第190回国会 財務金融委員会 第14号
平成二十八年四月二十日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 宮下 一郎君
   理事 うえの賢一郎君 理事 神田 憲次君
   理事 藤井比早之君 理事 古川 禎久君
   理事 松本 洋平君 理事 木内 孝胤君
   理事 古川 元久君 理事 伊藤  渉君
      あかま二郎君    井上 貴博君
      井林 辰憲君    越智 隆雄君
      大岡 敏孝君    大野敬太郎君
      勝俣 孝明君    國場幸之助君
      助田 重義君    鈴木 隼人君
      田野瀬太道君    竹本 直一君
      中山 展宏君    長坂 康正君
      根本 幸典君    野中  厚君
      福田 達夫君    務台 俊介君
      宗清 皇一君    山田 賢司君
      今井 雅人君    落合 貴之君
      玄葉光一郎君    鈴木 克昌君
      前原 誠司君    宮崎 岳志君
      鷲尾英一郎君    上田  勇君
      斉藤 鉄夫君    宮本 岳志君
      宮本  徹君    丸山 穂高君
      小泉 龍司君
    …………………………………
   財務副大臣        坂井  学君
   財務大臣政務官      大岡 敏孝君
   政府参考人
   (金融庁監督局長)    遠藤 俊英君
   政府参考人
   (財務省国際局長)    門間 大吉君
   参考人
   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君
   参考人
   (日本銀行理事)     雨宮 正佳君
   参考人
   (日本銀行理事)     櫛田 誠希君
   参考人
   (日本銀行理事)     武田 知久君
   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十日
 辞任         補欠選任
  井上 貴博君     あかま二郎君
  山田 賢司君     長坂 康正君
  落合 貴之君     今井 雅人君
同日
 辞任         補欠選任
  あかま二郎君     井上 貴博君
  長坂 康正君     山田 賢司君
  今井 雅人君     落合 貴之君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 金融に関する件(通貨及び金融の調節に関する報告書)
     ――――◇―――――
○宮下委員長 これより会議を開きます。
 金融に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、理事雨宮正佳君、理事櫛田誠希君、理事武田知久君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁監督局長遠藤俊英君、財務省国際局長門間大吉君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○宮下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
○宮下委員長 去る平成二十七年六月十二日及び十二月十一日、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づき、それぞれ国会に提出されました通貨及び金融の調節に関する報告書につきまして、概要の説明を求めます。日本銀行総裁黒田東彦君。
○黒田参考人 日本銀行は、毎年六月と十二月に、通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出しております。本日、我が国経済の動向と日本銀行の金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼申し上げます。
 最初に、我が国の経済金融情勢について御説明申し上げます。
 我が国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出、生産面に鈍さが見られるものの、企業部門、家計部門ともに所得から支出への前向きの循環メカニズムが作用するもとで、基調としては緩やかな回復を続けています。先行きについては、当面、輸出、生産面に鈍さが残ると見られますが、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、新興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景に、緩やかに増加すると見られます。このため、我が国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられます。
 物価面を見ると、生鮮食品を除く消費者物価の前年比はゼロ%程度となっています。もっとも、生鮮食品、エネルギーを除く消費者物価の前年比は、二十九カ月連続でプラスを続け、最近では一%を上回る水準で推移するなど、物価の基調は着実に改善しています。先行き、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面ゼロ%程度で推移すると見られますが、需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の上昇を背景に物価の基調は着実に高まり、物価安定の目標である二%に向けて上昇率を高めていくと考えています。原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提に立てば、二%程度に達する時期は二〇一七年度前半ころになると予想しています。
 このように、メーンシナリオとしては、我が国経済は基調として緩やかに拡大し、消費者物価の前年比は二%に向けて上昇率を高めていくと考えています。もっとも、本年入り後は、原油価格が一段と下落したことに加え、中国を初めとする新興国、資源国経済に対する先行き不透明感などから、金融市場は世界的に不安定な動きとなっており、企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大していました。
 日本銀行は、こうしたリスクの顕在化を未然に防ぎ、二%の物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため、一月の金融政策決定会合においてマイナス金利つき量的・質的金融緩和を導入しました。マイナス金利つき量的・質的金融緩和は、日本銀行当座預金金利をマイナス化することでイールドカーブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買い入れを継続することとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えていくことを主たる波及経路としています。国債のイールドカーブは、マイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入以降、大幅に低下しており、これを受けて貸し出しの基準となる金利や住宅ローン金利も低下するなど、金利面では政策効果は既にあらわれています。今後、その効果は、実体経済や物価面にも着実に波及していくものと考えています。
 日本銀行は、二%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点までマイナス金利つき量的・質的金融緩和を継続します。今後とも、経済、物価のリスク要因を点検し、物価安定の目標の実現のために必要な場合には、量、質、金利の三つの次元で、ちゅうちょなく、追加的な金融緩和措置を講じます。
 国際金融市場では、新興国や資源国の経済の先行きに関する不透明感などから、投資家のリスク回避的な姿勢が強まっており、不安定な動きが続いています。日本銀行は、こうした市場の動向や、それが我が国の経済、物価に与える影響について十分注視していきます。
 ありがとうございました。
○宮下委員長 これにて概要の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
○宮下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野敬太郎君。
○大野委員 おはようございます。自民党、大野敬太郎でございます。
 きょうは、質問の機会をいただきましたことを感謝申し上げたいと思います。
 そしてまずは、熊本、大分を中心に発生した震災によりましてお亡くなりになりました方々には心からお悔やみ申し上げたいと思いますし、また、被災されました皆様には心からお見舞いを申し上げたいと思います。
 きょう、ニュースを聞いておりましたら、現地のコンビニの九十何%がもう正常に起動するようになったということで、これは、過去の経験を生かしてサプライチェーン等々が最適化をしたんだということでございました。
 過去の経験というのも本当に重要だなと思うんですけれども、金融の政策においてはその過去の経験がなかなかない。最新の非伝統的な金融政策をどんどん生かしていくということでございまして、本当に大変な作業であると思いますけれども、引き続き御努力を賜ればと思います。
 まず初めに、今、日銀が世界経済についてどのような認識をお持ちなのか。先ほどもちょっと触れられましたけれども、例えば、先般行われましたG20でも世界経済の減速というのが指摘をされておりましたし、また、IMFでも下方修正というのが行われております。
 この話というのは、もっとも、そういった世界のマクロ的な指標上の話もさることながら、もっとより俯瞰的な、例えば人口動態、あるいはTPPやらTTIPやらといった市場のマップの変化とか、あるいは、資源のマップの変化、需給のマップの変化というのもあるんだと思います。そういった背景というのもしっかりと見ていかなくちゃいけないんだろうな、そんなことを思っています。
 いずれにせよ世界経済は、短期的にいえば、ことしに入ってかなりフラクチュエートするようになる。このボラティリティーが非常に高くなっているということは、背景としてはやはり、原油等の資源国の情勢とか、あるいは、中国等の新興国の経済の情勢ということが大きくその背景にあるんだと思います。
 いずれにせよ、そういった世界の経済をどのように見ているのかというのを、本日は雨宮理事にお越しいただいておりますので、まずはお答え賜ればと思います。よろしくお願いします。
○雨宮参考人 お答え申し上げます。
 今委員からも御指摘ございましたとおり、先般公表されましたIMFの世界経済見通しでは、先進国、新興国とも、見通しが幾分下方修正されました。これは、年初以降、これも委員から御指摘ございましたが、国際金融資本市場が不安定な動きとなりまして、株価あるいは原油価格等の資源価格が一時大幅に下落するというもとで、資源国を中心に景気が下振れいたしましたこと、それから、世界的に貿易の弱さが見られるというようなことが織り込まれたためというふうに理解してございます。
 日本銀行といたしましても、世界経済の現状につきましては、緩やかな成長は続いておりますけれども、資源国、新興国を中心に幾分減速しているというふうに判断してございます。
 先行きについてでございますけれども、先進国は、アメリカを中心に堅調な成長を続けると見ております。問題の、御質問の新興国、資源国でございますけれども、当面はやはり減速した状態が続くと見られますが、その後につきましては、この先進国の成長の好影響が徐々に波及することなどから、徐々に減速した状態を脱していくと見ております。
 こうしたもとで、先行き、世界経済は緩やかに成長率を高めていくというふうに考えておりますし、先ほど御指摘のございましたIMFの最新の見通しでもそうした予測になっているというふうに理解してございます。
○大野委員 ありがとうございます。
 おっしゃるとおり、ことしに入って非常にフラクチュエートしているということでありましたが、徐々には回復をしていくだろう、こういう見通しであると思います。
 先ほどちょっと触れました構造的な問題、より俯瞰的な問題、つまり、中国もそのうち人口というものは減っていく可能性もある、あるいは、資源という意味でもそういった変化もある、あるいはTPPの問題、そういった観点で何かおっしゃられることというのはございますでしょうか。
○雨宮参考人 御指摘のとおり、今、世界経済は、先進国、新興国を通じて非常に大きなチャレンジに面しているわけでございます。
 先進国全般でいいますと、二〇〇〇年代半ばの大きなバブル発生後の調整というのがまだ続いている面がございますし、大きな貿易構造の変化ということもございます。
 また、新興国についていいますと、この間、積み上がった大きな過剰設備の調整ということがございますし、そうした新興国の景気低迷、後退を背景に世界的に原油価格等の資源価格が後退する、それがさまざま影響を与えているということでございます。
 そうした影響も踏まえまして長期的にはさまざま議論が行われているわけではございますけれども、まずはアメリカを中心にゆっくりと着実な回復が続いているということでございますので、短期的には、こうした影響が次第に波及していくということで、緩やかな回復を見通しているということでございます。
○大野委員 ありがとうございました。
 いずれにせよ、ことしの冒頭からはかなりボラティリティーが高くなっている、不透明感も増しているということで、この問題がやはり国内の経済に非常にネガティブなインパクトを与えているのは確かなことであろうと思います。
 国内に目を転じますと、アベノミクスは四年目に入ったわけでありますけれども、実体経済、先ほど黒田総裁がお触れになられましたけれども、いろいろなマクロの指標から見ると、例えば、雇用統計とかあるいは倒産件数とかいったようなものはまあまあいい状況にあるんだとも思いますし、また、業況感の短観を見ましたら、まあまあ高い水準ながら、これはちょっと弱含みも最近しておりますけれども、比較的高い水準を維持しているということであります。
 心配なのが需要サイドの話であると思うんですけれども、その需要サイドは何かといったら、やはり物価が上がっていかない。物価は何でかといったら、期待インフレ率がしっかりと上がっていかない。それはなぜかといったら、やはり先ほどの海外要因が非常に大きなものなんだろうな。そういうところなんだと思います。
 一方で、期待インフレ率というのはやはり実質金利の低下を招くことになりますので、結果的に円高、株安、こういうことになっているんだと思います。
 そういった意味で、マイナス金利というのを導入したことによってまだそれが何とか維持できている、こういう状況にあるんだと思いますけれども、それでは、そういった国内の経済情勢について、直近で今の状況を日銀としてはどのように認識をされているかをお答え賜ればと思います。
○雨宮参考人 お答え申し上げます。
 これは先ほど総裁からも申し上げましたけれども、直近の最近の我が国の景気につきましては、やはり、新興国経済の減速の影響などから輸出、生産面に鈍さが見られるわけですけれども、基調としては緩やかな回復を続けているというふうに認識してございます。
 これも御指摘ございましたけれども、三月短観におきましては、確かに、業況判断が若干、これも新興国経済の減速の影響だろうと見ておりますけれども、慎重化したことは事実でございます。
 一方で設備投資計画等を見ますと、やはり、良好な企業収益などを背景に、二〇一五年度は前年比プラスとなった後に、二〇一六年度につきましても、この時期の調査、短観というのは、もともと、低く始まってだんだん修正されていくという癖がございますので、この時期としては比較的しっかりとした計画となっているということでございますので、基調として緩やかな回復を続けているという見方に沿ったものであったというふうに見てございます。
 直近、先行きでございますけれども、やはり、当面は輸出、生産面に鈍さが残ると見ておりますけれども、家計、企業の両部門における所得から支出への前向きの循環というこのメカニズムが働くもとで国内需要が増加基調をたどる。
 それから輸出でございますけれども、先ほど申し上げたとおり、私どもあるいはIMFの見通しのとおり、世界経済が緩やかに回復を続けていくということを背景に、輸出も徐々にこの減速した状態から脱していくというふうに見られますので、全体としては、我が国経済は基調として緩やかに拡大していくというふうに考えてございます。
○大野委員 ありがとうございました。
 確かに、世界経済は見通しとしては緩やかに回復をするのであろうという見通しでありますけれども、先ほども申し上げましたように、ボラティリティーが非常に高い、不透明感が高いということでもございますので、しっかりとウオッチをしていかなくちゃいけないな、そういう思いでございますので、また引き続きよろしくお願いしたいと思っております。
 そこで黒田総裁にお伺いさせていただきたいのが、一月の末に発表されましたマイナス金利つき質的・量的金融緩和、長い名前でありますが、マイナス金利政策と申し上げますけれども、これについて質問させていただきたいと思います。
 先ほど来お話が出ていますけれども、世界経済の情勢から来る国内の状況、これはリスクが高まった、あるいは高まるであろうという予測から当時その導入に踏み切ったという話だと思います。私は、これは大変結構な話で、大変評価をしているところでございまして、やはり、後手後手になってゆでガエルになってというのではなくて、先にそのリスクを予想して、そしてしっかりと対応するということも大変重要なことだと思いますし、また、先ほど冒頭に総裁がお触れになったように、新しい波及効果が生まれていくという観点でも非常に重要なポイントなんであろうと思います。
 一方で、一部、市場との対話とかフォワードガイダンスとか、あるいはサプライズの必要性というか、こういった指摘も一方ではあるわけでありますので、改めて、あのタイミングで踏み切った意義というか理由というか、それを今振り返って御答弁を賜ればと思っております。
○黒田参考人 先ほど来御説明申し上げましたとおり、我が国経済は基調として緩やかな回復を続けているということは確かでありますし、物価の基調も改善しているということは確かだと思いますが、本年入り後、特に、原油価格が一段と下落したことに加えまして、中国を初めとする新興国、資源国経済に対する先行きの不透明感ということから、金融市場は世界的に大変不安定な動きになりました。御指摘のとおり、ボラティリティーがいろいろな市場においてかなり高くなっております。
 こうしたことが、企業コンフィデンスの改善あるいは人々のデフレマインドの転換、これをおくらせるおそれがあり、そういうことになりますと、せっかく改善してきた物価の基調に悪影響を及ぼすリスクが増大していたというふうに思います。
 そういった観点から、こうしたリスクの顕在化を未然に防いで、二%の物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するという観点から、御指摘のように本年の一月下旬に、マイナス金利つき量的・質的金融緩和を導入するということを決定したわけでございます。
○大野委員 ありがとうございます。
 最近、ビッグデータとか人工知能とか、そういう言葉をかなり聞くようになりましたけれども、先般、おもしろい記事を拝見させていただいて、それは何かというと、野村証券とクレディ・スイスというのが、IBMのワトソンという人工知能システムを使って黒田総裁がやることを予想しようということだったそうであります。さすがにマイナス金利政策の導入については予想できなかったということでありますが、その前の、現状維持という、これは十二月の段階の話だと思いますけれども、これについては予想されたということであります。
 こういったもの、例えばバーゼル規制の議論なんかというのもかなり細かい議論になってきて、どうしていくのかという、まさにビッグデータの解析みたいな話になってきているんだと思いますけれども、こういった人工知能とかビッグデータの解析とかいうのは日本銀行としてはどのように捉えているのかなんということは、ちょっと唐突な質問でありますが、総裁、お答えいただけませんか。
○黒田参考人 経済分析においてさまざまなデータを用いて分析するということは当然でありまして、我が国においても、御指摘のような、いわゆるビッグデータを用いてさまざまな分析が行われております。日本銀行としても、そういったものには十分注意を払っております。
 ただ、金融政策につきましては、御案内のとおり、金融政策決定会合において、政策委員会のメンバー九名が経済金融情勢について丹念な点検を行って、次回の金融政策決定会合までの金融政策について結論を出すということでございますので、特定の誰か一人の将来の行動を予測するということの意味が大きいとは、私は余り思っておりません。
○大野委員 ありがとうございました。唐突な質問でお答えを賜りましたこと、感謝いたしたいと思います。
 先ほど、導入の時期についてお尋ねをさせていただきましたが、では、今の時点でその効果というのはいかがなものであるのか、これをどのように認識しているのかということでございますけれども、それと同時に、ちまたの意見として、指摘として、こういったマイナス金利はかえって国民の不安をあおるんじゃないかとか、あるいは、金融機関の収益にネガティブな影響を与えるんじゃないか、そういった指摘があるんだと思います。
 そういった観点で、その評価と、それから、そういった指摘をどう捉えるのかということについて。もし可能であれば、冒頭にイールドカーブの低下の話をお触れになられましたけれども、最近ちょっと右に下がってきているような状況も発生しているようなこともありますので、そういったこととか、あるいはその期待でインフレーションとの関係とか、そういったものももし可能であればお触れいただきながら、この二点についてお答えを賜ればと思います。
○黒田参考人 御案内のとおり、このマイナス金利政策というものは我が国で初めての経験でありますだけに、さまざまな声が聞かれているということはよく認識しております。
 もっとも、今回の政策は、これまで所期の効果を発揮してきました量的・質的金融緩和を一段と強化することによって、企業や家計の経済活動をサポートして、二%の物価安定の目標を早期に実現するということを目的にしたものでございます。
 実際に、マイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入以降、短期から長期にかけて国債の利回りは大幅に低下しておりまして、イールドカーブ全体が下がっております。御指摘のように、長期あるいは超長期の金利も含めてかなり低下をしているということでございます。
 これを受けまして貸し出しの基準となる金利あるいは住宅ローンの金利もはっきりと低下しておりまして、金融面では政策効果は既にあらわれていると思います。今後、その効果は実体経済や物価面にも波及していくものというふうに考えております。
 一方、預金金利も低下しているわけですが、預金金利は既にかなり低い水準にありましたために、その低下幅は貸出金利に比べますと小幅なものにとどまっております。また、中央銀行が既にマイナス金利を採用しております欧州の国の例を見ましても、金融機関の個人向け預金の金利がマイナスになるとは考えておりません。
 なお、金融機関の収益に対する影響というものも、マイナス金利に限らず、一般的に金融緩和の場合に議論になるわけでございますが、企業や家計にとって金融環境を緩和させようということになりますと、どうしても、仲介者である金融機関の収益に一定の影響が及ぶことは避けられないという面がございます。
 その上で、金融機関の収益を過度に圧迫することによってかえって金融仲介機能を弱めることがないように、御案内のような三段階の階層構造の採用をいたしまして、マイナス金利の適用は日銀当座預金の一部にとどめておりまして、金融機関収益に及ぼす直接的な影響は最小限にしているところでございます。
 もちろん、先ほど申し上げたように、金融緩和ということから、特に金利が全般的に下がっておりますので、収益に一定の影響が出てくる可能性はございます。
 ただ、足元の状況を見ますと、実は日本の金融機関は、景気の回復を背景にして、貸し倒れ等に伴う信用コストが大幅に低下しているということなどを背景に、実は、極めて高い収益水準を確保している状況にあります。
 また、資本につきましては、御案内のとおり、リーマン・ショックや欧州債務危機による損失が小さかったものですから、資本基盤も充実しておりますし、高い財務の健全性も保っているということでございます。
 したがいまして、マイナス金利つき量的・質的金融緩和は、金融市場に関する限り、所期の効果を発揮しておりまして、今後、実体経済あるいは物価面に好ましい影響を及ぼしていくものというふうに考えております。
○大野委員 ありがとうございました。
 今の御説明についてですけれども、この前のG20においても、世界各国お集まりの中のG20の各国に同様の説明、あるいはどんな説明をされたのか、あるいは、どういう議論がマイナス金利政策について各国で行われたのかについてはどのような形なのでしょうか。
○黒田参考人 G20におきましては、世界経済の動向あるいは国際金融市場の動向について議論が行われ、政策対応としては、金融、財政、構造政策を個別にあるいは総合的に活用して経済の安定と成長を図るということが合意されたわけでございます。
 そうした議論の中で日本銀行の金融政策につきましては、私から、マイナス金利つき量的・質的金融緩和は、あくまでも物価の安定を早期に実現するということのために、量的・質的金融緩和をさらに強化して実質金利の一段の低下を狙ったものであるということ、そして、大規模な国債買い入れとの組み合わせによって国債金利は大幅に低下しておりまして、金融機関の貸出金利も低下するなど、金利面では既に政策効果はあらわれていること、引き続き経済、物価のリスク要因を点検して、物価安定の目標の実現のために必要になれば、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講ずることなどを説明をいたしました。
 こうした説明に対しては、参加国の十分な理解が得られたものというふうに考えております。
 また、このG20では、従来から、各国の中央銀行が、経済活動をサポートし、物価の安定を実現するという国内の政策目的のために金融政策を適切に運営すべきであるという考え方も共有されておりまして、従来同様、今回のコミュニケにおいても明記をされているというところでございます。
○大野委員 ありがとうございました。
 つい一週間ぐらい前にIMFが、各国のという意味なんでしょうか、ちょっと私も正確に読んではおりませんけれども、マイナス金利政策については、評価というか、結構だという話で報告書を出されたと。
 これはあくまでも物価の安定化が目標なんだという評価だったやに伺っておりますけれども、黒田総裁の御説明が功を奏したのかな、比較的受け入れられたのではないか、このように私も認識をしているところでありますが、一つ気になっているのが、先ほど冒頭私は申し上げましたけれども、今の世界の経済のこの状況を考えたときに、また、国内の状況を考えたときに、政策の自由度の幅というのは極めて少ないような気がしているんです。その中でさらに国際協調というものがかなり求められる。このG20の最終的なコミュニケにおきましても、為替の切り下げ競争はやめようねというようなことになっていたと思います。
 それから考えますと、これは為替の競争では必ずしもないわけですので、ではどこが境目ですかというと、なかなか難しいところもあるんだと思います。
 そういった意味で、協調をしなくてはいけないという観点からすると、金利政策の幅というか、追加的な金融緩和の幅というのがさらに狭められているのではないかという懸案もあるわけですが、それはないという認識でよろしゅうございますか。
○黒田参考人 今回のあのG20のコミュニケでも、前回の上海のコミュニケと同様に、通貨の競争的な切り下げを回避するということが明記されておりますけれども、これは、従来からG20で共有されている基本的な考え方を再確認したものでありまして、何か新たな方針が合意されたということではありません。
 そうしたもとで、先ほど申したように、G20では、金融政策は物価の安定を実現するという国内の政策目的のために運営されるという考え方が共有されておりますので、コミュニケにおける通貨安競争の回避というものが、マイナス金利を含め、各国における金融政策運営を制約するものではないという認識は、G20で共有されているというふうに考えております。
○大野委員 ありがとうございます。
 一方で、協調というのは大切な課題で、世界の経済をやはり安定的に上昇させていく、こういう観点では協調というのも必要なんだと思いますので、そういった意味では注視をしているんですけれども、G20でIMFが、マクロ経済指標ですね、協調のポジションペーパーを用意されていて、結局その議論に至らなかったので、そこはそれ以上深掘りをせずに断念したというような話もちょっと伺ったんです。
 いずれにせよ、引き続き御尽力を賜ればなと。大変な作業だと思いますけれども、よろしくお願いしたいと思います。
 最後になりましたけれども、念のため、今後の金融政策の運営スタンスについてであります。もう何回も御答弁をいただきましたが、改めて確認のためにお伺いをさせていただきたいと思います。
 今後、日本の経済・物価情勢が一段と不透明さを増した場合に、さらに日本銀行としても必要な対応をしっかりとされる、こういう認識でよろしいのかどうかを最後に質問させていただいて、終わらせていただきたいと思います。
○黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、国際金融市場では、新興国、資源国経済の先行きに関する不透明感などから投資家のリスク回避的な姿勢が強まっておりまして、不安定な動きが続いております。
 日本銀行といたしましては、こうした市場の動向、それが我が国の経済、物価に与える影響については、十分注視してまいります。
 金融政策運営につきましては、冒頭の説明で申し上げたとおり、日本銀行は二%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、マイナス金利つき量的・質的金融緩和を継続してまいります。
 今後とも、経済、物価のリスク要因を点検して、物価安定の目標の実現のために必要な場合には、ちゅうちょなく、量、質、金利の三つの次元で追加的な金融緩和措置を講ずるという方針に変わりはございません。
○大野委員 先ほど終わると申し上げたので、以上で質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
○宮下委員長 次に、鈴木克昌君。
○鈴木(克)委員 それでは、私から総裁に少しお伺いをしてまいりたいと思います。
 まず冒頭、私からも、今回の熊本、大分を中心とした九州地方の震災で、お亡くなりになった方々、被災を受けた方々、そして、まだ避難をして大変苦しい状況に置かれておる方々、また、余震が続く中で捜索を続けられている方々、本当にそれぞれ、お悔やみを申し上げ、お見舞いを申し上げ、そして、国として、政府として、我々国会として、きちっと応援をさせていただかなきゃいけないし、そのことを改めてここでお誓いを申し上げたいというふうに思うわけであります。
 さて、質問に入らせていただきます。
 その震災のときに、総裁はちょうど、四月十四日の夜ですから、G20で国内にお見えにならなかったということだと思うんですが、益城町で震度七の発災をしたときに、どの時点でどのような報告を受けて、その際、どのような御指示をされたのか、御説明をいただきたいと思います。また、被災地の金融機関の被害状況や金融システムへの影響、現時点で把握をされている状況についても御報告をいただきたいと思います。
○黒田参考人 熊本県における地震が発生したときに、私は米国出張中でありましたけれども、震災発生後直ちに被災地の状況等について担当部署から電子メールで報告を受けておりましたけれども、その後、ほとんど毎時間のように詳しく報告を受けており、さらには、随行者が適宜担当部署に直接確認するということを通じて、できるだけ詳細な情報を得るように努めておりました。
 その上で、私からは、担当部署に対して、地震の影響を注視しつつ、関係当局と十分に連携しながら適切に対応していくように指示をしたところでございます。
 なお、この熊本県における地震の経済的な影響については、今の段階で具体的に申し上げることは難しいということを御理解いただきたいと思います。
 ただ、その上で、企業の適時開示や報道情報などによりますと、地震発生後、現地では、特に輸送機械やIT関連の工場で部品の生産を一時停止するといった動きが見られておりまして、その影響がサプライチェーンに及んでいる模様でありまして、日本銀行といたしましては、今回の地震が地元経済や日本経済全体に与える影響について、マインド面の影響なども含めて、引き続き調査してまいりたいと考えております。
○鈴木(克)委員 そうすると、具体的には金融機関の被害状況というのは大きな問題はなかったというふうに理解をしてよろしいんでしょうか、金融システムを含めて。わかりました。
 ただ、もちろん、余震も続いておりますし、どれだけ本当に大きな被害になっていくのかということは定かではないわけでありますが、言われておるところでは、恐らく新潟中越地震と同規模、さらにそれを上回るかもしれない、それから、阪神・淡路大震災も上回るかもしれないというような予測も立っておるわけでありますが、日銀として、今後どういった方針でこの震災に対して対処されるのか。その点、もう一度御答弁をいただきたいと思います。
○黒田参考人 まず第一に、金融面での影響でございますけれども、日本銀行の日銀ネット、さらには全銀ネット等は正常に機能しておりますし、日本銀行の支店、さらには銀行の支店等も窓口で通常の業務を行っておりまして、金融面では特別な問題は生じておりませんけれども、そうしたもとで十五日に、九州財務局長と日本銀行熊本支店長の連名で、金融上の措置を適切に講じるよう金融機関等に対して要請を発出いたしまして、関係機関とも十分に連携をとりながら、熊本県を初めとする、九州全体における円滑な銀行券の供給あるいは資金決済に万全を期しているところでありまして、現状では、基本的にスムーズに機能をしておるということでございます。
 その上で、先ほど申し上げましたとおり、輸送機械あるいはIT関連の工場で部品の生産を一時停止するというような動きが見られて、それがサプライチェーンに及んでいる。このことは、熊本に限らず、日本にあるその他の工場での生産にも影響が出てきているようでございまして、先ほど申し上げたように、地元経済のみならず日本経済全体に与える影響について、引き続き十分調査してまいりたいということでございます。
○鈴木(克)委員 まさにおっしゃるとおり、サプライチェーンの寸断といいますか、このことはやはり経済に多大な影響を与えていくということが考えられるわけであります。それ以外にも、交通網の寸断、それから観光施設の損壊等々、ゴールデンウイークを前に、本当に厳しい大変な状況になっておるわけであります。
 もちろん、それより前に人命救助であり、そして、避難をされておる方々を救済していくのは大前提でありますが、しかし、その後はやはり、九州のみならず、日本経済がどのように復活をしていくのかというところが問題だというふうに思うんです。
 先ほど、東日本大震災でサプライチェーンが寸断されたという話、あのときもやはり同じように我々は大きな経験をしたわけですね。今回、あのときの教訓というのは生かされたのかどうか。経済の中枢にお見えになる総裁として、東日本大震災のあの経験というのは今生かされておるのかどうか、その点、ちょっとコメントをいただけたらというふうに思います。
○黒田参考人 このサプライチェーンの問題は、御指摘のような東日本大震災の際に非常に大きな問題になりましたし、もう少し広く、アジア全体を見ますと、タイで大規模な水害がありまして、その際に、日本企業のみならず、タイに進出しているいろいろな企業が被害を受けまして、それが日本や米国へのサプライチェーンに障害が出たということで、世界的な影響が出たわけでございます。そうしたことを背景に、幾つかの教訓を企業としても得て、それなりの対応をしてきたと思います。
 一つは、サプライの供給先をある程度多様化する。一社、一工場だけに企業あるいは産業が供給を依存するという形でなくて、少し多様化する、複線化するということが一つであると思います。もう一つは、部品等の在庫を少し多目に持つということ、これが二つ目の対応だと思いますし、三つ目には、何か起こったときに、それまで取引していなかった先と、全世界にそういった部品の供給者というのは存在しているわけですので、直ちに供給先をスイッチするというような対応というようなことも企業は考えていたと思います。
 今回、そういった企業の対応がどの程度効果があったのか、あるいはまだ十分でないところがあったのかという点は今後検証していく必要があると思いますけれども、それぞれの企業として、そういう何かのときのために対応しておくということはもちろん必要なんですが、他方で、それ自体はコストがかかりますので、例えば、在庫をたくさん持つとか、供給先を多様化するとか、あるいは何かのときに全くこれまで取引していなかったところから部品を供給してもらう。それぞれコストがかかりますので、コストとそういうサプライチェーンの分断のリスクとを十分勘案しながら、全体として適切な対応がなされていく必要がある。
 少なくとも、このところ続いてあった震災であるとか、あるいは先ほど申し上げたタイの大規模な水害などの教訓は、企業として、経済として十分認識していく必要はあるというふうに思います。
○鈴木(克)委員 いろいろと総裁のお立場で経済の主要な方々と会う機会も多いと思うんですね、財界の。そういうときには、今おっしゃったような考え方、いつ何が起きるかわかりませんね、したがって、日本経済を守るためにも、国民を守るためにも、ぜひ経済人としてそういった今おっしゃったような考え方を常に持っていただきたいというような要請をこれからも総裁として私は発信し続けていただきたいなというふうに思うんですが、その点、いかがでしょうか。一言で簡単に。
○黒田参考人 今の委員の御意見は、私も全くそのとおりであるというふうに思っております。
○鈴木(克)委員 さてそこで、私が考えることではないと言えばそれまでのことなんですが、消費税率の引き上げの延期があるのかないのか、今回のこの震災がどのように影響をするのかということについて、少し総裁のお考えを伺いたいと思うんです。
 いずれにしても今回の震災は、激甚災害に指定をされるというのはもう間違いないというふうに思いますし、被害は、まだ全容はわかりませんけれども、ますます拡大をしていくということだと思うんです。
 そうすると、一般論としてという言い方が当たっているかどうかわかりませんが、このような状況の中で、総理は、リーマン・ショック級あるいは大震災級の事態にならない限り、消費税を予定どおり引き上げていく、こうおっしゃったわけでありますが、まさに私はその大震災の状況にあるというふうに思うんです。
 総裁として、これは言いにくいかもしれませんけれども、今回のこの災害を踏まえて、消費税率の引き上げについて御所見があればお伺いしたいと思います。
○黒田参考人 先ほど申し上げましたとおり、熊本の地震の経済への影響ということはまだ完全には把握されておりませんということを先ほど申し上げましたけれども、そういった状況ではないかと思います。
 いずれにいたしましても、消費税の扱いも含めた具体的な財政運営については、やはり政府、国会において決められるものというふうに認識しておりまして、私から具体的な意見を申し上げることは差し控えたいというふうに思っております。
○鈴木(克)委員 当然そういうような御答弁になるということはわかるわけでありますけれども、しかし、本当に私は、今回のこの九州の災害というのは、とても消費税引き上げをできるような状況ではないというふうに思っておるわけであります。
 いずれにしましても、国会の中でしっかりとまた議論をしてまいりたいというふうに思いますが、しかし、そのことが日本経済にどういう影響を与えていくのか、日銀の政策にどう影響を与えるのか、これはやはり非常に関連をする大きな問題だというふうに思います。これからも、このことについてもいろいろと御教授いただければ大変ありがたいなというふうに思っています。
 さて次に、今にぎわしておりますパナマ文書関連でお伺いをしたいんですが、これ、パナマ文書と言っているんですけれども、実際には、二〇一四年のルクセンブルク・リークといいますか、ルクセンブルク当局が多国籍企業の租税回避を手助けしていたということが暴露されたという、ここから実はいろいろな問題が始まっておるわけであります。したがって、本当にこの問題は結構根深い、そして、ある意味では世界の経済の根幹を揺るがすような大問題だというふうに私は思っておるわけです。
 今回、ICIJが分析を出したわけでありますけれども、これによって、世界の首脳らがタックスヘイブンの利用実態が暴露されて、アイスランドのグンロイグソン首相は辞任をされた、それから、イギリスのキャメロン首相も厳しい批判にさらされているということでございます。
 いずれにしましても、各国では捜査機関や規制当局などがその違法性や実態について調査を開始したとも伝えられているわけでありますが、びっくりしたんですけれども、先日の菅官房長官の記者会見で、この問題について調査する考えがないということをおっしゃったんですね。これは、私は、えっというふうに思ったんですが、パナマ文書には日本人の約四百名の名前等々が載っているというふうに言われております。
 そこでお伺いしたいんですが、日銀がBISの国際資金取引統計の日本分を集計されていますね。これの債権残高について、二〇〇八年九月、リーマン・ショック直後、それから直近の二〇一五年の十二月末、この残高というのを御紹介いただければ結構でございます。事務方でもいいですし、総裁、お願いします。
○黒田参考人 BISの国際与信統計というので見ますと、邦銀のオフショア向け与信残高は、二〇一五年末現在で五千六百六十三億ドルとなっております。今、手元に二〇〇八年末のデータはございませんけれども、最新時点のデータが今申し上げた数値になっております。
○鈴木(克)委員 私は、日本銀行が出した資料では、二〇〇八年九月末に四千九百二億ドル、そして、一五年十二月末が八千五百三十八億ドルというふうに結果を聞いておるわけでありますが、いずれにしましても、リーマン・ショック時と比べると残高が一・七倍に増加をしておるわけです。
 この投資の全てが違法性があるというふうには思わないわけでありますけれども、オフショア市場向けの取引が、日本円にして約九十三兆円も投資をされておるというこの事実、そして、シェアも二〇%から二七%ぐらいまで上昇しておるという現状からすると、不適切な利用目的が含まれている蓋然性は非常に高いのではないかなというふうに私は思うんです。
 我が国としても、調査をしないということではなくて、やはり調査を行うべきではないかというふうに思うんですが、総裁の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○黒田参考人 日本銀行としましては、金融システムの安定を維持するという観点から、もちろん、金融機関に対する考査、モニタリング等は行っておるわけでございますが、御指摘のような国際課税の関係法令の遵守状況やいかんということになりますと、これは私どもの権限の範囲外でございますので、何とも御質問にお答えする立場にはないわけでありますが。
 ちなみに、G20でもこのパナマ文書のことがかなり話題になりまして、今回のG20のコミュニケに、課税情報の交換等、G20としてこの問題に引き続き適切に対処していくということがかなり詳しく書いてございます。
 そういった情報交換等の法令上の措置も日本は講じておりますし、また、特にこのパナマ文書で話題になりましたペーパーカンパニーといいますか、最終的な所有者がにわかにはわからない形でいろいろな法人がタックスヘイブンにつくられているということの問題を特に欧州の国々が問題にいたしまして、こういったものの背後の所有者を明らかにするようにいわばタックスヘイブン等に求めるというようなことも考慮されているということであります。
 日本を含むG20諸国としてこの問題に適切に対処していくという、これは御承知のように、BEPSというG20でやっておりました国際課税の適正化という方針に沿って行われているものでございますけれども、それをさらに今強化していくということになったわけでございます。
○鈴木(克)委員 確かに、調査については直接総裁がどうのこうのと言うことではないかもしれませんけれども、まず、適切に対処をしていく以上は、やはり調査をしなきゃ、実態をはっきりしなきゃ対処のしようがないということだというふうに思うんです。
 なぜ私は総裁にこれをあえてお伺いするかというと、これは金融機関のあり方ということになってくるんですね。クレディ・スイス系やHSBC系の世界の名立たる金融機関がかかわっているのではないかというふうにICIJは報じておるわけですよ。
 したがって、金融機関自身が資金調達コスト削減などの目的でタックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立するということは、あるのかないのかわかりませんが、私は、そういったことも含めて、やはり金融機関というものが道義的に非常に大きな責任を持っておるというふうに思うものですから、総裁に、金融機関の倫理観やあり方等についても、この際、ぜひお伺いをしておきたいというふうに思うんです。
○黒田参考人 もとより、オフショア向けの与信というものは、さまざまな態様のもの、あるいはさまざまな目的のものが広く含まれておりますので、全てが国際的な租税回避と直接結びつけて考えることは適切でないとは思いますけれども、先ほど申し上げたとおり、G20でも、はっきりした問題意識のもとに、従来から課税情報の自動的交換、さらには、必要に応じて行われる情報交換といったことも進めておりまして、今回のG20のコミュニケでも、それをさらに推進するということがうたわれております。
 そういった意味で、租税回避、脱税といったことは適切に対処されなければならないというふうに思っております。
○鈴木(克)委員 時間があとわずかになりましたので、最後に一問、お伺いをしたいんです。いわゆるマイナス金利政策と政治的限界ということについてお伺いしたいと思います。
 その前に、一点、麻生大臣の金融政策に関する発言を、ここに十六、十七日の新聞を持ってきておるんですが、現地での記者会見でも、麻生大臣がG20の会合の場及びアメリカのルー財務長官とのバイの会談の中で、G20の為替についての合意はマイナス金利や日銀の金融政策に当てはまらないとおっしゃったのではないかという質問がありました。
 麻生大臣のこの発言に関しましては、ルー財務長官が記者会見の発言で円高に触れたことや、大統領選において日本や中国を念頭に置いたと思われる通貨政策批判が展開されていることによって、財務省が円高阻止のための為替介入に動きにくくなったからではないか、だからこそ、日銀の金融政策の幅を広げるために援護射撃としてそうおっしゃったのではないかという見方があるわけであります。
 このような見方を踏まえた上で、総裁は、大臣のこの発言を聞いてどのように思われたか、そして、大臣の真意はどこにあるというふうにお感じになったのか、御答弁いただきたいと思います。
○黒田参考人 G20のコミュニケでは、従来から参加国で共有されている基本的な考え方として、通貨の競争的な切り下げを回避するという旨が明記されておりまして、今回のG20でもこうした考え方が再確認をされました。同時に、各国の中央銀行が経済活動をサポートし、物価の安定を実現するという国内の政策目的のために金融政策を適切に運営すべきという考え方も従来から共有されておりまして、今回のコミュニケにおいても明記をされております。
 報道されている麻生大臣の御発言は、G20で合意されている通貨安競争の回避というものが、マイナス金利政策を含めて、各国における金融政策運営を制約するものではないという共通の理解を改めて指摘されたものというふうに認識をしております。
○鈴木(克)委員 もう時間でありますので、最後にさせていただきます。
 四月十二日の日経新聞にフィナンシャル・タイムズの記事が載っておりました。要点だけ申し上げますと、預金者の怒りは、既にさらなる利下げに対するかなり現実的な制約になっている。ドイツでは、年金生活者の貧困という問題が爆発的に広がったことで、欧州中央銀行の政策がポピュリスト政党の台頭をもたらしたとショイブレ財務大臣が非難するに至ったというふうに書いてあったわけです。そして、少なくともユーロ圏では、マイナス金利政策は政治的限界に近づいている可能性がある。今問うべきは、それにかわるべきものは何かだ。現在の市場の異常な状況は、一貫する財政政策を欠く中で中央銀行が経済問題の解決を求められていることの結果だとの見方は正しいとして、根本にある課題は、どのように刺激策を強化し、効果をより高めるかということで結論づけておるわけであります。
 急に出しておりますのであれかもしれませんが、今申し上げたようなことの見解、見方を総裁がどのようにお感じになってこの新聞をお読みになったのか。マイナス金利政策が長期化した場合、日本でも同じ状況を招く可能性もあるのではないかなというふうに私は思うんですが、その点、総裁、いかがでしょうか。
○黒田参考人 欧州における政治動向と金融政策の運営について直接コメントすることは適切でないと思いますが、事実関係ということで申し上げますと、例えば、ドイツのショイブレ財務大臣は、ECBにおける低金利政策が国内銀行と年金生活者にとって問題を引き起こしているといった趣旨の発言を行ったということが広く報道をされております。
 一方、欧州中央銀行のドラギ総裁は、三月の政策理事会後の記者会見において、仮にこれまでの緩和策を実施していなかったとすれば、壊滅的なデフレに陥っていた、あるいは、追加的な金融政策手段に不足はないといった趣旨の発言をされたものと認識をいたしております。
 ちなみに、ECBは現在、マイナス〇・四%のマイナス金利を銀行のECBにおける預金全額にかけております。
○鈴木(克)委員 終わります。ありがとうございました。
○宮下委員長 次に、今井雅人君。
○今井委員 民進党の今井雅人でございます。きょうは質問の時間をいただきまして、ありがとうございました。
 冒頭、私の方からも、今回の震災で被害に遭われた方、お亡くなりになられた方に、心からお見舞いとお悔やみを申し上げたいと思います。
 きょうは総裁にいろいろお話を伺いたいと思いますが、その前に政府の方にお伺いしたいんです。今回の震災で恐らく、中小企業、零細企業の皆さんも随分影響を受けておられると思いますし、特にやはり観光業が、相当今キャンセルも起きているようでありまして、資金繰りでこれからかなり苦労されると思います。
 ですから、政府としてこの金融面の対応を今どういうふうになさっていらっしゃるか、その点についてお伺いしたいと思います。
○遠藤政府参考人 お答え申し上げます。
 金融庁におきましては、今般の平成二十八年熊本地震に災害救助法が適用されたことを受けまして、四月十五日に、熊本県内の関係金融機関に対して、災害の影響を受けている顧客の便宜を考慮した適時的確な措置を講ずるように要請したところでございます。
 具体的には、議員お尋ねの資金繰りに関する事項といたしましては、観光業者、あるいは、より一般的に中小零細企業が商品販売の際に手形の振り出しを受けたものの、震災によって支払い期日までに金融機関に持ち込むことができなかった場合でも、関係金融機関と相談の上取り立てができるような形にするとともに、これも御案内のように、通常、企業が手形の支払いができずに半年に二度不渡りを出しますと、銀行から取引停止処分になってしまいますけれども、こうしたことがないように、支払いができない手形に対しても不渡り報告への掲載を控えるなど、取引停止処分に至らないようにすることなどの要請をしております。
 さらに、資金繰り目的を含みます融資審査の手続の簡便化、融資の迅速化、既存融資に係る返済猶予などの貸し付け条件の変更についても要請を行っているところでございます。
 金融庁といたしましては、金融機関が被災地における取引先企業のニーズを的確に把握し、きめ細かな対応を行うよう、引き続き促してまいりたいというふうに思いますし、金融庁、さらには財務局とともに、取引先企業からどのような相談が金融機関に持ち込まれているかをきめ細かに把握して対応していきたいというふうに考えております。
○今井委員 対応はしていただいているようでありますので、引き続き細やかにやっていただきたいと思います。
 本来でしたらこれは観光庁にお願いしたいと思うんですが、財金の場ですので、政府としてお願いしたいんですが、私、出身が下呂温泉なんですが、御嶽が噴火したときに大変な風評被害に遭いまして、全然位置的には関係ないのにキャンセルが物すごく相次いで、旅館業者の皆さん、大変苦しまれたんですね。今回も、まだ余震が続いているということもありますけれども、既にもう八月とか九月とか、この辺のキャンセルが軒並み出ているそうです。
 ですから、もちろん震災への対応は大事なんですけれども、逆に、余り大げさに騒ぎ過ぎるとそういう風評の被害が出てしまうということもありますので、その辺は十分注意をしていただきたいということを冒頭お願いしておきたいと思います。
 それでは、総裁にいろいろお伺いをしていきたいと思います。
 私も、週に二、三回ぐらい、今、市場関係者といつも連絡をとっていますけれども、いまだに、なぜ一月にマイナス金利を採用したのかがよくわからないという方が本当に多いんです。
 もちろん、先ほどから話があるように、ことしの一月はボラティリティーが非常に上がりましたから、何らかの対応をせざるを得ない。そういう環境はわかりますが、それまでやってきた量的の緩和、これにもまだ限界がないと常におっしゃっておられます。
 であれば、それで対応するであろうというふうに市場関係者は見ていたわけですけれども、それまで、私の承知しているところでは、黒田総裁は、マイナス金利というのはプラス面とマイナス面と両方あるという御認識だったと思うんですけれども、あの段階で、そういう両面を認識しながら、あえてなぜマイナス金利というのをあそこで採用したのか、この真意を一度お伺いしたいと思いまして、よろしくお願いします。
○黒田参考人 マイナス金利つき量的・質的金融緩和というものは、従来の量的・質的金融緩和に金利面の緩和オプションを追加して、量、質、金利の三つの次元で緩和手段を駆使することによって金融緩和を進めるというものでございます。
 現に、金利面では、御案内のとおり、当座預金金利をマイナス化することでイールドカーブの起点が下がりまして、大規模な長期国債の買い入れの継続とあわせて、金利全般に強い下押し圧力が加えられて、現にイールドカーブ全体が下がって、銀行の貸出金利も下がっているということでございます。
 一月の金融政策決定会合におきましては、経済・物価情勢あるいはリスク要因について委員間で議論した上で、何らかの追加緩和が必要だという意見が大勢を占めたということで、マイナス金利の導入のオプションと、量的・質的金融緩和の従来のものを拡大するオプションと、両方について議論が行われまして、その際の議論の要旨というのは議事要旨でもう既に公表されておりますけれども、委員間でさまざまないわばプロズ・アンド・コンズを議論した上で、この際、マイナス金利つき量的・質的金融緩和を導入することが適当という判断に至ったものでございます。
 マイナス金利そのものにつきましては、プロズ・アンド・コンズというのは、欧州でもございますし、我が国でもあるわけでございますけれども、特にマイナス金利についての議論の一つは、これが金融機関の収益を非常に圧迫して金融仲介機能を阻害するのではないかということが欧州の一つの議論だったわけですが、これは、今回の三段階の構造によりまして、マイナス金利そのものによる銀行の収益圧迫というのは極めて小さい、最小化されるということで踏み切ったわけでございます。
 なお、金融緩和そのもの、つまり、イールドカーブ全体が下がり、銀行の貸出金利が下がるということ自体は、これは量的・質的金融緩和で進めていた場合も同様でありまして、それが銀行の収益の圧迫要因になり得るということはそのとおりでありますけれども、やはり、金融緩和を進めることによって、経済活動をサポートし、物価安定目標をできるだけ早期に実現するという観点から、量的・質的金融緩和も進めてまいりましたし、今回導入したマイナス金利つき量的・質的金融緩和というものも、そういった観点から採用されたわけでございます。
 なお、量的拡大が限界に達したというふうには考えておりませんで、今後も、量及び質の面での追加緩和というのも引き続き選択肢にはあるというふうに考えております。
○今井委員 二〇一四年十月三十一日の二回目の追加緩和は、結果的には、株価も非常に強くなっていきましたし、円安も進みましたけれども、今回のケースは、金融市場の動きとしてはほぼ一日しか効果が出なかったということなんですね。市場の方の多くの見方は、量的緩和はもうこれ以上やるのは限界があるので禁じ手に出たんじゃないか、そういう評価をしてああいう動きをしていて、現在も、為替も今百九円ぐらいですし、株価も大きくは戻っておりません。
 ですから、やはり市場とのコミュニケーションという意味では、私は、あそこで唐突にマイナス金利を入れたということは、コミュニケーション手段としては非常に問題があったというふうに考えているんですけれども、その点についての御見解をお伺いしたいと思います。
○黒田参考人 この点は、欧州におけるマイナス金利の導入の経緯をごらんになっていただくとわかると思うんですけれども、確かに欧州の場合も、いわゆるスモール・オープン・エコノミーというか、スイス、デンマーク、スウェーデン等は、明確に、通貨がユーロに対して強くならないようにマイナス金利を導入し、さらにそれを深掘りして、為替の上昇を防ぐという目的で行ったわけでございます。
 これに対してECBの場合は、日本銀行と同様に、あくまでも、イールドカーブ全体を引き下げて、実質金利を下げて、投資や消費にプラスの影響を与えるということを目的に導入しておりまして、その際、結果的にユーロが安くなったか高くなったかといいますと、ユーロ安になったこともありますし、ユーロ高になったこともあります。
 それについてはECB自体も、為替に対する影響、あるいは株に対する影響というのは、あくまでも、投資家、金融機関のポートフォリオ行動によって起こることでありまして、普通に考えますと、他の事情にして一定であれば、金融緩和を進めた国の通貨が安くなり、あるいは株等の資産が価格が上がるというのは、通常のポートフォリオビヘービアでそういうことが予想はされるけれども、それは別に保証されたものということでもないということも言っております。
 私どものマイナス金利政策につきましても、委員御指摘のとおり、マイナス金利つき量的・質的金融緩和を導入した直後は、円安に振れ、株が上昇したわけですけれども、それはたしか二日ぐらいでとまりまして、むしろ円高、株安が進んだわけです。
 ただ、これは、投資家のポートフォリオビヘービアにはさまざまなことが影響しますので、特にその当時の、石油を含めた資源価格の下落が続く、あるいは米国の金利の引き上げのテンポがよりゆっくりになるのではないかとか、さらには欧州の銀行に対する不安とか、さまざまな要因の中でポートフォリオ行動が影響されたということだと思いますので、基本的に、市場が落ちついてくれば、通常のポートフォリオ行動であれば、先ほど申し上げたようなことが起こってくるのではないかというふうに思っております。
 ただ、いずれにしましても、量的・質的金融緩和にしても、マイナス金利つき量的・質的金融緩和にしても、主要な経済に対する影響のチャネル、経路というものは、あくまでも、長期金利を含めた金利の低下、特に実質金利の低下ということによって、経済活動を刺激して物価にプラスの影響を与えるということが主たる影響経路であるということ、これはECBと全く同じでございます。
○今井委員 マイナス金利を導入して、先ほどから御説明があるとおり、金融面では確かに、イールドカーブも下がってきましたし、金利も低下しているわけでありますが、これは金利が下がっているだけでは何の意味もないわけで、住宅ローンだって、その貸し出しがふえなければおかしいですし、融資の残高もふえないと何も効果がないということだと思うんですけれども、現状ではまだそれほどの傾向が見られていないと思います。
 先ほどから、実体経済にこれから影響が出るというふうにおっしゃっておられましたけれども、どれぐらいの期間を想定しておられますか。どれぐらいの期間が過ぎると実体経済への反映がなされるというふうにお考えですか。
○黒田参考人 これは経済学者の間でもいろいろな議論があるところでありますけれども、住宅ローン金利の低下、あるいは企業に対する基準貸出金利の低下等が住宅投資や設備投資に対してプラスの影響を与えるということは間違いないと思いますけれども、そのタイムラグについては、三カ月だ、半年だ、一年だといろいろな議論があると思います。
 ただ、もう一つ、御案内のとおり、住宅ローン金利がかなり大幅に下がっておりますので、住宅ローンの借りかえというものは相当起こっております。これは、住宅投資をすぐに進めるものではありませんけれども、利息の支払いをかなり大幅に削減して、いわば可処分所得をふやしますので、消費その他の支出にはかなりのスピードでプラスにきくであろうというふうにエコノミストたちは言っております。
 あくまでも、住宅ローン金利が下がって住宅投資が増加する、企業向けの貸出金利が下がって企業の設備投資等が増加するということには確かに一定のタイムラグがあるということは間違いないと思いますので、今後、そういったことの状況をつぶさに点検してまいりたいと思っております。
○今井委員 今の話にちょっと加えまして申し上げたいんですけれども、確かに今、世界経済は少し低迷をしておりますが、中国がこれは発祥だと思うんですけれども、今の中国の経済を見ますと、確かに電力消費量も伸び率がほとんど横ばいになっていますし、鉄道貨物の輸送量もちょっと落ちてきていますけれども、銀行貸し出しは割と堅調だと思います。
 ですから、株価を見ても、一月は非常にボラティリティーが激しかったですけれども、それ以降は上海の総合株式も、今は三〇〇〇ちょっとぐらいでずっと落ちついています。実体経済も比較的そんな大きな落ち込みをしているわけじゃなくて、恐らくことしは六%台の後半ぐらいで落ちつくんじゃないかなという状況にあると思います。
 黒田総裁はよくおっしゃっていますけれども、原油価格が下がったことが物価の基調を変えたと言っていますが、原油価格の動きもこの二月以降は非常に落ちついていて、今はWTIで四十一ドル台ぐらいになっています。そういう意味でいうと、物価に対する影響というのは、商品相場あるいはエネルギー価格という意味ではそういう影響は大分なくなっている、安定しているということです。
 であれば、物価の基調というのは、今後やはり、もともとおっしゃっているように、そういう波乱要因がないんですから、物価というのは自然に上昇していくということになろうかと思いますし、かつ、今おっしゃられたように、マイナス金利の影響はこれから出てくるわけですね。
 であれば、今の段階では追加緩和をさらにするという必然性はどこにもないと私は思うんですけれども、その可能性についてはどういうふうにお考えでしょうか。
○黒田参考人 一月にマイナス金利つき量的・質的金融緩和を導入いたしまして、それが実際に金融機関に適用になったのが二月の中旬でございます。そして、三月の金融政策決定会合では、政策は不変ということになったわけでございます。
 毎回の金融政策決定会合におきましては、その時点の最新の経済データを利用いたしまして、実体経済や物価の動向を把握し、先行きどうなるかという見通しを持って金融政策の議論をするということでございますので、今の時点で追加緩和があるともないとも申し上げられませんけれども、基本的な考え方は、従来から申し上げておりますとおり、二%の物価安定の目標の達成のために必要になれば、ちゅうちょなく追加緩和を行うということでありまして、何かスケジュール的に緩和をしていくというものではございません。
○今井委員 なかなかしっかりお答えいただけないんですけれども。
 繰り返し申し上げますが、一月に政策をやって、二月からのその効果を見なきゃいけないという時期です。しかも、今までの物価の波乱要因であったものも安定しています。こういう状況下で追加緩和をする必然性は、私は全くないということはここで申し上げておきたいというふうに思います。
 ちょっと時間もないので、次に、追加緩和、量的な緩和のことについてお伺いしたいんですが、まず、非常に一般論で申し上げますけれども、総裁はいつも、まだ限界はないというふうにおっしゃっていますが、マーケットにはやはり市場の機能が低下してしまうという限界は必ずあると思いますから、それは国債市場でも、トレジャリーの世界でもそうですし、REITの世界でもそうなんでしょうけれども、無限にこれは限界がないということでおっしゃっているわけじゃなくて、一定の限界は必ずどこかにある、そういう御認識でよろしいですか。
○黒田参考人 現在、日本銀行は、マイナス金利つき量的・質的金融緩和のもとで、毎年、長期国債を年間八十兆円保有額が増加するというペースで市場から買い入れておりますけれども、政府が新規国債を発行しておる額はたしか四十兆円足らずだったと思いますので、市場からどんどん吸い上げているという形でありますので、無限に続けるということはもちろんできないわけであります。
 ただ、当面、まだ市場に存在する国債の一部しか買い入れておりませんので、まだまだ市場には国債が十分残っております。
 したがいまして、現在見通しております二〇一七年度の前半ころに二%程度に達する可能性が高いという見通しのもとで考えますと、当面、金融政策の運営に当たって、量的・質的金融緩和を拡大していくということに制約があるというふうには考えておりません。
 なお、国債を大量に市場から買い上げていく過程の中で、いわゆる国債の市場の流動性というものに対する影響がどうかということはもちろん十分留意しておりまして、常に流動性については状況を把握いたしております。
 今のところ、流動性が極めて収縮して問題が生ずるということには至っておりませんけれども、当然、国債の市場流動性についても配意しながらも、やはり二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するという最大の目的のために適切な金融政策をとってまいりたい、こういうふうに思っております。
○今井委員 国債、トレジャリーの残高ですけれども、三月末の日銀のバランスシートを見ると、三百五十兆円残高がありますね。全体の三割ぐらいですから、まだ市場に国債がたくさんあるといっても、やはり三分の一を中央銀行が保有しているというのは、それは相当な額ですよ。
 ですから、私は、その限界というのがどこにあるかというのは非常に難しいですけれども、三分の一という額は非常に大きい金額であって、ここからの追加緩和というのは非常に慎重であるべきと。そうしないと、出口に出るときはいずれその国債を満期になったら手放していかなきゃいけないわけですね。ですから、その日銀が保有しているものが大きければ大きいほど、その出口のときにそういう問題に直面するということだと思いますから、そこはぜひ抑制的にやっていただきたいということです。
 それともう一つ、今いろいろなものを購入しておられます、REITも購入しておられますが。今、市場関係者の中で、次にETFの買い入れ枠を、大幅に株価を上げるためにここの枠を非常に大きくするんじゃないだろうかという臆測が非常に飛び交っています。今、日銀のETFの保有残高は多分七・五兆円ぐらいあると思いますけれども、ETF市場全体のほぼ半分ぐらいを占めているということです。
 もちろん、その裏には現物市場がありますから、現物市場の方がはるかに大きいので、それだけではかることはできませんが、これは現物市場と先物市場でよく起きることですけれども、先物で価格が大きく動くと現物のマーケットにそのまま影響を与えてしまう、そして市場が混乱するということも起きるわけです。日銀がETFをどんどん買っていってしまうと、そこでそちらの価格が上がると、一時的にアービトラージが働くでしょうけれども、少し市場が荒れてしまうということも起きるので、こういう小さいマーケットに日銀が余りそういうお金を入れるのは私は非常に問題だと思います。
 さらにもう一つ申し上げたいのは、デットじゃありませんので、これはエクイティーですから、エクイティーのマーケットに日銀が資金を投入していくということの正当性というのはどこにあるんだろうかという疑問もあるんですけれども、その二点についてちょっとお伺いしたいと思います。
○黒田参考人 これはETFもJ―REITも同様でありますけれども、資産価格のプレミアムに働きかけるという観点から買い入れを行っているわけでございます。
 御指摘のとおり、日本銀行のETFの保有残高は、時価ベースで見ますと二〇一五年九月末で約七・八兆円となっておりまして、この間のETFの市場規模との比較で見ますと、御指摘のように約半分を日本銀行が保有しているということになります。
 ただ、委員自身も御指摘になりましたように、ETFは、運用の対象となる株式が存在すれば新規に、幾らでも組成することが可能でありまして、御承知のように、東証一部上場株式は時価総額が約五百兆円程度でございますので、TOPIXに連動するETFというのは、いわばこの五百兆円程度の東証一部上場株式の時価総額を背景に組成され、その一部を日本銀行が購入しているということでありまして、株式市場との関係で日本銀行のプレゼンスが大き過ぎるということはないというふうに考えております。
 ただ、御指摘のように、期限のある国債と違いまして、ETFはそういうものではありませんので、そこは十分留意しながら購入を続けておりますけれども、やはり、資産価格のプレミアムに働きかけるという意味は引き続き十分あるというふうに思っております。
○今井委員 もう時間が来ましたので、もう一点だけ。
 総裁は、マイナス金利によって預金の金利がマイナスになることはないとおっしゃっていますけれども、ヨーロッパでは、確かに個人預金は非常に例外的ですが、法人向けの預金なんかはマイナス金利になっていることがありますね。日本ではそういうことは起き得ないですか。
○黒田参考人 そこは何とも申し上げかねますけれども、先ほど申し上げたとおり、個人預金について、御指摘のように、かなりマイナス金利を深掘りしている欧州でも、個人預金の金利はマイナスになっておりません。金融機関の間の預金はもちろんマイナスになっております。
 企業の大口預金については、いろいろな例があるようでございますが、これについては、今のところは日本ではマイナスになっていないということであろうと思います。
○今井委員 今のところはマイナスじゃないということは、将来その可能性があるということを含んでおられるんだと思いますが、そういうことも含めて、影響が出ないようにぜひしっかりやっていただきたいと思います。
 きょうは財務副大臣にもお越しいただいたんですが、時間が終わりましたので、どうも済みませんでした。終わります。
 ありがとうございました。
○宮下委員長 次に、木内孝胤君。
○木内(孝)委員 民進党、木内孝胤でございます。
 熊本、大分の大震災で、犠牲になられた方にお悔やみを申し上げますと同時に、被害に遭われた方にお見舞いを申し上げます。
 昨日も委員会で申し上げましたが、持ち場持ち場でできることを着実に進めて、きょうの朝刊にも、エコノミー症候群ではないかというようなことでお亡くなりになった方も一面に出ておりました。できることを着実に進めてまいりたい、その決意でございます。
 黒田総裁にお伺いいたします。
 G20のワシントンでの会合、どうもお疲れさまでした。この時期は、元衆議院議員の尾崎行雄氏が、元東京市長ですね、桜を贈って、それで、全米桜祭り、ポトマック公園を中心に非常に華やかなワシントンだと思います。
 桜を見たかという質問ではないんですけれども、ちょっとお伺いしたいのは、上海のときと今回のときのG20を比べますと、世の中の状況が大分変わってきているのかなと。
 先ほど今井委員の方からもありましたが、上海の総合指数も、二六五五ぐらいですか、底を打ってから三〇〇〇を超えました。それ以外にも、原油価格も二十六ドルから四十とか四十一とかいうところに今落ちついております。日経平均も、いっとき一万五千円割れしていたところから、一万七千円。
 そういう意味でいうと、当時、上海のG20サミットのころ、私は直接黒田総裁には質問はしておりませんでしたが、実態以上にリスク回避の動きが大きくて、言うほどはひどくないのではなかろうかというようなコメントを総裁はされていたかと思うんですが、一方で、今回のコミュニケを見ると、世界経済の回復は続いているという前向きなコメントもありますし、一方で、世界経済に対する下方リスクや不確実性は残っている、成長も緩やかでばらつきもあると、双方入りまじったようなコメントになっております。
 当時の上海のころと今回のワシントンとを比較して、新聞報道に出る以外の空気感とか会合での空気感等も含めて、黒田総裁の現状の経済に対する御認識、変化についてお聞かせいただければと思います。
    〔委員長退席、松本(洋)委員長代理着席〕
○黒田参考人 今回のG20のコミュニケでも、御指摘のとおり、世界経済は回復を続けており、ここは回復が続いているということですけれども、特に、金融市場は年初来の下落幅のほとんどを回復したということを言っておりまして、上海のときと比べますと、金融市場はやや落ちつきを取り戻した。上海のときのG20のコミュニケでは、明確に経済のファンダメンタルズに比して金融市場が非常に悲観的になっているということで、金融市場が十分ファンダメンタルズを反映していないじゃないかという感じだったわけですけれども、今回は、少なくとも金融市場については、やや落ちつきを取り戻したということであります。
 その一方で、世界経済について回復は続いているわけですけれども、御案内のとおり、IMFの世界経済見通しは、先進国、新興国とも、ほとんどの国について下方修正されました。
 その中で、実は中国については上方修正をしておりまして、ややそうかなというふうに思われる向きもあるかもしれませんが、御案内のとおり、IMFは中国について、世界銀行とかアジア開発銀行などと比べますとやや悲観的というか慎重な見方をしておりまして、今回それを修正して、世界銀行やアジア開発銀行などと同様の見通しにしたということであります。それで、ことしは六・五%ぐらいの成長ではないかということでありまして、私どもも、中国についてはそんなところではないかなと思っております。
 ただ、中国以外のほとんど全ての国、先進国、新興国ともに成長見通しを下げるとともに、さらに、これも委員御指摘のとおり、成長について依然として緩やかでばらつきがあり、下方リスクと見通しに関する不確実性は残っているということを言っておりますので、世界経済見通しを下方修正したわけですけれども、まだ下方リスクがあるということを言っているわけです。
 この点については、御指摘のとおり、石油価格や資源価格は底打ちしたようには見えるわけですけれども、依然として、一年半とか二年前と比べますと相当低いレベルにありますので、これが資源国のかなり成長の足を引っ張っているということかと思います。
 それから、中国自体はそういうことで比較的順調に成長しておりますけれども、中国の抱えている製造業の過剰設備というものがいわば世界的に製造業の製品の価格を引き下げる、そういうことを通じて製造業の投資に世界的にマイナスの影響を与えているのではないかというようなことから、いわば資源価格の下落はひとまず底打ちしたようには見えるけれども、相当低いレベル。それから、製造業の過剰設備、特に中国の過剰設備の影響といったようなことから、やはり下方リスクや不確実性が残るという見方になっておるのではないかと思います。
 しかし、委員も御指摘のとおり、またG20の声明でもはっきりしていますとおり、金融市場はやや落ちつきを取り戻しているということだと思います。
    〔松本(洋)委員長代理退席、委員長着席〕
○木内(孝)委員 やや落ちつきを取り戻しているというのは大変結構な一方で、もう一つ、国際金融市場での潮目の変化、ここ半年間ほどずっとその傾向が続いていると思うんですが、従来は、比較的財政健全化に重きを置いた経済運営を各国ともする。ここ半年以上前ぐらいから、それがどちらかというと財政出動への転換みたいな大きな転換を迎えているのではないか。
 コミュニケの中にも、中央銀行のマンデートと整合的に、引き続き経済活動と物価安定を支える、しかしながら、金融政策のみでは均衡ある成長につながらない、我々の財政政策は経済を支えることを意図しており、債務残高対GDP比を持続可能にすることが重要である、経済成長、雇用創出及び信認を強化するために機動的に財政政策を実施するというふうになっております。
 個別の会談でも、米国のルー財務長官が、他国に対してというのが日本に対してということかわかりませんけれども、財政出動を促すと理解されるような、そういうやりとりとか報道があったりとか、今までは、何か消費税を上げないと国際公約に反して国際的な信認を失うというのが一つ消費税を上げる要因ではありましたけれども、今大分そこら辺のムードが変わっているという認識をしております。
 もう一つこの中のメッセージで大切だなと思っておりますのは、債務残高対GDP比、これを持続可能な道筋に乗せるということは、要するに、経済政策運営を、今までのプライマリーバランス重視主義よりも、名目GDPをいかに上げるかということが非常に大切になってきている。
 そういう意味では、今の日銀の行っている二%の物価目標、これは現実よりちょっと高過ぎるんじゃないかとかいろいろ議論はございますけれども、この二%の物価目標を実現して名目成長率を高めるということが今日本が目指すべき姿であって、二〇二〇年のプライマリーバランス黒字化というのはむしろ誤っている目標だと私は思って、以前も目標を変えるべきではないかというような質問はしたことがあるんですが、そういう中で、先ほど今井委員からは、マイナス金利の効果は薄いのではないかとかそういう質問がございました。
 私は今の状況を考えると、為替の水準が百九円。百二十円のときに比べますと大分円高になっております。株価もここのところ若干持ち直してはいますが、二万円の水準から見ると、当然これは物価に対しては、一万七千円ということから考えると、マイナスな影響である。
 そういう意味では、今のままこれが続いていると、この間のマイナス金利を導入しても株高、円安にはならなかったということを踏まえると、私は、追加緩和をするということも、ある意味大きな選択肢として当然残っているのではないかなと思っております。
 四月二十七、二十八日に金融政策決定会合がございます。なかなか、先ほど今井委員からも話があったとおり、これはいつまでできるの、どこまでやれるのと。今まで金融緩和を支持していた市場関係者からも、何となくそろそろ限界が出始めているよねと。マイナス金利という、三次元、四次元にしたということで、これは一つの幅を見せたという意味では評価はするけれども、マイナス金利も余り効果はない。
 こういう中で、二十七、二十八日の金融政策決定会合におきまして、追加金融緩和というのは、二%目標実現にはありとあらゆる手段を講じるということをおっしゃっていますので、では、選択肢からは除外をしていないという御理解でよろしいでしょうか。
○黒田参考人 次回の金融政策決定会合に限らず、今後の金融政策決定会合において、金融政策につきましては、物価安定目標をできるだけ早期に実現するために必要ならば、ちゅうちょなく、量、質、金利の三次元を活用して追加的な措置を講ずるということは一貫して申し上げているところであります。
 また、量、質、金利いずれにつきましても、何か技術的というか、現実的な制約が今あるというふうには思っておりません。
 したがいまして、いずれの次元についてもさらなる緩和をする余地は十分あるというふうに思っておりますが、具体的にどのような金融政策を講ずるか、追加緩和をするかどうかというのは、常に申し上げていますとおり、毎回の金融政策決定会合で、物価や経済の実態をよく分析して、先行きを見通して、次回の決定会合までの金融政策を決めるということでございますので、現段階で次回の決定会合の内容を何か占うというか申し上げるということは差し控えたいと思います。
○木内(孝)委員 金融緩和に関しては、市場関係者でも、評価する人、あるいは非常に副作用が将来強いのではないかと言っている人、意見が非常に分かれるところでございます。
 その中で、やはり通貨の信頼性という観点から、これは事実上の財政ファイナンスではないかという見方をしている方が多うございます。当然、発行する額を超えた額を引き受けているわけですから、これは事実上の財政ファイナンスだろうと。
 私は一貫して実は量的金融緩和を支持している立場ではあるのですが、これは事実上の財政ファイナンスではないかと私もよく質問されることがございます。
 あと、もう一つ、ヘリコプターマネーという言い方をしますけれども、つい最近のインタビューでも黒田総裁はヘリコプターマネーについてお答えになられていましたが、これは財政ファイナンスでないと言えるのか。そのロジックはどうなっているのか。ヘリコプターマネーについて、財政の方と金融の方は分離されているからというような話なのかもしれませんけれども、その二点について、これは今問題ないレベルなのか、そうなのかそうでないのか、お聞かせいただければと思います。
○黒田参考人 まず第一点につきまして、現在のマイナス金利つき量的・質的金融緩和、これが財政ファイナンスであるかどうかという点につきましては、財政ファイナンスではないというふうに考えております。
 その基本的な理由は、あくまでも二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということのために現在の政策を行っているわけでありまして、財政のファイナンスを容易にしようというようなことで行っているわけでは全くありません。
 第二点のいわゆるヘリコプターマネーにつきましては、いろいろな議論がございますけれども、基本的には、金融政策と財政政策をいわば一体のものとして行おうということであると思いますが、現在の先進国、どこの国もそうですけれども、財政政策というのはあくまでも政府と議会が決定するものであり、金融政策というのは今や先進国では全て政府や議会から中立的な立場の中央銀行が決定する、そういうものでありますので、それを一体のものとして決定し行うということは、現在のこういう法的枠組みと矛盾するのではないか。だから、今の法的枠組みを変えない限り、ヘリコプターマネーというのは基本的にはあり得ないし、日本銀行としてそういうものを考えているということは全くないということでございます。
○木内(孝)委員 ありがとうございました。
 続きまして、熊本の地震についてお伺いをしたいと思います。
 先ほども、現時点でどの程度経済への影響があるのか、これは答えられる段階にないと。そこは承知した上でお伺いをしたいんですが、私も昨日、熊本に行っている熊本が地元の議員の秘書さんと連絡をとり合いながら、何が一番困っているのかというようなことを意見交換しました。
 やはり、現地に一番近い方から直接話を聞くというのが、当然のことながら、一番状況が把握しやすい。これは、いろいろ経済政策として考え得ることというのは、恐らく、例えばさっきの中小企業金融であれば、保証協会の貸し出しを条件を緩和したりとかいろいろあるんですが、正直、余り日本銀行さんとして今直接的にできることというのは限定的なのかなと。
 私の中で実は思い浮かばなかったので、ちょっと幾つかは質問したんですが、ただ、一つちょっとお伺いしたいのは、現場近くでどういうような報告が上がっていて、こういうのが選択肢としてあり得るというようなことがもしあれば、現場サイドからお聞かせいただければと思います。
○雨宮参考人 お答え申し上げます。
 私どもにとって一番近い現場というのは、私どもの熊本支店ということになるわけでございます。実際に、熊本支店あるいは近隣の支店を通じまして、被災の状況、あるいは金融システムの状況、決済の運行状況についてはできるだけ情報を入手するように努めております。
 当面、このような震災のような事態が起きますと、中央銀行にとってまず第一に最もなすべき事項は、決済システムあるいは金融システム、日々の決済ですとか、あるいは、人々が銀行券、お金を手に入れられるかどうか、そうした生活のインフラとしての決済システム、金融システムを維持するという観点でございます。
 その点では、私どもの支店も含めて、実は、やはり被災を受けた職員もおりまして、出勤できない者もおります。しかし、相当大勢の者が連続で臨時の宿泊を支店で行いまして、そうした決済システムの維持ですとか銀行券の配賦等に全力を挙げている段階でございます。
 現段階におきましては、そうした生活インフラとしての決済ですとか金融システムは何とか運行しているという状態であるというふうに認識しておりますが、これにつきましては、この後判明してくる事態もありましょうし、あるいは、先生御指摘のありましたような経済情勢も踏まえた金融機関の対応ということもございますので、引き続き情報を点検してまいりたいというふうに考えてございます。
○木内(孝)委員 もう一つ、地震の今後の経済に与える影響についてお伺いをしたいんですが、余震も続いておりますし、今、本当にどういう状況になるかわからない。先ほどもサプライチェーン等への影響という話がございましたが、例えば、東京であったとしても日々の経済活動に、私のところでも身近に非常にいろいろ影響が出ております。
 例えば、週末なんか会食とか含めていろいろ会合があるんですね。いきなりこれを自粛するべきか否かというような相談があったりして、私は、そういう自粛ムードを変な形でやるということはよくない一方で、どうしてもムードとしては、これは控えた方がいいんじゃないかとか華美になってはいけないんじゃないか、そうすると、結局、何となく自粛的な動きになってしまう。
 現段階で経済への予測をするのはなかなか困難だというのは先ほどもおっしゃっていましたので、答弁は難しい部分もあろうかと思いますけれども、ある程度の影響というのはもう既に出ているわけで、わかる範囲内で、これがどの程度今後出てくるのか、あるいは注視の仕方をどうするのか。
 なぜかといいますと、恐らく、今度の伊勢志摩サミットに向けて政府は、消費税を上げるか上げないかという難しい判断を今している真っ最中だと思います。世界経済の状況がやや安定化したとかいろいろなこと等も踏まえながら、トータルでどういうふうにしていくのか。この経済への影響というのを事務方の方からお答えいただければというふうに思います。
○雨宮参考人 お答え申し上げます。
 先ほど来御議論ありますとおり、地震の全般的な経済的な影響につきましては、現段階で詳細を具体的に申し上げることはまだ時期尚早というふうに考えておりまして、情報を収集、分析している段階でございますが、どういう観点から情報を収集、分析するかということで申し上げますと、やはり第一は、これまでも御指摘、御議論のございました、サプライチェーンに対する影響がどうなるかということ。これは恐らく、短期と中期、両方で考える必要があろうかと思います。
 二つ目は、これは全般的な消費動向に係りますことですけれども、中長期的には、観光にどのような影響を与えるか、消費動向に与える影響ということを考える必要があろうかと思います。
 それから三つ目は、先ほど先生も御指摘のありましたようなマインドに与える影響がどういうものになるかというようなことがございますので、全体的には、サプライチェーンを含めた生産面への影響、インバウンド観光も含めた消費への影響、あとは三番目は全体のマインドへの影響、こうした観点から点検を続ける必要があろうかというふうに考えております。
○木内(孝)委員 本当に、その影響がどういう形で出るのか、全く予断を許さない状況が続いておりますので、ぜひタイムリーに経済状況をアップデートしていただいて、それをきちっと政策に反映できるような体制をおとりいただければと思います。
 消費とマインド、これは非常に大きくリンクしているかと思いますが、来年の四月に消費税が上げられることが決定しております。
 消費税を再増税した場合の個人消費に与える影響というのは、前回、二年前の増税の前にもいろいろ議論がなされましたけれども、そのときは、状況をやや楽観的に見過ぎたんではないかという答弁を以前いただいているというふうに記憶しておるんですが、今回は、この間の影響、実際の数字を踏まえて、きちんとした個人消費への影響の分析をなさっているのかどうなのか。もちろん、三%と二%とか、軽減税率とか、いろいろな諸条件は違いますけれども、私は、今回二%上げたときのインパクト、個人消費に与えるインパクト、世界経済情勢を含めて、非常に個人の消費に大きな悪影響を与えるのではないかと思っております。
 再増税した場合の消費に与える影響の度合い、これについてどういうふうに分析をされているか、御所見をいただければと思います。
○黒田参考人 一月のいわゆる展望レポートにおきまして経済・物価見通しを日本銀行としても出しているわけでございますが、その中で、消費税率の引き上げの影響についても分析をしております。
 この分析につきましては、御指摘のように、二〇一四年の四月に三%上げたときの影響というものが事前に予想していたよりも大きかったのではないかというそういう経験を踏まえまして、さらに細かく分析をいたしました。
 その趣旨は、税率引き上げ前後の駆け込み需要の発生とその反動、それから、税率引き上げに伴う実質可処分所得の減少という二つの経路を通じて実体経済に影響を及ぼすわけですが、特にこの駆け込み需要の発生と反動ということの見通しについて改善をいたしまして、具体的には、二〇一四年四月の消費税率引き上げが二〇一四年度の実質GDPに与えた影響がマイナス一・二%ポイントであったのではないかという分析をし、そういう分析を踏まえて、二〇一七年四月に予定されている消費税率引き上げが二〇一七年度の実質GDP成長率に与える影響がマイナス〇・七%ポイント程度ではないかというふうに分析をしております。
 前回と比べて影響が小さいのは、もちろん、御指摘のように、税率の引き上げ幅自体が小さいということに加えて、食料品等に軽減税率が適用されるということによるものであります。
 ただ、消費税率の引き上げが経済に与える影響につきましては、その時点における景気回復のモメンタムや雇用・所得環境などにも依存するために、相当の幅を持って見る必要があるというふうに思っております。
 なお、今申し上げたマイナス〇・七%ポイントというのは引き下げの影響ですので、二〇一七年度の成長率の見通しがマイナス〇・七になるというものではございません。一月の時点ではたしかプラスの成長を見通しておりました。
○木内(孝)委員 二年前の消費税の増税は、やはりこうした個人消費の動向を見誤った結果マイナス成長が続いているというふうにも思っておりますので、当然、財政健全化も大切ですし、消費税を未来永劫上げないということではございませんけれども、考え方として、債務残高対GDP、対比ということで名目成長率を上げるような経済政策、特に中央銀行の立場からおとりいただければというふうに思っております。
 以上で質問を終わります。
○宮下委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。
 きょうは、「教えて!にちぎん」というものがホームページに出ています。「五分で読めるマイナス金利」、日銀のホームページに出ていますので、これについてお聞きしたいというふうに思います。
 このQアンドAは、誰に向けて何を教えるためのもので、どういう目的でつくられたのか、まず確認したいと思います。
○黒田参考人 この「五分で読めるマイナス金利」というものは、幅広く一般の方々を念頭に、マイナス金利について、その狙いや、特に、いろいろ出されておりましたさまざまな疑問に対する答えを、できるだけ平易な言葉でわかりやすく説明するということを目的として作成したものでございます。
○宮本(徹)委員 国民に幅広く、平易でわかりやすく疑問に答えるというふうにおっしゃいましたけれども、私、これを見ましたけれども、やはり、かなり上から目線だなというのを感じました。
 例えば、マイナス金利の導入によって普通預金金利が〇・〇二%から〇・〇〇一%に下がったことについてこう書いているわけです。「百万円預けて一年間の利息が二百円だったのが十円になったということです。消費を悪くするほどの規模ではありませんよね。」こういう書き方がしてあります。
 国民一人一人にすれば確かに大きな額ではないかもしれませんが、しかし、マイナス金利政策で国民の所得を奪っているということへの自覚をまるで感じない文章です。
 三月、参議院の財政金融委員会で我が党の小池晃議員が指摘をして、総裁も認めたように、金融緩和を推進して金利水準が下がれば、国民から企業部門に所得移転が起きていっているわけですよ。異次元緩和が個人に与える影響について、消費に影響がなければ問題はない、これだけ言ってしまうのが日本銀行の姿勢なんでしょうか。
○黒田参考人 この文章の中でも述べておりますとおり、個人の預金金利がマイナスになるということは考えにくいわけですけれども、それでも預金金利は低下しております。
 したがって、それが個人消費の悪化につながらないかという疑問に対して、もともと預金金利がゼロに近かったために、そうした影響は考えにくいということをお答えしたものでございます。
 あくまでもマイナス金利つき量的・質的金融緩和の狙いは、実質金利の一段の低下を通じて全体としての日本経済を刺激し、二%の物価安定の目標を早期に実現するということでございます。
 実際にも、企業向けの貸し出しの基準となる金利あるいは住宅ローンの金利ははっきりと低下しておりまして、今後、その効果が実体経済や物価面に着実に波及して、国民生活全体にとってプラスの影響を与えるというふうに考えているわけでございます。
○宮本(徹)委員 いや、プラスの影響ばかり言われるんですけれども、やはり、国民に負担を強いているという自覚を日銀はもっと持つべきだというふうに私は思います。
 しかも、この「教えて!にちぎん」の中では、すぐに預金金利を引き下げた日本の金融機関について、「去年もたくさん収益を上げています。」こう言った上で、マイナス金利でも余り銀行が困らないようにしたというふうに述べていますが、これはどういう意味でしょうか。
○黒田参考人 マイナス金利政策というものは、金融機関が日本銀行に保有する当座預金に適用される金利をマイナスにするということによって実施されるわけであります。そのため、金融機関収益に直接的な影響が及ぶことになります。
 この点、マイナス金利の導入に当たっては、金融機関が日本銀行に保有する当座預金を三段階の階層構造に区分し、その一部についてのみマイナス金利、マイナス〇・一%を適用するとともに、過去一年間の平均残高までの部分については引き続きプラス〇・一%の付利を行うこととした。
 御指摘の記述はそのことを説明したものでありまして、マイナス金利政策というものが金融機関の収益に過度の影響を与えますと、金融機関が経済の成長、発展のために行う金融仲介機能が阻害されるおそれがありますので、そういうことのないようにこういった形をとったということでございます。
○宮本(徹)委員 三月十六日の本委員会で日銀の雨宮理事が、メガバンクとりそな二行の大手銀行五行は、昨年九月末の残高から機械的に試算すると、預金金利の引き下げで年間三百三十二億円の支払い利息が減額される、こういう答弁がありました。
 四月発表の当座預金残高では、都市銀行はマイナス金利適用の残高はふやしていますが、それでも二兆一千百六十億円。機械的に試算をしますと、マイナス金利によるマイナスの利息は年間ベースで二十一・二億円になるのかなと思います。ですから、あわせて計算しますと、マイナス金利導入により損失した付利相当額は二百二十億円ということになると思います。
 一方、先ほど言いましたように、都市銀行が預金金利の引き下げで失われた利息が、これは年間三百三十二億円です。ですから、今後、貸出金利の低下で収益の減少がもう少し起こるかもわかりませんが、当面でいえば、預金金利を引き下げて対処したため、相殺すると、日銀のホームページに書いているとおり、銀行は確かに困らないということになっているんですね。だから、結局困っているのは国民ということになるんじゃないかと思います。
 結局、銀行にお金を預けている預金者がマイナス金利政策の負担をこうむっている、こういうことになるんじゃないですか。
○黒田参考人 マイナス金利政策と言われるものは、これまで所期の効果を発揮してきた量的・質的金融緩和を一段と強化するものでございます。量的・質的金融緩和のもとで、実質金利が大幅に低下することを通じて企業収益が増加するとともに、雇用・所得環境も大きく改善してきました。
 マイナス金利つき量的・質的金融緩和も、日本経済全体を回復させ、国民所得をさらに増加させることに貢献するものと考えております。
○宮本(徹)委員 そう、思われる思われると見込みだけ語られるわけですけれども。
 そして「教えて!にちぎん」、このホームページでは、「デフレから完全に抜け出すしかありません。そのために、今はがまんして金利を低くして、もっと景気を良くして、物価をもう少しだけ上げていくということです。」こうも書いてあるわけですけれども、このホームページで言っている我慢というのは、日銀は一体誰にこの我慢を求めているんですか。
○黒田参考人 マイナス金利のもとで、預金金利は、小幅ではありますが、低下していることは事実であります。
 したがって、例えば住宅ローンなどの借り入れがなく、金融資産の大半を預金で保有している方々にとっては、金利低下の直接的なメリットが感じにくいということは確かでございます。そうした方々には心苦しく思っております。
 ただ、こうした極めて低い預金金利水準はもう十五年以上続いております。その根本的な原因はデフレであります。デフレのもとでは、経済、物価を下支えするため金利水準を低くする必要があり、預金金利も低水準になってきました。
 十五年以上も続いている低金利環境から脱却するためには、思い切った金融政策を推進することによってデフレから脱却するほかないというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 結局、住宅ローンを使っていない多くの国民にとっては、我慢を強いている、大変心苦しいというせりふを初めてお伺いしましたけれども、我慢を求めていることになるわけですよね。
 結局、金融緩和政策で物価を上げていくという政府の方針に対して国民は黙って従い、金利は奪われても我慢しろということを言っているにすぎないんじゃないんですか。
○黒田参考人 日本経済が持続的な成長を実現するためには、デフレから脱却し、二%の物価安定の目標を安定的に実現することが必要不可欠であるというふうに考えております。
 デフレのもとでは、価格の下落が企業の売り上げや収益の減少につながり、その結果、賃金が抑制されて消費が低迷し、これがさらなる価格の下落につながるという悪循環が生じていました。企業も家計も、先行き、物価は上がらないことを前提に行動するようになり、支出活動が消極的になっていく。そうしたもとで、デフレが自己実現的に長引くことになったわけでございます。
 こうした状況を打破するためには、人々のデフレマインドの抜本的な転換により、物価が緩やかに上昇する状況をつくり出すことが必要であります。物価が緩やかに上昇すると、デフレ下での悪循環とはちょうど反対のことが起こります。つまり、企業の売り上げや収益が増加し、賃金も増加するという好循環が生まれるわけであります。
 このように、日本銀行では、マイナス金利つき量的・質的金融緩和により、企業収益や雇用、所得の増加を伴いながら物価上昇率が次第に高まっていくという好循環をつくり出すことを目指しております。このことは、家計を含めた日本経済全体のためにぜひとも必要なことであると考えております。
○宮本(徹)委員 そう言って三年間やってきたわけですけれども、名目賃金は若干上がったかもわかりませんけれども、増税だとか円安による食料品の物価高だとかで実質賃金は実際は下がって好循環は生まれていないというのは、もう三年たって、誰の目にも明らかなことだというふうに思います。
 その上で、この「教えて!にちぎん」では、マイナス金利の効果についてこう言っています。「マイナス金利にしたあと、住宅ローンの金利は下がって、十年固定で借りても一%以下になっています。銀行のローンセンターは大忙しだそうです。会社が借りるときの金利も下がっています。」こう書いてあるわけです。これだけ見ますと、いかにも住宅需要が拡大しているかのような書きぶりにとれるわけですよ。
 ちょっとお伺いしたいんですけれども、マイナス金利導入前に比べて、住宅ローンの貸し出しというのはどれぐらいふえているんでしょうか。
○櫛田参考人 お答えします。
 住宅ローンにつきましては、日本銀行が作成している貸出先別貸出金統計におきまして、四半期末ごとの残高を公表してございます。それで、直近の数字は、昨年十二月末の計数で前年比二・三%増ということでございます。
 その後の状況につきましては、金融機関からのヒアリング等では、マイナス金利導入後、住宅ローンについては、借りかえも含めまして問い合わせや取り組みが増加している、こういった声は聞かれているところではございますけれども、三月末の計数が公表されるまでにはなおしばらく時間がかかる、こういった状況でございます。
○宮本(徹)委員 まだ三月末の計数が出ていない、問い合わせは、借りかえも含めてふえているというお話でした。
 実際にこの間のアベノミクスの金融緩和政策で、では、住宅だとかを含めてどういう影響が出ているのかというのも確認したいと思います。
 まず初めに、改めて確認したいんですが、安倍政権が始まった二〇一二年十二月以降、貸出金利は長期も短期もともに低下を続けています。二〇一三年一月から現在までに長期の貸出金利は幾らから幾らまで低下しているでしょうか。数字だけで結構です。
○櫛田参考人 お答えします。
 銀行の長期の貸出約定平均金利をストックベースで見ますと、御指摘の二〇一三年一月、この時点は一・四一五%でございましたけれども、それが本年二月には一・〇八四%、この間、〇・三三一%ポイント低下いたしております。
○宮本(徹)委員 この間、〇・三三一%低下しているということです。
 では実際の住宅はどうなっているかというので、きょうは配付資料でお配りさせていただきました。これは、三月の月例経済報告の閣僚会議に提出された資料です。
 右上が住宅建設、「おおむね横ばい」というふうに書いてありますが、これをごらんになっていただければわかりますが、住宅建設の着工数は、総戸数で見ると、二〇一三年一月から消費税増税の駆け込み需要で、一旦、年率八十数万戸から年率約百万戸にふえております。しかし、その後、一四年四月の消費税増税を境に減少して、減少のまま続いている。二〇一五年十一月の段階で総戸数は年率八十数万戸になっているということで、結果的に横ばいなわけですよ。
 この中でも、持ち家に着目すれば、その結果を見るとこれは後退しているわけですよ。資料でいえば青い線になりますが、二〇一三年一月のころは年率三十万戸を超えて着工数があったものが、駆け込み需要が落ち込んで以降、年率二十七万から二十八万戸に低迷しているということになっています。
 つまり、貸出金利は二〇一三年一月から今日まで大きく下がるということになったわけですが、住宅着工数は総戸数では変動なし。持ち家に関していえば、横ばいどころか、一から二割下がっているというのがデータから読み取れます。ですから、この三年間の異次元緩和で金利が下がったといっても、住宅着工が伸びなかったというのが実際のところだというふうに思います。
 ですから、金利が下がっても、多くの庶民からすれば、実質所得が低下しているので、より住宅を購入しようという意欲は持てないということだというふうに思うんです。
 実は、こういう資料一つ見ても、マイナス金利で住宅ローンの金利が下がったからといって、住宅ローンの件数が大きくふえる、借りかえはふえていると思いますよ、借りかえはふえていると思いますけれども、住宅ローンの件数そのものが大きくふえるという期待というのは、非現実的なんじゃないですか。
○黒田参考人 住宅ローン金利が低下すれば、元利金の支払い負担が減少するために、当然、住宅取得が容易になるというふうに考えられます。消費税の導入前の駆け込みの影響というのはかなり長く続いていることであろうと思いますけれども、基本的に、住宅ローン金利が低下すれば住宅取得が容易になるということであると考えております。
 したがいまして、住宅ローン金利の低下は、借りかえ需要を高めるだけでなく、新規の住宅投資にもプラスの効果をもたらすというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 しかし、実際はそのプラスの効果が出てきていないわけですよ。本来、頭の中ではそうなるはずなんですけれども、実際は、やはり実質所得が低下しているもとでは、頭の中で考えたとおりにはいっていないということだと思います。
 銀行の貸し出し全般でも、マイナス金利の効果があらわれているというふうには私はなかなか見えないんじゃないかと思います。
 資料の裏側を見ていただきたいと思います。
 全銀協の全国銀行預金・貸出金速報によりますと、二〇一六年三月末の公表資料では、前年同月比増加は五十五カ月連続ということで、増加は続いております。しかし、伸びを見ると、マイナス金利導入後、都市銀行の貸し出しは、伸びるどころか、増加比率は大きく低下しております。下側のところ、右側の太いのが全国銀行のところですけれども。そういう状況になっております。全国銀行全体では、前年同月比の伸びはことし二月に下がって、それから横ばい。都市銀行、これは黒い実線になっていますが、この貸出金の増減率は、ことし一月から二月、三月と伸び率を低下させております。
 ですから、マイナス金利で貸し出しはふえるどころか、伸びが鈍化しているというのが実際なんじゃないでしょうか。
○黒田参考人 本年一月の伸びがプラス二・三%、二月がプラス二・二%となっておりましたが、三月はプラス二・〇%ということで、幾分プラス幅が縮小しております。これは、都市銀行と限らず、全ての銀行の貸出残高の伸びでございますが。
 これは、実は円高によって外貨建て貸し出しの円換算金額が減少したということによるものでありまして、その要因を除きますと、実勢は一、二月と同程度の伸びを続けております。都市銀行についてその影響が大きいのは、都市銀行が外貨建て貸し出しが大きいからでありまして、基本的に、三月の伸びというのは一、二月と同程度の伸びでございます。
 いずれにいたしましても、マイナス金利つき量的・質的金融緩和というものは、一月末に導入を決定したばかりでありまして、この政策が実体経済に与える影響を判断するためにはある程度の時間を要するというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 今、円高の影響も見なきゃいけないというお話でしたけれども、円高の影響を考えてみても、マイナス金利になってこれがぐっと貸し出しがふえているわけでもないというのも事実だということは言えると思います。
 そして、このマイナス金利の効果について、一月二十九日の政策決定会合で石田委員が、金利は十分低いので貸し出しがふえるとは考えられないという理由からマイナス金利に反対されましたが、そういう事態になっているというふうに思います。
 現在、銀行の現場からも同じ指摘が起こっております。報道で見ましたけれども、三菱UFJフィナンシャルグループの平野社長が十四日の都内の講演で、マイナス金利の経済効果について、既に金利の低い日本で企業や個人の投資を促すかどうかはわからず、残念ながら懸念を増大させる方向に働いてしまっているようだ、こう語った記事を見ました。さらに、現状についてこうおっしゃっています。個人も企業も政策効果に懐疑的になってしまっており、将来に対する不確実性が増すにつれて支出や投資計画を凍結している。報道では、こう述べたと書かれております。
 メガバンクの一つの社長がこういう指摘をされているわけですけれども、この指摘について総裁はどう受けとめていらっしゃるでしょうか。
○黒田参考人 日本銀行が導入しましたマイナス金利つき量的・質的金融緩和というものは、大規模な長期国債買い入れとマイナス金利によって長期、短期の国債金利を全体として低下させることで実質金利を引き下げて、設備投資や住宅投資などの経済活動を刺激し、国民所得を増加させるというものであります。
 マイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入以降、貸し出しの基準となる金利や住宅ローンの金利は一段と低下しているほか、極めて低い金利で長期の社債を発行し、設備資金を調達するといった動きも実際にあらわれてきております。
 また、三月短観、日銀の短観の結果などを見ましても、企業は金融機関の貸し出し態度がさらに緩和的になったと判断し、前向きな設備投資スタンスを維持しております。
 もとより、マイナス金利政策は我が国では初めての経験であるだけに、不安を感じられる向きもあろうかと思いますが、日本銀行としては、マイナス金利つき量的・質的金融緩和の目的やその効果の波及メカニズムについて、今後とも丁寧に説明してまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 前向きなことばかり先ほどからおっしゃるわけですけれども、メガバンクのトップの方が、支出や投資計画を凍結している、こういう動きが今は現状生まれていると言っているわけですから、やはりそういう事実にも目を向けなきゃいけないというふうに私は思います。
 マイナス金利に対する個人の意識も景況感を悪化させております。
 日本銀行が、生活意識に関するアンケート調査、三月調査、四月十一日に発表いたしました。これを見ますと、一般国民の意識も既にマイナス金利の影響が出ております。金利水準についての見方について、金利水準のDIが一五年十二月はマイナス四一・二%です。これが一六年三月ではマイナス五八・〇%。金利が低過ぎるという声が大変ふえているわけですよ。
 そして、景況感についての質問では、今後の見通しについて、「一年後を現在と比べると」ということが問いとしてあるわけですが、「良くなる」という回答と「悪くなる」という回答が前回の一五年十二月と比較してどうなったのか、数字を言っていただけますか。
○櫛田参考人 お答えします。
 今委員御指摘の生活意識に関するアンケート調査の三月調査の結果でございますが、一年後の景気は今と比べてどうなると思いますか、こういった質問に対しまして「良くなる」と回答した人の割合は、二〇一五年十二月調査では八・九%、二〇一六年三月調査では六・八%となっておりました。また、「悪くなる」と回答した人の割合は、二〇一五年十二月調査では二八・八%、二〇一六年三月調査では三七・七%となっておりました。
○宮本(徹)委員 今の数字のとおりで、一年後をよくなると答えた人は減少して、悪くなると答えた人は大幅にふえるということになりました。
 ですから、この回答を見ても、将来の景況感というのは国民の中で大きく悪くなっているというのは明白だと思います。
 支出についての設問でも、「一年後を現在と比べると」という回答を見ますと、前回から支出DIがマイナス三九・七%からマイナス四五・三%へと五・六%減少しております。それから、「日本経済の成長力」、こういう設問でも、「より低い成長しか見込めない」、こういう否定的な回答が四九・一%から五三・五%にふえるということになっております。
 ですから、このアンケートを見てもそうですし、そして、先ほど紹介した三菱UFJフィナンシャルグループの平野社長が言っているのもそうですけれども、今、国民の中で、個人も含めて、マイナス金利の政策効果に懐疑的になってきているというのははっきり言えると思うんですよ。将来に対する不確実性が増すにつれて支出や投資計画を凍結しようとしている現状というのが、この日銀のアンケート調査からも見てとれるんじゃないですか。
○黒田参考人 このアンケート調査で一年後の景況感が悪化した背景には、年明け以降、世界的に投資家のリスク回避姿勢が過度に広まる中で、我が国を含め、金融市場が不安定な動きとなったことの影響があると見られます。
 この間、労働市場では、失業率が三%台前半で推移し、三年連続でベースアップが実現する見込みであるなど、雇用・所得環境が着実に改善をする中、個人消費は底がたく推移しております。
 さらに、日銀短観では、企業の業況感は慎重化したものの、過去最高水準の企業収益を背景に、企業の前向きな設備投資スタンスは維持されております。
 こうしたことを踏まえますと、マイナス金利によって支出や投資計画が抑制されるということはないというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 いや、いろいろなものの景況感の悪化は金融市場の不安定化の影響だとかおっしゃいますけれども、マイナス金利については影響は一切ないというそれは、何の根拠を持って否定されるのかというのが私は全くわかりません。
 住宅ローンはふえていない、銀行の貸し出しも大きくふえていない、メガバンクのトップまで政策効果に懐疑的になって支出や投資計画を凍結している、こう言っているにもかかわらず、今の日銀の総裁の御答弁もそうですし、この「教えて!にちぎん」でホームページで書かれていることも、今、国民や、あるいは業界、財界人も含めて感じている現実というのを私は反映していないというふうに思います。
 そしてこの「教えて!にちぎん」は、「『もうデフレには戻らない』というところまで、あと少しです。この三年間、『異次元緩和』は、たしかに効きました。それをもっと強力にするということです。かならずデフレから抜け出せます。」とにかく日銀が言っているのは正しいんだから信じろ信じろと、精神論を説いているだけにしか読めないんじゃないかと思います。
 私は、改めて批判的な有識者の声や国民の声を聞いて、異次元緩和の実施から三年間というのを総括すべきだと思いますが、総裁どうでしょうか。
○黒田参考人 二〇一三年四月に量的・質的金融緩和を導入してから約三年が経過いたしましたが、この間、我が国の経済・物価情勢は大きく改善してまいりました。
 すなわち、企業収益は、中小企業を含め過去最高水準で推移しております。また、失業率が三%台前半まで低下するなど、完全雇用と言える状態となっており、こうしたもとで三年連続でベースアップが実現するなど、雇用・所得環境は着実に改善しております。
 物価面でも、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、一昨年の秋以降、原油価格が七割以上下落したことから、このところゼロ%程度となっておりますけれども、生鮮食品、エネルギーを除く消費者物価の前年比は、量的・質的金融緩和導入前はマイナスだったわけですけれども、二〇一三年十月にプラスに転じた後、二十九カ月連続でプラスを継続しており、最近では、プラス一%を上回る水準まで上昇しております。
 もとより、二%の物価安定の目標の実現という観点からは、なお道半ばであり、日本銀行としては、マイナス金利つき量的・質的金融緩和を着実に推進していく方針でございます。
 今後とも、政策に関する考え方や、その前提となる経済・物価情勢についての判断を、丁寧に説明してまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 ですから、やっていることが本当に正しいんだ正しいんだということで突進するのではなくて、やはり、この時点で立ちどまって真剣な総括をすることを改めて求めておきたいというふうに思います。
 あと残された時間で、先日ワシントンで行われましたG20等国際会議、会談に関連して質問させていただきたいと思います。
 四月十四日の日米財務首脳会談で麻生太郎財務大臣は、最近の為替市場での一方的に偏った動きに強い懸念があると米国に伝えたという報道がなされておりました。これは、ことしに入ってドル安・円高が進行したことについて言われたことだと思いますが、実際、会談ではどう述べられたのか。事実関係を教えていただけますか。
○門間政府参考人 ワシントンDCで行われました日米の財務大臣会合、麻生大臣とルー財務長官の会合におきましては、麻生大臣から次のような発言があったと承知しております。
 麻生大臣から、為替市場における過度の変動や無秩序な動きは悪影響を与えるものであり、最近の為替市場で見られている一方向に偏った動きに強い懸念を有している旨を伝え、また、通貨の競争的切り下げを回避するとのG20合意内容は、国内政策目的のための金融政策手段の行使を制約するものではないといった点を麻生大臣が指摘し、双方で確認した。
 さらに、この文脈で、マーケットでは、ドル高を是正するため、アメリカは金利引き上げを慎重に行い、日欧は積極的に金融緩和は行わないといった当局間の密約合意があったのではないかとの見方があるが、上海G20においてこのような密約合意が存在していないといった点を麻生大臣が確認しました。
○宮本(徹)委員 ことしに入り、マイナス金利導入を決めた一月二十九日ごろは一ドル百二十一円前後であったものが四月初めには百七円にまでドル安・円高が進んで、きょうは百八円、百九円というところで動いているみたいですけれども、現在のドル・円の為替相場について、日本経済に悪い影響を及ぼす程度のドル安・円高が進行している、こういう認識を財務省は持っているのか。
 一方で、円高になれば、食料品などは輸入価格が下がりますので、一般の個人消費にはメリットという面もあるとは思いますが、最近のドル安・円高の国内への影響についてどうお考えでしょうか。財務省、お願いします。
○門間政府参考人 ドル安・円高の経済に及ぼす影響につきまして一般論として申し上げれば、円高方向への動きに伴う輸入物価の下落は、原材料コストの下落等を通じ、中小企業や消費者の生活にも恩恵を及ぼし得る面があります。
 他方で、円高方向への動きは、輸出企業や海外展開をしている事業者等にとってはマイナスの影響があると言われております。
 いずれにしましても、今後も、為替が経済に及ぼす影響につきましては注視してまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 そういう一般論で答えられると、今の水準についてどう思っているのかというのがさっぱりわからないわけですよ。
 報道では、ルー米財務長官は十四日の日米財務相会談で、米当局がその認識で一致したわけではない、こう述べたとされているわけです。さらに、翌十五日の記者会見の場でルー長官は、日本は外需ではなく内需に目を向ける必要がある、こう指摘した上で、円相場について、最近は円高が進んでいるが市場の動きは秩序的だ、こう述べたわけですよ。
 ですから、財務当局の間で最近の為替相場の動きについて認識は共有されていないということなんでしょうか。
○門間政府参考人 ルー財務長官の発言についてのお尋ねでございますが、他国の発言につきましては、正確には趣旨がわかりかねますため、個別にコメントすることは差し控えたいと考えております。
 ただし、先ほども申し上げましたとおり、麻生大臣からはルー財務長官に対して、為替市場の最近の動向、通貨の競争的切り下げを回避するとのG20の合意内容、上海G20においてドル高を是正するための当局間の密約行為は存在しない点について意見を伝え、意見交換を行ったものと承知しております。
 今後とも引き続き、為替市場に関しまして、日米の財務相間で意見交換を行ってまいりたいと思っております。
○宮本(徹)委員 コメントしないというふうにされると困ってしまうんですけれども。為替相場について日米間で認識が共有されているのかという、そのことだけを聞いているわけですよ。だから、何で答えられないのかなというふうに思いますが。メディアでも、一致しないということがこれだけわあわあ報じられているわけですから、一致していないなら、一致していませんということを言っていただけたらいいんじゃないかというふうに思います。
 もうちょっと質問しようと思っていたんですけれども、質問時間が来てしまいましたのでこれで私の質問を終わりたいと思います、総裁にあと何問か質問したいというふうに思っておりましたが。
 異次元緩和の三年間の間に、今の局面とは別にして、大きく言えば円安・ドル高が起きました。この中で輸出大企業には大きな利益をもたらしました。一方で多くの国民にとっては、輸入物価、食料品などの高騰で生活を切り詰めざるを得なくなって、可処分所得という点では大きく切り下げるということになりました。これが、消費税増税とあわせて個人消費を冷え込ませている大きな一因になっているのは間違いないというふうに思います。
 ですから、日本経済への効果の検証もなくて、さらなる金融緩和の実施はやるべきではないというこのことだけ申し上げまして、質問を終わります。
○宮下委員長 次に、丸山穂高君。
○丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。
 私も、あと最後二十分でございます。最後でございますので、もうしばしおつき合いいただければと思います。
 総裁、まずちょっと、この間の委員の皆さんの御質疑と重複する部分もございますが、それは通告との関係で御容赦いただきたいと思うんです。
 改めて確認なんですが、今回の熊本の地震でどんな影響が日本経済にあるのかというのを、先ほど来いろいろな議論を聞いていましてまず最初に聞きたいのは、ちょうど総裁が出張に行かれたタイミングで会見をされていたのを見ると、熊本支店には被害の影響はなかった、そして決済関係も大丈夫だったというふうな御発言がありましたけれども、これまで何度も幾つかさらに余震等ありますが、現時点でもこれは大丈夫だということでよろしいんでしょうか。
○黒田参考人 そのとおりであります。
○丸山委員 そういった意味でしっかりとそのあたり、金融の部分でこの支店というのは非常に大事でございます。特に決済上のシステム、きちんと回っているかというのが大事だと思いますので、引き続きチェックは要注意で見ていただきたいと思いますが、今のところ大丈夫だということでございますね。
 そして、日本経済に与える影響について少しほかの委員との議論があったと思うんですけれども、詳細な分析をしていきたい、けれども現時点では出せないということでございます。
 恐らく余りいい影響はないとは思うんですけれども、総裁としても、悪い影響の方だというふうに思っていらっしゃるのか。そのあたりを伺えますでしょうか。
○黒田参考人 先ほど来、日本銀行のこの問題についての考え方を申し上げておりますけれども、やはり、地震が発生して、特に輸送機械やIT関係の工場で部品の生産が一時停止するということで、その影響がサプライチェーンに及んでいるということでありまして、この点は十分注意していく必要があろうと思っております。
 そのほかにも、議論に出ておりましたような、インバウンドを含む観光への影響、あるいはマインド面への影響といったものも引き続き調査をしてまいりたいと思っておりますけれども、それ自体としては、経済に対するマイナスの影響ということになろうかと思います。
 なお、その上で、復興ということになってまいりますと、その復興につきましては、もちろん復興需要というもので経済を押し上げるという面があろうと思いますけれども、いずれにいたしましても、現時点では、経済への影響というものを具体的に申し上げることはなかなか難しいということを御理解いただきたいと思います。
○丸山委員 その意味でしっかりと分析はいただきたいというふうに思うんですけれども、もう早速、日銀に対して追加の緩和の声が市場でも上がっていると思います。そこをもう一度、総裁として、この熊本の地震の影響も踏まえた上で、このあたり考慮される可能性が出てくるのかどうか、お伺いできますでしょうか。
○黒田参考人 金融政策運営につきましては、冒頭の説明で申し上げたとおり、日本銀行としては、二%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、マイナス金利つき量的・質的金融緩和を継続してまいります。
 また、今後とも、経済、物価のリスク要因を点検して、物価安定の目標の実現のために必要な場合には、ちゅうちょなく、量、質、金利の三つの次元で追加的な金融緩和措置を講じるという方針に変わりはございません。
○丸山委員 四月の決定会合を市場も注目しているとは思うんですけれども、一方で、先ほど来の議論で、この緩和に限界があるんじゃないか、しかし、総裁はないと考えるという幾つかのやりとりがありました。
 以前、私も総裁と議論をさせていただいた中で、特にまずマイナス金利の設定幅について、欧州でも水準としてほぼ、〇・何ぼとかいう水準があって、この水準より低く、さらにマイナスというのは難しいんじゃないかというふうな質疑をさせていただいたところ、総裁は、それが限界とは考えていない、必要であればやることもちゅうちょしないという御回答があったと思うんですが、それは今もそういうお考えなのか、お答えいただけますでしょうか。
○黒田参考人 御案内のとおり、欧州では現在、たしか四カ国とユーロ圏ですか、スウェーデン、デンマーク、スイス、それから最近ハンガリーが導入したと思いますが、そしてユーロ圏のECBがマイナス金利を導入しておりますけれども、ECBは現在マイナス〇・四%のマイナス金利を適用しておりますし、ほかの欧州の中央銀行はマイナス一%前後のマイナス金利を適用しております。
 日本銀行のマイナス金利は、現在、マイナス〇・一%であります。欧州の例と同じになるというわけではありませんけれども、技術的に何か日本銀行のマイナス金利をさらに引き下げることについて、当面、限界があるというふうには思っておりません。
 ただ、マイナス金利が一体どこまでできるのかという議論はエコノミストの間でいろいろありますけれども、現実的に、マイナス一%ぐらいまで行われている国がある、そしてECBはマイナス〇・四というところまで来ているということは言えると思いますけれども、いずれにしましても、さらにマイナス金利を深掘りするかどうかを含めて、金融政策決定会合においてその時々の経済・物価情勢を十分点検して、金融情勢も踏まえつつ適切な決定を行うということでありまして、今から何かマイナス金利をさらに深掘りするとかしないとか、具体的なことを申し上げるのは適切でないと思いますが、日本銀行のマイナス金利が何か今もうこれ以上下げられない、限界に来ているということは全くないと思います。
○丸山委員 金利については今のお答えでずっと一貫されていると思うんですが、先ほども少しお話がありましたけれども、量の部分、量的緩和の部分で、特に長期国債の買い入れについて限界が来るんじゃないかというのが、これは記事で岩田元日銀副総裁が、二〇一七年の半ばには限界が来るというふうな御発言を岩田さんがされているんです。
 くしくも、先ほど総裁の御発言で、年間八十兆というのを買っているわけで、どこかにそれは限界は来るだろうが、当面は来ない。特に、一七年度前半に二%というインフレターゲット目標を設定していまして、その目標のためにこれをやっているんだから、この目標、つまり、一七年度前半までにはこれが限界が来るとは思わないという御発言をされています。一方で岩田元日銀副総裁は、そのすぐ後、一七年の半ばには限界が来るという、そのお二人のを合わせるとぎりぎりのラインかなと。
 ここはまず総裁として、一七年の半ばにという御発言もありますが、一七年度中ということでもない、もっと先だという御理解でよろしいですか。
○黒田参考人 もっともっと先だと思います。限界は当面考える必要がないと思います。
○丸山委員 総裁、それはどれぐらいの範囲で、そのもっともっとというのは、一年なのか、五年ぐらいのイメージですか、それは十年とかいうわけではないと思うんですけれども。
○黒田参考人 現在、国債残高の三分の一ぐらいを持っているわけでございます。七割近いものがまだマーケットにあります。したがいまして、まだまだ技術的には幾らでも買い入れる余地があるというふうに考えております。
 なお、市場で量的緩和に限界があると言う方々の意見の一つは、担保がどうしても必要なので、その限界が来る、そのために国債をどうしても売らないという金融機関が出てきて、日銀が買うのに限界が来るのではないかという議論がありますけれども、これは二つの意味で当たっていないと思いまして、一つは、それに対応するというだけでなくて、いろいろな意味から、昨年の十二月の金融政策決定会合において、市中に百三十兆円ぐらいあると言われる何百かの住宅ローンを固めて信託財産にして、それを日本銀行が担保として受け入れますということを決めまして、それで実際に今実行されようとしておりますので、それも、そういう議論に対する反論に一つはなると思います。
 もう一つは、市場のリクイディティー、流動性が非常に低下して大変なことになるんじゃないかということですが、それも、さまざまな指標を見ますと、リクイディティーについては低下している局面もありますけれども、何かそれが重大な問題を引き起こすような状況には全くなっておりません。
 したがいまして、いずれの面からも、当面、今後何年も国債の買い入れについて量的な限界あるいは技術的な限界が来るということはないと思っておりますが、もちろん、国債の新規発行額よりも多い量の国債を市場から買い入れておりますと、極端な話を言えば、いずれ全部買ってしまうということになれば、それ以上買えないことは事実ですから、それより少し前に買うのが困難になるということはあり得ると思いますけれども、現時点では三分の一ぐらい持っているという段階ですので、今の時点で何か量的緩和の限界を考える必要は全くないと思っております。
○丸山委員 そういうお答えだということでございますけれども、先ほどのほかの委員の議論で、いわゆるヘリコプターマネーの議論を少しされていました。今、市場に出ている国債を、事実上、財政ファイナンス的に日銀が買い支えている側面があるんじゃないかと私も危惧しているんですけれども、しかし、総裁は先ほどの質疑では、これは財政ファイナンスではないというふうに御答弁をされております。
 一方で、これまでの、特に総裁がつかれてからの日銀の動きというのは、かつての経済学的に見ると、どちらかというと机上の空論と捉えられたような政策を、よく言えば大胆に発動されてきて、マイナス金利にしてもそうですし、やられてきた中で、このヘリコプターマネーもされるんじゃないかというのが、恐らく市場の人もそうですし、経済関係者も、総裁ならやりかねぬというところに思いがあるんじゃないかなと思います。現にヨーロッパの方も、ドラギ総裁は、この質問が出たというお話もありました。今、マイナス金利も含めて日本も欧州と似たような状況になってきていますので、そういった意味で関心が出てきているんだと思うんです。
 現時点ではヘリコプターマネーについて考えていないというお話なんですけれども、検討されたこともないんですかね。研究や検討みたいなものも含めて考えられたこともないのか。総裁、もう一度詳しくお伺いできますでしょうか。
○黒田参考人 考えたことは全くありません。
 ただ、御承知のように、この問題については昔からさまざまな経済学者がいろいろなことを言っておられまして、一番最初にヘリコプターマネーという言い方をしたのは、もう亡くなったミルトン・フリードマンだと思いますが、その後も、最近のいろいろな経済学者の方がいろいろなことを発言しておられまして、そういった発言はよく承知しておりますけれども、先ほどの答弁で申し上げたように、ヘリコプターマネーの基本的考え方というのは、金融政策と財政政策を一体として運営しようということですので、それは、日本を含めた先進国では、財政政策は政府と議会が決める、金融政策は議会や政府から独立した中央銀行が決めるという制度的な仕組みになっておりますので、それを否定しない限りいわゆるヘリコプターマネーというのはできないわけでして、そういったことを私どもは全く考えておりませんし、具体的に検討したこともありません。
○丸山委員 そういうお答えになるんだろうとは思っておりましたけれども、しかし、マイナス金利のときもそうですし、直前で総裁が変わるのを見てきましたので、引き続きこのあたりは議論はしていきたいと思います。
 ただ、日本の現状を見ますと、宣言するかしないかは別にして、例えば、今回も補正予算を組まれていくと思うんですけれども、組まれたときに、その国債の発行額以上のファイナンスを日銀の方がしているわけで、事実上は形としてはなっていると私は思う。
 しかし、実際に宣言するかどうかというのは非常に大きな問題で、また、日銀としてどう捉えているか、政府としてどう捉えているかが非常に大事な問題なので、現時点では、政府としてはこれは財政ファイナンスとは言えないし、ヘリコプターマネーは考えていない、考えたこともないという御答弁だと思います。
 時間もなくなってきましたので、日銀の審議委員についてお話をお伺いしたいんです。
 今般、報道で、我々国会の方に提示がされてくるという話で、政井貴子審議委員に、今は新生銀行の執行役員、女性で初ということで、私もお名前を見て調べたら、MBAをお持ちで、外銀で営業部長をされて、そして、その新生銀行の初の女性執行役員ということで、非常に優秀な方なんだろうなというふうに思います。恥ずかしながら勉強不足だったので、今、いろいろな著書を取り寄せて、もしくは講演の議事録みたいなものがあるので、それをいただいているところなんです。
 この日銀の審議委員にどういう方がおつきになるかと常に議論になると思いますけれども、総裁としてどういう方がつくのがいいと思われているのかどうかをまず全体的にお伺いしたいのと、もう一つ、私は政井さんとお話ししたことがないので、総裁はこれはお会いになったことがあるのかどうか、また、どういう方なのか、印象みたいなものがありましたらお伺いできますでしょうか。
○黒田参考人 日本銀行審議委員につきましては、日本銀行法におきまして、「経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者のうちから、両議院の同意を得て、内閣が任命する。」ということとされておりますので、それに従って、両議院が同意をされて内閣が任命するという者が日銀審議委員であるというふうに思っております。私からそれ以上申し上げることは差し控えたいと思います。
 なお、政井貴子氏については、昨日、国会に提示された段階だというふうに承知しておりまして、私から何か具体的にお答えすることは差し控えたいと思います。
○丸山委員 思わず含み笑い、お笑いなんですけれども、お会いになったことはあるんだと思いますし、お話をされたことがあると思うので、これから我々国会の方で審議するということでございますけれども、万が一もしなられた場合には、しっかりタッグを組んでやっていただけるというふうには思いますけれども、そのあたりも含めまして今後の議論につなげていきたいと思いますが、まず聞いてみたかったので聞いてみたということでございます。
 最後に円高と物価について伺って、終わりたいと思うんです。
 円高が物価目標の達成への障害になっているという御発言をされているんです。一方で、原油価格の現状が、要は、今回の報告でもそうなんですけれども、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとこれが二%程度に達するんだという、原油価格とあと為替というのは、前回の議論でもさせていただいたように、結構大きなファクターとして日銀総裁は捉えられていると思うんですけれども、いずれも結構厳しい状況にあるなというふうに思っていまして、為替は流れの中にあるとは思いますが、原油価格は、シェールガスの革命もそうですし、イランの状況を見てもそうですし、歴史的に厳しい。もっといけば、二〇一四年の前までの段階の方が歴史的に高かったんじゃないか。長期的に見たら、今がある程度普通の段階じゃないかと私なんかは思っているんです。
 そういった意味で、ファクターとして挙げられている原油の方も非常に物価目標の達成については厳しいし、為替も今総裁としては厳しい状況にあると思っていらっしゃると思うんですが、本当に物価目標の達成はできるんでしょうか。この辺の、為替や原油価格と物価との関係を最後に伺って、終わりたいと思います。
○黒田参考人 原油価格につきましては、従来から申し上げておりますとおり、中央銀行として何か特別な見通しを持っているわけではございませんので、基本的に、足元の原油価格を市場の先物価格で延ばして、一定の前提をつくって、それを物価の見通しをつくる際の基礎に置いているわけでございます。これは、IMFとか各国の中央銀行も同様な方式をやっていると思います。
 ただ、国際的なエネルギー機関であるIEAは、最近、原油価格も底を打ったのではないかというようなことは言っておるようでありますけれども、将来の価格については、先ほど申し上げたように、あくまでも市場の先物価格で延ばして置いているということでございます。
 為替につきましては、これは政策委員会のメンバーの間で共通のものを置いているわけではございませんが、確かに、為替が円高に振れますと物価を引き下げる方向に働くということは事実であります。また、輸出企業、あるいは海外に展開している企業の収益その他に影響も出てくる可能性もございます。
 したがいまして、為替の動向については当然よく注視してまいりますけれども、あくまでも日本銀行の金融政策は、物価の動き、物価というものを目標にして運営されておりますので、為替は重要な経済の指標であり、その影響は十分注視してまいりますけれども、為替にいわばひもつきで金融政策を運営するということではないということは、諸外国でも十分理解されていると思います。
○丸山委員 質問を終わります。ありがとうございました。
○宮下委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時六分散会