1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年三月三十一日(土曜日)
午前十一時七分開議
出席委員
委員長 長野 長廣君
理事 岡延右エ門君 理事 佐藤 重遠君
理事 若林 義孝君 理事 小林 進一君
理事 松本 七郎君 柏原 義則君
甲木 保君 小西 英雄君
坂田 道太君 周東 英雄君
高木 章君 東井三代次君
圓谷 光衞君 奈良 治二君
武藤 嘉一君 井出一太郎君
笹森 順造君 坂本 泰良君
渡部 義通君 小林 進君
浦口 鉄男君
出席国務大臣
文 部 大 臣 天野 貞祐君
出席政府委員
文部政務次官 水谷 昇君
文部事務官
(大臣官房人事
課長) 岡田 孝平君
文部事務官
(大臣官房会計
課長事務代理) 相良 惟一君
文部事務官
(初等中等教育
局長) 辻田 力君
文部事務官
(大学学術局
長) 稻田 清助君
文部事務官
(大学学術局職
員養成課長) 玖村 敏雄君
文部事務官
(社会教育局
長) 西崎 恵君
文部事務官
(調査普及局
長) 関口 隆克君
委員外の出席者
文部事務官
(大学学術局学
術課長) 岡野 登君
專 門 員 横田重左衞門君
專 門 員 石井つとむ君
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三月三十一日
委員平島良一君及び飛嶋繁君辞任につき、その
補欠として奈良治二君及び武藤嘉一君が議長の
指名で委員に選任された。
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三月三十一日
産業教育法案(長野長廣君外十七名提出、衆法
第四〇号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
文化功労者年金法案(内閣提出第九九号)(参
議院送付)
産業教育法案(長野長廣君外十七名提出、衆法
第四〇号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/0
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001・長野長廣
○長野委員長 これより会議を開きます。
文化功労者年金法案を議題とし、前会に引続いて質疑を続行いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/1
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002・松本七郎
○松本(七)委員 議事進行について昨日免許法のことで、自由党の岡さんから、参議院がいつまでも握つておつてけしからぬというお話があつた。参議院の運営については、いろいろ私ども意見はございますが、衆議院の方も、そうやつて主張する以上は、もつと出席をよくしてもらわなければならない。参議院にそういうことを言う以上は、やはりこちらも出席をよくして委員会を開くということでなければ、そういうことを言う資格はないと思うのです。ですから、もう少し出席を見てからやつてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/2
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003・長野長廣
○長野委員長 ごもつともだと思います。先ほど来、極力本日出席者のこの委員会出席を督促しております。そのうちにやつて来ると思いますから、時間の関係もありますので、そろそろ始めたいと思います。松本君の御意見に対しましては、さらに手を加えて出席するように努めます。
それでは松本七郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/3
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004・松本七郎
○松本(七)委員 新しく文化国家を建設しようとする際に、文化に特に顕著な功労者を顕彰するために法律をつくろうということで、われわれは大賛成でありまするが、ただ非常な著しい功労者を表彰あるいはそれに年金を与えるというようなことだけでは、真の文化の向上発達というものは期待できないと思います。やはりこの文化を大衆の中に浸透させ、向上発達を期するためには、こういうふうな功労者を表彰すると同時に、大衆がその文化的な向上ができるような基礎をつくるということが、並行して行われなければならないと思うのであります。現在たとい優秀な少数の文化功労者が出ましても、現実の状態は、小学校の生徒が映画を見るのでさえも、高い税金を払わなければならないというような状態で——もちろん国の財政は非常に苦しい状態であります、金が必要なことはわかりますが、あまりに安易な方面のみに税を課するということに急にして、この文化という面があまりに軽視されていると思うのであります。この点は大臣も同感いただくと思うのでありまするが、こういう文化的にすぐれた法律案をつくろうとされろ以上は、一方においてはその基礎になる大衆の文化の向上についても、よほど覚悟をきめて、大きな経綸を行つていただかなければならない。これをわれわれは期待いたしておるのでありますが、そういうふうな当面の大衆の文化あるいは健全娯楽というようなものに対する税の負担、これの軽減あるいは文化の向上についての構想、経綸というものを、この際はつきり伺つておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/4
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005・天野貞祐
○天野国務大臣 今松本委員の言われたことは、私も全然同感でございます。でありまするが、またこういうことも、一般国民の文化の向上ということに対して役立つことだと、自分は信じております。これで決して足るとは思いませんが、たとえば私は外国などへ参りまして非常に感動したことは、スイスのチューリッヒにおりれば、そこにべスタロツチの銅像があるとか、あるいはドイツのハイデルベルヒに行けば、ブンゼンの大きな銅像があるとか、至るところにそういうものがあつて、いかに文化というものが国民にとつて重大なものであるかということを示しているのでありますが、日本では従来はまつたく軍国的なことばかりであつた。この文化功労者年金というようなものも、そういう意味で、こういうものをつくるということが、やはりいかにこの文化というものが重大な意味を国家生活において持つているかということを、国民に知らすという意味であつて、そういう意味ではやはり一般大衆に対しても、これが意味を持つたものであるという考えを抱いております。しかし今おつしやつた通りに、決してこれをもつて足ることではなくして、一般の人たちが十分芸術などを味わえるようにするということは非常に必要で、文部省などでも芸術祭というようなものも催しますけれども、あれなどもまだ不徹底である。もつとこういう芸術祭などの場合にも、一般の人々がよい芸術を楽しむことができるというようなことにしなければならない。入場料などのことにつきましても、私も全然同感でございまして、そういう方面に向つて今後できるだけの努力もいたしたいと思います。あるいは読みものなどについても、すべて文化的なものが一般に浸透するように、私も心がけて善処いたす考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/5
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006・松本七郎
○松本(七)委員 多少具体的になりますが、たとえば劇場一つ借りるという場合でも、非常に高い金を払わなければ借りられぬというような状態で、一つの芸術をとつてみても大衆に浸透するというような具体策が、現在までのところ何らなされておらないのであります。そこで総合的な国立の劇場というものを建設される御意思がありやいなや、その点を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/6
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007・天野貞祐
○天野国務大臣 私はもし財政が許すなら、ぜひそういうことをしたいと思いますが、それに幾らか近いことは、近代美術館というものの創設を、まず考えたわけでございます。近代美術館の創設によつて一般大衆もよい芸術品に接することのできるようにしたいと思います。その次には劇場についても、できるならばいたしたい考えでこぎいますが、さしあたつては近代美術館に力を注ぐ考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/7
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008・岡延右エ門
○岡(延)委員 この法案は、参議院において修正されております。しかもこの法の目的というものは一番かんじんであるが、「この法律は、学術、芸術その他」というその目的のうちの非常に大きい、一番上に書いたものを修正しております。これはどういうふうな修正であるか、もつと文化というものを、文化功労者というものを広く解釈する意味であるかどうか、その点をお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/8
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009・天野貞祐
○天野国務大臣 文化という概念は、御承知のように、自然に対する文化であつて、普通いう、英語をもしかりますならば、カルチユア、シヴイリゼーシヨンというものを含めて文化ということが言えるわけでございます。しかしそういうように広げてしまうと、この法案に適しないことになる。でありますから、文化の概念は、学術、芸術、宗教、教育、思想というような範囲に限る考えでございます。しかしそういう考えでも、ここに「学術、芸術その他」というような言い方をするよりも、文化と一般に言つた方が、かえつてその趣意をよく表わせるという参議院り御趣旨でありますし、私もただ文字のことでございますから、この修正に応じたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/9
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010・岡延右エ門
○岡(延)委員 いや、広くする意味の修正ならば、われわれもむしろ歓迎するのであります。そこで私はこういうことを申し上げたいのであります。終戦まで、こういつた勲章といいますか——これはまあ勲章に似たような特権でありますから、これは軍人と文官が非常にアアンバランスであつた、これは御承知の通りであります。ちようど高等官一等程度の、要するに中将ですね、その文官の高等官一等程度の人が、大体高等官五等の少佐ぐらいの勲章をもらつている、こういう非常なアンバランスがあつた。それで勲章制度というものに対してああいう批判も起り、結局今のところ停止されておる、死んだときだけやるということになつておるわけでありますが、この法案は、それよりさらに輪をかけたアンバランスである。もう比較ができない。あなたは文部大臣であると同時に、国務大臣である。何か辞令の場合には、国務大臣に任じ、文部大臣に補すというような辞令だと思います。あなたは文部大臣としては、文化人だけを尊重してよろしい。けれども、国務大臣である以上、国全体のあれに目を注がなければならない、その点は、あなたはどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/10
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011・天野貞祐
○天野国務大臣 まことにごもつともな御意見だと思います。これは今さしあたつてこういう一歩を踏み出したのであつて、全体の国家功労者についても、どういう形かにおいて、やはりこういうような栄典制度というものが、将来設けられるものと期待いたしております。そういう栄典制度に対する第一歩として、こういうものを設立しようという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/11
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012・岡延右エ門
○岡(延)委員 事は、この法案の提出されるまでの経緯として、これを議員提出にしたらどうかという話があつた。ところが議員提出としますと、われわれは文部委員であるが、それより前に国会議員である。だから、国会議員である以上、全般のことを考えなければならぬのに、このアンバランスをいかんせんというのでつかれたら、われわれは一ぺんに参つてしまう。そういう意味で、われわれは議員提出法案とするのにふさわしくないというので、政府提案になつたわけであります。そこで私の言わんとするところは、この趣旨には非常に賛成である、けれども、このアンバランスをつかれたら、国会議員としていかにも審議が粗漏であつたと非難されるうらみなしとしない。あなたが国務大臣として、今後全般にこれを推し進めて行ころという考えだということを承りましたので、私はそれで了承するのでありますが、あなたが閣内におられる以上、今のお言葉を、単なる言葉にとどめないで、これを中核として全般に推し進めて行くように、極力努力してもらいたいということを、私は強く要望しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/12
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013・天野貞祐
○天野国務大臣 よくその御趣旨に沿うように、努力する考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/13
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014・浦口鉄男
○浦口委員 この法律ができたことは、たいへん喜ばしいことだと思うのであります。実はきのう岡田政府委員にも、ちよつとお尋ねしたのでありますが、それは提案理由の中にもありますように、従来天皇の大権としてありました文化勲章制度とは別個にこれができたということについてであります。きのうの説明によりますと、文化勲章制度は、憲法十四条の第三項にありますように、何らの特権を伴わない、すなわち年金などを与えることができない、いわゆる精神的な名誉だけを与えるものだ。それでは非常に物足らない、こういう意見によつて物質的な栄誉を与えるということにおいてこの法案ができた。しかも従前の文化勲章の制度とは、その表彰の対象がそこに全然相違がない。場合によつては、文化勲章を受けている人に、今度の年金を授与される面が非常に多いということを考えますと、どうもこれが二つなければならぬという根拠が薄いように思うのでありますが、これは憲法の十四条の改正まで行かなければ一本にできないということで二本にされたのか、その点を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/14
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015・天野貞祐
○天野国務大臣 この法案の起りは、やはり文化勲章受領者をもつと優遇したいということが、このことの起りでございます。ところが、今申したような憲法上の疑義については、有力な憲法学者の中には、そういうことは問題でない、よろしいのだ。文化受賞者に向つて賞金を出してもよいのだ、憲法の解釈上それでよいのだという議論もあつた。しかし他には、これは抵触するという論もある。そこで、とにかく文化勲章というような制度に、憲法上の疑義が伴うということはおもしろくない、だから疑義を伴わないようにしたいというのが、文化功労者年金法案を別につくるに至つた根本の理由であります。しかも同時に、こういう理由も含まれております。それは、文化勲章をいただいた方を主とはしますけれども、場合によつては、文化功労者年金は、もう少し範囲を広くして、先ほど申しました意味の、文化に対する功労者ではありますけれども、必ずしも文化勲章をもらわない方でも、場合によればこの恩典にあずかることもできるということの方がよいという御意見が、諸方にあるものでありますから、そういう意味も含めて、こういう別な法案にいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/15
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016・浦口鉄男
○浦口委員 大体了承いたしました。ところでそういうことになりますと、これがやはり二本でずつと行かなければならぬという理由は、たいへん薄弱なようにも考えられるのであります。いろいろ憲法の改正というような大きな問題にもなつて参りますから、これは早急にどうということはむずかしいと思いますが、将来は、やはり一本になるべきではないか、そういうふうに考えるのでありますが、大臣はいかがお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/16
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017・天野貞祐
○天野国務大臣 これは原理的に申せば、浦口さんのおつしやる通りだと思いますけれども、現在の社会事情と申しましようか、そういういろいろな点を顧慮すると、この二つにわけて行つて、そうして文化勲章をいただかない方でも、その事情によつてはこの年金をいただけるというように広げておく方が、実際にはいいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/17
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018・浦口鉄男
○浦口委員 その問題はそれだけといたしまして、実はこの文化功労者を決定する機関といたしましては、選考審査会がございますが、最後は文部大臣が決定されるのでありますので、その範囲について、ひとつお尋ねしておきたいと思うのであります。それは、もちろん文化というものが、非常に広い意味合いを持ちまして、先ほど松本委員からお話がありましたように、ひいては全国民の生活水準の向上というところから始まらなければならぬということは承知するのでありますが、そういうことにつきましても、現在までに行われておりまする表彰が、どうも一般大衆からは非常に高踏的なような感じがいたすわけであります。もちろん最近の対象といたしましては、芸能関係なども非常に表彰されております。なお和歌、俳句というようなものも出ておるわけでありますが、日本の文化という面を取上げてみましても、かつての徳川時代の庶民文学というようなものが、日本人の性格を世界に、非常に短かい表現をもつて示すというようなことで、大きな特徴があると思うのであります。そういう点にまでこの表彰を広げて行くことが理想であるかどうかということと、いま一つは、現在国家の財政において、国民の生活を全面的に引上げるということはなかなかむずかしいといたしましても、とりあえず、そういう中において、たとえば地方の公民館などを中心といたしまして文化に恵まれざる農村の子弟などに対しても、非常な慈愛を持つて、文化などの向上に盡しているという、目に見えないような隠れた人があると思います。これなどは、もちろん厳格な意味から申しますと、学術とか芸術とか、高い意味の文化とは、常にかけ離れているようには考えられますが、しかし私は、こういう国家の経済情勢においても、なおそこにいつくしみと慈愛を持つて、こういう文化に恵まれざる子弟に対して献身的な努力をしている隠れた人なども、大いに表彰してほしいというようなことを考えるわけであります。そういうふうな面について、大臣の御意見を承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/18
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019・天野貞祐
○天野国務大臣 今のお話は、要するに文化という概念はこれでよいけれども、その中をできるだけ弾力性を持たせるといいますか、そういうことが必要ではないかという御意見かと思います。私は、この法案をつくるに関係して、一番むずかしいことは、委員会を適正につくるということだと思います。これには、決して狭い意味の学者、芸術家というのではなくして、もつと広く実業界とか、そういう方面からも入れて、ほんとうに日本の良識を集めて、ここできめて行こうという考えでございます。そうして、法律は大綱を示して、その委員会に十分審議してもらつて、そこで範囲などもきめるとかいうふうにして行きたいと思います。けれども、今おつしやるような社会事業なども、どこまでこれに入つて来るかというようなことは、非常に限界的にむずかしいから、委員会の良識に訴えて行きたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/19
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020・浦口鉄男
○浦口委員 私はこれでよろしゆうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/20
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021・佐藤重遠
○佐藤(重)委員 大臣に二、三点お伺いしたいのですが、今出ております文化功労年金法、これはまことにけつこうだと思うのであります。ただ私は、こういうことを一つお尋ねしたいのです。すでに非常な苦労をして、りつぱな文化の成績をあげた人たちに、単に老後のためとか、あるいは過去の功績に報いるためとかいうのでなしに、将来においてそういつたりつぱな学者や功労者が出ろような積極的な保護助成の対策が必要だと思う。これに対してひとつ所見を伺つておきたいのであります。たとえば科学研究費だとかあるいは大学の研究費とかいうような費目があるのでありますが、どうも私の知つております範囲では、非常に金額も微々たるものでありまして、そこで研究したい、勉強したいというような優秀な学者、勉学者がおりましても、十分に機能を発揮することができないというような現状のように私は見るのであります。一面から言えば、余命幾ばくもないような年寄りに対する対策でなしに——それはそれでけつこうでありますが、もつと積極的に、今後の日本を背負う優秀な人を養成する対策が、何かなくてはなるまいと思うのでありますが、まずそれをひとつお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/21
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022・天野貞祐
○天野国務大臣 今のお考えは、もちろんごもつともなことでございますが、ただ研究者の養成ということと、この年金法案とは、二つの問題だと私は思つております。一方においては、こういう功労者を顕彰する、することによつて、国民全体に向つて、文化というものが、国家においていかに重要な性質を持つものであるかということを、納得してもらうというような趣意であります。他方は、学術の振興のために、今後どうするかということでございます。その問題の重要なことは、おつしやる通りでございまして、私もそれに対しては、一方においては育英資金を増額してここに特別研究生というものをつくつて、優秀なものは現に六千円から七千円ぐらいの補助を大学院において受けております。大学を卒業して五年間もそういう補助を受けますと、相当学問をやれるということは、人の経験いたしておるところでございます。しかし、それではまだ足りない、それ以上学者としてやる研究費は、研究費の増額ということによつて、今年は十分とは言えませんけれども、それでもかなりの増額をいたしております。また年々そり額をふやして行く。一方にはすぐれた研究所を助成して行く——私立のものでございますが、そういうものを助成して行くとか、さまざまな方法をもつて研究者をつくり、研究の発達向上を助成して行くというようなことを別に考えて行く考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/22
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023・佐藤重遠
○佐藤(重)委員 もう少し具体的にお話をしてみたい、また御意見を拝聴したいのであります。御承知の通り、大学の研究費という費目がございます。ところが実際においては、これが建物の修理費とか電灯、水道等々の物件に対する管理関係の費用にほとんど流されてしまつて、かんじんな学者の研究等のわけ前は、きわめて微々たるものであるように私は聞くのでありますが、そういう点について文部大臣はどういうふうに御承知になつておりましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/23
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024・天野貞祐
○天野国務大臣 大学の研究費というのは、今大学のそういう、何といいますか、しきたりは、私どもも、必ずしも適当でないと思つております。すなわち研究費というものに、光熱費というようなものも含まれておるというようなことから、純粋な研究にまわる費用がそこで食われるということは事実でございます。けれども、食われるといつても、本年などは、私の記憶が間違いなければ、十億ぐらいふえていると思います。ですから、そのうち幾らか食われたとしても、従来の倍になつております。大学の研究費が従来の倍になつておりますから、今後ますますそういう方針を続けて行けば、研究費も、日本の経済事情面から、十分なことはできませんけれども、あるところまでは、やれるようになるという考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/24
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025・佐藤重遠
○佐藤(重)委員 順次増額されて行つているようなお話でありますが、私の知つておりますところによりますと、たとえば科学研究費は、年額五億程度のようでありますが、昭和二十五年度も二十六年度もやはり五億で、ちつともふえていないように数字が説明しているのであります。この点はどんなふうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/25
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026・天野貞祐
○天野国務大臣 それはこういう事情であります。その五億というのは、学術会議の方でもつて一般の研究者にわける費用でございます。今私が倍になつたというのは、国立大学の研究費でございます。私は、池田蔵相に対して、五億では困る、前年度も五億ということで、また今年度も五億ということでは困ると申しましたところが、池田蔵相は私に対して、それならば国立の研究所とか国立大学の方に十億もふやしているから、その方から抜き出してこつちの方にやろうというお話ですから、それでは困るのであつて、学界の事情から申しますと、国立大学附属の研究所とか、国立大学の教室とかいうものは、研究費を充実することが必要で、学術会議に属する一般の研究費というものも大切ですけれども、しかしこれは次にして、そちらをやつて行こうというのであつて、研究費がふえてないというのは、そういうわけ合いからであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/26
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027・佐藤重遠
○佐藤(重)委員 文部大臣の御苦心は、まことに了といたしますが、願わくばその御方針をさらに一段と強力に御推進力をお願いいたしたいのであります。私ども与党でありますから、むろん現内閣に対して、相当な圧力と申しますか、鞭撻と申しますか、覚悟を持つておりますが、やはり主管大臣がひとつ積極的にやつてくださらぬことには、やりにくうございますから、御遠慮なしに、こういう方面の予算を請求されることを要望いたします。
それからもう一つお伺いしておきたいのであります。これはやはり具体的な事例によつてでありますが、今お互いに日本国民にとつて重大な問題の一つは、食糧問題だと思うのであります。食糧の合成研究の問題でありますが、これは申すまでもなく、私ども日本民族にとつて、まことに重大な問題だと思うのでございます。ところが、十年一日のごとく、あるいは百年一日のごとくと申しますか、千年一日のごとく、食糧合成研究なるものは、どうも非常に遅れておると思うのであります。たとえば、蛋白質の急速生産の研究のごとき、これは欧米その他の諸国では、相当進歩しておるのであります。こういうようなことは、やはり相当な経費もいることでありますけれども、ぜひとも何とかしなければならぬ問題だと考えるのであります。またその一環といたしまして、澱粉の合成研究のごときも、重大な問題だと思います。わが国では、すでに食糧合成の仕事につきましては、相当研究に手をつけておる学者もおるようであります。中には世界的な水準に達している若手の学者も出ておるようでございますから、これにさらに保護助成、また奨励の方策を講ずることによつて、日本の重大なこの食糧問題などは、きわめて効果的に解決せられるだろうと思うのであります。私はこの食糧問題だけでも、年額十億前後の助成をなす必要がありはせぬかということを考えております。またその方面の学者も、そう言つておるようでありますが、文部大臣はこの点について御共鳴が願えましようか。ひとつその御所見を伺つておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/27
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028・天野貞祐
○天野国務大臣 私は、文部行政に携わるようになりましたときに、まず第一に三つのことをやりたい。第一は義務教育、第二番目には育英制度の拡充、第三番目には学術の振興ということでございまして、今おつしやつたのは、私の努力しようという眼目の一つにしておることであります。私も多年大学におつた人間でありまして、研究費がいかに不足しておるかということもよく承知して、自分としては相当な努力をいたしたつもりでも、なかなかそれが思うように参りませんが、しかし今の御激励もあることですから、この次には、もつと何とかそこに研究費が出るように、なお一層努力をいたしたいと思います。ただ先ほども御説明申しましたように、大学の方の研究費は、ほぼ倍になつておるということになつておりますから、そこを粗略にいたしたわけではないのです。しかし今後も、なおその点に力を注いで行きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/28
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029・佐藤重遠
○佐藤(重)委員 研究は、もちろん大学などが専門にやることも適当でありましようが、しかし一般の民間に相当な学者研究家がおるようでございますから、そういう方面も十分に均霑するように、その保護助成、奨励の対象とすることを御考慮おきをお願いいたしたい。
最後に、私は大臣にお尋ねもし、またお願いもしたい一つの点は、どうも従来の文部行政の行き方が、非常に唯物的になつておりはせぬか。今日社会道義の頽廃、社会道徳が低下しておるということは、われわれの一般に見聞するところでありますが、その原因するところ、由来するところ、だんだん考えてみますると、結局は精神文化を非常に軽視しておるということが、近ごろの政治の一つの行き方になつておりはせぬか。出る法律も出る法案も、ほとんど大部分は唯物的方面のものが多いのであります。精神文化方面についてのひとつ雄大なる構想のもとに、日本民族の将来を立て直す大方策が、どうしてもこれは文部大臣を中心にして構想を立ててもらわなければならぬと私は考えるのであります。ことに東洋には、幾千年来つちかわれたりつぱな精神文化というものがあるにかかわらず、何でもかんでもまねごとをする。ことに敗戦後最近の状態を見ておりますと、まねごとが非常に多い。軽薄なことが見受けられる。日本独特の民族精神であるとか、従つて愛国の熱情であるとか、自主性であるとかいつたものが、だんだん消えてしまうのじやないかということを、私は非常に憂えるのであります。どうしてもこれは大いに反省して独自の文教政策を立てるべきではないか。まねごとではだめだ。文化々々といいますけれども、何でもアメリカさん、あるいはその他の欧米のまねごとさえすれば文化であるかのごとく錯覚しておりはせぬか、私どもの見るところでは、文化というものは、少くとも倫理性がなくてはいけないと思うのであります。珍しいことでさえあれば、動物に類する裸踊り、ああいうことも文化の一種のごとくに考えられておるらしい。私は、一体人間と動物の区別は、五倫五常の倫理性の有無によつてのみ考えられる、こう考えておるのであります。ただ形は人間である、言葉も人間の言葉を使う、だからこれは人間であるといつて、精神的に人間でないようなものを、近ごろ至るところに見るのであります。私はこれをほつておいてはいかぬと思う。ことに、今後われわれが一番努力しなければならぬのは、日本の自主性の回復、また将来における発展、こういうことを考えるのでありますが、精神文化方面における文部大臣の対策、構想いかん、これをひとつこの機会に伺つておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/29
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030・天野貞祐
○天野国務大臣 まず先ほどの民間の研究所、研究者を助成することが必要だというお話につきにましては、私もまつたく同感でございまして、今、決して十分ではございませんけれども、四千万円以上、民間の研究所の助成に対しましては用いております。しかしこれでは決して十分ではないのでありまして、今後ますますそれを増して行きたいと考えております。
それから、精神文化と申しましようか、そういう精神的な自主性、そういうことについては、ごもつともなお考えと私も考えております。ただ、そういう考えにつきましては、たとえば戦争中のように、精神的ということばかりを言つて、そうしてまた日本の国をたつとぶということはよいですけれども、日本があたかも神国だとかいうようなことを言つて来る、そういうように傾くことは絶対いけないことだ。日本だけがりつぱな国家であつて、ほかは夷狄だというようなことは、神話時代の思想であつて、今日には全然通用しない思想であるにかかわらず、そういう思想を抱いたということが、この敗戦の根本である。しかしまたその反対に、現在のようにまつたく国家というものを忘れてしまつて、ただ世界と個人があるだけのように考えて、そうして国家の持つておる自主性、自発性というようなものをまるで理解しないということは、非常な間違いであるということを、私は考えておりますから、それで日本的であるということが世界的であるということと少しも矛盾しない、ほんとうの意味における世界的というのは、ほんとうの意味における日本的なのだ。具体的に言うならば、ほんとうによい世界人は、自主的精神を持つた日本人なのだということを力説いたしておるわけで、一般に向つてほんとうの意味の国家主義が、ほんとうの意味の世界主義である。世界を忘れた国家でもいけないし、国家を忘れた世界でもいけない、そういう世界観を持つて一般の教育を指導して行きたいと考えております。そういう考えから、私が道徳教育の振興を唱えたり、その他のことを唱えておるわけでございますが、そういう線に沿つて今後ますます進んで行きたい考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/30
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031・佐藤重遠
○佐藤(重)委員 これは前の国会の委員会でも、文部の政府委員に御質問申し上げておつた点の一つでありますが、青少年、ことに学徒の武道の教育の問題であります。柔道は、今年からやつていいことになつたようでありますが、私は日本の精神文化の一面を、やはり分担しておつたと思います。剣道を、もつと奨励してはどうか、もうたいてい占領軍側でも、日本の剣道というものは、人殺しや侵略を目的とするものではないのであつて、本来は修養の一つの鍛錬方法であつたということが、おわかりになつておるのではないかと思うのであります。またわからしむるように、当局の努力方を私は再三要望しておるのでありますが、こういうふうに国際情勢が逼迫しており、また日本人の再起を必要とする際には、やはり精神方面、愛国心を作興すると同時に、やはり体力、あるいはみずからを守ること、必要に応じて進んで攻撃すること、その一つの準備として剣道のごときは最もいい、こう私は思つておるのでありますが、どうでしようか、まだその筋からお許しが出ないような状態にあるのでありましようか。もしお許しがないものだとすれば、占領政策にはなはだ矛盾がありはせぬかという疑問を持つような点もあるのでありますが、当局はいかに努力されておるか、その後の経過をこの機会に、なるべく大臣から聞いておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/31
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032・天野貞祐
○天野国務大臣 私は剣道というふうなもののいいことは、やはりわれわれがただ安佚に生活するというのではなくて、ほんとうに努力してやるとか、ほんとうに礼儀を守るとか、そういうような、人間に背骨を入れるような意味で、それ自体いいことだと思つておりますが、しかしまた、日本の軍国主義の復興というようなことに対しては、非常に世界が敏感でありますから、そういう点に対して、自分たちも言論を慎むとか、いろいろなことが必要だというふうに思つておつて、その趣旨は賛成ですけれども、にわかにこれを実現することができるかどうかということは、私は今ここではつきりしたことを申し上げることはできません。御趣旨は、どこまでも賛成でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/32
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033・佐藤重遠
○佐藤(重)委員 さいぜん専門委員の方に注文しておきましたら、今一つの例をちようだいしたのでありますが、昨年の八月、日光において全国武道大会が開かれたそうでありまして、そのときに頭のいい世話人がおつたものと見えまして、フエンシングという名前でやつて、たいへん盛会で、外国のお客さんもたくさんお見えになつたということでありました。名称などはどうでもいいと思うのでありますが、これはひとつうんと奨励してもらいたい。これはやはり組織的に学校の正科の一つとしてやらせたいと思うのでありますが、その方針について、大臣から御意見を伺えれば幸いであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/33
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034・天野貞祐
○天野国務大臣 私はその方針については賛成ですが、ただこういう時世は、やはり非常に注意深くなければならぬ時世である。世界に日本一国あるのではなくて、世界の日本である。しかも今までの無謀な戦争によつて、日本は世界から非常に注意深く見られておる際でございますから、よほど注意深くなければならないと考えます。ただ剣道そのものではありませんが、剣道を幾らか併用したと申しますか、モデイフアイしたものを、正科ではありませんが、すでにやつてもいいことになつておると思います。なお詳しいことは、政府委員から御説明させたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/34
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035・辻田力
○辻田政府委員 ただいま剣道のことについて御質疑がございましたが、大体大臣からお話がございました通りでございますが、剣道の問題は、御承知の通り柔道については、すでに学校柔道としてこれを実施することが認められましたので、剣道あるいは弓道につきましても、ぜひ認めていただくように、関係方面にお願いをしておるのでございますが、しかし剣道は、最初禁止されておるいきさつ等もございまして、今日のところでは、まだ正式の許可はないのでございます。その間におきまして、竹刀と申しますか、ちよつと剣道と類似しておつて形は違うというのがありまして、その竹刀競技をスポーツとしてやるようなことについて、だんだんと向うの了解がつきつつあるのでございます。まだ正式に了解したというところまでは行つておりませんが、今後政府としましては、お話の趣旨は十分わかつておりますので、努力したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/35
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036・圓谷光衞
○圓谷委員 文部大臣にお伺いしたいのですが、文化ということの意味であります。文化は生活一切の向上をさせるためのものだとか、いろいろ言われますが、皆さんの意見を聞いても、私はよくわからないのですけれども、文部大臣は、文化ということの定義でもできないものでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/36
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037・天野貞祐
○天野国務大臣 文化ということは先ほども申し上げましたけれども、自然に対する文化ということでして、文化——カルチユアと言いますが、これはもと耕すという字から出て来た言葉であります、同じ野菜でも、野に置いておくときは、それは自然なのですけれども、これを野菜として栽培すれば文化である。そういう意味で、ごく広い意味においては自然に対する文化で、人間の力が加わつて、自然を改造して、人間の目的にかなうようにしたものが文化です。けれども、ここはそういう広い意味の文化ではなくて、もつと制限された意味で、学問とか、芸術とか、宗教とか、教育とか、思想とか、文化功労者年金は、そういう狭い意味でやろう、こういう考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/37
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038・圓谷光衞
○圓谷委員 もう一つ、文化功労者の審査会でありますが、大体予算面に、お見込みは一年にどのくらいの予算をおとりになるのですか、人数は規定していないと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/38
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039・天野貞祐
○天野国務大臣 受賞者は、さしあたつては、今までの文化勲章を受賞された方が三十四人ありますので、三十四名というようにきめておりますが、これからは逐年十名ぐらいの人を増加して行こうという大体の見当でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/39
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040・圓谷光衞
○圓谷委員 一年に十人ぐらいずつふやして行くと、最後の予算はどのくらいになりますか、先に死ぬ者もありますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/40
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041・岡田孝平
○岡田(孝)政府委員 とりあえず二十六年度といたしましては、先ほど申し上げましたように三十四名分という一応の見込みをしておりますが、これが平常年度になりますと、大体十名ぐらい毎年追加して行く、しからば将来何名になるかということにつきましては、実際にやりまして、それによりまして、あるいは定員制を設けるとかいうようなことをいろいろ考究したい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/41
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042・小林進
○小林(進)委員 佐藤委員の質問に関連して伺います。民間研究所に四千万円くらい出しておられるというのですが、民間研究所のこの四千万円に該当する数はどれくらいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/42
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043・岡野登
○岡野説明員 現在文部省所管の法人で、学術的な研究に従事している研究機関の数は、約百六十ほどございます。しかし予算によつて限られておりますので、文部省といたしましては、その機関から詳しく調べをとりまして、それを日本学術会議におまわしいたしまして、国として補助に適当する団体を定めていただきまして、ABCというようなクラスわけにして行きます。実際に補助しておりますのは三十六にすぎません。Aのうち、また選びまして、三十六に対しまして現在補助をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/43
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044・小林進
○小林(進)委員 この問題は、かつて衆議院で決議案が上程されまして、科学技術を重視しなければならぬということが、全体の要望でもつて決せられたのですが、その場合にもやはり民間研究所をもつと考慮しなければいかぬということが特に強調されたのです。今お聞きしますと、大臣御苦労なさつておるようですが、非常に零細な補助であつて、おそらく国民が要望するところにこたえられておらないように考えられるのであります。三十六としましても、四千万円ならば一つに対して百万円程度でありまして、なおその他それに該当するものが多々あるという点から考えますと、やはり相当こういう問題を考慮していただかなければならぬと思います。なおこの問題は、いずれかの機会にお伺いすることにいたしますが、大学の研究所に対する額が、先ほど昨年の倍になつておるというふうにお話になつたのですが、実際の額は幾らになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/44
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045・天野貞祐
○天野国務大臣 前年度十三億のが、今度は二十四億になつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/45
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046・小林進
○小林(進)委員 それではこの法律についてお伺いいたします。第一条の目的のところに「顕彰する」という言葉があるのでありますが、やはりこれはあくまでも顕彰であつて、それ以外の目的というものを考えることは、その顕彰の意味をそこなうものと思います。提案理由の中にも顕彰することがきわめて重要な意義を有するというふうに述べてあるので、この際お聞きしたいと思いますが、重要な意義というこの内容を、詳しく御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/46
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047・岡田孝平
○岡田(孝)政府委員 この法の目的は、ただいまお述べになりましたように、第一条にあります通り、顕彰するということでありまして、それは特に文化の発達に功労のあつた者に対しまして年金を支給しまして、物質的にもこれに報い、そういたしましてこれを優遇するということが目的でございます。しかし同時に、これがいろいろ学術あるいは芸術の発達、あるいは研究等を奨励するという意味も、やはり実際においては出て来ると思います。しかしながら、直接の目的は、顕彰いたしまして、文化国家としてかようなことをいたしますことが、非常に有意義ではないかというようなところにあつたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/47
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048・小林進
○小林(進)委員 私のお聞きするところは、こういうようなことをしなければ、文化が興隆しないというのか、こういうことによつて文化というものが興隆する、あるいは現在の状況が、こうでもしなければ文化というものが興隆しない、こういうような内容をどうお考えになつて、この重要な意義があると考えておるのか、その点をお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/48
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049・天野貞祐
○天野国務大臣 こういうことがなければ、絶対文化というものは向上しないと言つては、私はそれは言い過ぎかもしれません。しかしこういうことが文化の向上発達に非常に有意義だ、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/49
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050・小林進
○小林(進)委員 もう一つ同じ大臣のこの提案理由の中に「精神的な優遇ともいえるものでありまして、文化の功労者に対して何らか物質的な優遇方法を講ぜられたいとの要望はきわめて多い」という説明があるのでありますが、物質的な優遇をすることが、またそれと関連しましてどういう意義を持つのか、当局のお考えをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/50
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051・天野貞祐
○天野国務大臣 物質的な優遇をすることが、直接にはある人の功績を顕彰するという意味を持つておると思います。しかし同時に、優遇することによつて、その人をして生活に安んじておられるということが、国家が文化に対する功労者に報ゆるという意味も、それに加わつて来ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/51
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052・小林進
○小林(進)委員 とかく文化に功労のあるような人は、不遇な境地に置かれることが多いというような点をお考えになつておるのかどうか、そういう点からお伺いしたわけですが、大臣はいずれのお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/52
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053・天野貞祐
○天野国務大臣 私は、正常の社会情勢においては、そういうことを感ずることがないかもしれませんが、現在のような非常に異常な社会情勢においては、そういう必要も、私は強く感じておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/53
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054・小林進
○小林(進)委員 そういう点で、前の委員も御質問になつたと思うのですが、やはり一方において、今文化に貢献しつつある人たちは、割合苦しい中で貢献しつつある。そういう面をもつと国家がめんどうを見てやつて、力を注いでやる方が大事じやないか。そういう点に対しては、財政的に苦しいからといつて、個人の辛苦にまかせておいて、何か顕著なものと認められた場合にこれを優遇するというようなことでは、私の考えとすれば逆じやないか。もつと途中において、国家が研究なり、あるいは精進する者に対して見てやる、奨励してやるということが、多く講ぜられることが必要だと思う。でき上つたものに対してほうびをくれて、それまでの過程というものは、個人の力で、個人の労苦によつてやらせるというようなことでは、ほんとうの文化の興隆を目ざしておるのではないというふうに考える。こういう制度もいいけれども、やはりそういう方面に、もつともつと御考慮願いたい。民間研究所の問題を一つ取上げても、大臣も不満だとおつしやつておられるのですが、もつと心配してやらなければ、せつかく一面にこういう制度を持つても、何かそれは彌縫的なものにすぎないような感じがいたすのであります。それから先ほど大学の研究所の費用の問題も、多額に増額されておるとは申しますけれども、実情を伺いますと不満な点が多々あるようであります。これは相呼応すべきものだというふうに考えるのであります。
次にお伺いいたしますのは、天皇の栄典大権に基く文化勲章制度との関係であります。ただいまお伺いするところでは、この勲章をもらつておる三十何名を、ただちに該当者とするというふうに聞いたのですが、そうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/54
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055・天野貞祐
○天野国務大臣 初めに、小林さんの述べられました点は、私も決して現在の研究者を粗略にするという意味ではございません。その方も十分努力をいたしたいと考えております。こういう文化に功労のあつた——たいていは老年の方ですが、そういう人たちを顕彰するということは、従つてまた若い研究者にとつて、国家がどれだけ文化を尊重するかという意味において、非常な鼓舞激励を与えるものだと思います。それは、現に研究をしておられる人たちに、小林さんが直接お聞きになれば、よくわかることだと私は思つております。けれども、だからといつて、研究者自体をそのままにしておくというのではなく、私もぜひ努力して、もつとその生活も安定させたい。たびたび申しますことですが、教育者の待遇の別表をつくりたいというようなことも、別途においてこれを考えておる次第でございます。また、ただいま申しましたように、私設の研究所の補助は、まことにわずかでございますが、しかし私設の研究所の中にも、非常に優秀な研究所があつて、国立の研究所を圧倒するような業績を示しているところもあります。そういうところには、重点的に補助をして行くというようなくふうはいたしております。しかし、もとよりこれでは十分というわけではございませんから、今後ますますこれが増額になるようにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/55
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056・小林進
○小林(進)委員 ただいま文部大臣にお伺いしたところは、天皇の栄典大権に基く文化勲章制度と、どういう関係があるかということで、つまり三十何人をすぐこれの該当者として本年度表彰するということは、事実かどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/56
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057・天野貞祐
○天野国務大臣 これはもともと文化勲章を受領した人を優遇したいというとこから起つて来たのですが、しかし文化勲章をいただいた方をただちにこれにするというのではなくして、新しい委員会をつくつて、その委員会において選考の上いたすということでございます。そういう関係でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/57
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058・小林進
○小林(進)委員 だから、実質的には三十四名をやるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/58
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059・天野貞祐
○天野国務大臣 そのことはきまつておりません。その委員会でもつて文化勲章受領者はただちにやると考えるか、あるいはその中にある人は残して他の人を加えることがおるかもしれません。
制度はこの文化勲章受領者を主としますけれども、それに限らないという含みを持つておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/59
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060・小林進
○小林(進)委員 そうなると、また質問が長くなりますが、別個のまつたく新しい制度であるということが、実は提案理由に述べられておるのであります。先ほど圓谷さんのお話を聞いておりますと、政府委員の方からは、さしあたつて今年は三十四名やることになる、それは要するに文化勲章の方で表彰された者である。そうしてそこには何か密接な関係を持つてこの制度というものが出ておるもののように考えられる。しかし提案理由から考えますと、全然別個のものであるというふうにも考えられる。ただいまの文部大臣のお話を聞いても、それはそれであつても、あくまでもこの法律からすれば、審査会によつて検討するが、実際的には文化勲章をもらつた者はこれに該当する、大体こういう建前になると、この審査会の意味も、かえつて天皇の大権によるところの文化勲章の方に主眼が置かれて、これは附随するような形になるような感がするのでありますが、ほんとうに別個なもので行くのか、実質的にはそういう関連を持つて行くのか、そこをはつきりもう一度お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/60
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061・岡田孝平
○岡田(孝)政府委員 制度そのものといたしましては、一応栄典大権に基く勲章制度とは切り離しておりまして、別に新しいものとして考えております。それは勲章そのものと直接に結びつけますと、先ほど来お話のありました通り、ただちに憲法の問題が起りますので、そういう点は避けまして、新しいものとするわけであります。しかしながら、実際としては、やはり文化に非常に功労のあつた者といいますのは、どうしても文化勲章を授与された者が、実際には選考する際に有力な候補者になつて入つて来るということは考えられます。しかも必ずしもこれは一致するものではないのでありまして、選考審査会の方で、十分に、いろいろな角度から検討いたしまして、勲章受賞者以外にも、その他の方面からも選考することもあり得ると思いますし、いろいろありますので、必ずしもこれは一致するものではないのでありますが、そういう意味で、関連は十分にあるわけでございます。予算の点では、本年度は何名になるかということもはつきり予想ができませんので、一応のところといたしまして、まず三十四名というふうにいたしてあります。
これはその予算の範囲内で選考にあたりまして、その結果何名になるかわかりませんが、しかし一応のところとしては三十四名というものをとりあえず考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/61
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062・小林進
○小林(進)委員 何となく実質的にはそれに関連を持つのだが、表面的には、あくまでも独立的なものであるというふうにうかがえるのですが、そこら辺は、今後の問題になると思います。
さらにもう一つだけお伺いをいたします。この審査会の問題でありますが、この審査会の委員の選考にあたりましては、文化に関して高い識見を有する者のうちから文部大臣が任命すると、いうふうに出ておりますが、当局がこういう考えで人選をしても、この審査会に一つの心配があると思うのです。そういう心配に対して、文部省としては、そういう傾向になつてはならないというふうな見解を持つておられるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/62
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063・天野貞祐
○天野国務大臣 これは先ほどもお答えしたことでございますが、この審査会は非常に重要なもので、これがどうできるかということが、この問題を決するほどの重要な問題です。でありますから、私は文化諸団体の関係者とか、そういう人たちのいろいろな意見を聞き、また文部省にも、従来文化勲章受賞者選定委員会をつくつた経験もありますから、そういうものを参考にして、ひとり学者とか芸術家だけでなく、広く社会の良識を集めてこれをいたそうという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/63
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064・小林進
○小林(進)委員 文部大臣が天野文部大臣であられる間は、私は心配はないと思いますが、しかしこういうものは、とかくそれが本来の目的を達成するのでなくて、いろいろなことに利用されるようなこともある時代があると思います。大臣もこの委員の選考が一番重大な問題だとおつしやられるのですが、そういう意味からすれば、ただ単に文部大臣の任命でなくて、国会の承認を受けるというふうな高い権威のあるものにして行くことが、私はいよいよこの法律の目的を達するのじやないかと思うのですが、そういう点については御考慮されなかつたのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/64
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065・天野貞祐
○天野国務大臣 こういう委員会は、従来は文部大臣だけできめておつたのですが、しかし、なお念のために、今度は文部大臣が選考した上で、これを閣議に付してきめるということにいたしておりますから、私はそれでよいのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/65
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066・小林進
○小林(進)委員 閣議は、文部大臣個人よりも大勢であるし、またそうでなければならぬりつぱなものでしようが、さらに私たちの憂慮するところは、一党にこれが利用されるようなことも心配するために、国会の承認というふうな、もつと大きな権威を持たせたらどうか、こう私は考えるのでありますが、そこまで行く必要はないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/66
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067・天野貞祐
○天野国務大臣 将来そういうことも研究いたしたいと思いますが、さしあたつては、そこまでは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/67
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068・松本七郎
○松本(七)委員 大臣は提案理由の説明の中で、一時金的な性質を有する日本学士院の恩賜賞と、それから学士院賞、こういう金品交付の制度について言及されておりますが、恩賜賞と学士院賞の額は、どのくらいになつているかということと、それからこういう制度は、もし今度年金法ができますと、それに将来包含される意図がありやいなや。あくまで別個にやられるとすれば、この年金法ができたあかつきには、恩賜賞あるいは学士院賞というものも、やはり額を上げて行く御意忠があるかどうか、この点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/68
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069・岡田孝平
○岡田(孝)政府委員 日本学士院賞、同じく日本学士院恩賜賞というのがございます。これはいずれも一人五万円でございます。それから日本芸術院賞というのがございますが、これは四万円でございます。これらの賞金とこの年金とは、別なものとして考えておりまして、年金の方はきわめて厳選いたします関係上、かりに一人の人が両方タブりましてもさしつかえない、かような見解を持つておる次第であります。なお額の点は、ただいまさしあたつては考えておりませんが、そういう問題もあるいは関連いたしておりましたならば、十分考究いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/69
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070・岡延右エ門
○岡(延)委員 本法案につきましては、諸般の事情により、この程度で質疑を終局し、討論を省略して、ただちに採決せられんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/70
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071・長野長廣
○長野委員長 岡君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/71
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072・長野長廣
○長野委員長 それでは質疑はこれで終ります。
討論を省略して採決いたします。本法案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/72
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073・長野長廣
○長野委員長 起立総員。よつて本法案は原案の通り可決いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/73
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074・長野長廣
○長野委員長 これより産業教育法案を議題とするに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/74
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075・長野長廣
○長野委員長 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
〔委員長退席、佐藤(重)委員長代
理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/75
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076・佐藤重遠
○佐藤(重)委員長代理 これより産業教育法案(長野長廣君外十七名提出、衆法第四〇号)を議題といたします。これより提案者から提案理由の説明を聴取いたします。長野委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/76
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077・長野長廣
○長野委員 産業教育法の御審議を願いますにあたり、提案者を代表いたしまして私より本法案の立案の趣旨を御説明申し上げますとともに、これが目的及び内容の概略について申し上げたいと存じます。
国民の大きな希望と期待のうちに、新教育制度が実施せられ、今日ようやくその完成を見ようといたしております。その結果に対しましては、軽々しく即断をいたすことはできないのでありますが、ただしかし、われわれのはなはだしく失望を感じ、憂慮にたえないことが明らかとなつて参りました。と申しますのは、職業教育の全面的な萎靡低下の傾向であります。わが国は目下産業経済の再建を急がなければならない状態に置かれております。しかるに、次の時代にその中堅者たらねばならない青少年層は、その要請に逆行しておるのでありまして、今日急速にこれが対策を講じなかつたならば、近い将来におきまして、産業の発展をはばむ大断層となるであろうことは必然であります。なるほど眼前の事実としては、わが国現在の産業界は、活発な回復を見ておるのでありますけれども、これは戦前における産業技術者の復活であつて、すなわち壮年者以上の者の奮闘によるものと見なければならないようであります。
この欠陥の原因についてはいろいろ考えられるのでありますが、まずその重要な一つの盲点は、新教育制度の中に含まれております。すなわち中学卒業後、ただちに社会に出る者につきまして、戦前には、これらの者は青年学校、その以前には実業補習学校において、働きつつ学ぶ体制がとられておつたのでありますが、新制度においては、全然置去りとなつたのであります。一箇年およそ百六十万の中学卒業者中、大約百万に及ぶ数を占めておりますこれらの者は、職業的には、ほとんどまる腰のまま社会に出まして、しかも卒業後二箇年は、労働基準法に制約せられまして、正規の就職も不可能なのであります。これがいわゆるテイーン、エージの層として徒為徒食のまま氾濫いたしておりまして、近時の社会悪の温床たるかの観を呈しておるのであります。二十歳以前のこの層においては、その総数はおよそ五百万を越えておるのであります。
次に、新制度による普通科偏重の傾向による現われと見られる高等学校職業課程入学者の減少で、これは新制大学においても、同様の傾向が見られるのでありまして、戦前に比しまして、大体半減しております。その上に、戦時中からの各種の悪条件の圧迫による学力の低下でありまして、これも戦前に比して約半ば程度に低下いたしております。その原因のおもなものは、施設、設備の不十分、技師の不足、職業教育に関する教科書発行の困難、実業教育費国庫補助の消滅等であります。教育は、何と申しましても教師にその人を得ることにあります。かつ職業教育は実験実習にまたなければならないのであります。
以上の趣旨にかんがみまして、本法案を立案いたしました。そのねらいといたします重要な点は、国と設立者とが協力いたしまして、公、私立を問わず、大学以下中学校までの学校教育を通じ、産業教育に要する施設、設備を充実し、実業教員の養成をはかり、教科用図書発行の円滑を期し、その他この教育をはばむあらゆる物的、人的原因を取除くことに努力いたしまして、これら青少年ないし一般公衆に、産業教育の充実向上をはかろうとするものであります。これが具体的な方法、計画等を適切ならしめるため、中央と地方とに産業教育審議会を設けまして、昭和二十七年度から実施に移そうとするものであり、これに要する経費は、国が予算の範囲内において補助することにいたしております。従つて、設立者に何ら義務づけるものではないことを附言いたします。
かくして、青少年をして、単に教養のある人格者たるにとどめさせないで、積極的に技術の向上を試み、これが改善の能力と勤労意欲の旺盛な、働くことによつて、みずからの住むよりよき郷土の建設から、ひいては国家の経済再建に敢闘する、真になすあらんとする青少年を養成しようとするものであります。
さらに、この法案の内容につきましては、専門員から御説明申し上げることにいたしますが、何とぞ以上の趣旨に応ぜられまして、皆様の十分な御審議を願いますとともに、これが成立の一日も早くなりまするよう、あわせてお願い申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/77
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078・佐藤重遠
○佐藤(重)委員長代理 委員長からちよつと申し上げます。特にお願いいたしたいことは、この法案は、実質的には、成立までに小委員会と関係方面との交渉関係等につきまして、種々御報告を申し上げ、今日に至つたものであります。この点御了承の上、御質疑等につきましては、できるだけ簡明に、法案を中心にお願いいたす次第であります。なお御質疑の方は、お名前と大体の所要時間を、委員長席まで御報告を願いたいと思います。
これより質疑に入ります。質疑は通告順にこれを許します。なお時間の制限は別にございませんが、できるだけ各委員均等な時間で、一刻も早く質疑が終了いたしまするように、特にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/78
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079・小林進
○小林(進)委員 議事進行について——今法案を受け取つたばかりで、すぐ質疑に入ることは、時間的にも、もう午後に入つているわけですから、書飯を食べるくらいの余裕はいただけると思うのでございますが、どうですか。それともすぐこれから継続いたしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/79
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080・佐藤重遠
○佐藤(重)委員長代理 ちよつと速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/80
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081・佐藤重遠
○佐藤(重)委員長代理 速記を始めて。
それでは午後一時半に開会することとし、それまで休憩いたします。
午後零時四十二分休憩
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午後一時四十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/81
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082・佐藤重遠
○佐藤(重)委員長代理 休憩前に引続き会議を続行いたします。
これより質疑に入ります。質疑は通告順によつてこれを許します。松本委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/82
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083・松本七郎
○松本(七)委員 産業教育法案が提出になりまして審議に入るわけでございまするが、幸いこの法律が制定せられましても、相当厖大な予算を必要とすることでありますし、かつ、いかにりつぱな法律ができましても、これを執行する側で深い理解と熱意がなければ、これは空文に終るおそれもあるわけでございますので、私はこの機会に、産業教育に関する現大臣の御意見なり、決意を、少し伺つておきたいと思うのであります。なるべく簡単に、要点だけを質問申し上げたいと思います。
第一は、産業教育というものと普通科の教育というものが、これまで一応分離して考えられて、制度の上でも、そういうふうになつているわけでありまするが、この産業教育一般に関する大臣の考え方、特に普通科教育との関係、及び新しい教育制度である六・三制との関係等について、大臣の御見解をお聞きしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/83
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084・天野貞祐
○天野国務大臣 もとはそういう普通教育ということと職業教育ということと、分離して考えていたのですが、しかし六・三制は、それを一緒に考えようという考えであります。そのために、職業教育という部門について、現在の施設では足らない面を生じて来た。そういう意味で、六・三制自体は、決して職業教育を軽んずるのではないけれども、その実行の仕方において、そこに欠陥を生じて来た。その欠陥を補うという意味で、この考えはもつともだと私は思つております。予算上には、確かにおつしやるような点がございますが、そういうことが起らないように、十分な配慮をしたいという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/84
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085・松本七郎
○松本(七)委員 それから、私どもが考えますのに、この産業教育法を成果あらしめるためには、やはり国が相当の力を持つて行かなくちやならぬ、財政的にも力を持たなければならぬし、また行政上も力を持つて行かなければならぬと思うのでありますが、終戦後の新しい地方自治の確立という根本策からいたしまして、それを徹底し得ない面が、われわれ立案する場合にも考慮されたわけでございます。私どもこの産業教育を振興する趣旨から申しますならば、やはり法律でもつて、ある程度は地方公共団体を義務づけるような規定も、必要ではなかろうかと思うのであります。また国が財政的援助をする場合でも、やはり全国に一律的に援助をするというようなことが、むしろ積極的になされてしかるべきではなかろうかと思うのでありまするが、この地方自治の建前をあくまでも尊重して行くとなると、なるべく財政的に一律に地方に援助するというようなことを避けようということが第一考えられます。また法律でもつて、そういう地方自治団体の義務づけをすることは、あくまでも拒否しようという意見も、有力に出て参るわけであります。これは占領政策にも、私はそういう点が出て来ておると思いまするが、アメリカにおける一州よりもまだ小さいような日本の国において、そこまで地方の自治というものを徹底しなければならないかどうか。私はこの教育制度においても、そういう矛盾した点が今後出て来るのではなかろうかと思うのであります。むしろこの産業教育を徹底して行くためには、そこの調整が今後問題になるのではなかろうかと考えるのであります。実際地方に財政的な力その他の力がないにかかわらず、形式的に、あまり地方の自治というものを重んじ過ぎると、国の弱体化を来すのではなかろうか、ここに私は今後の教育制度においても、考慮すべき点が出て来ると思うのでありますが、この点の大臣の予想なり御見解をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/85
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086・天野貞祐
○天野国務大臣 今の点は、私は教育に関する限り、非常に適切なお考えだと思つております。ですから私どもは、義務教育については、標準義務教育費というものを確保したい、地方に向つて、いわば平衡交付金の中に、教育費だけはひもをつけたいということを考え、それが日本の現状において必要だと思つておりますが、それさえも実現することができないという現状にあるわけでございます。そこに一つの重大な問題があるということは、松本さんと同じ考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/86
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087・松本七郎
○松本(七)委員 それと関連して、この産業教育法が成立した場合に、予算の裏づけ、予算の獲得について、どのような御決意があるか。それと同時に、これをやるために、六・三制の方の予算が食われるのではないかというような心配もされておりますが、その関係についての御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/87
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088・天野貞祐
○天野国務大臣 六・三制がこのために食われるということが起ることは、決してないように、ぜひ配慮をしたいと考えております。そういう点については、なお政府委員に補足させたいと思いますが、いかがでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/88
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089・相良惟一
○相良政府委員 私から補足せよということでございますが、私も大臣と同じように、この法律に基く経費が、六・三制をそこなうことは断じてないように、またないことと信じておりますし、ないように文部省としてできるだけの努力をしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/89
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090・佐藤重遠
○佐藤(重)委員長代理 速記をちよつとやめてください。
〔速記中止〕
〔佐藤(重)委員長代理退席、若林
委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/90
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091・若林義孝
○若林委員長代理 速部を始めて——都合によりまして私が委員長の席を汚します。
産業教育法案に関しまして、この立案に当られた小委員長を中心として質疑を許します。なおそれに関連して大臣に質問がある場合は、含めてなさつてさしつかえがございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/91
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092・小林進
○小林(進)委員 大臣にお伺いいたします。この法律をつくることと、問題は違うかもしれませんが、しかしこの法律に関してのことでありますから、この際お伺いしたいと思うのです。実はこの産業教育法案を小委員会で審議しておるころ、新聞等にも出ましたし。私たちも直接聞いたのですが、この法律に関係のある学校で、法律をつくるための運動であるか何か知りませんが、生徒から三十円ずつ金を集めた、こういうことが新聞にも出たし、それがどういうことに使われたということまで出たりです。大臣はごらんになつたかどうか知りませんが、最近子供に教科書を国家で買つてくれるというふうなことまで考えておるときですから、三十円であつても、これは非常に重大だと思うのです。学校の生徒あるいは父兄等に言わせれば、法律を三十円で買うのだ、こんなことまで言われるようなことがあつたのですが、大臣はお聞きになつたかどうかお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/92
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093・天野貞祐
○天野国務大臣 私はその新聞を読みませんでした。ただこの国会でどなたかおつしやつたように思つたのですが——政府委員から答弁いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/93
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094・小林進
○小林(進)委員 今までは小委員会で、別に速記等がなかつたために、公式な場所であらためてお聞きするのですが、もしそういうことが行われるとしたならば、大臣としては、どういうふうに御処置なさいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/94
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095・天野貞祐
○天野国務大臣 私は実情を少しも知らないので、知らないことに対して意見を述べるということもできかねますから、政府委員にその実情を述べさせるということはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/95
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096・辻田力
○辻田政府委員 ただいまの御質疑に対しまして、私たちの方で調べることができました程度におきまして、御報告申し上げたいと思います。
職業教育法制定に伴う全国職業高等学校長協会並びに全国職業高等学校PTA連合会による募金のことにつきまして、調査をいたしました結果について御報告いたします。
このことにつきましては、昭和二十五年五月、全国の農業、工業、商業の各高等学校長協会の大会が、神戸及び奈良で開かれまして、その際職業教育の振興に関する件の決議をみたのでございますが、そこに端を発しまして、衆、参両院へ職業教育法の制定に関する請願をいたしまして、両院ともに採択せられたものであります。その後、昭和二十五年十二月五日、全国の農業、工業、商業、水産の各高等学校長協会並びにPTAが連合してここに職業教育法制定推進委員会が結成されまして、その活動が開始されたのであります。
この推進委員会の組織のうちに企画委員会があり、ここでこの法案制定のための啓蒙運動費用が協議されましたとき、平素の会費の集まりぐあいより見て、一応の可能範囲を五百校と予想いたしまして、一校一万円で、合計五百万円を目標として集めるという原案をもつて、PTA連合会と相談したところが、この一校当り一万円という基準は、公平に似て公平でなく、結局これは父兄が負担するのだから、生徒数を基準として定めることが公平であるというPTA側の意見によりまして、その一万円の額と生徒一校当り四百人という計算の上で、一人当り三十円平均ということになり、これを十二月二十日の関東地区職業高等学校長協会並びにPTA連合大会に諮りましたところが、全日制の生徒一人当り三十円、定時制十五円が望ましいということになりました。この関東地区PTA連合会の結果を全国に流しましたところ、各地区においても自主的にこれに同調することになりました。もちろんこの基準は、PTAの寄付金募集の基準を示したもので、実際の寄付は父兄、外郭団体、地元実業界から仰ぐ趣旨であります。一部の学校において、生徒の手を通じて募金いたしたことが、誤解を生ぜししめているようでありますが、趣旨は、どこまでもPTAの任意醵出にあつたようであります。実際においては、中国地区では一人当り十円ずつとか、大阪地区では実業界よりの寄付を仰ぐとか、全然集めていない県とか、いろいろ各地方ごとの自主性によつてやつておるのであります。昭和二十六年三月十七日現在の募金総額は三百八十六万二千百八十円で、昨年五月よりの支出額は百五十二万六千四百七十五円であります。その支出内訳は、東京大会費の約二十六万円、旅費交通費の約二十八万円、印刷費の約二十四万円、その他会議費、通信連絡費等がおもなものとなつております。なお集まりました金額に余裕があれば、これをもつて職業教育振興についての意義ある事業を行いたいとの意向であります。
以上、概略ではありますが、文部省において調査をいたしました結果を御報告いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/96
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097・小林進
○小林(進)委員 私のお伺いしたのは、それを調査されて、ただいまの様子では、さしつかえないというようなことだろうと思いますが、それに対して文部省としてはどうするか、さしつかえないと断ずるのか、それともそういうことはいけないというのか、注意すべきところがあるというのか、そういう点をお尋ねをしたのであります。従つてこれは文部大臣からお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/97
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098・天野貞祐
○天野国務大臣 私はこの間、文部委員会だと思いますが、そういう話が出ましたから、よく調べるようにということを言つておつたのでありますが、今までほかのことにまぎれて聞いていない、今聞いたところでありますが、これはPTAが自発的に自分で先だつてやつておることでありますから、これを私がここで一概にいいとか、悪いとかいうように簡単に言えないのではないかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/98
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099・小林進
○小林(進)委員 いいとか、悪いとか、簡単に言えないということは、大臣の逃げ口上だと思うのであります。はつきりそういうことをやつたということがわかつておるし、政府もそれほど調査されておるのでありますから、そこは何か大臣として言明されるものをお伺いしたいのであります。実は私たちこうやつて文教の問題を取扱つておるそのことは、すでに一つは教育であつて、最近の政治というものは、何かいかがわしいことがあるのが今日の政治だというふうに疑惑を持たれておるような形で、子供はそういう政治教育を受けておるわけであります。そういうときに、かりにもこういう法律をつくるために金が集められたということは、非常に子供にとつては、教育上いけない問題だと思います。やはりしかるべき費用がいるならば、正当にこれが処置されるならば、それはやはり子供の、あるいは教育全体の問題として疑惑のないように処置される方がよいし、何らかここで文部省としても、そういう問題を聞いた場合には、適切な措置がなければいけないのではないかと思うのであります。この法案を審議しておる途中におきまして、幾度か私はこの問題をほかの委員とも話合いをしまして、こういうおもしろくないことを聞きながら、この法律をつくつて行くことを不愉快に思つた。従つてこの法律がすつきりした、りつぱな法律であるということを知らせるためにも、議員諸君のお力を借りてこれをはつきりして行きたい、こういうことを私お願いしたことがたくさんあるのであります。しかしまだ正式にこの法案が取上げられなかつたために、正式なお話合いができなかつたのですが、まず初めに大臣のお考えをお聞きして、そしてこの問題を何とか——まだまだその疑惑は、文部省が調査されたようなことで終つておらないのですから、善処していただかなければならぬと思うものであります。最近政治の面にいかがわしい問題がある点から考えましても、教育に関して不正があれば、文部大臣より、この際これに対する確固たる信念を披瀝していただきたい、こうお願いするものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/99
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100・天野貞祐
○天野国務大臣 私は原理的に申せば、小林さんの言われる通りだと思うのです。こういうことのない方が、なお望ましいと思います。けれども、PTAが自発的に集めていたということ、そういう点から、政府が一々これに干渉するという筋でもないだろう。かつ、この問題の要点は、その集められた金がいかに使われたかということが、重点ではないかと思うのです。でありますから、どういうように使われたかということまで、十分自分たちは調査しておるわけでもなく、文部省が立ち入つて、そういうことまで調べ上げるという筋であろうか。そういう点については、まだよく考えたいと思いますから、そういう使途などが明らかでないと、今ただちにここで断定的なことを私は申し上げることができないことを、了承していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/100
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101・若林義孝
○若林委員長代理 この問題は、直接本法案に関係があるように思いませんから、本法案に関係のある問題に局限したいと思います。——ちよつと速記をとめて……。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/101
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102・若林義孝
○若林委員長代理 速記を始めてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/102
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103・小林進
○小林(進)委員 ただいまお聞きのところだと思いますが、そういうように金を集めて、一つの法律をどうでもつくつてもらわなければならぬというようなことを、大臣としてどういうふうにお考えになられるか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/103
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104・天野貞祐
○天野国務大臣 文部省としては、一方においては六・三制というものを今充実しようと考えておるわけです。ですから、こういう点も、六・三制にちつとも矛盾することではないので、六・三制の補足的な意味を持つているのですから、こういうものもやらなければならないのですが、そこまで文部省としてはまだ手がまわらないのです。今小林さんは、のほほんという言葉をお使いになりましたが、私どもはこれでもできるだけやつて、六・三制は充実しようと思つておるのですが、そこまで手が及ばないということを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/104
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105・佐藤重遠
○佐藤(重)委員 本案の小委員会にかかりましたとき、たまたま小林委員でありましたか、その他のどなたからか、募金の問題が話に出たのであります。そのときに、私小委員長といたしまして議事を整理したのでありましたが、いろいろな意見が出ました。けれども、圧倒的な意見は、本案は議員提出の案でありますとともに、すでに二年ほども前から私どもの党が取上げて、宗教教育を振興すべしということを盛んに言つておつた、それがだんだん進展いたしまして、それが議員提出の案となつて出たのでありまして、決して今度の募金の運動の結果出たのではないというようなことも、その当時すでにお互いに自由な話をして、明らかになつたのであります。それから、もしかりに運動のために募金があつたといたしましても、それは当委員会の何ら関知するところではない。当委員会は、独自の見識に立つて、国家のため必要であるならば、また教育上必要であるならば、これはどこまでも審議を進むべし。もしこれにからんで何か不正が行われたとかなんとかいうことであれば、それはその方面の人たちが責任を負うだろうし、また国会にも行政監察特別委員会などもできておりますから、それぞれの方法はある。だから、その問題は切り離そうではないか。本委員会は、どこまでも独自の見地で、議院のために、国家文教のために本案を最も真摯な態度をもつてやつて行こうではないかということに、意見が大体圧倒的であつたということは、小林委員も御承知だと思うのであります。当時私も小委員長として責任のある立場において見聞しておりました経過は、まさに以上申し上げた通りでございます。その点一応御了承を願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/105
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106・岡延右エ門
○岡(延)委員 私は提案者の一人として小林さんに、先ほど六・三制の問題、あるいは予算の問題の話がちよつと出ましたから、その点われわれの考え方をひとつ申し上げてみたい。実は二十七年度から、今の法律で行きますと、六・三制の予算が非常に減るようになつておる。そこでわれわれは、教育の分野にできるだけ金を確保したい。そこで二十七年度に六・三制の予算が減るのだから、そのかわりというわけでもないが、そういつたような含みを持つて、ここに橋頭堡をつくつておきたい。それで二十七年度からどうしてもこれをやりたいというのが、われわれの真意である。それで、またここ一両日中にこれを通過成立せしめたいというゆえんは、二十七年度からやるには、相当の調査費も要する。そこで予算措置を要するから、できる限り一時間でも早くこれを通過せしめたい、こういうような気持でありまして、六・三制との関連及び予算を文教の分野に少しでも多く確保したいというのが、この法案を提出したゆえんであります。そういう点をひとつ御了承願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/106
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107・小林進
○小林(進)委員 大体了承いたしました。ただいまの岡さんの御意見ですが、これは私たちもよく承知しておりますので、決してこの法律を通すのに、協力しないというような考えは毛頭ありません。ただいま小委員長のお話を承つたのですが、そういう見解はありました。しかし私は、その問題は法律としては別個に考えて行かなければならぬということは考えました。だから別個に取扱うことはあながち席を新たにして取扱うということではないのです。その際にも小委員長は、この問題は私どもも何とかしなければならぬということを考えておるということは、確かに私そのときにお伺いしたはずです。全然考えないということでなくて、委員長としても、そのときにこの問題は考えようじやないかということは言われたと私は思います。そうして何らか御処置があると思つて実は待つておつたのですが、その後何ら委員長からお話がなかつたので、私は実は遺憾に思つておつたのです。委員長のお話も、先ほどのお話も私はそういうふうに了承いたします。
さらに大臣にお伺いいたしますが、その前に今ののほほんという言葉を再度私の方からも申し上げますが、それは委員長代理が、文部省は黙つておつてもいいんだ、かえつて金を集めて文教問題をわいわいする方がいいのだというようなことを言われるから、その場合に大臣の立場を考えれば、のほほんという言葉になるわけですから、決して現在の文部大臣を、のほほんの態勢におるというように言つたわけではないのですから、御了承を願いたいと思います。
そこでこの法律そのものについてお伺いいたしますが、学校教育法とか教育基本法とかいう根本となる法律があるわけです。そこでここに産業教育法というものが生れると、何か学校教育法と肩を並べたような法律になるわけですが、法体系の建前からいたしまして、大臣はこれをどうお考えになられるか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/107
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108・天野貞祐
○天野国務大臣 それは法律のことにかかわりますから、政府委員からお答えする方がよいと思いますが、まず私がお答えをいたします。私はやはり教育の根本は、教育基本法だとか、学校教育法だとかいうものだと思つております。だからして、これは並ぶというようなものよりも、それを補足するというような性質のものだと考えております。六・三制も、六・三制自体が何も不完全じやないのですけれども、それを実施している現在の状態には、こういう補足を要するものがあるというように、実質的には考えておるのであります。従つて、法律においても、そういうことが言えるのじやないかと思います。私はそう考えておりますが、政府委員にこれを補足させたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/108
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109・辻田力
○辻田政府委員 ただいま大臣から、大綱についてお話がございましたから、実はそれにつけ加える必要もないわけですが、憲法を中心としまして、憲法から教育基本法が出ておる。教育基本法をもとにいたしまして、学校関係の場合には学校教育法、社会教育の場合には社会教育法というこの二大法、それを中心にしてそれぞれ教員の場合、あるいは待遇の場合、あるいは待遇についてというようにだんだんこまかくなつております。大臣からお話がありましたように、職業教育あるいは産業教育の場合におきましては、特に現在の実情にかんがみまして、この基本の考え方を進めるのでなくて、補足する法規として、この法規は適切なものであるというふうに、われわれは考えております。法体系を乱すものであるとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/109
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110・小林進
○小林(進)委員 法体系を乱すものでない、また乱すべきでないというお考えを承つたわけですが、産業教育法という名前からしても、何かそういう印象を受けるし、内容の構造等にいたしましても、ややそれに類するような感を受けるのです。これは文部省としての御意見でけつこうなんですが、産業教育法というような名前でなくて、産業教育振興法とかいうような名前の方がよくないか、こんなふうに私はお尋ねしたいのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/110
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111・天野貞祐
○天野国務大臣 これは小林さん、私どもが提出したのでなくて、議員が提出したのですから、その返事は議員の方にお尋ねいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/111
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112・小林進
○小林(進)委員 しかしこれは議員の方から提出されるときには、どんな法律でも提出されるわけなんですよ。しかしそこに一貫した法体系というものがあるわけなんですから、文部省としてこれから、仕事をして行く際に、こういうもので支障がある場合には、やはり支障があるという御意見はあると思うのです。私はそういう意味で御意見を承つた。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/112
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113・天野貞祐
○天野国務大臣 それはただいま、これは法体系を乱すものでないという御返事をいたしたことで盡きておりはしないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/113
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114・小林進
○小林(進)委員 乱すものでない、また乱すべきではないという御意見は承つたのですが、私がつけ加えた言葉は、そういう印象を受けはしないか、そして中を調べてみましても、委員会があり、また審議会というようなものができるわけなんですが、そういう形からしても、何か学校教育法から独立したような形になるおそれがあるから、私はそういう心配は文部省ではしておらぬかと、こうお聞したわけですが、そういう御見解ならばよろしゆうございます。
それから、先ほど岡委員の方から御質問のあつたことに関連してお聞きいたしますが、岡委員は、六・三制予算というものが来年度はいらないとか、少くなるとかという状態だ、だから産業教育法というような新しいものに予算を振り向けるために、橋頭堡をつくるというような言葉で表現されたのですが、六・三予算というものは、文部省としては来年度も継続してつくる予定であるかどうか、この際お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/114
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115・岡延右エ門
○岡(延)委員 関連して来年度というのは、すなわちあしたから実施する二十六年度の予算を言う。ぼくは二十六年度とは言つていない、はつきり二十七年度と言つている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/115
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116・小林進
○小林(進)委員 それは二十六年度予算はもうできているから、ぼくは来年度と言つたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/116
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117・天野貞祐
○天野国務大臣 六・三制は、まだ私は進めて行かなければならぬと思つております。六・三建築は、現在〇・七坪ぐらいですが、〇・九坪ぐらいやらなければならない。しかし教育予算全体をもつとふやしたい、そういうふやす範囲においてこういう点も考えて行くというように、今思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/117
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118・小林進
○小林(進)委員 もう少しはつきりお伺いしたいのですが、六・三予算というものを来々年度、昭和二十七年度ももし出すとすれば、相当な予算がかかると思うのです。それは六・三予算が来年度は少くなるから、これにまわすというような与党の方のお考えのようですが、六・三予算というものは、昭和二十七年度も相当に持つてもらわなければならぬと私たちは思つているのですが、大臣は相当持たなければならぬと考えておられるのかどうか、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/118
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119・岡延右エ門
○岡(延)委員 僕は、二十七年度から六・三制予算を減らそうというような考えを持つているというふうに、小林さんは言われたけれども、私の言つたのは、そういう意味ではない。文部省が一応計画している現在の段階からいうと、二十七年度は相当減るようなかつこうになつているように仄聞する。そこで一応減るようになつておつても、われわれ与党としては、御承知の通り文教予算をでき得る限り二十七年度にもさらに多く要求し、獲得したい、こういう覚悟を持つておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/119
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120・天野貞祐
○天野国務大臣 〇・七坪ということにとどめれば、確かに減るわけでございます。しかし私どもは、できるならば〇・九坪というふうに進めたいと思つておりますけれども、文教の予算は今のような額ではなくして、将来もつと増大しようという考えを持つておりますから、総体的に論ずれば、減るということも言えるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/120
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121・小林進
○小林(進)委員 法律のことを大臣にお聞きしても……。(「それは議員に聞くべきだ。」と呼ぶ者あり。)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/121
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122・若林義孝
○若林委員長代理 私語を禁じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/122
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123・小林進
○小林(進)委員 教育委員会が、一つの審議会をこしらえる場合に、教育委員会が知事と協議してその審議会の委員をきめるというようなことをして行つても、教育委員会の存在は問題にならないかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/123
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124・辻田力
○辻田政府委員 この場合に、教育委員会が知事の方に協議するという意味は、私たちは、知事の方で私立学校を主管しておるのですから、従つて、この法案は産業教育全般に関することでありますから、私立学校にも関連するという意味において知事に協議するというふうに了解しておるわけです。従つてその意味においては、別にさしつかえないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/124
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125・笹森順造
○笹森委員 この法案が議員提出であります意味で、大臣にお尋ね申し上げることは、そのことを了解してのお尋ねでありますから、あらかじめお含みを願います。
この法律を出すにあたりまして、法のねらいとしておりまするのは、産業教育を奨励振興して行こうこういうことでありますが、日本の教育の本旨が、時代によつていろいろとかわつた方向をたどりながら、今日に来ておるようであります。そうして私どもが過去数十年、特に二十年この方、学問というものの生活化、実際化、職業化ということに非常に重きを置いて参りまして、過去二十年この方の中学校——今日かわりました中学あるいは高等学校と、大体年を同じゆうする生徒を養つておりました当時の高等普通教育におきましても、やはりただいま申し上げましたような、ここに出ておりまする産業教育の奨励というようなことが、ずいぶん考えられて参つたことは、御承知の通りであります。そこで、なお、しかし、日本の教育の傾向がこの学問の実際化、社会化ということに向つて不十分なのではなかろうか、これを補おうとするこの法律を私ども見る場合に、やはり根本の教育行政の本旨からいつて、ただいま申しましたような学問の実際化、社会化あるいは生活化ということに向つて、大臣は今後どういう御方針をとつておいでなさるおつもりであるか、この法を考えるについて一応お考えを承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/125
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126・天野貞祐
○天野国務大臣 私は学問の生活化といいますか、あるいは実際化といいますか、そういうことは非常に重要だと思います。しかし同時に、実際の職業を営む人に、もつと根本的な人間としての教養を与えるということも、また非常に重要な点だと思います。従来の日本の教育は、一方においては、全然大学の予備校のような制度を持つと同時に、他方には、全然人間を一つの手段にするような、そういう意味での職業化ということがあつたと思うのです。その両方の行き過ぎをためて、一方においては、十分人間として本来養うべきものを養つて行くと同時に、その人たちのそれぞれの天分とか、その地方の状況とかいうものによつて、同じ高等学校でも、非常な種々の姿を持つた高等学校があつていいと思うのであります。六・三制は、その点について趣旨はよいけれども、そちらを少し軽んじ過ぎたというようなきらいがあつて、そこをこういうものによつて、補足することによつて、初めてほんとうに教育がよく行われるということになるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/126
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127・笹森順造
○笹森委員 六・三制の完成完備、それと、この産業教育振興のための国費を支弁する方面との比重のことを考えたがゆえに、実は今のお尋ねをしたわけであります。ただいま大臣の申されましたように、私ども教育の本旨は、やはり人間性を養うということ、教養面に力を入れるということ、あろいはさらに上級学校に進む者の準備をするという一面は、やはり小学校、中学校、特に義務教育においては十分なければならないとともに、現在の日本の状況では、義務教育を終えたばかりで、上の学校に行くことのできない、ただちに生活の世界に飛び込まなければならない者が、非常に大きな数に上つておる、これに対しまして、今までの教育の仕方が不十分であつた。ゆえにただいまお話のごとく、その方面に力を入れるというこの法律の考え方がよろしい。こういうことは、根本の理論として、私どももそう考えておるから、お尋ねしまして、同意の御意見があつたと思うのであります。
ところで、お尋ねいたしたいのは、その後日本の学制のいろいろな進展に伴いまして、前には産業の名称をはつきりと示しまして、工業学校、商業学校、水産学校等の名前においてのみ産業教育が行われておつたような印象を与えておつたが、それではなしに、普通一般の中学校の中に、そういう実業科を設けるというぐあいに改正しましたのが、二十年この方の考え方のようであります。そこで今日そういうぐあいに截然と実業学校の名前を冠して、その方面に高等学校以上を重点的にやるのがよろしいのか、普通の中学校の中に、そういうような科目を入れて行く方がよろしいのか。これは将来助成法が適用される面においても、非常に大きな問題になると考えます。従いまして、二十年この方考えられたろ普通一般の中学校、すなわち今日の高等学校に位するようなものに対してでも、産業教育を授けるがゆえに、そこに予算の範囲内において助成するという方法をとるのが至当であるか、そういうものは別にして今名称をはつきりと示した工業学校、商業学校、水産学校、農業学校等だけに重点的にやればよろしいのか。これは将来の実施の面においても大きな影響を持ちます問題でありますから、今の教育一般の産業化、実際化というものを、どういう場合に截然と区別した方がいいのか、一般の中にそういうものを入れるのがいいのか、その辺についての文教の大体の行き方を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/127
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128・天野貞祐
○天野国務大臣 私は、その場合に一番重要なことは、名前を農業学校とか工業学校とかするよりも、そういう学校の生徒が、たとえば中学校を出た場合に、行けるならば上の学校に行ける、それからまた高等学校を出て、そういう名前のついた学校でも、行けるならば上の学校に行く。要するにその子供を若いときに一つの袋小路に入れてしまわない、こういう点に、新教育の重点があると思うのです。だから、そういう点さえ保障されるならば、名前は私は工業学校とか農業学校とか言つてもよいと思う。しかし自分としては、やはり教育の根本はどこまでも人をつくるということにあつて、職業を授けるというのも、人をつくるということなんですから、できるならば私は工業中学校、工業高等学校というようにして、ほかの学校とは別な中学ではなくて、中学の中にさまざまなヴアライエテイがある、種々相といいますか、高等学校の中にも種々相があるということがよいと自分は考えているのです。全然工業中学なら工業中学、そういう人文的な教養ということは少しも考えない、ただ出さえすれば使いやすい便利な人間、そういう意味の職業教育では、私はほんとうの職業教育とはいえない。そういう大体の考え方で、どこも袋小路ではいけない。どこまでも上に行ける道を開いておるけれども、人間にはそれぞれの個性がありますから、私は今のようなすべての子供が何でもみんな大学を出なければならないというような考えはよくない。それぞれの性質に従つて、ある者は中学、ある者は高等学校というようなところで完成する。といつても、全体完成するという意味ではないけれども、あるだけの働けるような力を持つたものをつくるということも、確かに必要なことだという意味で、この法案が六・三制の補足になる、こういう考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/128
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129・笹森順造
○笹森委員 ただいまの中等以上の教育において、やはり総合的な職業教育の内容を持つたものが適当である。例をいうならば、外国のポリテクニツク・ハイスクールというようなものがそれでありましようが、やはり日本ではまだ工業は工業、商業は商業、水産は水産ということになつております。しかもまた、その分野が割合に截然とわかれておりますけれども、日本の将来の普通一般の高等普通教育におけるポリテクニツク・ハイスクール式のもの、農業、商業、工業、これを総合的なものをつくるという傾向は、私もやはり賛成でありますが、文部省としては、そういうようなことを奨励しよう、あるいはまた考えておるというようなことがありますか、ありませんか。特に今後日本の学制の内容の改善等においても、これらのことは考えなければならぬ問題だと思いますので、そうする方が結局人間をつくる、またこの社会に出て複雑な経済生活をする上において必要な人間をつくるに、ぜひ必要でなかろうか。どうも今まで一面の、つまり道具のようになる人はあるけれども、経済世界全体に、人として活動する面が足りない教育を今までやつておつたように思うし、今後せつかくこういう産業教育振興助成法が出た場合には、そうしたできるだけ完全と申せませんでも、あらゆるものをできるだけ多く具足した人間をつくるという意味において、今言つたような方向の学校をつくるということについての御構想なり、御研究なりがあつたかどうか、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/129
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130・天野貞祐
○天野国務大臣 その点は、笹森委員のおつしやることに、私は全然同感なんです。私は職業教育には賛成だけれども、ここに使いやすい人間をつくる、人間をただの一つの方便にするような、そういう考え方の職業教育には、私は反対だということは、衆議院の予算総会においても言明しておる通りでございます。だから、そういう人間として一生、いろいろな趣味を持ち、またいろいろなことに対して関心の持てるような人間、ただ一つの道具のようなそういう人間では困るという考えを強く抱いておりますから、私の考えている方針は、笹森委員のおつしやることと同じではないかと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/130
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131・笹森順造
○笹森委員 ただいまの方針がそうであるとするならば、御就任以来、そういう方向に向つて、どういう御指導をおやりになつて、現にそういうようなかつこうの学校がどう運営されておるか、あつたならば承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/131
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132・天野貞祐
○天野国務大臣 私は教育刷新委員会以来、審議会においても、そういう論をして来た人間で、文部省としては、全体としてそういう私の方針に向つていると思います。けれども、その方針が少し行き過ぎたような形のために、この実業教育というものを振興しなければならないようになつて来ておるのです。だから今までは、もつぱらそういう方針に向つて行きますが、しかしそれが極端にならないようにということを、私はあらゆる機会において述べて参つておるのであります。ただ実際問題として、そのためにこういうことをやつた、ああいうことをやつたということは、私はどうも今までしておらないということを申さざるを得ません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/132
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133・笹森順造
○笹森委員 問題を少しかえまして、先ほど来、やはり二、三の方によつてお話が出ておつたのでありますが、この法律のねらいは、国家が公立学校、私立学校に対して、その主目的のために財政的援助をするということである。つきましては、そういうことが、いよいよこの法律が通過して、具体化されました場合に、一番気になりますのは、先ほど大臣も言われました、この平衡交付金等によつて盛り上げられたものがひもつきになつて、はたして下まで流れるかどうか。これは実は昨年の国会の本会議でも、私の質問に対して大臣は、その努力をすると明言されております。しかし、なお今日実際に行われておらない地方がある。これは私は実情をたくさん知つております。そこで、今後この法律が特にこの目的でできた場合に、そういう末端まで、そのものが目的の通りに行われる方法を確実にして、それが何ら今言つたような懸念がないという方法的なことを、はつきりされる必要があると思いますので、確信を持つておるということだけでなくて、方法的にも、これはそれ以外には使用せぬとはつきりそれを指示して、それが法的にもその通り具体的に行われるかどうか、その点を念を押しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/133
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134・天野貞祐
○天野国務大臣 平衡交付金は、申すまでもなくひもをつけるわけに行かないのですから、それで私どもは、標準義務教育費の確保の法律案というものを、前の大臣のときからやつておるのですが、それがどうしても関係方面の了解を求め得られない。そこで新しい形にして——それがなぜ求められないかというその根本は、地方の財政に干渉をして、これだけは教育費に使えというようなことが、原理的にいけないということに、その重点があります。だから、私どもは方法をかえて、中央が地方に干渉するという形でないようなくふうをして、現に関係方面と折衝をしておるところでございます。私が病気のために、まだ少し会うのが延びておりますけれども、この国会休会中に、ぜひそれを推し進めて、そうして教育費はこれだけということは、平衡交付金に入れても、それが使われるような道を、今交渉いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/134
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135・笹森順造
○笹森委員 ただいまも交渉努力をせられておるということでありますが、まだ進行中でありましようから、その結果は期待をいたしたいと思います。私どもが特に考えておりますのは、いろいろな面において、この助成法を考えるにおいては、話がそれては失礼ですから、なるべくこの中心に向てお話したいと思いますが、この助成する国費を得るためには、やはり歳出と歳入を考えなければならない。いかなる方面から歳入を得るか、あるいはまた実際どういう確信があるかは、大蔵大臣からむろん聞きたいのでありますが、これを文部大臣に聞くのは——それは国務大臣としてはお答えできましようが、主管は大蔵大臣だろうと思う。そこでどうしてもこれを振興して行かなければならぬということを考える場合に、私はやはり他の国の例も考えてみるがいいと思う。たとえば、米国のある州では、平衡交付金を出すには、教育重点主義になつて、教育だけにやつておるという州もあるようであります。そこで固定資産税の過去三年の収入と、過去三年の義務教育費その他州が補助しなければならないものを算定しておいて、そうして各自治体ごとに、はつきりとしたそのバランスの過不足が出て来た場合に、その不足なものに特にこれを平衡交付金として教育費だけに出すということをやつておる州もあるやに聞いております。こういうぐあいに、はつきりと初めから、この産業教育のためには、どういう費用がどう行くというようなことを考える道も、一つありはしないか。この法律の中でこれを言うならば、実験、実習においてあげられたものは、国庫の収入とせずして、これをその学校にまた還元せしむるというような思想が、やはりここにあるようでありますが、この財源について、はつきりと最後まで浸透するような方法について、何か今まで大蔵大臣として、でなくて、文部省として御努力なされておる点があるか。そうするとよほどはつきりして来て、いわゆる教育に、熱心に人が税金も出し、あるいはまたその他の方法で、この金が教育に還元されて行くというような努力が出て来るのではないか。やはりこの法の建前の観念の一貫した意味において、そういうような方面の努力を今までなされておつたか、またお考えになつたか、お尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/135
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136・天野貞祐
○天野国務大臣 それはやはり先ほど申しました義務教育費の最低基準を確保するということと、同じことになつて来ると私は思うのですが、そういう点については、私は三つの方法があるように思つております。一つは、元通り半額国庫負担という制度を復活することである。第二は、第二の教育使節団が示唆しましたような学区の制度を設けること、第三番目は、従来のような標準義務教育費を確保するやり方を、もう少し形をかえて、中央から地方に命令するという形でない形を、今実は考えております。初めの二の案は、できれば私どもは、むしろ半額国庫負担の制度がよろしい。教育費は、御存じのように非常に厖大であるために、そうすると平衡交付金という制度が意味をなさないようなことになるから、これは学校教育の学区制度というものを考えるとよさそうなんですけれども、しかしやはり行政区画との関係上、これは文部省で非常に研究しておりますが、なかなかむずかしいのではないか。さしあたつては、第三の形において関係当局と話合いをいたしております。そういうことができることになりますと、この産業教育についても、同じことができて来るのではないかと思つておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/136
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137・若林義孝
○若林委員長代理 ちよつと笹森君に御注意するのですが、本法案に直接関係のある分だけに、とどめていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/137
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138・笹森順造
○笹森委員 これは私立学校に関係した問題は、後に提案の責任者である委員長にお尋ねすることを保留してお尋ねしたいのでありますが、私立学校法によつて、私立大学審議会というものがある。この私立大学審議会というものが、やはりこの法の対象として考えなければならぬものではなかろうかと考えておるのです。それというのも、あとで委員長ともお話ししたいのですけれども、地方における公立学校の助成をする場合の、意見を求めたり、関係するのは教育委員会、地方の私立学校は、これを知事と読みかえるとなつておりますが、私立大学は、全然知事とは、教育のいろいろの運営上関係がない、こういうぐあいに考えておりますので、この私立学校法による私立大学審議会というものがここへ出て来るのでなければ、私立大学のいろいろなものを運営して行くのに不都合が来はせぬか、こういうようなことを、私どもは考えておるのでありますが、この私立大学審議会というものの、実際文部省でごらんになつておりまする内容、あるいはまたこういう法律に関する関係のことについて、文部大臣のお考えを伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/138
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139・天野貞祐
○天野国務大臣 これは法律に関係して来ますから、政府委員からお答えをさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/139
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140・稻田清助
○稻田政府委員 この法案を拝見いたしましても、第二節、私立学校の二十二条第二項に、私立学校法の規定を引いております。すなわちお話のような事項につきまして、私立学校法によりまして、私立大学審議会の審議を経なければならぬ事項につきましては、私立大学審議会の審議にかけるような趣旨にありますので、実際においては支障がないことと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/140
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141・浦口鉄男
○浦口委員 実は私も、この法案の立案の小委員の一人として参画して参りましたので、その自覚に立つて、的をはずれないように、一つだけお聞きしておきたいと思います。それは、この産業教育法と各種学校との関連について、ひとつお尋ねしておきたいと思います。
その前提として、まず各種学校で、学校法人の認可を受けているものは、これは準学校法人と呼ばれていると思うのでありますが、その点について政府の見解をひとつお聞きしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/141
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142・辻田力
○辻田政府委員 それでは私から御説明いたします。第二条に、この法律におきましての産業教育の対象が明記してありますが、その中に中学校と高等学校、大学ということになつておりまして、各種学校はこの中に包含されておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/142
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143・浦口鉄男
○浦口委員 そのことは承知の上で、実は希望的意見を述べるわけなんですが、この法律ができるまでには、長野委員長は、何年も非常に構想されたということも承知しておりますし、去年天野文部大臣が、いわゆる終戦後の総合制の一つの欠陥やら、あるいは新制大学が非常に濫立された、そのことによつて教育の内容の実質的低下というようなことから、むしろこれは職業大学に転換すべきだというような意見も発表されたことがあるのであります。そういう点から申しますと、この法案には盛られておりませんが、職業教育をほんとうに徹底して行くということについては、いわゆる洋裁学校であるとか、あるいは理髪学校その他自動車学校等の中で、非常に確実な基礎を持つた、いわゆる学校法人として認可されたものは、むしろそういう意味合いでこれをこの法律案に包含すべきでなかつたかということを考えるのでありますが、そういう点について、文部当局としての意見をまずお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/143
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144・稻田清助
○稻田政府委員 文部大臣の意見として、新制大学について申されたことは、私どもの了解といたしましては、新制大学を卒業いたしますもの、つまり教育の目的としては、ただ学問を研究するというだけでなく、一般の社会的な良識の豊かでありながら、同時に社会職業軍人として立つにちようど適当な素養を与えるものだということは、折りに触れて大臣の話として申し述べられておつたわけであります。この法律につきましては、大学及び短期大学が包含されておりまして、それらの大学及び短期大学に関する職業ないし技術的教育というようなものは、審議会等におきましても、御審議願えることだと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/144
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145・浦口鉄男
○浦口委員 ちよつと私の質問とはずれておるようですが、時間もありませんので簡単に申し上げることは、このたびの法律にすぐそれを盛つてもらいたいということは無理かと思いますが、今私が申し上げたような意味で、各種学校の中で基礎の確実なもので、学校法人として認可を受けておるものは、この法案にありますようないわゆる私立学校と同様に財政的援助の対象とすべき価値を認めてはどうかということに対しての見解をお聞きしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/145
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146・横田重左衞門
○横田專門員 各種学校のことにつきましては、この立案のときには、いろいろこの中の対象にしようとして考えたことがあるのですが、結局におきまして、学校教育を中心としてやるのをこの法律の主眼といたしましたので、従つて学校教育法の第一条による学校ということにいたしませんと、学校教育法の体系を乱す憂いも出て参りますし、そういう点で、各種学校の点は、この中から省いたような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/146
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147・浦口鉄男
○浦口委員 そういたしますと、将来各種学校がいわゆる学校教育法にふさわしき内容を備えるならば、そういう方向に行くべきである、こういうことは考えてよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/147
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148・横田重左衞門
○横田專門員 私どもそう思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/148
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149・小林進
○小林(進)委員 これは小委員会のときに私が提案したのでありますが、ここに抜けておるので、一応論議はしてありますが、その点をお伺いいたします。第二条の産業教育の定義の問題であります。対象としてあるのが「生徒、学生又は青少年その他の一般公衆」ということになつておりますが、生徒、学生はその前提になりますところの中学、高等学校、大学、これで十分教育できるのですが、その次に書いてあります青少年その他の一般公衆というものは、なるほど、中学校、高等学校、大学等で教育することができますけれども、この人たち独自の教育機関というものが必要と私は考えるのであります。現在の経済情勢また日本の今後の経済問題等から考えますと、この青少年あるいは一般公衆に対するところの産業教育というものが、非常に重大であるし、またこの人たちにそういう教育を施してやることが大切だと思うのであります。それがために、ここに教育機関としてはどうかと思いますが、この人たちを教育する機関としては、公民館というものがあるわけであります。これをこの定義の中に入れて、この人たちのために親切な産業教育がなされるようにしてはどうかと思うのでありますが、この点の御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/149
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150・石井つとむ
○石井專門員 立案の過程において、ただいまの御意見とまつたく同じようなことを、相当に考えてみたのであります。お話の通り、一応義務教育を終えました青少年その他これに続きます年齢の一般公衆などには、特にお話の点の必要を、私ども感じておるのであります。その点で公民館ということも、実は一度考えてみたのでありますが、さらに考えをめぐらしてみますると、学校が、多分に不完全ながら、まだ公民館よりも、設備の上において、あるいは先生の点におきまして、全国的に見ますると、まだ学校の方がそろつておる状況であります。そうして学校におきましては学校教育のほかに、いわゆる社会教育というものをなすべきであるということが、学校教育法及び社会教育法に掲げられておるのであります。国家の財政全体を予想いたしますと、この学校を基礎としてやりますところのただいまお話のありました一番大事な年齢層をねらつてやります教育を、学校だけでやるといたしましても、相当の金額になる見込みが出て参りました。さらにこれをもし公民館にまで広げて行きますと、公民館が少いと申しましても相当の数全国にはありまして、しかもこれが設備的に、また事務的には学校よりは低いレベルにあるのが普通でございます。これを両方にまたをかけますと、結局あぶはちとらずという形になりがちである。従つてこの際は、まず学校に重点をおきまして、できるだけの予算を学校に集中いたしまして、その学校が、学校教育としてのほかに社会教育もやる。その場合に、地理的その他の条件で、公民館を利用した方がいいという場合も出て来ると思います。ことに農山村の僻遠の地を考えますときに、公民館を利用する方が非常に便利であるという場合があります。その場合には、公民館に学校における設備を持つて行くということによつて、学校の授業としてやるというようなことも考えましたので、この際は一本に学校の方に集中をいたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/150
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151・若林義孝
○若林委員長代理 ちよつと速記をとめて……。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/151
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152・若林義孝
○若林委員長代理 速記を初めてください。
これにて質疑を打切りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/152
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153・若林義孝
○若林委員長代理 質疑打切りに対して御異議があるようでありますから、質疑打切りに賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/153
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154・若林義孝
○若林委員長代理 起立多数。
よつて質疑は打切られました。
これより討論に入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/154
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155・圓谷光衞
○圓谷委員 この法案は議員提出でありまして、小委員会を開いてこの法案の起草をされまして、小委員会においては十分論議も盡されておりますので、私どもとしては、この際討論を省略して、議決されんことをお諮り願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/155
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156・笹森順造
○笹森委員 議事進行に関して——ただいま敬愛する圓谷君から、小委員会において十分に審議を盡したというお話がございましたが、それは私の考えとは、まつたく違うのであります。そこでただいま委員長のお諮りによりまして、実はたくさんの質問を用意して来たのでありますが、多数によつて打切られましたので、私はこれから十分に納得の行くまで討論するということにきめておつたのであります、それに対して、まだ委員長の腹もきまつておらぬようであります。ぜひこの際には、討論を十分やらせていただくようにしていただかなければ、いかに多数で決議されましても、これは議員提案なのでありまして、私どものそういう要望を、全部委員長がお捨てになるということだと、これは今後遺憾な事態を生ずると思いますので、どうかこのことは、今までのいきさつを御承知の委員長が、寛大な処置をもつて、私どもに十分なる討論の時間をお許しくださるのであれば、私はこれで納得したいと思いますが、特に、この議事進行に関しては、討論に時間の制限は設けないという宣言をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/156
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157・松本七郎
○松本(七)委員 討論打切りの動議が出ましたが、何と申しましても非常に重要な法律案であり、しかも議員提出になつておるので、小委員会における審議は、私は相当慎重になされておると思いますが、しかし、民主党の方ではまだ質問があると言つておられるのでありますから、できるだけこれはやはり質問の時間はさくべきであろうと思います。しかし一方国会全体の運営から考えまして、その時間にある程度の制約をこうむらなければならぬことは、これはよくわかるので、私どもも極力それに協力して参つたのでありますが、いやしくもこういう重要な法律案を、議員提出で今採決しようというときに、討論もなしでやるということでは、せつかくのこの法律に傷がつくことになる。ですから、やはり笹森さんの言われるように、討論をやつて、そうして委員の良識に訴えて、円満にやつて行くということに、委員長はとりはからつていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/157
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158・岡延右エ門
○岡(延)委員 先ほど同僚圓谷委員から、討論打切りの動議が出ましたけれども、ただいまいろいろ協議の結果、時間の制限をして討論をすべきであるということに意向が一致しましたので、笹森順造君の討論時間を十五分とし、松本君はそれほど長くないという話でありますから、これは特に時間のあれをいたしませんけれども、そういう時間の範囲内において討論を許されんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/158
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159・若林義孝
○若林委員長代理 ただいま岡委員の動議について採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/159
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160・若林義孝
○若林委員長代理 起立多数。よつて岡君の動議は可決せられました。
討論は笹森順造君、松本七郎君の二名であります。討論を許します。笹森順造君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/160
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161・笹森順造
○笹森委員 このたび産業教育法案が、本委員会に議員提出案として出て参りまして以来、私たちは今日まで、この法律の完璧を期したいという熱意と、また努力をして参つた次第であります。しかしてこの法律の現在日本の国にどういう影響を与えるかという点に関しまして、あるいは総則に、あるいは定義に、その他いろいろな面から、明らかにせられておるようであります。しかも質疑の際に再々お互いの間に論議がありましたように、わが国の終戦後における教育の方向をいかに進めて行くかという問題に関しまして、本法案が重要性を持つておりますることは、また申し上げるまでもなかろうと思います。国家が国のすべての国民に教育の機会を均等にし、また社会に出た後に、その職責を全うするための職業技術を十分に与えるということの必要からかんがみまして、本法案のねらつておりまするところも、また当然であろうかと思います。
この際に特に考えられますことは、日本の教育自体の行き方が、すべての法律の面から考えてみてあるいは政治の面から考えてみて、文化、教育の尊重という面において欠けるところがありまするが、特にこの産業、職業教育においては、遺憾な点が非常に多いと、私たちはかねがね考えておつた次第であります。従いまして、国が公立学校に対し、あるいは私立学校に対しまして、国費を投じて、この欠陥を補わんとする趣旨においては、何人も不同意はなかろうと考えられます。
この際に特に考えなければならぬことは、そういう産業あるいは職業の教育を振興助成せしめるという助成法をつくります場合には、わが国の文教政策全体との比重をいかに考えなければならぬかという大きな問題が、私どもの双肩にかかつておるかと考えます。この点において、私どもがこの法律の適用を遺憾なからしめるとともに、やはりそうした全般的な見通しも十分にして行かなければならぬということも考えておつた次第であります。ゆえにこの法律が普通の法律とは異なりまして、責任を持つておりまする政府当局が予算の組立てをして、これに応じなければならない性質のものでありますがゆえに、単に文部大臣に対しまする質問ばかりではなくて、大蔵大臣に対して、この法律が通つた場合の所信をも、十分にたださなければならぬことを私どもは考えておりまして、実は本日も大蔵大臣の出席を非公式に求めておつたのであります。でありまするが、との財政の裏づけを必要とする法律に対して、大蔵大臣のこれに対する所信を聞くことなしに議員立法をするということに、大きな欠陥を感ぜざるを得ない。こういう点がやはりこの法律を出す上におきましては、委員の態度として明瞭にせられなければならないと思うのであります。遺憾ながらこの法律の裏づけとなるべき財政の根本をつかさどる大蔵大臣の意見を少しも徴する機会を与えられずに、この問題が遂に質問打切りとなり、討論に入るという、こういう変則な状況に来ておることを、はなはだ遺憾に考えるのであります。
しかして、実際の適用の面について考えてみまする場合に、ただいま申し上げましたように、国をあげてほうはいたる希望が、産業教育振興のために、熱意をもつてその当事者から興つておりますことを、私は十分に認識しております。ゆえに議員立法なるものは、それらの人々の意思を十分にくんで、そしてもつと民主的にこれが立案ざれなければならない。しかるにこの法律のにおいを私どもが感じまするのに、やはり依然として、これは旧来の官僚的な姿において表現されておることに、非常に遺憾を感じます。さらにまた、その根本といたしまして、思想がやはり依然としてそこに低迷しておるかのごとき誤解を与えるようなこの法律の文章に対しましては、私どもは実は訂正したいと考えておつたのであります。過去においての日本の国の教育は、画一教育であり、中央が力をもつて指導する教育であります。しかし、それでは日本の教育の将来の指導は、十分に発達して行かないと私どもは考える。ゆえに、この点が十分に改められることが必要となるのであります。しかるところ、この法律の文章を見ましても、ある政令で定めた規準に到達しないものということに一つの観点を置いて、そうしてその基準に高めようとする場合において助成するというようなぐあいに、書かれておるのであります。こういうことは、私ども立法する者の立場として、十分に考えてこれを修正して行かなければならない思想的な根本の問題が伏在しておると思つておるわけであります。つまり今後のわが国の状況を考えてみましておのおの全国の立地条件を異にし、その背景の産業的な要素を異にいたしております関係上、各地におきましてそれに最もふさわしい産業が興らなければならない。従つてある一つの基準を定めて、そこに到達しないものだけを、その線に上るまで努力するものに対してだけ助成するというような考え方自体を、私どもは反省すべきであり、むしろその立地条件に従つて、その背景をとり、経済的に特殊の教育に力を入れるというものに対して、自発的なものにこれを奨励、激励、開発して行くというのが、この法の建前でなければならない。この意味がここにまつたく欠けておるのであります。そういう表現ができておらないのであります。そこにすべての人の気持を表わすような条文に改められなければならない点を、私どもは見出しておるような次第でございます。
特にまた実際の適用のことを考えて見ますると、この中にまだ私どもが不備であり、もつと完璧にしたいと思う点がございます。そのことを申し上げまするならば、特に国の任務のことを規定しておりまする条項を見ると、そのことが明白になると思います。この原案におきましては、「国は、この法律及び他の法令の定めるところにより、地方公共団体が左の各号に掲げるような方法によつて産業教育の振興を図ることを奨励しなければならない。」と規定されております中に一、二、三、四、五とありますが、これだけでは、実際日本の産業教育振興に対して与える奨励としての意を、十分に盡しがたいうらみがございます。この中には、「一、産業教育の振興に関する総合計画を樹立すること。」「二、産業教育に関する教育の内容及び方法の改善のため必要な援助を与えること。」「三、産業教育に関する施設又は設備を整備し、及びその充実を図ること。」「四、産業教育に従事する教員又は指導者の現職教育又は養成の計画を樹立し、及びその実施を図ること。」「五、産業教育の実施について、産業界との協力を促進すること。」と掲げておりまするが、私どもが日本の教育の実情をつぶさに検討してみまする場合に、この五つの対象だけでは、非常な欠陥を感ずるのであります。
なるほど戦時中において、日本の国が戦災をこうむつて、学校の諸施設等に損害を受けたものが非常に多い。またそのほか教授上の設備、標本、機械その他のものの欠乏しておりまする実情も、よくわかりますから、この点に対してこの法律が考えたことは、当然であります。しかしその振興が、一体どういうことによつてはかられるかと申しますと、言うまでもなく、これはよき指導者によつて、よく指導せられるということであります。この中には、指導者の養成に関する規定はありますが、その人が実際教育にあたつて指導を実現しまする場合、多くの調査研究をしなければならない、その場合多くの人件費を必要とするのであります。この法律の中に、調査研究の人件費が特別に大きく取上げられるのが、私はこの法律の意義を果す上において、最も大事なものであろうと考えているのであります。これは財政の都合等によつてこういう場合のことを考えたことに対しては、むしろ私は財政の都合がこうであればこそ、ことに調査研究ということに対して、人件費を必ずここに出さなければならないということを考えておつたのであります。この点に対する欠陥がここに現われておりますことを、特に指摘しておかなければならないと思います。
さらに申し上げておきたいことは、先ほどわが党の小林委員からも指摘せられましたように、産業教育の振興を滲透せしめるためには、学校教育ばかりでなく、さらに社会教育の面にこれが大きく取上げられなければならない。この意味において、私どもは、公民館の利用ということを十分に考えて、この修正の意見を実は持つていたのであります。先ほどの専門員の考え方では、公民館は非常に多い、従つて学校に重点的にやつたのであるが、必要があるなら、学校が公民館を利用するような機会を与えてもよいというような答弁があつたのでありますが、私どもはそうは考えていないのであります。つまりこれを一律に、全国的にみな産業教育のために助成するというのではないので、先ほどから申しましたように、きわめて民主的に熱烈に要求するものの奨励に力を入れるという法の建前を考えます場合、全国的にばらまくという思想自体を改めなければならない。法自体の目的は、そうでないということを思つておるのであります。こういう意味で、公民館であつても、模範的な公民館がごくわずかでも取上げられることが、どれほどその立地条件に適した日本の産業教育の助成の目的を果すのに、効果的かわからない。こういう点に対して、私どもの考えでは、小学校、高等学校または大学ということのほかに、公民館ということを明記することによつて、今申しました適用のことも、十分に運用しますならば、この法律がもつとよい使命を果すに十分であろうと考えておるのであります。
さらにまた、同じ第二条の中の最後に括弧のところがございます。これは「(職業教育として行う家庭科教育を含む。)」こういうぐあいに括弧の中に書いてある。しかし、これはむしろ独立すべきものでありまして、ここに出しておりまする農業、工業、商業、水産業、家庭科教育、こう独立するのが、当然この法律の対象になります、わかれておりまする単位の職業分野の適当なる比重であろうかと、私どもは考えておる次第であります。
かくのごとくにいたしまして、これを通覧いたしまする場合に、もとよりこの法律は、私どもはぜひ実現しなければならないということを考えておるのでありまするが、遺憾ながら、これらの点がそのままにして、今日討論しなければならない状況になつておる次第であります。
特にここに申し上げておきたいことは、第十八条の具体的な補助の問題であります。ここでは予算の範囲内といつておりまするが、これが私どもは最初二分の一というぐあいに書かれておつたことを見て、実は驚いたのであります。なぜかというと、私どもは、二分の一を補助する、四分の一を補助するということ自体に反対しておるのではありません。むしろ先ほど申しましたように、おのおのの学校が、自力を持つてこの点を振興しよう、この点に努力しようということで、特にその学校の努力にふさわしい額だけを国が補助する、こういう建前が当然であつたのではなかろうか。これが二分の一、四分の一というような表現をするから、画一教育になる。こういうようなことについても、実は私どもも、もつとはつきりした説明がほしかつたのであります。こういうようなことで、いろいろ考えてみまする場合に、この法律の完璧を期しがたい点がある。でありまするが、根本において、私どもは決してこの法律を否定し、反対しておるのではありません。従いまして、かりにこの法律が通るといたしましても、私どもはこの完璧を期するために努力しなければならない。殷鑑遠からず、外国におけるこの種の法律も、十年、二十年をもつて、ようやくこれが議会に提案され、しかもまたその成果をあげておるという点を見るのでありますから、今急速にこれを上げるということよりも、むしろ十分時をかして、この第十国会内にこれを慎重審議して上げるのが、最も適当だと思うのであります。しかしこの法律自体に対して、私どもは何ら反対はしておりません。むしろこれが不備であるがゆえに、畸型兒であるがゆえに、完全な子供にしたいということから、私どもは今日まで審議をして参りました、どうかこの子供が月足らずの子供でないように、私どもは育てて行かなければならない。むりに月足らずの子供を産むというのは、非常に不本意でありますが、産期が来たということで、ただいまこの問題が審議されておるので、私どもは一切多数の決議に服従するよりほかに方法がなかろうかと思うのであります。
これによつて私どもは、少くとも以上の意見を述べまして、この法案の趣旨全体には賛成しまするが、いずれこの法律を修正すべきことの機会を得ることを期待し、そのことを附言いたしまして、一応賛意を表せざるを得ないことを申し上げます、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/161
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162・若林義孝
○若林委員長代理 松本七郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/162
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163・松本七郎
○松本(七)委員 私は提出者の一人といたしまして、いまさら申し上げることもないのでございまするが、今笹森委員から申されたように、やはりこの審議の状況に、はなはだ遺憾の意を表明せざるを得ないのであります。と申しますのは、私どもは、かねがね政府が法律案を提出して参りましたときには、まず第一に、その提出する時期がおそいということと、それから会期が切迫してから、十分の審議の余裕を残さずに上げてしまうという態度を、むしろこれまで政府に責めておつたわけであります。それが本日、私自身が提出者の一人でありながら、そういうふうな状態にならざるを得なくなつたということは、はなはだ遺憾にたえないのであります。特に民主党の方では、まだ質問事項が相当あるという状態であります。それから小委員会でも、いつも問題になりました予算の点については、長野委員長が直接大蔵大臣に会われて、それぞれの言質も得ておられると聞いておりますが、やはり正規の委員会において、大臣の出席を求めて速記に残すという手続を、私は経たかつたのであります。しかしながら、この法律自体については、小委員に入つておる私が、多くを申し上げることはございません。
ただ、ここに二つの希望を申し上げなければならないのであります。それはわれわれ小委員が起案するときは、すでに考慮もし、かつ努力もして来た点でございます。それは先ほど大臣の答弁にもございましたが、この産業教育法を効果あらしめるために、また産業教育ばかりでなく、一般教育というものを、今後日本の国の政治のウエイトを重からしめる上から申しましても、どうしても現在地方自治の問題と教育行政の問題、特に教育予算の問題というものと、真剣に取組まなければならない課題を持つておると思うのであります。この点について、はたして標準義務教育費の確保の法律案というような形で、たとい別な方法になつても、ああいうものでやつて行くべきか、あるいは昔の義務教育費半額国庫負担という方法で行くべきかという根本問題について、私は委員会としても、今後再検討を要するであろうと思うのであります。こういう点を解決しなければ、せつかくこういういい法律案も死文に終ることを、私は警告せざるを得ないのであります。
もう一つは、この法律で規定しております文字からは、必ずしもそういう心配はないと思うのでございまするが、これは大臣も心配しておるやに答弁されておりました。ただ使いやすい人間をつくるというようなことに堕されないように、これを私は特に強調したいのであります。私どもがこの法律を運営して期待するところは、ただ技術のすぐれた人間、使いやすい人間をつくるのではなしに、そういう産業教育を通じて、それによつて、むしろ人格のすぐれた人間をつくるということに、われわれは目標を置きたいのであります。ただそれが旧来の使いやすい人間をつくつて、下積みになるというような状態でなしに、それを切り抜けた人間養成の機関となる役を、この法律が果すことを期待いたしまして、かつ要望いたしまして、私は賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/163
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164・若林義孝
○若林委員長代理 これにて討論は終結いたしました。採決をいたします。賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/164
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165・若林義孝
○若林委員長代理 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。(拍手)
なお報告及び報告書の提出については、委員長に御一任を願います。
暫時休憩いたします。
午後四時十九分休憩
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〔休憩後は開会に至らなかつた〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02219510331/165
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