1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十四年九月五日(月曜日)
午前十時三十分開議
出席委員
委員長 石原 圓吉君
理事 小高 熹郎君 理事 鈴木 善幸君
理事 玉置 信一君 理事 松田 鐵藏君
理事 林 好次君 理事 砂間 一良君
川村善八郎君 田口長治郎君
冨永格五郎君 夏堀源三郎君
長谷川四郎君 奧村又十郎君
委員外の出席者
水産廳長官 飯山 太平君
農林事務官 松元 威雄君
專 門 員 小安 正三君
專 門 員 齋藤 一郎君
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五月三十一日
漁業法案
漁業法施行法案
水産物生産増強に関する件
の閉会中審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
派遣委員の調査報告に関する件
漁業法案
漁業法施行法案
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02119490905/0
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001・石原圓吉
○石原委員長 これより会議を開きます。
本日は電報等でお呼び立てをいたしまして、御繁多の折から御予定もあつたことと思いまするので、まことに恐縮であります。実は第五國会で継続審議を決定されました漁業法案、この漁業法案の現地懇談会につきましては、御承知のように四國、九州、瀬戸内海班を、この班長は玉木信一君を煩わしまして六月十八日より二十七日まで十日間、日本海班は班長川村善八郎君を煩わしまして、六月十七日より二十五日まで九日間、太平洋班は班長冨永格五郎君を煩わしまして、七月一日より七月八日まで八日間、北海道班、班長鈴木善幸君を煩わしまして、七月二十日より八月五日まで十七日間、各班とも終了をいたした次第であります。なおこのほかに地方的の要求といたしまして、瀬戸内海より紀伊水道を除外せよという要求に対する現地調査の件、それから佐渡の漁業状態を現地調査せよという要望に関する件、それから靜岡縣の靜浦一帶を、狩野川の排水のために漁場が全滅するというおそれがあるから、これを現地調査をせよというこの三つの要求があるのでありまして、これは責任上一應現地調査をする必要があると認めておるのでありまするが、これだけは未了になつておる次第であります。
以上四つの班長よりそれぞれ調査の報告があるはずでありまするが、この調査班は各班とも一班三人、十日間合計百二十日間と限定されたのでありまして、実際は計算しますると百六十八日余を費しておるのであります。またこれはほんとうの現地調査をした日数でありまして、そのほかに郷里より現地までの往復等は通算されておらぬのであります。これらを計算しますると、予定のほとんど倍に近い日数を要したのでありまして、このことはこの問題がいかに重大であるかということを委員諸君がお認めになり、かつその責任の重大さを感じられて、そうして非常な物心両面の犠牲を拂われて、ここに調査が一應完了したことに対して、委員長として深く謝意を表する次第であります。
これより各班長より御報告を願いたいと存じますが、それに先立ちまして、本日電報等でお招きするのやむなきことになりましたのは、実はこの案は第四次修正案そのもので、とうていそのまま通過するということは、地方漁民全般の要望と合致せない点が多々あるのでありまして、そのために相当愼重なる審議を要すると思うのであります。御承知のように國会も第六國会は十月下旬に召集されるようでありまするが、それまでの間に愼重審議を要するのでありまして、もう少しく早く御参集を願いたく存じたのでありますが、この國会の休会中の委員会は、まず理事会を開いて、そうしてその日程をきめるということに議院運営委員会で決定をしておりましたので、そのために先に理事会を開く必要がありまして、去る本月二日に理事会を開きまして、かく決定いたした次第であります。そうしてその結果は本日より十日まで連日時間励行で継続審議をするということに理事会は決定いたした次第であります。以上御報告を申し上げておきます。順序として四國、九州、瀬戸内海班の班長にお願いしたいのでありますが、まだ御出席がありませんから、日本海班長川村善八郎君にお願いいたしまする発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02119490905/1
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002・川村善八郎
○川村委員 御報告申し上げます。私は現在衆議院水産常任委員会において継続審議となつております漁業法案並びに同施行法案の國政調査のため、日本海班の班長として、日本海沿岸各府縣の中心地において懇談会を開催、または現地調査により、十分調査して参りましたので、その状況の大要を御報告申し上げます。
調査期間は去る本年六月十七日より同月二十五日まで九日間、ほかに旅行日四日間、計十二日間で、調査区域は青森縣より山口縣まで一府十三縣、参加班員は川村、小高、奥村の三水産常任委員、水産廳より松任谷漁政部長、佐藤事務官、松本事務官、衆議院上田調査員等で、青森、秋田、山形の三縣は秋田市において、新潟、長野の二縣は新潟市において、福井、京都、滋賀、兵庫の一府三縣は京都市において、富山、石川の二縣は富山市において、鳥取、島根、山口の三縣は松江市において懇談会を開催し、また直接現地調査等も行い、十分調査したのであります。
懇談会に際しましては班長より本懇談会開催の趣旨並びに順序等を説明し、承いで水産廳側より両法案に対する内容につきその大要を説明をなさしめ、漁民一般等に質疑感答を許し、右終了後、特に班長として左の事項を嚴守していただくように十分注意を願い、一般漁民より両法案に対する意見を十分公述していただき、これを聞くことにいたしたのであります。項は左の通りであります。一、出席者中当方の委員または説明員等は両法案に対し自己個人の意見は絶対に差加えないこと。二、官公吏の意見の公述はなるべく遠慮し、自由討議の場合に述べられたいこと。三、公述者は意見の公述をする場合は結論を先にし、理由を後にすること。四、公述者は相互間において討論または議論にわたらないこと。五、一回の意見の公述時間はなるべく十分以内とし、多数の漁民より多くの意見を述べられるようにせられたいこと。六、同一意見でも、または全然反対の意見でも、遠慮なく述べるようにせられたいこと。七、両法案の内容にない漁業問題にて、同法案の内容に入れたい希望意見は忌憚なく述べられたいこと。八、発言者は住所、氏名漁業種別名、所属團体名を申し出ること。九、発言者の多数ある場合は各縣交互に発言を許すことにすること。右趣旨をもつて公述者が意見の発表を終りますれば、班長は必ず意見の要旨を一回ごとに復唱し、記録したのであります。また時間に余裕のある場合は、第五回國会における水産常任委員会の経過及び結果を小高、奥村両委員より報告せしめ、一般水産問題等の自由討議をなさしめ、毎会議の所要時間は午前十時より午後五時まで、その間約一時間休憩し、大体正味六時間にわたつて熱心に会議をし、十分その意を議したのであります。以下懇談会開催地秋田市、新潟市、富山市、京都市、松江市の順に各府縣別の会議における漁民の意見の公述の大要と、現地調査の状況等を申し上げます。
秋田市における懇談会、開催日昭和二十四年六月十七日、場所秋田商工クラブ、参加縣、青森、秋田、山形の三縣、参加人員七十三名。
青森縣の意見の大要を申し上げますと、一、定置漁業権等は水産業協同組合法第十七條の制限を削除し、全面的に漁業協同組合に與え、漁業調整委員会において漁業の経驗者を選び、漁業権を行使せしめよ。二、漁業調整委員の数を十名とせず、地方の実情に即し彈力性を持たせ、学識経驗者及び公益代表者中の委員は知事の推薦した者より漁民は選挙することにせよ。三、たら底建網は定置漁業権とせよ。四漁業権の個人独占を禁止せよ等であります。
秋田縣の意見の大要を申し上げますと、一、定置漁業権等は漁業協同組合に與えよ。二、漁業調整費行政費等は國庫負担として免許料及び許可料等にて徴收するな。三、共同漁業権を拡大し、磯つき魚を全部入れよ。四、内水面にも共同漁業権を設けて漁業協同組合に與えよ。五、漁業法案に漁業金融の措置を織り込まれたい。七、漁業調整委員会については青森縣と同一にせよ。八、定置漁業権の保護区域を設定せよ。九、入漁は地方の実情に即し慣行を認めよ等であります。
山形縣の意見の大要を申し上げますと、一、漁業権の免許期間は少くとも十箇年とし、更新を認めよ。二、漁業権に保護区域及び繁植保護期間を設けよ。三、共同漁業権について秋田縣同樣にせよ。四、漁業権は全部漁業協同組合に與えよ。以下青森縣と同樣であります。五、漁民の定義を漁業種別ごとに定めよ。六、漁業権の補償料は現金で短期間に支拂い、漁業資金に充てよ。以上であります。
新潟市における懇談会、開催日昭和二十四年六月十九日、場所、新潟水産業会二階、参加縣新潟、長野の二縣、参加人員五十一人。
新潟縣の意見の大要を申し上げますと、一、河川にも区画漁業権を認めよ。二、漁業権は漁業協同組合一本に與えよと言う者、また漁業協同組合、生産組合、個人の順に與えよと言う者、また大規模の定置漁業を除き、漁業協同組合に與えよと言う三つの意見が出ました。三、たら場、漁場を一般漁民に開放せよと言う者と、開放するなと言う者と漁業協同組合に與え、漁業権の行使は経驗を有する漁民に與えよと言う三つの意見が出たのであります。四、漁業権の免許料、許可料については大体秋田縣と同樣であります。五、稚魚の濫獲を防止するよう法文化せい等が新潟縣の意見であります。
長野縣の意見の大要を申し上げますと、一、河川にも共同漁業権及び区画漁業権を認めよ。二、河川及び湖沼漁業と河川法、電気事業法の調整をはかれ。三、漁業調整費及び行政費及び漁業権の免許料、許可料については秋田縣同樣の意見であります。四、河川漁業の増産と濫獲防止のため、協同組合役職員及び市町村吏員中より、監督官を置き、取締りなさしめる等が新潟縣の意見であります。
富山市における懇談会開催日、昭和二十四年六月二十一日、開催場所富山縣廳、参加縣富山、石川の二縣、参加人員八十二名。
富山縣の意見の大要を申し上げますと、一として漁業法案は現在の漁業に沿わないから、これを返上し、全面的につくりかえてもらいたい。しかして法案をつくりかえる場合は左の各項を織り込まれたい。イ、農地法同樣自己の権利をもつて自営している者には漁業権を與えよ、すなわち自営者を第一順位とせよ。ロ、國家補償による買上げは賃貸及び休業の漁業権のみにすること。ハ、漁業法はむずかし過ぎるから、もつと簡明にして要を記せ。二、漁業法案には漁業権を総合的に織り込むべきである。ホ、十五メートル以浅といえども、重要なものは定置漁業とせよ。二、加入脱退自由な、しかも経営能力を有せざる漁業協同組合に漁業権を與うべきでない。しかも大規模の定置漁業のごときは非常に危險性を有するからである。三、漁民の定義、漁業調整委員会、免許及び許可料、漁業権の免許期間等の細部問題にづいての意見は、各縣と大同小異であつて、富山縣の大部分の意見は、定置漁業権は自営者に與うべきであるという意見は非常に強かつたのであります。
石川縣の意見の大要を申し上げますと、一、漁業権の免許並びに許可の優先順位の制度を廃し、適格性と非適格性のみとし、漁業調整委員会を信頼し、漁業権の免許並びに許可し得るよう民主化を徹底せしめよ。二、漁業権の免許、許可等を、加入脱退自由な、しかも資本の裏づけもない漁業協同組合、漁業生産組合等に第一優先とすることには絶対反対である。三、延縄漁業、流網漁業その他全部の漁業権は漁業法案に織り込むべきである。四、漁業調整委員には府縣会議員は除外されておるが、漁業者であるならばこれを認めよ。五、漁業從業者の賃金は歩合制度にするよう法案に折込め。六、漁業の災害補償制度を法案、に入れよ。七、漁業調整委員会、漁業権、の免許料、許可料、漁業権の調整費及び行政費等の問題は各縣と大同小異であります。
京都市における懇談会。開催日昭和二十四年六月二十三日、場所京都府中央市場会議室、参加縣京都府、福井、滋賀、兵庫の各縣、参加人員六十五名。
京都府の意見の大要を申し上げますと、一、河川漁業の繁殖保護を法文化せ。二、発電所、堰堤の被害を國家補償せよ。三、漁業保険制度、漁業権は、漁業協同組合第一優先等の問題を強調したのであります。
福井縣の意見の大要を申し上げますと、一、免許漁業の適格性中、惡質違反云々とあるが、ある程度年限の緩和、でき得れば違反の内容及び程度を明記せられたい。二、河川にも共同漁業権、区画漁業権を設けよ。漁業調整委員会の権限の拡大、漁業権の存続期間を十箇年ないし二十箇年にせよ。共同漁業権の補償も免許料等を排せ。漁業権は漁業協同組合に與えよと強調した点は、各縣と同樣であります。
滋賀縣の意見の大要を申し上げますと、一、全國の内水面二百四十万町歩に放流事業を國庫でやれ。二、漁業調整委員のうち、公益代表を廃せ。三、漁業権はすべて漁業協同組合に最優先。免許科、許可科の軽減及び行政費、調整費の國庫負担、内水面の共同漁業権の設定等強調されたるは各縣と同樣であります。
兵庫縣の意見の大要を申し述べますと、一、施行法第二十一條の漁業権管理委員会は不要である。二、第六十五條第一項の漁業調整に関し政省令を発する場合は中央漁業審議会の意見を聞き、民間の声を反映せしめよ。三、漁業調整委員会は漁業協同組合の正組合員のみで選挙させよ。四、漁業権はすべて漁業協同組合優先に、河川の繁殖保護及び漁業調整、漁業行政の國庫負担等の問題を強調したことは各縣同樣であります。
松江市における懇談会。開催日昭和二十四年六月二十五日、場所島根縣会議事堂、参加縣、島根、鳥取、山口の三縣、参加人員五十九人。
島根縣の意見大要を申し述べますと、一、定置漁業権の更新期を二十箇年にせよ。二、漁業権はすべて漁業法に織り込み、漁業協同組合優先に、河川漁業を共同漁業権に、漁業の調整費及び行政費は國庫負担に、漁業権の補償金は現金で支拂え、あるいは漁業権のあり方等について、強調したことは各縣と同じであります。
鳥取縣の意見は、島根縣の意見と大要は大体同樣でありますから、これを省略いたします。
山口縣の意見の大要を申し述べますと、一、第十六條第十項第一号の「七割以上」を「五割以上」に、同條第六項の「漁民七人以上」とあるを「地元地区内の漁業協同組合に加入したる漁民七人以上」と改め、同條六項三号を削除せられたい。二、補償金は全廃、免許料、許可料も徴收するな。三、漁業権はすべて漁業協同組合に與え、賃貸料をとることを認めよ。四、其の他漁業法案に関する意見は京都市及び松江市における各縣の意見と大同小異であるからこれを省略いたします。
以上は各縣における懇談会の意見の大要でありますが、さらに現地において実際の漁業者にその意見をただしたるに、われわれ漁民は親代々から漁業を経営して來ているが、資材、資金、魚價等が不合理となつているので、増産ができないで苦しんでいるから、右の裏づけが完全になれば必ず増産ができるので、何を苦しんで漁業法の改正をしなければならないか判断に苦しむのである。しかし日本の現状からどうしても漁業法の改正をしなければならないとするならば、農地法に準じて改正して、漁業の自営者に優先的に漁業権を與えるようにせられたいという意見は大多数であります。すなわち、漁業協同組合でも、生産組合でも、個人の漁業者でも、現在自営している者には漁業権を與え、賃貸漁業権、休業漁業権、一人で独占しているような漁業権、あるいは新規漁業権等を対象として漁業法の改正をすべきであるという意見は、相当強いのであります。また漁業協同組合または生産組合的の團体で漁業を盛んに経営しているところは、漁業法は改正にならなくても、法案の内容に織り込まれているようにやつているのであるから、改正になろうがなるまいが、さほどに影響することはないのであるが、かように何回も來られたり呼び出されては、沖を休まなければならないから、迷惑千万である、早くきめるなりやめるなりしてもらいたいというのが眞の漁民の声であるようでありますが、これを一應総合的観察の上に説明を加えてみたいと存ずるのであります。
一般に今般の漁業法案に関しては、縣水産当局等の指導によりよく研究せられて、水産廳係官等に対する質疑等も細部にわたれるもの多く、また五箇所の会場はおのおのその地方的事項を異にしているので、質問並びに意見等もまた特色を明らかに表わしているのであります。たとえて言えば、京都と富山のごときはまつたく相反し、それを一定の基準をもつて法律によつて一線を画するには、すこぶる困難なるを感じたのであります。また秋田、山形、青森縣方面等の意見は、一般に大規模なる定置漁業経営者が少いため、沿岸小漁業に関するもの多く、漁業権は漁業協同組合に與え、漁業調整委員会において選定し、漁業経営者個人に漁業権を行使せしむるべきであるという意見が最も多く、新潟縣は主としてたら場漁場に関するものが漁民の生死を決するというので、共同漁業権にせよ、あるいは反対である、あるいは知事の許可にせよ、と言つて意見は対立し、また長野縣は河川漁業に関することのみで、内水面漁業を切り離して法文化することを望み、また電氣事業の堰堤との衝突等が主として意見が出ておつたのでおります。また富山縣、石川縣は大規模の定置、漁業経営者が多く、古来から個人漁業が発達しているので、漁業権を漁業協同組合に優先せしむることには絶対に反対で、経驗と資力等を十分考慮して、個人の自営を認め、漁業権を與うべきであると強く主張し、中でも今回の法案は全面的に不賛成であるから、大修正すべしとの意見が最も多かつたことは、注目すべき点であつたのであります。また滋賀縣は湖沼、河川に区画漁業権及び共同漁業権を認めよという意見は圧倒的であり、また福井、京都、兵庫三縣は、今回の法案によろしく小修正を加え、すみやかに國会の通過を望み、ことに京都附近は村張組合多く、これに関連する意見は非常に強かつたのであります。また島根、鳥取、山口の三縣方面は、漁業協同組合に漁業権を與え、賃貸を認めよ、すなわち漁業権の管理権を漁業協同組合に與え、漁業権の行使権を漁業調整委員会と漁業協同組合等において漁民に與えよという意見は強いのであります。その他一般に漁業調整委員会に関するもの、行政費、調整費等の國庫負担にせよというもの、免許料、許可料に関するもの等は、各縣共通の意見であつたのであります。
今これらの公述者を今回出席者漁民総数二百二十人中各縣別に示せば、青森二、秋田七、山形三、新潟十一、長野八、富山十八、石川七、福井七、京都五、滋賀大、兵庫五、島根八、鳥取三、山口七、計九十九名の公述者が意見を述べ、全出席者の約半数近くになつておつたのであります。もつとも事前に縣内においで意見を大体とりまとめて、代表者として意見を発表した縣も二、三縣あつたのであります。
次に同一またはほぼ類似せる意見及び賛成者数を申し上げますと、大体次の通りになります。(l)漁業権を漁業協同組合に與えよ、八。(2)漁業権を漁業協同組合に與え賃貸を認めよ、八。(3)漁業権を漁業協同組合に與え、漁業調整委員会において適当なる経営者を定め漁業権の行使をさせよ、四。(4)行政費、調整費を全額國庫負担とせよ、十三。(5)定置漁業権の優先順位は現在の自営者を第一順位とせよ、十一。(6)河川、湖沼にも区画漁業権、共同漁業権を認めよ、八。(7)今回の漁業法案には全面的に不賛成であるから返上して組みかえるか、または大修正を希望する、七。(8)漁業権の免許期間を十箇年以上とし、更新を認めよ、五。(9)補償金を現金で一度に支拂うか期間を短縮せよ、四。(10)漁業資金の裏づけの措置を法案に織り込め、三。(11)漁業調整委員の数を限定せず、地方の実状に則し彈力性を持たせよ、また官選をやめよ、三。(12)漁業権に保護区域を設けよ、三。(13)海深十五メートル以下にも定置漁業を設けよ、また反対に共同漁業にせよという各種の意見、七。(14)しいら付漁業を共同漁業権より削除せよ、二。(15)許可漁業といえども、定置漁業より大規模なるもの、また生産の非常に多いもの、また定置漁業より將來性のあるもの等は、この法案に織り込むか、または詳細なる法規を設けよ、三。(16)今回の漁業法案は法文はむずかしくて漁業者にはわかりにくいから、もつと簡明にせよ、三。等が大体の意見であります。その他一、二の意見はありますが、省略いたします。
次に水産の一般問題に関する自由討議の意見の大要を申し上げますと、(一)、秋田、山形、青森縣。一漁業資材の檢査規定を設け嚴重に実行せよ。(二)鮮魚の輸送の改善、水産物の荷造費、輸送賃等は消費地負担とし、でき得れば統制水産物については國庫負担とせられたい、(三)魚價の改善をはかられたい。(四)水産業協同組合を市町村一丸を単位とするよう法の改正を望む。(五)水産物の統制の撤廃または改善をせられたい。(六)漁業権の補償評價を正しくせられたい。(七)水産行政の強化をはかられたい。(水産省設置その他)
二新潟、長野縣。(一)漁船の救助、ことに人命の救助保護等の措置等の経費は國庫負担とせられたい。(二)新潟縣下に十トン以上の漁船の出入できる漁港はほとんどないから、すみやかに漁港、船入澗を築設せられたい。(三)漁港協会は、二本建、三本建になつてその機能を十分発揮することはできないから、一本建にして眞に活動でき得るようにせられたい。(四)内水面漁業者にも労務加配米を給與すべきである。
以上は新潟、長野の自由討議の意見であります。
三、富山、石川縣。(一)漁業協同組合加入資格は、三十日以上とあるを九十日以上とせられたい。(二)漁業種別ごとに漁業協同組合を許すと、二つ以上の組合に加入してかえつて漁村を混乱させる結果となるから法の改正をされたい。(三)漁業協同組合に漁業権の最優先順位を與えて自営しろといつても資力がないからできない、從つて漁業協同組合に漁業権を所有させて、調整委員会で経営者を選定して個人に経営させることが最も実際に適していると思う。(四)水産協同組合の生産組合の組織及び内部的機構は現法のようではいかぬから改正すべきである。(五)漁業権はどこまでも漁業経営者に與えるべきである、特に定置漁業のごとき危險性もあり大資本を要するものは漁業の体驗者に與えるべきであるという意見は特に多かつた。
四、福井、京都、滋賀、兵庫縣の意見。(一)漁業協同組合連合会の事業を一元化せよ。(二)漁業從事者の事業税を免除せよ。(三)漁業会の取引高税を免除せよ。(四)リンク物資を適正に配船せよ。以上は四縣の意見であります。
五、島根、鳥取、山口縣。(一)すべての浮魚の漁業権(旧專用漁業権)を漁民大衆の手にもどせ。(二)漁業協同組合の事務補助費を國庫負担とせよ。(三)漁業調整には機動性を十分に持たせよ。(四)漁業協同組合に漁業権の免許または許可する場合は年限を定めるな、定める場合は少くとも二十年以上とすべきである。(五)漁業権は漁業協同組合に與え賃貸を認めれば最もいいのであるが、これができない場合でも管理権を與え、漁業調整委員会において選定して、漁民に漁業権の行使を與えるようにすべきである。
以上は各縣の自由討議の大要でありますが、すでに措置の決定せるもの及び実行に移されておるもの等は、各委員より説明並びに答弁し、なお第五回國会における水産常任委員会の各種水産問題等に対する審議の経過並びに結果等の報告あるいは説明等を詳細にしかも親切に、会議の最後まで各委員交互に熱弁を振つてくださいましたので、漁民各位も非常に満足し、納得をいたしましたので、日本海班の國政調査は非常に有意義であつたと思うのであります。
以上御報告申し上げます。なお詳細は書面をもつて報告いたしますから、何とぞ漁業法の審議に当りましては、漁民の意思を十分取入れられるよう、特に申し添える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02119490905/2
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003・石原圓吉
○石原委員長 次に太平洋班長冨永格五郎君にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02119490905/3
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004・冨永格五郎
○冨永委員 ただいまより私の受け持ちました太平洋班が太平洋沿岸各地において漁業法案等に関する國政調査をいたしました経過並びに結果について御報告いたします。
当班は去る七月一日三重縣津市を振出しに、七月八日宮城縣塩釜市を最後とする八日間の現地調査をいたしたのであります。この班に御参加くださいました委員のお方は、石原委員長初め小高君、砂間君と私であります。なお地元の委員として鈴木君、小松君、水野君、早川君の諸氏がそれぞれ現地において御参加くださいました。それに水産委員会よりは加藤調査主事と、水産廳よりは久宗経済課長、松元事務官が参加いたしました。
当班が担当いたしました調査区域、和歌山、奈良、三重、愛知、岐阜の五縣は、三重縣津市の縣会議事堂にて参加者九十六名をもつて現地側漁業者の意見を聞く懇談会をいたし、次に靜岡、神奈川、山梨の三縣は、靜岡市の縣正廳において参加者百十二名をもつて行い、次に東京、千葉、茨城、埼玉、群馬、栃木の六府縣は、千葉市の縣会議事堂で、参加者五十七名をもつて行い、福島、宮城、岩手の三縣は、宮城縣塩釜市の塩釜神社々務所において、参加者百八十六名をもつて同樣の懇談会を行い、現地地元の漁業者の意見を十二分に聽取して参つたのであります。なお各会場とも百名内外の傍聽者があつたことを申し上げておきます。
さらにその意見の詳細にわたつた調査の報告は、別紙の書面にして報告してありますし、さらに会議の方法等は各班とも同じであると思いますのでその詳細は省略をさせていただきますが、本漁業法案等に対する懇談会における意見の大要をかいつまんで申し上げますれば、当班調査区域全般にわたつて大体共通した意見は、定置漁業の存続期間を五年では短いから、十年以上にして定置漁業の実体に合う樣にせよといろ意見が多いのであります。
次に法案第六條中の定置の十五メートル制限をとれという意見と、共同漁業権の中につき魚や延縄、たこつぼ等を入れてほしいという意見が多いのであります。
次に十九條の眞珠養殖業の免許順位についての意見は、当班の三重縣はこの問題の中心地で、特に意見がありましたので詳細は書面にてごらんを願います。
次に六十條の遠洋漁業の免許期間は船の壽命と合致するように、五年とあるを十年か二十年位にせよというのであります。
次に七十五條においては、免許料許可料は手数料程度にせよという意見が大多数でありました。なお市町村漁業調査委員会を削除してあるが、これを復活してほしいというのであります。
次に八十五條の調整委員の定数は、大体において漁民代表を二名ほど多くせよというのと、八十六條の選出方法も業種別、階層別にせよという意見もあつたのであります。
次に百九條においては和歌山縣及び徳島縣との間の海区の変更をしてほしいという強い意見もあつたのであります。
次に第百二十七條では河川における漁業については、どこの縣でも旧來の專用漁業権を認めてほしいという意見が内水面漁業者の強い要望でありました。
次に施行法第十條においては、漁業権補償金額算定基礎の基準を、一年では公平でないからこれを二十一年、二十二年、二十三年の三箇年をもつて算定せよというのが大多数であり、それに同法十六條の補償証券の点については、三十年ではあまりに長過ぎるから、これをごく短期にするか、補償証券をもつて免許料、許可料の納入ができるようにせよという意見が多いのであります。なお特につけ足したいのは、免許料、許可料の料金で委員会の費用や行政費的なものに充当して、漁業者に、重税をかけるようなことはやめて全額國庫負担にせよという意見が多かつたことであります。
以上大要を申し上げました次第でありますが、終りに臨み特に申し上げたいことは、当班懇談会は津、靜岡、千葉、塩釜の四箇所でありましたが、いずれも参加くださいました漁業者の方々の、熱心かつ活発な意見の開陳がありまして、漁業者皆樣がこの漁業法案の改訂については、重大な関心を持つて当國会における審議の中に漁民の要望を多く入れるということを注視していることであります。
なお水産省設置決議案は各会場とも上程され、満場一致をもつて決議され、この実現に対して熱烈な要望がありました。また懇談会開催の主催縣におきましては、会場その他について格段の御手配なり御迷惑をおかけしましたような次第で当委員会の席上から、これらの主催縣の方々に厚く感謝をいたすものであります。それに現地へ私ども調査班が参りました節には、特に地元の水産委員の方々にも多大の御配慮を賜りましたことについでも、当班の班長として私から衷心より感謝の意を表明する次第であります。
以上簡單でございますが御報告を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02119490905/4
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005・石原圓吉
○石原委員長 次に四國、九州、瀬戸内海班長玉置信一君の御報告を願います。玉置信一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02119490905/5
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006・玉置信一
○玉置委員 それではただいまより私の受持ちました四國、九州班が、瀬戸内海、四國、九州各地において漁業法案等に関する國政調査をいたしました、その経過並びに結果について御報告を申し上げます。
調査のため派遣されました委員は石原委員長、それから川端、田口、中井の各委員に私がこれに参加いたしました、調査團の同行者といたしましては、衆議院常任委員会調査主事の沖山辰平君、それから水産廳の漁業権課長の大澤融着、水産廳漁業権課農林技官の山中義一君、こうした一行で参つたわけであります。しこうして当班が調査をいたしました期間は、六月十八日岡山市を振出しに、六月二十七日福岡を最後として、十日間の現地調査を行つた次第であります。調査区域といたしましては、和歌山、大阪、兵庫、岡山、廣島、徳島、香川、愛媛、高知、大分、福岡、長崎、佐賀、熊本、鹿兒島、宮崎、山口、この一府十六縣にわたつておるのでございます。
調査の方法といたしましては、まず最初に六月十八日、岡山市の廣島財務局岡山支部の階上において開催いたしました。この調査関係先は、和歌山、兵庫、岡山、廣島、大阪各府縣でございまして、派遣委員といたしましては、ここでは石原委員長と私でございました。同行者は前段申し上げました一行でございまして、出席者といたしましては、和歌山六、兵庫四、岡山三十二、廣島七、大阪三、計五十二名でございました。
それから六月二十日には松山市の松山商工会館において開催し、この調査先は香川、愛媛、高知、徳島の四縣でございました。これに出席いたしました委員は、石原委員長、川端委員、私の三名に、同行者はさき申し上げた通りでございまして、出席者は香川六、愛媛八十五、高知二、徳島十五、計百八名でございました。
次に六月二十三日は鹿兒島市の鹿兒島縣会議事堂におきまして開催したのでありまするが、この調査先は、鹿兒島、熊本、宮崎の三縣でございました。当時御承知のように台風による風水害等の事故がございまして、出席委員はこの前より非常に少うございまして、私が一人でございました。同行者はむろん異動はございませんが、出席者といたしましては非常に多数に上りまして、すなわち鹿兒島が百十三、熊本十三、宮崎三、合計百二十九名でありました。
六月二十五日には長崎市の精養軒大廣間会議室において開催いたしました。調査先は長崎、佐賀の二縣で、派遣委員は地元田口委員と私の二名でございましたが、同行者は異動ございません。出席者側は長崎百五名、佐賀三十五名、合計百四十名でございました。
六月二十七日には福岡市の福岡縣水産業会の階上において開催いたしました。調査先は福岡、大分、山口の三縣で、委員の出席は地元平井委員と私の二名で、同行者は前述の通りであります。出席者側としましては、福岡六十二、大分十一、山口九の合計八十二名ございました。
以上の開催日、調査先等によりまして、開会の方法といたしましては、各地とも大体午前十時から開催いたし、午後四時半に終したのであります。縣によりましては地元の知事がわざわざ出席されまして司会のあつせんをされ、あるいは司会のあいさつ等も述べられ、さらにまた水産部課長等が、各縣とも熱心にこのあつせんの労をとられまして、議事の進行にもいろいろと協力されたわけであります。
開催の要領としては、地元から司会の挨拶をした後、主班の水産委員から挨拶を兼ねて開催の趣旨を申述べその後に大澤漁業権課長から法案に対する詳細な説明を致し、次いで一應法案に対する質疑應答を試みまして、これが終りまして、これで午前の日程を終り、午後に入りまして、おおむね法案に対する意見の聽取、あるいは引続き忌憚のない懇談会等を開いたわけでございまするが、その詳細にわたりましては別に報告書を提出してありますので、これをごらん願うことにいたしまして、最後につけ加えて申し上げておきたいことは、この法案に対する懇談会の意見の大要を申してみますれば、瀬戸内海、四國、九州各地とも共通の意見といたしましては、第七十五條の定置漁業の存続期間の問題であります。その中で免許の期間の五箇年というのを、定置の漁業経営の実態からいたしまして、どうしても十箇年に延長をすべきであるという、ほとんど各地とも同一な意見が出たのでございます。なお第六條の共同漁業権中には浮魚加入の意見、それから第七十五條の免許料、許可料の全廃と、それから調整委員会の費用、行政費用は國庫負担とせよとの意見が特に強くありまして、また沿岸漁業免許制度の確立につきましても、強い意見の発表があつたのであります。瀬戸内海、四國方面は漁業権の輻湊からいたしまして、漁業法と並行して現実に即したところの瀬戸内海漁業取締規則の施行の要望の声が非常に強く、ひいては瀬戸内海漁業調整事務局機構の強化をしてくれという意見がかなり出ておつたのでございます。また和歌山、徳島各縣からは、第百九條瀬戸内海の区域から紀伊水道を削除してくれという要望が強く出ておりました。また九州方面におきましては、漁業権を全面的に協同組合に付與されてもらいたいということでありました。さらにまた河川團体には何らかの漁業権を與えられたいということと、それから慣行專用漁業権者に対する特別の措置、特に鉱害——鉱山等の汚水によるものですが、鉱害、汚水汚涜、魚付林等に関する漁場保護の制定であるとか、特にまた有明海の漁業調整事務局を設置してもらいたいという意見が非常に強く出ておりました。
大体以上でございまして、劈頭に申し上げましたように、いろいろと先ほど川村委員から申されたような詳細にわたりましてのこと、あるいは冨永委員から申された各地の漁民の熱烈なる要望及び陳情、その他水産省設置に対する一致した希望等のあつたことにつきましては、重複いたしますのでこれを省略いたしまして、
以上私が四國、九州班の主班として調査をいたしました大要を御報告申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02119490905/6
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007・石原圓吉
○石原委員長 次に北海道班長鈴木善幸君にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02119490905/7
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008・鈴木善幸
○鈴木(善)委員 北海道班の調査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
北海道班の派遣委員は班長鈴木善幸、班員といたしまして石原委員長、夏堀委員、奧村委員、小松委員、それに地元参加委員といたしまして川村委員、冨永委員、玉置委員、松田委員、林委員であります。随行者といたしまして、水産廳より松任谷漁政部長、山中技官、衆議院事務局より中山調査員、沖山調査主事であります。調査期間は七月の二十日から八月の五日まで十七日間に及んでおります。
調査地及び調査の地域と出席者でありますが、七月の二十日は函館市において懇談会を開催いたしました。この懇談会に集まりました地域の漁民は函館市檜山支廳管内、渡島支廳管内であります。出席者の数は八十九名に及んでおりますが、さらに本懇談会を終りましてから赤石浜及び小船町漁港を視察いたしておるのであります。七月の二十一日には余市港において懇談会を開催いたしまして、次に七月の二十二日には小樽市において懇談会を開催し、小樽市石狩支廳、後志支廳管内の漁民諸君が百六十四名集合いたしました。七月の二十四日には釧路市において懇談会を開催し、釧路市、釧路支廳、根室支廳、十勝支廳管内の漁民諸君が約二百名集合いたしておるのであります。なおこの機会において釧路港を現地視察いたしたのであります。七月の二十六日には網走市において懇談会を開催いたしまして、網走市及び網走支廳管内の漁民諸君が百七名出席いたしたのであります。
〔委員長退席、玉置委員長代理着席〕
なおこの機会に網走漁港を現地視察いたした次第であります。七月の二十八日には留萌市において懇談会を開催し、留萠市、留萠支廳管内の漁民諸君が百八十名参集いたしたのでありますが、さらに懇談会のあとで漁港施設、冷凍施設等を視察いたした次第であります。七月の二十九日には留萠支廳管内を主として漁港施設を中心といたしまして現地視察をいたした次第であります。七月三十日には稚内市におきまして懇談会を開催し、稚内市、宗谷支廳管内の漁民諸君が百四十三名出席いたしております。七月三十一日には宗谷支廳管内の漁港を視察いたしまして、八月一日には紋別町を視察いたしまして、漁港施設及び各種水産施設を観察いたした次第であります。八月の二日には室蘭市におきまして懇談会を開催いたし、室蘭市、苫小牧市、日高支廳、膽振支廳管内の漁民諸君が百五名出席したのであります。なおこの機会に室蘭漁港その他を視察いたしたのであります。八月の四日には札幌市におきまして北海道廳及び北海道議会の水産委員諸君と、北海道視察の問題につきまして意見の交換を途げた次第であります。八月の五日には噴火湾、森町に参りまして現地の要請によりまして座談会を開催し、なお森漁業会初め噴火湾の漁業施設について視察をいたした次第であります。
次に漁業法案に関しますところの現地懇談会の内容を御報告申し上げます。会議は前三班長より御報告がありましたような順序で取運んだわけでありますから、この際これを省略いたしまして、その際に開陳されましたところの漁民諸君の改正意見のおもなる点を御報告申し上げます。総括的な意見といたしまして、第一は本法案はきわめて難解である。働く漁民に容易に理解され、親しまれるような平易な法案にしてもらいたいという意見が強かつたのであります。第二は本法案ははなはだしく一方に偏したイデオロギーの上に立つて立案されているきらいがある。何ゆえにこの法案のみがアメリカ的民主主義を逸脱して、社会主義的方向をとらなければならないのか。この点を漁民大衆は非常に理解に苦しんでおる、こういう意見が強かつたのであります。第三は漁業権改革は農地改革に相当するものと考えるが、何ゆえに漁業権改革のみが、働く漁民から全漁業権を取上げなければならないのか。漁業権改革においても、農地改革と同樣に、漁業権を不当に集中独占するもの、不在地主的漁業権者並びに休業漁業権のみを國家において收用し、再配分するような穏当な方策をとらないのか。第四といたしまして本法案は漁業憲章とも称すべき基本法であるにかかわらず、許可漁業についてあまり触れていない。わが國今後の漁業は、漁業権漁業から許可漁業に移行する傾向が顕著であるから、許可漁業の調整について、本法はもつと具体的に規定すべきである。こういう総括的な四つの意見が圧倒的に強かつたのであります。
次に具体的な改正意見でありますが、第一は、第六條第三項の、水深十五メートルの線で定置漁業権を機械的に区分することは実情に適しない。
第二は、第六條第五項第三号の第三種共同漁業権の内容は法によつて明文化せすに、地方の実情に應じて規定できるよう海区調整委員会に一任せよ。第三は、第十四條第六項の共同漁業権は、各地先漁業協同組合に按分して権利を付與せよ。第四は、第十四條第一項第三号の條文はきわめて抽象的であり、調整委員の利害感情により左右されるおそれがあるから、これを削除せよ。第十六條の定置漁業権の優先順位につきましては、(1)自営漁業権者より漁業権を取上げないでもらいたい。(2)休業漁業権及び不在地主的賃貸漁業権のみを國家において收用し、再配分せよ。(3)漁業協同組合、漁業生産組合等の漁民國体に対する優先免許の條項は、北海道においては漁村の実情に即しないから削除してもらいたいという意見が圧倒的であつたのでありますが、但し一部に内地と同樣にすべきであるという少数意見もあつたのであります。この漁業團体の優先を不当とする意見の理由のおもなる点は、北海道においては大体において個人が経営しているのであるからして、國体がこれを経営しても生産低下になるおそれがある。次に漁業從事者は内地等よりの移勤労務者が多いのであるから、北海道においては漁業團体に優先免許することは不適当である。もう一つは、北海道は漁業の経営が個人中心でおつて、協同組合的な訓練が内地よりも遅れているという点であります。
〔玉置委員長代理退席、委員長着席〕
しこうして内地と同樣に北海道に例外規定を設けるべきではないという意見は、主として樺太等よりの引揚漁民の中から出ておつたようであります。次に(4)漁民國体の優先順位に関しまして、地区國体よりも定置漁業の経驗者をもつて組織する定置漁業の業種別組合を最優先としてもらいたい。(5)第十六條第四項の次に左の二項を追加してもらいたい。すなわち1、第四項の規定により同順位であるものの相互間の優先順位は左の順位による。(一)その申請にかかる漁業の漁場に近似し、これと同種の漁業を内容とする從前の漁場に経驗ある者。(二)前号に掲げるもの以外の者。2、前項の規定において從前の漁場とは、漁業法施行法第一條第二項の規定により、または存続期間満了により消滅した漁業の漁場をいう。
次に第二十一條の定置漁業権の存続期間は五箇年を十箇年ないし二十箇年と改められたい。なお調整委員会につきましては、調整委員会の費用に当られるのは、いわゆる行政費で、免許料、許可料からこれをまかなうべきでなく、國庫負担とすべきである。次に、調整委員会は諮問機関というような弱い性格ではなく、決定機関にしてもらいたい。次に調整委員会には專門委員をおくことを得とありますが、これは必ず專門委員をおくように規定してもらいたい。大体以上のような意見であります。
次に各委員より第五國会において取上げられましたところの各種の水産問題について報告をいたし、自由討議をいたしたのでありますが、その際に漁区の拡張問題につきまして、熱烈な道漁民諸君よりの意見の開陳があつたのであります。そしてその懇談会を、動議によりまして漁民大会に切りかえまして、水産省の創設並びに漁区の拡張を懇請する決議を満場一致可決いたしておるのであります。
以上御報告を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02119490905/8
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009・石原圓吉
○石原委員長 これをもつて第一、第二、第三、第四の調査班長の御報告は終了したのであります。この調査中は、おりふし酷暑の候でありまして、ことに台風等ときどき起り、調査班員諸君の御労苦、並びに水産廳より御派遣の方々、專門部より同行の諸氏に対しまして、ここに厚く敬意を表する次第であります。
なおこのほかに議長並びに委員長に対して多数の陳情、請願等、漁業法案に対する意見書が参つておるのでありまするが、これは專門委員部において整理をいたしまして、ただいま御報告に関する書類を一括とりまとめたいと思います。各班の御報告はこれをもつて終了をいたしましたので、暫時休憩をいたしまして、午後二時より開会をいたします。
午前十一時五十四分休憩
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午後一時三十分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02119490905/9
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010・石原圓吉
○石原委員長 それでは午前に引続き開会いたします。
これより漁業法案の逐條審議に入ります。まず一應当局より一章より十章までの説明を求めます。
なおこの際申し述べておきますが、日にちの関係上、非情に急ぐ必要があります。それにつきましては、委員諸君が欠席したり、出席したりして、さらに再質問等が起ることは、非常に進行を妨げますから、欠席しながらさらに済んだものに遡及することは認めないということに御承知を願います。
これより漁業法案の説明を当局より求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02119490905/10
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011・飯山太平
○飯山説明員 それでは條文解釈になりますので、松元事務官から説明させることにいたします。さよう御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02119490905/11
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012・松元威雄
○松元説明員 それではただいまから逐條の御説明をいたします。
まず第一章でありますが、これは全般の総則的事項を規定してございます。まず第一條がこの法律の目的でございます。これは前の國会におきまして、全般を通ずる問題といたしまして、いろいろ質疑もございましたし、政府からも説明いたしておりますから、ここで條文としての解釈は省略いたしたい。そうさせていただきます。
それから第二條は、この漁業法の中心をなしまする漁業という言葉の定義と、それから漁業者及び漁業從事者の定義でございます。これにも大体水産業協同組合法におきまして、一應の解釈はきまつておりますから、特に具体問題につきまして、こういう場合どうなのかという御質問がございましたらお答えいたしたい。そういうふうにいたします。
第三條、第四條、これは漁業法の適用範囲を規定いたしたのであります。これは現行法と同じでございます。主として三條、四條の適用範囲が問題になりますのは、内水面におきましてで、一般にはあまり問題になりませんから、特殊事例として御質問がございましたらお答えいたしたい。そういうふうに思つております。
第五條は、これは手続規定でございまして、現行法では施行規則の方で規定いたしております。これは漁業権の免許の申請でありますとか、あるいは許可の申請でありますとか、そういう役所に対しまする申請を、二人以上が共同でやる場合、その場合の手続をどうするかという技術的な規定でございますから、これも省略いたします。
次は第二章でございますが、これがこの法案の一番骨子をなしまするもので、新しい漁業権とはどういうものか、その免許方法、どういう者に免許をいたしまするか、そういう新しい漁業制度の一番中心となりまする概念を規定したものでございます。
大体全般の構造からいたしますと、この第二章の漁業権の内容、それから第四章の漁業調整のやり方、これが新しい漁業制度の中心になりまするので、それを実際に担当いたしまする漁業調整委員会、これにつきまして第六章で規定いたしました。それから今度新しく免許料というものをとりますから、それについて第五章に規定した、これが大体全般の中心でございます。これに対しまして内水面の特殊事情を規定したものとして内水面漁業という一章を設けました。それからちよつと性質のかわつておりますのは、指定遠洋漁業に関する規定でございまして、全体的にはそういう仕組みになつております。
そこで第二章でありますが、このうち第六條、七條、八條、これが新しい漁業権の定義でございまして、この六、七、八はいずれも関連しておりますから、一應まとめて御説明いたします。まず新しい漁業制度は漁業権を三つの種類にわけております。從來は定置、区画、特別、專用の四種あつたわけでございますが、これを整理いたしまして、定置区画、共同漁業権、この三つにいたしたわけであります。
そのうち定置漁業権の從來の漁業権と違いまするところは、從來の定置でありますと、いやしくも漁具を定置して営む漁業所であれば、どんなものであつてもすべて漁業権といたしたわけでありますが、この法案におきましては、そのうち水深十五メートル以上のもの、これを原則として定置漁業権といたしました。これは同じく漁具を定置して操業するものでありましても、いろいろ網の規模とか、構造その他で違つております。それを一律にただ漁法が技術的に同じだからといつて、定置にして同じ扱いをするということは、ちよつと実情に沿わない点もありますので、そういう技術的観点のほかに、大体綱の規模といいますか、そういう経済的な價値という観点を加えまして、十五メートル以下のものと、以上のものを区別して扱つたのであります。大体十五メートルと申しますのは、規模で申しますと、從業員五人以下程度、一應そういうふうに考えております。從つて五人以下のいわゆる小定置というものは、今度は定置漁業ではなくなる。これは第二種の共同漁業権になるわけでございます。そういう五人以下くらいの規模のものということを法律的に表現いたしますために、一應十五メートルという線を引いたわけでございます。これは一律に十五メートルするかどうかいろいろ問題もあるわけでございますが、一應法律で規定いたすとなると、どこかで線を引かなければならぬ、十五がおかしければ、十とか二十とか線をひかなければならないわけであります。境目はどこに線を引きましてもいろいろ問題は残るわけであります。大体十五メートルが妥当であろうというので、これにおちつけたわけであります。但し北海道におきましては海岸線の関係もございまして、水深が浅くても非常に沖出し距離が長くて、規模も大きいという現象が一般的でありますので、特に北海道に限りましては、にしん、いわし、さけ、ます、これを主としてねらう定置に限つては、水深のいかんを問わず全部定置として扱うこととしたわけであります。この十五メートルをはかりますのは、身網が設置される水面があるわけでありますがその水面の一番深いところをはかつて、そこが十五メートル以上あればよろしい。現実の網自体の深さではなくて、網の張られている場所の一番深い所、そういう意味であります。
次が区画漁業権でありますが、これは現行法と同じであります。それからちよつと申し遅れましたが、これは定置でも区画漁業権でも同じでありますが、從來は施行規則及び告示によりまして、詳細な漁業名称を規定してございました。今度はそういうこまかな漁業名称は廃止いたしまして、漁具の構造があるいは定置して営む、あるいは第四項に掲げましたような漁法でありますれば定置漁業なり、区画漁業とする、こまかな漁業名称は問題にしないというつもりでございます。区画漁業権は現行法と同じであります。
次の共同漁業でございますが、これが一番新しい概念でございまして、從來は專用漁業権それから前の事務当局案におきまして、根付漁業権と呼んでおりましたのと本質的には同じものであります。しかしその内容は大分かわつております。この共同漁業権の本質と申しますと、これは漁民が集團的に一定の漁場を利用する、個人々々がばらばらにやる漁業ではなくして、一定の地区の漁民が集團的に協同組合というものをつくりまして、その協同組合が漁場を管理して組合の定款でいろいろ使い方をきめてそれに從つて組合員にやらせるという、集団的な漁民の漁場の管理形態というものでございまする從つてあとで申しますように、この共同漁業権は原則として協同組合しか免許はいたしません。その点が他の定置及び区画と本質的に違つている点でございます。これは法律的には「一定の水面を共同に利用して営む」と表現したわけでありまして、その「共同に」というところが協同組合の漁場管理ということを法律的に表現した規定であります。そうしてこの内容は、從來の專用漁業権では別に内容を限定しないで、免許方針としてやつて行つたわけでありますが、今度はそれを法律で明確に内容とするものをきめた点が從來と違つているわけでございます。そしてその内容を第一種から第五種までにわけたわけでありますが、このうち第一種共同漁業というのは、前の事務当局案におきまして根付漁業と呼んでいたもので、海草とか貝類とか、いわゆる根つき、磯つきのものを内容とするものであります。そういう根についている、あるいは磯についている動かないものを対象といたしております。そしてここに「主務大臣の指定する定着性の水産動物」と申しますのは、現在考えておしますのは、伊勢えび、うに、なまこ、しやこ、ほや、ひとで、えむし、かしぱんというようなものを大体予想いたしております。これは全國一律に指定するものでございますが、このほか地区によつて、たとえばたこを入れてくれ、あるいは白えびを入れてくれというように、各地の具体事情で指定をしてくれという要望もいろいろあるわけでございますが、今申しました全國的に指定するもののほかに、そういう地方的なものを入れるかどうかという点は、現在險討中でございますが、大体さしつかえないものは入れて行こうかと一應考えております。しかし入れ得るものは、原則としてその漁場に一應定着して他に動かないという性質のものでなければならないわけであります。
それから第二種の共同漁業、これは「網漁具を移動しないように敷設して営む漁業」というように規定してありますが、これは定置漁業の「定置」とは少し違う観念で、もう少し廣い観念であります。定置と申しますと、一定の場所に漁具を置き、一定の漁期中これを動かさないわけでありますが、これは動かしてもかまわない、ただ漁具を敷設している間動かない構造になつていればよろしい、敷設する場所は漁期中かわつてもよろしい、その点が定置と違つているわけであります。具体的に申しますと瀬戸内海にありますが、現在專用漁業権中のます網というようなものでありまして、これは漁具自体の構造から申しますと定置のます綱と同じで、ただ漁期中場所を動かすという点で定置にしていないわけでございます。それで具体的に第二種共同漁業の中に入りまするのは、先ほどの定置漁業権からはずれました水深十五メートル未満の定置即ちいわゆる小定置、それから刺網のうちのいかりどめ刺網、現行法で特別漁業権の第五種、第六種になつておるふくろまち網漁業、一定の敷場を有する敷網漁業というものを大体考えております。すなわち小定置、いかりどめ刺網、ふくろまち綱漁業、一定の敷場を有する敷網漁業といつたものであります。同じ刺網でありましても、流し網になりますと、これは波と風によつて動くようになつておりますからこの中に入らない。それからたこつぼも一應動かないような構造になつておりますが、あれは網漁具ではないからというので、この中に入らないわけであります。大体第二種共同漁業によりまして、回遊魚でありましても、自分の地先で待ち構えてとる漁業というものは漁業権の内容となるわけであります。
第三種の共同漁業は現行法の特別漁業の大部分を含んでおります。地びき網、地こぎ網漁業というのは現在の特別漁業権の第三種、船びき網漁業というのは第四種、飼付漁業は第七種、しいらづけ漁業は第八種、つきいそ漁業は第九種というわけで、現在の特別漁業権の大部分を網羅している。そのうち第五種、第六種は、今申しましたように第二種共同漁業権の中に入る。そうしますと現在の特別漁業権の中で新しい共同漁業権の中に入らないのは第一種と第二種だけでありますが、これは鯨またはいるかを追い込んでとる漁法で、数も非常に少うございますし、地域的にも限定された特殊の漁業でありますから、あえて漁業権としなかつた。それ以外の特別漁業権はあるいは第三種あるいは第二種として漁業権としたというふうになつております。そして特別漁業権の地びき、船びきでありますと、ひき揚げ場ないしひき寄せ場はきまつているわけでありますが、今度はそういうふうに限定はしないで、共同漁業権として免許を受けました一定の漁場の中ではどこでやつてもかまわないというように融通性を持たせるわけであります。そこで從來では地びき一つをとりましても、あるいは特別漁業権の地びき、あるいは專用漁業権の地びき、あるいは許可漁業の地びきというように、いろいろわかれていたわけでありますが、今度はすべて第三種共同漁業の中に入るというようになるわけであります。
この中で一番誤解があるかと思いますのは船びき網漁業でありますが、これは船びきと申しましても、純漁撈技術学的に申しました船びきとは違うのであつて、無動力船によるものに限る方針でございます。
大体この共同漁業権は、内容を見るとわかりますように、大体自分の地先限りでやる漁業で、ほかの地先には行かない。魚群を追つて他の地先であろうと何であろうとどんどん追つかけてとるという移動性の漁業は入れていないわけであります。從つて同じ船びきと申しましても、動力船で自分の地先以外にも行つてとるという漁法はこの中には入れないというように考えております。
それから第四種の共同漁業でありますが、これは瀬戸内海あるいは三重縣方面の特殊の漁業でありまして、これがいかなる漁業かと申しますことは、お手元にくばりましたプリントにも書いてあるわけでありますが、これは特に強く第三者の侵害を排除しなければ成立しないという漁業でありますので、漁業権としたわけであります。たとえば寄魚漁業を例にとつて御説明しますれば、これは冬期になつてぼらが一定の場所に寄つて集まつて來るのを、散らさないようにしてとるという漁業でありまして、その間は船舶の航行も全部停止してとる。そのように第三者の侵害を嚴重に排除しなければ成立しないというので漁業権としたわけであります。
第一種から第四種までが一般の共同漁業権の内容でありますが、このほか第五種共同漁業といたしまして、湖沼に限りましてはこれ以外の漁法であつても第五種共同漁業として漁業権とするようにいたしたわけであります。これは湖沼におきましては、地元の協同組合に管理をまかしてもよその部落との複雜な入会関係はないから大体差支ないというふうになつておりますので、これ以外の漁法でも漁業権の内容としたわけであります。
そこで全般的に共同漁業権の内容を見ますと、大体その地元の組合限りで管理して、他の組合との間にそう複雜な入会関係はないというものを漁業権の内容とするように定めてあります。從つていわゆる魚群を追うて自由に移動して、運用漁具でとる漁業、そういうものは漁業権の内容にはしなかつた。大体根つぎ、磯つきのもの、それから浮魚でありましても、自分の地先で待ち構えてとる漁業、こういうものを漁業権の内容としたわけであります。これはそういうふうに自分の村だけでなくて、他の地先にも行つて自由にとる漁業を漁業権の内容とすることにいたしますことは、部落とかあるいは村とか、組合の地区ごとに固定的反障壁を設けることになつて漁業の自由な発展を阻害する、そういうような趣旨からいたしまして、漁業権の内容からははずしたわけであります。しかしはずしたからと言いましても全然自由におつぱなすかと申しますと、そういうわけではなくて、これはあとの第六十七條に海区漁業調整委員会の指示という條文がございます。これは調整委員会は具体的な問題を処理しますためにいろいろさしずをするわけであります、そういう委員会のさしずで調整をとつて行こう、固定的に漁業権の内容というふうにするのではなくて、一應漁業権の内容からはずす、そうして自由にしておいて、その間に起る紛争は、この委員会の指示ということで調整をとつて行く、そういうふうに考えております。これが新しい漁業権の内容であります。
先ほど第五項の共同漁業権で、協同組合は漁場を管理するのだと申し上げたのでありますが、これをさらに表現した條文がこの第八條であります。この共同漁業権は協同組合に免許するわけであしますが、協同組合は自分で自営するわけではなくて、組合員にやらせるわけであります。しかしそのやらせる関係は賃貸とは違うということを法的に表現したのがこの第八條で、協同組合の組合員たる漁民は、組合の定款に待つて各自漁業を営む権利を有する、つまり協同組合が漁業権を持つて、定款でその行使方法をきめる、その行使方法に経つて組合員は漁業をやるのだ、こういう意味であります。これはちようど陸の方におきまして、入会権というのがございます。この入会権は少しやかましく申し上げますと、総有だということになつております。この入会と申しますのは入会の山なんかあるわけでありますが、そういう入会の山を部落が共同に管理しているわけであります。これとちようど同じ関係が海にありましては一定の漁民の集團があつて、そこが漁場を共同に利用している、それを陸の方では入会権としましてその内容は慣行によらしたわけでありますが、それを海の方では協同組合の共同漁業権——前は專用漁業権でありましたが——とし、第八條の各自漁業を営む権利というのをあわせて規定して、その入会的な漁場の利用を法的に表現いたしたわけであります。
第七條の入漁権でありますが、この入漁権と申しますのは、これも入会山の例をとつて御説明申し上げますと、他人の持つている入会山に入り会う関係、こういう関係が陸でございます、これが海の方でもあるわけでありまして、一つの協同組合が前の專用漁業権、今度の共同漁業権を持つている、その場合に他の組合員がその漁場に入り会つて操業する、それを入漁権として規定しているわけでございます。この入漁権につきまして現行法と違います点は、ます第一は現在の入漁権には慣行の入漁権と、契約による入漁権と二つあるわけでございます。それを新法では慣行によるものを認めないで、すべて契約によらしたという点が第一であります。契約によらせるわけでありますから、一應漁業権を持つております組合が、入漁権は設定しないと言えば、入漁権は設定し得ないわけでありますが、そういう場合に、不当に入漁権の設定を拒むという場合には、あとの第四十五條の規定によりまして、漁業調整委員会が裁定をいたしまして、入漁権を結ばせるというようにいたしております。だから一應慣行だからといつて、当然に入漁権が設定されることはやめる。そうして一應は契約によらせる。しかしながら契約では相手方が不当に拒むという場合がありますから、その場合には調整委員会がさばきまして、入漁権を設定させた方がいいという場合には設定させるということに規定したわけであります。
それから現行法との相違の第二点は、現行法では入漁権を設定し得る漁業権は專門漁業権だけであつたわけであります。それを今度は專用漁業権のほかにひび建養殖業、かき養殖業、第三種区画漁業たる貝類養殖業を内容といたします区画漁業につきましても入漁権の設定を認めたわけであります。これらの漁業権は一應区画漁業権でありまして、共同漁業権とは違うわけでありますが、その内容を見ますと、やはり組合が漁業証権を持つて、定款で行使方法をきめて組合にやらせる、そういう協同組合の漁場管理という本質におきましては、実は共同漁場と同じわけであります。この点はあとの適格性の規定でもそうでありますが、協同組合が漁場を管理するという本質におきまして、共同漁業権と同じであるという点に基きまして、これらの区画漁業権についても入漁権を認めたわけであります。從つて入漁権はこれから個人には認めない。組合対組合の関係で結ばせるというふうに考えております。
次に第九條、これは定置漁業と区画漁業は、漁業権または入漁権に基かなければやつてはならぬという規定で、現行法と同じであります。
第十條は漁業権の設定を受けようと思うものは知事の免許を受けろという規定で、現行法と違いますのは、現行法では專用漁業権は大臣の免許でありますが、今度はすべて知事の免許にしております。
次に第十一條、これは免許の内容をあらかじめきめるという規定でありまして、今度の新しい免許方法の一つの中心をなす規定であります。從來は自分が漁業権の免許を受けようと思いますと、こういう漁業権の免許をしてくれと言つて、個別に申請をさしたわけであります。そうしてその申請が他に拒む理由がなかつたならば、免許をいたすというふうにして、つまり漁場の利用方法を免許を受けようとする者の個人的な判断にまかしておつたわけであります。從つて漁場の利用方法は非常に無方針で、無統一になつておるわけでります。自分々々がめいめいに自分はこういうのがほしい、自分はこういうのがほしいというふうに個別に申請いたしますから、漁場全般を総合的に見ますと、利用方法が総合性がないわけであります。そこで現在の漁場関係を見ましてもわかります通り、たとえば休業漁業権の数が会主体の三分の一以上になつておる。あるいは前網とかあと網というものがあるというように、いろいろむだな漁場の使い方をしておる。從つてこれをあらかじめ海区というものを單位にしまして、その総合的な利用方法をきめる。それに從つて漁業権として利用いたします内容をあらかじめきめておく。こういう規定であります。こういうふうに、あらかじめ漁場計画というものをきめまして、それに從つて漁業権の免許をして行く。從つて今度は、自分が個別にこういう漁業権がほしいと言つて申請するのではなくて、あらかじめきまつた漁業権の内容に從つて、自分はあの漁業権がほしいというふうに申請いたすわけであります。この漁場計画のきめ方、これが漁業生産力という点から見まして、非常に問題になる点で、これには十分な資源調査、あるいは漁業技術の研究というものが前提になるわけでございます。これをやらなかつたならば、漁業法案の目的でありまする漁場の総合利用、それによる生産力の発展ということはできないわけで、なお今後二年間に、十分技術的な調査研究をいたしまして、合理的な漁業権の内容をきめて行きたいと、こう考えております。
第十二條は、漁業権の免許を受けようとする者は知事の免許を受けるわけでありますが、その場合、知事だけでしめるのではなくて、海区漁業調整委員会の意見を必ず聞くという規定であります。從來は知事の一瞬專断でありまして、そういう民間とは離れた役人というものが免許権を握つていたわけでありまするが、今度は知事だけできめるのではなくて、海区漁業調整委員会の意見を聞いてきめるというようにいたしたわけであります。この意見の聞き方が問題になるのでありますが、意見を聞くと申しましてもいろいろありまして、單に形式的に諮問機関的に意見を聞くという聞き方もありまするし、実質的には決定機関のような聞き方もあるわけでありまするが、この場合、漁業の方では農地とは違いまして、委員会を決定機関にはしなかつたわけでありまするが、実質上は決定機関のように動かして行きたい。法的には最後の権限はやはり知事が持つているわけでありまするが、実際の委員会の運用方法といたしましては、大体委員会の意見に待つて動くようにして行きたいと、こう考えております。これは運用方針とからむわけでありまするが、実際問題としまして、知事が免許権を持つておると申しましても、委員会の意見と違つた決定はまずできぬわけでありまする從つて実質上は委員会できまるようになるであろうと考えております。大体これからのこういう免許の方法と申しますか、そういう方向としましては、大体役所というものは事務局的に動きまして、いろいろ調査をいたしましたり、研究をしたりしておりまして、そういう資料を提供して行く、そういう十分な資料に基いて、委員会で判断をして行くというふうに持つて行くべきであろうと考えております。
次の第十三條は、免許をしてはならない場合を列挙いたしたわけであります。まず第一号は、これはあとに述べまする、第十四條に規定する適格性がない場合には免許をいたさないというわけであります。
第二号は、ただいま御説明いたしました漁場計画、これと違う内容の免許の申請をして來た場合には免許をしないという規定であります。
次の第三号でありまするが、これは漁業権の不当な集中に至るおそれがある場合には免許をしないという規定で、この規定につきまして、何を不当な集中と言うか、いろいろ疑義があるわけであります。不当な集中と申しまするのは、單に数がたくさんあつてはいけないというように、形式的に数だけで計算するのではなくて、経営の合理化という点からたくさん漁業権を持つということは当然であります。むしろ多角経営をする関係から、いろいろな角度の漁業権を持つということは、むしろ推進して行くわけでありますが、そういう経営の合理化というふうな合理的な理由もないのに、ただたくさん漁業権を持つということを押えよう、こういうわけであります。これは漁業権の数は限定されておりますし、希望者は多いわけでありますから、それを正当な理由なくして、たくさん免許をもらうということは問題がありますので、そういう合理的な理由のない不当な集中となる場合には、免許をいたさないというようにいたしたわけであります。なお、ついででありますが、これは独占禁止法に言つておりまする集中、あるいは過度経済力集中排除法に言つております集中とは意味が異つておりまして、独占禁止法の場合には不当な取引制限に至るような集中を言つております。また過度経済力集中排除法は、過度に経済力を集中して、その力で他の企業を圧迫するという点から集中を防いでいる。これはちよつと違いまして、漁業権の数は限定されている、しかも希望者は多いという関係から、なるべく公平に、みんなに漁業権を免許したい、こういう関係であります。それと経営の合理化とのからみ合いで、不当なという表現をわけてあります。
第四号は、「漁業調整その他公益上必要があると認める場合」、この四号の規定を発動いたしますことは、実際問題としてはそう多くなかろうと考えております。これは現行法では、大体これと同じ内容のことを、すでに免許を與えた漁業と相いれずと認める場合には免許をしない、こういうふうな表現をいたしておりますので、免許するかしないか非常にむずかしいのでありますが、今回はそういうふうな漁場の利用関係は、あらかじめ第十一條の漁場計画の事前決定によつてきまつてしまいますから、第四号によつて免許しないことはまずあるまいと考えております。大体は、第四号に当るような場合は、あらかじめ漁場計画でもつてきめておるわけでありまするが、それに漏れたような場合を考えて規定いたしたわけであります。
次の第五号は、これは前四号とはその趣旨を異にいたした規定でありまして、私有水面の場合の所有者を保護いたした規定であります。これは大体同樣の趣旨の規定が現行法の施行規則に規定してあるのでございます。これは実際問題としましては、そう例はないわけでありまして、内水面で問題になるわけでありまするが、免許を受けようとする漁場の敷地が他人の所有に属する場合、あるいは水面が他人の占有にかかる場合は、その所有者または占有者の同意を得なければならぬという、こういう規定でございます。具体的例で申し上げますと、たとえば灌漑用のため池のようなものであります。灌漑用のため池なんかは、よく水利組合が持つております。水利組合が持つております場合に、漁業権を設定してくれという場合には、そのため池は公共の用に供する水面でありまするが、主たる目的が灌漑用の水利である。從つてその所有者の水利組合の意思を重んじたわけであります。しかしながら、その所有者または占有者が不当に同意を拒んではならぬということを第四項で規定いたしております。もしも不当に同意を拒んだ場合は、裁判所に訴えまして、同意にかわる判決をもらう。そうして免許をしてもらう。そういうふうになります。
第二項、第三項は、これは所有者または占有者の佳所または居所が明らかでない場合は、同意が得られぬわけであります。その場合には、裁判所の許可をもつて同意にかえることができる、こういう規定であります。この「最高裁判所の定めるところにより」と申しますのは、この場合の裁判所の許可を受けまする手続等を最高裁判所規則できめる、こういうわけであります。現行法では、「裁判所ノ許可ヲ求ムル手続ニ関スル件」という勅令が出ておりますが、今度はそういうことは勅令ではなくて、最高裁判所規則できめることになりますので、こう表現いたしたわけであります。
次の第十四條、これが適格性の規定であります。適格性と申しますのは、免許の最小限度の資格要件、まあそういつたものであります。この第十四條は適格性の規定で第十五條から第十九條までで優先順位をきめております。從來はこういう適格性とか、優先順位という規定はありませんで、その判断は実際に免許します場合に知事が判断して來たわけでありますが、今度はそうではなくて、法律で基準をきめ、まず最小限度の資格要件を適格性としてきめ、その資格審査を通つた者の間でだれが一番、だれが二番というふうに、法律で順番をきめて、その法定の順番に從つて免許をして行くというふうになつておるわけであります。その最小限度の資格要件の規定がこの第十四條の規定でありますが、これは四つ要件があります。この四つの要件のいずれをも満たさなければ適格性はないわけであります。これは第一項と第二項以下とは少し性質の違つた規定でありますから、まず第一項について御説明申し上げます。
この第一項は自営する者の適格性でございます。これはあとの第三十四條におきまして、漁業権は貸付けができませんので、從つて原則として自営する者でなければ免許は受けられないわけであります。そして先ほど御説明いたしました第八條で「各自漁業を営む権利を有する。」と規定されました漁業は、貸付けではなくて協同組合が所有して組合員にやらせるわけでありますので、その場合の適格性の規定を第二項以下に規定いたしております。まず自営いたします者の適格性としましては、第一号から第四号までに規定してありまする條項のいずれにも該当しないものであります。いずれかに該当すれば、適格性はなしとされて免許は受けられないわけであります。この第一号は「漁業に関する法令の惡質な違反者であること、」漁業に関する法令と申しますのは、漁業法、それから漁業法に基きまする各種の漁業取締規則であります。よく御質問があるのでありますが、統制違反、つまり價格違反とか、あるいは配給ルートの違反という統制違反は、この漁業に関する法令ではございません。從つてこれには当たらないので、もし非常に統制違反がはなはだしいという場合には、前の第十三條の第四号の「漁業調整その他公益上必要があると認める場合。」のこれに該当いたしまして、免許しない場合もあるわけでありますが、この十四條の適格性で言つておりまする漁業に関する法令ではありません。それからこの惡質ということでございますが、これは非常に表現があいまいであるといつて、いろいろ疑義があるわけであります。これはもしこの表現をとりますと、漁業に関する法令の違反者であるということになるわけでありますが、そうなりますと、実際問題として現行法のもとでは法規の不備もあつて大体は違反をやつておる、從つてほとんど全部の者が適格性がなくなつてしまうわけであります。かといつて違反をして、その結果刑に処せられたということになりますと、これは逆に非常に数が少い。しかも運の惡い者がつかまつておるというような場合がありまして、実情にそぐわないわけであります。從つてそういう形式的な違反とか、あるいは違反した結果刑に処せられたというような形式的な要件でなくて、実際的に判断して行く。惡質と申しますと、法文ではあいまいのようでありますが、実際問題として、社会通念というのがあるわけであります。大体どのくらい違反したら惡質だ、つまり普通の社会常識では認められぬという場合でありまして、その具体的な判断は社会通念によつて行こう、その社会通念を表現するものは漁業調整委員会の判断であると考えて、委員会の運営に持つて行こう、こう考えておるわけであります。
それからこれもよく御質問があるのでありますが、これは一回惡いことをしたら免許はしないのか、そういう御質問もありますが、そういうふうな懲罰的な意味ではありません。これはもしもその者に免許したらば、今後惡質な違反をするであろうというような者には免許をしたくないわけでありますが、その場合に、漠然とこの者は惡質な違反をするであろうということは非常に危險でありますので、その惡質な違反をするかどうかの判断は過去の実績に求める。過去にかつて非常な惡質なことをしている。その後も改心の情がなく、ずつと惡質を続けて今後も続けて行くだろうと思われる場合には、免許いたさない。かつて一度違反をやつてもその後は法規を守つているという場合には、これには当らないわけであります。
次の「労働に関する法令の惡質な違反者であること。」これも大体同樣の内容であります。その労働に関する法令と申しますのは、具体的には労働基準法、それから労働基準法は三十トン以下の漁船に適用になるわけでありまして、三十トン以上の漁船になると船員法であります。この労働基準法あるいは船員法、それから労働組合法、大体これがおもなものであろうと思つております。このほかに労働関係調整法でありますとか、あるいは船員保險法、その他の労働者保護のための保險法規、それから職業安定法というようなものもございますが、主として漁業で問題になるのは労働基準法関係、それから労働組合法の第十一條違反、こういうものが問題になるだろうと考えております。漁業に対しまする労働法規の適用といたしましては、法規自体が大体近代的な労働者を対象として書いてあるという関係で、非常に漁業には形の上では当てはまりにくい点もあるのでありますが、その実際の内容から申しますと、十分に漁業に適用しても当然な規定であります。その中で漁業で問題になりますのは、実際はそうは多くないので、労働基準法ないし船員法で実際問題になつて來るのは大体二つくらいであろう。その一つは最低保障をつける規定である。全歩合は認められなくて、最低保障は必ずつけなければならぬ。その最低保障をつけろという規定に違反した場合、これが一つであります。もう一つは災害補償、死んだ場合に補償する、あるいは病気やけがした場合に治療費を出してやる。そういう災害補償の規定がありますが、これに違反した場合、大体この二つであろう。それと労働組合法の第十一條違反、組合運動に熱心であつたから首を切つてしまつた。この三つくらいであろうと思つております。現在ではまだ労働法令も十分認識されておりませんし、特に漁業では徹底を欠いて一般的に行われていないわけでありますが、この法の改正が実際に行われまする二年後には、労働法令の内容は十分理解されて行われるであろうという、ふうに考えております。
次の第三号は、これは海区委員会の投票の結果、総委員の三分の二以上の委員が漁村の民主化を阻害すると認めたら免許はしない。こういうわけであります。これは一見いたしますと非常に乱暴のように見えるかもしれませんが、実際問題としましては、総委員の三分の二でありまして、出席委員ではございません。委員が十名でございますが、その三分の二、つまり七名以上が漁村の民主化を阻害すると認め、それほどの圧倒的の多数で認めた場合にはやむを得ぬだろう、よほどの場合だろうと考えられるわけであります。これは一々投票するわけではなくて、普通は一号、二号を判断して、特にどうもこの人間については問題があるから投票してみようと言われた場合は、投票する。その結果三分の二の圧倒的な多数で漁村の民主化を阻害すると認められたら免許はしない、こういうわけであります。
次の第四号は、この前の一、二、三号をもぐるものを押さえる規定であります。適格性のない者が、自分が表面に立つて申請すると、適格性がないからといつて免許がもらえない。そこで自分は陰に隱れまして、この條件をパスしますものを表面に立てる。その裏で、あるいは共同経営でありますとか、あるいは仕込みでありますとか、そういう関係で実際の経営を支配して行く。そういう場合を押えようというわけであります。從つてこれは経営の内容を判断しなければならないので、なかなか運用はむずかしいわけであります。
この四号について見まして、そのいずれかに該当したならば適格性がないとして免許はいたさないわけであります。なお適格性は漁業権を持つておる間ずつと保持しなければなりませんので、單に免許をもらう場合だけではありません。もし免許をもらつたあと、たとえば漁業法違反をした、そうして適格者でなくなつた場合には、ただちに免許を取消すということになつております。これは第三十八條第一項でありますが、適格性を有する者でなくなつたときは免許を取消さなければならないというふうにいたしております。取消すことができるという表現ではありません。現行法の取消し規定は、できるという表現でありますが、これは取消さなければならないとして、常に適格性を保持して行くようにいたしております。適格性の規定は、非常に嚴密に書いてありまするが、実際問題といたしましては、大体は適格性をパスするのではないかというふうに考えております。從つて適格性をパスしました者の間では、次の第十六條以下の優先順位できめて行くことになつております。
それから第二項以下の適格性、これは少し趣旨を異にいたします。これは先ほど申しました通り、共同漁業権とそれからある種の区画漁業権は、協同組合権が持つて組合員にやらせるわけであります。そういう漁業権をどういう組合が持てるかという協同組合の適格性を規定いたしたわけであります。第二項は区画漁業権についてであります。これを要約いたしますと、地元の協同組合で、地元の関係漁民の三分の二以上を含んでおる組合に免許をいたすわけであります。地元の協同組合で地元の関係漁民の三分の二以上を含んでおる組合であつたならば適格性があるわけであります。その関係漁民と申しますのは何かと申しますと、これは区画漁業権の場合でありますと、たとえばのりでありますと、のりの漁業を從來からやつていた漁民、これが関係漁民でございます。そうして協同組合が持てまする区画漁業権というのは、ひび建養殖業とかき養殖業と内水面の魚類養殖業と、第三種の貝類養殖業を内容とする区画漁業権でありますが、関係漁民というのはそれらのおのおのの漁業をやつておる人間で、但しそのうち内水面の魚類養殖業と第三種区画漁業たる貝類養殖業については、やつていた人間だけではなくして、從事していた者、それから養殖をする人間のみでなくてとるだけの人間、これも関係漁民の中に含めるわけであります。これは少し内容がこまかくなりますが、疑義があろうかと思いますから御説明いたします。これは第二項の第一号の括弧の中の説明でございます。第二項第一号に括弧いたしまして、「内水面における魚類養殖業云々」と書いてございます。この意味なのでありますが、この内水面の魚類養殖業とか、あるいは貝類養殖業におきましては、單に種苗を放つてふやすだけの行爲と、とれるだけの行爲がわかれている場合があるわけであります。たとえば貝類養殖でありますと、貝の種苗をまいて大きくして、大きくした貝を人にとらせるというふうにいたしてある場合があるので、その場合に、とるだけの漁民も関係漁民の中に数えよう、又労働者を雇つて大規模にやる場合もあるので、その場合には從事者も関係漁民の中に数えよう、こういうことであります。ほかのひび建養殖業とかあるいはかき養殖業等ではこういうことはございませんから規定はいたしておしません。それから三分の二以上というのは所帶單位で計算いたします。個人單位ではございません。これは一家に二、三人あつたからといつて、それを個人單位で数えることはおかしいので、所帶單位で見て行こう、こういうわけであります。それから三分の二の計算方法でありますが、これは共同申請の場合には延べで見るわけであります。つまり地元の関係漁民が百人いた。そのうち五十人はA組合に入つておつて、二十人はB組合へ入つておつたという場合に、ABが共同に出願した、これは両方を通じて見ますと七十人になつて三分の二以上でございますから、この共同申請体には免許をいたすというわけであります。連合会で出願いたした場合にも、やはりその單位の組合の組合員を延べで見るわけであります。延べで三分の二以上あればよろしいというわけであります。それからただいま地元と申し上げましたが、この地元とは何かということは、あとで関係地区という言葉が出て参りますので、それとあわせて御説明いたします。それから業種組合には適格性は認めておりません。地区組合に限るわけでございます。これはたとえば貝なら貝をやる者だけで貝の組合をつくつて漁業権を申請したという場合に、その組合に貝の漁業権を免許いたしますと、その組合内部ではうまく行くかもしれませんが、その貝と漁場がだぶつて、あるいはのりがあるという場合が多いので、その場合、貝とのりとを別にしてしまつたのでは漁業調整ができないという関係がございますので、地区組合に持たせるというふうにいたしております。それからただいま御説明いたしましたように、関係漁民の三分の二以上が入つている組合に免許をいたす、こういうふうにいたしたわけで、これは本來なれば関係漁民全部網羅してほしいわけであります。しかしながら全部ということになりますと、協同組合の加入脱退自由の原則等もございますので、それと調整をとつて三分の二としたわけなのです。從つて逆に三分の二だけで漁業権をもらいますために、故意に残りの三分の一の人間を排除するという場合も考えられますので、そういうことのないように員外者、つまり協同組合員外の者を保護する規定をいろいろと設けております。これが第三項、第四項でございます。これもこまかい規定はございますが、一應御説明いたしますと、地元地区に百人いた。その場合七十人だけで協同組合をつくつて漁業権をもらつたという場合、残りの三十人はどうするかという問題でございます。この場合に、協同組合法の第二十五條の加入拒否の制限に関する規定がございまして、正当な事由がなければ加入を拒めないということになつておりまして、それで救えるわけでありますが、地元地区が廣くてその中に協同組合が二つできたという場合がございます。その場合に片方の組合だけで三分の二になるので、そこだけで申請して漁業権をもらつてしまつたという場合には、残りの三分の一の組合は自分も共同で漁業権をもらうように申請してくれというように申し出でられるというわけであります。三分の二あるからといつて單独では申請はだめだ。残りの三分の一が自分も共同で仲間に入れてくれという要求があつたならば、一諸に共同申請しなければならぬということで、これが第三項に規定してございます。第四項も同じような趣旨であります。
それから第六項から第九項吏では共同漁業権の適格性、どういう協同組合が共同漁業権が持てるかという規定であります。これは考え方は今の区画漁業権の場合と同樣でありまして、地元地区の関係漁民の三分の二以上を含んでいる組合、これが適格性があるわけであります。この場合に関係漁民と申しますのが、区画漁業権の場合の関係漁民とは少し違つておりまして、区画漁業権の場合はその漁業を営んでおる者でありますが、共同漁業権の場合の関係漁民と申しますのは、一年に三十日以上沿岸漁業を営む者であります。これは第六項の第一号に、「一年に三十日以上沿岸漁業を営む者云々」と規定してございます。この共同漁業権と申しますのは漁民の固有権である。漁民であれば、だれもやれるものであるというような思想からしまして、從來だれがやつていたかということは問題にいたさないで、いやしくも一年に三十日以上沿岸漁業をやつておればよろしい。こういうふうにいたしたわけであります。一年に三十日以上というのは、協同組合員の最小限度の資格と同じであります。それからここに関係地区という言葉が出て参ります。先ほど区画漁業権の場合には地元地区というふうに申しましたが、この地元地区と関係地区とは実は内容は同じであります。ただ片方は区画漁業権で、片方は共同漁業権である、その法的な効果も若干違いますので、片方は特に関係地区といつて、言葉だけを違えたわけで、内容は同じであります。すなわち何が地元地区、ここでは関係地区であるかと申しますと、これは從來免許をいたします場合には、二つの免許方針をとりました。一つは地先主義、もう一つは慣行主義でありました。つまり現行法では慣行があれば必ず漁業権を免許する。まずこうなつております。それからもう一つ、專用漁業権は地先水面で出願した場合でなければ免許しない。こういう地先主義と二つがあつたわけであります。今度の漁業法では、そういう地先主義とか、あるいは慣行ということは言わないで、つまり慣行だから当然に免許する。あるいは地先だから当然漁業権をやる。地先でなかつたら免許しないというような固定的、形式的なやり方はやめまして、地元地区ということで、地元の組合に免許して行く。あるいは地元の者に優先的にやらせるというふうにいたしたわけであります。この地元と申しますのは何かというと、法の第十四條の第二項の括弧の中でありますが、「自然的及び社会経済的條件により、当該漁業の漁場が属すると認められる地区をいう。」と非常に抽象的な文句で書いてございますが、自然的と申しますのは大体地理的という意味であります。だから、その漁場は地理的に申しましてどこに近いか。地理的と申しましても、何も嚴密な意味で最短距離はどこだというような狹い意味ではありません。しかしあまり飛び離れたところは地元と言えぬわけであります。たとえば千葉縣の海を從來神奈川の人間が使つておつたからといつて、神奈川を地元の組合とはちよつと言えないわけであります。大体漁場の附近という、その程度の廣い意味で、地理的にどこに近いかということを意味するのでありまする
それから社会経済的條件と申しますのは、これは端的に申しますと、生活の依存度ということであります。つまり從來その漁場をどの漁民が使つておつたか、そこの漁村の状況はどうであつたか、漁民の数はどのくらい、あるいはそこの漁業はどんな漁業があるかというふうに、從來どの漁民が使つておつたか、そこの漁村の産業構成でありますとか、あるいは漁業の状況でありますとか、漁民の数でありますとか、そういうことを総合的に見まして、どこの地区の漁民にやらせたら一番いいかという、生活の依存度ということできめるわけであります。從つてあらかじめ漁場計画をきめまして、前もつて免許いたします漁業権の内容がきまるわけであります。そのきまつた漁業権につきまして、その漁業権を利用させるのはどこがいいだろうかをきめる。どこの部落がその漁場に近いか、あるいはどの部落がその生活の依存度が高いかということを総合的に判断して、地元地区をきめて行く。きまつたら、その地元地区の三分のこ以上の関係漁民が入つている組合に免許をして行く。こういうわけであります。よく地元地区のきめ方と協同組合の地区の関係はどうなるんだという御質問がございますが、これは形式的に申し上げますと、地元地区をどうきめるかということと、協同組合の現実の地区がどこかということとは一應は無関係でございます。從つてりくつから申しますと、協同組合はただいまはできておるわけでございます。そうして新しい漁業権の再配分が行われますのは、二年後でございますから、そのときはすでに組合ができているというようになりますが、そうした場合に、從來できておりまする組合の地区を分割して、地元地区をきめるという場合も理論的にはあり得るわけでございます。しかし実際上はそういう組合の地区なんかも考え合せて、大体きめて行くという考えでございます。こう申しましても、これは一應抽象的な御説明でございまして、具体的な漁業権につきまして、この地元はどこかということをきめるのはなかなか難問でございます。それは第一次的には調整委員会にきめさせて行こうと考えております。
それから先ほど区画漁業権の場合で御説明いたしました協同組合の員外者保護の規定につきましては、区画漁業権と同樣でございます。第七項で第三項から第五項までの規定を準用いたしております。
それからもう一つ員外者保護の規定といたしまして、おれは組合に入りたくないという者があるわけでございます。新しい協同組合は加入、脱退自由でございますから、むりに入れと言えぬわけでありまして、その場合入らなかつたから、漁業権の内容の漁業もやれないということは不都合なわけでございます。協同組合というのは、これは二つの機能を営みますので、一つは経済事業——販賣事業、購買事業、信用事業、利用事業というような経済事業、それから漁業権を持ちまして、これを管理するという仕事があるわけであります。この場合経済事業の点では、おれはこの組合に入るのはいやだと言つたからといつて、漁業権もやらせないというわけには行かないのでございます。組合に入らなくても、共同漁業権の内容になつております漁業をやれるというのがこの八項の規定であります。これは先ほど申しました第六十七條の調整委員会の指示の規定がありますが、調整委員会が指示をいたしまして、たとえば共同漁業権を持つております組合に対して、どこそこの者の入漁を拒んではならぬという指示をいたしまして、その指示でもつて漁業権の効力を押えておいて、組合員外の者に漁業をやらせるということはできるわけでございます。そういう一般的にできますものを、特に関係地区内の漁民で協同組合に入らない人間があつた場合には、その組合と入らない漁民との間を調査いたすように何らかの指示をする。たとえば一年に幾日間は組合員外の者であつても、入漁をやらせてやるとか、全面的に入れてやるとか、何らかの形で必要な指示をするように義務づけております。これが第八項の規定でございます。こういうように加入脱退自由の原則をとつている協同組合に漁業権を持たせるという関係から、組合に入らない人との関係を調整するために、いろいろこまかな規定を書いてあるので、非常に複雜でわかりにくいことと思います。これは組合員以外の者も保護しているのでありますが、それでは組合に入らないでもよいかというと、やはり組合に入つた方がよいわけであります。
第九項、共同漁業権を持たせるのは原則として協同組合だけでありますが、第一種の共同漁業、根つけ、磯つけの漁業を内容とします共同漁業につきましは、市町村も持てるようにしたのでございます。慣行があるから当然持たせるという意味ではございません。從來からも漁業権を持つており、しかもその地区のいろいろの特殊事情によりまして、協同組合にやらせるよりは、町全体でやらせた方がよいという場合に免許をいたすわけでございます。靜岡縣等に主として、てんぐさ等海草類を内容として町で持つている專用漁業権がございますが、町は今度は絶対に持てないという意味ではなく、一應、持てるようにする。しかしこれは二十條の優先順位の規定によりまして、もしその町であつても、地元に協同組合ができて、それが出願したときには、優先権は協同組合にあるわけでありますが、一應適格性を持たせたわけでございます。
次は優先順位の規定であります。これは第十五條から第二十條までございます。第十六條は定置漁業権の優先順位、第十七條、十八條、十九條は区画漁業権の優先順位、第二十條は共同漁業の優先順位であります。まず十六條が一番代表的な規定でありまして、他の條文はこれを準用しておりますから、これについて御説明いたします。
優先順位と申しますのは、法律で順番をきめるわけでありますが、実際問題としましてこれは非常にむずかしいわけであります。全國的に見まして、いろいろ事情を異にしておりますから、抽象的に一律の基準を設けるのはむりがあるので、そういう所は委員会の御判断で具体的にきめて行くようにいたしております。第十六條は、長くて、技術的な規定も入つておりましてわかりにくいと思いますが、これを結論的に申しますと、定置漁業権の順番は三つのグループにわかれる。第一順位が協同組合自営または組合自営に準ずるような全村的漁民経営、第二順位は生産組合、第三順位が組合とか生産組合以外の通常の経営体——個人経営とか会社経営。そして第三順位の間でさらに順番をつけているわけであります。協同組合が一番であるということを表現いたしましたのは第九項であります。それから生産組合を第二順位といたしましたのは第六項であります。第三順位であります通常の経営体につきましては、第一項から第五項までに規定してございます。それから協同組合よりも優先する特例的な第一順位が第十項でございます。しかしこれはあとで詳細御説明いたしますがきわめて特例でございまして、他の経営体の申請と競合することは、実際問題としてはないと思います。これは適用になりますような地区もごくまれな場合しか予想いたしておりません。
この協同組合を優先させたについていろいろ各地から意見が述べられておりますが、なぜ協同組合を優先させたかと申しますと、大体漁場は沿岸漁民の総有であるというのを基本観念にとつております。その場合に、総有漁場の利益というものを沿岸漁民全部に帰属せしめる形としては協同組合自営という形であるという観点が第一であります。もう一つ今後の漁業の経営形態でございますが、今後漁業経営はますます逼迫いたして行くであろう。個別の経営では非常に困難である。沿岸漁業というものは個別経営ではなく、全村的な共同経営にならざるを得ないのではないか。そういう経営形態の見通しを考えまして、協同組合自営ということを正面に立てたわけでございます。しかし一應協同組合自営ということを法文上は優先しましても、問題は資金、資材の点でございます。この点ではたして組合でやれるかどうか。組合がやれる場合は実際には限られております。ます漁場が安定しておりませんと、組合自営では手が出せぬわけであります。そういう漁場の安定という点と、申う一つは漁民の連帶意識と申しますか、もうかつたときに、あいつ一人にもうけさせるのはけしからぬ、おれも仲間に加えろという気持でなく、もうかつたときも苦しいときも全部で経営して行くのだという漁民の連帶観念、そういうものが必要なわけでありまして、こういう條件が備わり、さらに資金、資材の確保があつて初めて協同組合自営というものが、できるわけであります。この自営の要件といたしましては、漁業を営める場合の要件を協同組合法の第十七條に規定してございます。この組合法に規定してありまする第十七條の要件を満たしておりますることが一つで、もう十つは地元の漁民を原則として全部網羅していることであります。組合自営を優先させる趣旨が漁場の総有に基くという趣旨からいたしまして、関係漁民が全部網羅されていることが要件でございます。この関係漁民を原則として、全部網羅するということを、法文では「地元地区内に住所を有する漁民の属する世帶の数の七割以上であること。」と表現しております。そして組合法の十七條の組合自営の要件を、この漁業法の趣旨に合せて改正いたしております。これは施行法の第二十條で、「水産業協同組合法の一部を次のように改正する第十七條第一項を次のように改める。」といたしまして改正いたしております。この改正いたしました組合自営の要件は三つございます。一つは出資組合であること、もう一つは原則として組合員の労働力でその漁業をやること、他から労働力を雇つて來ないということである。これを法文では組合の営む漁業又はこれに附帶する事業に常時從事する者の三分の二以上が組合員又は組合員と世帶を同じくする者であり」と表現してございますが、このように原則として組合員の労働力でその漁業をやるということ、これが第二の要件であります。もう一つの要件は、「組合員の三分の二以上の書面による同意」ということであります。自営ということは容易ならぬことでありまして、もし失敗したら組合員全部に響く大問題でございますから、單に総会の議決というだけでなくて、三分の二以上の書面による同意ということを要件にしたわけであります。この組合自営の三つの要件と、さらに地元漁民を原則として全部網羅しているということ、この四つを合せました場合に優先的に免許するわけであります。それから形式上は協同組合自営でありませんでも、内容が組合自営と同じである場合は免許いたすというわけであります。これが第九項の後段で「又は」以下に規定しておるのでございます。これは法文では「又は地元地区内に住所を有する漁民によつて構成される法人であつて」といつて、何か会社を予想しているのかというふうに意味がとれるかもしれませんが、実はこの法人と申しますのは、一番最後の第十六項で、「法人以外の社團は、前十五項の規定の適用に関しては、法人とみなす。」と規定してございます、つまり優先順位の條文で法人と書いてございますのは、実は法人以外の社團、つまり大網組合といつたような任意組合を意味しておるのであります。それを法人と一應規定いたしましたのは実は立法技術でございます。そこで、そういうよな大網組合というような任意組合であつても、内容が組合自営と同一であればかまわないわけであります。これは組合自営でありますと、いろいろ形式がめんどうな点もある。特に協同組合というのは、個人單位、個人加入でございます。ところがその自営を認めました沿岸漁場は沿岸漁民の総有であるから、その魚利は沿岸漁民に帰属せしめるという思想からいたしますと、個人單位でなくて世帶單位になるべきわけであります。つまり一所帶に二人または三人いるから、二口持つとか三口持つというわけでなく、一所帶何人おつても一口ずつというわけでありますから、そういう点が個人單位の組合と違いまして、別に大網組合というものをつくることを認めたわけであります。しかしこれによつて組合に対するような嚴密な監督を脱法的にのがれるということはやらさないように考えております。これが組合自営の要件であります。
次が生産組合であります。生産組合は法文では「地元地区内に住所を有する漁民七人以上によつて構成される法人であつて左の各号の全部に該当するもの」と表現してあります。この各号を全部見ますと、大体協同組合法の生産組合の規定とほとんど同じでございます。ただ違います点は、第二号の要件、すなわち構成員の過半数が経驗のある者であるというこの要件が生産組合にはございません。これは特に優先的に免許いたしまする生産組合でありますから、普通の生産組合の要件以上に要件を加重いたしたわけであります。だから全然関係ない漁民が生産組合をつくつて、おれに定置を免許してくれと言つてもそれはだめで、今までその漁業をやつていた、あるいは網子として乘つていたという経驗がなければだめだというわけであります。この生産組合を優先させます理由は、協同組合優先の理由とは違う趣旨でございます。これは先ほど申しましたように、協同組合を優先させた理由は漁場の総有観念でございますが、これはそうではなくて、その漁業に從事する人間の観点に立ちまして、資本も平等に出し合い、労働力も同じに出し合うという眞の共同経営、そういう形態が望ましいから優先的に扱う、こういう思想でございます。その網の関係では、全部が資本も平等に出し合う。また資本を出すだけで資本家的存在でなく、労働も一緒に出し合う。もちろんこの労働というのは、現実に沖に行くだけではなくて、経営事務、資材の購入販賣という点も含むわけであります。それから生産組合を第三順位にするといつても、第八項で北海道においては適用いたさないということにいたしております。これは北海道では、定置の労働者というのは、地元の漁民ではなくて、むしろ出かせぎ漁夫というわけで、生産組合をつくる実体的な基盤がない。しかもこの形を、あるいは加工業者であるとか、あるいはまた問屋であるとか、むしろ商業資本等によつて利用される危險性の方が大きいという点から考えまして、北海道では適用を排除いたしたわけであります。だから北海道では生産組合がいけないというつもりではないのであつて、もしも北海道でもこういうほんとうに望ましい生産組合の実体ができたならば、もちろん免許いたしていいわけであります。これはあとで御説明いたしまする同順位者間の勘案條件という点を見ましてもわかりますように、そういう生産組合的な経営は優先的に扱うことになつておるわけでありますが、ただ法律上絶対的に優先させることはやめたわけであります。
次の第三順位の通常の経営体、これが第一項から第五項までに規定してございます。この通常の経営体の間では、三つの観点から順番をつけております。まず第一が今まで漁業に関係していたかどうか、漁業をやつていたか、あるいは漁業に從事していたという者とそれ以外の者——これから新しく漁業をやろうという人間、この二つのグループがあるわけであります。そういうふうに從來の漁業関係者と、それから新しく漁業をやろうという人間とこの二つのグループにわけまして、この二つのグループの間では、さらに優先順位をきめるために経驗を見るのであります。これが第二項であります。「前項の規定により同順位である者相互間の優先順位は、左の順序による。」といたしまして、この二つのグループの間では経驗で見て行く。その経驗には三つあるわけで、一つは同種の漁業の経驗、次が沿岸漁業の経驗、第三がそれ以外のものの経驗者、こういうふうに三つのグループにわける。それでもなおかつ同順位がございますから、その場合にはその経驗がどこの海区で経驗があつたかという点でわけまして、その申請いたしました漁場のある海区で経驗ある者は、他の海区の経驗者よりも優先的に扱うというふうにいたしております。このように今まで漁業をやつていた者であるかどうかという点で二つのグループにわけ、さらに経驗によつて三つのグループにわけ、さらにその海区の経驗ということによつて二つのグループにわける、こういうふうに順番をつけております。経驗と申しますのは、これは過去十箇年においてその漁業をやつていたか、あるいはその漁業に從事していたことを言うわけであります。十箇年間連続でずつとやるというわけでなくて、その間やつておればかまわないわけでおります。從つてもつともらしく優先順位と申しますけれども、実際問題といたしましては、大体みんな同順位になつて來るという場合が多かろうと思うわけであります。その場合にはこの第五項で第一号から第六号までに勘案項目が書いてございますが、この勘案項目を総合的に判断してきめるというふうになつております。
その勘案項目は、第一は労働條件、もちろん労働條件のいい方がいいわけでありまして、第一が労働條件、第二はなるべくその地元の漁民を労働者として使つてやれ、こういうのでございます。第三は、なるべくなら地元の資本をたくさん集めてやれ、よその資本でなくて、地元の資本で、なるべくたくさんの地元の漁民をその経営に参加させよ、こういうのでございます。第四は、経驗の程度とか、資本とか、あるいは技術とか、そういう経営能力でございます。これは経驗と申しましても、今申しました経驗では、たいていだれもあるような経驗で、その中でさらにどの程度の経驗があるかというふうな、経営能力の点を一つ判断項目にあげているわけであります。第五といたしまして、その漁業への依存度でございます。そのほかにもいろいろ商賣をやつており、あえて定置をやらなくてもいいという者は免許をあえてしないで、どうしても定置でなければやつていけないという者に免許して行く、こういう考え方であります。次に第六といたしまして、漁場を利用いたします場合には、どうしても他の漁業とぶつかるわけであります。たとえば定置を張つておりますと小釣りと衝突する、あるいは刺網とぶつかるというふうに、他の漁業と必ず影響があるわけであります。その場合に、自分だけ我を張つて他の漁業のじやまをする。小釣りはやめてもらいたい、あるいは刺網はやめてほしいということでなく、なるべく協調し合つて水面を総合的に利用して行く。そういうふうな態度が望ましいわけでありまして、そういう他の漁業との協調、その他水面の総合的利用に関する配慮の程度、これを判断いたすわけであります。大体こういう六つの條件をいろいろ総合的に見まして、だれに免許するかをきめて行くわけであります。これが定置の優先順位の規定であります。
そして優先順位の見方につきまして、第十二項から第十六項まででこまかな技術的な規定を設けております。優先順位のきめ方の規定であります。これは非常に手がこんでおるわけでありますが、第十二項は、共同で申請した場合には、優先順位はどう見るかというわけであります。三人で共同申請した、そのうち二人は從來からの漁民であつた。一人はこれから新しく漁業をやろうという場合、三人の共同申請体の順位はどう見るかというわけでありまして、その三人の共同申請体は漁民と見る、こうわけであります。それからこれも非常にこまかいのでありますが、四人出願して、二人は漁民二人は非漁民という場合にはどう見るか。その場合には非漁民と見る。順位の落ちる方と見る、これが第十二項の後段の規定であります。
第十三項も同樣でありまして、協同組合と個人とが共同申請をした場合、その場合にはどうするかというのであります。これも同樣にどちらが議決権及び出資額で過半数を占めているかによつてきめるという規定であります。
第十四項はこれは法人についての優先順位の見方でありまして、法人が申請いたしました場合には、先ほど優先順位の項目たる漁業者、または漁業從事者であるかどうか、あるいは経驗があるかどうかという点は法人自体について見るわけであります。この場合、法人自体といたしますれば経驗がない。たとえば從來の経驗者でもつて会社をつくつたという場合には、その合社自体としては経驗がないわけであります。しかしそれを内容的に見ますと、その会社の構成員は経驗のある漁民であるという場合には、その会社は経驗者と見よう、こういう規定なのであります。つまり法人自体としては優先順位が惡くても、構成員に割つてみた場合に、優先順位は上の方にあるという場合には上の方に見よう、こういうことであります。
次の十五項、これも非常にこまかな規定なのでありますが、これも十六條の第二項で優先順位が三つあるのであります。同種の漁業の経驗と、沿岸漁業の経驗と、それ以外の経驗と三つあるのであります。この場合に、たとえば十六で申請した、そのうち三人は同種の漁業の経驗者、四人は沿岸漁業の経驗者、三人はそれ以外の漁業の経驗者、こういつた場合にはいずれも過半数にならないのであります。いずれも過半数にならないと、先ほど御説明いたしました第十二項では一番下の順番と見る、こういうことなのでありますが、その場合には同種の漁業の経驗者と、沿岸漁業の経驗者とを合せると七になつて過半数になる、そういう場合にはこれは当然沿岸漁業の経驗者として見るべきでありますから、第十五項にこのように規定したわけであります。この辺十二項から十六項までは立法技術的な規定で、非常に読みにくいかと思いますが、内容はそういうことであります。なおこれはあとで一覧表にして、印刷物でお渡しいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02119490905/12
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013・石原圓吉
○石原委員長 暫時休憩いたします。
午後三時十一分休憩
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午後三時三十分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02119490905/13
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014・石原圓吉
○石原委員長 それでは引続き会議を開きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02119490905/14
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015・松元威雄
○松元説明員 ただいま第十六條で定置漁業権の優先順位を御説明いたしたわけでありますが、次に区画漁業権と共同漁業権の優先順位を御説明いたします。大体の條文の体裁、内容も、定置漁業権の第十六條の規定にならつております
まず区画漁業権の優先順位でありますが、区画漁業権をわけて三つにいたしております。一つは協同組合が管理できる漁業権、つまりひび建養殖業、かき養殖業、内水面の魚類養殖業、第三種区画参漁業たる貝類養殖業、この四つを内容といたしまする区画漁業権これが一つ。それから眞珠養殖業を内容といたしまする区画漁業権が一つ。そのほかの区画漁業権が一つ。この三つにわかれます。まず第十七條は、その他の区画漁業権、つまり協同組合が管理できる漁業権と、眞珠養殖業を内容とする区画漁業権を除きましたそれ以外の区画漁業権の優先順位が第十七條であります。これは実際問題としまして、その他の区画漁業権ですからまあ区画漁業権の一般原則なのでありますが、現在の漁撈技術から申しますと、これに当てはまるものはそう数は多くなくて、大体海の第二種区画漁業—漁類養殖業、えび類養殖業、すつぽん類養殖業、これが大体の内容になるのではないか、こういうふうに思つております。その一般の区画漁業権の優先順位が第十七條のわけでありますが、これにつきましては協同組合とかあるいは生産組合というような漁民國体優先の規定は置いておりません。絶つて通常の経営、定置の場合の第三順位にありました普通の経営体相互間の優先順位だけを規定いたしております。その中におきましては、大体の順番は定置と同じでありますが、定置にない項目を二つ加えております。定置の場合は優先順位をきめまする項目は三つあつたわけであります。つまり今まで漁業に関係していたかどうかという点が一つ。経驗があるかどうかという点が一つ。それからその海区で経驗があるかどうかという点が一つ。この三つを組み合せまして順番をきめたのでありますが、このほかに二つの項目を加えておるわけであります。この二つの項目の中の一つは漁民であるかどうかということが一つ、もう一つは地元に住所があるかどうかということ、これが一つであります。條文では第十七條の第二項と第三項になりますが、第二項で、「前項の規定により同順位である者相互間の優先順位は、左の順序による。」つまり今まで漁業に関係していた者の間の順番では、漁民とそれ以外にわかれるわけであります。この今まで漁業に関係していた者と、漁民とどう違うのかという点でありますが、漁民というのはそのうち個人たる者であります。これは第八條で漁民(漁業者又は漁業從事者たる個人をいう。以下同じ。)というようにいたしておりまして、漁業者または漁業從事者のうち個人をいうわけであります。だから個人経営は会社経営よりも優先するわけであります。なおこれにつきまして漁民会社はどうなるかということですが、漁民会社は実は個人と同じに扱つて優先するのであります。それはちよつと説明が複雜になりますので、お手元にお配りいたしました第十七條中難解な箇所の説明という印刷物がございますからこの方に讓りたいと思います。内容といたしましては、この漁民というのは個人といわゆる漁民会社、つまり日水とか大洋というような普通の会社ではなくて、漁民がつくつた会社、これが漁民に当るのだ、こう御了解願いたいと思います。
次に第三項によりまして、その中ではさらに地元地区内に住所を有する者はよその者より優先するのだ、こういたしております。この住所につきましても法人の場合の住所はどうなるかという問題がありますので、これもお手元の印刷物中に御説明いたしてございます。それはお手元の印刷物中の一番最後のページに書いてあるわけなのでありますが、内容的には、法人の場合には住所は法人自体の事務所がどこにあるかということじやなくて、その構成員の住所はどこにあるか、つまり法人の住所が地元にありましてもその構成員の住所は東京にある、こういう場合にはその会社は地元地区に住所があるとは見ない。逆にその会社の主たる事務所、つまり法律上の住所は東京にあつてもその構成員の住所は地元にあるという場合には、その会社は地元地区内に住所を有するものというふうにいたします。漁民であるかどうかという点と地元に住所があるかどうかという点、この二つの項目を加えただけで、あとは定置の優先順位と同じであります。第六項の勘案項目も表現は多少違えている点もありますが、考え方はまつたく定置の場合と同じでありますから説明は省略いたします。
從つてもう一度要点を繰返しますと、一般の区画漁業—実際問題としましては、海におきまする第二種区画漁業が主たるものでありますが、この優先順位は、漁民團体優先の規定はおかない。通常の経営の間の優先順位でやる。その間では大体定置に準ずるが、定置の優先順位のほかに漁民であるかどうか、地元地区に住所があるかどうかという二つの項目を加える。それについては法人の場合には條文の読み方に少し注意を要する点がある。大体こう御了解を願いたいと思います。
次の十八條は協同組合が管理できる漁業権、ひび建養殖業、かき養殖業、内水面の魚類養殖業、貝類養殖業を内容とする区画漁業権の優先順位でありますが、これは先ほど御説明いたしました適格性のある協同組合が第一順位でございます。もしもそういう適格性のある協同組合が出願しなかつた場合にはどうなるかというのが、第十八條の二項でございます。これは準用しておりますからちよつと読みにくいかと思いますけれども、内容的に申しますと、適格性のある協同組合が出願した場合が第一順位である。もしそれが出願しなかつた場合には定置の優先順位の場合の漁民團体優先の規定を適用いたしまして、組合自営が一番、生産組合が二番、その他の経営が三番、そしてその他の経営の間の順番は、定置の優先順位ではなくて第十七條の普通の区画漁業権の優先順位を使う、こういうふうになります。
次に眞珠養殖業を内容とする漁業権の優先順位でありますが、これは漁民團体優先の規定は置いておりません。從つて通常の経営体相互間の優先順位の規定であります。それは、考え方は大体定置の優先順位と同じでありますが、特に経驗に重点を置いております。從つて今まで漁業に関係があつたかどうかということで二つのクラスにわける、その間では眞珠の養殖の経驗があるかどうかで優先順位をきめるわけであります。それから第三項の読み方がちよつとほかと違つておりますから御注意を願います。第三項では「第一項及び前項第二号の規定により同順位である者相互間の優先順位は、」というふうに規定いたしまして、ほかの場合のように前同項の規定により云々とはいつておりません。前項第二号というのは、眞珠の養殖に経驗のない者であります。経驗のない者の間では地元に住所がある者が住所がない者に優先する、こういうふうになります。從つて眞珠の養殖に経驗のある者は住所の有無を問わず第一順位である。眞珠の養殖に経驗のない者の間では、地元の者が優先し、地元外の者が順位は落ちる、こういうふうになるわけであります。勘案項目も大体定置の場合と同じでありまして、これも眞珠という漁撈技術の特殊性にかんがみまして、多少字句の表現をかえておる程度であります。その他條文の読み方はいずれも定置の場合を準用いたしておりますから省略いたします。
第二十條は共同漁業権の優先順位であります。これは共同漁業権につきましては、第二種共同漁業から第五種共同漁業までは協同組合しか持てませんから、優先順位ということは起り得ないわけであります。ただ第一種共同漁業につきましては、特例的に慣行によつて市町村にも適格性を認めておりますから、その点の優先順位を規定したわけであります。第二十條によりまして第一号の「第十四條第六項の規定により適格性を有する者、」つまり協同組合が、第二号の、「同條第九項の規定により適格性を有する者、」つまり市町村よりも優先する、こういうわけであります。以上で優先順位の御説明を終ります。
第二十一條以降は漁業権の内容であります。まず存続期間でありますが、これは現行の漁業権の存続期間よりも大幅に縮めております点が一つ、もう一つは更新制度を認めておりません。これは從來の漁業権では二十年以内となつておりまして、しかも更新制を認めておりますので、一旦免許いたしますと、ずつと続くわけであります。ところがその間に漁況は違つて参りますし、漁法も進歩する。それからまた免許を受ける方の漁民の状態も違つて來る。そういうように、免許をいたします基盤がずつとかわるわけであります。にもかかわらず一旦免許すると固定する、そういう弊を除きますために、期間を短かく限つて、原則として五年、共同漁業権だけは十年、しかも区画漁業権を除いてそれ以外の漁業権については更新制度を認めない、新規免許として新しく免許し直す、こういうふうにいたしております。大体五年目を単位としてもう一度漁場整理をやる、漁業計画をたて直して、新しく免許をし直して行く、こういうわけであります。これは免許を受けます人間の主観的な考え方からいたしますと、あるいは不安感を抱かれるのもごもつともだと思つておりますが、実際問題としましては、まともに経営しておれば次に免許が行かぬということはまずないわけでありまする待つて主観的な不安は客観的にはそう理由はない。しかも漁場の利用法も、それからだれが免許を受けるかも固定さしては困る。そういう固定の弊を防ぐために、短かい免許期間、それから更新制度の廃止、こういうようにいたしたわけであります。なおこれからは、従來のように知事の判断で、二十年以内として十年、五年といつた短期免許をすることは、今度はできないわけで、必ず五年あるいは十年というようにいたし、ただ漁業調整上必要な限度に限つて期間を短かくできるということにいたしております。この「漁業調整のため必要な限度」というのは、たとえば免許してから五年間が一期間でありますが、その間、途中で免許することが例外的にあり得るわけであります。その場合にはその存続期間の終期を一般に合せる必要がありますので、短期免許する、こういう場合をおもに考えているわけであります。なお五年と申しますのは、大体漁業権の賃貸期間等から判断いたしまして、一経営期間としての最小限度は満たしている、しかも固定もしないというようなところをねらつているわけであります。
次に区画漁業権だけ更新制度を認めました理由は、区画漁業権につきましては、実際問題としては大体協同組合が持つわけですし、優先順位もそう定置ほどのウエートはないわけであります。しかも多少固定的な施設もするわけでありますから、更新制度をこれに限つて認めたわけであります。なおこまかいことでありますが、「延長することができる」といつて、「延長」という字句を使つておりますが、内容は從來の、「更新」であります。從來の「更新」という字句は、大審院判例では、更新は新免許なり、といいつてるので非常に都合が惡かつたので、今度は前の免許の延長という法的根拠をはつきりさせて、「延長」という字句を使つたわけであります。
第二十二條の漁業権の分割又は変更、これは現行法と同じでありますから省略いたします。
第二十三條で漁業権の法律的性質を規定いたしたわけであります。そして同條の第二項から第二十八條までで漁業権の讓渡性並びに担保性の制限について規定いたしております。
まずこ十三條の第一項で「漁業権は、物権とみなし、土地に関する規定を準用する。」これは現行法と同じであります。從つて一應物権であつて、第三者に対して物権的請求権を有する。もしも漁業権を侵害したならば、漁業権侵害であるといつて妨害排除を請求できる、このように物権として保護いたしております。しかしながらこの物権という性質は、通常の場合の私有財産権と同じではないのでありまして、多分に公的な性格を帶びているわけであります。と申しますのは、漁業権というのは、ある漁法で漁場を使う場合に、その漁法を第三者の侵害から護りますために、特に物権的な保護を認めたわけであります。ところが大体水面というものは、総合的に利用するので他の漁業者と影響し合う。それが通常の土地のように物権性を振りまわされては、水面の総合利用ができないという点で、その効力にある程度の制限をつけておりますし、それからまた、今度は適格性とか優先順位とかいつて、最も漁場をうまく使つてくれると認められるものに免許いたしたために、免許を受けた人が、本人の自分勝手で漁業権を賣つたり買つたりすることは認めない。つまり讓渡性、担保性を制限いたしている、このように公的な制約を加えております。その公的制約は大別いたしますと行使方法に対する制約、つまり漁業権者であつても、自分かつてに恣意的には使えないという行使方法の制約と、それから讓渡性、担保性の制約、大体この二つに大別されるわけであります。このほかに取消し事由が従来より廣く認められるというような点もございますが、大別しますと行使方法に対する制約と、讓渡性の制約と二つになつておる。そのうち行使方法に対する制約につきましては、あとで説明いたしますが、まず讓渡性の制限についてここで御説明いたします。これは第二項から第二十八條までにずつと規定してあるわけでありますが、これも漁業権の種類によつて、いろいろ讓渡性、担保性をかえて行く。しかも同じ漁業権であつても、その漁業権をだれが持つているか、つまり協同組合が持つているか、あるいは個人が持つているかでさらにかえて行く。場合によつては、讓渡性は認められないが担保性は認めるというように、非常に複雜になつておりまして、條文は煩鎖でございますので、お読みにくいかと思いますが、これもあとで一覧表にいたしまして、この漁業権は讓渡性はある、担保性はないというふうに一覧表で一應お配りいたしたいと思います。内容を結論から申し上げますと、まず共同漁業権は讓渡性も担保性もない、つまり共同漁業権は賣買してもいけないし、担保に入れることもできない。それから区画漁業権は二つにわかれまして、協同組合の管理できる漁業権と、協同組合に管理権の認められない区画漁業権の二つになります。このうち協同組合の有する漁業権、これは先ほど申しましたひび建養殖業、かき養殖業、内水面における魚類養殖業または第三種区画漁業たる貝類養殖業を内容とする区画漁業権でありますが、この協同組合に管理権と認められる区画漁業権につきましては、共同漁業権と同じように扱いまして、讓渡性も担保性もない。それから協同組合に管理権の認められない区画漁業権——眞珠養殖業を内容とするものでありますとか、あるいは海の第二種区画漁業でありますとか、こういうものは讓渡性も担保性も認められる、こういうようになつております。なおこまかいことではありますが、協同組合に管理権の認められる区画漁業権でありましても、場合によつては協同組合が持つ場合と、個人が持つ場合と両方あるわけでありまするその場合に、個人が持つた場合には協同組合に管理権の認められない区画漁業権と同じ扱いをして、讓渡性も担保性も認める。協同組合が持つ場合には讓渡性も担保性も認めないで、共同漁業権と同じ扱いをするというようにいたしております。それから定置漁業権は讓渡性はないが、担保性はあるというようにいたしております。そういう内容をこの第二十三條の第二項から第二十八條までで規定したわけであります。
まず第二項は担保性の制限でありまするこの内容では、定置漁業権と協同組合に管理権の認められない区画漁業権については、抵当権の規定を適用する。それ以外の質権、先取特権の規定は適用しない。それから協同組合に管理権の認められる区画漁業権と、共同漁業権は抵当権も認めない。質権、先取特権は勿論認めない。つまり担保権は一切認めないというわけでありまする
第二十四條は抵当権の設定し得る場合を受けまして、定置漁業権と区画漁業権に抵当権を設定した場合の、抵当権の効力の及ぶ目的物の範囲に関する規定であります。これは現行法と同じであります。第二項は定置漁業権に抵当権を設定する場合には、知事の認可を要する、こういう規定であります。これは定置漁業権は讓渡性は認めないわけであります。つまり賣買はできない。にもかかわらず担保には入れるわけでありますが、場合によつては脱法的に担保に入れることが考えられるわけであります。それを防ぐために担保に入れる場合は知事の認可制をしいたわけであります。
第二十五條は非常にこまかな技術的な規定でありますが、先ほど申しましたように、協同組合に管理権の認められる区画漁業権は、その保有主体が協同組合であるか、あるいは個人であるかで取扱いを異にしておるわけであります。個人が持つている場合には抵当権は設定できるが、協同組合が持つている場合は抵当権は設定できないことになつておりますために、現在個人が持つていて抵当権を設定している、それを協同組合に移した場合には、抵当権は設定できないわけでありますから、抵当権は消えるわけであります。そこで担当権者を保護する規定が必要になるというので、第二十五條の規定を設けたわけであります。実際問題としてはあまり例はなかろうと思います。
第三十六條は、区画漁業権を移轉する場合には、知事の認可を受けよという規定であります。なおここでちよつと御注意願いたいのですが、この区画漁業権という言葉は、ただむき出しで区画漁業権と使つてありますが、実は第二十三條第二項で、「区画漁業権(ひび建養殖業、かき養殖業、内水面における魚類養殖業又は第三種区画漁業たる貝類養殖業を内容とする区画漁業権であつて、漁業協同組合又は漁業協同組合連合会の有するものを除く。第二十四條から第二十八條までにおいて同じ)」というようになつておりまして、区画漁業権とむき出しになつておりましても、実はひび建養殖業以下の協同組合の管理できる漁業権であつて、しかも現に協同組合が持つているものを除いた以外のものでありますから、その点御注意を願います。そういう協同組合が管理できる漁業権であつて、しかも現に協同組合が持つている以外のもの、逆に言いますと、協同組合に管理権の認められない区画漁業権と、協同組合の管理権は認められるが、現在個人が持つている区画漁業権は移轉できるが、移轉する場合には知事の認可を得なさいというわけであります。しかも認可せられる相手方は適格性を有する者に限られるわけでありまする適格性を有する者以外の者に移轉する場合には、その移轉は認可いたしません。從つて移轉は認めるけれども、適格性という免許の最小限度の資格要件が必要である。こういう趣旨であります。
第二十七條は、それ以外の、つまり協同組合に管理権の認められる区画漁業権であつて、現に協同組合が持つているもの、そういう区画漁業権を除いた一般の区画漁業権の規定は第二十六條で、それ以外の漁業権についての移轉の制限の規定が第二十七條、これは移轉はできない。從つて定置漁業権、共同漁業権及び協同組合に管理権が認められて、しかも現に協同組合が持つている区画漁業権、この三つは移轉ができない、こういうわけであります。但し定置につきましては、抵当権を設定することは認めたわけでありますが、この抵当権の実行によつて移轉する場合は移轉はよろしい、こういうわけであります。
それから第二十八條と申しますのは、これもちよつとおわかりにくいかと思いますが、この第二十八條は、第三十八條の第一項と合せて読むわけでありますが、第三十八條第一項によりますと、漁業権者が適格性がなくなつたら取消さなければならないわけであります。そこで漁業権者が死んでそのむすこが相続したという場合に、死んだ父親は適格性があつたけれども、むすこは適格性がなかつたという場合には、ただちに漁業権を取消さなければならないわけであります。それでは相続ということに対して少し酷でありますから、多少猶予期間をおいて、相続で漁業権を取得した者は、二箇月以内に知事に届け出る。知事はその間にその者は適格性があるかどうか調べて、適格性があればよろしい、なかつた場合には一定の期間内に他の者に讓渡しろという通知をするわけであります。その讓渡をするまでは取消し規定を発動しない。もしその一定期間内に讓渡しなかつたら取消し規定を発動して取消す、こういうようにするのが第二十八條の規定であります。從つて相続によつて取得した人間が適格性がない場合には、他の者に讓渡することを認める必要がありますので、第二十八條の第二項の讓渡の場合はこの限りでない、つまり移轉してもよろしい、こういうふうにいたしたわけであります。
どうも規定が少し複雜で入り組んでおりますから、一覧表を後にお手もとにお配りいたします。以上が漁業権の讓渡性及び担保性の制限に関する規定であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02119490905/15
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016・石原圓吉
○石原委員長 本日はこの程度でとどめたいと思います。明日は定刻より出席委員が少数でも始めまするから、さよう御承知を願います。
本日はこの程度で散会いたします。
午後四時二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02119490905/16
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