1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年七月十五日(土曜日)
午前十時二十二分開会
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本日の会議に付した事件
○地方税法案(内閣送付)
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001・岡本愛祐
○委員長(岡本愛祐君) これより地方行政委員会を開会いたします。本日は地方税法案の予備審査をいたします。先ず国務大臣の趣旨説明をお願いいたします。岡野国務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100814720X00219500715/1
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002・岡野清豪
○国務大臣(岡野清豪君) 只今提案いたしました地方税法を制定する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申上げます。
前国会においても、政府は新地方税法案を提出いたしたのでありますが、提案時期の遅延等の関係から、その審議は新年度に跨がることとなりましたので、旧税法から新税法への移行を円滑にするため、新税法において廃止又は税率の改正を予定する、税目については新らしい地方税法の成立するまでの間、その徴収を停止して置くことを適当と考え、別途その旨の法律案を提出することといたしたのであります。
然るところ、徴収停止の法律案は成立いたしたのでありますが、その後この法律を存置したまま、言い換えれば、現行地方税制の主要部分の効力を停止したまま、新らしい地方税法案は幾多の論議の後遂に不幸にして成立をみることができなくなつたのであります。
徴収を停止せられました税目は、現行地方税法の主要税目の殆んど全部でありますので、地が団体は、その活動の原動力とも称すべき税収入の大部分について徴収の途が絶たれたことになつたわけであります。従つて地方団体はその歳入について年間の確たる見通しを得ることができなくなつたのでありまして、自然年間を通ずる地方財政の計画的執行も困難となり、多くの事業が停止せられたまま今日に至つているのでありまして、これが地方行政の運営に少なからぬ障害をなしていることを虞れているものであります。
政府といたしましては、このような情勢に鑑み、今までに地方財政平衡交付金約六百二十億円を概算交付すると共に、爾余の不足資金については大蔵省預金部より短期融通することとし、以て最底限度の財政需要を賄うに足る財源は確保するこことしたのであります。
併しながら、右は飽くまでも暫定措置でありまして、事態の根本的解決はもとより新地方税法案の一日も速かな成立実施を措いて他にこれを求めることができないのであります。
ここにおきまして、政府は、前国会における論議に鑑み、且つは、法案成立の遅延に伴い、原案に若干の修正を施して、再びここにこれを提案することとした次第であります。
最初に新地方税法案制定の目標と方針を申述べたいと存じます。
言うまでもなく、我が国は、敗戦によるにがい体験から、終戦後逸早く新らいし憲法の下に、民主主義に基いて国政を運営する旨を確定したのでありました。もとより、民主政治の確立は、単に政治運営の形式を民主化するに止めてはなりませず、政治運営に関する判断が広く国民の中から生れて来るように仕向けて参らなければなりません。これがためには、すべて公事に関する問題は可及的に、その問題の周辺にあつて、その問題から直接の影響を受ける人達の手によつて、責任ある処理を行わせるようにして参らなければなりませんので、民主政治の確立と地方自治の強化とは表裏一体をなす問題であります。
而して、地方自治の確立を意図して、すでに地方自治法が制定せられ、地方公共団体の骨格は整つたのでありますが、それよりも寧ろ住民に繋がるその事務を豊かにし、活溌な自治活動を可能にするその財政を強化して、地方自治の内容を充実させることこそが、先決の問題であります。然るに地方公共団体の現状は、相次いで負荷せられる。任務の重いのに比べて、財政力は微弱であり、ために、地方自治は財政的に破綻に瀕しているとまで極言せられているのであります。
これを税制の面について申上げますならば、すでに地方団体のうち七割を超えるものが、標準税率を超えて課税しておりますし、法定税目の外に、地方団体が新税の設定を余儀なくされておりますものが、課税団体で二千、税目で百数十種類に及んでいるのであります。
大抵の団体がその税率で課税するものとして定められている筈の標準税率で課税している団体が寧ろ例外でありましたり、法定税目そのものが、可なり無理なものを拾い上げて、国民に圧迫感を与えていることを虞れているのに、その上更に多くの団体が幾多の無理な税目を設けざるを得ない状況に置かれているということは、地方税収入の甚だしい不足を示すものであつて、そもそも地方税制そのものが、破綻していると申さねばならないのであります。
現行地方税制は、すでに国税附加税の制度を捨てて、独立税中心主義を採つているのでありますが、中枢をなす事業税、地租及家屋税の三収益税は、或いは国の所得税や法人税と課税標準を同じくし、或いは国の決定した賃貸価格を課税標準をする等尚著しく国に依存する態勢を改めないのであります。そもそも地方自治の伸長を期そうといたしますならば、活動の源泉となるべき財源を豊富にすると共に、これを地方団体みずからの責任において確保させ、以て自治運営に対する住民の鋭い監視と批判とを求めるようにして行かねばならないのであります。よつて、地方税収入を拡充し、地方税制の自主性を強化して、地方自治の根基を培うことを今次地方税制改正の第一の目標といたしているのであります。
次に現行地方税の主要な税目の個々について申述べたいと存じます。
その一は、事業に対する課税でありますが、戦前地方税総額の二〇%を占める程度であつたものが、現行税制そのままで参りますと、昭和二十五年度には三五%内外を占めることになるのであります。而も事業税のうち個人の事業主の負担いたしますものが。戦前の五〇%内外から九〇%内外に増加して参つているのであります、このことは現行事業税が二重の意味において不合理になつているのでありまして、即ち第一には、他の課税客体に比べて事業の負担が重過ぎるということであり、第二には、本来応益的に負担すべき事業税が大企業に不当に軽課されているということであります。
その二は、土地及び家屋に対する課税でありますが、地代家賃統制令との関係があるからとはいえ、戦前地方税総額の三〇%を占めていたものが、現行税制で参りますと、昭和二十五年度では漸く一〇%を占めるに過ぎなくなるのであります。而も他の税目と比べましても、可なり負担の均衡を欠いていることが感ぜられるのでありまして、営業用乗用車ですら、その一台の負担は畑地三十七町歩、家屋八百数十坪の負担に匹敵しているのであります。
その三は、住民税であります。元来戸数割を廃止して住民税が設けられた当時は収入を挙げることを主たる目的にはしないで、単に負担分任の精神を地方税制の上に存置して置くための、極く少額のものであつたのであります。ところが地方財政の窮乏は、この税に相当多くの収入と弾力性とを求めざるを得なくなり、自然団体間においても課税額に可なり大きな幅ができ、標準税額の十数倍に達している町村も珍らしくなくなつてきたのであります。こうなつて来ると、応能原則を重視すべき租税としてもはや放任し難くなつてしまつたといわねばならないのであります。このような現状に鑑み地方税制を根本的に改革して、国民の地方税負担の合理化及び均等化を確保することを、今次地方税制改正の第二の目標といたしております。
而して、このような目標の下に則つた具体的な地方税制改革の方針は、第一は、財産課税の重課、流通課税の整理、消費課税の減少軽減、所得課税の増加、事業課税の軽減、雑税の整理等を行い、地方税全般に亘つてその負担の合理化と均衡化を徹底することであります。
第二は、課税標準、税率等に関する地方団体の権限を拡充して、地方税制の自主性を強化すると共に、道府県税と市町村税とを完全に分離し、以つて、税務行政の責任の帰属を明確にすることであります。これによつて道府県税としたものは、普通税で附加価値税、入場税、遊興飲食税、自動車税、鉱区税、漁業権税及び狩猟者税の七税目、目的税で水利地益税であり、市町村税としたものは、普通税で市町村民税、固定資産税、自転車税、荷車税、電気ガス税、鉱産税、木材引取税、広告税、入場税及び接客人税の十種目であり、目的税で水利地益税及び共同施設税であります。
第三は、有力な直接税を声町村税として、市町村における税収入の強化を図ると共に、住民の市町村行政に対する関心の増大を求め、以つて地方自治の基盤を培うと共に、民主政治の推進を期することであります。第四は、特別徴収に関する規定を整備すること。納税秩序を強化すること等により、税収入確保の方途を講ずることであります。
第五は、税率を全税目に亘つて明確に規定することにより、地域間における地方税負担の衡平化を期することであります。
かくして、地方税法を全文に亘つて改正したのでありますが、これによつて、昭和二十五年度において、地方団体が収入することのできる税額は千九百八億円となる見込であります。昭和二十四年度千五百二十四億円と比較すると、三百八十四億円の増収ということになります。この地方税の増収の外に地方財政平衡交付金制度を創設したり、災害復旧費の全額を国庫において負担することにいたしたりしましたので相当の財源が増加になります。勿論これにより地方財源は特に潤沢になつたということも言えないのでありますが、現下の国民租税負担の現状に鑑みまするとき地方税としてはこの程度の増収に止めることを以て適当とすると考えた次第であります。
以下新税の創設、既存税目の変更、徴税手続の合理化、改正原案に対する修正点の順に従つて、新地方税法案の内容を御説明申上げます。
先ず新設された税目についての説明でありますが。
その第一は、附加価値税であります。附加価値税は、事業税及び特別所得税を廃止すると共に、これらの課税客体であつた事業の附加価値に対し、附加価値額を課税標準として、事業所又は事務所所在地の道府県において課税するものであります。
ここに附加価値と申しますのは、当該事業がその段階において、国民総所得に附加した価値を指するものでありまして、生産国民所得の観念で申しますならば、一定期間における当該事業の総売上金額より他の事業から購入した土地、建物、機械設備、原材料、商品、動力等の代価を控除したものをいい、逆にこれを分配国民所得の観念で申しますならば、賃金、地代、利子及び企業者利潤を合算したものと言えましよう。このような附加価値額を課税標準とするところの附加価値税を従来の事業税に代えて創設するゆえんは、
第一に、従来の事業税でありますと、先ず収益課税たる本質上、非転嫁的なものでありますが故に、今日のごとく所得税法人税、道府県民税、市町村民税更にこの事業税と所得の上に累積的に課税されているときにおいては、事業に対する負担が堪え難いまでに重くなること。
第二に、事業税の課税標準は所得であるが故に、必然的に国税たる所得税及び法人税の課税標準の算定の結果に追随せざるを得ないこととなり、事業税課税についての責任の帰属を不明確にすること。
第三に、凡そ事業を継続している以上は、常に地方団体の施設の恩恵に浴しているのであるから、事業はすべて応分の地方税負担とすべきであるに拘わらず、事業税によるときは、所得のないものは、常に課税を免かれるという欠陥を有するのに対して、附加価値税においては、これらのいずれの欠陥をも一応克服できる上に、取引高税のごとく重複課税とならないこと。企業の垂直的結合を促進するがごとき欠陥を有しないことなどの長所があり、更に進んで固定設備の購入代金が課税標準から、控除されるが故に、現下の我が国経済にとつて、最も必要であるところの産業の有機的構成の高度化を促進するという効果も亦期待できるのであります。
而して、附加価値税は、農業、林業並びに鉱物の掘採及び採取の事業に対しては非課税の取扱いをいたしたいと考えております。その理由は前二者につきましては、主として固定資産税の負担が相当重くなつていることによるものであり、後者につきましては、別途鉱産税が存置されているからであります。
次に附加価値税の税率は、標準税率を四%とし、最高税率を八%としているのでありますが、原始産業、自由業等につきましては、標準税率を三%、最高税率を六%とし、免税点はいずれも附加価値額の総額が十二月分として、九万円を原則といたしております。
更に、附加価値税の徴収手続は、申告納付の方法によるものとしております。又、これと関連しまして、附加価値税につきましても、青色の申告の制度を採用することとしたのであります。
又、昭和二十六年度限りの課税標準算定の特例として、金融業、運送業及び倉庫業につきましては、その選択によつて、総売上金額の一定額を以て、附加価値額とすることができるものとしておりますが、その理由は或いは事業の特種な性格に基くものであり、或いは事業の公共性に鑑み差当り負担の急変を避けようとする趣旨に出たものであります。この附加価値税の収入見込額は、昭和二十六年度四百十九億円、平年度四百四十一億円であります。
新税のその二は、市町村民税であります。同じ税目は従前にも存していたわけでありますが、その性格を一変しているのでありまして、市町村内に住所を有する個人に対しては、均等割及び所得割により、事務所、事業所又は家屋敷を有する個人及び事務所又は事業所を有する法人に対しては、均等割によつて課するところの税であります。
従来の市町村民税と異なりますのは、第一には、世帯主を納税義務者とする家族主義的な構成をとつていたものを、所得のある限りは、成年者をすべて納税義務者とする個人主義的な構成をとつていることであり、第二には、均等割、資産割及び所得割の三者によつて課税していたのを、資産割を廃止して、均等割と所得割の二者によつて課税することとしたことであり、第三には、法人に対しては均等割しか課税しないこととしたことであります。而して、均等割の額は人口五十万以上の市において、「個人は八百円を標準とし最高一、〇〇〇円、法人は、二、四〇〇円を標準とし、最高四、〇〇○円」、人口五万以上五十万未満の市において、「個人は六〇〇円を標準とし、最高七五〇円、法人は一、八〇〇円を標準とし、最高三、〇〇〇円」、これら以外の市町村において、「個人は四〇〇円を標準とし、最高五〇〇円、法人は一、二〇〇円を標準とし、最高二、〇〇〇円」としているのであります。
他方所得割につきましては、「前年の所得税額を課税標準とし、その百分の十八を標準とし、百分の二十を最高とする方式」及び「前年の課税総所得金額を課税標準とし、百分の十を最高とする方式」並びに「前年の課税総所得金額から所得税額を控除した後の金額を課税標準とし、百分の二十を最高とする方式」の三方式のいずれかを選択し得るものとしておりますが、昭和二十五年度におきましては、第一の方式のみを採用することとしております。
尚、市町村民税は、前年において所得がなかつた者及び生活保護法の適用を受ける者並びに不具者及び未成年者に対しては、その全部を、同居の妻に対しては、均等割を課さないものとしております。ただ未成年者及び不具者であつても、一定額以上の資産所得又は事業所得を有し、且つ、独立の生計を営む場合又は同居の妻であつても、その夫が市町村民税の納税義務者でない場合においては、事なるが故の非課税の取扱いは受けないのであります。
課税団体は、六月一日現在において住所又は事務所、事業所若しくは家屋敷が所在した市町村で、その課税方法は賦課処分によるものとし、納期は原則として、均等割のみを納付するものは七月、その他のものは、七月、九月、十二月及び二月の四回としております。ただ本年度及び明年度におきましては、若干の特例を定めております。又収入見込額は、昭和二十五年度において五百七十億円、平年度において四百七十億円であります。
新税のその三は、固定資産税であります。固定資産税は、土地、家屋及び減価償却の可能な有形固定資産に対しその価格を標準として原則として、所有者に課するところの税であります。これは、従来の地租、家屋税を拡充したものでありまして、その主な相異点は、課税客体が土地、家屋の外に、償却資産の加えられていること、課税標準が、賃貸価格と異なる価格であることであります。而して、その価格は、毎年一月一日の適正な時価によつて、概ね各市町村に設置される固定資産評価員の行う評価に基き、市町村長が決定いたします。この市町村長が決定した価格は、固定資産税の課税の必要上、市町村に作成を義務付けられた固定資産課税台帳に登録し、一定期間関係者の縦覧に供して、確定することとしております。但し、昭和二十五年度分の固定資産税の課税標準に限り、農地以外の土地及び家屋については、賃貸価格の九百倍の額、農地については、農地調整法による農地の公定価格に二二・五を乗じて得た額とするものとしております。
又、償却資産の価格については、資産評価法の規定によつて再評価を行なつた場合における再評価額の限度額、同法の規定によつて償却資産の所有者が現実に行なつた再評価額又は再評価を行わない場合にあつてはその資産の帳簿価格等を参酌して、適正な時価を市町村長が決定するものであります。
固定資産税の税率は、百分の一・七を標準としておりますが、当分の間百分の三を最高とし、且つ、昭和二十五年度分に限り、百分の一・七に一定したのであります。一定した趣旨は、課税の条件を同一にすることによつて、課税標準額について存する不均衡の所在を明確にし、次の機会における固定資産の公正な評価を容易ならしめようとする趣旨であります。尚、大規模の工場や発電施設が近隣の市町村の公共費の支出に直接且つ重要な影響を与えたり、これらの地方における経済と直接且つ重要な関連を有する場合においては、地方財政委員会がこれらの固定資産を指定し、これを評価してその価格を決定し、固定資産の所在する市町村の如何に拘わらず、その価格を関係市町村に配分することができるものといたしておりますのは、税源の極端な偏在を防止しようとする趣旨に外ならないものであります。又、船舶、車両その他二以上の市町村に亘つて使用される移動性若しくは可動性償却資産及び鉄軌道、発送配電施設その他二以上の市町村に亘つて所在する固定資産のうち、地方財政委員会が指定するものについては、地方財政委員会が価格を決定し、その価額を関係市町村に配分するものとしておりますが、その趣旨は主として、広い見地からする評価によつて関係市町村間における固定資産の価額配分の適正を期そうとするところにあるわけであります。固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とし、納期は原則として、四月、六月、八月及び十一月の四回としておりますが、本年度及び明年度におきましては、若干の特例を定めております。
又、収入見込額は、昭和二十五年度において約五百二十億円であり、平年度において五百九十三億円であります。
第二は、既存税目に対して加えられた変更に関する説明でありますが、
その一は、入場税に関するものであります。第一点は既に切離して去る三月より実施せられているところでありますが、税率を従来の十五割の部分を十割に、又、従来の六割の部分を四割に、それぞれ三分の一づつ引下げたことであり、第二点は、新たに課税除外の規定を設けたことであり、第三点は、催物の主催者等に所定の入場券又は利用券の発行義務を課すると共に、入場者が入場し又は利用者が利用する際に、その入場券又は利用券の一半を切取つて他の一半を入場者又は利用者に交付する義務を課したこと、及び全員を無料で入場させた場合であつても、その状況により経費を課税標準として課することができるものとしたこと等徴収の強化を図つた点であります。
その二は、遊興飲食税に関するものであります。第一点は、現行の税率十五割、八割、五割及び二割を十割、四割及び二割に引下げ、以て負担の軽減と徴税の適正化を図らんとしたことであります。第二点は、条例で領収証発行及び証紙使用の義務を課し得るものとし、乱れ勝ちな遊興飲食税の徴収を確保する途を規定したことであります。
その三は、自動車税、漁業権税、自転車税、荷車税、広告税、入場税及び接客人税についても、新たに標準税率を定め、以て地域間の負担の均衡化を図ると共に、その課税手続、救済、罰則等に関する所要の規定を整備して、納税者の理解に便ならしめようとしたことであります。
第三は、賦課徴収について改正を加えました諸点に関する説明であります。
その一は、過納に係る地方団体の徴収金を納税者に還付し、又は未納の徴収金に充当する場合において加算金の制度を創設し、以て納税者の権利の保護に欠けるところのないようにしたことであります。
その二は、納税者又は特別徴収義務者について滞納処分、強制執行、破産宣告等があつたときは地方団体は、その徴収金について交付要求をなし得るものとし、以て税収入の確保に遺憾なきを期したことであります。
その三は、納税者に交付すべき徴税令書には課税の基礎及び税額算定の根拠を明確に示さなければならないものとし、以て、納税者の保護とその納税への協力を期したことであります。
その四は、入場税、遊興飲食税、電気ガス税、木材引取税等と特別徴収によつて徴収させるときは、特別徴収義務者にその徴収に係る税金を申告納入させることとすると共に、入場税と遊興飲食税の特別徴収義務者が特別徴収をする場合においては、そのことを明示する証票の交付方を地方団体の長に申請するものとし、その交付を受けた証票を店頭その他公衆の見易い個所に貼付しなければならないものとし、以て、この種租税徴収の強化を図つたことであります。
その五は、納税義務者が申告納付し又は特別徴収義務者が申告納入する場合においては、延滞金、過少申告加算金、不申告加算金及び重加算金の制度を、又督促状を交付した場合においては、延滞加算金の制度をそれぞれ新たに設け、以て、納税意識の高揚と滞納の絶滅を期したことであります。
その六は、所要の罰則規定を整備して徴収の強化を図つたことであります。
尚、今次の改正案において本年度又は来年度から廃止を予定している税は、先に成立いたしました地方税法の一部を改正する法律と合せ、道府県民税、地租、家屋税、事業税、特別所得税、不動産取得税、酒消費税、電話税、軌道税、電柱税、船舶税、舟税、金庫税、と畜税、使用人税、漁業権の取得に対する漁業権税自動車の取得に対する自動車税、自転車の取得に対する自転車税、荷車の取得に対する荷車税、都市計画税等の多数に上るのであります。
以上を要するに今次改正案は実に、我が国の地方税制の創始以来の画期的なものであり、特に附加価値税、固定資産税及び市町村民税の三大新税の創設、道府県税体系と市町村税体系との明確な分離及び賦課徴収手続の明確化等の諸点において極めて優れた特色を有し、地方財政の確立乃至地方自治強化のために偉大な貢献をなすべきことが期待されるのであります。
而して政府は、概略右のごとき趣旨と内容に基きまして、地方税法案を前国会に提案いたしたのでありますが、不幸にして不成立に終りましたため、ここに若干の修正を加えて再び提案する次第でありまして、以下修正を加えました諸点について御説明申上げます。
先ず、第一は、附加価値税の実施を一年間延期して、明年一月一日からとし、それまでは、概ね、現行の事業税及び特別所得税を課するものとしたことであります。これは元来その負担の転嫁することを予想する税種について、半年以上も過去に遡つて、実施するということは不穏当でありますのと、新税の実施には、何分法案の成立後も準備に万全を期する必要があると考えたからであります。
而して、附加価値税に代え存置される事業税及び特別所得税につきましては、法案中に第六章として特に一章を設け、詳細に規定することとしたのであります。即ち、その課税客体については、概ね、現行の事業税及び特別所得税のそれと同一にしているのでありますが、ただ、農業、林業については、固定資産税との関連上、これを非課税とし、又、原始産業中主として自家労力によつて行うものについても付加価値税の場合と全く同様に課税しないこととしたのであります。税率についても附加価値税について予定した四百二十億円の収入を得ることを目途として、現行事業税の法人及び個人の第一種事業に対するもの、本税、附加税及び都市計画税割を合せて十八%を十二%に、特別法人及び個人の第二種事業に対するもの、同じく十二%を八%に、特別所得税中第一種業務に対するもの、九・六%を六・四%に、第二種業務に対するもの、十二%を八%に、それぞれ三割三分余りずつ引下げると共に、免税点を現行の四千八百円から二万五千円に引上げ、以て、事業税負担の合理化を図つた次第であります。
而して、この事業税及び特別所得税は、全額を道府県税とすると共に、納付の方法は、現行通り徴税令書を交付して徴収するところのいわゆる普通徴収の方法によるものとしているのであります。
第二に、市町村民税については、法案成立の遅延に伴い、昭和二十五年度分に限り、その賦課期日を八月一日とし、且つ、固定資産税の修正との関聯からその納期を昭和二十五年度においては九月、十一月及び一月の三期とし、また昭和二十六年度においては七月、九月、十一月及び一月の四期としたのであります。
第三に、固定費産税については、前国会においても、この税の負担の急激なる増加については、とかくの論議のあつたところに鑑み、標準税率を原案の百分の一・七五から一・七に引下げると共に、昭和二十五年度においては、百分の一・七の一定税率を用いるか、同年度分の固定資産税の収入見込額が五百二十億円を相当に上回り、又は下廻ると認めるときは、概ね、五百二十億円となるように、昭和二十六年一月中において地方財政委員会がその税率を変更するものとすることとし、その負担の合理化を図ることとしたのであります。
又、昭和二十五年度及び昭和二十六年度の納付については、特に次のような特例を設けることとしたのであります。即ち、
(一) 昭和二十五年度分の固定資産税を課すべき償却資産に限り、その価格を概ね(1)帳簿価額、(2)資産再評 価法の規定による現実の町評価額(3)再評価を行わないものにあつてはその見積価額、(4)再評価額の限度の七〇%の額のいずれをも下らない範囲で仮決定し、これを基礎として仮に算定した税額を徴収し、昭和二十六年度において固定資産評価員の評価の実績に基いて本税額を決定し、同年十二月中に、仮に算定した税額との差額を追徴又は還付するものとしたのであります。
(二) 次に、昭和二十六年度分の固定資産税は、最終納期前の各納期においては、農地以外の土地、家屋及び償却資産については、昭和二十五年度の固定資産税の仮の課税標準の算出方式によつて算出した仮の課税標準額、並びに農地については、農地の公定価格を基礎とした昭和二十六年度の課税標準額の合計額を基礎として、仮に算定した税額を納期数で除して得た額を徴収し、最終納期において、現実の評価の結果による課税標準額を基礎として税額を決定しすでに徴収せられた仮算定税額との差額を追徴又は還付することとしたのであります。
(三) 尚、固定資産税の納期は、法案成立の遅延及び右の仮算定税額徴収の制度の採用に伴い、昭和二十五年度は土地、家屋に係る固定資産税の納期を八月、十二月及び二月、償却資産に係る固定資産税の納期を十二月及び二月とし、昭和二十六年度の納期は、四月、大月、八月及び十二月としております。
(四) 免税点についても、課税標準額の仮決定制度の採用に伴い徴収の便宜上本年度分及び明年度分に限り土地、家屋及び償却資産の各別に計算し、その額を一万円とすることとしたのであります。
以上の諸点が前国会提出の法案について修正を加えた主要な点でありますが、新税法制度の趣旨も照らし、地方財政法に次のごとき改正を加えることといたしております。即ち、その一は、地方団体は、寄附金を割当て、強制的に徴収するようなことをしてはならないこと。
その二は、公共事業費の財源を起債に求める場合は、従来少くとも二割の増税をしていなければならなかつたのでありますが、少くとも標準税率で課税している場合であれば、よいものとしたことであります。
最後に、私といたしましては、この法律が一日も速かに成立して施行せられ、朝野の絶大なる理解と協力の下に、よくその所期の目的を達成し、以て地方自治の確立を通じて、国政民主化の上に大きな貢献をすることを望んで止まないものがあります。何とぞ慎重御審議の上、速かに議決あらんことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100814720X00219500715/2
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003・岡本愛祐
○委員長(岡本愛祐君) 本案に対する質疑は次回に譲りたいと思います。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100814720X00219500715/3
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004・岡本愛祐
○委員長(岡本愛祐君) 御異議ないと認めます。
それでは今日はこれで散会をいたします。
午前十時五十八分散会
出席者は左の通り。
委員長 岡本 愛祐君
委員
石村 幸作君
岩沢 忠恭君
高橋進太郎君
堀 末治君
安井 謙君
相馬 助治君
西郷吉之助君
鈴木 直人君
竹中 七郎君
石川 清一君
国務大臣
国 務 大 臣 岡野 清豪君
政府委員
地方自治庁次長 鈴木 俊一君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100814720X00219500715/4
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