1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年四月二十八日(金曜日)
午前十時五十四分開議
出席委員
委員長 石原 圓吉君
理事 川村善八郎君 理事 鈴木 善幸君
理事 夏堀源三郎君 理事 平井 義一君
理事 松田 鐵藏君 理事 林 好次君
小高 熹郎君 川端 佳夫君
田口長治郎君 田渕 光一君
玉置 信一君 冨永格五郎君
福田 喜東君 岡田 勢一君
井之口政雄君
出席政府委員
農林政務次官 坂本 實君
農林事務次官
(水産庁次長) 山本 豐君
委員外の出席者
農林事務官
(水産庁漁政部
長) 松任谷健太郎君
農 林 技 官
(水産庁漁政部
漁船課長) 高木 淳君
專 門 員 杉浦 保吉君
專 門 員 齋藤 一郎君
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四月二十七日
委員永田節君辞任につき、その補欠として菅家
喜六君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
水産資源枯渇防止法案(内閣提出第一四九号)
漁船法案起草に関する件
以西底びき網漁船の整理に伴う予算措置に関す
る件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/0
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001・石原圓吉
○石原委員長 これより会議を開きます。
昨日に引続き水産資源枯渇防止法案を議題といたします。本法案に対する質疑は昨日で大体盡きたと思われますので、本日はただちに討論を行いたいと考えますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/1
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002・石原圓吉
○石原委員長 御異議なければこれより討論を行います。井之口政雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/2
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003・井之口政雄
○井之口委員 水産資源枯渇防止法案に対して、共産党は反対いたします。これは昨日も農林大臣が仰せられました通りこの法案はおよそ二つの部分から成立しております。一つは水産資源の枯渇を防止するという名目のもとに減船しよう、操業の短縮をしようとする方面と、もう一つは、その結果生ずるところの業者の損害を、国民によつて賠償させようという意図を持つ、この二つの部分から成立しているのであります。そこで名目は資源枯渇の防止でありまして、もしこの目的が達せられるものでありますればけつこうでありますけれども、この法案をもつてしては不可能である。農林大臣の言葉をもつて言いますれば、理が非であろうとも、至上命令としてこれを実行しなければならないのだというふうなことを言つておられますが、決して政治というものは、理非の判別を抜きにして、至上命令でしなければならぬという性質のものではないと思います。もしわれわれが真に以西底び方面の漁業に対しまして資源の枯渇を防止するという建前を遂行するといたしましたならば、これは当然全面講和の線をもつてわれわれは中国とも、それから今北鮮に起つておりまする朝鮮人民共和国とも、あるいはソビエト同盟とも講和を実現いたしまして平和な状態を実現いたしまして、そうしてあらためてこの問題を国際間の條約にかけて、お互いに協同してこの資源の維持並びに漁獲の程度というものを、條約をもつて決定して来なければならぬ性質のものだと思います。しかるに、たとい今一方的にある程度の減船が行われるといたしましたところで、この船に対しまして、武装をするとか、あるいは境界線を突破して外界に乗出して行くとか、残つた船で必ずそういうことをやるのであります。そのためにかえつて国際上の紛議が起つて来ることは明らかであります。この法案の根本的なねらいは、国際信義を回復するんだという点に農林大臣の説明もあつたようでございますが、単独講和をもつて、はたして国際間の信義が漁業方面において確立せられるか。これはわれわれが言うまでもなく不可能だと思う次第であります。最も直面しておりまする中国、朝鮮、ソビエト方面との間の講和が締結されない限り、この目的を達し得るものではないと思います。それでありますから、そういう締結なくして、一方的にかりに制限いたしましたところで、これは残つた大会社の一部分の漁船を、かえつて武装するとか何とかいうことになつて、境界線を突破して他領を犯すというふうな結果になつて、決して資源の枯渇防止にならないと、われわれ思います。さらにもう一方の方面といたしまして、この操業を短縮する方面でありますが、これは操業を短縮してそうしてむしろ大会社の船を残して中小以下の船の操業を停止してしまつて、その利益を大物に集中して行くというトラスト化の傾向を、やはりこの法案は持つておる。現にそういう意味におきまして、行政訴訟問題が起つておるのを見ても、そのことが明らかになるのでありまして、今日許可を受けておる漁船が持つておるところの権利を、漁業権として政府が一つの賠償をし買い上げるというふうなことは、これはものの本質を誤つておるものである。決して今日の許可なるものは、漁業権という性質のものではない。これは明らかであります。それを国民の負担、租税によつて買上げるということに対しましては、われわれは反対せざるを得ぬのであります。一隻当り約三百万円出すといたしましても、これが昨日の農林大臣のお話では、約八億円見当になるというようなことでありますが、補正予算を組んで、八億円の金をこの業者の損害補償のために出すというようなことは、もしこれがやられるといたしますれば、そのほかの中小企業者並びに農業等々に対しても、やはりその操業を短縮する犠牲を国民が負わなければならぬという結果になりまして、立法的に非常にこれは不公平であります。土地あるいはその他の確実なる漁業権に対しましては、今日の漁業法でこれを国家が賠償するというようなことも規定がありますけれども、この許可になつているところの漁船の漁業権なるものは、さような地代とかいうような性質を帯びたものではない。でありますからしてこれを賠償するということに対しましては、われわれは反対せざるを得ぬのであります。しかしこのために、操業を短縮しようと短縮しまいとにかかわらず、もしかりに短縮が大きく現実上の問題として起る場合、ただちに政府がこれに応ずるような手段といたしましては、失業対策の制度をとることが必要であります。多くの漁業労働者の失業者ができて参りますから、そういうものに対しましては、政府は徹底的な政策をとらなければならぬ。しかるに三百五十トン以上の整理される漁船に対して賠償をするというのに、賠償金が三百万円とすることになりますと、その内訳は、労働者に対して拂われる部分はほとんどなく、あるいは従来の漁業経営者の利得を補償するとか、あるいはその船の維持費に充てる、そういう方面に使われるだけであつて現実に労働日者にはまわつて来ないことは明らかであります。こういうふうなやり方は、水産資源枯渇防止法の最も欠点とすることでありまして、われわれは、その場合に生じて来るところの漁業労働者に対する失業保險の制度、失業に対する救済制度というふうなものを、積極的にむしろ確定して行かなければならぬと思います。さらにこの問題を制限することが、適当であるか不適当であるかということを調査するために、約二千万円からの予算が組まれておりまするが、この二千万円に対しましても、整理される船の経営者がこれを分配しようというふうな考えを持つている。これはとんでもない話であつて、調査はあくまでも日本の漁業制度の将来の発展のための研究、そういう方面に使われるべき性質のものである。それをいたずらに経営者の方に分配してしまうということは、日本の漁業を崩壞させるところのもととなると思います。利益のある場合には、どんどん経営者は利益を分配しておきまして、そうして一たび過剰投資が起る、そうして操業を短縮しなければならぬというふうな状態が実現した場合、その損害を一切の人民の租税の負担に轉嫁してしまおうというふうなことに対しましては、これはあくまでもわれわれは反対せざるを得ぬところであります。
以上の理由をもちましてこの法案にわれわれは反対する次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/3
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004・石原圓吉
○石原委員長 鈴木善幸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/4
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005・鈴木善幸
○鈴木(善)委員 自由党を代表いたしまして、ただいま議題と相なりました水産資源枯渇防止法案に賛意を表したいと存じます。
本法律案は、わが国の国際間における信用を高め、かつマッカーサー・ラインによつて制約を受けております限られた海域において、最も計画的に、高度の生産を継続的にあげようという趣旨から現在漁業資源に対しまして比較的比重の重くかかつておりますところの、過剩な漁船を整理いたしまして、水産資源の保護をはかり、わが国の漁業秩序を確保しよう、こういう趣旨の法案であります。この趣旨に対しましては、おそらくいかなる政党といえども、反対をすべき筋合いのものではないと私は考えるものであります。この法案は、ただいま共産党の井之口君から御意見がありましたように、漁船の整理とそれに伴う国家の補償との二つの部分からなつておるわけであります。この整理を行いますにあたりましては、漁業法に定むるところの中央漁業審議会の意見を聞いて政府が行いますところの、徹底した資源調査の基礎の上に立つて、合理的な減船を行うことに相なつておるわけであります。また補償の面につきましては、ただいま井之口君は、漁業法には、漁業権と違つて許可漁業の面には補償の規定がないということを言つておりますが、これは井之口君が今国会になりまして水産委員になられたので、漁業法の内容を御存じない結果だと思うのであります。漁業法には、これらの以西底びき等の漁業の整理にあたつては、明らかに国家が補償すべきことを明定いたしておるのであります。これは漁業法を知らざるところから来ている意見であるわけであります。この国会が決定いたしましたところの漁業法の命ずるところによつて、政府はこれらの漁業の整理にあたつて国が補償を行い、それによつて円満なる漁業の転換、あるいは失業等の救済を行おうとするものでありまして、今井之口君がおつしやいましたところの、一そう当り三百万円の額が大体予想されておるのでありますが、その大部分は経営者たる資本家に行つて、勞働者には何らの恩典がないであろうというようなことをお話になつておるのでありますが、これもよく御検討いただけばわかることでありまして大体三百万円を予定いたしまして、そのうち百二十五万円が乗組員に行く予定に相なつているのであります。そうして船の繋留等の維持費として四十九万円、約五十方円が計上されておるのでありまして、船主には百三十五万円ということになりまして税金との関係を考慮いたしますならば、むしろ従業員諸君に厚く相なつているように思うのであります。また政府は、二千万円の額を調査費に充てるということを申しているのでありますが、これは全然違うのでありまして現在補償等の財源として考えられて、見通しのついておるものは二千万円程度であるという話でありまして、これは調査費に計上されるべきものではないのであります。私どもは講和会議に臨むわが国の漁業態勢を整備いたしまして、国際信用を高め、真に国際間におけるわが国の漁業の信用度を高めることが、講和に臨むわが国の漁業のあり方でなければならない、漁業曹の心構えでなければならないと思います。そういう意味において、わが国が漁業の自粛の態勢を整備し、限られた漁場資源をもちまして、ここに計画的に、真に国際協約を守つて行かんとする自粛的なわが漁民が、中外にその立場を宣明する重要法案であります。こういう意味合いから、自由党は全面的に賛意を表するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/5
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006・石原圓吉
○石原委員長 これにて討論は終局いたしました。これより本案の採決を行います。本案に賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/6
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007・石原圓吉
○石原委員長 起立多数。よつて本案は原案通り可決いたしました。
なお報告書の作成につきましては、委員長に御一任いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/7
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008・鈴木善幸
○鈴木(善)委員 ただいま委員会の採決によりまして、水産資源枯渇防止法案は委員会として決定を見たわけでありますが、この際に本委員会の決議をもちまして本法がさつそく適用されるでありましようところの、以西底びき網漁船の整備に伴う予算措置に関しまして決議を提案いたしたいと思います。その案文を朗読いたします。
決 議
以西底曳網漁船の整理に伴う予算措置に関する件
政府は、以西底曳網漁船の整理を円滑に実施するため、法に規定する補償金について速かに予算的措置を講ずべし。
右決議する。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/8
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009・石原圓吉
○石原委員長 ただいま鈴木君の動議による決議案に御賛成の方は御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/9
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010・石原圓吉
○石原委員長 起立多数。決議案は原案通り決せられました。本決議は議長に報告するとともに、大蔵大臣、農林大臣、経済安定本部長官並びに水産庁一長官に参考送付することにいたします。その手続等に関しましては、委員長に御一任願います。なお本決議は、その内容が、先ほど可決いたしました水産資源枯渇防止法案と密接な関係にありますので、同法案についての委員長報告並びに報告書中に本決議を当委員会の要望として申し述べたいと考えますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/10
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011・石原圓吉
○石原委員 御異議なければ、さよう決します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/11
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012・石原圓吉
○石原委員 次に松田委員より発言を求められております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/12
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013・松田鐵藏
○松田委員 この前に中間報告をいたしました漁船法に対しまして、いろいろと折衝した結果におきまして、委員長及び川村委員の折衝もありまして、ようやくわれわれが原案として出したものに、二十七條だけ削除いたしましてオーヶ1が来ることになつたのであります。この点御報告いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/13
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014・石原圓吉
○石原委員 他に御発言はありませんか。ただいま松田漁船法案の小委員長の報告を承認いたしまして本日午後の委員会で審議することにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/14
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015・石原圓吉
○石原委員且 ではさよう決します。夏堀君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/15
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016・夏堀源三郎
○夏堀委員 地方税の問題で、山本次長に要望しておきたいことがあります。地方税、特に附加価値税は、漁業者にとつてはこの負担が特に多いのであつて合同審議会におきましても、私詳細説明をいたしたのであります。大体今の経営状態からいつて、漁業者の負担となるのは、現行法と比較して十五倍ないし二十五倍となる勘定となるのであります。現在の経営は非常に困難であり、むしろ経営は成立たないという段階に入つており、これに加えてこのような過重負担では、もう漁業は壊滅状態だというほかはないのであります。そこでこの法案は、今参議院で審議中でありますが、いろいろなる関係方面の問題もありますので、まず通過するではないか、こう思われます。この法案が通過いたしました際にどういう方法でもつて行くかということを、今から研究しておかなければなりません。この標準課税率というのは生産の面においては、これが三%以内ということになつております。以内ですから、その範囲内において各地方においてこれを調整すればよいのである。けれども各地方ではこれを一ぱいにとるおそれ多分にあると思いますので、ここに水産庁とよく協議をしてこの範囲内で適当な課税の方法をやつていただきたい。水産関係は大きな負担が出るのでありますから、特別に何かの方法を講じてもらうように、御協議をしてもらいたいのでありまするが、私、合同審査会においても、あるいはその他の役員会等においても、七月、シヤウプ氏が再度日本に参られましたならば、ぜひともこの点を十分に説明して、これを修正してもらいたいということを、申し入れておいたのであります。この法案の取扱いは、今申し上げたように、一歩誤ると漁業が壊滅状態になることは明らかでありまするので、水産庁としても、この点誤りのないように御処置あらんことを切望するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/16
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017・石原圓吉
○石原委員長 それでは暫時休憩いたします。
午前十一時二十一分休憩
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零時五十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/17
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018・石原圓吉
○石原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
漁船法案起草の件を議題といたします。先ほど漁船並びに水産資材に関して小委員長より報告がありました案につき、説明を求めます。川村君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/18
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019・川村善八郎
○川村委員 漁船行政の一元化をせよということは、われわれが第一回国会からその意見が相当に強かつたのであります。具体的に取上げられましたのは、第六回国会に取上げられまして今期国会には、いよいよこれをどうしても法文化して漁船行政の一元化をしなければならないということに相なりましてこれを漁船並びに資材に関する小委員会に付託に相なつて、着々その研究をしつつ、草案を急いで参つたわけであります。当初の案といたしましては、第一章から第七章、第一條より第三十二條の案で、第一章には総則、第二章には漁船の建造及び調整、第三章には漁船の登録、第四章には漁船に関する検査、第五章には漁船に関する試験、第六章には雑則、第七章には罰則、かように草案がなされまして、それぞれ小委員会の草案についてこれまで委員各位とともに研究をし、委員会において審議を続けて参つたのであります。本日いよいよこれを今期国会に議員提出をするということに決定をいたしたのでありますが、この間関係方面の了解を得なければならないので、手続して参つたところが、ただいま関係方面の了解も得られましてこれを本格的に委員会に諮ることに相なつたのであります。ただこの場合申し上げておきますことは、先ほど申し上げました内容は、当初の内容でありましたが、いろいろな客観情勢から、漁船法の案を修正しなければならないことになつたのであります。以下漁船法案の修正についてその要点を御説明申し上げます。
一、第二十七條の試作奨励金の條項はこれを削除いたしたのであります。従いまして第二十八條を第二十七條とし、以下順次一行づつ繰上げ、新たに第三十條第三号中「第二十九條」を「第二十八條」と修正いたしたような次第であります。時間がありませんので、内容は詳細に説明をいたしませんが、各員はすでにこの内容については、十分研究をいたして参りましたので、小委員会の案なるものをぜひとも皆さんの御賛成を得まして一刻も早く本会議に上程あらんことを切にお願いをする次第であります。
以上をもつて報告にかえる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/19
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020・石原圓吉
○石原委員長 それではこれより本案を委員会の成案となすことについてお諮りいたしたいと思います。採決に入ります前に、本案について討論を行います。井之口政雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/20
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021・井之口政雄
○井之口委員 本案は造船法から分離して漁船法という特別の法案にしただけがこの法案の骨子でございます。そうして今まで運輸大臣の管轄のもとにあつたものを、農林大臣の管轄に移すというのが、これの一番中心的な点になつておると考えられます。しかるに造船法案がそれ自体運輸大臣の権限を非常に強化いたしますし、かつ集中生産の方式を強化いたし、さらに漁船の軍事化というふうなことを次第に強化して行く機構を持つていたものでありますが、この漁船法も、やはりこの根本の点を分担しておるものであります。決してこの漁船法によつて造船法の帯びていたところの、今までの欠点を除去したものではなくして、かえつて同じように、今度は農林大臣の権限を強化して集中的に官僚的な機構をますます漁船行政の上にも及ぼすという結果に立ち至りますし、それのみでなく、さらに大きな漁業会社に生産を集中して行く機能をこれから発揮することは明らかであります。のみならず、さらに漁船の登録を厳重に行つて、細大漏らさずこれを議して、われわれの憲法上の権利までも侵害するように強化されて参りますれば、これは漁船の軍事的用途への道を開くものであります。われわれは戰時中多くの漁船が徴発されて、軍事上に使われたことをよく知つております。またああいうもののために、こうした漁船が利用されるということに立ち至るわけでありますからして日本共産党といたしましては、この法案に対しても反対いたします。真に漁民のための漁船法、真に漁民大衆が、自分自身で漁船の一切の建造、改造、用途の変更というようなことを決定し、漁民自身によつてなされ得るところの、大衆的なものに切りかえることが、われわれは絶対に必要であると思います。この意味におきましてこれに反対いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/21
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022・石原圓吉
○石原委員長 次に川村善八郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/22
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023・川村善八郎
○川村委員 私はただいま議題となつております漁船法案につきまして自由党を代表して全面的に賛成するものであります。
御承知の通り、漁船行政は、過去には農林大臣がつかさどつておつたのであります。戰時中、戰争に勝ち抜くということから、船舶の行政を一元的にしようという国家総動員法に基いて、臨時船舶法で定められて、運輸大臣がこれを所管して参つたのであります。ところが漁業に何ら知識を持つておらないところの運輸大臣、あるいは運輸行政官が漁船の行政を行いましたために、いかに漁民がそのなすべきことに苦しんで来たか。たとえて言いまするならば、漁船の建造許可をとります場合に、地方長官の手を経てこれを農林大臣に提出して農林大臣の許可の了承を得て初めて今度は運輸大臣にその書類を提出して運輸大臣の許可を受けなければならない。この間手数といい、日数といい、またいろいろな経費といい、莫大な損失をして來たのであります。また検査におきましても、漁業に何ら経験のないところの運輸省の検査でありますために、あるいはその他の委任機関とされておつたために、これまたいろいろな隘路があつたことは事実であります。これらの点を一掃するためには、何と言つても、やはり農林省すなわち水産庁に持つておりますところの技術、それから水産庁の管理しておりますところの試験所、その他のいろいろな意見を聞いて漁船行政の一元化をすることが、最も妥当であるという声があつたと同時に、それを漁民は望んでおつたのであります。今回初めてその要望がかない、漁船法といつて独立することに相なりましたことは、邦家のためにもまた漁民のためにも、最も喜ばしいことと存ずるのであります。もちろん内容全体につきましては、必ずしも全幅の敬意を拂うべきものではないのでありまして、もう一歩進んで、内容の充実した法律につくりたいのでありますけれども、これらのまだ臨時船舶管理法が生きておりますので、それらとの関連もあり、あるいはまた運輸省の船舶行政の関係もありますので、一挙にわれわれの望むところに持つて行けないことは遺憾ではありますけれども、少くもこの漁船法においてわれわれの望んでおるところの問題が、七、八割も解決がつき、もう一歩進んで完全な法にしたいと思いますが、そうした点は今後の改正等によつて補われる、かように考えておるのであります。
そこで先ほど井之口君から農林大臣の権限の拡大であるからこれはいかぬとか、あるいはまた、軍事施設等にその船が関連するのではなかろうかというような御心配もあつて反対せられておるのでありますが、これらはただ一つの御心配であつてわれわれはかようなことは絶対にないと信じておるのであります。いやしくも農林行政の中のいわゆる水産行政は、行政面はもちろん農林大臣が基幹となつて行政を行つておるのでありますけれども、われわれは法の立法権、その他国会としては、これらを監視する権限を持つておりますので、井之口君の心配されるようなことは、絶対にわれわれがさせない、かような確信を持つておりますので、どうか本会議には井之口君は反対しないように、そうしたような点は、この委員会限りでがまんしていただいて、本案に賛成していただきたいというふうにお願いしておきたいと思います。
以上私は自由党を代表して賛成の意を表する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/23
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024・石原圓吉
○石原委員長 これにて討論は終結いたしました。
お諮りいたします。本案を当委員会の成案と決定いたすに賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/24
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025・石原圓吉
○石原委員長 起立多数。よつて委員会の成案と決定いたしました。
続いて提出方法についてお諮りいたします。本成案を委員会提出の法律案として議院に提出いたしたいと考えます。これに賛成の方の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/25
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026・石原圓吉
○石原委員長 起立多数。よつてさよう決定いたします。なお字句の整理に関しましては、委員長に御一任願いたいと思います。
本日はこれをもつて散会いたします。
午後一時十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704562X04019500428/26
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