1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年十月二十三日(月曜日)
午後一時二十八分開議
出席委員
委員長 小金 義照君
理事 阿左美廣治君 理事 多武良哲三君
理事 今澄 勇君
江田斗米吉君 澁谷雄太郎君
高木吉之助君 永井 要造君
中村 幸八君 中村 純一君
福田 一君 南 好雄君
村上 勇君 高橋清治郎君
加藤 鐐造君 風早八十二君
田代 文久君 小平 忠君
委員外の出席者
検 事
(法務府法制意
見第一局長) 高辻 正巳君
資源庁長官 始関 伊平君
通商産業事務官
(資源庁鉱山局
長) 徳永 久次君
通商産業事務官
(資源庁鉱山局
鉱政課長) 讃岐 喜八君
專 門 員 谷崎 明君
專 門 員 大石 主計君
專 門 員 越田 清七君
十月十三日
委員岡延右エ門君、志賀健次郎君、田渕光一君
及び宮幡靖君辞任につき、その補欠として中村
幸八君、河野金昇君、江田斗米吉君及び神田博
君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
鉱業法案(内閣提出第一九号)
採石法案(内閣提出第二〇号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/0
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001・小金義照
○小金委員長 ただいまより通商産業委員会を開会いたします。
本日から、去る七月二十八日、すなわち第八国会の終りに提出せられました鉱業法案及び採石法案を議題として審議を進めます。この両法案が本委員会に付託されましたのが七月二十八日で、会期も切迫いたしておりましたので、とりあえず七月二十九日、この両法案の提案理由の説明を聽取いたしましたが、何分にも重要法案のことでもあり、急速に審議を終了せしめることが困難でございました。そこで七月三十一日、これら両法案の取扱いについて協議し、これを閉会中審査に付することに決定いたした次第であります。同日委員会において鉱業法案及び採石法案に関する小委員を選任し、その後八月三十日より十日間中国、北九州方面及び東北、北海道方面に小委員を派遣して、現地の輿論等の調査と現地の状況視察を行つたのであります。
以上が両法案が付託されましてから今日までの一応の経過でございます。
それでは両法案について質疑をお許しいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/1
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002・中村幸八
○中村(幸)委員 議事進行について発言いたします。
鉱業法施行法並びに土地調整委員会設置法がまだ国会には提案になつておりませんが、鉱業法案並びに採石法案の審議をいたしまする上におきまして、最も密接なる関係がありますので、この以上述べました両法案のごく大体のことを頭に入れておかないと、完全なる審議ができないと思うのであります。そこでこの両法案が目下司令部との折衝がどの程度に行つておりまするか、また臨時国会がいずれ近く開会になると思いまするが、その際には必ず提案ができるかどうか。さらにまたこの両法案の現在の段階におきまして、政府が考えておりまする大体の構想を承つておくのが一番便宜であり、また必要ではないかと思うのでありまするが、この点委員長におかれましてはお諮りを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/2
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003・小金義照
○小金委員長 ただいま中村幸八君よりお聞き及びの通りの議事進行についての発言がありましたが、鉱業法施行法案の要綱あるいはまた土地調整委員会設置法案の要綱について、概略の説明を聽取いたすことに御異議ございませんか。
〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/3
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004・小金義照
○小金委員長 御異議なしと認めます。それでは徳永鉱山局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/4
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005・徳永久次
○徳永説明員 資料がまだお届けいたしてございませんが、手配いたしておりますので、後ほどお手元にまわることと存じます。鉱業法の施行法につきまして、ただいま司令部へ出しておりまする案及びそれの要綱を用意いたしておりますので、詳しくはそれをごらん願いたいと思うわけであります。ただいまお尋ねのございましたこれまでの経過をかいつまんで申し上げまして、なお中身につきまして御説明申し上げたいと思います。
関連法といたしまして、鉱業法の施行法と、もう一つ土地調整委員会法とあるわけでございますが、土地調整委員会法につきましては、実はこの委員会が内閣所管の委員会ということになつておりまするような関係から、法案の準備につきましては、私の方も密接な連絡はとつておりまするけれども、形式的には一応法務府の所管で処理していただいておりまして、その関係上御説明の点につきましては、後ほど法務府の局長がお見えになりまするので、その方にお願い申し上げることにした方が適当だと考えるわけであります。ただ土地調整委員会法につきましては、前に司令部に一応政府側の案を提出いたしまして、その際に司令部側から若干のコメントが出たのでありまするが、その内容はきわめて軽微なものでございまして、当初の原案をごく一部訂正いたしますだけで、司令部関係はすらすらと通るものと私ども見込みをつけておるわけであります。
それから施行法につきましては、実は日本政府部内の決定が遅れまして、今月の十三日にその決定をいたしまして、司令部には翻訳いたしまして十八日に提出いたしておるわけでございます。ただ司令部におきましても、この法案が前国会に提出されました鉱業法、採石法と不可分な関係にあるということは十分に了承していただいておりまするので、次の臨時国会が何日から開かれまするか正確に承知いたしておりませんけれども、正式に開かれますまでの間には、十分承認をいただけて提出できる見込みでおるような次第でございます。
その内容でございまするが、実はこの施行法は、普通の法律でございますれば、本法に合せまして附則のところに施行に関しまする規定をいろいろ入れるわけでございまするが、何分にも鉱業法関係の旧法と新法との関係で、條文が多くなりまして、数にいたしまして六十箇條ほどに相なりますために、附則に書くのはあまりにだらだらといたしまするし、形式を別にかえまして、関連法ではございまするが、單行法のような形式をとりましたわけでございます。しかしながらその内容は、他の一般の法律の場合と同様でございまして、そのうちに特殊の規定が入つておるといいましても、主として経過規定が入つておるわけでございます。
その内容を大きくわけてみますると、一つは新法の施行に伴いまする経過措置であり、もう一つは、新法の施行に伴いまして、ほかの税法その他の法令で鉱業法関係の規定がいろいろ入れてありまするものを、新法の施行に伴いまして訂正を行う字句を入れたものでございます。それから第一番目の新法の施行に伴いまする経過的措置が、大きくわけまするとさらに二つにわかれるわけでございますが、一つは新法の規定と旧法の規定との関連を明確にすること、もう一つは、新法によりまして七種の鉱物を追加鉱物として新たに鉱業法の対象にいたしました関係上、その追加鉱物に関連しまするところの権利者につきまして、経過的な既得権の保護の経過措置を織り込んだということでございます。
それで順序を追いまして申し上げますれば、第一の新法の規定事項と旧法の規定事項との関連を明確にしましたということは、たとえばどういうことかと申しますると、新法が全面改正をとつております関係から、旧法によりまする権利、採掘権とか試掘権とか、砂鉱権とか使用権とかいうものがございますが、新たに新法による権利の設定があつたものと見なしまして、別段手続をとらないでも中絶しないように、新法の定めておりまする採掘権、試掘権、租鉱権に乗り移るという扱いをいたしたわけでございます。それから新法によりまして一鉱区当りの制限最低面積と申しますか、境界線のきめ方とか、存続期間とかいうものが旧法と若干異なつておりますので、そういう旧法のものは新法にかかわらず、旧法通りでよろしいというような特例を認めることが必要になつて参つたわけであります。それからこれもほかの法令の場合によく出ることでありますが、條件とか効果とかいうものが旧法と新法と異なつておりますような場合には、新法施行後も前の通りのもので有効だというような新法の特例になるわけでございます。これも乗り移り際に、よくほかの法令にもあることですが、こういうようなことをやはり経過措置として織り込んでおるのでございます。
それから七種の追加鉱物を設けるにつきまして、現在この追加鉱物に該当しまするものの新たな鉱業権の設定が当初に出て参るわけでございますが、その際に優先順位と申しますものをきめておかなければ、混乱を来すことが予想されますので、その優先順位をどういうぐあいに定めるかということが次の大きな内容をなしておるわけでございます。その優先順位のきめ方といたしましては、一応施行法ではこういう扱いをいたしておるわけでございます。第一番に優先になりますのは、追加鉱物を現在掘つておる人が新法施行後六箇月の間に依然として仕事を継続するつもりで出願しました場合には、それが第一番の優先順位というのであります。それから第二番目は現に仕事をしている人が、必ずしも続けるつもりで権利をとるとは限りませんので、その場合にどういう人を次に優先にしたらよかろうかという問題といたしまして、第二番目には追加鉱物を取得するために土地に関する権利を持つておる人、土地所有者といろいろ話合いをしまして、掘るつもりのもとに約束しておる人があるわけでございます。そういう人が第二番目に六箇月以内に出願がありました場合には優先的に処理するということにしました。それから第三番目には、土地所有者が同じく六箇月以内に出願をされました場合には、土地所有者が優先になるということにいたしておるわけでございます。このように優先の扱いが三通りございますが、そういうものが何もない、全然新たなものにつきましては、この優先にひつかからない限りにおきましては、次の出願者が登録されることになるわけであります。
それから七種の鉱物を追加鉱物にいたしますと、現在鉱業法の鉱物の扱いになつておりません関係上、掘ります際には土地所有者との話合いで何がしかの掘賃と申しますか、掘採料を土地所有者に拂つておるわけでございます。鉱業法の鉱物になりますると、土地所有権とは分離したものだという扱いになりますので、将来土地採掘料というようなものは、土地所有者に拂う必要はないということになるわけですが、しかし今まで掘つております際に土地所有者に何らかの代償を拂つておる場合には、新法によりまして鉱業法の扱いを受けるようになりましても、鉱業権者となつた人は、相当の補償金を拂うということにいたしておるわけでございます。その例は従来ともある鉱物が新しい鉱業法の鉱物として追加されたことがあつたのでございますが、その際に行われておつた趣旨によりまして規定がきめられておるわけでございます。以上が経過規定の経過的措置の中身でございます。
それから新法の施行に伴います他の法令の改正は、たとえば今度の法律によりますと砂鉱権というものをなくしまして、鉱業法で一体にいたしましたわけでございます。従いまして砂鉱権に関する砂鉱という字句もなくなりました。それらの関係から他の法律の中に使われております字句を新法の名称に置きかえましたわけであります。これは実質の改正ではございませんで、名前の変更というだけの法令の統一のための改正でございます。大体さようの規定を内容といたしておりますが、最初申しました通り、條文が非常に多くなりましたので、別の法律の形をとつておるという次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/5
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006・小金義照
○小金委員長 中村幸八君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/6
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007・中村幸八
○中村(幸)委員 明治三十八年に制定せられました現行鉱業法は、その後数次の改正を経ておるとはいいながら、時代の進歩あるいは経済の発達、特に終戰後の社会状態ないしは国民思想の変還等によりまして、修正を要すべき箇所が随時に発見せられるのでありまして、今回政府におきまして現行法を根本的に改正し、鉱物資源を一層合理的に開発することによりまして、公共の福祉の増進に寄與する。それからさらに鉱業と一般の公益及び他産業との調整をはかり、かつ法の運用を愼重にいたしまして、国民の権利の保護に遺憾のないように企図せられておりますことは、まことに時宜を得たことと思うのでありまして、その根本の考え方につきましては、何ら異論をさしはさむべきものはないと思うのでございますが、鉱業は御承知の通りあらゆる産業の最も重要なる基礎産業でありまするし、他面におきまして事業遂行上多額の資金を要し、かつ非常に危險の伴うものでありまするがゆえに、国家がこれに対してあらゆる保護を加え、育成いたして行くのでなければ、国民経済全体の進歩発達を期し得られないと思うのであります。かかる観点からいたしまして、今回の改正案を見まするときは、いささか鉱業の保護に欠くるところがありはしないかということを恐るるものであります。私ども通産委員の者は、先般全国各地に鉱業法の施行状況を調査に参りまして非常に稗益するところがあつたのでありまするが、ことに各地の業者または関係の方々より、本法案の内容につきましていろいろと熱烈なる希望や意見を承つたのであります。私は本法案を通覧いたしました結果、いろいろと疑問の点もあり、また解釈を公権的にはつきりとさしておいた方がいいと思わるるような点もありまするし、また中にはあるいは修正していただいた方がいいではないかと思わるる点もありますので、以下順次法案の條項に従いましてお尋ねして参りたいと存じます。
まず第一に、法案第二條に、「国は、だ掘採されない鉱物について、これを掘採し、及び取得する権利を賦與する権能を有する。」とあります。それから第十七條に「日本国民又は日本国法人でなければ、鉱業権者となることができない。」とありまするが、国自身ははたして鉱業を営むことができるかどうか。もし国が鉱業を営むことができるとすれば、いかなる手続によつて鉱業を営むのであるか。これは将来起り得る重大問題でありまするので、まずこの点からお尋ねいたして参りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/7
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008・徳永久次
○徳永説明員 ただいまお尋ねのございました第二條、第十七條の問題でございまするが、第二條は実は現行法には非常に古くから出ておりまするものでございまするが、鉱物は国有とすというような書き方で表現されておりまするが、その内容になつておりますることは、国有と申しますと、いかにも民法上の所有権に似たような感じ、この字句では所有権を国が持つているんだというふうな感じを受けやすいような表現になつておるわけでございまするが、しかしつぶさに鉱業法の中に現われておりまする精神を考えてみますると、新法の中に表現いたしましたような、鉱物を国有とすといいますのは、鉱物は土地の所有権と離れた、所有権の内容以外のものとして、国がそれを掘採取得する権利を人に與える権能を持つているんだという趣旨を簡潔に現行法は表明したものではなかろうかというふうに了解されまするので、ことに、その内容は現行法ができましたときの母法であります外国の例を見ましても、大体そういう趣旨に了解されますし、むしろわかりやすく、書こうといたしました気持を表現した方がいいんではなかろうかというような趣旨で、新法におきましては、まだ掘採されない鉱物について、国がこれを掘採及び取得する権利を賦與する権能を有するんだというふうに書いたわけであります。
それから十七條でございまするが、十七條は「日本国民又は日本国法人でなければ、鉱業権者となることができない。」という字句でございまするが、これはここに書いておりまする第一の意味は、文字通り多少権利の取得を制限いたしたわけでございまして、外国法人は但書にございます、條約に別段の定めがある場合でなければ、鉱業権者となれないというふうに制限いたしたわけでございます。これは鉱業権というものは、その国にとつてやはり基本的な重要な権利でございまするので、外国立法例も相当やはり制限的な扱いをいたしておりますから、日本におきましても制限的な扱いをいたした方がいいじやないかということで、置いたわけでございます。ただその扱いは、通商航海條約等によりまして互惠的に、よその国で日本法人にも鉱業権の取得を認めるという場合には、日本の方でもその国に対して、その国の国民あるいは法人に鉱業権の取得を認めるというように、互惠的に扱つた方がいいではないかという精神でこの法案ができておるわけであります。ただただいま御質問のございましたこの十七條によりまして、日本国民または日本国法人でなければ、鉱業権を取得することができないという字句から反対解釈としまして、政府自身、国自身が鉱業権者となることを指定したものではないかというような御質問の御趣旨かと拝聽いたしたのでございますが、その点は他の法令の扱い等から見まして、国が鉱業権者となる場合は、国が一つの経済行為を営むものの主体となるわけでありまして、その限りにおきまして、個人あるいは法人と全然平等の扱いをいたしておるわけでありまして、その場合におきます国自身の経済行為を主体としての、国が鉱業権者になることを指定した趣旨ではないのであります。これは現行法には、その点を国も鉱業権者になる場合にはこの法令によつてでなければ権利を取得できないというような書き方がいたしてございますが、この点は現行法においての解釈におきましても、注意規定としてそういうことはあるだけでありまして、條文で創設的にそういう権利を特に與えたということではないので、当然の規定をわかりやすく注意的に入れたんだというのが従来の公権的な解釈になつておるわけでございます。他の法令の例から見まして、むしろ一々断つてないのが普通の例でございますので、この條文——新法におきましては特にその点を断わらなかつたというだけの意味でできておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/8
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009・中村幸八
○中村(幸)委員 この第二條と第十七條の解釈について詳細なる御説明でありましたが、それだけでは私が先ほどお尋ねした国が鉱業を営むことができるかどうか、また出願することができるかどうかということについての御説明としては、ちよつともの足りぬような感じがするのであります。現行法には国が鉱業を営む場合には、本法の手続によるというようなことも書いてあるのであります。これは今の御説明だと單なる注意規定だと思いますが、しかし第二條と第十七條を見ただけではむしろ国が鉱業を営むことはどうもできかねるように思うのであります。ことにもし国が鉱業を出願する場合は、それではどういう條文によつて出願することができるかどうか、そこも非常にあいまいになつて来るわけであります。はたして御説明のごとく国も鉱業が当然出願できるのだ。経営もできるのだといたしました場合、それではもし政府の役人が違反行為等した場合、罰則に触れるのかどうか、そういうような問題も起り得ると思うのでありますが、もう少しはつきりと、その点は改正法案においても規定する必要があるのではないかと思いますが、重ねてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/9
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010・徳永久次
○徳永説明員 国が鉱業権の主体になり得るかということでございますが、実は現実にも、御承知のように運輸省が今九州で石炭鉱区を持つておりまして、鉱業権者として稼行しておるわけであります。なお先ほどの説明を若干補足して申し上げますと、現行法の中に、国が鉱業をなします場合にも、鉱業法の適用を受けるという規定がはつきり書いてあつたわけであります。実はこの規定が入りますには、若干沿革的な理由があつたようでありまして、その沿革的な理由と申しますと、当初、明治政府創立早々のころ、日本坑法時代には、鉱業は政府がこれを行うのだ、そうして国民はその政府の事業の請負、稼行をするだけだ、そういう扱いがされておりまして、その後現行の法律が、外国の法令等をさんしやくしまして、詳細なる基本法ができ上りましたわけでございます。その際に、政府がみずから鉱業を営みます場合につきまして、旧日本坑法との関連から疑問が起つたようであります。その疑問をなくするというような趣旨から、当然政府が鉱業を営む場合においても、明治三十何年かにできました現行法の適用を受けるのだということを、はつきり書いておくことが必要だというような事情から出たわけでございます。ただ先ほど申しましたごとく、国が経済行為をやります際には、その限りにおきましては、国といえども国民と何らかわつた特権を持つわけでございませんので、すべてこの法に従つて平等の立場に立つわけでございまして、物の売買、その他の場合と同様に、全然平等の立場に立つのだという扱いが、法律体系全般にされておるわけであります。鉱業法の場合におきましても、現行法ができましてからすでに数十年になりますし、その間に特殊扱いをしなければならないという必要もございませんし、また特殊な規定を置いておかなければ、国民と違つた扱いを受けるのだという誤解もすでになくなつたので、ほかの法律と同じ扱いで、対等の書き方をしていささかも疑念を起さない状況に相なつたのではなかろうかというふうに考えまして、新法におきましては、現行法にございました注意規定を削除いたしたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/10
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011・風早八十二
○風早委員 関連して……。この第十七條は、非常に重要だと思います。この但書によれば、條約に別段の定めのあるときには、外国法人にも鉱業権を持たせることができるという意味に違いないわけなのでありますが、そうなりますと、これは結局、まだわからない将来のいろいろな條件を、全然ここでのんでしまうことになるのであります。そういう意味で、今明らかにしてもらいたいのは、どういう條約を大体予想されておるのか。そこで鉱業権を讓渡し得る場合でも、どの範囲にそれを考えておられるのか。そういうような点について、もう少し説明を要するのではないかと思います。私は、全部詳しく読むひまはなかつたのでありますが、これについての何か規定がありますか。これではあまりに漠然としていて、場合によつては、無制限な鉱業権の取得があり得るわけでありますから、その点ちよつとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/11
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012・徳永久次
○徳永説明員 第十七條をわれわれがつくりました趣旨は、先ほども申し上げましたように、ほかの権利と若干異なりますので、鉱業権につきましては、無條件に第三国人に平等にする必要はないのではないか。むしろさような制限的な意味で設けたのでございまして、ただ條約によりまして、相互主義によりまして、先ほど申しましたが、相手の国の鉱業法なり、それを背景としました通商航海條約等の中身に、その国の鉱業権の取得につきまして、日本法人あるいは日本国民の権利取得を、その国の国民あるいは法人と平等扱いにいたしております際には、日本もその国の国民あるいは法人に、平等に権利を與えるというような扱いにして、そういう特例、相互主義がない限り與えないというつもりで、この原案はできておるわけでございます。もちろんその條約自身も将来のことでございますが、国会によりまして、最終的に定められることになると思いますが、互惠相互主義以上に、外国人を特殊扱いする、外国人を日本国民あるいは日本法人よりも優遇するというようなことは、私どもとしては考慮もいたしておりませんし、またさようなことはなさる必要もないのではないかというぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/12
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013・風早八十二
○風早委員 制限的な意味で設けられたということはよくわかりました。しかしそれにしても、この條約というものは、これはやはり力関係でありまして、相互主義といいましても、事実不平等な條約ということは将来にわたつてあり得るわけです。そういう場合にやはり相互主義というものが、はつきりこれに出ている必要がある。もし制限的な意味で設けられたとして、その趣旨に従うとしても、やはり相互主義ということがここには出ておらないわけです。どういう條約が出されようと、條約に別段の定めがありさえすればいいわけで、そこまで及んでおらないわけです。そういう点は注文上どういう用意をされるおつもりでありますか。これではあなたの言われる趣旨が出ておらないわけです。その点非常に重大でありまして、とにかく鉱業権というものは、これは国のいわゆる独立の基礎であります。これは汪兆銘政権の場合でも御承知のように、日本から、鉱業権の讓渡、特に株式所有五一%ということが、汪兆銘——かいらい政権と言われた汪兆銘政権によつても拒否されたという事実のあることは御承知と思いますが、重要な国の独立に関係した問題でありまして、そういう場合に相互主義と言われましても、相互主義なら相互主義でそれが出るような條文にして行かないと、この條文では御趣旨が出ておらないのではないかと思うのです。その点一応だめを押しておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/13
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014・徳永久次
○徳永説明員 ただいまの点でございますが、実は私ども相互主義のもとにその條文を書き上げるとして、どういう書き上げ方がよろしいのであろうかということを実は外務省の人ともいろいろ御相談申し上げたわけであります。外務省の人も相互主義によつてやるということには全然異議がないわけであります。ただその主義のもとに條文をつくるといたしましても、御承知のごとく通商航海條約におきましては、大体相互主義以外に最惠国約款というものが挿入される例も多いわけでございまして、その最惠国約款によりまして、ある国に移しましたものが、最惠国約款條項を含んでおります他の国にも均霑するというような扱いが多いわけでありまして、さようないろいろのことを考えてみますと、ただ相互主義という気持はわかりますが、それを條文に表現することもなかなかむずかしく、適当な言葉もないということで、精神は先ほど申しましたことにだれも異論はないわけでございますが、條文の書き方といたしましては、詳しくは條約加盟国であり、しかもその條約自身はなお政府が律するといたしましても、究極におきまして国会の承認にかかる事項でございますし、そこで内容もあわせて検討されることと思いますので、本法自身としてはこういう表現をとらざるを得ないであろうということになつておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/14
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015・風早八十二
○風早委員 もう一点だけ……。どうも今言われたことだけでは制限的な意味で設けられたという趣旨が、ただ單に但書にしたというような形式上の問題にしかとどまつていないと思うのであります。これを実質上やはり條文で生かすためには、この條約に別段の定めあるときは相互主義によりとか何とかいうことでもあればその趣旨ははつきり生きて来ますけれども、その趣旨が少しもここに出ておらない。これでは但書でなく、外国法人もまたこの條約によつて積極的にこれを書いた場合とちつともかわらないので、そういう制限的な意味というものが出ておらないわけです。ただ條約という制限があるだけでありまして、その條約というのは、これは具体的な問題として予想されておりますけれども、十分予想される問題だと思うので、実はそのこともお伺いしたかつたのでありますが、それはお答えがないので今わからないとしておきましても、しかしそれは十分に可能性のある問題であります。これはただちに外資の優越性によつてこれが規定せられて来るわけでありまして、その場合にその当該の経営にとつては、やはり合弁でも何でも、あるいは向うが五一%持つておつてもそれで一向さしつかえない、むしろけつこうだ、歓迎するということがあつても、これが一つ一つの経営ではそういうことがありましても、全体として見ますと、やはり国の独立の問題に直接ひびが入つて来る。これは講和條約も目前に控えている場合、やはりこの点はそう簡單にあなた方の解釈あるいはまた外務省の解釈といいましても、それでは納得が行かないのではないかと思うのです。それでどういうふうにしたらよろしいかというような立法論は、これはまた別に私の方で述べますけれども、一応今の御説明の制限的なということが生きておらないという点では、どうも今の御説明ではまだ依然として不十分だと思うのです。ただあなた方の解釈で通用するはずだと言われましても、どう考えてみても條約に別段の定めある場合ということになりますと、そう大ざつぱには行かないと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/15
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016・徳永久次
○徳永説明員 この新法ができますいきさつは、御承知のごとく終戰後数年かかりまして、関係の学者、実務家、関係各省集まりましてつくつたのでありますが、その際の当初の原稿は、むしろ内外人平等主義でもいいのではなかろうかというような一応の結論が出ておつたわけであります。ところが法案の審議の過程におきまして、関係方面との折衝の過程におきまして、むしろ鉱業権については内外人平等というのを、制限主義をとつておる方がよそにも多いので、日本もそう遠慮せずに制限主義にした方がいいのではないかという示唆もございまして、われわれとしてはさような趣旨におきまして、ただ制限主義と申しましても国際関係のことでございますので、むしろ相互主義の原則においてくらいは現行法よりも緩和した方がいいのではないかという趣旨のもとに條文を作成したのであります。その條文の作成の経緯は、先ほど申しましたごとく通商航海條約をごらんになりますれば、各国の通商航海條約、これは将来どうなりますか、既存のものはおおむね例文のごとく最惠国約款が入つておるというような関係もございますし、実際的には最惠国約款のある相手方には、ある国と相互主義を結べば均霑して適用がある。それは日本側が均霑させるだけでなしに、日本もまた均霑の権利を受けるということになるわけでありまして、今非常に御心配のあつたお尋ねでございましたけれども、非常に心配すればきりがございませんが、従来の通商航海條約の例文から考えますれば、通商航海條約の何と申しますか、一種のひな型とこれとかみ合せて考えますれば、十分にわれわれの立法の趣旨が生きるのではないかというぐあいに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/16
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017・風早八十二
○風早委員 その点ですが、今戰後のここに至るいきさつについては十分に了承できます。これがやはり初めは無制限に平等に許そうというところから、だんだん制限的のところへ移つて来ようとしている。そのことはよくわかります。しかし今言われるように、今までの條約の家際を見てみますと、やはり最惠国約款のある国との契約については相互主義が事実出ていると言われますが、その場合の日本は今の日本とは違うのです。これは明らかにりつぱに独立した対等、平等な資格を持つた日本であつたのであります。その場合の日本と今の日本とをやはり区別してもらわないと、これは非常に危險だと思う。やはり現在としては、こういう点は十分に国の独立を全うすることをはつきりわれわれは法律の上でも規定しておかないと、その後実際の必要が起つた場合にそういうふうな但書をつけたといつたつて一向おそくはないのでありまして、現在これをやつておけば、最初から一部明渡し、結局それが力関係で明渡さなければならないという危險をこの中にちやんと許しているようなことになつているわけでありまして、そういう点は同じようなことをあなたの方でも政府側でも心配しておられるとすれば、やはりそういう心配のないように、これは制限なら制限でほんとうに具体的にどこまで制限をするのかということを明記することは何でもないと思います。そういうふうなことを考えられないで これは今すぐ明記してくださいというのではありませんけれども、そういうことを考えられる用意があるかどうかということを聞いておけばいいのであります。長くなりますからこれくらいにしますが、大体そうでないと、あなたの言われる趣旨がこの條文には出ていないということを指摘しているわけでありまして、その点をはつきりしておいてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/17
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018・徳永久次
○徳永説明員 私の方から念のため申し上げたいと思うのでありますが、私から特に御説明申し上げるまでもなく、現在まだ日本といたしましては対等に條約を締結し得る段階にあるわけではございません。従いまして、現在におきましてはこの條文が働くわけではございませんで、正式に講和條約ができまして、日本が国際社会の一員として十分の独立国の扱いを受けるということになりました以後における問題になろうと思うわけであります。その際に特に不利な條約を日本自身が結ぶというようなことは、私どもとしては全然予想もしていないわけであります。ただ鉱業法は一つの経済法ではございまするが、現行法がしかるごとく、数十年にわたります基礎的な法律でございますので、その後の日本の独立国の体系としての形を法案の中に擁しておくことが適当であろうというだけの趣旨から入れたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/18
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019・風早八十二
○風早委員 問題はありますけれども長くなりますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/19
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020・小金義照
○小金委員長 中村幸八君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/20
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021・中村幸八
○中村(幸)委員 先ほどの鉱山局長の御説明によりますと、従来の沿革から見ても、また法全体の解釈から言つても国は経済行為を営むことができるのである、そしてその場合においては一般国民と同等の立場に立つという御説明でありまして、一応この点は納得するといたしまして、はたしてしからば国が鉱業を営む場合、この法案の全部の條文が適用されるのか、あるいはこのうちのある條文は国の性質から適用ないものもあるのだというような御解釈なのか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/21
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022・徳永久次
○徳永説明員 その点ただいまの御尋ねでございますが、鉱業法の中に特殊の規定を置いておりますので、他の一般の法令におきまして、その法令が国にも適用する場合と同様な解釈をとらざるを得ないと思うのであります。その解釈によりますと、たとえば罰金とか、あるいは体刑とかいうようなことがあるといたしましても、さような種類の罰則の適用は国には適用しないというのが、他の一般の解釈になつていると同様なことになろうかと思うわけであります。但し鉱業法の中にはたとえばその違反なり、義務懈怠の結果としての鉱業権の取消しとかいう例がございまして、そういう條文は国にも一般国民、法人同様に適用があるものと了解いたしているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/22
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023・中村幸八
○中村(幸)委員 次に追加鉱物のことについてお尋ねいたしますが、今回は新たに石灰石、ドロマイト、けい石、長石、ろう石、滑石、耐火粘土この七種の鉱物を新しく鉱業法で鉱物に指定しているのでありますが、これらの鉱物を追加指定した理由についてお尋ねいたしたいと存じます。
それからついでにお尋ねいたしますが、これらの七種の鉱物のほかに、なお法定外の鉱物としてはぺントナイト、酸性白土、けいそう土、陶石、ひる石、雲母があるのでありますが、そのうちでも特にべントナイトは頂戴した採石法関係の資料によりますと、二十四年度の生産額は二十五億円に上りまして、他のものよりも断然産額が多いのであります。また事業社の数は三十八あります。従業員の数も九百人に達しているのでありまして、掘採方法は坑内掘りを主とするというように、鉱業法上の鉱物に指定するのに適当を失しているようにも考えられないのであります。これらの点についてお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/23
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024・徳永久次
○徳永説明員 七種の鉱物を追加鉱物にどういうことで選んだかというお尋ねでございますが、これは先ほど申し上げた新法の立案に数箇年もかかつたわけでありますが、その際にただいま中村委員からお上げになりました、いわゆる学問上鉱物と言われるものは全部候補に上げてこれを委員会で審議されたわけであります。結局におきましてこの審議はその鉱物自体の用途の需要程度とか、あるいは需要の現在とか将来の状況、一口に言いますれば、国民経済上の効用なり重要性というような観点に立つて、もう一つはそれを鉱業法の鉱物扱いいたしますことは、一つの義務が伴うと申しますか、採掘自体を鉱業法の鉱物としての扱いをすることによりまして、合理的にやらしめるということのために、現在の鉱業法の施行状況が資源との関係から見て、あるいはその規模から見て、どうであるか。またそれに関連して保安法の適用があるわけでありますが、そうい義務を課する適当な段階に来ておるかどうかということ等を一つ一つ検討いたしまして、その結論がこの七種のものを現在の段階においては、適当と見るかということになつたわけであります。ただいまお尋ねのありましたベントナイトにつきまして、その生産額二十五億円というお話でございますが、これは私どもがお配り申し上げておる資料でございまして、それを引用されたと思うのであります。どうも自分で出して置きながらはなはだ申訳ございませんが、單位の間違いもあつたように思いますので、再調査いたしましてその間の重要度その他を御説明申し上げますが、先ほど申し上げましたような標準なら、長年の検討、デイスカツシヨンの結果として、一応鉱業法の扱いには到達したということになつたのであります。ただこの鉱業法と合せまして採石法を御承知のごとく提案申し上げておるわけでありますが、採石法は鉱業法ほどややこしい扱いはいたしておりませんが、同時に事業者としては、法律的な背景の何もない状況よりも、その権利も相当安定して仕事ができるということをねらいまして、この採石法案を御提案申し上げた次第であります。先ほどの標準なり議論の結果落ちました鉱物につきましては、採石法の適用を受けるという扱いにいたしまして、その方の保護なり監督を、鉱業法に準じた程度の軽い形で扱うということが、適当ではなかろうかと考えまして、さような取扱いにいたしてあるわけであります。ただ比較検討、判断の問題になつて参るわけでございますが、私ども業界あるいは学界その他大勢の委員の方々の御判断を尊重いたしまして、この法案には、七種に落ちましたものは採石法に入れるというふうな取扱いにいたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/24
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025・中村幸八
○中村(幸)委員 二十五億は何か單位が違つておるかもわからない、こういうお話でありますが、よくその点お調べになつて、後刻お答え願いたいと思います。
それから耐火粘土でありますが、耐火粘土のうちでも、多治見地区の耐火粘土は、耐火と申しましても価格も低廉でありまして、きわめて小規模経営のものが大部分を占めておる状態でございます。もしこれに鉱業法を適用するとすれば、業者の負担が過重となり、その存立が困難となるおそれがあるので、耐火粘土は品質により、あるいは地区別に区別して、多治見地区の耐火粘土は法定鉱物より除外してほしいという意見が出ておりますが、これに対する当局の御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/25
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026・徳永久次
○徳永説明員 多治見地区におきまする耐火粘土の現在の開発利用状況というものは、ただいま中村委員からお話がございましたように、若干特殊の状態になつておることは確かでございます。耐火粘土それ自体として、耐火粘土の用途に適当するごとく利用もされておりませんし、あの地方におきましては陶磁器の原料というふうに利用されておりますし、またその利用の形態がきわめて小規模の開発利用という形になつておることは、お話の通りでございます。ただこの点の扱いをどういうふうにした方が最も適当であろうかと考えまして、この委員会でも現地におきまして公聽会をおやりいただく等の手続をやつていただきまして、また私どもも現地へ係官を実地調査に派遣いたしまして、いろいろと実情を調査いたしておるわけでございます。ただ一部特殊扱いをしろという御意見もございますが、先般の通産委員会からの現地調査の際のその場の空気としましては、特殊扱いをするに及ばずという御意見の方が大多数であつたというふうにも、私聞いておるわけでございます。追加鉱物につきましては最初に施行法の概要で申し上げましたごとく、現在仕事をしておる者は若干優先的に取扱い等もいたしますし、多治見地区だけの特殊の事態によりまして、地方の町村等の、いわゆる現地の業者との提携のしようによりまして、この法律にそのまま乘つかつても、最初の権利の設定のときのやり方いかんによりまして、あるいは支障なしに行き得るのではなかろうかというぐあいにも、私どもただいまのところ見ておるわけでございます。ただ何分相当影響も大きいと申しますか、業者も小そうございますので、その間に無用の御迷惑をかけることも私どもの本意とするところではございませんので、その点なお現地の事情等によりまして、現行法通りで十分のしのぎがつくものかどうか、もしそれがしのぎがつかない場合には、どういう特殊扱いの特例を認める必要があるのかどうか、いま少しく私どもとしても検討さしていただきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/26
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027・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 今局長の御答弁の中に、通産委員会からの調査のときに、現地の大多数の意向としては、特殊扱いをするに及ばずという御意見であつたという御答弁であります。私の聞き違いかもしれませんが、もしそうだとすると、少し違うようです。もう一応その点はつきり御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/27
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028・徳永久次
○徳永説明員 私ども直接会議に出席したわけではございませんが、その会議の際の議事録等を拝見いたしますと、確かに特別扱いをしろという御意見も相当出たわけでございますが、それに反対される御意見も相当出まして、むしろ声の小さい大きいによつて判断するわけにも行かぬのかもしれませんが、特殊扱いにするに及ばずという議論の方が、勝ちを占めたと申しますか、そういう印象であつたというふうに、私ども実は了解いたしておつたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/28
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029・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 それは局長のたいへんな見当違いの御見解で、それは逆なんです。賛成する側の人もあつたわけですが、多治見地区としては大多数の声は、ほとんど九十九パーセントまでは、この適用を受けては困る、こういう意見だつた。私はその点についてはまた私の質問のときに申し上げますが、そういう御見解ですと、大分見当が違いますから、それはひとつ訂正してお考え願いたいと思います。多治見地区としましては、大多数が鉱業法の適用をされることは困るということになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/29
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030・徳永久次
○徳永説明員 ただいま私の方の係官から、私の了解が間違つておるということでございます。あの委員会におけるデイスカツシヨンは、耐火粘土全体のデイスカツシヨンと、多治見地区のデイスカツシヨンと、両方混線したような議論になつておつた模様でございます。多治見地区自体としては、圧倒的に特別扱いをしろという御意見が強く、耐火粘土全般の問題としては、耐火粘土だからといつて鉱業法の扱いにしないようになつては困る、やはり鉱業法の扱いをしてもらわなければ困るという御意見であつたようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/30
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031・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 耐火粘土全体としては、適用を受けなければ困るという御意見だつたということですが、しかしそれも違うのです。多治見地区としては、その区別は非常にむずかしいから、たとえばゼーゲル錐何度で区別するかということになると、非常にむずかしくて、実際問題としては区別できないことになるから、鉱業法の適用を受けることは困るという意見なんで、その耐火度の強いものと弱いものとの間に、明確な区別が、法的にも実際問題としても、つけられればさしつかえない、こういう意見が大多数ですから、その点も局長として了解していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/31
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032・中村幸八
○中村(幸)委員 鉱業法を適用いたしますと非常に利益する面もあるわけであります。しかしまた一面たいへん手続等がめんどうになることもありますし、今加藤委員からのお話の通り区別するということも技術的になかなかむずかしい点もありますので、今後十分現地の実情を御調査になつて、さらに立法技術上はたして区別することが可能であるかどうかというようなことも御研究の上善処せられたいと思うのであります。
それから次は改正案におきましては、現行砂鉱法を廃止いたしまして、新たに砂鉱を鉱種名として追加しておりますが、砂鉱とその他の鉱物の区別は單に鉱床による区別でありまして、その判別は非常に困難な場合もあるのであります。そこでむしろ鉱脈鉱床も沖積鉱床も同一地域内にあるものについては同一人に採掘せしめる方が便利であると思うのであります。そこで金鉱は砂金を、鉄鉱は砂鉄をというふうに、現行の鉱種名は砂鉱をも合せて新しく採取せしめるということで、砂金という鉱種名を追加することにしたらどうかと考えますが、その点についてどういうお考えでありますか承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/32
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033・徳永久次
○徳永説明員 砂鉱と砂鉱でない鉱物との区分をなくして、全部一本にしたらよいではないかというようなお話でございますが、同じ金なら金につきまして、砂金とそうでないものとが鉱業法に上つておるようなかつこうになつておるわけでありますが、これは現実にいろいろ調べてみますと、砂鉱目的以外の鉱業権が同じ地域で砂鉱をとつておるという例はほとんどないようであります。砂鉱の掘採はほかの鉱物とは経営の規模も異なるのでありまして、同一人が行うことは適当ではない、不便だということからさようなことになつておるかとも思うわけであります。逆に申しまして、砂鉱の目的で砂鉱を発見した人に対しまして、その地下にあります砂鉱以外の鉱床についての権利を與えますことも、その砂鉱をやるつもりの人がほかのものをやるということは先ほどの逆でございますが、その規模経営の関係から申しましても、合理的な開発が行われることも考えにくいのではないかというふうに思うわけであります。また租鉱権のことを考えましても、租鉱権は新法の中に書いてありますごとく、設定行為によりまして成立するものでありまして、これは強制するというふうな方法をとつておりませんので、権利者と一部の鉱区を借りて開発したいという人との相対ずくの話合の建前にいたしておるわけであります。鉱業権者が砂鉱も開発しないし、租鉱権の設定にも応じない場合に、砂鉱がとれないままに放置される、死蔵されるというようなこともありまして、むしろ適当ではないのではないか。一口に申しますと、開発の主体の規模、業態の相違というものは相当顯著でありまして、別扱いにした方が適当ではないかというところから、砂鉱法と鉱業法というものは現行法には別になつておりますけれども、法体系そのものとしては、そうさしたる別扱いにする必要はありませんが、鉱種としてはやはり砂鉱とそうでない鉱物とは別扱いにした方が、地下資源の合理的な開発上、業態の相違等から考えて適当であるというような判断で、法は一本にしますが、鉱種は別にして、別々に開発していただくというようなことを考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/33
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034・中村幸八
○中村(幸)委員 次に鉱区面積の点についてお尋ねいたしまするが、現行法によりますと、石炭鉱区の最低面積は五万坪であります。これを約二倍の三十ヘクタールとした理由をまず承りたいと思います。この五万坪は従来長年にわたつて一企業單位として何ら不利、不便もなく実施されて参つたのでありまして、これを二倍にするという場合には、実際必要以上の広い鉱区の出願を強要せられるということにもなりますし、鉱区税の関係もありまして、中小炭鉱を圧迫するという結果になるおそれがありますので、この点に対するお考えをお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/34
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035・徳永久次
○徳永説明員 ただいまお話のありました鉱区は、大ざつぱに見ますと、現行法に比べまして新法はそれぞれの金属類につきましても、石炭につきましても約倍に広げておるわけであります。これは現行法の鉱区の実情と申しますよりも、むしろ現に仕事が行われております実情と、それから資源の合理的な開発、これは技術の進歩等とも関連があるわけでありますが、石炭につきましてはただいまお話のありました五万坪というのは現在の技術によりました場合には、合理的な開発という見地からはむしろ小規模過ぎるのではないかという委員会での意見の結果、かような取扱いにしたわけであります。従いましてお話のごとく出願につきましては最低十万坪ぐらいのことになつて参るわけであります。しかし実際掘採の行われます実態を見ますれば、十万坪の方がむしろ適当ではないか、ただこの際におきましても基本的には十万坪でありますが、鉱床の状況、あるいは掘残し等の関係で、租鉱権というものも認められておるわけでありますし、租鉱権の認められておる状況とあわせて考えますれば、むしろ基本的な権利の單位というものは、やはり新法のごとく現行法よりも倍ぐらいの方が適当ではないかということに、委員会の審議の結果なりまして、それによつて決定いたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/35
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036・中村幸八
○中村(幸)委員 次に土地調整委員会のことについてお尋ねいたしますが、この土地調整委員会は、第十五條の鉱区禁止区域を決定いたしましたり、あるいは第百八十七條に列挙するような、いろいろな重要なる裁定をしたりする非常に大切な機関であります。この土地調整委員会がどういうメンバーをもつて構成されることになつておりますか、現在政府においてお考えになつておる点を承りたいと思うのであります。と申しますのは、もしこの土地調整委員会に公共に関係する方々が入つて来ない場合におきましては、公共の利益について一方に偏して決定されるおそれがあるので、この土地調整委員会の構成ということはたいへん大事だと思うのであります。この点についてお尋ねいたしまするが、さらにこの土地調整委員会設置法の全体の構成を御説明を願うことになつておりましたが、先ほど御出席がなかつたので、まだその御説明を承つておらないようなわけでありますから、ついでに全体の構成につきまして、お話願つたら幸いと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/36
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037・小金義照
○小金委員長 それではまだ説明を求めておりませんでした土地調整委員会設置法案の要綱につきまして、これから説明を求めます。法制意見第一局長、高辻正巳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/37
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038・高辻正巳
○高辻説明員 土地調整委員会設置法案が、前国会におきまして提出の運びに至りませんわけでございまして、ただいま立案の過程にあるわけでございますが、仰せのごとく鉱業法案なり、採石法案なりと非常に密接な関係がございます。その概略についてお話を申し上げたいと思います。
この法律案は今申し上げます通りに、鉱業法案なり、採石法案と密接な関係のあるものでございますが、この鉱業なり、採石業なりは、一方におきまして公共の福祉のために重要な企業でありますから、大いにその開発を獎励しなければならないことはもちろんでありますが、他方におきまして、農業、林業、その他の産業、それから一般公益に重大な影響を及ぼすことも否定することができないのでございます。そこで一定の土地をいかなる目的に用いることが最も適当であるかという判断が重要となるのでありますが、このような判断は、一産業の保護助成あるいは土地の自然美の維持保存というような、一方的な立場からのみなされるべきではなく、全産業または一般公益との総合調整という広い立場から、公正妥当になされなければならないというふうに考えられるのであります。こういう観点からしまして、土地調整委員会を設置しまして、土地に関して鉱業、採石業、農業その他の産業、それから一般公益との間の調整をはかることを主眼といたしまして、ただいま御指摘のようないろいろな許可認可等について、一定の事務をつかさどらせることを、この法律案の内容に盛つたわけでございます。
ごく概要を系統的に申し上げますと、まず第一は土地調整委員会の組織とその権限でございます。土地調整委員会は前に申し上げましたような見地から、その独立性を保障いたしますために、これを総理府の外局とするようなことになつております。土地調整委員会は委員長、それから委員四人で組織することになつております。委員長及び委員の資格といたしましては、人格が高潔であつて、公共の福祉に関し公正なる判断をすることができ、しかも法律または経済に関する学識、経験を有することを必要といたしまして、その任命につきましては国民的信望のある人が選ばれるよう、両議院の同意を得ることにいたしてございます。また委員長及び委員は裁判官に準じまして、法律に定められました特別の事由がない限りは在任中その意思に反して罷免されることがないことにしておるのでございます。
なお土地調整委員会の事務を処理させるために、事務局を設けることといたしております。土地調整委員会は、前に述べましたような所掌事務を遂行するために、主として鉱区禁止区域の指定及びその解除をなす権限、鉱業権の設定または取消しに関する異議、鉱区の増減に関する異議、採石権の設定に関する異議及び鉱業または採石業のための土地の使用または收用に関する異議の裁定を行う権限、それから採石権の設定に関する決定を承認する権限を有するほかに、法律に基いて土地調整委員会に属せられた権限を有するのでありますが、その所掌事務につきましては、多くの委員会に認められておりますように、土地調整委員会規則を制定することができるようになつております。
第二は鉱区禁止地域の指定なり、その解除を行う場合の手続でございますが、この指定なり、解除が当該地域の土地所有者その他の利害関係人の権利に重大な影響を與えることを考慮いたしまして、この指定または解除を行います場合には、通商産業大臣の意見を聞くほか、特に聽聞会を開きまして、一般の意見をも求め、場合によつては利害関係人を審問することといたしまして、指定または解除の妥当で適切なことを確保するための用意をいたしておるのでございます。
第三は、土地調整委員会の裁定に関する手続でございますが、裁定は土地調整委員会の行いまする司法的な処分でありますので、この裁定が公正に行われますために、裁定になるまでの審理手続につきましては、裁定を申請しましたものと、それから処分庁の両方を事件の関係人といたしまして、相対立せしめるような訴訟的な形式をとることになつておるのでございます。そうして審理のために必要な資料の調査收集につきましては、土地調整委員会は行政機関に対しまして、報告なり、資料の提出を求めることができます。あるいは申立により、または職権によりまして、事件関係人または参考人の審問、鑑定、物件の提出、立入り検査等の処分を行うことができることと一応考えておるのでございます。
第四は、土地調整委員会の裁定に対する訴訟でありますが、土地調整委員会の裁定、それから裁定の申請を却下する決定に不服のあります者は、土地調整委員会を被告といたしまして、訴えを提起することができるのでありますけれども、裁定の目的となります事項を取扱いますには、高度の專門的、技術的な知識経験が要求されるのでありますから、裁定を申請し得る事項につきましては、特に土地調整委員会の裁定を経た後でなければ訴えを提起することができないものといたしました。また土地調整委員会の技術認定に一応の信頼を置きまして、土地調整委員会の認定した事実は裁判所においてこれを立証する実地的な証拠があると認めた場合におきましては、裁判所を拘束するということが考えられておるのでございます。さらに土地調整委員会を尊重する趣旨に従いまして、訴えの当事者が裁判所に対し新しい証拠を申し立てることができる場合、裁判所の裁定の取消しまたは変更をなし得る場合をかなり制限すると同時に、裁定を変更することができる場合には、裁判所の裁量により、事件を土地調整委員会にさしもどすということもできるようにしてあるのでございます。
第五は罰則の点でありますが、土地調整委員会の行う事件関係人及び参考人の審問、鑑定、物件の提出または検査等の処分の執行を確保いたしますために、これらの処分の違法を罰することといたしております。
以上がこの法案の大綱でございますが、ただ関係方面との完全なる了解にはまだ達しておりませんので、ただいま御説明したもの以外に若干の相違が出るかもしれませんが、大綱としましては、今申し上げたことにかわりはないと存ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/38
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039・中村幸八
○中村(幸)委員 次は鉱山局の方にお尋ねいたしますが、鉱業権の設定の出願をいたしますと、これによつて将来鉱業権を取得し得る主体権ができるのでありまして、これは一種の財産権とも見られるのでありますが、現行法におきましては、特に出願人の名義変更の制度を認めておるのであります。ところが改正法案におきましては、この制度を廃止することにいたしております。これは発見者保護という立場から申せば、むしろこの制度は存置した方がいいように考えるのでありますが、どういうふうにお考えになりましようか、お伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/39
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040・讃岐喜八
○讃岐説明員 現行法では出願中の名義変更を認めているのでございますが、出願中の権利はまだまだ未決定のものでございまして、公益上の支障の有無とか、先願の有無または他の鉱区との重複関係等を調査した上で初めて鉱業権と見るかどうかがきまるのであります。こういう不安定な地位のものが取引の対象となるということは、関係者にとりましては非常に危險でございまして、処分をする行政庁の側でも転々と出願人がかわるときには、処分上種々支障を生ずるのであります。明確な権利となりましてからならばけつこうでございます。こういう意味でブローカーの存在といいますか、転々として出願中の不安定な権利が移転するということをこの際否定したいという趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/40
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041・南好雄
○南委員 出願中の権利の移転を認めないという御趣旨ですが、それは実際試掘の実態から見ますと、そういう不安定なものはだれも買いたいという者はないのであつて、先願のないもの、おそらくは一定の期間がたてば必ず鉱業権として認められるもの、そういうものに限つて取引の対象となつて来るのであります。
〔委員長退席、多武良委員長代理着席〕
しかもこの出願提出中の鉱業権の転々讓渡は、鉱業法以来ずつと認められているものであつて、急激にこれをそういう何と申しますか、独断的な考えで否定することは少し行き過ぎのように思うのです。もう一ぺん十分考えていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/41
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042・讃岐喜八
○讃岐説明員 御意見の通り、その転転します権利は相当有望なものであるということは確かであると思うのでございます。ところが実際の運用におきまして、実ははつきりした鉱業権になりましても転々と売買されるものが多いのでございます。これは試掘権のままで実際開発しないで、売買を目的として鉱業権をとつておる、こういうふうに見受けられる事例が多いものでございますから、少くとも出願中のものだけは今度は移転を否定しだいというのが提案の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/42
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043・南好雄
○南委員 一つの考え方だろうと思いますが、それは鉱業権であろうが出願中の権利であろうが一つの形成権でありまして、この期待権をそういう簡單な理由で讓渡を禁止するということは、初めて法律を設けるならそれは一つの考え方でありますけれども、鉱業法以来長らくそういう慣習になつておつたものを、本法改正を機会としてそういう行き過ぎたことをやることは、私は鉱業発達のためにかえつて害があるのではないか、こういうふうにも考えられるのであつて、できれば旧鉱業法の方がむしろ鉱業発達のためにかえつて益がある、こういうふうにわれわれは考えておるのですが、その点もう一ぺんよくお考え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/43
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044・讃岐喜八
○讃岐説明員 御意見ごもつともな点があるのでありますが、提案しました趣旨を御説明申し上げておるのでございまして、ひとつ考えさせていただきたいと思いますが、もう一つ申し上げたいことは、今度の新法では鉱業の実施につきまして義務を持たしておるのでございます。鉱業権が設定されましてから六箇月以内に鉱業に着手する義務を有するという新しい考え方を盛つております。そういう一連の考え方から、出願なり鉱業権を持つた人は必ず自分で開発するのだ、こういう精神を貫きまして、関連してこういう考え方をとつておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/44
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045・中村幸八
○中村(幸)委員 この鉱業権設定の出願中における権利の移転の問題については、ただいまも南委員から御意見が出た通りでありまして、一種の期待権がこれによつて発生するわけであります。この期待権を保護するということは最も必要なことではないか。特に鉱山の発見者保護の立場から申しまして、金融が詰まつた、何とかしなければならぬがどうにもならぬというような場合も起り得るわけでありますから、その場合に移転ができるという制度をぜひとも存置したいと思うのであります。特に他の法令、たとえば特許法等にも出願中の権利の移転の制度はあるのでありまして、鉱業法だけの問題ではないと思うのであります。全体の法の考え方から申しましても必要なように思うのでありまして、十分御研究の上善処せられるよう希望いたします。
次に試掘権の存続期間についてお尋ねいたします。現行法におきましては試掘権の存続期間は四年となつておりますが、改正案におきましては二年となり、必要の場合さらに一回を限つて二年の延長を認める、こういうことになつておるのであります。存続期間を短縮いたしまして試掘や探鉱を促進し、またいたずらに多数の権利を独占しておるという弊害を除去する御趣旨には賛成でありますが、これを実情について見ますならば、改正案の二年ではむりではないかと考えるのであります。特に石油、アスフアルト、天然ガスのごときは、一本の試錐にも長期間を要するだけでなく、地質調査方法が進歩いたしました今日、この地質の調査には各種の方法を併用いたしまして、広範囲にわたつて探鉱を実施しなければならぬというような事情もありますし、またその賦存地帶がたまたま積雪地帶にあるという悪條件もあるのであります。さらにまた石炭においても、今後だんだんと深度が深くなり、千五百尺あるいは二千尺ともなりますと、一本の試錐に二年もかかる場合もあるのであります。特に北海道方面におきましては、十二月から翌年の五月までは雪に埋もれて全然作業ができないというような事情もあるのでありまして、改正案の二年というのはいささか短かきに過ぎはしないかと思うのであります。そこで試掘権の存続期間は現行通り四年とし、さらに誠実に各種の方法を講じて探鉱いたしまして、いま一歩というところで権利を失つて、他人にとられるということはまことに気の毒でありますので、かかる場合にはごく嚴重な條件をつけて一年なり二年、もう一ぺん認めてやるということにしたらどうかと思うのでありますが、この点はまことに重大な問題でありますので、政府におきましても十分御研究の上、御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/45
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046・徳永久次
○徳永説明員 ただいま御質問のございました試掘権の期限を、新法によりまして二年にしたことの可否について——四年、二年にした方が適当じやないかという御質問でございますが、この点は私どもとしては非常に苦慮いたすと申しますか、むずかしい問題と考えておるわけであります。と申しますのは、現在の探鉱の技術等と関連いたしまして、どこが適当な期間の定め方であるかというようなことから判断されまして、今お話のありましたごとく、と同時に日本の地理的な條件と申しますか、寒い国も暖かい国もございまして、仕事のできる期間の制約を受けておる地帶もあるわけでございます。原案は若干探鉱の技術の進歩という点を高く評価し過ぎたというきらいがあるかとも、実は思つておるわけであります。この原案ができるにつきまして、委員会にもずいぶん議論が行われたのでありますが、一応この委員会では原案のような趣旨になつておつたのであります。しかしながらただいま中村委員から御指摘のございましたように、この通産委員会の各地におきましての公聽会の状況から見ましても、この期限が辛きに過ぎるのではないか、十分の試掘権の期間中に探鉱を行うには余裕が少し少な過ぎるという御議論が各地で出ておつたような状況でございます。この通産委員会としても、あるいはこれを変更しろという御意見の出ることも、私ども予想をいたしておつたようなわけでございます。なお委員会として各地で行われました公聽会の、大多数の御意見の状況ということも十分頭に入れまして、この立案に関係しました方々にもその状況を伝えまして、重ねてどの辺が最も適当であるかということを私どもといたしましても率直に考えてみる必要があるのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/46
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047・田代文久
○田代委員 ちよつとこれは参考までにお尋ねしますが、外国特にアメリカなんかは試掘権の期間はどんなになつておりますか、わかつておれば御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/47
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048・讃岐喜八
○讃岐説明員 日本の制度と仕組みが大分違つておるのであります。大体二年と記憶しております。それでこうなつておるのでございます。アメリカでは試掘権というような権利は與えられないのです。政府と試掘をやりたい人の間に契約といいますか、單純なパーミツトが與えられる、こういうことでございます。権利じやございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/48
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049・南好雄
○南委員 日本の鉱業法とアメリカの鉱業法は法律のでき方が違うのでありまして、日本の鉱業法の昔からの考え方は大陸型でありますか、ドイツ、フランス、あたりの試掘権の期間は今どうなつておりますか、御存じならばちよつとお教え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/49
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050・讃岐喜八
○讃岐説明員 詳しいことを今申し上げて間違うといけませんから資料にしてお出しいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/50
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051・南好雄
○南委員 先ほど中村委員からお話がありましたので、私つけ加える必要もないのですが、出願中の鉱業出願権の保護とか、あるいは今の試掘権の期間を制限するというような考えは相関連した思想だろうと思うのであります。先ほどだれか政府の説明員のお話では、二年間に着手の義務を持たす、こういうお話もありました。ところがそれは観念的には着手ということは簡單には言い切れますが、何をもつて着手するかといえば、今日の鉱業法も着手であります。そういうことで結局中小鉱業と申しますか、中小鉱業をやることによつて、なるべく国家の無形的権利を有形ならしめて国富を増加して行こうという広い大きな意味の考え方を一つの型にはまつた考えで、年限を減らしてみたり、出願中の権利を制限してみたりするようなことは、むしろ時代に逆行する考えのように思うのであります。鉱業はなるほどお説の通りこれを開発するためには莫大な資金もいるのであります。どうしても大企業になりがちでありますが、これを育てて行く、これを培養して行く中小鉱業の目に見えぬ大きな犠牲ということを考えて行かなければならぬ。改正委員会なんかではしばしば大きな鉱業者の代理が出ておりまして、自分たちに都合のいいような意見をとかくわれわれも昔聞いたのでありますが、そういう意見に動かされることなく、日本の鉱業法、また日本の鉱業権が寄つてもつて育つて来た沿革を十分おくみとりになつて、出願中の権利を保護したり、試掘権の期限を今度のように二年にするようなことをしないで、昔のようにやつて、また中小鉱業がよつて育つて行くように特段の政府の御配慮を特にお願いしたいと思うのであります。少し今度の改正法は大企業保護に片寄りすぎておるように思うのであります。ちよつと御参考までに昔からの考え方を申し上げて、政府に改正の意思ありやいなやをひとつとつくりお伺いしておいて、通産委員会としても後ほどこういう方面について相談してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/51
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052・中村純一
○中村(純)委員 この試掘権の新法による二年というのは短かきに失するという先ほど来の中村委員その他の御意見につきましては、私はまつたく同感なんでございますが、かりに二年なら二年でいいのですが、新法によつて旧法と違う年限が決定された場合に、先ほど配付せられました資源庁鉱山局の鉱業法施行法案要綱によりますと、旧法による権利すなわち採掘権、試掘権、砂鉱権、使用権は新法施行の日に新法による権利となつたものとみなす、こうあるのですが、旧法によつて試掘権を得ておつたものが、新法施行後とたんに二年を経過しておつた場合にはどういうことになるのでありますか。それで消滅させるお考えでこれを立案されておりますか。その点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/52
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053・徳永久次
○徳永説明員 ただいま南委員から重ねて御質問がありましたが、あとの御質問を先にお答えしておきます。御質問のございました試掘権の期間が新法に乘り移るという経過は非常に簡單に書いてございますが、試掘権につきましては、現行法では延長のない四年ぽつきりの制度でございます。新法施行と同時に残存期間が二年より長くても、それは現行法の四年になるまで存続させることになつております。ほかのものと一緒に書きましたが、原則的には新法に乘り移るということになるのであります。試掘権につきましては、現行法時代に得られました試掘権は、その現行法による期間中は存続するということになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/53
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054・中村純一
○中村(純)委員 今の御答弁で趣旨はわかるのでありますが、それは法理上当然そういうことになるのですか、あるいは経過規定を必要とするものでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/54
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055・徳永久次
○徳永説明員 施行法の法案もお手元にお配り申し上げたと思いますが、その中の第三條の第一項に出ております。
〔多武良委員長代理退席、委員長着席〕
それから先ほど南委員から御質問がございました試掘権の期間の点なり、あるいは出願中の移転の取扱いを指定した原案の取扱いについて、政府として考え直す意思があるかどうかというお尋ねでございますが、これは先ほども私申し上げましたごとく、私どもとしてこの法案をつくりますには、相当愼重にやつたつもりでございますが、しかしながら何分にも関連の多い、また重要な基礎法のことでございますので、愼重の上にも愼重にいたしまして、少しでもりつぱな法案にしたいというふうに考えておるわけであります。この国会におきまして、ことに通産委員会でこの休会中に御熱心に各地をおまわりいただきまして、公聽会等を開いておることでございまするし、この際私どもの係官も一緒につぶさに現地にお供いたしまして、この状況を見ておることでございます。私どもといたしましてはこの委員会におきまして、現地において出ましたご意見と実情によりまして、変更の御意見が出ました場合におきましては、極力その線に沿うことく考えて参りたいというつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/55
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056・中村幸八
○中村(幸)委員 この存続期間の問題につきましては、私ども先般国会の国政調査として東北、北海道方面に出張いたしました。また他の一班は九州方面にも参つたのでありますが、いずれの地域に参りましても、二年々々では短か過ぎる。四年、二年にどうしてもしてもらいたいという非常に強い御要望もあるのであります。そこで来る二十六日、二十七日の公聽会の結果を見まして、通産委員会としては、あるいは修正案を出すようになるかもしれませんが、政府におきましても十分善処せられんことを希望いたします。
次にお尋ねいたしたいことは、保護鉱区あるいは予備鉱区というのがあるのは御承知の通りでありますが、この保護鉱区あるいは予備鉱区というところの区域には鉱物が存在しない場合もありますし、また炭層が発達しておらないために稼行にならないような場合もあるのであります。また今すぐには各種の事情で掘採に着手し得ない場合もあるのでありますが、現在掘採しておる鉱区と密接な関係がありまして、保安の上からも事業を経済的に経営する上から申しましても、ぜひとも保有しなければならぬ区域であると思います。ところが第十八條の五項によりますと、「試掘権者が誠実に探鉱した事実が明らかであり、且つ、鉱床の状態を確認するため更に探鉱を継続する必要があると認めるときでなければ、延長の許可をしてはならない。」とありますので、この條文をこのまま適用すれば、保護鉱区あるいは予備鉱区については延長は認められないことになりますが、これは鉱山にとつては生命とも申すべき大切な鉱区でありますので、何らかの形で保護する必要があるものと思うのであります。この点について政府はいかにお考えになつておるか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/56
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057・徳永久次
○徳永説明員 鉱業の経営の実際上、いわゆる保護鉱区に該当するようなものが存在しておることは御承知の通りであります。その形態は従来結局試掘権の形で温存しておつたというのが実情であろうかと思うのであります。従つてこの試掘権の問題は昔から現行法に至りますまでの間に、実は非常にいろいろな過程を通つておるのであります。鉱業の実態から申しまして、山の開発資源は有限でございますし、企業は永久であるというようなことの調節から考えますと、企業は現在仕事しておる鉱区以外に、それがなくなつた場合に、次にやる鉱区を用意しておかなければならないというような形にならざるを得ないかと思うのであります。それを鉱業法に関連して考えますと、そのためには試掘権というような形で長く置けるという制度が望ましいというような結論になつて参るかと思うのであります。他方鉱業の全体的な開発というようなことを考えますと、試掘権のままいつまでも置けるというのでは、その権利の上に眠ると申しますか、仕事にかからないままでじつと置いておくものばかりふえるというようなことになつて、鉱業法の体系として考えました場合に、そこに異論が出て参ります。結局この両方の摩擦と申しますか、関係から過去におきまして鉱業法の試堀権は、あるときは何度も何度も優先出願で更新ができるという仕組みになつておりますし、それが現行法のごとく幾たびかいろいろな変化を経まして四年ぽつきりというような形に相なつておるものと思われるわけであります。従つてこの試掘権の期間をどの程度に定めるかにつきまして、ただいま保護鉱区を残す問題と、それから鉱業権の上に眠らないようにするものとの調節をはかるためにどの辺が適当かというような問題になるのじやなかろうかというような感じがいたしておるわけであります。新法が先ほど来御議論がありましたごとく、現行法の四年ぽつきりより狹く短かくついておる、この調節の仕方が若干行き過ぎであるのじやないか。むしろそれのみならず、合理的な試掘をやるにも不十分な期間ではないかというような御議論が出ておるわけでございまして、この期間をどうするか、今の日本の鉱業の段階あるいは鉱業の開発の促進という関係から、現在の段階においてはどの辺が適当な期間であり、延長の程度として適当かという判断に帰着するのじやないかと考えておるわけであります。先ほど来この期間をめぐりましていろいろ御意見がございましたごとく、私どもも率直にこの期間をどの辺にしたら適当かということを考えてみたいと思つておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/57
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058・中村幸八
○中村(幸)委員 いわゆる保護鉱区なるものは権利の上に眠つておるとかいう問題ではないのでありまして、この保護鉱区というものがなければ、安心して炭鉱の——あるいは金属鉱山の場合もあり得ると思いまするが、安心してその仕事ができない、保安上非常に心配だというので、保有しなければならぬ鉱区であるわけでありまして、この区域には多くの場合炭層は発達していない、あるいは鉱物が存在しないという場合もあり得るわけであります。これは存続期間の延長の問題だけでなくて、一般の問題から言つても、鉱物は存在しないが鉱区として設定しなければ非常に鉱山の経営上支障があるのだという区域でありますので、延長の問題とあわせて、もつと広い範囲において保護鉱区あるいは予備鉱区というものを認識していただいて、何らかの保護する規定を置いておく必要があるのじやないかと考えるわけでありますが、この点についてはなお十分御検討の上、適当なる処置を講じていただきたいと思うのであります。
次にお尋ねいたしますことは、現存の試掘権の存続期間についてでありますが、先ほども御説明がありまして、旧法による権利は新法施行の日に新法による権利となつたものとみなし、面積、境界及び存続期間に関する特例を認めた、こういうふうに鉱業法施行法案の要綱には書いてありまするが、実は現在大手筋の会社におきましては、何百という試掘権を保有しておるのであります。かかる多数の試掘鉱区を一時に探鉱するということは、人員やあるいは経費の関係からいたしまして、不可能ではないかと思うのであります。そこでこの現存する存続期間につきましては、どういう特例を認めたのか、この要綱でははつきりわからないのでありまするが、私どもは現存の試掘鉱区については、あるいは新法施行の日に新しく登録せられたものとみなすというふうにしていただくか、あるいはその存続期間は一応現行法による存続期間の残存期間にとどめるといたしましても、さらにもう一回の延長を特に認めるというようにしていただくことが、現在の鉱業界の実情よりして必要であると思われるのでありまするが、この点についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/58
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059・徳永久次
○徳永説明員 新法の取扱いから先に申し上げたいと思いますが、新法の取扱いにおきましては、施行法の第三條におきまして、旧鉱業法による試掘権の存続期間は、従前の存続期間の満了の日までとするというぐあいに規定いたしておるわけであります。これは従いまして新法が施行になりましても、従来のものは四年間の期間でありまして、新法がかりに原案通りに二年となりましても、もし残存期間が二年以上になつておるとしましても、二年以上現行法通り存続するということを書いておるわけであります。ただ今なお御議論がございましたように、現行法の二年、二年というものを四年、二年にしたらどうかというような御議論に関連いたしまして、現行法の二年、二年を四年、二年にこの原案をかえました場合に、現行法の四年ポツキリのものについても、なお二年だけ延長を認めたことにした方がいいじやないかというような御意見だと拝聽したのでありますが、もし新法の原案をかえまして、四年、二年というようなことにでもいたしました場合には、この経過措置としましても、既存の四年のものをさらに二年だけ場合により延長が認められるというような施行法の改正も行つた方が、両者の均衡がうまくとれるのじやないかというように考えますけれども、問題はいずれにしましても、原案をどの程度、どういう修正をするかという際の問題かと思いますので、ただいまはつきりどうこうということを申し上げかねるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/59
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060・中村幸八
○中村(幸)委員 次は採掘権の存続期間についてお尋ねいたしますが、採掘権の存続期間については三十年となつております。けれども、鉱山の経営というものは、初めから鉱区内の全鉱量を対象として操業するものではなく、事業の進むにつれて、予測しない鉱床が発見されることもありますし、また予想より鉱量が少い場合もあるのでありまして、鉱況いかんによつて、あるいはまた経済事情のいかんによりまして、採掘権を短期間に放棄することも起り得るし、また別子銅山のごとく、二百年も三百年も継続する場合もありますので、存続期間を初めから三十年と限定することは不適当のように考えるのでありまするが、いかがなものでしようか、お尋ねいたします。ことにこの御質問を申し上げる理由は、存続期間を三十年といたした場合、三十年の終りに近くなりますると、担保力が非常に薄弱になるおそれがあるのじやないか。つまり、あるいは存続期間延長の申請を忘れることがあるかもわからぬし、あるいはまた存続期間延長の申請をいたしましても、第十九條五項の規定によりまして不許可となるおそれもあるわけであります。従つてそういう懸念からいたしまして、担保力が非常に薄弱となり、金融上の不利を招くということもあり得るわけであります。何回でも延長ができるからいいではないかということでありまするならば、何も余分な手数をかけて出願をさせなくともいいじやないかという議論も成り立ち得ると思うのであります。またいたずらに永久に権利を独占さすのはよろしくないという御意見もあり得ると思いますが、用のない者は鉱区税を拂つてまでも、いつまでも持つておるはずはないのでありまして、自然に放棄するとかあるいはその他の理由によりまして整理されて来ると思うのであります。この採掘権の存続期間の問題もたいへん重大な問題でありますので、はつきりと御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/60
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061・徳永久次
○徳永説明員 ただいま採掘権の存続期間を三十年に切つたのは何ら実益がなくて、むしろマイナスにしか考え得られないではないかというような御質問だつたと思いますが、私どもこの條文につきましては、この條文に出ておりますごとく、実質的には三十年で切つてしまうのだという観念はほとんど持つていないのでありまして、山の壽命がある限り何度も繰返して継続ができるというふうに原案をつくつたつもりであります。ただ一応の存続期間を三十年と切りましたのは、鉱区の最低坪数の制限と同時に、最高の坪数の制限がございますが、一鉱区ごとに見ますと一応これだけの期間がございますれば、その際にあらためてその価値を再検討してみる適当な時期でもあるということで、三十年というのは鉱業の実情から見て手ごろの期間であろうというので定めたので、期間の延長のために特に登録税をとるかというようなことも何ら考えてもいないわけでございます。ただこの鉱業法ができますまでの間にいろいろと議論ございまして、外国の法令等によりますと、鉱業権の内容を、鉱業をやる人と国との間の権利関係を明確にする必要があるのではないかというような議論が出て参りまして、その際の議論の一つとしまして権利の内容を明らかにするとすれば、結局いつまでの権利であるかというようなことも、国との関係を明らかにする一つの方法であるというようなことで、実は現行法では無期限になつておりましたのを、一応期限をつけるということにいたした次第であります。但し最初に申しましたように、それによりまして、まだ山の価値があるのに期限が切れたらおしまいになるというようなことは好ましくないのでありまして、壽命がある限り何度でも延ばすということがほんとうの仕組みであるということから来た三十年でございまして、実質的には何ら支障がないというようには、この條文をつくつたつもりでおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/61
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062・中村幸八
○中村(幸)委員 何度も許すのであつて、別に登録税をとる考えじやないというお話でありますが、何度も許すなら、何もわざわざ手数な出願をさせなくてもよいと思いますし、また三十年の切れ目に再検討の機会を與えるという御説明もあつたのでありますが、鉱業を営む者は常に真剣でありまして、ぼんやりしているはずはないと思うのであります。わざわざ再検討の機会を法律によつて與えてやらなくても、鉱業権者は常に鉱業の内容その他を勘案しまして、一生懸命にやつておるわけでありますから、わざわざ三十年という期限を切るという必要はないと考えるわけでございます。この点についても通産委員会として、あるいは修正案を提出するようになるかもわからないのでありますが、政府においても十分御研究あらんことを切望する次第であります。
次は第四章の勧告及び協議の件でありますが、第八十八條には通産局長は「鉱業権の交換又は売渡について、当該鉱業権者に勧告することができる。」とありますが、局長の勧告によりまして協議に入りまして、協議がととのわなかつた場合、あるいはまた協議することができなかつた場合の結末について何ら規定がないのであります。これは次の第八十九條におきまして、通産局長が鉱区の増減の出願につき協議すべきことを勧告した場合の結末について、第九十條以下に詳細に規定いたしておるのと対照いたしまして、妙に感ずるのでありますが、何がゆえに第八十八條の鉱業権の交換、売渡しの場合には通産局長の決定の申請ができないようにしておるのか、その理由を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/62
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063・徳永久次
○徳永説明員 八十八條の鉱業権の交換、売渡しに関しまする通産局長の勧告につきましては、ただいま御指摘のごとく、勧告の結果としまして、当事者の一方に了解が得られなかつた場合に、跡始末をどうするかという條文はお話のごとく確かにないのであります。これは現行法よりその点は国の干渉の権力の規定が弱まつた形でつくられておるわけであります。実はこの法案ができますにつきまして、新憲法のいわゆる財産権の尊重という規定と現行法との調和をどの辺におくべきであろうかということがずいぶんと議論されました結果としまして、現行新憲法の趣旨から見ました場合に、交換、売渡しを国が場合によつて勧告をやり、さらに勧告を聞かない場合にはある種の決定をして、その決定に強制力を持たすというようなやり方は、財産権に対する国の干渉の行き過ぎとなつて、必ずしも新憲法の精神にそぐわないからというような気持から、かように勧告だけ行つて、勧告以上の決定あるいは強制等の措置を行わないというように改正いたしたわけであります。なお過去に飜りまして、戰時中にもこの種の規定があつたのであります。実際の運用等を考えてみますと、法律の強制力、強制的な規定をもちまして、交換、売渡しに対する国の勧告強制が行われた事例というものはほとんどなかつたというような実例等から見まして、むしろ法によつて阻止するというよりも、実際の相互の利害得失の状況というものを第三者の立場におきまして、通産局長が見まして交換、売渡しをなさつた方がお互いに得になりますよということを、詳細な科学的なデーターによる説明によりまして、納得していただいて、納得ずくで行くことがいいんではなかろうか。そういう道は全然残されてないわけでもなし、ただそういう行政の運用の妙にまつという気分だけを出して、最後はそれを強制するというところまで行くのは、新憲法の精神から見て非民主的ではなかろうかというような判断のもとにかような規定にいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/63
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064・南好雄
○南委員 今の鉱山局長の御返事ですが、勧告の本質的意味は、それがなければ通産局長は勧告ができないという反面的の解釈を持つておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/64
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065・徳永久次
○徳永説明員 いや勧告の規定がなければ勧告できないという反対解釈はとつておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/65
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066・南好雄
○南委員 そういう考えであるならばむしろこの規定は蛇足ではなかろうかと思うのであります。およそ規定がある以上は、その規定はやはり一つの意味を持つていなければいけないと思うのです。結局勧告の結果を強制することはできぬ。ただ一応品をきいてみるというだけならば、なくても通産局長は鉱業権の性質上当然あつせんもすることができれば、具体的にできるのであります。むしろ新法を制定する際においてそういういらぬ規定は削除すべきものではないかと思うのですが、そういう規定を置かれたほんとうの意味はどこにあるか、もう一ぺんはつきり御返事していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/66
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067・徳永久次
○徳永説明員 ただいまのお尋ねにお答えいたしますが、法律的に申しますれば——法律的と申しますか実際論といたしまして、八十八條の規定がなければ勧告できない性質のものではないと思いまするが、ただ何と申しまするか、心理的な効果と申しますか、法律に勧告の規定を挿入してありますると、同じ勧告をいたします際にも、責任者といたしまして勧告の内容についての十分な調査、判断研究を行いました結果としまして、妥当な、少くとも鉱業行政をあずかつておりまする通産局長としては、相当の自信を持つた勧告をするように相なるのではなかろうか。さようないわば法律的な効果ではございませんが、法律に基く勧告の形をとりましたことによりまして、勧告自体が愼重に行われ、従つてそれがある程度傾聽に値いする効果を持つような勧告が行われるということになるのではなかろうか。さような心理的な効果と申しますかそういうようなものにおいては何らない場合よりも効果があるんじやなかろうかと考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/67
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068・南好雄
○南委員 その考え方がかえつて何も知らぬ人に強制力がないにもかかわらず、強制力があるように誤認さすもとになるのであります。そういう考え方は非常に非民主的な考え方だと思います。結局そういう特定の法律効果を持たないものは、行政運用にまつべきものであつて、わざわざ法律の規定にれいれいしく入れることがかえつて時代錯誤だと思うのです。むしろこの際はそんな規定は削除した方がいいのじやないかと私たちは思うのです。ひとつよくお考えおき願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/68
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069・中村幸八
○中村(幸)委員 ただいま南委員からもお話があつたのでありますが、実際これは結末をつけないで、勧告のしつぱなしということは、かえつて非民主的でもあると考えるのでありますし、先ほどの局長の御説明にも、財産権の尊重と、現行法の調和に苦慮した結果、強権を発動するのは非民主的であるというので、原案ができておるというお話であります。しかし八十九條の鉱区の増減の出願については、はつきりと勧告した場合、その話がまとまらなかつたその場合には、通産局長の決定の申請ができると規定しておるわけでありまして、八十八條の交換、売渡しの場合には結末をつけないが、八十九條の鉱区の増減の出願については、結末をつけたというところに私は不審に思う点があるのであります。ことに八十八條の規定を見ましても、通産局長が公共の利益を増進することができると認めて勧告したのでありますから、せつかくそういう公共の利益を増進するために局長が勧告しておきながら、話がまとまらない場合には知らぬ顔をして済ましておるということは、公共の利益を局長が無視することになると思うのであります。どうもこの点おかしなことと想うのでありまして、南委員はむしろこんな妙な條文はとつてしまえという御意見のようですが、私はそれはまたかえつて行き過ぎであり、それよりもはつきりと結末をつけて話がまとまらなかつた場合には、局長が裁定をしてやる。決定をしてやるということに御修正を願つた方がいいじやないかと思うのでありますが、この点について今すぐ御返事がいただけなければ、なおこの点十分御研究を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/69
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070・徳永久次
○徳永説明員 八十九條と八十八條の違いの点だけにつきまして、ちよつと私立案者といたしまして御答弁申し上げたいと思います。八十九條におきましては鉱区の位置形状が鉱床の位置形状と相違し、鉱区の位置形状を変更しなければ、鉱床の完全なる開発ができない場合という條件がついておるわけであります。このここにあります限度におきましては、地下資源というものは有限のものでございますし、形が鉱床の形と合つてないがために、いわば鉱床の端つこの方が鉱区の中に入つてないという場合があり、その端つこを対象としてあとの鉱業権を設定し得ないような広さ、形の場合があり得るわけであります。さようなことに相なつておりますと、永久に再び採掘することの不可能な、地下資源というものを放棄するというような結果に相なりますので、その限度においては国が鉱業権者の意思に何と言うか、介入すると申しますか、公共の利益のために介入して、それを最後までそれが理由のあります場合に直していただくだけの措置が、必要になるのではなかろうか、こういうぐあいに考えておるわけであります。八十八條の方になりますと、鉱区と鉱床はうまく合致しておりますが、鉱区の施業の問題としまして、甲の場所をAという人がやつており、乙の場所をBという人がやつております場合に、ほかの鉱区との関連におきまして、AとBの人が鉱区を交換してもらつた方が、どちらも有利であろうというような場合のことを、八十八條はうたつておるわけであります。その点になりますと、鉱物資源の賦存條件の本質上から来る議論と申しますよりも、経営上便利であるとかないとかいう問題に相なりますので便利である、便利でないというようなことには、国はよけいな文句を言つてもらわぬでよろしゆうございますというふうに言われた場合に、それをさらに公共の立場ということで押し切つて、決定まで持つて行くことが、財産権の尊重の意味から見て、適当であろうかどうかというところに、八十九條の場合とは異なつた性質の問題があるのではないかというぐあいに考えたわけであります、一種の、国が干渉します場合に、この辺が一つの限界点と申しますか、八十九條あたりまでは、鉱業の特質から当然国が干渉してしかるべき範囲であり、八十八條の辺になりますと、鉱業の特殊性からとだけ言い切れない面になつておるのではなかろうか、そういうふうに了解しているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/70
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071・中村幸八
○中村(幸)委員 ただいまの御説明だと、八十八條の場合は、経営の便宜からこういう規定を置いた、こういう御説明でありますが、八十八條の條文を読んでみますと、そうはとれないのであります。「通商産業局長は、同種の鉱床中に存する鉱物の鉱区が錯そうする地域において、鉱業権の交換又は売渡を行わせることによつてその地域の鉱床を経済的且つ能率的に開発し、公共の利益を増進することができると認めるときは、」云々「勧告することができる。」こうありまして、單に経営の便宜だけではなくて、その地域にある鉱床を経済的に、かつ能率的に開発し、公共の利益を増進するというところに主眼があると思うのであります。しからば公共の利益を増進すると政府が認めておきながら、話がまとまらなかつた場合でも、それをそのままに放置しておくということは、国家が公共の利益を無視するという結末になるのではなかろうかと思うのであります。どうもこの点が納得できないわけでありますが、御返事がいただけますかどうか。いただけなければ、またなお十合御研究の上で、この点、鉱区の増減の場合と何ら区別する必要はないと思うのでございますから、適当に善処を願いたいと思います。
次に土地の使用及び收用の問題でありますが、現行法には、鉱業上急迫の危險を防止する必要があるときは、通産局長の許可を得て、ただちに他人の土地に立ち入り、またはこれを使用することができるという條項があるのでありますが、かような保安上重要な條文が改正案には削除されておりますが、その理由を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/71
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072・徳永久次
○徳永説明員 ただいまの御質問にありました條文は、実は鉱業法というよりも、むしろ保安に関する規定ではないかという、了解のもとに、この施行法の第四十四條に「鉱山保安法の一部を次のように改正する。」とありますが、一枚めくりまして、次のページの三十一條の二というところに挿入されたわけであります。保安法の改正の方に讓つたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/72
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073・中村幸八
○中村(幸)委員 次に第百六條の規定によりまして、土地の使用または收用が許可せられた場合、農地調整法との関係はどうなるか、御説明を願いたいと思います。すなわち農地開発申請手続というようなものは、一応必要なのか、あるいは土地の使用または收用の許可があつた場合には、こういう農地調整法の手続は必要なくなるのか、その点を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/73
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074・徳永久次
○徳永説明員 この農地調整法の適用のございます土地につきましては、その土地を使用あるいは收用いたします場合には、農地調整法が適用になります。従いまして、農調法関係の了解を必要とするということに相なつております。現行法も同様になつておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/74
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075・中村幸八
○中村(幸)委員 ただいまいただいた土地調整委員会設置法案を見ますと、第四十五條に、「委員会による土地の使用又は收用の裁定があつたときは、その裁定の範囲内で当該行政官庁の許可又は認可があつたものとみなす。森林法、国立公園法、農地調整法」こうありますが、これで見ますと、土地の使用または收用のあつた場合には、農地調整法の手続がいらぬように思うのですがどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/75
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076・高辻正巳
○高辻説明員 ただいま御説明がありましたように、土地の使用または收用が、この委員会によつてなされました場合には、ここに掲げられておりますような森林法、国立公園法、農地調整法と、それに基く命令の規定によつて、行政庁の許可または認可を要する場合でも、それはその裁定の範囲内で当該行政庁の許可、認可があつたものとみなされるわけであります。その前の段階については触れてないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/76
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077・中村幸八
○中村(幸)委員 次にお尋ねいたしたいと思いますことは、鉱業用地としてせつかく買い入れた土地が、農地委員会によりまして、開墾地として指定され、取上げられた事例を聞いておるのでありますが、他人の土地でも、百四條によりまして、鉱業用地として使用できるのに、自分の土地でありながら、しかも鉱業用地が取上げの対象となるということは、まことに不合理だと思うのでありますが、かような場合に、何か救済方法でもありますかどうか、承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/77
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078・徳永久次
○徳永説明員 むずかしい御質問でありまして、まごついて恐縮でございますが、私詳細な事情は承知いたしておりませんが、ただいまの農地調整委員会や農地に指定します場合の運用につきましては、こちらの方の委員会にそれぞれの通産局の委員も出ておりまして、農地に指定してしかるべきかどうかという際に、ほんとうに鉱業のために必要な土地が農地にならないように、調節をとるというような仕組みにはあるいはなつているように思います。ただ非常に法律的なややこしいことになりますが、万一鉱業法のために收用いたしました土地が、その際は工業用地としてさしあたりいらないというような関係から、万一にも農地に指定されておりましたものが、また再び鉱業用地として、どうしても必要になつて参るという事態がありました場合どうなるかというようなこと、法律的に考えてみますと、再び鉱業法によりまして、收用なり使用を行うということになろうかと思いますが、そうなる場合に、もしそれが農地関係の方からの同意が得られずに、收用ができなかつたという場合には、先ほどの議論にもどりまして、土地調整委員会にその事案が鉱業権者から出されまして、土地調整委員会で第三者的な立場におきまして、その土地というものを鉱業用地として利用することが必要であるか、適当であるか、あるいは農地として残すのが必要であり適当であるかということが判断されて、土地調整委員会の方で裁定がきまりますれば、そのきまつたところに従つて、もしそれが鉱業用地として認められれば農地委員会の方の処分があつたものとみなされるというような手続になる仕組みになつているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/78
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079・中村幸八
○中村(幸)委員 ちよつと御説明がはつきりしないのでありますが、実は私ども北海道へ参りましたときにそういう話を聞いたのであります。ただいまの御説明だと、農地委員会には通産局の役人も出席している仕組みになつているように承りまして、やや安心したのでありますが、どうかこの点は十分今後ともせつかく委員として出席せられているのでありますから、鉱業の立場ということをお考えになつて、鉱業用地としてぜひ必要な地域であればその分については開墾地として指定することに反対せられ、鉱業のために万全の努力をせられるように希望する次第であります。
次に損害賠償請求権のことについてお尋ねいたしますが、この損害賠償請求権は「損害発生の時から二十年を経過したとき、」は時効によつて消滅するということがありますが、不安定期間をあまり長くすることは鉱業権者にとりまして酷でありますから、民法百六十七條の債権の消滅時効と同じように十年とするお考えはないか、承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/79
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080・徳永久次
○徳永説明員 この百十五條の損害発生のときから二十年という規定でございますが、これはいろいろと他の民法との関連その他から議論が行われたのでありますが、結局いたしまして鉱害につきましては、損害発生のときからと申しましても、相手方がそれを発生のその瞬間から十分に鉱害を認識するというふうにも見られない場合が多くございますので、そういたしますと債権の消滅時効の十箇年との関連から申しまして、これを十箇年に短縮いたしますことは、民法とのバランスから考えましてやはり適当ではないのではないかということから、現行法通り損害の発生のときから二十年ということに相なつたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/80
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081・中村幸八
○中村(幸)委員 鉱業権が現に存続しているものにつきましては、ただいまの御説明によりましてあるいはやむを得ないと存じまするが、鉱業権が消滅したものにつきましては、鉱業権者の所在や、あるいは責任の範囲が不明確となるおそれもあります。また一面百十九條を見ますと、「鉱業権の消滅又は鉱業権の消滅若しくは鉱区の減少による租鉱権の消滅の後十年を経過しても、損害が生じないとき、」その場合は供託した金銭を取りもどすことができるという規定があります。これと調子を合せて鉱業権の消滅、あるいは消滅時効を十年とすることにしたらどうかという考えも持つておるのであります。この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/81
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082・徳永久次
○徳永説明員 確かに百十九條の供託金の取りもどしができるという、その上に立つての損害でなければ取りもどしができるという、一見バランスがおかしいじやないかという感じもいたさないわけではないのでありますけれども、しかし供託金の方はむしろ供託金の取りもどしを緩和したということに御了解を願いたいのでありまして、損害賠償の責任の公平ということを他の債権の消滅時効の期間との関連から考えますると、やはり発生のときから二十箇年という方がバランスとしては適正ではないかというように考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/82
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083・中村幸八
○中村(幸)委員 次に移りまして、百十九條の第一号に「当該鉱区又は租鉱区に関する損害を賠償したとき」は供託した金銭を取りもどすことができるとありますが、この場合の「損害を賠償したとき」というのは完全賠償をしたときのことを言うのでありますか、それとも一部賠償をしたときでも賠償した額にあるいは比例して供託金の一部の取りもどしができるかどうか。その点お答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/83
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084・徳永久次
○徳永説明員 この百十九條の「当該鉱区又は租鉱区に関する損害を賠償したとき」とございますのは、損害の全額を賠償したときという趣旨でございます。字句は若干不正確かも存じませんが、現行法も同じような規定にできておりますからその趣旨において運用されておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/84
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085・中村幸八
○中村(幸)委員 全額を賠償したときと解釈いたしますと、供託金の方は毎年々々積み立てて行くわけであります。賠償したあとの残りの額がきわめて少い場合、供託金の総額とつり合いがとれないことが起り得ると思うわけであります。その点はどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/85
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086・徳永久次
○徳永説明員 供託金制度そのものは御承知のごとく当然に損害が起りましても、起りませんでも、損害の担保というような制度でつくられておるわけでありまして、その区域だけについて一応損害になつておりますものにつきまして、賠償が十分に行われたということに相なりましたとしましても、なお次の賠償ということも考えられないわけでもございませんので、供託金の一つの安全保障、損害賠償の担保というような感じから考えまして、一つ一つ相対的に運用いたしますことが適切かどうか。今御指摘いたしましたごとく、その鉱区だけについて考えますると、金を拂つたのだが、供託金が残り過ぎているというような感じも出る場合があるかと思うのであります。供託金全体の制度の趣旨から考えますと、若干鉱業権者の方にあるいは酷だとか言われるかもしれませんが、担保の確実というような精神から、現行法も採用して来たようなわけであります。
〔委員長退席、永井(要)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/86
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087・中村幸八
○中村(幸)委員 損害を担保するために供託金を積み立てることはわかつておりまするが、しかし損害賠償はあとの残りの部分がきわめて少いような場合があり得る。何らかの不可抗力によるか、あるいは特殊の事情によつて全部賠償ができないというような場合があり得るわけでありますが、そういう場合に一面においては供託金の方は毎年毎年積み立てるから、非常にたくさんな額になり、供託金の額は担保どころの騒ぎではなく、もうあり余るほどの供託金がある。こういう場合も想像され得るわけであります。御説明のように全額賠償しなければ供託金のとりもどしができぬということになると、こういう不合理な場合も生じ得るわけでありまするが、この点何らか方法はないものかどうか、なおお考え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/87
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088・徳永久次
○徳永説明員 この点はただいま私が現行法の趣旨で申し上げたわけでございますが、この條文をごらん願いますと、細目の点も省令におきまして、ただいま御指摘のような不都合の起らないようなことも省令に委任されたことに相なつておりますので、新法施行に伴いまするこの條文の省令を制定いたします際に、現行の省令の不合理な点がございますれば、十分の検討をいたして、よりいいものに仕上げてみたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/88
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089・中村幸八
○中村(幸)委員 次は損害賠償の担保として、石炭、亜炭につきましては、トン当り二十円を越えない範囲において、その他の鉱物については価格の百分の一を越えない範囲において通産局長が毎年鉱区ごとに定めた額を供託する、こういうふうにございますが、もちろんこの二十円なりあるいは価格の百分の一というものは最高限を示したものでありまして、具体的にはこれよりも低いところできめられると思うのであります。しかしながら石炭についてはこのほかにまだ特別鉱害のためのトン当り二十円を支出しなければならないという事情もありますし、北海道の炭鉱にはほとんど鉱害らしい鉱害は起らない。また金属鉱山においても廃水とか、鉱煙による被害のほかはほとんど鉱害は起らない。こういうような事情にありますので、あまり多額にきめることは鉱業権者にとつて少し酷ではないかと思います。そこで二十円とか、あるいは価格の百分の一というようなことはどういうところでこういうふうにきめたのか、算出の基準についてお示しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/89
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090・徳永久次
○徳永説明員 その石炭の二十円という金額をはじき出しました一つの目安でございますが、現在主として石炭鉱業によります土地の陥落等のための賠償をどの程度にやつておるかと申しますると、全炭鉱の平均は必ずしも出ておりませんが、主要炭鉱の平均をとつてみますると、最近の数字がおおむねトン当り三十六円程度に相なつておるわけでございます。もちろんそれは平均でございますので、その中にはもつと高いもの、低いものとあるわけでございますが、いわゆる大きいところになりますと、六十円とか七十円とかいうようなケースもあるわけでありまして、さような数字のおおむね三分の一くらいのものを常時担保として用意しておくことが適当ではなかろうかという目安のもとに、平均の三十六円の三分の一にしますと、十二円ということになりますし、大きいものの六、七十円の三分の一になりますと、二十円を超過するというような数字に相なるわけでございます。そこでその上の方の場合も考えまして、最高二十円としておくのが一応妥当ではなかろうかと考えたわけでございます。もちろん具体的にこれを適用いたします場合には、炭田の地帶によりまして、鉱害発生のプロバビリテイーが相当違うというような事情もございますので、地区によりまして違つた金額を鉱山局長が定めるというようなことに相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/90
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091・中村幸八
○中村(幸)委員 この担保金につきましては、今も申し上げるように北海道の炭鉱にはほとんど鉱害がないとか、あるいは金属山には鉱害が少いといつたような事情がありますので、具体的に適用する場合にはこれをよほどお考えになつて、最高限をきめる場合はよくよくの場合でなければしないというふうに運用の面でやつていただきたいと思います。
そこで最後に私お尋ねいたしたいことは、この法案には、鉱業権と採石権の相互の関係を調整する規定がありませんが、鉱業権に基いて自然に出て来た採石は、鉱業権の内容として、鉱業権者が取得することができる。あるいはまた、鉱区が重複しておる場合には、その相互関係を規定いたしておりまする六十六條のごとき規定を設ける必要があるのではないかと思いますが、この点はいかがですか、お伺いいたします。
〔永井(要)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/91
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092・徳永久次
○徳永説明員 ただいま御指摘のございました鉱業権実施の当然の結果といたしまして、鉱物以外の岩石類——今回の採石法によりまして、権利の対象になりまする岩石類を採集することがあるわけでございます。ただいままでのところ、御承知のごとく鉱業をやります際には、鉱業として目途がつきますまでの間、ある期間採石法に該当する岩石を掘つておる場合があるわけであります。この作業そのもの、それから掘りました石の処置につきましては、従来平穏公然に処置いたしておるわけでございまして、これが採石法をつくりました結果といたしまして、平穏公然に処置できないということに相なりましては、鉱業にとりまして、死活の問題に相なることだと考えるわけでございます。ただいまの御質問は、そのような趣旨から鉱業法の中に、鉱業を行う当然の結果として出た採石そのものについては、採石法によらなくともいいのではないかという規定がないと、不都合を生じはしないかという御質問の御趣旨と思うわけでございますが、この点につきましては、私ども実は率直に申しまして、法案審議の立案の際に、その点まで考え及んでいなかつたわけであります。従来平穏公然に行われておつたことでありまするから、その規定が平穏公然に行い得るごとくしなければなりませんが、新たなる規定を必要とするかしないかという問題につきましては、私どもとしまして、研究させていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/92
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093・中村幸八
○中村(幸)委員 私のお尋ねしたことは、今のお話の鉱業権に基いて出て来る採石をどうするかというはつきりした規定がほしいということであります。鉱区と採石権の地域とが重複した場合どつちが優先するのであるか、この点について鉱業法の改正案の六十六條にあるような規定が必要じやないか、この二点をお尋ねしているわけですから、よく御研究の上適当の機会に御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/93
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094・徳永久次
○徳永説明員 私半分しかお答えしなかつたようでありますが、第二の点につきましては、鉱区につきましては当然に鉱業法が優先いたしまするし、岩石につきましては全然鉱業権のない場所につきましては、採石法の設定されております場合に、そちらが優先するということになるかと考えます。従いまして採石の問題にもどるわけでございます。鉱物をとりますために、当然に採石権の設定せる場所を掘つて進まなければならないというようなケースも起るかと考えられるわけであります。その点の規定につきましては、現行法は何ら規定をしていない。二つの法律の解釈だけでつなぎがつくかどうか、私ども若干疑問を持つておりまして、ただいま研究中であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/94
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095・中村幸八
○中村(幸)委員 同一鉱床の中に鉱物と採石と両方ある場合に、採石権の設定していない採石を鉱業権者がどうするか、それと採石権が設定してある場合にはどうするか、採石権が設定してある場合とない場合とによつて区別があるじやないか。そこらを御検討の上で善処されることを希望いたしまして私のきようの質問はこれで一応打切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/95
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096・小金義照
○小金委員長 それでは中村幸八君の質問は次会に留保いたします。
明日は午前十時より開会することに公報をもつて御報告を申し上げてありますが、先ほど理事会で明日は午後一時から開会することに変更いたしましたから御承知願いたいと思います。
本日はこの程度で散会いたします。
午後四時三十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804793X01619501023/96
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