1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十四年九月六日(火曜日)
午前十時二十一分開議
出席委員
委員長 石原 圓吉君
理事 小高 熹郎君 理事 鈴木 善幸君
理事 玉置 信一君 理事 林 好次君
理事 砂間 一良君
川村善八郎君 田口長治郎君
冨永格五郎君 夏堀源三郎君
田村 久之君 長谷川四郎君
奧村又十郎君
委員外の出席者
水産廳長官 飯山 太平君
農林事務官 久宗 高君
農林事務官 松元 威雄君
專 門 員 小安 正三君
專 門 員 齋藤 一郎君
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本日の会議に付した事件
漁業法案
漁業法施行法案
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02219490906/0
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001・石原圓吉
○石原委員長 これより会議を開きます。
前会に引続き漁業法案並びに漁業法施行法案の逐條説明を聽取いたします松元説明員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02219490906/1
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002・松元威雄
○松元説明員 それでは昨日に引続きまして第二十九條から御説明いたします。
第二十九条は現行法と同じ規定でありますから省略いたします。
第三十条は漁業権の貸付を禁止いたしました規定であります。これは不在地主的な貸付は禁止するという当然の規定であります。一番問題になりますのは、貸付は禁止されておりますけれども、しからば共同経営とか委任とか請負とか貸付類似のものはどうなるかということでありますが、このうち委託経営あるいは請負経営というのは、実質上はその契約内容が当然漁業権の貸付ということを含んでおるのが普通でありますので、実際的に判断いたしまして、これも禁止するつもりであります。共同経営は内容によりまして禁止すべきものと禁止すべからざるもの、また禁止するのがむりな場合もございますので、この第三十條で一律に禁止するということにいたしません。本來から申しますと、その者が最も適当であると認めて漁業権を免許いたしたわけでありますから、免許を受けた者と他の者と共同経営をするということは、嚴密に申しますと優先順位の規定にも反しますし、あるいは免許違反になるのではないかという疑問もあるわけでありますが、事実問題といたしまして、免許後の事情によつて他の者と共同経営をするということが予想されますから、それを一律に禁止しない。ただ共同経営の結果、他の者が実際上その経営を支配いたしている場合には、あるいは適確性の喪失として免許を取消すこともありますし、また優先順位が非常に狂うというときにも、取消すという規定も別に置いております。
第三十一條、第三十二條、第三十三條、この三箇條は多少表現はかえておる点もございますが、実際上は現行法にある規定と同じでありますから省略いたします。
第三十四條は、漁業権の制限または條件に関する規定であります。この制限、條件の規定は現行法にもあるわけでありますが、現行法との違いは、現行法では免許をするにあたつてだけ制限、條件をつけ得たわけでありますが、新法では免許した後でも、海区漁業調整委員会の申請によつて制限または條件をつけることができるように拡大いたしたわけであります。これは免許前だけに制限、條件をつけるのでは不便でありまして、免許後の情勢によつていろいろ調整をしなければならぬ。そうした場合に制限、條件を付する必要があるからであります。
第三十五條、第三十六條は漁業権者が休業をいたします場合の措置であります。現行法にはない新しい規定でありますが、実際問題といたしまして、この規定が発動される場合はそうはなかろうと思います。この趣旨を要約いたしますと、休業しようと思う場合には、あらかじめそれを届け出る。そうして休業期間中は他の者がこの漁業を営める。これは水面の利用という点から申しまして、漁業権者が、休んだからといつて、その水面をむだにあけておくことは適当ではない、それからまた経営者のかつてな休業によりまして、労働者の生活権が脅かされるという点もありますので、他の者が知事の許可を受けて、その漁業権の内容たる漁業を営めることにしたわけであります。
第三十七條から第四十條までは漁業権の取消に関する規定であります。そのうち第三十七條の休業による漁業権の取消、第三十九條の公益上の必要による漁業権の変更、取消または行使の停止、漁業法違反の場合の同樣の措置、これは現行法と内容が同じであります。新しい取消規定といたしましては第三十八條でおります。これは新法で適格性と優先順位の規定を設けましたのに対照いたしまして、免許を受けた後に適格性がなくなつたら必ず免許を取消すということが一つ、それからまた適格性は喪失しないけれども、免許をいたしましたときと経営内容が違つている。たとえば先程申しましたように、免許後他の者と共同経営をする、あるいは仕込、金融その他の関係によりまして他の者が経営を実際上支配している、しかもその実際上経営を支配している人間が表面に立つて出願した場合には、優先順位が非常に下位にあつて当然免許するはずではなかつた、そういうような場合でありましたならば、海区漁業調整委員会の申請によつて漁業権を取消すようにいたしたわけであります。本來ならば、優先順位が多少でも狂えば優先順位の思想とはちよつとマッチしない点があるわけでございますが、かといつて一々こまかな優先順位の相違までを言い立てますと、実情にそぐはないという点がありますので、多少優先順位の狂うことはやむを得ないといたしましても、当然に優先順位が狂つてくるという場合に限つて取消すようにいたしたわけであります。
節四十條は、現行法に錯誤によつて免許をした場合には漁業権を取消し得るという規定があります、しかしながらこれは行政行為の取消事由として一般的に当然のことでございますから、新法ではその点は規定しないで、ただ錯誤によつて免許をした場合それを取消すには海区漁業調整委員会の意見を聞かなければならないと規定いたしたわけであります。
第四十一條は漁業権に抵当権が設定されていて、漁業権を取消された場合抵当権者を保護する規定であります。これも現行法と同じでございますから省略いたします。
第四十二條は、漁業権者が工作物を設置してその漁業権の價値を増大せしめた、しかるに漁業権の免許がもらえなかつた、そういう場合に、もし漁業権の免許が得られなかつたのが適格性がなくなつたとか、あるいは漁業に関する法令違反とかその者の責めに帰すべき事由がある場合は別でございますが、そうでなくて漁業権がもらえなかつたという場合は、せつかく施設いたしました工作物がむだになつてしまう、またそういうふうでは経営に不安を感じて、恒久的な施設をして経営の合理化をはかるということが行われなくなるのではないかというので、そういう工作物を設置して積極的に経営の合理化をすることを推進する意味におきまして、万一漁業権の免許がもらえなかつたならば、その漁業権の免許を受けた人間に対して工作物を買い取つてくれという請求権を認めたわけでございます。ただ実際問題といたしまして、このような恒久的な工作物を設置するということは、第二種の魚類養殖業等の障壁などをば設置する場合を除いてはあまり考えられないわけであります。
第四十三條から第四十九條までは、漁業権に関する規定であります。これはほとんど現行法と同じであります。ただ新しい規定が二條ございまして、一つは第四十四條、もう一つは第四十五條であります。第四十四條に入漁権を結んだ場合には、その内容を書簡で明らかにしておけという規定であります。これは新法では入漁権にすベて設定行為によつて、入漁契約を結ばせるわけでありますから、後日入漁権の存否、それからその内容についていろいろ紛争が起る場合を予想いたしまして、あらかじめ書面ではつきりさせておくわけであります。ただ書面化しなかつたからといつて罰則を受けるとか、あるいは入漁権が無効になる、そういう罰則あるいは効力規定ではなくて、まあ例示規定と申しますか、一應書面化する義務を負わしておいて、もし書面化してなかつたならば、あとで問題が起つたならばその方に挙証責任がある、その挙証責任を果さなければならないという不利をこうむるわけであります。書面にいたします内容は、現行法の入漁権の登録する場合の事項と同じであります。
第四十五條は昨日説明いたしました慣行の入漁権を認めないということとも関連いたすわけであります。もちろん現行入漁権だけに限つた問題ではございませんが、すべて契約によらせますために、漁業権者の自分がつてな都合によつて不当に入漁契約の締結を阻んだ場合に、漁業調整委員会に申し出ますと、漁業調整委員会が裁定をいたしまして、その規定によつて、当然に入漁契約結ばせる、あるいは新たに入漁契約を結ぶだけではなくて、現在の入漁権の内容が適正でないという場合に、それを変更してくれ、あるいは逆に漁業権者の方から、もう入漁権を消滅さしてくれ、そういう請求があつた場合に、相手方が不当に拒んだ場合に、漁業調整委員会の裁定によつて入漁権の変更または消滅をなし得るようにいたしたわけであります。このように新しい漁業調整につきましては、漁業調整委員会というものが非常に大きな働きをするわけであります。その他の入漁権に関します規定は、現行法と同じでありますから、省略いたします。
第五十條は漁業権及び入漁権に関する登録の規定であります。これは多小字句の表現はかえておりますが、内容は現行法と同じでありますからこれも省略いたします。
第五十一條は、漁業法に関する裁判の場合に、その管轄の裁判所がどこかというのをきめる規定であります。一應漁業権は物件とみなされ、土地に関する規定を準用されるわけでありますから、不動産と同じ扱いをされるわけであります。その場合にはその漁業権の所在地は漁業に最も近い沿岸の市町村にあるのとみなす、こういう管轄をきめるための規定で現行法と同じであります。
以上で第二章の漁業権及び入漁権に関する規定の説明を終ります。
第三章の指定遠洋漁業は漁業制度改革と少し趣旨を異にする規定でありますから、別にあとにまわしたいと思います。そうして第二章の漁業権及び入漁権に関する規定と、第四章の漁業調整に関する規定に両者一体となりまして、新しい漁業調整の方式を規律いたしておる規定でありますから、第四章の説明に入ります。
まず第六十五條は、農林大臣または都道府県知事が漁業取締規則を定め得るという規定でありまして、現行法と同じであります。いかなる事項について取締規則を制定できるかという点も同じであります。農林大臣が定めます場合には省令、それから知事が定めます場合には縣規則できめるわけであります。この省令または縣規則できめました事項については罰則を設け得るのでありまして、この罰則の限度として、第三項で省令の場合は二年以下の懲役、五万円以下の罰金、縣規則の場合は六箇月以下の懲役、一万円以下の罰金というふうにいたしております。なおここで第三章の指定遠洋漁業とも関連いたすわけでありますが、この第三章の指定遠洋漁業となつておりますのは、現在の農林大臣許可の漁業とは必ずしも範囲が一致しておりません。それより狭いわけであります。たとえば以東の底引き網漁業であるとか、百トン未満のかつお、まぐろ漁業というのは、現在農林大臣の許可になつておりますけれども、指定遠洋漁業には入つておりません。これらのものはどうなるかという疑問があるようでありますが、これはこの第六十五條によつて從來と同樣に、やはり省令で取締規則をきめ、農林大臣の許可にいたす予定であります。そうしてこの漁業取締規則違反をいたしました場合の罰則は、今申しましたように、省令の場合で二年以下の懲役、五万円以下の罰金、縣規則の場合で、六箇月以下の懲役、一万円以下の罰金で、第十章の罰則で第百三十八條に規定してあります漁業権関係の罰則――無免許操業あるいは漁業権の制限條件に違反したというような漁業権関係の罰則の方は三年以下の懲役または二十万円以下の罰金として、この方がはるかに罰則が重くて、少し均衡を失するようでもありますが、これは漁業権に関しましては、法律で規定をきめております。しかるに今申しました以東底びき網であるとか、あるいはかつお、まぐろ漁業の百トン未満のもの、その他縣の漁業取締規則できめられます漁業は、法律で実体的にきめてなくて、その内容を命令に委任してある、從つて命令にどんな内容をきめるかわからないので、ただちに重い罰則をきめるわけには行かないというような事情がありまして、実体的には多少罰則の均衡を失する点があります。それから知事が縣の漁業取締規則をきめます場合には、その縣内の海区に設置された海区漁業調整委員会の委員で縣の連合海区漁業調整委員会をつくりまして、その意見を聞いてきめるようにいたしております。なお新しい制度では内水面については法律では別規定を設けておりますし、取締規則も別に海のほかに内水面漁業取締規則というものの制定が予想されるわけでありますが、それにつきましては、内水面の漁業管理委員会の意見を聞くというふうにいたしております。
次は第六十六條の許可を受けない地びき網等の禁止という規定は、なぜここにこう規定したか、非常におわかりにくいと思うのであります、これはこういうわけであります。第六條の五項で共同漁業権の内容を規定してありますが、その共同漁業権の内容といたしまして、根付漁業のほかに第二種共同漁業、第三種共同漁業、第四種共同漁業といたしまして、小定置でありますとか、あるいは地びき、船びきその他の漁業を漁業権の内容に入れたわけであります。ところがこれらの漁業が共同漁業権の中に入つて免許されますと、これらの漁業をやり得る者は、その免許を受けた地元の組合員だけに限られるわけであります。ところがこれらの漁業を地元の協同組合員だけにやらしてよいかどうかという点は、少し問題があるのでありまして、たとえば小定置であつた場合に、從來から地元外の者がずつとその小定置を経営していたという場合があるのでありまして、それを地元の組合にやらせて、地元外の者にやらせないということは不都合なことが多いわけであります。もちろん從來のように漁業権の貸付が認められておりますれば、その場合組合外の者には貸付をするのでありますが、それも第三十條によつて禁止されておる。そうしますと從來から組合外の者が利用しておるという関係からいたしまして、今後もその小定置は組合外の者に利用させるべきであると認められる場合には、その小定置の区域だけを初めから除外して、残りの部分を地元の協同組合に免許いたすというわけであります。そして地元の組合に免許しなかつた部分の小定置、地びき、そういうものは第六十六條によりまして、許可漁業にして、許可を受けて組合外の者にやらせる。こういうふうにいたしたわけであります。共同漁業権を地元の協同組合に持たせて、しかも組合外の者に貸付を認めなかつたということは多少むりな規定でありますが、そういう趣旨で第六十六條を規定いたしたわけであります。
なお若干こまかくはなりますが第一項の但書で、「但し、共同漁業権の内容となつている場合及び都道府縣知事の定める場合」というのは、漁業権の内容となつておりますれば、さらに許可を受けることは必要ないようににすべでありますし、それからこれらの漁業であつても、どの縣でも全部許可を要するというのではなく、縣によりましては自分のところは自由漁業でよろしいという場合も考えられるわけであります、そういうことを予想いたしまして、縣によつて自由操業にした方がよいという場合は、許可を受けることを要しないようにする、そういう意味でこの但書があるわけであります。
次の第六十七條は新しい漁業調整の方式の眼目となる規定であります。非常に廣汎でかつ強力な規定であります。昨日も取上げましたように新しい漁業法のねらいは、水面の総合利用ということである。水面の総合利用をいたしますための漁業調整の方式として、漁業調整委員会が一方では漁業権の免許あるいは入漁権の裁定、許可漁業の許可をする。それから免許したあとでありましても、第六十七條の指示という権限によりまして、漁業権または入漁権の行使方法、それから許可漁業、自由漁業でありまして、その漁業の仕方、漁場の利用方法、そういうことにつきましてさしずをいたす。そのさしずに從つて漁業調整をやつて行く。こういう仕組になつておる。その根拠規定であります。從來の漁業権による漁業規律、あるいは取締規則による規則では、その規律が固定的また一般的でありまして、具体的事情に應じて具体的に調整して行くのには不十分だつたわけであります。今度はそういう漁業権による規律、あるいは漁業取締規則による一般的な規律はもちろんのことでありますが、そのほかに随時必要に應じて融通自在に委員会が指示して行く、その指示により漁業調整をにかつて行くというふうにしたわけでありまして、この指示権がうまく発動されるかどうかということによりまして、新しい漁業調整がうまく行くか行かぬかの境目になるという重大な規定であります。この指示は何に対しても指示ができるという非常に廣汎なものであります。この指示権がどのくらい重要かということは、一例を申し上げますと、從來はいわゆる回遊魚を運用漁具でとるような漁法は專用漁業権の内容となつておつたものが多いのであります。それを今度は共同漁業権の内容からはずした。そうしますと一應それは許可ないし自由漁業となるわけであります。しかしそれは全然自由になるというわけではなく、その間の調整は第六十七條の委員会の指示によつて調整をはかつて行くというところに期待しているわけでありまして、もしこの期待通りに指示が果されなかつたならば、漁業権の内容から回遊魚をはずしたことがかえつてマイナスになるわけでありまして、この指示のいかんが新しい漁業法の死命を決するといつても過言ではないというふうな規定であります。この指示は第一次的には委員会が発動いたしますが、これだけでは法的の拘束力はないわけであります。もちろんその指示に從つて漁民がそれに服從すれば問題はないわけでありますが、もしその指示に從わなかつた場合には、ただちに指示違反だから罰則がかかつて來るというのではなく、もしその指示に從わないものがあつた場合には、委員会が知事に対してこの指示に從うべきことを命じてくれといつて申請をするわけであります。知事はその申請を受けましたならば、それに対して異議がない、またあつてもその理由がないという場合に、その指示に從えという命令を下す。そしてこの命令に違反した場合にのみ罰則がつく。こういうふうに知事の個別命令によつて法的な裏づけをしているわけです。またその指示を妥当もないと知事が認めた場合には、委員会の申請した指示を取消すことができるというように最後の決定権を知事に持たしておくというふうにいたしております。
次の第六十八條から第七十條までは漁法の制限に関する規定でありまして、爆発物、有毒物の使用の禁止、それから爆発物、有毒物を使つてとつた魚の販賣禁止という規定でありますが、現行法と同じものであります。
第七十一條のさく河魚類の保護に関する規定でありますが、これもほとんど現行法と同じ規定であります。ただ若干違いますのは、從來は工作物の設置の制限または禁止に関する一般法規命令を下せたわけでありますが、新法では法規命令のほかに設置の制限または禁止の個別命令を下し得る。從つて省令を出すこともできるし、又直接個別命令を下して設置を制限したり禁止したりすることもできるというふうに拡げております。内水面では今後発電工事等の関係で重要な意議を持つて來るわけであります。
第七十二條は漁場または漁具の標識に関する規定、これは現行法と同じであります。
第七十三條は初めにもどりまして、総則の漁業法の適用範囲――第三條であります。第三條で公共の用に供しない水面には一應漁業法の規定は適用しないわけでありますが、今御説明いたしました漁業調整に関する命令とか、禁止漁法、そういつた規定は公共の用に供しない水面であつても、これとつながつている水面では、その水面でたとえば有毒物を流しますと、公共の用に供する水面にも影響があるわけでありますから、これらの規定に限つて公共の用に供しない水面であつても、漁業法の規定を適用するというわけで、現行法と同じであります。
第七十四條は漁業監督公務員に関する規定であります。これは現行法にもある規定でありますが、少し内容を違ております。今まで御説明いたしましたように、漁業秩序をいろいろきめるわけでありますが、問題は漁業秩序をきめたわけではなくて、それがいかに実行されるかということであります。その場合に、水面における警察力は非常に不備でありまして、單なる一般の警察力だけではなく、漁業の実態に通暁した者が取締ることが非常に必要なわけであります。そのために一般の警察官、あるいは海上保安官、そういうもののほかに漁業関係の官公吏の中から、あるいは漁業監督官あるいは漁業監督吏員――官吏の場合には漁業監督官と言い、縣の吏員の場合は、漁業監督吏員と申します。從來は両者をひつくるめまして漁業監督吏員と申しておりましたが、今度は別の名称をもつて呼び、両者を合せて漁業監督公務員というふうにしております。こういつた漁業監督公務員が漁業の取締りをするわけであります。それで第七十四條の規定があるわけでありますが、これで從來と違いまする点は二つあります。一つは從來の漁業監督吏員は臨檢、檢査というような一般的な行政権限のほかに、司法権限、――捜査いたしましたりあるいは証拠調べをいたしましたりする司法権限を当然に持つていたわけであります。しかし今度は警察官の制限等の点もありますし、人権保護の点から申しまして、監督吏員全部に、行政権限はよいとしても、捜査、証拠調べ、押収というような司法権限を当然に認めるわけに行かないというので、監督吏員を二つにわけまして、行政権限だけ――これは臨檢であります、そういう行政権限だけの権限を持つ監督官または監督吏員と、そのほかにさらに司法権限まで持つ監督官または監督吏員と二つにわけたわけであります。そうして司法権限まで持たせる監督官または監督吏員の任免は、大臣または知事だけできめるのではなくて、その他の檢察廳の地方検事正と協議してきめるというふうにいたしたわけであります。これが第一の相違点であります。
次に從來は司法権限を行います場合の手続は、間接関税反則者処分法、現在名前をかえまして関税反則取締法と呼んでおりますが、関税反則取締法の規定によりまして、普通の刑事訴訟法の手続とは違つていたわけでありますが、これも人権保護の思想から言つておもしろくないというので、新しい刑事訴訟法の規定に從うようにいたしたわけであります。この二つの点が從來の漁業監督吏員と違つております。
次に第五章の説明に入ります。第五章に免許料及び許可料に関する規定であります。從來は漁業権の免許を受け、あるいは許可を受けました場合には單に許可の手数料、これはほんの紙代、事務費であります。そういうものだけを拂つて、実体的の負担はしなかつたのでありまして、免許料または許可料というものは徴收していなかつたわけであります。新制度では免許料、許可料というものをとる。これが新制度の一つの中心点になつておるわけであります。これにはいろいろの経緯があつたわけでありますが、結局最後に落つきましたのは、免許料または許可料というものをとる、そしてそれを漁業権の補償と委員会経費、その他行政費にあてるということになつております。これがどのくらいの負担割合になるかと申しますと、お手元にお配りいたしました印刷物で大体見当がつくわけでありますが、一應の大見当をつけるために机上の計算を申し上げてみますと、免許料、許可料の全部を平均いたしまして、水揚高の三・七%くらいの負担になる。それが定置漁業、区域漁業というような漁場を特定いたすものについては五%強くらいの負担になり、共同漁業権で二・七、八%くらいの負担になる。そういう実体的な金額になるわけであります。なおこれは補償にも関連いたしますので、後の補償の規定と合わせまして久宗経済課長から御説明いたすことにいたします。
次に第六章の漁業調整委員会及び中央漁業調整審議会の御説明をいたします。これはちよつとこまかいことでありますが、中央漁業調整委員会そ審議会と呼んで委員会と呼ばなかつたのは、これは内容から申しますと、中央漁業調整審議会も漁業調整委員会の一部門であるわけでありますが、ただその権限が一般的の諮問に答申するというような権限でありまして、具体的に免許をする、あるいは指示をするというような、具体的権限を持つておるのではない。しかもこれに中央におけるものでありますので、水産廳設置法とも関連して、もし委員会にするならば外局になるというような関係もありまして、中央漁業調整委員会という名称にいたしたわけであります。内容的にはこれも漁業調整委員会の一環、そう御了承願います。この漁業調整委員会の権限及び機能につきましては第二章の漁業権及び入漁権、第四章の漁業調整の章で説明いたしたわけでありますが、しからばこの権限を行使する委員会の構成はどういうものか。新しい漁業法がうまく行くかどうかということは、この委員会がどういうものができ上るかということによるという点が非常に多いわけであります。從つてこの委員会の構成がどんなものになるか、委員にはどんな人がなるかということが重大なことになるわけでありますが、それを第六章で規定いたしております。漁業調整委員会に海区漁業調整委員会及び連合海区漁業調整委員会の二つになるわけであります。このほか実態的には中央漁業調整委員会も含めまして、まず海区ごとに海区漁業調整委員会が置かれ、数海区と合せて連合海区漁業調整委員会が置かれ、全國に中央漁業委員会が置かれる仕組みになつております。
まず海区漁業調整委員会について御説明いたします。海区漁業調整委員会は海区ごとに置かれるわけでありますが、この海区というのは大体漁業状態の似通つたところをとりまして、一つの懸を三つないし四つの区域にわけ、その海区内の漁業全体を管理する全権限を有するものとしてこの海区委員会があるのであります。
なおこの海区の置かれますのは通常海でありますが、海のほかにも主務大臣の指定する内水面、これは名称を申し上げますと、一應今指定しようと考えておりますのは、琵琶湖、霞浦北浦、八郎潟、浜名湖、それから北海道の猿澗湖、厚岸湖、風運湖、それから山陰地方の宍道湖、中海、新潟縣佐渡の加茂湖の十箇所を予想いたしております。この十箇所の湖沼は内水面ではありますけれども、実態から申しまして海と同樣であるというので、海の扱いにいたして海区漁業調整委員会を置き、その他の規定もあとの内水面漁業の規定を適用しないで、海の規定を適用することにしております。
次に第八十五條の委員会の構成であります。委員会は委員十人をもつて組織し、その十人のうち一人を会長とし、会長は委員の互選できめることになつております。また委員のうち七名は漁民の中から選挙したものでありまして、残りの三名は知事が選任し、そのうち二人は学識経驗者の中から任命し、一人は公益代表者の中から選任するとなつております。この公益代表と申しますのは、ちよつておわかりにくいかと思いますが、これは漁業内部にとらわれないで、他の産業との関係を見まして、廣い視野に立つて他の産業との調整をはかるという立場のものであります。この十名が委員でありますが、このほかに必要に應じて專門委員を置くことができるわけであります。この專門委員は、名前は委員とつけてありますが、正式の委員ではなく議決権はもちろんございませんで、單に意見の答申機関であります。委員は十名で海区全体の漁場を掌握しているというわけにに行かないので、実際上は專門の事項については專門委員会の意見を聞く、この專門委員会の運営によつて海区委員会の決定がうまく行くようになるという意味で專門委員というのは非常な重要性があるわけであります。この專門委員は学識経驗の中から知事が選任することにいたしております。このほかに委員会には書記、市町村の補助員、部落補助員というものを置くようにいたしております。
次に、今申し上げました漁民の中から選挙いたします漁民委員について、その選挙権及び被選挙権はどうかという点は、第八十六條に規定してあります。これは内容的に要約して申し上げますと、海区に沿う市町村に住所または事業場を有していて、相当程度漁業で飯を食つておる者が選挙権、被選挙権があるのであります。これを法律的に表現いたしますために一年に九十日以上――九十日というのは協同組合法で組合員の資格として三十日から九十日までと規定して、相当漁業で飯を食つておるということの表現といたしておるわけであります。その一年に九十日以上漁船を使容する漁業を営むもの、あるいは漁船を使う漁業に從事しておるものが選挙権があるのだといたしております。但し一年に九十日以上漁船を使う事業を経営するか、あるいはそれに從事するということは全國一般の基準でありまして、具体的に地方によりましてこの気準をかえることを認めております。それは第二項で、知事が海区の特殊な事情によつて、一定の漁業について、選挙権のある漁業者の範囲を廣げたり縮めたりすることができると規定しているわけであります。これにより、たとえば漁船を使わない漁業であつても漁師と認められるというわけで選挙権を認める。逆に、場合によつて一年に百日いか釣りをやつても、いか釣りをやつている者は下駄屋さんとか学校の先生というように、日数は多くとも漁民とは認められないような場合には、九十日というのを百二十日に上げるということも考えているわけであります。実際問題としてこの選挙権があるかどうかの判断、これはりくつから申すと非常にむずかしいわけであります。沖に出ます場合に一々記録をとつているわけでもありませんし、さらに九十日というのは、現実に沖に出た日数のほかに準備作業も当然含んでいるわけで、それまで含んで男判定することは非常に困難なことと思いますか、事実上はその土地の社会通念でまずきまつてくる。そういうふうにその土地の社会通念というものに期待いたしているわけであります。この選挙権の有無の判定、これは市町村の選挙管理委員会がするわけでありますが、それは漁業のことを知つているわけではありませんので、実際的には協同組合とかそういうものから選挙権の有無を判定する委員会のようなものをつくらなければならぬだろうと考えております。
第三項で「海区漁業調整委員会の委員云々」と規定しておりますのは、これは念のための注意規定で海区委員会の委員あるいは協同組合の役員というものは、その委員会の仕事あるいは組合の仕事に專念いたしますと自分の商賣ができなくなる。しかし自分の商賣ができなくなつたからといつて、その者は通念上は当然漁民と認められるものでありますから、現実には一年に九十日といつたような、選挙権の資格を満たさないことがかりに起つても、その者は選挙権を有することとする、こういう注意規定であります。
第八十七條から第九十四條までで選挙に関する規定をしておるわけでありますが、この規定は大体において縣会議員の選挙と同じやり方と御了解願いたいと思います。從つて條文では大体九十四條で、地方自治法の規定を非常にこまかく準用いたしておりまして、準用できないで実体的に違つた規定と、それから準用では非常に読みかえが多くて読みにくい規定、それからこの規定は漁民に直接知らせる必要があるから準用したくて書いておきたいという規定、こういう規定だけは大体書き上げた、こういうふうな構成になつております。選挙の規定は非常にうるそうございますし、実際これをやるのは選挙管理委員会がやるので、專門的知識は必要ではございませんから、こまかな説明は省略いたします。
選挙事務の管理は第八十八條で縣の選挙管理委員会が扱う、委員会の名簿の作成という仕事は市町村の選挙管理委員会がやる、こうなつております。ほとんど懸会議員の選挙と同じでありますが、実体的に違う点は、大きな点では補欠選挙というものをほとんどいたしません。途中で委員が欠けました場合、繰上げ当選で行つて、補欠選挙というのをなるべくやらないという建前をとつております。この点が違つております。
第九十三條は委員の兼職の禁止に関する規定であります。委員は都道府縣の議会の会員とは兼ねられないという規定で、これは立法と行政とを兼ねないという三権分立の思想から来たものでありまして、海区の漁業調整員会の委員の仕事は、大体縣の行政事務であります。從つて縣の立法に関與する縣会議員とは兼ねさせない、こういうわけであります。第九十六條は委員の辞職の制限、違員は正当な事由がなければ辞職できない。これは訓辞規定であります。効力規定ではありません。
第九十七條は被選挙権を失つたら職を失うという規定、第九十八條は委員の任期に関する規定であります。任期は二年といたしております。從つて第一回目の委員は漁業整理が終つて漁業権の最割当が行われるまでやることになるわけであります。
第九十九條はリコールに関する規定で、これは縣会議員のリコールの場合と同じにいたしております。
このリコールは漁民が選挙した委員に対して発動されるわけでありますが、このほか知事の選任いたしました委員については知事が解任できるという規定が第百條であります。第百一條から第百三條までは委員会の会議に関する規定であります。第百四條は解散命令に関する規定、こうなつております。以上が海区漁業調整委員会の構成に関する規定であります。
大体この海区漁業調整委員会の構成に関する規定を次の連合海区漁業調整委員会、中央漁業調整委員会では準用いたしておりますから、違う点だけを御説明いたします。
第百五條は、いかなる場合に連合海区漁業調整委員会を設置できるかという規定で、これを結論から要約して申しますと、いかなる目的のためでも、自由自在にいつでもつくれる、何に関してもつくれるわけであります。たとえば東京湾のあぐりの調整をいたしますために、東京、神奈川、千葉の三縣で東京湾いわしあぐり網の連合海区漁業調整委員会をつくる、必要がなくなつたら解散する、必要があればその都度随時つくつて行く、こういうことで固定的なものではありません。一應大体漁業状態の似通つたところを選びまして海区というものをつくり、その海区内の漁業に関しては海区漁業調整委員会が全権をもつて管理をする、こういたしたわけでありますが、いかに漁業状態の似通つたところをとりましても、海区ではつきりわけられるわけではなくて、どうしても海区と海区にまたがる問題があるわけであります。このまたがる問題を海区委員会でやると、どうしても自分の海区の立場に立つた判定をしがちでありますので、そういう場合には連合海区調整委員会を運用して、海区と海区にまたがる問題の調整をとつて行こう、こう考えております。從つて東京湾でありますとか、あるいは伊勢湾、唐津湾というように、数府縣にまたがつている場合には、連合海区漁業調整委員会の運用が最も期待されるわけであります。
この場合委員会をつくります場合には、知事がつくります場合と、海区委員会が自発的につくります場合と両方ございます。知事がつくります場合、それから海区委員会が自発的につくります場合には、同じ府縣内であれば問題ございませんが、もし府縣が違つていた場合には、知事同士が話合いをする、話合いがつかなかつた場合には大臣が決定をするというふうにいたしておりまして、あらかじめ先ほどの湾のように、対縣関係で問題がめんどうであるというような場合には、大臣の方から発動して、連合委員会をつくつて運用して行こう、そう考えております。
この連合委員会の委員は、その傘下の各海区漁業調整員会の委員の中から同数を選んで充てるわけであります。そしてその委員の定数は、知事がつくります場合には知事がきめる、海区委員会が自発的につくります場合には海区委員会が協調してきめるというふうにいたしております。もし十二人というふうにきめた場合には六人ずつ出す、四海区であつたならば三人ずつを出すというふうに、各海区委員会から同数ずつ出すという建前をとつております。もし連合海区漁業調整委員会をつくります傘下の海区委員会の数が非常に多くて、連合委員会の委員の定数をオーバーした、たとえば北海道で北海道全体の連合海区委員会をつくります場合には、北海道の海区というものは市川町村ごとで非常に多うございますから、その割合には各海区から一人を出してその一人出た者が互選して連合委員会の委員をきめるというふうにいたしております。なお申し遅れましたが、この海区委員会は共に北海道では市町村を海区というふうにいたしております。連合委員会の委員は傘下の各海区委員会から選ばれた委員で充てるわけでありますが、そのほか必要があると認めた場合は、その半数以下の人数に限つて学識経驗委員を知事が選ぶことができます。その他は海区漁業調整委員会の場合と同様であります。それから連合海区漁業調整委員会は、随時必要に應じて設けるわけでありますが、瀬戸内海に限りましては、瀬戸内海の対縣関係の複雑な入会関係、これを処理いたしますために、恒久的に瀬戸内海連合海区漁業調整委員会を設置する、瀬戸内海はきわめて入会関係が複雑でありますので、それを海区に限つて海区だけで解決することはとうてい不可能であります。しかも各府縣にまたがるところが非常に多いので、府縣かぎりでは解決できないというわけで、それで施行法の第十八條で水産廳設置法の一部改正によりまして、瀬戸内海漁業調整事務局を開くことになつておりますが、役所としては瀬戸内海に限つて瀬戸内海漁業調整事務局を置き、それと合わせて委員会としては恒久的な瀬戸内海連合海区漁業調整委員会を設置するということになつております。この瀬戸内海の海区の区域は、現在の瀬戸内海漁業取締規則の区域をそのままとつております。瀬戸内海ではこの漁業調整事務局と瀬戸内海連合海区漁業調整委員会との運用が非常に重要でありまして、大体各府縣にまたがるもの、たとえばあぐりとか、うたせというような各府縣にわたつて操業するものの調整、それからたとえば岡山縣と香川縣の入会関係というふうな調整、こういつたものは事務局及び瀬戸内海連合委員会が自発的にイニシアチーブをとつて調整をとつて行くというふうに考えております。
次に中央漁業調整審議会でありますが、これは大体漁業法の施行に関する重要事項の諮問機構でありまして、たとえば免許方針をきめる、具体的に免許いたしますのは縣知事が海区漁業調整委員会の意見を聞いてきめるわけでありますが、そういう具体的な免許をいたします場合の基準、方針、そういつたものをきめる、それから指示をする場合の大方針と言いますか、そういうふうな全体的な基準というものをこの中央審議会にかけてきめて行こう、こう考えております。審議会の会長は農林大臣をもつて充て、そのほかに十五名で組織されます。その十五名のうち十名は漁業者及び漁業從事者の代表、他の五名が学識経驗者というふうにいたしておりまして、農林大臣の申出によつて内閣総理大臣が任命するというふうになつております。その他のことは海区漁業調整委員会と同樣であります。
第百十五條は、選挙は選挙管理委員会が担当いたしますので、その選挙管理委員会の監督に関する規定、第百十六條は漁業調整委員会は新しい漁業調整の立役者といつた重大な役割を演じますために、その役割を演ずるに必要な権限――報告をとるとか、あるいは檢査をするというふうな権限を規定いたしております。
第百十七條は漁業調整委員会に対する行政権の監督の規定であります。
第百十八條は漁業調整委員会の費用に関する規定であります。これは免許料と関連いたしますので、あとで久宗課長より御説明いたします。以上で漁業調整委員会の構成に関する規定の説明を終ります。
次は第七章の土地及び土地の定着物の使用に関する規定であります。このうち第百二十條から第百二十三條までは現行法と同じでありますから省略いたします。新らしい規定は第百二十四條、第百二十五條、第百二十六條、この三箇條であります。この趣旨は漁業統計をいたします場合に、單に水面の利用関係を調整するだけではなくして、陸上の土地あるいは建物、そういつたものの使用が必要不可欠である場合があるわけであります。たとえばこんぶの採捕をいたします場合には、こんぶをほす乾場――海藻乾場というものが絶対必要不可欠であります。それからまた漁業を営むためには船揚場というのが必要でありますし、また定置の番屋とか、そういつた施設も必要になつて來るわけであります。ところが現在そういうふうな施設は代替性がないので、金で買うというわけに行わぬのでありますが、そういう代替性がなくて、しかも必要不可欠であるという施設があたかも農地の不在地主のような所有関係にある場合があるわけであります。そういう関係にありましては、漁業経営というものが脅かされるわけであります。そして不当な搾取を受けるという関係もありますので、漁業経営上の必要不可欠の代替性のない土地とかあるいは建物といつたものを、漁業調整委員会の裁定によつて使用権を設定できる。そういう趣旨であります。
第百二十四條はいかなる場合に使用権をできるかという場合を規定いたしたわけであります。
第百二十五條が使用権を設定いたします裁定に関する規定、これを規定いたしております。
第百二十六條は、内容は百二十四條と同じでありますが、百二十四條が新しく使用権を設定する場合の規定であるに対して、百二十六條は現在すでに使用権を設定されておる、ところがその設定されておる使用権の内容が不当である。たとえば賃貸料が不当に高い、そういつた場合に、その使用権の内容を適正にするための委員会の裁定に関する規定であります。
次に第八章の内水面漁業に関する規定の御説明であります。今まで御説明いたしましたのは海に関する規定でありますが、内水面漁業に関しましては、全然別扱いにいたしたわけであります。從來は内水面漁業も海の法規と同じ法規の適用を受けて、同じに扱われていたわけでありますが、内水面漁業は海とは違う点を持つております。その最も根本的な点は、内水面では増殖が基本である。増殖をしなかつたならば、内水面漁業は成立しない。その点海の方は單に調整をすればいいわけでありますが、それだけでなくて、内水面では積極的に増殖をはかる施設を講じなければならぬわけであります、そのために海と違う新しい規定を別に設けた、こういう趣旨であります。
そこで内水面では増殖ということが基本でありますために、まず免許いたします漁業権としては、区画漁業権しか免許はしない。区画漁業権をもらつて、積極的に増殖をする場合のほかは漁業権を與えない。そうしておいて、協同組合が自発的に自分の力で増殖をする場合には、区画漁業権を認めるのでありますが、それ以外の場合には、内水面で魚をとる者からは料金をとりまして、その料金を財源として國が積極的に基本的な増殖をはかつて行く。こういう構想にいたしております。從來は協同組合が專用漁業権を持ちまして、その專用漁業権によつて河川の管理をし、場合によつては多少の増殖もしていたわけであります。しかしながら水系は非常に長大なわけであります。その長大な水面を部分的に協同組合が管理して増殖しても、大して効果はあがらぬわけであります。もちろんダムとダムとにはさまれた間というふうに、川の中で境界があれば、その区域について協同組合の自力でも増殖ができるわけでありますが、そうでない場合には、河川全体を協同組合が管理するわけには行かない。そうしますと、どうして増殖が不十分になつて來るわけであります。いくら放しても放したものが人にとられるのでは、増殖しても増殖のしがいがない。從つて増殖の意欲が阻害される。なお從來は増殖について國から補助金が多少出ておつたわけでありますが、今後は國家財政の点からして、補助金というものは出る見込みがない。こうなりますと、國から出す補助金を呼び水にして協同組合の積極的な増殖を期待することはむりであつて、しかもまたかりに多少補助金が出たとしても、協同組合は河川を部分的にしか管理できないので、本格的な河川全体にわたる管理増殖ということはでき得ないわけである。こういう観点に立ちまして、しからば協同組合にかつて國が増殖をして行こうというわけであります。そこでこの百二十七條で、「内水面においては、区画漁業以外の漁業の免許はしない。」と、漁業権の免許について規定いたしたわけであります。なお内水面と申しますが、実はこれが三つにわかれるのでありまして、一つは先ほど申しました琵琶湖、霞ヶ浦等のような指定内水面、これは海の扱いをいたします。もう一つは湖沼であります。湖沼は区画漁業権以外に共同漁業権を免許いたします。湖沼は増殖しない場合であつても湖沼の管理ということが必要であり、しかも湖沼一円を地区とする協同組合ができますればその協同組合で管理することができるわけでありますから、湖沼は区画漁業権のほかに共同漁業権の免許もする。こういたしております。もう一つは普通の河川であります。この河川は区画漁業権しか免許をしない。
次に第百二十八條で、内水面で魚をとる場合には、政府に料金を納めなければならないと規定いたしております。これは内水面で魚つりをする場合には、すべて料金をとるというのではなくて、河川のために料金をとるわけでありますから、増殖をしないで、自然にふえる魚については原則としてとらぬわけであります。そこで漁種、漁法を限り、あるいはまた漁場とか漁期を限つて賃金を納めるというわけであります。
この料金でありますが、これには二つの意味がありまして、一つは海の場合の免許料、許可料に当るものですが、これを内水面ではやはり料金と呼んでおります。たとえば内水面で区画漁業権の免許を受けた場合は、免許料、許可料を拂わないのでありますが、同じ性質のものを料金という名目で拂うのであります。それと遊漁の料金という意味――免許料、許可料とは意味を異にしますが、つりの料金というものと、二つの意味合を持つているのでございます。この二つのものは、字句としては同じ料金という言葉で表現しておりますから御注意願います。この料金も漁業の種類によつてその額をかえるとか、あるいは操業できる漁場によつて、さらにまた一年間通用であるとか、あるいは一日限りというように、いろいろ料金を違えて行くというように予定いたしております。この料金は海の場合の免許料、許可料と同じように、補償と行政費にあてるほか、増殖費用にあてるわけであります。
なおこの國営増殖ということにつきまして、國営という言葉から一般に誤解を生じている向きが少くないようでありますが、國が料金をとつて増殖をすると申しましても、一々國の役人を使つて、何から何まで國の手でやるというわけではないのでありまして、むしろ國が金をとつてプールした料金を各縣に配り、各縣はさらにその地域の協同組合を実際の実施機関として増殖をやつて行くという形になるわけであります。これに河川の利用が、一河川単位では考えられないで、ある料金ではつる人間が多くて料金が多く上るが、他の河川ではそうではないというわけで、そこでプールする必要があるわけであります。プールした結果、増殖の必要性に應じてそれを縣に配り、縣が地元を使つて増殖をやらして行くという形になるのであります。ただその場合に、從來の形と違つて、專用漁業という形で結びつけないわけであります。一般の主観的な感じで行きますと、漁業権がないと養殖をしても人にとられてしまい、何ら保護をされないからばかばかしいという氣分になるかもしれませんが、そうではなくて、協同組合が養殖をし、河川の管理をする場合に、必ずしも漁業権というものは必要はないわけであります。漁業権がなくても実際に管理でき、養殖の効果が協同組合に帰属できればいいのでありまして、そういう仕組みを考えて行きたいと思います。つまり從來は漁業会が漁業権を握つて河川を独占して、不当な金を漁業者からとるという弊害もあつたのでありまして、しかも増殖をあまりやつていなかつた、そういうような弊害を除いて、漁業会が十分果していなかつた河川の管理とか、増殖という役目を果させるように、新らしい仕組みを考えているわけであります。
次に内水面の漁業管理の機構といたしましては、海の場合には海区漁業調整委員会というものを設置いたしたわけでありますが、内水面では都道府縣ごとに内水面漁場管理委員会というものを置いて、この漁場管理委員会が、内水面における免許でありますとか、あるいは許可、それから増殖、そういつた内水面漁場の管理に関する事項を処理いたすわけであります。この内水面漁場管理委員会の構成は、大体漁区委員会の場合と同じようでありますが、ただ内水面漁場管理委員会の委員は、選挙制ということは実際的に見て非常にとりにくいわけであります。漁民と申しましても海の漁民とは違つておりますし、遊漁者も非常に多くて、選挙権というものが把握しにくいという点にかんがみまして、すべて知事の選任とする、その選任する相手方を漁業者代表、それから営業として漁業はしないけれども、河川で魚をとつているという者、それから学識経驗者、こういう各グループの中から知事が代表と認められる者を選任する、そういう仕組にいたしております。
それからちよつと前にもどつて、申し遅れましたが、先ほど内水面では料金を納めなければ魚をとつてはならぬ、こう申し上げましたが、その逆に料金さえ納めれば自由に魚をとつていいのだというのではなく、やはり漁業によつては許可制をしくわけであります。たとえばいりやな漁業等は金さえ納めればだれがとつてもいいのだというのでなくて、やはり許可制はしいて行く。その点ちよつと條文上は読みにくいかもしれませんが、許可制はさきに御説明いたしました第六十五條に從つて内水面の漁業取締規則を出して、許可制をしいて行くという点、御了解願います。
なおこの内水面の管理のやり方と関連いたしまして、河川の組合については協同組合法を改正いたしまして、河川組合の組合員資格をかえております。これは河川の組合というのは経済事業をするものではなくて、河川の管理團体である、從つて河川の漁業会は從來から專用漁業権を持つて河川を管理いたしたわけでありますが、そういう河川の管理團体であるということをはつきりさせるために、新法で協同組合法を改正いたしたわけであります。これは施行法の第二十條の中ごろであります。そこで「第十八條第一項に次の但書を加える。」といたしまして、「但し、河川において水産動植物の採捕又は増殖をする者を主たる構成員とする場合にあつては、組合の地区内に住所を有し、且つ水産動植物の採捕又は養殖をする者(遊漁者を除く。)であつて、採捕又は養殖に從事する日数が一年を通じて三十日から九十日までの間で定数で定める日数をこえるものも組合員たる資格を有する。」というふうに規定いたしております。この第十八條第一項というものは、協同組合の組合員の規定であります。それは漁民を組合員としておりますが、内水面の場合では法律上の漁民ではなくて、嚴密に法律から申しますと、継続的に商賣として魚をとつて賣つておるといのではなくて、生活上川に依存して魚をとつておる、たとえばふだんは百姓をやつていて、あゆの時期にはあゆをつる、そのつつたあゆをたまに賣る場合もあるが、自分で食う場合もある、あるいはやまめをつつて、それを生活の資に充てるというようにしているのもあるわけで、そういうのは法律的に嚴密に申しますと、漁民であるかどうか疑問があるのでありますが、実体的な内容から言うと通念はほ漁民である。そういう者を協同組合の構成員に加え、河川の協同組合は河川の管理團体であるという色彩をはつきりさしたわけであります。現在河川漁業会は專用漁業権を今後は持てないというふうになつておる点を誤解いたしまして、協同組合の発足はなかなか進んでいない現状であります。今後は河川の協同組合は河川の管理團体という思想をはつきりさして、二年後にはこの國営増殖の実際の担当機関として動くというふうに持つて行きたい。こういうふうに考えております。これが内水面漁業に関する規定であります。
それでは先ほど省略いたしました第三章の指定遠洋漁業の御説明をいたします。これは法文を見ますと、第二章と第四章の間にはさまりまして、ほかとの連絡が非常になくて、奇異な感じをお受けになるだろうと思うのでありますが、たしかにこれは漁業制度改革ということとちよつと違つた点を持つておるわけであります。これの要点は、大ざつぱに申しますと二つあるわけであります。一つは許可の定数を法律上きめるという点が一つであります。もう一つは許可の承継を法律上当然に認める、許可と船とをつけまして、船が譲渡されたら許可も自然に移るということを規定いたしたわけであります。大体この二つの点が中心になるわけでありますが、それを條文について御説明いたします。
指定遠洋漁業というものについて、第五十三條第一項に規定してありますが、大型捕鯨船、以西トロール漁業、以西機船底びき網漁業、それから遠洋かつお・まぐろ漁業の四つであります。これは現在の農林大臣許可の漁業とは少し範囲を異にいたしておりまして、よず漁船式漁業はこの中に入れておりません。それからこれは現在はないのでありますが、プールの中で以西以外の地区でやりまするその他の北洋のトロール、こういうものが將來できました場合にこれを指定遠洋漁業のわくからはずす。それから以東の底びきも指定遠洋漁業ではない。それからかつお、まぐろ漁業の中で百トン未満のものは指定遠洋漁業にはしないとしております。指定遠洋漁業というものは許可の定数というものを法律上はつきりきめまして、しかも船が賣買されたならば、許可も当然ついて行く、そのほか期間が満了した場合に当然許可をするというように、許可の承継を法律上当然認めているというような特殊な許可をいたしておりますために、少し農林大臣許可の漁業と範囲を違えたわけであります。なおこまかいことでありますが、以西機船底びき網漁業というのは現在の以西の底びきとは少し範囲が違いまして、五十トン未満の機船底びきは今考えております以西の整理と関連してこの中から省いております。
第三十三條で主務大臣に、指定遠洋漁業の種類ごとに許可を受けてやれる船の定数を定めなければならないというようにいたしました。從來でも許可をいたします以上は、許可の定数ということは当然想定されているわけでありますが、これを法律の正面に出さないで、許可の方針として定数を考える。それをこれらの指定遠洋漁業については、法律上当然に定数をきめることを想定いたしたわけであります。この定数のきめ方は一應資源調査をいたしまして、資源量というのが基本になるわけでありよすが、單に資源量だけでなくて、多少資源量をオーバーすることがありましても、たとえば底びきにつきまして資源量よりは多いと思われましても從來底びきをやつていた数が多い、しかもこれからも底びきをやらなければならぬ人間の数が多いというような社会経済的條件と申しますか、そういうことも勘案いたしまして総合的に数をきめるわけであります。
第五十四條と第五十五條は起業の認可に関する規定で、現在各取締規則にきめてあります内容とほとんど同じであります。
第五十六條は許可または起業認可をしたい場合の規定でありまして、昨日御説明いたしました第十三條の漁業の免許しない場合、あの漁業権の場合と同じ思想であります。まず第一は適格性がない場合、第二が許可の不当な集中に至るおそれがある場合、第三が漁業調整その他公益上必要がある場合、この二つであります。このうち許可の不当な集中と申しますのは、指定遠洋漁業の場合には具体的にいろいろ考えられるわけでありまして、これも経営の合理化とからむ問題で、何が不当かという判断はむずかしい点でございますが、漁業権の場合よりもこの二号に当る場合として檢討しなければならない事例が多いのじやないかと予想いたしております。適格性がない場合には許可はいたさないわけでありますが、その適格性といたしましては、漁業法の第十四條の場合の漁業権の適格性と同じような内容であります。違いまする点は、漁業権の場合の第三号の三分の二の投票があつて、漁村の民主化を阻害すると認めたならば、適格性がないとするあの規定はこちらは置いておりません。指定遠洋漁業と申しますのは、ある程度近代化された資本的な漁業であつて、若干沿岸漁業とは性質が違うというような点も考えて多少表現をかえたという点もあるわけであります。また主として表現の問題でありますが……。
それから第三十七條の三号、四号、これが漁業権の適確性にないわけであります。これらの漁業はある程度資本漁業として確立しまして、まず船舶が重要用件である。使つて、その船舶が大臣のきめる要件を満たしていない場合には、適格性なしとして許可をしたいということが一つ。それからある程度、底びきなら底びきをやるにはどのくらい資本がいるかということがきまつて來るので、そういうような資本を持つていない場合、この場合も適格性がないわけであります。もちろん資本と申しますものは現金である必要はない。だから金を借りるというあてがある場合でもよろしいし、それからその者の信用力でもかまわないわけであります。その他の点は漁業権の適格性と同じであります。
次に、この指定遠洋漁業の許可の仕方でありますが、第五十八番と第五十九條に規定してあります。第五十八條は新しく許可する場合の許可の仕方であります。これは現在の指定遠洋漁業の現状では、新許可ということはちよつと考えられないわけでありますが、もしも定数の変更があつて新許可します場合にはくじできめる、こういうわけであります。現在ではだれに許可すべきか、その判断は行政廳が責任をもつて、まあ判断いたしているわけでありますが、新法ではそういう行政廳の判断にはよらせないで、適確性さえあればあとは当然に許可をする。もしも、その許可を受けたいという数が定数をオーバーした場合には、くじ引きできめる。こういうふうに割り切つてしまつたわけであります。そのくじの仕方が四項、五項に書いてあるわけでありますが、そのくじをします場合に、たとえば希望者が十人あつたという場合には必ずしも延べでやる必要はなく、ある程度グループでわけてやつてよろしい。そのグループのわけ方は第五項でこういうふうな基準を考え合してグループをきめようというふうに規定したわけであります。ちよつと誤解があるかと思いますが、第五項で「前項の組に分け、及びこれに割り当てるべき許可又は起業の認可の数を定めるには、左に掲げる事項を勘案しなければならない。」とあります。この場合、各号を組み合せて組をきめるわけではないのであります。たとえば一号から三号までのグループ、四号から七号までのグループ、こういうのでなくして、一号から七号までの事項を総合的に判断して、グループをきめるというグループのきめ方の一應の基準、こういう意味であります。なお、これは大型捕鯨業には適用できないということになつております。これは大型捕鯨業は現在三者でありますし、それに許可の定数も二十五艘というものでありまして、特に経営形態が非常にものを言うのでありまして、それをくじ引きということは妥当でないという点にかんがみまして、これは特別扱いにいたしております。
次に第五十九條。これがこの指定遠洋漁業の許可の仕方の中心点になるのでありますが、これは思想から申しますと、一旦許可をもらつたならば、ずと許可が続いて行く、いわゆる許可の更新といつたようなものであります。そういう許可の更新と許可の承継、船を賣つたならば当然許可もついて行く。それを規定にうたつたわけであります。もちろんこれは現在でも許可方針としてある程度内規できまつていることでありますが、それを法律上正面切つて認めたわけであります。第一が許可の期間が満了したために、さらに許可を申請した場合の期間満了の更新許可であります。第二号は代船建造であります。第三号が沈没代船、第四号が承継であります。第五号はこれも起業の許可の承権であります。承継は許可だけの承継、あるいは許可だけの承継という点は認めておりません。船があつて船を承継した場合には許可も承継するというので、空権賣買的なものは法律上では認めていないのでありますが、相続人に限つて認可の承継を認めております。第六号は相続人に準ずる会社の合併の場合の許可または認可の承継であります。
第六十條で許可の期間は一應現行法にならいまして、五年といたしておりますが、五年経ちましたあとの更新は五十九條によつて当然さらに許可を更新することになるわけであります。
第六十一條は許可の内容の変更、これは現行の取締規則と同じような内容であります。
第六十二條は許可または起業の認可の失効に関する規定で、これも現行取締期間と同じような規定であります。
第六十三條はこの許可について漁業権に関する規定といたしまして、たとえば制限、條件とか、取消しとかいう規定を準用した規定であります。
第六十四條は許可の定数をきめたわけであります。ふやす場合はよいのでありますが、減した場合には、たとえば今まで百隻定数があつたのを八十隻に減した場合には、その差額の二十隻は取消さなければならぬ。その取消す場合はどういう基準で減らすかという基準を二項の各号できめたわけであります。しかし実際にはもしも指定遠洋漁業の整理をいたして許可の定数を減す場合には、この六十四條だけでは不備でありまして、そのおのおのについて整理法といつたようなものを規定しなけれげならぬのじやないか、こういうふうに思つております。こういう新しいやり方が指定遠洋漁業の許可の仕方でありまして、こういう仕方の許可をいたす、そのほかのものは、たとえ農林大臣の許可であつても、この指定遠洋漁業のうちには入らないのであります。なおこの施行の細則はおのおのの漁業取締規則できめるというふうになつております。
以上で指定遠洋漁業の説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02219490906/2
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003・石原圓吉
○石原委員長 この場合ちよつと質しておきたいのであります。第五十八條の第六項に「前項の規定は、大型捕鯨業には適用しない。」こういうことがあるのであります。從つてただいま松元事務官からは、特別扱いにするということでありますが、その特別扱いの内というものはどんなのであるか、これを將來どういう規定でやつて行くのであるか、永久に独占せしめるというような意向があつては、大いに考えなければならぬと思うのであります。これに対して適当なる機会に本委員会において具体的な説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02219490906/3
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004・夏堀源三郎
○夏堀委員 大藏大臣の出席を求めて漁業資材の補給金の打切りに対して大臣の説明を聞きたい、委員長も五日から七日までの間に出席させるということであつたのです。昨日も出席がない。きようも出席がない、しかも出題は簡單な問題ではないのであつて、もし補給金の打切りが実現するということになつたなら、おそらく定置、底びき、あぐり、こうしたような重要な漁業の採算はとれませんし、繋船は続出する、恐るべき失業問題及び生産減となる、私の考えでは大体六〇%以上生産減となることを予想しております。こうした問題を本委員会で取上げて、これは予算に関係もありますので、十日まで委員会を開くのであつたならば、この十日までの間に、委員会でこの問題を取上げて必ず何かの結末をつけなければならぬじやないか、こう考えております。ぜひとも明日あるいは明後日あたりにでも時間を與えて――なお大藏大臣に出席することができないということであればこれは重大な問題となると私は考えております。この問題で過般大藏大臣に会見を求めたが、その際に大臣室に入れず長時間待たして廊下話であつた、その態度は不遜であつた、そうしてなおこの委員会に出席せぬということであれば、これは水産委員会を侮辱するものじやないか、こう私は考えております。このような重大な問題を等閑に付するということは絶対にいかぬと思いますので、この問題はどうか委員長はお約束になつた通り、五日から七日までに必ず出席してくれるように、もしこの時間がとれなかつたならば、あと一日か二日の余裕を與えても必ず本委員会に出席して納得の行く限りの説明を伺いたい、こう存ずるのであります、よろしくおとりはからいを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02219490906/4
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005・石原圓吉
○石原委員長 ただいま夏堀委員の発言は私ども至極同感でありまして、実は先刻主計局長が参つたのでありますけれども、当委員会よりは大臣と主計局長と同時の出席を求めたのであります。しかるに大臣は補正予算の関係で三日間は多忙のために出られないということであるが、それで主計局長のみでは用を足すことはできないから帰つてくれと言うてただいま帰した次第であります。さらに大臣の意向を確めて善処したいと思います。
午前はこれで休憩といたします、午後は一時から再開いたします。
午後零時九分休憩
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午後一時三十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02219490906/5
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006・石原圓吉
○石原委員長 午前中に引続き開会します。
補償制度並びに免許料、許可料につき久宗事務官より説明があります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02219490906/6
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007・久宗高
○久宗説明員 補償料並びに免許料の御説明に入ります前に、午前中の残りといたしまして、附則と施行法の初めの方に若干規定がございますので、その説明の方を先に済まさしていただき、その後に補償料、免許料の説明をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02219490906/7
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008・松元威雄
○松元説明員 午前中に引続きまして、残りの判定を御説明いたします。第九章の雑則でありますが、さして重要な規定はございせん。一應條文を申し上げます。第百三十三條は漁業手数料を納めることを規定いたしております。この手数料は免許料、許可科とは違いまして、ノミナルな紙代といつたような手数料でございます。從來納めていたものと同じであります。
次の第百三十四條は行政廳が漁業の免許とか許可とか、そのほかこの法律に規定してあります事項を処理するために、必要な場合は報告を徴したり、檢査したり、そうしたことができるという規定でありまして、先ほど漁業調整委員会の権限について御説明したのと同じであります。
第百三十五條に訴願に関する規定であります。この法律に規定いたします事項、それに関する行政廳の処分に不服がある者はすべて訴願を提起することができるという規定でありまして、現行法では訴願し得る事項をある程度制限いたしておりますが、新法では全面的に訴願を認めております。なお行政訴訟につきましては、今度は旧憲法の時代とは違いまして、すべて行政処分に対しては行政訴訟法を提起できるようになつておりますから、この條文から省いております。なお行政訴訟の手続きといたしまして、行政訴訟を提起する場合に、その前に法律で訴願することができると規定されている場合には、必ず訴願を経てから行政訴訟をしなければならないというふうに行政事件訴訟特例法で規定されておりますから、念のために申し上げます。
第百三十六條は管轄の特例の規定でありまして、現行法にもある規定でありますが、漁場が二以上の知事の管轄に属する場合には、大臣が知事にかわつてその権限を行い、または知事を行う知事を指定することができるという規定であります。あまり例もございませんが、たとえば現在でも京都府と福井縣の境あたりに農林大臣免許の定置漁業権があるというようなまれな場合がございます。
第百三十七條は特別市とか特別区等に対する法律の適用の規定であります。
以上で漁業法本法の説明は終つたわけであります。
罰則につきましては一々の説明は省略いたしまして、ただ全般といたしまして、現行法に比して罰則が強化されています。現行法では主として罰金でありますが、今度は体刑を加えまして、相当に罰則を強化しているという点だけを申し上げまして、他は省略させていただきます。
次に附則の説明に入ります。なお一般の法律で附則に規定いたしますのは経過規定でありますが、この漁業法では経過規定が非常に多うございますので、その経過規定のうち一部分を漁業法の附則に規定し、他の部分は漁業法施行法で別の力に規定した、こういうふうにいたしております。その経過規定のうち漁業法の附則として規定いたしました分は第一項から第十五項までであります。第一項は漁業法施行期日をきめる規定であります。公布の日から数えまして三箇月を越えない期間内で制令で定めるというふうにいたしてあります。第二項は現行の漁業法を廃止する規定であります。第三項は、新漁業法が施行になつて二年間は新免許にしないという規定であります。これは漁業法は二箇年間を要しまして、その間新しい漁業権を免許いたしますと、いろいろ複雑な関係を生じますし、また二年間の再割当のための実績をつけるために免許を出願するというような場合もあつて、混乱いたしますので、現在漁業権等臨時措置法によりましても、いわゆる新規免許はしないというふうにいたしておりますが、それを受けまして、新法の附則で準備期間中の二年間は一切新免許はしないというふうにいたしたわけであります。なお臨時措置法では、形式は新免許であつても、実質上從前の漁業権の存続期間の更新であると認められるものについては新規免許をするというふうにいたしておりますが、これもこの新漁業法の附則ではしないことにいたしております。なおこの第三項の但書で「漁業法施行法第一條第二項の規定により云云」とありますのは、準備期間は二年間でありますが、地区によりましては二年たたないで漁場整理ができるという場合もあります。その場合には漁業法施行法の第一條第二項で地区及び漁業種類を指定して、その地区及びその漁業種類については二年たたないでも漁場整理を始めるというふうに規定いたしておりますので、これを受けまして、原則として二年間であるが、二年以内であつても、その指定があつた場合には新制度を発動して漁業権の免許をして行くという意味であります。
第四項は、第二十一條で区画漁業権は存続期間の延長を認められているわけでありますが、その延長を認める規定を当分の間は適用しないということでありまして、その意味は、期間の延長が認められておりますと、漁業権者が固定するわけであります。ところが現在の過渡期の時代におきまして、たまたま漁業権の免許を受けた者について永久に固定せしめることは問題でありますので、こういう過渡期の收まつた段階から後に更新制度を発動することにして、それまでは更新の規定は発動したいという意味であります。当分の間と申しますのは、大体五年ないし十年くらいの間を一應今は予想いたしております。從つて二年後に第一回の新規免許をし、その後にもう一度新規免許をして、それ以後を更新制度にして行く、こういうことになる予定であります。
第五項の趣旨も同樣でありまして、定置漁業権と区画漁業権は移轉を認められ、あるいは抵当権を設定することができるのでありますが、これも現在の過渡段階におきまして移轉を認めますと、望ましくない者に移轉される可能性があるわけでありますから、これもそういう変態的状態があつた後から認めることにいたしまして、それまでは認めない、こういたしたわけであります。
但書の「第二十八條第二項の譲渡」といいますのは、昨日御説明いたしました相続人が適格性がないために、他の者に漁業権を讓渡するという場合でありまして、この場合は当分の間でも移轉を認めております。第六項、第七項は、この規定に違反した者の罰則であります。
なおちよつとここに誤解があるかもしれませんが、「移轉又は抵当権の目的となることができない。」という意味は法律上の効力規定でありまして、移轉しても法律上移轉という効果は生じない、無効ということであります。そのほかにさらに讓渡する契約を結び、あるいは抵当権を設定する契約を結ぶ、そういう事実行為がありますので、その事実行為をも押えるために罰則を科した、つまり契約の効力自体を無効にせしめると同時に、事実行為も押えるというふうに二重に押えたのであります。
第九項は、許可料はこの法律施行後二年以内において制令で定める期日までの間は適用しない、こういう意味でこれは免許料をとりますのは、新漁業権の免許になつたそのときでありす。そしてそれを原則として二年後でありますから、その免許料をとります時期と許可料をとる時期を合せるために二年以内において政令で定める時期というふうにいたしたわけであります。
第十項から第十二項までは最初に行う海区漁業調整委員会の委員の選挙に関する特例であります。これは第八十九條で毎年二月一日現在で選挙人名簿をつくるわけであります。從つて通常の場合でありますと、二月一日現在でつくつてから三月と五日たつてから選挙が行われますから、大体五月五日ごろが選挙、こういうことになるのであります。これが一般の原則でありますが、最初の選挙はこの一般の原則によることができない場合――これは施行期間のいかんによつて違つて参りますから、一般原則によることができない場合がありますので、その特例を政令で設け得るようにしたわけであります。これが第十項の規定であります。
第十一項も同樣の趣旨で、最初の選挙人名簿をつくります場合に、一般の照覧期間等の規定によることができない場合がありますので、その場合にはその期間を縮めることができるように、政令で特例を設ける措置を講じたわけであります。
第十二項も第十項第十一項の規定を受けまして、最初の委員会の選挙の期日が一般原則と違つている。そうしますと、委員の任期が二年では次の選挙期日と合いませんので、その間の調整をとるために二年という任期を政令で調整し得るようにいたしたわけであります。
第十三條は内水面漁業の料金について第九項の趣旨と同じにしたわけで、これも免罪料をとるのが二年後であるから、それに合せて料金も同じ時期から取り出すという意味であります。
第十四項、第十五項は漁業調整委員会ができるまでの経過規定でありまして、委員会ができるまでは委員会の意見を聞かなければならないという規定は適用しない。それから委員会が権限を持つている事項は、委員会にかわつて知事が行う、そういう経過規定であります。以上で漁業法の説明を終ります。
次は漁業法施行法の説明に入ります。
第一條から第八條までは現行漁業法を廃止いたしましたので、これに関するつなぎの規定でありまして、現行漁業法が廃止されますと、それに基いておる漁業権、漁業の許可といつたふうなものに一切即時無効になるわけでありますが、それをしばらくの間そのまま続けさせる必要がありますので、そのつなぎの措置を講じたわけであります。第九條から第十七條までが補償に関する規定であります。それから第十八條から第三十二條までが、漁業法制定に伴いまして関係法律を改正する規定であります。この中には実体的に水産業協同組合法関係の法令の改正が含まれております。第二十三條から第二十六條までが罰則の規定、そういう仕組みになつております。
まず第一條は、先ほど御説明いたしました新漁業法附則の第二項によりまして漁業法は廃止されますから、黙つておりますれば、廃止の日から既存の漁業権はすべて無効になるわけでありますが、漁業権を一旦御破算にして、新しく免許し直すまでには、準備期間として二年間を要するわけであります。これはその間に漁業調整委員会の選挙をいたし、漁業計画をつくり、だれに免許するかをきめるという仕事がなかなかたいへんでありますので、一般的に申しますと、どうしても二年間かかる。從つてその二年間商は現存の漁業権をそのまま続ける必要があるわけであります。そこで第一條で現存の漁業権は施行後二年間はなおその効力を維持するというふうに規定したわけであります。この二年間というのは準備期間の一般の原則でありますが、先ほども申し述べましたように、地区によりましては二年たたずに漁業整理ができるという場所もありますので、第二項で、制令で地区及び漁業権の種類を定めて期日を指定したときは、そのときまでで旧漁業権をやめて、その日以後新漁業権を免許するというふうにいたしております。なお準備期間中は旧漁業権につきましては、新法は原則として適用にならないわけでありますが、但しこの新法の規定のうち、漁業調整委員会の指示――調整委員会が漁業権の行使を適正にするために必要な指示をすることができるという指示の規定は適用いたすことにしたわけであります。これは漁業権の帰属をかえるのが二年後でありますが、その間にありましても漁業権の行使が不適当である場合においては、それを是正する必要があるわけであります。つまり全面的な改革は二年後に讓られるけれども、その準備期間中でもできる改革がある。それをなし得るように、新法第六十七條の調整委員会の指示の規定だけは適用することにしたわけであります。第三項から第四項までは、同樣の内容を現在漁業権等臨時措置法で規定いたしておりますが、臨時措置法は新漁業法が施行になりますと即日廃止するようになつておりますから、そのつなぎの措置を施設法に規定いたしたわけであります。内容は臨時措置法とほとんど同樣でございます。ただ一箇点違います点は、先ほど御説明いたしましたように、臨時措置法では新規免許はしないが、内容が從前の漁業権の存続下の更新にあるものに限つては新規免許をするというふうになりておりましたのを、附則で一切新規免許はしないとした点だけ違つております。他は現在臨時措置法の内容を漁業法本法の附則第三項と、施行法一條の三項から四條までに規定いたしております。同じ内容でありますから説明は省略いたします。
第五條は河川の漁業権は協同組合が管理できるという規定であります。これは旧漁業権は漁業会が持つておるわけであります。そして協同組合は旧漁業権は持てないわけであります。それは現在漁業会が持つておりまする旧漁業権を協同組合に制渡することを認めますと、それが実績となつてしまつて、二年後の再割当が円滑に行かないということが予想されますので、一般的に協同組合が旧漁業権を持つことは認めなかつた。しかしなら河川におきましては、どの協同組合に持たせるかについて、海のような複雑な問題がないわけであります。從つて現在ただちに協同組合に旧漁業権を持たせましても、さしたる弊害はない。しかも河川の協同組合は海の協同組合と違いまして、経済事業はほとんどやらないで、むしろ河川の管理團体というものである。從つて二年後からは河川の管理團体として國営増殖の実施期間として働くわけでありますが、その二年間の準備期間中であつても、なおかつ河川の管理が必要である。それには現在漁業会が持つておりまする專用漁業権その他の漁業権をもつ必要がある。そういう理由で河川に限りまして、旧漁業権を協同組合が持つことを認めた規定がこの第五條であります。もちろん海におきましても、漁業会が單に漁業権の管理だけの理由で二年間残存するということは、著しい協同組合の設置も不十分となるきらいがありますし、いろいろと問題があるわけでありますが、かと言つて、今ただちに漁業会を解散せしめて、旧漁業権を協同組合に持たせますと、先ほど申しましたように、二年後の新漁業権の再割当の円滑な実施の弊害となるおそれがありますので、海につきましては、河川のように協同組合が旧漁業権を持てることにはしないのであります。これが漁業権に関するつなぎに措置であります。
第六條は、漁業権以外の行政処分のつなぎ規定であります。これはたとえば、現行漁業法に基きまして許可を受ける、そういつた場合に現行漁業法が廃止されますと、その訂可の根拠がなくなりますから、その許可は一旦無効になります。從つてもう一度新漁業法に基まして許可を受ける手続をしなければならない。それは不便でありますので、旧漁業法で許可その他行政廳の処分があつた場合に、新法でもその処分ができる場合には、別に手続を要せずして、新法に基いてその処分をしたものとみなす、こういうつなぎの規定であります。こまかい字句でありますが「漁業の免許を除き」というふうに規定いたしましたのに、漁業の免許につきましては、今御説明したように、第一條から第五條まででつなぎの措置を規定してあるからであります。第二項で「前項の規定により新法に基いてしたものとみなされた処分の有効期限については、別に命令で特別の定をすることができる。この意味はちよつと不明瞭かと存じますが、これは一應前のことがそのまま新法でも引継がれるわけであります。そうしますと許可の有効期限は前の許可の残存期間となるわけであります。たとえば五年という許可を受けまして、旧漁業法が廃止になつた時期に、あと二年残つていたというときは、この残り二年間は新法で許可を受けることになるわけでありますが、この場合許可漁業につきましても、ある程度整理する必容がある。その整理の仕方は、漁業権のように、一旦全面的に御破産にするかどうかは別問題でありますが、ある程度の調整をしなければならない。その場合に調整し得るようにするためには、許可の終期が一致しておりますれば整理しやすいわけであります。あるいはまた全部一致しなくても、一定のブロックごとに許可の終期がそろつておりますと整理しやすい。こういう関係からして、許可の有効期限につきまして、命令で特別の定めをいたしまして、その終期をある程度そろえ得るようにする、そのための規定がこの二項であります。
なお関連して御説明いたしますが、漁業制度と申しますのは、何も漁業権だけに限つたのではございません。すぐ漁業権制度の改正というふうに結びつけられるのでありますが、漁業の利用方法を規律いたしておりますのは漁業権と漁業の許可、各種の漁業の禁止、これがからみ合さつて漁業の秩序ができ上つているわけであります。從つてそのうち漁業権だけを全面的に整理いたしましても、完全な漁業調整はできない。從つて許可につきましても同樣整理する措置を講ずる必要があるわけであります。但しこの許可のやり方を、漁業権のように一斉に全面的に御破算にするというやり方をとるか、それとも別の方をとるかは問題があるわけでありまして、ことに許可漁業は漁業権とは違いまして権利ではありませんから、あえて法律を要さずして整理できるわけであります。それからまたその事態が必ずしも明白に把握されていない。從つて漁業権のように今ただちにてをつけることができない。そういう事情もありまして、一應法律を変えずして訓練し得るという点から、この二年の間いろいろ調査をいたしまして、実態を把握してかた何らか許可を整理する手を打ちたい。こう考えているわけであります。実体的にはむしろ許可漁業の力がウエイトが大きいわけでありまして、当初漁業権の設定されました明治三十四年当時には、漁業権のウェイトというものに大きかつたわけでありますが、漁業の変貌によつてむしろ許可漁業の方が大きくなつた。そういうことを考え合せまして、許可漁業の整理、その調整ということは、むしろ漁業権以上に重要な点を含んでいるのであります。そしてその調整は今一挙にするのではなくて、漸次実体を明らかにして、二年後に漁業権が御破算になる時期に合せて許可に手をつける、そういう見通しであります。
なお許可漁業のうち、指定遠洋漁業につきましては、第七條で一応應審査するという規定を設けております。これは旧法に基きまして、指定遠洋漁業の許可または漁業の認可を受けておりますものについては、漁業権のように全面的に御破算にするという方法はとりませんけれども、新漁案法で指定遠洋漁業に許可または起業認可をしてはならない場合を規定しております。たとえば適格性のない場合、あるいは許可の不当な集中に至る場合には、指定遠洋漁業の許可としてはならないという規定がありますので、その規定に合せまして、新法によれば許可をしてはならないという場合に該当する事由がある場合には、現在許可を受けているものに許可を取消すという規定が第七條であります。
第八條は旧法に基いてやりました訴願についてのつなぎの規定であります。
第九條から第十七條までの補償に関する規定は、免許料、許可料と合わせまして別に御説明いたします。
次は第十八條以下の関係法律の改正であります。第十八條は水産物設置法の一部改正でありますが、これは漁業法を施行いたしますために、附属機関として中央魚業調整審議会及び瀬戸内海連合海区漁業調整委員会を置くということが一つと、もう一つは瀬戸内海に中央の出先機関といたしまして、瀬戸内海漁業調整事務局を設置する、この二つの規定を新たに加えたわけであります。
第十九條は漁業財團抵当法の一部改正でありまして、これは昨日御説明いたしましたように、魚業権の讓渡及び担保等については制限を受けるわけであります。從つてそ制限に合せまして、漁業財團抵当法も改正するというのがこの第十九讓であります。
第二十條は水産業協同組合法の改正であります。これは大体今までに御説明いたしましたが、一つは協同組合自営を優先させます規定と合せまして、組合自営な要件を援和したという点が一つ、もう一つは、河川の協同組合を河川の管理團体であるという性格を明白ならしめるために、組合資格を改正したという点が一つ、大体この二つが主なる内容的な改正でありまして、それに関連してところどころ字句を修正いたしたというふうになつております。なおこの中で「第八十條、第八十一條及び第八十二條第三項中「從事する者」を「常時從事する者」に改める。」というふうにいたしましたのは、前の生産組合の規定におきまして、從事者をもつて機構するように規定したわけでありますが、從事者と申しましても、臨時の者があるわけでございます。たとえば定置で土俵をつくる場合に臨時に雇う、そういう者があるわけでありまして、臨時の者を生産組合の構成員と考えることはおかしいわけでありますので、当出字句はいささか不備てあつたのを修正いたしまして、從事者というのは常時從事者であるということを明確にいたしたわけであります。なお常時と申しまして、固定的にずつと雇われるという意味ではなくて、臨時ではないという意味であります。從つて一漁期間雇われるというのも常時の從事者であります。それで固定的に船主に結びついておる特定の労働者だけを含んで生産組合をつくるということはこの趣旨からにずれるわけであります。
第二十一條は水産業團体の整理法の一部改正であります。これは二年間の準備期間中の漁業権の管理に関連いたしまして改正いたしたわけでありますが、先ほど説明いたしましたように、二年間は漁業会が漁業権を持つて管理いたすわけであります。ところが漁業会は本來ならば一日も早く解散した方がよいわけでありまして、それが二年間残るというのは漁業権の始末のしようがないので持たしたわけであります。それを相かわらず旧勢力が漁業会を牛耳りまして、漁業権の管理権を牛耳ることによつて從來の勢力を温存するということを防ぐ趣旨で、一應形は漁業会に持たせるが、その管理はちようど漁業会の資産処分について資産処理委員会が扱つたと同じように、その漁業権の管理については漁業権管理委員会が当るというふうにいたしたわけであります。この漁業権管理委員会の委員の選び方、これは大体資産処理委員と同じでありまして、漁民が五分の二以上みずから出席する特別の総会で選ぶ。しかして選挙権は漁民だけであり、被選挙権も漁民だけに限る。こういう点は資産処理委員会よりももつと嚴重であります。非漁民は漁民権に対しては一切タッチさせる必要がないからであります。そういうふうに嚴密に漁民から選びました漁業権管理委員が漁民権の管理に対して旧來の理事にかわつてその権限を営むというわけであります。なお漁業会の漁業権の管理はすべて漁業権管理委員会が行いますわけではなくて、管理委員会のほかに総会、総代会というのが当然あるわけであります。ただ理事の権限をかけて行うだけでありまして、もちろん管理委員会の意見が総会の意見と相反しました場合には、総会の決定が優先することは当然であります。このように漁業会の資産のうち漁業権の管理に関しましては、漁業権管理委員会が扱いますために、資産処理委員会の権限中から漁業権に関する部分を削除いたしております。
第二十二條は農林中央金庫法の一部改正でありまして、これは現行法では生産組合は直接中金に加入はできなかつた。一應協同組合に加入して、協同組合が中金より借りて、それを生産組合にまた貸すというふうな仕組みになつておりましたが、これでは金融の円滑を欠くわけでありますし、特に大きな生産組合になりますと、協同組合ではまかないきれない場合もありますので、直接生産組合を中金に加入させて、金融の便宜をはかつた。こういう改正であります。
第二十三條以下二十六條までは罰則の規定であります。説明は省略いたします。
附則の第一項はこの施行法の施行期日に関する規定で、これは漁業法本法の施行期日と一致させております。第二項は、これも漁業法本法の附則で海区漁業調整委員会が設置されるまでの、つなぎの規定と同じ趣旨で、委員会ができるまでは委員会の意見は聞かなくともよろしいという規定であります。
以上で、非常に荒つぽく簡單でありましたが、一應漁業法及び漁業法施行法の説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02219490906/8
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009・石原圓吉
○石原委員長 暫時休憩します。
午後二時十一分休憩
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午後二時十六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02219490906/9
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010・石原圓吉
○石原委員長 それでは会議を開きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02219490906/10
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011・久宗高
○久宗説明員 それでは引続きまして、施行法の第九條からの御説明をいたします。漁業権の補償の問題と免許料、許可料の関係につきましては、先議会におきましても数字的にいろいろ詳細に御説明をいたしておりますので、この逐條審議におきましては、主として法文上のいろいろな問題につきまして、特に難解な点、そういうところにつきまして御説明申し上げたいと思います。
まず九條でありますが、これはだれにどういう補償をするかということをきめた規定であります。御承知の通り漁業制度改革におきましては、二年間の準備期間があるわけでありまして、その期間の後に漁場の切りかえが行われるわけであります。そこでその切りかえの際、つまり漁業権が消滅いたします際に漁業権又はこれを目的とする入漁権、賃借権若しくは使用貸借による貸主の権利を持つている方に対して、この法律の定めるところによつて補償金を交付することになるわけであります。ここに「貸借権若しくは使用貸借による借主の権利」とございますが、今度の補償におきましては、漁業権の客観的な價値を補償したいという意向を持つておりますので、何らかの理由で賃借料をとらないで貸しているというような場合でありましても、その漁業権の客観的な價値を補償したいという考えから、「使用貸借による借主の権利」というものも含めたわけでございます。補償全体の考え方といたしましては、すでに財産税のときに漁業権の評價という問題が出ておりますので、これと大体歩調を合せるのが当然でありますが、ただ財産税の場合と、漁業権そのものを消滅さしてしますという場合とでは若干事情が違いますので、それに從つた考え方で、補償の金額の算定その他につきましては、多少の修正を加えておるわけであります。
第十條は漁業権等の補償計画及び補償金額の算定について規定したものであります。まず補償の計画でありますが、農地改革の場合にはやはり補償計画と――補償計画と申しますより、あの場合には買上げの計画でありますが、これを一筆ごとにではなしに、相当まとめてやつたわけでありまして、そのために一つ一つの事情が片づかないで、全体が非常に遅れてしまうという事情があつたわけであります。そこで漁業権の場合には、補償の計画というものを個々の漁業権ごとに定めて行こうという考え方をとつております。つまりどこかひつかかつておりましても、そのために全体がとまつてしまうということのないようにして行きたいということで、漁業権ごとに補償計画を立てるわけです。これには漁業権補償委員会が参加するわけでありますが、補償委員会の問題につきましては、十七條のところで御説明申し上げたいと思います。この補償計画については、まず補償の金額を定めなければならないわけでありますが、その算定方法につきましては、第三項に各号ずつと書いてございますように、いろいろこまかい計算方法が書いてございます。大事な点は、その補償金額は左の各号に掲げる額の範囲内において定めるという点でありまして、つまり左の各号に掲げる計算がただちにそのまま補償の金額になるのではないのであります。これが基準になりまして、その金額の範囲内において定めるというふうになつております。これにどういうことかと申しますと、ある算式をきめましても、それを具体的な事例にあてはめました場合に、いろいろ特別な事情がそこに入つて参りますので、そのままただちに補償金額としたのでは、実際上から見まして非常に公平を失するという場合があり得るわけでありまして、この補償全体の考え方といたしましては、もちろん基準は法律できめましたような基準が当然に補償の主体をなすわけでありますが、それと関連いたしまして、各漁民がおのおの自分の隣の網とか、そういうものについて、あれがこのくらいの金額なら自分の網も当然このくらいの金額だといつた、横の公平ということが非常に大事であろうと思うのであります。そこでそういつた事情を考慮いたしまして、つまり左の名号からきまつて参ります額の範囲内で補償委員会がきめる。その場合に、後にお話いたしますような点数制というようなものも加味して行きたいというふうに考えておるわけであります。この各号の御説明につきましては、これは非常に煩瑣な数字が入つて参りますので、逐條審議においては省略させていただきたいと思いますが、すでにお配りしました資料にも書いてございますし、前にも御説明しておりますので、一應省略したいと思います。一号から六号までは個々の基準の規定でありまして、六号は何か特別な事情によつてこの前各号にどうしてもより得ない場合、またそれによることが著しく不適当と思われるような場合も予想されるわけでありまして、そういう場合には主務大臣が定める基準によつて算出した額という一項を設けておるわけであります。これは不測の事態も考えられると思いますので、一應用意に入れたわけであります。第三項の額の範囲内において定めるという問題と関連して、これを調節する措置は第四項であります。つまり第四項におきましては、一應計算の基礎にいたします賃貸料とか、漁獲金額というものにつきましては、これは昨年の七月に統計法に基いて実施した漁業権調査規則があるわけであります。これに最も正確と思われる数字が報告されておるわけであります。この金額によるのだ。しかしながらその場合、たとえば賃貸料について考えました場合に、漁業会がその会員に賃貸していたために賃貸料が著しく低い場合、あるいは事情の変更によつてその賃貸料によることが著しく不適当な場合、その他特別な事由がある場合、その賃貸料によらないで、漁業権補償委員会が近傍類似の漁業権の賃貸料を参酌して定める額を賃貸料とすることもできるというふうにいたしておるわけであります。また同時に、この漁業権センサスの基礎になつておりますのは、昭和二十二年の七月から二十三年の六月末日までの一年間がとられておりますので、この一年間の漁獲金額というのをとるのでは、その基準年度の不漁とか天災によつて漁獲金額が著しく低いというような場合もございましようし、その他特別の事情が考えられますので、そういう場合にはやはりこれもその漁獲金額によらないで、漁業権補償委員会が近傍類似の補償金額を参酌して定める額を基準としてとれるということにいたしたわけであります。この額の範囲内において委員会が定めます場合に、先ほどちよつと申しましたように、大体現在考えておりますのでは、これは漁業種類ことになる場合が多かろうと思いますが、大体海区ごとにたとえば点数制というものを設けまして、ある基準になる網がかりに百点といたしました場合に、この網は八十点、この網は六十点といつたような、漁業者が見まして客観的にはこのような價値のものであるというものと、この基礎になる基準の價格というものと組合せまして、そこでできるだけ横の公平もはかり、同時に基準とも離れないような補償の額を定めて行きたいというふうに考えておるわけであります。そういうような措置をとりませんと、実際きめました場合に非常にでこぼこができまして、そのためにかえつて補償全体の意義を失つてしまうことをおそれたわけであります。同時にそれをあまり簡易にいたしました場合に、またこれも相当問題がある、非常にむずかしい点であろうと思うのであります。
もう一つここで申し上げておきたいのは、財産税の場合に、自営の漁業権につきましては所得を基準にして計算しております。しかしその財産税の場合の実際問題をいろいろ検討してみますと、漁業権ごとの所得というものは非常にとらえがたいということがわかるわけでありまして、それよりはむしろ近傍類似の漁業権というものから見ましてそこに推定賃貸料というものを割り出して行つた方が、先ほど御説明いたしました点数制との関係においても公平が期し得られるという考え方から、自営の漁業権につきましても推定賃貸料というものを考えたわけであります。なおこの基準年度につきまして、從來第三次案におきましては三年平均ということを申しておつたわけであります。また財産税においてもそういう考え方をとつたわけでありますが、この三年平均ということも、実際これにあたつてみますと、とうてい補促しがたいということから、もつと確実な資料に基いてこれを実施するという意味で、漁業権センサスをいたしました場合の基準のときをとつたわけでありまして、すなわち昭和二十二年七月一日から昭和二十三年六月三十日までといたしたわけであります。なお繰返して申しますように、この一年をとつたことによる必要な補正は第四項でいたしたいというふうに考えておるわけであります。價格のベースから申しますと、三年平均よりはこの一年間の方が若干上まるわけでありまして、これをとつたために特に非常に損になることはないと考えるわけであります。
なおもう一つ理論的な問題といたしましては、二年後に漁業権の消滅が起つて、そこで補償問題が起る。それの基準年度はそれよりずつと前になるということにつきまして、いろいろ問題があるではないかという御議論があつたのでありますが、この点につきましては、農地のような場合でありますと、一筆ごとにやつて参りまして、二年間にそれをすつかり整理してやつて行くようになるわけでありますが、漁場の特殊な実情から申しまして、これを一件ごとに片づけるというわけに参りませんので、漁業権は当然消滅したらすぐ新しい漁場関係に移りたいわけでありますが、その二年間は権利があると同じような状態で操業して行くわけであります。しかしながらそれは漁場整理の特殊な制約から参るものでありまして、その間は本來は二年前に消滅さすべきものを、二年間準備期間中そのまま操業を続けさせるというわけでありまして、これは消滅のときにおきます價格と関連させなかつたわけであります。そういう事実は法案を示すことによつて一般に周知されることでありますから、それによる不測な経済上の損害が第三者に與えられることのないという考え方をとつております。また同時に、ここで法律上から申しますと、補償の対象になりますものは、その消滅の時期に権利を持つた人間でありますが、その基準がもつと前にあるため、そこに食い違いが起るのではないかという議論もございますが、それは臨時措置法並びにこの施行法の前段において、大体凍結措置がとられておりますので、全体から見るとごく少数の例外しかないのではないか、こういうように考えております。
第五項は補償計画を定めた場合の公告に関する規定でありまして、この中において、補償すべき漁業権等を有する者の氏名または名称及び住所、補償すべき漁業権等、及び補償金額等を公示するわけであります。
これによりまして次の補償の手続が進んでるわけでありますが、第十一條は、それに対する異議の申立てまたは訴願に関する手続上の規定であります。その期間につきましては、実際上どの程度にかかるだろうかということをいろいろ檢討いたしました結果、大体手続といたしましては、できるだけこれを早く完結させる必要があるわけでありますが、実際問題としては、それにあまり短かくいたします場合には、権利者に不測の損害をこうむらせるということも考えられますので、やや農地の場合よりはこれを長めに見ております。
第十二條は知事による補償計画の承認に関する問題であります。この補償計画は十一條のような手続をだんだんふんで参りまして、最後に委員会から知事に承認を求めることになるわけであります。これはもちろん漁業権ごとの補償計画でございます。知事が承認いたします場合に問題となりますのは、実際のやり方によつて各縣ごとに非常に基準が違つて來てしまう、こういう場合が考えられるわけであります。そういたしますと、これはあと免許料その他にも関連して参りますので、各縣の間のアン・バランスを最小限度に食いとめる必要があるわけであります。そこでまたそういうような全般の問題もございますし、漁業権それ自体にも他にいろいろ問題がある場合が考えられますので、それを何らかチエックする必要があるわけであります。それで第二項におきまして、都道府縣知事がそういう承認をしようとする場合に、主務大臣の方から他の都道府縣の漁業権等補償計画と均衡を失し、その他不当であると認めるときは、都道府縣知事に対して承認をしてはならないということを命ずることができるという規定を設けたのであります。これによりまして全体のバランスをとつて行きたいというふうに考えておるわけであります。そういたしますと、第三項で、都道府縣知事は承認ができなくなるわけでありますから、その承認を拒むわけであります。そういたしますと、漁業権補償委員会はその計画をつくりなおさなければならないことになります。もし委員会の方でそれをつくりなおさないときは、都道府縣知事が補償委員会にかわつてこれを作製しなおすことができるという規定も第四項に置いたわけであります。第五項、六項、七項は手続的規定でありますから、省略いたします。
第十三條の承継人に対する効力、これも言うまでもないところですから説明を省略いたします。
第十四條の補償金の供託の問題でありますが、第九條の規定によりましてて、補償金を交付すべき漁業権等について、先取特権または抵当権があるときは、当該権利を有する者から供託をしなくてもよい旨の申出がある場合を除いて、政府は補償金を供託しなければなりません。この場合はどういうことになるかと申しますと、結局先取特権または抵当権を持つているものは、権利ではなしにその補償金そのものに対して抵当権を持つ、こういう形になるわけであります。この漁業権そのものについて、抵当権が形式上も成立しておるというのは、調べによりますと非常に少いわけでありますが、やはりこういう規定を設けませんと、抵当権者に損をかけるということでそれを設けたわけであります。これに特に言うまでもない規定であろうと思いますが、注意規定として設けてあります。
第十五條でありますが、これに補償金増額請求の訴えについての規定であります。補償計画を立てます際に、訴願とかいろいろな手続があるわけでありますが、補償計画はどんどん裁決その他の措置によつて進んで行くわけでありまして、それが決定してしまいました場合でも、その補償金の額に不服がある者は、訴えをもつて増額を請求することができるわけであります。このことは当然と言えば当然でありますが、むしろ但書に意味がありまして、そういうような訴えにつきましても、あるところでけじめをつけませんと、全体の補償の問題が片づきませんので、この決定があつて通知受けた後は、一箇月を経過したときはこの限りでない。この但書の方に意味があるのであります。もちろんこの場合の被告は國であります。
第十六條は漁業権証券に関する規定であります。この補償金の交付につきましては、インフレーションの関係その他財政上の必要に基きまして、これを現金で全額交付することができないということは、金額から見ましてもやむを得ないことであろうと思うのでありますが、法律上は三十年以内に償還すべき証券で交付することができると規定いたしたのであります。この三十年以内というのは非常に長過ぎるのではないかという御意見もあるわけでありますが、この点につきましては、免許料との関係がありまして、これを非常につめて参ります場合には、免許料の方の負担の度合も非常に強くなつてくるわけであります。そこで現在のように経済状態が非常に不安定な場合におきまして、長期の見通しは非常にむずかしいわけで、現在のところお配りした資料などにおきましては、一應二十五年の計算をいたして数字を出してございます。しかし法律の上では一應大事をとりまして、三十年以内には償還すべき証券とあります。しかしこれは実際交付いたしますまでに経済上の見通しももう少し確定的に立ち得ると考えられますし、漁業者の負担能力その他を考えまして、相当つめられるではないかと考えております。漁業権の方の基礎算定のところで御説明をちよつと省略いたしましたが、普通の漁業権は大体十五年の権利として計算し、専用漁業権につきましては、特に三十年というふうに規定しておりますので、それとの関連で相当の長い年数にこの償還を考えませんと、負担能力の方に問題が起こるわけでありまして、一應ここでは三十年以内というふうに法律上の規定をいたしたわけであります。この一項の規定によつて交付するために、政府は必要な額を限度として証券を発行することができる。この証券の正確につきましては、大体農地証券を同じようなわけでありますが、これと同じ取扱いをされてはいろいろ困るという問題があるわけでありまして、これにつきましては、このあとで申し上げたいと思います
第三項は、交付する証券の交付價額の問題でありますが、これは時價を参酌して、大蔵大臣が定めるというふうに規定しております。これは一般の公債の場合と同じでございますが、結局市場の金利とのバランスというようなこと、この証券の利回りその他の関係をいろいろ考慮しなければならないわけでありまして、それはいよいよ発行に一番近い時期においてそれをきめる必要があるわけであります。そこで前もつてこれをきめてしまうわけに参りませんので、そこではこういう形をとつておりますが、大体農地証券の場合で申しますと、交付價額を落すという形ではなくて、むしろ一般の金利より多少引上げるという形でやつておりますので、漁業権証券におきましても、大体そのようになるだろうと考えておるわけであります。なおこれについての証券に関する必要な事項は、これは詳細になりますので命令に譲つております。ここで問題になりますのは、農地証券の場合の証券の性格といたしましては、無記名証券でありますので、轉々賣買はもちろんされますし、これを賣り、あるいは銀行に担保に入れて、貸出しを受けるということも実質上はできるわけなのであります。しかしながらこれは農地証券――農地改革の場合の特殊な事情、地主に対する補償という意味も含まれたと思うのでありますが、その他これを無制限に認めます場合には、証券で出した意味がなくなつてしまう。つまりインフレーションを非常に激成する。新たな追加的な投資になる、こういうような意味も含めまして、日銀に対する通牒が大蔵省の方から出ておりまして、それによつて五年間は発券準備に充ててはいけないという規定があるわけであります。その結果、事実上これが資金化しないという形になつておるわけでありまして、それを特に特殊な場合に救うために、政府の買上げといつた措置をこれに加えておるわけであります。その財源はもちろん土地を買う方の人が一ぺんに相当拂つてしまつたというような財源を、それにまわして買上げに充てているわけでありますが、こういうようなことは、農地証券の場合にはそれでいいかと思うのでありますが、漁業権証券の場合には、これが参ります相手を考えますと、現在の漁業権の所有関係から当然おわかりになりますように、漁業会に相当大きな部分が行くわけでありまして、大体零細漁民の團体に対してその金が行くわけでありまして、これを何らか生産施設に使いたいというような場合に、こういうような制約を受けるということでは非常にむずかしいわけでありまして、この点を何とかしなければならないわけでございます。ただ法律上、それは規定されておりませんので、これを財政当局と十分話合いをつけて、実施するまでの間に固める必要があるわけでありまして、その問題がまだここでは残されておるわけであります。
第十七條は漁業権の補償委員会に関する規定であります。この補償の問題はなかなかたいへんな問題でありまして、それを農地の場合で申しますと、農地委員会が買上げ賣渡しという、その買上げに相当する問題であります。しかしながら漁業制度改革におきましては、農地でいえば買上げに相当する仕事は、この補償委員会が漁業権の補償という形といたしまして、漁業調整委員会はむしろその後の白紙にかえつた漁場をいかにするかという問題に集中的につつ込んで行くという考え方をとつておりますので、これをわけております。そうして漁業権補償委員会は、都道府懸ことに設けまして、その都道府縣内の漁業権等の補償に関する事項を処理させることになるわけであります。この場合先ほど個々の漁業権ごとに計画を立てると申しましたが、大体海区單位にまとめて行く形になると思います。また内水面はちよつと別になるのではないか、こういうふうに考えますが、委員会としては一つとしてそれを処理して行くという考え方を持つております。
この委員会の構成でございますが、これは選挙制をとつておりません。この点は補償ような非常な大事な問題について、ことに漁業の民主化といつたような問題から、これを選挙制にしろという意見も非常に強いわけでございますが、これは相当專門的な問題になつて来るわけでございまして、またそれぞれの業種を網羅するといつたような必要も出て参るわけでございます。そこでここでは選挙制をとらないで、知事の選任にいたしております。すなわち漁業者及び漁業從事者の中から選任した者七名並びに学識経験ある者の中から選任した者五名、計十名ということになつております。その結果、選挙制をとつておりませんので、いろいろ問題があるわけでありますが、非常に人数が少い点と、府懸單位で府懸の問題全般を見なければならないということから、われわれとしてはこれによつて特に大きな障害があるとは考えておらないのであります。また漁民の側でこれを監視するいろいろな方法も実際問題としては考えられると思いますので、特にこれは懸單位の非常に大きな選挙をやるというところまでは考えておらないわけでございます。この補償の問題よりもむしろ新しい漁場をどうして行くかという方が、実際問題としては大事だと思います。また現在の漁民の関心もむしろそちらの方にあるように考えております。この委員会は結局九條の規定による漁業権の補償金の交付に関する事務が法律上確定するまででありまして、これが終ればこの委員会としてはなくなつてしまうといことになるわけであります。ただ問題は、先ほどちよつと基準年度のところで触れましたように、二年間ということになりますが、補償の手続が法律上始まりますのは、形式的に漁業権の消滅した時期、つまり漁場の切りかえをやつてから、初めて補償計画を立て、いろいろな手続をふんでこの決定に至るわけでありますが、実際問題としては、実質的にはそれ以前に始まるわけであります。つまり基準年度もすでにきまつておりますし、この法律が施行されますと、ただちに仕事にかかりまして、補償の計算その他をして行くわけであります。それをいたしませんと、免許料の方にそれをどういうふうに振り充てるかという大ざつぱなわくも出て参りませんので、実際上は試行と同時に、これが働き出す。しかしそれによつて計算されたいろいろなものが法律的に確定いたしますのは、つまり漁場切りかえが行われてから、初めて具体的に委員会としては正規の動きを始めるわけであります。二年間の準備機関と、そのあとの法律的にこれを固める期間というものが、この委員会の活動する時期ということになるわけであります。これが補償の関係につきましての法律上特に申し上げておかなければならないと思うような点の大要でございます。
次にこれと関連いたしまして、免許料の方の御説明をいたしたいと思います。漁業法の第七十五條をごらん願いたいと思います。先國会におきましても再御説明いたしましたように、結局この補償の財源というものは、新しい漁業権の免許料及び漁業の許可料でまかなうわけでございますが、その関係を規定いたしましたのが、この第五章であります。
まず第一項は沿岸漁業に関する部分であります。沿岸漁業とその他の関係は、一項と三項を照し合せていただけばわかるわけでありますが、補償の問題につきまして沿岸漁業を全部の漁業でカバーするという形はとつてはならないという問題が出て参りましたので、結局沿岸のものは沿岸でまかない、内水面のものは内水面でまかなうということになるわけであります。そこで第七十五條のような規定になるわけでありますが、第一項では「毎年、政府に免許料又は許可料を納めなければならない。つまり毎年ということが書いてございます。これはよく理解があるわけでありますが、一遍に拂つてしまうのではないのであります。つまり漁業権というものをもらつて、あるいはこれ買うというような考えで一遍に免許料を納めてしまつて、それだけでおしまいというように考える方がありますが、そうではなくて、毎年納めるわけであります。これは実際上申しますと、今まで漁業者に拂つておりた賃貸料を國に拂うと考えていただけばいいわけでありまして、償還の方も年賦でこれは均等の償還になつておりますので、それを見合つて免許料を毎年拂つておく、それは漁業権を買いとつてしまうのではなくて、免許を受けまして、それに対して一定の賃貸料を國に拂つて行くというふうにお考えいただけばわかると思うのであります。そういうものを毎年政府に納めなければならぬ、それの内容を第二項で規定しております。つまりその場合一、二、三号に掲げたような費用の合計額とおおむねひとしくなるように毎年免許料、許可料の額を定めるわけであります。これはどういうことかと申しますと、この中に二号、三号で行政費の問題が出て來るわけでございます。これについてはまたあとで申し上げますが、それと補償の額、つまり一号であります。これとの合計額を免許料でまかなう形になりますので、それとほぼ見合つた金額を予定するわけでありまして、もちろんこれは総額がきまつて、これをだんだん各種漁業種類に振りわけて行く、そういうふうにいたしまして、一應毎年のバランスをとつて行くわけであります。これはきつちりというわけに行きませんので、おおむねというような妙な言葉になつておりますが、大体予算を立てます場合にこれ見合うつて立てて行くという形になるわけであります。ここに但書がついておりますが、これに免許料または許可料の額が漁業者の負担能力を超えると認める場合はこの限りでない。これはあとに減免の問題が出て参りますが、それと違いましてここで言つている但書は、こういうような長期の計画を立てて補償と免許料というものを見合せて行くわけでありますので、将來大きく経済状態がかわつて來る、たとえばデフレーションで非常に大きな変動が來るといつたような場合に、こういうふうに額が見合つております関係上、それが漁業者にとつて非常に大きな負担になつて来る。こういつた場合はおおむねひとしくなるように、毎年納めなければならないという規定がはずれるわけでありまして、これは個々の減免の問題とは違うわけでありまして、すなわち長期に見合わしました場合に、大きな経済上の変動が來ます場合に、こういうようなやり方そのものをその年続けて行くことが不当であるといつたような場合に考慮される規定でありまして、財政関係の方々は非常にこれを入れるのをいやがつた規定であります。この各々のうち二号と三号に行政費に関する問題でありまして、これをなぜ免許料、許可料に含ましめるりかという点に、懇談会その他でも非常に議論が出ておりますように、非常に問題な点でございます。これについては立案いたしました場合に、財政関係者とは非常に長い期開議論いたしました問題でありまして、いろいろ経緯があるわけでありますが、これを特にここに入れました問題ついて、しばしば農地改革の場合と比較されるわけであります。農地改革の場合には全然農民の負担ではなしに、一般会計からまかなつておるのに対して、これと同じ性格である漁業制度の改革という場合に、行政費を漁民が負わなければならないという問題であります。これについてはもちろん二年間の準備期間においては免許料も入つて來ませんし、これは一般会計の負担で行く。これはちようど農地改革が二年間でやります場合にこれを國費でまかなつておると同じであるということが言えるわけでありますが、この漁業調整委員会は二年間だけの措置ではなしに、その漁場の再割当をいたした後引続いて漁業調整をして行くのだ、その結果は受益者は漁民それ自体ではないかということから、これに受益者負担という考え方が入つて来ておるわけであります。しかしながらこれは現在農地委員会の方を見てみましても、また農地改革の性格もかわつて、その後の農地のいろいろな調整関係をやつておるわけでありまして、そういう点から見ますと、明らかに矛盾があるわけであります。さらにこれが入つて來ました結果、補償の額の方は確定額でありますから、長期の見通しが立てられるわけでありますが、行政費が入つて参りますと、これは物價状態の変動によりましていろいろかわつて來るわけでありまして、漁民の負担がこれによつてどうなるか、内部の負担関係のバランスもいろいろかわつて來るわけでありまして、いろいろ支障があるわけであります。しかしながらこれは当時農地改革が非常に金がかかつたというような問題から、相当関係方面その他からも強い意見がございまして、こういう形になつたわけであります。しかしながらこれは私どもとしても、まだいろいろ問題があると考えておる次第であります。第三項は沿岸漁業以外の問題でありまして、ここに一、二、三、四、五と揚げましたような漁業につきましての許可料の問題であります。二項はその入つて來た許可料がどう使われるかという使途まではつきり限定しておるわけでありますが、三項はその関係はないのであります。これは魚價が一つの体系を持つておるという関係から、沿岸漁業の方がこういう負担がかかる場合にはそれとほぼ同じ同額の負担がこちらにかかつて來るということを規定したものでありまして、これは四項においてそのことを抽象的に書いておるわけであります。つまりこのような種類の漁業からとります許可料は、毎年やはりその総額が第一項の免許料及び許可料の合計額に主務大臣が中央漁業調整審議会の意見を聞いて定める一定割合を乗じて得た額を超えないように定めなければならない。結局ここで述べておりますことは、中央漁業調整審議会の意見を聞いて沿岸漁業とほぼ同等の負担をしていただくわけであります。これは先ほどちよつとお話いたしましたように、魚價の体系ということから來るアンバランスの問題のこともあります。同時にここの三項に揚げました漁業につきましては、財政関係者の方でこれは相当特権的の性質を持つておるのではないか、從來これをただ手数料的に扱つていたことについて相当疑問があるとゆうような意見が出ております。つまりこのような形をとりませんでも、特権料的なものが考えられて、何らかの措置がとられるのではないかということも予想されます。かりにそれがとられないといたしましても、税その他の関係で、もしここに超過的な利益がございますと、大きくとられて、ただ一般会計の方に漁業とは全然無関係に使われてしまうことになるわけであります。ここに積んだ金をどういうふうにどこへ使うということまで書いてございませんが、これは一應許可料としてとり、一般会計に入ります。その使途はまだきまつていないけれども、少くとも漁業関係で積んだ金であるから、漁業に関連して、たとえば保險制度とかいろいろな問題があると思いますが、特殊な施策について行政的な費用が要るという場合に、これを引出して來ることが考えられるわけであります。これは、いろいろ漁業上、殊にこの制度をやりました結果起る経営上の問題について、施策が追つかけて行つた場合に、初めて生きてくることになると思うのであります。それにかりにここでこのようなわくを設けませんでも、やはり実質的にはとられてしまうわけでありまして、それよりむしろここにわくをつけてしまつた方がいいのではないかという考え方があるわけであります。
次にこれは全体に関連するのでありますが、許可料、免許料を拂います場合には、所得の計算において当然これは経費として差引かるべきものでありまして、これによつて二重に所得税とだぶつて来ることは法律上はないわけであります。現在の税のとり方が、そういう経費の算定その他においてというよりは、むしろ上からある金額がかぶさつて來るというような関係が現実にありますので、それははつきり申し上げられないわけでありますが、税制の改正におきましても、そういう実際の税のとり方が相当問題になつておりますように、漁業におきましてもそういうような税のかけ方そのものがもし設けられるならば、こういう形のものに実質上二十課税になるという場合もあり得るわけでありまして、そういうようなものに対してこういう措置をとつて参ります場合には、國としては、一方において税でそういうようなやり方をすることはできなくなるわけであります。もし税が法律通り行われれば、これは経費として差引かれて二重の形にはならぬことになるのであります。
第七十六條は減免に関する問題であります。先ほど七十五條二項の但書で申し上げたのは、長期の見通しについての一般的な規定でございますが、七十六條の方は現実の減免の問題であります。第一項の方は全般的な問題、すなわち「経済状況の著しい変動、不漁、天災その他やむを得ない事情により、漁業者の負担能力が減退したために」というふうに言つておりますが、これはつまり日本全体でもよろしうございますし、ある一定の地域ということも考えられるわけでありますが、いずれにいたしましても、免許料または許可料を納めることが著しく困難であると認められる場合において、中央漁業調整審議会の方から政府に働きかけるという場合であります。つまり免許料を減免すべきだ、こういつた問題が出て参りました場合に、政府といたしましては、減免あるいは納府の猶予、その他免許料または許可料の納付の負担を軽減するために必要な措置を講ずることができることになつております。
第二項の方は、そういう全般的な問題ではなしに、個々の漁業者の問題でありまして、漁業者は、その営む漁業につき、不漁、大災その他やむを得ない事由によりその負担能力が減退したときは、海区漁業調整委員会に対して、免許料の徴收の緩和を政府に申請すべきことを申出ることができるという規定を置いております。それが妥当であるかどうかということは海区漁業調整委員会が檢討するわけでありまして、それは三項に書いてございます。その申請は相当と認めて、政府にその徴收を緩和すべきことを申請したときは、政府は軽減に関する必要な措置を講ずることができるという規定になつております。これは農地の場合には、どういう場合であるということを数字的に限定しておるわけでありますが、漁業の場合には現在のところまだ確定的な数字で申し上げかねると思うのであります。そこでここは非常にあいまいな形になつておりますが、いずれにしても、そういうような個々の漁業者あるいは全般についての減免という問題の根拠規定をここに置きたいと考えておるわけでありまして、今後漁業経営の内容が漸次明らかになつて行くに從つて、この問題はもつと明確に規定できるでありませう。現在まだやみその他の問題がありまして、経営内容を明確に示すとは非常に困難でありますので、その点は触れなかつたのであります。いずれにしても、これは減免のそういう根拠規定を置いて漸次固めていきたいという考え方であります。
第七十七條は徴收の市町村への委任の規定でありまして、これは手続的な問題でありますから省略いたします。
第七十八條は督促及び滞納処分の問題、第七十九條と八十條は手続的な規定でありますから省略さしていただきます。
第八十一條に委任規定がございますが、免許料及び許可料に関しては、これまた非常にこまかい規定がいろいろ要ると思うのであります。それにつきまして大きな筋、ことに大事な点をこの法律に書いたわけでございますが、あとのこまかい規定はこれを命令の方に限つたわけであります。
以上が免許料につきましての特に問題になるような点の御説明でありますが、先ほど松元説明員の方で省略いたしました二、三の点がありますので、それをつけ加えておきたいと思います。
その一つは第百十八條の問題であります。これに今の行政費とも関連する問題でありますが、百十八條に漁業調整委員会の費用の問題が書いてございます。これは委員会の費用をだれがどういうふうに負担するかというのであります。全体としては今の免許料のところで毎年々々費用をきめて行くわけでおりますが、それに対して府懸の方からしばしば國の事務をやらされる。委員会について費用は出してくれるけれども、費用以上に仕事ばかり押つける。これではとうていやりきれないという問題が非常に強く出まして、ここに特にそれを規定したわけであります。すなわち國の方では、免許料の額の決定の際基礎とした費用、委員会にどれだけ出すかといつた問題については、それの頭をはねないで、全額を完全に負担するということであります。また都道府懸の方は、上から参りました負担金の額を越えて委員会の費用を支出する義務は負わない、こういうことを書いてあるわけであります。すなわち、ごく簡單に言つてしまえば、來た金だけの仕事しかしないということになるわけでありますが、地方といたしましては、農地委員会の場合に非常に問題があつたらしいので、特にこれを入れてくれという話があつて入れたわけであります。もちろん地方によつて、その懸の特殊な事情に基づて、この費用を超えて懸の負担においてさらに支出するという場合も禁じているわけではないのでありますが、その両者の義務的な関係を明確にしたわけであります。三項は数府縣にわたる場合のことを規定しているわけであります。瀬戸内海連合海区漁業調整委員会並びに中央審議会の費用というものを國が負担しております。
それから免許料と補償の問題と関連いたしまして、内水面の方に第百二十九條の規定がございます。これは先ほどちよつと説明を省略しておりますので、若干御説明しておきます。これも考え方は七十九條と同じでありまして、結局料金をどれだけとるかという問題と、それをどう使うかという問題を規定したわけであります。大体特別会計的なものの第一條に相当するものだけがここへ来ているというふうにお考えになつていただけばよいと思います。どういうような財源によつて、どういうような仕事をするかということが出て來ております。ここで沿岸と違いますのは、内水面に関する分の補償の費用を置くことはもちろんでありますが、いわゆる普通の行政費のほかに、第二項で政府の一行う内水面における増殖事業に要する費用というのが入つております。これは内水面におきましては、主として料金の対象になりますのは遊漁者でありまして、これはまさに増殖の受益者になるわけであります。そういう意味と、もう一つに遊漁者でありますから、その負担関係というものはその支拂う能力によつて考えてもよいわけでありまして、実際これによつて生活している漁民の場合の生活の問題というようなところまで突込む必要はないわけであります。從つて相当便利ないろいろな措置を講じました場合に遊漁者が出してくれれば幾らでももらい受けた方がいいわけでありまして、それをどんどん増殖部門につぎ込んで行こうというわけであります。そこでいわゆる補償の額あるいは行政費をまかなうものよりも、料金としてとれる額の方が多いわけでありまして、その残りの部分が増殖事業としてつぎ込まれて、つまりそれがリンクしておるわけであります。もし料金制度が非常に成功いたしまして、遊漁者もどんどん増殖が進んで來るというので、満足して料金を相当してくれる、しかも確実に出してくれるということになつて参りますと、それだけ増殖事業が自動的にふくらんで行くということになるわけであります。これは先ほど松元説明員の方から御説明いたしましたように、増殖事業が補助金が切れてから非常に沈滯する一方でありますし、荒廃にまかされている関係もありますので、これにはどうしても補助金的なものがいるわけであります。そして今のような大きなプールによつてやつて行くのでなければ、内水面が個々に増殖する所と、魚のとれる所と違うといつた関係もありまして、これはバランスをとつて行く必要がある。そこでそれを形式的には政府の行う事業、と言いますと、何か民間の仕事を取上げてしまうようなかつこうに見えるわけでありますが、実はそうではなくて、内容から申しますと、こういう形式をとらなければ、合理的に増殖の資金を動かせないわけであります。國が増殖事業を行うと申しても、実質的に行うのはごくわずかでありまして、委託という形式を通じて、実際上の増殖事業に必要な経費が継続的に流れて、しかもこの制度がうまく行けば、それがだんだん自動的にふくらんで行くということを企図しているわけであります。これは現在計算している見当から申しますと、相当固く見ても、現在の増殖事業からスタートして、だんだんこれを廣めて行く可能性が見えるわけでありますが、逆に増殖事業の規模がこれによつてかえつてわくがきまつて來て、小さくなつてしまうという心配は大体なかろうと考えております。
以上で補償と免許料の問題につきまして、詳細な数字に抜きにいたしまして、法文上の問題だけお話したわけでありますが、これで一應漁業法及び漁業法施行法に関する逐條の御説明を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02219490906/11
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012・石原圓吉
○石原委員長 一應当局の説明は終つたようでありますから、明日より質疑應答することにいたしまして、正十時より開会いたします。
本日はこれをもつて散会いたします。
午後三時十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X02219490906/12
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