1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十四年十一月二十七日(日曜日)
午前十一時五十三分開議
出席委員
委員長 小野瀬忠兵衞君
理事 志田 義信君 理事 多田 勇君
理事 永井 英修君 理事 南 好雄君
理事 森 曉君 理事 成田 知巳君
理事 笹山茂太郎君 理事 米原 昶君
篠田 弘作君 周東 英雄君
多武良哲三君 坪内 八郎君
丹羽 彪吉君 福井 勇君
藤枝 泉介君 田中不破三君
羽田野次郎君 岡田 春夫君
出席国務大臣
通商産業大臣 稻垣平太郎君
国 務 大 臣 青木 孝義君
出席政府委員
外国為替管理委
員会委員 奥村竹之助君
(理財局長)
大蔵事務官 伊原 隆君
委員外の出席者
專 門 員 圓地與四松君
專 門 員 菅田清治郎君
十一月二十七日
委員井手光治君、小川平二君、金原舜二君及び
鈴木正文君辞任につき、その補欠として多武良
哲三君、藤枝泉介君、坪内八郎君及び丹羽彪吉
君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
外国為替及び外国貿易管理法案(内閣提出第四
三号)
外国為替管理委員会設置法案(内閣提出第四四
号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/0
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001・小野瀬忠兵衞
○小野瀬委員長 ただいまより会議を開きます。
これより内閣提出第四三号、外国為替及び外国貿易管理法案、内閣提出第四四号、外国為替管理委員会設置法案を一括議題に供し、討論に付します。討論は通告願にこれを許します。多田勇君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/1
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002・多田勇
○多田委員 ただいま議題となつております外国為替及び外国貿易管理法案、並びに外国為替管理委員会設置法案に対し、民主自由党を代表して賛成の意見を申し上げます。
今日わが国の経済はいわゆるドツジ構想に基き、安定経済計画を推進いたしておりますが、安定の基盤に立つて日本経済の復興自立を実現させるためには、どうしても国内生産力を充実させ、外国貿易の発展振興にまつところがまことに大きいのであります。この意味から、今日まで、特に輸出優先の建前をとつて、ひたすらに国力の回復に努めて参つているのであります。
われわれは長い間、講和なき管理下の不自由なわが国の現状を打開して、一日もすみやかに国際経済への参加を期待して参りましたし、そのために精進努力することにただに国をあげての要請であるばかりでなく、自立経済達成のための必要條件であると確信いたしているのであります。
幸い国内経済においては、インフレ牧東の顕著なる傾向を見、経済も平常化の方向をたどつて参つております。しかも、国際経済との接触面は日一日と深まり、めまぐるしい変転の中にも講和の時期が近づき、わが国が国際経済社会に参加できる時期は、次第に近づいて参つた感があるのであります。この際、積極的に国際経済への参加体制を確立することに望ましいことであるばかりでなく、当間必要欠くことのできない準備でもあります。このときにあたり、従来各部門にわかれていた対外取引に関する諸法規が整備統合されて、單一の基本法として成文化され国会に提案されたことに、まことに時宜を得たものであり、近づく国際経済への参加準備として望ましいことであると思うのであります。
本法案は三つの主要目的を持つておるのでありますが、第一は国際慣行に合致した外国為替管理制度を確立することであります。この点はわが国が国際経済社会に参加いたしますには、当然の前提処置であると存じます。第二は輸出貿易を最小限度の制限にとどめ、特別の場合にのみ承認を受けることとし、原則として自由にする建前をとつたことであります。この点は、輸出振興がわが国の自立経済に重要なる役割を持つ今日、国内の要望にこたえるものと存じます。第三に輸入を民間貿易に切りかえ、輸入の承認を受ける義務と担保の提供義務とを課せられているのでありますが、この点はエイド・フアンドを受けている今日、やむを得ないことと思うのであります。
法案を通じて問題となる点は、具体的な処置については政令に委認していることでありますが、この点については、制限規定の逐次緩和とともに、国際経済情勢の変化につれ、時宜に即応した弾力性ある効果的な運用をはかるためという政府の言明に信頼したいのであります。
次に、わが国の貿易が本法に基き自由体制に入るにあたり、特に留意すべき重要問題は貿易金融であります。制度としての貿易体制が解放されて自由に近くなりましても、それを裏づける資金面での制約が取拂われねば、仏つくつて魂入れずという事態を招かないとも限らないのであります。しかも長い間の封鎖経済からようやく国際経済に参加するのでありますから、競争状態も想像にかたくないのであります。政府においてはこれらの諸点を特に考慮して、国際経済体制参加の意義を達成さすべく、貿易金融に遺憾なきよう諸般の適切な措置を講ずるとともに、輸入の担保提供義務についても最善の考慮を加えられんことを特に希望するものであります。さらに関税率の問題についても、早急に適切なる改善を加えるとともに、輸出商品の質的向上のためにも具体的な方途を講じ、国際市場における信用の増大と貿易の伸張に努められたいのであります。また今日わが国貿易振興の障害となつている諸種の事項については、目下具体的に折衝を重ねられていると向いているのでありますが、それらの事項が一日もすみやかに実現できますよう、最善の努力を拂われんことを国民の名において希望する次第であります。私は本法案野運営いかんは、わが国の経済自立のためにはもことに重要でありますので、適正かつ合理的にしかも闊達なる運営を希望してやまない次第であります。
以上をもつて二法案に対する賛成の意見を申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/2
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003・小野瀬忠兵衞
○小野瀬委員長 成田知巳君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/3
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004・成田知巳
○成田委員 日本社会党を代表いたしまして、本法案に対して反対の意見を申し上げます。
最初に外国為替及び外国貿易管理法案についての反対意見を申し上げますが、外国為替管理委員会設置法案は親子法の関係がございますので、従つて外国為替及び外国貿易管理法案の反対によつて、その反対理由をご了承願いたいのであります。
吉田総理大臣が施政演説の際に、日本の経済は安定したと言われ、池田蔵相は財政演説の際に、さすがに安定とは言い切りませんでしたが、安定の軌道に乗つて来た、こういう演説をされておるのでありますが、安本長官は、本法案の提案理由の説明においては、同じく国内経済の安定ということを言つておられます。従つて本法案の底を流れておる考え方は、国内経済は安定したという一連の考え方があると思うのでありますが、この立場に立つて本法案が立案されたのであります。しかし事実は吉田内閣のデフレーシヨン政策の激化によりまして、国内産業は委徹沈滯、半身不随の状態になつておる。大量の失業者が町にあふれまして、大きな社会不安が巻き起つておる。こういう国民生活の破滅の上に立つた資本の安定こそ、吉田内閣の言う国民経済の安定であり、吉田内閣、民自党の考え方だ、こう私たちは考えるのであります。この国民経済安定の名のもとに、国民生活の安定を資本の安定にすりかえんとしておる民自党の政策が、為替面あるいは貿易面に現われた姿が本法案でありまして、本案が通過するあかつきには、ますます日本産業の破滅と国民生活の崩壊をもたらすという見通しを、私たちは持つておるのであります。特に本法案は白紙委任状的な委任立法でありまして、昔の国家総動員法の再来を思わすものでありまして、国会の審議権を無視するものははなはだしいものがあるということを、断定せざるを得ないのであります。たとえば輸入限度の個人割当の問題、あるいは輸入保証の限度についても何ら本法案においてはうたわれてない。これが單に政令に委任されておるだけでなしに、閣僚審議会と通産大臣の協議のもとに、一方的にこれらの限度が定められるという仕組みになつておるような政府の説明を見ましても、その弊害が非常に出るのではないかということを、私たちに憂えておるものであります。
次に貿易金融の面でありますが、輸出の面におきまして輸入の面におきましても、金融の面におきまして、非常に融通性が欠けておりまして、特に大きな資本化につきましては、その信用によりまして相当の金融も得られるかもしれませんが、中小企業においては完全にこれが無視されておるという意味合いにおいても、私たちは本法案に反対せざるを得ないのであります。それから外国銀行と外国商社の問題でありますが、輸出入の両面におきまして、わが国商社は自由競争に遭遇する上に、資金の豊富なる外国銀行がわが国に進出して参りまして、わが国銀行は外国銀行と角逐しなければならない。またわが国の輸出入商社にいたしましても、当然現在の盲貿易で相当大きなハンデイキヤツプを負わされておる上に、金融の面におきましても、さらに外国銀行の圧迫のもとに、大きな危機に遭遇するということは当然予想されるのでありまして、こういう状態のもとに、自由貿易あるいは民間貿易という名のもとに、自由な貿易を許すということは、結局わが国産業の破滅を来すという結論に到達せざるを得ないのであります。特に本法案の審議の過程で明らかになつたことは、外国銀行につきましては本法の適用があるかどうか。最初政府の答弁では、あるがごとくあるいはないがごとき答弁であつたのでありますが、最後に本法の適用がないということが明らかになつた。たとい法律的に外国銀行が日本国内銀行と同じように日本政府の管理を受けておるといたしましても、経済的な実力の差がある以上、相当国内銀行は競争力の点において劣位に置かれざるを得ないにもかかわらず、法律的にも全然外国銀行が本法の適用を受けないということになりましたならば、その結果やまさに思い半ばに過ぎるものがあると言わなけれげなりません。
わが国の貿易は過去十年間の空白と敗戰によつて、大きな痛手を受けておるにもかかわらず、こういうような一方的な法案が通過するということは、わが国貿易の将来にとつて、私たちはゆゆしい問題を惹起するという考え方のもとに、本法案に対して全面的に反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/4
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005・小野瀬忠兵衞
○小野瀬委員長 笹山茂太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/5
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006・笹山茂太郎
○笹山委員 私は民主党野党派を代表しまして、ただいま上程されました外国為替及び外国貿易管理法案、及び外国為替管理委員会設置法案に対しまして賛成をするものであります。
御承知の通りわが国経済の自立の一大支柱は貿易の振興でありますが、従来この貿易振興にあたりまして、手続の煩雑、海外市場把握の不足、これらの原因によりまして相当難澁いたしておるのでございますが、いずれにいたしましても、戰後各国の経済の窮迫に伴いまして、国際通商関係は貿易憲章あるいは国際通貨圏制度をめぐりまして、漸次国際的の管理に移行される自然の運命にあることは当然でありまして、わが国もこの大勢に順応する態勢を今から準備しなければならぬと思います。さような意味合いにおきまして、われわれが当面しておるところの貿易機構の合理的改善を、すみやかに樹立する一環といたしして、ここに提案されました両法案は時宜を得たものと感ずるのでございますが、この法案の内容をしさいに検討しますると、いかにも未熟な案のように思うのであります。あたかも翻訳文を読んでおるような観があるのでございますが、私は特に国民の権利義務に関する重大な事項を政令に譲つておるという点については、非常に遺憾にたえないのでございます。これらの事情になつたいきさつにつきましては了とするものでございますが、でき得る限りこういつた重大な問題につきましては、法律をもつて早い機会におきましてはつきりきめる必要があると考えるものであります。
さらに国民の待望するところの手続の簡素化につきましても、何ら具体的に法律の上では現われておりません。これは政令の運用によつて達成されると思うのでございますが、これらの点についても政令あるいは省令の制定にあたりましては、十分御勘案を願いたいと思うのであります。
かような未熟な案にもかかわらず、私どもがこの際賛成するというのは、国際貿易につきまして国民がかねて待望しておりました民間貿易が、いわゆるローガン構想によりまして、輸出につきましては来月の一日から、輸入につきましては来年の一月から許可されるという時期にあたりまして、この準備をする、裏づけをするところの法律なしには、私はやつて行けないというふうに感ずるのでありまして、それらの点から考えましても、これらの法案は、この国民の要望を沿うべく、きわめて不十分ではありまするが、私はかような法案が成立したければならぬというふうに考えるものであります。ただこれらの運用につきましては、政府に対しまして先ほど申し上げた点より、実はいろいろ御注文をいたしたいと思うのであります。
この法案の運用につきましては、貿易関係につきましては御承知の通り行政機関の各般にわたりまして、いろいろ複雑な関係にあるのでございます。従いまして、貿易関係の各般の行政機関が、総合的に一体となつて緊密な連絡をとるにあらざれば、とうてい運用はうまく行かないというふうに考えておるのであります。先般の委員会におきましても、たとえば閣僚審議会の構成の問題につきましても、これは政令に譲られてはつきりしないのでありますが、農業関係の閣僚を入れるかにつきまして、政府委員の答弁にあいまいになつておるのでございますが、食糧の輸入あるいは生糸の輸出、これらは農業関係に至大の関係を持つておるのでございますかから、ぜひこういつた関係も入れられまして、そうして日本の経済に対するところの影響につきまして、十分御審議を願いたいと思うのであります。
さらに外国為替予算の構成でございますが、これに日本の経済の構造にも重大な影響があるのでありますから、何らかの方法をもちまして、でき得られば国会方面にも接触を保つように御考慮願いたいと思うのであります。
さらに外国為替の集中の問題でございますが、先ほど他の委員から申されましたように、外銀の問題あるいは外商の問題等いろいろあるのでございますが、せつかく外国為替を集中する建前にある以上に、これら放任されておるところの外銀、外商の為替も、為替管理委員会の万に一手に総合されまして、総合的に運用されることを希望するものであります。
さらに内外資本の貿易関係に関する競争の問題でございますが、現在の日本の窮迫した資本のもとにおきましては、並たいていのことでは対抗ができないと思うのでありますからいて、これらの点につきましても、ひとつ関係方面に十分密な折衝を続けていただきたいと思うのであります。
さらに輸入許可の問題でございますが、これは先着順という取扱いになつておるのでございますが、さようなことはあるいは他の国におきましては成功したかもしれません。しかし必ずしも日本の実情から考えると、私はそういうような建前だけでは成功するとは考えられないと思います。広くこういつた面につきましては、国民経済的にいかに有利な輸入ができるかというような点も、考慮されたところの行政的措置をぜひ実行してもらいたいと思うのであります。
さらに貿易金融の問題につきましては、輸出品は中小企業が日本においては重点を占める。こういつた面につきましても、ひとつ金融制度を確立してもらいたい。
さらに企業の合理化によつてコストを下げるというような問題があるのでございますけれども、これらにつきましてもやはり設備の改善、こういつた方面に長期の政府資金を積極的に投入されて、優秀なる機会あるいは企業の能率化、こういつた方面につきましても政府の善処を希望するものであります。
最後に、貿易の中心の一つであるところの関税の問題でございますが、これは先般も申し上げました通り、わが国の関税は非常に現在となつては適切を欠いておる。これを早く国際的な観点に立つて、合理的なものにしなければならぬと思います。しかるに来年六月ロンドンにおきまして開催されるところの関税協定に対しまして、できるならば日本もそれに参加を、ひとつぜひ関係方面に折衝していただきたいと思います。ただこの際におきましては、これに応ずるためにやはり現在の関税制度につきまして、すみやかにこれを改正する必要があると思いますので、これらの点につきましても、政府の努力あるいは御注意を促す次第であります。
これをもちまして私の討論を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/6
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007・小野瀬忠兵衞
○小野瀬委員長 米原昶君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/7
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008・米原昶
○米原委員 私は日本共産党を代表しまして、ただいま上程されました二つの法案に対し、絶対反対の意見を簡單に表明するのであります。
この法案は一見すれば今までの不自由な貿易をやめて、自由な民間貿易を振興するために、それを裏づける為替の管理法であるかのように見えるのでありますが、事実においては、貿易の実権を内外の一部大資本家が独占しようとするものであり、現在の日本の実情において、また世界経済の実情において、この法案が実行される限り、日本の貿易を、従つて日本の経済の実権を、ほとんど外国資本の支配下に置き、日本を植民地的状態に置かんとするところの、稀代の悪法であると断ぜざるを得ないのであります。
第一、従来公団で取扱つておりました輸出、輸入に要する厖大な資金を業者にまかせることになりながら、この委員会の審議におきましても、金融措置を具体的にはまだ何ら講じていない点であります。たとえば、輸入の場合をとつてみましても、小麦一万トン三十五億円、羊毛一万俵十五億円であります。少くともこれが取引の最低單位であろうと思うのであります。こうした十億、二十億、三十億といつたような厖大な資金を、一体個々の業者ことに中小の業者が、どうしてこれをまかなうことができるか。とうてい日本の業者にはできない相談であります。
第二に、その上に輸入に対しては高率の保証金をとることになつております。西独の例では五〇%をとつておりまするが、この点についてもほとんどこれを政令にゆだねて、通産大臣の独断できめることができるようになつておる。これでは、中小業者はまつたく貿易から除外されることになりかねないのであります。
第三に、こうした貿易が行われるとすれば、資力、金利、情報網、その他あらゆる利益を持つておる外銀、外商が貿易を支配することになりますが、これに対し国内業者を保護するに足る何らの対策も出されていたいのであります。
第四に、昨日も通産政務次官からそういう意思が表明されましたが、たとえば政府は、アジア・マーシヤル・プランに参加する希望を持つておるそうでありますが、こういう考え方とこの法案とをあわせて考えてみるならば、この法案を実行する際に、国民の大多数が希望しておるところの中央貿易、対ソ貿易等は、非常な阻害を受けることになるのであります。しかもそういうことになるならば、吉田総理大臣はしばしば希望としては全面講和を望むと言つておりながら、実際においてはなしくずし講和をやつておる。いわゆる事実上の講和であります。実に高価な講和であります。こうして日本を、いわゆる世界の冷たい戦争の一方の側につかせることになり、かのヨーロツパにおけるマーシヤルプランと関連して、北大西洋同盟が結ばれましたが、そういうアジア・マーシヤル・プランに参加しようとする希望、それは明らかに太平洋同盟に参加しようとする希望を現わしておるに相違ないのであります。そういう政府のいわゆる單独講和、軍事基地提供、そういう形の意味のものをこの法案は明らかに持つておるのであります。こういう意味において、われわれはこの二つの法案に絶対に反対するものであります。しかもこうした重大なる問題を全部政令にゆだねて、しかも閣僚審議会の決定については、国会に何の責任も持つておらない。今まで各委員からも申されましたが、戰時中の国家総動員法以上の言語道断な惡法だ。こういう意味においてわれわれはこの法案に絶対反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/8
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009・小野瀬忠兵衞
○小野瀬委員 田中不破三君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/9
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010・田中不破三
○田中(不)委員 私は民主党連立派を代表いたしまして、ただいま上程されておりまする二つの法案に賛成の意を表するものであります。そのおもな点について簡單に賛成の理由を説明さしていただきます。
まず第一は輸出が特定の場合を除いて原則として自由になり、また輸入は従来政府によつて行われておりましたものが、民間貿易に切りかえられることになる点でありまして、いずれも貿易の正常化に向つて大きな道が開かれることになるものと存ずるのであります。
第二には、外国為替予算が構成されることになつているのでありますが、これは輸出入による収支を初め、国際収支の均衡をはかつて対外信用を維持し、また一方わが国産業経済に主大の関係を有しまする輸出入物資の需給の適正を確保するためには、きわめて適当な措置でありまして、しかもその重要性のきわめて高い点から、その作成には新たに閣僚審議会が設けられて、その責めに任ずることになつているのでございますが、きわめて正当のことと存ずるのであります。
次に第三には、基準外国為替の單一制、各外国通貨について正しい裁定外国相場の決定維持等に関する條項が規定せられているのでありまするが、これらは近き将来わが国が国際基金協定に参加を認められることを期待しての措置としてきわめて妥当であり、参加の日の一日も早からんことを念願するものであります。
第四には、外国為替の集中及び外貨の流出またはその原因となる特殊行為に対する制限または禁止に関する條項についてでありますが、わが国の輸入力、輸出力から見て国際収支の均衡をいかにはかるかが、重大関心事である現状におきましては、相当厳密な対外支拂い手段等を補足し、また国際収支に悪影響を及ぼす行為を制限または禁止することは、これまたやむを得ないことを信ずるのであります。
以上簡單に賛成の理由を申し述べたのでございますが、次に本案の施行にあたつて考慮を要する二、三の点について希望を申し述べたいと存ずるのでございます。
まず第一は、先ほどもしばしば各委員から説明のありました通り、本法案には政令、省令にまかされた事項が相当多いのであります。これは内外の経済事情が急速に変転することを予想される現状では、やむを得ないことと思われるのであります。しかしこれら政令等の制定にあたつては、極端な取締りあるいは煩瑣な手続等の制定に陥ることなく、政府の答弁にありましたように、また本法案の所期しておりますように、この政令等への委任を善用活用されて、機宜に適した処置をとられんことを希望する次第であります。
第二の点は、本法施行後は民間輸入になります結果、輸入業者に対する金融につきましては、相当の困難を予想されるのでありまして、この点は本案の審議にあたつて各委員からしばしば質問があつた次第でありますが、政府の御答弁によれば、十分の覚悟と準備をもつて対処しておられるようでありますし、私は十分にその点を信頼いたすものでありますが、万遺憾なき措置をとつていただきたいのであります。
第三には、これまたしばしば質疑応答を重ねられた問題でございますが、輸入をしようとする者の担保の提供義務についてであります。その率等につきましては、酷に失することのないよう適正か措置をとられんことを希望するものであります。
最後に政府では本法案のみならず、関税その他各部門にわたつて、国際経済への参加態勢をとられるやに聞いておりますが、せつかくその実現に努力せられんことを希望するものであります。
これを要するに、本法案は近く予想される日本側への外国為替、外国貿易、外国資金等の大幅移管に即応してわが国内態勢を整え、ひいては国際経済参加への一歩前進が始まつたことと存ずるものでございまして、この点において本法案の成立に対しましては、満腔の賛意を表する次第でございます。これをもちまして私の賛成討論を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/10
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011・小野瀬忠兵衞
○小野瀬委員長 羽田野次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/11
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012・羽田野次郎
○羽田野委員 私は新政治協議会を代表いたしまして、本案に希望を付して賛成の意を表明するものであります。
これは先ほどの論者の言われましたように、きわめて未熟ずさんな欠陥の多い法案でありますけれども、何しろ関係方向から発せられました覚書に基いて、政府が倉皇として立案されたものであると存じますから、きわめて自主性のないのはもとより当然でありまして、やむを得ないものとして賛成するものであります。希望といたしましては、これも前論者によつて繰返されました通り、この新しい貿易方式によりますと、民間業者の競争がきわめて熾烈になることが予想されます。従つて大貿易業者が実力主義をかざして、弱小の業者を押しつぶす結果になることをおそれるのであります。これに対しましては、その保護の対策を確立されたいということを申し上げたいのであります。さらになた外国の商業者との競争であります。この点では何としても日本の業者が実に弱い立場にあります。これは外商は船舶を持つておりますし、本店を持つておるし、情報綱を持つており、海外市場に精通をしておるのでありますけれども、日本の業者はそうした点においてきわめて不利でございます。まつたく盲貿易でありますから、これを打開する対策を急ぐこと。それから金融に至りましては、もう前論者で書されておりますから繰返しません。もう一つはこれも先ほど笹山さんだつたと思いますが触れられたようであります。また昨日どなたかの質問がございましたが、この予算の問題で、これを機会の承認も受けないでよろしいということになつておるようでございます。せめて閣僚審議会に農林大臣が入るならともかく、これが入らないような、入れないような意図が政府にあるやに聞かれたのであります。昨日の人の御質問に対しまして、通産大臣、大蔵大臣、安本長官というふうに言いました。農林大臣はどうだという重ねての質問に対しまして、言葉をぼかして関係経済閣僚でありますといつたようなことを言つておられる。それは確かに農林大臣をオミツトする意図があつたのであります。これは大工業復興、あるいは貿易優先に急なるのあまり、農村のごときを軽視する傾向のある民自党の性格を、不用意に政務次官が露呈したものと私は断ぜざるを得ないのであります。今農民はこの食糧の輸入の問題につきましてきわめて深い関心を持つております。おそらく日本農業の将来を決定する重大な問題であると信ずるのであります。この点についてそういうお考えのもとにこの法の運営をやられたら、たいへんであると私は考えるのであります。断じてこの閣僚審議会には農林大臣を入れまして、そしてこの食糧輸入の問題ないしは生糸の輸出の問題について、せめて農林の声を農林大臣を通じて十分に取入れられんことを、切望してやまざるものであります。
それから次に、ほかの論者が触れられませんでしたから、ついでに安本長官に申し上げたいことは、この対外競争力を増長するために、ひたすらに政府はコストの切下げをせられておる。しかしこのコストの切下げたるや、必ず農民の犠牲においてやろうとするものであります。これは米価審議会の決定をまつたく無視して低米価を決定し、それによつて低物価政策の樹立をやつておること、従つてまた労働者の賃金を低位に置こうという基盤の上に、このコストの切下げをやろうという傾向が強いのであります。これは言うまでもなくソーシヤル・ダンピングに陥る傾向が非常に強く見られるのであります。この点につきまして、政府とは申しませんが、特殊の地位にある安本において、十分関心を拂われんことを切望してやまざるものであります。
以上希望條件を付しまして私の賛成討論を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/12
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013・小野瀬忠兵衞
○小野瀬委員長 岡田春夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/13
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014・岡田春夫
○岡田(春)委員 労農党を代表いたしましてこの法案に対して反対をいたします。
反対の理由を簡單に申し上げます。わが国の貿易は今度の法案を通じて、大体二つの形で許されることになるわけでありますが、見返資金特別会計を通じて直接政府の管理のもとにおける貿易、それから今度の法案によるところの自由貿易と名目を打ちましての貿易、この二つの貿易の形によつて行われる場合において、この二つの法案に現われております貿易の形は、表面においては民自党の諸君の非常にお喜びになるような自由貿易でございましようが、実質においては国際経済の中に目隠しをして、手かせ足かせで日本を投げ込むような貿易であると私は言いたいのであります。この点はもういろいろ申し上げる必要もないと思いますが、特に協定貿易のもとにおいて、自由貿易という形で名目だけはつけましても、実際にこの法案の中におけるいろいろな具体的な事情によりましても、これは非常にはつきりいたしておりますし、たとえば楽観大臣である安本長官のもとにおいて計算しております資料によりましても、ローガン構想によつて輸入超過三百四十億円くらいのものがすでに計算されている。こういう事実を見ましても、外国貿易が自由貿易であるという名目をつけながらも、実際はこれは不自由な貿易で、半植民地的な貿易を今後において実現する結果を招くであろうということを、われわれはきわめて心配いたしておるのであります。特にこれを関連をいたしまして、閣僚審議会あるいは外国為替管理委員会、あるいはまた法案上におきまする政令等の問題を通じて見ましても、この自由貿易を称せられるこの法案による貿易は、実際に国民から完全に離れてしまい、また国会の審議からも離れてしまつたような形で貿易が行われる。しかもこの法案を通じて、大資本を中心にする貿易が行われて行く結果が招かれて来ることは必至であります。そればかれではありません。輸入の面において特に外商の進出の可能性が、非常に大きく現れて、参りまして、全体として日本の貿易は外国の商社、外国の銀行のもとに押えつけられる危険性が非常にあるという点で、われわれは反対せざるを得ないのであります。その結果国内的な現象として現われて参りますのは、これは当然国内における厖大な滞貸であります。この滞貨をさばくために外国の立場から見た不公正な競争によるところのソーシヤル・ダンピングを禁止するという、こうい管理のもとにおるにもかかわらず、遂にソーシヤル・ダンピングを行わざるを得ないような形になつて現われて来るであろうと思います。また滞貨のために国内においては厖大な企業整備が行われて、失業対策において鈴木労働大臣、安本長官が再三にわたつて手放しの楽観論を言われるにもかかわらず、失業の厖大な数が発生することも明確であります。こういう点から見ましてもわれわれは絶対に賛成するわけに行きません。
特にここで一言申し上げておきたいことは、クレームに日本が第四位にランクされておりますが、このクレームの理由といたしまして、国際経済が不況であるためにクレームを出したという理由を発表しておるのでありますが、そのような国際経済が不況であるということを理由にしてクレームを出したということに、世界の歴史上いまだかつてないという言葉で外国新聞は伝えておるのであります。こういう事実から考えましても、今後における貿易の問題においては十分これを考えて行かなければ、日本の国がいわゆる破滅の危機に、この法案を通じて瀕して来るであろうということを、われわれは厳重にここで警告しかければならないと思います。いろいろ反対の理由を申し上げたいのでありますが、以上簡單に申し上げまして反対いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/14
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015・小野瀬忠兵衞
○小野瀬委員長 これにて討論は終局いたしました。ただちに採決に入ります。両法案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/15
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016・小野瀬忠兵衞
○小野瀬委員長 起立多数。よつて外国為替及び外国貿易管理法案、外国為替管理委員会設置法案の両法案は原案の通り可決されました。(拍手)
なお両法案に対する委員会報告書その他については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/16
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017・小野瀬忠兵衞
○小野瀬委員長 御異議なしと認めます。さよう決定いたします。
なお政府側より発言を求められております。この際これを許します。国務大臣青木孝義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/17
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018・青木孝義
○青木国務大臣 本法案の審議にあたりましては、各位の特段なる御努力をいただきまして、いろいろと問題は、ただいま御討論がございましたように残つておる点もあろうかと思いますけれども、ともかくも十分御審議をいただきまして、ここに皆様の御賛意を得ましたことは、まことに私どもといたしまして心嬉しく存じまして、厚くお礼を申し上げる次第でございます。なおこの法案につきましていろいろ御指摘の点につきましては、政府といたしましてもこの運営の方法におきまして十分留意をいたしまして、萬違算なからんことを次第でざいます。本日はまことにありがとございました。厚く御礼申しあげます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/18
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019・小野瀬忠兵衞
○小野瀬委員長 本日はこれにて散会いたします。
午後零時三十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604073X00619491127/19
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