別なんだけれども、それはそれとして、しかし極めて不安に思わざるを得ない。
 だから、しっかりとした副大臣を早急に選任するように小泉首相に上申をして、ちゃんと体制を整えていただかない限り、民主党は責任を持った質疑ができないじゃないですか。きちっとした答弁が返ってこない危険がある。そういう体制で仕切り直しをすべきだというふうに思いますよ。いかがですか。
○南野国務大臣 富田政務官と協力いたしますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
○辻委員 先ほど、私は、この共謀罪は現代の治安維持法だと。その理由については質疑の中で明らかにしてまいりますけれども、一言で言えば、内心の自由を侵害するものである、行為を問わないで思想を処罰するものであるという意味において共通なんだというふうに思うんですよ。
 治安維持法というのは、これは日本国憲法に違反するものなんですか、どうなんですか。その点、大臣、いかがですか。
○南野国務大臣 治安維持法は、戦前の特殊な社会情勢の中で、国の体制を変革することを目的として結社を組織することなどを取り締まるために、これを処罰の対象としていたものと承知いたしております。(発言する者あり)
 憲法違反かどうかということは申しかねます。
○辻委員 ちょっと待ってくださいよ。さっき私が、目的遂行罪や、そして内心の自由が侵害されるんだ、そういう意味で共謀罪と同じなんだと。大臣は治安維持法の時代に生まれて育っておられるわけだから、治安維持法の存在を御存じなはずですよ。ですから、その治安維持法は戦後廃止になっているけれども、では、この治安維持法の内容というのは日本国憲法に違反するものなのかどうなのか。この点、きちっとお答えください。
○南野国務大臣 そのことについてお答えいたしかねますけれども、これに対しまして、この法案は、治安維持法は、重大な犯罪であり、かつ組織性の要件を満たす犯罪の共謀に限って……(発言する者あり)治安維持法でございますよね。
 治安維持法に関しましては、これは先ほど申し上げました、御指摘の治安維持法は、戦前の特殊な社会情勢の中で、国の体制を変革することを目的として結社を組織することなどを取り締まるために、これを処罰の対象としていたものと承知いたしておりますが、これに対しまして、現在我々が進めようとしておりますこの法案は、重大な犯罪であり、かつ組織性の要件を満たす犯罪の共謀に限って処罰することといたしております。すなわち、このような組織性の要件を満たす犯罪は、特に悪質であって、違法性の程度が高く、事前に防止する必要性も高いと考えられますことから、このような犯罪に限り共謀罪の対象とすることとしたものであります。
 このように、今回の法案の共謀罪は、犯罪行為の性質に着目し、このような組織性の高い犯罪を共謀する行為に限って処罰することとするものであって、必ずしも、特定の犯罪と結びつかない、結社を組織する行為自体を処罰するものではありませんので、御指摘の治安維持法とは法律の趣旨や目的、あるいは処罰の対象となる範囲が全く異なるものであるということを考えられます。
○辻委員 私はそういうことを聞いていないんだけれども、そこまでおっしゃるんだったら、治安維持法のどこが一緒でどこが違うんですか、答えてください。共謀罪とどこが類似をしていて、どこが違うんですか。あなたがそういうふうに答えるんだったら、私が質問しないのに勝手に答えているんだから、それはあなたに答弁を継続する責任がありますよ。
 治安維持法は共謀罪と類似する面があると私は指摘している。内心の自由の侵害だということで、これは同じものであるというふうに指摘している。あなたは今、違う、違うと言ったけれども、では、どこが同じでどこが違うんですか。目的遂行行為を治安維持法の第一条で認めているこの条文について、これは共謀罪と極めて類似の法構造を持っているじゃないですか。その点について、きちっと答えてください。
○塩崎委員長 富田政務官。(辻委員「いやいや、大臣に聞いていますよ」と呼ぶ)
○富田大臣政務官 委員長の御指摘ですから。
 今の先生の御質問は、ちょっと前提をたがえているんではないかと思うんですね。大臣は治安維持法とは異なるというふうに答弁していますが、先生はもう治安維持法と類似点があるという前提で質問されているんです。(辻委員「そういう質問をしていないんです」と呼ぶ)
 最初の先生の質問は、治安維持法は現憲法に違反するのかどうかという御質問は、大臣としては答える立場にないという御答弁でございました。
○辻委員 さきの予算委員会で、東京裁判について、その結果をどのように評価するのか、どうそれを受けとめるのか。これは今の問題ではないですよ。日本の戦後の政治が出発した原点の一つにおいて、今ある政治家としてそれをどうわきまえているのかという見識を問うているわけですよ。政治姿勢が問われているんですよ。小泉首相は認めたじゃないですか。東京裁判は厳粛に受けとめると認めたじゃないですか。
 治安維持法が廃止になったということは、南野大臣、今回の法案の提出に当たって、あなたにとってはどのように評価して受けとめているんですか。内心の自由の侵害に当たるという指摘について、これはもう通説ですよ、どう受けとめているんですか。これが答えられないとなったら、大臣としての資格を問われかねないですよ。
○南野国務大臣 先生が御指摘しておられる内心の問題については、このたびの法改正では触れない、これは問題でないということでございます。
○辻委員 だめだよ、そんなのは。答えていないじゃないですか。(南野国務大臣「答えていますよ」と呼ぶ)治安維持法について聞いているんですよ。共謀罪の話でしょう、今答えているのは。
○塩崎委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○塩崎委員長 速記を起こしてください。
 では、南野法務大臣。
○南野国務大臣 憲法に違反するのかしないのかということにつきましては、私は申し上げる立場にございません。
○辻委員 では、敗戦後、ポツダム宣言を受諾して、ポツダム宣言の十項、確認しておられるかどうかわからないけれども、それを受けて治安維持法がその後廃止になった。この手続について、これは戦後の日本の国のあり方、出発点を画するものなんですよ。そこを出発点として、今の政党政治、民主主義体制が生まれているわけですよ。答えるべき義務があるじゃないですか。
 答える立場にないというのはどういうことですか、あなた。答える立場にあるじゃないですか。為政者の一人として、今の日本国憲法体制の立場に立って治安維持法をどう評価するのか、答える立場にあるでしょう。責任も義務もあるじゃないですか。答えてください。逃げるんじゃないですよ。
○南野国務大臣 今先生がおっしゃられました特定の法律が憲法に違反するのかどうかということにつきましては、私が申し上げる立場にはありません。
○辻委員 いや、自民党のだらしなさが本当に明らかですね。だらしがないじゃないですか。どうしてそういうこと一つ答えられないんですか。憲法十九条に違反するのではないかというふうに問うているんですから、憲法十九条について、これは守るんだということを何で言えないんですか。
○南野国務大臣 それは、日本国民、守るべきだと思います。
○辻委員 治安維持法は、一九二五年の四月二十二日に制定されて、国体の変革、私有財産の否認を目的とする結社の組織を処罰する。そして、一九二八年に緊急勅令で目的遂行罪と死刑の規定が盛り込まれた。「結社ノ目的遂行ノ為ニスル行為」ということで、当初は日本共産党、しかし、労働組合や労農派や外郭団体、文化団体、宗教団体、どんどん広がっていったわけなんですよ。
 ですから、要するに、法律の解釈としてはきちっと限定がされていないと、どんどんひとり歩きして、解釈で広がっていくという歴史的経験、まさに教訓化しなければいけない事例がここにあるんですよ。そういう事例として学ぶというおつもりがあるのかどうなのか、大臣としていかがですか。政治家の見識として答えてくださいよ。
○南野国務大臣 いろいろな課題について過去に学ぶということは、これは当然のことだというふうに思っておりますが、治安維持法と今皆様方に御審議をお願いしているものについては、これは内心という問題については関連のないものだというふうに思っております。
○辻委員 関連はなくはないですよ。行為の外形を処罰するのではなくて内心を処罰する、そういう刑法の体系が採用されるということについては、これは法務大臣としてはどうお考えなんですか。是が非か。
○富田大臣政務官 先生の質問は内心を処罰するという前提でされていますので、この法案は内心を処罰するものではないというふうに午前中からずっと答弁しておりますので、その点、ぜひ誤解のないようにしていただきたいと思います。
○辻委員 前提で質問していませんよ。共謀罪はどうなのかということは、それは改めて質問しますよ。今は、内心の自由の侵害ということについて、これは認められてはならないものなのかどうなのかという意見を聞いているんですから、そういう横やりを入れてそらすような答弁をしないでください。
○南野国務大臣 内心の自由は憲法上に保障されております。
○辻委員 その上で、要するに、法律の規定がどんどん拡大解釈されていって、人権が侵害される方向で、しかも内心の自由が侵害される方向で治安維持法は拡大解釈されていって、最終的に廃止になったんですよ。そういう歴史的経過を教訓化するという姿勢をあなた自身はお持ちなのかどうなのか、その点を聞いているんです。(発言する者あり)
○南野国務大臣 一般論として申し上げるならば、歴史的なものから学ぶということは、これは大切なことだと思っております。
○辻委員 それだけのことだとかいうようなやじが飛んでいますけれども、それだけのことじゃないんですよ。
 だから、これは後ほど別の委員も、私もまた聞かせていただきますけれども、例えばオーバートアクトとか組織犯罪の団体性とか越境性とかいうことが全く規定されていない法案として今政府が提案していますよ。今政府の答弁で、いや、これは違うんだ、限定的にやっていくんだということを言っているけれども、それはどんどん別の解釈があり得るわけですよ。だから、そういう法案を提出するということは極めて紛らわしいんですね。
 国民の多くの方々が、こんなに傍聴がたくさんいらっしゃるように、注視している、極めて市民の権利、自由にかかわる危険性の高い法案だからこれだけの注目を浴びているわけですよ。そういうときに、過去の教訓をしっかりと受けとめるのであれば、今回の法案の提出に当たってそのことが生かされていなきゃいけないじゃないですか。今、受けとめるとおっしゃっているんだから、そういう受けとめる立場で今回の法案を見たときに、不十分な点があるんでしょう。どこが不十分なんですか。その点をお答えください。(発言する者あり)反対尋問だから誘導していいんですよ。当たり前じゃないですか。
○南野国務大臣 今提出させていただいている法案を不十分だと思って御提案しているわけではございません。でも、先生方がそれに関連しましてどのように御審議いただけるかということで、先生方の御審議を今いただいているところでございます。
○辻委員 治安維持法は、「日本国政府ハ日本国国民ノ間ニ於ケル民主主義的傾向ノ復活強化ニ対スル一切ノ障礙ヲ除去スベシ言論、宗教及思想ノ自由並ニ基本的人権ノ尊重ハ確立セラルベシ」というポツダム宣言十項を受諾して、しかし、日本の時の政府は治安維持法を廃止しなかった。そこで、一九四五年の十月四日にGHQが人権指令というものを出した。政治的、公民的及び宗教的自由に対する制限の除去の件というものを出した。そして、それを受けて、緊急勅令で一九四五年十月十五日に廃止になっているんですよ。
 だから、まさに治安維持法は、戦後の憲法の保障する内心の自由や結社の自由や表現の自由や信教の自由と衝突するものであるということであるがゆえに、こういうポツダム宣言十項の受諾に基づいて廃止になっているわけですよ。だから、そのことの意味をきちっと踏まえて、治安維持法と同じような内容の側面がこの共謀罪に見受けられるとすれば、それは問題なんですよ。そのことを本当にきちっとわきまえていただきたいというふうに思います。
 午前中の質疑を聞いていて、今のこの法案は、これは大林局長もおっしゃっていた、労働団体や市民団体に及ぼすものではないんだと。ないんだといって、だれが保証するんですか。為政者がそれを保証できるんですか。これは冒頭で申し上げたとおりですよ。これはやはり歴史を教訓化すべきであろう。
 治安維持法の経過について簡単に振り返りたいというふうに思います。これについては、まず政党、そして文化団体、労働団体、さらには市民団体、そして宗教団体、このようにどんどん広がっていった。これは、富田政務官いらっしゃるけれども、創価教育学会も、一九四三年に牧口常三郎さんと戸田城聖さんが検挙されていますよね。治安維持法は悪法だという理解を富田政務官はお持ちなんじゃないんですか。いかがですか。
○富田大臣政務官 それは政務官として答える立場にはないと思いますが、当然、政治家としては悪法だというふうに認識しております。
○辻委員 あなたは弁護士の立場で友人の弁護士に、共謀罪について、これは反対だと従来おっしゃっていましたよね。その点、いかがですか。
○富田大臣政務官 辻議員が、まさかこんな法案の審議に立ち会うとは思わなかったとおっしゃっていると同じように、私も、まさか答弁側に立つとは全然思っておりませんでした。
 おととしに、落選後復活当選して、初めてこの法案の説明を聞いたときには、確かに辻議員おっしゃったように、私は、その共謀、丸ごとの共謀、生の共謀というのはちょっと問題ではないかというふうに、課長から説明を受けてそのとおり思いましたので、そのとおり当時の課長に申し上げたことがありますし、友人にも、それはまずいんじゃないかと。きょう午前中の審議で、漆原理事の方から、その点についてプラスアルファの部分が必要ではないのかというような御提言がございました。私は、政務官になる前は全く漆原委員と同じように考えておりました。
○辻委員 では、その同じように考えておられた見解は個人としては変わっておられないと思うので、共謀罪について何が問題だと考えておられたんですか。その点、御説明いただきたいと思います。
 議論の前提としてそれは率直に言ってくださいよ。
○富田大臣政務官 いや、審議に必要なのかどうかわかりませんが……(辻委員「必要ですよ、これは。議論をちゃんとやりましょうよ」と呼ぶ)議論をちゃんとやるという前提でしたら、できましたら、質問通告にきちんといただければ、こちらもきちんと政治家として準備して、政治家としての議論をしたいと思うんですが、辻先生の場合、突然矢が飛んでくるものですからなかなか言えないんです。
 私もやはり誤解していた部分があって、生の共謀をそのまま処罰するのではないかというふうに当初の説明では思いました。共謀という行為を処罰するのではないのではないかというふうに考えていましたので、ちょっとこれは問題なのではないかと。
 ただ、それを一般の方に説明する際に、共謀という概念と共謀という行為、これをどう説明するかというのはなかなか難しい問題ではあるなというふうに思いますので、きょう午前中、漆原委員の方からなかなか示唆に富む御提言がありましたので、やはり大先輩は違うなというふうに今思っているところであります。
○辻委員 漆原委員が、自分の尊敬するとはおっしゃったかどうか知らないけれども、先輩が、主観説をいよいよ採用したんだと。大林局長に、これは主観説を採用したものかどうなのかと。大林局長、はっきり答えない。罪数だけからは原則例外が、要するに共謀罪がこれは例外だというふうには言えないんじゃないか、どうなんだと。大林局長は、断じがたいと言っているんですよ。
 結局、要するに、法制審の部会長の報告で、オーバートアクトはとらないと。一方で、条約の審議に臨んだ日本側の見解として、共謀罪は我が国のルールに適合しないんだという見解を示していた。どちらをとるのか。これも厳密にははっきり言わない。それは、オーバートアクトをとらないという方向でおっしゃったけれども、要するに、どれを原則として、どれを例外として政府が考えているのかはっきりしないんですよ。
 南野さん、これはどっちが原則で、どっちが例外なんですか。刑法体系の中で共謀罪が原則になっているんじゃないかという漆原議員の質問があったんですよ。大林局長は、断じがたいと言っているんですよ。原則、例外、どっちかわからないと言っているわけですね。
 そのときに、漆原議員は大臣に聞かなかったんですよ。なぜかわからないけれども、聞いていないんですよ。だから、私は漆原議員のかわりも兼ねてお聞きしますから、きちっと答えてください。
○南野国務大臣 我が国の刑事法におきまして、実行の着手がある場合に処罰することを原則とすることは、これは漆原先生がおっしゃられた問題点であろうかと思いますけれども、これがどちらかというと、私としても断じがたいということでございます。
○辻委員 いや、もう一回ちょっと確認します。今、どうおっしゃったのですか。もう一回ちょっと答えてください。
○南野国務大臣 我が国の刑事法におきまして、実行の着手がある場合に処罰することを原則とすることは、これは……(辻委員「断じがたい」と呼ぶ)いやいや、断じがたいのでありませんが。
 今申し上げました場合に処罰することを原則としつつ、実行の着手がなくても処罰するという点では法案の共謀罪は例外だというふうに思っております。
○辻委員 漆原議員の質問で、焼き鳥屋であいつをやっつけようというような話が出ていたと思うんですが、それについて、特定の犯罪を実行する具体的な合意が問われるんだから、内心の処罰とかそういう問題とは違うんだというふうにおっしゃっているけれども、特定の犯罪を実行する具体的な合意とは何なんですか。かみ砕いて言ってください。どういうレベルのことを言っているんですか、それは。
○南野国務大臣 単に漠然とした相談程度ではこれは足りずに、目的とか対象とか手段、実行に至るまでの手順、また各自の役割など、具体的な犯罪計画を現に実行するために必要とされる各種の要素を総合的に考慮して、具体性、特定性、現実性を持った犯罪実行の意思の連絡があることが必要であり、かつ、それで足りるというふうに考えられるということでございます。
○辻委員 要するに、団体性とか組織性とかいうことについて極めてあいまいで、どんどんひとり歩きするだろうというふうに私は思っているし、それは歴史的にもそうだし、この法案はとりわけそういう抽象的な規定でしかないんですよ。だから、その点については後でまたきちっと質疑をさせていただきたいというふうに思うんです。
 結局のところ、人間社会において、人と人とのつながりは、人間同士が交流をするわけですよ。だから、人間と人間が言葉を交わしたりして交通するわけですね。その言葉をかけ合った内容について、どのレベルのものが処罰されるのかどうなのかということが一義的にはっきりしないんですよ。
 刑法の罪刑法定主義は何かというと、何をしてはならないかということが明記されていて、ああ、それをしなければ自分は自由を束縛されないんだな、そういう意味での人権保障機能があるわけです。だが、この共謀罪については、何が許されて何がいけないのかというのが全然はっきりしないわけですよ。それは、国民の側にとっても、要するに、自分の行動の行為規範を立てるときに、何を基準にしていいかわからない。逆に言えば、為政者の側が何をするかわからないということが裏返しであるわけですよ。だから、これが危険な法案だというふうになっているわけですよ。
 つまるところは、内心の意思が発現をした、その発現の仕方で、具体的な行為にならなくても処罰されるというわけだから、結局、内心の処罰に帰するんですよ、これは。だから、憲法十九条の内心の自由を侵害することになるのではないかという強い疑念が指摘されているんですね。
 共謀ということについても、これは共謀共同正犯議論という中で、物すごく緩やかに、遠くで何かやっているのを、端っこの方にいても、それは現場で共謀したというようなことになるし、その場にいなくても順次共謀で共謀したということになるんですよ。
 そういうふうに考えていけば、独立罪としての共謀罪じゃないけれども、犯罪の共謀というふうになっているけれども、具体的にどういう外形的な行為が大丈夫で、大丈夫でないというのが明らかになっていないわけだから、結局、内心の自由に絞られるんですよ。
 こういう疑念について、大臣、国民にどうお答えになるんですか。御自分の言葉で語ってくださいよ。
○南野国務大臣 組織的な犯罪の共謀罪、これは人の内心にとどまる単なる意思を罰則するものではありませんし、また、具体個別的な犯罪行為と結びつかない合意を処罰しようとするものでもありません。さらに、この罪が成立するためには、団体活動などとしての当該行為を実行するための組織により行うことなどを合意することも必要であるということでございます。
○辻委員 では、違う聞き方をします。
 法案については、立法事実があって、立法目的があるということが不可欠だと思いますけれども、この法案の立法事実として語られるところによると、国際的に麻薬の取引があって、資金洗浄ということが一九八〇年代の後半ぐらいから国際的に大きな問題になっていたんだ、だから国際的な犯罪集団の取引行為について、これは規制をしないといけないんだということがそもそもの条約の制定に至った発端で、経過であったというふうになっていると思うし、この法案の趣旨についてもそこが述べられているだけなんですよ、共謀罪について。
 そうすると、今の日本の国内において、この法案をつくらなければいけないという立法事実というのはどういうものがあるんですか。お答えください。
○富田大臣政務官 直接的には、先生おっしゃるように、条約を国内法化する今回の法案ですけれども、では国内の立法事実が全くないのかといったらそういうことはなくて、先生も当然御存じのように、ピッキング犯罪とかカード犯罪にしても、また今回、おれおれ詐欺についても、かなり後ろに暴力団がくっついていろいろやっているというような……(辻委員「どこが越境的ですか」と呼ぶ)いや、越境性は問題ないですよ、そこは。国内の立法事実を言っているわけですから。その越境性の点はまた別だと思いますので。そういった組織犯罪集団がバックにある犯罪があるわけですから、それが立法事実だというふうに考えております。
○辻委員 富田政務官、すりかえ答弁はやめてくださいよ。法制審の第一回の審議の中で、そういう立法事実は存在しないと言っているじゃないですか。あなたの言っているのは条約とは関係ないんですよ。条約そのものの越境的な、国際的な犯罪ということについて、今日本においてどういう立法事実としてうかがわれるものがあるんですか。その点を聞いているんですよ。
○富田大臣政務官 法制審の第一回目では、先ほど申しましたように、今回は条約の国内法化ですから、その部分を直接考えていただきたいということは言いましたけれども、そのほかにも、先ほど私が申したように、組織犯罪集団が国内でいろんな犯罪を行っている、そういった立法事実もありますということをちゃんと事務方の方で法制審の先生方に説明しておりますので。
○辻委員 そうすると、立法事実というのは、国際的な、越境的な組織犯罪ではないんですか。違うということ。国内的な、おれおれ犯罪とかそういう詐欺的な犯罪が立法事実なんですか。いつからそういうふうに変わったんですか。だれが変えたんですか。
○富田大臣政務官 いや、国内的な立法事実もあると申し上げたのです。プラス越境性でいえば、蛇頭とか、外国の犯罪集団が日本の犯罪集団と連携してピッキング犯罪を行ったり、外国から入ってきている犯罪集団の構成員がさまざまな事件を起こしているのはもう明らかですから、それは先生のおっしゃる越境性を含んだ今回の立法事実になるというふうに考えております。
○辻委員 明らかではないですよ。では、それは統計上ちゃんと示してくださいよ。
 結局、ある法案を制定するんだということなわけだから、改正をするんだということなわけだから、こういうこともある、こういうこともある、こういうこともあるということを言えば、それで済む問題じゃないんですよ。一方でデメリットなり弊害があるということのバランスの中で、立法目的と立法事実が厳格に検討されなきゃいけないというところで論議をしているわけだから。
 ですから、そもそも条約の国内法化ということで言っているわけじゃないですか。では、条約が前提としていた越境的な犯罪、組織犯罪について、その側面における立法事実が日本国内的にあるのかないのか、この点を聞いているんですよ。おわかりでしょう、言っていることは。だから、それに限ってお答えくださいよ。これは大臣、お答えください。
○南野国務大臣 通告していただくとありがたいんですけれども、御指摘は、法制審議会において事務当局から、国内的なニーズにこたえるという形はとっておらず、条約締結のために必要な犯罪化等を図っていきたいということを基本に考えているとの発言がなされたことを指しているものだというふうに思います。
○辻委員 通告していますよ。立法目的について、立法事実についてと通告しているじゃないですか。撤回してください。
○富田大臣政務官 今の大臣が申し上げた通告をしていただければというのは、もう少し具体的に、先ほど先生の方からおっしゃったように、立法事実を裏づけるような資料があるのかというような御質問もありましたけれども、そういった点も含めて言っていただければ、準備した上で……(辻委員「質問取りで言っていますよ、それは」と呼ぶ)ちょっと、申しわけございません。それは……(辻委員「では、撤回しなさいよ。侮辱ですよ、それは」と呼ぶ)
○塩崎委員長 辻委員、ちゃんと委員長の指名を受けてから発言してください。
○辻委員 質問取りの段階で、立法事実、立法目的について、その点について言っていますよ。聞いていないというのは、それはそちらの内部問題でしょう。撤回してくださいよ。
○富田大臣政務官 先生の質問取りのペーパーは一枚紙で、項目が書かれたのはいただいておりますけれども、今言ったような、具体的に、こういう答弁しろという、こういう御質問があるという点については私ども聞いておりませんでしたので、その点で大臣の方が申し上げたと思っておりますので、誤解があったとすれば、それは撤回させていただきたいと思うんですけれども。
○辻委員 やはり、与党になると性格がゆがんでくるんですか。何で率直に物を語れないんですか。非を認めるということは、何ら恐れるべきことではないですよ。非を認めた上で、これをこう改善すると言うべきじゃないですか。だから傲慢に言いっ放しになったりするんですよ。それはもうやめましょう、そういうことは。
 そうすると、立法目的としては、要するに、条約でうたわれている越境的な組織犯罪が多発しているということについて、それを抑圧するというか防止するために条約を批准して国内法化するんだということが立法目的なんですか。そういう理解でいいんですか。
○富田大臣政務官 おっしゃるとおり、それも立法目的の一部でございます。
○辻委員 一部というのは、では他部は何があるんですか。ほかに何があるんですか。
○富田大臣政務官 先生が先ほど来質問されております、具体的な立法事実はあるのか、条約を国内法化する以外の立法事実はあるのかという点の、越境性も含んだ立法事実、先ほどから答弁させていただいておりますけれども、そのような点もあるということでございます。
○辻委員 それは今までの議論からは飛躍していると思いますね。
 そうすると、具体的な、暴力団の犯罪とか、国内法的な、要するに組織犯罪と言われるものが立法事実に入るんですか。では、それはどこまで入るんですか。答えてくださいよ。
○富田大臣政務官 ちょっと質問の御趣旨がよく理解できないんですが、どこまで入るかというその範囲を私の方から限定するわけにいきませんけれども、午前中の質疑で明らかになったように、国内の犯罪に対しても当然、共謀というものが対象になっていくわけですから、そこはおのずから限定されてくるというふうに理解しています。
○辻委員 だから、そういうお答えをされると余計、午前中、御党の議員が質問された疑念がやはり出てくるんですよ。
 六百十五の罪種にわたって共謀罪ということが適用になるわけでしょう。そうなると、原則か例外か、罪種の数からいうと断じがたいというような話になっているわけですよ。では、それはどこで限定されているんですか。
 そうすると、そもそもの越境的な国際的な組織犯罪ということからは、もうそれは一部であって、ほとんどは、国内におけるそういう暴力団の犯罪とか、そういうものを抑制するためにこの共謀罪を提案しているんだ、こういうことを富田政務官はおっしゃっているように思いますけれども、そういう理解になりますよ。
 では、そこで違うんだったら、厳密にどこがどう違うのか、限定してちゃんと語ってくださいよ。
○富田大臣政務官 限定して語るといっても、資料を持ち合わせておりませんので。
 先生の質問は、多分、越境性とは関係ないんだというふうに私が答弁したとすれば、それは国内の立法事実だけに基づいてやっているんだから、もともと条約の国内法化にはならないんじゃないかというふうに御質問されたいんだと思うんですが、両方含んでおりますので。
 もともと、この条約の国内法化というのは、越境的な犯罪で、先ほど先生がおっしゃったように、それが条約にまとまってきて、それを国内法化しようということですから、当然越境性を含んでおりますね。それ以外にも、国内でも国際的な犯罪がずっと来て、その中で越境性を要件にしていないものも当然ありますよね、国内の中だけでそういう犯罪が起きてくるわけですから、そこも当然含まれる。
 ただ、先生先ほどおっしゃったように、条文の数からいけば原則と例外が逆転しているのではないかというふうに思われるじゃないかというような御質問で、午前中局長が、確かに断じがたいというふうに答弁されたんですが、やはりそこは、漆原委員の御質問にありましたように、原則から見れば今回のは例外、例外中の例外であるというふうに私は思っております。
○辻委員 何が例外で何が原則であると御自分は何にも語っていないですよ。ちゃんと論証していない。人に説明をしていない。結論だけ言っているにすぎないですよ。
 そういうことで言えば、では、六百十五の罪種のうち、越境的な犯罪で対象となっている罪種は幾つなんですか、国内的オンリーなのは幾つなんですか。現に発生している犯罪の統計の数字なり、それを踏まえておっしゃってくださいよ。どれだけの妥当範囲がどっちに多くなるんですか、これは。
○富田大臣政務官 統計は、ちょっと残念ながら、今持ち合わせておりませんので。
 今、六百十五の犯罪で越境性を要件としているのは何なんだというふうにおっしゃいましたけれども、この法案では越境性は要件としておりませんので、その結果、その六百十五に当たる犯罪が対象になってきたというふうに理解しております。
○辻委員 だから、それはまた解釈のルールで三十四条二項をどう評価するのかとかいう問題に返っていくわけだけれども、そもそもは国際的な越境的な組織犯罪を防止しようということで出発したのが、ふたをあければ、六百十五の罪種で越境的な国際犯罪というのは、その中で実例としては挙げることが余り具体的にはできないような、そういう状況。つまり、法制審の第一回ではそういう立法事実はないんだと言われるような状況の中で、国内法化のみが自己目的化されて、結果として国内法化された現物を見れば共謀罪の方がむしろ原則になるような、そういう規定になっているわけですよ。
 では、それについて、市民の側から見て人権保障機能が果たし得るような特定がなされているかといえば、特定もなされていないわけじゃないですか。だからこんな大きな問題になっているんですよ。
 だから、そこについて、では、統計的な数字を示してきちっと答えてくださいよ。きょうでなくていいから。それはお約束いただけますか。
○富田大臣政務官 ちょっとこちらからの質問になってしまって申しわけないんですが、統計を出すということであれば、今先生が言われていたのは、六百十五の犯罪の中に越境性から考えられる犯罪がどういう罪種があって、それについて具体的にどんな事件が起きているんだというような統計を出せという御趣旨ですか。(辻委員「まずはそうですね」と呼ぶ)
 では、済みません。こんなペーパーは見たくないんですが、当局の方で、すべての犯罪について国際的にのみ行われるか否か、にわかに断じがたい、組織的犯罪集団はあらゆるものに手を出すというふうなペーパーが回ってきましたが、実際に、暴力的な犯罪集団がこの罪種には手を出さないとかいうことは、これは言えないとは思うんですね。ただ、先生がおっしゃっているように、では、これまでに具体例があったのかというようなものは、裁判例なり、法務省の方にもし統計があれば、それはお出ししたいと思います。
○辻委員 では、それは必ずきちっと出してください。
 しかし、結局のところ、何で今この時期にやるのかというのは、大義名分としては、条約の国内法化なんだというその一点でしょう。そういうことでいいんでしょう。今やらなきゃいけないというのはその一点なんでしょう。大臣、それはどうなんですか。お答えください。
○南野国務大臣 やはり日本としても、国際的なメンバーの中に入りながら条約の締結をし、そういう安心、安全の国を築いていくという方向に持っていきたいと思っていることでございます。
○辻委員 国連が条約の国内法化に当たって立法ガイドというのをつくっているんですが、これは何年に作成されたものですか。
○小野寺大臣政務官 公表されたのは、ことしということになっています。
○辻委員 質疑はまだ継続してやりたいというふうに思いますけれども、そうすると、法制審でこの共謀罪の要綱案を提出するに当たって、この立法ガイドは参考にしているんですか、していないんですか、それはどちらですか、法務大臣。
○南野国務大臣 今先生御指摘の立法ガイドというのは二〇〇四年に出されておりますけれども、我々のこの法というものはそれ以前に出させていただいているものでございます。
○辻委員 そうすると、今回の共謀罪の法案は、そもそも国連のつくった立法ガイドを踏まえて法制審にかけられていないということをおっしゃっているわけですよ。
 この立法ガイドの中を見れば、今回の共謀罪の法案と大きく食い違っている点が多々ありますよ。それについて、これは今後の質疑の中で、法務当局の見解、そもそも翻って立法目的、立法事実はやはりないんじゃないか。だから、早急にこれは廃案にすべきだということで、もう一度これは質疑をさせていただきたいと思います。
 時間が参りましたので、きょうのところはこれで終わりにいたします。
○塩崎委員長 次に、松野信夫君。
○松野(信)委員 民主党の松野信夫です。
 共謀罪を中心に質問をさせていただきたいと思いますが、既に午前中からいろいろ議論がありましたように、国民の人権に関する大変重大な法案だ、まずこういう認識、これは恐らく大臣もお持ちだろうと思います。
 それだけの大変重要な法案ですから、例えば委員会の定足数の問題にしても、答弁の方につきましても、やはりきちっと法令、規則、これは遵守した形で、違法のない形で、しっかり審議をしなきゃならないというふうに思いますが、まず、大臣、この点はよろしいですね。
○南野国務大臣 先生おっしゃるとおりだと思います。
○松野(信)委員 そうだとしますと、先ほどちょっと辻委員も指摘がありましたように、この席に滝前副大臣がいらっしゃらないというのは大変重大な問題である、大変私も残念に思います。
 滝さんには、いろいろ答弁していただきました、なかなか立派な答弁もしていただいて、深く敬愛をするところでありまして、そういう滝前副大臣がおられないということで、これもちょっと調べてみたんですが、やはり、法律上はきちっと副大臣を置かなければいけない、こういうふうに思います。
 一つは、国家行政組織法という法律があります。この第十六条に、「各省に副大臣を置く。」ということで、「副大臣は、その省の長である大臣の命を受け、」云々として、職務の代行もする、こういう規定になっています。
 それから、もう一つ別の法律、これは平成十一年の七月に施行され、当時、政治改革をしなきゃいけない、政治家同士の議論をしなきゃいけないということで、政府委員をできるだけ廃して、大臣、副大臣、政務官ということで、国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律というのが制定、施行されているわけです。この第一条を見ますと、今申し上げたように、政府委員制度の廃止、副大臣等の設置について定めるということで、第八条に、各省に副大臣を設置する、こういうふうになっているわけで、私はこの理解は、副大臣を置くか置かないかはその当該大臣の自由だというのではなくて、これは必ず置かなければいけないというふうに読むべきだと思いますが、この点はどうですか。
○南野国務大臣 国家行政組織上どのように考えるべきかということについては、私からの答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
○松野(信)委員 それはおかしいですね。先ほど辻委員の似たような質問に対して、置かなければいけないというふうに答弁されて、私の質問に対しては答弁を差し控えさせていただきたい、これはどういうことでしょうか。おかしいじゃないですか。
○南野国務大臣 私の気持ちと、それから法律上の解釈ということで御答弁させていただきました。
○松野(信)委員 法務大臣たる者が、副大臣を置かなければいけないのか、置くか置かないか自由だというのか、そこのところの判断もできないんですか。ちょっとそれはどうなっているんでしょうか。
○南野国務大臣 それには解釈の問題もありますけれども、やはり決められたメンバーはそろっていてほしいというふうに思っておりますし、そろって審議をさせていただきたいとも思っております。
○松野(信)委員 きょうの一番最初の質問に、これだけ重要な法案の審議ですから、いやしくも違法な状態で審議をしてはならないということについて、大臣もそれはそのとおりだという答弁をいただきました。そうであれば、今申し上げた国家行政組織法、これは十六条にあります、それからもう一つの国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律、これでも置かなきゃいけないとなっているのに、置いていない。しかも、これは、副大臣というものは機関の長である大臣の申し出により内閣が任免を行うということになっているわけです。ですから、非常に気の毒ですけれども、敬愛する滝前副大臣は南野法務大臣の申し出で罷免された、こういうことになっているわけですよ。そうすると、その後の副大臣も、これはこういう法律に従って南野法務大臣が速やかに手続をとって新しい副大臣を選任しなきゃいけないと思いますが、どうですか。
○南野国務大臣 本日の段階で、私から副大臣の任命について申し上げることは差し控えさせていただきたいと思っております。
 富田政務官が全力を尽くしてくださっております。私も全力で頑張ります。
○松野(信)委員 それは、法務大臣、政務官が全力を尽くしていただくのは当然の話です。しかし、冒頭言ったように、きちっと法律で決まっているわけですから、それを無視してどんどん審議していいという理屈にはならないわけです。
 それで、ちなみに言うなら、法務大臣がもし欠けた場合、法律上は副大臣が職務代行することになっているんですけれども、ではどうするんですか。法務大臣が欠けた場合はどうするんですか。
○南野国務大臣 まだ私を殺さないでください。
○松野(信)委員 そんなことを言っているんじゃない。今の発言はちょっと撤回してください。私は別に、大臣を殺そうというふうなことを一言も言っているわけじゃないんですから。ちょっと今のは撤回してくださいよ。
○南野国務大臣 はい、撤回させていただきます。
○松野(信)委員 別に亡くなるかどうかということでなくて、法務大臣が欠けることはあるわけですから、そのために副大臣を置かなきゃいけないというふうに法律では規定しているわけです。ですから、それは南野法務大臣が、速やかに副大臣を選任いたします、今そういう手続をとっていますとおっしゃるなら、私も、それはああそうですかということでいいかもしれませんが、全くどうもそういう動きが見られないものですから、きょう質問せざるを得ないわけです。どうでしょうか。
○南野国務大臣 きょうの段階でというふうに申し上げておりますが、きょうの段階で、私から副大臣の任命については申し上げることができないということでございますので、どうぞ御了解いただきたいと思っております。
○松野(信)委員 そうしますと、きょうの段階でまだ副大臣について任命に関する申し出、どうもできていないということだとしますと、先ほど申し上げた二つの法律にこれはますます違反するんです。ますます違法になります。
 既に、これは法制局の方が、二〇〇二年の事例で答弁をされていて、速やかに選任するという手続をとらない限り違法だというふうに言われているんですよ。それは御存じありませんか。
○南野国務大臣 私が申し上げたいのは、副大臣の任命についていろいろと申し上げているとか申し上げていないとかということを、きょうの段階で申し上げられないということを申し上げているということです。
○松野(信)委員 きょうの段階で申し上げられないというのであれば、大臣みずからがこの二つの法律を踏みにじっているんですよ。このままじゃちょっと審議できないですよ。せめて大臣から、副大臣については法律にちゃんと規定があるように、自分としてはこの方向で進んでいきます、せめてそのくらいの答弁がとれなければ、これは質問できないですよ、今後も。これは大体違法なんですから。これは二つの法律に明らかに反します。
 それとも大臣、いや、明らかにこれは違法ではありません、これは極めて適法な状態のままで委員会が開かれているというふうにおっしゃいますか。おっしゃるんだったらその根拠を言ってください。
○南野国務大臣 最終的には、これは内閣の政治的判断になるということでございます。
○松野(信)委員 そんな内閣の政治判断かどうかなんて聞いていないんですよ。冒頭私が質問したように、これだけ重大な法律ですから、違法な状態で審議をしてはならない。それについては大臣も、それはそのとおりだと言ったわけです。今副大臣が欠けるというのは、この二つの法律に明らかに違反ですよ、違法ですよ、もし大臣が、違法ではない、適法なんだというふうにおっしゃるんだったら、その適法な根拠を言ってくださいという、その答えが出ないですよ。
○塩崎委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○塩崎委員長 速記を起こしてください。
 南野法務大臣。
○南野国務大臣 先ほど申し上げました、最終的には内閣府の判断ということになろうと思っておりますけれども、法務省といたしましても、鋭意努力を重ねていくところでございます。
○松野(信)委員 これまでの内閣法制局の答弁では、単に努力をするというだけでは違法状態は脱しない、こういうことですよ。速やかに選任しなきゃいけない義務があるんです、法律上は。それはお認めになりませんか。(発言する者あり)法制局はいいですけれども、法務大臣の認識を。
○南野国務大臣 現在でも鋭意努力いたしておりますので、お認めいただきたいと思います。
○松野(信)委員 この問題は、大臣がお考えのようにそう簡単な問題ではないんですよ。法律上は、きちっとやはり副大臣、政務官を選任しなきゃいけないんです。これは先ほど申し上げた法律で、政府委員を廃して政治家同士がきちっと委員会の中で議論しようという、まさに政治改革の議論の中で出てきたことなんですから、ちょっとどうも余り軽く考えて、副大臣がいなくたって自分がしっかり答弁できるというふうにお考えじゃないかなというふうに思いますけれども。ぜひこれは、早急に選任する義務がある、この点だけはしっかり申し上げておきたいと思います。
 それでは、国際組織犯罪防止条約についてまずお伺いをしたいと思いますが、この条約が出てきた背景というのは、国際的な犯罪組織、例えばアルカイダとかあるいはマフィアだとか、要するにそういう国際的な組織犯罪を国際的にどういうような仕組みで防止をするのか、ここからスタートして、まさにそのために条約を制定し、それを踏まえて各締約国は国内法化する。まさに出発点はここにあるわけですけれども、この点はそのとおりだというふうに理解してよろしいですね。
○小野寺大臣政務官 委員御指摘のとおり、この条約というのは、法の網をかいくぐって暗躍する国際的な犯罪組織、組織犯罪に効果的に対処するために、各国の法制度を整備して法執行活動を強化するとともに、国際的な組織犯罪の捜査や訴追における国際協力の促進を目的とするということがこの目的になっております。
○松野(信)委員 条約の第二条で定義がありまして、第二条の(a)のところで、「「組織的な犯罪集団」とは、」云々として、一定の「犯罪を行うことを目的として一体として行動するものをいう。」こういう規定があり、また、第三条のところには、「組織的な犯罪集団が関与するものの防止、捜査及び訴追について適用する。」こういうことで適用範囲が規定をしております。
 そうすると、この条約自体、いわゆる組織的な犯罪集団で、また性質上、日本語の訳では国際的というふうに言われていますが、原文の英語でいいますとトランスナショナルというふうになっていますので、私は、国際的というふうに訳するよりは越境的ということで訳するのが正しいのではないかと思いますが、いずれにしろ、そういう越境的な性質、それから組織的な犯罪集団が関与する、これの防止だということで二条、三条に出ているわけで、これが全体としてその後の条文にもすべてかかってきて、この条約としては作成されている、こういう理解でよろしいですね。
○小野寺大臣政務官 基本的にはその理解でいいと思います。
○松野(信)委員 それで、第五条で、今問題になっております共謀罪あるいは参加罪、これを規定しているわけです。
 条約の第五条では、「組織的な犯罪集団への参加の犯罪化」、こういうような表題のもとに、共謀罪それから参加罪が規定をされているわけです。我が国の方は、参加罪を採用しないで共謀罪を国内法化するんだ、こういうことで現在この法案の審議があるわけです。
 それで、念のために確認をしておきますが、今回のこの法案というものは、条約が要求をしている範囲とぴったり一致するものなのか、条約が要求をしている以上に犯罪化というものを規定はしていないのか、あるいは、条約が要求しているよりも、もっとより圧縮した形で犯罪構成要件をつくっているものなのか、この点はどうですか。
○富田大臣政務官 基本的には条約と一致しているというふうに理解しております。
○松野(信)委員 基本的には条約と一致して、つまり、条約が要求している、まさにそのとおりの中身で国内法化している、こういうことでよろしいんですね。
 基本的にはというふうに今富田さんは言われたので、そうすると、必ずしも、どうも例外規定があって、条約と少しずれて規定しているところがあるのかというふうに思いますが、もしそうであれば、どの部分が条約と違っているのか、明らかにしてください。
○塩崎委員長 答弁できますか。(松野(信)委員「ちょっと時計をとめてくださいよ」と呼ぶ)
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○塩崎委員長 速記を起こしてください。
 富田政務官。
○富田大臣政務官 今回の法整備は、条約を締結するために必要不可欠な立法措置を基本としつつ、我が国の既存の法制との整合性及び条約の趣旨等を考慮して特に必要と考えられる立法措置を講じております。そういう意味で、そこの部分については全く一致しているというわけではございません。
 例えば、証人等買収罪の対象犯罪が組織犯罪である場合の加重処罰とか、あと、犯罪収益に、共謀した者がその共謀に係る犯罪の実行のための資金として使用する目的で取得した財産を加えていたり、こういう点がプラスアルファになっております。
○松野(信)委員 そうすると、条約で要求されている以上の犯罪化、規制化がなされているということでよろしいですね。今、何か文書をざっと読まれたんでわかりにくかったんですけれども、この部分は条約で要求されている以上の犯罪化、規制化をしているというところをもう少し具体的に説明してください。
○富田大臣政務官 条約担保のための最低限の立法措置とは言いがたいものとして、まず、贈賄罪に関して国民の国外犯を処罰するものとする、これは刑法三条の改正になっておりますが、これがまず第一点。第二点としまして、犯罪収益に証人等買収罪により供与された財産を加える、これは組織犯罪処罰法二条二項三号の改正等がございます。
○松野(信)委員 要するに、今回の法案というのは条約に定めている以上のものを言うならば盛り込んでいるということで、これはこれでまた後で質問させていただきますが、とりあえず条約五条の点について、これが共謀罪の条約での根拠条文になっていると思いますので、これについて確認をしておきたいと思います。
 まず第一点、念のためにということですが、条約第五条の第一項のところで、「必要な立法その他の措置をとる。」ということで、(a)のところに「次の一方又は双方の行為」ということで、(a)の(i)のところが、これが要するに共謀罪ということですね。それから、(a)の(ii)のところが参加罪ということになっていて、それから次に、(b)のところでは「組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の実行を組織し、指示し、ほう助し、教唆し若しくは援助し又はこれについて相談すること。」ということになっているんですが、今回の法案の共謀罪というのは第五条の一項の(a)の(i)を国内法化したものだ、こういう理解でよろしいんですか。
○富田大臣政務官 そのとおりでございます。
○松野(信)委員 そうすると、第五条一項の(b)の方は、これは国内法化は必要ないとお考えですか、それとも別のお考えがあるんでしょうか。
○富田大臣政務官 現行法の幇助犯、教唆犯で担保されているというふうに理解しております。
○松野(信)委員 そうすると、(b)の方は、もう既に教唆、幇助で国内法化が済んでいるから、これについては新たな手当ては必要ないんだ、今こういう御答弁をいただきました。
 しかし、(b)のところについて見ますと、それは「教唆」とか「ほう助」というふうにありますから、それは確かに、現行法上の教唆とか幇助というのがあるからそれで足りているというのもわからないではないんですが、(b)の最後のところに「相談すること。」というのがあるんですね。これは国内法でもう既に足りている、こういう理解ですか。
 ちょっと時計をとめてくださいよ、答弁できないなら。
○塩崎委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○塩崎委員長 速記を起こしてください。
 富田政務官。
○富田大臣政務官 「相談」という文言だけ見ますと、これまでの刑法における共同正犯、教唆犯、幇助犯にストレートに当たらないのではないかという前提で先生の今の御質問が出ていると思うんですが、基本的には、相談という行為は、共同して行うのか、あるいはその一部をだれかがその正犯を幇助するのか、あるいは教唆するのかというそれぞれの行為に含まれているというふうに法務省としては理解しております。
○松野(信)委員 しかし、それはちょっとおかしいんじゃないですか。相談がその教唆とか幇助に含まれていると今答弁がありましたけれども。
 それなら、この相談というのは、あくまで犯罪実行についていろいろと相談、ある意味では謀議をすることになりますから、では、この相談と、その前の五条の(a)の(i)の方の共謀とはどう違うんですか。
 答弁できなければ、ちょっと時計をとめてください。
○塩崎委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○塩崎委員長 速記を起こしてください。
 富田政務官。
○富田大臣政務官 先生の御指摘の(a)と(b)ですが、(a)の方は実行行為前の行為について規定しておりまして、(b)の方は「組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の実行を組織し、指示し、ほう助し、教唆し若しくは援助し又はこれについて相談すること。」というふうになっておりますので、実行行為を前提とした相談というふうになっておりますから、法務省としては、これはこれまでの共同正犯、幇助犯、教唆犯に含まれているというふうに理解しております。
○松野(信)委員 それはおかしいですよ。そうすると、(a)の方は実行を前提としない共謀というのがあり、(b)の方は実行を前提とする相談がありと、こういう理解ですか。本当によろしいですか、それで。
○富田大臣政務官 (a)の「次の一方又は双方の行為」の後に括弧書きで、犯罪行為の未遂または既遂に至る犯罪とは別個の犯罪という前提で(a)が立ち上げられておりますので、(a)の方はそこに至っていない、(b)の方は至っているということで、先ほど私が答弁したような解釈になるということであります。
○松野(信)委員 それはおかしいですよ。(b)の方も、あくまで一定の組織的な犯罪集団が関与して重大な犯罪についていろいろ組織をしたり相談をしたりという、これを独自に立法で措置をとるというふうに、この条約はそう読むのが私は常識的なところだと思いますよ。
 それで、(a)の方は、犯罪の未遂、既遂とは別に、共謀罪というだけで一つの犯罪が類型化されるというだけのことですから、今の富田さんの説明はちょっとおかしいと思いますが、どうですか。
○塩崎委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○塩崎委員長 速記を起こしてください。
 富田政務官。
○富田大臣政務官 法務省の方の解釈は先ほど私が答弁したとおりなんですが、条約の解釈ということですと、これは外務省の方のお考えですので、法務省としては、こちらが先ほど御答弁したとおりに考えております。
○松野(信)委員 この条約は、法務省あるいは外務省、早く共謀罪を審議したい、審議したいということで、かねてから手ぐすねを引いたようにしてやっていたわけですよ。だから、相当の準備をした上でもうずっと継続審議なりなんなりで来たわけですから、それを今ごろになってしっかりした答弁ができないというのは、今まで何をやっていたんですかというふうに私も言いたくなるのです。
 それでは、もう一つ、この五条のところがまさに共謀罪の根拠条文になっているから、しかも、先ほど、これをもとに犯罪が膨らんでいないかどうかということまで聞いているわけですからね。
 では、五条の1の(a)の(i)のところで、金銭的利益やその他物質的利益を得ることに直接または間接に関連する目的のための重大犯罪、こういう規定がありますので、本来これはいわゆる目的犯だ、国内法化するに当たっても目的犯として立法化するんだ、こういう理解でよろしいですか。これも基本的な質問ですからね。
 ちょっと速記をとめてくださいよ。
○塩崎委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○塩崎委員長 速記を起こしてください。
 富田政務官。
○富田大臣政務官 先生御指摘のように、条約の方には確かに目的というふうにされているんですが、本法案では目的犯というふうな形にはしておりません。
○松野(信)委員 そうすると、先ほど申し上げたように、条約のとおりに国内法化されているかどうかというところで、先ほど富田政務官の方からは、いや、必ずしも、条約以上に犯罪化、規制化しているところもあるとおっしゃったけれども、今のこの五条の共謀罪の点については特に触れられていませんでした。
 つまり、条約上はあくまで目的犯として、要するに目的という形で犯罪化を限定しようというふうになっているにもかかわらず、実際に出てきた国内法化のところでは目的という形の限定はしないで広げているんだ、こういうことでいいんですか。
○富田大臣政務官 言葉だけをとらえますとそういうふうな解釈も可能かと思うんですが、先ほど先生の方からも御紹介ありましたけれども、条約に言う「金銭的利益その他の物質的利益」とは、例えばわいせつ物をやりとりするような、主たる動機が性的欲望を満たすことにある犯罪も含まれるなど、極めて広い意味を有すると解されております。ゆえに、これを得ることに直接または間接に関連する目的で足りるとされておりますので、その適用範囲はさらに広くなりまして、現実的には、純粋に精神的な利益のみを得る目的の犯罪等が除かれるにとどまるものというふうに考えております。
 他方、そもそも組織的な犯罪の共謀罪が成立する場合にはこのような目的が認められるのが通例であると考えられます。すなわち、まず、団体の活動とは団体の意思決定に基づく行為でありまして、その効果またはこれによる利益が当該団体に帰属するものでありますので、組織的な犯罪の共謀罪が成立するためには、共謀者間に団体に効果、利益を帰属させる意図が必要であり、条約の規定する目的が認められるのが通例であろうと考えられます。
 また、不正権益目的には、いわゆるみかじめ料の獲得等を目的とするものですから、常に条約の規定する目的が認められると考えられます。
 なお、仮にそのような目的が認められない共謀の事案があったとしても、それが団体の活動として当該犯罪行為を実行するための組織により行われるものという厳格な要件を満たすのであれば、そのような目的がある場合と同程度に犯罪実現の危険性が高く、また犯罪の事前抑止の必要性も高いと考えられますので、そのような目的がある場合と同様に罰すべきであるというふうに考えております。
 そういう意味では、条約が目的で限定的にしたことを、この法案では、目的そのものを入れておりませんけれども、同様に限定的な解釈になるというふうに考えております。
○松野(信)委員 何かぺらぺらと読まれたので、ちょっとよく追えなかったんですが、要するに、条約五条のところでは目的という形で限定をしている、しかし、今回国内法化で出てきた法案では、正面切って目的という形の限定はしていないけれども、事実上、目的に関する縛りがかかってくるだろう、要約するとそういうことでよろしいんですか。
○富田大臣政務官 要約していただきまして、そのとおりでございました。もともと、目的の方がかなり漠とした形で限定しておりますので、要約していただければ、先生が今おっしゃったとおりだと思います。
○松野(信)委員 しかし、実際に、条約は明らかに目的ということで限定をして目的罪を予定している。ところが、今回の国内法化は目的という縛りは形式的には出てこないわけで、それは富田政務官は事実上縛りがかかるだろうというふうな答弁ですけれども、しかし、これは富田さんが一々一々犯罪を摘発するわけじゃありませんから、実際に法を施行するのは別の人ですから、やはり法律上目的というのをしっかり書いておかないときちんとした縛りにならないと思いますが、目的というのをなぜ入れなかったんですか。
○富田大臣政務官 先ほどの繰り返しになってしまいますけれども、条約の方で言われる目的はかなり範囲が広くて、現実的には純粋に精神的な利益のみを得る目的の犯罪が除かれるだけというふうに解釈されておりますので、そういう意味では、目的で、ある意味限定性を加えるという意味がかなり失われているのではないかな。現実問題としては、ほかの要件に当たる場合にこの目的と、中に入るようになるのではないかと先ほど答弁させていただきましたけれども、そのように考えております。
○松野(信)委員 その点について、私は、やはりきちっと国内法化でも目的をすることがこの条約の厳密な意味での国内法化につながるものだ、これは指摘しておきたいと思うのです。
 それから、この条約のところで、「金銭的利益その他の物質的利益を得ること」を目的とありますので、物質的利益というふうにありますから、例えば政治的、精神的、宗教的な利益というものはこの条約上は除外されている、こういう理解でよろしいですか。
○小野寺大臣政務官 純粋として精神的なものについては除外されているというふうに言えると思います。
○松野(信)委員 そうすると、政治的、宗教的なものも除外されているということで、確認ですけれども、いいですね。
○小野寺大臣政務官 純粋に精神的なものについては除外されているということだと思います。
○松野(信)委員 それは聞きましたから、私が聞いているのは、精神的じゃなくて、政治的とかあるいは宗教的利益というものはこの目的に入るのかどうかということです。
○小野寺大臣政務官 何度も同じことで恐縮ですが、純粋に精神的なものであれば排除されるということです。
○松野(信)委員 ちょっと、答弁をもう少しまじめにやってくれませんかね。
 条約は「金銭的利益その他の物質的利益」というふうになっているので、何も別に純粋精神的な利益を除外するとは書いていないんですよ。だから、宗教的な目的のために共謀するというのは除外されるというのがこの条約の政府としての解釈になるのではないんですか。
○小野寺大臣政務官 純粋に宗教的なものあるいは政治的なものは除外されるというふうに言えると思います。
○松野(信)委員 そうすると、それはこの犯罪の中から除かれるとした場合に、では、今度の共謀罪の国内法化の本件の法案では、その点はどうなりますか。つまり、純粋にというから、純粋に政治的、宗教的、精神的な目的というようなものについては犯罪としてどう扱うんですかという質問です。
○富田大臣政務官 条約の方には目的がございますけれども、本法案では目的がかかっておりませんので、ほかの要件を満たせば共謀に当たるというふうになると思います。
○松野(信)委員 そうすると、これまた条約を拡大しているということになりますね。
 つまり、条約では、精神的なものあるいは宗教的なものを目的とするのは、これはもう除外されるんですよ。ところが、今の富田政務官の答弁だとそういうのも国内法では入ってくるということですから、これまた条約を拡大しているということで、そういうふうな理解でよろしいですね。
    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕
○富田大臣政務官 繰り返しになってしまいますが、組織性の要件がかかっているということで、先ほど私の方で、その組織性の要件が認められる場合には、条約の方で目的等を含めた範囲内のものが全部犯罪に当たるというふうに御答弁させていただきましたけれども、組織性の要件にかかってくるのであれば共謀の中に入ってくるというふうに理解しております。
○松野(信)委員 同じことの繰り返しだから、この点についてはもう避けたいと思いますが、要するに、この点も、ある意味では条約とは違う形で国内法化されてきているのが今度の法案だというふうに指摘せざるを得ないと思います。
 それで、この条約五条の点については、これまた別の委員も指摘がありましたけれども、当初日本政府というものは、この五条の共謀罪は我が国の法制度に合わない、こういうふうに言っていたわけですね。これは第二回のアドホック委員会の中で日本政府が提出をして、原文は英文ですけれども、我が国の法制度に合わない、あるいは相入れないということで、英文の方を見ますと、「our legal principle to criminalize the acts of conspiracy and preparation of all serious crimes.」というふうに言っていますので、我々の基本的な原則にはこの共謀罪は合わないというふうになっていたわけです。
 まず、その点は現在でもそういうふうに、この第二回の委員会に出した日本政府の方針というものは現在でも変わっていない、維持されているということで、それはよろしいですか。
    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕
○富田大臣政務官 先生御指摘のとおり、アドホック委員会の第二回の書面を先ほど読んでいただきましたけれども、条約交渉の初期の段階では、現在の五条に相当する規定が犯罪化を義務づけておりましたのは、共謀罪については、重大な犯罪を行うことを合意すること、これだけでありまして、また参加罪についても、組織的な犯罪集団の犯罪活動またはその他の活動に参加する行為というふうな規定でございました。この当時は、いまだ共謀罪の対象となる重大な犯罪の範囲が定まっておらず、また共謀罪につきまして、現在のように「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件を付することも認められていませんでした。
 我が国におきましては、一定の犯罪については実行の着手前の共謀、陰謀や予備行為を処罰する罰則があるものの、すべての犯罪の共謀を一般的に処罰の対象としておらず、また、特定の犯罪行為との結びつきがない犯罪集団への参加を同様に犯罪とする罰則はありませんでしたので、そのような発言をさせていただきました。
○松野(信)委員 それはわかっているんですが、こういうふうに日本政府が第二回のアドホック委員会で、これは第一項から全部で十二項までにわたって、日本の方針、考え方というものを明らかにしているわけです。重大犯罪についてはという形で、今富田政務官が言われたとおりですが、この考え方というものは現在でも日本政府の考え方であるということでよろしいのか、それとも、第二回のアドホック委員会で出した日本政府のこのペーパーの考え方というものはその後変わったんだ、方針を変更したんだということになるのか。この点はどうですか。
○塩崎委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○塩崎委員長 速記を起こしてください。
 富田政務官。
○富田大臣政務官 当初の段階では先生の指摘していただきました主張をしたわけですが、その後、幾つかの提案をさせていただきました。我が国の提案のうち、別の類型の参加罪の規定を設けるというような提案もしましたが、これは各国に受け入れられませんでしたが、共謀罪の要件に「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件を加える点につきましては、関係国との調整の結果、「国内法上求められるときは、」「組織的な犯罪集団が関与する」という要件を付すことができる旨の規定とすることが各国に受け入れられました。
 なお、共謀罪の対象となるべき重大な犯罪の範囲につきましても種々の議論がありましたが、各国による協議の結果、現在の二条(b)において定義されているとおり、「長期四年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重い刑を科することができる犯罪」とされたところであります。
○松野(信)委員 それでは、端的にお伺いしますが、この日本政府の方針の中で第五項のところ、これは正式な翻訳も要求したんですが、英文しか渡されませんでしたので、英語で議論しようかと思ったけれどもそうもいかないでしょうから、私の方でちょっと訳をしたのですが、もし訳が間違っていたらおっしゃってください。
 私がいただいた英文から見ますと、すべての重大犯罪の共謀または予備の諸行為を犯罪化することは、我が法制度に首尾一貫しない……
○塩崎委員長 松野委員、翻訳がちょっと手元に今ないようなんですが。
○松野(信)委員 第五項。(富田大臣政務官「アドホック委員会の我が国の発言の五項ですか」と呼ぶ)アドホック委員会に提出した我が国の対処方針、全部で十二項あります、それの第五項。
 これもちゃんと質問通告で、五条に対する日本政府の方針とその後の変更点、出しているんですよ。だから、これに基づいて質問すると。私はちゃんと和訳を要求したけれども、和訳は出せないと言うから、では……(発言する者あり)
○塩崎委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○塩崎委員長 では、速記を起こしてください。
 松野委員から、事前に政府に対して英語で書かれたポジションペーパーの和訳を欲しいと言われたけれども、いずれの省も対応していないということでありますので、次回までにその和訳を両省力を合わせてちゃんとつくって、もともと英語であることはわかっていますが、その上で松野委員の残余の時間を別途とるということで、きょうの松野委員の御質疑は、これで一たん終わりにするということでいきたいと思います。そういうことで両省よろしいですね。――それでは、大変申しわけありませんが、そういうことで御了解をいただいたということで。
 次に、松本大輔君。
○松本(大)委員 民主党の松本大輔です。
 さっき、途中で配ってくださいと申し上げたんですが、もう配っちゃってください。
 松野委員は非常にお優しい方で、私はもうちょっと底意地が悪いので、さっきの松野委員の御質問の中で、ちょっと気にかかるところがあったので取り上げたいと思います。
 それは、副大臣が任命されていないというのは違法状態ではないかという指摘だったわけですが、今そこにある、今ここにある違法状態を解消できない大臣が、今回の共謀罪であれば犯罪対策の国際協力だということらしいんですが、どうやって将来起こり得る越境組織犯罪に対処できるんでしょうか。今回の共謀罪創設に関しては、人権侵害を引き起こす可能性も高いという指摘がなされているわけですが、今ここにある、今現在ここにある違法状態を解消できない人が、どうやって将来起こるかもしれない人権侵害を防げるんだと、私にではなくて、この審議を見ていらっしゃる国民の皆さんにちゃんと納得のいくような説明をしてほしいと思います。大臣、どうぞ。
○南野国務大臣 先ほども御質問いただきましたけれども、また先生からの御質問でございます。
 副大臣の設置というのは、国会審議の活性化、政治主導の政策決定という目的を果たすための内閣の政治的判断を行うものでなく、一時副大臣が欠けたことをもって、即座に違法であるとか、これは違法状態にあるとかということは言えないというふうに思っております。
○松本(大)委員 内閣の責任でというのが先ほどの松野委員とのやりとりの中でもあったんですが、ただ、先ほど松野委員は質問の中でもおっしゃっていましたけれども、欠けた場合は速やかに副大臣を指名しなければいけないんだ、そうでなければ違法の状態なんだというような、法制局の解釈とおっしゃったと思ったんですが、そういう意見を御紹介されていたと思うんですね。
 それで、速やかに行動をとるのは、この場合、まず一義的には、内閣ではなくて、申請者である大臣なんですよ。速やかに行動をとらなければ違法なのであれば、まずはその違法状態を解消するために、大臣が副大臣に適任だと思われる人材を内閣に対して申請を上げなければ、これは、いつまでたっても違法の状態を大臣みずからが放置されている、しかも、大臣は法務大臣でいらっしゃいますから、違法状態を放置されているというそしりを免れないのではないかと思うんですが……(発言する者あり)今、違法務大臣という不規則発言があったんですけれども、委員会自体が違法務委員となりかねないというふうに思いますので、これはいつまでにこの違法状態を解消されるのか。速やかに行動をとらなければならないと定めているわけですから、では、大臣はいつまでに副大臣の申請を内閣に対して上げるのか、お答えください。
○南野国務大臣 繰り返しになりますけれども、違法状態にあるとは言えないものというふうに思っております。それにしておきます。
○松本(大)委員 今、違法状態ではないとおっしゃいましたけれども、先ほどの松野委員の御質問の中では、速やかに後任を選ばなきゃいけない、そうでなければ違法なんだというような見解が指摘されているわけですから、違法状態の解消に向けてやはり申請を上げなきゃいけないと思うんですよ。もしそうでなければ、では百歩譲って、大臣としては直ちに違法とは断じられないとしても、違法の疑いがあるかもしれないけれどもそれは放置される、こういうことですか。
○南野国務大臣 私は、放置するとかしないとか、そういうことは申し上げておりません。
 副大臣の設置については、国会審議の活性化、それから政治主導の政策決定という目的を果たすためには、これは大変大切なことである、判断を排除するものではないわけで、一時副大臣が欠けたということをもって、違法だと決めておられますけれども、これは即座に違法であるとか違法状態にあるとか言えないというふうに思います。けれども、先ほども申し上げましたが、可及的速やかに自分の意向というものは相談するということは、もう既に申し上げておりますので。
○松本(大)委員 今、可及的速やかにという御発言がありました。先ほどの御答弁の中では、鋭意努力をしておりますということだったんですが、では、現在申請自体は上げていらっしゃるんですか。つまり、申請自体は上げていらっしゃって、内閣がそれを受けるかどうか手元に保留されているのか、それとも、申請自体はまだ上げていらっしゃらないのか、どちらですか。
○南野国務大臣 そういうことに関連する答えは差し控えさせていただきます。
○松本(大)委員 可及的速やかというのは、では、いつまでにやるということでしょうか。
○南野国務大臣 できるだけ早くということです。
○松本(大)委員 この法案の採決までに副大臣の申請は上げられるんですか、どうなんですか。
○南野国務大臣 申請する、いつまでにするということについては差し控えさせていただきますけれども、先ほども申し上げましたように、副大臣の問題については十分な考慮をしているということは御報告できると思います。
○松本(大)委員 質問にちゃんと答えていただきたいと思います。
 可及的速やかにというのはいつまでなんだというふうに申し上げたし、そして言葉を変えて、今審議中のこの法案の採決までに副大臣の申請を上げられるのかというふうにお伺いしましたので、はっきりとお答えください。
○南野国務大臣 それは努力ということで申し上げておきます。
○松本(大)委員 聞き方を変えますが、即座に違法だと判断はできないということらしいんですが、では、別段副大臣がいなくても構わない、しばらくいなくたって構わない、この法案が採決されるときにもいなくたって別に構わないんだ、そのうち申請します、そのうち任命します、そのうち後任が決まります、こういうことでよろしいとお考えになられているんでしょうか。
○南野国務大臣 そのようなことを私は申し上げてはおりません。
○松本(大)委員 じゃ、何で速やかに申請を上げられないんですか。それがまずいと思われるんだったら、速やかに申請を上げなきゃいけないという話なわけですから上げられたらいいじゃないですか。だけれども、いつまでにやるということはおっしゃらない。つまり、やる気が見られないんですね、言葉とは裏腹に。
 副大臣がいなくていいとは思っていないとはおっしゃるけれども、実際に、いつまでにやるんですかと言うと答えられないということなので、本当に副大臣がいなくて困る、いなきゃいけないんだという御認識をまずお持ちなのかどうか、そこのところからやはり疑わしく思ってしまうんですね。いかがですか。
○南野国務大臣 先ほども御答弁いたしました、法務省としては鋭意努力する、でも最終的にはそれは内閣の判断でございますということでございます。
○松本(大)委員 先ほども申し上げたように、内閣の判断というのは、一義的には、まず法務大臣がこの人だという適任者を選んで申請を上げた上で、それをオーケーするかどうかは内閣の判断だと思いますが、まずアクションを起こさなきゃいけないのは、つまり今の不作為を解消しなきゃいけないのは、大臣御本人なんですよ。本当にわかっていらっしゃるのかな。
 鋭意努力するということなんですけれども、これをお聞きになられている方は、本当に副大臣を指名しなきゃいけないとこの人は思っているのかなと多分疑問に思っていらっしゃると思うんですね。ひょっとしたら必要ないと思っていらっしゃるんじゃないだろうか、このまま、副大臣が不在のままこの法案審議をどんどん進めちゃっても構わないとひょっとしたら思っていらっしゃるのかもなというふうに多分、今ごらんになられている方は思っていらっしゃると思うんですが、それでよろしいですか。
○南野国務大臣 いろいろと御報告いたしておりますけれども、副大臣に関するポストにつきましては、ここでああでもないこうでもないと言うことではないと思いますので、そういう問題についてはやっております。
○松本(大)委員 さっき松野委員も、国家行政組織法に定めがあるんだというふうに御指摘をされているわけなんですが、これは本当に、違法状態、あるいは即座に判断できないとしても違法の疑いがある状態で、仮に法案が採決されて仮に成立したとしても、そんな違法の状態で、違法の疑いのある状態で成立したような法案を国民の皆さんに向かって守ってくださいとおっしゃっても、これは説得力がないと思いますよ。大臣、いかがですか。
○南野国務大臣 申し上げることは同じでございます。
 副大臣の設置は、国会審議の活性化、それから政治主導の政策決定という目的を果たすための内閣の政治的判断を排除するものではありません。一時副大臣が欠けたということをもって、即座に違法であるとか違法状態にあるということは言えないものというふうに思います。
○松本(大)委員 一時欠けている場合ということなんですが、一時というのはどのぐらいの期間を指すのでしょうか。
○南野国務大臣 それは、しばらく、お待ちいただきたいと思います。
○松本(大)委員 しばらくとはどのぐらいの期間ですか。ちゃんと答弁してください。(発言する者あり)
○塩崎委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○塩崎委員長 では、速記を起こしてください。
 南野法務大臣。
○南野国務大臣 先生お尋ねの日数の件でございますけれども、何日たったらということははっきり言えないということでございますけれども、法務省としては鋭意努力する、そういうことを御報告したいと思っております。
○松本(大)委員 私、これは非常に問題であると思っています。違法の疑いのある状態をそのまま解消することなしに、しかも期限を区切らない。いつまでにやるんですかとお尋ねしても、明確な答えが出てこない。一時とかしばらくとかふざけた回答が出てきて、いつまでにやるのかははっきりと答えてもらえない。
 私、何を申し上げたいかというと、法案の中身もさることながら、やはりプロセスというものを、適正な手続をちゃんと踏まえてほしいということを申し上げているんですね。手続的にも瑕疵のない形で法案の審議を行わなきゃいけないんじゃないかということを申し上げているんですよ。
 今問題になっている、問題というか、先ほどから話題になっている、滝副大臣がそちらにいらっしゃらないのは私も非常に、正直申し上げて寂しいかなという気がするんですが、なぜ、そもそも前副大臣が職を辞してまで郵政民営化法案に反対票を投じられたのか、三十六人の方と反対票を投じられたのか。あるいは、自民党の十四人の議員が欠席とか棄権とかというような手段に出られたのか。これは、郵政民営化法案の中身もさることながら、これまでの手続だとかプロセスが余りにもいただけなかったということも大きく影響していると私は思うんですね。
 例えば、中央省庁等改革基本法三十三条に「民営化等の見直しは行わない」という規定がある中で、法治国家の前提を無視して、法改正すら行わぬまま民営化法案を出してきた。あるいは、自民党の総務会の前例を覆して、説得と同意を取りつける努力を怠った。こういう状態で、いや、アメリカの年次改革要望書にあるんです、だからやるしかないんです、同意してくださいと言われたって、それは同意はできないなとお考えになられる方がいても不思議じゃないと私は思うんですね。
 翻って、今回の共謀罪の創設を考えてみますと、恐らく法務省さんとしては、いや、これは国際条約なんです、越境組織犯罪防止条約でそう決まったんです、犯罪対策の国際協力なんです、だからやるしかないんです、同意してください、こういうことかもしれないんですけれども、その際には、先ほどの郵政民営化の例で挙げたように、既存の国内の法体系と果たして整合性はとれているのかどうかとか、国益を損なうような不必要な妥協がそこに行われていないのかどうかとか、きちんとやはり検証しなきゃいけない。それが我々国会議員に求められている役割だと思うんですね。
 である以上、政府は本当に我々の同意を取りつけたいのであれば、そのプロセスについて、例えば十分な説明を行う、十分な情報開示を行う、こういう手続をやはり重視してほしい。これまでのプロセスの妥当性についての判断材料を提供していただくこと、それから、この先の議論についてもしっかりとした手続を担保してほしい、こういうことを申し上げているわけなんですね。
 大臣は法務大臣でいらっしゃるわけですけれども、法制審議会の議事録がなぜ公開されているんだと思いますか。法制審議会の議事録が公開され、かつ尊重までされているわけですよね。ある法案の条文の解釈について、草案規定というか起草過程が解釈を考える上で非常に重要だからこそ、それが公開され、尊重されているわけなんですよ。
 事ほどさように、条約とか法律とかというものに関しては、やはりそれまでのプロセス、起草過程というものが非常に大事だと思うんです。この点については、私、ちょっと政務官にもお伺いしたいと思うんですが、南野大臣と外務大臣政務官にお伺いしたいと思います。
 言い直します。つまり、法案とか条約の解釈を考える上では、それまでの起草過程、でき上がりの形とか結果としての中身が重要であることもさることながら、これまでの起草過程、プロセスというものが非常に解釈を考える上でも重要である。だからこそ、法制審議会の議事録だって公開され、尊重されているわけですよ。
 大臣は、プロセスが大事だという考え方についてはどのようにお考えになられているのか、それをお伺いしたんです。よろしくお願いします。
○南野国務大臣 プロセスについては、それは先生と同じく、大切なものであり、歴史的評価ということ、それも大切なものであるということは、先ほどお話し申したとおりでございます。
○小野寺大臣政務官 過程というのは確かに大事なことだと思います。
 ただ、内容につきまして、例えば、それが二国間あるいは多国間の交渉の中でどうしても相手国に配慮して公表できないもの、あるいは、今後、いろいろな形で我が国の考え方を相手国に知らしめるということで、我が国が不利益をこうむるというような内容については差し控えて、できる限りの対応をしなきゃいけないというふうに思っております。
○松本(大)委員 次の質問を踏まえた上で大臣政務官には御答弁をいただいたわけなんですが。
 そこで、お手元にお配りした資料なんですけれども、では、一体その条約の起草過程がどうだったのかということがこの法案審議についても決定的に重要であるということで、委員会としてお出ししたのが、この添付資料一でございます。
 これが六月二十三日ということで、この要求への回答が審議入りへの条件とされたというふうにも伺っております。そして、七月八日の理事懇で、続く資料二ですが、外務省から「六月二十三日法務委員会理事懇において配布された資料について」という回答文書が提示をされました。委員会の要求については、そのままはお答えできないと、先ほど大臣政務官がおっしゃったところを考慮されたんだと思いますが、そのままの形では答えられないけれども、ただ、文書による回答は例外的でもあり、これ以上の回答はできない、精いっぱいの回答なんです、こういうことでございました。
 この資料一の資料要求というのは、憲法六十二条の国政調査権であるとかあるいは国会法百四条に基づく非常に意義深い重いものであるというふうに思うわけでございまして、であるからには、やはり、この資料二の外務省からのもったいつけて回答されたこの「六月二十三日法務委員会理事懇において配布された資料について」という回答文書に誤りはないというふうに、まず最初に大臣政務官にお約束をいただきたいと思います。
○小野寺大臣政務官 誤りがないように作成したつもりであります。
○松本(大)委員 誤りがないようにというのは、事実を知っているのは外務省の皆さんなわけですから、交渉の現場にいらっしゃった方が、誤りがないようになんということは許されるはずがないじゃないですか。もし誤りがあるかもしれないようなものをちゃらっとこうやって出してきたのだったら、私どもと、委員会と政府との間の信頼関係はこれでもう終わりだと思います。
 もし誤りの疑いを排除できないようであれば、本人の知り得ている状況なわけですから、本人しか知り得ない状況なわけですから、誤りのない形で再提出されるまではこの審議を続けられないと思います。委員長、どうですか。
○小野寺大臣政務官 言葉足らずかと思いますが、誤りがない形できちっと対応して提出させていただきました。
○松本(大)委員 大臣政務官は非常に誠実なお人柄で、私が尊敬してやまない先輩議員のお一人であるわけですが、事務方をかばわれる余り、何か奥歯に物の挟まったような言い方をされたんですが、要するに、この回答文書に誤りはない、こういうことでよろしいですか。今、うんとうなずいていただきました。
 この回答文書が、実は、ほとんどが六月二十三日の要求時点で既に公開されている情報から成り立っておりまして、回答まで二週間を要したにもかかわらず、実は内容的には何ら新しいものがない、つまり委員会としての要求に対しては事実上のゼロ回答だったのではないかなというふうに実は私は思っております。
 ちょっと具体的に検証していきたいと思うんです。
 まず、この資料一の「1 情報公開文書」「第七回会合関係」の「2)一月二十四日から二十七日にかけての非公式会合の内容」ということなんですが、これは先ほど松野委員も取り上げられておりましたが、条約の現五条、この当時の三条、共謀罪の犯罪化を義務づける第三条が合意された第七回の経過を明らかにすべきではないか、これは決定的に重要ではないかという趣旨で御質問をさせていただいているわけです。
 それについての外務省の回答は、具体的に公電をちょっと御紹介させていただきますと、ちょっと戻りますが、資料三、この黒塗りの公電が、共謀罪の犯罪化を義務づける第三条が合意された第七回の会合内容を、非公式会合をつづったものではないかな、そこで墨塗りされていると。ですが、これは、共謀罪の犯罪化を義務づける規定というものを、一体どういう経緯で交渉が行われてきたのかということを知る上で、やはり公開してほしいという趣旨で情報公開の中身に入れたものでございます。
 それに対しての外務省の回答が、資料二の二ページ目の上、「(ロ)一月二十四日から二十七日にかけての非公式会合の内容」ということなんですが、ずらずらと「犯罪収益の洗浄の犯罪化」から並べてあるんです。
 実は、この資料四、国連ホームページに掲載されている第七回の会合報告なんですけれども、その二ページ目、これはローマ数字というんですかね、「Informal consultations」と書いてあるところの上から八行目の真ん中あたり、「devote the informal consultations to be held from」というようなくだりなんですが、要するに、ここの部分に書いてあることを和訳して、外務省の回答の資料二のこの(ロ)のところにずらずらと並べられて、既に公開されている、国連のホームページ上で入手可能な情報を和訳したにすぎない内容でございます。
 これは、憲法に基づく委員会からの資料要求に対して余りにも不誠実な対応ではないかなと。また郵政民営化法案を引き合いに出してしまうんですが、最初は修正なんて全く考えていないとさんざんもったいつけておいて、いざ修正の話になるとさっさと合意して、その後質問をされると、いや、文章を修正しただけで中身は何ら変わっていないとうそぶいてしまうどっかの総理と同じで、非常にもったいぶって、これが目いっぱいの誠意なんだと言っておいて、実は対応を変えたわけではないと。まさに面従腹背というやつで、立法府をこけにした、全くもって誠意に欠ける態度ではないかと私は思うわけであります。
 これはほんの一例でして、実は、資料一に求めた資料要求の外務省の回答内容はほとんどが、一つを除いて、アメリカ提案を除いて、ほかのすべては、既に提出されている資料からの抜粋であるとか、ホームページなどで入手可能な情報が盛り込まれております。
 そこで、誠実な小野寺政務官にお伺いしたいんですが、やはりこの回答はもっと誠意を持って回答していただく、再提出すべきであると考えますが、大臣政務官、いかがお考えですか。
○小野寺大臣政務官 事務方の方からは精いっぱいの対応をさせていただいたという意見はいただいておりますが、私自身、もう少しこの内容については考えて対応したいというふうに思っています。
○松本(大)委員 考えて対応していきたいと今おっしゃいましたが、それは、事務方は精いっぱいだとおっしゃったが、政務官御自身としては考えて対応したいということは、つまり、今後の再提出に含みを残された発言と受け取ってよろしいですか。
○小野寺大臣政務官 きょうこの場ですぐにというのは難しいんですが、具体的にどの部分についてどういうことで御関心があるかということを協議させていただきながら、できる限りの誠意を尽くしたいと思っています。
○松本(大)委員 誠実な大臣政務官、御期待にそぐわない御回答をいただいて非常にうれしく思っております。
 この要求文書のどこが、では、これは既知の情報じゃないか、ここは新しいけれども、これは全部既知の情報じゃないかというところは、何ならうちから資料を出しますので、それでもって外務省さんの方で検討していただきたい、これをお約束いただきたいと思います。(小野寺大臣政務官「はい」と呼ぶ)今、はいとうなずいていただきました。よろしくお願いします。
 それで、実は問題は、事務方としては誠意ある対応をしたんだ、既知の情報であるとはいえ、まとめたんだ、そして英語の苦手な議員もいるから国連のホームページを和訳したんだ、そういうことなのかもしれないんですけれども、ただ、問題はそれだけではなくて、この資料一の要求資料の二番「外務省国会開示資料」の「1)第九回会合関係」、これは、現条約の三条、この当時の二条、この二条の審議経過、交渉状況を知る上で非常に重要な資料である、あるいは、ここにも書いてございますとおり、そこから派生した三十四条二項の立案過程を知るために決定的に重要であるということから資料要求をさせていただいたわけでございます。
 具体的には、この資料五をお開きいただきますと、二枚目、中段から墨塗りしてありまして、次をめくっていただくと、一ページが全面非開示で、その後、四ページ目も上から大半の部分が墨塗りされている、この部分の内容を明らかにしてほしいという要求を委員会としてさせていただいたというわけでございます。
 ここは越境性の定義について議論がされているところで、三十四条二項、共謀罪とかマネロンについてはなぜ越境性を要件としないのか。越境組織犯罪防止条約に基づく審議を今しているわけなんですが、越境組織犯罪防止条約なのに、なぜ共謀罪やマネロンについて越境性を要件としないというような三十四条二項という不思議な項目が生まれてしまったのか、それを考える上で非常に重要だから資料要求をした、こういうわけです。
 そこで、外務省の回答がどうだったかというと、また資料二に戻ります。資料二の二ページ目、下の方ですね、「(2)第九回会合関係」というところですが、そこの、このページでいうと下から五行目、「第二条パラ二(現在の第三条二(国際性))の文言について議論がなされた。具体的には、(d)の「consequence」の意味について検討がなされ、その意味が曖昧であることから「substantial effects」と修文された。」というふうに書いてありますが、このとおり、第九回会合で第二条パラ二が外務省回答のように修文されたのであれば、この九回会合を受けて十回のアドホック委員会で配られた条約のドラフトのRev9、これに当然載っているはずなんですね。
 そこで、資料六を開いていただきますと、これが、外務省が回答で言うところの「「consequence」の意味について検討がなされ、その意味が曖昧であることから「substantial effects」と修文された。」という内容が反映されているはずの、この外務省の回答が事実であれば、反映されているはずの条約案のRev9というものなんですが、二ページ目を見ていただきますと、「Article2」とありまして、条約の適用範囲を定めているわけですが、パラ二を見ましても、(a)、(b)で終わっていまして、(d)というのはどこにも見当たらないんですね。
 外務省の回答では、九回のアドホック委員会で第二条のパラ二が修文されたということなんですが、修文されたと書いてある「substantial effects」というのはここには書いていませんし、そもそも(d)さえないんです。これは、第九回会合のワーキンググループで第二条パラ二が修文されたという外務省の回答は誤りではないかと考えますが、いかがですか。
○小野寺大臣政務官 この第九回の会合の中で議論されたということは、まだいろいろな意見が出ているというような段階であって、十回のところまでそれが決定されたという形で煮詰まってはいない、最終案にはこの修正が載っているという形になっていると思います。
○松本(大)委員 今、私の質問には、実はお答えになられていません。
 外務省の回答は、議論が続いたというものではなくて、第九回の会合で、(d)のところが「substantial effects」と修文されたというふうに言い切っているんですね、書いてあるわけですよ。ところが、修文された形跡がないんですね。九回の会合が終わって、十回目のアドホック委員会のときに配られたRev9にそもそも(d)が存在していないんですよ。修文されたのなら、当然このドラフトに(d)として「substantial effects」という文言があるはずなんですが、どこを探しても見当たらない。
 そこで、この外務省の回答に、第九回会合のワーキンググループで第二条パラ二が修文されたという回答をされているわけですが、それは誤りでしょうというふうにお伺いしているわけです。(発言する者あり)
○塩崎委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○塩崎委員長 速記を起こしてください。
 小野寺政務官。
○小野寺大臣政務官 第九回のワーキンググループについては、このことに関して議論をされたんですけれども、第十回についてはそれが反映されていない、最終的な形では修文されたということになっています。
○松本(大)委員 修文されたのは、第九回会合と書いているんですよ。今おっしゃったように、十回の会合だったら十回の会合で修文されたわけですし、九回の会合の言及部分で、ここで書いてある内容とは違う話になりませんか。やはりうその回答をされたとしか思えないんですが、ちゃんと答えてください。
○小野寺大臣政務官 この第九回というのは、あくまでもワーキンググループの中での議論ということで、そこで決定されたというわけではないということだそうです。
○松本(大)委員 それは、この書きぶりはうそであるということをお認めになられているのと同じです。
 この外務省の回答には、第九回の会合で修文されたと書いてあるわけですから、九回の会合で修文されずに議論が持ち越しになって十回で決まったのであれば、九回の会合関係のところでこの議論がされていないわけですから、違う回答になるはずなんですよ。うその回答をされているんじゃないですか。
○小野寺大臣政務官 第九回のワーキンググループというのは非公式の会合で、第十回が公式の会合ということになっています。
○松本(大)委員 今のは全く答えになっていないのではないかと思います。
 第九回の会合関係の資料をこの資料一として要求したわけです。ここで、公式会合ですね、これは。第九回会合の公式会合のこの部分で一体何が議論されたのかという話をして、資料要求をした。そうしたら、外務省の回答は、いや、この墨塗りされている部分は、つまり九回の会合のこの墨塗りされている部分で議論されたのは、現三条の2の部分であって、具体的には、(d)の「consequence」の意味について検討がなされて、「substantial effects」と修文されたというふうに書いてあるわけですから、それが十回で修文されたのであれば、ここではその議論は行われていないわけですから、公式会合で。そうしたら、回答は変わっていなきゃおかしいんじゃないですか。これは、十回で修文されたと書くのが正しくありませんか。
○塩崎委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○塩崎委員長 では、速記を起こしてください。
 小野寺政務官。
○小野寺大臣政務官 お答えいたします。
 第九回の会議では、あくまでもワーキンググループにおいての議論ということになっていまして、ワーキンググループの中での議論ということが最終決定されるわけではないので、ここでは、修文というのは、ワーキンググループの中での修文ということ。最終的な決定は、第十回の協議の中で決定しなければいけないということになっています。
○松本(大)委員 もしそうなのであれば、これは書きぶりを変えなきゃいけないと思うんですね。ワーキンググループにおいて議論がなされた、つまり小委員会において議論がなされて、もとの会合に戻ってきて、それで修文が行われたんだ、この場で修文が行われたんだ、これが九回時における結論なんだ、ここまでは固まったんだとしか読めないわけですから、あくまでも、ワーキンググループの中で議論をされて、その中でこのような議論がされたんだというにとどまるのであれば、ここは「修文された。」と書くべきではないと思いますが、いかがですか。
○小野寺大臣政務官 よく読んでいただければ理解いただけないかと思うんですが、ワーキンググループの中でこれは「修文された。」ということがつながるということが言えると思うんですが。
○松本(大)委員 「ワーキンググループにおいては、」ということは、ここの「議論がなされた。」というところで終わっているわけですよね。それで、その議論がなされて、ここで一回文章が切れているわけですよね。具体的に何が議論されたのかはともかく、この「修文された。」という文章は、あくまでもこのドラフトとして反映された、この文書の中に落とし込まれたというふうに受け取るのが通常であると思うんですが、いかがですか。
○小野寺大臣政務官 ここでお話しいただいているのが、求められているのが、もともとワーキンググループについての議論はどうかということでお答えをしていますので、この「修文された。」というのは、ワーキンググループの中での修文というふうにとっていただけないかというふうに思うんですが。
○松本(大)委員 ワーキンググループの中で、あくまでも、そのグループ内においては、これを変えようという合意が行われた、こういうことですね。であれば、やはり「修文された。」という表現は少なくともとっていただきたくなかったなというふうに思います。
 それは、十回の会合とか外交公電とかを読む限り、資料七としてつけた部分がそうなんですが、第十回の会合で、二枚目のところで下から三行目、「(d)については、」というふうに書いてありまして、次の三ページ目に移ると、上から二行目に「「substantial effects」との表現に改められて受け入れられた。」と書いてあるわけですから……(発言する者あり)資料七です。資料七、二枚目の下から三行目、「(d)については、「with effects or intended effects」の部分に関し、」というふうに書いてありまして、それからずっと続いて、三ページ目に移って、上から二行目、「単に「with substantial effects」との表現に改められて受け入れられた。」というふうに書いてあって、ここで修文されたんだというふうに外交公電を読む限りは受けられるわけですから、これと平仄がとれないような、少なくともミスリーディングであるような文章を回答としていただきたくなかったな、ちょっと残念であったなと。
 ワーキンググループ内でそういう合意が行われたというのであれば、ともかく、「修文された。」という表現は少なくともとっていただきたくなかったな、非常に残念である、非常にミスリーディングな書きぶりではなかったのかなと。
 先ほど申し上げたように、今までの回答が既知の情報を寄せ集めてきた情報であったり、それから、合意が行われたというふうに書かれているならともかく、「修文された。」と、外交公電の十回会合とは違う書きぶりがしてある。非常にミスリーディングな書きぶりでこちらに提出されたというのは非常に遺憾であるということを申し上げておきたいと思います。
 ですから、さっき、誠実な政務官は、協議をします、検討しますとおっしゃっていただいたので、ぜひ今後の検討においては、これからさらに踏み込んだ回答ができるのかどうか、それから書きぶりも含めて、再提出に当たってはそこら辺のところも十分考慮をいただきたいなというふうに思います。
 残りの時間は、通告をしましたので、大臣に先日の郵政特での発言についてちょっとお伺いしたいなというふうに思います。
 なぜ郵政特の発言をここで取り上げるのかといいますと、今回の共謀罪創設に関しては、人権侵害を引き起こす可能性が高いという指摘がされているわけでございます。その意味で、どうしても確認させていただきたいのが、郵政特での郵政民営化の広報戦略についての大臣の御認識でございます。
 ちなみに、大臣政務官への御質問はこれで終わりですので、もしよかったら御退席ください。
 大臣は、六月三十日の郵政特で次のように発言をされています。「昨日の私の答弁中、山花議員お示しの資料の記載内容につきまして言及した部分につきましては、あえて答弁の必要がない事項について述べたもので、おわびして撤回させていただきます。」こういうことなんですが、大臣、「撤回させていただきます。」とおっしゃっているのは、六月二十九日の山花委員とのやりとりのうち、具体的にはどこからどこまでを撤回されるとおっしゃっているんでしょうか。
○南野国務大臣 六月二十九日の郵政特別委員会における山花議員の御質問に対する私の答弁のうち、郵政特別委員会速報記録の十一ページ二段目十七行目の「一番下のところには、」から同二十七行目「そういう問題については」までを撤回させていただいたものです。
○松本(大)委員 済みません。衆議院郵政特別委員会速記録というのを取り寄せたんですが、これでいくと、二十九日の審議は三十六ページから始まっていまして、今の十一ページが実はないんですが。何か文章で、ここからここまでとかというふうにおっしゃっていただけると助かるんですが。
 聞き方を変えます。
 特にお伺いしたいのは、委員会が混乱した原因となった大臣の以下の答弁です。
 まず、「特定個人を誹謗中傷するなど、特定個人の人格を攻撃するようなものでない限り、人権侵害には当たらないと考えております。」こう答弁されて、さらにもう一度、「特定個人の人格を攻撃するようなものでない限り、人権侵害には当たらないと考えるということでございます。」このように二回答弁をされておりまして、このことが、今の答弁は大問題だということで、翌日整理して答えることになった直接の原因ではないかというふうに思います。
 そこで、もうページはいいですから、大臣、「特定個人の人格を攻撃するようなものでない限り、人権侵害には当たらないと考える」という答弁は、三十日の御発言の中にある「おわびして撤回させていただきます。」の中に入っているんでしょうか、含まれていないんでしょうか。どちらですか。
○南野国務大臣 今先生が御指摘の部分については撤回はしておりませんが、そのときの答弁が言葉足らずでしたので、追加をさせていただいております。
○松本(大)委員 追加をさせていただいたというのは、「おわびして撤回させていただきます。」の後の、一般論で申し上げましてというところだと思うんですが、「一般論といたしまして、差別的取り扱いにつきまして」云々というところだと思うんです。
 私はまず、特定個人の人格を攻撃するようなものでない限り人権侵害には当たらないと考えるのかどうかということを、その発言を撤回するのかどうかを聞いたら、今、撤回していないとおっしゃったんですが、これは、山花委員とのやりとりの中で、部落差別などは特定個人ではなくて地域じゃないか、個人でなければ人権侵害には当たらないというのは、これはおかしいんじゃないかというような話から、今の答弁は大問題ですよという話になって、翌日再度、大臣、御発言をされているわけですが、にもかかわらず、この部分は撤回されないと。つまり、特定個人の誹謗中傷でなければ人権侵害には当たらないんだと。
 大臣、それでは改めてお伺いしますが、部落差別などは特定個人ではなくてある地域に住んでいらっしゃる方々を対象とした人権侵害であるというふうに考えますが、これは人権侵害に当たらないという御認識であるということでしょうか。
○南野国務大臣 集団に対します表現、これが人権侵害に当たると言えるためには被害者が特定されることが必要であり、単に、例えばどこそこ県民のような表現を用いたのみでは対象が余りにも漠然としていることから、原則として人権侵害には当たらないと考えております。
○松本(大)委員 今のは答弁になっていないです。ちゃんと答えてください。どこどこ県民なんて聞いていないですからね。
○南野国務大臣 ただし、集団が比較的小さく、かつ、集団に属する人々を特定することができる場合には、その集団に属する人に対する人権侵害となり得る場合があると考えております。
 さらに、このような厳密な意味での人権侵害に当たらないとしても、集団に対する表現が、その集団に属する者の人間としての尊厳を傷つけ、一定の集団に対する差別意識を殊さら増幅させるなど人権擁護の観点から看過し得ない場合には、差別助長行為として許されないものと考えております。
○松本(大)委員 一般論で逃げないで、ちゃんと質問に真正面から答えてください。
 部落差別が人権侵害に当たるのか当たらないのか、あなたの見解をお伺いしているわけですから、一般論で逃げずに、きっちり答えてください。
○南野国務大臣 先生はどれを指して部落差別とおっしゃっているのか、私にはわかりません。
○松本(大)委員 時間稼ぎの質問はやめていただきたいと思うんですが、六月二十九日の質疑の中で、「特定個人の人格を攻撃するようなものでない限り、人権侵害には当たらない」というあなたの発言をつかまえて、では、例えば「部落差別とかそういうのは特定個人じゃなくて地域でしょう。それを個人じゃなければいいなんて、そういう答弁はやめてくださいよ。」こういうふうにおっしゃっているわけです。
 ですから、あなたが先ほどこれは撤回されないとおっしゃったから、それでは、人権侵害に当たらないんだ、そういう御認識なんですかと聞いているんですよ。(発言する者あり)
○塩崎委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○塩崎委員長 速記を起こしてください。
 南野法務大臣。
○南野国務大臣 部落差別というふうにお話しになられましたが、部落差別にしても、集団が比較的小さく、かつ、集団に属する人々を特定することができる場合には、その集団に属する者に対する人権侵害となり得る場合があると考えております。
○松本(大)委員 今の御答弁は、いわゆる部落差別の中には人権侵害になるものもあればならないものもある、人権侵害にならない部落差別があるんだ、こうおっしゃったということですね。
○南野国務大臣 今、なり得る場合があると考えております。
 さらに、このような厳密な意味での人権侵害に当たらないとしても、集団に対する表現が、その集団に属する者、人の人間としての尊厳を傷つけ、一定の集団に対する差別意識を殊さら増幅させるなど人権擁護の観点から看過し得ない場合には、差別助長行為として許されないものと考えております。
○松本(大)委員 大臣の御答弁は、三十日に二階委員長の許しを得て発言された、「一般論といたしまして、」というところを読み上げられているだけで、私の質問に直接お答えになられていないというふうに思います。
 部落差別の中に人権侵害に当たるものと当たらないものがあるという趣旨の発言を大臣は今されたわけですよ。あなたは何か区別されていましたけれども、何かマトリックスじゃないですけれどもフローチャートみたいな形を読み上げられたわけですけれども、それでいくと、それに漏れた場合は、たとえいわゆる部落差別であっても人権侵害には当たらないという区分けを今あなたは御説明されたわけですよね。どうですか。
○南野国務大臣 もう一度申し上げます。
 集団が比較的小さく、かつ、集団に属する人々を特定することができる場合には、その集団に属する者に対する人権侵害となり得る場合があると考えております。
 このような厳密な意味での人権侵害に当たらないとしても、集団に対する表現が、その集団に属する者の人間としての尊厳を傷つけ、一定の集団に対する差別意識を殊さら増幅させるなど人権擁護の観点から看過し得ない場合には、差別助長行為として許されないものと考えております。
○松本(大)委員 何でこんなことがはっきり言い切れないのか、私には非常に疑問であります。
 部落差別の中には人権侵害になり得る場合があると。あなたは、なると一言も言っていないわけですよ、人権侵害になり得る場合があると。厳密な意味で、しかも人権侵害に当たらない場合とおっしゃったということは、あなたは人権侵害になるとはそもそも思っていなくて、人権侵害になり得る場合があるんだ、なり得ない場合でも、人権侵害に当たらない場合でも云々という話をされているんですね。つまりは、部落差別の中に人権侵害に当たらない場合がある、こうおっしゃっているわけですよ。
○南野国務大臣 私は部落差別というような文言はそのとき使っていませんけれども、先生がそのように部落差別ということについてお話しになられるのであれば、私としては、部落差別については、一般に人権侵害または差別助長行為として許されない行為であるというふうに思っております。(発言する者あり)
○松本(大)委員 具体的に聞けというような不規則発言があったので、それでは具体的に聞きたいと思います。
 大臣、あなた、三十日の郵政特で、「差別的取り扱いにつきましては、合理的区別か否かで差別か否かを判断いたします。」と述べていらっしゃいます。
 それで、見ておいてくださいねと質問通告したスリード社の郵政民営化の合意形成コミュニケーション戦略のターゲット戦略のマトリックスなんですけれども、これについての発言をあなたは撤回されるのかどうか、ちょっとページ数がよくわからなかったので、結局撤回されたのかどうかわからないので、聞き直します。
 この問題とされたチャート、マトリックスで、差別的取り扱いについては合理的区別か否かで差別か否かを判断しますという発言を翌日あなたは一般論としてされているわけなんですが、それでは、今回のケースで、小泉内閣支持基盤を縦軸のIQ軸でローだと位置づけた、逆に構造改革抵抗守旧派はハイに位置づけられているんですが、あなたは小泉内閣の一員ですけれども、この区別は合理的であるとお考えですか。
○南野国務大臣 対象をIQによって分類したかのような記載については、行政として容認すべきものではないと考えております。
○松本(大)委員 容認すべきではないという発言が、一般論ではなくて具体論に踏み込まれた発言だと思いますが、それでは、その容認すべきではないという意味が差別に当たるのか、あるいは、あなたの区分けでいけば、さらに進んで人権侵害に当たるのかということをお伺いしているんですね。
 そこで、あなたもその一員である小泉内閣が、その小泉内閣の支持基盤は主婦層と子供を中心、さらにシルバー層だというふうに書いてあるわけですが、この方々がIQがローであるとして、例えば都市部ホワイトカラーという方々とは区別されているわけですが、この区別は合理的だとお考えですか。
○南野国務大臣 対象をIQによって分類したかのような記載については、これは行政として容認すべきではないと考えております。
○松本(大)委員 いや、そんなことを聞いていないんですよ。容認すべきではないという発言が、あなたのおっしゃる差別なのか、それとも、さらに進んで人権侵害に当たるのか、このことを聞いているんですね。
 山花委員がそもそも聞いたのは、この問題のある戦略が人権侵害ではないか、人権侵害の疑いのある広報戦略を政府として採用されたんじゃないか、それを政府の一員である、しかも人権擁護の最高責任者であるあなたに判断を問うたんですよ、山花委員は。
 ところが、委員会が混乱して、あなたは翌日再度発言をされている。ところが、撤回されたという部分がどこかわからないので、では、容認すべきではないという七月四日の原口議員への答弁が、差別に当たるのか、さらに進んで人権侵害に当たるのか、あなたの区分けの仕方を聞いて、わざわざそれを使って聞いているんですよ、合理的区別なのかどうかということを。
 私の質問ではなくて、あなたの地元の宇部の主婦の方から聞かれたと思って考えてくださいよ。私は南野さんを含めた小泉内閣を支持しているんです、ところが、政府が郵政民営化の広報戦略に採用した会社の企画書には、私たち主婦はIQがローであるとして区分されていました、これは許しがたい差別じゃないか、人権擁護を担当する法務大臣としてどう考えているんだ、このように地元の主婦の方から詰め寄られたときに、あなたは、コメントの必要がないとか、合理的区別だから差別じゃないんだ、そういうふうにお答えになられるのか、それとも違うのか、あなたの見解をお聞かせください。
○南野国務大臣 一般論として申し上げます。
 差別的な取り扱いとは、合理性のない不利益な取り扱いを行うことをいいます。特定の層を広告の対象とすることが不利益な取り扱いに当たるとは認められないことが多いのではないかと思います。
 もっとも、厳密な意味で人権侵害に当たらないとしても、行政の遂行に当たり、人権に配慮した取り扱いがなされるべきことは当然のことであると考えております。
○松本(大)委員 私、何もこの広報戦略について全く無関係のだれかに聞いているわけじゃないんですね。政府が郵政民営化の広報戦略として採用した会社の企画書に人権侵害の疑いのあるものが含まれているのではないかという指摘があるんだと。そこで、当事者である、政府の一員である、しかも閣僚の一人である、しかも人権擁護の最高責任者、あなたは所信表明で固有の職務だとおっしゃっているんですよ、固有の職責だとおっしゃっている。その最高責任者であるあなたに判断を問うているのに、一般論で逃げるなどということは、私は許されないと思うし、資質が疑われるべきではないかというふうに思います。
 きょうはちょっと時間が来てしまいましたが、質問時間が終了しましたとあるので次に回しますが、非常に問題だ。
 何かもし御発言があるんだったら言ってください、最後に。
○南野国務大臣 特定の私人の行為について調査をしないで人権侵害に当たるかどうかを確定的に申し上げることは、これは適当でないと思います。
 今伺っている範囲では、行政としてこれを容認すべきものではないと考えております。
○松本(大)委員 終始一般論で逃げられて、当事者として、人権擁護というのは固有の職責なんだとおっしゃられたあの所信表明は一体何だったのかと、私は非常に残念に思いました。
 こういった人権意識のもとで、人権侵害の可能性が高いという指摘がされているこの共謀罪の創設の議論をこのまま続けていいのかどうか非常に疑わしいということを指摘して、私、また質問に立たせていただきたいと思います。
○塩崎委員長 次に、津川祥吾君。
○津川委員 民主党の津川祥吾でございます。
 きょう、大臣、政務官にぜひお考えをいただきたいんですが、質疑が大分ずれ込んでおります。私の時間で十五分ぐらいずれておりますが、この前に松野委員の質問のときに十五分残しておりますから、おおむね三十分おくれていると思いますが、これはすべて政府側の答弁がままならないために時間がこれだけ押しているものでございます。
 私ども、時間をかけて、しっかりとこの法案の審議をさせていただきたい。賛成、反対は、いろいろ議論はあるかもしれませんが、その話ではなくて、少なくとも提出をしていただいた法案については徹底的に時間をかけて議論をさせていただきたいと思っておりますので、少なくとも質問通告したものについては最低限準備をしていただきたいですし、当然のことながら、提出をされる以上は、その前提となっているような部分については、仮に通告がなくてもしっかりと答弁をいただきたいぐらいでありますので、よろしくお願いいたします。
 私の通告は、紙でもさせていただきましたが、加えて、私の前に質問をされた方々の質問についてもさらに加えさせていただきますというふうに通告をさせていただきましたので、これまでの答弁で若干気になった点について、まず簡単な点からお伺いをさせていただきます。
 まず、政務官、先ほど辻委員の質問のときに、これは立法事実の話をされたときに、国際的な犯罪組織が云々とか、あるいは国際的な犯罪で何件あるかというようなことではなかなか答えられないけれども、この法律は国際的な犯罪というものを要件としていなくて、国内で考えているので、六百十五の犯罪数があるんだというふうにお答えをいただきました。
 私どもが法務省さんからいただいている資料を一つ一つ数えさせていただきましたら、六百十四なんですね。これは一つ何かふえたんじゃないかと思うんですが、これをまずお答えをいただきたいと思います。
○富田大臣政務官 犯罪の個数の数え方については定まったルールがあるわけではございませんが、平成十七年四月一日に施行されている罰則であって、性質上共謀の対象とならない過失犯と未遂犯を除いた上で、対象となる罪の何条何条、条の数を数えると合計で四百九十二となります。
 また、どのような罪名あるいは犯罪行為が対象となるかという観点から数を数えると、合計で六百十五あるというふうに聞いておりますが。
○津川委員 聞いておりますがじゃなくて、私の質問通告の紙の冒頭にも書いていますよね、ずらずらっと、カラーで、お渡ししたと思うんですが。
 まず、私がきょう質問させていただきたかったのは大まかに申し上げますと三点ありまして、対象犯罪が非常に多いという点、条約の審議経過と今回の立法の関係、それから、その中で越境性の関係、この三点をお聞きしようと思っていまして、対象犯罪数が多いというところで、私、六百十四というふうにちゃんと書かせていただいていると思いますね。これは、私は何度も何度も数えましたし、さっきも数えましたし、私の秘書も数えましたし、ほかの議員の方にもあえて数えていただきましたけれども、六百十四なんですよ。
 これは今言っていただいた話から類推すると、いただいた資料は平成十七年一月一日時点で施行されているものという話ですので、その後多分一つ施行されたと思うんですよ。ですから、それは何ですかと伺っているんです。
○富田大臣政務官 先生、申しわけないですが、先生がお持ちの資料が何月何日付かで、それ以降もしあれば、それは一つふえたと思うんですが、こちらでは四月一日現在では六百十五というふうに。
○津川委員 いや、これは私がつくった資料ではなくて、つい先日法務省さんから送っていただいた資料を数えたものですし、何月のものかというのは私は今申し上げました。一月一日です。一月一日時点で施行されているものだから数えたら六百十四だと思うので、今四月一日とおっしゃったので、その間に一つふえたでしょうから、それは何ですかと伺ったんですよ。わからないならいいです。
○富田大臣政務官 済みません、現時点ではちょっと承知しておりません。
○津川委員 法律も随時施行されていますし、新しい法律もどんどんできてきますから、ふえたり減ったりするんでしょうけれども、まさにこの部分について質問をさせていただいているわけですし、このこと自体大分問題になっていますね。
 前回提出されたときには五百幾つだった。このことについてマスコミ報道なんかでも、五百幾つも、犯罪類型が多くてこんなのでいいのかというような指摘もあったと思うんです。
 実際、今現在どうなっていますかということを何週間か前に法務省の方にお伺いをいたしましたら、即答できずに、何日間か待ってくれと言われまして、何日間かお待ちしてようやく出てきたものなんです。その後で、またもう一度同じものに少し備考を加えたものをお送りいただいたものですから、これをもとに私たちは法案の審議をさせていただいているつもりですので、新しく加わったものについては、これが加わりましたというようなことをぜひ追加で、本来であれば報告をいただきたかったなというふうに思います。
 それでは、対象犯罪が非常に多いのではないかということについて質問をさせていただきますが、まず、この条約の審議過程の中で、重大犯罪ということを付せば、その重大犯罪というところをはっきりと明確にすれば日本もサインをして批准をできるんじゃないかという審議過程があったというような話がこれまで答弁されています。残念ながら、細かいところは墨塗りになっているので余りよくわからないわけでありますが。
 ちょっと大臣に確認させていただきますが、先ほど松本委員が提出をされた参考資料の中にもございますが、外務省の方からいただいた資料、いろいろ墨塗りになっている部分がございます。これは、国会に対して、公の場ではなかなか公開し切れないということだと思うんですね。だから墨塗りになっている。どなたが参加をされたかとか、あるいは非公式会合であるとか、何だかよくわからない理由がいろいろあるそうでありますが、いろいろな理由でもって、国会に対して、委員会に対して提出するときには墨塗りになるということだと思います。
 ただ、審議の過程のお話を伺いますと、当然外務省の方も現地に行かれて交渉されます、法務省の方も行かれて交渉される、警察庁の方も行かれて当然交渉に参加をされていますね。実際に参加をされた方々だけですべて決定するのではなくて、今現在こういう状況だ、これについてどう対応しようか、国内でこれでいけるかどうかというようなことについて日本国内の外務省の方に、本省の方に問い合わせがあって、本省の方は各関係省庁に打診をして、どうだと言っていろいろ回答をいただいて、また現地の交渉をされている方々にこうしなさいという指示を出される、こういう流れでありますが、ということで考えますと、この墨塗りの中身の部分については大臣は御存じということでよろしいでしょうか。
○南野国務大臣 先生御指摘のこの黒塗りのところについては、詳細は存じ上げておりません。
○津川委員 大臣が御存じない理由を教えてください。これは大臣が、南野さんがとは言いませんが、法務大臣、少なくとも法務省として、日本の法体制に合わせて、これはなかなか、このままではいけませんという判断をされた、それを正式に文書で出された。先ほど、英語で出されたけれども御存じなかったという話がございましたけれども、それはいいですが、今後やっていただけばいいんですが、そういう最初の政府の方針にしろ何にしろ、外務省の担当者の方が日本の法体系はどうかということを判断されたとはちょっと思えない。これはやはり法務省が判断されたと思うんですね。法務大臣が当然最終的に判断されるべきもので、別にそれは現場の方、別の方が判断されてもいいですけれども、大臣にも見せられませんということにはならないはずなんです。
 だから、大臣は今まだこれをお読みになっていないかもしれませんが、大臣は墨塗りになっていない中身の部分も見せてと言えば見ることができると思いますが、これは、まだごらんになっていないから詳細御存じないということであれば、見たいと言えば見ることができるということは間違いないですか。
○南野国務大臣 それは、申し上げれば見られると思います。
○津川委員 外交にかかわる話ですから、大変失礼な話ですが、法務大臣が、いや、ここでこういう質疑をしていましたと本当は言っちゃいけないことをぽろっと言っちゃうとこれはまずいのかもしれませんけれども、でも、当然法務大臣として、担当されている法案を今回出されてきて、重大な法案だと言われているこの法案を審議するに当たって、日本の政府ができないと言っていたものを最終的にはのんだわけです。その途中でどういう経緯があったか、どういう議論があったかということはぜひ関心を持っていただきたいと思いますし、きょうまでまだごらんになっていないようであれば、ぜひ要請をしてごらんになっていただきたいと思いますが、いかがですか。
○南野国務大臣 努力いたします。
○津川委員 済みません、今のは努力するところじゃなくて指示するところだと思うんですが、いかがですか。
○南野国務大臣 私は、読むことを努力するというふうに申し上げたわけで、必ずそれはしたいと思います。
○津川委員 ありがとうございます。
 大臣、この法案、実は相当いろいろな問題点があると思うんですが、その中の一つで、やはり大臣もきょうも、治安、治安維持とはおっしゃらなかったかな、安心、安全の確保のために必要だというようなお話をされたと思うんですが、ただ、逆に、六百十四、今御説明いただいた数字でいうと六百十五の犯罪数もあって、今、一個ふえたのが何かもわからないというようなほどたくさんあるわけですね。国民の多くの方はもっとわからないと思います、専門家の政務官ですらわからないんですから。そういう状況で、非常に多くの、言ってみれば新しい犯罪類型ができたというふうに考えてもいいと思います。
 これまでは、少なくとも、共謀している段階でやろうという話になっても、まあ、やめるかという話になればそれっきりなわけですから。ただ共謀しただけで犯罪になります、何を共謀したら犯罪になるか、どれですかといったら、六百十五ありますというのでは、国民はよくわからないわけですね。やはりこれは、ある意味で、逆に不安になるんだと思います。
 私たちは別に、常に法律を違反するようなことをやっているという意識はないですから、まあ、どこかの犯罪者が何かやっているんだろうぐらいの感覚でいれば関係ないよというふうにお感じの方もあるかもしれませんが、一方で、六百十五もあると、実は相当幅広いということもあります。
 そもそも、これは重大犯罪に絞るべきだというアドホック委員会での主張、日本の政府としての主張です。重大犯罪というものはどういうものかということについて、これはいただいた資料の中にもこういう書き方をしているわけですね。「条約上の重大な犯罪に該当する罰則一覧(死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪)」。つまり、条約上の重大な犯罪なんですね。
 日本の政府として、日本の法務省として、重大な犯罪とは何かという定義はこれまでしてこなかったと思います。ですから、あくまでもこれは条約で言っているところの重大な犯罪ですよという解釈だと思うんですが、これはこれで間違いないでしょうか。
 日本の政府は、死刑または無期もしくは長期四年以上の懲役云々の罪は重大な犯罪だというふうに解釈をされるのか、これはあくまでも条約上で言っているところの、条約で求めているところの重大な犯罪だという判断をされるか。これをちょっとお答えいただけますでしょうか。
○南野国務大臣 重大な犯罪ということを条約では、すなわち各国の法律において定められている刑期の重さを基準として、長期四年以上の自由を剥奪する刑またはこれより重い刑を科することができる犯罪を共謀罪の対象犯罪とすることを義務づけております。その上で、国内法で求められるときは、組織的な犯罪集団が関与するものという要件を付すことが認められています。したがいまして、国内法においてこの要件を付す場合であっても、重大な犯罪のすべてを対象犯罪とすることが条約上の義務であると考えております。
 そこで、この法案では、死刑または無期もしくは長期四年以上の懲役もしくは禁錮の刑が定められている犯罪であって、かつ、厳格な組織性の要件を満たすものに限っている、それの共謀を処罰することとしているということです。
○津川委員 共謀罪が成立する犯罪構成要件の話をしたのではなくて、重大犯罪という定義について伺いました。日本政府は、長期四年以上の懲役もしくは禁錮の刑が定められている罪以上のもの、これは重大犯罪というふうに今回正式に判断をされたということでよろしいですか。
○富田大臣政務官 先生は日本政府の判断とおっしゃっていますけれども、これは条約の定義で、それを受け入れているということでございます。
○津川委員 いや、ですからそれを聞いているんですが、条約で求めるところの重大な犯罪という定義でこういうふうに、それは条約には四年以上と書かれています。日本政府として重大な犯罪というものを求めたわけでしょう、これまで、最初は、重大な犯罪に限るべきだと。
 それで、出てきた条約は、要するにこれは協議の中でまとまった話で、外国もある話で、ほかの国の法体系、これは全然違うわけですから、罰則の重さは全然違うので、それはどういう落としどころで四年になったかは議論がわからないのでわからないんですが、最終的にそうなったとして、日本政府として、この条約で求めている罪というのは重大犯罪だという判断をされるのかどうかを伺っているんですが、お答えいただけますか。
 それとも、それはあくまでも条約上だから、国内で重大犯罪という定義はないので何とも言えないという御答弁でしょうか。
○富田大臣政務官 済みません、今先生が最後におっしゃったとおりでございます。
○津川委員 では私が最初に答弁した方が早かったかもしれませんけれども、多分そうだと思うんですよ。
 ただし、交渉上は、まさに日本政府として、これは重大な犯罪に限定をするべきだという交渉をされてきた。これは間違いないわけです。では、重大な犯罪とは何かという議論がさんざんあったわけですね。その中で、例えば、ではこの犯罪、この犯罪というリストをつくろうかといったら、それもなかなかうまくいかないよというところで、四年というところで落ちついたんだと思うんです。
 ただ、実際に日本の法制をとるときに、日本の法律を修正したり新しく法律をつくるときに、条約で四年と言っているからこれは必ず四年だということにはならないと思うんですね。先ほども、どなたでしたか、松野委員だったと思いますが、条約で求められているものそっくりそのままを法律にしているのか、そこからはみ出したところまでやっているのか、あるいはそこまでは至らないところで法律をつくっているのかというような質問がありました。
 必ずしも条約で求めているものが日本の法律体系にぴったりそぐわないのであれば、これは日本の法制に合わせて、条約で求めるところの重大犯罪についての共謀については犯罪化をする、そういう作業をすれば、条約が求めることは基本的になし得ると思うんです。むしろ、それをやらずに、四年だから四年だというやり方をすると、国によっては全く何か、全然、例えば、場合によっては重大犯罪が抜けてしまうかもしれません、どうだかわかりませんけれども。
 そういったこともあり得ると思うので、本来、条約が求めていることをしっかり日本の法律に落とし込んでいくという考え方からすると、日本の刑法上、その他の法律上の罰則が四年以上というやり方が、本当に条約を議論していたときの重大犯罪というものとマッチするのかどうかということは議論してもいいと思うんです。というよりも、これはもう日本の中で、まさにこの国会の中で議論して、いや、こんなことはないよという数字が出てくれば、それで法律をつくればいいんだと思うんですね。
 そこで伺いたいんですが、日本の法体系の中で、この条約で求めているような重大な犯罪というもの、六百十五、これは重大犯罪、そのようにお考えでしょうか。
○南野国務大臣 条約は、重大な犯罪、すなわち、長期四年以上の自由を剥奪する刑またはこれより重い刑を科することができる犯罪を共謀罪の対象犯罪とすることを義務づけております。
 法案の共謀罪は、このような条約の義務に従いまして、死刑または無期もしくは長期四年以上の懲役もしくは禁錮の刑が定められている罪を対象としたものであります。
○津川委員 では大臣に伺いますが、というか、今は全然御答弁いただかなかった。今のは条約でどう求めていますかという話で、それは読めばわかるんですが、そうじゃなくて、日本の法体系の中で四年以上というのが、まさに条約で言っているような重大犯罪というものとぴったりマッチしていると思うかどうか、大臣の御見解を伺います。
○南野国務大臣 先ほど申し上げたこの中身につきましては、これは条約上の取り決めでありますので、我が国もそれに合わすというような方向で考えていくということでございます。
○津川委員 例えば、これでは軽過ぎるかもしれないわけですよ、最初に逆の話からしますが。私は重過ぎると思っているんですけれども。
 例えば、本当は三年以下の懲役というふうに定められているものでも、いや、これは組織的にやられると、実際にやられるとかなわぬな、実際に実行行為があって被害が出てからどうこうするよりも、なるべく少しでも早いうちにこれは取り締まるべきだ、芽を摘んでおくべきだ、こういうこともあるかもしれないわけです、三年以下でも。
 だから、別にこれは、法律としては三年以上にしたっていいわけですよ。条約では四年以上にしなさい、四年以上のものをしなさいと言っているだけなので、三年以上のものにしたって条約違反にはならないですよね。だから、これは本当に四年で適当であるとお考えですかというふうに伺ったんですけれども、いかがでしょうか。
 というか、ではもう一つ、済みません。私がいただいている資料では六百十四ですが、この六百十四の犯罪、これは全部ごらんになりましたか、大臣。これを全部見ていただいて、これは要らないとか、あるいはここに入っていない、入っていないのはなかなか思いつかないかもしれませんが、あれも入れるべきじゃないかとか、そういう発想はなかったでしょうかね。
 四年で切ったらこうなりますというのはまさに事務的にそのとおりなんですが、果たして本当にこれでいいかどうかというのは、まさに日本の立法府が、我々が検証しなきゃいけないところなんですが、提出をされた法務省として、これで適切であるというふうに判断された、法務大臣はそのように判断されたということでよろしいでしょうか。
○南野国務大臣 私としては、それがいいのではないかなというふうに思っておりますが、重大な犯罪のすべてにつきまして共謀罪の対象犯罪とすることが条約上の義務であると考えられている。条約の審議の過程におきましても、重大な犯罪をリスト化することの可否が問題となりました。犯罪組織はいかなる犯罪をも行う可能性があり、そのリスト化は困難であるとされ、法定刑を基準とすることとされました。
 法案の共謀罪の対象犯罪は、いずれも組織的な犯罪集団が関与して犯されることがあり得ないというものではないので、過失犯など性質上共謀の対象となり得ないものを除き、いずれかの罪を対象犯罪から除外することは適当ではないと考えられております。
○津川委員 考えられておりますって、どなたが考えたのかよくわかりませんが、私、大臣の考えを伺ったんですが。
 では、一つ伺います。刑法でいきますかね。刑法の中で、何でもいいんですが、これはいろいろ通告しているのでちゃんと勉強していただいていると思いますが、逃走援助という罪があります。「法令により拘禁された者を逃走させる目的で、器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為」をする、この人は懲役ですね。これを組織的に共謀した場合、これは共謀罪に当たると思いますか、どうですか。
○南野国務大臣 それはならないということでございます。
○津川委員 今、ぱっと後ろで調べていただいたと思いますが、刑法から、多分上の方からいきますから準備しておいてくださいね。
 これは百条ですね。これはならないんですよ、三年以下ですからね、いや、ねと言うのも変なんですが、私だって知りませんよ、私だって調べたからそう思ったんです。これを何か犯罪組織がわあっとやったら、これは共謀罪、共謀、いや、共謀と言うかどうかは別として、重大、何かいかにも犯罪組織がやりそうなイメージがあるんですけれども、これを共謀しても、警察が見つけても、おまえら共謀罪だとは言えないんですね。
 さらに、これについては、この表であるのは逃走援助暴行、この百条の2に、「前項の目的で、暴行又は脅迫をした者は、三月以上五年以下の懲役に処する。」だから、逃走するときに、よし、ぶん殴って逃走させようという共謀をすると共謀罪になるんです。
 ですから、三年で切るか、四年で切るか、五年で切るか、いろいろな議論があると思うんですけれども、実は日本の法制の中で、いただいたものをいろいろ見ますと、四年で切れているものというのは非常に少ないですね。三年で切るか五年で切るかですよね。何で四年で切ったのか。
 実は、外国の例を見てもやはりそういう切り方をされているところが多くて、必ずしもこれは共謀にはならない、要するに、重大な犯罪なんじゃないだろうかと思われるようなものが落ちてしまったりしていますね。
 それから、ほかに、逆の例を申し上げますと、例えば、一番典型的なものにしましょうか。ごめんなさい、今度は刑法じゃない、刑法から飛ぶんですが、航空法の第百五十二条、機長による旅客の救助等に必要な手段を尽くさない行為というのがあるんです。これは五年以下ですから、これを共謀すると共謀罪になっちゃう。でも、これは共謀できないですよ。機長がどうやって共謀するんですか。これは共謀罪にならないですよ。
 先ほど大臣がおっしゃったのは、過失、過失致死とかそういったものについては、最初の段階、犯罪をする段階からその結果の発生について故意がないから、そもそも合意の共謀はできないから、数の上では入るけれども実際には当たらないよというような話をされました。でも、今のは、別に過失じゃないんですけれども、入っちゃうんですよ、共謀罪に。
 だから、四年で切るというのは余り合理的じゃないんじゃないかと思うんです。これは検討されましたか、大臣。私は合理的じゃないと思うんですが、四年が合理的であるということを御説明いただきたいと思います。
○南野国務大臣 共謀罪等の対象となる重大な犯罪の範囲については、その条約の審議過程において、国際的な組織犯罪を防止するため、各国が標準装備するべき罰則の対象となる犯罪の範囲をどのようにすべきかという問題として議論がされた。そして、その点については、長期三年以上とする意見や、また長期五年以上とする意見もあった中で、最終的に長期四年以上の自由を剥奪する刑またはこれより重い刑を科すことができる犯罪を対象とするべきであるということで意見の一致を見たということであったと承知しております。
○津川委員 ですから、条約の審議過程を今伺っているんじゃなくて、日本の国内の問題です。
 その条約をサインしてきたのはいいんですが、その条約をサインしてきて、さあ、日本で法律をつくろうという段階で、各国は、四年がいい、三年がいい、五年がいい、いろいろあったわけですよ。最終的な条約として四年になったのは、今の説明を聞いたら、三、四、五があったから真ん中をとったという感じがしますが、本当にそうかどうかは知りませんけれども、この審議過程は明らかになっていないので全然わかりませんが。
 この四年というものが、そのそれぞれの国によってはぴったりマッチするところもあるかもしれない。でも、合わないところだったら、そうではない立法措置をすればいいわけじゃないですか。必ずしも四年にこだわる必要はないと思うので、何で日本で立法するときにこれを四年にしたんですかということを何度も伺っているので、条約の中の審議過程ではなくて、日本の法律に照らして四年が合理的だということを説明してください。
○南野国務大臣 それは、条約上の義務であるということが一つでございますが、先ほど審議の過程については御報告したとおりであります。
○津川委員 いや、だから、条約が四年以上にしなさいと言っていても、それで不十分かもしれないわけですね。
 では、まず、不十分ではないとお考えになったということでよろしいですか。
○南野国務大臣 ここの中で長期四年としたことにつきましては、そのような話し合いの中で決まったということですから、日本は条約ということを締結する前にそのような形で四年というふうにしたということでございます。
○津川委員 ですから、条約が四年以上というのを義務化するのはいいんですが、三年以上にしなくてもいいんですかという話をしているんです。
 先ほどの逃走援助については、これは共謀にならないという話でした。刑法の第百二十四条の往来妨害。「陸路、水路又は橋を損壊し、又は閉塞して往来の妨害を生じさせた者は、二年以下の懲役」です。だからこれも、橋を壊してやろうという共謀をしても、共謀罪にならないんですよ。おかしいと思いませんか、大臣。
    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕
○南野国務大臣 今御審議いただいているこの法案は、主に条約の義務を果たすために今御審議いただいているわけで、そのためには基準となる四年というものを使わせていただいております。
○津川委員 大臣、アメリカに言われたからやるとか国連がやると言ったからやるんですよという話じゃなくて、それはもちろん外国がやれと言ったことに足並みをそろえる必要は物すごく重要にありますが、そうではなくて、日本国として、こういう重大な犯罪の共謀というものを犯罪化させるべきだというお考えをお持ちだったら、何も四年に限る必要はないわけですよ。日本の法律体系では四年では不十分だということになったら、確かに形の上では条約の決まりを守っているかもしれません。でも、本質的には守っていないという話になりますよ、それでしたら。
 今の話は、今の話というのは橋を壊すという話、これは共謀にならないわけですよ。これを共謀しても共謀罪にならないわけですね。こういうような事案が、探せば幾らでもあります。
 大臣が御案内かと思いますので、この話にしますが、例えば堕胎の話。妊娠中の方が堕胎をしたとき、これは罪になりますが、これを組織的に共謀するということはあり得ないかもしれませんが、その方に依頼を受けて、承諾をして堕胎をさせた方、堕胎をさせるということ、これは共謀することはあり得るかもしれません。これは共謀罪は成立しますか。
○富田大臣政務官 同意、嘱託堕胎は、二年以下ですから、当たりません。(発言する者あり)
○津川委員 定足数を確認してください。
○田村(憲)委員長代理 一応発言を許可いたしましたが。
○津川委員 では、定足数を確認してから質問させていただきます。
○田村(憲)委員長代理 定足数は足りております。
○津川委員 はい。ありがとうございます。
 気を取り直しまして、同意堕胎ですね。同意堕胎は共謀罪にならないわけですけれども、これは組織的にやる可能性というのは十分あり得ると思うんですよ。どうですか、大臣。大臣、せっかくですから御答弁いただきたいと思います。
○南野国務大臣 堕胎を集団で共謀してやるというのは、私、聞いたことがありません。
○津川委員 では、済みません、伺いますが、この同意堕胎の場合、どういう状況でなされるんですかね。
○南野国務大臣 これは刑法に関係する部分とそうでない堕胎というのもありますけれども、堕胎したいというのは本人の、または夫との話し合いのもとになされるものというふうに思っております。
○津川委員 夫と二人で堕胎される方もあるかもしれませんが、余り変な推測なしで申し上げますけれども、例えばそういったことができる専門的な知識をお持ちの方が、事情により、極端な話、違法行為と知りながらやらざるを得ないというような状況もあり得ると思うんですね。
 こういう状況は大臣も多分御存じだと思うんですけれども、別に私はそれを殊さらに今ここで問題にしようとしているわけではなくて、そういったことも共謀するというか、数人の方で、では、どういうふうにやりますかということを話し合いをして合意するということはあり得ると思うんですよ。
 だから、集団でという発言はどういう意味をおっしゃっているのか、私、わかりませんが、別に二人でもできるわけですから、二人でも共謀罪ですから。二人ぐらいの方が、では、私はこれを担当します、あなたはこれを担当してください、こういう状況でやりましょう、本人は同意されています、同意堕胎ですよね。こういったものをやれる方、業務としてされる方もあると思うんですけれども、それは共謀罪にならないということでよろしいですか。
    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕
○南野国務大臣 それが規定を超えた業務上の堕胎であるならば、それは罪になると思います。
○津川委員 いや、堕胎が罪になるかどうかを伺ったんじゃなくて、今、共謀罪の話をしているんですから。共謀したときにそれが共謀罪に当たらなくていいというふうに感じますかということを伺ったんです。どうでしょうか。(南野国務大臣「もう一度お願いします」と呼ぶ)
 法律、刑法上は、同意堕胎と不同意堕胎と業務上堕胎とある。それぞれ重さがいろいろあって、それで過失致傷になるか過失致死になるかでまた罪の重さが重くなったり軽くなったりするから、それがちょうどこの四年をまたぐわけですよ。ですから、同じような現状の中であって、この共謀が成立したりしなかったりすることが起こることが不合理だということを私は申し上げているんです。大臣、いかがですか。
○富田大臣政務官 犯罪の罪名によって、確かに先生のおっしゃるとおり、またぐ場合が出てくるとは思うんですが、共謀罪が成立するか否かは、組織性の要件とかほかの要件を満たさなければなりませんので、そこの部分を考えると、決して不合理ではないというふうに考えます。
 また、先生のもともとの基本的な問題意識として、やはり日本の独自の考え方として、三年以上の罪が本当に大きな犯罪であって、なおかつ組織的に行われる可能性があるんだったら長期三年以上にすればいいじゃないかというお考え、一つの考え方としてあるんじゃないか、それを条約のまま四年とするのは日本の政府、特に法務省としてきちんと考えていないんじゃないかという御質問だと思うんですが、先ほど来出ていますように、リストアップは難しい。条約の中で三年、四年、五年と出てきて、四年に落ちついたということでそれをそのまま受け入れているわけです。
 午前中来出ていますように、四年以上でも六百十五の罪に当たる。それを逆に三年まで広げた場合に、では幾つになるんだ、できるだけ限定的にという考え方でいった場合には、条約上の四年というのをストレートに国内法にも反映させるのがいいんじゃないかというふうに法務省としては考えております。
○津川委員 つまり、三年ということもあるかもしれないけれども、罪によっては三年にした方がいいのはあるかもしれないけれども、三年以上にしちゃうとまたえらい拡大をするから四年にした、こういうことでよろしいですか。
○富田大臣政務官 それも一つの理由でございます。
○津川委員 組織的な話というのはもちろんあるにしてもですよ、長さの話だけ今は伺いますが、では、何で五年じゃだめだったんですか。
○富田大臣政務官 済みません。条約上、四年以上、長期四年以上が重大な犯罪と定義されておりますので、これを五年とすると条約違反になってしまいます。
○津川委員 そこが伺いたいところなんです。
 先ほどの審議過程でもちらっと言っていただきました。三年がいいんじゃないか、四年がいいんじゃないか、五年がいいんじゃないかという議論がありましたと。最終的に、真ん中をとったかは知りませんが、四年に落ちついた。それは結構ですが、それぞれの国の刑罰の重さに合わせて、場合によっては三年にする必要もあると思うし、それなりの、二年半とかいうのがあるかどうか知りませんが、そういう下げ方もあるでしょうし、場合によっては五年にするべきというところもあると思うんですよ。
 それは、確かに条約は四年以上を義務化していますから、五年にする場合にはそこの部分については何らかの手当てをしなきゃいけないと思います。その何らかの手当てというのは、留保するか何するかという話だと思うんですが、ここは、法務省の方とお話をすると、核心の部分なのでなかなかできませんとおっしゃるんですが、確かに核心の部分です。確かに核心の部分ですが、まさに日本の法体系に合うか合わないかという議論をこの法務委員会の中で、国会の中で議論をするわけです。それは条約を議論する方々が決める話ではなくて、日本の国内でどうかということは私たちが議論すべきことであって、ここの部分については、一年間、例えば五年を超えるものについてという絞り方をかけるということもあり得ると思うんですね。
 実際、多くの罰則、罪を見ていきますと、やはり五年で切れているものって結構ありますね。各国の法律、残念ながら、これは国会図書館にいろいろ伺ったんですがなかなか出てきませんが、やはりほかの国も五年で切っているようなところがあって、先ほど政府参考人からも、フランスの例として、五年を超えるですか、そういった答弁をされたと思います。
 ですから、国によってそういう判断の仕方というのはあり得ると思うし、それはむしろ当然やるべきだと思うんですが、その議論すらしていないのだとすると非常に大きな問題だと思いますし、まさにここでその議論をさせていただきたいし、そこまでは要らないんじゃないかとか、もっとやるべきじゃないかということ、場合によってはそういった議論もさせていただきたいんですが、まず、場合によっては五年という切り方もあり得るんじゃないかということについて見解を伺いたいと思います。
○富田大臣政務官 先生おっしゃるように、当然そこの議論が必要ではないかという点はそのとおりだと思いますが、先ほど、留保してもいいじゃないかというお話がありましたけれども、条約の留保につきましては本来外務省の方で御答弁いただくものだと思うんですが、一般には、条約の趣旨及び目的と両立しない留保は許されないというふうに考えられております。
 重大犯罪の定義というのはこの条約の核心部分をなすものだと考えておりますので、留保するというのはなかなか難しいのではないかなというふうに現段階では考えております。
○津川委員 わかりました。いろいろつけていただいて、なかなか難しいと現段階ではお考えということは、質疑を通して、ああ、やはりそれもやらざるを得ないなというふうにお考えいただくことがあるかもしれないという答弁でよろしいですか、留保するかもしれないと。
○富田大臣政務官 政治家として議論するという意味では先生の御指摘はよくわかりますけれども、この条約の中心、核心的部分をなしているということでは、ちょっと留保をつけるというのはできないというように考えております。
○津川委員 先日、我が党の委員会の勉強会に法務省の方に来ていただいて、外務省の方も来ていただいて、ここの、長さの部分について留保をかけている国はないんじゃないだろうか、ないと認識していますというような答弁をいただいたんですが、これはホームページの方でしょうかね、に書いてあるのは、ウクライナで五年とされている。これは質問通告の文書にも書かせていただいたので、チェックをしていただいたことと思いますが、やはりこういうものもないわけじゃないわけです。
 それはもちろん、重大な核心部分でありますから、これは好き勝手に、いや五年だ、六年だ、十年だというようにはできないかもしれません。
 つまり、日本国内で、この条約で求めている重大犯罪、この議論の審議の過程も含めて、こういう重大な犯罪については、組織的に行われるものについてはなるべく早い段階で摘発をしなきゃいけない、犯罪化をしなきゃいけないというそもそもの、まさに核心部分に照らして、日本国内では、例えば五年を超える犯罪についてという規定の仕方で、間違っていないということが十分に主張できればそれは留保できるんだと思いますし、そもそも、留保できるかどうかは外務省が考える話であって、我々が考える話じゃないわけですよ。
 我々は、国内法においてこういう重大犯罪の共謀というものを犯罪化しようというときに、日本の国内の法体制を見て、先ほど政務官、誠実に、例外的だというお話をいただいた、この例外的な規定を設けるときに、本当に六百十五がいいのか、五年を超えるというものにした方がいいのか、一つ一つ、やはり罰則なり犯罪の中身をチェックして、私がさっき言ったように、この表には入らないけれども本当は入るかなみたいなものも含めて、それを入れろとは言いませんが、これは入らぬだろうというのは実はたくさんあるわけですよ。
 そういったものを本当は落とすには、一つの手段として、私は、五年以下を切るというのは非常に合理的だと、これは私の個人的な思いですが、いかがですか。
○富田大臣政務官 政治家としては共感できる部分はあるんですけれども、答弁としては、やはり条約上、四年の義務が課されていますので、中心的な部分に留保をつけるのはちょっと難しいのではないかなというふうに思います。
○津川委員 申しわけないですけれども、今の答弁は納得できません。政治家として理解できるなら、政治家として判断していただきたいと思います。その席には、まさに政治家として座っていただいているわけですから。
 政治家じゃないなら、政府参考人の方とお話をさせていただければいいわけですが、わざわざ私どもは、政府参考人が答弁席に座らないで、大臣と政務官だけに座っていただいて、こんなに審議が長引いてしまったのも、これはやはり、政治家同士、政治家としての議論をしようじゃないかという話でありますし、ここはまさに国内の法律をどうやってつくるかという話でありますから、私どもは、この条約そのものを否定しているわけではなくて、こういう条約は確かに必要だ、そして国際協調も必要だと思います。
 しかし、それを国内法に落とし込んでくるときに、このままではちょっと日本の法体系に余りにも合わな過ぎる。そこをやはりしっかりと議論させていただきたいし、先ほどのオーバートアクトの話も議論していただきたいという話だったわけですよね。あと、団体の規定についても議論していただきたいという話だったわけですよ。
 ですから、四年以上が果たしていいのか、五年を超えるがいいのか、ぜひ議論しようじゃありませんか。私は、本当は大臣と言いたかったんだけれども、政務官とばかり議論していますが、大臣もぜひ一言、何か一言言っていただきたいんですけれども。
 大臣、例えば通貨偽造という犯罪がございます。重大な犯罪でございますが、通貨偽造行使の共謀をすれば共謀罪ですね。ところが、この法律、これは四年以上にしてしまうと、通貨偽造準備も共謀罪になっちゃうんですよ。通貨偽造の準備の共謀をするということはあり得ない話ですよね。それは除くんだというような言い方をされましたが、五年を超えるとやると、これは実は自動的に落ちるわけですよ。
 実は、結構法律の罰則の重さはここの五年のところで切れているというのは、例えば、重大な犯罪であっても、準備までの場合は五年以下になっていたりするわけです。ですから、私はまさに、国内法に照らして議論した場合には、五年を超えるものについては云々の要件を満たした場合には共謀すると共謀罪だというなら、これはまだ議論としては理解できます。
 大臣、いいですか。やはりこの四年以上というのは国内法に照らしてはおかしいんじゃないかと思うんですが、見解を伺いたいと思います。
○南野国務大臣 いろいろな御議論があるのかなと思いますけれども、法定刑は、これは犯罪の違法性だとか重大性の評価を示すものであろうかと思っております。長期四年以上を重大犯罪として共謀罪の対象とすることは、我が国の法体系においても合理性があるというふうに私は思っております。
○津川委員 はっきり答弁をいただきました。
 では、なぜ合理性があるかをお答えいただきたいと思います。
○南野国務大臣 それは、今我が国にある法体系を見てから、そのように思うわけであります。
○津川委員 ですから、今、通貨偽造の準備もこれは五年以下だから共謀罪になっちゃうと言いましたよね。これはおかしいでしょう。四年以上にしたら、準備の共謀というわけのわからない話になるわけです。
 さらに言うと、今回できる共謀罪、共謀罪の中の、組織的犯罪法の六条の二にできる「死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪」については、「五年以下の懲役又は禁錮」。だから、そういう犯罪の共謀をすると五年以下なんですよ。ということは、そういう死刑になってしまうような犯罪の共謀の共謀をしても共謀罪になっちゃいます。
 これはおかしいと思いませんか、大臣。日本の法律体系に照らして、四年以上にしたらおかしくなっちゃうでしょう。どうですか。
○富田大臣政務官 ちょっと聞き漏らしていたので、答弁が違うかもしれませんが、共謀の共謀というのは共謀罪では考えていません。
 先ほど、通貨の準備まで共謀するのはおかしいじゃないかというふうに先生おっしゃいましたが、やはり通貨偽造というのは準備行為もかなり違法性が高いし、通貨偽造同行使まで発展する可能性がかなり高い犯罪ですから、その共謀が罰せられても、それは決して不合理ではないというふうに私は思いますが。
○津川委員 通貨偽造の準備というのは、通貨の偽造行使があるから準備があるんでしょう。行使があるから準備があるんだから、準備したってそれは行使の共謀になるじゃないですか。いや、これはあくまでも準備をしているだけで、行使はしませんなんということはあり得ないでしょう。
 そもそも通貨偽造行使という犯罪があって、その準備も犯罪になるわけですよ。ということは、そもそも準備をするということは、例えば行使を前提にした共謀もあり得るわけでしょう。つまり、この本体の部分の共謀を押さえておけば、共謀罪としては十分じゃないかと思うんですよ、実際に運用されることを考えて。いや、行使はしません、準備するだけですという犯罪はあり得ないでしょう。それは、実際に準備するのは、行使をする準備だから犯罪になっているわけですよね。
 しかも、さらに、その共謀をするときに、犯罪組織の方がどういった手続で共謀するかよく知りませんけれども、それはこうやって使おう、行使をしようということを前提に準備をするだろうし、そのための共謀もするんだと思うんですね。ですから、その共謀を押さえるんだったら、通貨偽造行使の共謀だけ押さえておけば十分じゃないですか。いかがですか。
○富田大臣政務官 通貨偽造準備の行為としてどんなことが考えられるかといいますと、例えば五百円硬貨を偽造するために同様のコインを用意するとか、偽造紙幣の紙を準備するとか、そういう行為も当然考えられるわけですね。それは、その行為自体、やはりかなり危険性を持った、自分たちではもうやらないつもりで集めていたとしても、それはどこへ流れるかわからないとか、そういうことを考えたときに、その準備行為自体がやはりかなり違法性の強い、反規範性の強い行為だというふうに私は思いますが。
○津川委員 ここはちょっと見解が違うところだと思いますが、いずれにしても、これは全部犯罪の話ですから、この犯罪はしてもいいじゃないかという議論をしているわけではなくて、共謀というものをそもそも罪とするような重大犯罪という仕切りをするときに、何をしちゃいけないのかというのは、やはりこれは明確にするべきだと思うんですね。六百十五までふやしてしまうと非常にわかりにくくなるから、そうではなくてこれとこれとこれだというのをわかりやすくするためには、まさに重大な犯罪の核心の部分についての罪の共謀というふうに言っておけば、基本的にそれで足りるのかなという判断です。
 それから、先ほど共謀が共謀にならないという話をされましたけれども、死刑になるような犯罪の共謀を共謀した場合に、それが共謀罪にならない理由を教えてください。
○富田大臣政務官 正確な答弁になるかどうかわかりませんが、例えば殺人の共謀を共謀するというのは、その最後の共謀というのは殺人の共謀そのものですよね。だから、それは今回の対象の共謀罪そのものだと思うんですが。
○津川委員 殺人の共謀の共謀と殺人の共謀は、中身が違います。いいですか。
 例えば、来週、某国の総理大臣を暗殺するという共謀をしようと。その共謀をするには、共謀する、参加される方々がスケジュール帳を見て時間を調整して、では今度の日曜日にやろう、今度の日曜日十時、どこどこで首相を殺す共謀をする会議を開くのでどうですかと電話で言って、うん、その時間はあいているよという話をするのが共謀じゃないですか。
 それは、中身は殺害じゃないです。殺害をする共謀をする共謀をしているわけですよ。法律的にはこれは共謀罪になっちゃうじゃないですか。いや、もうめちゃくちゃおかしな話ですよ。だけれども、この法律を読むと、六条の二の一項にある重い方ですね、死刑または十年以上の方の場合の共謀をしたときには五年以下になってしまいますから、この二号の方の四年以上の懲役またはの方にひっかかって、死刑になるような犯罪の共謀の共謀をしても共謀罪になるんですよ。
 実際に死刑になるような犯罪の共謀とその共謀は、中身が違います。犯罪としておかしな犯罪ができちゃうんですよ、これ。ならないという話をされたけれども、少なくともそれは死刑の共謀にはならないはずですよ。だって、何日の何時にどこで集まろうという話しかしていないんですから。どうですか。(発言する者あり)
 ついでに申し上げますが、今筆頭理事からそれは殺人の共謀になっちゃうんじゃないですかという話がありましたが、先ほど大臣も答弁されたように、焼き鳥屋で話をしているときには共謀にならぬという話をしましたね。焼き鳥屋で共謀すると共謀罪にならないという話じゃないと思いますけれども。具体的に、いつ、何時、どういう手順でどういった形でその犯罪を実行するかという具体的なことを共謀しなければ、合意しなければ共謀罪にならないという話のはずですよね。
 ですから、今度の土曜日に総理を、総理というのはやめますか、ある人を殺す共謀をする会議を開きますよという共謀は、死刑になるような共謀ではないはずなんですよ。でも、この法律の規定で長期四年以上のものというものを共謀罪の犯罪構成要件にしてしまうと、共謀の共謀まで共謀になってしまうんです。これはおかしいと思っていただきたいんです、このぐらいは。いかがですか。
○富田大臣政務官 ちょっと具体的に考えてみたいんですが、殺人をする日を決めて、何日か前に一たん先生がおっしゃったように集まる、その後また何度か集まって、殺人の直前に集まって実際に実行行為へ行こうというその直前の共謀だけが共謀罪の対象になるということはないと思うんですね。その他の要件も含めて、最初の段階で特定性、具体性がもし認められるのであれば、それはもう共謀罪の対象になるというふうに思うんですが。
○津川委員 ちょっと済みません、それで話し合いをして、最後の共謀の段階でこれはやめようという話をしたらどうなるんですか。共謀罪は成立するんですか。
○富田大臣政務官 それは、一たん共謀が成立していれば成立することになります。
○津川委員 やはりこれは法律的にはそうなるんですよ。でも、それはやはりおかしいでしょう、幾ら何でも。人を殺そうという話し合いをしようと言って、うん、しよう、しよう、しよう、うん、でも、やはりやめようと言ったのに、それは犯罪だというんですよ。
 最終的な合意は犯罪をしないという合意ですよ。犯罪をするという合意をしたらそれは共謀だと言っているはずの話が、最終的にはまさに重大な犯罪を犯さないはずの共謀をして、済みません、時間が終わりましたからもう終わりますが、というようなことが、四年以上になるとおかしいんです。五年を超すとやるとこれも全部クリアされますので、また時間をいただいて議論させていただきたいと思います。どうもありがとうございます。
○塩崎委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時四十五分散会