1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年五月十六日(水曜日)
午前十時三十三分開会
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本日の会議に付した事件
○自動車抵当法案(内閣送付)
○自動車抵当法施行法案(内閣送付)
○道路運送車両法案(内閣送付)
○道路運送車両法施行法案(内閣送付)
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001・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) これより運輸、法務連合委員会を開会いたします。
それでは議題でありまする自動車抵当法案、道路運送車両法案並びに両法案のそれぞれの施行法案につきまして質疑応答を開始いたしたいと思います。御質疑のあるかたはどうぞ御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/1
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002・伊藤修
○伊藤修君 委員のかたの御審議の関係上、法務委員から先に質問さして頂きます。私のほうの関係事項といたしまして主として質問いたしたいと思いますが、この法律によつて日本の法律の基本的な考え方に一歩前進いたしまして、新らしく動産抵当というものをここに創設しようというのでありますが、これに対するところの英米法系の立法例があるかないか。又我が国において他にこういう一つの立法体制が過去において認められたかどうか。この点について先ずお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/2
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003・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) 自動車に関しまして、アメリカ等の規定によりますと、やはり自動車の登録制度を利用いたしましてモーゲージの制度があるようであります。内容は苦干変つておるようでありますが、他には私どもちよつと存じておらんのであります。我が国におきましての動産抵当は、御説明のとき申上げましたように、船舶の二十総トン以上のものについての例、又農業動産信用法によりまして、農業動産についてその動産抵当を認めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/3
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004・伊藤修
○伊藤修君 元来抵当権の対象となるところの物件について、今御説明がありますごとき動産の場合においては、いわゆる物の同一性というものが保持されることは当然窺い知るところでありますが、本件のごとき動産の場合において、問題は物の同一性というものが果して保持できるかどうか。いわゆる担保権の公示の、いわゆる公示方法という点のみを捉えて、本法において抵当権を創設しようという、こういう考え方であるか。自動車のごときに同一性が果して保たれるかどうかという点にあるのですが、御説明の中にあるところの船舶に対するところの抵当及び農信法によるところの農業資産の抵当或いは工場抵当法によるところの抵当、こういうものに対しては、包括財産としてその一個の企業体制全体を抵当権の対象とするというところに狙いがあり、且つ容易にそれが分離できないというところにも抵当権の目的物としての適性が認めらるるのであるが、本件の自動車のごとき場合において、抵当権が果して目的が達せられるかどうか。例えば自動車の脚を容易に代える、ぼろのタイヤをいいやつと代えた場合において、果して抵当権の同一性が認められるかどうか。また機関についてはナンバーを打つということが書いてありますが、或いは機関の主要の部分についての変更があつた場合、ボデーの変更があつた場合、今日においては脚が非常に高いので脚の変更があつたような場合において、果してこの同一性が保たれるかどうか。いわゆる私の申上げるところは、いわゆる抵当権の対象としての物に適するかどうかという点について一つ御説明を伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/4
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005・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) この法案におきましては自動車の同一性を確認する方法といたしましては、自動車のシャーシー、車台にナンバーを打刻いたします。その打刻の、運輸大臣の指定するところに従つて打刻させることによりまして、同一性を確認して行こうということでございます。只今お話ありましたように、エンジンを取替えるというような場合におきましては、債権者の同意を得るように政令を以て定めるつもりであります。又自動車におきましては、この検査の條項によりまして厳格なる検査を毎年一回以上行うことになつておりまするし、その場合におきまして常にその車の実体につきまして検査できまするし、又登録におきましても検認の制度を設けまして、その車が実際に登録の実体と合つておるかどうかという点もいたすことにいたしておりまするので、同一性の確認ということにつきましては間違いなくやつて行けるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/5
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006・伊藤修
○伊藤修君 今の御答弁によると、簡單に同一性が確認できるという仰せでありますけれども、それは成るほどボデイについてはそういうマークを打つとか、或いは機関についてもマークを打つとか乃至は一ケ月ごとに確認によつて云々と言われるけれども、問題は抵当権を実行する場合において果して債務者がそういう善意な債務者のみということは限らないのです。多くの場合は債務者はとにかく債権を害することを想像しなくちやならん。その場合においていわゆる脚のごときものを変更するというような場合において、私は今の御説明では納得できんと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/6
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007・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) 惡意の債務者或いは抵当権設定者におきまして、債権を害するようなことがございますれば、勿論阻害行為といたしまして取消すこともできまするし、又抵当権の物権的の性質からいたしまして、その妨害の排除なり予防の請求をなし、又不法行為によるところの損害賠償ということも考えられまするので、その点につきましては心配がないのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/7
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008・伊藤修
○伊藤修君 それはちよつとお説としては乱暴ですね。不法行為によるとか、阻害行為の排除によるという、そういうことはちよつと実情に即さないと思うのです。又そういうことによつて救済されなければ目的が達せられないという、そこに、もう不備があるのじやないですか。それから我々は自動車に対するところの重要措置として、この法律のできることに対しては別に反対するものじやありません。ただ、できるならば完全無欠なものを作りたい。又抵当権の本質を明らかにしたい。将来国民がこれに対して、一体動産抵当というものに対して、こういうものが一つできれば今後はいろんな面について動産抵当というものが考えられる。一つの立法傾向として、一つの新らしい基礎を作ることになる。示唆することになる。こういうことを考えまして、私は明らかにして置きたい。かように思うのです。本法立案に対して反対する意味じやないのです。それから御説明のような趣旨ではちよつと私は目的が不安ではないかと思うのです。それから私の申上げることはあなたの御説のように、いわゆる不法行為による損害賠償の訴えとか、妨害行為の行為取消を訴えを起すとか、そういう複雑な手続をしなかつたならば債権者はその権利を保護せられないというような、不安な法律ではいかん。どうせ法律を作るならば、いわゆる法律自体によつて債権者の権利を確保されるような透徹したものでなければならない。その意味において、根本的な同一性の保持ができるかどうかという点をあなたに伺つて置きたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/8
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009・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) 自動車の価格から申しますと、シャシ一、車台の価格というものは非常に大きな部分を占めておりますので、車台が変らなければ同一性を保つておるというふうに考えて立案をいたしておるような次第でございましてタイヤの交換、或いはタイヤの摩耗ということは、勿論動産でございましてあるわけでございます。そういう点は、実際の抵当物の交換価値そのものから行きますと少い部分を占める、こういうふうに考えまして、重合の変更がなければ同一性を確認するという前提の上に、これを立案したようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/9
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010・伊藤修
○伊藤修君 私はこういう業者ではありませんけれども、業者のかたが果してそれで納得するか。いわゆる今日の自動車の通念といたしまして、脚が最も重要なものである。ただ価値において、脚だけでは車台の総価値から比較いたしますと少いという仰せでございますけれども、むしろ業者としては脚を第一に見ることが当然の通念ではないか。ただ価値の比例だけで以て脚は問題ではないというようなことはちよつと暴言だと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/10
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011・佐竹達二
○政府委員(佐竹達二君) 脚というのはどういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/11
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012・伊藤修
○伊藤修君 いわゆるタイヤのことを言うのです。それは業者で皆言つておるでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/12
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013・佐竹達二
○政府委員(佐竹達二君) ええ、言つております。
それで、この全体の自動車の値段にいたしまして、タイヤの値段というものは大体一割から一割五分くらいの見当だと思いますので、それでこの消耗というものは当然考慮に入れて考えるべきものだと思いますので、自動車の価値というものはシャシーなりエンジンなりに依存しておると考えて然るべきものじやないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/13
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014・伊藤修
○伊藤修君 あなたがたは結局その仕事をやられるという面だけで考えているが、我々は法理の面から考えるのです。
ただ金額の問題を言つておるのではない。金額は重要だと私は思いますが、あなたがたは重要ではない、パーセンテージからいつたら少いというので、それは問題じやないというふうにお考えになるが、一体それでは、これは実行する場合に、外された場合に、それに追求するかどうか。本法でもつてそれを追求できるかどうか。タイヤを外されておる、その外されたタイヤに対して、古いタイヤを附けられて外されたタイヤにつきましては、本法において追求できますかどうか。抵当権の追求牲がこれで認められておりますか、先ずこれを伺つて置きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/14
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015・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) 不動産と同様に抵当権といたしましては追求いたしません。他の方法によつて救済をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/15
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016・伊藤修
○伊藤修君 他の方法とはどういう方法ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/16
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017・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) それが不法行為によるものでありますれば勿論損害賠償を取るというような方法によりまして救済いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/17
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018・伊藤修
○伊藤修君 どういう不法行為に基くのか存じませんがそういう場合において、不法行為によつてその救済を求めるという行き方はどうですかね。一体理事者にお伺いしますが、この法律はあなたのほうで立案されたのですか。法務府の意見長官の意見でも徴せられて立案されたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/18
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019・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) この法律は私のほうで立案いたしまして、法制意見局の審議を経て決定いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/19
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020・伊藤修
○伊藤修君 今の追求権の問題はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/20
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021・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) 惡意を以て、車を故意に新らしいタイヤをはずして、抵当権実行の前にあるものを古いタイヤに換えてしまつたというようなことがありますれば、或いは阻害行為、不法行為が成立する場合におきましては、不法行為によりまして掲害賠償を取ることにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/21
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022・伊藤修
○伊藤修君 元来抵当権の物権的効力といたしまして、物に対して権利は追従しております。その物の支配によつて債権者は利益を享受するということは本質的に明らかであります。従つてその物が分離されまして他に行つた場合において、不法行為の概念とか、或いは阻害行為の概念とかというものは、抵当権の場合においては効用をしないと考えるのです。又そうすることが当然のことです。然るが故に物権として債権以上の効力を與えておるのです。従つて物権の範囲におきましては当然追求権というものを認めておるのです。然るに本法ではそれに対するところの手当がしてないのではないか、いわゆる不動産抵当の場合において追求権を明らかに認め、又農信法においても認めております。或いは船舶の場合でも確かに認めておるのです。そういうものに対して認めてやることが当然じやないでしようか。あなたのおつしやるようにただ不法行為である、或いは阻害行為である、それで他の法律によつて救済を受けなければならないという脆弱な抵当権というものは果して認めるかどうか。抵当権の本質をそこで以て打切ることになるのではないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/22
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023・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) お説の通り抵当権は物権でございますから、物権的な請求権によりまして返還を求めるということが抵当権の性質からできるものではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/23
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024・伊藤修
○伊藤修君 できるものじやないかと仰せになるけれども、それはこの法律の建前として、いわゆる不動産抵当というものによらずして、特別な抵当権として、ここに動産抵当を新らしく創設するという特別法としての建前であることは仰せの通りであります。して見ますれば、この特別法中に物権的追求権の規定を明らかにしなかつたならば、抵当権者は権利の完璧を期せられないのじやないかということをお尋ねするのです。だから私はそういう欠点を補正なさつたら如何か。こういう意味です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/24
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025・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) 私どもが考えておりますのは、この特別の自動車抵当権というものをこの法律によりまして設定いたしまして、民法の総則に関する規定につきましては適用があるものと考えておるのでありますが、物権的請求権として返還を請求するということはできる、民法の規定によりましてできるものと考えておるような次第であります。殊に自動車のタイヤのごときものは自動車に附加して一体となつておるものでございますから、これにつきましては、不動産の例によりましても特別の規定を置かず、民法の総則の規定によりまして解決をいたしたいと考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/25
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026・伊藤修
○伊藤修君 どうも支離滅裂ですね。別にあなたをいじめるというつもりじやないのですけれども、私はあなたにこの法律に対して、お互いにいい法律を作りたいと思うから欠点を指摘しておるのです。ですから欠点は率直にお認めになつて研究をなさるならともかく、ただ言いのがれようというお考えではちよつとまずいと思うのです。私は改めて御説明申上げるまでもなく、今私が質問していることは抵当権の効力の問題を質問しているのです。あなたのいうような御答弁は物権の総則を御説明なさつている。総則によつてはそこに出て来ないのです。物権の本質はそこにある。総則の規定が効力の面に及んで、効力の規定がなければ、抵当権の実行について追求権というものは認められないのです。だから、これは明らかに、私は抵当権者を保護するというのならば、これは明記すべきものである。こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/26
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027・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) この点につきましては更に私のほうといたしましても研究いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/27
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028・伊藤修
○伊藤修君 それでは理事者の御研究に待つことにいたしまして、私はその点は強く指摘して置きたいと思います。
次に本決において、この抵当権の実行についての規定は、僅かに十七條の第三項、第三項が抵当権の実行についての規定と考えられますが、その他の規定は最高裁判所の規則に譲るというような書き方がしてあるのですが、御承知の通り最高裁判所のルールによるということは、憲法第七十七條ですか、それに基いて最高裁判所がルールを決定する権限を持つておることは申すまでもありませんが、これは問題が今日なお解決しておらないのですが、少くとも立法府としての考え方は、従来の一貫した立場から、およそ我々の基本人権に影響のない、單なる手続に関する規定、こういうふうに制約した下に今日までその態度を一貫して参つたのです。又最高裁判所もこの点に対しては敢えて立法府との紛争を避ける意味において、みずからその点は規則制定ということを狭義に解釈しておつた、こういう今日までの立場であります。で、むやみやたらに最高裁判所のルールに委讓して行くということは、立法府そのものの権限の委讓であることは我々として納得できない、それから殊に本法の場合におきましては、いわゆる権利の得喪変更に関するところのもの、基本人権の基本である財産の得喪変更に関するところの基本人権の事項を定めておる。これを最高裁判所に委ねるということは、みずから立法権の放棄であると考えます。こういうようなことは我々としては承服できない。少くとも不動産抵当法におけるところの実行に関する規定をここで準用なさるか、或いはここに改めて明定なさるか、いずれかの方法をおとりになつた方がいいのじやないかと思います。御意見を伺つておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/28
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029・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) 只今の御説誠に御尤もなことでございます。私どももいろいろ考えたわけでございますが、今回自動車が第五條によりまして不動産的な取扱を受けることになりましたので、これらの抵当権の実行につきましても不動産的の取扱をするという必要が生じて来ました。ただ自動車がその性質上機動性に富んでおる。その他自動車の特質から考えまして、民事訴訟であるとか或いは競売法によるところの不動産に対するところの手続をそのまま適用するということが困難となつて参りましたので、何か適切な調整規定を設けなければならないと考えておるのでございます。その結果、いろいろ考えました結果、この七十七條の規定によりまして、裁判所の管轄といたしまして、その手続を最高裁判所の規則制定にゆだねました。このことは家事審判法であるとか或いは民事訴訟法等の例もございましたので、又その他民事の調停法案などにおきましてもありましたので、この方法によつたのであります。なお最近いろいろ行政関係の立法等を見ておりますと、こういう例も多々ございますので、最高裁判所規則によりましてやつて参りたいと考えておるのであります。殊に競売法、民事訴訟法を改正をいたしますということになりますと、非常に時機が遅れるという点も考慮に入れた点を申上げで御了解を得たいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/29
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030・伊藤修
○伊藤修君 私の質問の根本に触れていらつしやらないのですが、私の申上げることは、これは便宜最高裁判所のルールにゆだねるという安易な考えかたはいけない。いやしくも立法府としてみずから当然なさなければならん法律制定、即ち基本人権の保障に関するところの重要事項に対しまして、他の機関、行政機関にゆだねるということは、我々としては憲法の精神から申しましても不適当じやないか。殊に競売法であるとか民事訴訟法の強制執行手続法というものは、いわゆる基本人権に影響あればこそ法律を以てしておるのです。ただその執行の手続に、單なる手続に関する規定は、これは最高裁判所の定めでよろしいけれども、得喪変更の基本的な基礎というものは法律によらなければ我々は不適当と考えております。ただこれは基本的なものは本法において準用なさるという形式をおとりになる、強いて考えるならばですよ、準用なさる、いわゆるそのまま適用せずして準用なさる、或いは移し替えてここでお書きになつてもよろしいと思うのですが、そうしてその手続を期日を定めるとか運行を定めとか、そういう手続、ルールに関することは、最高裁判所にゆだねて結構です。そうなるべきが当然だと思うのです。立法の建前から行きますと……。若しあれでしたら御研究になつて御答弁をなさつてもよろしいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/30
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031・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) この点につきましては法務府と再三に亘りましていろいろ検討した結果ですので、更に検討いたしまして御返事を申上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/31
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032・伊藤修
○伊藤修君 では次に、この抵当権は、ちよつと條文をずつと読みますと、いわゆる抵当権の登録によつて対抗要件にしているように考えられるのですが、若し違つておりますれば御訂正になつてよろしいが、私は、対抗要件とするならば、農信法では確か善意の第三者に対する対抗要件にしておりますが、本法では善意、惡意を問わず対抗要件にしているようですが、むしろ登録ということを基本に考えてこの抵当権を創設されるというならば、これを成立要件にされたほうが益々以て抵当権者に確実な権利の保障になるのではないか。成立要件にするか。対抗要件にするか。対抗要件にするならば、善意の第三者に対しての対抗要件にするか。或いは善意、惡意を問わずして対抗要件にするのか。この点を明らかにして頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/32
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033・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) この法案におきましては、お説の通り登録を以て対抗要件といたします。又農業用動産の抵当権の対抗力についての特則がございます。只今おつしやいましたように、惡意の第三者に対しては登記なくしても対抗できるというような規定がございますが、実際に善意、惡意というような認定の困難、その他法律の錯綜等を考えまして、そういうことでなしに全部したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/33
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034・伊藤修
○伊藤修君 成立要件にするかどうかということは……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/34
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035・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) 成立要件ということにしませんでしたのは、現在の船舶の抵当につきましても、農業動産の抵当にいたしましても、登記を以て対抗要件にいたしております例に倣いまして、今回もしなかつたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/35
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036・伊藤修
○伊藤修君 御研究が足らんのじやないですかね。船舶の場合と、農信法によるところの抵当権の場合には、御承知の通り農業企業を構成している農業資産というものがある、それを包括して抵当権の目的にする。従つて抵当権設定契約ができて、その農業資産として一体をなしたものにつき、抵当権の本的たる経済価値を認めるところに法的価値がある。本法の場合におきましては、そうじやなくして、初めから登録をするということが、もう基本的にあるのですから、容易にできるのです。できるならば、むしろその登録を創設すると同時に、登録することによつて抵当権の成立を認める。こうしたほうが、債権者に対するところの権利の確保というものの完璧を期するのじやないか。ほかのものがあるからこうしたのだとおつしやるけれども、ほかのものはできない。船舶の場合におきましても、船舶を作りつつあつて、作つて初めて抵当権ができて来る。不動財産の場合に、不動財産の登記の契約ができて、そうして不動産財産の登記をして、そこで初めて抵当権を設定する。だから契約の成立と対抗要件とは、二つに分類して二段に行われる、行わざるを得ない。本件の場合におきましても、むしろ同時に行うことのほうが、債権者の権利は確保されるじやないか。又それのほうが第三者の権利を害する虞れもなし、殊に本法においては善意、惡意を問わずと、こうおつしやつているのですから、我々はむしろ立法的には、惡意の者には対抗を当然できる。こうしたほうがいいと思うのですけれども、これはお考えによつてですから異論はありませんが、どちらでもよろしいが、併し私は本来ならば、惡意の者に対しましては何も登録抵当権の執行の対抗云々ということは、これによつてしなくてもいいと思うのであります。惡意の第三者を保護する必要はない。法律はすべてそういう根本理念の下に作られているのですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/36
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037・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) 成立要件にするかしないかという点につきましても、いろいろ法務庁との間の交渉におきましてもあつたのでありまするが、この点につきましては更に研究いたしまして答弁を申上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/37
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038・伊藤修
○伊藤修君 先ほどお伺いしたいわゆる追求権の問題と関連いたしまして、今理事者のお答えがあつたように、若しそれをも犯して物を損傷する、分解する、抵当権の実行を阻害する、こういう者に対するところの処罰の規定を設ける必要はないでしようか。いわゆる民事手続によらずして、それを犯罪と見るという考え方はどうでしようか。私は他の立法側からしても当然それは考えるべきことじやないかと思います。基本的には私は追求権の規定を設けられることが当然だと思います。そうして、なお且つ、それを犯して、債権者を害する目的を以て物を分解をし、そして損傷する、そうして抵当権の実行を不可能ならしめるという者に対しましては、罪として処罰するのがこれは他の立法例にも見受けられるのです。そうして行くことが端的にその権利を確保する国の親切な手当だと思うのですが、御意見を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/38
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039・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) 農業動産信用法には一部そういう規定もあるわけでありますが、私法関係の事柄に対しまして罰則を以て臨むということについては、他の法令の審査のときに私も非常に法務庁といろいろ折衝をしたこともあるのでありますが、そういう点からいたしまして罰則まで及ぼさなくてもいいじやないか。こういうふうに現在私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/39
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040・伊藤修
○伊藤修君 本法でも罰則はあるんじやないですか。車両法にはあるのじやないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/40
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041・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) 車両法にはございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/41
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042・伊藤修
○伊藤修君 ですから、いわゆる車両法において、私らから言えば行政違反だと思いますが、それに対して刑罰を以て臨んでいるのですから、私権の得喪変更に対しまして、それを不正に侵害する者に対しまして好意を以て臨むよりも、むしろそれに対しましては刑罰を以て臨むのが当然のことです。それは工場抵当法にもあります。農信法にもあります。あえてこの法律だけがそれを辞退する必要はないと思うが、これはお考えになつたら如何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/42
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043・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) 先ほどの返還請求権と関連いたしまして研究いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/43
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044・伊藤修
○伊藤修君 本法の第十七條によりますと、「抵当権者は、前條後段の通知を受けたときは、その自動車に対して、直ちに、その権利を実行することができる。」即ち十六條の後段のような事項が生じた場合において、返済期が到来した抵当権の実行が直ちにできるということを明らかにしたわけです。そうすると前段の場合は含まれないのですが、前段の場合に任意に抹消した場合において果してどうなるのか。それはいわゆる抵当権の実行の時期の到来ということにならないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/44
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045・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) 前段は陸運局長が職権を以て抹消登録をした場合でありまして、この場合には期限の到来ということにはならんわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/45
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046・伊藤修
○伊藤修君 この抹消は、職権を以て抹消するということは、その用途を廃し或いに解体し、いわゆる自動車所有者において任意にそれを届出ることによつて陸運局長がこれを抹消するのでしよう。従つてその抹消の内容は、任意の場合も包含すると考えられるのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/46
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047・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) 間違えました。十五條の場合は、車の自動車でなくなつた、或いは自動車の同一性を失なつてしまつたような場合の抹消登録の規定になつておるわけでございまして、第十六條におきましては、同一性を保持しておりますけれども、運用の用に供しない自動車にした場合を規定しておるわけでございます。従いまして十五條によつて抹消してしまいました場合には、抵当権の請求権といたしまして、そのものに請求がかかつて行くわけになります。又その保險金その他のものに物上代位をして行くことに相成るわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/47
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048・伊藤修
○伊藤修君 御説明はちよつと納得できんのです。解体した場合は暫くおきまして、用途を廃すという場合において、今御説明のように運輸の用途に使わないからというのですね。だから登録を取消す、こうおつしやるのですが、そうすると債務者の任意に用途を廃止する、それによつて抵当権は抹消されてしまうのです。一つの逃道ですよ。あなたは、債務者というものは相当惡意に考えなくちやならんのです。抵当権がいつの間にか抹消されてしまう。私は大きなミスだと思います。そういう点をよくお考え合せにならないと、漫然とこういう規定を設けられるということは、債務者というものはそこから逃げて行つてしまうのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/48
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049・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) 速記を止めて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/49
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050・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/50
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051・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) この「自動車の用途を廃止したとき」というのは、先ほど申上げましたように、十五條において言つておりますことは、自動車の同一性をなくすること、更に進んで解体してしまうとか、滅失してしまう、なくなつてしまうというような意味合から、自動車のエンジンを外してしまうとか、或いは又單なる事務所代用に使つてしまうとかというような意味合いの場合なんでありまして、十六條のほうにおいて「運行の用に供する」というのは、自動車が道路上を走らずにそのまま動かない状態に置く、こういうような意味合いで同一性を保つておると、こういう意味合いで規定したのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/51
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052・伊藤修
○伊藤修君 この條文の書き方から申しますと、解体の場合と用途を廃止するということとは別個の問題だと思うのです。「登録自動車が滅失し、解体し(整備又は改造のために解体する場合を除く。)、又は自動車の用途を廃止したとき。」とあるのです。従つてお説のようにはこの條文は読めないのです、又そう読まぬことが当然です、この條文から言つて……。だからあなたの御答弁は條文にもたれていないのです。道路運送車両法の第十五條の第一項の第一号です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/52
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053・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) 私共がいろいろこれを書きましたときは、「滅失し、解体し」というのは、自動車の元の姿を全く喪失してしまう場合を考え、又「自動車の用途を廃止したとき」という場合は、自動車を輸送手段として使用することを廃止する場合におきましてその物理的変形を伴いますけれども、元の姿が全然はなくなつてしまわない、全面的には喪失しない状態を用途を廃止すると、こういう観念で立案したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/53
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054・伊藤修
○伊藤修君 それはそういうふうには読めないのです。前に例示的に「滅失し、解体し」と、こうある、而も括弧の中で説明書きが付いておつて、そしてその後段にもつて行つて「又は自動車の用途を廃止したとき」とある。これは任意に今まで運送用に使つておつたものを運送品にもう使わないと言つて届ける、或いは営業に使つておつたものを営業をやめたからと言つて、車庫に放り込んでおいて登録を取消す、或いは自分の田舎へこれを疎開させておくというので、持つて行くために登録を取消すという場合が、まあ自動車の用途を廃止するということになる。これは最高裁判所の判例をとつても当然そう出て来る。あなたのようなお考えには出て来ないです。こんな條文の解釈、そういうふうな御解釈は、それは国民こそ大変迷惑いたします、そんな解釈をとつて頂いては……。して見ますれば、この條文を受けた抵当法の第十七條、従つて遡つて又第十六條になるが、その前段の場合の登録を抹消したということにこれが含まれて来る。そうすると、債務者の任意に用途を廃止する、そうして抵当材の抹消をここで図つてしまう。そうすると、抵当権は抹消されてしまう。折角債権者は抵当権を持つておると思つて一生懸命でやるが、債務者の任意によつて抵当権が抹消されるという虞れが十分考えられる。これはあなた、面子をお考えにならずして、折角これだけの法律をお作りになるというならば、その点を研究なさつて、そういう穴のないように御考慮を願いたい。いろいろ当委員会において他の重要法案もおありになるから、一応この程度にしておきますが、私のこの法律に対して疑義の点を指摘申上げることは、この業界において、今日の金融状態から考えましても、提案理由の説明のごとく、こうして金融の途を開いてやるということは好ましいことであるということは前提として認めますが、従つてそういう途を開いてやるならば、債権者に対しまして安心して債権の実行できる権利を確保せしめることである。又債務者はそれによつて誠実に実行し得べく法律によつてよくその点を取締る。いやしくもそれに対しまして債権者の利益を害するがごとき行為をなさしめないように法律で手当する。あなたの先程の基本的のお考え方では、この法律で拔けておるならばほかの法律でどんどん取締つたらいいじやないかというような、そういう不親切なことでは、債権者は安心して金融の途は開きません。又債務者も窮して参りますれば何事をするかわからないですから、これが日常のことですから、そういう点をよく考え併せまして、こうやつて類例のない動産抵当というものを日本において新しく創設しようというならば、一つ模範的なものをお作り下さい。なお、よく御研究の上、次回に御答弁をお願いすることにいたしましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/54
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055・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) 只今の御質問のうち、本日、研究してから答弁をすると言われました部分につきましては、さように取計わるる旨今打合せいたしました。次回におきまして御答弁申上げるように取計らいたいと存じます。
どうぞ次に御質問の方、御発言をお願いいたします。鈴木さん、山田さん、御質問ございませんでしようか。運輸委員会側如何ですか。若し本日のところはございませんければ、あとは次回に讓りまして、合同審査会としては本日はこれで終ります。
午前十一時三十二分散会
出席者は左の通り
運輸委員
委員長 植竹 春彦君
理事
岡田 信次君
小泉 秀吉君
高田 寛君
委員
仁田 竹一君
山縣 勝見君
内村 清次君
菊川 孝夫君
小酒井義男君
前田 穰君
松浦 定義君
鈴木 清一君
法務委員
委員長 鈴木 安孝君
理事 伊藤 修君
委員
山田 佐一君
齋 武雄君
岡部 常君
政府委員
運輸省自動車局
長 牛島 辰彌君
運輸省自動車局
整備部長 佐竹 達二君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013828X00219510516/55
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