1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年五月十七日(木曜日)
午後二時三十九分開議
出席委員
委員長 前田 郁君
理事 大澤嘉平治君 理事 岡田 五郎君
理事 坪内 八郎君
稻田 直道君 岡村利右衞門君
片岡伊三郎君 玉置 信一君
畠山 鶴吉君 前田 正男君
滿尾 君亮君 山崎 岩男君
原 彪君 山口シヅエ君
出席国務大臣
運 輸 大 臣 山崎 猛君
出席政府委員
運輸事務官
(大臣官房長) 荒木茂久二君
運輸事務官
(鉄道監督局官
営鉄道部長) 唐澤 勲君
運輸事務官
(自動車局長) 牛島 辰彌君
運輸事務官
(自動車局業務
部長) 中村 豊君
運 輸 技 官
(自動車局整備
部長) 佐竹 達二君
委員外の出席者
専 門 員 岩村 勝君
専 門 員 堤 正威君
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本日の会議に付した事件
道路運送法案(内閣提出第一三一号)
道路運送法施行法案(内閣提出第一三二号)
海上運送法等の一部を改正する法律案(内閣提
出第一六一号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/0
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001・大澤嘉平治
○大澤委員長代理 これより会議を開きます。
道路運送法案及び同法施行法案を議題といたします。昨日に引続き質疑を続けます。岡田五郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/1
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002・岡田五郎
○岡田(五)委員 簡単に五つ、六つ質問を続けさせていただきます。
まづ第一にお尋ね申し上げたいのは、このたびの法律で自動車運送事業の業種が、旅客、貨物両方で六種類になつておるようであります。一般路線貨物自動車運送事業、一般区域貨物自動車運送事業、それから特定自動車運送事業、こういうふうに貨物関係につきましては三つになつておるようでありまして、施客においても同じでありますが、たとえば一般路線貨物自動車運送事業と一般区域自動車運送事業と、これが兼業ができるものかできないものか。あるいは一般路線貨物自動車運送事業をやれば、一般区域の方は免許をされないものかどうか。この辺御説明を願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/2
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003・牛島辰彌
○牛島政府委員 違つた種類の自動車運送事業は、やはり免許基準に合致すれば免許いたすことになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/3
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004・岡田五郎
○岡田(五)委員 御答弁の模様によりますと、一般路線の自動車運送もやり、一方また附近の一定の事業区域内の、いわゆる区域貨物自動車運送事業もやれる、こういうように御答弁いただいたと考えるのであります。つまらぬことを重複して質問するようでありますが、さように心得てよいのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/4
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005・牛島辰彌
○牛島政府委員 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/5
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006・岡田五郎
○岡田(五)委員 それでは次に運賃の問題についてお尋ね申し上げたいと思うのであります。第八條の第三項に「第一項の運賃及び料金は、定額をもつて明確に定められなければならない。」こういうことになつておるようであります。しかもこの運賃及び料金は運輸大臣の認可料金になつております。この定額の意味といいますか、定額の範囲でありますが、具体的に例を言いますと、その一定の地区におきまして一定の額をおきめになるのですか、それとも一定の地区にとらわれないでも——ちろん地区も考慮の中に入ると思いますが、業者別におきめになるのでありますか。またさらに品種別にこの定額をおきめになるのでありますか。もう一つは、かさ高品あるいは重量品あるいは天候の関係、道路の関係、いろいろと定額につきまして割増しする場合もあるし、また割引しなければならないような條件もあると思うのでありますが、その辺のところを明確に各項目につきまして御答弁をいただきますれば、この定額という文字の概念の実際の範囲が大体わかると思うのであります。その辺のところを、具体的な事項につきまして御説明をお願いいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/6
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007・中村豊
○中村(豊)政府委員 定額制の実施についての御質問でございますが、御指摘のように具体的に申し上げますと、地域別にも業者別にもおのおの違うことがあり得るわけでございます。これは全部業者からの申請に対しまして、第八條の認可の基準に従いまして、その妥当であるかどうかを調べて認可するわけでございますから、その際に業者ごと、地域ことに適正な原価を償い、かつ適正な利潤を含んでおるということであれば、おのおの違つた額が認可される、こういうことになるわけであります。また品種別につきましても、その業者の申請の内容を見まして、それが妥当でありますれば、品種別にも違うことがあり得る。それは認可基準の八條第二項第三号を見ましても、「貨物の運賃及び料金を負担する能力にかんがみ、」ということが書いてありますように、負担力主義も加味しておるわけでありますから、品種別にも違うことが考え得るわけでございます。また割増し、割引という制度も、申請がありましてそれがこの基準に合致しますれば、認可されるのであります。さように定額制というのは相当複雑なものであつてさしつかえないのでありまして、定額制であるから画一的な一本のものでやるということでは決してございません。その意味では決して実行不可能的な、実情に合わないようなものでないということになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/7
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008・岡田五郎
○岡田(五)委員 この運賃、料金関係の規定をずつと見ておりますと、特定の族客及び荷主に対して不当な取扱いをしてはいかぬ、また運賃の割もどしをしちやいかぬ、また運賃についてはできるだけ現払いをしなくちやならぬ、また定額をもつて明確に定めなければならないというように、運賃については非常に厳格のような規定になつておりまして、しかもこの定額というものは、先ほど言われましたように品種別に、業者別に、地区別に、あるいはときによつては客観的な條件別に、あるいは数量別に、各條件を加味していろいろの段階でおきめになるだろうと思うのであります。ことに貨物自動車によつて運ばれる貨物の種類は、おそらく私は万、千を数えられると思いますが、こういうようなものにつきまして一々おきめになるのか、それとも雑貨と称し、あるいは機械類と称して、大類別におきめになるのでありますか。私は事務的に非常に煩瑣な手数をふまれると思うのであります。煩瑣な手数をふまなければ、こういうような禁止規定を抜けるには幾らでも抜けられるのではないか。私はその点を非常に心配するのでありますが、その辺の実情をさらに御説明をつけ加えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/8
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009・中村豊
○中村(豊)政府委員 御指摘のように、品種別に、数量別に一々別々の認可運賃ができましては、煩雑にたえないことになると思いますし、事務もたいへんなのでありますが、これは鉄道運賃などとは違い、ある程度明確な、簡明なものでなければならないと思いますので、それほど複雑な認可申請がありましても、そのままこれを認可するということは、かえつて実際に合わないであろうと思うのでございます。ただ先ほども申しましたように、貨物の負担力ということを考えるとか、あるいは認可基準の第四号にありますように、他の自動車運送事業者との不当競争のおそれがないようにするとかいう配慮をいたしますから、複雑であるとはいいながら、同じような事業で同じような地域には、おのずから大体同じような運賃が認められる、こういうようになろうと思いますから、それほど御心配のような複雑なことは起らないのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/9
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010・岡田五郎
○岡田(五)委員 私はかえつて非常に心配するのであります。むしろ自動車で輸送されておる荷物は、大体鉄道によつて輸送されておる荷物とほぼ同じであると考えていいと思うのでありまして、ただ距離が遠いか遠くないか、あるいは道路上を運送するかしないかという、自動車運送の特質からする距離の問題はございましようが、品種は大体同じであろうと思います。私が非常におそれることは、鉄道が持つておられる貨物賃率表であるとか、あるいは等級表であるとかいうものに似た形をとらなければ、ここにきめられた厳格な、特定の荷主に対して不当な扱い方をしてはいかぬ、あるいは運賃の割もどしをしてはいかぬ、また定額で明確にしなければいかぬということで、荷主を保護し、自動車運送業者を保護する意味における定額運賃を厳守させるためには、かように詳細にして正確な表によつて認可せられるのではないか。これが立案だけに終れば、定額制の定額制たるゆえん、趣旨を没却し、またこの禁止規定を巧妙に脱法する——と言つては誤弊がありますが、くぐるというような結果になつて、せつかく定額制をもつていわゆる公平性を期せられた趣旨が没却されるのではないか、かように私は心配するのであります。なおその点につきまして、御説明をつけ加えていただけるならば御説明をつけ加えていただきたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/10
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011・中村豊
○中村(豊)政府委員 御心配の点の複雑になることは、われわれもかえつて実際に合わなくなると思いますので、ある程度品種別あるいは地域別、業種別に重なるものが想像されますけれども、それほど複雑なものはさしあたり認可すべきではないと思うのであります。ただ現在の運賃が、御承知のように物価統制令に従いまして、たつた一本最高額を統制額として押えてあるだけでありますので、これではあまりに実際に合わない。貨物の種類によりましては非常に負担力の少いものもありましようから、そういうものについてはある程度の安い運賃を認める。あるいは同じ地域の業者はみな同じ額でなければならないというような、サービスをまつたく考えないような運賃を一律に認めるということはおかしいではないか。あるいは北海道から九州に至るまで、まつたく同額であるということは実情に合わない。そういう点を加味して、トラック運賃を徐々に合理的なものに持つて行こうという趣旨でございますので、すぐ複雑きわまりないものになるというような見込みは持つていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/11
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012・岡田五郎
○岡田(五)委員 この点心配の仕方について、政府委員と私と大分程度が違つておるようでありますが、現行規定でございますと割もどしの禁止規定もなかつたかと思いますし、また特定の荷主に対して不当な差別取扱いをしてはいかぬというような禁止規定はなかつたと思います。そのときの商慣習、そのときのお得意によつて適当な割引もし、適当な扱いもしておつた、こういうことなのですが、今度は非常な禁止規定があつて、しかも定額でしなくちやならぬ、しかも今度の運賃は現払いでなくちやならぬというようなことで、この運賃制度についは、われわれの感じと違つた非常に厳格な規定になつておるようであります関係上、実は私はこれも荷主の保護になり、また自動車運送業者の両面の保護から、運賃の公平性と明朗性というようなことから、定額制をおとりになつたと推察するのであります。かような点から言えば一業種ごとに鉄道の貨物運賃等級表または賃率表みたいなものをこしらえて、それを公示して、正々堂々と公平に貨物を取扱つて行く、こうあるのが理想の形であろう、またこう持つて行くことを期待しておられるのではないか。今までのような認可料金のようなつもりで定額をおきめになるような気持では、今度の運賃制度のほんとうの趣旨を没却するのではないかと私は考えるのでありますが、その点につきましてはあるいは政府委員と見解の相違に終るかもしれませんので、これ以上この問題についての質問は繰返さないことにいたしまして、ただお尋ねいたしたいことは、この自動車運賃につきまして、現払いといいますか、運送貨物を荷受人に引渡して、そのときに金を受取れ、特別の理由がなければすぐ受取れ、こういうことになつております。これをいわゆる皆さん方は現払いと言つておられますが、変な質問でありますが、これは現金払いという意味の現払いでありますか、そうでなくて広い意味の現払いでありますか、その辺念のために一応御質問申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/12
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013・中村豊
○中村(豊)政府委員 現払いと申しますのは、現金払いという狭い意味ではございませんで、むしろ即時払いと言つた方が合うのではないかと思います。従いまして支払い手段といたしましては現金のみならず、手形その他の有価証券、そういう対価をもつて支払うということも認められるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/13
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014・岡田五郎
○岡田(五)委員 次に自動車運送料金または運賃につきまして、なぜほかの運送業者では見られない現払いという制度をおとりになりましたか。この條文の立法趣旨と申しますか、意図のほどをお聞かせ願いたい。
それからついでにもう一つお尋ね申し上げますが、第十條の二項に「荷主の経理上の手続その他やむを得ない事由がある場合」は、必ずしも現払いでなくてもよろしいが、省令できめられた期間内において払え、こうあるのですが、荷主の経理上の手続というのは、解釋のしようによつては非常に広く解釋できるのでありまして、金がないから払えないというのも、考えようによつては経理上の手続とも解できるかもしれない、かように考えますが、この「経理上の手続その他やむを得ない事由」という文字の解釋につきまして、御説明願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/14
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015・牛島辰彌
○牛島政府委員 現払い制度を採用いたしました理由は、ただいま御質問のありました定額制の運賃を採用いたしまして、一般の荷主公衆に対しまして不当な差別的な取扱いをしないように、また不当な競争を起さないようにいたす制度を今回採用いたしましたので、これを実際に定額制を守つて行く上から行きますれば、どうしても貨物自動車運送事業につきましては現払い制をとつて、荷物を引渡すときに運賃を支払うという建前が必要だと思うのであります。従つてある荷主に対しては運賃の支払いについて特段にあとにするとか、一連の荷主に対しましては即時に払わせるというようなことをしないように、すなわち不当な差別的な取扱いをしないようにいたし、さらにそのことによつて事業者相互間において不当な競争に陷らないようにするために、この現払い制度を採用したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/15
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016・中村豊
○中村(豊)政府委員 荷主の経理上の手続その他やむを得ない事由がある場合は例外であるということでは、非常に幅が広過ぎて逃げてしまうじやないかという御質問でございますが、経理上の手続で、ことに大きな会社なんかでは、すぐに右から左に現金が、あるいは支払い手段が出ないということは当然考えられますので、支払いする意思はありながら、手続でどうしてもやむを得ない場合に、そこまで追求することは苛酷と思いますので、そういうような、例としては、経理上の手続その他それに準ずるようなやむを得ない事由のある場合にはよろしいということにしたわけでございます。十分に支払いの意思はあるにかかわらず、手続その他の理由でまことにやむを得ない場合、こういうことになつておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/16
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017・岡田五郎
○岡田(五)委員 大体日本の商慣習から言いまして、こういう商売にすべて現払いでなくちやならないといつて法律にきめられること自体が、私は非常に無理がある感じを持つておるのであります。かような無理を第十條でおきめになつて、しかも二項で「荷主の経理上の手続その他やむを得ない事由」、これは非常に使いやすい言葉でございまして、私はこの言葉を利用いたしまして、省令の定められた期間内はほとんど後払いに逃げ込むと思うのであります。このやむを得ない事由というのは、そのときどきの客観的事情によつて、何とでも解釋できるのであります。実は自動車運送業者と荷主というものは、従来ともお得意の関係にありまして、なかなか親しき仲にあるのでありまして、この第二項の文句を巧妙に利用いたしまして、現在行われておるような後払いの実際の状態に陷ることを憂うるのであります。私は日本の商慣習に合うような実際的な法の運用の結果になることを、一面においては一つの緩和剤として賛意を表するわけでありますが、ただもう一つお尋ね申し上げたいのは、「運輸省令で定める期間内に、」とこうあるのでありますが、省令で大体どのくらいな猶予期間をお考えになつておりますか、簡単でけつこうでございますから、その期間だけお知らせを願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/17
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018・中村豊
○中村(豊)政府委員 この期間はなかなかきめ方がむずかしい問題でありまして、ただいまの御必配のように、この例外があるために、みな事実上そこまでの後払いが原則になるのではないかという御心配はわれわれもするものでありますから、これをあまり長くすると後払いの時期を長くしたことになりますし、あまり短かくしますと、せつかく第二項で緩和をした意味が没却せられますので、非常に困つておるわけでありまして、現在これこれの日数を考えておるということはまだ申し上げるまでに至つておりませんけれども、大体の見当は、アメリカその他の例も考えまして、十日から二十日くらいというところでどうだろうかということを考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/18
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019・岡田五郎
○岡田(五)委員 最近いろいろ自動車業者から陳情を受けておるのでありますが、自動車部品その他自動車用燃料が非常に値上りをして来ておるのであります。しかもこれらの物資は統制経済撤廃の結果、ほとんど自由価格になつておるのでありまして、そのときどきの輸出入あるいは国内経済状況に応じまして、値上りをいたしておるのであります。ことに自動車用部品または燃料は、ほとんど外国から輸入しておる、こういうような関係で、自動車運送業者は自動車またはこれが運転に要する材料値上りのために、困窮をいたしておるのであります。一面最後の自動車運送業者の実入りであるべき運賃、料金が、認可料金で統制をされておるのでありますが、なぜその運賃料金をまだ統制しなければならないか。この点について、一応政府のお考え方を念のために承つておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/19
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020・牛島辰彌
○牛島政府委員 御承知のように現在自動車運賃につきましては、統制令によりまして統制いたしました。従つて現在の運賃は最高をきめております統制額であります。物価の情勢もおおむね安定して参りました現在といたしましては、物価統制というものはできるだけ解除することが望ましいことと考えております。しかしながら自動車運送事業はきわめて公共性の強いものでありまして、その運賃が一般物価あるいは国民生活に及ぼす影響は、相当重大なものでございます。従つて運賃は国民の消費生活に直結しているものでありますので、この統制解除については慎重を期して行かなければいけないことでございまして、現状においては、まだ解除するまでに至つておりません。しかしながら今後におきまして、できるだけ早くこの統制を解除する方針のもとに、検討を続けて行きたいと思つております。私どもといたしましては、自動車運送事業の各事業種別を一斉に解除することが困難でありますならば、事業種別に従つてでも統制を解除してもよいと思います。しかしながら本法におきましては、認可をするということは単なる物価統制の見地から言うのではございませんので、この運賃を認可して行くということは、一般の自動車運送事業のみならず、その他の交通事業等におきまして、運賃を利用者の荷主公衆にはつきり公示することが必要と考えられ、また先ほども申し上げましたように、利用者に対しまして無差別的な取扱いをなし、また不当な競争を起させないで行く行政の取扱い方からいたしまして、運賃を認可にかけるということは、今後も継続して参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/20
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021・岡田五郎
○岡田(五)委員 この運賃の認可について、認可せられた後におきまして物価が上る場合は非常にけつこうなんでございますが、経済事情が非常に変更されまして、この認可料金を改正しなければならない、むしろ下げなければならないという場合に、運輸大臣が認可料金の変更を命令できるような規定もないようでありますし、一にかかつて自動車運送業者からの自発的な値下げ申請がない以上は、この認可料金を維持されるということになりまして、むしろ自動車運送を利用する荷主側におきましては非常に不利であり、また荷主側を擁護する規定がこの法律の中にないように思うのでありますが、かような著しき経済事情の変動に基いて、認可料金を変更する必要のあつた場合には、どういうような法律的措置または行政的措置を講ぜられるつもりでありますか。その点重ねてお尋ね申し上げたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/21
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022・牛島辰彌
○牛島政府委員 本法の第三十三條に、自動車運送事業者に対しまして事業の改善の命令を出し得ることにしております。従いまして公共の福祉を阻害しておる事実があると認めるときは、事業者に対しまして改善命令を出すことにしております。その第二号に「運賃、料金又は運送約款を変更すること。」というのが入つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/22
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023・岡田五郎
○岡田(五)委員 二十四條の区域運送の場合でありますが、この区域運送業者が区域外に貨物を運ぶ場合には、その都度運輸大臣の許可を受けなければならない、こういうことになつておるのでありますが、その都度運輸大臣に許可を受けるという、言葉は非常に簡単でございますが、万一いつどういう荷物を区域外に荷主から委託されて運ぶかもしれないにかかわらず、東京のまん中におられる運輸大臣に、その都度許可を受けなければならないというのでございますか、出先自動車事務所に届出、許可を受ければそれで運輸大臣の許可になりますか、また陸運局長に一々許可を受けるのか、その都度どういうふうに許可を受ければよいのか、具体的な手続を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/23
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024・中村豊
○中村(豊)政府委員 その都度運輸大臣の許可を受けるということになりますと、非常にたいへんなことになるわけであります。それでこの点は地方の陸運事務所長に委任して、現地で必要なものならば、即刻許可できるような手続にいたしたいと思います。なお根本的にはそうたびたびかような事実が起りませんように、現在ありますような事業区域の範囲、すなわち、府県を単位にして、何々県一円とある程度の小さい区域を直しまして、実際の交通経済ブロックに適合するような、府県の単位を全然離れた実際の交通に合うような区域を、十分実績その他をにらみ合せて考えまして、そういうものを免許して行く、こういうふうにいたしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/24
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025・岡田五郎
○岡田(五)委員 もうこれで私の質問を打切りますが、このたび道路運送車両法及び自動車抵当法に関連いたしまして、六つの法律案が出たのであります。非常に厖大な、非常に詳細な自動車関係につきましての監督または規制、認可、それぞれの事項をきめておられるのでありますが、これがために運輸省は機構を変更せられるつもりがあるのかどうか、またこれに対して人間が今までよりもどのくらいよけいかかるのか、またどのくらいの行政費といいますか、予算を見積つておられるのか、御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/25
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026・牛島辰彌
○牛島政府委員 自動車関係の六法案を実施するにつきまして、行政機構を改変する考えはございません。ただ現在の機構の中において、あるいは課の名称の変更というようなことが考えられなければならない状態になるかとも考えておりますが、行政機構を特に改変する考えはございません。この道路運送法にいたしましても、また車両法にいたしましても、現在省令事項になつておりまするものを法律事項に引上げたものも相当多数ございますし、また法案といたしまして、道路運送法の全面改正を行いました関係で、非常に厖大になつた関係もございますので、私どもといたしましては、できるだけ現在の人間を増さないで、新しく仕事をいたしますものも消化して参りたいと考えております。ただ車両検査のごときものは、今後におきまして自動車の数が実際にふえた、あるいはまた抵当のごとき非常に複雑な仕事を開始するということに相なりますと、人員の増加はやはりこの面ではある程度考えなければならぬと思うのですが、本年度の予算におきましては、今ただちに抵当の問題も起りませんし、今後の自動車の増加につきましては、やがて編成さるべき補正予算の節、あるいはまた来年度予算の編成にあたりまして、その面におきまして人員の増加を若干考えなければならぬかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/26
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027・玉置信一
○玉置(信)委員 ごく簡単にお伺いいたしたいと思います。免許の点についてお伺いしたいのでありますが、従来荷馬車の運送をしておつたものが貨物の運送事業を始めたいというような場合に、今日までの地方の実情を見てみますると、北海道地方ではマル通がほとんど独占に近い仕事をやつて参りまして、最近なおその弊が残存いたしておりまして、個人で貨物自動車を持つておる者が申請した場合に、容易に免許されないのでありますが、この事情は今日どういうことになつておりますか。この法案に基くとこの点はどういうことになるのか、一応お伺いして本論に入りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/27
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028・牛島辰彌
○牛島政府委員 この法案におきまして、ただいま御質問になりましたいわゆる荷馬車というのは、軽車両事業になつておりますが、最近軽車両事業が相当小型貨物自動車運送事業に転向と申しますか、かわつて来る傾向が全国的にございます。小型事業の免許につきましては、第六條に掲げてございます免許基準に照しまして、審査を行つて免許をいたしておるわけでございます。終戦後小型事業の新規免許をいたしましたものは百十二程度で、この中には荷牛馬車のいわゆる軽車両の関係の方も相当多いわけでございます。個人が免許されないということは、具体的の事案についてよくお伺いいたしませんとわからないのでありますが、やはり事業をやります上に、ことに貨物運送事業をやります場合におきましては、資力、信用をこの免許基準において重大視しておりますので、その点であるいは免許にならなかつたのじやないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/28
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029・玉置信一
○玉置(信)委員 実例を申し上げて、さらに御意見を承りたいのであります。これは私、地元の問題でぶつかつておることでありまして、詳しく承知いたしておるので、特に当局の御所見をお伺いします。実は私の地方では、御承知のようににしんの大宗地帯でありまして、季節的漁獲であつて、非常に運輸の面で混乱を来すわけであります。ところで今日までの過程におきましては、マル通関係とか、あるいはマル通から分離された北海道自動車会社とかいうような大きな経営体ができておるのであります。ところが個人の許可を受けるには、マル通あたりの内申書とか同意書がなければ許可をしないというような、今日までの行き方をとつておる。そこで当時私どもお伺いしましたところによりますと、自動車の配分の状況等から見て、数字的に申し上げて、たとえば百両なら百両、それ以上はその地域における貨物の集散の数字をあんばいしてふやすことはできないから許可をしないというような、陸運局あたりの意同でありましたが、もしそうであるとすれば、そうした大きな機関の車を特にふやす理由はないと思うのです。さらにそれを具体的に申しますと、実は大きな経営をいたしておる経営体の名義をもつて経営することはよろしいということで、その会社の名義を借りて、その名義料を月に、数字は忘れましたが、たしか一万とか二方とかいう名義料を出して、その会社に自動車を所属させて、そうして表面はその会社の自動車であるというような名義において、個人が経営をしておる実情なんです。これは表向きに発表することはかんばしくないことであろうとは思いますが、実際はそういうことになつております。そのようなことにして車をふやすぐらいならば、独占的な仕事を打破していただいて、個個に経営させる方が最も民主的であり、しかも荷主の方面からその方が利用価値があると思います。ころいうような点に対して、運輸省としては末端の調査をしておられるか、またこういうような個人には許可すべきであると思うのでありますか。先ほどの局長の御答弁の趣旨に合うようにすれば、当然許可さるべきものと思うのでありますが、この点について重ねてお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/29
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030・中村豊
○中村(豊)政府委員 御質問のような事実があるとすれば、まことに奇怪なことでありまして、内申書というのは私どももどういうわけで必要なのか、了解いたしかねるのであります。また既存業者の名義で名義料を払つてやればいいということは、まつたく違反行為でありまして、現在の法律及び今度の改正法で厳に戒めておるところでございますので、さような事実がもしありとすれば、非常にけしからぬと思います。その点はわれわれまつたく存じておりませんから、よく実情を調べたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/30
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031・玉置信一
○玉置(信)委員 そうした現実の問題が横たわつておりますので、さような実情にある地方に対しては、個人に対しても許可すべきであると私は思うのです。せつかく名義料を出して使つておるものであるから、実質的には車をそれだけ特にふやす必要もない、その車を個人に引渡せばいいのですから、そういうものの許可に対しては、どういうようにお考えになつておるのですか承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/31
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032・牛島辰彌
○牛島政府委員 この法案におきましては、個人だから免許をしないとか、会社であるから免許をするとかいうことには触れておらぬのでありまして、その経営をするところの主体が、この免許基準に適合しておるということを要求しておるわけでございます。従つて個人だから免許をしないということはございませんから、実情をよく調査いたしまして、また実際に申請されてそれが却下になつておりますれば、その申請された人あるいはその事案についてよくお伺いいたしまして、また私の方でも調査をいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/32
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033・玉置信一
○玉置(信)委員 第十條、第十一條の運賃、料金の問題についてお尋ねいたします。交通機関の公共性にかんがみて、鉄道の運賃、料金制度のように、一定額の運賃、料金を定めて、そうして自動車運送事業の場合は、運送貨物を荷受人に引渡すまでに運賃、料金を収受しなければならないということを規定せられて、さらに第十一條に持つて来て、その猶予事項を設けてあるのでありまして、こうした運賃の猶予規定によるものを、はつきり明示しておかなければやれないことになつておるようでありますが、従来の習慣によつて、たとえば運送したものを月末払いという場合に、適当に運賃の収受をするというようなことは認め得られないものであるかどうか、この点をお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/33
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034・中村豊
○中村(豊)政府委員 第十一條の問題では、ここにありますように、反覆継続的に行うようなものを、毎日々々運賃を払うのはたいへんでございますから、一月まとめて払う、こういうことでございますので、そういう場合だけは許可をするということになつております。ただ一回だけ運んでそれを月未払いということは、むしろ十條の趣旨に合えば十條で行くということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/34
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035・玉置信一
○玉置(信)委員 第百四條の道路運送審議会のことについてお伺いいたしますこの審議会の権限と、陸運局長の権限の点を主眼としてお尋ねするのでありますが、「陸運局長は、その権限に属する左に掲げる事項については、道路運送審議会にはかり、その決定を尊重して、これをしなければならない。」以下三号のうちで、事業の停止、免許の取消しあるいは運賃、料金に関する認可等をこの審議会に諮つて、これを尊重してきめるということでありますが、これらの最終的な責任はだれにあるのでありますか、この点をひとつ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/35
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036・牛島辰彌
○牛島政府委員 道路運送審議会は陸運局長の諮問機関でございますから、法律処分をなしました対外的の責任は陸運局長にあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/36
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037・玉置信一
○玉置(信)委員 第百七條の道路運送審議会の委員の選任についてお伺いいたしますが、これは都道府県知事の推薦する者とういことになつておりますが、知事の推薦によらなければならない根拠は、どういう考え方によつて生れたのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/37
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038・牛島辰彌
○牛島政府委員 一般的に、民意を聞くと申しますか、広く適任者を得るためには、現在の制度上から考えますと、やはり都道府県知事に推薦していただくというのが一番適当であると考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/38
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039・玉置信一
○玉置(信)委員 私も一応そうは考えるのでありますが、しかし陸運局管下において、それぞれ関係方面の輿論をただして、そこできめることも一方法でないかと思うのですが、知事に求めた方が、広い範囲に民意が反映されるとでもお考えになるか、この点をもう一度お伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/39
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040・牛島辰彌
○牛島政府委員 この制度をつくります場合におきましても、またこの法案を立案いたします場合におきましても、候補者の適任者をいかにして求めるかということが一番の問題となつたのであります。適任者を得る点からいたしまして、運輸大臣あるいは陸運局長が主になつて各地の適任者を求める方がいいか、あるいは都道府県知事にお願いする方がいいか、あるいは市町村長等の機関を利用した方がいいか、いろいろ検討したのでございますが、陸運局長をして適任者を選任させるということになりますと、陸運局長の諮問機関になるものを自分が候補者を推薦することになりまして、道路運送審議会の自主性という点を考慮いたしますとあまり適当ではない、こういうふうに考えまして、都道府県知事の推薦ということにしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/40
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041・玉置信一
○玉置(信)委員 あとで大臣が来ましたらまた質問をいたしますから、この程度で私は打切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/41
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042・滿尾君亮
○滿尾委員 私は総括的質問を大臣にいたしたいのでありますが、その点を保留いたしまして、その総括的質問は大体第一條にかかわる問題でありますが、第一條以外の具体的な條文に関するお尋ねを若干申し上げたいと思います。
第一は、第三條の第二項第一号でございますが、一般乗合旅客自動車運送事業というものを定義をせられましたのにつきまして、なぜ一般バス事業の一番本質的な部分を形成しております路線という観念をここにお書きにならなかつたか、そのことをこれは裏から規定せられておるのでありますが、こういう最も顕著なる代表的なバス事業等の定義におきまして、ことさらにその根幹をはずれたものの規定をせられることは、立法技術としてあまり好ましくないように考えるのでありますが、一応の御説明を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/42
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043・中村豊
○中村(豊)政府委員 バス事業は、路線を定めて一般旅客を乗り合わす事業が、一番典型的なことは御説の通りでございます。従つてさように表から書くべきであるというお説には、まつたく傾聴すべきものがあるのでございますが、いろいろと起案をしているうちにぶつかりました問題は、第二号と第三号とで貸切旅客自動車を規制しまして、残つた乗合の関係を、路線をきめるものと路線をきめないものとに、いわば区域といいますか、わけることが、観念的に一番はつきりいたしますが、そうすると事業種別としては四つになるわけでございます。ところが路線をきめないで乗合をするような事業は、実際には存在理由がなくて、現在もほとんどございませんし、将来もまず起らないだろうと思いますので、さような事業についてまで麗々しく事業種別を新しく書き上げるというのもいかがかと思つたわけでございます。それならば、そういうものは除いてしまつて、第一号のものは路線を定めるとはつきり書けばいいではないかという御説でございますが、そうなりますと、路線を定めない乗合は、自動車運送事業ではなくなつてしまうので、免許を要しない、まつたくの自由な営業になる、かようなことになるわけでございます。そうなりますれば、自由営業であるというので、どんなものずきの方かはわかりませんが、それをどんどんやり出して、輸送秩序を撹乱するというようなことがあつてははなはだおもしろくない、こういうようなことをいろいろ考えまして、御説のような多少明確を欠く、端的に書いてないというきらいはございますけれども、やむを得ず一般乗合の中に路線を定めないものも入れたわけでございます。しかしながら路線を定めないような乗合事業については、免許基準に照して考えてみますと、おそらく免許することは起らないのではないか、かように考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/43
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044・滿尾君亮
○滿尾委員 路線を定めざる乗合自動車事業というものが観念上存在するので、こう書いたというお話でございますが、そういうものは法律の明文で認めないと書けば私はよろしいと思うのであります。しかしこれは表現の問題でありますから、深く追究するほどのこともないと思います。第二号、第三号に関しまして、「一個の契約により」と書いてあるのでございますが、一個の契約ということは、相手方が必ずしも一人ということにならないかどうか。一個の契約ということは、契約当事者が一人であるということを意味しておるのであるかどうか。あるいは私がハイヤーならハイヤーを借りて、途中でほかのお客さんを私の負担で拾つて行くというような事態は、これはきわめてあり得る。あるいは数人が一個の契約でハイヤーを借りて、実際はバス類似の行為であるものがここに存在し得るのでありますが、これらのことについては、この法律はどういうふうな考えをもつてどう処置せられんとするのであるか、お聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/44
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045・中村豊
○中村(豊)政府委員 契約当事者としては一人、それと運送事業者とが契約するので、一個の契約になるわけでございますが、運送の申込者の方が数人で構成されていても、契約の当事者になる者が一人であれば一個の契約、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/45
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046・滿尾君亮
○滿尾委員 数人であつても、数人の複合体が当事者であるという観念も成り立ち得る。この議論をいたします実益というものは、つまりハイヤーの車をバス代用のように使うことは、実際問題として可能なのです。これらを取締る考えで、一体この條章ができておるかどうか。はたしてどの條章によつて、いかにこれを取締り得るものであるかを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/46
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047・中村豊
○中村(豊)政府委員 乗合と貸切とをわける根本の趣旨は、乗合はお客さんおのおのの間に何ら意見の連絡がなくて、みんな別個に一人々々がバス業者に契約する、こういう場合でございます。貸切の場合には、普通の場合は一人でありますが、数人であつても、その数人の間に意思の連絡があつて、統一した意思決定がなされて、その意思決定に基いて一人の者が運送人に申し込む、こういう場合であれば貸切になります。つまり契約の当事者の申込者側が、一人であるか数人であるかは問いませんが、その間に統一した意思決定がなされて、一個の意思がまとまるかどうかということが、貸切か乗合かの違いである、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/47
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048・滿尾君亮
○滿尾委員 一個の契約の解釈はそれでいいといたしまして、これを運用いたしまして、自分が一人でハイヤーを契約して乗つて、途中でちよつととまつてはこのお客さんもこのお客さんもといつて拾つて行く。そうして実際は乗合と同じような働きをさせることが可能であつて、また競馬場その他の場合におきましては、そのことが非常に行われておるのであります。一体道路運送法は、かかる社会現象に対しましてどういう態度をとられんとするのであるかというのが、私のお伺いの焦点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/48
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049・中村豊
○中村(豊)政府委員 その一緒になつた人が、今まで全然顔見知りでなかつたのが、そのときに話合いをして、それでは一緒になつてやろうということになれば、そこに意思の統一があつたわけであります。従つてそれは貸切でさしつかえないと思いますが、競馬場から一人で乗つて行つて途中からある人間が入つて来て、それが便乗をしてそのハイヤー業者の方と契約すれば、これは乗合になつてしまう。従つてさような場合に、それを貸切事業者がやれば、これは違法行為、そういうことをやりたいならば堂々と乗合の免許を受けてもらいたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/49
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050・滿尾君亮
○滿尾委員 それでは貸切自動車のバス類似行為は、これを取締るお考えであるということが、明らかになつたと考えてもよろしいと思います。
その次に、同條第三項でございますが、特定自動車連送事業についてでございます。この特定の場合に、あるいは自分の工場の通勤者を無賃輸送をする、あるいはかつて三越が東京駅前にサービスの自動車を出しておつた、ああいうものは、今回は事業の観念に入らないものと解釈されますが、どういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/50
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051・中村豊
○中村(豊)政府委員 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/51
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052・滿尾君亮
○滿尾委員 そういたしますと、これらの事業は、免許の手続もいらず、事実行為としてやつてよろしいことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/52
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053・中村豊
○中村(豊)政府委員 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/53
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054・滿尾君亮
○滿尾委員 その場合には、たとえば自分の工場の通勤者を運ぶとか、あるいは特定の学校の学生を運ぶとかいつたような、利用者とそのサービスを提供するものとの間に、社会的通念に基、いて妥当な関係があると考えられることは、今回の法律の御制定によつてまことにけつこうだと思いますけれども、かりに百貨店が東京駅等の連絡駅まで無賃のサービス自動車を出すというような行為は、単なる事実行為として、運輸大臣が何らこれに関与しないという建前は、私は制度としては少し行き過ぎではないかと思うのでありますが、どういう御所見でおられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/54
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055・中村豊
○中村(豊)政府委員 現在の法律では、さような場合無償であつても、これは特定事業ということで免許を受けることにしておりますが、いろいろと実施した結果を見ておりますと、それを免許基準によつて縛るということは、あまりにも観念論ではないか。事実有償であれば別でありますが、無償である場合に、そこまで免許を要すると規定することは、むしろ実際には合わなくて、そういうものは無免許にして、自由営業にしても大した実害はない。むしろそれならば、国民の権利を侵害しないように認めてやつたらいいではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/55
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056・滿尾君亮
○滿尾委員 三越の例をとつたのでありますが、この三越のような実例に対して驚くべき御寛大な御精神で、ほとほと感服いたしたのでありますけれども、私はその点は少し行政の錯覚を起しておられるのではないかと思う。そういたしますと、三越が神田の駅でも東京駅でも、あるいは上野駅でも、その資本力のあるにまかしまして、大型のりつぱなバスを出して、自分の店にいらつしやい、いらつしやいとやる行為は、どんなに運輸量をたくさん運びましても、これは無賃輸送であるから、事実行為にとどまるということになる。ところが百人も百五十人も満載して走るようなバスに対して——バス事業の物理的な事実行為はすでに出現しておる。それに対する監督が、単なる普通の車両の検査とか何とかいう程度でとどまるものであれば、私はこれは道路運送法の一つの盲点でないかと思う。なるほどそれを免許申請をさせる必要はない。それは今回の御改正の方がよろしいけれども、それの利用者とその事業の経営者との間に、常識的な関連のない、不特定多数の一般公衆を無賃輸送をするというような面につきましては、これはやはり何らかのコントロールが必要でないか。決して従来のような取扱いが必要だとは思いませんけれども、御考慮を煩わす必要があるのではないか。私先般大阪に行きましたが、大阪では競馬場、競輪場に行きますには、市営のバスが無賃で輸送をしておる。これは私は驚くべき事実を発見したのでありますが、これらは数十両の車が動いて、何万人という人間の輸送をしておる。しかしこれは事実行為ということになつて監督を免れるということは、私は実に奇怪なことだと思う。御研究を十分煩わしたい点であります。
次に第五條の問題でございますが、第五條の第一項第四号に「当該事業の経営が運輸上必要である理由」というのを、免許申請いたしますときに書かなければならぬことになつておるのでありますが、第六條の第一項第一号に行きますと、「当該事業の開始が輸送需要に対し適切なものであること。」ということがあり、第三号で需要のバランスのことを論じております。この三つのことは、私は非常につながつておるように思うのでありますけれども、一体どういうわけで、この第四号のような「当該事業の経営が運輸上必要である理由」を申請者にお書かしになるか。申請者はすでに必要があると思つて出すのでございますから、第四号と、六條の一の輸送需要に適切であるというような感じ、どうもここらがあいまい模糊として、立法のほんとうのお気持がよくわからぬのでありますが、御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/56
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057・中村豊
○中村(豊)政府委員 申請人は、自分の申請が運輸上必要であるとかたく信じていると思うのでありますが、そういう信念だけでは、その申請書を受けた行政官庁はわかりませんから、一体どういうわけで必要であるかを具体的に説明するために、そういう書類を要求するわけであります。そういう書類によつて第六條各号の免許基準に該当する者を審査するということであります。しかしながら実際には書面の上だけでは、十分に基準に適合するかいなかを判定できないことが多いでありましようから、多くの場合に、そのほかにさらに現地調査というようなことが行われるのが例ではありますが、まず第一に書面において、申請人の必要とする意図はどこにあるかということを知りたいわけであります。そのためにできた規定であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/57
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058・滿尾君亮
○滿尾委員 前條第四号と六條第一号の関係がよくわからない。もちろん申請いたします人は、そろばんが立つ、従つてその事業は確かにその面の社会に需要されているということを確信して出すのでありますから、第四号というようなものはほとんど飾りじやないか。ところが御審査になるときに、当該事業の開始が輸送需要に対し適切なものであるというこの表現でありますが、これは一体どういうことを考えておられるのか、よくわからぬのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/58
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059・中村豊
○中村(豊)政府委員 かりにそろばんに合つてもうけになることでありましても、はたしてそれが適正なものであるか、その地区において輸送需要があつて、それに対して合つているかどうかということをよく審査しなければ、輸送需要がない、あるいは輸送需要に対して適切でもないものを、ただ事業の経営が有利であるからということで、かような公益事業を免許するわけには行かないのが、この規定の置かれた理由であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/59
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060・滿尾君亮
○滿尾委員 しからば第六條の一号は、当然第三号に包含せられる、従つて第一号はいらないものである。しかしこれは表現上の問題でありますから、深く追究いたしません。
次は第八條に参ります。第八條には、業者は料金を定めて大臣の認可を受けなければならないと書いてある。ところがこの條文で察しまするに、これは個別的認可になる。先ほどの岡田委員に対する御答弁からも、それをよく察することができたのでありますが、さらにこの問題は隣の定額制の問題にもかかわつて来る。私はこの第八條の個別的認可ということについて、非常に疑念を持つている。その場合に、問題をもつと明確にするために、定額運賃とあわせてお尋ねいたしたいと思う。この定額という意味でありますが、定額とは読めば字のごとくでありますけれども、何円から何円までというのが定額であるか、あるいは百円の運賃であつても十キロから二十キロまでというようなゾーン・システムでつくつた場合には、実質は相当フラクチユエートする内容を持つているのでありますけれども、形は定額運賃になるやいなや。つまり金額のきめ方におきまして、今までの運賃は最高運賃だから、五百円以内ならよろしい。今度の定額ということは、二百円なら二百円という具体的な数字をぴつしやり押えるものであるかどうか、百円から二百円までというきめ方が定額の観念の中に入るか、かりに金額が二百円ときめてあつてもへその輸送距離なり何なりにつきまして、あるいはトン数につきまして、ゾーンを認めておれば相当幅があるが、かような幅のある定額制をお考えになつているのか、非常にコンクリートなぴしやつとした定額をお考えになつているか、この定額の形式いかんということをお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/60
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061・中村豊
○中村(豊)政府委員 定額はお言葉のようなびしやつとしたものをいうのであります。従いまして何円から何円までというのは定額ではなくて、何円というそのものであります。
第二の、たとえば五十キロから百キロまでの間幾らというふうなゾーンの点は、定額制に抵触しない定額制であると思います。ということは五十キロから百キロまでは、そのどこの距離をとりましても、それが一々何円という定額に該当するという意味で、あとの方の問題は定額制に合致するわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/61
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062・滿尾君亮
○滿尾委員 貨幣価値のノミナルな面だけをぴしやつときめて、ゾーンの方は相当幅があるということになりますと、これは両方の積で実際の価値がきまるのでありますから、非常にしり抜けとんぼの定額だと思います。しかしそれは意見でありますからよろしいといたしまして、なぜこの定額をおきめになつたか。従来の最高運賃制では、どこに弊害があつて、今回の定額という新しいシステムにお切りかえになりましたか、その意味をひとつお尋ねいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/62
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063・中村豊
○中村(豊)政府委員 定額制の立法の趣旨は、日本の現在の事情では、あるいは非常に奇異に感じられるかもしれませんけれども、しかし業界の事情をいろいろ考えてみますと、二つの点からその必要な理由を考えられるわけであります。「第一は、自動車事業者相互間の関係で、甲の事業者はある額、乙の事業者はある額というふうに、おのおのサービスを競うあまりに不当な値引をする、認可を受けた運賃があるにもかかわらず、あるいは現行においては統制額があるにもかかわらず、お互いに運賃でもつて不当な競争をするということでは、これは事業の健全な発達にもなりませんし、あるいは荷主に非常な損害を及ぼすということになりますので、事業者相互の公正な競争のために定額制が必要であると思います。もちろんたびたび申しましたように、事業者相互おのおのの定額の額そのものは、事業者によつて内容が異なることはあり得るわけであります。
第二の理由といたしましては、対荷主の関係でありまして、甲なる自動車運送事業者が、Aなる荷主には一定の認可を受けた額によつて運賃をとり、Bなる荷主に対してはそれよりも値引をした運賃をとるということは、荷主に対する不当なる差別待遇になつて、最も公正なるべき事業運営の点から、これは禁止すべきことであろうと思います。
さような二つの点から見まして、この点は、この自動車事業界を明朗にして安定したものにするために、ぜひとも必要な制度と思うのでありまして、自動車事業のような事業において、サービスを競うあまり、お互いに運賃を下げてダンピングに出るということは、まつたく事業の経営の根底を動揺させてしまうことでありまして、決して事業の確立をはか、るゆえんではない。またそれが荷主にも不測の損害を起すことになると思うために、この制度をとつたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/63
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064・滿尾君亮
○滿尾委員 定額のお気持は一応わかるのであります。しかしながらその定額の御決定が、個別的認可の制度をとつているということについては、私は非常に奇怪な感じがする。一体この世の中の経済現象において、同一経済社会において、交通の関係なり通信の技術的発達に基いて、一定の範囲内の物の価値は、必ず私は同一に帰すべきものだと思います。ところがこのたびの法律の御趣旨は、Aの業者には、非常に上等の車を使つておつてサービスがよいからお前は百円でよい、Bの業者には、車が古くてがたがたでサービスが悪いから五十円でよいというような、定額運賃を御設定になるようでありますが、よく政府当局が口にせられる運送事業の公共性ということは、今私の申し上げましたことに関連いたしまして、一体いかなることを内容としてお考えになつておるか、その点をひとつ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/64
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065・中村豊
○中村(豊)政府委員 定額制が、ある同じ地域では同額でなければおかしいと言われるのでありますけれども、同じ地域では経済情勢はもちろん同様でありましよう。たとえば賃金ベースであるとか、一般物価水準とかいうものは同じでしようから、一応は原価も同様のものであるはずでありますけれども、そこはその事業者おのおのの得意、不得意、あるいは長所、欠陷がいろいろあるものでありますから、ある事業者は車両費に非常に金をかける、ある事業者は整備費に非常に金をかける、あるいは燃料を非常に節約するとか、いろいろと長所を発揮すれば、これは理の当然として原価が違つて来るわけであります。しかしながら原価が高くて運賃が高いものが認められても、必ずしも競争に負けるというわけではありませんで、おのおの長所を発揮すれば、運賃がかりに差があつても、お客さんあるいは荷主の好むところに従つて輸送を行つて行くことは、十分想像できるわけであります。一例を申し上げれば、現にさような例はあるのでございまして、東京箱根間あるいは熱海地域に乗合バスが動いておりまして、A、B、Cと三つばかりあるわけでございますが、これなどは旅客運賃が違つております。ある会社のごときは、ほかよりも五割以上高いのでございますけれども、非常にりつぱな優秀車を使つている。そのために特殊なお客が特にそれを選択しているというようなものもあるわけでございますが、普通の場合に、特に運賃の差があるために無理な競争が起るということがあつてはいけませんので、その場合を予想して、一応第四号でもつて不当な競争を起す場合には調整をするということになつているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/65
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066・滿尾君亮
○滿尾委員 問題をもう少し明確にするために、われわれは自動車運送事業と申しましても、ちよつとわけて考えなければならぬと思います。今御説明になりました箱根行のバスのサービス等におきましては、乗る利用者が人間でございますから、そのサービスのよい悪いというのは、経済的支出がにらみ合つて、非常によく了解される立場にあります。非常な高級車を使つて、あるいはスピードが早い急行料金に相当するような割増し運賃を設定することも可能だと思います。しかし、私の主として申し上げたいと思つておりますことは、同一経済社会における単一価格という原則は、五感を持つている人間ではない物の輸送の場合においてどうかということである。非常に新しい車で送つてもらおうと、三十年のフオードで送りましようとも、別にその物を毀損さえしなければ大して差はない。かような輸送のサービスを求められている部面においてものを考えて見ますると、この認可運賃は非常に奇々怪々なものである。こういうふうに個別的認可制度をとられて、たといそれが定額であつても個別的認可だということになりますれば、国がこの貨物運送事業を免許制にした意味がないように私は思います。これを利用せんとする一般公衆に対して、機会均等のサービスを提供しておるのである、安心してどの業者に頼んでも、一定地域内においては大体同じ取扱いを受けるのだ、そのことを国は保証しておるのだという点に、これらの運送事業の公共性の重要な部分を発見するのでありますが、政府委員は貨物運送事業における公共性をそこにお考えになりませんかどうか、伺つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/66
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067・中村豊
○中村(豊)政府委員 もちろん旅客と違いまして貨物の場合には、貨物そのものには何ら意思はありませんから、貨物そのものはいろいろと運送業者を選択することはできませんけれども、貨物のうしろには荷主がありまして、荷主が意思を持つておりますから、みずから好む運送業者を選ぶわけでございますので、貨物だから選択する能力がないということはないと思います。ただその場合に、公共事業であり、公共性を強調するから、荷主に対して同等のサービスを提供するのが本質でないか、こういう御質問でございますが、公共性というのは、貴重な旅客、貨物を運んで行く事業でありますので、きわめて重要である。しかもそれが社会、経済、国民生活の重要な根本の基盤を形成しておるから、この事業は公共性がきわめて強い事業である。従いまして運送を引受けなければいけないという義務がありますとか、申し込まれた順序に従つて運送をしなければいけない義務があるとか、あるいは認可を受せた運賃、料金、約款を、営業所その他の見やすい場所に掲示して、一般に周知させてやらなければならぬとか、事業計画に定められた通りの運行をしなければいけないとか、公共の福祉に反する行為をした場合には禁止されるとか、事業改善の命令を出されるとか、いろいろと普通の事業には全然ないところの重い義務を負つているわけでございます。従いましてそういうふうな重い義務を負わされて、その範囲でその事業者の長所々々に応じて運賃額そのものがかわることは、それだけでは決して公共性に反することではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/67
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068・滿尾君亮
○滿尾委員 中村政府委員の申されますことは、貨物運送事業が重い公共性を持つている結果として現われたことをおつしやつていると思う。私から申せば、公共性があるからこそ引受けの順序をきめたのだ。公共性があればこそいろいろ監督の規定があるのであります。私がまず言いたいことは、その公共性とは何であるか、いかなる作用、いかなるフアンクシヨンをさしてあなたは、この貨物運送事業に公共性があると考えておられるかということを聞いておる。もし国家社会をささえるわれわれの社会生活における重要な仕事だというならば、たとえば製鉄事業というものがあるが、近代の産業政策は鉄鋼の生産なくしては成り立たぬ。しかし鉄鋼生産事業は公共性があるかどうかということになると、トラック屋さんと製鉄所とを比べてみたときに、製鉄所が同じような公共性があるとは私は思わない。必要があれば外国からどんどん買つて来たつてよい。その製品は社会生活にはなくてはならぬものであるが、その鉄をつくつている事業そのものに公共性があるとは毛頭思われぬ。従つて貨物運送事業のいかなる性質をあなたは公共性の根拠としておられるか、私は概念の内容を伺つている。従つて公共性があるから役所はこういう仕事を課しておるのだ、こいうう仕事を監督しておるのだということはけつこうであつて、その実態をどういうふうにお考えになつておるか、それによつてこの議論が非常にかわつて来るのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/68
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069・中村豊
○中村(豊)政府委員 公共性の根本は、かような運送事業は不特定多数の旅客または荷主に対して、運送するというサービスを提供する。相手は公共一般なのであります。それに対して貴重なる人命あるいは財宝を運ぶ。ここに他の製鉄事業などとは比較にならないほどの重要性があると思います。製鉄事業が公共性があるかどうかは、これは別問題でありまするが、自動車事業は対象が一般公衆であるという点に、公共性の根本があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/69
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070・滿尾君亮
○滿尾委員 そういたしますと、中村さんのお考えになつておりますことと私の考えております公共性とは、あまり開きがないのでありますけれども、この運送事業というものは、不特定多数の一般公衆に対して利用せられる便宜を提供しておるのである。そこには私も公共性を発見しておる。従つて公衆がこれを利用するに機会均等でなくちやならぬという点を私は考える。従つてよく事情を知らない人が、Aのトラック屋さんに頼んだら千円とられた、Bのトラック屋さんに頼んだら八百円でも行くところだつたというようなことは、私は非常に奇怪だと思う。どうしても同一経済社会における一つのサービスの提供については、一定の基準がなければならぬ。単一でなければならぬ。従つて個別的認可ということは、業者側の事業採算を土台にしてものを考えておる。たとえば先ほどお話のような豪華なるバスなんかは特別でありますから、私はこれには差がついてもいいと思う。しかし物の輸送ということは、その物はなるほど荷主はありますが、とにかく生卵を送つてこわれるような取扱いをしてもらつては困るけれども卵がこわれないでまつすぐ行く分には、何も五十年のニュー・カーで運ぼうと、三十年のおんボロのカーで運ぼうと、一向さしつかえないし、またその営業所が都心の非常に目抜きの地代の高いところにあつて、原価が非常に高くついていようと、都会のすみつこにあろうと一向かまわないことである。従つて個別的認可ということは間違つておる。同一経済社会においては、その経済社会のとり方が東京一円を一区域と見るか、品川一円を一区域と見るかは、相当議論の余地がありますが、いずれにしても、一つの経済社会においてその中に生活している人は、荷物を送るのに公共性のあるトラック屋に頼んだ場合に、どこに持つて行つても同じ運賃で安心して頼めるというところに、私はこの事業の公共性があると思う。その個別的認可で業者の採算を基礎にして、能率的経営における適正な競争をする。お前はこういう目抜きの一坪何十万円とするところになぜ車庫をつくつたかと、目を四角にしてしかるようなわけに行かない。しかし何十万円の場所に車庫をつくつた業者は、能率的経営をやつても原価は非常に高くなる。従つてかような考えで行けば、非常に高価な場所に営業所を設け、車庫を設けた業者の運賃は、当然非常に高くなるだろう、こういうことは私は非常におかしいと思う。もちろんサービスによりまして、取扱いが非常に丁寧であるとか、あるいは迅速であるとか、その他事でも美しい、いい車を使つておるということもフアクターでありますが、そのサービスは国民の背後に隠れておるいわゆる自由競争の、値段は同じでもあそこの店は早い、あそこの店は取扱いが丁寧だ、いい車を使つておるということで、お客の選択がここに生まれる。私は個別的認可は間違つておると思う。少くとも一つの経済社会における貨物運賃というものは、同一でなくちやならぬ。それがいわゆる公共性を確保するゆえんである。その背後で各個の業者は自分の特徴をそれぞれ生かしまして、それに対するサービス競争をすべきものであると考えるのでございますが、政府委員の御所見はいかがでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/70
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071・中村豊
○中村(豊)政府委員 先ほど申し上げたような趣旨で公共性を御了承願つたとしますれば、旅客、荷主の一般公衆が運送を申込んだのに対して、ひとしく均等な機会を与えることはぜひ必要になります。そのためにこそ運送引受け義務が法律で厳重にきめられておりまして、運送強制はされておるのであります。ただ問題は、運送の引受け義務を課せられた場合に、いかなる條件で運ぶかということは、その事業者それぞれの特色によつてかわつて来るのではなかろうか、こういうことを申し上げておるわけでありまして、運送強制はもちろんとされておるわけであります。そして荷主がおのおのの業者の運賃が違うことではわからないじやないかと申されますけれども、運賃、料金または運送約款は、店頭に掲示すべき義務を課しておりまして、周知法を講じておるわけであります。そこで同一地帯同一運賃という御説は、ある一定の運賃をきめた場合に、当然数個の事業者の中には、それよりも安い運賃でできる業者も必ずあります。またそれよりも高い運賃でなければどうしてもできない業者も必ずあるわけであります。それをただちに同一運賃に無理に持つて行こうというのが実際に合わないのであつて、高い運賃でしかできないものに一定の運賃を強制することは、事業改善の意欲をなくさせますし、あるいは安い運賃でできるものに一定のそれよりも高い運賃でやらすことは、サービスに対する意欲をなくすことになるのでありますから、経済の原則から言えば、当然業者おのおのによつて適正な原価をまかない、適正な利潤を含むものが出ることは、理の当然であろうと思うのであります。ただ御説のような点はございますから、自然そこにお互いが高いものは安くするように努力しましようし、安いものは事業の設備をよくすることによつて、一定の運賃に近づくことを試みるでありましようから、自然の傾向としては、これは同一の運賃にだんだんと接近して来る、こういうことは申されるでありましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/71
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072・滿尾君亮
○滿尾委員 私はどうしても納得しない。それは政府委員の御説明によれば、貨物事業のおもしろみというものは一つもない。私の考えで行けば、一つの経済社会における貨物の運賃は一つである。従つて数個の業者がおつて、それぞれ経営上の特色を持つておる。運賃はどうしてきめるかというと、平均経営というものを一応考えるよりほかはない。従つてその平均経営から見て、レベルの下の業者もおれば、上の業者もおる。レベルの下の業者は、どうしても収支相償うように勉強しなければならぬし、また安いコストで楽々とやつて行ける人は、自分がそれだけ研究したのだからうんともうかる。そのもうかる上にますます勉強するようになつておる。これこそほんとうの経済上の実情に即しておつて、お役人のお考えになつておりますように、第八條の一項のごとくに行けば、勉強したものも勉強しなかつたものも、六分か八分か知りませんが、一定の適正利潤を常に保証されるということは、結局企業意欲を減退させる、この意味におきまして非常にこれはおもしろくないと思う。またこの八條このままでやるということは、あたかもトラック事業が自由経営とまつたくかわらない。免許事業にして国がある程度の保護、監督をいたします以上は、どうしてもこれは同一運賃でなければいかぬ。そして背後のサービスにおいておのおのが競争すべきである、こう考えるのでありますが、この事業の公共性とこの八條と、私は真正面から矛盾しておるという見解を持つておるのでありますが、議論になりますからこのくらいにいたします。
次に第九條でございますが、運送業者は収受した運賃の割もどしをしてはならないと書いてあるのでありますが、これは公平の原則だろうと思います。この場合に、一体営業政策の割引というものを禁止しておるかどうかお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/72
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073・中村豊
○中村(豊)政府委員 営業政策上割引をしようとする場合に、それが妥当なものであつて認可を受ければ、認可を受けたその割引額がすなわち定額になるのでありまして、この九條に違反するものではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/73
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074・滿尾君亮
○滿尾委員 割引をしようと思うときには、あら「かじめ申請せよということがどこかに書いてあるのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/74
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075・中村豊
○中村(豊)政府委員 九條で割引、割もどしは禁止されておりまして、八條の三項で定額運賃であることをうたわれておりますから、定額運賃そのものとして認可を受けることになる、八條と九條の読合せでできるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/75
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076・滿尾君亮
○滿尾委員 それは非常にむずかしい條文の解釋であつて、普通の人間にはこれはわからぬのであります。トラック事業といえどもこれは事業でありますから、運賃に関してもある程度の営業政策の幅を与えなければならぬと思う。たとえばある地方において甘藍なら甘藍が非常に出る。それはわずか一月の間の季節的の貨物である。そういうような貨物につきまして、運賃政策上の営業政策がここに認められる余地を法律が明らかにしておらぬということは、これは非常な欠陷だと考えますが、いかがで、ございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/76
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077・中村豊
○中村(豊)政府委員 政府委員の御質問は、割引というものをある程度幅を認める。たとえば定額幾らに対して一割以内ならば適宜というお話であろうと思いますが、それは定額という観念をわれわれは適切なものだと思いますので、それとは抵触するというわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/77
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078・滿尾君亮
○滿尾委員 割引率等のことは行政官庁にまかせておけばよいのであつて、法律の建前としては割引をすることができる。しかもその割引は、Aの特定の荷主に対して割引するのはいかぬ、これは法律の精神に反する、しかしその季節、その貨物に関して、何人にも同様の割引運賃をもつて引受けるならば一向さしつかえない、これはあらかじめ道監の承認が何かを得る程度、あるいは届出でもよろしい、簡単な手続でもつて、業者が営利上適正に活動し得る、公平の原則を破らない程度において割引ということをやり得るように明示せられることが必要であろう。八條と九條を読み合せればおのずからわかるではないかということは、これは実にむずかしい御議論であつて、困難ではないかと思う。特に割引、割もどしを禁止しておるという明文があるがゆえに私はこのことを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/78
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079・中村豊
○中村(豊)政府委員 必要な公平の原則を破らない範囲において、割引運賃が必要なことは御説の通りでありまして、それを認可を受けてしまえばそれがすなわち定額になつて、決して法律違反ではございません。また割引だけではありませんので、割増ということが必要な場合には、それも認可を受ければそれでいいわけであります。それが定額になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/79
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080・滿尾君亮
○滿尾委員 第十條の現払いにつきましては、同僚委員からいろいろお尋ねがありましたから、省略いたしたいと思いますが、このたびの法律の改正の一つの山はこの点にあると思う。これは最も重要な事項であります。ただ現払いというのに、六十日先払いの手形でもよろしいというような御答弁があつたように承つたのでありますが、これでは非常に不公平である。片方では現金で払え、片方は六十日後の支払いでいいぞ、こそいうことになる。支払い手段は必ずしも現金たるを要せずと同じである。そうすると九十日の手形もある、三箇月後に払う。とにかくその手形を渡しさえすればよろしいということになれば、第十條はほとんど骨抜きになつてしまう、それは公平の原則にもとる。第十一條におきまして、同僚委員から御注意がありましたように、たいへんあいまい模糊としたことで、利用者に便宜なように逃げ道がつくつてあります。第二項に特定な荷主に不当な差別待遇をするものではないと書いてありますが、かような後払いを認めることは、金利の負担において非常に不公平であります。この点は一体どういうようにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/80
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081・中村豊
○中村(豊)政府委員 手形でもよいというのは、現金だけを要求することは、現在の経済取引ではあまりに実情に沿いませんので、そうしたわけでございますが、さような長期の手形を例にとつて、極端な場合を特に誇張していただきますと、非常に現金の場合と差があるように見えるわけでありますが、もちろん現金払いに準ずるようなものを考えるわけでありますから、信用のある履行確実な、また銀行に持つて行けばすぐ割引できるような手形が一番必要なのでありまして、それがほんとうの手形であろうと思うのでありまして、不渡り手形のような、手形といえども実際の支払いの意味をなさな いようなものを考えておるわけではないのでございます。その辺のところは、実施の運用に為たつて十分注意いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/81
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082・滿尾君亮
○滿尾委員 この十條の規定は、議論をしますといろいろな角度からいろいろな議論が可能になる。従つて私は今回の運輸省の御精神は了といたしまして、これを深く掘り下げないことにいたしたいと思つておるのでありますが、これだけの大改正をせられるにつきましては、前後左右の事情を振り返つてみる必要がある。たとえば同じ運輸大臣の監督下にあります国鉄なり何なりにおきまする後払い制度とか、着払いの制度とか、いろいろな運賃の支払いに関する制度があります。それらの制度と大体歩調を一にすることを考えなければいかぬ。たまたま自動車の運送の事業をとつて考えれば、バスは現金だし、ハイヤー、タクシーは現金だし、トラック業者だけは非常に気の毒な事情だ、これはまことに同情に値するのですが、結局運輸省所管の各輸送事業における運賃支払い方法を、漸次この方向に統一して行く御決心がなければ、卒然として自動車運送事業だけをお出しになるのは、私は非常におかしいと思う。だから他の事業については一体どういうような御考慮をお払いになりつつあるか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/82
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083・中村豊
○中村(豊)政府委員 他の自動車運送事業は、大部分現払いであることはお話の通りでございます。また鉄道も、旅客はもちろん現払いであります。貨物においても原則として現払い、ただ通運事業者その他特殊のものが、承認を受けた場合に後払いが認められておるだけで、荷主直接の場合には現払いであります。通運事業者が後払いを認められるのは、われわれがここでこの法律が十一條で猶予を認めますような反覆的に行う場合に大体該当すると思います。従つて通運、鉄道貨物運賃とも同じようなことになるわけであります。船においても大体同様の事情でございます。従つて運輸省所管の各事業に比べて、これが特別きわだつてそうよくしてあるということは決してございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/83
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084・滿尾君亮
○滿尾委員 私の少し古い知識でございますが、代金引きかえという制度があつた、また通運事業等におきましても、着払いで代金取立ての委託を受けておる場合が非常に多い。トラック事業におきましても同じような制度が存在する、そういうものと現払いとは、どういうような関連でお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/84
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085・中村豊
○中村(豊)政府委員 代金引きかえとか、通運事業の着払いというものは、隔地取引でございますから、発地において着地到着後の運賃諸掛をすぐ取立てるということは、実際に合わないと思います。そこに別の国鉄という運送機関が入るわけ寄ございます。その点が隔地取引である通運事業とこのトラツク事業——トラック事業は自分自身が最後まで自分自身の手で持つて行くのでありますから、その点に事業の性質として多少の違いがあるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/85
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086・滿尾君亮
○滿尾委員 第十二條に入りまして、運送約款の規定があります。私はやはりこれもこの事業の公共性にかんがみて、たとえば国鉄の附合契約の範疇に入るべきものではないかと思う。従つて個別的に認可ということはやはりおかしい。特別の事情のあるときに、加重條件をいろいろおつけになることはかまわぬけれども、ごくノーマルな運送契約の一つの定型というものを、当然運輸省はお考えになつて、それによつて圧倒的大部分の運送契約というものは行われなければならない、こう思うのであります。どうして個別的認可にせられたか。また法律では個別的認可にしておるけれども、実際として見れば約款のようなものをつくつて、付随契約という体裁まで事実上つくられるお考えであるかどうかをお伺いしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/86
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087・中村豊
○中村(豊)政府委員 運送約款を認可することは実際に合わないと申されますけれども、やはり事業者によつておのおの最初に申しましたように特色があるのでありますから、多少の相違が出て来ることは、これは想像できると思う。それを無理に一つの約款に押し込めるということは、かえつて実際に合わないのではないか。ただ運輸大臣が認可する場合に、あまりに同一地区に運送約款がまつたく違つて、いろいろあるということは困るような場合には、認可の際におのずから修正なり條件というようなことをつけて、修正認可ということも行われるだろうと思います。それを事業者から出てくる約款の認可申請を受けて、運輸大臣が見るわけでございまして、運輸大臣が頭から、このような約款であるべきだと上から押しつけるということは、とるべき方法ではないと思います。なお事業者が、相談の上で一つの運送約款をつくつて、それを認可申請するということは、独占禁止法その他の関係などもありますので、軽々にはできないことだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/87
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088・坪内八郎
○坪内委員 道路運送審議会の点につきまして、実際の問題についてお尋ねいたしたいと思うのであります。道路運送審議会の運営というものにつきまして、またこれが事務的な、審議会の運営に当るところの費用、予算というものは、陸運局で持つように相なつておるようであります。これは大まかでもけつこうでありますが、こういつた関係の審議会を開く費用というか、そういうものの予算は大体において総額どのくらいになつておりましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/88
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089・牛島辰彌
○牛島政府委員 二十六年度の道路運送審議会関係の予算は、総額にいたしまして千五百七十八万円余になつております。これは昨年度に比較いたしますと、七百六十八万円程度減ぜられております。この減額のおもなるものは、委員手当でございます。二十五年度予算におきましては、道路運送審議会の委員は、すべて常勤の職員である公務員でありましたが、現在は道路運送審議会の委員は非常勤の公務員になつております。従いまして現在道路運送審議会委員に支給いたします給与は、委員の手当ということになりますので、その関係で約七百万円程度減額を受けたというのが、おもな減額であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/89
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090・坪内八郎
○坪内委員 質問を詳しくいたしたいのでありますが、相当時間も経過いたしておりますので、後日に譲ることにいたしまして、簡単に質問いたしたいと思います。そこでわれわれ自由党の考え方からいたしましても、機構が複雑になり、またさらにそれに伴うていろいろな人件費がふえるということは、われわれは反対でありますが、この運送審議会というものは陸運局の諮問機関で、申すまでもなく、その事業の免許あるいは停止あるいは免許の取消あるいは運賃関係というようなことの、重要な審議をいたすのでありますから、これが運営にあたりましては、こういつた陸運局の庶務に委嘱して審議会を開くということではなしにして、運輸審議会が独自の立場で事務局などを持つて、そうして自主的に運営をするということが理想ではないかというようなことを、われわれは考えておるのでありますが、その点についての局長の御所見はどうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/90
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091・牛島辰彌
○牛島政府委員 道路運送審議会は御説のように陸運局長の諮問機関でございます。またこの審議会は陸運局長に付属しでおるものございますけれども、そこにおいて実際にその権限に属されておる事項の決定につきましては、十分に自主性を考えなければいけないと思つております。従いまして許しますれば、ここに相当の事務局を置き、完全に自主的な方向に進むのも一つの方法から存じております。しかしながら一方におきましては実際の法律職務をやり、対外的に責任を持ちますものは陸運局長であり、運輸大臣ということになりますので、そこに行政処分をなすものとまた道路運送審議会というものとの間の調整ということも、よく慎重に考えなければならぬと思います。その意味からいたしまして、現状におきましては道路運送審議会の委員の方々は非常勤の職員ともなつておりまして、その事務局を設定するようには考えておらないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/91
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092・坪内八郎
○坪内委員 われわれは、この道路運送審議会が文字通り自主的に完全な運営をやろうということになりますと、事務局でも設置して、陸運局にその庶務を置き、あるいは陸運局においてこれを処理するような行き方でない方がいいのではないかということも考えております。もちろん目下のところそういつた予算関係あるいは人件費その他の費用によつて、意のごとくならないということになりますと、道路運送審議会というものがほんとうに文字通り自主的に運営できるのであろうかないのであろうかということについて、非常に疑問があるのであります。そこでこの法律がいよいよ国会を通過いたしまして施行されることになりますと、これは厖大な画期的な法の改正でありますので、各業者には何らかの方法でこれを講習して啓蒙するか、あるいは指導するというようなことになるのであるかどうか、その点をまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/92
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093・牛島辰彌
○牛島政府委員 この法案につきましては、各業界の代表者の方々とも相談いたしまして立案した経過もございますので、大体においてすでに御存じの点が多かろうと思います。また御説のように、この法案は全部合せますと、非常に多数の條項からなつておりますし、新たにつけ加えた條項もございますので、あらゆる機関を使い、あるいは実際に現地にも出向きまして、各業界の方々によく徹底させたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/93
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094・坪内八郎
○坪内委員 あとで大臣に玉置委員から質問があるそうでございますので、後日に譲りまして、簡単に質問いたしたいと思います。この法案の指導啓蒙ということについては、あらゆる機関を通じてこれを施行して、万全を期するということでございますが、現在道路運送審議会におきましても、あるいは陸運局におきましても、その他の官庁でもそうでございますが、そういつた啓蒙費というか、出張旅費というものは、予算が非常に少いというところに、たいへん大きな問題を惹起している点があることは御承知の通りであります。私の長崎県におきましては、長崎県陸運事務所が、車体の検査あるいはこういつた関係業業者に対する指導講習といつた面について、費用が足りないということで、業者にその費用を分担させたりして、検察庁によつて一網打尽に検挙されたということも、御承知であろうと思うのであります。そういうことになりますると、この法律を施行いたしまして、陸運局あるいは関係当局の者が、業者に対してそれぞれの指導啓蒙あるいは育成をはかるということになりますと、さしあたりそういつた予算面に最も大きな障害を来すのではないかということを、私は憂慮いたすのであります。従つて将来この法律を施行するにあたりまして、あるいは過去においてそういつた例も他府県にもあるというようなことを私は漏れ聞いております。陸運局は出張旅費が十分ないために、まかされた出張費の範囲内で、いろいろと指導することができない。従つてそれを業者に負担させるというようなことも聞いておるわけであります。また私の長崎県においては、全国一の離島があるのでございまして、役人がそれぞれのところに出まわつてやることは、実際において困難な点もあるのであります。そういうことを感じますから、その点よほど慎重に運んで行かなければいけないということを私は考えておるわけでありますが、現在の陸運局のそういつた予算面で、これが十分やれる見通しがあるかどうか。あるいは将来そういつた収賄事件と申しましようか、職事件と申しましようか、そういう事件もあるやさきでございますから、そういう点について御所見を承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/94
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095・牛島辰彌
○牛島政府委員 長崎県のことを申されまして、まことに恐縮に存じております。事件の内容につきましては、私どももよく存じております。ただいま御指摘になりました点は、主として車両検査につきまして、検査場の不備、あるいはまた事業者の要望等からいたしまして、実際に車両検査をいたします場合に、各地に出張してこれを行つておるという実情から起つている問題が多かろうと思つております。この車両検査につきましては、私ども本年度において旅費を相当増額してもらうことになつたわけであります。従いまして車両検査について従前のごとくいろいろの非難を受けることは、少くなつて参るだろうと考えております。ただ実際問題としまして、一般の旅費については極力節約をするという建前から予算が組まれております関係上、本年度の予算におきましては、一般の旅費は相当の削減を受けております。
ただいま私がこの法案の施行につきまして、各地に出向いて法案の趣旨徹定をはかると申しましたのは、各地に事業者がお集まりになれば、本省から実際に出向いて法案の説明に当りたいということでございます。
なお本年度の予算につきましては、先ほども御説明申し上げましたが、この法案を実施するにつきましては、極力現在人員をもつてこれに充当して参りたいと思つております。ただ自動車の両数の増加に伴いまする車両検査事務というものは、数学的にふえて参るものでございまして、こういう点についての人員の増加は、本年度も若干いたしておりますが、明年度においても当然必要なことであろうと思いますし、また御審議願つておりまする抵当法案のごとき、新しい制度が実施されることになりますれば——これは明年からでございまするけれども、これらの人員の増加につきましては、来年度予算、あるいはもしも提出することになりますならば補正予算等におきまして、十分に努力して充実をはかりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/95
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096・坪内八郎
○坪内委員 まだいろいろ質問いたしたい点がありまするけれども、時間の都合上これを保留いたしまして、玉置委員に譲りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/96
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097・玉置信一
○玉置(信)委員 私はこの法案についているく大臣にお伺いしたいこ糸ありますが、滿尾委員が相当総括的な質問をされるということでありますので、私も保留いたしまして、この機会に緊急質問の形式におきまして、二、三分の時間を拝借しまして大臣にお伺いしたいと思います。
それは御承知のごとく、敗戦後の日本における企業として、世界注視の的でありました民間航空が、今回許可されたということを承つておるのでありますが、この民間航空の航空路の問題につきまして、かつて大臣に御質問をし、御要望を申し上げておいたことがあるのであります。聞くところによりますと、この民間航空会社の現段階における運航状態は、北海道を除いておるやに漏れ承つておるのでありますが、かかる重要な、しかも大きな公共性を持つておる民間航空におきまして、特に北海道のごとき特殊事情の地帯は、国際情勢等から考えまして、すべて重点的に考えなければならぬときにおきまして、北海道をあとまわしにされておるということは、もしそれが事実とするならば、はなはだ遺憾と思うのでありますが、大臣におかれましては、この認可の経緯等につきまして、この際お伺いできれば最も仕合せとするところでありますと同時に、もしさようなことであれば、北海道も同時運航の開始されるよう、私は特に北海道道民四百三十万の輿論のあるところをくみとりまして、この機会に大臣に御要請申し上げる次第であります。
一応御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/97
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098・山崎猛
○山崎国務大臣 お答え申し上げます。北海道四百三十万道民の熱意ある御要望ごもつともと考えます。結論から申し上げると、北海道に対しましては、現在は予算がないのでありますけれども、追加予算の形式できわめて早く実現するように、その下話が進行中でありますから、そういうふうに御了承願いたいのであります。それで決して北海道は——東京以南だけであつて、以北は無期限あとまわしというような趣旨ではございませんで、北海道を必ず九州方面と同じように取扱つて行くという方針にはかわりはないということをお考え置きを願いたいのであります。その上に追加予算のような措置によつて、早急にこれを実現するように今手配中でありますから、この点も御了承願つておきます。もちろんこれは日本航空株式会社ができ上り、そうして国際的の向う側の会社との話合いもできて、一まとめになり、両者の間に事業運営の準備ができ、初めて運航するわけではありますけれども、政府としましては、その場合に北海道を閑却せず、同じような扱い方で行けるという方針にかわりなく進めて行くということを御了解を願つておきます。北海道はそうでありますけれども、青森、仙台等はまだその運びに参りません。この点もあわせてお考え頂きを願いたいと思います。それらも予算的の措置ができれば、おつてその線に沿うて同じような扱いで進むということにお考えを願いたいと思います。数日前の新聞に、東京以南の東京、大阪、福岡とかいうようなところだけ出て、北海道方面は一切なかつたようであります。御心配になることはごもつともと考えますが、そういう状態であります。この点御了承願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/98
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099・滿尾君亮
○滿尾委員 道路運送法の問題につきまして、個々の條文につきましては政府委員より十分お話を伺いましたが、私はこの法律の第一條に掲げました総括的な立場におきまして、大臣の御所信を伺いたい。
本日は大体五つのことをお尋ね申し上げたいという考えでございます。第一は、この道路運送法を運用せられますにあたつての、大臣の御心境を伺いたい。第二は、第一條のいわゆる公正なる競争ということに関連してお尋ねを申し上げたい。第三は、同條のいわゆる運送秩序ということについてお尋ねいたしたい。第四は、道路運送の総合的な発達という見地についてお尋ね申し上げたい。第五に、道路運送審議会につきましてお尋ね申し上げたい。こういうつもりでございますが、時間が許しませなければ、残りました分を保留いたしまして、できます限り御答弁を願いたいと思います。
今回の道路運送法の改正でありますが、実は現行法を施行せられましてから二年余り、その実績にかんがみまして、御提案になりました法律は幾多改善の跡が見られて、私どももその限りにおきましては非常に満足に感ずる次第であります。しかしながら終戦後今日までの運輸行政の実際のあり方というものを反省してみますると、私はここに幾多の問題があり、それがゆえにわざわざ大臣にお出ましを願つて、この法律の改正ができました後におきま更る大臣の御心境を伺いたいわけでございます。
〔大沢委員長代理退席、坪内委員長代理着席〕
実は法律を見ますのに、私は三つの観点から考えております。一つは利用者の立場から、一つは関係業者の立場から、一つはこの法律の運用に直接関与いたしまする運輸大臣の部下である行政機関の立場からの考え方、かように翻つて見たいと思うのであります。道路運送法のほんとうのねらいは私が申すまでもなく、国民一般利用者の立場が最優位を占めるものだと思うのであります。しかしながらこの法律を実際に運営して参りますうちには、ある面におきましては、利用者の利害と業者の利害あるいは行政機関の立場というものが、いろいろに錯雑いたしまして、常に必ずしも利用者最優位の原則が、今日まで貫かれて来なかつたように思うのであります。この法律が陸運に関する各種の事業の適正な発達をこいねがつておる。まことにこれらの事業は、この法律によつて免許事業とされて、国家の非常な手厚い保護のもとに、しかし半面におきましてはまた幾多の義務も負わされておるわけであります。何ゆえに国がこれだけの保護を加えるのであるかということを考えてみましたときに、結局終局の目標は、国民一般の福利の増進にある。ところが長年の運輸省の行政のあり方を考えてみますると、いつの間にか直接業者に関連したる面に、非常に多くの耳目を奪われてしまつた、こういうきらいをしみじみ感ぜざるを得ない。われわれは国民の利益を確保するためには、関係業者を非常に丈夫なものにし、信用の高いものにし、これをりつぱに育成して行かなければならない。しかしながらいつの間にか業者がその特権に隠れまして、あるいは不当なるインフルエンスを行政機関の末端にまで及ぼしたというような事例がないでもない。ちようど神様にもできるのに、神殿を拝むのが建前なのに、いつの間にか神主を一生懸命拝んで、拝殿の方にはしりを向けておる、こういうようなきらいさえも私は出て来たように思うのです。それでどうしても一般利用者の立場というものは、組織ぶありません。一人々々の人民がいろいろの角度からいろいろの感想を持つ。しかしながらそれをわざわざ行政官庁までしりを持ち込んで行くほど勇気のある人も、根気のある人も、一般庶民にはないわけです。従つて運輸大臣とせられましては、国民の声なき声を聞いていただきたい。これが一番大切なことではなかろうか。不幸にして国会の審議においてさえも、団結しておりまする有力なる業界の意見は、きわめて忠実に反映せられるけれども、一般利用者、庶民の声は十分反映しないきらいがある。このことを大臣はぜひ念願に置かれまして、この法律の運用に当つていただきたいとこいねがうものであります。またこの行政機関は——大臣は非常に厖大なる組織を全国に持つておられる。これは多数の人間の集まりでございまするから、たまに間違いの起りますることはまことにやむを得ない。私も長崎に起り、また方々にあつた事件を存じておりますが、これは間違いでありまするから、私はさような間違いを取立てて責めるようなやぼなことを考えておるのではない。しかしながらかような間違いの場合でなくて、日常の行政事務の運営にあたりまして、今私が大臣にお願いしますような気持が、十分浸透していないきらいがある。そして所在のその土地土地のいろいろな事情、ことに業界の利害関係の反映等によりまして、はなはだ行政が明朗でないような面もときどき見受けられるのであります。それでこの行政機関に対する人事の問題でありまするが、率直に申しまして、国鉄と運輸省との人事の問題、この間に運輸当局におかれては非常に御不自由になつておられる。もう少しこの仕事に打つてつけの人を、国鉄側から引抜くわけに行かないかという感を実に深くする。やはり人にはそれぞれ特徴がありまして、自動車行政の末端機関といたしましては、かりに少しできが悪いといたしましても、鉄道プロパーの仕事には非常に有能な人がある。私が全国拝見いたしましたところによると、現在の行政機構の末端機構におきましては、非常にりつぱな勇気のある業績をあげておられる方々もたくさんありますが、また一面人の特長を殺して使つておる。まつたく場違いの人を場違いの場所に使つておる。その結果は御本人も不幸である。国民も不幸である。業者も不幸である。まつたく困つたと思われるような節がないでもないのであります。またわれわれの立場から考えますと、そのようなことを申しますことは、結局お役所に対しまして、あとのたたりをおそれてだれもほんとうのことを言わない。かく申す私でさえも、今日国会議員の立場にあり、かつ運輸行政の裏面に相当通じておりますつもりの私でさえも、本日この言を大臣にあえていたすにつきましては、あとのたたりをおそれまして、実は戦々きようきようたる気持を持つております。言いたいことを半分もよう言わない一般市民の、その間の事情を十分にお察しな願いまして、この法律の運用について、大臣におかれましてはそのかじのとり方を間違えないようにしていただきたい。個々の條文の議論なんかは実は大臣に申し上げるのは場違いでありますが、私はこういう法律運用の御心境につきまして、大臣の御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/99
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100・山崎猛
○山崎国務大臣 滿尾委員の運輸行政について御経験と蘊蓄に基いた御所見を拝聴して、啓蒙されるところ非常に多いのであります。運輸大臣山崎自体が、本来から言えば場違いの人物を場違いのところに置いた形に相なつておりますので、私こそ戦々きようきよう、大過なくこの任務を果したいということに、日夜苦心いたしておるような次第であります。ただいま御列挙になりました箇條は、一々ごもつともであります。私もそういう線であり、そういう心持で、幸いにして国会を通過いたしますれば、ただいま滿尾委員のお言葉の趣意を拳々服膺して、これを法文以上にその実績をあげるために、それぞれの担当当局者を鞭撻激励いたしまして、成果を上げることに努力したいと考える次第であります。さらにまた五箇條の御質問を御列挙に相なつたのでありますが、ただいままでのお尋ねは、総論的の御意見であつたと考えますので、一応ここでお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/100
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101・滿尾君亮
○滿尾委員 それでは次に公正な競争について、お尋ねを申し上げます。法案の第一條に、公正な競争という字句をお入れになりましたことについては、私は非常に賛成申し上げる。これはぜひあるべき字句である。これについてはいろいろ意見があるようでありますが、私は非常にけつこうであつたと考えます。この公正な競争という立場は、いろいろの角度から見られるのでありますが、私が運輸大臣にお尋ねいたしますことは、第一に日本の陸上の運輸機関相互間において、自動車運送というものの立場ということを、この字句の中に見るのであります。法案を書かれた人は、どうも自動車の畑の中の公正な競争ということだけをお考えになつておるようにとかくうかがわれるのでありますが、大臣の御所管といたしまして、鉄道と自動車の関係、ことにバスと鉄道、あるいは定期便の貨物路線と鉄道の問題というようなこととあわせて、この問題を考えなければならない。さらにこのことを進めますと、いわゆる交通調整という問題になつて来るのであります。それで前回の地下鉄営団の改正のときにも、交通調整に関する問題について、大臣の御注意を喚起申し上げたような次第でございましたが、ここにおいて私は、日本の陸上の輸送機関のシステムをどう構成するかということについて、それが国家の立場から見て最も経済的であり、能率的であるというものをつくり上げるという考慮を失つてはならないと思います。この点につきましては大臣の十分なる御関心をひとつ喚起することにとどめまして、バスなり何なりの技術的な議論は、鉄道監督局長と自動車局長を相手に展開するつもりでありますが、大局的にぜひ大臣御自身の心にとどめていただきたいということをお願い申し上げます。さらに今度は自動車間の公正なる競争という問題でありますけれども、これは業態によりまして差違があるのではないか。道路運送法はただ一括して、自動車運送事業の公正なる競争と申しておりますけれども、実は同じ法律の認めております運送事業と申しましても、いわゆる公共的、社会的な価値という点から申しますと、私はこの間に階段があると思うのであります。それはバスを最も重しとし、その次はトラック、ハイヤー、タクシーといつた順序で階段がある。これは人によつて違うかもしれません。従つてその階段に沿うて、やはり営業免許の方針がかわつて来る。今日までの運輸省の行政の実績を振りかえつてみますと、既存の秩序の維持ということに汲々としている。これはもちろん部面によりましては、ハイヤー、タクシーのごとき、もう今日すでに濫許と称せられるほどのものもないではありません。しかし最も議論の対象となるものは、一般貨物、区域貨物、貸切りの問題であります。これらにおきましては、非常に現状維持的な要請が強くて、終戦後すでに六年間になんなんといたしましても、新規免許は統計においてただの二十社しか許していない。たとえば東京区域のことにおきましては、終戦後ただの一社も許していないと思います。東京の経済状態は、終戦直後から今日までどれだけ復興し、経済活動の総量がいかに増量したかという事実にことさらに目をおおうて、現状維持的であるようにしか思えない。この点は事務当局にあらためて他日お尋ねいたしますが、かような実態の上に運輸省の行政というものが今日置かれている。先ほども申し上げました通り、みなこわもての方でありまして、つくられた輿論の上に運輸行政というもものが安坐しているのではないか。私をしてほんとうに言わしむれば、噴火山の上で居眠りをしておられるようにしか思われない。いつまでこの居眠りが続けて行けるだろうかということについて、深甚なる御考慮を求めたいと思うのであります。いろいろこまかいことにつきましては政府委員に譲りますが、ぜひ大臣が大所高所から、わが国陸上交通機関全体の中における自動車運送の立場、また自動車業者間の公正なる競争の確保ということについて、大局からいろいろ御指導を賜わりますよう、特にお願い申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/101
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102・山崎猛
○山崎国務大臣 御趣意まことにごもつともであります。もちろんこの法律そのものは、自動車を中心とした法律でありますけれども、電車、汽車等と総合して日本の交通を統合調整して、円満なる発達をして行かなければならないことであり、もう一つ私をして忌憚なく言うことを許されるならば、道路そのものも自動車、汽車、電車と違つた方向にあつては相ならないと考えるので、平生の持論といたしましては、当然まずもつて道路、汽車、自動車、電車、こうあつて初めて交通政策、運輸政策が、一貫した調整がとれるものではなかろうかと考えておるような次第であります。そういうつもりで、ただいまの滿尾委員の御説の通り、われわれも微力ながらその趣意によつて、日本の交通行政の円満なる発達を期し、産業の開発、地方の発展に資したい、こういう方針で進んでおる次第でございます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/102
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103・坪内八郎
○坪内委員長代理 次に、海上運送法等の一部を改正する法律案を説題といたし、提案理由の説明を求めます。山崎運輸大臣。
—————————————
海上運送法等の一部を改正する法律案
海上運送等の一部を改正する法律
第一條海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)の一部を次のように改正する。
第二條第三項を次のように改める。
3 この法律において「定期航路事業」とは、一定の航路に船舶を就航させて一定の日程表に従つて運送する旨を公示して行う船舶運航事業をいい、これを旅客定期航路事業と貨物定期航路事業とに分ける。
第二條第四項を同條第六項とし、以下順次二項ずつ繰り下げ同條第三項の次に次の二項を加える。
4 この法律において「旅客定期航路事業」とは、旅客船(十三人以上の旅客定員を有する船舶をいう。以下同じ。)による定期航路事業をいい、「貨物定期航路事業」とは、その他の定期航路事業をいう。
5 この法律において「不定期航路事業」とは、定期航路事業以外の船舶運航事業をいう。
第二條第十二項の次に次の一項を加える。
13 この法律において「港湾関係業」とは、定期航路事業に直結して行う海上運送取扱業又は定期航路事業のために船舶のけい留施設若しくは荷さばき施設を供給する事業をいい、「港湾関係業者」とは、港湾関係業を営む者をいう。
第三條、第四條、第七條、第八條、第十七條及び第十八條中「定期航路事業」を「旅客定期航路事業」に、第八條から第十六條まで、第十八條及び第十九條中「定期航路事業者」を「旅客定期航路
十九條の二第一項及び第十九條
の三(第十九條の四において準
用する場合を含む。)の規定にか
かわらず、これらの規定による
届出又は公示をすることを要し
ない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/103
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104・山崎猛
○山崎国務大臣 ただいま上程されました海上運送法等の一部を改正する法律案の提案理由について説明申し上げます。
わが国海運も連合国軍の好意により、漸次定期貨物船航路の就航も許容され、すでに沖縄航路、バンコック航路、南米航路、印度、パキスタン航路が許可され、近くニユーヨーク航路も許可される模様でありますが、これらの定期航路においては外国の定期航路事業者と公正な競争を行うべきであつて、運賃値下げその他の不公正競争方法は厳に戒めなければなりません。これら理由からこの改正案においては、
第一に、従来なかつた貨物定期航路事業の概念を新しく設定いたしました。
第二に、補助金の交付、輸送命令を出し得る範囲等を国内の船舶運航事業者に限定し、日本と外国との間または第三国間には適用しない旨を明らかに規定いたしました。
第三に、従来のいわゆる二重運賃制が海運同盟において認められるかいなか現行法の解釈として明確でなかつたものを、不公正または不当でない限り認めることとして、世界的商慣習に即するようにするほか、排他的海運同盟に参加することが絶対認められなかつたものを、その條件が不当でない限り参加することを許容することにいたしたのであります。
第四に、運賃率を破る場合において、虚偽の運賃請求書を作成したりして、不公正な方法で輸送を行つた場合、定期航路事業者はもちろん、荷主も定期航路事業者と通牒した場合には処罰されることにいたしたのであります。
第五に、定期航路事業に直結して行う海上運送取扱業または上屋、桟橋供給業は、定期航路事業と同じ公益性がありますので、海運同盟の結成を認めるとともに、不公正競争方法を禁止いたしたのであります。
第六に、裸傭船は、外国国旗を掲揚しているにかかわらず、日本船員が乗船するため外交上の問題が残り、なお
一年間許可制を実施することといたしました。なお国内における重要物資輸送命令をなお二年間発し得ることといたしたのであります。
以上がこの法律案の提案理由でありますが、何とぞ十分なる御審議の上に、すみやかに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/104
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105・坪内八郎
○坪内委員長代理 本案に対する審議は、本日はこの程度にいたしまして、次会に譲りたいと思います。
本日はこれをもつて散会いたします。明日は午後一時半より開会いたします。その詳細は公報をもつてお知らせいたします。
午後五時十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101003830X02419510517/105
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