1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年九月三十日(火曜日)
午前十一時三十五分開議
出席委員
委員長 加藤 勘十君
理事 辻井民之助君 理事 山下 榮二君
理事 川崎 秀二君 理事 橘 直治君
理事 原 侑君
荒畑 勝三君 菊川 忠雄君
田中 稔男君 館 俊三君
前田 種男君 尾崎 末吉君
小林 運美君 寺本 齋君
山下 春江君 吉川 久衛君
河野 金昇君 綱島 正興君
出席國務大臣
勞 働 大 臣 米窪 滿亮君
出席政府委員
大藏事務官 今井 一男君
勞働事務官 上山 顯君
委員外の出席者
專門調査員 濱口金一郎君
九月十六日委員土井直作君辭任につき、その補闕
として九月二十六日山崎道子君議長の指名で委員
に選任された。
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九月二十三日
新湊町に公共職業安定所及び勞政事務所設置の
請願(内藤友明君紹介)(第六七四號)
宮津町の勤務地手當の地域給を甲地域に引上の
請願(太田典禮君紹介)(第六八一號)
の審査を本委員會に付託された。
九月二十七日
系統農業會從業員組合の陳情書
(第三二三號)
を本委員會に送付された。
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本日の會議に付した事件
失業手當法案(内閣提出)(第五二號)
失業保險法案(内閣提出)(第五三號)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/0
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001・加藤勘十
○加藤委員長 これより開會いたします。
前會に引續いて質疑を繼續いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/1
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002・館俊三
○館委員 緊急質問を提出したいと思いますが、お許ししていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/2
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003・加藤勘十
○加藤委員長 ただいまお聽きの通り館君から、緊急質問をしたいという御提議がありましたが、異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/3
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004・加藤勘十
○加藤委員長 それでは異議なしと認めますから、どうぞ。館君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/4
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005・館俊三
○館委員 今井給與局長に緊急質問として、官公吏の給與に關する件をお聽きしたいと思つております。まずお聽きしたいことは、政府がこのごろ千八百圓ベースと言つておりますが、この千八百圓ベースを最初政府として、お心ぎめをした月はいつでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/5
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006・今井一男
○今井政府委員 申し上げます。今囘の新物價體系設立に並行いたしまして、本年七月以降從來の千六百圓の水準を、その實質賃金を確保する意味合におきまして、これを千八百圓に引上げることが適當と考えまして、追加豫算に計上目下關係方面と折衝中でございます。但し組合側との交渉關係におきましては、いまだに未決のままになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/6
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007・館俊三
○館委員 その千八百圓と千六百圓案との差額二百圓、それについて組合その他の折衝において、六百圓をどうするとかこうするとかいう案が出ておりますが、これについての經過を一つお聽きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/7
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008・今井一男
○今井政府委員 千八百圓と千六百圓との差額二百圓は、千八百圓水準に關する組合側との妥結が成立しません關係上、留保されたまま今日に至つておるのでありますが、一方官公吏の現在の生活状況に鑑みまして、八月なかばころ政府側の方から組合側に對しまして、とにかく政府として一應用意しようという金は受取つたらどうかと、かように申し出ましたところ、貰うことについては組合側としては別に異存はない、かような御見解でありました。しからばこの配分方法をどうするかという問題につきまして、政府側から團體交渉の席上組合側に申し出たのでありますが、組合側といたしましてはとにかく千八百圓水準そのものは、われわれとしてただいま受け容れるわけにいかない、從いましてこの配分方法に自分らとして意見を述べることは、結局千八百圓水準を承諾したことになるおそれがあるからして、この配分方法はあげて政府に一任する、かような見解になりまして、數囘の折衝の結果、この問題につきましては、去る九月十九日に全官公職員待遇改善委員會準備委員會におきまして、兩者の間に覺書が交換されました。その覺書のこの問題に關する部分を朗讀いたします。「千八百圓水準は組合側としては不滿であるが、生計費の不足を幾分でも補うため、早急に現金を受取る焦眉の急に迫られておるので、七月乃至九月の三箇月分について、右水準による増額分を政府の責任において支拂うことに對し、組合は異議を有するものではないこと、」こういう了解が成立いたしまして、結局政府といたしましては、いわばやむを得ずといつた形で、各種の資料から配分案を決定いたしました。この配分案は組合側の方にももちろん提示いたしましたが、組合側は正式にはこれに對して排判を述べることはできない。こういう御見解で今日に至つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/8
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009・館俊三
○館委員 この千八百圓ベースをきめられた建前はどういう御趣旨であるか。私のお聽きしたいところは、地域的に千八百圓ベースを區分して唱えられておるのか、それとも全官公吏に對し千八百圓ベースというものを一様にお考えになつた上で建てられておるのか。私たちの考えといたしましたならば、全官公吏の平均生活水準を千八百圓ベースというふうにきめられたのであつて、これは單に地域的な考えをもつてきめられたものでないというふうに考えたい。また組合側としても、おそらくそう考えておるんじやないかと私は考えておる。これ以外に勤務地手當において地域給というものがつけてあるのでありますから、千八百圓ベースというものは全體的に見る考え方でいくべきものであつて、地域給というものは別途考慮せらるべきものである。こういうふうに考えておつたのでありますが、その點御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/9
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010・今井一男
○今井政府委員 千六百圓水準そのものが、現在全國の各町村に散在しております官公吏全體を通じての水準でございます。その點が官公吏の特殊性と考えなければならぬ點でなかろうかと思うのでありますが、一般に工場勞働者は大部分が都市もしくは都市に近い所におりますが、官公吏は趣きを異にいたしまして、全國の津々浦々に散在しておるという特殊性が、給與の面にも影響を及ぼすものであります。千六百圓の水準は御承知の通り、一應組合側と團體交渉の結果成立した水準でありますが、この水準を新物價體系においてはいくらに上げることが適當かということで、先に安本で發表になりましたラインに沿いまして、その千六百圓の實質賃金を生かすためには千八百圓に上げることが適當である、こういつて千八百圓に上げたのでありまして、從いましてその中にはもちろん地域の關係も全部含まれております。ただその差額の二百圓をどういうふうにわけるか、こういう問題は、これは事情の變化に應じまして適當に考慮する必要があることは申すまでもありませんが、とにかく勤務地手當もこの二百圓の中に含めて考えるということは從來からの建前でございますし、今囘の給與審議會の關係から、政府の決定いたしました暫定業種別平均賃金、この場合におきましもさように取上げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/10
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011・館俊三
○館委員 今度の千八百圓の水準と千六百圓との差額の二百圓をくれるということについては、組合側においても異議がないと思いますが、地域的にこれをわけるということについては、今申しました私の觀念からして、全官公勞の立場においては、おそらく二百圓という差額が全國一様にくれるものであるというような考え方からやつておるんじやないかと思います。そういう場合に、今度支給される六百圓がどういうふうに區分されていくかということが、非常に關心の的だろうと思いますが、同時に今度給與されるものが、いわゆる千八百圓ベースというものの形においてくれるのではなくて、政府はこれをすり變えて、現實の生活の一時補給という形においてもつてきておるんじやないか、そういうことであれば、組合の考えておる六百圓というものと、政府が今六百圓を出そうという基本的な考えとは、齟齬するという感じを受取つておるんじやないかと思うのでありますが、その點どうお考えですか。
〔委員長退席、山下(榮)委員長代
理著席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/11
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012・今井一男
○今井政府委員 組合側の受取られるところが、その眞意が解釋上どこにあるかということにつきましては、私どもが忖度いたしまして誤つておる場合があるかもしれませんが、政府側の見解では、千八百圓水準というものが少くとも現在の新しい憲法の建前におきましては、政府職員につきましては、國會の御承認という問題もございますので、千八百圓ベースは政府の内部におきましては一應成立いたしましたものの、これが正式に豫算等の手續において完了しておりませんので、一應用意いたましましたその水準と、千五百圓水準との差額の三月分を、この際一時金として出す。こういう見解のもとに、昨日これに關する關係法律案を國會の方に提出いたしました次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/12
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013・館俊三
○館委員 この緊急質問を出した理由は、六百圓を國會が承認した場合に、その六百圓をどう配分するかということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/13
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014・今井一男
○今井政府委員 一應閣議の決定を經、組合側にも先に提出しました案によつて配分したい考えております。この案そのものはかなり地區的に差がついておりますが、政府といたしましては、毎月貰つておる給與の上にこの分を乘つけて考えて、その上で現實の生計費とにらみ合わせることが適當である。この一時金だけを切り離しますと、非常に開きがあるように見えますが、結局その根つこに属するところに毎月の給與がございますので、その毎月の給與にこの部分をプラスしたものでこの際の一時金を配分することが、乏しい財政をもちまして官公吏の生活の實情に最も即應するゆえんである、かような見解でつくつた案でありまして、この案は京阪神に對しましては、現在もらつている月收のうちから勤務地手當を外しましたものの十二割、そのほかに六大都市級、われわれは特地と呼んでありますが、それが九割、甲地と申しまして大都市あるいは六大都市の周邊の都市、こういつたところが六割、普通の都市及びそれに準ずべきところが三割、それ以外の一般の農村が二割、そういうふうな案で配分いたしたい、かように思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/14
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015・館俊三
○館委員 先に給與局長の言われた勞働組合との折衝の間において、この配分については勞働組合がタツチしないというようなお話があつたが、その次の會合の時分において、これをもらうことは異議がないということであつて、最後の決定の時分に配分については一言も觸れておりません。今後政府はこの配分率について、さらに組合と折衝する意思がありますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/15
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016・今井一男
○今井政府委員 八月中ば以來この問題を官公職員待遇改善委員會準備委員會において取上げまして、團體交渉の席上、公式的にとにかく配分案に關する意見を欲しいということを積極的に増し上げましたところが、ただいままでに申し上げたような形から、委員會といたしましては、正式に組合側から意見を申し述べるわけにはいかないというような御返事をいただいたのであります。さらに私どもは、しからば非公式でも御意見が伺えないかということを申したのでありますが、それもやはり現在の組合における各種の情勢から申上げにくい。從つてこれはどうしても政府の方で一方的にきめていただく以外方法がない、ただしこの案がきまつたならば施行前にぜひ見せて欲しい、かような折衝でまいりました。去る十九日におきましても、その線によりまして正式に覺書の調印が交されました。その案ができ上りまして、同じく先週の準備委員會におきましてこの案をお示し申し上げましたところ、組合側としては、これにつきましては結局意見はあるが批判は差控える、こういつた委員會の御希望であります、ただその御承わりますと、準備委員會を構成しております一部の組合におきましては、非常なる御不滿があるというようなことを私ども耳にしておりますが、とにかくわれわれの團體交渉の正式な機關は委員會の方でそういう決定になりました上におきましては、あとの構成メンバーと政府が直接取引をするということは、準備委員會の團體交渉權にも影響を及ぼす問題であるので、やはり政府としてはこの際勞働交渉の建前上できないのではないか、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/16
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017・館俊三
○館委員 この配分法を發表した場合に、今井給與局長は、勞働組合にどういう樣相が現われるかということについての見透しなり御見解がありましたら、御發表及いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/17
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018・今井一男
○今井政府委員 本年に入りましてから、地方差による生活費の開きというものが非常に顯著になりつつあることは、各種の數字から明瞭にこれを捕捉できるものであります。もちろんこの數字をいろいろと分折してまいりますと、そこにいろいろの見方が生れてくるとは考えられますが、とにかく方向的にはそういう方向が現實の姿でございますので、その開きをそのままに全部正比例するというわけ方は、われわれとしても必ずしも適當とは考えないのでございますが、しかしながらある程度そういう事實を織り込んだのであります。すなわち現在においての政府でやるところの最高と最低の開きが三割しかないというという姿は正しい姿ではない。いま少しこの幅を擴げる必要があろうという反對の意見がないわけではございませんし、絶對多數の各方面の御意見のように私どもは認識しておる次第でございます。從いまして、そういう線を承知いたしまして今囘の配分案を考えたわけであります。最も開きがあるとわれわれの考えております京阪神地方の十二割というものも、これは七、八、九の三箇月分でありますので、これを三で割つたものに現在もらつている月收をプラスすれば、現局最低との開きは六割足らずという形に相なりまして、現實の生計費の姿から申しますれば、客觀的にはいにかくバランスを得た姿ではなかろうか。もちろん今の地域區分は、全國的に全部均整がとれたものとは申し上げかねますので、乙においても丙においても、やはりある程度不權衝を受けなければならぬという地域が取殘されているということは、私どもこれを認めるのにやぶさかでないのであります。そういう地方においては、それは御不滿の出ることも想像されますが、客觀して考えますれば、このくらいの開きは、私ども日ごろ各方面の官公職員の方々及び組合幹部の方々とおつき合いしておりまして、その方面から得ましたいろいろの印象を總合集積した結果が、今囘のこの案の基礎をなしている。從つてもちろん、いかなる場合においてもこういう差等を設ける場合には、一部に不滿の方々ができることはやむを得ませんが、大多數の面から申しますれば、大體當り障りのいい形に納まつているのではないか、かように考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/18
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019・館俊三
○館委員 この手もとに來ておる陳情書に現れている實際の金の配分方法を見ると、超特地を除いた一般地方の姿が非常に少さくなつている。これについて組合の姿によつてはずいぶん不滿が出るだろうと思います。なおまた組合は政府側との折衝の間において、この案について保留の態度をとつているのではないかと私は考える。そこでこういう案が示された場合に、どういう樣相が組合内に現われるかということを私は非常に心配するのでありまして、それを聽くのでありますが、今千八百圓ベースその他でいざこざがしきりに起つている際に、さらにするりとそのまま脱けられるであろうと思われたところの二百圓の差額というものが、こういう形で現われたというのは、これがまたいざこざに輪をかけるような調子になりはしないかということを私はおそれるのであります。それで組合がこれを出したときの組合の樣相について、どういうように政治的にお考えかということを、私は聞きたかつたのであります。現實にここにもつてきた陳情書、これは政府に對する陳情書でなく、委員會に陳情の形できておりますが、せつかくの陳情でありますから讀み上げてみますと、政府は官公吏の給與水準引上げを一方的に公表し、豫算的措置には千六百圓水準より千八百圓水準の差額二百圓を計上した、しかるにその實際支給には、豫算の全額を勤務地手當として支給せんとしている、錯誤もはなはだしい、水準引上か、勤務地手當の支給か、はたまた都市喜ばせの生活補給金か。いわゆる都市に集中させた生活補給金では、非常に刺戟を強くするということなんだろうと思います。しかも勤務地の支給率は、地域差がはなはだ擴大されているといつて、政府から示されたものと思われるような差をここに列擧しているのですが、その次に、政府は生活必需品全般のにわたつて丸公を全國的に一樣にとつて、その枠内において最低生活を強制している。さすれば丸公生活における最低生活は、およそ全國各地域一樣とみなされてもよいわけである。それほどでなくても、差額が六對一というそれほど生ずる理由が成立たない。たとえ、やみ物價にしても六對一という差は考えられない。むしろ農村も都市のあほりを受けて高價な現情である。ここにも政府の大きな誤差を生じている。純朴な農民、農村勤務者の最低生活の犧牲において、都市勤務者の穴埋めを畫すことの錯誤は、やがて農山村勤務者の精神的反抗を覺悟せねばならぬということになつておりますが、そういうことにつきまして、これは全官公勞組合の總意であるかないかということも疑問でありますけれども、そういう波動が次ぎ次ぎに全國的組織をもつ勞働組合の農村方面、あるいは超特地、あるいは特地以外の所に住む組合員に、相當の響きを與えてくるというようなことになつて、いよいよ勞働行政上今非常にややこしくなつているところの姿が、ますますややこしくなりはせぬかということも考えられるのであります。そういう場合に、勞働組合そのものを正常に育成していくという立場から考えましても、この地域差の區分があまりにはげしいということはどうかと考えられる。そこで緊急質問を出した理由でありますが、丙地の二百六十一圓に至つては、二百圓からみてたつた六十一圓しか多くないというような恰好になつているのでありまして、これが實際において、都市以外に居住する官公吏の生活を補給するに足るかどうかということなのであります。丸公というのはこの説明にもあるように、丸公の生活によつて千八百圓ベースが維持できるという政府の聲明である以上は、これは多少の差異があつても、全國的に配分率をよくしていくということでなくては、非常に不公平なものができ上つてくる。政府みずからが、都會生活においては丸公自身の裏付けが困難であるというようなことを證明するような配分の仕方であつては非常に困ると、私は考える。この點については、十分自分たちも研究してみたいと思いますが、この差異をどこまでも維持しなければならないという政府の立場であるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/19
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020・今井一男
○今井政府委員 いろいろ御意見を拜聽いたしました。われわれ常にこういつた地域差の問題でありますとか、各省の凹凸の問題でありますとか、組合組合の内部事情によりまして、きわめて利害關係が複雜しておりますような問題につきましては、つとめて第三者的な見地から、その最大公約數に徹底的な線をもつてくるように努力いたしております。たとえば凸凹整理の問題につきましても、これはお聞き及びの通りに、一部をどうしても頭割りにしなければならない。政府として從來凸凹に比例するように、その目的のために留保しました金を、一部組合側の御要求によりまして頭割りに平等にわける、こういつた團體交渉の問題が起りました際におきましても、組合々々によりまして一つ一つ御意見が違うのでありますので、殊に勞働組合の健全な發達のために、なるべく組合々々が個個的にならないように、せつかくできました全體の團體交渉機關でありますところの官公職員待遇改善委員會を通じまして、なるべく多數の組合が辛棒し合つて、我慢できるような線を見つけたいといつたために、一箇月以上の長きにわたりまして折衝を重ねて、ごく最近妥結したような沿革もございます。從いましてこの地域差の問題につきましましても、私どもとして、日ごろ最も頭を惱ましておる問題でありまして、決して農村をうとんずるとか、あるいは都會をどうするといつたような見解は毛頭ございません。但し資料その他の關係で、理實の地域の認定その他におきまして、未だに不十分な點がありますので、個別的にはいろいろな問題が生ずるかと思うのでありますが、またそういつた見地から今囘の配分案をつくりますに對しましても、積極的に團體交渉の席上において、各組合側の御意見を伺うべく努力いたしたのであります。しかしながら現在の組合の各種の内情から申しまして、そういつたことはできない、やむを得ぬから政府の方に一方的にきめてくれ、但し自分たち批判の權利を留保する、かようなお立場を終始とられたのであります。その點は組合の内情から申しますると、まことにやむを得ない態度だと考えられるのです。從いまして私たちは、從來からわれわれのこの問題に關しまして、各方面から得ておるいろいろな情報、いろいろな資料、こういつたものを極力公正に勘案いたしまして、いわゆる最大公約數の線でまとめたつもりなのが現在の案でございます。從いましてむろん個々的に見ますると、いろいろな苦情が出ることはもちろん豫想されますが、結局最大公約數の線においてまとめると、どなたがおやりになつても、おおむねその線に近いものになるのでないか、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/20
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021・館俊三
○館委員 これで質問を打切りたいと思いますが、當局が諸種の雜多の組合を相手にして苦心されておるその折衝のぐあいも、なかなか面倒であるということは、かつて組合におつた私自身がよくわかることなんであります。十分御苦心は察知するのでありますが、ただ最後に千八百圓水準というものによつて、勞働者の生活の現状を打破していくという氣持であつたように考えられる。その差額が地域給に變更してしまつたという氣持を、組合に多數與えておるということが一つと、それからもう一つ千八百圓ベースを維持するためには、實質賃金を十一月までに裏付けをすることになりますれば、都會も僻陬地も同じ待遇を受けねばならぬ。こういう經濟事情のもとの場においても、都會地の金のかかることはわかるのでありますが、しかしこの實質賃金を平均的に裏付けていく建前から考えてみても、この地域的に割當てられるこの差額が、きわめて大きくなつておるということはどうかということを考えられまして、この點にもう一考慮加えられないかということを希望するのであります。これは計數的に十分な御檢討の上階段づけられたことはよくお察ししますが、そればかりでなく、現實的に情勢を十分認識はされておられるでしようが、そういう意味からの檢討を、差額をこしらえる場合に、つけていただけないかということを考えるのであります。なお勞働組合と今後も折衝されるでありましうが、私の懸念されるところは、その案がいわゆるこれから始まるところの千八百圓ベースではいけないという反對、それに調和してどういう形をとり出すかということも考慮の中に入れて、いわゆる勞働攻勢の一つの分子を、そういうふうに含めておるのだということもお考えの上、十分にこの階段を、もう少し縮められる御工夫を希望しておきたい。そして私の質問を打切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/21
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022・山下榮二
○山下(榮)委員長代理 これで館君の緊急質問は終つたのでありますが、次は本來の失業保險法、失業手當法の質問を繼續いたしたいと思います。質問を通告順にお許しいたしたいと存じます。まず辻井民之助君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/22
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023・辻井民之助
○辻井委員 勞働大臣に、失業問題に對する對策についてお尋ねしたいと思います。ただいま上程せられております失業手當法案竝びに失業保險法案は、現在就業している勞働者の中から、今後出るであろうと豫想される失業者を對象とせられておるのでありますが、政府の發表にもありますように、現在すでにいわゆる顯在失業者、濳在失業者の推定は、八百萬に達すると見られております。この二つの法律案には、これら現在の八百萬に達する失業者は全然對象とせられていない。そして現在までのところ政府には、何らこの八百萬の失業者に對する對策が明らかにせられていないのであります。政府は今いわゆる傾斜生産による計畫經濟の確立、あるいは企業整備によりまして不要不急の生産を禁止するというような政策が行われ、さらに經濟流通秩序の確立というような、これらの政府の政策が、さいわいにしてぐんぐんと實現されていくことになると、これらのいわゆる濳在失業者、今やみ屋をしたり、あるいは小賣商人をやつているような人たちも、いずれも續續と、はつきりした失業者として現われてくるのであります。これらの今後多數に現われてまいります失業者に對する對策は、これは社會不安を除去する上から申しても、實に緊急を要する問題だと思います。どうにか買出し部隊、やみ屋で食えているから、なお社會不安はいくらかでも緩和されているのでありますが、そういう連中が食えなくなれば、必ず犯罪は激増し、社會不安は激化してくる、これは明白であります。こういう見地からも、これらの失業對策は實に急務であると思います。また日本の經濟復興の上からいいましても、完全雇傭というものの實現がこれまた絶對條件でありまして、働く能力をもち、働く意思をもちながら、働くことができないということでは、産業の復興は不可能でありまして、こういう失業者を速やかに産業に吸收するようにしなくちやならぬのでありますが、こういう八百萬人の顯在、濳在失業者が、やがてこれが顯在失業者にならなければならぬのでありますが、またそういう計畫で政府は進んでおられるのでありますが、これらの今後濳在失業者の中から現われてくる多くの失業者に對する政府の對策というものについて、はつきりと御見解を伺いたいと思うのであります。これまではただ生活保護法によつて食えない者を救うということは、政府から言明せられておりましたが、申すまでもなく生活保護法は、生活能力のない者の生活を救援することを目的にできておる法律でありまして、これらによつて働く能力も腕もある失業者が甘んじていそうなはずがないのでありますから、これではやはり不十分であると考えます。一體こういう今後續々表面に現われてくると豫想される多くの失業者に對する根本的な對策を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/23
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024・米窪滿亮
○米窪國務大臣 辻井さんの御質問、まことに時節柄適切かつ深刻なる問題でございまして、私はじめ勞働政策に關係のある政府當局は、非常にこれを心配しておるのでございます。その對策については、たびたび從來機會あるごとに申し上げた通りでありまして、失業保險法あるいは失業手當法で救うということは、失業對策の中の最後の案でございまして、これは私どもとしては、いわゆる最上の策とは考えておりません、そこで政府といたしましては、いつも言うことでございまするが、土木事業、公共事業等を、目下關係筋ともその豫算について折衝中でありますが、できるだけ廣範圍に公共事業を進行しまして、これに顯在失業者を吸收したい。また豫算に上つておらない事業としては、政府としては電源の開發であるとか、輸出産業であるとか、さいわい五億ドルのクレジツトのレボルヴイング・フアンドも許されておりますから、これによつて輸出産業を振興して、若干の失業者を吸收したい。電源については、この前經濟安定本部總務長官が一應御説明申し上げたのでありますが、實は失業對策から考えても、單なる生産の方面から考えられるのではなくして、失業對策の方面から考えても、きわめて有望であると思つておるのでありますが、關係筋に對する説明の點において、あまりにもその出力を大きく説明したために、いわゆる再軍備の温床だと考えられたとみえて、今停頓しておる状態でございます。しかしそれは決して望みがないとは言われないので、政府としては、さらに努力したいと考えておるようなわけでありまして、こういつたぐあいにあらゆる失業者を吸收し得る事業を振興させたいと考えております。さらにその意味において、全國に五百四十箇所の職業安定所を、もつと効果をあげるように指令をしまして、その活動を強化したい、こういうぐあいに考えております。さらに政府としては、全國に三百四十箇所あるところの職業補導所の機構を改善して、その活動を促してまいりたい。實はこれもたびたび申し上げることですが、昭和二十一年度における求人が三百萬、求職は反對に二百二十萬、その差八十萬という現象を示しておつた。しかも就職の成立したものが百二十萬、あるいは百三十萬に過ぎない。ここにまだまだ、この求職者の方にも心がまえの點において、われわれからみて一段の反省を求める點もあるし、またこれは取扱う政府側の職業紹介機關においても、努力が足らないのじやないかという點もあるのでありまして、從つてこの三百萬、二百二十萬、百三十萬というこの數字に現われた食違いについては、職業補導所として、もつと活動し得る餘地があるのではないかと、こう考えているわけであります。もちろん辻井さん御指摘の通り、生活保護法などという救貧的制度において失業者を救濟するということは本筋ではないのでございますが、これも一つの方法だと考えております。これは生活保護法に關係のあるいわゆる授産場、あるいはそれに類した共同作業場というような所において、われわれが職業の指導をし得る餘地があると考えているのでございまして、以上申し上げたいろいろの政府の政策を總合的に活動さして、なるべく一人でもよけいな失業者を救濟したい。こういうぐあいに考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/24
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025・辻井民之助
○辻井委員 現在資本主義機構が維持せられています以上は、名實伴う完全雇傭の實現ということは、はなはだ困難でと思いますが、しかしこの厖大な失業者に對して、産業復興によつて本年度にはどの程度まで職業を與え得るか、また來年度にはどの程度まで完全雇傭に近づき得るかというような、一定の勞働省としては計畫なり目標をもつてお進みになる必要がある考えるのでありますが、こういう點について何か御計畫なり見透しでもありますか。これは經濟の面からは安本長官にお聽きするのが適當だと思いますが、しかし失業者勞働者の面からは、やはりこれは勞働省の管轄だと思いますから、この八百萬と推定される失業者を、今お述べになりましたような事業によつて、どの程度まで吸收できるか。將來今の政府の經濟緊急對策、あるいは傾斜生産が計畫通り實現していくとすれば、はたして今後どれほど經てば完全雇傭の實現、あるいはそれに近い状態に達するか、こういう御計畫なりお見透しがあれば伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/25
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026・米窪滿亮
○米窪國務大臣 どの程度に公共事業その他の新興産業に吸收し得るかという數字については、その精細なる具體的のことは、目下經濟安定本部で調査立案中ですが、大體昨年度の計畫を見ますと、百七十萬は公共事業に吸收し得る。但し諸種の事情によつて、それの六割か七割くらいに減ることもやむを後ない状況をわれわれは認めておりまして、大體百十萬くらいは公共事業に吸收し得る數字ではないかと考えております。輸出産業であるとか、電源開發ということについては、まだその規模がはつきりと計畫立てられておらないのであります。從つてこれに吸收し得る勞働者の數も、今のところはつきりとこれを申し上げるところへ行つておらないのであります。またどの程度に企業整備の再建が行われるかということについても、これまた經濟安定本部で今見透しを立てつつあるので、この際それによつて出てくる失業者がどのくらいあるかということも、ここで責任のある御同答のできないことは、まことに申譯ないと思いまするが、いずれ見込みの立ち次第に御報告いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/26
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027・辻井民之助
○辻井委員 それでは次に賃金の問題についてお尋ねしたいと思います。例の千八百圓ベースにつきましては、いろいろ本會議においても質問が出たりしておるのでありますが、政府が物價體系の一部として、どうしても千八百圓は維持しなければ物價體系全體が崩壊するという立場にお立ちになつているのに對して、われわれはやはりこの點には同感でありまして、あくまでこの千八百圓ベースは支持したい、そのために勞働組合としても協力すべきだと考えております。しかしながらそれには前提があるのでありまして、政府自身が一十月までには少くとも食糧、生活必需品は五割まで配給によつて確保する。いわゆる實質賃金によつてこの千八百圓でやつていけるようにするということを聲明せられておる。この實質賃金の確立を前提としての千八百圓であります。しかるにこの委員會においても、總理も認めになつておりまするように、現在十一月に黒字ということは非常に困難な状態であります。しかし十一月には、これまでの經過を見て必要に應じて改める意思のあることも言明せられているのでありまするから、われわれはやはり十一月に黒字が困難であつても、何とか千八百圓は維持するように協力したいと考えております。しかしそのためにはどうしても、勞働者がこの千八百圓ベースに協力することができる手を、政府において勇敢に急速にお打ちになることが絶對條件でありまして、もし政府の約速の實賃金も確保されないで、ただ勞働者に千八百圓の維持にいくら協力をお求めになつても、これはむりでありまして、勞働者がそれに協力しようにも、それではできないのであります。そのためには、繰返して申し上げますが、これに甘んじて働き得る手をお打ちになることが絶對必要だと思います。その方法としては、一つの問題は、勤務所得税の免税點を大幅に引上げること、また勤勞所得税の税率を改正しまして、累進課税が行われておりまするために、炭鑛などにおきましても、うんと殘業して増産をする、そうして賃金の所得が殖えると、殖えた分の半分も三分の二までもが所得税でとられてしまうというようなことでは、勤勞意欲を發揮することができないのは當然でありまして、こういう不合理な累進課税の税率を徹底的に改める、また大幅に免程點を引上げる。こういう方法によつて協力のできる條件を政府がおつくりにならなければならぬ。またもう一つは、お約束になつております現物の配給でありますが、近く政府はタバコの値上も計畫せられているようでありますけれども、議會を通るかどうかわかりませんが、タバコの値上をする。しかも家庭配給も減らすというようなことになりますと、タバコは今日ではもう奢侈品ではないので、まつたく生活必需品でありますから、勞働者はいくら上つてもやはり買わなければならぬので、こういう點からも、すでに政府の千八百圓ベースをきめた當時の建前が崩れてくるのであります。それで値上げになつてもならなくても、もつと職場に對してタバコの配給をする。また主食に對しても、少くとも次の米穀年度からは、井上農林政務次官が非公式に發表もせられましたように、すべての勤勞者に對して、せめて一日五勺でも加配米を出すというような方法をとる。またいま一つは、現在廢止になつております國鐵その他の通勤定期券であります。單なる定期券ではなしに勤勞者のための通勤の相當割引したところの定期券を復活さす。こういう千八百圓でできるような方法をとつて、一般の經濟流通秩序を一日も早く確立することは、これは絶對必要でありますが、それができるのを待たなくても、こういう方法は政府の勇氣一つによつて決して不可能ではないのでありますから、大なる勇斷をもつて著々とこういう手をお打ちになりますならば、勞働階級も必ず政府の誠意を認めて協力することを考えます。こういう點につきまして、勞働大臣は、これは勞働大臣だけでおやりになることはできぬと思いますが、しかしうしろには數百萬の勞働階級ががんばつているのでありますから、この支持を得て、閣議において大いに主張していただくならば通らぬことはないと思います。こういう目に見えた勞働省の勞働大臣の、あるいは片山内閣が働く階級に對するところのただ耐乏を求めるばかりでなしに、できるだけの手をこの通り打つているのだということを、お示しになる必要があると思うのでありますが、こういう點についてどういうお覺悟をおもちになつておるか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/27
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028・米窪滿亮
○米窪國務大臣 辻井さんの非常な御激勵の意味を含めた御質問を伺つて感激しておるのであります。御指摘の千八百圓の名目賃金の裏づけになる物の配給、すなわち勞務用物資の配給を是正して、それによつて實質賃金を高めようという御意見については、全然同感でございます。ただ現在の勞務加配米その他の勞務用物資の配給は、千八百圓という名目賃金の裏づけをするために、特配をするという精神から出ていない。これは御承知の通り石炭その他の傾斜生産というものに重點をおいて、それの増産を奬勵するという意味から、現在はそういう基準のもとに勞務用物資の特配が行われておるのであります。この點閣議においても、相當これがあなたの意見なり、私の意見のようなぐあいに、今後勞務用物資の配給を切りかえようという意見に對して、依然としてやはり重點的な傾斜生産、重點主義の基準のもとに配給をするという意見と對立をしまして、目下なお決定しかねておるのでございますが、私としては、やはり政府が機會あるごとに總理大臣を初め、いわゆる實質単金を高めるために生活必需品を、名目賃金の裏づけになるものを特配するということを言つておる以上は、私どもの意見が正しいと思いまして、今後ともその方面に努力するつもりでございます。
また勤勞所得税に關する御意見がありましたが、これはすでに、いわゆる經濟緊急對策を發表した際においても、政府は基礎控除額を百三十五億圓くらいに上げるということを言明して、近く七月に遡りまして、すでに支拂つておるところの勤勞所得税からこれを還附する方針をとつております。もちろんそれだけでは辻井さんの御要望には合わないと思いますが、少くとも政府は現在の勤勞所得税が勞働者にとつて相當の負擔であることを認めまして、そういつた處置をとつております。但しこれについては大藏當局の方の意向もありまして、なかなかそう御要望のようなぐあいにいかぬだろうと思います。たとえば御引例になりました鑛山におけるところの勞働者が、基準生産力を超えて働いた場合において、それにかけるところの所得税の累進課率を減免しろという意見も、相當本日の閣議でも問題になりましたのですが、大藏當局としては、税制の立場からなかなかこの點は困難のようでございまして、これについては閣内において意見をなとめるのに、なおいくたの折衝が必要だろうと考えておるのでございます、もちろん重點産業において、そういつた税負擔を輕減することが、増産の唯一のキー・ポイントであるとも考えておるのでございまして、大藏當局となお折衝を續けるつもりでありますが、萬一それがまとまらない場合においては、それに代わりべき處置をとつてまいりたいと考えておるのでございます。いずれにせよ勞働者の負擔にならない、勞働者が働いて増産しても、その働いた分だけは税金でとられて、元も子もなくなるというようなことにならないという處置をとつてまいりたいと考えております。タバコについては、この點は、家庭配給を一切止めるとか、あるいはピース、コロナの値段を上げるという意見もでておるやに聞いておりますが、當局としては、絶對にこれは反對だ。この點はいろいろの意見があるようでありますが、當留としては、それに對して反對の態度を示しております。
通勤に關してパスを發行するというか、あるいは通勤手當をだすということが一部の勞働組合からしてでておりますが、そういうようなものをやるということは、パスの場合については運輸省の意見も聽かなければならない。手當をだすということになると、これはいろいろの手當にそれがただちに誘い水になつて、各種の手當がでてくるのでございまして、この點は政府として、やはり千八百圓ベースにすぐ響いてくるのであります。もちろん本給を上げなくても、そういう手當が加わつていくということは、やはり總合的にこれは千八百圓ベースでなくなつていくということになるのでありまして、これはなかなか簡單に片づけられないと思つておるのでございます。要するに私として考えておることは、いわゆる勞務用物資の配給機構を、またその觀念を、この際根本的にかえるべきだ。この考え方は捨てておらないのであります。しかし同時に、勞働組合の諸君に私はいつも言つておることですが、賃上げ闘爭、まことにこれはやむを得ないものとわれわれは認めておるのであるが、しかし今日生産は興つておらない。しかるに生産増強は絶對的に必要である。このときに生産をするところの勞働組合が、單なる名目賃金と生活費の比較において、名目賃金を上げろということの運動にばかり集中しておるようなことであれば、いつまで經つたつて生産力は向上しない、從つて生活必需品というものはでてこない。のみならず、ここにおいて私は勞働組合の諸君に對しても、生産を上げながら、生産闘爭に十分の關心と精力を注いでもらいたい。また一方において、この八百萬の勞働者は生産者と同時に消費者であるから、この組織されたところの勞働者が國民運動の中核になつて、そうしてやみ撲滅運動を展開してくれるならば、G・H・Qのレーバー・セクシヨン・チーフのキレン氏も言つておるように、勞働組合が中心となつて、起つて一大國民運動を發展するならば、おそらく流通秩序の確立というこの政府の施策は、この一角から始まつてくるのじやないかということも考えておるのでありまして、十月二日に開かれる勞働團體代表者の會合において、この點を私は代表者諸君に要望したいと思いますが、辻井さんのおつしやつた通り、私の背後には六百萬なり八百萬の勞働者がおると考えておるのでありまして、この點は私も勞働者のためにサービスするつもりでおります。勞働者諸君も私が今申し述べた政策が、この經濟危機を救うのに適切であると考えられるならば、ひとつ辻井さんからも幹部諸公に、政府の方針に協力するように要望方御協力願いたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/28
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029・辻井民之助
○辻井委員 勞働大臣の御答辯と私の質問とが多少食違つておる點もありますが、たとえば通勤パスの問題でも、手當とか何とかではなしに、通勤パスをうんと割引をして、かつての制度を復活せしむべきであるということを申し上げたので、大した問題ではないから、これ以上答辯は求めませんが、ただ最後に申し上げておきたいことは、われわれはもちろん與黨として今日まで片山内閣を支持し協力するために、背後にある勞働組合に對しても極力働きかけてまいつたのでありますが、賃金問題についても、どうしてもこの體系を維持しなければ、再び賃上げと物價高騰との競爭が始まつて、經濟は崩壊するというので、極力説得し協力を求めたのでありますが、その當時われわれは十一月には赤字が出るのだからということを盛んに申して、耐乏を求めてきたのでありますけれども、それが實現しない。これはなかなか大きな計畫でありますから、いろいろな事情のために計畫通りいかないのもむりもないと思いますが、しかしこういう大きな計畫が實現しないにしても、今申し上げたように、加配米を全勤勞者に出すとか、あるいは勤勞所得税をああいう發表のありましたような、わずかばかりのものではなしに、大幅に免税點を引上げ、あるいは累進の率を改める。そのほかいろいろやろうと思えば、もつと政府の誠意を勞働者に認めさすところの手があると思うのでありますが、それがほとんど何らみるべきものがないのでありまして、ただ勞働者の方に耐乏を求めるだけであつて、政府みずからは何も手を打つていない。これではいかにわれわれが全面的に支持協力を求めても、勞働階級の間では、まだそれほど政治的にはつきりしていないのでありますから、ついに離れていく、またどうしても實質賃金が保障されない以上は、食えないのでありますから、もう將來のことは言つておられない。物價體系がどうなろうと、今が食えない結果は、爭議が激發してくることはどうにもならぬのであります。いかにわれわれが協力しましても、そういう全體的な傾向が生れてまいつたときには、これはどうにもならぬのであります。そういう危險が現在迫つておるようにわれわれは考えます。そこで繰返し希望したいことは、今申し上げた具體的な問題は、これはほんの二、三の例でありまして、そのほかいくらでもやろうと思えば、今全體の經濟流通秩序が確保されないでも、部分的に確立して、そうして實質賃金を上げてやる手はいくらでもあると思います。たとえば一般勤勞者に對する加配米について、安本の考え方は私はけしからぬと思うのでありますが、將來今の傾斜生産、計畫經濟が實現されてまいりますと、いわゆる不急不要という企業はなくなるのであります。すべてがその度合こそ違え、いずれも日本經濟復興のために重要な産業ばかりになつてくるのであります。それは一切のものに同じだけの加配米を出せというならばむりでありますけれども、重要度に應じて、すべて働いておる者には特別にそれだけみておるのだということを明らかにするために、たとえ一日五勺というような申譯的な加配米でも出しますならば、どれほど勞働階級は感じをよくするかわからぬのであります。今後の經濟はそうならなければならぬのでありまして、皆が直接間接度合こそ違え、經濟復興のために役立つておるのであります。それにただ重點的な石炭、鐵鑛、そうしたもの以外には輕工業その他に對しては出せないというようなことは、これはけしからぬ考え方だと思います。われわれもこういう安本の考えには徹底的に反對したいと思います。どうぞ勞働大臣としても、勞働階級の納得するように、苦しい中からよく政府がこれだけのことをやつてくれたというような手を極力お打ちになることが必要であります。そうでない限り、いかにわれわれが協力せしむべくがんばりましても、とてもそれはむだであると思ひます。十分ひとつ勇敢に、果敢にそういう點について努力せられんことを希望いたして、私の質問を打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/29
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030・米窪滿亮
○米窪國務大臣 御質問ではなかつたのでありますけれども、私の先ほどの答辯に少し足らないところがございまして、御指摘があつたようでありますから、ちよつとお答えいたします。通勤パスが千八百圓に影響はないというお考えのようでありますが、實はこれは運輸省の特別會計において相當の影響を及ぼす。かりに二百六十萬の官公廳職員に通勤バスを出すことになれば、それだけ特別會計における收入減を來す。その收入減を一般會計から補填するか、その他の方法で補填するか、その方法についてはどうやるにしても、いずれにしても國全體の豫算の收入減ということになれば、それがインフレの原因になる。ひいては千八百圓ベースの問題にも關係してくる。こういうことで政府しとては、あらゆる角度から、あらゆる施策において勤勞階級の生活費を輕減する方法を考えておりますが、以上申し上げたように、基礎控除額を百三十圓ばかり殖やじたという點、あるいは千八百圓の名目賃金の裏付けになるような勞務用物資の配給改善に努力するというような點、その他努力はしております。しかしもし政府の考えの足らないところ、あるいは考えの及ばないところがございましたならば、皆さんの方から、こういう案はどうだというように、いい妙案なりお考えがあるならば、どうぞどしどしと御注意を願えればさいわいだ、こういうぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/30
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031・山下榮二
○山下(榮)委員長代理 本日は午後本會議もあつて、相當重要な議案が審議されるようでありますから、委員會はこれをもつて散會いたします。次會は公報をもつてお知らせいたします。
午後零時四十八分散會発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100105289X01619470930/31
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