1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年四月三十日(日曜日)
議事日程 第四十三号
午後一時開議
第一 弁護士法第五條第三号に規定する大学を定める法律案(本院提出、参議院回付)
第二 国家行政組織法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院回付)
第三 建築基準法案(内閣提出)
第四 社会福祉主事の設置に関する法律案(参議院提出)
●本日の会議に付した事件
考査特別委員長の同委員会における調査の中間報告
鉄道電化促進に関する決議案(稻田直道君外三十四名提出)
在外抑留同胞引揚促進に関する決議案(中山マサ君外二十三名提出)
都市建築物の不燃化の促進に関する決議案(江崎真澄君外二十九名提出)
日程第一 弁護士法第五條第三号に規定する大学を定める法律案(本院提出、参議院回付)
日程第三 建築基準法案(内閣視出)
日程第四 社会福祉主事の設置に関する法律案(参議院提出)
地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、海上保安監部及び海上保安部の設置に関し承認を求めるの件
会計検査院法の一部を改正する法律案(内閣提出)
昭和二十三年度国有財産増減及び現在額総計算書
昭和二十三年度国有財産無償貸付状況総計算書
政府に対する不正手段による支拂請求の防止等に関する法律を廃止する法律案(内閣提出)
相続税法の一部を改正する法律案(川野芳滿君外三名提出)
地方財政平衡交付金法案(内閣提出)
児童福祉法の一部を改正する法律案(内閣提出)
予防接種法等による国庫負担の特例等に関する法律案(内閣提出)
水産業協同組合法の一部を改正する法律案(内閣提出)
文化財保護法案(参議院提出)
午後二時五十分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/0
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001・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) これより会議を開きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/1
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002・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 考査特別委員長から、同委員会における調査の中間報告をしたいとの申出があります。この際これを許します。考査特別委員長鍛冶良作君。
〔鍛冶良作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/2
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003・鍛冶良作
○鍛冶良作君 本年三月二日付で、菅家喜六委員から当考査特別委員会に対しまして、日本共産党書記長徳田球一君がソ連当局に日本人捕虜で共産主義化されない者は送還しないようにと要請したということが事実であるとすれば、この所為は祖国同胞を裏切る不徳行為であり、憲法上保障された個人の自由を束縛せんとする不法行為で、日本再建に重大な悪影響を及ぼしたるものと考えられるから、その真否を調査まれたい旨の調査要求書が提出されましたので、三月三日の理事会に諮り、六日の委員会の議に付しまして、この要求を採択することに決しましたので、ただちに下調査を行うこととしました。ところが、三月二十四日付で、調査要求書の提出者である菅家委員から、ひとり徳田書記長の要請問題のみならず、日本共産党が直接間接に日本人のソ連引揚げを妨害している事実があるから、同党の引揚げ妨害行為として事実の真否を調査されたい旨の追加要求がありましたので、当委員会は、この追加要求をも採択しまして、本件を日本共産党の在外同胞引揚げ妨害問題として調査することとなり、三月三十一日より証人の喚問を行い、四月二十七日までに委員会を開くこと十二回、尋問したる証人二十四名に及びました。この尋問により今日までに判明した問題の要点は、大略次のごとくであります。
昭和二十三年五月、ウオロシロフ地区の収容者にあて、徳田書記長の名で、万国赤十字社発行の往復はがきの返信紙に、お元気にてソ同盟の強化のため邁進され、りつばな闘士として帰国され、反動に対してともに闘う日の来ることをお待ちいたしております旨の、かたかなの通信が寄せられたことは、亀沢冨男君の証言によつてほぼ明らかとなつたところであります。同君はまた、同年九月四日、同地区の一収容所の中隊長キシロフ大尉が示した印刷文に、徳田書記長から、貴国の厚意によつて優先的に送還されたところの身体虚弱、素行不良者の言動が著しく反民主的で、党活動に大なる支障を来すものがあるから、願わくは貴国の厚意によつて、思想的に肉体的に強固なる者を送つてくれるようにという意味の要請があつた旨が記されてあつたと証言しております。
ウオロシロフ地区は、昭和二十三年五月ごろには、すでにシべリア民主運動として反ファシスト委員会が結成されていたのでありまして、いわゆる反動分子はほとんどなくなつていた状態であつたのであります。しかしなお、徳田書記長からのはがきを見た晩には大衆総会が開かれまして書記長の要望にこたえるため、りつぱな闘士となることを誓い合い、仲間の者の中のひより見主義者や偽装民主主義者をつるし上げる運動が激化したということであります。しかし、反ファシスト委員会の結成を見て、反動分子が少くとも表面上皆無に近かつたという状況におきましては、徳田書記長よりの要望も多くの衝撃を與えなかつたごとく、現に亀澤証人が、キシロフ大尉から、徳田書記長が思想的、肉体的に強固な者をまず送つてほしいと要望しておる事実を知つても、当時はすでに帰国が決定していた時期でもあり、また共産党としては当然かくあるべき要望と考えたので、特別の反応をも感じなかつたと証言しておるのであります。
しかるに、これより約一年後の昭和二十四年九月十五日に、カラカンダ地区収容所第九分所において政治部将校エルマーラエフ上級中尉の口から、いわゆる徳田要請があつたことを露語で発表され、これを菅季治君が通訳をしたのでありますが、その発表を聞いた者に異常の衝撃を與えたのであります。元来、カラカンダ地区収容所第九分所の収容者は、日本に帰還させるのだと言われて各地かち集結せられた者でありますが、その多くは、いわゆる反動と目されていた者、前職が憲兵、特務機関、警察官、特高または協和会員もしくは戦犯容疑者等でありまして、その経歴上、四箇年以上の在ソ生活を余儀なくしていた者が多かつたのであります。しかも当時は、ソ連当局によつて、本年中に戦犯を除く捕虜及び抑留者は全部帰還させるという声明が出されたことを聞知していたのであります。こういう状況のもとで徳田要請があつたと聞いたので、あるいは帰国することは当分絶望ではないかと感じて異常な衝撃を受けたというが、ほとんどの証人の一致した証言であります。
管証人は、いつ諸君が帰れるか、それは諸君自身にかかつている、諸君がここで良心的に労働し、真正の民主主義者となるとき諸君は帰れるのである、日本共産党徳田書記長は、諸君が反動分子としてではなく、よく準備された民主主義者として帰国するように期待していると訳したと証言しております、その席にいて、親しくエルマーラエフ上級中尉及び菅通訳の言葉を聞いたというほとんどの証人は、一致して、「期待している」とは言わず、「要請している」と通訳したと証言しているのであります。ことに証人相原和光君は、委員長よりの質問のある前に菅君の証言が正しいと力説した人でありますが、「期待している」とは言わなかつた、「希望している」と訳したと証言し、さらに植松某が、十一月には戦犯を除く捕虜または抑留者は全部帰還させるというソ連当局の声明が出されているが、われわれはそれによつて帰還できるのかという意味の質問を発したとき、この声明は反動には適用されたいと答弁したと証言しているのであります。ところが菅証人は、そういう問答はなかつたと否定しているのでありまして、菅君の証言を全面的に支持しようとしている相原君の証言ですら、菅君のと食い違いを見せているので以ります。もつとも、菅君は後に至つて、自分は期待と訳したが、当時の収容所の状況並びに雰囲気から見れば、たとい期待と訳しても、聞く者には要請の意味に受取られたということは想像できると言い切つているのであります。もつつも徳田証人は、タス通信を援用して、これを根も葉もないことだと言つておるが、この席にい合せて穂田要請を聞いたという者は、当委員会の証人としては山口茂、小笠原唯雄、日高清、渡邊武士、橋本忠義、山森友太郎、峰田重吉等の諸君でありますが、対日理事会のシーボルト議長の手元にある四十四通の口述書の宣誓署名人――前記証人中四名は重複しております――または山形県下における署名運動参加者十二名、石川県下の署名運動参加者七名等多数に上る者がある点から判断してカラカンダ地区における政治部将校の発言中に徳田要請があつたと言つたことは、事実と認めなければなりません。(拍手)
なおカラガンダ地区の徳田要請は、第二次日の丸梯団の人々によつて取上げられた問題でありますが、この日の丸梯団の責任者がたまたま久保田薫蔵君であつたため、一部においては、同団が右翼団体であり、軍国主義者の集団のごとくいわれたのでありますが、これは結成当時の各責任者を証人として喚問した結果、いわゆる民主グループに対抗するため、船中で日の丸を胸につけて一線を画したものであり、在ソ中いわゆる反動と目された者及びひより見主義者たちが、祖国日本を前にして結成した、一時的のものであつたことが判明したのであります。ウオロシロフ地区で一年前にさまで問題にならなかつたものが、カラカンダ地区では深刻な衝撃を與えた事実は、前にもすでに述べた通りでありますが、その深刻な衝撃を受けたゆえにこそ、これらの人々が、日本に帰つてから、それを重大視して問題として取上げた事情も、容易に察知できるものであります。
シべリアにおける日本人捕虜及び抑留者の間に行われた民主運動は、反軍闘争に端を発し、友の会より民主グループヘ、さらに反ファシスト委員会ヘと発展して行つたもので、その総仕上げとして、スターリン大元帥への誓いを中心としたいわゆる感謝決議文の作成並びに捧呈が行われたものであることは、すべての証言によつて、また日本新聞の記事その他によつて明らかであります。そもそもこの民主運動は、日本新聞により全地区に指導されて行つたもので、菅君その他の証言にあるごとく、常に反動分子の摘発とその除去とに努めたことは明らかであります。
一九四七年二月六日の日本新聞には、反動の定義が掲げられていますが、これによれば、資本主義より社会主義へと発展するのは社会の必然的な正しい発展であつて、この歴史の流れ、発展を食いとめようとすることが反動であるとされています。言葉をかえれば、ソ連社会主義、すなわち共産主義への発展を阻止しようとするのが反動であります。同年二月一日の日本新聞には、所内の反ソ及び反動分子の徹底的撲滅という記事が見えますし、菅証人によりますと、ある収容所から、反動は帰国させないでほしい旨の請願をソ連の内務省かに出した記事が、日本新聞に掲載されたことがあるそうであります。また巨人軍の水原茂君が、帰還後転向を声明し、スターリンヘの誓いの内容を暴露したことを伝聞した一九四九年八月四日の日本新聞は、水原なる民族の腰ぎんちやくの出現は決して偶然ではない、滅亡にあえぐ日米反動は、かくのごとく手段を選ばぬ狂乱を続けている、しかもデモ、中傷の犯罪はまさに未聞の醜悪に達している、われわれの生命かけ署名運動にあびせたこのどろ足こそ、わが人民を植民地奴隷に突き落さんとする敵の、四九年度帰還者への挑戦なのだ、聖なる怒りに燃え、鉄腕をもつてこれら腰ぎんちやくどもをわが帰還戦列からたたき出せ、という檄文を載せたのであります。この檄文によつて、各収客所における反動分子摘発闘争は一段とはげしさの度を加えたといわれています。
菅証人によりますと、帰国の時期が適当でないと認める者の内申の権限を、民主グループ時代は専門部員、反ファシスト委員会時代は中央委員会にソ連当局から與えられていたのであります。この事実は、亀沢、小泉、加藤等各証人の証言でも明らかにされたことでありますが、反動分子は帰すなというのが民主運動指導者の方針であつたことは前述のごとくでありますから、帰国の人選の内申の権限を與えられている専門部員または中央委員は、当然反動分子の帰国を、いまだ時期が適当でないものとして内申したことは、容易に察知されるのであります。しかも菅証人によれば、日本共産党からは常によき民主主義者として帰つて来るようにと希望して来ていることが伝えられていたのでありますし、宇野証人によれば、日本新聞に、徳田書記長が、日本共産党として、多くの民主分子となつて帰つて来てもらいたいという要望をしている旨の記実が掲載されたということでありますから、全員入党を目標とし、日本共産党の指導のもとに、というのをスローガンの一つとしていた反ファシスト委員会として、また一九四九年五月十九日の日本新聞が伝えているごとく、万雷の拍手歓呼の沸き上る中に、日本共産党政治局員を名誉幹事団に満場一致選出した第二回反ファシスト大会としては、この日本共産党の要望をいれるためにでも反動分子の帰国には手心を加えたことは当然であると考えるのであります。これを反対に言いますれば、日本共産党が、前述のような要望をすることによつて、間接に、反動分子と目された人々の帰国の妨害をしたものと断じられるのであります。
日本新聞には、ほとんど毎号、アカハタ紙より取材した記事が掲載されております。この点と、日本共産党への入党または支持を強烈に呼びかけているという点とから、日本共産党新聞とは連絡があつたと考える、と菅証人は証言しています。徳山証人はこのことを否定しましたが、一九四九年七月二十四日の日本新聞が、その六百号に達した日として、「六百号勝利の日を、この日迎える日本新聞をわが旗として守り、一九四九年帰還の歴史的大行進の中に、それがアカハタに引継がれるまで」と記して、二つの新聞の連絡を強調している点でも明らかと思います。
第一回反ファシスト大会のスローガンの一つに、前述のごとく、民主民族戦線のもとに、日本共産党の指導のもとに、というのを掲げた事実、スターリンヘの誓いを中心とした感謝決議文その他に現われた、帰還後は全員が日本共産党に入党するという決意を表明した事実、さらに一九四九年七月九日の日本新聞の社説で、帰還者諸君は全員が一人のごとく民主民族戦線の戦列に加わり、英雄的共産党の旗のもとにその全力をささげ、必要とあらば、アメリカ植民地支配者とその売国的従僕どもに、生命をもなげうつて闘わんことを銘記せよ、と激している事実、また同年七月十五日の日本新聞で、日本共産党創立二十七周年記念日に寄せて、ソ同盟帰還者が徳田書記長に対し、民主民族磯線の鉄の闘士たらんことを厳粛に宣誓している事実、これらはすべて、在ソ民主運動が日本共産党に直結して行われたことを裏書きするものであります。
次に日本共産党は、当初の否定にもかかわらず、コミンフォルムの批判に屈して、その国際性を暴露したことは周知の事実でありますが、野坂參三氏は、在ソ民主運動の任務は旧ファシスト的将兵の思想革命であると言つている、と証人矢浪久雄君は言い、さらにこれを敷衍して、反ファシスト的意識変革または民主的人間変革にあつたと言い、在ソ民主運動の特徴はプロレタリア国際主義の基調に立つていたと述べているのであります。従つて、ソ連当局の意向が、在ソ日本人に対し、その人間変革、すなわち、ソビエト的人間の形成を目的としている以上、日本共産党は、その国際的性格から当然これに協力しなければならず、また協力したと断じ得ると思うのであります。(拍手)人間変革を遂げざる人間はソ連当局の希望しない人間であり、同時に日本共産党の要望しない人間であります。
そこで日本共産党は、徳田書記長初め野坂、伊藤その他の幹部諸君の名をもつて、在ソ日本人にあて、民主主義者となつて帰国することを期待して、る旨の書信を送つたものと考えられるのであります。一九四九年七月十六日の日本新聞に載つた野坂君の激に、私は諸君に、よき共産党員であるとともに、よき民主民族戦線の組織者であることを期待する、とありますのは、その一例であります。ソ連当局と日本共産党との仲介または伝達機関と目されるものは、在ソ民主運動を指導した日本新聞及び民主グループまたは反ファシスト委員会であります。よつてこれらの指導機関の活動は、ソ連当局及び日本共産党の間接の活動であることは特に注目されなければならぬ事実であります。
日本共産党は、昭和二十二年十二月二十三日の第六回党大会で、引揚者、復員者、留守宅家族、遺家族の生活擁護並びに帰還促推闘争に関する決議を行つておりますが、この中で、日本共産党が引揚げに関して従来とつて来た態度を防禦的あるいは弁解的態度といつており、さらに全党員、全党機関がこの問題に対し示していた無関心を一蹴すべきことを要望しているのであります。この決議は、日本共産党が常に引揚げに対して先頭に立ち、人民のために働いて来たといつているのとまつたく正反対でありまして、この大会までは、日本共産党は、遺家族数百万の嘆きをよそに、引揚げに対しソ連当局の態度を弁解し、また無関心であつたことを雄弁に告白しているのであります。(拍手)
しかるに徳田書記長が、当委員会では否認しましたが、参議院において確認されました、昭和二十四年四月二日の、ソ同盟帰還者の受入れ態勢を強化せよという指令では、二箇月後に帰還する二十数万と予想される新帰還者たちを敵の謀略と懐柔から守つて、全員を入党させるようにしろといつているのであります。この指令では、敵とは日本政府並びにいわゆる反動諸団体をさしているのであります。これは新帰還者が昭和二十三年度の帰還者より一段と積極化しており、全員入党の決意をしているということを、右の指令ではつきりいつているのでありますから、日本共産党には、引揚げ開始の二箇月も前に、どんな人たちが帰国することになつたかが連絡されていたことがわかると同時に、新帰還者の受入れの闘争を準備していたことがはつきりするのであります。日本共産党の引揚げに対する態度が、昭和二十二年の暮れまでと雲泥の差を示して来たのは、在ソ日本人が共産党に有利なように訓練され、人間変革をされた事実によつて起きて来た現象であると断ぜられるのでありまして、徳田証人は、二十四年五月に日本共通党から引揚げ促進の懇請をソ連共産党中央委員会にしたと言われているが、もしそういう事実があつたとしても、それは今言つたような理由からであつたことがわかると考えます。
以上によつて日本共産党は、いわゆる徳田要請によつて直接に在ソ日本人の一引揚げを妨害した疑いが濃厚であり、さらに書簡その他により、民主主義者となつて帰属することを期待し希望している旨の意思表示をして、ソ連当局または在ソ日本人間の民主運動の指導機関、新聞等を通じ、いわゆる反動分子の引揚げを、妨害したことは、きわめて明瞭と考えるものであります。(拍手)はたしてしかりとするならば、日本共産党のこの態度は、提案者の指摘された通り、祖国の同胞を裏切る不徳行為であり、在ソ同胞の自由を抑圧して、自党の望む思想に引きつけようとする憲法違反の行為と断ぜざるを得ないのであります。(捕手)その詳細は後日提出する本報告に護りたいと思いますが、政府におかれても、この問題を一層詳細に検討し、なお幾十万と推定される在ソ同胞の一日も早く帰還されるよう最も適切なる方途を立てられんことを切望してやまないものであります。
これをもつて本件に関する中間報告といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/3
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004・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) この報告に対して質疑の通告があります。これを許します。梨木作次郎君。
〔梨木作次郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/4
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005・梨木作次郎
○梨木作次郎君 私は、ただいまの報告書に対して質問をいたしたいと存じます。(「質問なんておこがましいじやないか」「あやまればいいじやないか」と呼び、その他発言する者あり)
ただいまの報告によりますと、いわゆる徳田要請並びに日本共産党の引揚げ妨害の事実を断定しておるのでありますが、しかし……(「事実じやないか」「断定してもいいじやないか」と呼び、その他発言する者あり)かかる断定の根拠について伺いたいのであります。第一、要請問題については、徳田球一氏と、要請の相手であるところのソ同盟政府、このいずれもが、かかる事実はなかつたということを明らかにしておるのであります。(「うそだ」と呼ぶ者あり)徳田書記長は、考査委員会におきまして、これを明白に否定し、ソ同盟政府はタス通信を通じて、これをばかばかしい、悪意あるつくり話であると公表しておるのであります。要請問題について最も権威あり、かつ確実な証言をなし得るものは、日本共産党の書記長徳田球一氏とソ同盟政府よりほかないのであります。(拍手、発言する者あり)公党の書記長の弁明と、連合国の一員たるソ同盟政府の公式の発表に信を置かないような考査委員会の報告はこういうやり方で、どうして民主主義というものが運営されますか。これは明らかに民主主義の原理を否定するものではないか。また連合国を侮蔑し、これに挑戦するものではないか。この点を伺いたい。
第二番目には、報告書によりますと、なお幾十万と推定される在ソ同胞となつておるのでありますが、この推定は一体何に根拠を置いておるのか。わが党は、今日まで、在ソ抑留同胞の具体的内容を詳細に説明するように政府に要求したが、政府はこれを何ら発表しでおらないのである。いわゆる三十七万人ついても、その氏名、出身の県別、これらを政府に対し発表せよと追つておるが、何ゆえにか、政府はこの発表を拒んでおる。この在ソ抑留者が幾らあるかということが、引揚げ問題についての重要問題の一つである。しかるに、これを何ゆえに考査委員会が明確に調査しなかつたか、この点を伺いたい。
さらに第三番目には、報告書によりますと、徳田要請を認定する証人としまして山口、日高、渡部、橋本、山森、峯田というような証人をあげておるのであります。しかし、これはいずれも考査委員会の調査によつて明らかなように、日の丸梯団に所属しておる人たちであります。日の丸梯団とは、多数の証人によつて明らかになつたように、旧将校、憲兵、特務機関、これらの前職者を中心にして、日本の権力を自己の手に握ることを綱領とした、日本軍国主義の復活を企図する反動団体であります。(拍手)かかる証人の証言を取上げ、これを喚問して証言をさせ、これによつていわゆる徳田要請をでつち上げようとする、これは明らかに日本共産党を誹謗し中傷せんとするところの多数党の陰謀であると私は思う。(拍手、「共産党恥を知れ」と呼び、その他発言する者あり)かかる報告書をつくり上げ、これを国会において報告するということは、この国会並びに考査委員会がファシストに利用されているという印象を日本の人民並びに全世界の人民に與えることであります。(拍手)かようなことによつてわれわれが今や当面しているところの日本の民族の独立、平和の確保並びに全面講和をどうして確保することができるか。これは明らかに民族の独立と平和と全面講和を妨げるものであると思うが、報告者はどう考えるか。以上を伺いたいと思うのであります。(拍手、「答弁の要なし」「軍国主義者の手先になつておるじやないか」と呼び、その他発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/5
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006・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 鍛冶委員長、御答弁をお願いいたします。
〔鍛冶良作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/6
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007・鍛冶良作
○鍛冶良作君 私は、ただいまの梨大君の質問はまことに了解に苦しむものであります。(「何を言うか」と呼び、その他発言する者あり)私は、委員今によつて決定せられておることをそのまま報告しただけでありまして、委員会の決定に至るまでのことを聞かれたからといつて、私の報告書と何の関係があるでありましよう。それは決定するまでの討論であります。私の報告に間違つたところがあるとか、わからぬところがあるとおつしやるならばいいが、決定してしまつたものを、私に内容を聞かれたからといつて私は答える必要はないものと思います。また、かような質問が前例となつては、はなはだおもしろくないものである、許すべからざるものであると考えておるということをつけ加えて申し上げます。(拍手、「もう一ぺん明確に答弁しろ」「再質問」と呼び、その他発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/7
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008・山本猛夫
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、稻用直道君外三十四名提出、鉄道電化促涯に関する決議案は、提出者の要求の涌り委員会の審査を省略してこの際こ引を上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/8
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009・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/9
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010・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
鉄道電化促進に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。岡村利右衞門君。
〔岡村利右衛門君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/10
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011・岡村利右衞門
○岡村利右衞門君 ただいま議題となりました鉄道電化促進に関する決議案につきまして、提案の趣旨を弁明いたします。
まず決議案を朗読いたします。
鉄道電化促進に関する決議案
わが国経済の再建並びに国有鉄道経営の合理化の観点において鉄道の電化を促進し、石炭の節約、輸送力の増強等を図ることは、現下の緊急事である。
よつて政府及び日本国有鉄道は、速やかに確固たる鉄道電化の計画を樹立するとともに、必要なる諸般の措置を講じ、もつて積極的にこれが実現を期すべきである。
右決議する。
次に本決議案の趣旨を簡単に述べまして、諸君の御賛同を得たいと存じます。
鉄道を電化するということは、国鉄といたしまして輸送力の増強、サービスの改善、経営の合理化、保健衛生等の利点があるのみならず、わが国経済の再建にとつて重大な影響をもたらすものであります。わが国経済の再建と石炭の増産とは離すべからざる関係にあることは、ここに多く申し上げるまでもないと存じますが、わが国の石炭事情はきわめて寒心すべき状態にあるのであります。すなわち、わが国の石炭の推定埋蔵量は約九十億トンで、世界の〇・二%、第十六位にすぎないのでありますが、出炭量は第五位であります。従つて維持年数は、世界の平均が三千五百五十二年であるのに、わが国はわずか百九十年と推定されているのであります。しかも炭質は劣等でありまして優良な粘結炭、発生炉用炭、無煙炭、高カロリー炭は海外に依存せればならぬ状態であります。この乏しい、しかも質のよくない石炭をいかに効果的に利用するかということは、わが国に課せられた重要な問題であると存じます。
ところで、この石炭がどういう方面で最も多く使用せられているかと申しますと、最大の消費者は実に国有鉄道であつて、昭和十二年度における国鉄用炭は全国消費量の七・五%であつたのが、その後炭質の低下等により逐年増加いたしまして、戦後二九%にまで達したのであります。最近この状態は漸次緩和されつつあるのでありますが、なお二〇%内外となつているのであります。しかも国鉄は、列車運転の必要上、高カロリーの良質炭を要求しているのであります。従つて、国鉄における石炭消費量の多寡のわが国経済に及ぼす影響はきわめて大きいのであります。
しからば、国鉄用炭をいかにして節減したらよいかというと、ここに鉄道の電化という問題が浮び上つて来るのであります。現在、石炭を蒸気機関車に使用することは、非効率の代表的なものとされているのであります。今かりに六千五百カロリーの石炭を蒸気機関車に使用いたしますと、熱効率は四・八%にすぎないのでありますが、その同量の石炭を電力にかえ、電気機関車を動かせば、約三倍に近い一一・七%となるのであります。従つて、運転用電力を全部火力でまかなうとしても、現在の使用量の約四〇%程度の石炭をもつてすれば足りるわけであります。しかるに、わが国には電力資源としての水力がきわめて豊富なのでありますから、これを開発利用すれば、渇水期を除いては、所要電力の大部分は水力でまかない得るのでありますから、さらに少い石炭で事足りるのでありまして、これによつて節約し得た石炭は他の重要産業に振り向けることができるので、石炭を増産したと同様な結果となるのであります。
かくのごとく、鉄道の電化は石炭の消費面において著しい貢献がなされるのでありますが、国鉄といたしましては、経費中占める石炭費の割合は現在二五%程度でありますから、石炭費の節約ということは、経営の合理化に大きな効果を及ぼすものであります。さらにまた電化によりまして、列車の牽引力及び速度の増大をはかることができまして、輸送力の増強を期し得るのみならず、旅客輸送の場合においては、保健衛生と旅行の快適という大きな利点があげられるのであります。次に、電源の開発、電化工事の施行に伴い、雇用の増大、関連産業の振興にも寄與し得るということは、見のがすべからざる点であろうと存じます。
以上が鉄道電化を促進すべき趣旨でありますが、最近学界、財界、労働組合等においても、こぞつて鉄道の電化を提唱している点から考えて、また各方面から国会に寄せられている請願、陳情を見ても、国民がいかに鉄道の電化を要望しているか洞察にかたくないのでありまして、これにかんがみましても、鉄道の電化はすみやかに実現をはかる要があると信ずる次第であります。よつて政府及び日本国有鉄道は、すみやかに確固たる鉄道電化計画を立て、現在険路となつている電源については、明年秋完成を予定せられている信濃川山辺発電所の出力を特に考慮に入れ、その他資材資金等を勘案して必要なる措置を講じ、すみやかにかつ積極的にこれが実現をはかるべきであると考えるのであります。
以上簡単でありますが、本決議案の趣旨を申し上げました。何とぞ諸君の御賛同を得たいと存ずる次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/11
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012・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/12
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013・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/13
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014・山本猛夫
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、中山マサ君外二十三名提出、在外抑留同胞引揚促進に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/14
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015・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/15
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016・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
在外抑留同胞引揚促進に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。中山マサ君。
〔中山マサ君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/16
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017・中山マサ
○中山マサ君 ただいま議題となりました在外抑留同胞引揚促進に関する決議案につきまして、その趣旨弁明をいたします。
まずその案文を朗読いたします。
在外抑留同胞引揚促進に関する決議案
終戦以来五箇年にわたつて、連合国の好意により在外同胞の大多数の引揚が実施されたことは、全国民の深く感謝するところである。しかるに四月二十二日のタス通信は、在ソ同盟の同胞の本国送還が終つたと発表している。しかしながら、今なお相当多数の同胞の残留をわれわれは確信する。しかも抑留中における死亡者及び戦犯関係抑留者の氏名及び訴因が発表されぬ。このため外には、長期にわたつて、切々故国に思いを馳せつつ今なお労役に服し、病床に臥する抑留生活の同胞あるいは満刑後何らの保護を受けることなく路頭に迷う者、内戦に参加を余儀なされている者等、生命の危険にさらされている幾多の同胞あり、内には、多年生死不明のままに肉親の帰還を待ちわび、既に心身ともに疲れ果て、実に惨たんたる生活に立つ留守家族あり、誠に言語に絶する悲痛なる社会問題であり、且つ人道問題である。
われわれは、改めてここに抑留同胞の最後の一人に至るまで、その引揚が速やかに実行せられることを連合国に懇請するとともに、未帰還同胞に関する調査の徹底、留守家族遺族の援護に萬遺憾なきを期せねばならない。
政府は、これがために必要な萬全の方策を講ずることに遺漏があつてはならない。
右決議する。
終戦時の在外同胞中、今日までに帰還して参りました者六百二十万余、これは四箇年有余にわたります連合諸国の御盡力によることは、かねて申す通りでございます。ここに、いま一たび国民とともに深甚の感謝をささげる次第でございます。しかし、去る二十二日のタス通信は、戦争犯罪人二千四百五十八名と病人九名を除く最後の日本人捕虜九万五千名の送還が完了した旨を発表しているのでございます。
私たちは、いかにしても、かかる発表を絶対に信じ得ないのでございます。なぜならば、昭和二十四年五月二十日、タス通信が発表した終戦時における捕虜総数は、五十九万四千名でありました。ところが、今回の発表によりますと、日本降伏以来ソ連から日本に送還された日本人捕虜総数五十一万四百九名、戰闘地域にて放免された捕虜七万八百八十名、残留戦犯者、病人二千四百六十七名とあり、計五十八万三千七百三十六名となり、従つてこれだけでも、差引き一万余名の食い違いが生じております。また舞鶴援護局には、留守宅より未帰還者あてに寄せられた通信が二十万通も保管されており。これによりましても、いかに多数の未帰還者があるかを裏書きしているのでございます。
以上の事情から判断いたしまして、いまだ多数の抑留者が、切々故国に思いをはせつつ帰国を待ちわびていることは、疑う余地なく、このタス通信により、国民は総力をあげて今後の引揚げ問題については、断固たる決意を必要とする段階に到達したものと考えます。政府は、この際引揚げ完了の発表に接し、去る十二月二十一日の第百二回対日理事会のシーボルト議長のステートメントにおける未帰還者三十万余の数字を想起し、関係方面に積極的に懇請するとともに、死亡者についてもこの際明確な数字を発表するよう要請しなければなりません。
ここにおきまして私は昨日の委員会におきまして、共産党の一議員よりして、死亡者の氏名を発表する必要がないかのような御発言がありましたについては、日本人としての立場から、実に残念にたえないものであると考えているのございます。(拍手)
引揚げ問題に関する国民の要望にこたえるところが、政府になければなりません。この四箇年の長い期間を暗い心持のうちに過して参りました留守家族並びに潰家族に対する援護の問題は、政府においても十分愼重に考慮していただかなければ、重大なる社会問題と化して来るのでございます。これら幾多の山積する重要問題の解決に私どもは一層の努力を拂うことを誓うものでございます。
以上がこの決議案の趣旨でございます。本院におきましても、たびたび決議を行い、政府を督励するとともに、関係方面にもしばしば懇請に参りましたことは、皆様御承知の通りでございますが、私どもは、最後の一人が母国の土を踏むまでは、この引揚げ問題に対して非常なる憂慮を抱いているものでございます。願わくば急速なる解決をはかられますよう要望いたしまして、趣旨の弁明を終る次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/17
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018・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 討論の通告があります。これを許します。川上貫一君。
〔川上貫一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/18
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019・川上貫一
○川上貫一君 私は、日本共産党を代表いたしまして、ただいま上程されている在外抑留同胞引揚促進に関する決議案に反対するものであります。もちろん、抑留同胞の引揚げ促進そのものに対しては反対するのではありません。だからこそ、わが党は、昨年の五月に、ソ同盟共産党に対して仰留同胞の引揚げを懇請している。これは明らかなる事実である。しかしながら、本決議案は、その名前は同胞引揚げ促進というのであるが、その本意はまつたく政治的意図に出た陰謀である。(拍手)第一、決議案によれば、タス通信はソ同盟にある同胞の本国送還は終わつたと発表しているが、今なお多数同胞が残留していることをわれわれは確信すると述べている。一体、諸君は何によつて確信するのか。連合国の有力な一員であるところのソ同盟が発表している事実を信ぜず、政治的反動の意図がきわめて明らかな日の丸梯団のごとき一部の者の片言隻句によつて、かつてにでつち上げた数字によつ、ソ同盟の発表が虚偽であるということを確信するのであるか。(「しつぽを出したな」と呼ぶ者あり)しつぽではない。良心があるならばかようなことは言えないはずだ。われわれは、かようなファシストの言を盾にとつて、いいぐらいな数字によつて、連合国の一員であるソ同盟を誹謗するような、この発表を虚偽であるというような、こいう人間こそ、私はフアシスト一味であると言わなくちやならぬと思う。(拍手)
第二に、本決議案は、長期にわたつて労役に服し、病床に臥す云々と言うている。一体、おりもしない者が、どこで労役に服するのか。おりもしない者が、どこで病床に臥するのか。帰還将軍さえも、抑留者はほとんどいないと述べているのです。政府は、かつて三十数万もの抑留者があると発表した。これを宣伝した。この数字の根拠さえも示しておらない。また、この数字の責任の所在さえも明らかにしておらない。またこの決議案は、内地にあつて引揚げを待つ云々と言うているが、その数字さえも政府は発表することができない。こういうありさまでありながら、傲慢不遜にも、ソ同盟が抑留者の氏名を発表しないと、たてついているのだ。(拍手)いわんや決議案において、満刑後何らの保護を受けず、路頭に迷う云々と言うている。いかなる証拠があるのであるか。
そもそもソ同盟の引揚げは完了したのです。私ははつきり言うが、もはや一人も帰つては来ません。これは明らかです。しかるに本決議案は、これが帰つて来るかのような期待を家族に與えようとしている。
さらに一方では、われわれがこの事態を明らかにするために要求した留守家族調査の結果さえも発表しないのだ。政府は留守家族のカードを集めているはずであります。市町村、府県別のこの数字が手元にあるはずであります。今こそ政府はこの数字を発表してしかるべきだと思う。こういうこともやらないで、ソ同盟に責任を帰し、家族に空しい期待を與えるような決議案が、これがどうして陰謀でないと言えるのか。(拍手)
さらに中国における抑留同胞――そもそも中国は未承認の国であります。正式に交渉する方法がないのである。もし中国の抑留同胞について云々するならば、われわれはその前に、中国の承認と、その平和的交渉の道を開くような決議を出さなければならぬ。(拍手)これが国会の国民に対する義務である。諸君も知つておられるように、日本の侵略が一番大きな被害を加えたのはどこであるか。中国である。あらゆる残虐が中国で行われた。あらゆる不法が中国で行われた。無辜の中国人が血を流しておる。この責任はまことに重大であるが、かようなことをたなに上げて、吉田内閣総理大臣のごときは中国を誹諦し、與党もまたこれに同調しておるのだ。そうしておいて、抑留同胞に関する責任だけを中国に負わせようとしておる。こういう決議案は、道徳的にも不当である。将来中国と提携しなければ復興も発展もあり得ないようなこの日本と中国との関係を、諸君は反動の利益のために破壊するつもりであるのか。(拍手)われわれは、かような陰謀ではなく、中国の承認、中国との平和的交渉ができるような決議を本国会ですべきであるのだ。
今、政府及び與党の諸君は、国際反動勢力の利益のために、みずから自主性を放棄しておる。公正な講和を妨害しておる特定国への隷属の道を進めておる。彼らは、内外の反動勢力の手先になつて、一切を戦争の方向に進めておる。だからこそ軍事基地に協力するとさえ公言しておるのだ。かようにして、反ソ反共の前線基地をみずから買つて出ておるのだ。軍事産業の復活は当然だ。国土と人民生活が破壊されるのは当然だ。国の自主と独立のために、人民の利益のために闘うすべての民主勢力が弾圧されるのは、この内閣のもとにおいては、この與党のもとにおいては当然だ。戦争挑発は当然だ。この重大なときに、日本をまつたく危険に陷れ、こういうことをしておるのは、これまたこれら一味の人々である。秋田の花岡鉱山、木曽谷における中国人俘虜の殺害、こういうことはにおかむりをし、細菌戦犯人を擁護し、戦犯を温存し、少数民族を圧迫し、国内においては民主的組織を破壊し、国際反動の手先になつて反ソ反共を叫びながら、連合国の一員に対して敵対行為をとつておる。まさにかような人々こそ人民の敵であるといわなければならない。(拍手)
このことは、考査委員会においてもはつきり出て来た。これをごらんなさい。事態は明らかだ。考査委員会は、反動の手先、人民の敵になり下つた。與党の多数によつて、反ソ反共の道具になり下つたではないか。五井産業事件を放棄し、鉱工品公団事件を無規し、徳田要請を取上げ、いやしくも一党の首領に対して、自由党の諸君は何をしたか。礼儀も知らず、恥も知らず、ファシスト団のしり馬に乗つて、日の丸梯団の一部の者の片言隻句を寄せ集めて、反ソ反共の陰謀委員会にしたではないか。本決議案は、これらの陰謀の一つである。
私は最後に言うが、引揚げ問題の根本は一体どこにあるか。反ソ反共によつたこの闘いにあるのだ。反ソ反共が多くのわれわれの同胞を抑留せしめたのだ。しかるに、今また諸君たちは、引揚げ問題に籍口して、犠牲になつた遺家族の心持をつりながら、これを運用しながら、これを反ソ反共の陰謀に使い、もう一度日本の国民をこうした惨事に引きずり込もうとしておることが明らかだ。(拍手)国会は、こういう人々の陰謀に反対の決議をするのがあたりまえだ。この決議はまつたく逆である。日本共産党は、かような陰謀決議案には反対であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/19
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020・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 吉川久衛君。
〔吉川久衛君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/20
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021・吉川久衛
○吉川久衛君 私は、国民民主党を代表いたしまして、ただいま提案されております決議案に賛成の意を表するものであります。
終戦後四年間余り異国にあつて抑留生活を続けられておる人々の身の上を案じますとき――私どもは、バスや電車に乗つておるときに、そのバスや電車が何かの事故でとまつてしまつた場合、車掌さんが、どういう事故で、どのくらい停止するか、何時間くらいしたら動き出すかというようなことを予告されれば一応安堵するのでありますが、その予告もない場合には非常に不愉快な思いをするのであります。このような、ささいな問題でも、われわれは見通しがつくまでは、まことに不愉快な思いをするものでありますが、異国にありまして、いつ帰られるかわからないというような状況に置かれる人人の身の上を案じますならば、まことに想像に余りあるものがあると思うのであります。(拍手)私どもは、こういう人々を一日も早くお迎えいたしまして、狭いながらも八千万国民がほんとうに提携して日本の再建に立ち上らなければならない。これが日本人の人情であり、この人情が紀国再建の基本であると確信するものでございます。(拍手)
共産党を除く全国民は、今日までの血の叫びを上げて同胞の帰還をこいねがつていたのでございますが、共産党の諸君は――少くとも私は、ただいままで日本共産党を信用して参つたのでありますが、驚いたことには、川上君のただいまの演説を聞きまして、また梨木君の先ほどの演説を伺いまして、共産党の共の字は気狂いの狂じやないかと思います。(拍手)党派を超越して、同胞の一日も早く帰られることを念願するのが日本人でなければならない。(拍手)共産党の諸君は、顔は日本人の顔をしておられるが、実はソ同盟の諸君のように見えてならない。(拍手)昨年の夏ごろからでありました。ソ連から帰られた同胞にたいして、赤旗をかついで、たいへん歓迎の意を表しておりましたが、それは入党を勧めるための歓迎でありまして、心の底から同胞を迎える態度ではなかつたのであります。(拍手)
私は、第一回国会から海外同胞引揚特別委員会におりまして、共産党の諸君の態度を見ておりますると、ほとんどあの貴重な委員会において数の問題に終始して、時間つぶしばかりやつて、そうして真に引揚げ問題を有効適切にやることについては何らのお考もなされなかつたという現実をながめて参りまして、まことに私は遺憾にたえません。(拍手)しかしながら、今日もなお、共産党を除いては、全国民をあげて同胞引揚げに非常な熱烈なる期待をいたしているということは、私どもまことに感激にたえないところでありまするが、最後の一人までも帰られる裏で、この熱烈なるわれわれの要望は、あくまでも高揚いたしまして貫徹しなければならないと思うのであります。
以上、簡単でございますが、賛成の討論といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/21
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022・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 受田新吉君。
〔受田新吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/22
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023・受田新吉
○受田新吉君 私は、ただいま上程されておりまする在外同胞の帰還促進に関する決議案に対しまして、日本社会党を代表いたしまして賛成の討論を試みるものであります。(拍手)
終戦以後五箇年になんなんといたしておりまする今日、われわれの同胞の一部に、なお祖国の土を踏まない人が相当数あるということは、まことに人道的にも重大なる事件であります。(拍手)この在外同胞が故国の土を踏み得ざる痛ましい現実の前に立つて、去る二十二日、ソ連タス通信の、明らかに引揚げは完了した、二千四百余名の戦犯その他病人の一部を残すのみとなつたというこの報道は、当日、あの舞鶴の埠頭において、この船にわがはらからの帰るを待ちわびておつた家族たちが、わが肉親の姿を見ざるや、あの埠頭に泣き伏した現実をはつきりつかんで、われわれはまことに悲嘆にたえない次第であります。(拍手)
さて私たちは、ここにソ連タス通信なるものが、先ほど来川上君たちによりまして、政府の正式発表であり、これ以外には一人もないのである、そしていかに待つても一人も帰ることはないのであると言明されたのでありますが、この言葉は、まことにわれわれに悲しい仕打ちを與えたといわざるを得ないのであります。私は、ここにソ連タス通信がソ連政府の正式発表であるということは、その権限を委譲されたという報道によつてソ連側の意図がはつきりされるのでありますが、同時に、去る二十五日、ソ連大使館に参りまして、ロザノフ政治顧問にお尋ねした際においても、これと同様の声明があつたのであります。
私は、ソ連政府はここに正式声明として残留者なしという立場をはつきりされた以上、今後ソ連政府が引揚げに対してわが同胞の上に光を與えることは非常に困難な立場に立つと同時に、共産党の方々も、ここによほど苦しい立場に立つておられることを思うのでありまするが、しかし、ここに私はつきりと申し上げたいことは、今日までこの決議案に賛成をしてくださつた共産党の方々が、今日この決議案が反動性を有するゆえんをもつてこれを拒否された点におきまして実はでき得べくんば、共産党の方々も、最後の一人の引揚げが完了するまで引揚げ促進に御協力を願つて、有終の美を発揮していただくことを懇願じて参つたのであります。私、この点に関しましても、共産党の諸君の考えておられるところの戦犯者の氏名の発表、病人の氏名の発表等をすみやかにされることに対しては、皆様も御協力をお願いできるものと信じておつたのであります。私は、この点におきまして、この引揚げ問題は、今や日本の政治問題、世界の人道問題において、最も悲痛なる最終段階に達した事件であることを痛感するものであります。
私は、ただいま決議案に盛られたる幾多の要件の中に、特に最後にあげられてあるところの一言を取上げて、まずこの賛成の討論にしたいと思うのでありまするが、未帰還者調査というものに対して国内問題として、いま一歩徹底したる措置が何ゆえ政府においてとられなかつたかということであります。この点におきまして、わが同胞の中に帰らざる人たちがどれだけいるか。その人たちはどういうような立場の人かということを、いま一歩つつ込んで、正確な数字を何ゆえ日本政府は発表してくれないのであるか。この点は、従来しばしば政府に対しまして、引揚げ促進の決議案に附帯してこの要望を続けて参つたのでありますが、依然としてこの実態調査が明らかになつていないという点において、日本政府の態度はまことに遺憾であると断ぜざるを得ないのであります。同時に、この引揚げ未完了の人たちの実態調査に基くはつきりした数字と、その人たちの援護対策、引揚げて後における就職、就労、住宅問題、その他あらゆる点において政府が万全の施策を講ずることを、従来重ねて政府に要請を続けて参つたのであります。これらの点についても、政府において十分受入れ態勢の完璧を期することなくしていまだに遺憾の点の多々あることに対しても、日本政府は十分反省し、今後一層の努力を期せなければならぬのであります。
私は同時に、この引揚げ問題について特に吉田外務大臣にお願いを申し上げたいのであります。吉田外相は、引揚げ問題に十分関心を持つていただいているといわれているのでありまするが、引揚特別委員会に一回の出席もなく、たいへんわれわれはこれに遺憾の意を表し続けて参つたのであります。しかしながら、渉外的にある程度の努力をされていることは、これはわれわれとして了承しているのであります。しからば、この点について、さらに一層政府は、渉外的にも今後この引揚げ関係に対して、最後の一人に至るまで引揚げ完了のその日まで誠心誠意努力を傾倒し、でき得べくんば、ソ連政府に対してもその赤誠を吐露して、この戦犯者の氏名の発表その他われわれの要望する数々の要請をしていただきたいと思うのであります。
私は最後に一言申し上げたいのでありまするが、タス通信が発表した数字の内容において、昨年と今年の発表の中に約一万の誤差があるのであります。同時に、一般邦人を含まないと言明した昨年の報道に比しまして、本年の発表は一般邦人を含んでいる結果となつているのであります。これらの点につきましても、タス通信の矛盾について、われわれはさらに渉外的関係を通じてその原因を明らかにし、その事実を究明していただきたいのであります。
さらに一言申し述べたいのは、この引揚げ問題は、今後ソ連側の正式発表で一名も残存者なしということと、われらは渉外局の発表の推定によるところの多数の数字の前に大きな矛盾を抱いたまま、今後何年間もこの事態が続くとしたならば、ゆゆしき状態が現われることをわれわれは憂うるものであります。でき得べくんば、この憂欝なる気持を一刻もすみやかに解決して、引揚げ完了の喜びの日がわれわれの目の前に現われて来ることを待望し、留守家族たちの上に光あり、希望ある日が一日もすみやかに訪れまして、祖国再建のいばらの道を堂々と切り開いて、やがて平和と文化の花絢爛と咲きにおう理想国家に邁進をいたしたいと思うものであります。ここに引揚げ問題の最終段階に差しましたる今日、この決議案の上程とともに、われらはこぞつて全国民運動として、この問題の解決と、そしてソ連邦を含む連合諸国に今後さらに一層の懇請を申し上げ、そしてわれわれに引揚げ問題解決の日を一日もすみやかに招来できるよう待望いたしまして、賛成の討論を終る次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/23
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024・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/24
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025・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて本案は可決いたしました。
この際政府から発言を求められております。これを許します。副総理林国務大臣。
〔国務大臣林讓治君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/25
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026・林讓治
○国務大臣(林讓治君) 本月二十二日、タス通信は、ソビエツト政府から発表の権限を與えられたと称しまして、日本人捕虜の送還は、例外として戦犯二千四百五十八名、病者九名の残留者を除き、ここに完了したと放送いたしましたが、この意外の発表は、留守家族の方々はもとより、一般国民に異常なる衝撃を與えたことと私どもは信ずるわけであります。政府は、今月二十七日、内閣官房長官の談話をもつて、右タス通信の発表ははなはだ納得いたしかねる、しかしこの通信は公式なものでないので、日本政府としては、これらに対し公式的には何にも言えないが、その内容は、従来政府が責任をもつて調査した根拠ある数字に照し合せ、はなはだ不可解であり、ソ連政府は未帰還同胞のすみやかな送還と、死亡者の氏名を発表すべきことを要求いたしたのであります。
在外同胞引揚げの問題は、政府はもとより、国民一般のきわめて重大な関心事であります。この問題の解決こそ、われわれが民主日本として再出発いたしてより、常に念頭を離れないところの切なる念願であります。このたびのタス通信の発表が、引揚げの時期の問題を越えて、在外同胞の残留者はなしと言うに及んでは、これら肉親の帰還を待ちわびる留守家族の心情を思うとき、その衝撃は筆舌に絶し、沈痛の姿を想像いたすに際しましては、実に断腸の思いがいたすのであります。われわれが、八千万国民の切なる願いとして、在ソ同胞のうち死亡者の氏名とその情報を通告せられるよう要求し続けて参つているにもかかわらず、この願いに対してさえ、いまだに何らの回答にも接しないのは実に遺憾であります。願わくは、ソ連政府が人類の道義と国際正義にこたえて、われわれの切願が実現の日の至らんことを願つてやまないのであります。われわれは、挙国懸命の努力を傾倒いたしまして、強力な引揚げ促進運動を継続実施することをお誓い申すわけであります。また留守家族、遺族の援護に対しましては、この上とも万遺憾なきを期したいと存ずる次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/26
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027・山本猛夫
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、江崎真澄君外二十九名提出、都市建築物の不燃化の促進に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/27
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028・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議た御異議ありませんか。
〔「異議なし」)と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/28
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029・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
都市建築物の不燃化の促進に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。江崎真澄君。
〔江崎真澄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/29
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030・江崎真澄
○江崎真澄君 私は、ただいま議題となりました都市建築物の不燃化の促進に関する決議案の提案者を代表いたしましてその趣旨を弁明し、諸君の御賛同を得んとするものであります。
まず決議案を朗読いたします。
都市建築物の不燃化の促進に関する決議
わが国は、年々火災のためばく大な富を喪失しているが、これは、わが国の建築物がほとんど木造であつて、火災に対し全く耐抗力を有しないことに起因する。
特に都市においては、都市計画の実施、消防力の強化とともに建築物の不燃化を図らなければ、火災による損害の防止は期し得られない。
過去三十年間、法令に基いて都市建築物の不燃化に努めて来たが、都市建築物の不燃化は単なる法令の施行のみでは誠に困難である。幸いわが国経済力も漸次回復し、不燃建築に要する建築資材の入手難も漸く緩和されたので、急速に都市建築物の不燃化に努力すべき時期に到達したものと信ずる。
そのため、今回建築基準法を制定して近代的不燃都市の建設を企図しているが、これら法令の整備と相まつて、政府は速やかに具体的措置を決定し、これを実施することを強く要望する。
記
一、都市の不燃化を促進するため、防火地域内に建設する不燃建築物に対し、国庫補助金の交付及び建設資金融通の途をひらくこと。
二、都市の火災危険地区において既存建築物の防火改修事業を実施し、これに対し国庫補助金を交付すること。
三、新たに建設する官公衛等は、原則として不燃構造とすること。
四、防火地域内における小宅地の利用を合理化するため、共同建築物の建設を促進するよう適切な法的措置を講ずること。
右決議する。
御承知の通り、わが国は火災国というきわめて恥辱的な別名を冠せられております。相次ぐ火災によりまして、勤勉にして精励なる国民の築き上げた国富を、あたら烏有に帰せしめておる現状であります。その最大の原因は、何といつても建築物のほとんどが燃えやすい構造であり、火災に対する抵抗力がきわめて貧弱であることに起因いたすのであります。このわが国建築物の重大なる欠点を是正せんがために、過去三十箇年にわたり、法令によつて不燃化建築物の建設に努力して来たのでありますが、笛吹けどもおどらず、現実は、火災にあえば、その火災の損失をとりもどすために急ぎ木造家屋をつくり、その木造家屋はまた焼失し、いたずらにこれを繰返すのみとなり、不燃化建築の構想は容易にその実効をあげ得なかつたのであります。
決議案第一より第四に至る各項に対する理由を申し上げますと、第一の点でありますが、大正十一年、時の政府は、東京都内においては、日本橋、京橋、丸ノ内等、中心部約百五十八万坪の地域を甲種防火地区として指定したのでありますが、耐火建築がなされたのは、指定地域内宅地面積九十三万坪に対しまして、わずか十二万坪にすぎず、総宅地面積の一四%という態たらくであります。また昭和九年、大火災によりまして甲種防火地区に指定された函館市においては、現在まで不燃性’建築物は、甲種防火地区でありながら二棟という、お話にもならない状況であります。法令によつて堂々と不燃建築物たることを規定しながら、かくのごとく実効をあげ得ないのは、建築費が木造に比して高価であり、わが国民の経済力をもつてしては、とうていその建築費をまかない得ないことが、その最大の原因であると認められるのであります。
たまたま政府は、今国会に建築基準法案を提出し、本日衆議院においてこれが可決を見んとしているのでありますが、この法案それ自体は、きわめて民主的にして、しかも地方自治の精神にかなつたものでありますが、この法案の中には、特に項を設けて防火地域を設定し、その地域内の建築物はすべて不燃性建築たることを厳重に規定しておるのであります。かかる規定は、国家百年の大計のためまことに喜ぶべき思想でありますが、すでに申し述べました通り、国民自身の経済力は、この規定、この思想には、とうていつき得ない困難が考えられるのであります。そこで政府は、この際燃えない都市建設の大目的貫徹のため、特に耐火建築の建築費に対しましては国庫補助金の交付及び建築資金の融通等積極的施策を樹立し、急速なるこれが実現に質せられたいのであります。なお、防火地域内に建築する不燃建築物に対し国庫補助金を交付し、かつ建築資金を融通した事例は、かつて大正十二年の関東大震災後に、東京及び横浜市内の防火地区においてこれを実施いたしたのであります。この際、その例を全防火地域において復活し、不燃都市建設を促進しなければならないと確信するものであります。
第二項につきましては、最近熱海市の大火を初め、飯田市、能代市等、せつかく戦災を免れながら、不慮の事態から甚大なる被害をこうむつているのでありますが、過去十箇年間において百戸以上を消失せる火災は、実に八十九件の多きに上るということであります。そのほとんどが中小都市であるという点も忘れてはなりません。
これは、それらの都市における都市計画事業の遅滞とか、消防力が貧弱であるとか、いろいろな悪条件にもよりますが、根本においては、木造不良住宅が密集し、いかにも大火災発生のための温床といつたわが国建築物のあり方によるものであると言わなければなりません。従いまして、これらの頻発する火災を防止するためには、すでに申し述べましたように、まず防火地域を指定し、新たに建築する建築物の不燃化を積極的に進めますとともに、既存火災危険地域における建築物を耐火に改造する措置を急速かつ大規模に施する必要が感ぜられるのでありす。しかしてこの必要は、特に経済の少い地方中小都市に多いのでありして、この改修事業を強力に行うたには、何としても国庫より相当の補金を交付する原則の確立をいたさなればならないと考えるのであります。
第三に、近来官公署の火災は特に立つて多いのであります。最近の例あげてみましても、たとえば県庁とては、青森、埼玉、佐賀、長野の庁を燃やしているのであります。また役所は、山口市を初めといたしまて奈良、能代、西宮、熱海等の各役所を数えているのであります。のみならず、東京駅の八竜州口、あるいはまた、過ぐる二十六日には高崎市役所を焼失するなど、実に枚挙にいとまき状況と申さねばなりません。過去四簡年間の官公庁の火災被害は、延べ十万坪の多きに上り、二十五億円といわれております。これによる国民大衆のこうむる直接、間接、有形、無形の損害は、実にはかり知り得べからざるものと言わなければなりません。かかる見地からしても、まず官公庁の建設は当然不燃建築を原則とし、これが実現に真剣な考慮を拂うべき段階に到達したものと言わなければならぬのであります。
第四に、わが国の都市の宅地はきわめて細分化されており、特に防火地区に指定されているような中心部においては格別この傾向が著しいのでありまして、このことも耐火建築物の実施を妨げる重大な障害となつておるのであります。たとえば東京都中央区では、一筆三十坪未満の宅地は総宅地筆数の三五%に及んでおり、このように細分化された宅地を合理的に利用するためには、数筆の宅地の上に共同建築をしなければならないのであります。この共同建築物促進のためには、民法の規定のみでは不十分でありますから、所有に関する特別の法制をつくり、共同建築を容易にすることが必要であります。これはまた一面、不燃化建築物の建設促進の一因となるものと考えるのであります。
以上、各項目にわたりまして理由のおよそを申し上げたのでありますが、まつたく都市不燃化促進は、目下の喫緊事であると申さなければなりません。かつて英京ロンドンにおいても、一六六六年、全市をおおうた大火に見舞われるまでは、相続く火災に悩まされて来たのでありますが、当時レーン氏の提唱する不燃化都市計画を、ときに夢物語であると笑う人もあつたのでありますが、断固これを採用することによつて偉大なる成功を収めたのであります。但しこれは、先ほどあの辺からもやじが飛びますように、すでに二百八十年も昔の話であります。この決議案にして、今日ここに声を大にして論ずるなどは、いかにおそきに失するかを思わせる感ありと言わなければなりません。今こそわれわれは、わが国建築物の最大欠点である燃えやすい構造を打破し、改むるにおそきはなしとして、一刻もすみやかに不燃化を強力に推進しなければならないと確信するものであります。
以上の理由によりまして本決議案を提出し、諸君の全面的御賛成を得、政府におきましても、この趣旨にのつとり早急に具体策を講ぜられんことを期待するものであります。以上、本決議案の趣旨弁明といたす次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/30
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031・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/31
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032・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。
この際建設大臣から発言を求められております。これを許します。益谷建設大臣。
〔国務大臣益谷秀次君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/32
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033・益谷秀次
○国務大臣(益谷秀次君) 都市におきまする建築物の不燃化を強力に推進して参りますることは、火災防止、国民の生命財産保全という関係から見ましても、きわめて重要な事柄であると存じます。今回御審議を願つておりまする建築基準法の立案に際しましても、この点特に留意をいたした次第であります。
ただいま御決議になりました決議の御趣旨は、きわめて政府においても御同感であります。十分に研究をいたしまして、御趣旨に沿うべく努力いたしたいと存ずる次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/33
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034・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 日程第一、弁護士法第五條第三号に規定する大学を定める法律案の参議院回付案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/34
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035・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 採決いたします。本案の参議院の修正に同意するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/35
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036・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて参議院の修正に同意するに決しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/36
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037・山本猛夫
○山本猛夫君 日程第二は延期されんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/37
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038・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/38
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039・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程第二は延期するに決しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/39
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040・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 日程第三、建築基準法案を議題といたします。書長の報告を求めます。建設委員長淺利三朗君。
〔淺利三朗君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/40
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041・淺利三朗
○淺利三朗君 ただいま議題となりました建築基準法案に関し、建設委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
最初に、政府の議案提出の理由並びに法案の内容の概要を御説明申し上げます。
現在、建築物の質の規制に関する法律といたしましては市街地建築物法がありますが。この法律は、制定以来満三十年を経過しております。その間若干の小改正を経てはおりますが、今日においては、その形式及び内容ともに不備な点が多く、新憲法の精神にかんがみて改正を必要とするものがあり、かつわが国建築の質的改善による災害の防止、国民生活水準の向上には十分に寄與し得ないうらみがあります。よつて、この際市街地建築物法を廃止し、あらためて新たなる構想により建築物に関する基本法を制定する必要があると認め、本法案の提出を見た次第であります。
次に、本法律案に規定してある重要な点を御説明申し上げます。
第一に、現在の市街地建築物法は、保安衛生または都市計画上必要な建築の制限をおもな内容としておりますが、その具体的な制限内容をほとんど命令に委任しておりますので、これを改めまして、本法案により、国民の権利義務に関する重要事項はすべて法律で具体的かつ詳細に規定いたしました。
第二に、建築物がこの法律に定める最低基準に適合することを確保する手続については、従来のような都道府県知事の認可制度を廃止いたしまして、建築物の質をこの法律の基準に適合させる法律上の責任は原則として当該建築物の設置者または工事施行者等であることを前提として、建築行政に関する点については、専門的な知識、経験を有する市町村または都道府県の建築主事の確認を受ければ足りることとし、かつその処理期間を法定いたしまして事務処理の責任を明らかにし、手続の簡易、迅速化をはかりました。
第三に、建築物の質に関する実体的の規定につきましては、現行の市街地建築物法令施行の経験にかんがみ、全般的に技術的な改善を加えておりますが、特に最近の火災その他の災害頻発の状況にかんがみまして、防火及び防災に関する規定を極力整備いたしたのであります。
本法案の付託以来、委員会は、提案理由を聴取いたしました後、引続き政府との間に熱心なる質疑応答を行つたのであります。すなわち第一に、防火地域内の耐火構造に関する規定は著しく嚴軍に施行されることになつているが、国民の経済力がこれに伴わないときは、費用の点より、かえつて住宅建築を阻害するおそれはないか、これに対する政府の助成的予算措置を講ずる考えはないかという点であります。これに対して、耐火建築助成の予算並びにこれに必要なる法的措置に関しては本法と並行して強力に推進したい、なお国会においてもこれが実現に関し指導と協力を希望するとの答弁でありました。
第二に、市街建築物法と都市計画法とは、ひとしく大正八年に姉妹法として生れ、一体不可分の関係にあるのに、今回ひとり市街地建築物法のみを改正し、その中には知事の権限を大幅に市(町村長に委譲する等、広範囲の変革が行われているが、両者の間に矛盾を来すおそれはないかという点でありま下す。これに対しては、一応矛盾のないよう十分に考慮を拂つてはおるが、最も近い将来において、都市計画法に関しても、本法同様、地方自治の精神にのつとつた改正を行いたいという答弁でありました。
その他適用区域の問題、建築用地の問題、本法施行に伴う市町村の経費負担能力に関する問題、府県から市町村へ転出を予想される建築関係技術者の身分保障の問題等に関しても幾多の質疑応答が行われたのでありますが、その詳細は速記録に譲りたいと存じます。
かくて本委員会は、昨二十九日、質疑を打切り討論に入つたのであります。まず日本共産党を代表して深澤義守君より、建築の質の向上をはかるために建築の量がかえつて減少する等の理由により、本案に反対の意見を述べられました。次に国民民主党を代表して村瀬宣親君、社会党を代表して前田榮之助君、さらに自由党を代表して瀬戸山三男君より、それぞれ次の希望意見を付して本案に賛成の意見を述べられたのであります。すなわち、防火地域内の耐火建築物を促進するためには国庫補助金の交付及び建設資金の融通等経済的援助が絶対に必要であること、火災の早期発見に関する法制上の整備を行うべきこと、並びに建築物の質の向上を期するとともに量の増加をはかるため予算的措置を十分に強化すべきこと等に関して、政府に対し強く要望せられたのであります。
かくて採決に入り、多数をもつて原案通り可決いたした次第であります。
以上、簡単に御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/41
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042・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/42
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043・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/43
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044・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 日程第四、社会福祉主事の設置に関する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。厚生委員長堀川恭平君。
〔堀川恭平君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/44
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045・堀川恭平
○堀川恭平君 ただいま議題となりました社会福祉主事の設置に関する法律案について。厚生委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
生活保護法、児童福祉法及び身体障害者福祉法の三法律は、国民福祉に関する三大支柱ともいうべきものでありますが、本法案の内容は、これら法律運用の責任者中、特に第一線にあつて直接国民に接する専任職員の設置並びにその資格等に関する事項を規定せんとするものでありまして、これにより福祉関係諸立法の企図するところを円滑、適正に達成せしめることを目的とするものであります。
次に本法案のおもなる内容について申し上げますれば、第一に、この専任職員の名称を社会福祉主事とし、その任務は生活保護法、兒童福祉法及び身体障害者福祉法に関する事務につき第一線のケース・ワーカーとして活動することを明記し、都道府県においては、それぞれの猶予期間をおいてこの社会福祉主事を設置すべき義務を負わしめたのであります。第二に、福祉主事の資格として年齢、素質、知識、技能等についての要件を規定いたしたのでありますが、ただちにこれらの要件を強制いたしますときは所要人員が確保できない場合の生ずることを考慮しまして、経過措置として、今後二年間を限り都道府県知事の認定による選考の制度を認めることといたしたのであります。
本法案は、本月二十九日、本委員会に付託せられ、提案者山下参議院議員より提案理由の説明を聴取した後、ただちに審議に入りましたが、質疑を終了し、討論を省略して採決に入りましたところ、本法案は多数をもつて原案通り可決すべきものと決せられた次第でございます。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/45
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046・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/46
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047・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/47
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048・山本猛夫
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、海上保安監部及び海上保安部の設置に関し承認を求めるの件を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/48
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049・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/49
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050・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、海上保安監部及び海上保安部の設置に関し承認を求めるの件を議題といたします。委員長の報告を求めます。運輸委員会理事關谷勝利君。
〔關谷勝利君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/50
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051・關谷勝利
○關谷勝利君 ただいま議題となりました、地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、海上保安監部及び海上保安部の設置に関し承認を求める件について、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本件は、海上保安庁法の一部を改正する法律案の施行に伴いまして、管区海上保安本部の事務の一部を分掌させるため、海上保安監部を大阪市に、海上保安部を函館市外三十八箇所に設置する必要がありますので、これについて国会の承認を求められたものであります。
本件は、四月二十七日、本委員会に付託され、四月三十日、政府より提案理由の説明を聴取し、質疑、討論を省略し、ただちに採決の結果、起立多数をもつて本件に承認を與うべきものと議決いたしました。
右御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/51
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052・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 採決いたします。本件は委員長報告の通り承認を與えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/52
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053・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて本件は委員長報告の通り承認を與えるに決しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/53
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054・山本猛夫
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、会計検査院法の一部を改正する法律案、昭和二十三年度国有財産増減及び現在額総計算書及び昭和二十三年度国有財産無償貸付状況総計算書の三件を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/54
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055・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/55
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056・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
会計検査院法の一部を改正する法律案、昭和二十三年度国有財産増減及び現在額総計算書、昭和二十三年度国有財産無償貸付状況総計算書、右三件を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。決算委員会理事川端佳夫君。
〔川端佳夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/56
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057・川端佳夫
○川端佳夫君 ただいま上程されました会計検査院法の一部を改正する法律案につきまして、その要旨及び委員会における審議の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。
現行会計検査院法では、検査官は両議院の同意を経て内閣が任命することに定められております。本案は、第一、検査官の任命が国会の閉会中または衆議院の解散のために、両議院の同意を経ることができないときは、内閣はその同意を経ないで検査官任命の道を開き、この方法によつて検査官を任命したときは、その任命の後最初に召集される国会において両議院の承認を求めなければならないこととし、第二、前記改正に伴い関係條文に所要の改正をしようとするものであります。
本案は、去る二十八日付託となり、本三十日、委員会において提案理由の説明を聞き、質疑応答の結果、この種の場合に対処する当然の改正であることを了承しました。
かくて討論を省略し、採決に入りましたところ、全会一致をもつて政府原案の通り可決した次第であります。
次に、昭和二十三年度国有財産増減及び現在額総計算書、同年度国有財産無償貸付状況総計算書につきまして、決算委員会における審査の経過並びに結果を簡単に御報告申し上げます。
まず昭和二十三年度国有財産増減及び現在額総計算書について御説明いたしますれば、その増減の方では、昭和二十三年度に増と処理された国有財産の総額は、一般会計において二百六十二億九千八百余万円、特別会計において四百八十一億五千八百余万円、合計七百四十四億五千七百余万円となつており、減少の総額は、一般会計において二十六億六百余万円、特別会計において百六十二億四千余万円、合計百八十八億四千七百余万円でありまして、この増減差引の結果は、両会計を通じまして五百五十六億千余万円の増加となつております。次に現在額について申しますと、年度末における両会計所属の国有財産の総額は、千二百五十六億五千百余万円となつております。
決算委員会は、本件の審査にあたり政府及び会計検査院当局から説明を聴取いたしましたのでありますが、その質疑応答の詳細は速記録に譲ることといたします。
次いで、本日討論に付しましたところ、自由党を代表し藤枝泉介君から、昭和二十三年度国有財産増減及び現在額総計算書には、同年度末までに終戦処理費その他の支弁によつて国が取得した国有財産、また財産税法及び戦時補償特別措置法によつて物納された国有財産で掲記されていないものがまだ巨額に上つているが、政府はこれらの処理を促進し、昭和二十四年度計算書に掲記することを言明した、よつて本計算書は、政府の言明を了として、次の要望を付してこれを是認する。「政府は国有財産に関する事務を促進し、将来国有財産増減及び現在額総計算書の正確を期せられたい」との動議が提出されたのであります。これに対し日本社会党前田榮之助君から反対の意見が開陳されましたが、採決の結果、多数をもつて藤枝君の動議のごとく是認すべきものと議決した次第であります。
次に、昭和二十三年度国有財産無償貸付状況総計算書について御報告申し上げます。昭和二十三年度に増と処理された無償貸付の国有財産の総額は、一般、特別の両会計を通じ千百二万余円となつており、減少額は一億百二十八万余円でありまして、この増と減との差引の結果は九千二十六万余円の減少となり、年度末における総額は千二百三十五万余円となつております。昭和二十三年度初め現在額一億二百六十一万余円でありましたものが、前に申しましたように、その年度末現在額が千二百余万円と、はなはだしい減少をしましたのは、国有財産法が改正せられ、無償貸付のできる範囲が制限されたことによるのであります。
本委員会においては、これまた政府当局から説明を聴取いたしまして、討論を省略し、採決の結果、多数をもつて是認すべきものと決定いたした次第であります。
右一括御報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/57
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058・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) まず会計検査院法の一部を改正する法律案につき採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔一異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/58
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059・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
次に昭和二十三年度国有財産増減及び現在額総計算書及び昭和二十三年度国有財産無償貸付状況総計算書を一括して採決いたします。両件を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/59
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060・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて両件とも委員長報告の通り決しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/60
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061・山本猛夫
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、政府に対する不正手段による支拂請求の防止等に関する法律を廃止する法律案及び川野芳滿君外三名提出、相続税法の一部を改正する法律案の両案を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんこを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/61
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062・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/62
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063・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
政府に対する不正手段による支拂請求の防止等に関する法律を廃止する法律案、相続税法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員長川野芳滿君。
〔川野芳滿君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/63
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064・川野芳滿
○川野芳滿君 ただいま議題となりました政府に対する不正手段による支拂請求の防止等に関する法律を廃止する法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果につき御報告申し上げます。
この法案は、最近における価格統制の緩和その他の諸般の情勢にかんがみまして、政府に対する不正手段による支拂請求の防止等に関する法律を廃止するとともに、同法中、政府層用の連合国軍関係労務者及び公共事業関係労務者に対する賃金支拂に関する規定、及びこれに関連する一般職種別賃金額の告示に関する規定をなお当分の間効力を有するものとするために提出されたものであります。
この法案につきましては、本日政府委員より提案理由の説明を聴取し、ただちに質疑に入りましたが、質疑応答の詳細については速記録に譲りたいと存じます。
次いで討論を省略し、採決の結果、起立総員をもつて本案は原案の通り可決されました。
次に、ただいま議題となりました、議員提出の相続税法の一部を改正する法律案について、大蔵委員会の審議の経過とその結果を御報告申し上げます。
まず、本法律案の趣旨と内容を御説明申し上げます。政治資金規正法第四條に規定する公職の候補者が、選挙運動に関し贈與により取得した金銭で、同法第二十八條の規定による報告がなされたものは、相続税の課税価格に算入せず、非課税となつているのでありまするが、今回公職選挙法が施行せられるにあたりまして、公職選挙法の施行及びこれに伴う関係法令の整理に関する法律により政治資金規正法中第二十八條を含む第三章が全文削除せられ、これらの規正が公職選挙法の中に吸収せられることになりましたので、このままにしておきますると、この免税の規定は効力を失うこととなるのであります。この法律案は、よつて相続税法中の関係條項、すなわち第十二條第一項第六号の規定を改めまして相続税免税の規定の失効を避け、その効力を現在通り存続せしめんとするものであります。
本日、提出者前尾繁三郎君より提案理由の説明を聴取し、次いで質疑を打切り、討論を省略し採決いたしましたところ、起立多数をもつて原案の通り可決いたした次第であります。
以上、簡単でございまするが、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/64
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065・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) まず政府に対する不正手段による支拂請求の防止等に関する法律を廃止する法律案についき採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/65
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066・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
次に相続税法の一部を改正する法律案につき條決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/66
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067・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/67
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068・山本猛夫
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、地方財政平衡交付金法案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/68
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069・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/69
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070・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
地方財政平衡交付金法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。
〔川西清君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/70
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071・川西清
○川西清君 ただいま議題となりました地方財政平衡交付金法案につき、地方行政委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
御承知のごとく、地方公共団体の自主性を推進し、その発達をはかることは、国政民主化の基礎をつちかう必然の要請でありまして、これがため地方自治制度の整備を行うとともに、地方税財政を確立することが緊要であります。地方税財政確立のためには、自主的、自律的な地方税法を設け、さらにすべての地方団体を通じ、合理的にして妥当な自治活動を行うだけの歳入を保障することが必要であります。
申すまでもなく、経済社会の進展に伴う経済力の都市集中と、人文の発達に伴う地方団体の行政活動分野の拡張とは一般の趨勢でありまして一方には強力な財政力を持ち、軽少な税負担で団体としては豊富、多彩な活動のできるものがある反面、他方には、貧弱な財政力のもとに、住民には過重な税負担を課しながら最小限の施設すらも営み得ないものを見るに至つたのであります。この富裕団体と貧困団体との間の財政力を均衡化し、すべての地方公共団体の財政の基盤の確立をはかるため、昭和十五年以来、地方配付税制度を実施して参つたのであります。この制度は配分方法が簡略であり、各地方団体間の財源調整は不徹底であつたのであります。このことが国庫負担金制度と国庫補助金制度の現われた理由となるのであります。しかしてその結果として、しばしば地方団体に対する国の干渉、支配が行われるに至つた次第であります。今回の地方税法の根本的改革の機会に、個々の雑多な補助金、負担金を通じて行われる自治の干渉ないし中央支配の余地をなくし、地方団体が自主的に財政を管理し、事務を処理し、行政を執行することができるようにし、同時に従来の財政的均衡化の方式に画期的な変更を加えようとし、かつ課税力及び財政需要の測定方法を精緻詳密ならしめて、総合的な地方財政調整の徹底をはかろうというのが、地方財政平衡交付金制度の構想であります。
法案の内容の概要を申し上げますと、第一は、この交付金制度の地方財政均衡化の方式であります。これは各地方団体ごとに測定した財政需要額と財政收入額とを比較し、財政需要額が財政収入額を越える額を補填するという方式によつてなされておるのであります。
第二は、毎年度交付すべき交付金総額は、一定の方法により測定した当該年度の財政需要額が財政收入額を越えると認められる地方団体の超過見込額の合算額を基礎とじて定めることといたしておることであります。しかしてその算定は、地方団体及び国の関係行政機関に必要なる資料の提出を求め、これを参考として地方財政委員会が行うものとしておるのであります。
第三は、この交付金は、その総額を各地方団体の基準財政需要額が基準財政収入額を越える額に按分して算定することにいたしてあることであります、基準財政需要額と申しますのは、地方団体がその目的を達成するために、合理的かつ妥当な水準において地方行政を行う場合に要する経費のうち、補助金、負担金、手数料等の特定、収入を財源とする部分を除いたものの所要額をいうのでありまして、この算定は、地方行政を相当数の種類に分類いたしまして、それぞれの行政に要する経費を測定するために定めた測定単位の数値を単位当りの費用に乗じて行うことにいたしております。この場合、測定単位の数値は実数をそのまま用いないで、これを一層的確に測定するために、人口密度寒冷、積雪度等の一定の事情をしんしやくして補正したものを用いることになつております。次に基準財政収入額と申しますのは、各地方団体間の徴税状況により、交付金の公正を失することのないようにするため、当該団体の法定普通税の収入見込額を一定の基準税率により客観的に捕促したものを用いるとともに、その基準税率は地方財政に弾力性を残し、かたがた地方団体の徴税意欲の減退を防止するため、地方税法に定める標準税率の百分の七十に相当する率を用いることといたしております。
第四は、昭和二十五年度及び二十六年度の暫定措置として、交付金総額の十分の一に相当する額をその総額とする特別交付金を設けておることであります。これは現在の段階においては、千態万様の地方団体の個々について課税力、ことに財政需要をすべて的確に捕促することは至難でありますから、その欠陷を補わんとするものであります。これによつて交付金の額の算定期日後に生じた災害等のため、特別の財政需要があること、その他特別の事由があることにより、交付金の額が財政需要に比し過少であると認められる地方団体に交付されるのであります。
なお本法案について政府の強調する点を申しますと、この制度と地方自治との調和をはかる趣旨において、第一には、その運営は内閣に対して十分その独立性を保持と、かつ地方団体の利益を容易に反映することのできる構成を有する地方財政委員会をして行わしめるということであります。第二には、国は地方自治の本旨を尊重し、交付金の交付にあたつて、あるいは、條件を付し、あるいは使途を制限するがごときことは一切行わないということであります。第三には、この制度は従来の配分方式に画期的改変を加えるものであつて、十分に所期の成果を改めるには、地方経費及び収入の測定方法について今後ともさらに研究を加え、交付金の計算が客観的な基礎の上に置かれるようにするため努力を継続する所存であるということであります。
本法律案は、去る四月二十五日、本委員会に付託せられ、二十七日、政府より提案理由の説明を聴取し、即日質疑応答を開始し、二十八日これを続行し、二十九日文部、大蔵両委員会との連合審査会を開催し、各委員より地方自治庁及び文部省の各政府当局と熱心なる質疑応答を行つたのであります。なお同日、本委員会を開会して、政府当局との間に質疑応答を続け、さらに三十日においても質疑を行つたのであります。三委員会の連合審査会におきましては、長野文部委員長より、義務教育費に関し、本法案の実施にあたつて、過去の事例にかんがみ遺憾なきを期せられたい旨政府当局に希望意見を述べたのであります。以上のほか、質疑応答は速記録に譲ることにいたします。
かくて、同日質疑を打切り、討論に入り、自由党の河原委員、国民民主党の床次委員、社会党の門司委員よりそれぞれ党を代表して原案賛成の討論あり、共産党を代表して池田委員より応対の討論があり、次いで採決の結果、多数をもつて政府提出原案の通り可決と決定いたした次第であります。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/71
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072・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 討論の通告があります。これを許します。立花敏男君。
〔立花敏男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/72
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073・立花敏男
○立花敏男君 日本共産党は、ただいま提案されました地方財政平衡交付金法案に反対でございます。(拍手)
まず第一に、この法案によれば地方財政の確立がうたわれておりますが、事実はまさに逆でございまして、この法案が施行されましたならば、地方財政は極度の貧困に陷るであろうということでございます。何となれば、まず第一に、この法案の第三條には、地方財政に対して必要かつ十分なる金を與えるということが書かれてございますが、事実はまさに逆でございまして、その理由は二つございます。
まず一つは、先般多数の横暴をもつて通過せしめられました地方税法でございますが、あの地方税法によりますと、一挙に住民税は二倍、三倍になり、固定資産税は十数倍になり、附加価値税は、はなはだしいところになりますと数十倍になる大増税でございます。三日間の公聴会におきましても、市町村の代表あるいは他の公述人も、これはとれない税金であるということを、はつきり申しておるのでございます。かかる莫大な、とれない税金を地方に押しつけておいて、しかもその莫大なる地方税との差額を交付するということは、明らかに税が過重に見積られておるということでありまして、この点からいたしましても、交付されます差額は決して地方の実際の要求を満すことができないのでございます。
さらにもう一つの理由は、国家予算に組まれました千五十億という平衡交付金の額は、まつたく天くだり的に決定された額であります。六千六百億のいわゆる軍事予算の中からはじき出された、天くだり的にきめられた数字でございまして、決して地方の財政需要を総合して計算された数字ではないのでございます。従つて、千五十億の数字をもつて地方の財政需要を満たすことは絶対にできない。この法案の中にも、交付金の配分はその必要に応じて按分するという表現が用いられておるのでございまして、さいぜん私が読み上げましたところの、第三條における、必要かつ十分なる交付金を與えるという表現と、同じく法案の中にあります、交付金額は必要の金額に応じて按分するということとは明らかに矛盾しておるのでございまして、これ以上はなはだしい欺瞳はないと考えます。明らかにこれは、必要かつ十分という羊頭を掲げまして、しかも按分による過少の交付金しか交付しないという狗肉を地方に與えるものでございます。
さらに第二番目の反対の理由は、この法案のまつたく特徴的な表現でございますが、この法案の施行に伴いまして、政府は義務教育国庫負担法を廃止する予定だということをはつきり大臣が申しております。これこそ、まさに憲法の室文化にほかならない。憲法二十六條によりますと、義務教育は無償とするとある。この法律の裏づけが義務教育国庫負担法でございまして、これを廃止する。しかも廃止されました後におきまして一体教育費はどうなるのか。これに対しては何らの保障も與えられていないのでございます。従つて、全国のPTA、あるいは学校の教員、あるいは学生たちが、この平衡交付金法に対して、全面的に全国的な反対を起しておることに対しましては、共産党は全体的に支持いたすものでございます。地方に至りましては、おそらく教育費は、人民弾圧のための警察費あるいは軍事基地化のための土木費に食われてしまいまして、今でも植民地化されつつある教育が、まつたくいわゆる愚弄教育に堕するものであるということは、火を見るよりも明らかでございます。
さらに第三点に反対の理由としてあげたいと思いますのは、地方財政委員会に対して全権を與えまして、かつての内務官僚の復活が明らかに企てられておるという事実でございます。地方財政委員会は、御承知のように地方税法に対しましても絶大の権限を持つております。たとえば、市町村民税の課税標準の決定、あるいは固定資産税、附加価値税の配分の問題、あるいはさらに農地価格の決定の問題、あるいは地方債の発行許可の権限まで持つておるのでございます。しかもその構成は、驚くなかれ、現在の日本の支配構成からいたしますと明らかに中央官僚の出先機関にすぎないところの知事、市長あるいは町村長の代表によつて構成されておりまして、納税者の立場からの代表は一人も入つておらないのであります。しかも、その権限に至りますと、驚くなかれ、地方財政委員会の事務局の職員が、国税庁の職員の権限とまつたく同じ権限を持ちまして、たとえて申しますと、地方税に関しまするところの調査質問権を持つております。その質問に答えなかつた場合は、一年以下、二十万円以下の罰金だというような絶大な権限を地方財政委員会の事務局の職員に與えている。これは明らかに憲法違反の疑いがあるのでございまして、單に事務的な職務の遂行に関しまして、かかる罰則をもつて臨むということは、明らかにファッショ的な権限を地方財政委員会の事務局の職員に與えるということでございます。さらにこの財政委員会が、平衡交付金に関しましては、また地方税法と並びまして絶大な権限を持つて来ておる。あらゆる問題がこの財政委員会の処理にまかされているのでございまして、平衡交付金の金額の一決定、あるいは測定単位、あるいは単位当りの単価、あるいは総額の見積り、交付金額の決定並びにその交付、こういうふうな重大な点が全部財政委員会に與えられておりまして、法案はまつたくの骨抜きでございます。こういうふうな、かつての内務官僚の復活が、地方財政委員会を通じて企てられておる。一方さらに、おそらく明日あたり上程されるでありましようところの地方自治法の改悪は、この中央の財政委員会の官僚化、ファッショ化と並びまして、地方都道府県の議会の開今回数を減じまして、その逆に地方の知事あるいは市町村長の権限を不当に拡大しております。これは明らかに中央、地方を通じての外国独占資本の要求するところの官僚機構を上から下まで貫かんとしておる現われでございます。
さらに私どもがこの法案の審議にあたつて反対であります理由は、国会の審議権の蹂躙の問題でございます。法案の審議に必要なる資料が何ら整えられていなかつた。第一に、各自治団体に渡しますところの交付金額の決定、これも何らなされていない。さらにひどいことには、土木、警察、あるいは教育、こういうものに対する行政種別の交付金額についても、これまた何ら数字を持ち合せていないのでございます。さらに千五十億の一〇%に達します特別交付金に対しましては、これをだれに、どういう形で、いかなる基準によつて與えるかということも、まつたく資料が提出されておらない。また大臣に聞いてもわからない。こういうことで、どうしてこの法案をわれわれが審議することができるでありましようか。しかも本多国務大臣は、地方税法と地方財政委員会法と地方財政平衡交付金法の三者は一体不可分であると言つておる。一体不可分であるならば、当然これは並行審議されなければいけない。しかるに、まつたくばらばらにこの法案の審議がわれわ委員会に押しつけられました。これでどうしてわれわれが国民の信頼に沿つて法案を審議することができるでありましようか。(拍手)しかも、最も中軸であるところの、国民に多大の負担を與えるところの地方税法の審議に際しましては、国会宝前の與党の諸君自身が、みずから與えられた審議権を放棄し、われわれの審議権を蹂躙して、一方的に税法を通過せしめておる。しかも、そのあとで、それと一体不可分である地方財政平衡交付金の審議をまたむりやりに通そうということは、これほどひどい審議権の蹂躙はないと考えます。新聞の伝えるところによりますと、参議院におきましては、地方税法に対して修正案を出しまして、それをもつて関係方面と交渉しておる。しかりとすれば、衆議院で関係方面の意向と伝えて審議を打切つた態度が正しいのか、あるいは参議院でさらに修正案をもつて関係方面と交渉しておるのは、これは単なるゼスチュアにすぎないのかわれわれはここに大きな問題がひそんでおることを発見するのであります。
結論的に申しますと、地方財政確立の美名に隠れまして、中央地方を通じて内外独占資本の要求するところの官僚機構を整備し、これに全権を與えて、人民に対する収奪と弾圧を容易ならしめ、もつて日本の植民地化を、あるいは軍事基地化を実現せんとするものであります。
私は最後に、四月三十日、本日付の中外新聞を読み上げたいと思います。減税案拒否撤回、連合国西独の要求認む(ボン二十八日発ロイター共同)西独の連合国高等委員会は……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/73
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074・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 立花君―立花君……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/74
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075・立花敏男
○立花敏男君(続) さきに西独議会を通過した減税法案の施行を拒否し……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/75
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076・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 立花君―立花君……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/76
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077・立花敏男
○立花敏男君(続) 西独のアデナウアー首相や民間団体から……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/77
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078・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 立花君、申合せの時間が過ぎましたから結論をつけててください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/78
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079・立花敏男
○立花敏男君(続) 激しい抗議を受けていたが、二十八日にいたりこの拒否を撤回、問題の減税法案を承認した。なお委員会のこの発表は、同日行われたアデナウアー渡独首相との会談律なされたものである」。もつて政府並びに自由党の諸君は、いかに君たちが国民の利益を裏切つておるかということを反省される資料としていただきたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/79
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080・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 床次徳二君。
〔床次徳二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/80
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081・床次徳二
○床次徳二君 私は、国民民主党を代表いたしまして、ただいま提案せられましたところの本案に賛成をいたすものであります。
御承知の通り、本案は地方税制の改革と相まち、地方団体の独立性を確保せんとするものでありまするが、地方税制に関しましては、すでにわが党の熱心なる反対にもかかわらず、これが本院を通過したのでありまするが、その高税率、あるいは課税標準の過小見積り等は、将来納税者に多額の負担の激変を起し、あるいはその不均衡を比ずるということをおそれておるのでふりまするが、すでにこの法案が成立いたしました以上は、やはりここに平衡交付金法案の成立を必要とするものと考えるのでありまして、ここに私たちは賛成の意を表するものであります。しかしながら、特にこの点ここに注意を喚起いたしまして、その実施に遺憾なきを期したいと思うのであります。
第一に、本年度におきまして政府は平衡交付金を千五十億円に決定いたしておるのでありますが、この金額は、本法の趣旨といたしまするところの、地方自治団体の必要にしてかつ十分なる予算額に該当いたさないのであります。すなわち政府は、予算におきまして均衡予算を主張し、地方の実際財政需要を過小に評価いたしまして、これを極度に圧縮いたしまして四千九百億といたしました。結局、千五十億円の少額な交付金を計上いたしたのであります。かくのごとき少額なる平衡交付金におきましては、本法の本来の目的を達成いたしまするのに相当疑いを持たざるを得ないところであります。
教育委員会の審議におきまして、国民の必要とするところの義務教育費その他の各種の市町村事業に対しまして、はたしてその必要額を確保し得るかということに対しまして大きな問題があつたことは、各位も御承知であると存じまするが、われわれは、かかる重要なる財源は必ずこれを確保いたしたいと考えておるのであります。しかしながら、今日政府が提案いたしましたところの千五十億は、すでに予算において決定いたしましたが、まつたくその根拠を欠いておるのでありまして、今後地方財政委員会その他におきまして検討いたしました場合におきましては、必ずや相当不足額が見込まれることと思うのであります。すなわち私は、本年度におきまして、地方財政委員会その他この法案実施の結果におきまして相当額の不足が生じました場合には、必ずその不足額を追加計上いたしまして増加配付いたすべきところの義務が政府に発生しておることと考えるのであります。特に義務教育費に関しましては、国民教育上遺憾なき金額を絶対に確保するという配意がなければならないのであります。この点に関しましては、すでにわが党は、予算審議におきまして二百億の増額を主張しているのでありまして、今後法案実施にあたりまして政府はこの趣旨にのつとつて遺憾のない処置を講ぜられんことを要望するものであります。ここに政府の責任のあるところを明らかにいたしたいと思います。
第二に、地方団体に交付すべきところの金額の算定に関しましては、遺憾ながら本年度におきましては、本法の期待するところの十分なる手続をとつておらず、またその基礎においても、はなはだ貧弱なることを考えるのであります。本来でありますならば、交付金の単位費用等は当然本国会におきまして十分愼重論議せられるべきでありますが、本年度に限りましてこれが規則に譲られているのでありまして、まことにこれは遺憾なることであります。従つてこの重大なる運営の責任は一に政府並びに地方財政委員会の双肩にかかつているのでありまして、今後その実施上につきましては特に愼重な態度を必要と認めるものであります。たとえば、地方の負担に重大なる関係のありますところの災害の度数問題、あるいは降雨量の問題、中央よりの遠隔度に関しましても、当然考慮が必要と考えるのであります。特に本年度におきましては、測定電位並びに単位費用等に関しまして、先ほど申し上げましたように規則にゆだねられておりまして国会の審議を受けておらないということに対しましては、特に政府の責任が大きいことをここで重ねて申し上げておきまして、真に地方団体の財政の確立のために遺憾なき注意を必要とすることを申し上げたいのであります。
第三に指摘いたしたいことは、本制度は地方税制の変革と相まちまして、今後地方団体に財政上相当著しい影響のあることを予想いたしまして、暫定措置といたしまして、昭和二十五年度並びに二十六年度に対しましては、特別交付金の制度を設けているのでありますが、私どもは、いささかこれが少きに失すると考えているのであります。なおこの特別交付金の配付に対しましては、十分に地方の実情を考慮いたしまして、不公平を来さざるがごとく、その運用に配意いたされんことを要望するものであります。
以上、これを要するに、今日わが党といたしましては、大局的見地より、地方自治団体の財政の運用の円滑を期するがために、国民負担の苦悩を救済するがために、ここに本法案に賛成するものでありますが、しかし、本年度の施行の実際におきまして不足を生じました場合におきましては、政府はその不足額に対しましては、必ず平衡交付金を追加計上いたしまして、これを増額交付する、かかる財政上の欠陥を補うところの責任があることをこの際強調いたしたいのであります。
以上をもちまして、私の討論を終る次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/81
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082・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/82
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083・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
児童福祉法の一部を改正する法律案(内閣提出)
予防接種法等による国庫負担の特例等に関する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/83
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084・山本猛夫
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急議を提出いたします。すなわち、内閣提出、兒童福祉法の一部を改正する律案、及び予防接種法等による国庫負担の特例等に関する法律案の両案を括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/84
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085・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/85
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086・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なし認めます。よつて日程は追加せられました。
児童福祉法の一部を改正する法告案、予防接種法等による国庫負担の特例等に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告求めます。厚生委員長堀川恭平君。
〔堀川恭平君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/86
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087・堀川恭平
○堀川恭平君 ただいま議題となりました児童福祉法の一部を改正する法律案及び予防接種法等による国庫負担の特例等に関する法律案について、厚生委員会における審議の経過並びに結課を御報告申し上げます。
まず児童福祉法の一部を改正する存律案について申し上げます。
児童福祉法は、昭和二十三年一月より施行せられ、昨年六月、第五国会におきまして一部改正が行われたのでありますが、今回新たに地方財政平衡交付金制度が設立せられましたこと及び本法施行後における経験にかんがみ必要なる改正を行わんとするのが、政府の本法案提案の理由であります。
次に本改正法案の内容のおもなるものを申し上げますならば、第一は、療育施設を虚弱児施設と肢体不自由兒施設にわけ、前者においては、身体の虚弱な児童に適正な環境を與えてその健康増進をはかり、後者においては、上肢、下肢または体幹の機能の不自由な兒童を治療するとともに、独立自活に必要な知識技能を與えることといたしておるのであります。
第二は、里親に委託せられた児童の健全な成育を保障するため、現在厚生省令で定められておる児童福祉施設の設備及び運営についての最低基準を、里親における養育についても拡充いたしたのであります。この最低基準を維持するために、行政庁は里親に対して必要な報告をさせ、児童の福祉に関する事務に従事する官吏または吏員に実地につき監督させることができることといたしておるのであります。
第三は、今回地方財政平衡交付金によつて交付せられることになつた兒童福祉施設入所者及び里親委託児童の保謹賀のうち、入所後及び委託後の費用は、前に述べました児童福祉施設の設備及び運営並びに里親の養育について定められた最低基準を維持するに足るものでなければならないこととして、都道府県及び市町村をして経費の点からも児童の生活を保障させることにいたしまするとともに、保護費の支弁が適正に行われているかいなかについて、厚生大臣は当該官吏に都道府県または市町村の事務処理状況を、都道府県知事は当該吏員に市町村の事務処理状況を、それぞれ実施について調査させることができることにいたしたのであります。
第四は、従来都道府県知事が本人またはその扶養義務者から徴収することにいたしておりました一時保護に要する費用は、実際上徴収不可能な実情にかんがみ、今後徴収しないことといたしたのであります。
本法案は、三月十七日、本委員会に付託され、四月二十六日、政府より提案理由の説明を聴取したのでありますが、二十八日の委員会において質疑を終了いたしましたところ、青柳委員より、本法案附則を「この法律は、公布の日から施行し、昭和二十五年四月一日から適用する。」と改める修正案が提出せられたのであります。
次いで、日本共産党の渡部委員より本法案に反対の討論があつた後、まず修正案の部分について採決に入りましたところ、修正案は多数をもつて可決すべきものと決せられ、次に原案の他の部分について採決いたしましたところ、多数をもつて原案の通り可決すべきものと決せられた次第であります。
次に、予防接種法等による国庫負担の特例等に関する法律案について申し上げます。
地方財政平衡交付金法案の施行に伴い、厚生省の所管にかかる法律中、地方財政平衡交付金に繰入れられる国庫及び都道府県の負担に関する規定についてその適用を停止する等の必要を生じたため必要なる事務的改正を行わんとするのが、政府の本法案提案の理由であります。
本改正法案の内容のおもなるものについて申し上げますならば、第一は、厚生省関係行政費中、地方財政平衡交付金に繰入れられる国庫及び都道府県の負担に関する規定の適用停止を予防接種法その他六法律において規定しようとするものでありまして地方財政平衡交付金法と歩調をそろえる必要がありますので、一応その適用の停止を
昭和二十五年に限ることといたしておるのであります。第二は、伝染病予防法第十六條の二を改正して、都道府県または市町村が平常に行う鼠族、昆虫駆除の実施を義務づけるとともに、この実施人員の設置、薬品等の設備についての基準を政令で定めることとし、これによつて地方財政平衡交付金制度のもとにおいてこの実施を確保することができるようにし、あわせて伝染病が流行しまたは流行のおそれある場合について、伝染病予防上さらに必要な駆除をなさしめ得るように規定いたしておるのであります。
本法案は、三月三十日、本委員会に付託せられ、四月二十六日、政府より提案理由の説明を聴取したのでありますが、二十八日の委員会において質疑を終了しましたところ、青柳委員より、本法案附則を「この法律は公布の日から施行し、昭和二十五年四月一日から適用する。」と改める修正案が提出せられたのであります。
次いで、日本共産党の渡部委員より本法案に反対の討論があつた後、まず修正案の部分について採決に入りましたところ、修正案は多数をもつて可決すべきものと決せられ、次に原案の他の部分について採決いたしましたところ、多数をもつて原案通り可決すべきものと決した次第であります。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/87
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088・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 両案を一括して採決いたします。両案の委員長の報告はいずれも修正であります。両案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/88
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089・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて両案とも委員長の報告の通り決しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/89
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090・山本猛夫
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、水産業協同組合法の一部を改正する法律案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/90
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091・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/91
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092・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
水産業協同組合法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。水産委員長石原圓吉君。
〔石原圓吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/92
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093・石原圓吉
○石原圓吉君 ただいま議題となりました水産業協同組合法の一部を改正する法律案につき、水産委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、政府の提案理由を簡單に申し上げます。水産業協同組合法は、昨年二月十五日に施行されましてから一年余を経過したのであります。この間、組合の設立は着々と進み、認可された組合の数は約四千に達し、漁村の民主化と水産経済の振興に多大の寄與をなしつつあるのであります。しかしながら、この実施一年余の経験にかんがみ、かつまた全国各地より寄せられた本法改正に関する請願、陳情の趣旨に基きまして、本法の一部を改正し、その一層有効な活用をはかる必要を認めたのであります。
次に、そのおもなる内容について申し上げます。第一は、一定規模以下の法人が准組合員として組合に加入する道を開いたことであります。元来、水産業協同組合は個人の結合による組織でありますが、現下の経済事情においては、個人経営とほとんどひとしい弱小な法人による経営がきわめて多く、これら法人の組合加入を認めてその利益を享受せしめることを妥当と考えたのであります。第二は、主として法人加入に伴いまして独占禁止法との関係を規定しております法第七條を改めまして、独占禁止法の組合に対する適用の緩和をはかつたことであります。第三は組合の役員に関する事項でありまして、役員の任期を最大限三年まで定められるごとく伸長するとともに、組合の事業と実質的に競争関係にある事業の関係者が組合の役員及び主要職員に就任することを禁止したのであります、以上が政府提案による改正のおもなる内容であります。
本法案は、三月二十三日付託されたものでありますが、本委員会におきましては、その重要性にかんがみ、漁業制度に関する小委員会において愼重審議の結果、政府案の一部を修正すべきであるということになつたのであります。
次に、この修正案のおもなる内容について説明いたします。第一点は、漁業協同組合並びに同連合会の役員の被選挙権を、一箇年を通じて九十日以上漁業を営みまたは従事する者としたことであります。その理由は、漁業を専業とする真の漁民を役員とすることにより組合の経営を一段と法の趣旨に沿わしめんとしたのであります。第二点は、組合の自営する漁業と組合員の行う漁業との聞及び協同組合の系統組織相互間には実質的な競争関係はないことを明確にしたことであります。第三点は、水産業協同組合法制定に伴う水産業団体の整理等に関する法律において漁業権管理委員会の委員の被選挙権を明確にしたことであります。
かくて本委員会においては、四月三十日質疑を終り、討論に入り、共産党井之口政雄君より反対の意見を述べられました。
次いで修正案につき採決いたしましたところ、共産党を除き全員の賛成あり、引続き修正部分を除いた原案につき採決いたしましたところ、これまた共産党を除き全員の賛成がありました。よつて本法案は修正議決することに相なつた次第であります。詳細にわたりましては速記録によつて御了承願います。
以上、簡単でありますが、御報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/93
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094・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
賛成者起立発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/94
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095・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り決しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/95
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096・山本猛夫
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、参議院提出、文化財保護法案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/96
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097・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/97
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098・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
文化財保護法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。文部委員長長野長廣君。
〔長野長廣君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/98
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099・長野長廣
○長野長廣君 ただいま議題と相なりました文化財保護法案につきまして、文部委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本法案は、参議院より提案いたされましたものでありますが、去る第五国会以来、衆議院におきましても、文部委員会を中心として研究を重ねて参りまして衆議院案といたしまして、重要文化財保護法案を起草作成いたしたのであります。しかしながら、この両法案の本旨とするところがまつたく合致いたしまするところから、ここに参議院の提案によりまする文化財保護法案に一本化することと相なつたものであります。従いまして本法案は、衆議院において作成いたしましたところの重要文化財保護法案の趣旨と内容とをほとんど全面的に取入れておるものであります。
かような経過をもつて提案いたされました本法案の趣旨並びに目的は、その第一点といたしましては、文化国家建設の基礎要件でありますところの国民の文化意識の向上、すなわち文化的教護を高めようとすることにあります。これを広く申しまするならば、世界文化の進歩に貢献しようとするものであります。第二点といたしましては、国民の文化活動の歴史的所産とも申すべき重要文化財等の社会公共性を明瞭にいたしまして、政府及び国民の責任と良心に基いて保護と援助と維持に当ろうとするものであります。
次に本法案の内容のおもなる点の二、三について申し上げますならば、従来より幾つかにわかれて存しましたところの文化財保護に関する諸法規を本法案において統一、整理、補足をいたしてあります。また従来はとかく合致しておりました文化財保護行政横構をここに統一いたしまして、民主的な委員会制度にいたしてあります。その他有形、無形、埋蔵の諸文化財についての保存措置、助成措置を規定いたし、それぞれの文化財に関する環境保全の規定も加えまして、わが国における一種の文化体系を整えようとしておるものであります。なおまた文化財所有者の所有権を尊重いたしました点については、国家の補助及び助成の措置と関連して特に考慮をいたしてあります。さきにも申し上げました通り、衆議院におきまして重要文化財保護法案を起案いたしました際には、文化財保護行政をさらに完全ならしめるために、財政的措置として文化財保護基金の制度も立案したのでありますが、これは諸種の事情により実現することを得なかつた次第であります。
衆議院文部委員会は、かように本法案が起案されるに至るまでの間、終始多大な関心をもつて臨んで参つたのであります。そのためには、幾たびか委員派遣を試みまして現地の実情調査を行い、あるいは多くの識者の意見を聴取する等に努めて参つたのであります。
かくて本法案は、四月二十九日、本委員会に本付託と相なりましたので、文部委員会といたしましては、さらに愼重なる審議をいたしました結果、法律制定にあたつて技術的に生ずる不備な点がありますので、その点の修正案が自由党の水谷昇君より提出いたされました。
次いで、この修正案並びに原案を一括して討論に入りまして、自由党を代表いたしまして水谷昇君、国民民主党を代表いたしまして原彪君、社会党を代表いたしまして松本七郎君及び共産党を代表いたしまして渡部義通君よりそれぞれ賛成の討論がありました。
かくて討論を終り、採決に入りまして、水谷君提出の修正案並びに修正部分を除く原案がいずれも全会一致をもつて可決いたされました。よつて本法案は修正議決いたされたのであります。詳細は速記録によつて御了承いただきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/99
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100・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 討論の通告があります。これを許します。水谷昇君。
〔水谷昇君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/100
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101・水谷昇
○水谷昇君 ただいま上程中の文化財保護法案修正案並びに修正部分を除いた同原案に対し、私は各党各派を代表して賛成の意見を申し述べます。
本法案提出の契機となりましたものは、申すまでもなく法隆寺金堂壁画の焼失でありますが、昨年一月二十六日のこの悲報ほど全世界の文化人を聳動させたものはございません。遠くはギリシャ、近くは西域、インド風の局部的エレメントを統括して、一つのまとまつたあの端麗な芸術様式を生み出したものは、結局唐の初めの豊かな生活感情のうちにはぐくまれた斬新な芸術的官能にほかなりませんが、聖徳太子出現ごろから民族的自覚の域に入つたわれわれの祖先は、あたかも国民感情が最も高揚し、国力も最も充実した時期に、世界文明の梓を集めたこの壁画を残したのであります。ラングドン・ウオーナー氏は、これをヴァチカンのシスチン・チヤぺルや、スタンプールのアヤソフィヤに比しておられまするが、薬師寺の三尊仏や、三月堂の諸彫像に示された芸術的表現は、ここで一段のさえを示しているのであります。しかも、この時代の作品が現在中華民国に皆無であるのを思うとき、この世界的壁画の焼失は惜しみても余りあるものがあります。これゆえに、政府としても十分にこの点を考慮し、財政逼迫の際にもかかわらず、応急措置のために、はたまた二十四年度修理予算として相当に多額の支出をなし、さらに二十五年度も、より以上多額の予算を確保し得ることは、われわれのひそかに喜びとするところであります。この法隆寺金堂壁画の焼失を契機として、輿論が沸き立つたこともむりはありません。
顧みれば、太平洋戦争以来、わが古美術はほとんど捨てて振り返られるところがなかつたのでありますが、ウオーナー博士を初め、アメリカ将兵の理智と良識とが、わが奈良、京都を爆撃から救つたことが明らかとなるに及んでわれわれもにわかに反省し、ひたすら古美術品の散逸防止に努力したのであります。しかも、ここにまた法隆寺壁画が焼失し、ウオーナー氏をして長大息せしめたこともあずかつて、ここに古美術品の保存の徹底ということが叫けばれるに至りました。
古美術品は、しかばねではありません。これをわれわれがながめますのは、單に古い品物であるからでなく、珍しい品物であるからでもなく、また目に訴える美しい品物であるからではなくして、実にわれわれは、この古美術品を通して、これをつくり出した民衆の魂に触れんがためにほかならぬのであります。これは、われわれの遠い相先への追慕、懐古の至情でありますが、同時に、われわれはでき得る限りこれを後世に伝うべき責務を担つておるわけであります。
今回、参議院の同僚議員によつて本法案が提出されましたが、本法案は、昨年より両院文部委員会においてそれぞれ草案を作成し、たびたび相互に折衝して、最後に衆議院文部委員会案のおもなる点を十分取入れて参議院側において作成したものであります。私は、まず第一に、それが古美術保存の急務がほうはいとして起つた好機をとらえていることを喜ぶものであります。
次に本法案によりまして、従来の国宝や重要美術品に関し再検討の機会が與えられたことを幸いに存ずるものであります。本年一月十五日現在の国宝六千九百三十七点、重要美術品八千三百大十九点、計一万五千三百六点、これをことごとく完全に保存いたしますることは、現在の国家財政よりしては、とうてい許されるところではありません。従つて、本法案によりまして従来の国宝と重要美術品の区別が廃せられ、そこにあらためて吟味と淘汰がなされまして、真に保存の価値あるものだけを取上げ、これを国家が責任を持つて保護いたしますようになりますのは、われわれの最も歓迎するところであります。
この間において、古美術品の環境保全の規定が設けられましたことは、まつたく新しい試みであります。その他の点でも、あるいは古美術品の国への委託、管理者の選定等を規定し、場合によつては強制修理、強制管理もできるようにいたしております。かくして本法案は、さらに進んで国家が古美術品の所有者の所有権を侵さない程度でその出陳や公開を勧奨し、もつて国民の文化的教養に役立てることにいたしておりますが、文化国家の建設を念願するわれわれといたしましては、当然首肯し得られるところであります。
本質論といたしましては、古美術品を保存する主体は国家か国民かという問題がありますが、われわれとしては、でき得べくんば政府にまかせ切りでなしに、志ある団体や、力ある個人、つまり民衆の手でこれを保存して行きたいと思うのでありますが、現在の、わが国の国情といたしましては、一婦人の献身的運動によつてマウント・ヴアーノンなるワシントンの家が保存されるというようなわけには参らぬのであります。本法案においても、この点ずいぶん研究せられたものでありまして、保存行政はあげて国家の仕事といたしまするとともに、この行政機関を委員会制度として、その民主的運営を企図いたしておりますが、わが国の現状におきましては、この程度をもつて最良策といたすべきであると存ぜられます。
なお本法案は、有形文化財はもちろんのこと、演劇、音楽、工芸、技術その他の無形文化財までも取上げ、さらに史跡名勝並びに天然記念物及び埋蔵文化財をも取上げておりまして実に理想の高く構想の人なるものがあるのであります。
ただここで遺憾なことは、この法律の裏づけとなるべき予算が実に僅少である点と、われわれが最も主張いたしました、重要文化財と指定されたる古美術品に対する免税措置が実現し得なかつた点であります。これは、われわれといたしましては基金制度を設けるなど、今後責任を持つて善処いたしたいと存ずるものであります。
諸君、われわれの祖先が精魂を傾けて製作した古美術品が、しかばねではなくして生き物であることを思うとき、その散逸ないし滅失は、まことに骨肉にわかれる思いがいたすのであります。われわれは、この法案をぜひともここに通過せしめ、国民同胞のことごとくがこれを忠実に遵奉して古美術の保存の完璧を期し、これを活用して、もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献いたしたいと存ずる次第であります。
以上をもつで各党各派を代表しての本法案及び修正案に対する賛成の討論を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/101
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102・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/102
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103・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り決しました。
明日は定刻より本会議を開きます。本日はこれにて散会いたします。
午後六時六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X04519500430/103
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