1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十四年五月七日(土曜日)
午前十一時五分開議
出席委員
委員長 淺利 三朗君
理事 鈴木 仙八君 理事 内藤 隆君
理事 松井 豊吉君 理事 前田榮之助君
理事 池田 峯雄君 理事 天野 久君
宇田 恒君 瀬戸山三男君
三池 信君 宮原幸三郎君
上林與市郎君 増田 連也君
出席政府委員
國家消防廳管理
局長 瀧野 好曉君
建設政務次官 内海 安吉君
建 設 技 官
(河川局長) 目黒 清雄君
委員外の出席者
建設事務官
(河川局監理課
長) 宮前 憲三君
專 門 員 西畑 正倫君
專 門 員 田中 義一君
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五月六日
志和、廣島間道路開設の請願(中川俊思君紹
介)(第一〇一一号)
矢島、象潟間縣道改修の請願(村上清治君紹
介)(第一〇一二号)
関東地方の水害復旧費助成に関する請願(春日
正一君外二名紹介)(第一〇三三号)
野之瀬村の災害復興費融資に関する請願(深澤
義守君紹介)(第一〇四二号)
勝沼、大月線を國道に編入並びに改修の請願(
深澤義守君紹介)(第一〇四六号)
北上川改修の請願(野原正勝君外五名紹介)(
第一〇四七号)
富士橋改築促進の請願(天野久君外二名紹介)
(第一〇四八号)
石狩、苫小牧間内陸運河開設及び運河地帶の濕
地干拓に関する請願(宇野秀次郎君外三名紹介
事)(第一〇五六号)
一箕村地内不動川砂防工事促進の請願(大和田
義榮君紹介)(第一〇七二号)
磐井川上流砂防工事促進の請願(高田弥市君外
五名紹介)(第一〇七九号)
北上川改修並びに災害復旧促進の請願(小澤佐
重喜君外五名紹介)(第一〇八〇号)
幕別、池田間の十勝川に橋梁架設の請願(高倉
定助君外一名紹介)(第一〇八二号)
川内地方の災害復旧事業促進に関する請願(石
原登君紹介)(第一一〇〇号)
斐伊川治水工事施行の請願(木村小左衞門君外
三名紹介)(第一一〇一号)
兵庫縣の庶民向賃貸住宅増築に関する請願(塩
田賀四郎君紹介)(第一一二三号)
板橋町の区画整理に関する請願(松井豊吉君紹
介)(第一一三四号)
表生駒山系砂防工事施行の請願(松永佛骨君紹
介)(第一一三九号)
遠賀川堤防補強工事費國庫補助増額の請願(田
代文久君外一名紹介)(第一一五六号)
阿武隈川築堤工事延長の請願(大内一郎君紹
介)(第一一九八号)
安倍川改修工事継続施行に関する請願(西村直
己君外一名紹介)(第一一九九号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
水防法案(内閣提出第一四〇号)
屋外廣告物法案(内閣提出第一七三号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/0
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001・淺利三朗
○淺利委員長 これより会議を開きます。
去る二日付託になりました屋外廣告物法案、内閣提出第一七三号を議題といたします。提案理由の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/1
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002・内海安吉
○内海政府委員 ただいま上程になりました屋外廣告物法案の提案理由及び要旨について御説明いたします。
現行の廣告物取締法は、明治四十四年の制定にかかり、その内容は新憲法及び地方自治法の精神に照らして改正を必要とするものでありますので、これを廃止して、これにかえて本法案を制定しようとするものであります。
第一に、現行法は、その建前といたしまして、廣告物に関する実質上の規制をすこぶる廣範囲にわたつて、包括的に行政官廳の命令に委任しており、これに基き実際上は都道府縣知事が都道府縣規則を制定して、規制を行つております。このような廣汎な行政命令えの委任を認めますことは、新憲法下におきまして、國民の権利の保障が高められました今日、はなはだその趣旨に添はぬものがありますので、屋外廣告物に関する制限態様をできるだけ法律をもつて明確にいたしたいと存ずるのであります。
第二に、現行法におきましては、廣物告の規制に関する事務は、國の事務として取扱われておるのでありまして、実質的には今も申し述べましたように、都道府縣知事が都道府縣規則によつて取締つております。すなわち、廣告物に関する実質的な取締りは、一切都道府縣知事單独の責任において行われ、都道府縣の議会は全然関與いたしておりません。なおまた美観風致の維持という点から、行政官廳において廣告物に関して統制を加えましたことは、勢い官治的色彩の濃いものとなるきらいもあります。したがつてこの際廣告物の規制に関しましては、國の事務としての取扱いをやめて、都道府縣固有の事務として、都道府縣の條例をもつて取扱わしめます方が、地方自治の本旨にかない、かつ廣告物に関する規制も適切に行われ、その効果もまたよりよく期待できると思うのであります。
第三の点といたしまして、都道府縣がその固有事務として、條例で廣告物の規制を行うことといたしましても、各都道府縣があまりに異なつた條例を制定して、取締りにはなはだしい差異懸隔を生じますと、廣告物業者はもちろん、廣告物を表示しようとする一般國民にとりましても、はなはだ迷惑な次第でありますので、都道府縣が條例を制定します場合の基準となるべき事項を、法律をもつて明瞭にすることにいたしたのであります。
第四点といたしまして、廣告物に関する規制の目的をもつぱら美観風致の維持及び公衆に対する危害の防止のみに止め、現行法のごとくに、安寧秩序または風俗を保持するために廣告物の内容にわたる制限をすることは、本法案の対象としないことにいたしました。
以上で本法案の大要を御説明申し上げた次第でありますが、何とぞ御審議の上、本法律案の成立に御協力あらんことをお願いいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/2
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003・淺利三朗
○淺利委員長 次に水防法案、内閣提出第一四〇号を議題といたします。前会に引続きまして質疑を継続いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/3
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004・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 昨日の委員会におきましてお尋ねいたしましたが、昨日の御説明では明確でなかつたと思いますので、きようは國家消防廳の方から見えておるそうでありますので、國家消防廳との関係につきまして、二、三お尋ねをいたしてみたいと思います。
昨日の委員会におきましても、この点についで質問をいたしたのでありますが、水防法案の第七條であります。都道府縣知事が水防計画を定める場合には、建設大臣のほかに國家消防廳の長官の承認を得なければならない、かようになつておるのでありますが、水防法は消防法とほとんど内容を同じくするのでありますが、消防法におきましては、國家消防廳の長官は、消防に関する指揮命令権もなければ、またもちろん消防計画に関與する権限もないのであります。ここにあらためて比較的縁が遠いと言われるところの、水防計画についての承認を與える権限を新たにこしらえようとするその趣旨、並びに目的を一應明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/4
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005・瀧野好曉
○瀧野政府委員 ただいまの御質問でございますが、この消防の体形を一應見ますと、消防組織法と消防法と現在併立しておるのであります。消防組織法において大体消防の組織体形を織り込んでおるわけであります。しこうしてそのもとに実際の行為法である消防法は、ほとんどの内容を火災の消防の面に集中いたしておりまして、内容的には水防に関しましては、若干の火災の場合の條文を援用しておる程度であるのでありまして、水防法のような法律が今回提案されましたのもその見地からであろうと思うのであります。そういたしまして、消防組織法に大体考えておりまする消防なる概念は、必ずしも火災だけではありませんで、水災、震災その他の災害を含んでおるのであります。この消防組織法におきまする國家消防廳の任務といたしまするものは、組織法の第四條及びその他の條文においてうたわれておるのでありますが、まずその中におきましても、國家消防長官におきまして、消防に関する諸報告を求める法規、準則の基準を示して、一定内容の勧告をいたすという場合があります。消防情勢の円滑なる流通をいたしまして、組織法の四條、二十二條、十九條、そういう点からも任務が明らかになつております。問題は御質問の水防法第七條の承認権でありまするが、水災は火災と異なつて、非常に廣汎な地域にわたるものを対象といたすのであります。水災は御承知のように数市町村、あるいは場合によつては数府縣にわたつて災害が起るのであります。この対策は数市町村ないし数府縣にわたつて考えられなければならない。さような場合は、当然この消防組織法の第二十四條にうたつてありまする非常事態の場合とわれわれは考えております。消防組織法の第二十四條には、明らかに、國家消防廳、國家、地方警察、都道府縣知事及び市町村が相互において、非常事態に備えてこれが防除についてあらかじめ協定し、應援する場合もあるのであります。でありまするから、かような場合に消防活動が自治主義で徹底しておることはもちろんでありますが、その場合の弊害を若干修正いたしまして、廣範囲にわたりますような非常事態に備えて、國家消防廳、あるいは国家地方警察、都道府縣知事というものまで参画いたしまして、これが自治主義の徹底による若干の弊害を補正しておると私たちは考えております。さように國家消防廳が立至つている場面が相当あるのであります。しかいたしまして水防法を貫いております大体の精神は、水防活動の実態は何かと申しますと、第二條においていろいろ考えられておりますが、目下のところでは消防機関が非常に重要性を持つておる。すなわち実際の水防活動をいたしまする消防機関に対して、消防機関は火災その他の災害に備えて活動いたしまする活動体であると同時に、水防に対しましての活動機関でありまして、消防活動に從事いたしまする消防團その他の消防機関につきましては、平素の消防活動の指導ないし國家的な企画面を担当いたしまする國家消防廳におきまして、実際の都道府縣知事の立てまする水防計画の内容を一應把握し、自治消防の実態に適合するような内容の水防計画を立てていただきたいために、國家消防長官のもとにこれが承認を建設大臣同様考慮されてしかるべきだと存ずるのであります。また水防法第七條の承認につきましては、直接市町村の運営管理を意味するものではないと思うのであります。水害のような洪水による非常な危險事態の非常事態に備えての都道府縣知事の立てまする水防計画につきまして、都道府縣知事の水防計画の内容を檢討するということでございまして、いわゆる市町村の消防につきまする運営管理、あるいは行政監督ということを意味するものとは解しないのであります。
それから最後に國家消防廳におきまして、水防計画の面に重大な関心を持ち、これの承認を求めたいのは消防組織法の第二十條にありますように、設備資材のあつせんということがございますが、現在の状態におきましてはあつせんという程度ではないのでありまして、経済安定本部でもきめておりまするように、水防活動と申しまするか、廣い意味の消防活動に從事いたしまする消防員の必要とする消防器具、資材等の指定生産資材の割当規則に基きます資材等の割当、国家的な活動そういう面を担当いたしておるのでありまして、水防計画内容に沿わしめるがごとき資材等の國家的見地からの割当配給等をやらねばならぬ面があるのでありまして、この点からも水防計画の内容を熟知檢討いたしておきたいのであります。さような理由からいたしまして、第七條の承認を消防廳長官も入れたのであります。一應御説明いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/5
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006・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 大体明白になつたのでありますが、なるほど消防組織法には水火災も入つておりまして、水災に対する点がきわめて不明確になつておつたので、今回水防法をこしらえるとい、う趣旨についてはけつこうでありますが、消防組織法の國家消防廳の仕事の内容を法文から見ますると、ほとんど火事のことだけを研究しておるように見えるのであります。ただいまの御説明のように、水災に対してきわめて重大な関心を持つておられるということは敬意を表するのであります。しからば國家消防廳においては、日本全國の水災に対して十分な認識をもつて、これに対する対策をいかにすればいいかということを研究調査しておられるかどうかということを、もう一度お尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/6
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007・瀧野好曉
○瀧野政府委員 お答えいたします。國家消防廳は発生的に見ますると、元々消防なるものが、わが國におきましては警察の所管に属しておりますことは御承知の通りであります。内務省の警保局のごく一部分で担当しておりまして、消防につきましての國家的任務責任を果す廳といたしまして、ようやく浮び上つたのは昨年三月のことでございます。申訳のようになるのでありますが、ようやく一年経過したにすぎない。もちろん災害に対しまして軽重はございませんけれども、この組織法確立実施まで國家的見地から消防の面を大きく研究し、これが指導方針を與えるという大きな任務は、まず火災の面から始まつておるのでありまして、もちろんこの水防法が今回できたのも、水害がはなはだしく國土の消耗を見ておる現状からいたしまして、必要であることは痛感されるのでありまするけれども、まず消防法なるものの重点があげて火災に置かれておるということは、先ほど申した通りでありますが、国家消防廳におきましても水害に対しまして、これが対策を、いわゆる國家消防廳として與えられた組織法その他から出て來るところの、当然の任務といたしまする面からの任務ないし責任を、これから十分果して行きたい、遺憾ながら現状におきましてはお尋ねのような水害、水防に対しまする全面的活動をいたしましておりませんことは、よく承知いたしておるところであります。一方建設省の方におきまする建設省自体としての大きな面がございまするので、それと歩調を合せて、國家消防廳におきまするところの任務といたしまするものを、これから開拓し廣げて行きたいと考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/7
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008・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 今の御答弁によりますと、水防に関して何らの知識もないし、いまだその緒についておらないということであります。私が問題にいたしたいのは、大体水に関係することは國土保全並びに民心安定、また個人の財産その他の保護のために、建設省が國土計画その他の関係から全般的な把握をいたしておるので、建設省の所管としてこの問題が起つておると私は思うのでありますが、同じ水防計画に対して、さらにまた別個の消防廳という機関において同じような研究調査をして、さらにその計画が二途に承認する場合も起り得るというのは、見解の相違があると思うのでありますが、現在わが図の行政機構の簡素化、事務の簡易化、能率化という点から考えても、さらに今回新らたに制定される法律におきまして、建設大臣だけでは日本の水防計画に対する万全なる計画を立てることができないという、そこに疑義があるのであります。國家消防廳も関係し、建設大臣も関係しなければ、日本の水害に対する、また水害の防除、予防に対する政策が確立されないほど貧困なる建設政策であるかどうかということを、私は問題にしておるのでありますが、この点は内海政府委員にお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/8
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009・内海安吉
○内海政府委員 現在の地方の市町村の財政の状態から見ましても、また國の財政から見ましても、でき得ることならば地方の自治團体を基本としたる、いわゆる地方自治制による地方議会の條例によつて協力を仰ぎたい。いわゆる國と國民とが一体となつて、そうしてこういうような不時の災害に備えるということが自然の行き方でないかと思うのであります。瀬戸山さんも御承知の通り、現在のこの財政状態においては、でき得るならば國民全体の御期待に沿いたいのでありまするけれども、しかし財政その他においていかんともすることができないというので、今日御提案になりましたところの水防法案というものは、地方の條例の規定を設けるときの一つの規範として、一面においては制定してその希望を満たしたいというのと、一面においてはやはり水防と消防とが一体となつて天災を防ぐということをねらつておるような次第でございます。この際完全に、しかも全体の御希望を盛り上げるというわけにはいかないという苦心の点はどうぞ御推量を願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/9
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010・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 私が問題にいたしておりますのは、都道府縣が立てますところの水防計画なるものが、これで最小限度に災害を防除するための計画になり得るかどうかという、その認定の力と組織が建設省だけではできないのかどうか、私はお尋ねしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/10
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011・内海安吉
○内海政府委員 そこでただいま消防長官からも言われたごとく、この機会においてはやはり内閣の管下にある消防廳と建設省が一体となつて、そうして協力態勢をとつて進めるよりほかに、今日のところ道はないように考えられております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/11
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012・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 その程度の現在の状態であるということでありますから、やむを得ないといたしておきます。、消防廳の方にお尋ねいたしたいのは、現在の消防團では水防を完全にすることはできないというお考えであるかどうか。そこで水防團を別個にこしらえた方が消防並びに水防活動に、具体的に人間の心理状態までを入れての話でありますが、活動が円滑に行き得る見込みがあるかどうかということの所信をお伺いいたしたいと思います。現在御承知の通りに、消防團に対する給與その他というものはきわめて稀薄であります。人心がかようになつておりますので、義勇奉公の精神というものがきわめて稀薄になつておる。從いまして、消防團員に昔のように率先してなる人はごく少いのであります。各市町村におきまして、消防團員を獲得するということはそう簡單にはいかないのであります。現在の給與状態にいたしましても、これは人を働かしておいて、もちろん國家公共のためでありますから、普通の利益を目的とするものとは違いますけれども、やはり一日もしくは数日空費して活動する場合においては、この生活の半面も考えてやらなければならぬということは当然であります。しかしながら現在の國家財政、特に窮迫いたしておりますところの市町村財政においては、それができないで、懇願いたして義勇奉公の精神を盛り立てておるというのが実情でありますが、その上にさらに消防團のほかに水防團員を募集いたしまして、これに團体訓練を行つてやつて行く方がいいのかどうかということと、消防團があるほかに水防團をこしらえた場合に、水害に対しては水防團の責任ではないか、また火災に対してはそれは消防團の責任である。こういうことはあつてはならないことでありますけれども、人間の通常の心理状態といたしては、さような責任轉嫁をするおそれがないとは言えない。私は直接関係いたしておりました経驗から見て、さように考えるのであります。そこで昨日も、もしこの法律が通過いたしましたあかつきにおいては、できるだけ私は水防團というものはこしらえない方針で、やつていただきたいということを要望いたしたのでありますが、この法律によりますと、消防機関によつて十分なる目的、責任を果すことができない場合には、水防團をこしらえるということになりますと、消防團に対する信頼が置けないということをはつきりそこで明示するわけです。そういうことになりますと、消防團の活動に相当の影響がありはしないかということを、あるいは私の杞憂かもしれませんが、考えておりますので、これに対しますところの消防廳の御見解をひとつ承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/12
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013・瀧野好曉
○瀧野政府委員 國家消防廳の考えを申し上げます。御見解のごとく終戰以來自治体の窮迫ないし各個人の公共精神の変化等によりまして、一時的な現象ではあろうと思いますが、消防團の中にはかつて見られた義勇奉公の氣持が薄らいでいる。從つてこれに対して強力なる指導ないし援助が必要だということは痛感いたしておるのであります。國家消防廳の立場からいたしまするならば、でき得まするならばこれは非常に理想的な申分かもしれませんけれども、市町村におきまして、できれば消防本部を置きまして、最も習熟された訓練されたる消防官と、なおそれを補う消防團の強力な活動が期待されるのでありますが、多くの市町村におきましては、そういつた給與が非常に稀薄な、まつたく公共精神によつて自治の建前からする消防任務を果すところの消防團に期待いたさざるを得ない状況であります。そこで消防團を除いて、水防には水防團でやるという一本の建前を貫くことは、現下の情勢からいたしましては困難であり、また実情に沿わないのではないかと思います。消防團をあくまでも水防活動の面に活用いたしまして、法律案にもありますように、どうしても諸般の事情から、それでもつてはまかなえないという場合に水防團の方針で行くということがいいだろうと思います。お説のように消防團の任務からいたしまして、水災の場合に期待し得るものはやはり消防團で、すなわち消防團の威力にかけて、消防團の名誉にかけてこの水防もやるという行き方で消防團というものを指導し、これを盛り立てたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/13
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014・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 大体あげ足をとるようで申訳ありませんが、ただいまの御説明を聞いておりますと、水防團を別にこしらえるということはあまり感心しないんだという御見解のようであります。私もさように実際問題として考えております。むしろ大体消防機関が水防事務を十分に処理することができないから、ほかにもう一つ機関をこしらえる——機関というよりも人を集めるということでありますが、それだけの人が集まるのでありましたならば、消防團の組織を強化いたしまして、そうしてそれこそ管轄と言いますか、権限の爭いのない、さらにまた責任の轉嫁の状態も起らない、最初から十分に納得して活動ができるところの消防團をつくつておくということが、私は一番いい方法ではないかと考えるのでありますが、建設省当局並びに消防廳関係の明確なる御答弁を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/14
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015・目黒清雄
○目黒政府委員 ただいまの御趣旨にわれわれも同感でありまして、大体消防團を中心としてそれを盛り立てて行きたいという考えでおつたのでありますが、御承知の通り、その区域が一箇町村に限定されるという場合もあり、数箇町村にまたがる場合も多いのでありまして、そういう場合は一箇町村單位の消防團では間に合わない場合が想像されるのでありまして、そういう場合には水防團という名前が生れて來ると思うのであります。大体は一箇町村單位ですべての活動が限定されるような場合でありますれば、消防團を活用したいというつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/15
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016・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 これは法律をよく見ればわかると思うのでありますが、一應明確にするためにお尋ねしておきたいと思います。今回の水防法では消防法から一切水防に関する処理を抹消すると附則の第三項の改正規定に出ておりますが、そういうことになれば、もちろん消防組織法においては水災も入つておりますので、消防團が水防に関する事務を入れるということには概念的にはなりましようけれども、一應消防團の組織活動の法律でありますところの消防法からは、一切水災に関する規定を抜いてしまう。これは消防團は水災に対しては大体原則として活動の責任がないというような観念を植えつけるおそれがあると私は考えております。そういたしますと、消防法そのものによつては、水防團は全然活動はせぬでもいいというような観念を植えつけるおそれがあるのでありますが、これについて消防組織法と水防に関することとの関係を、明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/16
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017・宮前憲三
○宮前説明員 ただいまの御質問に対しましてお答え申し上げます。今御説明申し上げましたように、全國のほとんど大部分の町村におきましては、消防團を活用いたしまして具体的な水防活動を行うということが、大部分になるのではないかと、私はかように考えております。むしろ全体の團の数から言いまして水防團の方が数は非常に少い、こういう実際の動きになると考えますので、消防組織法の中に水災の防禦ということを入れておきまして、消防團もこれによつてそういう任務を持つておるのだぞということをはつきりすると同時に、活動方法といたしましては、消防團も水害の場合には水防法によつて活動してもらう、火災の場合には消防法によつて活動してもらうという考え方をいたしておりますので、その点は具体的にそう大きな問題になりはしないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/17
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018・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 もうあまりくどくなりますのでやめますが、さつきの点は大体明確にならないところでやめようかと思いましたが國家消防廳に対する承認の問題は、私どうしても現在の状態においては承服できがたいという見解を今持つておるのです。國家消防廳は、消防におきましても大体あつせん、勧告の程度でありますから、もし水災に対して重大な関心を持つておるからというお氣持でありましたならば、さような水防計画ができたならば、これは建設大臣に全幅の信頼をしていただいて、建設大臣の承認を得たところの水防計画なるものの報告を、國家消防廳に求めるというくらいの程度で、機材のあつせんでも何でもできるのではないかと考えております。私はなぜくどく申し上げるかと言うと、行政機構の簡素化をしながら、もし完全な国家消防廳の活動を期待するということになりますれば、相当の人員をふやして、建設省におけると同じような研究をしなければ、水防計画が適切であるかどうかの判断は下されない。現在の状態においてそれはできないと言うならば、將來そういう二つの水防に関する行政機関をつくる前提になりはしないかということを私は考えておる。それでなければこの規定は意味がないのであります。そこまで來て國全体の水防計画に対する明確な判断と、それに対する資料を調査研究いたして行く。都道府縣知事が持つて來たところの水防計画が、これが現在において最良のものであるという判断をつけるためには、相当の組織と研究がいるのでありますから、それをしなければ相ならない。それをしないならばこういう法律はいらないということになりますので、われわれが平素考えておりますところの、行政の簡素化という点から考えて、これは報告程度でよろしいのではないかと考えております。もう一度念のために國家消防廳の御見解を承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/18
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019・瀧野好曉
○瀧野政府委員 御意見ごもつとものようにも思いますけれども、基本的に水防活動の実体が消防機関でやる点、接触面が同様のものを対象とする関係上、消防を建前として国家消防廳が消防組織法にもうたつておりますように、消防の科学的ないろいろの研究をいたす、試驗もいたす、あるいは諸設備、諸器具等の檢定をいたす、あるいは情報活動をいたす。消防の自治を侵さざる程度の國家的見地からのいろいろの任務を持つておるのでありまして、消防という概念から水防を切り離してごらんになれば、さような論拠になるかと思いますが、一應国家消防廳が消防の建前から一つの機関としてさような任務を持つておるのでありまして、現状がどうであるからこうであるというような論拠でもつて、將來長く続くところの法律の建前として、国家消防廳における一つの所見を都道府縣知事の樹立いたします水防計画に織り込み、反映させるということは必要であらうと思うのであります。なお建設省だけでだめなのか、建設省だけでは國家機関として弱いのかという先ほどの御見解もあつたのでありますが、決してさような意味でないと思うのであります。あに消防のみならず、水防のみならず、いわゆる自治体活動のすべての立場におきまして、國家機関の数箇のものがその計画に参画するということはしばしばあるのでありまして、純粋に一つの政府の機関が唯一の機関であるということを求める必要はないと思うのであります。第三番目に、行政の簡素化と申しますけれども、簡素化は日々の仕事においてかからなければなりませんので、建前として数箇の機関が参画するということがすなわち事務の澁滯を來すという論拠にはならないと思うのであります。ともあれいろいろな情勢からいたしまして、いろいろな理由からいたしまして、第七條の承認という面は、国家消防廳といたしましては強く主張いたしたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/19
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020・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 私の質問は終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/20
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021・淺利三朗
○淺利委員長 それでは通告の順序によりまして、次に宮原委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/21
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022・宮原幸三郎
○宮原委員 法案第七條の都道府縣の水防計画について、建設廳立案当局が、計画の内容についてある程度構想ができているなら、まずそのことを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/22
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023・目黒清雄
○目黒政府委員 その水防計画の内容といたしましては、大体都道府縣が、その管内におきまして、水防の調整、それから円滑なる実施を確保することを目的として、洪水や、水位、その他の情報の入手及び傳達を渡すための通信連絡、大きな堰堤等の流量の調節、調査、水閘等についての予定計画、予備倉庫等による資材の備蓄及び補給及びその配分の輸送の計画、その他の施設の管理、利用それから水防弱点区域に関する対策、それから連絡たとえば府縣と建設省、それから出先官廳の地方建設局、その他の機関との連絡関係、こういうものが府縣の水防計画の中に入ると思うのであります。從つてこういう主として他府縣あるいは他廳との連絡関係を主にわれわれは審議して行きたい。こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/23
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024・宮原幸三郎
○宮原委員 本年は國民の期待に反して、また建設当局の御努力もほとんどその効果がなく、河川改修、災害復旧、そういう面において、予算がまことに心細い状態に相なつて、最終決定がそういうところにおちつく心配をわれわれお互い一同いたしておるわけであります。本年もまた水害の時期が目の前に直面しておるときに、この水防法ができることは、私ども非常に喜びといたします。と同時に、この貧弱な予算をもつて今年度の水害を最小限度に食いとめるためには、單にその法規を出すというだけで、水防法が成立するだけでもつて、目の前にその災害がぶらさがつているのに、われわれは安心することができないのであります。從いまして、ただいまの御説明のような水防計画のもとに、各府縣の水防團がが活動したところで、それは水害の起つた場合のあとの祭であつて、今にして建設当局の誠意ある、しかも情熱のこもつた水害対策、予防対策を考究になる必要があるということを痛感するのであります。從いまして、それはどういう意味を持つかと申しますれば、水防の團体としての水防訓練は、この法案のうちにも書き上げられておりますけれども、一般民衆の水害に対する予備知識というものが非常に貧困でありまして、例をとりますというと、私の選挙区であります廣島の呉市のごときは、昭和二十年の九月に、水害のために二千名の生命を失つておる。あの空襲でも二千名の死傷者はでなかつたのでありますが、空襲以以上の被害を受けております。しかも今回の國費によつてこの災害予防、または河川改修の方面によつて、この水害の防止をいかなる程度に期待できるかというと、まことに心細い次第でありまして、本年度も昭和二十年当時の雨量がありました場合には、ここに何千名以上の生命を失うという危險にさらされておるのであります。これは一例にすぎません。全國至るところ同様であろうと思います。從いまして水防の訓練と申しますか、立ちのきの時期とか、水防の危險の警告とかいうようなものについて、この法案の徹底を期する意味において、建設当局はいかなるお考えをお持ちになつておりますか、この法案を審議する際に、その点についてお聞きするのであります。ただいまの計画は、大体机上の案としてはしごく重要なことが盛られておると思うのでありますけれども、その計画ができ上つたところで、災害が起つた場合においての、跡始末には多少はなるかもしれませんが、この全國的に危險にさらされておるところの人命、財産、こういう方面の予防については、まことに隔靴掻痒の感があると思います。その面についての当局の御決意を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/24
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025・目黒清雄
○目黒政府委員 水防の一番重点と考えますところは、水害を未然に予知することが一番大切であります。それに対していかなる水防活動をするかの準備態勢を整えるというのが、一番大事だと思うのであります。現在におきましては、洪水の予報ということにつきましては、大河川におきましては、中央氣象台及び安本の資源局などが寄り集まりまして、もちろんわれわれも参加いたしておりますが、大体大きな河川につきましては、ある程度洪水の予報の協議会をつくつて、ある程度の見通しをつけておりまするが、これにはいろいろ過去の資料が必要なのであります。これらの資料を蒐集いたしまして、できるだけ早くこれらの洪水波の傳播の予報をいたしたいと考えておりまするが、目下のところはまだその域に達しておりません。しかしながら大体の雨量によるところの予報は、現在におきましては中央氣象台においてこれを取扱つておりまするので、ある程度の洪水の予知はできるのであります。その場合に、われわれは水防團あるいは消防團というものを活用いたしまして、最後まで堤防を守ることに奮戰しなければならぬと思います。この消防團、水防團の活動を続ける場合におきましても、やはりこれは相当、技術を要するのであります。從つてこれらの活動を常に先から訓練いたしておきませんと、その非常時にあたつて間に合わないというようなことが起りますので、われわれとしては消防團、水防團の訓練をいたす計画を立てておるのであります。それと同時に水防には必要なる器具資材を相当量備蓄しておかなければならぬのであります。このためには、適当な箇所に水防小屋を設置し、それにそのとき必要と思われる十分なる資材と器材を備蓄しておくべく各府縣に勧告いたしておるのであります。それで水防活動が始まりまして、最後のどたん場まで活動して行きたいのでありますが、いよいよその活動が効を奏しないという段階に入りますと、最初お話のような退避の命令を出さなければならぬと思うのであります。どうしても未然に人命を失うことを避けるためには、やはりある程度の退避を安全な時期において命令を下すことが当然だと考えております。しかしながらわれわれの考えておりますのは、その退避よりもできるだけ現在の堤防を最後の一線まで水防活動によつて守りたいというのが念願でありまして、そのために先ほど申しました通りの訓練と資材の備蓄とを主眼にいたして参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/25
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026・宮原幸三郎
○宮原委員 ごく碎いて御相談するのですが、その計画の中に、消防活動が今の災害防止の土工と申しますか、そういう方面に主力を注ぐということとあわせて、一般民衆に対する立のきの際の世話まで——立のき先の予定計画とか、立のきを指示する場合の予告の方法とか、そのほか建設省あたりでお考えになれば、大体河川の危險区域というような所もある程度おわかりになつておるでありましようから、そういうようなことの予知とかいうようなことまで織り込まぜるような計画をお立てになるというお考えはありませんか。あるいは計画書の中にそれを織り込まなければ、他の訓令とか通牒というようなものを、各府縣当局が当然これを義務として、いかなる小さい河川といえども、危險ありという面においては、全國的に、組織的に一般民衆の生命財産の危險を防止するだけの組織を完成し、あの都市計画ができるところまで進ませていただいて、被害を最小限度に食い止めるというようなお考えはないか。この点をお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/26
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027・目黒清雄
○目黒政府委員 日本の河川は御承知の通りの状態で、非常に荒廃しております。そこで河川の状態におきましても、やはり相当な危險な箇所と安全なる箇所とが一河川においてもあります。それでわれわれといたしましては、直轄河川に類するものはわれわれの出先でありまする地方建設局が実体をよく把握しておりまして、予知できるまで研究が積まれております。また府縣知事の管理しておりまする中小河川以下の河川は、知事の下におります土木関係の職員が河川の危險状態をよく把握しております。從つて第一線におきましては、その出先である出張所というようなものが、この実体を握り、十分市町村等と連絡がとれるようになつておるのであります。水防計画のうちにもちろんこれらを想定いたしまして、最後の必要な計画を立てなければならぬのは当然でありますが、その場合の第一の計画立案者は、やはりどこまでも市町村長がこれに対して実体を握つております関係で、ここで立ててもらつて、われわれはこれを審議したい、承認したいという考え方でやつておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/27
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028・淺利三朗
○淺利委員長 質問がなかなか盡きないようでありますから、ここで一旦休憩いたします。
午後零時七分休憩
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〔休憩後は開会するに至らなかつた〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504149X01319490507/28
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