第189回国会 法務委員会 第14号
平成二十七年五月十五日(金曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 奥野 信亮君
   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君
   理事 伊藤 忠彦君 理事 柴山 昌彦君
   理事 盛山 正仁君 理事 山尾志桜里君
   理事 井出 庸生君 理事 遠山 清彦君
      池田 道孝君    大塚  拓君
      大西 宏幸君    門  博文君
      菅家 一郎君    小林 鷹之君
      今野 智博君    冨樫 博之君
      藤原  崇君    古田 圭一君
      宮川 典子君    宮崎 謙介君
      宮澤 博行君    宮路 拓馬君
      簗  和生君    山口  壯君
      山下 貴司君    若狭  勝君
      黒岩 宇洋君    階   猛君
      鈴木 貴子君    柚木 道義君
      重徳 和彦君    大口 善徳君
      國重  徹君    清水 忠史君
      畑野 君枝君    上西小百合君
    …………………………………
   法務大臣         上川 陽子君
   法務副大臣        葉梨 康弘君
   法務大臣政務官      大塚  拓君
   最高裁判所事務総局刑事局長            平木 正洋君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    林  眞琴君
   法務委員会専門員     矢部 明宏君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十五日
 辞任         補欠選任
  門  博文君     小林 鷹之君
  辻  清人君     大西 宏幸君
同日
 辞任         補欠選任
  大西 宏幸君     池田 道孝君
  小林 鷹之君     門  博文君
同日
 辞任         補欠選任
  池田 道孝君     辻  清人君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)
     ――――◇―――――
○奥野委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長林眞琴君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
○奥野委員長 次に、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所事務総局平木刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
○奥野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山尾志桜里君。
○山尾委員 おはようございます。民主党、山尾志桜里でございます。
 この裁判員裁判改正法、大臣御存じのとおり、今週二回にわたって参考人質疑を開かせていただきました。それぞれの方がそれぞれの立場で真摯な意見をおっしゃってくださいまして、本当に、この委員会の中でも、改めて政党を超えて大きな共通の理解が深まった参考人質疑ではなかったかと私自身は感じております。
 大臣は、この参考人質疑、議事録を読まれましたか。
○上川国務大臣 議事録も拝見させていただきましたし、また、ネットで拝見させていただきました。
○山尾委員 まず、大臣、これは通告はしておりませんけれども、この参考人質疑をネットでごらんになって、また議事録を読み返されて、感想、そしてまた参考人の方にお伝えしたい思いがありましたら、ぜひこの場で一言おっしゃっていただけますでしょうか。
○上川国務大臣 二回にわたりましての参考人質疑ということで、立場がそれぞれということでありますが、裁判員裁判そのものが国民の皆さんの御参加をいただきながらやるということでありますし、また、被害者参加制度という新しい制度もある中で、当事者としても参加をするという、たくさんの皆様がかかわりながら、この制度そのものを大事にしていただいているということを改めて強く感じたところでございます。
 スタートしてからまだ日が浅いということでございますので、改善する余地、あるいは、さまざまな視点からお気づきになったことにつきまして率直に意見を述べていただいたということでございます。そういう意味では、私自身、不断の改革が必要だなというふうに思っておりますので、そうした貴重な御意見をさらに深掘りしながら対応していく必要があるということも感じたところでございます。
○山尾委員 私どもも最初の質疑では気づかなかった裁判員裁判にまつわるさまざまな重たい課題が参考人の皆さんから開陳されたわけですけれども、大臣、一度、見直し規定までは必要ないのではないかという御趣旨の発言をなされていますが、こうやって議論の過程を経た中で、改めてこの見直し規定について問います。
 大臣、この見直しの必要性、それを規定しておくことの重要性、いかがお考えでしょうか。
○上川国務大臣 今回、裁判員裁判の改正ということでお願いをしてきたプロセスそのものにつきましては、一番初めの附帯のところも含めまして、また、検討会を設けて丁寧にやっていくという趣旨の中で積み上げてきた議論の末に今回の提案をさせていただきながら、その趣旨を盛り込んで御議論に付すということに至ったところでございます。
 その意味では、そのプロセスがございまして、丁寧にやってきていただいたのも事実でございますので、そういう意味で、私自身は、そうしたものを土台にして提案させていただいているということでございましたので、今のような形で、検討事項を付さないというような形でのお願いをしてきたところでございます。
 今回、改めてさまざまな御議論もいただきまして、そうしたことにつきまして真摯に取り組んでいくということにつきましては、共有をしているのではないかなというふうに思っております。私自身もそのように考えているところでございます。
○山尾委員 私どもは、参考人質疑を経て、改めて、今回の検討、もちろん検討の過程でも真剣な御議論があったことは私も感じてはおりますけれども、やはりそこですくい取れていない課題が一つ二つではないということも確認できたなと感じておりますので、この見直し規定が仮につけられた際には、ぜひ、大臣にはその重たさをしっかり考えていただいて、責任を持って前に進めていただきたいというふうに思っております。
 改めてこの法案のことについて入っていきますけれども、やはりまず一つ確認したいのは、この委員会で、最も肝である、最も議論を尽くすべきというふうに考えられた超長期事件の除外についてでございます。
 これは、まず最初に局長にお伺いをしたいと思います。
 やはり、私自身の議事録をもう一度読み返しますと、局長の答弁が途中で変更しているのではないかというのが率直な感想でございます。
 なぜならば、まず私が最初に問うたときには、私はこういうふうに質問しました。除外する際に検討すべき事項として一番目に挙げられています他の事件というのは、過去に裁判員裁判から除外された前例事件をいうのだというふうに私は説明を受けたと理解しているんですけれども、違いますかと。これに対して局長は、「委員御指摘のとおりでございまして、過去に除外された事案についてでございます。」これが一番最初の答弁であったかと思います。
 ただ、局長自身も、その後、「典型的には、除外事由が決定された他の事件というのがここの事情に当たると思います。」というふうにややその趣を変えられ、そして、最終的には、「法文上は、除外決定がなされた事案だけがここでの考慮事項になるわけではございません。」こういうふうになってしまいました。
 そしてまた、最初の答弁と大塚政務官の答弁を比較しても、政務官も、除外した事件以外は全て除外してしまうということも適当ではない、こういう御趣旨のことをおっしゃった。
 局長の中での答弁の変遷と、最初の局長答弁と政務官の御意思の食い違い、ここはやはりはっきりさせておかないと今後支障が出ると思いますので、明確にしたいと思います。
 まずは、局長、この他の事件でありますけれども、他の事件とは、過去に除外された他の事件に限定されるのか、除外されずに裁判員裁判が行われた事件を含むのか、法務省としての認識を確定させてください。
○林政府参考人 他の事件につきましては、法律案第三条の二の適用が問題となっている事件とは別の過去の裁判員制度対象事件のことでありまして、法文上、単に他の事件と規定されておりますとおり、法律案第三条の二の規定による除外決定がなされた事案には限られません。
 他の事件には、法文の文言上は、三条の二の規定による除外決定がなされた事案だけでなく、本法律案施行前の事案のほか、本法律案施行後の事案で、本法律案第三条の二の除外決定がそもそも問題とされなかった事案でありますとか、あるいは除外決定が請求されましたが請求が却下されたような事案、こういったことなども他の事件の中に含まれると考えております。
○山尾委員 そうだとしますと、見直し規定はもちろんのこと、運用が極めて重要な位置を占めることになってまいります。
 改めてお伺いをしたいと思います。
 前田裕司参考人、検討会そして法制審両方に参加された弁護士の方ですけれども、この方も、最初は、やはり選任手続を必要的要件とすべきだという修正案を出されたんですね。でも、それに対して運用上の保証がなされたから今回の案を受けたのだというふうにおっしゃっておられます。
 そこで、ここは法務大臣にお伺いしたいと思います。
 この法の趣旨というのは、できる限り当該事件において選任手続を実施した上で、極めて例外的に除外を検討するというものであると考えてよろしいでしょうか。
○上川国務大臣 今回、極めて例外的な場合ということで想定をいたしまして、除外をするということを法文に盛り込むことにいたしたところでございます。
 その意味では、その事例が今、ございません。そういう意味では、当分の間につきましては、実際には、裁判員の選任が困難であったでありますとか、あるいは審判に要すると見込まれる期間の終了に至るまで裁判員の職務の遂行を確保することが困難であった、そうした、他の事件ということで積み重ねがないということになりますので、当然、委員の御趣旨のとおり、選任手続を実施するということが大変大事であるというふうに思っております。
○山尾委員 では、改めて裁判所にも問います。
 今の大臣答弁で明らかになった、この法の趣旨を尊重した運用をしていくということでよろしいですか。
○平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 除外決定をするか否かは各裁判体が個別に判断すべき事項でございますので、最高裁の事務当局としまして、判断のあり方についてお答えする立場にはございませんが、最高裁判所といたしましては、各裁判体が除外決定をする前提として、立法過程における議論も含め、必要な情報を周知してまいりたいと考えておるところでございます。
○山尾委員 最高裁判所の答弁としてはそこがぎりぎりのところなのかなというふうには伺いましたが、ぜひ、今おっしゃったことに努めていただきたいというふうに思います。最初が大変肝心だというふうに思いますので、よろしくお願いします。
 では次に、いずれにしても、今回の改正案が通った後、やはり裁判員裁判については、さまざまな課題についてしっかりと検討の場が持たれるべきだというふうに思います。
 そして、この検討の場の持ち方なんですけれども、今回、会議体としては、検討会そして法制審議会と、大きなものが二つございました。残念ながら、この裁判員裁判、私どもが知らない、評議がいかに行われているのかということまで最も経験をしている当事者であります裁判員経験者がこの検討の場に入っていないんですね。
 そしてまた、犯罪被害者の方についても、もちろん、その立場に立ってさまざまな主張をされる、会の代表であられるとか弁護士さんはいらっしゃっても、被害者の方が直接当事者としてこの検討の場に入っていくということは行われておりません。
 そこで、大臣に伺いたいんですけれども、裁判員経験者、あるいは裁判員裁判を被害者あるいは御遺族として経験をされた当事者の方、そういう方々を、ただただヒアリングの対象としてではなくて、検討の当事者としてかかわりをお願いしていくということも含めて、次回はよくよく委員の選定を考えていただきたいんですけれども、いかがですか。
○上川国務大臣 裁判員裁判そのものの趣旨でございますけれども、国民の皆さんの司法に対する理解を深めるということ、そしてその信頼の向上に資するということでございますので、その趣旨に鑑みますと、裁判員制度に対する検討に当たりましては、裁判員の経験者でありますとか犯罪被害者の皆様の意見などにつきましても、これは、一般国民の視点を取り入れるということだけにとどまらず、大変大事な視点であるというふうに思っているところでございます。
 今後の裁判員制度につきましての検討の場をどうするかということ、あるいは方法等につきましては、そのような観点も含めまして適切に考えてまいりたいというふうに思っております。
○山尾委員 確かに、やはり被害者や御遺族というのは大変な深いお気持ちを持っておられますから、そういう当事者の方、御本人そのものにどのような形でかかわっていただくかということに検討が必要なのはわかります。ただ、やはり法曹関係者ではない一般の方、そういう方が被害者になる、あるいは御遺族になる、あるいは裁判員を経験して裁判員経験者となる、そういう方々が、今週のこの場で、極めて冷静に、私たちが本当に傾聴に値するような御意見をどれだけ言っていただいたか、そしてまた、その場での質問のやりとりについても、いわゆる法曹三者と言われる方に遜色のない本当にしっかりしたやりとり、答弁をいただいたかということを感じていただいて、一般の方はなかなかああいう場の当事者には難しいという先入観は一度取り払って検討していただきたいというふうに思っておりますので、ぜひよろしくお願いをいたします。
 では次に、幾度かこの場でも議論のありました、裁判員の心の負担を考慮しながらもいかに必要な証拠を裁判員裁判で取り入れていくか、この最も究極の場面の一つが遺体写真であるというふうに思います。
 先回の参考人の方も含めて、多くの被害者、御遺族の方は、特に殺人事件のような場合には、やはり遺体の写真はしっかり裁判に顕出してほしい、自分の家族に何が起こったのかということを、苦しいかもしれないけれども、直視をして判決を出してほしい、こういう思いを多くの方が持っておられるというのは事実だというふうに思います。
 心の負担の軽減というのは必要です。でも、写真そのものを加工する、あるいはイラスト化するというところから入るのではなくて、それ以外の、実際に行われているように、裁判員になり得る方々にこういう写真を見る可能性がありますということを事前に伝え、そして、余りにも精神的負担が大きい場合には柔軟に辞退を認めるという今の運用でありますとか、遺体写真が突然目に飛び込んでくることがないように白表紙をきちっとつけるということでありますとか、あるいは、裁判員裁判にかかわっている裁判員の方が、その審理の途中といいますか、判決が終わった後でなくても、必要な時期にちゃんと臨床心理士の方などに相談、カウンセリングを受ける体制をもっと整えるとか、そちらの周囲の環境を整備することは非常に大事だと思いますけれども、どうすれば写真そのものを出さないようにできるかということを先に考えるというのは、私はやはりちょっと違うのかなというふうに思っております。
 そこで、まず裁判所にお伺いをします。
 皆さんのお手元に、私の資料ですけれども、「裁判員の精神的負担軽減に関する申合せについて 平成二十五年七月十九日 東京地裁本庁刑事部」、こういうペーパーをお配りさせていただきました。
 これは、私が伺っているのは、高裁が、こういった東京地裁の取り組みがあるよということを全国の裁判所に情報提供する趣旨で通知した資料だと伺っておりますが、その点、それでよろしいですか。
○平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 委員御指摘の東京地裁の申し合わせは、最高裁が、全国の裁判所に参考になるものかと考えまして参考送付したものでございます。
○山尾委員 これを見ますと、申合わせ事項の一番のところですけれども、「遺体写真等の刺激の強い証拠については、」と始まりまして、「証拠が真に必要不可欠なものなのか、」「裁判員に過度の精神的負担を与え、適正な判断ができなくなることがないか、代替手段の有無等も考慮しつつ採否を慎重に吟味する。」というふうになっております。
 今すぐこれをこのように変えよというようなものではないと思います、もちろん各裁判体の訴訟指揮だとは思いますけれども、ただやはり、先ほど申し上げたように、遺体写真というのは、人が殺された事件については、私は、基本的に、裁判員、裁判官が見ていただくべきものであろうと思います、例外はあろうかと思いますが。そしてまた、それを見ることによって適正な判断ができなくなるということがないとは言いませんけれども、それを見た上で適正な判断をしていただくというのが、やはり本来の刑事裁判のあり方だろうというふうに思います。
 そして、もちろん、さまざまな代替手段のあり方は、今まで先例も積み上がってきているでしょうけれども、色彩の明度を落とすとか、写真の範囲をいかにクローズアップするかとかいうことは、もちろん工夫の余地がゼロとは言いませんが、やはりイラストでは伝わらない真実というのが私はあるように思いますけれども、裁判所、何かコメントできることがあればおっしゃってください。
○平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 委員御指摘の東京地裁の申し合わせは、東京地裁において、広く国民から御参加いただくという裁判員法の趣旨や、刺激の強い証拠によって適正な判断ができなくなるおそれがあるという点などを踏まえまして、特に裁判員裁判におきましては、当該証拠によって立証しようとする事実の位置づけや、その事実の立証に最適な証拠は何かという点につきましてより慎重に吟味し、検察官や弁護人の意見などを聞いた上で証拠の採否を判断すべきであるとの議論がなされ、そのような観点から、イラストで代替できる場合についてはイラストを採用するという考え方がまとめられたものと承知しております。
 どのような証拠を採用するかということにつきましては裁判官の判断事項でございますので、各庁でどのような議論を行い、どのような申し合わせを行うかということにつきましては、最高裁といたしまして、一定の考え方をお答えする立場にはございません。
 なお、委員御指摘のとおり、遺体写真を取り調べる必要がある場合には、その取り調べ方法を工夫するなどの配慮は各庁において行われているところと承知しております。
○山尾委員 では、今度は証拠請求をする検察官、法務省にお伺いをしますけれども、証拠の採否というのは、その証拠で何を立証するのかという事柄との関係で決まってくるかと思います。
 この問題で一番ポイントになるのは、犯行の凄惨さ、すさまじさ、むごさ、こういうものを立証すべき事柄として遺体写真を請求する、このことについて、私は、検察官が過度にためらうべきではないと思うんですけれども、その点、大臣、いかがですか。
○上川国務大臣 御遺体の写真ということで、その取り扱いにつきましては、最高検察庁が作成した基本方針というのがございまして、これにおきまして、写真については、今おっしゃったような凄惨な場面、大変厳しい状況の中で殺害されたというようなことについて、適正妥当な事実認定及び量刑のためには、証拠調べ請求をして裁判員の方にも示さなければならない場合がある、そうした方針を立てているところでございます。
 他方で、いきなりそのような写真を出しますと、大変気分が悪くなるとか、いろいろな形で職務遂行が困難になる裁判員の方もいらっしゃる可能性があるということでございまして、そうした場合におきましては、心理的負担というものに配慮して、あらかじめ、先ほどおっしゃったように白い紙をつけるというような形で、その事実を告げた上で対応するように、そうした記載があるところでございます。
 先ほど来のお話のとおり、各裁判体の訴訟指揮のもとでということではございますけれども、やはり凄惨な場面等も直視していただくということも大事なことではないかというふうに思っておりますので、そうした方針にのっとって、個々の事案につきまして適切に対応していくということが何よりも必要というふうに考えております。
○山尾委員 今言っていただいたような大臣の方向性、私も共有しますので、ぜひそのような形で進めていただきたいというふうに思います。
 これまで、裁判員裁判が始まって六年間、もちろん、検察庁も裁判所も含めて、裁判員の方にしっかりと参加をしていただく環境を整えるということにある意味注力をされてきた六年間だったと思います。ただ、やはり改正の節目を迎えまして、それも引き続き大事ではありますけれども、その対になる形で出てきた懸念について、運用も含めてもう一度見直す、検討していくということが必要だと思いますので、ぜひよろしくお願いをいたします。
 次に、被害者参加人、先ほど大臣も話に出していただいた被害者参加制度における被告人質問の話をちょっとさせていただきたいと思うんです。
 先日、荻野参考人、娘さんを殺されたお母様ですけれども、私、本当に、以降心を離れないお訴えが幾つもありまして、その中で、あれっ、本当にそんなことがあるのかな、おかしいなと思ったことはここなんです。
 あのお母様は、自分が遺族として裁判員裁判に参加をし、被告人に対して質問する場面で、私は、犯人に対して、何で殺したんですかということを聞きたかったですと。何で殺したんですか、殺す理由はないでしょうということを本当に聞きたかったんですね、でも、何で殺したんですかというのは直接過ぎるからだめやと言われました、こういうふうにおっしゃいました。
 このことについては、参考人がおっしゃった言葉をそのまま言うと、自分が直接犯人に尋問したいときには、前もって裁判所の方から、犯人を直接攻撃するような質問は絶対したらいけないと言われるんです、こうもおっしゃっておられました。
 そこで、まず法律上の根拠をちょっと確認したいんですけれども、これは局長に伺います。
 被害者の方がする被告人質問は、証人尋問と異なって、内容について一般的な制限はないように私は確認をしているんですけれども、その点いかがでしょうか。
 というのは、証人尋問については、犯罪事実について被害者は証人に直接聞いてはいけないよ、情状についてだけだよということが規定で決まっておりますけれども、被告人質問についてはそういった内容の一般的な制限は法文上ないと思いますけれども、局長、いかがですか。
○林政府参考人 被害者参加人による被告人質問につきましては、被害者参加人等が意見陳述をするために必要があって相当と認められる場合には、被害者参加人等による、今指摘された証人尋問の場合とは異なりまして、情状に関する事実のみならず、犯罪事実についても質問することはできるとされております。
○山尾委員 そうしますと、裁判所にお伺いをしたいんですけれども、被害者、御遺族の方が、事前に裁判所の方から、直接的な質問をしてはいけないよと言われるというようなことがあり得るんでしょうか。
○平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 委員御指摘の質問に対してお答えすることは、個別事件についてお答えすることになりますので、なかなか難しい面がございますけれども、被害者参加人が被告人質問をされるという場合には、まず、質問事項を明らかにして検察官に対して申し出をするということになっておりますので、その関係で、質問事項がどうかということで裁判官が何らかの判断を示すことがあるかとは思いますけれども、委員お尋ねの、質問について事前にどうなのかという点については、ちょっとお答えが難しいところでございます。
○山尾委員 私も、そうやって事前に開陳された質疑の内容、あるいは実際に法廷内で質問が始まったときのその内容について、裁判官が訴訟指揮に基づいて、やはり過度に被告人にとって防御の不利益になるような質問の仕方が続くとか、そういうときに個別で訴訟指揮をするということはあり得るでしょうし、よほど事前に出された質問の中身が、これはやはり被告人の防御に、幾ら何でも直接問いかけさせるわけにはいかないだろう、こういう中身であれば、個々の訴訟指揮の中で対応することは当然あってしかるべきだと思うんです。
 これは問いません、個々の事案については多分答えられないと思いますので。ただ、この間の参考人質疑の中で言われたような、なぜ娘は殺されなければいけなかったのか、なぜあなたは私の家族を殺したのか、この一言を事前に制約したり、あるいはその場で制約するというようなことは、私は、ほとんどあってはならないことだというふうに思っております。
 そこで、これは法務大臣にお伺いしますけれども、検察官の側が被害者参考人に対して、事前に、過度に抑制的になる必要はないんだよ、内容についての法文上の制限はないんだよ、ただ、訴訟指揮の中で、こういう内容だったりこういう問いかけ方だと、それは確かに制約される場面があるかもしれないけれども、原則として中身に対して制限はないんだ、思いを質問に込めることが許されているんだということを、個々の事件で個々の検察官が、個々の被害者や御遺族にしっかり丁寧に説明をしていくことは運用上とても大事だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○上川国務大臣 検察官の役割ということで御質問があったかというふうに思います。
 そもそも、この被害者参加制度そのものが円滑かつ適正に運用されるというためには、被害者参加人あるいは被害者参加弁護士と検察官との間で密接なコミュニケーションを保ちながら、被害者参加人の方たちが被害者参加制度そのものの趣旨をよく理解していただいた上で、訴訟行為につきまして適切に行われることができるように、助言その他の助力をする必要があるというふうに考えているところでございます。
 したがいまして、検察官が、仮に、被害者参加人の方が被告人質問を行うに当たりまして、先ほどの先生のお言葉でいきますと過度に抑制的になるようなことがあるということであるならば、そのように抑制的になる必要はないということにつきましても必要に応じて適切な助言をするものというふうに承知をするところでございます。
○山尾委員 ぜひ、運用が今どうなっているのか、しっかり見ていただきたいと思います。検察官にとっては幾つもある殺人事件の一つであっても、その被害者や御遺族の方にとっては、一度しかない、家族のために、家族に成りかわって被告人に対して思いをぶつける唯一の機会ということがありますので、ぜひその点はよろしくお願いしたいというふうに思います。
 そして、同様のことで、遺影の持ち込みについてもこの場で課題に上がりました。
 これは、遺影の傍聴席への持ち込みと、傍聴席を越えたバーの内側への持ち込みと、二つに区別をされているわけですけれども、今週の参考人のお話だと、傍聴席については、一番前におられた身内の方に託そうと思っても、大き過ぎるのはだめだと言われて、ちっちゃいもので、被告人に見えないようにしてくださいというふうに言われたと。これが当該事件での運用であったというふうに御説明がございました。
 そして、これは個々の裁判体によって統一的な運用がなく、なかなか、裁判所に聞いても何かデータを持っているわけではないということでありましたので、皆さんのお手元に一つの参考資料をお配りしました。どうなっているんだろうということを、皆さん、委員の先生方も疑問に思われたと思いますので。
 三枚目なんですけれども、二つ、四角に囲いました。これは、平成十九年改正刑事訴訟法等に関する意見交換会における議論の概要の中から抜粋したものです。つまり、被害者参加制度が認められた平成十九年の改正法、これに関して三年の見直し規定がやはり設けられ、そしてそれに基づいて意見交換会が設けられ、その意見交換会で、裁判所の判事が、主にこんな運用がありますよというようなことを御説明いただいている文章です。
 このボックスの一番上の方が、これは傍聴席への持ち込みの運用です。「大きさは被害者の遺族が望まれるよりは小さいものにしてほしいと、また、被告人に意図的に掲げるような動作はしないでほしいと。それから、一列目にはそれを掲げないでいただきたいというようなお願いをした上で、許可している実例が多いのかなと考えています。」
 さっきのお話と大体合いますよね。自分たちが望む写真よりもちっちゃいものにしてほしいと言われた。そして、被告人に見えないようにしてほしいと言われた。そして、この場合は、もしかしたら二列目というまでの制約はなかったのかもしれません。
 これはちょっと裁判所にお伺いをしたいんですけれども、私たちにはわからないんです。大体これが各裁判体の運用の中で一番多いようなルールの設定の仕方だ、こういうふうに受けとめていいものなんでしょうか。どうなんでしょうか、その点は。
○平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 最高裁判所といたしまして、遺影の傍聴席への持ち込みにつきまして、全国各地の裁判体が具体的にどのような条件で許可したかということについては把握しておりませんので、委員の御質問になかなか答えにくいのですけれども、その基準と申しましょうか判断要素につきましては、委員御指摘の意見交換会におきまして、裁判官である委員から、遺影の傍聴席への持ち込みの判断に当たっては、事案の性質、被告人の年齢あるいは被告人の心身の状況、審理の具体的な内容、遺影の大きさ等を踏まえ、適正、公正な裁判への影響や法廷秩序への影響、被害者遺族の心情への配慮等の事情を総合考慮して判断しているという発言がございます。
 全国の裁判体におきましては、このような要素をもとに判断しているものと承知しております。
○山尾委員 ただ、例えばこの大きさについても、遺族が望まれた大きさが適切な大きさであればそれを許可すればいいわけであって、望まれるよりは小さいものにしてほしいというのはちょっと私は腑に落ちないところがありますし、その他もろもろ、やはり腑に落ちないところがあります。
 そして、さらに、バーの中の遺影についてですけれども、これは、この資料でいえば二つ目のブロックの中です。ここには、「傍聴席の二列目よりはかなり被告人に近い位置に遺影が持ち込まれること、それから、審理中に常に遺影が被告人の視野に入る可能性が高いこと、その二つを合わせて考慮すると、先ほどの一般論として傍聴席でこういう運用をしているということを踏まえると、持込みを認めるのはなかなか難しいのかなと現状では考えております。」
 実際に、荻野参考人の例についても、バーの中への持ち込みは認められなかった、机の上にも置けなかったということなんですよね。
 私、裁判所に申し上げたいんですけれども、個々の裁判体の判断を尊重しなければいけないというのはわかります。ただ、最高裁として、やはり、こういう運用が一つの参考になるのかなという一定の判断をして、そういった運用を先ほどの例のように各裁判所に情報提供するということはできるわけですよね。実際、遺体写真なんかの運用については、最高裁が、東京地裁の取り組みが参考になると判断をして、各裁判所に情報提供しているわけです。やはりそこには最高裁の役割というのがあると私は思うんです。だって、どういったものを情報提供し、どういったものをその枠の外に置くかということを判断されているわけですから。
 そういう中で、今後、やはりこの遺影の持ち込みについて、最高裁としても、どのような運用があるのか、しっかり把握に努めていただいて、そして、改めて、被害者御遺族の方の、一般市民から見ると当然だというような願いがかなうような形で今後取り計らいを考えていただきたいと思いますが、これに対して何か答弁できることがございましたら、お願いします。
○平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 まず、先ほどの委員の御質問に関係するところなのですけれども、遺族の御希望した大きさよりも小さいものにしていただくというところなんですけれども、ここはちょっと説明が不足しているのかなと私自身は考えておりまして、遺族の望んでおられる遺影がかなり大きいという場合にはということなのかなと思っております。
 今回の委員の御質問に対してお答えいたします。
 ことしの七月に、司法研修所におきまして、委員御指摘の意見交換会での意見等も踏まえまして、被害者等への適切な配慮のあり方について裁判官同士で議論がなされる予定となっております。また、高裁単位でも、被害者や御遺族の心情をお聞きする機会を設けるなどして、被害者等の心情を把握することができるよう努めておるところでございます。
 今後も引き続き、被害者に関する諸制度の適切な運用について議論が行えるよう、必要な情報を各庁に提供したり、必要に応じて議論の場を設けるなどした上、その結果を適切に共有できるように努めてまいりたいと思っておるところでございます。
○山尾委員 バーの中への遺影の持ち込みが原則として認められないというのはやはりおかしいと思うんですよ。
 荻野さんは、こんなに参加してつらかったことはないです、娘がここにいないから一緒に参加したいと思ったのに、それが許されなかったというのは一つすごく思います、こうおっしゃっています。
 今話にも出ましたけれども、被害者が生きておられたらその場にいるわけですから、それが、写真として参加することも許されない。それが被告人の防御に不利益になるということは、私はあり得ないというふうに思いますよ。もう一度、これはしっかり議事録に残していただいて、裁判所の中でも検討していただきたいというふうに強く思います。
 ちなみに、すごく大きい写真だということをおっしゃいましたけれども、荻野さんがおっしゃったのはA4ですよ。すごく大きい写真を持ち込もうとする人はそういないです。ぜひその点も市民感覚で考えていただきたいというふうに思います。
 もうすぐ時間も迫ってまいりましたので、次の話に参りますが、控訴審における被害者参加についてです。
 控訴審において、被害者参加人が意見を述べたり、それを前提にした被告人質問を望む場合、それは法律上許されているのでしょうか、法務省に尋ねます。
○林政府参考人 控訴審におきまして事実や情状の取り調べがなされる場合などにおきましては、控訴裁判所の裁量によりまして、被害者等に心情を中心とする意見の陳述が認められる場合もあります。そのような場合においては、控訴審において、心情を中心とする意見の陳述をするための被告人質問というものも認められ得るものと考えられます。
○山尾委員 法律上は認められるという中で、前回の参考人の話だと、やはり、すごく大きな問題がありました。一審で死刑判決が出たことが、裁判員がかかわらない二審、三審で覆ることが物すごく苦痛である、こんな裁判員裁判なら、ない方がいいんじゃないか、こんなお話もございました。
 その問題は大変大きな問題で、これもまた、今後しっかり私たちが取り組むべき課題だというふうに思います。要するに、二審、三審で裁判員裁判を取り入れていく、こういう選択についてもしっかり考えていくべきだと思います。
 また、その手前で、二審の裁判で、私たちから話を聞く機会がなかった、参加した側からも、被害者からも、やはり二審でも話を聞いてほしい、そうしたら変わってきたんじゃないかと思うと。これは物すごく率直な感想だというふうに思います。
 そこで、改めてこれは大臣に伺いたいんですけれども、法律上、被害者の方が被害者参加制度を利用して控訴審の場で意見を述べることは可能なのですが、ただ、可能であるということが、控訴審において検察官から被害者参加人に十分説明されていない例があるんじゃないか。特に、控訴審あるいは最高裁においては、検察官自身が被害者参加制度の運用に対して認識が不十分な面があるんじゃないか。
 要は、地裁、地検のレベルで幾つも幾つも事件を取り扱いながら新しい制度にどんどんなれ親しんで活用している検察官もいれば、やはり高裁、最高裁の段階になると、事件数も少なくなってまいりますし、新しい制度の取り入れ方もスピード感が遅くなってまいります。
 そういう中で、控訴審、あるいはさらにその上の審理においても、検察官が被害者参加人に制度のたてつけを十分に説明をして、本来あるべき権利を使う機会を失うことがないようにしていただくことが必要だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○上川国務大臣 今委員の方から、被害者やその御家族、御遺族の中に、控訴審におきましての検察官の対応が十分ではない、不満があるということにつきましては承知をしているところでございます。コミュニケーションを何よりも大切にする中で取り組むということでございまして、そうした御指摘につきましては、真摯に受けとめてまいりたいというふうに思っております。
 平成二十六年の十月、昨年の十月でございますが、全国の検察庁に対しまして通達を発出しているところでございまして、こうした被害者の皆さんと検察官とのコミュニケーションのあり方につきましては、被害者に対しましての配慮のあり方につきまして、第一審であったとしても、また上訴審であったとしても、基本的には同じであるということでございますので、そういう意味では、上訴審におきましても、相当な範囲で第一審に準じた対応をするよう求めるということでの通知を発出しているところでございます。
 そうした方針にのっとって、被害者等に対しましての配慮につきましては、さらに努力をしてまいりたいというふうに考えております。
○山尾委員 ぜひしっかりやってください。
 最後に、問題提起で終わってしまうかもしれませんが、司法取引と裁判員裁判の関係について、一点、問題提起をしたいと思います。
 これは、今の制度でいくと、事件そのものに重なることはありません。ただ、もし仮に裁判員裁判の範囲が今後拡大していくようなことがあれば、あるいは、司法取引というものがもし仮に通って、仮に、さらに拡大するような、そんな事態が万が一にもあり得たら、これは重なる範囲が出てくるわけです。そして、もし司法取引が始まってしまったら、今の裁判員裁判のあり方でも、こういう場面があります。通常の覚醒剤事件で始まって、そして司法取引が行われた後、起訴までに営利目的が判明をして裁判員裁判の対象となってしまったら、ここは重なってしまうんですね。
 そういう重なる場面があり得るかどうかということをお伺いしたいと思います。局長。
○奥野委員長 林局長、手短にお願いします。
○林政府参考人 今言われたような形で、営利目的が後に加わった形で、それによって無期懲役を法定刑とするような罪名になって裁判がなされるような場合においては、そういった場合には、合意制度と裁判員裁判というものが重なり得るような事態もございます。
○山尾委員 最後に意見で申し上げますけれども、私は、この裁判員裁判ということに、例えば、今回提案されることが見込まれている司法取引による求刑の拘束力というのはなじまないのではないか。裁判員の市民感覚に照らすと、司法取引に基づいた供述の信用性というのは相当低く評価されることが推測される。やはり、刑事裁判に一般市民の感覚を取り入れていこうというこの裁判員裁判と、司法取引によって、いわば求刑を約束したりだとか、一定の事実をのみ込むことを約束したりだとか、そういう国民とは全くかけ離れたレベルにおける約束事によって出てくる供述で裁判をしていくということは、本当になじまない、水と油の制度だというふうに思っております。
 なので、この裁判員裁判をこういうふうに真摯に話し合って、本当にいい制度だから頑張っていこう、こういう後に、司法取引などを含むそういった法律が出てくるのだとしたら、私は大変にゆゆしき事態だと思っておりますので、まずそれを意見で申し上げて、最後の言葉とさせていただきます。
 ありがとうございました。
○奥野委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 維新の党の重徳和彦です。きょうも少しお時間を頂戴します。
 先日から私が申し上げております起訴率の低下の問題に入る前に、一昨日、厚生労働委員会の方で私は質疑に立ちまして、以前からこの法務委員会で取り上げさせていただいております司法面接につきまして、塩崎厚労大臣と議論をさせていただきました。
 きょうも資料でお配りしておりますけれども、神奈川県伊勢原市にあります子どもの権利擁護センター、この機能も説明しながら議論したんですが、塩崎大臣は、実は、この子どもの権利擁護センターがオープンしたことしの二月の前に話は既に聞いていたよということでございました。そして、こういう問題には正面から立ち向かわないといけないんじゃないか、大変意味がある取り組みであると、前向きな御発言がございました。
 私は、以前から申し上げておりますように、日本全国で、児童相談所と警察と検察が一堂に会して子供に対する面接を一発で終えるということを全国に一発で広げていくというのは、なかなか運用も、トライ・アンド・エラーもあるでしょうから難しいかもしれないので、例えば、この伊勢原のセンターがせっかくあるわけですから、ここでモデルケースを試行しながら、必要な見直し、場合によっては法制度の見直し、こういったことをやっていくべきじゃないかなということを考えているところです。
 先般の質疑では、林刑事局長に対しまして、私の、検察官面前調書というものは、やはり検察官が直接その被害児童、被害者と面接をしたものしか認められないであろうか、それとも、誰か別の人が面接しているんだけれども、バックモニターで検察官が見ていて必要な追加質問事項を加えていくようなやり方でも検察官面前調書として認められるかどうかということについて、現行制度上はなかなかそこはハードルが高いねという御答弁だったと思います。
 ということも踏まえまして、本当はそのハードルも越えなきゃいけないかもしれないんですが、まずは、モデルケースとしてやるとすれば、児童福祉に精通した検察官が、児相、警察、検察を代表して一対一の面接を行ったものを証拠としつつ裁判を行うということについて、何か法的な問題点などはありますでしょうか。その点、確認させてください。
○林政府参考人 こういった司法面接の手法の中で、検察官が代表して被害児童の事情聴取を行うといった場合、そうしたときにつくられる供述調書でございますが、その取り扱い、法的な位置づけについてお答えいたします。
 まず、検察官がこういった被害児童の事情聴取を行って、その供述を録取した供述調書については、いずれにしましてもこれは供述調書でございますので、伝聞証拠となります。したがいまして、刑事訴訟法三百二十条一項によりまして、原則として証拠として用いることはできないとされております。
 一方で、例えば被告人の弁護人がその当該供述調書を証拠とすることに同意した場合には、刑事訴訟法三百二十六条一項によりまして、証拠として用いることができます。
 また、被告人の弁護人が同意をしなかった場合、検察官は、まずは当該被害児童の証人尋問を実施することとなります。証人尋問におきまして、被害児童が精神もしくは身体の故障などの理由によって供述することができないときとか、あるいは被害児童が以前行った検察官の面前における供述と相反するか、もしくは実質的に異なった供述をして、かつ、その検察官の面前における供述が証人尋問における供述よりも信用すべき特別の状況が存するとき、こういったときには例外的に供述調書が証拠となるという形になっております。
 以上でございます。
○重徳委員 つまり、特段問題ないということでよろしいでしょうか。私の質問に対しては特段問題がない、つまり、検察官が一対一でやる場合であればほかに問題はないと。
○林政府参考人 問題がないの意味によりますが、要するに、検察官が代表して供述調書をつくった場合にも、その供述調書が全て証拠になるということにつながるとは限らないということでございます。先ほど申し上げたように、それをもって証拠となるためには、さまざまな刑事訴訟法上の要件が満たされないと証拠にならないということになります。
○重徳委員 それは今までの検察官面前調書であっても同じことですよね。だから、司法面接であるがゆえに取り扱いが変わることはないということでいいですね。うなずいておられるので、それでいいと思います。
○奥野委員長 いや、ちゃんと答えなさい。林局長。
○林政府参考人 司法面接の考え方を取り入れて検察官が代表して事情聴取を行って、その結果できた供述調書というものは、これまでの検察官の面前調書と全く法的には異なるものはございません。
○重徳委員 それをお聞きしたかったんです。ありがとうございます。
 塩崎大臣はこの間の答弁の中では上川大臣のことにも言及されまして、犯罪被害者基本法をつくったとき中心的にやったのが今の法務大臣の上川陽子さんだとおっしゃいまして、必ずや上川大臣も理解を示してくれるんじゃないか、ここまでおっしゃっておりましたので、ぜひともモデルケースの試行をバックアップしていただきたいと思います。
 具体的に、例えば神奈川の地検の理解ある検察官をこの子ども権利擁護センターのモデルケースに協力させていただく、こういうことについて御協力いただけますでしょうか、大臣。
○上川国務大臣 ただいまの司法面接ということでの一連の御質問をこの間いただき続けてまいりまして、大変重要な御指摘でありますし、また、被害を受けた子供たちの目線に立って取り組むという、そうした姿勢でまいりたいというふうに思っておりますので、そういう意味で、より一層工夫しながら取り組んでまいりたいというふうに思っております。
○重徳委員 ありがとうございます。ぜひ、ともに取り組んでいくことができればと思います。よろしくお願いいたします。
 さて、次に、奥野委員長のリーダーシップによりまして、今回、殺人罪等の起訴率の推移に関する報告というものを法務省の方から提出していただくことができました。
 正直、十分納得できるだけの情報がない中で、裁判員制度と連動しているとは言いがたいという部分を非常に強調しているという感もあるんですが、まず、この資料の内容について、簡単で結構ですので、ポイントを御説明いただけますでしょうか。
○林政府参考人 御指摘をいただきまして、起訴率の低下について一定の分析を試みたところでございますが、一つには、やはり近年の起訴率の低下傾向について裁判員制度の施行の影響を検討したところ、この低下傾向は、殺人罪、強盗致死傷罪のいずれも裁判員制度施行前から低下傾向が始まっておりまして、裁判員制度の施行と連動しているものとは言いがたいものと考えました。
 その他、起訴人員の減少あるいは不起訴人員の増加ということについても裁判員制度の施行前にさかのぼって検討しておりますけれども、特に不起訴人員の増加というところにおきましては、不起訴全体の中で被疑者不詳として処理される事件が非常に大きな割合を占めており、そうして被疑者不詳として処理された事件の増加というものがこういった不起訴人員の増加の一因となっているというふうにうかがわれたと考えております。
○重徳委員 委員の皆様方にもお配りしていただいていますので、皆さん方にもごらんいただきたいんですが、例えば殺人罪の起訴率につきましては、このグラフの赤いラインが示しますように、確かに、見方によっては平成十六年あるいは十八年ごろから低下傾向にある、これはそのとおりだと思うんですが、減少が始まったのが十六年ごろだよという説明をもって裁判員制度と連動しているとは言いがたいという説明なんですが、でも、二十一年以降も低下しているのも事実なんですから、だから、連動しているとは言いがたいとは言えても、連動していないとも言いがたいというのがフェアな言い方じゃないかと私は思います。
 また、被疑者不詳のものが非常に多かったという御説明がありますが、皆さん方のお手元の資料でいうと、一枚めくったところに被疑者不詳を除いたグラフが、殺人罪、その次には強盗致死傷罪について起訴率が載っています。もちろん、三〇ポイント、五〇ポイントという極端な落ち方はしていませんが、基本的には低下傾向にあるということも言えると思います。
 ですから、これ以上要因分析をする材料が現時点ではないんだというのが実情ではございましょうから、私も別に、裁判員制度が始まったから起訴率が下がったことは間違いないとか、絶対そういうふうに結論づけたいというわけでもないし、そういう確証まで私自身も持っているわけではありませんので、これ以上の言い方はできませんけれども。
 いずれにしても、私が今回、この一連の質疑のやりとりの中で指摘をしたいのは、この起訴率低下というのは、裁判員制度が始まる前だろうが後だろうが、起訴率が上がったり下がったりするというのは、これは非常な臆測を呼んでしまうんだと思うんです。まして、この五、六年の間に起訴率が大幅に下がったのを見て、どっちかというと、少なくともぱっと見では、連動しているんじゃないかと思う方が自然だと思うんですよ。
 そうじゃないなら、そうじゃないということもきちんと説明をしなくちゃいけないと私は思います。起訴、不起訴の判断権というのは、誰が判断するかというのは、それはもうひとえに検察が判断するわけですから、最近えらく起訴率が上がっているなとか、下がっているな、激しく上下しているな、これを見たら、やはり皆さん不安を覚えても仕方がないと思うんです。だから、こういういろいろな臆測を呼ぶのは当たり前のことだと思います。
 したがって、きょう私が申し上げたいのは、法務省として、例えば、毎年出している犯罪白書というのがあるんですね。見てみますと、ちゃんと、起訴、不起訴の人員等の推移とか一応の不起訴人員の理由とか、そういうものが、二十六年版でいうと四十九ページに一ページ使ってあるんです。まだ余白もありますから、そういうところにちゃんと、なぜ起訴率が上がったり下がったりしているのか、起訴人員がふえたり減ったりしているのか、不起訴人員がふえたり減ったりしているのか、これを、わからないなりに、今回一応こういう文書で出していただけたわけですから、一概にはわからないけれどもという前置きを置くなりして何か説明を加えていかないと、これは場合によっては余計な臆測を呼ぶこともあると思うんです。
 この点を踏まえまして、大臣、犯罪白書等において、以後、国民にきちんとこの一連の説明を書くべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○上川国務大臣 起訴率のトレンド、そして要因の分析について、さまざまな条件のもとでという中ではありますけれども、今回こうしてお出しすることができたということについては、この委員会での質疑の上でということでございまして、大変大事な御指摘をいただいたというふうに思っているところでございます。
 分析の前提となるデータが、なかなか、過去のトレンドを全て表現するということに足るものではないということを勘案したとしても、これからさらに、そうしたデータ収集も含めまして、分析手法につきましても検討を進めてまいりたいというふうに思っております。白書にどのように表現するかということにつきましても、あわせて検討してまいりたいというふうに思っております。
○重徳委員 ぜひ前向きに検討していただきたいと思います。期待をしております。よろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。
○奥野委員長 次に、井出庸生君。
○井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。きょうもよろしくお願いをいたします。
 先ほど山尾先生が取り上げられました、先日の参考人の荻野さんの思いですとか遺影の問題、私も同じような思いで聞いていたんですけれども、これは、被害者の人生ですとか被害者の生きざま、そういうものを亡くなった被害者にかわって御家族、御遺族が訴えたい、そういうことだと思うんですね。
 私はこの法務委員会の質疑の中で、暴行事件によって命を落とした方の証拠がイラストで出されたもの、そのイメージ図をお示ししたこともあるんですけれども、その御遺族の方の話を聞けば、弁護人を通じてなのか検察官から聞いたのかわからないんですが、とにかく、裁判官の方から、暴行で一人の人が亡くなった、この事件はそういう事件なんですという説明を何度もされて、物すごい状況の遺体で、その前にいろいろ、お仕事のこと、プライベートのこと、これからのことがあった中で、御家族を失った御遺族からしたら非常につらい思いをされたということを伺いました。
 この御遺族の思い、被害者の人生をしっかり公判で訴えたいというお気持ちは、私は、御遺族からすれば当然だと思います。
 一方で、裁判所のこれまで積み重ねてきた判例ですとか、そういったものが大事だというところもわかるんですけれども、私、平木さんにちょっときょう申し上げたいのは、個別の裁判に余りかかわれないんですけれども、判例ですとか公平性というところも大事ですけれども、被害に遭われた方の人生というものも大事だと思うんですね。そこをもっともっと各裁判体に、悩みに悩み抜いて結論を出していただきたい、そういうことじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 裁判所といたしましても、事件を担当する裁判官や職員が犯罪被害者の置かれた立場、状況等に関する理解を深めることが必要と考えておりまして、各高裁単位で、地裁の裁判官のみならず高裁の裁判官も出席しまして、犯罪被害者やその御遺族、犯罪被害者問題の専門家などから直接話を聞く研究会を実施するなどして、被害者等の心情の把握に努めておるところでございます。
 山尾委員御指摘の意見交換会におきましても、被害者の立場から裁判の運用面についてさまざまな御指摘をいただいておりますので、その結果を、高裁を含む裁判官や裁判所の関係職員に情報提供いたしております。
 最高裁といたしましては、今後とも、被害者や御遺族の心情、立場に対する理解が各庁で共有されるようにしてまいりたいと思っておるところでございます。
○井出委員 今、高裁単位のお取り組みを御紹介いただきました。
 参考人の荻野さんが先日ここでお話しされたことについて伺いたいんですが、一審の裁判員裁判の判決で結論が出た、それに対しては、荻野さんのお立場として、市民の感覚が反映された、非常に荻野さんとしてはそういう思いがあったと。ただ、それから何の音沙汰もなくて、二年たって高裁が開かれて、たしか一回の審理、荻野さんからすれば、十分な審理とは到底思えませんでしたと。その四カ月後に、判決の中身が変わった結論が出たというお話だったんです。
 私は、これは聞いていて、国民の感覚を反映するとか国民の司法に対する理解、信頼を深めるというのは、裁判員が参加する一審だけのことではないのではないかと思いました。端的に申し上げますと、高裁、最高裁の審理の状況ですとか制度について、もっともっと裁判の関係者や国民によく理解をしていただかなければいけないと思います。
 さきの委員会で私は指摘したんですけれども、裁判員裁判が始まってから、高裁の証拠の取り調べ、証人尋問の数、これを裁判官裁判時代と比べると、その数の割合、パーセンテージが減ってきている。つまり、それは、私がそのデータを見たときに受けとめたのは、一審の裁判を尊重して、一審の裁判の中身から結論を出しているのかな、そういう数字かな、そういう制度でもあるのかな、そういう理解だったんです。
 ただ、制度ですとか、そのことをもう少し、少なくとも裁判の当事者に伝えていく必要があるのではないか。今は、例えば被害者の御遺族の弁護人であるとか検察官が、御納得のいかない被害者に対してはこれこれこういうことなんだとつらいお気持ちで検察官、弁護人も説明をされていると思うんですが、裁判員裁判が始まってから、高裁や最高裁の制度、対応というものを裁判の関係者に少しでもわかりやすく説明する機会ですとか、そういう変化や取り組みということをされてきたのかどうかを平木さんに伺いたいと思います。
○平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 先ほども申し上げましたとおり、これまでは、裁判員裁判というとやはり一審ではないかというような面もあったかと思うんですけれども、被害者の問題ですとか、さらには国民一般の問題ということになりますと、当然、控訴審についても関心が高いところでございます。
 特に、委員御指摘の、事件関係者、特に被害者の方等が高裁の審理についてなかなかわかりにくいという面があるとすれば、その点は、一般論で恐縮ですけれども、高裁の裁判体が、その事件の訴訟関係人、特に被害者の場合であれば検察官を通じて適切な情報提供をし、検察官において被害者やその御遺族に説明していただくということで今後も情報伝達をしていきたいというふうに思っておるところでございます。
○井出委員 荻野さんは、一審が裁判員裁判だったら、控訴審、最高裁も裁判員でやってほしいとまでおっしゃられておりまして、私も、そういうことができるのかどうか、いろいろな数字とかこれから見て、私なりにも考えてみたいなと思うんですが、そこに至らなくても、そこの高裁、最高裁のあり方について、最高裁の方から国民、裁判関係者にもう少しわかりやすく説明をしていただく、そういう取り組みをしていただく、そういうことで多少なりとも改善できる部分があるのではないか、そのように感じました。
 次に、これも参考人の話で大臣にお伺いをしたいんですが、こちらにいらっしゃった江川紹子さんが、裁判員裁判は非常にわかりやすい、ずっと取材をされているオウム事件を見て、裁判官時代のものと裁判員になったものと見比べても、非常にわかりやすいという肯定的なお言葉がありました。
 ただ、その一方で、最後に、この制度はまだ過渡期である、そういう意味で見直す機会が必要だということを言われて、この後、修正案の御提案、また附帯決議も御説明させていただきますけれども、見直しをする提案をさせていただきました。三年後に再び見直しをしていくという附則をつけさせていただきたい、そういうふうに思っております。
 一点、大臣のお仕事にかかわることで伺いたいんですけれども、江川さんもおっしゃっていたんですけれども、これから、裁判員裁判で死刑の判決が出たもの、その死刑の執行というものを考えていかなければいけない時期が来ると思います。
 そのことについて、裁判官の出した判決の死刑囚もいますし、裁判員裁判が判決を出した死刑囚もいて、いずれ、その執行という判断が遠からず来るやもしれませんし、そのことについて今何かお考えがあれば伺いたいと思います。
○上川国務大臣 参考人の質疑の中で、江川参考人の方からそうした御指摘があったというふうに私も承知をしているところでございます。
 時間がたった後にも参加した裁判員の方がさまざまな思いをしょうことがある、時間の経過という中でその心理的なところに影響が及ぶのではないか、こんな御指摘ではなかったかというふうに思っております。
 国民の皆さんの良識を踏まえた上で、裁判の方にその良識を入れるという中で、裁判そのものが信頼に足るものであるということを促すために今回の裁判員裁判という制度が発足し、この時期にまた御検討いただいているということでございますので、そうしたことも含めまして、検討は絶えず進めていかなければいけないというふうに思っております。
 今回の法務委員会におきましての審議の中で御指摘いただいたこと、さらに参考人の質疑の中で御指摘をいただいたことにつきましては、大変重く受けとめさせていただきたいというふうに思っております。
○井出委員 これまでの審議の中で、裁判員経験者が、自分たちが出した判決に対して被告が控訴をしたのか、その後被告が更生をしたのか、そういうことを知りたいという声も一部あった、そういう話も出ました。
 私は、死刑の執行というものについて、判決を出した裁判員の方も、その事実を知りたいという方もいれば、知らなくても、自分たちで一旦判断したものだから改めて思いをしたくないという方もいるかと思って、個別に連絡をするとかそういうことは今の時点でどうすべきなのかなというところは私も思うんです。
 裁判員裁判の判決によって死刑の判決が出た、その死刑囚の刑を執行するときは、法務省、大臣の方からも、裁判員裁判の件だと、そして、裁判員も一審が終わったときに多くの方からその御労苦をねぎらわれると思うんですけれども、裁判員が一定の結論を出したということに配慮、言及をされる、そういうことを検討していただいてもよいのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○上川国務大臣 御意見ということで承らせていただきます。
○井出委員 裁判員裁判の判決、裁判員裁判の結論ですというその事実を表明するだけでも、それをニュースでごらんになる方もいるでしょうし、私は、そこに大臣の思いまで含める必要は全くないと思うんですけれども、やはりその事実にきちっと言及していただくということも検討していただいてもよいのかな、そのように思っております。
 大臣、お時間の都合があると伺っておりますので、これで結構でございます。
 また最高裁に伺いたいのですが、参考人の江川さんのお話の中で、裁判員に選ばれたときに、特にお母さんですね、子供を預ける場所を一時的に確保できないのかとか、あともう一つ、土日の開催、これはお仕事をやっている方にとっては検討に値する話なのかなと思うんですけれども、そのあたり、例えば裁判所の近くの保育所にお願いをしておけばそれで事足りるとか、土日開催を検討したことがあるとか、江川さんが言及されたことは私は非常に現実的でいいなと思ったんですけれども、そういうことは過去に検討されたり取り組まれた事例というのがあるのかないのか、お聞かせいただければと思います。
○平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 まず、子育て中の裁判員候補者の方に関しましては、裁判所内に託児所は設けておりませんけれども、最高裁が設けているコールセンターにおきまして、裁判員裁判期間中の保育施設における一時保育の利用等に関するお問い合わせに対応しております。
 また、各地の裁判所におきまして、裁判員候補者に裁判員等選任手続期日のお知らせ、これは法律上の呼び出し状でございますけれども、呼び出し状をお送りする際に、保育施設の御紹介等に関する案内文書を同封しております。
 具体的な案内文書の内容は、各地方裁判所で各地の実情に応じて作成しているところでございますが、例えば東京地裁におきましては、各区役所において呼び出し状が届いた方であることを伝えることで、裁判員裁判の期間中に一時保育サービスを利用できる保育施設を紹介してもらえますとの御案内をしているところでございます。
 さらに、裁判が始まった後におきましては、通常、裁判は午後五時ごろまでには終わりますし、余裕を持った日程を組んでいることが多いことから、裁判体は、一時保育サービスを利用された方がお子様の迎えに間に合うよう配慮して裁判を進行させることになるものと承知しております。
 なお、裁判中にお子さんの体調不良等の緊急事態が生じた場合には、保育施設から裁判所に連絡があれば、連絡事項をすぐに裁判員の方にお伝えするようにしておりまして、子育て中の方が安心して裁判員裁判に参加できるような環境整備に努めておるところでございます。
 次に、裁判員裁判の土日開催の点でございますけれども、休日の開廷につきましては、訴訟関係人等のニーズ、休日に出頭を求められる相手方や証人の負担、セキュリティー確保の問題、職員の執務体制やこれを維持するためのコストなどを考慮する必要があると思われます。
 また、裁判員裁判のもとでは、できる限り連日開廷し、継続して審理することになりますが、審理に数期日を要する事件につきまして、土曜日、日曜日も含めて連日開廷するとなりますと、裁判員の方々の負担も相当なものになることから、慎重に検討する必要があると思っておるところでございます。
○井出委員 慎重とはいえ、いろいろな可能性を持って検討をしていただきたいと思います。
 よく見たら、大臣は質疑終了までいて大丈夫だ、そういうメモをここにいただいておりましたので、大臣に伺いたいんです。
 先ほどの修正、附則の話なんですが、今回提案させていただきます附則は、ほとんど現行法の附則九条と変わりません。
 ただ、附則の最後のところなんですけれども、この制度が我が国の司法制度の基盤としてより重要な役割を果たすものとなるよう、所要の措置を講ずるものとすると。もともとは、ここは、この制度が我が国の司法制度の基盤の役割を十全に果たすことができるよう、所要の措置を講ずるものとするという文面になっていた。ここを多少変えさせていただいたんですが、その思いは、裁判員裁判が重要な役割を果たす基盤と私は一定なりつつあると。
 しかし、大臣がこの委員会でおっしゃっていただきました国民が参加する裁判、それが一体何がふさわしいのかと。これは対象事件の話、対象事件をどう類型化するかという話なんですけれども、そこの議論をしていくことによって、より一層の役割を果たすということに資するかとも思いますし、あともう一点は、これから議論が始まっていきますが、取り調べの可視化の議論、その対象事件としても裁判員裁判事件ということになっておりまして、裁判員裁判の事件というものはこの制度の中にとどまらない、日本の刑事司法の中において非常に大きな意味を持ってきている。
 その意味で、この三年後の検討というものを、今回は、この法務委員会の委員長や与党の皆さんに御配慮をいただいて、かなり議論を尽くさせていただく時間をいただきました。こうしたことを法務省内の検討の段階からもっと多くの関係者を呼んで検討してほしい、そういう意見もありましたし、この次の検討というものを本当に法務省の検討の段階から、今回積み残している宿題もありますし、真摯な検討をやっていただきたいと思いますが、大臣の御見解をいただきたいと思います。
○上川国務大臣 委員御指摘をいただきました今回の法律案でございますけれども、裁判員法の附則第九条を踏まえて設けられました裁判員制度に関する検討会において議論を重ねながら、十八回に及ぶ議論の上でこの改正内容に至ったということで御審議をいただいたところでございます。
 今回の法務委員会におきましての審議、さらには参考人の皆様から貴重な御体験も含めての大変真摯なお声もいただいてまいりましたので、そうしたことも踏まえて、またさらなる改善に努めてまいりたいというふうに思っているところでございます。
 今回の法律案の施行後、一定期間を経過した場合に再び見直しを行うべきとされるのでありましたならば、その御審議の結果につきましても真摯に受けとめさせていただきまして、その趣旨に見合った十分な検討を行ってまいる所存でございます。
○井出委員 本当にいろいろな問題提起に対して議論の時間もいただきましたし、特に、今大臣からもお話があった参考人の御意見を直接伺えたというのは、私自身も新聞やいろいろな論文等でそういうものを読みましたけれども、実際に直接その方に接していくということは非常に大事だなと思いました。
 ぜひ、これからまた法務委員会は大事な議論が続いていくと思いますので、現場を見たり、いろいろな方の話を聞いたり、引き続き丁寧な運営をしていただきたいということをお願いして、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
○奥野委員長 次に、安藤裕君。
○安藤委員 自民党の安藤裕でございます。
 いよいよ裁判員法の審議も大詰めということになってまいりました。きょうは、今までの審議を踏まえて、いろいろな角度から質疑をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いをいたします。
 まず、裁判員ではありませんけれども、検察審査会について一点だけお伺いをしておきたいと思います。
 裁判員裁判の開始と同時に、検察審査会においても、その議決に法的拘束力を持つということになりました。つまり、検察の処理についても国民の目線で判断をするということがより求められるようになったということでございます。そして、検察審査会の審査員も、裁判員と同じように、国民の中からくじで選ばれるということになっております。
 そこでお尋ねをしたいと思いますが、今回の一連の質疑の中で、裁判員の辞退者が大変に多くて、それで国民の目線が十分に反映をされているのかということも言われておるわけですけれども、それでは、検察審査会においてはどのような状況になっているのか、そのことについてお答えをいただきたいと思います。
    〔委員長退席、柴山委員長代理着席〕
○平木最高裁判所長官代理者 委員御指摘の検察審査員候補者の辞退率に関する統計は、現在のところございません。
○安藤委員 ということなんですね。レクのときには、今、特段支障がないということ、またあるいは法令上の規定がないということで、データはとっていないということでしたけれども、しかし、今、一連の司法制度改革の中で、検察審査会についても強制起訴というかなり強い権限が持たされたわけです。私は、裁判員裁判の裁判員になるのと同様に、検察審査会の審査員という役職も本当に重たいものがあるだろうと思っております。
 今のところ辞退率がデータとして存在をしていないということですけれども、これからも、国民の司法参加を求めるという意味では、裁判員と同じように、どのぐらい辞退をされているのかというデータは必ず必要になってくると思いますし、今後はぜひそのデータをとっていただきますように、これはお願いとしておきたいと思います。
 次に、今回の議題となっております裁判員裁判に移っていきたいと思います。
 まず、参考人質疑の中で幾つか疑問に感じた点について確認をしていきたいと思いますけれども、裁判員裁判において、裁判員にできるだけ負担をかけないために、公判前整理手続によって、どの証拠を採用するかとか、あるいは審理計画が事前に定められて、それに沿って裁判が行われておるという形になっていると思います。
 参考人からは、時間が決められたり、あるいは証拠が限定をされる中で、十分な審理が尽くされているのかということについて疑問が少し呈されていたように思います。スケジュールや効率を優先する余り、真実を追求するための審理がおろそかになっているのではないか、こういった意見があったわけですけれども、裁判所ではこういった意見に対してどのような感想を持つか、お答えいただきたいと思います。
○平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 一般論で恐縮でございますけれども、現在の運用といたしましては、余裕を持った公判審理計画が立てられているというふうに聞いております。
 裁判員裁判におきましては、委員御指摘のとおり、公判前整理手続を経ることが前提となっておりまして、ここで法曹三者が十分議論し、主張や真に必要な証拠を整理するということを行いますとともに、証拠調べに要する時間についても見通しを立てております。その上で、さらに余裕を持って公判審理計画を立てるのが一般的な運用になっておりますので、予定時間内に十分な審理を尽くせないということは考えにくいと思っております。
 仮に想定しなかった事態が審理中に発生したとしましても、余裕を持って予定を立てるのが通常でございますので、予定時間内に審理を終えることは十分可能であると考えられますし、諸事情によって予定時間内に審理を終えられなかったとしても、審理を尽くすために必要であれば、審理予定時間を超過して審理を続行するということも当然考えられるところでございます。
 いずれにしましても、裁判所としましては、十分な審理を尽くすことを前提に公判審理計画を立て、円滑な裁判員裁判の運用に努めてまいりたいと思っておるところでございます。
○安藤委員 ありがとうございます。
 余裕を持った審理計画が立てられているのでその枠内で終わるのが通例であるということでしたけれども、具体的に、実際の審理日程が予定よりも超過したような事例があるのではないかと思いますけれども、そういった事例がどのぐらいあるかというデータはございますでしょうか。もしあれば、お答えいただきたいと思います。
○平木最高裁判所長官代理者 委員御指摘のデータは、最高裁で把握しておりません。
○安藤委員 ありがとうございます。
 これもやはり、参考人の方が数々の裁判を傍聴してきた中でそういった感想を持たれたというのは、かなり重たいことなんだろうと思います。
 もともと、審理計画が余裕を持って立てられているということはもちろんだと思いますけれども、その後、では、本当にその枠内でもともと適切な想定だったのか、そのあたりの検証はやはりやっていかなきゃいけないことだと思いますし、時にはそれが予定を超過するということもあり得るんだろうと思いますけれども、できればこれからはそういったデータもとっていただいて、そして、本当に国民の皆様にきちんと審理が尽くされているんだということが説明できる環境づくりというのが必要だと思いますので、これからはそういったことにもぜひ御配慮いただきたいと思います。
 それから、次の質問に移りますけれども、これも先ほどちょっと質疑の中でありましたが、控訴審や上告審において、ほとんど公判が開かれずに、開かれても一回のみで、一審判決が破棄をされてしまったということがありました。
 裁判所の通例では、控訴審では書類の確認が主であって、一審と同様の審理が行われるわけではないということだろうと思いますが、このことはなかなか国民の皆様は御存じないことだろうと思いますし、一審と同様の審理が行われる、あるいは行われることを期待しているということだろうと思います。その中で、それが行われずに一審判決破棄の判決が出てしまうということに対して、司法に対する信頼が揺らいでいるのではないかというふうな感覚を感じたわけです。
 特に、裁判員裁判で出た判決を破棄する場合には、被害者及びその御家族には、丁寧に審理を尽くしているんだということを御理解いただくことが必要だと思いますし、従来の裁判官による裁判以上にそのことに対しての配慮が必要だと思いますけれども、裁判所としてはこのことについてどのようにお感じになられたか、お答えいただきたいと思います。
○平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 委員御指摘の点は、平成十九年改正刑事訴訟法等に関する意見交換会におきましても、被害者の立場から同様の御指摘があったと理解しております。
 この意見交換会では、裁判官の経験のある学者から、控訴審の実情について、次のような発言がなされました。
 控訴により記録が控訴審に送られてまいりますと、裁判官は、公判期日が開かれる前に、その送られてきた記録を全て読み込み、一審の裁判官が調べた証拠については全部調べた上で、第一回公判期日を迎えます。また、控訴した側からは控訴趣意書が出てまいりますので、どういう点がこれから争われるのかもあらかじめわかります。
 そうしますと、第一回公判期日に法廷に臨むときは、一回で結審して判決をするのか、あるいは、何らかの事実の取り調べをしてから、一回ないし数回で結審して判決するのか、おおよその見通しがついているというのが控訴審の実情です。ですから、控訴審が一回で結審した場合、事件関係者の方からすれば、裁判所が何もしていないような印象をお持ちになるかもしれませんが、一般的には、当事者から事前に十分な主張や相応の証拠の請求などがあって、それらも踏まえて第一審の記録を精査した結果、比較的短時間で審理が終わるという仕組みになっております。
 このような発言がございました。
 裁判所といたしましては、控訴審が一回で結審しているからといって、決して軽はずみに判断しているわけではないということを御理解いただきたいと思うのですけれども、先ほども御説明いたしましたように、訴訟関係人を通じて、スケジュール等、情報提供に努めてまいりたいと思っておるところでございます。
○安藤委員 ありがとうございます。
 やはり控訴審の位置づけというものがなかなか普通の国民の皆様方には御理解をいただいていないんだろうと思いますし、そういったことを、今、裁判員裁判が導入された中で、より丁寧な御理解と、それから、控訴審の位置づけの説明というものが必要になってくるんだろうと思います。より一層これをきちんと御理解いただけるような努力が必要だと思いますし、それをやっていくことが司法の信頼にもつながっていくと思いますので、どうぞよろしくお願いをしたいと思います。
 それで、それにも関連をしてまいりますけれども、裁判員裁判というのは、あくまでも法律の知識のない方々が判決を下しますし、何よりも、人間がやることですから、誤りがあるということも十分に考えられるわけです。そのために、本来であれば、控訴審の役割が今まで以上に重要になってくるんだろうと私は思っております。
 そこで、裁判員裁判が始まる前と始まった後で、控訴審における一審判決の破棄率のデータ、破棄がふえているのか減っているのか、それとも変わらないのか、そのことについて御説明をお願いしたいと思います。
○平木最高裁判所長官代理者 委員お尋ねの破棄率、破棄の割合についてお答え申し上げます。
 裁判官の間では、裁判員制度の趣旨を踏まえ、控訴審は裁判員裁判の判断を尊重すべきであるという議論がなされておるところでございます。現に、主要な十五の罪名における破棄の割合につきまして、第一審が裁判官裁判である平成十八年から二十年に終局した控訴審判決と、第一審が裁判員裁判である裁判員制度施行から平成二十七年二月末までの期間における控訴審判決を比較しますと、破棄の割合は一七・六%から七・九%に下がっているところでございます。
○安藤委員 ありがとうございます。
 明らかに、裁判官裁判のときと裁判員裁判のときと比べると、控訴審においては第一審の判決を尊重しているという結果が出ているんだろうと思います。
 次にお伺いしたいのは、裁判員裁判が始まってから量刑に何かしらの変化を生じているか、求刑に対して重たい判決になっているのか、軽い方に変わっているのか、それとも今までと傾向は変わらないのか、裁判官裁判によるころと裁判員による裁判のころと、その傾向を教えていただきたいと思います。
○平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 裁判員裁判導入後の量刑傾向といたしましては、殺人未遂、傷害致死、強姦致傷、強制わいせつ致傷及び強盗致傷の各罪で、実刑のうち最も多い人数の刑期が重い方向へシフトしております。他方で、殺人既遂、殺人未遂、強盗致傷及び現住建造物等放火につきましては、執行猶予に付される率が上昇しておるところでございます。
○安藤委員 ありがとうございます。
 重たくなったり、またあるいは軽くなったりということを言われたのではないかと思います。
 次に、通告とちょっと質問の順序が入れかわるかもしれませんけれども、報道のあり方についてちょっとお伺いをしたいと思います。
 裁判員裁判の対象事件には殺人など重大な事件が含まれるために、裁判員になる人たちには、マスコミ等を通じていろいろな情報が事前に入ることになります。その情報の中には、事実や、あるいは事実でないものや、推測や脚色をされたものが混在をして、それが、裁判が始まる前や、またあるいは裁判が始まった後でも、裁判員の目や耳に入ってくるわけですね。
 これが裁判員の判断に多少なりとも影響を与えるのではないかと思いますけれども、裁判所としてはこのことについてどのようにお考えか、お答えいただきたいと思います。
    〔柴山委員長代理退席、委員長着席〕
○平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 社会的に注目を集めた事件では、委員御指摘のように、裁判員裁判の審理中に大きく報道がなされることがございますので、裁判員がそれらの報道に接した場合には、報道から情報を得てしまったり、何らかの先入観を抱いてしまうという可能性は否定できないと考えております。
 もっとも、裁判所もこのようなおそれにつきましては十分認識しておりまして、裁判員裁判の審理、評議の間に、裁判員の皆様方に対して、事実の認定は法廷で取り調べられた証拠によって行うという刑事裁判の原則を繰り返し説明しておりますし、評議では公判で取り調べた証拠の内容を適宜確認するなど、証拠に基づく裁判がなされるように努めておるところでございます。
○安藤委員 ありがとうございます。
 そういうお答えになるんだろうと思いますけれども、やはり人間ですから、いろいろな情報が目と耳に入ってくると、それを完全に捨てた中で、法廷に出てきた証拠のみに基づいて判断するというのは、これは訓練を積んだ人でないとなかなか難しいのではないかなということを思うわけでございます。今は裁判所としてはそういうお答えにならざるを得ないと思いますけれども、やはりそういった懸念が少しあるなということもお伝えをしておきたいというふうに思います。
 それから、ほかの委員の方が御質問なさるかなと思っておったんですが、御質問なさらなかったので、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
 今までの議論の中で、死刑とか、またあるいは性犯罪について、これを裁判員裁判に含めるべきか含めるべきではないのか、またあるいは選択制にするべきではないかという議論がありましたけれども、今のところ、裁判所の方での判断といいますか、どういった方向で検討しているかということについてお伺いをしたいと思います。これは法務省でもどちらでも結構です。
○林政府参考人 性犯罪について対象から除外すべきであるとか、あるいは被害者選択制を採用すべきという御意見がございましたけれども、これについては、これまでにも、裁判員制度に関する検討会におきまして、そのような議論がなされたところでございます。
 その議論の経過を振り返りますと、性犯罪に係る事案を対象から一律に除外するという意見につきましては、例えば、性犯罪について、裁判員裁判では、裁判官のみによる裁判と比較して重い量刑が言い渡される傾向にあって、性犯罪の被害の深刻さが裁判員に理解されていることのあらわれと考えられるところ、仮に性犯罪が裁判員裁判の対象から除外され、国民が悪質な性犯罪の被害について考える機会を失うと、その実情が理解されないままになるという弊害があるといった意見、あるいは、性犯罪以外にも、親族間の重大犯罪等のプライバシー保護の必要性が高い事案があり得るので、性犯罪のみをプライバシー保護という観点から除外するという根拠づけが難しいのではないかという意見、また、こういった被害者のプライバシーに関する懸念というものは、現行法制を利用した運用上の対応によって解決すべきである、こういった意見などの消極意見が多く示されて、一律除外という形での積極意見は見られなかったところでございます。
 また、被害者選択制につきましては、やはり被害者に選択の責任を負わせるとなると、いずれの選択をしたとしても、これでよかったのであろうかといったようなことについて悩み続けることが考えられるなど、かえって被害者の負担といったものが大きくなるという難点がある、あるいは、選択制は、一見、被害者の意思を尊重する制度のように見えるけれども、被害者に対して裁判員裁判という制度を実施するか否かの選択を迫るのは酷なことであって適当ではないのではないか、そのような意見があって、消極意見が大勢を占めていたということがございまして、これまでのところ、こういったことについて、今回の法改正には含められていないということでございます。
○安藤委員 ありがとうございます。
 やはり、死刑という重大な判決についての判断をさせるかどうか、またあるいは性犯罪のようなプライバシーを十分に尊重しなきゃいけない事件についてどう扱っていくのかというのは、これからも本当に真摯に議論していかなきゃいけない内容だと思いますので、私たちも、これは心してかかっていかなきゃいけないというふうに改めて思っているところでございます。
 そして、今までの一連の質疑の中で、裁判員裁判が始まってからの裁判のやり方や、またあるいは控訴審の動きや量刑の推移など、きょうの質疑で確認をさせていただきました。そして、今までの法務委員会の質疑においても、裁判員裁判の判決を覆すのは裁判員裁判のそもそもの導入目的に反するのではないか、国民感情を反映した司法を目指す司法制度改革に逆行するのではないかというような意見も聞かれます。
 これは、ちょっと私の意見を申し述べますので、特に答弁は求めませんので大丈夫ですけれども、しかし、私は、今のこの風潮にあえて少し疑問を投げかけておきたいと思っております。
 裁判員の皆さん方は、本当に真摯に裁判に向き合って、真剣に評議をして、大変な思いをしながら判決を下しておられると思います。そのことには心から感謝を申し上げなくてはならないと思っております。
 しかし、少し皆様方にお考えをいただきたいと思いますのは、きょう、ちょっとお手元に資料を一枚お配りいたしましたけれども、資料の二枚目でございますけれども、リスキー・シフト実験と言われる、これは社会心理学の一つの実験でございます。集団討議を経た集団の決定は、個人の決定に比べて、利益は大きいが、危険も伴う方向に偏る傾向がある。逆に、集団決定の方が安全指向になることもある。両極に分かれているということが社会心理学の実験で指摘をされているわけです。個人の判断よりも、集団で討議をした方が両極のどちらかの方に分かれていく傾向があるということが社会心理学で実験として言われているわけですね。
 そして、お配りをした資料にはちょっと書いておりませんけれども、なぜこのリスキー・シフトが起きるのかということについては、二つのことが言われております。一つは、集団で討議をすると、決定が誤っていたときに誰が責任をとるのかということが曖昧になることによる責任拡散過程、つまり、責任が曖昧になるとリスキーな選択が行われやすいという考え方です。それともう一つは、冒険的選択をする人、よりリスクをとるような選択をする人はリーダー的素質を備えていることが多い、つまり、リーダーシップによる説明。この二つのことが言われているわけですね。
 裁判員裁判の結果が、今ここで指摘をされているような現象が必ず起きているとは言いませんけれども、もしかしたら、ここで指摘をされるように、集団討議を経て、より両極に分化をする結果が出る傾向があるのではないか。先ほどの質疑をさせていただいた中で、量刑の分布がどう変わっていますかという中でも、こうなっているということは直接断言はできないですけれども、そうなっている可能性は否定できないのではないかということを私は思うわけです。
 特に、従来の判断では死刑とならなかった事件に対して踏み込んだ判断をするというのは、これはよりリスクのある判断だろうと思いますが、果たしてそれが本当に裁判員の皆様方の感覚を冷静に反映させたものなのか。そして、今までの裁判では一般国民の良識が反映をされていなかった、これからはあなた方が一般国民の良識で判断をしてください、それが新しい司法をつくるんですよというようなことが言われると、過去の判例にとらわれずに、裁判員の皆さんがそれぞれの価値判断基準で量刑を判断していくことを促すことにつながるのではないか。そうすると、裁判によって量刑の不均衡が生じることになっていき、結果として司法の信頼性を大きく揺るがしていくことにつながっていくのではないか、私はそんなことも懸念をしております。
 そして、一つ質問の項目を飛ばしていたかと思うんですけれども、上級審において裁判員裁判の結果を重視すべきというようなことを誰かがどこかで明言したり、またあるいは通達みたいな形で何か出されているのか、そのことについて一つ確認をしておきたいと思います。
○平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 委員御指摘のような、最高裁が控訴審の審議のあり方等について何か通達を出しているということはございません。
 裁判官同士の議論、研究の中で控訴審のあり方について意見交換がなされておりまして、その中では、裁判員制度の趣旨や、刑事訴訟法におきまして控訴審が事後審であると位置づけられているところなどの趣旨を踏まえまして、裁判員裁判の一審判決を可能な限り尊重しようといったような議論がなされておると承知しておるところでございます。
○安藤委員 ありがとうございます。そういうことだろうと思います。
 やはり、過去の判例というものは、さまざまな事案について専門家の皆様方が真摯に向き合った知恵の結晶であろうと思いますし、それに対して、やはり恐れと敬意を持って接する必要があるんだろうと思います。過去のさまざまな事例と真剣に対峙をしてきた先人の知恵の結晶と異なる判断をするのであれば、その後のさまざまな批判に対しても、それに耐えて乗り越えていく、それだけの相応の覚悟が必要であると思います。今、裁判員裁判での裁判員の皆様方に、果たしてそういった覚悟が必要であるということが共有をされているんでしょうか。
 きょうの質疑の中でも、裁判員裁判の方が裁判官による裁判よりも求刑より重い判決が出る傾向があるのではないかというようなことを思わせるものもありましたし、また、新聞報道においても、控訴審において一審判決が破棄をされると、国民の目線で下した裁判員裁判の判決を重視すべきだとか、一審において裁判官や検察官がきちんと裁判員に情報を伝えていればこんなことにならなかったというような、裁判員は必ず正しくて、過失がなくて、何か裁判官や検察官に過失があるというような論調の記事が書かれるわけです。
 しかし、やはり裁判員だって間違えることがあるし、それを正すのが上級審の役割であると思います。その職務がこれからも間違いなく実行されるような環境を整えるのが、我々立法府の、そして政治の役割だと私は思います。
 先ほどの質疑の中で、控訴審における一審判決を破棄する割合が、裁判官による裁判が行われていたころに比べると減っているように思われますし、裁判所が裁判員裁判の判決を重視する方向で実務を運用しているというような答弁もありました。
 しかし、先ほど紹介した社会心理学の内容などについても、プロの裁判官であれば、研修などを通じて、こういったことはあり得るんだ、こういったことがないようにしなきゃいけないという訓練を施すことも可能だと思いますけれども、一般の皆様方にそういった研修を施すことはできません。善良な国民の皆さんの集団討議の結果が全て正しいとは限らない、このことは、私は、常に念頭に置いて裁判員裁判についての議論はしていかなきゃいけないというふうに思っております。
 そして、このことは、民主主義というものについての正しい理解にもつながっていくんだろうと思います。何でも国民の皆さんに聞けば正しい答えが返ってくるというものではありません。やはり、正しい情報や間違った情報が混在している現在においては、より本質を理解した議論の末に、あるべき社会の姿を見出していくのが民主主義の姿だと思いますし、それには、それぞれの分野の専門家の相当程度の専門性が必要になってくると思います。
 裁判員に対して悲惨な被害者の写真を見せることを回避したり、またあるいは負担軽減のためにいろいろなことがそぎ落とされるというようなことがあったときに、マスコミでおもしろおかしく、ワイドショーネタになっているような芸能人たちの結論が裁判員たちの心証に大きく影響してしまうということも、これもやはり否定できないのではないかと思います。ワイドショーネタが国民感情であるということには断じて賛成できないということは、これは皆さん方も共有できることだろうと思います。
 そして、裁判官は専門家ですし、専門家にふさわしい知識を積み上げて、修練を積んで、さらには国民の皆さん方から司法に対する信頼を確保していく責任があります。その専門家の意見よりも一般の国民の意見の方が必ず正しいとは限らないわけですね。
 私は、今回の質疑の中でも一番重視をしなきゃいけないのは、裁判員の辞退率の高さ、そして、できればやりたくないと感じる人の比率の高さだと思います。私は、これこそが国民の皆さんの良識ではないかと思いますし、参考人の意見の中には、やりたい、やりたいという人に任せるのはちょっとどんなものなのかといったような意見もあったわけです。
 私は、国民の良識は果たしてどこにあるのかということをもっと裁判員裁判においては真摯に議論をして、そしてあるべき裁判の姿というものを模索していくべきだということを意見として申し上げさせていただきまして、私の質疑を終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
○奥野委員長 次に、清水忠史君。
○清水委員 日本共産党の清水忠史でございます。
 きょうも、元気にテンポよくいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 二日間の参考人質疑を拝聴しまして、本当に、字面だけでは、マスコミの報道や、あるいは専門家の方の論文だけでは伝わらない裁判員裁判の本質といいますか、裁判員裁判でよかった、市民的な感覚が反映された、こういう声もあれば、やはりさまざまな問題点も浮き彫りになったのではないかというふうに思います。
 そういう点でも、今回の改正案というものが、これは附則第九条に基づいて出されたものですが、極めて不十分ではないかなというふうに思います。改善すべき点が全て網羅されたということではないというのは、この委員会の皆さん共通の認識ではないかなというふうに思っております。
 参考人の皆さんが異口同音に、やはり、よりよい裁判員制度にしていくためにも、引き続き、これで了とせず、行政府あるいは立法府、そして最高裁が努力してこの裁判員裁判の制度を改善していく、こういうことが必要であるということになったと思います。
 それで、改正案の一つ目に記された、超長期、長期間の審理を要する事件等を裁判員裁判の対象事件から除外するということについて質問をさせていただきたいと思います。
 これは、法務省の説明によりますと、裁判員に過重な負担がかかって、また裁判員や補充裁判員に不足を生じる、そういう場合に備える必要があるということだったと思うんですが、我が党の畑野議員の質問の中でも、著しく長期にわたる事件そのものの要件が極めて不明確であり、これまで同様の事件が起こっていないということからも、私は、これは立法事実そのものが不明確ではないかというふうに考えております。
 同時に、著しく長期になる、公判審理が複雑で長引くだろうなという事案こそ、国民にとっては関心も高くて、市民感覚を反映させる裁判員裁判にするという意見も参考人からるる出されました。
 それで、初めに聞きたいんですが、私は、ちょっと冷静になって考えましたら、もともと、この超長期というのは、今になって出てくるというよりは、この裁判員裁判の制度が始まるときにも予測される事態だと思うんですよ。見直しじゃなくて、この制度を始めるときに、著しく長いときに本当に裁判員の方が来てくれるだろうか、呼び出しに応じてくれるだろうかという意見や予測というのは出たんじゃないかなというふうに思います。
 私は、裁判員裁判の制度ができるときのいわゆる検討会、裁判員制度・刑事検討会、ここでも著しく長期にわたる事案を除外しようという議論はされていたと思うんですが、これは間違いありませんか。
○林政府参考人 今御指摘のありましたとおり、裁判員制度の創設の際に設置されました裁判員制度・刑事検討会におきまして、審理に余りに長期間を要するものについて裁判員裁判の対象から除外することについて議論がなされたことがございます。
 その検討会におきましては、このような除外ということに対しまして、裁判員制度を導入する以上、被告人に裁判員の参加する裁判を受けるか否かの選択権を与えないことが前提であるけれども、何日以上審理にかかる場合に裁判員制度の対象事件にならないというふうになると、場合によっては、争点をつくり出すことによって、事実上、被告人が裁判員裁判を受けることを拒否することができる事態を生じるのではないか、あるいは、ある程度国民に負担がかかる上でも、関係者によってその弁論の分離、併合等の工夫をすればよいのではないかといったような反対意見が出されまして、裁判員制度創設に際して、こういった著しく長期にわたる事件を制度の対象から除外するという制度については採用されなかったものでございます。
○清水委員 採用されなかったということなんですね。創設時に意見としては出た、議論の対象になった、しかし、今局長が言われたとおりの理由でもって採用されなかったわけです。
 そのときの裁判員制度・刑事検討会の議事録を読ませていただきました。井上正仁座長が、審理に余りに長期間を要するものは裁判員裁判の対象から除いてしまうという考えもあろうかということでしきりに述べられていたんですが、今言われたとおり、極めて長くなるから対象事件から除くというのであれば、これは裁判員裁判の趣旨に反する、長いからこそ、国民の関心が集まる重大事件だからこそ、裁判員の市民的な感覚をしっかりと反映させる、司法の国民的な基盤を構築するということで、これは退けられた意見なんですね。
 ところが、今回、改正案で、再びといいますか、著しく長期にわたるものについては除外すると出てきたんですね。なぜ法制定時に否定されたものが今回法改正として盛り込まれたんですか。
 法制定時に否定された趣旨というのは、今私が述べましたよね。これは、この六年間の時の流れの中で変遷するものじゃありませんよ、普遍的なものですよ、裁判員裁判の根幹にかかわるものですから。これは変わっていないわけでしょう。だったら、なぜ今回このような改正案が出たのか、本当に理解に苦しむんです。
 私、ちょっと一つ聞きたいんですけれども、つくらなければならないような立法事実はあったんでしょうか。
○林政府参考人 これまで裁判員制度が施行されて、一定の裁判員制度の運用がなされてまいりました。その中で、これまでに審判が行われた裁判員制度対象事件は、全て裁判員の参加する合議体により判決に至ることができたものでございます。もっとも、この中には審理期間が相当長期間となる事案というものも散見されることとなりました。
 そうした点を踏まえますと、今後、従前までの事案をはるかに上回るような事案、すなわち、審判の期間がこれまでのものよりもさらに長期に及ぶような場合、そういった事件が発生することは否定し得ない。そのような場合に、例えば、選任手続を行っても、辞退者が続出して必要な員数の裁判員を選任することが困難になるような事態でありますとか、あるいは、公判段階に至りまして辞任等によって裁判員に不足を生じて、裁判員等の追加の選任と更新手続の繰り返しというのが行われて、結局、判決までたどり着かないという事態、こういった事態が生じることも想定し得るところでございます。
 この点につきまして、平成二十四年の十二月に最高裁事務総局が公表いたしました裁判員裁判実施状況の検証報告書、これによりますと、審理予定日が長くなればなるほど、裁判員候補者の辞退率が高く、かつ、裁判員等選任手続の期日における候補者の出席率が低くなるという傾向があると認められる上に、これまでの長期審理事案における裁判員等の選任状況を考慮いたしますと、こういった事態が生ずる可能性はやはり十分にあると考えられます。
 そして、仮にそういう事態が起こった場合に、現行の裁判員法のもとではあくまでも裁判員による合議体によって審理を行わざるを得ないわけでございますが、それでは当該裁判が行えないことになりまして、現にそういった手続が立ち行かなくなってからでは適切な対処は困難である、そのようなことを未然に防ぐための立法措置が必要になると考えられます。
 こうしたことが、今回、長期間の審判を要する事件を対象事件から除外することを可能とする規定を設ける具体的な必要性、そこに今回の立法事実が認められると考えております。
○清水委員 いろいろ言われたんですけれども、今言われたことは創設時の刑事検討会でも言われていた話です。私は、この六年間を通じて、こうした規定を設けなければならない立法事実はあるかというふうに伺ったんですよ。
 確かに従事期間が百日を超えるようなものもありました。公判期日が三十回になるようなものもありました。確かに長期になれば辞退率がふえていく傾向はあるかもしれません。それでも、できなかったということじゃないでしょう。
 私、一つ言いたいんですけれども、とにかく除外規定を設けようという方がもともとどういう意見をおっしゃっておられたかといいますと、裁判員制度ができる前ですが、公判期日が十日以上のものについては除外する制度をつくったらどうかというふうにおっしゃっていたんです。わずか十日ですよ。例外的にとか、原則として選任手続をやるということでずっと議論されていましたが、もともと除外規定を設けようという趣旨が、できるだけ裁判員の対象事件を減らしていく、難しいもの、長いもの、そういうものは職業裁判官だけで済ませてしまおうと。十日以上のものについては除外の制度を求めようと一貫して述べてきた人が、今回の裁判員制度に関する検討会、この取りまとめ報告書の中で出してきた。
 創設時に意見が通らなかったのはなぜか。少数派だからですよ、この意見が。これは、みずから述べておられますよ。私の意見は少数派だったと井上さんはおっしゃっている。今回はたまたま多数派だった。だから、創設時に、除外規定を設けるのは裁判員裁判の制度の根幹にかかわる原則だからだめだということで退けられたものが、今回、また出てきたということなんです。
 ですから、それは、将来を予見して、不測の事態に備えるということはあり得る話です。しかし、私、繰り返し言いますけれども、創設時の裁判員制度・刑事検討会では、オウム真理教の事件も例に出して、このような事件の場合はやはり除外した方がいいんじゃないかという議論をされているんです。それでも、適正な区分審理によって裁判員裁判でやるべきだ、それがこの制度の趣旨だということで退けられていたのに、今回出てきたのはおかしいのではないですか、こういうふうに聞いているわけです。
 林刑事局長の今の答弁では、立法事実があるかないかということについては明言されていなかったと思うんですが、もしあるとすれば、目的手段審査などは行われたのか。例えば、実際の社会に存在する事実、あるいはこの法律をつくることによって効果が得られたかどうかという検証ができるかどうか。ここまで考えられてこの法律を出されたんですか。お答えください。
○林政府参考人 裁判員制度創設の際、この問題は議論がされたわけでございますが、そのときには裁判員制度はまだ施行されておりません。したがいまして、その後行われることになる裁判員制度の運用の状況、そのデータというのが全くない状況のもとでの議論でございました。そういった形で、具体的な議論をその段階で十分に行うには基礎的な情報がなかったわけでございます。
 その後、当然、裁判員制度が実施されまして、裁判員制度の実施された場合の相当長期間にわたる事案というのも生じてまいりました。その際に、一般的に、裁判員制度の運用の中で、審理予定期日が長くなればなるほど辞退率が上がるといったようなデータも蓄積されてまいりました。
 そのような中での検討として、今回、これまでは運用できたけれども、それをはるかに超える長期の期間を要する事件について除外することを可能とする規定を事前に設けておく、こういうことについては十分な立法事実があると考えております。
○清水委員 立法事実があるというふうに言われたので、私、では、違う質問をします。
 例えば、公判前整理手続の段階で裁判所が、別の合議体がやるということですけれども、これは著しく長期だと認定して、裁判員裁判から除外したとしましょう。例えば、その事件の被告人が事実を否認している場合、私はやっていません、無罪ですと言っている場合、誤判あるいは冤罪を防止するためにも、適正な公判のため、市民感覚を取り入れてもらいたい、裁判員裁判でやるべきだという被告人や弁護人、あるいは国民世論、こういうことにちゃんと説明できますか。
 事件が長期かそうでないかを理由にして、事実を否認している被告人が裁判員裁判を受けられないとしたら、裁判員裁判を受けられる被告人との公平性の担保というのは、これはどうとると考えるべきですか。端的にお答えください。
○林政府参考人 刑事訴訟手続は、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしながら、事案の真相を明らかにして、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現すること、これが目的とされております。
 この刑事訴訟手続の最も重要な機能といいますのは、これは裁判員制度による裁判であろうと職業裁判官による裁判であろうと変わりがないと考えております。
 そういったことから、今回、除外されるかどうかということによって、裁判員制度による裁判を受けるのか、あるいは裁判官のみの裁判を受けるのかという違いが出てくる場合がございますが、それによって、指摘されたような形で、それが除外されたことが当該被告人にとって不利益、不公平というものが生じるとは考えておりません。
○清水委員 それはちょっと納得できない答弁ですね。それだったら、何のために重大事件に限定して裁判員裁判を導入したんですか。これは、被告人や弁護人や、あるいは検察の判断によって受ける受けられないが選択できる制度じゃないでしょう。私が聞いたのは、公平性が担保できるかということなんですよ。
 憲法十四条に何と書いていますか。法のもとの平等というのがあるじゃないですか。なぜ、著しく長期かどうかによって、裁判員裁判が受けられる被告人と、そうでない人が生まれるのか。しかも、これは事実を否認している人の場合ですよ。例えば、今は対象事件になっていませんけれども、痴漢冤罪もそうでしょうし、窃盗もそうでしょう。
 ちょっと私、これは最高裁に確認します。私が今言っていることがいかに大事かということを強調したいので。
 裁判員裁判というのは、重大事件で起訴されているわけです。死刑とかあるいは無期懲役とか、有期刑ですね。これまで行われてきたうちに、起訴されたものの無罪となった人は何人いますか。
○平木最高裁判所長官代理者 十四名でございます。
 申しわけございません、四十四名でございます。
○清水委員 大事なところで間違えたらあきませんやん。四十四名、おおという声が上がるところを想定していたのに。
 四十四名無罪になった方がおられるわけですよ。これは裁判員裁判を導入したから必ず無罪になったかどうかは知りませんよ、それは検証しないとわかりません。ただ、無罪判決を言い渡された被告人の中には、裁判員の市民感覚が生かされたからこそ無罪となれたのではないかというふうに考えている人があろうかと私は思います。
 それで、ここで上川陽子法務大臣にお尋ねするわけなんです。
 今の議論を聞いていただきまして、著しく長期にかかわる問題なんですが、繰り返しますが、裁判員制度がスタートする過程においても著しく長期の問題は出ましたけれども、これは入れない、そういう事件こそ、区分審理の適正化だとか、こういうことでやっていこうということでスタートしたわけですよ。立法事実にしても、私は曖昧だというふうにも思っておりますよ、ないというふうに思っていますよ。
 さらに、事実認定を争う事件、今私が言いました、被告が否認している事件などについて対象事件から除外されるということになると、これは無実、無罪を主張している被告に対して、裁判員の市民的な感覚が生かされないということになるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
○上川国務大臣 今回、超長期ということで、例外中の例外という形でお願いしているところでございまして、対象の事件に対しましては、裁判員の裁判というのが通常行われるということを前提としての動きでございます。
 ただ、御指摘のように、裁判員制度から安易に除外されるのではないかという御懸念ということでございまして、それは許されないということだというふうに思っております。
 したがいまして、この除外ということにつきましては例外中の例外ということでございまして、公平な裁判にするという意味におきましては、裁判員裁判におきましても、プロの裁判官による裁判におきましても、当然のことながら、公平に行われるべきだというふうに考えます。
○清水委員 今、上川大臣からも例外中の例外というお話がありましたし、取りまとめ報告書にも、これを導入するのであれば、除外規定を設けるのであれば、「極限的な場合」という表現も出されております。
 私は、この制度の趣旨に沿って、除外規定を設けるべきではないというふうに思いますし、わざわざ今すぐつくらなくてもいいものを法律に入れるよりも、参考人質疑を聞いていただいてわかるように、もっと法改正しなければならない問題点が浮き彫りになっていると思うんです。
 著しく長期という場合も、例えば大城参考人が言いましたように五百人、六百人の候補者を呼び出せば何とかやっていけるということもありましたし、江川紹子さんは、長いかどうかというだけで必ずしも対象から外す必要もない、一番大事な問題は、責任を果たそうとする高い意識をどう国民全体に広く育んでいくかということだ、こういうことで、長期を理由に対象事件から外すことは認められないというふうに考えておられますし、私も同様です。
 そういうことで、本来もっと必要ではないかという部分は、やはり対象事件の拡大ということだと思うんですね。差し当たって重大な刑事裁判に限定されてきたのがこの裁判員制度ですが、たとえ死刑とか無期懲役とか多くの量刑を科せられるような事件でなくても、また国民の関心が集まろうとそうでなかろうと、例えば被告人にとっては、あるいは被害者にとってもそうですけれども、その人本人にとっては重大事件に変わりはないわけです。
 そういう点では、痴漢冤罪という話もありましたし、窃盗というのもありましたし、あるいは参考人からは行政訴訟ということもありましたし、私は労働事件ということも非常に重要だというふうに思っております。あらゆる民事事件、どこまで対象を広げていくかということはいろいろ意見のあるところだと思うんですが、おおむね、対象事件を広げてはどうか、せっかくいい制度なんだからという意見があったと思うんですが、議事録を読まれて、あるいはネットを見られて、上川大臣、どのように受けとめられたでしょうか。
○上川国務大臣 裁判員制度の対象事件の拡大につきまして、さまざまな御意見があったということでございます。今後の検討におきましても、そのようなさまざまな御意見を十分に参考にさせていただきたいというふうに考えております。
○清水委員 しっかりと受けとめていただきたいと思うんですね。
 辞退率の高さや出席率の低さということもこの委員会で大変議論になりましたが、私は、それを無理やり高めればいいという話でもなく、やはり、環境整備を行う中で、国民の方が裁判員裁判に気分よく参加できる状況を整えるということが非常に重要だと思っております。
 そこで、最高裁にお伺いします。
 例えば会社勤めの方は、なかなか仕事をあけて裁判員裁判に参加することが難しいというような方もいらっしゃるかもしれません。会社の、職場の理解があれば参加したいという意欲を持っておられる方もいらっしゃると思うんですね。
 ですから、例えば会社員の方、会社勤めの方から要望があれば、裁判所が職場にアプローチをして、候補者の方が円滑に裁判に参加できるよう理解を求めていくということも必要だと思うんですが、いかがでしょうか。
○平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 各地の裁判所におきましては、裁判官や裁判所職員が企業等に出向いて説明を行う出前講義を制度施行後から継続して行ってきたところですが、最高裁が件数を把握している平成二十六年六月から二十七年三月までの期間におきましては、百二十件の出前講義が実施されており、そのうち五十七件が企業や事業者団体において実施されております。
 出前講義におきましては、裁判官等が実際の運用状況や裁判員経験者の声などの紹介を交えながら裁判員裁判についての説明を行いまして、国民の皆様方の多くが持っておられると思われます疑問や不安を取り除いて、安心して裁判員裁判に参加していただけることを目指しておるところでございます。
○清水委員 出前講義が全く無駄だとは言いませんけれども、五十七件というふうにおっしゃいましたでしょう。この国内に事業所数が幾らあるか御存じですか。五百七十万、事業所があるんですよ。全部の事業所を回るというのはなかなか難しいと思うんですよ。
 それよりも、裁判員候補者の方からの、ちょっとうちの上司に一声かけてほしい、理解を求めてもらいたいということに応えた方が私はよっぽど効率的だと思いますし、会社に、職場に対しては、候補者になったことについて秘匿する義務はなかったはずだと認識しています。そういう点では、そういう合理的なことも大いに検証していただきたい。これは、意見を述べておきたいと思います。
 それで、今回、前田参考人からは、例えば、裁判員制度も刑事裁判の一部ということですので、公判前整理手続における証拠の全面開示、あるいは取り調べ全過程での可視化、そして取り調べ段階での弁護人の立ち会い、こうした公正な裁判を行うということで、るる検討会でも意見を述べておられたんですが、とにかく、前田参考人の意見はこの検討会の検討事項に当たらないということで、ことごとく退けられてきたという印象を、私は議事録を全て読ませていただいて、非常に感じたところです。
 それで、一点お伺いします。
 裁判員制度に関する検討会の委員の皆さんは、検討事項の範囲について全て共有されていたんでしょうか、そうでなかったんでしょうか。端的にお答えください。
○林政府参考人 裁判員制度に関する検討会、累次行われたわけでございますが、その過程で、何を論点にするのかという論点整理についての議論もなされたところでございます。
 それにつきましても、その都度、その検討会においてさまざまな意見がございました。特に、裁判員制度に特有な論点と、そうではなくて刑事訴訟全般にわたる論点、こういうものが混在するようなところの取り扱いというものについては議論がなされたと承知しております。
 そういった場合に、他方で、当時、法制審議会の新時代の刑事司法制度特別部会というのがございました。こちらの方では、さらに刑事訴訟手続全般についての議論がなされていたものですから、それとの関係で、裁判員制度に関する検討会の論点をどのようにするかという議論がなされたと承知しております。
 結果としまして、その後の当該裁判員制度に関する検討会についての論点整理については、最終的には委員全員に共有されて、納得されたものと承知しております。
○清水委員 そんな正確でないことを言っていただいたら、私は、誤解を招くと思いますよ。
 検討会が十八回開かれましたよね。前田委員は、第十六回検討会で、証拠開示制度について、せめて法制審議会特別部会での制度改革につながるような議論の素材だけはこの検討会で残しておこうと意見を表明されておられます。そして、十七回でも、取りまとめ報告書に入ろうという時期にあっても、こういう意見を述べられているんです。ですから、全ての委員がその範囲について、検討事項の共有があったというふうには私は思えません。
 以上の点から、最後に上川大臣、この裁判員制度、まだまだ必要な改正が、あるいは運用上の改善が求められていると思いますので、一言、所見を述べていただきたいと思います。
○奥野委員長 上川大臣、端的にお願いします。
○上川国務大臣 裁判員制度そのものが日本の司法制度の中できちっと定着をし、また支持を得ていくことができ、またそれが発展することができるように、今回の委員会及び参考人の方々の議論も含めまして、しっかりと検討し、また制度に役立てていきたいというふうに思っております。
○清水委員 終わります。ありがとうございました。
○奥野委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
○奥野委員長 この際、本案に対し、盛山正仁君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、維新の党及び公明党の共同提案による修正案、清水忠史君から、日本共産党提案による修正案がそれぞれ提出されております。
 提出者から順次趣旨の説明を聴取いたします。山尾志桜里君。
    ―――――――――――――
 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
○山尾委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表いたしまして、その提出の趣旨及び内容について御説明申し上げます。
 本修正案は、法律案の附則に、政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、新法の施行の状況等について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、裁判員の参加する裁判の制度が我が国の司法制度の基盤としてより重要な役割を果たすものとなるよう、所要の措置を講ずるものとする規定を追加するものであります。
 以上が、本修正案の趣旨及び内容であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○奥野委員長 次に、清水忠史君。
    ―――――――――――――
 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
○清水委員 私は、日本共産党を代表して、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案を提出いたします。
 その内容は、お手元に配付されております案文のとおりであります。
 まず、修正案の提案理由を御説明申し上げます。
 裁判員制度は、冤罪が絶えない刑事司法に対し、国民の司法参加によって、刑事裁判に市民感覚、国民の常識を反映させ、事実認定を適正なものにすることが期待されて導入されました。
 同時に、法制定時にも、また施行後も、取り調べの全過程が可視化されていないことや、証拠の全面開示制度が実現していないことによる誤判、冤罪の危険性、裁判員参加のための職場環境の整備のおくれ、裁判員の厳しい守秘義務、重い心理的負担など、さまざまな問題が指摘されてきました。施行されて六年になろうとしている裁判員制度の見直しは、こうしたさまざまな問題を国民的な議論のもとに解決するものでなくてはなりません。
 ところが、政府の改正案は、この間、指摘されてきたさまざまな問題を解決するものとはなっていません。
 よって、裁判員制度の抱える問題点を解決するため、裁判員法改正案に対する修正案を提出するものです。
 次に、修正案の概要について述べます。
 第一は、対象事件の見直しです。
 一つは、政府案にある長期間の審判を要する事件の裁判員裁判からの除外規定を削除することとしています。
 二つは、否認事件については、被告人が請求したときは裁判員裁判として取り扱うよう、対象事件を拡大することとしています。
 第二に、裁判長に、推定無罪の原則を初めとした刑事裁判の原則について、裁判員等に対し、公開の法廷での説明を義務づけることとしています。
 第三に、死刑判断に関する評決要件を、全員一致によるものとしています。
 第四に、裁判員等の心理的負担を軽減するための措置を講じることを義務づけることとしています。
 第五に、裁判員等の守秘義務について、違反に対する罰則から、懲役刑を除き、罰金刑に限定するとともに、裁判員等の任務終了後は、守秘義務の範囲を、正当な理由がなく他人のプライバシーを漏えいする行為や評議の秘密のうち他人の意見を明らかにする行為及び財産上の利益等を得る目的で正当な理由がなく評議の秘密を漏らす行為に限定することとしています。
 第六に、対象事件の拡大の施行後三年を経過した場合において、新法の施行の状況について、国民的な検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、所要の措置を講ずるものとしています。
 第七に、刑事訴訟法にかかわる事項ですが、改正法の施行後速やかに、検察官が保管する全ての証拠の開示を義務づける制度並びに被疑者の取り調べの状況等の録画及び録音、いわゆる取り調べの全面可視化を義務づけるとともに、その取り調べの際に弁護人の立ち会いを認める制度を導入するため、必要な法制上の措置、その他の措置を講じなければならないものとしています。
 以上が、政府案に対する修正案提出の理由及びその概要です。
 議員各位の皆様の御賛同を心からお願いし、趣旨の説明といたします。ありがとうございました。
○奥野委員長 これにて両修正案の趣旨の説明は終わりました。
 この際、清水忠史君提出の修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。上川法務大臣。
○上川国務大臣 本法律案に対する修正案については、政府としては反対であります。
    ―――――――――――――
○奥野委員長 これより原案及び両修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。畑野君枝君。
○畑野委員 私は、日本共産党を代表して、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部改正案に反対、日本共産党提出の修正案に賛成、自民、民主、維新、公明各党共同提出の修正案に賛成の討論を行います。
 第一に、著しく長期にわたる事件を裁判員裁判から除外する規定の新設は、国民の司法参加により国民の社会常識を裁判に反映させるという裁判員制度の趣旨に反するものであり、認めることはできません。
 著しく長期にわたる事件の要件は、著しくという基準が曖昧であり、立法事実も存在しないと言わなければなりません。しかも、職業裁判官が職権で判断し、裁判員裁判の対象事件から除外することができるため、国民の裁判員裁判への参加の権利を奪いかねません。
 冤罪事件など、重大否認事件こそ、裁判員の社会常識、市民感覚を裁判に反映させ、適正な事実認定がなされることが期待されます。
 裁判員の負担軽減のためには、裁判員が参加しやすくなるよう、有給休暇制度の導入などの職場環境の改善、保育所、学童保育の利用の確保などに積極的に取り組むべきです。
 なお、災害時における措置、被害者特定事項の保護の改正点は、この間の実情を踏まえた妥当なものであり、必要なものです。
 第二に、本法案は、裁判員制度についてこの間指摘されてきたさまざまな問題の解決を棚上げする内容となっております。
 裁判員制度は、冤罪が絶えない刑事司法に対し、国民の司法参加によって刑事裁判に市民感覚、国民の社会常識を反映させ、事実認定を適正なものにすることが期待されたものです。
 一方で、取り調べの全過程の可視化がなされず、証拠の全面開示制度がないことによる誤判、冤罪の危険性、裁判員として参加するための職場環境の整備のおくれ、裁判員の厳しい守秘義務、重い心理的負担など、さまざまな問題が指摘されてきました。現行法が施行されてから六年になろうとしながら、辞退率が六七・一%にふえ、参加にちゅうちょする人は八七%に及んでいます。
 ところが、本法案はこれらの問題の解決を盛り込んでおりません。
 我が党の修正案は裁判員制度をめぐる諸問題を解決するための最低限の提案であり、見直し規定を含めたものです。
 自民、民主、維新、公明各党共同提出の修正案は見直し規定についてのものであり、賛成します。
 以上をもちまして、討論を終わります。ありがとうございました。(拍手)
○奥野委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
○奥野委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。
 まず、清水忠史君提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○奥野委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
 次に、盛山正仁君外三名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○奥野委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○奥野委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
○奥野委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、盛山正仁君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、維新の党、公明党及び日本共産党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。井出庸生君。
○井出委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
    裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
 一 長期間の審判を要する事件等は、国民の関心が高く、社会への影響も大きい事件が多いことから、裁判員制度が創設された目的に鑑み、その除外決定は極めて例外的な措置であることなど、本法の趣旨の周知徹底に努めること。
 二 審判に著しい長期間を要する事件等の対象事件からの除外決定は極めて例外的な措置であることに鑑み、除外の要否の検討を行う前提として、関係者の協力の下、公判前整理手続等において必要な審判期間及び公判期日等についての十分な検討を行うとともに、できる限り裁判員等選任手続の実施を図り、裁判員裁判を実施するために最大限の努力を尽くすことなど、本法の趣旨に沿った運用がなされるよう周知徹底に努めること。
 三 本法の附則に基づく三年経過後の検討の場を設けるに当たっては、国民の視点からの見直しの議論が行われるよう、裁判員経験者、犯罪被害者等の意見が反映されることとなるように、十分に配慮すること。
 四 裁判員裁判の円滑な実施を図るため、裁判員制度施行後の辞退率の上昇及び出席率の低下について十分な検討を加え、必要な措置を講じること。
 五 事業者による特別な有給休暇制度の導入などの職場環境改善の促進、保育所・学童保育等を日常的に利用していない者がこれらの施設を利用することの確保等、できる限り国民が裁判員として裁判に参加できるような環境の構築に向けて、更に積極的に取り組むこと。
 六 国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に訴訟手続を行う制度の在り方について、差し当たり刑事訴訟手続における国民参加の制度である裁判員制度が導入されたことに鑑み、国民の司法に対する理解・支持を更に深め、司法の国民的基盤をより強固なものとして確立するため、広範な視点に立って検討を行うこと。
 七 本法の附則に基づく三年経過後の検討に当たっては、死刑事件についての裁判員制度の在り方、性犯罪についての対象事件からの除外などの犯罪被害者等の保護の在り方、否認事件への裁判員参加の在り方、裁判員等の守秘義務の在り方等、当委員会において議論となった個別の論点については、引き続き裁判員制度の運用を注視し、十分な検討を行うこと。
 八 裁判員制度施行後における殺人罪及び強盗致死傷罪等の起訴率の低下と制度の影響との因果関係について、本法の附則に基づく検討までに検証を行うこと。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
○奥野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○奥野委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。上川法務大臣。
○上川国務大臣 ただいま可決されました裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
 また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと存じます。
    ―――――――――――――
○奥野委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
○奥野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十分散会