1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年四月六日(木曜日)
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委員氏名
通商産業委員
委員長 高橋 啓君
理事 島 清君
理事 廣瀬與兵衞君
理事 玉置吉之丞君
栗山 良夫君
下條 恭兵君
田中 利勝君
重宗 雄三君
平岡 市三君
中川 以良君
境野 清雄君
深川榮エ門君
阿竹齋次郎君
山内 卓郎君
鎌田 逸郎君
宿谷 榮一君
結城 安次君
兼岩 傳一君
駒井 藤平君
地方行政委員
委員長 岡本 愛祐君
理事 吉川末次郎君
理事 岡田喜久治君
三木 治朗君
黒川 武雄君
堀 末治君
岩木 哲夫君
林屋亀次郎君
谷口弥三郎君
柏木 庫治君
西郷吉之助君
島村 軍次君
鈴木 直人君
太田 敏兄君
濱田 寅藏君
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本日の会議に付した事件
○小型自動車競争法案(衆議院提出)
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午前十一時二分開会
〔高橋啓君委員長席に著く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/0
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001・高橋啓
○委員長(高橋啓君) これより小型自動車競争法案について通商産業、地方行政連合委員会を開会いたします。先ず提案者から提案理由の説明を聞くことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/1
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002・栗山長次郎
○衆議院議員(栗山長次郎君) 御審議を煩わします小型自動車競争法案に関しまして提案の理由を説明させて頂きます。
この法案は通産当局においてもかねてから構想をいたしておつたようでありますが、衆議院の方といたしましては四十名各主要会派に亘る者が共同の提出者となりまして先々週議了をいたし、その際当該通産委員会で若干の修正が加えられて、こちらの御審議を仰ぐことになつた次第でございます。この法案を各派殆んど共同の形で立案に着手いたしました主なる理由の第一点は、自動車の性能を高めて輸出対象として将来有望である小型自動車を海外によく認めさして、日本の貿易帳尻に貢献するところまで持つて行こう、それには競走をいたしまして性能の向上をさせることか一番捷径である、その資料といたしましては海外における実例を幾つか調査をいたしましたところ、英国あたりの例えばロールスロイスのような世界の最高級車として考えられておりますものも、その前身にあつては競走によつて初めて性能を高めることができたというような文献もございますし、現在でもツーリスト・トロフィー・レースというようなものがございまして、ここで競走をしてかなり政府も力を入れて性能を高めておりますし、アメリカ方面でもそうした方法によつて品質の向上を図つておるというようなことに多くの刺戟をされて、日本でも輸出対象となる小型自動車のそうした推進部面が欲しいということを考えましたことが第一点でございます。
第二点としましてはおこがましいことになるかも知れませんが、地方の財源に或る程度の寄與がなし得る、この二点が主なる立案の動機となりました。又これを御審議して成立さして頂きたいと四十名が提案して考えました理由でございますが、先般試験的に東京でも一回、関西で数回小型自動車の民間の任意的な立場において競走をいたしましたのでありますが、国内産車と外国の車と比べますと非常な差がございまして、三割程度スピードが落ちる結果を見たのであります。スピードが低いということが、日本の車は劣性であるという結論的な印象を海外に與えるのが、今までの例でございますので、これはもう少し上げなければ海外宣伝をして輸出をするということがむずかしい、メーカーの方を調べましたところが、それは外国の車に追付くことは或る程度まで可能であるという見通しも得たわけでございます。主に御説明を申す必要があろうかと考えますのは、地方における自治体主催者、これがどういう立場でどれだけの財政收入になるかという点であろうと思いますが、地方自治的自主権を尊重いたしまして、競馬とか競輪の場合のごとくにこれを扱いませんで、即ち中央が何でも干渉関與するという構想から離れまして、原案においては主催者を都道府県と構想いたしたのでありますが、衆議院の当該委員会の御修正では、それに五大都市をも主催者として加えて欲しいということで、幸いその通りに運んでおつて今御審議を願えます主催者といたしましては、都道府県及び五大都市ということでありますが、その主催者は各議会の決議によつてこれをやるかやらんかということを決め、同時にやらせる機関をもそこで指定することにありますので、主催者がこれを実施する場合に方々了解運動を求めて歩かなければならぬという弊害はそこで端的に除かれておる次第でございます。
財政收入としてどれだけになるかという点は、法案にもはつきりと盛つてございますが、勝車投票券の売上高を百といたしますならば、そのうちの七十五は配当金として投票券を買つた一般に拂戻される、あとの二十五%残りますうちの三%は国庫へ納入をする、後二十二残りますが、二十二のうち五%以内、五%を超えない額を以て競走の実施に当りますつまり委託された団体の費用にする、それを本法案では競走会と称しておるのでありますが、十七%が施行者即ち都道府県並びに五大都市の直接扱う金になるのでございまいまして、十七%中約七、八%は都道府県のその実施の費用に費やされる見込でありまして、別途一割足らずが施行者の財政收入になるという構想でございます。大体実算は将来の問題になりますけれども、仮想の数字を求めて計算をいたしまして、さようになるという見通しを立案者達は一応持つた次第でございます。
それから大抵の方が御懸念を頂きます問題として、この競技から生ずる弊害、それから又危險の問題、非常に残酷ではないかという御懸念が各方面におありのようでございますので、その二つの点について附加えさして頂きたいと存じますが、自動車競走の場合には機械の力が、御想像頂きます通りに約七、八割になりまして、運転技術者の貢献率というものは二、三割程度に止まるのがまあ、テストの結果大体申上げ得る割合であります。從つて塔乘者の意思によつて著しく競走を歪曲するという率は他の場合よりも少いということが申上げ得るのでございまして、同時に根本の目的が日本に残されたただ一つのスピードの道である自動車のカピードを上げて行こうということでありますので、競走場の構想といたしましても曲芸的にやるという構成ではなくして、本当にスピードを現わし得る競走場、これも申上げさせて頂きますならば、その競走場のコースの距離でございますか、英国あたりでは四百メートル程度のものをもやつておるということでありますけれども、私共の目的はスピードを上げることにありますので、八百メートル以上、八百メートル又は千六百メートル、序に申上げますと、八百メートルのコースを作ります際には、附属施設をも加えて約三万坪の地積が要りますし、千六百メートルを作ろうと思いますと、約六万坪の地積が要りますので、これは競走場を作ります土地の問題ということが含まれますので、本法案では農地を潰してそれに充ててはならないということを附則に上げておる次第でございまして、ですからまあ條件に惠まれた所でなければ、なかなか法案は皆様御精通して頂きましても実施には移れないということでございますが、私がそこで今申上げましたのは、スピードと品質の向上というところに重点が置かれてあつて、そのため競走場の構成等もかようになりますために、いわゆる八百長的なことはこの競技においては、仮にあつたとしましてもその科学的な率は極めて低いという点でございます。それから危險率でございますが、この点についても諸外国の例を通産当局を煩わして大分調べて頂いたのでありますが、これは向うの文献とか新聞雑誌より外に資料がございませんけれども、最近における最大事故は最近アメリカにおけるミジエツト・モーターカー・レースをやりましたときに、死者が二名出ております。その原因として上げられておりますものは、車体とエンジンとの釣合を著しく破つて大変無理なことをした。英国あたりでやつておりすのは、両者の国際基準を嚴格に守ることにさしておりますので、英国には取立てて上げられるような人命の死傷とか負傷とかいう事故は殆んどございません。我が国でやらして頂きます場合でもそうしたエンジンと車体とのバランスを破るとか、若しくは障碍物的な競走は一切やらせないとかいうことによつて危險率は余程低下せしめ得るものと想定しておりますし、現に試驗的に各地でいたしましたのでは、実際の事故としては落ちて鎖骨をちよつと折つたという人が一名あつただけでございまして、よく映画等で誇大に示されているああした事柄は試驗でいたしました場合にはございませんでありました。それにしましても若干の危險率は見込まなければなりませんので、自家保險というような制度を立てて、万一の場合に備えるということも、この財政上の運営としては構想されておる次第でございます。
次に衆議院の当該委員会において修正を行いました点につきましては、通産当局若しくは当該委員会の委員長が御説明申上げるべきであろうと考えておりますが、便宜上依頼を受けましたのでそれを加えさして頂きたく存じますが、最初立案をいたしました者たちの考え方としては、これは地方自治体を尊重して、地方自地体が自己の意思によつて自己の企画通りに行えるようにしようという考え方で都道府県というものを挙げたのでございます。同時に余り多くの場所で行い得る性質のものではございませんでして、都道府県のうちでもさつき申上げました場所の関係でやりたくもやれないという所がおありでしようし、又そこに観衆の集まりの程度ということもありまして、恐らくこれを実施できるようになりましても、最初の一年か二年は十ヶ所若しくは十五ヶ所ぐらいではなかろうか。その自然制約を受けます他の事柄といたしましては、現に競争に出場し得る車が日本にそう多数あるわけではございません。百五十か二百でございます。それから選手といたしましても戰前に民間で行われたことがございますから、若干の経驗者はございますけれども、今後現われて来る予想を持ち得るにいたしましても、現在では大したことはございません。二、三日名くらいのものでございます。それで実施し得る箇所が、法案に公平に作りましても、実際実施し得る数は少かろうと考えたのでありますが、五大都市、これはこういうことには最も條件が揃つた主催者団体になり得るのであり、財政收入が是非欲しいから五大都市を主催者のうちに加えるという御意見が出まして、それが衆議院の当該委員会において成立をいたしておりますので、原案に添えて主催者に更に五大都市、即ち京都市、大阪市、横浜市、神戸市及び名古屋市は都道府県と相並んで主催者になれるという修正が衆議院で出されましたことを御了承を賜わりたく存じます。以上盡ま支おりませんでしようけれども提案の理由としてお聽き取りを頂いた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/2
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003・高橋啓
○委員長(高橋啓君) これより質疑に入りますが、お諮りいたしますが、本日は特に地方行政委員の方の質疑を優先的に行いたいと思いますが御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/3
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004・高橋啓
○委員長(高橋啓君) 御異議ないものと認めましてそのように計らいます。尚今日提案者の代表の栗山さんの外に通産省の通商機械局長の玉置さん、車輛部長の森さん、車輛課長の伊藤さんも政府側から出席いたしております。それではこれから質疑に入ります。御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/4
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005・鈴木直人
○鈴木直人君 第三條第一項を衆議院において修正されて、五大都市を含めるということになつておりまするが、第六條の修正がないように思われるのです。従つて五大都市のある都道府県においても都道府県に一ヶ所きり設立することができないということになるならば、例えば大阪府においては大阪府がやるか大阪市がやるかどちらかを選ばなければならんということになると思うのです。そこでいわゆる五大都市を含んでおるところの都道府県においてはいずれか一ヶ所以上は設置することができないということになるわけでしようか。それをお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/5
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006・栗山長次郎
○衆議院議員(栗山長次郎君) お答え申上げます。只今衆議院の通商産業委員会の委員長代理を勤めておられます神田さんがお見えになりましたから…ぢやお答う申上げますが、これは仰せの通り主催者としては府なら府その府の中にある五大都市中の一つが主催者にはなれる。併しこの競走場を作りますことは競走の回数が一ヶ年を通じて限られておりますので無駄になるであろうと思う。でありますから大阪なら大阪で作ります一つの競走場が両方の主催者によつて使われる、一つの競走場が両方の主催者によつて使われることを期待いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/6
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007・鈴木直人
○鈴木直人君 そうしますと五大都市を含む都道府県におきましては、各都道府県と五大都市側との間においてお互いに協定して、いずれか一方がその建設者になつて、そうしてその建設されたところの競走場を使う方面において両方で相談の結果それをやると、こういうような建前をとつておるわけでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/7
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008・栗山長次郎
○衆議院議員(栗山長次郎君) お答え申します。今仰せの通りに運営される場合もありましようが、提出者の構想いたしました競走場の設営についてのことを申添えさして頂きますならば、競走場の設営は主催者になり得る公共団体、地方自治体がみずから自家建設並びに自家経営をなす場合、若しくは民間をして設立経営をせしむる場合、そうして主催者がこれを賃借することもありましよう。また半官半民の形式で作られている、この三つの場合を考えておりますが、そこに競走場が合のような三つのうちのいずれかの過程を経てできました場合、使う方の者は自家のものであればそのまま使えますし、又所有者が他の者であれば賃借料を拂つて使うというふうに構想いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/8
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009・岡本愛祐
○岡本愛祐君 お伺いいたしたいのは只今までに小型自動車競走が民間で自然に発達して来ているでしようか、この法案によつて初めてこういう競走をやるようにあるのですか。今まですでにこういう競走会みたいなものは法律はないけれどもやつているのですか、どうでしようか、その点をお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/9
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010・武藤文雄
○政府委員(武藤文雄君) お答えいたします。過去に任意的に東京及び関西両方面で戰前数回、戰後数回行われておりますが、これは八軍と一緒になつて行いましたり、誰かそこで奮発して世話人になつてくれる者がないと実感には始まらなかつたのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/10
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011・岡本愛祐
○岡本愛祐君 国家地方警察の方からもお見えになつておるからお尋ねしたいのですが、今までこの小型自動車競走とか普通の自動車の競走とか、そういうものは治安上危險だとして止めてあつたようなことはないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/11
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012・武藤文雄
○政府委員(武藤文雄君) お答えいたします。勿論競馬式にいたしますものとしては自動車の競技はなかつたと思いますが、單なるいわゆる與行、観物として或いはあつたかとも存じますが、その点は私共詳細に存じておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/12
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013・岡本愛祐
○岡本愛祐君 今私の質問したいのは別に危險なものとしてその競走を禁止したことはなかつたかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/13
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014・武藤文雄
○政府委員(武藤文雄君) さようなことは聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/14
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015・岡本愛祐
○岡本愛祐君 栗山さんにお尋ねいたしますが、ただスポーツとか何とかいうそういうことは考えないで車の改良のためにこの競走が行われるとお考になりますか、スポーツとしてこれを発達さして行こうというおつもりでおやりになるのでありますか、その点を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/15
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016・栗山長次郎
○衆議院議員(栗山長次郎君) 主目的は今岡本委員長のお挙げになりました通りに車の性能の向上、それから地方財政の寄與でございますけれども実際見ておりますと、スポーツとして将来伸び得る可能性も可なりに認め得るのでございまして、つまり若干気品のあるものとしてこれを育て上げることができれば、今構想しております海外へも日本の優秀車ができましたら優秀車及び選手を添えて派遣をする、海外から選手を呼ぶ、というようなことも可能でありますので、御指摘頂きましたスポーツの方面をこれに含めて行くことも可能であると考えます。又望ましいことであると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/16
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017・岡本愛祐
○岡本愛祐君 この法案を審議するに当つて考えるのでありますが、この競輪はスポーツとしてやられる建前であろうと思つたのでありますが、スポーツでなくてもう賭そのものになつている。この小型自動車競走法による小型自動車の競走も賭そのものになることは甚だ困るのでありまして、この法律を作るに当つてその点を一番最初に考えなければならぬことだろうと私は思うのであります。段々御説明が栗山さんからありましたように、八百長的のことはこの自動車の性質上できにくいということはありますが、競輪の場合は随分八百長がありましてもうスポーツというよりか賭のためにやつている。而も不正な賭のためにやつているというふうになつてしまいつつあるのでありますが、こういうことのないような御心配と申しますか、その配慮をなすつていらつしやるのかどうか栗山さんに伺いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/17
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018・栗山長次郎
○衆議院議員(栗山長次郎君) 御指摘の点は私共は申上げました二つの目的を達成する副次的な弊害として、やはり同樣の考慮をいたしましたし、又今までも縣念が拂拭してはおらないことを正直に申上げなければならぬと思いますが、それにつきましては法案の中にもございますように、さような弊害が現われて来た場合に監督官庁である通産省でこれを抑制するとか、或いは止めさせるとかいうようなことも、法案の中に特に具体的な例を挙げておりませんけれども、措置の講じ得るように備えておりますので、これに携わる人達には私共の縣念又こちら樣の御縣念もよく滲透するように、通産当局は、その可能なる範囲においてやつてくれることを期待いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/18
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019・岡本愛祐
○岡本愛祐君 国家地方警察の方から、只今まで行われている競輪の不正事件、その他それに端を発した会場の騒擾事件、つまり治安上に対していろいろな影響を及ぼして来ておりますが、これについての今までの有様というか、その扱い方、それからこういう競走についてどういう注意をしなければならぬかというようなことが分かつておれば、国家地方警察から聽きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/19
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020・武藤文雄
○政府委員(武藤文雄君) お答えいたします。競輪で現在まで八百長式の競技が行われた、そのためにいわゆる警察事故しなつたもの、それを大きく分けますと三つのものがあるようでありますが、一つはいわゆる地方ボスが役員になつてそれが選手を自分の意のままに動かして八百長レースをやらせる、第二には、役員にはなつてないなけれども、そのボスが直接に選手を買收等によつて八百長レースをやらせる、第三はまあ選手双互間で談合して特定の選手に勝たしたり或いは故意に負けたりするというふうの八百長、三つのものがあるようでございます。
で最近までに大きな事件といたしましては、昨年の四月にありました西宮の八百長であります。これでは地方ボスの某が子分を三十人ばかり、競輪場の整理員として、そうしてそのレースの場合に、その出場選手に一人あたり五千円くらいも贈賄する約束で八百長レースをやつた。この外に小倉、鳴尾でも八百長レースをやりました。この件については贈賄者五名、仲介者十名、收賄者二十二名、これを検挙いたしております。尚この場合自転車振興会では一人あたり五十円くらいずつ返還をしておるようであります。次は五月に大阪の住吉で、たまたま或るレースのときの一人の選手が、外の八人の選手から百五十メートルばかり間を開けてゴールインをして大穴があいた。そこで観衆が八百長だと騒ぎ出して乱闘事件になつた。結局車券拂い戻しで事件は解決しておりますが、この間警察官に対して公務執行妨害等があつた、こういう事件がございます。次いで六月に鳴尾でやはり八百長レースがありました。これはその一つのレースで、A級選手が八名、B級選手一名が出場しましてレースが行われたのでありますが、その中のB級選手が一着となつた。そこで観衆が八百長だと言つて騒ぎ出した。それで振興会の方では、八名のA級選手に出場停止処分を発表した。併し観衆が納まらないで車券の拂い戻しを要求した。そこで憤慨した観衆が事務所の車券売場などに押しかけ、結局スタンドの三ヶ所に放火をし、そのとき治安に当つた警察官或いは消防官にいろいろ暴行を加えたというようなこともあります。公務執行妨害で検挙いたしました。七月に埼玉県の大宮で、これはやはり地方ボスと選手との談合による八百長ですが、十月にも又大宮で或る選手が調子が悪くて二着となつたために、これを八百長レースだと言つて地方ボスの某が子分と共に選手達の控室に押し掛けて行つて、これを殴つたという事件があります。十月に岐阜でやはり選手間でこれは談合がありまして、八百長レースをやつたということがあります。最近といたしましては二月の川崎の事件でありまして、これは地方ボス某外二名が選手八名に対して八万四千円の贈賄をしております。最高が二万円、最低が五千円くらいの贈賄をしておるようでありますが、その後も地方ボスと結託してこういつた事故がそれから数回に亘つて選手を買收して八百長レースをやつておるということがございます。目下これは引続き検挙中であります。現在までに贈賄者側三名、收賄者側、これは選手でありますが、十九名、合計して二十二名引続き検挙中であります。
まあ顯著な事件としては以上申上げたような状況であります。で純然たる警察の立場から、こういうものの捜査の任に当つております者として、気付いた点を二、三申上げたいと思います。その一つは、競輪でも、恐らくこの法案でもそうだろうと思いますが、選手と役員が收賄した、これについては処罰の規定があるのであります。ところがその收賄のない、或いは收賄の立証のできない不正レースというものが相当あるわけであります。こういつたものに対しての処罰規定が現在ない。從つて選手間でいろいろ談合してやつたというだけでは処罰されておらない。で、贈收賄の立証ができなければ我々としては送庁できないという点で非常に取締上悩みを感じているという点が第一点であります。
第二点は、選手なり或いは役員に対して、いろいろ強要したり或いは脅迫をしたりする事例が非常に多いのであります。これは御承知の通り刑法の規定であります。非常に軽い規定になつております。強要については三年以下、脅迫については二年以下又は五百円以下という非常に軽い刑罰になつております。実際の状況に比して必ずしもこの刑法の規定だけで足りるものかどうか、このあたりも検討を要するのではないかと考えます。
第三は、常に事故が起りますのは、いわゆる八百長レースだ、不正レースだということでフアンが騒ぎ出す、その間に主催者側の態度が明確を欠くというようなことがあつて、場合によつては強引に押切られて車券の拂い戻しをするというような事態が起つて来る。殊に大体損をした者が騒ぎ出す、その者が何といつても数が多い、それに圧倒されて車券の拂い戻しをしたり、或いはその間でトラブルが起つたりするということで、不正レースに対する取扱い、逆に申しますれば審判の権威尊重、或いは協会の本当に正しい取扱い、こういつた点で往々にして明確を欠く場合がある、それが徒らに事故を大きくして乱鬪騒ぎになるという事例が非常に多いのであります。こういつた面についてのレースの取扱い方というものを確明にし、且つこれを嚴正に行うということが大事だと考えられるのであります。
それから第四は、只今もお話がありましたが、いろいろの弊害が起る、その防止について監督官庁におかれて十分に御監督を願いたい。我々は警察取締の立場からこれに当るのでありますが、競技自体というものに対しての監督官庁の嚴正な監督をお願いいたしたい。まあ我々の純然たる警察の立場からの御意見を申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/20
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021・高橋啓
○委員長(高橋啓君) それでは今日はこの程度にて散会いたします。
午前十一時三十九分散会
出席者は左の通り。
通商産業委員
委員長 高橋 啓君
理事
島 清君
廣瀬與兵衞君
玉置吉之丞君
委員
平岡 市三君
中川 以良君
境野 清雄君
阿竹齋次郎君
鎌田 逸郎君
結城 安次君
地方行政委員
委員長 岡本 愛祐君
委員
三木 治朗君
黒川 武雄君
谷口弥三郎君
柏木 庫治君
島村 軍次君
鈴木 直人君
櫻内 辰郎君
衆議院議員
栗山長次郎君
政府委員
国家地方警察本
部部長
(刑事部長) 武藤 文雄君
通商事務官
(通商機械局
長) 玉置 敬三君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714790X00119500406/21
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