1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十三年六月五日(土曜日)
午前十時四十六分開議
出席委員
委員長 井伊 誠一君
理事 石川金次郎君
大村 清一君 佐瀬 昌三君
松木 宏君 明禮輝三郎君
石井 繁丸君 猪俣 浩三君
榊原 千代君 中村 又一君
大島 多藏君 佐竹 晴記君
北浦圭太郎君
出席國務大臣
國 務 大 臣 鈴木 義男君
出席政府委員
檢 務 長 官 木内 曽益君
法務廳事務官 野木 新一君
法務廳事務官 宮下 明義君
委員外の出席者
專門調査員 村 教三君
專門調査員 小木 貞一君
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六月三日
伊丹市に拘置所支所設置の請願外一件(後藤悦
治君外一名紹介)(第一二三八号)
姦通に対する男女同罰の刑法制定に関する請願
(坂東幸太郎君紹介)(第一二五二号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
刑事訴訟法を改正する法律案(内閣提出)(第
六九号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/0
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001・井伊誠一
○井伊委員長 会議を開きます。
前会に引続き、刑事訴訟法を改正する法律案について審査を進めます。猪俣浩三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/1
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002・猪俣浩三
○猪俣委員 法務総裁がお見えになつておりますから、二つの点についてお尋ねいたしますが、あとは法務総裁の御都合で、どうぞ御退席になつても結構であります。
第一点は司法警察職員と檢察官との関係につきましてお尋ねしたいと思うのであります。本法案の百八十九條及び百九十三條に、この関係について書いてあるのでありますが、申しまでもなく。檢察官は檢察廳法によつて規律せられておるものであり、また司法警察職員は、警察法によつて規律されておるものでありまして、この二つの法律を観察いたしますると、檢察官の組織、機構及びその精神的基調と申しますか、そういうものと、司法警察職員の組織、機構及びその精神的基調というようなものは、たいへん違うのじやないかと考えられるのであります。これを両者連絡をつけ、あるいは檢察官が指揮をするというようなことに対しまして、そこに多大の疑義がわくのであります。私は準法律的に考えましても、さように考えられるのであります。檢察官は檢察廳法第一條、第七條あるいは第八條によりまして、これは要するに一つの中央集権的な、統一的な組織体をなしております。そして昔からありますような、檢事同一体の原則が働いておるわけでありまして、いわゆる檢事総長が全部の檢察官に対して指揮権をもつておるというふうな建前でありまして、これはよほど民主的にお考えになりませんと、昔のいわゆる官僚組織、最も精鋭なるところの官僚組織の一体制をなしておるわけであります。そういう雰囲氣の中に檢察官はお働きになつておるわけであります。ところが司法警察職員は、いわゆる警察法によりまして働くのでありますが、これは警察法の前文にも書いてありますように、二つの大きな要請があつて、一つは地方自治の眞義を推進する観点からという意味、それから民主的権威の組織を確立するというような意味から、警察法ができあがつておりまして、その精神的基調の上に、司法警察官というものがあるべく要請されておるのであります。殊に地方自治体警察というようなものは、この地方自治の眞義を推進し、民主的権威の組織を確立するというような精神的基調に立つてやつておるものでありまして、こうような地方自治体警察の職員と檢察官というものは、相当法律解釈から見ましても、特色が違うのであります。そこに私は摩擦が起り得る可能性が多大にある。そこでこの刑事訴訟法の第百八十九條ないと百九十三條というようなこういう規定だけで、はたしてこれがスムーズに犯罪捜査に統一的な活動ができるや否やということに対しまして、はなはだ疑問がわくのであります。その疑問は地方自治体警察と檢察官の関係においてなおさらわくのでありまして、こういう規定だけでそれが十分に連絡がなし得るや否やという疑問であります。百九十三條を見ますと、いわゆる檢察官がその管轄区域の司法警察職員に対して犯罪捜査の重要な事項に関する準則をきめるということになつておるのでありますが、これが先ほど申しましたような精神のもとにできあがつておりまする警察法のもとにおいて、司法警察職員に対しまして、先ほど申しましたような機構の所に働いておる警察官の犯罪捜査についての一般的準則をきめる、これがどのようなことをきめるのであるか、今私どもははつきり具体的にわからぬのでありますが、お尋ねしたいことは、個々の犯罪が起つた場合に、その犯罪を捜査するについての重要な事項に関するいわゆる一般的規則をつくるという意味であるか、あるいは抽象的に一般的に犯罪捜査はかような方式でやれというような準則をきめるという意味であるか。もしそういう一般的に犯罪捜査に関する準則をきめるということになりますと、何だか最高裁判所の規則制定権のようなものを警察官に與えたような感じが起るのでありまして、これがただいま申しましたような警察法のもとにおける公安委員會及び司法警察職員というものとどういうふうに調和できるものであるか、その所信を承りたいのであります。御承知の通り自治体警察は、警察法の四十二條によりまして、行政管理及び運営管理両方ともやりますのみならず、その経費は要するに地方自治体がこれを負担しておる。そうしてそこに公安委員會なるものがあつて、この行政管理、運営管理をやつておるというのでありますが、これに対して檢察官が準則をきめるということがどういうことに相なりますか、その点について疑義があるのであります。もちろん警察法の第二條第六号を見ますと、「逮捕状、勾留状の執行その他の裁判所、裁判官又は檢察官の命ずる事務で法律をもつて定めるもの」こういうふうにありまして、これによつて規則をつくるという基礎をおもちになるのかもしれませんけれども、どうも私ども讀んだ感じによりますと、「裁判官又は檢察官の命ずる事務で法律をもつて定めるもの」というその中に、一般的の準則をきめるというようなことが一体包含できるのであるかどうか、これもはなはだ疑問があるのであります。それらの点について、ひとつ御意見を承りたいと思うのであります。
それに関連いたしまして、たとえばこの檢察官のつくりましたところの準則に対しまして、いわゆる自治体警察なり都道府縣警察なりの公安委員会が反対をいたしましたならば、それは何人がこれを調整にあたるのであるかという問題についても、この刑事訴訟法だけでは解決できないのじやないかと思うのであります。先ほど申しましたような精神的基調の上に立つている公安委員会であるから、この檢察官の準則と異るところの考えをもつ公安委員会がなきにしもあらずでありますが、さような場合にこの公安委員会がこの準則に必ず從わなければならぬという法的根拠がどこにあるのであるかという点につきまして、法務総裁の御意見を承りたいと存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/2
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003・鈴木義男
○鈴木國務大臣 猪俣委員の御質問はごもつともであります。元來警察事務と檢察事務とは、法律上の性質から申しますれば。区別のあることは仰せの通りであります。しかし犯罪捜査ということになりますと、自治体警察がございましても、本來が國家事務であるものを委任せられていると見るべきものでありますから、これは統一的見地からその指揮に從わなければならないということは、御了解願えると思うのであります。この一般的指示というものは、どういうものを意味するか、もとより警察官執務規範のような全國の警察官に通用いたしまする規範をこしらえますことは、この犯罪捜査に関しまする限りは、公安委員会が單独できめ得るというものではなくして、檢察官廳、檢事総長等の関與のもとに、協議の上決定せらるべきものであるということについても、御了解願えると思うのであります。そういう規範ができまして、さらにその規範に從つて仕事をやつていくわけでありますが、さらに一層各地方においてそれぞれの犯罪捜査の仕事にあたります上においては、具体的の事件に対する指示でなくして、必要なる一般的な指示を與えることがしばしば必要になると思うのでありまして、そういう権限を檢察官に與えるということは、犯罪捜査という仕事の性質から考えまして、当然のことであると考えているのであります。それ以外のことについて、特に自治権を尊重し、少くともこれを侵害するような指示をするはずはないのであります。またすべきものでもないのであります。万一爭いが起りました場合には、やはりかくのごとき問題についての最後の決定権は、最高裁判所がもつているものと解しているのであります。
それから公安委員会を指揮することができるかというような御趣旨の御質問のように感じましたが、それは指揮するという建前になつておらないのでありまして、互いに協力をするというだけでありますから、覊束せられるような命令を発するという趣旨ではないのでありますから、これまた御質問のような心配はないのではないか、かように考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/3
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004・猪俣浩三
○猪俣委員 私のお尋ねしたいことは、都道府縣公安委員会、あるいは市町村公安委員会は、警察に関する行政管理及び運営管理両方とも行う機関であります。そこでこの所属の警察吏に対しましては、公安委員会がそういう管理をやつておるのでありますから、この公安委員会の管理権と、檢察官の準則との衝突した場合には、いかなる調整方法があるかという点についての御意見を承りたいのであります。たとえば檢察官の準則に対して、公安委員会が反対の態度をとるというようなことがあり得るとするならば、その場合の調整は何人がいかなる方法でやるかということのお尋ねであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/4
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005・鈴木義男
○鈴木國務大臣 その点は、少くとも事犯罪に関する限りは、檢察官が專権的に決定権をもつておるのでありまして、その補助としてあるいは命令の実行の機関として警察官は働くのでありますから、そういう問題は起り得ないと考えます。その他の点については、公安委員会が指示権をもつておりますし、またそれを尊重し、それを侵すことがないような相なるわけでありまして、逆に公安委員会の方では、犯罪捜査に関する檢察官の権限というものは尊重せられまして、これを侵犯する、あるいはこれに異議を提起するということはあるべきではない、かように考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/5
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006・猪俣浩三
○猪俣委員 今の点はそれで打切りといたします。
次に刑事訴訟法の審議にあるいは直接関係が薄いかもしれませんが、間接的にはたいへん関係にある問題だと思いますことを、一点お尋ねしたいと思います。それは國会と最高裁判所と法務廳との関係であります。どうもこの点につきまして、私どもはつきりしない点があるのでありますが、一体最高裁判所の判決、あるいは裁判行為そのものにつきまして、立法機関なり行政機関が容喙できないことは、これは申すまでもないのでありまして、私のお尋ねしたいことは、要するに司法行政についてであります。裁判所法におきますると、最高裁判所が今までの司法省のやつておりましたほとんど大部分の司法行政を行うような機構に相なつたのでありますが、この裁判所の行います司法行政につきまして、國会がいかなる監督権をもち、いかなる調査権があるかという問題であります。これはもちろん國会の問題でありますから、法務総裁の御意見は御意見として承るだけでありますが、法務総裁は内閣の最高の法律顧問であられるから、要するに行政府としてはこれをどういうふうにお考えになつておりますか。最高裁判所の行う司法行政について、國会は何らこれに調査権あるいは監督権がないものであるかどうか、その点について承りたい。
〔委員長退席、石川委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/6
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007・鈴木義男
○鈴木國務大臣 その点はまことに重要なかつデリケートな問題でありまして、十分詳細に檢討してお答えを申し上げなければ徹底しないかと存ずるのでありますが、時間の関係上簡約して申し上げますが、また後日を期してさらに詳細に意見を適当な方法によつて表明いたしたいと考えます。
御承知のように、新憲法はできるだけ理論上の要請を充たしまして、立法、司法、行政の三権を分立させたのであります。そのために裁判所は全部他の二権から独立いたしまして、それぞれ一切の裁判の実体はもちろんといたしまして、人事、予算並びに行政の部門まで、司法に附属いたしますものは、これをつかさどるということに相なつたわけであります。そういうやり方がよいかわるいかという問題につきましては、非常に議論の余地があろうと存じますが、一應さようにきまつたのであります。しかしながら、三権の関係というものは、分立したから全然無関係であるというわけではないと考えるのでありまして、殊に憲法は、國会が國の最高機関である、こういうことを規定いたしたのでありますから、必要な限りにおいて、裁判に対しまして、行政に対してはもちろんでありますが、それぞれ監督しあるいは調整をするという権限をもつているものと解釈いたすのであります。もとより裁判の実体については、これは立法府といえども干預することを許さないと考えますが、事司法行政に関する限りは、監督をすることができるはずである、また監督すべきものである、こういうふうに考えているわけであります。但しその方法をいかにすべきかということは、さらに一層デリケートに問題でありまして、もしそれを一歩誤りますれば、やはり司法権の独立を侵害するということに相なりますから、その点については、十分愼重に考慮せられなければならない、こういうふうに考えるわけであります。そこで進んで司法権が独立をいたしました結果といたしまして、司法部と行政府、國会というものが、一應無関係の形にあるわけでありまして、相互に協議をし、あるいは連絡をすることについて、法律の規定の上に欠くるところがあるのではないか、もしこういう御趣意であるといたしますならば、その点は十分そういうふうに考える余地があるということを申し上げざるを得ないのであります。そこで司法部の行政事務——最高の人事については、御承知のように内閣がこれを決定し、任命をする権限をもつておりますから、問題が解決せられると思うのでありますが、予算等に関しましては、どうしても國会との間にもある種の交渉をもたなければならず、また内閣との間にも交渉をもたなければならぬ。ただいまの建前では、裁判所の予算というものは、一應内閣に送付せられまして、内閣は大藏大臣がこれに意見を附して、そのまま何らの手を加えずに國会に御提案申し上げる。國会はこれを自由なる立場から御審議に相なる。こういうふうなことに相なつておるわけであります。その内部関係におきましては、裁判所といえども、ただ独善的に國家財政の実情を無視して、勝手な予算を組むということは好ましくないことでありますし、またあつてはならないことでもありますから、予算を編成するに際しましては、いろいろな一つの内規のようなものをこしらえまして、そうして大藏大臣その他二、三の大臣、あるいは裁判所の長老、民間の代表者、両院の議長というようなものを構成員に入れまして、そして審議会のようなものをこしらえまして、そこで審議をした上で、編成をいたしておるやに承つておるのであります。しかしそういうことも行く行く制度化して、実際に法律上の根拠あるものとして考えるべきでないかというようなことも、十分考えられる問題であります。かりにそうでないといたしましても、閣議に列席する代表者というものをもつておらぬのでありまして、閣議は、かるがゆえにこれに少しも筆を加えないということにはなつておりますが、しかし実際は裁判所の利害を行政部に表明させるための何かここに機構があつた方がよろしいのではないか、ただいまのところは書面をもつてその意思を表示している形でありますが、また國会に対しても同樣でありますが、書面によつてのみその意思を表示するということでは足りないのではないか。それならば、そういう連絡の任にあたる特殊の機関を、裁判所の代表としてつくることが必要ではないかというような意見も、実は存するのであります。これらはいずれも議論として存在するというところでありまして、まだ具体化するというところまでは参つておりません。そういう場合、ただいまのところ実際上においては、最高裁判所あるいは裁判所の利を行政部において代理して発言をいたしておるという形、また國会に対しても、あるときはそのような役割を勤めるものが法務総裁であるというような形をとつておるのであります。これは別に法的根拠があるわけではないのであります。事実上便宜に從つてさような役割を勤めておるということになつておるのでありまして、この点も將來考慮すべき問題の一つであると、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/7
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008・猪俣浩三
○猪俣委員 総裁に対しての質問はこれだけであります。
これは立法論でありますから、御意見だけを承つておきたいと思うのでありますが、法人の刑事責任と申しますか、刑罰能力と申しますか、そういうことに対する規定が、この法案にも見えないようであります。御承知の通り、統制法令には犯罪行為をなしたものを処罰するのみならず、会社それ自体に対して訴追をするということが多多あるのでありまして、罰金刑を課される場合が多いのであります。そこでこの裁判所の審理並びに刑罰を課する点におきまして、法人がその間に解散するというようなことが起るのでありますが、そういう場合の関係が、どうも現行法でもはつきりしておらぬ。また今度の新法にもはつきりしておらないと思うのであります。新法の草案の三百三十九條を見ますと、「左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない」とあつてその三号に「被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき」という規定がありますが、これがいろいろ問題が起るのではないかと思います。まず三つの場合をわけて考えてみますと、被告会社の犯罪が発覚して、審理が係属中に被告会社が解散したような場合に、一体被告人として法廷へ会社を代表して出る者は何人であるか。あるいは審理は何人を相手にして行うのであるかというような疑問が一つあるのであります。それから、これはもちろん、第一審で有罪の判決を受け、なお檢事なり被告人から上訴し、上訴中にやはり解散した場合にも、同樣の問題が起ると思うのであります。それから審理は済み、有罪の判決を受け、刑の執行を受けないうちに、罰金を完納しないうちに法人が解散をし、結了登記をやつてしまつたような場合には、それは一体どういうことに相なるのであるか。もちろん審理が済んで有罪の判決が確定した後に法人が解散せられた場合には、これは清算事務として、あとにその罰金の完納は残ると思うのでありますけれども、前の二つの場合におきましては、疑問があるのであります。さような場合における規定が、この新法にもないかと思うのであります。訴訟能力、あるいは刑事責任能力と申しますか、そういうものを考慮する上につきまして、法人の解散及び現務の結了登記ということと、それをどういうふうに御処理なさるのであるか、その御意見を承りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/8
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009・木内曽益
○木内政府委員 お答えいたします。法人の訴訟能力につきましては、刑訴に規定しておりますが、刑罰能力につきましては、これは実体法の問題でありまして、それぞれ実体法の問題でありまして、それぞれ実体法によつて規定さるべきものと考えております。それからただいま御質問の、犯罪が発覚して公判審理の係属中に解散したとか、あるいは上訴中に解散したとか、あるいは判決確定後解散したという場合におきましては、特別の規定が実体本にない以上は、被告人が死亡した場合と同じ理由において、公訴権は消滅するものと考えます。それから法人が合併した場合は、四百九十二條によりまして、合併したその法人が責任を負うことになつておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/9
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010・猪俣浩三
○猪俣委員 私はこの四百九十二條を見まして、合併した場合のことを刑事訴訟法に書いてあるが、しかるにこれ以外のことは書いてないから今御質問したわけであつて、やはり刑事訴訟法に裁判の執行が書いてある以上は、実体法の規定の必要もありましようが、やはりこの訴訟法にそれを書いておく必要があるのじやないか。四百九十二條にすでにそれをお書きになつているとすれば、この合併以外の理由によつて消滅したような場合について、どうして規定を置かなかつたのであるかという疑問が四百九十二條を見て出てきたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/10
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011・木内曽益
○木内政府委員 合併以外の場合は、全然その法人がなくなつてしまうわけでありますけれども、とにかく合併の場合は、なるほど解散の場合と同じで一應なくなる形でありますけれども、合併によつて一應その形が残つてくるものと見まして、この点については特別の規定を設けた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/11
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012・猪俣浩三
○猪俣委員 今のような、インチキ会社で、刑のきまらぬうちに解散するようなおそれがある場合には、この刑事訴訟法の三百四十八條が使われるのでありましようか。判決の確定をまつてはその執行をすることができず、そういう場合に仮納付の言渡しをするようになつておりますが、これがさような場合に適用される條項であるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/12
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013・木内曽益
○木内政府委員 もちろん御質問のように、これはこの規定を動かし得ると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/13
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014・猪俣浩三
○猪俣委員 それからこれはあるいは実体規定になるのかもしれませんが、会社の場合、あるいは合名会社が多額の罰金を背負つたが、はなはだ会社が無資力で、裁判を執行しても何も罰金が納められないという場合に、合名会社あるいは合資会社の無限責任社員に対し、その罰金の連帶責任を負わせることができるかどうか。裁判の執行としてどういう御見解であるか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/14
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015・木内曽益
○木内政府委員 法人が解散した場合には、御質問のような無限責任社員の責任も解除されてしまうわけでありまするから、むろん法人もこれに対して責任を負わせることはできないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/15
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016・猪俣浩三
○猪俣委員 解散しない場合です。会社が存続しておりまして無財産である、悪いことをしているから罰金はうんとかかつてしまつた。会社の財産から取立てられない場合に、会社に代つて無限責任社員が負担するかどうかという問題です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/16
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017・木内曽益
○木内政府委員 四百九十條によりまして、解散していない場合は当然責任があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/17
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018・猪俣浩三
○猪俣委員 これは古いですが、明治三十八年十一月十三日民事局長の通牒があつて「合名会社ガ、罰金、追徴金並ニ控訴裁判費用ノ言渡ヲ受ケ、裁判確定後之ヲ完納セズシテ無資力トナリタル場合ニ於ケル罰金及追徴金ニ関シテハ、社員ノ財産ニ対シテ執行ヲ為ス事ヲ得ズ、控訴裁判費用ニ対シテハ第六十三條ノ適用アリ」六十三條というのは連帶責任のことですが、こういう通牒があるのです。これが刑事訴訟法の四百九十條によつて改正されたと見ていいのでありますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/18
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019・木内曽益
○木内政府委員 この問題につきましては、さらに研究いたしまして、お答えいたしたいと思いますから、どうぞ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/19
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020・猪俣浩三
○猪俣委員 今の点に関しましては、今度の刑事訴訟法の案は、憲法の規定に副うことに対して御熱心に研究されたようでありますが、新しい統制経済法の行われておる法人の犯罪の氾濫しているような近代的な樣相に副うところの規定が、私は少いように思いまして、今のような問題は、白々に起つておる問題でありますので、この規定は國会の責任にもなりましよう。あとは意見になりますが、どうも刑事訴訟法草案に新しい感覚が非常に乏しいという氣がするのであります。なおその点につきましては、二、三質問したいのでありますが、次にやはり同じような意味におきまして、経済法令には、いわゆる限時法及び臨時法というような問題があるのであります。限時法と称される法律が、明らかに法律の廃止された場合においても、なお刑罰は旧法時代に行われた刑罰が、そのまま効力があるというように、はつきり書いてある場合と、いわゆる書いてない場合、全体の趣旨から、限時法あるいは臨時法としてとらなければならぬ法律と、こうあるのでありまして、これに対しまして、今度の草案の三百三十七條の第二号に「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき。」という一項目があるだけでありますが、この問題と今の臨時法あるいは限時法といわれる刑罰の効力とどういうようなことになつておりますか、御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/20
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021・野木新一
○野木政府委員 経済統制法令に関連する法人のいろいろな刑罰関係その他の問題につきましては、実は今いろいろ議論が発展中でありまして、十分熱しない点もありますし、十分研究の足りない点もありますので、恒久的の刑訴にまだそれを盛りこむ段階に至つておらないという点で、この刑訴法に、そういう問題はあまり多くはいつておりません。もし必要があれば、何か特別の規決で賄つておきまして、それが通説的に一般的になつた場合に、また刑訴にとりこんだらどうか、そういう考えでおりまして。それからただいまの限時法もしくは臨時法的のことであります。これま学説上いろいろ爭いがありますし、この刑訴にただちに取入れるにはいろいろ研究の足りない点もありますので、その点も今いつたような感覚でこれを落しておきました。解釈論としては、大体三百三十七條の二号は、現行刑訴とまつたく同じ形になつております。現行刑訴内において判決された理論が、そのままにここに適用されていく。そう思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/21
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022・猪俣浩三
○猪俣委員 次にこれも小さいことでありますから、ついでにお聽きしますが、公判の録音あるいは速記の謄写したものを公判調書の一部にするというような、新しい科学的なものを裁判にもちこむということになるか、そういう御考慮はこの草案にないのでありますか、そういうことに対する御意見はいかがでございましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/22
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023・野木新一
○野木政府委員 その点につきましては、実は臨時法制調査会、司法法制審議会の答申にも、公判調書のようなものに対して、科学的な部面を取入れるという答申がありまして、われわれ研究してまいりましたけれども、この案は大体いわゆる憲法が認めました最高裁判所の規則制定後の判例などを考慮しまして、若干のものは規則制定後に讓つたような関係があります。そこでそれらの点も必要とあれば、規則制定後の公判調書と関連して規定していくという見解に立つておつて、これを否定する見解じやありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/23
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024・猪俣浩三
○猪俣委員 次にこれも御論議になつたことだと思いますが、念のためにお聽きいたしたいと思うのであります。憲法の第三十三條及び第三十五條と本法案との関係について、二、三お尋ねしたいのであります。それは憲法の三十三條は「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」ということになつております。三十五條は捜索及び押收の場合、やはり令状がなければ侵されないというふうに、原則がきまつておるのでありますが、この草案を見ますと、二百十條の緊急事件、これにやはり令状なしで逮捕することが規定されております。それから二百二十條にやはり緊急事件に対して逮捕令状が出ておる場合には、捜査及び檢証が令状なしにやれるという規定があります。なお七十三條の三項になりますが「勾引状又は勾留状を所持しない場合においても、急速を要するときは、前二項の規定にかかわらず、被告人に対し公訴事実の要旨及び令状が発せられている旨を告げて、その執行をすることができる。」こういうふうな規定があつて、要するに令状なしで執行できるという規定があるのでありますが、どうもにせ警察官なんかはやつている今日におきまして、かようなことが憲法の第三十三條及び三十五條とどういうふうに調和するのであるが、その御意見を承りたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/24
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025・野木新一
○野木政府委員 ただいま御質問の点につきましては、刑事訴訟法應急措置法立案当時も、問題になりましたところでありまして、当時各方面の意見なども聽きまして、いろいろ研究した結果、一應違憲にあらずというので、こういう結論に達したわけであります。今そのことを申し述べてみますと、まず二百十條の緊急逮捕の問題であります。これからまず申し上げますと、憲法三十三條は「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」こういうことでありまして、結局この解釈論になるわけでありますけれども、私どもとしては、三十三條は現行犯の場合を除いては、令状によらなければ逮捕されないというので、令状があらかじめ事前に出てあることが、多くの場合原則的であることはもちろんでありますけれども、必ずしも絶対に事前に出ておるわけではないということで、そこをはつきり言つておるわけではない。要するに令状によつて逮捕するということになりますから、普通の社会の見解上、令状によつてと認められる程度のものはよいのではないか。憲法はそこまで嚴格なことを要求しておるわれではない。そういう解釈のもとにおきまして、この二百十條は三年以上の懲役もしくは禁錮、そういうような割合に重い罪であつて、しかもそれを犯したことを疑われる十分な理由があつて、しかも急速を要して裁判官が逮捕状をもつとくることができなす。そういうような條件のもとで身体を拘束した場上には、ただちに裁判官に逮捕状を請求する。結局逮捕状と逮捕という行為は、一面逮捕の行為がある意味でまだ継続しておるという場合に、令状がおつつけ出るというようにも観念されますので、この程度のことは弊害も認めないし、憲法も許しておる。そういう解釈のもとに、これを立案しております。
次の二百三十條の方でございますが、これも第三十三條の場合を除いてはと書いてありまして、その二の三十三條の場合というのは、現行犯として逮捕される場合、それから令状によつて逮捕される場合、こういうことになりまして、二百十條の緊急逮捕もやはり会状による逮捕だという解釈のもとに立ちますれば、その限度においても三十三條の場合を除いたというところにはいつてきますので、二百二十條も違憲ではない。そういう見解であります。
七十三條の方は勾引状または勾留状を所特しない場合においても、現実にすでに勾引状が出ておつて、しかもたまたま持つていないという場合でありまして、逮捕状のところも、この規定は同樣になつております。もしこれがないとすれば、逮捕状はリユツクサツク一ぱい出さなければならぬということになりまして、実際上にも副わないし、しかもある意味で緊急逮捕という観念が、不当に拡がる関係にもなりますので、要するにこの場合は、すでに逮捕状が出ておる。勾引状がすでに出ておるという場合でありますから、これは三十三條に反するということは言えない。こういう見解であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/25
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026・猪俣浩三
○猪俣委員 今の見解よくわかりましたが、これにつきましては、相当の学者がやはり憲法違反だと言うておるのでありまして、憲法普及会で発行いたしております憲法大系の第十巻「新憲法と人身の自由」に木村亀二氏、これは司法関係の人はよく御存じの人でありますが、この人などが憲法違反だと言つております。最高裁判所の問題になつたときに、最高裁判所で違憲の審判でもされることがありますと困ると思つて、御質問申し上げた次第であります。
それから高等裁判所におきまして覆審制度が廃止された。その理由はいろいろ承つたのでありますが、これはたしか刑事訴訟法の改正案要綱が発表されたときにも、かような覆審制度の廃止ということはなかつたのでありまするし、また先般できました應急措置法にもなかつたことで、新たにこの法案で出てきたのでありまして、長い間のいわゆる日本における刑訴の実績を打破つた新たなる考案だと思うのでありまして、なかなか重大問題ではないかと思うのであります。殊に重罪の裁判におきまして、なお昨日も私申しましたような、いわゆる当事者の訴訟主義が、実際の弁護士の実力におきまして、なかなか十分に発揮できないような現状におきまして、一審ですべて事実審が終つてしまうということに対しましては、どうも被告にいろいろな不利なところが起るのではないかというふうに考えられるのであります。殊に聞くところによりますと、控訴あるいは上告におきまして、その理由ありとして認められておるパーセンテージが、四〇%にもなつておるということを聞くのであります。そうすると覆審制度というものは、相当実益があるのじやないか。これはまつたく高等裁判所で書面審理みたいになつてしまつたのでありますが、こういうふうにしなければならぬどうしても重大な理由があるのであるかどうか。その点について御意見を承りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/26
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027・木内曽益
○木内政府委員 お答えいたします。いろいろ御心配の点は、私もごもつともと考えるのであります。ただ從來の一審のような形で、ただちに控訴審を改正案のような改めたといたしますれば、非常に問題であると考える。ところがこの改正案においては、一審の手続が非常に丁重になりまして、とにかく一審の公判廷においてあらゆる攻撃、防禦の方法が講ぜられることになつたのであります。從つて大体証拠等は全部一審において出盡すという建前をとつておるのでありますかるから、さらにこれと同じ方法を控訴審においてするだけの必要もないと考えられるわけであります。しかして從來御質問のように控訴審におきまして、原審の判決を破つて、原審の判決を変更したというのが、相当の数になつていることは事実でありまするけれども、先ほど申しました通りに、一審の手続が非常に丁重になり、事件の関係の証拠も十分出揃い、眞相も明瞭になつて判決されるわけでありまするから、從つて從來の控訴審において原審判決を変更されたその数とは、非常な差が起きてくると思うのであります。なおまた控訴審においても、現在の大審院の仕事、いわゆる大審院の場合よりは、相当廣く扱つておるのでありまして、なお控訴いたしましても、單なる書面審理だけではなくして、なおこれは必要があると思うときには、裁判所がこれを調査することもできるという規定が設けてあり、あるいは差戻すなり自判なりできるということにもなつているのでありまして、決して御心配のような心配はないのではないか、かように考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/27
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028・猪俣浩三
○猪俣委員 最後にきのう私は三百二十一條の証拠のところですが、これについてお尋ねしたのでありまするが、本会議が始まるために中止になつたような形で、私の質問の趣旨が少し不徹底な点があつたのじやないかと思うのでありますが、三百二十一條の第二項におきまして、「被告人以外の者の公判準備若しくは公判期日における供述を録取した書面又は裁判所若しくは裁判官の檢証の結果を記載した書面は、前項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。」というふうになつておるのでありまして、この「公判準備若しくは公判期日における供述を録取した書面」というのは、いわゆる裁判官の面前で前審の公判期日における調書、それを意味するのであるかどうか、あるいは更新前のも含むのであるかという質問に対しまして、それはそれを含むものであるという御答弁があつたのでありますが、そうしますと、これを純理論的に考えますると、いわゆる裁判官の直接審理主義というものから、やはり相当遠くなるのじやないか。なおまた更新前のものでも、更新後ということになると、いわゆる口頭審理というものと遠ざかつて、結局書面審理という結果になるのじやないか。この直接審理主義と、この三百二十一條の二項がどう調和するのであるか。これは訴訟経済上、かような規定にしたのであるという御説であるが、やはり直接審理主義の立場から、この方がいいのだという御見解であるかを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/28
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029・野木新一
○野木政府委員 昨日申し上げたところは、あるいは言葉が足立なかつたかもしれませんが、三百二十一條第二項「被告人以外の者の公判準備若しくは公判期日における供述を録取した書面」これはここといたしましては、第一審の大体公判を前提としての規定でありますから、ここの適用があるのは公判更新前で、公判期日の中に起ります控訴審、上告審の方につきましては、第三百九十四條におきまして「第一審において証拠とすることができた証拠は、控訴審においても、これを証拠とすることができる。」という規定でやります。それから第四百四條で「第二編中公判に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、控訴の審判についてこれを準用する。」こういうような規定でやります。上告審も同じで、通して言つておるわけであります。
それから直接審理との関係につきましては、もちろんすべて証人が判決裁判所の面前で言つた供述のみを証拠とするというのが、一番徹底した直接審理主義になると思いますけれども、いろいろ訴訟経済の点もありますし、また裁判所が調べた証人ならば、その証人の供述も調書にとられ、その調書も中立の立場において正確にとられるわけでありますから、その書面は証拠としてとつていいじやないか、直接審理主義を必ずしもそこまで徹底するほどの必要もないじやないか、そういうような見解のもとにこれをつくつたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/29
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030・猪俣浩三
○猪俣委員 私の質問はこれで終りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/30
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031・石川金次郎
○石川委員長代理 それではこれにて散会いたします。
午前十一時五十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X02519480605/31
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