第163回国会 法務委員会 第6号
平成十七年十月二十一日(金曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 塩崎 恭久君
   理事 田村 憲久君 理事 早川 忠孝君
   理事 平沢 勝栄君 理事 三原 朝彦君
   理事 吉野 正芳君 理事 高山 智司君
   理事 平岡 秀夫君 理事 漆原 良夫君
      井上 信治君    井脇ノブ子君
      石破  茂君    稲田 朋美君
      近江屋信広君    大塚  拓君
      太田 誠一君    岡本 芳郎君
      笹川  堯君    柴山 昌彦君
      谷  公一君    福井  照君
      松野 博一君    三ッ林隆志君
      水野 賢一君    森山 眞弓君
      保岡 興治君    柳本 卓治君
      山内 康一君    石関 貴史君
      枝野 幸男君    河村たかし君
      玄葉光一郎君    小宮山泰子君
      田村 謙治君    伊藤  渉君
      保坂 展人君    滝   実君
      今村 雅弘君    山口 俊一君
    …………………………………
   法務大臣         南野知惠子君
   法務副大臣        富田 茂之君
   法務大臣政務官      三ッ林隆志君
   外務大臣政務官      小野寺五典君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    大林  宏君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 辻   優君
   政府参考人
   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君
   法務委員会専門員     小菅 修一君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月二十一日
 辞任         補欠選任
  秋葉 賢也君     大塚  拓君
  笹川  堯君     石破  茂君
  谷  公一君     岡本 芳郎君
  松島みどり君     松野 博一君
  柳澤 伯夫君     福井  照君
  河村たかし君     小宮山泰子君
  津村 啓介君     田村 謙治君
同日
 辞任         補欠選任
  石破  茂君     笹川  堯君
  大塚  拓君     山内 康一君
  岡本 芳郎君     谷  公一君
  福井  照君     柳澤 伯夫君
  松野 博一君     松島みどり君
  小宮山泰子君     河村たかし君
  田村 謙治君     津村 啓介君
同日
 辞任         補欠選任
  山内 康一君     井脇ノブ子君
同日
 辞任         補欠選任
  井脇ノブ子君     秋葉 賢也君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)
 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二〇号)
 最高裁判所裁判官退職手当特例法の一部を改正する法律案(内閣提出第二一号)
 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二二号)
     ――――◇―――――
○塩崎委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案及び最高裁判所裁判官退職手当特例法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
 他に質疑の申し出がありませんので、これにて各案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
○塩崎委員長 これより各案を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 まず、内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○塩崎委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○塩崎委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、最高裁判所裁判官退職手当特例法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○塩崎委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
○塩崎委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前九時三十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十分開議
○塩崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 内閣提出、犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長大林宏君、外務省大臣官房審議官長嶺安政君、外務省大臣官房参事官辻優君、外務省大臣官房国際社会協力部長神余隆博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
○塩崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平岡秀夫君。
○平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。
 きょう、私は、条約刑法の中でも国際組織犯罪防止条約に関連する法案の質問を中心にやらせていただきたいというふうに思っておりますけれども、冒頭、中身に入る前に、我々としては、この法案を審議するに当たっては、やはり条約の交渉経緯というものがしっかりとわからないと充実した審議ができない、場合によっては、そうした交渉経緯によってこの法案のあるべき姿というのが違ってくるのかもしれない、こういう視点でいろいろな資料提出を要求してきたところでございます。
 しかし、残念ながら、こうした私たちの要求に対しては、ある程度の概要を説明したペーパーはいただきましたけれども、我々が望んでいるものとはほど遠いものでしかなかったということで、大変残念であるとともに、我々としては、引き続きこうした資料の開示を要求していきたいというふうに思っております。
 そこで、まず最初に、その資料の中でも最も重要であると言われている公電の関係でありますけれども、国際組織犯罪防止条約、ちょっと長いのでこれからTOC条約というふうに略称させていただきますけれども、これに関するアドホック委員会第七回会合、第九回会合、そして第十回会合に関する公電を開示するように求めたいと思います。よろしくお願いします。ぜひ開示していただきたい。
○小野寺大臣政務官 ただいま御指摘の公電のうち、非公式協議に関する公電全体及び非公式協議の内容を記載した部分については、公開しないことを前提という条件のもとで各国が行った発言が記載されております。このような性格の文書を開示した場合には、他国との信頼関係が損なわれるおそれがあります。開示していませんが、それ以外については既に開示してきたと思っております。
 なお、不開示部分も含めた条約の審議過程につきましては、本条約に関係する法案の御審議のためという事情も踏まえ、本年七月八日及び十月十九日の法務委員会理事懇談会において、書面にて配付いたしました。とりわけ十月十九日に配付させていただいたものは、審議経過が十分にわかるようにしております。外務省としてもできる限りの対応をさせていただきたいと思っておりますので、ぜひ御理解をいただきたいと思っております。
○平岡委員 理解するわけにはいかないのでありますけれども、この点については引き続き要求を続けさせていただきたいというふうに思います。
 そこで、ことしの七月十二日に当委員会で、南野法務大臣に対して我々の同僚議員の方からもこの件について質問をさせていただきまして、南野大臣に、こうした公電関係、私もちょっと持っていますけれども、配付資料ではございませんから了承はとっていませんけれども、こういう形でしか開示がされていない。多分、これは前に見られたんですよね。
 こういうような状況になっているということでありまして、我々は、これでは交渉経緯が全くわからないじゃないかということで、南野法務大臣に対しては、御自身でこの公電をしっかりと見ていただきたいというふうに同僚議員がお願いしているはずでございますけれども、南野大臣、見られましたでしょうか。
○南野国務大臣 御指摘の公電につきましては、開示されていない部分、その墨で塗った部分についてもちゃんと見せていただきました。
○平岡委員 そこにはどういうことが書いてありましたか。
○南野国務大臣 公電を見たことということでございますが、公電の内容の詳細を今ここで私の口から申し上げることは適当ではないというふうに思っております。
 外務省におきまして作成いたしまして、先ほど御説明した概要と同じ内容のことが記載されております。政府が国際組織犯罪防止条約の交渉経過を隠しているとの御批判には当たらないというふうに思っております。
○平岡委員 我々は見ていないのでわかりませんけれども、外務省、先ほどの答弁の中でも、こういう記録を開示した場合には他国との信頼関係が損なわれるおそれがあるんだということで、その記録部分を開示することはできないというふうに言いましたけれども、大臣、自分で読まれて、まさにそういうことが書いてあって、この部分は開示すべきではないというふうに思われましたか。どうですか。
○南野国務大臣 いろいろな中身がございますが、私の考えといたしましては、それはクローズドでお話し合いがされた部分につきましてでございますので、その中身はオープンにすることはできない約束のもとにあったということを理解した上で、その文言といいますか、公開したらいけないということについては、それはそういう約束事を守るということになってくるというふうに思います。
○平岡委員 今、約束があったからできないんだという話だったですけれども、外務省の答弁の中でいくと、こういうような性格の記録を開示した場合には他国との信頼関係が損なわれるおそれがあるんだ、こういう話で、その書いてある中身がそういう信頼関係を損ねるおそれがあるのかどうかということを私は聞いているんですね。
 どうですか、見られて、本当に信頼関係が損なわれるおそれがあるような内容だったですか。どうですか。
○南野国務大臣 中身の文言一つ一つが信頼関係があるとかないとかということではなく、それについて、そういう約束事をもって、前提として話し合いをされた、これは国際的な問題でございます。
 先生も国際会議にお出になられて、起草委員会とかいうところにお出ましになっておられると思います。ある部分については、文言をどういうふうに解釈するかということだってあり得る話でございます、ある話でございますので、それはある意味で、英文で書かれるということであればネイティブの人の方がより確かだと思いますけれども、そこにもやはり我々は参加して、それなりの知識で対等に話をするということでございます。
 クローズドでやられたということ、会合は進行されたということについては、やはりその体制を守っていくべきだ、それが国際の信頼性を損なわない形で展開するものだと思っております。
○平岡委員 大臣の答弁は、そもそもそういう約束でやっているんだから開示できないんだという話ですけれども、私が聞いているのは、中身がそういう内容だったですかということを聞いているんですね。まあ、それはもういいです。
 そこで、私は、中身が秘密であれば、それは秘密でしようがないと。秘密であったとしても、では我々が一切見られないのかというと、いろいろな手段があると思うんですよね。国会法の中にも、秘密会を開いて、そしてそこで秘密にわたる事項についてもいろいろと調査をしたり審議をしたりすることができるという仕組みがあるわけであります。
 委員長、ぜひ、この公電の開示を含めて、公電の中身を確認するために、この委員会において秘密会を開催することを要求したいと思います。委員長、いかがでしょうか。
○塩崎委員長 理事会ではなくて委員会を秘密会にという意味ですか。(平岡委員「そうです」と呼ぶ)理事会で諮りたいと思います。
○平岡委員 この点については引き続きまた要求してまいりたいと思いますので、理事会でしっかりとまた議論をさせていただきたいというふうに思います。
 そこで、このTOC条約の関係でありますけれども、この条約については、先進諸国における議会の承認あるいは批准の状況というのはどういう状況になっており、見通しとしてはどういう状況にあるかというのをまず教えていただけますでしょうか。
○小野寺大臣政務官 お答えします。
 国際組織犯罪防止条約につきましては、G8の諸国のうち、現時点ではカナダ、フランス、ロシアが既に締結済みです。その他のG8諸国につきましてはいまだ締結しておりませんが、アメリカとドイツについては、既に締結について議会において承認済みであると承知しております。
 また、英国については関係する法律の省令の改定作業を残すのみであり、イタリアについては必要な法整備についての検討を行っているなど、各国ともこの条約締結に向けて鋭意努力されているというふうに承知しております。
○平岡委員 今の答弁の中では、既に条約を締結したところ、あるいは締結に向けて審議中であるところ、いろいろあったように思いますけれども、これらの国々について言うと、今回のTOC条約の第五条、問題となっている条文でありますけれども、これに基づいていろいろな国内法制化を図るということが各国に義務づけられているわけでありますけれども、どのような国内法制化が行われているんでしょうか、外務副大臣。
○小野寺大臣政務官 この五条につきましては、組織的な犯罪集団への参加の犯罪化について規定したものです。
 今御指摘がありましたが、既に条約を締結しましたカナダにつきましては、共謀罪及び参加罪の規定を有しております。また、同条約の署名に先立ち、条約の趣旨に沿った形で国内法改正手続の大半を終えていたことから、締約に当たってはごく一部の法改正で足りたものと承知をしております。
 また、同時に、既に条約を締結しておりますフランスですが、これは参加罪の規定を有していたところ、さらに刑法を改正して条約を実施しましたが、その改正に当たっては特に問題がなかったと承知をしております。
 米国につきましては、共謀罪の規定を既に有していたところ、同条約第五条との関係では特に問題なく法整備が可能であったものと承知をしております。
 英国も、共謀罪の規定を既に有していたところ、同条約第五条との関係では特に問題なく法整備が可能であったと承知しております。
 ドイツは、参加罪の規定を既に有していたところ、同条約第五条との関係で特に問題なく法整備が可能であるものと承知しております。
○平岡委員 今の答弁でもおわかりのように、ほかの先進諸国というのは、この条約締結に当たって余り大きな法律改正というのをしないでも済んでいるんですよね。
 私が何を言いたいかというと、日本の外交当局というのは、この条約を結ぶに当たって一体何をしていたんだ。本当に、これほどまでに日本の法体系を無視するような、離れてしまっているような法律改正をしなければ条約が締結できない、こんな交渉、なぜしてきたんですか。これは外務副大臣に聞きたいと思います。
 逆に言えば、こういうものをわざわざ条約として署名してきたということは、私は、日本の法務当局が、この機会にいろいろなことをこの日本社会の中に持ち込んでくる、いろいろな、この社会を管理していくような、そういう法体系を持ち込みたいがためにこの条約にあえて異を唱えないで帰ってきたんじゃないか、こんな疑惑まで私は持っています。
 まず、最初の質問については外務副大臣、そして二番目の質問については法務大臣、お答えください。
○小野寺大臣政務官 政務官答弁で恐縮です。
 今のお話で、我が国外務省を初め努力が足りなかったのではないかというふうなお話がありました。
 確かに、現行の法制度には一般的な共謀罪等の規定はありません。我が国の法制度に合うように、本条約の審議過程におきまして、日本としましても積極的な主張、提案を行うことにより、それらの一定程度を条文に反映させることができたと外務省としては考えています。
 すなわち、当初の共謀罪の規定は、重大な犯罪を行うことを合意するというものであり、また参加罪については、組織的な犯罪集団の犯罪活動またはその他の活動に参加する行為というものでした。その時点では、まだ共謀罪の対象となる重大な犯罪の範囲が定まっておりませんでした。また、共謀罪について、現在のように「組織的な犯罪集団の関与するもの」という要件を付すことも認められておりませんでした。
 そこで、我が国は、このままでは我が国の法制度と相入れない旨の意見を強く述べまして、共謀罪については、「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件を加えるべきことなどを提案し、関係国との調整の結果、「国内法上求められるときは、」「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件を付すことができる旨の規定とすることが各国に受け入れられ、現在の本条約第五条の規定となりました。
 このように、我が国としても積極的な交渉を行った結果、我が国の主張が受け入れられ、本条約第五条の規定となったものであるというふうに考えております。
○南野国務大臣 国際組織犯罪の防止条約、これは重大な犯罪の共謀などを犯罪とすることを義務づけておりますけれども、その理由は、組織的な犯罪というものは、たくさんの者が計画や準備に関与し、綿密に計画を立て、組織の指揮命令等に基づいて行われるという性質があろうかというふうに思っております。
 したがいまして、このような共謀がなされると、計画どおりに犯罪が実行される可能性が高いということであり、また一たび犯罪が起きてしまうと、重大な結果、または莫大な不正が生じることになってくると思います。
 そこで、このような組織犯罪に効果的に対処するためには、犯罪の実行に着手する前の段階でその一定の行為を処罰の対象とすることが不可欠であるというのが条約の要請、すなわち国際社会の共通の認識であるというふうに理解いたしております。
 そこで、我が国も、この条約を締結し、国際社会と協力して一層効果的に国際的な組織犯罪を防止するため、この条約が義務づけるところに従いまして、国際的な共犯、犯罪の共謀罪を新設することとしたものでございます。決して、先生が先ほどお話しになられましたような、監視社会をつくろうというものではございませんということを御理解いただきたいと思います。
○平岡委員 今の南野大臣の答弁は、非常に好意的に解釈して、これはあくまでも国際的な組織犯罪を防止するための条約であって、我が国の国内のいろいろな社会を監視するため、管理していくためのものではない、こういうものだという前提で、これから議論を進めさせていただきたいというふうに思います。
 そこで、この条約について言えば、私がいろいろな人たちから調べていただいたことによりますと、条約に基づく国内法制化の中で、ウクライナが、この条約の中で重大犯罪というものが四年以上の自由刑またはそれ以上の自由刑というようなことになっているけれども、この点について留保あるいは解釈宣言をして、ウクライナについては懲役五年以上のものについて重大な犯罪とするというような国内法制化といいますか、国内法との関係を整理されたというふうに聞いておりますけれども、この点は事実でしょうか。
○小野寺大臣政務官 委員御指摘のとおり、ウクライナにつきましては御指摘のような状況になっていると思います。
 ウクライナは、条約締結に当たって、留保及び宣言の名のもとに、重大な犯罪という用語は、ウクライナ刑法に言う重大な犯罪及び特に重大な犯罪に相当するものである。ウクライナ刑法に言う重大な犯罪とは、法により五年以上で十年を超えない自由刑が定められた罪をいい、ウクライナ刑法に言う特に重大な犯罪は、法により十年以上または無期の自由刑が定められた罪をいう旨表明しています。したがいまして、ウクライナは、留保及び宣言の名のもとに、本条約に言う重大な犯罪を長期五年以上の自由刑としたことは事実です。
 ただし、ウクライナの留保及び宣言の趣旨につきましては、同国における四年以上五年未満の自由刑が定められている犯罪が存在するかどうかなど、ウクライナの法体系を踏まえて検討する必要があり、現在、私どもはウクライナ政府に照会しております。まだ回答についてはいただいておりません。
 したがいまして、ウクライナの本件留保及び宣言の趣旨及びその条約上の評価につき、現段階で、長期四年以上の自由刑を長期五年以上の自由刑に限定したものと言えるかどうかを含め、確定的なお答えをすることは今困難だと思っています。
○平岡委員 一応、確認しなければいけないことが幾つかあるということですから確認をしていただきたい、その結果についてはしっかりとこの委員会にも報告していただきたいという前提でお話しさせていただきますと、条約というのは、条約法に関するウィーン条約というのがあって、その第十九条の中に条約の留保というものが認められているというふうになっているわけでありますけれども、このTOC条約についても、条約法に関するウィーン条約第十九条に基づく留保を付することは可能であるというふうに考えていいでしょうね、外務副大臣。
○小野寺大臣政務官 外交官経験もありますし、また法の専門家であります平岡委員の御指摘のとおり、ウィーン条約におきましては留保するということが可能になっています。多国間条約について、ある国が条約の一部の規定に関して問題を有する場合には、当該規定に拘束されずに条約に参加し得るように、留保を付して締結することが一般的に認められております。
 TOC条約では、第三十五条3、国際司法裁判所への紛争付託の拒絶を除き、留保に関する特段の規定は存在しておりませんが、交渉過程において、本条約への留保については、ウィーン条約法条約の留保に関する規定が適用されることが確認されています。したがって、ウィーン条約法条約第十九条に従い、条約の趣旨及び目的を損なわない限度であれば、本条約に対し留保を付すことは、御指摘のとおり、可能であります。
 しかし、本条約については、既に平成十五年の通常国会におきまして、留保を付さずに締結することにつき国会の承認をいただいております。行政府としては、本条約につき、このような形で国会の承認をいただいている以上、当然、留保を付さずに締結することとしており、その前提での国内担保法の審議をお願いしているところであります。
○平岡委員 今、国会で留保をつけないで締結することを承認していただいているという話でしたけれども、この留保というのは一体だれがつけるんですか。
○長嶺政府参考人 お答えいたします。
 条約に対する留保につきましては、これは、国として締結する際に留保を付する付さないということがあるわけでございますけれども、国内においては、これは条約の締結権を有している行政府が留保を付するということになります。
 ただ、これは先ほど答弁もございましたように、このTOC条約につきましては、留保は付さないということで国会における御承認をいただいたものでございますので、それに基づきまして、今後締結をする際に、今の経緯を踏まえまして締結をする、すなわち、留保を付さないで締結するということになろうかと思います。
○平岡委員 今、私たちは何をしているのか。私たちは、このTOC条約を締結するに当たって必要な国内法制化をしている。この国内法制化ができなければ締結ができない、こういう中で今議論しているわけですよね。
 そういう状況の中で、この国内法制化が、我が国の法制の中で、必ずしも法体系の中でうまくそぐわない、そういう状況の中で国内法化はこれが限度だというものがあったときには、これは国会の承認としての条約の締結についての承認がかつてあったといえども、国内法制化はここまでしかできないんだという意味においての留保というのは当然あり得るんじゃないですか。どうですか。
○長嶺政府参考人 お答えいたします。
 若干、留保の関係する国内的な手続との関係もございますので、その面もあわせて御答弁申し上げます。
 留保につきまして、これは厳密に言いますと、条約の規定に基づいて行う留保と、それから今委員が御指摘になっておりますようなTOC条約の一般的な留保の可能性ということは、ちょっと分けて論ずる必要がございます。
 後者のような、条約の規定に基づかないで留保を付して条約を締結するかどうかという際には、これは、条約の特定の条項に係る適用関係が、その留保を付すことによって変更され、または排除されるという効果がございますので、行政府といたしましては、条約の締結について国会の御承認を求める際に、付す場合につきましては、留保を付して当該条約を締結することについて国会の御承認をいただく、こういう手続になるわけでございます。
 今回御議論になっていますTOC条約につきましては、一昨年の通常国会におきまして留保を付さないで承認を求め、国会の方としてそのとおり御承認をいただいたわけですので、この条約につきましては留保を付さないで締約するということで、いずれ締約する際にはそのような態度をとるということになると考えております。
○平岡委員 今の答弁でもある程度明確になっているわけですけれども、国会が留保をつけないで承認することを承諾したということでありますから、では国会が、こういう国会の国内法制化の審議の過程の中で、やはりこれは留保を付してでも、この条約の適用については必ずしもそのとおりの国内法制化じゃないというものをつくったとしたら、これはやはり国会の意思として、留保して承諾をすべきであるということを改めて承諾する、このことも可能だというふうに私は思います。
 そういう意味で、あくまでも行政府が、自分たちは付したくないんだ、あくまでも国会が承認してくれたんだからその承認のとおりにやりたいんだというのなら、国会の承認をもう一度とり直すということを我々としてやればいいというふうに私は思っております。
 そこで、この留保をつけられるということについての条件がこの条約法に関するウィーン条約であるわけでありますけれども、どういう場合には留保を付すことができるというふうになっていますか。
○長嶺政府参考人 お答え申し上げます。
 これはウィーン条約法条約の第十九条の、先ほど御指摘のあった条項でございますが、中身を御紹介するということで御答弁させていただきたいと思います。
 第十九条は、条約には留保を付することができると書いてございますが、その例外として三点述べております。第一に、条約が当該留保を付することを禁止している場合。第二に、その条約が当該留保を含まない特定の留保のみを付することができる旨を特に定めている場合。第三に、今の二つの場合いずれにも該当しない場合でありますけれども、当該留保が条約の趣旨、目的と両立しないものである場合。
 以上が留保ができない場合でございますので、これを反対から読めば、最初の、禁止しているあるいは留保を認めないというのに該当しない場合には、条約の趣旨、目的と両立する限りにおいて留保というのが許容される、こういうふうに解するところでございます。
○平岡委員 今、条約の規定を紹介していただきましたけれども、先ほど紹介したものの中では、第一番目も第二番目も、こんなことはこのTOC条約の中には定められていませんからこれは該当しないということで、三番目の、当該留保が条約の趣旨及び目的と両立しないものであるときはだめだけれども、それ以外はいいんだということに該当するんだと思いますけれども、このTOC条約の趣旨、目的というのは一体何ですか、外務副大臣。
○小野寺大臣政務官 それぞれの条項によって違っております。
○平岡委員 意味不明の答弁ですけれども、条項によって違うというのなら、一つ一つの条項が、そこで違っていたらもう全然留保はつくれないというのは、そうしたら、みんな留保はつくれないという話じゃないですか。
 条約の趣旨、目的というものは、そもそもこの条約がどういう目的でつくられているのか、どういう趣旨に基づいてつくられているのかということですよね。
○小野寺大臣政務官 そのような御質問ですので、お答えいたします。
 この条約の全体的な趣旨ということによりますと、法の網をかいくぐって暗躍する国際的な犯罪組織に効果的に対処するため、各国の法制度を整備し、法執行活動を強化するとともに、国際的な組織犯罪の捜査や訴追における国際協力の促進を目的として作成されているということで理解しております。
○平岡委員 どこから引用されたのか、ちょっとわかりませんけれども、今いみじくも言われたように、この条約の第一条に目的が書いてあり、そして第三条に適用範囲が書いてあるわけでありますけれども、この目的でいきますと、「国際的な組織犯罪を防止し及びこれと戦うための協力を促進すること」だと。そして、この条約の適用について言えば、「性質上国際的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するものの防止、捜査及び訴追について適用」していくんだ、こう書いてあるわけですね。
 ですから、これが趣旨、目的であるので、この趣旨、目的と両立しないような留保ならできないけれども、その趣旨、目的と両立するようなものであるならば、これは留保は可能である、こういう位置づけになっているわけです。
 そういう意味で、私は、これから一つ一つといいますか細かい各論に入っていくに当たって、こういう状況にあることを踏まえて、もっともっと国内法制化に当たっては国内法の基本原則に沿った立案をしていただきたい、今回の法案はそれに全然合致していないわけでありますからもう一度出し直してきてほしい、こういう趣旨で以下質問させていただきたいというふうに思います。
 そこで、まず最初に、この法案の立法事実があるかどうかということでありますけれども、これは七月の十二日の同僚議員の質問の中でもありました。そこで、法制審議会では、法務省は共謀罪について国内的には立法事実はない旨の説明をしているというふうに指摘がされているのでありますけれども、そういう事実、法務省がそういうことを説明したという事実はあるんでしょうか、どうでしょうか。
○南野国務大臣 御指摘の法制審議会での発言といいますのは、事務当局から、国内的なニーズにこたえるという形はとっておらず、条約締結のために必要な犯罪化等を図っていきたいということを基本に考えているとの発言がなされたことを指しているものと思われます。この発言は、共謀罪の新設が直接的には国際組織犯罪防止条約を締結するために必要であることに基づくものであるという趣旨でございます。
 しかし、これに加えまして、法制審議会におきましては、我が国における国際的な組織犯罪の現状が深刻な状況を迎えてきていることについても説明がなされました。
 また、特に条約五条が犯罪とすることを義務づける共謀罪につきまして、我が国においても犯罪組織が資金を得るために種々の犯罪に関与することが行われているので、実際にそれが着手する前の段階であっても、端緒を得て犯罪組織の活動を摘発していくことは、組織的犯罪に対抗するための有効な武器になると考えている旨の発言もなされているところでございます。
 また、国内的にも、法案の共謀罪を新設することによりまして、例えば暴力団による組織的な殺傷事犯やいわゆる振り込め詐欺のような組織的な詐欺事犯などについて、その実行に着手する前の段階での検挙、処罰が可能となり、被害者の発生を未然に防止できるなど、我が国における組織的な犯罪により一層効果的に対処できることとなりますので、国民の安全と安心を確保する上でも十分に意義があると考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○平岡委員 今読み上げられた中身は、条約締結のために必要な犯罪化を図っていくということであるんだということであって、国内に本当に、今回皆さんが提案しているような法律をつくらなければいけない、そういう事実関係があるのかという点については何ら答えていない。
 特に問題なのは、国際的な犯罪ではなくて、国際的ではない犯罪についてまでこの共謀罪というものを今回の法案で持ち込んでいること。このことは何ら国内的には立証されていない、この必要性があることについては何ら立証されていないというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。――ちょっと答弁を探すのに時間がかかるのかもしれません。私はないと思っているということであります。
 そういうことで、先ほど私は条約の留保の話をしましたけれども、この条約の趣旨、目的というのは、先ほどから申し上げているように、国際的な組織犯罪の防止、これについていろいろと協力したりするんだというようなことがあるわけですね。国内的な問題については、これは条約の趣旨、目的とは違うんですね。
 そういう意味では、我が国では、国内的には、国内的な問題だけに関するものについては、こういう共謀罪をつくらなければいけない、そういう事実はないんだ、これが私は主張できると思うんですけれども、どうでしょうか、法務大臣。
○南野国務大臣 我が国内で、国内的にと言われるその限定される文言については、我々日本人がということになるんでしょうか。先生のイメージにある部分を教えていただきたいと思います。
○平岡委員 先ほどから言っているように、この条約の趣旨、目的というのは国際的な組織犯罪の防止ということですね。ですから、国際的でない組織犯罪について、今回のような共謀罪を持ち込んでこなければいけない、そういう立法事実というのは我が国にあるんですかということです。
○南野国務大臣 お答え申し上げますが、条約第三十四条第二項は、国内法で共謀罪等を犯罪とするに当たり、国際性の要件を付することを認めておりませんが、その理由は次のようなものと考えられます。
 すなわち、現実の社会では、ある犯罪について、その背後に国際的な犯罪組織が存在する場合であっても、個別具体的な犯罪行為だけを見ると、単独犯であったり犯罪行為自体は一国内にとどまるため、犯罪の国際性を認めるのが難しいというような場合もあります。また、特に捜査の初期の段階におきましては、捜査の対象となっている犯罪行為が国際的な性質を有するかどうかが明らかでなく、さらに捜査を進めてもその立証が容易でない場合が少なくありません。
 このような現実を踏まえますと、仮に、国内法で共謀行為を犯罪とするに当たりましては、国際性を要件とすると、検挙、処罰できる範囲が不当に狭くなってくる、そういうふうに狭くなる上、組織犯罪の早期かつ的確な検挙、処罰が困難となってくる。ひいては、一層効果的に国際的な組織犯罪を防止するという条約の趣旨、目的を没却してしまうことになりかねないというふうに言われております。
 そこで、条約は、国際的な組織犯罪に対する効果的な対処を確保するため、三十四条二項におきまして、国内法で共謀罪等を犯罪とするに当たり、国際性の要件をつけることを禁止したものというふうに考えられております。
○平岡委員 大臣は条約を引用されてしゃべっていますけれども、私は、この条約というのは、先ほども言いましたように、条約の趣旨、目的に反しない限りは我が国は留保ができる、その前提で話しているんですよ。
 だから、この条約の趣旨、目的は、先ほど言った国際的な組織犯罪の防止についての話ですよ。今、この条約に基づいて国内的なものまで共謀罪を持ち込まなければ、処罰できるものあるいは捜査できるものが何か不当に狭くなるというふうに言われましたけれども、それは取り締まり当局側のエゴであって、独善的な考え方であって、それは逆なんですよ。むしろ、国際的な組織犯罪を防止する観点からいったら、純国内的なものについてはできる限り除外していくというような法制度をつくっていかなければいけない。このことが我々の国内法制により近づけていく道だということなんですよ。
 だから、大臣が言っておられるのは、不当に狭くなるというのは、あくまでも取り締まる側の論理であって、これは社会全体に暮らしている人たちの論理じゃないんですよ。大臣、どうでしょう。
 大臣、私が言っているのは、条約からちょっと、余り条文にこだわらないで、条約の趣旨、目的というのが、国際組織犯罪防止のための条約ですと。ですから、そういうものが防げるようなものであるならば、条約の趣旨、目的に反していない。だから、その部分について、過度に国内的にいろいろな悪い影響を与えるものであれば、国内法の問題として我々はそこまではできませんということを考えるのが我々の役割じゃないか、我々はそういう立場に立つべきじゃないか。
 今大臣が説明されたのは、むしろ不当に捜査の範囲が狭くなるとかといったような、それは取り締まる側の論理でしかない。このことについて大臣の率直な御意見を伺いたいということなんです。
○南野国務大臣 いろいろな事案が出てくるというふうに思いますけれども、もしその事案が発生した場合には、その中身をしっかりと見てみないと、国内の問題だからそれは国際的につながっていないねということも言えないというふうに思いますが、そういう意味では、国内の問題は別よとなると、これはまた国際的に協力することはできにくいということになると思います。
○平岡委員 今、協力ができなくなると言いました。どういう協力ができなくなるんですか。
○南野国務大臣 一番大切なのは、我が国における、安心、安全に暮らすためにはどのような形で生きていったらいいか。我が国だけじゃなく、国際的にどのように国民の安寧を保つかということにもその問題点は関連しているというふうに思うからであります。
○平岡委員 いや、国際的に協力ができなくなると言われたので、どういう協力ができなくなるんですか、どういう場合が困るんですか、それをまず言ってください。
○南野国務大臣 いろいろな捜査範囲がございます。我が国でも、この問題についてはこのように捜査していこうというふうに計画した場合、それが国内にとどまらず国際的な犯罪ということになった場合には、国際的な相手国、それはどこかわかりませんけれども、そういうユニバーサルな問題点についても協力を得なければ、我々は、いい結果ができてこない。そういう意味では、国といろいろな、多国的にしていかなければならない話であろうと思います。
○平岡委員 大臣、よく考えてください。外国から我が国に捜査協力を求めてくる、これはもう国際的だからこそ協力を求めてくるわけですね。今大臣が例に挙げられました、我が国が外国に捜査協力を求めていく、これは国際的だから求めていくのですよ。つまり、国際的な捜査協力というのは必ず国際性というものが認識された上で協力を求めていくのであって、先ほど言いました、純国内的な共謀罪をつくらなくたって十分に国際的な協力はできるんですよ。大臣、そうじゃないですか。
○大林政府参考人 恐縮でございます。
 委員がおっしゃっている、留保できるかどうか、あるいは条約の解釈の問題については、外務省の問題だと思います。
 今お尋ねになっている問題について一つだけ例を出させていただきますと、共謀罪、今回、重大な犯罪ということで提案させていただいているところでございますけれども、もう委員十分御承知のとおり、現在、日本には共謀罪というのはそれほど多くはありません。
 ただ、先ほどから御紹介になっているように、外国では共謀罪がもう通例であるところもあります。ですから、今回、共謀罪を一応条約がつくれということになっていますと、日本の場合には共謀罪が限られた範囲しかないということによって、犯人引き渡しとか司法共助とか、そういう問題においてそごを来して、応じられない部分が多いということは一般的に言えると思います。
○平岡委員 刑事局長、何か捜査共助に応じられないと言われますけれども、それは国際性があるから捜査共助というのが行われるのであって、その捜査共助の要請があるんでしょう、国際的だから、国と国との間をまたがっているから。だから、そういうものについて協力さえできれば、別に何の問題もないじゃないですか。純粋に国内的なものを取り締まるような法律をつくる必要はどこにもない。
 今の刑事局長の答弁はおかしいですよ。それはもういいです、おかしい答弁はそのままで残しておきたいので。私は、強くそこはおかしいということを指摘させていただきたいというふうに思います。
 そこで、この条約の中では、三十四条第一項に「自国の国内法の基本原則に従って、必要な措置をとる。」というふうに規定してあります。そして、今まで法務大臣が条約を一生懸命引用されてきた部分というのは、実はこの三十四条の二項にあるわけですね。
 そうすると、三十四条の一項というのは大原則を定めるものであって、この原則というのは非常に大きな原則だと私は思うんですね。そういう意味においては、この「自国の国内法の基本原則に従って、必要な措置をとる。」という三十四条第一項の規定をしっかりと国内法化に当たっては維持していかなければいけない、私はこのように考えるんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○南野国務大臣 先生がお話しになられておられる国際組織犯罪防止条約第三十四条一項に言う「自国の国内法の基本原則」というのは、各国の憲法上の原則など国内法制において容易に変更することのできない根本的な法的原則を指すものと解されております。
 この点、我が国の刑事法におきましては、現実に法益の侵害が発生した場合はもとより、その危険性のある行為を未遂犯や危険犯として処罰することとしているほか、特に重大な罪や取り締まり上必要がある犯罪については、予備罪、共謀罪等、実行の着手前の行為をも処罰することとしております。
 また、法案の共謀罪は、犯罪の共謀を広く一般的に処罰するものではなく、重大な犯罪であり、かつ、組織的な犯罪集団が関与する犯罪の共謀に限って処罰の対象とするものである。したがって、今回の組織的な犯罪の共謀罪の新設ということにつきましても、我が国の国内法の基本原則に反することにはならないものであるというふうに思います。
○平岡委員 大臣、いみじくも、我が国の国内法の基本原則の中には法益侵害の結果が発生したものについて処罰していくんだというようなことがあるけれども、これは大した原則じゃないんだ、そんな趣旨のことを言われましたけれども、私はこれは……(発言する者あり)いやいや、それは憲法の原則になっていないとか、何かいろいろ言われたじゃないですか。だから今回のはいいんだとかと言っておられるので。
 それはやはり、書いてあるか書いていないかというのは別として、今まで我々の刑法の長い歴史があるわけですよ。そういう原則を踏まえていたら、やはりこの共謀罪というのは、これは漆原委員もかつて、共謀罪をつくるのが今度は原則になるんですかどうですかという質問に対して、どっちを言っているかわからないような答弁だと言って何か非難されておられましたけれども、やはりこんなことで共謀罪というものを原則にするというのはおかしい。
 あくまでも、我が国の共謀罪あるいは陰謀罪というものは、非常に重大な、本当に重大な、国が転覆するかもしれないといったような、そういうような重大な罪に対して設けているというのが原則であって、六百十九にも上る罪に対して共謀罪というものを設けることは、決して我が国の基本法制にはなじんでいないんですよ。
 まず、このことを原則として物事を進めていかなければ、これがいいんだと言われたら、もうこれ以上議論をしたってしようがないですよ。こんな条約を締結した外務省の責任、こんな条約を承認した国会の責任が問われなきゃいけない、こんなことにもなってくるというふうに思います。
 そうならないためにも、我々は、この国内法制化に当たって、しっかりと国内法の基本原則というものを守る、そういう国内法制化を図っていかなければいけない、このことをまず前提にしてお話をさせていただきたいというふうに思います。
 そこで、先ほど組織的犯罪集団の関与というものを前提としているんだということで限定がされているんだというような話がありましたけれども、果たしてこれは限定されているんですか。これまでの議論の中ではかなりこの点についても、私じゃなくて与党の紳士的な議員からも随分指摘があって、刑事局長も、ちょっとやはりやばかったかな、そんな答弁も出ているようでありますけれども。
 ここのところは、組織的犯罪集団というものが我が国の法律の中では必ずしも限定されたものになっていない、かなり幅広いものになっている。この点をもう一度、大臣の言葉として、どのようにお考えになっているのか、現時点でどういうふうに思っておられるか、このことをしっかりと答弁していただきたいというふうに思います。
○南野国務大臣 団体の定義を定めた規定に該当することだけで直ちに共謀罪の対象になったり処罰されたりということは全くありません。あくまで厳格な組織性の要件をすべて満たした場合に初めて、このような共謀を行った個人が罰則の対象となるということでございまして、法案で新設する組織的な犯罪の共謀罪、これは厳格な組織性の要件を満たす重大な犯罪、つまり、団体の活動として、犯罪行為を実行するための組織により行う犯罪、または団体の不正権益の獲得、維持、拡大の目的で行う犯罪を共謀した場合に限って成立することとしております。このような成立要件につきましては、法文上も明記されております。
 したがいまして、先生の御指摘の団体等の点につきましては、前者の要件を満たすのは、犯罪行為を行うことを共同の目的を有する団体として意思決定する、すなわち、犯罪行為を行うことが共同の目的に沿うような団体であり、かつ、団体内部に犯罪実行部隊を持つような団体である場合に限られることでありますし、後者の要件を満たすのは、例えばみかじめ料を獲得するための縄張りのような、その威力に基づく支配力を有するような団体、具体的には暴力団のような団体に限られるということでございます。
○平岡委員 具体的にはこういうものに限られるとかと言われても、どこを見たらそんなことが書いてあるのか、さっぱりわからないんですよね。これはもう皆さん指摘されているところですから、そういう指摘を踏まえて大臣の認識を聞いたんですけれども、大臣はそういう認識をほとんどお持ちにならないで、これまでどおりの答弁をされておられますから、これは国会で幾ら議論しても仕方ないのかもしれません。そうじゃなくて、国会での議論というのは、よりよいものを求めていく、そういう精神でぜひ参加していただきたいというふうに思います。
 この条約の中には、団体というものについていろいろな制約が課されているというふうに思うんです。条件というか要件というものが課されているというふうに思うわけでありますけれども、例えば、条約の中では、「金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため一又は二以上の重大な犯罪又はこの条約に従って定められる犯罪を行うことを目的として一体として行動するもの」といったような限定が付されているわけですよね。
 しかし、今回提出された法案の中には、そうした限定は何もない。これまでの議論でいけば、七月十二日に行われた議論をとってみても、宗教的目的や政治的目的の集団についても含まれてくる可能性がある、そういう条文になっている。
 そういうふうに幅広くなっていることに対して、大臣はどのようにお考えですか。この団体の範囲というものをしっかりと明確に、少なくとも条約に沿った中身に限定していく、そういう法律にすべきじゃないかというふうに思いますけれども、どうでしょうか。
○南野国務大臣 国際的組織犯罪防止条約に言う「金銭的利益その他の物質的利益」といいますのは、例えばわいせつ物をやりとりするような、主たる動機が性的欲望を満たすことにある犯罪も含まれるなど、極めて広い意味を有すると解されております。また、このような利益を得ることに間接に関連する目的でも足りるとされていることから、その適用範囲はさらに広く、純粋に精神的な利益のみを得る目的で行われる犯罪が除かれるにとどまるものと考えられます。
 しかし、仮にそのような目的で行われる犯罪であっても、それが重大な犯罪である以上、少なくとも我が国におきましては、他の目的で行われる犯罪と区別してこれを処罰しないこととするのは適当ではないと考えられます。そして、厳格な組織性の要件を満たす場合には、犯罪実現の危険性が高く、その事前抑止の必要性も高いので、他の目的で行う犯罪を共謀した場合と同様に処罰すべきであると考えられております。
○平岡委員 今大臣が読み上げられた中身をずっと聞いていましたけれども、大臣、私が冒頭に、この条約の交渉をするに当たって法務省は何を考えたんですかと最初に前提として聞きましたよね。この条約をきっかけとして日本の国を管理社会にしていく、そういうことを目指して法務省は今回の法案をつくっているんですかと。そうじゃないというふうに言われました。
 今大臣が読み上げられたことは、まさに、この条約を批准するということを理由にして、この日本という社会を管理国家にしていく、監視国家にしていく、そういうことを目指したものじゃないですか。不当に狭くなるからというのは、それはあなた方の論理ですよ。市民社会の人たちの論理じゃないですよ。そこのところをやはりしっかりと認識していただかなければいけない。勝手にこの条約の適用範囲を超えるような形で我々の社会を監視社会にしないでいただきたい、このことを私は強く申し上げたいというふうに思います。
 大臣、何か言いたいことがあるなら。
○南野国務大臣 先生からただいま、監視社会をつくることになるのではないかというお尋ねがございました。
 法案の共謀罪につきましては、すべての重大な犯罪の共謀を処罰の対象とするものではなく、団体の活動として、犯罪行為を実行するための組織により行われる等の厳格な組織性の要件を満たす重大な犯罪の共謀に限って成立することといたしております。何でもかんでもということではないわけでございます。
 団体の範囲が無限定であるとの御指摘も含まれておるわけでございますが、これは、団体の定義を定めました組織的犯罪処罰法第二条の第一項の規定に該当することだけで直ちに共謀罪の対象になったり処罰されたりするということでは全くありません。あくまでも、先ほど述べましたような、厳格な組織性の要件を含め、共謀罪の構成要件をすべて満たした場合に初めて、そのような共謀を行った個人が処罰の対象となるわけであります。
 したがいまして、共謀罪を創設することが、何らかの団体に属する人を広く監視するようなことになるものではないかと思っておられますが、そうではありませんということを申し上げたいと思います。
○平岡委員 この団体に該当することが直ちに処罰の対象にならない、そんなことは私もわかっていますよ。いろいろな要件が重なってきて処罰の対象になる。
 しかし、そのときの要件の一つに、この団体性が、どんな団体なのかということがあるわけですよ。そのときに、この団体というのは、条約の中ではこういう団体だというふうに限定されたものに書いてあるわけですよ。さらにそれを超えて今回の法案は出てきているわけですよ。だから、その点をつかまえて私は問題にしているわけであります。
 大臣、そう思いませんか。条約で規定されている組織的犯罪集団を超える概念としてこの団体が出てきているんじゃないんですか。超えていないんですか、全く同じですか、どうですか。
○大林政府参考人 基本的には、この立法過程は、当然のことながら、この条約を踏まえて国内法をつくったものでございまして、それに適するものとして、従来どおり組織的犯罪処罰法というものがある、その要件に条約のものが重なるということでこれを立法した経緯もございます。
 ただ、子細な面で見た場合に、先ほど大臣がお答えになったように、宗教上のもののみを目的とする場合にどうだ、条約上はそれは除かれるであろうと。しかしながら、国内法につきましては、やはり日本国内におけるまたそれなりの治安情勢なりそれなりの立法の必要性があるということで、委員がおっしゃっているように、今回の共謀罪の部分が条約より広い部分も確かにあると思います。
 ただ、団体の問題からしますと、先ほど大臣おっしゃったように、いわゆる暴力団的な団体ということで、解釈としてそういうふうに非常に狭めた形でやって、これまでも御説明しているとおりでございまして、多少差はありますけれども、基本的には条約を踏まえてつくられたものであるということを御理解いただきたいと思います。
○平岡委員 条約を踏まえたものであるということはわかりますけれども、条約を踏まえてさらにまた一歩も二歩も踏み込んでいるということを私は言っているのですから、今回の条約の締結に当たって必要な国内法制化を図るんだというのであれば、この共謀罪というのがもともと我が国の法体系の中では極めて例外的なものである、この前提を踏まえてやはり法制化していただかなければいけない。
 この機会に、何が何でもいっぱい対象となる団体を、この条約を超えて、また今までのものを維持するあるいはふやしていくんだ、そういう発想に立ってこの法制化をしてほしくないという意味において、できるだけ、条約で限定されている団体、場合によってはまたさらに限定してもいいのかもしれませんけれども、少なくとも、条約で限定されている団体を超えるような団体が含まれるような国内法制化はしてほしくないということを私としては申し上げたいというふうに思います。
 そういう意味でも、この法案については、まず出し直していただきたいというふうに思います。
 次に、この条約の中でも書かれている話でありますけれども、国内法制化に当たっていろいろな要件を付することができるということにはなっているわけでありますけれども、そのときに、この条約の第五条の1の(a)のところに、こういう犯罪をつくりなさいというものの中に、犯罪行為の未遂または既遂に係る犯罪とは別個の犯罪としなさい、こういうふうに書かれています。
 この別個の犯罪ということに関してでありますけれども、我が国は、予備罪とか準備罪というのは、この条約に言いますところの犯罪行為の未遂または既遂に係る犯罪ではないというふうに理解していいですか。
○南野国務大臣 国際組織犯罪防止条約五条の1の(a)となっていますが、それは、犯罪行為の未遂または既遂に係る犯罪とは別個の犯罪として、いわゆる共謀罪または参加罪を犯罪とすることを義務づけるものでありますが、この規定を離れて一般的に申し上げるならば、我が国の刑事法における予備罪または準備罪は、実行に着手する前の一定の行為を処罰するものでありますので、犯罪の未遂または既遂とは別個の犯罪ということになります。
○平岡委員 予備罪、準備罪が別個の犯罪という前提で考えると、今度は予備とか準備というのは、またTOC条約第五条の中で「国内法上求められるときは、」という規定の中で「その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為」、一般的には、アメリカ法で言うところのオーバートアクトとかいうふうに言われているようでありますけれども、我が国の言葉に当てはめたときには、今言ったような条約上にある行為の中には予備とか準備というのは入るのでしょうか。
○小野寺大臣政務官 ただいまの御質問ですが、本条約にあります「合意の内容を推進するための行為」とは、米国法におけるオーバートアクトを念頭に置いたものであり、我が国で言う予備行為等を念頭に置いたものではありません。
 オーバートアクトは、予備行為とは実行の着手前の行為という点では共通していますが、共謀罪の成立の要件としてのオーバートアクトのかわりに予備行為を要求することが条約の趣旨に反するか否かについては、予備行為の概念をいかに解するかによるものと考えております。
○平岡委員 私、予備と準備を言ったんですけれども、似たようなことをしゃべられるんだと思いますけれども、念頭に置いていないというのは、これはだれのあれですか。念頭に置いていないというのは、別にだれが念頭に置いているか置いていないかにかかわらず、この条約の条文の規定を見て、予備とか準備というものがこれに該当するのか該当しないのか。該当しないんですか。どうですか。
○小野寺大臣政務官 条約第五条1の趣旨は、組織的な犯罪集団による重大な犯罪を実効的に防止するという趣旨から、当該犯罪行為を行うことを合意すること自体を独立の犯罪として処罰することにあります。
 仮に、予備行為について、実行行為着手前の行為が予備罪として処罰されるためには、当該構成要件の実現のための客観的な危険性という観点から見て実質的に重要な意義を持ち、客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合たることを要件とするものと考えるのであれば、合意そのものをもって犯罪化するという本条約の趣旨に合致しないことになるおそれがあると考えられ、この点を慎重に吟味する必要があると考えます。
○平岡委員 慎重に吟味していただきたいと思いますけれども、私の常識的な日本語の考え方からいけば、ここに書いてある「その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為」というものの中には、予備行為とか準備行為も当然入ります。それ以上に、予備行為とか準備行為以外のものもあるのかもしれない。それは確かに認めますけれども、予備行為、準備行為というのは、当然これは入るんですよ。むしろ予備行為、準備行為の場合は、その合意の参加者一人ではなくて、その合意をした参加者以外の人が行うものも入ってくるという意味では、逆に広いものもある、私はそう思うんですね。
 そういう意味では、我々は、この条約の条文を国内法に当てはめて考えるときには、日本で既に、国内法の体系の中ではそんなにたくさんはないかもしれませんけれども、予備罪、準備罪というものが国内法では共謀罪よりもより幅広い範囲で存在しているというような視点に立って、例えば国内法制化をするときには、準備罪または予備罪とそれらの共謀共同正犯または教唆犯というような、我が国の法体系になじむ仕組みで国内法制化を図ることも可能ではないかというふうに私は思うんですけれども、法務大臣、どうでしょう。
○南野国務大臣 今先生が申されましたことでございますが、「合意の内容を推進するための行為」というのは、これは米国法におきます、先生もお話しになっておられるいわゆるオーバートアクト、これを念頭に設けられたものであると承知いたしております。そのような起草経過も踏まえまして解釈されるべきであると考えます。
 そして、米国の判例におきましては、我が国における予備罪の予備行為には当たらないと考えられるような行為、例えば殺人の共謀をした者が殺人の実行を依頼した者に対して報酬の一部を支払う行為や、薬物の密売を共謀した者が他の共謀者との間で密売について電話等で話し合って段取りをする行為、これもオーバートアクトに当たるとされているものと承知しております。
 また、条約におきましては、犯罪行為の未遂または既遂に係る犯罪とは別個の犯罪として、いわゆる参加罪または重大な犯罪を行うことを一または二以上の者と合意することを犯罪とすることを義務づけておりまして、このような義務を履行する方法としましては、参加罪または共謀罪を設ける必要があると考えているところであります。
    〔委員長退席、早川委員長代理着席〕
○平岡委員 ここの、今私が先ほど来から読み上げているところが、オーバートアクトを念頭に置いたものだと。それはまあ念頭に置いたのだろうと思います。
 でも、それでなければいけないというのは、根拠はどこにあるんですか。我々には条約の交渉過程の公電も見せてもらえないのでわかりませんけれども、これがオーバートアクトしか含まないんだ、それ以外の準備行為、予備行為というのは含まないんだという根拠を示してください。何を見たらそういうことが書いてあるんですか。この条約の交渉過程の中でそういう議論が行われて、これはオーバートアクトに限りましょうということで合意されているんですか。仮に合意されているとしたって、この条約の中でどれを見たらそれはオーバートアクトに限られるというふうに認識するんですか。
 これは通告をしていませんから、大臣にはちょっと難しいかもしれません。刑事局長でも外務当局でもいいです、オーバートアクトに限られるということの条約交渉上の根拠あるいは条約上の根拠、これを示してください。
○神余政府参考人 突然の質問でございますけれども、できる限りお答え申し上げたいと思います。
 本条約にあります「合意の内容を推進するための行為」は、先ほど御答弁がありましたように、オーバートアクトを念頭に置いたものではございますけれども、ただ、そのオーバートアクトとこの予備行為というものがどういうふうに違うのか、あるいは、その実行の着手前の行為という点では確かに共通しておりますけれども、共謀罪の成立の要件としてオーバートアクトのかわりに予備行為を要求することが条約の趣旨に反するか否かといったことにつきましては確たる定義はございませんけれども、これにつきましては、予備行為の概念というものをいかに解するかによるものというふうに考えております。
○平岡委員 場合によっては、我々は、ここに書いてあることは、我が国で言うところの予備行為、準備行為ということが該当するんだという解釈宣言なり留保なり必要な行為をすることによって国内法の体系と合わせていく、そのことも私は可能だろうと思います。
 それはさておいて、この顕示行為、オーバートアクトについては、立法化に当たってそういうことを伴うことを認めておって、ある国ではそうしたこともしているというふうに聞いていますけれども、どんな国があるんでしょうか。オーバートアクトを国内法制化において要件としている国としてはどういうものがあるんでしょうか。
○小野寺大臣政務官 御指摘のような立法を行った国としましては、オーストラリア、ロシア、フィンランド、ラトビア、サウジアラビア等が挙げられます。
○平岡委員 それらの国々においてオーバートアクトというふうに位置づけられているのは、この条文で書いてあることと全く同じ内容になっているんですか。どうですか。
○小野寺大臣政務官 各国がその国内法においてどのような形で規定をしているかの詳細については承知しておりません。
○平岡委員 各国がどういうことをもってオーバートアクト、皆さん方が言っておられるものとして、解釈通告なのか留保なのか知りませんけれども、としているのか、これは必ず調べてください。各国がどういうふうにこの条文に基づいた要件というものを、オーバートアクトと言われているものについてどういうふうに規定しているのか、これを調べていただきたい。お願いできますか。
○小野寺大臣政務官 時間をいただければ、誠意を持って対応させていただきたいと思っています。
○平岡委員 まずその調査をしっかりとしていただいて、また委員会に報告していただく。そして、我々も、我が国の法体系に合うような仕組みでこの国内法制化を図っていくということを一緒に検討していきましょう、そしていい案を来通常国会に出していくように努力しましょうということで、さらにもっと指摘しなければいけない点があるので、次のところに行きたいと思います。
 これも七月十二日の同僚議員の質問の中に、TOC条約で重大な犯罪とされる我が国の犯罪のうちで、越境性の可能性のあるものとないものとを区分してくれというふうに要請をし、そしてこれに対して、統計的な数字で示せれば示してまいりたいと当時の富田大臣政務官が答えられております。
 「これまでに具体例があったのかというようなものは、裁判例なり、法務省の方にもし統計があれば、それはお出ししたいと思います。」それに対して同僚委員が、「では、それは必ずきちっと出してください。」というふうにして、そのやりとりが終わっているわけでありますけれども、これはどういうふうな結果が出ていますか。それをお示しください。
○大林政府参考人 恐縮でございます。
 御質問の、国際的な組織犯罪を行っている、または行う可能性が高い団体としては、暴力団や外国人犯罪組織、あるいは、いわゆるやみ金融会社や組織的詐欺商法を行う団体などが一般的には想定されるところだと思います。しかしながら、このような団体そのものの把握を目的とした調査は行っていませんので、団体の数を挙げるということは困難であることを御理解いただきたいと思います。
 しかしながら、法案の共謀罪における組織性の要件は、現在の組織的犯罪処罰法において組織的な殺人等を加重処罰する場合の要件と同じでございまして、これまでにこの要件を満たした事例として承知している団体の例は五十数件、そのうち七割弱が暴力団で、残りは賭博場や詐欺会社などとなっております。御承知のとおり、この犯罪は今からつくるもので、これから摘発例が出るわけでございますが、今の団体の定義をしている前提としては、そのようなものが見られているところでございます。
 なお、具体的な資料化ができるものであれば、努力して、また検討させていただきたい、このように思います。
○平岡委員 今の答弁は、私が質問したこととは別のところの答弁だったので、それはそれで後で聞こうかと思っていましたから、今刑事局長が言われたように、資料化して提出していただきたいというふうに思います。
 今のは組織犯罪集団のところの質問なんですね。私の今の質問は、ちょっと質問の分野が違って、重大な犯罪のところの質問なんですね。
 我が国において重大な犯罪とされる我が国の犯罪のうちで、越境性の可能性のあるものとないものとに区分してくださいという話として、当時の富田大臣政務官が、「法務省の方にもし統計があれば、それはお出ししたいと思います。」ということで答えられて、それではきちっと出してくださいねと当時の同僚議員が言われたんですよ。今その同僚議員はここにおられませんから、私がかわりにそこをちゃんと、我々は継続性を持ってしっかりと答弁をチェックしていくんだ、そういうつもりで言っているんですけれども、副大臣、お持ちならお持ちで、言っていただければ。なければないで、後日またで結構でございますから。
○富田副大臣 済みません。今手持ちがありませんので、しっかり調査したいと思います。
○平岡委員 それでは、そういうことでお願いいたしたいと思います。
 そこで、この重大な犯罪というものがどういうものかということについての議論がありますけれども、今回は、自由刑として長期四年以上の自由刑またはそれ以上の自由刑だというような形で、非常に無味乾燥なといいますか、どんなものがどう当たるのかがさっぱりわからないような話になってきているわけであります。
 この条約交渉会合においては、リスト方式、どういう犯罪が重大な犯罪として、国際的な協力をしていくあるいは国際的な組織犯罪として防止されていくべきなのかということが議論されたという経緯があったと思うんですけれども、これについて、これまでの交渉過程の中で、どういうものがリスト方式として主張されたんでしょうか。どういうものがそのリストの中で示されていたんでしょうか。
 この点についての例を、例えばこういうものがありましたと、例えば、第十回のアドホック委員会会合ではリスト方式を主張する国の共同提案が出されたというようなことも皆さん方の報告の中から聞いておるんですけれども、どんなものが出されたんでしょうか。
○小野寺大臣政務官 第二回会合の条文草案においての犯罪リストの案が示されたという中には、一九八八年の麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約で規定されている不正な麻薬または向精神薬の取引及び資金浄化や、文化財の不法な輸入、輸出及び所有権移転を禁止し及び防止する手段に関する条約により規定されている文化財の不法取引及び窃盗、そしてテロ防止に関する国連条約に含まれる行為等が含まれておりました。
○平岡委員 今、一つの例として挙げていただきましたけれども、第十回会合においても、リスト方式を主張するアルジェリア、エジプト、インド、メキシコ、それからトルコからも、こういうものを挙げてはどうかというようなことで提案があったというふうに聞いております。
 こういった提案に対して、我が国としては、どのような問題があると認識して、どのような対応をしたんでしょうか、外務副大臣。
○小野寺大臣政務官 我が国としましては、本条約の対象となる犯罪をリストによって定めるリスト方式について、リストに含むべき犯罪選別の議論に多大な時間を要し、コンセンサスを得るのが困難であること、多様な活動を行っている犯罪組織への対応に柔軟性を欠くことなどを考えまして、適当でないと考え、これに反対の立場で臨みました。
○平岡委員 私は、ある意味では、国際的な組織犯罪として国際的に協力しなければいけない犯罪というのはおのずと限度があるんだろう、限界があるんだ、範囲があるんだろうというふうに思うんですよね。
 今回の長期四年以上の自由刑には国内法でどんなものがあるかというのは、資料として出てきていますから見るとわかるわけでありますけれども、例えば、特別公務員の暴行陵虐罪であるとか、あるいは公職選挙法であるとか最高裁の国民審査に違反するような話とか、そんなものまで全部これは入っちゃっているんですね。こんなものまで本当に国際的組織犯罪防止のための犯罪として国内法制化する必要があるんですか。どうですか。
○大林政府参考人 法務省といたしましては、組織的な犯罪集団は、みずからの組織の維持拡大のため、種々の利益を求め、手段、方法を選ぶことなくあらゆる犯罪活動を行うという特性を有することから、組織的な犯罪集団が将来実行し得る犯罪を漏れなく記載したリストを作成することは現実的に困難であると考えました。
 他方、法定刑は、それぞれの犯罪類型ごとにその違法性の高さや責任の重さに応じて定められるものであることから、犯罪の軽重を図る尺度として一定の合理性を有することを考慮すると、これを基準として、一定の重さ以上の刑期が定められている罪を対象とすることには合理性があると考えておりました。
 そこで、リスト方式によるのではなく、各国の国内法において定められている法定刑を基準として重大な犯罪を定めるべきとする主張を支持することが適当であると考えたものでございます。
○平岡委員 今六百十九の罪状が長期四年以上の自由刑またはそれ以上にあるというふうにありましたけれども、それぞれどういうことが考えられるのか、今ここで出してくれと言われてもすぐに出ないと思いますけれども、ちょっと教えていただけませんか。
 私にはどうしても、こんなものが国際的組織犯罪防止のために重大な犯罪としてここの中に規定されなければいけない犯罪だとは到底思えないものがあるんですよね。こんなものまで国内法制化したら、これは後世の笑い物になると私は思いますね。これは何のための立法なのか、そこのところをわきまえてやらなければいけないというふうに思うんですね。
 そういう意味では、やはりもっともっと抑制的にこの犯罪を特定していくということが必要だというふうに私は思うんですけれども、何か手を挙げておられるので。
○大林政府参考人 前から御説明しているとおり、四年以上、確かに、委員がおっしゃるとおり非常に大きな数にわたります。ただし、共謀罪の性質としては、先ほど申し上げましたように、団体性、いわゆる組織犯罪集団というものを頭に置いておりますので、要するに、その人たちが利益を得るためには、例えば公職選挙法においても、その利益のために特定の違反を行わせるということは抽象的には考えられるわけです。
 ですから、確かにリスト方式というのも一つの方式ではございますけれども、一つ一つを挙げていった場合に、では、絶対あり得ないのかという議論になりますと、これはなかなか難しいということでございます。
 ただ、委員が今おっしゃっている、では、具体的にどういうものがあるか、これは私の方で用意して御説明させていただきたいと思います。(発言する者あり)
○平岡委員 今同僚議員の方からも発言がありましたけれども、組織性だけの問題じゃないんですね。この条約に基づいて国内法制化をとるという意味において、我々はもっともっと限定的に考えていますから、国際性があって組織性があるその犯罪として、それぞれの罪状に基づいてどんなことが考えられるかということをお尋ねしたいということなので、そういうふうな視点でちょっと整理していただきたいと思います。
 ただ、私がちょっと思うのは、国によっては、長期四年以上の自由刑あるいはそれ以上というのは多分まちまちなんだろうと思うんですよね。ある国ではそれは該当するけれども、ある国では該当しない、そんなことがたくさんあるんじゃないかというふうに思うんです。国際的な捜査共助が必要だということで仮に重大な犯罪を特定していくとしたら、そんな犯罪がまちまちなものをどうやって円滑な国際共助ができるんだろうか、私はそういう疑問を持つのです。
 そういう意味でいったら、それは確かに作業は大変かもしれませんけれども、こういう犯罪が本当に国際的な組織犯罪として捜査協力をしていかなきゃいけないものなんだ、こういうような特定の仕方をしていくことが、私は、本来求められる立法作業じゃないかというふうに思うんですね、あるいは条約作業だろうと思うんですね。
 そういう意味において、長期四年以上ということで国内法制化をしたら、犯罪がまちまちになってしまう。このことから生じてくる問題というのはあるんじゃないかと思うんですけれども、どうでしょうか。これは一応通告してありますから。
○南野国務大臣 各国が自国の法定刑を基準として共謀罪の対象となる犯罪を定める場合には、一部の罪について、ある国では共謀罪が成立しますけれども別の国では成立しないこともあり得ることは、先生御指摘のとおりでございますが、この条約の義務に従いまして、少なくとも、各国におきまして重大な犯罪に当たる犯罪の共謀が犯罪とされることにより、多くの場合はすべての国において共通して共謀行為が犯罪となることとなると考えられております。
 したがいまして、多くの場合に、国際的な捜査共助の要件である、要請国においても被要請国においても犯罪に当たるものであること、これを双罰性と言うようでございますが、これが満たされることとなれば、国際的な捜査共助が促進されることとなるものと考えております。
○平岡委員 だから、長期四年以上の自由刑またはそれ以上というような形でやる場合には、それが該当するのか該当しないのかとか、国際的な捜査にも大変混乱を来すような話にもなってしまうわけで、やはり本来あるべきは、国際的な組織犯罪を防止するために本当に必要な犯罪というのは一体何なのかということを吟味して、そしてこういうものをつくっていくべきだということを申し上げたいというふうに私は思うんです。
 時間がちょっと限られてきたので、あと、どうしても聞いておきたいところを二点だけ質問させていただきたいと思います。
 一つは、自首減免の話なんですけれども、今回の共謀罪については自首減免規定というのが置かれています。先ほど来から私が申し上げているように、そもそも、この共謀罪という犯罪類型をつくるということ自体が、私は、監視社会あるいは管理社会というものをつくっていくんじゃないかというような不安を持っているわけでありますけれども、これほど多くの罪について自首減免制度というものをつくっていくということは、そういうおそれが非常に高いんじゃないか、なおさら高いんじゃないかというふうに私は思うんですね。仮に自首減免ということを認めるとしても非常に限定的であるべきだ、こういうふうに私は思うんです。
 そういう意味では、仮にその共謀が実行に移された場合には、被害が広範、重大で、かつ、事後の回復措置をとることが困難なもの、こういったものに限定して自首減免を考えていくべきだというふうに思うんですけれども、大臣、その点いかがでしょうか。
○南野国務大臣 共謀をした者が実行に着手する前に自首した場合に、刑を軽減し、または免除することとしているのは、これは、自首を奨励し、共謀に係る重大な犯罪が実行されることを未然に防止しようという政策的配慮に基づくものであると思います。
 このような規定を設けることは、共謀に係る重大な犯罪を未然に防止するため、共謀罪または参加罪の犯罪化を義務づける条約の趣旨に沿うものでありまして、また、この必要性は重大な犯罪とされる各罪において変わるところはございませんので、一律にこれを設けることとしたものでございます。
○平岡委員 だから、私は、こういう一律に設けるという発想そのものが、やはり監視社会、管理社会をつくっていくということになる。なぜこれをつくらなきゃいけないか。一たん被害が起こったときに、回復しがたい被害であったり、あるいは物すごく広範かつ重大な被害が起こったりとか、そういうものに限定して、本当に必要性があるものに限定していくべきだということを指摘しておきたいと思います。
 時間がないので、もう一つ捜査に関連して申し上げます。
 私は、先ほど共謀罪で出ましたけれども、イギリスとかアメリカなんかでは、捜査あるいは取り調べにおいて可視化というものが行われている。それはすべてじゃないかもしれませんけれども、そういうふうな形で、例えば、今回の共謀罪について言えば、どういうものが共謀の証拠になるのかというようなことを考えていったときには、非常に恐ろしい取り調べが行われる可能性もあるような気がするんですね。例えば、自白が強要されたり、あるいは誘導的な取り調べが行われたり、こういうことが非常に懸念されるわけです。
 そういう意味でいったら、従来から民主党の方では、取り調べの可視化ということを主張して、その関係の法案も提出したことがありますけれども、私は、この日本においても、この共謀罪ということとは離れてでも当然に妥当するのでありますけれども、仮に共謀罪というようなことが非常に限定された範囲内でつくられるとしても、ぜひ、この捜査、取り調べの可視化ということをやっていかなければいけない。そうしなければ、お互いに、取り締まる側の方も、逆に今度は、自分たちが本当にちゃんとした取り調べをしているというふうに世の中の人たちから見てもらえるんだろうかという逆の不安もあるんだろうと思うんですね。
 だから、この点についてぜひ実現させていきたいと思うんですけれども、南野大臣の見解を伺いたいと思います。
○南野国務大臣 共謀の存在というものは、取り調べによってその自白を獲得しなければならない、またならなければ立証できないというものではありません。
 例えば、犯罪計画書などの合意に関する物証や周辺事情、共謀の状況を聞知した者からの情報提供などによって合意の存在が裏づけられることもあると考えられます。このことは、既存の犯罪の共謀を立証したり、密行的に行われた犯罪を立証する場合においても同様であり、共謀罪の創設によって特殊捜査のやり方が変わるものではない。
 したがいまして、共謀罪が創設されれば、強引に自白を獲得することになるというものではないと考えられますが、先生から可視化という御質問をいただきました。
 取り調べの状況の録音、録画等につきましては、司法制度改革審議会の意見においても、刑事手続における被疑者の取り調べの役割、その関係で慎重な配慮が必要であり、将来的な検討解題とされていると思います。したがいまして、法務省といたしましても、この問題につきましては、刑事司法制度のあり方全体の中で慎重に検討することがあると考えております。
 以上でございます。
○平岡委員 この共謀罪については、まだまだ多くの論点があるだろうと思います。我々としては、今回の政府の法案というのは、基本的には、この条約を国内法化するに当たって、よりもっと一歩捜査の範囲を広げていって、監視社会、管理社会みたいなものをつくっていこう、何かそういう下心があるのではないかと、多分持っていないでしょう、大臣が持っていないと言われたから持っていないと思うんですけれども、一般の市民の人たちはそう思っている人が多いんですよ。
 そう思っている人が多いので、そこは自制的な国内法制化を行い、そして必要があるならば解釈宣言を出す、あるいは留保をする、そういうことも含めて、改めて立法化を考え直していただきたい、私はこのことを今回の第一回目の質問では要求させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。
○早川委員長代理 次に、石関貴史君。
○石関委員 民主党の石関貴史です。
 これは昨日の東京新聞だと思いますが、見出しが「共謀罪 三たび断念の背景」という記事が載っております。大臣、これは読まれましたでしょうか。
 冒頭の部分だけ簡単に申し上げると、近未来フィクションということで載っております。舞台が大手ゼネコンY社。A会長さんが、官邸の建設を受注したい。B社長は、これは役員も死ぬ気でセールスして頑張ろう、この会社でとろう。するとC副社長が、しかし、ライバルのZ社は既に政府に設計図を提出したというふうに言われていますよ。そこでD専務が、Z社の設計図を入手して対策を立てましょう。C副社長が、そんなことは甘いので、Z社に忍び込んで設計図を盗んでくるんだ、こういうことをおっしゃいます。B社長は、いや、D君、口実をつくって相手方へ忍び込んで盗んでこよう。そこでD専務は、犯罪に手を染めるのは不本意であるが、これは会社の存亡の危機だからやってみようということをおっしゃいます。
 最後に、このA会長が、そんなばかなことはやめなさい、正攻法で堂々と勝負をするんだというA会長のこの言葉で、瀬戸際でこの会社の首脳陣はこの盗みを思いとどまるということだったんですが、半年後に、窃盗の共謀の疑いで当局の捜査を受けて、C副社長、D専務が同容疑で逮捕されて、起訴される。盗みは実行されなかったが、共謀罪が適用されたということであります。ところが、このB社長というのは、おとがめがなかった。なぜかというと、この解説は、自首をしたので刑が減免されたんだということであります。
 大臣、これはお読みになったと思うんですが、こういうことが実際あり得るのでしょうか。
○大林政府参考人 先般来、団体の活動、それから目的という面でお答えしているところでございますが、いろいろなケースがあろうかと思います。
 ただ、今お読みになったもの、会社自体が正常な営業活動をしていた、その過程において、たまたまそういう違法なことを計画したという問題については、それは共同の目的があったというふうには認められないのではないかと考えております。
○石関委員 それでは、ここにあるフィクションのようなことは起こり得ないということで承知をしてよろしいんでしょうか。
○大林政府参考人 証拠次第というところもありますので、なかなか具体的な問題としては申し上げられないのですが、ただ、今委員おっしゃるものでいえば、例えばそのような盗み的なものを専らしている、それによって例えばほかの者からお金を得るとか、そういうものについては、私はなるのであろうと。
 ただ、今の一つの競争社会の中で、前も例が出ました、例えば脱税をするとか、今の競争関係においても、たまたまそのような行動に出るというものについては刑事罰がそれぞれあるわけですので、基本的にはその問題であろう。組織的な犯罪としてそのようなものを処罰するということが前提ですので、今お聞きしたような事例ではならないのではないかと私は考えております。
○石関委員 それでは、大臣にお尋ねをいたします。
 こういったような報道がたびたびされておりますし、この法案に対する反対の声や疑念や不安という声がますます高まっているというふうに私は認識をしているんですが、今週月曜日、十月十七日付ですね、日本ペンクラブというところから、会長の井上ひさしさんのお名前で廃案を求める声明を発表され、私もこれが送られてきて、いただきました。
 この日本ペンクラブというところ、大臣、どういう組織であるかということは御存じでしょうか。
○南野国務大臣 著書を書かれる方々がグループとなっているところではないかなというふうに思っています。
○石関委員 大変高名な方々が名前をそろえていらっしゃるところなんですが、「「共謀罪」新設に反対し、廃案を求める声明」というのを出されているんですが、まさに法案に関する声明ですので、大臣、これについては読まれていらっしゃいますでしょうか。
○南野国務大臣 それは読んではおりません。いただいておりません。
○石関委員 それでは、私、恐縮ですが、一部分だけ読んでさしあげたいと思います。社団法人日本ペンクラブ会長井上ひさし様のお名前ですね。「共謀罪は、法益を侵害する行為が実行されたことに対して処罰を行うという近代刑法の原則を否定し、共謀したという事実や推測のみをもって処罰しようとするものである。「行為」でなく「意思」や「思想」を処罰することは、戦前戦中の日本の暗黒社会を生みだした「治安維持法」の実例を見るまでもなく、およそ個人の基本的人権の擁護を前提とする民主主義社会の原則を忘却したものと言わざるを得ない。」このようにこの声明の中に書かれております。
 この日本ペンクラブ、大臣おっしゃったとおりで、ペンを持って立つ方々の会なんですが、歴代会長さんを見ると、初代が島崎藤村さんがやられている。その後、正宗白鳥さん、志賀直哉さん、川端康成さん、井上靖さん、遠藤周作さん、大岡信さん、梅原猛さん、そして今、井上ひさしさんがやられているという会ですね。また、理事の方々を見てみますと、専務には阿刀田高さん、また理事の中に、猪瀬直樹さんですとか梅原猛さん、養老孟司さん、こういう方がいらっしゃるということですから、この方々を見ても、これはわけのわからない方々の集まりじゃなくて、いわゆる知識人の、日本でも有数の方々の社団法人、会だというふうに、これは皆さんもこのように認識をされると思います。
 ただ、この法案に対するいろいろ誤解があるのではないかということを与党の委員さんもおっしゃっていますが、一流の知識人の方が集まっているこのペンクラブの名前でこういった声明が出されているということについては、この方々も誤解をされているんじゃないか、もっと説明をすればこの方々もわかってくれる、そういう御認識なのか、この声明に対しての大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○南野国務大臣 今お読みいただいたのを聞かせていただきましたけれども、もう少し我々が言わんとしているところ、法律に盛り込まれたところも御理解いただきたいなというふうに思いました。
○石関委員 今まで一度ならずこの法案は提出をされておりますし、この国会でも審議をされている。また、法務省においても、国民の中に理解を広げようと努力をされている。先日も、漆原委員からホームページの件もありました。
 ただ、そういった努力をされているにもかかわらず、この知識人と呼んでいい方々だと思います、大臣もそういうふうに思われるんじゃないかと思いますが、こういった方々でも理解をされない、誤解とまでは言わないんでしょうけれども、十分な理解をされていないからこういう声明が出される。今の大臣の御答弁をお聞きしても、こういった印象を大臣も持たれているんじゃないかなというふうに思いましたが、こういった方々を含めて国民の相当多数の方々が、この法案に対して理解をされていない、あるいは大いに反対をされている。
 そもそも、どうして皆さん反対をされているのか、大臣はどのように受けとめていらっしゃるんでしょうか。
○南野国務大臣 一言で申し上げるならば、今俎上にのって御審議いただいている法案を正確に御理解していただきたいという気持ちはありますが、法案の共謀罪の成立する範囲、そういうものは極めて限定されているものでございますので、そのような御懸念は、この点に関する正確な内容が十分に伝わっていない面があるのではないかというふうに思います。
 法務省としましても、法案の共謀罪について国民の方々に正確に御理解していただくよう、今後ともこの点について広報活動等を通して展開していきたいと思っております。
○石関委員 こういった方々にもなかなか理解をされていない、大変残念な状況だなというふうに思いますが。
 それで、国会における、この委員会における審議の中でもたびたび出ていますが、もう一度私からも確認をさせていただきたいと思います。
 まず、国民が不安に思っているのは、第一に、犯罪の準備すらしなくても、単なる話し合いや合意だけで処罰されるおそれがあるんじゃないか、憲法が保障する内心の自由ですとか表現の自由、こういったものが侵されるんじゃないか、いわゆる思想の処罰につながるんじゃないか、こういったことを非常に心配されている国民が多い。まさに、ペンクラブの会員の方々もこういった思いでこの声明を出されているんじゃないか、このように私は考えますが、これは大臣、全く杞憂だというふうにおっしゃるんでしょうか。そんなことはありませんよ、皆さんがよく理解をされないだけで、十分にこの法案を読み込んで、そして法務省の説明を聞けば、このことは全く杞憂だ、大臣はこのように御説明をされるんでしょうか、このように認識をされていらっしゃるんでしょうか。
○南野国務大臣 ペンクラブの方々も、良心の自由を侵害するのではないかというような気持ちが根底にあるのかなというふうにも思いますが、組織的な犯罪の共謀罪は、個別具体的な犯罪行為に着目して、条約上の重大な犯罪に当たる行為を団体の活動として当該行為を実行するための組織により行うことなどの合意をする行為を、そのような行為の危険性や反社会性の高さに照らして処罰するものであります。
 このような組織的な犯罪の共謀罪は、人の内心にとどまる単なる意思を処罰するものではありませんし、また、個別具体的な犯罪行為と結びつかない合意を処罰しようとするものでもありません。さらに、この罪が成立するためには、先ほどるる審議させていただいておりますとおり、団体の活動として当該行為を実行するための組織により行うことなどを合意することも必要であります。
 したがいまして、今回の法案の組織的な犯罪の共謀罪というのは、思想、良心の自由を侵害するものではないということも御理解いただきたいというふうに思っております。
○石関委員 それがなかなか理解されていないという現状を今御説明させていただいたので、非常に残念なことだというふうに思いますが、そもそも、その団体が限定をされていない。国民の素直な不安の気持ちとしては、先ほどからも御説明いただいていますが、これは犯罪団体だけではなくて、先ほど企業の例が新聞にありました、企業ですとかあるいは市民団体ですとか労働団体とか、こういった団体にも共謀罪が適用されてしまうんじゃないか、こういう心配を大きく持たれているから反対の大合唱が聞こえてくると思うのですが、このことも、よく理解をされていないからだ、皆さんそれは杞憂ですよ、そんな御心配要りませんよ、大臣はこのようにお考えでしょうか。
○南野国務大臣 きっと皆様方、市民団体の方やまた会社等の正当な団体に属しておられる方々が、法案の共謀罪が成立するのではないか、そういう御不安をお持ちなのかなというふうにも思いますが、法案の共謀罪が成立するためには、団体の活動として犯罪行為を実行するための組織により行われる犯罪ということをまず御理解いただきたい。もう一つには、団体に不正権益を得させる等の目的で行われる犯罪の遂行を共謀するという要件を満たす必要があるということも共謀罪、それが共謀罪に該当する、それ以外はならないんだということも御理解いただきたいと思っております。
 今申し上げました団体の活動として犯罪行為を実行するための組織により行われるという要件のうち、団体の活動というのが団体の意思決定に基づく行為であります。これはもう、今るる討議されたことでございますが、その効果またはそれによる利益が当該団体に帰属するものをいいます。また、犯罪行為を実行するための組織と申すのは、犯罪実行部隊のように、組織の構成員の結合の目的が犯罪行為を実行することにあるものということを解釈されています。
 したがいまして、法案の共謀罪が成立するのは、犯罪行為を行うことを共同の目的とする団体として意思を決定するということであります。すなわち、犯罪行為を行うことが共同の目的に沿うような団体であり、かつ、団体内部に犯罪実行部隊を持つような団体である場合に限られております。
 また、先ほど二番目に申し上げました要件のうち、不正権益とは団体の威力に基づく一定の地域または分野における支配力であって、当該団体の構成員による犯罪その他の不正な行為により当該団体またはその構成員が継続的に利益を得ることを容易にすべきものをいうから、共謀罪が適用されるのは、これも先ほど申し上げましたが、みかじめ料を獲得するための縄張り、そのような支配を有するような団体である場合に限られております。
 したがいまして、正当な団体の活動、ペンクラブのような正当な団体の活動が共謀罪の構成要件を満たすことはあり得ないというふうに思っておりますので、どうぞ御安心いただきたいというふうにも思っております。
○石関委員 今、ペンクラブという例も出していただきましたが、ペンクラブですとか、先ほど申し上げた企業、市民団体、労働団体、こういった団体はこの法律にある団体に当たらないということは、法案のどこに書いてあるんでしょうか。
○南野国務大臣 今申し上げましたように、それが共謀罪となるためにはということでるる申し上げましたとおりでございます。
○石関委員 書いていないということでよろしいでしょうかね。法案には書いていないと。
○大林政府参考人 今のお答えでございますけれども、この団体は当たる、当たらないではなくて、先ほどから大臣が御説明しておりますように、その団体あるいは団体の活動というものが組織的犯罪処罰法の二条、三条に適用、先ほどと同じ繰り返しになりますけれども、具体的に、共同の目的とか継続的結合とか、それから指揮命令に基づいて任務分担で動く組織だとか、そういうような要件がその前にあるのです。それに対して共謀罪はついている。
 それで、委員がおっしゃるとおり、御心配があるということは私どもも十分わかっています。
 それで、今のこの組織的犯罪処罰法について、こういう今の要件に当たるものについて、罪を加重して処罰している、それはもう現実に動いております。
 これはいろいろ御意見はあろうかと思いますけれども、一つの例として挙げさせていただければ、例えば平成十五年、刑法犯の検挙人員が百二十六万九千七百八十五と、その中に交通業過が多いんですけれども、このいわゆる組織的犯罪処罰法、例えば三条なんかの検察の処理人員が百六十五名と非常に少ないんです。
 では、その内容を見てみますと、具体的に団体として適用を受けたものは暴力団です。罪名を読んだらわかると思います。賭博場開張図利、幇助、殺人、殺人未遂、逮捕監禁、恐喝、威力業務妨害、詐欺、主たる罪名は大体それに限られております。ですから、その条件が非常に、確かに前から申し上げているとおり、確かに団体というのがわかりにくいという御意見はわかるのですが、今の要件を重ねた場合には、犯罪を目的とするそういう組織的なもの、活動しかない、基本的にはそう言い切っていいんです。
 それは、先ほど言いました継続性、一番最初に出された新聞の例でも、継続反復的に同じような行為をやっているのが犯罪集団でありまして、そういう点から、先ほど言われた事例のように、競争のために一時的にというものは組織性も問題でありますし、それから、沿う目的という点でも落ちるということでございます。
 ですから、これは実務の運用だということでまた御批判を受けるかもしれませんけれども、非常に謙抑的に、実際の実例、これはもう私ども資料を出してもいいんですけれども、そのように運用されているということをぜひ御理解いただきたいと思います。
○石関委員 これは十四日の平沢委員の質問にも団体要件に関するものがありました。今御説明いただいたのですが、一方で、この中で、ある団体が途中からその性格が変わって内容が変質したということで、こういう犯罪の行為を犯すとか、そういった団体になってしまった。これについては、一般論で、これは大林政府参考人の答弁ですね。「組織性の要件を満たすかどうかは、団体の名称や法的地位から形式的に判断されるものではなく、その団体の実際の活動内容等を総合的に考慮して判断されるべきもの」だと。
 この総合的に判断ということは、どういうふうに判断されるのか、よくわからない。この団体について具体的に列挙されたわけではありませんから、こういった部分で今の御説明を伺ってもなお非常に心配だ、私自身もそういう気持ちになりますし、また国民の方にはさらに、私も直接ここで伺っているわけですが、それでも心配なわけですから、国民に伝わる段階ではさらにこの心配が増幅をされているということだと思うんですが、この点についてもう一度御説明いただけますでしょうか。
○大林政府参考人 一応この適用のあるものは、非常に犯罪目的、犯罪を行う、そういう組織的な集団だというふうに御理解いただきたいと思います。
 今御質問のように、例えば、初めは正常なものから走り出した。しかしながら、また、倒産みたいな形になりました、もう正常な業務は行えない、実際詐欺するしかないということで、その組織が全体として専ら詐欺を繰り返していくという場合には、それは最初の、例えば登記の、定款なんかから外れたものであっても、これはもう完全に詐欺集団として切りかわった、こういう認定をされるケースはあろうかと思います。
 ただ、それは証拠の問題かもしれませんけれども、今のような団体の要件がいろいろ重ねてありますので、そういう意味において、団体の定義というよりは何の犯罪を行ったかということがこの場合問題でありますので、そういう点から、その当該犯罪の集団だ、そういうもので全体が一体として動いている、役割分担している、そういうものを前提としているというふうに御理解いただきたいと思います。
    〔早川委員長代理退席、委員長着席〕
○石関委員 御答弁いただきましたけれども、それにしても、総合的に考慮される部分が大きければ大きいほど、列挙されていないわけですから、なかなか国民の不安というものを払拭できないし、私自身もこの疑念というのはクリアにならない。この部分をしっかりクリアにしない限りはこの法案はなかなか国民の理解を得られないでしょうし、これはしっかりこの部分を特に練り直して、また提出された方がいいのではないかなというふうに申し上げます。
 それでは引き続きまして、これまた新聞の記事で恐縮なんですが、東京新聞ですね。十月八日付です。
 これは共謀罪に関してアメリカの例が載っています。アメリカは乱発をして歯どめがない、これが日本にも導入されてしまうと大変だよ、こういう非常に不安をあおるような記事なんですけれども、これが事実かどうか。反戦運動も対象になってしまいますよ、「話し合いだけで罪、誰もが捕まる可能性」と。
 これは、今法務当局の御説明では、こんなことはないんですよということですが、実際はこういうことが書かれていて、立派なマスコミのメディアに載って流れているということなんですが、こういうことは本当に日本では起こらないんでしょうか、この法案が通ったとき。もし万が一この法案が通ってしまったとき、こういうことは起こらないんだということであれば、はっきりそのようにおっしゃっていただきたいと思います。
○大林政府参考人 今の御指摘の記事の具体的な内容は私、わかりませんけれども、ただ、それは各国によっていろいろな形があろうかと思います。先ほども平岡委員から御指摘のあったオーバートアクトの問題がございます。私が承知している限り、英米法の国は、犯罪を行ったということがもう前提で、あとは悪いものは共謀しても罪になるということで、割合と、まあそこはよくわかりませんけれども、コンスピラシーの共謀罪というのが広く行われているというふうに伺っております。
 ただ、これまでも議論になっておりますように、我が国におきましては、共謀罪はこれまで非常に少ないということがございます。
 それから一方で、今度は単なる共謀ではなくて、組織的犯罪処罰法の、今のような重畳的な要件、団体要件を重ねたものを私どもは考えております。
 ですから、その記事のもとになっているものが私はわかりませんけれども、アメリカの場合には比較的共謀罪でという運用がなされている可能性もあるのかなと。ただし、日本の場合は、今の単なる共謀じゃなくて、その前に団体規制というものがかかっていますので、そこで濫用というものは歯どめがかかるものだというふうに考えております。
○石関委員 英米と法体系が違いますから、これが同じような共謀罪という名前をとっていても日本は違いますよということだろうと思いますが、ただ、こういう形でマスコミで流れれば流れるほど、国民というのは不安に思いますし、本当にそうなんだろうかという思いもあるでしょうから、それを払拭するだけの説明の努力はしっかり果たしていただきたいと思います。その努力がまだ足りないので、先ほどペンクラブを初めとして反対の大合唱が起こっているんじゃないかなというふうに思います。
 それから、これは大臣にシンプルにお答えいただきたいと思うんですが、たびたび話が出ておりますが、対象犯罪が六百十九ですか、六百を超える、六百十九というふうに認識をしていますけれども、これだけの多くに上る。また、公職選挙法等、本当にその条約が想定するものがここまで多く入るのだろうか、こういうふうな印象を受ける国民が相当多数だと思います。これを全部認めてしまうというのは、大臣、シンプルに考えて、これは多過ぎるんじゃないか、そういう認識を大臣はお持ちにならないでしょうか。
○南野国務大臣 先ほど平岡委員からも、いろいろその件については審議させていただいたと思いますけれども、六百十九というものの基本になるのは、四年以上の長期凶悪犯罪であるという一つの基準がありますので、その基準に合わせてしたということでございます。
 そのほかでは、リストアップすればいいじゃないかというもう一つの考えもありますけれども、四年以上の長期の凶悪犯罪というようなところで切った場合には、先生がおっしゃるように六百十九ぐらいある。
 そして、公職選挙法のことは、それはもし別な線で切ったならば、そこら辺の十三項目がなくなるだろうということでございますので、そういうことを考えるならば、いや、それは中に入れても中長期的な展望で、それが全くなくなるというようなことはあり得るのかあり得ないのかわかりませんが、それはさほど問題ではないのではないかな。いや、六百十九が多いと思う方は、この切り口で切った場合には六百十九になるというようなことを御報告できるかなというふうに思います。
○石関委員 決まったラインで切るので六百十九出てもしようがないということだと思うんですけれども、こういう官僚的な御説明をされている限りは、なかなか国民に理解は広がらないだろう、今、そういった印象を私は改めて持ちました。
 先ほど、平岡委員からも、監視社会になってしまう、そういう危惧を抱く国民が大変多いということもありました。また、自首した者は刑が減免されるということですから、この措置があると、密告社会、この社会が密告をすることを許容するような、自分が密告をすれば自分は逃れられるんだ、そういう風潮を喚起してしまうんじゃないか、こういう監視社会であったり密告社会、政治やそれから制度、法律、こういったものが社会のセンチメントといいますか、雰囲気とか行動を規定するわけですから、規制をしていくということですから、世の中に悪影響を与えてしまうんじゃないか、私はこういった危惧も抱いているのですが、政治家として大臣はこのことについてどのようにお考えでしょうか。
 監視社会、こんな世の中になっていいのかな、また、あるいは密告社会、密告を奨励とは言いませんが、密告をすれば自分は逃れられるということであれば、人間の性情を考えれば、自分は密告をしよう、あるいは陥れよう、こういった危惧を抱いても私は当然だと思うんですが、政治家として大臣は、このことが世の中にどんな影響を及ぼすか、私は大変な悪影響を及ぼしてしまうんじゃないかなというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○南野国務大臣 人間は性善説をとるか性悪説をとるかという問題点からもスタートするだろうと思いますけれども、自分がどういう行動をすればそれが悪い方向でないのか、こういうことをすればよい方向なのかということの見きわめが本当に自分自身にできていくという最初の段階が必要ではないだろうか。人間としてのそのポリシーというものをどう構築していくかということがもっと、今、我々法務省では法教育ということを学校で展開しようとしておりますが、そのようなルールを守って生きていくということを一つの大きなポイントにして考えたいと思ってその教育をしているわけでございますので、そういうところで、どのような行動をされるかということが、例えば密告しなければならない、そういう方たちをそうでない環境に持っていくためにはどうしたらいいか、環境の問題も考えていかなければならないと思います。
○石関委員 これは関連でまた大臣にお尋ねをいたしますが、今回、総選挙で、小泉首相はこういう言葉を御自身ではお使いにならなかったんでしょうけれども、いわゆる刺客という方が造反されたところに送り込まれたということで、私、この刺客という言葉自体も非常に青少年を中心に悪い影響を及ぼさなければいいな、こういった気持ちで私自身もこの選挙に出たわけですが、刺客を送り込んで、いわば首をとってしまう、徹底的にやっつけてしまう、こういった政治の姿勢というのが世の中にやはり悪い影響を及ぼしてしまうんじゃないかな、こういう危惧を私は抱きながら自分も選挙戦を戦ってきたわけなんです。
 今、法教育をやらなきゃいけないということなんですが、法教育というのは、今どの段階までそれが進んでいるんでしょうか。法教育がしっかりしていて、今まで日本にあったかなかったか、法教育がしっかりして、そういった基盤があった上で、こういう新しい時代の趨勢ですとか国際的な犯罪に対応した国内法を整備していく、しっかりした法の認識を持った子供たちが育ったり、我々がそういう基盤を持った上でこういう法整備をされるというのは一つ理解ができる段階かなというふうに思うんですが、今、その法教育はどの段階に至っているんでしょうか。
○南野国務大臣 先生、刺客とおっしゃいましたけれども、我々国会議員が刺客という文言を用いたかどうか、自分たちから私は刺客よと言った人がいたかどうかということを考えれば、それはそうでなかったんじゃないかなというふうに思います。どこから刺客という言葉が生まれたのか、私は存じ上げません。
 そういうような意味で、今、法教育の話に移りましたが、もうテキストブックはできました。小学校、中学校でも今展開されております。学校の先生がそれを展開できないレベルであるならば、それはその地域にいる弁護士さんでもいろいろ司法関係の方々をお呼びして、子供たちと一緒に教育するというところのレベルまで行っておりますので、どうぞそれは各地域に広めていきたい課題でございます。いろいろな県で取り扱ってくださっておりますので、そういう意味では、子供たちがルールを守るということを勉強してくれば、家庭で会話をすれば、大人が子供から教えてもらうことも多いのではないかなと思っております。
○石関委員 刺客ですか、こういった言葉は使われていないということで、先ほど申し上げた……(南野国務大臣「使われていないとは言いませんよ」と呼ぶ)大臣は使っていないですし、また小泉首相も使われていなかったということだと私は……(南野国務大臣「それは知りませんよ」と呼ぶ)知っている限りです。報道等でも、党として抗議もされているぐらいですから、こういうことかなというふうに思うんですが、ただ、その刺客という言葉は実際に使われていますし、例えば密告社会、先ほど私が申し上げた言葉も、大臣も使われていないでしょうし、法務省としてもこういった言葉は使われていないんだと思うんですね。
 ただ、この法案が提出されることによって、密告社会という言葉がやはり報道の中でも使われていますし、このこと自体、私は非常に社会をシュリンクさせるような、そういう問題を持っているんじゃないかなと思います。このことは申し上げておきたいと思います。
 また、本論に戻りますけれども、法務省、きょうに至るまで、先ほどいただいてきたような説明をずっとされてきた、私がお尋ねしたことも、以前にも御答弁をされた内容が随分入っていたというふうに思いますが、結局のところ、国民の反対とか心配というのは、これは杞憂ですよ、心配要りません、皆さんが御心配されるような、そんな広くやりませんからという御説明だったというふうに私は理解をいたしますが、それでも国民の反対はどんどん高まっている。こんな法案やめてくれ、そういった声は大臣の耳にも届いているだろう、この委員会の部屋だけではなくて、いろいろなところからそういった声が大臣の耳にも届いているだろうというふうに私は思います。
 先ほど申し上げましたけれども、ホームページにおいても説明の努力が足りないんじゃないかなということが与党の委員からも指摘をされました。法務省が、また大臣が、この反対というのは、誤解とは言わないまでも理解が足りない、もう少し理解をしてほしいということですから、このことが誤解であるのかそうでないかということはおいておいたとしても、国民に理解をしていただくために、本当に、先ほどおっしゃったような、もっと理解をしてもらおうというためには、法務省としては、また大臣御自身はどのような努力をこれまでされてきたのでしょうか。今までいろいろやられてきた中だけれども、ここまでしか理解が進んでいないというのが私は現状だと今までの御答弁を聞いていて思うんですが、どんな努力をされてきましたか。
○南野国務大臣 お答え申し上げる前に、私が資料を見ずに先ほど対象犯罪の数などを言っておりましたので、犯罪の個数の考え方については定まったルールがあるわけではありませんけれども、平成十七年四月一日に施行されている罰則であって、これは性質上共謀の対象とならない過失犯と未遂犯を除いた上で対象となる罪の条の数を数えると、合計で四百九十二となります。また、どのような罪名あるいは犯罪行為が対象となるかという観点から数を数えますと、私がさっき言った数ではなく、合計では六百十五という数であるということをちょっと先に訂正させていただきたいと思います。
 先生がおっしゃられた、私が何をやってきたかということでございますが、法案の共謀罪につきましては、個々の国民の方々に正確に御理解していただくことは極めて重要であるというふうに思っております。先生も正確にお伝えしていただいているというふうに感謝申し上げますが、そこで法務省としましては、これまでも共謀罪等の法案に関する説明を当省のホームページ、ごらんいただいていると思いますけれども、そこに記載いたしております。
 また、報道機関等に対しましても、できる限り丁寧に説明をしてさしあげておったところでございますが、今後ともこのような広報をさらに充実していきたい、いろいろな会合のときにもこのような話ができるようになれば、それはもっといい広報の場所であるというふうにも思っておりますし、そのようにも展開してきつつあります。
○石関委員 今、努力をされてきたという御答弁をいただきましたが、その努力にもかかわらず理解がされていない、大臣としては大変じくじたる思いをお持ちだろうというふうに思います。
 今お話を伺っていると、先ほど、ペンクラブもそうですが、反対をされていたり、本当はそうじゃないですよという記事を書くマスコミや、こういったところに御説明をされてきたということなんですが、例えば、反対の声明を出された先ほどのペンクラブ、こういうところには個別に対応というのはこれまでされてきたんでしょうか、それとも、そのままほっておいて、ホームページなり、またあるいはマスコミへの記者会見なり、そういうところでの説明に終始していたのか、あるいは個別に丁寧な説明をされてきたのか、こういった具体的な説明の仕方というのを御答弁いただきたいと思います。
○大林政府参考人 今御指摘になられた、ペンクラブに対して直接私どもが御説明するということはありませんでした。
 委員がおっしゃるとおり、皆さんの理解を得るということは極めて重要であると考えております。私、先ほど、実際の今の要件、団体要件で処罰している事例をちょっと御紹介させていただきましたけれども、それがかぶって今度の共謀罪という形になっていますので、そういう現実的な処罰事例としてどういう形で運用がなされているか、こういう面についてもやはり御理解いただく必要があるかなと。それも含めまして、私ども、さらに検討させていただきたいと考えております。
○石関委員 ホームページのお話をされました。いわゆるパブリックコメントというものはとられたんでしょうか、ホームページ等を利用して。いかがでしょうか。
○南野国務大臣 まだとっていないということでございます。
○石関委員 これは、これまで一度ならず提出をされてきた法案なんですが、今まで一度も行われていなかったということでよろしいでしょうか。
○南野国務大臣 法制審議会で御審議いただいておりますので、そこにはいろいろな御意見をいただいております。
○石関委員 法制審議会のメンバーとどのような議論がその中で行われたか、このことの御説明をお願いします。
○大林政府参考人 法制審議会には学者の方もおられます。それから、日本弁護士連合会の弁護士さんもおられます。今回反対されている意見には、弁護士さんの委員の方も反対というか、最終的な形は別といたしまして、いろいろな議論、もちろんその中には反対される議論もあった、このように承知しております。
○石関委員 いわゆる有識者の方々が入られている審議会ということなんですが、一般の国民の間にはなかなかわかりづらい法案であって、不安が広がっているということですので、そういった方からパブリックコメントのような形で意見を伺っていないということだと思うんですが、先ほど大臣がおっしゃったように、そういった説明をもっと充実させていきたい、そういうお気持ちはあるというふうに理解をいたしましたが、これはぜひパブリックコメントぐらいはとらないと、一部のいわゆる有識者の方々だけの審議会の意見でこれを強引に進めていくというのは私はいかがなものかと思うんですが、今後そのようなお考えをお持ちなんでしょうか。この法案を通すために、また、国民の理解を広げるために、パブリックコメントのようなものをお考えでしょうか。
○大林政府参考人 この法案につきましては、既に国会で御審議いただいております。それから、委員が御指摘のとおり、マスコミでもいろいろと報道されております。その中でいろいろな御懸念なり御批判があることは、私ども承知いたしております。私ども、今すぐにパブリックコメントという形をとることは考えておりませんけれども、いろいろな報道等で論じられていることでもあり、そういう誤解がもしあるならば、解消するためにさらに努力したい、このように考えております。
○石関委員 誤解なのか理解不足ということなのか、先ほどから答弁でもありました、私も再三申し上げているとおり、理解がされていないのが現状だということは我々の共通認識だと思いますから、ぜひこういった手段も活用して、より広く国民の意見を聴取して、また、周知をする、御理解をいただくような努力は、これはぜひやってしかるべきだというふうに思いますので申し上げます。
 このいわゆる共謀罪については、過去二回、国会の審議で廃案になっているということですね。今回が三度目の提出だということですが、議事録を見ますと、前国会、そして今国会においても、審議の中で与党の委員からもさまざまな疑念も表明されているということですし、今回、法案を再度提出するというこのときに当たって、そうした国民の不安ですとか国会での審議の経過を踏まえて、当然私は、直すべきところは直さなきゃいけない、また、わかりにくいところはわかりやすく直す。
 何度も答弁を伺っても、それでもわからない。これはわかりにくい表現をされているんだ、そういう法律になっているんだということだというふうに私は思いますし、そういう配慮があってしかるべきだったというふうに、これは二回やって、今回もまたこういう疑念が野党だけじゃなくて与党の委員からも出されているということですから。
 ただ、そういうことが行われずに同じものが、全く同じものがまた出てきた。こういうことについては、どういうお考えで同じものを、二回だめで、また同じものが出てきた。これはどういうお考えなんでしょうか。
○南野国務大臣 既に国会承認をいただいております国際組織犯罪防止条約、これは国際社会と協力して一層効果的に国際的な組織犯罪を防止することなどを目的とするものですので、国際社会の一員として、我が国としても早期に締結する必要がある、また、我が国における組織犯罪対策にも資するものですから、早急に条約の内容に従った法整備を行う必要があるというふうに考えているわけであります。
 法案の共謀罪についてさまざまな御意見や御批判があることは承知いたしておりますが、法務省としましては、法案の共謀罪は、その条約の内容に従ったものであり、また、厳格な組織性の要件をつけることにより、組織的な犯罪集団が関与する犯罪の共謀に限って成立するものとしていることなどから、前回と同じ内容のものを提出することとしたものであります。
○石関委員 ほとんど条約の要請ということの御説明だったというふうに思うんですが、我々が問題にしているのは国内法の整備の問題であって、それがあるので平岡委員も先ほどから留保ですとかそういった質問をされているというふうに思いますが。
 これは三回目の提出なんですが、全く同じものを提出されてきたということですから、これは大臣、選挙後、同じ法案が出てきたということですから、この前の衆議院の選挙で政府・与党が大勝したということでこの共謀罪についても信任を得たんだ、こういった認識を大臣はお持ちになられているんでしょうか。
○南野国務大臣 そういう関連をお考えになるとは思いも寄りませんでした。そういうことはないわけでございまして、なぜ同じ法案を出すかということでございますが、我々は、これで十分だと思う、国際的な話し合いもしながら、それでテーブルの上にのせさせていただいているわけでございます。そのテーブルの上で皆様方に御審議をお願いしておりますので、皆様方の英知をお出しいただき、そして、その法案がよりよいものになるということを今この審議の場でお願いしているところでございますので、同じ法案であってもその意味があるというふうに解釈していただきたいと思います。
○石関委員 それでは、これは自民党の大臣にお聞きしますが、自民党のいわゆるマニフェストでは、この共謀罪についてどのような記載があったのでしょうか。――大臣、御承知でなければ、三ッ林政務官、御承知でしょうか。自民党の政務官にお尋ねいたします。
○三ッ林大臣政務官 ただいま承知しておりません。
○石関委員 これはメモなんですが、共謀罪の言葉は出てこないというふうに、マニフェストの中では、「政権公約二〇〇五」「自民党の約束」ですか、この中には共謀罪という言葉は出てこない。この中には「組織犯罪、サイバー犯罪、少年犯罪に対処する関連法整備を推進する。」こういうのが一行だけ入っているということで、これも写しですのでわかりませんが、手元にある写しで見るとこういうことが載っているということです。大臣は御承知じゃない、政務官も御承知じゃないということであります。
 ただ、大きな選挙、総選挙を戦う中に、どうしてマニフェストに共謀罪という言葉が入っていないんでしょうかね。共謀罪ということを言わずに、国民に隠したまま選挙をやったということなんでしょうか。どういうことなんでしょうか。
○南野国務大臣 我が党にそれがなかったということでございますが、一行あったということでございますので、このたびの選挙は郵政民営化の信を問うというところに大きな看板があったわけですが、それのみならず、一行でも我々の心としては中に入っていたというふうな解釈もできるわけでございまして、もろもろの項目を取り上げていくということでございますので、法務省としては、その問題点について取り組んでいることには間違いございませんので、御理解いただきたいと思います。
○石関委員 私が読み上げて、一行あるということなんですが、ただ、共謀罪という言葉はないんですね。組織犯罪、サイバー犯罪という言葉になっています。これはどういう理解をされるかというと、共謀罪というものを隠すという意図があったかどうかわかりませんが、明らかに、このことを提示して選挙を戦った、このことに関してはこういったことは行われなかったんじゃないかな、私はこのように認識をします。
 ところで、大臣は総選挙で、だれかは言っていただく必要はありませんが、どちらかへ応援演説等、応援に行かれましたでしょうか。
○南野国務大臣 応援には行かせていただいております。
○石関委員 その際に、今取り上げられています共謀罪については、選挙の応援に行かれたときに、有権者に御説明をする絶好の機会だということで、共謀罪の理解を得るような、演説の中にそういった御説明を取り入れられたりそういったことをされて、有権者の理解を深めよう、有権者の理解を得よう、こういった御努力は大臣はされたのでしょうか。
○南野国務大臣 対象者もいろいろでございますので、そういう話をすることもありますし、または裁判員制度の話をすることもありますし、少子社会対策ということについての話をすることもございます。また高齢者に対する介護の問題点、そこら辺についても話をさせていただくことがございますので、対象者によりもろもろのお話をさせていただいて、そして、その候補の方々が御支援をいただいて当選していただきたいという願いから歩いております。
○石関委員 これは法務の責任者としてしかるべき態度だと思いますし、十二分にそういった主張もされたし、国民の理解を求めるような努力をされたんだろう、私はそういうふうに受け取りたいと思います。
 先ほど申し上げましたけれども、これは先日の与党の委員の質問の中にもありましたけれども、この法案の条文が難解過ぎる、こういった指摘は多数いただいているというふうに思います。「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者」こういう表現、一般の市民はもとより、私のような、弁護士の資格もありませんし、こういった人間にはなかなかわかりづらいんじゃないかなというふうに思います。
 法務省が何年もかけて説明を努力されてきたということですが、その努力をされた上でも、会社や労働組合、各種団体、これも対象にされちゃうんだ、こういった疑念を抱かせているし、それがふえる一方だというふうに私は認識をしていますが、再度提出するに当たって、先ほどもそっくりそのまま同じ法案が提出されましたということを御指摘申し上げましたけれども、再提出するに当たって、誤解の生じないようなわかりやすい、そういった文言にしようというお気持ちは大臣はお持ちじゃなかったんでしょうか。
○南野国務大臣 私は法務委員会での御審議をお願いするわけでございますので、そういう意味では、もう皆様方は十分に御審議をしていただけるものと確信いたしておりました。
○石関委員 こちらはいろいろ、司法試験に通られる方も多いので、そういう専門家的な方々には非常におわかりになるんでしょうけれども、私は一般国民にもわかるようにということで今申し上げましたので、ちょっと期待した答弁と違ったなというふうに思います。
 また、大臣、法務省の姿勢として、司法制度改革の精神というものがあると思うんですが、手元に司法制度改革審議会の意見書というのがあります。大臣はお読みになっているだろうと思いますが、私、読ませていただきました。平成十三年六月十二日に出たものです。
 この中には、私読ませていただきましたけれども、「国民に身近で利用しやすく、その期待と信頼に応えうる司法制度を実現すべき」、こういった言葉が「はじめに」というところの中に書かれています。先ほど言った、私のような、司法試験に通ったわけでもありませんし、こういった立法府に身を置いておりますけれども、私もまだそこまでの深みがないというふうに思っていますけれども、こういう人間にとっては大変結構なことが書いてある。
 また、同じ報告書の中に「国民的基盤の確立のための条件整備」という章がありまして、このように書いてあります。「分かりやすい司法を実現するためには、司法判断の基礎となる法令の内容自体を、国民にとって分かりやすいものとしなければならない。とりわけ基本的な法令は、広く国民や内外の利用者にとって、裁判規範としてのみならず行為規範としても、可能な限り分かりやすく、一般にも参照が容易で、予測可能性が高く、内外の社会経済情勢に即した適切なものとすべきである。」このように書かれております。
 これを踏まえてつくるのであれば、今回提出された、非常に難解だと指摘もされておるこういった法案、このわかりやすい司法の実現と大変かけ離れたものになっているんじゃないかなというふうに思いますが、大臣、まず、これを読まれて、認識をされているかということと、今回の難解という指摘がある条文のこの乖離についてどのようにお考えですか。
○南野国務大臣 法律の条文をわかりやすくするということ、これは大切なことだと思いますけれども、要件を紛れもなくきちんと書き切るためには、やや複雑なものとなってしまうということがあるのかなというふうに思います。もっともっとボリュームがあるものになってしまうのかなと。国民にわかりやすくするということは、これは大切にしていきたいと思います。
 先ほどの司法の問題でございますけれども、これは国民的に法務省が展開していく改革の一つでありまして、司法というのは自分たちから縁遠いものと思っていたものを、もっと身近に感じてほしいというような形で、今、司法制度の改革というところにポイントを当てております。司法支援センターというようなものも来年の秋から展開するということでございますので、そのためにはいろいろと、国民の方々の不安、不満、それから弁護とかそういう司法の問題について、気になることはどうぞ御相談に来てほしいというところを我々は開設していこう、そして国民に優しい司法というものを展開していこうとしていますので、法務省が抱えている心は国民の方々に向かっている、易しく御説明したいということは同じ心で展開しているものであります。
○石関委員 いろいろ今環境整備を行われているという御説明をいただきましたが、ぜひその気持ちというか哲学というのをまずこの条文に反映していただきたいなというふうに思います。いろいろな環境整備を行われているということですけれども、まず、そういったことより、この法律にそれを反映できないのかな、このように思います。
 また、今御説明を伺いましたけれども、本当に熱意がどこまであるのかなというふうに、一つ一つ検証していくと、そんなような思いを私も抱かざるを得ない。今取りかかっている、取りかかっているということですが、なかなか、それが反映されるにはどれだけかかるんだろう、こういった大変な不安をまた覚えてしまいます。
 これは単純に言うと、大臣が今おっしゃったような哲学なりお気持ちというのを、単純に、法務省の中にもまず広げて、国民の中に広げていくのであれば、まず第一歩として、例えば、法務省を指導するときに、政治家として、私のような素人にもわかるような条文にしなきゃだめよ、こういう指導をされて、また、司法制度改革審議会の意見書にも書いてあるでしょうと具体的な例示も挙げて指導されれば、法務省の中にもこういった大臣の精神というのは浸透していくのではないかと思うんですが、こういうことは、大臣、実際指示をされたり、今までもやられてきたのでしょうか。
○南野国務大臣 なるべくいろいろとお話し合いをさせていただいております。
○石関委員 時間がなくなりましたが、簡潔に一点だけ。
 次に、条約の締結状況について簡単にお尋ねをいたします。
 大臣、この法案の成立、大変急いでいるなというふうに私は印象を受けるんですが、先ほどもありましたけれども、共謀罪というのは、これは成立しないとどんな影響があるのでしょうか。
○南野国務大臣 この法案が成立するまでは、我が国は国際組織犯罪防止条約やこれに附属する人身取引に関する議定書なども締結することができないというのが、これが一つでございます。
 国際組織犯罪防止条約は、既に百十二カ国もの国々がこの条約を締結しております。我が国においても、既に国会で承認いただいたものであります。それが、我が国として、この条約を締結し、これらの国々と手を携えて、協力して組織犯罪に立ち向かっていくことが必要であります。安心・安全な国日本というものをこの中に位置づけたいと思っているわけでございます。
 また、この法案は、我が国におきまして組織犯罪による重大な被害が発生することを未然に防止し、国民の安心と安全を確保することにも資するものであると思いますので、このような治安に関する取り組みもおくれることになってしまいます。
 そういう意味で、法務省としましては、この法案につきまして、この委員会において御審議いただいた上で、できるだけ速やかに御成立をお願いしたいというふうに考えている所存でございます。
○石関委員 外務省にお尋ねいたします。
 先ほど、先進国の中の締結状況、批准の状況についての御答弁は前の委員にありましたけれども、例えば中国ですとか韓国とかASEAN諸国、インドなど、こういった近隣諸国の批准の状況というのはどういうふうになっているんでしょうか。これらの国、いわゆる犯罪の輸出国になっているというような指摘もされている国々も入っていると思いますが、この国々のところはどうなっているんでしょうか。
○辻政府参考人 御答弁申し上げます。
 アジア諸国の状況でございますが、今委員御提示にございました、中国については二〇〇三年に締結済みでございます。マレーシアは二〇〇四年に締結済み、ASEANの中では、同様にフィリピンが二〇〇二年に締結済みでございます。近隣諸国のうちでは、韓国、シンガポール、タイ、これらが国内法の整備を検討中だ、こういうふうに理解しております。
○石関委員 韓国も国内法の整備を検討中だということですし、先進国の中については先ほども答弁がありました。
 日本だけじゃなくて、これだけ先進国においても近隣諸国においてもまだ締結もしていない、検討しているところもあるということですし、国内においてまさにこれだけの反対の声が上がっているという状況ですし、マスコミの各紙においても、練り直してこい、こういった表現もされている状況ですから、十分このことを踏まえて、しっかり練り直していただければというふうに私は思います。今の段階ではこの法案をよしとする国民的理解もないし、また条文等の整備もこれでは足りないということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○塩崎委員長 次に、高山智司君。
○高山委員 民主党の高山智司でございます。
 まず、個別の質問に入る前に、大臣にちょっと伺いたいのです。
 今回、いわゆる共謀罪と言われる法律、強制執行妨害の法律、ハイテク犯罪、三つ出ているんですけれども、これは何で一本の法律で出てきたんですか。この内容、ばらばらじゃないですか。どうしてこういうのを一本の法律で出してきたのか、ちょっと大臣の方から説明していただけますか、これは閣法なので。
○南野国務大臣 今回の法案におきましては、三本、あれじゃないかということでございますが、近年における犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化、そういう現状にかんがみまして、一点目として、国際組織犯罪防止条約の締結に伴う法整備として刑法及び組織的犯罪処罰法等の改正を、そして二点目として、強制執行を妨害する行為等についての処罰規定の整備として刑法及び組織的犯罪処罰法等の改正を、それから三点目として、ハイテク犯罪に対処するとともに、サイバー犯罪条約を締結するための法整備として刑法及び刑事訴訟法等の改正を行うこととしております。
 このうち一点目とそれから三点目の法整備についてのお尋ねもそうなんですが、これらは犯罪の国際化の状況に対処するためという点で共通するところがあります。または、刑法を改正するという点でも共通しておりますので、一括の法案として御審議いただくのが適当であるということの考えによって提案させていただいております。
○高山委員 今の大臣の御説明ですと、一番目のいわゆる共謀罪とハイテク犯罪、これは国際化ということ、あと、条約があるからねということで共通しています、それ以外は刑法の改正だというんですけれども、刑法の改正ということを言ったら、これは全部共通しちゃいますよ、法務省が出してくるものはほとんど。
 私は、少なくとも強制執行妨害は別建てで出していただいてもいいんじゃないかなと思いますけれども、大臣、これはちょっと、種類が違うものを余りにもまぜ過ぎているというふうに思いませんか。ひょっとすると、何か、どさくさに紛れて、我々の反対しにくいものを入れて、処罰の範囲を拡大するようなことをやっておられるんじゃないかと。実際、今までそういう議論をずっとしていますからね、これは処罰の拡大につながる危険なものだという。何かちょっとそういう意図を感じるんですけれども。
 まさかとは思いますけれども、大臣、もう一度確認しますけれども、明らかに強制執行妨害はちょっと質が異なりますよね、強制執行妨害だけは。どうですか、大臣。
○南野国務大臣 いろいろ先生のお話がございましたけれども、TOC、これは強制執行妨害というようなこともありますが、組織性ということでは、これはまた共通している点があるというふうに思いますし、また、この法案を出して何とかかんとか、腹黒いと言ったら悪いんですが、そういうようなことは我々は考えておりません。これは純粋に法務省としての検討をさせていただこうとしているところでございます。
○高山委員 本当に腹黒いかどうかというのはこれからちょっと検証していきますけれども、先ほども、まず、問題となっている共謀罪の方で、条約があるので、こういうような共謀罪、日本の法制にはなじまない部分もあるけれどもつくらなきゃいけないのでという御説明がありましたけれども、先ほども同僚議員が質問しましたように、条約がなかった場合に、共謀罪をつくる上での国内での立法事実はあるんですか。つまり、国内でこういう共謀罪という類型が違う罪を新しくつくる何か必要性があったんでしょうか。要するに、国際性に関係なく聞いているんですよ。
○南野国務大臣 なぜ共謀罪を新設する必要があるのかということでございます。
 これは、組織的な犯罪は、計画または準備段階に関与するものが多く存在いたします。計画性が高度であったり、組織の指揮命令等に基づいて行われることでありますから、犯罪の実行に至る可能性が高くなっている、それは先生も御存じだと思います。
 また、一たび犯罪が実行されてしまいますと、これは重大な結果や莫大な不正な利益を生ずることから、これに効果的に対応するためには、犯罪の実行に着手する前の段階の一定の行為を処罰の対象とすることが不可欠であろうというふうな観点からでございます。
 そこで、我が国としても、同条約を締結しまして、国際社会と協力して、国際はだめとおっしゃるけれども、国際社会と協力して一層効果的に国際的な組織犯罪を防止する。そのためにも、この義務づけるところに従いまして、組織的な犯罪の共謀罪を新設するということにしたわけであります。
○高山委員 大臣がおっしゃるとおり、組織的だったり集団的な犯罪というのは、一たび本当に実行になった場合には重大な結果を及ぼすことが多いと私も思います。けれども、そういう犯罪というのは、大体、予備罪ですとか準備罪というのが随分規定されていると思うんですけれども、国内の犯罪に限ってですけれども、共謀罪がなければ今まで罰せられなくて困難だったという事例はあるのでしょうか。
○大林政府参考人 恐縮でございますが、私からお答えさせていただきます。
 例えばということで、最近問題となっております、要するに振り込み詐欺の事例を申し上げますと、詐欺罪には、未遂はありますけれども予備罪はありません。
 例えば、そういう集団で、これは集団かどうかという団体の問題は認定しなきゃなりませんけれども、仮に役割分担をして、ある者は名簿を集める、ある者は犯行に使う携帯電話を集める、あれはそれぞれ組織的にやらなきゃできないような犯罪だと思います。
 その場合に、今、詐欺罪で罰する場合には着手がなければなりませんから、相手に電話をかける行為が必要ですね。ところが、今、予備罪がないために、そういう電話を集める、あるいは名簿を集める、資金を集めるという行為は、今のところ処罰されません。ですから、今問題となっている組織犯罪、暴力団の事件でも今の詐欺罪なんかの集団にしても、これはやはり共謀罪をつくれば摘発はしやすいという問題、被害者が出にくいというようなことは、一般論としては言えると思います。
○高山委員 大臣、今の話を伺って聞きたいんですけれども、確かに、振り込み詐欺というのは非常に凶悪な犯罪ですよ。だけれども、そういう、例えば電話をそろえたり、あるいは相談をした段階で、既に共謀罪の既遂として罰する必要はありますか。大臣、ちょっとこれは伺いたいのです。
○南野国務大臣 そもそも共謀といいますのは、特定の犯罪を実行しようという具体的それから現実的な合意がなされていることをいうのでありまして、犯罪を実行することについて漠然と相談したりとか電話をかけたりとか、そういうものは共謀罪としては成立しません。
 また、組織的な犯罪の共謀罪、これは犯罪の共謀を一般的に処罰するものではなく、死刑、無期または長期四年以上の懲役または禁錮に当たる重大な犯罪であって、かつ、厳格な組織性の要件を満たす犯罪、具体的には、例えば暴力団による組織的な殺傷事犯やいわゆる振り込め詐欺のような組織的詐欺事犯、あるいは暴力団の縄張り獲得のための殺傷事犯などを共謀した場合に限って成立するものであります。
 したがいまして、団体の活動や縄張りと無関係に友人や同僚と共謀しても、共謀罪は成立いたしません。また、犯罪実行部隊のような犯罪行為を実行するための組織を持つことのない市民団体や会社等の団体に属する人が共謀したとしても、やはり共謀罪は成立いたしませんということです。
○高山委員 大臣、もうちょっと私は答えやすい質問のつもりだったんですけれども。
 それはさておき、先ほどの刑事局長の御答弁だと、何か電話を用意したりなんなりと言いましたけれども、それはもう共謀を超えているじゃないですか。共謀のいわゆる顕示行為が見えるんじゃないですか、電話を用意したりなんなりとなると。だから、相談しただけで、共謀だけで罰するというのでは危険なんじゃないか。やはり何らかの顕示行為が必要だというふうに提出者の方も思っているということなんでしょうかね、今の答弁だと。
 その件に関しましては、やはり完全な条文の形で出していただかなければ到底賛成はできないなということを申し上げて、ちょっと共謀罪だけではありませんので、三法一括で出されているので、ハイテク犯罪の方を伺いたいと思うのです。
 大臣、このハイテク犯罪の方、こちらも条約があってそれを敷衍したということなんでしょうか。それとも、国内的にもこういう処罰の必要があるというようなことでつくられた新しい犯罪なんでしょうか。どちらなんですか、これは。
○南野国務大臣 今、情報など高度化されておりますし、そういうような関連の中から、国内の問題もありますし、それを超えた国際的な課題というのもあるというふうに思っております。
○高山委員 これは、僕、今回時間が少ないので、ちょっとピンポイントで聞きたいんですけれども、ウイルスを作成する罪のものがありますね。この条文を見ますと、人が電算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせずですとか、その意図に反する命令をしたとか、こう書いてあるんですけれども、この意図とはだれの意図のことなんでしょうか。この主体はだれですか。この条文の主体を聞いています。細かい話なので、政府参考人でも結構です。
○大林政府参考人 その意図というのは、その電子計算機を使用する人でございます。
○高山委員 確かに、一般的に、コンピューターウイルスが入ってくると、持ち主である自分の全く予想もしないような画面になっちゃったりして困る、これは罰する必要があるなというのは当然のことだと思うんです。
 大臣はインターネット等は結構やられますか。どうですか。結構やっていますか。まず、やっているかどうかを。
○南野国務大臣 そんなにやっておりません。
○高山委員 これは、副大臣あるいは政務官はかなりもうやられていると思うので、御存じのことだと思うんですけれども、最近、いろいろホームページを見ていますと、ポップアップ広告といって、ぴっと、どんどん広告が出てくるのがありますね。あれは積極的には見たくないので、どちらかといえば意に反するのではないかなと思いますけれども、例えばああいったような仕組みまでこれは処罰するものなのか、非常に不安を覚えるんですけれども、大臣、ポップアップ広告は処罰の対象になるんでしょうか。
○南野国務大臣 先生御指摘のいわゆるポップアップ広告、先生もよくごらんになるんですか。(高山委員「いや、僕は余り見ません」と呼ぶ)
 近時、多くのホームページに利用されているもので、一般的に申し上げれば、インターネットを利用する者は通常その存在を知っていると思いますし、そのことが社会的にも許容されていると考えられる。したがいまして、このようなポップアップ広告の表示は、電子計算機の使用者の意思に反してコンピューターを作動させたことにはならず、不正な指令にも当たらないということで、コンピューターウイルス供用等の罪には該当しないというようなことが今言われているところでございます。
○高山委員 いや、常識的にはポップアップ広告がこれに当たるということは当然ないと思うんですよ。ただ、そういうものの存在をみんなが知っているということと、それが意に反するかどうかというのは、これはまた分けて議論する必要があります。
 大臣も私も、世の中にコンピューターウイルスというのが蔓延していて、気をつけないとどんどんウイルスに感染してしまうぞということは当然知っていると思うんですよ。けれども、例えばこのポップアップ広告も、今当然、委員の先生方も使われている普通の標準的なソフトだと、ポップアップブロックしましたと出ますよ、幾つブロックしていますと。つまり、みんな見たくないから、そういうのはブロックするようにできているんですよ、アンチウイルスソフトで。こういうのができているわけです。そうすると、これはウイルス同様のものと考えて、こういうポップアップ広告も入ってくるんじゃないか。
 少なくとも、条文上は区別されていないんですよ。大臣、これは条文上はっきり区別する必要はありませんか、そういうポップアップ広告と本当に悪意に満ちたウイルスと。どうでしょう。大臣、そういう必要性は感じませんか。
○大林政府参考人 なかなか技術的な御質問でございますが、先ほど申し上げましたように、ポップアップ広告の表示が社会的に許容されているかどうかというのがまず一つの問題だと思います。
 確かに、おっしゃるように、使用者によっては望まないという方もおられるかもしれませんが、先ほど大臣から申し上げたとおり、使用者の意思に反して作動させたというふうに言えるかどうかというと、今の役割といいますか、それから考えると、それには当たらないだろう。あるいは、不正な指令という構成要件に当たるかというと、やはりこれもならないということで、構成要件には当たらないというふうに考えております。
○高山委員 いや、これは、今僕が例に出したのはポップアップ広告ですけれども、大臣、最近、インターネットを余りやられないし、私も余り見ませんからわかりませんけれども、非常に有害なサイトが多いんですよ、アダルトサイトだとかそういうのが。それで、今、コンピューターで設定して、子供に見せないように、パスワードをやらないと見られないとか、そういう有害なサイト、お酒とかたばこのサイトにはアクセスできませんよ、こういう制限をかけることができるんですよ。
 だけれども、またこれもイタチごっこでして、そういう制限をかけているパソコンであっても、ぽんぽん出てきちゃうようなページもあるんですよ、そういうページにちょっと飛んだだけで。では、こういうのはこのウイルスに当たるんでしょうか。
○大林政府参考人 なかなか、個別の事案についてはいろいろあろうかと思いますが、今の不正指令電磁的記録作成等の罪における意図に沿うべき動作をさせずという解釈の問題だと思います。電子計算機によって行う情報処理が、電子計算機を使用している者の意図したとおりになされないということを意味しておりまして、その意図どおりか、これは本当に、社会的な常識もありますし、証拠次第だと思いますけれども、一般的に申し上げると、余り制約的にするというものを考えているものじゃございませんで、今のように、かなり、そのウイルスの性質が例えば人の情報を外に出してしまうとか、そういうものを対象にしておりますので、やはりケース・バイ・ケースだと思いますけれども、そのようなものであろうかなというふうに考えております。
○高山委員 今、インターネットの世界の特に広告は、いかにしてページを見ている人に目立つようにするかというので、これは日進月歩なんですよ。だから、今はもう携帯電話のものでも、今度横にずっとニュースとかそういう情報が出るようなものとか、どんどん新しいものが出てきているわけですね。だから、これはインターネット広告業界の人にしてみれば、新しい表現方法をどんどん今考えて、そういうポップアップブロックだとかも、こういうのもクリアして何とか見せるように当然これは日々努力されていると思うんですけれども、私は、そういうのが犯罪的な行為だとは思いません。私は、そういうのは当然許されるべき広告の活動だと思っているのです。
 そういう理解に立った上で、念のため聞きますけれども、サイバー犯罪条約、この条約の方では、一体、ウイルスを作成したりあるいは使ったりすることの罪に関して、どういうふうな規定になっているんですか。いただいた本の七十六ページぐらいに書いてある気がしますけれども。
 もしわからないようだったら、ちょっと時計をとめていただいて。
○塩崎委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○塩崎委員長 速記を起こしてください。
 辻参事官。
○辻政府参考人 条約上の規定ですので、私の方からお答えさせていただきます。
 サイバー犯罪条約第六条の規定に「装置の濫用」というのがございますが、それの中で、第一項に、「締約国は、権限なしに故意に行われる次の行為を自国の国内法上の犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。」という中にa、i項がございまして、「第二条から前条」、前条と申しますのは第五条、システムの妨害、データの妨害等でございますけれども、「定められる犯罪を主として行うために設計され又は改造された装置(コンピュータ・プログラムを含む。)」というものだと理解しています。
○高山委員 今外務省の方からありましたように、条約では、これは「犯罪を主として行うために設計され又は改造された装置」というような書き方をしているんですよ。これはわかりやすいですよね。例えばポップアップ広告が犯罪目的じゃないな、広告で見てもらいたいんだからと。それに比べて、こちらの刑法の方は、「その意図に反する動作を」と。
 これは大臣、ちょっと伺いたいんですけれども、処罰範囲はどっちが広いと思いますか。条約の方とこの刑法で書いている方と、処罰範囲がこの文言からどちらが広いというふうに感じますか。
○南野国務大臣 ささやかれたように、刑法の方が広いということでございます。
○高山委員 いや、だから、私がさっきから問題を指摘しているのは、個別の事例でわかりにくいなと皆さんおっしゃるように、これは表現の自由に対する大幅な規制ですよ。意図に反するじゃないかと言われたら、これはみんな犯罪になっちゃうおそれがあるわけですよ、刑法の方の文言だと。せめてこの条約ぐらい、例えば「犯罪を主として行うために設計」と限定したらいいじゃないですか。どうしてこんなわざと広い範囲で、処罰範囲を広げるようなこういう文言にされたんでしょうか。
 だから、先ほど私が冒頭に言ったように、何か乗じて、捜査機関の何かやりやすいようにいろいろなものをまぜてきているんじゃないかなという疑念がわいてくるわけですけれども、大臣はこれはどうお考えですか。明らかに刑法の方が処罰範囲が広くなっていますよ。どさくさに紛れて、条約より広くしちゃったんじゃないんですか。
○南野国務大臣 この法案についても前々から検討をさせていただいており、そのように意図的にしたものというふうには解しておりません。
○高山委員 これは明らかに刑法の方が、事務方の人ですら、ちょっとどうだかわからないな、適用がわからないと言うぐらい、結構文言があいまいなんですよ。それで、コンピューターの、ただのウイルスだと思っているかもしれませんけれども、これは創作活動ですからね。そういう新しい表現方法、広告、こういうのは過度な規制に私はなっていると思いますよ。
 しかも、先ほど私がいろいろ例に出したときに、そういうブロックするソフトがあるというような話をしましたけれども、その次に書いてある電子計算機損壊等、これは今回未遂も罰することになっていますよね、大臣。これは実際には、例えばウイルスなりそういうのが来て、こちらにアンチウイルスソフトが入っていてブロックできた場合でも罰する、こういう趣旨で間違いないですね、大臣。これは間違いないですね。
○南野国務大臣 先生おっしゃるとおりでございます。
○高山委員 大臣、そうしますと、これはちょっと、今みたいに刑法で表現を制限するような極めてあいまいな文言で、しかも随分処罰の範囲が広がっている、意図に反するというだけですからね。これは、解釈のしようはいろいろあるわけですよね。
 さらに、未遂まで罰するようになっていますね。これはちょっと、これからのインターネット社会をつくる上で、確かに便利になってくるからいろいろな不安もできてくるかもしれませんけれども、Eコマースやらあるいはインターネット上での広告表現、過度に規制することになりませんか、大臣。その点はどう考えますか。
○南野国務大臣 これはいろいろなものでも適用できると思うのですけれども、何か悪いことが発生してしまってからではどうしようもございませんので、それらの不正を少しでも未然に防ぐためにそのような形で我々は検討させていただいたということを御理解いただきたいということでございます。
○高山委員 今のは未遂犯の処罰に対しての答えだと思うんですけれども、だから、そもそも私が大臣に伺いたいのは、確かにウイルスをつくる、こういうのを刑法を使ってまで罰する必要があるのかもしれませんけれども、ちょっと処罰の範囲が広過ぎて、これは、日本のこれからのEコマースだとかあるいはインターネットの広告、こういうものの発展を考えた上で、強度の規制になっているというふうに私は考えますけれども、大臣はその点をどのように考えていますか。
○南野国務大臣 それは解釈の仕方によるというふうに思っておりますので、そういう意味では、これは適正にその中に入れられているものというふうに思っております。
○高山委員 これは随分過度の規制だなという感じがいたします。随分捜査側のやりやすいように解釈できる、ただ意図に反していればいいわけですから。例えば、そういうポップアップ広告、類似のもの、そういうのも今のままでは処罰対象になりますからね。条約ぐらいにせめて「犯罪を主として行うために設計」などと限定をした方がいいのではないですかというふうに私は提案をさせていただきます。
 もう一つ、ハイテク犯罪の方でちょっと今聞いておきたいのが、刑訴法の改正の方で、通信履歴の電磁的記録を何か保全要請できるということですけれども、この保全要請というのは一体どういうことなんですか、法的なことなので、これは事務方でも結構なんですけれども。保全要請というのは一体どういう効力を発生するものなんですか。
○大林政府参考人 最近、今のような、コンピューター、携帯電話等が非常に広まって、これを利用した犯罪が多くなっております。
 その場合に、通信履歴といいますのは、通信元、発信元それから通信先、日時等のいわゆる形式的な部分、インターネット業者が料金なんかを請求するような形であるために業務上そういうものを把握しております。そういうものについてわかると、要するに、通信内容そのものじゃないんですけれども、例えば被疑者が、どこへ、いつ発信しているかという通信履歴がわかることによって、捜査に非常に役立つことが多くなっています。
 ところが、業者はその料金をいただいちゃうとそういう履歴を消してしまう、業務上必要なくなるということになります。そうすると、例えば、あるところから被害申告が出た、今捜査を開始する、それで通信の関係を調べようとしたらもうデータがなくなっていたという問題がありますので、そういうことで、条約にも規定がありますけれども、そういうものをある程度の期間残していただく、こういうお願いをする、そういう制度でございます。
○高山委員 私、特に保全要請というのは何か聞いているんですよ。お願いするのはいいんですけれども、いや、ちょっとこれは個人情報にかかわることなので出せません、これは当然プロバイダーも言うと思うんですよ、そういうことは。この保全要請というのは一体どういう法的効果があるんですか、こういうことを聞いているんですけれども。
○大林政府参考人 これは差し押さえ等によって最終的にはその内容を得るわけですけれども、その前提として、そういう情報というのはたくさんありますから、業者の協力を得て、必要な範囲のものをとっておいていただく。それで、その結果、犯罪の役に立つようなものであれば、裁判官から令状をもらって、そのデータを後で差し押さえするというか、そういうことですので、前段階的な、そういうお願いだと思います。
○高山委員 そうすると、令状をとる前に捜査機関の方で業者にお願いするというようなことなんでしょうかね。
 私の教科書的理解では、憲法の二十一条の二項で通信の自由というのが保障されていたと思うんですけれども、通信の自由というのは、人がだれと話したりなんなりというのが保障されているだけじゃなくて、通信の有無、これも公権力や他人に知られないということが保障されているというふうに私は理解しているんですけれども、そうすると、ちょっとこれは憲法上問題ありませんかね。
○大林政府参考人 御案内のとおり、いわゆる通信傍受については通信傍受法というものがあります。これは条件が非常に厳しくなっている、対象も限られている、しかも、それは両当事者が通話中のものを聞く、しかも、両当事者の同意を得ないで聞く、こういう性質のものでございます。
 ですから、通信の自由というのは非常に広い範囲でございますけれども、今度の場合には、業者が業務上保管している、どこからどこへの通信があった、そういう履歴について保存していただくようにお願いするということですので、通信傍受法的な厳格な要件を定められている、そういうものではないということでございます。
○高山委員 いや、今、政府参考人、厳格な要件を定めていないから問題だと言っているんですよ、私の方は。通信の自由というのは、どこに、だれに電話した、あるいはメールを出した、こういう履歴を人に知られたくないんですよ。だから、そういうことは厳格な要件をもってしてしか開示してはいけないはずなんじゃないですか、なのに要請程度でいいんですか、令状主義を潜脱することにはなりませんか、こういう質問なんですけれども。
○大林政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、今の保全要請は、中身自体、例えばどこからどこまでということ自体は、これはあくまでも令状じゃなければ差し押さえられないことになっております。例えば、いつからいつまでの間、この携帯電話から発信された、そういう記録を残しておいてくださいということで、その時点では内容自体に触れる、要するに、個人的な通信内容に触れるような問題ではございませんので、それについてはお願いする。しかし、最終的にその情報を捜査機関として手に入れるということになりますと、令状によって差し押さえるという手段が必要ですので、憲法上の問題はないというふうに考えております。
○高山委員 質疑時間が終わりましたけれども、今の答弁を聞いていても、通信の内容にわたるものではないから、履歴だから、通信の自由の保護の範囲外であるというような、そういう答弁だったように私は思えましたけれども、それはちょっと解釈違いだなと思いますね。通信の履歴そのものも、極めてプライバシーにかかわる、保護の対象にならなければいけないものですから、私はこの点、まだ疑念を持っているということを申し上げて、きょうは質問を終わりたいと思います。
○塩崎委員長 次に、保坂展人君。
○保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。
 大林局長に伺いたいのですが、今回、共謀罪の共謀というのは独立して成立する概念なんでしょうか。独立して共謀罪というのは成立する、独立犯なんですか。
○大林政府参考人 そのとおりでございます。
○保坂(展)委員 とすれば、共謀罪の既遂、未遂、こう分かれるわけですね。そう理解していいですか。独立して成立する犯罪であれば、共謀罪が成立したのは既遂状態ですよね。それが成立していない状態を未遂、そういうふうに判断、いや、未遂の罰則がないということを聞いているんじゃないんです。概念としてそう整理できますか。
○大林政府参考人 正確に理解しているかどうかわかりませんが、共謀という行為によって直ちに既遂に入りますので、未遂という概念はちょっとないんじゃないかなと。いわゆる講学上、状態犯という分類に入ると思います。
○保坂(展)委員 というと、共謀という行為の中身をちょっと考えていきたいんですけれども、具体的に言っていきたいと思います。例えば、オートバイを使ってひったくりを繰り返す、例えば黒シャツ党と名乗るようなそういう若者のグループがいた、これは継続的に犯罪をやっているわけですから要件にはまると思うんですが、公園の一角に集まった、リーダー格が次はどうしようかと言った、これはもう既遂ですか。
○大林政府参考人 共謀の解釈といたしましては、二人以上の者が特定の犯罪を実行する具体的、現実的な合意をすることをいいます。ですから、今おっしゃる意味は、提案した、そこで合意がなければ共謀罪は成立しないということでございます。
○保坂(展)委員 では次に、メンバーが、十二時過ぎにあの駅裏がいい、いつもの手順でやろうと言ったら、成立ですか。
○大林政府参考人 今の共謀の問題ですけれども、共謀罪という意味においては今の形では足りないと思います。というのは、窃盗をやろうという形で、やろうと応じた場合に、これは窃盗の共謀としては成立すると思います。しかしながら、共謀罪というのは、団体要件がありますから、したがって、分担を決めるとか、ですから、共謀の内容がもっと具体的でなければ今度の法案の共謀罪は成立しないというふうに考えます。
○保坂(展)委員 しかし、いつもの手順でやろうというのが、いつも、例えば、オートバイは二台でこいつが運転するとか、後ろに乗るやつがひったくるとか、いつもの手順、もう細かく言わなくてもわかる、十二時の駅裏といえば、ああ、こういう感じだとイメージを持ったといったら、共謀成立じゃないですか。
○大林政府参考人 ケース・バイ・ケースではございます。ただ、委員がおっしゃるような場合に共謀罪が成立することもあると思います。
○保坂(展)委員 その次に、また別のメンバーが、その時間まずいよ、別のグループが来るかもしれない、やめようというふうに言った場合は、これは共謀の中止に当たるのか。あるいは、先ほど言った、いわば、結局、最終的な合意というのはそこでひっくり返るわけですね。しかし、その前にどうもやろうという空気になった、だけれども、最終結論はやめておこうと。これはどうなんでしょうか。これは共謀の未遂じゃないか、あるいは、既遂なのか。
○大林政府参考人 二通り考えられると思います。
 一つは、今委員が設定されたように、これと言えば今までの犯罪形態が一遍に再現できるような共謀が成立するという場合は共謀罪が成立すると思います。
 ただ、委員が今おっしゃられたように、例えば、これはまずいよというのが、それは一つの共謀の中の一場面である、ですから、本格的というのはおかしいですけれども、いわゆる共謀罪が成立したと言えるのかどうか。それはケース・バイ・ケースで、今のような思考段階が入るものは、さっきのように、これ、という感じの指示で全部動くような状態とは言えないのじゃないかという場合もあり得るのかな、そういうふうな感じがいたします。
○保坂(展)委員 共謀は、開始された途端にそれはもうすなわち既遂である、未遂というのはあり得ないと言うから細かく分けて聞いたわけですが、どうも今のお話を聞いていると、共謀に至らぬ場合というのもあるように聞こえるんですが、それでは、このところ、例えば共謀罪というと共謀共同正犯、そういうことは今までもあったんじゃないのというような声もあります。
 この場合の共謀と今回の共謀罪の共謀というのは、同一の定義だという理解でいいですか。
○大林政府参考人 いわゆる練馬事件に関する最高裁の判決におきまして、共謀共同正犯における共謀につき、二人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思のもとに一体となって互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議である旨判示されております。
 共謀罪の共謀として必要とされる合意内容とほぼ同一の内容だというふうに考えております。
○保坂(展)委員 それで、この共謀共同正犯の場合は、主観的な要件として、共同実行するという意思があること、そして、大体その客観的な要件として、共同実行がされたということ、この二番目があるわけですよね。今回の共謀罪は二番目がないわけで、しかし概念としての共謀は同じだと。
 それと、さらに進めて聞いていきたいんですけれども、いろいろ調べてみると、判例では、共謀というのは、むしろ、会議を開いて役割分担をして、君はあそこ、おまえはここで見張りとか、そういうことを全部決めてやらなくてもいい、明示的なものでなくて暗黙でもいい、これは黙示的な共謀なんですかね、こういうことも言われていますし、また、順次共謀といって、一堂に会さないで一人一人に伝達していく、こういうことでもいいとされています。
 さらに、最高裁判所の最近の判決だと思いますが、平成十五年五月一日の最高裁判決で、暴力団の組長がけん銃をボディーガードに所持させていたという事件の判例がございますね。ここでは、組長、被告人がけん銃を持つなという指示をしていたということを弁護側は主張したようですが、これは、至近距離にボディーガードを置かないことによって不法所持の罪に問われまいという行為であって、けん銃所持者と被告人の間には黙示的な意思の連携があって、共謀共同正犯に該当するとなっていますよね。
 いわば、この解釈を今回の共謀罪の共謀にも準用できるとお考えですか。
○大林政府参考人 これも、やはり証拠の判断といいますか、ケース・バイ・ケースではないかと思います。確かに、委員がおっしゃるように、共謀を認定するものはいろいろな形態、先ほどおっしゃられた順次共謀もあります、それから、黙認による共謀もあります。ですから、それが具体的な犯罪に対して、犯罪をしようという主体的な合意である以上は共謀と言えると思います。
 ただし、先ほどもちょっと申し上げましたが、今回の共謀罪はそれの合意以上に、団体要件といいますか組織性の要件が、実行部隊によってやらなきゃいかぬような、そういうふうな組織性の要件が別に加わっていますので、共謀の解釈と両方合わせなければその犯罪の成否については言えないんじゃないか、こういうふうに考えます。
○保坂(展)委員 ちょっと余り正面からのお答えになっていないような気がするのですが、この場合、暴力団の組長ですから、組織性、団体性の要件は満たしていると思いますけれども、さらに進めて聞いていきます。
 では、今回の共謀罪でも、恐らく与党も含めて、団体における意思形成過程あるいは意思決定、これがどこまで構成要件としてしっかり客観的な基準が置かれるのかということで語られていると思うんですが、今ちょっと挙げましたように、会議によって意思決定が行われない場合、あるいは暴力団の組長であるとかワンマン会社の社長とか、そういう支配力を持った人物が決めたと言ったら、団体の決定というふうに解していいんですかね。
○大林政府参考人 これもケース・バイ・ケースだと思いますけれども、委員がおっしゃられるケースで、それは団体の決定がなされたと認定される場合もあろうかと思います。
○保坂(展)委員 それでは、今の場合は明示的に組長やワンマン社長がこれだというふうに決めた場合ですけれども、そういう決め方は必ずしもしていない、団体の意思決定機関でそういう犯行なり犯罪プランが黙認されていた場合、これはどうですか。
○大林政府参考人 ちょっと今のはお答えしにくいのですが、団体の活動としてそれなりの地位にある者が決定した、それで、例えばそれなりの部下が、実行部隊が動き出したという場合は、団体の活動としてということがあろうかと思います。
 ただ、黙認してというのが、例えば周知していてとか、いろいろなケース・バイ・ケースがあると思うので、一概には言えないと思いますが。
○保坂(展)委員 実は、組織的犯罪対策関連三法のコメンタール、三浦さんも著者になっている、そこで書いてあることをちょっと今紹介したわけなんですね。そうすると、団体の意思決定、これは組織的な殺人などで五、六年前ここで議論しましたけれども、私が今問いかけたことは該当すると書いているんですね。さらには、適用対象として、必ずしも団体というのは暴力団などに限定するものではないというふうにも書いているんですね。
 この改正案として今回出てきているわけなので、どうも今の答弁を聞くと、これまで、いろいろこの場で、いや、共謀というのはもっと厳密なもので、君はここに行って、あなたがあそこに行って、車はだれが運転して、何時に出発して、こういうことで緻密に立証していくんだというお答えだったかに見えるのですが、実はもうちょっと幅広ですね。どうですか、今までの答弁とちょっとそごを生じませんか。
○大林政府参考人 今私がお答えしているのは、委員から具体的な案件の御指摘があるものですから、私なりに御説明しているものでございます。
 それは、団体というのは、もともとは今の構成は色がついているものではないものですから、それで組織的犯罪処罰法において団体のいろいろな要件をくっつけているわけですね。ですから、今おっしゃられる文がどの記載の部分か、私はちょっとわかりませんが、今委員がおっしゃられたものについて、私は今申し上げたとおりじゃないかというふうに思いますけれども。
 ですから、今の記載部分がよくわかりませんけれども、ケース・バイ・ケースでありまして、ただ、今のような条件設定ならば今のような解釈ができるのではないかというふうに考えています。
○保坂(展)委員 では、一言聞きますけれども、言語なし、目くばせ、いよいよ時が来たという顔でリーダーが威光を放った、こういう場合、共謀が成立する場合もあるんじゃないですか、今までの共謀共同正犯の概念からいえば。
○大林政府参考人 まず、共謀としては目くばせでも十分共謀が成立する場合はあると思います。
 ただ、今回問題となっている共謀罪については、団体要件がついていますから、それが目くばせによって一斉に動くようなシステム化されたものであれば、それは委員がおっしゃるケースもあると思います。
○保坂(展)委員 なるほど、目くばせでも共謀罪成立という、これは非常に絞り切って言っていますからそういう答弁を恐らくされるだろうなと思って聞いているわけですけれども、だから、結局、法律というのはできてしまえば動いていくわけですね。共謀共同正犯の解釈だって、かなり判例は変わってきていますからね、広がってきています。そこを指摘しておいて、強制執行妨害に行きたいと思います。
 先ほど同僚の委員から大変いい指摘がありました。私も、強制執行妨害は独立した、これは法制審も別に諮問されていますからね。これはこうやってサンドイッチしてくるのはいかがなものかと思って、条文をちょっと読んでみました。読んでみたところ、いわば処罰が上がっている。これは占有屋対策であると私たちも説明を聞きました。しかし、別に占有屋に限定するという条文、法文はないんですね。
 そこでお聞きします。この間、強制執行妨害で、占有屋、暴力団などの事件以外にも、一般の方、個人の事件として起きている事件というのは相当数あるんでしょうか。
○大林政府参考人 平成六年から十年までの五年間に、現行の刑法第九十六条の三第一項の競売等妨害の罪のうち、民事執行に関する競売等について、第一審において有罪判決が言い渡され、その後有罪が確定した事件を対象とした調査によりますと、約八割の事件に暴力団等の関係者が関与をしており、また、被告人の約五割が暴力団等との関係を有しております。
 これらの調査からいたしますと、強制執行妨害には暴力団などが相当高い割合で関与しているものと考えられます。
○保坂(展)委員 わかりました。しかし、逆に引き算をしてみれば、八割を残すところの二割は暴力団関係者じゃない人たちということになろうかと思います。それらの暴力団関係者とか、あるいは、これはよく我々も混同してしまうのですが、この強制執行妨害には団体性、組織性の要件はかかっていないですよね、それ自体としては。そのはずです。そうでしょう。
 だから、今までの現行法の九十六条の二で、強制執行妨害、これは「強制執行を免れる目的で、」これが「妨害する目的で、」というふうに幅が若干広がっているということと、一つ一つ見ていくと、これまでは、強制執行を受ける対象の財産を隠匿したり、損壊したり、仮装譲渡したり、仮装債務という形で偽装したりというのが処罰対象だったのに対して、現状改変、価格減損、あるいは金銭、財産の無償の譲渡、あるいは低額な不利益な譲渡、こういうものが問題であると。問題であるというよりは処罰対象だというふうに書かれているんですね。
 私は、特に、この提案されている九十六条の二の三、「金銭執行を受けるべき財産について、無償その他の不利益な条件で、譲渡をし、又は権利の設定をする行為」、ここをちょっと読んで考えてみたのですが、こういうことはないといいなと思いながら聞きますけれども、例えば、会社の業績が大変不振である、給料が出ない、半年ローンが払えなかったサラリーマンの方がいらっしゃった。これは、追い詰められて債務超過状態になり、その事情を高校三年生の息子もよく知っていた。そして、いよいよ強制執行の対象になりそうだ、あるいは、なりかけているというか、そういったことにもうなるだろうというときに受験に合格した。これだけ朗報だったわけですね、この方にとっては。このときのためにずっと長いこと積み立ててきた学資保険が満期になった。二百万円、二百五十万円、それが満期になりました。
 さて、それでは、このサラリーマンの方が大学の入学金を払い込む、そして残りのお金を、これで上京してアパートでも借りて、お父さんはもう仕送りは無理だよ、アルバイトでもして自活しなさいとやった場合はどうなんですか。この条項に当てはまらないか、外形的には心配ですね。
○大林政府参考人 一般論として申し上げれば、犯罪の成否というのは個別具体的な事案によると思います。
 ただ、一般論として申し上げますと、強制執行を受けた債務者が家族や近親者に金銭や物品を譲渡する場合であっても、強制執行を受けるおそれのある状況のもとで、強制執行を妨害する目的によって行われた行為であるという要件が必要でございます。
 しかしながら、今お聞きしていると、子供に対する養育的な、そういう色彩が強いように思われます。ですから、それは債務者であっても当然家族を養わなくてはなりませんし、そういう債務の本旨に従った履行というものは、金銭執行の引き当て、財産を減少させる行為とは普通考えられておりませんので、今のような財産の移転行為について、犯罪は成立するというふうには考えられないのじゃないかと思っております。
○保坂(展)委員 そういうことを、どこの条文で我々は読み取ればいいんでしょうか。
○大林政府参考人 今申し上げたように、強制執行を妨害する目的というのが構成要件になっています。今の御趣旨だと、それは一つの扶養行為の一部として金銭譲渡しているわけですから、この要件にまず当たらないのではないかと思います。
○保坂(展)委員 ただ、そのサラリーマンの方は脳裏に、まとまった、満期になった学資保険の金額、請求されているいわば負債、しかし、これは学資保険としてためてきたんだから息子へというふうに意識したかもしれない。この程度では妨害に当たらないということですか。
 それなら、やはりローン破綻の状況の中で、例えば、それは息子に対してはそうした、先祖代々伝わる骨とう品とか、その他価値ある幾つかの、お母さんの形見だからとか、娘に対してそれを物品として上げた、この行為はどうですか。
○大林政府参考人 これも個々具体的な事案によるのではないかというふうに思います。
 私が今申し上げているとおり、一つの家族内の、世間的な常識において、それは強制執行妨害をするためのものではない。例えば形見とか、それは特殊な物品ですし。逆に言えば、よく言われるのは、財産をあえて奥さん名義にして執行を免れるという、それは金額的なもの、それから対象、それから執行を受けるべき時期との関係、もろもろの状況から判定していくものですから、一概にはちょっと言えないと思います。
○保坂(展)委員 伺っていても、そういう一般の市民にはこの法律は該当しませんということに、そういうふうに聞こえるのですが、そうしたら、ではなぜそこに絞り込みがないのかということを、この条文を読んでいる限りはないんですね。
 例えば、では、今度は商売をやっている方が追い込まれたとする。借金がなかなか返済できなくなってくる。しかし、この際、思い切って新規事業で、やはり商売の借金は商売で返さなきゃいかぬということで、例えば不動産を担保として、相場より比較的安くお金を借りて店を出したという場合はどうですか。
○大林政府参考人 それもケース・バイ・ケースでございますが、要するに、債権者に対する著しい不利益性といいますか、そういうものがなければ立たない。
 委員も御案内かもしれませんけれども、従来の強制執行妨害というのは、判例において、やはり強制執行を受ける客観的な状況が必要だ。これはもう御案内のとおり、債権者と債務者の間ではいろいろなやりとりがあります。それで、そういう刑事罰に当たるものについては、やはり判例上の縛りがありまして、執行を受けるべき客観的な状況のもとで、それを認識しながらやったということで犯罪が成立するということになっておりますので、ケース・バイ・ケースだとは思いますが、それは実務上確定した判例だというふうに考えております。
○保坂(展)委員 例えば九十六条の五に、「報酬を得、又は得させる目的で、人の債務に関して、第九十六条から前条までの罪を犯した者は、五年以下の懲役若しくは五百万以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」とありますけれども、これは事前の説明だと、暴力団の組長とか、そういった犯罪組織集団のトップなどと説明を受けました。
 例えば、本当に多重債務で焦げついて、九死に一生を得たいという思いで弁護士に駆け込んだ、そしてその弁護士がいろいろな例を挙げてアドバイスした。こういうシーンには全く当てはまらないものなんですか。
○大林政府参考人 これも事案によると思います。
 弁護士さんは、いろいろな法律的な知識を依頼者に対して教えるといいますか、そういう職務を担っています。ですから、例えば、例えばでまた申しわけないんですけれども、依頼者と特殊な関係、昔からの親しい関係にある、それではおまえはこうしろという形で具体的な犯行を示唆するという場合は、それは弁護士さんでも教唆罪なり幇助犯が成立する場合があると思います。
 ただ、委員がおっしゃるように、法律的な知識、こうなるとこうなる、例えばそういう犯罪が成立しますよとか、そういうものを教授する場合に、そういうことで仮にその分の法律相談的な報酬を受け取ったということが直ちにこの今の条文に当たるものではないというふうに感じます。
○保坂(展)委員 これは三法案一体として提出されていますから、この法案が成立すれば、かかる例えば弁護士の知恵づけ、これをもとに実行されなくても共謀罪の成立要件を満たしているというふうに言えますでしょうか。例えば、そこに団体性、組織性の要件がその弁護士も含めて何らかの形で立証された場合はありということですか。
○大林政府参考人 これもやはり事例の設定の仕方だと思います。
 仮に、そういう強制執行妨害を、専らそれをするという犯罪組織があったとします。それに弁護士さんが加わって活動をしている。それは、その場合には当たるかもしれません。
 ただ、今おっしゃられた、割合と対人関係的な、法律相談的なものについては本件の共謀罪が当たるとは到底考えられません。
○保坂(展)委員 答弁を聞けば多少は安心はするのですが、だったら、なぜもっとしっかりそういう誤解というか、読んでいる限りはそういうことを事例として考え得るわけですから、これはやはりもう少しちょっと絞り込んでほしいなと思います。
 労働組合について最後に伺います。
 会社が倒産する。倒産する前に労働組合が未払い賃金や退職金を確保する、こういう目的で、あるいは、取り立て屋とかが来ますよね、町金とか暴力団関係者も押しかけてくる、いわば不法な回収が行われないように一時的に会社を占有して、あるいは生産設備や社屋を守るというか、そこに泊まり込んだりとかいうことが時々あるわけですね。特に不況が続きましたから、最近でもありますが。
 二年前の六月の法務委員会で、これは民事の方の法案審議で、正当な労働組合活動が価格減少行為に当たることはないと当時の民事局長が答弁され、また同様の附帯決議もその当時付されているんですが、この点の心配の声も先ほどの強制執行妨害で少し上がっているんですね。この点についてはどうでしょうか。
○大林政府参考人 犯罪の成否は個別具体的な事案によりますので、確定的なことを申し上げるのは困難ですけれども、一般論として申し上げれば、正当な労働組合活動が強制執行妨害罪の各構成要件や目的要件を充足するものとして処罰の対象となるような事態は想定しがたいと考えております。
○保坂(展)委員 労働組合が、経営者が行方不明になってしまう、そして会社の生産設備を使って製品をつくる、そして販売して会社を立て直したケースなども実はありますよね。外形的に先ほどの占有屋対策と言われるこの強制執行妨害罪が対象とする行為と似ているということによる心配の声が上がっているんですが、そこは、憲法上保障された労働組合の活動あるいは団結権や交渉権等々のことは前提として保障されるというふうに理解していいでしょうか。
○大林政府参考人 今回の改正は、まず、裁判所が発する執行官保管の保全処分の公示札等が除去された後において、これらに表示されていた命令等を実質的に没却する行為、それから、強制執行を受けるおそれのある状況のもとにおいて、強制執行を妨害する目的で行う強制執行の進行を阻害する行為、それから、偽計または威力を用いて、執行官等の強制執行の行為を妨害するなど、人に向けられた強制執行の進行を阻害する行為、それから、競売開始決定前における強制執行の売却の公正を害すべき行為等を処罰の対象と取り込むものでございます。
 今の要件などを考えた場合に、先ほど申し上げたとおり、正当な労働組合活動がこのような構成要件あるいは目的要件に当たるということはなかなか考えられないというふうに思います。
○保坂(展)委員 まだまだ聞きたいことがありますが、時間になりましたので終わります。
○塩崎委員長 次回は、来る二十五日火曜日午後一時二十分理事会、午後一時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時六分散会