1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十三年六月三十日(水曜日)
午後十一時四十分開議
出席委員
委員長 早稻田柳右エ門君
理事 泉山 三六君 理事 塚田十一郎君
理事 中崎 敏君 理事 梅林 時雄君
理事 吉川 久衛君 青木 孝義君
淺利 三朗君 石原 登君
大上 司君 倉石 忠雄君
島村 一郎君 苫米地英俊君
松田 正一君 宮幡 靖君
川合 彰武君 松尾 トシ君
河井 榮藏君 佐藤觀次郎君
石神 啓吾君 田中織之進君
林 大作君 松原喜之次君
八百板 正君 後藤 悦治君
中曽根康弘君 細川八十八君
井出一太郎君 内藤 友明君
本藤 恒松君 堀江 實藏君
本田 英作君
出席政府委員
大藏政務次官 荒木萬壽夫君
大藏事務官 平田敬一郎君
大藏事務官 伊原 隆君
大藏事務官 愛知 揆一君
大藏事務官 今井 一男君
委員外の出席者
大藏事務官 原 純夫君
六月三十日委員園田直君、島田晋作君及び受田新
吉君辞任につき、その補欠として長野長廣君、石
神啓吾君及び松原喜之次君が議長の指名で委員に
選任された。
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六月二十九日
昭和二十三年六月以降の政府職員の俸給等に関
する法律案(内閣提出)(第二〇一号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
所得税法の一部を改正する等の法律案(内閣提
出)(第九三号)
取引高税法案(内閣提出)(第九四号)
復興金融金庫法の一部を改正する法律案(内閣
提出)(第一三四号)
損害保險料率算出團体に関する法律案(内閣提
出)(第一八八号)
昭和二十三年六月以降の政府職員の俸給等に関
する法律案(内閣提出)(第二〇一号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/0
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001・梅林時雄
○梅林委員長代理 会議を開きます。去る二十六日本委員会に付託いたされました損害保險料率算出團体に関する法律案を議題とし、まず政府の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/1
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002・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 ただいま議題になりました損害保險料率算出團体に関する法律案について御説明申し上げます。
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損害保險事業の保險料率は、過去の損害率、將來の損害発生の予想及び経費率によつて定められますが、損害発生の予想の中には周期的に大火等の異常災害が起ることをも考慮に入れる必要があります。しかして、損害保險の対象は、建物、家財、機械設備、原材料、商品、船舶、運送品、積荷、人体に対する傷害その他多岐にわたり、損害高の程度は建物の構造、その用途、水利、消防施設、地勢、氣象、商品の性質、船舶の構造、航路の状況、施設管理の良否、人心の動向等きわめて複雜な要素によつて左右されるものであります。このゆえに、損害保險については、廣汎な資料と、專門的知識と、多年の経驗とを集積して、初めて合理的であり、妥当であり、かつ公平な保險料率を求めることができるのであります。
前に申述べましたような複雜多岐な要素により保險料率が算出されるということは、その原價計算がむつかしく主観的な測定が行われる余地があることを意味するものであります。從つて保險料率の算出を各個の保險会社の自由に委せるときは、保險料率は保險会社間の過度の競争により、知らない間に不当に切下げられる傾向を有するものであります。かくて一度異常災害が起りますときに、損害額が保險会社の担保力を超過し保險契約者及び被保險者に迷惑を及ぼし、ひいては損害保險事業の信用を傷つけるに至るのでありこのことは過去の経驗に徴しても明らかであります。
現在の保險業法では、保險料率を大藏大臣の認可に係らせるほか、その第十一條において保險料率の統制協定を認め、また大藏大臣は保險会社に対し統制協定を命ずることもできることになつているのであります。独占禁止法の制定後においても「独占禁止法の適用除外に関する法律」により昨年十月三十一日までは、この保險料率の統制協定に関する保險業法第十一條は独占禁止法の適用から除外されておりました。然しながら、この規定は同業者間の自治協定を公認し促進するものであり、明らかに独占禁止法の精神に反するので、昨年十一月後の事態については適切な対策を講ずる必要があつたわけであり、保險業法の全面的改正の際これを解決する予定となつていたのでありますが、保險業法の改正が急速に進まない関係上、本件を切離して至急処理することが必要となつてまいりました。
これが対策といたしましては、公正な科学的保險料率を算出する損害保險料率算出團体の設立を認め、損害保險会社が任意その会員となることにより、合理的保險料率を利用し得る途を開くとともに、他面において、料率團体の構成、業務の運営についても、適切な規則を加え業者間の自由競争を不当に抑制せぬようにすることが適当であると考えられるのであります。かくして損害保險事業の健全な発達及び保險契約者等の保護を図り、あわせてこの法律に基く正当な行為については、独占禁止法の適用を排除しようとするのがこの法律案を提出する理由であります。法律の大要は次の如くであります。
第一に、損害保險料率算出團体は、公正かつ合理的な保險料率を算出し、保險料率に関する諸般の資料を会員たる損害保險会社の利用に供することをその目的とするものであつて、この法律に基く特殊法人とし、その設立については大藏大臣の認可を受けなければならない。損害保險会社は、任意に会員となつて、保險料率またはその施設を利用することができるものといたしたのであります。脱退は勿論自由であります。
第二に、会員が料率團体の算出した保險料率を利用する場合は、会員たる保險会社が個々に保險業法に基き、保險料率変更の認可を受けなければならないものとし、かつ、料率團体が会員に代つて認可を受けることを禁止いたしました。
第三に、料率團体をして保險料率算出の資料の閲覽、料率の周知等の公開的措置をとらしめることといたしました。
第四に、料率團体に対する大藏大臣の檢査の権限、その他必要な監督の権限を規定しました。
第五に、保險業法第十一條の統制協定に関する規定を削除するとともに、本法による行為については独占禁止法の適用を除外することといたしたのであります。以上の如くでありますゆえ速やかに御審議をお願いします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/2
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003・梅林時雄
○梅林委員長代理 次に昨二十九日本委員会に付託されました、昭和二十三年六月以降の政府職員の俸給等に関する法律案を議題といたします。まず政府の説明を求めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/3
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004・今井一男
○今井政府委員 このたび本國会に提出いたしました昭和二十三年六月以降の政府職員の俸給等に関する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げ、各位の御審議を御願いいたしたいと存じます。
政府は、最近の経済事情、殊に物價ないし生計費の高騰による政府職員の困難な生活事情を改善するため、新物價との見合において、三千七百九十一円の新給與水準を決定し、これに基く新給與を速やかに実施いたすため、六月二十三日以來官廳職員労働組合と團体交渉を行い、組合側の了解を求めてまいつたのでありますが、現在のところ交渉の進捗を見ず、このまま推移する場合には、会期も余すところわずかしかない今國会に、新給與に関する法律を付議することは不可能となるおそれがあり、これでは政府職員の生活に重大な影響を及ぼす結果となりますので、交渉の妥結を待たず、とりあえずこの法律案を提出した次第であります。
次に、この法律案の内容を御説明申し上げます。第一に、この法律は、認証官等他の法律に特別の定のある者を除く一般政府職員に対し、職員総平均の月收三千七百九十一円の永準の給與を、本年六月一日に遡及して支給することを定めたものであります。
第二、に俸給につきましては、各職員の職務の級を十五級に分類することは、從來とまつたく同様でありますが、級別俸給額表は、從前に比しおおむね三割程度を増額することといたしました。但し、経過的措置といたしまして、この法律施行の際、その職員の属する職務の級における俸給の幅の最高を超える者については、その職員の現に受けている俸給の一割五分程度の増額を目途として、新給與実施本部長の定めた俸給を支給することといたしました。
第三、に扶養手当の額は、從來の二百二十五円を二百五十円に増額いたしました。
第四、に勤務地手当及び特殊勤務手当並びに実施機関等はすべて、さきに御承認をいただきました政府職員の新給與実施に関する法律の例によることといたしました。
以上、この法律案につきまして立案の趣旨及び法律案の概要を御説明申し上げた次第でありますが、政府職員の生計の実情をおくみとりの上、速やかに御賛成くださいますよう希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/4
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005・梅林時雄
○梅林委員長代理 それでは今日まで本委員会に付託されております全法案について質疑を続行いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/5
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006・塚田十一郎
○塚田委員 ちようどこの損害保險の法案が出ましたので、税法と関連いたしまして、ちよつとお伺いいたしておきたいのであります。私どもは取引高税法というものは全面的にあまり賛成をいたしておらぬのでありますけれども、例の取引高税で損害保險の再保險を免税してほしいという、非常に熱心な陳情を聽きました。その説明を聽くと一應もつともであると思われる節もあるのであります。殊に今度御提案になりました法案でも、損害保險料率というものは限度にきているし、あまり高くならないようにということが政府のお考えでもあるのではないかと私どもは考えているのでありますが、この点に対して主税当局がどういうようにお考えになつているか、なおこの問題に関しましては私どもが承知いたしました範囲では、政府部内におきましても銀行局と主税局との間にかなり当初考え方の違いがあつたということ、銀行当局が今日考えている今日の立場では、一應これはむりやりに承認させられたというような形になつているのだというようなことも、はたしてほんとうであるかどうかは知りませんが、聞いているのであります。殊にまた主税局が再保險にも、どうしても取引高税を課せなければならないというお考えをもたれた根拠になる点に、多少錯誤があつたのではないかというようなことも承知しているのであります。それらの点と併せて、最終決定としてどうしてもこれを再保險にも取引高税を課さなければならぬという御決定になつたいきさつを、お聽かせ願いたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/6
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007・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 再保險につきまして、取引高税を課することにいたしておりますことは、今お話の通りでございます。今回の取引高税は私どもは前から御説明申し上げておりますように、なるべく低い税率で、廣く各取引に課税するというのが現在の諸般の情勢から見て最も合理的なものではなかろうか、これをあるいは製造者の段階でまとめて課税するとか、あるいは製造業者の段階だけで課税するとか、いろいろ國によつて違つているところがあるようでありますが、私どもはたとえばフランス、ドイツ等で行われておりますように、なるべく低い税率で、廣く浅く納付していただくというのが、本法の性質上また現在の國民経済の実情からいたしまして、最も妥当なことではないか、こういう趣旨で取引高税法を立案している次第であります。從いまして物品販賣業においても卸、小賣二段階にわかれて課税するという現在の構成に相なつているわけであります。その考え方を全部押し拡めますと、保險の場合におきましても、普通の債務の保險料並びに再保險料に対しましても、それぞれ課税するということが、今回立案されました取引高税法の一般原則に適合するのではないかと考えまして、その原則に対して例外を認めることがなかなか理論的に苦しいというところが、この再保險につきましても特に非課税にしないという一番大きな理由でございます。ただこの保險の中には、生命保險はなかんずくそうですが、相当貯蓄的分子がある、生命保險において相当多くの部分がさような分子であると思いますが、その他の保險につきましても、若干そういう要素が考慮される。ただ保險につきましては、これは純然たる貯蓄とは考えませんで、私どもはいわゆる掛金保險の部分には、ある程度そういう要素があるということも考えられますので、控除をして課税しているというわけで、生命保險につきましては百分の七十五を控除する。その他の保險につきましては百分の三十を控除いたしましてそれぞれ各段階に課税する。かようにいたした方が、今回の取引高税の性質からいたしまして妥当ではないか、かように考えまして、再保險につきましても、やはりその原則に從つて課税する、かようにいたしたわけであります。保險の立場からいたしますと、もちろんなるべく軽い方がよいのは当然でございます。
それから損害保險につきましては、先ほども御説明申し上げましたように、相当保險料率が高くなつておりまして、必ずしもその面から保險料がいつていない面は、ある程度あると思いますが、ただ百分の一程度の取引高税でありますから、この程度の取引高税でございますれば、保險の事業に対して圧迫を與えて、不当に保險事業を抑圧するというようなことはまずなかろうと考えまして、一般原則に從つた制度にした方が妥当ではないか。かように考えていたしたような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/7
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008・塚田十一郎
○塚田委員 いろいろ政府側がこれを御決定になつたのを伺えば事情があるようであり、原則論としてはなるほど肯かれる節もあるのでありますが、ただ私どもいろいろ聽きましたところで承知しました範囲では、大体取引高税というものは、外國のやつておることをおまねになつたのだ、そういうことであると、その外國の側でも再保險料に課税をすることの例がないということは、ほんとうであるか嘘であるか、私どもが聞いたところはそういうように承知しておるのであります。それともう一つ、結局最終的にこれが利用者のところへいつて轉嫁できるというのであれば、これは確かに取引高税のねらつているところなのでありますが、今日の再保險の状態では、元受保險と再保險との間にマージンというものがほとんどないのだということ、從つてこれを最終の消費者にもつていく技術的な方法がないということを考えますと、少しこれは無理なのではないかというふうに私どもは考えるのですが、その点はどうなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/8
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009・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 御指摘のごとく、たとえば一厘一毛といえども違わないような調整の方法は、なかなか困難ではなかろうかと思います。ただ概数におきまして保險料率をきめる場合におきまして、再保險に対する取引高税と、最終保險に対する保險料率と、両者を合わせて負担させるというような保險料率をきめることは、これは私は必ずしも不可能ではないと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/9
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010・塚田十一郎
○塚田委員 この問題は一應質疑はこのくらいにいたしまして、問題をあとに保留しておきたいと思います。
次に先日質問いたしました問題で、まだ一般的な問題として残つておる点について二、三お尋ねをいたします。その一つの点は、インフレの高進する場合におきまして、名目利益に対する課税をどうするかという問題でありますが、これは非常に議論があつて、この前の公聽会におきまして井藤公述人のお話を伺いましたときにも、井藤氏の御意見では、全然かけないということはできないだろう、しかし全部かけるということは必ずしも適当でないというように、その裏面の解釈からもうかがえるように私どもは考えたのであります。私どもも考え方はやはり同じ意味でありまして、全然これをとらないということはいけないだろうと思いますが、名目利益を全部他の実質的利益と同じように、税の上で取上げてしまうということになれば、もとを枯らしてしまうから、それは規則の上でとるとらぬは御随意でありますけれども、おとりになることになれば、これは結局所得のもとを枯らすから、翌年度以後においての所得がうまくとれなくなるという意味において、今後規定の上で、どうのこうのというよりも、実際の運用の上で、何かの手心によつてこういうものをある程度はとるが、それ以上はとらないというような方法が講ぜられてしかるべきものではないかというように私どもは考えます。その手心をする方法の一つとして、現在、殊に法人は多少よいのでありますが、中小商工業者などの場合には、必要経費の認定において、ほとんどそれらの人たちが使つております固定の設備、その他設備に対しての減價償却というものをお考えになつておらない。こういうものは物的な減價においてもそうですし、また再生産の上からみても、價格の上からの減價からしましても、非常にこういう時代は減價がはげしいのでありますから、こういうものを相当大幅にみていただくというような面においても、名目的な利益というものを、多少課税の面から拔いてやるというような手心があつてしかるべきではないか、あるいはまたこれが手心でいかぬということであれば、何らかそういうことができるような法的な措置を講じた方がよいではないかと私は考えておるのでありますが、その点についての当局の御意向はどんなでありますか、お聽きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/10
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011・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 いわゆる名目的利益に対する課税の斟酌という問題は、一般論といたしましてそういう議論がございますが、具体的問題になつてまいりますと、どこをとらえてどうするか、なかなかむずかしい問題のように私どもは見受けるのであります。ただ所得税の税率等が、たとえば貨幣の購買力が低下したのに対應して調整されていない、こういう意味でございますと、今回の税法におきましては、少くとも過去において進展したインフレには、できるだけ調整を加えるべくそれぞれ考慮して、料率等も考えておるわけであります。たとえば今までの二十万円の所得と、昨年の二十万円の所得と、最近の二十万円の所得では非常に違うが、そういうものにつきましては違うということで、妥当な税率を定める、かような意味合いにおける調整は、やはり私はその都度必要に應じてやつていくということが必要ではなかろうかと考えるのでございます。ただ一部に非常に税制をスライド式にかえたらどうかという議論もあるようでありますけれども、それはインフレがよほどひどくなりまして、政府がどうにも手がつかぬ。むしろインフレを認めてすべての政策をはかつていこうという段階になりますれば、あるいは好むと好まざるとにかかわらず、そういう制度もとらざるを得ぬということになるかと思うのでございます。ドイツのインフレの末期におきましては、まさにさようなことだつたと思うのであります。今の日本のインフレの段階におきましては、私はそういうようにいきますのは適当でない。あくまでもインフレを抑えるという立場においていきましても、実際上そうめちやくちやなことにならないで済みますし、またならないようにしなければならないのではないかということを考えまして、そういう御指摘のようなスライド的な考えをとることにつきましては、あるいは理論的になるかもしれませんが、私としては今の段階では賛成しがたいのであります。ただ今の御指摘の減價償却等の問題ですが、これは確かに一つの大きな問題でありまして、法人の場合におきましても、大体現実に法人が投資した價格をもとにして計算しております。また個人の場合におきましても同樣に、現実にいくら固定資産に金を注ぎこんだか、それをもとにして償却をする。これは普通の原則といたしまして定めることにいたしておるわけでございますが、この問題は結局におきまして、政府として、たとえば会社等につきましても、資産の再評價を認めるか認めないかという問題に帰着するのではないか、そういうことを現実問題として認めた方がよいという段階になりますれば、これは税の上におきまして、やはりそれに應じてやつていくということにいたすのが当然だと思うのであります。その方がむしろ先決問題でありまして、税制につきましてもそういう問題を併せて將來十分に研究してまいりたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/11
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012・塚田十一郎
○塚田委員 一應御答弁は了承するのでありますが、どういうわけでこの個人企業の場合に、必要経費というものの御認定が十分にいかないのかどうか。これは私どもが昨年の課税の実際において個々に相談を受けた実例にあたつてみると、これは全然御考慮になつていない。ただ先日も申したように、お前のところは賣上げがこれだけあるから一割ぐらいの利益があるのは当然だ。あるいは一割五分くらいの利益はとれるだろうということで、從つてそれだけの利益をあげる場合において、どれだけの設備を使つておるのか、またどれだけの流動資本を使つておるのか——流動資本のことを特に申し上げますが、資本の減價ということは私ども考えておるのでありますが、そういう点をまつたく御考慮にならない。そうして御相談に行くと、いや帳面があつてもあてにならない、また帳面がないというような一點張りで、どうしても相談に應じない。そこでいろいろ聞いてみると、やはりそんなものの相談に應じておつてはきりがないから、ほどよいところでやるという一般指示があるようにも聞くのであります。もしそういうことが事実であるといたしますと、これは課税の実際問題としては、重大なる問題なのであります。法律にはそういうことはないように必ず書いてあるはずでありますから、少くとも原則的にいくらむずかしくても、そういうものは当然考慮すべきように御指示を願つておかないと困るのではないかというふうに考えております。あるいは私が聞きましたそういう場合は、事実と相違することであつて、当局としてはやはり第一線には十分そういうものを考慮するようにというように御示達になつておるかもしれませんが、その辺あつさりとしたところをお聽かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/12
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013・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 今御指摘の点は、まつたく私どもは税法に從つて收支計算をして所得を出す、これがいかなる場合といえども理想であるし、できるだけそれを努める、こういうことを一般方針としておりますことは、はつきりこの際申し上げておきたいと思います。ただ申告によつて申告通りしかるべきと認められる程度の納入者の数があまりにも少いので、それを一々につきまして現状の調査をして結論を得てやるということでは、年度内に歳入が確保されないということに相なりますので、大体におきましては基準的なことにつきまして、できる限りその調査の際には、御指摘のように收入支出ともに丁寧に調べ上げまして、それによつて、こういう業種であるならば、賣り上げの基本に対して大よそどの程度の收益率があるという調査をいたしまして、それをもとにいたしまして、その他の張薄ができないとか、あるいは調査に非常に手がかかるというような納税者につきまして、推定調査をいたしまして、更正決定をやらざるを得ない現状であります。しかしこれは決して理想ではございませんで、私どもはあくまでも丁寧に調べまして、的確なところで決定するということが理想でございますので、將來の方向といたしましては、でき得る限りそういう方向を多くいたしまして、もつて所得の正確を期したいと考えておるのであります。もし万一更正決定等につきまして、不服がございますれば、張薄その他を整備して、税務署が調べるという場合には、もちろんみるべき收入は見、引くべき經費は引くというふうにいくべきことは当然でございまして、あるいは功を急ぐと申しますか、仕事に追われているままに、場合によりますと御説のような態度をとつておるようなところが、なきにしもあらずと思いますが、そういう点は十分御注意の点を傳えまして、できるだけ適正に行われますように努力いたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/13
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014・塚田十一郎
○塚田委員 次に御尋ねいたしたいのは、法人の現在においての企業者と、個人の現在においての企業者の課税の不適正を、どういうぐあいにされるかという問題なのであります。これはもちろん所得税法の上では、税法の命じておる通りということで、それが正しく行われれば、こういう議論は成り立たないわけでありますが、実際問題としては、決してそうではないのでありまして、すでに御承知のように昨年非常にあの税が個人に対して重かつたというので、今非常に個人業者がこれを法人組織に改めるという動きが活発に起つております。私のところなどにも会社にしないからという相談をもつて來ている人がたくさんあるのであります。そこで会社にすると、一体個人とそんなに税が違うのだろうか、どうなんだろうかということでありますが、やはり実際の運用を見ると、必ず違つているし、違つてくる。どういうところからそういうことが出てくるかと申しますと、一應法人になつていれば、企業主体が法人でありますから、それについている人は、その法人から出る所得は全部勤労所得になる。勤労所得になると、そこで天引二割五分というものが課税所得の上から減じられる。いま一つは、何といつても法人税の政府の收入予定というものが、非常に少いということであります。一方は約千三百億もあるのに、一方は百三十億しかない。そういうことになると、どうしても予算だけはとろうという当局のお考えが基本に過去の実例においてもあり、また今後もそうでありましようが、そうすると千三百億にならぬ限りは、個人の方はどこまでも追究していく。法人の方は百三十億の予算だから、一割か二割とれればという現実が必ず出てくる。この二つの大きな原因ではないかと私ども思つている。現に個人の場合には、昨年は一月の確定申告後に、二月に更正決定を出されて、三、四、五、六と非常に強い勢いをもつて追究されていつた。ところが法人になると、税務署などに行きまして、法人の税の取り方を調べてみますと、法人は御承知のように決算期のあと一箇月以内に申告するということになつており、申告の時期がばらばらになつているから、申告書を出しても、五箇月も六箇月も、ちつとも何の音さたもなくて済んでしまう。どうしたのかということを行つて伺つてみると、こういう御答弁をときどき聞くのであります。近ごろはそういう事業のものは、あまり利益がないということを聞いているものですから、行つてもたんと税金はとれないだろう。だから税金のとれそうなところから、申告の出ているのをぼつぼつと行つて調べて税金をとつているのですというような、きわめてのんびりしたお考えで税をとつておられる。こういうところに法人と個人との間に、非常にきびしさの違い、從つて過重さの違いというものが出てくる。こういうふうに考える。私どもそういうぐあいに承知しているものですから、法人にしたい、法人にした方が税金が安いでしようか、どうだろうかという御質問を受けると、やはり安くなるでしようねと答弁せざるを得ない。こういうことになつている。しかしこれは私どもの立場からの話で、政府としてはそれでは相ならぬので、ただ名義が法人であると個人であるとによつて違いが出るということは、税法の欠陷ではないかというふうに考えておるのでありますが、この辺当局はどういうふうにお考えになつているか御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/14
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015・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 ただいまの問題につきましては、先般お尋ねがございまして、やや詳細に御説明申し上げておいたのでございますが、税制といたしまして、私どもいろいろ計算してみますると、決して法人の方が低いということにはならないようでございます。先般資本金二十万円の法人が、五十万円の利益をあげたというので、同じような事業を個人で経営している場合と、それぞれ配当、賞與報酬等も、普通一般に行われている程度のことをやつたものとして、それぞれ新税法によりまして、負担を計算して比較してみますと、やはり幾分は法人の方が多いようでございまして、制度といたしましては、私どもは大体バランスがとれているのぢやないかと考えておるのでございます。ただ実際は今大分実情をお調べの上でお話になつたのでありますが、調査にあたりまして、個人と法人とやや今までと税務の運用が違つてきたというところが、大分影響しているのぢやないか。法人は御承知のように、大きな法人と小さな法人といろいろあるわけでございますが、大きな法人につきましては、決算がなかなかしつかりしている。從いまして、その決算の内容を一々調べまして、個別に洗つていきますと、大体適正な額が出てくるということに相なるわけでございまするが、素人の法人の場合は、從來そういうものを目当てにいたしましてやつておるような傾向が大分ございまして、從いまして個人から法人になりまして、一應曲りなりにも張薄がついている、しかも税務署に対しまして、適正な材料をあらかじめ用意していくということになりますと、今日の実際の手不足の現状におきましては、それを徹底的に内容を調べ上げて、正確な調査を出すというのが——相当ございますけれども、全部にゆきわたらない。その結果といたしまして、いきおい法人の場合は個人と違つて、何と申しますか、会社等でつくつた資料によつてきめる。こういう傾向が少し個人の場合に比較して強かつたのぢやないか。個人の方はその他いろいろ調べまして推定等も加えて、御説のように一定期限までに決定するというようなことで、大体運用してまいりましたので、その辺のところは相当徹底している向きもあるのでございますが、法人は御指摘の通り、事業年度を過ぎてから申しまして、それに続いて、いわばばらばらに処理しておるというようなところは、実はあつたわけでございます。でございまするが、最近のように、むしろ会社の場合におきましては、中小法人の方が利益が多い。こういう段階になりますと、やはり政府の方針を從來と違えまして、法人につきましても、もう少しいろいろな財産的な資料、間接材料等によりまして、所得を捕捉するということに努めなければならぬのではなかろうかということで、地方におきましては、昨年度あたりからそういうやり方をやりまして、相当な実績を上げておるところもあるようでございます。本年におきましては、御指摘のような欠陷がないように、極力運用によりまして、個人、法人のアンバランスをなくするように努力いたしたいと思うのでございます。法人税の見積りでございますが、御承知の通り法人税というものは、昔から大部分が大きな会社の税金でございまして、中小の法人の分は、額からいたしますとわずかであつたのでございます。ところで大きな会社というもののが、二、三の例外を除きまして、今日では大部分が特経会社になつて、あるいは物價統制でマル公が少しむりがかかつておりまして、なかなか利益がないというので、昔ならば一社で何億円を納めていた会社が、今は皆遺憾ながら法人税の所得の計算は利益がない。こういう状況にあります関係上、法人税のウエイトが非常に個人に比較して少くなつてまいつておるのであります。從いまして將來私は法人の経理状況がもう少し健全な姿に立至りますれば、所得税と法人税の收入のウエイトが、よほどまた変つてくるのではないかと考えます。遺憾ながら現状におきましてはさようなことに相なつております。そういうことが直接税とはいいながら、なかなかそれに依存し得ない一つの大きな理由になつておるかと存じますが、さような点を合わせ考慮いたしまして、歳入額をごらん願いたいと考えるのであります。負担の方はあくまでも見積りは適正にしておるつもりでございますが、見積りのいかんにとらわれず、実質的な負担の均衡を得るように、鋭意努力いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/15
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016・梅林時雄
○梅林委員長代理 お諮りいたします。午前中はこれくらいといたしまして、午後二時より質疑を続行いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/16
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017・倉石忠雄
○倉石委員 政府委員より先ほど御提案になりました政府職員の俸給等に関する法律案の三千七百円の基礎資料を御提出願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/17
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018・梅林時雄
○梅林委員長代理 これにて休憩いたします。
午後零時二十二分休憩
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午後二時四十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/18
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019・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。
午前中と同樣、日程全部を議題として質疑を続行いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/19
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020・堀江實藏
○堀江委員 まず昭和二十三年六月以降の政府職員の俸給等に関する法律案について質問したいのであります。この政府職員に対する給與の前の二千九百二十円ベースの際におきまして、私あの案が、全官公廳と政府の爭議妥結の覺書に違反しているということについて、あの法案が間違いな法案であるということを指摘したわけでありますが、今回の法律の題目につきまして、政府と全官公廳との間の覚書におきましては、二九二〇円ベースは一月より三月までの暫定的な給與であるという覚書があるにかかわらず、今回の法律におきましては六月以降ということになつておりますが、四月、五月をどうするのか、この法案の題目それ自体が覚書に違反しているのではないかということを考えるのでありますが、それについての御見解をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/20
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021・今井一男
○今井政府委員 全官公の組合側の諸君が、二九二〇円の妥結をもちまして、一月、三月の水準であると了解されておる模樣でありますが、政府がそういつたことをお約束したことは一度もございません。これは関係大臣等にお尋ねくださいましても、いろいろの速記録をお調べになつても、はつきりすると思うのであります。從つて公にも一——三月云々ということは少しも述べておらないのであります。しかしながらその次の給與水準を何月からやるかということも、別に約束したわけではございません。今回の三七〇〇円ベースの問題は組合側とその後引続きまして、きようもまたただいま交渉をいたしておりますが、とにかく國会の会期がかように切迫してまいりましたので、交渉の妥結まで待つておりますと、支拂時期を失するおそれがございますので、とにかく三七〇〇円ベースのものだけは取あえず法律で政府で出したい、しかしながら引続いて交渉はやりましよう、交渉がまとまつたならばまとまつた数字に基きまして、補正予算を出すことについて政府は善処するということも固く約束をしております。それに対して一應こういう法律案を出すことについてどういう意見かということを、正式に二回となく、三回となく質したのでありますが、これに対しまして組合側は、公式にはイエスとも言わないし、ノーとも言わない。いわば関知せずというような態度以上にとれない。公式に文書で出したことは、法律案はすべて團体交渉の妥結をまつて提出すべきものと認めるけれども、それ以上の回答はできない。かようなことでございましたので、やむなく妥結を待たないで、一應ここまでは出す、交渉は引続いて努力する——現に昨日もきよもやり、またあすからも引続いてやるつもりでおりますが、かようになつておりますので、交渉の結果いかんによりましては、あるいはただいまの六月ということが変更されるかもしれません。もちろん数字も動くかもしれません。しかし取あえず政府として目下本予算に計上してありますところの、六月以降の人件費予算に見合うだけの法律案をこの際國会の御決議を願つておくというだけの意味合いにおきまして、この法律案を提案した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/21
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022・堀江實藏
○堀江委員 今給與局長から答弁をいただきまして了解したところもあるわけでございますが、全官公廳と妥結していない数字であるということは伺つたわけであります。しかし前の一八〇〇円ベースの問題のときにも、あるいは二九二〇円ベースのときにも、大体妥結がついてあの案ができた。しかし今回は一方的に政府が予算の單價として三七九一円ベースを出されるということも今伺つたわけであります。しからば三七九一円ベースは今の御説明によりまして、あるいはまた加藤労働大臣がこれは予算上の單價である。全官公労との妥結がついたならば補正予算でも組む。つまりこれは内拂いである。御存じのように全官公廳は物價の上らない場合の五二〇〇円ベースを要求していることは御承知の通りでありまして、三七〇〇円ベースというものはとうてい今の物價の引合いの関係、あるいは政府の厖大な予算、そうしたものが実行される場合、これは全然問題にならぬということは、天下の常識になつておるわけでありまして、これはただ加藤労働大臣が言われた予算上の單價であつて、三七〇〇円ベースは單にいくらかにきまるところの内拂いであると解してもいいわけです。この点についてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/22
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023・今井一男
○今井政府委員 お話の中にございました一八〇〇円ベースと二九〇〇円ベースのときの行き懸りを若干申し上げますと、一八〇〇円ベースのときも、当時給與審議会におきまして、政府の責任において昨年七月きまつたのでありますが、それに伴いまして政府職員も一六〇〇円から一八〇〇円に引上げましたが、その引上げましたときも政府は組合との妥結を待たず、予算並びに法律案の提案をいたしましたのであります。この場合は組合側は政府が一八〇〇円まで出そうというなら、政府の責任において出せ、こつちも出すなら受取るといつた話合いです。しかしながら基本的な要求線は決して捨てない。こういつた話合いでまとまらないまま支給になつたのであります。なお二九二〇円ベースのときは、御承知と思いますが、一部の組合は了承いたしましたが、大部分の組合は了承を得ないまま、会計年度の切迫に伴いまして、やむなくこれは出したのでございます。今回の分はもしこれが國会の会期が相当まだ引続きございましたならば、許す限り團体交渉をすべきであり、また政府としてもさように考えておつたのでありますが、何分行き詰りましたので、やむを得ずとりました次第でございまして、ただこの三七九一円がどれほどの正確性をもつておるか、あるいは五二〇〇円がどれほどの根拠があるかということにつきましては、まだ組合側と政府側の間に、一度も掘下げが行われておりません。組合側はその前に予算であるとか、物價であるとかいつたような問題を解決しなければ、具体的な檢討にはいることができないと申しておりまして、また政府としてはまず賃金ベースをきめて、その次にそういつた問題を議論したいということは、るる主張してまいりましたけれども、遂に話合いができなかつたのであります。從いまして現在におきまして政府は三七〇〇円ベースにつきまして物價改訂の関係とにらみ合わせまして、これを不当なものと考えてはおりません。しかしながらこれが議論の進むに從いまして組合側との交渉の結果、数字が変るということはもちろんあり得ると思うのであります。從いまして現在のところ組合側はあるいは内拂いとしてもらうというかもしれませんが、政府といたしましては現在は一應三七九一円で処理してもらつて、次に話がついたときに、遡つて整理する。こういつた考え方をとつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/23
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024・堀江實藏
○堀江委員 加藤労働大臣は予算上の單價であるということをはつきり、参議院だつたと思いますが、言つておりますし、また三七〇〇円ベースが実質賃金の低下であるということもいろいろな統計によつて明らかになつております。当然われわれがこの案を審議する場合においては、三七九一円ベースは内拂いであるということの解釈でなかつたならば、この案を審議することもできぬではないか。前の二九〇〇円ベースのときには、御説明があつたように、國鉄のみこれに加わつたという経緯がありますが、今回は國鉄も全部含まつての五二〇〇円ベースの要求であり、われわれがこうした実際の労働者の最低生活を維持することのできぬ低賃金を協議し、可決することは、今後当然起るであろうと考えられるところの労働攻勢に対するところの責任を、國会が負うことになるという意味におきまして、私らがこの案を審議する場合には、三七九一円ベースは内拂いであるということが前提でなかつたならば、この法案の審議には当れぬ、それだけの責任がもてぬというふうに自分では解しているわけであります。もう少し明確に、内拂いであるということの御見解をはつきりしていただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/24
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025・今井一男
○今井政府委員 政府といたしましては、一般の賃金水準という問題は別でありますが、使用主の立場においての政府は、使用人としての全官公廳の從業員の給與につきましては、これは團体交渉できめるのが筋道であるというふうに從來考えてまいつておるわけであります。從いまして、團体交渉の済んでいない、妥結に至つておらない今日、——もちろん國会の独自の立場からの、独自の御見解を承ることは別題題でありますが、もしそういつた從來の行きがかりが正しいものであるといたしますと、團体交渉の妥結に至らないうちに、今度の数字がいくらになるかということを申し上げかねる次第でありまして、両者がいま少し数字的な議論を今日まで鬪わしてきておりますと、あるいはもうどのくらい、あるいは何割くらい上りそうだとか、どうとかということは申し上げられるのでありますが、とにかく五千二百円ベースと三千七百円ベースの数字的檢討につきましては、今までに何回とない会合におきましても、一度も議論を重ねてきておりませんので、その辺の見当は何とも申し上げかねる次第でございます。從いましてあるいは内拂いにならないかもしれないという形勢も絶無ではございませんので、この瞬間におきましては内拂いであるということを、政府としては確認するというわけには、團体交渉の関係上申し上げかねるということをひとつ御了察願いたいと存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/25
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026・堀江實藏
○堀江委員 そうしますと、「昭和二十三年六月以降の政府職員の」という表題の問題がありますが、先ほど局長は四月五日の給與をいかにするかということは、今後の團体交渉によつて、あるいは四月に遡及してきめられるベースのものが支拂われるようになるかもしれないというお話でありましたが、そうすると、この法律の表題を六月以降とすることは、そうしたものを抑える結果になるという意味におきまして、この字句を何か適当な字句に変更する必要があるというふうに考えるものでありますが、どういう御見解でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/26
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027・今井一男
○今井政府委員 團体交渉のただいまの進捗状況は申し上げた通りでありまして、從いまして私ども非常に幅の廣い分野が残されていると考えているものであります。從いまして、ベースそのものは今のところ数字がきまつておりますが、遡及の問題につきましても、おそらく議論は必ず出るだろうと思います。そうしてその議論がいかように落ちつくかによりまして、変更が生じ得ると申し上げた次第であります。そういう確定をもつてやるべき筋合のものを、今回は一日も早く政府はここまでは用意した予算を支給したい、こういつたために出しましたものでありまして、予算が六月以降三千七百九十一円で組んで、國会の御審議をいただいておりますので、それと並行いたしまして、とりあえずそれだけのものは今後別に受取らぬという意味合でもないようでありますから、なるべく早く拂いたいという意味合でこういう表題をつけ、こういつた方法を選んだ次第であります。從いましてこの法律案の内容も特に問題になりませんように、現在妥結を見ております二千九百二十円のいわゆるふくらましでありまして、一應まとまつたところをそのままにしておいて、なるべくその後の妥結によつて、多少問題が起りましてもほとんどそういつたところには変更する心配のないような形を特に選んだ次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/27
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028・堀江實藏
○堀江委員 今局長の、この法案の文句がそうしたことに触れていないということについては了承するものでありますが、先ほど政府と全官公との爭議の妥結の際に、この二千九百二十円ベースは、一月より三月のものであるということが箇條の中に書いてあつたのであります。私はこの覚書を今日は持つてまいつておりませんが、局長はこうしたことは覚書にはない、何もそうしたことを話したことはないとおつしやつたのでありますが、これは多少御見解が違つておるのではないかと考えるのであります。その点について伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/28
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029・今井一男
○今井政府委員 政府は四月の十六日、公式に苫米地官房長官の名前におきまして、全官公廳の代表者と仮調印を交しましたときの文書の中にも、また西尾加藤両大臣が、個人の資格において協議会に與えられました了解事項などにおきましても、一、三月云々という文句はございません。これは私ここに確信をもつて申し上げるところでありまして、資料は後ほどお手もとにお届け申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/29
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030・堀江實藏
○堀江委員 その一月より三月までであるかどうかという問題につきましては、私もここに資料をもつてまいつておりませんので、また後ほどそれを出しまして私の質問はこれで終りたいと思いますが、政府に要望しておきたいことは、こうした妥結のついておらぬ三千七百九十一円ベースをきめることは、非常に大きな問題である。この面において、これは昭和二十三年度の予算と関係のある問題でありまして、三千七百九十一円ベースが崩れたならば、補正予算を当然出さなければならぬことはお説の通りでありまして、これは予算安等全般に関連のある問題であります。ここに私としてはこれを審議するが正当であるかどうかということに対して大きな疑問をもち、政府として、もう少し誠意をもつて全官公廳との交渉を早急にやられた上において、こうした法案を出されるのが至当でないかという見解を私はもつておるのであります。新聞紙によりますと、國会の方がいそがしい関係もあるかもしれませんが、その交渉についてあまりに政府当局の誠意がないように新聞記事では認められます。そういう点につきましては、なるべく早く妥結を急いでいただきたいということを要望し、なおさつき申し上げましたように、この法案は國会として大きな責任を負うことになるのであります。心ずこうした法案をつくるそのことが労働攻勢を激発するという結果になることを非常に憂えておるということを申し上げまして、一應私の質問を打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/30
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031・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 大上君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/31
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032・大上司
○大上委員 所得税法の一部を改正する等の法律案並びに取引高税法案について質問したいと思います。
まず先般塚田委員からの質問に答えて、大藏大臣の答弁、並びに主税局長からこれらの補足的説明がありましたが、問題は租税收入を確保するため、急速に徴税機構を整備強化云々という法案の提案理由がございます。なるべくこれに講習会をもつとか、あるいはいろいろな政策をするとか言つておりましたが、毎期、あるいは昨年度の改正の折についても、どうもこの御答弁が地についておらない。さらに税法の施行上必要なるものであるならば、これが計数的な、あるいはこれに要するところの費用というような面から見て、もつと具体的に政府当局から説明してもらいたいと考えますが、まずこれについてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/32
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033・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、一般的な大体の方針につきましては、先般大藏大臣からもお話がありましたし、私からもその重点のおきどころにつきまして、いろいろ御説明申し上げておいた次第でありますが、内容に立至つて説明せよということでございますので、今年の徴税費の内容について若干申し上げさせていただきたいと存じます。
昭和二十年度の予算におきましては、徴税費の全体が二十三億六千八百余万円になつております。それが本年度の予算におきましては七十八億七千八百万円程度の予算を計上しておる次第でございまして、このうち相当人件費が多くの分を占めまするが、人件費につきましては、今問題になつておりますところの三千七百円ベースを基にいたしまして、税務官吏に対する特別の職階制等を考慮いたしまして計算しております。その他の旅費等につきましても、來年度実績に顧みまして、少くとも役所が適正に仕事をしていく上にきまして必要な経費は、これを計上するということで計算しておるのでございます。さようなわけでありますが、その他の各般の施設につきましても、いろいろ改善を加えたいと考えておる次第でございます。まず先ほど申しました旅費でございますが、旅費は昨年度におきましては二億四千八百万円でありましたが、それを本年度におきましては七億程度に増額することにいたしております。各種の消耗品等につきましても、昨年は一億二千万円でありましたが、これを三億五千万円ほど計上しております。備品類等につきましても、昨年は一億三千万円でございましたが、本年は三億四千万円という数字を計上しております。その他各般の事項につきまして、でき得る限りの予算の計上をはかりまして、遺憾なきを期したい。それから財務局、税務署等の分離諸施設等につきましても、本年度といたしましては、新たに設けました財務局税務署等が、昨年のごとく諸施設が不完備のため、なかなか仕事が思うようにできないということがないように、極力処置してまいりたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/33
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034・大上司
○大上委員 大体徴税費用の点から見て、二十二年度が二十三億円、本年度は七十八億円で大体はわかりますが、これに比べて物價も非常に上つておると考えます。この計算の基礎をお尋ねしたいのであります。なお一つ旅費の問題が出ましたが、われわれが税法を愼重審議して、そうして國会を通過しても、先般申しました通り、いわゆる今次の更正決定の場合に、各直税課長が、非常に高いという文句があるならば、いわゆる國会議員がこれをきめたのだから、国会議員に文句を言えという論議あるいは質問をして、私は当局からの返答をもらつたのであります。問題は現場第一線の税務職員の技術あるいは調査能力の低下ということであると同時に、一つは旅費規程もあると思います。たとえば大都市によつて旅費計算は特別といいますか、勤務地の関係の問題が出ておりますが、勤務地の関係で甲、乙であるとか、あるいは乙、丙等の違いはありますが、乙地を見ますと、実際上バスに乘り、汽車に乘りまして、相当の日数がかかるにもかかわらず旅費規程上は日帰りという計算になつておる。この旧法が依然として使われておる。從つて旅費をもらうよりも、納税者を呼び出した方がいいというようなことで、結局納税者と税務署の人とが机上の論を鬪わす。実際はみずから行つておらない。こういうような欠陷があると思いますが、その甲、乙、丙の各地におけるところの都市、いわゆる中都市、あるいはそれ以外の都市、その区分けは、特に農村の問題についてはどういうふうに改正せられたか、その点を伺つておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/34
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035・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 旅費につきまして、でき得る限り最近の物價、交通費等の事情並びに現地の実情に應じまして、適切を得るように、目下その問題につきましては給與局と相談中でございます。まだ結論に至つておりませんが、でき得る限り御指摘のような点につきましては、実情に即するように改善を加えたいと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/35
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036・大上司
○大上委員 さらに私これを聞いたのでございますが、小さくとも、あるいは下級官廳であろうとも、税務署長になればいわゆる行政面と申しますか、いろいろな人と折衝しなければならぬ。特に関係方面の連絡もつけなければならぬというにかかわらず、税務署長にわずか交際費というか、こういうような接待費用を一年で七百円かやつておらない。こういうことについて、はたして十分なるところの税務署自体の運営できるかできないか、そうして今次の予算にはこれがどういうふうに変化しておるかという一つの点をお尋ねしたいと思います。
なおもう一つ結論的には、いわゆる昨年私たちの当委員会におきまして、税務署官吏の特別待遇法案を通過せしめたのでありますが、その提案理由を皆さんあるいは当局もよく御存じのはずであると思います。ところが実際税務署において見ておりますと、私の調査した範囲内においては、いわゆる直税と申しますか、非常にむずかしいところのことを扱う、あながち直税とは申しませんが、その出身者が非常に早く退官してしまう。やめてしまう。地方の税務署の法人係長くらいでおつて、すぐ相当の会社へいつてしまいます。これはどういうことであるかと申しますと、結局待遇が惡いという結論に達しておる。当局の方においてはこれをどう考えておられるか。かりに大阪税務署管内を見てみますと、現在下から上るといつたら語弊がありますが、二十数年勤めたところの税務署長が、ほとんどと言つては、また語弊がありますが、七%余り全部間税並びに庶務課出身が多い。こういうような現状でございます。從つて下級といいますか、属以下の各官吏が調べにきた場合に、はたして十分な決裁がとれるかとれないか。こういうふうな面からみて、もちろんこの問題は当局は調べてはおられますが、この問題を御答弁願いたいと同時に、待遇においてもちろん本年度、二十三年度の七十八億円、その徴税費用は人件費というような説もありましたが、さらに一考してやる余地はないか。なお一つ附け加えて、そうすれば大体取引高税というものを今度見越し、なお所得税法の一部改正という両法案からもつてきて、今次の七十八億円というところの徴税費用が出たのだが、万一取引高税廃止というようなことになれば、これはどういうふうに計算なさつていくか。この三点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/36
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037・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 第一のお尋ねの税務署長等が実際において、仕事をやつていく上において、何と申しますか交際費みたいなものが必要であるということは、私どももその必要は感じておるわけであります。ただそういうことは必要ではございますが、國費多端の折からでざざいますので、なかなか思うに任せないというのが一方における現実でございます。できますならば多額の交際費を支弁して、それによつてうまく、でき得る限り仕事が円滑適正な運びにまいりますようにいたしたいのはやまやまでございますが、なかなか現在の財政状況からみますれば、さようにはまいらぬのでございます。ただ本年度におきましては、せめても從來に比べまして幾分でも改善をはかりたいというので、予算におきましても、全國的に相当計上いたしておりますが、從來よりも幾分かは改善を加え得るのではないかと考えておるような次第でございます。
最後に取引高税の問題でありますが、取引高税につきましては実は私どもは今日の財政状況からいたしまして、必要やむを得ないというわけでまいつておりますので、目下のところ原案が通過するということにならなければ、ちよつと今のお尋ねに対してお答えいたしがたいということを申し上げておきます。
なお徴税費でありますが、徴税費は全体といたしまして実は税額に対しまして本年度は相当増加するわけでございます。二十三年度におきましては、率におきまして税額に対して約三%、昭和十六年、十七年、十八年は〇・八%、〇・七%というような状態でございましたし、昨年度におきましても一・六%程度の比率でございますので、從來に比べますと、よほど改善ができたものと考えておりますが、しかし私どもとしてこれで満足しておるわけではございませんので、將來におきましても、税務官吏の待遇をよくするとともに、機構の整備、施設の拡充ということにつきましては、さらに一段と努力をいたしまして、能率よく税務行政が動くように、できる限りの努力をしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/37
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038・大上司
○大上委員 さいぜんの税務署長の費用として五百円は、國費多端の折という言葉がございましたが、これは私考え方が違うと存じます。なぜなら警察におきましては、危險を冒して治安を守るという面から見、また大同小異はあろうと思いますが——税務官吏がどぶろくの檢挙とか、あるいはあらゆる面において身を危險にさらしておることは、十分当局は御認識のはずだと思います。こういう場合に警察署長であればわずかであるが、警察署長賞というものを供與して志氣を鼓舞するが、そういう方法が今までは全然とられていない。そういう面からみてもう少し御考慮の余地があるのではなかろうかと考えますが、この二点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/38
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039・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 ただいまの御意見私どもとしましては、ありがたく拜聽するわけでございます。先ほどから申し上げましたように、非常に多端の際でございますので、なかなか思うような金額な計上できないのが現状だろうと思つております。本年度におきましては、できますならば、一署五千円から八千円程度は計上できるように、努力したいと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/39
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040・大上司
○大上委員 次に先般の公聽会の際において、公述人が過去の税法施行に伴う内部規程、また事務規程が云々ということを言つておられました。かつてこういうものがあるのかないのかという点をお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/40
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041・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 内部規程というお話でございますが、役所の普通の例といたしまして、役所の仕事につきましては、できるだけ公表してやつているという趣旨におきましては、もちろんさようでございますが、ただ役所内部の單純な事務的な処理につきましては、これは從來といえども公表するわけではございませんので、必要に應じて公表していく。かような考え方でいたしておるのでございます。役所関係の内規ももちろんございますことは、大上委員御指摘の通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/41
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042・大上司
○大上委員 当局はこれがあるということを言明なさいましたが、当委員会におきましてかなり大きな法案を審議する場合に、私はかような点があると思います。今次提案せられました所得税法の第九條を見てもわかる通り、所得の算定は総收入と総支出とを引いて、その残といとことになつておりますが、收入によりまして、納税者がこれは当然経費である。こういうようなものは経費に見てもらわなければ困るにもかかわらず、往々税務署においては、これを経費としては法律上認められぬ。こういうような法律上という言葉をよく使い、私も実地に陳情を受けた場合があるので、こういうものが一つの内部規程あるいは事務規程のように私は推測いたします。從つて法案の審議上こういうものは私たちに資料として提示されるのが至当であると思いますが、当局のお考えはいかがでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/42
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043・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 今お尋ねの收入及び必要経費の計算方法等につきましては、まつたくお説の通りでございまして、私どもかような点につきましては、できる限り公表いたしまして、相互に誤解を生ずることのないように努めたいと思います。嚴に昨年度におきましては、農業所得の計算方法につきましては、資料として國会にも提出いたしましたし、その他の所得につきましても、できるだけこれを公開いたしまして、適正を期したいと存じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/43
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044・大上司
○大上委員 しつこくて恐れ入りますが、最後に私のお尋ねしたい点は、あらゆる税法並びに事務規程、内部規程の運用者、すなわち納税者に直接当るのは税務官吏のいわゆる收税官吏です。この法規を十分運用し得るだけの能力が、現在の第一線にばらまかれておる人にあるかないか。從つてこれは各係官があるのですが、この実務年限はいかん。私の調査したところによりますれば、大阪の最もいいとせられた場所でございますが、それすらも一年八箇月あるいは二年という実務年限になつております。もつと細部を調べますと、全然素人が多い。從つて書類の書き方もわからない。こういうような者に事務を担当させておる。これはなるほど終戰後のいろいろな欠陥もありましようが、内部規程、事務規程を十分運用し得るところの能力があるのかないのか、これをお尋ねしたいと思います。なお当局のお調べになつたところの実務年限と、両方合せてお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/44
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045・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 現在の税務官吏は全体として約五万人ほどおります。その中で御指摘のようにまだ最近はいつたばかりで、十分仕事を覚えていないものが大分おりますことは御指摘の通りでありまして、私どもはこの諸君に早く仕事を覚えてもらいまして、能率よく税務行政が動きますように、いろいろな方法を考えておりますことは、先般も申し上げた通りであります。しからば全然慣れた諸君がいないのかということになりますと、必ずしもそうでもございませんで、たとえば昨年の十月の調べでございますが、これは任官の方ですが、三級官以上の官吏で昨年十月一日現在で、一万九千人ほど全國におります。そのうち五年以上の経驗ある者が約五割二分、つまり半分以上は五年以上の経驗がある者でございまして、一万人近くは税務官吏として五年以上の経驗ある者がまだ相当あるのであります。ただ人員の配置が生活の事情、住宅の事情から、各署によつては必ずしも適正に行つていないという点につきましては、住宅の改善、あるいは待遇の改善等をはかりまして、極力人員配置の合理化をはかつてまいりたいと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/45
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046・大上司
○大上委員 今度は少し細部にはいりますが、現在各法人は申告納税制度になつたのであります。從つて各法人は予定申告をする。それと同時に税務署は中間報告をし、なお確定申告をして最後に政府がきめる。もちろんこの方式によりますと、收支決算が一箇年二期の分、すなわち一月から六月まで、七月から十二月までの分ならばそうでもございませんが、商法の規定上、一箇年をもつて一会計年度と見た場合、これによつて各法人の係りの收税官吏の事務が相当煩雜になつておる。この商法の規定を將來どうなさるのか、現行法のままでいくのか、あるいはこれを存続することによつて、当局はどの程度の人員と申しますか、事務を考えておられますか、その点をお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/46
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047・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 ただいまの点は手数から考えますといろいろ問題もございますが、何しろ現在のような非常に経済情勢の変動の激しい時代におきましては、若干手数はかかりましても、仮決算等に基きましてさような申告をし、調査をいたしまして、課税の適正をはかる必要がございますので、現在のところはそういう制度の方がよろしいのじやないか、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/47
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048・大上司
○大上委員 それはわかりました。
次に取引高税について二、三お尋ねしたいと思います。塚田委員からもいろいろお話がありましたが、國民の担税力がもう限界点に達しておる。これは各人の主観的な考え、あるいは資料の交換がない限り、一應当局の説明を了解しなければならないが、先日中曽根委員からの質問に対し、営業及び営業者の概算徴收額というものを主税局長が発表なさつたように私は思つております。從つて各業種によつて相当の数字が出ておりますが、この数字の計算基礎をまずお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/48
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049・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 先般も申し上げましたように、おもな品目については、それぞれ昭和二十年度中における生産額を調査いたしまして、それに対しそれぞれ價格を乘じて計算し、さらに昭和二十三年度における生産の増加見込額、並びに物價の変動状況を加味いたしまして、それぞれ計算いたしたわけであります。他の雜多な品目についても、あらゆる資料を用い、できる限り全体として適正な價格が計算されるように努めた次第であります。なお営業税、所得税等における從來の課税表も使つたことももちろんでありまして、あらゆる資料を使いまして、できるだけ取引高税收入の見積りの正確を期した次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/49
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050・宮幡靖
○宮幡委員 所得税法の一部を改正する等の法律案につきましては、すでに大分質疑も行われておりまして、お伺いいたします諸点がそれぞれ関連性をもつことと思いますが、ただいままでの質疑の間に、まだ十分了解のできない点につきまして、二、三お伺いしてみたいと思います。
今回の所得税法等の一部改正にあたりまして、政府当局の最も大きく國民に理解を要求いたしておりますのは、いわゆる勤労階級の負担軽減、その方法として基礎控除の引上げ、扶養控除の大幅の引上げをしている、かように申し述べられておりまして、これは形の上において一應さような状態も現われているかとも存じますが、これを深く掘り下げてみますと、どうも政府の御説明が、失礼ではありますが若干國民をなだめて、そして知らず知らずの間に重い負担にもちこもうとするような——それほどの作為的のものでもないでしようが、何となくその宣傳と事実との相違していることに大きな疑問をもつものであります。第一番に基礎控除の問題でありますが、これを四千八百円から一万五千円に大幅に引上げたのだ、三倍以上になつたのだ、かようなことを言つておりますが、この一万五千円と算定せられましたその額の根拠は、何によつて生れたものであるか、おそらく政府には一貫した一つの見方があり、一つの基準がありまして、これを算定せられたことと思うのでありますが。私の知り得る範囲において、先般経済安定本部において発表せられました経済情勢報告書の示しますところの、いわゆる生計費の基準というものは、世帶人員四人三分ないし四人五分の家計におきまして、昭和二十二年一月は千九百八十円であり、二十三年の一月は五千八百五十円となつている。この期間の平均は四千百十円であつて、飲食物費の占むる割合は六七%だと申しております。仮に四千百十円の標準生計費の六七%の飲食物費として費されました支出の額を算定いたしますと、それは一年で三万三千三十六円となります。ところが基礎控除はその半額にも達しない一万五千円であつて、まずもつて当局は妥当と信ずるとの御見解に対しては、私は賛意を表することができないものであります。なおこれを昭和二十二年一月の千九百八十円当時の飲食物費の割合を年間に換算してみますと、一万五千九百十二円となりまして、うちから四千八百円の基礎控除といたしますと、飲食物として、いわゆるわれわれの血となり、肉となり、骨となつて費された支出の中へ課税部分の食いこむ割合は、一万一千百十二円であります。ところが昭和二十三年一月現在の五千八百五十円の中に含む飲食物費を年間に換算いたますると、四万七千二十八円となり、これから一万五千円の基礎控除をいたしますと、三万二千二十八円というものが、その飲食物費の中に課税が食いこむことになつております。これでは四千八百円を一万五千円に引上げても、何ら軽減の價値がないではないでしようか。かようなものをもつて國民大衆に訴えて、これは基礎控除の引上げだ、勤労階級の負担を軽減したのだと宣傳なされますことは、あまり声が大きくして実質が伴わないことに私は疑問を存するものでありまして、一万五千円の算定の基礎につきまして、はなはだ失礼でありますが、ただ当てずつぽうの数字をお用いになつたのではなかろうかとまでただいま考えているような次第でありますが、この点に対します詳しい数字を示しての御答弁をお願いしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/50
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051・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 先般もどなたか御質問がございましてお答えしておいたわけでございますが、結局所得税におきましては、基礎控除、家族控除、税率あるいは勤労控除、こういうものが全部総合されまして、結局負担税額がきまつてまいるわけでございます。從いまして私どもかような諸般の控除あるいは税率等につきまして、いろいろな見地から檢討を加えまして、結果において出てきた負担はこの際としてやむを得ないというような場合におきまして、初めてそれぞれの控除が妥当である、かような意味からいたしまして、総合控除して決定しているような次第でございます。それと財政事情等が許しますれば、あるいはでき得る限りさらに軽くするということも考えられますが、一方におきましては、さような点から考えまして、この際として結局所得税の負担として最も合理的であると考えられる線でいかざるを得ないのであります。そこで問題は何か一定の算率があつて、自然に基礎控除額がきまつたかということでありますが、さようなやり方はいたしておりません。これは先ほど申し上げておりますように、いろいろな角度からいろいろな場合を計算いたしまして、現在の負担に比較いたしまして、改正後こうなる。しからばどうであろうかという点を、いろいろの見地から考えまして、前にも申しましたように、妥当なる控除額にする、かような判断からいたしているのでございます。今若干参考となりますような計数を申し上げますと、昨年の消費者物價指数ですが、昨年一箇年の平均に対しまして、今年の六月ころの見込は、大体八三%くらいの増であろうかと考えられるのでございます。賃金の方は昨年一箇年の賃金に対しまして、今度の新ベースが大体一二九%程度の増になる。それやこれや考えまして、少くとも二倍以上にしなければならないということは、一つのめやすになろうかと考えるのでございます。しこうして二倍以上いくらにするかということにつきまして、何か機械的な計数かあつて算出するのかというお尋ねでありますけれども、さようなことはいたしておりません。先ほどから申しましたように、いろいろな角度から檢討いたしまして、妥当な負担であるということをねらつておるわけでございます。この点につきましては、たびたび申し上げるわけでございますが、たとえば昨年三千円の人の負担がいくらであつたか。その百円あたりの負担率を、扶養家族三人の場合について調べてみますと、一一・三%でございます。その同じ人が今年は賃金、物貨の上昇に伴つて、約倍額の六千円の收入があるという場合におきまして、その六千円の場合の、同じく扶養親族三人の場合の負担はいくらになるかと申しますと、四・六%でございます。從いましてさような比較をしてまいりますると、大体におきまして、今申し上げましたように、実質的な負担力におきましても、少くとも所得税に関する限りにおきましては、相当軽減がはかられておるということは、明瞭に言えることと考えておるのでございます。單に六千円の人が現在千四百七十一円であるが、それが二百七十九円になる。すなわち千二百円だけ軽減された。約八分の一程度負担が軽くなるというだけでなく、名目的な所得税の増加を織込みまして負担を考えましても、少くとも所得税、なかんずく勤労所得税に関しましては、この際としまして相当な軽減が行われたものと私どもに考えておる次第であります。そういういろいろな数字を比較檢討し、一方財政事情等もにらみ合わせまして、各種の所得税の税率、基礎控除、扶養家族の控除等を、それぞれ妥当と認めたところに定めようというのが私どもの考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/51
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052・宮幡靖
○宮幡委員 事務的な御答弁に対しては、一應了解ができるものでありますけれども、またただいま政府委員からの御説明の内容は、一部資料等でも頂戴いたしまして檢討いたしておるものでありますが、結局はもう一つ重大な点を見逃されておるのではなかろうかと考えます。三千円の場合に、かりに税金が千円かかつて二千円だけしか残らなかつた場合の、その千円の負担の苦しみと、六千円も收入があつた場合に、三百円しか税金を拂わなくとも、事実上の生計費が上つておりますれば、前の千円の方が樂で、あとの三百円の方が困難であります。その点を見逃しているということが私には痛感せられるのであります。実質と、名目ということをしばしばお用いになりますが、事実はただ貨幣の價値において額が減つただけで、生計費の膨脹に伴つて收入が膨脹しただけで、実質上の負担としては食い込みである。われわれが生きていくために費やされたその支出に課税されるのが多くなればなるほど、名目の税は少くとも、國民の負担は重いのであります。これを断じて軽減などという言葉で扱うことはできないと存じますが、この点についてはいかがでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/52
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053・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 現在ありまする統計のうちでは、貨幣の購買力と申しますか、実際の物價水準と申しますか、そういうものを測定する材料といたしましては、例の内閣統計局でやつております消費者物價指数というのが一番権威のあるものと称されておるわけでございますが、それを先ほど申し上げたわけでございまして、昭和二十二年の平均に対しまして、最近は八三%程度の増加に相なつておるというような点から考えましても、私ども先ほど申し上げました説明は決して不当ではない、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/53
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054・宮幡靖
○宮幡委員 これ以上この問題は議論になると思いますから差控えておきます。これはおもなる原因が財政事情に押されておやりになつたものだと私個人で承知しておきます。かような場合に軽減々々と國民大衆に呼びかけても、來年の三月三十一日までに決定し取り上げますところの税金というものは、実際として結論は決して軽減になつておりません。その場合の國民の声を聞いて、われわれが民主自由党といたしまして大衆の生活を憂うるあまりに、この点につきまして失礼と思いましても、深く堀下げて御質問をいたしましたことを、つくづく御反省願いたいと存じます。私はここにだめ押しをいたしておきますが、二十三年度末におきまして勤労階級が、なるほど負担が軽減されたと言つて喜ぶ声が出るか、いや負担の軽減というものにつられたが、事実は負担が重くなつたという怨嗟的な声が出るかということを、よくお見守り願いたいことを一つ條件に申し述べておきます。
次に税法上で現われますところの、勤労階級というものの定義の問題でありますが、これはどう考えてみましても、私には納得のいかない点があります。勤労階級というものが、大むね給與所得のある者を対象として考慮せられておつて、さような範囲内において勤労階級の負担の軽減というようなものを考えておるのでありまするが、端的に申すならば、農業從事者は勤労階級ではないのでしようか。私はこの点について非常に疑問をもつております。農業労働量の過重であるということは、世上一般周知の事実でありまして、いわゆる朝に星をいただいて家を出で、夕に月を背負つて帰るの重労働をいたしております。しかるに現在他の勤労階級は、誤れる労働基準法の保護下におきまして、拘束八時間、実労働七時間というような、かつての日本人の素質から申しますならば、またその勤労意欲の実態から申しますならば、きわめて軽度な勤労をいたしております。その軽度の勤労をいたしておりますものを、所得税法上の勤労階級のわくの中にはめて、過重なる労働をいたしており、しかも食糧自給の困難な國情におきまして、さらに大きな負担をさせられております農民を、この勤労階級の中に加えてないことの疑問は、私はどうしても取去ることができません。農業所得に対して、給與所得同樣な考慮を拂い、少くともこの税のかけ方において、特段の考慮があつてしかるべきものだと私は固く信ずるのであります。希わくは農業所得に対しましては、これを独立課税といたしまして、必要経費の範囲を拡張し、しかも一般の税率より軽減されましたるところの、特別の税率を定めまして、農業生産の意欲を向上し、いわゆる勤労階級の負担の均衡をはかるべきだと思うのでありますが、この点はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/54
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055・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 農業所得の問題につきましては、先般來たびたびお答えいたしておるわけでございますが、農業所得の中に勤労の分子がないということを私どもは是認しておるわけではございません。農業所得でも、それから営業所得の下の方の所得でも、おそらく勤労とそれから本來の事業と申しますか、收益と申しますか、そういうものの集まりが農業所得であると考えるのでございます。ただしからば、まつたくの雇傭労働に基く給與所得と同じであるかどうかということになりますと、その点はやはり段階があるのではなかろうか、なかんずく今日のようなインフレの進展を今までしてきた、あるいは今後におきましては極力抑えるつもりでございますが、なかなか困難な事態にあると、こういう際におきまして、事業的な所得と、それから純粹の雇傭労働に基く定額賃金と申しますか、給料と申しますか、そういうものとの間に、相当の差があるということは、これはむしろ私は常識ではなかろうかと思う。理論的に考えましても、両者の間に相当の差があるということも考えられますし、やはり所得税の税制といたしましては、現在の段階におきましては、雇傭労働に基く收入と、農業等の事業所得との間におきましては、給料においては二割五分控除するというこういう開きがあつても、妥当ではないかと考えるのであります。農業所得、営業所得等の諸所得につきましては、基礎控除、税率の調整、その他によりまして、本年度はやはり昨年度に比べますと、これはインフレが今後よほど爆発しない限り、今後相当負担の軽減もはかられるものと考えるのであります。それで実質負担が重くなるか、軽くなるかきまるが、私どもといたしましては、でき得る限りインフレを抑えまして、やはり税制はなるべく長い間合理的な税制として維持し得るように、あらゆる努力を傾けて、負担の適正という見地からいたしても、破れないように努力することが、当面の課題ではないかと考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/55
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056・宮幡靖
○宮幡委員 どうも農業所得の中に含まれる勤労部分の見方について、相当これは政府とわれわれと、考えておるところに相違があるのでありまして、政府のお考えはいわば非常に固い頭になつておりますが、給與所得のうちから二割五分程度の控除をいたしますくらいの差額が、農業所得にあるということの断定について、私は決して満足の意を表せられないのでありますが、これは今農家の実情というものは、さような面に及んでおりません。これを一般の所得と合算いたしまして課税することさえ、どうかと思つているのでございますが、一般給與所得との間に二割五分くらいのゆとりがあるだろうという、その見解につきましては、もう少し自分といたしましても研究いたしまして、他日また税法の根本的改正を期するときに、さいわい発言あるいは意見を申し述べる機会がありましたら申し述べて、本日はこの点はその程度でお伺いいたしておくことにいたします。しかしながらこの税法で、ただいまもインフレを克服いたしまして、この税法の筋をはつきり通していきたいというような御説でありますが、ただいまの税法なるものは失禮な話でありますが、これは租税体系の上からみると、あまりに整然といたしたものではありません。また直接税と関接税との関係におきましても、直接税は金持から、関接税は一般大衆からとれるだけ、とりやすいところからとるというような傾きが大きく流れておりまして、これがもしインフレがさいわい克服されまして、平常経済に復した場合に妥当な税法だというようなことは、私どもは根本的に考えておりません。從つてこれは当面の問題でありますので、農業所得の問題につきましても、当面考えて農家の負担が非常に過重である。これも先ほど一言意見を止めておきました通り、今の議論をするよりも昭和二十三年の年度末において、農民がいかなる声を上げるかということによつて、きわめて明確に審判が下される点ではなかろうかと思います。この点特に御考慮をお加えを願つておきたいと存じます。
その次は山林所得の問題でありますが、戰時中の濫伐によりまして、山林の荒廃は御承知のようにはなはだしいのでありますが、その上に加えましていわゆる食糧事情に押されました開拓事業が各地に進んでいる。しかもその目標と相なります開拓地は、われわれで適切に申せば、富士山南麓一万町歩の土地というようなものは、これは火山灰の堆積いたしておりますいわゆる不毛の土地であります。金肥等が十分にありまして施肥いたしましたならば、あるいは若干の收盛はあるかもしれませんが、原則としてはつくつて値打のない土地であります。机上プランからいたしましてこれらを盛んに開拓する計画を立てて、そうして一方においては治山治水の事業、いわゆる公共事業費というものはまことに微々たるものであつて、この濫伐によります洪水の惨を防ぐの施設等はほとんど行われておりません。ただいま美田熟畑は洪水の惨禍にまさにさらされようとし、またすでにさらされた所もたくさんあるのでありまして、これを救う一つの方法といたしましては、山林の再造成をやることが急務であります。ところが現在の山林所得の計算の仕方からいきますと、切つたあとへ苗木を植えるということは、現実において不可能な状態になつております。いわゆる植林費が非常に高くなつておりまして、賣つた木材の代金に課税を受けまして、そうしてその中から山林を再び植えつけるというようなことは、とうていできないような状態であります。從つてただいまのような山林所得に対する課税が行われておりますならば、これは山林の再成の阻害する一つの原因となるように考えられておりますので、これを何とか改善してまいらなければならないものであると痛感いたしております。それで山林所得の必要経費の算定につきましては、ただいまの税法にそれぞれのお示しがありますが、希わくば山林所得というものの中の必要経費として、それに植林をいたします、いわゆる山林を再成いたします基礎的の支出である再成植林費を、必要経費として認められることが、ある意味の奬励をもかねまして、適切なる課税を生む導因となると思います。しかしながらこれでは課税の面がなくなつてしまう。かような点もありますので、ただいまやつております十分の五を山林所得から控除いたしますこの控除を廃しまして、必要経費の中に山林の再成費を含める。かような変更が最も妥当であると信じておりますが、政府当局の御所見はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/56
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057・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 山林の所得につきましては、御承知のように、あるいはすでに今御指摘のように普通の所得と違いまして、若干一時的な性資がはいつておるというような意味におきまして、五割を控除して課税しておるのであります。五割を控除して課税するということは、実は税の負担におきましてはさらに五割よりもはるかに軽減するということは、皆さん方よく御承知の通りであります。累進率の課税でございますので、そのまま課税いたします場合と、五割を控除して課税する場合におきましては、單に税負担が百分の五だけ軽くなるというにあらずいたしまして、所得の大きさによつて違いますが、五割も、六割も、七割も軽くなるというような結果に相なるのであります。かようなことにいたしておりますので、また山林の所得の性質上、かようなことは一應私ども合理的と考えておるわけでありますが、なお必要経費の見方に少し変動を加えたらどうかというお話でございますが、さようなことに相なりますと、また他の所得との間の権衡を失するというようなことにも相なりますから、経費の見方はあくまでも理論に從つて、各所得を通じて一貫した方針に從つてやる。山林の所得に対する課税は、やはり山林所得の性質に應じて、それぞれ適当な課税方法をやるというような考え方からいたしますと、現在のような制度の方がまだベターでなかろうか。ただ自分の五を控除して課税するということはごくおおまかな課税方法でございますので、必ずしも妥当でないかもしれません。たとえば年々輪伐じておるような山林の経費においては、あまり控除は要らないという理窟も成り立つのであります。これに反して何十年間に一回伐採するようなものに対しては、なお控除が不十分であるという議論も成り立つかと思うのでございます。しかしそこまで一々まいりませんので、他の一時所得と同様に、百分の五を控除して課税するというようなところでこの際いきます方が、妥当な方法ではなかろうかと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/57
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058・宮幡靖
○宮幡委員 山林所得の課税につきましては、歴代の政府がかなり税法上苦心を拂つておることはわかつておるのでありますが、いわゆる五分五乘などという課税の方法を用いまして、ずいぶん複雜な計算方法をやつてまいりましたが、現在のインフレが克服せられた場合に、なお存続すべき体系をもつておるのではない。いわば一時の應急的な税法であろうということも考えられますので、どうも山林所得の中で、今までのお答の中では、最も適切なお答えをいただいたように考えておりますが、一段の御研究、御考慮を拂つていただく必要があるのではなかろうかと考えております。特に山林所得が一時所得的な性質を帶びておるという点につきましての、一時所得についての十分の基礎控除は、私は不必要であるということを申し述べたいのであります。なぜかと申しますと、この一時所得というものは昨年度の追加予算におきまして、わずかに百万円だけしか計上されておりませんが、本來から申しますならば、この一時所得というものは少くともなお何十億というものが予算に見積らるべき性格のものをもつておる。いわゆるインフレやみ利得の大部分は、この一時所得の中に潜在しておるものだと私は考えておるものでありますが、政府の説明でいきますと、一時所得を把握する観点として、一時所得の性質を説明いたしますのに、馬券の利益だとか、あるいは賭博の利益等はこの一時所得の代表であるというようなことを、それぞれの税務研究とかあるいはその他の税務の刊行物の中に示してありますが、決して私はさようなものじやないと思います。それはペーパー・マネーでもつて隠退藏することはたくさんありまするが、やはり札は札でありまして、流通するのが本來の生命であつて、何らかの形において、いずれかの時期において、必ずや地上にその形体を現わすものであります。そうすればそれを捕捉いたしますことは、もし末端税務行政が十分に認識いたしたところの力をもつておりまするならば、この一時所得こそ大いに把握できまして、インフレ克服の一つの手段ともなるのではなかろうかと考えます。さような意味において、あくまでもこれはインフレの利益が主眼であり、あるいは偶然の所得というものが、その根本をなしておるものでありまして、相續税のごときを見ましても、かつては日露戰爭の直後、相續税を創設しましたときには、これは人生最大の不幸事、いわゆる戸主の死亡によつて相續が開始されることがおもなる理由であるから、なるべく苛斂誅求にわたらざるように、なるべく手加減をして課税しろというような大藏次官通牒さえ発せられておりましたが、その後相續の偶然性が大きく取上げられまして、金持の子供が金持になることは不自然であるから、これにはかえつて重い税をかけるべきだということに傾いて、現在も政府当局はその方針をとられておるものであることは御承知の通りであります。さすれば一時所得において十分の五を控除するなどということは、あたら歳入の財源をみすみす失うようなものじやなかろうかと思うのでありますが、これらを撤廃せられまして、全面課税——一時所得を得るに必要な経費は認めまするが、その他の所得は全面課税せられるということこそ妥当であると思うのであります。この点はいかがでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/58
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059・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 有力な御意見を拜聽いたしまして、非常に参考になるわけでございますが、ただ今御指摘の点はやはり運用の面の問題が相当多いのではないかと考えるのでございます。運用面におきましては、私ども極力努めまして、一時所得によつて一時に急に出てきた場合におきましては、極力税率をかえたいと考えるのでございます。ただ制度といたしましては、やはりこれは一時所得でございまして、年々生じまする所得と趣きを異にして、ある年に一遍にまとめて所得が出てくる。そうすると累進率でございますので、どつかと大きな税がかかる。こういう問題になつてきまする点もございますから、やはり課税するといたしましても、百分の五程度は控除して課税するということにいたしましてもやむを得ないのではなかろうか。なかんずく最近におきましては、先ほども名目利益の問題がございましたが、一時所得等につきましては特にそういう問題がございまして、たとえば不動産を賣りまして、その代りになる不動産を買おう。こういう人がある場合におきまして、賣りますと讓渡所得がかかる。買おうと思うと税金を納めた残りでは買えない。こういつたような実際的な問題も起りがちな例が相当ございますが、やはり百分の五程度の控除を存置するのがよろしいのではなかろうかというようなことを考えまして、むしろ調査の適当な運用をはかるという方向にいきたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/59
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060・宮幡靖
○宮幡委員 ただいまの政府委員の御説明は了承いたしますが、希わくば運用の面におきまして、ぜひともこの一時所得の増徴ということに御留意あらんことを切にお願いしておきます。
その次に法人税のことにつきまして一言お伺いしてみたいのでありますが、法人税の根本をなします各企業体の構成資本というものは、ただいまのような貨幣價値の下落が相ついで起つてまいりますと、その内容はこれをマネー的に考えますると、実に雜多であります。それで先般税法に関します公聽会を開きました席におきまして、井藤教授からもお話がありまして、原價倍数制度ということを申しておりましたが、私はこの原價倍数制度ということは、学者に対して参考的な意見としてはいいかもしれませんが、原價倍数制度ということの意義が完全に捕捉できないのであります。思うにその井藤教授の意見といたしましては、会社の固定資産等を再評價いたしますことを根本理念としてのお話ではなかろうかと存じますけれども、会社等の固定資産を再評價いたしまして、資本額の適正を算定いたしますことは容易なさたではありません。事務手続上これをもし行わんとするならば、それこそ大藏當局の人員を、法人税に関する係におきまして相当増員せられましても、なお処理できない、かような面がくるのではなかろうか。しかしながらこの貨幣價値のアンバランスの関係を調整しないということもはなはだ不本意でありまして、結局一番簡易な税務の実務として容易に行えますいわゆる倍数換算の方法をとるべきであろうと考えております。もとより法人税が基本の普通所得に対して、一律に百分の三十五をかけるということについては、何ら資本金に関係ないのでありますが、超過所得というものは普通所得の上にかかるものでありまして、あくまでもその資本金額計算が基本をなすものであります。從つて資本金額の戰前に構成せられました部分、及び戰後昭和二十一年八月十日までに構成せられました資本、あるいは現在の構成せられた資本、大まかに考えましても、これくらいのセクションを設けても差支えないではなかろうかと考えます。例として申し上げますならば、戰前構成されました資本はこれを百倍として計算し、戰後昭和二十一年八月十日までに構成されました資本を五十倍とし、現在のものは帳簿價格、これを合算いたしましたものをもつて、超過利得計算の基礎的の資本金とする。かようなことにいたしたら、もつと適切なるところの超過所得税を徴收することができると思いますが、この点に対しまする改正の御意図はございますか。所見をお伺いいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/60
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061・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 ただいまの御意見は、この法人税と、それからインフレの結果、法人の会社の資産の評價その他の経理が調節されていない点を、いかに調節するかという問題に関する一つの問題だと考えるのでございます。そういういろいろな研究案もできておるのでございますが、私どもとしましては、やはりそういう問題は、資産の評價なり、法人自体の経営の問題になつて、まずその方面が妥当な解決を見ないと、なかなかこれは税法上妥当な結論を下しがたい。ただいま御指摘の例がございましたが、たとえば、昔拂込まれた資本金でありましても、戰災等によりまして、会社の実態財産が相当減つておりますのと、さにあらずして、なお相当継続されておりますのと、いろいろございまして、その間一律に、同じ倍率でいくということは、合理性を欠く場合も出てまいりまするし、これは結局におきまして、会社が現在の財産に應じまして——最近の状況に應じて資本の評價と申しますか、再評價と申しますか、そういうことをどうするかという問題がきまらなければ、なかなか解決しにくい問題じやなかろうかと思います。最近におけるインフレの進展状況から見ますると、私はいつかはそういうことをやるべき時が來るのではないかと思います。そういう状態におきまして、税法におきましても、でき得る限りのアジヤストをはかるということでまいりますのが妥当ではなかろうかと考えるのであります。もつとも、今後インフレが急激に進展してまいりますと、なかなかそういうことは言つておれないということに相なると思いまするが、その点につきましては、あらゆる手を用いまして、インフレをカーブし、ストップするということにいくべきだと思いまするので、現在のところといたしましては、先ほど申し上げましたところ御了承願いたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/61
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062・宮幡靖
○宮幡委員 ただいまの御説明は、ごもつともの点もあり、私と見解を異にする点もあります。これも議論にわたりますので、一應他日の研究に委ねたいと存じますが、ただ課税上の実務の問題につきまして、これと関連いたしまして、一言お伺いいたしたいのでありますが、どうも超過所得を、今回の改正案によりますと、資本に対する三割超過、五割超過、十割超過という、非常に法人企業が莫大な超過利益があるものであるということを予想して立案せられております。先ほど塚田委員から質問がありまして、法人と個人との課税が、会社になつた方が税率が安くなりはしませんかというようなお尋ねがあつて、自分としてはそう考えないが、商人的な立場から考えると、そうだと言わなければならないような事実があるというような答弁もございましたが、税務署において法人税を徴收する場合においては、ただいまの法則では、どつちかと申すと、いわゆる努力目標と言うか、あるいは割当課税と申しますか、とにかく一つの予算の配付が行われておることは事実であります。そうしてそれに合うためには、各企業も超過所得にぶつかるまではやはりとつております。少しぐらい超過所得にかかつていなければ、どうも上局の方の見込が惡い、ちよつとぐあいが惡いから、というようなことで、各企業におしなべてこれを用いる。これは税務の実務であります。そういうような形でありますから、三割といつて上げられたことは迷惑千万。それで資本金はもとの通り、昔の十万円は十万円と評價されておつて、そうして三割でもつてわずかに三万円、そうして今の貨幣價値から言えば、戰災等の特別事情を除きますれば、今はその十万円が一千万円にも働いておる。それを現行の税法の一割に止めてもらえば百万円で、超過所得の限界は少くなるのであります。どうも超過所得がかからないような決定をしたのでは、上局の通りが惡いというような税務の実務から見ますと、三割五割に限度を上げていただいたことは、資本金額の算定をかえない以上は、はなはだ妥当なものではありません。これを三割、五割、十割にしておくならば、資本金を何らかの簡易な方法で、事務のさほど煩雜にならない範囲において、どうしてもこの資本金の換算ということをしなければ——その程度の多い少いは、これは議論のあるところでありまするが——趣旨としては、それをしなければ、これは逆に法人に対しまする大きな負担になる。超過所得が三割になつたがために、普通所得をつり上げられる。これは、こういう事実がちまたにいくらでも起つておる。現実としてわれわれの日常生活にも、必ずぶつかるであろうということを憂えておりますが、この点の実際については、三割にもなつたのですから、普通ならば、これは超過所得のかからぬという原則で並べておる。外資導入の関係があるので、法人税は軽減しておるのであるから、超過所得は原則としてはかからぬ。超過所得がかかるようなものは、せいぜい三割、五割というものであつて、こういうものは特例だ、とおつしやるならば格別、從來のような税務行政をそのままにしておくならば、この五割、十割、あるいは三割のセクションというものは、これは会社企業に対して軽減どころか、かえつて重圧を與えるところの原因になる。かように考えておりますが、この点についての実務的の御見解はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/62
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063・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 法人税につきましては、実は今のお話とちよつと逆でありますが、先ほど申し上げましたように、資本につきまして個別的に是正を加えるということは、税法だけでやるのはなかなかむずかしい。さればと言つて、おおむね多くの会社は物價なり実際の收益に対しまして、相当低い資本金で、相当な仕事をしておる。マージンでも、賣上げのごく一部が利益になりますと、これは相当な利益になる。こういう伏態をそのまま課税しますのは、やはりいかにも超過所得税としてむりがありはしないかということを考えまして、超過所得税の改正をいたしておるのでございます。從いまして、資本の再評價をいたしますれば、あるいは從來通り、一割、二割、三割くらいの税率で課税するというのも、一つの方法かと思うのでありますが、さようなことが技術的にはなかなかむずかしいし、むしろ一般の、会社の評價自体の問題にあると考えますので、税法におきまして大まかに調節をはかるという意味におきまして、かような改正を加えておるのであります。從いまして、このことは私ども実際問題として、現在の多くの法人につきまして、評價を一定すれば、非常に高率な課税になつてなかなか納まらない、そういうことがないようにすることが、一つのねらいでございますので、御了承願いたいと考えるのであります。
なお、運用につきましていろいろ御指摘がございましたが、これはあくまでも適正な所得を算定するということのみが唯一の目的ではございませんし、またそれより以上にはみ出る筋合のものではないと考えますので、運用にあたりましても、さような趣旨で適正を期するべく努力するつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/63
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064・宮幡靖
○宮幡委員 ただいまの政府委員の御説明は了承いたしました。のみならず、事実さように運用されますならば、この税法の三割、五割、十割に上げました意味もはつきりしてまいりまするし、國民も定めし安心することだろうと思つております。どうか國民の安心するように御運用を願いたいと存じます。
その次に、有價証券の移轉税につきまして、先般ちよつと大藏大臣にお伺いいたしておきましたが、租税特別措置法の中で、改正要綱の中に「企業再建整備法又は金融機関再建整備法の規定により認可された整備計画に基き発行する株券を引き受ける者等が、当該企業整備計画に基きなした株券の移轉については、有價証券移轉税を課さないこと」となつておりますが、先般証券の処理につきましての法案も通過いたしております。財閥解体あるいは財産税の物納化、あるいは國の持つております株式、制限会社、特経会社、かようなものの開放株が、六百億ないし八百億あるというようなことが予想されておるわけでありますが、この開放株に対しますところの買取りの際に起ります有價証券移轉税については、何らの考慮が租税特別措置法で拂われておりません。單に企業再建整備法、金融機関再建整備法だけに考えられております。これは何か立法上の手落ちのように私は考えますが、この点はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/64
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065・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 今御指摘の租税特別措置法の規定は、実は企業再建整備法、金融機関再建整備法等の規定によりまして、認可された整備計画に基いて、一應ある人が株券を引き受けまして、そうしてなお暫くの間に、今度はほんとうの所有者に賣りさばく、こういうことになる場合を考えまして、一應だれかが引受ける場合における移轉税を免税いたしまして、本來の株券の取得者に、その株の賣渡される場合においては課税しようという趣旨でございます。これらに対しまして、独占禁止法その他の規定によつて株がそれぞれ賣買され、本來の取得者にそれぞれ賣渡される場合においては、やはり有價証券移轉税は、ごく軽微な例でございますが、やはり課税していただいてよろしいのではないか、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/65
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066・宮幡靖
○宮幡委員 株については、開放株の原始取得についても課税をなさるという御意意ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/66
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067・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 原始取得というお話でございますが、すでにある株をたれかが買う場合の取得でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/67
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068・宮幡靖
○宮幡委員 持株会社整理委員会の所有になるわけですが、最初に買う人に、その場合に課税になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/68
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069・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 その場合は課税になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/69
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070・宮幡靖
○宮幡委員 さよういたしますと、証券の民主化ということを標榜しております第一の條件が、大体特株会社の解体等の場合の開放株の処理は、その会社の從業員が最優先でありまして、第二位がその地元の人たち、それから一般、こういうことになります。從業員の引受けということは名目でありまして、事実は引受ける資力はないわけであります。今度はそれに対しまして、金融のわくを拡張いたしまして、その証券を担保にして五割ないし七割くらいの金融ができるという途が最近開けたように承つておりますが、事が勤労——汗と脂でもつてたたき上げました階級の方々がもつ株であつて、これに有價証券移轉税をかける。その税のうちの一番高い千分の八がかかるということは——移轉税全体から見れば微々たるものでありますが、金のない者によぶんにかける、しかも借金してまでももつていかなければならないというということは、証券の民主化の趣旨に相反する。何か租税特別措置法の中に若干軽減するなり、これを保護するなりの規定があつてもいいと思う。金持が買うならば千分の八くらい何をか言わんやでありますが、割当てられてもちまする労働者の引受け株に対してもこれがかかるということは、何となく得心がいかないところであります。この点についてもう一度ひとつお答え願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/70
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071・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 先ほど申し上げましたように、開放株の場合は、原始取得者でなく、すでにある株をある人が取得する、かようなことになるわけで、有價証券移轉税は、原則に從いまして課税するということでやむを得ないと考えておるのでございます。その場合に持主が從業員等の労働者の場合、特に考えたらどうかというお話でございますが、これも決して強制的に割当てるわけではなくて、やはり極力証券民主化の見地から、廣く所有してもらうという趣旨に從つて買う場合でございますから、そういう場合におきまして、有價証券移轉税を納める程度の資力はあるものと考えてもよろしいのじやないか、かように考えますので、特にそういう場合に限つて移轉税を課税しないということは、必要なかろうと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/71
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072・宮幡靖
○宮幡委員 そこでこれはほかの問題に関連があるのですが、持株会社整理委員会に委託されました株というものの所有権は、もとの人たちにはないことが原則であります。從つてちようど株券を最初に発行すると同じような状態が想像されるのでありますが、私はそれは原始取得とはどうしても考えられません。一度持株会社整理委員会にその所有が移るのであります。これは旧株主から新株主に移るものとは根本的にその趣が相違しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/72
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073・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 有價証券移轉税法によりまして、原始取得には課税しないということにいたしておるわけでございますが、そういう考え方からいたしまして、今の御指摘のような場合も同じだということの解釈は、少し無理だと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/73
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074・宮幡靖
○宮幡委員 時間も大分追われておりますから、くどい質問はやめまして、もう一つお伺いいたします。
先ほども申し上げましたように、ただいまの税は、とりやすいからとるという傾きが非常に多いのであります。その一つの現われといたしまして定額税である登録税におきまして、大幅な引上げをしておる。たとえば商事会社におきますところの現行登記移轉の登録税が千二百円、これらは登記所におきます手数あるいは登簿いたします手数の原價を考えましても、一体かようなことをしてよろしいものだろうか。これは鉄道や何かを見て、ここらがよかろうから六百円を千二百円にしてくれ、このくらい出せるだろうというので、いわゆる税をとりやすいものからとろうという傾きがはなはだ多いのです。この点はどうもはなはだ遺憾にたえないのであります。変更登記というようなものは、御承知の通り紙片一枚か二枚書いて申請いたしまして、そうしてわずかに二三行を登簿するだけの手数であります。これに最も重いかような負担をさせますことは、結論におきましては登記を遅滯ならしめまして、違法を奬励するような傾きになるので、これこそは現行の六百円をしばらくおいて、殊にわずかのものでありますから、他に財源を求められた方が適切でなかろうかと考えますが、その点はいかがでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/74
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075・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 登録税につきましても、間接税一般につきまして申し上げたと同じように、物價事情等によりまして、必要最小限度の引上げをいたしておるのでございます。御指摘の場合は二倍だつたかと存じますが、昨年の場合に比較しまして、本年度二倍に引上げるということは決して私ども行き過ぎではない。この程度でございますれば、やはり負担としても相当でございましようし、また全体といたしまして、何しろ相当重い負担を國民各位にしていただかなくてはならぬときでございますから、やはりいきおい余力あるもので増税をはかるというのが、とるべき態度でなかろうかと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/75
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076・宮幡靖
○宮幡委員 どうもこの点は納得がいかないのですが、やはりとれるやつからとるという傾向が、税法の大きな流れであると思います。どう考えてみても、これはもとは五円でありますよ、それが十円になつた。もし十円ならばこれは百二十倍ですから、政府は税金の引上げ倍率を今のやみベースで考えるのかということになります。これは笑いごとのようでありますが、事実重大なる問題でなかろうか、どこを見たつてこれはよくないのであります。もつとほかにこのくらいの財源はどうにでもなるだろうと思いますから、これは別に私は政府の手落ちとして、それを追究しようとか何とかいうものではありませんが、多くの場合、税法等の問題については、かようなこまかい方には皆さんの御注意がいつていないと思うますから、一應お尋ねしておくわけでありますが、どうも私はこの点は納得できません。どうしても登録税のごとき定額税においてポンポン上げればいい。物品税などの定額税においてポンポン上げれば、税額は殖えるのだ。この行き方は税として一番惡い行き方である。こういうことをはつきり申しておきたいと思います。なお質問したいことがたくさんありますが、時間の関係もありますので、本日はこの程度でとにかく一應ここで打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/76
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077・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 今いろいろ御質問がございましたが、むしろ私どもはやはり引上ぐべきものは引上げる、下げるものは下げる、そういうことをできる限り、物價事情、賃金の事情、経済の情勢に應じて適正にやるということが、この際とるべき途でございまして、いやしくもそういう余地がある限りにおいては、税制に改正を加えるというのが、この際として正しい行き方でなかろうかと考えるのであります。もちろんやみ所得の捕捉につきましては不断の努力をいたしまして、全力をあげて捕捉してくいということは、たびたび申しておるのでございまして、單に安きについておるわけではありません。合理的に刷新しようということに重点がありますことを申し上げておきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/77
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078・大上司
○大上委員 私も質問したいと思いますが、この際二、三資料を要求いたしまして、早急にいただきたいと思います。まず第一にお願いしたい資料は、配付税のいわゆる未決定になつておる部分が相当数全國にあると思います。これも調査したところによりますと、それを決裁されずに放任しておるということであります。これの件数と、あるいは徴税し得るところの見込税額、もう一つの資料は取引高税につきまして、先般の公聽会に出ておりましたが、課税の回轉率といいますか、一取引毎にその取引高税がかかるとするならば、行程において何行程ぐらいかかるか、これは事務当局の主要品目で結構でございますから、それはお任せしますから、この二つの資料せ明日までにお願いいたします。これによつて質問を続けたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/78
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079・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 ただいまのお尋ねに対しましては、資料がございますので、あとで御説明して御了解を得たいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/79
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080・本藤恒松
○本藤委員 酒税のことでちよつとお伺いしたいのですが、一級清酒の六百円を九百円、並びに二級酒を五百四十円を七百五十円にという高値に改訂されるのでありますが、こういう高い値段で自由に賣られるといつても、結局大衆はこれを飲むだけの経済力がないのでありますから、これに伴うところの弊害としては、どぶろくが多くなる。それからそれに準じてやみ米相場がだんだん暴騰してくる。最近地方でも米のやみ相場の高い原因は、どぶろくにあると言つておるのであります。ある一つの面では燒酎をたくさん蒸溜するために、高い米を買つて、地方でアルコールをつくつて賣つておるというような傾向があるのであります。私はこういうような行き方ではなくして、どうせ國全体からいけばアルコールを要求しておる。やはり一般國民としては酒をある程度つくつて、そうして実際國の増産をお互いの実務においてやらせるという意味においては、食糧事情もありましようが、ある程度今までの石数よりも、米を何かとして増石してはどうかという一つの問題と、それからそれに代つてわれわれが今後やはり研究してみてはどうか。というのは、食糧として大体主食の米を使つてやることが一番いいのであり、なおまた麦を使つてビールをつくるのは、われわれ國民としては要求しておりますが、しかし食糧事情としてそういうことはできぬとしたならば、果実酒を自由に販賣させ、自由につくらせる。つくるということはむろん免許の上においてつくらせますが、つくる石数高、または販賣させる價格の制限、配給ということをなくして自由につくらせる。また販賣させるということならば、果実酒に対するところの進歩、改良ということは相当に進んでくると思うのであります。これはひとつ果実酒のごときは、すでに大藏省の方へ業者からいろいろ陳情も出てきておりはしないかと思いますが、すでに果物は統制から解除されて自由になつております。價格もそれに準じて高くなつておりますが、果実酒の價格だけは配給統制であり、または價格も統制でありますから、こういう行き方ではとうてい果実酒の進歩改良もできません。なおまた食糧の関係からにらんで、果実酒の増産ということもやはり今後むしろいいことじやないかと思うのでありますが、それらに対しての見解を承りたいのであります。なおまたこれは酒造家としての希望、むろん日本全國の酒造者の意見であると思いますが、戰爭中たまたま昭和十七年でありますか、整備のためにやむを得ず協力して休造しておつたのであります。その当時軍と関係あり、また統制のいろいろな力というか、背景と、その当時の官僚との結合によつて、いろいろな不公平な業者が残つておるのでありますが、その当時やめた人たちは必ずしも心からやめようということはむろんなかつたのであります。いよいよ終戰後、今日になりまして、これらの業者の人たちは、やはり許可をとつて、もとの酒造営業をしたい希望が全國にあると思います。これらもひとつ大藏当局の人たちの御意見を承つておきたいのでありますが、いわゆる清酒に対する方法も今までの方針をいま一歩かえられた方がよくはないかという意見と、もう一つは、果実酒に対する見透し、これをいま一歩進歩的に考えて自由にやらせる。なお果実酒以外の雜酒もこれに準ずる。私は日本のあらゆる文化というか、平和日本の行き方としては、こういう嗜好方面も相当進歩していくと思いますから、今からこれらに対する準備として、果実酒、雜酒だけは、統制を解除して自由にやらせた方がよくはないかと思います。それに準じて、それに対する税金の徴收も額がだんだん上つてくるから、こういうことから、清酒を高くして税金を得るというような方法でなくしていつたらいかがかと思いますが、こういう一般の考えていることに対しての希望のある一つの方針を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/80
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081・原純夫
○原説明員 第一の果実酒の統制の問題でございますが、酒類につきまして戰後三年経つ今日、なお統制を続けていかなければならぬということは、何さま原料が食糧関係からして非常に制約されている一方、製品を供給いたします先としては、鉱山あるいは農村、その他そういう生産増強、勤労意欲の高進というような必需面がございますので、やはりこれを統制していかなければならないという現状でございます。果実酒につきましては、御指摘の通り原料果実の價格並びに配給の統制がはずれるという事態になつてきておりますし、また業態といたしましても、非常に各地で原料の價格が違い、平均をみておらぬというような実情にも考えまして、これが統制を撤廃するという方法が、すらつとしたいき方ではないかという考えで、ただいま研究し、さらにその措置にあたるところまで仕事を進めております。雜酒についてもというお話でございますが、雜酒となりますと、原料も統制原料を使うものが大部分でございますし、從つて原價その他の関係において、統制もできるし、一方ただいま申し上げましたような理由で、統制を続けてまいるという必要が強くありますので、これはしばらくそのままでまいりたいというように考えております。
それから次に清酒の轉廃業者の扱いの問題でございます。これは戰爭末期になりまして、原料が非常に減つてまいり、同時に人的、物的方面でいわゆる轉業問題が起りました時期に整理をいたしました。これが業界の、いわゆる当時における民主的に申しますか、それぞれ都合をはかつてやつていただいたわけでありますが、実際においてやめられた方が氣の毒であるということは、おつしやる通りでございます。その点も考えまして、政府といたしましては昨年の初め、清酒の轉廃業者の復活について、御承知の通り原料の方も昔に比べますと十分の一くらいということになつてきている時期でございますが、轉廃業者を復活させるということに向うべきだという方針を立てまして、昨年の暮から始まりました酒造年度におきまして、相当数の復活を見ております。いずれも残存業者と轉廃業者とお互いに相和し、相提携して話をまとめ、復活をはかる。政府といたしましてもその間に立つてできる限りの斡旋をいたしまして、なかなかデリケートな問題でございますから、いろいろな摩擦のままあつたところもございますが、各方面の努力によつてこれを打開して、かなり円満な、順調な経過をもつて、この筋の実行ができたのじやないかというように考えております。なお轉廃業者の問題につきましては、將來におきましてもよく当時の事情も考え合わせて、十分な措置をとる必要があるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/81
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082・本藤恒松
○本藤委員 清酒の方の造石高に対する御意見がまだありませんから、ちよつとついでに承りたいと思います。ただいま申し上げたように、今の農村の米のやみ相場というものは、必ずしも都会の買出しによるのが、やみ相場の一番高い問題になるのではなくして、結局どぶろくや燒酎をとる原料として買い集めるために、その米のやみ相場が高くなるという傾向が至るところにあるのであります。それであるから私はいま少し清酒を多くつくつて、いま少し安い値段で一般にやつた方が、適切じやないかということを申し上げたのでありますが、これに対する御意見と、それからなお果実酒だけは今考慮中であるということになつておりますが、すでに果実というものは行き詰つておつて、ぶどうにいたしましても、りんごにいたしましても、すでに價格が産地でも、場所によつては二百円、三百円しておるのだから、これをつぶして高いぶどう糖を配給してもらつたとしても、なおアルコールを配給してもらつたとしても、それを今の自由價格の高値で賣るとしても、もう追いつかない相場になつておるのです。それであるから、今後果実酒業者の行き方として、よほど安い相場のついたときとか、または等外の惡い果物の、腐敗するに先だつて、それを処分するという値段で買い入れてやるとかする以外にはないのでありまして、私はこの果実酒の統制をある程度解除する以外に、雜酒というものも手持品をはつきりと調査しておいて、手持品だけのものはこの程度でひとついいだろうということの腹をきめて、統制を解除して自由にやらしたらどうだろうかというふうに私は思うのであります。重要な物資がそのうちに含まれておるから、もし雜酒の方を統制解除したならば、またやみからやみで製造するというようになりますが、手持品を申告して、それを大藏省で許可をして、それだけの石数をつくらして自由にやらしてはどうかと私は思うのであります。果実酒の点はむろん早急に解決していただいた方がいいと思うのです。なおその雜酒に対してもどうかいま少し見透しをよく定めて、今の一般の行き方に対してやつていただきたい。これに対する御意見をいま一度承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/82
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083・平田敬一郎
○平田(敬)政府委員 酒類の生産について有力な御意見を拜聽いたしましたが、御承知のように酒類の生産は現在非常に減つております。清酒にいたしましても、ただいま昭和十二酒造年度、支那事変前は四百三十七万石つくつておりましたのが、本年度の見込みでは、わずかに五十八万石、すなわち一割四分程度に減つております。その他の酒類全部を合計いたしましても、昭和十二酒造年度におきましては六百五十一万余石をつくつておりましたのが、本年度の見込みといたしましては、わずかに百三十六万石でありまして、一割九分程度の生産石数になつておるのでございます。かように減つておりまする関係上、いろいろ農村方面あるいは都会方面におきましても、最近は相当密造酒が出まわつておるようでございますが、おもしろくない傾向が出てまいつておるわけでございます。これに対しましては、一方において極力取締り等を強化いたしまして、さようなことがないようにいたしておるのでございますけれども、御指摘のように酒類の供給がかように減りましては、なかなか思うようにはまいらないのでございまするので、私どもも希望といたしましては、できる限りこの酒については、造石するのが妥当ではないかということを考えておるのでございます。ただしかしながら酒類の原料は、御承知の通り主として食糧に向うものでございまして、米といい、いもといい、それぞれ現在の日本の食糧の非常に欠乏した段階におきましては、貴重な食糧に相なつておりますので、なかなか酒の造石の方までまいりにくいというのが、現在の実際のおかれた状況ではなかろうかと考えるのでございます。ただ本年度におきましては、食糧事情も若干よくなる事情もございますし、國内の生産も順調にまいりますれば、來年度としては私どもの希望としましては、これに対して相当造石ができるように努めていきたいと考えておりますけれども、ただ、今申しました全体の食糧状態がございますので、なかなかむずかしい問題であるということを、一應御了承置き願いたいと思います。
それから先ほどの雜酒についての統制の問題でございますが、果実酒は今第二課長からお話しましたように、今回ごく近いうちにこれは撤廃するつもりでございます。雜酒になりますと、先ほどもお話しましたように、いろいろ有用な原料を使つておりますし、製品といたしましても相当まとまつた石数がございまして、統制も相当しやすいという関係もございますので、今しばらく統制を続ける方がいいのではないか。ただ今後における実際の需給状況その他の情勢を見まして、漸次考えていくという方向に向つたらどうかと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/83
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084・本藤恒松
○本藤委員 大体の御意見で一應納得できる点もあり、なおまた御研究を願いたい点もあるのでありますが、アルコールのなりアルコールの加工を、ある程度自由に許していただくとするならば、——果実以外としてはそれは主食の甘藷でありますが、甘藷というものは採收期が一時であつて、設備がないために貯藏に非常に困難しておるので、他方においてもさつまいもからあれを加工するならば、酒精なりあるいはまたあれを直接いろいろに改良して、相当酒に役立つ余地があるのであります。大きく機械があればアルコールというものはただちにできますが、しかしこのさつまいものある程度の加工というか、アルコールにかえる一つの方法として、私は雜酒なり果実酒なりというものとにらみ合わせて、ある程度までは自由に甘藷などもされてはどうか。そうすると日本全國では大したアルコールが助かるのであります。これはあまり統制が強かつたり、いろいろ自由にできない場合におきましては、そういう業者が積極的に改良進歩を加えることができないのでありますが、甘藷の酒精に対する処理ということに対しての御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/84
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085・原純夫
○原説明員 酒類の生産に資するために、甘藷の統制をはずせという御意見を伺いましたが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/85
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086・本藤恒松
○本藤委員 そうではなくて、申請によるなり、手続によつては、全部ではなくても、一部自由にさしてはどうかというのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/86
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087・原純夫
○原説明員 御承知の通り、甘藷は主食の一つとして統制されておりますので、結局ただいまお尋ねの点は、酒用の原料としてどれだけの甘藷が割当てられるか、さらに御質問の趣旨を忖度いたしますれば、実際問題として甘藷の荷動きが惡かつたりいたしまして腐るというようなものもある、そういうものを酒の方に利用したらどうかというような含みをもつた御質問であると思いますが、甘藷の酒に対する割当量は、酒に対する米その他の割当を一括しまして、毎年秋冬にはつきり決定いたします。そして日本の主食事情、特に海外から援助を仰いでおりまする関係からして、これを超過いたしますことは、嚴に戒めなければならない実情にあるわけであります。が同時にただいま申し上げましたような腐敗甘藷等の問題になりますと、実際において日本の経済がなだらかに動いていないために、むだになつてしまう芋がある。これを利用せぬのはうそではないかというような含みから、こういうものにつきましては、できるかぎり酒用の原料として使いたいということで、極力現在も使つているわけでございます。なおそのほか澱粉かす、あるいは芋の搾り汁というようなものになりますと、統制の程度はあるいは相当ゆるくなつているものがございます。つまりそこに自由のきく御面があるわけであります。これらの部面におきましても業界の方々がそこをねらつてそれを酒に轉化するというプランをおたてになります場合には、われわれといたしましても、國家財政の上からしましても、酒の需給から言いましても、非常にありがたい次第でありまして、できるだけやつていただくつもりでおります。ただ何さま酒には原料のほかに燃料が必要であり、資材が必要であり、また設備が必要でございますので、こういう線について、やはりそれぞれ相当の條件を備えなければなりませんけれども、そういう條件のあります限り、酒の造石高の増加に役立ちますようにという、御質問の趣旨の通りの氣持でやつているつもりでございます。今後ともなるべくその御趣旨を体しまして、酒の造石高の増加をはかりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/87
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088・塚田十一郎
○塚田委員 復興金融金庫法の改正について十分ばかりお尋ねいたしておきたいと考えております。今度の改正案で、一應五百五十億円の増資ということで御提案になりましたのでありますけれども、実はここまでまいります段階におきまして、私どもが承知しておりますところでは、六百億ということを政府当局が非常に熱心に御希望をもつておつたということを承知しているのであります。そこで六百億が四百五十億に減じられましたところのいきさつをまずお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/88
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089・愛知揆一
○愛知政府委員 ただいまのお話の通り、私ども事務当局の原案では、この期間を経過いたしますためには、どうしても六百億の増資額が必要であるということを一應立案いたしました。その六百億の内容といたしましては、第一・四半期の実況から見まして、第二・四半期、第三・四半期、すなわちこの次の通常國会で御審議をいただきますまでの間の期間の予想を立てまして、その予想の結果におきましてはどうしても六百億程度が要る。その間に御承知の價格改訂あるいは財政などの各般の方針等がきまりますことを前提として、さように考えたわけでございます。ところが御承知のごとく一方におきまして復興金融金庫を通しまする融資につきましては、單に経済的な観点のみならず、政治的、社会的諸般の関係からいたしまして、できるだけこれは圧縮することが最も望ましい。特に最近におきましては外資導入と関連いたしまして、どうしてもその観点から、ますますもつて復金のような現在尨大な機構になつておりますものは、できるだけ縮小いたしまして、内外に対してはつきりと説明の明瞭につきますものに限定をいたしたいと考えられるわけでございます。また一面復興金融金庫の事務の分量から申しましても、できるだけ詳細に審査もし監査もいたしまして、さらに回收を促進するためには、できるだけその業務の分野も狹めたい。またできるならば規模も縮小いたしたいと考えるのが当然のことでございますので、一應六百億という計画を立てまして、何とかしてこれを少しでもいいから減らすような工夫をしたいと考えまして、いろいろやつてみまして、大体現在の予想といたしましては、ぎりぎりのところ圧縮を重ねるならば、四百五十億でどうやら間に合うのではないかというところを押えたわけであります。なお率直に申し上げますると、あるいはこれでは足りないかというおそれもございますので、五百億程度のところは両四半期におきまして出ることを心のうちには用意いたしているわけであります。その際におきまして足らざるところ、五十億程度のところは、應急臨機の措置を講じたいと考えているわけでありすま。
もう一つ附け加えて申し上げておきたいと思いますのは、第一・四半期に立てました計画から申しますれば、ある程度第二・四半期以降に繰延べができますものも相当ございますので、それらを勘案いたしまして、ただいまの見込みでは五百億で何とかやつていける、またできれば四百五十億に止めたいということで、この増資額を決定したようないきさつになつているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/89
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090・愛知揆一
○愛知政府委員 御説明を伺つてみますと、非常に御苦心された結果減額されたということでありますが、その御苦心はまことに多とするのであります。しかし私どもがこの前の増資の場合に、この復金問題に対して抱いていた感じと今日では、大分情勢が違うのではないか。と申しますのは、あの時分は一般金融界においては、まだ今日ほど非常な資金詰りということは深刻に考えられておらなかつた、ところが今日になりますと、非常にこの資金面が窮窟になつて、産業界の全般において資金の面からくる圧迫というものがひしひしと感じられているが、結局産業の命とりというところまでいくのではないかと考えているのであります。そこで復金資金というものをお締め願つたということは結構であり、私どももぜひそれを希望する次第であります。一体それでは他の面の金融政策というものを、政府がそれと復金のこの増資をお減じになつたということをにらみ合わせ、どういうようにお考えになつているか、この点をひとつお聽かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/90
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091・愛知揆一
○愛知政府委員 ただいま御指摘の通りでございまして、この問題につきましては、私どもとしましては、一面におきまして復金を通しての産業資金は、先ほど申しましたように内外いろいろの関係がございますので、できるだけ圧縮に努める。しかしながら金融政策全体といたしましては、いわゆる健全金融の線を維持してまいりますことは当然でございますが、同時にたとえば現在は公價の全面的な改訂がすでにスタートしたわけでありますので、その公價改訂のいずれによつて必要でありますところの運轉資金等については、正規のルートに乘つた生産の促進をいたしますために、円滑な資金の供給をするということを、基礎的な考えにしているわけであります。ただしかしながら同時に公價の改訂ということにつきましては、たとえば石炭とか電力というような基礎的の産業、あるいは鉄鉱業等につきましては、今回の價格改訂に関して各般の事情も非常に詳細に檢討いたしまして、その他の要素が見透し通りに実行できるものであれば、いわゆる赤字運轉資金は出ないはずであるという建前で考えております。
現在巷間において資金の行詰りということが言われておりますが、同時にこの際公價の改訂その他により、ある意味におきましては局面が打開されるわけでございますので、それらの諸般の價格政策、その他に相應いたしまして、金融政策においても十分といかぬまでも、相当のゆとりをもつて考えてまいりたいと思つておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/91
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092・塚田十一郎
○塚田委員 何とかしてやるお考えがあるということは御答弁で了承できるのであります。しかしそのお考えを実行されます上において、私が非常に懸念しております点は、御承知の今の融資準則というものが、預金の純増加がなければ、産業界にも財政資金は出されないという、根本の大わくによつて束縛されておるということがあるのであります。そこで問題ははたして今の状態で預金が伸びる見透しがあるのかどうか、またこの四月以降、どれくらいの預金の伸びを見ておるのか、この点をまずひとつお伺いいたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/92
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093・愛知揆一
○愛知政府委員 まず第一に預金の伸びでございまするが、今年度にはいりまして、四月におきましては一般自由預金の増加の目標は、二百四十億と大体見込んでおつたわけであまりす。それに対しまして御指摘の通り、実績の見込みは三十三億程度にすぎなかつたわけでございます。それから五月におきましては、当初の見込みは二百二十億程度を見込んだのでありますが、実績はやはりわずかに九十六億というような状況でございます。この実績がかくのごとく非常に成績が惡かつたことにつきましては、いろいろの原因が考えられるのでありまするが、たとえば三月末までは御承知のように昨年度の貯蓄目標が千七百億に対しまして、千九百億以上の実績をあげたというようなこと、そのために三月までに、金融機関として相当な無理な努力も重ねたということも言えましようし、あるいはまた一部にいわゆるウィンドウ・ドレツシングというようなことが行われたことも、かなりあると思います。しかし同時にまた暫定予算で六月まで推移してまいつたというようなことは、どうしても政府支拂いの面等におきましては、うちわにならざるを得なかつたというようなことから、一般に金の出方が足りなかつたために、かような状況を示したのでありまして、六月の推算はまだ出ないのでありまするが、六月にはいりましてから、郵便貯金その他の状況を見ておりますと、相当にこの状況は回復しつつあるように見受けられるのであります。蓄積の状況はさような状況でございますが、ついでに資金の需要の方を申しまするならば、需要を二つにわけまして、財政資金の面を申しまするならば、四月におきましては、財政資金としては、百三十五億くらい一月に出る資金としての需要があるという見込みでありましたのが、二十一億に止まつておる。それから五月におきましては財政資金の需要が五十億、これがやはり見込みよりも相当うちわで済んだわけでございます。六月におきましても実績見込みは七十七億程度であります。かように財政資金の需要の実績が、見込よりもかなりうちわにおさまつておるという状況であります。それから産業資金につきましては、全体的に申しまして四月が約百七八十億と見込みましたのが、実績は百二十六億に止まつた。また五月には二百億足らずと思いましたのが百五十七億に止まつた。六月におきましては二百億を見込んでおるのでありますが、実績としては百九十億前後に止まるのではなかろうかというように考えておるわけであります。
ただいまの数字で申し上げましたわけでありますが、融資準則の問題につきましては、健全金融ということから申しまして、融資準則の建前はやはりあくまで健全金融ということでやつてまいりたいという念頭から申しますれば、資金の蓄積の範囲にこれを止めたいと思うことは山々であります。しかしながら資金の蓄積が十分でありません場合にも、やむを得ざる方面について円滑な金融をすることについては、現在の制度のもとにおいては、相当の考慮を拂つておるつもりであります。たとえば蓄積が予定通りに伸びなかつた。四月のごときはほとんど一割近くに実績が落ちておるのでありまするが、資金の需要の方に対しましては、その比率どころではなくて、はるかに多くの比率のものを産業資金として供給しておるというような状況に相なつておるわけであります。
なおこの機会に價格改訂に伴いまして、当面考えております根本の方針といたしましては、大体四つのことを考えておるのであります。一つは從來の健全な金融政策を基調とする根本方針はあくまでかえない。しかしながら第二に價格改訂に伴う適正な通貨の増加、所要資金については、企業の実態に即應しまして円滑な供給をはかる。ただこの際に注意すべきは、價格改訂を理由とする便乘的な融資は、嚴重にこれを排除するという考えであります。第三に企業に対する赤字融資ということは、價格改訂を機会に今後はこれを抑圧しなければならないというふうに考えております。それから第四に、從來赤字融資を受けた企業に対する経理の監査、ないし経理の監督を嚴重に実施する。この四つの考え方を基本といたしまして、具体的にいろいろと話合いもし、また実行しておるつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/93
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094・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 暫時休憩いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204365X05119480630/94
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095・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 では暫時休憩いたします。
午後五時八分休憩
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