1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十三年七月三日(土曜日)
午後四時三十分開議
出席委員
委員長 山崎 岩男君
理事 中嶋 勝一君 理事 田中 松月君
理事 山崎 道子君
大石 武一君 小笠原八十美君
近藤 鶴代君 太田 典禮君
重井 鹿治君 福田 昌子君
松谷天光光君 荊木 一久君
小野 孝君 野本 品吉君
寺崎 覺君 榊原 亨君
出席政府委員
総理廳事務官 三橋 則雄君
厚生事務官 宮崎 太一君
厚 生 技 官 三木 行治君
厚 生 技 官 濱野規矩雄君
委員外の出席者
專門調査員 川井 章知君
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七月三日
恩給法臨時特例案(松原一彦君外六十五名提
出) (第一六号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
性病予防法案(内閣提出、参議院送付)(第一
八九号)
健康保險法の一部を改正する法律案(内閣提出、
参議院送付)(第一九七号)
へい獸処理場等に関する法律案(内閣提出、参
議院送付)(第一九九号)
社会保險診療報酬支拂基金法案(内閣提出、参
議院送付)(第二〇六号)
恩給法臨時特例案(松原一彦君外六十五名提
出)(第一六号)
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〔筆記〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/0
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001・山崎岩男
○山崎委員長 ただいまより会議を開きます。
性病予防法案、健康保險法の一部を改正する法律案、へい獸処理場等に関する法律案及び社会保險診療報酬支拂基金法案を議題といたしまして審査を続けます。山崎委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/1
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002・田中松月
○田中(松)委員 私は山崎委員に代つて性病予防法案について質疑いたします。この法案の國庫負担についてであります。これは全額國庫負担とすべきだと考えるのでありますが、一般に非常に高い今日の実情と考え合わせまして、政府ではどのように考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/2
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003・濱野規矩雄
○濱野政府委員 なかなか困難な点があるのでありますが、治療の内容をはつきり示してあげたいと考えております。なお困窮者にはできる限り扶助したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/3
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004・田中松月
○田中(松)委員 第二十條で國庫負担が二分の一となつております。これはぜひとも全額負担とすべきだと考えますが、政府の御所見はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/4
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005・濱野規矩雄
○濱野政府委員 全く同感なのでありますが、困難なのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/5
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006・田中松月
○田中(松)委員 医療関係では不良医藥品がたいへん多いと聞いておるのでありますが、その取締りについて單に取締りの規則等を施行するばかりでなく、この法律にその規定を設けるような御意思はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/6
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007・濱野規矩雄
○濱野政府委員 藥の統制は法律におきましては藥事法で規定いたしておりますし、まにペニシリンは現在檢査を行つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/7
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008・田中松月
○田中(松)委員 新聞によりますと注射のアンプルが不清潔のため、患者さんがかえつて病氣になつた等という記事があります。事実であるとしましたら、非常に重大なことと考えるのでありますが実情はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/8
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009・濱野規矩雄
○濱野政府委員 もし事実であるとしましたなら嚴重に取調べます。またそういう問題は、今後衞生教育の徹底をはかりまして万全を期したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/9
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010・山崎岩男
○山崎委員長 外に御質疑はございませんか——質疑がなければただいま議題といたしております四案につきまして、いずれも質疑を打切りたいと存じますが御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/10
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011・山崎岩男
○山崎委員長 御異議がなければただいまの各案の質疑を打切りまして、次に討論に入るのでございますが討論は別に通告もありませんので、これを省略いたし、ただちに採決に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/11
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012・山崎岩男
○山崎委員長 御異議がなければ性病予防法案、健康保險法の一部を改正する法律案、へい獸処理場等に関する法律案及び社会保險診療報酬支拂基金法案の各案を一括して採決に入ります。ただいまの各案を原案通り可決いたすことに賛成の諸君の御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/12
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013・山崎岩男
○山崎委員長 起立総員。よつてただいまの各案はいずれも原案通り可決いたしました。
なお、議長に提出いたします報告書の作成に関しましては、委員長に一任していただきたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/13
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014・山崎岩男
○山崎委員長 御異議がなければさよう取計らいます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/14
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015・山崎岩男
○山崎委員長 次に松原一彦君外六十五名提出の恩給法臨時特例案を議題といたします。
先ず提案者の野本品吉君より提案理由の説明を聽取いたすことにいたします。野本品吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/15
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016・野本品吉
○野本委員 ただいま議題となりました恩給法臨時特例案につきまして、その提案理由を御説明申上げます。
昭和二十一年十月恩給法臨時特例が制定され、同年十月から施行されて今日に至つておりますが、これは、恩給法所定の恩給金額計算方法に対し、例外的な取扱いを、暫定的に定めたもので、公務員の俸給の増加にかかわらず、恩給金額を從來の金額の程度にすえ置かんとするものであります。その法文にも明白なことく、この法律はとりあえず当分の間の法律として制定されたものであります。しかるに、この法律は制定後、今日まで久しくそのままに放置されていますために、恩給制度は退職給與制度としての実を失い、ただ單にその名を止むるにすぎない状態になりましたから、ここ二、三年來各方面から、この法律の撤廃、恩給制度改善を要望されるに至り、その叫びは、年とともに大きくなつてまいりました。國会に対しても毎回全國各地から請願及び陳情が殺到し、國会におきましては、その都度これを採択して、政府にその善処方を要望したのであります。また本会議あるいは委員会においても、われわれ同僚の諸君からしばしばこれについて政府当局の善処を切望して來つたのでありますが、未だに、その実現を見るに至りませんことは遺憾にたえないところであります。殊に新給與制度が実施されることになりましたにもかかわらず、依然としてこの法律を放置して、恩給金額を依然として現状のままにすえ置くことは、眞に遺憾にたえないところであつて、永年の間十年一日のごとく公務に精勤して、退職した忠実な公務員に対し、われわれのまつたく忍び得ないところであります。よつてわれわれは、國家公務員法に明らかにされた恩給制度の趣旨に鑑み、退職者が相應の生活を営み得るごとき恩給を給し得るように、恩給制度を改善することを目途とし、現行恩給法臨事特例に改正を加えることにいたしたのであります。さいわいにして、同僚諸君多数の御理解ある御賛同により、これに要する経費につきましては、さきに、適当な措置が講ぜられましたので、本案を立案いたしまするとともに、なお、國家財政等に対し影響するところを顧慮して、政府当局の意見をも徴し、その賛同を得て、ここに本案を提出するに至りました次第であります。
改正の主なる点は、およそ次の諸点にこれを要約することができます。
第一点は、一般恩給額の計算に関する措置であります。
現行恩給法の規定によりますと、普通恩給、扶助料、一時恩給、一時扶助料等一般恩給額は公務員の退職又は死亡当時の俸給額を基礎として計算されることになつています。然るに恩給法臨時徳例の規定は、この取扱いに対する暫定的な取扱いとして、この計算方法に対して制限を設け、戰前における公務員の俸給額程度の仮定俸給を設けまして、これを基礎としてこれらの恩給を計算することにいたしております。今日の物價事情及び在職者の給與水準に照らしまして、今後なおこのように恩給金額をすえ置くことは適当でないと思われますので、この制限を撤廃いたしまして、恩給法所定の通り公務員の退職または死亡当時の俸給額を基礎として、これを計算することといたそうとするのであります。
第二点は、公務傷病者の恩給に関する措置であります。現行恩給法及び恩給法臨時特例の規定によりますと公務傷病者に給せられる増加恩給及び傷病年金は、公務員の等級の別及び傷病の原因程度の別によりまして定額制となつておりますが、今回公務員の俸給制度が根本的に改正され、また俸給の額も相当増額されましたのに照らしまして、このような定額制としておくことは適当でないと思われますので、これを改めて増加恩給及び傷病年金は、傷病の原因程度の別のみにより定めた率を、退職当時の俸給額に一律に乘じて計算することといたそうとするのであります。また、この退職当時の俸給額に乘ずべき率は、恩給法臨時特例制定前の退職当時の俸給に対するこれらの恩給の從來の割合より惡くならないようなものを採用することといたしました。
なお、右のような公務傷病恩給受給者であつて、妻、未成年の子、父母、祖父母等扶養家族を有する者につきましては、さらにその生活上の負担を軽くする必要があると考えられますので、在職給における扶養手当の制度にならない、扶養家族加給制度を設け、その家族一人につき月額二百円を加給することといたそうとするのであります。
第三点は、公務扶助料に関する措置であります。現行恩給法及び恩給法臨時特例の規定によりますと、公務傷病のため死亡した公務員の遺族に給する扶助料は、公務員の等級の別及び傷病の原因の別によりまして定められた一定率を普通の扶助料額に乘じて計算することになつておりますが、ただいま申上げました公務傷病恩給の場合と同樣の理由でこれを改めて、この種の扶助料は、傷病の原因の別のみによつて定めた率を一律に第一点で申し上げました公務員の俸給そのままの額を基礎として計算いたしました普通扶助料に乘じて計算することといたそうとするのであります。また、この割合は、恩給法臨時特例制定前の恩給法從來の割合を下らないようなものを採用することといたしました。
なお、右のような扶助料につきましては、現行法及び恩給法臨時特例によりますと、遺族三人以上の場合にのみ遺族加給の制度がありまして、基本扶助料に公務員の等級の別と遺族員数とにより定められた率を乘じて得た若干の金額を加給することになつておりますが、これを改めまして、ただいま申し上げました家族加給と同じように、遺族一人について月額二百円を一律に加給いたそうとするのであります。
第四点は、いわゆる若年者及び多額所得者の普通恩給停止に関する措置であります。現行恩給法の規定によりますと、普通恩給を受ける者が四十才以下であるときは、その年令に應じて、普通恩給の四分の一乃至八分の一停止することとなつておるのでありますが、今回、この法律におきましては、普通恩給金額計算に対する制限を撤廃して、これを恩給法の規定の通りの計算方法に復せしめました結果、普通恩給金額が増加しますこと及び社会事情をも考慮しまして、この停止はさらに強化するのが適当であると思われますので、傷病のため所得能力を制限されるような者を除いて、四十才未満の者であれば、恩給の全額を停止し、四十五才未満であれば恩給の五割を、五十才未満であればその三割を停止することといたそうとするのであります。
次に現行恩給法臨時特例によりますと、普通恩給年額が千円以上で恩給外の所得が一万円を越える者については、所得額に應じて、恩給の一割五分ないし三割を停止することとなつておりますが、この法律案によりまして普通恩給が増額されたことと、最近の物價事情の推移とを考え合せまして、恩給年額が一万五千円以上で恩給外の所得が十五万円を越える者について、この割合で恩給の停止を行うことに改めようとするのであります。
第五点は、災害補償との調節に関する措置であります。先般労働基準法の施行に伴い、公務員が、公務のため傷害を受け、または病氣になり、その傷病が治つたときあるいは、公務のための傷病に起因して死亡したときは、一般勤労者と同じように、同法に基く災害補償を受けることになりましたので、公務に起因する傷病のため退職し、または死亡した公務員につきましては、すでに災害補償を受けた傷病と同じ傷病によつて公務傷病関係の恩給または扶助料を給せられるような場合も生ずることになりましたから、災害補償を受けた者に給するこの種の恩給につきましては、補償を受けてから六年間これに相当する部分の恩給を停止して、災害補償と恩給との間におきまして適当な調節を行わんとするのであります。
第六点は、現在の年金恩給受給者に対する措置であります。現在の受恩給者は、はなはだ少額の恩給を受けていまして、傷病者、老齡者等ははなはだしく困窮いたしておるものと想像されますので、このような人々の恩給をもできる限り、この法律施行の際に退職する類似の人々の恩給金額の程度にまで、これを引き上げるべきであると思われますから、これ等の者の受ける恩給金額に近く、しかして、この者の受ける金額を越えない程度に増額することといたそうとするのであります。
以上のほか、警察監獄職員または義務教育制の学校の教育職員の國庫納金の取扱い等、從前の恩給法臨時特例に規定されました恩給法の特例であつて、引き続き存続せしめるのが適当であると考えられます條項等をも併せて規定いたしたのであります。
以上が、この法律案を提出するに至りました理由であります。なお詳細なことにつきましては、御質問に應じて御答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/16
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017・山崎岩男
○山崎委員長 それではこれから審査に入ります。質疑は通告順にこれを許します。大石武一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/17
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018・大石武一
○大石(武)委員 この臨時特例案で傷痍軍人はどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/18
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019・三橋則雄
○三橋政府委員 厚生年金保險法の一部を改正する法律案が今回國会を通過しましたので、一般の傷痍年金が引上げられたのですから、傷痍軍人も当然そういたしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/19
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020・野本品吉
○野本委員 関係方面と折衝を行つたとき、関係方面でも、その方面に関心を持つ日本の人達と話したいと述べていたから、今後はどんどんそういう方面に力を注ぎたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/20
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021・大石武一
○大石(武)委員 今後とも傷痍軍人のことにはぜひ協力いたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/21
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022・山崎岩男
○山崎委員長 重井鹿治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/22
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023・重井鹿治
○重井委員 元大学教授で、現在七十八才、現在無職の人とこの特例案とどういう関係がございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/23
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024・三橋則雄
○三橋政府委員 以前の恩給法によりますれば多分年額二千四百円だつたと思いますが、この特例案が施行になれば、三万四百円になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/24
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025・重井鹿治
○重井委員 私は未だ厚生委員になつたばかりで、恩給の法規もよく見ておりませんが、今日通過した恩給法の一部を改正する法律案とこの特例案とはドういう関係にあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/25
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026・三橋則雄
○三橋政府委員 恩給法の一部を改正する法律案は、新憲法公布後に諸制度の改廃、制定があり、それらとの関係のため改正いたしましたもので、この特例案と全然関係はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/26
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027・山崎岩男
○山崎委員長 次に委員外の樋貝詮三君より委員外発言を求められておりますが、これを許すことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/27
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028・山崎岩男
○山崎委員長 御異議がなければこれを許します。樋貝詮三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/28
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029・樋貝詮三
○樋貝詮三君 それでは政府に対して二、三点質問したいと存じます。
第一に傷痍軍人の恩給であります。同じ軍人という名前はついておりますが、一般の軍人恩給と傷痍軍人の恩給を一諸に取扱つてはならぬと思います。傷痍軍人の大部分というものは、召集によつて軍人になつたものでありまして、戰爭を推進させるとか、戰爭を好むとかいつて軍人になつたのではありません。自らの好むと好まざるとを問はず、軍人として戰爭にも從事せねばならぬようになつた人々であります。その点においては、一般の文官などとちつとも変つた人々ではありません。今回恩給の大増されるようになつたことは、社会政策の意味から言つても非常に時宜を得た御処置であると思います。前に恩給増額のときは、三割増加になるのにも全國であの騒ぎでありました、貨幣價値の下落というものもありましようが、今度は平靜な中にこの増額ができたということは、國民各位の自覚に起因していると思います。それにつけても、傷痍軍人の恩給というものはぜひ増額したいのですが、これに対する政府の御所見を伺いたいと存じます。
第二に、恩給の本質についてであります。從來恩給という文字に災いされて、恩給は何か恩惠として與えられるものデあるかの感をもたれたものでありますが、これははなはだ恩給受給者にとつて迷惑の至りで、恩給は決してそんなものでない、一般社会政策の盛んな國々も、社会政治のほかに恩給が存在いたしております。米國でも、英國はもとより、あの國際連盟においても認められておりました、それは現在の給與で、経済能力の減換をカバーし盡されないからであります。官公吏として薄給を與えておいて、將來の恩給をもつてその足りない分を補うという組織であります。恩給があるからという理由で現在の官公吏の俸給なども一般労務者より割安でありますし、やめて後まで恩給を與えるという理由で薄給であります。言ひかえれば、われわれの経済能力が徐々に減じて使い途にならない者は一般の年金である恩給で賄うし、急に減つたものはそれが公務に原因した場合等、傷病恩給で賄つておりまして、ともに能力の減つた者に対する補償であります。私はまたそう信じております。馬場博士などもこう申されておりました。決して恩給亡國などということが言われるべきではありません。これは先年恩給増額が國家財政をも顧みずに叫ばれたときに、そんなに過当の要求をすると恩給亡國になるぞと、この私が初めて使つた言葉であります。それを財政とにらみ合せないで恩給亡國などという言葉を使われることは愼んでもらいたいと思います。恩給を廃止するなら、將來の人々の分は現在俸給を増して、それから廃止して下さい。また過去の恩給は過去の事実に基くものでありますから、それは増額なり一時金に換算するなり、時價を與えて下さい。これは公務員を使つた國家なり公共團体なりの義務であると信じます。今回は増額を願うのでありますから、申すことはないのでありますが、恩給の本質についての政府の御所見を伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/29
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030・三橋則雄
○三橋政府委員 ただいまのお尋ねの第一の点、すなわち傷痍軍人の点に関しては、非軍事的事由に基く一般的補償制度の最低限度を越えない限度において給與を許されている次第でありますから、このような補償制度の最低限が引き上げられましたならば、これに伴つて、軍人軍属傷病恩給についても、できるだけの努力を拂つて、許される範囲の舞額実現をはかりたいと考えています。
第二の点においてはまつたく同感の意を表するものであります。近く國家公務員法による退職給與制度も確立されると思いますが、同法の規定の趣旨から申しましても、たといその制度に大変革がなされたといたしましても、お説のような趣旨を没却するようなことにはならないと想像いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/30
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031・樋貝詮三
○樋貝詮三君 さらにもう一つお伺いしたいと存じます。それは恩給という言葉であります。今日の給與の性質から見て、恩給という言葉は必ずしもこの給與性質を表はいておるとは申されません。ペンシヨンというのを恩給と訳しておりますが、数百年前英國宮廷に起りました当時には恩給というのも当つたでありませうが、今回の恩給には恩惠的意味は含まれておりません。当時私も恩給法の制定にあたつて、恩給という文字のないことと、文句の簡單のことと、そして当時にはいくらか恩惠的意味も残つておりました為に恩給という言葉を使いましたが、今日ではもうやめてもよろしいと思います。この言葉は誤解を招きますが、政府はこれに関して何か御考慮になつたことがおありでありませうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/31
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032・三橋則雄
○三橋政府委員 恩給という名称につきましては、種々研究してみましたが、ただいまお述べになりましたように適殿な名称が見当らないような事情でありまして、國家公務員法におきましても恩給と称しておりますので、今後とも檢討はいたしますが、目下のところこのままにしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/32
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033・山崎岩男
○山崎委員長 外に質疑はございませんか……。
それでは質疑もないようでございますから、本案に関する質疑を打切りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり。〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/33
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034・山崎岩男
○山崎委員長 それでは本案に対する質疑を打切ります。
次に本案に対する討論につきましては、別に通告もないようでございますから、討論を省略してただちに採決に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/34
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035・山崎岩男
○山崎委員長 御異議がなければただちに本案の採決に入ります。
恩給法臨時特例案を原案通り可決することに賛成の諸君の御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/35
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036・山崎岩男
○山崎委員長 起立総員。よつて本案は原案通り可決いたしました。
なお議長に提出いたします報告書の作成に関しましては、委員長に一任していただきたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/36
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037・山崎岩男
○山崎委員長 御異議がなければ左樣取計らいます。
本日はこれをもつて散会いたします。次会は明日午前十時より開会いたします。
午後五時二十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204237X02219480703/37
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