1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年七月二十九日(土曜日)
午前十時五十八分開会
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本日の会議に付した事件
○鉱業法案(内閣送付)
○採石法案(内閣送付)
○継続審査承認要求の件
○通商及び産業一般に関する調査の件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100814793X00819500729/0
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001・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) 只今より開会いたします。鉱業法案を議題に供します。先ず政府の提案理由の説明をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100814793X00819500729/1
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002・首藤新八
○政府委員(首藤新八君) 只今議題となりました鉱業法案につきまして、その提案理由を御説明いたします。
鉱業法は、鉱業を規律する基本法で、現行鉱業法は明治三十八年に制定せられ、その後十数回の改正を経て今日に至つているのでありますが、時代の進歩経済の発達及び関係法律の改廃によりまして、現行鉱業法は広汎な修正を必要とするに至つているのであります。政府といたしましては、昭和二十一年から現行鉱業法の改正準備に着手し、昭和二十二年に当時の商工省に学界、業界その他の関係者を委員とする鉱業法令改正委員会を設けまして、鉱業法の改正についての意見を諮問し、昭和二十四年三月にその答申を得、又この目的のためにアメリカから来朝されたアメリカ鉱業法の専門家の助言を以ちまして、この法律案を立案した次第であります。
今回提案致しました鉱業法案は、鉱物資源を合理的に開発することによつて公共の福祉の増進に寄與するという根本目的においては勿論、鉱業権を中心とする法律の基本的な構成におきましても、現行鉱業法と根本的な相異はないのでありますが、鉱物資源を一層合理的に開発し、鉱業と一般公益及び他産業との調整を図り、且つ、法律の運用を愼重にして国民の権利の保護に遺憾のないようにすることを目標として立案いたしました結果、現行鉱業法の單なる改正でなく、現行鉱業法に代る新たな鉱業法の制定を提案いたすこととなつたのであります。
この法律案が現行鉱業法と異つている主要な点を申上げますと、その第一は、鉱業法上の鉱物に石灰石、ドロマイト、けい石、長石、ろう石、滑石及び耐火粘土並びに従来砂鉱法の適用を受けました砂鉱を追加したことであります。石灰石以下七種の鉱物は、我が国の重要な地下資源であり、将来ますますその需要の増加が予想されますので、この際これらの鉱理を鉱業法上の鉱物とし、法律の保護監督の下にその合理的な開発を図ろうとすものであります。又砂鉱は、従来砂鉱法の適用を受けておりましたが、砂鉱法はその内容において鉱業法と殆んど同様でありまして、今後も特に別の法律にする必要が認められませんので、砂鉱法を廃止して鉱業法に統合することといたしました関係で鉱業法上の鉱物としたものであります。
第二は、鉱業権の存続期間等に関するものであります。現行鉱業法では、試掘権は四年、採掘権は無期限となつておりますが、この法律案におきましては、試掘権は元来が鉱物の存否及び採掘の価値があるかどうかを確認する作業を行うための権利でありますので、その存続期間を二年とし、更に試掘を継続する必要がある場合には一回限り二年の延長を認めることとして採掘に適する場合は速かに採掘権に移行させることとしたのであります。採掘権につきましても、一つの鉱区の開発は、一定の期間で終了するものでありますから、一応その存続期間を三十年とし、その後も採掘の価値がある場合には、存続期間を更新できることとしたのであります。又鉱業権者の鉱業実施の義務を明確にし、止むを得ない事情で鉱業を実施しない場合は、あらかじめ認可を受けさせることとしたのであります。
第三は、租鉱権に関するものであります。現行鉱業法におきましては、鉱業権者でなければ鉱業を行うことができないことになつております。併し旧重要鉱物増産法及び旧石炭鉱業権等臨時措置法におきましては、鉱物の増産を図るため許可又は決定に基いて鉱業権に使用権を設定し、鉱業権者以外の者が鉱物を掘採することを認めたのであります。これは臨時的な増産の必要のために認められた制度であつて必ずしもそのまま基本法たる鉱業法にとり入れるべきものではないのでありますが、現実においては、鉱業権者がその鉱区の一部で他人に残鉱の収取等を行わせることが鉱物の経済的な開発利用のために適切な場合がありますので、七のような場合に限つて当事者の合意により租鉱権を設定して租鉱権者が鉱業を行うことを認めることとしたのであります。第四は、鉱業に関する勧告又は協議に関するものであります。旧重要鉱物増産法及び旧石炭鉱業権等臨時措置法には、隣接鉱区相互間の増源、鉱業権の交換売渡、事業設備の譲渡等について広汎に国が關與する規定があつたのでありますが、この法律案におきましては、鉱床の完全な関発のため止むを得ない必要がある場合に通商産業局長は隣接する鉱区相互間の増減について勧告をし、当事者の申立があつたときは当事者間の協議に代る決定をすることを認め、鉱区が密集し錯そうする地域における鉱業権の交換売渡については、通商産業局長に交換売渡についての勧告をすることだけを認めたのであります。又現行鉱業法では、通商産業局長は、理由を示して施業案の変更を命ずることができることになつておりますが、この法律案では、通商産業局長は、鉱床の完全な開発のため止みを得ない必要があるときは、先ず施業案の変更を勧告し、勧告がきかれなかつた場合に初めて変更を命ずることとしたのであります。第五は、土地の使用及び收用に関するものであります。現行鉱業法では、鉱業権者に他人の土地を使用する権利を認め、土地の所有者の請求があつたときに限りその土地を收用することになつておりますが、鉱業上の土地の使用には恒久的で且つ土地の形質を変更してしまう場合が外く、この場合いつまでも使用の情態を続けることは、実情に適しないので、特定の鉱業上の目的に他人の土地を利用し、その土地の形質を変更し、而もその土地を将来永く鉱業上の目的に供さなければならないときは、その土地を收用できることとしたのであります。尚、従来は鉱業のための土地の使用及び收用についてはすべて鉱業法に規定されておりましたが、この法律案では若干の特別の定をする外すべて土地収用法の規定によることとしたのであります。
第六は、鉱害の賠償に関するものであります。鉱業を行う者が鉱害について、特別な賠償義務を負う場合及びその賠償を金銭又は原状回復によつて行うものとする点においては、この法律案も現行鉱業法と同様でありますが、従来から土地又は建物について被害の発生を予想して損害の賠償をした後にその土地又は建物が第三者に譲渡された場合の賠償の対抗力について問題があり、時として二重の賠償をする結果となるような場合がありましたので、土地又は建物に関する損害について予定された賠償額の支拂は、政令で定めるところにより登録をしたとさは、その後その土地又は建物について権利を取得した者に対してもその効力を生ずることとして予定賠償の効力を明確にするとともに、登録によつてそれを公示し、第三者が不測の損害を受けないようにしたのであります。又鉱害の賠償を公正適切に行う資料とするため、通商産業局長は、地方鉱害賠償基準協議会に諮問した上で鉱害の賠償の方法範囲等に関する基準を作成して公表することができることとし、更に現実に鉱害の賠償について争が生じたときは、裁判所の調停の前に、一般公益を代表し、又は各産業について知識経験のある者のうちから通商産業局長が指定する仲介員の和解の仲介を受けることができることとしたのであります。
第七は、通商産業局長の権限の行使に関するものであります。この点につきましては、通商産業局長がこの法律案に基く重要な処分を行う際には、あらかじめ関係者に対し、公開による聴聞を行うこととして、処分を公正適切にすることを図つているのであります。
第八は、土地調整委員会による鉱区禁止地域の指定及び通商産業局長等の処分に対する裁定の申請の制度に関するものであります。鉱区禁止地域の指定と申しますのは、一定の土地で鉱物を掘採することが一般公益又は農業、林業若しくはその他の産業と対比して適当でないと認めるときは、土地調整委員会が鉱物を指定してその土地に鉱業権の設定を禁止する制度であります。又裁定の申請と申しますのは、鉱業に関する出願、土地の使用又は收用に関する申請等に対する処分について、その処分が公益上文は農業、林業若しくはその他の産業に対する関係から不当であるという点で不服のある者に土地調整委員会の裁定を申請してその処分の取消又は変更を求める道を開いた制度でありまして、共に鉱業とそれ以外の土地の利用との調整を公正な第三者の立場で決定しようとする制度であります。
以上述べました点がこの法律案が現行鉱業法と異る主要な点で、その他の点につきましては、大体において現行法の原則をそのまま認めているのであります。
尚、この法律案の施行に伴う経過措置及び関係法律の改正につきましては、別に鉱業法施行法案を提案することにいたしております。
以上この法律案が現行法と異る点を明らかにしつつこの法律案の提案の理由を御説明致しましたが、これをもつて今後の我が国の鉱物資源開発のための基本的制度とし、鉱物資源を合理的に開発することによつて公共の福祉の増進に寄與しようとするものであります。
何卒愼重御審議の上、可決されんことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100814793X00819500729/2
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003・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) 次に採石法案を議題に供します。政府の提案理由の説明をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100814793X00819500729/3
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004・首藤新八
○政府委員(首藤新八君) 只今議題となりました採石法案につきまして、その提案理由を御説明いたします。
言うまでもなく鉱物、岩石等の地下資源は、一国経済の重要な基礎をなすものでありまして、而も人工的に再生産することのできないものでありますので、諸外国においてもその国の実状に応じてこれらの掘採取得について特別の法律を制定し、その合理的開発を図つているのであります。我が国におきましては、重要な鉱物につきましては鉱業法が適用され、それらの鉱物は、土地の所有権の内容から除外され、出願に基いて設定される鉱業権によらなければ掘採できないこととするとともに、鉱業の目的に必要な土地の使用権等を認めることによつて土地の所有者と個々に契約を結ばなくても鉱物の掘採ができることにしているのであります。然るに岩石及び鉱業法の適用を受けない鉱物につきましては、従来その採取に関して特別の法律の規定がなかつたため、その採取を行おうとする者は、自ら土地を所有している場合の外は、土地の所有者との債権契約によるか、或は、土地を買い取らなければならなかつたのであります。その結果土地の所有者と契約を結ぶことができないか、或いは土地の買取について承諾を得られない場合は、岩石等の採取を行うことができず、有用な資源の開発を阻害することが往々あつたのであります。
更に債権契約による場合は、土地の転売によつて採取の権利を失つたり、或いは契約期間の満了に際してその更新を拒絶されたり、不当な代償の支拂を要求されたり致しまして採取を継続することができなくなる危険がありますので、これらの事業者は、安心して事業の設備に資本を投下して岩石等の合理的な開発を行うことができない現状にあるのであります。併し、岩石及び鉱業法の適用を受けない鉱物のうちある種のものは、いづれも重要な地下資源であり、建築事業用、工業用等各方面に重要な用途を有するものでありまして、これらの有効なる開発の成否は、我が国経済の復興に影響する所極めて大なるものがあるのであります。
以上申し上げました理由に基きまして、この法律案におきましては、その採取につき特別の法律の制定を必要とするこれら岩石及び鉱物を第二條において「岩石」とよび、又これらの採取事業を「採石業」ということと致しまして、本法の適用を受けることとし、採石業者の権利の安定を期し、岩石資源の有効な開発を図つているのであります。
然らば、この法律案においては、如何なる方法によつて採石業者の権利の安定を図つているかと申しますと、鉱業法においてその適用を受ける鉱物につきましては、それらの鉱物は土地の所有権の範囲外のものとされているのでありますが、この法律案にいう岩石につきましては、明治以来の我が国の鉱業立法の沿革や、一般の社会的な観念に従つて、土地の所有者の支配下にあるものとしているのであります。併し、その採掘に関する権利を確立するため新しく「採石権」という土地に関する物権を創設したのであります。これによつて、他人の土地で岩石の採取を行おうとする者は、土地を買い取らなくても採石権という確実な権利によつて岩石の採取をすることができることとなるのであります。
尚、採石権は、個人間の任意の契約によつて設定されるのが原則でありますが、岩石の採取を行うことが適当な土地について、土地の所有者等が採石権の設定に同意しないときは、岩石の採取を行おうとする者は、通商産業局長に申請し、その決定によつて採石権の設定を受けることができることにしているのであります。しかし、その土地が鉄道、軌道、道路、水道、運河、港湾、河川、湖沼、池、橋、堤防、ダム、かんがい排水施設、公園、墓地、学校、病院、図書館等の公共用施設の敷地又は用地であるとき、建物の敷地であるときは、決定の申請は、できないこととし、又その土地を農業、林業その他の産業のために使用する方が、岩石の採取のために使用するよりも有益の場合又は岩石の採取が公益を害する場合には、採石権を設定する決定は行わないこととしているのであります。その外その決定については、関係者の公開による聴聞を行うと共に土地調整委員会の承認を要することとし、且つ、決定に不服のある者は、土地調整委員会の裁定を申請できることとしているのであります。なお、採石権の讓受又は採石権の存続期間の更新につきましても、同様に通商産業局長の決定によりまして、採石権の譲受又はその存続期間の更新をすることができることとしたのであります。
又採石業を行うためには、岩石の運搬等の目的に他人の土地をどうしても利用しなければならない場合がありますので、これらの場について鉱業法と同様の手続によつて他人の土地を使用することができることとしているのであります。但し、鉱業の場合と異つて、採石業者は、土地の所有権、採石権その他何等かの形で土地の利用権を持つているのでありますから、使用の目的については、鉱業の場合に比して著しく狭く限定しているのであります。
尚、岩石の採取によつて、土地の陷没、土砂の流出等がおこり公益を害する場合が考へられますが、このようなときは、通商産業局長が防止のため必要な命令をなしうることとする等事業に対する若干の監督的な規定をおいたのであります。
以上、この法律案の提案の趣旨と大要とを御説明いたしましたが、政府といたしましては、今後この法律案の施行によりまして、我が国の岩石資源が法律的な基礎の上に立つて合理的に開発され、ひいては我が国経済の復興に資する所のあることを期待しているものであります。
何卒愼重御審議の上、可決されんことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100814793X00819500729/4
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005・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) 皆様にお諮りいたしますが、只今提案理由の説明を伺いました鉱業法案及び採石法案の質疑は本日は取止めにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100814793X00819500729/5
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006・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) 御異議ないものと決定いたしました。それから今の両法案については、昨日政府より提案され、会期も切迫していますから、議長に対して継続審査の要求をいたしたいと思いますが如何いたしましようか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100814793X00819500729/6
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007・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) 御異議ないものと認め、鉱業法案及び採石法案については継続審査要求書を議長宛提出するように決定いたしました。
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008・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) 次に通商及び産業一般に関する調査を議題といたします。本調査については三回に亘り委員会において調査を行なつて参りましたが、到底この程度で済む調査ではありませんので、本件も同じく継続調査をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100814793X00819500729/8
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009・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) それでは議長宛に継続調査要求書を提出することに決定いたしました。速記を止めて。
午前十一時三十分速記中止
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午後零時二十六分速記開始発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100814793X00819500729/9
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010・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) 速記を始めて下さい。本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十七分散会
出席者は左の通り。
委員長 深川榮左エ門君
理事
古池 信三君
廣瀬與兵衞君
栗山 良夫君
委員
上原 正吉君
小野 義夫君
松本 昇君
加藤 正人君
山内 卓郎君
山川 良一君
境野 清雄君
西田 隆男君
政府委員
通商産業政務次
官 首藤 新八君
資源庁炭政局長 中島 征帆君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100814793X00819500729/10
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