第193回国会 法務委員会 第21号
平成二十九年六月七日(水曜日)
    午前九時二分開議
 出席委員
   委員長 鈴木 淳司君
   理事 今野 智博君 理事 土屋 正忠君
   理事 平口  洋君 理事 古川 禎久君
   理事 宮崎 政久君 理事 井出 庸生君
   理事 逢坂 誠二君 理事 國重  徹君
      赤澤 亮正君    安藤  裕君
      井野 俊郎君    池田 佳隆君
      大野敬太郎君    奥野 信亮君
      門  博文君    金子万寿夫君
      神山 佐市君    菅家 一郎君
      城内  実君    國場幸之助君
      鈴木 貴子君    田所 嘉徳君
      辻  清人君    野中  厚君
      橋本 英教君    藤原  崇君
      古田 圭一君    宮川 典子君
      宮路 拓馬君    簗  和生君
      山田 賢司君    若狭  勝君
      阿部 知子君    枝野 幸男君
      階   猛君    山尾志桜里君
      大口 善徳君    吉田 宣弘君
      池内さおり君    畑野 君枝君
      藤野 保史君    木下 智彦君
      松浪 健太君    上西小百合君
    …………………………………
   法務大臣         金田 勝年君
   内閣府副大臣       石原 宏高君
   法務副大臣        盛山 正仁君
   内閣府大臣政務官     豊田 俊郎君
   法務大臣政務官      井野 俊郎君
   文部科学大臣政務官    樋口 尚也君
   厚生労働大臣政務官    堀内 詔子君
   最高裁判所事務総局人事局長            堀田 眞哉君
   最高裁判所事務総局刑事局長            平木 正洋君
   政府参考人
   (内閣府大臣官房審議官) 大塚 幸寛君
   政府参考人
   (警察庁長官官房総括審議官)           斉藤  実君
   政府参考人
   (警察庁長官官房審議官) 西川 直哉君
   政府参考人
   (警察庁長官官房審議官) 高木 勇人君
   政府参考人
   (法務省大臣官房審議官) 高嶋 智光君
   政府参考人
   (法務省大臣官房司法法制部長)          小山 太士君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    林  眞琴君
   政府参考人
   (法務省人権擁護局長)  萩本  修君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議官)           神山  修君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議官)           瀧本  寛君
   政府参考人
   (スポーツ庁スポーツ総括官)           平井 明成君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議官)           中井川 誠君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局児童虐待防止等総合対策室長)       山本 麻里君
   法務委員会専門員     齋藤 育子君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月七日
 辞任         補欠選任
  赤澤 亮正君     田所 嘉徳君
  安藤  裕君     橋本 英教君
  國場幸之助君     金子万寿夫君
  辻  清人君     神山 佐市君
  藤原  崇君     簗  和生君
  山田 賢司君     池田 佳隆君
  枝野 幸男君     阿部 知子君
  藤野 保史君     池内さおり君
  松浪 健太君     木下 智彦君
同日
 辞任         補欠選任
  池田 佳隆君     山田 賢司君
  金子万寿夫君     大野敬太郎君
  神山 佐市君     辻  清人君
  田所 嘉徳君     赤澤 亮正君
  橋本 英教君     安藤  裕君
  簗  和生君     藤原  崇君
  阿部 知子君     枝野 幸男君
  池内さおり君     藤野 保史君
  木下 智彦君     松浪 健太君
同日
 辞任         補欠選任
  大野敬太郎君     國場幸之助君
    ―――――――――――――
六月七日
 裁判所の人的・物的充実に関する請願(大口善徳君紹介)(第一七二五号)
 同(階猛君紹介)(第一八〇〇号)
 同(宮川典子君紹介)(第一八〇一号)
 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一七九三号)
 同(階猛君紹介)(第一七九四号)
 同(篠原孝君紹介)(第一七九五号)
 同(福田昭夫君紹介)(第一七九六号)
 同(古川元久君紹介)(第一七九七号)
 同(真島省三君紹介)(第一七九八号)
 同(本村伸子君紹介)(第一七九九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)
     ――――◇―――――
○鈴木委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官大塚幸寛君、警察庁長官官房総括審議官斉藤実君、警察庁長官官房審議官西川直哉君、警察庁長官官房審議官高木勇人君、法務省大臣官房審議官高嶋智光君、法務省大臣官房司法法制部長小山太士君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省人権擁護局長萩本修君、文部科学省大臣官房審議官神山修君、文部科学省大臣官房審議官瀧本寛君、スポーツ庁スポーツ総括官平井明成君、厚生労働省大臣官房審議官中井川誠君及び厚生労働省雇用均等・児童家庭局児童虐待防止等総合対策室長山本麻里君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
○鈴木委員長 次に、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所事務総局人事局長堀田眞哉君及び刑事局長平木正洋君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
○鈴木委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎政久君。
○宮崎(政)委員 自由民主党の宮崎政久です。
 性犯罪を厳正に対処するための刑法の一部を改正する法律案について質疑をさせていただきます。
 明治四十年に現在の刑法が制定されて今日まで百十年が経過して、今回初めて、性犯罪の構成要件などを大幅に見直す改正となりました。何が罪となるのか、いかなる重さで処罰されるのか、これは国の意思でありまして、主権者である国民が定めるところであります。
 この委員会で刑法の理念を審議して、議論して、そしてその結果が議事録にも記載されることは、ここにいる私たち国会議員の大きな責務であると認識をしております。
 本日、私を含めまして十名の質疑者が立ちますが、この法案を速やかに成立させるべきであるという点では、与党も野党も共通した思いを持っているところであると思っております。充実した審議を求めて、まず私から先陣を切らせていただきたいと思います。
 今回の改正内容、どれも重要なのでありますけれども、私は、特に二点、評価をしたいと思っております。
 一つは、法定刑の下限を引き上げたという点であります。
 これまで強姦罪は、強盗罪と比較をされて、財物を奪う強盗と性的自由を奪う強姦とで、なぜ強姦の方が刑が軽いのか、こういう批判をされてきました。また、法定刑の下限が懲役三年以上であることから、検察官の求刑も低目になるということもあり、執行猶予つきの判決が出やすいという現実もあったことは事実であります。
 性犯罪の被害に遭いますと、被害に遭われた方は、学校や会社に行けなくなってやめてしまったり、異性と交際ができなくなって結婚を諦めてしまったり、その被害の結果は極めて甚大であります。
 それなのに、被告人が裁判を経て執行猶予つきの判決を受けるということになれば、被害に遭われた方からすれば、言ってみれば無罪放免になったような印象を受けますので、それが司法に対する不信感になったり、被害の回復を阻害するという面があったわけであります。
 もう一つは、親告罪でなくしたという点であります。
 被害に遭われた方が警察に相談に行くということはその時点で相当な勇気を振り絞っているわけでありまして、警察に行きさえすれば、後は捜査をして、裁判になってくれるというふうに信じておられるわけであります。にもかかわらず、親告罪だということで、改めて、これを事件にするかどうかはあなたが決めてくれというようなことを言われるのは、被害者の方にとっては苦痛以外の何物でもないし、せっかく勇気を出して警察に行ったのに途中で心が折れてしまったり、悪い場合には、加害者からの逆恨みを恐れて告訴を断念するという事態もないわけではないわけであります。
 また、事件が進展する中で、告訴を取り下げるならば被害弁償を支払うという持ちかけを受けて、泣く泣く告訴を取り下げて示談金を受け取ることにならざるを得ないケースというものもあります。
 本来であれば、罪を犯した者は刑事責任を負って、さらに損害賠償という民事上の責任を負うのが当然であるはずなのに、親告罪であったがために刑事か民事か二者択一を迫られる、こういった被害に遭われた方もこれまで多かったわけです。
 こういったこと自体、言ってみれば二次被害という状況でありますし、その後の被害の回復をしていただくのに多大な悪い影響を及ぼした現実がありました。
 今回、このこと以外にも大きな前進となる本改正をすることには、性犯罪の被害に遭われた多くの皆さんが声を上げてくださったことが推進力となってきたことは事実であります。
 これは、与野党問わず、被害に遭われた皆さんの声を聞いたと認識をしておりますけれども、私ども自由民主党においても、私は事務局長をさせていただいておりますが、司法制度調査会において、性犯罪の被害に遭われた方、これを支援されている方、法改正の運動に取り組んでおられる方、また熱意を持ってこの問題に取り組んでいる弁護士さん、こういった多くの皆様から幾度となくヒアリングをさせていただいて、その声を聞かせていただきました。
 被害を声に出して人々に訴えるというのはとてもつらく苦しいことであることは、想像にかたくないわけであります。性犯罪の被害に遭われた皆さんが長い年月をかけて訴えてきた地道な取り組みの成果が今ここでようやく一旦結実しようとしていることに対して心から敬意を表して、また感謝の思いを胸にいたしまして、質疑に入りたいと思います。
 本改正の概要等大枠につきましては、先日の衆議院の本会議において金田法務大臣から丁寧に御答弁をいただいております。本日は、刑事実務にわたる部分、言ってみれば細目的、技術的な事項にわたる部分も多くありますので、政府参考人、主として刑事局長にお答えいただきたいと思っております。
 まず、今回の刑法改正に至る経緯と改正の趣旨を端的に御説明ください。
○林政府参考人 近年、現行法の性犯罪に関する罰則は、必ずしも現在の性犯罪の実態に即したものになっていないという指摘がなされておりました。そこで、性犯罪の実情等に鑑みまして、事案の実態に即した対処をすることができるようにするため、今回の所要の法整備を行うものでございます。
 経緯でございますけれども、今回の改正に当たりましては、まず、平成二十六年十月から、刑事法研究者、法曹三者そして被害者支援団体関係者などから成ります性犯罪の罰則に関する検討会を開催して検討を行いました。その検討結果を踏まえまして平成二十七年十月に法制審議会に諮問を行いまして、平成二十八年九月に法制審議会から答申がなされましたので、この答申を踏まえまして法務省におきまして必要な検討、準備を行い、本法案の提出に至ったものでございます。
○宮崎(政)委員 ありがとうございます。
 それでは、ここから法文の具体的な構成要件等について質問をしてまいりたいと思います。
 まず、改正後の刑法第百七十七条でありますけれども、強姦罪を改め強制性交等罪は、実行行為について、性交、肛門性交または口腔性交をしたと定めておりますけれども、この三つ、性交、肛門性交、口腔性交のそれぞれの定義について御説明をお願いします。
○林政府参考人 まず、性交とは、膣内に陰茎を入れる行為をいいます。肛門性交とは、肛門内に陰茎を入れる行為をいいます。また、口腔性交とは、口腔内に陰茎を入れる行為をいいます。
○宮崎(政)委員 この強制性交等罪の条文、定めた定義は今のような形でありますが、この形態で、女性が加害者となって男性に性交等を強いる場合も含まれているということが明らかになっているのかどうか、御説明をお願いします。
○林政府参考人 本条におきましては、誰の陰茎を誰の膣内、肛門内、口腔内に入れるかについては文言上限定しておりませんので、自己の膣内等に被害者の陰茎を入れる行為を含むと解することができると考えて用いておるところでございます。
 したがいまして、今回の法案における性交、肛門性交または口腔性交とは、相手方の膣内、肛門内もしくは口腔内に自己の陰茎を入れる行為のほかに、自己の膣内、肛門内もしくは口腔内に相手方の陰茎を入れる行為を含むものであると考えております。
○宮崎(政)委員 さまざまな態様にも対応していくような形で今回の法改正がされておりますので、この辺の趣旨は法務当局でも十分周知を図っていただきたいと思っております。
 次に、法定刑の下限の引き上げについて伺いたいと思います。
 強姦罪の法定刑の下限を懲役三年から五年に、被害者が死傷した場合についてはその法定刑の下限を懲役五年から六年にそれぞれ引き上げるという内容になっております。
 まず、その趣旨を御説明ください。
○林政府参考人 強姦罪の法定刑については、例えばその下限が引き上げられました平成十六年の刑法改正に係る国会審議及び公訴時効等が改正されました平成二十二年の刑法等改正に係る国会審議の際にも、衆参両議院における附帯決議におきまして他の罪の法定刑との均衡や被害の重大性を踏まえたさらなる検討が求められているなど、さまざまな指摘がなされてまいりました。
 そして、平成二十六年十月から当省において開催いたしました性犯罪の罰則に関する検討会における検討、あるいはその後の法制審議会における調査審議におきましても、強姦罪の法定刑の下限を引き上げるべきであるという意見が多数を占めたところでございます。
 平成十八年から平成二十七年までの実際の量刑を見ましても、法定刑の下限が懲役五年とされておりますところの強盗罪及び現住建造物等放火罪よりも強姦罪の方が重い量刑がなされる事件の割合というものが高くなっております。
 このように、法定刑の引き上げを求める指摘が多くなされ、現に重い量刑がなされている状況を踏まえますれば、強姦罪の悪質性、重大性に対する現在の社会一般の評価は、少なくとも強盗、現住建造物等放火の悪質性、重大性に対する評価を下回るものではないと考えられ、現時点において強姦罪の法定刑の下限は低きに失して、国民の意識と大きく異なることとなっていると言わざるを得ないわけでございます。
 そこで、強制性交等罪についての法定刑の下限を、強盗罪、現住建造物等放火罪と同様に懲役五年に引き上げることが適当であると考えたものでございます。
 また、その結果的加重犯である強制性交等致死傷罪につきましても、強制性交等罪の法定刑の下限との均衡を図る観点から、懲役六年に引き上げることが適当であると考えたものでございます。
○宮崎(政)委員 冒頭、一番に指摘をさせていただきましたけれども、法定刑の下限を引き上げる、これによって裁判実務のあり方なども影響を受けることは間違いありません。ですから、そういったことを、一つ一つの裁判に対して立法府が注文をつけるというわけではありませんけれども、ぜひ十分に配慮した形での訴訟の運営がなされるべきであるということも指摘したいと思います。
 あわせて、ちょっと刑事局長にお聞きしたいのは、現行法の百七十八条の二、集団強姦罪等につきましては今回の法改正に合わせて廃止をするというような形になっております。その趣旨を御説明ください。
○林政府参考人 現在、集団強姦等の罪の法定刑の下限は四年、同罪に係る強姦等致死傷の罪の法定刑の下限は六年とされております。
 今回の法改正では、強姦罪を改正する強制性交等罪の法定刑の下限を懲役五年に、強姦等致死傷罪を改正する強制性交等致死傷罪の法定刑の下限を六年にそれぞれ引き上げることとしておりまして、集団強姦等の罪及び同罪に係る強姦等致死傷の罪を廃止したといたしましても、集団強姦等の罪については、現在の法定刑より下限が引き上げられることになります。
 同罪に係ります強姦等致死傷の罪につきましては、現在の法定刑の下限と同じこととなるわけでございますが、これにつきましては、前科等のない犯人が被害者に対して最善の慰謝の措置を尽くすなどしたにもかかわらず、酌量減軽をしてもなお、およそ執行猶予を付し得ないことには問題があるとの観点から、法定刑の下限について、酌量減軽をした場合において、執行猶予を付することができる限界である懲役六年を超えるものとすることは相当ではないと考えられます。
 集団による強姦という悪質性については、引き上げられた法定刑の範囲内で量刑上適切に考慮することによって適切な科刑が可能となります。したがいまして、強姦罪及び強姦等致死傷の罪の法定刑の下限を引き上げることに伴い、集団強姦等の罪及び同罪に係る強姦等致死傷の罪については廃止することとしたものでございます。
○宮崎(政)委員 次に、強姦罪の暴行、脅迫要件について伺いたいと思います。
 まず、強姦罪の成立に必要な暴行、脅迫の程度であります。これは判例で確立されておりまして、強盗罪のように相手方の反抗を抑圧する程度のものであることを要せず、反抗を著しく困難ならしめる程度のものであれば足りると解されてきたところでありますけれども、今回の改正後の強制性交等罪についてもこの点については変更がないのか、刑事局長にお尋ねをします。
○林政府参考人 強制性交等罪における「暴行又は脅迫を用いて」との文言は、改正前の強姦罪における「暴行又は脅迫を用いて」との文言と同じ意味であると考えて用いております。
 したがいまして、これまでの強姦罪等における解釈の変更を意図するものではございませんで、暴行、脅迫の程度は、委員御指摘のとおり、相手方の反抗を著しく困難ならしめる程度のものであれば足りると解されるところでございます。
○宮崎(政)委員 それでは、現在の実務において、今御説明のあった強姦罪の成立に必要な暴行、脅迫について具体的にどういった事情を考慮して事実認定をしていくのか、刑事局長に御説明いただきたいと思います。
○林政府参考人 暴行、脅迫が相手方の反抗を著しく困難ならしめる程度のものであるかどうか、これにつきましては、判例等によりまして、被害者の年齢、精神状態、行為の場所、時間等諸般の事情を考慮して、社会通念に従って客観的に判断されなければならないものと解されているところでございます。
○宮崎(政)委員 今概要を御説明いただいたわけでありますが、要はさまざまな事情をあわせ考慮するということですが、被害者の方々のお話を伺っていると、処罰すべきものが処罰できていない、激しい抵抗をしなければ暴行、脅迫が認定されないじゃないか、こういったことから、この暴行、脅迫要件については撤廃をしてほしい、緩和をしてほしいという意見がたくさん寄せられています。
 実は、きょうもこの法務委員会の席に、これまで多大にこの改正に向けて活動されていただいた皆さん、いろいろな団体があるんですけれども、学者の先生、それぞれの団体の皆さんが来ておられます。わけても「刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト」というのを進めておられた四団体の皆さんは、出版物も出したりとかいろいろなことをして御尽力されてこられました。きょう、委員会も傍聴していただいております。皆さんの取り組みに心から敬意を表したい、そして感謝を申し上げたいと思います。
 実は、この暴行、脅迫要件、私も弁護士として二十年仕事をしている中でさまざま事件に出会ったときに、加害者側から、合意があったと思った、こういう弁解とも関連する場合が非常に多いんです。
 例えば、具体的なケースでいいますと、被害者が行きずりの被害に遭ったような場合、加害者が被害者に暴力を振るったり刃物を突きつける、こういうようなことがあれば暴行、脅迫というのは認められやすいわけでありますけれども、では、そこまでいかなかったケースはどうなるのか。人けのない夜道でいきなり声をかけられて腕をつかまれる、普通の女性であれば、驚いて、恐怖で固まってもう声も出ない状況になります。よほど訓練を受けているとか、日ごろから、何かあったときにはきちっと対処しようというイメージトレーニングを重ねているような人でない限りは、逃げたり抵抗したりすることはできないわけです。まさに反抗を著しく困難にされた状態と言えるわけでありまして、被害者の方のこの状況は、例えばフリーズとか解離、こういったように言われる、言ってみれば正常な反応であります。
 しかしながら、これが事件化されていって、例えば事情を聞く段階になったりすると、何で大声を出さなかったのかとか、通りかかった人がいたのに何で助けを求めなかったのかというふうに聞かれることも多くて、それをもって合意があったと言い張る加害者の側もおるわけであります。
 しかし、通りがかりの人に声をかけるといってみても、その人が助けてくれる保証はありませんし、面倒なことに巻き込まれたくないという人もいるでしょう。また、助けを求めたけれどもその人に聞こえなかったという場合には、加害者が今度は激高して、もしかしたら殺されるんじゃないか、こういう恐怖心を被害に遭われている方が抱くのはある意味当然であります。相手は行きずりで強姦をしてくるような人間なのであります。
 さらに、事案によっては、被害に遭われている方が服を脱がされているという場合もあるでしょうから、恥ずかしくて声をかけられない場合もあるでしょう。それをもって、自分から声をかけなかった、助けを求めなかった、だから加害者が合意と思っても仕方がない、こういうようなことになっているのではないか、そんな声も上がっています。
 法務当局の考えを刑事局長に聞きたいと思います。
○林政府参考人 暴行、脅迫の認定が厳し過ぎる、あるいは激しく抵抗しなければ暴行、脅迫があると認定されないといった声、そういった批判の声があることは十分に承知しております。
 その上で、暴行、脅迫の程度につきましては、先ほども申し上げましたが、諸般の事情を考慮して、社会通念に従って客観的に判断されるべきものであると解されるところでございまして、これは、具体的な状況によりますれば、単にそれのみを取り上げて観察すれば反抗を著しく困難ならしめる程度には達していないようなものでありましても、例えば行為の時間、場所等諸般の事情によっては反抗を著しく困難ならしめる程度の暴行、脅迫が認められ得る、こういうふうにされているところでございます。
 したがいまして、真に強姦罪等により処罰されるべき事案について、暴行、脅迫要件のみが障害となって処罰されていないという状況にはないのではないかと認識しているところでございます。
 例えば、被害者が、加害者との人間関係や恐怖感から抵抗できない場合において抵抗していなかった、このことのみをもって暴行、脅迫が認められないというものではなく、こういった場合につきましても、先ほどのような客観的な事情、状況を考慮してその暴行、脅迫というものが認定され得ると考えております。
 反抗を著しく困難ならしめる程度の暴行、脅迫の立証が足りないとして無罪となった事案の中においても、暴行、脅迫の要件のみが認められないということを理由としているものではなくて、そのような場合には、被害者の供述の信用性がその事案において認められなかったものでありますとか、被害者が性交に同意していた可能性が否定できないことを理由として無罪とされているものもあると考えております。
 なお、暴行、脅迫の認定に当たりまして、犯罪被害に直面した被害者が反射行動により抵抗できなくなるような場合があるということ、そういった心理状態を適切に考慮する必要があるということはまことにそのとおりでございまして、それは重要な指摘であろうかと考えております。
 法務・検察におきましても捜査、公判に携わる検察官に対して経験年に応じた各種の研修をしておるわけでございますけれども、そういった中におきましても、こういった被害者の心理状態といったものについての理解について、今後も引き続きその研修の充実というものを図ってまいりたいと考えております。
○宮崎(政)委員 今、刑事局長が答弁された点、それでも多くの方々から、必死に抵抗しなかったら暴行、脅迫要件が認められないんだという厳しい御指摘があることは事実なんです。どうかこれは重く受けとめていただいて、さまざま研修等の言葉も今ありましたけれども、受け手がどう受けとめるか、事件に遭われて被害を申し出ている人がどう受けとめるかということも重要な観点でありますので、ぜひこの辺の周知はしっかり図っていただきたいと思います。
 同様の趣旨で、最高裁判所にもお尋ねをいたします。裁判所においても、性犯罪に直面した被害者の心理であるとか、フリーズであるとか解離といった反応が生じることなど、事情を十分に考慮した上で暴行、脅迫要件の認定をしていくことが絶対に必要であると考えておりますが、最高裁のこの点についての見解を伺います。
○平木最高裁判所長官代理者 どのような場合に強姦罪の暴行、脅迫を認定するかは、個別の事件におきまして各裁判体が判断すべき事項ではございますが、一般論として申し上げますと、昭和三十三年六月六日の最高裁判決は、「当裁判所判例は、刑法百七十七条にいわゆる暴行脅迫は相手方の抗拒を著しく困難ならしめる程度のものであることを以つて足りると判示している。しかし、その暴行または脅迫の行為は、単にそれのみを取り上げて観察すれば右の程度には達しないと認められるようなものであつても、その相手方の年令、性別、素行、経歴等やそれがなされた時間、場所の四囲の環境その他具体的事情の如何と相伴つて、相手方の抗拒を不能にし又はこれを著しく困難ならしめるものであれば足りると解すべきである。」と判示しておりまして、各裁判体は、このような判例の趣旨も踏まえながら暴行、脅迫の存否を適切に判断しているものと承知しておるところでございます。
○宮崎(政)委員 最終的に裁きを下す裁判所においても、今回の法改正の、冒頭刑事局長が説明してくれた経緯、そして今回のこの国会審議の中で出ている、被害に遭われた方、またこれを支援している方、さまざまな方々からこの暴行、脅迫要件については意見が出ていることが研修等で十分に伝わるように配慮していただきたい、そして適正な裁判が進められるようにお願いをするものであります。
 次に、強盗・強制性交等罪について伺いたいと思います。
 今回の法案では、強盗が強姦をした場合に重く処罰する規定である強盗強姦罪、刑法の二百四十一条でありますけれども、この構成要件を見直して強盗・強制性交等罪に改めるというふうになっております。
 まず、この趣旨を簡潔に御説明ください。
○林政府参考人 現行法上、強盗犯人が強姦をした場合には強盗強姦罪が成立いたします。他方で、強盗と強姦の双方を行った場合でありましても、例えば強姦行為の後に強盗の犯意を生じて強盗をした場合には、強盗強姦罪は成立せず、強姦罪と強盗罪の併合罪が成立するにとどまりまして、法定刑は強盗強姦罪と大きく異なる結果となっております。
 これは、同じ機会にそれぞれ単独でなされてもなお悪質な行為でありますところの強盗行為と強姦行為すなわち改正後は強制性交等の行為の双方を行うことの悪質性、重大性に鑑みますと、その先後の関係の違いをもって科すことのできる刑に大きな差異があることは合理的に説明が困難でございます。
 そこで、今回、法改正によりまして、同一の機会に強盗行為と強制性交等の行為とが行われた場合につきまして、その行為の先後関係を問わず、強盗・強制性交等罪といたしまして、現行の強盗強姦罪と同様の法定刑で処罰することとしたものでございます。
○宮崎(政)委員 確認ですけれども、この強盗・強制性交等罪というのは、強盗の罪と強制性交等の罪に同時に着手した場合であるとか、この先後が明らかでない場合も成立するという理解でよろしいでしょうか。
○林政府参考人 強盗・強制性交等罪は、強盗行為と強制性交等の行為との先後関係等にかかわりなく、同一の機会に強盗行為と強制性交等の行為とを行った場合を処罰しようとするものでございます。
 したがいまして、この強盗・強制性交等の罪は、強盗の罪また強制性交等の罪の両方の罪に同時に着手した場合であっても、またどちらが先に行われたか不明な場合におきましても、同一の機会に行われたことが認められる場合には成立をいたします。
○宮崎(政)委員 改正後の二百四十一条の一項の条文では、強盗・強制性交等罪は、強盗の罪または強制性交等の罪の一方を犯した者が他の一方をも犯した場合に成立するという、「をも」という表現を使っているわけでありますが、今御説明があった点がこの「をも」という表現の中に入っているという理解でよろしいかどうか、御説明をお願いします。
○林政府参考人 今回の法改正により、強盗強姦に関する解釈を変更しようとするものではありません。したがいまして、現行法の強盗強姦罪について、判例上、強姦は強盗の機会に行われれば足りるものと解されていることを踏まえまして、改正後の二百四十一条第一項におきましては、強盗の罪と強制性交等の罪が、その先後関係を問うことなく、同一の機会に行われた場合にはこの強盗・強制性交等罪が成立するものと考えております。
○宮崎(政)委員 ありがとうございました。
 あともう一点ですけれども、この二百四十一条の一項の文言なんですが、強盗罪ではなくて強盗の罪、強制性交等罪ではなくて強制性交等の罪という条文上の表現が用いられております。この意義というか射程範囲について御説明をお願いします。
○林政府参考人 今回の法改正により、現行の強盗強姦に関する解釈というものを変更しようとするものではございません。したがいまして、改正後の二百四十一条一項におけます強盗の罪といいますのは、現行法の強盗強姦罪における強盗と同様に、二百三十六条の狭義の強盗罪だけではなく、強盗の罪として論じられる二百三十八条の事後強盗罪や、二百三十九条の昏酔強盗罪が含まれます。また、改正後の二百四十一条一項におけます強制性交等の罪につきましても、百七十七条の狭義の強制性交等罪だけではなく、強制性交等の罪の例によるとされていますところの百七十八条の準強制性交等罪が含まれます。
 もっとも、十八歳未満の被害者を監護する立場にある者がそのことによる影響力に乗じて性交等に及ぶ場合において、その性交等と同一の機会に暴行、脅迫を用いるなどして財物奪取にまで及ぶという事態は実際上想定しがたいことから、改正後の二百四十一条第一項における強制性交等の罪からは監護者性交等罪は除いてございます。
○宮崎(政)委員 あともう一点、この強盗・強制性交等罪ですけれども、現行の強盗強姦罪と同様に、不幸にして被害者が死亡された場合に、さらに重い法定刑を置いています。
 もっとも、現行の二百四十一条というのは結果的加重犯で、殺意がある場合には成立しない、殺意がある場合には強盗殺人と強盗強姦が成立をするというふうに処理されるわけでありますけれども、この点について、改正後の二百四十一条三項においては殺意がある場合を含むのか、条文上の表現では人を死亡させた者はというふうになっておりますので、この点を明確に御説明ください。
○林政府参考人 改正後の刑法二百四十一条三項の罪には、強盗・強制性交等罪に当たる行為によりまして殺意なく人を死亡させた者だけではなく、殺意を持って人を死亡させた者もその対象に含むものとしております。
 条文上も殺意がある場合を含むことを明らかにするために、一般に、いわゆる結果的加重犯のみをその対象とし、殺意がある場合を含まないものと解されている現行法の強盗強姦致死罪のように、よって死亡させたとの用語は用いずに、第一項の罪に当たる行為により人を死亡させたときと規定しているところでございます。
○宮崎(政)委員 ありがとうございました。
 次に、非親告罪化の件について御質問させていただきます。
 今回、強姦罪、準強姦罪、強制わいせつ罪及び準強制わいせつ罪を親告罪とする規定を削除して非親告罪とするとともに、わいせつ目的、結婚目的の略取誘拐罪なども非親告罪とする内容としております。
 これまで性犯罪が親告罪とされてきた趣旨は、一般に、公訴を提起することによって被害者のプライバシーなどが害されるおそれがあるので、被害者の意思を尊重して、被害者を保護するためであるというふうに指摘がされております。ただ、冒頭申し上げたとおり、親告罪であるということが、被害に遭われた方に非常に重いもの、不利益と言えるようなものを背負わせている点もあったことも事実であります。
 今回、このような形で非親告罪化することの趣旨について御説明ください。
○林政府参考人 委員御指摘のとおり、現行法上、強姦罪等につきましては親告罪とされておりまして、その趣旨は、公訴を提起することによって被害者のプライバシー等が害されるおそれがあって、被害者の意思を尊重するためである、このように解されてきたところでございます。
 もっとも、近年の性犯罪の実情等に鑑みまして、性犯罪被害者やその支援団体関係者等からのヒアリング等を行ったところ、現在の実情といたしましては、犯罪被害によって肉体的、精神的に多大な被害を負った被害者にとっては、告訴するか否かの選択が迫られているように感じられたり、また、告訴したことにより被告人から報復を受けるのではないかとの不安を持つ場合があるなど、親告罪であることによりかえって被害者に精神的な負担を生じさせていること、このことが少なくない状況に至っていると認められたところでございます。
 そこで、このような実情等に鑑みますと、これを非親告罪化して、親告罪であることにより生じている精神的負担を解消することが相当であると考えられたことから、今回の法改正により非親告罪化することとしたものでございます。
 また、現行法上、わいせつ目的または結婚目的の拐取に係る罪につきましても、強姦罪と同じくいわゆる性犯罪と位置づけられ、親告罪とされております。その趣旨も、一般に、強姦罪と同様に被拐取者のプライバシーの保護のためなどとされております。
 このことからしますと、今回、強姦罪等を非親告罪化しようとする以上、これと同様に、わいせつ目的または結婚目的の拐取に係る罪につきましても非親告罪化するのが相当であると考えたところでございます。
○宮崎(政)委員 私も冒頭指摘させていただきましたとおり、親告罪であるということの意味はプラスにもマイナスにも働く。だから、今後も、もちろん被害に遭われた方の中にはさまざまな御見解の方がおられるので、刑事当局では被害者の方の心情を十分配慮していただきたいというふうに思っております。
 非親告罪化に関連して、法改正の前後での取り扱いについてお尋ねをしたいと思います。
 今回の附則の二条二項では、改正法が施行される前の被害であったとしても、原則として非親告罪化するとしています。まず、これがどういう趣旨であるのかということとあわせて、法改正前のものでも告訴がなくても処罰できるという点で、例えば遡及的に被疑者、被告人に不利益になるという意味で罪刑法定主義に反することはないのかどうか、御説明いただきたいと思います。
○林政府参考人 まず、趣旨でございますけれども、今般の強姦罪等の非親告罪化、これは被害者の精神的負担の軽減のために行うものでございます。こういった趣旨、目的に鑑みますと、被害者の負担を軽減するためには、できる限り広く非親告罪化することが適切であると考えられましたところから、今回の法改正に際して、附則の二条二項により、原則として、改正法施行前の行為についても非親告罪として取り扱うこととしたものでございます。
 そして、改正法施行の時点において将来的に告訴がされる可能性がある事件につきましては、告訴がなされれば、公訴が提起され、有罪判決が出される可能性があるものでありまして、これを非親告罪化したとしましてもその被疑者、被告人の法律上の地位を著しく不安定にするものとは言えないことなどから、改正法施行時に告訴がされる可能性があるものについては、改正法施行前の行為を非親告罪として取り扱いましても、被疑者に不利益な改正法をさかのぼって適用するものではなく、罪刑法定主義等に反するものではないと考えているところでございます。
○宮崎(政)委員 ありがとうございました。
 次に、被害者の方々への配慮に関する点についてお尋ねをしたいと思います。
 被害に遭った方の中には、被害に遭った直後、警察に行くこともできなくて、医療機関にだけ何とかやっと行くことができたという例も少なくないと思います。こういった場合に、例えば体液であるとか髪の毛とか、そういう証拠になるもの、証拠の保全について、これをしっかりやっていただくということがその後の適正な処罰のためには重要だと思います。
 まず、現状、こういったことについてどういった取り組みがされているのか、警察当局に伺いたいと思います。
○高木政府参考人 警察庁におきましては、政府の犯罪被害者等基本計画に基づきまして、医療機関における性犯罪証拠採取キットの試行整備を実施しているところでございます。
 これは、協力の得られる医療機関等に対して性犯罪証拠採取キットをあらかじめ整備し、警察への届け出を行うかどうか迷っておられる性犯罪の被害者が当該医療機関を受診した場合に、医師等が被害者の同意を得た上で身体等に付着した証拠資料の採取等を行い、証拠資料の滅失や被害の潜在化の防止を図るというものでございまして、現在、十四都道県に所在する二十一の医療機関等で試行しているところでございます。
○宮崎(政)委員 この第三次犯罪被害者等基本計画の推進は非常に重要であります。これまで取り組みが十分でなかったと言わざるを得ない面もたくさんあります。ワンストップ支援センターみたいなものをしっかりと政府挙げて支援していくことは重要でありますので、ぜひ、今の答弁に納得しているというわけではないんですけれども、引き続き、この計画に従って速やかに対処を進めてもらいたい。これは各省庁にまたがる点でありますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 同じ文脈で、法務当局はどういう取り組みをしているのか、刑事局長に伺います。
○林政府参考人 法務当局といたしましては、やはり被害者の方々との関係で捜査、公判というものを担っていくわけでございますので、こういった場合につきましては、まずは被害者とコミュニケーションを非常に密にいたしまして、被害者の心情に配慮した捜査、公判に努めていく必要があると考えております。そういった場合には、関係者の名誉、プライバシー等の保護等については特に配慮しながら、捜査、公判の遂行に努めていく必要があると考えております。
○宮崎(政)委員 また、被害に遭われた方々から、被害を届け出た事件が結果不起訴になったけれども、十分説明を受けたとは思えない、到底納得できないという声も聞かれます。今回、刑法の改正を求める活動をされているさまざまな団体からもこういった趣旨の声を聞きました。
 こういった指摘に対して、刑事局長の御認識を聞きたいと思います。
○林政府参考人 今委員御指摘のような声につきましては、数年前からもこういった問題提起がなされておりまして、検察におきましても、こういった性犯罪の被害者の捜査、公判に当たるに当たっては、犯罪被害者の希望に応じて、関係者の名誉、プライバシー等の保護の要請に配慮しつつも、不起訴処分の内容でありますとか理由を丁寧に説明して、被害者の方の気持ちにできるだけ応えられるよう努める、こういった取り組みをこれまでもしてきたところでございます。検察の現場に対してのその旨の中央からの通知等も発出しているところでございます。
 そういった中でも、不起訴になった理由を十分に説明してもらえなかった、納得できなかったという点をやはりまだ聞くことがございますけれども、納得できなかったかどうかというところはともかくといたしましても、理由を十分に説明していないという声につきましては、やはりこれまでの取り組みにつきましては、さらにこれを、十分にこういった丁寧な説明、被害者の心情に配慮した捜査、公判というものに対しての取り組みをさらに進めていきたいと考えております。
○宮崎(政)委員 これは先ほど質問したほかの質問とも共通するんですけれども、やはりこの犯罪の性質を踏まえてみて、よくよく、その被害に遭われた方、関係者の方の声を本当に丁寧に深く聞いてもらうことが必要な犯罪類型だと思います。そのことについて、今答弁をいただきましたけれども、さらにその趣旨を各所に徹底していただく必要があると私は思います。それによってこういった十分じゃないという声に応えた形での今回の法改正ということになると思いますので、ぜひ特段の取り組みを求めるものであります。
 裁判所にもお伺いしたいと思います。
 被害に遭われた方からは、公判段階でもプライバシーの保護だとか被害者への配慮が不十分だという声はお聞きしております。
 今、例えば現行の刑訴法でも、二百九十条の二で被害者特定事項の秘匿の決定をすることができますね。裁判で秘匿決定、これは、氏名とか住所とか、被害者を特定する可能性のある事項について公判の手続において明らかにしないということでありますけれども、裁判の場で被害者の氏名を読み上げないとなっているのに、裁判官や弁護人などが被害者の名前を読み上げる例があるということは巷間聞いているところであります。
 また、訴訟の中では証人尋問ということが行われるわけでありますけれども、この証人尋問で、事件そのものと関係がない、被害に遭われた方の過去の性体験であるとか職業について質問してくるというようなことで、被害に遭われた方からすれば言ってみれば二次被害に遭っているような状況であったり、偏見に基づいた取り扱いがいまだにされるんだ、こういう声が上がっていることは事実です。
 こういった指摘があることに対して、最高裁判所の認識を伺います。
○平木最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましても、公判段階における被害者への配慮は重要であると認識しております。被害者特定事項の秘匿決定がなされた事案におきまして、被害者の氏名や住居が法廷で読み上げられるというようなことはあってはならないことであると認識しております。
 また、証人尋問について申し上げますと、みだりに証人の名誉を害する事項には及んではならないとされておりますので、このような規定に基づいて適切に訴訟指揮をすることが重要であると認識しております。
 裁判所といたしましては、被害者に対する配慮につきまして、引き続き、法の趣旨にのっとって適切な運用に努めてまいりたいと考えております。
○宮崎(政)委員 刑事裁判というのは峻厳なものであるべきだと私は思っています。人が人を裁く、その場面で訴訟関係者が間違いを起こしてはやはりいけないんだと思うんです。もちろん、人間ですから間違いはあるというのは当然ですけれども、やはり刑事裁判の場でこういう間違いが起きてはいけないと私は思います。それは刑事裁判だからです。
 だから、どうか、このようなことが二度と起きないように、ぜひ最高裁の方から各地の裁判所に、今回の法改正に当たってそういった声が上げられて、国会の議論の中で指摘があったということを伝えていただきたいと思いますし、そういったことをしていただくことが、刑法を改正しようといって苦しい中からも今日まで取り組んでくださった多くの関係者の皆様の御労苦に応えることだと思います。
 次に、裁判における氏名の秘匿ではなくて、起訴状の段階でそもそも被害者の名前は書かない、この取り扱いについてお聞きをしたいと思います。
 性犯罪の被害に遭われた方の中には、当然のこととも言えますけれども、起訴状では被害に遭った自分の名前は秘匿してほしい、被告人、犯人に自分の名前は知られたくないと思うのが普通でしょう。
 しかしながら、昨年六月に、強制わいせつ致傷の事案で、起訴状に被害者の氏名を書かずに起訴された事例について、公訴事実が、できる限り罪となるべき事実を特定したものではないとして、刑訴法二百五十六条三項ですけれども、法令違反になったという福岡高裁宮崎支部の判決がありました。
 裁判ですので、被告人側の防御権の問題もあるし、事案によってさまざまだとは思いますけれども、昨年五月に刑事訴訟法を改正する法律が成立しましたけれども、その附則の九条三項では、起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置については、この刑訴法の改正法成立後検討を行うということも定められております。こういったことが累次の法改正でも今日に至るまでされてきたことも事実であります。
 まず、刑事局長に、昨年の刑訴法改正後の起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置の検討状況がどうなっているのか、御説明いただきたいと思います。
○林政府参考人 委員御指摘の改正刑事訴訟法附則九条三項によります政府の検討につきましては、現在、刑事手続に関する協議会というものを開催しております。これは、最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会そして警察庁、こういった構成によりますものでございます。この刑事手続に関する協議会におきまして、この起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置等の事項につきましても協議、意見交換を行っているところでございます。
○宮崎(政)委員 この検討は、多角的な検討が必要であることはよくわかります。ただ、これまでも、被害に遭われた方、刑法の改正を求める運動を進めてこられた方、さまざまな立場の方からの声が多数上がっておりますので、ぜひ慎重かつ速やかな検討をしてもらいたいと私は思っております。
 当然、この問題の先にあるのは、では判決書をどうするんだという問題もあるわけでありまして、言ってみれば、先ほど申し上げたとおり、人が人を裁くという刑事裁判の峻厳さと、そして、被害に遭われた方が被害から立ち直っていって社会生活を営んでいただけるようにするための一助として、ここにかかわる司法、法曹の関係者だけではなくて、全ての国民がここに真摯な目を向けて、また温かい取り組みをしてこの困難な課題の解決に向けて取り組んでいかないといけないというふうに思っております。
 今回、明治四十年の刑法制定以来百十年たって、性犯罪に関する規定の改正がされるわけでございます。どうか、こういった真摯な取り組みを、この国会の審議、そして改正法を成立させていただいた後の全ての関係者の取り組みに反映されることをお願い申し上げまして、質疑を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○鈴木委員長 次に、今野智博君。
○今野委員 自由民主党の今野智博です。
 本日も法務委員会での質問の機会をいただきましたことを、心から感謝、御礼申し上げます。
 既に、主な論点に関しまして、宮崎委員の方から大分詳しく、また多くの質問がされております。私は、先ほどの質疑に関連した範囲内で、少し違った角度から質問をさせていただきたいと思います。
 この刑法改正、強姦罪等の改正が主な改正となりますけれども、この間、多くの被害者団体、各種団体の皆様から、私のところにも足しげく足を運んでいただき、さまざまな点について御指摘をいただきました。本当に示唆に富む内容でありまして、今回の改正に多くの部分は反映されておりますけれども、まだ残念ながら反映されていない意見というものも数多くございます。
 そのような被害者団体、各種団体の皆様からのさまざまな声をいただいて、私としては、きょうはそれを質問の中にできる限り反映させていければというふうに思っております。
 まず最初に、今回の改正、強姦罪の百七十七条、以前の条文でありますと、「暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、」というふうな規定が置かれております。それを今回の改正においては「十三歳以上の者に対し、」ということで、まず行為の類型を広げるに当たって客体を女子から者ということで、先ほどの質疑にもありましたとおり、男性にも被害があり得るということを明確にしたということでございました。
 私がそれに関連してお聞きしたいのは、今、我が国においても、いわゆる性的マイノリティーの方々、LGBTと言われるような方々は多数おられます。そうした方々が例えば性転換手術によって人工的な膣あるいは陰茎を具有するようになった場合、今回の改正による強制性交等罪の客体あるいは主体となり得るのかどうか。まず、これについて御答弁をお願いいたします。
○林政府参考人 強制性交等罪におきます性交とは、膣内に陰茎を入れる行為をいいます。ここでいう陰茎、膣は、基本的には医学的な陰茎、膣を指すものと考えております。
 もっとも、強制性交等罪の保護法益が性的自由また性的自己決定権であることや、強制性交等罪において性交等を重く処罰する趣旨を踏まえますと、個別の事案によりますけれども、性別適合手術により形成された陰茎または膣でありましても、生来の陰茎または膣と実質的に変わりがないということ、そういった認定ができる場合があり得ると考えております。具体的には、形状が生来の陰茎または膣に近似しているかどうか、あるいは陰茎または膣としての実質をどの程度有しているかなどの要素を勘案して判断されることになると考えられます。
 したがいまして、性別適合手術によって人工的に形成された陰茎や膣が生来の陰茎または膣と実質的に変わりがないと言うことができる場合には、当該手術によりそのような陰茎や膣を有するようになった方々、こういった方々は強制性交等罪の客体または主体になり得ると考えております。
○今野委員 貴重な御答弁をいただきました。
 ただ、残念ながら、我が国においてこうした法改正をしてそれを広く周知していくということがもちろん必要ではありますけれども、まだまだ性犯罪に関しては被害の潜在化というところが拭い去れないわけであります。もちろん、さまざまな事情があってそうした状況が生まれているということは私も承知しておりますけれども、その被害の潜在化がまた新たな被害を生んでいく。性的な犯罪者に関しては常習性が薬物事案並みにあるのではないかというような話もされておりますけれども、そうした常習的な犯罪者によって新たな性被害者が生まれていく、それを食いとめるためにも、潜在化を防止して、処罰をきちっと適正に与えていく、そうした体制が必要であるというふうに私は思っております。
 今回の改正によって男性も被害者、客体となる、そしてまたLGBTの方々も被害の主体、客体としてみなされる。ただ、そういう人たちに関しての被害に遭った場合の相談窓口などは、恐らく今までは女性を中心とした窓口の支援体制がとられてきたのではないかなと思います。
 今回の改正に当たって、あるいは以前からもそうした事態があると思いますけれども、相談窓口などの支援体制はどのようになっているのか、教えていただけますでしょうか。
○高木政府参考人 警察におきましては、各都道府県警察にそれぞれ性犯罪専門の相談窓口等を設けているところでございまして、御指摘のありました新たな対象の方々につきましても、そういったところで適切に対応してまいりたいと考えております。
○今野委員 ぜひ、人員の配置も含めて、より細やかな配慮ができるような相談体制をとっていただきたいというふうに思います。
 それで、先ほど宮崎委員の質疑の中にも出ておりました犯罪の被害の潜在化というところにも絡むんですけれども、被害者が被害に遭った場合に当然警察にまず相談に行く。今回、親告罪を非親告罪としたということは一つ前進だと思いますけれども、先ほど刑事局長の答弁の中にも、被害に遭われた方の名誉、プライバシー等の保護に十分配慮した捜査、公判の進め方ということが出ておりました。
 まずは、被害に遭われた方からすれば、その被害を外部に知られたくない、あるいは犯罪者から逆恨みされるのが恐ろしいというようなことも被害申告をためらわせる要因ではもちろんありますけれども、私は、それだけではなくて、捜査、公判ということを踏まえた場合、どうしても被害者から詳細な供述を得なければいけない、それがやはり我が国の捜査の基本であると思います。ですから、その段階で、物すごくつらい記憶、経験を繰り返し繰り返し捜査側に供述しなければいけない、当時の記憶をまた呼び起こさなければいけない、それはかなり心理的にも負担になるだろうと容易に想像されるわけであります。
 その点に関して、先ほどの被害の潜在化を防止するという観点からしても、いかにしてこれを軽減できるか。とりわけ、年少者の方々にとってはそうしたものを繰り返し繰り返し供述するというのは一般成人から比べてもかなり負担になるだろうと思います。そうした負担をいかに捜査機関の側で軽減できるのか。今までの対策も含めて、あるいはこれからどのような負担軽減策をとっていくのかについて、少し教えていただければと思います。
○高木政府参考人 御指摘にもありましたように、性犯罪事件捜査に当たりましては、二次的被害をできるだけ生じさせないよう心がけるとともに、捜査に伴って発生する負担をできる限り小さくするよう心がけるといったことが非常に重要であるというふうに認識しております。
 こうした中、特に児童の性犯罪被害の場合につきましては、警察、検察といった捜査機関のほか、児童相談所においても聴取を行うといったことがあるため、警察庁におきましては平成二十七年十月に検察及び児童相談所との連携強化について通達を発出したところでございまして、具体的には、警察におきましては、児童を被害者等とする事案を認知した際には、検察、児童相談所との早期の情報共有を行った上で、対応方針を相互に検討いたしまして、例えば代表者による聴取を行うなどの取り組みを通じまして、児童の負担軽減と供述の信用性の担保の双方に資する形の事情聴取を実施するよう努めているところでございます。
○今野委員 ワンストップ支援体制という話も出ておりましたけれども、そうした負担をいかにこれから軽減していけるか。そうした地道な捜査機関の運用、取り組みが、被害の潜在化を防止する上では大きな要素になってくるんだろうというふうに思います。
 最後、ちょっと時間がなくなってきたので、今回新たに新設される監護者等の規定。監護者が影響力に乗じてわいせつ行為をすることを防止するということで新たな規定が設けられたところでございます。
 私は、監護者の定義とか意義とかは恐らくこの後に吉田先生が詳しくやっていただけると思うんですけれども、一つちょっと気になっているのが、監護者ではない人がただ立場上被害者となる方に影響力を行使できる事例というのは、この社会の中で数多く考えられる話だと思います。例えば、何かスポーツの指導者ですとかあるいは宗教の教祖とか、そういった方々が対象者に対してかなり強い影響力を行使できる、その影響力があるがために被害者が抵抗できないということも当然想定されるわけでありまして、今回、主体に対して監護者等といった限定を設けたがために、監護者に当たらない人たちが影響力に乗じてわいせつ行為等をした場合に、不当にその処罰のすき間、間隙が生まれてしまっているのではないかということを私は何となく懸念しております。
 そこに関して、間隙が生じているのか、いないのかというところを含めて御答弁をいただければと思います。
○林政府参考人 委員御指摘のとおり、例えばスポーツのコーチなど、監護者ではないということを前提として、その監護者でないという者が十八歳未満の者に対して実際有している影響力に乗じて例えばわいせつな行為をした場合でありましても、今回の監護者わいせつ罪等には該当しないわけでございます。
 もっとも、現行法におきましても、直接であると間接であるとを問わず、十八歳未満の児童に対しまして事実上の影響力を及ぼして児童に淫行させた場合、これについては法定刑が懲役十年以下の児童福祉法違反というものが成立するわけでございます。また、被害者が、抗拒不能すなわち心神喪失以外の理由で、社会一般の常識に照らして、具体的な事情のもとで、物理的、身体的あるいは心理的、精神的に抵抗できないか、または抵抗することが著しく困難な状態にある、こういったことの状況に乗じて性的な行為に及んだ場合には、準強制わいせつ罪や準強制性交等罪が成立することになります。
 したがいまして、そのような児童福祉法違反でありますとか準強制わいせつ罪、準強制性交等罪において処罰されるということはあるわけでございまして、実際に、裁判例といたしましても、高校のソフトボール部の顧問兼監督が抵抗しない女子部員に対して脱衣を命じて行ったわいせつな行為、こういったものについては、心理的に抵抗することが著しく困難で抗拒不能の状態で行われたとして、準強制わいせつ罪が認められた事案もあるところでございます。
○今野委員 現行の条文においてもそうした対応が可能だということで御答弁をいただきました。ぜひ、不当に処罰の間隙が生じることがないように、適切にこれを運用していただきたいと思います。
 社会は今、目まぐるしく変わっておりまして、特にこうした性犯罪の関係におきましても、法改正がなかなかその実態に追いついていかない。私はこれは不断の見直しが恐らく必要な分野であろうというふうに思っております。
 今回の改正を受けて、まずは捜査当局、捜査機関においてその趣旨をしっかり周知徹底して、本当に被害者の気持ちに寄り添いながら、被害の潜在化を防いで、犯罪者に対して的確に処罰していくという体制を運用の中でしっかり心がけていただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
 本日はありがとうございました。
○鈴木委員長 次に、吉田宣弘君。
○吉田(宣)委員 おはようございます。公明党の吉田宣弘でございます。
 本日も質問の機会を賜りましたこと、心から感謝を申し上げます。
 今般の刑法の一部を改正する法律案について、これは百十年ぶりのいわゆる性犯罪の規定の改正であるというふうにお聞きをしております。
 性犯罪の被害者の方から、被害者にも責任があるんじゃないかというふうな社会的風潮に対する懸念の声に触れさせていただきました。私は、性犯罪というものは一〇〇%加害者が悪いんだ、被害者には全く責任がないんだ、そういった社会的理解に向けた大切な第一歩であろうと、今般の改正の意義を重く受けとめております。
 この質問に臨ませていただくに当たりまして、被害者団体の皆様に数多くの御示唆を賜りましたこと、深く感謝と敬意を申し上げて、質問に入らせていただきたいと思います。
 まず、強制性交等罪について御質問いたします。先ほどの宮崎先生の質問にもございましたけれども、大切な点なので、私からも確認の意味を込めて質問させていただきます。
 本罪の成立には、従前のとおり、反抗を著しく困難ならしめる程度の暴行、脅迫が必要であると構成要件上明記されている。この点、先日の我が党の國重理事の代表質問にありましたとおり、被害者団体の皆様からは、抵抗できなかったがゆえに暴行、脅迫が認定されなかった、また、被害に直面した際に生じる生理的反応や心理状況が理解されていない、そのような御指摘があったところでございます。
 そこで、この暴行、脅迫の認定に当たっては、被害者が拒否できなかった事実をしっかり前提に踏まえて、なぜ拒否できなかったのか、被害者の心理的状況と行為すなわち加害者の行為との関係において総合的に評価していかなければならないと私は考えておりますけれども、まず、この暴行、脅迫の認定のあり方について刑事局長から所見を伺いたいと思います。
○林政府参考人 強姦罪等における暴行または脅迫につきましては、判例上、反抗を著しく困難ならしめる程度のものであれば足り、そうした程度のものであるかどうかにつきましては、被害者の年齢、精神状態、行為の場所、時間等諸般の事情を考慮して判断されるべきものと解されております。具体的な状況によっては、単にそれのみを取り上げた場合、そして観察した場合には反抗を著しく困難ならしめる程度には達しないと認められるものでありましても、行為の時間、場所、被害者の精神状態、年齢等によりましては反抗を著しく困難ならしめる程度の暴行、脅迫が認められ得ると考えているところでございます。
○吉田(宣)委員 暴行、脅迫の形態はさまざまあろうかと思うんですね。暴行というと有形力の行使、脅迫というと何か相手方を威圧するような言動ということになるのかもしれませんけれども、例えば、被害者の立場に立ってみれば、さまざまな状況があるかもしれませんけれども、加害者からにらみつけられただけでも、これは著しく抵抗できないというふうな状況に陥ることもあろうかと思います。
 そういった被害者心理というものをやはりしっかり、これは調査研究を踏まえていただきたいと思っておりますし、先日の國重理事の代表質問の主張にもありましたけれども、被害者の心理状況などについてしっかり調査研究というものを進めていただきまして、検察官、裁判官の研修にコミットしていっていただきたいことを私からも申し上げておきたいと思います。
 次に、監護者わいせつ罪、監護者性交等罪についてお聞きをしたいと思います。構成要件の中身をお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず、この犯罪のいわゆる創設の背景についてお聞きしたいんですけれども、親子間における性的虐待について現状把握をしている実態や、その処罰の状況について、前提として刑事局長からお聞かせいただきたいと思います。
○林政府参考人 親子間の性的虐待事案の実態を把握しているところについて申し上げますと、例えば、実の親あるいは養親等の監護者による十八歳未満に対する性交等が継続的に繰り返されて、監護者と性交等をすることが日常的なことになってしまっていたり、さらには、監護者の日ごろの言動等によりまして、十八歳未満の者が、監護者と性交等をすることが当たり前のことである、このように思い込んでしまっているといったようなことなど、こういった場合がございまして、事件として日時、場所等が特定できる性交等の場面だけを見ますと、これが暴行、脅迫などを用いることなく、また抗拒不能にも当たらないといった事態であるけれども、実際には十八歳未満の性的自由を侵害して性交等が行われている、こういった事案が存在するものと承知しております。
 こういった事案については、現行法の強姦罪、準強姦罪により対処することが困難な場合が多くて、法定刑がより軽い児童福祉法違反等で処理されている実情が認められると承知しております。
 当局で把握した限りにおきまして言いますれば、平成二十五年、平成二十六年に起訴された事件または第一審の判決宣告があった事件のうちで、親子間における姦淫行為を伴う事案の適用罪名について見ますと、強姦罪または準強姦罪が二十四件、児童福祉法違反が四十三件、条例違反が三件ということでございました。
○吉田(宣)委員 この犯罪の被害者は十八歳未満の未成年ということでございます。先ほど刑事局長からのお話にもあったとおり、自分が被害に遭っていることを精神的な未成熟さゆえに十分把握できないというところについて、これは犯罪なんだということを明らかにすることによって保護していかなければいけないということなんだろうと思っております。
 そのような今の刑事局長のお話にあった処罰の状況の現状も踏まえて今回の監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪を新設するというふうに理解しておりますけれども、これらの罪を新設する趣旨について改めて確認させていただければと思います。
○林政府参考人 先ほど御紹介させていただきましたが、親子間の性的虐待事案については法定刑がより軽い児童福祉法違反等で処理されている実情が認められます。
 しかし、一般に、十八歳未満の者は、精神的に未熟である上に、生活全般にわたって自己を監督し、保護している監護者に精神的にも経済的にも依存しておるわけでございまして、監護者がそのような依存、被依存ないし保護、被保護の関係により生ずる監護者であることの影響力があることに乗じて性交等をすることは、強制性交等罪と同じく、これらの者の性的な自由、性的自己決定権を侵害するものであると考えられます。
 そこで、このような行為類型については強制性交等罪等と同等の悪質性、当罰性が認められると考えたことから、今回新たに犯罪類型として監護者性交等罪及び監護者わいせつ罪を設けて、強制性交等罪などと同様に処罰することとしたものでございます。
○吉田(宣)委員 ありがとうございます。
 その趣旨を踏まえて、これから構成要件の中身を少しお聞きしたいと思います。
 まず、構成要件にある現に監護する者の意義について教えてください。
○林政府参考人 今回の法において監護するというのは、民法八百二十条に親権の効力と定められているところと同様に監督し、保護することをいいまして、十八歳未満の者を現に監護する者とは、十八歳未満の者を現に監督し、保護している者をいいます。
 本罪の現に監護する者に当たるか否かは個別の事案における具体的な事実関係によって判断されることとなりますが、民法における監護の概念に照らしまして、現にその者の生活全般にわたって、衣食住などの経済的な観点でありますとか生活上の指導監督などの精神的な観点、このようなものから依存、被依存ないし保護、被保護の関係が認められ、かつ、その関係に継続性が認められるということが必要であると考えております。
○吉田(宣)委員 今、継続性というキーワードが一つ示されたかと思います。
 次に、同じく構成要件で、今度は、現に監護する者であることによる影響力という文言がございます。この意義について、刑事局長からまたお教えいただければと思います。
○林政府参考人 監護者わいせつ罪及び監護者強制性交等罪における影響力とは、人の意思決定に何らかの作用を及ぼし得る力をいいます。
 その上で、現に監護する者であることによる影響力とは、監護者が被監護者の生活全般にわたりまして、衣食住などの経済的な観点や生活上の指導監督などの精神的観点から、現に被監護者を監督し、保護することにより生ずる影響力のことをいいます。
 したがいまして、本罪の現に監護する者であることによる影響力といいますのは、ある特定の場面における特定の行為に関する意思決定に直接かかわるものに限るものではありませんで、意思決定を行う前提となる人格、倫理観、価値観等の形成過程を含めまして、一般的かつ継続的に被監護者の意思決定に作用を及ぼし得る力に含まれていると考えております。
○吉田(宣)委員 現に監護する者であることの影響力を今お話しいただきましたけれども、構成要件はさらに、影響力があることに乗じてと規定されております。この規定の意義について、加えて御説明いただければと思います。
○林政府参考人 乗じてとの用語でございますが、先ほど答弁いたしました現に監護する者であることによる影響力が一般的に存在し、当該行為時においても、その影響力を及ぼしている状態で性的行為を行うということを意味します。
 すなわち、性的行為を行う特定の場面におきまして、監護者からこの影響力を利用する具体的な行為がない場合でありましても、このような一般的かつ継続的な影響力を及ぼしている状態であれば、被監護者にとっては監護者の存在を離れて自由な意思決定ができない状態であると言えます。
 その上で、被監護者である十八歳未満の者を現に監護し、保護している立場にある者がこのような影響力を及ぼしている状態で当該十八歳未満の者に対して性的行為をすることは、それ自体が被監護者にとって当該影響力により被監護者が監護者の存在を離れて自由な意思決定ができない状態に乗じていることにほかならないと言えます。
 よって、乗じてと言えるためには、性的行為に及ぶ特定の場面において影響力を利用するための具体的な行為は必要なく、影響力を及ぼしている状態で行ったということで足りると考えております。
○吉田(宣)委員 状態で足りるということでございました。
 次に、今野先生の質問とも関連また重複するかもしれませんけれども、私からも改めてお聞かせいただきたいのは、今の刑事局長からの御説明で構成要件というものは改めて明確にはなっていると思っておりますが、その上で、十八歳未満の者に対する影響力を及ぼす立場の者としては、これは監護者だけに限った話ではなくて、学校の先生であったりスポーツのコーチの方であったり、そういった方もいるんだろうと思います。これらの者については処罰の範囲とはなっていないというふうに今の刑事局長からの御説明で私は理解をしておりますけれども、この点、改正が不十分ではないかという御意見もありまして、私自身もそういったお話を直接聞く機会がありました。
 法務省の見解についてお聞かせをいただければと思います。
○林政府参考人 委員御指摘のように、監護者性交等罪の監護者の範囲に限定するものでは処罰対象として不十分ではないか、こういう意見があることは十分に承知しております。
 その上で、今回、例えばスポーツのコーチでありますとかあるいは教師など、こういった者についてはやはり通常は、生徒等との間に生活全般にわたる依存、被依存ないし保護、被保護の関係が認められないことから、現に監護する者に当たらない場合が多いと考えております。
 現に監護する者以外の者につきましては、十八歳未満の者が生活全般にわたって精神的、経済的に依存しているとは言えないわけでございますので、この者に対する影響力も、監護者による影響力の場合とは異なりまして、十八歳未満の者において、その者の言動の当否等を適切に判断することが常に期待しがたい、こういった状態に常にあるとは言えないわけでございます。また、その者の力が及ばない状態で精神的、経済的に自立して生活することが常に困難である、こういった形で類型的に捉えることもちょっと困難な事案であろうかと思います。
 そうしますと、今回の法案での主体の範囲を現に監護する者以外の者にも拡張していく場合には、これは被害者の同意の有無を問わない構成要件であるとすることは相当ではなくて、結局、行為者と被害者との関係、具体的な影響力の内容や程度、被害者の同意の有無や意思決定の過程などを考慮した構成要件をつくらざるを得なくなります。個別の事案ごとに、こういったものについては、さらに行為者の故意というものも必要となってくるわけでございます。
 こういった構成要件を考えた場合に、結局、監護者性交等罪を設けることによって対処しようとする事案については、基本的に個別の具体的な事案ごとに立証が求められるわけでございまして、逆に、類型的な今回のような監護者に限った形の構成要件ではなく、個別にその被害者の同意があるかないかなどといったものを構成要件に組み込んだような構成要件を考えますと、それは立証することがかえって困難になるということも考えられます。そういったことをしますと、本罪を創設していく趣旨というものについても結果的には合致しないことになるのではないかと考えられるわけでございます。
 そこで、今回の改正案では主体を現に監護する者に限定することとしまして、その場合には被害者の同意の有無を問わないというような構成要件として監護者性交等罪を創設する、これをもって、性犯罪の実態というものに即した対応をこのような形で行おうとしたものでございます。
○吉田(宣)委員 構成要件の機能であったり、また立証であったりというふうな技術的な側面というのは今私も半分ぐらいは理解をしたところでありますが、釈然としないところは少し残るかというふうな気がしておりますので、そういった意味においては、今後も法務省においてはしっかり検討は継続をしていっていただきたいなというふうに思います。
 以上、刑事局長に構成要件についての細かな中身について確認をさせていただきましたが、これ以降は法務省以外の省庁にもぜひお話をお聞かせいただければと思っております。
 昨年の十二月に、与党の性犯罪・性暴力被害者支援体制に関するPTという会から「性犯罪・性暴力被害根絶のための十の提言」というものを申し入れさせていただいております。この申し入れは、性犯罪、性暴力は、被害者にとって身体面のみならず精神的にも長期にわたる傷跡を残す重大な犯罪であり、許すことができない、加害者への厳正な対処及び性犯罪、性暴力被害者の支援は極めて重要な課題であるとの認識のもと、申し入れをさせていただいたところでございます。
 以下、この申し入れも踏まえた形で数点質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 監護者わいせつそれから監護者性交等罪の被害者が十八歳未満であるということは明らかでございますけれども、捜査、公判にわたって未成年者の特性に応じた配慮というのはやはり重要になってくるのであろうと思っております。
 この点、先日の國重理事の代表質問に対し、金田大臣から、済みません、少し飛ばすところもありますが、児童相談所、警察及び検察の三者間において協議し、いずれかが代表して聴取を行って被害者の負担を軽減するなど、監護者性交等罪の被害者につきましてもこのような取り組みが一層推進されるというふうな答弁をいただいたところでございます。
 未成年者に最大限配慮した刑事手続の運用というものはぜひお願いをしたいところでございますけれども、本罪の被害者たる未成年は身体的にも精神的にも、また精神的な未成熟さゆえに深い傷を負っているということは想像にかたくないのであろうと私は思っております。
 その意味におきましては、刑事手続における配慮以外にも、刑事手続外の部分について、例えば医療であったり心理的なケアであったり、そういったものが必要になってくるというふうに私は思っております。
 そこで、改めてお聞きしたいのは、刑事手続外のケアについて、警察庁並びに厚生労働省から御説明をいただければと思います。
○西川政府参考人 お答え申し上げます。
 性犯罪は、被害者の尊厳を踏みにじり、身体的のみならず精神的にも極めて重い被害を与えるものでございます。監護者わいせつ罪、監護者性交等罪の被害者は、中長期にわたり心身に有害な影響を受けるおそれが極めて高いことから、そのケアは大変重要であると認識しております。
 昨年四月に策定されました第三次犯罪被害者等基本計画におきまして、未成年の性犯罪被害者を含む犯罪被害者等の精神的、身体的ケアに関する取り組みが盛り込まれております。具体的には、警察における性犯罪被害者に対するカウンセリングの充実、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の配置による学校におけるカウンセリング体制の充実及び関係機関との積極的な連携促進、児童虐待の被害者等の保護に関する警察及び児童相談所等の連携、精神保健福祉センターにおける犯罪被害者等に対する心の健康回復のための支援等の施策が盛り込まれております。
 警察庁といたしましては、第三次基本計画に基づきまして、引き続き、関係機関、団体等と連携し、未成年の性犯罪被害者を含む犯罪被害者等の精神的、身体的ケアに関する取り組みを推進してまいる所存でございます。
 以上であります。
○山本政府参考人 お答え申し上げます。
 議員御指摘のとおり、性犯罪の被害者は心や体に深い傷を負っており、被害を受けた児童に対しては児童相談所などの関係機関において適切な支援が行われるようにすることが重要と考えております。
 このため、性犯罪の被害児童に対しては、児童相談所において、安全確保が必要な場合に児童の一時保護を行っております。また、これに加えまして、被害児童の身体的、心理的なケアを行うため、児童心理司によるカウンセリング、それから専門的な医療的ケアのための医療機関受診に関する援助などの支援を実施しております。
 また、国におきましては、「子ども虐待対応の手引き」において、性的虐待を受けた児童に対するケアについて留意しなければいけない事項について取りまとめ、自治体に周知しております。
 こうした従来からの取り組みに加えまして、昨年五月に成立した改正児童福祉法において、児童心理司等の専門職の配置を新たに法律に位置づけるとともに、昨年四月に策定した児童相談所強化プランに基づき、児童心理司等の専門職を平成三十一年度までの四年間で一千百二十人増員することを目指すなど、児童相談所の体制強化を図っているところでございます。
 今後とも、性犯罪の被害児童への支援を適切に行うとともに、児童相談所の体制や専門性を着実かつ計画的に強化していきたいと考えております。
○吉田(宣)委員 きめ細やかな対応をお願いしたいし、また警察と厚生労働省はやはりしっかり連携をとっていただいて、未成年者に対するケアというものに全力を挙げていただきたいとお願いしたいと思います。
 加えまして、私は、重大な心身にわたる傷を負った被害者というのは、あってはならぬのですけれども、やはり自殺に追い込まれてしまう場合というものがあるのではなかろうかと思っております。私に示唆を与えていただいた被害者団体の方の著作にも、そのような、自殺に駆り立てるような苦しい心の思いを読ませていただきました。私は、被害者の方が思い、苦しみ、最終的にみずからの命を絶ってしまうような事態というのは絶対にあってはならないことだと思いますし、そういった意味においては自殺対策というものが極めて重要であろうと思っております。
 その上で、性暴力被害者支援と自殺防止対策事業との関連をぜひ強化していただきたく、強く要望させていただきたいと思いますけれども、厚生労働省から受けとめをお聞かせいただければと思います。
○中井川政府参考人 お答え申し上げます。
 性犯罪や性暴力の被害を受けた方の中には、自殺を図るおそれのある方もいらっしゃるため、御指摘のとおり、被害者支援と自殺対策との連携は非常に重要であると考えているところでございます。
 政府の自殺対策の指針でございます自殺総合対策大綱の見直しに向けた有識者による検討会の報告書、これは去る五月十五日に報告をいただいたわけでございますが、その報告書におきましても性犯罪、性暴力の被害者支援のさらなる充実が必要とされておりまして、こういった支援を進めていきたいと考えているところでございます。
 具体的には、例えばいわゆるいのちの電話として電話相談を行う民間支援団体による相談支援を引き続き後押ししていくこと、それからもう一つは、現在、福祉、医療などの従事者を対象に、性暴力被害者に対しPTSD等に対応した専門的な心のケアを行えるよう研修を実施しているところでございますので、自殺対策の現場におきましてもこうしたスタッフも活用していく、こういうことによりまして自殺対策の観点からも性暴力被害者に寄り添った相談支援等の充実を図ってまいりたい、かように考えている次第でございます。
○吉田(宣)委員 さまざま進んでいることとお聞かせいただきました。しっかり、ただでさえ苦しい思いをされている方がみずから命を絶つことなきよう、ぜひ寄り添っていただければと思います。
 済みません、話の流れからして、もう一度この法律の側面に戻らせていただきますけれども、私からもちょっとお聞かせいただきたいのは非親告罪化についてでございます。
 親告罪というのはそもそも起訴の適否を被害者の意思に係らしめる制度であると承知しているところでございますが、これを非親告罪化するということは、被害者の意思にかかわらず起訴できるような制度に変えるということであると承知しております。
 しかし、さまざま先ほどから御説明もありましたけれども、非親告罪化する意義も私も十分承知はしておりますけれども、一方で、自分の意思に反して事件が公になってしまうということを恐れる被害者の思いにもやはり寄り添わなければならないと思っております。
 その上で、先日の國重理事の代表質問に対する金田大臣の御答弁にも、事件の処分等に当たって被害者のプライバシーや心情に配慮することが重要であると認識をしていただいているということで、検察当局においてもこれまでも被害者の意思を丁寧に確認するなどしてきたものと承知しておりますが、性犯罪が非親告罪化された後においても今回の改正の趣旨を踏まえて一層の配慮に努めるというふうにお話ししていただいております。
 その上で、今の大臣の御答弁にありました中身から、私はさまざまな配慮がされているということはよくわかるところでございますけれども、では具体的にどういうことが現状なされているのかについて、御説明をいただければと思います。
○林政府参考人 刑事手続における被害者のプライバシーまた名誉を保護するための方策あるいは負担を軽減するためのものについては、現在、制度として幾つかのものがございます。
 公開法廷における被害者特定事項の秘匿、証拠開示の際の証人等の安全についての配慮、あるいは証人尋問の際の付き添い、遮蔽、ビデオリンク方式による証人尋問、こういった制度がございます。また、運用といたしましても、現在、起訴状における記載方法についての配慮、あるいは証拠開示をする場合に一定部分をマスキングして証拠開示をする、こういったようなことを運用としても行っているわけでございます。こういったことを十分に活用することによってその被害者のプライバシー、名誉を保護するということを行っております。
 また、被害者との関係におきましては、当然、捜査、公判に当たりまして被害者と十分にコミュニケーションをとって、被害者の心情に配慮した捜査、公判活動をしなくてはいけないわけでございますが、そういったコミュニケーションをとっている際においてもこういった制度があるということについては十分に御説明しないといけないと考えております。
 そういったことも含めて、これは非親告罪であった性犯罪においてもこれまで当然のように行っていることでございますが、今回の全体が非親告罪化されるということにつきましては、こういった被害者への配慮というものもさらに十分に進めていかなくてはいけないと考えております。
○吉田(宣)委員 本法案の成立を機に、より一層進めていただきたいというふうにお願いしたいと思います。
 次に、性犯罪というものは潜在化しやすい傾向があることは皆様御承知のとおりだと思います。したがって、犯罪被害の暗数も極めて大きいという意味からすれば、実態を把握するのはなかなか難しい状況でもあるんだろうと思いますが、対策を打つためにはこの実態調査というものがやはり前提として極めて重要であると思っております。本法案の成立を踏まえれば、男性や性的マイノリティーの方々も含めた性犯罪、性暴力被害の実態をより正確に把握していかなければいけないというふうに思っております。
 調査の対象や調査項目をこの法律の成立を機にやはり拡充していっていただきたいというふうに思っておりますけれども、政府の側から御所見をいただければと思います。
○大塚政府参考人 お答えいたします。
 実態調査の件でございますが、内閣府では男女間における暴力に関する調査をこれまで三年に一度実施しておりまして、これまでの調査の中では、本人の意に反して異性から無理やりに性交された経験という問いにつきまして、これは女性を対象にこれまでは調査を行ってきたところでございます。
 この調査は新たなものを本年度実施することにしておりまして、その実施に当たりましては、本改正法案の趣旨も踏まえまして、調査対象あるいは調査項目について所要の見直しを行うなど、今後、引き続き、性犯罪、性暴力被害につきましてその実態把握に努めるとともに、被害者支援の充実に取り組んでまいりたい、かように考えております。
○吉田(宣)委員 よろしくお願いしたいと思います。
 最後に、性犯罪のワンストップ相談センターの設置について、お願いという形で質問させていただきたいと思います。
 私は地元が福岡県でございますが、福岡県はワンストップ相談センターが設置されております。特色がありまして、センターがどこにあるのか誰も知らないんです。電話番号だけしか明らかにされていない。ということは何を意味するかというと、徹底的に秘密を守れる体制が組まれている。その上で、そこに電話をすれば、警察にも弁護士にも、また医療機関などにもきちっと連携がとれるような体制をとられております。
 私は、初当選直後の予算委員会の第一分科会において、このワンストップセンター、当時、九州では福岡県と熊本県、それから沖縄にもあったんですけれども、それ以外の県にはありませんでした。そのことを踏まえて、ぜひこのワンストップセンターというのを最低でも各都道府県に一つずつはつくっていただきたいというお願いをさせていただいたところでございますけれども、政府の皆様と各自治体の御努力もいただきまして、九州では各県に一つでき上がっております。
 ただ、先日お話を伺ったところ、まだ全ての県には整っていないということでございますが、このワンストップ支援センターをぜひ各県に一つつくるようにしっかり政府として後押ししていただきたいと思っておりますし、第四次男女共同参画基本計画の中にも平成三十二年を目途に頑張るというふうなことが書いてありますけれども、これはぜひ前倒ししていただいてやっていただきたいと思います。
 あわせまして、暗数が多い性被害の方々、警察に被害を相談できない方に対するケアというものも私は大切だと思っております。そういった点についてもしっかり国として各都道府県をバックアップしていただきたいと思いますけれども、受けとめをお聞かせいただければと思います。
○大塚政府参考人 お答えいたします。
 お尋ねのワンストップ支援センター、第四次の基本計画で平成三十二年度までに各都道府県に最低一カ所という成果目標を掲げました。これは現在三十八都道府県に設置というところまで来たわけでございます。昨年十二月の与党の提言もいただきましたので、できるだけ早期設置を目指していく、加えて、設置したセンターの安定的な運営を図るという意味から、今年度予算に初めて性犯罪、性暴力被害者の支援交付金を計上させていただいたところでございます。
 この交付金によりまして、具体的には、相談員の人件費等の運営経費ですとか、委員御指摘のありました、やむを得ない事情によりまして警察に相談できない被害者の医療費あるいはカウンセリング費用といったものにつきましてもこの交付金の対象といたしまして、都道府県を財政的に支援することとしたところでございます。
 この交付金を活用していただきまして、御指摘のございました全都道府県でできるだけ早期に設置していただき、かつ安定的な運営を図っていただく、加えまして関係機関ともきちっと連携して、今後とも、引き続き、地域のいろいろな実情に応じました被害者支援の充実に取り組んでまいりたいと考えております。
○吉田(宣)委員 終わります。
○鈴木委員長 次に、井出庸生君。
○井出委員 民進党、信州長野の井出庸生です。
 冒頭、先週の金曜日、本会議で性犯罪の刑法改正の審議が始まり、きょうが事実上最初の質疑の日であるにもかかわらず、本日をもって議論が終局し、採決に至るというこの運びについて強く抗議を申し上げます。
 ことしの先月二十九日、性暴力禁止法をつくろうネットワーク、こうしたさまざまな活動をされてきた皆さんからも緊急声明が出ております。緊急声明には、刑法性犯罪の改正よりも共謀罪の審議が与党の合意によって先行されたことについての深い憤り、その上で、刑法の改正を放置することは許されないと。そしてまた同時に、一方で、この改正案には強姦罪の暴行、脅迫要件の緩和等数々の積み残された論点があり、審議に当たっては当事者の声に耳を傾け、改正案に盛り込まれなかった論点も含め十分に議論することを強く求めるとあります。
 私は、ここまで、当事者の方の声を、当委員会に参考人として来ていただいて、御意見をいただきたいということを申し上げてまいりました。しかし、その一方で、残念ながら、昨日の理事会では、私のそのような発言に対して、それではこの法案の早期改正というものを諦めることに等しいというような発言があり、断じてその発言は認められない。
 私は、性犯罪刑法の改正の早期の実現と慎重審議、その両方をこれまで訴えてきたつもりでございます。そこは委員長もおわかりいただいていると思いますが、一言いただきたいと思います。
○鈴木委員長 重く受けとめております。
○井出委員 その上で、質問に入ってまいりたいと思います。
 今回、被害当事者の方々が、与党、野党を超えて一年以上にわたる活動をここまでされてまいりました。そのことについては、先日の本会議でも申し上げましたが、深く感謝を申し上げます。
 大臣にお伺いしますが、当事者の方と直接会話をされて、そうした皆さんの声を直接聞かれた機会はこれまであったかどうか、伺います。
○金田国務大臣 井出委員の御質問にお答えいたします。
 そういう機会を持って、お話を伺ったことはございます。
○井出委員 実際にお話をされたと。私も、少ない回数ではありますが、そうした方々とお話をさせていただきました。
 また、きょう、本を持ってまいりましたが、山本潤さんという方が「十三歳、「私」をなくした私 性暴力と生きることのリアル」という本をこの刑法改正と時を同じくして出版されました。本を読ませていただいて、少しでもそうした当事者の方々に思いをはせる、もし自分や自分の身近でそういうことがあったらどうなのかということに思いをいたして、この本から深く思いを受けとめさせていただいたつもりでございました。
 しかし、この本の終盤に、山本さんは御自身の体験から、性暴力被害に遭われて、普通の感覚を取り戻すにつれてわかってきたことがある、彼らは知らないだけなのだと。彼らというのは私も含めた社会全体のことを指していると思います。彼らは知らないだけなのだ、そのような恐怖を感じる世界があることを想像もできないだけなのだ、被害を受けているときには選択の自由などなく、彼らが後から言うような、逃げられたり誰かに助けを求められたりする状況など存在もしなかった、こうしたことを理解できないだけなのだと。
 本の最後にそのように書かれておりまして、私は思いをしっかりと受けとめながらこの本を読ませていただいたつもりでありますが、それでも、終盤のこの一節には、改めて、私もそうしたところに思いをはせるのに至らないと。再びまた振り出しに戻るような思いをいたしました。
 この法案の審議というものは、そうした当事者の方々に少しでも思いをはせるということが大変重要であると思いますが、その点について大臣の見解を伺いたいと思います。
○金田国務大臣 委員の御指摘につきましては、私もそのように考えております。
○井出委員 質疑を続けてまいります。
 今回、当事者の皆さんが特に強く要望されたものの一つに、強姦の構成要件、暴行、脅迫要件というものがございます。
 私どもも、強姦罪の構成要件を何とか少しでも外形上きちっと基準を引きながらも解釈を広げられないか、また、強姦罪の定義を変えることができなくても、準強姦罪の方の抗拒不能という考え方、そこを判例に合わせて、心理的に反抗不能ないし著しく困難、こうした文面などを用いることによって準強姦罪の構成要件を変えることで、それがひいては強姦罪の解釈も変えていくことができないかとさまざま検討を重ねている最中でありました。こうしたことを形にすることができずに、大変残念でなりません。
 刑事局長でも構いませんが、伺います。私は、強姦と準強姦というものを、本会議では、法定刑は同じである、強姦も準強姦も強姦であるということを申し上げましたが、強姦と準強姦は本質的にどのようなものを罰するのか。私は、本質的な罰となる対象というものは重なっている、同じではないかと思いますが、本質的な処罰対象について伺います。
○林政府参考人 強姦と準強姦は別の構成要件、別の罰条として掲げられておりますけれども、それを処罰する趣旨及びその保護法益というのは同一でございまして、その意味で重なっていると考えております。
○井出委員 保護法益、性的自由といったところを指して、今お話があったかと思います。
 強姦罪の成立の経過を振り返りますと、明治十年、日本帝国刑法草案、これはボアソナードが起草しております。その草案では強姦罪に暴行、脅迫という文字が盛り込まれました。しかし、強姦の強という字に暴行、脅迫という意味合いが含まれるのではないか、そうした議論もありまして、最終的に旧刑法の条文では、明治十三年の制定になりますが、強姦罪に暴行、脅迫の文言がございませんでした。
 その当時の三百四十八条は、十二歳以上の婦女を強姦したる者は懲役に処す、薬酒等を用い人を昏睡せしめまたは精神を錯乱せしめて姦淫したる者は強姦をもって論ずと。
 ボアソナードは、強姦について、承諾を待たず、そうした考え方を持っていたと言われ、強姦罪の制定の最初のときから、強姦罪の本質が任意の同意のない姦淫にあるということは創設当時から共通認識であった。
 今読み上げましたものは、二〇一四年六月に発行されました「性犯罪・被害 性犯罪規定の見直しに向けて」、女性犯罪研究会代表岩井さんという方の書かれている本なのですが、制定当初から、そうした任意の同意のないものを罰するというものがこの法律の出発点であったということを述べております。そのことは現在も変わりがないのか、確認を求めたいと思います。
○林政府参考人 同意がないということ、それによる性交であるということ、このことについて、その本質が変わりがないという点はそのとおりであろうかと思います。
 今のは、ボアソナードの時代に、強姦罪の本質は何なんだろうか、こういうことを検討したときに、今委員が言われたように、被害者の同意のない性交であるということにそこの本質がある、そういうことを言われたんだろうと考えます。
○井出委員 この本には、強姦罪の本質は任意の同意のない姦淫にある、それを処罰することにある、そして、暴行、脅迫というものは被害者の承諾が不存在であることの証拠であると。ですから、これは、逆から考えれば、暴行、脅迫がなければ強姦が成り立たないということではないんだ、あくまでも本質は承諾不存在の行為を罰することであるということに言及しております。
 ただ、さはさりながら、ボアソナード自身も、不承諾の確たるものとして暴行、脅迫というものを強姦の規定に置くことをその後行いました。その一方で、準強姦罪を制定する際にも、ボアソナードは、睡眠などに乗じた姦淫は被害者の承諾がないという点で暴行、脅迫による強姦と何ら変わりのないものであった、そのように発言しているとあります。
 その後、さまざまないきさつを経て現状の刑法の規定になっていくわけですが、もう一度確認をさせていただきます。
 強姦と準強姦、名前は違いますが、対象となる処罰の本質は一緒であり、そしてそれは不同意、不承諾の性的犯罪を取り締まるという解釈が出発点であった。それが法律上明確な線引きということでさまざまな構成要件というものを明示しておりますが、その出発点というものは今も変わらず。そして、今回ここがいじれなかったということは私にとっては最大の痛恨の事態ではありますが、この出発点をこれからも維持して議論を続けてまいりたいと思います。
 刑事局長の見解を伺います。
○林政府参考人 明治の時代での立法の出発点が今委員が御指摘になったところにあるかどうかということについては私が直ちにお答えすることは困難でありますけれども、今から振り返りまして、そのように、明治の時代の立案、立法の時点での強姦罪であるとか準強姦罪の本質は何であるのかということについて、それが同意のない性交であるということに本質を求めるという見解、これについては十分に考え得るところの見解であろうかと思います。
 歴史的に、立案当時にそれを出発点としたかどうかということについては私はお答えすることができませんけれども、そういったことに強姦罪あるいは準強姦罪の本質を求める、同意のない性交であるということに本質を求めるという見解は十分に成り立ち得る考え方かなと思います。
○井出委員 十分に成り立ち得ると言っていただきました。
 この本の最後の部分には、例えば面識のある相手からのそうした行為については、特に暴行、脅迫を用いなく、しかも巧妙に意思の自由を奪うことは可能である、準強姦罪創設の背景には、暴行、脅迫という手段によらず、その他の手段を用いた場合でも被害者の任意の承諾なき姦淫は許されないという理念があったと。
 午後に一時間、また時間をいただいておりますので、午後から具体論に入ってまいりたいと思います。
 一旦終わります。
○鈴木委員長 次に、阿部知子君。
○阿部委員 民進党の阿部知子です。
 本日は、この貴重な法務委員会の質疑のお時間を頂戴いたしまして、理事初め委員長に感謝をいたします。
 私は、日ごろ厚生労働委員会に所属しておりますので、めったにはこの法務委員会の質疑に立たせていただくことがないのですが、冒頭、きょう、与党の御質疑の中にも野党の御指摘の中にも、この法案、百十年ぶりの改正に大きく動きをつくられたさまざまな関係者、被害者の皆さんのお声が反映されるようにという御指摘がありました。これは与党も野党も同じ思いだと思います。
 もう一点、では、そのお声がどういう形で国会審議というものに残されるであろうか。私は、参考人の質疑と申しますのは、やはり、議事録に残り、日ごろの取り組みについても国会が共有できる貴重な場であるし、この性暴力を含めた刑法の改正にそうした場がないということに著しい違和感を覚えます。
 事の発端が皆さんの運動であったにもかかわらず、引用することは容易だと思います、誰それがこう言ったと。でも、やはり、そうした活動してこられた方の声というものが議事録に残る、御自身の発表として残るということが大事と思いますが、委員長についてはなぜそういう行程がとられていないのか。また、委員長御自身は、国会審議のあり方として、こういう国民の声、取り組んできた声が、この場で、委員会質疑で取り入れられることの意味はどうお考えか。冒頭、伺います。
○鈴木委員長 理事、委員ともに同じ思いとは思いますが、国会の日程上、やむを得ずこういう日程になったことを御理解ください。
○阿部委員 委員長はちょっと早口で、よくわかりませんでしたが、私は、何度も申しますが、やはり、さまざまな御意見を議事録に残していくということは、歴史的な改正である分、絶対に不可欠なんだと思います。
 きょう採決やに言われておりますが、引き続き与野党の理事並びに委員長にはぜひお考えを深めていただきたいと思い、私の質問に入らせていただきます。
 今回の法改正は、主に四つの大きな柱になっておりまして、一番目が強姦罪の構成要件並びに法定刑の見直し、二番目が監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪の新設、そして三番目が強盗強姦罪の構成要件見直し、そして四番目に強姦罪等の非親告罪化という四点になっているかと思います。
 私は、きょうは、特に四番目の非親告罪化ということについてお尋ねをいたします。
 さきの質疑の中でも既に林局長からは御答弁があったと思いますが、改めて金田法務大臣に、今回この強姦罪が非親告罪化されたことのメリット、何が大きな前進なのだろうという点をお尋ねいたします。
○金田国務大臣 阿部委員の御質問にお答えをいたします。
 現行法上、強姦罪、強制わいせつ罪等は親告罪とされております。その趣旨は、一般に、公訴を提起することによって被害者のプライバシー等が害されるおそれがあって、被害者の意思を尊重するためである、このように解されております。
 もっとも、性犯罪被害者やその支援団体関係者等からのヒアリング等を踏まえて検討いたしました結果、現在の実情としては、犯罪被害によって肉体的、精神的に多大な被害を負った被害者にとりましては、告訴するか否かの選択が迫られているように感じられたり、告訴をしたことによって被告人から報復を受けるのではないかとの不安を持つ場合があるといったようなことなど、親告罪であることによりかえって被害者に精神的な負担を生じさせていることが少なくない状況に至っているものと認められたわけであります。
 このような実情に鑑みました場合には、これを非親告罪化して、親告罪であることにより生じている被害者の精神的な負担を解消することが相当であると考えられたことから、今回の改正案において強姦罪等を非親告罪化するということにしたものであります。
○阿部委員 確かに、人を告訴、告発するというのは、大変に精神的にも負担が大きい。プラス、今大臣がおっしゃったように、しかし、非親告罪化されたときに、プライバシーというものがどうなっていくのか、自分が本当は望まない告訴という形になってはいけないということは、今の大臣の御答弁でも確認をされたと思います。
 その上で、お手元の資料を見ていただきますが、ここには、いわゆる強姦あるいは強制わいせつなどで、告訴欠如という形で、その方が告訴をしないという形で不起訴になった件数の推移がございます。当然ながら、一般犯罪よりは、告訴欠如、告訴をしないということの比率は多いと思います、一般犯罪で二から三%ですから。
 しかしながら、強姦とか強制わいせつ罪の特殊性で、あるいは相手から示談などがあって、結果的に告訴欠如となったもの、強姦では近々の資料で二四・八%、そもそも不起訴が六二・六ですから。また、強制わいせつ罪でも二九・八%。すなわち、四件に一件あるいは三件に一件は、告訴欠如という理由で告訴がされない。嫌疑不十分というものと並ぶほど、告訴欠如というものが強姦ではふえております。
 先ほどの井出委員とのやりとりで、強姦と準強姦は、自由な意思による性交ではないという意味で、根本的に、本質的に同じものであると。私もそう思います。意思を奪われた上での性交あるいはわいせつでありますから、そこが起点、出発点と思います。
 と同時に、いわゆる強姦と準強姦、意識がない状態、アルコールや薬物やいろいろな中で意識がない状態でそうした行為が行われた場合には、なおさらにこの事態を告訴するためのハードルが高いと思います。すなわち、告訴欠如に至る比率が高いのではないかと思います。これは、告訴しようにも、そのときの記憶等々が取り戻せないというのもあるやもしれません。
 そこで、これは担当並びに金田法務大臣にお伺いをしたいと思いますが、なぜ、集計上、強姦と準強姦は分けられず告訴欠如という中でカウントされているのか。いろいろな資料を拝見しましたが、準強姦だけを分けたものが見当たりません。この点について、私は、分けてきちんと現状を把握すべき。普通の犯罪に比べて強姦は告訴をされていない率が高い、さらに準強姦では高いのではないかと思います。すなわち、自由意思が表明できない状態では告訴欠如になる率が高いのではないかと思いますが、これについて、大臣、お願いします。
○井野大臣政務官 先生の御趣旨は、準強姦事件に特有の分析を可能とするため、強姦罪と区別して統計をとるべきということだと思われますけれども、準強姦事件については、強姦事件と比較して立証が困難であるなどとは我々としては一概に考えてはおらず、また、検察当局においても、個別具体の事案に即して、法と証拠に基づいて適切に起訴、不起訴の判断をしているものと我々は承知をしております。
 したがいまして、強姦罪と準強姦罪を区別して統計で把握することが必ずしも必要であるとは考えていないということでございますが、もっとも、法務省としても、今後とも、今回の法改正を機に、性犯罪の動向を注視してその実態を把握するよう努めることは重要なものであると認識をしているところでございます。
○阿部委員 立証が困難かどうか把握できるためのデータがないということだと思います。立証が困難かどうか把握していないというのは、個別の事案はさまざまであります、しかし、そのとき、意識がない状態下で起こる、告訴、告発には結びつきづらい、それが本当にデータ上そうであるのかそうでないのかも、分けられておらなければわからないわけです。
 私は先ほど、法のというか刑の根本、何が問題なのかというと、自由意思によらない性交ということが犯罪の構成要件だと思いますが、それでもさらに薬物が使われ、あるいはアルコールが使われ、準強姦という事態が起きているという現実が多々ある中で、その方たちが果たして本当に妥当な捜査を保障され、告訴まで道がつながっているかというと、そうではないと思いますので、データがないということをもって、立証困難かどうか、差がないと言わず、データにのっとっておっしゃっていただきたい。それは物の理でありますから。
 金田大臣、今後、この法律が成立したときに、準強姦罪におけるアルコールや薬物の使用というのは非常に深刻な問題。もちろん脅迫、暴行要件も重大です。でも、そもそも自由意思をなくさせられている中で起こることで、それがプラス薬物、アルコールをもって行われ、なかなか告訴に結びつかないと思いますから、そういう観点で分析をしていただきたいが、いかがですか。
○金田国務大臣 今委員御指摘の点につきましては、一般的に申し上げますと、今後とも性犯罪の動向というものをしっかりと注視してその実態を把握するように努力していく過程の中で非常に重要な御指摘の一つだ、このように思っております。
○阿部委員 ありがとうございます。
 と同時に、今回、非親告罪化したことで、最も意思を表明できない子供の問題、未成年の問題は私は大きな前進をしていると思います。大臣にあっては、子供が被害者の犯罪、また子供たちへの支援ということについてはどんなお考えをお持ちか、お願いいたします。
○盛山副大臣 今、阿部委員が御指摘のとおり、子供が性犯罪の被害者となった事案におきましては、被害の認識あるいは表現の能力が乏しいという子供の特性を踏まえた対応が大変重要であると我々は考えております。
 検察当局におきましても、このような認識に基づきまして、例えば児童相談所などの関係機関との十分な情報交換、あるいは親権者ほかとのコミュニケーションを行うなどして、その特性に配慮した対応に努めているところでございます。
○阿部委員 この件につきましては、後ほど民進党の山尾志桜里さんも取り上げられることと思います。
 本来は、こうした場で、子供の性暴力の支援に当たっている方から私はぜひ御意見を賜りたいと思います。本当に潜在化して、親子の力関係の中で、性暴力を受けたとしても、それは自分が悪いんだ、あるいは、言ってしまえばお父さん、お母さんが罰せられる、だから自分が全部抱え込まなければと思っているのが子供の実情であります。今回の法改正からさらに本当に子供の人権の回復に向かうよう、この点については後ほど質疑の中で取り上げさせていただきたいと思います。
 私は、きょう、ワンストップ支援センターと内閣府で言っておられる、私どもは性暴力被害者支援センターと名づけておりますが、被害者がそうした事態に出会ったときにまずそこに相談をして保護されるような仕組み。それは、今申し上げました子供たちにも、あるいは、なかなか警察に行って告訴というプロセスをとりがたい方々にとっても、いわゆる性暴力、性犯罪として警察が把握するものは、というか、警察に行くということ自身が一桁のパーセンテージだと思いますから、それ以外に、氷山の、海の中にあるような事態についてどういう受けとめをしていくべきかということで、このワンストップ支援センターについてお伺いをいたします。
 内閣府にお願いしたいと思います。実は、ワンストップ支援センターは平成二十三年の第二次犯罪被害者支援計画の中に明文化をされておりますが、この経緯とお取り組みについて教えてください。
○大塚政府参考人 お答えをいたします。
 ワンストップ支援センターでございますが、性犯罪、性暴力被害者の支援のため、いろいろな支援を一元的にそこで提供するということで、今お話のございました計画、さらには第四次の男女共同参画基本計画に基づきまして、今、全都道府県に一カ所を設置すべく、私どもの支援も含めて推進をしているところでございます。
 現在、三十八都道府県、箇所数でいいますと三十九カ所で設置されているところでございまして、引き続き、この全都道府県設置に向けまして、私ども、支援を進めてまいりたいと考えております。
○阿部委員 恐縮ですが、これはとても重要なことなので、この設置の目的ということ、何を目的としているのかを明示していただけませんでしょうか。言葉で表現していただきたいと思います。目的とは何でありましょう。お願いします。
○大塚政府参考人 お答えをいたします。
 設置の目的でございますが、これは、性犯罪、性暴力被害者に対しまして、被害直後からの総合的な支援、この総合的な支援と申しますのは、産婦人科医療、相談・カウンセリング等の心理的支援、さらには捜査関連の支援、法律的支援、こういったものを可能な限り一カ所で提供することによりまして、被害者の心身の負担軽減、健康回復、さらには警察への届け出促進、被害の潜在化防止を図る、これを目的とするものでございます。
○阿部委員 ありがとうございます。
 私は、今回の法改正が、もちろん、起こした罪への刑罰を強化するという点は評価いたしますが、同時に、犯罪には被害者がいて、その方たちの人権回復というのは車の両輪で、その意味で、こちらの支援の側が薄いというか、現状において追いついていないという点を大変懸念しておりますので、今確認をさせていただきました。
 そして、ワンストップ支援センターは、お手元の資料にございますように、いただきました資料ですと、現在三十九カ所という私の手元の表、そして、都道府県にするとたしか三十八であると思いますが、ずっと見ていただきますと、病院あるいは病院連携型というのは九つしかなく、いわゆる連携型と呼ばれるものがほとんどであります。
 しかしながら、そもそも内閣府がつくられたワンストップ支援センター開設・運営の手引というものがありまして、これを見ますと、地域事情もあろうかと思いますが、病院拠点型や相談センター拠点型ということの方が望ましい、それは、病院機能とすぐにタイアップできる、あるいは病院そのものが支援センターになるということですが、しかし、でき上がってみると、確かに数はふえておりますが、相談連携型といって、各医療機関にはタコ足のように連携をお願いしながらやっていくというものがふえております。
 この現状についてはどう改善していかれるおつもりでしょう。お願いします。
○石原副大臣 委員御指摘のとおり、性犯罪、性暴力被害者支援のためのワンストップ支援センターは現在三十八都道府県で三十九カ所設置されており、そのうち病院拠点型については九カ所というふうに承知しております。
 内閣府では、個々の都道府県の詳細な状況については十二分に把握しておりませんが、病院拠点型が少ない主な理由としては、拠点となる病院の不足、医療関係者や支援者などの人材不足などが原因であるというふうに考えております。
 一方で、病院がワンストップ支援センターの拠点としての役割、機能を担うことは難しい場合でも、委員が言われたように、協力病院や連携病院といった形で、支援のネットワークの中で一定の役割を担っているケースがあるというふうに考えております。
 こうした状況は地域によりさまざまと考えられるので、都道府県の実態やニーズに応えられるように、今年度予算で設けた性犯罪・性暴力被害者支援交付金を効果的に活用して把握をしてまいりたいというふうに考えております。
○阿部委員 確かに今年度、支援交付金が出まして、医師の研修並びに看護師さんの研修等には多少の費用がつきますが、後ほど御紹介しますが、病院拠点型というと、医師が当直をしていて二十四時間対応ができる、そして夜の方が暴行事件は多いわけで、本当にいつでも即つながるという意味では、これは内閣を挙げて病院拠点型に持っていく必要があります。確かに、医師が不足している、あるいはもろもろ地域事情もあると思いますが、後ほど私がこういう案はどうだろうということを提案させていただきますので、またそのときに機会あれば御答弁をお願いいたします。
 そもそも、先ほど、警察に駆け込んでいかれるというのは大変少ない、ハードルが高いということを申し上げましたが、その警察が、もしそういう被害者の方が助けを求めて来られた場合に、窓口の警察官の対応というのはどのように教育されているであろうか、これについて御答弁をお願いいたします。
○高木政府参考人 性犯罪被害者の精神的負担の軽減あるいは被害の潜在化防止といったことを図るためには、特に被害者に対する対応が適切になされることが極めて重要であるというふうに認識しておりまして、そういった観点から、捜査員に対する教育、研修の充実等に努めているところでございます。
 具体的には、教育訓練の中では、被害者の心情に配慮した対応、初動捜査の具体的方法、被害者聴取のあり方等を具体的に教えているところでございまして、今後ともこういった指導教養をさらに充実してまいりたいと考えております。
○阿部委員 私が今、警察の初動というか警察が何をしているのかということでお尋ねいたしましたが、先ほど、司法の場でも必ずしも被害者の心情に配慮がない場合もあるということがあったと同じように、警察の場でも警察による二次被害ということが従来から言われております。犯罪の特殊性だと思いますが。
 事例の紹介を一例だけさせていただきますが、私は神奈川で、選挙区は藤沢ですが、すぐ近くに横須賀があって米軍基地がございます。そこで二〇〇二年に起きたジェーンさんという女性の強姦事件であります。
 この方は警察に行かれましたが、十時間近くも警察にとめ置かれ、アメリカ等々ですとレイプクライシスセンターというのがあって、犯人の証拠をとるために病院機関にすぐ連れていかれて、そして外傷があればケアを受けて、情況証拠を採取して、そして、そこからまたいろいろな取り調べに持っていくというところなのですが、このジェーンさんの件は十時間横須賀の警察署にとめ置かれたということです。
 これはもちろん、二〇〇二年の事案ですから、その後、彼女は国賠訴訟を起こしまして、その対応がきちんと本当に自分の人権を守ったのかどうかということを起こされましたので、警察庁としても改善していると思いますが、ただ、さまざまな、犯罪捜査規範や被害者対応要綱、あるいは内部規律などの中に、本当に、被害者に迅速に医療が必要なんだということをちゃんと紹介して、道をつないでいるだろうかという点で、私は今も懸念が残ります。
 というのは、被害を受けた当事者の女性は、もう本当に判断が不能な状態で、今すぐ医療的にやらなければいけないことがあるというふうには考えられない、とにかく何でもいいから助けてほしいとそこに行くわけで、そのときの初動の警察官に、医療の必要性から、その方の人権への配慮というのは極めて重要となりますので。
 また、きのう、警察庁の中で何か使っているマニュアルとか本はないのですかと伺いましたが、各都道府県でやっておりますというので、どんな指導が具体的になされているかをいただけませんでしたので、これは心にとめていただきまして、二次被害が起こらないようにお願いをしたいと思います。
 さて、私が先ほど来強調しておりますように、性犯罪の特殊性は、即医療が必要になるものが多いということで、一つ御紹介したいのが、大阪にございますSACHICOというワンストップ支援センターであります。
 皆様のお手元に資料をつけさせていただきましたが、このSACHICO、性暴力支援センター大阪。セクシュアル・アソールト・クライシス・ヒーリング・インターベンション・センター・オオサカ、これを全部略すと、たまたまSACHICOといういい名前になるということです。
 基本理念ということで、ここは病院型の支援センターですが、被害直後からの総合的支援ができる。二十四時間体制のホットラインと、支援員が常駐して心のサポートをすると同時に、二十四時間の産婦人科救急医療体制と継続的な医療を行い、警察、弁護士、カウンセラーなどの機関への連携を行っている。当事者が告訴するしない、あるいはその後どう生きていくかを自分で選べるような体制と、究極的には性暴力のない社会の実現を目指しているということです。
 ここに、二〇一〇年から二〇一五年三月までの実績がございます。この五年間で、相談件数は九百八十三。ここを受診された、カルテの枚数であります。大体年間二百件くらい。正直言って、ワンストップ支援センター、他の支援センターで、ここほどたくさんの件数を受け入れて、実際の支援につなげているところはないと思います。
 ちなみに、性虐待も二百十三件。これはとても警察に上がる数ではありません。また、DVあるいはレイプ、強制わいせつでは、未成年の比率が大変多い、五百七十七件中三百十六件となっております。今、もっと件数はふえていると思いますが。
 このSACHICOの活動は、チャートで、次に絵がございますが、阪南中央病院という院内にあって、女性医師が二十四時間対応をしていて、そしてホットラインを持ってやっているというところでございます。
 次に、また開いていただきますと、レイプ、強制わいせつ被害者の診療というのは、時間外が多くて、時間もかかる。被害者への診療は平均百十三分であります。状況を聞きながら、証拠を採取する。時間外の受診が六〇%、深夜帯が一三%。すなわち、拠点病院でないと、とてもこれだけはできない。
 もちろん、警察が連携して、善意の先生方がいろいろ協力はしてくれる。レイプのときの証拠採取セットというのがあって、それを医療機関に渡しておくのですけれども、そういうやり方では、なかなか全体の、レイプに対しての対応が持ち上がっていかない。もちろん、お医者さん側は善意で一生懸命やってくれていますが、まだまだだと思います。
 すなわち、時間と人員と場所が必要で、当然それを配置するにはお金が要るということです。入り口も別にします。普通の産科、出産の入り口と、夜中に生まれる赤ちゃんも多いですから、でも、こちらで起きた不幸に対応するときの窓口は変えて、裏からわからないようにしてなどの施設の改築も必要です。
 その下に書いてありますが、レイプ、強制わいせつの被害者五百七十七人にどんな対応がされたか。緊急避妊薬の処方、性感染症の検査、そして犯人の精液などの採取。あるいは、少しおくれて来た方は、妊娠をしておられる方も五十三人。七十二時間以内に避妊措置をしないと本来はいけないのですけれども、なかなかたどり着かなくて、妊娠してからという方もございます。その他、弁護士紹介、カウンセリング紹介などとなっております。
 ここで金田法務大臣にお伺いいたしますが、先ほど被害者の方とか支援団体とお話をされたことがありますかという質問がほかからもございましたが、私は、こういう現場で支援に携わっている、大変件数も多い、そして性被害とは何かということを理解していただくために、金田大臣にあってはぜひ視察もしていただきたいし、きちんとこれを定着化させるために御尽力いただきたいが、いかがでしょう。
○金田国務大臣 阿部委員から、ただいま、性暴力救援センター大阪、SACHICOの取り組みについてさまざまな御説明を賜りました。
 私は、犯罪の被害に遭われた方々の声に真摯に耳を傾ける、そしてその保護、支援に取り組むということは非常に重要なことであろう、このように認識をいたしております。
 このSACHICOのケースは、性犯罪、性暴力被害者に被害直後からの総合的な支援を可能な限り一カ所で提供するということによりまして、被害者の心身の負担を軽減し、その健康の回復を図るとともに、警察への届け出の促進、被害の潜在化防止を目的とするワンストップ支援センターである、このように認識をいたしております。
 ワンストップ支援センターが一番初めに整備されたのは恐らくこの大阪のSACHICOなんだろうと思うんですね。ですから、そういう意味においても、先頭を切って頑張っておられるということに非常に感心をして拝聴しておりました。
 そういう中で、私は、性犯罪や性暴力の被害者というのは、多大な精神的な苦痛あるいは身体的な苦痛を受けてさまざまな支援を要するんだということから、その心身の負担を軽減し、心身の健康の回復を図るというワンストップ支援センターの取り組みというのは極めて重要なものであるなという思いを抱いてお聞きしておりました。
 犯罪被害者等基本法によります基本計画、その第三次基本計画においてはワンストップ支援センターの設置促進が施策として明示されておりますことからも、さらなる拡充が図られるということを私としては期待していきたい、こういうふうに思っております。
○阿部委員 私がぜひお願い申し上げたいのは、やはり医療型の拡充ということには人件費もかかりますし、病院の体制整備も必要であります。石原副大臣にお伺いいたしますが、これは内閣を挙げてそういう支援をしていただけることが大変重要だと思います。ことし、二十九年度からいろいろな交付金が始まっておりますが、まだほんのスタートで、ちっちゃな芽であります。しかしながら、これは本当に、こういう被害者にとっては、病院というのは不思議なことに、そこに駆け込めばちょっと守られるということも同時に感ずる場所でありますので、ぜひさらなる支援というかバックアップをお願いしたいですが、いかがでしょう。
○石原副大臣 お答え申し上げます。
 当該交付金は、ワンストップ支援センターの全都道府県での早期設置とその安定的な運営を図るために、今年度予算に新たに設けたものであります。今、金額はまだ小さいというお話がございましたけれども、まずはこの今年度新設した交付金を適切に施行していくことが何よりも重要であるというふうに考えております。
 その上で、今後のあり方については、各都道府県における取り組み状況などを勘案しながら、引き続き内閣府として検討してまいりたいというふうに考えております。
○阿部委員 ずっとモデル事業以来、必ずしもスピードアップした取り組みではない。ただ、これは緊急性のあるものですし、一方で法改正がされて非親告罪化されているわけですから、やはりもう一つの被害者支援ということは、私は並び走っていただきたいと思います。
 引き続いて、最近大変に目にとまることが多い、学生あるいは医学部の学生並びに医師による集団の強姦事件についてお尋ねをいたします。
 金田大臣にも最後のページをお開きいただきたいのですが、ここには、大学生等による主な集団暴行事件というのを新聞等々に出ている限りにおいて拾わせていただきました。
 古くは、二〇〇一年、早稲田大学のイベントサークル、スーパーフリーというところの学生たちが起こした事件、それから、京都大学が二〇〇五年の十二月、京都教育大学が二〇〇九年の二月。おのおの特徴的なのは、女性を酒に酔わせて、飲ませて暴行を集団で働くという、ひきょう者のきわみだと思いますが、こういう事件が多く起きております。
 特に二〇一六年は、立て続いて四件ですね。起きたところは、おのおの、東邦大学の医学部の卒業生である研修生が、千葉の船橋中央あるいは東京慈恵医大等々に勤めていて、研修をやっていて、これもお酒を飲ませて暴行した。専用のマンションの一室を借りてやっていた。東京大学でも、大学生と大学院生五人が、同じように、女性を酒に酔わせてわいせつ行為に及ぶ。慶応大学でも、神奈川県の葉山の合宿施設で、ミス慶応コンテストを主催して、そのときに被害女性を集団で強姦する。そして千葉大学、これも医師が関係していますが、千葉大学医学部の男子学生らが、飲食店で女性を酒に酔わせてトイレで暴行する。医学生三人と医師一人、東邦大学の方も研修医と現役学生一人ということで、どの事案を読んでも、大変に社会の風紀がもう本当に乱れていて、深刻な実態と私は思います。
 ここでお尋ねですが、今回、集団の強姦あるいは準強姦などについては、集団強姦罪というものを廃止することになっております。
 平成十六年に、集団で強姦するとは、共謀して強姦するわけですから、普通の強姦よりはやはり問題が大きいだろうということで、集団強姦罪と別途、やはり法律というのは国民へのメッセージですから、こういうものはやってはならない、より厳密に罰するぞということで、平成十六年に改正が行われました。
 今回廃止となっておりますが、果たしてこれで国民へのメッセージを誤ることがないのか。これだけ事件が起きているときに廃止をして、例えば、強姦の実際の量刑が上がったから、わざわざ集団強姦罪だけ別にしなくてもいいんですという考え方かと思いますが、法律とは何か。国民へのメッセージだと考えれば、現時点で集団強姦罪をなくす意味は何でありましょう。
○盛山副大臣 阿部委員の御指摘のとおり、今こういうような事案が大分ふえているというのは、本当に残念なことだなと思います。私もいろいろ感想を述べたいわけでございますけれども、法務省として述べることではないでしょうから、ちょっとそれは残念ながら別の場でということにさせていただきますが。
 お尋ねの集団強姦罪廃止の件でございますけれども、現行法におきましては、集団強姦罪の法定刑の下限が懲役四年でございます。今回の法改正では、強姦罪の法定刑の下限を懲役三年から五年に引き上げるということで、現行の集団強姦罪の法定刑の下限を上回るということになります。
 ということでございまして、集団による強姦の悪質性については、引き上げられた法定刑の範囲内で量刑上適切に考慮することによって適切な科刑が可能であるといったことから、集団強姦罪を廃止することが相当と考えますし、また、集団強姦罪を廃止する以上、集団強姦致死傷罪についても廃止するのが相当と考えたところであります。
 そして、阿部先生御指摘の、誤ったメッセージを発することになるのではないか、こういうことでございますけれども、集団的形態の強姦、準強姦については、暴力的犯罪としての凶悪性が著しく強度である点で悪質であるという点では私どもも同感でございます。
 しかしながら、今回、強姦罪の量刑を引き上げるということとしたものでございますので、仮に、今般の強姦罪、強姦致死傷罪の法定刑の下限の引き上げに合わせてさらに集団強姦等の罪等を引き上げるとすれば、例えば、集団強姦罪の法定刑の下限を、通常の強姦罪の懲役五年を超える例えば懲役六年などとして、そして、集団強姦等に係る致死傷罪の法定刑の下限を、通常の強姦致死傷罪の懲役六年を超える例えば懲役七年といったことが考えられるわけでございます。
 しかしながら、現行法上、集団強姦等に係る致死傷罪の法定刑の下限につきましては、酌量減軽をした場合において執行猶予を付することができる限界である懲役六年とされております。この趣旨は、犯行に加担した者の中でも関与の度合いが比較的軽微な者であって前科等のない犯人が、被害者に対して最善の慰謝の措置を尽くすなどしたにもかかわらず、酌量減軽をしても執行猶予を付し得ないことには問題があると考えられたからでありまして、この趣旨は現在も妥当することから、法定刑の下限を懲役六年を超えるものにすることは適当ではないといったようなことでこういった結論になっているということを御理解いただきたいと思います。
○阿部委員 今御答弁いただいたのは単に量刑の年数の問題であって、私が申し上げたいのは、法は社会へのメッセージ。その数量化されたものが何年という刑ではありましょう。しかしながら、これだけ集団の強姦事件が起きている中で、集団強姦罪そのものが廃止ということは、やはりその名前を残すことだってできるわけです。何がいいことで何が悪いことなのか、何をやるべきではないのかというメッセージがこれでは明らかにならない、法の持つ意味が後退をすると私は思います。
 大臣、普通に常識で考えて、これら、今まで随分、強姦しても、確かに執行猶予がつくものが多いのです。懲役三年でも執行猶予がつくとか、現実には強姦しても罰せられないというメッセージにもなりかねないから、その法定刑を上げていくということはいいと思います。しかし同時に、集団強姦罪そのものがなくなるというものではない。その行為に対する考え方というものは明示されるべきだと思いますが、金田大臣、いかがですか。
○金田国務大臣 委員御指摘の点は先ほどから拝聴いたしておりました。
 私どもがこのたびの改正に際しまして申し上げたいことは、ただいま副大臣から申し上げたとおりであります。
○阿部委員 この刑法改正に当たって、特に子供たちを性暴力から守るためにぜひ改正をと言っておられた方からの言葉なんですけれども、法律は大人から子供へのメッセージというふうに言っております。これを読みかえると、法律は時々の社会がどうあるべきかのメッセージであります。私は、大事なところが抜けているように思います。物事の軽重だけではかっていって、執行猶予になる年限がどこからかなどでやっていくということは、そもそも残すこともできたはずですから、今の御答弁については承服しかねますが、そうされたということは、御説明ですから、承りました。
 そして、では、どうして私たちの社会はこうなってしまったのかということで、医学部教育のあり方ということも、特に東邦大学や千葉大学は、医師になる方たちが率先して強姦を起こすなんということは本当に厳しく罰せられるべきだし、また、教育課程でそういうことはきちんと、女性の人権、ジェンダーは教えられるべきですが、一体文部科学省はどう取り組んでおられるのかについてお伺いいたします。
○樋口大臣政務官 将来医師を目指す医学生には、とりわけ高い倫理観や人権意識が求められていると認識をしております。
 医学教育において、学生が卒業時までに身につけておくべき必須の実践的診療能力の学修目標を提示いたしました医学教育モデル・コア・カリキュラムにおいて、医の倫理と生命倫理に関する規範に関する項目が盛り込まれているところでございます。
 これらに基づきまして、各医学部において、一般社会倫理から医の倫理まで広く学び、これらを深く学んで理解する、倫理、心理、社会問題に対応できる能力を養うといった、医師として求められる倫理観や人権意識を涵養するための教育が実施されていると認識をしております。
 さらに、平成三十年度から運用予定の医学教育モデル・コア・カリキュラム、平成二十八年改定でございますが、これにおいては、医師として求められる基本的な資質、能力として、新たに、医師としての尊厳と責任を自覚し人格を高めることや、法規範の遵守及び法秩序の形成に努めることが明示された日本医師会の医師の職業倫理指針に関する規範を概説できるといった項目を盛り込むなど、医の倫理にかかわる学修目標を充実しているところでございます。
 文部科学省といたしまして、このような取り組みを通じて、医師としての職責や倫理に関する教育がさらに充実をするよう、各大学に対して促してまいりたいと思います。
○阿部委員 今の御説明を聞いても、やはり、女性の人権やこういう強姦ということについて、ほとんど具体的にそれでは教えられないと私は思います。そういう方がお医者さんになって本当に女性たちが安心してかかれるだろうかと、恐怖すら覚えます。
 私の提案は、先ほど石原副大臣がいろいろこれから充実させるとおっしゃった、ワンストップ支援センターを各大学医学部に置くことです。二十四時間できるのですから。そして、そういうことが自分のそばにある、何がこれは問題なのかということを、OJTではありませんが、日々学ぶことであります。事態は非常に深刻です。
 これは、次に、厚生労働政務官にお伺いいたしますが、多くの大学病院は同時に特定機能病院で、患者さんに対してハイレベルな医療を提供する、当然高い倫理性も求められる。例えば、特定機能病院にワンストップ支援センターの医療型を設置するとか、何らかの具体的なことがなければ、倫理規範といってこうやって読んでも、正直だめなのです。
 本当にこういうことが根絶されるように、私は前、厚生労働委員会でこれを取り上げたことがありますが、ぜひ、文科省と協力して、特定機能病院ないしは大学病院、特定機能病院の八割以上は大学病院ですから、人材はおられるはずです、できるはずです、お取り組みいただきたいが、いかがでしょう。
○堀内大臣政務官 阿部委員御指摘のように、性犯罪、性暴力被害の支援を行うに当たって、医療機関の果たす役割は大変重要だと認識しております。
 しかしながら、性犯罪、性暴力被害者のためのワンストップ支援センターは、先ほど阿部委員がお配りくださった資料の四にございますように、病院拠点型のみならず相談センター拠点型などの多様な形態がありまして、特定機能病院や医療機関以外の類型も含めどのような主体がその役割を担うべきかについては、地域の実情に応じて検討される必要があるものではないかと思っております。
 厚生労働省といたしましても、引き続き、文科省、内閣府と連携しつつ、ワンストップ支援センターの設置に向けて、関係団体や都道府県に対する周知、協力依頼、そういったものを行ってまいりたいと思っております。
○阿部委員 国としてやるべきことを地域の実情に逃げたら私はだめだと思います。
 私たち五つの野党で、ワンストップ支援センター医療型を設置してほしいという法案を実は提出しております。それは、やはりそこに政治の意思の優先順位を置けということであります。
 被害者をきちんと受けとめられる支援センター、もちろん、相談型でも、ないよりはずっといい、連携型もそうであります。でも、絶対必要な産婦人科医療の部分がきちんとそこに常時確保され、そこで性暴力とは何かということを自覚した医師が育ち続けるということが、社会から性暴力を根絶していく大きな道だと思うし、同時に、学生たちが逆に言うと安易にこういう事件を起こさない、そうしたことを保障していくと私は思います。
 ちなみに、私がこれだけ力説するのは、今、大変問題になっております、TBSの元記者が詩織さんという女性を準強姦したかもしれないと言われている事件がございます。これが、もしも病院拠点型に来ていただくと何が違うのか。
 実は、先ほど申しました性感染症があるとかあるいは避妊措置をとるとか、いろいろありますが、それと同時に、血液を必ず採取して保存しておきます。そうすると、今多い、集団強姦も全部そうですが、酒に酔って、あげくに強姦をするわけです、血中のアルコール濃度、あるいはデートのときに相手の意識をなくすために使う薬物などの濃度も、きちんとそこがチェックできます。
 医療は常に、例えばそれがいろいろな中毒ではないか、何が起きたのかということを検証するために冷凍保存を、このワンストップ支援センター、SACHICOに行っていただけばわかりますが、血液をとってやっております。恐らく、警察の窓口に行かれても、それだけの体制がある病院につながらないことも多いと思います。
 私がわざわざ準強姦と強姦を分けたのは、そのとき女性に記憶がない、もちろん、同意によらない性交は一緒です、でも、情況証拠を固めていかないと、告訴にも結びつかない、結局不起訴になっちゃう。それでは本当に魂の殺人と言われるレイプの犠牲者は後を絶ちません。
 金田法務大臣にもう一度伺います。
 私は、そういうことをきちんと見てきていただきたいのです。病院拠点型の支援センターとはどんな体制で、ここは何が保障されているのか。最後に、金田大臣、私は、今これだけ世上騒がれている強姦の問題、女性たちの虐げられた人権の問題、どうやっても政治が意思を持って解決していかなければならないと思いますが、視察を兼ね、そして状況を見ていただいて、本当の充実、本当の支援のために先頭に立って御尽力いただきたいが、御答弁をいただきたいと思います。
○金田国務大臣 阿部委員の先ほどからの貴重なお話を伺っておりました。ワンストップ支援センターの設置促進は非常に重要であるということ、それに加えて病院拠点型が非常に意味があるというお話、そういう一つ一つになるほどなという思いを持って先ほどからお聞きしていたことを繰り返し申し上げたいと思います。
 このたびのこの法案のことにつきましては、今までも可能な限り、たくさんの皆様の思いやお話や経験をお聞きしてこの改正に至ったわけですけれども、私たちの努力というものはこれで終わりとかいうものではありません。これからも、法案の成立を見た暁には、それをベースにした対応をやはりしっかりと行政としても考えていかざるを得ませんし、そしてまた、その法律に足らざることがあれば、それはまた次の機会を考えていく、そういう努力を続けなければいけないなという思いを改めて感じた次第であります。
○阿部委員 ありがとうございます。
 最後に、この五年間の被害者とつき合って見えてきたことというSACHICOの取りまとめをお伝えしたいと思います。
 一つ、警察に行けない被害者も多い。一つ、妊娠してからの来所が多い。一つ、アルコール使用、ネットでの接触、集団レイプが多い。一つ、障害を持つ人の被害の発見と対応がおくれがちである。一つ、子供の性被害が多い。
 これらは全て潜在化しやすいもので、このワンストップ支援センター医療型が大きな役割を果たしたということであります。
 大体、年間三千万から五千万の維持、運営、管理費が必要です。石原副大臣にも御尽力いただきますが、政府を挙げて、そして厚労省も文科省も御尽力をいただきたい。
 以上で終わらせていただきます。ありがとうございます。
○鈴木委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時六分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
○鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。山尾志桜里君。
○山尾委員 民進党の山尾志桜里です。
 きょうは性犯罪厳罰化法改正案の質疑ということですけれども、当事者が早期の実現を強く望んでいるということを理由に本日採決ということであるならば、私は強く抗議をしたいと思います。
 皆さんのお手元に、性暴力禁止法をつくろうネットワークの皆さんが五月二十九日に出された緊急声明をお配りいたしました。
 まず第一段落目、最初の文章を見てください。「与党の合意により組織犯罪処罰法改正案の審議が刑法性犯罪の改正案の審議より先行されたことにより、今国会期間中での刑法性犯罪の改正実現が危ぶまれる事態となりました。」このように書かれています。
 当事者の皆さんは御存じです。この性犯罪厳罰化法の審議がおくれにおくれているのは、自民党、公明党の皆さんが後から共謀罪を数の力で強引に押し込んできたことが唯一最大の原因であります。自民、公明の皆さんは、きょう一日で質疑、採決、こういう全く不十分な日程を強行している責任は御自身にあるということを認識すべきだと思います。
 二点目、この緊急声明の最後の段落をごらんください。「審議にあたっては、当事者の声に耳を傾け、改正案に盛り込まれなかった論点も含めて十分に議論することを強く求めます。」と。
 私たちは、何よりも当事者の声をこの法務委員会で聞くべきだと参考人質疑を強く求めてまいりましたが、自民党、公明党はこれを無視しました。性犯罪はその多くが密室で行われ、被害者にしか届けられない叫びがあります。しかし、つら過ぎて声を上げられないたくさんの被害者の方もいらっしゃいます。そういう被害者の方の思いをしょって、実名を出して声を届けてきた当事者の方がいるんです。その当事者の方が、これまで、本で、メディアで、集会で、どんな思いで筆をとり、マイクをとって演壇に立って活動を続けてきたか。そして、その方々が、いよいよこの法案を審議する国会で、この法務委員会で声を届けたいとおっしゃっていることを無視してその機会を握り潰すというのは、私は、大変恥ずかしいことを与党の皆さんはしていると思います。
 三点目、改正案に盛り込まれなかった論点を十分に議論してほしいと書いてあります。
 その議論の時間は、自民党、公明党の判断で、きょう一日しかこの衆議院ではありません。私も持ち時間の中で全力で当事者の思いを伝えるつもりですけれども、重要な論点に絞っても恐らく時間は足りないでしょう。
 百十年待った当事者の思いが、ようやくこの百九十三回国会で受けとめられようとしています。その国会で縁あって法務委員を務めさせていただいているにもかかわらず、なぜ与党の皆さんは、せめて当事者が議論してほしいと提示している論点をできる限り議論する時間を確保する努力をしないんですか。
 こういった論点は、被害者の方が体を、心を削られるような思いで被害体験の記憶を何度も何度も喚起して言葉にして人前に出してきた、こういう思いの結晶です。今回の法案でその全てに立法措置を施すことは難しくたって、その論点を議論して議事録にとどめて、今後の見直しの建設的な検討に結びつけていくことが、せめてものこの部屋の中にいる法務委員の責務だと私は思います。
 参議院での共謀罪審議を例えば一旦とめて、正当な手続どおり最初に提出されたこの性犯罪厳罰化法を審議すれば、この衆議院だってあと一日でも二日でも日程をとった上で今国会で成立させることはできるんです。あるべき姿に戻すだけのことです。そんな当たり前の努力すら放棄しながら、きょう一日で採決まで強行して、地元などで、性犯罪厳罰化法を通しました、こんなふうに報告する、こういう姿は、申しわけないけれども、与党の皆さん、大変恥ずかしいやり方だ。これは私の意見として申し上げ、論点に入りたいと思います。
 時効の論点です。
 六月二日の本会議、この性犯罪厳罰化法の審議入りに当たって、四人の議員が代表質問に立ちました。維新を除く三人の議員全員、我が党の井出議員、公明党の國重議員、共産党の池内さおり議員、三人とも、魂の殺人という言葉を使ってこの性犯罪の重大性を訴えました。
 大臣にお聞きします。性犯罪は魂の殺人であるという表現、適切だと思われますか。
○金田国務大臣 山尾委員の御指摘にお答えをいたします。
 先般の六月二日の本会議において質問をいただきましたが、そのときに確かに魂の殺人というお話もございました。私も、そのお話をしっかりと聞かせていただいたと思っております。
○山尾委員 しっかりと聞いたかどうかということではなくて、別に私は、リーガルターム、法律用語としてこれが当たるのか当たらないのか、そういうことは聞いていませんけれども、魂の殺人という表現は法務大臣にとってどういう表現として受けとめていらっしゃいますか、まさか不適切だとは思われていないと思いますけれども、そういった点をお伺いしております。
○金田国務大臣 非常に重い御発言だと思っております。
○山尾委員 なぜ、この性犯罪がほかの犯罪と異なり、魂の殺人とまで表現されているのか、そのゆえんはこの犯罪のいかなる特徴にあるというふうに大臣は考えていらっしゃいますか。
○金田国務大臣 やはり、このたびの法案に出てまいります強制性交等罪などの性犯罪というのは、被害者の人格やその尊厳というものを著しく侵害するものであるという点において私は認識をしているつもりであります。
○山尾委員 それでは、殺人で時効の撤廃がなされたにもかかわらず、魂の殺人と言われる性犯罪について、未成年者を被害者とする場合の公訴時効の停止すら今回盛り込まれなかった理由はなぜですか。
○金田国務大臣 お答えをいたします。
 年少者が被害者である場合の性犯罪被害の深刻さ、あるいは、そのような犯罪について厳正な対処が必要であるということは認識をいたしております。
 もっとも、公訴時効期間の進行を停止したとしても、特に年少者の記憶については変容するおそれが大きいということなどを考慮いたしますと、犯罪事実の立証が困難である場合も少なくないということ、あるいは、性犯罪については被害者の供述が唯一の証拠である場合もあって、そのような場合には、被疑者、被告人の防御という観点からも証拠の散逸が問題となってくるといったようなことから、年少者が被害者である性犯罪について、公訴時効の停止というものには慎重な検討を要するというふうに考えておる次第であります。
○山尾委員 年少者の記憶が変容する、そういう類型的な特徴を持っているということは、私も、そういった未成年者の性犯罪被害者、検事のときに何度も事情聴取をさせていただいていますので、わかっております。そして、この性犯罪という密室で行われる類型的な特徴を持っている犯罪ですから、こういった供述が唯一の証拠である場合があり得るということもわかっております。
 それでは、大臣にお尋ねをします。被害を受けた子供には何の落ち度もありません。その子供の記憶が変容するからもしかしたら有罪をかち取れないかもしれない、こういうリスクをなぜその被害児童のみが負わなければならないのですか。
○金田国務大臣 確かに、被害者が年少の場合には公訴時効を停止する制度を設けておくことはどうかという点についてなんですが、事案によっては有罪の立証が可能な場合もあり得ることは否定できないと思われるわけであります。
 例えば、性犯罪に特有の問題ではないかもしれませんが、およそ犯罪一般に該当するものであって、被害者が年少の場合の性犯罪に限って公訴時効を停止するという合理的な理由になると言えるかどうかという疑問があること。それから、被告人に有利なものも含めて、被告人の防御という観点からも、証拠の散逸の問題を考慮する必要がある、先ほども申し上げたんですが。鑑みますと、被害者が年少の場合の性犯罪に限って取り扱いを異なる形にすることは慎重な検討を要するという思いを申し上げております。
○山尾委員 今、大臣は二点おっしゃいました。未成年者の性被害、このことに限ってこういった時効停止ということをとるのがいいのか、本当にこれだけなのか、もしかしたらそのほかもあるのではないか、そういうようなことを一点おっしゃいました。そして、二点目は、被告人、被疑者の防御の観点ということをおっしゃいました。
 まず、一点目について重ねてお尋ねをいたします。
 未成年者が被害者となる性犯罪については、特徴的な二つの点があります。大臣みずからがおっしゃったように、未成年者でありますから、そもそも自分が性被害を受けているのかどうか、それ自体が認識できない。そして、それが認識できないにもかかわらず時効だけが進行していき、認識できる年齢になったときには時効が完成しているというのは、明らかにほかの場合に比べて正義にもとるのではないか。こういう特徴があるから、未成年者の性被害については、せめて例えば成年に至るまでは時効を停止するべきではないか、こういうことを申し上げています。ほかにもあるのではないかという論点とは全く異なることだと思いますね、これは非常に特徴的な話ですから。
 大臣、この点についてはいかがお考えですか。
○金田国務大臣 ただいまの御指摘に対しましては、局長から答弁をさせます。
○林政府参考人 未成年者について委員御指摘のような問題があるということについては、そのとおりであろうかと思います。それゆえに、他国においても、こういった時効を停止するという制度を持っているところがございます。
 他方で、今回、そういったことの御指摘も踏まえながら、やはりこの問題については、未成年者の問題というのも性犯罪特有の問題ではないわけでございます。性犯罪に限って公訴時効を停止する合理的な理由になるかどうかは疑問があるという点。それから、実際に公訴時効制度を変えることによってそういった起訴、処罰に実際に至るのかということを考えますと、必ずしもそういうことにはならず、依然としてその証拠がないために起訴、処罰できないということも考えられるわけでございます。
 やはりこういった問題については、公訴時効の制度をもって解決するということではなくて、子供たちの権利を守って、被害者を救済するためには、早期にその児童の性的虐待というものを発見し、またこれを顕在化して、適切に刑事手続につなぐようにしていくことが重要ではないか、こう考えている次第であります。
○山尾委員 一つ一つ反論させていただきたいと思います。
 まず、早期に発見する努力をするべきだということはそのとおりです。しかし、それでも早期に発見できない事例というのは必ず残ります。なので、早期に発見する努力をするべきだというのは、私は、正面からの理由になってないというふうに考えます。
 そしてまた、未成年者については、性被害以外についてもそういった記憶の減退等々があり得るので、性被害に限る合理的理由があるのかどうか、こういう疑問を提示されました。
 しかし、未成年者については、今の法体系の中でも、十三歳未満は同意があっても犯罪が成立する、こういった特殊な法規定が置かれております。ほかの暴行とかそういったものとは違うわけですね。
 なぜそれが違うのか。ほかの犯罪態様、被害態様と性被害は違うからです。法自身が、例えば十三歳未満であれば、やはり少なくとも、性に対する被害を受けている、こういうことを認識できない、あるいはしっかりとした認識のもとに有効な同意ができない、そういった判断を法が下しているわけですね。
 例えば、十三歳未満の被害者としましょう。そして、法みずからが、そういった者にはやはり性犯罪、性被害を受けているという認識に欠けているんだ、なかなか有効な同意ができるまでのそういう能力に至っていないんだ、こういうことを認めているにもかかわらず、時効だけが進行して、結局、その能力を身につけたときには時効が完成してしまう。こんなのは法の中で矛盾してしまいますし、正義にもとるというふうに思うんですけれども、この点、大臣はいかがお考えですか。
○金田国務大臣 先ほどの刑事局長の答弁の引き続きの御質問でございますので、引き続き刑事局長に答弁させます。
○林政府参考人 十三歳未満の者について、暴行、脅迫等を伴わなくても強姦罪が成立する、こういったことにしているのは、当然それは、性的な自己決定権、性的な自由というものを、そういった場合には同意することができないような年齢なわけでございますので、そこに着目して、その者については、暴行、脅迫はなくても犯罪が成立するようにしているわけでございます。そういったことと、時効制度をどのように考えるかということとは直接は結びつかない話だと思います。
 委員御指摘のとおり、時効制度を、ここの場合に、これは性犯罪に限らなくてもいいのかもしれませんが、年少の者について、大人になるまであらゆる時効をとめるということ、公訴時効の停止といった制度を持つ、あるいはそういった考え方そのものについて、私は否定するつもりは全くございません。
 しかしながら、現在の公訴時効制度というのは、やはり時の経過による証拠の散逸等に基づく法的安定の要請と、一方で被害を受けた方から見た犯人処罰の要請、こういったものを調和する制度でございまして、そういったことから考えますと、この制度の中で性犯罪のみについてこういった公訴時効の制度ということを援用させることについては合理的な理由を見出せないと考えているわけでございます。
 その合理的な理由というところの一番大きな点は、やはり子供の記憶というものについては変容のおそれが大きいということを考慮いたしますと、こういった公訴時効期間制度を停止したといたしましても、これについて、証拠の散逸から、あるいは記憶の変容から、犯人処罰の要請というものを満たすことにはなり得ない。いや、なりにくい。なり得ないということではございません。必ずそういったものを満たせるわけではないものですから、そういったことで、今回、公訴時効の制度というものについては、これを援用させることを考えなかったということでございます。
 もとより、委員が御指摘になるような公訴時効制度でこの問題についても対応する、そういった対応の仕方というものがあることは重々承知しておりますけれども、今回、検討の結果、そのようにしたということでございます。
○山尾委員 大臣が局長に聞けと言うから、局長に答弁いただいても、私は、性被害特有の事情がありますよねと、合理的な理由を申し上げたと思うんですね。それをお聞きになっているにもかかわらず、答弁の中で、性被害以外でもいいのかもしれないというような言葉を紛れ込ませて論点を拡散したり、ずらしたりするのであれば、私は大臣に答えていただきたいというふうに思いますよ。
 性被害という特有の事情があるから、未成年者の性被害については、この時効を成年まで停止させるということには合理的な理由があると思いますよ。だって、性被害をそれと認識できずに、被害申告して時効を中断することが不可能なのに、不可能を前提にして時効を進行させて、可能になったときは時効が完成している、これはどう見たってこの問題特有の不正義じゃないですか。なぜそれを放っておくんですか。
 今、何か、今回はこういう方法があることは承知しているけれども入れないことにしたと。理由になっていないじゃないですか。
 そして、最後の方にもう一回おっしゃいましたね。結局、証拠が散逸しているから、実際に有罪にできるのかと。なり得ないというのを、なりにくいと訂正されましたけれども。
 そういった、裁判にチャレンジをし、そして立証にチャレンジをし、そこで実際有罪をかち取れるかどうかは、それはわかりません。でも、大人になって、自分が受けていたのはやはり性被害なんだ、決して、わからずに受け入れていた自分が悪いのではないんだ、その犯罪に及んだ相手が悪いんだということをやはり社会にしっかり認識してもらいたい、チャレンジしたい、こういう当事者がいるときに、なぜ、いやいや、やったって有罪になるかどうかわからぬよと。チャンスを奪う理由にはならないと私は思います。
 刑事局長の答弁は理由にならない答弁ばかりだったというふうに思いますし、イギリスは性犯罪について公訴時効がありません。フランスは、未成年者に対する強姦の時効は成年に達したときから進行します。韓国も同様です。ドイツは、主たる性犯罪について、被害者が二十一歳になるまで停止です。なぜ日本は今回これだけの改正をする中でこの程度の正義すら実現できないのかということを、私は大変不思議に思います。
 政府はできない理由ばかりおっしゃいますけれども、性犯罪の罰則に関する検討会、確かに有識者の方は話し合われました。法制審議会刑事法部会、これも外部の方が話し合われました。
 例えば、この検討会の委員あるいは刑事法部会の委員としてこの時効停止を猛反対されたのが、共謀罪のときにも法制審幹事として、このときは全面賛成の立場に立たれた井田教授。検討会、審議会の中で、この未成年者レイプの問題については、時効停止について猛反対をされています。
 そういった立場で意見をおっしゃるのは専門家として自由ですから、それに対して私が感じたことを申し上げたいと思います。なぜなら、政府と同じ方向だから。
 例えば、この井田教授は、未成年者レイプの時効停止の反対理由として、法制審で、性犯罪の場合だけ時効の進行をとめるというのは、性犯罪の場合には、時間が経過してもなお正しい裁判ができるという特殊性があると言えて初めて合理化できる、正当化できると。相当、被疑者防御の観点を重視されておられました。
 一方、共謀罪における参考人質疑では、私が、捜査時期が早まって捜査の範囲が広がる危険があるのではないか、こういうふうに丁寧にお尋ねをしましたが、誤った人を捜査の対象にしてしまうおそれというのは、それは全ての刑罰法規につきものであって、それはやはりそれに対応していかなければならないのであって、今回の法案がとりわけ危険が高いわけではないというように、包括的共謀罪においては、明らかな特殊性を度外視して、私から見るとかなり弛緩した答弁をされていました。
 私は、未成年者レイプについても共謀罪においても、被疑者防御の観点は非常に重要だと思っています。ダブルスタンダードは、私も含めて、こういった議論のプレーヤー一人一人が厳に自分を戒めるべきだというふうに思っています。結論ありきで、そういった被疑者防御の要請を、この犯罪については重視したり、こっちの犯罪については軽視したり、そういうことがあってはならないように気をつけなきゃいけないというふうに私も思っています。
 そして、この未成年者を対象にした性犯罪の時効停止は、もちろん密室犯罪です、第三者の存在が考えにくい、客観証拠が残りにくい、当事者の記憶に基づく供述証拠への依存度が高まりやすい、被疑者防御の観点から課題があることはわかります。だからこそ、時効の撤廃とは言わずに、成年までの時効の停止ではいかがか、こういうふうに提案をしているわけです。
 そういった、被疑者防御、冤罪というリスクを何ら落ち度のない未成年者の性犯罪被害者に全て転嫁させて、裁判で事実を明らかにする努力すら国家が、社会が、政府が放棄するというのは私はやはり正義に反すると思うので、大臣、本会議では、慎重に検討すべき事項だ、こういうふうにおっしゃっておられましたが、私としては積極的にこの改正法実現を契機に検討していただきたいと思いますけれども、大臣自身の言葉で、特に紙を見てどうのということではないと思いますので、この点について最後に答弁をお聞きしますので、大臣の考えをお伺いします。
○金田国務大臣 山尾委員の御質問に、先ほどから刑事局長がお答えをいたしております。その上で、私に再度御質問でございますので、自分の考えを申し上げるとすれば、公訴時効制度は、犯罪一般について、時の経過による証拠の散逸等に基づきます法的安定の要請と犯人処罰の要請というものの調和を図るものである。この趣旨は、性犯罪の被害者にも及ぶものであると考えております。
 なお、この点に関しては、先ほど話題に出ました性犯罪の罰則に関する検討会におきましては、公訴時効制度を変えることによって加害者を起訴、処罰できるのかというと、そのようなことにはならず、依然として証拠がないために起訴、処罰できないと思われるという指摘があったことは申し上げておきますし、また、子供たちの権利を守り被害者を救済するためには、早期に児童の性的虐待を発見、顕在化して、適切に刑事手続につなげるようにしていくことなどが重要だという指摘も出たところでございました。そういう中で私どもは判断してきたという部分を申し上げたいと思います。
○山尾委員 今大臣がおっしゃったことは刑事局長がおっしゃったことで、私はそれに対する反論をもう既に申し上げていますから、再反論をいただきたいんですね。そちらが答弁されて、それに対して私が反論して、もとの答弁に戻ったのでは、議論の積み上げにならないんですよ。
 この時効について、結局、本会議の答弁は慎重に検討するということでありましたけれども、私はしっかりと、この改正を契機に検討の俎上に積極的に上げていただくべきだと、これからも強く主張申し上げたいというふうに思います。
 次に、暴行、脅迫要件についてお話をします。
 当事者の方々からは、暴行、脅迫要件が、判例では反抗を著しく困難ならしめる程度、こういった形で要求されていることも含めて、かなり本来有罪であるべき者が無罪になっているのではないか、こういう指摘があって、この暴行、脅迫要件の見直しをしてほしいと多くの声が寄せられていますし、大臣のもとにも寄せられていたと思います。
 今回この件について見直しがされなかったのはなぜですか。
○金田国務大臣 ただいまの御質問にお答えをいたします。
 強姦罪における暴行または脅迫の程度というものは、判例上、反抗を著しく困難ならしめる程度のものであれば足りると解されております。具体的には、被害者の年齢、精神状態のほか、行為の場所の状況、時間等諸般の事情を考慮して、事案に即した適切な判断がなされているものと考えております。
 御指摘のように、より軽度な暴行等が用いられた場合にも強制性交等罪が成立すると考えることについては、暴行または脅迫が要件とされている趣旨をも踏まえて、慎重な検討が必要であるというふうに考える次第であります。
○山尾委員 私の疑問は、反抗を著しく困難ならしめる程度が要求されているのはなぜなのかということなんです。
 なぜ、困難が著しくなければ反抗できるだろう、こういう話になるんでしょうか。この著しいという要件を所与のものとしてこの要件解釈を続けると、大臣、暴行、脅迫があって、しかも性行為があった、そして本人は同意していないと言っている、だけれども、結局、その暴行、脅迫が著しく反抗を抑圧する程度のものでなかったから強姦罪にならない、こういうことが起きているんですね。
 なぜ、著しいということが必要だというふうに大臣は考えているんですか。あるいは、なぜ、著しいということを必要としている判例の解釈が適切だというふうに考えているんですか。
○井野大臣政務官 暴行、脅迫についてお尋ねでございます。
 確かに、判例上、暴行、脅迫については、反抗を著しく困難ならしめるものの程度というふうになっておりますけれども、そうした程度のものであるかどうかについては、被害者の年齢、精神状態、行為の場所、時間等の諸般の事情を考慮して判断されるべきものと解されておりまして、具体的な状況によっては、確かに、単にそれのみでは、取り上げて観察すれば反抗を著しく困難ならしめる程度には達しないと認められるものであっても、行為の時間、場所、諸般の事情によっては反抗を著しく困難ならしめる程度の暴行、脅迫が認められ得るというふうに考えております。
 現に、判例、具体的な事例においても、例えば手首をつかんで引っ張る、背後から抱きつく、ソファーに押し倒すなどの有形力の行使のみが認定された事案で、被告人と被害者の体格差や、犯行場所に二人きりであったなどの事情を踏まえ、反抗を著しく困難ならしめる程度の暴行、脅迫があったと認定されている事案があるというふうに承知しております。
○山尾委員 こういった判例解釈のもとで適切に事案を当てはめて適切な判断を下している判例があるということは、私もそう思います。ただし、適切な判断を下している判例があるということは、必ずしも適切ではないんじゃないのという判例もあるからこういうことが問題になっているのであって、いや、中にはちゃんと有罪になっていますよということは、これのままでいいという理由には全くならないんですね。
 それで、私から、これはちょっとやはり問題を感じるべきだという、判例について、有罪、無罪の判断が、全部を詳細に検討して間違っているとか正しいとか言うつもりはありません、ただし、幾つかのこういった性犯罪の事案について、少し判示の文言を引きながら、本当にこういった判示を許すような要件解釈でいいんですかということをお伝えしたいというふうに思います。
 例えば、東京高裁、平成二十六年九月十九日の判例です。これは、二十五歳の成人男性が十五歳の小柄な女子中学生を、夜の学校の校庭、人けのない裏側、暗い場所で姦淫した事件で、暴行、脅迫が抵抗を著しく困難にする程度のものとまでは言えず、無罪となった事例です。
 その判示の一部を読みます。被告人は、女生徒の肩を押して背中をコンクリートブロックに押しつけた以外は、合意の上での性交の場合にも伴うような行為に及んだにとどまり、女生徒の抵抗を排除するような暴行、脅迫は加えていない、さらに、ここは大事です、性交の際の両者の体勢によれば、女生徒が足をばたつかせるなどしさえすれば、性交を容易に妨げることができたと言えると。足をばたつかせれば逃げられたでしょうと言っているんですね。
 でも、この事案では、この被害女子は、当時、左膝の靱帯をけがしていたことが事実認定されています。そうすると、当然、足をばたつかせるなどの抵抗も困難だったんじゃないのか、こういう問題も提起されるとも思われるのですけれども、判例は、この女生徒は、この性交の現場まで二キロ以上歩き、性交の際にもズボンをおろされないようつかんだり、被告人の手を押さえるなどの抵抗をしたというのであるから、それなりの運動能力を保持していたと言える、こういうふうに判示されているんですね。
 そもそも性犯罪被害者が、恐怖の余りフリーズしたり、感情の麻痺が起こってしまったり、何かすればよりひどいことをされるんじゃないかというふうに思って当たり前の状況が十分にあり得るにもかかわらず、こういった事情は十分に考慮されず、ましてや、ズボンをおろされないようつかんだ行為とか、手を押さえるなどの抵抗をした、こういうことは認めながら、そういう抵抗をしたということをある意味逆手にとって、こんなこともできたのだから運動能力はあったでしょう、足をばたつかせることもできたはずでしょうと。著しい抵抗をしていない、つまりこの被疑者の暴行、脅迫は抵抗を著しく困難にする程度のものではない、したがって無罪と。
 こういう事案は、今の事案ですね、専門家の間でもその判断に疑問が呈されている判例ですけれども、裁判例ですけれども、個々の判例を知らなくても当たり前だと思いますが、大臣、この事案を聞いたことはありますか。
○金田国務大臣 今、詳しく教えていただきました。
○山尾委員 スルーすればいいんですけれども、私、そういう答弁は嫌いなので、申し上げますね。
 詳しく伺いましたというのは、簡単には知っていたんですか。私は、知らなかったと思いますよ、この事案は。知っていたか、知らなかったかと聞いているので、どうぞお答えください。
○金田国務大臣 全く知らなかったかと言われれば、そうではありません。
○山尾委員 では、こういった事案を御存じの上で、本会議のとき大臣は、この暴行、脅迫要件の裁判所の判断について、事案に即した適切な判断がなされている、こういう答弁をされているんですか。
○金田国務大臣 先ほど、私が最初にこの課題について答弁をしたとおりであります。
 強姦罪における暴行または脅迫の程度は、判例上、反抗を著しく困難ならしめる程度のものであれば足りると解されており、事案に即した適切な判断がなされているものと考えておるわけであります。
○山尾委員 この性犯罪厳罰化法は、みんなで成立させて、しかし、残された課題をちゃんと顕在化して議事録に残そうという思いで質問をしていますし、無罪に対して疑問が呈されている判例というのはたくさんあるので、別に知らなくていいんですよ。
 ただ、こういう事案を知っていただいて、この場でも共有すれば、やはりちょっとこの問題は今後この法務委員会でも、あるいは大臣としても、ちゃんと検討していかなきゃいけないよね、みんなでそういう問題意識をちゃんと共有しようという思いで聞いているんですから、何か答えられないようなときに、全然関係ない、最初に答弁したとおりと、もとの、全然関係ない答弁ブロックに戻るような不誠実な姿勢はちょっとやめていただきたいというふうに思います。(金田国務大臣「委員長」と呼ぶ)いや、結構です、私の質問に答えていただければ。
 もう一つ、事案をお話しさせていただきましょう。
 鹿児島地裁名瀬支部、平成十四年の事案です。被害女性に自動車で自宅まで送るように言って、被疑者を自宅まで送り届けた被害女性に対して、被疑者が自分の部屋で姦淫し、傷害を負わせた強姦致傷の被疑事件です。これも同じように、暴行、脅迫の程度が足りないということで無罪になっています。
 この判決では、こういうふうに書いてあります。被告人による暴行も、手をつかんで引っ張ったり、胸を突いて倒したり、馬乗りになるといった程度のものであり、強姦行為の際に多く見られる殴打、扼首などの激烈な脅迫がなされた形跡はないとして、無罪です。なおかつ、この判示のなお書きで、翻ってみるに、被害女性が格別の抵抗行動をとらなかったことから、被告人はこのような抵抗排除手段をとる必要がなかったと言うこともできると。
 先ほど政務官が、判例の解釈の中でも、ソファーに押しつけたというか、こういう事案でも認められていることがありますよと。あるんでしょう。でも、さっき申し上げたように、コンクリートブロックに押しつけた場合でも認められていない判例もあるんですね。
 さっき政務官が、手をつかんで引っ張った、暴行、脅迫でもこういうような認めている事案はありますよと。あるんでしょう。でも、このように、手をつかんで引っ張ったりという程度のもので、殴打とか首絞め、扼首とかこういう激烈な脅迫はなかったということで、結局無罪にしている判例もあるんですね。
 ただ、周辺事情が違うので、一概にそれが適切だとか不適切だとか、ここでそれを確信的に判断するつもりはありません。だけれども、こういった判示がなされていることは事実なんですね。だから、きちっと被害者に寄り添った判断をする判例もあれば、疑問が呈されるような判例もある。
 私は、今、裁判所、裁判官個々の資質も一つの論点としてあるでしょう、でも、やはりこういったかなり幅の広い解釈が当てはめの中でされてしまうということは、つまるところ、構成要件の設定にやはり問題があるのではないですか、こういうことを申し上げているんですね。
 だから、やはりこの暴行、脅迫要件をもう少し被害者の声に寄り添って考え直す、検討し直す、こういうことは私はやるべきだというふうに思いますけれども、大臣、この点はいかがですか。
○金田国務大臣 先日の本会議において私が述べたその考え方を先ほどお尋ねになりました。したがって、最初の申し上げたことと同じことを申し上げることになった経緯はあります。
 そして、今また改めて聞かれているわけですから申し上げますが、事案に即した適切な判断がなされているものと考えてはおりますが、御指摘のように、強制性交等罪が成立する際の、暴行または脅迫が要件とされているその趣旨をも踏まえて慎重な検討が必要であり、また、委員から御指摘があったそういうことの課題が、今御指摘されているその背景というものも踏まえて、私もそういう御指摘もあるんだなというふうに改めて受けとめておる次第であります。
○山尾委員 今大臣がおっしゃった暴行、脅迫が要件とされている趣旨は何ですか。
○井野大臣政務官 あくまでも保護法益が、女性というか被害者の性的自由意思を抑圧というか反するというか、そのために、明確にするために暴行、脅迫というものがあるというふうに考えております。
○山尾委員 政務官のおっしゃるとおりだと思います。
 本質は、その意思に反して性的自由が奪われている、これが本質である、ただし、その意思に反しているかどうかというのは内心、主観面だから、それを客観面、客観的な要件として顕在化させておかなければ逆に被疑者防御の観点にやはり問題がある、そういった主観的な内面のものを客観面にある意味転化させた、顕在化させた構成要件が暴行、脅迫だ、そのとおりだと思います。
 私も、さっき申し上げたように、この性被害であったって被疑者防御の観点は重要だと思うから、何らかの形でそういった客観面の構成要件をきちっと摘示し続けて、外延をはっきりさせておくことは重要だと思う。
 だけれども、そうであれば、暴行、脅迫というものを仮に必要とするとしても、何も著しく反抗を困難にする程度の暴行、脅迫である必然性は全くないのではないかというふうに思うんですけれども、政務官、いかがですか。
○井野大臣政務官 あくまでも構成要件上は暴行、脅迫という文言のみでございまして、著しく反抗を困難ならしめる程度のものというふうな、判例による解釈でございますので、場合によっては、こういった議論を通じて裁判所、最高裁の裁判例とかの変更があるかもしれませんし、それはまた事案のケースによるものなのかもしれません。ここまでしかちょっと答えられないということで御理解いただければと思います。
○山尾委員 先ほどの大臣や政務官がおっしゃっている規範は、恐らく昭和三十三年の最高裁判例の規範をおっしゃっていると思います。何年前でしょうか。昭和三十三年だから、五十九年前か。
 そろそろ、裁判所の判例が変わるかもということではなくて、やはり立法府が立法府の意思でこの構成要件の変更ということに取り組む時期に来ているんじゃないですか。今回の刑法改正だって一つの大きな取り組みだと思いますけれども、やはりその次に、ここにもしっかり立法府が責任を持って検討していく、対処していくということが私は大事だと思いますので、そういった観点でしっかりと今後も法務委員会で議論していきたいというふうに思います。
 その次に、少しだけ監護のことについて論点提示をしたいと思います。
 今回、いわゆる現に監護する者による性犯罪については暴行、脅迫がなくても犯罪化するということが提示をされております。このこと自体は一歩前進だと思いますが、私が検事をやっていたときに、忘れられない映像があるんです。暴行、脅迫はない、しかし、明らかに少女の意思に反して、その性的自由が大人、学校の先生によって踏みにじられている強姦の撮影動画です。そういう映像をたくさん見てきました。学校内で先生が生徒に、スクールセクハラなんという言葉ではおさまりませんね、強姦、レイプをして、そしてそれを動画に撮っているんですね。そういう事例をたくさん見てきました。その動画もたくさん見てきました。
 私は、全ての先生と生徒に対して、まさに今回の現に監護する者に当たるかどうかということについては、これは個別具体的な判断があってしかるべきかもしれません。
 ただ、大臣は答弁の中で、今回の現に監護する者の解釈を本会議でおっしゃっています。一般論として申し上げれば、教師については、通常は、生徒との間に生活全般にわたる依存、被依存ないし保護、被保護の関係が認められないことから、当たらない場合が多い、こういうふうに答弁されていますね。
 だから、規範として生活全般にわたる依存、保護の関係が必要だ、こういう前提に立っているんですけれども、なぜ生活全般にわたることが必要なのか。
 小学生、中学生、やはり年端のいかない学生にとって学校という場は、生活の全般、全てではないかもしれないけれども、ほとんど自分の世界がそこにあるという、大変大変、そこからなかなか自分の意思で逃れられない一つの社会です。その中でこういう事案が起こるのであれば、現に監護する者の中に場合によってはやはり先生というものが入ってしかるべき事例が私の感覚でいくと相当あるのではないかというふうに思いますけれども、大臣、いかがですか。
○盛山副大臣 山尾委員の御質問についてでございますけれども、監護者わいせつ罪そして監護者強制性交等罪において、監護するというのは、民法に親権の効力として定められているところと同様に監督し、保護することをいい、十八歳未満の者を現に監護する者とは、十八歳未満の者を現に監督し、保護している者をいうわけでございます。
 学校の先生であり、あるいは学校の先生に限らないと思いますけれども、どの程度その被害者にとって、先生は生活の中でほとんど全てとおっしゃいましたけれども、それはやはりケース・バイ・ケースということになるかと思うものですから、具体的ケースに応じて見ていかなければわからない。ですから、当たる場合もそれはある、そういうことじゃないかと思います。ケース・バイ・ケースだと思います。
○山尾委員 ケース・バイ・ケースという御答弁をいただきました。一般的には当たらないと言い切ってしまうよりは、やはりケース・バイ・ケース、個別具体的な事案によるんだ、こういう答弁が私は正確だろうというふうに思いますし、こういった答弁をいただいたことで、やはり今回の監護者、監護する者によるこういった性犯罪というのは暴行、脅迫がなくたって犯罪なんだということがしっかり社会に周知をされることは大事だというふうに思います。
 この点は、これが成立した暁に、実際にどういった運用がなされ、どういった事例で判断が争われ、そしてどういった事例において監護する者に当たったり当たらなかったりして、そこにはやはり処罰のすき間というのがあるのかないのか、そういったことを法務省としては丁寧に今後検証、分析していただきたいというふうに思います。
 その次に、配偶者間にも強姦罪が成立するということを明示すべきではないか、こういう論点がございました。今回この明示規定を見送った理由についてお尋ねしたいと思います。
○金田国務大臣 お答えをいたします。
 そもそも、条文上、配偶者間における強姦罪あるいは改正後の強制性交等罪の成立は否定されておりません。これに反する判例もありません。むしろ、配偶者間に限って明文の規定を設けた場合には、配偶者以外の親密な関係においては強姦罪が成立しないかのような誤解を招きかねませんので、かえって問題が生じ得るのではないかと考えられます。
 したがいまして、配偶者間においても強姦罪や強制性交等罪が成立し得る旨の明文の規定を置くことには慎重な検討を要するものと考えておる次第であります。
○山尾委員 いつも出てくる、ほかの親密な関係には成立しないという誤解が招かれるというのは、私はためにする答弁だなと思っていつも聞いているんですけれども、そんなことはないですよ。別に一般的に強姦が成立するという刑罰法規がちゃんとあって、配偶者間でも当然ですよということを置くことによって、何で突然、そのほかの親密な関係は成立しないという誤解が招かれるんですか。これは全く反論にならない反論だというふうに私は思っています。
 それに対して今大臣が、条文上否定されておらず、反対する判例がないというふうにおっしゃったので、私は指摘をしたいと思いますけれども、例えば広島高裁の判例、婚姻関係の破綻を強姦罪成立の要件としています。ひっくり返せば、破綻していなければ強姦罪は成立しない、むしろそういう誤解を招きかねない判例ですね。あるいは、性交渉を夫の妻に対する権利の行使と捉えて、暴行、脅迫を伴うような場合は、これは適法な権利行使じゃないからだめだよ、こういう東京高裁の判例もあります。
 私は、実際法文上は否定されていないし、判例もしっかり、当然夫婦間だって、これは庇護の対象だから、こういう文脈だけで言っているんじゃないんですよ、夫婦だって個と個の人間関係ですから、夫婦だからということをもって、個人の尊厳が傷つき、実際は犯罪であるものが犯罪でないかのように扱われるのはおかしい。
 条文に明示されていないけれども、ちゃんとそれが、判例もきちっとわかって、毎回毎回ちゃんと裁判例を出してくれるならいいけれども、実際には婚姻関係の破綻がなければ強姦罪は成立しないとかそういう判例があるので、これは明示をしたらいいんじゃないですか、こういうことを申し上げているんですけれども、いかがですか。
○井野大臣政務官 私は、これは恐らく、大臣が答弁されたとおり、夫婦間でも当然否定されていないわけですし、かえって、夫婦間のみでも成立するよという規定を置くこと自体も、ちょっとそれは不自然なのかなと。いろいろな恋人関係もありますし、いろいろな親密な関係があるわけですから、夫婦間だけなぜ規定が置かれるんですか、逆にそういった疑問点も出てくるのではないかなというふうに思いますので、夫婦間のみ規定を置くというのはちょっと適切ではないというふうに思いますが。
○山尾委員 夫婦間だから性交渉を夫の妻に対する権利の行使と捉えている判例があるから、そういう誤解があるから、夫婦間でも、いや、おかしいよ、こういう明示の規定を置く必要性があるんじゃないか。必要性がなければ要らないんですよ、別に。でも、あるんじゃないですかということを私は申し上げているわけです。
 もう一つ私はお伺いしたいんですけれども、この明示の規定について、国家権力が家庭内に介入することは危険なんだ、こういう理由でこの明示を反対されている方もおられます。大臣はこういう考えをとられているんですか。
○金田国務大臣 私の考え方は、先ほど申し上げたとおりであります。
 細目的な話になりますので、刑事局長に答弁させます。
○鈴木委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○鈴木委員長 速記を起こしてください。
 金田法務大臣。
○金田国務大臣 明示の規定を置くべきかという御質問であろう、こういうふうに思いますが、それであれば、私が先ほど申し上げましたが、配偶者間に限って明文の規定を設けた場合には、配偶者以外の親密な関係においては強姦罪が成立しないかのような誤解を招きかねず、かえって問題が生じる、このように考える次第であります。
○山尾委員 私の質問は、要するに、配偶者間の規定を明示しなかった理由について、国家が家庭内に介入することは危険だからやめた方がいい、こういう論を張る方もいらっしゃいます、大臣としては、これは理由に入っているんですか、入っていないんですかという質問です。
○金田国務大臣 お答えをいたします。
 御指摘のような考え方はとっておりません。
○山尾委員 こういう考え方はとっていないということでした。国家権力が家庭内に介入することはよくないから入れないんだという考えはとっていないということですね。
 私の考えをこの件について申し上げます。
 家庭内で犯罪が起きている場合は、必要があるならしっかり権力が介入すべきだと思います。だけれども、自民党憲法草案にあるように、相互に助け合う義務のように、全く犯罪と関係ない家庭内、夫婦間、こういった規律について国家が介入する必要は全くないし、すべきでもないということを私は申し上げたくて今お聞きさせていただきました。
 最後に、済みません、時間が本当に少しになってしまいましたけれども、司法面接の話を伺いたいと思います。
 司法面接、要するに、年少者が性被害に遭ったときに、繰り返し、警察官、検察官、児童相談所の職員、お医者さんに何度も何度も被害状況を尋ねられることによる精神的な負担を軽減し、そしてまた、何度も尋ねられて供述が変わっていくことによって信用性を否定されて無罪になる、こういうことを防ぐために、できるだけ専門家が連携して、可能な限り一度で終わらせよう、これが司法面接の考え方です。
 そこで、まず法務省にお尋ねします。
 平成二十七年十月二十八日に、最高検察庁、警察庁、厚労省の三者が一斉に、多機関連携を進めようと通知を出されました。ここからどうなったか。以後、司法面接は、法務省は何件やりましたか、厚労省は何件やりましたか、警察庁の把握するところでは何件やりましたか。
○盛山副大臣 今、山尾先生御指摘の、平成二十七年の通知以降、我々法務省と関係の省庁で密接な連携、検討をしております。
 具体的には、警察庁、厚生労働省などの関係府省庁が参加する児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議を設置して、情報の共有その他、連携策の強化をしているところであります。
 具体的な件数につきましては、局長の方から答えさせたいと思います。
○林政府参考人 件数を申し上げます。
 平成二十七年の十月二十八日の通知発出以降平成二十八年九月三十日までの間に、百八十八例ございます。
○堀内大臣政務官 厚生労働省では、実施状況について四半期ごとに都道府県などから報告を求めておりまして、先ほどと同じ期間、平成二十七年十月から平成二十八年九月までに、合計二百十四件実施されているというふうに報告を受けています。
○高木政府参考人 警察庁におきましては、都道府県警察から報告を求めるに当たりまして、刑事事件として立件したものに限定して報告を受けているところでございますが、お尋ねの期間におきまして、関係機関による協議を行った上で代表者による聴取を実施し、事件を送致した人数につきましては、合計百三十九名の児童でございます。
○山尾委員 ちょっと時間が来ていますが、一点だけ法務省に追加で聞かせていただいて、問題提起で終わりたいと思います。
 では、法務省、百八十八件ということですけれども、例えばその中で、最もの趣旨である、結局、一回で終わらせることができたのか、二回以上になってしまったのかとか、信用性が争われたのは何件だったのかとか、無罪になってしまったのは何件だったのかとか、ちゃんと録音、録画でその信用性を担保できた、こういうものは何件だったのかとか、百八十八件という件数以外に、この司法面接を今後連携してやっていくに当たって、必要な項目、リストといったものをちゃんと分析されているんでしょうか、いないんでしょうかという質問です。
○林政府参考人 今、幾つか言われましたが、例えば二回以上の事情聴取が行われた事例というのは、先ほどの事例の中で三十四例ございます。それから、無罪判決というものはございません。それから、録音、録画が実施された事例というのは百五十例ございます。
○山尾委員 時間が過ぎたので終わりたいと思いますが、この司法面接をぜひしっかり前に進めていただきたいんです。きょう浮かび上がったのは、結局、三者で定義がばらばらなんですね。警察は立件したものを数えている、厚労省は二百十四件、法務省は百八十八件というふうに、定義が統一されておりません。しっかりと連携して、きちっと必要な定義を統一して情報共有していただきたいというふうに思います。
 そして、私は、実際法務省にはきのう聞いたんですよ、何件ありましたかと。そうしたら、その時点では数えていないということだったんです。でも、きのう、きょうにかけて頑張って数えていただきました。百八十八件、そして二回以上が三十四件とか今局長はおっしゃいました。きのうからきょうにかけて数えていただきましたが、大臣、それではだめなんですね。せっかく通知を出して三者で連携していこうとおっしゃっているんだから。しっかりまず中央で三者の、名前はいいです、情報共有のための検討会なり協議会を立ち上げてください。そうでないと、それぞればらばらの定義で、結局、何が必要なのか共有できないままこの試みは雲散霧消してしまいます。
 ぜひそのことを大臣にしっかりとお伝え申し上げ、そして、実際に論点が終わらないんです、きょう一時間いただきましたけれども。最初に申し上げました、刑法の改正は今国会で実現をするんでしょう。でも、残された論点がたくさんあり、しっかりとそれを解消していくのは私たち立法府の役目なんだということをこの委員会全員で共有して、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
○鈴木委員長 次に、井出庸生君。
○井出委員 午前に引き続き時間をいただきまして、ありがとうございます。
 午前中の質疑で、強姦それから準強姦の罰すべきその本質は不同意、不承諾の行為である、そこに、その証左として暴行、脅迫ですとかいろいろな構成要件が来ていると。最後に付言しましたのは、その不同意、不承諾の一連の行為というものは、面識のない者より面識のある者同士の方が、外形上見えない形で、暴行、脅迫とかがなくても、不同意、不承諾というものが鮮明化しない中で性犯罪が行われることが起こりやすいと。ある本の一節を紹介させていただきました。
 そこで、まず、きょうお配りをしている資料、新聞でございますが、きょうだいの兄が加害者、妹が被害者になってしまった事例を御紹介します。「許さない:性暴力の現場で」「兄からの虐待 逃げ得…納得できない」、二〇一六年十二月三日、毎日新聞地方版、群馬県内版の連載の第四回目でございます。
 少し御紹介します。
 うそでしょうと母は言い放った。兄を訴えたい、許せない、裁判で罪を償ってほしい、そう願ったが、親から反対され、警察には届けなかった。
 ナツキさん、仮名は、小学生のころの記憶がほとんどない。五歳上の兄のわいせつ行為が始まったのは小学校に入ってすぐのころだった。
 中学一年の冬、学校で警察官による防犯講話が開かれた。警察の言葉に、初めて兄の行為が強姦という犯罪だと知った。
 ねえ、何でそんなことするの。その日の夜、思い切って兄に聞いた。返ってきたのは、何となくの一言。何となく。頭が真っ白になった。はらわたが煮えくり返る。私の人生を壊しておいて、何となくって何なの。
 翌日、学校のスクールカウンセラーのところに駆け込んだ。すぐに担任教諭と教頭が加わり、家庭に連絡が入った。駆けつけた母親は、娘の顔を見るなりこう言い放った。うそでしょう、お兄ちゃんがそんなことするはずない。親戚宅を経て、県内の児童養護施設に移った。
 親族の冠婚葬祭には極力出席しない。兄と顔を合わせたくないからだ。兄は普通に就職し、恋人がいる。あのときの母の心情を思えば、息子を犯罪者にしたくなかったのだろう。でも、納得はできない。
 記事をかいつまんで、ストーリーを御紹介しました。この記事では、こうしたきょうだいの加害者、被害者の問題、今回改正項目の中に盛り込まれております十八歳未満の子供に対する監護者の性暴力の罰則が親子の間にとどまる、きょうだいの間、きょうだいというものは含まないことになったという問題提起をされております。
 この記事は、このナツキさんという仮名の方が、小学生のころの記憶がほとんどない、五歳上のお兄さんのわいせつ行為だと。そうしますと、お兄さんは中学生ぐらいからそういうことをしていたのかなと推測されるわけです。そういうことを考えますと、先ほど山尾委員が指摘をされました、被害者が幼いときの時効というものをどう考えるかということもこの事例で考えることができるかと思います。
 私がきょうこの事例でまず伺いたいのは、きょうだいでそういうことがあったときに、親が事を荒立てたくない、その結果、被害者が大きな傷を負うことがある。このケースは、家族とその後離れて、きょうだいは離れて暮らしておるようですが、場合によっては、きょうだいですから、離れたくても離れられないようなケースもあるかもしれません。私自身、こういったものはそもそも把握や対策というものが難しい、それを承知の上で、一体行政機関においてどういう把握また把握の仕方があるのか、その取り組みについて伺いたいと思います。
 一応、通告は法務、文科、厚労とお願いをしているんですが、法務省は何かございますか。なければ、あるところから。では、お願いいたします。
○山本政府参考人 お答え申し上げます。
 きょうだい間で子供に対し性暴力が行われているにもかかわらず、保護者がそれを放置している場合は、児童虐待の一類型であるネグレクトに該当すると考えてございます。
 ネグレクトの件数は児童相談所における虐待相談対応件数の内容別件数として把握しているところでございますが、きょうだい間の性暴力など、その細目の内訳の件数については現時点では十分な把握ができておりません。
 被害者が子供であるきょうだい間の性暴力のうち、児童相談所が関与しているケースについては児童相談所が把握しており、国として性暴力事案についてどのような形で把握することが適当か、児童相談所や関係者の御意見も伺いながら検討していきたいと考えております。
○神山政府参考人 お答え申し上げます。
 特にきょうだい間の性暴力に限定したものではございませんが、性暴力被害者のケアや加害者の更生のための取り組みは大変重要なものであると認識してございます。
 このため、文部科学省におきまして、性暴力被害者のケアにつきましては、まず学校におきまして日常の生徒指導や健康観察などを通じて児童生徒の問題を早期に発見するようにしていますとともに、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどの教職員が被害を把握した場合には、児童相談所を初めとする関係機関と連携して対応することとしております。
 加害者の更生につきましては、文部科学省として特にこれに直接の取り組みは行っておりませんが、再犯を防止するという観点から、例えば加害者のうち希望する者に対しまして、学び直しを支援するためにその機会の提供を行っているところでございます。
 今後とも、性暴力被害者のケアに取り組みますとともに、再犯の防止につきましても、関係省庁と連携し、取り組みを行ってまいりたいと考えてございます。
○井出委員 法務省は、もし特に何かあれば。なければないでも結構ですが。
○林政府参考人 法務省としましては、きょうだい間の性暴力等について、具体的な事案をどのようにつかむかという観点ではなくて、本法案の立案の過程で、きょうだい間の性暴力についてどのような実態に触れたかということでお答えいたします。
 法務省においては、性犯罪の罰則に関する検討会とか法制審議会の議論の参考とするために、地位、関係性を利用した性的行為の起訴事例というものを調査しました。その中には、実の親子間あるいは養親子間の事案のほかに、きょうだい間、兄妹等の事案についてがございました。兄について、強姦罪や児童福祉法違反の罪で起訴された事例もございました。
 また、きょうだい間、兄妹間の性暴力の実態につきましては、法制審議会の部会の中で行われたヒアリングにおきましても、兄と父親による性暴力の被害者であって、近親姦虐待被害当事者のための自助グループの活動をしている方から、兄妹間の性暴力の実態等について御意見をお聞きしたところでございます。
 その際、お聞きした方からは次のような意見が述べられておりました。
 誰かに気づいて助け出してほしい気持ちと同時に、世間にばれることで自分や家族がその先どうなるか不安で、誰にも怖くて言えなかった。加害者になる前の、大好きであった父や兄が処罰されるということについても抵抗があった。被害者も加害者も社会全体も性被害に遭うことを恥と認識しており、この認識を変えることで被害を訴えやすい社会になると思う。子供は助けを求めたり何らかのサインを発信しているが、それをキャッチしたり安全に介入できるような知識や経験のある人たちにつながらなければ見過ごされ、状態を悪化させ、結果的に諦めてしまう。
 こういったような意見が述べられていたところでございます。
○井出委員 このきょうだい間の事案というもの、この新聞の事例ですと、きょうだい間の強姦という話でありますので、れっきとした犯罪であると思います。また、子供同士の性非行という言葉がふさわしいのかどうかわかりませんが、いろいろなケースも想定されます。
 あくまでこれは一般論なんですが、犯罪の被害に遭われた方というのは、加害者に対するきちっと処罰をしてほしいという感情と、それともう一つ、犯罪被害者の思いとして、どうしてそういうことをしたのか、真相究明。当然、犯罪というものは加害者に責任がありますので、謝罪して許されるということではございませんが、謝罪を求められる被害者の方もいらっしゃいます。新聞記事は、このお兄さんは本人から直接聞かれたときに何となくと答えていると。
 今、各省からそれぞれ話を伺いまして、私自身もこれは物すごく表面化しにくい類型の話なのかなと思っております。こうしたものをどうしていくべきかということで、一つ、きょうは性教育の話について取り上げたい。
 性教育は、男性、女性の身体的な発達の経過を教科書で紹介する。それから、高校生の教科書では、例えば結婚生活とか家庭生活ですとか、そういったものも紹介されております。その一方で、ならぬものはならぬ、こういうことをしてはいけないというような記載は余りというかほとんど見当たりませんし、あと、そもそも、私は本会議のときにも申し上げたのですが、男性と女性が初めて性交渉を持つような年代というものもどんどん低年齢化していると言われている。
 そういうときに一番しっかり教えなければいけないのは、本会議でも触れましたが、やはり両者の同意である。それも、単に興味本位で、うん、いいよという話ではなくて、一体それがどういうことで、どういう結果をもたらすか、それに責任を持てるか。うなずくのも、嫌だと言うのも自分に委ねられている。そういったことも含めて、その内容を理解し、対等性があり、強制性がなく、そういった真の意味での同意というものを教えるべきではないか。
 小学生のときからそれを教えるかどうかは大変議論もあるかと思いますが、少なくとも高校生には教えておく必要があると思います。中学生だって場合によっては教える。全ての子に教える必要があるかどうかはわかりませんが、そういうことも検討すべきではないか。
 そこで、どうしてそういった同意についての記載というものがないのか、その点についてまず伺いたいと思います。
○瀧本政府参考人 お答え申し上げます。
 学校における性に関する指導は、学習指導要領に基づき、児童生徒が性に関して正しく理解し、適切に行動をとれるようにすることを目的に実施されております。具体的には、体育科、保健体育科、特別活動を初めとして、学校教育活動全体を通じて指導することとしております。
 また、指導に当たりましては、委員からも今御指摘がありましたとおり、発達段階を踏まえること、あるいは学校全体で共通理解を図ること、保護者の理解を得ることに配慮するとともに、個々の児童生徒間で発達の差異が大きいことから、集団で一律に指導する内容と、個々の児童生徒の抱える問題に応じ個別に指導する内容を区別して指導することとしています。
 こうしたことを踏まえまして、中学校や高等学校の保健体育科の学習指導要領におきましては成熟に伴う変化に対応した適切な行動が必要となることとしており、指導要領の解説において、自分の行動への責任感や異性への尊重など、性に関する適切な態度や行動の選択が必要となることを理解できるようにしているところであります。
 また、御指摘のとおり、直接に同意ということについては明記をしておりませんが、性に関する教育に当たりましては、例えば道徳における、異性の特性や違いをきちんと受けとめ、相手の人格をとうとぶ姿勢を育成すること、あるいは特別活動において、男女相互の理解と協力の指導に関連して、性に関する指導との関連を図った指導を工夫することといったものも行っておりまして、学校教育活動全体を通じた性に関する指導の充実に努めているところでございます。
 文科省としては、引き続き、こうした点についての指導について努力をしていきたいと思います。
 以上であります。
○井出委員 今、いろいろお話をいただきました。
 少し私からも御紹介をさせていただきますと、例えば中学校の教科書、東京書籍の「新編 新しい保健体育」。ここには「異性の尊重と性情報への対処」という項目がありまして、一時的な感情に流されちゃいけない、自分の気持ちや行動をコントロールして、お互いの心や体を大切にすることが必要ですというような記述があります。これなどはまだ、同意とは書いていないんですが、そう解釈もできなくないかなと。
 それから、高校で広く使われていると言われている大修館書店の「現代高等保健体育」。男女の人間関係は、何よりも人間として対等で平等な関係を前提として成り立つ。このあたりは、多少その後を先生が補足していただけば、そうした同意というものにつながっていくのかなと思うんですが。
 いかんせん、高校や中学の学習指導要領を見ますと、お話があったように、相互の理解ですとか、尊重、責任感ですとか、正しく理解する、適切に行動するというものが中学校も高校も至るところに出てくるんですが、男女間の同意であるとか、そういう具体のことは出てこない。正しく理解とか、相互の理解とか、尊重、責任感という言葉で同意というものを読み込め、そういうことなのでしょうか。
○瀧本政府参考人 お答え申し上げます。
 委員から御指摘のあった保健体育科を中心にいたします指導においては、性教育の文脈においての異性の尊重という点が学習指導要領やその解説に記載されており、それを具現化する教科書においても今紹介いただいたような記述があるところでございますが、これに加えて、先ほど申し上げたとおり、特別活動において男女相互の理解と協力の指導という一般論としての指導のところがございますが、ここであえて指導要領の解説においては、性に関する指導との関連を図るようにと。
 このことは、道徳科におきます、異性の特性や違いをきちんと受けとめ、相手の人格をとうとぶ姿勢を育成する、ここにつきましてもあえて、保健体育科における性に関する指導との関連を生かした指導の工夫をということで望んでいるところでございまして、保健体育科を中心としつつも、学校におきます性に関する指導は、道徳であったり特別活動であったり、さまざまな分野の教育活動を通じて全体として行われているところでございます。こうした中で、先生のおっしゃるような趣旨も含めて指導を行っていると考えております。
 以上であります。
○井出委員 教科書が大変何か抽象的で、前向きと言えばいいかもしれませんが、オブラートに包んだ表現であっても、先生の中にはきちっと説明される方もいるかもしれません。また、いないかもしれませんので、一概に現状の性教育がいいとか、だめだとか、そういうことを申し上げることはなかなか難しいと思うんです。
 道徳の教科書、たまたま私は三年ぐらい前に文部科学委員会におりましたので、「私たちの道徳」という中学校の教科書、そこにもきちっと「異性を理解し尊重して」という項目があります。
 好きな異性がいるのは自然のこと。あしたを生きるエネルギーにできたらいいと思う。それは私もそう思います。だけれども、二人だけの殻にこもってしまうと周りが見えなくなって、人間としての幅を狭めてしまうかもしれない。考えてみよう、男女交際のあり方を。
 あとは何かメモ書きみたいなものがあって、好きに考えてくれ、あとは先生次第というような形です。
 子供同士の話がなかなか表面化しにくいということは先ほど申し上げたとおりです。被害に遭うか遭わないかというのはその二人の関係もありますので一概に言えないんですが、やはり断るべきときは断る、断られたときはそれはだめなものだと認識する、そういうことを含めても、やはり性教育のあり方を少し考えていかなければいけない。
 もっと言えば、性教育は、小学校も中学校も高校も、まず男性と女性の人体の解説図から始まるわけですね。授業は四十五分、五十分が一こまで、何回やるのかちょっと詳細には存じていませんが。その最後の方にそういう心の部分、それも、尊重するとか、相互に理解するとか。よく歴史の授業が最後まで行かないじゃないかというようなことを従前から言われておりますが、果たして心の、男女間の尊重ですとか、平等ですとか、そういうところまで指導が行っているのかというところも大変疑問です。
 今回の法改正は、先ほど山尾委員もおっしゃいましたし、私も午前中申し上げましたが、法律の改正だけで全てが解決する問題では到底ございません。子供間の問題は、厚労省、文科省、法務省にお聞きしましたが、全部すぐに一〇〇%行政がきちっと対応することがかなり難しい問題であるということはおわかりいただけたかと思います。
 必要なのは、性犯罪に対する理解というものを今回の法案審議をきっかけに世の中に問題提起したい。それにはやはり当事者がここでしゃべっていただくことも私は必要だったと思います。性教育については、本会議でも申し上げましたが、今回の法改正を高校だったらストレートに法改正があったと教えてもいいかもしれませんし、それは伝え方はあるかと思いますが、今回の法改正の趣旨、それは世の中のいろいろな声があって、百十年間の積み重ね、遅きに失したと思いますが、ここに至っているわけですから、このことをぜひ教育の分野できちっと周知していただく。
 周知の仕方は私の方からきちっとは求めませんが、文科省の方で検討されて、やはり年齢の高いところから考えていくとしても、高校、中学あたりにはこのことをきちっと、通知、通達というものを出していただきたいと改めてお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○瀧本政府参考人 お答え申し上げます。
 今回の改正法にかかわりまして、その内容の周知、あるいはその中でとりわけ児童生徒としても理解しておくべき点、ないしは教職員がきちんと理解しておくべき点、例えば性暴力に遭った高校生や中学生が当然い得るわけですから、そういう点で教職員はより深くきちんと理解しておく必要があるのだろうと思っておりますので、今御提案のございました通達、通知を発出することの検討を含めまして、文科省としては引き続き学校における性に関する指導の充実に努めてまいりたいと考えております。
○井出委員 刑法の改正という長年なかったことの契機でございますので、何としても通知、通達というものを強く検討を求めたいと思います。
 次の話題に行きたいと思います。
 きょう採決が予定されておりますが、昨日、少しその修正というものを御提案、協議をさせていただきました。また、修正に至らなかったところについては、附帯決議というものも各党間で御相談をさせていただきました。後ほど提案をさせていただきます。
 そのことを前提に少しお話ししたいのですが、今回、大変さまざまな御意見、ここを改正してほしい、ここを改正してほしい、見直し規定は入れてほしい、こういうものは附帯決議に入れてほしいというような御意見をいただいております。その中で、今回の改正にとどまらず、落ちた論点もございますので、見直し規定を入れてほしいというお話がありました。
 そこで、法改正をきっかけに、この法律案の附則に、三年後を目途として、性犯罪における被害の実情、法律による改正後の規定の施行の状況等を勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策のあり方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする規定を追加しよう、そういう修正を考えております。
 今、早口で言って、何を言っているかわからないということになってしまってはいけないので、御提案させていただいた趣旨をここで明確にしておきます。
 この見直し規定の趣旨は、性犯罪に対処するための施策の全体的なものを、この法律が施行されてから政府に対し検討を求めていくものだ。その施策全般とは一体何か。事案の実態に即した対処を行うための施策として、一つは、処罰規定の整備、議論のありました構成要件の見直し、監護者わいせつ罪の主体の拡大、性交同意年齢の引き上げ、暴行、脅迫要件の緩和など、今回、法制審、その前の検討会からいろいろな御意見があった中で成案が得られなかったものについて引き続き議論をしていただきたい。それから、公訴時効の停止というものも引き続き議論をしていただくべきだと思いますし、法律のみならず、性犯罪被害者の支援策。これまでの質問の中に出てまいりました、ワンストップセンター、司法面接。与党の先生からもお話がありました、二次被害をなくすように、いわゆるレイプシールドといった考え方。
 そういうあらゆる施策を引き続き検討していくという趣旨を込めて、今回この修正案を御提案させていただいております。当然、刑事局長、大臣におかれましてはその趣旨を御理解いただいていると思いますが、改めて今申し上げたことについて答弁をいただきたいと思います。
○林政府参考人 今回の法務省としての本法案の提出に当たりましては、これまで申し上げましたように、検討会あるいは法制審議会の過程でかなりさまざまな御意見というものを伺って検討してまいりました。
 その中で、やはり今回法改正に至ったものと至らなかった論点というものがございますけれども、いずれにしましても、問題の所在あるいは改正の方向というようなものについては、真摯にそれを受けとめて検討してきたものでございます。ある意味改正の方向性のベクトルについては基本的に同じような立場に立ちながら、さらにどこまでそれを実現するかというような形で、今回一応の結論を出させていただいたわけでございます。
 そういった意味におきましては、本法案の内容につきまして、さらにこの施行状況を検討して、もう一度制度について見直しをするということについては、十分に真摯に受けとめて、適切な検討を行っていきたいと考えております。
○金田国務大臣 ただいま井出委員からお話がございました。
 私どもの刑事局長から申し上げたとおりでありますが、今回の法案の提出に当たりましては、さまざまな観点からの御要望や御意見をお出しいただき、それを踏まえて、法制審議会での審議も経て、十分に検討を行ってきたものとは認識をいたしております。
 しかしながら、本法案の内容がそれで十分で、さらに課題となるものはないのかという話になりますと、その後もさまざまな指摘をいただいているとおりであります。
 したがって、今後また引き続いて、修正の趣旨やあるいは附帯決議の趣旨というものを踏まえながら、そして必要な議論をいただいたことを踏まえながら検討を続けていくということになるんだろう、こういうふうに考えております。
○井出委員 この見直し規定を御提案させていただくに当たりまして、刑法の見直しを断続的にやっていくということが刑法の法律の安定性から見てどうか、そういう御意見もありまして、私も昨晩、質問をつくりながら考えました。
 しかし、大臣、聞いていただきたいんですが、きょうの冒頭の質疑で、旧刑法から刑法をつくるまで、強姦の構成要件に暴行、脅迫という文言は最初は旧刑法にはなかった、それからそれが出てきた、準強姦ができた、そして、準強姦と強姦が一体となった文案が検討された時期も明治三十三年にありました。そういう紆余曲折を経て、現行の刑法の構成要件というものができております。
 ですから、刑法を、百十年ぶりの改正ですから、これは物すごく歴史的な改正で、一回変えたら百年、二百年にわたって普遍的なものでなければいけないというようなことも最初は頭をかすめておりましたが、旧刑法から刑法に至るまでのいきさつを見ますれば、やはり適宜適切なものを追求していくための検討というものは当然できるべきだし、過去の歴史においてはそれをやっていますので、そのことについてはぜひお願いしたいと思います。
 答弁いただいてもいいですか、もう一回。さっきいただいたんですけれども。
○金田国務大臣 井出委員のただいまの御指摘に対しましては先ほど申し上げたとおりでありますし、ただいまおっしゃっていることも私は理解しているつもりであります。
○井出委員 それから、もう一つ。
 附帯決議も幾つかお願いさせていただくことを予定しておりますが、大方、今回は与党の先生方から御提案いただきまして、その中身も深く御検討いただいたものと評価をさせていただいております。
 その中で、性犯罪の起訴、不起訴の処分を行うに当たって、被害者の心情に配慮するとともに、必要に応じてその処分の理由等について丁寧な説明に努めると。被害者の側に立って説明責任をしていこう、そういう趣旨のものも提案を予定しておるのですが、先日私が本会議で国家公安委員長に尋ねた件について、きょうは政府参考人ですが、伺いたいと思います。
 国家公安委員会の役割というものは、私が承知しておりますところ、警察行政の政治的中立性の確保、警察運営の独善化の防止。この警察運営の独善化の防止について、具体的に国家公安委員会というものはどのような取り組みをされているのか、教えてください。
○高木政府参考人 国家公安委員会は、国民の良識を代表する民主的管理機関としまして、警察行政の民主的運営と政治的中立性を確保するために警察庁を管理するという役割を担っております。
 具体的には、国家公安委員会は大綱方針を定めまして、警察庁がそれに即して事務を行うということとされておりまして、各種の報告等を受けた上で大綱方針を定める、こういった活動をしているところでございます。
○井出委員 国家公安委員会と、また都道府県単位でもそれに準ずる組織があるかと思いますが、大綱を定めて、恐らく全国の警察が均一にと申しますか適正に仕事ができるようにという観点かと思いますが、警察に対して指導をしたり調査をしたり。国家公安委員会というものは、今おっしゃったように警察から離れた有識者的な方がなられると思いますが、その有識者、第三者的な立場を発揮して調査、指導をするというような業務はあるのか、教えてください。
○高木政府参考人 国家公安委員会ないし都道府県公安委員会は、それぞれ、国家公安委員会については警察庁、都道府県公安委員会については都道府県警察でございますけれども、そういった警察の執行組織を管理する機関ということでございまして、所要の報告等を警察機関から申し上げますし、国家公安委員会ないし都道府県公安委員会からは必要な報告を求めて、その上で管理を行う、そういった業務を行っているところでございます。
○井出委員 報告を求めるというお話がございました。
 六月二日の国家公安委員長の答弁、私がある事件について尋ねたものでございますが、その事件について、告訴を受理し、法と証拠に基づき必要な捜査を遂げた上で、関係書類及び証拠物を東京地方検察庁に送付したものであり、また、送付を受けた検察庁においても必要な捜査が行われたものと承知していますと。
 この承知というものは、報告を受けたのであって、必要な捜査を遂げたものを国家公安委員会がみずからお調べになって認識したということではございません、そういうことでよろしいですか。
○高木政府参考人 お尋ねの件につきましては、警察庁から国家公安委員会委員長に対しまして国会で御答弁申し上げるに際しまして事案の概要等を報告申し上げた、こういった趣旨でございます。
○井出委員 報告があったと。
 その後、警視庁において必要な捜査が尽くされ、また、検察庁で不起訴処分となっていることなどを踏まえ、検証を行うことは考えておりませんと。この必要な捜査が尽くされたという点は、警視庁、警察庁の報告をもとに必要な捜査が尽くされていると認識されているのか。それでよろしいですか。
○高木政府参考人 お尋ねの件につきましては、警視庁におきまして告訴を受理し、法と証拠に基づいて必要な捜査を遂げた上で、関係書類及び証拠物を東京地方検察庁に送付したものでありまして、また、送付を受けた検察庁においても必要な捜査が行われたものというふうに承知しておりますが、そのような旨警視庁から警察庁に対しまして報告をいただき、警察庁から国家公安委員会委員長にも報告を申し上げた、こういったことでございます。
○井出委員 全て警察庁、警視庁からの報告ベースであると。
 それから、最後に、そうしたことを踏まえ、検証を行うことは考えておりませんと。そもそも国家公安委員会は、あと都道府県の公安委員会は、個別の事件について検証を行う権限があるのかないのか、伺いたいと思います。
○高木政府参考人 検証の権限ということになるといろいろな場合があると思いますので、一概に申し上げることは難しいところでございますけれども、基本的な制度の仕組みといたしましては、公安委員会は大綱方針を定めて警察機関を管理する、こういった役割を担っているものというふうに認識しております。
○井出委員 基本的には報告を受けることが主な業務であって、この事件を離れて、これまで例えば冤罪事件ですとかいろいろな事件について検証といったものが捜査機関において行われてきた、それは検察庁であったり警察庁であったり各都道府県警であったりもするかと思うんですが、国家公安委員会がそういう検証をしたというものは私は聞いたことがございませんし、そういうことは恐らくされていないから、今のような少しまろやかな答弁になっているのかなと思います。
 そうしますと、検証を行うことを考えておりませんというのは、検証する必要があるなし以前の問題で、そもそも国家公安委員会は検証する立場にない、そういうことをこの答弁でおっしゃったんじゃないですか。
○高木政府参考人 警察庁からの報告を受けて、国家公安委員会委員長としてもそのように御判断された、こういったことかと考えております。
○井出委員 先ほど冒頭に申し上げましたが、警察運営の独善化の防止でありますとか、その下へ行けば、警察庁の民主的な管理ですとか、そういったことも役割として入っているようではございますが、その実態、事実上というところはきょうの御答弁のとおりなのではないかと思います。
 この事件は、私は細かく踏み込んで取り上げてはおりませんが、少なくとも検察審査会への申し立てがされている。それは、本会議でも申し上げましたが、公正な捜査を尽くしてほしいと。被害を訴える方からすれば当然の心理である。
 検察審査会について伺いますが、検察審査会というものは、私の理解ですと、最初になされて不起訴となった捜査の中身をもう一度調べるところであって、捜査のプロセスとか公正さとか、誰がどう判断したとか、そういうものを調べるところではないと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
○林政府参考人 検察審査会制度は、一般の国民の中から無作為に抽出して選任された十一名で構成される検察審査会が検察官の不起訴処分の当否を審査することを通じて、検察官が行う公訴権の実行に民意すなわち一般国民の感覚を反映させてその適正を図ることを目的としているわけでございます。
 その審査の対象というのは検察官の不起訴処分の当否でございまして、その審査に必要な部分について検察審査会が審議、検討を行うということになると思います。
○井出委員 当否というのは、私が申し上げたように、やはり証拠関係ですとか事件の中身そのものの検討だと思いますが、では、捜査の体制がどうだったとか、誰がどう判断したとかというのも、当否に影響するようであれば検察審査会も当然調べるということですか。
○林政府参考人 検察官の不起訴処分というものは、証拠関係がどのようになっていたのか、それについてその検察官の不起訴処分が当を得たものであったかどうかを審査するわけでございまして、そういった場合に、証拠の収集過程とかいったことが検察官の不起訴処分の当否を審査することに影響があるのであれば、そういったことについては検討されることとなります。ということで、やはり、不起訴処分の当否を審査するに必要な範囲で審議し、検討されるということだと考えます。
○井出委員 不起訴処分の当否を判断する上で、捜査の判断のいきさつとか体制とか、そういうものも必要であれば検討の対象になり得るか、そこが必要かどうかはやってみなきゃわからぬということだと思います。
 でも、きょうは恐らくそういうものは検察審査会の対象には一〇〇%なり得ないと思って質問に立っておりましたので、その可能性がわずかでもあるのであれば、国家公安委員会、警察の方でこの検証をするつもりがないというお話があることは大変遺憾ですが、まだ検察審査会の状況を見守りたいと思います。
 それと、本会議でもこれは触れさせていただきました。あと、先ほど、二次被害という話も午前からございました。性犯罪の被害を訴えられる方、まさに今回のように、事件の中身というものは、いろいろ報道されておりますが、検察審査会に付されておりますので私は申し上げませんが、ただ、被害を訴えられている方がいる。これは今回の事件に限らずいらっしゃると思います。そうした方に対する例えば容姿ですとか過去の経歴ですとかいったことに対する批判というもの、私は本会議でも、そういうことはやはりあってはならないし、支援というものは社会を挙げて取り組むべきだと申し上げました。
 恐らくその答弁を人権局長がしていただくということでよろしいんでしょうか。済みません、参考人はいつも一任しておりますので。そうであれば、人権局長から答弁を求めたいと思います。
○萩本政府参考人 個別の事案を離れて、あくまで人権擁護の観点から一般論として申し上げることになりますけれども、犯罪被害者は、性犯罪に限りませんけれども、犯罪そのものが人権侵害の最たるものの一つということになりますし、被害あるいはその被害の後遺症で苦しんでいるところに追い打ちをかけるように、今委員御指摘のとおり、二次的な被害による重大な人権問題が現に起きているという認識でおります。ですから、そのような人権問題にもしっかり対処していかなければいけないという認識でおります。
○井出委員 一般論でお話をいただきまして、冒頭に、報道等を承知しておりますがと言ってくれればなおよかったのですが、そこまではきょうは求めません。
 もう間もなく時間になると思いますので、このまま審議が終わってしまうのは大変残念ではございますが、また、修正案が見直し規定にとどまったというところも、私自身は大変力不足を実感しております。
 この法務委員会は共謀罪等いろいろございまして、私も法務委員会で今まで三年ほどやってきた中でいろいろな紆余曲折がありました。私自身、例えば強行採決でまさか委員長の横に行くなんということは思ってもおりませんでした。度が過ぎたなと反省しなければいけないところもあるかと思います。
 しかし、きょうの性犯罪の、性に対する理解というところで、道徳の中学生の教科書を読んでおりましたら、フランスの啓蒙思想家ボルテールの言葉がございました。互いの知識を持ち寄り、互いに許し合わなければならない、たった一人の者が見解を異にしたとしても、この者を大目に見なければならない。その下に、アンドレ・ジッド、フランスの小説家の言葉。一つの立場を選んではならぬ、一つの思想を選んではならぬ、選べば君はその視座からしか人生を眺められなくなる。
 私も反省するべきところはあるということはさきに申し上げました。これからの法務委員会の運営、国会の運営にこの言葉を一言添えまして、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
○鈴木委員長 次に、逢坂誠二君。
○逢坂委員 民進党の逢坂誠二でございます。
 今回の性犯罪の厳罰化法案でありますけれども、多くの方が一日も早い成立を望んでいるということでありまして、私も基本的方向については了とするものでありますし、早く成立をさせたい、そう願っております。
 しかしながら、きょうの法案審議が、実質上、法務委員会で始まってたった一日でこれを質疑終局、採決というのはやはり余りにも乱暴だというふうに思いますし、参考人の皆さんの声も全く聞いていない、これも乱暴なことだというふうに思います。早く成立させたいということを人質にとってこういう荒っぽい法案の審議をするというのは、私は厳に慎むべきだというふうに思います。
 これまで私もいろいろな団体の皆さんからの話を聞いてきました。例えば「刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト」といったような皆さんの話でありますとか、あるいはそのほかの皆さんからも話を聞いてきましたけれども、きょうの法案審議に当たって、先ほど私にある一枚のペーパーを託されましたので、そのペーパーをちょっと朗読させていただきたいと思います。
 発信元は、性暴力禁止法をつくろうネットワークという方々のペーパーであります。宛先は「衆議院法務委員会委員長鈴木淳司様」ということであります。題名が「当事者の声を反映した刑法性犯罪の改正を求めます」。
  「性暴力禁止法をつくろうネットワーク」は、被害者、支援者、弁護士、研究者など様々な立場から性暴力に関する包括的な法整備を求めて十年以上活動してきた全国組織です。
  この六月七日にも刑法性犯罪の改正案を採決するとの報道に接し、大変驚愕しております。
  今回の改正案では、未成年や十八歳未満の、近親者から被害にあっても逃げられない被害者が救済され、これまで声を上げられなかった男性・セクシュアルマイノリティの被害が正当に取り扱われるようになります。何としても早期改正が望まれています。
  しかし、一方で、今回の改正案には、暴行脅迫要件、配偶者間の強姦についての明文化、性交同意年齢の引き上げ、公訴時効の撤廃もしくは停止、地位・関係性を利用した性行為の処罰規定の対象の拡大など重要でありながら盛り込まれなかった事項がたくさんあります。
  やっとのことで警察に訴えても被害者として認められず、さらに二次被害によって、苦痛に満ちた生活を送ることを余儀なくされる性犯罪・性暴力被害者が少しずつ声を上げ始めています。改正の審議にあたっては、このような被害当事者の声に国会議員が直接耳を傾け、被害実態に即した改正を実現する必要があります。
  百十年も顧みられてこなかった刑法抜本改正について、形ばかりの審議で終わらせてしまうのは全く納得できません。
  今次改正案は「魂の殺人」と言われる性犯罪・性暴力被害者を一刻も早く救済し、悪質な加害者を野放しにしないためには、まだ不十分な点が多くあります。
  当事者の声を反映した改正の実現こそが望まれています。
  実行ある性暴力被害の実態に即した改正を実現するために、当事者の声を直接聞き、十分に審議を重ねることを強く要望します。
ということで、この文書の内容、このペーパーの内容を鈴木委員長にお伝えさせていただきます。
 鈴木委員長からの御答弁は不要でございますけれども、この声を重く受けとめていただきたいと思いますし、たまたま今、これは性暴力禁止法をつくろうネットワークの皆さんの意見でありますけれども、多分ほかの方もそう思われているのではないか。一刻も早い成立は望む、だがしかし、国会での審議もしっかりしてほしいということだと思いますので、鈴木委員長、ぜひ重く受けとめていただきたいと思います。
○鈴木委員長 重く受けとめております。
○逢坂委員 それでは、少し個別的事項について質問をさせていただきます。通告が必ずしも十分ではなかった部分もあろうかと思っておりますので、もし通告が十分ではなかったので答えられないというものがあれば、それについては答弁を留保いただいても構いません。
 まず最初でありますけれども、子供の被害者全般に対する司法面接のことについてお伺いをします。
 六月二日の衆議院本会議で、法務大臣がこのように答弁されております。児童相談所、警察、検察の三者連携の仕組みを利用し、適切に対処をするという答弁をされているわけでありますけれども、子供の被害者というのは、あらゆる性的虐待といいましょうか、性犯罪といいましょうか、そういうものが対象になるのか、この三者連携の仕組みを利用しというものは何らかの限定があるのか。もしおわかりになれば、刑事局長、よろしくお願いします。
○林政府参考人 検察庁における取り組みは、このようにしております。児童が被害者である事件や児童が目撃者等の参考人である事件、こういったものを対象にこの取り組みを行うということとして、通知文書を出しております。
○逢坂委員 ということは、これは、今、林刑事局長が言うところからすれば、対象にならないものはないという理解でよろしいでしょうか。子供がそういう性犯罪の被害に遭うといったようなことについては、あらゆるものについて対象にするということでよろしいですか。
○林政府参考人 この取り組み、被害者に配慮した事情聴取というようなことについて取り組んでおりますので、これは犯罪の罪名を問わず、児童が被害者である事件についての事情聴取、また、被害者ではなくて児童が目撃者というものについても刑事司法としては事情聴取を行わなくちゃいけない場合があります。そういった場合にもやはり児童の特性に配慮した事情聴取というのを行わなくちゃいけないという観点からこの事件の対象を定めておりますので、事件の罪名等については限定を加えておりません。
○逢坂委員 了解いたしました。
 それでは、次にお伺いをしますけれども、この大臣が言うところの、三者連携の仕組みを利用し、適切に対処をするということでありますけれども、これをいわゆる司法面接と言ってよいのかどうか、いろいろあるんでしょうけれども、ここで言われていた内容、訴訟手続においてこの内容の扱いというのはどういうふうになるのか。これを証拠として扱うのか、それは個々具体の事例に応じて判断されるのか、一律の考え方はこれについて何かあるのか、この点はいかがでしょうか。
○林政府参考人 今委員御質問の中で、司法面接と言っていいかどうかということを留保されましたけれども、実際に、この司法面接という言葉にはさまざまな意味がございます。
 一番、制度として司法面接というものを構築すべきだということを言っておられる意見の中には、やはり、実際に捜査段階で例えば児童の性犯罪の被害者を事情聴取した場合に、それを証拠として、あるいはビデオで録音、録画しておきまして、その後それが裁判所において直接証拠として扱われる、すなわち、裁判所において、公判において、もう一度その被害に遭った児童が証人として尋問を受けることがないように、そこまで制度として証拠能力も与えた上で、直接の証言にかえて証拠として採用できる、こういったものを構築するという、ここまでを、そういった制度がセットになったものが司法面接である、こういう考え方がございます。
 もとより、それについては刑事訴訟法の中で規律しなくちゃいけないことでございますので、現在三者で取り組んでいるものについては、そこまでの内容は含んでおりません。
 したがいまして、捜査段階あるいは福祉の段階で、児童が性犯罪の被害に遭った場合に、そういった児童に対して事情の聴取を行う場合には極力その回数を減らす、そのためには、三者の中でできれば代表を決めて、その代表の者が調べるということにおいて、なるべく一回で終える、そういったことによって、被害者の聴取回数を減らすことによって負担を軽減する、こういった実務の運用の中での取り組みだと御理解いただければと思います。
○逢坂委員 今の答弁からしますと、いわゆる司法面接というものを林刑事局長に説明いただきましたけれども、三者連携の仕組みは必ずしも、刑事局長の言う司法面接の機能を十分に現行法の中では備えていないという認識でよろしいでしょうか。一部そういう側面はあるけれども、必ずしも十分ではない。その辺はいかがでしょうか。
○林政府参考人 司法面接は多義的であると申し上げましたが、委員が御指摘になったような意味での司法面接ということであれば、そういった機能は備えておりません。
 実際に、司法面接であるところの証拠としての取り扱いということについては非常に議論が当然ございます。公判になりますと、弁護側、被告人側の防御権というのがございます。その場合に、反対尋問権というものが憲法で保障されているわけでございますので、それとの関係で、司法面接というもので、捜査段階で聴取した例えば録音、録画の記録媒体が必ず証拠になりますといったことを制度化するということについては、これは非常に大きな議論があるわけでございまして、そういったことを内容とする制度を司法面接というのであれば、当然そこまでの内容を含むものではないということでございます。
○逢坂委員 それでは、金田大臣にお伺いをするんですが、金田大臣の答弁は、三者連携の仕組みを利用し、適切に対処するという答弁をされていたかと思うんですが、適切に対処するというのはどういう観点、どういう意味、どういう意図なんでしょうか。
○金田国務大臣 検察当局においては、より早い段階から警察や児童相談所と情報交換を行った上で、被害児童の事情聴取に先立って、その負担を軽減するという観点から対応方針を協議するといったような取り組みを行うということ、それに、代表者による事情聴取を相当数行うなどの対応をしてきたものである、検察当局においての対応をこのように承知いたしております。
 今後とも、より一層の工夫、改善を加えながら、警察及び児童相談所との検察当局側からのさらなる連携強化を図っていく、そういうことを申し上げたつもりであります。
○逢坂委員 適切に対処をするというのは、検察当局側との連携強化、そういう意味合いだということでよろしいですか。うなずいておられますので、そういうことだと。わかりました。
 多分、これだけでは必ずしも十分ではないのだというふうに思いますので、この点についてはより議論を深めて、今後どう変えていくかというか、どういう対応をしていくかということを、もっと議論を深めなきゃいけないのではないかというふうに思います。
 それでは、次の点をお伺いしますけれども、これも未成年の場合の代理人の制度についてちょっとお伺いをします。
 今回の性犯罪被害の被害者が未成年の場合、その親権者が原則として法定代理人につくということが想定されようかというふうに思いますが、これはこれでよろしいですか。
○林政府参考人 今委員が言われた法定代理人というのは、何か就任するということではなくて、未成年者については親権者が法定代理人とされているということでございます。
○逢坂委員 その場合に、法定代理人そのものが加害者であるとか、いわゆる親にも話しにくいというような事情、あるいはそのような性的被害を受けた場合、何らかの救済措置、そういうものが被害者である子供に対してあるんでしょうか。
○林政府参考人 そういった救済措置というものが法定されているわけではございません。
 ただ、今回の立案の中で、今の文脈で関係することとしますれば、従来、例えば母親が法定代理人であった場合に、その内縁関係の夫あたりから性被害に遭った子供がいたとしますと、これが親告罪となっていますと、法定代理人も告訴権を有するわけでございますが、その告訴権者たる法定代理人が、自分の内縁の夫という者との関係を危惧してなかなか告訴に踏み切れないというようなことがあり得たわけでございます。
 そういった場合に、今回は、親告罪というものを非親告罪といたしましたので、そのことによって、そういった場合の法定代理人である者がしかるべき正しい告訴をしない、そのことによって犯罪が立件できない、あるいは起訴ができないということはなくなるということとされております。
○逢坂委員 そこの点は理解いたしました。
 それで、重ねてでありますけれども、いわゆる法定代理人としてそもそもふさわしくないといいましょうか、そういう事情がある場合に、第三者が子供被害者の代理人となるといったようなことは、法的にはそういう余地はあるでしょうか。
○林政府参考人 委員御指摘の代理人という意味がちょっと理解できませんので、その代理人というのは、どのような意味での代理人なのでございましょうか。
○逢坂委員 要するに、親権者が法定代理人、原則そうなっていると。その親権者が法定代理人としての機能を果たし得ないということは、例えば、親には絶対話せないような内容であるとか、あるいは親そのものが加害者であるとか、そういったような場合に、被害者である子供はどうしますかということです、もっと平たく言えば。
○林政府参考人 実態としてどうするかということについて、事案によるかと思いますが、例えば、刑事訴訟法において、被害者の法定代理人が被疑者であるといった場合には規定を設けておりまして、そのときは、被害者の親族が別に独立して告訴をすることができるという形で、そういった特別な事情がある場合に告訴権者を拡張している規定がございます。
○逢坂委員 この点、実は私自身もまだ勉強がちょっと十分ではないのでありますけれども、そういうケースは実際に多分あるんだろうなというふうに思われますので、こうしたところもこれからまだまだ詰めていかなければいけないポイントの一つだと私は思っています。
 それでは、次に、ちょっと話題をかえまして、きょうは豊田内閣府大臣政務官にお越しをいただいておりますけれども、ワンストップ支援センターについてお伺いをしたいんです。
 ワンストップ支援センターについては、先ほど来答弁がありましたとおり、全国の全ての都道府県に設置ができるようにということで準備を進めているということでありますけれども、現在想定されているワンストップ支援センターの仕組みというのは、対象者というのは誰を想定されているのか。例えば、成人女性被害者だけを想定しているのか、あるいは、そうではない、男性、女性を問わず、LGBTの方々といった幅広い対象者を想定されているのか、このあたりについていかがでしょうか。もし想定されていないというのであれば、現時点ではまだそこまで明確には想定していないんだということであれば、それはそれで構いません。
○豊田大臣政務官 お答えを申し上げます。
 性別は問わないということでございます。
○逢坂委員 性別は問わないと。
 それから、LGBTなどの被害者の方についても、これは対象になるということでよろしいですか、性別を問わないということであれば。
○豊田大臣政務官 そのような理解でよろしいと思います。
○逢坂委員 あと、これらの財政支援についてですけれども、財政支援を予定しているということであります。設立当初のイニシャルコスト、これへの財政支援というのは多分予定されているんでしょうけれども、ランニングコストについてはどのように考えておられるでしょうか。
○豊田大臣政務官 相談員の人件費等の相談センターの運営に要する経費、相談員等の研修費及びワンストップ支援センターの広報啓発費、そして、やむを得ない事情により警察に相談できない被害者の医療費及びカウンセリング費用などに関して、都道府県を財政的に支援していくということでございます。
○逢坂委員 今の答弁から、ランニングの一部は支援の用意があるというふうに理解をいたしました。
 そこで、ちょっと政務官にお願いなんですけれども、各県一つずつ当面設置することを予定しているということでありますが、各県一つであれば、北海道は全くこれは機能しないというふうに思います。多分、北海道に設置するのなら札幌に設置するんだろう。私が住んでいる函館から札幌まで、特急で三時間三十分、今はもうちょっとかかりますかね、JR北海道はいろいろあるものですから。そういう状況ですから、場合によっては東京から大阪へ行くより遠いんですよ。
 だから、そういう意味では、各県一つにこだわらずに、地域の実態に応じて、北海道のことだけを言うつもりはありませんけれども、柔軟な対応をお願いしたいというふうに思います。これはお願いだけでございますので、答弁は不要でございます。
 そこで、大臣、実は、きのうの夕方、私はある手紙をいただきました。それは、性犯罪被害者の方ではなくて、性犯罪の加害者の方から手紙をいただきまして、今まだ服役中だということであります。この方の手紙、私も慎重に読ませていただいたのでありますけれども、今回の法改正には基本的に賛成であるといったようなことが書いてありました。若干その内容を読ませていただきます。これは基本的に賛成だということを前提にしてお聞きいただきたいんです。
 今回の法改正を実現させたとしても、性犯罪が蔓延する社会の現状に大きな変化をもたらすことはできないだろうと思っています、今回の法改正で影響を与えられる範囲は被害の事後のことに限られます。そう言われれば、確かにそのとおりなんですね。被害に遭ってしまった後では、どんな救済策をもっても被害者を救うことはできません、事件の記憶という被害は一生消すことのできない被害として残ってしまうと思うからですというようなことを手紙の中で述べられております。性犯罪というのは、被害に遭ってからでは遅いのです、被害後の対策を拡充すると同時に、被害を未然に防ぐ方策を真剣に議論すべきではないでしょうか、被害に遭ってからでは遅いという厳然たる事実を、本物の被害者の痛みも理解できていないのではないかと思わずにいられません。
 こういったちょっと非常に厳しいことも書かれているんですが、御自身が性犯罪の加害者になって長い間服役をされている、そして、どうも服役をされている間にさまざまなことを勉強され、いろいろなお気持ちになられているんだと思います。
 そこで、大臣、これは特に通告をしておりませんので、大臣の思い、考えをお聞かせいただきたいんですけれども、今回の刑法の改正というのは、被害が起きてしまったときにその罪をどう判断してどう罰するかということでありますけれども、被害を起こさないために、性犯罪被害を発生させないためにどんな取り組みが必要だというふうに大臣は個人的に思われるか。大臣がこう言ったからだめだとか、いいとかということではないと思うんですよ。私は、ここのところはもっと柔軟に社会の中で幅広く考えておくべきことではないかなというふうに思うんですが、大臣、いかがお考えですか。
○金田国務大臣 逢坂委員の非常に貴重なただいまの御指摘だったと思います。加害者の立場から、非常に参考になることも御紹介いただきました。
 事後のことに限られるというお話がありました。今回の法改正というのは、近年における性犯罪の実情等に鑑みて、事案の実態に即した対処をするためのものであります。ですから、性犯罪への対策の推進のための重要な一環をなすものであるんですけれども、単に罰則を強化するだけで性犯罪を抑止するのにはなかなか十分ということは難しいんだろう、私もそういう思いはあります。記憶という被害は残るんだ、したがって、未然に防ぐ必要があるんだ、まさに私はそのとおりだというふうに思います。
 でも、政府全体として協調のとれた取り組みというものはどういう形でどこまでやればいいのか。これは本当に、私たち政治家が共通して、この法案を仮に成立させていただけるものであれば、その後も、直ちに引き続いて検討を重ねていかなければいけない、そういうテーマだというふうに思っております。
 いずれにしても、性犯罪の抑止を図るということ、未然にどういう対応をしていくのか、いろいろな面があろうと思います。きょう出席をいただいた各省庁にもそういうさまざまなテーマがあると思いますし、私は、やはりこれは、これとこれとこれだというふうに申し上げられるような話ではなく、各立場におられる皆さんの熱い心をもって取り組んでいかなければいけない、そういうテーマなんだろうというふうに思いますので、委員の御指摘もありましたが、私たち政治家が肝に銘じて、この法案の処理をした後も、日々そういう方向に向けて議論を重ね、そして思いを重ねて努力をしていくべきである、このように思っております。
○逢坂委員 私は、先ほど井出委員が指摘をした教育というのが、一つやはり重要なポイントだというふうに思います。これは法務省の問題では必ずしもないのかもしれませんけれども、やはり政府を挙げてというか、我々も含めてでありますけれども、どういうふうに未然に発生させないかということが最も大事なポイントだと思います。
 教育に関して言いますと、諸外国のこの分野の教育を見ますと、やはり、日本よりも、より具体的で、実際の事例に切り込んで学校の現場でも議論をしているように私には見受けられますので、そういったことも念頭に置いて、これからしっかりした対応ができるように力を尽くしてまいりたいというふうに思います。
 それから、この手紙の中でもう一つ重要なことが指摘をされておりまして、平たく言ってしまうと、この受刑者の方が、出所後、再犯、もう一回それを犯してしまうのではないかということであります。しかも、こういうふうに書いてあるんです。年々上昇する再犯率の高さを考えれば、刑務所が更生の準備施設として機能していないのは明らかな事実です、法務省の性犯罪者処遇プログラムを受講しましたが、質、量とも不十分との感触は否めませんでしたし、プログラムで学んだことを刑務所内で実践、練習しようとすると、刑務所自体から無効化、否定される現状には非常な困惑を覚えていますという指摘なんですね。
 私、実は、こうしたことが刑務所の中で行われていることを知ったのも初めてですし、こういう声を聞く、こういうことを直接、今まさに受刑者の方から聞くのも初めてなんですけれども、この点、通告をしておりませんので大臣に感想は求めませんけれども、こうした事実もあるということで、ぜひしっかり心にとめておいていただきたいと思いますし、この問題については、この法案はきょうで審議が終わってしまう、非常に残念ではありますけれども、どこかの機会でまたやらせていただきたいというふうに思います。
 以上で終わります。
○鈴木委員長 次に、池内さおり君。
○池内委員 日本共産党の池内さおりです。
 ジャーナリストで、準強姦被害を検察審査会に訴えている詩織さん、私、会見を拝見しました。真っすぐに顔を上げて、被害者らしく弱い存在でいなければならないという状況に疑問を感じる、隠れていなければならない、恥ずかしいと思わなければならない、そういう状態にとても疑問を感じたと述べていらっしゃいました。
 私は、本当に、被害者というのは全く悪くないというふうに思います。自分の体は自分のもので、意に反する性的接触で自分の境界を侵害されていいはずがありません。性暴力は許されない、被害者を守る社会に変えるために今回の刑法改正が力とならなければならないというふうに思います。
 本会議で大臣も、被害者のプライバシー保護や心情への配慮を徹底するなど含めて、被害が潜在化しないように取り組みを進める、このように御答弁されて、被害暗数を減らし、申告をふやすことの重要性を答弁されました。
 非親告罪化は重要な改正だと思います。一方で、被害当事者の小林美佳氏が、プライバシーや生活が守られる仕組みや安全が完全に確保される必要がある、このように発言されているように、非親告罪化に伴う被害者のプライバシー保護の徹底がますます必要になっていると思います。
 改正によって新たな措置というのは講じられるんでしょうか。
○林政府参考人 委員御指摘のとおり、この非親告罪化に伴いまして、被害者のプライバシー保護というのは非常に重要なことであると考えております。
 この被害者のプライバシー保護といいますのは、これまでにも、性犯罪被害者に限ったものではないわけでございますが、刑事手続における被害者のプライバシーあるいは名誉、こういったものを保護するための方策、あるいはその負担を軽減する方策として、制度として次のようなものがございます。
 公開法廷における被害者特定事項の秘匿、あるいは証拠開示の際の証人等の安全についての配慮及び被害者特定事項の秘匿、また証人尋問の際の付き添い及び遮蔽及びビデオリンク方式による証人尋問、こういった制度がこれまでつくられてきたわけでございます。
 さらには、これは運用としてでございますけれども、性犯罪等の被害者特定事項について、起訴状における記載方法の配慮、これは運用の中でこういった配慮を行っておるわけでございます。また、証拠開示におけるマスキングということも行っております。
 こういった、これまでにも構築されてきた制度あるいは運用というものを、今後とも、性犯罪の非親告罪化に伴いましてさらに拡充、徹底して行うことが求められていると考えております。
○池内委員 つまりは、新しい措置はないということだと思います。
 大きな負担となっているのは、捜査、裁判という刑事手続の中で、またマスコミやネットに情報が流れることで二次被害、セカンドレイプを受けることです。警察や検察、加害者側弁護士がしばしば被害者に、あなたにもすきがあったんじゃないか、うそをついているんじゃないか、あなたも楽しんだんでしょうと、こんなことを聞いている。これが実態であって、被害者はこうした事実を恐れています。
 事件とは関係のない性経験を詳細に聴取され、プライバシーが侵害されている、この実態を大臣は御存じでしょうか。これが被害申告をためらう大きな要因になっている、大臣にはそうした認識はありますか。
○金田国務大臣 池内委員にお答えをいたします。
 性犯罪の被害者にとりましては、その被害状況に関する聴取を受けるということは精神的負担が大きいものであることは申し上げるまでもない、このように受けとめております。
 検察当局においては、被害者の方の聴取に際しましては、その名誉、プライバシーそして心身の状況といった点に十分配慮しているものと承知をしているわけでございまして、事件とは何ら関係のない性経験を詳細に聴取するような実態があるとは私は受けとめておりません。万一そのように受けとめられているとすれば被害申告をためらう要因となりかねないことは、御指摘のとおりであります。
 そして、検察当局においては、引き続き、被害者の心情等に配慮した捜査、公判活動に努めるとともに、被害者の思いに沿いながら、現在取り組んでいる被害者保護の施策について広く周知をするように努めていくものと考えておるところであります。
○池内委員 あると受けとめていないと。これは、ぜひ現場の実情を大臣には知っていただきたいというふうに私は改めて思います。
 二〇一三年七月、鹿児島地裁の準強姦の強制起訴事件において、裁判長が、被害者、これは当時未成年の女性ですけれども、判決に向けて被害者の人となりを知るためだ、このように言って、性体験に関する質問を行い、指定弁護人から異議が出されるという事態が起きました。裁判長自身が、未成年者、この被害者のプライバシーをさらすかのような、これは辱めを与えているではないかと思うんですね。
 こうしたことは、この事件に限ったことではありません。こうした事実、出来事を防ぐための一つの手段がレイプシールド法。アメリカの州、そしてその他の国々のレイプシールド法について説明を願います。
○林政府参考人 いわゆるレイプシールド法といいますのは、被害者の性的経験や傾向に関する証拠を裁判に提出することを原則として禁止する、こういった内容とする外国の法制度でございます。
 当局において全て網羅的に把握できておりませんが、例えばアメリカ、米国の連邦証拠規則におきましては、被害者が他の性的な行為にかかわっていたことを立証するための証拠、また被害者の性的傾向を立証するための証拠については、一定の場合を除きまして、性犯罪に関する刑事訴訟で立証に用いることは許容されない、こういった内容、規定になっているものと承知しております。
○池内委員 諸外国でも、被害者の過去の性的な経験、被害者の人格や供述の信頼をおとしめ、加害者の減刑のために利用されてきたという事実があって、事件とは無関係な被害女性の性行動の情報を証拠採用できなくするというふうにすることでプライバシーを保護し、裁判官に偏見を持たせる証拠を避けることができる。アメリカでは、今お答えがあったように、被害者の性的経歴についての無関係な証拠の採用を禁じているし、オーストラリアにもこのような法律はあるし、インドですよ、インドも二〇〇三年に改正をしています。
 我が国でもこうした仕組みがあれば被害者はもっと訴え出ることができるようになるんじゃないでしょうか、大臣。
○井野大臣政務官 先ほど法務省刑事局長の方から御紹介がありましたレイプシールド法についてでございますけれども、我が国においては当然まだこれを採用しているわけではございません。
 その理由としてですけれども、憲法で保障されている被告人の反対尋問権の制約にならないかどうかであったり、また、現行法では、刑事訴訟法の規定によって、事件に関係のない被害者の性的な経験や傾向に関する尋問等については裁判長の適切な訴訟指揮によって制限することが可能で、そのように予定されているというふうに我々は考えております。
 したがいまして、現時点において、レイプシールド法については、その要否を含めて慎重な検討を要するのではないかというふうに考えております。
○池内委員 一日も早く日本にも導入すべきだということを強く求めたいと思います。
 暗数を減らすために、このレイプシールドというのは不可欠だと私は思います。現にアメリカでは、この法のもとで被害者に敬意を払った対応というのが進んで、被害者が通報するようになりました。
 刑法改正だけでは、被害者は訴え出ることなんてできません。本来ならば、刑法改正を諮問する際に同時に諮問すべきだった課題だと思う。早急に、これは本当に求めたいと思います。
 捜査や公判のこうした過程で、性的偏見によって被害者のプライバシーが侵害をされている。
 ジェンダーバイアスについてお聞きしますけれども、文化的、社会的に醸成された当たり前のこととして受容されている性差別に基づく偏見のことです。性犯罪の捜査、司法におけるジェンダーバイアスは理解されているんでしょうか。
 きょうお配りの配付資料をごらんいただきたいんですけれども、この資料は、ゴルフ練習場経営者で、指導も行っている六十代の男性が、教え子の当時十八歳の高校生だった女性への準強姦罪に問われた事件です。最高裁まで争って昨年無罪となり、けれども、民事訴訟で女性に損害賠償が認められました。
 この事件は、性犯罪として初めて検察審査会による強制起訴が行われたものです。検察官は、嫌疑不十分として不起訴の判断をしました。検察審査会が二度の議決を行いました。二度目の議決では、下線部ですけれども、犯行は計画的であった、被疑者は、度胸をつけるためだと言葉巧みに申立人をゴルフの指導を口実にホテルへ連れ込み、申立人が抵抗できないように、部屋を施錠して密室状態をつくり出し、ゴルフの弱点を指摘するなど三十分間説教しており、申立人のおとなしく従順な性格を利用して、心理的、精神的に被疑者からの姦淫行為を受け入れざるを得ない状況に追い込んで、被疑者は申立人を抗拒不能の状態に陥れた、十分に被疑者の故意を認定できるというふうに議決しました。そして、被疑者が、性交の承諾はなかったが嫌がっているとも思わなかったとしていることに対し、申立人の供述の信用性を認めて起訴相当という議決をした、これが流れです。
 これに対して、高裁の判決は驚くべきもので、被害者の抗拒不能を認めながら、加害者が弱者の心情を理解する能力や共感性に乏しい無神経な人物で、被害者の強い抵抗がないことを消極的な同意と受けとめた可能性が否定できない、そのため、被害女性が抗拒不能状態にあったことを認識して、これに乗じて性交したとまでは認められないと、無罪判決が下されました。最高裁では、上告棄却ということになりました。けれども、こんな事案はフランスの刑法であれば加重強姦に当たる、そういう事例です。
 検察審査会の市民感覚と、起訴をしなかった検察官、無罪判決を下した裁判官に著しい認識の乖離があるように思います。つまり、深刻なジェンダーバイアスがあるのではないか。これは最高裁と刑事局長にお聞きします。
    〔委員長退席、今野委員長代理着席〕
○平木最高裁判所長官代理者 一般論として申し上げますと、各裁判官は、一件一件証拠に基づいて適切に判断しているものと承知しております。もっとも、裁判所といたしましても、被害に遭ったときの被害者の心理状態等をよく理解し、適切に事実認定を行うことは重要であると考えております。
 そこで、司法研修所では、刑事事件を担当する裁判官を対象とした研究会において、性犯罪の被害者の支援に長年携わっている大学教授を講師としてお招きして、被害時の被害者の心理状態やその後の精神状態等について理解を深める講演を行っていただくなど、被害者への配慮に関する研修を行っております。
 裁判所といたしましては、このような研究会を通じて被害者の心理状態等の理解に努めてまいりたいと考えております。
○林政府参考人 御指摘の事案において検察官の判断それから検察審査会の判断が分かれたわけでございますが、検察当局におきましては、個別具体的事案に即しまして、法と証拠に基づいて事件を処理したものでございます。
 すなわち、特にその証拠の評価というものについて意見が分かれたわけでございますけれども、これが、検察官にジェンダーバイアス、性差に基づく偏見があり、それに基づいてこのような評価が分かれたというふうには認識しておりません。
 いずれにいたしましても、個人が性別にかかわりなく尊厳を重んぜられて、その人権が尊重されるべきことは言うまでもありませんので、検察当局においては、今後とも、引き続き、それを前提といたしまして、法と証拠に基づいて捜査、公判活動に当たっていくものと承知しております。
○池内委員 加害者が無神経だったことを理由に無罪にされる、こんな犯罪がほかにあるでしょうか。こういう価値判断をしてしまうところに、歴史的に社会的に醸成されてきた性差別意識があるのではないか、これを問うたのでありまして、きちんと答弁いただきたかったというふうに思います。
 本当に嫌ならもっと激しく抵抗したはず、逃げられたのになぜそうしなかったのか、こういう強姦神話が被害者のリアリティーからかけ離れて、抵抗が弱いから同意していたとされている。しかし、トラウマ研究の進展で、突然の性暴力という異常な体験に対して、被害者がフリーズ反応を引き起こしたり、衝撃が強くて感情が麻痺をして、事件の次の日も平気で仕事に行っていたというふうに解されてしまう、そのように外形上は見えてしまう、そういうことも往々にしてあることが明らかになっている。
 裁判官は強姦神話にとらわれていないんでしょうか。被害者の行動、トラウマ被害を十分に認識しているのでしょうか。
○平木最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたとおり、裁判所といたしましても、被害に遭ったときの被害者の心理状態をよく理解して適切に事実認定を行うことは重要であると考えておりまして、先ほど申し上げましたような研究会を通じるなどして被害者の心理状態などの理解に引き続き努めてまいりたいと考えております。
○池内委員 裁判官が個人的な経験則やまた思い込みによって価値判断を下すようなことがあったら、本当に大変なことだと思います。
 裁判員制度の導入の後、性犯罪の量刑というのは、特に強姦致傷罪では若干重い方へとシフトしています。この点で、裁判員に性犯罪を裁かせることは危険ではないかと職業裁判官が危惧していましたけれども、むしろ真の危険は、性犯罪の違法性、保護法益、被害の実態が正確に理解されず、経験則もジェンダーバイアスや時代おくれの強姦神話に基づいており、罰せられるべき加害者が無罪や不当に軽い刑に処され、逆に被害者は二次被害、セカンドレイプやPTSDに苦しんできた、日本の刑事裁判そのものに潜んでいたのではないかと強調したいと、島岡まな大阪大学教授が厳しく批判をしています。私は、このことを肝に銘じるべきだというふうに思うんです。
 強姦罪の起訴率の低下が著しい。一九九八年の七二・三%から徐々に低下をして、強姦罪の下限が二年以上から三年以上に引き上げられ、これが二〇〇四年でしたけれども、この二〇〇四年を経て、二〇〇五年からは低下の一途をたどっています。一昨年は三五・三%に半減しました。
 嫌疑不十分による不起訴が増大しています。不起訴のうち嫌疑不十分が四割から五割を占めている、この理由は何でしょうか。内閣府の女性に対する暴力専門調査会では、学識経験者の方がこう言っています、検察は顔見知りの事件を起訴しない傾向があると。この指摘はどうでしょうか。
    〔今野委員長代理退席、委員長着席〕
○林政府参考人 御指摘の強姦罪の起訴率、ここ十年ほど低下傾向にあるということは承知しております。ただ、これは刑法犯全体についても同様の傾向が見られております。強姦罪に限って起訴率が低下しているものとは認識しておりません。
 また、この起訴率でございますが、個別具体の事案に即しての起訴、不起訴の判断の集積でございますので、起訴率の低下について、その原因あるいは評価を一概に述べることはやや困難であろうかと思います。
 その上で、顔見知りの場合と顔見知りでない者との判断で検察官の評価が違うかどうかということでございますが、この強姦罪について見れば、既に検挙件数のうち半分半分、顔見知りの者による犯行あるいは顔見知りでない者の犯行、これはほぼ半々でございます。
 捜査、公判の実務におきましては、被疑者となっている者については半分が顔見知り、半分が顔見知りでない、そういった件数になっておりまして、こういった状況のもとで、検察官が、顔見知りの場合にはどのような起訴をする傾向があるか、あるいは顔見知りでない場合にどのような起訴をするのかということについては、その判断の中で全くその傾向はないものと考えております。
○池内委員 今、強姦罪の起訴率が低下しているということはお認めになっている。
 ほかのも起訴率は下がっていると言ったんですけれども、でも、強盗の起訴率というのはおおむね六割から七割で推移していますよ。殺人罪だって実質五割程度。強姦罪は格段に、これはほかとは比べられないぐらいに低下しているということは私は言っておきたいし、また、半分半分だとおっしゃったけれども、暗数が物すごく多いということを考えれば、本来であればもっと性犯罪としてちゃんと処罰しなきゃいけないものが隠れているということを私は指摘したいというふうに思います。
 二〇〇八年六月の大阪地裁の強姦罪無罪判決は、二十四歳の被告が出会って二日目の十四歳の少女を姦淫した事件ですけれども、被害少女が性交に同意していなかったことを認めながらも、加えられた暴行の程度に関し、被告人が被害少女の足を開く行為及び被害少女に覆いかぶさる行為が、犯行を著しく困難にする程度の有形力の行使であるとは認めがたいというふうにしました。結局、叫ぶほどの拒絶、本気で抵抗するべきものという裁判官の強姦神話、女性に対する厳格な貞操維持の義務を求めているとしか思えない判決じゃないかと思います。
 起訴した検察は、こうした無罪判決が出ると、負けてしまうんだったら起訴しないという方向に流れるんじゃないですか。
○林政府参考人 検察官といたしましては、法と証拠に基づきまして、その場合に検察官として起訴するかどうかについては、的確な証拠によって有罪判決が得られる高度の見込みがある場合に限って公訴を提起するという運用が行われてきております。
 この点につきましては、性犯罪あるいは強姦罪とかいうものの罪名にかかわらず、全体として、検察官の処理といたしましてはそのように行っているということでございます。
○池内委員 これだけ不起訴がふえています。その理由が何なのか。暴行、脅迫要件の立証が困難なのか、故意の認定が困難なのか、顔見知り、監護者以外、親族からの被害がどの程度かなど、さまざま要因があると思うんですね。
 法務省自身が、なぜここまで不起訴がふえているのか検証していただきたいし、研究者などがその内容をトレースできるように情報も提供すべきだと私は思います。この点も強く検討を求めたいというふうに思います。
 次に、内閣府の調査では、性暴力事件の七割から八割程度が顔見知りの加害者によって行われている、このことが明らかになっています。これは、民間団体の相談現場での実感や、諸外国の傾向とも重なるものです。
 顔見知りの間でこそ、暴行、脅迫を立証しにくい、被害が潜在化している。嫌疑不十分の不起訴というのがこれだけふえているというのは、私は何度も繰り返していますけれども、ますます潜在化していくのではないか。積極的に起訴すべきじゃないでしょうか。
○林政府参考人 先ほど申し上げましたが、被疑者と被害者が顔見知りであるか否かによってその被害者の例えば信用性を判断している、そういったことはございません。やはり個別の具体的な事案に即して、関係証拠の中で起訴すべき事件は適切に起訴しているものと承知しております。
○池内委員 顔見知りの間だと、暴行、脅迫というのは必ずしも必要ない場合がやはり多いわけですよね。必ずしも必要ではない。そうすると、この暴行、脅迫要件というのが被害者にとってはどう働くかといえば、やはり被害の選別化に働いているのではないか、みずからの被害を立証するときに物すごく大きなハードルになっている。性行為の同意の有無こそ、構成要件にすべきじゃないですか。
○林政府参考人 同意の有無そのものを直接の構成要件にした場合、これについては、同意というものの立証というのは非常に困難なものがございます。そういったことによりまして、同意の有無を直接構成要件にした場合に、かえってその立証のハードルが高くなるといったことはあり得ることと考えます。
 さらには、立証のみならず、同意の有無で構成要件を考えた場合に、どの場合に犯罪が成立するかということになりますと、交際関係のある例えば男女の場合に、どのような場合に犯罪が成立し、どの場合に犯罪が成立しないかということについては、当事者にとりましてもなかなか予測が困難、可能性が低くなる、こういった問題もございます。
 そういったことから、同意の有無そのものを構成要件とするということ、すなわち、例えば暴行、脅迫という構成要件を撤廃して、構成要件の中に同意があるかないか、同意がない場合の性交を犯罪とする、こういうふうに定めた場合には、その立証の点におきましてもそうですが、当事者における犯罪成立の予測可能性というものもかなり低くなってしまう、そういった問題があろうかと思います。
○池内委員 現実に、被害者がどれだけ抵抗したかということが常に問題にされる。でも、被害者からすれば、嫌なものは嫌だし、つまり、ノー・ミーンズ・ノーと世界の女性たちが声を上げているように、嫌なものは嫌なんですよ。
 立証が難しいとおっしゃった。でしたら、なぜ同意があると思ってしまったのか、加害者の側に挙証責任を負わせるべきじゃないですか。
○林政府参考人 もちろん、仮に加害者の側に同意があったものの挙証責任を負わせるという形にすれば、立証は非常に容易なものとなると思います。しかしながら、刑事訴訟法におきましては全て検察官が挙証責任を負うというのが大原則でございまして、その部分について挙証責任を転換するということについては、刑事訴訟法の基本構造との関係で、かなりそれは問題が大きいものと考えます。
○池内委員 刑事訴訟法の基本構造で個人の人権が虐げられるというのはおかしいと思います。性犯罪のときにやり方を変えるということは幾らでもできるんじゃないか。今おっしゃいましたよね、挙証責任を加害者に負わせれば立証は大分やりやすくなる、容易になると。だったら、やってください、被害者の個人の人権を守ってくださいよということを私は言いたいと思う。
 実は今、私が何だかとっぴなことを言っているとお感じになるかもしれないけれども、世界ではこのような法改正が進んでいるということなんです。
 欧米諸国では三十年から四十年前から刑法を改正してきて、韓国もそうですね、我が国が参考にしてきたドイツでも、昨年の改正で、被害者の明示した意思に反すれば暴行、脅迫は不要、このように改正をしました。そのほかにも、加害者と被害者の年齢差や、社会的地位、親族からの被害や、教師と教え子、地位や関係性を利用した類型を処罰するという法改正が何度も重ねられています。レイプシールド法とあわせて、被害者が身の安全を確保する、訴えやすい状況を社会としてふやしてきているわけです。こうした刑法や刑事司法の手続の改革が、女性が積極的に被害を訴えられるように変化をもたらしている。
 法務総合研究所の研究が指摘しているフランスの事例を読み上げてください。
○高嶋政府参考人 御指摘の箇所は、法務総合研究所研究部報告三十八の十六ページ目、下から五行目から十七ページ目三行までの八行ということでよろしいかと思いますが、読み上げます。
  フランスにおける性犯罪の発生件数は増加傾向にあるが、この背景には、性犯罪を警察に届け出やすい環境の整備(例えば、既述の性犯罪に関する公訴権の消滅時効に関する法改正等)及び国民、特に女性の権利意識の変化があるようである。すなわち、以前は性犯罪の被害、特に家庭内や親族間で起きた強姦事件等については、被害者である女性が警察に被害届を出さない傾向が見られたが、二十年ほど前から、女性の人権意識(自己の権利はだれにも侵されることのない絶対的で崇高な性質のものであるとの意識)の高揚とともに、自ら警察への被害届や通報をためらわずに行うなど、女性の性犯罪の被害に関する意識が徐々に変化しており、これが統計的に性犯罪の増加をもたらした大きな要因の一つであると考えられている。
以上でございます。
○池内委員 声を上げやすい、暗数を減らす、こういう努力があれば、女性たちはエンパワーメントされて、自分の被害を被害として認識し、立ち上がることができる。ぜひ、この方向での改正をさらに求めていきたいと思います。
 次に、構成要件についてお聞きします。
 改正百七十七条は行為者及び被害者の性別を問わないとした点、ジェンダー中立化が図られて、評価ができる、本当に大事なことだというふうに思います。しかし、あくまでも男性器の挿入行為に限定をされ、強制性交と強制わいせつでは法定刑が全く違っています。性的侵入に対する重大性の認識が極めて浅いのではないかと思います。
 性的侵入を男性器に限って重く処罰する国というのは一般的なんでしょうか。
○林政府参考人 諸外国の制度を網羅的に把握はしておりませんけれども、当局が把握している限りでは、強姦罪の対象行為を男性器の挿入に限定して、男性器以外の例えば異物挿入に関する罪について、これとは別に軽い法定刑を定めている国あるいは州としましては、アメリカにおけるニューヨーク州、それから大韓民国があるものと承知しております。
○池内委員 つまり、世界的に見て、男性器に限っている国は本当に少数派です。しかも、韓国では男性器と異物を分けているけれども、法定刑の上限は三十年以下で一緒です。イギリスでは性的侵入は何でも、別に男性器であろうが指であろうが異物であろうが、上限は終身刑となっています。しかし、日本では男性器以外の挿入というのは強制わいせつ罪になって、強姦罪とは大きな法定刑の差がある。
 こうした状況について、刑法学者からは、男性器の女性器への挿入行為を特別に扱い、それ以外と区別する発想は、家父長制度のもとで男系の血統の維持を目的とした従前の強姦法の考え方を引きずったもの、このように批判をされています。こうした批判をどう受けとめますか。被害者からすれば、とりわけ子供にとっては、異物挿入であっても極めて深刻な事態じゃないでしょうか。
○林政府参考人 御指摘は、例えば膣や肛門等への異物等の挿入について、強制わいせつ罪よりも重いけれども強姦罪よりは軽い犯罪、こういったものを処罰類型としてつくってはいかがか、そういったものをしないのは、男性器挿入ということについて、今委員が御指摘のような考え方に立っているのではないかという御質問だと思います。
 異物を膣や肛門等に入れる行為につきましては、異物にもさまざまなものがございます、類型的に強制わいせつよりも重く処罰する異物の範囲、これを定めることは困難であると考えます。
 また、異物の挿入は、その異物の性状や行為態様に応じて、法定刑の上限が懲役十年であるところの強制わいせつの枠内で、事案の実態に即した対処をすることが可能であります。そのようなことから、異物の挿入行為につきましては強制わいせつ罪よりも重い犯罪を設けて処罰することは今回はしていないということでございます。
 他方で、異物の挿入が強姦罪、今回でいう強制性交等罪と全て同質の当罰性があるかと言われましたら、そうではないと考えておりますので、今回、そういった考え方から、このような異物挿入について特別の類型とすることにしなかったものでございまして、男性器挿入というものにこだわっている、そういうものではございません。
○池内委員 被害者のリアリティーからはかけ離れた答弁だったと思います。その認識自体が世界から物すごくおくれているという自覚をぜひ持っていただきたいと思うところです。
 今回の法改正ではまだまだ足りない、構成要件をもっと強化して改正すべきだと思います。子供を保護するという観点で極めて不十分です。
 今回、監護者わいせつ及び監護者性交等罪が新設されますが、この規定だけでは、先ほどの鹿児島のようなスポーツ指導者と教え子、こうしたケースは救えないということになります。欧米諸国では、子供への性被害は加重する、これが当たり前です。
 今回の改正は、新設された罪はありますけれども、法定刑を見ればそのようにはなっていません。成人するまでの公訴時効の停止、撤廃も盛り込まれていない。いわゆる性交同意年齢についても、一般的に日本人よりも未成年者の成熟度が早いと言われている欧米諸国でも十五歳、十六歳が通常で、つまりそれだけ子供を性的被害から国家として保護している。
 明治時代の十三歳にとどめおいていいんでしょうか。我が国の子供は、欧米諸国、韓国などと比べて格段に性暴力、性犯罪からの保護のレベルが低いと、大臣、思いませんか。
○盛山副大臣 今回の法案というのは、我々としては、児童に対する性犯罪への厳正な対処という視点での改正というふうに捉えることができるのではないかと考えております。
 法制審議会の刑事法部会におきましても、年少の児童に対して口腔性交をした等の事案が多くあるとの指摘があるところ、口腔性交につきまして、これまでは強制わいせつ罪で対処するほかなかったわけでありますが、今回の法案により、強制性交等罪として重く処罰することが可能となっております。
 また、家庭内における児童に対する性犯罪は、新設された監護者性交等罪によって、より事案の実態に即した処罰が可能になると考えております。
 さらに、家庭内の性的虐待事案では親からの告訴が得られにくい事案もあると承知しているところ、今回の法案により性犯罪が非親告罪になることから、この種の事案について、告訴がなくとも早期に警察等が介入することが可能となると考えております。
 また、教師やスポーツのコーチ、こういったことにつきましても、先ほども御答弁したところでありますが、事案に応じて準強制わいせつ罪、準強制性交等罪、児童福祉法違反が成立し得ることとなりますので、この点においても、児童の保護という点については我々も考慮したつもりでございます。
○池内委員 今御答弁されたような事実を認識されたということはとても大事だと思うんですけれども、でも、もっと幅広く視野を持っていただいて、限りなく全ての性暴力を許さない、きちんと性犯罪として取り締まるのだ、こうした構えで子供たちを守っていきたいし、その点ではやはり不十分だと言わないといけないと思います。
 今や世界では、法律、政策など、あらゆる領域とレベル、社会の隅々においてジェンダー平等を目指すジェンダー主流化、この潮流が当たり前になっています。
 私がきょうずっと明らかにしてきたように、今、検察官も裁判官も約八割が男性で、男性中心の物の考え方、物の見方が社会規範として浸透しています。そして、その浸透してしまったジェンダーバイアス、とらわれた目で見ていると、何が不正義かはわからなくなります。気づきにくい。
 自分の中に内面化されているこのジェンダーを自覚して、そしてこのジェンダーバイアスを取り除いていくという訓練は一朝一夕ではできない。私は、本当にこれはやらなきゃいけない課題だし、男女平等というのが単なるつけ足しじゃないんだったら、この改革こそ必要だというふうに感じています。
 刑事司法におけるジェンダーバイアスをなくすための教育、一九八〇年代からアメリカを初め諸外国で既に行われています。こういう事例を参考にジェンダー教育を強化していくというのはいかがでしょうか、裁判所そして刑事局長。
○堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 司法研修所におきましては、性差に関する問題について裁判官が理解を深めるということの必要性を理解しておりまして、そういった理解のもとに、これまでも裁判官に対しまして、性犯罪、DV、セクシュアルハラスメント、女子差別撤廃条約等に関する研修を実施してきたところでございまして、今後も、研修の必要性を踏まえました上で適切に研修を実施してまいりたいと考えているところでございます。
○林政府参考人 検察官の研修につきましては、必ずしもジェンダー教育という位置づけをしているものではございませんけれども、性犯罪被害者等の立場を踏まえた捜査、公判のあり方といった教育及び男女共同参画に対する理解を深めるための教育、このようなものを実施しているところでございます。
○池内委員 どちらも今お答えいただいて、裁判官の研修の資料をいただきましたけれども、これを見ても、性暴力に特化したもの、またジェンダーに特化したものもありません。検察の方は、過去七年間を振り返っていただきましたけれども、性犯罪被害の心理に配慮した取り調べ、この研修が四百八十九時間の間にわずか二時間三十分行われただけ。やはりこれでは、被害者は真の意味で救われないというふうに思うんですね。
 今回の刑法の改正は本当に第一歩、今後検討を進めるに当たっては検討会や法制審議会の委員の人選が非常に重要だと私は思います。ジェンダー法学専門の有識者を多数選任するように求めます。
○小山政府参考人 お答えを申し上げます。
 法制審議会についてのお尋ねでございます。
 法制審議会は、民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項を調査審議することなどを目的とするものでございまして、このような性格から、法制審議会の調査審議に当たりましては、法律専門的な調査検討のほか、経済社会の急激な変化及び複雑化に適切かつ迅速に対応する必要があるものと認識しております。
 このような観点から、法制審議会の委員につきましては、幅広い意見を述べていただくために、公正かつ均衡のとれた構成になるよう配意いたしまして、法律専門家あるいは一般有識者といった多様な立場の方々を適切に任命しているものと認識しております。
 また、この委員の人選につきましては、総会、部会のいずれにいたしましても、今委員の御指摘がございましたようなさまざまな観点から御意見をいただいてきたところでございます。
 今後とも、この委員の人選につきましては、さまざまな御意見を踏まえまして、先ほど述べました法制審議会の設置の趣旨、目的に照らしまして、委員により代表される意見、知識経験等が公正かつ均衡のとれた構成になるよう留意し、適切な人選に努めてまいりたいと考えております。
○池内委員 適切かつ迅速にジェンダー主流化を実現していただきたいと思います。
 最後に、百十年ぶりのこの刑法改正が国民の意識にどのように反映していくのか、継続的な調査をぜひ行っていただきたいと思いますが、いかがですか。
○金田国務大臣 池内委員の御質問にお答えをいたします。
 今回の法改正は、これまでも何度もお話が出ておりますが、明治四十年に現行刑法が制定されて以来初めて、性犯罪の構成要件等を大幅に見直すものであります。今回の法改正を機に、性犯罪が決して許されないものであるとの意識を社会全体にさらに醸成するということが重要であると考えております。
 そこで、私ども法務省としましては、ホームページへの掲載を初めとする広報活動のほか、国会での御審議や記者会見などのさまざまな機会を通じまして丁寧に御説明をすることにより、御指摘のように国民に法改正の内容を浸透させていきたい、このように考えております。
 現時点では、法改正が国民の意識にどのような影響を与えるのか、その中身がどの程度国民に浸透するのかについて直接の調査を予定しているものではないわけですけれども、今後とも、刑法等の罰則を可能な限り時代の要請にかなったものとするために必要な検討や調査を行ってまいりたい、このようにも考えておる次第であります。
○池内委員 時間なので終わりますが、きょう質問できませんでしたが、加害者更生プログラム、こうした取り組みも本当に重要だというふうに認識しています。私も性暴力を絶対許さない日本社会をつくるために頑張る決意を申し上げまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。
○鈴木委員長 次に、畑野君枝君。
○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
 刑法の一部改正案について質問いたします。
 先ほどからお話がありますように、百十年前の制定から初めての性犯罪に係る刑法改正です。きょう一日の委員会審議でなく、参考人の皆さんの御意見など、しっかりした論議を尽くすべきであったということを最初に強く申し上げたいと思います。
 私はきょうは、この間お話を伺ってまいりました山本潤さんの著書、「十三歳、「私」をなくした私」を少し御紹介させていただきたいと思います。冒頭にこのように述べられています。私は父親からの性的虐待のサバイバーだ、私が十三歳のとき、父は私に性加害をするようになり、それは父と母が別れるまで七年間続いた、私の心は人生の早い時期に殺されてしまったのだと述べられております。そこから立ち直って、このような本を書かれるまで、どれだけの年月が、そしてどれだけの苦しみ、悲しみがあったか。まさに魂の殺人と言われる問題です。
 そこで、私は、短い時間ですが、今回の法案で、百七十九条、監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪の新設がされたことについて伺いたいと思います。
 監護者が性的虐待を行うということは、本来助けを求めたい人に虐待を受けることですから、被害者の心理的ダメージは本当に強いものがあります。そこで、伺いますが、法案の現に監護する者とは何か。そして、地位、関係性を利用した性的行為に関して、例えば教師と生徒、雇用関係、障害者施設や福祉施設の職員と入所者、医師と患者、スポーツコーチや協会役員と選手など、現に監督する者に含まれる場合があるのではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○盛山副大臣 先ほども御答弁申し上げたところでございますが、監護者性交等罪の現に監護する者とは、十八歳未満の者を現に監督し、保護している者をいいます。これに当たるか否かは個別の事案における具体的な事実関係によって判断されるものですが、一般的には、現に生活全般にわたって依存、被依存ないし保護、被保護の関係が認められ、かつ、その関係に継続性が認められることが必要であると考えております。
 教師、スポーツの指導者という御指摘がございました。一般論として申し上げれば、御指摘の教師やスポーツ等の指導者については通常は、児童生徒との間に生活全般にわたる依存、被依存ないし保護、被保護の関係が認められないことから現に監督する者に当たらない場合が多いと考えられますが、繰り返し申しますが、これも具体的なケース・バイ・ケースということになります。
 福祉施設の職員等につきましてもさまざまな場合が考えられ、一概に申し上げることは困難ではありますが、同居の有無、居住場所に関する指定等の状況、指導状況、身の回りの世話などの生活状況、生活費の支出などの経済的状況、未成年者に関する諸手続等を行う状況などの要素を考慮して、実態として生活全般にわたって依存、被依存ないしは保護、被保護の関係が認められ、かつ、その関係に継続性が認められる場合には、現に監護する者に該当する場合もあると考えております。
○畑野委員 刑罰法規である以上、構成要件は明確でなくてはならないと思います。法務省として明確な見解を示すべきだということを申し上げておきたいと思います。
 二〇一五年二月十八日付神奈川新聞に次のような記事が載りました。
 特別支援学校の小学部に通う長女には知的障害がある。放課後に通う放課後等デイサービスで、昨年一月、二〇一四年ですが、職員の男が利用者の女児にわいせつな行為に及んでいたことが発覚。警察からの電話は発覚から四カ月後だった。警察署で、男性が撮影したという動画を見せられた。長女だとわかり、女性は泣き崩れるしかなかった。
 私は、この横浜市の女性から直接お話を伺いました。そのお母さんは、何回も動画を見せられ、警察、裁判所などで同じ話をさせられた、一年以上心療内科から処方された薬を服用しても夜眠れなかった、家族全員が苦しんだとおっしゃっております。子供が性犯罪の被害に遭ったときに、心理的負担に十分に配慮して面接を行い、事実の確認とケアをすべきだというふうに思います。
 そこで、厚生労働省として、二〇一五年十月二十八日に、子供の心理的負担に配慮した面接の取り組みに向けた警察、検察との連携強化についてという通知を出しております。
 私、先日、神奈川県伊勢原市にあります子どもの権利擁護センターかながわに伺いまして、先ほどあった司法面接、診察室があって、虐待を受けたことが疑われる子供のためのワンストップセンターとなっている、連携もしているということも伺いました。
 厚生労働省に三つ質問をお願いしているんですが、まとめてお答えいただけますか。
 この通知によって、子供の心理的負担の軽減がどのように制度として図られているのか。そして、年齢別の性的虐待の件数、協同面接の実施件数、具体的な対策についてどうか。最後に、法改正に伴って児童相談所について対応が充実されることが必要だと思いますけれども、また、先ほど紹介したような医療機関との連携も進める必要があると思いますが、その点はいかがでしょうか。
○山本政府参考人 お答え申し上げます。
 心に深い傷を負った子供から被害状況等の聞き取りを行う際は、被害児童にとって二次被害にならないように十分配慮する必要があると考えております。
 先生御紹介になりましたとおり、平成二十七年十月に通達を出しておりまして、児童相談所、警察、検察の三機関で面接、聴取方法等について協議するように通知をしているところでございます。
 この協同面接等により、必要な情報を一人の面接者が集中して話を聞くことで、被害の詳細を語ることが子供にとって出来事の再体験となる二次被害を回避または緩和することができるなど、子供に与える負担をできるだけ少なくしているものと考えております。
 それで、実績でございますが、私どもとしては四半期ごとに都道府県等から報告を求めておりまして、平成二十七年十月から二十八年九月までに合計二百十四件の三機関による協同面接または二機関による面接が実施されているところでございます。
 面接、聴取方法を児童相談所が警察、検察に協議した事例二百四十七件のうち性的虐待の件数は百三件ということでございますが、年齢別の内訳を見ますと、学齢前児童、ゼロ歳から六歳が六件、小学生、七歳から十二歳までが三十四件、中学生、十三歳から十五歳までが四十三件、高校生その他、十六歳から十八歳が二十件というふうになってございます。
 こうした児童相談所における協同面接が円滑に実施されるように、厚生労働省では、児童相談所強化プランに基づく専門職の増員を図るとともに、昨年五月に成立しました改正児童福祉法において、児童福祉士等の専門職に研修の受講を義務づけております。その研修のカリキュラムにおいて警察、検察など関係機関との連携について盛り込んでおりますので、二十九年度から取り組みが進んでいくものと考えております。また、平成二十八年度から協同面接を実施するための設備等を整備するための費用への補助を実施しております。
 今回の刑法改正法案が成立した際には、その趣旨や内容等について、法務省とも十分に相談させていただきながら、児童相談所に対して十分に周知を図ってまいりたいと思っております。
 また、今後の体制強化につきましては、昨年四月に策定した児童相談所強化プランに基づきまして、児童福祉士等の専門職を平成三十一年度までの四年間で千百二十人増員することを目指すなど、児童相談所の体制整備を図っていきたいと考えております。
 また、先生御紹介になりましたように、子どもの権利擁護センターかながわ、こちらでは子供の心理的負担に配慮した面接と診察をワンストップで実施する取り組みが行われているところでございまして、こうした民間団体とも十分に連携した子供ケアを図っていきたいというふうに思っております。
○畑野委員 時間がもうなくなってしまいました。警察庁、検察庁、内閣府に来ていただいたんですが、積み残しでございます。
 最後に、金田大臣に伺いたいと思います。まだまだこれから、法改正そして運用の改善を含めていろいろな支援を進めていく必要がある、財政的にも必要になってくると思います。その御決意を伺って、私の質問を終わります。
○金田国務大臣 畑野委員にお答えをいたします。
 このたびの本法案の提出に当たりましては、さまざまな観点からの御要望や御意見をいただきました。これを踏まえて、法制審議会での審議を経て十分に検討を行ったものと認識いたしております。
 もっとも、本法案の内容が不十分であるという御指摘もあることにつきましては真摯に受けとめた上で、今後とも適切に検討を行ってまいりたい、このように考える次第であります。
 また、検察当局におきましては、これまでも警察や児童相談所と連携するなどいたしまして児童の負担軽減及び供述の信用性確保に努めてきたところでございますが、今後とも、児童はもちろんのこと、性犯罪の被害に遭われた方々の心情やプライバシー等に十分配慮した捜査、公判を行っていくものと承知しておりまして、私ども法務省としましても、関係府省庁と連携いたしまして性犯罪被害者への配慮、支援の充実に積極的に取り組んでまいりたい、このように考える次第であります。
○畑野委員 終わります。
○鈴木委員長 次に、木下智彦君。
○木下委員 日本維新の会、木下智彦でございます。
 大体半年ぶりぐらいになるかと思います。この法務委員会、時間をいただきまして、本当にありがとうございます。何かちょっと懐かしい思いで、前にいらっしゃる方々も、後ろの方に座っていらっしゃる方々もほとんど変わらない中でお話ができるので、きょうの機会をいただいたことを非常にうれしく思っております。
 今回の件なんですけれども、実は、去年、私の方から質問させていただいた内容を真摯に受けとめていただいて、こういう形で今回審議ができるということで、これも本当にうれしい話なんです。
 先ほど来、野党の皆さん、いろいろ言われておりました。非常に大事な法案で、たくさんの審議時間をかけるべきものだと。私はこの委員会を外れていて、いろいろ横目に見ていたんですけれども、例のテロ等準備罪の話であるとか、その審議入りをする前にも、この刑法については非常に重要だから先に審議するべきだというふうな話も出たりしておりました。
 ただ、ちょっと思ったのが、そうであるならば、これは中であったかどうかは、私は知らないところで言うのは恐縮なんですけれども、例えば、こういう委員会の定例日だけではなくて予備日の提案をするであるとか、本当にそういうふうな審議を充実させるためのことがやられたのかどうかというところがなかなか見えないので、ちょっとそこがどうだったんだろうなという気がして、聞いておりました。
 それから、もう一つあるんですね。
 重要な法案であるという中で、先週の金曜日に本会議場でこれの質疑がありました。そのときに、それがいけないとか、これがいけないとかという話じゃないんですけれども、個別の案件で、ジャーナリストの方が性的な危害を若い女性の方に加えたという話がありました。
 これを取り上げるなという話では私はないと思っています。当然、こういったことも個別の案件としてはあったんだということで、取り上げるのはいいと思うんですけれども、その日の夜のニュースを見ていて、ほとんどのテレビ局がこの刑法改正の中身については全く報道しないんです。言っていたのは何かというと、警視庁の刑事部長がその逮捕をとめた、それについて質問したというような感じなんです。これって本当にいいのかなと。質問する側もその辺はぜひ考えていただきたいと思うんです、これは非常に申しわけない話ですけれども。
 ましてや、例えば、これが政局にとらわれて、メディアに事前に、こういうことを話をするからぜひテレビで流せとか言っているようなことであったとしたなら、そうだとは言いませんけれども、あったとしたならば、これは、本当に大事な法案だと言っていることとちょっと矛盾するんじゃないかなというふうに私は思っているので、そうでないことを祈りたいなというふうに思います。
 なぜこういう話をするかと……(発言する者あり)そうじゃないと。それなら、安心です。名誉のために、そうじゃないというふうにおっしゃられていましたので、そうじゃないということだと思います。
 なぜこういう話をするかというと、昨年、私、この法案についてこの委員会で話をさせていただいたときに言ったんですけれども、あの当時、法制審議会でいろいろと話がされたこと、そういったことについて報道があったんです。そのときには、これも重要だとは思うんですけれども、今回の刑法の改正、百十年ぶりというふうに言われている中で、こういった性的な被害者の、これを親告罪でなく非親告罪化するんだということが新聞報道の前面に出ていたんですね。
 私は、当然これも非常に重要なことだと思うんですけれども、もっと、もっとと言うとこれはまた語弊があるかもしれませんけれども、重要だなと思うところは、先ほど共産党の池内委員も言われていましたけれども、主体と客体が、今までは、これは強姦罪に関してですけれども、被害者は女性、そして加害者は男性というふうに限定されていた、これは、主体と客体というふうなものが、捉え方を変えて、本当に今の現実に即した形になっていく改正案だということで、非常に評価すべきものなのではないかなというふうに思ったので、あの当時に言ったのは、そういったことをやはり報道してほしいし、そう思ったからこそ、あの場に立たせていただいて質疑をさせていただいた、そういうくだりでございます。
 前置きが非常に長くなって大変申しわけないんですけれども、では、まず、今回の法案で変わるところ、評価できるところだと思うんですけれども、そういったところで、その内容についてちょっと詳しく教えていただきたいところがあるので、まず一番最初に話をさせていただきたいことがあります。
 それは、強盗、それから、今回の法案である強盗・強制性交等罪及び同致死罪についてという形で話をさせていただきます。今までは、今までというのか現在の法律では、強盗強姦罪というのがありました。今度の強盗・強制性交等罪、これで具体的にどういったところが変わるのかというところを聞きたいんですね。
 その中で、特に、今までは、強盗強姦罪の場合、未遂というふうに言ったときに、調べてみると、どっちを未遂したときが未遂罪に当たるのか、強盗なのか強姦なのか、この辺はどういうふうになっていたのか。それから、今回、強盗・強制性交罪の未遂罪というふうになったときに、どういう違いがあるのか。ここの部分を、その理由も含めて教えていただけますでしょうか。
○林政府参考人 まず、現行法の強盗強姦罪、この未遂罪でございますが、これは、強盗に着手した犯人が、それ以後に強姦に着手することを前提といたしまして、強盗の既遂、未遂にはかかわらず、強姦が未遂に終わった場合、この場合に強盗強姦未遂罪が成立するものと解され、そのように判例もなっておりました。
 これに対しまして、今回、強盗・強制性交等罪を新設したわけでございますけれども、これにつきましては、二百四十一条二項で任意的な減軽が認められる範囲は、まず、着手の先後を問わず、強盗の罪と強制性交等の罪のいずれも、両方が未遂に終わった場合、この場合に任意的減軽が認められるとしたものでございます。
 したがいまして、強制性交等の罪に先に着手した場合にも減軽をなし得ることとなるのはもちろんでございますが、先に着手した強盗の罪が既遂、後に着手した強制性交等の罪が未遂で、この場合には現行法であれば強盗強姦未遂罪が成立するというわけでございますが、今回の二百四十一条二項にはこれでは該当しませんで、刑の減軽を認めないこととなります。
 要すれば、いずれにしても、今回の新たに設けた強盗・強制性交等罪においては、強盗の罪と強制性交等の罪のいずれもが未遂に終わったこと、その場合にのみ任意的減軽が認められるということになります。
○木下委員 ありがとうございます。
 要すれば、今までは未遂が強姦のみだった、それにこれが適用されていたということだと思うんですね。それが今回で変わる。現実に即しているといえば即しているんだと思うんですけれども、ここでもうちょっと聞きたいんです。
 その二百四十一条、私はここは非常に重要な点だというふうに思っているんですけれども、今まで聞いたところでいうと、強盗を働いた者が強姦をした場合、それから強姦を目的にして行ってその後強盗をした場合、この場合で今まで違ったというんですね。刑量が違うというふうになっていたと思うんですけれども、これは何でそうだったのか、なぜそうだったのか、どうして今回それをよしとせず変えたのか。これはしっかりその理屈を教えていただきたいんです。
○林政府参考人 これまでの現行法における強盗強姦罪につきましては、主体は強盗犯人、強盗がというふうに条文はなっておりますが、強盗犯人が強姦をした場合、この場合にのみ強盗強姦罪が成立する、このようになっておりました。これは、主体が強盗となっていたからでございます。
 そして、他方で、強盗と強姦との双方を行った場合でありましても、強姦の行為が先で、強姦行為の後に強盗の犯意を生じて強盗をした場合、この場合には、今申し上げた理由により強盗強姦罪は成立しませんで、結局、強姦罪と強盗罪との併合罪が成立するということにとどまっておりました。
 こうなってまいりますと、処断刑というものは、強盗強姦罪の場合とそれから強姦罪と強盗罪の併合罪の場合とでは大きく異なる結果となります。
 しかし、同じ機会にこれらそれぞれ単独でなされてもなお悪質な行為でありますところの強盗行為と強姦行為との双方を行うこと、このことの悪質性あるいは重大性に鑑みますと、こういった強盗行為と強姦行為との先後関係でありますとか犯罪の発生時期の違いをもってこのように科すことのできる刑に大きな差異があるということは、これは合理的に説明することは困難であります。
 そこで、今回の法改正におきましては、強盗行為と強制性交等の罪に当たる行為が同一の機会に行われた場合におきましては、その行為の先後を問わずに、強盗・強制性交等罪として、これまでの強盗強姦罪と同様の法定刑で処罰することを可能とするようにしたものでございます。
○木下委員 ありがとうございます。
 先後を問わずこうするのが普通だろうという御答弁がありました。確かにそうするべきだと思うんですね。ですから、今回の法案、非常に評価できるポイントかなというふうに思ったんです。
 聞いていて思ったんですけれども、百十年間、ここの部分は変わっていなかったんですね。これによって刑量が違う罪を着た人たちがいる、この現実というのをしっかり捉まえなきゃだめだと私は思うんです。百十年前と今は違うと。しかし、今というのも、今回の改正がなければ、ここ五年、十年の間にでも同じようなことをし、そういうふうなことに対して被害者の人たちの感情が左右されてきたということ、これをしっかりと捉まえた上でこのポイントを理解しなければならないのかなというふうに今思いました。
 次に、もう少しここを突っ込んでお話しさせていただきたいと思うんですけれども、この二百四十一条の部分で、同じところですね、現法において強盗強姦というふうな形がされて、そしてそれが致死、死に至った場合、この場合に係る被疑者の殺意の有無の取り扱いと今回の法案の取り扱いの違いというところをちょっと聞かせていただきたいんですね。
 いろいろと私の方でも調べさせていただいたんですけれども、ちょっと整理があれなんですけれども、まず聞きたいのが、例えば、殺意があった場合というのを、この二百四十一条のもともとのところで含んでいた場合には、一つ、強盗強姦致死罪というふうな形で捉えられることがある、ただ、今は、この殺意の有無というのが含まれていない。それで、強盗強姦罪とそれから強盗殺人罪、この二つが、観念的競合というんですかね、これによって判断されて、今の判例としてこの捉え方をしている。これはさまざまな、いろいろな考え方がある。
 さっき言ったのは、強盗強姦罪と強盗殺人罪というのが競合しているという形。それからもう一つは、強盗強姦罪と殺人罪が競合しているという形。これはともすれば法定刑が軽くなる可能性があるので、これはいけないだろうというふうに言われていた。それから、強盗強姦致死罪とそれから殺人罪が競合するという考え方もある。この場合は、強盗強姦致死、致死というのと殺人というのが両方重なっているので、これは二重評価なんじゃないかという話であるとか。もしくは、強姦罪と強盗殺人罪が競合性がある。
 この中で、今までは、判例としても、強盗強姦罪それから強盗殺人罪というものの競合関係というのを捉まえていたというふうなことなんですけれども、これは今までどうしてそういうふうな形になっていたのかということ。それから、今回で、どういう形で、その観念的競合というのと、それから先ほども言われていた併合罪と、この辺の関係をちょっと体系的に整理していただきたいと思います。
○林政府参考人 強盗強姦致死罪がどのような場合に成立するかという解釈につきましては、これはもちろん、この法律自体が明治にできた法律でございまして、その後、裁判例によって確定されてきた経緯がございます。
 これについて、どのように考えるべきかというのは、学説によってはさまざまな意見があるわけでございます。しかしながら、非常にたくさんある学説の中で、裁判例としてはこのように確定した解釈をしてまいりました。
 まず一つは、現行の強盗強姦致死罪につきましては、強盗の機会に行われた姦淫行為またはその姦淫行為の手段である暴行、脅迫から死の結果が生じた場合に成立するものである、こう考えていました。強盗強姦致死罪については、姦淫行為またはその手段である暴行、脅迫から死の結果が生じた、こういった場合にのみこの強盗強姦致死罪は成立する、こう考えていました。
 また、判例上、この強盗強姦致死罪はいわゆる結果的加重犯である、このように理解していました。したがいまして、殺意のない場合に限り強盗強姦致死罪は成立する、このように考えていました。
 したがいまして、委員御指摘のあったように、強盗犯人が被害者を強姦して故意に殺害した、このような場合には、これは強盗殺人罪がまず成立します。さらに、致死を除いた強盗強姦も成立しますので、結局、この強盗殺人と強盗強姦が観念的競合になる。これがこれまでの判例の確定した解釈でございました。
 これに対しまして、今回、改正後の二百四十一条の三項の罪は、強盗の罪と強制性交等の罪とが同一の機会に犯された場合において、その行為の先後関係を問わずに、いずれかの罪に当たる行為から死の結果が生じた場合について成立するものとしております。現行の強盗強姦致死罪は、先ほど申し上げましたように、後に行われた行為である強姦に係る行為から死の結果が生じた場合についてのみ成立したということでございますので、それと比較しますと、いずれかの罪に当たる行為から死の結果が生じた場合にも成立するという点で、現行の判例の解釈よりも成立範囲は拡大するということになります。
 また、殺意の点で申し上げますと、改正後の二百四十一条の三項の罪には、強盗の罪または強制性交等の罪のいずれかの罪に当たる行為により殺意なく人を死亡させた者だけではなくて、殺意を持って人を死亡させた者もその対象に含むものとして今回制定しております。したがいまして、この点におきましても、現行の強盗強姦致死罪に比べまして成立の範囲は拡大するということになります。
○木下委員 ありがとうございます。今非常に細かく説明していただいて、よくわかったと思います。
 今の話を聞いていても、殺意があったか、なかったか、行為がどっちだったかということにかかわらず、今回の改正で範囲が広がる、それが、立法事実というんですかね、実際に求められるものに近づいているというふうに、私は今の質問させていただいた御答弁で感じました。
 では、次の話をさせていただきます。
 これもいろいろな委員の方々が言われていたことなんですけれども、今までの強姦罪、今回の強制性交等罪の要件の暴行、脅迫、それから、準強制性交等罪の要件として心神喪失もしくは抗拒不能、金曜日に私は本会議場でもやらせていただきましたけれども、ここは、こういう形の表現であれば狭過ぎるんじゃないのというふうな話をさせていただきました。現実に即して考えたら、いろいろなときがあるでしょう。きょうもいろいろなことをケースとして言われていて、それについては、細かくその状況等々で判断していくんだというふうに言われていました。
 いま一度ここの部分を確認したいんですけれども、例えば強姦罪のところで言われていた、反抗を著しく困難ならしめる程度、これは具体的にどういうことなんですか。これはどういう形になったときのことをおっしゃられているか。
○林政府参考人 まず、暴行、脅迫というものは、刑法において、ほかの罪名においても使われております。
 まず、相手方の反抗を著しく困難ならしめる程度のものであれば強姦罪における暴行、脅迫は足りるということの意味でございますが、まず一点は、強盗罪との比較がございます。
 強盗罪における暴行、脅迫は、相手方の反抗を抑圧する程度のものという判例の解釈がございます。そのような、相手方の反抗というものを前提として、それを抑圧する程度のものである必要があるというのは、強盗罪の暴行、脅迫においてはその程度までが必要でございますが、強姦罪についてはそこまでは必要がない、反抗を著しく困難ならしめる程度のものであれば足りる、このように判例で解釈されました。
 その上で、さらに、反抗を著しく困難ならしめる程度の内容というものにつきましても、それに続く判例におきまして次のような判示がなされております。
 暴行または脅迫の行為、単にそれのみを取り上げて観察すればこれが反抗を著しく困難ならしめる程度には達しないと認められるようなものでありましても、その相手方の年齢、性別、経歴、その場合のなされた時間、場所の環境、こういった状況を考慮して、相手方の反抗を著しく困難ならしめる程度で足りるということを解すことができる、このように判示もされているところでございます。
 したがいまして、累次の判例によりまして、これまでの強姦罪における暴行、脅迫の内容というものはそのように判例で判示されてきたものでございます。
 具体的な事例で申し上げれば、例えば、手首をつかんで引っ張る、背後から抱きつく、下着を脱がせる、ソファーに押し倒す、こういった有形力の行使のみが認定された事案で、被害者と被告人の体格差でありますとか、犯行場所に二人きりであったことなどを踏まえまして、これは反抗を著しく困難ならしめる程度の暴行、脅迫があったものと判示されたものがございます。
 また、深夜、カラオケ店の個室内で被告人と二人になっていた、こういった被害者に対して、上半身を押す、下着を脱がせる、両足を広げるなどの有形力の行使のみが認定されて、この場合、被害者は被告人から抱きつかれたりしても強く抵抗していなかったというような事案においても、このような、反抗を著しく困難ならしめる程度の暴行、脅迫があったと認められた事案があるということでございます。
○木下委員 ありがとうございます。
 あわせてもう一つ聞きたいんですけれども、準強制性交等の要件というところで、これは金曜日のところで御答弁があったんですけれども、同じようなことを言われていましたけれども、物理的、精神的、身体的状況、こういうことを判断してと。まあ、状況によって程度の差はあるのかもしれないですけれども、これも、今御答弁されたことと同じように、そういう状況を判断してやっている、言葉の意味合いだけでやっているんじゃないよというふうに捉えていいんですか。
 というのは、私どもが金曜日に言わせていただいたのが、この準強制性交等の要件というところで、心神喪失ではなくて心神耗弱でもいいんじゃないの、抗拒不能ではなく抗拒困難という状態であっても、これを要件として認めるべきなのではないかというふうな話をさせていただいたんですね。
 だから、そこは、言葉の使い方はあるとしても、今言われていたような、物理的、精神的、身体的状況、こういったものによって判断されるべきものであり、言葉の使い方は、そこの部分も範疇に含めているという考え方、先ほどの強制性交等罪のところの要件も含めてですけれども、そういう解釈をしていいのかどうか。
○林政府参考人 委員御指摘の準強制性交等罪の要件であります抗拒不能というものにつきましては、裁判例におきまして、心神喪失以外の理由で、社会一般の常識に照らして、当該具体的な事情のもとにおいて、物理的、身体的あるいは心理的、精神的に抵抗できないか、または抵抗することが著しく困難な状態にあること、このように判例ではなされておりまして、学説上もこの点については同様に解されていると認識しております。
○木下委員 ありがとうございます。
 ということは、ちょっと強引な解釈かもしれないですけれども、困難という場合も含まれているんだ、そういうふうに捉えられたと思います。だから、ここはそういうことも含めて非常に評価できるのではないかなと今判断しました。
 では、今度は、先ほども言われていたんですね、被害者の年齢、精神状態、そういうことも状況の中で考えられると。
 ここで、これも金曜日に話した話なんですけれども、十三歳未満の子供たち、十三歳未満であった場合には、同意があろうがなかろうが、今までは、女の子供に対して行った場合は、これはもう強姦罪というふうなたてつけだったと思うんですね。
 ここで言わせていただきたいのが、もうその時点で、被害者の年齢それから精神状態、こういったものも含めて、反抗を著しくできない状態だと私は思っている。その解釈の中で行われる行為が、これも先ほど来いろいろな方々が言われていましたけれども、姦淫の行為自体が、男性器、陰茎を用いた挿入行為というふうなもの、これが今までは膣だった、それが口腔もしくは肛門等々にも広がるというふうな話だったんですけれども、これだけでいいのかなとやはり思ってしまうんですね。
 前後がありますから、この話についてちょっと先に言わせていただきますけれども、今の状態で、被害者の年齢、精神状態を含めてそうであったときに、先ほども言われていました、手や指、それから、何と言われましたかね、私は器具というふうに言ったんですけれども、異物というふうなものの挿入行為についてと。
 今まで野党の方々が聞かれていたのは、これは全般的な話として聞かれていたと思うんですね。別に十三歳未満の子たちというのではなくて、大人も含めてそういった行為があったときに、これはさまざまなものがあって、その被害が性交と同等とまでは言えないというふうな答弁をされていたかと思うんですけれども、これは、十三歳未満に関しては違うんじゃないかなと私は思うんです。
 といいながら、いろいろなものがあります。どういった目的で、例えば医療行為なんかで指だとかを入れる場合は除かれるべきだと思っていますし、それに準ずる形で、器具等を使って検診するとかということもあるかと思うんですけれども。さまざまなものがある、さまざまなもので除外すべきものがあるから、さまざまなものがあるからここの部分に関しては含めなかったというふうにおっしゃられていたんですけれども。
 これは特に十三歳未満、私は思っているんですけれども、なぜそうかというと、これもこういうところで言うのは非常に忍びないですけれども、本当に、子供たちに対しての犯罪、実際を見ていたら、今までのを見ていると、結局、何とかそういう形で、押さえつけたりそういうことをして挿入行為をしようとする、でも、小さい子供たちですから、なかなかそうはうまくいかない。
 その中でどういう犯罪が実際にあるかというと、これは全てではないですけれども、できないがために、例えば、それこそ手を入れたり、それこそ器具を使ったり、そういうこともありますけれども、最終的に、よくあるというふうに言ったらこれはいけないのかもしれないですけれども、先に殺してしまうんです。殺害をした上で死姦したりとか、こういった行為が非常に多い。その過程の中で、まず最初に、生きている間にどういうことをするのかと考えたら、挿入行為、実際の陰茎の挿入行為ができる前にそういうことが起こっているんですね。
 だから、そういうことも含めて考えたときに、現実的にそんなことがあってはならない、それを防ぐ必要があると思うので、これは、実際に除外される行為というのはどんなことが考えられるんですか。さまざまなとおっしゃられていますけれども、そのさまざまなの中で除外され得るべきものというのはどういうものを考えられているか、これを答えてください。
○林政府参考人 今回、この性交等という概念については、膣、肛門あるいは口腔内、このものに陰茎を入れる、陰茎というものについての挿入、これを性交等だと考えたわけでございます。
 これは、陰茎等の挿入ということについては、極めて濃厚な身体的接触を強いられるという点で、この点を重く、これまでの強制わいせつ罪の加重要件であったところの強姦罪ということが、加重要件と考えていますので、類型的にそこは重く処罰すべきであると。
 では、その処罰すべきものが、ほかにどのようなものを挿入した場合に類型的にそこと同等の処罰をすべきかというところになりますと、もちろん、委員御指摘のとおり、異物の物次第によっては、あるいはその挿入の仕方によっては、極めて陰茎が挿入される場合と同等程度の身体的に濃厚な接触を強いられるという態様があることは、それはそのとおりであろうかと思います。
 ただ、この場合に、ではどこまでが陰茎等の挿入と同程度の身体的な接触なのかということを考えた場合に、ですから、あらゆる異物、さまざまなあらゆる異物を全て挿入した行為を性交等罪、今までの強姦罪と同等に処罰する、これは困難だろうと思います。
 そうした場合に、ではどこまでの範囲をこれまでの強姦罪と同等に処罰すべきかとなりますと、重く処罰する行為の範囲、外延というのは、非常にこれを定めることは困難であります。したがいまして、今回、陰茎等の挿入というものに限定して加重するということにしたものでございます。
 以上でございます。
○木下委員 ありがとうございます。
 わかるんです、今の言葉でわかるんだけれども、でも、さっき言われていましたよね、被害者の年齢であるとか精神状態であるとか、そういうことを考えて、それでやる、その状況によって判断していくんだというふうに言われていたのであれば、特に十三歳未満の子供たちに対しては、陰茎の挿入と同等な濃厚な挿入行為は処罰の対象にすると書けばいいじゃないですか。
 類型的にどうかといったときに、その状況で判断するんだとまで言われていたのであれば、逆にそこの部分については、私は保護すべき対象にしてもいいんじゃないか。これはすごく体系的には難しいことかもしれません。そうするとあっちが出ればこっちが出ないということはあるということは理解しながらも、私は、特に十三歳未満の子供たちに対してはそういうことをやっていくべきなのではないかなと。
 これはすぐに対応できることかどうかはわかりません。ただし、常日ごろ、実際に犯罪がどういうふうにして行われて、そしてどんなふうな状況だったのかということをしっかり見て、これをどんどんどんどん改正していくべきだと思うんです。
 ですから、百十年間、刑法をこの部分については改正しなかった、これから先は、もっと時代の流れに沿った改正、すぐにでも検討できる改正というのをしっかりとやっていただきたいと思います。
 大臣、せっかくきょう久しぶりに来たので、先ほど同じような御答弁をされていましたけれども、そういうことを念頭にやっていただきたいと思いますので、最後に一言いただけますでしょうか。
○金田国務大臣 木下委員のただいまのお話、今回のこの法改正、いろいろと皆様の御意見やお考えをベースに仕上げた法案だというふうに受けとめてはおりますが、引き続き、これが成立した後でも、その後、皆さんと一緒にまた考えたり議論したりして刑法のあり方を考えていくことになろうか、このように考えている次第であります。
○木下委員 大変ありがとうございました。
 以上で終了いたします。
○鈴木委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
○鈴木委員長 この際、本案に対し、平口洋君外四名から、自由民主党・無所属の会、民進党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び日本維新の会の共同提案による修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。井出庸生君。
    ―――――――――――――
 刑法の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
○井出委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。
 本修正案は、法律案の附則に、政府は、この法律の施行後三年を目途として、性犯罪における被害の実情、この法律による改正後の規定の施行の状況等を勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策のあり方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする規定を追加するものであります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○鈴木委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
○鈴木委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、刑法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、平口洋君外四名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○鈴木委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。
 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○鈴木委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
○鈴木委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、平口洋君外四名から、自由民主党・無所属の会、民進党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び日本維新の会の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。國重徹君。
○國重委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。
    刑法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
 一 性犯罪が、被害者の人格や尊厳を著しく侵害する悪質重大な犯罪であることはもとより、その心身に長年にわたり多大な苦痛を与え続ける犯罪であって、厳正な対処が必要であるものとの認識の下、近年の性犯罪の実情等に鑑み、事案の実態に即した対処をするための法整備を行うという本法の趣旨を踏まえ、本法が成立するに至る経緯、本法の規定内容等について、関係機関及び裁判所の職員等に対して周知すること。
 二 刑法第百七十六条及び第百七十七条における「暴行又は脅迫」並びに刑法第百七十八条における「抗拒不能」の認定について、被害者と相手方との関係性や被害者の心理をより一層適切に踏まえてなされる必要があるとの指摘がなされていることに鑑み、これらに関連する心理学的・精神医学的知見等について調査研究を推進するとともに、司法警察職員、検察官及び裁判官に対して、性犯罪に直面した被害者の心理等についてこれらの知見を踏まえた研修を行うこと。
 三 性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の過程において、被害者のプライバシー、生活の平穏その他の権利利益に十分な配慮がなされ、偏見に基づく不当な取扱いを受けることがないようにし、二次被害の防止に努めるとともに、被害の実態を十分に踏まえて適切な証拠保全を図り、かつ、起訴・不起訴等の処分を行うに当たっては、被害者の心情に配慮するとともに、必要に応じ、処分の理由等について丁寧な説明に努めること。
 四 性犯罪被害が潜在化しやすいことを踏まえ、第三次犯罪被害者等基本計画等に従い、性犯罪等被害に関する調査を実施し、性犯罪等被害の実態把握に努めること。
 五 刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第五十四号)附則第九条第三項の規定により起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置についての検討を行うに際しては、性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の実情や、被害者の再被害のおそれに配慮すべきであるとの指摘をも踏まえて検討を行うこと。
 六 性犯罪が重大かつ深刻な被害を生じさせる上、性犯罪被害者がその被害の性質上支援を求めることが困難であるという性犯罪による被害の特性を踏まえ、被害者の負担の軽減や被害の潜在化の防止等のため、第三次犯罪被害者等基本計画に従い、ワンストップ支援センターの整備を推進すること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○鈴木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○鈴木委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。金田法務大臣。
○金田国務大臣 ただいま可決されました刑法の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処をしてまいりたいと存じます。
 また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと存じます。
    ―――――――――――――
○鈴木委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
○鈴木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十一分散会