1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十六年三月二十二日(木曜日)
午前十一時十九分開議
出席委員
委員長 長野 長廣君
理事 岡延右エ門君 理事 佐藤 重遠君
理事 若林 義孝君 理事 小林 信一君
理事 松本 七郎君 柏原 義則君
甲木 保君 坂田 道太君
高木 章君 東井三代次君
圓谷 光衞君 平島 良一君
井出一太郎君 笹森 順造君
渡部 義通君 浦口 鉄男君
出席国務大臣
文 部 大 臣 天野 貞祐君
出席政府委員
文部政務次官 水谷 昇君
文部事務官
(大臣官房宗務
課長) 篠原 義雄君
文部事務官
(初等中等教育
局長) 辻田 力君
文部事務官
(大学学術局
長) 稻田 清助君
委員外の出席者
專 門 員 横田重左衞門君
專 門 員 石井つとむ君
—————————————
三月二十二日
若林義孝君が理事に補欠当選した。
—————————————
本日の会議に付した事件
理事の互選
宗教法人法案(内閣提出第五一号)
市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する
法律案(内閣提出第一〇五号)
教育職員免許法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一〇七号)(予)
教育職員免許法施行法の一部を改正する法律案
(内閣提出第一〇八号)(予)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/0
-
001・長野長廣
○長野委員長 これより会議を開きます。
理事の補欠選挙を行います。理事の選挙は、その手続を省略して、委員長において指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/1
-
002・長野長廣
○長野委員長 御異議なしと認め、私より若林義孝君を理事に指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/2
-
003・長野長廣
○長野委員長 次に、宗教法人法案を議題とし、質疑を続行いたします。笹森順造君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/3
-
004・笹森順造
○笹森委員 前回に引続き、宗教法人法案についてお尋ねをいたします。この法律の條項に直接関係したことを、お尋ねしたいのでありますが、この法律の持つておりまする理念、影響、結果等の見通し等については、主として大臣のお答えをお願いいたし、また各條項の事務的な取扱い等に関しましては、直接事務に当つておられまする政府委員のお答えでけつこうでありますから、できるだけ簡潔明確にお答えをお願い申し上げたいと思います。
この法律の目的の一つに、教義を広めるということが書かれておりますが、教義を広むることによつて、その宗教団体が発達をして参りまする場合には、当然新たなる境内地並びに建物、工作物等を取得することにならなければならぬことは、申し上げるまでもないと思うのであります。その新たに取得する場合と、固有の境内地並びに建物、工作物というものとの間に、取扱い上にはつきりとした区別があるかないか。特にこの点につきまして第二條の精神による第三條の適用についてのことをお尋ね申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/4
-
005・篠原義雄
○篠原政府委員 御質問の趣旨は、宗教団体が新しく境内地を設定するような場合、それと教派、教団等の組織を持つているところの寺院、教会等の拡張、その他境内地を広める、そういう場合の相違点についての御質疑と心得てよろしいでしようか。
〔委員長退席、岡(延)委員長代理
着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/5
-
006・笹森順造
○笹森委員 私の質問の要領は、明確に申し上げますと、こう申し上げてお尋ねしたら、かえつて今の私のお尋ねした意味が通るのではなかろうかと思います。それは第四ページのところをごらんくださいますと、その一行目のところに「当該宗教法人に固有の建物」ということが書いてありますが、この「固有」とは、新たに取得した建物、工作物、こういうものと区別する、そういう意味にこれを考えてよろしいか、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/6
-
007・篠原義雄
○篠原政府委員 「固有」の意味は、従来から所有しておるという意味ではございません。われわれの意味するところは、宗教団体として社寺等が境内地、境内建物として実際に使用されている関係を、ここでは一般の宗教団体が通性として、あるいは普遍的にもつぱらその土地、建物を利用する場合の特性というような意味に、この「固有」という言葉を使つております。従つて新しく取得するとか、あるいは従来から持つているという意味との差異によつて、この固有という言葉を使つておらない。従つて新しく境内地を設定する場合も、その境内地というものが、ここに記載してあるような宗教法人の用に供する場合には、当然新旧を問わず、第三條の境内地とわれわれは考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/7
-
008・笹森順造
○笹森委員 それで、その点は明確になりましたので、その適用に関する実際の問題で、もう一つお尋ねしたいと思います。
包括団体である教団等の法人が所有します、ただいま御説明のありました固有の境内地及び建物、工作物を、被包括団体であり、あるいはまた将来それに関係をしようという個々の法人、教会等に讓渡しまする場合においても、やはり免税せられることになるか。あるいはまた個々の被包括団体であつた教会等の法人が固有する境内地及び建物、工作物を、その所属の包括団体の法人に讓渡するという場合等においても、免税等の取扱いを受けるかどうか、その点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/8
-
009・篠原義雄
○篠原政府委員 御意見の通り、登録税その他税法の適用によりまして、免税の恩典に、両者の場合、同様に浴することができるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/9
-
010・笹森順造
○笹森委員 飛んで第十二條の第五号のところでお尋ねをいたします。それは私ども配付せられておりますこの印刷物の法案の九ページの第一行目であります。「責任役員についてはその員数」こうありますが、第十八條には「三名以上」ということがあります。この員数については、五名以上であると、その数がいくら多くなつても、その制限の規定がないのです。大きな教団等になりますと、非常に大きな数にもなり得るということを予想しますけれども、大体これについて、最大数のことを考えられたかどうか。また考えぬとすれば、これは無制限でよろしいのか、その辺についてのお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/10
-
011・篠原義雄
○篠原政府委員 この責任役員の人数につきましては、法の十八條をごらんになりますと「宗教法人には、三人以上の責任役員を置き」という関係から、最小限の規定といたしましては三人、それ以上は各宗各派の教団の実情に応じ、あるいは神社、寺院の実情に応じまして、責任役員の数をお定めになつていただきたい、こういう趣旨でございます。従つて、それ以上の数をわれわれも予想しておりますし、また現状におきましては、責任役員にふさわしいような機関の地位にある者が相当ございます。これは最大限を限定することも不可能ですし、従つて、少くとも法人としての活動をなす場合においては、三人以上の機関が必要だという角度から、最小限度を定めた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/11
-
012・笹森順造
○笹森委員 その次には、第十四條の第一項の項目についてお尋ねをしたいと思います。一号に「当該団体が宗教団体であること」という一項目がございます。この問題につきましては、特にそれが従来のある教派、あるいはある宗派等の教団のもの、あるいはそれから関係を離脱して再出発したものにおいては、それは宗教団体としての過去の活動実績を持つておるのでありますから、この規定による一箇月の公告によつて、申請を受理した日から三箇月以内に大体それが宗教団体であるかないかということについての見通しがつくといたしましても、まつたくの新興宗教であるならば、それはあまり期間が短か過ぎはしないか。従つて突如として興つて参りました宗教団体、それが宗教法人の資格を与えられるということは、この法律の嚴格なる建前から申しますならば、まず四箇月以内にそのものが法人格を得られることになるということは、いわゆる社会現象として興つた宗教団体の実績を判断する上において、非常に欠くるところがありはしないかという点について、これは事務的なことよりも、むしろ文部大臣のこの取扱い方に対する御観察を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/12
-
013・天野貞祐
○天野国務大臣 ただいま仰せになつたことは、いかにもごもつともなことだと思うのです。こちらでもそういうことを考えましたから、三箇月というようなことを考えたわけですが、しかし事務当局では、ほかのつり合いもあつて三箇月でよいのではないかという考えであり、私も大体それでよいのではないかという考えでございます。しかし御意見のことはごもつともなことだと私も思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/13
-
014・笹森順造
○笹森委員 進んで第十八條の点についてもう一回伺いたいと思います。ここには「宗教法人には、三人以上の責任役員を置き、そのうち一人を代表役員とする。」と掲げられてありますが、かりに三人となりました場合に、それは宗教の教師と申しましようか、僧侶と申しましようか、牧師と申しましようか、司祭と申しましようか、その宗教を自分の本職としておりまする布教をする人、あるいはこれを受けている信者、こういうものを、私どもは宗教団体においては、常に二つの存在を見るのでありますが、この場合に、それは教師のみである場合、信徒のみである場合、あるいはまた教師と信徒と両方入る場合、そのいずれでもよろしいということであるか。別にこれには制限規定はないようでありますが、それはおのおのその宗教法人の規則に定むるところによつて、一切きめてもよろしいのかどうか、その点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/14
-
015・天野貞祐
○天野国務大臣 それはただいまおつしやる通り三種類に考えられると思いますが、それぞれの教団が、やはりそれぞれいろいろな特殊事情というものがあるからして、それを教団の特殊事情によつてきめるということでよろしいのではないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/15
-
016・笹森順造
○笹森委員 そこで、もう一つ明確にしておきたいと思うのでありますが、その場合に、ある場合には、すべて選挙で行われるということもあり得ると思います。その被選挙母体は、教師である場合と、あるいは信徒である場合とあつて、信徒の数が多くて、その三人とも信徒の方から出、そうしてその信徒が代表者となる。従つて教師というようなものとは截然と区別されて、その者がその宗教法人の一切の責任者となり、またこの権能を実施する者になる場合がある。あつても、それがその規則に別に抵触していなければそれでもよろしい、こういうお答えが、今のお答えの中に含まれていると解釈してよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/16
-
017・篠原義雄
○篠原政府委員 ただいまの御質問でありますが、これにつきましては、その資格あるいは範囲等につきましては、おのおのの規則の定むるところによるのでございまして、しかもなお特定の場合、たとえば教師資格を持つている人、あるいは特殊の宗教上の権能を持つている人に相当の権能を附与しなければならない、こういう実情もございまして、従つて第十二條の第十二号は、そういう用意のため、宗教団体を制約するような場合があります。あるいはそういうふうな権限行使の上における制約関係等もございまして、そういう事項につきましても、ここに定めをしていただけば、権限行使の上にも、その他の関係を宗派の特殊性を生かしたような法規上の運営ができようかと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/17
-
018・笹森順造
○笹森委員 進んで第二十三條の條項に関してお尋ねをいたしたいと思います。一から五までの條項は「一月前に、信者その他の利害関係人に対し、その行為の要旨を示してその旨を公告しなければならない。」しかし「緊急の必要に基くもの」云々とございます。ところが、この一から五の中に、新たに法人が不動産等を取得する場合には、公告をする必要がないのかどうか、その点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/18
-
019・篠原義雄
○篠原政府委員 その場合の不動産取得の場合につきましては、おそらく基本財産とか、基本金とかいうような関係から、この問題が資金関係として出て来る場合は、これは規則その他の関係で制約できようかと思います。但し、新しい不動産を取得する場合を、このものによつては規定してはおらない、新しく土地を買う場合、それは規定しておらない。この二十三條においては規定しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/19
-
020・岡延右エ門
○岡(延)委員長代理 ちよつと笹森委員に御相談でございますが、文部大臣に対する質疑の通告が、まだ九名ほどございます。ところが、御承知の通り大臣は長く病気しておられましたので、参議院の方からもひつばりだこでございます。そういう次第でございますから、大臣でなければ答えられないといつたようなものだけに、できるだけ集約してひとつお願いいたします。政府委員は、いつでもおりますから、どうかそのおつもりで……。なおまた蛇足を加えますと、大臣は病床におられたために、この用語については、十分勉強されていないような趣がございますから、その点もひとつお含みの上お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/20
-
021・笹森順造
○笹森委員 承知いたしました。今の委員長の御要望によつて、ほかの質問者もおいでのようでございますから、さよういたします。実は私條項についてお尋ねしても、この法の精神であるとか、ほんとうの結果等も、実は掘り下げて、ほんとうに法の精神自体をもお伺いしたがつたのでありますが、今の御要望もありましたので、それではそれになるべく集約して申し上げます。
それでむしろ委員長にお願いしたいのは、大臣にお答えを願うことを先にどんどん進めて、そうしてお答えをお願いして、そこで一応私の大臣に対する質問を打切つて、あとで政府委員に事務的なことをお尋ねする、それでよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/21
-
022・岡延右エ門
○岡(延)委員長代理 了承しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/22
-
023・笹森順造
○笹森委員 それでは、この法の適用について、最も懸念せられる一つのことが、第二十六條にあるようであります。それはすべての教団、あるいは宗派、あるいはまた神社その他におきましても、本庁と末社、あるいは本山と末寺、あるいは教団本部と下部教会との関係がございます。ところがこの法の全体を見てみまする場合に、いわゆる民主主義的と申しましようか、各独自の教会団体、あるいは神社、あるいは寺院等が、それぞれ十分なる活動をせしむるために、従来の包括関係と被包括関係において、その関係を廃止しようという場合に、きわめて廃止しやすくこれが考慮せられておつて、しかもまたこの関係を新たに設定するという場合には、これを非常にむずかしくしておるというような感じを受けるのであります。この関係が第三項に現われておつて、この関係を設定しようという場合には、どうしても宗教団体の承認を受けなければならない。ところが、当該関係を廃止しようという場合には通知しなければならない。そうしてこの教団の規則の中にいかなるものがあつても、これは規則の規定によることを要しにいものであるというのが、この二十五ページの初めのところに書かれておる。私はこれを見て、これははたしてこの法律が適当なるものであるか、不適当なるものであるかということについて、十分検討を要することではなかろうかと思うのであります。つまり、仏教にしでも、キリスト教にしても、ほかの宗教にいたしましても、殷賑的に分派々々という、この教派及び他のそういう分派が非常に興つて来るという傾向を見るのであまりすが、これは一面において喜ぶべきことであり、他面においては悲しむべきことでもあるかと思います。また日本ばかりでなくて、諸外国におきましても、一つの宗教があらゆるそういう分派をまたもう一ぺん融合して、一つのものにしようという大きな運動が行われておる。一昨年、世界キリスト教大会がアムステルダムにおいて開かれたときも、この運動が非常に大きく起つておつて、米国、カナダその他の国々においても、こういう中心に集まろうという思想が大きく動いておる。ところがこの法律の建前が、どうも中心に一つになつて行つて、あるいは釈迦を中心にして一つになるとか、あるいはキリストを中心にして一つになるという運動を、むしろ阻止するのではないかというような感じが起る。従つて私はこの法案をつくりました趣旨の根本において、その作為がその中にありはしないかということを懸念するのであります。特に宗教が、これから大きく教団なりまた宗派なりが活動しまする場合は、国内的に、あるいは国外まで外国伝導をしなければならないというように、相当強い力を必要とする場合において、わかれて行くことに便宜が多くて、一つになることにあまり宜便を与えないというようなことが第二十六條の趣旨のように考えられる。私としては、この点において、宗教行政として、もう少し考えなければならぬと思うので、この点に対しまする理念、またその適用の結果を、大臣は一体どうお考えになつているか、お答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/23
-
024・天野貞祐
○天野国務大臣 ただいまのお考えも、私が伺いまして、いかにもごもつともなお考えのように思われます。脱退の場合だけは非常にやさしいけれども、今度これが連合して大きい団体になつて行く方が非常にむずかしいということは、よくないのではないかというお考えなんですが、しかしただいま事務当局もそう言つておりますが、脱退というようなそういう一つの自由を、制限するというようなことはよくないということが、主に置かれるものですから、それで脱退の方を主にしておるので、そちらは自由にやれるようにしておる。そういう点に少し片寄つているというふうに私も考えますけれどもその点については、事務当局の意見もちよつとお聞き願えませんでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/24
-
025・篠原義雄
○篠原政府委員 ただいまの大臣の御答弁に補足させていただきます。第二十六條の後段の規定は、御承知のように現行法令の規則の変更の規定である。宗教法人令第六條の解釈におきまして、信教自由のためにする離脱、あるいは脱退等の行為は、その宗派に属する管長の承認はいらないという解釈として、現実にはとり運ばれておつた次第でございます。従つて種々の神社、寺院、教会の脱退するものが非常に多いために、そこでその法の解釈が、本来ならば——形式上はそう解釈できないのでありますが、それがダイナミックな、動的な関係からという理由のもとに、その承認は必要がない、こういう解釈で脱退がなされておる。この現実の問題を考えまして、その同じ精神のもとに、これは信教自由という建前から来た次第でございまして、従つて宗派といえども、信教自由の建前で脱退するものについては、制約するのは行き過ぎではないか、こういう関係から、その脱退の場合の用意といたしまして、二十六年の後段の規定が生れた次第であります。しかもその三項に、先ほど申されました承認とかあるいは通知の規定がございまして、この承認と申しますのは、どの場合におきましても、相手方の団体に入らうとする場合においては、相手方が同意しない、あるいは承認しないという場合には、自分だけで他の宗団に入るということは、ちよつと行き過ぎではないか、あるいは実情に沿わないのではないか、そこで相手方の、入らうとする教宗派、教団の承認を受ける。一方においては、出て行こうとする教宗派、教団に対して通知をする。相互仁義を十分ふんだ上で、法規上においてもはつきりその手続をしたならば、この間における事態の平穏な解決が望まれるのではないか、こういう趣旨からこの規定が挿入された次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/25
-
026・笹森順造
○笹森委員 これも実は大臣にお尋ねしたいのですが、お願いできたらお願いいたしたいと思います。実はこのごろ日本キリスト教団の中から、離脱、分離するという一つの傾向を見ております。そういう傾向がずつと大きくなりますと、遂にはこの団体が解散しなければならないという運命にまで追いやられはしないかというきざしがないでもありません。第六章の解散のときに、宗教団体を包括する宗教法人にあつては、その包括する宗教団体が欠亡した場合、これは当然解散しなければならぬことにまでなる。こういう傾向を私は非常に憂えているので、現に教団自体が、この法律が通るということによつて、分裂を来す勢いがはげしくなりはしないか。そこでこの法案をつくる陰には、教団に対して同情的でない、むしろこれをなくした方がよいというようなぐあいの運動があるような誤解さえ、実は生れて来るのであります。この点を——私はこまかい事務的の取扱いについては、また後ほど事務当局から伺うことにして、質問を保留しておきますが、こういう具体的なことが起つておるので、実は私はこのことはもう少し考慮しなければ困るでなかろうか。つまりもつと的確に申しますならば「通知しなければならない」というのを、協議しなければならないというぐあいにして、協議した上でも、なお協議がまとまらない場合には、これは離脱してもやむを得ない。しかしその場合には、まつたく新しい宗教法人として別に発足するのであつて、過去の実績等を問わずに独自で行く、こういうぐあいにでもなれば、自由を妨げることにもならずして、今言つたような懸念がなくなるのではなかろうか、こういうことを考えておりまするので、これは事務当局より文部大臣の、今起つております事象に対して、この法律の及ぼす影響力というものを懸念して、実はお尋ねしているわけであります。お答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/26
-
027・天野貞祐
○天野国務大臣 御趣旨はよくわかります。私どもは、そういう実際のことを知らなかつたのですが、今おつしやることはよくわかります。しかし一緒になつておることを欲しないというような場合、離脱したいというような場合に、それを何か法律に拘束があつて、無理やりに一つになつているというようなことでは、やはり全体としての力が出ないのではないでしようか。だからして、そういうことは自由にしておくことの方がよろしいということも、考えられるじやないかと、自分には考えられるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/27
-
028・笹森順造
○笹森委員 これはやはり政策的なことでありまするから、もう一応大臣にお尋ねして、これだけで大臣に対する質問はやめまして、あとは他の方の大臣に対する質問にお讓りしたいと思います。そうしてなお私の質問を保留させておいていただきたいと思います。それは、しばしばここに出た問題でありますが、今、文部大臣のための審議会が中央に一つだけある。ところが、知事の場合には審議会がない。私どもが懸念しておりますのは、宗教法人として認証を与えられなかつた場合には、当然中央にやつて参りますが、認証を与えてしまうと、それが地方で終りになつてしまうという場合に、今後研究あるいはいろいろと批判の的となるような事象の起ることを、非常に懸念しておるのでございます。ですから、やはり地方知事にも、こういう審議会的なものを設けることがいいのでなかろうか。もつと具体的に申し上げるならば、かりにわれわれの着想を言うことをお許し願いますならば、私どもの同志としては、たとえば県の教育委員会等をして、その諮問の機関にする。
〔岡(延)委員長代理退席、佐藤(重)委員長代理着席〕
しかも現在においては、こういうことをしない建前で教育委員会ができておりますから、今日の教育委員会では不適当であるかもしらぬが、将来この種の教育委員会が知事の諮問機関になるということになつて、そこに審議に関する活動もするということになれば、従つて選挙をする場合にも、そういう意味で宗教法人等に関する諮問機関にも適当な人が選はれて出て来るということになつて、文教政策をつかさどる上において、非常にいいのではないかという気もいたしております。こういう意味で、何か最初知事が認証を与える場合に、もう少しそのところを納得の行くような一つの審議機関があつた方がいいじやないか、またそれを考えてもらいたいと思う。これは法律の建前でいつておるのでしようが、どうもまだ疑点がありますので、議論はまた別にいたしますが、これでほんとうに満足なさつているかどうか、今言つたようなことは、どういうふうに大臣はお考えになつているかを伺つて、一応私の大臣に対する質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/28
-
029・天野貞祐
○天野国務大臣 その点ば、私も笹森委員のおつしやることが、ほんとうに理由があると思います。要するに、こういうことですね。地方でそれを拒絶してしまつた場合には、それはまた中央にすぐ申し出るからいいけれども、認可してしまつた場合に、間違つたものを認可する場合も起るのではないか、こういう御懸念はごもつともな御懸念ではないか、そのためにはやはり各地方に審議会のようなものを設ける、それについては教育委員会というものもあるのだから、そういうものもここに関連させて考えた方がいいじやないかというお考えは、私は一応ごもつともなお考えではないかと思います。しかし、地方でやつてそれが適当でないという場合には、中央の審議会からそれを是正することができるということがありますから、その点も、著しい場合には、中央からそれを是正することができると思うのです。また地方にそれぞれ審議会をつくるということになると、いろいろ標準の違いとかいうことも、そこに起つて来ると思うのです。だから、今のようなことも一理あるけれども、この法案の通りでも、さしたるあれは起らないじやないかと私は思う。地方で拒絶した場合には中央に来るから、そこでやる。また地方でやつた場合にも、中央でそれを再審議することができるというのであつて、中央に一箇所だけ審議会があるということにしてやれば、全国を一様に審査することができるということになりますから、私はこの法案の通りでも、さしたるあれは起らないじやないかと考えます。しかし、笹森委員のおつしやることは、確かに一応考えなければならない点であるというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/29
-
030・岡延右エ門
○岡(延)委員 大臣に一、二点伺いたいのであります。たしか一昨日のこの委員会において、文部大臣は、宗教的信念さえあれば、既成の宗教団体に入つていなくてもよろしい、こういつた意味に近いように、私は委員長席から拜聽したのでありますが、天野先生は、日本でもまれに見る哲学者であり、また良識の所有者であるから、それでいいのかもしれません。ところが、一般の凡人は、何となしに宗教心があればよろしいというようなことでは、どうもいかぬのではないか。終戦後のあの思想的混乱も、ひつきようするに、ぼくをして言わしむれば、日本人に宗教的信念がなかつた、その思想の根底に宗教がなかつた、こういうことが、ぼくははつきり言えると思う。そこで、そういつたような凡人は、何とはなしに宗教心みたいなものがあればいいのだということでは、ぼくは非常に心細い。また一昨日の天野文部大臣の宗教に対する信念というのでは、せつかく宗務課といものを率いて、宗教行政の最高の地位にあられる方としては、いささかどうも心細いような感じがする。かつて田中耕太郎氏が文部大臣のときには、非常に明快なる言葉をもつて宗教的信念を吐露され、われわれはそのときに、なるほど宗教行政の最高の地位にある方として、非常に頼もしいという感じを受けたのでありますが、どうも今の大臣は、宗教的信念——、理解が足りないというようなことじやないですけれども、それについての大臣の宗教行政の最高統帥者としての信念を問いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/30
-
031・天野貞祐
○天野国務大臣 私は、一昨日はこういうことを申したのです。私の持つている宗教的信念はどういうものかということを問われたのです。ですから、私は、自分はこういう考えだ。しかし、すべての人が私のようにあればそれでよいのだということを、決して言うわけではありません。私は、成立宗教というものは、まことにけつこうなもので、すべての人がそういう宗教的な信念を持つということは、まことにけつこうだと自分は思つております。ただ私はどういう点が違うかということを申したのです。要するに、宗教というものは、大きい三つの要素をどうしても欠くことができない。第一は、対象としての、絶対社会と言つてもよいし、神と言つても、何と言つてもいいのですが、そういうものと、それを信ずる個人、それだけではいけない。それを媒介するところの教組、こういうものがないといけないのですが、自分はその第三のものを欠いているという点において、いわば道徳的な信念であつて、ほんとうの意味の宗教的な信念とは言えないということを私は申したのであります。けれども、私はすべての人が、そういうほんとうの意味の宗教に帰依するということは、まことにけつこうなことだと考えているので、決して私のようであればよいと言つたわけではありません。しかし私だげのものも持たない人もあるかに自分は思う、東洋の言葉でいうならば、道を信ずるという、そういうことさえもないということがあるので、ますますもつて遺憾とするわけであります。そういう意味で、決して私の程度でよいと言つたわけではございませんから、御了承いただきたいと思います。
それから田中博士と私とは、これは、もう次元を異にしているものであつて、とうてい私が田中博士のような宗教的信念を持つわけでございません。これは自分ながら、はなはだおはずかしい次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/31
-
032・岡延右エ門
○岡(延)委員 この法案は、明治、大正、昭和を通じて、神社という問題が非常に論議されておりますことは、御承知の通りであります。これは数十年の間論議されたにかかわらず、まだ明快な解答が与えられていないというのが現状でございますが、この法案を提出する場合に、一挙にこういうような問題を天野文部大臣の英断によつて解決していただきたいということを、われわれは念願いたしておつたのでありますが、この問題は解決されておりません。それが一つ。もう一つは、この法案によつてあの終戦後だけでも雨後のたけのこのように輩出したところの怪しげな——あえて言いますが、怪しげな、宗教に似たようなもの、こういうものを排除する精神を持たない。われわれはこれを持つてもらいたいと思う。ところが、宗教課長の答弁でも、またこの間公聽会をやりました際に、事実上この法案の草案作成に参画した公述人から承りましても、そういう点はさらさらない。要するに、それをやると、何とはなしに宗教統制みたいなことになるというので、それは全然ないのだという意見でございました。これは戦争中の統制の行き過ぎから、あつものに懲りてなますを吹くというような、要するに非常に消極的な考え方になつておるのではないかと思われるのでありますが、この神社問題というああいう大きな問題も解決できず、またインチキ宗教の続出を見る。これは逆に見ると、これを奨励するかのような、——要するに税金が無税になるというので、そういつたような面さえあるということが、ぼくとしてははなはだ遺憾にたえない。私をしてはつきり言わしむれば、この法律は、これは宗教団体の免税法だといつたような、きわめて調子の低いものになつてしまう。せんじ詰めれば、これははなはだ私の遺憾とするところであります。結論的に申しますと、これはないよりもよろしい、ナツシングよりはややベターであるというところで、われわれはこれに賛成の態度をとつておるものでありまするが、大臣はこういつたような法案でも、これを完璧なものとお信じになつておられるかどうかひとつその辺のところをお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/32
-
033・天野貞祐
○天野国務大臣 神社のことでございますが、これについては、私は一挙にこれを解決してしまうということには、やはり無理があるのではないか。これはやはり実際に行つて行くところの法案でありますから、無理があるのではないか。だから、現在としては、この程度でいたし方ないのではないか。私たちがここに何か空に、全然白紙において一つの宗教という概念を考え、そうしてものをきめて行くというのではなしに、この法文の精神にもありますように、各宗派の伝統というものを考えて行く、そうして今までの成立ちというものを考えて行くという点から行くと、私は神社を含めるということが、必ずしもそう非常に不都合なことだとは思つておりません。一昨日も申したように、この神社というものは、宗教という狭い意味の嚴格な意味の宗教という範疇には入らないだろうと思いますが、実際にこれを取扱つて行くというためには、現在の日本では、これがいたし方ないといいましようか、現在の段階ではこれで満足すべきものではないか、こう考えております。
第二の点については、私ほ実に岡さんに同感なのであつて、いろいろな淫祠邪教というものが出て来るはなはだしいものがある。こういうものはどうかして排斥しなければならぬ。審議会というものは、そういう役目を当然持つて行かなければならない、私はこういう考えでございます。一昨日倫理性というお話が出たときにも、私は倫理性を欠くものは当然これは排除されるということが、審議会の職分に必然的に含まれているべきだというふうに考えております。この法案が完璧とは言われないでございましようが、しかしさしあたつては、こういうものが一つの過程としては必要ではないか、そういう考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/33
-
034・岡延右エ門
○岡(延)委員 淫祠邦教を排除するのは審議会の務めだというこの明言を得まして、私は非常に頼もしく思います。どうか審議会ができたあかつきは、そういつたような気持を十分取入れて、運用していただきたい。これを御希望申し上げまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/34
-
035・小林信一
○小林(信)委員 私の方では、主として笹森委員から全体的にお伺いしておるのでありまして、ほんの二、三の問題だけお聞きしたいのであります。それは一昨日笹森委員の概括的な質問に対しまして、その中で、特に文部大臣のこの法案を提出するについての根本的な意図というようなものについてお伺いした中で、大臣が答えられるのに、現在人心が非常に不安を感じておる従つてこれは結局今後宗教というようなものが非常に盛んになることが予想される、そこで健全な宗教を育成するためにこの法案を用意したのである、こういうようなお話があつたのです。その人心が非常に不安に置かれておるという問題は、私も同感でありますが、もう少しこの問題につきまして、どういう点からこう判断されておるか、大臣の御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/35
-
036・天野貞祐
○天野国務大臣 今戦争というものが、そういうふうに必然的に人間を不安にするものだと私は思うのです。ことにこういうふうに国際情勢がひどくなつて来ているときに、ものを考える者が少し考えてみれば、世界中に戦争をしたいと思う者は、一人もいない。これほどいやな戦争を、しかも非常にすぐれた人たちが世界を支配しているのに、話合いができないで、いつでも人間が生存そのものを脅かされている、こういう状態は、当然人を不安に導くものと私は思う。幾らか、私どもの言葉で言うなら、歴史の非合理性というようなものを考える者でも、考えない者でも、おのずから感じて、おのずから不安になる。だから、ことに生活そのものも現実において脅かされているというような場合には、何かもつと絶対的なものに自分を託したいという考えは、当然私は起つて来ると思うのです。そういう意味で、現実に宗教が盛んになつておる。また盛んになることは、非常にけつこうだと思うのですが、その際に、よい宗教をば発達するようにこれを助け、同時に、ただいま申したような、非常に悪いものは、何かこれを防ぐくふうをするというような意味が、この法案によつて、私はあるところまで到達できるのではないか、そういう考えです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/36
-
037・小林信一
○小林(信)委員 もちろんそういうような不安を醸成する問題につきましては、その戦争の問題も考えるわけであります。大臣のおつしやるところも、もちろん私が今から申し上げるような点からばかりでなくて、この宗教政策というものをお考えになつておられると思うのですが、そういう一つのお話の筋合いから考えると、一面そういう不安を除去するということについて、政策の上で当然大臣として責任を感じて行かなければならぬと思うのであります。しかし、それをいかに手をつけても、善処しても、努力しても、そういう必然的な結果になるのだというところで、この宗教の問題を考えて、かかる措置をしようとするのか。もちろんそういう不安を除去するために、一面においては努力されることは当然だと思うのですが、そういうことは、もう必然的に不安というものは出て来る、こういう一つの御判断からおつしやられるのかどうか、お伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/37
-
038・天野貞祐
○天野国務大臣 これは一方から言うなら、もう歴史的な必然として日本の社会を脅かしている、世界を脅かしていると思うのです。これはもう現実であつて、それを全然なくしてしまうことはできないことです。それなら、われわれは拱手傍観しているかというと、そうじやないので、できるだけそれを防いで行こう、そういう不安から人間を救つて行こう。それには、一方においては生活も安定させる。それが最も重要なことですけれども、しかし同時に、人の知力も開発する、また健全なる宗教を発達させる、さまざまな手段をもつて、そういう不安を除いて、八間が生存を喜び、日々の生活に意義を見出して行くようにして行くということが、政治とか思想とかいうものの私は任務じやないかと思うのです。それを全然なくしてしまうということは、これは世界史をなくしてしまうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/38
-
039・小林信一
○小林(信)委員 御意見はよくわかりました。もちろんそうであるべきだと思うのです。そこで私は、大臣がどういうふうに現在の世界情勢なり、あるいは国内情勢なり、また国内情勢をわけますと、経済の問題だとか、あるいは思想の問題とかいうものに、いかなる御見解を持つておられるかという、その見通しを実は承りたいのですが、世界情勢等の問題よりも、この際大臣として最もはつきりした信念のもとに善処していただかなければならぬ問題は、思想の問題だと思うのです。最近政府の中で、共産党の非合法化をするとかしないとか、いろいろな御意見があるように、新聞等で承つておるのです。これは単に治安維持というような責任者の立場から考えられる問題もあるし、また法律的にこれを考えて行く場合もあるのですが、私はこの際一番重大なのは、思想という問題から、その当面の責任者である大臣の適切な判断というものが、最も根本になつて行かなければならぬと思うのです。これに対して、今大臣はどういう考えを持つておられるか、この際お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/39
-
040・天野貞祐
○天野国務大臣 私はこの法案の審議とは、少し問題がずれて来ているように、自分には思えますけれども、しかしまるで関係ないということでもございませんでしようから、お尋ねでごいますから、私の考えを申し上げると、思想と世界とは無関係なものでなくして、世界的な現実というものは、いつも思想をも規定して来るのであります。だから、そういう思想を全部どうしてしまうということは、とうていできなことで、人間は歴史につくられながら歴史をつくるという、その歴史をつくるという側面から、われわれはこの日本において思想というものを考えて行かなければならないと思つているわけであります。今の共産党の問題につきましては、私は共産党には、もちろん反対なんです。しかし日本に興つて来ている共産主義の運動にどう対処するか、これは日本に課せられた一つのむずかしい問題だと思うのであります。非合法というようなことも、一つの考え方でございましようけれども、それをいつやるかということもまた一つの問題であつて、私が今ここで、ただちに非合法にすべきものであるか、すべからざるものであるかということを申し述べる筋合いでないように、自分は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/40
-
041・小林信一
○小林(信)委員 確かに離れているかもしれませんけれども、大臣のおいでになる機会も少いし、また考えようによつては、宗教の問題を、この前の話からしても、相当根拠を現実の問題に置かれているようにお伺いしたのですから、やはり私はこういうようなものを、この機会にいろいろお伺いしておこうと思うのですが、やはり私はそういうような総合された上において、宗教に関する法案も、私たちとしては考えて行かなければならぬと思つておるのであります。そこで今大臣にはつきりお伺いしたかつたのですが、この際言明を避けられるようですから、私の方でもまた別の機会に讓りまして、一つこの法律の中でお伺いしたいことは、これも先ほど笹森委員からお話があつたのでありますが、認証をするところの権限を持つ地方の責任者として、知事があげられているのでありますが、これを考えられた場合に、教育委員会は全然考えられなかつたのか。教育委員会も考えられて、そうして両者を検討した結果知事になつたのか、それらのの経緯を承りたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/41
-
042・天野貞祐
○天野国務大臣 これは教育委員会のことも十分考慮した上で考えたわけでございます。確かに笹森さんもおつしやつたように、地方に何か審議会があるというのも、一つの考え方だと私も思いますけれども、教育委員会は、やはり教育というものにどこまでも力をいたすというのでよいのではないでしようか。ことに今の教育委員会というのも、今通りではどうか、それについても、今度審議会をつくつて研究中でもあるという事態ですから、私は少くともこの際は知事ということにしておいて、中央の審議会が、いつでも知事の判断を再審査するというので、私はよいのではないかと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/42
-
043・小林信一
○小林(信)委員 またこれも一つ重大な問題だと思うのすが、知事でもいいというようなことでは、教育委員会は何をするところだという一つの教育委員会の本質の問題になると思うのです。そうすると教育委員会は、宗教というふうな問題は、今後は教育の中から取除いて考えて行かなければならぬかというようなことも考えられるわけです。私たちの地方における教育委員会の実際の仕事から考えて行くならば、宗教団体と提携するとか、あるいは宗教団体に対するいろいろな協力というふうなものは、これはやはり今日の教育委員会がある現実からすれば、教育委員会に大きな責任、使命というものが考えられると思うのです。ところが、単に認証というような、そうして宗教の物的根拠を与える法律であるというだけのことから、もしこれを知事に与えたとするならば、教育委員会の本質的なものをこれによつて左右される傾向がある。最近、現実的な教育委員会の実態からして、出て来るところの法律というものが、教育委員会の方に置いてはまずいということで、とかく教育委員会よりも、知事の方に持つて行こうという傾向が政府の方にあるのですが、現在の教育委員会というものは、そういう現実から、だんだんとその使命というものが薄くなり、権限が剥奪されて行くようなことになるのです。私たちは、せつかく教育委員会を設けた以上、これをもつと、こういう問題ばかりでなく、最近問題になつております教育財政の問題等も、もつと教育委員会に強い権限を持たせて、教育委員会の存在価値を高めて行かなければならぬ、こう考えておるときに、またこの宗教法人で——やはりこれも現実の問題からであろうと思うのでありますが、知事の方に権限を持つて行つたということは、教育委員会そのものを無視するような形になつて来はしないかと私は思う。また今後の宗教政策の面からして、政教の分離ということをせつかくうたつておきながら——実際政教を分離の状態に置くならば、これはどうしても教育委員会の方に置くべきが至当である、こう考えておるのですが、そういう教育委員会の性格の問題、それから宗教法人法そのものの問題からして、どういうふうにお考えになつておられるか。それから、もし大臣として、意中に教育委員会を今後こういうふうに進めて行くのが至当であるという考えがあるならば、その大臣の考えておられる今後の教育委員会のあり方を、一応私たちは御説明を受けなければ、これに対して満足しないものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/43
-
044・天野貞祐
○天野国務大臣 教育委員会は、現状のままでは、これはもういけないということは、すべての人の考えておるところだと思います。そのために、今、御承知と思いますが、文部省内にそういう審議会をつくつて審議中であります。さしあたつて、教育委員会に財政権を付与するというようなことは、ぜひとも必要なことだと私は思つております。ただ宗教のことというのは、今ここで問題になつておるのは、いわゆる政教分離であつて、何も宗教の内容に立ち入ることではないのであります。それは、非常な反倫理性を持つたものには別ですが、一般の宗教の内容に立ち入ることではなくして、宗教の、いわば外部構造と申しますか、そういうものをやりやすくする、健全な宗教の活動をやりやすくするというような点に、この法案は関係をしておることでありますから、これを知事がきめるということには、私は何もさしつかえない問題ではないかと思う。けれども、知事がそれをきめるについて、審議会をつくるとかいうふうなことには、これは確かに一理あると思いますけれども、それを必ず教育委員会がやらねばいけないとまで、私は今考えるまでには至つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/44
-
045・小林信一
○小林(信)委員 その問題は、私は前からもよく承つておるのです。物的根拠を与えるだけであつて、決して宗教の本質を規定するようなものはこの法律は持つておらない、こう言われるのですが、それは宗教そのものの本質に対して、法律等によつて規定することはいけないことであるからという見解でもつて規定しないのであつて、規定しないということは、本質的なものに対してこの法律が根拠を持つておらぬのではなくして、そういうことを根拠にして、本質というものをはつきりごの法律は持つておるのだ、こう私は考えるのです。決して中にないから、宗教の単に物的の面だけだから、これを知事に讓つていいというふうな問題では私はないと思う。本質的なものをうたつてないということは、うたわないというそこに、はつきり宗教政策の本質的なものを持つている法律だと考えるわけです。そういうことでごまかして知事の方へ行くのでなくして、そういう本質的なものをはつきりこの法律は持つておるのですから、従つて私は、これは知事ではなく、教育委員会が至当ではないか。大臣は知事にやつてもさしつかえないじやないかと言われるが、私としては、教育委員会の使命から考えても、これは教育委員会にまかすのが至当だとこう考えるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/45
-
046・天野貞祐
○天野国務大臣 小林さんの論理は、非常に複雑して来ておられるのですが、私は信教の自由ということがあるから、それで政教分離なのであつて、その宗教の本質に、この法律によつて立ち入ろうというのではない。宗教団体法人として、その活動を自由にさせよう、こういう趣意なのであつてもつぱら宗教の内容に立ち入ることではないのだから、これを知事がしてもさしつかえないのではないか。教育委員会がしてはいかぬというのではなしに、知事がしてもさしつかえないのじやないか、こういうことを私は言つておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/46
-
047・小林信一
○小林(信)委員 私は、その知事がしてもいいではないかということは、それならば教育委員会がやつてもいいのではないかということになる、こう考えるのです。そこは単なる二つのものを並べただけの問題ではなくして、大臣が宗教法人法案提案理由説明要旨というものを私たちに申されたときに、道義、思想、文化等各般にわたつて、国民の生活に深いつながりを持ちつつ活動をしておるものである、この点に考えまして云々というふうな、この法律を、たといそれがどういう内容を持つておろうとも、正しく社会の道義あるいは思想なり文化なりというものに貢献しよう、これを根本として考えておられるのでありますから、私は教育委員会の現在の姿からしても、当然そちらに渡さるべきであるというふうに考えておるのであります。大臣のお考えは、私には何ら根拠がなく、ただ知事が選択されておるというふうに思える。あるいは教育委員会というものを今後相当に改革して行くというような御意思があるので、そういう点から知事の方に渡されておると思うのですが、私の見解では、教育委員会の方にまかせた方が、今後の宗教活動の面をこういう意図からしてお考えになつておられるならば、目的が達成ぜられるのであつて、先ほどから問題になりております認証の場合、あるいは脱税行為等によつて、この法を適用しようとするところの不当な問題を避け得られるのではないか。かえつて知事の方に置いた方が、そういう点では非常に混乱をするのではないか、こう私は考えておるのです。これは見解の相違ですから、やむを得ませんが、私は何ゆえ教育委員会をこの問題から無視したかということが、非常に疑念に考えられておるのであります。これは私の見解でございますが、以上をもつて私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/47
-
048・浦口鉄男
○浦口委員 時間の関係もありますし、大臣もたいへん病気のあとでお疲れと思いますので、なるべく論争を避けまして、簡単に二、三お尋ねしておきたいと思うのであります。
実は、この法案を最初一覧いたしましたときに、どうしても物足りないところが一つあるのです。それは各委員からも御質問が出ているわけでありますが、いわゆる宗教の定義ということについて明確でない。もちろんこれを明確にすることは、たいへんむずかしいということも承知いたしております。過日の公聽会における東大の岸本教授の言葉によりましても、学界においてもすでに定義が百ほどあるということも聞いております。しかし一昨日文部大臣は、やはりそれに対して大臣としてのある一つの定義をお述べになつておいでになりますが、その点もわれわれは了承いたしております。しかもこの法律が、いわゆる物的な面をのみ規定をしたということになるわけでありますが、しかし認証にあたりまして、認可するかどうかということになりますと、勢い直接あるいは間接に、どうしても宗教の根本に触れざるを得ないということが現実に考えられるわけであります。ことに大臣は、宗教行政の責任者としておいでになり、なおこの法案との関連においても、審議会の最高責任者であり、最後の決定権をお持ちでございますので、一応やはりその根本問題についてお考えをお尋ねしておきたい、こう思います。
実は世間の一部に、大臣は哲学者でいられるので、宗教否定論者である、こういうふうな意見がある。私は、哲学というものについて、より以上深い認識を持つていない点を、たいへん遺憾に思うわけでありますが、こういう世間の意見に対して、いわゆる哲学を宗教との関係、とりわけカント哲学者としての大臣は、一体哲学と宗教との関連性において、どの点が一致しあるいは相違しておると思われるか、その点について一度お尋ねをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/48
-
049・天野貞祐
○天野国務大臣 一体ほかの学問ですと、たとえば物理学なら物理学といえば、物理現象を研究する学問をいい、あるいはケミストリーといえば、そういう一つの化学現象を研究するというふうに、ものがはつきりしておるのでございます。ところが哲学というものは、何が哲学かということが、すでに哲学の問題なんです。御承知でございましようが、哲学の本を開けば、必ず一番初めに、哲学とは何ぞやと書いてあります。ですから、私は私の哲学を考えますけれども、それはいろいろの人によつていろいろに考えられるということを、お考えおき願いたいと思います。唯物論の哲学者は、宗教というものを否定するでございましよう。しかし、私はそうではなく、宗教というもの対して非常に関心も持ち、また敬意も持つておつて、先ほども申しました通り、一般の人が宗教的信仰を持つということは、非常に望ましいことだと思つております。それなら自分も持つたらいいじやないか、こういうことでございますが、しかし人はいろいろな性質とか、境遇とかがございますから、私がただちにそれを持つということはないのであります。一体知識とは、どういう性質を持つておるか。数学なら数学、物理学なら物理学というものを、だれでも承認しなければならないということは、どういう根拠によるものであるとか、あるいは道徳というふうなものは、どういう性質でなければならないとかいうようなことを、どこまでも理論的に究明して行こうとする立場が哲学でございます。それに対して、私の理解する限りでは、宗教というものは、むしろ自分を先方にまかせる、こちらからものを研究して行くというのではなくして、向うにそれをまかせようというわけであります。だからして、そういう領域があるということを知ることが、哲学の一つの任務であります。私どもは、哲学というものによつて、いわゆる概念的な知識でもつて、すべてを知り盡すということはできないのであります。そうじやなくもう一つ、もつと大きな信仰の領域があるのだ、そういうことを認めておるのが、私どもの哲学であります。そういう意味で、私どもの哲学的な研究と宗教の信仰というものは、併立して行けるばかりでなく、私どもの哲学研究の情熱とか、真理を愛するとかいうことも、ある意味で、そういうような宗教的な情操を持たないとそれがやれないという意味で、哲学と宗教というものを考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/49
-
050・浦口鉄男
○浦口委員 今のお言葉で大体了解をいたします。哲学が非常に理論的にものを解釈している、こういうこともよくわかるのでありますが、われわれが今宗教あるいは宗教の根本となる信仰ということを考えます場合に、これが一つの現実の行動の上においてどういうふうに現われるかということが、端的に考えられるわけであります。そこで大臣の予算委員会あるいは外務委員会で、いわゆる愛国心ということについてのお答えを拜聽いたしております。静かなる愛国心、これはまことに私当然と思うのでありますが、私実は仏教信者でも何でもないのでありますけれども、仏の言葉にも、一心に仏を見奉らんとしておのずから身命を惜しまず、こういう法華経の言葉もあります。そうなりますと、理論的に解釈しただけでは、一つの行動にならないということを、われわれは考えるのであります。その理論を超越して一歩踏み切つたときに初めて行動になる。そこに私は宗教と哲学との一つの境目がある、こういうふうに、これは私の考えですが、考えられるのであります。
そこで私が文部大臣にお尋ねをいたしたいことは、そういう関連から考えまして、日本のいわゆる神社が問題になると思うのです。日本の神社というものは、これは日本人の中にも、そういう考えをお持ちの方があると思うのでありますが、われわれの印象でも、日本の神社が、何か軍国主義の根本の基礎をなしているというふうな考えがあると思うのです。もちろん戦争中、当時の政府が、戦争目的遂行のために、学校の生徒、教授その他に対して、神社を中心に置いて、そして戦争送行意識を高揚しよということを、われわれは承知いたしておりますが、神社の本質そのものが、軍国主義の要素であり、あるいはそれから来た結果が、日本人をして好戦国民としたというふうな考えに対しては、われわれそこに根本的な考えの誤りを指摘したいのであります。しかし、これは論争を避けまして、そういう事実が、はたして日本の神社の根本にあつたかどうか。戦争中のことになりますと、これは必ずしも神社ばかりではなしに、あらゆる神社、仏閣その他、あるいはそれがたとい金刀比羅さんでも豊川さんでも、みな武運長久をお祈りしたということは、これはわれわれも承知いたしておりまするし、またふだんにおいて、社神に参詣する日本の国民全部が、日本のいわゆる武力的進出ということを、必ずしも所願していたかどうか、私はそういう事実は不幸にして承知いたしておりません。中には家内安全、商売繁昌と拜んだ人も、たくさんある。そういう点から、神社に対して、日本の国内においても、あるいは外国においてはことさらそういう誤解があるのではないか、この点について、まず大臣のお考えをお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/50
-
051・天野貞祐
○天野国務大臣 神社というものが、なぜ戦時中にそういう一つの戦争遂行の手段に利用されたかというと、神社崇拜ということには、世界性というものがない。キリスト教とか、仏教とか、進歩した宗教は、みんな世界性を持つておる。それならば、世界性を持つておるから国民性というものがないかというと、そうじやないのです。戦争中キリスト教や仏教を、世界性のゆえに迫害したというのは非常な間違いであつて、決してそうじやないのです。しかし世界性を持つておるということは、事実なんです。ところが、神社をたつとぶというのは、相先崇拜であつて、ちつとも世界性を持つていない。そのために聞違つた愛国心とか、間違つた国家主義に利用される危険が多分にある。けれども、それは聞違つて使つたのであつて、それ自体は、必ずしも軍国主義とか、戦争讃美とかいうことにはならないと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/51
-
052・浦口鉄男
○浦口委員 言葉じりをとらえるようですが、世界性がないということは、神社の本質が悪いということではない、こういうことに解釈してよろしゆうございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/52
-
053・天野貞祐
○天野国務大臣 世界性がないということは、神社がプリミティヴだということです。プリミティヴだということは、ただちにこれが悪いというふうに積極的に言うことはできない。進歩していないということ、未発達だということは、従つてそこにいろいろな悪いものを伴う危険性があるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/53
-
054・浦口鉄男
○浦口委員 いわゆる神社神道に対する論争は、この間から大分ございますし、圓谷議員などは、これに対して非常に深い見解をお持ちでありますから、私はそのことを意見として述べることを避けます。結論においては、神社は、やはり今の大臣の御見解からいたしましても——般のいわゆる宗派とは、別に扱うべきではないか、こういう見解を私は持つておりますが、その点いかがでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/54
-
055・天野貞祐
○天野国務大臣 理論的にいえば、何もないところに新しくものを考えて行くというならば、これは別の範疇に取扱つてもよろしいでありましよう。しかしいつもこういう法律というふうなものは、白紙にものを書くのではなくて、できているところの、一つの伝統の上にものをつくつて行く、慣習の上に物をつくるというのが、法律の性質だと思うのです。従つて今の場合には、本質的にそういう違いがあつても、これを同じ宗教という範疇で取扱つてもさしつかえないというのが、私の考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/55
-
056・浦口鉄男
○浦口委員 そういたしますと、実はこの前の公聽会のときにも、公述人の安藤さんにお尋ねをしたことがあるのであります。これは名前をあげますと、ちよつとさしさわりがあつたり、あるいは私の記憶に誤りがあると困ると思いますので、名前はあげませんが、参議院の最高の立場においでになる方が、キリスト教の有数な信者であり、しかも明治神宮の相当の——名前はどういう名前になつておりますかしりませんが、やはり檀徒総代とか、あるいは代表というような立場になつておられる。こういうことが、実際に日本人の伝統として考えて参りました神社と、いわゆるその他の宗派に対する信仰との、現実に現われた考えの違い方だと思うのです。これをこの宗教法人法案で、一体どういうふうに今後扱うかということが、私はまだ結論が出ていないと思うのです。その点に対して、大臣はどういうお考えをお持ちになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/56
-
057・天野貞祐
○天野国務大臣 今おつしやる通りだと思うのです。キリスト教徒でも、仏教徒でも、その人が神社神道に属するといいましようか、そういう神社崇拜ができるというところに、確かに神社崇拜というものが、ほんとうの意味の宗教ではないということが言えると思うのです。しかし今ここで規定しているのは、そういう宗教の本質とか、宗教の教義とかいうものに立ち入るのではなくて、現在あるそういう宗教団体が、健全に成長し、その活動がよりよくなされ得るということを目標としておるものなんですから、宗教の本質論をもつて、この法案を全部解釈して行くという筋のものでないだろうと私は思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/57
-
058・浦口鉄男
○浦口委員 そうしますと、これは私の希望的な意見でございますが、宗教の定義というものは、結論において、やはり私は完成すべきものだ、こう考えます。もちろんそれによつて、どの宗教がいいとか、悪いとかいうことを決定することではないと思いますが、結論において、やはり宗教の定義というものは、必ず完成されるべきものである、また完成されなければならぬ、こう考えられるわけであります。ところが、これはたいへんむずかしいということは、私も承知をいたしておりますし、また国家としてそこに一つの示唆を与えるということは、もちろんこれは好むべきことでないということも、よく承知をいたしております。そこで、これは民間団体が自発的にそういう方向に進んで行く一つの機関が必要だと思います。口を開けば淫祀邪教ということも言われますが、これに対してはだれが判断するかと申しますと、もちろん国民の良識、知性によつて判断するということは当然でございますが、そういう機運も、やはり何かの一つの形をもつてこれを助成し、推進して行くことが、政治的に当然あるべきことだ、こう私は思います。そこで各宗派の代表などが集まりまして、一つの討議機関というものがつくられて、それによつて国民のそういう信仰に対するよき理解を助長し、育成して行くという方法は、どうしてもなければならぬというふうに考えますが、そういう点に対して、大臣はどういうお考えをお持ちでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/58
-
059・天野貞祐
○天野国務大臣 そういう育成ということが、私も非常に必要だと思います。それは今おつしやつたような仕方も、もちろん必要ですけれども、学校教育というふうなものも、あるいは社会教育というふうなものも、みな一般の知性を開発して、そういう考えを育成して行かなければいけない、こういうふうに思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/59
-
060・浦口鉄男
○浦口委員 最後に、国教という問題についてお尋ねいたします。アメリカなどは、御承知のように、国の成立ちそのものが、おそらくキリスト教的な要素によつてできた国でありますので、自然それが国教のような形になつておると、私は承知いたしております。たとえば、議会における一つの儀式も、キリスト教的儀礼によつて行われる。英国もそういうことを聞いております。日本で今どういうものを国教にするかということを、私は今主張するのではございませんが、そうしたものが自然な状態において、すなわちその国家の伝統、国民の民族性その他において、自然にそういうものができることが好ましいかどうか。その点だけをお尋ねいたして、私の質問を打切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/60
-
061・天野貞祐
○天野国務大臣 私は、今の日本で、そういう一つの国教というようなものを考えることは、非常にむずかしくもあり、できないことでもあり、必ずしも望ましいとまで言えないのではないかという考えを持つております。けれども、私の述べた中には、いずれも私見が多分にありますことを、ひとつ御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/61
-
062・佐藤重遠
○佐藤(重)委員長代理 それでは宗教法人法等の質疑は、明日午前さらに続行することにしまして、本日午後は、一時半から、市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案、国立大学管理法案の質疑を行いたいと存じます。
これで休憩いたします。
午後零時四十九分休憩
————◇—————
午後二時四十四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/62
-
063・岡延右エ門
○岡(延)委員長代理 休憩前に引続き会議を続行いたします。
市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑に入ります。渡部義通君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/63
-
064・渡部義通
○渡部委員 政府委員の説明の中に、「退職年金及び退職一時金の制度は」という事項のあとに「少くとも今年一ぱいは、採用後三年になるものはいないわけでありますから、教員でこの制度の適用受けるものは予想されない」とあるが、この「採用後三年になるものはいない」というのは、どういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/64
-
065・辻田力
○辻田政府委員 これは昭和二十四年の一月十二日に教育公務員特例法ができまして、教育公務員特例法によりまして、それ以後に新しく採用したものについては、退隠料あるいは退職年金というようなものが問題になりますが、それ以前のもの、すなわち従来から引続いて就職しておりますものについては、恩給の継続があるわけでございます。従つて、昭和二十四年一月十二日以後に採用されたものは、本年一ばいはまだ三年になりませんので、従つて退隠料とか恩給という問題は起らないという意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/65
-
066・渡部義通
○渡部委員 そうすると二十四年度以前の教職員は動続年限は、その就職当時からの継続として、旧恩給法によるということになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/66
-
067・辻田力
○辻田政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/67
-
068・渡部義通
○渡部委員 それからもう一つ。退職年金及び退職一時金並びに公務災害補償は、地方公務員法にいう給与のうちに入つておりませんので、これらの給与につきましても同様の処置をとつたという点がはつきりしないのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/68
-
069・辻田力
○辻田政府委員 これは地方公務員法の中に、そういうことが明示してない。従つてその場合の負担の関係が明瞭を欠いておると申しますか、普通の地方公務員法の原則によりますと、それのぞれ地方公共団体、すなわち市町村立小学校でございますと、市町村において設置をいたしておりますので、その設置者がこれを負担するという原則になるわけでございます。しかし先ほど申しましたような理由で、都道府県の負担にする方が適当であるということを、ここに明示しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/69
-
070・渡部義通
○渡部委員 この法案は、内容としては、従来市町村で負担していたものを、都道府県で負担するということだけに限るわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/70
-
071・辻田力
○辻田政府委員 従来、実際は都道府県で負担しておりまして、ただ法文の上で明文がなかつたというふうなものを、明文化したものが大部分でございますが、また一方に、退隠料とかあるいは死亡一時金というようなもので、ややともすると法文上の解釈といたしまして、市町村の負担になるように解釈をされるような傾向にあつたものを、都道府県の負担にした方がいいという意味で、明文化いたしたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/71
-
072・渡部義通
○渡部委員 それは市町村財政の不安定な状態における負担を、都道府県の負担にすることによつて、もつと給与を安定化するというのが、目的であるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/72
-
073・辻田力
○辻田政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/73
-
074・岡延右エ門
○岡(延)委員長代理 市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案、本案に関しましては、質疑は全部終了いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/74
-
075・岡延右エ門
○岡(延)委員長代理 次に教育職員免許法の一部を改正する法律案、同施行法の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/75
-
076・渡部義通
○渡部委員 免許状をとるために、今教員たちが非常に困つておるのは、免許状をとること自体の中に、非常に困難があるということなんです。たとえば一単位をとるのに、少くとも一週間ぐらいかかる、そうすると、夏休みをこれに全部費し、春、冬の休みを全部とつても、大体八単位ぐらいしか免許がとれない。従つて所定の免許を全部とつてしまうのには、非常に困難を伴うのであつて、これはどうしても三年間ぐらいはかかるし、しかもそういう状態のもとで、今日では教員たちは全部の休みをこのために充てなければならぬのみならず、土、日講習というようなことのために、非常に過労になる。その結果、教員たちの健康や研究上にいろんな不便が起きて非常に困るという声を所々方々に聞くわけであります。従いまして、こういう点で、もつと緩和して単位をとつて行けるようなことについて、考えておられるのかどうか。これをお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/76
-
077・稻田清助
○稻田政府委員 ただいまの御心配の点でございますが、そうした点を考えまして、昨年の夏の臨時国会の場合に、免許法施行法第七條の期間を延長いたしたのでありますが、今日ここに提案いたしておりまする案におきましては、さらにその猶予期間を五年延長いたしておるわけでございます。従いまして、その猶予いたした長い年月の間に、適当に認定講習、現職教育を受ければよいわけでございますし、また昨年の夏以来、一方において通信教育を開始いたしましてこういうような施設によりまして、現職教育を受けやすくいたしておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/77
-
078・渡部義通
○渡部委員 もう一つの困難は、今申し上げました点のみではないのであつて、たとえば北海道とか、山村、漁村というようなところでは、認定講習を受けために、どこか相当の地点まで出張しなければならない。ところが、その出張いたします経費が非常に厖大にかかるのであつて、ある地方では、今日どうしても二、三千円ぐらいは、一回受けるとかかつてしまう。しかし政府の方としては、現在一年に四千円かかるものとして、そのうちの半額は地方負担にしておるけれども、政府からの補助というようなものは、大体において講師とか会場費とかいう方面に使われてしまつて、認定講習を受ける教師たちの負担は、教師たち自身がほとんど負担しなければならぬ、こういう困難をさらに切り開くことをお考えになつておるかどうか。実際問題として、経済的な立場からも、認定講習を受けることが困難だという声が強いのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/78
-
079・稻田清助
○稻田政府委員 ただいま御指摘の、受講者の旅費についてでありますが、旅費ばかりを考慮いたしまして、補助金として昭和二十五年度に一億九千三百万円余り、明年度におきまして、一億五千五百万円余り計上いたしておりまして、これによつて旅費の負担から生じます受講者の苦痛を軽減いたそうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/79
-
080・渡部義通
○渡部委員 しかし実際問題として、教師たちは補助を受けながらも、第一に時間的にやつて行けない、参つてしまう、第二には経済的に参つてしまう。そういう点からして、認定講習を受けるということは、たとえば土、日とかけてやろうとしても、遠いところでは金曜日から月曜日にかかつてしまう。その結果、自分たちの研究も実際には進まないし、さらに教授上、非常に不便を感じて、兒童たちの学力低下ということも、そこに原因があるんだという声をしばしば聞いておるわけです。認定講習というものは、今まですでに相当教育をやつておる人たちが、そのような困難を、自分たち自身や、学童の教育の上にももたらしながら受けているので、だから、実質的には、少しも質的な向上になつていないという非難があるわけです。この非難は、やはり文部省として十分に考えられなければならぬのであつて、教員組合等では、この認定講習の単位を全部獲得するというようなことは、一定の五年とかいうような年限だけにすべきではなくて、もつと長い間にそれは是認されていいのだというふうな希望が、非常に強いわけです。それを五年間に限定してしまうところに、無理が出て来はしないかという問題が残るわけですが、この点の見解を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/80
-
081・稻田清助
○稻田政府委員 認定講習における修得単位数でございまするが、一級上の免許状を取得いたしまするために、何単位をとらなければならぬかという問題につきまして計算いたしますると、平均二二・四単位でございます。ところが二十五年度までに単位を修得いたしました状況を調べますると、認定講習以前に受けました講習で、やはり単位に換算せられますものが平均三・三単位、認定講習としてすでに二單位以上とつておりまするので、爾余は十四單位くらいになります。かりにこの十四單位を五箇年間で修得するという計算をいたしますれば、一年三單位とればよろしいのであります。三單位とりますのは、夏休み二箇月を充当いたしますれば十分であります。それ以外に冬季あるいは春季の休み、あるいは土日等を充てますれば、さして一般の授業その他に支障を生ずるというようなことは、まずないと考えております。さらに今回提出されました施行法の改正によりまして、この期間をさらに延長いたしておるわけでございまするから、この期間の関係によりまする受講者の無理及びこれが初等中等の教育に及ぼす悪影響というものは、ここに除かれるものだと考えております。また先ほど、その講習の内容について御指摘がありました。何分昨年は初めての講習でありましたので、全般的に見まして、多少いろいろ論議すべき問題があつたかと考えております。私どもといたしましては、そういう問題を除く意味におきまして、特別にアイフエルの一環といたしまして、こういう教育学部の教官、あるいは教育委員会の当局者、これをブロツク別に東京に集まつていただきまして、それぞれ二週間にわたつてのこうした公開議座に関しまする研究集会をいたしたような次第であります。かたがた先ほど申し上げましたように、通信教育の方も漸次充実して参りましたので、受講者に対しまする便宜は、今後非常に大きなものがあろうかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/81
-
082・渡部義通
○渡部委員 この認定講習を受けなければならぬ助教諭の数は、どのくらいありますか。そのパーセンテージはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/82
-
083・稻田清助
○稻田政府委員 認定講習を受けなければならないのは、必ずしも助教諭に限りませんので、一級上になる必要を感じました者は、その免許状所有者以外は全部でございまするが、ただいま御指摘の助教諭の数といたしましては、十万七千人余りでございます。教員のパーセンテージといたしましては一七・九%ということに相なつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/83
-
084・渡部義通
○渡部委員 聾唖学校の教員は、二つの種類の認定を受けなければならぬということになつているようですが、すでに一定の単位をとつている者が、また六単位か何か加わるのでしよう。そういう必要は、どこにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/84
-
085・稻田清助
○稻田政府委員 これは免許法の附表、各表につきましてごらんの通り、すべて專門教育及び教職教育につきましては、修得単位数が規定いたしてあつたのであります。しかしながら、免許法制定当時におきましては、盲聾唖関係の教員、あるいは養護学校の教員等に関しまする養成施設、あるいは再教育施設等が、まだ充実いたしておりませんでしたので、性質上あるいは他との権衡上、当然単位を規定しなければならないところを差控えておつたのでありまするが、その後御承知のように東京教育大学その他全国四箇所の国立大学に、特殊教育に関しまする二箇年の臨時養成課程が設けられましたし、また明年度以降におきましては、先般御審議いただきました国立学校設置法によりまして、東京教育大学にこうした特殊教育に対しまする四年制の課程が設けられたわけであります。従いまして、これらの養成施設においては三百三十名程度ずつ毎年養成せられるのでありまして、盲聾唖関係現在教員二千四百名に対しましては、十分な養成数であると考えられます。また一方再教育におきましても、特殊教育等につきましてはワーク・シヨツプ——研究集会と申しますか、あれあたりにおおける講習におきましても、特別に単位を勘定いたしております。そういうような事態におきまして、養成及び再教育が充実いたしましたので、他との権衡を考えまして、原則によりまして、新たに単位数を加えることにいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/85
-
086・渡部義通
○渡部委員 この文部省の予算の中に、教職員指導講習に必要な経費というものがあつて、その中に米国人講師というものがあるようですが、米国人講師は、現在何人くらい日本で雇われる予定になつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/86
-
087・稻田清助
○稻田政府委員 お話のは、いわゆるアイフエルに参加いたしまする米人講師の数の予定でありますか、あるいは学校に参りまする外人講師の場合でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/87
-
088・渡部義通
○渡部委員 指導講習の方です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/88
-
089・稻田清助
○稻田政府委員 二十六年度に開設いたしまする教育指導者講習において、何人の外人講師が参加せられるかという問題につきましては、まだ未決定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/89
-
090・渡部義通
○渡部委員 新聞等によつては、すでに各大学配属の講師もきまつておるということでありますが、各大学に配属の講師はきまつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/90
-
091・稻田清助
○稻田政府委員 このアイフエル以外、大学に参りまして、二箇年間契約をもつて講義に従事をいたしまする外人講師は、すでに三十五名決定いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/91
-
092・渡部義通
○渡部委員 新聞によりますと、もつと非常に多いように出ておりますが、三十五名しかきまつておりませんか。予定としてはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/92
-
093・稻田清助
○稻田政府委員 予算といたしましては、四十名充当いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/93
-
094・渡部義通
○渡部委員 その外人講師の給料は、どのくらいになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/94
-
095・稻田清助
○稻田政府委員 月額三万五千円であります、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/95
-
096・渡部義通
○渡部委員 何新聞でしたか、ちよつと忘れましたが、大体十万円ぐらいだということが出ておりましたが、そういうことはないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/96
-
097・稻田清助
○稻田政府委員 月額三万五千円と申しまするのは、日本政府が予算に基きまして支出いたしまする手当でございまして、それ以外に米本国から相当な金が給与せられるというふうに聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/97
-
098・渡部義通
○渡部委員 そのアイフエル大学に対してこういう講師を配属するということ、また配属しなければならぬどいうことは、どういう理由によるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/98
-
099・稻田清助
○稻田政府委員 新しい大学教育におきまして、御承知のように新しい教育法を設けております。特にこうした教職課程というような面につきましては、従来わが国におきましては、かなり外国から劣つておつだという点は、いなまれない事実であろうと存じます。こういう時期でございまするので、こうした講習におきましても、わが国内におけるその方面の権威ある教授方に参加していただきます上に、外国から適当な方を招きまして、同時に参加していただきますことは、わが国の新しい教育を充実する上におきまして必要なことだと考えて、いたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/99
-
100・渡部義通
○渡部委員 われわれは外人の講師が議習会や大学に招かれるということ自体には、必ずしも反対ではないが、しかし外国の講師が講師としてどういう価値を持つておるかとについては、非常に疑問があるし、現実に疑問が出て来る根拠があるわけです。それはある配属されたところでは、向うでは中学校の免許ぐらいしか持たないような人が、こちらでは大学の先生をやつておるというようなこともあるらしいし、事実上また日本の現在の学界というものは、日本人の教育を高く進めて行く上に、決して低い状態にあるわけではないわけであつて、自然科学の面ではともかくとして、社会科学のいろいろの分野において、日本の学界がアメリカ等の学界より低いとは考えていない。実際問題として、私たちの專門的な部門に関する限りは、非常に高いものを持つておる。アメリカのそういう面については、これはりつばな学者だと日本人の中で考えられておる学者は、社会科学の方面ではほとんど見当らないといつてもいい状態だと思うのです。そういうときに、外国人を非常に高い俸給をもつて日本にわざわざ雇い入れなければならない理由がどこにあるかということが、理解されないわけなんです。しかもここには米国人講師としてありますが、われわれは米国からだけ講師を迎える必要はないのであつて、フランスからも、英国からも、中国からも、もちろんソビエトからも迎え得る。それをなぜ米国を主として特別に考えておられるか、そういう点に疑問を持つておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/100
-
101・稻田清助
○稻田政府委員 ちよつとお尋ねしままが、ただいまの話は、アイフエルに関係のものでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/101
-
102・渡部義通
○渡部委員 アイフエル及び大学関係です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/102
-
103・稻田清助
○稻田政府委員 まずアイフエル関係でございますが、これにつきましては、予算におきましても、外人の教師に対する費用支出は皆無でございます。これは全然米国の方の費用負担で見ておるわけであります。また今、日本の学術と外国の学術の高さ低さ、あるいは程度の問題等を御論議になりましたけれども、実際教育指導者の講習におきまして扱いますのは、新しい教授法、新しい教育法でありまして、大学において新たに設けました単位制度の運用であるとか、あるいは一般教育の運営であるとか、また教職課程の問題だとか、あるいは生徒指導の問題だとか、日本が新たに広く外国に目を向けまして、また外国のいろいろな問題をこの面に吸収する必要があるという面において、日本人教師と相並んで、外人教師が参画するわけでございます。全然外人教師が独自に講義をいたすわけではなくて、日本人教師と緊密な連絡のもとに講習計画を立て、運営して参る次第であります。第二に、各大学におきまして新たに外人の講師を契約いたしますのは、戦前におきましても、広く外人教師を受入れましていろいろな面における文化をわが国学術界に注入する、あるいは生徒指導にそれを応用するというようなことがありますので、さしあたり米人教師を三十何名迎えておるわけでございますけれども、そのほか下話といたしましては、英国に対しましても、あるいはフランスに対しましても、あるわけでありまして、われわれといたしましては、なるべく早い機会に、こうした他の各国の教師たちも、日本の大学に講師として参加せられるように希望いたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/103
-
104・渡部義通
○渡部委員 アイフエルにおける米国人講師が、アメリカの経費によつてやられるということになると、ますます不可解になると思います。なぜアメリカがアメリカの経費をもつて日本教師を教育するのか。そういう点を文部省はどういうふうに見ておるのか、この点を聞きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/104
-
105・稻田清助
○稻田政府委員 日本の新しい教育の振興のために、好意ある援助だと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/105
-
106・渡部義通
○渡部委員 それは私たちは、一般の教職員に対しての考えからいつても、そうは考えられないのです。この点は米国人講師だけをこういう講習会の講師とすること自体に、文部省が日本の教育をアメリカ型にかえて行こうという意図を、ここに含めておるとわれわれは思うのです。アメリカの方で、積極的に自分の方の経費でやつて行くということは、日本の学童を指導し、日本の国民を教育して行くところの直接の担当者たちを、アメリカ化して行くという危険をわれわれは見るわけです。こういう点について文部省としては、そういう理解を持たなかつたのかどうか。日本の教育がアメリカ化されていいのかどうか。アメリカ化されて行こうとする現在の日本の教育の中で、いろいろな不便や困難や、また日本にそぐわないようなことが、現実に非常に現われているときに、それがさらに促進されるような形で、教師の講習までがアメリカ人によつて、アメリカの経費によつてやられることに危惧を持たれないのかどうか、この点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/106
-
107・稻田清助
○稻田政府委員 教授法でありますとか、あるいは教育心理の研究であるとか、あるいは学校環境の衛生の保持といつたような、いわゆる教職課程に関連いたしまする学問、あるいはまた一般にそうした教授法、指導法等につきまして、米国が非常に進歩しておるという点につきましては、單に文部省ばかりでなく、日本の在来その方面に專門であります教育関係の学者たちが、すべて言われる点だと考えております。われわれは、もちろん外国に学びますものは、米国に限らないと考えておりますが、米国にそういう点についての非常に進歩したものがあります以上、その方面から優秀な指導者の協力を得られますことは、わが国の教育改善のために、非常に必要なことでもあり、またけつこうなことだと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/107
-
108・渡部義通
○渡部委員 アメリカ人講師による講習会を開くための経費等は、どういうふうになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/108
-
109・稻田清助
○稻田政府委員 約三千二百万円でございまして、これは諸講師の旅費でありますとか、日当でありますとか、通訳者の費用であるとか、いろいろそのほかの経費であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/109
-
110・渡部義通
○渡部委員 私の質問は今日はこれで保留しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/110
-
111・松本七郎
○松本(七)委員 前国会で商船学校が文部省の管轄に移つたわけですが、あの当時、文部省がやつても、商船学校を従来より以上に不利な立場に置くようなことは絶対にないという確約ができていたわけです。その後聞くところによりますと、商船学校の教員の定員が各校四名ずつ、合計二十名減少したということで、今まで二百七十三名だつたのが二十六年度の予算で二百五十三名になつているということですが、その経過と、今後どのようにされるかという点を、明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/111
-
112・稻田清助
○稻田政府委員 所管外でございますので、詳細なことは、別の政府委員から適当の機会にお答えいたすようにいたしたいと思いますが、考えますると、大体旧商船学校は旧制高等学校でございまして、新しくここに発足いたしまする商船学校は新制高等学校でございます。そうした点において、職員構成が違つて参ることに基因するのではないかと考えております。ただ現実に、従来商船学校の先生であつた方が、この場合失職される方はないように聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/112
-
113・松本七郎
○松本(七)委員 委員長にお願いしておきますが、私も質問をしばらく留保しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/113
-
114・小林信一
○小林(信)委員 私はきようは免許法の方で一つだけお伺いしようと思つております。あと施行法の方については、またあらためてお伺いしたいと思います。
第十八條の七項、臨時免許状の箇條ですが、その内容を見ますと、まことにややこしく表現されておるのです。たとえば「当分の間」という言葉、それから「相当期間にわたり普通免許状又は仮免許賦を有する者を採用することができない場合に限り」、そしてさらに「教育委員会及び都道府県知事が協議して」とか、その有効期間を二年とすることを、教育委員会規則または都道府県規則できめることができるというふうに、非常にややこしいのですが、これはどういうわけでこういうことにしなければならぬか、御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/114
-
115・稻田清助
○稻田政府委員 まず第一に「普通免許状又は仮免許状を有する者を採用することができない場合に限り」とありますのは、現在の第五條第三項の文句を、そのままここへ移して参つたわけでありまして、つまり臨時免許状というのは、こうした普通免許状、仮免許状を持つている者が足りない場合に限つてのみ発行できる性質のものであることを、ここに繰返したわけであります。ところが、今までの規定によりますと、第九條第三項によつて、臨時免許状の有効期間は一年間でございます。と申しますのは、毎年々々教員の需給状況を考えて、やはり臨時免許状を出さなければならない状況があつた場合には、またそこで臨時免許状を再発行して、適当数の助教諭を入れるということにするわけでありまするけれども、ただ日本全国の状況を見ますと、一年々々切りますることでは、なお相当助教諭に依存しなければならない地方がありますので、事務上の取扱い等を緩和する意味におきまして「一年とすることができる」としたわけであります。建前は一年でありまするけれども、二年間有効の臨時免許状を出すことができる、こういうことによつて需給状況を緩和しようという考えでございます。
それから「都道府県の教育委員会及び都道府県知事が協議」とありまするのは、御承知のように、公立学校につきましては、都道府県の教育委員会が免許状を出します。私立学校につきましては、都道府県知事が出すわけであります。需給状況を緩和して出しまする臨時免許状の有効期間について、同じ府県において、知事が出すのと教育委員会が出すのと、ちぐはぐになりましては、おかしいので、その辺は話合いの上で、公立、私立を通じての取扱いをやつていただきたい、こういう趣旨によるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/115
-
116・小林信一
○小林(信)委員 そうすると、まず第一に問題になりますのは、教育委員会が担当すべきものであつても、府県知事に相談をするのか。従来教育委員会に権限があつたものは、これは知事と協議する必要はないのか、その点はつきり御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/116
-
117・稻田清助
○稻田政府委員 公立学校につきましては、従来都道府県教育委員会に権限がありまして、ほつておけば一年の有効期間でありますが、もしそれを二年としたい場合には、私立学校関係を持つております都道府県知事に相談をして、自分の方を二年にするかい、あなたの方も二年にしないかと相談して、話合いがついて、その府県ないし二年とする。そうでなくて、ここにちぐはぐが起りますると、教育面あるいは需要供給面で、非常に混乱が生じまするので、その調節をやるわけであります。御存じの通り、従来の都道府県教育委員会の権限に属することでありましても知事と相談する、知事の権限に属することでありましても、教育委員会と相談するという趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/117
-
118・小林信一
○小林(信)委員 なるほど、そのいきさつから考えて行くと、こういうふうな建前をとることも、やむを得ないような気がするのですが、午前中の宗教法人法案審議の場合にも、私の考えでは、都道府県で認証をする場合に、なぜ教育委員会にさせないかと申し上げたところ、文部大臣の言うには、府県知事にしてもさしつかえないじやないかというだけの御意見だつたのです。このことと、宗教法人法案あたりから考えてみても、教育委員会の権限をだんだんに知事の方に移すような形が、何となくとられるような気がするのですが、何か文部省で教育委員会に対する根本的な改革でも考えておるのか。あまりここで小さい問題で、そういうふうに邪推するのはどうかと思うのですが、何かこれも権限を知事の方に移管するような形になつて、知事が教育面において相当権限を持つて来るような形になると思うのですが、そういう点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/118
-
119・稻田清助
○稻田政府委員 今回の改正によりまして、教育委員会の権限を狭めて、知事の方を拡張するというわけではございませんので、顧みれば、これは教育委員会法制定の当時にさかのぼるわけでございますが、申すまでもなく、教育委員会法におきましては、教育委員会は公立学校に関する関係のみを所管いたしまして、私立学校につきましては、教育委員会の権限が及ばない、これは知事であるとされたわけであります。従つてその後に制定いたされました現行の免許法制定の場合におきましても、私立学校系統は知事、公立学校系統は教育委員会というふうに、截然とわけて参つた次第でございます。もうすでに教育委員会成立のときから、こういうような振りわけができておるので、いまさらこれを伸び縮みさせるような意思はないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/119
-
120・小林信一
○小林(信)委員 それならこういう問題が出て来ると思うのです。私立学校の方には、臨時免許状を二年にする必要はない、ところが公立学校の方では、どうでもしなければならぬというような場合において、知事の意見によつて、教育委員会の方の意見が無視されるようなことがあつたら、これは問題だと思うのです。そういうような点を考慮すれば、二つが別個の立場で考えても、さしつかえないのではないかと思うのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/120
-
121・稻田清助
○稻田政府委員 権限の形式から考えますると、確かにお話の通りでございますけれども、一体臨時免許状を出すか出さないか、あるいはそれを何年にするかという問題は、教員のその地方における需給状況によるというような現行法の規定があるわけでございます。従いまして、その府県内の需給状況がこの問題を決定するとすれば、一つの状況を二つの立場において別に見るということがあつてはならないという意味において、その調節をここで考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/121
-
122・小林信一
○小林(信)委員 そうすれば、教育委員会の方で認めたものを、やはり重視されるような形にする必要はないのですか。私の心配するところは、知事の権限でもつて、何かそういう権限が侵害されるようなことはないか、これが私の心配なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/122
-
123・稻田清助
○稻田政府委員 むしろ逆な問題だと思うのでございます。数量的には、非常に公立学校教員の需要が多うございますので、きまつた供給源から参ります教員の配当、あるいはそのほか教員の需要を考える場合には、どちらかと申せば、教育委員会の方が知事を支配しがちだとは思いますけれども、しかなしがら、教育委員会といえども、私立学校の問題を全然その利害関係のほかに置いて考うべき筋合いのものではないので、こうした問題につきましては、十分両者の合意が成り立ち得るものだと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/123
-
124・小林信一
○小林(信)委員 それからもう一つ。あるいはこの問題の方が先になるかもしれませんが「有効期間を二年とすることができる」——この二年という期間は、やはり最近の需要状況というふうなものから判定されたことと思いますが、この二年と限定したところに、何か御意見があるのだつたら、お聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/124
-
125・稻田清助
○稻田政府委員 これは現行法の通り一年であることが、もちろん望ましいのでございます。またときといたしまして助教諭が温存せられますために、教員養成学部の新卒の配当がなかなか困難だといつたようなことを聞くような件すらあるわけでございまして、教育の実質を向上する意味におきまして、できるだけこの臨時免許状の発行は制限して参りたい。しかしながら、まだはなはだ遺憾ながら一七・九%も助教諭があるわけでございますので、一年ということではあまりにきゆうくつだ。そこで最低もう一年延ばして二年というわけであります。やむなく二年に延ばしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/125
-
126・小林信一
○小林(信)委員 この臨時免許状で採用された人の立場を考えてみれば、食えないから、たとい一年でも何とか教員をやつて行こうというような人たちであれば、やはりこういう取扱いを受けてもいいのですが、とにかく安い俸給で非常に大事な仕事を預かる者とすれば、それに志す以上は、やはりこういう法律の上からも、相当に認めてもらわなければならぬと思うのです。そうしてやらなければ、そういう希望者は出て来ないのであります。一方、卒業生が多くて、採用も今年は困難であるというふうなことを聞くところもあるのですが、そういう点からすれば、臨時免許状の人たちに、三年間の有効期間を与えておくことになれば、せつかく卒業した有資格者を採用することができないというようなことで、そのために障害になるわけです。それも一応理はありますけれども、またそういう臨時免許状に該当するような人たちを採用して行かなければならぬというような必要も、時代によつてはまた場所によつては、あると思うのです。そういうふうに考える場合、その人たちのそれに志す気持を尊重する場合に、一年でいいんだ、悪かつたらよせということでなくて、やはりそういう人たちに、将来の道を開いてやるというようなことも、法律の上から考えて行かなければならぬと思うのです。あまり局長の言うところは、臨時免許状に該当する人たちに対して、冷酷な考えを持つておるように私たちは伺うのです。かつての日本の実情からすれば、相当この臨時免許状に該当するような人が、日本の教育を助けたこともあるし、今後もそういうことはあり得ると思うのです。もう一つ最近の地方の実例から考えてみますと、小学校一・何がし、中学校一・何がしという学級数に対するところの定員が出ておるのですが、地方の実情は、必ずしもそれに即応しておらない。予算等の関係で、相当低いところの数字でもつて教員が補充されておるようです。そういうような点からいえば、やはり臨時免許状に該当する人たちの奨励も考えて行かなければならない。今のような局長の態度でいいかどうか。私はその点をお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/126
-
127・稻田清助
○稻田政府委員 国民子弟の教育という観点から、この免許状は第一に考えなければならぬことだと、私どもは考えておるわけでございます。そういうような点から見まして、ただ臨時免許状を有する方々を温存するという方面からこの問題を考えるのでなく、むしろ進んで、私ども来年度予算においても考えておりまするように、各大学の教育学部、学芸学部において、一年課程の臨時養成施設も設けておりまするし、また全国二十四箇所にわたつて、都道府県の協力を得て臨時養成施設も設けられておりますし、先ほど質問にお答えいたしましたように、認定講習も充実して参りたい。そういうような面におきまして、普通免許状、仮免許状を有する、その実質のある教員をもつて、中学校・小学校・幼稚園を満たすということを、まず第一に考えて行きたい。その場合に、従来の一年で切りますことが、あまりにも事務上煩瑣でもあるというような点からいたしまして、二年に延長したわけであります。もしかりに、ある地方においてなお臨時免許状を有する人をとどめておかなければならぬ必要がありますれば、そこで首になるわけでなく、一年なり二年たちましたときに、もう一回臨時免許状を同一人に交付することまでもできるのでありますから、ただちにこれをもつて、期限が切れれば首になる、こういう性質のものでないことを、御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/127
-
128・小林信一
○小林(信)委員 それは更新されることもあると思いますが、やはり根本的には、有資格者を充実するために、二年とか三年とかいう年限を原則的に持たせることは、じやまになるからという精神が、多分に見受けられるのです。しかし、私が最初に申しましたように、とにかく、今先生が足りないからやむを得ないというときに応ずる人は、これは決して日雇い労働者のような気持でなくて、相当教育に理解を持ち、あるいは教育に対して何か一つの希望を持つておる人が来るわけでありますから、そういう人たちには、やはりそれ相応に待遇してやることがいいと思うのです。従つて一年というようなことは、原則として、二年なりあるいは三年なりにして、その人たちの将来を開拓してやるようなことをやつてもさしつかえない、また現在の情勢では、そういうふうにして教職につく人たちを誘致することが、大事じやないかと思うのですが、現在の情勢からしてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/128
-
129・稻田清助
○稻田政府委員 その点繰返すことになつて恐縮でございまするが、臨時教員養成施設、あるいは一年の簡易課程なり、あるいは認定講習なり、そういう再教育施設によりまして、臨時免許状を有する者を仮免許状を有する者として充実する、仮免許状を有し得るようにしてあげるというような点に、私どもとしては最も力を注いで参りたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/129
-
130・小林信一
○小林(信)委員 それなら、なおさら二年なり三年という長い期間を与えてやることが、いいんじやないかと思うのです。これが一年ごとに更新されるとすればせつかくそういうふうな機会を与えられても、それに自分が安心して向うことができないで、一年で首を切られたらどうなるかという心配があると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/130
-
131・稻田清助
○稻田政府委員 根本は、免許法の基本的態度の問題だと思つております。教員の資質向上ということを考えまして、国民に対しまして教育の水準を保障するという点から、この免許が制定せられたといたしますれば、やはり基本線は、普通免許状、仮免許状の線にとどまるべきであつて、臨時免許状は、でき得る限り少からしめるという建前だと思つておりますが、ただ現在の事情を見まして、ここに一年延伸することにいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/131
-
132・岡延右エ門
○岡(延)委員長代理 本日はこの程度で散会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/132
-
133・岡延右エ門
○岡(延)委員長代理 御異議なしと認め、本日はこれにて散会いたします。
次会は明日午前十時より開会をいたします。
午後三時四十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X01419510322/133
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。