1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年十月二十六日(木曜日)
午後十時四十一分開議
出席委員
委員長 小金 義照君
理事 阿左美廣治君 理事 多武良哲三君
理事 中村 幸八君 理事 今澄 勇君
江田斗米吉君 小川 平二君
澁谷雄太郎君 高木吉之助君
田渕 光一君 永井 要造君
中村 純一君 福田 一君
南 好雄君 村上 勇君
高橋清治郎君 加藤 鐐造君
風早八十二君 田代 文久君
小平 忠君
出席国務大臣
通商産業大臣 横尾 龍君
出席公述人
日本鉱業協会会
長 岡部 楠男君
日本亜炭協会代
表 詑間 七郎君
東京大学教授 杉村章三郎君
日本石炭協会会
長 高木 作太君
帝国石油株式会
社社長 酒井 喜四君
石灰石鉱業協会
会長 芳賀 茂内君
北海道石炭株式
会社社長 舟橋 要君
愛知県耐火粘土
工業協同組合顧
問 加藤 英一君
石材振興会会長 上山 元市君
全国鉱山労働組
合連合会会長 原口 幸隆君
日本炭鉱労働組
合生産部長 村上 一美君
北九州石炭株式
会社取締役会長 武内 禮藏君
委員外の出席者
通商産業政務次
官 首藤 新八君
資源庁長官 始関 伊平君
通商産業事務官
(資源庁鉱山局
長) 徳永 久次君
通商産業事務官
(資源庁鉱山局
鉱政課長) 讃岐 喜八君
專 門 員 谷崎 明君
專 門 員 大石 主計君
專 門 員 越田 清七君
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本日の公聽会で意見を聞いた案件
鉱業法案及び採石法案について
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/0
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001・小金義照
○小金委員長 これより通商産業委員会を開会し、公聽会を開きます。
この際、公述人各位に対して一言ごあいさつを申し上げます。本委員会が鉱業法案及び採石法案の審議にあたりまして、特に公聽会を開いて利害関係者及び学識経験者その他一般の方々より広く御意見を聞くことといたしましたのは、御承知の通り、この両法律案は鉱物資源を合理的に開発することによつて公共の福祉の増進に寄與するという根本目的のもとに、鉱物資源を一層合理的に開発し、鉱業と一般公益及び他産業との調整をはかり、かつ法律の運用を愼重にして国民の権利の保護に遺憾のないようにすることを目標として立案せられ、さらにわが国の岩石資源が法律的な基礎の上に立つて合理的に開発せられ、ひいてはわが国経済の復興に資するところのあることを期待しつつ、政府よりさきの第八国会の末期に提案せられ、ただちに本委員会に付託せられたのであります。しかしながらこれが国会に提出せられる過程におきましても、関係者方面においてはいろいろな調査が行われ、活発な意見が繰返されたのであります。かかる状況下におきまして、本委員会はこの二つの法律案の取扱いに愼重を期し、前国会におきましては残余会期の短かかつた関係もあり、審議を終了するに至らなかつた次第であります。なお七月三十一日、この両法案を閉会中審査に付することに決定いたしたのであります。同日、委員会におきまして鉱業法案及び採石法案に関する小委員を選任し、その後八月三十日より十日間、中国、北九州方面及び東北、北海道方面に小委員を派遣して、それぞれ現地の輿論等の調査と現地の状況視察を行つたのであります。越えて九月二十七日国会閉会中本委員会を開会いたしまして、公聽会を開くことに協議決定いたした次第であります。公述人各位におかれましては、御多忙中の貴重な時間をさいて御出席をしてくだいまして、委員長におきまして厚くお礼を申し上ぐるとともに、以上申し上げました公聽会開会の趣旨を御了察の上、両法案につきましてそれぞれのお立場から、またあらゆる角度から、十分に忌憚のない御意見を御開陳くださるようこの席からお願いいたしておきます。
次に議事の進め方について念のために申し上げておきます。公述人の発言順序は、原則としてお手元に差上げてあります名簿の順序によること、但し必要ある場合におきましては委員長において随時変更し得ること、なお委員より公述人各位への質問は最後に一括して行うことになつておりますので、万障お繰合せの上、御着席のほどをお願いいたします。公述人各位の発言時間はおおむね十五分以内とすること、御発言はその都度委員長より御指名申し上げること、御発言は発言台でお願いいたしますこと、御発言の際には必ず御職業とお名前とをお述べいただくこと、なお衆議院規則によりまして公述人の発言はその意見を聞こうとする事件の範囲を越えてはならぬこと、また公述人は、委員に対して質疑をすることはできないことと相なつております。以上お含みを願つておきます。
なおこの際委員各位にお諮りいたしますが、日本炭鉱労働組合連合会長武藤武雄君の代理人として、日本炭鉱労働組合生産部長村上一美君に御意見を述べていただくことに御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/1
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002・小金義照
○小金委員長 御異議ないと認めます。それでは当該発言順序が参りましたならば、代理人の方に御発言をお願いいたします。
それではまず日本鉱業協会会長岡部楠男君より御発言をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/2
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003・岡部楠男
○岡部公述人 ただいま御紹介にあずかりました、私は日本鉱業協会会長の岡部楠男であります。金属鉱業界の代表として、業界の新鉱業法案に対する意見の要旨を代弁いたします。業界といたしまして最初に鉱業法の改正案の内示を受けましたのは、たしか昭和二十一年であつたと思います。当時の原案より、ただいまの国会に提出せられておりまする法案は、その間大分変遷があつたようであります。このたびの改正案で特に改善された点は、第一が七種の新鉱物が追加されたことであり、第二は鉱業権者に対しても土地收用を認めたことであります。第三に、鉱害賠償につき打切り補償に関する規定が設けられたことであります。改正案には以上のような特長がありますが、他方なお鉱業界といたしまして不満の條項も少くないのであります。以下業界の改正案に対する意見を、主要事項だけ申し述べます。
第一に、採掘権の存続期間に無制限とすること。新法案第九條によりますと、採掘権の存続期間を三十年に区切つております。いかなる根拠で三十年に区切つたのか理解に苦しむところであります。地下埋蔵鉱量の把握は困難であります。ことに金属鉱業のごとく鉱況の変化の多いものについて、鉱区の金鉱量を事業開始当時把握することは不可能でありまして、採鉱に並行して探鉱を行い、鉱量を確保して行くものであります。従つて予想より鉱量が少くて二、三年で放棄する場合もあります。また鉱物は一定有限のものでありまして、必ず採掘し盡されるものでありますので、このことより、法律的に無期限といたしましても、自然的に有期限となるのであります。この点有期限の漁業権と異なる性質を持つておりますので、その権利の対象の本質が異なつておることを考慮していただきたいのであります。正常経済下における鉱業会社の金資産の約五〇%は固定資産であります。かような莫大な固定資産の設備を地上にいたしておるのでありますが、この点もまた漁業権と異なるところであります。この基本的権利を三十年で区切ることは、たとい延長制度があるといたしましても、企業者に與える圧迫は強いものであります。将来採掘権の存続残存期間の少くなつたものに対する融資は困難になるのであります。この点より将来採掘権の残存期間の追つたものは、担保価値を減じ、融資上すこぶる不利になるのであります。期限の延長を認めているのでありますが、延長するには一定の期間内に所定の手続を要することになつておりますが、もし手続上間違いがあれば権利を喪失したり、また利権屋に乘ぜられるおそれがあります。採掘権に期限を設けてもいかなる利益もないものと考えますし、現行採掘権で少しも不都合はないものと業界では認めているのを、何ゆえに、改悪しようとするのでありますか、理解しかねるところであります。鉱業権は実質的には無期限でないのであります。埋蔵鉱量による自然的期限にまかせておくことが、鉱業の特殊性にも適しておるのであります。法律上の期限を設けることは、鉱業経営に圧迫を加えることになることをおそれているものでありますので、国会においてぜひ修正を希望いたします。
第二は、採掘権の存続期間は現行法通り四年とすること。試掘権を二年に短縮しようとする政府当局の意思は、試掘権で採鉱をやつておる業者に対する反感と、試掘事業の強制による早急な国内資源開発をねらつた二点にあるのではないかと思うのであります。試掘権で採掘をやることは、これまでの試掘権は昭和十五年までは試掘権者に優先継続出願権を認めていたので、何回も繰返し、実際上試掘権は何箇年も存続ができましたが、試掘権者の継続出願制度が廃止せられますと、重要鉱物増産法により、試掘期限の進行が停止されていましたので、試掘権は実際上十年も二十年も存続して来たのであります。政府事務当局は、この事態に対する改正をはかつたのでないかと存じますが、御存じのように重要鉱物増産法が二十三年五月末で失効いたしまして、試掘権は現行法の本来の姿に返り、本年一月ごろより古い試掘権は満期消滅いたしつつあります。従つて従来のようなことは自然見られなくなるものと思います。原則として二年間に試掘をしいることでありますが、北海道、東北、北陸地方の山岳は半年雪に閉ざされ、その他の期間中でも天災暴風もありますので、一年中探鉱産業のできるのは半年以下であります。その他の地方でも、試掘はだんだん不便な山奥になりつつある傾向にありますから、探鉱資金、探鉱機械器具の入手もいまだ相当困難の事情にありますので、二年では期間が短かく、人里離れた山岳の探鉱は困難であります。さらに委員皆様の御考慮を煩わしたいことは、鉱業政策的見地よりも、鉱床を小さく細分して採掘させるか、一つの鉱床になるべく集中して同一人に掘採させるか、いずれかの方法が鉱業政策上適当かという問題でありますが、地下資源の特殊性とわが国のごとき資源の埋蔵量の少い国といたしましては、採掘可能鉱量を多くする立場からも、後者の方がよいと存じます。二年に短縮することは前者の考え方によるものであります。業界といたしましては試掘権は原則として現行法通り四年といたしまして特殊事情のあるものに対しては、改正案のごとくさらに二年の延長を認めることが適当であると存じます。
第三には、改正法施行当時、現存の試掘権についても一回、二年の期限の延長を認めること。現在の試掘鉱区は、全国約四万余と推測されますが、大手筋鉱山会社は、一社で何百という現存試掘鉱区を一時に探鉱することは、人員、経費の関係よりも不可能であります。鉱業界の現状は、新規鉱区の開発より戰時中荒廃せる採掘鉱山の復興が先決であります。従つて改正法施行当時、現存試掘権の存続期間は現行法によるとともに、一回延長を認めることが鉱業界の現状より必要であります。
第四に、試掘権より採掘権に転願のものは採掘の許可または不許可の通知ある日まで試掘事業を認むること。採掘権の許可は従来の通産局の事務処理状況と現在の通産局の未処分状況から勘案いたしますと、相当の期間を要するのが常態であります。もし採掘出願中試掘権の存続期間の切れた場合は、操業を中止して待機のやむなきに至るのであります。ことに鉱山保安法が施行され、監督の立場より別の窓口より運営されておりますので、役所の事務処理上許可が遅れたことは、保安監督部としてはしんしやくしないので、従業員の転換とか失業等の困難なる事態も生ずることになるので、むしろ法律上許可、不許可の決定するまで試掘権者として操業を認めるとともに、鉱業法、税法上その他鉱山保安法規上の法的責任を負わすようにする方が実態に適応するものと考えます。
第五に、土地調整委員会の鉱区禁止区域の決定は、農山林業者と同時に、鉱業権者または鉱業出願人の意見を聽取するとともに、これが設定はみだりにならざるよう、愼重に審議するよう特に要望いたします。鉱区禁止区域を決定することは、その地帶の資源を永久に封鎖することになります。また先ほども申し上げましたように、鉱業は着手当初は鉱量の全貌はまつたくわからず、この点農山林業のごとき、ただちにその生産額の算定できる産業と比較して、いずれが国民経済上福祉となるかを比較考慮することは困難であり、むしろ鉱業の評価困難なことより、これを低く評価することをおそれるのであります。土地調整委員は鉱業に対する十分なる学識と理解とを持たれる方であると同時に、鉱区禁止区域の設定は愼重に取扱うよう、国会の権威をもつて勧告していただくよう希望いたします。
第六に、改正法案では新たに鉱業に対する勧告の章を設け、鉱業権の交換または売渡し及び鉱区の増減、施業案の変更等の勧告ができることになつております。自由経済のもとにおいては、企業は業者の総意と責任にゆだね、官庁の企業干渉はあつてはならないのであります。この見地より第四章、勧告に関する規定は望ましからざる規定であります。国家の資源開発上やむを得ないと認められる場合にのみ発動すべきで、重要鉱物増産法当時の官僚統制的意識による適用は排除したいと希望いたします。
第七に、土地收用並びに使用につきましては、改正案第百四條列挙の土地使用條項の中に、鉱業として重要なもので列挙されてないものがあるということでございます。それは一炭鉱で、探鉱にはボーリングまたは最近行われている科学的探査、たとえば重力探鉱とか電気探鉱、地震探鉱のごとき探鉱が相当行われておりますが、これらの探鉱は第百四條の一号に入れることはむりのようであります。鉱業としては重要事項でありますので、探鉱を一号追加していただきたい。同條第四号には鉱業用資材中の坑木、火薬類をあげているが、なお油、石炭等の燃料、鋼材、カーバイト、選鉱剤等の重要資材置場が落ちているようでありますので、これらを一括して鉱業用資材置場を追加していただきたいのであります。なお港近くの鉱山における船積み施設の土地使用も認めていただきたい。第百五條の收用は性質上重要やむを得ないものに限定する必要のあることは、われわれも了解いたすところでありますが、第百五條に列挙されている事項に匹敵する重要事項で、コンプレツサー、ノミ燒場、巻上機等の探鉱施設と、港を利用する鉱山製錬場の船積み施設を追加していただきたいことであります。
第八に鉱害賠償責任の消滅時効に関する規定であります。改正案第百十五條では損害の発生または鉱害の進行のやんだときより二十年となつておりますが、金属鉱山の坑内排水等の鉱害等、進行がいつやんだか実際上不明で、結局永久ということになります。鉱業権存続中のものは因果関係が不明のためやむを得ないと存じますが、鉱業権消滅のものはその損害が発生しないときは、第百十九條第二項で担保供託金のとりもどしを認めております。加うるに鉱業権が消滅しても、二十年、三十という賠償責任を認めても、鉱業権者の所在や責任等の範囲が不明となりますので、鉱業権消滅のときは、鉱害賠償責任も消滅のときより十年とすべきであります。
第九、改正案第百十七條第三項で、石炭以外の鉱種についても鉱産物販売額の百分の一以内の担保供託金の積立てを命じ得ることになつておりますが、石炭一トン二十円に比し、金属鉱山の百分の一の限度額の算出根拠も疑問でありますが、根本的には金属鉱山の鉱害には、石炭、亜炭のごとき土地陷落の問題はほとんどないといつてもよいほどであります。金属鉱山の鉱害は掘探量に関係のない坑内、選鉱等の排水または鉱煙等で、金属鉱業に対する供託金制度の必要は、鉱業法施行四十五年の実績にかんがみましても、その必要はないのであります。政府当局は今新たにいかなる見通しと御意向により金属鉱山に供託金制度を新設されんとするのか、その御趣旨は理解いたしかねるところであります。金属鉱業界といたしましては、担保供託金制度は、金属鉱業としては必要がないので、除外してもらいたいことを要望いたします。
第十、鉱業権と採石権に関する調整規定をおくことが必要であると考えます。
このたび国会に提出されました採石法案によりますと、採石法に列挙されている岩石を掘採販売する場合は、採石権を得なければならないものとされております。しかも採石権は原則として土地所有権者にその優位を認めております。しかるに鉱業権における採鉱は、脈石、母岩等と一緒に採掘しなければ採鉱できないのでありますので、地下の採鉱については、従来も現在も地上権と関係なく鉱業権の内容として掘採しているのでありますが、たまたま岩石等が経済価値のある場合は販売いたしているのであります。地下何百尺何千尺の箇所の採掘は地表所有権では利用外であるし、所有権の行使に何らさしつかえるものではなく、鉱業権の採掘に附随して掘採販売される岩石は鉱業権の内容であり、当然採石権を得る必要はないものと考えています。しかし学者の中には別箇の法体系で規制しているので、かような場合採石権を要するものと解する方もあるそうです。かような異説に対してもまた両者の権利衝突を避けるためにも、鉱業権による採鉱に附随して掘採される岩石の採石は、採石法より除外するとともに、鉱業権と採石権が同一地域に重複設定された場合は、両者の操業に関する調整規定をこの際設けておくことが立法上望ましいことであると考えます。
時間の関係上、業界の改正法案に対する主要希望意見のみ申し述べましたが、その他の事項につきましての業界の要望事項はお手元に差上げましたプリントをごらん願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/3
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004・小金義照
○小金委員長 ただいま六分半ほど超過いたしましたが、なるべく十五分以内でお述べを願いたいと思います。
次は御用務の関係がありますので、順序を変更いたしまして、日本亜炭協会代表詑間七郎君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/4
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005・詑間七郎
○詑間公述人 ただいま御紹介にあずかりました詑間七郎であります。
亜炭鉱業会とこのたび鉱業法に入りました耐火粘土というものが非常に関係が深いので、亜炭鉱業会といたしましても、耐火粘土が鉱業法に入るために、亜炭と耐火粘土を掘つて行く上に非常にむずかしい問題がときどき起りますので、耐火粘土のうち、特に木節粘土というものをこの法案第三條の種目のうちから除いて採石法の種目の方へ変更していただきたい、こう思うのであります。耐火粘土は大体私の長年扱つておる経験から大別しまして、二種類にわかれるものと思つております。第一種類の方は、現在採掘されておる岩手県にある岩手粘土あるいは福岡県の石炭の間から出る耐火粘土、第二種類としては木節粘土で、愛知、三重、岐阜県などに産する木節粘土と、そのかたわらにあるところのドロマイト粘土というものが耐火粘土の中に含まれておるだろうと思つておるのでありますが、第一の方の分は鉱業法に入れるのが妥当であり、第二の方は採石法の方に入れるのがよろしいじやないか。このいろいろな種目を見ますと、採石法の方は多分のものが表面から掘つて入るようになつております。鉱業法の方は大体が坑道深く入るということになつておるように思いますから、私の方としては、今申し上げた耐火粘土の本節なり、ドロマイトなりは採石法の方に入れていただきたい、この思うのであります。
それからこの採石法の條項の中に、採石を終つた時分には原状に復しという條項がございますが、この原状に復するということは非常にむずかしい言葉でないか。一旦掘つた山を原状に復せといつても、これはできない相談ではないか。これはせびとも他の言葉をもつて、第三者に損害を與えない程度に復旧するとかいうよう言葉に改めて條項をかえていただきたいと思います。
もう一言つけ加えさせていただきたいのは、私は亜炭を掘つている以外に、長年陶磁器の原料をやつているものでございまして、この採石法のうちに磁土という言葉がないのであります。これはこの條項を見ますと、酸性白土、けいそう土、こういうふうに書いて陶石となつておりますが、磁土ということは新しい言葉のように考えるお方もあるかもしれませんが、これは陶磁器のうちの磁器をつくる時分にどうしてもなくてはならぬ原料であります。この蛙目というものは耐火粘土の中に入れずに、磁土として、この磁土の中に蛙目、その他の磁器のうちに使うところの原料を加える。一例を申しますと、対州白土というようなものもありますし、東北地方に産するたくさんの磁土がございますから、そういうものは磁土として採石法に加えた方が妥当ではないか。資料の見本なども持つておりますけれども、そういうふうにお願いいたしたい。
それからもう一つお願いしたいのは、この鉱業法の種目の中に長石とけい石が入つておりますが、これも採石法の中に入れるのが妥当であります。長石とかけい石というものは大体が表面から掘るものであり、長石のごときは一箇所にたくさん鉱量があるものではないのであります。たいていは四、五年、十年くらい掘れば掘り盡すというのが例でありますから、ぜひこの鉱業権の種目より採石法の方にかえていただきたい。けい石のごときも、たいへんたくさんある丹波地方、あるいは三河にあるけい石というものは量もありますし、また長石と錯綜してあるけい石ではなくて、このけい石なども、本来から言えばこれをけい岩という字に改めて、別にけい石——あるいはけい石というのがぐあいが悪ければ白いけい石というように直すのがほんとうなのではないか。今の三河地方に出るところのけい石、丹波地方に出るけい石などは、耐火れんがに使用するものであり、白いけい石というのはガラスあるいは陶磁器の原料とするもので、非常にその使用の目的も違いますし、鉱物のあり方も違うから、これはぜひそういうふうに改正をしていただきたい、こう思うのであります。以上をもつて私の意見を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/5
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006・小金義照
○小金委員長 次は、これも時間の御都合があるそうでありますから、東京大学教授杉村章三郎君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/6
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007・杉村章三郎
○杉村公述人 私は東京大学教授杉村章三郎であります。私はただいま議題となつております鉱業法案及び採石法案に対して全体としましてはその成立を希望するものであります。現行の鉱業法は明治三十八年、また砂鉱法は明治四十三年にそれぞれ制定せられました古い法律であり、これが改正は終戰前におきましてもしばしば問題となつておつたところであります。終戰後間もなく昭和二十一年の初頭以来改正委員会が設けられ、爾来改正案につきましての研究が続けられておつたのであります。この改正委員会には東大の我妻教授を初め、著名な学者も参画せられており、この案の形成には積極的に努力されたということも伺つております。いわばこの法案は官界、学界の多年の研究になる成案であつて、昨今見られますような国会の閉会まぎわに一括上程されるような議案とは多少趣を異にしておるのではないかと思われます。またこの法案は英米の法制をそのまま移したというようなものではなく、従来の鉱業法を基礎としてわが国の実情に即する制度を樹立しようとしておる点で賞讃せられてよいかと思われます。
全体としての観察はこれくらいといたしまして、以下この法案の内容につきまして問題となるべき点を指摘いたしたいと存じます。ただここに御了承を得たいことは、以下私が述べますことは現在の私一個の見解でありまして、鉱業行政につきましても、私が関係しております地方行政調査委員会においても取上げることと存じますが、まだこれはその討議に入つておらないということを申し述べておきます。この鉱業法につきましての最も根本的の問題は、地下資源に対する国家の権能というものの性格でありまして、現行の鉱業法では御承知の通り未掘採の鉱物は国の所有とするということになつております。この規定は上は天上に達し、下地軸に及ぶというような所有権万能の思想を克服して、地下の重要費源に対する国の支配権は認めたものであるということは明らかであるとしましても、国の所有としましたために、その権能、性格につきまして従来学界などで論議が重ねられておつたのであります。この法案では国有という文字を避けまして、「国は、まだ掘採されない鉱物について、これを掘採し、及び取得する権利を賦與する権能を有する。」というように規定して、未掘採の鉱物に対して国がある種の支配権を有することを明らかにしております。しかし問題は、これではまだ解決しておるとは考えられないのでありまして、この場合の国家の鉱物に対する支配権の性格が問題となるのであります。無主物に対する国家の統治権的支配権と解するということも一説でありましようけれども、これはおそらく正当とは言えないものと考えます。法案も鉱区外に搬出された鉱物について、初めて無主の動産としておるわけであります。鉱物に対する国の支配権が、無主物に対するものでないとすれば、それはやはり現行鉱業法におけるような所有権的支配権とならざるを得ないわけでありまして、こう解しますと、鉱業権の設定の許可というものは、やはり鉱業出願者、すなわち将来の鉱業権者に対する特権の付與ということになるのであります。そうしますれば、その特権につきまして、一定の年限を限るということも、一つの行き方と思われるのであります。またただこの許可に際して使用、徴收すべき手数料というのが、單なる行政的面に対する反対給付というものを内容とするものではなく、むしろ特権料——ある特権として国が與えた、こういうような性格のものと解すべきものではないかと考えられるのでありまして、もしそうだとすれば、別表における手数料というものは、採掘権設定に対する場合などは、多少少額に失するのではないかというようにも考えられます。私としてはちようど特許権に対する特許料というような考え方になつてはどうかと思うのでありますが、もつともまず鉱業権者に対しては、特に鉱区税という地方税が課せられて、その間その利益に対する国家の地方団体に対する寄與というものはしておるわけでありますが、そういう特権料の徴收ということによつて、一面鉱業のいわば資本主義的の経営の利潤に対して、国家が参加するというような考え方もできないのではなかろうかというように考えておるのであります。
次に鉱業権につきましては、法案は現行鉱業法の建前と同様に、日本国民または日本国法人をもつてその資格としておるのであります。これは鉱業の国家的性格をその根底とした考え方でありますが、日本の置かれた現在の国際的地位からすれば、少くとも相互主義を原則とすべきではなかろうかとも考えておるのであります。鉱業権の許可につきまして、先願主義がとられておるということも現行法と同様であります。この決定は出願の発送の日時を標準としておるのであります。そうして出願には引受時刻の証明のついた第一種郵便ということで、その順位を定めようとしておるわけであります。このくらいな手続をとれば、受領の日時を標準とするというようなことでない方がよろしかろうと思うのでありまして、従つてこの点については、法案の主義に賛成したいと思うのであります。
次に行政組織の面から考えてみますと、この法案は鉱業の許可権を初めとしまして、国の権力的関與にあたり、行政機関というものは、ほとんど通産省の地方出先機関であります通商産業局長に一任してあるのであります。通産局長は鉱物の掘採が経済的に価値がないと認めるときか、その他公共の福祉に反すると認める等の場合におきまして、出願を許可しないというように、多くの裁量権を持ちまして、また公共の福祉に反する等の場合、すでに與えた鉱業権を取消するというような権限も與えられておるのであります。これに反して通産大臣というものは、異議の決定権とかあるいは鉱業権者に対する報告聽取の権限というようなものが認められておるにとどまるわけであります。これは官庁内部のいわば地方分権主義ともいうべきものでありまして、この種の行政機能をすべて国の出先機関に一任して、一々本省の大臣の許可を要しないとしているのは事務の簡素化をねらい、一面には地方通産局長の責任を明らかにしたと言えるわけでありまして、これは官庁組織における新たな傾向とも見られるのであります。しかし通産局長の権限が著しく大であるだけに、通産大臣のこれに対する監督あるいは是正の規定というものが必要ではなかろうかと存じます。この種の行き方は労働基準法などで見られておるのでありますが、労働基準法では基準局長の行為に対して労働に関する主務大臣が指揮監督をして、これを行使することが明らかにせられておるのであります。
それから次に鉱業に関する国の事務と地方団体の事務との配分の見地からこの法案を取上げてみることにいたします。この法案におきましては鉱業権の設定の許可権を初めとしまして、ほとんどすべての行政処分を国の権能としまして、これを主として出先機関たる通産局長が処理するということになつております。これは法案の総則の規定にありますように、鉱業の目的とするところが、鉱物資源の開発を国家的見地から合理的にしようということにあるようでありますし、また国が地下資源に対する支配権を有する以上、この原則がとられたことは当然であろうかと思われます。ただ地方公共団体の権能と関連するところを拾つてみますと、鉱業権設定の出願のあつたときに、通産局長は関係都道府県知事に協議しなければならないものとしております。これは鉱業の実施が地元の地方公共団体に密接な関係を有するものでありますから、その同意を必要とするという趣旨に解せられるのであります。もしそうとするならば、協議せられる地方公共団体は都道府県には限らず地元の市町村長がさらに密接な関係を持つておるものと思われるのであります。それでありますからして、やはり都道府県知事と関係市町村長がこの協議に加わるということが適当ではなかろうかと思われるのであります。また法案では、国の所有する土地については、この協議機関を当該行政機関としておるのでありますが、この場合もやはり関係地方公共団体の長は協議に加わるべきものではなかろうかと思われるのであります。つまり單なる国の機関だけが、そこに所有者が利害関係を持つわけではなくやはり関係地方団体が利害関係を持つからと考えられるからであります。同様にして土地使用及び使用の場合の協議につきましても、都道府県知事の協議を要すとなつておりますが、これもやはり同様の考え方で行くべきであろうと思われるのであります。
次に地方公共団体との関係は、地方鉱害賠償基準協議会というものがここにありますが、その構成についても存するのでありまして、法案によりますと、委員は十二人以内の委員からなり、それに関係行政機関の職員の中から局長が任命するということになつておるのでありまして、この行政機関の職員というものはどういう範囲であるかは必ずしも明らかにしておりませんが、この行政機関の中にもやはり地方団体の関係者を加うべきものではないかと思われるのであります。
以上が鉱業法案につきまして、大体気づきました点でありまして、このほかもちろん鉱害賠償の問題があります。また土地調整委員会というものがここに大きな役割を演じておるわけでありますが、この点につきましては時間もありませんので申すことを差控えておきます。
もう一つ次に採石法案につきましても、この採石権というものは非常に特殊なものでありますが、これは鉱業法と違いまして、国の支配権下にあるものを特許するというような形ではなく、むしろ土地所有権に対する制限物件につきまして、国家がその運営について関與するというような仕組みのものと思われるのであります。この採石権になりますと、国家的見地からする合理的な運営ということは、これはかなり薄くなるわけでありまして、地方団体の側におきましては、これは地方の利害関係にすぎない、あるいは單なる県内の中小企業者であるから、これについての事務はやはり地方団体の事務としてもらいたいというような希望があるようでありますが、現在の段階におきましては、必ずしもそれが適当とも言われないわけでありますが、将来においては、やはりこの採石関係の事務は、地方団体に委讓するということが適当ではなかろうかとも現在考えておる次第であります。
以上なお非常に大きな法案でありますので、いろいろなことが問題になろうかと思うのでありますが、さしあたつて私の考えております点を述べまして御参考に供する次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/7
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008・小金義照
○小金委員長 次は日本石炭協会会長高木作太君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/8
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009・高木作太
○高木公述人 日本石炭協会会長の高木作太であります。鉱業法は申すまでもなく鉱業に関する基本法でございまして、地下資源を合理的に開発することによつて公共の福祉の増進に寄與することを目的といたしますことは、日本坑法以来一貫した、かわらざる法の精神であると信じます。従つて経済界の変動に伴つて、しばしば改正を必要とする法令などと異なりまして、恒久的性質を持たなければなりません。現行法は明治三十八年制定以来、数次の部分的改正は行われましたが、半世紀にわたり、わが国の鉱業の発展に寄與したものでありますことは御承知の通りであります。政府におかれましては、重要鉱物増産法の失効を機会に、同法中の所要の規定を本法中に取入れることと同時に、砂鉱法を同法に合併し、法の整備を行うため、今回鉱業法改正案を国会に提案されました事情は了解いたしますが、さきにも申し述べましたように、伝統ある恒久法の改正は、現今のごとき事情下においては、きわめて愼重に行うことが肝要であつて、伝統の精神をみだりに改変するがごときは嚴に愼まなければならぬものと存ずる次第であります、かかる意味合いにおきまして法案をしさいに検討いたしますと、私どもの納得いたしかねます事項が数箇所ございますので、條を追つて簡單に修正の要望とその理由を開陳いたしたいと思います。
第一点は、石炭鉱区の最小面積を十五ヘクタール、従来の五万坪程度とすることであります。法案第十四條第二項は石炭鉱区の最小面積を三十へクタール、約十万坪と規定いたしておりますが、従来五万坪の企業單位で何らの不利不便なく稼行して参つたのでありまして、特にこれを三十ヘクタール、十万坪に拡大せねばならぬ理由は認められませんのみならず、鉱床の関係よりする鉱区の交換分合はもちろん、鉱業行政上の鉱区の整理統合等にも少からざる支障を来すものと考えます。よつて従来通り五万坪程度を最小面積とされんことを希望いたします。
第二点は、試掘権の存続期間を従来通り四年とし、一回の延長を認むることであります。今後試掘を要する地域はおおむね深部に属し、地表よりの探査きわめて困難であり、数多くの試錐その他精緻なる科学的探鉱を行うことを必要といたしますし、あるいは立地條件に支配されて、試掘期間の半ばを必然的に空費せしめられ、また資金、資材並びに技術陣容等からいたしましても、わが国の現状は既往の実情に徴しまして試掘期間は四年以上を必要といたしますので、法案第十八條の試掘期間はぜひ四年間と修正せられたいのであります。
次に試掘作業を誠実に継続中のものについては、さらに一回の延長は鉱業の発展助長の上からも当然と考えますから、これまた四箇年の延長を認むることに修正せらるることを希望いたします。
なお改正鉱業法が施行されます際、現行法によつて設定され、現に存する試掘権の期間についてでありますが、この点は本法案には何らの経過規定が見当りませんので、あるいは鉱業法施行法案中に規定されるかとも存じますが、改正法施行の際、旧法によつて設定された、現に存する試掘権については、改正法施行の際、改正法によつて試掘権が設定されたものとみなし、期間の計算も改正法に従うことにされることを希望いたします。
御承知の通り現存する各種鉱物の試掘権は、戰時中重要鉱物増産法の規定によつて鉱種別に期間が延長され、現在きわめて混乱しておりまして、取扱いの上からも、改正法によつて簡明ならしめる必要があると思います。なお右のごとき取扱いは、昭和十六年試掘権制度改正の際の先例もあり、既得権尊重の趣旨よりいたしましても、きわめて当然と考えます。
第三点は、採掘権は従来通り永久権とすることであります。法案第十九條は採掘権に期間を付してありますが、これは採掘事業の本質をわきまえざるのはなはだしきものであります。由来採掘鉱区は一応採掘事業の成立する鉱量の埋蔵は推定されますが、掘進の進展に伴つて埋蔵量を確認し、経営方針を立てるものであつて、鉱区面積、企業規模等によつて相違はいたしますが、埋蔵量によつては、数十百年の長きにわたり事業を営みつつある例に乏しくないのであります。もし予測に反し鉱況不振の場合は、たとい権利は永久権であつても、内容の空虚な権利でありますがゆえに、権利者は当然これを放棄いたしますから、この面からの弊害は考慮の要はないと思います。また企業の安定、永続性、資材、技術の合理的活用の見地よりすれば、一事業所の終掘に備え、予備鉱区を保持することは必要かつ当然のことでありまして、なおまた一定期間内に、限りある鉱物資源を採掘せしむることは、国家百年の計より見て、必ずしも本法案の目的とする公共の福祉の増進に寄與するゆえんではないと思います。かかる見地からいたしまして、採掘権は期間を付せず、確固たる永久権として投資の安全性を保持せしめ、鉱利を保護することが鉱業政策上当然と考える次第であります。
第四点は、事業着手の義務の期限を一年とし、休業の認可を届出とすることであります。法案第六十二條第一項は、事業着手を鉱業権の設定または移転のときから六箇月に義務づけておりますが、わが国の現状は、資金、資材はもとより、技術陣容を一時に動員することの困難はもちろんのこと、土地の使用の手続その他相当の準備期間を必要いたします。また立地條件の支配を受け、積雪期に許可または移転を受けた鉱区等については、法律は不可能をしいる結果と相なりますので、現行法通り着手義務は一箇年と修正されんことを希望いたします。
同條第二項、第三項は休業について従来の届出制を認可制に改めましたが、従来届出をもつて何ら支障なく運営されて参りましたので、特にこれを認可制とする必要は認められませんので、理由を明記して届出することに修正せられたいと思います。
第五点は、土地の使用、收用についてであります。鉱業の実施に際し、最初に逢着する問題は鉱業用地の問題でありますが、実情は鉱業用地の使用は、鉱業法による通商産業局長の許可に基き、土地所有者と協議することのみによつては土地の使用ができず、さらに農地調整法によつて、府県知事の農地使用の許可を受けなければなりませんので、手続の煩瑣はもとより、急速なる土地の使用が困難で、事業経営上支障が少くありませんが、法案によりますれば、土地の使用、收用の申請があつたときは、通商産業局長は関係都道府県知事に協議するとともに、鉱業権者または租鉱権者並びに土地に関して権利を有する者の出頭を求めて、公開による聽聞を行うこととなり、従来よりきわめて公正かつ民主的な形式が採用されておりますので、農地調整法の重ねての適用の必要はないものと信じます。よつて農地調整法の適用を除外する明文を挿入し、急速に土地の使用、收用のできますよう修正せられんことを希望するものであります。
第六点は、鉱害賠償についての所見であります。鉱害の賠償に関する規定は昭和十四年に追加されたものでありまして、以来十箇年の歳月をけみしましたが、その間事変、戰争が介在しましたので、遺憾ながら正常の歩みを続けたとは申しかねます。すなわち事変、戰争中国家の要請に基いて、鉱害の発生を無視して強行採炭を行いました結果、異常なる鉱害が発生したのでありまして、これにつきましては先般の国会におきまして特別鉱害復旧臨時措置法が制定されまして、一応の解決を見ましたことは、まことに御同慶の至りでありますが、前に申し述べましたように、鉱害賠償の規定は制定後日なお浅きため、今回の鉱業法の改正にあたりましても、原則的に現行規定がそのまま移行され、わずかに必要規定の一、二箇條の追加にとどまりましたことは、まことに時宜に適した措置であると存じます。しかるに一部には今回の鉱業法改正の機会に、賠償原則を変革し、金銭賠償を原状回復に置きかえることの要望があるやに聞き及んでおりますが、賠償は民法の大原則に従い、金銭をもつてその損失の補填をなすことを本旨といたしますがゆえに、損失補填以上の賠償義務を法定いたしますことは、理論上の矛盾があるばかりでなく、限度ある鉱業権者の負担力を度外視するものでありますから、この賠償原則は従来通り金銭をもつてこれを行うことといたしますことが当然と信ずるものであります。もつとも鉱業権といたしましても、適正賠償額に国家その他の出捐を加算いたしまして、鉱害の原状回復を行いますことにつきましては大なる関心と希望を持つものであります。よつて政府におかれましては、前国会の当院の決議の趣旨を尊重せられ、一般鉱害の復旧に関し、すみやかに施策を考究せられますことを切望いたします。
なお現行法より改正法案が踏襲いたしております供託金制度につきましては、その効果にかんがみ、これが存置につき、この際再検討を加えられんことを希望するものであります。
これを要しますのに、鉱業権者に苛酷な負担を法律をもつて強制いたしますことは、石炭鉱業の破滅を意味するものでありますから、鉱業権者の責任限度はあくまでも金銭をもつてする適正賠償にあることを法文上明らかにいたしておく必要がありますことを重ねて申し述べます。
次に今回追加されました第百十四條の規定の予定賠償は、当事者相互の便益を考慮されたものと存じます。すなわち賠償は、その物の対価以上に上まわることは考えられませんので、鉱業権者は対価を提供し、将来の賠償責任の免除を受けますことは、これまた当然と考えますし、紛議を未然に防止し、双方の利益となるものと固く信ずるものであります。
なお鉱害賠償に関連いたしまして一言いたしたいことは、鉱害発生の予見されます土地に、鉱業権者に連絡なく建物その他の工作物等を設置することによつて、無用の鉱害を惹起する場合がありますので、これが防止の方法を請ずることであります。すなわち実例といたしましては、近き将来当然土地陥落の被害発生の予想されます土地に、新制中学校の校舎を新設しようといたしまして、地ならしに着手いたしました際、鉱業権者がこれを知り、協議の上他の安全地帶に敷地の変更をいたしましたので、鉱害を未然に防止し得たのであります。かような事例は枚挙にいとまありませんが、かくのごとき場合は、事前に鉱業権者に協議することの一箇條の條文挿入によつて、鉱業権者及び相手方双方の損害を未然に防ぎ、多大な利益となるものと信じます。
時間の関係上意を盡しません点御了察を願います。御清聽を感謝いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/9
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010・小金義照
○小金委員長 ちよつとお諮りいたします。公述人に対する質疑については、後刻全部の公述人の御発言が済みました後にまとめてしていただくことに相なつておりましたが、午前中御発言をくださいました方々のうちで所用のためお帰りにならなければならない方がございますので、その方々の分に対しましては特別に午前中これから御質疑をしていただいた方がよろしいと思いますが、御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/10
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011・小金義照
○小金委員長 御異議ないと認めます。それではさよう決しました。岡部楠男君、詑間七郎君、杉村章三郎君及び高木作太君、以上四名の方に対する御質疑がありましたならば、御発言願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/11
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012・田渕光一
○田渕委員 亜炭と粘土の採掘権に対していろいろあるのですが、公述人が十二時の汽車で帰るということを伺つておりますから、後刻書面で伺いまして御回答願うことにいたしたいと思います。ひとつ公述人に御了解を願つておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/12
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013・小金義照
○小金委員長 それでは詑間さんにそのことをお願いいたしておきます。
それでは次に進みます。帝国石油株式会社社長酒井喜四君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/13
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014・酒井喜四
○酒井公述人 ただいま御紹介にあずかりました帝国石油株式会社の酒井喜四であります。今回の鉱業法改正法案は改正の方向、趣旨についてはおおむね賛成でございます。ただ詳細に検討いたしますると、局部的にはいろいろ意見もあるのでありますが、この席では石油鉱業に直接携わつておる立場から、関連する点について若干の意見を述べたいと思うのであります。
第一点は、石油を目的とする試掘権の存続期間は四年とし、さらに少くとも二年延長を認めるということが絶対に必要であると考えるのであります。試掘権の存続期間は改正法案の第十八條において、現行の四年が二年に短縮され、延長期間がさらに二年とされておるのでありますが、石油については左記に述べまするように、他鉱業と異なる特殊事情によつて、特にこの期間を四年に延ばす必要があると考えるのであります。その一つは石油の探鉱の特異性であります。石油は液体あるいは気体として存在するために、露頭の位置に鉱床の本体が存在しないのが普通なのであります。従つて石油の探鉱は固形鉱物の場合と異なりまして、鉱床自体を直接探鉱するに先だちまして、石油が存在し得る構造を求めなければならないのであります。すなわち石油母岩、マザー・ロツクと言つておりますか、それの発達の確認、それから多孔質の砂岩の存在の確認、帽岩キヤツプ・ロツクの分布の確認、集油構造の確認、集油機構の決定といつたようないわゆる石油のいれものの存否及びその條件を明らかにしてからでなければ、本格的な試掘に入ることができないという特殊な事情があるのであります。
次に探鉱の範囲がきわめて広大な地域にわたるということであります。さきに述べましたような構造の探査にあたりましては、探鉱の規模が広大な地域から始められなければならないことは石油の探鉱の一大特質なのであります。しかも最近の本邦におきまする石油探査は、物理探鉱法の導入によつて一新時期を画しまして、広汎な平原を対象に加えることになつたのであります。すなわち物理探鉱法は広汎な地域にわたつて重力探鉱法による基礎調査をまずやり、続いて地震探鉱法による構造の精査をいたします。さらに必要に応じては、放射能探鉱、地化学探鉱等を併用することによるものでありまして、基礎調査及び以上の精査を完了するだけでも少くとも二年ないし四年を必要とするのであります。
次に探鉱の深度が非常に伸びて参つたということであります。石油におきましては、その採掘可能深度がきわめて大でありまして、すでに三千メートルを越えた例も多々あるのでありまするが、最近探鉱技術の進歩に伴つて試掘井の深度も次第に増大する傾向にございます。かかる試掘井は一坑を完成するにも相当長期を必要といたしまするが、さらに深部構造は多くの場合地表の構造との間にずれを示すために、必然的に探鉱面積も拡大いたしまするし、また試掘の坑数も増加せざるを得ないという実情に相なつておるのであります。かくのごとくしまして、地質構造の規模によつては相当の距離を離して順次多数の試掘を要するために、一般的に試掘井による探鉱作業期間としては、少くともそれのみで三年ないし四年を必要とするものであります。従つて基礎調査、構造精査及び試掘井による全探鉱作業期間は、どうしても五年ないし八年の日子を必要とすることになるのであります。ここで探鉱の所要の期間の実例を二、三申し上げてみますと、平原地帶探鉱の例として、新潟県中蒲原郡の羽生田——加茂の構造の場合は、昭和二十二年より地表及び古生物調査、重力概査及び精査並びに地震精査を都合三年間にわたつて行いました。二十四年、二十五年、深度約千五百メートルに対して、試掘井二坑を掘鑿、二十六年以降現在引続き試掘を要するものとして作業を進めております。また同じく新潟県北蒲原郡水原構造の場合は、昭和二十二年以降本年に至るまで四年間、地表、古生物、重力概査、重力精査、地震精査をいたし、本年及び本年以降二年以上試掘作業による探鉱を行うものであります。また北海道の山陵地帯探鉱の例として、天塩郡の北川口構造の問題がありますが、この場合は、第一次探鉱として昭和十一年地質調査を、昭和十三年地表調査を行い、昭和十三年から十七年まで深度約千百メートルに対し、二坑のロータリーの試掘井を掘鑿して一時中止したのでありますが、この資料に基いてさらに第二次探鉱を計画し、昭和二十二年、二十三年、地表及び古生物調査を行い、二十三年以降深度二千二百メートルに対して試掘井一坑を掘鑿し、目下掘進中、かような事情になつておるのでありまして、この場合のごときは、第一、第二の両探鉱期間を通算いたしますると、実に十年以上にわたるというような実情なのであります。
さらに、現実の問題としては、本邦においては石油の賦存地帶が主として降雪地帶に偏在するために、地質調査並びに試掘作業に相当季節的制約を受けることも考慮しなければならないと思うのであります。すなわち地質調査を積雪期間中に実施することはほとんど不可能であります。また試掘については、道路の開設、櫓その他諸設備の建設等の準備作業は、すべて雪どけを待つてやらなければならぬ、こういうことに相なつておるのであります。
以上のように石油の探鉱は特殊な條件下にあるところ、改正法案に示された一般鉱物の短期試掘権を石油においても一律に適用されるにおきましては、探鉱作業の中途において試掘権が消滅するがごとき不安定な事態を招来し、ために科学的探鉱に伴う試掘鉱区に対する大規模な投資を不可能ならしめ、ひいては今後本邦の石油資源の積極的開発を著しく阻害するおそれがあると考えるのであります。
さきに昭和十六年の鉱業法改正に際しまして、試掘権のいわゆる優先出願権の廃止とあわせて、存続期間が二年から現行の四年に延長をみたのでありますが、その際改正法実施の場合に現存する試掘権については、その存続期間を改正法施行後四年として、やむを得ない事由があると認めたときは、石油はさらに四年を、その他の鉱物は二年を限つて延長を認めるという旨の規定が加えられたことは御承知の通りでありますが、これは石油鉱業における試掘権が他の鉱業の場合に比較し、存続期間の伸長を認めなければ、技術的にいわゆる試掘の目的を達成することができなかつた実情を示すものであるのであります。また今次の鉱業法改正にあたりましても、鉱業法令改正審議会は、石油の特殊事情を確認いたしまして、石油を目的とする試掘権については、存続期間を四年とするとの議決を行つておりまするし、また仄聞するところによれば、総司令部においても、試掘権の存続期間は一般に二年とし、特に石油に限り必要と認めるときは四年以下の期間延長を許可し得るようにすべきであるとのコメントを出しておるということも伺つております。これらは前述のような実情に照して、きわめて適切な配慮であると考えるのでありまして、ただいま申しました石油試掘の特殊性の主張が、ひとりそれに関係する者の独断でないことを実証するものであると私は考えるのであります。
第二点は租鉱権制度の適切な運用をはかるべきであるということであります。新鉱業法案は残鉱の收取その他鉱物の経済的開発上必要がある場合、他人の採掘鉱区内の一部で鉱物を掘採取得するための租鉱権制度を設けておるのでありますが、石油鉱業には従来共同井という慣行があります。これは当事者間の契約関係をもつて実質的に他人鉱区の開発に寄與しているのであります。しかしながらこれら共同井の法律関係は明確を欠くために、当事者間に不測の事故ないし損害を惹起するおそれなしとしないのであります。従つて新法案の租鉱権制度が従来の共同井の慣行をそのうちに吸收し得るごとく措置するならば、法律的にはなはだ有意義というべきであります。ただこれがためには石油鉱業における租鉱権については、石油鉱床の特殊性にかんがみ、租鉱の対象たる鉱床の解釈また租鉱区の面積の取扱い等について、実情に則した措置が講ぜられるとともに、その合理的な掘採のため抗井の位置、深度、間隔、坑数の制限等を法的に認めることを必要とするのでありまして、少くとも現行の共同井契約については経過的に右の措置を認めることによつて、租鉱権制度の運用面の適切を期することがまず先決條件である。このことが適行に行われることによつてのみ租鉱権制度の新設に私は賛成する次第であります。
第三点は鉱業の実施の規定に関連して二、三の意見を述べてみます。その一つは施業案であります。採掘鉱区に対する施業案は、試掘の場合と同じくこれを届出制にいたすべきであると思うのであります。本来企業に対する行政関與はできる限り避けるべきであると思うのでありまして、この場合届出制によりましても、草案の第百條の規定によつて必要に応じて施業案の変更の勧告命令をすることができるのであります。これによつて十分行政目的を達することはできるはずであると思うのであります。この認可制をとる理由として、鉱山保安法との関係によるもののように聞えておりますが、届出制によつて保安法の面に影響を及ぼすとは思われませんし、試掘鉱区の場合と甲乙を設ける理由も考えられないのであります。
次に施業案の内容は、申すまでもなく事業実施の根本的要綱に属するものでありまするから、それの内容は命令に讓るべき性質のものではなく、少くともその骨子となるべき事項は、本法において明確にされることを要望する次第であります。
さらに鉱業の実施面において鉱利の保護、鉱業権者相互間の関係の問題があるのでありますが、新法案は、いわゆる相隣関係事項の規定においてはなはだ不備なものであります。諸外国の立法例によれば、相当進歩を示しておるようでありますから、かかる例にならいまして、適切なる立法化を行い、事業運行の円滑をはかるとともに、事故の発生防止に勉めるべきであると考えるのであります。この点改正案の第一次草案には研究の跡が認められておつたのでありますが、遂に本法案に載るところとならなかつたのはまことに残念しごくに存する次第であります。
さらに法案の第二十六條に、設備設計書の規定がありますが、これに関連いたしましても、他人の鉱区に重複しまたは隣接して鉱区の設定申請がされた場合には、鉱利の保護、合理的開発、あるいは事故防止の見地から、必要ある場合はこれを提出させることと改正するのが妥当であると考えるのであります。
なお右の点並びに施業案の内容とも関連いたしまして、相隣鉱業間の準則的規定が欠如しておることの不備が、いよいよ痛感させられる次第なのであります。その次が他人の土地を使用し得る場合に、石油及びガス輸送管の設置というものを加えていただきたいのであります。これは第百四條を読んで見ますると、鉱物の運搬に関して索道その他の規定が載つておりまして、おそらく石油及びガスが液体あるいはガス体であるということから、そこに記載漏れではないかと思うのでありまして、決して石油及びガス輸送管の設置を使用の対象から削除する趣旨ではなかつたろうと思うのでありまして、これはぜひその文句をこれに加えていただきたいと思うのであります。
最後に現行法では炭化水素を主成分とする天然ガスは、石油と見なされておりまするが、新法案は、可燃性天然ガスを石油のほかに独立鉱物として取扱われることになつております。このため石油鉱床とまつたく関係のない可燃性天燃ガスの掘採が、明確に独立して行われることとなるのであつて、この点はきわめて妥当であるのでありますが、天然ガスの性質及びそれと石油鉱床との関係は、賦存條件によつてその都度の制定を待たなければならず、かつその判定は技術的にも非常に困難な場合が多いために、新法においては天然ガスの掘採が石油の掘採に支障を與えぬように、十分に考慮せられなければならないと思うのであります。このためには少くとも含油層と密接な関係にある可燃性天然ガスは、石油自体とみなさるべきであり、かかる取扱いとともに、現行の石油を目的とする鉱業権に関しては、可燃性天然ガスの掘採権を含むよう、経過的な措置をとられんことを希望する次第であります。
以上をもちまして、私の公述を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/14
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015・小金義照
○小金委員長 それでは午前中はこの程度にいたしまして休憩いたします。午後は一時半から引続き開会いたします。
午後零時九分休憩
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午後一時五十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/15
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016・小金義照
○小金委員長 これから午前中に引続きまして公聽会を開きます。
次は石灰石鉱業協会会長芳賀茂内君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/16
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017・芳賀茂内
○芳賀公述人 ただいま御紹介にあずかりました石灰石鉱業協会会長芳賀茂内でございます。鉱業法案に関する意見、主として追加鉱物について意見を申し述べたいと存じます。
石灰石、ドロマイト、けい石、長石、ろう石、滑石、耐火粘土を鉱業法上の法定鉱物に加えることについては、関係業界多年の願いでありましたところ、政府におかれては四年来の審議を盡された結果、第八国会にこれら追加鉱物を含む鉱業法案を提案されましたことは、われわれ業界の喜びにたえないところであります。何とぞ国会におかれては愼重御審議の上、すみやかに本件を御可決くださいますよう、ひとえにお願い申し上げます。
つきましては左に協会の意見を申し述べまして、御審議の資料に供したいと存じます。
一、石炭石の重要性、石炭石は現在では日本の地下資源の中で最も重要なものの一つであります。その埋蔵量も少くなく、しかも産額の大なること、品質の良好で用途が多方面にわたること。すなわちおもなるものを申し上げますと、セメントを初め、化学肥料、カーバイド、石灰、ソーダ灰、ガラス、人造纎維の原料として、製鉄用副原料として、また製紙、製糖用中和剤としまして、あるいは土建用碎石として広く用いられ、昭和二十四年度においては生産量一千万トンに達し、今後逐年増加の趨勢にあります。戰後わが国が重工業から平和産業に転ずるに及び、低兼な原料である石灰石は、いよいよその用途と使命を増し、従来無機化学の範囲を出なかつたものが、化学の進歩につれ、輓近有機化学の領域に進出し、その勢いは年を追うて隆盛になつておるような次第であります。かくのごとく石灰石は産業上原料として重要であるばかりでなく、製品としてまた原石として輸出される量も少くないのであります。
第二、決定鉱物追加要望の要点、そのうちの一、採掘権を確保し、事業の安定をはかる必要があります。理由、みずから所有し、または賃貸している石灰石鉱床に対し、他人が他種鉱物の試掘権を出願し、ために現に採掘している区域あるいは予備区域であつても、計画的に苦しめられた事例が従来少くなかつたのであります。事業者の一部ではこれら妨害を防ぐため、自己の鉱床に対し他鉱種の試掘権を設定し、むだな費用と労力を拂つておるものもあります。
二、鉱物の採掘またはこれに伴う必要な施設のために土地の使用または收用が許され、事業の安定をはかる必要があります。理由、従来搬出積出し用地、引込線用地または索道鉄柱その他必要施設用地等に不当な対価を要求され、ために事業の遂行が妨げられ、または既設積出し用地の賃貸し契約を解除され、事業経営が脅かされた等の事例が少くなかつたのであります。
第三、採石料に関し土地所有者から不当な価格が要求され、事業の安定が脅かされることを防止し、公正かつ健全な経営と企業の安定をはかる必要があります。
理由の一、採石料の不公正かつ事業の負担限度を越える増額要求がここ数年各地に行われ、ために年余にわたつて妥結のつかなかつた事例が相当あつたのであります。法定鉱物に追加されることによつて「まだ採掘されていない鉱物についてはこれは掘採しまたは取得する権利の附與」、これは国家にあるので、従つて採石料は無償たるべきことを明確にし、不当な摩擦を除き、鉱業の育成をはかられることを期待するものであります。理由の二、従来から採石料を支拂つておるものについては、当然補償しなければならないものと考えるが、経過措置において、その補償額が無制限かつ無期限でなく、適当な基準と年限が定められ、不必要な摩擦を予防されることを期待するものであります。
四、石灰石鉱業に対する税体制を明確にし、かつ現在一部において行われておるごとき悪税を廃止されて、もつて企業の安定をはかる必要がある。理由の一、現在は事業税を課せられ、あるいは近き将来これにかわつて附加価値税が課せられようとしておるが、法定鉱物となれば、将来鉱産税を課せられることとなり、鉱業としての税体制を明確化されることを期待するものであります。理由の二、現在福岡県、和歌山県及び北海道の一部において、石灰石工業に対し、事業税のほかに、トン当り二円ないし十五円の石類税を課せられておるものがあるのであります。あるいは福岡県の一部のごとき、鉱産税と同率の石類税が課されておるという事実もあります。昭和二十四年秋には東京都の一部町村会議において、トン当り三円の石類税新設を決議せられた。これを従来法定鉱物について見ますると、鉱産税が課せられているが、これとあわせて、いわゆる鉱石税のごとき課税はなかつたはずであります。ひとり石灰石鉱業がこの種二重課税せられておるのは了解に苦しむところであります。
以上のような次第で、国会において愼重に税制審議が行われても、いわゆる法定外の独立税として市町村限りで二重課税的な市町村民税を課せられることは苦痛にたえないところであります。この点からも法定鉱物に指定されることにより、鉱産税一本として税制の公正化をはかられることを期待するものであります。
五、法定鉱物の追加が遅れたために、鉱業者または土地所有者の既得権が不当に侵害され、思わぬ混乱を引起す例があります。すみやかに実施の必要であることを要望します。理由、新鉱業法案については、すでに四年にわたり、各方面の意見を聞き、政府で用意されたものであります。その内容は広く知られており、その近き実施が期待されておりまするので、実施が遷延しているために、その時期的ずれに乘じ、現に某採掘場においては、土地所有者から二十年にわたる賃貸し契約を解除して来たり、あるいは某採掘地に対し、すでに売り渡した農民が、農地法による買收運動を起したるごとき、または現に採掘中の某事業場が近く契約更改期となるので、爾後の契約に応じない態度を示しているがごときその一例でありまして、いずれも事業者の稼行必至を見越して、法施行前に既得権を一時中断し、本法案上の土地所有者の権利を確保し、もつて経済的交渉を有利にはかろうとしておるものもあるのでありまして、あるいはまた反対に、ためにする者が土地所有者の利益を侵害することもあり得るわけであります。
三、鉱業法案に関する意見、一、法案に見えます土地調整委員会、これには業界からも参加させていただきたいという要望を持つております。二、法案第四十條、第四十七條、第九十一條及び第百六條の聽聞に関する通知及び公示期限を二週間前とすること。理由、法案においては、一週間前までにこれをしなければならないことになつているが、鉱業権者側では、本社、所轄事務所及び採掘事業所等の連絡と準備等の都合もあつて、原案の期日では不具合であります。三、法案第六十二條の事業着手期間を一箇年以内とすること。理由、事業着手のための諸般の準備は六箇月では困難である。四、法案第百四條の使用目的に港湾を追加し、法案第百五條の收用目的に露天掘りによる鉱物の掘採及び港湾を追加する。河川面及び海面の使用に関しては、法案第百八條、水の使用に関する権利と同様に、土地の使用に関する規定を準用する。五、法案第百十五條の損害賠償責任の消滅時効は鉱業権消滅のときに限り、消滅のときより十年とすること、理由、鉱業権者の所在、責任等不明となり、または経済能力の著しき減退の場合も予想される。六、鉱業権による採掘に附随して採取される採石は、鉱業権の内容として認めらるることとし、鉱業権と採石権との調整をはかる。
以上意見を申し述べました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/17
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018・小金義照
○小金委員長 次は時間の御都合があるそうでありますから、北海道石炭株式会社社長舟橋要君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/18
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019・舟橋要
○舟橋公述人 このたび鉱業法案の改正及び採石法案の立案されるにあたりまして、業界及び各界多数より意見の御聽取をしていただき、この公聽会をお開きになりましたその愼重さというものに対しまして、国民といたしまして、最大の敬意を表するとともに、深甚なる感謝の意を表したいと思います。私のこれから公述いたします一、二項目を除きまして、大半はわれわれの業界を代表いたしまして、高木石炭協会長より詳細なる項目の説明をしておりますので、私はごく大略をわれわれ業界全体が同一意見であることの意思表示のために各項を追うて、簡單に御説明申し上げたいと思います。
第一点、法律第十四條第二項の石炭鉱区の最低面積三十ヘクタールは、十五ヘクタール、約五万坪とすること、この理由といたしまして、現行鉱業法の石炭鉱区の最低面積五万坪は独立の一企業單位として明治三十八年以来約五十年にわたつて別段の不便と不利を感じなく実施されて来たものであります。この面積の引上げの必要は絶対にないと思うのであります。従来通りにしていただきたいと思います。
さらに第二点、法案第十九條第一項の採掘権存続期間は三十年と限定されているが、現行法通り無期限としていただきたい。その理由、石炭鉱業においては三十年以上にわたつて継続稼行するもの数多く、従つて三十年に限定することは実情に沿わないのであります。採掘を終了しまして、鉱区の価値がなくなりますれば、横利を放棄するから永久権として絶対さしつかえないと思うのであります。
第三点、法案第六十二條第一項において、試掘、採掘の事業着手の義務を六箇月以内に規定してありまするが、これを一年以内として同條第二項、第三項の認可を届出制に改めることにお願いしたいと思うのであります。その理由としましては、北海道のごとく気候的特殊事情があります。冬期間はほとんど十一月から四月までは調査もできませんし、着手が困難であります。積雪の事情のために、この時期はとうてい、不可能でありますので、事業の着手、及び休業について許可制度としたが、現今のごとき不安定な経済事情下においては、届出制とすることが妥当であると思うのであります。
第四点、鉱業用地としての土地の使用及び收用の権限を、従来通り通商産業局長とすること。理由、従来土地の使用及び收用は、通商産業局長の権限で処理されていたため、従来は鉱業用地の確保には、事の性質上多少の困難はありましたが、比較的順調な解決によつて、事業の遂行をして参つたのであります。しかるに新法案によりますれば、事業の認定の権限を除いては、すべて土地收用審査会にその権限が移されております。事業の処理、解決に長時日を要することは明らかで、事業実施に障害を示すことが予想されるのであります。加うるに、右審査会がほとんど鉱業に関係のない委員をもつて構成されております。従つて鉱業の特殊性に対する認識乏しく、事業の公正なる判断をなすことについて、はなはだ不安であります。もとより鉱業用地の使用、收用は急速を要する場合が多いのでありまして、このために特殊法たる鉱業法中に、これらに関する規定が設けられているものと信じます。この見地から二本建となさず、従来通りの取扱いを切に希望するものであります。
第五点、法案第百十五條第一項の、鉱害賠償請求権の削減時効二十年を十年とすること。理由、鉱害賠償請求権の消滅時効は、損害発生のときから二十年、進行中の損害については、その進行のやんだときから二十年を経過したときに、初めて効力を生ずるものとなつているが、鉱業権は国家より賦與された権利であり、この権利の正当な行使によつて生ずる鉱業の賠償を、民法の不法行為と同一視することは、理論的にも首肯できないのであります。民法第百六十七條第一項の原則と歩調を合せて、これを十年として、不安定期間を短縮していただきたいのであります。
第六点、法案第百十七條第二項の鉱害賠償の担保供託は、北海道としては、これを除外していただきたいと思います。北海道には既往において、鉱害発生の事例なく、本道の石炭鉱業に対しては担保供託を免除する明文を設けていただきたいという点であります。
第七点は租鉱権について、法案第三章の租鉱権制度につきまして、世間の一部に否定的見解があるやに聞き及んでおりますが、従来の慣行の斤先を、法律上の制度として、権利義務を明確にいたしたことは、適切なる立法措置と信じます。すなわち大規模な企業に適しない地下資源を、この種権利によつて遺利なからしめることは、国家的に見ましても、必要であると信じまして、原案に賛成するものであります。ただ租鉱権なる用語は、たまたま元満州国鉱業法の用語と同一であるがゆえに、かれこれ権利の内容も異なるゆえ、従来より用いなれました使用権なる用語を踏襲していただけますならば、幸いだと思うのであります。
次に第八点、従来の、現行法の第二十二條に規定されておりました出願中名義の変更ができる件が、今度の新法案で削除されております。これは特にお願いしておきたいことは、北海道のごときは、地下資源の調査は行き渡つておりません未開発地が多いのであります。現在のあらゆる鉱業は、自己の現稼行に忙しく、ひまがないために、新しき探鉱その他の調査は十分に行き渡ることができないのであります。幸いにも探鉱屋というものが、相当に北海道におりまして、これらが企業意欲のために、あるいは事業意欲のために、常に調査を行つております。しかも今日鴻ノ舞ほか優秀な鉱区は、これら探鉱屋の手によつて探鉱され、出願されている。そうして出願中に名義の変更等の処置によつて、今日大会社に移讓されまして、りつぱな鉱山になつておる実例が少くない。まだまだ北海道においては、これらを十分に利用することこそ、国家の鉱物資源を完全に開発し、採掘できる過程に持つて行くことができると思いますがゆえに、どうか現行法第二十二條を、どこへでもいいから復活していただきたいということを特にお願いするものであります。
申し述べました各項については、地方的な見地の條項がございますので、法律を二本建とすることは困難と思いますが、法の精神をどこかに生かしていただきまして、あるいは年限の延長とかその他に生かしていただきますならば、十分に実施面において、施行の上においてできると思います。
以上申し上げまして私の公述を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/19
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020・小金義照
○小金委員長 次は愛知県耐火粘土工業協同組合顧問、加藤英一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/20
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021・加藤英一
○加藤公述人 ただいま御指名をいただきました加藤でございます。実は私、昭和十八年から本年の四月まで、ただいま御指名の理事長をいたしておりましたが、組合法がかわりましてその資格を失い、現在は顧問をいたしております。それからこの事業を中心といたしまする愛知県、三重県、岐阜県が同じような組合をつくつておりますが、それの連合会を組織して、その会長をやはり同じ時まで勤めて、現在は顧問をしております。そういう両方の関係と、県議会の末席を汚して、経済委員の末席にありますので、その点からもお問合せの件についてお答えを申し上げてみたいと存じます。
私どもの業界におきましては、大体において今回御審議中の鉱業法案は適当と認めます。特に耐火粘土が新しく法定鉱物として指定されたことは最も適当な措置と考えます。何となれば耐火粘土が製鉄鑄鋼用の補助的重要不可欠の鉱物であり、特に平和の今日、陶磁器をもつて外貨獲得、すなわち日本の土を金にかえる、まことに貴重な事業と考えます。耐火粘土即陶磁器であり、陶磁器即ドルであります。すなわちこの三県下の軒下から出ます土が、たちまち金にかわり、国を富まし、世界を益するという、この面——わが愛知県におきましては毛織物工業、綿工業の盛んなことは御承知の通りでありまするが、これらは原料を外国に求めて、その得るところは賃料である。この事業こそ真から土を金にかえるというとうとい仕事だと私どもは考えております。私ども業界におきましては、さきに述べましたように三県連合会におきましても、ここ数年来一致して、耐火粘土の法定鉱物に指定せられるよう、また新鉱業法の一日も早く制定せられるよう、陳情懇願これ努めて来たのであります。さればこそ当局におかれましては、耐火粘土が法定鉱物に指定せられていないにもかかわらず、中央には鉱山局鉱政課に專任にひとしい主務係官を置き、地方においては地方通産局の鉱山部鉱業課で生産資材の獲得から割当、生産指導の面、主食の増配、一時は優先輸送の便宜まで與えられて来たのであります。これらのことにかんがみましても、今回御審議中の法案は、業者といたしましては、あげて歓迎をしなければならぬ、感謝せねばならぬことであるのであります。しかるに最近に至りまして、三重県あるいは岐阜県の一部に反対の声が起つておるのは御承知の通りであります。これが原因を考えてみまするに、第一、終戰後製鉄製鋼事業の衰微とともに、耐火粘土の需要がたいへん減つた、それと金づまりによつて経営難に陷つておる、そこへ指定鉱物になつた場合一万二千円などというような一鉱区登録税を拂い、その他新税がおつかぶさつて来て、なおさら経営難に陷るのではないか、こういう心配。それから第二番目には、耐火粘土とは必然的に層をなしまして埋蔵をしておる亜炭との摩擦、亜炭が優先的であり、力の上においても勢力がいい、これに圧倒されてしまうのではないかという心配がここへくつついて来るのであります。これは三重県の場合です。第三に、資材の特配とか優先輸送等の特権にもう魅力がなくなつてしまつた。なおこのほかに、地方自治体及び第三者的立場において反対があるようであります。これは粘土業者が重要鉱物に名をかりて濫掘をしたり、無軌道な作業をして、治山治水から農業耕作初め、第三者に鉱害を及ぼすような悪質の者等が跳梁するのではないかという心配があるかと存じまするが、本法案の設定によつて、これらの害悪を除いて、健全、まじめな業者の保護助長を目的とすべき本法案である以上、これはあくまで歓迎して行かなければならぬのであります。特に陶都と言われ、煙の都と言われる瀬戸市、多治見市、四日市市等は、何に生かされ、何に生きておるか。これを考えまするときに、これがすみやかなる成立は、私ども県民の立場においても、業者の立場においても、やらなければならぬことと考えるのであります。特に愛知県におきましては、耐火粘土の原産地でもあり、一連の陶磁器生産地であるところの瀬戸市を中心とする一帶の地方自治体も、業者も、この成立を希望しておるということを申し述べます。さればわが愛知県議会におきましても、本年の当初予算に、わずかではありまするが、七十五万円の耐火粘土試掘ボーリングの費用を計上して、疲弊せるところの業者の助成と発見、この貴重物資の完全採掘の方法を考えておるわけであります。
かくのごとき見地からいたしまして、あくまで本法の精神と実際は、事業の保護育成であり、害悪除去に徹底しなければならぬと思います。そのためには、第一番に耐火粘土の定義を確立していただくということであります。現在耐火粘土はゼーゲルSK二十六番以上となつておりまするが、二十六番と申しますれば、粘土瓦の土、土管コンロの原土まで含まれてしまうのではなかろうか。ここの表にありまする土でも、かまどやコンロや熱土ぐらいの耐火性は必ず持つておるものであります。されば本法案あるいは耐火粘土という名前の権威にかけても、また取締りの上から考えましても、この耐火粘土というものの定義をSK三十番以上ときめられることが適当ではないかと考えます。これによつて低火度粘土の採掘者、弱小業者の多い地方の反対が消えるのではないかとも考えられます。
第二に、本業者は大多数が家内工業的なきわめて小企業体でありますが、これは国でも認められておるために、第何條でありましたか、旧指定鉱物の面積が三ヘクタールであるというのに対して、新しく指定されました耐火粘土等の面積が、一ヘクタールと規定されておるように承知しております。これに準じまして、登録税もその三分の一ということが不適当であつたならば、少くも二分の一の六千円程度にしてやつていただきたい、こう思います。また中小企業体を助成、育成する意味におきまして、現在の事業税にかわる鉱産税等、一切の税負担は必ず比重的に考えて、新しい税法によつて軽くされて行くということが、本法の目的でもあり、かくのごとき重要産業の国家の指導という面で徹底していただきたいと思います。
第三に、耐火粘土と亜炭とは、同一地区に層をなして埋蔵しておりますものでありまして、あくまで同種と考えてはならない。権力の強い方の者が、同地区に層をなしておるものなので、一方的に獲得したいという気持もわかるのでありますが、耐火粘土の業者がそういうことを考えたら亜炭業者はお困りになる。亜炭業者がそうお考えになれば耐火粘土業者が困る。これは本質的にあくまで異種であることを明記せられて、亜炭業者も粘土業者も、ともに同等の権利が與えられるように法文化して行かれれば、これは協調して事業の遂行ができると思うのであります。こうしていただくことによつて、三重県の粘土業者の反対は消えるものと考えます。
第四に、第三十四條かと思いまするが、鉱業権者の資格というところの第二項に、「自ら鉱業を営む資力又は信用を有すること」とあり、第三項には「自ら鉱業を営む能力を有すること」、こう規定せられておりますることは、切詰めて考えて参りますると、大資本家の擁護に傾くのではないか、鉱業の根本を成す発見というものは、資力はなくとも、足にまかせ、知惠にまかせ、その旺盛なる意欲に燃えてする根本の発見者の権利が沒却されてはならないのであります。そのためにこの資格の第一は発見の功労者に置くべく、法文の明記が願いたい。資力、能力、信用等は、第一の発見者に結びついて行く第二義的のものであると私は考えます。
第五番目に、当地方におきます亜炭業者の場合、実際の採掘者は七五%までが弱小な斤先業者であります。現在でも斤先料金等の問題で鉱業権者との間の争いは絶えないのであります。新鉱業法が施行されます場合には、これが激化するのは火を見るよりも明らかであります。これの適正な仲裁機関として、地方通産局長あるいは地方鉱業委員会というものに、その裁定権を與えられるような法文がほしいと思うのであります。これは耐火粘土の鉱区においても同様に考えられます。
第六に、法文中「原形に復する」ということでは、鉱業法の第百十一條、採石法第八條で詑間公述人から御指摘がありましたように、私としてもかような文句を置いておいては法の権威にもかかわり、実際の運用が不可能であるということを考えて、適正な御訂正が願いたいと思うのであります。
最後に、かくのごとく愼重に手を盡して法案の御審議をいただきまする委員長初め各委員の御熱意に、厚く敬意と感謝を捧げます。御清聽を感謝いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/21
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022・小金義照
○小金委員長 次は石材振興会会長上山元市君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/22
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023・上山元市
○上山公述人 私は石材振興会の会長上山元市であります。本日この席にお招きをいただきまして、私どもの意見をお聞きいただきます機会を與えていただきましたことを厚く御礼を申し上げます。はなはだ駄弁かも存じませんが、まず冒頭に私がお願いいたしたいことは、石をもう一度見直していただきまして、それから私の話をお聞き取り願いたいと存じまして、一応石の重要性ということを申し上げてみたいと存じます。
およそ天地の間で何が多いといつても、石くらい多いものはございますまいと存じます。多ければ平凡であります。平凡であるから人はこれに関心を持たぬのであろうと思いますが、およそ石ほど広く科学的にも思想的にも、古くから愛翫せられたものはまれであると思うのであります。文化の始まりは、石からであると言うても過言でないと思います。古代人からの生活と石との関係、その用途のありさま、その日常生活の道具類について見ましても、今日現に残されているものでも幾多のものが数えられるのであります。平安朝時代から造庭について、石に意味を発見いたしましてこれを観賞し、これを大自然につないで味うなどは、日本的文化の理想の一到達点であつたろうと思われます。室町から桃山時代の真に日本的な建築で、わが国自身で発達し完成されたものでかの江戸城、大阪城、姫路の城、名古屋城など、みな天下の名城とされておるのでございまするが、それらのすべてが大きな石垣で築かれ、豪壯な気分が漂うており、大阪城のかのたこ石や肥後石などは、三十六尺に二十尺という巨大な石で築かれておるのでございます。この点などは攻撃と防禦ということだけでなく、永久不滅という考え方が強く表現せられておるのでありまして、現にエジプトにおけるピラミツドやスフインクス、さらにギリシヤの建築、ヴエスヴイヤスの火山の灰の下から掘り出されたかのポンペイの廃墟にいたしましても、千数百年以前のものが残されておる現状でありまして、わが東京だけにいたしましても、本議事堂を初め、日本銀行、勧業銀行、第一生命、その他現代建築でも幾多残されておるのでございます。かように大は築城の巨石から、小は愛翫さるる碁石、盆石の類に至るまで、ことごとく石であるのでございます。敬神崇祖の象徴である碑石類、さては一般土木建築工事に基礎材、建造材、装飾材として必要欠くことのできないものでありまして、その使用される数量もまた厖大なものであると同時に、戰災の復興とその体験から見て防火建築に重きを置くときには、いかに厖大な石材の必要と重要性が認識されることであろうと思うのでございます。
ここで強調いたしたいことは、道路、海湾の築造、耐火耐震建築にはセメント・コンクリートを理想とせられておりまするが、その骨材としての石材はまた不可欠のものでありますと同時に、そのセメント一トン製造するのに一トンの石炭が必要とせらるると聞いております。この貴重な石炭を大量に必要とするセメントは、石材の結合材として、またセメントでなければならぬところへ使用して、その貴重な石炭はよろしく科学資材に利用して、そのセメントを使用するところへ地下資源で無盡蔵にあり、燃料、電力などを要しないで済む石材を十分に利用することが国策としてきわめて重要であると思うのであります。これほどに重要な使命を持つております石材の生産業が発達し大成し得ないで、このまま推移いたしまするならば、熟練技術工を失い、わが国のこの豊富な地下資源である石材の生産が皆無になるときが来るのではないかと、憂慮にたえぬものがあるのであります。この最大の原因はいろいろありましようが、この石材採掘業に対しては、その権益に関し何ら国家の保護が與えられていないのであります。鉱業、砂鉱業を初めといたしまして、農林、水産その他各種の産業についてはいずれもその業法を制定せられ、さらに補助金の支出、育成までせられているにもかかわらず、ひとりこの重要な石材業に対してはこれがなく、従つて、石材の採掘に関する権利が法律上認められず、業者の正当なる権益を擁護すべき道も開かれず、ために往往にして採掘に関し、土地所有者は契約期限満了を機会に、転貸または回收してみずから経営に当るなど、採掘主産業者はようやくにしてその採掘場の開拓せられたものを放棄するなど、常に不利益な立場に立ち、多大の損害をこうむつたこともしばしばあつたのであります。従つて土地所有者、鉱業権者その他との間に紛議を生じ、しかもこれを訴うるに道なく、常に不利益な立場に立ち、かような実情のもとにおいて、斯業者の当然の権利が擁護せられないのみならず、企業家が資本を投下せんとする場合にも、法律上の保護のないことに不安を感じまして進出を躊躇し、石材業の発展は期し得られないことをおそるるものでございます。
この種法令は、アメリカを初め諸外国にはすでに制定せられておるのみならず、ドイツは一九三五年、三十六年にわたりまして、斯業救済、技術の向上発展の意味をもつてかのベルリンのオリンピツクのスタジヤムのごとき大施設に驚くべき大量の石材を使用して斯業興隆をはかり、またイタリアでも群小大理石業者を合同せしめて半官半民的のものとして、モンテコチーネにこれを当らしめるなどの例もあつたのでございます。
ここにおきまして、わが国に石材業者のためのみでなく、世人をして安心して資本を投下することを得しめることによつて、石材業の振興を促し、再建途上にある建設工事に要する基礎資材を欲するところに豊富に供給して、わが国復興工事の促進とあわせて斯業の振興に寄與せしめらるることは、国策として緊急のことと思わるるのであります。
今石材採掘業の現状を申し上げてみまするならば、全国の業者数は、終戰後法人で三百七十社、個人経営二千六百三十人、計約三千の業者がございます。従業員の技術工は二万七千三百人ないし三万二千人おりまして、平均年齢が四十六歳になつております。輸送、排土その他の従業員をこれらに入れますと、約五万人の従業員を擁しておりまするが、最近三箇年の需要量を申し上げてみますると、昭和二十一年進駐軍方面に対して百二十九万八千九百五十五トン、官民合せまして百三十八万五千五十トン、計二百六十八万四千五トンという量を出しております。これは終戰直後でございまするが、二十二年になりまして、これを合したものは五百十六万六千六百七十七トン、二十三年には六百六十万五千三百五十八トン、二十四年には五百四十五万一千五百四十トン、以上のような現状でございまして、港湾、河川、道路、観光施設、建築の増大急を要するために需要もまた恐ろしく激増の傾向にあるのでございます。でありますから、この業の健全な発達を念願するために、法律の制定方を企図、発意、請願いたしましたのは遠く大正九年十二月か、大正十年一月でございました。当時香川県の知事佐竹義文氏に要請をいたしまして、石材事業調査費として予算を計上せられたのでございます。さらに昭和十一年香川県石材組合が建議、請願、決議をいたして、県参事会の大森康守氏を通じて請願いたしたのでございます。昭和十八年六月全国的運動を起すために、上野精養軒におきまして全国の石材業の連合会を結成いたしまして、この運動を起すことにいたしました。昭和二十一年業界で実行委員結成と同時に運動を開始いたしまして、ようやくにして政府、商工省の指導に入りまして、漸次業態の認識を得ることとなりまして、爾来今日に至るまで異常の発達を来し、業者また訓練が積まれつつ、業態も面目を新たにするとともに、重要性を確認せられることになつたのでございます。爾来総理大臣、衆参両院議長、所管大臣、関係官庁へ請願陳情二十数回に及んでおります。この間進駐軍天然資源局にも数回陳情いたしたのでございます。また現場採掘場と関係当局に御視察、実情調査を願つたところも数十箇所ございます。
以上申し述べましたごとく採石法の制定が緊急事であることを幸い政府御当局でもお認めになられまして、前々国会及び前国会に御提案されました。その内容のきわめて実情に適した法律でございまして、全面的にしごくけつこうであると存じます。それが目下継続審議中で、先般も酷暑の折にもかかわらず、親しく通商産業委員各位が実情御視察をたまわりまして、いよいよその制定発布を見るのも間もないことのよう拜承いたし、邦家のためにまことに慶賀にたえぬ次第でございます。どうか御審議の上本国会を通過せしめられまして、発布せられますようひたすらお願いいたす次第でございます。
終りに一言お願いいたしておきたいことは、今日までに土地所有者は、本法が制定せられますと、農地法のごとく解して、不利であるかのごとく申さるることを聞きましたが、石山のあるところはほとんど荒蕪地でございまして、石を採掘することによつて荒地が平地になつて畑地となり、また立木も繁茂して来るのでありまして、採掘権者とともに双方とも惠まれることになることは確実でございます。また第二に、仄聞いたしましたところによりますと、この法律の施行事務を地方庁へ移牒せらるるとかの意見もある由でございますが、この法律制定の事情と、斯業に理解のある本省の一貫した指導を受けることが望ましいのでございます。また鉱業権者とも密接な関係もございますので、その鉱業法の施行に当られる当局の御監督を受けることがきわめて便利であるのでございますから、この点当局におかれましても御考慮を願いたいのでございます。それからさらに鉱業権者と重複のあるときをおもんぱかつて調整法を設けていただきたいと存じます。また第八條に原状回復のことがございますが、原状回復のことはやむを得ないのでございますが、これは不可能なことが多いのでございます。願わくはせいぜい金銭賠償にとどめていただきたいと存ずる次第であります。
御清聽を煩わしまして厚く御礼を申し上げます。これをもつて終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/23
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024・小金義照
○小金委員長 次は全国鉱山労働組合連合会会長原口幸隆君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/24
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025・原口幸隆
○原口公述人 金属鉱山労働組合を代表いたしまして、組合の意見を申し述べたいと思います。
鉱業法は、論ずるまでもなく鉱業を規制する基本的な法律であり、国民全般の理解と関連する面が非常に大でありまして、單なる営利を目的とする事業としてのみ鉱業を行うべきではなく、埋蔵量においても諸外国と比較にならないほど貧弱な日本の鉱物資源をより一層合理的かつ民主的に採掘し、これを公共の福祉増進に寄與するという基本的な考え方が貫かれておらなければならないというふうに考えます。金属鉱山労働組合としては、こういう見地から鉱業法がより民主的な方向に改正されることを切に希望いたすものであります。
この意味において、鉱業法案に対しては次の五つの意見を持つております。第一には、通産大臣、通産局長の法の実行にあたつては、極力独善的傾向を排除し、鉱害賠償に関連する争議、鉱業権の取消し、鉱区の増減、施業案の変更等に対する処分など特に利害関係の対立する問題の解決に当つては、労働者、経営者、学識経験者等、各層の意見を十二分に取入れ、法の執行に当る必要があると考えます。原案によると、鉱害賠償に関しては、争議の予防解決に資するため、局長の諮問により賠償の範囲、方法についての一般的基準を作成するため、地方鉱害賠償基準協議会が、設けられ、また争議の和解の仲介機関として仲介委員会を設けようになつておりますが、個人的な利害関係を取扱い、多分に政治的な問題に発展する可能性があり、單に経営者のみでなく、労働者にも大いに累を及ぼす問題でありますので、これらの機関は民主的な方法で選出された委員によつて民主的に構成されて行かなければならないというふうに考えます。
こういう観点から、局長の諮問機関として、労働者、経営者、学識経験者等、各界から選ばれた委員によつて地方鉱業協議会を構成し、ここで鉱害賠償に関する争議の予防、解決のために、賠償範囲、方法についての一般的基準を作成し、また争議の仲介を行い、さらに特に業者にとつて大きな影響を持つ局長の処分については、局長は必ずこの機関に諮問しなければならないようにしたい。
次に第二点として、第一と同様の趣旨のもとに通産大臣の諮問機関として中央鉱業協議会を設けること。これは本法及び関係法規の改廃、制定、または百七十一條による異議申立てのあつた場合の受理、却下の決定及び受理された場合の異議に対する決定について、大臣は必ず諮問しなければならないようにしたい。
第三点として、調停委員会の構成員数を現在の三名から五名にふやす必要がある。
第四点として、鉱業権の売買によつて労働者の労働権、生活権が脅かされるおそれがある場合には、鉱業権の売買に関しては地方鉱業協議会に付議して労働者の意向を十分反映せしめようにする。
第五点として、鉱業権者の資格としては、日本国民または日本国法人以外は認めないようにする。
以上でありますが、以上の諸点をやや説明いたしますと、第一の地方鉱業協議会においては、第一に通産局長の諮問機関として設ける。第二に、次の各條項の処分については通産局長は必ず協議会に諮る。試掘権、採掘権の更新決定、十八條、十九條。掘進増区に関する申請の決定、四十七條。鉱区の増減命令、四十八條。試掘鉱区に対する採掘出願命令、四十九條。錯誤による鉱業権の設定、鉱区の増減、分割、合併等の取消し処分、五十二條。保健衛生、公共の福祉のための鉱区減少、鉱業権の取消し、五十三條。他人の鉱業の妨害排除のための鉱区減少、鉱業権の取消し、五十四條。法規違反による場合の鉱業権の取消し、五十五條。租鉱料並びにその支拂い方法、時期の決定七十七條。法規違反による租鉱権の取消し処分、八十三條。鉱区が輻湊する地域における鉱業権の交換、売渡しの勧告、八十八條。鉱区の増減につき採掘権者間での協議すべき旨の勧告、八十九條。右の協議不成立の場合の局長の決定、九十條。施業案の変更命令、百條。石炭、亜炭鉱業権者に対する担保供託金の決定及び右以外の鉱業権者に対する担保供託金の決定、百十七條。担保供託を行わない場合の事業停止命令、百二十條。以上。
次に地方鉱業協議会の第三番目として、鉱害賠償に関する争議予防または解決に資するため、局長の諮問によつて賠償の範囲、方法についての公正適切な一般的基準を作成する。
第四に、鉱害賠償に関する争議について当事者より通産局長に和解の仲介申立があつた場合、局長は協議会に諮問し、仲介の労をとる。
第五に、協議会の構成は労働者、経営者、学識経験者、各委員五名ずつとし、労働者、経営者側委員の中には鉱業に経験のある者、農業に経験のある者、他の産業に経験のある者をおのおの一名ずつを必要とする。委員長は通産局長として、委員は通産局長の委嘱によりますが、この場合労、資、学識経学者の意見を十分に尊重していただきたい。
以上が地方、鉱業協議会でありますが、次に中央鉱業協議会の構成としては、第一に通産大臣の諮問機関として設ける。第二に本決及び関係法規の改廃、制定にあたつては大臣は必ず協議会に諮問する。第三番目に百七十一條に基き異議申立があつた場合、これの受理、却下について大臣は協議会に諮る。それが受理された場合、異議に対する決定を下し、大臣に答申する。第四番目に構成については地方鉱業協議会の場合と同様でありますが、委員長には通産大臣が当り、委員は大臣の委嘱による。次に、第三番目の問題である調停委員会については、調停委員会の任務、委員の選出方法については異議がありませんが、調停の対象が大なる利害関係を伴つて、また調停の効力も非常に大きいと思われますので、委員数を原案の三名から五名にふやす必要があるように考えられます。次に、第四番目の鉱業権の売買に関する制約について、従来経営不振あるいは不能の鉱山が他人に譲渡される場合に、従業員の意思を無視して行われ、いたずらに争議をかもした例がたびたびありますので、鉱山労働者の生活というものは、山とともにある実情にかんがみまして、第十二條に但書として、但し稼行中の鉱区の売買については、地方鉱業協議会に諮らなければならない旨の規定を挿入し、右のごとき争議を防止するため、労働者の意見が十二分に述べられる機会が與えらるべきであるというふうに考えます。
最後に、鉱業権者の資格の問題については、原案第十七條によれば、日本国民または日本国法人以外でも、鉱業権者となり得る旨が規定されておりますが、日本国民としての立場から、日本国民または法人以外の者に対しては、鉱業権を所有させることに反対する。
以上が金属鉱山労働組合を代表しての意見であります。これをもつて終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/25
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026・小金義照
○小金委員長 次は、日本炭鉱労働組合生産部長村上一美君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/26
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027・村上一美
○村上公述人 日本炭鉱労働組合を代表いたしまして、意見を述べさせていただきます。
われわれも地下労働者としまして、全鉱とまつたく同じ意見を持つております。さらに具体的に説明申し上げてみますと、まずわれわれは、本法案が第一條の目的を完全に果すことを、労働者の立場から真に切望いたしますがゆえに、地下労働者として前項とまつたく同じ意見に至つたわけであります。
まず前項で述べましたところの鉱業審議会なるものを地方並びに中央に設置していただきたい。こういう考え方をなぜ持つに至つたか、その理由を詳しく御説明申し上げますと、まず問題になりますのは、鉱害補償の面が第一点であります。これは従来一労働者なり、あるいは農民が被害の対象である場合が、特に九州においては多かつたわけでありますが、こういう場合に経営者を相手に一市民、一農民、一労働者としての抗争では本案に盛られておるところの仲介員、あるいは調停委員を通じての労働者に有利な結果が常にもたらされるということについては、一点の疑念を持つものであります。しかるがゆえに、この鉱害補償の点にかんがみましても、現在保安の面では実施せられております保安協議会、これは地方並びに中央にありますが、これとまつたく同じ性格のものを設置していただきたいという希望を持つに至つたものであります。
次に第二点としまして租鉱権に関する問題でありますが、この租鉱料の基準がまだないために、かつて試掘権の設定を受けておつたような山では、租鉱料のために労働者の福利施設なり、賃金を切下げざるを得ないという問題が起きておるわけであります。この点に関しましても労働者の代表を含むところの鉱業協議会でもつて愼重に検討して労働者の生活を考慮してほしい、こういう考え方を持つものであります。
第三点には鉱区並びに鉱業権の売買が、いとも簡單にただ單なる経営能力による、あるいは経営上やむを得ないという言葉によつて、労働組合があるにもかかわらず何ら相談なしに行われたというのが中小鉱山ではかつて見受けられたのでありますが、それがためにただちに経営者の交代が大量馘首なり、あるいは協定賃金の不拂いに至るというふうな現象が見られておりましたので、直接確保しておる鉱業権につきましては、ただ單なる物権としてではなく、労働者の生活に直結しているものであるという観点から、この鉱業協議会でもつて愼重にこの売買を取扱つていただきたい。こういうふうにわれわれは切望するものであります。
以上三点が特に鉱業協議会を地方並びに中央に設置していただきたい、こういうふうに考えるに至つた重要な点であります。その内容につきましては、前項と一致しておりますのでこれは省略さしていただきます。
次に第十七條の但書以下につきましては、われわれは鉱業権者が日本人であることを切望いたしますので、日本人としての立場より但書の抹消を要望する次第であります。
以上前項とまつたく一致しておりますので、主要な点のみを摘出いたしまして説明して日本炭鉱労働組合の意見を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/27
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028・小金義照
○小金委員長 次は北九州石炭株式会社社長武内禮藏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/28
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029・武内禮藏
○武内公述人 本日改正鉱業法案の公聽会が開催せられるにあたりまして、私ども多年鉱業に従事し、経営をやつておつた者の立場からいたしましてこの恒久法の制定の機会において、ぜひ御考慮をお願いしたい点がありますので、次に率直に述べさしていただきまして、御審議の資料に資していただきたいと信ずるものであります。
第一に本案の第十四條の二項に、石炭鉱区の最低面積があげられておりますが、これは三十ヘクタール、つまり十万坪近い数字のようでありますが、これは五万坪としていただきたい。理由は長年五万坪で実施されて来ましたが、何らこれに対して不利、不便はなかつたばかりではありません、鉱利保護並びに立地條件上はかえつて五万坪の方が適当と思われますので、従来通りの五万坪を切望申し上ぐる次第であります。
第二に第十八條の試掘権の存続並びに延長がそれぞれ二箇年となつておりますが、これは四箇年としてほしいことを切望いたします。理由といたしましては、九州におきましての炭鉱の開発は古くからすでに露頭に近い残部は採掘し盡されております。今後の開発にまつべきものはかなり深部あるいは洪積層をかぶり、あるいは火山岩でおおわれておるなどのために、地表からの探査はよほど困難が多いのでありまして、あるいは多数の試錐を実施しなければ、石灰の賦存状態は確認することはできないのであります。ここに一つの例をあげてみますれば、御承知の方もあると思いますが、杵島炭鉱の所有にかかる多良鉱区は、多良岳のふもと一帶に千数百万坪の地域を占めておりまして優良炭の賦存が予想されておりますが、全面が多良岳の熔岩をもつておおわれておりますために、探査のためすでに十八年以来試錘が継続されておりますが、これが完成にはまだ数年を要するものと予想されています。このような例は他にもたくさんありまして資金、資材、技術陣容などの関係もありまして、厖大な鉱区の開発は二年や四年では不可能と思われます。もちろん鉱業権の死蔵または投機を防止する意味で、試掘権の存続期間を短縮される趣旨はよくわかりますが、実際問題として探査に長年月を要する善良の企業家に対しましては、優先的に累次の延長を認められることとし、少くとも一般的には存続、延長ともにおのおの四年くらいにされる方が最も妥当であり、またかくしてほしいと信ずるものであります。
第三点といたしまして、第十九條採掘権の存続期間三十年は、現行法通り無期限とされたい。理由としまして、現行すでに数十年間継続されておる鉱山も少くないのでありますが、または今後もこれとひとしいものはたくさんあると予想される鉱山があるのであります。これを三十年として、いたずらにめんどうな手続をふまねばならないのみならず、鉱区の資産価値に影響するところも大きいと思われます。また今後は価値のない鉱区に多額の鉱区税を負担して保有するようなことはなく、鉱業権者みずからが放棄することと思われますので、三十年に制限されることは一面無意味と思われるので、現行法通り無期限にしていただきたいことを切望いたします。
第四点に、第六十二條第一項の事業着手までの期間六箇月を、現行法通りに一年とされたいことを切望します。理由は着手にあたりまして、農地改革以来、鉱業用地の使用に移るまでの経過に非常に困難が伏在いたしまして、土地の買收、借入れ等には相当な日時を要します。また交通不便なところに資材を持込み、設備をするまでにも相当な日時を要しますため、着手期限の六箇月はあまりに短か過ぎます。ぜひ現行法通りに一箇年間にしていただきたいことを切望するものであります。
第五点といたしまして、六十二條第三項の、事業休止手続は、通産局長の認可でなく、現行法通りに届出にしてほしいのであります。届出を切望いたします。その理由といたしまして、事業の休止は、特にあらゆる経済面、あらゆる関連する鉱業の経営の面からいたしまして、経済を伴つておることでありまして、これの緩急は重大なる経済的に收拾でき得ざる事態を惹起することも予想せられるのであります。従つて現行法通りに、届出にぜひしていただきたいということを切望申し上げる次第であります。
第六点としまして、第三章の租鉱権の問題でありますが、各方面から伺うところによりますれば、租鉱権を忌避しておる向きもあるように聞きますが、私は本制度は現在最も適切なる制度と思つております。以前の斤先掘り制度のように、旧制の方法を改めて、租鉱権により権利も義務も確認されますことは非常な進歩であることと信じます。また大規模な企業には適しない地下資源を租鉱権によつて回收することは、鉱利保護並びに国家経済上必要なことで、一部論者の言うような、租鉱権が否定されますと、現在の租鉱権に該当している多数の炭鉱並びにこの従業員の運命ということにつきましては、重大なる社会問題を惹起すると信じます。私は原案に絶対の賛意を表するものであります。
第七点といたしまして、第五章の土地の使用、收用の問題でありますが、従来鉱山が鉱業予定地として、あるいはまた鉱害問題の解決策として、被害者の懇請によつて買收していました土地は、さきの農地改革で安く買いとられてしまつたのであります。その後鉱業用地の借入れや、買收には不当の対価を要求され、容易に解決されない実情にありますので、真に鉱業の発展のために必要な土地は、公平な補償金によつて迅速に使用または收用のでき得るように規定されたいのであります。また土地の使用目的と收用目的とには区分を設けられる必要はないと思いますので、第百五條の土地の收用目的を、第百四條の土地使用目的の範囲まで拡張されるように要望いたします。なお鉱業用地の使用收用は急速に処理する必要がありますので、農地調整法の適用の排除されることを切望するものであります。また事業の認定を通産局長の所管といたしますことは当然でありますが、なおこれが裁決も従来通り同局長の権限とされるように切望するものであります。
第八といたしまして、第六章の鉱害賠償の問題でありますが、第百十一條第二項で損害賠償は金銭をもつてすることが原則となつております。現行法も同様でありますが、今関係者の一部から強く原状回復主義が叫ばれておりますが、原状回復の全責任を鉱業権者に負わされることは、法理的に見ましても、不合理であり、実際問題としても不可能であります。もともと鉱害は無過失損害であるから、賠償の責任はないとされていたものが、昭和十四年の鉱業法改正によりまして、初めて賠償責任を認められたわけで、今民法の不法行為による損害賠償の原則を越えてまで鉱業権者に責任を負わされることは絶対に承服はできがたいのであります。実際問題といたしましても、陷落不毛となつた田地の復旧費、これは所によつて違いますが、反当り二十万円または三十万円を要する所もたくさんありまするが、対価を越えたかかる厖大な復旧費を鉱業権者に負わされる理由もなく、またこれを負担する能力もありません。しいてこれを負担せよということは、立地條件から見まして九州のような炭鉱は経営不能に陷り、やめなければならないというようなことも一面考えられるのでありまして、もとより国土回復のため、原状の回復には業者といたしましても決して反対するわけではありませんが、鉱業権者の負担限度は対価までとし、それ以上の金は国なり受益者なりに負担さすべきものと信じます。従つてこの困難な問題を本鉱業法一本で解決せらるるように期待することはむりではないかと思うものであります。これは至急に本法とは別に、国の助成などによる鉱害復旧法の制定、かようなものを熱望いたすのであります。
なお本法中原状回復の字句を原状の効用回復に改めていただきたい。鉱害は必ずしも原状に回復する必要はないと信じます。原状の効用を回復すれば事足りるものでありまして、現に特別鉱害復旧法には明らかに原状の効用回復としてあるのであります。被害者のうちには必要もない山や高地まで復旧させようというような非常識の人もあられるやに伺います。ために解釈に疑義のないように、原状の効用回復と改められることを切望するものであります。
第九といたしまして、第百十三條にさらに将来鉱害発生のおそれある土地に重要な建物その他の工作物を建造する場合は、あらかじめ鉱業権者と協議して将来の紛争を予防する旨の一條を加えていただきたいことを望むものであります。その理由といたしまして、鉱区内には、はなはだしきは採掘中、あるいは採掘直後まだ地表の安定しないところに施設物を建造された例はたくさんあります。これがために採掘面積を縮減されたり、あるいは不測の賠償金を支出させられるなど、鉱山にとつてはなはだ迷惑であるのみならず、建造者にとつても決して望ましいことではないのでありますから、後日の紛争をできるだけ事前に防止するよう、本條項が必要だと思います。
十といたしましては、打切補償の問題は、第百十四條第二項で打切補償は登録することになりましたが、まことにけつこうなことであります。ついては改正法施行前に完全なる打切補償をしたものも、当事者間に異議のない当然打切補償として解決したものも、施行と同時に登録する條項を設けていただきたいことを切望いたします。なお打切補償制度の問題でありますが、これに強力に反対しておる向きもありますが、鉱業権者の立場から申しますと絶対に必要なことで、原案よりさらに一層明確にされるよう要望いたします。すなわち金銭賠償を原則とされる以上は、打切補償制度が確立されることは理の当然でありまして、絶対に必要であります。従来打切補償制度がはつきりしなかつたために、せつかく十分の対価を支拂つて打切補償したものが、未復旧のまま第三者に転売され、その第三者から再び賠償を要求されている実情にあるものが少くないのであります。かかることは鉱山側にとりまして耐え得られないところでありますから、相当の対価を支拂つて打切補償を要求することは当然のことでありまして、被害者から見ましても、その打切補償金から生ずる果実が耕作收入に見合うことになれば、別に経済的には損失はないわけでありますから、不毛の土地や全然復旧不能の物件等に対しましては、鉱業権者の申入れによつて対価を供託してでも打切補償ができるように規定されるよう切望するものであります。
第十一といたしまして、法案第六章第二節の担保の供託についてでありますが、鉱業権者は本制度の有無にかかわらず、常に意を用いて賠償の責任を履行していますし、また本供託金は積立の年からでもとりもどしができますので、いたずらに入れたり出したり手続が煩わしいばかりで、決して鉱害賠償の恒久対策とはなりませんから、本制度は必要ないものと思われますが、現行法の制度をそのまま移行いたすのであれば、石炭鉱業の現状その他諸般の経済事情に照らし、しばらくでも資金を死蔵させないために、トン当り五円ないし六円以下とされることを要望するものであります。なお現在の特別鉱害復旧法による負担金は、トン当り二十円となつておりますので、さらにこれを供託によつて重複することは、資金面からもはなはだ苦痛でありますから、さきに述べました五円か六円かの供託をするといたしましても、特別鉱害の負担金納付期間中は停止さるるようお願いしたいのであります。
大綱におきましては、改正鉱業法案には異論のないものでありますが、ただいま十数点をあげました点につきましては、私の意見を披瀝申し上げまして、本法案の御審議にあたりまして、十分の御考慮をしていただくことをお願いいたしまして、私の供述を終ります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/29
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030・小金義照
○小金委員長 以上をもちまして本日の公述人全部の御発言が終りました。委員各位より質疑がありますれば、御発言を願いたいと存じます。——別にございませんければ、本日の公聽会はこれで終了いたしますが、この際一言ごあいさつを述べさせていただきます。公述人各位にはきわめて御繁忙の際にもかかわらず、長時間にわたつて御出席くださいまして、貴重な御意見を御開陳くださいましたことは、まことにありがたいことでございまして、厚くお礼を申し上げます。当委員会におきましては、この両法案の審査にあたりまして、各位の御意見ないし御趣旨の存するところを参考に供し、十分愼重審議を期したいと存じます。この席から委員会を代表いたしまして、委員長より厚くお礼を申し上げます。
明日は正午前十時より公聽会を引続いて開催することとし、本日はこれをもちまして散会いたします。
午後三時三十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804799X00119501026/30
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