1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年五月二十三日(水曜日)
午前十時三十一分開議
出席委員
委員長 小金 義照君
理事 高木吉之助君 理事 多武良哲三君
理事 中村 幸八君 理事 高橋清治郎君
理事 今澄 勇君
今泉 貞雄君 小川 平二君
中村 純一君 南 好雄君
村上 勇君 金塚 孝君
河野 金昇君 加藤 鐐造君
風早八十二君
出席政府委員
通商産業政務次
官 首藤 新八君
通商産業事務官
(通商機械局
長) 玉置 敬三君
委員外の出席者
参 考 人
(日本理化工業
株式会社社長) 高橋 直行君
参 考 人
(東京大学教
授) 兼重寛九郎君
参 考 人
(日東化学株式
会社常務取締
役) 和田 伯士君
参 考 人
(日本冷凍事業
協会会長) 草野 常徳君
参 考 人
(東京工業大学
教授) 内田 俊一君
専 門 員 谷崎 明君
専 門 員 大石 主計君
専 門 員 越田 清七君
五月二十三日
委員小川原政信君及び眞鍋勝君辞任につき、そ
の補欠として中村純一君及び村上勇君が議長の
指名で委員に選任された。
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五月二十二日
新百貨店法制定に関する請願(田中伊三次君紹
介)(第二二五三号)
の審査を本委員会に付託された。
同日
日本発送電株式会社への出資設備復元に関する
陳情書
(第七
五六号)
けい肺法の單独立法化に関する陳情書
(第七六三号)
大淀川発電所返還促進に関する陳情書
(第七九六号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
小委員及び小委員長の補欠選任計量法案(第一
三七号)内閣提出
計量法施行法案(内閣提出第一四〇号)
高圧ガス取締法案(内閣提出第一三〇号)(
予)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/0
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001・小金義照
○小金委員長 ただいまより通商産業委員会を開会いたします。
本日はまず去る三月三十日本委員会に予備付託となりました高圧ガス取締法案を議題といたします。本日は去る五月十六日の本委員会の決定に基きまして学識経験者及び事業関係の方々に参考人として御意見の陳述をいただくことになつております。
この際参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。参考人各位におかれては、御多用中にもかかわらず、特に貴重な時間をさいて本委員会に御出席くださいましたことに対して厚くお礼を申し上げます。どうか十分に忌憚のない御意見を御発表くださるようお願いいたします。
それではまず高橋直行君より御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/1
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002・高橋直行
○高橋参考人 本日は高圧ガス取締法案につきまして、若干の意見を申し述べさせていただきます。
この法案は、拝見いたしますと、大体法律の構成といたしましては、近代的な新憲法に沿うた法体系を持つておりまして、かつまた旧法に比べまして一応高圧ガスの取締法といたしましてかなり行き届いたものと考えております。ただここに注意を要することは、一口に高圧ガスと申しましても、その対象となりまする業種は非常に多種多様でありまして、他の工業と違いまして、非常に簡單なものもあれば、非常に複雑な構成を持つておるものもあるという、きわめて複雑な工業であるわけでございます。こういう工業を対象といたしまする法律でありますので、この間にいろいろ問題はあると考えるのでありますが、この法律の条文を一覽いたしますると、取締りの対象となりまするいろいろな事項が、かなり多く省令に依存しておることが目立つわけでございます。これは本法の第一条に明記せられてありますように、災害の防止あるいは公共の安全を確保することが目的となつておるのでありまして、これは当然のことではございまするが、ただいま申し上げましたように、対象となりまする業種が非常に多種多様であり、技術面から見ましても非常に簡單なものもあれば複雑なものもある。たとえば肥料工業における硫安の製造、あるいは石灰窒素の製造、あるいは製鉄、造船、車両その他金属工業に不可欠な関係を持つておりまする酸素工業、あるいは日常国民生活の上に重大な関係を持つておりまする生活物資に、いろいろな関係を持つところのソーダ工業、あるいは冷凍工業、その他数え上げますると非常に多い業種に関係が深いわけでございます。それでそういう多種多様な、そうして技術的にもいろいろむずかしい点のありますものを同一の法律をもつて規制するというところに非常に困難さがあるのではないかと思うのであります。それがために、この法律を運用いたしまする要綱が省令に依存されておるということも、またこれやむを得ない帰結であろうかと考えられるのであります。なおこの法律は、災害の防止あるいは公共の安全を確保することが目的となつてはおりまするが、冒頭に申し上げましたように、日本の経済の復興、あるいはその発展、あるいは国民生活に密接な関係を持ち、重要性を持つておりまするがゆえに、この法律の理念にはそれらの重要な産業を助長し、あるいは育成することが考えられなければならぬわけなんであります。もちろん立案当局のお考えといたしましては、そこに重点を置かれてあることは私どもも推察するにかたくないわけでありますばかりでなく、たまたまこの法律の所管が通産省の所管であるということにおいてこれを裏づげすることができると考えるわけであります。従つてこの法律の運用につきましては、十分それらのことを考えてしかるべく考慮する必要があると思います。言いかえますれば、災害の防止あるいは公共の安全、産業の助長育成というものは裏表であるべきであると私は考える次第であります。この法律の運用にあたりまして、たまたまかんじんな要項が省令に依存されておるというところに私どもは深い注意を払わなければならぬわけであります。本法律案の第六十七条以下に、高圧ガス保安審議会というものの設置が規定されておりますが、この保安審議会の活用がうまく行きますれば、この法律は非常によい法律として、高圧ガス工業のために喜ぶべきことであると考えておる次第であります。この保安審議会の活用こそ、いわばこの法律をよくするか悪くするかというかぎになるのではないかと考えておる次第であります。大体私がこの法律について感じております要点は、以上のようなものでありまして、こまかく審議いたしますといろいろな問題が起るかと存じますが、この法律案に対する意見は大要以上の通りであります。
なおつけ加えて申しますれば、本案の第十四条に、「第一種製造者は、製造のための施設の位置、構造若しくは設備の変更の工事をし、又は製造をする高圧ガスの種類若しくは製造の方法を変更しようとするときは、都道府県知事の許可を受けなければならない。」という条文があるのでありますが、これは常識といたしましては一応当然のことと思われますが、一般の高圧ガス工業の業種を通覽して考えますと、たとえば「構造若しくは設備の変更」ということは非常に大きな施設のことも包含しており、またきわめてささいな工事の変更ということも含まれておるかと思うのであります。大きな施設あるいは重要な施設につきましては、もちろん許可を得る必要があるかと思うのでありますが、ささいな問題につきましては、これを一々今日の発達した技術面から見まして、この条文をしやくし定規に解釈いたして実行いたしますと、これはいろいろな支障を起すのではないかと考えます。この点は今後できます省令の中に、緩和の規定を相当盛り込んでいただきますれば都合がよいと考えられるのであります。のみならずつけ加えて申し上げますと、こういう許可の申請をいたしますためには、第七十三条に規定してある手数料を納めなければならないのであります。しかもこれらの手数料は相当高額な規定になつております。もつともこれは最高を規定しているわけでありますが、とかくこういうものは最低でなく、最高をとらえる憂いがありますので、この点も一応御注意を払う必要があるのではないかと考えております。なおほかにも若干のこまかいことはないわけではございませんが、大綱から見まして以上のような意見を申し上げておきたいと思うのであります。なおいささか蛇足でありますが、今までに申し上げましたように、保安審議会というものは非常に大切な機構であることから考えまして、この条文が第五章の雑則の中に入つております。これは私の感じでございますが、かような大事なものは雑則からとりまして、独立した一章といたしまして、雑則に先行されてしかるべきではないかと考えるわけであります。これは單なる感じではございますが、法律を守る者にとりまして、少し大きな響きがあるのではないかと考えるわけであります。
なおもう一つけ加えてみたいのは、第六章の罰則であります。今日の日本のいわゆる重化学工業というものは、欧米に比べますと相当水準が低いわけであります。今後ますます学問的にも、技術的にも進歩いたさねば、国家のためにも、対外的にも日本の工業はひけ目を感ずるわけであります。従つてあまりに罰則が多すぎる、あるいは重いということは、この発達せんとする工業を妨げるのではないかという感じを持つわけであります。この点立法の衡に関係せられる皆様の御考慮をお願いしたいと考えるのであります。
大体私の申し上げたい点は以上の通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/2
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003・小金義照
○小金委員長 委員諸君に申し上げますが、今意見を開陳された高橋さんは、時間の都合で間もなく退席されますので、何か御質問がありましたら、特にこの際質問をしていただきます。風早八十二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/3
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004・風早八十二
○風早委員 すぐお帰りになるということですから、簡單にお尋ね申し上げます。この法案の特にねらいとするところは、災害の防止という点にあるわけでありますが、今までの御経験でどういうふうな災害がどの程度実際起つておるか、そういう点若干実例をもつてお話願えればよいと思います。と申しますのは、罰則の問題について非常に注目すべき御意見もあつたようでありますから、それとも関連いたしまして、特にまた他の現場を持つておられる方々にも同様に御質問いたすかもしれませんが、とりあえず高橋さんからひとつお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/4
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005・高橋直行
○高橋参考人 お答え申し上げます。私の経験は年数だけは長いのでありますが、学問的にも技術的にもはなはだ貧弱でありまして、御満足の行くようなお答えができるかどうかわかりませんが、二、三の例を申し上げて御参考に供したいと思います。
高圧ガスに関する事故でありますが、これも先刻業種について申し上げましたように、軽微なもの、また重大なものいろいろあつたようであります。たとえば高圧ガス容器の爆発、あるいは合成工業の装置の一部の爆発といつたようなものが例としてあげられるわけであります。この高圧ガス装置の爆発におきましても、たとえば原料ガスの爆発の場合もございましたし、あるいは製品であるところのガスの導管において爆発をいたした例もあるのであります。こういう爆発の実際を検討いたしてみました過去の経験では、その原因が学問的にも技術的にも完全に解明されておるものは少いのであります。たとえば空気分離装置の爆発等におきまして、爆発のあとを調査いたし、科学的にもこれを検討いたしまして、ある程度原因のわかるものもございましたし、全然わからなかつたものもあつたわけであります。と申しますことは、そういうガス分離装置のプロセスというものは、きわめて高遠な学問的な方法でありまして、專門的な方々の学者あるいは技術者の調査にまつても、なお今日不明なものもあるわけなのであります。そういうことがかなり高級な技術におきましては、今日いろいろ存在いたしております。そういうような点からいたしまして、あまり罰則が重過ぎるということになりますと、企業者の生産意欲を妨げるようなこともあるのではないかと愚考いたしているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/5
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006・風早八十二
○風早委員 今のお話で大体罰則が発展を非常に阻害するという御趣旨は若干わかつたような気がするのでありますが、それにもかかわらず、今お話のように、非常に複雑な、高度の科学的な装置であることはわかるのでありますが、爆発の原因もわからないということになりますと、これはきわめて危險な話だと思います。大体装置の科学的な関係が明らかである限りは、やはり爆発についてもわかるはずだと思うのですが、それにはわかるだけの專門家がいないとか、どこか装置に安全性が欠けているとか、安全装置そのものが欠けているとか、何か皆さん方の方の固定施設面での欠陥かと考えられるのではないかと想像するのでありますが、そういう点は遺憾なく、しかもわけのわからない爆発事故が起るのだというお話でありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/6
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007・高橋直行
○高橋参考人 お答えします。その面につきましては技術家、專門家、あるいは学者たちの結合で、数年前から今日までその原因の探索に研究を継續しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/7
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008・小金義照
○小金委員長 次は兼重寛九郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/8
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009・兼重寛九郎
○兼重参考人 私は東京大学生産技術研究所長をしております兼重寛九郎でございます。このたび高圧ガス取締法案がこの委員会で審議いたされますについて、私が参考人としてここにお招きを受けましたことは、たいへんありがたいことと思つております。この法案の性質については、その要旨に書いてございますように、現行の法規に改善を加えられたものでありますから、大体においてよろしい。特に私が意見をつけ加えることはないように考えます。今までの法律が非常に簡單で、多くの部分が施行令の方に譲られておりましたものが、今度その大部分が法律に移つておりますから、非常な進歩であると思うのであります。しかしながらこのように詳細になりました法律案をもつにしましても、技術的な面はかなり多くが通商産業省令に譲られておりまして、従つてこの法案が目的とすることを達成し得るかどうかということは、通商産業省令が適切にきめられるかどうかということにかかるわけでありますから、私はその省令をきめられますときに、なお十分な検討をせられることを希望いたしたいと思うのであります。この法案については、高圧ガス協会、日本冷凍協会というような、学者、技術者の団体の意見も聞かれたように聞いておりますので、その人々の検討をされた以上に、私がこの法案につい意見を加えることはございません。ただここで新たに、容器のことに対する規定のほかに、機器を含められたということは従来とかく容器だけの取締りに重点が置かれておつたのに対しまして、実際には機械の部分に事故が起るということから、これを含められたのは適切と思うのでありますが、冷凍機械を製造する者にその規定が適用される、しかもその内容が省令で規定されるという場合に、冷凍機械の製造業者には、かなりりつぱな技術者を持つておりますものから、町工場という言葉で言い表わしていいかどうか知りませんが、それほどでない小さな事業をやつております者と、これにもかなり程度の差がございます。その場合に、あまり技術を持つていない事業者がそういう規定で制限をされることは、保安上必要であろうと思いますけれども、技術を持つております者が新しい設計をして進歩をはかろうとするときに、その進歩が阻害されないような規定をつくることが必要であろうと思うのであります。それから今高橋さんも申されましたが、高圧ガス保安審議会というものが非常に大事な役割を受持つように思いますが、これを活用されることを希望いたしますと同時に、その委員の任期が六箇月で、ただ一回に限り再任を認めるというふうになつておるようでありますが、こういう審議会の委員を一人の人があまり長く續けてやるということにはよくない点もございます。しかしながら、あまり短期間に交代をいたしますと、始終事情を知らない人々が入りますために、十分なことができない結果も生じますし、また委員を三十人程度に予想してあるようでありますが、その中のどのくらいの人が学識経験者から選ばれるか知りませんが、半分といたしましても十五人もし三分の二ならば二十人でございますが、その二十人の人が長くても一年限りで、どんどん交代することになりますと、終りには適任者を得にくいというようなことも起らないでもないではないかというふうに思います。この点はこの法律にきめられることでありますので、皆様方の御検討をお願いしたいと思うのであります。
もう一つ、この取締りを受ける側から感ぜられるであろうと私が推察いたしますことは、取締りを一つの所だけでなしに二つ以上の所から受けることがあるのではないかと思うのであります。たとえて申しますと、都道府県知事のやる仕事がございます。そのことは、そこの公安委員会を通して行われることもあるようでありますが、そういう関係の行政機関の間の連絡が大切であると思います。この七十九条に、通商産業大臣のある程度の委任を可能にしておるようでありますが、その条項は十分活用されまして、取締りを受ける者の不便、苦悩がないような考慮が必要と思いますが、これも法律といたしましては、この規定をするだけでよろしいでありましようし、またそれ以外に適当な方法はないだろううかと感じております。
私が申し述べたい点は以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/9
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010・小金義照
○小金委員長 次は和田伯士君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/10
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011・和田伯士
○和田参考人 私は日東化学工業株式会社の常務取締役をしております和田伯士と申します。今日参考人として出席せしめられたことは、私どもの事業がこの法案に非常な深い関係を持つております関係上、この機会を得ましたことを非常に喜んでおる次第であります。
私どもでは硫安の製造をいたしております。そこで硫安を製造いたします硫安工業界では、本法案が出たことに対して非常な関心を持ちまして、数次にわたり各社の者が集まりまして検討を加え、硫安業界としての意見書をさきに参議院の深川通産委員長あてに提出いたしておる次第であります。われわれ硫安工業界は、高圧ガス工業と申しましても、わが国の高圧ガス工業は非常に広範囲でございますが、その中のまずあらゆる意味において大宗をなしておるものではないかと考えるのであります。従つてこの法案あるいはこれに付随した省令がどういうふうに出、どういうふうに運営されるかということは、われわれ業界の将来の発展にも非常な関係を持つことだと考える次第でございます。
高圧に関する現行法の圧縮瓦斯及液化瓦斯取締法は、大正の中期に制定せられたと記憶いたしますが、これは市販として消費せられる高圧ガスに関する取締りを主としたものと見受けておるのであります。これはいわば比較的專門知識の少ない小規模の事業者及び一般大衆の災害防止の面に力を注がれて、このくらいのことは当然のことと考えるのであります。今回の改正法案は、その後各種の高圧ガス工業が発展して参りましたためと、さらに法案の整備を目途とせられたことと思いますが、法案の対象が非常に広範囲なものとなつたことが特徴であろうかと考えるのであります。従つてこの対象になる業種、業態は非常に範囲が広く、あるいは企業の資本としても、あるいは管理の技術者の陣容というような面からいたしましても、その他いろいろな面から考えましても、非常な広範円に、いわば市中の町工場式のもの、あるいは町工場と言えない、店先の仕事という程度に考えられるものから、巨大な資本を擁して、相当高度の技術と、高度の管理を日夜やつております硫安あるいはメタノールの企業に至るまで、相当広範囲のものを対象として包含しておるわけであります。従つてこの法案がそういう広範囲のものに画一的に適用されました場合に、ある種の事業の発展を阻害する、あるいはそういう強度の取締法案が実施上非常な困難が伴うというようなことがなければ幸いだと考えるものでありまして、特にそういうことのないようにやつていただきたいというのがわれわれの念願でございます。改正法案の目的とせられますところの災害の防止、公共の安全確保ということについては、何人も異議のないところでありまして、日常、高圧ガス工業の実務に携つておる私どもも、常にこのことは念願しておるところでございますが、しかし現在の発達した技術に基く良好な施設及び管理のもとでは、高圧ガスの製造、加工をやる、あるいは触媒をやるということが、それが高圧ガスなるがゆえに特に危險が多いというふうにも考えられぬ点があるのではないかと思います。これはしいて言いますれば、要するに高圧ガスに対する知識の不十分さ、あるいは扱いの不なれというようなことが、最も危險な点であろうかと考えるのであります。そこで整備された大企業の固定的な設備は、こう申しましては何でございますが、私ども、十分行き届いた管理をしておると確信を持つておりますし、また長期にわたつて安全な操業を維持することそれ自体が、この高圧ガス工業なのでありまして、高圧ガス工業の事業経営事業現場の仕事の大部分は、法案の対象に考えられ、目的として考えられるところの機器の保安をやり、従つて当初のこの法案の目的である事項が、われわれの日夜努力しております管理のほとんど全部であると考えてもさしつかえないのであります。一言にして申しますれば、本法案の趣旨を、われわれは日夜忠実に実施し、守つて行くということが、われわれの日常の仕事であるというふうに考えていただいてもさしつかえないものであります。また先ほど高橋さんのお話もありましたけれども、事故発生の場合、必ずしもあとで全然わからないというようなことはないと思いますけれども、偶発的な事故もやはり起り得るのでありまして、これが定時検査等によつて完全に防げるものであるかどうかということには、相当に疑問もあろうかと思います。また外国の立法例等をうかがいましても、高圧ガスに関する立法例も、やはりガスの充填容器の取扱いということが主体になつておるやに聞き及んでおります。古典的な製造設備には、その適用がないかあるいはまた非常に緩和されたものであるというふうに聞き及んでおるのであります。その例といたしまして、先般アメリカのポープというアンモニア合成のエキスパートがおいでになりました際に、アメリカのアンモニア合成用の触媒は、三年とか五年とかいう非常に長い寿命を持つものである、日本の触媒は非常に寿命が短いがというような話があつたのでありますが、そういうことから考えましても、アンモニア合成の一連の装置が、数年間そのままの状態で運転を継續されておると考えてもいいかと思います。また私、先年、ドイツに機械を買いに参りましたが、その際に、ドイツのE・Gの触媒の性能、寿命等についていろいろ協議いたしましたときに、これは横道に入りますが、ガスの性質、成分さえよければまず触媒は七年くらいはそのままで持つのだ、現にスカンジナヴイアではすでに七年間同一触媒で運転を継續しておる工場があるということを申しておりましたが、それらから類推いたしましても、アンモニアの合成装置は極力その好調の形において運転を継續するということが欧米でも建前になつておるやに推察いたしておる次第でございます。いろいろと申し述べましたが、結局これらいろいろの点についてはすでに先ほどの書類をもつて提出いたしておりますので、その方で検討していただきたいと思いますが、私は要点として次の二項目について、本法案に対する希望を申し述べたいと思います。
第一は、法案第三十五条所載のように、都道府県知事が毎年定期の保安検査をやるということでありますが、硫安、尿素あるいはメタノールの事業に対して毎年定期の保安検査を適用するということを除外していただきたいということであります。そのかわりとして、作業主任者の定時行うところの当該設備に対する検査の報告をもつてこれにかえるということに緩和していただきたいという希望でございます。その理由といたしますことは、先ほど申し述べました中に断片的に申しておきましたが、まず第一として、企業の自己防衛上、この種の事業は優秀な技術者をして自主的に、常に忠実に保安管理に専念せしめておるということ、それから法案にいうところの画一的な保安検査が、多種多様なアンモニア合成設備のどの部分あるいはどの装置に対しても常に好ましい結果をもたらすというふうには考えがたいということ、それから保安検査、特に圧力試験をやるということが、場合によつては機器の寿命をむしろ短縮するおそれもあるのではないかということ、それから次に硫安工業のような複雑な工程の工業は、検査をいたしますと、とめていよいよ運転を始めるまでに二箇月以上を要するのではないかと考えます。一部分検査して、あとは運転しておるというわけに参りませんので、系統の一部を検査いたしますためにも、全系統を停止しなければならぬということになりますので、結果から見て、硫安等は現在の二割程度の減産を引起す結果になりはしないかと考えるのであります。
次には、これは高橋さんも申されましたし、兼重先生の方からもお話がありましたが、例の審議会の問題であります。法案第六十七条以下第七十二条にわたる審議会の案につきまして「審議会は、国家試験その他高圧ガスの保安に関する重要な事項について、通商産業大臣の諮問に応じて答申し、又は通商産業大臣に建議する。」となつておりますが、特に保安事項については、十分に机上の知識と同時に現場の経験を持つた技術者と申しますか、そういう者を加えて、審議会の審議結果にいずれから見ても十分納得の行く権威を持たしていただきたいということを要望するものであります。従つてこれについては、委員は現在高圧ガス工業の実務に従事する有識者を多数任命していただきたいという希望、それから先ほど申しましたように、この法案の対象になります業種は非常に広範囲にわたつておるために、審議会はぜひ部会制にしていただきたい。大体業種別に審議会を組織して万全を期していただきたいということをお願いしたい。それから審議会は、單なる答申研究機関という以上に活用していただきたいと考えるのであります。
以上これを要約いたしますと、保安検査に関する問題、審議会に関する問題、この二項目について要望を申し上げて、法案、省令の中にその点を盛り込んでいただきたい、こういうことを御希望申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/11
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012・小金義照
○小金委員長 次は草野常徳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/12
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013・草野常徳
○草野参考人 日本冷凍事業協会会長の草野常徳であります。この法案に関しまして、私は冷凍事業の面から意見を述べさせていただきたいと思います。本法案が災害防止、公共の安全という目的で制定せられましたにつきまして、われわれもこの点に対しては十分な注意と熱意を持つてこの目的を達成したいとは思つております。この法案を拝見いたしましたが、概括的な法案あり、また先刻からもたびたび申されますように、多種多様の業種が包含されておりますために、この法案が概括的なものになつたのもやむを得ないことだと思います。従つてこの法案の各条について一々意見を申し述べることは差控えたいと思いますが、ただここに八条、十一条、十二条、十八条等の技術的基準が示されてないということ、それから第十四条の許可を受くべき施設の位置、構造、設備の変更をした場合にも届出あるいは許可が必要だということになつておりますが、いかなる程度の変更の場合以上のものが届出あるいは許可が必要かということも明示がありません。それから第二十六条の危害予防規程を設定せよということでありますが、これはどの程度に規程を設くべきかという点、それから二十九条の作業主任者免状の作業範囲も省令に譲られてあります。それから五十七条の冷凍設備に用いる機器の種類、これはどういうものが対象になるか、その種類の明示もありません。六十三条の届出の必要ある災害の程度―災害と申しましてもどの程度からのものは届出の必要があるのか、こういう点もはつきりいたしておりません。そこでこれは概括的のものでありますので、ここに明示がなくて省令に譲られてあるので、さだめし省令によつてはつきりして参ることと存じますが、こういう点をおきめになります場合には、どうか業者の意見も十分参酌していただきたい、こういうことを希望するものであります。
なお冷凍事業と申しますと、他の高圧事業と違いまして、これは割合簡單な高圧ガス事業の作業だと私どもは心得ております。しかしながらこれに決して災害がないとは申しません。たままた災害のある実例はあるのであります。従つてわれわれも災害防止に対しては十分注意もいたしますし、また法令に従つて参りたい、こう思つておるわけなのであります。従つてこういう比較的簡單であり、しかも工場数はこの表にもありますように七百十五の工場がある、またこのほかその後ふえたもの、あるいは小さいものも加えますと相当数に上り、また所在地が都会地にたくさんあります。しかも住宅地あるいは商業地域にもすでに建てられたものがあります。従つてここにいろいろな基準が示されました場合に、既設の業者に非常な影響を及ぼす面もありますので、こういう点について、省令によつて明示される場合には、既設の業者あるいは将来ともこの仕事に著しき阻害を来さないような、なるべく実情に即した規定を設けていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。
そこでこの法案につきましては、原案を御作成になりますときに、日本冷凍協会に御諮問もありました。その冷凍協会の方にわれわれも参加いたしまして一応拝見しております、また意見も申し述べました。そのわれわれの意見についてもよく取入れていただいておりますので、今ここでこういう点がはなはだ困るということは何にもないのでありますけれども、今申し上げましたようなことを明確にしていただきますれば、私どもはたいへん仕合せだ、こういうふうに存ずるわけであります。どうかこの省令等を御作成になります際には、十分に私どもの意見も聞いていただきたいということを申し述べて、私の発言を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/13
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014・小金義照
○小金委員長 次は内田俊一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/14
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015・内田俊一
○内田参考人 私は東京工業大学の教授をいたしております内田俊一であります。参考人といたしまして、御指名によりまして本席で意見を申し上げる機会を与えられましたことをはなはだ光栄に思います。まつたく第三者といたしまして忌憚のない立場から意見を申し上げますと、この法案を拝見いたしますと、先ほども皆様からお話がありましたように、対象が非常に広汎でありまして、取締りという立場からできました法律としましては、はなはだ運用が困難であるのではないかという感じを持つております。対象をもう少しはつきりしていただきますと、この点は大いに楽になるのじやないか。たとえば高圧ガスあるいは液化ガスの容器に限るとか、あるいははつきりした装置、機械のあるものに限るということにしていただくと、この点はずつと楽になるのじやないかと思います。前の方と重複いたすことがあるかもしれませんが、それは参考人がみなその点に問題を持つておるということで御了解を願いたいと思うのであります。
第三十五条の定期検査の件であります。これがもしも水圧試験ということでやられますと――話が少し技術的な問題にわたりまして恐縮でございますが、一般に作業しております圧力の一・五倍とか二倍とかいうような圧力をもつて試験するのが普通でありますが、そういうことをいたしますと、その試験のあとで機密に保つておりますガスケツトというものがいたみまして、全装置にわたりましてこれをとりかえてしまわなければ仕事ができないということにもなりかねないのであります。そうしますと何のために試験をしたかということがわからなくなつて来るという危険もあるのであります。これは、ある場合にはガスケツトの漏洩試験をやるとかいうことも考えられますけれども、この点は御考慮になつたのかどうか、御研究を願いたいと思います。
それからもう一つ、皆様と重複いたしますが、第六十七条以下のいわゆる保安審議会の点でありますが、この点は先ほど兼重先生も御指摘になつたように、委員の任期が最長一年を限つておるということになりますと、すでに現在におきましても学識経験者がこの中に何人か入るとしますと、專門家は非常に数が少いのでありまして、勢いしばらくいたしますと、專門家でない人でなければ勤まらぬという事態が起り得ることを御注意願いたいのであります。それからこの法案を読んで参りますと、「省令で定める技術的な基準」ということが至るところに出て来るのでありますが、この基準の設定というものをこの審議会がいたす権限――きめる権限があるのかどうか存じませんが、もしこの法案に掲げておりますように、單に諮問に応じて答申したりあるいは建議するということだけでありますると、ただいま申し上げましたように、対象が非常に複雑多岐にわたつておりますので、この技術的基準というものが、どの程度しつかりした学問上に基礎を置いた確たるものになるかということに多少疑問を持つのであります。
それから実際の監督、試験、取締りをやりますために、第六十六条に保安管理員を置く、すべての実際面がこの保安管理員の力量、経験ということによつて支配されるというような面もございますので、どういう方法でこの保安管理員を任命し、かつ試験し、これを養成するか。これは常識をもつて申しますと、大きな企業でありますれば、その企業に長年従事しております技術者というものは、まず信頼の置ける技術者でございますが、この保安管理員がそれに対抗し得るだけの力量を持つた人に養成ができ、しかも相当の数がいるというような点に多少の疑問を持つのであります。
ほかに二、三問題を担うような点がないでもございませんが、あまり冗長になりますから省略させていただきますが、これもまたちよつと技術的な問題で恐縮でありますが、この法案に圧力というのをゲージ圧力ということで規定してございますが、このゲージ圧力は、私見では絶対圧力をとるべきであるというふうに思うのであります。ゲージ圧力と申しますと、特殊な場合には一割、あるいはそれ以上の誤差を生ずることもあるのでありまして、法律のように厳密を要するようなものにおきましては、絶対圧力をとるべきであるというふうに考えております。これは御意見を承りたいと思うのであります。要点はこのくらいのものでありますので、また御疑問の点がございましたならばお答えいたしますが、最後に先ほどからお話がありましたように、実際の学理的並びに技術的な基礎というものがはつきりしておらない面も二、三事故が起りました場合には起つております。そこで通商産業省におきましては、試験所のようなものもたくさんお持ちでありますから、そういうところを御活用になつて十分学理的な基礎を確立して、この法律の運用に資していただきたいという希望を申し述べておきます。
私の発言はこれだけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/15
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016・小金義照
○小金委員長 以上をもちまして参考人の御発言は終了いたしました。これに対する委員諸君の御質問がありましたら、この際これを許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/16
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017・風早八十二
○風早委員 どなたからも御質問がないようでありますので、先ほどお尋ねした事故の問題について、最後の内田教授にお尋ねしたいと思います。
やはり内田さんにおかれても事故の原因にはつきりしないものがあるというふうなお話だつたと思いますが、主としてどういう意味でその事故の原因がわからないのか。この点何か学問上説明ができたら説明していただきたいと思います。と申しますのは、設備の不備の面あるいは安全装置というものの不備という点以外に何か特別な、偶発的というようなことが先ほどからも出ておりますが、これはどういうふうなものであるか、もう少ししろうとにもわかるように御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/17
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018・内田俊一
○内田参考人 ただいまの御質問の点でございますが、私実例をもつて実際体験した現場に臨んでおりませんのでわからないのでありますが、たとえば液体空気の製造設備が爆発したというような場合に、今までは微量なアセチリンが空気の中に入つておつて、これが装置の中に集積いたしまして、危険な爆発物をつくるのだというような説明も聞くのであります。また一方においては、いろいろな潤滑その他の点から自然に入つて参ります軽い炭化水素と申しますか、そういうものが徐々にその中に集積いたしまして、それが爆発の原因になるのだという意見もありまして、こういうものがはつきりしておらないということになりますと、いずれに主力を置いて爆発を防止すべきかという観点に多少の違いが出て来るのでありますが、これが非常にいつも微量なので、これの検出がむずかしいとか、いろいろ技術的な問題があるので、こういう点も将来研究によりまして、はつきりいたしますと、対策が立ち得るという意味で申し上げたのであります。一例であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/18
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019・小金義照
○小金委員長 それではこの際、この席より参考人各位に対して一言ごあいさつを申し上げます。
本日は長時間にわたりまして御出席を願い、いろいろ熱心な御意見をお述べくださいまして、まことにありがとうございました。失礼ながらこの席から厚く本委員会を代表しでお礼を申し上げます。本委員会といたしましては、皆様の御発言を十分参考として愼重に審議をいたしたいと存じます。ありがとうございました。
この際委員の変更についてお知らせいたします。昨二十二日委員中村純一君が辞任し、小川原政信君が補欠選任せられ、本日小川原政信君、眞鍋勝君が委員を辞任し、中村純一君及び村上勇君がそれぞれ補欠選任せられました。
なおこの際お諮りいたしますが、昨日補欠選任せられました河野金昇君並びに本日補欠選任せられました中村純一君及び村上勇君につきましては、小委員及び小委員長はそれぞれ従来通りといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/19
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020・小金義照
○小金委員長 それではそのように決定いたしました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/20
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021・小金義照
○小金委員長 次に計量法案及び計量法施行法案を一括して議題といたします。この両法案につきましては去る二十一日質疑が終了いたしておりますので、本日はただちに両法案を一括して討論に付します。討論は通告の順に従つてこれを許します。中村幸八君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/21
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022・中村幸八
○中村(幸)委員 私は自由党を代表いたしまして、計量法案並びに計量法施行法案に賛成の意を表するものであります。
現行度量衡法は、実に明治四十二年の制定にかかるものでありまして、その後メートル法採用に関する大改正を初め、数次にわたる部分的改正は施されて来たのでありますが、なおその大綱においては、制定当時に比して大した変化はなく、終戰を契機として諸般の制度が更新一新せられた時代の潮流から、ひとり取残された感なきを得なかつたのであります。従いましてこれが根本的改正に関する学界、業界その他各方面の要望が漸次熾烈となり、国会においてもまた一再ならず改正促進の決議がなされたので、あります。
かような次第でありますから、政府当局においてもこれら各方面の強い要望にこたえて、昭和二十一年これが根本的改正に着手し、爾来五星霜の間鋭意検討を重ね、今般ようやくその成案を得て、国会提出の運びにこぎ着けましたことは、まことに時宜を得たるものと申すべく、いなむしろ遅かりしやにも存ぜられる次第であります。
計量法案は、要するに現行度量衡法を全面的に改正し、計量に関する基本的、統一的制度を確立すると同じに、計量行政の民主化をはからんとするものであり、また計量法施行法案は、計量法の施行期日を定めると同時に、必要な経過的措置を講じ、あわせて関係法律の改正を行うことを目的するものでありまして、その内容は、いずれもおおむね肯繁に当るものと存ずるのであります。しかしながら私は無条件に原案賛成の意を表するものではありません。この際政府当局に特に強く要望いたしたいことは、第一は検定並びに取締りの統一についてであります。現行度量衡法においては、検定または取締りの統一を保持することが困難であり、それがため本法案においては、検定または取締りに関し新たに覆審制度を設け、その審査のために計量調査官を置き、さらに検定取締用基準器その他に関する基準器検定制度を設けて、その統一に留意する等種々の考慮を払つているのであります。しかしながら、なおこれらの検定や取締りが中央と地方、並びに地方相互の間において区々まちまちとなり、その間当事者の行き過ぎ、あるいは不心得、その他のため業者が甚大なる迷惑をこうむるおそれなしとしないのでありまして、従来この種の苦い経験にしばしば悩まされた業者等のこの点に関する不安は実に深則なものがあるのであります。ついてはこれら一切が結局杞憂に終ることとなるよう、すなわち覆審を必要とする以前の段階において、換言すれば予防的意味において万遺漏なきを期するようこの制度を活用し、運用そのよろしきを得んことを切望いたすものであります。
第二に、計量審議会の問題であります。本法案によりますれば、審議会の委員は関係行政機関の職員に限定せられておるのであります。しかしながら本審議会の性質上学識経験者、特に利害関係の深い業界のエキスパートをも包含せしめる必要があると思うのであります。またこれらの委員の任期についてもこれを最大一箇年の短期間に限定するがごときことのないよう措置すべきだと考えるのであります。原案がかように決定したについては、もとよりその間種々の経緯のあつたこととは存ずるのでありますが、審議会の性質、その使命等にかんがみ、さらにまた同じく経済関係の審議会に属する高圧ガス保安審議会との振合いなども考え、政府当局において早い機会に着手せられんことを切望する次第であります。
以上二点に関する強い要望を付して本法案に賛成の意を表するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/22
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023・小金義照
○小金委員長 高橋清治郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/23
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024・高橋清治郎
○高橋(清)委員 私は国民民主党を代表してただいま議題となりました両法案につき賛意を表するものであります。
度量衡法は明治四十二年制定されたものであつて、そり後大正十年メートル法採用の大改正を初め、数次にわたり改正されましたが、なおその大綱については制定当時と大した変化はなく、終戰後の諸制度の一新の情勢から取残された感があつたのであります。今回提出されました両法案は、昭和二十一年以来今日まで実に五年の長年月を経て作成されたものであります。その努力に対しましては関係者に深く敬意を表するものであります。
その内容においては、ほとんど現行度量衡法の全面的改正であり、画者を比較して見るときに、その内容は著しく民主化されているが、次の二、三の点においていささか危惧の念を禁じ得ない点があるのであります。
すなわち一、第九十四条の一定期限内に検定しなかつた場合の態度、二に、第百二十三条の計量調査官の規定、三、尺貫法、ヤード・ポンド法の有効期限等についてであります。これらの点についてはわが党といたしましてまだ釈然とせぬ点がありまするが、幸い政府側もこれらの点には十分考慮して万全を期すとの答弁があつたので、この言を信用いたす次第であります。どうか両法案の運用につきましては、今日まで当委員会の審議中各委員からいろいろな要望がありました。また関係業者からも種々な希望もあつたのであります。これらの点を十分考えまして、この計量行政の完璧を期することを希望いたしまして、以上強い条件を付しまして私の賛成討論を終りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/24
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025・小金義照
○小金委員長 次は加藤鐐造君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/25
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026・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 私は日本社全党を代表して本案に賛成するものでありますが、四箇条の希望条件を付しておきたいと存じます。
本法案によつて、計量行政を時代に適応せんとしたことにについては賛意を表しますが、しかし数年にわたる調査研究によつてでき上つたものであると聞いているものでありますから、私は本法案によつて計量法決定版ともいうべき完璧なものを期待しておつたのであります。しかし事実は多くの欠陥を持つており、なお改善すべきものが相当多いのははなはだ遺憾であります。従つて本法を運用するにあたつて十分の注意が必要であるということを特に当局に注意を喚起したいのであります。
そこで私は以下四箇条の希望条件を申し上げますが、第一には一部強制検定を必要としないものについては可急的すみやかに任意検定とすべきであるということであります。第二は電気関係の諸單位はすみやかに本法に加えて電気測定法を本法に統一すべきであるという点であります。第三は計量調査官の検定等の行為に対する査察を厳重にし、検定並びに取締りの統一をはかり、計量調査官の選任にあたつては、練達にして人格の開き人を選び、計量行政の完璧を期すべきである。第四は計量行政審議会の委員は公務員のみを充てることは適当ではないと認めるから、民間学識経験者を加えるよう考慮されたいという点であります。この四の点は特に修正を考えておつたのでありますが、この際は当局の考慮を促すのみにとどめておきますが、近きに将来特に考慮されるように要望いたします。以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/26
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027・小金義照
○小金委員長 次は風早八十二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/27
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028・風早八十二
○風早委員 私はこの法案に対して何とか賛成に持つて行きたいと努力したのでありますが、しかしながら実際にこれに対して検討を加えれば加えるほど、また質疑を重ねれば重ねるほどますますいろいろな疑点並びに反対の根拠が加わりまして、残念ながら私は日本共産党を代表して反対の意見を表明するものであります。
まず第一に、この法案のでき上るに至りましたいきさつでありますが、これは一言にして言えば、何といつてもいわゆる官庁セクト主義、官僚のなわ張り、こういうふうな面が非常に濃厚に露骨に出ておる典型的なものの一つであると考えざるを得ないのであります。たとえばこの強制検定の制度にいたしましても、結局この強制検定というものが、ほとんど必要のないような一切の微細な器械製品に及んでおりまして、実際問題としてこれをやられれば、業者も非常な不便を感ずるし、また検定をいたす者も、その数からいつても、またこの質からいつても、不足であり不備である関係から、事実上追いまわされてやれるはずはない。現に現在九百三十余名も検定員がある上に、またこれをうんと増員しなければならないということまでして、何もこまかい一々の必要のない器具にまで検定を加える必要はなかろうと思うのでありますが、そういううことをやるのは、結局この検定行政の幅を広げて行くという意図がきわめて露骨に現われておると見るほかはないと思うのであります。ことにこの検定の手数料の問題でありますが、これはただ單に官庁のなわ張りというだけでなく、そのとばつちりとして、手数料は実際はまさに税金とちつともかわらない性質のものである。ただこれが検定を受けたものであるということを標識するための手数料である。つまり実際にその検定を受けるべき品物が、技術の向上に役立つため、また不正のないために行われるというよりも、ただレツテルを張るための手数料である、こういつたような性格が、今後はこの検定の範囲が非常に広がつたところからますますはつきりして来るということを考えますと、業界に与える不利益は実に甚大なものであると考えるのであります。
さらにこの法案の全体の体系でありますが、それほど広範囲に機器製品に対する検定をやるといいながら、この法案において電気計量單位であるとかその他の計量單位が除外されておる、こういう大きな不備がある。このことは不備であるとしてすでに関係当局も認めておるはずでありますが、しかもこの不備のままでこの法案を今速急に通すということは、これまた官庁なわ張り主義の一つの現われであると考えざるを得ないのであります。御承知のように、電気メーターであろうがガス・メーターであろうが、実際これをつくる者、あるいはこれを使う者にとつては別にかわらないのでありまして、それを二つの制度、二つの法律によつて二重に拘束を受けなければならないという不便は、実にはなはだしいものであると思うのであります。このことはすでに業者の間でも言つておるだけでなく、政府部内、特に検定関係の官庁部内におきましても、有力な反対意見があるわけであります。こういう点を無視して、速急にこれを通さなければならないという理由をわれわれは認めることはできないのであります。
さらに計量行政審議会の問題でありますが、これに対して民間人をなぜ入れないかという私の質問に対しましても、それは聴聞会があるから必要がないと言われます。しかしながら計量行政審議会を役人だけで構成させるということは、すでに執行機関で役人だけがやるわけでありますから、まつたく二重の屋上屋を架するような制度に過ぎなくなるのでありまして、これらの点についても一向にこれを修正しようとされる意思を表明されない、むしろその反対であるということは、われわれはどういう事情があるかわからないが、この法案を通すために通すというような一つのなわ張り主義が出ておる証左であると考えざるを得ないのであります。
また部分的な諸点でありますが、度量衡の販売業者の簡易修覆の権利が今まで無制限に与えられておつたのであるけれども、これが今回の法案によつてやはり制限せられることが事実出ておるのでありまして、これらも、この法案がなかつたならばもつと自由にその営業がやれた業者に対して大きな不利を与える一つであると言うことができると思うのであります。これらの点については他の委員からもいろいろ質疑があり、注文があつたと思うのでありますが、政府当局としては一つもこれに耳を傾けようとしない、どこまでも一応この法案を通す、こう言われるのでありまして、われわれはそれならば結局反対せざるを得ないわけであります。
なお業者からの預かり品を損傷した場合に、これを賠償する点について十分なる保障がこの法案や施行令によつては与えられておらない。これはかりに一応形式的にそういう規定があつても、事実上業者の置かれておる立場から、その損害の賠償を請求して、あとにあとくされを残さないということはなかなかむずかしいことでありまして、それだけになおさらこの点には念を入れて業者の利益の安土を確保する用意があつてしかるべきであつたと考えるのでありますが、それらの点もきわめて不十分である。これらのいろいろな欠陥があつて、私どもは再度三度これらについては政府当局に対してもその修正を要求したのでありますが、すべてこれらは無効に終つておる。なお尺貫関係の方面からも、メートル制との併用なり、あるいはそのほかポンド制の側からもいろいろ問題が出ております。政府は日米経済協力ということを特に強調されながら、その立場からいつてもはなはだ矛盾するような点が出ておるのであります。これは私としては特に今取立てるほどのことはないのでありますが、そういういろいろな面から不備を押し切つて、遂に今日これを多数をもつて押し通されることは、一に官僚主義の最も露骨な面が現われた証拠であるとわれわれは考えるのでありまして、そういう立場からもまた私は反対せざるを得ないのであります。
最後に、しからばこの計量関係の検定につきまして、あるいは検査につきまして、今までの免許制から許可制になり――許可制は現在その実情に大体合つておるわけでありますが、さらにこれを自由営業にして行くという要求も非常に強いのであります。私は自由営業にしたからといつて、必ずしもそれでこの問題が解決するとは思いません。しかしながらもしもほんとうにこの検定が必要である、つまりこの法案の趣旨にうたつてあるように、日本の経済産業、特に技術水準を向上させるに役立つということが貫徹せられるためには、特定の品目に対してどうしても国家が強制的にも検定する必要がありましよう。しかし矛盾することは、その場合については当然国家が無償でこれをやらなければならない。むしろ国家的な義務であると考える次第でありまして、その面からいつても、この検定手数料制度というものとこれは合致上ないものである。私どもは今後正しく伸ばして行かなければならないきわめて特定の品目につきましては、国家が無償でやる。そうしてそのほかのものについては広汎に自由営業の制度を認める、こういうことがほんとうに日本の技術水準の向上、産業水準の向上をもたらすものであると考えるのであります。その立場からこの法案に対して反対の意思を表明するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/28
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029・小金義照
○小金委員長 以上をもつて討論は終局いたしました。
引續いて両案について採決いたします。計量法案及び計量法施行法案に賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/29
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030・小金義照
○小金委員長 起立多数。よつて両法案は原案の通り可決いたしました。
この際委員会報告書作成の件についてお諮りいたします。これは先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/30
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031・小金義照
○小金委員長 御異議なしと認めます。それでは御一任願つたものと決します。
本日はこの程度にて散会いたします。
午後零時十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03119510523/31
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