1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年五月二十五日(金曜日)
午後二時四十分開会
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本日の会議に付した事件
○交通政策の公正なる実施に関する問
題の件
○道路運送車両法案(内閣送付)
○道路運送車両法施行法案(内閣送
付)
○自動車抵当法案(内閣送付)
○自動車抵当法施行法案(内閣送付)
○鉄道敷設法の一部を改正する法律案
(衆議院提出)
○港湾法の一部を改正する法律案(衆
議院送付)
○日本国有鉄道法の一部を改正する法
律案(衆議院提出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/0
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001・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) 只今から運輸委員会を開会いたします。暫時そのままで休憩いたします……。
只今委員外の議員として参議院議員の一松定吉君より極めて短かい時間質問をいたしたいとの申出がありました。許可して御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/1
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002・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) さように決定いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/2
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003・一松定吉
○委員外議員(一松定吉君) 委員外の質問としてお許しを賜りましたことを感謝いたします。私は運輸大臣に少しばかり御所見を承わつてみたいのであります。
終戦後我が国の交通に対しまして非常なる進歩発達を加えて殆んど戦前に近いような状況に立至りましたことは、運輸当局の御尽瘁の賜であるとこの点に対しましては私は感謝いたしております。私の所見といたしましては、我が国における運輸交通に対しましては何といたしましても運輸省のとるべき処置は公正でなければならない。交通の便宜ということを念頭に置かなければならない。外客誘致に関して将来の見通しを以てそれらの施設を十分にしなければならない、こういうように私は考えておるのであります。ところがよほどこの交通が回復せられ、我々国民としてこれはよほど戦前に比べて見てよくなつたと感謝をいたしておると同時に、一方には非常な不平を持つておる地方のあることを見逃すことはできぬと私は思います。例えば東海道、これはもう非常に戦前よりも殆んどよくなつたくらいに私どもは思つておりまするが、東北、北陸、山陰、四国等における交通はまだ戦前に比較いたしましてこれはよほど進歩発達したという域に達していないのではなかろうかと私は考えております。こういう点は一つ運輸大臣といたしましても大いに御考慮に入れて頂かなければならぬと思いますが、これを少しく具体的に申上げまして成るべく質問を簡略にするという意味において、例を以て御質問を申上げてみたいのであります。何といたしましても我が国におきましては東京を中心にして交通の利便ということを考えなければならぬと思います。これに関しまして東京を中心として各地に至るいわゆる直結しておる汽車の運行を見ますれば、先ず近畿に対しましては大阪、神戸、こういう方面には至れり尽せりの特急若くは急行の運転が行われておることは、我々は誠に感謝いたしておりまするが、九州に及びますると東京から九州に直結いたしておりまする連絡は、博多、熊本、鹿児島、長崎とこれだけの四つの線が東京から直結いたしておるのであります。然るに東京から大分、宮崎、宮崎を経て鹿児島方面に対しましては一つもこの直結の線路が設けられておりません。ただ京都から都城行の準急というのが一本あるきりです。でありますから、大分、宮崎、若しくは大分、宮崎を通して鹿児島方面に旅行せんとする者は、門司において京都から来る準急に乗り換えなきやらん。その間が少くとも一時間半、二時間の暇があるのであります。それがために非常に不便を感じておることは関係方面の皆様のよく御了知のところであろうと思います。そればかりではありません、急行券を求めるにいたしましても、寝台券を求めるにいたしましても、大分、宮崎の人は博多か、門司か、小倉か、下関かに交渉しなければそれらのものはとれないというような実情にあることを我々は非常に不便に感じております。こういう点についての運輸大臣の御所見はどういうものであろうがそれを一つ承わつてみたい。
それから今度はこの東北方面にいたしますると、いわゆる東京を中心にして直結いたしておりまするのは仙台行が一本あります。それから青森が二本あります。準急は青森が一本あり仙台が一本ある。こういうことでありまするからこれはまあ比較的やや恵れているというように考えられるのでありまするが、今度は新潟方面に参りまするのは急行というのがただ新潟行一本丸るきりでありまして、あとは直江津、新潟に行ける準急がある。それから山陰の方面に至りましては殆んど一つもありません。でありまするから京都から山陰に旅行する人は乗り換えなきやならん。で、これが丁度私が先刻例をとりましたように、大分、宮崎に旅行する人と同じような不便を感じておる、かように私は思うのでありまするが、こういう点に対しましての運輸大臣の御所見を承わつてみたい。これに対しては将来どういうようなお考えを持つておるのであるか、又何故にこのような大分、宮崎や、山陰方面が、言葉は悪いですけれども虐待されておるのであるかということについて一つ考えを承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/3
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004・山崎猛
○国務大臣(山崎猛君) お答え申上げます。終戦後政治的、経済的万般の事情が復興の段階に入らざる状況であつたにかかわらず、国有鉄道の復興の仕振りが予想以上に早かつたというお言葉は、運輸大臣といたしましては誠に有難い御観察の御発表であると、及ばずながら国有鉄道全従業員の努力の結果が、混乱のうちからこれだけの秩序を取戻したものと考え、更に一層のお言葉までもなく将来に向つてその線を強く押出して行こうという覚悟でおる次第であります。ところで交通上の政策の実施は公正でなければならない、誠に御意見御尤もと考えます。国有鉄道である以上はできるだけ全国津々浦浦に至るまで公正といいますか普遍的といいますか行き亘つた運営の仕方であり、国民の期待に副うものでなければならないという点も全然私はお説に同感の意を表するものであります。ただ御了解を願つておかなければならないことは、勿論願うまでもなく、万々御承知の点ではあろうと考えまするけれども今日の日本の全線一万九千キロ約二方キロに上るこの鉄道のうち、約四割が黒字線であつてその六割は赤字線であるという事実なのであります。従つて黒字線によつて赤字線を養いつつ、補いつつ全二万キロの鉄道運営を行なつておるというような状態にありまするので、自然赤字線に属する部分においては黒字線に対する部分よりも若干の手遅れがあり勝ちなのであります。黒字線を十分になしつつそうしてできるだけその力を割いて赤字線に振向けるというような状態であるのであります。ここに鉄道運営の上の苦心が存する次第でなのあります。更に又しばしば東海道線が如何にも他の全国の線に比較して力の入れ方が過ぎている、更に露骨な批評は少し贅沢過ぎやしないかという批評もあるのであります。これらに対しましては勿論不必要なる贅沢はしないのでありますけれども、冀くは東海道線のごときは経済的に最も頻繁なる往復の多い所であるばかりでなしに、国際的の玄関口の姿でもあるような形にありまするので、或る意味においては試験的の意味におきましてもこれらの線に対して先ず力を入れてみて、手を加えてみて、それを全国に及ぼす、徐々に及ぼして行くというような施策もあるような次第でありますので、殊に東海道線だけを贅沢に野放図に待遇をするという狙いではないのであります。勿論申上げるまでもなく東海道線は黒字線中の黒字線であるということは申上げるまでもないのでありまして、東海道線によつて得た利益を多分に地方の赤字線に振向けつつあるということを御了承を願わなければならないのであります。
それから今日これはやはり一つの日本の国情の観測でありますが、僅かに終戦後五カ年余りであるにかかわらず、経済産業といわずあらゆる面が復興の兆が盛んであつて、全面的に交通機関に対する需要量が増すような傾向を持つているのであります。これは日本復興の、興隆の機運の反映であると考えまして、私どもはそれに愉快に追われつつ最善を尽しましてこれを満すことに努力するというような方向をとつている次第なのであります。いずれにしても貨車といい客車といい戦争中以来そのままにして置いて、戦後において窮屈の中から補修をし若干の新車を造つて補つているような関係もありますので、勿論運輸当局といたしましては、十分国鉄を鞭撻してその充足を図ることに努力はいたしておりますけれども財政上、資金上の都合も十分に参らず、国民の期待に十分に副うことができないということを反省して努力いたしておるような次第であります。
只今各線における列車の東京を中心としたる、日本全国各地方に通ずる幹線についてまだ不十分なる点が多々あるということを実例を一々お挙げになつてお話があつたのでありますが、それらの線の連絡等については私甚だ運輸大臣として頗る素人でありまして十分にそれらの線の連絡を心得ておりませんけれども、只今お挙げになつた程度の幹線につきましては私が実際に乗つた体験から申して誠にその通りであるということを肯定するに決してやぶさかなるものではないのであります。こういうことは列車の運転系統を、正しい時間の連絡をとるというようなことは、鉄道当局の專門技術的の領分に入りますので、運輸大臣がただ机上においてここからここまで引張つて行けというようなわけには参りませんけれども、併し私どもが地図を開いてここからここまでは当然一貫したる運転があつて然るべきであるという常識の判断から申してもできることなのでありますから、その常識の判断に副うべく技術的、專門的の研究調査をさせて、そうしてそういう方面に到る旅客に対する満足の行くように今後調査、努力、実現を期することに力を入れたいと、こういうふうに考える次第であります。
只今特に具体的の一例としてお挙げになつた日豊本線に急行列車を設定するというがごときは、これはどうかというお尋ねでございますが、具体的の例を示してのお尋ねでありますからこの点につきましては特にお答えを申上げたい、かように考えるのであります。現在日豊線の旅客交通量は一日平均百名前後となつているのであります。もう少し詳しく申上げれば百十五名前後ということになつているのであります。このために若し急行列車を一個列車設けて、これを運転するというようなことになりますれば、現状から申しては相当難点があるのであります。なお現在の都城、京都間の準急一往復を東京まで延長せよというような陳情も別に受けておるのでありますが、これも右の趣旨から難点がありますので目下研究調査中なのであります。この準急列車は門司において東京行の急行列車、これは熊本発の列車でありますが、この東京行の急行列車は大阪において上り特別急行列車「はと」更に下り特別急行「つばめ」に接続をとつておりますので、現状では乗継ぎの不便はあるけれども、ともかくも線は続いている。只今その乗継ぎの不便を特にお話があつたのでありますが、これらも現状においてはともかくも乗継ぎではあるけれども連絡ができておるのでありますので、しばらく御辛抱を願えれば、我々の方の調査と相待つてそうして御期待に副うように努力いたしたいと考えるのであります。不十分なる点は重ねて一つお尋ねを願つてお答え申上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/4
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005・一松定吉
○委員外議員(一松定吉君) 今の大臣の御誠意ある御答弁でほぼ御趣旨のあるところはわかりましたが、今あなたの御答弁のうちで、私今少しく御考慮を払つて頂けば我々の希望は達成せられるのではないかと思うふしがありますからそれを一つ申上げてみたいのであります。あなたのお言葉のうちに黒字線と赤字線とは、赤字線の方は黒字線の収入によつて賄いつつ僅かに経営を続けておるのだという御趣旨はそれはよくわかります。ところが東京から大分、宮崎、鹿児島に直通する急行を一本ふやすことによつて、赤字線を黒字線で補給ができないものだということには実は私は賛成できない。なぜかというと、東京から小倉までは黒字線でなければならない。小倉からあなたのおつしやるように乗客が一日百十五人だ、一日百十五人というそれはそんなに僅少であるかどうかこれはわかりませんが、この辺をもう一遍お答えを賜りたいが、小倉から大分、宮崎、鹿児島を経ることが仮に赤字としても、東京から小倉までは黒字でなければならん。それはなぜかというと、東京から博多行、熊本行、長崎行、鹿児島行は黒字であるために、この急行というものが運転ができておるならば、小倉まで黒字であるものが小倉から先が仮に赤字であつても、いわゆる黒字と赤字とのプラス、マイナスによつて運営できはせんかというこれが一つ。
いま一つは私は現に東京を午前十時にたつて鹿児島に翌日の十八時に着くということを、大分廻りにして下さいとは申しません、申しませんが、鹿児島はいわゆる博多行、熊本行、長崎行がある。而して熊本からはですね、あれから先、熊本から鹿児島までの間を、これを大分、宮崎を通して、都城に行つて鹿児島に廻すとすれば、そんなに鹿児島に住んでいる人は不便じやない。時間からすれば南の方を通つた方が時間が距離が短くはないかと私は思う。そういうようなことについて私はあなたの御見解が牽強附会であるとは申しません、現に今まであるのですから申しませんが、今少しく御考慮を払えば我々の考えている大分、宮崎、鹿児島というものに、東京から直通の急行を出すということについてそんなに今御心配に相成るようなことはないのじやないかと思うのですから、この点はいま少しく御検討を賜りたいということが一つ。
それからなぜそういうことを申すかというと、別府というのは御承知の通りに、私は大分県の生れであるから、別府のことを特に言うのではありませんよ、別府は日本の別府であるばかりでなく世界の別府であります、将来講和が成立いたしますれば外客というものがどしどし我が国に入つて来る、そういうようなときに、別府を中心に東京別府間に急行が運転せられるということは、外貨の獲得の上からしても最も必要なことだろうと思うので、こういうような点を考えて頂くということと、それから佐伯は海軍の軍港であつたのでありますが、非常に港がいい、こういう所は外国貿易がだんだん進展するにつれて、この港というものは将来大いに有望な土地なのだ、外国船がどんどん入つて来るというような有望な土地、それにいわゆる宇佐神宮というものがある。それに鹿児島というものが直通するということになれば、これは是非一つ大分宮崎間を通ずる直通の急行を私は必要であると思うのであります。その点について一つ御考慮をお願いいたしたいということと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/5
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006・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) 御発言中恐縮でありますが、重要法案が山積いたしておりますから次回にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/6
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007・一松定吉
○委員外議員(一松定吉君) これだけ一つお答えを賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/7
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008・山崎猛
○国務大臣(山崎猛君) 日豊線に急行を入れるという点について、特に九州大分県の御出身の一松議員より地方の事情を十分御精通の上で詳細なるお尋ねであるのでありますが、お尋ねの御趣旨に副うように一つ十分検討いたしまして、ひとり九州南廻りの旅客の便のみならず、御指摘になりましたような別府という大きな将来の日本の観光地域の一つとして数えられるような点、別府より更に足を伸ばせば宮崎鹿児島とおのずから九州の特殊の景物に接し得るような次第でありますので、ひとり産業の面からばかりでなしに、そのような見地からも当然ここには相当重点をおいて検討さるべき線であるように考えまするので、お説のごとく国有鉄道を督励いたしまして、この方面開発の意味から申しましてもそういう線の開けるように努力いたしたいとかように考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/8
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009・一松定吉
○委員外議員(一松定吉君) 有難うございました。どうぞ一つお願いいたします。
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010・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) 次に道路運送車両法案、同施行法案、自動車抵当法案、同施行法案を一括上程いたします。前回に引続きまして質問を許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/10
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011・菊川孝夫
○菊川孝夫君 私は道路運送法案並びに道路運送車両法案及び自動車抵当法案についての質問を一応終るに当りまして、この三法案が国会を通過した暁におきまして、三法の運用の最高責任者となられます運輸大臣に対しまして二、三お尋ねいたしまして、その御所見を承りたいと思うのであります。勿論三法案のうちでも自動車抵当法案を除きまする他の二法案は、現在の諸法令を一応取りまとめられたというような恰好でありまして、別段そこに新らしい意欲というものはあるようには見受けられません。併し自動車抵当法案は動産たる自動車を新たに抵当権の対象にして、これによつて自動車運送事業の発達と自動車による輸送の振興を図らんとするものでありまして、まさに画期的な立法だろうと思うのであります。併しながら前二法案につきましても、今日まず長い間戦争や或いは占領下という悪い条件の下で、その発達を阻害されておつた日本の自動車輸送事業が、講和を目前に控えまして一つ躍進をしようという気運が漲つていると思うのであります。この気運に対処しまして新らしい時代に適合する自動車輸送行政を行わんとするところのこの積極的な意欲はこの法案の中に私は見受けられて非常に喜ばしいと思うのでありますが、この三つの法案の目的はどれも極めて立派なものを掲げてありまして、この新らしい時代に適合するものであるということができると思うのであります。併し如何に立派な目的を掲げましようとも、その運用を一歩誤まりますると、自動車輸送事業がとにかく勃興と申しますか、復興と申しますか、とにかく伸びようとする気運にありますだけに、その運用を誤つたら混乱或いは腐敗等の事実が生じる危険のあることを我々には忘れてはならんと思うのであります。
そこで第一にお尋ねいたしたいことは、この三つの法案のうちには随所に免許、認可、許可、登録、認定というような用語が使われておりまして、業者が運輸省に向いましてそれぞれの申請をすることになります。で、自動車輸送業者がこの事業が隆盛に向うに伴つて、どうしても業者の競争というものも又激甚になつて参り、従つてこれに伴う運動というものも私は猛烈を極めるということを当然予想しなければならんと思うのであります。従つて業者と担当官の間に忌わして表現であるかも知れませんが収賄だとか或いは饗応等のみにくい事実を生じる危険も一応多いと見なければならんと思うのであります。現に運輸大臣の所管、管掌にある、あなたの部下の中から海上保安庁の職員が多数に嫌疑を受けて現在留置をされております。今後まだその事件がどこまで発展するかもわからないというような新聞の報道でありまして、国民の指弾を浴びているということは率直にお認めにならなければならんと私は思うのであります。この事実を前にいたしまして、まあ運輸大臣は長年清節を謳われて参つた人格の高潔なお方であつて、併しながらそのあなたの指導力を以ていたしましても、この種の事件の根絶は極めて困難であるということを私は内部で痛感されましたと思うのであります。又国民に対しましても、こういう事件が起きておるということは非常に責任をお感じになつておると思うのでありますが、現にこの三法の審議に当りまして、地方行政委員と合同審査会を行なつた際にも、某委員から、免許、認可をめぐつて地方におきまして、これにまあ下手するとこういう事件に発展する危険のあるというような芽生えがあるかのごとき発言があつたことも事実であります。海上保安庁事件に鑑みまして、この立法を運用するに当つて、私は前車の轍を踏ましめないように事前に十分なる指導と監督をなされることが必要でなかろうかと思うのであります。これに対しまして大臣は如何なる決意と構想を以て、特に海上保安庁事件に鑑みまして、どういう構想を以てお臨みになろうとしておるか、この点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/11
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012・山崎猛
○国務大臣(山崎猛君) お答え申上げます。法案の随所に許可、認可、免許というような言葉が非常に多く現われて参り、これをめぐつてややともすれば業者との請託関係を生ずる機縁になりはしないか、如何にこれを監督するつもりであるかというふうに承わつたのであります。私も恐らくお尋ねになつた御本人と同じような気持で、一体日本の制度の上には許可、免許というような言葉が、或いは事項が余りに多過ぎるということを平生感じておるものであります。希くばこういう言葉をできるだけ最小限度にして、そうしてお疑いのような請託関係等の間違いのないような行政の運行ができることを望んでやまないのであります。それかといつて今日現状の民度、或いは情勢においてこれをできるだけ少くするというだけの方針でこれを扱うというわけにも参らないのであります。許可、免許等のことなしに、勿論お尋ねの御趣意も野放図に、自由放題にやれという御趣意ではなかろうと考えまするし私もさように考えるのであります。今日の日本の民度といいますか、社会の経済一般の慣例、現状と申しますか、これらのものが或る程度の制約、規制、調整の下にこれらの事業の発達を図るということでなければ全人ことごく神によらず、人間らしき弱点を現わして参るのでありますから、業者の面においてこれを調整するために必要なのでありますが、同時に又当局者として全面的の総合調整、統一を図つて行く上において、そうして健全なる事業の発達をなし、産業、経済、社会、文化前面に対する交通事業のサービスを提供するという上から行きまして、日本の今日の現段階においてはこの程度の許可、免許等の文字が法文の中に現われているということは願わしいことではないが止むを得ずこの程度までは御承認、御了承願わなければならないという次第であるのであります。従つて若し本法案が幸いにして御協賛を得て成立ののちにおいて実施した結果において、この辺のところを略してよろしいというような実際の実施の上から我々がこれを認める場合においては、決してそれを一カ所なりともさような扱い方を減らして行くということに決して当局はやぶさかなるものではないということをお答え申しておきたいのであります。勿論これを実施するに当りましては徒らに許可、認可の手続を煩雑にして一般業者に対して不便を感ぜしめるという建前ではないのであります。のみならず更に又これをよき武器として、業者との結託、請託というような機縁を作るということは厳に戒めて、海上保安庁の例なしとは申せませんがそれは運輸大臣といたしましては、それぞれの当事者をして誤りなからしめることを十分に注意をしつつ法の実効を期したいとかように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/12
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013・菊川孝夫
○菊川孝夫君 第二にお尋ねいたしたいことは、道路運送法案の目的の中に「道路運送の総合的な発達を図り、もつて公共の福祉を増進する」とあります。総合的な発達を図るためにはどうしてもやはり総合的な見地から助成、保護、監督等の必要があることは申すまでもないと思うのであります。特に自動車輸送事業はここで飛躍的な発展の段階に参つておるときに、先に私が申上げました通りであつて、むしろ大臣の方は、この点が自動車の今の状態はどうなつておるかということは、御認識になつていると思うのでありますが、その自動車事業はメーカー、自動車を作るのは通商産業省の監督を受けている。それから運転手の試験免許、監督は警察の所管事項になつている。それから交通規則は、これは道路管理者であるところの都道府県知事、又は市長の所管事項である。それから道路の建設というのは建設省の所管である、それから自動車の整備工場であるとか、或いは車体の検査、試験、運送事業の免許は、これは運輸省の所管になつていまして、極めてこれは多角的な行政組織だと言い得ると思うのであります。この多角的な行政組織でもつて総合的な発達を図ることは実はむずかしいことであろうと言わなければならんと思うのであります。運輸行政の最も大事な責任に任ぜられている運輸大臣として、将来この種の多角行政を逐次集約して行こうというような積極的な御意思があるかどうか、この法案提出に当りましてああいう表現がなされておりますので、私は一つお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/13
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014・山崎猛
○国務大臣(山崎猛君) 只今御指摘の多角的の関係に交通事業が置かれているという点に対する御感想はこれ又私も同感であります。当然お説のごとく一貫したる、総合されたる施策でなければならないことは申上げるまでもないのであります。政府におきましてはひとり交通事業ばかりでなしに全面的に行政各般の面についてそういう方向に持つて行くべく着々調査をいたしておるような次第であります。で私どももお尋ねの通り全然御同感であるのでありまするから、この方向に向つて進めて行きたいと考えるのであります。ただ日本の、殊に官界におきましてはこれは御同様に痛感する点でありまするが、いわゆるセクシヨナリズムといいますか割拠的の気風が未だに残つておるのでありまして、勿論これは悪い面からばかり批評もできないのでありまして、その仕事に忠実なるの余り非常に執着心を持つというような面もあるのでありますが、これは事務的でなく政治的に高所大所から総合、調整、一貫性を持たしめるというふうに動かなければならないと考えておるのであります。私もできるだけ将来はこの線に副うて、ひとり交通事業ばかりでなしに日本の各般の政治に向つてかくありたいと考えておる一人でありますので、この点は質問者と問題意であるということをお答え申上げて御答弁に代えたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/14
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015・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) 只今衆議院の本会議が三時五分から開会せられ運輸大臣関係の議決が行われますので、大臣に急速に御出席の要求があるそうでありますが如何いたしましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/15
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016・菊川孝夫
○菊川孝夫君 成るべく簡単にやりますから。次に昨年の十二月に地方行政調査委員会から行政事務再配分に関する勧告がなされております。この勧告に対しまして内閣として如何なる態度を決定されましたか、この点についてお伺いいたしたいと思います。内閣の態度が決定しておらないといたしますれば運輸大臣としてその所管事項なる、あなたの所管事項である火急の運輸行政ということについては御検討になりて態度を決定されておると思うのですが、この勧告に対しまして如何なる態度を以て臨もうとしておられるかお伺いしたいと思います。というのはこの勧告によりますると、一般の自動車運送事業の中で乗合旅客自動車及び定路線貨物運送事業の監督は国、それから貸切旅客自動車及び不定路線の貨物自動車の運送事業の監督は府県、それから特定のものの需要に応ずるための自動車の運送事業については、旅客貨物を通じすべて府県の事務とする、但し国は府県の事務とされた自動車運送事業については、必要があるときは運賃料金の調整を行うことができる、とこう言つておつて、自動車の登録だとか、車両の検査、自家用自動車の使用規則、及び自動車道路事業の監督はすべてこれを府県の事務とすると主張しております。又陸運事務所の完全なる府県移管を主張しておるところを見逃すわけにはいかんと思うのであります。若しこの勧告が近く内閣で採用されるということになるようでありましたら、今日道路運送法案や、或いは道路運送車両法案を急いで私は提案される必要はないと思うのであります。それをあえてこの国会に提案される以上は本勧告を無視される意向であると解釈できると思うのでありますが、それでよろしうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/16
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017・山崎猛
○国務大臣(山崎猛君) 今のお尋ねはいわゆる神戸勧告と称するものであろうと考えるのであります。これは私がここで申上げるまでもなく勧告に対しては十分尊重をいたしてその趣意を検討いたしまして、そして実際の上にこれを取入れるということで、各方面から勧告に対する調査検討をなしたる上、本法案の起草と相成つたような次第であります。申上げるまでもなく尊重するということは全面的に受入れるという意味ではないと私どもは考えておりまして、十分それを検討し、運輸省としての意見と照し合せてその所信を採用して行くという意味で尊重いたしておるような次第であります。併し交通事業はほかの事業と違いまして、経済の面から申しましても、産業、社会万般の面から申してその特殊性を十分認めなければならない事業であり、一つのそれらの面に対する動脈のごとき重要なる使命を果すものと考えておるのであります。決して中央集権的に地方自治体の権限を中央に集めることによりてその目的を達しようと考えるのではなくして、総合し、調整し、一貫して社会万般の面に十二分の統制ある調節されたるサービスを提供しようという意味からここに集中的にこの事業を処理して行こうという趣意に基いて立案されておるということを御了承を願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/17
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018・菊川孝夫
○菊川孝夫君 どうもはつきりしないような気がするので重ねてこの点について別な角度からお尋ねしてみたいと思うのでありますが、自動車の輸送はその性質から、又特に将来これはだんだんと車両の性能が高度化して来ると思うのでありますが、そうなるに従つてますます自動車の行動範囲というものも拡大されることは、これはもう火を見るよりも明らかであります。こういうような傾向を度外視しまして単なる行政事務の面からのみ自動車行政を大幅に府県に委譲するということは、総合的な発達にブレーキをかけるものであり、府県の割拠的な行き方というのが自動車輸送事業の発達を私は阻む結果になることを憂慮するのでありますが、運輸大臣はこの点を一つどうお考えになつておるかお尋ねしたいと思います。重ねてこれはもうこういうような勧告のような工合に委譲したのであつては私は却つてやりにくくなるし、混乱するのである、こういうふうに思うのでありまして、従つて運輸省でやつた方がいいと、こういうような考えを私は持つておるのですが、運輸大臣はどちらですか。今のははつきりしないのでごまかしておられるように思う。できるだけ運輸省に統制をとつて総合して全国にこの事業を確立したい、こう考えております。
次に日本の自動車輸送事業は、ここで先ほどから繰返して申上げましたように非常な発展をしようとしているところへ持つて来てアメリカとしてもその製品やガソリンなんかの一つの大きな市場として日本に製品並びにガソリンが進出をして参りまして、この日本の機運に更に拍車を加えるというような見通しを立てなきやならんと思うのであります。さてそうなつて参りますると、どうしても国有鉄道及び地方鉄道、軌道との競争ということは当然起つて参ると思うのであります。戦争中或いは戦後を通じまして、国鉄にいたしましても又は私鉄にいたしましても、ややもいたしますと独占的な地位の上に若干安閑としておつたというきらいがないでもないと思うのであります。この新興勢力の攻めて来る方と守ろうとする方が競争いたしました場合には、どうしても守る方は打撃をこうむるということは、歴史的な宿命だと思うのです。これは勿論公正なる競争を確保するという法律の原則に立脚いたしまして、自動車運送事業或いは自動車道路事業の免許を行われると思うのでありますが、今にいたしましてこの公正な競争に耐え得るような、国鉄なり私鉄が十身に力を養つて行く必要があろうと思うし、又そういうふうに御指導なさらなければならんと思うのであります。この点について大臣は今どういう構想を持つておられるか、又逐次そういつた指導を現に行われておるかどうか、これはこの法案を通過するに当つて非常に大事な点だと思いますので一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/18
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019・山崎猛
○国務大臣(山崎猛君) 自動車の発達と鉄道との影響ということはお説の通り当然起る問題であると考えるのみならず、現に一部分においては起りつつあると思うのであります。従いまして路線の許可、免許というような場合におきましては、この点については、特に十分の考慮を払うべき点が多いように考えるのであります。技術的に、專門的にそのキロと運賃等を申上げると際限もないのでありますが、殊に国有鉄道の場合におけるよりも私設鉄道の場合においてその影響の先ず以て先に強く感じて来るというようなのが実情ではなかろうかと考えるのであります。運輸省といたしましては、この点については十分の考慮を払つて乱競争にならないように、既設の鉄道に不当の競争をしかけて行くというようなことのできないように適宜調節を取つて競争を進めて行きたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/19
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020・菊川孝夫
○菊川孝夫君 最後にもう一遍お尋ねしたいのは、免許とか許可、認定、それから認可、こういうような事項は、ややもいたしますとこれが一つの政党の争いの道具に使われる危険が私は極めて多いと思うのであります。どの国でもこれがあることでありまして、こういうような免許、許可、認定、認可というような事項が政党の争いに供せられるということになつて参りますると、そこにどうしても悪いといいますかスキャンダル、醜事実が胚胎して来る、こう思うのであります。併しこれは私も国鉄におりました当時にも痛感したのでありますが、だんだんと中央で統制すると申しますか、そういう権限を握るということになりますと、政党の幹部の紹介状を持つて来た連中が押しかけて来まして、遂には小さい物品の納入までも政党の紹介なしには買えないという時代もあつたわけであります。そういうようなことがあつたのでは、これは公正なる競争を確保することもできないと思うのであります。特に道路運送法案の中では百二十三条におきまして、地方の公共団体、特に都道府県並びに特別市が自動車運送事業をやつておりますそこに向けて、一方民間業者が乗り入れて公正なる競争を挑もうとする場合にこれが政争の具に供せられる危険が極めて多い。特に最近の傾向といたしまして、時の政権を担当しておる政党の地方の知事並びに市長であつたならば、それの意見を徴する場合にも大胆率直に取上げる。ところが反対党の党員であるところの市長の意見であつたならば、これは無視されるというような危険が生じることは極めて多いと思うのであります。こういうような法律案を運用するに当りまして、どうしましても政治勢力には属することなく、飽くまでも毅然たる態度を以てこの公共の福祉を確保すると共に、やはり官僚的な特権を乱用しない、この二つが是非とも私は必要だと思うのでありますが、運輸大臣が政党人であると共にこの法律を運用する最高の責任者といたしまして、そういうことを部下と共に守り得る決意と用意を以ておられるかどうか、この点についてはつきり明言願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/20
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021・山崎猛
○国務大臣(山崎猛君) 只今のお尋ねの点は私も同感、同憂の士を以て任ずるものであります。申上げるまでもなく、運輸当局者をしてさような過ちをなさしめざることが、私の運輸大臣としての一つの監督上の責任でなければならないと堅く信じているものであります。それらの点につきましては及ばずながら全力を尽して当るつもりであるということを申上げてお答えに代えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/21
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022・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) お急ぎのようでありますから、これで一応打切ります。この法律案につきまして、政府委員、政府説明員が見えておりますが、別に御質問もなければ次の法案の審議に移りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/22
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023・小酒井義男
○小酒井義男君 自動車抵当法案について一つだけお尋ねしておきたいと思います。これは過般の法務委員会との合同審査の時に專門的の立場からこの法案が悪意に利用せられる欠陥が指摘せられておつたと思うのです。こういう問題について関係当局としてこれをどういうふうに補正せられるなり、或いは補正せられるなりして行かれるおつもりであるかどうか、この点について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/23
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024・牛島辰彌
○政府委員(牛島辰彌君) 初めての動産抵当のことでございますので、確かに御指摘になりましたように、この法案は万全のものとは私ども言えない点があると思うのであります。幸いにいたしまして、本法案の実施は今暫らく時間もございますので、その間に十分これを検討いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/24
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025・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) それでは次の法案に移つてよろしうございますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/25
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026・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) それではさようにいたします。では鉄道敷設法の一部を改正する法律案を議題に供します。提出者の提案理由の説明をお願いいたします。提出者衆議院議員岡田五郎君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/26
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027・岡田五郎
○衆議院議員(岡田五郎君) 只今議題となりました鉄道敷設法の一部を改正する法律案につきまして提案者を代表いたしまして提案理由並びに要旨を御説明申上げます。
鉄道が経済及び文化の基盤であることは今更申すまでもないのでありまして、我が国経済の再建、文化の向上を図るため国土綜合開発の一環として日本国有鉄道の新線建設を行うことは国民のひとしく熱望するところであります。衆議院においては第七、第八両国会において鉄道建設促進に関する決議案が可決せられ又参議院におきましても前国会において同趣旨の決議案が可決せられたことはすでに各位の御承知の通りであります。
然るに今日に至るまで鉄道新線の建設の遅々として進捗していないことは国鉄の戦災施設の復旧に急を要するものが多かつたこと、その財政事情の悪かつたこと等より見て止むを得なかつたこととも考えられまするが、我が国に必要な鉄道を完成するため日本国有鉄道の敷設すべきものとしてこの法律の別表中に掲げられている予定路線は百六十五の多数に上り、その内すでに建設に着手せられたにもかかわらず戦争の影響によつて工事中止の止むなきに立至つている区間のみでも五十カ所、五百九十余キロに達しておるのであります。そのほかその後の政治経済事情の推移に伴つて新たに鉄道建設の特に必要と認められるに至つた路線も又少くないのであります。
今や国鉄の復興も漸く軌道に乗り、その財政状態も亦安定して参つたのでありまするから、この際戦後の政治経済情勢に即応する鉄道建設計画を樹立しこれが推進を図る必要があると考えられるのでありまするが、いずれの路線の建設から始めるべきか、又その財源を如何にして調達すべきかは国家再建のため特に慎重を要する重要事項であると存じます。
よつて運輸大臣の諮問機関として鉄道建設審議会を設けて、広く衆智を集めて建設路線の選定、資金調達の方法等を調査研究せしめ、鉄道新線の建設の万全を期することといたしたいというのが本改正法案提出の理由であります。次に本改正法案の内容の主なる点について申上げますれば、第一に、鉄道建設審議会は運輸省に設置せられる運輸大臣の諮問機関であります。
第二に、運輸大臣は、日本国有鉄道から鉄道新線建設の許可申請があり、これが許可に関して必要な措置をする場合又は公共の福祉を増進するため特に必要があると認めて日本国有鉄道に対して新線建設に関して命令をする場合にはあらかじめ本審議会に諮問しなければならないことといたしております。尚鉄道建設審議会はみずから進んで新線建設に関し関係各大臣に建議することができることといたしました。
第三には、審議会は政党政派にとらわれず国家財政の状況、国鉄運営の実状、他の交通機関との関連等をも十分に考慮し、我国経済の発達文化の向上に資することを目標として、公正且つ合理的に審議決定しなければならないことを規定いたしました。
第四には、審議会は、その職責の重要性に鑑み広く衆智を集める必要があると考えまして、衆議院の指名したる衆議院議員六人、参議院の指名した参議院議員四人、関係各省の政務次官等七人、運輸審議会会長、日本国有鉄道総裁、運輸業、鉱工業、農林水産業、金融業等について高い識見と経験とを有する者六人、鉄道建設について学識と経験とを有する者二人、合計委員二十七名を以て組織することとし、委員は内閣において任命いたしまするが、特に国会議員及び職務上任命せられる者以外の者の任命については両議員の同意を得なければならないことといたしております。
なお委員は非常勤、その任期は二年とし、国会議員及び職務上任命せられたる委員以外の委員については、心身の故障のためその職務を行うことができないと認められる場合、又は職務上の義務違反その他委員として不適当と認められる場合には両議院の同意を得てこれを罷免することができるごととし、その他審議会の議決方法等所要の規定を設けておるのであります。
以上甚だ簡単でございますが、本改正法案提出の理由及びその内容の概略を申述べました。何とぞ慎重御審議の上速かに御可決あらむことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/27
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028・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) 專門員の調査報告を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/28
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029・古谷善亮
○專門員(古谷善亮君) この法案は審議会の組織その他をきめましたもので特別に申上げることはないようでありますが、一言だけ申げておきますと、第六条におきまして六号、七号に掲げるものにつきましては両議院の同意を経ることを要しまして、次の第七条におきますれば、国会の閉会又は衆議院の解散の場合において任期満了いたした場合の規定が出ております。従いまして最初に任命されました場合におきまして国会が閉会又は衆議院の解散の場合におきますと、どういうことになりますか、国会の開会まで待つて任命をしなければならんというような事態が生ずるのじやないかと考えます。第二年目からは任期が満了いたしました場合におきまして、さような場合にはその委員のかたは両院の開かれますまでなお在任いたすことになつておりますからして、二年目からは支障がないのであります。最初の年だけはそういうことになるように読まれますのでございますが、この点をお確め願いたいと思います。この法案が参りましてから時間が少いのと、衆議院の議員立法でありますために、政府提案のようにあらかじめ政府の担当者について調査をするような機会がございませんでしたので、いつものように政府の担当者と問答いたしまして承知いたしました事項を御報告するような形で申上げることができませんでしたので、御審議に当りまして只今の点をお確め願いたいと存じます。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/29
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030・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) ちよつと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/30
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031・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) 速記を始めて下さい。
次に港湾法の一部を改正する法律案を議題に供します。これについて提出者から修正意見について説明を申上げたいという申出がありますが、発言を許可して御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/31
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032・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) 御異議ないものと認めましてこれを許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/32
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033・岡田五郎
○衆議院議員(岡田五郎君) 港湾法の一部を改正する法律案はまだ本院に回付になつておりませんが、この法案は実は衆議院の坪内八郎君その他数名が修正案を出しておられるのであります。その港湾法の一部を改正する法律案に更に修正を加える法律案を私の名前で実は提出いたしまして、目下衆議院の運輸委員会において審議中でございます。その修正の各条項につきましてはお手許に配布いたしておると存じまするので、各条項の読み上げは差控えさして頂きまして、修正案の要旨とその内容を簡単に逐条的に御説明申上げさして頂きたい、かように存ずるのであります。
先ず修正の第一点は、現行法第二条第五項の修正でございます。現行法は港湾施設でございます各種の施設が列記せられておるのでありまするが、修正案はこの外郭施設といたしまして新たにその防潮堤それから堤防、突堤及びその胸壁を加え、繋留施設といたしまして船揚場を備えようとするのでございます。その理由といたしましては、これらの施設は現在掲げられておりますこの施設の名称の中に包含せられるという説もあるのでありまするが、又包含せられないという説もありまして、解釈がまちまちなのでありまして、港湾工事施行上支障を来す虞れがありますので、この際これらの施設を明確に掲げることにいたしたのであります。
次に港湾施設の敷地でございますが、これは観念的には施設とは別個のものでございまするが、実体的には密接不可分のものでありますので、新たに港湾施設といたしまして港湾施設用地を加えたのでございます。
第二点は第二条第六項の新設でございます。現行法によりますると、港湾施設とは港湾区域又は臨港地区内にあるものに限られておるのでありますが、これらの区域又は地区の外にある施設でも補助の対象とする必要があるものにつきましては、港湾管理者の申請によりまして運輸大臣が認定したものに限りまして港湾施設とみなすことといたしたのであります。
第三点は第四条の改正でございまするが、港務局の設立手続を規定いたしておりまする現行第四条は、その手続の時間的順序や地方公共団体の議決を要する事項の範囲等につきまして明確を欠いておりまするので、これらの諸点を明らかにしようするのでありまして、実質的には現行規定を改めようとするものではございませんで、従来の疑義を正しくするためのものであります。
第四点は、現行第三十三条の規定は港湾管理者としての地方公共団体又はその一部事務組合の設立について第四条の手続を準用しておりまするので、今回の第四条の修正に応じましてこれを、修正するものでございます。
第五点は現行第三十七条は港湾区域内における一定の行為を規制しておるのでありまするが、港湾区域に接続する水面や地域、例えば水際の土地における行為について何ら規制されておりません。然るにこの港湾区域に接続する海浜等で最も多く工事が行われまするので、区域外百メートル以内を区域に含めることといたしまして、かかる区域における工事に対して規制を行うことといたしました。又現行法は港湾工事のみを規制の対象としておりまするが、海湾工事以外の工事、例えば造船業がドックを築造する場合にも管理者の長の許可を受けなければならないことといたしまして、港湾の保全を風ろうとするものであります。
第六点は、第四十二条の修正であります。従来神戸、横浜、関門のごとく国際交通の要衝にあたる港湾の外国貿易施設につきましては、国は大体全額国費を以て修築して来たのでありまするが、これらの港湾も港湾法の施行によりまして五割を国が負担することになつたのでありまするが、外国貿易の増進が特に必要でありますが、我が国の経済事情に鑑みまして、外国貿易の増進上特に重要な港湾につきましては、水域施設又は外郭施設に対しましては全額を、繋留施設に対しましては七割五分を国が負担することといたしました。
第七点は、第四十二条の修正に応じまして特定重要港湾における臨港交通施設の工事に対する国の補助率を七割五分までに引上げたのでございます。
第八点は、港湾施設が他の工作物と効用をかねるときの工事の施行方法や費用の負担について管理者が協議いたして定める旨を第四十三条の二として設けたのでございます。
第九点は、定期船業者や港湾運送業者が反復して行為をした結果、施設が損耗したときはそのものに工事の費用の一部を負担させることができるようにするために第四十三条の三を設けたのでございます。
第十点は、港湾の現状を完全に把握する必要がありまするので、港湾管理者は港湾台帳を調製しなければならない旨を第四十九条の二として設けたのであります。
第十一点は、第五十二条の第一項中に避難港の重要性に鑑みまして、直轄工事の対象にこれを加えたのでございます。
第十二点は、第四十三条の改正において特定重要港湾の臨港交通施設に対する国の負担率を定めるため、第五十二条第三項を改めたのでございます。
第十三点は、市街地建築物法が廃止せられまして、建築基準法が制定せられましたので、五十八条第一項中の一部を改めました。
第十四点は、都道府県災害土木費国庫負担に関する法律が廃止せられまして、本年四月一日公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法が施行せられましたので、港務局に関する規定が置かれておりまするので第五十八条第五項を削つたのでございます。
第十五点は、第六十条第一号の改正でございます。現行法では地方港湾でも都道府県が管理者の設立に加わつている場合は運輸審議会に諮問して港湾区域の認可又は不認可を決定することになつておりまするが、港湾の実情に鑑みまして地方港湾は諮問を要しないことといたしました。
第十六点は附則第五項であります。従来旧軍港や福岡県の苅田港のごとく国内産業の開発上特に重要な港湾は国が全額又は七百分の五百五十のごとき高率な負担をして来たのでありますが、港湾法の制定により五割の負担にとどめられたのでありますが、これらの港湾、例えば旧軍港市のごときは旧軍港市転換法第三条で国がその転換事業に積極的に補助をするように規定せられております。よつてこれらの事情に鑑みまして、重要港湾のうち国内産業開発上特に重要な港湾で政令で定めるものにも当分の間特定重要港湾と同様な負担補助をなすことができることといたした次第であります。
第十七点は附則第六項 及び第七項でございます。この項は会計年度の途中において港湾管理者が設立せられた場合の費用の負担に関する経過規定であります。港湾法第四十二条、第四十三条は港湾管理者が設立せられた場合に初めて適用せられるものであります。通常予算措置としては年度初頭において負担割合、補助率を定めて公共団体に通知することになつておりまするが、その通知の日以後において港湾管理者が設立せられた場合に年度途中で負担割合を変えることは技術的に困難と思われますので、年度初頭に定まつた割合で昭和二十六年度に限つて負担又は補助ができるようにしたものであります。
以上修正案の理由及び内容につきまして簡単でございまするが、御説明申上げた次第であります。何とぞ法案回付の上におきましては、慎重御審議の上御可決あらんことをお願い申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/33
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034・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) 更に提出者の一人でありまする玉置衆議院議員から修正の第二点について発言を求められております。これを許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/34
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035・玉置信一
○衆議院議員(玉置信一君) 港湾法の一部を改正する法律案に対する修正案の内容を簡単に御説明申上げまして、予備審査の御参考に供したいと存じます。この修正案は衆議院の運輸委員会におきまして本日提案理由の説明をいたしまして、明日は委員会でこれが上がることになつておるのであります。
その内容は現行法第三条は、専ら漁業の用に供する港湾として、漁港法により指定されたものは港湾法の適用を受けない旨を規定しておりますが、港湾によつては主として漁業の用に供するものであるか、或いは従として漁業の用に供するものであるか、画然と区別いたしがたいものでありまして、その判定は頗る困難を来たしておる実情であります。よつて原則的には漁業の用に供する港で、漁業法によつて指定された港はすべて港湾法の適用から除外いたしまして、例外として政令で定められた港湾につきましては、港湾法の適用も受けることに改めようとするのがこの修正案の趣旨であります。このことは各委員におかれまして、現に現地のこうした問題にぶつかつておられますことと存じますので、甚だ簡単ではありますが、以上を以て説明を終りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/35
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036・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) じやこの法案は質疑その他衆議院の議決を待つて次回に譲りたいと思います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/36
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037・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) 次に日本国有鉄道法の一部を改正する法律案を議題に供します。前回に引続き質疑を続行いたします。どうぞ質問のあるかたは御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/37
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038・菊川孝夫
○菊川孝夫君 先ず第一にお尋ねいたしたいことは、この日本国有鉄道を将来とも公共企業体として存続さして行くという構想の上に立つているか、それとも昔のような鉄道省というものに引戻そうとする考え方の上に立つているか、先ずこの点について最初の出発点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/38
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039・前田正男
○衆議院議員(前田正男君) その前に一言この機会に一つ述べさして頂きたいことがございます。私はこの法案の審議に入りますときに、專門員から説明のございました職員の兼職禁止のことでございますが、本日両院協議会が成立いたしましたので、現在私たちの出しておりますところの法文の通りこれが協議会が成立いたしましたから、現在のところでは何らこの法文は修正する必要はない結果になつておりますので、過般の專門員の説明のときには若し成立しない場合には幾らかいじらなければならんだろうというようなお話がありましたが、成立いたしましたので、この修正法律案の通りで本日の両院協議会で成立いたしましたので、その点一言お断り申上げます。
なお只今の御質問でございますが、大体昨日も一応御説明申上げたのでございますけれども、私たちといたしましては、日本国有鉄道を、労働関係の問題もございましたが、併しながら公共企業体として一歩進めようということで立法をいたし、その両院の多数を以ちまして成立しておる以上は、是非とも私たちといたしましては、更にこの公共企業体を一歩進めて行きたい、こういう考えであるのであります。従いまして昨日から御説明申上げております通り、先ず企業体といたしましては、当然更に民間の企業体制に近ずける、一般の私鉄の経営体に近ずけるというのが又私たちとしての企業体の能率を発揮し、創意工夫を尊重できるものであると思うのであります。又公共企業体のあり方につきましても、この国有鉄道の場合は稀な例でございまして、欧米等にありますところの公共企業体におきましても、若しこういう監理委員会というものを置きますならば、それは当然これだけの法律に書いてあります通り指導統制をする権限と責任を有するというような監理委員会を置きます以上は、当然常勤にいたしまして兼職を禁止する。そうしてこの監理委員会がすべて日常に当つてのこの法文に書いてある通りの権限と責任を取つて行くというような行き方になつておるのでありますが、日本の場合におきましては、そういうことが実際に困難であつたために、非常に変な例になつておるのでありまして、これと同時に立法化されましたところの、同じ日本にありますところの公共企業体であります専売公社におきましては、こういう監理委員会という制度はないのでありまして、どちらかというと経営の現収が小さい。更に民営に近いところの企業に近いと思われるところの専売公社におきましては、すでに監理委員会を廃止いたしまして、大臣の任命にかかるところの役員が全責任を以て権限と責任と代表権とを持ちまして運用しておるのであります。私たちは今回の改正におきまして、先ずこの点を主眼といたしまして、一歩民間経営体に近ずけるためにこの企業体を代表する人に権限と責任を与え、その役員、総裁以下の役員が自分たちの経営権と創意工夫を以てできる、こういうような体制にいたしたい。更にできますならば、この総裁、副総裁、理事等にも民間人を入れて、是非一つもつと能率ある効率的な運営をして行きたい、そういう意味におきましても、この総裁の上に監理委員会があるというようなことではなかなかそういう優秀な、有能な人を迎えるということは甚だ困難でありまして、そういう意味におきましても、私たちは今回監理委員会が廃止されるということは、非常に公共企業体の立場から見まして一歩前進したるものであると考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/39
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040・菊川孝夫
○菊川孝夫君 提案者の今後の国鉄運営についての構想は公共企業体として残そうということがはつきりいたしましたが、そこで公共企業体に国鉄を切替える際に、一体パブリック、コーポレーシヨンというのはどんなものだろうというわけで、あの当時マッカーサー元帥から七月二十二日の書簡が出ましたときに、お互いにそれは何だというわけで研究いたしました。その結果先ずアメリカにはTVAというのがあるからして、これを一つモデルにしてやろうじやないかということにきまつたように私も記憶いたしております。で、あのTVAの沿革だとか現在の状態をいろいろそれぞれの角度から皆研究したわけでありますが、公共企業体におきましては、飽くまでも先ず人事の独立ということと、それから経理の独立、この二つはどうしても確保されなければならんということははつきりしたわけです。この時に検討いたしました結果、そこで今御提案になつておりまする改正案というものはどうかいたしますると、むしろ人事の独立という面が失われておる、これは薄弱になつておる、例えば副総裁は内閣が任命するとこうきめているのです。副総裁というのはやつぱり総裁が自由にこれを使い得るものでなければならん、で総裁だけ任命しておいて、今度副総裁は内閣のほうで勝手にこう押し付けて来るとこういうような恰好になつております。又理事一名を任命いたしますにしても、これは運輸大臣の認可を受けるのですから、そこで認可しなかつた場合にはどうなるかということになるのです。従つて人事の独立ということはこれは条項で以て完全に抹消されてしまう。而も経理の独立も現在の法律上から言つてされていない。で、そうなつて参りますと、ただ名ばかりの公共企業体でありまして、実質的には何らこの公共企業体としての私は一番肝腎な屋体骨を取つてしまつて、そうして看板だけは公共企業体であると言つて掲げて行くということはどうもおかしいような気がするわけでありますが、この点について提案者の御見解はどうでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/40
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041・前田正男
○衆議院議員(前田正男君) 先ほども申しました通り、TVAにおきましては理事会がございますが、これは先ほど申しました通り兼職を禁止いたしました常勤のものでございまして、この当時におきましてもそういうような意見もあつたように聞いておりますけれども、日本の実情といたしましては甚だ困難であるというので、法文上は指導統制する権限と責任を持ちながら非常勤という監理委員会ができまして、法文の通りには現在運営されていない諮問的な存在的な、或いは考査機関的な存在になつておるというような現状になつておるのでございます。
次に人事権の問題でございますけれども、これは御承知の通りこの国有鉄道というものは、私たちがこの際一歩近ずけまして、私鉄の経営と同じような民間経営体に近ずけるというときになりまして、民間の経営体においておわかりの通りこの役員は勿論御承知の通り株主の総会におきましてこれが選任されるわけであります。私たちといたしましては、幾ら企業体が独立性を持たなければならないと言いましても、株主の立場から離れてやるということはこれはできないのでございます。日本国有鉄道はこれは皆さん御承知の通り国民のもの、国家のものでございまして、決して鉄道に従業しておられるかたたちのものではないのでありまして、そういう点から行きまして、株主を代表しておるところの国会或いは政府、大臣等から当然に或る程度の任命があるということは当り前のことであるのであります。而もこれは公共企業体であります以上、各運輸事業との総合調整といつたような立場から見ましても、又一般の公共企業体的な立場から見ましても当然のことであるのでありまして、特に総裁を私たちが両院の同意を得ることにいたしましたのは、従来とも監理委員が両院の同意を得ておりまして、非常に国有鉄道を重視しており、更に又その監理委員の推薦によつて総裁が任命されるということになつておりましたので、間接には国会の同意を得ておつたというような点から、総裁を私たちは両院の同意を得て任命する。副総裁も重要な人事でございますから内閣が任命する。併しこの理事の問題についてもいろいろと御意見があるようでありますが、私たちは従来国家におきますところのいろんな公共企業体に近い例を見ますと、日本専売公社の理事は大蔵大臣の認可を受けることになつております。又運輸関係で稀にこの公共企業体に近い帝都高速度営団の理事も主務大臣が任命することになつておるのであります。私たちは成るべく公共企業体であります国有鉄道を民間の私鉄並みの経営にいたしたいとは思つておりますけれども、併しながら少くとも国家のものでございますので、この重要人事につきましては、少くとも国民の代表が意見を述べる、又それが任命して行くということにいたしたいと思います。併しながらそれ以外の国有鉄道を代表し、責任を持つ役員以外の人事につきましては、今後は非常にこの役員も責任をもつてやれる立場になつて来るのであります。併しながら従来の例によりますと、実は国会から委任を受けておりますところの監理委員、この委員が全般に亘つて指導統制する権限と責任を持つておりますのでありますから、末端の人事に至るまでこの権限で行きますならば、これを行うことができるのでありまして、どちらかといいますと、私は昨日も申したのでありますが、監理委員会というものについて全般に亘つて監督する権限を持つておりましたのが今回はこのように法律を改正して参りますと、大臣の監督権限、役員の任免の範囲、或いは予算の範囲というふうに国民の監督する権限というものは非常に縮小されて来たものと思つておりまして、独立企業体の体制を整えて来ておるものと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/41
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042・菊川孝夫
○菊川孝夫君 TVAのときでございますが、このTVAの一番プレシデントというのは非常に権限を持たされまして、経理につきましても人事についても殆んど任されて、この人間をアメリカのほうで民主主義の下におきまして一旦選任した以上はこれを一つうんと大幅に任してしまつて、十分に腕前を振わせようというのが構想であれができていると思うのです。あの人の治績たるや実に大したものだというので、今アメリカにおける一つの事業家としての一番最高水準を行く人だとまで言われておるのです。やはりその蔭にはすべてを任されておつたという……相当事業を始めましたときには非難ごうごうたるものがあつたけれども、それでもあえて押切ることができた、こういうようなふうにいたしておきますると、これは私ども決して国鉄に勤めておる者の国有鉄道だなんということは毛頭考えておらないのでありまして、国鉄におつた当時におきまして労働運動を続けておりましたときにも、やはりこれは国民大衆の国鉄だ、だからして飽くまでも国民の利益と幸福のために運営しなければならんというので組合運動の指導もやつて来たつもりでありますが、従つてこれが今までその逆でありまして、実は政党内閣はだんだんと政党政治というものが確立されるに従いまして、内閣が変るたびにこういう人事にすぐ喙が入つて来る、こういうことになりまして、一時はまあ一警察署長から村の駐在巡査までの異動があつたということはあなたも御記憶に新たなるところであろうと思うのであります。で国鉄には千二百億というような厖大なる予算が将来ともあるわけでありまして、これを使うために甘い所に蟻が集るごとくに蝟集して来る、で先ず政党の力で以て嘱託に入つて来る、やれバスを寄こせ、それから物の納入を認めよ、それから先ほども道路運送法で大臣に尋ねたわけでありますが、免許、認可、許可、それから運送店の承認、売店の承認からもうあらゆる利権漁りがこれに殺到して来るわけであります。そういうときに、どうしたつてこれは今はまあ自由党の政権下にありまするけれども、これはどうしてどこにいつ変るかわからんので、百年も自由党の政権の続くというわけじやないですから、これは世の中の変遷によつては政治情勢の変革もあり得るのでありまして、そのたびごとにこの総裁以下の人事がどうしてもそんなことは手を付けちやいかんということになつておりましても、それは単なる絵に画いた餅でありまして、すぐにこれは手を付けることは、別にこれは政党内閣華やかなりしときでも警視総監にまで手を入れようという気持もなければ、そういうことを誰も主張している者はない、併しながら実際にはやつたのでありまして、そのためにアメリカが進駐して来たときにも、その弊害はアメリカにおいても政党がこういうところへ口を出すといいますか、力を出すということを成るべく断ち切らなければならんというので公務員法を向うも制定した、公務員の椅子も一々取合いをするというのであの公務員法を制定した、日本もやはりそういう弊害を一つ除去しなければならん、政党政治を一方においては奨励する半面におきまして、その政党の政治によつて生ずる弊害を先ず除去しなければならんというので日本でも公務員法を拵えろとやかましく言つた。これは公務員法制定の大きな一つの理由であるし、日本の官僚政治の打倒ということもあつたでしよう。併しそれが大きな理由だと思うのであります。併し二十条のように私はやつて行きまするとどうしてもその人間の弱点というやつはそんなことはないのだ、うまく運用するのだとあなたはおつしやつてしまうならそれまででありますが、そこで緩衝地帯であるところの監理委員会というものが設けられた、それであなたの言われるには監理委員会は必ず悪いことはないのだが、現在の監理委員はやり方がといいますか、活動は十分にしなかつた、この目的は何も法律に示されておる通りにやればいいのでありまして、これにはちやんと役所で金はやらん、旅費その他はやると書いてあるのでありまして、そいつで食つていけないなら断るべきが私は正しかつたのじやないか、従つて監理委員会がどうなつておるかということをもつと御検討されたかどうか、どういうことを事実今日までやつて来たか、あなたの言われるには、この諮問機関或いは監査機関的な存在となつてしまつたというのでありまするけれども、一応そういう監理委員会が今日まで果してきた職責についてお調べになつたか、どういうことをやつて来たかということについてお調べになつたか、それからどういうことをやつたのが悪かつた、何をやらなかつたのが悪かつたというような資料を御調査になつておりましたならば一つお示し願いたいと思いますが。こういうとき監査委員会がぼやぼやしておつたのがいかなんだ、こういうことをやらなかつたのはいかなんだというような具体的な事例がありましたならば、これは監理委員会という一つの機関を廃止するという、而もここで法律を……これはどちらかと言うと法律ではこれを指導監督するということになつておりながら監督をやらなかつたと言つて提案者は提案理由のうちに指摘されておるわけであります。従つてとにかく公正な立派な委員会に対しましてお前たちはやらなかつたのであるから法律に従つてやつていないのだというふうにこの提案理由の中に示されておるわけでありますから、具体的に御調査になりまして、こういうとき、このときにやらなかつた、こういうことをやらなかつた、こうあるべきを怠慢であるというような例がありましたならば一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/42
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043・前田正男
○衆議院議員(前田正男君) 今のお話でございますけれども、先ず第一の公共企業体というものにつきましてはいろいろの考え方があるということは先ほど申した通りであります。併しながらアメリカにおきましても、公共企業体のあり方につきましては、公共企業体の赤字というものは結局国民の租税によつて賄われる。政府と密接な関係にある機関である以上政府の政策と相反する行動は許されない。行政権の首長が中二階的な存在であつて、最終的責任を負いながら十分統制を加えられんというような、こういう反対の意見もございまして、実は日本の専売公社を作るときにはこういう監理委員会のないような公共企業体を作つたのでございます。実はこの国有鉄道法を制定いたしますときに、この問題につきましては速記録をお読みになればおわかりの通りだと思いますけれども、衆議院におきましても参議院におきましても、この国鉄の意思の決定とか、或いは決議機関、その他そういう性格につきましてはいろいろと疑問があつたのでありまして、勿論今お話の通り監理委員会の業績につきましても私は一応資料はもらつてはおります。專門調査員から頂きましてもらつてはおりますが、併しながら私たちがそれを立法のときに一番疑問としておりましたことは、この二カ年間何ら解決されていない。一体代表している人が責任を持つていないというその疑問につきましても何ら解決していない。日本国有鉄道のいろいろの問題のありました意思決定機関、或いは諮問機関、設置機関そういうような問題につきましては非常に不明確でありまして、私たちはやはり立法いたしました当時から疑問を持つておりましたが、監理委員会というものにつきましては、この機会に明瞭にするのがいいのじやないかというのが結論でございます。
勿論今のお話のようにいろいろと公共企業体というものに中間的な存在を置いたほうがいいというようなお考えで行きますならば、或いは監理委員会の常任にされて、TVAのように兼職を禁止するというような行き方で、最高責任機関としての責任を取つて行くというのが一つの行き方だと思います。先ほど申しました通り反対論もありまして、今大蔵省の管轄になつております専売公社のような行き方もあるのでありまして、私たちはこの機会に日本の実情から見ましては、専売公社と或いは又一般の私企業、殊に私鉄の経営に近いような監理委員会という存在のないようなところに持つて行つたほうがいいじやないかと、こういうふうに考え、なお人事権の問題につきましては、いろいろご意見がありましたけれども、私たちは先ほど申しました通り、勿論役員につきましては、これはどうしても国民の総意というものが入つて来る。株主の意見が入つて来るのが当然でございますが、若しこの監理委員会が本当にこの権限と責任を行使いたしますならば、公務員にまで及ぶのでありますけれども、併しながら今回の法律が修正されますならば、今後はこの法律に基きまして、その範囲は役員の任命の範囲だけに限つて来まして、それ以外のことにつきましては、人事権につきましては何ら干渉できないのでありまして、役員が又この法律によりまして受けましたところの権限と責任においてそれ以下のことについて携わつて行くというふうに私はしなきやならんものと確信するのであります。こういう点につきまして又いろいろと御質問がありますればお答えいたします発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/43
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044・植竹春彦
○委員長(植竹春彦君) ちよつと、提案者のほうで時間の都合上、他日質問を続行することにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。
午後四時三十七分散会
出席者は左の通り。
委員長 植竹 春彦君
理事
岡田 信次君
小泉 秀吉君
高田 寛君
委員
仁田 竹一君
内村 清次君
菊川 孝夫君
小酒井義男君
高木 正夫君
村上 義一君
前田 穰君
松浦 定吉君
鈴木 清一君
委員外議員
一松 定義君
衆議院議員
岡田 五郎君
玉置 信一君
前田 正男君
政府委員
運輸省港湾局長 黒田 靜夫君
運輸省鉄道監督
局長 足羽 則之君
運輸省鉄道監督
局国有鉄道部長 石井 昭正君
運輸省自動車局
長 牛島 辰彌君
運輸省自動車局
業務部長 中村 豊君
運輸省自動車局
整備部長 佐竹 達三君
事務局側
常任委員会專門
員 岡本 忠雄君
常任委員会專門
員 古谷 善亮君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101013830X02419510525/44
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