1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十四年五月九日(月曜日)
午後一時三十一分開議
出席委員
委員長 石原 圓吉君
理事 小高 熹郎君 理事 鈴木 善幸君
理事 玉置 信一君 理事 平井 義一君
理事 佐竹 新市君 理事 林 好次君
理事 砂間 一良君 理事 小松 勇次君
川端 佳夫君 川村善八郎君
田口長治郎君 冨永格五郎君
夏堀源三郎君 二階堂 進君
西村 久之君 松田 鐵藏君
奧村又十郎君 今井 耕君
水野彦治郎君 早川 崇君
出席國務大臣
農 林 大 臣 森 幸太郎君
出席政府委員
水産廳長官 飯山 太平君
委員外の出席者
農林事務官
(水産廳次長) 藤田 巖君
專 門 員 小安 正三君
專 門 員 齋藤 一郎君
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五月六日
水産業團体整理特別措置法案(内閣提出第一八
二号)
同月七日
漁業法案(内閣提出第一八六号)
漁業法施行法案(内閣提出第一八七号)
四月二十八日
第二水産講習所を水産単科大学に昇格の請願(
坂本實君紹介)(第六四六号)
漁港施策樹立に関する請願(石原圓吉君紹介)
(第六四七号)
法人の水産業協同組合加入に関する請願(坂本
實君紹介)(第六八三号)
同月三十日
漁船保險制度存置に関する請願(石原圓吉君紹
介)(第七〇八号)
漁業法の部改正に関する請願(大森玉木君紹
介)(第七〇九号)
五月四日
眞網代漁港修築の請願(鈴木善幸君紹介)(第
八〇七号)
漁業法の一部改正に関する請願(砂間一良君紹
介)(第八〇八号)
名島に避難港築設の請願(西村久之君紹介)(
第八八二号)
漁業権に関する請願(砂間一良君紹介)(第九
〇二号)
漁船保險制度存置に関する請願(砂間一良君紹
介)(第九〇三号)
同月六日
三石船入澗拡張工事施行並びに鳧舞船入澗築設
の請願(篠田弘作君紹介)(第一〇三号)
越賀村字社田方海域に防波堤築設の請願(石原
圓吉君紹介)(第一〇四九号)
小濱漁港拡張並びに改修の請願(奧村又十郎君
紹介)(第一〇五一号)
通山漁港修築の請願(川野芳滿君外五名紹介)
(第一〇五二号)
有珠船入澗改修の請願(篠田弘作君紹介)(第
一〇七七号)
内水面の專用漁業権撤廃に関する請願(守島伍
郎君紹介)(第一一四三号)
漁区拡張に関する請願(塩田賀四郎君紹介)(
第一一四三号)
同月七日
漁港法制定に関する請願(志田義信君紹介)(
第一二一一号)
八幡濱漁港修築工継続施行の請願(小西英雄君
紹介)(第一二一二号)
漁区拡張に関する請願(砂間一良君紹介)(第
二五五号)
漁業権制度改正に関する請願(松田鐵藏君紹
介)(第一三一三号)
安田町に漁港築設の請願(長野長廣君紹介)(
第一三八六号)
高岡町地内の香宗川口に船溜築設の請願(長野
長廣君紹介)(第一三八七号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した件
連合審査会開会に関する件
水産業團体整理特別措置法案(内閣提出第一八
二号)
漁業法案(内閣提出第一八六号)
漁業法施行法案(内閣提出第一八七号)
水産廳機構に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/0
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001・石原圓吉
○石原委員長 これより会議を開きます。
本日は去る六日本委員会に付託になりました水産業團体整理特別措置法案、内閣提出第一八二号、及び七日付託になりました漁業法案、内閣提出第一八六号、漁業法施行法案、内閣提出第一八七号、以上三案を一括議題として審議に入ります。まず政府より右三案の提案理由の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/1
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002・森幸太郎
○森國務大臣 水産業團体整理特別措置法案の提案理由について説明いたします。
第三國会において成立いたしました水産業協同組合法及び水産業協同組合法の制定に伴う水産業團体の整理等に関する法律は、本年二月十五日より施行され、現在全國各地において水産業團体の解散準備、水産業協同組合の設立の段階にあるのであります。從つて水産業團体の財産の処分、特に水産業團体より新協同組合への財産の移轉がこれから始まるのであります。この財産移轉につきましては、水産業協同組合法の制定に伴う水産業團体の整理等に関する法律中に、その方途に関して規定しているのでありますが、なおこのほかに二つの問題に関する規定が必要なのであります。第一は、水産業團体より水産業協同組合へ債務を承継させるについて、債権者保護の手続を購ずることであります。第二は水産業團体より水産業協同組合へ財産を移轉する際の財産の評價基準であります。この法律案は、この二つの問題に関する規定をその内容とするものであります。
以下その内容を御説明いたしますと、まず第一に、債権者の保護手続につきましては、水産業團体は、まづ水産業協同組合がその債務を承継するについて、債権者に公告または催告し、異議の有無を問い、異議ある債権者には債務の弁済または信託等の措置を講ずるのであります。この弁済または信託の措置をとるため必要なときは水産業團体の資産を処分するのでありますが、その譲受については、協同組合に最大限の優先権を認めております。この債権者保護の手続を完了しなければ、水産業團体は、水産業協同組合への財産移轉の認可申請ができないことになつております。
第二に水産業團体から水産業協同組合へ財産を移轉する場合、その財産の評價については、帳簿價格と時價の範囲内で水産業團体の資産処理委員会の定める價格によつて財産の引継ぎを行わせることとし、各團体の実情に應じて價格を決定し得るようにしているのであります。
以上がこの法律案の内容の大要でありますが、水産業團体より新協同組合への円滑なる財産の移轉をはかるため、何とぞ愼重御審議の上、なるべくすみやかに御協議あらんことをお願い申す次第であります。
次に漁業法案及び漁業法施行法案につきまして、その提案理由の大体を御説明申し上げたいと思います。
今日わが國の当面する最大の問題は、國内各分野における民主化を達成し、この基盤の上に生産力を発展させ、日本経済の再建と、その自立化をはかることにあります。農業とともにわが國産業構造の基盤をなす漁業にして、その生産力の発展は停滞し、その内部に多くの封建的な残滓を包藏したままにとどまりますならば、再建日本の基盤はまことに脆弱にして、日本の民主化はもちろん、経済自立もまたゆがめられざるを得ないでありませう。
政府におきましては、終戰以來漁業問題の全面的解決につき鋭意考究を進め、その一環として漁業團体制度の改革をなすべく、去る第三國会に水産業協同組合に関する法律を提出し、その成立を見、すでに本年二月十五日より施行いたしておりますが、根本的には漁業生産に関する基本的制度、すなわち漁業制度の改革を断行することが不可欠なのであります。
現行漁業制度は、明治三十四年の旧漁業法において初めて法制化され、同四十三年の全面的改正によつて確立されたものでありますが、これは旧來の慣行をそのままに固定したものであり、その後の諸般の情勢の変化、特に漁業生産力の発展にもかかわらず、基本的部分については何ら改正を見ずに今日に至つたものであります。
その内容の根本的欠陥といたしましては、個々の漁業権を中心に漁場の秩序が組み立てられているために、漁業生産力をあげるに不可欠な相当廣い水面を単位とした総合的な計画性を持ち得ないこと、また適当な調整機構を伴わず漁業権を物権としたことの弊害面として、権利者に不当に強い力が與えられ、漁場の秩序が漁民の総意によつて民主的に運用されておらぬこと等があげられるのでありまして、これが漁業生産力の発展を阻害し、また漁村の封建性の基盤をなしているのであります。從つて漁業生産力を発展させ、漁業の民主化をはかるためには、この行き詰つた漁場関係を全面的に整理し、新たに漁業生産に関する基本的制度を定め、民主的な漁業調整機構の運用によつて、水面の総合的高度利用をはかる必要があるのであります。これが漁夫制度改革を実施するため必要な漁業法案及び漁業法施行法案を提出したゆえんであります。
申すまでもなく、この一片の法律によつて、ただちに生産力が発展し、漁業の民主化が達成されるものではなく、政府といたしましては、この改革の基盤の上に立つて、各般の施策、なかんづく漁業経営の安定と、漁民生活の確保に関する施策を、総合的に推進せしめる所存でありますが、漁村の封建性の根の深さを思うとき、この改革に対する全図漁民の積極的な関心が切望され、改革の成否もまたこれにかかると思うのであります。
以下両法案の主要な内容について概略御説明申し上げます。両法案はその内容が一体をなすものでありますので一括して御説明申し上げます。
第一は沿岸漁場の全面的整理であります。この法律施行の際現に存する漁業権は、二年以内にほぼ一齊に消滅させ、同時に計画的に新漁業権の免許を行います。この漁場整理のため消滅する漁業権等には、漁業権補償委員会の計画に従いまして補償することとし、この補償の財源は免許料、許可料及び内水面における料金に求めることにいたしております。補償金の算定方法は、おおむね財産税の場合の許價方法にならつて定めております。補償金は、現下の財政金融事情にかんがみまして、政府発行の証券をもつて交付することといたしております。
第二は、新漁業権についてでありますが、漁業権は定置漁業権、区画漁業権及び共同猟業権の三種とし、その内容は從來と多少違えております。存続期間は從來より大分短縮し、期間の延長は区画漁業権以外には認めないこととし、漁場の固定化を防ぎ、事情の変化に應じて最も合理的に漁場を利用し得るようにいたしております。
漁業権の免許方法は、都道府縣知事が漁業調整委員会の意見を聞いて、水面の総合的高度利用の見地から、事前に免許の内容をきめ、法定の適格性及び優先順位に從つて免許することとし、従来のごとき行政廳の独断的決定を避け、法律の定める基準に從つて民主的に決定することといたしました。
免許する相手方は、原則として自ら漁業を営む者であり、漁業権の賃貸は禁止しております。但し、漁業権の性質上、その行使に團体的規制が必要なものは、自営でなくても一定の條件を備えた漁業協同組合またはその連合会が免許を受け、組合員の内部規制により、組合員が漁業を営み得るように措置いたしております。このような漁業権及び独占排他性の弊害の強く現われる漁業権については、一定の民主的要件を備えた地元の漁民團体に優先的に免許するようにいたしております。漁業権を物権として第三者の侵害から保護する点は從來と同様でありますが、権利者の恣意的な行使は制限し、また賃貸を禁止し、譲渡性及び担保性を制限して、単なる私権ではなくて、水面の総合的高度利用のためという公的性格を強めております。入漁権は慣行制度を廃止して、すべて設定行為によらしめることとし、漁業調整委員会の裁定によつて調整しうるようにいたしております。
第三は、指定遠洋漁業であります。これについては、許可の定数を定め、また適格性の規定に反しない限り、船舶の使用権に実質上許可が伴うように措置いたしました。そして、漁業権の場合とやり方は多少違いますが、この法律施行の際現に指定遠洋漁業の内容たる漁業の許可を受けている者については、一定期間内に再審査を行うことといたしております。
第四は、免許料及び許可料でありまして、毎年沿岸漁業に関する補償及び漁業制度改革費をまかなうため、沿岸漁業者から免許料または許可料を徴収し、沿岸漁業以外の漁業者からは沿岸漁業者とほぼひとしい負担度の許可料を徴収することにいたしております。
第五は、漁業調整委員会であります。漁場の総合的高度利用及び漁業に関する紛争の調整をはかる民主的な機構として、新たに漁業調整委員会を設けることとし、行政廳で漁業の免許等重要な行政処分をする場合には、必ずこの委員会の意見を開かねばならないこととし、さらにまた漁業調整上必要な指示をするという廣汎な権限を有して、漁業制度改革の眼目をなすものであります。これには、海区ごとに設置する、海区漁業調整委員会と、海区にまたがる特定の問題を処理するために、臨時に設けられる連合海区漁業調整委員会とがあります。また中央には漁業法の施行に関する重要事項を審議するため、中央漁業調整審議会を設置することといたしております。
第六は、土地及び土地の定着物の使用についてでありまして、海草乾場、船揚場、漁舎等漁業上の施設として必要な不可欠な土地、または土地の定着物を漁業者が使用し得るように措置いたしたのであります。
第七は、内水面漁業であります。内水面の中でも海に準ずるようなものは別といたしますが、通常の内水面については、その特殊性に即應し、増殖事業を積極的に展開するため、海面と異なる特殊規定を設けることといたしました。すなわち内水面においては、原則として、料金を納めなければ、水産動植物の採捕または養殖をすることができないこととし、政府はこの料金の収入をもつて、補償及び漁業制度改革費のうち、内水面漁業に関する分をまかなうとともに、内水面における基本的増殖事業を行うのであります。この内水面における民主的な調整機構としては、都道府懸に内水面漁場管理委員会を設置いたします。
第八は、瀬戸内海漁業についてであります。瀬戸内海における資源の維持と複雑な入会関係の調整を期するため、特に瀬戸内海漁業調整事務局を設置し、漁業法の施行に関する事務に一部を分掌させることといたしました。これに対應して連合海区漁業調整委員会も、普通は臨時のものでありますが、瀬戸内海には常設のものを設置いたすこととしております。
第九は、漁業制度改革に伴う関係法律の改正でありまして、特に水産業協同組合法関係の規定を改正いたしております。
以上が両法案の主要な内容でありますが、何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御協賛あらんことを切望する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/2
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003・石原圓吉
○石原委員長 ただいまの森農林大臣の御説明に質疑がありましたならば通告順にお許しいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/3
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004・砂間一良
○砂間委員 森農林大臣に、まず最初の水産業團体整理特別措置法の提案理由の問題に関連いたしまして、少し御質問したいと思うのであります。水産業協同組合を設立するにあたりまして、旧水産業團体の資産の保全ということが非常に問題になりまして、農林省におきましても、この保全につきましていろいろ措置をとつて参つたと思うのであります。ところが、その省令や指令が十分実行されておらない部面があるように存じまして、去る四月九日の水産委員会で、千葉縣水の問題に関連いたしまして飯山長官に御質問したのでありますが、そのときに飯山長官は、方的なことを聞いてもわからないが、もしそういうような事実があるならば、十分調査した上でしかるベく適当な手段を講ずるというふうに言明されたのであります。その後この問題につきまして、御報告もまた聞いておりませんし、どういうことになつておるかわからないのでありますが、聞くところによりますと、四月十四日の千葉縣水の解散総会におきましては、俄然この点が問題になりまして、財産目録なども実にめちやくちやである。そしてこの省令違反の事実もあるように聞いておるのでありますが、これらの点につきまして、前の飯山長官の御答弁と関連いたしまして、その他にもそういう違反の事実が全國にたくさんあるのじやないかと思うのでありますが、それらの点につきまして、どういう状態であるかということ、特に今問題になつておりまする新たに省令違反の千葉縣水の資産処分などにつきましては、農林大臣としてどういう御処置をその後とつて来たか、また今後とる方針であるかということにつきまして、まず最初に御質問したいと思うのでありますが、そういうことが十分適当に処置が講じてなければ、今ここでこういう特別措置法などをつくりましても、元の水産業国体の資産を、インチキに処分されて空つぽになつておれば、実際こんなものを今つくつても何にもならないわけであります。ですからその点について、旧水産業團体の財産保全について、これまで保全してくることにつきまして、実際どういう状態であつたか、どういう措置をとられたかということが非常に重要だと思うのであります。まずその問題からお伺いして行きたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/4
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005・石原圓吉
○石原委員長 ちよつと砂間君にお諮りいたしますが、これは詳細なる説明を飯山長官がすることになつておりますから、その上で質疑をされることが妥当のように思いまするが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/5
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006・砂間一良
○砂間委員 それならばあとにまわしてもよろしゆうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/6
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007・石原圓吉
○石原委員長 そういうことにお願いいたします。それでは藤田次長よりこの三案に対する詳細なる補足説明があります。
〔委員長退席鈴木委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/7
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008・藤田巖
○藤田説明員 ただいま農林大臣から三法案の提案理由の説明があつたのでありますが、その提案理由によりまして、大体の点は御説明が済んだと考えておりますが、なお若干の点につきまして補足いたしまして、さらに御説明をいたしたいと考えます。
まず水産業團体整理特別措置法の問題でありますが、これはさきに水産業協同組合法の制定に伴う水産業團体の整理等に関する法律といたしまして施行に相なつております。この法律に基きまして、從來の水産業團体が、その持つております財産を処分いたします場合の債権者保護の手続、及びその場合の財産の評價基準、これを明確にいたしたのであります。これによつて財産処分を公正に行い、水産業協同組合へ財産が円滑に移轉されるような処置を講じたいということを目的にするのでありまして、これは農業協同組合法におきましては、政令をもつて同様の事項が規定されておるのであります。水産業團体につきましても、当初は政令をもつてこれを規定いたす意向でございましたが、その後法律をもつて規定することに変更いたしまして提案いたしたのであります。
農業協同組合とのおもな相違点を申しますと、農業協同組合におきましては、從來の縣の農業会の清算をいたします場合の清算人は、農林漁業中央金庫が清算にあたるということになつておりました。水産業協同組合関係のこの法律におきましては、清算をいたします場合は自主清算、つまり第三者によつて清算をするのでなくて、自主的に清算をする、つまり從來の理事が資産処理委員会の決定に基きまして、それぞれ資産の処理をし、そうして清算をするという建前になつております点が相違の第一点であります。
第二点は、財産を移轉いたします場合の財産の價格は、公定値格がございますときは、その公定價格によるのでありますが、公定價格のございませんときは、帳簿價格と時價との範囲内で資産処理委員会が定める價格、こういうことにします。農業團体関係では、これが時價を下らざる範囲ということに相なつております。その点が相違をいたしております。そのほか水産業協同組合に財産が円滑に移轉いたしますために、あるいは随意契約の方法を原則にする、あるいはまた入札をいたします場合も、できるだけ水産業協同組合が入札する機会を得るように、必要な規定を設けてあるのであります。それ以外は大体農業協同組合の場合と同様と御了承いただけばよかろうと考えております。この法律はごく簡單でございますので、この程度にとどめておきたいと思います。
次に漁業法案と漁業法施行法案の御説明でございます。これは從來もたびたび委員会において御説明いたしましたが、なお新しい委員の方も相当多数おられますので、重複はいたしますけれども、ずつと初めから御説明をいたしたいと考えております。お配りをいたしましたこの漁業法案、漁業法施行法案の印刷物によつてごらんいただきたいと考えております。
現在提案をいたしましたこの漁業法案及び漁業法施行法案は、数次にわたる修正を絡まして、やつと最終的になつたのでありまして、いわば私どもの修正の段階から申しますると、四度目の修正をして出したということになるのであります。一番初めに漁業制度改革に関する第三次案についての重要修正点と書いてあります。昭和二十三年十月に発表いたしました農林事務当局案、これはいわば第三次の修正案でありますが、それをその後各方面の意向を聞きまして、さらにおもな点について修正をいたした。その修正の内容を一番初めのところに書いてあります。それから、修正を加えました結果、それが全体としてどういうような形になるかということを二十一ページ以下に漁業制度改革に関する件というところでとりまとめまして、この法案の骨子を大体簡單にまとめましたのがそこに載つておるわけであります。從つて御説明は大体この漁業制度改革に関する件、この要綱に從いまして御説明をいたしたいと考えております。農林大臣の提案理由と重複いたすところもございますが、説明の便宜上お許しいただき、たいと考えます。
まず漁業制度改革のねらいでありますが、これは初めに書いてございますように、漁業制度改革のねらいは、漁業生産力の発展と漁業の民主化、この二つの大きな目標を同時に解決して行くために、この漁業制度改革を行いたいということであります。つまり漁業生産力の発展と申しますことは、これは漁場の総合的な高度利用によりまして、個々の経営単位——漁業権なら漁業権個々の経営單位ごとの生産力が上るとか上らないとかいうことでなくて、それを含めた一定の漁場としての生産力を総合的にあげる。こういう方向に考えたいと思つております。
それから漁業の民主化という問題は、これは生産面におきまして、あるいは労働面、流通面、漁村生活、行政面において、從來ございます封建性を排除いたしまして、生産力の基礎でありますところの民主化を達成して参りたいということを考えておるのであります。よく農地改革と漁業制度改革とが比較をして論ぜられるのでありますが、農地改革と漁業改革との根本的な相違点というものをよく認識して、その方法を考えて行かなければならぬと思うのであります。農地改革と今度の漁業制度改革とは、同じような考え方のところもございますが、土地と漁業との本質的な相違からいたしまして、そのやり方も内容も、非常に違つて参る点が出ておるのであります。つまり土地というものは、個々にこれを分割することができるわけであります。そして土地を経営する者が所有する。つまり経営と所有を一体化することによつてその土地の生産性を高めて行く。そしてまた大体において、その所有者がその土地の上に肥培管理その他に極力努力することによつて、その土地の生産性は、大体隣りの土地とは一應無関係に高めることができるのでありますが、漁場というものは水面が共通をしており、また魚も回遊をいたすというような関係からして、個々のものがいかに努力をいたしましても、それは全体としての施策があまり徹底しない。つまり総合的に計画を立てて漁場を考えなければならない。個々には考えられない。これが土地と漁場との根本的な相違点であろうと思います。從つて一つ一つの問題を個々に解決して行くというやり方が、漁業権制度の場合にはとれないのであります。やはり漁場單位にこれを解決して行く。そして各漁業権の間の総合調整をはかりながら、これを解決して行くというやり方にいたさなければならないということが考えられるのであります。それからいま一点は、農地の場合におきましては、先ほど申しましたように、経営と所有とが一体化することによつて生産性を高めて行くことができます。これはまた漁業権の種類によつて差別はあるのでありますが、漁業権のある種類のものについては、経営と所有を一体化することは、必ずしも漁業にとつて適当な場合ばかりとも限らないという点が違うのであります。つまり漁業権というものには、たくさんのものに分割して與えることができない性質の漁業権があるのであります。その場合に、これを與えるときに必ず所有する個々の者に與える方がよいのか、あるいは国体的な規制を必要とするようなものについては、経営と所有を分離して考えることがまた一つの考え方であろうと思うのであります。
〔鈴木委員長代理退席、委員長着席〕
從來農林省の考え方といたしましては、むしろ権利というものは漁業者團体に保有させまして、その漁業者團体の総意に基きまして、経営は個々の適切なる人にこれを経営さすというように考えておつた時代が実はあつたのであります。お手元にお配りしてありますところの資料でごらんいただけばわかるかと考えておりますが、漁業権の所有並びに行使状況に関する資料というのがございますが、現在漁業権の総計が定置区画特別、專用全部寄せて四万四千件あるのであります。そのうち漁業会、つまり漁業者團体の持つております権利が全体の六四十二光を占めております。ことに專用漁業権は特殊な性質から九三・三%が漁業会の所有。こういうように、漁業権の保有主体は從來漁業会が大部分を占めておる。しかしながらその経営をいたします内容を見ますと、この二のBの表を見ていただく、とわかるのでありますが、自営賃貸別経営状況表を見ていただきますと、権利者自身が経営をしておりますのは全体の二四%であります。そうして人に貸しておりますのが、七六%とありますのは誤りでありまして、これは七〇%であります。つまり権利は漁業会が持つ、経営はむしろこれを貸して、個々のものが経営しておる。これが現在の状況であります。しかしながらこの状況は必ずしも不適当だということではないのであります。これがつまり漁業権が土地と違う特別の性質から参つておるわけであります。そうして、つまり漁業者團体が権利を持つておるということによつてどういう作用をしておるかと申しますと、その権利を通じまして、將來漁民が力を得る場合には、これを経営するというような体制にだんだん移して行きたいというような点が一つ。第二点は権利を通じまして経営者に対する発言権を持ちまして、それによつて他の小漁業との間の調整をやる。つまり自主的の漁業調整というものをやつておるものであります。またそれによつて沿岸の小さな漁業者の保護を権利を通じてやつておつたわけであります。なお第三点は、賃貸料というような形式によつてこれをとりましたものを、沿岸小漁民の利益に還元をいたして、あるいは沿岸漁場の維持その他の費用の財源にしておる。こういうふうな関係にあつたのであります。
そういうような考え方からいたしまして、漁業制度の改革の案も第一次案、第二次案、第三次案、第四次案と、主としていかなるものに権利を持たし、いかなるものに権利を行使させるか、この大きな問題について、案がだんだんとかわつて参つたのであります。この点が一番むずかしい点であつたのであります。結局現在提案いたしております案としておちついておりますところを申しますと、先ほど申しました一の点については、できるだけ團体的規制を必要とするという漁業につきましては、これを漁業者團体の手に託す、原則といたしましては、みずから経営いたすものに権利を與えるという原則でございますが、團体的規制の必要なものにつきましては個たにこれを所有させることが困難でございますので、国体に持たせるという意味で共同漁業権、從來の專用漁業権よりも相当内容の廣がつておりますところの部分と、狭くなつておる部分とがございますが、ある意味においてはむしろ廣がつておりますが、共同漁業権あるいは区画漁業権の一部を、みずから経営しない場合でも漁業協同組合または連合会に一定の要件を備える場合には保有させるという道を開いた。第二の点は、つまり権別を通じて経営者に対していろいろ漁民が発言をして、その利益を守つておりました点は、今度は漁業調整委員会による人を通じてこれを発言する、つまり権利を通じての発言でありましたのが、漁民がみずから選ぶ漁業調整委員会の委員を通じてこれを確保する、こういう方向に考えております。それから第三点の、賃貸料の形式で利益を還元する。これが沿岸の漁村の維持、振興のために相当使われているという点につきましてのこの問題は、遺憾ながら本法によつては達せられておりません。と申します理由は、免許料及び許可料は、大体補償財源として行政措置をまかなうことと見合になつているので、その点は本法によつては達せられておりませんが、私どもといたしましては、これは將來の問題として考究すべきではあるまいかと考えております。大体ただいま申しました点が漁業制度改革の根本的な考え方であるわけであります。以下簡單に内容を御説明申し上げたいと考えております。
まず沿岸漁場の全面的整備であります。これは先ほど申しました理由で、新しい法律施行の際、現在ございます漁業権を、大体地区別、種類別に——新法施行後二年以内においてそれぞれの地区別または漁業権ごとに政令の定める期日に一律に消滅させる。そうして同時に計画的に新しい漁業権を免許するというやり方をいたしたいと考えております。
それから漁業権及びこれを目的とする入漁権、賃借権並びに使用貸借による借主の権利を有する者に対しては、政府は補償金を交付する。すなわち一律に消滅をさせますかわりに、從來の漁業権に対しては補償金を出す。そうしてこの補償金は一定の算式によつて計算いたします。この補償の財源といたしましては、今度新しく免許いたしました漁業権の免許料、許可料、その地内水面におきまする料金に求めるという考え方でおるわけであります。
補償金の大体の予定でございますが、これも参考資料で詳しく見ていただけばけつこうだと思いますが、大体補償を要します金額が百七十億、これに対しまして二十五箇年元利均等年賦償還という方法で、利子を加算いたしますと、約三百億になるのであります。これは二十五箇年均等償還でございまするので、大体一年に十二億ずつ免許料、許可料等をとりまして、それで償還をして行くということになるのであります。これの見合といたしまして、大体免許料、許可料はどのくらいとるかと申しますと、大体漁獲高の平均三、七%程度徴収するという計算をいたしておるわけであります。
次に漁業権及び入漁権の御説明であります。漁業権の種類は、從來は專用漁業権、定置漁業権、区画漁業権、特別漁業権という四種類ございましたのが、今度は定置漁業権、区画漁業権、共同漁業権というふうになつたのであります。定置漁業権の期間は五年、区画漁業権は五年、共同漁業権は十年というふうに、從來法律では二十年以内となつておりますが、大体一期と考えて五年程度にこれを区切つておるわけであります。そして五年の後はさらに再免許をして行くわけでありますが、区画漁業権につきましては、増殖をした稚魚、稚貝の所有権その他の関係もありまして、存続期間の延長制度を認めておるわけであります。
大体定置漁業及び区画漁業については、ごらんいただけば了承願えるかと考えておりますが、共同漁業権について御説明を申し上げますと、共同漁業と申しますのは第一種から第五種までございます。第一種は根つき、いそつきの漁業、つまり海草貝類、または主務大臣の指定する定着性の水産動物、たとえば、伊勢えび、うに、なまこ、しやこ、え虫、ほや、ひとで、カシパン、あるいはまた富山縣の白えいというようなものを予定いたしております。こういう大体定着をする動物は別といたしまして、ここでは根つぎ、いそつきの海草貝類を考えておるのであります。つまり從來の專門漁業権の中の浮魚の部分ははずして、浮魚を運用漁具でとるものはこのたびの改正によつては入会漁業に考えております。これは主として運用漁具でとる漁区というものは、從來の旧幕以来の慣行から免許をいたしましたそのままが、ずつと固定をいたして来ておりますが、そ後漁船の動力化の問題、あるいは人口構成の変化というような点から、從來の実情とはそわない点も相当多数あると考えております。從つてこの浮魚の問題については、これを権利の外に置きまして、漁業調整委員会の調整によつてきめて行くという方式を採用いたしたわけであります。これは決して無制限にやらせるという意味ではございません。つまり漁業権からはずしますけれども、漁業調整委員会の指示によつて新しい漁業秩序を立てまして、それに基いてやらせて行く合理的なやらせ方をしたいというのがこの趣旨であります。
それから第二種の共同漁業であります。定置漁業は、ここに書いてございますように、身網を設置される場所の最深部が最高潮時において水深十五メートル以上のいわゆる中型及び大型の定置漁業を考えておりますので、小さなものについてはむしろ共同漁業権と考えまして、権利は漁業者團体に持たせ、その團体の内部規制によつてこれを適当に行使して行くということがより実際に即するのではないかというので、新しくこれを追加したわけであります。
第三種の共同漁業は、從來の特別漁業権あるいは專用漁業権の内容になつておるところのおふなもの、これを第三種の共同漁業といたしたのであります。
第四種の共同漁業は、寄魚漁業あるいは鳥付こぎ釣というような、從來專用漁業権の内容として保護いたしておる、また権利の内容として保護しなければ漁業の秩序が保てないというものについて、特別にこれを追加をしたわけであります。
なお最後の第五種の共同漁業は、たとえば琵琶湖とか霞ヶ浦あるいは八郎潟というような大きなところは別でございまして、そこは海の秩序と同じようなやり方でするのでありますが、それ以外の湖沼または主務大臣の指定する湖沼に準ずる水面、こういうふうなところの漁業につきましては、これはいわゆる封鎖的にやつて行けるわけでありますから、こういうふうなところにつきましては、魚類も含めまして共同漁業としてこれを認める。そうして團体規制によつてこれを行使して行こうというふうに考えておるわけであります。
それから漁業権の性格でございます。この漁業権は從來通り物権とみなして、土地に関する規定を準用するのでありますが、先ほど申し上げましたように、從來の漁業権は移轉が自由であつたのでありますが、今度は新しい調整方式に基いて、つまり適格性と優先順位という二つの原則からいたしましてだれに與えるかということをきめで來たのでありますから、かくしてきめられたものがその後自由に轉々売買されるということになりますと、意味のないことになるわけであります。その意味において、ある程度の譲渡性及び担保性に対する制限も、これはやむを得ないであろうと考えております事。ただ例外的に、一定條件のもとに担保性あるいは譲渡性を認めておるわけであります。ただこれによる金融上の支障の問題につきまして、私どもといたしましては、別途に水産金融の方途につきまして考えて行くというふうにしなければならないのじやないかと思つておるわけであります。なお漁業権を通じまして、從來慣行による漁業権があつたのでありますが、これを今回は廃止いたしまして、慣行による漁業権はこれを認めない。なおまた慣行による入漁権も認めない。入漁権にいたしましても、すべて設定行為によつてこれをやらせるというように考えておるわけであります。
次に漁業権の免許方法でありますが、都道府縣知事は、漁業の免許をいたします場合に、海区漁業調整委員会の意見を聞いて、漁業の種類、漁場の維持及び区域、漁業時期その他免許の内容たるべき事項、申請期間並びに共同漁業についてその関係地区というものをあらかじめ定める。つまり從來の権利は申請者が個々に選んでこれが出て來たわけでありますが、今度は漁場の調整計画というものが先に立ちまして、場所の方が先にきまるわけであります。そうしてその場所を一應先に決定をいたしまして、その後それに対する申請をとる。その申請に対して、多数出ます場合には、都道府縣知事は海区、漁業調整委員会の意見を聞いて、法定の適格性と優先順位に基いてこれを免許して行く、こういうやり方に相なるわけであります。從來專用漁業権は農林大臣の免許でございましたが、今回漁業権につきましては全部これを都道府縣知事にまかすことにいたしておるわけでございます。ただ問題になりますのは、適格性と優先順位の問題でございます。いかなる者が申請の適格性があり、いかなる者に優先的に許すか。この規定が非常にむずかしいのでございまして、それにつきましては、三十一ページ以下に別紙として大体そのおもな点を書いてございます。定置漁業または区画漁業の免許の適格性につきましては、漁業に関する法令の悪質違反、労働に関する法令の悪質違反、漁村民主化を阻害するもの、不適格者の実質的な経営支配、これを問題にいたしまして、このいずれかに該当する者は定置漁業または区画漁業については適格性を有しない、こういうことに考えております。ただこの字句が相当解釈上議論のわかれるところでございます。私どもといたしましては、大体だれが見ても、これはひどいと思われるものを不適格なりとして、これをしりぞける。こういうふうに運用いたして行きたいと考えております。ささいなものについて、これを一々取上げようというような趣旨ではございません。それからそのほかの漁業につきまして、たとえば区画漁業のうち、ひび建養殖業、かき養殖業、内水面における魚類養殖業または貝類養殖業を内容とするものは、当初に説明いたしましたように、この漁業晦の行使に團体的規制というものが不可欠でございますので、これはみずから漁業を営む者に免許するという原則ではございますけれども、このものにつきましては、みずから組合が自営いたしませんでも、関係漁民の三分の二以上が組合員になつておりますような協同組合または連合会には適格性を持たせたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
それから共同漁業権につきまして、も、やはり同様の考え方をいたしているわけであります。ただ権利を今度は協同組合に持たせるわけでありますが、協同組合は、御承知の通り、脱退及び加入が自由でございます。從つて協同組合には入りたくない。また入つておらない。しかしながら漁業はやらなければならぬ。こういうふうな、つまり組合に加入しない漁民はどうするが。漁業権の行使にあたつてこれをどうするかという問題につきましては、この次にありますように、これは海区漁業調整委員会が必要な指示をいたしまして、許可を必要とするものについてはその許可を受ける。そしてその免許を受けた組合との調整をはかりまして、これを行使せしめる。かような方式をとつているわけであります。
次に免許の優先順位であります。この免許の優先順位につきまして、定置漁業の免許の優先順位につきましては、この順序決定の項目といたしまして、漁業者または漁業艇事者、その次にはその申請にかかる漁業と同種の漁業に経験あること、それから当該海区において経験あること、これを順序決定の項目と考えております。これはどういうことかと申しますと、申請が出ました場合に、ます漁業者または漁業從事者であるか、しからざる者かということによつて大別をするわけであります。從つて漁業者かまたは漁業の從事者が、しからざる者に優先をするわけであります。そして残りました者のうち、その申請にかかる漁業と同種の漁業に経驗あるかないかということによつて、さらにまた区別をつける。経驗のある者は経驗のない者に優先するわけであります。さらにその経驗のあります者のうち、当該海区において経驗があるかないかという決定をする。そして当該海区に向いて、経験ある者は、しからざる者に優先するわけであります。こういうふうにだんだんと取つて行くわけであります。最後にたくさんのものが同順位者として残つた場合にはどうするか。その場合には、勘案事項というのがありまして、一から六までの條件、こういうふうな條件をいろいろ勘案いたしまして、海区漁業調整委員会がこれを決定するということになるわけであります。ただその場合に、一定の民主的な要件を備える地元の漁民團体というものは、優先的に扱われるというふうな規定を考えておるのであります。そのうち漁業協同組合が自営する、あるいはまたこれに準ずる全村的な漁民團体、こういうふうなものについては、これはその優先順位を第一に考えております。またその次に、原則として出資が平等であり、構成員の三分の二以上が当該漁業に後事し、原則として構成員の各自一個の議決権が平等であるというふうに、一定の要件を備えておりますところの漁民團体を第二順位と考えます。しかしこの点につきましては、北海道についてはこの例外的措置を考えております。北海道の定置漁業につきましては、大体労務者の大半は内地方面の出かせぎが多いわけでありまする出かせぎ労働に依存しておるような関係からして、北海道については特に生産組合の、すなわちBに書いてございます漁民團体の優先ということは、特に認めないというふうに規定がいたしてございます。それからその次の、その申請にかかる漁業に高度に依存する、いわゆる村張組合といたしましてやつておりますものについては、これは例外的に最優先の規定を設けるというふうに措置をいたしております。
それから次は区画漁業権でありますが、ひび建養殖業、かき養殖業、内水面における漁類養殖業、それから貝類養殖業、これにつきましては、三にございますように、この第一順位は適格性のある漁業協同組合または連合会、こういうふうに考えておりまするそれから眞珠養殖業につきましては、第四にございますように、これは経驗を重視して、特に当該漁業の進歩的企画の程度を問題にするというふうに考えております。それ以外の区画漁業の免許の場合には、先ほど申しました順序決定の項目にさらに住所というものを加える。つまり地元におる者、おらない者ということを要件の一つに考えております。これは特に團体優先の規定は設けないということで措置いたしております。
最後に共同漁業の免許の順位につきましては、これは大体漁業協同組合または連合会が第一順位であります。その次に但書によりまして、官公のある市、町、村、町村組合、または財産区で特別の事情でこれを免許することが適当であるというふうなものに、これを與えるという道を例外的に記載しておるわけであります。大体それが優先順位と適格性の問題であります。
それから次に指定遠洋漁業であります。以上が漁業権の整理あるいは再免許のやり方でありますが、許可事業につきましては、これは漁業権とも若干事情も違いますので、漁業権のように全面的な切りかえをこの際しようということは考えておりません。もちろん調整が必要になる漁業もあろうかと思います。これは海区漁業調整委員会等でそれぞれの調整を考えて行くということは別でありますが、全面的の切りかえをこの際一挙にやるということは考えておりません。ただ指定遠洋漁業、つまり大型捕鯨業、以西トロール漁業、以西機船底びき網漁業または遠洋かつお、まぐろ漁業等、國際性のあるところの漁場において営みますような漁業については、これは許可の定数を新しく定めまして、そうして一定区画なり一定限度をきめる。それからこの新法施行の際、現在許可を受けております者については、新法施行後一定期間内に再審査を行う。そうして法定された許可の適格性及び許可の不当な集中の関係を考慮するというふうに考えておるわけであります。
次に免許料及び許可料の問題でございますが、政府は毎年沿岸漁業の漁業権者または許可を受けた者から、先ほど申し上げましたような漁業権等の補償及び漁業制度改革に伴う費用のうち、沿岸漁業に関する分をまかなうために、免許料または許可料を徴収する。つまり補償の費用及び行政の諸費をまかなうために、免許料及び許可料を徴收する。それから遠洋漁業の許可料につきましては、これは毎年沿岸漁業者におけると同じ程度の負担割合のものを徴收する。しかし特定の場合に、この免許料、許可料につきましては、減免あるいは納付の猶予その他負担軽減のための措置を講ずる、こういうふうにいたしておるわけであります。
次に今度の漁業制度改革について、一番重要な役割を果します漁業調整委員会の問題であります。漁業調整委員会は、従来の案によりますと、中央漁業調整審議会、連合海区漁業調整委員会、海区漁業調整委員会、市町村漁業調整委員会、こういうふうな四つの種類にわかれておつたのでありますが、共同漁業権が、先ほど申し上げましたように、相当廣い範囲のものについても認められ、つまり内部的な調整がみずからできるように相なりました関係上、市町村の漁業調整委員会は特に設ける必要がなくなりましたので、これを削除いたしたわけであります。從つて海区の漁業調整委員会、それから連合海区の漁業調整委員会、中央漁業調整審議会、こういうふうな組織になるわけであります。中心になるものは海区の漁業調整委員会であります。これは漁場の総合的高度利用及び利用に関する紛争の調停をはかる民主的な機構として考えておりますが、大体各縣に、私どもの予想といたしましては三つ程度の海区にわけまして、海区漁業調整委員会を置く。特定の地域につきまして、その一海区において解決のできません問題は、これは連合海区調整委員会というものを暫定的につくりまして、特に問題の起りました場合にはこれを処置する、こういうふうな仕組みにいたしたいと考えております。但し瀬戸内海につきましては、瀬戸内海の特殊の事情からいたしまして、むしろこれは各縣にまたがる問題が多いわけでありますから、これだけは特に常設的な連合海区調整委員会を設置いたしたい、かように考えておるわけであります。この海区漁業調整委員会は、都道府縣知事が免許等漁業権に関する処分をいたしますときには、海区漁業調整委員会の意見を聞かなければならない、こういうことに相なつております。法的には諮問機関と考える。しかしながら実際問題といたしましては、海区漁業調整委員会が公正に判断をし、そうして決定をいたしまして、その決定によつて事実上都道府縣知事がこれを免許する、あるいは免許を與えないというような措置に出ることが理想だと考えております。
その構成でございますが、海区漁業調整委員会は大体十人の委員を出すのでありまして、漁民委員が七人、これは選挙制であります。それから学識経驗委員が二人、これは知事が選任する。公益代表委員一人、これも知事が選任する、こういうふうに考えておるわけであります。連合海区の漁業調整委員会は、関係各海区の漁業調整委員会の委員の中から選出された同数の委員で構成する。これを選ぶ者でありますが、原則として関係市町村の区域内に佳所または事業場を有するものであつて、一年に九十日以上漁船を使用する漁業を営み、またはこれに從事するものが大体選挙権及び被選挙権を持つておるわけであります。ただ原則として書いてございます通り、そのほかにも漁船を使用する漁業でなくても、たとえば裸もぐりでありますとか、そういうふうなものにつきましては、これはその地方たんの状況によりまして、特に選挙権を與えることができる。またあるものにつきましては、それに該当する者でありましても、その選挙権及び被選挙権の資格を限定することができるというような規定を設けておるわけであります。それでこの委員の選挙のやり方でありますが、これは農業の調整委員会とはちよつと趣をかえておるのでありまして、漁業の方面におきましては、それぞれの階層別、あるいは経営者及び從事者の区別、あるいは地区別、業種別、こういうふうなものからそれぞれこの利益代表的な意味で出すことがいいか、あるいはそういうことをしない方がいいかという点については、いろいろ問題があるわけであります。この原案におきましては、一應そういうふうな利益代表的な委員としての考え方ではなく、委員というものは公平な判定者として選ぶ。そして業種別な、あるいは專門的な問題については、專門委員会を必要に應じて開きましてこれを補つて行く、こういう建前をとつております。從つて、この業種から何人出す、あるいはこういう地区から何人出すというようなやり方には考えておらないのであります。一選挙区制であります。それからまた選挙は直接選挙の方法をとる。それから立候補制を採用いたします。
それから中央漁業調整審議会でありますが、これは漁業法の施行に関する重要事項を審議するための機関であります。漁民委員十人、学識経験委員五人、これは農林大臣の申出によつて内閣総理大臣がこれを任命するという建前をとつております。
次に土地及び土地の定着物の使用でありますが、これは漁業権がかりに移轉をいたしましても、漁業権によつて漁業を営みます場合に、どうしても使わなければならぬところの土地または土地の定着物というものを、他の者がこれを占めておる。こういうような関係上困るというような場合に、漁業権者はそれを使用し得るように処置するためにこの規定が置いてあるのであります。
以上が海面における漁業整理の内容でありますが、次に内水面におけるやり方でありまする内水面は海面とは相当事情が異つております。内水面で必要なのは積極的な増殖事業をすることが必要であります。主としてその増殖事業を行うために必要な改正を整えておるのであります。その意味からいたしまして、内水面は原則として料金を納めなければ水産物植物の採捕または養殖をすることができない、料金制度を採用いたしました。そして権利といたしましては、特に増殖を專門といたしまする区画漁業以外の漁業の免許はしない。但し湖沼においては共同漁業の免許をすることができるわけであります。原則として区画漁業以外の免許はしない。こういうことにいたしました。そうして料金収入をもつて補償費、あるいは漁業制度改革に伴う費用のうち、内水面における漁業に関する分をまかなつて行くと同時に、これを財源といたしまして内水面の基本的な増殖事業を行う。そうして内水面の漁場の管理につきましては、内水面漁場管理委員会というものを設置します。そうしてこれが水産動植物の採捕及び増殖に関する事項を処理する。そしてその他の管理に当るという考え方をとつているわけであります。
次に瀬戸内海漁業調整事務局でありますが、これは先ほどちよつと触れましたように、瀬戸内海は特殊な事情がございますので、ここの調整を行う機関といたしまして、特に瀬戸内海漁業調整事務局というものを設置いたしまして、漁業法の施行に関する事務の一部を分掌させております。つまり、各縣各縣にまたがつておりますところの漁業の許可でございますとか、あるいはまた漁業の調査その他の調整の仕事をやるというふうに考えておるわけであります。
以上が大体この漁業法及び施行法を通じましての説明でございます。
なおそれに関連をいたしまして、水産業協同組合法の改正の点に触れておきたいと考えております。水産業協同組合法におきましては、この前の國会にこれが成立をいたしました際にも、いろいろ論議があつたのでございまして、改正を要する点がたくさんあるわけであります。その点につきましては、今度の案といたしましては、制度改正と直接関連する問題はこれを取上げる。こういうことに考えております。従つて自営組合、漁業協同組合が自営をいたします場合の條件を緩和する、あるいはまた農林中金へ從來は生産組合は直結いたしておりませんでしたが、今度は中金へ生産組合を直結せしめる、あるいはまた河川の漁業組合の委員の資格を拡大して行く、もう一つは市町村の漁業会が協同組合法施行後二箇月以内に解散準備総会を開いて、いよいよ仕事がやれなくなるわけでありますが、漁業権の管理に関する部分については、依然として漁業権整理の行われるまでは、漁業会が漁業権を持つているわけでありますから、その間における管理は漁業権管理委員会というふうなものを設置いたしまして、これによつて管理するというように考えているわけであります。その程度におきまして、この漁業協同組合についての問題、それから法人加入の問題、あるいはまた連合百会の規模の制限、そういうふうないろいろの問題もあるわけであります。これにつきましては、なお協同組合法の施行の経過を見ました上で、やつて参りたいということで、現在研究をいたしているわけであります。
以上が大体漁業法及び漁業法施行法に関連いたしました御説明であります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/8
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009・石原圓吉
○石原委員長 ただいまちよつと大臣が閣議に行きましたが、じき來ると思いますから、ちよつとお待ちを願いまして、その間にお諮りをいたします。運輸委員会において審査中の造船法案は漁船に関連して本委員会にと効ましても重大関係を有する法案でありますので、運輸委員会と連合審査会を開きたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/9
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010・石原圓吉
○石原委員長 御異議なしと認めまして、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/10
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011・石原圓吉
○石原委員長 もう一つお諮りします。この際水産廳の機構改革に関する件を議題として追加いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/11
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012・石原圓吉
○石原委員長 異議なしと認めます。では水産廳の機構改革に関する件を議題といたします。これは森農林大臣より水産廳設置法の一部改正について御説明を求めたいのでありますが、便宜上水産廳次長より説明を求めたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/12
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013・藤田巖
○藤田説明員 それでは農林省設置法が施行いたされますに関連いたしまして、関係法令の整理に関する法律案の内容として、水産廳設置法の一部改正案が出ておるのであります。これについて御説明を申し上げたいと考えておるのであります。
從來この水産廳設置法は特に独立した法律でさきに出ておるわけであります。今回の農林省設置法の中にこれは一括して取入れられておらないのでありまして、別に從來ございました水産廳設置法を一部改正するというような形式で出ておるわけであります。その内容は、大体今度の行政整理の関係で水産廳がどうなつたかということでありますが、これは水産委員各位の御配慮によりまして、水産廳の機構については、行政整理にもかかわらず縮小されずに、そのまま現状が認められておるわけであります。從來の農林省部内の各局につきましても、中には整理になつたところもあるのでありますが、水産廳につきましては、そのままで、部につきましても従来通り三部制がそのまま採用されておるわけであります。水産廳では内容的には何ら行政整理の関係の影響は受けておりません。
さらにこのかわつております点を申し上げますと、第一点は「漁網綱の生産並びに」という字句が創られておるわけであります。これはどういうことかと申しますと、從來の水産廳の設置法では、漁網綱の配給に関する事項は農林省、生産に関する事項は商工省、こういうふうになつておつたのでありますが、今回これは農機具の生産と同じような考え方からいたしまして、水産業に対してこの漁網綱の生産というものは非常に密接な、離しがたい関連がございまして、特にこの漁網綱の生産もこの規定から申しますれば、農林省の所管としてやれるというふうに相なつたのであります。ただ実際問題といたしましては、漁網綱の生産については、水産廳も所管があり、通商産業廳も所管がある、こういうふうな関係に相なつております。その間の調整は別途にやつて行かなければならぬというふうには考えておる次第であります。私どもはこの機会に漁網綱の生産についての実質上の事務もでき得れば水産廳にこれを移すことにいたしたいと考えておるわけであります。
次はこの水産廳に附属機関といたしまして水産研究所、日光養魚場、水産講習所、これを置くということを明らかにしたのであります。水産研究所は水産廳設置当時からの懸案問題であります。つまり日本の水産業を今後発達さすためには、科学的な調査、研究ということを基礎にいたしまして、その基礎の上に各種の水産行政が立てられなければならない。從つて調査、研究の機構というものが行政の中心にならなければならぬという考え方からいたしまして、中央におきましては調査研究部が設置されたのであります。その機会に地方においての機構といたしまして、水産研究所というものを設置する。大体理想といたしましてはこれを北海道区、東北区、東海区、南海区、西海区、日本海区、内海区、淡水区、この八つにわけでおりまして、それぞれ水産研究所を設置する。そうして調査、研究の機構を整備して参りたいというふうに考えております。しかしながら実際問題といたしまして、これに伴う予算というものについては特に今回ふえておらないのであります。さしあたりは現在ございますところの予算を配付いたし、これを適当にあんばいいたしまして、できるだけこの仕事を漸進的に進めて行きたいというふうに考えておるわけであります。
それから日光の養魚場が加わる理由は、従来この日光の養魚場は宮内省の所管であつたのでありますが、その宮内省の所管でありましたものが一應林野局の所管に移つたのであります。今回そのうち養魚場の関係については水産に非常に重要な利害関係がございますので、特に今度は日光の養魚場を水産廳の所管に移すことに、林野局と話をいたしまして決定をいたしたわけであります。
それから水産講習所の規定がございます。水産講習所は從來第一水産講習所及び第二水産講習所とわかれておるわけでありますが、これは第一水産講習所及び東京水産大学——これは第一水産講習所が東京水産大学にかわるわけですが、暫定的にはつまり二つのものが一應併立してある期間は残るわけでありまして、これについては国立学校設置法の定めるところによつて、当分の間農林大臣の所管とする、こういうことに相なつております。それから第二水産講習所については、これはまだそこまで第一水産講習所と同じようには決定をいたしておりませんが、第二水産講習所の所管というものを一應今度の水産廳設置法の一部改正案におきまして明らかにいたしたのであります。
そのほかの附属機関といたしまして水産物規格審議会及び漁船再保険審査会、この二つは從來とも出るわけでありますが、そういうふうな委員会はこれを今回特に附属機関として法律に掲げなければならぬというような関係からいたしまして、特にこれを明定いたしました。
水産廳の設置法の一部改正の内容は以上申し上げましたような点でありまして、大体において現在の機構とは何らの変改はございません。むしろ從來よりも附加された部分が若干あるというふうなことになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/13
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014・石原圓吉
○石原委員長 本問題並びに漁船法案につきまして一應当局へ警告を発します。この問題はわれわれ水産常任委員会に重大なる関係を持つものでありまして、少くともこの法案を提出されるにあたつては、われわれにも提出のときに説明があつてしかるべきであると思うのであります。しかるに先月の二十六日に提案されたものが、今日まで、われわれは説明を受けていない。ことに共同審査をするにもその時期を失するようなことになつておるということは水産廳の確かに怠慢であると思うのであります。以後かかることのないように、嚴重に警告を発します。なおこれに対して御意見なり御説明の点があれば承ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/14
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015・森幸太郎
○森國務大臣 今の点について一應農林省の立場を申し上げておきます。御承知の通り各省設置法案は議会の運営の組織の上におきまして、内閣委員会がこれを主管することになつておるのであります。農林省としては、この水産業が重大であるので、國会においても水産委員会というものが特に設けられてあるのでありまして、一方においては農林委員会が組織されて、二つになつておるのであります。この農林省設置法案は農林委員会においては説明いたしておりません。これは議会の運営によりまして、内閣委員会に提案されて審議が進められておりますが、先般農林委員会から内閣委員会に要求されまして、合同審査をおやりになつたのであります。それで農林省がこの法案を水産委員会に提出しなかつたことが、非常に怠慢であるごとくに委員長は今お述べになりましたけれども、内閣の運営組織がさようになつておるのであります。それだから内閣委員会において提案の説明をいたし、さらに農林委員会と合同審査をやるというので、内閣委員会において再び繰返して説明いたしたような次第であります。内閣運営のそういう構造については御了解を得たいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/15
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016・西村久之
○西村(久)委員 ただいまの森農林大臣のお話はよくわかるのでありますが、事が非常に急なることを察知いたしまして、非公式ながら内閣委員長へ合同審査の要求をいたしたのであります。けれども近くこの法案を上げようということで、合同審査に日時をかしてもらわれぬのであります。内閣委員長といたしましては、水産委員会に関係のある案件であるから、水産委員会の意見を申出てもらえば、その意見を十二分に尊重して、本案の通過に努力をしたいというお氣持を持つておられることを附言いたして置きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/16
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017・冨永格五郎
○冨永委員 ただいまの農林大臣のお話はよく了承いたしました。もちろん私どもも農林省設置法案が取上げられておることも承知いたしておりますし、また自分の方にもそれぞれ法案が配付になつておることも承知いたしておるのでございます。この委員会の案にしなかつた点については、私どもも手落ちのあることは当然認めなければならないと考えておるのであります。委員長が警告を発せられた点について、あるいは大臣は不満があつたかもしれませんが、水産廳においても、こうした農林省設置法案その他造船法案等これに関連した議案については、始終氣を配つておられるはずである。常に水産廳、農林省が委員会と対立的な空氣にあることは、きわめて好ましくない行き方で、これはどうしても表裏一体であり、協調的でなければならないのであります。もちろん私どもにも手落ちのあつたことは認めますけれども、水産廳におかれましても、農林省設置法案が出れば、それに関連した機構の改革もあるであろうし、それによりよくもなり悪くもなるということも、当然考えなければならぬことでございますので、將來この点に対しては十二分な御留意を願いたいことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/17
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018・森幸太郎
○森國務大臣 これは水産廳ということでなしに、農林省として、理論がどうであろうと内閣委員会にこれを提案するのが正当であつて、ほかに理由は一應ありましても、專門的にこういう水産委員会があり、農林委員会があるのでありますから、本案の内容を説明することは当然であります。その手落ちがあつたことはわれわれ承認いたします。今後は委員会と農林省と密接な関係をもつて、円満なる法の制定にお骨折りを願いたいのでありますが、今委員長から、いかにも農林省が無責任であり、冷淡であり、はなはだそのなすべきことをなさないごとく警告を発するというお話でありましたが、警告ということは簡單に取扱つてもらつては困ります。警告を発するということは、政府が行政をやる上において非常に怠慢であるという重大な問題でありますから、私としてはそう簡單に聞き逃すわけに行かぬのであります。むしろそれならば、水産委員長はなぜ内閣委員会に合同審査を御要求にならなかつたかと言い返したいので、あります。そういうことを双方で言うわけではありませんが、われわれの手の足りなかつたことも承認して、今後改めますから、水産委員長として合同審査を内閣委員会に御要求にならなかつたこともいけないと思うので、警告という言葉は改めていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/18
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019・鈴木善幸
○鈴木(善)委員 委員長の御発言に関遇して、一言農林大臣にお伺いしたいのであります。造船法の点について、委員長から御発言があつたのでありますが、この造船法は閣議においてすでに決定を見て上程されておるようでありますが、その後私どもがこの造船法を檢討いたしましたところ、漁船の建造の上からきわめてむりな、実情に即しない点が多々あるのでありまして、それに関しまして水産廳の説明を求めましたところ、水産廳と運輸省の船舶局との間において、完全なる意見の一致をいまだ見ていない。しかもはなはだしきにいたりましては、運輸当局から何ら事前に相談を受けていない。こういうことが明らかに相なつたのであります。このように事務当局の意見がいまだ完全に一致されていないものが、閣議において決定を見たということは、きわめて意外に存ずるのであります。農林大臣は、この造船法は漁船建造の面から見て、あれでさしつかえないという御裁断のもとに閣議で決定をされたものであるかどうか。この点をお伺いしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/19
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020・森幸太郎
○森國務大臣 造船法につきましては、その所管について、かつて運輸省と逓信省と交渉いたしたことをわれわれは記憶いたしておるのであります。造船法は四月の幾日でありましたか閣議の了解を得たことになつておりますが、閣議で決定する場合は、各省関係が事務的にこれを折衝するのであります。百何十件というたくさんな法律でありますので、こまかい点につきましてはすべて事務次官会議で処理いたしまして、大体各省の了解を求めて、これが法案として成立するのであります。漁船というものは。資材等の関係、あるいは船の危險であるとか保全という意味から、これは運輸省が專門的に考えるのでありますけれども、特別なる使命を持つておる漁船の技術の点は、これは水産関係の技術者、いわゆる農林省がこれを処質すべきものと考えるのであります。この法案の閣議法定につきましては、そごまで十分なる審議が盡されておりませなかつたために、先般來運輸大臣とも交渉いたしておるのでありますが、運輸大臣もこれをぜひとも自分の方にとつて來なければならぬというようなことは、確信をもつて言えないのでありまして、水産行政の上から、これはどうしても農林省と共管にすべきものであるというならば、事務上別にさしつかえない、こういう考えを持つているのであります。実はほんとうの話が、非常にたくさんの法案が一しよに閣議に出ましたために、そういう内容のこまかい点まで檢討を加えていなかつたのであります。これは実際の内輪話を申し上げるのでありますが……。そういうふうに実際共管にした方が行政の上でよいというならば、あえて事務上こだわつてやらなければならぬという問題でもないのでありますから、修正等について事務当局においてさらに交渉して、実際に適合するように直してよい、こういう考えを持つているのでありますが、一應法案として出しましてから、この水産委員会の御審議を経まして、運輸委員会等にも御交渉を願うというふうに議会の立場から適当な御処置をおとりくださることをお願いいたしたい、かように実は考えているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/20
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021・砂間一良
○砂間委員 先ほど藤田説明員より、各省設置法に関連して、水産廳の機構は大体現状のままだというふうな御説明があつたのでありますが、しかし機構はかわらなくても、定員が非常に縮小されるとか、何とかいうことになりますと、やはりこの運営の上におきまして、いろいろ実質的にかわつて來る可能性があると思うのであります。この定員法の方はいつごろ御提出になるお見込みか。もしこの提出の時期が遅れるようでありますならば、水産廳関係ではどのくらい減らす見込みか、あるいはふやす見込みかというふうな点につきまして、ちよつとお伺いしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/21
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022・森幸太郎
○森國務大臣 定員につきましては、今行政管理職におきましてとりまとめをやつておるのでありますが、定員法に附随いたしまして、これらの行政整理に対する給與金その他のいろいろの関係事項がありますので、今それを整理いたしておるのであります。今日にもそれをとりまとめて、閣議の決定をいたしたいという順序になつておつたのでありますが、きのうは日曜日の関係で、先方の関係が十分にまとまつておりませんので、一両日延びるかとも存じますが、最も近いうちに提案されることと存じます。なお定員につきましては、本省において三割、外部において二割という、この行政整理の方針によつて整理をいたすことに各省ともなつたのでありますが、農林省におきましては、外局や出先関係は特別忙しい仕事もいたしておる関係上、その通りに行きますればよほど困つて来るような点もあろうと思いますので、できるだけ出先関係に対しては、仕事を簡素化するということと、そうして人員をなるべく整理しないという方針をもつて行くのでありますが、本省関係においては三割の原則に基いて整理をいたしたい、かように考えております。ところが今度の人員の定員をきめますについて、本省と、水産廳、林野廳、食糧廳、この三つの外局が別々に人数がきめられるのであります。從來でありますと、農林省一括して、ここは忙しい所、あるいはひまな所というふうに勘案いたしまして、プール的にいろいろの融通もついたわけでありますが、今回の定員組織法は、水産廳という単独の独立した定員が定められるのであります。それでありますので、この足らぬところを食糧廳から持つて來るわけにも参らず、非常に仕事の上においてきゆうくつが感じられるのではないかと考えておるわけであります。一般行政と同じように、三割という程度で参つたのでありますが、農林省平均いたしまして現在の八一%ぐらいな定員になりますので、平均しますと、欠員等もありました関係上、二割少し足らずか、そこらの定員が整理されるということになるのではないかと存じておりますが、こまかしい数字を今持つておりません。大体そのくらいな程度であると御承知を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/22
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023・玉置信一
○玉置委員 私先ほど大臣の御説明になりました漁業法の中について、二分間ばかりの時間でお伺いしたいと思います。
この漁業法の制定は、御説明にありましたように、漁業生産力を上げるに不可欠な、相当廣い水面を範囲とした総合的な計画のもとに漁業生産力を上げる。そのためには、明治四十三年にようやく改正されたといたしましても、実に古い漁業法のもとにやつておりますので、当然今日は一大改革の必要に迫られておるわけであります。この点について、私は過去の封建的な漁業制度を改めて、そうして大衆漁民が生きるべく、しかもまた自立経済を打ち立てる基礎となるべく、この漁業生産の面に漁民を働かせようというこの法案に対しまして、私は双手をあげて賛成するものでありますが、ただ一つ疑問とするところは、農地制度改革とまつたく根本的に相違している点は、農地改革におきましては、北海道、あるいは内地と別々に違いますが、一戸当り一定の面積を残したものを開放させておりますが、この漁業権におきましては、全部を一應政府で買上げて、そして政府の証券によりまして補償金を交付するということになつております。こういう結果から考えますと、どうも私有権を否定するような形式を一應とられておる。言うまでもなく、漁業権は民法上與えられた権利を持つておるわけでありますが、これに対して、こういうような方式でやられることは、農林大臣におかれましては妥当なりとのお考えを持つておられるかどうかということが一点でございます。
それから次は、漁業協同組合を実施するときにおきまして、ごらんの通りこういうポスターを出しておる。これは非常にイデオロギー的にこうしたものをつくつたのではないかと思われるような、実に極端なポスターを出して、漁民にその方向を指示しておる。これがために中小漁業者の間には非常な摩擦を起しておる。しかも中小漁業者の挑発を醸成せしめて、非常な感情問題までも起きておるという状態であります。この漁業法を施行する場合におきましても、なおかつこうした極端なことまでもして指導されるお考えであるかどうか。さらにこれは大臣の責任ではないのですがう当時こういうものを出して指示しておられるのでありますが、これは水産廳が出しておるのですか。水産廳長官は御存じなのかどうか。今後漁村の民主化をはかろうとする目標として、この漁業法が今制定されるのでありますが、これに対する御方針、御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/23
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024・森幸太郎
○森國務大臣 漁業権の問題は農地改革と同じような立場で考えさせられるのでありまして、今まで農業者が、自分が農業をするのに耕地を持つていないという立場に置かれてありましたことが、非常に農民の独立自主性を失わせて、ただ隷属的な氣持になるという考え方で、耕作する者は農地を持つて、耕作せざる者は農地を持てない、こういう氣持も加わつたわけでありますが、要するに今までのような大地主、小作者という関係をなくして、そうして眞に農民が自分の土地を耕作するのだという氣持で食糧増産に努力し、国力を増進するという方針に、農地改良は置かれておつたのでありますが、今回の漁業法の改正につきましても、地方によつていろいろ事情もありますが、今までからは形もかわつておりますが、漁業者が自分で漁業権を持たない、ただ資本家のために働かされているというような漁業であつては、働く漁民としましては非常に不しあわせである。それで自分の漁業権を持ち、そうして自分の持つた漁業権によつて漁業を営んで行く。しかも自分だけの單独的、個人的な頭でなしに、協同の力によつて助け合つてこの漁業を営んで行くという方向に、今回の漁業法の改正の重点が置かれておるのであります。決してこれを思想的に、従來の旧弊を打破して行こうというような考え方でなしに、今までの組織が漁業しない人が大きい漁業権を持つて、そうして搾取しておるというような事実も各地に現われておつたのでありますから、そういうようなことでは漁業者として幸福な生活ができない、こういう氣持で、漁業を営む者が漁業権を持ち、しかもその漁業は自分個人でなしに、協同の力によつて漁業を営む、こういうような組織にかえて行きたいというのでありまして、決してそういうある思想によつてこれを行うというようなことは毛頭ないのであります。なお今のポスターは水産廳と書いてございますから、水産廳の責任を持つて出したのでありましようが、決して行き過ぎた考え方で現状を打破して行くという氣持でなしに、ほんとうの漁業というものはみんながカを合せて、そうして從來のようなやり方でなしに、漁業者が食分の漁業権を持ち、あらゆる力を働かして、漁業協同の方向に持つて行くというように指導して行かなければならぬ。かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/24
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025・砂間一良
○砂間委員 ちよつと申し上げますが、一律に二割とか三割とかと言われても、そういうやり方はまずいと思う。水産廳の場合、むだないらぬところは減らしても切つてもいいと思うが、実際のいろいろな内容を見まわしますと、そう不要な課はない。特に今度新しい漁業法でも制定されますと、その部面からいたしましても、相当仕事がふえて來る場面もあると思うのです。そういう点などについても、やはり定員の考慮が必要だと思うのですが、現在ある部課にいたしましても、たとえば調査研究部なども非常に重要な部門でありますけれども、部員が非常に少ない。そのために水産関係のいろいろな重要な科学的調査や統計研究というものができておらぬ。そのために漁業保險なども委員会では始終問題になつておるのでありますが、その立案の材料を請求すれば、ないというような形でありまして、こういう部なんか拡充する必要があると思うのです。特に労働関係の方面におきましては、係を二、三人置いてあるくらいでありまして、何ら見るべき仕事をやつておらぬ。水産業の発展とか何とかいろいろ申されましたけれども、やはりその基礎は、実際に働いておる人間の問題でありまして、しかもその漁業に從事しておる勤労者が、非常に遅れた封建的な労働條件のもとにあるのです。こういう面ではもつと水産廳あたりが労働組合の組織なり、あるいは労働法規の啓蒙、啓発等について、積極的に指導する場面がたくさんあると思いますが、今の水産廳の機構及び人員では、そういう点はできないというような状態だと思います。從つてこういう労働の係なんかは、むしろ一つの労働課くらいに拡張いたしまして、積極的にもつと仕事をやつて行く必要があると思います。それを全体の定員の中から一律に二割減らすとか、三割減らすとかいうのは、まことに機械的なやり方であつて、そんなことでは日本の水産業全体の発展ということはとうていできないと思います。そういう点を大臣は十分考慮されまして、今度の定員法なんかを提出されるにあたつても、むだないらぬところはいくら切つてもいいと思いますが、そういう必要なところはむしろ積極的に充実し、拡張して行くという考慮をお願いいたしたいと思います。ことに漁業法関係の課なんかは、今どこの課で扱つておるかしりませんけれども、相当人員なんかをふやしまして、充実して行くような予算的措置を今から講じておかなければ、もしこの法案が通過したときに、この法律の実施、運営ということは非常に阻害されると思います。その点を希望しておくわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/25
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026・石原圓吉
○石原委員長 ちよつと協議をしますから速記をとめて……。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/26
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027・石原圓吉
○石原委員長 速記を始めて下さい。
それでは本日はこれをもつて散会いたします。
午後三時三十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01019490509/27
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