第174回国会 環境委員会 第10号
平成二十二年四月二十七日(火曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 樽床 伸二君
   理事 太田 和美君 理事 木村たけつか君
   理事 橋本 博明君 理事 山花 郁夫君
   理事 横光 克彦君 理事 齋藤  健君
   理事 吉野 正芳君 理事 江田 康幸君
      石田 三示君    大谷 信盛君
      川越 孝洋君    工藤 仁美君
      櫛渕 万里君    小林千代美君
      斎藤やすのり君    田名部匡代君
      玉置 公良君    村上 史好君
      森岡洋一郎君    矢崎 公二君
      山崎  誠君    吉川 政重君
      小池百合子君    福井  照君
      古川 禎久君    山本 公一君
      吉泉 秀男君
    …………………………………
   環境大臣政務官      大谷 信盛君
   参考人
   (独立行政法人国立環境研究所特別客員研究員)   西岡 秀三君
   参考人
   (大阪大学大学院経済学研究科教授)        伴  金美君
   参考人
   (東京大学先端科学技術研究センター特任教授)   山口 光恒君
   参考人
   (気候ネットワーク代表)
   (弁護士)        浅岡 美恵君
   環境委員会専門員     春日  昇君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十七日
 辞任         補欠選任
  中島 隆利君     吉泉 秀男君
同日
 辞任         補欠選任
  吉泉 秀男君     中島 隆利君
    ―――――――――――――
四月二十六日
 危険な気候を回避するための法律制定を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八四八号)
 同(吉井英勝君紹介)(第八四九号)
 アスベスト被害の根絶と補償を求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第八九八号)
 同(志位和夫君紹介)(第八九九号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第九〇〇号)
 家庭生ごみ(食品廃棄物)の有効活用に関する請願(江田康幸君紹介)(第九四四号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 地球温暖化対策基本法案(内閣提出第五二号)
 低炭素社会づくり推進基本法案(野田毅君外四名提出、衆法第七号)
 気候変動対策推進基本法案(江田康幸君提出、衆法第一五号)
     ――――◇―――――
○樽床委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、地球温暖化対策基本法案、野田毅君外四名提出、低炭素社会づくり推進基本法案及び江田康幸君提出、気候変動対策推進基本法案の各案を一括して議題といたします。
 本日は、各案審査のため、参考人として、独立行政法人国立環境研究所特別客員研究員西岡秀三君、大阪大学大学院経済学研究科教授伴金美君、東京大学先端科学技術研究センター特任教授山口光恒君、気候ネットワーク代表・弁護士浅岡美恵君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じております。どうかよろしくお願いを申し上げます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、参考人各位からそれぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
 それでは、まず西岡参考人にお願いいたします。
○西岡参考人 おはようございます。西岡でございます。
 私、最近、環境省の方のロードマップ検討会の座長というのをやっておりまして、基本的にそのロードマップ検討会では、二五%まで技術的に削減が可能だということで、あとは政治の選択にお任せしたいというようなことをやっているということを申し上げます。
 きょうは、私の「低炭素社会への転換に向けて」というお手元に配っておりますこのパワーポイント、最初に低炭素社会への転換の意味について私の見解を述べさせていただき、それにつきまして、あと二、三、四と個別にお話をしていきたいと思っています。
 まず最初に、一ページを開いていただきます。
 「低炭素社会への転換の意味」とございます。私は、もちろんこの低炭素社会への転換というのは非常に大きな社会の転換だと考えております。どういう意味かといいますと、これはまず、安定な気候という今までただだと思われていた環境資源の価値が非常に高くなった、ですから、これに対してみんなお金を払わなきゃいけない。そして、解決策というのはほかにない、技術システムという日本の得意分野でしかない。この二つを強く申し上げたい。
 ここに、石油危機と現在の気候危機とのアナロジーということで表がかいてございます。
 昔を思い浮かべますと、一九七〇年代の石油危機のとき、これが一ドル、ほとんどただだと思われていたものが、数十ドルに現在値上がりしております。この解決策というのは、一つは省エネ、二つ目が高いけれども買う、そして三つ目が自主開発ということでございます。省エネにつきましては、これは日本で培った技術を国外へ売るということで今プラスに転じていると思いますけれども、あとの二つにつきましては、国外へのエネルギー代の支払いということで、富の持ち出しということになっているかと思います。
 現在、気候危機、これは言ってみれば、安定な気候を維持するためにみんなが努力するという必要が出てきた、値段が高くなった、コストが高くなったということでございます。これは、石油危機と唯一非常に大きく違うことは、その解決というのは人間の知恵でしかない、技術でしかないということです。新しい原油を買う、もちろん天然ガス等々ございますけれども、そういうことではおさまりがつかないということでございます。
 ここにありますように、その解決策というのは、国内の省エネ、低炭素技術、あるいは非化石燃料の開発ということでございまして、これは、原油に相当するものは知恵と技術しかない。これはまさに我々日本の得意分野ではないかと思われます。もちろん、自分たちは何もしないで海外から技術を買ってということはありますけれども、そんなことは考えられない話でして、技術優位性の放棄ということになります。あるいは、耐え続けるということがございますが、我々、環境省の方で研究者が集まって推定しますと数兆円の費用がかかるということで、これも余りよろしくない。
 国益維持のための望ましい政策といいますのは、そこにございますように、もう既にまず競争が始まっている。追従を許さない低炭素技術、これは技術だけじゃなく社会システムをつくり上げて競争に勝つという戦略しかないのではないかなというぐあいに思っております。
 そのためには、座して待っているわけにはいかない。高い目標を掲げて引っ張るといったことが大切ですし、さらに、当然のことですけれども、その転換に当たっては、産業構造の転換、雇用の問題、費用、こういった摩擦がございますけれども、それを最小にする道筋を早くつくって考えていこうということで、私ども、ロードマップの作成をやっているということでございます。皆さんにもさらにお知恵をいただきまして、そういうロードマップをいいものに完成したいというぐあいに思っております。
 これからは各論に移ります。
 どれだけ削減するべきかということについて幾つか議論がございます。
 これは、現在、二五%という目標が一つ掲げられておりますけれども、これが出てきたゆえんといいますのは、政策的に二度Cあたりに何とか落ちつくようにしようという決定のもとで、その中で、科学者の言っていることを選択しますと、この一番上に赤で囲んでございます、四五〇ppm程度のところまで落とさなきゃいけないということになります。
 ここでシナリオの数が、研究がどれだけ行われたかという数でございますけれども、現在はそういう政治の目標に向かって一番上のシナリオに対する研究が非常にふえております。百十八という非常に大きなものがございますが、これは、あるとき、いろいろなモデルがあって、それを標準のフレームを与えてみんなで比較して、どこがどうなんだろうという検討をやったものですからここは非常に多くなっていますが、これは、言ってみればエクササイズがたくさんあるということであります。
 次に、三ページに移らせていただきます。
 どれだけ削減するべきか。これは、科学的成果を政策が選択するというプロセスでずっと進んでおります。
 まず、二度以内に抑えるという認識、あるいはそれに対する見解を認識するというようなことは、いろいろございますけれども、ラクイラ、コペンハーゲンでそういう政治的な意図が示された。その中で、科学者がいろいろやっているものを探してみると、その下の表にございますように、それぞれの濃度あるいは温度の基準によりましていろいろな案がございますけれども、二〇二〇年、二五ないし四〇%先進国は減らすということが妥当あるいは必要であるということを、この三つの選択肢が科学から示されまして、そのうち政策としてこの一番上を選んだということになります。
 このように、科学と政策が交互に進みながら、科学をベースにした政策が形成されているということでございます。
 さて、それではどれだけ日本が削減するべきか。これは交渉事でございますので、私がその交渉事について申し上げることではないんですが、おまえはどれだけ減らせるかという交渉の中で、どういう基準でもって話がされるかということをここに書いてございます。
 三つございますけれども、一つは責任。どれだけそれぞれが負担するのか、どれだけそれぞれが汚しているかといったことですね。これは、今まで先進国は歴史的にうんと出してきてそれがたまっているじゃないか、その責任をとるべきだとか、一人当たりの排出量でもって責任をとるべき、いろいろな言い方がございます。
 あるいは、能力。お金を持っている人はお金を使って減らすのがいいじゃないか、これは所得税もそういうところがあるわけですが、そういった言い方もございます。
 あるいは、実効性。例えば、非常に性能のいい技術があるんだったら、それを使って世界じゅうで一番安く減らしてもいいじゃないか、限界削減費用を一定にしようというような論議もここにあるわけです。
 こういった幾つもの公平性の基準でもってこの交渉が行われているということを申し上げたいと思っております。そのどれをとるかにつきましては、まさに外交あるいは政治の問題かと思っております。
 五ページが、今の話を、それでは一度公平性の指標ごとに削減割合を比較して、どこがどれだけ減らさなきゃいけないんだろうか、これをそれぞれの考え方でもって計算してみると、こんなにあります。私が言いたいことは、いろいろな指標のとり方によって、それぞれの国がどれだけ減らせるかの割合は大分変わってくるなということでございます。
 例えば、三つ目の「共通だが差異ある収斂」、あるいは二つ目のCアンドC、最終的に一人当たり同じぐらいの排出量にしようじゃないかといったようなことになりますと、国で見ますと、人口の多いところは得をしますね。言ってみれば、日本のようにこれから人口が減っていくというところは損をする。そういうことが起きるわけで、アメリカの方がなぜそんなに少ないんだなどと言われると、そういう理屈であります。
 もちろん、日本が一番低い、青色が一番低いのは、右から三番目の「GDPあたり排出量収束」という、非常に我が日本は省エネ国家でございますので、そういう論からいいますと、ここを大いに主張するということもあるかと思います。あとは交渉に任せるということになります。
 さて、どれだけ削減するべきかということで、六ページに全体の流れが書いてございます。大変な削減をしなきゃいけないということをまず覚悟しなきゃいけないと思います。ちょうど「人口のピーク」と書いてあります現在のところから、八〇%、これは九〇年比で書いてございますけれども、ここを真っすぐ引いたあたりの真ん中ぐらいに大体二五%削減が来ている。これをもう少し低い削減目標にしますと、この線がぐぐっと折れ曲がって、後で頑張らなきゃいけないということになるかと思います。
 次のページになります、七ページ。私どもは、早期削減が非常に重要だと考えております。
 なぜかといいますと、まず第一に、環境の立場からいいますと、おくれればおくれるほどそれだけ二酸化炭素あるいは温室効果ガスを大気中に出しているわけで、そういう累積排出量が気候変動にきいてきますから、少しでも早く削減する必要があります。
 二番目、これは、単に技術を入れればいいという話じゃなくて、社会インフラ全体を変えなきゃいけないこともある。そういったところに普通は三十年ぐらいはかかるわけでございますので、早期に着手する必要がある。
 それから、将来の技術を見込んで、いい技術がありそうだからということでやっていって、だめだったらどうしようかということがありますから、なるべく早く手をつけておいた方がいい。
 それから、効率の改善というのは、年間GDP当たりのエネルギー量、すなわちエネルギー強度という考え方でいきますと、みんな知恵を出しますから、ほっておいても大体一・三%ぐらい進化するんですけれども、それを待っていてはいけません。我々の計算では二%以上の進歩が要ります。ですから、ここは加速しなきゃいけない。待っていてもしようがない。
 それから、技術には習熟効果がある。早く、たくさんのシェアで大量のものをつくればつくるほど知恵が集まりまして、国際的優位に立つ。私はコペンハーゲンで、アメリカのエネルギー庁長官でございますが、スティーブン・チューの話をお伺いしましたら、まず最初に彼は、世の中には習熟効果というのがある、早目に市場をとって世界の技術を席巻するんだというふうなことを述べておりました。
 それから六番目、そういう調子で世界で競争が進んでいるときに技術開発や普及をおくらせるということは、グローバルでの市場獲得を逃がしてしまうということがあるかと思います。
 八ページ、日本がどういう道をたどってきたかを、左の上のあたりの「先進国のGDP当たりCO2排出量」というのを見ていただき、一番左のグラフでございますが、このグラフの縦軸はいわゆる省エネ度を示しております。下に行くほど有利な国である。すなわち、日本は一九七〇年代はアメリカの倍もよかった。
 ところが、その後、どういうことかといいますと、ほかの国はこの指標をどんどんどんどん下げております。これは二つのやり方がある。技術をよくする、あるいは産業構造を変えていくということでございますけれども、日本はちょうどこの二十年ぐらい、今では踊り場と言っておりますが、こういう状況に陥って、EU等々には抜かれてきている。右にございますように、デカップリング、GDPと温室効果ガスを分けていくといったことが十分できない状況になってしまった。何とかここは頑張らなきゃいけないということが示されております。
 それから、その次は九ページに参りますが、これは限界削減費用のカーブでございます。
 これはどういうカーブかといいますと、縦にコストをとって、横軸にはどれだけ減らせるか。すなわち、左の方にマイナスコストで、非常にわずかでございますけれども、技術が幾つかございます。それをどんどん入れていったら、これはほとんどマイナスコスト、すなわち、やればむしろ得をするという形で入っています。
 そして、どんどんどんどん高い技術を入れていくことになりますけれども、これから我々が一番必要とする技術というのは、結構高い技術がございます。右側の方にありますように、次世代自動車、太陽光発電、高断熱住宅、こういったものの技術を、低い削減目標では対象にしないということになりますので、やはり高い目標を掲げてこういうところにチャレンジして、そこで勝ち抜くということが必要かと思います。
 右下に書いてございますが、物づくり国際競争力の強化、それから生産量増加に伴う価格低下、これは先ほど申しました習熟曲線、そして豊かな生活空間の創出のために、ぜひここまでのチャレンジをしていただきたいなと思っております。
 十ページには、削減可能性ということで書いてございます。これは、二〇五〇年にはこういうスタイルになりますよということを書いてございますが、ロードマップにつきましては、時間がございません、十一ページへ移らせていただきます。
 ロードマップの考え方は、法案はできたけれども裏打ちするものが何もないじゃないかという御批判がございまして、ともかく私ども、研究者としてやってみようということで書いたものでございます。
 十一ページの絵を見ていただいて、一番下のところに、全体の戦略といたしましては、まず国内市場で力を蓄え、既存の低炭素技術を導入して低炭素社会を実現しつつ、将来、二〇年から五〇年にわたっては世界市場に目がけて革新的な低炭素技術を開発していこうと。
 そのために、まず施策といたしましては、上の方に書いてございますキャップ・アンド・トレード、それから地球温暖化対策税、固定価格買い取り制度、これは法案に書かれているものでございます。皆さんの法案の提案にも書かれておりますように、そういうことを前提といたしまして、規制等々を入れながらやっていこうということでございます。
 十二ページには、非常に細かく、要するに我々はきちんとやっていますよということを示すだけの絵でございますけれども、日々の暮らし住宅分野でどういうことをやっているか。結構ネックになりますのが人材でございます。それから基準づくりだとか、そういうことから始まるかと思います。
 十三ページに、その結果ということで書いてございます。私ども、今十三ページに飛んでおりますが、真ん中あたりに、一五%、二〇%、二五%ということで、この幅で計算をしてみました。技術的にまず可能であるということが一つの結論でございまして、二つ目が、特に需要者側で需要を減らしていくということは非常にきくということを申し上げたいと思っております。三〇年につきましても、それをトレンドとして伸ばした参考をつけております。
 それから、再生可能エネルギーが入るかということにつきましては、このとおりやっていけば入っていくだろうということ。
 最後になりますけれども、十五、十六ページ、これは、幾ら費用がかかるか。
 当然ですけれども、最初に幾らか投資をしなきゃいけない。それから、多分、産業構造の変化に伴う雇用の摩擦等々がございます。費用につきましては、ここにありますように、例えば二五%削減については十年間で百兆円かかります。一年間で十兆になりますから、大体GDPの二%ぐらいになります。これだけを毎年抱えながらやっていくということになるかと思います。
 十六ページは、マクロフレームというのを固定してやるのではなくて、産業構造も変わるという前提でやっていくと、かなり金額が少なくて済むということでございます。
 まとめにつきましてはヘッドラインだけ読ませていただきますけれども、安定な気候維持の知恵で国際競争に勝ち抜くべきではないか。それから、二五%削減は技術的に可能でありますけれども、極めて強い政策措置が要るということでございます。そして、この実現には二%弱の投資が要る、しかしそれは十分ペイする投資であるということを申し上げております。
 早目にこういうことを確保して、その方向に向かって道筋をつくっていきたいということでロードマップを検討しているというお話を申し上げました。
 どうもありがとうございました。(拍手)
○樽床委員長 ありがとうございました。
 次に、伴参考人にお願いいたします。
○伴参考人 大阪大学の伴金美と申します。
 本委員会に招致していただきましたことは、私にとりましても大きな名誉でございまして、よろしくお願いいたします。
 なお、申し添えますが、私は、内閣府の経済社会総合研究所客員主任研究官も兼務しております。このポストは一年ごとの更新でございまして、実は、自民党歴代四代の内閣総理大臣と、今般、鳩山内閣総理大臣から、大体毎年辞令をいただいております。
 専門は経済モデルの構築でございます。本日の委員会における私の役割も、地球温暖化対策基本法案を経済モデルで評価する研究者の一人として陳述をすることと心得ております。
 委員の各位におかれましては、三月三十一日の小沢環境大臣試案に取り上げられました私のモデルによる試算結果につきまして、いろいろな御質問があろうかと思っております。ただ、参考人としての陳述は、試算の経緯と私のモデルの基本的な考え方の説明にとどめまして、細かな数値等は、きょう配付しております資料、きょうの日付があります資料を参考にしていただければと思います。後で委員の方々から幾つか質問がございましたときにお答えしたいというぐあいに思っております。
 政策決定に当たって経済モデルがさまざまな立場から用いられるというのは研究者としてもありがたいことでございまして、それはまず最初に非常に感謝申し上げたいと思っております。
 私はこれまで、経済モデルを用いた政策決定にかかわるタスクフォースと言われているものがあるんですが、そういうところにたびたび招かれております。印象深いのは実は二つございまして、一つが、一九九六年から九七年にかけてAPECの閣僚会合に向けた貿易自由化の経済効果試算というものでございます。もう一つは、今回の温暖化対策の経済効果に関する中期目標検討委員会とタスクフォースの試算でございます。
 二つに共通いたしますのは、まずグローバルな問題であること、それから、経済全体の厚生は上昇するんだけれども特定の産業に対して強い痛みを与える、この二点について共通していることがございます。
 したがって、使われるべき経済モデルは、世界モデルであること、それから、財、産業レベルの分析が十分にできることが必要と考えております。
 今般、経済モデルを用いて温暖化対策が経済に与える影響を試算する、そういうお話は、実は、中期目標検討委員会の福井俊彦座長から、日本経済研究センター理事長である深尾光洋委員に依頼がございまして、そこが最初のスタートになっております。
 深尾委員は温暖化対策を強化することが国際競争力に与える影響を非常に懸念されておりまして、私もその話を最初に聞いたときに、温暖化対策の影響評価はグローバルな問題であって、したがって、その経済モデルというものもグローバルである必要があるということで深尾先生と意見が一致しました。
 実は、その時点で私自身は世界モデルを持っておりましたが、一、二カ月の短期間で中期目標検討委員会が必要とする詳細な情報を提供できるようにモデルを再構築するというのは簡単ではございませんで、無理ですよという形で答えた記憶がございます。
 ところが、私もその経緯はちょっとよく存じ上げませんが、日本に限定した経済モデルでの試算をしてほしいというお話が参りまして、それならば、内閣府経済社会総合研究所におきまして、国際共同研究の一環として作成し、技術選択を重視した日本モデルができておりましたので、これを用いることを提案いたしました。
 作業を行いますのは、当時、内閣府の研究所の主任研究官であった川崎泰史氏、彼は現在、日本経済研究センターに出向しておりますが、それと関東学園大学の武田史郎先生、このお二人に担当してもらうということになりました。これが、いわゆる日経CGEモデルという名前で中期目標検討委員会とタスクフォースで用いられたものでございます。
 今般、小沢環境大臣試案に盛られました私のモデルが国際モデルでないとの批判もたびたびお聞きするわけでございますけれども、中期目標検討委員会でもタスクフォースにおきましても、日経CGEモデルが国際モデルでないからその試算結果は信用ならないというお話は私自身一切聞いておりません。
 ただ、中期目標検討委員会の試算作業の中で、温暖化対策の経済効果を試算する上で、日経CGEモデルの問題点というものもよくわかってまいりまして、その再構築を少し考え始めたところでございます。ただ、昨年の十月に始まったいわゆるタスクフォースの段階では間に合わずに、日経CGEモデルの改良版で対応するという決定を行って、そのとおりにしたわけでございます。
 問題点は三つございます。
 一つは、低炭素社会を実現するための技術選択の問題でありまして、経済モデルというのはいわゆるトップダウン型技術選択モデルという範疇に入るモデルでございますが、実は、温暖化対策に関する問題というのは、もう既にわかっている技術がいつの段階で採択されるか、そういうことをちゃんと分析する必要がございます。これはいわゆるボトムアップ型技術選択モデルと言われているものでございまして、これを経済モデルにどう入れるかが私どもの大きな仕事でございました。
 日経CGEモデルは、実は、IPCCの第三作業部会の副議長もしております、今ベニス大学の学長をされていると思うんだけれども、カルロ・カラーロさんという方の指導を受けまして、これは国際共同研究の一環でございますが、いわゆるボトムアップ型の技術選択モデルを取り入れた、そういう日本経済のCGEモデルと言われているものを作成したわけでございます。
 第二の問題としては、第一の問題と密接にかかわることでございますが、いわゆる低炭素社会に向けたイノベーションの具体的内容でございます。
 実は、中期目標検討委員会でもタスクフォースでも、そのイノベーションあるいは技術進歩というものがどういうものかというのは一切与えられずに、ただ単に経済計算をしろという命令が下りまして、そのために時間を費やしたという苦い思い出がございます。
 その意味で、ロードマップ検討委員会に今回私参加を求められ、技術の専門家、これは委員は十数名ですが、その下に非常に多くの方々がいらっしゃいまして、その方々から、技術がどういうものがあるか、どういうイノベーションがあるか、そういうことをつぶさに教えていただきまして、今回のモデルに反映させることができたと思っております。
 第三は、フォワードルッキング、すなわち我々は未来を見据えて行動する、こういう問題を経済モデルの中にどう入れるかということであります。
 そのときに重要になりますのは、基本的には貯蓄と投資。貯蓄は基本的には投資に回りますので、貯蓄と消費をどういう形で決めるかということでございます。
 日経CGEモデルではどういうやり方をとっていたかというと、貯蓄率が一定であるという仮定を持っておりました。そうしますと、将来のために投資をしようとする場合には、所得がふえなきゃどうにもなりません。しかし、温暖化対策を実行すれば、生産に対して下向きの力が働きますので、所得はなかなかふえない。そうすると、投資もできずに、そのまま経済がずぶずぶと沈下していくということになります。
 ところが、今回のモデルにおきましては、どういうやり方をとったかといいますと、将来に向けて考える。したがって、消費を減らして投資をふやす、そういうものを明示的に入れるということでございます。
 このようなモデルのタイプは、いわゆるラムゼー型モデルと言われている動学的な最適化行動のモデルでございますが、最近の日本の、日本だけじゃございません、アメリカの大学院のコア科目の最初の段階でたたき込まれるモデルでございます。それを今回入れることによって、いわゆる将来に備える人々の姿というものをモデルに取り入れる。それが非常にポジティブな形で動いているというのが今回のモデルの特徴でございます。
 成長戦略というのは、結局のところは投資をどのように拡大させるかということが重要でございますけれども、それに沿った経済モデルの構築ができたと自負しております。
 なお、投資をコストとおっしゃる方が多くいますが、モデルでは、投資から得られる収益が投資のコストを上回ったときのみ投資が行われるという形でモデルは組み立てられております。したがって、行われる投資というのは十分ペイできるものであるということでございます。
 本委員会でも取り上げられておりますIPCCの第四次報告書と私のモデルが随分異なるのではないかということでございますが、このIPCCのモデルというのは、EMF、エナジー・モデリング・フォーラムというところがやっていまして、それが、今回の場合、二〇〇六年のエナジージャーナルの中にすべて載っています。今回の私のモデルはそこには載っておりませんが、基本的には、二〇〇六年のジャーナルに出ておりました二つのモデル、これは特集に二つトピックがありまして、一つがハイブリッド、このハイブリッドというのはいわゆるボトムアップ型の技術選択をどう取り入れるかという話と、もう一つはマルチガスの話でございます。マルチガスに関しては、今回少し時間が間に合わなかったんですが、いわゆる技術選択についてはそれを十分取り入れたというぐあいに思っております。
 委員の皆様方に理解していただきたいのは、IPCCの方にリファーされているモデルはすばらしいモデルである。確かに、レフェリーも得て非常にすぐれたモデルであることは事実でございますけれども、そのモデルの多くの部分、全部じゃございません、経済モデルについては、一部門のマクロモデルでございます。先ほど申しましたように、温暖化対策というのは特定の業界に対して強いインパクトを与えます。そのために、やはり、私の行ったようなマルチセクトラルモデル、多部門モデルが必要でございまして、もちろんIPCCの中にはそういうモデルもございます。そのことは皆さんにぜひ知っておいていただきたい。
 ただ、今回の日本モデルは三十七部門四十財の非常に詳細なモデルになっておりまして、それを世界モデルにするというのはこれからの仕事になろうかと思っております。
 なお、これも強調いたしたいことでございますが、IPCCモデルの中に金融市場や国債残高という問題を入れているモデルは私は存じ上げません。そのことは主張したいということになっております。
 蛇足ですが、私も一九九五年に公刊されたIPCC第二次報告書のリードオーサーをしておりまして、リードオーサーは何をするかというと、どんどんどんどんペーパーが来るものに対してコメントをどんどん書いてやる、そういう仕事なわけですが、そういう意味で随分疲弊した記憶がございます。
 今回の試算は日本経済に限定したものでございますが、昨年十二月に内閣府の経済社会総合研究所と中国国務院との共同ワークショップに参加いたしまして、そこでは日本経済モデルではなくて世界経済モデルを使っていますが、日本と中国と韓国が技術協力をすることによって、二〇三〇年までにちょうど日本の排出量に相当する十三億トンを減らすことができ、かつ、日本と中国と韓国のGDPを押し上げる効果がある、そういうような報告、つまりウイン・ウインの試算結果も出しております。
 委員の皆さん方に理解していただきたいのは次の二点でございます。経済モデルは全知全能ではありません。できることとできないことがあります。それから、もう一つの問題は、経済モデルは過去を引きずるために、新たな試みに対する評価をするとき非常に保守的になるということもございます。
 私が政治に興味を持ち始めたのは小学校の高学年でございまして、そのときに池田勇人首相が国民所得倍増計画というものを打ち出しました。安保闘争の後で疲弊した、あるいは分裂した国民をまとめ上げる、そういう考え方としては非常によかったというぐあいに思っております。
 それに対して、実は私の恩師でございますアメリカのペンシルベニア大学のクライン教授が、この方は一九八〇年にノーベル経済学賞を受賞されておりますが、大阪大学に参りまして、ただ、私はそのとき大阪大学ではございませんで、まだ子供でしたからあれなんですが、当時の新開陽一助教授、現在は名誉教授ですが、その二方が日本経済に関する非常に精緻なモデルをつくりました。そして、国民所得倍増計画を評価しまして、実現は困難であるというぐあいに結論したわけでございます。
 でも、どちらが正しかったかというのは皆さん御存じのとおりでありまして、基本的には、コンピューターを使った精緻な経済モデルが、いわゆる下村治先生のカンピューター、まさに勘で動くモデルですが、それに負けたのでございます。
 基本的になぜ負けたかというのは既に今はわかりまして、先ほどから私が主張しております、将来を見据えて投資を積極的にするという企業行動を、これまでの過去の歴史を引きずった経済モデルではなかなか入れることができなかった、それが失敗のもとでございます。そういう意味で、私がフォワードルッキングとあえて申し上げるのはそういうことでございます。
 本題に戻りますけれども、四月五日付のニューヨーク・タイムズ、これは西岡先生の参考資料の中にもございますけれども、アメリカのプリンストン大学のクルーグマン教授、この方も二〇〇八年のノーベル経済学賞を受賞されておりますが、印刷すると十八ページぐらいになります環境政策に関する英語の論文、寄稿というよりは英語の論文だと思うんですが、その中で、経済モデルというものはコストを過大に評価する傾向があると明確に書いております。でも、実際には、企業や家計はうまくやりくりして低く抑えてしまう、そんなものだよということをおっしゃっています。
 それから、もう一つクルーグマンがおっしゃっているのは、観測されたデータを説明するモデル、これは簡単にできちゃいます。しかし、将来を予測するモデル、これはなかなか難しいということをおっしゃっております。
 その意味で、私自身、一九九六年から九七年に貿易自由化の経済効果という試算を行いまして、それでAPEC、特にアジアが繁栄するという試算を出しました。しかし、その直後に何が起こったかというと、アジア・ショックでございます。その結果、なぜそんな楽観論を振りまいたのかと多くの人から非難を受けました。でも、それから十数年たっておりますが、私の予測のとおりに世界は動いているというぐあいに考えております。
 最後になりますが、二五%の削減は高過ぎるから目標を少し下げた方がいい、実行できる目標の方がいい、そういうお考えもあろうかと思っております。
 ただ、私は三十六年間大学で教えておりますが、目標を学生に合わせますと、学生はそれで満足しちゃうんですね。結局、その学生の能力を引き出すことができない。だから、私自身は高い目標を掲げ、それがどんなに高くても、実は若い彼らは簡単にクリアしちゃうんですね。
 私は、三十六年間の大学の教育の中で身をもってそういうことを考えておりますので、できそうもない目標を掲げるべきではないではなくて、できそうでないかもしれないけれども、日本は非常にまだアクティブでありまして、それを十分クリアするということは、私自身、信じております。皆様方は、まさにその制度設計、制度づくりがお仕事でございますので、そういう形で目標あるいは制度をつくっていただく、これが日本国にとっても重要ではないかと思っております。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
○樽床委員長 ありがとうございました。
 次に、山口参考人にお願いいたします。
○山口参考人 御紹介いただきました山口でございます。よろしくお願いいたします。
 最初に申し上げたいことは、私自身、ぜひ日本が高い目標を掲げて、みんなで一緒にやっていこう、これは全く大賛成ということです。
 一つだけ考えなければいけないことは、日本の場合には国際約束をする、こういうことです。それができなかった場合は、国民の税金で買ってこなければいけない。これは京都議定書で今やっているわけです。ですから、そこを考えた上でやらなければいけないだろう。ここが一番のポイントだと思います。
 私は、きょうはもう少し原点に立ち返った点をお話ししまして、そして皆様の議論の御参考に供したいというふうに思っております。
 レジュメがございます。ここに「本日の要旨」と書いてございまして、四点あります。この四点について、具体的なデータに基づきながらお話をしていきたいというふうに思っております。
 たまたま私、こちらにおられます西岡さんもそうですけれども、IPCCのリードオーサーをずっとやっておりまして、そういう点からIPCCのことについてもぜひ皆さんにお話ししたいと思います。
 とはいうものの、まず最初に、COP15で世界が変わったというところを申し上げたい。
 一言で言うと、それまでの熱狂から冷静な議論に戻ったということなんですね。これは、細かいことはもう申し上げられませんけれども、要するにEUが進めてきた工業化以降二度目標、これが結局合意できなくて後退した、こういうことです。
 それから二番目には、いわゆる京都議定書スタイル、要するに、もし国が絶対量の目標ができなければ税金を使って買ってくる、これが破綻したわけです。これはアメリカが絶対にそういうことを受けない。アメリカの法律はどこにもそんなことは書いていない。ということで、プレッジ・アンド・レビューになった。要するに、各国ができることを一生懸命やっていこう、こういう形になった。これがコペンハーゲンの一番大きな転機だというふうに私は理解しております。
 さて、今度は議会に温暖化対策基本法という法案が出ていまして、御承知のとおり、日本は高い目標を掲げておりますけれども、条件がついております。そして、他国がやれば日本はこうやる、やらなければ日本はどうなんだというのがないという目標は、少なくとも温暖化については私は聞いたことがないんですけれども、例えば一つの例として、ここの四角の中にオーストラリアの例がございます。これは二〇〇〇年比ですけれども、自国では五%、ほかがやると一五、ただし、もし四五〇ppm安定化ということで本当にみんながやるんであれば自国は二五やる、こういうような立て方ですね。これが普通なんで、そのあたりは日本でこれから皆さんにぜひお考えいただきたいと思っておるわけです。
 鳩山首相の国会答弁などを拝見しますと、首相は四五〇ppmを求めておられるので、要するに、首相の条件というのは四五〇なんだな、こういうふうに私は理解しております。
 さて、次に、一番ポイントなんですけれども、時々二五%削減は科学の要請だという言葉が出てまいります。ここが非常に大切なところですので、ぜひ御理解いただきたいと思って、ここに鳩山首相の衆議院予算委員会における答弁を持ってきてございます。
 要するにIPCCの第三次、第四次報告、鳩山首相の言っている科学というのはIPCCのことを指しておるわけですけれども、平均気温上昇を工業化以前に比べて二度以下に抑える。そのためには四五〇ppmにしなければいけない。これはCO2等価濃度というんですけれども、細かいことは除きます。四五〇のためには、先進国は二〇五〇年に八〇で、二〇二〇年に最低二五だということを、これを鳩山首相は科学的知見と言われておるわけです。
 ただ、次に、いろいろな科学的知見があることを首相も知っているんだ、その中で一番厳しい一つの有力な知見というものに基づいて自分としてはやりたい、こういうふうに言われておるわけです。したがって、鳩山首相は、科学的知見はたくさんある、その中で自分はこれをとりたいんだという、要するに、科学が要請しているというのではなくて、科学的知見はたくさんあるけれども自分はその中でこれをとる、これが首相が予算委員会で答弁された内容。これは私、議事録からとってきたわけです。
 そうしますと、鳩山首相のロジックは、まず気温上昇を工業化、この工業化というところが非常に大事なものですから入れてあるんですけれども、以前から二度以内に抑える、そのためには四五〇ppmで安定化させなければいけない。そうすると、先進国は二〇五〇年に八割、世界では五割。二〇二〇年には前倒しで二五から四〇、これが必要なんで、日本は二五だ、これが首相のロジックだと私は理解をしております。
 次のページに参りますけれども、これは、幸い、先ほど西岡参考人が既に説明をしていただいております。モデルの数が多いとか少ないとかいう問題はありますけれども、この一番上の例が、要するに、ある程度の気温上昇に抑えるためにどういう濃度にならなければいけないか、それには二〇五〇年にどの程度減っていなきゃいけないかということを、濃度別に六つにIPCCで分類をしてあります。これが科学的知見なんですね。これは全部科学的知見です。
 次に、これは全部IPCCレポートですけれども、その下に、これも西岡さんがさっき説明されましたけれども、仮に、この一番上の、赤丸をしてありますけれども、四五〇というものをやるんだと。カラーの方に移りまして、アネックス1というのは先進国なんですけれども、これが二五から四〇ということがIPCCに出ているんです。
 ただ、ここの数字は、例えば、先ほどもございましたけれども、二〇五〇年に一人当たり排出量を均等化するとか、ほかにもありますけれども、そういう幾つかの前提を置いて学者がやった論文を集計したらこうなったというだけの話です。
 したがって、その前提を変える。例えば日本のように効率が高い場合に、そこをベンチマークにしてやったらどうなるんだという計算をすれば、当然変わってくる。たまたまその論文がなかった、そういう状況です。
 さて、これを申し上げた上で、IPCCというのは一体何をするところなんだということをぜひ御理解いただきたいんですけれども、私自身が十年前にIPCCに初めて行ったときに、当時のワトソンという議長にさんざん言われたわけです。IPCCは政治家に、意思決定者に客観的なデータを提供する。特に私が担当しております政策措置、そのあたりのところは、政治家に対して選択肢を示します、その選択肢も自分が勝手に示すのではなくて、学者の論文を全部集めてきて、一番いい論文をまとめたところはこういうふうになります、こういうふうにやったらこうなります、こうやったらこうなる、こうやったらこうなる、さて、あとは政治家が選択してください、これがIPCCの仕事だと。
 ちょっとここに英語を一言だけ書いてあります。これはIPCCの人は全員よく知っている言葉で、ポリシー・レレバントであって、ポリシー・プレスクリプティブではない。これはどういうことかというと、要するに政策に非常に参考になる情報を出そう、ただ、プレスクリプティブというのは、医者の処方せんじゃないですけれども、こうすべきだ、これにはこの薬を飲まなきゃいけない、あるいはこうしなきゃいけない、それをIPCCは絶対にやってはいけない。これはもう絶対の原則なわけです。
 去年の七月のベニスの会議でも、私はわざわざ手を挙げて、これをパチャウリ議長に確認いたしました。これはだれも反対がありません。IPCCというのはこういうことだということです。
 ということは、当然のことながら、この上の六つ、いろいろなカテゴリーがありますけれども、どの濃度だとかどの気温だとかということをIPCCが要請していることは全くございません。これがもし違うというんでしたら、証拠を挙げていただけたら幾らでも私は受けて立つつもりであります。
 さて、IPCCはこの辺についてどう書いてあるかというと、下から二つ目の四角で、英語で書いてあるんですけれども、これは日本語のアンダーラインを引いてあります。科学は政治が決める場合のその一部にすぎないというふうに書いてあるんです。我々は科学者だ、我々はサイエンスに基づいていろいろなことを言う、ただ、政治は倫理だとかほかの問題とかいろいろなことがあって、我々はだから科学でやりますよ、科学はこの一部なんですということです。だから、科学がどうしなさいということは言わない。
 それからもう一つ、先ほど二五から四〇という数字が出ておりましたけれども、これはこの章を書いた、いわゆるリードオーサーの中の責任者がいます。デニス・ティアパックという男ですけれども、彼がわざわざ国連の交渉の場に出てきて話したものがここにございます。これも英語で書いてありますので日本語のところだけ読みますと、二五から四〇、これは四五〇の場合ですから、もし五五〇ですと全然違う数字になるんですね。要するに、ここに出ているのは、IPCCの結論、コンクルージョン、あるいは要請、リコメンデーションではないんです、文献の要約ですよということを、わざわざリードオーサーの中の一番トップの男がここの表についてみんなの前で、国連の場で言っているということです。
 上記から、二度目標それから濃度目標、あるいは先進国の二五から四〇、これは科学の要請ではない、これは別に私はどっちがいいということは全く言ってなくて、ただ、IPCCというのはこういうことですということをぜひ御理解いただきたい。
 ですから、先進国二五から四〇が科学の要請ではないわけですから、日本が二五をやるとかやらないということは、これは当然科学の要請とは別で、皆さんが政治の問題としてどうされるかということです。これを最初にぜひ申し上げたかったわけです。
 次に、先ほど来、二度という話が出ております。これは、結論から申しますと、工業化以降二度でやろうということについて国際合意はございません。
 ここでぜひ御承知いただきたいのは、そもそも温暖化対策はどこまでやるべきかということは、気候変動枠組み条約という京都議定書のもとの枠組みの条約に書いてあります。それによると、第二条ですけれども、危険でない濃度で安定化する、これが温暖化対策の目的なんですね。危険でない濃度で安定化する。
 ただし、条件が三つあります。特に三番目が、経済開発が持続可能な態様で進行することができる。要するに、危険でない濃度で対策をしなければいけない。対策不足はだめだ。ところが、余りに対策を急激にやって、もし経済が持続可能でなくなった場合には、それはだめだ。これは、いわゆる京都議定書のもとの枠組み条約にはっきりと書いてあるわけです。要するに、温暖化対策の目的は持続可能な発展なんですね。ですから、IPCC自体が最近は気候変動ということから持続可能な開発、発展ということにだんだん重心を移しているというのはこういうことにあるわけです。
 そして、IPCCはこれについてどう書いているか。実は、ここの章は私がリードオーサーですから非常によく知っていますけれども、次の四角の中、出所も全部書いてありますけれども、安定化レベルの選択は対策不足による温暖化の損害と対策過度による経済への悪影響のバランスの問題である。何をもって危険な濃度と見るかについてはほとんどコンセンサスがない。要するに、何が危険だということのコンセンサスがない。しかも、ここにハイアグリーメント、マッチエビデンス、これは全くそういうふうにみんなが思っているということです。
 なぜかというと、一つは、危険な濃度とは何かについて合意がないわけです。例えばサンゴ礁が死滅するというのが危険だとすると、既に今かなり危険かもしれません。ただ、いわゆる熱塩循環、ヨーロッパが十度も下がってしまう、そういう海洋循環に影響を及ぼす、こういうことになると四度、五度でもまだ大丈夫かもしれない。したがって、何をもって危険とするか、この合意がないんです。これは科学では絶対に合意ができないので皆さん政治家の方々に決めていただくしかない、こういうことです。
 それで、もう一つ、IPCCで時々二度から三度云々という話が出ます。ここの真ん中辺の四角に書いてあります。一九九〇年以後の気温上昇が二度から三度上がると、正味便益の減少あるいは正味損害の増加を招く。温暖化というのはマイナスだけではなくてプラスも当然あります。例えばシベリアで小麦ができるとか、そんなことがあるわけですけれども、そのプラスが減ってくる、あるいはマイナスがさらにマイナスになる、そこが二度から三度上昇する。ただ、ここは、IPCCでははっきり書いてありますけれども、一九九〇年以降の話なんです。工業化から一九九〇年までに既に〇・六度ぐらい上がっています。
 そうすると、工業化から二度以内ということは、既にもう〇・六度上がっていますから、一九九〇年からあと一・四度しかないんです。ところが、IPCCには、九〇年から二度から三度上昇するとこういう問題だということです。そこは全く違う問題ですので、ぜひ御理解いただきたい。
 それから、もう一つ、工業化以降二度目標というのは、これはコペンハーゲンで、いいか悪いかは別にして、合意がございませんでした。そして、日本政府のホームページにも、世界全体の気温の上昇が二度以内にとどまるべきであるとの科学的見解を認識し云々、こう書いてあります。ここで何が抜けているか。従来は、工業化以前に比べてという文言が必ず入っていたんですね。それが抜けたわけです。これは非常に大きな意味があります。要するに途上国が絶対にそこに乗ってこない。ですから、コペンハーゲンで工業化以降二度、これは明らかな間違い。日本政府も認めていますし、先月私はワシントンでアメリカの政府交渉団の人間とも話してきて、彼らも同じ理解であります。
 最後のページでございますけれども、それでは、なぜ工業化以降二度について合意がないのかということです。これは実現可能性が非常に低いんです。
 まず、わかりやすい例を一つだけ持ってきたんですけれども、二〇五〇年までに先進国が一人当たり排出量を、二〇〇五年比で書いてありますけれども八割減らす。アメリカも八割、日本も八割、こう言っています。八割減らしても、途上国は一人当たり排出量を二〇〇五年の二・三トンから一・三トンにしなければいけないわけです。要するに、今途上国が、人口がふえるということがありますので、一人当たり排出量を四三%下げなければいけない。
 そもそも先進国が八割減らすというのはできるかできないかのぎりぎりのところだと思うんですけれども、今、途上国が現状から四割三分減らす。中国は既に今四トンです。それを一・三トンにする、これはどうしても合意ができないわけです。ということで二度目標というのは合意できなかった。ということで二度目標は科学の要請ではございません。そして、もう一つは、いいか悪いかは別にして、工業化以前の国際合意はない、こういうことです。
 そして、次の竜巻みたいな絵ですけれども、これはもう時間がないのでちょっとだけしかお話ししませんけれども、例えば横軸の四五〇ppmで安定化させたときに二度目標を超える確率です。簡単に言うと大体五割。ですから、もし本当に絶対に工業化以降二度といったら、四五〇では絶対だめ、もっと下げなければいけないという、これがいわゆる確率です。これはぜひ御承知おきを、これは客観的なデータでございます。
 さて、これを踏まえて日本はどうするかということですけれども、鳩山首相のその前提条件、これはさっきの国会答弁からしますと四五〇ppmと言われています。そうすると、さっきの二度目標と同じことになって、これは満たされない、世界がそれをオーケーすることはない。とすると、そのとき日本はどうするんだ、これは日本の目標をつくらなきゃいけない。
 そこで、さっき申し上げましたように、日本とヨーロッパ、カナダは全く違うということを申し上げたいと思います。カナダは京都議定書のメンバーです。できなければ、ハンガリーでもチェコでもどこでも行って、京都議定書上、国民の税金で買ってくることは当然できるわけです。だけれども、いや、できない、ごめんなさい。三割以上ふえちゃったわけですけれども、国民の税金は使えない。したがって、済みません、できませんでした、ごめんね。それに対しては何の制裁もありません。これは事実を申し上げています。
 ヨーロッパの場合にもこういう例はたくさんございます。一番わかりやすいのが安定成長協定、まさに今それが崩れちゃっているわけですけれども、絶対にこうでなければいけないというのが、財政状況が変わってきて、違ってきているんですね。日本の場合には、これはいいか悪いかは別にして日本の文化でして、京都議定書もそうですけれども、できなければ腹を切るというのが日本の文化です。ウォールストリート・ジャーナルでもこの間腹切りと言われましたけれども、腹を切るというのは、幾らコストがかかっても、何が何でも買ってくるのが日本。私はある意味ではいいことだと思うんですけれども。日本がそういう目標を決めるときに、我々が考えている目標というのはカナダやヨーロッパと同じレベルではないんです。これは私がよくヨーロッパの人間に言って歩いていることです。
 もう一つ、アメリカの法案審議の状況が今随分グレーになってきておりますので、その点、よく御留意いただきたい。
 そして、その中で、たまたまさっき議論になりました、環境省から中長期ロードマップが出ております。結論からいいますと、大変意欲的なすばらしいいろいろなモデルが出ておるんですけれども、ただ、その前のタスクフォース、これは私も委員だったんですけれども、それからその前の中長期目標委員会、そこで出ているのと結果が随分違います。
 例えばGDPロスについても、前のモデルでは、西岡先生のおられる国環研でもGDP比がマイナス三・二となっておるわけです。慶応のモデルは五・六です。ですから、三から六ぐらいの間のGDPロスなんですね。二五をやるには、特に電気料金も大体二倍ぐらいに上がる、こういうことです。
 ところが、今度の場合に、GDPは、先ほど伴先生のお話もございまして、場合によってはふえる、ぜひふえた方がいいんですけれども、ふえる。それから、電気料金は一割ぐらいしか上がらない。そして、これはどっちがいいということではなくて、そういう全く違う結果が出ている中で、これはぜひ専門家によってどうしてそういうことになるんだということをチェックしていただいて、その上で皆さんに審議をしていただかないと、いいところだけでやって、それをもとに審議してしまうというのは非常に危ない。
 実際に、いわゆる環境省の委員会の一番最後にこのモデルがぽっと出てきて、四つあるうちの三つしか出なかったんですけれども、ある委員が、ちょっと今急に出てきてよくわからないんだと。これは議事録からとってきたんですけれども。ぜひ専門家でまず審議をやって、その上で、従来この温暖化問題というのは産構審と中環審、要するに経産省と環境省、両方の合同委員会でずっとやってまいりました。そこでやることによってまさに両方のバランスのとれた審議ができるので、そういう形でやっていただきたい。
 そして、私もある程度専門家ですし、さらに、本当のモデルの専門家に聞きましても、実はモデルの評価ができないんですね。なぜできないかというと、これは伴先生ももちろん時間がなかったと思うんですけれども、全部のデータがないのでわからないわけです。ですから、評価ができない。
 それから、前提条件が、もう御説明の時間がございませんけれども、例えば脱炭素化率が、今はマイナスになっちゃっているんですけれども、日本は過去〇・一からよくて一%。そして、例えば伴先生のモデルは年率二から四%でいく、こういうふうになっているんですけれども、ヨーロッパで、たまたまフランスとイギリスでこれだけ高いことが実際あったんですね。ヨーロッパで十五年間で原子力が六倍になった、そういう状況です。それからイギリスで北海油田が出てきた、原子力もやりました。要するに、そういう状況があればもちろんできるんです。
 ですから、これから日本が二〇二〇年までに原子力を六倍にする、ちょっとこれはおかしいんですけれども、要するに、そういうようなことが本当にできるのかどうかとかも入れてきちっとやるべきだというふうに思っております。
 さらに、環境省の検討会に出てきたもので本当に二五%可能というのはございません。先ほど伴先生にもちょっと確認しまして、四つありましたけれども二五可能というのはないんですね。その中で大臣が試案として二五を出されているので、ぜひ政治家の皆さんに検証をしていただきたい。
 そして、日本としては、先ほどちょっとしか申し上げられませんでしたけれども、適応ですね。例えば、海面が上がってきたらモルジブが沈むので、堤防を上げる、堤防をつくることによって海面が少し上がっても何とかもつわけですけれども、ツバルや何か、ああいう本当に危険な島、これは倫理的な問題もございますので、日本がぜひ率先して、これは避けられないわけですから、ああいう人たちが安全に住めるようにするということです。
 それからもう一つは、今、残念ながら成長期待が非常に下がっておって財政危機です。この中で、さっき伴先生も言われていましたけれども、財政、金融が入っているモデルが物すごく少ないんですね。慶応大学のモデルは入っているわけですけれども、それとほかのモデルが随分違うわけです。したがって、今のこういう日本の経済の中でどういうモデルで考えたらいいのかです。
 それからもう一つは、日本の場合には高齢化の問題だとか医療だとか年金、そっちにお金がいかなきゃいけない。世界で見ると貧困や病気が非常に大きな問題です。その中で、例えば日本で言う限られた資源をどこにどういうふうに配分するかという中でぜひ温暖化についても前向きに対応していただければ、こういうふうに思います。
 これで終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
○樽床委員長 ありがとうございました。
 次に、浅岡参考人にお願いいたします。
○浅岡参考人 浅岡でございます。
 本日は、こうした機会を与えていただきましてありがとうございます。
 私どもは、気候ネットワークという名前で、この十二年、十三年ほど、温暖化に関しまして、国際交渉の動き、また日本の国としての政策、各地に私たちの仲間がおりまして、各都道府県、市町村など地域で温暖化対策にかかわっておりまして、それをフォローしてまいったところでございます。
 九八年に地球温暖化対策推進法が制定される審議のときにも呼んでいただきまして、それから十数年たちました。本日、三つの法案が提出されている。内閣提出法案、また公明党提出法案につきましては、大変大きな時代の変化を感じさせていただくものであります。二度の目標が公明党法案の中には含まれておりますし、また、先般の本会議では鳩山首相も二度の目標についての御認識を表明されていました。大変時代が変わったというふうに感じているところで、この動きを大変歓迎いたしております。
 ただ、本日は、内閣提出法案につきまして、やはり中期目標に前提条件がついている点、また、国内排出量取引制度の排出枠の上限の設定の仕方につきまして原単位目標も検討するとされている点、その他若干の点につきましてさらに強化いただきたいということを申し上げたいと存じます。
 私たちがこういう問題にかかわってきました中でもこの二年ほどは、まさにこうした法律をつくっていただきたいという運動をやってまいりました。それがこのメーク・ザ・ルール・キャンペーンであります。ルールといいますのは、地球温暖化をとめていく、防止していくための日本の国内の法律をつくっていただきたい、そういうものであります。
 こうしたことに私たちが取り組もうと思いましたのは、イギリスでビッグアスクという運動をNGOがやっておりました。それは二〇〇六年ぐらいからもうやっていたわけでありますが、その発端といいますのは、ブレア首相が、二〇五〇年、当時は六〇%でしたが、長期の目標を国民に呼びかけていました。しかし、そこに長期の目標だけではなくて、今の政府が今何をするのかということにつながった法律がなければ本当に温暖化をとめることはできない。こういうことからこうしたキャンペーンをやっておりました。まさに、イギリスで気候変動法というものが議論をされていたときであります。
 こうした動きは、京都議定書が発効いたしまして、二〇一三年以降は二〇五〇年を見据えて気候を安定化させるための国際的な枠組みが必要である、そういう観点で議論をされておりましたし、ドイツも二〇〇七年には統合的な温暖化対策のプログラムというものをつくっておりましたり、EUにおきましてもEU指令等を順次整備していた、こういう中で、日本にもそうしたことが必要だということを痛感したからでございました。
 こうした運動をしておりますとき、二〇〇八年にはイギリスで気候変動法が成立しております。
 また、こうした温暖化に対する問題意識は、私たちNGOは、温暖化をとめなければ私たちの子供たちに安全な大気を残すことができないという思いがとても強いのでありますけれども、あわせて、経済がグローバルのレベルでも大きく変わっていこうとしているときに、化石燃料に依存せず、あるいは排出を削減しつつ経済を高めていくという、まさに経済政策であり雇用の確保であり雇用の創出であり、そうした経済の観点からの問題意識も常に持ってまいりました。それは、ヨーロッパやアメリカの動き、アメリカにおきましても二〇〇六年ごろから上院に排出量取引の法案などがたくさん提出されていたわけでありますが、それらの背景にはまさにその国の経済をどうしていくのかという動きがあったことを承知したからでございます。
 こうした温暖化問題につきましては、これまでの先生方の議論を拝聴いたしましても、まさに国民的課題である、地球規模での課題である、政党といいますよりも、共通の目的を持って取り組まれるべきだという御意見を多々拝聴いたしました。これは、イギリスの気候変動法の制定のときにもまさにそうしたことが見られたわけでありまして、イギリスの当時は労働党政権でありますが、今もそうですけれども、むしろ野党の自由党あるいは保守党の方から、より目標も強化し法律を強化すべきだという意見が多々出まして、それで、一年余の経緯の中で、目標も高める中で法案が成立したという経緯を見てまいったところでございます。
 本日は、法案につきまして若干申し上げたいと存じます。
 まず、目標であります。
 やはり明確な、また意欲的な目標が設定されていることは極めて重要であります。その中でも、長期目標だけではなく、また二度の目標を認識するというだけではなく、具体的に中期目標がそうしたことで確定することは、国内の温暖化対策を進め、国内の経済を大きく成長型に転換していくためには不可欠だと私どもは思っております。こうした中長期目標は、削減時代に向かうのだという、企業や国民に対する明確なシグナルであります。ここに政治の主導性を私たちは期待するわけであります。
 そして、現在の政治の責任を明確にしていただく。これは、イギリスのNGOがかねてキャンペーンの中で求めてきたことであります。長期の目標だけでは今の政治の皆様が温暖化問題に対する責任を果たされたことにならない。法的拘束力のある中期目標がぜひ不可欠であります。
 また、長期の目標があれば中期の目標はおのずと定まるのかといいますと、そうではございません。二ページ目の下のところに、麻生政権時代の中期目標検討委員会の資料をそのままとってきておりますけれども、当時、中期目標をどうするかというときに、わざわざこういう説明がございました。いずれの選択肢をとっても、二〇五〇年、六〇から八〇の長期目標との両立は可能、整合的であると。ということは、こういう考え方をとる限りは日本の削減の方向性は定まらないわけであります。
 現政権の内閣提出法案は、限りなく二五%に近い、真水でやりたいという意欲をお示しはいただいておりますけれども、私も法律家でありますが、法律というものはいかにそうした解釈の余地を少ない形で成立させるか、これが立法者の課題であると思っております。ぜひともこの点はしっかり議論いただきたいと存じます。
 また、目標は二〇五〇年にわたる法律であるということがこの法案の特徴でございますけれども、こうした長い数値目標を含むということは、おのずと当然でありますし、科学もどんどんと進展してまいるでありましょう、また世の中の状況も変わってまいるでありましょう、こうしたところに見直し条項が入るというのは全く自然なことでございます。イギリスの法案の中には、随分そうした条項が組み込まれております。
 こうした観点から見ますと、現在の内閣提出法案の十条二項の前提条件、また十条四項の後段に、中期目標がない、法的に存在しない間の対策の決め方についての規定、そして、附則の一条、また附則の二条。このままでは、しっかりした中期目標を持った日本の温暖化対策を具体的に組み立てていくには大変大きな支障になると、法律家として申し上げざるを得ません。
 事実上、自民党法案では九〇年比マイナス八%でありますから、マイナス八%からマイナス二五%の幅だと理解はされますけれども、先ほどの山口先生のお話のような御意見が声としてあるといたしますと、日本はどの方向に向かうのか、まことにここは真剣な議論を今ここでやっていただきたいと思うところであります。
 三ページ目でございますが、法案につきまして、定義規定について、もう一度検討いただきたいと思う点が二項ございます。
 四項につきまして、排出とは何かという点で、二酸化炭素など温室効果ガスの排出のとらえ方には、直接排出という考え方と間接排出という考え方がございます。発電に係る火力発電所からの排出を最終消費部門に分けるのは間接排出でありますが、先ほどの西岡先生の十三ページのロードマップの図は間接排出でできております。当然のように間接排出で議論をするということには、私どもは反対したいと思います。これは極めて日本的な、日本にしか見られないことでございます。直接排出で大規模排出源の代表であります発電所にしっかりした供給側対策をとるような仕組みをとること、これは不可欠でございます。
 また、五項の七号に、「政令で定める」とゆだねられた部分がございます。これは、ヒートポンプなどの熱をここに取り込むということが懸念をされます。と申しますのは、既に前政権のときに成立いたしました、エネルギー供給構造高度化法の再生可能エネルギー源の定義と同文でございまして、既にそこでは、政令でこのようなことを含むと書いております。よく吟味して、議論していただきたいと存じます。
 次に、対策についてでありますが、鳩山首相が国連で、キャップ・アンド・トレード型の排出量取引制度、地球温暖化対策税、再生可能エネルギー、これらを代表として掲げまして、すべての政策を動員して目標達成すると言っていただいたことは大変歓迎されることでありますし、この三つの対策が主要な柱であるということは、そのとおりでございます。
 その中でも、とりわけ国内の排出量取引、キャップ・アンド・トレードの仕組みといいますものは、大規模排出源を確実に削減していくという意味で、温暖化対策の中核的な政策である。これは国際共通であります。サミットなどでの合意の中でも、そうしたことは確立しております。税も含めまして、やはり炭素に価格をつけていく、これが基本であります。
 この国内排出量取引制度につきまして、ぜひとも御留意いただきたい点は、まず直接排出でとらえ、火力発電所を対象としてとらえること、そして排出者は事業所単位でとらえること。そして、排出枠の上限といいますのは、その取引対象の全体にも総量でキャップがかかります。その上で、さらに事業所単位で総量でのキャップがかかる。ここに原単位でキャップをかけるというものは、キャップ・アンド・トレードではございません。
 お送りいただきました衆議院の資料の中には、総量規制型キャップ・アンド・トレードというような表現がございました。このような表現は、国際的には通用いたしません。キャップ・アンド・トレードというのは、総量を規制するということでございます。原単位型キャップ・アンド・トレードがあるというようなことではございません。
 原単位につきましては、重要なことであります。これを改善することは不可欠でございますけれども、それを考慮していくことは可能でありますし、成長産業、例えば、工場を新たにつくる、それは新規枠としてまた認める、そのようないろいろな方法がございますし、排出枠の設定、オークションの収益といいますものは、低炭素経済に移行していく中でのいろいろな痛みを含め、あるいは新たな成長も促進する、そういう意味で非常に上手に使っていく、スマートな政策をつくるためのかぎとなっているところでございます。
 再生可能エネルギーにつきまして、目標にヒートポンプのことをとりわけ重視していただきたい。これでは実質的な再生可能エネルギー拡大の目標になりません。また、再生可能エネルギーと、非化石エネルギーという形で、原子力をセットにした形で、極めて原子力に依存した対策が西岡先生の資料を拝見いたしますと出ております。これには、私たちは、これまでなぜ排出が減らなかったのかという反省のもとに、非常に危惧をいたしております。
 次に、取引制度に限りませんが、国の基本の政策と、また自治体で多くの市民あるいは地域の中小事業者とも協力しながらやります対策と、役割分担というものをしっかり考えていただきたい。国が大もとのしっかりした政策を立てる、その上に地域でさらに強化した対策を立てる、そうしたときに、とりわけ国の所管いたしますキャップ・アンド・トレード型の取引制度というものの制度設計が重要であります。東京都から、ここにお示ししておりますような、国家管理型のキャップ・アンド・トレードと、小さなところの地域管理型のキャップ・アンド・トレードにつきまして提示をしているところでございますので、御参照ください。
 基本原則につきまして、内閣提出法案の基本原則に何項かある点についてでございますが、私はここの点で、やはりかつて似たような経済調和条項を思い出すわけであります。ここはやはり、成長産業を興していこう、成長戦略の中に組み入れようという民主党の基本姿勢を考えましたときには、削減は不可避であります。
 対策はいろいろあり得るということが今問題になっております。先ほど西岡先生のお話にありましたように、排出量の推移と経済の成長をデカップリングする、切り離す、こういう戦略を明確にここに示すこと、削減しながら経済を高める、雇用を高める、新規産業を高める、こういう表現に変えていただく、また、それに合うエネルギー政策を構築するというふうに切りかえていただくことが重要ではないかと思います。
 物づくりは大事であります。ここに幾つか、どのような物づくりがあるのか少し分けておりますが、やはり成長型物づくりは余り排出量が多いところではございません。この辺の実態もよく見て、雇用も既に多く、またこれからも拡大するところでございます。これは御参考にしていただければと思います。
 最後に、法案の三十三条でございます。
 政策形成への民意の反映という条項を入れていただいていること、これは大変歓迎されることでございます。また、新政権が新しい公共の考え方というものを提案して私たちに投げかけていただいていること、市民の側として大変歓迎をいたしております。
 しかしながら、この三十三条の規定の中には、目に見える利害関係者として経済界とか消費者とか労働団体とかありますが、一般の市民、あるいは将来世代を代表する、我々NGOがそういう役割を担おうとしているわけでございますが、こうした私たちのような者がしっかり政策形成の中に、政策を策定していくプロセスにも、またその最終的なところにもかかわっていくことができるような仕組みをつくっていただく、またそのように運用していただくということを切にお願い申し上げまして、私の意見といたします。
 ありがとうございました。(拍手)
○樽床委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
○樽床委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。斎藤やすのり君。
○斎藤(や)委員 衆議院議員の斎藤やすのりでございます。
 私は、国民から選ばれた国民の代表です。きょうは、国民が聞きたいと思っていること、国民が知りたいと思っていることを聞きたいと思います。
 きょうは、このカメラでたくさんの国民の方が、衆議院テレビ、ウエブサイトでストリーミングを見ております。ここだけで見られているんじゃなくて、全国民が見ております。私もきょうは、ぜひ多くの皆さんに見ていただきたいと思いまして、ツイッターで告知いたしましたので、国民を意識しながら、ぜひ、わかりやすくシンプルに、ポイントを絞って答えていただきたいというふうに思います。
 時間がないので早速質問に参らせていただきます。
 中期目標の点です。
 中期目標のところで、自民党案は九〇年比マイナス八%。それから、公明党、民主党はマイナス二五%という数字を出しました。
 伴先生に質問です。
 低炭素社会の実現という観点、それから経済成長という観点、こういう観点からいうと、九〇年比マイナス八%というのは適正な数字なのかどうかというものをちょっとお伺いしたいと思います。
○伴参考人 今の御質問でございますけれども、マイナス八%というのは非常に低い目標だというぐあいに思っておりまして、やはり、社会全体が低炭素社会に向かうには、もう少し高目の方がよろしいかと思っております。
○斎藤(や)委員 そういう点でいいますと、やはり中長期目標に掲げられているマイナス二五%の実現ということを我々は志向しなければいけないというふうに思うわけですけれども、西岡先生に質問でございます。
 先ほど西岡先生は、強い政策措置が必要であるということを説明されておりました。この強い政策措置というのは具体的にどういうものなのかというものをちょっと教えていただきたいのですが。
○西岡参考人 どうも質問ありがとうございます。
 強い政策措置には、経済措置、そして教育、それから規制等がございます。あらゆるものを動員する必要があるかと思います。
 まず大切なのは、経済措置のうち、取引であるとか税であるとか、それからフィードイン・タリフ等々についてはきちんとやっていただきたい。しかし、それだけではだめで、例えば住宅における基準の設定のようなものは、これはみんなが得をするんですけれども、そういう経済的措置というよりも、むしろ標準化とか規制だとか、そういうものも併用していく必要があります。それから、国民に対して、特に負担がどういうものであるか、それはだれがどういうぐあいにやるのがいいかといった教育を特にやっていく必要があるかと。この三つについて強化する必要があると思っております。
 非常に大切なことは、そういう全体の話でございますけれども、言われるところの政治の意思、ポリティカルウイルというものを明快に示すということが一番大切です。これはどの企業においても、将来の投資をするときに、将来どうなるかわからないということでは逡巡してしまいます。ですから、法案という形で明快な意思を示していただくことが一番の政策措置であるかと思います。
 以上です。
○斎藤(や)委員 ポリティカルウイルということですけれども、そういう意味でいうと、今までの環境政策というのは、明らかにそのポリティカルウイルというものが足りなかったというふうに私は感じております。
 そのポリティカルウイル、政治がきちんと低炭素社会へかじ取りをするというところでは、やはり制度設計というところが重要になってくるわけなんですけれども、今、CO2はどこがどれだけ出しているのかをきちんとキャッチして、そこにキャップをかけるということ、それがやはり私は重要だと思います。
 私の手元には、百六十六の巨大事業所が温室効果ガスの総量の五〇%を排出している。家庭も当然省エネをやらなければいけないんだけれども、家庭が一割、大規模事業所が総量の五〇%を排出しているので、やはりここに何とか規制をかけなければいけないというふうに私は感じております。
 浅岡さんに質問なんですけれども、政府案では、総量を基本としつつという言葉で法案がつくられておりますけれども、排出権取引制度はどうあるべきだと考えておられますでしょうか。総量と原単位の論点、それから取引単位、こういうところをちょっとお伺いしたいと思います。
○浅岡参考人 ありがとうございます。
 私のメモの三ページに簡単な絵をかいてございますが、ただいま御指摘いただきました点は、このグラフにも絡むものでございます。
 このグラフは、発電所がおよそ三分の一、そして鉄鋼、高炉製鉄所で一二%、セメント工業などが三%、化学が二%など、大規模排出事業所と呼ばれるところの排出量の割合を示したものでございます。百六十一の事業所といいますのは、排出量の多いところから百六十一番目までを合計いたしましたところ、日本の総排出量の約半分になるということでありました。これは一つずつカウントいたしました。そして、その百六十一番目が百万トンも排出しているということでございます。
 しかしながら、ここの三ページのグラフの中で色をつけておりますところで、発電所と製造業、その他運輸関係で省エネ法の対象事業所に当たるところ、合わせまして約七割ということになりますけれども、それらの一番小さいところというのは一万トンにいかないようなところ。これくらい大きな幅があるということでございます。
 そこで、キャップ・アンド・トレードという制度は、こうした大規模な排出事業所を対象といたしまして、火力発電所を当然ながら対象といたしまして、その全体の排出枠をキャップとして総量で定め、それを、新規に事業を起こされるようなことのリザーブなどに一部を残しますが、残りをそれぞれの事業所に配分をする。
 その配分の仕方のところでどのように配分するのかというのが、総量を基本としつつ、原単位も検討する、こういう文章になっているのが第十三条でございます。これはこのまま読みますと、原単位も検討するとございまして、原単位による排出上限枠を定めるような仕組みをとるとは書かれてはいないと私は思いますが、しかし、これはそういうものだと読む方もいらっしゃるような規定だと思います。そういう誤解を受けないように、原単位を検討するという部分はもう削っていただいて、排出量総量での排出枠を認めるということにしていただきたいと思います。
 原単位はなぜ必要なのかというので、成長産業にというようなことをおっしゃっておられる。御説明にもございましたけれども、原単位を排出の総量枠の決定に考慮するということはどの国でも検討していることであります。これがベンチマークというような方式であります。
 新たに工場を二倍にする、三倍にする、新たにつくる、これは新規の工場の排出枠ということになります。工場自身でさらにエネルギー効率を高められる。それでも足りない分は再生可能エネルギーなどクレジットを買ってくるというようなことでも目標達成は十分できるわけでございまして、基本の総量での排出枠設定ということ抜きには、この制度は、そもそも将来の制度設計の一番基礎を誤ることになる、この点だけは十分御配慮いただきたいと思います。
 また、事業所単位で考える、これも、後々検証していく、あるいは排出枠を正しく配分していくためには不可欠な要素だ、この点も御留意いただきたいと思います。
○斎藤(や)委員 大規模事業者にキャップをはめるというのは、総量をコントロールできるというところで、やはり私は推し進めるべきだと。一方では、鉄鋼とかセメント、こういうところは総量規制で、今、ただでさえ原材料が上がっている。国際競争力という観点からいえば、若干の制度の補てんというかバックアップというものをしなければいけないのではないかなというふうに私は考えております。
 さて、次の質問にいきますけれども、山口先生に質問がございます。山口先生先ほど、自民党政権下で地球環境小委員会の委員を務められたという……(山口参考人「民主党です」と呼ぶ)民主党ですか。それから、企業の立場から環境問題にかかわった経験をお持ちだということで、これはプロフィールを見せていただいたんですが、経団連を中心に企業の立場からかかわった経験をお持ちだということなんですけれども、質問でございます。
 この十年、実はCO2がふえ続けてきたということでございます。京都会議で明確な目標設定がされていたのにもかかわらず、なぜこのCO2がふえてしまったのか。これは、実効性のある政策があったのかどうかというものを山口先生のキャリアから見てどういうふうに分析されているのか、ちょっと質問させていただきたいと思います。
○山口参考人 質問をありがとうございます。
 実際に京都の目標はなかなか難しいんですね。恐らく今御質問の趣旨は、産業界が自主的にやっている、それでできるのかということなんじゃないかというふうに私は思っておるんです。
 自主的か、例えば排出権取引みたいにキャップをかけるかというのは、教科書的には違います。ただ現実は、日本の場合に自主的にやっていることが、実は、これはいいか悪いかは別なんですけれども、ほぼ行政主導みたいになっているんですね。私自身も産構審と中環審の合同会議で、毎年毎年、言葉がいいか悪いかわからないんですけれども、例えば、パチンコ屋さんから何からいろんなところに来ていただいて、医師会もそうです、病院もそうです、もちろん鉄もそうですけれども、全部チェックしていったんですね。そして、ここのところがおかしいじゃないかというようなことで、そうするとまたそこのところを再検討してやり直してくれ、そういうような形で実際やってきました。
 ですから、一番ポイントはそこで、一つはそういうふうに自主的にやってきたのと、ヨーロッパの場合にはキャップ・アンド・トレードですけれども、物すごく緩いんですね。例えばそれの原単位の効率が果たしてどうなのかという、ここをひとつぜひ比較してみていただきたい。
 それからもう一つ、実は、IPCCの報告書もお読みいただければと思うんですけれども、要するに、自主的なものというのがヨーロッパとアメリカで全然だめだ、こういうふうになっているんですね。ただ、IPCCの報告書でも、例えば日本のようなところは非常にうまくいっているというふうに書いてあるんですね。ですから、国際的に認められている。それで、なぜそういうことになっているかというのがポイントなんですけれども、一つだけ例を申し上げます。
 私自身が驚いたんですけれども、中越沖地震がございました。あれは二年前でしたか、そのときに原子力がとまっちゃったんですよね。そうすると、当然のことながらガスとか石油とか石炭に行かざるを得ないので、電力は、自分がやったものが、もうどうしてもできない状況になりました。そのとき、その会社の社長さんが我々の審議会に、政府の審議会に出てこられて、これは自分で買いますと言ったんですね。それで実際買われている。
 これは、例えばアメリカとヨーロッパの人に私がその話をすると、まさかと言うわけですね。何で罰金もないのにそんなことをするんだと。ですから、日本というのはそういう国なんだという話を私はいたしました。そして、現実に産業の方は今のところは減っているわけです。ただ、もちろん、これは景気の動向とかいろいろございます。ですから、さっきのまさにキャップ・アンド・トレードみたいにきちっとやるのと自主的、これはどっちがいいかというのは、まさに日本の状況を見てやる。
 それから、例えばキャップ・アンド・トレードの場合でも、非常に緩い目標でしたら、ヨーロッパみたいにこれはすごく緩いんですけれども、その場合にはこれで全然うまくいくわけですね。ですから、国としてどのくらいの厳しい目標を決めるか、そこがやはり一番のポイントだ、こういうふうに思っております。
 どうもありがとうございました。
    〔委員長退席、横光委員長代理着席〕
○斎藤(や)委員 今、自主的な目標がうまくいっている、そういうお話でございました。確かに、自主的目標のままで二〇〇八年度はCO2が減ったということも私理解しておりますけれども、では、これがもしリーマン・ショックがなかったらどういうことになっていたかと考えますと、比率からいうと、やはりふえ続けてきたということでございますから、結局、自主的な目標というのがやはり機能していないんじゃないかというふうに私は考えざるを得ません。
 現在行われている試行的排出権取引のスキーム及びその前提となっている経団連の自主行動計画を見てみましても、リーマン・ショックで減ってしまったということもあるわけですけれども、一昨年の十月から始まっているこのスキームの二〇〇八年度の取引実績は、皆さん、一件だけです。一件、一トンだけです。つまり、これはほとんど、この自主行動計画から試行排出量取引スキームというのは機能していないというふうに言わざるを得ませんし、この試行スキーム自体にもキャップがない、個々の目標の設定に任されている、原単位目標か全体量目標の選択制になっているということで、本当にこんな制度で、これをそのまま延長する形で新しい排出権取引制度をつくったときに、やはり経済成長したときにまたさらにCO2がふえてしまうんじゃないかというふうに私は思わざるを得ないんですけれども、この点はどうでしょうか、山口先生。
○山口参考人 大変いい質問をいただいたと思います。
 もちろん、経済成長あるいは経済の上がったり下がったりによって、これは日本だけじゃなくて、世界、みんな変わっているわけですね。
 その中で、私自身は、実は経済界の方にこういうふうに申し上げています。キャップ・アンド・トレードか自主的か、僕はやるなら当然政府との協定がいいと思うんですけれども、そのポリシーよりももっと大事なことは、日本の主要な業種、もちろん電力とか鉄とかセメント、化学もある、いろいろなのがあります。そのすべての主要業種が世界の最高効率を宣言してこれをコミットするんだ。世界でだれもやったことがないところまでの効率を日本のすべての主要業種がやる。これ以上はほかの業種はどこもできないんですね。
 ただ、もちろんこれをやるにはデータが要るんですよ。例えば、鉄でも高炉と電炉じゃ全く違うとか、セメントもクリンカーとそうじゃないものとか、いろいろなデータが要ります。これはたまたま今、七カ国で、アジア・パシフィック・パートナーシップというのを進めて、最近ヨーロッパも随分関心を示しているんですけれども、まさに本当に基礎的なデータを一つずつ詰めているんですね。私も一回驚いたくらいの細かさなんですけれども、そういうふうにしてデータをきちっと詰めていって、各国との比較ができる。
 そして、日本が世界最高、もちろん今最高のところが随分あるんですけれども、これはいわゆる物を一トンつくるのに何トン出るかという物の効率なんです。そこで最高だからいいということでは、やはりもうちょっと技術革新がなければいけないですし、その最高の場合でもさらにそれをもう少し上げていくという、少なくとも世界のどこの同業も追従ができないところまでやる、これが一番大事なことだ。逆に言うと、政府はそれよりももっと厳しい規制をやるということはできないはずなんですね。ということは、もうその生産をやめてくれという話になります。
 政府としても、国が日本の産業構造を決めるということはもちろん難しいわけです。ですから、今の最高効率でいく。もちろん、私自身は、日本の産業構造がいつまでも同じでいいということは全然思っていないんですね、その中でやはり技術革新でどんどん変わっていく、そういうダイナミクスは当然に必要だと。ただ、少なくとも今度の場合については、各業種がそういうことをコミットしてほしいと私は思っております。
○斎藤(や)委員 建設的な御意見をありがとうございました。
 私も同感な部分があります。ただ、効率も大事なんですけれども、やはり規制をかけること、キャップをかけることで、エネルギー供給などのこういった産業構造を変えることで技術革新して競争力をつけるという方向に日本はかじをとるべきなのではないかなと思います。今の先生の御意見と一部重なるところはありますけれども、一部ちょっと私とも違うところがあるのかなというところでございます。ありがとうございました。
 次の質問です。富の流出についてでございます。
 厳しいキャップをかけたり温暖化対策税を創設すると我が国の産業が国際競争力を失って企業が海外に逃げちゃう、劇的な富の流出というリスクが生じるというのが、一部産業界や、これは自民党さんからも話が出ているわけなんですが、これについて伴先生の見解を求めます。よろしくお願いいたします。
○伴参考人 私は世界モデルでその問題を検討しておりまして、日本が非常に大きな削減をする、でも、お隣の中国、それから、その研究をやっていたときはアメリカもキャップがかかっていなかったわけですが、そうしたときにどれぐらい逃げるかということを計算しております。モデル上の計算でいくと、大体一〇%から二〇%の間、これぐらいは逃げてしまうということがございますが、日本の鉄鋼業がなくなる、あるいはセメント業界がなくなるということは一切ございません。
 それから、基本的には、そういう産業に関しては確かに海外に行くわけですけれども、ほかの産業が出てまいりまして、そこが日本経済を支えていく。それが一つのこれからの日本のスタイルになるのではないか。
 もう一回言いますが、日本が非常に厳しいことをしたから鉄鋼業がつぶれるということはございませんで、後から御質問があるかもしれませんが、鉄鋼業は私の今回の試算ではプラスになっております。
○斎藤(や)委員 本当に、この議論をしますと必ず、国際競争力の低下だとか、それから経済成長を妨げる、そういうにしきの御旗を掲げて反論される方が結構いるわけなんですけれども、今の先生の話を聞きますと、経済成長を妨げるんじゃなくて、一部の業界の利益が海外に逃げてしまう、全体的な経済のキャパシティーは、産業構造を変える、温暖化対策をやることで広がる、そういうことですよね。
 私、一つちょっと例を挙げたいのが太陽光発電の導入なんですけれども、二〇〇四年までは、皆さん御存じのとおり、日本というのは世界で一番の太陽光発電の導入量でございました。今、皆さん、この導入量が日本は何位か御存じですか。これはいろいろデータによって違うんですけれども、日本は今現在六位、あるいは八位という話もございます。落ちちゃったんですね。
 それから、太陽電池のセル製造メーカーの生産量ですけれども、過去は、一位はシャープでございました。ところが今は、一位がたしかドイツのQセルズというところですか、それから中国のサンテックパワー、三位がアメリカのファーストソーラー、四位が日本のメーカー。最高の技術を持っている日本の太陽光発電のメーカーが、完全に韓国とか中国とかドイツの国々の後塵を拝している。
 それで、これはよく言われるんですよ、日本は太陽光発電には向いていないと。いや、決してそんなことはないんです。よくよく調べてみますと、世界一の導入量、一位のドイツより日照時間はありますし、それから、特に太平洋側のサンベルトなんというのは本当に日照時間が豊富にありまして、二位のスペインと余り変わらないぐらいの日照時間を持っているということで、太陽光発電が伸びるポテンシャルは持っている。でも、伸びていない。
 これがなぜ伸びなかったのかというのをちょっと山口先生にお伺いしたいんですけれども、山口先生、お願いします。
○山口参考人 御質問ありがとうございました。
 私自身、太陽光発電は、太陽光だけじゃないんですけれども、新エネルギーですね、ぜひ伸ばすべきだというふうに思っているんですね。
 ただ、問題は、今よりもっと伸ばすかどうかということは恐らくどなたも異議がないと思うんですよ、どこまで伸ばすかという話なんですね。結局、コストの話になってきて、政府の支援があったときにかなり入って、支援がなくなったらそれがとまってしまう。私自身も、シャープは常に世界一であってほしいし、日本の太陽光はぜひそうしてほしい。むしろ、さっきお話しのように、ドイツは、あれは物すごく悪い条件でやったんです。ですから、逆に言いますと、そろそろ破綻すると思っているんですけれども、ただ、日本はドイツほどじゃない。
 ただ、問題は、どこまでやって、それによって当然コストがどこまで下がるかという、これはまたモデルの問題になるんですけれども、一般的にはどうしても電力価格が上がってくるわけですね。それに国民がどこまで耐えられるのかという、そこをぜひ国民とよく対話して、いや、そういうことはぜひ必要なんで、このくらいの電気料金引き上げ、例えば二倍はいいんだとか、よくわかりませんけれども、モデルで例えば電気料金が二倍になっているのと伴先生の一割というのは全然違うんですけれども、それはどっちがいいかわかりませんけれども、まさに国民が納得する、それでもそれをやるということであれば、それはもちろん構わないと思うんですね。ただ、いや、それはちょっと話は別だ、ぜひやってほしいけれども、おれは払うのはちょっと嫌だとなってくれば、これは途中でうまくいかなくなる。
 だから、あくまですべて、こういうことをやったときにこういう形になる、そして皆さん、国民はどうなんでしょうかと。当然コストアップになるわけですから、そこのいわゆる対話といいますか、これがぜひ必要だ、こういうふうに思います。
 以上です。
    〔横光委員長代理退席、委員長着席〕
○斎藤(や)委員 ありがとうございました。
 私は、全量固定価格買い取り制度、政治がやはりきちんと意思を持って、太陽光発電それからさまざまな再生可能エネルギーを盛り上げていくことが日本の経済の再生につながっていくということを政治がきちんと意思決定しなければいけないのではないかなというふうに強く感じております。
 時間がありません。最後ですので短目に行きたいと思います。
 西岡先生にお伺いしたいんですけれども、私は、温暖化対策というのはもう待ったなしだというふうに思います。早期に削減しなければいけない。これはきょう、西岡先生から早期削減の重要性に対する考え方をお聞きしました。
 野党案の中で、準備期間を十年間費やすというふうに書いてある。そういうこともありますけれども、準備期間というものが必要なのかどうか、早急にやるべきなのかどうか、何をやるべきなのか、これをポイントを絞ってもう一回ちょっとお話ししていただきたいんです。よろしくお願いします。
○西岡参考人 十年の準備期間というお話でございます。
 私は、もう既に一部の産業につきましては、準備期間が過ぎて動き出していると思っております。ですから、今大切なのは、それを後押しするというところまで行っているのではないか。準備期間、準備期間といいながら、先ほどの私のグラフでお示ししましたように、この十五年、二十年というのは踊り場、あるいは停滞の時期にあったわけですね。思い返せば、十年前にやっていればということでございます。それから、世界の技術が非常に動いております。ですから、それと比べますと、いわゆる準備期間ということだけではいけないと思います。当たり前ですけれども、もう既にスタートしていますし、それを後押しするべきだと思います。
 ただ、準備期間が必要になるのは、さまざまな意味でのインフラを整備する必要がある。例えば鉄道、公共交通をふやすとか、いろいろなことがございます。そういうことについては、準備期間どころか、すぐに計画を立てて進めていただきたいというぐあいに思っております。
○斎藤(や)委員 ありがとうございました。
 失われた二十年というものを早急に埋め合わせるためには一刻も早くインフラなどの整備をしなければいけないという意見でございました。
 私も、実は、気象予報士という立場で、毎日世界の大気の流れを読んでいます。ことしの春の異常低温というのは、実はインド洋から赤道にかけての海水温の異常な上昇が世界に伝播して偏西風の流れを変えて、四十一年ぶりに東京で四月中旬に雪が降ったとか、さまざまなところで異常な気温を呼んでおります。ですから、気象予報士という立場からも、早急にこの温暖化対策を進めなければいけないということで、ぜひ委員の皆さんも危機感を持って制度設計していただきたいというふうに思います。
 きょうはありがとうございます。
○樽床委員長 次に、齋藤健君。
○齋藤(健)委員 自由民主党の齋藤健でございます。
 温暖化対策絡みの法案が三本提出されまして、ようやくここで議論が始まりました。これらの法案は、日本の将来に多大なる影響を与える、政治家として日本の将来への責任というものが問われる極めて重要な法案だと私は認識をしておりまして、一つ一つきちんとした議論をこの国会で積み上げていって国会議員としての責任を果たしていきたい、私はそういう思いでこの法案審議に臨んでおります。
 そういう意味では、そのスタートとしまして、きょう、日本を代表する四人の専門家の方々にわざわざお時間を割いていただいておいでいただきましたこと、まず初めに心から感謝を申し上げたいと思います。
 先ほど来、高い目標、高い目標という議論がございました。冷静に法案を読んでみますと、今自由民主党が出している案では、国内対策だけで二〇二〇年に二〇〇五年比一五%ということでございます。国際的に購入してくる部分が幾らということはこれからの国際交渉であるということで、そこは明示をしておりません。そして、法律上は、その中期目標を設定するに当たりましては、国内で一五%プラス国際分を含めて中期目標を設定する、そういうつくりになっております。
 一方で、民主党の案は、〇五年比に引き直しますと二〇二〇年に三〇%削減をするという目標になっております。しかし、国内と国際の内訳はわかりません。何度伺ってもそれは答えないということでありましたので、結局、国内でどれだけ努力するかということについて自民党案と民主党案を比較することは困難であります。ですから、どちらが国内的に高い目標を掲げているかどうかというのは不明です。
 そういう意味で、我々も、決して低い目標で甘んじてやっていこうということではなくて、法案のつくりからいって単に今比較不能であるということが、我々が冷静に認識をしておかなくてはいけないことであろうと思っております。
 きょうは、これから国会で審議をしていくに当たりまして、ぜひとも専門家の皆様方の御意見を確認しておきたいところを中心に私の方から御質問をさせていただけたらと思っております。どうぞよろしくお願いをいたします。
 まず、西岡先生にお伺いできたらと思うんですけれども、先生はIPCCのリードオーサーもやられていた、今もやられているのかもしれませんが、とお伺いしております。
 そこで、ちょっと確認だけなんですけれども、そもそもこのIPCCという組織は、どこかの国があるいは先進国が何%削減すべきといったような勧告をしたり、要請をしたり、あるいは要求をしたりする機関なんでしょうか。ちょっとその点について先生の御見解を賜れればと思います。
○西岡参考人 お答えいたします。
 先ほど山口参考人の方からも話がありましたように、IPCCというところは、この問題に関連するものは取り上げるけれども、先んじてこれをするべきだということを言う機関ではありません。私もそれこそ二十年来IPCCにつき合っておりますけれども、その当初から、IPCCというところは、その時点時点における科学的なポイントを集約してみんなに示すことである、そしてそれを選択するのは政治の役目であるという姿勢をずっと保っております。
○齋藤(健)委員 先生、ありがとうございました。
 ということは、確認的にまたお伺いしたいんですが、IPCCのレポートを根拠にして科学が要請をしているとか要求をしているということは言えないということでよろしゅうございましょうか。
○西岡参考人 それはむしろポリシーの方から考えなければいけない話でございまして、IPCCが示したものに対して、まず、ポリシーの方でこれはやはり大切だなということを認識する。そして、UNFCCに書かれている危険なレベルというのをどう思うか検討して、そこで、今あるものからこれでいこうということで、今、幾つかのもちろん違いはありますけれども、大体二度あたりを目標にして進んでいこうじゃないかということを政治が決める。そうしたら、今度は次にIPCCが、では、何度ぐらいだったらどういう問題が起きるんだろうかというリストを示す。そしてそれを政策がピックアップする。そういう形で、先ほど私が申しましたように、交互に進んでいくわけですね。
 ですから、そのプロセス自身が、科学の言っていることを取り入れながらやっていくというスタイルで進んでいるのではないかと思っています。それをどういう言い方で表現するかということは、ちょっといろいろな表現の仕方があるかと思いますけれども。いずれにしても、科学も無視していないし、政策も無視をしないで、そういう順次のシークエンスでやっているということだと思います。
○齋藤(健)委員 ありがとうございます。
 先ほど西岡先生も二度Cというのは政治の目標だという表現を使われておりましたので、私もそうなんだなと思って認識をしたところであります。
 もう一つ確認的に、この国会の議論でこれから大事な展開になっていくと思われる点でありますが、日本の二五%削減目標というものが科学の要求であるということをIPCCのレポートを根拠にして言われる向きがあるんですけれども、IPCCの専門家として西岡先生はこの点についてはどういう御見解をお持ちでしょうか。
○西岡参考人 この件につきましても、先ほど申しましたように、まず、全体でどれだけ減らそうかということを、IPCCのレポートに基づいて、政治が大体この辺でいこうと。そうしたときに、では、IPCCの方では、それをさらに細かく審議してみるとこうなっていくということで、バリでピックアップされました、二五%あるいは四〇%で出ている、ほかのシナリオもたくさんあると。我々IPCCの役目はそこまででして、そして、それを選択して次へ進もうという形をとっておられるかと思います。ですから、科学をベースにしているということも確かでございましょう。
○齋藤(健)委員 しつこいようで済みません、もう一点だけ伺わせていただきたいんですが、日本が二五%削減すべきであるということはIPCCのレポートのどこかに書いておりますか。
○西岡参考人 その表は、先進国は二五ないし四〇%を削減する必要があるというぐあいに書いてあります。日本が先進国であってそれをとるかどうかは政治の意思だと思います。
○齋藤(健)委員 ありがとうございました。
 次に、私、削減目標を議論するときに、京都議定書で一九九〇年から二〇一〇年までの二十年間で六%削減するということに我が国は大変苦労をしているわけでありますが、一方で、これから〇五年比で考えてみますと、この二五%削減というのは、二〇二〇年までで三〇%強の削減ということになります。
 素朴な疑問として、二十年かけて六%削減するのに四苦八苦している国が、〇五年から二〇二〇年までの十五年間で三〇%削減をする。それも、今政府がつくろうとしている国際的枠組みは、その目標が実現できなかった場合にはペナルティーがあるというような、そういう枠組みづくりに挑戦をされているわけであります。そういう意味では、十五年間で三〇%削減というのは、おお、大丈夫かなとみんなが思う数字だろうと私は思っております。
 したがいまして、国民各層の間から、そういうことで本当にどういう影響が出るんだろうかという真剣な心配が起こってきているということだろうと私は思います。これは何も自由民主党が言っているだけではなくて、私のところにも本当に真剣に心配する声が産業界、労働界からも寄せられております。
 ここで大事なことは、では、どういう影響が出るかということを分析するときに、やはりモデルを使って分析するしかありません。大臣もモデルを使って分析されているわけでありますけれども、大事なことは、そのモデル、これはさっき伴先生もおっしゃいましたように、当然のことながら、限界もあります。モデルがすべてだなどと言うつもりもありません。
 ですから、大事なことは、その採用されたモデルが、どういう検討過程を経て、その時点における専門家の皆さんの英知を結集するようなプロセスを経てつくられたモデルなのかどうかということをきっちりと国会の場で検証することが大事だろうと私は思っております。
 我々はモデルの専門家ではありません。この委員の中には、これだけ大勢の委員がおりますから、モデルについて詳しい方もおられるかもしれませんが、一般的に、現実問題として、国会議員の皆さんがモデルに精通しているということはあり得ないことだと思います。
 ですから、国会がやらなくてはいけないことは、これほど大きな影響が出るかもしれないモデル試算について、きちんとしたプロセスと、それから日本の専門家の皆さんがきっちりと参画する形ででき上がったモデルに基づく議論なのかどうかということを少なくとも国会できちんと検証して、そして、検証された暁には、そのモデルに従って、では二五%削減目標をどう考えるべきかという次のステップに議論は進んでいくんだろうと私自身は思っているところであります。ですから、国会でのモデルの審議のあり方というのはそういうふうにすべきだろうと私は考えているところでございます。
 伴先生のモデルにつきましては、伴先生一人をやり玉に上げるわけじゃないんですが、大臣が先生のモデルで御説明をされるものですから、どうしても先生のモデルについて幾つかお話をしなくちゃいけないかなということであるわけですけれども、先ほど来、山口先生、伴先生のお話にもありましたが、麻生政権のもとでも、中期目標の検討委員会を立ち上げて、多くの専門家の皆さんが参加をして議論いたした経緯がございます。それから、鳩山政権のもとでも、タスクフォースでモデル分析が行われたと私は承知しております。それは、先ほど伴先生からも御紹介がございました。問題は、その分析結果と伴先生のモデルでやはり随分異なる結果が出ているということであります。
 先ほど、その理由について伴先生にお話しいただきましたけれども、私は、どうしても素朴な疑問というのが頭から離れないのであります。それはどういう疑問かといいますと、伴先生のモデルでは、一五%削減するよりも二五%削減した方が雇用がふえる、そういう分析結果になっております。つまり、削減した方が雇用がふえるんだ、そういう分析結果になっております。
 私は、そうか、削減すればするほど雇用がふえるのであるならば、世界の国はみんな率先して高い目標を掲げるんじゃないだろうか、そうすればCOP15なんというものはもうとっくの昔にまとまっていたんじゃないだろうか、では、削減すればするほど雇用がふえるのに、なぜこんなに国際交渉が難航するんだろうかという極めて素朴な疑問があるわけであります。
 その素朴な疑問についてやはり専門家の皆さんの御意見を承っておかなくてはいけないと私今思っているところでございます。
 小沢環境大臣の資料によりますと、伴先生のモデルを利用して、二五%削減の雇用への影響はプラスだという見解をこの国会でも、もちろん産業別にはいろいろあるけれどもトータルではということですが、発表されているわけであります。大変重要なモデルの位置づけになってしまっているわけであります。
 最初に西岡先生にお伺いしたいんですけれども、西岡先生、御専門家としてこの伴先生のモデルについてどのような御見解をお持ちか、ちょっとお伺いさせていただければと思うんです。
○西岡参考人 正直言って、私は経済の専門家でございませんので、見当違いもあるかと思います。しかしながら、伴先生が今回なさったことは、政治が明快な目標を立てればそちらの方に動いていくよ、貯蓄の分が一部投資に回されて、そちらの方が経済効果が高いから、そっちは上がっていくよということをお示しになったということかとまず思っております。
 それから、削減すればするほど雇用がふえるかどうかにつきまして、私の解釈でございますけれども、今、この閉塞状況において、どちらに投資していいかわからないようなときに、やはり何かに投資をすればそれなりの雇用は発生するだろうと。それからもう一つ大切なことは、多分、そこで習熟効果とか出てくるということもあるかと思います。それは私の解釈でございますけれども。
○齋藤(健)委員 ありがとうございます。
 先ほど山口先生は、先生のプレゼンテーションの中でおっしゃっておられましたけれども、GDPロスの点ですとか、電気料金の点ですとか、脱炭素化率の置き方とか、いろいろやはり専門家によるチェックをこれからきちんとすべきではないだろうかという御意見がございました。私も、モデルの専門家ではないので、その是非を議論するつもりはありません。先ほど申し上げましたように、そのプロセスにおいて、どのようなしっかりとした検証が行われてきたかということを確認したいだけであります。
 私が前回この環境委員会で環境省の寺田局長に御質問させていただいて判明いたしましたことは、この伴先生のモデルにつきましては、環境省の中期目標検討委員会で一回だけ議論したというお答えでございました。それからさらに、寺田局長のお話によれば、中央環境審議会でも議論はしていないということでございました。それから、各省の専門家とも議論はしていないということでございました。
 私としましては、この間の寺田局長の話を伺いながら、やはりそういうオープンな場で、きちんとした場で専門の先生方が互いに検証し合う場が必要なんじゃないだろうかという強い気持ちが起こったわけであります。そうしましたら、きょう、山口先生の方から、私と同じような疑問が呈されたわけであります。
 伴先生にお伺いをしたいのは、削減すればするほど雇用がふえる、そして国際交渉でそれでもなお難航しているのはなぜなんだという素朴な疑問がどうしても払拭されない中で、これから、公式な、そして全部オープンにした場でこの先生のモデルについて検証していくべきではないかと私は思うんですが、先生の専門家としての御意見を賜れればと思います。
○伴参考人 簡単に答えます。
 当然のことかと思っております。
○齋藤(健)委員 ありがとうございます。
 この話は、先ほど来申し上げているように、日本の将来に多大な影響を与えるような問題でありますので、ぜひ、専門家の皆さん方が総力を挙げて検証した上で、そしてそれをまた国会で建設的な議論をしていくという形で展開ができたらいいなと私も思っておりますので、これから環境委員会の場でもその旨を政府にきちんと要求していきたいというふうに思っているところでございます。
 それから、次の質問ですけれども、西岡先生にお伺いをできたらと思うんです。
 国立環境研究所で、タスクフォースで二五%削減の場合のモデル分析をされていますが、GDPに与える影響はマイナス三・二%である、たしかそういう分析結果を発表されていたように私は記憶をいたしております。なぜかそれは環境大臣試算には入っていないわけでありますけれども、その見解は今も変わっていないかどうか、先生にお伺いできたらと思います。
○西岡参考人 中期目標検討委員会のときに私どもも試算はいたしました。しかしながら、そのとき、いわゆるマクロフレームというものを決める、すなわち、鉄鋼は一億二千万トン、あるいは交通量は今までどおりとか、それから原子力を何基つくるとか、そういう大切な指標につきまして固定された中での計算をしております。
 我々は、それにさらに技術的な裏づけをつけようということで、そういうモデルを回そうとしたんです。それは三回ぐらい回さないといけなかったんですが、一回目で時間切れになりまして、そのまま出してしまって、ややGDPのロスが高く出ております。しかし、ほかの先生方のモデルの方は、そういうマクロフレームはもう考えない、それはもう産業構造が変わってもいいんだということで、要するに手足を縛らない形のモデルでございますので、当然ですけれども、GDPのロスというのは少なくて済む。国民経済にとってそちらの方がいいという結果が出ているということでございます。
○齋藤(健)委員 ありがとうございます。
 時間が余っていますけれども、私が伺いたかったことが全部伺えましたので、これにて質問を終了させていただきます。先生方、どうもありがとうございました。
○樽床委員長 次に、江田康幸君。
○江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。
 本日は、地球温暖化に関する基本法の審議に入る中で、このような参考人の先生方に貴重な御意見をお伺いする場をつくっていただきまして、心から御礼を申し上げます。
 まず、地球温暖化による気候変動対策の基本法として、政府案、公明党案また自民党案の三法案が出そろいました。いよいよ議論が始まったところでございます。
 この地球温暖化、気候変動問題は、我が国の将来の姿を明らかにする議論であると思っております。いずれの法案も基本認識というのは共有しているものであり、我々としては、議論の上でよりよいものにしていく、これが非常に重要な議論であると私は認識しておりますので、そのような視点に立って、きょうは参考人の先生方に貴重な御意見をお伺いさせていただきたいと思っております。
 まず、西岡先生にお伺いをさせていただきます。
 西岡先生は、温暖化の影響、適応、脆弱性を担当するIPCCの第二作業部会の副部会長を務めてこられました。まずは温暖化の影響についてお伺いをしたいんです。
 地球温暖化による気候変動というのは、人類の生存の基盤を揺るがす脅威であるわけで、気候変動の緩和及び適応を図ることは人類共通の課題となっております。
 そこで、この温暖化の影響について、原点に戻って、我々はどういう認識を持つべきか、これについてお伺いをさせていただきたいと思います。
○西岡参考人 まず最初に、今IPCCの副部会長とおっしゃいました。これはほんのわずかな時期にやっていたということで、それが続いているわけではございません。
 まず、今の、被害についてどう考えるかということでございます。
 基本的に、大気中にCO2あるいは温室効果ガスがふえればふえるほど、気候変動自身は非常にバイオレートされるということがあります。その結果、二種類の問題が起きる。一種類のものは、現在の気候がゆっくりと変わっていきまして、水の降り方がこれまでこっちに降っていたのが降らなくなる、あるいは今まで降らなかったところに降るようになってくる。現状の生産体制あるいは生活といったものが侵食されるという、じわじわと来るのがあります。
 そのほかに、このまま温度が上がっていきますと、これは今世紀には、かなり確率は高いですけれども起こると言っているわけではございませんが、南極の氷が滑り出るあるいは解ける、あるいはそれでもって海水面が上がる。本当にこれは一たん起こるととめようのない、いわゆる不可逆な問題があります。
 ですから、我々が考えなきゃいけないのは、不可逆であるということが非常に大きなポイントであります。それから重大である。なぜなら、それは世界各地に満遍なくいろいろな意味で起こってくるということがあります。それから、突発的なものがあるということですね。この三つを十分考えた上での対策をとらねばならない。
 IPCCでは、もちろん、温度が高くなって得するところもありますよということを言っておりますけれども、それが二度あるいは三度になりますとだれも得しないような状況になるといったことも言っております。
 なお、日本でどういう状況が起こっているかということにつきまして、我々も予測はしておりますが、現実に調べてみるということは非常に大切でして、二〇〇五年、二〇〇七年でしたか、果樹試験場の方で調べてみますと、もう既に各地でかんきつ類等々がやられているといったことがあります。米が九州の方で品質が悪くなって、白く濁った米しかとれなくなった。そして北海道の米はうまくなっている。こういう変化をどう考えるかということについては、我々の方はそういう変化が観測されていますよというところを出すまででございまして、それをどうとらえるかは、またこちらのお話ではないかなと思います。
 以上です。
○江田(康)委員 今おっしゃっていただきましたように、地球温暖化による影響というのは大変大きなものが予測もされ、また現実においてもう進んでいるわけでございます。ポイント・オブ・ノーリターンという時点が必ず来るというか、取り返しのつかないような状況にも至ってくる。地球温暖化に対して的確な対策をとっていく、これが我々が共通に認識を持っていかなければならないところでございます。
 そういう意味で、今我が国において地球温暖化に対する基本法が成立をするかどうか、それを迎えている大変重要なときだと思っております。
 浅岡参考人にお聞きいたします。
 浅岡参考人は、COP等の国際交渉の現場にも接してこられました。そこでお聞きするわけでございますが、内閣提出法案には前提条件つきの二五%削減が盛り込まれておるわけでございます。私が聞きたいのは、これが今度国際交渉の場で主要国の背中を押すことができると思うかどうかという点であります。
 少しく補足しますと、この前提条件というのは、我が党も二五%中期目標を掲げておりますけれども、政府案も二五%。その削減目標に、全主要国による公平で実効性ある枠組みの構築と意欲的な目標の合意といった前提条件がついているわけでございます。これは、前提条件が満たされたと政府が判断したならば二五%削減の中期目標を設定する、それまでは二五%削減の目標は実施しないということを意味するわけで、いわばこれは二五%が凍結されるもしくは放棄される可能性を持つ法案であるということで、公明党はこの点を大変危惧しております。
 そういう意味で、まず浅岡参考人に、よくこの委員会の環境大臣等の、また総理の答弁でもございますけれども、この前提条件は主要国の背中を押すことに大きな意義があるということをおっしゃいます。その点について、国際交渉の場で活躍されてきた浅岡さんにお伺いをさせていただきます。
○浅岡参考人 ありがとうございます。
 まず最初に、IPCCは、何度気温が上昇すればどういう悪影響があるということをかなり詳細に、しかし、後で振り返りますと、少し控え目に出してきている。そして、何%の削減を先進国全体でやっていくことによってこういうふうな気温の上昇にとどめることができるというシナリオも見せているわけであります。
 こういう科学の政策決定者に対する提言というものを受けとめて、鳩山首相が九〇年比二五%削減目標を掲げるとおっしゃられたことは、私は政治の見識であると思いますし、公明党法案で書いていただいていることもまさにそのとおりであろうというふうに思います。こうした見識を科学者は求めておられると思います。
 この二五%削減目標には、確かに昨年九月の国連での御発表の中でもついてはおりました、前提条件つきではないかという声もありました。しかし、この段階で非常に国際交渉に歓迎され、またそれがCOP15に向けたその後三カ月のプロセスを非常に後押ししていたということはそのとおりであったと思います。
 ただ、このままで今後どうなのかという点が重要だろうと思います。
 私は、今日本国内の法律の中にこうした前提条件がつけられ、しかも、これまでの内閣の御発表等ではかなり前提条件をみずから厳しくするようなことも言っておられるような中で、法律ができまして、これを国際社会がつぶさにごらんになられたときに、国際交渉の場におきましても、主要国といいましても先進国から途上国からいろいろあるわけでありますが、やはり日本の本当のリーダーシップというか先進性というか、そういうものを感じていただくことは難しい。交渉を引っ張っていくんだという決意を感じていただくことは難しい。
 と申しますのは、ドイツは既に四〇%削減をやりますと言っているわけであります。イギリスも、法律の中に三四%削減を法的拘束力のある目標として掲げているわけであります。やはり本当に国際合意を、非常に困難な交渉を進めて引っ張っていくのはそういう国だとどの国にも見えるのが自然ではないかと思います。
 また、国内の削減目標が結局はないんじゃないか、わからないんじゃないかということは、現政権が本当に国内で掲げている目標を、では国際合意ができたときにちゃんとやる担保がないではないかというふうに見られるわけであります。これでは、国際的な信用を得ていくという点を非常に私どもは懸念しております。
 それ以上に、私は、これまで議論がございましたけれども、日本の国内の削減をやらなければいけないことです。このやらなければいけないことを、いかに経済にもいい形で、国民生活にもいい形で、そして雇用、労働者にもいい形でやっていくのかという工夫をするところに力を注いでいくことができないという点を大変危惧するところでございます。
○江田(康)委員 前提条件つきの二五%削減、志は高いけれども、やはり国際交渉という非常に困難な交渉を伴う中においては、そのリーダーシップをとっていくということは困難なのではないか。
 続けてちょっとお伺いをいたしますけれども、浅岡参考人は京都弁護士会会長も務められておりますが、京都でのCOP3の開催に尽力してこられた、長い国際交渉の場の経験をお持ちになっておられる方でございますのでお聞きいたしますが、ポスト京都議定書と言われる次期枠組みのあるべき姿についてどう考えるかを続けてお聞きしたいと思います。
 それというのも、今どういうような状況になっているか。私の認識でございますけれども、ポスト京都議定書、国際的な一つの枠組みを国際社会がつくる、その方向で議論が進んでまいったわけでございます。現状としては、AWGLCAというグループとAWGKPという二つのグループ、すなわち、LCAは長期タームの枠組みをつくる、もう一つのKPというのは京都プロトコルの枠組みで進むという、この二つのグループで議論が進んでいるわけでございますけれども、京都議定書の枠組みを残して、そしてそこに入っていないアメリカや中国等の国でまた別の枠組みをつくる、こういうような二本立てになるのではないかというような様相も今見えてきているわけでございます。
 我が国にとって、こういうような二本立ての姿ができ上がっていくというのは大変に厳しいことを意味すると思われます。我が国にとっては、やはり主要な排出国が公平で実効性のある一つの枠組みをつくっていく、これに尽力していかなければならない、そういうような状況かと思いますが、そういう中で、現状は非常に混沌としてきているようなこともあるかと思いますが、次期枠組みのあるべき姿について御見解をお伺いできればと思います。
○浅岡参考人 すべての国が温暖化の被害を将来世代のために最小化する努力をしていくことは申すまでもないことでありまして、先進国の中でもいろいろ、途上国の中にもいろいろ、二百カ国近い国々の二〇五〇年に向けた大きな目標が二度を超えないようにしようということで共有されつつも、それの具体的なプロセスを決めていくということは、極めて困難な、人類の初めて経験する大挑戦であろうと思います。
 そうした大きな目標に向かいまして、まず、二〇五〇年目標はおおむね固まって共有しているわけでありますし、二度という枠組みもコペンハーゲン合意の中で政治のトップたちが大きな政治信条として持ったわけでございますので、そこを実現するためのプロセス、道行きというものの二〇二〇年ごろの目標を法律的な形にどう定めていくことができるか。
 この焦点につきましては、私が法律家として考えましたときに、一つの約束の中にすべてを統合的に包摂して書かれること、これにまさるものがないことは言うまでもないと思います。しかしながら、それができなければ何もしないのか。その形が大事なのか、そこに盛り込まれる中身が大事なのかという点で申しますと、内容の方がずっと大事でありまして、法的な形式は次の課題であろうというふうに思います。
 実質的な削減のプロセス、先進国の各国について、京都議定書の第二約束期間が、本来あるべきものと考えて京都議定書がつくられ、そうしたプロセスをたどってきたことを否定することはできませんし、コペンハーゲン合意の中で、京都議定書について、これを廃止するようなことを何ら合意しているわけでもありません。
 ただ、私どもNGOの立場といたしましても、二〇一二年までの国際的な法的な拘束力のある目標があり、これでは到底足りないことがまたこれまで確認をされてきて、次の国際的な約束の仕組みというものをこれと空白期間を設けずに形をつくっていく、この重要性も非常に大きなものがございます。
 こうした要請を、困難ではありますけれども、やはり実現していくために、日本がよりいい形で、いいものができるように役割を果たしていただきたいということを期待いたしますし、鳩山首相が一つの文書にできることが望ましいとお考えであるとすれば、日本はより野心的な目標を国内で実現できる法的体制をしっかりと定め、このようにやろう、そして、このプロセスの中で海外の途上国の人々にもこのように支援もしていく、私たち日本は成功のモデルをつくっていく。そのように示していただくというようなことは必須であり、またそういうプロセスで合意ができていくことを望んでおります。
○江田(康)委員 ありがとうございました。
 ちょっと時間がなくなってまいりましたので、浅岡参考人にもう一点お聞きをしたいと思いますが、公明党提出法案の全体について、忌憚のない評価をいただきたいんです。それは、我が党は政府提出法案に足りないこと、また改めなければならないところをしっかりと浮き彫りにするためにもこの法案を提出してまいりました。その評価をいただきたいと思うんです。
 先ほど来、一つ問題に挙げられておりますことに二度Cの点がございますけれども、我が党は、IPCCの科学的な知見に基づいてラクイラ・サミットの首脳宣言、またコペンハーゲン合意で確認された、世界全体の平均気温の上昇が摂氏二度Cを超えないようにするべきとの世界共通の二度C目標の認識を前文に明記しております。この点についてもお伺いをしておきたい。
 それから、中長期的な目標について、前提条件をつけないで、ただし、国際社会の動向に従って見直し規定も設ける、こういう中長期的な目標について、これも含めて、浅岡参考人そして西岡先生の御意見をお伺いしたいと思います。
○浅岡参考人 公明党から提出いただきました法案は、私たちNGOで、メーク・ザ・ルール・キャンペーンといたしまして、気候保護の法律をつくってほしいと考えてきましたところを非常に多く反映いただいていると思います。前文で二度を入れていただきましたことは非常に大きな認識でございまして、国際的な認識も共有いたしますし、おのずと日本のたどるべき道がここに見えてくるわけであります。
 長期の目標が、この法律が成立すると同時に国内のしっかりしたシグナルとなって、企業の皆様も安心して投資をいただく、投資家の人たちも成長産業に、低炭素型の産業に投資をしていただくという基盤がつくられると思います。長期二〇五〇年に至る目標規定の見直しを科学の視点等を基礎としながら設けられていることは、法律的には極めて自然なスタイルである、通常とられる方法であると思います。
 とりわけ私が賛同いたしたいのは、国の排出を直接排出でとらえ、そして火力発電所に対して供給側での削減対策を明確にする、それを国内排出量取引制度の中に加え、総量での排出枠並びに事業所ごとの排出上限枠を定める、国際標準型と考えられます基本の取引制度の骨格をここにお示しいただいた、ぜひともこれを皆様に御賛同いただきたいと思うところであります。
 再生可能エネルギーにつきましては、ちょっと定義規定につきまして御留意いただきたいというふうに思います。
 そのほか、地方自治体の役割を取引制度の中でも見ていただき、取引制度というのは、地方自治体が交通政策や森林対策を進めていきますときに、いかに財源を確保していくかというような観点からも極めて重要でございます。参加の仕組みにつきましても言及いただいておりまして、私どもとしては、基本的なところで大変ありがたく存じております。
○西岡参考人 まず最初に、二度を明記しているという話でございますが、これは非常に重要な話かと思いますので、まことに賛成するところでございます。
 やはり、長期、遠くを眺めて今を設計していくということが非常に大切でございまして、そういう意味では、UNFCCCの第二条をいつも念頭に置いておくことは非常に大切だと思っております。
 また、コペンハーゲンの最終的な留意におきましても、それが二度では間に合わないかもしれないということも考えて、さらにそれよりも厳しいことも必要だったら考えなさいという話がございました。そういうことについても非常にアプリシエートするところであります。
 それから、前提条件つきにつきまして、これは私の方で余り申し上げるところはございません。高ければ高いほどいいし、また、二五%削減は技術的に可能であるということが我々の結論でございます。
 それを踏まえて、今後、国際交渉等々あると思いますので、それはそれなりに、いろいろ書かれていることについて私としては理解をしたいと思っております。
 以上です。
○江田(康)委員 ありがとうございました。
 最後の時間で、きょうはモデル分析の先生方もおいででございますので、せっかくでございます、聞かせていただきたいんです。聞いている側においては、このモデル分析というのはなかなかわかりにくいもので、お聞きしたい。
 まず、麻生政権、これは私も十分に見させていただきましたが、今回提出された鳩山政権での小沢試案というモデルは、例えば、GDPがプラス〇・四%、雇用の創出も百二十五万人、こういうようなものが出ているわけでございます。麻生政権では積み上げ方式で、別のモデルで雇用や経済に対する影響というものをしっかりと把握して出したものだと思います。
 それで、麻生政権の中期目標検討委員会におけるモデル分析がどういったもので、そして、今回の鳩山政権でのモデル分析でどのような点が深められたのか。言いかえれば、麻生政権のときの分析と鳩山政権の分析で何が明らかとなったのか、そして我々は何に留意しなければならないのか。特に、二〇年二五%削減が経済に与える影響、雇用に与える影響について、わかりやすく言っていただけないかと思います。
 重要なことは、気候変動政策を日本経済の新たな展開に結びつけるために何が大事になってくるのか、ここを、西岡先生と、モデル分析の伴先生、山口先生、三人にお伺いをしたいと思います。
○西岡参考人 現在、ロードマップの方でも、前提として経済計算をしております。
 麻生政権のときに、先ほど私申し上げましたように、マクロフレームという、言ってみれば産業構造は固定したままでやってくださいという話がございましたが、今回いろいろと精査していきますと、例えば、もう少し交通量なんかも減っていくだろうというようなことを前提に入れていきますと、ちょうど、今までマクロフレームを固定して、これは絶対動かしちゃいけないよと言われると、事実を数えて入れていこうとしても、最終的にどうしてもそれ以上は積み上がらないという状況がありました。ですけれども、マクロフレームを動かすこともできる、産業構造も幾つか変えていくというような条件を入れていきますと、技術的な裏打ちもできる形で二五%削減が可能だということが見えてきた。そのときに、全体として十年間約百兆円の投資が要るということが見えてきたということがありまして、前進をしております。それが第一点でございます。
 何が必要かということでございますけれども、当然、今後一番大切なのは、従来の道で行ったらもうだめだということは二、三の点でわかっている。これは、まず被害の面からもだめだし、国際的な競争の面からだめである。そうしますと、オルタナティブをやって、そのときにどれだけ違いが出てくるかということについていろいろなモデルでこれから検討する。我々、その一つを示したものだと思っております。
 その方向は明快でございまして、低炭素社会に必要なものということでロードマップにいっぱい書いてあることがまさにそのことでございまして、それに投資することがいわゆるグリーン投資と言われているものになると私は考えております。
 以上です。
○伴参考人 お答えいたします。
 まず最初に、訂正をお願いしたいのは、百二十七万人という数字は私のモデルではございませんで、藤川先生のモデルでございます。
 あのとき、小沢環境大臣試案として四つほど出ておりますが、そのうちの一つ、私のモデルは、実は、中期目標検討委員会、それからタスクフォースで用いられた日経CGEモデルのデータとほとんど全く同じモデルでやっております。ただ、違うところは何かと申しますと、いわゆるダイナミックをどういう形で考えるか。リカーシブダイナミックというのは毎年毎年解いていくモデルでございます。そのときには、貯蓄率というのは一定という前提でやっておりますので、所得がふえない限り投資には回らない。
 ところが、私の場合にはフォワードルッキング、IPCCでは、インターテンポラル・オプティマイゼーションという形のカテゴリーに入れられておりますが、この場合には、将来明るいあるいは低炭素社会に世界が向かうとすれば、その方向にみんな走り始める。走るということは、今の貯蓄を少し減らして投資に回す。私も、エコキュートを買いましたし、小型のエコカーも買いましたし、そういう形で動き始める、これはまさに投資でございます。ほとんど同じメンバーがつくっているわけでございますが、そういうものが日経CGEモデルと今回の私の違いということでございます。
 それともう一つ、日経マクロモデルは、タスクフォースでは使われておりませんが、中期目標検討委員会では使われておりまして、これは日経センターの非常に伝統的なモデルでされている。
 それから、藤川先生のモデルの場合には、産業連関表という分析の仕方で、これは、打ち上げ花火と言うと藤川先生に怒られるかもしれませんが、非常に景気のいい話が出るわけです。これは、実は吉野先生が質問されているときに米印を見て批判されていましたけれども、まさにそのとおりでございまして、所得は一定ですから、あるところでどんと需要が出ればほかのところで減るわけです。
 ですから、私どものCGEモデルというのは余り政府では好まれないんです。つまり、余りいい結果が出ない、大きな結果が出ない。
 今回の場合でいきますと雇用の増は二〇二〇年で二十六万人です。正確に言うと、ちょっと足さなきゃいけませんが、大体四十万人ぐらいふえて、一方で減るところがありますから、差し引きして二十六万程度。だから、百二十万という大きな数字は私のモデルではございません。それだけはちょっと御理解いただければと思います。
 そういう形で、今回の違いというのは、将来を見据えて人々は行動する。私自身もそうですし、社会もそうですが、そういう低炭素社会に向けて企業がどんどん動き始めている。やはりそれを我々は評価すべきではないかというぐあいに考えております。
 以上でございます。
○山口参考人 御質問ありがとうございます。
 モデルの件で最初にちょっと申し上げておきたいのは、実はちょっとわからない点がございましたので、朝時間があったので伴先生とお話しする機会がございまして、それも入れてなんですけれども、一言で言いますと、今度、ロードマップの検討会で出てきたすべてのモデルが、九〇年比で二五%削減しているモデルというのはないんです。ですから、そこをまず最初に、伴先生のものだけちょっとわからなかったんですけれども、それはいい悪いではなくて、二五削減しているモデルは一つもないんですね。
 もう一つ、実は西岡さんの国立環境研究所はそれがあるはずなんです。私が一緒にやっていたタスクフォースのときに、その場合にはGDPロスに例のマイナス三・二というのが出てきたんですが、今度はそれがないので、実は、それも入れて、どこにどういうふうにあるんですかということをちょっとお伺いしたい。一言で言うと、わからない点がいっぱいあるということですね。
 そして、もう一つは、やはり各モデルの違いが物すごくあるわけです。先ほどの伴先生のお話は全くそのとおりで、いわゆる日経CGEのモデルで、いわゆる逐次動学型とフォワードルッキングというふうに変えたとおっしゃっている。むしろ、それよりも、例えば慶応のモデルですと、GDPロスがマイナス五・六になっていて、伴先生のものはうまくいくとプラスになる。それだけの違いがどうして出てきたのかをやはりきちっと見ないと、どっちにのっとっていいのだろうということがわからないわけです。
 その意味で、実は、伴先生のモデルも私は実はまだよく理解ができていないんです。ですから、批判とか何かは一切ございません。
 一番私が肝心だと思っておりますのは、モデルに金融、財政のセクターが入っているかどうかということなんですよ。私が知る限りでは、これが入っているモデル、伴先生のはちょっとわからないのでわからない前提ですけれども、ほかに慶応のものだけが入っているんですね。その慶応大学のモデルはどういうものかというと、国債の金利が上がらないように税収を国債の償還に充てていくというモデルなんです。それであのモデルはできているんですね。ところが、ほかのものはそれがないわけです。ということは、金利や何かが一切変わらない、そして、必要な投資はいつでもそこに必要なお金が出てくる、こういう前提です。
 果たしてそこはどうなんだろうかということも、当然、我々もそうですけれども、政治家の皆さんに、現実の話ですので、金融、財政の、特に今の日本のGDPに対する財政赤字の大きさが先進国ではトップだと思うんですけれども、この中でやはり金利の問題というのは考えざるを得ないというふうに思うんですね。
 そして、もう一つ、伴先生のモデルで、細かいことは申しませんけれども、きょう伴先生から出された十ページのところに前提条件がいっぱい出ております。このうちで、例えば上から基準解というのは恐らくベースラインケースだと思うんです。例えば上から四つ目が二酸化炭素排出効率改善、これは脱炭素化率、エネルギー分のCO2、これが日本の場合には今マイナスに振れているものが二から四。これは二から四に上がっていくのかどうか、またちょっとこれもお伺いしないとわからないんです。
 それから、特にコストをかけないエネルギー効率の改善が二・五だとか。あと、例えばこの下の方にイノベーション促進ケースというのがございまして、恐らく風力とか太陽光の設置費用が毎年八%下がっていくというふうになっている。太陽光はかなり下がっているんですね。ただ、風力はもしかしたら上がるかもしれないという状況になっております。それから、設置場所拡大、公共・大規模施設屋上開放で毎年三二%ずつふえる。これがいいか悪いかということではなくて、要するに、こういう前提で先生が計算されると恐らくそういうふうになるわけですね。
 ということで、この辺をぜひ精査する必要がある、こういうふうに思います。
○江田(康)委員 大変ありがとうございました。
 きょうは参考人の先生方に貴重な御意見を伺いました。審議に反映をさせていきたいと思います。
 ありがとうございました。
○樽床委員長 次に、吉泉秀男君。
○吉泉委員 社会民主党の吉泉秀男です。
 先週金曜日の質問に引き続いてこういう場所に立たせていただいた、このことにまず御礼を申し上げたいと存じます。
 また、四名の先生方から大変な御指導そして多くの指摘を受けまして、本当にありがたいなというふうに思っております。
 まず最初に、山口先生の方に質問をさせていただきたいというふうに思います。
 先生の指摘については、自分自身大変興味を持ったわけでございます。とりわけ、今の国際的な動きの中では、それぞれ強制力、それは科学の要請ではない。そういった部分から見れば、どうあってもやはり政治のところの中で決まっていくんだ、こういう御指摘を受けたところでもございます。
 その中で、先生は、削減の部分について法をつくるのであるならば九〇年比八%、このことで法そのものについて基本法を考えるべきだ、こういう主張をしているわけでございます。
 私どものところでそれぞれ三つの法案が今審議をされているわけでございますけれども、鳩山政権の、総理みずからが二五%削減、こういった部分を言い切ってもいるわけでございます。
 そんな面で、山口先生が八%にこだわる一つの根拠についてまずお伺いをさせていただきたい、こう思います。
    〔委員長退席、山花委員長代理着席〕
○山口参考人 大変いい御質問をいただきまして、ありがとうございます。
 まず、私自身は実は、自民党の案ということではなくて、これは私自身は二〇〇五年比、別に自民党の肩を持っているわけではなくて、そもそも二〇〇五年比でやるべきだというのが私の意見なんですね。一九九〇年を基本にするのはだめだという意味なんです。これは詳しく御説明すると時間がかかるので、もしさらに御質問があればお答えします。要するに、二〇〇五年比を基準にやるべきだ、そうすると一五%だ、こういう意味なんですね。それが仮に九〇年にすると八になるというだけの話なんです。
 それで、なぜそうか。実は、当時の麻生首相がこれを発表されたときに、私は随分批判をいたしました。高過ぎるという批判をしたんですね。現時点、調べていただければわかるんですが、ヨーロッパのどこの国も、日本の当時の麻生首相のあの目標に異論は一切挟んでいません。一部の新聞が全く勉強もしないで、単にヨーロッパが二〇で日本が九〇年だと八なのでだめだと言っている新聞はありましたけれども、実際によくわかっている政府の人たちは一切反論していないんですね。
 ただ、私は反対したんですけれども、首相が決めましたよね。そうしますと、これはもう世界に日本としては宣言してしまっているわけです。すると、それがいいか悪いかという段階は残念ながら超えてしまっている。今度は鳩山首相が二五と言われましたけれども、言った根拠を今必死につくっているという、まあちょっと順序は逆なんですけれども。
 ただ、二五を言われて、例の前提条件があります。その前提条件というのは、先ほど申し上げましたけれども、首相の国会での説明からいうと、四五〇ppmあるいは工業化から二度というふうに恐らく首相は思っておられる。そうすると、これは、先ほど御説明しましたように、国際合意はまず絶対に得られないと私は思っています。アメリカもとてもだめですし、中国はもう絶対に受けないだろうと思うんです。
 そうすると、鳩山さんの二五というのがその前提条件がないときどうなるんだという話になるわけです。私が強く主張をしていることは、普通は、さっき冒頭で申し上げましたけれども、自国は単独でもこれだけやる、そして条件としてはほかがみんなやればここまで上げるよ、これはほかの国がみんなやっていることで、国際交渉の常識と言うのはおかしいんですけれども、別に日本が非常識とは言いませんけれども、そういうことなんですね。ということで、まず日本がどこまでやるということが今ない中で、それは非常にまずい。
 日本がやるとすれば、少なくとも、鳩山首相が言ったことは言ったことで、これはもう事実ですので、そこと国際的に矛盾しない形で日本の目標を解決していかなければいけない。そうなると、みんなが本当に私が言ったことを全部やれば、おれは二五でいい、やるよと、これはこれでもう首相が言われているわけですね。では、そうじゃないときはどうするんだとみんな聞かれます。それに対して、いや、これは真水で二〇〇五年比で一五%、仮に九〇年であれば八%なんですけれども、そこを日本はやる、あなたたちが何にもやらなくてもおれは一人でやるんだ、こういうことなんです。
 だから、私、経済学者から見ると、それでも他国から見ると日本が非常にきつい。
 というのは、限界削減費用というのがさっき出ましたけれども、これは限界削減費用と言うと何だかわからなくなるんですけれども、一言で言えば炭素価格なんです。要するに、排出権取引をやった場合の日本の炭素価格が大体百五十ドルぐらいなんです。そして、今ヨーロッパが言っているのとアメリカが言っているのは五十ドルぐらいなんですね。ですから、日本は、追加的に一トン出す場合のコストが百五十ドルぐらいになるような政策を麻生総理のときにもう既に言ってしまったわけですね。
 それはアメリカやヨーロッパよりも非常に高いんですけれども、ただ、そこはむしろ、ほかの方も言われたかもしれませんけれども、日本はまさに技術開発で生きていくので、ほかと同じではなくて、厳しくても自分たちはやっていくんだ、その厳しい目標を技術でカバーする。
 そして、もう一つだけ、その技術を世界に出していけば、これは日本が一五だの二五というんじゃなくて、排出量全体以上が日本の技術を出すことで大幅削減ができるんです。ですから、国内での削減はもちろん大事なんですけれども、日本が国際的に技術をもっとどんどん出していって削減する、ここが非常に大事だ、こういうふうに思っております。
 以上でございます。
    〔山花委員長代理退席、委員長着席〕
○吉泉委員 ありがとうございます。
 何も自分自身も、自民党案が八%、こういうことでどうのこうのという、そういうふうな考え方ではないんです。やはり今の現状の中で高い数字だなというふうな中で頑張ろうというふうな部分もあるんだけれども、しかし、この間の京都議定書等々を含めながらずっと推移をしてきた中で、排出量がどんどんやはりふえている、減らない。そういう中でどうするのか、そういった部分が私ども政治の道にいる者に問われている。そういう中で、やはりそれぞれ夢のある、そういう面で慎重審議もしなきゃいけないな、そういう思いから、八%になぜこだわったのかなということで質問をさせていただいたところでございます。
 その中で、浅岡先生に質問させていただきたい、そういうふうに思います。
 先生は、ネットワークを含めて、それぞれ市民運動、さらには環境団体等々を含めて多くの活動家の人方なり関係する人方と勉強会もしながら環境問題に取り組んできている、そういう認識を自分自身しているわけでございます。
 その中で、二〇〇八年度の総排出量については、いわゆる経済の産業分野における一つの景気低迷の中で非常に落ちてきたわけでございますけれども、この間ずっとやはり高いまま排出をしてきた。そういう状況というものについてどうとらまえて、なぜそうであったのかという見解等について、浅岡先生がどうとらえているのか、まずお伺いさせていただきたい、そういうふうに思います。
○浅岡参考人 ありがとうございます。
 二〇〇七年の段階で見ますと九〇年比八%近い増加になっておりますが、なぜこうなったのかという点には、一つは、もともと余り国内での削減目標をしっかり据えてはおりませんでした。ほぼ国内はゼロというのが九〇年来一貫した目標であります。その目標の低さということが一つの要因だと思いますけれども、削減していくための政策をしっかり入れるということができずにきたのがこれまでの十数年であったと思います。日本はお金もある、技術もある、しかし政策がない、これが国際社会から、我々NGOの仲間でもよく言われてきたことでありました。
 これは、私どもも中央環境審議会などに入れていただいている中で、必要な、例えば国内排出量取引制度であるとか税であるとか、本当に十年同じ議論を繰り返してきましたけれども、前政権のもとではそれが具体化する、あるいは議論が深められるということがなかったわけであります。
 そういう中で、経団連自主行動計画にゆだねられてまいりまして、日本の排出量の三分の一を占めます電力のところが最もふえたわけであります。五割ふえました。なぜふえたかといいますと、石炭火力発電所を増設し、また稼働率を高める、それが二倍、三倍になるということが日本の排出量を押し上げてまいりました。
 産業部門につきましても、それ以外の製造業につきまして自主目標を定めておられまして、目標達成と言われるのですけれども、その目標自身が、我々がかかわりました審議のプロセスでもう既に達成したものがその業界の目標になっている。なかなか削減をするという目標をみずから決めるということなく、低い目標を設定し、それを達成したと言ってまいったというのがこれまでであります。
 今後につきましては、やはり電力と産業部門につきまして、私は西岡先生のロードマップにつきましては、その部分をもう一度見直してやっていくような仕組みをとっていただきたいと思っているところでございます。そのための政策が、最も基本となるのがキャップ・アンド・トレードであるということであります。
○吉泉委員 まさに先生の方から今述べられたところと一致はするわけでございますけれども、しかし、今ここに来てそういう甘えは許せない、そういう立場でまさに先生方が、西岡先生も言うわけでございますけれども、産業革命に等しい、そういう思いの中の今回の基本法を含めた決意が必要なんだろう、こういう一つの方向性というものが出されておるわけでございますし、それについては、すべてそういう認識は共有できるものだろう、こういうふうに思っております。
 自分自身、山形出身で農林の方の委員にもなっているものですから、やはり今後、それぞれの再生可能エネルギー、まさに自然エネルギー、この部分をどう私方が地域の中で産業として興していく、そういう視点の中で地方の活力をやっていこう、そういうふうな思いの中で今取り組みもさせてもらっているところでございます。
 しかしながら、それぞれ、例えば小水力、その部分を一つとってみても、いわゆる河川法、さらには電気事業法、いろいろな部分の中でそれを乗り越えていかなきゃならない、そういう一つ一つの課題もございます。
 そういう中において、今の全量買い取り制度、このところに対してどういうような視点の中で、今の現状というものを含めて、この間それぞれ市民運動等を含めてやってきた浅岡先生の方から、この買い取り制度の基本的な視点、さらにはこの部分のとらえ方、そういった部分をお伺いさせていただきたいというふうに思います。
○浅岡参考人 ありがとうございます。
 私どもが海外の動きを見ますときに、再生可能エネルギーについて目覚ましいヨーロッパ、アメリカ、あるいは途上国、中国、インドなどの動きを見まして、大変うらやましく思うわけであります。これは、その国が政府として再生可能エネルギーを本当に拡大しなければならない、そのために必要な国の役割、政治の役割というものを果たさなければならない、まさにポリティカルウイルをひしひしと感じるわけであります。日本にそれがこれまで本当に乏しかった。目標も乏しく、政策も乏しかったということが言えると思います。
 その補助金だけで今はコスト高というふうになるものを回すことはできません。それで、経済の仕組みの中に入れるというものが、一九九〇年ごろからヨーロッパ、ドイツ、デンマークなどで始まりました固定価格での買い取り制度というものでありまして、これをいかに拡大するかということで、それぞれの国でいろいろ工夫をしてきておられます。
 日本で前政権のときに始まりました買い取りの制度は、太陽光だけであります。余剰電力というものが基本であります。やはり私は、言われました小水力も含め、風力、バイオマス、その他、地熱等、すべての再生可能エネルギーを最大限活用する。
 先ほど斎藤先生の御質問の中で、太陽光が日本が世界一だったのに今や六位、七位だ、こういうお話がありましたけれども、それは、ドイツの再生可能エネルギーのほんの小さな部分でありまして、何%でしかないわけです。そのほかの部分が、風力やバイオマスや、そういうものがずっとたくさんあります。それでも、固定価格買い取り制度で電力に価格転嫁されているものというのは、一世帯当たり一カ月三ユーロから四ユーロだ。
 やはり上手な制度設計に知恵を絞っていただくというところに本当に工夫していただいて、すべての再生可能エネルギーの電力事業者の買い取り義務化を明示する。今のこの政府の法案の中で再生可能エネルギーにつきまして一番心配なところは、新たな法案をつくるとは書いてございません。これは、ひょっとすると、現在あるエネルギー供給構造高度化法をそのまま適用しよう、経済産業大臣の告示で解決しようとしているとすれば大変問題だと思います。
 電力事業者の適切なる買い取り義務化、太陽光以外のところ、今ロードマップもほとんど太陽光でしかつくられておりません。だからこそコスト高になるわけでありまして、そうではなく、もっとすべての再生可能エネルギーにつきまして拡大するとともに、こうした制度を将来やっていきますときには、大きな電力の発電から送配電の仕組み、送配電を双方向的に非常にスマートにできるスマートグリッドの浸透というものは、これは新しいインフラでありまして、一種の公共事業でございます。
 大きな目標を見越して、ここに新たなビジネスチャンスもまた出てまいるんだろうと思います。そういう大枠の中で見通した制度設計をぜひともやっていただきたいと思っております。
○吉泉委員 ありがとうございます。
 先日の質問の中でも、このところについては、国民総参加ではなくて国民全体が投資をしていく、そういう一つの機運、そういう方向の施策、さらには誘導、そういうものが私方に求められている、そういう考え方で質問をさせていただいたわけでございます。
 やはりこれから全量の買い取り制度については、もっともっと議論もしながら、いい制度にしていきながら、そして、みんながいわゆる自然エネルギー、そういった方向の脱化石燃料、こういう社会に変わるんだという思いを全体で共有のものにしていかなきゃならないなというふうに思っているところでございますし、ぜひこの問題については浅岡先生の方からもっともっと御指導もいただきたい、こういうふうに思っております。
 それで、西岡先生にちょっとお聞きさせていただきたいというふうに思います。
 今、全体的に、原子力、その方向性の中で、それに依存をして、そして、いわゆる脱化石燃料、こういう方向というものがある程度進む状況があるというふうに自分自身思っております。しかし、事故の問題、さらには放射能の一つ一つの危険、安全性担保の問題も含めて、こういった部分を考えると、もっともっと原子力については私たちは研究開発もしていかなきゃならない、そういう状況なんだろうというふうに思っております。
 その中で、西岡先生が、原子力に依存する、そういった部分については、少し、危険というよりは、やはりもっともっと自然エネルギー、こういう方向において低炭素社会を追求するべきだ、こういう主張もしているというふうにお伺いをさせてもらっております。その中では西岡先生の、今の低炭素社会に向けた原子力発電、このところのとらえ方、この点についてお伺いさせていただきたいと思います。
○西岡参考人 原子力については、今の低炭素社会、あと数十年を考えたときには、必須なもの、要るであろうということは確実であります。ただ、何度も申し上げますけれども、まず安全性の問題、これは確実にやっていただかなければいけないということはあります。
 それから、お手元の私の後ろの方に参考資料をつけてございます。二十三ページを見ていただきますと、これまで原子力に頼って頑張っていこうという線で幾つかのプロジェクションがなされていました。全部下回っております。ですから、原子力があるからこの話はいいんだよというわけにはいかないというのがもう一つの認識であります。今回も非常に高い目標でやろうということでございますけれども、これがうまくいかなくなったときに間に合わないんじゃ困るということは、リスクとして考えておく必要があります。
 もう一つ、私が提唱しておりますし、また、最近はエネルギー基本計画の中の論議でも進んでおりますけれども、需要側でどれだけエネルギーの使用が減らせるか、これが今後のポイントです。
 我々の長期の見通し、二〇五〇年七〇%削減という研究をやりましたけれども、そのときの結果といたしましては、需要側のエネルギーを四〇ないし四五%減らすことができると。そうしますと、全体として供給が非常に楽になるわけですね。今まで供給が頑張って、皆さんが欲しいエネルギーを全部やりますよという形で苦労していただいたんですけれども、逆に言いますと、需要側が半分になりますと、それほど原子力も入れられない。入れますと、非常に運転のフレキシビリティーがなくなるということもございまして、それほど原子力に頼らなくても済む状況が出てくるのではないかなと我々は思っています。
 ですから、私のお勧めは、まず需要側で徹底して省エネをするということ、それから二つ目、原子力につきましては、計画どおりいかないときのリスクも考えていただくこと、そして、当然でございますけれども、安全ということについては十分留意していただきたいというぐあいに思っております。
 以上です。
○吉泉委員 ありがとうございます。
 同じ質問でございます。それは伴先生にお伺いさせていただきたいというふうに思います。
 今安全性がまだまだ担保できていない、こういう状況の中で、それぞれ世界各地における原子力、そういった方向でのエネルギーの依存、こういう部分がある。そういう状況の中で、今回出されたいわゆる経済の一つの分析、ロードマップについては、今の原子力をどういうふうにとらえながら、労働力なり経済がこういうふうになるというふうに分析なされたのか、そこの原子力依存という部分がどういうふうに入っているのか、そのことをちょっとお伺いさせていただきます。
○伴参考人 私のモデルでは、原子力発電というのは、ある意味で外から与えるという、基本的には設置場所それから稼働率等もほとんど決まっておりますので、その線で与える。ただ、実は、モデルの結果、詳細、きょうお配りしたのを見ていただくとわかるんですが、原子力発電、実は余ってしまいます。つまり、それだけ電気の需要が減る。
 これは先ほど西岡参考人がおっしゃったことですが、電気の値段が一〇%ですけれどもかなり減る形になる、つまり、それだけ省エネが進む。その結果、一般的には、タスクフォースのときも、それから中期目標検討委員会でも、いわゆる外から与えた原子力の供給にいっぱいいっぱい張りつく形になっていますが、今回のモデルの場合は、むしろ張りつかずに減る形になります。
 だから、そういう点では、電力会社の方々、私は関西電力の方とよくお話をするんですが、彼らが思っていることも同じでありまして、この調子でいったら電力は余っちゃうかもしれない、そういうふうに危惧してもございます。
 だから、そういう点でありまして、いつも原子力をどんどんふやせ、ふやさない限り経済がもたないということにはならずに、むしろ余ってしまう可能性すらあるかもしれない。逆に言うと、それだけ自然エネルギーというものが増加し、そして、それは高いわけですけれども、それをみんなが払うという形に持っていけば、基本的には原子力に対する需要も少し減るかもしれない、そういう形のモデルにはなっております。
○吉泉委員 ありがとうございます。
 ただ、同じく、この二〇二〇年の段階では、八基増設、その稼働、そういった部分を含めて一応出されて、ロードマップになっているわけですけれども、それと同時に、伴先生の方も、二〇二〇年というところでの分析を出されている、そういう状況でございます。
 そんな中で、今のお話でありますと、電力がいわゆる余ってくるのではないかということになってくると、もう一度その辺の見解をちょっとお伺いさせていただきたい。
○伴参考人 原子力の上限については、もうタスクフォースとかいろいろなところでも設定されておりますので、その上限を設定する。もし低炭素にするために原子力に対する需要がふえたとしても、その上限にぶつかる形でモデルは設定しております。
 しかし、私の場合は、実はそこにぶつからずに、ということは、逆に言うと、最初に想定した供給ほど要らない。ただ、その供給の増加は、先ほど言った、二〇二〇年までにもう計画段階で走っているものがございますので、それは当然入れた上での供給の見通し、その前提のもとでそれがひょっとしたら余るかもしれない、そういうことでございます。
 よろしいでしょうか。
○吉泉委員 大変参考になりました。そんな中で、今のところについても自分自身も整理をしながら審議に入らせていただきたい、そういうふうに思います。
 最後の質問になります。特に排出量の取引制度のことでございます。
 これも浅岡先生の方で、環境団体なり相当いろいろな議論がなされているというふうに聞いております。それぞれ、方式、規制のやり方、二つあるというふうな部分も含めてあるわけでございますけれども、この制度のとらえ方、さらには、それを入れていく際の一つの方式等について、浅岡先生の考え方をお聞きさせていただきます。
○浅岡参考人 ありがとうございます。
 前に申し上げたことと重なりますけれども、キャップ・アンド・トレードというのは、必ず火力発電所を対象にする制度で、直接排出でとらえていただくこと、そして、事業所単位でとらえ、対象事業者全体につきましても総量の枠を長期的に削減していくというシナリオのもとに、個々の事業者の排出枠の設定の仕方についても検討いただきます。それは総量で行うというのが、キャップ・アンド・トレードの、これをあいまいにしてはいけない、非常に大きな原則でございます。
 ただ、短期的に、今排出枠をどのように、幾らにするのかを、例えば鉄鋼や電力の事業者の方々がいろいろ御主張になる、あるいはこういう事業者が御主張になられる、そういうことをそれぞれの御主張の中でよく精査され、それぞれの効率、同じ業種でありましても工場によりまして効率は本当にいろいろであります、そのことも私どもはデータの中でも確認しておりますので、より適切な配分方法を短期的また長期的にとっていくための議論というものは、まずデータを、国はたくさんデータをお持ちですので、それを十分皆さんも共有して活用いただきましていい方式を議論する、これはとても建設的なことだと思います。
 また、確かに産業的には今後拡大していくところ、あるいは若干後退していくところ、それが出てくるのは、産業構造の転換はどの党の皆様もおっしゃっておりますように必然のところでございますが、それが痛みとなる、あるいは消費者の中で低所得者の方々には痛みとなる、そういう側面があるのも現実でございますから、これは排出枠の割り当ての仕方というところでそれなりに調整しようというようなことを工夫しているというのが、基本的にはそれはアメリカの法案の一つの考え方でありますが、その工夫はいろいろしていただくことはあるのではないかと思っております。
 しかし、総量で排出枠を設定するという、このことが揺るがないように、原単位を検討するという部分は削除いただきたいと思っております。
○吉泉委員 どうもありがとうございました。
 やはり、私たち、これまで本当に化石燃料にどっぷりつかった暮らし、さらには依拠してきた私たちの経済、産業でもございます。それを大きく転換する、そういう面の中では、本当に一つ一つクリアしていく、そういう部分が私方、大変だなというふうに思っております。しかし、やらなきゃならない、そういうふうにも思っております。
 そんな面で、先生方の方からますます私たちに対して御指導もいただきながら、低炭素社会に向けたいろいろな御指導、さらには御提案、よろしくお願いを申し上げながら、時間になりましたので終わらせていただきます。
 本当にきょうはありがとうございました。
○樽床委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。本当にどうもありがとうございました。
 この際、申し上げます。
 ただいま本委員会において審査中の各案及び経済産業委員会において審査中の内閣提出、エネルギー環境適合製品の開発及び製造を行う事業の促進に関する法律案についての環境委員会、経済産業委員会の連合審査会は、本日午後二時三十分から第十六委員室において開会いたします。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時十九分散会