第179回国会 本会議 第9号
平成二十三年十一月十七日(木曜日)
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  平成二十三年十一月十七日
    午後二時 本会議
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○本日の会議に付した案件
 難民の保護と難民問題の解決策への継続的な取り組みに関する決議案(小平忠正君外十七名提出)
 野田内閣総理大臣のアジア太平洋経済協力(APEC)会議出席等に関する報告及び質疑
    午後二時三分開議
○議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。
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○太田和美君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
 小平忠正君外十七名提出、難民の保護と難民問題の解決策への継続的な取り組みに関する決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。
○議長(横路孝弘君) 太田和美さんの動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。
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 難民の保護と難民問題の解決策への継続的な取り組みに関する決議案(小平忠正君外十七名提出)
○議長(横路孝弘君) 難民の保護と難民問題の解決策への継続的な取り組みに関する決議案を議題といたします。
 提出者の趣旨弁明を許します。逢沢一郎君。
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 難民の保護と難民問題の解決策への継続的な取り組みに関する決議案
    〔本号末尾に掲載〕
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    〔逢沢一郎君登壇〕
○逢沢一郎君 私は、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会、公明党、社会民主党・市民連合、みんなの党、国民新党・新党日本、たちあがれ日本を代表いたしまして、ただいま議題となりました難民の保護と難民問題の解決策への継続的な取り組みに関する決議案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。
 案文の朗読をもちまして趣旨の説明にかえさせていただきます。
    難民の保護と難民問題の解決策への継続的な取り組みに関する決議案
  二〇一一年は、一九五一年の「難民の地位に関する条約」採択から六十周年、また日本の同条約加入から三十周年という節目の年にあたる。特に、日本は条約加入後、今日に至るまでの三十年間、国際社会の一員として世界中の難民や避難民の支援に臨み、人間の安全保障の概念を強調することによって、難民それぞれについて人道支援と平和構築を中心に据えた取り組みを行ってきた。二〇一〇年にはパイロット・ケースとしてタイからミャンマー難民を受け入れるプログラムも開始され、アジアで初の第三国定住による難民の受け入れ国となった。
  また国内においては、庇護制度の充実・発展を目的として、難民認定審査の透明化、効率化に力を注いできた。
  このような過去の実績と難民保護の国際法及び国際的基本理念を尊重し、日本は国際的組織や難民を支援する市民団体との連携を強化しつつ、国内における包括的な庇護制度の確立、第三国定住プログラムの更なる充実に向けて邁進する。同時に、対外的にも従来どおり我が国の外交政策方針にのっとった難民・避難民への支援を継続して行うことで、世界の難民問題の恒久的な解決と難民の保護の質的向上に向けて、アジアそして世界で主導的な役割を担うべく、右決議する。
以上であります。
 何とぞ議員各位の御賛同をよろしくお願いいたします。(拍手)
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○議長(横路孝弘君) 採決いたします。
 本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。(拍手)
 この際、内閣総理大臣から発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣野田佳彦君。
    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕
○内閣総理大臣(野田佳彦君) ただいまの御決議に対して、所信を申し述べます。
 政府といたしましては、ただいま採択されました御決議の趣旨を十分に体しまして、世界の難民問題の恒久的な解決と難民の保護の質的向上に向けて、国際社会で引き続き主導的な役割を果たしていく考えであります。(拍手)
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 内閣総理大臣の発言(アジア太平洋経済協力(APEC)会議出席等に関する報告)
○議長(横路孝弘君) 内閣総理大臣から、アジア太平洋経済協力(APEC)会議出席等に関する報告について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣野田佳彦君。
    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕
○内閣総理大臣(野田佳彦君) 私は、第十九回アジア太平洋経済協力、APEC首脳会議への出席のため、十一月十二日から十四日まで米国を訪問しました。
 APECは、各エコノミーの自発的な意思によって、アジア太平洋地域における経済面でのつながりを強め、地域の未来を語り合う場として、その創設以来、我が国が主導して育ててきた地域経済統合の試みです。
 昨年、我が国が議長として取りまとめた横浜ビジョンの理念を踏まえ、本年のAPEC首脳会議では、成長と雇用、規制改革と競争力及びエネルギー効率・エネルギー安全保障の課題について、忌憚のない意見交換を行い、次のとおり具体的な措置をとることが合意されました。
 一つ、地域全体の経済成長を促すため、貿易を制限せずにイノベーションを促進するための共通原則、グリーン成長のための環境物品の普及のために各エコノミーが取り組んでいくことに合意しました。
 二つ、APEC全体でのエネルギー効率向上の目標設定に合意しました。私も、オバマ議長の求めに応じて、エネルギー効率向上に関するこれまでの我が国の経験と教訓、今後の挑戦について説明して、議論をリードしました。
 三つ、アジア太平洋自由貿易圏の実現に向けて、我が国として主導的な役割を果たしていくことを明らかにしました。また、その道筋のうち、唯一交渉が開始されているTPP協定について、我が国は交渉参加に向けて関係国との協議に入ることを紹介し、幾つかのエコノミーから歓迎の意が表明されました。
 首脳会議出席の機会をとらえ、中国の胡錦濤国家主席、米国のオバマ大統領、ロシアのメドベージェフ大統領、ペルーのウマラ大統領と個別に会談を行いました。
 胡錦濤中国国家主席とは、日中両国が、ともに、地域及び世界の平和、安定及び繁栄に向けて責任ある役割を果たし、関与していくことが重要であり、そうした大局的観点から、来年の日中国交正常化四十周年を見据えつつ、戦略的互恵関係を深めていくことで認識を共有しました。
 オバマ米国大統領とは、APECでの協力に加え、今週末開かれる東アジア首脳会議において米国が初めて参加することを踏まえて、日米両国がこの地域でリーダーシップを発揮していくことを確認し、さらに、TPP、牛肉輸入問題、米軍再編を含む安全保障、子の親権といった事項や北朝鮮につき、最新の状況を踏まえ意見交換をしました。
 メドベージェフ・ロシア大統領とは、アジア太平洋を取り巻く安全保障環境が大きく変わりつつある中で、エネルギー、近代化及び安全保障を含むあらゆる分野での協力の強化を確認しました。領土問題については、問題解決の必要性を再確認し、お互いに相手を尊重しつつ、静かな環境のもとで議論を続けていくことで一致しました。
 ウマラ・ペルー大統領とは、本年五月に署名された経済連携協定、EPAの発効に向けた意見交換等を行い、両国の関係をさらに発展、深化させることを確認しました。
 今回のAPEC首脳会議を通じて、世界成長の牽引役であるアジア太平洋地域の確かな可能性を各首脳と改めて確認することができました。我が国として、各エコノミーと協力し、来年のウラジオストク会合でさらなる成果を目指していきたいと考えています。世界の成長センターたるアジア太平洋地域の活力を我が国の再生に取り込んでいくべく、経済外交を推進してまいります。(拍手)
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 内閣総理大臣の発言(アジア太平洋経済協力(APEC)会議出席等に関する報告)に対する質疑
○議長(横路孝弘君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。谷垣禎一君。
    〔谷垣禎一君登壇〕
○谷垣禎一君 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、野田総理のAPEC帰朝報告に対し、質問いたします。(拍手)
 最初に、政府の基本認識について伺います。
 現在、野田総理の発言あるいは政府の方針が余りにもあいまいなゆえに、国民は総理の真意をはかりかねています。
 総理は、出発の前夜、関係各国との協議を開始し、さらなる情報収集に努め、十分な国民的な議論を経た上で、あくまで国益の視点に立って、TPPについての結論を得ていくことにしたいと述べられました。これを受け、報道各社は「交渉参加表明」と報じました。
 しかしながら、鹿野農林水産大臣や山田前農林水産大臣は、交渉参加が前提ではない、事前協議で踏みとどまったと発言しています。一体、この解釈の差は何なのでしょうか。
 問題の本質は、総理が言葉の定義をあえてあいまいにしたことにあります。したがって、まずは確認いたします。
 交渉参加と、交渉参加に向けて関係国との協議の開始とは、一体どこが違うんですか。総理はあえて交渉参加という表現を使わなかった。なぜなんでしょうか。これは、国内の慎重派、特に民主党内の慎重派に配慮したためでしょうか。
 我々自民党は、政府の情報収集不足、そして決定的な説明不足により、国民的議論が全く熟しておらず、APECにおいては交渉参加の表明をすることに反対する旨を表明していました。発表直前の十一日の夕刻には、野党六党が共同して、総理に対して同様の趣旨を申し入れました。
 その上で、総理が記者会見で国民に伝えたかったことは、我々が反対した交渉参加の表明だったのですか。それとも、我々の声を受け入れ、その手前で踏みとどまったのですか。総理の明確な答弁とともに、政府の統一見解を求めます。
 APECにおいて、最も重要な相手国である米国との会談はいかがなものであったのか、この会談内容をめぐって日米でそごが生じています。
 すべての物品及びサービスを貿易自由化交渉のテーブルにのせると表明したとする米国側と、今回の会談においてそのような発言をした事実はないとする外務省がぶつかったのです。結果として、米国側が発言はなかったことを認めたようですが、発表を訂正する意向はないようです。
 問題は米国の意図にあります。総理が幾ら日本国民に向けて言いわけをしようが、最大最強の交渉相手である米国には、例外なくすべての品目、分野を交渉の対象とするという明確な意思があるのです。
 これに関して、見逃せない報道があります。
 枝野経済産業大臣がカーク通商代表との会談に備える映像において、大臣が手にする発言用の資料には、「野田政権として交渉参加を決断した」「全ての品目・分野を交渉の対象とする用意がある」と明記されているのです。
 これはどういうことでしょうか。APEC出発前の説明の二枚舌、日米会談の説明の二枚舌。政府の誠意は全く見受けられません。
 総理は、このような状況をどのように説明されますか。明確にお答えください。
 そもそも政府は、例外なき関税撤廃と言わないと交渉に入れない、しかし、実際に交渉に入れば例外をとれるかもしれないと言い続けてきました。総理は、例外なき関税撤廃を本気で覚悟して交渉に臨もうとしているのか、それとも、交渉により除外項目をとりに行こうとしているのか、どちらなのでしょうか。
 さらに言えば、交渉で除外項目を獲得することに成算ありと思われているのでしょうか。既に米国側に、交渉品目に例外なしと認識されてしまっています。除外項目獲得についての交渉の大方針について、総理に伺います。特に国民的関心の高い国民皆保険と米の問題についてもお答えください。
 我々は、TPP交渉のような非常に高度な交渉力を要する協議を民主党政権には任せてはならないと確信しております。
 政府は、平成の開国などというスローガンを掲げてきました。しかし、これが事実に反しているのは明らかであります。
 日本は、我が党が政権を担ってきたころから、自由貿易を推進し、これまでの繁栄を築き上げてきました。我が国は、既に十三の国や地域と経済連携協定を結んでおり、TPPの参加国である九カ国のうち六カ国とは既にEPAを結んでいます。日本の平均関税率は四・九%と低く、海外から日本は鎖国状態にあるとは思われておりません。
 したがって、菅前総理の感覚は初めからずれていたとしか言いようがありません。国のトップが初めから我が国は鎖国していると言っていたのでは、条件交渉など到底できません。外交交渉のイロハも御存じなかったようであります。
 また、藤村官房長官や前原政調会長は交渉途中の離脱の可能性を明言しておられ、野田総理もそれを示唆しています。入り口から逃げ腰の国を相手に、他の参加予定国が真剣に向き合うことはありません。国内への配慮のために交渉本体へ悪影響を与えた、極めて稚拙な手法と言えますが、総理の見解を伺います。
 そもそもTPPは、民主党政権が普天間問題をこじらせたために日米の信頼関係が損なわれ、その外交上の失策の穴埋めとして、米国の歓心を買うために苦し紛れに打ち上げたとの疑念がぬぐえません。いわば、民主党の失政に国民がつき合わされたわけであり、この点について総理の認識を改めて伺います。
 TPPについて政府は十分な情報を開示しておらず、世論調査でも八割から九割の方がそのように感じています。国民の不安は高まっており、政府としてこれにどうこたえていくのでしょうか。
 TPPの議論をする上で、避けて通れないものが農業です。
 民主党政権は農家の戸別所得補償制度を推進していますが、生産価格と市場価格の差が拡大していけば、それを埋めていくための巨額の財源を要します。TPPで輸出企業に、そして戸別所得補償で農家にいい顔をし、その結果、財源はないとなれば、まさに、あの詐欺まがいのマニフェストと同じこととなります。
 民主党が五〇%とまで掲げた食料自給率は見る見る低下し、農村は荒廃し、過疎化が進むということになりかねません。また、食料安全保障の観点からの検討も行われている様子もありません。中山間地域や離島も含め、これまで国土を守ってきた地域で生活している人々の暮らしをどう守るのか、それとも守らないのか。
 さらには、今回被災した東北地方では、一次産業を担われてきた方が多いのは御承知のとおりです。オール・ジャパンで復興を支えなければならないこの時期に、今後のなりわいがどうなるか不安を与え、復興への意欲を失わせてしまうことなど、あってはなりません。
 農業対策等についての具体策をお聞かせください。
 医療についても、国民の不安は高まっています。
 これまで、政府は、公的医療保険制度などのサービスは議論の対象となっていないと説明してきましたが、米国政府のTPPの目標に医療制度の自由化を掲げているとの報道もあります。事実としてどうなのか、政府の情報収集と説明はどうなっているのか、日本の医療をどうするのか、その中で国民皆保険制度は守るのか、お答えください。
 TPPには、このほかにも、ネガティブリスト方式の導入、投資に関する紛争解決の問題、金融サービスの郵貯や共済の扱い、政府調達の調達基準額の引き下げの問題等、国民に知らされていない重要な問題が多々あり、これらが広まるにつれて、国民の不安が増している現実があります。
 このような不安をどのように払拭されるのか。政府・与党は、国民の不安をTPPお化けと切り捨てるのみで、真摯に説明しようとしてきませんでした。今後も不誠実な対応をとり続けるのか、伺います。
 TPPによって、我が国は一体何を得られるのでしょうか。
 TPPのメリットとして、十年間で二・七兆円のGDPアップという試算がよく挙げられますが、平均すれば一年当たり二千七百億円、マクロの経済指標としてはいささか物足りない数字であります。これに対して、国内対策費の見積もりは全く説明がありません。
 また、政府の試算は、内閣府、経済産業省、農林水産省とばらばらであり、政府が責任を持って統一的な試算すら出せないのは大いに問題です。野田政権のリーダーシップの欠如はここにもあらわれているわけです。
 このありさまで国民を説得できるとはとても思えませんが、政府がTPPのメリットを堂々と説明できないのはなぜなのか、総理に伺います。
 いずれにせよ、今や、参加云々の事実関係にかかわらず、関係国との協議はスタートしてしまったわけです。もはや、この段階においては、我が国の国益を守る上で、総理や政府の強い意思、高度な外交交渉の技術等が問われることとなり、持てる外交資源を総動員していかなければなりません。
 その際、総理が口にされる国益とは一体何なのか、その国益を守るために具体的にどのような外交交渉を行い、手段を講じていくのか、野田総理に伺います。
 なお、TPPについて、今後ますます議論を要することは明らかです。さまざまな課題を掘り下げ、国民的議論をさらに深めるべく、国会における特別委員会の設置を強く求めます。
 これらのほかにも、外交・安全保障政策の観点等、TPPについてただすべき点は多々あります。しかしながら、本日は言葉の定義等のそもそも論から確認しなければならなかった。
 これは、総理が、国内でTPP推進派と慎重派双方に対していい顔をし、海外でもいい顔をしたことに帰します。真意を明確にしないまま解釈を相手にゆだねた、総理の不誠実な姿勢が招いたものであります。これを二枚舌、三枚舌と言わずして、何と言うのですか。
 総理の正心誠意は、言葉だけであります。民信なくば立たず。政治にとって大事なのは、国民や世界との信頼関係ではないでしょうか。
 これに関して言えば、先ほどブータンの国王陛下より格調高い演説をいただきました。その一方で、昨日、内閣の一員でありながら、極めて非礼な対応があったとのことです。野田内閣の品位と資質が問われることであり、甚だ遺憾であります。
 政治は、国民の理解、国民の後押しなくして進みません。TPPについては、情報不足と政府の説明不足が甚だしいことは、国民共通の認識です。今後、我々は、国民の代表として、国民の不安を払拭するため、これまで述べた、我が国のメリット、デメリット、リスクが何か、いかなる対策を検討しているのか等、さまざまな論点について、真の国益のために政府を問いただす決意です。政府においては、得られた情報を隠さず公開する等、真摯な対応を求めます。
 それすら政府ができないのであれば、一刻も早く退場していただかなければなりません。その際には、我々が、国民的議論を深め、国益に照らした判断を行うのみです。
 我が党はその覚悟を有することを表明し、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕
○内閣総理大臣(野田佳彦君) 自民党谷垣総裁の御質問にお答えをしてまいります。
 交渉参加に向けた関係国との協議の開始についての御質問をいただきました。
 交渉参加とは、現在TPP協定交渉中の九カ国との協議を経て、交渉に加わることです。定義の御質問でした。
 他方、交渉参加に向けて関係国との協議を開始するとは、各国が我が国に求めるものについて、さらなる情報収集に努め、十分な国民的な議論を経た上で、あくまで国益の視点に立って、TPPについて結論を得ていくためのプロセスを開始するということであります。
 TPPについての政府内、与党内、国民各層における議論等を踏まえ、私は、十一日の記者会見で、TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入ることとしたと申し上げましたが、その意味は、これ以上でもこれ以下でもなく、そのまま受けとめていただきたいと考えております。
 経済産業大臣と米国通商代表との会談資料に関する御質問をいただきました。
 昨日の予算委員会で経済産業大臣が答弁したとおり、経済産業大臣は、私が記者会見を行うよりも前に日本を出発しており、結論がわからない段階で、さまざまな可能性を想定した資料を事務方に用意させていました。また、実際の会談では、そうした資料は使用していないものと承知をしております。
 いずれにせよ、政府としては、昨年十一月に閣議決定された包括的経済連携に関する基本方針に基づき、TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入ることとしております。
 次に、TPP協定における関税撤廃の扱い及び国民皆保険制度等への影響についてのお尋ねをいただきました。
 TPP協定については、すべての関税を撤廃することが原則になると考えますが、最終的に、即時撤廃がどの程度となるのか、また、関税撤廃の例外がどの程度認められるかについては、現時点では明らかではありません。
 また、米等の品目の関税の撤廃とサービスや投資では異なった議論がなされていると認識をしており、公的医療保険制度のあり方そのものは議論の対象となっていません。
 いずれにせよ、国益を実現するためにしっかりと協議をしていきます。
 普天間飛行場の移設問題との関連及びTPP交渉からの離脱についてのお尋ねがございました。
 アジア太平洋地域に位置する貿易立国である我が国にとって、世界の成長エンジンであるアジア太平洋地域の成長力を高いレベルの経済連携を通じて取り込むことはプラスであると考えております。こうした点なども踏まえ、政府としては、しっかりと議論し、あくまで国益の視点に立って、TPPについての結論を得ていくこととしており、御指摘のような普天間飛行場の移設と関連づける見方は当たりません。
 また、仮にTPP協定交渉に参加する場合には、守るべきは守り抜き、そしてかち取るものはかち取るべく、まさに国益を最大限に実現するために全力を尽くします。
 TPPに関する情報開示についての御質問をいただきました。
 国民の皆様に対する説明や情報提供が不足しているという指摘は重く受けとめ、今後、各国との協議を通じて得られた情報を含め、政府を挙げて、一層の説明や情報提供にしっかりと努めていく考えであります。
 農業対策等の具体策に関する御質問をいただきました。
 TPP交渉参加の判断いかんにかかわらず、我が国の農林漁業の再生は待ったなしの課題であります。こうした認識のもと、さきに策定した我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画に基づき、政府全体の責任をもって、戸別所得補償制度の適切な推進、農地集積の加速化、青年新規就農の増大、六次産業化等の推進、再生可能エネルギーの供給促進などを五年間で集中展開してまいります。
 その際、基本方針にあるとおり、まずは、農林漁業における震災対策について万全の措置をとります。(発言する者あり)
○議長(横路孝弘君) 静粛に願います。
○内閣総理大臣(野田佳彦君)(続) さらに、中山間地域等の条件の不利な地域にも十分配慮して、さまざまな地域の共存を図り、世界に誇る美しい農山漁村を将来にわたって守っていく所存であります。
 公的医療保険制度についての御質問をいただきました。
 米国は、医薬品へのアクセス拡大のためのTPP貿易目標の中で、医薬品に関連する政府の手続の迅速化や透明性の強化などについて提案を行っていることは承知していますが、公的医療保険制度のあり方そのものについては、TPP協定交渉において議論の対象となっていません。
 いずれにせよ、仮に交渉に参加した場合、日本の誇るべき国民皆保険制度を維持し、我が国の安心、安全な医療が損なわれないよう、しっかりと対応いたします。
 TPPの国民への説明についての御質問をいただきました。
 TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入ることを通じて得ることのできる情報は少なくないと考えております。御指摘のあった農業、医療、投資、金融、政府調達等の分野を初め、各国との協議を通じて得られた情報や、国内への影響、我が国にとってのメリットを含め、政府を挙げて、今後、一層の説明や情報提供にしっかりと努めていく考えであります。
 TPPのメリットについての御質問をいただきました。
 アジア太平洋地域に位置する貿易立国である我が国にとって、世界の成長エンジンであるアジア太平洋地域の成長力を取り込むことの意義は大きいと考えています。TPPは、APEC地域に拡大することが目指されており、実際にカナダやメキシコもTPPについて関心を表明するなど、アジア太平洋自由貿易圏、FTAAPに向けた地域的取り組みの一つとして重要と考えます。
 TPPは、アジア太平洋地域における貿易・投資ルールを定めることにつながっていくものと考えます。そうしたルールづくりに日本が参加することは意義が大きいと考えられます。
 具体的なメリットとして、例えば、高い関税が撤廃されることで産業の空洞化を回避する、すなわち、国内の雇用を守り、ふやすことが可能になること、外国政府による輸出規制等を制限することでレアアース等の希少資源や石油、天然ガス等の安定的な確保を図ることができること、模倣品、海賊版の拡散を防止する仕組みをつくることで日本の技術を守ることができることなどが挙げられます。
 また、影響に関する試算については、内閣官房の試算が、関係府省と調整したシナリオに基づく、広く国際機関によって活用されているモデルを使用して行ったものであり、経済全体への影響についてはこの試算を参照していただくことになります。
 これは、年平均二千七百億円の効果と見るのではなく、将来にわたってGDPが二・七兆円増加するという状態が継続すると解釈すべき数値であります。また、これは関税引き下げに限られた試算であり、サービスや投資、非関税分野などの分野も含めれば、さらに追加的な効果があると考えられます。また、カナダとメキシコが関心を示したところですが、これらの国を加えると数字はさらに大きくなります。
 いずれにせよ、御指摘のTPPのメリットを含め、国民の皆様に対し、一層の説明や情報提供にしっかりと努めていく考えであります。
 最後に、国益とそれを守るための手段についてのお尋ねがございました。
 私は、世界に誇る日本の医療制度、日本の伝統文化、美しい農村、そうしたものは、断固として守り抜く決意であります。
 同時に、先ほども述べたとおり、アジア太平洋地域に位置する貿易立国である我が国にとって、世界の成長エンジンであるこの地域の成長力を取り込むことの意義は大きいと考えます。
 TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る際に、守るべきは守り抜き、そしてかち取るものはかち取るべく、まさに国益を最大限に実現するために全力を尽くす決意であります。
 TPP協定については、多くの省庁にまたがる分野を取り扱っており、協議に当たっては、強力なチームをつくり、私がリーダーシップを発揮し、政府一体となって取り組んでいきます。(拍手)
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○議長(横路孝弘君) 遠山清彦君。
    〔遠山清彦君登壇〕
○遠山清彦君 公明党の遠山清彦でございます。
 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました野田総理大臣のアジア太平洋経済協力会議出席等に関する報告について質問いたします。(拍手)
 野田総理、公明党は、日本の国内政策との整合性を図りつつ、日本の成長に資する形での二国間EPAやFTAの締結を推進し、アジア太平洋地域に二十一世紀型の自由貿易圏を構築することには、基本的に推進の立場であります。
 しかし、今回のAPEC首脳会議に際し、政府が、日本の国民に十分な説明もしないまま、国会での議論も全く不十分なまま、そして、肝心の政府・与党内での明確な結論も得ないまま、あなたがTPP協定への事実上の交渉参加の表明をしたことについては、まことに拙速と批判せざるを得ません。拙速とは、早いだけでできが悪いという意味でありますが、このような判断をされた総理に、強く、冒頭抗議申し上げます。
 同様に、国内の議論が未成熟のまま国際公約としてしまった消費税増税策と同じように、今回の拙速な判断は、民主党政権の外交姿勢の致命的な欠点を象徴しております。その欠点とは、すなわち、戦略性のない二枚舌外交をしているということであります。
 その証拠に、首脳会議直後の日米首脳会談の発言内容をめぐり、日米両政府で、看過できない見解の相違が発生しております。ホワイトハウスの公式声明文によれば、野田総理はオバマ大統領にすべての物品・サービスを貿易自由化交渉のテーブルにのせると発言したことになっております。一方、総理は、帰国後の国会審議でその発言を否定しながらも、この声明文の訂正は求めないという、非常に不可解な言動を貫いておられます。
 このような総理の不可解な姿に、多くの日本の国民は、既に強い不安感を持っているのではないでしょうか。
 そもそも、国内と国外で異なる説明をする戦略性のない二枚舌外交は、今に始まったことではありません。沖縄の普天間移設問題についても、政権交代直後の鳩山内閣時代の大失態により、深刻な膠着状態に陥っております。
 時の総理から最低でも県外を約束された沖縄県民にとって、この問題はもはや覆水盆に返らずであり、以前の合意は盆の上には載っておりません。盆の上に載っていない水を飲めと言われても、そこにないのですから、飲めないのです。ところが、米国政府から見ますと、二〇〇六年の日米合意は有効のままなので、合意という水はまだ盆の上に載っております。よって、アメリカ政府は、日本政府に、早くその水を飲めと言ってくるわけであります。
 野田政権は、まさに今、そのはざまで苦しんでいるわけでありますが、これこそまさに自業自得、戦略性のない二枚舌外交の結果であります。
 このような経緯から、多くの国民が、今回のTPP参加問題が第二の普天間になるのではないかという深い懸念を持っているということを厳しく指摘し、以下、具体的に総理に質問いたします。
 まず、総理はなぜ、TPP協定の交渉参加を決める前に、アジア太平洋自由貿易圏、FTAAPの実現に向けた他の道筋を追求する努力をしなかったのでしょうか。
 従前のAPEC首脳会議声明においては、TPPに併記される形で、ASEANプラス3、ASEANプラス6という枠組みも明示されておりますし、ASEANを除いた日中韓のFTAの実現を優先した方が日本の経済成長に資するという専門家の意見もございます。
 政府がTPP参加のメリットの根拠として提示している内閣府経済社会総合研究所の川崎研一客員主任研究員のGTAPモデル試算の結果を見ても、日本のGDP増加率の比較で、必ずしもTPPが上位とは限らない数値となっております。具体的には、TPPの場合〇・五四%、日中FTAで〇・六六%、日中韓FTAで〇・七四%、日中韓プラスFTAで一・〇四%でございます。
 野田総理は、本日の報告の中で、TPPが唯一交渉が開始されている枠組みであることを強調しておりますが、そもそも日本主導で交渉してもおかしくない日中韓FTA等の実現の努力を怠って、TPP交渉にだけ参加する姿勢は、全く説得力に欠けます。
 米国主導のTPP以外の枠組み構築への努力は全くする気がないのですか。総理の答弁を求めます。
 野田総理が今回拙速にTPP交渉参加の決断をした背景には、交渉段階から入らなければTPPのルールメーキングに参加できず、日本に不利な枠組みになってしまうとの懸念があったと指摘されています。
 しかし、そもそもTPPは、その出発点である環太平洋戦略的経済連携協定、通称P4協定に明らかなように、全品目の関税撤廃が最大の特徴であり、最大のルールであります。ところが、総理を初め野田内閣の閣僚は、国会では、あたかも特定のセンシティブ品目について例外扱いができるかのような発言を繰り返しております。
 改めて伺いますが、今後のTPP交渉参加へ向けた協議あるいは交渉参加後の協議において、日本がこれまでの二国間FTA、EPAにおいて常に除外または再協議の対応をしてきた農林水産品を含む九百四十品目について、関税撤廃の対象から除外することは本当に可能とお考えですか。
 また、もし総理が可能と考えていらっしゃるのなら、その考えをアメリカのオバマ大統領にハワイで明確に伝えたのかどうか、明快に御答弁をいただきたいと思います。
 一方、一部の専門家からは、今回の交渉参加表明は遅過ぎるとの指摘もあります。なぜなら、日本がTPP協定の交渉に仮に参加できるとしても、既に参加している九カ国の同意手続が今後必要であり、参加できるのは早くて来春という見通しがあるからです。一体、総理は、いつ交渉に参加できると考えて今回の決断をしたのでしょうか。
 また、もし、参加した時点で、ルールメーキングがかなり進んでしまい、日本の主張が余り反映されていない段階となると、笑い話にもなりません。なぜなら、参加する段階というのは九カ国の同意を得ているわけでありますから、その時点で参加を撤回すると、日本の国際的信用は地に落ちるからであります。
 ということは、参加撤回の選択肢はないというのが外交常識であります。にもかかわらず、TPP参加への賛否で党内が割れてしまっている民主党の党内事情のためか、政府・与党の幹部の一部は、あたかも途中でのTPP参加撤回の選択肢があるかのように公言をしております。これは普天間移設問題が迷走したときと全く同じ構図であり、私は深い懸念を持っております。
 野田総理、TPP参加撤回の選択肢はあると本当にお考えですか。この質問への答弁で、普天間のときのように再び国民を欺くようであれば、もはや、あなたの総理辞任では済まされないほど重大な問題になります。そのことを認識された上で、率直にお答えをいただきたい。
 次に、TPPと農業について伺います。
 このテーマをめぐる議論では、日本の農業は規制と関税に保護された産業であり、国際競争力が弱いという主張が頻繁になされ、それを前提に、日本の農業再生のためにもTPP参加はよい契機であるとの意見も聞かれます。
 しかし、関税がゼロになりますと、稲作などの土地利用型農業は日本で壊滅的打撃を受けることは、火を見るより明らかであります。日本の農地の集約は、民主党政権の再生目標でも一区画二十から三十ヘクタールであり、とてもではないが、一区画百ヘクタール規模のオーストラリアには及びません。土地条件の格差、これは農家の努力では乗り越えられないものであります。
 野田総理は、国会で、TPPに参加するしないにかかわらず、日本の農業再生支援を強化する決意を繰り返し述べておられますが、その具体的内容は何でしょうか。もし、一部の欧米諸国をモデルに所得補償措置の強化をするならば、莫大な財源が必要であり、その財源確保の手法についても語らなければ、説得力はありません。この点についての総理の答弁を求めます。
 また、TPP参加により、食料自給率が低下する可能性があります。民主党は、マニフェストにおいて、現在四〇%の自給率を五〇%まで引き上げることを明記しておりますが、この公約も断念されたと理解してよろしいのでしょうか。
 これから世界人口が百億人へ向かって増加していくと言われる中で、食料の確保が中長期的に困難になることが予測されておりますが、そういったときに日本の食料の対外依存率を高めることは、国家の安全保障リスク上の問題が大きくあります。総理の見解を伺います。
 TPP参加の影響は、日本の国境を守っている離島にも及ぶ可能性があります。
 日本全体の島の数は六千八百五十二島でありますが、現在、人が住んでいる有人離島の数は四百二十一にすぎません。この数は、終戦直後からほぼ半減いたしております。ただでさえ超高齢化と人口減少に苦しむ離島でありますが、例えば、TPP参加により砂糖の関税などが撤廃されますと、一部の離島の基幹産業であるサトウキビ農業は壊滅し、離島のさらなる無人島化が進むことが懸念されます。
 私は、現在、公明党離島振興対策本部長として、来年度末に期限を迎える離島振興法の改正案をつくる与野党実務者協議に参加しておりますが、その中では、離島の定住促進が最大の課題であります。それは、島嶼国日本の国境はほとんど離島によって形成されており、また、その離島に、さまざまな不利条件の中でも、暮らしてくださる国民の方々がいるからこそ、国境が守られているという認識に基づいております。
 野田政権の閣僚には、この基本的認識が欠如しているのではありませんか。TPP参加が離島に与える影響並びに国境を守っている離島定住者に与える影響について、総理がどのような認識をお持ちか、率直にお答えをいただきたいと思います。
 次に、TPPと日本の雇用問題について伺います。
 TPP参加の最大のメリットは、日本の輸出産業の活性化との指摘があります。確かに、関税がゼロになれば、日本製品の競争力は高まり、輸出が活性化され、経済成長を押し上げる可能性があります。
 しかし、製造業を中心として、日本の工場が昨今の円高なども背景に海外移転をふやす傾向がさらに強まると、その工場で雇用される人の大半は外国人労働者となり、日本人労働者の所得向上には必ずしもつながりません。日本企業の海外工場で、安い人件費で雇われた外国人が製造した製品が、日本に関税なしで逆輸入され、それを所得がふえない日本人が購入する、こんな事態が待っているとすれば、これも余りメリットとは言えないのではないでしょうか。
 野田総理の、TPP参加が日本の雇用に与える影響についての見解を伺います。
 中国や韓国のTPP参加の可能性についても、総理の見識を伺います。
 TPPへの日本参加を主張する方々は、過去十年間で急激な経済成長を実現した隣国の中国や韓国に対抗する手段として、TPPの意義を強調する傾向があります。しかし、中国も韓国も、両国ともいまだにTPP参加の意向を示しておりません。韓国経済は貿易依存率が八〇%を超えており、最もTPPに前向きになりそうな国ですが、それでもTPPに参加しておりません。
 野田総理は、なぜ中国や韓国がTPPに参加しないのか、その理由についてどのような見解をお持ちでしょうか。また、あわせて、将来的にこの両国が本当にTPPに参加するのかどうか、どのような見通しをお持ちなのか。答弁を求めます。
 最後に、野田総理は、TPPについて、バスに乗りおくれるなと言わんばかりの姿勢を示されてきました。しかし、きょうお聞きしたような数多くの懸念事項にははっきりと答えず、国民に十分な説明をしないままでは、運賃が幾らか明示されていない、行き先も表示されていないようなバスに乗れと言っているのと同じであります。そんなバスには、だれも乗りません。
 早期に国会にTPPに関する特別委員会を設置し、日本に対するメリット、デメリットを徹底的に国民の前で議論することを求め、私の代表質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕
○内閣総理大臣(野田佳彦君) 遠山議員の御質問にお答えをしてまいります。
 まず、TPP以外の経済連携への取り組みについてのお尋ねがございました。
 所信表明演説でも述べたとおり、包括的経済連携に関する基本方針に基づき、より幅広い国々と高いレベルでの経済連携を戦略的かつ多角的に進めていく考えであり、日中韓FTAについても早期交渉を目指します。
 我が国としては、TPP交渉参加に向けて関係国と協議に入るとともに、御指摘のありました日中韓FTAや、ASEANプラス3、ASEANプラス6といった取り組みも積極的に推進し、アジア太平洋地域における二十一世紀型の貿易・投資ルールの形成に向け、主導的役割を果たす考えであります。
 TPP交渉における除外品目についての御質問をいただきました。
 今回の日米首脳会談においては、私からオバマ大統領に対して、TPP交渉参加に向けて関係国と協議に入っていくということ、また、昨年十一月に決定した包括的経済連携に関する基本方針に基づき、高いレベルの経済連携を進めていくという趣旨の話をいたしました。
 TPP協定については、すべての関税を撤廃することが原則になると考えますが、最終的には、即時撤廃がどの程度となるか、また、関税撤廃の例外がどの程度認められるかについては、現時点では明らかではございません。仮にTPP交渉に参加する場合には、守るべきものは守り抜き、そしてかち取るものはかち取るべく、まさに国益を最大限に実現するために全力を尽くす決意であります。
 TPP交渉参加への時期についてのお尋ねがございました。
 各国が日本の参加に関する態度を決定するまでに要する時間は、各国の国内手続などによって異なるため、一概に申し上げるのは難しいと考えます。
 一方、先般のTPP協定参加国首脳会議で発表されたTPP協定の輪郭によれば、さらなる作業が必要な分野が多く残されていると承知しており、仮に交渉参加をする場合には、我が国としても今後のルールづくりに参画できると考えております。
 続いて、TPP交渉からの離脱についてのお尋ねがございました。
 TPP交渉参加に向けて協議に入る際には、守るべきものは守り抜き、そしてかち取るものはかち取るべく、まさに国益を最大限に実現するために全力を尽くしたいと思います。そのことに尽きるということであります。
 次に、農業再生策と食料の安定供給についての御質問がございました。
 我が国の農林漁業の再生は、TPP交渉参加の判断いかんにかかわらず、待ったなしの課題であります。また、食料の安定供給の確保は国民に対する国家の基本的な責務であり、国内の農業生産の増大を通じて食料自給率の向上を図っていくことが必要であります。
 こうした認識のもと、さきに策定した我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画に基づき、食料自給率カロリーベース五〇%、生産額ベース七〇%などを目指し、戸別所得補償制度の適切な推進、農地集積の加速化、青年新規就農の増大、六次産業化等の推進などの戦略を五年間で集中展開してまいります。
 なお、高いレベルの経済連携と、農林漁業の再生や食料自給率の向上との両立を実現するためには、基本方針にある諸課題をクリアし、なおかつ、国民の理解と安定した財源が必要であります。直接支払い制度の改革等も含め、具体的な方策は、国民的な議論を経て、個別の経済連携ごとに検討することとしています。
 離島に関する認識についてのお尋ねがございました。
 排他的経済水域の保全、サトウキビの生産や観光といった特色ある地場産業の展開など、重要な役割を担っている我が国の離島については、TPP交渉参加の判断いかんにかかわらず、振興を推進していく必要があると認識をしています。離島の状況や課題に的確に対応できるよう、例えば、定住の促進に必要な生活基盤の整備や基幹産業の振興など、さまざまな施策に取り組んでまいります。
 TPP参加による雇用の影響についての御質問をいただきました。
 内閣官房が行った試算では、TPP協定交渉九カ国と我が国が物品貿易について一〇〇%関税撤廃した場合、結果として、日本の実質GDPが二・七兆円増加するとの結果が得られています。この試算では国内の雇用の増減については分析を行っていないため、雇用面での定量的なメリットについて確たることを申し上げられませんが、一般に、GDP増加に伴う雇用への波及は期待されるものと考えています。
 なお、産業空洞化による雇用の喪失を防ぐため、先般の円高への総合的対応策に基づき、立地補助金等、あらゆる政策手段を講じてまいります。
 最後に、韓国、中国のTPP参加の可能性についてのお尋ねがございました。
 TPP協定は、韓国、中国を含むAPECエコノミーすべてに開かれたものであり、参加するか否かはそれぞれのエコノミーの判断と考えます。
 その上で、昨年の横浜APECにおいて、アジア太平洋自由貿易圏、FTAAPについて、ASEANプラス3、ASEANプラス6及びTPP協定といった地域的な取り組みを基礎としてさらに発展させることにより、包括的な自由貿易協定として追求されるべきことが確認をされています。
 したがって、両国も、TPP協定がFTAAPに向けた地域的取り組みの一つであるとの認識を共有していると考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(横路孝弘君) 笠井亮君。
    〔笠井亮君登壇〕
○笠井亮君 私は、日本共産党を代表して、APEC報告に対して質問いたします。(拍手)
 総理は、ホノルルでのAPEC首脳会議で、TPP協定の交渉参加に向けて関係国との協議に入ると表明しました。日本列島に広がった反対の世論と運動、慎重な対応を求める意見にも耳をかさず、国民への説明も全く不十分なまま、交渉参加を表明したこと自体が極めて重大です。厳しく抗議し、撤回を強く求めるものであります。
 全国各地からは、政府はみずからに都合のよい情報しか開示していない、将来にわたる根本的な問題が極めて多く、取り返しのつかない禍根を残すと厳しい批判が一斉に上がっています。このような国民の声を踏みにじり、国会を軽視するやり方は、断じて容認できません。総理の見解を求めます。
 総理は、国益は守ると繰り返します。問題は、どんな方針で協議に臨もうとしているかであります。
 昨日の参議院予算委員会で、総理は、日米首脳会談では一年前に菅内閣が閣議決定した基本方針に基づいて発言したと述べ、それは、センシティブ品目について配慮を行いつつ、すべての品目を自由化交渉対象とすることだと答弁されました。これが野田内閣として関係国との協議に臨む基本方針ということなのか、改めて確認したい。
 そうだとすれば、センシティブ品目として従来我が国が除外または再協議の対象にしてきた、米、小麦、砂糖、乳製品、牛肉、豚肉、水産品等の農林水産品を含む九百四十品目などは、配慮するだけで、除外されない。つまり、すべての品目を自由化交渉対象とするというのが日本政府の方針だということではありませんか。これでは、米などのセンシティブ品目が対象とならないという保証など、何もないではありませんか。
 米政府が、野田総理はすべての物品・サービスを貿易自由化交渉のテーブルにのせると発言したと発表するのも当然であります。これほど国益を損ねるものはありません。そうでないと言うなら、センシティブ品目は、交渉対象にしない、除外すると明言できますか。明確な答弁を求めます。
 次に、今回ホノルルで行われたTPP交渉について質問します。
 APEC議長のオバマ米大統領は、総括会見で、TPPのルールについてアメリカを含む九カ国が大枠合意に達したと述べました。これにより、TPPとはいかなるものか、一層鮮明になってきました。
 この大枠合意の冒頭に明記されているのが、包括的な市場アクセス、つまり、物品財、サービス貿易、投資に係る関税とほかの障壁を撤廃することであります。
 総理は、守るべきところは守ると言いますが、大枠合意では、すべての関税・非関税措置を全面撤廃するという大原則が既に明記されている、そういう認識をお持ちですか。既にそういう大枠ができ上がりつつあるTPPとわかっていながら、なぜ交渉に参加しようとするのですか。明確な答弁を求めます。
 既に大枠合意された交渉に参加するとどうなるか。
 外務省提出資料のTPP協定交渉の分野別状況には、二十一交渉分野にわたり、我が国にとり慎重な検討を要する可能性がある点が列挙されています。例えば、貿易の技術的障害分野では「遺伝子組換え作物の表示などの分野で我が国にとって問題が生じる可能性がある」と述べ、原産地規則分野では「輸入原材料を用いた場合も原産品と認めるルールとなる場合、TPP参加国以外の国からの輸入原材料を使用した産品が輸入される可能性がある」、このことを指摘しています。
 日本がTPP交渉に参加すれば、これらの問題点さえ、検討の余地なく、自由化原則に沿って具体化が進むことになるではありませんか。
 次に、TPP交渉参加に向けたアメリカとの協議についてであります。
 日本がTPP交渉に参加するためには、既に交渉に参加している九カ国の同意が必要であり、とりわけアメリカとの関係では、日米政府間の事前協議段階で米側の対日要求をのまなければ日本の交渉参加が米議会で承認されない。先日の予算委員会で私が指摘したことがいよいよ明確になってきました。
 日米首脳会談後の米大統領報道官発表は、オバマ大統領は、カーク通商代表に対して、日本の立候補を検討する国内プロセスを開始するよう命ずるつもりである、そのプロセスには、非関税障壁を含め、農業、サービス、製造業の各分野における特定の懸念材料について、議会及び米国の各利害関係者と協議することが含まれると述べました。カーク代表は、早速、日本に対して、アメリカ産牛肉輸入制限大幅緩和、郵政の保険分野、自動車の非関税措置緩和などを求めると表明したのであります。
 総理、アメリカはこれらについて具体的に何を求めてきたのか、国民と国会に対して明確に報告されたい。
 オバマ大統領は、日米首脳会談直前のAPEC・CEOビジネスサミットで、日本がどの程度TPPに関係する困難なプロセスをくぐるつもりがあるのか、その感触は総理からつかめるだろう、それは例えば農業分野であり、彼らにとってはそれは難しい問題となると述べ、日本の本気度を確かめると公言しています。また、輸出倍増、雇用創出がアメリカにとってのTPPの目的だと、あけすけに語っています。
 そのために、日本に対して、TPP交渉参加を認めるかどうかをてこにして関税・非関税措置の全面撤廃を迫り、日本がそれを受け入れなければ交渉参加を認めない、さもなくば丸のみせよ。これほどの屈辱的外交はありません。総理の見解を伺います。
 そこで、アメリカの対日要求にかかわって、以下の項目をどうするのか、具体的にお答えいただきたい。
 牛肉輸入制度について、アメリカは、日本市場を再び開放することは重要な優先事項であると明記しています。
 今回の日米首脳会談で、総理は、BSE対策全般の再評価にかかわって、現在、月齢二十カ月以下の牛に限って認めている輸入を月齢三十カ月以下に広げる考えを伝えましたが、さらに、アメリカの要求にこたえて、米国産牛肉輸入の自由化を進めるつもりですか。
 総理は国民皆保険は守ると言われますが、それは、だれでも、保険証一枚で、どこでも医療が受けられるというのが原則です。ところが、アメリカの保険業界や医薬品メーカーは、お金がないと受けられない自由診療を持ち込もうと要求しています。外務省も、混合診療の全面解禁が議論される可能性を否定していません。それを許せば、日本の保険制度そのものが崩されていくことになる。そうした対日要求にどんな態度をとるのですか。
 ISD、投資家対国の紛争解決条項は、多国籍企業が、この条項を利用して、進出先国で有利になるように規制措置を変更させようとするものです。現に米韓FTAには盛り込まれ、今、韓国で大問題となっています。
 アメリカからこの条項を要求された場合、日本国民の安心や安全を守る立場から、きっぱり拒否できるのですか。
 今、日本に求められているのは、アメリカ一辺倒から脱し、アジアを含む各国と、経済主権を尊重した互恵平等の経済関係を発展させることであり、TPP参加では断じてありません。
 最後に、普天間問題について質問します。
 総理は、日米首脳会談で、普天間基地の移設問題に関する日米合意の実現を推進するため、辺野古新基地建設のための環境影響評価書を年内に提出することをオバマ米大統領に約束しました。
 これは、沖縄県民の総意を真っ向から踏みにじる、極めて重大な背信行為と言わなければなりません。だからこそ、沖縄県議会は、十一月十四日、環境影響評価書の提出断念を求める意見書を全会一致で可決したのであります。
 総理、今、日本政府がやるべきことは、負担軽減と言いつつ、沖縄に新たな負担、新たな基地を押しつけるのではなく、日米合意を撤回し、普天間基地の即時閉鎖、無条件返還のため、米政府と正面から交渉することではありませんか。
 明確な答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕
○内閣総理大臣(野田佳彦君) 笠井議員の御質問にお答えをしてまいります。
 まず、TPPに対する国民の声についてのお尋ねがございました。
 TPPについては、国民の間に、賛成から慎重な対応を求める声まで、多様な御意見があると承知をしています。国民の皆様に対する説明や情報提供が不足しているという指摘を重く受けとめ、今後、各国との協議を通じて得られた情報を含め、政府を挙げて、一層の説明や情報提供にしっかりと努めていく考えであります。
 今後、関係各国との協議を開始し、各国が我が国に求めるものについて、さらなる情報収集に努め、十分な国民的な議論を経た上で、あくまで国益の視点に立って、TPPについての結論を得ていくことにしたいと考えております。
 続いて、センシティブ品目の除外等についての御質問をいただきました。
 TPP協定については、すべての関税を撤廃することが原則になると考えますが、最終的に、即時撤廃がどの程度となるのか、また、関税撤廃の例外がどの程度認められるかについては、現時点では明らかではありません。
 いずれにせよ、仮にTPP協定交渉に参加する場合には、守るべきは守り抜き、そしてかち取るものはかち取るべく、まさに国益を最大限に実現するために全力を尽くします。
 関税・非関税措置の撤廃とTPP交渉への参加についての御質問をいただきました。
 先般発表されたTPP協定の大まかな輪郭に関する文書に、御指摘のような記述があるとは承知をしていません。また、TPP協定において、先ほども申し上げたとおり、最終的に、関税の即時撤廃がどの程度になるか、また、関税撤廃の例外がどの程度認められるかについては、依然として明らかではございません。
 いずれにせよ、関係国との協議を行うに当たっては、国益にのっとって対応を決めていきたい、結論を出していきたいというふうに考えております。
 自由化が検討の余地なく進む可能性についての御質問をいただきました。
 先般発表されたTPP協定の大まかな輪郭によれば、さらなる作業が必要な分野が多く残されていると承知しており、仮に交渉参加をする場合には、我が国としても今後のルールづくりに参画できるものと考えています。
 いずれにしても、世界の成長エンジンであるアジア太平洋地域の成長を取り込み、我が国の経済の活性化につなげていくためには、国と国との結びつきを経済面で強化する経済連携の取り組みは欠かせないと考えております。その上で、国益を実現するためにしっかりと対応していきます。
 米国の具体的な対日要求についての御質問をいただきました。
 カーク米国通商代表は、記者会見において、記者から、御指摘の三分野が米国の関心事項かと問われたのに対し、それらの分野が米国にとっての懸案事項であり、これまでどおり二国間で働きかけていく旨述べたものと認識をしています。
 TPPと米国との交渉についての御質問をいただきました。
 今後、TPP交渉の参加に向けて関係国と協議をしていく中で、個別の二国間懸案事項への対応が求められる可能性は否定できませんが、その場合でも、我が国としては、何が対応可能で何が対応困難かを明確にし、あくまでも個別に対応することとなります。
 いずれにせよ、国益を実現するためにしっかりと協議してまいります。
 米国産牛肉輸入等の米国の個別要求に関する御質問をいただきました。
 BSE問題については、TPP協定交渉とは別に、科学的知見に基づき、個別に対応する考えであります。
 公的医療保険制度のあり方そのもの等については、TPP協定交渉において議論の対象となっていません。
 いわゆるISDを含め、国際約束の締結に当たっては、国内法との整合性を図ることとしており、我が国の国内法とそごが生ずるといった問題が発生することは想定をされていません。
 いずれにせよ、国益を実現するためにしっかりと協議してまいります。
 普天間飛行場の移設に関する米国政府との交渉についての御質問をいただきました。
 普天間飛行場の移設については、同飛行場の危険性を一刻も早く除去し、沖縄の負担軽減を図るということがこの内閣の基本的な姿勢であります。
 現在の日米合意は、全体として、少なくとも現状に比べると、沖縄の大きな負担軽減につながると考えており、政府としては、この合意を着実に進めていく方針でございます。
 沖縄において県外移設を求める声があることは承知していますが、政府としては、引き続き、沖縄の皆様の声に真摯に耳を傾け、政府の考えを誠実に説明し、沖縄の皆様の御理解を得るべく、一歩一歩努力していく考えであります。(拍手)
    〔議長退席、副議長着席〕
    ―――――――――――――
○副議長(衛藤征士郎君) 服部良一君。
    〔服部良一君登壇〕
○服部良一君 私は、社会民主党の服部良一です。
 社会民主党・市民連合を代表して、総理のAPEC報告につき、総理に質問いたします。(拍手)
 最初に、TPPについて、総理がオバマ大統領に一体何を言ったのか、質問いたします。
 ホワイトハウスの十一月十二日付発表文には、貿易自由化交渉のテーブルにはあらゆる物品及びサービスをのせるという野田総理の発言を大統領が歓迎したと明記されています。アーネスト大統領副報道官は、十四日の記者会見で、この発表文は、オバマ大統領と野田総理との二人きりの協議に基づいていると明言されました。
 アメリカは言っている、日本では言っていない。一体どっちなんですか。それとも、総理はオバマ大統領にすべてをテーブルにのせると密約でもしたんですか。何を言ったのか、この国会の場で正確に説明してください。
 ある外務省幹部は、例外、除外を前提とした参加が認められないのは交渉の前提だと述べています。本当は、やはり、すべてをテーブルにのせるしかないのではありませんか。イエス、ノーでお答えください。
 すべてをテーブルにのせるということでないのであれば、米側も発言がなかったことは認めていると言うだけでは済みません。これは発言事実をめぐる問題であって、米政府の解釈上の問題ではありません。事実に反するならば、今からでも訂正を求めてください。はっきりとお答えください。
 私には、野田政権が、アメリカや財界の声ばかりに耳を傾け、国民生活のことを軽視しているように見えます。総理は、国益を損ねてまで交渉に参加することはないと述べていますが、ここで言う国益とは何ですか。具体的にお示しください。
 総理は、国民皆保険は断固として守ると言いましたが、本当に断固守れますか。
 米国は郵貯、簡保の存在を認めないのではないかという質問に対して、玄葉外務大臣は、郵政改革関連法案はWTOのルールと整合していると明言しましたが、これが日本政府の方針であり、決して譲ることはありませんね。
 小宮山厚労大臣は、日本の食品安全基準を下げるような提案を受け入れない、医薬品についても、国民の生命や健康をしっかりと守るように対応していきたいと答えていますが、妥協はしませんね。
 現在四〇%の食料自給率を五〇%に高めることができますか。日本の農業、畜産業を本当に守れますか。
 総理、はっきりとお約束ください。
 総理、国民生活が第一はどこへ行ってしまったんですか。
 弱肉強食、新自由主義政策と言われた小泉・竹中構造改革路線、それによって広がった格差に対するノーが二年前の政権交代でした。格差解消の明確な見通しが得られないまま、東日本大震災に見舞われ、皆で必死で復興しようとしている今、なぜTPPなのですか。TPP参加は、小泉路線とどこがどう違うのですか。
 アメリカが求めてくることは、日米構造協議や年次改革要望書の延長線上であることは明らかです。そのアメリカの圧力に抗して、アメリカ化でないTPPを実現することができるのですか。
 TPPで上がる利益は、アメリカや日本の大企業の株主や経営者を潤すだけで、結局、安定的な雇用の増加や地方の再建、国民生活の再建につながらないのではないでしょうか。おまけに、製造業派遣や登録型派遣を原則禁止とした労働者派遣法案を骨抜きにする動きすらあります。本当に情けない。
 総理、TPPで国民生活の格差が広がることは絶対にないと断言できますか。
 総理が、アジアにおいて、どのようにして、協力を深め、経済圏を構築していこうとしているのか、全くわかりません。TPP未参加の中国、韓国、インドなどは、明らかに警戒を強めています。アジア太平洋といいつつ、太平洋の向こう側へとすり寄る日本を、アジアの経済発展、地域協力のパートナーと見るでしょうか。
 総理は、TPP協議入りで、日中韓の経済連携の動きも加速する、あるいは、安全保障面で安定した環境につながるなどとしていますが、アジア諸国は逆のメッセージを受け取っていませんか。
 中国は、従来は、ASEANプラス日中韓の枠組みを模索し、日本が主張する、インド、オーストラリア、ニュージーランドを加えたASEANプラス6には消極的でしたが、現在は前向きな姿勢に転じつつあります。しかし、TPP路線は、この展開に冷や水を浴びせることになりませんか。
 総理は、日中韓やASEANプラス6の枠組みをどう進めるおつもりですか。抽象論、一般論ではなく、実現可能性のある具体的道筋でお示しください。その面で、APECや二国間会談等でどのような成果が上がったのか、具体的に御説明ください。
 北東アジアの安定と協力の深化は、日本にとって極めて重要です。その点で、最近注目すべき動きがあります。
 李明博韓国大統領とメドベージェフ・ロシア大統領は、今月二日、ロシアから北朝鮮経由で韓国に天然ガスを供給するパイプライン計画の推進を確認しました。関連して、北朝鮮への通過料として、発電所を建設する案が検討されていると報じられています。北東アジアの緊張緩和なくしては、考えられない動きです。
 ロシア大統領とエネルギー分野での協力の強化を確認したということですが、今後ますます天然ガスの安定的かつ安価な調達が必要となる日本にとっては、気になる動きです。韓国からさらに日本に延ばす選択肢もあると思われませんか。それが可能になる環境ができることが非常に重要です。北東アジアにおける大事な動きを見過ごし、機を逸することにならないか、懸念します。
 総理の見解と、今後の北東アジアの平和と安定、経済協力の展望をお聞かせください。
 最後に、日米首脳会談で、総理は、米軍普天間基地の辺野古移設について、環境影響評価書を年内に提出する準備を進めていると説明されました。
 総理は沖縄の理解と言いますが、仲井真沖縄県知事は県外移設を繰り返し求めていますし、この十四日には、沖縄県議会で、「米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対し、環境影響評価書の提出断念を求める意見書」が全会一致で可決されました。この決議には、「県内移設に反対を求める県内四十一市町村長及び、全県議会議員を含む県民の総意を無視するものであり」「県民の生命、財産及び生活環境を守る立場から、普天間飛行場の県内移設に反対し、国外・県外に移設を求めるとともに、環境影響評価書の提出を断念するよう強く要請する」とあります。社民党だけが言っているんじゃないんです。民主党も自民党も、すべての会派が賛成しているんです、賛同しておるんです。
 この意見書を携えて、県議会の代表団が上京します。総理は、県議団に直接お会いになりませんか。そして、この意見書に対して、どのように誠意を持って回答されますか。
 普天間問題が進展しないことへの米政府や議会のいら立ちは、総理も十分に感じておられるでしょう。米国の求める具体的進展とは、公有水面埋立許可であることは明らかです。
 辺野古移設を強行するため、県知事が持つ権限を奪う特措法を制定することは、将来にわたって絶対にありませんね。総理自身の口から明確に御答弁ください。
 総理、いつまで日米合意にこだわり続けるおつもりですか。できないことをいつまでもできるできると言ってアメリカに期待を持たすよりも、できないことはできないとはっきり言う方が、日米の信頼関係になるんじゃないですか。
 総理の決断を求め、今後の展望をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕
○内閣総理大臣(野田佳彦君) 服部議員の御質問にお答えをいたします。
 まず、APECの際の日米首脳会談についての御質問をいただきました。
 私からは、オバマ大統領に対しまして、TPP交渉参加に向けて関係国と協議に入っていくということ、また、昨年十一月に決定した包括的経済連携に関する基本方針に基づき、高いレベルの経済連携を進めていくという趣旨の話をしたのであって、御指摘のような密約を行ったという事実はございません。
 米側発表資料については、発表直後、説明、訂正を求めましたが、今次首脳会談での私の発言そのものを引用しているわけではないことが確認されたので、我が国としてもその旨をAPECを取材するマスコミに発表し、既に内外で報じられています。したがって、改めて訂正まで求める必要はないと考えております。
 TPP協定については、十年以内にすべての関税を撤廃することが原則になると考えますが、最終的に、即時撤廃がどの程度となるか、また、関税撤廃の例外がどの程度認められるかについては、現時点では明らかではありません。
 いずれにせよ、国益を実現するためにしっかりと対応していきます。
 国益としての国民皆保険、郵政、食品安全、医薬品及び農業、畜産業について御質問をいただきました。
 私は、世界に誇る日本の医療制度、日本の伝統文化、美しい農村、そうしたものは、断固として守り抜く決意であります。TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る際には、こうした決意のもとで、守るべきは守り抜いて、そしてかち取るものはかち取るべく、御指摘の分野を含めて、まさに国益を最大限に実現するために全力を尽くす決意であります。
 TPPの必要性や格差拡大の懸念などに関する御質問をいただきました。
 震災からの復旧復興は、私の政権の最重要かつ最優先の課題であり、そのために全力で取り組んでいくことは言うまでもありません。
 TPP協定は、世界の成長エンジンであるアジア太平洋地域の成長力を取り込み、日本経済の活性化につながるものであります。これは、雇用の増加や国民生活の改善に資するものであり、震災からの復旧復興にとっても重要であると考えています。
 このため、今後、交渉参加に向けて関係各国との協議を開始し、各国が我が国に求めるものについて、さらなる情報収集に努め、十分な国民的な議論を経た上で、あくまで国益の視点に立って、TPPについての結論を得ていくこととしたいと考えています。
 私は、御指摘のあった弱肉強食のような考えにくみするものではなく、世界に誇るべき日本の医療制度や美しい農村などを断固として守り抜き、分厚い中間層によって支えられる、安定した社会の構築を実現する決意であります。
 なお、TPP協定は、先進国、途上国を含む複雑な利害が錯綜する多国間でのルールづくりの場であり、共通の利害を有する国々が連携することで、一部の国の利益が押しつけられるようなことは難しい性格のものとなっていると考えております。
 次に、アジアでの経済圏の構築とAPECでの成果についてのお尋ねがございました。
 TPP協定交渉は、APEC加盟エコノミーに開かれたものであり、ASEANプラス3、ASEANプラス6とともに、アジア太平洋自由貿易圏、FTAAPに向けた地域的取り組みの一つとしても重要であります。
 我が国としては、TPP交渉参加に向けて関係国と協議に入るとともに、日中韓、ASEANプラス3、ASEANプラス6といった取り組みも積極的に推進をし、アジア太平洋地域における二十一世紀型の貿易・投資ルールの形成に主導的な役割を果たす考えであります。
 今回のAPEC首脳会議を通じて、世界成長の牽引役であるアジア太平洋地域の確かな可能性を、各首脳と改めて確認することができました。
 北東アジアの安定と協力の展望についての御質問をいただきました。
 御指摘の十一月二日の韓国とロシアの間の首脳会談における議論は承知をしており、このような動きについては、北東アジア地域における協力関係の今後や我が国のエネルギー安全保障を考えていく上で、注目をしています。
 同時に、北東アジア地域の安定のため、我が国は、北朝鮮の核問題等の解決に向けて米国や韓国とこれまでも緊密に連携して取り組んできており、今後とも、地域の関係国と協力しながら、積極的な努力を続けていく考えであります。
 最後に、普天間飛行場の移設に関し、沖縄県議会の意見書、特措法の制定及び今後の展望などについて、一連の御質問をいただきました。
 普天間飛行場の移設問題については、日米合意を踏まえつつ、同飛行場の危険性を一刻も早く除去するとともに、沖縄の負担軽減を図ることがこの内閣の基本姿勢であります。
 今般、沖縄県議会が意見書を可決したことは承知しておりますが、県議会の代表団の方々と直接お会いするかについては、私自身の予定等の諸事情を勘案しながら対応したいと考えています。
 また、環境影響評価の手続については、環境影響評価書を年内にも提出できる準備を進めており、沖縄の御理解も求めながら、法令にのっとって適切に進めてまいりたいと考えています。
 現在の日米合意は、全体として、少なくとも現状に比べると、沖縄の大きな負担軽減につながると考えております。政府としては、引き続き、沖縄の皆様の声に真摯に耳を傾けるとともに、政府の考えを誠実に説明し、沖縄の皆様の御理解を得るべく、一歩一歩努力していく考えであります。
 なお、特措法を制定することは、念頭に置いておりません。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(衛藤征士郎君) 柿澤未途君。
    〔柿澤未途君登壇〕
○柿澤未途君 みんなの党の柿澤未途でございます。
 みんなの党を代表して、野田総理のAPEC帰国報告に対して質問をいたします。(拍手)
 総理はどうしたいんですか。TPPには参加したいんですか。それとも、今はそのつもりはないんですか。
 このままだと日本はじり貧だ、覚悟を持って攻めの開国を行うべきだ、だからこそ、国民は、当初の野田総理の姿勢を支持していたのです。それが、民主党をぶっつぶしてでもと反対派の声に押されて、一歩後退、二歩後退。そんな野田総理の不決断症候群が国民の失望を買っているのではありませんか。きょう発表の時事通信の世論調査では、野田内閣の支持率は三五%で、早くも支持と不支持が逆転をしてしまったそうであります。
 総理はどうしたいんですか。TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入るとのどっちつかずの文言は、この際、御答弁に当たってのNGワードとさせていただきます。はっきり、総理はどうしたいのか言っていただきたいとお願いを申し上げます。
 みんなの党は、TPP早期交渉参加に賛成の立場を一貫してとってまいりました。
 菅総理が第三の開国と言ってTPP交渉参加を打ち出したのは、昨年十一月のAPECの前であります。にもかかわらず、現政権は、ここまで意思決定をぐずぐずおくらせ、結局、交渉参加に向けた関係国との協議という、わけのわからない文言で意思表示しましたが、その直後には、交渉中の九カ国が、ルールの大枠合意にこぎつけてしまいました。
 この間、実に一年以上を空費したために、自由貿易のルールメーキングの形成段階から参加する、そして日本に有利な条件を引き出す、こういう最大の国益を損なったのではありませんか。
 マレーシアの首相からは、これまでに九カ国が合意したルールを受け入れることが日本参加の前提だと、日本の参加に高いハードルを課す発言も出てきています。これを受け入れるのですか。
 世界の中で対等な競争条件で戦える産業構造をつくらないと、TPP参加により、裸のまま、無防備に扉をあけ放つようなことになりかねません。
 そして、現政権は、TPP交渉参加には前のめりのようですが、既得権益に切り込む改革や不合理な参入障壁の撤廃には後ろ向きとしか見えません。農業、医療といった閉鎖性の高い国内市場で非効率なまま温存されている産業分野について、TPP参加による自由化の波の中で、どのように改革を進めていくんですか。
 農業について、第四次補正予算の編成を総理は口にしています。しかし、その内容が現状の戸別所得補償の積み増し等であるとするならば、それは、かえって、小規模零細な兼業農家中心の我が国の農業の抱える弱点をそのまま固定化する、あるべき農業改革とはまるで逆方向のものと言わなければなりません。農家に金をばらまけば反対がおさまると考えるなら、ウルグアイ・ラウンド対策のばらまきと全く同じであります。このようなばらまきを続けても、日本の農業は強くならず、TPPで本当に壊滅してしまいます。
 小規模兼業農家も対象とする戸別所得補償の拡充が第四次補正予算を含めた今後の農業再生の中心になるのか、お答えください。
 アメリカ通商代表部、USTRのカーク代表は、早くも、TPP交渉における日本の重要論点の三つとして、牛肉、自動車、そして郵政を挙げています。これらの項目がTPP交渉の中でアメリカから提起されるのは間違いないと見ていいでしょう。その一方で、野田政権は、郵貯、簡保を半永久的に政府が株を保有し官業金融とする、郵政逆戻し三法案の早期成立を目指しています。全く矛盾しています。
 郵政はどうするんですか。守るべきネガティブリストに入れるつもりなんですか。預金量百七十五兆円の日本最大の金融機関を交渉の例外扱いにして、それでTPPに参加できるんですか。
 円高について伺います。
 円売り・ドル買い介入をしたって、基本的な円・ドルの需給要因が変わらない以上、早晩、為替はもとの水準まで円高になると言ってきました。そのとおりになっているではないですか。残るのは、外為特会の四十兆円近い巨額の為替差損です。円・ドルの需給要因を変えない以上、つまりは日銀がマネタリーベースをふやす量的緩和政策に踏み切らないと、今の円高は、抜本的にはとめられません。そのつもりはないんですか。
 為替介入は、短期国債証券の発行により資金調達が行われます。その取引仲介を行うのはいわゆる短資会社でありますが、そこには日銀OBの天下りが数多くいることが、民主党議員の国会質問等を通じて、明らかになっております。短資会社国内三社の、会長二人、社長二人、代表取締役の実に八割が日銀からの天下りであります。
 日銀や財務省が、量的緩和ではなく、持続的な効果の乏しい円売り・ドル買いの為替介入にあくまでこだわるのは、こうしたことが背景にあるのではないですか。
 尖閣諸島問題について伺います。
 去年のAPECのときを思い返してみますと、九月の尖閣諸島の漁船衝突事件をめぐって、中国の不当な圧力で、逮捕した中国人船長を釈放する決定が下された後も、中国首脳がAPECに来日するのかしないのか、そのような騒ぎになっていました。野田総理も覚えていらっしゃるはずです。それ以降、最近に至るまで、中国の漁業監視船が尖閣周辺海域を航行する事例が相次いで起きていて、一向におさまる気配を見せておりません。
 今回、胡錦濤国家主席との初の首脳会談で、野田総理は、東シナ海を平和と友好の海に、こういう発言はされたようですが、昨年の事件、それ以降の出来事を踏まえて、尖閣諸島及び周辺海域は我が国固有の領土、領海である旨の発言はされたんでしょうか。
 TPP、アジア太平洋の自由貿易という潮流の中で、現政権に、野田総理に、日本の守るべきものを守り、国益を増進することが果たしてできるのか。国民が不安に思っているのは、まさにその点なのです。尖閣諸島をめぐる最後の質問を含め、そのことが問われているのです。
 逃げることなく真っ正面から質問に答えていただきますように切にお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕
○内閣総理大臣(野田佳彦君) 柿澤議員の御質問にお答えをしたいと思います。
 まず、TPPへの参加に関する御質問をいただきました。
 世界経済の成長を取り込み、産業空洞化を防止していくためには、国と国との結びつきを経済面で強化する経済連携の取り組みは欠かせません。これに伴う影響について勘案し、また、我が国にとっての国益を追求しながら、より幅広い国々と高いレベルでの経済連携を戦略的かつ多角的に進めていきたいと考えています。
 TPPに関しては、世界の成長エンジンであるアジア太平洋地域の成長力を取り込むことができる枠組みであり、アジア太平洋自由貿易圏、FTAAPに向けた地域的取り組みの一つとして重要なものであります。
 今後、協議を通じて、各国が我が国に求めるものについて、さらなる情報収集に努め、十分な国民的な議論を経た上で、国益の視点に立って、TPPについての結論を得ていきます。
 TPP交渉参加に係る意思決定のタイミングとルールづくりへの参加についての御質問をいただきました。
 TPP協定については、当初、六月をめどに交渉参加について結論を出すとしていたところでありますが、三月の東日本大震災の発生等により、そのスケジュールにおくれが生じました。しかし、その後、政府・与党内で鋭意議論を積み重ねてきた結果、今般、TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入ることといたしました。
 ルールづくりに間に合うのか否かについては、今後のTPP協定交渉のスケジュール次第と考えますが、先般発表されたTPP協定の大まかな輪郭によれば、さらなる作業が必要な分野が多く残されていると承知しており、仮に交渉参加をする場合には、我が国としても今後のルールづくりに参加できるものと考えております。
 貿易自由化に対応した国内改革についての御質問をいただきました。
 主要国・地域との間の高いレベルの経済連携強化に向けて、昨年十一月に閣議決定した包括的経済連携に関する基本方針に基づき、農業、規制・制度改革等の分野において、適切な国内改革を先行的に推進してまいります。
 御指摘のあった農業については、十月二十五日に政府決定した我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画を、政府全体の責任をもって具体化し、着実に実行していくことで、競争力・体質強化、地域振興に取り組んでいきたいと考えています。
 また、医療については、日本の誇るべき国民皆保険制度を堅持し、我が国の安心、安全な医療は守ります。同時に、病院の機能分化等を適切に進めることにより、良質な医療の効率的な提供を図ってまいります。
 第四次補正予算と農業再生策についての御質問をいただきました。
 第四次補正予算については、ただいま第三次補正予算の審議をお願いしているところでございますので、まだそれに言及できる時期ではございません。いずれにせよ、今後、追加財政需要の状況を見て判断することとなるものと考えております。
 農業再生については、TPP交渉参加の判断いかんにかかわらず、進めていくべき課題であります。こうした認識のもと、先ほども申し上げた基本方針・行動計画に基づき、農地集積の加速化、青年新規就農の増大や六次産業化の推進、再生可能エネルギーの供給促進などの戦略を五年間で集中展開してまいります。
 戸別所得補償制度についても、農業が食料の安定供給や多面的機能の維持という重要な役割を担っていることを評価し、意欲ある農業者が農業を持続できる環境を整えることを目的とする政策として、適切に推進してまいります。
 TPP交渉参加と郵政についてのお尋ねをいただきました。
 現時点では、個別の二国間懸案事項をあらかじめ解決していくことを交渉参加の前提条件として示している国はございません。今後、TPP交渉参加に向けて関係国との協議をしていく中で、仮に米国が郵政改革法案について問題提起する場合には、我が国としては、従来からの我が国の考えを引き続き表明し、同国の理解を求めていく考えであります。
 日中首脳会談についてのお尋ねがございました。
 胡錦濤中国国家主席との会談では、日中両国が、ともに、地域及び世界の平和、安定及び繁栄に向けて責任ある役割を果たし、関与していくことが重要であり、そうした大局的観点から、来年の日中国交正常化四十周年を見据えつつ、戦略的互恵関係を深めていくことで認識を共有いたしました。
 今回の日中首脳会談においては、尖閣諸島に関するやりとりはありませんでした。いずれにせよ、尖閣諸島は歴史上も国際法上も我が国固有の領土であり、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題は、存在をいたしません。
 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
    〔国務大臣安住淳君登壇〕
○国務大臣(安住淳君) 円高に関連して、金融政策と為替介入の目的についての御質問でございました。
 金融政策については、日銀において、その時々の市場動向、経済動向を踏まえつつ、適切に判断されるべきものであり、日本銀行には、引き続き、政府と緊密な情報交換、連携を保ちつつ、果断な金融政策運営によって経済を下支えしていただくことを期待しています。
 また、我が国の為替介入は、為替市場における投機的な動き、無秩序な動きによる急激な為替変動を防ぐことを目的として実施するものです。議員御指摘のような短資会社の経営等への配慮は、一切存在いたしません。
 以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(衛藤征士郎君) 中島正純君。
    〔中島正純君登壇〕
○中島正純君 国民新党の中島正純でございます。
 国民新党・新党日本を代表して、野田総理のAPEC出席に関する報告に対して質問させていただきます。(拍手)
 我が国が三月十一日の東日本大震災や原発事故への対応に忙殺されている中、国際的には、欧州における経済混乱や米国経済の低調、さらには超円高の定着など、経済、社会の大変動が生じております。
 こうした中、各国は、生き残りをかけ、貿易や経済連携に乗り出してきました。しかし、現政権は、みずから能動的に動くことは避け、激しく変化する周辺の動きに合わせて、受け身で、その都度方針を検討しているように我々には映ります。
 まず、TPP交渉への政府の基本姿勢を伺います。
 去る十一日の野田総理の記者会見では、交渉参加に向けて関係国と協議に入るという表現を使われました。これは、あくまで、参加交渉ではなく、事前協議にとどまったものと解釈してもよいのか、改めて確認させてください。
 そして、そもそも今回は、黒船来航のように、他国からの要求にせっつかれ、国内の意見統一も見ないまま、拙速にAPEC首脳会議に臨んだ感が否めません。また、世論も二分している中で、国民への説明不足が著しい。
 今後、TPPに参加することのメリット、デメリットなどをしっかり説明することが政府においての責務と考えますが、どのように国民への説明を進めていくつもりであるのか、お伺いいたします。
 次に、日本の外交方針について伺います。
 近年、我が国は、二国間などでFTA、EPAの締結を推進してきました。WTO交渉が行き詰まった現状を考えると、一面ではいたし方ないとも言えます。しかしながら、資源に乏しい我が国の経済を発展させ、成長していくには、世界各国との自由貿易を推進していくことが基本となるのではないでしょうか。
 このような中、なぜ、今TPPでなければならないのでしょう。資源や食料に乏しい島国である我が国にとっては、環太平洋諸国との経済連携だけではなく、全世界、全方位をにらみ、国家的戦略を進めていくことこそが、本来の国益にかなうことではないでしょうか。また、EU各国など環太平洋以外の国々との貿易も重要であると考えますが、政府の通商貿易・経済外交戦略は、そもそもどういう理念のもとに構築されているのでしょうか。
 さらに、総理が常に語る、アジアの発展可能性を内需として取り込んでいくという方針の直接の対象は、中国であり、韓国であるはずですが、現在、これらの国はTPPに参加表明しておりません。同じ環太平洋諸国であり、重要な隣国である中国、韓国との関係をどのように発展させていくのか。そして、中国、韓国以外にも、TPPに参加表明していない国との貿易に問題は生じないのでしょうか。あわせて見解を伺います。
 TPPは、一般的に、工業側にメリットがある反面、農業は大きな痛手をこうむるという基本パターンで受けとめられております。TPPに参加することで、関税が廃止され、輸出産業を中心に恩恵を受けるということが想定されています。輸出産業の中でも、恩恵を受けるのは大企業であり、中小企業については、海外との競争が激しくなる中で、リストラ、廃業を余儀なくされる可能性が高く、結果として、雇用にとってもプラスの影響はないという論者もおります。
 また、この国会で内閣が最重要と位置づける被災地の復興については、基盤となる産業が農林水産業であり、TPP参加によって当該産業が大きな打撃をこうむることになれば、復興の妨げになるばかりか、被災地自体の存続にもかかわる問題も生ずることになるでしょう。
 サービスについても、原則市場開放が求められます。例えば、公的医療保険制度の開放を余儀なくされ、混合診療の導入も受け入れざるを得なくなることが大変心配です。その結果、これまで一応確保されてきた医療の水準が低下し、あるいは、米国でも大きな社会問題とされている医療の格差も、現実の問題として、無視できなくなることが懸念されます。
 まさに国内の諸産業が大きな変革を迫られようとしており、国益を担う政府としては、TPPに参加することによって、守るべきものは守り、主張することは主張するといった姿勢が必要であります。
 そういった状況のもと、このたびのAPECにおいて、野田総理がすべての物品・サービスを貿易自由化交渉のテーブルにのせると発言したと米政府が発表したことに対し、一言も言っていないと否定しておられます。しかし、これについて米側に訂正を求めないことも表明しておられます。
 いずれにしても、海外では交渉参加に積極姿勢を示し、国内では慎重姿勢を強調する姿勢は、批判を恐れた、その場しのぎの二枚舌ととられかねません。
 また、早速、米通商代表部、USTRは、TPP交渉の方針を決めた日本との事前協議では、自動車市場の規制の改善や米国産牛肉の輸入規制撤廃、簡易保険の見直しを重点三分野として話し合う意向を示したと伝えられております。米国とのこれまでの自動車や半導体を初めさまざまな品目の自由貿易交渉では、一方的に要求を押しつけられ、我が国は常に受け身で対応せざるを得ない状況でした。今回も全く同じ轍を踏まないか、危惧しております。
 今後、政府としてはどのような姿勢で臨む方針であるか、お聞かせください。
 最後に、好き嫌いにかかわらず、グローバル化の進展といった地球規模の経済変動の中で生き残るため、世界各国との経済連携は非常に重要であります。我々は、世界の動きを分析し、ビジョンを描き、大きな戦略を立てる必要があります。TPPについても同様で、交渉の見通しをしっかり立て、国益にかなうものとしなければなりません。
 改めて強調しますが、我々も自由貿易を推進する立場は全く揺るぎませんが、TPP交渉については極めて慎重に進めていただきたいということを申し添え、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕
○内閣総理大臣(野田佳彦君) 中島議員からは、三点の御質問をいただきました。
 まず、TPPの国民への説明に関する御質問でございます。
 十一日の記者会見で、私は、TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入ることとしたと申し上げましたが、その意味は、これ以上でもこれ以下でもなく、そのまま受けとめていただきたいというふうに思います。
 国民の皆様に対する説明や情報提供が不足しているという指摘は、重く受けとめさせていただきます。今後、各国との協議を通じて得られた情報を含め、政府を挙げて、一層の説明や情報提供にしっかりと努めていく考えでございます。
 全世界、全方位をにらんだ経済連携の推進についての御質問をいただきました。
 所信表明演説でも申し上げたとおり、包括的経済連携に関する基本方針に基づき、より幅広い国々と高いレベルの経済連携を戦略的かつ多角的に進めます。具体的には、日韓、日豪交渉を推進し、御指摘のありました日・EUや日中韓の早期交渉開始を目指します。
 TPP協定は、アジア太平洋自由貿易圏、FTAAPを包括的な自由貿易協定として追求していく上で基礎となる重要な地域的な取り組みであり、APEC加盟エコノミーに開かれたものであります。また、仮にTPP交渉が進んでいけば、日中韓、ASEANプラス3、ASEANプラス6についても前向きな動きが出てくる可能性があると考えています。加えて、世界貿易機構、WTOの協定交渉にも前向きな影響が出てくる可能性も指摘をされています。
 最後に、TPPとアメリカとの交渉についての御質問をいただきました。
 今後、TPP交渉の参加に向けて関係国と協議をしていく中で、個別の二国間懸案事項への対応が求められる可能性は否定はできません。その場合でも、我が国として、何が対応可能で何が対応困難かを明確にし、あくまで個別に対応することとなります。
 いずれにせよ、中島議員が指摘をされた御懸念や御提起を踏まえて、国益を実現するためにしっかり議論、協議していきたいというふうに思います。
 ありがとうございました。(拍手)
○副議長(衛藤征士郎君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○副議長(衛藤征士郎君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
       内閣総理大臣   野田 佳彦君
       財務大臣     安住  淳君
 出席内閣官房副長官
       内閣官房副長官  齋藤  勁君