1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年五月二十八日(月曜日)
午後二時十九分開会
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本日の会議に付した事件
○土地收用法案(岩沢忠恭君外六名発
議)
○土地收用法施行法案(岩沢忠恭君外
六名発議)
○北上川開発法案(川村松助君外八名
発議)
○河川道路都市及び建築等各種事業並
びに国土その他諸計画に関する調査
の件
(調査報告書に関する件)
○継続調査承認要求に関する件
○住宅金融公庫法の一部を改正する法
律案(衆議院提出)
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001・小林英三
○委員長(小林英三君) 只今から委員会を開会いたします。
土地收用法案について岡田第三部長に逐條説明をお願いいたします。速記をとめて……。
午後二時二十分速記中止
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午後三時速記開始発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/1
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002・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記を始めて……。それでは三十分間休憩をいたします。
午後三時一分休憩
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午後三時三十八分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/2
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003・小林英三
○委員長(小林英三君) 休憩前に引続きまして、建設委員会を再開いたします。土地用法案の質疑を続行いたします。第八章から。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/3
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004・岡田武彦
○法制局参事(岡田武彦君) 第八章、收用又は使用に関する特別手続につきまして御説明申上げます。
第一節は用委員会の調停に関する規定でございます。この第一節は全部新らしい制度でございまして、調停という制度を設けたのでございます。第百八條の調停の申立に関する規定でございますが、当事者同士が協議を開始し、又は裁決を申請した後におきましても、協議の成立があるとか、又は四十八條第一項の規定によります裁決があるまでは、起業者はいつでもすべての土地所有者及び関係人の同意を得まして、收用委員会に調停の申立をすることができるのでございます。これが第百八條の規定でございます。次に第百九條は、調停委員に関する規定でございまして、調停委員は三人で組織するのでありまして、その調停委員は、收用委員会の委員のうちから收用委員会の会長が命ずることになつております。但し第百九條第四項にございますように、三人のうち二人は、收用委員会の委員でない者で、ここにございますように、起業者が推薦する者、土地所有者及び関係人が推薦する者を以て命ずることができるのでございます。以下はこの委員会の会議に関する手続の規定でございます。第百十條は、調停の手続は公開しないということを原則に謳つておるわけであります。第百十一條、これは意見の聴取に関する規定でございます。百十二條、これはいよいよ最後の調停案の作成及び勧告に関する規定でございまして、調停委員は全委員の一致を以ちまして、調停案を作成して、これを起業者及び土地所有者、関係人に示しまして、相当と認める期限を付して、その受諾を勧告しなければならないことに相成つております。第百十三條は、調停案の受諾に関する規定でございまして、これを受諾しましたときは、調停書を作成いたしまして、署名押印して調停委員に提出することに相成つております。百十四條は、調停申立の却下及び取下に関する規定でございまして、説明は省略いたします。第百十五條は、調停の効力に関する規定でございまして、かようにいたしまして調停書ができまして、書面を調停委員が受理いたしますときは、この法律の適用によりましては、第四十條によりますところの協議が成立したものとみなすのでございます。以上が第一節、調停制度に関する規定でございます。次に、第二節は協議の確認に関する制度を設けておるのであります。これも全く新らしい規定でございます。第百十六條、協議の確認の申請に関する規定でございます。起業者と土地所有者及び関係人の全員との間におきまして協議が成立いたしましたときは、起業者は土地細目の公告があつた日から一年以内に限りまして当該の土地所有者及び関係人の同意を得まして、当該土地の所在する都道府県の收用委員会に協議の確認を申請することができるのでございます。この場合に、土地申請書の記載事項を第三項に掲げてあるわけでございます。それから第百も條、これは協議確認申請書の欠陷の補正に関する規定で、ございまして、先だつて御説明申上げましたところの第十九條の規定を準用いたしまして、欠陥の補正を行う場合の規定を置いておるわけであります。第百十八條、協議の確認に関する規定であります。收用委員会は確認申請書を受理いたしました場合におきましては、市町村別にこの当該市町村に関係のある部分の写を当該市町村に送付いたすわけでございます。そうして市町村はこれを受取しますというと、直ちに確認の申請があつた旨を公告し、公告があつた日から二週間その書類を公衆の縦覧に供しなければならないのでございます。この縦覧期間内におきまして、利害関係人は收用委員会に異議の申立てができることになつております。收用委員会は第五項にございますが、收用委員会は確認の申請が法令の規定に違反せず、又前項の規定による異議申立がなく、或いは又異議の申立てがあつた場合におきまして、その異議の申立が同項の規定に違反し、若しくは理由のないことが明らかであり、且つ協議の内容が第七章、と申しますのは、收用又は使用の効果に関する規定でございますが、その規定に適合いたしますときは確認をしなければならないのでございます。それから第百十九條でございますが、これは確認を拒否する場合の規定でございます。これは條件のない場合におきましては、これは拒否しなければならないという規定でございます。第百二十條、その確認処分の方式及び確認書の送達でございます。これいろいろと書いてございますけれども、確認いたします場合、若しくは拒否いたします場合におきましては、文書を以ていたすということを書いてあります。第百二十一條は、確認の効果に関する規定でございまして、その確認がありましたときは、この法律の適用につきましては、四十八條第一項の規定によりまするところの收用又は使用の裁決があつたものと見込まれるのであります。この場合におきまして、起業者、土地所有者及び関係人は協議の成立及び内容を争うことができないのでございます。以上が第二節の協議の確認に関する規定でございます。次に、第三節、緊急に施行する必要がある事業のための土地の使用、第百二十二條は、非常災害の際の土地の使用に関する規定でございます。起業者は非常災害に際しまして、公共の安全を保持するために、緊急に施行する必要があります場合におきましては、これは特別の規定でありまして、この場合におきましては、事業の種類、使用しようとする土地の区域並びに使用の方法及び期間につきまして、当該市町村の許可を受けまして、直ちに他人の土地を使用することができるという規定でございます。これは特別の規定でございまして、これにつきましては十分私権を尊重いたしますように、例えば第二項におきましては「前項の規定によつて使用する土地の区域並びに使用の方法及び期間は、公共の安全を保持するために必要且つやむを得ないと認められる範囲をこえてはならない。」、こういうふうに使用の方法等につきまして制限を設けておるのであります。次に第百二十三條は、緊急に施行する必要がある事業のための土地の使用に関する規定でございます。現状のように非常災害ではありませんでも、起業者は裁決の申請をいたしております場合におきまして、緊急に施行する必要が生じた場合におきましては、裁決が遅延することによつて事業の施行が遅延して、その結果、災害を防止することが困難となり、その他公共の利益に著しく支障を及ぼす虞れがありますときは、起業者の申立によりまして、土地の区域及び使用の方法を定め、起業者に担保を提供させた上で許可することができるのでございます。この場合につきましては、二項以下におきまして、例えば第二項におきましては、「前項の規定による使用の期間は、六月とする。」と限定いたしておりまして、且つこの「使用の許可の期間の更新は、行うことができない。」というふうな規定を設けました。その他私権のほうについて十分留意いたしまして、各項目に規定を設けておるわけでございます。次に百二十四條は、この非常災害の際の土地の使用と、緊急に施行する必要がある事業のための土地の使用、この二つの條文の規定によりまして、使用いたしました場合に、土地の損失の補償につきまして規定を設けておるのでございます。ここに第一項にございますように、起業者は、非常災害の場合の土地の使用の許可を受けた場合におきましては、又緊急に施行する必要がある場合の使用の許可を受けました場合におきましては、その使用の期間が満了した場合、若しくは百二十三條の第五項の規定によりまして、使用の許可が失効した場合におきましては、土地を使用することによつて生ずる損失を補償しなければならないというふうに書かれてあるわけでございます。そしてこの場合におきまして、損失の補償は使用の時期の価格によつて算定しなければならないということに相成つております。第二項におきましては、この場合におきまして、補償の裁決に関する規定を準用いたしておるわけでございます。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/4
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005・田中一
○田中一君 百十八條の三行目の「市町村別に当該市町村に関係のある部分の写」というのは、その収用される、何と言いますか、細目にですね、それを全部殊更に村なら村單位でその写を配ると、そういうわけですね、全体のものは要らないけれども、その部分だけを送ると、こういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/5
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006・高田賢造
○説明員(高田賢造君) その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/6
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007・田中一
○田中一君 第三節の百二十三條ですが、「(緊急に施行する必要がある事業のための土地の使用)」とありますが、このおしまいのところに「起業者の申立により、土地の区域及び使用の方法を定め、起業者に担保を提供させた上で、直ちに、当該土地を使用することを許可することができる。」とありますが、その担保というのは物ですか、金銭ですか。又その担保の量は、誰が算定するのですか、担保物件は何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/7
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008・高田賢造
○説明員(高田賢造君) この場合の担保につきましては、第六項にございますように、第八十三條第四項から第七項までの規定をここで準用いたしておりまして、その規定、八十三條のところにございますように、金銭又は有価証券、又その額は収用委員会が相当と認める額でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/8
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009・田中一
○田中一君 その第二項の、「前項の規定による使用の期間は、六月とする。使用の許可の期間の更新は、行うことができない。」、この場合、使用方法を適用する収用委員会がその使用を決定したならば、そのままあとに継続することができるという意味で、臨時措置はできないという意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/9
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010・高田賢造
○説明員(高田賢造君) これは常に期間の更新を認めない趣旨でありまして、ただその後におきまして、使用期間、使用の許可をいたしました後に、あとで裁決があるわけでございますが、その裁決がありましたならば、その裁決六カ月以内において裁決があります場合には、その裁決に切替えまして、この使用の許可は、新らしい本裁決がありましたあとは失効するわけでございます。そのことが第五項に記載してあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/10
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011・田中一
○田中一君 実質的には六カ月以上もこの臨時措置更新もできんけれども、裁決によれば、必要な期間まで続けられるという意味に解釈してよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/11
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012・高田賢造
○説明員(高田賢造君) 本裁決で切替わるならば、木裁決のあつた事後は全部木裁決の法律の効力によりまして進めて行くわけでございます。併しながら百二十三條の第一項による使用というものは、これは一回限りでありまして、而も六カ月来れば、あとでそれまでに裁決がその間になかつた場合にも、当然それは終つてしまいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/12
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013・田中一
○田中一君 ですから結局六カ月以内には必ずその起業者が絶対に必要なものだという場合には確認されることになるわけですね、それが常態なのでしよう、実際は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/13
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014・高田賢造
○説明員(高田賢造君) それが常態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/14
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015・田中一
○田中一君 この四項に「起業者は、第一項の場合において、」と言いますから、この土地所有者及び関係人の請求があつた場合に、自己の見積つた損失補償額を払い渡さなければならない。これは「自己の見積つた損失補償」というのは初めて出た言葉ですが、どういうことを意味するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/15
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016・高田賢造
○説明員(高田賢造君) この使用の許可の際には、第一項終りの方に書いてございますように、必ず担保が付いて来るわけでございます。普通の考え方からしますると、一方においては担保をとつております以上は、補償額を支払わなくともよろしい、四項の補償額を支払わなくもよろしいという規定さえあるのでありますが、特にこの四項を設けまして、その場合でも一応の見積額を払わなければならないというふうに拡張をして、土地所有者及び関係人の保護を図つたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/16
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017・田中一
○田中一君 それはこの起業者の自己の見積つた損失補償額という意味ですね、これが一方的に、このあとの項にあるかも知らんが、自己の見積つた損失補償額というものに異議があつた場合には、何かどつかに正しい方向に持つて行くということはあるのですか、何かありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/17
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018・高田賢造
○説明員(高田賢造君) これは法律の上で申しますと、これについて異議がございましたならば、当然一般原則に従いまして、訴えを提起する途が開かれております。併しこの場合の補償の支払い義務と申しますのは、類例で申しますと、九十五條の第二項にございますところの……間違いました三項でございます、三項とまあ類例が同じようでありまして、一応自己の見積額を払い渡すという三項の規定がございます。これと趣旨において同じでございまして、これに同じでございまして、殊に百二十三條の場合には、本来それに相応すべきこの補償の担保を付けております。一般原則に従いますと、使用の場合の支払は事後払いが通常原則でございます。それをその場合、特に起業者に負担をかけまして、逆に申しますと、土地所有者、関係人の便宜を図つたのでございますので、殊更にわざわざこの規定を設けた次第であります。一応見積額としてあるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/18
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019・田中一
○田中一君 見積額は結構なんですが、起業者が見積つた額をそこに一方的に設けたのは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/19
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020・高田賢造
○説明員(高田賢造君) それはもう少し敷衍いたします。と、この短期の六カ月間の使用の場合には、補償を事前払いに補償いたしますということは、法律技術上も困難でございますし、通例他の立法例もそうでございますが、事後払いとか、或いは長期の場合には、土地收用法の原則に基きまして、同時に行こうということについて定めておるわけであります。併しながら百二十五條にもございますように、普通の場合の補償がございますときには、先ず緊急の場合でございますので、一応使用させまして、争いがあるときには担保その他で補償をいたしまして、あとではつきりこれをきめるというシステムをとらざるを得ない。又そういうふうにしましても、公平の原則に照らしまして、必ずしも不都合ではないわけでございます。従いまして事後払いの原則をこの百二十三條の例にとりましても不都合はないのであります。併しながら、なお丁寧に考えまして、起業者が自発的にこの自分の見積つた額があります以上は、それは義務としてこれを払うようにいたした規定で、非常に親切にわざわざ書いてあるのであります。一般原則は使用の場合には、すべて事後払いが建前であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/20
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021・田中一
○田中一君 いや結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/21
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022・小林英三
○委員長(小林英三君) 次は第九章に移ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/22
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023・岡田武彦
○説明員(岡田武彦君) 第九章、手数料及び費用の負担に関する規定でございます。第百二十五條は手数料に関する規定でありまして、これは現行法にない新らしい規定であります。ここにございますように、事業の認定を申請する場合とか、收川、使用又は損失の補償の裁決を申請するとか、この條文に書いてあります場合におきましては、建設大臣又は都道府県知事によつて処分機関が違つておりますので、当該処分を行いますところの機関、即ち国又は都道府県に一万円をこえない範囲において政令で定める額の手数料を納めなければならないということになつております。次に百二十六條、これは鑑定人等の旅費及び手当の負担に関する規定でございまして、鑑定人とか、参考人の旅費及び手当は起業者の負担とするという規定でございます。これは現行法に類似の規定がございます。第百二十七條から百二十八條、この二つの條文は、手続の費用、義務の履行費その他の費用の負担、徴收等に関する規定でございます。第百二十七條は、起業者、土地所有者及び関係人がこの法律又はこの法律に基く命令に規定する手続その他の行為をし、又は義務を履行するために要する費用は、それぞれの者がみずから負担するという規定でございます。百二十八條、これは市町村長が、先ほど御説明申上げました第九十九條によりまして、土地若しくは物件の引渡しとか、物件の移転の代行等をいたします場合に要しました費用を徴收する場合に、どういうふうにして徴收するかという、費用の負担に関する規定を書いたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/23
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024・田中一
○田中一君 これは別に問題ございません。ただ一つ前のほうですね、一つちよつと私質問するのを忘れたのでありますが、いいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/24
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025・小林英三
○委員長(小林英三君) はい、よろしうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/25
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026・田中一
○田中一君 この調停委員でございますが、調停委員というのは、結局委員三名の中から選ぶというのですが、この場合に收用委員である者が調停委員になれるわけですが、その調停委員というものの身分とか、收用委員と調停委員というものの区別、それからその收用委員は法律的に定められるのでありますが、調停委員というものは調停、という一つの、何と言いますか、行為をするということにとどまるのか、どういうことで質問したらいいかわからんけれども、收用委員とは身分上全然異なつておりますね、收用委員である者が調停委員になれますが、收用委員の権限、決定というものと……、調停委員はおのずから調停に違いないのですが、調停委員というものを殊更に作らないでも、收用委員の三名が調停の役割を果せば、それでいいのじやないかと思うのです。改めて調停委員というものが生れたということの……、調停委員法とか何とかいうものがあるかどうか、私は詳しく知りませんけれども、若し調停委員というものを置かなければならない必要があつて置くのですか。そのところが……。收用委員の五名が、そういう場合には調停の責に任ずるとか、何とかいうようなことでいいのじやないかと思うが、どういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/26
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027・澁江操一
○政府委員(澁江操一君) 立案いたしました者の考え方といたしましては、お説のように、調停委員はそのまま收用委員がそういう権限を行えば、それでもよろしいわけです。この調停委員制度は、要するに規定を置きましたゆえんは、当事者の気持をできるだけ尊重してやるということでありますので、そういう点を加味いたしまして、当事者のうちから或る程度調停委員を出したいという希望があれば、それも参考にしたい。そのためにわざわざ第四項を置いてございまして、起業者が推薦する者或いは利害関係人の推薦する者というものも範疇に入れるという仕組みをとつております。これは要するに当事者の或る程度の気持を付度してやることが、むしろ調停の趣旨を全うさせるゆえんじやないか、こういうことは必ずしも調停委員だけにこだわらない、收用委員だけにこだわらないというつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/27
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028・田中一
○田中一君 收用委員と調停委員との身分上のウエイトはどうなんですか。何と言いますかね、どちらが……、調停委員の決定に收用委員は服さなければならないとか、そうすると、收用委員会の権威というものはなくなつてしまう。收用委員というのは、今局長がおつしやつたように、双方の妥当なる点を示すわけであります。それでもなお紛争があるという場合に、調停委員との比較、調停委員というものと收用委員というものと、どちらのほうにウエイトがあるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/28
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029・高田賢造
○説明員(高田賢造君) この收用委員会の調停の制度が生れましたのは、收用委員会の本来の手続でございます。と、余りにも形式がやかましく、或る程度強制的な効力を持ちますので、相当嚴格な法律的手続で進めなければならんわけであります。併しこの調停はそういうむずかしい法律的な手続にこだわらずに、できるだけその当事者の意思が十分入るような、調停案そのものの中に当事者の両方の意見が入りますような、もつと簡易な調停手続というものを一応用意して置く必要がある、これがここに掲げました調停制度が生れたゆえんでございまして、むずかしい法律上の効力とか或いは法律上の手続というものは、ここに御覧下さいますように、余り書いてないのであります。相当運用の妙を発揮いたしまして、両方の当事者の意向を調停委員でうまくまとめて、まるく收めるというところに本来の收用手続と全然性質が違うところがございます。調停委角を設けましたのは、飽くまでまるく收めるというところからいたしまして、工夫した規定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/29
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030・田中一
○田中一君 第五十條ですね、「收用委員会は、審理の途中において、何時でも、起業者、土地所有者及び関係人に、和解を勧めることができる。」とありますが、この和解と調停の解釈はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/30
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031・高田賢造
○説明員(高田賢造君) 五十條の和解のほうは、收用の手続の中に入りましてから、而も入りました後において委員会が開始した、その規定の中におきましての和解でございます。この調停のほうは、收用手続の中に入ります前の段階で、或いはその外での話合いでまとめるという一つのところを狙つたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/31
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032・田中一
○田中一君 收用委員が調停委員になつていますね。收用委員会の和解ですね。それから調停委員の中に收用委員以外の者から入れるという根拠は、お設のように、理窟を言わずに話を進めて行こうという趣旨からわかりますか、この場合には、との委員外の二名の者は收用委員としての資格を持つのですか。八章の第一節の收用委員会の調停、その場合には、入つた場合には、收用委員としての資格をその調停の機関が持つのですか、持たないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/32
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033・高田賢造
○説明員(高田賢造君) 第一節の見出しが收用委員会とございますのは、たまたまここに百九條の第五項にございますように、この調停委員会の委員長は收用委員会の委員の中から選ばれた者が入りまして、收用法のむずかしい手続ではございませんけれども、或る意味におきまして、收用委員会の委員がそこに入りまして、そこでいろいろお世話をするという意味におきまして、收用委員会という名前を使つてございます。併しながら手続はこれはやはり御心配のように、收用手続とは別個の離れた手続でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/33
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034・田中一
○田中一君 そうすると、これはこの委員外の二人の者は調停委員になれる、それは收用委員としての資格はないのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/34
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035・高田賢造
○説明員(高田賢造君) この場合、收用法の收用手続の中の收用委員とは違うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/35
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036・小林英三
○委員長(小林英三君) ほかに御意見がないならば、第十章に移ります。訴願及び訴訟。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/36
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037・岡田武彦
○法制局参事(岡田武彦君) 第十章訴願及び訴訟について御説明申上げます。第百二十九條は、訴願に関する規定でございまして、第一項は、都道府県知事がいたしました事業の認定に対しまして、利害関係を有する者が、この当該事業の認定について不服かありますときは、建設大臣に訴願することができるという規定であります。これは新しい規定であります。第二項は現行法ともございまして、收用委員会の裁決に対して不服がある者は、建設大臣に訴願することができるという規定でございます。第百三十條、訴願の裁決に関する規定、この場合、訴願がありました場合におきましては、建設大臣はこの事業の認定が法令の規定に違反し、又は不当であると認めるときは、事業の認定の全部又は一部を取消し、又は変更する裁決をすることができるのでございます。それから收用委員会の裁決に対する不服の訴願があつた場合におきましては、その裁決が法令の規定に違反し、又は不当であると認めるときは、建設大臣は原裁決の全部又は部を取消し、又は変更する裁決をすることができるのでございます。第三項以下は、それに伴う手続規定が書いてあるのでございます。第百三十一條、これは建設大臣が訴願に対しまして裁決いたしますときは、あらかじめ土地調整委員会の意見を聞かなければならないという規定でございます。第百三十二條、訴訟、これは現行法と殆んど類似の規定でございます。百三十三條、これも現行法と同樣、類似の規定でございます。百三十四條も現行法と同樣でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/37
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038・小林英三
○委員長(小林英三君) 御質疑がなければ、十一章に移りたいと存じますが、御異議ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/38
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039・田中一
○田中一君 土地調整委員会ですね。これは何故土地調整委員の意見を聞かなければならないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/39
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040・澁江操一
○政府委員(澁江操一君) この間説明いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/40
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041・小林英三
○委員長(小林英三君) それでは第十一章に移ります。雑則。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/41
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042・岡田武彦
○法制局参事(岡田武彦君) 第十一章雑則でございます。第百三十五條は、期間の計算方法と通知及び書類の送達の方法の規定でございまして、現行法に類似の規定でございますので、説明を省略させて頂きます。百三十六條、これは代理人に関する規定でございまして、この規定は新らしい規定でございまして、この法律に基きまして、起業者とか、土地所有者がいろいろな行為をいたします場合において、弁護士その他適当な者を代理人とすることができるという規定でございます。第百三十七條、秘密を守る義務、これは收用委員会の委員、予備委員及び調停委員の委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならないという規定でございます。次に百三十八條でございますが、これは総則にございますが、総則の第五條におきましては、所有権以外の権利についての收用又は使用、第六條におきましては、立木、建物その他土地に定着する物件に関する收用、使用、第七條は、土石、砂礫を收用する場合の規定が総則にあるのでございますが、これにつきまして、この百三十八條におきまして、総則からずつと第十章までの間におきまして準用することを必要とする規定を掲げておるのでございます。なお又この場合に準用しにくいような文句もございますので、この條文におきまして、読替えの規定をずつと詳細に規定しておるわけであります。これによりまして、土地以外の権利とか、立木、建物その他土地に定着する物件、それから土石、砂礫の收用又は使用ができるようになつておるわけであります。それから第百三十九條、土石、砂礫を收用する場合の効果の特例に関する規定であります。これは土石、砂礫の性質上特例を設ける必要があるのでございまして、土石、砂礫を收用する場合におきましては、起業者は收用の時期におきまして、当該土石、砂礫を採取する権利を取得し、当該土石、砂礫の属する土地に関するその他の権利は、その採取に支障を及ぼす限度におきまして行使することができないのでございます。第百四十條、これは地方公共団体に関する規定でありまして、この法律には随所に市町村とか、市町村長という文言が出て参りますけれども、これにつきまして、東京都の区とか、地方自治法によります五大都市における区とかというものに読替える規定を置いておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/42
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043・小川久義
○小川久義君 次に進めて頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/43
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044・小林英三
○委員長(小林英三君) それでは第十二章に移りたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/44
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045・小林英三
○委員長(小林英三君) それでは第十二章に移ります。罰則。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/45
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046・岡田武彦
○法制局参事(岡田武彦君) 罰則について御説明申上げます。第百四十一條以下百四十六條までは、この法律の規定に違反した場合の罰則に関する規定でございまして、現行法は古いために、罰金等につきまして、相当修正する必要がございますので、現下の経済情勢と睨み合せまして又他の刑罰法令とも権衡を失しないように勘案いたしまして、この罰則に関する章を設けた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/46
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047・小林英三
○委員長(小林英三君) 御質疑がなければ、土地收用法案の質疑を終えまして、土地收用法施行法案を議題にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/47
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048・小林英三
○委員長(小林英三君) 御異議ないと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/48
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049・小林英三
○委員長(小林英三君) 收用法施行法案を議題に供します。簡單なる説明を請います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/49
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050・岡田武彦
○法制局参事(岡田武彦君) 土地收用法施行法案は、現行土地收用法から新法に乘り移ります場合におきまするところの経過的規定を設けておるのでございます。先ず第條は、ここに書いてあります通りでございまして、土地收用法を廃止するわけであります。それから第二條から第八條までは、旧法から新法に切替える場合の経過的規定を設けておるのでございます。それから第九條に移りますが、第九條は罰則の適用につきましては、新法施行後もなお従前の例によるという規定でございます。それから第十條から最後の條文でございます第二十四條までは、土地收用法の全文改正に伴いまして、現行法と條文が変つて参りましたので、他の法律で以ていろいろと土地收用法を適用しております場合についての調整を図る規定でございます。
以上簡單でございますが、土地收用法施行法の御説明を申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/50
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051・小川久義
○小川久義君 ちよつと速記をとめて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/51
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052・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記をとめて……。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/52
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053・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記を始めて……。皆さんにお諮りいたします。只今議題となつております土地收用法案及び土地收用法施行法案につきましては、討論を省略して直ちに採決に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/53
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054・小林英三
○委員長(小林英三君) 御異議ないようでありますから、両法案を一括して採決いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/54
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055・小林英三
○委員長(小林英三君) 御異議ないと認めます。それでは両法案を括して議題に供します。両法案を原案通り可決するひとに賛成の諸君の起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/55
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056・小林英三
○委員長(小林英三君) 全会一致であります。よつて両法案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお本全議におきまする委員長の口頭報告の内容は、先例に従つて行いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/56
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057・小林英三
○委員長(小林英三君) 御異議ないと認めます。
それから両法案を可とされた諸君は、成規の通り順次多数意見者の署名をお願い申上げます。
多数意見者署名
小川 久義 島津 忠彦
平井 太郎 深水 六郎
田中 一 徳川 宗敬発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/57
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058・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記をとめて……。
〔速記中止〕
〔委員長退席、理事小川久義君委員長席に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/58
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059・小川久義
○理事(小川久義君) 速記を始めて……。
これから引続いて委員会を開きます。更に今日の日程に上つております北上川開発法案に対して、先日提案理由の御説明を聞いたのですが、もう少し詳細に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/59
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060・高橋進太郎
○委員外議員(高橋進太郎君) 先日提案理由の説明を申上げたのですが、その際御配付申上げました北上川の地図を御覧頂きますればわかると存じますが、この前も申上げました通り、北上川は約二百四十二キロで、宮城県並びに岩手県を貫いておりまする東北随一の川でございます。従つて百五十万の住民がその生業を托しておる地域であり、その地域からだけでも米が二百四十万石もとれる。今回のこの改修によりまして、大体八十万石以上の米の増産が期待できるという結論に相成つておるのであります。そこでなぜ一体この計画に着手いたしましたかという経過を申上げまする前に、この北上川の近年起りました水害の実況についていささか申上げたいと存じます。説明書にもございました通り、明治初年以来、約九十回の水害がたび重なつており、これがために岩手、宮城がいわゆる困窮のどん底に落ちまして、両県とも日本で尻から一、二を争うような貧乏県に相成りましたのも、全くこの水害と苦闘に苦闘を重ねたというようなことが最も大きな原因をなしているのであります。そこで最近の水害の最も大きいのは昭和二十二年の七月に宮城県の迫川、北上在の水系である迫川が決懐いたしまして、石越村という村を中心にいたしまして、約四十日以上に亘つてその村の大部分が水底に没し、且つ住民がそのために或いは北海道に身売りし、或いは婦女子の身売り等も惹き起したというような問題があつたのでございまするが、その年の九月にはカザリン台風がございまして、一方においては一関を中心といたしました殆んどの部分がいわゆる長い間軒まで達するところの泥土と化し、宮城県におきましては、岩手県を境といたしますところの上沼村という所で北上川が決壊いたしたのであります。北上川の決壊いたしましたのは明治九年以来始めてでありまして、この北上川の決壌によりまして、一関と同樣に宮城県の北部におきまする約八万町歩の耕地は全部一望の泥海と化するという状況に相成り、長いのは四十数日もそういう状態が続いたというので、それを機会にいたしまして、事新らしく北上川の問題が大きく取上げられたのであります。と申しまするのは、従来北上川が大体宮城県の部分につきましては、一応の改修工事ができ上りましで、即ちここにございまする新北上川という、この今まで石巻に流れておりましたところの北上川の出口を追波という太平洋岸に分水いたしまして、この解決を図つたのであります。従つて一方住民といたしましては、即ち北上川の一応の体系はできた。従つて事北上川に関する限りは先ず大丈夫ではないかという考えをしておつたのでございまするが、
〔理事小川久義君退席、委員長着席〕
この昭和二十二年のカザリンの台風によりまして、而も内務省の従来の河川計画は、従来の流水量に対して二割の幅を見ておつたのでありまして、到底この北上川の本堤防がいよいよ決壊するなどということは夢にも考えておらなかつたのであります。実はその当時でありまするが、北上川の一関が決壊して、そうして一関が全面的に水底に没したということを聞き、その水が北上川の非常な増水となつて警戒水位に達して、北上川危しというような声を聞いたのでありまするが、宮城県の土木部長のごときは、そういうばかなことはない、あれは内務省の粹を集めて作つた川であつて、而も計画水量の二割も幅を見ておるのであるから、そんなばかなことはない。それは電話の誤まりであろうとさえ言つたその言葉が、約三時間後におきましては、決壊いたしまして、先ほど申上げました通り、宮城県の北部におきましては約八万町歩の土地が一瞬に水底に没したという記録があるのであります。続いて昭和二十三年におきましても、これ又八月と九月におきましては、アイオン台風がありまして、再び一関は全国稀に見る惨状を呈したのであります。続いて二十四年度も水害があり、且つ又二十五年の八月におきましても、同じような水害が、この北上川の水系を中心にいたしまして、両県下に水害があつたのであります。かくのごとく、この数カ年間、連年、而も多い所では只今申上げました石越という村のごときは、この五カ年間に米をとつたのはただ一度である。而も御丁寧に年に二度ずつ起すところの水害に見舞われて、四十日以上もその水が引かないというような、こういう水害がたびたびあるというのは、全国でも稀なる所であり、全くほかにない例でございます。そのために昭和二十二年以来、年々数十万石の米がそのためにとれず、且つ又その他の生業におきましても、困窮のどん底に陷つているというのが、この北上川の水系を中心にいたしました宮城、岩手の両県下の惨状の実情であります。
そこでこういう実情に対応いたしまして、何とかこれは根本的な治水計画、延いては利水並びに総合計画を立てるのでなければ、両県下の県民は誠にその困窮の一路を迫るばかりであるというので、昭和二十二年以来鋭意この問題に、岩手県も宮城県も、県政のあらゆる問題を捨てまして、そうしてこれと取組んで参つたのであります。その間或いは東北の軍政部から天然資源課長ロストハウスというかたがわざわざ両県下の知事並びに関係官を呼ばれまして、この問題のために特に軍政部の全体会議を開いてくれたのであります。これは二十三年であると記憶しておりまするが、その際にロストハウスさんの指示いたしましたのは、大体アメリカのTVAの構想を中心にいたしまして、そうして岩手、宮城の両県において、このTVAの構想を中心にして、急速にこれが問題の解決のために話を進めるようにという指示があつたのであります。このためにはわざわざアメリカからも人を呼んで頂き、或いは総司令部のほうからも、或いは林業、或いは農業、或いは治山というような係官を招致して頂きまして、我々にいろいろとこのTVAに関する資料を、或いは又いろいろなサゼツシヨンをせられたのであります。併しながら何せ両県下とも、先ほど申上げました通り、明治初年以来九十回も水害を重ねておるというような県であり、目ぼしい企業というものは殆んどない。而もただ僅かないわゆる單作地帶の農業において露命を繋ぐという状態でありますので、到底アメリカのTVAにまねるような、ああいう各州が連合して豊富な資金を作り、それによつて自主的にこの問題を解決するというようなことは到底及び得ないので、これらの総合案ができるまでは、ひたすら中央の補助にお縋りし、補助金の増額を念じておつたのでありまするけれども、なかなか一方においては、年々の災害であり、且つ又それらの費用が嵩み、又私どものほうの財政的な制約を受けて思うに任せなかつたのであります。その際我々といたしまして考えましたのは、大体三通りの案を考えたのであります。一つの案といたしましては、この宮城県と岩手県で一種の県連合の水利組合のような、いわゆる県水利組合のような総合水利組合を作つて、そうしてこれを法律の規定に基いて国から強力なる補助を受けて、それによつてこの問題の解決に資したらどうかという案であります。ところがこの案はいわゆる自治体であるところの宮城県及び岩手県の連合で、その連合となるところのこの岩手、宮城の財政力というものは、先ほど申上げました通り、極めて貧困でありまして、このいわゆる文なしの者が集まつたところで、なかなか財政的な目度が付かん。而うして、この前の説明にも申上げました通り、この総合計画を遂行いたしますには、約九百億の資金を要するのでありまするけれども、到底両県の水利組合の連合会という形式では、この目的が達成し得ないし、且つ又両県のみを目的とするということになれば、いわゆる憲法上に言う住民の投票というような制約等もあつて、この案もなかなかむずかしいのではないかというふうに考えて、結論に到達しておらなかつたのであります。第二案は、いわゆる港湾法の規定のうちにありまする一種の公法人のような考え方で、その公法人によつて岩手、宮城を緊密に結んで、その公法人を中核といたしまして、これらの事業を完成さしたらという考え方であります。而しながら、この公法人も今申上げました通り、資金の調達その他におきまして、重大なる障害があり、果してそれらの公法人を以て、これが完璧が期し得るかどうかというような点が相当論議になりまして、結論までに到達しない、その折に利根川につきましては、先般参議院において通過いたしましたあの利根川開発法案というものの御提出があり、而もあの構想は、いわゆる国の力と地方の力とを渾然一体たる形において統合し、それによつて総合的なこの計画というものを協力に推進しようという一つの態勢を作るという狙いに相成つたのであります。従つて北上川といたしましても、この利根川の開発法に準じまして、ここにかねて我々といたしまして、研究に研究を重ねて、そうしてない智恵を絞りに絞つたこれらの案を提げまして、そうして北上川開発法案というものを今回お手許に御審議を頂き、そうしてかねて我々百五十万の北上川を中心とするその住民が、日夜念願しておるこの問題というものの解決に当りたい、こういうのが本案の趣旨でございます。従つて本案につきましては、この地図で御覧になるように、岩手、宮城を総合し、北上川の水系を中心にして、そうして一にはこれの治山、治水というものを完璧にすると共に、昔は大体石巻から盛岡の近所まで水運の便があつたのであります。これは芭蕉の奥の細道等を御覧になればおわかりの通り、帆かけ船を以て運航しておつたのでありますが、荒廃に荒廃を重ねたところの現状では、所々に水運を阻害するような場所等もありますので、従つていわゆる利水方面についても、十分これを考慮し、且つ又その治山、治水の根本となるところの問題は、従来單に堰堤の築造というところに重点が置いてあつたのでありまするけれども、これでは到底問題の解決にはならないのであります。と申しますのは、昭和二十二年の九月の災害で、一関がいわゆる日本でも珍らしいような惨状を呈して、死傷者だけでも五百人を出したというような状況でございまして、非常な問題になつたのでありまするが、要するに当時の北上川というのは、大体宮城県と岩手県の境で、五千五百立方の水を流す、こういうような計画であつたのであります。ところがこのカザリン台風のときには、約四百五十ミリという未だ曾つて記録にないところの雨量があると共に、その水量におきまして、約九千立方メーターの水が流れたというような、誠に驚異的な水であつたのであります。従つて従来の計画を根本的に改革しなければならん。このためには岩手県の上流におきまして、約五つのダムを作りまして、そのダムの築造によつて、約二千立方メーターぐらいの水を洪水量の場合においては調整する、且つ又一部には遊水地帶というものを設けまして、そうしていわゆる大の虫を生かすために小の虫を殺すというような建前から、洪水のひどい場合においては、その田畑を犠牲にいたしまして、そこを遊水にするというような案も併用いたしまして、そうしてこの曾つで記録されました九千立方メートルの水を何とか調整しようというような考えが基礎になり、そのためにはこのダムの築造ということが先ず大きく岩手県の場合においては取上げられたのであります。同じように宮城県においても、約二カ所においてダムを築造する、その結果、そのダムの築透の結果、これにもございます通り、発電が可能となり、その発電を基礎にして、又立遅れておるところの農業の改革となり、或いは又その一方におきましては、いわゆるこの北上川水系の治山、治水の完璧によりまして、今まで遊水地帶であり、或いは水害地であるというようなものが、或いは灌漑の便を得、或いは又排水の便を得て耕地の改良に相成りまして、そうしてこれらを総合いたしますれば、約八十万石の食糧が両県下において増産するという結論に相成つたものであります。なおそれに関連いたしまして、この地図でも御覧になるように、根本は最近における山の荒廃でもございまするので、一方においてはいわゆる造林計画を強力に推し拡めて行く、それに伴う砂防であるとか、或いは治山砂防であるとかというような面も併用いたしまして、そうしてここに完璧を期したいというのがこの法案の狙いであります。従事、ともしますれば、いわゆる治水は治水、治山は治山、利水は利水、或いは発電計画は発電計画、或いは又耕地造成は農林省において耕地造成というような工合に、そこに総合的な有機性がなければなりません。一例を申上げますれば、宮城県の場合で仙北地方において、昔の旧藩時代においては約十幾つかの遊水地帶がございました。そうして自然的な調整を以て、これらの洪水の解決に当つておつたようであります。ところが最近における食糧の増産或いは人口の激増というような問題から、この遊水地帶というものを殆んど干拓いたしたのであります。例えば一例を申上げますれば、品井沼という約六千町歩の沼が宮城県にあるのでありますが、その六千町歩も殆んど干拓を完了した、こういう状況になつておる。そこには約六百戸の農民が入つておるのであります。ところがこの品井沼のごときも、この五カ年聞に三回水害に見舞われて、根本的にその農業経営が覆えされ、而も滯水期間が約三十日以上に亘つておるというような状態で、これは要するに干拓事業と、それに伴うところの排水並びに一方における治山、治水というようなものの計画が総合しておりませんものですから、要する治水計画なり、それらに対応すべきいわゆる土木事業が完成しないうちに、農業のほうの干拓事業が進捗し、それによつて米を植えるほうを先にやつた、その結果はマツチしないところの治水が破れまして、五年のうちに三度も水に見舞われるというような例が各所にあるのであります。そういうような点から見ますれば、どうしてもこの法案を御通過頂きまして、そうしてこれらの事業がいわゆる渾然一体となつて総合され、そうしてそれによつてこの両県下を百年の安きに置きたいというのが、今回この法案を通じまして、両県民の希つておるところでございます。どうぞ委員各位におかれましては、この両県下、いわゆる日本にもかくのごとき、数年の間に何回も洪水に見舞われ、而もその規模の大きく、滯水期間が長く、而も困窮のどん底にあるというようなのは他にないのでありまして、そういう両県下の実態を十分御認識下さいまして、この案に対してできるだけ早く御審議をお願いいたしますことをお願い申上げる次第でございます。なおあとに御質問があれば、幸い両県の土木部長並びに宮城県からは企画局長が来ておりますので、御質問にお答えしたいと思います。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/60
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061・小川久義
○小川久義君 折角地元からもおいでになつているのだし、速記をとめて、懇談の形で伺つたらどうかと思いますが、さようお取計らいを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/61
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062・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記をとめて……。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/62
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063・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記を始めて……。なおこの際お諮りいたしたいことがございます。参議院議長に対しまして、継続調査要求書を出したいと思いますが、ちよつと專門員に読ませます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/63
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064・武井篤
○專門員(武井篤君) 継続調査要求書の案でございます。
一、調査事件
河川、道路、都市及び建築等各種事業並びに国土その他諸計画に関する調査。
一、理由
本委員会は目下右に関する調査を進めているが、本調査は、その対象が広汎多岐にわたり、且つ、尚年度諸計画並びに事業に関して、その施策を十分検討する必要があり、これを中断することは調査上多大の不利、不便を招来するので、閉会中においても継続して調査を行いたい。
右本委員会の決議を経て、本院規則第五十三條により要求する
昭和二十六年五月 日
建設委員長 小林 英三
参議院議長 佐藤尚武殿発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/64
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065・小林英三
○委員長(小林英三君) 継続調査要求書を出すことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/65
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066・小林英三
○委員長(小林英三君) 御異議ないと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/66
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067・小林英三
○委員長(小林英三君) なお調査未了報告書を提出したいと思いますが、その内容は委員長に御一任願うことにして御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/67
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068・小林英三
○委員長(小林英三君) 御異議ないと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/68
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069・小林英三
○委員長(小林英三君) 次は、住宅金融公庫法の一部を改正する法律案を議題に供します。先ず提案理由の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/69
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070・瀬戸山三男
○衆議院議員(瀬戸山三男君) 只今議題となりました住宅金融公庫法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由と法案の概要を御説明申上げます。
御存じのごとく、住宅金融公庫は、昨年五月住宅金融公庫法に基き設立され、翌六月より業務を開始しております。併し当時予期せられなかつた朝鮮動乱勃発の結果、建築資材の値上り、従つて建設費の高騰が著しく、ために現行の融資條件のままでは、公庫から住宅の建設資金を借り受ける一般の人口にとつて過重な負担となり、公庫本来の目的を達することが困難な状況と相成つたのであります。本法案におきましては、貸付限度の引上げと、償還期間の延長等、実情に即した融資條件の緩和を図り、以て比較的所得の少い一般大衆に対しましても、公庫の利用を可能にせんとしておるのであります。なお都市における防火の重要性に鑑み耐火構造、又は簡易耐火構造の住宅につきましては、貸付限度の特段の引上げを行い、その建設を助成することにいたしております。
次に、融資の対象となります住宅の面積は、従来十八坪を限度としておりましたが、戰後五年を経過いたしました今日、本格的復興に備えるため、この範囲を僅ではありますが拡げまして、二十坪までといたしました。このほか更に改善したい点も相当残されておるのでありますが、諸種の事情によりまして、一度に改革することが困難でありますため、他日漸を追つて行うべきものといたしまして、今日は必要最小限の、以上の点にとどめた次第でございます。
なお、附則において規定いたしました通り、貸付率の引上と貸付対象の拡大とは、本年七月一日以降において、住宅論敵公庫で申込を受付けたものに適用いたしますが、これは事務的の混乱を避けるために過去に遡及することをいたさなかつたのであります。但し、償還期間の延長のみは、場合によつては過去に受付けたのに対しましても適用し得ることとし、実情に応じて負担の軽減をなし得る途を開いておる次第であります。
以上誠に簡單でありますが、要旨を御説明申上げた次第であります。よろしく御審議の上、速かに可決せられんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/70
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071・小林英三
○委員長(小林英三君) 本案につきましては、質疑は明日に譲りまして、本日はこれで散会いたします。
午後五時六分散会
出席者は左の通り。
委員長 小林 英三君
理事
岩崎正三郎君
赤木 正雄君
小川 久義君
委員
島津 忠彦君
平井 太郎君
深水 六郎君
田中 一君
三輪 貞治君
徳川 宗敬君
委員外議員
高橋進太郎君
衆議院議員
瀬戸山三男君
政府委員
建設省管理局長 澁江 操一君
事務局側
常任委員会專門
員 武井 篤君
常任委員会專門
員 菊池 璋三君
法制局側
参 事
(第三部長) 岡田 武彦君
説明員
建設省管理局総
務課長 高田 賢造君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014149X02319510528/71
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